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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】多官能性有機ケイ素化合物の調製
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
C07F7/18 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574810
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021039773
(87)【国際公開番号】W WO2022006207
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/046,591
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イヴォン-ベセット、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シアオユアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョフル、エリック
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP05
4H049VP07
4H049VQ21
4H049VQ30
4H049VQ79
4H049VR11
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VR42
4H049VR43
4H049VW02
(57)【要約】
多官能性有機ケイ素化合物の調製方法が提供される。本方法は、(A)アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分を含む有機シラノール化合物と、(B)少なくとも2つの加水分解性基を有するヒドリドシラン化合物とを、(C)酢酸塩の存在下において反応させることを含む。本方法によって調製された多官能性有機ケイ素化合物もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性有機ケイ素化合物を調製する方法であって、前記方法が、
(A)アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分を含む有機シラノール化合物と、(B)少なくとも2つの加水分解性基を有するヒドリドシラン化合物とを、(C)酢酸塩の存在下において反応させ、それによって、前記多官能性有機ケイ素化合物を調製することを含む、方法。
【請求項2】
前記有機シラノール化合物(A)が、下記一般式:
【化1】
(式中、Yは、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、添字aは、0、1、又は2である)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記官能性部分Yが、式R-D-(式中、Rは、アルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を含み、Dは、(i)式-(CH-の炭化水素基(式中、添字mは、1~6である)、(ii)エーテル部分、又は(iii)(i)及び(ii)の両方を含む二価連結基である)のものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記官能性部分YのRが、以下の式:
【化2】
(式中、添字bは、1、2、又は3であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である)を有するアルコキシシリル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能性部分YのRが、以下の式:
【化3】
(式中、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基又はHである)を有するアクリルオキシ基である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記有機シラノール化合物(A)において、(i)各Rが、メチルである;(ii)各添字aが、0若しくは1である;又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒドリドシラン化合物(B)が、以下の一般式:
【化4】
(式中、各Zは、ハロゲン、アルコキシ基、カルボキシ基、オキシム基、及びアミノオキシ基から独立して選択される加水分解性基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、添字cは、2又は3である)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)各加水分解性基Zが、Clである;(ii)添字cが2であり、Rがメチルである;又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酢酸塩(C)が、一般式[RC(O)O][M](式中、Rは置換又は非置換のメチル基であり、Mはアルカリ金属である)を有する複合体を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酢酸塩が、酢酸ナトリウムを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記有機シラノール化合物(A)と前記ヒドリドシラン化合物(B)とを前記酢酸塩(C)の存在下において反応させることが、前記ヒドリドシラン化合物(B)と前記酢酸塩(C)とを一緒に合わせて反応性予備混合物を形成することと、続いて、前記反応性予備混合物と前記有機シラノール化合物(A)とを一緒に合わせ、それによって前記多官能性有機ケイ素化合物を調製することと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応性予備混合物が、前記ヒドリドシラン化合物(B)及び前記酢酸塩(C)からインサイチュで形成されたアセトキシヒドリドシラン中間体を含み、前記有機シラノール化合物(A)が前記アセトキシヒドリドシラン中間体と反応することで、前記多官能性有機ケイ素化合物が得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機シラノール化合物(A)と前記ヒドリドシラン化合物(B)とを、(i)担体ビヒクルの存在下において;(ii)25℃未満の温度で;(iii)実質的に無水で;又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせで反応させることを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機シラノール化合物(A)及び前記ヒドリドシラン化合物(B)が、前記担体ビヒクルの存在下において反応し、前記担体ビヒクルが、(i)非プロトン性;(ii)芳香族;(iii)非極性;又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである有機溶媒を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記担体ビヒクルが、(i)トルエン;(ii)キシレン;(iii)ヘプタン;(iv)水素付加イソパラフィン系炭化水素;又は(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記有機シラノール化合物(A)と前記ヒドリドシラン化合物(B)とを前記酢酸塩(C)の存在下において反応させることにより、前記多官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物が得られ、(i)前記反応生成物が、前記有機シラノール化合物(A)のホモ縮合から形成される副生成物を実質的に含まない;(ii)前記反応生成物が、利用される前記有機シラノール化合物(A)の総量に基づいて、5%未満の残留量の前記有機シラノール化合物(A)を含む;(iii)前記方法が、前記反応生成物から前記多官能性有機ケイ素化合物を単離することを更に含む;又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記有機シラノール化合物(A)と前記ヒドリドシラン化合物(B)とを1:1以下の(A):(B)の化学量論比で反応させることを更に含み;(B)前記反応が、(i)少なくとも95%の前記有機シラノール化合物(A)の全体的な変換;(ii)少なくとも95%の前記多官能性有機ケイ素化合物の収率;又は(iii)(i)及び(ii)の両方を構成する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法によって調製された、多官能性有機ケイ素化合物。
【請求項19】
前記多官能性有機ケイ素化合物が、以下の一般式:
【化5】
(式中、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されるアルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を含み、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Dは、二価連結基であり、各添字aは、独立して、0、1、又は2であり、添字cは、2又は3である)を有する、請求項18に記載の多官能性有機ケイ素化合物。
【請求項20】
(i)各Rが、メチルである;(ii)各Rが、独立して、メタクリルオキシ基若しくはトリメトキシシリル基である;(iii)各Dが、式-(CH-の炭化水素基であり、添字mが、2若しくは3である;(iv)添字aが、添字cによって示される各部分において、0若しくは1である;(v)添字cが2であり、Rがメチルである;又は(vi)(i)~(v)の任意の組み合わせである、請求項19に記載の多官能性有機ケイ素化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/046,591号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、有機ケイ素化合物に関し、より具体的には、多官能性有機ケイ素化合物を調製する方法、それを用いて調製された多官能性有機ケイ素化合物、及びそれから調製された官能化シロキサンに関する。
【背景技術】
【0003】
有機ケイ素材料は当該技術分野において既知であり、無数の最終用途及び環境で利用されている。例えば、オルガノポリシロキサンは、多くの産業用、ホームケア用、及びパーソナルケア用配合物で利用されている。シリコーン及び有機官能性の両方を有するハイブリッド材料のそのような配合物における利用が増加しており、その結果、そのようなハイブリッド材料は、従来はシリコーン材料又は有機材料のみに関連付けられていた利益の組み合わせを呈し得る。しかしながら、ハイブリッド材料を調製する多くの方法は、官能性有機ケイ素化合物を必要とし、多くの場合、その合成及び/又は利用が困難である。更に、多くの従来の有機ケイ素材料は、ハイブリッド材料の調製において利用可能な機能が限定されている。具体的には、特定の官能性有機ケイ素化合物を調製する従来の方法は、多くの場合、多くのシリコーン材料と(例えば、シリコーン再配列の促進、非選択反応、分解、官能基の加水分解などを介して)不適合であり、結果として、収率及び純度が低下し、そのような方法の全般的な適用性を制限する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、多官能性有機ケイ素化合物を調製する方法を提供する。本方法は、(A)有機シラノール化合物と(B)ヒドリドシラン化合物とを、(C)酢酸塩の存在下において反応させ、それによって多官能性有機ケイ素化合物を調製することを含む。有機シラノール化合物(A)は、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分を含み、ヒドリドシラン化合物(B)は、少なくとも2つの加水分解性基を含む。
【0005】
本方法によって調製された多官能性有機ケイ素化合物もまた提供される。多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化1】
(式中、各Yは、独立して、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分を含み、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各添字aは、独立して、0、1、又は2であり、添字cは、2又は3である)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
多官能性有機ケイ素化合物を調製する方法が本明細書では提供される。調製された多官能性有機ケイ素化合物は、少なくとも1つのヒドロシリル化可能な基を含む2つの異なる種類の官能基を含み、したがって、官能化シロキサン化合物の調製において、並びに硬化性組成物(例えば、キャッピング剤などとして)及びその様々な成分、例えば、出発物質、試薬、ビルディングブロック、官能化化合物などとしての1つ以上のシリコーンに基づくものなどを調製するための組成物及び方法において有用である。
【0007】
本方法は、(A)有機シラノール化合物と(B)ヒドリドシラン化合物とを、(C)酢酸塩の存在下において反応させることを含む。本方法は、縮合型付加反応(「反応」)を介して多官能性有機ケイ素化合物を調製し、これは、本明細書の説明から理解されるであろう。特に、有機シラノール化合物(A)、ヒドリドシラン化合物(B)、及び酢酸塩(C)は、本方法において利用され得る追加の成分と共に、以下に順番に記載され、それらは本方法の「成分」(すなわち、それぞれ、「成分(A)」、「成分(B)」、「成分(C)」など)として、又は同様に「出発物質」、「化合物」、及び/又は「試薬」(A)、(B)、及び/若しくは(C)などとして本明細書では集合的に称され得る。
【0008】
上記で紹介されたように、成分(A)は、有機シラノール化合物、すなわち、少なくとも1つのケイ素結合ヒドロキシ基(すなわち、Si-OH基、シラノール基など)を有する有機ケイ素化合物である。有機シラノール化合物(A)はまた官能性部分を含み、これは、以下で更に詳細に記載されるように、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される。
【0009】
典型的には、有機シラノール化合物(A)は、以下の一般式:
【化2】
