(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】シリコンウェハーをドーピングするためのガス混合物を分配する設備及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/223 20060101AFI20230727BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230727BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230727BHJP
F17C 13/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
H01L21/223 Z
H01L21/205
H01L21/31 Z
F17C13/00 302Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574649
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021064250
(87)【国際公開番号】W WO2021244946
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】599115310
【氏名又は名称】エアー・リキッド・エレクトロニクス・システムズ
【氏名又は名称原語表記】AIR LIQUIDE ELECTRONICS SYSTEMS
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】トドロヴァ、ヴァニナ
(72)【発明者】
【氏名】ダルフィ、エルヴェ
【テーマコード(参考)】
3E172
5F045
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB16
3E172BA01
3E172BA04
3E172DA90
3E172EB02
3E172KA03
3E172KA22
5F045AA03
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC19
5F045AF03
5F045BB08
5F045BB20
5F045EE02
5F045EE04
5F045EE05
5F045EE12
5F045GB04
5F045GB06
5F045GB07
5F045GB15
(57)【要約】
ドーピングガス(1)供給源と、キャリアガス(2)供給源と、ドーピングガス容器(1)に接続されたミキサー装置(3)と、キャリアガス(2)供給源と、ミキサー装置(3)へのドーピングガス(1)及びキャリアガス(2)の流量を調整するための第1の流量調整部材(41)及び第2の流量調整部材(42)と、ドーピングガス(1)及び/又はキャリアガス(2)の混合物のうちの少なくとも1つの目標含有量(C1、C2)に従って決定される割合で第1の流量設定値(D1)及び第2の流量設定値(D2)を調整するように第1及び第2の流量調整部材(41、42)を制御するための制御ユニット(5)と、バッファタンク(7)と、混合物を消費流量(DC)でドーピングユニット(10)に分配するための分配ライン(6)と、物理量を測定するための少なくとも1つの測定センサ(8)であって、その物理量の変動が消費流量(DC)の変動を表し、第1の測定信号を供給するためのものである測定センサ(8)と、センサ(8)に接続されており、且つ第1の測定信号に基づいて第1の制御信号を生成するように構成された制御ユニット(5)と、第1の制御信号に応答して第1及び第2の流量設定値(D1、D2)を調整するように構成された流量調整部材(41、42)と、を備えた、シリコンウェハードーピングユニットにガス混合物を分配する設備が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハードーピングユニットにおける使用に適しており且つその使用を目的としたガス混合物を供給するためのプラントであって、
- ドーパントガス(1)の供給源、
- キャリアガス(2)の供給源、
- 前記ドーパントガス(1)の容器と前記キャリアガスの供給源とに流体接続されたミキサー装置(3)であって、前記ドーパントガスと前記キャリアガスとを含むガス混合物を出口(33)で生成するように構成されたミキサー装置(3)、
- 運転中の前記ミキサー装置(3)の出口(33)における前記ガス混合物の生成流量(DP)を規定する第1の流量設定値(D1)及び第2の流量設定値(D2)に従って、前記ミキサー装置(3)に向かって流れる前記ドーパントガス(1)の流れ及び前記キャリアガス(2)の流れをそれぞれ調節するように構成された第1の流量調整部材(41)及び第2の流量調整部材(42)、
- 前記生成流量(DP)に対するそれぞれの割合で前記第1の流量設定値(D1)及び前記第2の流量設定値(D2)を調整するように前記第1及び第2の流量調整部材(41、42)を制御するように構成された制御ユニット(5)であって、前記それぞれの割合が、前記ガス混合物中のドーパントガス(1)及び/又はキャリアガス(2)の少なくとも一つの目標含有量(C1、C2)の関数として決定される制御ユニット(5)、
- 一方で前記ミキサー装置(3)の前記出口(33)に、他方で供給ライン(6)に出口ダクト(23)によって接続されたバッファタンク(7)であって、前記供給ライン(6)が、前記ガス混合物の変動消費量を表す消費流量(DC)でシリコンウェハードーピングユニット(10)に前記ガス混合物を供給するように構成された、バッファタンク(7)、
- 物理量を測定するように構成された少なくとも1つの測定センサ(8)であって、その変動が前記供給ライン(6)によって供給される消費流量(DC)の変動を表し、前記物理量の第1の測定信号を提供する測定センサ(8)、
を含み、
前記制御ユニット(5)が、前記測定センサ(8)に接続されており、且つ前記第1の測定信号から第1の制御信号を生成するように構成されており、前記流量調整部材(41、42)が、前記第1の制御信号に応答して前記第1の流量設定値(D1)及び前記第2の流量設定値(D2)を調整するように構成されている、プラント。
【請求項2】
前記バッファタンク(7)の下流に配置されており、且つ前記供給ライン(6)によって供給される前記ガス混合物中のドーパントガス(1)及び/又はキャリアガス(2)のうちの少なくとも1つのそれぞれの含有量を分析するように構成された第1の分析ユニット(13)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記第1の分析ユニット(13)を第1のサンプリング位置(36a)で前記供給ライン(6)に接続する第1のサンプリングダクト(36)と、前記第1の分析ユニット(13)を第1の戻り位置(37a)で前記供給ライン(6)に接続する第1の戻りライン(37)とを備えており、前記戻り位置(37a)が前記供給ライン(6)の前記第1のサンプリング位置(36a)の下流に位置し、減圧弁(51)が、前記第1のサンプリング位置(36a)と前記第1の戻り位置(37a)との間の前記供給ライン(6)上に取り付けられており、好ましくは、前記減圧弁(51)が前記測定センサ(8)の上流に取り付けられていることを特徴とする、請求項2に記載のプラント。
【請求項4】
前記ミキサー装置(3)の前記第1の出口(33)で生成された前記ガス混合物中のドーパントガス(1)及び/又はキャリアガス(2)のうちの少なくとも1つの含有量を測定し、その結果少なくとも第2の測定信号を提供するように構成された第2の分析ユニット(14)と、前記第2の分析ユニット(14)に接続されており、前記第2の測定信号から第2の制御信号を生成し、且つ前記第2の制御信号に応答して前記生成流量(DP)に対する前記第1の流量設定値(D1)の割合及び/又は前記第2の流量設定値(D2)の割合を修正するように構成された制御ユニット(5)と、を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項5】
前記第2の分析ユニット(14)を第2のサンプリング位置(34a)で前記出口ライン(23)に接続する第2のサンプリングダクト(34)と、前記出口ライン(23)上の前記第2のサンプリング位置(34a)の下流に位置する第2の戻り位置(35a)で前記第2の分析ユニット(14)を前記出口ライン(23)に接続する第2の戻りライン(35)と、前記第2のサンプリング位置(34a)と前記第2の戻り位置(35a)との間の前記出口ライン(23)に取り付けられた背圧調整弁(52)と、を備えることを特徴とする、請求項4に記載のプラント。
【請求項6】
0.0001%~50%、好ましくは0.05%~30%(体積%)のドーパントガス(1)の含有量を有する混合物を供給するように構成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
前記ドーパントガス(1)の供給源が、四水素化ゲルマニウム(GeH
4)、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)、及び/若しくはジボラン(B
2H
6)を含む、並びに/又は前記キャリアガス(2)の供給源が、水素(H
2)、窒素(N
2)、及び/若しくはアルゴン(Ar)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項8】
