(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】ポリエチレン組成物及びポリエチレン組成物を含むフィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
C08F10/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577261
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021016815
(87)【国際公開番号】W WO2022005533
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】サンドキューラー、ペーター ヘルマン ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ビスワス、サンジブ
(72)【発明者】
【氏名】ガレスピー、デイヴィッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】デミロルズ、メフメト
(72)【発明者】
【氏名】ゾグ、マイケル ジェイ.、ジュニア
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100AA19Q
4J100CA03
4J100DA04
4J100DA06
4J100DA09
4J100DA14
4J100DA49
4J100JA58
(57)【要約】
0.910g/cm
3~0.924g/cm
3の密度、及び0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I
2)を有し得、改善されたコモノマー組成物分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲内の第1のポリエチレン画分領域と、溶出プロファイルの80℃~95℃の温度範囲内の第2のポリエチレン画分領域と、溶出プロファイルの95℃~110℃の温度範囲内の第3のポリエチレン画分領域と、を含む、ポリエチレン組成物が開示される。第2のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%を含み得る。第3のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%を含み得る。第1のポリエチレン画分領域の、第2のポリエチレン画分領域に対する比率は、6~15であり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン組成物であって、
改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲内の第1のポリエチレン画分領域と、
ICCD分析法による前記溶出プロファイルの80℃~95℃の温度範囲内の第2のポリエチレン画分領域であって、前記第2のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%を含む、第2のポリエチレン画分領域と、
ICCD分析法による前記溶出プロファイルの95℃~120℃の温度範囲内の第3のポリエチレン画分領域であって、前記第3のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%を含む、第3のポリエチレン画分領域と、を含み、
前記第1のポリエチレン画分領域の、前記第2のポリエチレン画分領域に対する比率は、6~15であり、
前記ポリエチレン組成物は、0.910g/cm
3~0.924g/cm
3の密度、及び0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I
2)を有する、ポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレン組成物は、2.0~5.0の範囲内の、重量平均分子量の数平均分子量に対する比率(Mw/Mn)として表される分子量分布を有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレン組成物は、3~6のゼロ剪断粘度比を有する、請求項1又は2に記載のポリエチレン組成物。
【請求項4】
第1のポリエチレン画分の分子量の、第2のポリエチレン画分の分子量に対する比率は、0.75~1.50である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項5】
第3のポリエチレン画分はピークを含み、50パーセントピーク高さにおける前記ピークの幅は、2℃~10℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項6】
前記第1のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の45%~60%を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項7】
前記第2のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の5%~15%を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項8】
前記第3のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の25%~50%を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項9】
前記ポリエチレン組成物は、500rad/秒につき、0.1rad/秒でDMS周波数スワップ試験方法を使用して測定した場合に、2.0~5.0のタンデルタ比を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレン組成物は、0.1rad/秒及び190℃でDMS周波数スワップ試験方法を使用して測定した場合に、1.0~6.0のタンデルタを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項11】
ポリエチレン組成物であって、
改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲内の第1のポリエチレン画分領域と、
ICCD分析法による前記溶出プロファイルの80℃~95℃の温度範囲内の第2のポリエチレン画分領域であって、前記第2のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%を含む、第2のポリエチレン画分領域と、
ICCD分析法による前記溶出プロファイルの95℃~120℃の温度範囲内の第3のポリエチレン画分領域であって、前記第3のポリエチレン画分領域は、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%を含む、第3のポリエチレン画分領域と、を含み、