(式中、Yは、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、添字aは、0、1、又は2である)を有する。官能性部分Yがアルコキシシリル部分である場合、成分(A)は、アルコキシシリル官能性有機シラノール化合物として更に定義され得る。同様に、官能性部分Yがアクリルオキシ部分である場合、成分(A)は、アクリルオキシ官能性有機シラノール化合物として更に定義され得る。
【0010】
上の成分(A)の一般式に関して、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である。好適なヒドロカルビル基は、置換又は非置換であり得る。このようなヒドロカルビル基に関して、「置換」という用語は、1つ以上の水素原子が水素以外の原子(例えば、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子)で置き換えられているか、炭化水素の鎖内の炭素原子が炭素以外の原子で置き換えられている(すなわち、Rが炭素鎖内に1つ以上のヘテロ原子(酸素、硫黄、窒素など)を含み得る)かのいずれか、又はその両方である、炭化水素部分についての記載である。したがって、Rは、その炭素鎖/主鎖内に及び/又は上に(すなわち、その炭素鎖/その主鎖に付加される及び/又は一体である)1つ以上の置換基を有する炭化水素部分を含み得るか、又は炭化水素部分であり得るので、Rが、エーテル、エステルなどを含み得るか、又はエーテル、エステルなどであり得ることが理解されるであろう。
【0011】
概して、Rに好適なヒドロカルビル基は独立して、直鎖、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせであり得る。直鎖及び分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和又は不飽和であってもよい。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式又は多環式であってもよい。直鎖及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。ヒドロカルビル基の全般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基等、並びに誘導体、変形体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに例えば6~18個の炭素原子を有する分岐状飽和炭化水素基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基(すなわち、ハロ炭素基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の具体例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチル基、並びにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基及びフルオロベンジル基が挙げられる。典型的には、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基である。例えば、いくつかの実施形態では、各Rは、独立して、線状又は非分岐状の非置換ヒドロカルビル基などの非置換ヒドロカルビル基から選択される。いくつかのこのような実施形態では、各Rは、1~18個の炭素原子、例えば、1~12個、あるいは1~10個、あるいは1~6個の炭素原子を有する、非置換ヒドロカルビル基から独立して選択される。
【0012】
各Rは、有機シラノール化合物(A)中の任意の他のRと同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、各Rは、同じである。他の実施形態では、少なくとも1つのRは、有機シラノール化合物(A)の少なくとも1つの他のRとは異なる。ある特定の実施形態では、各Rは、独立して、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基などから選択される。特定の実施形態では、各Rは、メチルである。
【0013】
更に、上記成分(A)の一般式に関して、官能性部分Yは、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される。言い換えれば、官能性部分Yは、少なくとも1つの独立して選択されるアルコキシシリル置換基又はアクリルオキシ置換基を含む。官能性部分Yのアルコキシシリル置換基又はアクリルオキシ置換基は、上記の有機シラノール化合物(A)の一般式に示されるケイ素原子(すなわち、有機シラノール化合物(A)のシロキサン主鎖)に、直接的に(例えば、共有結合を介して)又は間接的に(例えば、二価連結基を介して)結合されてもよい。ある特定の実施形態では、官能性部分Yのアルコキシシリル又はアクリルオキシ置換基は、下記のように、Y自体が、アルコキシシリル又はアクリルオキシ基を表すように、有機シラノール化合物(A)のシロキサン主鎖に直接的に結合される。他の実施形態では、官能性部分Yのアルコキシシリル又はアクリルオキシ置換基は、例えば連結基を介して、有機シラノール化合物(A)のシロキサン主鎖に間接的に結合される。
【0014】
例えば、いくつかの実施形態では、官能性部分Yは式R-D-(式中、Rは、以下で更に詳細に記載されるように、アルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を含み、Dは、連結基である)を有する。より具体的には、このような実施形態では、連結基Dは、独立して選択される二価連結基であり、直鎖であっても分岐状であってよく、置換であっても非置換であってもよい。典型的には、連結基Dは、二価の置換又は非置換の炭化水素基から選択される。例えば、いくつかの実施形態では、連結基Dは、式-(CH-(式中、添字mは、1~16、あるいは1~6である)を有する炭化水素部分を含む。これらの又は他の実施形態では、連結基Dは、置換炭化水素、すなわち、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、Sなど)を有する主鎖を含む炭化水素基を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、連結基Dは、エーテル部分を含む主鎖を有する炭化水素である。
【0015】
概して、Rは、アルコキシシリル基及びアクリルオキシ基から独立して選択される。これらの基は、特に限定されず、以下の全般的及び具体的な例によって例示される。したがって、代替のアルコキシシリル基及び/又はアクリルオキシ基は、本明細書の記載を考慮して、当業者によって容易に想定される。
【0016】
ある特定の実施形態では、Rは、官能性部分Yがアルコキシシリル部分であるようにアルコキシシリル基であり、成分(A)は、上で紹介したアルコキシシリル官能性有機シラノール化合物(A)として更に定義され得る。このような実施形態では、Rは、典型的には、以下の式:
【化3】
(式中、添字bは、1、2、又は3であり、Rは、添字bにより示される各部分において独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である)を有するアルコキシシリル基である。
【0017】
アルコキシシリル基Rは、モノ、ジ、又はトリアルコキシシリル基として、すなわち添字bが、それぞれ、1、2、又は3である場合として更に定義され得る。典型的には、アルコキシシリル基Rが上記の部分式RO-により表される少なくとも2つのアルコキシ基を含むように、添字bは、2又は3である。このような実施形態では、各Rは、アルコキシシリル基R中の任意の他のRと同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
、及び存在する場合にはR(すなわち、添字bが1又は2である場合)に好適なヒドロカルビル基の例としては、概して、上記のRに関して記載したものが挙げられる。典型的には、各R及びRは、メチル基、エチル基などのアルキル基から独立して選択される。このような場合、アルコキシシリル基Rは、トリアルコキシシリル、ジアルコキシアルキルシリル、又はアルコキシルジアルキルシリル基として、すなわち添字bが、それぞれ、3、2、又は1であるものとして定義され得る。
【0019】
ある特定の実施形態では、各Rは、メチル又はエチルである。これらの又は他の実施形態では、各Rは、メチル又はエチルである。特定の実施形態では、アルコキシシリル基R中の各R及びRは、メチルである。例えば、特定の実施形態では、Rがトリメトキシシリル基である(例えば、式(CHO)Si-である)ように、添字bは3であり、各Rはメチルである。同様に、他の実施形態では、Rがトリエトキシシリル基である(例えば、式(CHCHO)Si-である)ように、添字bは3であり、各Rはエチルである。いくつかの実施形態では、Rがトリメトキシシリル基である(例えば、式(CHCHO)Si-である)ように、添字bは2であり、各Rはメチルであり、Rはメチルである。
【0020】
ある特定の実施形態では、Rは、官能性部分Yがアクリルオキシ部分であるようにアクリルオキシ基であり、成分(A)は、上で紹介したアクリルオキシ官能性有機シラノール化合物(A)として更に定義され得る。このような実施形態では、Rは、典型的には、以下の式:
【化4】
(式中、Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基又はHである)を有するアクリルオキシ基である。Rに好適なヒドロカルビル基の例としては、上記Rに関して記載したものが挙げられる。例えば、Rは、1~4個の炭素原子を有するものなどの置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み得る、又はこれらであり得る。
【0021】
ある特定の実施形態では、アクリルオキシ基Rがアクリレート基として定義され得るように、RはHである。他の実施形態では、Rは、Rに関して上記したもののいずれかなどの置換又は非置換ヒドロカルビル基から選択される。いくつかのこのような実施形態では、アクリルオキシ基Rがアルキルアクリレート基として定義され得るように、Rはアルキル基である。このようなアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル基(n-プロピル、イソプロピル)、及びブチル基(例えば、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、t-ブチル)基が挙げられる。特定の実施形態では、アクリルオキシ基Rがメタクリレート基として定義され得るように、Rはメチルである。
【0022】
引き続き上記成分(A)の一般式に関して、有機シラノール化合物(A)の添字aは、0、1、又は2である。例えば、ある特定の実施形態では、添字aは0であり、有機シラノール化合物(A)は以下の式:
【化5】
(式中、各R及びYは、上述のとおりである)を有する。いくつかのこのような実施形態では、有機シラノール化合物(A)が式YSi(CHOH(式中、Yは上記のとおりである)を有するように、各Rはメチルである。
【0023】
他の実施形態では、添字aは1であり、有機シラノール化合物(A)は以下の式:
【化6】
(式中、各R及びYは、上述のとおりである)を有する。いくつかのこのような実施形態では、有機シラノール化合物(A)が式YSi(CHOSi(CHOH(式中、Yは上記のとおりである)を有するように、各Rはメチルである。
【0024】
更に他の実施形態では、添字aは2であり、有機シラノール化合物(A)は以下の式:
【化7】
(式中、各R及びYは、上述のとおりである)を有する。いくつかのこのような実施形態では、有機シラノール化合物(A)が式YSi(CHOSi(CHOSi(CHOH(式中、Yは上記のとおりである)を有するように、各Rはメチルである。
【0025】
有機シラノール化合物(A)は、任意の形態、例えば、未希釈でもよく(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)、又は溶媒若しくは分散剤などの担体ビヒクル中に配給されてもよい。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;など;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル)、シリコーン流体、又はこれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、有機シラノール化合物(A)は、担体ビヒクルの非存在下で利用される。いくつかのこのような実施形態では、有機シラノール化合物(A)は、有機シラノール化合物(A)及び/又はヒドリドシラン化合物(B)と反応する水及び担体ビヒクル/揮発性物質が存在しない状態で利用される。例えば、ある特定の実施形態では、本方法は、有機シラノール化合物(A)から揮発性物質及び/又は溶媒(例えば、有機溶媒、水など)をストリッピングすることを含んでもよい。有機シラノール化合物(A)からストリッピングする技術は、当該技術分野において既知であり、蒸留、加熱、減圧/真空の適用、溶媒との共沸混合、モレキュラーシーブの利用、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
有機シラノール化合物(A)は、当業者によって選択される任意の量で利用されてもよく、例えば、選択される特定のヒドリドシラン化合物(B)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、反応させられる成分(A)及び/若しくは(B)並びに/又は調製される多官能性有機ケイ素化合物の総量)などに応じて異なる。
【0027】
ある特定の実施形態では、本方法は、2、3、4、又はそれ以上の有機シラノール化合物(A)などの2つ以上の有機シラノール化合物(A)を利用することを含む。このような実施形態では、各有機シラノール化合物(A)は、独立して選択され、(例えば、シロキサン主鎖、官能性部分Y、置換基Rなどの観点から)任意の他の有機シラノール化合物(A)と同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
例えば、ある特定の実施形態では、有機シラノール化合物(A)は、化合物の混合物を含み、式中、官能性部分Yは、上記の式R-D-を有し、この化合物は二価連結基Dに対して互いに異なる。いくつかのこのような実施形態では、各Dは直鎖又は分岐状炭化水素基であり、有機シラノール化合物(A)は、50:50、あるいは65:35、あるいは>90:10、あるいは>95:5(直鎖:分分岐状)の直鎖又は分岐状基の比を有する化合物である。ある特定のこのような実施形態では、各連結基Dは、上記の有機シラノール化合物(A)の一般式を有する成分(A)において、利用される分子の少なくとも70モル%、あるいは少なくとも75モル%、あるいは少なくとも80モル%、あるいは少なくとも85モル%、あるいは少なくとも90モル%、あるいは少なくとも95モル%において直鎖炭化水素基である。