前記ドーパントガス供給源(1)が、ドーパントガス(1)とキャリアガス(2)とから形成されるガスプレミックスを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項9】
前記第1及び第2の流量設定値(D1、D2)から前記測定センサ(8)によって提供される前記第1の測定信号への第1のフィードバックループを含み、前記第1のループが、
- 前記制御ユニット(5)内に配置されており且つ前記第1の測定信号から少なくとも第1のエラー信号を生成するように構成された第1のコンパレータ(11A)、
- 前記制御ユニット(5)内に配置された、特に比例・積分・微分(PID)タイプの第1のコレクタ(12A)であって、前記第1のエラー信号から前記第1の制御信号を生成するように構成された第1のコレクタ(12A)、
- 前記第1のコレクタ(12A)に接続されている前記第1及び第2の流量調整部材(41、42)のアクチュエータであって、前記第1の制御信号を受信し、前記第1の流量設定値(D1)及び前記第2の流量設定値(D2)が前記第1の制御信号に適合するそれぞれの位置に前記第1及び第2の流量調整部材(41、42)を動かすように構成されたアクチュエータ、
を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項10】
前記生成流量(DP)に対する前記第1の流量設定値(D1)及び/又は前記第2の流量設定値(D2)のそれぞれの割合から、前記第2の分析ユニット(14)によって提供される前記第2の測定信号への第2のフィードバックループを含み、前記第2のループが、
- 前記制御ユニット(5)内に配置されている第2のコンパレータ(11B)であって、前記ドーパントガス(1)の目標含有量(C1)と前記キャリアガス(2)の目標含有量(C2)とから選択される少なくとも1つのパラメータと前記第2の測定信号との比較から、少なくとも第2のエラー信号を生成するように構成された第2のコンパレータ(11B)、
- 前記制御ユニット(5)内に配置された、特に比例・積分・微分(PID)タイプの第2のコレクタ(12B)であって、前記第2のエラー信号から前記第2の制御信号を生成するように構成された第2のコレクタ(12B)、
- 前記第2のコレクタ(12B)に接続されている前記第1及び第2の流量調整部材(41、42)のアクチュエータであって、前記生成流量(DP)に対する前記第1の流量設定値(D1)及び/又は前記第2の流量設定値(D2)の割合が前記第2の制御信号に適合するそれぞれの位置に前記第1及び/又は第2の流量調整部材(41、42)を動かすように構成されたアクチュエータ、
を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項11】
前記測定センサ(8)が、前記消費流量(DC)を測定するように構成された流量センサ又は流量計を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
前記第1のコンパレータ(11A)が、前記消費流量(DC)の変動を表す少なくとも第1のエラー信号を生成するように構成されており、前記第1のコレクタ(12A)が、前記第1及び第2の流量調整部材(41、42)の動きを制御する第1の制御信号を生成するように構成されており、その結果前記第1及び第2の流量設定値(D1、D2)が、前記流量(DC)の変化と同じ方向に変化することを特徴とする、請求項11に記載のプラント。
【請求項13】
前記測定センサ(8)が、前記バッファタンク(7)内の圧力を測定するように構成された圧力センサを備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項14】
前記第1のコンパレータ(11A)が、前記バッファタンク(7)内の圧力の変動を表す第1のエラー信号を生成するように構成されており、前記第1のコレクタ(12A)が、前記第1及び第2の流量調整部材(41、42)の動きを制御する少なくとも第1の制御信号を生成するように構成されており、その結果前記第1及び第2の流量設定値(D1、D2)が圧力の変化と反対方向に変化することを特徴とする、請求項13に記載のプラント。
【請求項15】
加熱手段に関連付けられたチャンバを備えた炉と、ウェハーが配置される前記チャンバ内に配置された支持体とを含むシリコンウェハードーピングユニットを備え、且つ請求項1~14のいずれか一項に記載のプラントをさらに含むアセンブリであって、前記炉がドーパントガス(1)とキャリアガス(2)との混合物を前記チャンバ内に導入する手段を備えており、前記導入手段が前記プラントの前記供給ライン(6)と流体接続されていることを特徴とする、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハーをドーピングするためのユニットで使用することを目的としたガス混合物を供給するためのプラントに関する。プラントは、混合物を使用場所に直接供給することを可能にし、また消費ユニットによって消費される流れの関数として、プラントによって製造される混合物の流量を調整することも可能にする。本発明は、そのようなプラントを含む、シリコンウェハーをドーピングするためのアセンブリにも関する。
【0002】
特に、本発明によるプラント及びプロセスは、純粋なガス混合物又はガス予備混合物の混合物を供給すること、特にいわゆるキャリアガスといわゆるドーパントガスとの混合物を供給することを目的とする。
【0003】
なお、「ドーピングユニット」という表現は、単一のドーピングユニットと、ガス混合物によって並行して供給される複数の存在、特に分岐ボックスの下流に配置された複数の存在の両方に及び得る。
【0004】
本発明は、特に、半導体製造プロセスにおけるシリコンウェハーのドーピングに適用される。
【背景技術】
【0005】
エレクトロニクス用集積回路の製造プロセスにおいて、半導体製造技術は、シリコンを半導体にするために、いわゆるドーピング元素を中に挿入することによる、ケイ素原子を含むマトリックスの本質的な修飾に主に基づいている。公知のドーピング元素は、例えばゲルマニウム、リン、ヒ素、アンチモン、ホウ素、ガリウム、アルミニウムである。
【0006】
例えばリンやホウ素などを用いる最も一般的に使用されているドーピングプロセスでは、シリコンウェハーが炉に入れられ、一般的には800℃~1200℃の温度にされる。ドーパントガスとキャリアガスとの混合物が炉のチャンバに導入される。キャリアガスは、ドーパントガスをシリコンウェハーの表面に運ぶ役割を有している。
【0007】
通常、ガス混合物は、ガスボンベの中に圧縮又は液化された形態でパッケージングされる。ガスボンベの充填は逐次方式で行われ、混合物の成分が順々にボンベに導入される。各成分について、成分の導入中及び導入後のボンベ内の圧力を監視するか、成分の導入中にボンベを秤量することによって、ボンベに導入されるガスの量が確認される。ガス混合物をパッケージングするためのそのようなプラントは、特に国際公開第2010/031940A1号パンフレットに記載されている。
【0008】
ガス消費ユニットによって提供される性能及び/又は結果の信頼性及び再現性をユーザに保証するためには、各成分の濃度について高い精度を提供するガス混合物を生成することが必要である。用途に応じて、目標値に対する濃度の実際の値の変動の最大許容差は、1%(相対%)未満、又は0.5%未満、さらには0.1%未満とすることができる。成分の数が多いほど、及び/又はその含有量が少ないほど、そのような許容差を満たすことが難しくなる。
【0009】
これは、混合物の流量及びドーパントガスの含有量が比較的低い集積回路製造用のドーパント混合物で特に当てはまる。このため、ドーパントガスの含有量の監視をさらに改善し、その精度及び安定性を確保する必要がある。成分が潜在的に可燃性、自然発火性、及び/又は有毒であるドーパントガスの性質のため、この監視はさらに重要である。
【0010】
要求される精度によっては、現在のパッケージング方法では不十分な場合がある。特に、圧力制御による圧力計量パッケージングでは、圧力センサの精度と、ガス量の計算に影響及ぼす温度変動によって、精度が本質的に限定される。生成されるガス混合物の濃度値に関しての不確実性に加えて、異なるボンベにパッケージングされた混合物間の濃度の相違が存在する。そのような相違は、ボンベを交換するたびに、消費ユニットによって得られる結果を大きく変動させる可能性がある。
【0011】
構成成分を秤量することによる重量測定パッケージングは、混合物の組成に関してより高い精度を提供するが、ボンベの充填を伴う段階的なプロセスが依然として必要である。
【0012】
しかしながら、ボンベを使用すると、ガス混合物の消費がいつ変動するかを予測することが難しい供給の停止を伴い、ユーザの自律性が制限されることになる。ガス混合物のリードタイムが比較的長い場合があるため、ユーザは生産の継続性を確保するためにボンベの在庫を管理しなければならない。
【0013】
さらに、混合物のボンベへの充填は、このタイプの作業に特化したパッケージングセンターで行われる。その後、ボンベを使用場所に輸送しなければならず、これには専用の物流管理が必要とされる。危険物の輸送に関連する制約は、可燃性、自然発火性、毒性、及び/又は無酸素性の成分を含むガスの混合物を輸送する問題の場合にも存在する。
【0014】