前記ポリエチレン組成物は、0.910g/cm
3~0.924g/cm
3の密度、0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I
2)、及び2.0~5.0の範囲内の、重量平均分子量の数平均分子量に対する比率(Mw/Mn)として表される分子量分布を有する、ポリエチレン組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物を含む、フィルム。
【請求項13】
前記フィルムは、単層フィルムである、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムは、多層フィルムである、請求項12に記載のフィルム。
【請求項15】
前記多層フィルムの1つ以上の層は、前記ポリエチレン組成物を含む、請求項14に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2020年6月30日出願の米国特許仮出願第63/046,386号の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に記載の実施形態は、全般的にはポリエチレン組成物に関し、特に当該ポリエチレン組成物を含む多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
多層フィルムは、可撓性パッケージ用途を含むパッケージ用途で使用される。インフレーションフィルム又はキャストフィルムを含み得る単層及び多層ポリマーフィルムが、例えば、ダウンゲージ(すなわち、より薄いフィルム厚を使用すること)、又はポリアミドなどの比較的高額な材料の減少もしくは排除による材料費の削減を可能にしつつ、十分な靭性及び穿刺特性を示すことは有益である。
【発明の概要】
【0004】
異なる触媒系を使用する様々な重合技法が、包装用途に好適なそのようなポリオレフィン組成物を生成するために用いられている。しかしながら、包装用途に好適な組成物を開発する際の研究努力にもかかわらず、望ましいポリマー組成物密度で物理的特性の良好なバランスを有する包装用途に好適な組成物が依然として必要である。また、このバランスを達成するために、従来の方法は、ポリアミドなどの極性材料を組み込む場合があり、これは、他のポリオレフィンを利用する場合と比較して、プロセスの複雑さを増大させ、フィルム構造の複雑さを増大させ、リサイクル不可能な多層フィルムを製造させ、材料コストを増大させる場合がある。
【0005】
したがって、インフレーションフィルム又はキャストフィルムを含み得る単層及び多層ポリマーフィルムが、材料費の削減及び/又は再利用可能性の向上を可能にしつつ靭性を示すことは有益である。顧客及び産業の要件を満たす剛性及び物理的特性(例えば、穿刺特性)を示す多層フィルムが必要とされている。
【0006】
本開示の実施形態は、単層又は多層フィルムにおいて利用される場合に、改善された剛性及び改善された過酷な条件での耐性(abuse property)(例えば、ダート、穿刺エネルギー、引裂)のバランスを提供し得るポリエチレン組成物を提供することによって、これらの必要性を満たす。1つ以上の実施形態において、ポリエチレン組成物は、第1のポリエチレン画分領域、第2のポリエチレン画分領域、及び第3のポリエチレン画分領域を含んでもよく、各画分は、本明細書に記載される溶出プロファイル内の領域を有する。そのようなポリエチレン組成物の使用は、好適な穿刺特性対弾性率の比率を可能にし得る。
【0007】
1つ以上の実施形態によれば、ポリエチレン組成物が提供される。ポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(improved comonomer composition distribution、iCCD)分析法による、溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲内の第1のポリエチレン画分領域と、ICCD分析法による、溶出プロファイルの80℃から95℃の温度範囲内の第2のポリエチレン画分領域と、ICCD分析法による、溶出プロファイルの95℃から120℃の温度範囲内の第3のポリエチレン画分領域と、を含み得る。第2のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%を含み得る。第3のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%を含み得る。第1のポリエチレン画分領域の、第2のポリエチレン画分領域に対する比率は、6~15であり得る。ポリエチレン組成物は、0.910g/cm3~0.924g/cm3の密度、及び0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0008】
1つ以上の実施形態によれば、ポリエチレン組成物が提供される。ポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による、溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲内の第1のポリエチレン画分領域と、ICCD分析法による、溶出プロファイルの80℃~95℃の温度範囲内の第2のポリエチレン画分領域であって、当該溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%を構成する、第2のポリエチレン画分領域と、ICCD分析法による当該溶出プロファイルの95℃~120℃の温度範囲内の第3のポリエチレン画分領域であって、当該溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%を構成する、第3のポリエチレン画分領域と、を含み得る。ポリエチレン組成物は、0.910g/cm3~0.924g/cm3の密度と、0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I2)と、2.0~5.0の範囲内の重量平均分子量の数平均分子量に対する比(Mw/Mn)として表される、分子量分布とを有し得る。
【0009】
1つ以上の追加的な実施形態によれば、フィルムが提供される。そのフィルムは、フィルムの少なくとも1つの層にポリエチレン組成物を含む、単層フィルム又は多層フィルムであってもよい。ポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による、溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲内の第1のポリエチレン画分領域と、ICCD分析法による、溶出プロファイルの80℃から95℃の温度範囲内の第2のポリエチレン画分領域と、ICCD分析法による、溶出プロファイルの95℃から120℃の温度範囲内の第3のポリエチレン画分領域と、を含み得る。第2のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%を含み得る。第3のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%を含み得る。第1のポリエチレン画分領域の、第2のポリエチレン画分領域に対する比率は、6~15であり得る。ポリエチレン組成物は、0.910g/cm3~0.924g/cm3の密度、及び0.1g/10分~0.5g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0010】