【0029】
有機シラノール化合物(A)は、提供され得る、又は他の方法で「そのまま」、すなわち多官能性有機ケイ素化合物を調製するための反応の準備ができている状態で得られ得る、又は代替的には、本方法の一部として調製され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、有機シラノール化合物(A)を調製することを更に含む。
【0030】
当業者には理解されるように、Si-OH基とSi-Cl基との縮合は、直接的に、又はまずSi-Cl基のSi-OH基への加水分解及びその後の2つのSi-OH基の縮合によって間接的に行われてもよい。このように、有機シラノール化合物(A)の調製は、以下の式:
【化8】
(式中、各R、Y、及び添字aは、有機シラノール化合物(A)に関して上記のとおりである)を有する塩素官能性有機ケイ素化合物などのハロゲン官能性有機ケイ素化合物の加水分解によって行われ得ることを理解されたい。したがって、有機シラノール化合物(A)については、シラノール官能基(すなわち、そのSi-OH基)に関して本明細書に記載したが、特定の条件下では、先述の塩素官能性有機ケイ素化合物は、それ自体が1つ以上のSi-OH基を含んだ、下記のような、成分(B)の1つ以上の加水分解反応生成物により、自身が反応し得ることも理解されるべきである。このような場合、有機シラノール化合物(A)は、それ自体がその方法中にシラノール(すなわち、Si-OH官能基)になることはない。したがって、有機シラノール化合物(A)に関して使用される用語「有機シラノール」は、限定されるものではなく、加水分解条件下で対応する有機シラノール化合物に容易に変換されるハロゲン官能性有機ケイ素化合物を包含するものと理解されるべきである。
【0031】
上記で紹介されたように、成分(B)は、ヒドリドシラン化合物、すなわち、分子当たり少なくとも1つのケイ素結合水素原子(すなわち、Si-H基)を有するケイ素化合物である。ヒドリドシラン化合物(B)はまた、典型的には、少なくとも2つの加水分解性基(すなわち、例えば縮合反応の最中に加水分解を受けることができる2つのケイ素結合基)を含む。
【0032】
典型的には、ヒドリドシラン化合物(B)は、以下の一般式:
【化9】
(式中、各Zは、独立して選択される加水分解性基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、添字cは、2又は3である)を有する。
【0033】
ある特定の実施形態では、添字cは2であり、ヒドリドシラン化合物(B)は以下の式:
【化10】
(式中、各Z及びRは、本明細書に記載のとおりである)を有する。他の実施形態では、添字cは3であり、ヒドリドシラン化合物(B)は以下の式:
【化11】
(式中、各Zは、本明細書に記載のとおりである)を有する。
【0034】
各加水分解性基Zは、独立して選択され、ヒドリドシラン化合物(B)中の任意の他の加水分解性基Zと同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、各加水分解性基Zは同じである。他の実施形態では、少なくとも1つの加水分解性基Zは、ヒドリドシラン化合物(B)の少なくとも1つの他の加水分解性基Zとは異なる。ヒドリドシラン化合物(B)に好適な加水分解性基は限定されず、有機シラノール化合物(A)のシラノール基とヒドリドシラン化合物(B)との縮合を促進することができる任意の基であってもよい。
【0035】
ある特定の実施形態では、各加水分解性基Zは、ハロゲン(例えば、塩素、臭素など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基など)、カルボキシ基(例えば、アセトキシ)、オキシム基(例えば、-ONC(CHCH)、及びアミノオキシ基(例えば、-ON(CHCH)から独立して選択される。特定の実施形態では、各加水分解性基Zは、ハロゲンである。特定の実施形態では、各加水分解性基Zは、塩素である。
【0036】
いくつかの実施形態では、各加水分解性基Zは、有機シラノール化合物(A)で利用される特定の官能性部分Yを特に考慮して選択される。例えば、特定の実施形態では、化合物(A)は、上記のアルコキシシリル官能性有機シラノール化合物(A)であり、ヒドリドシラン化合物(B)は、アルコキシシリル基を含まない(すなわち、各加水分解性基Zは、例えばハロゲンなどのアルコキシ以外である)。
【0037】
存在する場合(すなわち、上記したように、添字cが2である)、ヒドリドシラン化合物(B)の置換基Rは、ヒドロカルビル基である。好適なヒドロカルビル基は、置換又は非置換であってもよく、上記有機シラノール化合物(A)の置換基Rに関して上記のヒドロカルビル基によって例示される。典型的には、Rは、メチル基、エチル基などのアルキル基から選択される。例えば、ある特定の実施形態では、Rはメチルである。しかしながら、アリール、アルカリール、及び他の種類のヒドロカルビル基もまた、Rとして利用することができる。加えて、Rは、上記したように、選択されたヒドロカルビル基の炭化水素鎖に対して、内部、末端、及び/又はペンダントで置換されてもよい。
【0038】
特定の実施形態では、各加水分解性基ZはClであり、Rは、存在する場合、メチルである。このような実施形態では、ヒドリドシラン化合物(B)は、ジクロロメチルシラン(すなわち、添字cは2である)及びトリクロロシラン(すなわち、添字cは3である)で例示される。
【0039】
ヒドリドシラン化合物(B)は、任意の形態、例えば、未希釈(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)で利用されてもよく、又は溶媒若しくは分散剤などの担体ビヒクル中に配給されてもよい。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;など;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル)、シリコーン流体、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒドリドシラン化合物(B)は、有機シラノール化合物(A)及び/又はヒドリドシラン化合物(B)と反応する水及び担体ビヒクル/揮発性物質の非存在下で利用される。例えば、ある特定の実施形態では、本方法は、ヒドリドシラン化合物(B)から揮発性物質及び/又は溶媒(例えば、水、反応性溶媒など)をストリッピングすることを含んでもよい。ヒドリドシラン化合物(B)からストリッピングする技術は、当該技術分野において既知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸混合、モレキュラーシーブの利用など、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0041】
ある特定の実施形態では、本方法は、2、3、又は4以上のヒドリドシラン化合物(B)などの、2つ以上のヒドリドシラン化合物(B)を利用することを含む。このような実施形態では、各ヒドリドシラン化合物(B)は、独立して選択され、例えば、加水分解性基Z、加水分解性基Zの数(すなわち、添字cによって表されるとおり)など)に関して、任意の他のヒドリドシラン化合物(B)と同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
ヒドリドシラン化合物(B)は、当業者によって選択される任意の量で利用されてもよく、例えば、選択される特定の有機シラノール化合物(A)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、変換させられる成分(A)及び/又は調製される多官能性有機ケイ素化合物の総量)などに応じて異なる。
【0043】
利用される有機シラノール化合物(A)及びヒドリドシラン化合物(B)の相対量は、例えば、選択される特定の有機シラノール化合物(A)、選択される特定のヒドリドシラン化合物(B)、採用される反応パラメータなどに基づいて異なり得る。当業者には理解されるように、成分(A)及び成分(B)の反応の理論最大モル比(すなわち、完全な反応の化学量論比)は、添字c、すなわち、加水分解性基Zの数に応じて異なる。例えば、添字cが2である場合(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)が2個の加水分解性基Zを有する)、成分(A)及び成分(B)は、2:1のモル比(A):(B)のモル比で反応し得る。同様に、添字cが3である(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)が3つの加水分解性基Zを有する)場合、成分(A)及び成分(B)は、3:1のモル比(A):(B)のモル比で反応し得る。
【0044】
反応の特定の理論最大モル比にかかわらず、例えば、形成された反応生成物の精製を単純化するために、典型的には、成分のうちの1つが過剰に利用されて成分(A)又は(B)の一方を完全に消費する。したがって、ある特定の実施形態では、有機シラノール化合物(A)とヒドリドシラン化合物(B)とは、10:1~1:10の(A):(B)のモル比、例えば、8:1~1:8、あるいは6:1~1:6、あるいは4:1~1:4の(A):(B)のモル比で反応する。特定の実施形態では、有機シラノール化合物(A)は、多官能性有機ケイ素化合物への成分(B)の変換率を最大にするために、相対的に過剰(すなわち、化学量論的過剰、例えば(A)対(B)のモル当量比が添字cより大きい場合)で利用される。このような実施形態では、有機シラノール化合物(A)とヒドリドシラン化合物(B)とは、6:1~2:1超のモル比、例えば5:1~2:1超、あるいは4:1~2:1超、あるいは3:1~2:1超の(A):(B)のモル比で反応する。特定のこのような実施形態では、有機シラノール化合物(A)とヒドリドシラン化合物(B)とは、3.5:1~3.01:1超の(A):(B)のモル比(例えば、ヒドリドシラン化合物(B)が3つの加水分解性基Zを有するように、添字cが3である場合)、あるいは2.5:1~2.01:1の(A):(B)のモル比(例えば、ヒドリドシラン化合物(B)が2つの加水分解性基Zを有するように添字cが2である場合)で反応する。
【0045】
他の実施形態では、ヒドリドシラン化合物(B)は、多官能性有機ケイ素化合物への成分(A)の変換率を最大にするために、相対的に過剰(すなわち、化学量論的過剰、例えば(A)対(B)のモル当量比が添字cより少ない場合)で利用される。このような実施形態では、有機シラノール化合物(A)とヒドリドシラン化合物(B)とは、1:1以下の(A):(B)の化学量論比で反応する。例えば、いくつかの実施形態では、有機シラノール化合物(A)とヒドリドシラン化合物(B)とは、3:1以下の(A):(B)のモル比(例えば、ヒドリドシラン化合物(B)が3つの加水分解性基Zを有するように、添字cが3である場合)、あるいは2:1以下の(A):(B)のモル比(例えば、ヒドリドシラン化合物(B)が2つの加水分解性基Zを有するように添字cが2である場合)で反応する。
【0046】
これらの範囲外の比率も同様に利用され得ることが理解されよう。例えば、ある特定の実施形態では、例えば反応中に有機シラノール化合物(A)が担体(すなわち、溶媒、希釈剤など)として利用される場合、有機シラノール化合物(A)は、大過剰(例えば、ヒドリドシラン化合物(B)のモル量の10倍以上、あるいは15倍以上、あるいは20倍以上)で利用される。他の実施形態では、例えば反応中にヒドリドシラン化合物(B)が担体(すなわち、溶媒、希釈剤など)として利用される場合、ヒドリドシラン化合物(B)は、過剰の成分(A)、あるいは大過剰(例えば、有機シラノール化合物(A)のモル量の10倍以上、あるいは15倍以上、あるいは20倍以上)で利用される。
【0047】
上で紹介したように、成分(C)は、酢酸塩、すなわち酢酸アニオンを含む複合体である。酢酸塩(C)は別様に特に限定されない。
【0048】
当業者によって理解されるように、酢酸塩は、概して、対イオン(例えば、カチオン、又はカチオンの組み合わせ)を含み、これは、有機カチオン(例えば、イミダゾリウム、ピリジニウム、及びピロリジニウムカチオンなどの四級アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、など)、無機カチオン(例えば、金属カチオン)、及びこれらの組み合わせから選択され得る。好適なカチオンの具体例としては、アルカリ金属(例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)など)及びアルカリ土類金属(例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)など)のカチオンが挙げられる。
【0049】
ある特定の実施形態では、酢酸塩(C)は、一般式[RC(O)O][M](式中、Rは置換又は非置換のメチル基であり、Mはアルカリ金属である)を有する複合体を含む。
【0050】
部分式[RC(O)O]によって示される部分は、アセテート(すなわち、酢酸イオン、酢酸アニオンなど)と定義されてもよく、又はそうでなければアセテートと呼ばれてもよく、この用語は、概して酢酸の共役塩基を包含することが理解されよう。しかしながら、本明細書における置換基Rの記述を考慮すると、酢酸塩(C)のアセテートは、高次カルボキシレートアニオン(例えば、プロピオネート、ブチレートなど)又は他のアセテート誘導体(例えば、フルオロアセテート、ジクロロアセテートなど)であってもよく、これらはまとめて、上記一般式中の置換基Rによって表される置換又は非置換メチル基の範囲内に入ることが理解されるべきである。
【0051】
例えば、ある特定の実施形態では、成分(C)の塩複合体が、式[HCC(O)O][M](式中、Mは、本明細書中に記載のとおりである)を有するように、Rは非置換メチル基である。他の実施形態では、置換基Rは、式(RC-(式中、各Rは、H、ハロゲン(例えば、F、Cl、Brなど)、及びヒドロカルビル基から独立して選択される)を有する置換メチル基である。
【0052】
に好適なヒドロカルビル基の例としては、上記有機シラノール化合物(A)の置換基Rに関して上記したもののいずれかが挙げられる。典型的には、Rのヒドロカルビル基は、メチル基、エチル基などのアルキル基、及びフェニル基、ベンジル基などのアリール基から選択される。例えば、ある特定の実施形態では、成分(C)の塩複合体が更に又は代替的にプロピオネートイオンとして定義され得るように、少なくとも1つのRはメチルであり得る。しかしながら、アリール、アルカリール、及び他の種類のヒドロカルビル基もまた、Rとして利用することができる。
【0053】
ある特定の実施形態では、各Rは、H、F、Cl、1~4個の炭素原子を有する非置換アルキル基、及びフェニル基から独立して選択される。いくつかのこのような実施形態では、Rの少なくとも2つは、Hである。特定の実施形態では、Rが上記で紹介された非置換メチル基であるように、各RはHである。