加えて、ボンベの接続/取り外しの作業はユーザにとって面倒であり、またガス混合物が周囲の空気で汚染されるリスクが高くなる。ボンベは、充填前に、洗浄や不動態化などの工程を含む特定の準備も必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、特にシリコンウェハードーピングユニットで使用することを目的としたガス混合物を供給するためのプラントを提案することによって、上記欠点の全て又は一部を克服することであり、前記プラントは、特に混合物の消費時点における要求に応じて供給の連続性及び柔軟性を提供しながら、混合物の組成を正確に制御することを可能にする。
【0016】
この目的のために、本発明の解決手段は、シリコンウェハードーピングユニットにおける使用に適しており、その使用を目的としたガス混合物を供給するためのプラントであり、前記プラントは、
- ドーパントガスの供給源、
- キャリアガスの供給源、
- ドーパントガスの容器とキャリアガスの供給源とに流体接続されたミキサー装置であって、ドーパントガスとキャリアガスとを含むガス混合物を出口で生成するように構成されたミキサー装置、
- 運転中のミキサー装置の出口におけるガス混合物の生成流量を規定する第1の流量設定値及び第2の流量設定値に従って、ミキサー装置に向かって流れるドーパントガスの流れ及びキャリアガスの流れをそれぞれ調節するように構成された第1の流量調整部材及び第2の流量調整部材、
- 生成流量に対するそれぞれの割合で第1の流量設定値及び第2の流量設定値を調整するように第1及び第2の流量調整部材を制御するように構成された制御ユニットであって、前記それぞれの割合が、ガス混合物中のドーパントガス及び/又はキャリアガスの少なくとも一つの目標含有量の関数として決定される制御ユニット、
- 一方でミキサー装置の出口に、他方で供給ラインに出口ダクトによって接続されたバッファタンクであって、供給ラインが、ガス混合物の変動消費量を表す消費流量でシリコンウェハードーピングユニットにガス混合物を供給するように構成された、バッファタンク、
- 物理量を測定するように構成された少なくとも1つの測定センサであって、その変動は供給ラインによって供給される消費流量の変動を表し、前記物理量の第1の測定信号を提供する測定センサ、
を含み、
制御ユニットは、測定センサに接続されており、且つ第1の測定信号から第1の制御信号を生成するように構成されており、流量調整部材は、前記第1の制御信号に応答して第1の流量設定値及び第2の流量設定値を調整するように構成されている。
【0017】
場合によっては、本発明は、以下に述べる特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0018】
プラントは、バッファタンクの下流に配置されており、且つ供給ラインによって供給されるガス混合物中のドーパントガス及び/又はキャリアガスのうちの少なくとも1つのそれぞれの含有量を分析するように構成された第1の分析ユニットを備えている。
【0019】
プラントは、第1の分析ユニットを第1のサンプリング位置で供給ラインに接続する第1のサンプリングダクトと、第1の分析ユニットを第1の戻り位置で供給ラインに接続する第1の戻りラインとを備えており、戻り位置は供給ラインの第1のサンプリング位置の下流に位置し、減圧弁が、第1のサンプリング位置と第1の戻り位置との間の供給ライン上に取り付けられており、好ましくは、減圧弁は測定センサの上流に取り付けられている。
【0020】
プラントは、ミキサー装置の第1の出口で生成されたガス混合物中のドーパントガス及び/又はキャリアガスのうちの少なくとも1つの含有量を測定し、その結果少なくとも第2の測定信号を提供するように構成された第2の分析ユニットを備えており、制御ユニットが、第2の分析ユニットに接続されており、第2の測定信号から第2の制御信号を生成し、且つ生成流量に対する第1の流量設定値の割合及び/又は第2の流量設定値の割合を前記第2の制御信号に応じて変更するように構成されている。
【0021】
プラントは、第2のサンプリング位置で第2の分析ユニットを出口ラインに接続する第2のサンプリングダクトと、第2の戻り位置で第2の分析ユニットを出口ラインに接続する第2の戻りラインとを含み、戻り位置は出口ラインの第2のサンプリング位置の下流に位置しており、第2のサンプリング位置と第2の戻り位置との間の出口ラインに背圧調整弁が取り付けられている。
【0022】
プラントは、0.0001%~50%、好ましくは0.05%~30%(体積%)のドーパントガス含有量を有する混合物を供給するように構成される。
【0023】
ドーパントガス源には、四水素化ゲルマニウム(GeH4)、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、及び/又はジボラン(B2H6)が含まれる、及び/又はキャリアガス源には、水素(H2)、窒素(N2)、及び/又はアルゴン(Ar)が含まれる。
【0024】
ドーパントガス源は、ドーパントガスとキャリアガスとから形成されたガスプレミックスを含む。
【0025】
プラントは、第1及び第2の流量設定値から測定センサによって提供される第1の測定信号への第1のフィードバックループを含み、前記第1のループは、
- 制御ユニット内に配置されており且つ第1の測定信号から少なくとも第1のエラー信号を生成するように構成された第1のコンパレータ、
- 制御ユニット内に配置された、特に比例・積分・微分タイプの第1のコレクタであって、第1のエラー信号から第1の制御信号を生成するように構成された第1のコレクタ、
- 第1のコレクタに接続されている第1及び第2の流量調整部材のアクチュエータであって、第1の制御信号を受信し、第1の流量設定値及び第2の流量設定値が第1の制御信号に適合するそれぞれの位置に第1及び第2の流量調整部材を動かすように構成されたアクチュエータ、
を備える。
【0026】
プラントは、生成流量に対する第1の流量設定値及び/又は第2の流量設定値のそれぞれの割合から、第2の分析ユニットによって提供される第2の測定信号への第2のフィードバックループを含み、第2のループは、
- 制御ユニット内に配置されている第2のコンパレータであって、ドーパントガスの目標含有量とキャリアガスの目標含有量とから選択される少なくとも1つのパラメータと第2の測定信号との比較から、少なくとも第2のエラー信号を生成するように構成された第2のコンパレータ、
- 制御ユニット内に配置された、特に比例・積分・微分タイプの第2のコレクタであって、第2のエラー信号から第2の制御信号を生成するように構成された第2のコレクタ、
- 第2のコレクタに接続されている第1及び第2の流量調整部材のアクチュエータであって、生成流量に対する第1の流量設定値及び/又は第2の流量設定値が第2の制御信号に適合するそれぞれの位置に第1及び/又は第2の流量調整部材を動かすように構成されたアクチュエータ、
を備える。
【0027】
測定センサは、消費流量を測定するように構成された流量センサ又は流量計を含む。
【0028】
第1のコンパレータは、消費流量の変動を表す少なくとも第1のエラー信号を生成するように構成され、第1のコレクタは、第1及び第2の流量調整部材の動きを制御する第1の制御信号を生成するように構成され、その結果第1及び第2の流量設定値は、流量の変化と同じ方向に変化する。
【0029】
測定センサは、バッファタンク内の圧力を測定するように構成された圧力センサを備える。
【0030】
第1のコンパレータは、バッファタンク内の圧力の変動を表す第1のエラー信号を生成するように構成されており、第1のコレクタは、第1及び第2の流量調整部材の動きを制御する少なくとも第1の制御信号を生成するように構成されており、その結果第1及び第2の流量設定値は、圧力の変化と反対方向に変化する。
【0031】
さらに、本発明は、加熱手段に関連付けられたチャンバを備えた炉と、ウェハーが上に配置される前記チャンバ内に配置された支持体とを含むシリコンウェハードーピングユニットを備えており、且つ本発明によるプラントをさらに含むアセンブリであって、炉がドーパントガスとキャリアガスとの混合物をチャンバ内に導入する手段を備えており、前記導入手段が前記プラントの供給ラインと流体接続されていることを特徴とする、アセンブリに関する。
【0032】
本発明は、以降で説明される添付の図面を参照して、非限定的な例示として提供される以下の詳細な説明からより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態によるプラント運転の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による第1のフィードバックループの概略図である。
【
図3】バッファタンク内の圧力とプラントの生成流量の経時変化の一例である。
【
図4】本発明の一実施形態による、プラントによって供給されるガス混合物の成分の含有量の経時的な制御された変化の一例である。
【
図5】本発明の一実施形態によるプラントによって供給されるガス混合物の流量の経時変化と、この変化の間に測定された混合物の成分の含有量の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ドーパントガス1の供給源とキャリアガス2の供給源とを備えた本発明によるプラントを表す。これらのガスは、単一の若しくは混合された純物質、又は複数の純物質のプレミックス、特に1つの純物質が別の純物質で希釈されたものとすることができる。
【0035】