これら及び実施形態は、添付の図面と併せて以下の発明を実施するための形態においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特定の実施形態の以下の発明を実施するための形態は、以下の図面と併せて読む場合、最も良く理解され得るが、そこでは、同様の構造が同様の参照数字で示される。
【
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、ポリエチレン組成物の溶出プロファイルを示すグラフである。
【
図2】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、ポリエチレン組成物を生成するのに有用な反応器系を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本出願の特定の実施形態を説明する。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に特許請求された主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0013】
「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指す「ホモポリマー」という用語、並びに2種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」という用語を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、ターポリマーなどの、2種類以上の異なるモノマーから調製された、コポリマー又はポリマーを含む。
【0014】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、50モル%超のエチレンモノマー由来の単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系ホモポリマー又はコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)が含まれる。当該技術分野で既知の一般的な形態のエチレン系ポリマーとしては、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。線状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、超低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、線状低密度樹脂及び実質的に線状低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による線状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ポリプロピレン」又は「プロピレン系ポリマー」という用語は、重合形態で50モル%超のプロピレンモノマーに由来する単位を構成するポリマーを指す。これには、プロピレンホモポリマー、ランダムコポリマーポリプロピレン、インパクトコポリマーポリプロピレン、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、及びプロピレン/α-オレフィンコポリマーが含まれる。
【0017】
「LDPE」という用語は、「高圧エチレンポリマー」又は「高度に分岐したポリエチレン」とも称されることがあり、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用することによって、14,500psi(100MPa)を超える圧力で、オートクレーブ又は管状反応器において、部分的又は完全にホモ重合又は共重合されることを意味するように定義される(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号を参照されたい)。LDPE樹脂は典型的には、0.916g/cm3~0.940g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0018】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、並びにビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、及び拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、並びにビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)を含むが、これに限定されないポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれる。LLDPEは、線状の、実質的に線状の、又は不均一なエチレン系コポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、実質的に線状のエチレンポリマーを含み、これらは、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、及び米国特許第5,733,155号(これらの特許文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に更に定義されており、またLLDPEは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第3,645,992号におけるものなどの、均一に分岐した線状エチレンポリマー組成物を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの、不均一に分岐したエチレンポリマー、及びそれらのブレンド(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,914,342号及び米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)を含む。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相重合、溶液相重合、もしくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0019】
「HDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は置換モノ-もしくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、束縛幾何触媒、ホスフィニミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、0.935g/cm3超~最大約0.980g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0020】
「ULDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は置換モノ-もしくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、束縛幾何触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、0.855g/cm3~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。ULDPEとしては、ポリエチレン(エチレン系)プラストマー及びポリエチレン(エチレン系)エラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレン(エチレン系)エラストマープラストマーは、一般に0.855g/cm3~0.912g/cm3の密度を有する。
【0021】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などという用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で既知の任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層が、ブレンドを含有し得る。そのようなブレンドは、乾燥ブレンドとして調製され得るか、その場で(例えば、反応器内で)溶融ブレンドとして形成されるか、又は当業者に既知の他の技法を使用して形成され得る。
【0022】
「多層構造体」又は「多層フィルム」とは、2つ以上の層を有するあらゆる構造体を意味する。例えば、多層構造体(例えば、フィルム)は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれより多くの層を有し得る。多層構造体は、文字で指定された層を有するものとして説明され得る。例えば、A/B/Cとして指定された3層構造体は、コア層(B)、並びに2つの外層(A)及び(C)を有し得る。
【0023】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、工程、又は手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、任意の以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる」という用語は、具体的に描写又は列記されていない任意の成分、工程、又は手順を除外する。
【0024】
多峰性ポリエチレン組成物及び特性評価
本明細書で使用される場合、本開示のポリエチレン組成物は、「多峰性ポリエチレン組成物」と称され得る。1つ以上の実施形態では、多峰性ポリエチレン組成物は、エチレンとC3~C12アルケンなどのコモノマーとの重合から形成される。想定されるコモノマーには、1-オクテン及び1-ヘキセンなどのC6~C9アルケンが含まれる。1つ以上の実施形態では、コモノマーは1-オクテンである。
【0025】
1つ以上の実施形態において、多峰性ポリエチレン組成物は、ASTM D792に従って測定した場合に、0.910g/cm3~0.924g/cm3の密度を有し得る。実施形態では、本開示の多峰性ポリエチレン組成物は、ASTM D792に従って測定される場合に、0.910g/cm3~0.922g/cm3、0.910g/cm3~0.920g/cm3、0.910g/cm3~0.918g/cm3、0.910g/cm3~0.916g/cm3、0.910g/cm3~0.914g/cm3、0.910g/cm3~0.912g/cm3、0.912g/cm3~0.924g/cm3、0.912g/cm3~0.922g/cm3、0.912g/cm3~0.920g/cm3、0.912g/cm3~0.918g/cm3、0.912g/cm3~0.916g/cm3、0.912g/cm3~0.914g/cm3、0.914g/cm3~0.924g/cm3、0.914g/cm3~0.922g/cm3、0.914g/cm3~0.920g/cm3、0.914g/cm3~0.918g/cm3、0.914g/cm3~0.916g/cm3、0.916g/cm3~0.924g/cm3、0.916g/cm3~0.922g/cm3、0.916g/cm3~0.920g/cm3、0.916g/cm3~0.918g/cm3、0.918g/cm3~0.924g/cm3、0.918g/cm3~0.922g/cm3、0.918g/cm3~0.920g/cm3、0.920g/cm3~0.924g/cm3、0.920g/cm3~0.922g/cm3、0.922g/cm3~0.924g/cm3、又はこれらの範囲の任意の組合せである密度を有し得る。
【0026】
1つ以上の実施形態では、多峰性ポリエチレン組成物は、ASTM D-1238に従って190℃及び2.16kgで測定した場合に、0.1g/10分間(g/10分)~0.5g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。実施形態では、多峰性ポリエチレン組成物は、ASTM D-1238に従って190℃及び2.16 kgで測定した場合に、0.1g/10分~0.4g/10分、0.1g/10分~0.3g/10分、0.1g/10分~0.2g/10分、0.2g/10分~0.5g/10分、0.2g/10分~0.4g/10分、0.2g/10分~0.3g/10分、0.3g/10分~0.5g/10分、0.3g/10分~0.4g/10分、0.4g/10分~0.5g/10分、又はこれらの範囲の任意の組み合わせのメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0027】
実施形態によれば、多峰性ポリエチレン組成物は、2.0~5.0の範囲内の分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)として表されるもの)を有し得る。実施形態では、多峰性ポリエチレン組成物は、2.0~4.5、2.0~4.0、2.0~3.5、2.0~3.0、2.0~2.5、2.5~5.0、2.5~4.5、2.5~4.0、2.5~3.5、2.5~3.0、3.0~5.0、3.0~4.5、3.0~4.0、3.0~3.5、3.5~5.0、3.5~4.5、3.5~4.0、4.0~5.0、4.0~4.5、4.5~5.0、又はこれらの範囲の任意の組み合わせの分子量分布を有し得る。本明細書に記載されるように、分子量分布は、本明細書に記載されるようなゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)技法に従って計算され得る。