【0054】
アルカリ金属Mは特に限定されず、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、若しくはそれらの組合せ(例えば、酢酸塩(C)が、2つ以上のカチオンを含む混合塩である場合)を含み得る、又はそれらであり得る。ある特定の実施形態では、Mは、ナトリウム及び/又はカリウム(K)を含む。特定の実施形態では、酢酸塩(C)が酢酸ナトリウム化合物として更に定義され得るように、Mはナトリウムである。特定の実施形態では、酢酸塩(C)は、代替的には、酢酸ナトリウム、例えば通常はNaOAcと略される化学式NaCOCHを有する複合体を含む。
【0055】
概して酢酸塩(C)に関しては、例えばポリカチオン性及び/又は架橋対イオンが利用されるポリ酢酸塩などの、所与の複合体中に平均して2つ以上のアセテートイオンを含む化合物もまた利用され得ることが理解されよう。例えば、ある特定のアルカリ金属二酢酸塩(例えば、二酢酸ナトリウム)及び/又はアルカリ土類金属アセテート(例えば、別様に酢酸カルシウムとして単に呼ばれている、二酢酸カルシウム)もまた、本方法において利用され得ることが理解されよう。同様に、ある特定の実施形態では、本方法は、2、3、又は4以上の酢酸塩(C)などの、2つ以上の酢酸塩(C)を利用することを含む。このような実施形態では、各酢酸塩(C)は独立して選択され、例えばアセテートアニオン、対カチオンなどに関して、他の任意の酢酸塩(C)と同じであっても異なっていてもよい。
【0056】
酢酸塩(C)を調製する方法は当技術分野で周知であり、上記の式によって記載及び/若しくは表される特定の化合物、並びに/又はそれを調製するために使用される化合物は、様々な供給業者から市販されている。したがって、酢酸塩(C)は、本方法の一部として調製されてもよく、又はそうでなければ、入手されてもよい(すなわち、調製された化合物として)。同様に、酢酸塩(C)の調製物は、成分(A)と(B)との反応の前、又はインサイチュで(すなわち、成分(A)と(B)との反応中に)形成され得る。
【0057】
酢酸塩(C)は、任意の形態、例えば、未希釈(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)で利用されてもよく、又は溶媒若しくは分散剤(例えば、有機シラノール化合物(A)に関して上述したもののうちのいずれか)などの担体ビヒクル中に配給されてもよい。いくつかの実施形態では、酢酸塩(C)は、有機シラノール化合物(A)、ヒドリドシラン化合物(B)、及び/又は酢酸塩(C)自体(すなわち、成分(A)及び成分(B)と合わされるまで)と反応する水及び担体ビヒクル/揮発性物質の非存在下(例えば、無水)で利用される。例えば、ある特定の実施形態では、本方法は、酢酸塩(C)から揮発性物質及び/又は溶媒(例えば、水、有機溶媒など)をストリッピングすることを含んでもよい。酢酸塩(C)をストリッピングするための技術は、当技術分野において既知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用など、及びこれらの組み合わせを含み得る。
【0058】
酢酸塩(C)は、当業者に選択されるであろう任意の量で利用されてもよく、これは、例えば、選択される特定の酢酸塩(C)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、成分(A)及び成分(B)の総量)などに応じて異なる。概して、反応に利用される酢酸塩(C)と成分(B)とのモル比は、成分(A)と成分(B)との反応の速度及び/又は量に影響し、それにより多官能性有機ケイ素化合物を調製することができる。したがって、成分(A)及び/又は成分(B)と比較した酢酸塩(C)の量、並びにこれらの間のモル比は、変動し得る。典型的には、これらの相対量及びモル比は、(例えば、反応の経済的効率の向上、形成される反応生成物の精製の簡易化などのために)成分(A)及び成分(B)のカップリング、並びに/又は一方若しくは両方の成分の完全な変換を最大化するように選択される。
【0059】
多官能性有機ケイ素化合物を調製するために利用される反応は、特定の機構及び/又は種類に限定されないが、本方法で採用される条件下において、成分(B)と成分(C)とが反応して、例えば、成分(C)のアセテートアニオンと成分(B)のケイ素原子との、その1つ以上の加水分解性基(例えば、上記の置換基Z)によって促進されるインサイチュ縮合を介して、アセトキシヒドリドシラン中間体が調製されると考えられる。当業者に理解されるように、成分(B)と成分(C)との反応の理論上の最大モル比(すなわち、完全な反応の化学量論比)は、ヒドリドシラン化合物(B)の添字c、すなわち加水分解性基Zの数に応じて異なる。例えば、添字cが2である(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)が2つの加水分解性基Zを有する)場合、成分(B)と成分(C)とは、2:1の(C):(B)のモル比で反応し得る。同様に、添字cが3である(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)が3つの加水分解性基Zを有する)場合、成分(A)及び成分(B)は、3:1の(C):(B)のモル比で反応し得る。
【0060】
アセトキシヒドリドシラン中間体の形成を説明するためのほんの一例として、ヒドリドシラン化合物(B)がジクロロメチルシラン(すなわち、添字cが2であり、Rがメチルであり、各ZがClである)であり、酢酸塩(C)が、酢酸ナトリウム(すなわち、NaOAc)である実施形態では、アセトキシヒドリドシラン中間体は、一般式(AcO)c’(Cl)2-c’SiHCH(式中、添字c’は、この式に対応する各分子において1又は2である)を有することを理解されたい。しかしながら、当業者はまた、アセトキシヒドリドシラン中間体全体の添字c’の平均値が、利用される成分(B)と(C)との相対量によって影響され得ることを理解するであろう。例えば、化学量論的過剰の成分(C)が前述の例示的な実施形態で利用される場合、アセトキシヒドリドシラン中間体全体の添字c’の平均値は、成分(B)と(C)との所望の反応の化学量論的最大モル比(すなわち、完全な反応の化学量論比)に基づく理論的最大値である2に近づき得る。
【0061】
前述の説明から理解されるように、酢酸塩(C)は、典型的には、成分(B)のアセトキシヒドリドシラン中間体への変換率を最大にするために、ヒドリドシラン化合物(B)に対して、化学量論的に等価又は過剰に利用される。このように、ヒドリドシラン化合物(B)と酢酸塩(C)とは、典型的には、(C)のモル比で反応し得る添字cが2(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)が2つの加水分解性基Zを持つ)である場合、1:2以下の(B):(C)のモル比で利用され、あるいは、添字cが3(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)が3つの加水分解性基Zを持つ)である場合、1:3以下の(B):(C)のモル比で利用される。例えば、いくつかの実施形態では、酢酸塩(C)は、ヒドリドシラン化合物(B)に対して1:1未満~1:10の(B):(C)の相対的なモル比を提供するのに十分な量で使用される。例えば、ある特定の実施形態では、ヒドリドシラン化合物(B)と酢酸塩(C)とは、1:2~1:10、例えば1:2~1:5、あるいは1:2未満~1:5、あるいは1:2未満~1:4、あるいは1:2.1~1:3.1の(B):(C)のモル比で利用される。これらの範囲外の比率も同様に利用され得ることが理解されよう。例えば、ある特定の実施形態では、酢酸塩(C)は、大過剰(例えば、ヒドリドシラン化合物(B)のモル量の10倍以上、あるいは15倍以上、あるいは20倍以上)で利用される。
【0062】
ある特定の実施形態では、成分(A)、(B)、及び(C)の特定の種類及び相対量は、反応のある特定の副生成物の反応性が、反応成分及び/又は反応生成物に関して最小化又は他の様態では低減されるように選択される。例えば、ある特定の実施形態では、成分(A)のシラノールとヒドリドシラン化合物(B)との全体的な縮合(すなわち、直接及び/又はアセトキシヒドリドシラン中間体を介して)が副生成物としてHClを生成するように、ヒドリドシラン化合物(B)の加水分解性基Zは、各々塩素である。このような実施形態では、酢酸塩(C)は、反応混合物内に緩衝系を調製するように選択された量(例えば、アセトキシヒドリドシラン中間体を調製するのに必要な化学量論量を超える)で利用されてもよく、それによって、塩化物塩(例えば、NaCl)及びアセテートアニオンの共役酸(例えば、AcOH)を形成することによって、HClと成分(A)及び/又は(B)との反応性を低下させる。
【0063】
ある特定の実施形態では、本方法は、成分(A)と(B)とを(D)反応阻害剤の存在下において反応させることを含む。反応阻害剤(D)は限定されず、多官能性有機ケイ素化合物の調製のための反応(例えば、所望の及び/又は必要とされる反応以外の反応を防止、抑制、又は別の方法で阻害することができる任意の化合物又は組成物を含んでもよく、又はそのような任意の化合物又は組成物であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、例えば、有機シラノール化合物(A)がアクリルオキシ官能基である場合、反応阻害剤(D)は、重合阻害剤を含む、あるいは重合阻害剤である。
【0064】
重合阻害剤は、限定されず、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、光安定剤、若しくは紫外線吸収剤など、又はこれらの組み合わせを含んでもよく、あるいはこれらのいずれかであってもよい。このような化合物は、当該技術分野において公知であり、概して、例えば、それとの共有結合の形成を通じた遊離ラジカルの除去を介して、遊離ラジカルと相互作用して遊離ラジカルを不活性にすることができる化学化合物又は部分である、又はこれらを含む。重合阻害剤はまた、又は代替的に、重合遅延剤、すなわちラジカル重合の開始及び/又は伝播速度を低減する化合物であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、重合阻害剤は、酸素ガスを含む、あるいは酸素ガスである。概して、重合阻害剤は、有機シラノール化合物(A)及び/又は多官能性有機ケイ素化合物(例えば、アクリルオキシ部分を含む場合)のラジカル重合を介して形成され得る副生成物の形成を防止及び/又は抑制するために利用される。
【0065】
ある特定の実施形態では、重合阻害剤は、フェノール化合物、キノン化合物若しくはヒドロキノン化合物、N-オキシル化合物、フェノチアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、又はこれらの組み合わせを含む、あるいはこれらである。
【0066】
フェノール化合物の例としては、フェノール、アルキルフェノール、アミノフェノール(例えばp-アミノフェノール)、ニトロソフェノール、及びアルコキシフェノールが挙げられる。そのようなフェノール化合物の具体例としては、o-、m-、およびp-クレゾール(メチルフェノール)、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェノール又は2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’-オキシビフェニル、3,4-メチレンジオキシジフェノール(セサモール)、3,4-ジメチルフェノール、ピロカテコール(1,2-ジヒドロキシベンゼン)、2-(1’-メチルシクロヘキサ-1’-イル)-4,6-ジメチルフェノール、2-又は4-(1’-フェニルエチ-1’-イル)フェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4,6-トリス-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールA、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、メチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、4-tert-ブチルピロカテコール、2-ヒドロキシベンジルアルコール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、6-イソプロピル-m-クレゾール、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5,-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート又はペンタエリスリチルテトラキス[p-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、6-sec-ブチル-2,4-ジニトロフェノール、オクタデシル3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサデシル3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-チア-1,5-ペンタンジオールビス[(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジオールビス[(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジオールビス[(3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)プロピオネート]、1,9-ノナンジオールビス[(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7-ヘプタンジアミンビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、1,1-メタンジアミンビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3-(3’,5’-ジメチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス(3-tert-ブチル-5-エチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)メタン、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェン-1-イル)メタン、ビス[3-(1’-メチルシクロhex-1’-イル)-5-メチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル]メタン、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェン-1-イル)メタン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェン-1-イル)エタン、ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェン-1-イル)スルフィド、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェン-1-イル)スルフィド、1,1-ビス(3,4-ジメチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-3-メチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)ブタン、1,3,5-トリス-[1’-(3Δ,5″-ジ-tert-ブチル-4″-ヒドロキシフェン-1″-イル)メチ-1’-イル]-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,1,4-トリス(5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシ-2’-メチルフェン-1’-イル)ブタン及びtert-ブチルカテコール、p-ニトロソフェノール、p-ニトロソ-o-クレゾール、メトキシフェノール(グアヤコール、ピロカテコールモノメチルエーテル)、2-エトキシフェノール、2-イソプロポキシフェノール、4-メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ-又はジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール、2,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン(アセトバニロン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えば、α-、β-、γ-、δ-、及びε-トコフェロール、トコール、α-トコフェロールヒドロキノン、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ヒドロキシベンゾフラン(2,2-ジメチル-7-ヒドロキシクマラン)などが挙げられる。
【0067】
好適なキノン及びヒドロキノンには、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(4-メトキシフェノール)、メチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-メチル-p-ヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、4-メチルピロカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、3-メチルピロカテコール、ベンゾキノン、2-メチル-p-ヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、4-エトキシフェノール、4-ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p-フェノキシフェノール、2-メチルヒドロキノン、テトラメチル-p-ベンゾキノン、ジエチル-1,4-シクロヘキサンジオン2,5-ジカルボキシレート、フェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-3-ベンジル-p-ベンゾキノン、2-イソプロピル-5-メチル-p-ベンゾキノン(チモキノン)、2,6-ジイソプロピル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-アミノ-5-メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ビスフェニルアミノ-1,4-ベンゾキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アニリノ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、N,N-ジメチルインドアニリン、N,N-ジフェニル-p-ベンゾキノンジイミン、1,4-ベンゾキノンジオキシム、コエルリグノン(coerulignone)、3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメチルジフェノキノン、p-ロゾール酸(アウリン)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ベンジリデンベンゾキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノンなどが含まれる。
【0068】
好適なN-オキシル化合物(すなわち、ニトロキシル基又はN-オキシル基)としては、少なくとも1つのN-O●基を有する化合物、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなど、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(TEMPO)、4,4’,4’’-トリス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)ホスファイト、3-オキソ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-N-オキシル、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-トリメチルシリルオキシピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル2-エチルヘキサノエート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルセバケート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルステアレート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-ベンゾエート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(4-tert-ブチル)ベンゾエート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジジン-4-イル)スクシネート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)1,10-デカンジオエート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルマロネート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)フタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)イソフタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)テレフタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジパミド、N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カプロラクタム、N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6-トリス[N-ブチル-N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル]トリアジン、N,N’-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-N,N’-ビスホルミル-1,6-ジアミノヘキサン、4,4’-エチレンビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペラジン-3-オン)などが挙げられる。
【0069】
重合禁止剤において、又は重合阻害剤としての使用に好適な他の化合物としては、フェノチアジン(PTZ)及び同様の構造を有する化合物、例えば、フェノキサジン、プロマジン、N,N’-ジメチルフェナジン、カルバゾール、N-エチルカルバゾール、N-ベンジルフェノチアジン、N-(1-フェニルエチル)フェノチアジン、例えば、N-ベンジルフェノチアジン及びN-(1-フェニルエチル)フェノチアジンなどのN-アルキル化フェノチアジン誘導体が挙げられる。当然ながら、重合禁止剤は、任意の数の特定の化合物を含んでもよく、これらは各々独立して選択されてもよく、重合禁止剤の任意の他の化合物と同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
特定の実施形態では、反応阻害剤(D)は、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(4HT)、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルセバケート(Bis-TEMPO)、ポリマー結合TEMPO、及びこれらの組み合わせから選択される重合阻害剤を含む、あるいはその重合阻害剤である。
【0071】
利用される場合、反応阻害剤(D)は、別個の成分として反応に添加されてもよく、又は成分(A)及び成分(B)の反応前に別の成分(例えば、有機シラノール化合物(A))と混合されてもよい。反応阻害剤(D)は、当業者によって選択される任意の量で、例えば、選択される特定の反応阻害剤(D)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、成分(A)及び/又は(B)の総量、反応の雰囲気、反応の温度及び/又は圧力など)に応じて利用され得る。ある特定の実施形態では、反応阻害剤(D)は、50~2000ppmの量、例えば、50、あるいは100、あるいは250、あるいは500、あるいは1000、あるいは1500、あるいは2000ppmの量で反応中に存在する。しかしながら、当業者は、例えば、反応規模及び/又は条件が、追加量の反応阻害剤(D)を必要とする場合、これらの範囲外の量及び例示的な量も利用され得ることを容易に理解する。
【0072】
反応抑制剤(D)は、成分(A)及び(B)の反応前、反応中、及び反応後を含めて、いつでも本方法において利用され得る。加えて、反応阻害剤(D)は、反応自体内での使用に加えて、例えば真空トラップ、蒸留及び/又は受容ポットなどにおいて本方法中に補助的に使用されてもよい。更に、上記の量の追加又は代替として、酸素を別々の成分として(例えば、上記の化合物から選択される別個の反応阻害剤(D)の代わりに、又はそれに追加して)反応に添加してもよい。このような場合、酸素は、任意選択的に他の気体(例えば空気の形態)の存在下で、酸素ガスの形態で反応に導入されてもよい。利用される場合、酸素ガスの量は、反応混合物の上の気相が爆発限界未満に留まるように選択される。
【0073】
本方法で利用される成分(すなわち、有機シラノール化合物(A)、ヒドリドシラン化合物(B)、酢酸塩(C)、及び/又は反応阻害剤(D)(利用される場合))は、「そのままで」、すなわち、多官能性有機ケイ素化合物を調製するための反応の準備ができている状態で提供され得る。あるいは、成分(A)、(B)、(C)、及び又は(D)のうちのいずれか1つ以上、又は全ては、反応の前又は反応中に形成され得る。いくつかの実施形態では、上記で紹介したように、本方法は、有機シラノール化合物(A)を調製することを含む。これらの又は他の実施形態では、本方法は、ヒドリドシラン化合物(B)を調製することを更に含む。これらの又は他の実施形態では、本方法は、酢酸塩(C)を調製することを更に含む。
【0074】
上で紹介したように、本方法は、典型的には、予め形成されていてもよく(例えば、反応性予備混合物中で)、及び/又はヒドリドシラン化合物(B)及び酢酸塩(C)からインサイチュで形成されてもよいアセトキシヒドリドシラン中間体を介して、成分(B)を有機シラノール化合物(A)と間接的に反応させることを含む。この様式において、利用される特定の条件は、可変であるが、概して、アセトキシヒドリドシラン中間体を調製するための成分(B)と(C)との縮合、並びに多官能性有機ケイ素化合物を調製するための成分(A)とアセトキシヒドリドシラン中間体との縮合を促進するように選択される。更に、反応は、典型的には、有機シラノール化合物(A)及び/又はヒドリドシラン化合物(B)の加水分解を最小限にする条件下において行われ、そうでなければ望ましくない副反応をもたらし得る。特に、反応は、典型的には、いずれかの縮合反応を促進するために化学量論量の酸又は塩基を使用せずに、無水又は実質的に無水の条件下において行われる。例えば、酢酸塩(C)の使用は、反応成分間の分解及び/又は不要な反応を最小限に抑えるために反応中に生成されたHClを洗浄するのに必要な、他のシラノール-クロロシラン型縮合で使用されるアミン塩基の使用を回避する能力を提供する。このような他の条件は、例えば、不完全な反応、有機シラノール化合物の自己縮合などにより、有機シラノール化合物の所望の縮合生成物への不完全な変換をもたらすことが観察された。本明細書に記載の方法の特定の成分及び条件は、このような制限を克服し、並びに成分(A)及び成分(B)から多官能性有機ケイ素化合物を調製する別の方法の使用と比較して、有機シラノール化合物(A)の多官能性有機ケイ素化合物へのより高い変換率、及び/又は多官能性有機ケイ素化合物の全体的な収率を可能にするために利用され得る。例えば、ある特定の実施形態では、本方法は、少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも96%、あるいは少なくとも98%の有機シラノール化合物(A)の全体的な変換率を提供する。これらの又は他の実施形態では、本方法は、少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも96%、あるいは少なくとも98%の多官能性有機ケイ素化合物の全体的な収率を提供する。
【0075】
典型的には、成分(A)、(B)(C)、及び任意選択的に(D)を、容器又は反応器内で反応させて、多官能性有機ケイ素化合物を調製する。反応が下記のように高温又は低温で行われる場合、容器又は反応器は、任意の好適な様式で、例えばジャケット、マントル、交換器、浴、コイルなどを介して加熱又は冷却され得る。同様に、容器又は反応器は、本明細書の説明及び実施例を考慮して容易に理解されるように、ガス入口、凝縮器、バブラー、循環器、撹拌装置、及び/又は本方法を実行する際に利用される反応の1つ以上の条件を制御するために利用され得る他のそのような機器を備え得る。