「ドーパント」という用語は、半導体の分野でケイ素をドーピングすることができ、且つドーピングに適したガス、すなわちケイ素の導電特性を変更するために別の材料の原子をケイ素マトリックスに導入することを可能にするガスを意味すると理解される。ドーパントガスとして、特に四水素化ゲルマニウム(GeH4)、ホスフィン(PH3)、ジボラン(B2H6)、アルシン(AsH3)を使用することができる。
【0036】
「キャリア」という用語は、ドーパントガスをシリコンマトリックスに輸送することができ、且つ輸送に適したガス、好ましくは水素(H2)、窒素(N2)、又はアルゴン(Ar)などの1種以上の不活性な純物質から形成されたガスを意味すると理解される。
【0037】
なお、「ドーパントガス」という表現には、ドーパント純物質、複数のドーパント純物質の混合物、又は非ドーパント純物質で希釈されたドーパント純物質を含むプレミックスが含まれ得る。有利には、ドーパントガスは、キャリアガスを形成するものと同じ性質の別の純物質で希釈されたドーパント純物質から形成される。ドーパントは非常に反応性が高いため、その安定性を確保するために、一部のものは一般的には液体状態で非常に低い温度(典型的には-30℃)で貯蔵される。キャリアガスで希釈されたドーパントガスのプレミックスを使用することにより、ドーパントは気体混合物の形態で貯蔵され、ドーパントの安定性だけでなくより優れた均一性も保証される。
【0038】
その場合、最終的にキャリアガス中のドーパントガスの含有量が0.0001%~30%の範囲であるドーパント混合物を提供するために、ドーパント純物質、特に1%~30%、好ましくは1%~15%のドーパント純物質と、残部のキャリアガスとから構成されるドーパントガスを使用することができる。例えば、ドーパントガスは、H2中で10%の含有量のB2H6をドーパント純物質として含むことができ、その後、H2と混合されることで、H2中のB2H6の含有量が0.05%~5%の範囲のドーパント混合物を提供することができる。
【0039】
好ましくは、それぞれのガス供給源は、前記ガスが入っている容器、特にガスボンベ、典型的には最大50Lの水量を有し得るボンベ、又はボンベの束を形成するように互いに接続されたボンベのセット、又はより大きな容量のタンク、特に最大1000Lの容量のタンク、例えば低温貯蔵タンク又はローリートレーラー上に配置されたタンクである。
【0040】
特に、ドーパントガス供給源はドーパントガスが入っている容器であり、キャリアガス供給源はキャリアが入っている容器である。
【0041】
好ましくは、供給源は気体状態の流体を供給する。供給前に、流体は、気体状態、液体状態、すなわち液化ガス、又は液体/気体の二相状態で貯蔵され得る。好ましくは、ドーパントプレミックスの場合、これは気体状態で貯蔵される。
【0042】
図1は、プラントが2つのガス容器から2成分ガス混合物、すなわち2つの成分を含む混合物を生成するように構成されている場合を示している。当然、本発明によるプラントは、2つより多いガス供給源を備えることができ、2つより多い成分を含む混合物、特に3成分又は4成分のガス混合物を生成することができる。
【0043】
ドーパントガス1とキャリアガス2のそれぞれの容器は、第1のライン21及び第2のライン22によって、それぞれの第1及び第2の流量調整部材41、42と接続されている。これらは、ガス混合ミキサー3へ流れるドーパントガスとキャリアの流れを調整するために設けられている。好ましくは、ライン21、22は、ミキサー装置の入口32に接続された共有ライン部分を形成するために、ミキサー装置3の上流に位置する接続位置31で一つに合わせられる。その結果、ドーパントガスとキャリアガスとの混合物は、装置3の中に入ってその中でさらに混合及び均質化される。なお、ライン21、22がミキサー装置3の2つの別個の入口32a、32bに開口することも想定することができる。
【0044】
好ましくは、それぞれのライン21、22は、これらのライン内の圧力を測定及び制御するために減圧弁及び圧力センサを備えている。ドーパントガスとキャリアガスの圧力はそれぞれ一定に、典型的には1~10barの値に保たれ得る。
【0045】
各流量調整部材41、42は、流体の流量値を目標値に最も近い流量値にするために、流体の流量を設定、制御、調整するように構成された任意の手段であってよい。
【0046】
典型的には、流量調整部材41、42は、弁、例えば比例制御弁などの膨張部材と組み合わされた流量センサ又は流量計をそれぞれ備えている。弁は、空気圧式であっても圧電式であってもよく、またアナログ式であってもデジタル式であってもよい。弁は、流体の流れの中に配置された可動部分、典型的には少なくとも1つの閉鎖部材を含み、その変位によって流積を変化させることができ、その結果設定値にするために流れを変化させることができる。特に、流量調整部材41、42は、質量流量センサと比例制御弁とを備える質量流量調整弁であってもよい。なお、流体の質量の測定に基づく調整であっても、設定される流量値と測定される流量値は必ずしも質量で表されない。したがって、体積流量設定値を、比例制御弁の開度のパーセント割合として表すことができ、これに調整部材の制御弁に印加される電圧値が対応する。開度のパーセント割合から質量流量値又は体積流量値への変換は、100%の開度の調整された流量の公称値を知ることによって行われる。
【0047】
有利な一実施形態によれば、弁は圧電式である。このタイプの弁は、弁に印加される電圧の監視を可能にする優れた精度と優れた再現性を提供する。このような弁は、磁場や高周波ノイズからの影響も比較的受けにくい。これらのエネルギー消費量は小さく、最小限しか発熱しない。メタル・オン・メタル制御面は、ガスとの反応を減らし、さらには排除する。最後に、流量制御キャビティの容積が特にソレノイド弁の容積と比較して小さいことから、ガスの迅速な交換と優れた動的応答が可能である。
【0048】
実際には、第1及び第2の流量調整部材41、42により、第1の流量設定値D1及び第2の流量設定値D2に従って、ミキサー3に入るドーパントガスの流れ及びキャリアガスの流れをそれぞれ調整することができる。ミキサー装置3の出口33において、生成流量DPの出口ライン23内のガス混合物は、2つのガス供給源を有するプラントの場合、ドーパントガス及びキャリアガスの2つの流量D1及びD2の合計に対応する。プラントが例えば第3のガス供給源を備える場合、流量DPは、対応する流量調整部材41、42、43によってミキサー装置3の方向に調整される流量D1、D2、D3の合計になる。
【0049】
本発明によるプラントは、第1及び第2の流量調整部材41、42に接続されている制御ユニット5をさらに備えており、これによりその動作が制御され、特にプラントの運転条件に応じて決定される適切な値にするために設定値D1、D2が調整される。
【0050】
これを行うために、流量調整部材41、42は、有利には、制御ユニット5によって流量設定値が与えられる閉ループシステムをそれぞれ備えている。これらの設定値は、その後閉ループシステムによって、流量調整部材41、42によって測定された値と比較され、その結果、それらの位置は、前記システムによって可能な限りD1、D2に近い流れをミキサー装置3に送るように調整される。
【0051】
有利には、制御ユニット5は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)システムとも呼ばれるプログラマブルコントローラ、すなわち監視用のマンマシンインターフェースとデジタル通信ネットワークとを含む工業プロセス用の制御システムを備えている。PLCシステムは、プラントの制御サブシステム又は機器を制御する複数のモジュール式コントローラを含み得る。これらの機器の要素は、少なくとも1つの測定センサからのデータの取得、少なくとも1つの流量制御部材に接続された少なくとも1つのアクチュエータの制御、パラメータの調整及びフィードバック、システム機器の様々な要素間でのデータの送信、の中からの少なくとも1つの操作を確実に行うようにそれぞれ構成される。
【0052】
したがって、制御ユニット5は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、コンピュータのうちの少なくとも1つを含み得る。制御ユニット5は、プラントの制御機器の様々な要素、特に流量調整部材41、42やセンサ8に接続されていてもよく、電気、Ethernet、Modbusなどの接続によって前記機器の要素と通信することができる。例えば無線周波数、WIFI、Bluetoothなどの接続による他の接続及び/又は情報の送信モードをプラントの機器の全て又は一部について想定することができる。
【0053】
最初に、電子ロジック5は、ガス混合物中のドーパントガスの目標含有量C1及び/又はガス混合物中のキャリアガスの目標含有量C2の関数として、生成流量DPに対する流量D1の所定の割合及び/又はDPに対する流量D2の所定の割合、すなわち所定のD1/DP及び/又はD2/DP比率を計算する。
【0054】
好ましくは、電子ロジック5は、キャリアガスの目標含有量C2からのキャリアガス流量D2の計算を実行せず、D1から差し引くことによってD2を設定する。その場合、D2はDPに対応し、そこからD1が差し引かれる。好ましくは、電子ロジック5は、混合物の微量ガスの目標含有量C1から、DPに対する流量D1の所定の割合を計算する。
【0055】
なお、例えば三成分混合物では、D1及びD2は、それぞれの目標含有量C1、C2から設定することができ、第3のガスの第3の流量設定値D3は、D1及びD2の値から推定される。
【0056】