【0076】
成分(A)、(B)、(C)、及び任意選択的に(D)は、容器に一緒に若しくは別個に供給され得るか、又は任意の添加の順序で、任意の組み合わせで容器内に配給され得る。全般的に、本明細書における「反応混合物」への言及は、概して、例えばこのような成分を一緒に合わせることによって得られるような、成分(A)、(B)、(C)、及び利用される場合任意選択的に(D)を含む混合物を指す。
【0077】
ある特定の実施形態では、本方法は、成分(A)、成分(C)、及び任意選択的に成分(D)を、成分(B)を入れた容器に添加して、反応混合物を調製することを含む。他の実施形態では、本方法は、成分(A)、及び任意選択的に成分(D)を入れた容器に成分(B)及び成分(C)を(例えば、同時に又は順次)添加して、反応混合物を調製することを含む。このような両方の実施形態では、反応混合物は、成分(A)の存在下におけるアセトキシヒドリドシラン中間体のインサイチュ形成を促進する。他の実施形態では、本方法は、成分(B)と成分(C)とを合わせて反応性予備混合物を形成することと、続いて成分(A)を反応性予備混合物と合わせて多官能性有機ケイ素化合物を調製することと、を含む。このような実施形態では、反応性予備混合物は、例えばヒドリドシラン化合物(B)及び酢酸塩(C)からインサイチュで形成された、アセトキシヒドリドシラン中間体を含み得る。これらの実施形態において、成分(A)は、例えば、反応の会話(conversation)速度を高め、不要な副反応を最小限に抑え、発熱などを制御することによって反応条件を安定化するために、反応性予備混合物にゆっくり及び/又は分割して添加されてもよい。
【0078】
本方法は、反応混合物を撹拌することを更に含み得る。撹拌は、例えば反応混合物中で合わされる場合、反応成分の互いの混合及び接触を増大し得る。このような接触は独立して、撹拌を伴って(例えば、並行して又は順次)、又は撹拌を伴わずに(すなわち、独立して、あるいはその代わりに)、他の条件を使用することもできる。他の条件は、反応の特定の成分(例えば、成分(B)及び成分(C)、成分(A)及びアセトキシヒドリドシラン中間体など)の接触、ひいては成分(A)と成分(B)との反応を増大させて、多官能性有機ケイ素化合物を調製するように調節することができる。他の条件は、反応収率を増大させるための、又は多官能性有機ケイ素化合物と共に反応生成物に含まれる特定の反応副生成物の量を最小限に抑えるための有効な条件であってもよい。
【0079】
順序にかかわらず、成分は、反応が溶液、エマルジョン、懸濁液、スラリー、二相混合物中で、又はそれらの組み合わせ中で行われるように、担体ビヒクル(例えば、溶媒、希釈剤、流体、又はそれらの組み合わせ)の存在下において反応し得る。利用される特定の溶媒、担体、及び/又は希釈剤、並びにその採用されたそれぞれの使用量は、例えば、特定の有機シラノール化合物(A)、ヒドリドシラン化合物(B)、酢酸塩(C)、及び/又は反応阻害剤(D)(利用される場合)、調製される特定の多官能性有機ケイ素化合物などに基づいて、当業者によって独立して選択される。
【0080】
概して、反応は、不均一条件(例えば、担体ビヒクルに懸濁されているが溶解されていない、1つ以上の成分)又は不均一条件(例えば、溶液状態)下において行われ得る。例えば、いくつかの実施形態では、酢酸塩(C)は、反応が不均一に行われるように、担体ビヒクルに可溶性ではない)。概して、成分のいずれか1つ以上又はそれらの組み合わせ(例えば、反応性予備混合物)は、均一な混合物/溶液の形態(すなわち、成分が、それとの反応混合物を形成する前に、担体ビヒクル中に溶解及び/又は配給される)で採用され得る。例えば、担体ビヒクル又は溶媒の一部分を、有機シラノール化合物(A)、ヒドリドシラン化合物(B)、酢酸塩(C)、及び/若しくは反応の任意の他の成分に添加するか、又は別様に合わせて、多官能性有機ケイ素化合物を、個別に、1つ以上の成分の混合物と一緒に、又は反応混合物全体と一緒に、調製してもよい。
【0081】
担体ビヒクルは、特に限定されず、典型的には、溶媒、油(例えば、有機油及び/若しくはシリコーン油)、流体など、又は上記のもののうちいずれか1つ以上などのこれらの組み合わせを含み、あるいはこれらである。
【0082】
いくつかの実施形態では、担体ビヒクルは、有機溶媒を含む、あるいは有機溶媒である。有機溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;ホワイトスピリット、ミネラルスピリット、ナフサ、水素付加イソパラフィン系炭化水素などの処理された炭化水素混合物;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;アセトニトリル;テトラヒドロフラン、n-メチルピロリドンなど、並びにこれらの誘導体、改質物、及び組み合わせを含むものが含まれる。先の例から理解されるように、有機溶媒は、典型的には非プロトン性であり、芳香族又は非芳香族、極性又は非極性などであり得る。ある特定の実施形態では、有機溶媒は、非極性非プロトン性溶媒である。いくつかのこのような実施形態では、有機溶媒は、芳香族である。
【0083】
ある特定の実施形態では、担体ビヒクルは、揮発性及び/又は半揮発性炭化水素、エステル、及び/又はエーテルを含む有機油を典型的に含む有機流体を含む、又はそのような有機流体である。このような有機流体の全般的な例としては、C~C16アルカン、C~C16イソアルカン(例えば、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカンなど)、C~C16分岐状エステル(例えば、イソヘキシルネオペンタノエート、イソデシルネオペンタノエートなど)などの揮発性炭化水素油、並びにそれらの誘導体、改質物、及び組み合わせが挙げられる。好適な有機流体の追加の例としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化アルキル、芳香族ハロゲン化物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。炭化水素としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、Isopar L(C11~C13)、Isopar H(C11~C12)、水素付加ポリデセンが挙げられる。
【0084】
特定の例では、担体ビヒクルは、トルエン、キシレン、ヘプタン、水素付加イソパラフィン系炭化水素(例えば、Isopar)、又はこれらの任意の組み合わせを含み、あるいはこれらである。いくつかのこのような実施形態では、反応が実質的に無水で行われるように、担体ビヒクルは、水を含まない、あるいは水を実質的に含まない。
【0085】
反応の温度は、選択される特定の反応成分、調製される特定の多官能性有機ケイ素化合物などに応じて、例えば反応の任意のそのような構成成分の揮発性及び/又は反応性に関して、選択及び制御される。概して、反応は、-78℃~100℃の温度で実行することができる。しかしながら、特定の範囲(例えば、-10℃~10℃、20℃~25℃、20℃~60℃など)が、反応させられる特定の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)に基づいて選択されてもよい。
【0086】
ある特定の実施形態では、反応は、低温で実行される。低温は、典型的には25℃(周囲温度)未満、例えば-78℃~周囲温度未満、あるいは-30℃~周囲温度未満、あるいは-15℃~周囲温度未満、あるいは-10℃~周囲温度未満、あるいは-10℃~20℃、あるいは-5℃~20℃、あるいは-5℃~15℃、あるいは0℃~15℃である。いくつかの実施形態では、反応は、(例えば、氷を用いる及び/又は0℃に設定した、氷浴、循環器、又は冷却装置を用いて)約0℃の温度で実施される。代替的な実施形態では、反応は、室温(すなわち、20~25℃)で実施される。
【0087】
反応温度は、上記の範囲とは異なっていてもよいことを理解されたい。例えば、ある特定の実施形態では、反応は、25℃超~100℃などの高温で実施される。いくつかのこのような実施形態では、高温は、25℃超~90℃、又は30℃~90℃、又は30℃~80℃、又は30℃~60℃である。同様に、成分(A)及び(B)の反応中に、反応パラメータを修正してもよいことも理解されたい。例えば、温度、圧力、及び他のパラメータは、反応中に独立して選択又は修正され得る。これらのパラメータはいずれも、独立して、周囲パラメータ(例えば、室温及び/又は大気圧)及び/又は非周囲パラメータ(例えば、低温若しくは高温及び/又は減圧若しくは高圧)であってもよい。任意のパラメータはまた、動的に修正されてもよく、リアルタイムで、すなわち、本方法中に変更されてもよく、又は静的(例えば、反応の持続時間中又はその任意の一部)であってもよい。ほんの一例として、ある特定の実施形態では、本方法は、第1の温度で反応性予備混合物を調製することと、第2の温度で成分(A)と反応性予備混合物とを(例えば、上記と同じものを一緒に合わせることにより)反応させることと、を含む。このような実施形態では、第1の温度は、例えば発熱を制御する場合など、第2の温度よりも低くても高くてもよい。
【0088】
(多官能性有機ケイ素化合物を調製するための成分の反応が実行される時間は、規模、反応パラメータ及び条件、特定の成分の選択などに応じて異なる。ある特定の実施形態では、反応が実行される時間は、0時間超~48時間、例えば1分間~48時間である。比較的大規模(例えば、1kg超、あるいは5kg、あるいは10kg、あるいは50kg、あるいは100kg)で、反応は、1時間~48時間、あるいは2時間~36時間、あるいは4時間~24時間、あるいは6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、又は48時間などの時間にわたって行ってもよい。比較的小規模(グラム規模、又は10、あるいは5、あるいは1kg未満)では、反応は、1分間~4時間、例えば、5分間~1時間、30~35分間、又は10、15、20、25、若しくは30分間などの時間行ってもよい。あるいは、同じ比較的小規模で、反応は、1~3時間、あるいは2~3時間など、30分間~3時間の時間にわたって行ってもよい。特定の反応時間は、有機シラノール化合物(A)の変換、多官能性有機ケイ素化合物の生成などを(例えば、クロマトグラフィー法及び/又は分光法を介して)監視することなどによって、当業者によって容易に決定されるであろう。
【0089】
概して、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の反応は、多官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を調製する。特に、反応の過程で、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む反応混合物は、増加する量の多官能性有機ケイ素化合物の量と、減少する量の成分(A)及び成分(B)の量を含む。反応が完了すると(例えば、成分(A)又は成分(B)のうちの1つが消費される、追加の多官能性有機ケイ素化合物が調製されない、など)、反応混合物は、多官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物と称され得る。このように、反応生成物は、典型的には、任意の残りの量の成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)(存在する場合)、並びにその分解及び/又は反応生成物(例えば、蒸留、ストリッピングなどによって以前に除去されなかった材料)を含む。反応が任意の担体ビヒクル又は溶媒中で実施される場合、反応生成物はまた、このような担体ビヒクル又は溶媒も含んでもよい。
【0090】
ある特定の実施形態では、反応生成物は、有機シラノール化合物(A)のホモ縮合から形成された副生成物を含まない、あるいは実質的に含まない。これら又は他の実施形態では、反応生成物は、利用される有機シラノール化合物(A)の総量(例えば、重量又はモル量による)に基づいて、10%未満、あるいは8%未満、あるいは5%未満、あるいは3%未満の残留量の有機シラノール化合物(A)を含む。
【0091】
ある特定の実施形態では、本方法は、反応生成物から多官能性有機ケイ素化合物を単離及び/又は精製することを更に含む。本明細書で使用されるとき、多官能性有機ケイ素化合物を単離することは、典型的には、多官能性有機ケイ素化合物の相対濃度を、(例えば、反応生成物又はその精製品において)それと組み合わせた他の化合物よりも高めることと定義される。したがって、当該技術分野において理解されるように、単離/精製は、他の化合物をこのような組み合わせから除去すること(すなわち、多官能性有機ケイ素化合物と組み合わされた不純物の量を、例えば反応生成物中で減少させる)、及び/又は多官能性有機ケイ素化合物自体を組み合わせから除去することを含んでもよい。単離のための任意の好適な技術及び/又はプロトコルが利用され得る。好適な単離技術の例としては、蒸留、ストリッピング/蒸発、抽出、濾過、洗浄、分配、相分離、クロマトグラフィーなどが挙げられる。当業者には理解されるように、これらの技術のいずれも、多官能性有機ケイ素化合物を単離するために、任意の別の技術と組み合わせて(すなわち、順次)使用することができる。単離は、多官能性有機ケイ素化合物を精製することを含んでもよく、したがって多官能性有機ケイ素化合物を精製すること、と称されてもよいことを理解されたい。しかしながら、多官能性有機ケイ素化合物の精製は、多官能性有機ケイ素化合物の単離に利用される技術に対し代替の及び/又は追加の技術を含み得る。選択された特定の技術にかかわらず、多官能性有機ケイ素化合物の単離及び/又は精製は、反応自体と順に(すなわち、ライン内で)実行されてもよく、したがって自動化されてもよい。他の例では、精製は、多官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物が供される独立型手順であってもよい。
【0092】
特定の実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物を単離することは、例えば、水溶液(例えば、水、ブラインなど)及び任意選択的に非水性溶媒を反応混合物に添加し、分配時に相を分離することによって、反応混合物を洗浄及び/又は抽出することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、反応混合物を異なる水溶液(例えば、水、炭酸ナトリウム水溶液、ブラインなど)で順次に分けて洗浄して、反応混合物から水性の構成成分を除去することを含む。このような実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物を単離することは、典型的にはまた、反応生成物から揮発性物質を蒸留及び/又はストリッピングして、例えば、反応生成物から非水性溶媒又は他の揮発性物質を除去することを含む。両方又はいずれかの場合(例えば、洗浄/抽出によって水性の構成成分を除去した後、及び/又はストリッピング/蒸留によって揮発性物質を除去した後)において、反応生成物(すなわち、ここで異なる溶解度及び/又は揮発性の他の構成成分から分離される)は、単離された多官能性有機ケイ素化合物と称することができる。