実施の1つの可能性によれば、制御ユニット5は、例えばタッチスクリーンなどの入力インターフェースを含むマンマシンインターフェース300を備え、ガス混合物中のドーパントガス及び/又はキャリアガスの前記少なくとも1つの目標含有量をユーザが入力することを可能にする。例えば、含有量は、ガス混合物中に存在するドーパントガス又はキャリアガスの体積パーセント割合として表すことができる。より一般的には、マンマシンインターフェース300は、ユーザが制御ユニット5に指示を与えることを可能にすることができる。
【0057】
流量調整部材41、42は、制御ユニット5から指令を受けて、ドーパントガス及びキャリアガスの流量を、ガス混合物の目標組成から決定されるそれぞれの設定値D1、D2に調整する。これらの流量で、ドーパントガス及びキャリアガスがミキサー装置3に入る。
【0058】
典型的には、ミキサー装置3は、入口32と出口33が開口しており、中で混合物が均質化される共通のミキサー容積を含む。例えば、ミキサーに入る流体の連続的な混合を可能にするスタティックミキサータイプのミキサー3を使用することができる。このタイプのミキサーは、一般的に、流体の流れを乱すことができる少なくとも1つの乱流生成要素、例えばプレート、パイプの一部、インサートを備えており、圧力降下及び/又は乱流を発生させて流体の混合及びその均質化を促進する。
【0059】
したがって、ドーパントガスとキャリアガスとの混合物は、ミキサー装置3の出口33において生成流量DPで生成される。流量D1及びD2は、流量DPによって、並びにドーパントガス及びキャリアガスの望まれる含有量C1、C2によって支配される。
【0060】
発生する1つの問題は、ガス混合物の需要が変動する消費ユニット10へのガス混合物の供給に関するものである。このことから、ガス混合物を位置10に搬送するための流量が変動する。
【0061】
ミキサー装置の出口で生成されるガス混合物の流量を消費されるガスの流量に合わせるために、本発明は、ミキサー3の出口33を、出口ライン23を介してバッファタンク7の入口に接続することを提案する。供給ライン6は、バッファタンク7の出口に流体接続され、運転中に混合物を消費ユニット10に供給することを可能にする。
【0062】
なお、このプラントは、過圧の場合に使用する逃し弁と、ガス再処理ユニットへの混合物の通過を制御する弁とに連結されたベント15を備えたバッファタンク7に流体接続されたベントライン25を備えていてもよい。この弁により、消費ユニットへの供給を開始する段階の間に、プラントのラインとバッファタンク7とをパージすることができる。
【0063】
したがって、消費ユニット10へのガス混合物の供給は、消費ユニット10による混合物の消費に対応する消費流量DCでバッファタンク7から行われる。流量DCが供給プラントの運転中に変動する場合には、バッファタンク7の上流の生成流量DPが混合物の需要に対応しなくなる可能性がある。バッファタンク7は、それが流体回路に提供する補完的な容積により、流量DPに対応しない場合であっても、流量DCでの供給を保証することができる。特に、DPがDCよりも大きい場合には、タンク7は、ガス混合物が供給ラインに向かって押し出されることを防ぎ、その結果過剰生成を吸収する。また、DPがDCよりも小さい場合には、バッファタンク7は、例えば高い消費流量で速すぎる消費が開始された場合に、ユーザが抜き出せる混合物の予備を形成する。これにより、生成量が少ない状況であっても流量DCでの供給を確保することが可能になる。
【0064】
さらに、プラントは、物理量を測定する測定センサ8を備え、その変動は、供給ライン6を流れる消費流量DCの変動を表し、対応する第1の測定信号を制御ユニット5に提供する。特に、第1の測定信号は、センサ8によって得られた複数の連続した測定値を含み得る。ユニット5はそれを受信し、それは、第1の制御信号に従って第1の流量設定値D1及び第2の流量設定値D2を調整するように、流量調整部材41、42に送信される。
【0065】
したがって、本発明は、消費流量DCの変動に、したがってユーザの要求に合わせるために、最初に設定された流量設定値D1、D2を再計算することを可能にする。ミキサー装置3は混合流量を生成し、その制御は消費される流量と関連付けられる。
【0066】
なお、同時に、制御ユニット5は、D1/DP比及びD2/DP比が、ガス混合物に望まれるドーパントガス及びキャリアガスの成分に従うようにこれらの監視を継続する。
【0067】
本発明による方法は、有利には、消費ユニットによる混合物の消費の開始の際に、それまで消費が検出されていなかった場合に、始動段階を実施する。この始動段階の間に、ゼロの生成流量DPから、所定の生成流量DPでのドーパントガスとキャリアガスとの混合物の生成に変化する。
【0068】
実際には、始動段階において、ユーザは、生成可能な最大生成流量の所定の割合に対応する最小「始動」値に設定可能な所定の流量DPでのガス混合物の生成を始動させることができる。この最大生成流量は、第1及び第2の調整部材41、42が供給するように設計された第1の最大流量値と第2の最大流量値との合計に対応する。有利には、所定のパーセント割合は、最大生成流量の少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%である。これにより、D1、D2流量調整部材を最適且つ最も正確な作動範囲で測定するセンサを使用することができる。
【0069】
なお、消費ユニットへの供給中に、生成したガス混合物は、特に混合物の組成が目標組成を満たさない可能性がある場合には、ベント15に供給することができる。
【0070】
ユーザは、バッファタンク7を満たし、その中の混合物の予備を構成するために、予想される消費流量DCよりも高い生成流量を最初に任意選択的に設定することができる。
【0071】
消費の始動段階の後、生成を調整する段階が続き、その間、生成流量DPは消費流量DCの関数として調整される。調整段階中、制御ユニット5は、測定センサ8から受信した測定値を介して消費流量DCを監視する。消費流量DCの変化が検出された場合、制御ユニット5は、ミキサーの上流に供給される流量D1、D2を合わせるための第1の制御信号を生成して、修正された流量DCとラインへの流量DPを一致させる。
【0072】
好ましくは、測定センサ8は連続的に又は準連続的に測定を行う。好ましくは、制御ユニット5は、第1の制御信号の生成及び/又は流量調整部材への第1の制御信号の送信が、所定の時間間隔、特に1~60秒のオーダーの間隔でのみ行われるように構成される。言い換えると、流量設定値は、この時間の間、制御ユニット5によって命令される設定値の調整なしに維持される。これにより、流量DCの不慮の変動に続くプラントの反応を防止することができ、或いは運転エラーを引き起こす可能性のある流量DPの過度に急激な変動の発生を回避することができる。
【0073】
任意選択的には、流量DCの変動の振幅及び/又は速度に応じて、制御ユニット5は、少なくとも一時的に生成流量DPを維持するように構成されてもよい。例えば、消費流量DCが増加した場合には、消費ユニット10は、ミキサー3の生成不足を補うためにバッファタンク7で抜き出すことができる。消費流量DCが減少した場合には、ミキサー3の過剰生成を吸収するためにバッファタンク7を満たすことができる。
【0074】
好ましくは、制御ユニット5は、センサ8によって測定された物理量がゼロの消費流量DCを表すときにガス流を停止するように構成される。したがって、需要がない場合には、プラントはガス混合物を生成しない。センサ8によって測定された物理量が低消費流量DCを示す場合、すなわち所定の低流量閾値よりも低い場合、制御ユニット5は、バッファタンク7内の過圧を回避するためにガス流を停止するように構成することもできる。また、センサ8によって測定された物理量が所定の高流量閾値を超える消費流量DCを示す場合には、制御ユニット5は、アラーム信号を生成するように構成することもできる。
【0075】
有利には、本発明によるプラントは、第1及び第2の流量設定値D1、D2から第1の測定信号への第1のフィードバックループを使用する。「フィードバックループ」は、一般的には、調整する量が調整される量、すなわちフィードバックされる量に作用し、それをできるだけ速やかに設定値に到達させ、その設定値を維持するプロセスを監視するシステムを意味すると理解される。フィードバックの基本原理は、フィードバックされる量の実際の値と、達成が望まれる設定値との差を連続的に測定し、この差をできるだけ早く縮めるために1つ以上のアクチュエータに適用される適切なコマンドを計算することである。これは閉ループ制御システムとも呼ばれる。
【0076】
第1のフィードバックループにおいて、調節する量は、測定センサ8によって測定される物理量であり、調節される量は、ドーパントガス及びキャリアガスの流量D1及びD2の調整による生成流量DPである。設定値は、混合物の消費条件によって異なる。
【0077】
センサ8の他に、第1のフィードバックループは、制御ユニット5内に配置されており且つ第1の測定信号から少なくとも第1のエラー信号を生成するように構成された第1のコンパレータ11Aを備えている。第1のエラー信号は、測定された物理量の変動を表すことができる。これは、有利には、別の瞬間に実行された前記物理量の少なくとも1つの測定と比較することによって得られる。
【0078】
さらに、第1のフィードバックループは、制御ユニット5内に配置されており且つ第1のエラー信号から第1の制御信号を生成するように構成された第1のコレクタ12Aを備える。
【0079】