【0093】
他の技術及び/又は手順もまた利用され得ることが理解される。例えば、いくつかの実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物を単離することは、反応生成物を濾過すること(例えば、反応生成物から、固形分、塩、及び他の沈殿又は懸濁物質を除去すること)を含む。このような実施形態では、当業者に理解されるように、溶媒及び/又は希釈剤(例えば、トルエン、ジエチルエーテルなどの有機溶媒)を利用して、反応生成物の様々な成分を可溶化及び/又は沈殿させて、多官能性有機ケイ素化合物を単離することを容易にすることができる。これらの又は他の実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物を単離することは、反応生成物から揮発性物質を蒸留及び/又はストリッピングすることを含み得る。例えば、担体ビヒクルが使用される場合などの特定の実施形態では、揮発性物質は、多官能性有機ケイ素を含む反応混合物から蒸留及び/又はストリッピングされる。両方又はいずれかの場合、(例えば、濾過による固体の除去及び/又はストリッピング/蒸留による揮発性物質の除去後)、(固形分及び/又は揮発性物質から分離された)反応生成物は、単離された多官能性有機ケイ素化合物と称され得る。
【0094】
特定の実施形態では、本方法は、多官能性有機ケイ素化合物を精製することを更に含む。精製のための任意の好適な技術を利用してもよい。ある特定の実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物を精製することは、多官能性有機ケイ素化合物(例えば、留出物)を除去すること、又は他の化合物/成分をそこからストリッピングすること(すなわち、反応混合物又は精製した反応混合物の高沸点成分としてポット内に多官能性有機ケイ素化合物を残す)を含む。当業者には理解されるように、多官能性有機ケイ素化合物を精製及び/又は単離するために反応生成物又は精製反応生成物を蒸留することは、典型的には、高温及び減圧下で実行される。高温及び減圧は、当業者によって容易に決定されるように、例えば、反応の特定の成分、調製される特定の多官能性有機ケイ素化合物、使用される他の単離/精製技術などに基づいて、独立して選択される。いくつかの実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物の精製は、単離された多官能性有機ケイ素化合物を精製すること(例えば、精製が、多官能性有機ケイ素化合物の単離の後に行われる場合)として定義することができる。
【0095】
上記に紹介したように、本方法は、多官能性有機ケイ素化合物を調製する。より具体的には、成分(A)及び成分(B)の構造並びにそれらの反応のパラメータの説明を考慮して理解されるように、本方法は、例えばヒドリドシラン化合物(B)の加水分解性基(Z)に対する有機シラノール化合物(A)の縮合媒介置換を介して、有機シラノール化合物(A)及びヒドリドシラン化合物(B)の付加生成物として多官能性有機ケイ素化合物を調製する。
【0096】
典型的には、本方法に従って調製された多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化12】
(式中、各Y、R、R、添字a、及び添字cは、独立して選択され、上記で定義される)を有する。より具体的には、各官能性部分Yは独立して選択されたアルコキシシリル又はアクリルオキシ部分であり、各Rは独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各添字aは添字cによって示される各部分において独立して0、1、又は2であり、添字cは2又は3である。
【0097】
本明細書の説明を考慮して当業者に理解されるように、本方法で利用される有機シラノール化合物(A)は、上記一般式中の添字cによって指定された部分に対応する多官能性有機ケイ素化合物の一部分を形成し、本方法で利用されるヒドリドシラン化合物(B)は、本明細書に記載されるように、部分式-Si(H)(R3-cで表される部分に対応する多官能性有機ケイ素化合物の一部分を形成する。したがって、式、構造、部分、基、又は他のそのようなモチーフが、多官能性有機ケイ素化合物と、本方法において利用される有機シラノール化合物(A)及び/又はヒドリドシラン化合物(B)との間で共有される場合、そのような共有モチーフに関する上記の説明は、多官能性有機ケイ素化合物(例えば、各Y、R、R、添字a、添字cなどに関して)を等しく記載し得る。
【0098】
例えば、多官能性有機ケイ素化合物は、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から各々独立して選択される(すなわち、各官能性部分Yは、上記のように、少なくとも1つの独立して選択されるアルコキシシリル又はアクリルオキシ置換基を含む)、2つ又は3つの官能性部分Yを含む(すなわち、添字cは、下記のように、それぞれ2又は3である)。したがって、各官能性部分Yは、多官能性有機ケイ素化合物中の任意の他の官能性部分Yと同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、各官能性部分Yは、同じである。他の実施形態では、少なくとも1つの官能性部分Yは、多官能性有機ケイ素化合物の少なくとも1つの他の官能性部分Yとは異なる。特定の実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物の各官能性部分Yは互いに異なる。いずれにせよ、多官能性有機ケイ素化合物は、2つ又は3つの官能性部分Yを含むため、本明細書中における、多官能性有機ケイ素化合物に関する単数形の「官能性部分Y」又は単に「Y」への言及は、多官能性有機ケイ素化合物のうちの各官能性部分Yを集合的に指す(すなわち、上記の一般式に示される2つ又は3つの官能性部分Yの各々)ものとして理解されるべきである。
【0099】
官能性部分Yのアルコキシシリル置換基又はアクリルオキシ置換基は、上記の多官能性有機ケイ素化合物の一般式に示されるケイ素原子(すなわち、多官能性有機ケイ素化合物のシロキサン主鎖)に直接的に(例えば、共有結合を介して)又は間接的に(例えば、二価連結基を介して)結合されてもよい。ある特定の実施形態では、官能性部分Yのアルコキシシリル置換基又はアクリルオキシ置換基は、多官能性有機ケイ素化合物のシロキサン主鎖へと直接結合され、それにより、上記するように、Y自体が、アルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を表す。例えば、いくつかの実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物が以下の一般式:
【化13】
(式中、各R、R、R、D、添字a、及び添字cは、独立して選択され、上記で定義される)を有するように、各官能性部分Yは式-D-Rを有する。より具体的には、各Rは、独立して選択されるアルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を含み、各Dは、独立して選択される二価連結基である。
【0100】
例えば、いくつかのこのような実施形態では、各連結基Dは、式-(CH-(式中、添字mは、1~16、あるいは1~6である)を有する炭化水素部分を含む。これら又は他の実施形態では、各連結基Dは、置換炭化水素を含む。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの連結基Dは、エーテル部分を含む主鎖を有する炭化水素である。各連結基Dは、多官能性有機ケイ素化合物中の任意の他の連結基Dと同じであっても異なっていてもよい(例えば、各官能性部分Yは、任意の他の官能性部分Yと同じ又は異なるDを含んでもよい)。ある特定の実施形態では、各連結基Dは、同じである。他の実施形態では、少なくとも1つの連結基Dは、多官能性有機ケイ素化合物の少なくとも1つの他のDとは異なる。いずれにせよ、多官能性有機ケイ素化合物は2つ又は3つの官能性部分Yを含み、これらは各々、式R-D-を有してもよく、本明細書において単数形の連結基Dへの言及は、多官能性有機ケイ素化合物中の(すなわち、2つ又は3つの官能性部分Yの各々において)1つのみの連結基D又は各連結基Dに適用され得る。
【0101】
上で紹介したように、各Rは、独立して、アルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を含む。これらの基は、特に限定されず、本明細書の全般的及び具体的な例によって例示される。各Rは、多官能性有機ケイ素化合物中の任意の他のRと同じであっても異なっていてもよい(例えば、各官能性部分Yは、任意の他の官能性部分Yと同じ又は異なるRを含んでもよい)。ある特定の実施形態では、各Rは同じである。他の実施形態では、少なくとも1つのRは、多官能性有機ケイ素化合物の少なくとも1つの他のRとは異なる。特定の実施形態では、多官能性有機ケイ素化合物は、少なくとも2つ、あるいは3つの異なるR置換基を含む。いずれにせよ、多官能性有機ケイ素化合物は2つ又は3つの官能性部分Yを含み、これらは各々、式R-D-を有してもよく、本明細書において単数形のRへの言及は、多官能性有機ケイ素化合物中の(すなわち、2つ又は3つの官能性部分Yの各々において)1つのみのRに又は各Rに適用され得る。
【0102】
ある特定の実施形態では、Rは、以下の式:
【化14】
(式中、各R、R、及び添字bは、独立して選択され、上記定義のとおりである)を有する、独立して選択されるアルコキシシリル基である。より具体的には、添字bは、1、2、又は3であり、Rは、添字bにより示される各部分において独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である。これらの実施形態では、アルコキシシリル基Rは、モノ、ジ、又はトリアルコキシシリル基として、すなわち添字bが、それぞれ、1、2、又は3である場合として更に定義され得る。典型的には、アルコキシシリル基Rが、上記の部分式RO-(式中、各Rは、アルコキシシリル基R中の他の任意のRと同じであっても異なっていてもよいよう)によって表される少なくとも2つのアルコキシ基を含むように、添字bは、2又は3である。ある特定の実施形態では、アルコキシシリル基Rが、トリアルコキシシリル、ジアルコキシアルキルシリル、又はアルコキシルジアルキルシリル基として、すなわち添字bが、それぞれ、3、2、又は1であるものとして定義され得るように、各R及びRは、メチル基、エチル基などのアルキル基から独立して選択される。例えば、特定の実施形態では、Rがトリメトキシシリル基である(例えば、式(CHO)Si-である)ように、添字bは3であり、各Rはメチルである。同様に、他の実施形態では、Rがトリエトキシシリル基である(例えば、式(CHCHO)Si-である)ように、添字bは3であり、各Rはエチルである。いくつかの実施形態では、Rがトリメトキシシリル基である(例えば、式(CHCHO)Si-である)ように、添字bは2であり、各Rはメチルであり、Rはメチルである。
【0103】
ある特定の実施形態では、Rは、以下の式:
【化15】
(式中、Rは、上記定義のとおりである)を有する、独立して選択されるアクリルオキシ基である。より具体的には、Rは、H、又は独立して選択されるヒドロカルビル基(例えば、置換又は非置換ヒドロカルビル基、例えば1~4個の炭素原子を有するもの)である。ある特定の実施形態では、アクリルオキシ基Rがアクリレート基として定義され得るように、RはHである。他の実施形態では、アクリルオキシ基Rがアルキルアクリレート基として定義され得るように、Rはアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)である。特定の実施形態では、アクリルオキシ基Rがメタクリレート基として定義され得るように、Rはメチルである。
【0104】
多官能性有機ケイ素化合物の添字cは、2又は3である。したがって、ある特定の実施形態では、添字cは2であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化16】
(式中、各R、R、Y、及び添字bは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。他の実施形態では、添字cは3であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化17】
(式中、各R、Y、及び添字aは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。
【0105】
多官能性有機ケイ素化合物の各添字aは、添字cによって指定される各部分において独立して0、1、又は2である。したがって、当業者であれば、添字cによって示される各部分は、独立して、部分式Y-Si(R)O-(すなわち、モノシロキサン、式中、bは0である)、Y-Si(R)O-Si(R)O-(すなわち、ジシロキサン、式中、bは1である)、又は、Y-Si(R)O-Si(R)O-Si(R)O-(すなわち、トリシロキサン、式中、bは2である)のものであってもよいことを容易に理解するであろう。いずれのそのような場合でも、各Y及びRは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである。
【0106】
例えば、ある特定の実施形態では、添字cによって指定される各部分において、各添字aは0である。いくつかのこのような実施形態では、添字cは2であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化18】
(式中、各R、R、及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。他のこのような実施形態では、添字cは3であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化19】
(式中、各R及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。
【0107】
特定の実施形態では、添字cによって指定される各部分において、各添字aは1である。いくつかのこのような実施形態では、添字cは2であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化20】