第1のコレクタ12Aは、第1の制御信号に応答して、それぞれの位置への第1及び第2の流量調整部材41、42の動きを制御するアクチュエータに制御信号を送信し、第1の流量設定値D1及び第2の流量設定値D2が第1の制御信号に従って調整される。典型的には、アクチュエータはレギュレータ部材内の可動部品の動きを制御し、これにより、流量DPとDCとの間の差を小さくする傾向がある方向に、ミキサー装置3に送られる流量D1、D2を変化させる。
【0080】
好ましくは、第1のコレクタ12Aは、比例、積分、微分(PID)タイプであり、これにより、比例動作、積分動作、微分動作の3つの組み合わされた動作によりフィードバックの性能を向上させることができる。
【0081】
好ましくは、及び上述したように、第1のフィードバックループの補正動作は、エラーを引き起こす可能性のある生成流量の過度に急速な変動を防ぐため、所定の間隔で、好ましくは1~60秒の間隔で、より好ましくは20秒程度の間隔でのみ設定値D1、D2に適用される。この間隔は、第1のコレクタ12Aのパラメータであってよい。
【0082】
第1のコレクタ12Aは、特に、マイクロプロセッサと、メモリレジスタと、第1のエラー信号を処理してフィードバックループの比例項、積分項、及び微分項を数値計算によって生成するためのプログラミング命令とを備えることができる。計算及び/又は実験によって決定することができるこれらの項は、調整部材41、42のための制御信号を提供するために組み合わされる。微分項は任意選択的にはゼロであってよい。
【0083】
図1は、消費ユニット10に供給される消費流量DCを直接測定するために供給ライン6上に配置された流量計とも呼ばれる流量センサ8によって測定信号が得られる実施形態を示している。プラントの様々な要素に送受信される信号は、「A」で表されている破線によって模式的に示されている。
【0084】
典型的には、流量DCが増加する場合には、制御信号は、第1及び第2の流量設定値D1、D2の増加を命令し、流量DCが減少する場合には、第1及び第2の流量設定値D1、D2の減少を命令する。
【0085】
なお、本発明との関係では、第1及び第2の流量調整部材41、42のそれぞれは、第1の流量設定値D1又は第2の流量設定値D2がゼロである閉位置と、第1の流量設定値D1又は第2の流量設定値D2がそれぞれ第1の最大流量値又は第2の最大流量値を有する全開位置との間で移動可能である。
【0086】
第1及び第2の流量調整部材41、42は、任意選択的に、閉位置と開位置との間の少なくとも1つの中間位置を占めることができる。好ましくは、前記中間位置は、第1の最小流量値又は第2の最小流量値以上の第1の流量設定値D1又は第2の流量設定値D2に対応する。好ましくは、第1の最小流量値及び/又は第2の最小流量値は、それぞれの第1又は第2の最大値の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%、又は少なくとも50%である。これにより、レギュレータ部材41、42の精度、より具体的にはレギュレータ部材に使用される流量センサの精度がより優れた流量範囲で作動させることができる。
【0087】
任意選択的には、これらの位置は、流量を望みの範囲内で段階的且つ制御された方法で増加させるためにあらかじめ規定することができ、これにより、第1のフィードバックループによって混合物の精度をよりよく制御することができる。
【0088】
一実施形態の変形形態によれば、プラントは、バッファタンク7内の圧力を消費流量DCを表す物理量として測定する圧力センサ8を使用する。したがって、消費流量DCの変動は、バッファタンク7内の圧力変動の決定を介して間接的に決定される。測定信号が、ライン6に接続されたセンサ8ではなくバッファタンクに接続されたセンサ8によって生成されることを除いて、
図1の描写をそのまま適用可能である。
【0089】
なお、本発明によるプラントは、一方が流量センサであり他方が圧力センサである2つのセンサ8を備えていてもよい。これらのセンサは上述した通りであり、それぞれが第1の測定信号をそれぞれ生成する。所定の選択基準に応じて、制御ユニット5は、センサ8の一方又は他方から生じる測定信号から第1の制御信号を生成するように構成される。好ましくは、制御ユニット5は、2つの測定センサ8のうち、最も高い流量を表す物理量値を測定するものから生じる第1の測定信号を使用することを選択する。
【0090】
実際には、消費流量DCが増加すると、ミキサー装置3の出口で生成される生成流量DPが不足し始める。消費ユニット10は、タンク7内の圧力の減少をもたらすミキサー3の生成不足を補うために、バッファタンク7で抜き出す。
【0091】
圧力センサ8は、第1の測定信号を第1のコンパレータ11Aに送信し、第1のコンパレータ11Aは、圧力低下情報に対応する第1のエラー信号を生成し、それを第1のコレクタ12Aに送信して、第1及び第2の流量調整部材41、42に適用される第1の制御信号を計算し、その結果、第1及び第2の流量設定値D1、D2が、第1の制御ループによって決定され得る適切な係数によって増加する。
【0092】
可能な一実施形態によれば、第1のコンパレータ11Aは、低圧閾値と高圧閾値とから選択される少なくとも1つのパラメータと、第1の測定信号との比較から、少なくとも第1のエラー信号を生成するように構成される。これらの閾値は、運転条件やプラントの特性などに応じて調整することができる。バッファタンク7内の圧力が低圧閾値に到達すると、第1のコレクタは、所定の流量設定値D1、D2に応じてドーパントガスとキャリアガスの流れを調節するように流量調整部材に命令する。
【0093】
この運転モードは、調整段階中だけでなく消費の始動段階中にも使用することができる。始動段階の場合、バッファタンク7内の圧力が低圧閾値に達するとすぐに、流量調整部材は、始動値に設定された流量DPでガス混合物を生成するためにドーパントガス及びキャリアガスの流れを調整するように命令される。特に、流量設定値D1、D2は、それぞれ第1の最小流量値及び第2の最小流量値に対応し得る。流量調整部材41、42は、それぞれバッファタンク7内の高圧閾値が達成されるまで、始動値に等しい流量DPになる最小流量を生成し始める。
【0094】
1つの可能性によれば、タンク7内の圧力が十分に増加しない場合、特に高圧閾値に到達しない場合、又は圧力が十分に急速に増加しない場合には、流量設定値D1、D2は、好ましくはPIDタイプの第1のコレクタ12Aによる調節方式に従って増加し、この場合、流量の増加は圧力低下の関数である。
【0095】
タンク7内の圧力が高圧閾値に到達すると、流量調整部材41、42は、流量D1、D2がゼロとなるそれぞれの閉位置に向かって移動することができる。
【0096】
図2は、PIDタイプの第1のコレクタを用いた第1のフィードバックループの効果の例を概略的に示しており、ここでは、D1とD2の和に相当する生成流量DPが、バッファタンク7内の圧力P7の変動の関数として補正される。第1及び第2の最大流量値の合計に対応するプラントの最大生成流量DPは、100sL/分(標準リットル/分)、すなわち6Nm
3/h(1時間あたりの標準立方メートル)に設定される。第1及び第2の最小流量値の合計に対応するプラントの最小生成流量DPは、25sL/分(標準リットル毎分)、すなわち1.5Nm
3/hに設定される。高圧閾値及び低圧閾値は、それぞれ4bar及び3.8barに設定される。
【0097】
図2は、プラントの運転中に遭遇する可能性のある様々な状況を模式的に表している。DP=DCの場合、圧力は4barで安定なままである(
図2の右下の灰色の矢印)。その後、DC>0であるがDP=0であるとすると、バッファタンク内の圧力は3.8barに低下する(灰色の矢印に沿った左への移動)。この圧力は、流量調整弁の始動圧力である。流量DPは、最小始動値、すなわち25sL/分である。制御ユニットが流量DP<DCを生成するよう流量調整弁に命令するとすぐに、圧力はプラントの最大DP流量、すなわち100sL/分に等しいDC流量が達成されるまで低下する(灰色の矢印に沿って上方に移動する)。DCが減少すると、すなわちDP>DCになるとすぐに、バッファタンクがいっぱいになり始め、圧力が3.5barから4barに上昇する(黒い破線の矢印に従って)。4barは、バッファタンクの充填が停止する圧力である。
【0098】
バッファタンク内の圧力(破線)と生成流量DP(実線)の経時変化を示している
図3に、実際に起きていることの一例が示されている。グラフの開始時(ゾーンA)、圧力が低下していない場合には、流量設定値は0のままである。圧力が低下するとすぐに(ゾーンB)、流量調整弁D1、D2に流量設定値が与えられ、これらは圧力が安定しない場合には一定の間隔で段階的に増加する。圧力が安定するとすぐに、バッファタンクへの充填が停止する(ゾーンC)。圧力が再び低下した場合(ゾーンD)、消費量DCを提供し、バッファタンクの圧力を安定に保つことができるように、流量調整弁の設定値が望まれる値に調整される。
【0099】
標準立方メートルは、常温常圧条件(基準系及び1気圧すなわち101325Paに応じて0℃、又は15℃、又は一般的ではないものの20℃)の気体についての、1立方メートルの体積の含有量に相当する気体の量を表す単位であることに留意する必要がある。純粋な気体の場合、1標準立方メートルは約44.6molの気体に相当する。
【0100】
なお、バッファタンクは、有利には、プラントの最大生成流量DPの少なくとも半分に等しい内部容積を有する。
【数1】
【0101】
この最小内部容積に従うと、DCの意図しない性質に関連する圧力変動を吸収することができる。バッファタンクは、少なくとも1L、又は少なくとも50L、更には1000L以上の内部容積を有し得る。好ましくは、バッファタンクの内部容積は、50~400Lである。タンクは、単一のタンクで形成されていてもよく、或いは互いに流体接続された複数のタンクから形成されてもよく、その場合バッファタンクの内部容積は、タンクの容積の合計と理解される。
【0102】
1つの有利な実施形態では、
図1で見られるように、プラントは、供給ライン6によって供給されるガス混合物中のドーパントガス及び/又はキャリアガスの少なくとも1つの含有量を分析するように構成された第1の分析ユニット13をさらに備えていてもよい。これにより、特にプラントの始動段階の際に、測定された含有量が目標含有量に適合するように、ガス混合物の供給を条件調整することができる。目標含有量C1、C2に対して0.01%~5%(相対%)程度の許容範囲が設定されてもよい。生成された混合物が適合しない場合、生成は、任意選択的に停止することができる。好ましくは、第1の分析ユニット13は、特にガス混合物中の微量ガスの場合があるドーパントガスの含有量を分析するように構成される。
【0103】
有利には、プラントは、第1の分析ユニット13を第1のサンプリング位置36aで供給ライン6に接続する第1のサンプリングダクト36を備えている。したがって、タンク7から供給ライン6を流れる混合物の一部は、第1の分析ユニット13で分析されるために、第1のサンプリングダクト36によってサンプリングされる。第1の分析ユニット13を通過した後、サンプリングされたガス混合物は、供給ライン6上の第1のサンプリング位置36aの下流に位置する第1の戻り位置37aで供給ライン6に接続された第1の戻りダクト37を介して供給ライン6に戻される。混合ガスは高精度且つ高付加価値のドーパントガスであるため、この再循環方式により、混合ガスの排出及び損失が防止される。さらに、使用されるガスの性質の観点からユーザにとって費用がかかり煩雑な排出された混合物の再処理の可能性が回避される。
【0104】
プラントは、第1のサンプリング位置36aと第1の戻り位置37aとの間の供給ライン6に取り付けられた少なくとも1つの減圧弁51をさらに備えている。減圧弁は、下流の減圧器として機能し、これは第1のサンプリング及び戻りダクト36、37を通るガス混合物の流れに必要な圧力差を確保することを可能にする。さらに、減圧弁51は、シリコンウェハードーピングユニット10に供給されるガス混合物の圧力を調整するように構成される。その結果、混合物のパラメータの精度及び安定性の点でシリコンドーピングユニットの要件を満たすために、使用位置での圧力の安定性が確保される。特に、減圧弁51は、供給ライン6に直列に取り付けることができる。
【0105】
本発明によるプラントは、ミキサー装置3によって生成されたガス混合物中のドーパントガス及び/又はキャリアガスのうちの少なくとも1つの含有量を測定するために、バッファタンク7の上流に配置された第2の分析ユニット14も備えていてもよい。場合によっては、本発明は、第1の分析ユニット13及び第2の分析ユニット14の一方及び/又は他方を備えることができる。第2の分析ユニット14は、結果として、制御ユニット5に向けた少なくとも第2の測定信号を提供するように構成され、この制御ユニットは、第2の測定信号から第2の制御信号を生成する。第2の制御信号は、生成流量DPに対する第1の流量設定値D1と第2の流量設定値D2の割合の一方及び/又は他方を調整するように、流量調整部材41、42の一方及び/又は他方を制御するために使用され、その結果、ミキサー装置3を出るガス混合物の実際の組成が、含有量C1、C2(C2は好ましくはC1から推定され、測定されない)を有する目標組成に近づく。混合物の組成の制御との関係においてプラントの様々な要素に送受信される信号は、破線「B」によって概略的に示されている。
【0106】
ミキサー装置によって生成される混合物の含有量のこの制御は、流量調整部材41、42によって実際に調整される流量とそれに適用される流量設定値D1、D2との間の起こり得る誤差を埋め合わせることを可能にする。ミキサー装置の出口とバッファタンク7の入口との間にサンプリング位置を配置することにより、含有量の起こり得る変動に対してより迅速に検出及び対応することが可能になり、その結果、適合しない混合物を消費するリスクを回避することができる。
【0107】
有利には、プラントは、第2のサンプリング位置34aで第2の分析ユニット14を出口ライン23に接続する第2のサンプリングダクト34と、第2の戻り位置35aで第2の分析ユニット14を出口ライン23に接続する第2の戻りライン35とを備えており、戻り位置35aは出口ライン23の第2のサンプリング位置34aの下流に位置している。既に説明したように、ガス混合物は高精度で付加価値の高いドーパントガスであるため、この再循環方式により、混合ガスの排出と損失が防止される。さらに、使用されるガスの性質の観点からユーザにとって費用がかかり煩雑な排出された混合物の再処理の可能性が回避される。
【0108】
プラントは、第2のサンプリング位置34aと第2の戻り位置35aとの間の出口ライン23に取り付けられた少なくとも1つの背圧調整弁52をさらに備えている。
【0109】
上流で圧力が変化すると、その入口圧力が一定のままであるように、及び一定の流量が出口ライン23を通過するように、背圧調整弁がバイパスライン内の流量を修正する。実際には、背圧調整弁52は、上流の圧力が所定の閾値よりも大きい場合に閉じる部材を含む。背圧調整弁52は、上流圧力がこの閾値より低いときに、或いは背圧調整弁の上流端と下流端との間の圧力差の関数として、所定の流量で開き、通行可能になる。
【0110】
一実施形態によれば、背圧調整弁は、バイパスに取り付けられたチャンバと、制御膜によって作動する弁とを備えることができる。この膜は、一方ではガス回路に接続されたダクトを開閉するために設けられた加重ばねによって、他方では上流で安定化されるべき圧力によってバランスがとられている。
【0111】
背圧調整弁52は、複数の機能を実行する。これは、上流圧力調整弁として機能する。すなわち、これは、前記背圧調整弁52の上流のガス回路内のガス混合物の圧力を、特に出口33で、ミキサー3で、ミキサーの入口31で、調整部材41、42で調整するよう構成される。
【0112】
流量DPが生成され、流量DCの関数として調整される生成調整段階中に、バッファタンク7は満杯になり、タンク7内の圧力は消費の変化の関数として変動する。これらの圧力変動は、タンクと連通するライン21、22の入口31でも見られ、これは流量調整部材41、42によって行われる流量測定を歪ませる、及び/又は妨害する可能性がある。背圧調整弁52を使用することにより、下流の圧力が変動する可能性がある一方で、上流の圧力を一定に保つことができる。このようにして、ドーパント混合物の組成の精度及び安定性が大幅に改善される。
【0113】
さらに、消費が停止すると、タンク7内の圧力は上昇する傾向にある。流量DPが止まるとすぐに、背圧調整弁52が混合物を上流回路に閉じ込め、これにより、プラントが停止したときに混合物を望みの圧力に保つことができる。ミキサー3が流量DPで混合物を生成し始める始動時に、背圧調整弁は、流量調整弁41、42がそれらの設定値に到達するのに必要な時間、すなわち流量調整弁41、42の始動時間を短縮させることができる。典型的には、1秒未満、又は数ミリ秒未満の調整弁41、42の応答時間を得ることができた。
【0114】
背圧調整弁52は、第1のサンプリング及び戻りダクト36、37を通るガス混合物の流れに必要な圧力差を確保することも可能にする。
【0115】
なお、混合物をサンプリングして分析ユニット14に運ぶ第2のサンプリングダクト34は、有利には、分析器がリアルタイム又は事実上リアルタイムで非常に正確な応答を提供するように、可能な限り短い長さを有する。好ましくは、ラインは、混合物がそのサンプリング位置でサンプリングされる瞬間と分析ユニットがその測定値を与える瞬間との間の間隔が最小であるように、典型的には30秒未満、特には1~30秒であるようにされる。
【0116】
好ましくは、第2の制御信号は、ドーパントガス又はキャリアガスの測定された含有量と目標含有量との差についての少なくとも1つの情報を含む第2のエラー信号から生成される。好ましくは、ドーパントガスの含有量のみが測定され、その目標値と比較される。ドーパントガスは混合物の主成分ではないガスである。この差は、具体的には次のように表すことができる:
【数2】
(式中、M1は、ドーパントガスについて測定された含有量である)。相対差ΔC1は、第1の流量設定値D1の補正係数として使用することができる。
【0117】
ミキサー装置3の出口において100sL/分の生成流量DPで2つのガスの混合物を生成するように構成されたプラントの例を考える。目的のガス混合物は、0.5%の目標含有量C1のドーパントガスと、残り、すなわち99.5%(体積%)の含有量C2を有するキャリアガスとから形成された混合物である。流量D1には、キャリアガスで30体積%に希釈されたドーパント純物質を含むプレミックスが使用される。DPに対して1.667%の割合に対応する1.667sL/分(0.1Nm3/h)の第1の流量設定値D1と、その結果DPに対して98.333%の割合に対応する98.333sL/分(5.1Nm3/h)の第2の流量設定値D2がそれぞれの流量調整部材41、42に適用される。±1%の部材41、42の制御精度が想定されている。D1で-1%、及びD2で+1%の誤差では、ドーパントガスの実際の流量は1.650sL/分になり、キャリアガスの実際の流量は99.316分sL/分になり、実際の生成流量は100.967sL/分になる。ミキサー装置3の出口で0.49%のドーパントガス含有量が測定され、目標含有量C1に対する差ΔC1は-1.95%(相対%)に相当する。制御ユニット5は、流量調整部材41、42において、この差を相殺するように、DPに対する流量割合D1及びD2の調整を命令する第2の制御信号を生成する。その結果、第1の設定値D1は、D1=1.682sL/分に調整される。