(式中、各R、R、及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。他のこのような実施形態では、添字cは3であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化21】
(式中、各R及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。
【0108】
特定の実施形態では、添字cによって指定される各部分において、各添字aは2である。いくつかのこのような実施形態では、添字cは2であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化22】
(式中、各R及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。他のこのような実施形態では、添字cは3であり、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式:
【化23】
(式中、各及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。
【0109】
上記したように、多官能性有機ケイ素化合物の各添字aが同じである必要はなく、代わりに別の添字aと異なっていてもよい。ほんの一例として、式中、添字cが2であり、多官能性有機ケイ素化合物が添字cで示される1つの部分を含み(式中、添字aは0である)、添字cで示される1つの部分を含む(式中、添字aは1である)場合、その結果、多官能性有機ケイ素化合物は、以下の式:
【化24】
(式中、各R、R、及びYは、独立して選択され、本明細書の定義のとおりである)を有する。
【0110】
本方法に従って調製された多官能性有機ケイ素化合物は、例えば、組成物(例えば、硬化性組成物)中の別個の成分として、官能化化合物を調製するための反応の成分として、など多様な最終用途に利用され得る。例えば、多官能性有機ケイ素化合物は、分子当たり少なくとも1つのケイ素結合水素原子(すなわち、ヒドリドシラン化合物(B)から)を含むので、多官能性有機ケイ素化合物はヒドロシリル化反応に利用され得る。したがって、多官能性有機ケイ素化合物は、例えば、ヒドロシリル化触媒の存在下において、少なくとも1つのケイ素結合エチレン性不飽和基を含むポリシロキサンとの反応を介して、官能化シロキサン化合物を調製するために利用され得る。
【0111】
同様に、多官能性有機ケイ素化合物はまた、アルコキシシリル及び/又はアクリルオキシ官能性部分を含むので、多官能性有機ケイ素化合物及びそれを用いて調製された官能化シロキサン化合物は、硬化性組成物中の成分として利用され得る。例えば、多官能性有機ケイ素化合物がアクリルオキシ官能性有機シラノール化合物(A)から調製される場合、多官能性有機ケイ素化合物及びそれを用いて調製される官能化シロキサン化合物は、ヒドロシリル化硬化性組成物中の成分として利用され得る。同様に、多官能性有機ケイ素化合物がアルコキシシリル官能性有機シラノール化合物(A)から調製される場合、多官能性有機ケイ素化合物及びそれを用いて調製される官能化シロキサン化合物は、縮合硬化性組成物中の成分として利用され得る。
【0112】
1つ以上の添加剤と組み合わせる場合、多官能性有機ケイ素化合物及び/又は官能化シロキサン化合物を含む縮合及び/又はヒドロシリル化硬化性組成物は、接着剤組成物中、又は接着剤組成物として利用することができる。そのような接着剤組成物を調製するための好適な添加剤の例としては、充填剤、処理剤(例えば、充填剤処理剤)、架橋剤、接着促進剤、表面改質剤、乾燥剤、増量剤、殺生物剤、難燃剤、可塑剤、末端封鎖剤、結合剤、老化防止剤、水放出剤、顔料、レオロジー変性剤、担体、粘着付与剤、腐食防止剤、触媒阻害剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。以下の簡潔な概要により、ある特定の略語、略記、及び実施例に利用される成分に関する情報が得られる。全ての反応生成物は、NMR(H、13C、及び29Si)並びにGC-FIDによって特定される。
【0114】
有機シラノール化合物(A)
【0115】
「AMAシラノール」は、以下の式を有する有機シラノール化合物である:
【化25】
【0116】
「ETMシラノール」は、以下の式を有する有機シラノール化合物である:
【化26】
多官能性有機ケイ素化合物
【0117】
「二官能性AMA Si-Hコンバータ」は、以下の式を有する多官能性有機ケイ素化合物であり、
【化27】
以下の実施例1及び比較例1で調製される。
【0118】
「三官能性AMA Si-Hコンバータ」は、以下の式を有する多官能性有機ケイ素化合物であり、
【化28】
以下の実施例2で調製される。
【0119】
「二官能性ETM Si-Hコンバータ」は、以下の式を有する多官能性有機ケイ素化合物であり、
【化29】
以下の実施例3で調製される。
【0120】
実施例1:二官能性AMA Si-Hコンバータの調製
【0121】
機械的撹拌機を備えた乾燥ジャケット付き反応器(300mL)に、酢酸ナトリウム(無水;202mmol;1.2当量)及びトルエン(無水;54mL)を充填して、不均一な混合物を得る。これを撹拌(250rpm)しながら窒素雰囲気下において15℃まで冷却し、保持する。ジクロロメチルシラン(101mmol;0.6当量)を、反応器中の混合物に5分間にわたって徐々に添加して、20℃の発熱を起こし、反応性予備混合物を得る。これを30分間撹拌する。次いで、AMAシラノール(167mmol;1当量;トルエン中3.0M)を、反応性予備混合物に30分間にわたって徐々に添加し(速度:1.5mL/分)、その際、反応温度を20℃以下に維持する。得られた反応混合物を15℃で30分間撹拌し、水(33mL)を充填し、次いで10分間撹拌する。得られた混合物を、水(33mL)、炭酸ナトリウム水溶液(3M;33mL)、及びブライン(33mL)で洗浄し、有機物を濃縮して(減圧蒸留)、生成物を透明な粘性液体として得る(二官能性AMA Si-Hコンバータ;49.2g;99%収率;2%残存シラノール(GCMS))。
【0122】
実施例2:三官能性AMA Si-Hコンバータの調製
【0123】
機械的撹拌機を備えた乾燥ジャケット付き反応器(300mL)に、酢酸ナトリウム(無水;193mmol;1.1当量)及びトルエン(無水;58mL)を充填して、不均一な混合物を得る。これを撹拌(250rpm)しながら窒素雰囲気下において15℃まで冷却し、保持する。トリクロロメチルシラン(61.4mmol;0.35当量)を、反応器中の混合物に15分間にわたって徐々に添加して、8℃の発熱を起こし、反応性予備混合物を得る。これを90分間撹拌する。次いで、AMAシラノール(174mmol;1当量;トルエン中3.0M)を、反応性予備混合物に30分間にわたって徐々に添加し(速度:1.5mL/分)、その際、反応温度を22℃以下に維持する。得られた反応混合物を15℃で150分間撹拌し、次いで水(33mL)を充填し、10分間撹拌する。得られた混合物を、水(33mL)、炭酸ナトリウム水溶液(3M;33mL)、及びブライン(33mL)で洗浄し、有機物を濃縮して(減圧蒸留)、生成物を透明な粘性液体として得る(三官能性AMA Si-Hコンバータ;47.5g;96%収率)。
【0124】
実施例3:二官能性ETM Si-Hコンバータの調製
【0125】
撹拌機及び窒素掃引を備えた乾燥反応器に、酢酸ナトリウム(無水、オーブン乾燥;2.6g;31.6mmol;1.26当量)及びトルエン(無水;50mL)を窒素雰囲気下において充填して、不均一混合物を得る。これを氷浴で0℃まで冷却し保持する。次いで、ジクロロメチルシラン(1.2mL;11.5mmol;0.46当量)を、反応器内の混合物に添加して、反応性予備混合物を得る。次いで、ETMシラノール(7.5g;25mmol;1当量)を、15分間にわたって反応性予備混合物に滴下して、反応混合物を得る。これを30分間撹拌し、次いで濾過し、水(50mL)、NaOH(1M);50mL)、及びブライン(50mL)で洗浄する。その後、有機物をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮(ロータリーエバポレータ)し、高真空下にておいて乾燥させて、生成物を得る(二官能性ETM Si-Hコンバータ;4.72g;64%収率)。
【0126】
比較例1:二官能性AMA Si-Hコンバータの調製
【0127】
窒素出口、熱電対、滴下漏斗、及び撹拌棒を備えた二口フラスコ(100mL)に、ジクロロメチルシラン(5mmol;0.5当量)及びジエチルエーテル(20mL)を充填して、溶液を得る。これを氷浴で0℃まで冷却し、保持する。滴下漏斗にAMA-シラノール(2.76g;10mmol;1当量)、ピリジン(0.8mL;10mmol;1当量)及びジエチルエーテル(5mL)を充填し、得られた混合物をフラスコ内の撹拌溶液に滴下して、反応混合物を得る。これは直ちに白色沈殿を形成し、6℃の発熱を起こす。氷浴を取り除き、反応混合物を室温まで加温しながら撹拌する。次いで、反応混合物を濾過(プラスチック製フリット漏斗)して、沈殿物を除去し、濾液を分離漏斗に移す。次いで、有機物を、HCl水溶液(1M;10mL)、飽和NaHCO(10mL)、及びブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し(ロータリーエバポレータ)、透明液体を得る。次いで、これを高真空下において乾燥させて、生成物を得る(二官能性AMA Si-Hコンバータ;2.4g;80%収率;8%残存シラノール(GCMS))。
【0128】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴又は態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、全ての他のマーカッシュメンバーから独立したそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/又は予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュ群の各々の要素は、個々にかつ又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。

【手続補正書】
【提出日】2023-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性有機ケイ素化合物を調製する方法であって、前記方法が、
(A)アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分を含む有機シラノール化合物と、(B)少なくとも2つの加水分解性基を有するヒドリドシラン化合物とを、(C)酢酸塩の存在下において反応させ、それによって、前記多官能性有機ケイ素化合物を調製することを含む、方法。
【請求項2】
前記有機シラノール化合物(A)が、下記一般式:
【化1】
(式中、Yは、アルコキシシリル部分及びアクリルオキシ部分から選択される官能性部分であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、添字aは、0、1、又は2である)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記官能性部分Yが、式R-D-(式中、Rは、アルコキシシリル基又はアクリルオキシ基を含み、Dは、(i)式-(CH-の炭化水素基(式中、添字mは、1~6である)、(ii)エーテル部分、又は(iii)(i)及び(ii)の両方を含む二価連結基である)のものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記官能性部分YのRが、以下の式:
【化2】
(式中、添字bは、1、2、又は3であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である)を有するアルコキシシリル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能性部分YのRが、以下の式:
【化3】
(式中、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基又はHである)を有するアクリルオキシ基である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドリドシラン化合物(B)が、以下の一般式:
【化4】
(式中、各Zは、ハロゲン、アルコキシ基、カルボキシ基、オキシム基、及びアミノオキシ基から独立して選択される加水分解性基であり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、添字cは、2又は3である)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酢酸塩(C)が、一般式[RC(O)O][M](式中、Rは置換又は非置換のメチル基であり、Mはアルカリ金属である)を有する複合体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機シラノール化合物(A)と前記ヒドリドシラン化合物(B)とを前記酢酸塩(C)の存在下において反応させることが、前記ヒドリドシラン化合物(B)と前記酢酸塩(C)とを一緒に合わせて反応性予備混合物を形成することと、続いて、前記反応性予備混合物と前記有機シラノール化合物(A)とを一緒に合わせ、それによって前記多官能性有機ケイ素化合物を調製することと、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応性予備混合物が、前記ヒドリドシラン化合物(B)及び前記酢酸塩(C)からインサイチュで形成されたアセトキシヒドリドシラン中間体を含み、前記有機シラノール化合物(A)が前記アセトキシヒドリドシラン中間体と反応することで、前記多官能性有機ケイ素化合物が得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機シラノール化合物(A)と前記ヒドリドシラン化合物(B)とを前記酢酸塩(C)の存在下において反応させることにより、前記多官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物が得られ、(i)前記反応生成物が、前記有機シラノール化合物(A)のホモ縮合から形成される副生成物を実質的に含まない;(ii)前記反応生成物が、利用される前記有機シラノール化合物(A)の総量に基づいて、5%未満の残留量の前記有機シラノール化合物(A)を含む;(iii)前記方法が、前記反応生成物から前記多官能性有機ケイ素化合物を単離することを更に含む;又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。





【国際調査報告】