【0118】
好ましくは、第1の設定値D1のみが第2の測定信号に応じて調整され、制御ユニット5がD2の維持を制御する。D2が第2の制御信号に応答して調整されることも想定され得ることが理解される。上の例では、D2は97.4sL/分に調整されることになる。なお、補正は、制御ユニット5に予め記録された目標含有量の少なくとも1つに補正係数を適用することによって実行することもでき、上の例では、0.78%に等しい係数による補正であり、これは、その結果D1を1.682sL/分に調節する効果を有する。
【0119】
任意選択的には、プラントは、第1の分析ユニット及び/又は第2の分析ユニットが予想許容範囲外の含有量を検出した場合にアラーム信号を発するように構成されたアラームを備えていてもよい。
【0120】
第1の分析ユニット13及び/又は第2の分析ユニット14は、特に、以下のタイプの検出器:熱伝導度検出器、磁気式交番圧力検出器、触媒吸着検出器、非分散赤外線吸収検出器、赤外線分光計、音響波又は光音響波の伝搬によるガス濃度分析器、から選択することができる。分析ユニットのタイプは、分析するガスの性質に応じて合わせることができる。第1の分析ユニット13と第2の分析ユニット14は、任意選択的に入れ替えることができる。
【0121】
一実施形態によれば、プラントは、生成流量DPに対する第1の流量設定値D1及び/又は第2の流量設定値D2のそれぞれの割合から、第2の分析ユニット14によって提供される第2の測定信号への第2のフィードバックループを備えていてもよい。
【0122】
第2のフィードバックループにおいて、調整する量は、第2の分析ユニット14によって測定された含有量であり、調整される量は比率D1/DP、D2/DPのうちの一方及び/又は他方である。設定値は、測定された実際の含有量に応じて可変である。
【0123】
第2のループは、制御ユニット5内に配置されており、且つドーパントガスの目標含有量C1及びキャリアガスの目標含有量C2から選択される少なくとも1つのパラメータと第2の測定信号との比較からの少なくとも第2のエラー信号を生成するように構成されている第2のコンパレータ11Bを備える。第2のコレクタ12Bは、特にPIDタイプの制御ユニット5内に配置されており、第2のエラー信号から第2の制御信号を生成するように構成されている。第2の制御信号に応答して、第1及び第2の流量調整部材41、42のアクチュエータは、DPに対するD1及び/又はD2の割合が第2の制御信号に従うそれぞれの位置への第1及び第2の流量調整部材41、42の動きを命令する。好ましくは、D1の割合のみが調整され、制御ループはD2を固定したままにするよう命令する。
【0124】
なお、第1コンパレータ及び第2コンパレータは、任意選択的には、入力データとして、センサ8からの測定値と第2の分析ユニット14からの測定値の両方を受信し、且つ出力として、適切なエラー信号を生成するように構成された1つの同一の物を形成していてもよい。同じことが、第1及び第2のコレクタについても当てはまる。
【0125】
本発明によるプラントは、半導体、光電池、LED、及びフラットスクリーン産業などの様々な産業、又は鉱業、医薬、宇宙若しくは航空産業などの他の産業で用いられるガス混合物を供給するために使用することができる。
【0126】
好ましくは、プラントは、少なくとも制御ユニット5、ミキサー装置3、流量調整部材、測定センサ8、バッファタンク7が中に設置された少なくとも1つのガスキャビネットを備えている。ドーパントガス及びキャリアガスの供給源は、キャビネットの内部又は外部に配置することができる。好ましくは、このキャビネットが適切なフットプリントを保持するように、供給源はキャビネットの外側に配置される。好ましくは、制御ユニット5は、キャビネットの壁の1つに固定されるか、キャビネットから距離を置いて配置されることにより、キャビネットの外側に配置される。
【0127】
ガスキャビネットは、後壁と、側壁と、前壁と、基部と、天井とを有するハウジングを備えていてもよい。ハウジング内には、基部の上に立つ1つ以上のバッファタンクが設けられており、これは従来技術で公知の方法でハウジング内に固定することができる。ガスダクトのシステムは、好ましくはキャビネットの基部に対して、前記ハウジング内に配置される。キャビネットは、弁、減圧弁、圧力測定部材などのガスダクトのシステムを制御及び/又は維持するための手段を含んでいてもよく、これにより、ガスの供給、特定のダクト又はダクトの一部の開閉、ガス圧の管理、パージサイクルの実行、リークテストなどの操作を実行することができる。
【0128】
ハウジングは、ドーパントガス及びキャリアガスを供給するためのガス入口開口部と、ガス混合物を供給するためのガス出口開口部とを備えている。供給ライン6は出口開口部に接続されている。運転時には、ガスキャビネットは供給ライン6によって消費ユニットに接続される。特にパージガス、又はベンチュリー効果によって真空を作り出すガス、及び分析器を較正するためのガス標準のために、他のガス入口が設けられていてもよい。
【0129】
本発明によるプラントは、特に、以下の組成を有するガス混合物を生成するために使用することができる:
- 2%のAsH3を含む空気、
- 1~10%のAsH3を含むHe、特に1%、2%、又は10%の含有量のAsH3を含むHe、
- 1~20%のAsH3を含むH2、特に1%、3%、4%、5%、7%、10%、15%、又は20%の含有量のAsH3を含むH2、
- 1~10%のAsH3を含むN2、特に1%、2%、5%、又は10%の含有量のAsH3を含むN2、
- 1~10%のB2H6を含むAr、特に1%、2%、3%、4%、5%、又は10%の含有量のB2H6を含むAr、
- 1~10%のB2H6を含むH2、特に1%又は10%のB2H6を含むH2、
- 1~10%のB2H6を含むN2、特に1%、2%、3%、4%、5%、又は10%のB2H6を含むN2、
- 1~15%のPH3を含むAr、特に1%、2%、5%、10%、又は15%のPH3を含むAr、
- 1~10%のPH3を含むHe、特に1%、2%、又は10%のPH3を含むHe、
- 1~15%のPH3を含むH2、特に1%、5%、10%、又は15%のPH3を含むH2、
- 1~15%のPH3を含むN2、特に1%、2%、3%、4%、5%、10%、又は15%のPH3を含むN2。
【0130】
好ましくは、ドーパントガスの目標含有量C1は、0.0001%~50%、好ましくは0.1%~30%であり、残りはキャリアガスである。
【0131】
本発明によるプラントの有効性を実証するために、キャリアガスとしての水素中にドーパントガスとしてジボラン(B2H6)を含む混合物の製造及びその場での供給を行った。ドーパントガスは、ジボランを20体積%の割合で水素で希釈したプレミックスから構成された。プラントは、上述したPIDタイプの第1のフィードバックループと、第2のフィードバックループとを含んでいた。
【0132】
図4に対応する最初の試験では、B
2H
6の含有量を段階的に増加させた混合物の生成を行った。これは、ドーパントガスの含有量で得られる精度及び分解能を示す目的である。B
2H
6の含有量について0.005%(絶対%)の精度を達成することができた。
【0133】
図5に対応する第2の段階では、B
2H
6の目標含有量C1が0.5%(体積%)の混合物を生成した。この含有量は、ドーピングユニットの消費の変動中に測定した。
図5は、この記録中に測定されたB
2H
6含有量と共に、供給ラインによって供給されたガス混合物の流量DCの記録を示している。
【0134】
典型的には0~30sL/分で変化するガス混合流量DCは、0.008%(絶対%)、又は絶対値として80ppm、すなわち相対値として1.6%のオーダーの相対標準偏差によって特徴付けられるB2H6含有量の安定性を持たせて生成することができた。測定された含有量は、平均で0.494%であった。横線は、記録中にB2H6の含有量が到達した最小値と最大値を示している。
【0135】
本説明は、2つの成分を含む混合ガスについて記載しているが、より多くの成分を有する任意の混合物に置き換えられることに留意すべきである。例えば、三成分ガス混合物の場合、3つの供給源が、それぞれドーパントガス、キャリアガス、及び第3のガスを供給する。流量調整部材41、42、43は、制御ユニット5から命令を受信し、ドーパントガス、キャリアガス、及び第3のガスの流れをそれぞれの流量設定値D1、D2、D3に調整する。ミキサー装置は、D1、D2、D3の合計に等しい流量DPの混合物を供給するように構成される。DPに対するドーパントガス、キャリアガス、及び第3のガスの割合は、ガス混合物中のドーパントガス、キャリアガス、及び第3のガスのそれぞれの3つの目標含有量C1、C2、C3のうちの少なくとも2つの関数として決定される。2つのガスを含む混合物について既に説明した特徴の全て又は一部を、3つ以上のガスを含むこの混合物に置き換えることができる。
【国際調査報告】