【0028】
1つ以上の実施形態によれば、多峰性ポリエチレン組成物は、3.0~6.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。実施形態では、多峰性ポリエチレン組成物は、3.0~5.5、3.0~5.0、3.0~4.5、3.0~4.0、3.0~3.5、3.5~6.0、3.5~5.5、3.5~5.0、3.5~4.5、3.5~4.0、4.0~6.0、4.0~5.5、4.0~5.0、4.0~4.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、5.0~6.0、5.0~5.5、5.5~6.0、又はこれらの範囲の任意の組み合わせのゼロ剪断粘度比を有し得る。
【0029】
追加の実施形態によれば、多峰性ポリエチレン組成物は、例えば4以下、3以下、2以下、又は更には1以下など、5以下のダウレオロジー指数(Dow Rheology Index)を有し得る。
【0030】
1つ以上の実施形態では、本開示の多峰性ポリエチレン組成物は、1つ以上の添加剤などの追加の成分を更に含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、カラーエンハンサ、染料、潤滑剤、TiO2又はCaCO3などの充填剤、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、UV安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。多峰性ポリエチレン組成物は、そのような添加剤を含む多峰性ポリエチレン組成物の重量に基づいて、合わせて0.1~10重量パーセントのそのような添加剤を含有し得る。
【0031】
本明細書に記載されるように、ポリエチレン「画分」とは、多峰性ポリエチレン組成物の組成全体の一部分を指す。本開示の実施形態は、少なくとも、「第1のポリエチレン画分」、「第2のポリエチレン画分」、及び「第3のポリエチレン画分」を含む。多峰性ポリエチレン組成物中に含まれる様々な画分は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析方法によって、溶出プロファイルにおいて、それらの温度範囲ごとに定量化され得る。特に明記されていない限り、本明細書で言及されるいずれの溶出プロファイルも、iCCDによって観察された溶出プロファイルである。そのような画分の例は、本明細書により提供される実施例を考慮してよりよく理解されるであろう。概して、第1の画分は、第1の画分の温度範囲内にピークを含むことができ、第2の画分は、第2の画分の温度範囲内にピークを含むことができ、第3の画分は、第3の画分の温度範囲内にピークを含むことができる。本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物は、「多峰性」と称することができるが、これは、多峰性ポリエチレン組成物が、それらの溶出プロファイルに少なくとも2つのピークを含むことを意味する。いくつかの実施形態は「三峰性」であり得るが、これは3つの主要なピークが存在することを意味する。
【0032】
記載されるiCCD分布を参照すると、
図1は、試料のiCCD分布100を、累積重量分率曲線200とともに概略的に示している。
図1は、画分102及び画分106を含む、iCCDプロファイルのいくつかの特徴を概略的に示している。画分102は、ピーク104を有し、画分106は、ピーク108を有する。各画分は、半ピーク幅110及び112を有する。
図1のプロファイルは、実験又は観察に由来するものではないが、代わりに、iCCD溶出プロファイルの特定の特徴を記載するという情報提供目的で提供されることを理解されたい。
【0033】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される多峰性ポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルの45℃~80℃の温度範囲における面積によって定義される、第1のポリエチレン画分を有し得る。本明細書で用いられる場合に、いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルにおける、45℃~80℃の第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の領域として定義され得る。第1のポリエチレン領域画分は、多峰性ポリエチレン組成物中の、当該ポリマー画分の総相対質量に対応し得る。
【0034】
実施形態では、第1のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて45℃~80℃の温度範囲内に単一ピークを有し得る。本明細書で使用される場合、「単一ピーク」は、特定の画分が単一ピークのみを含むiCCDを指す。すなわち、いくつかの実施形態において、第1のポリエチレン画分のiCCDは、単一ピークを形成するために、上向きの傾斜と、その領域に続く下向きの傾斜領域とのみを含む。1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分の単一ピークは、40℃~75℃など、45℃~80℃の温度範囲内にあり得る。理論に束縛されるものではないが、重合に二重反応器設計が使用される本開示のポリエチレン組成物の少なくともいくつかの実施形態において、より高密度の結晶ドメインと、より低密度の非晶質ドメインと、の組み合わせが存在し得ると考えられている。衝撃強度は、隣接するラメラを接続する非晶質領域又は結合濃度によって、主として制御される。密度が0.910g/cm3未満の場合、相対的な結合鎖濃度は、比較的大きいと推定される。本開示の組成物中の第1のポリマー画分のピークは、45℃~80℃の温度範囲内にあり得るが、これは、改善された靭性などの機能的利益のためにより高い結合鎖濃度を提供することができる。
【0035】
第1のポリエチレン画分におけるピークは、定義された温度境界でのそれぞれのポリエチレン画分における極小値によって形成されない場合があることを理解されたい。つまり、ピークは、ポリエチレン画分のしきい値温度によって形成されたピークではなく、その範囲全体の観点でのピークでなければならない。例えば、単一の谷に続く単一のピークがポリエチレン画分に存在する場合(上向きの傾斜に続く下向きの傾斜に続く上向きの傾斜)、そのようなポリエチレン画分には単一のピークのみが存在することになる。
【0036】
1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも40%(例えば、溶出プロファイルの総面積の少なくとも42%、少なくとも44%、少なくとも46%、少なくとも48%、少なくとも50%、少なくとも52%、又は更には少なくとも54%)を含み得る。例えば、第1のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の40%~65%、例えば、溶出プロファイルの総面積の40%~60%、40%~55%、40%~50%、40%~45%、45%~65%、45%~60%、45%~55%、45%~50%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、55%~65%、55%~60%、又は60%~65%を含み得る。
【0037】
1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分の重量平均分子量は、20,000g/モル~250,000g/モル、又は20,000g/モル~200,000g/モルなど、250,000g/モル以下であり得る。実施形態では、第1のポリエチレン画分の重量平均分子量は、20,000g/モル~250,000g/モル、20,000g/モル~200,000g/モル、20,000g/モル~150,000g/モル、20,000g/モル~100,000g/モル、20,000g/モル~50,000g/モル、50,000g/モル~250,000g/モル、50,000g/モル~200,000g/モル、50,000g/モル~150,000g/モル、50,000g/モル~100,000g/モル、100,000g/モル~250,000g/モル、100,000g/モル~200,000g/モル、100,000g/モル~150,000g/モル、150,000g/モル~250,000g/モル、150,000g/モル~200,000g/モル、200,000g/モル~250,000g/モル、又はこれらの範囲の任意の組み合わせであってもよい。ポリエチレン画分の分子量は、本明細書で後述するように、GPC結果に基づいて計算され得る。
【0038】
1つ以上の実施形態において、多峰性ポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルの80℃~95℃の温度範囲における面積によって定義される、第2のポリエチレン画分を有し得る。本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、第2のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルにおける、80℃~95℃の第2のポリエチレン画分の単一ピークの真下の領域として定義され得る。理論に束縛されるものではないが、第2のポリエチレン画分中のコモノマー分布は、多峰性ポリエチレン組成物がフィルムに押出成形されたときの特性の改善に寄与し得ると考えられる。例えば、そのような改善された特性には、改善された穿刺特性が含まれ得る。
【0039】
第2のポリエチレン領域画分は、多峰性ポリエチレン組成物中の、当該ポリマー画分の総相対質量に対応し得る。1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン画分は、溶出プロファイルにおいて極小値を含み得る。この極小値は、第1のポリエチレン画分のピークと第3のポリエチレン画分のピークとの間に存在し得る。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、第2のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも5%(例えば、溶出プロファイルの総面積の少なくとも6%、少なくとも8%、又は更には少なくとも10%)を含み得る。例えば、第1のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の5%~15%、5%~10%、又は10%~15%を含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、第2のポリエチレン画分領域に対する第1のポリエチレン画分領域の比率は、6~15、6~10、10~15、又はこれらの範囲の任意の組み合わせであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、第2のポリエチレン画分領域の重量平均分子量に対する第1のポリエチレン画分領域の重量平均分子量の比率は、0.75~1.50、0.75~1.25、0.75~1.00、1.00~1.50、1.00~1.25、1.25~1.50、又はこれらの範囲の任意の組み合わせであってもよい。
【0043】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン画分の重量平均分子量は、80,000g/モル~200,000g/モル、又は80,000g/モル~150,000g/モルであり得る。追加の実施形態において、第2のポリエチレン画分の重量平均分子量は、80,000g/モル~200,000g/モル、80,000g/モル~150,000g/モル、80,000g/モル~100,000g/モル、100,000g/モル~200,000g/モル、100,000g/モル~150,000g/モル、150,000g/モル~200,000g/モル、又はこれらの範囲の任意の組み合わせであり得る。ポリエチレン画分の分子量は、本明細書で後述するように、GPC結果に基づいて計算することができる。
【0044】
1つ以上の実施形態において、多峰性ポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルの95℃~120℃の温度範囲における面積によって定義される、第3のポリエチレン画分を有し得る。本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、第3のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルにおける、95℃~120℃の第3のポリエチレン画分の単一ピークの真下の領域として定義され得る。第1のポリエチレン領域画分は、多峰性ポリエチレン組成物中の、当該ポリマー画分の総相対質量に対応し得る。
【0045】
1つ以上の実施形態において、第3のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて95℃~120℃の温度範囲内に単一ピークを有し得る。第3のポリエチレン画分におけるピークは、定義された温度境界でのそれぞれのポリエチレン画分における極小値によって形成されない場合があることを理解されたい。つまり、ピークは、ポリエチレン画分のしきい値温度によって形成されたピークではなく、その範囲全体の観点でのピークでなければならない。例えば、単一の谷に続く単一のピークがポリエチレン画分に存在する場合(上向きの傾斜に続く下向きの傾斜に続く上向きの傾斜)、そのようなポリエチレン画分には単一のピークのみが存在することになる。第3のポリエチレン画分の温度範囲として、95℃~120℃の範囲が望ましい場合があるが、これは、95℃~120℃での、低分子量の高密度成分により、ポリエチレンは、より低密度の画分を維持しながら、より高い全体密度を達成することができるためである。
【0046】
1つ以上の実施形態において、第3のポリエチレン画分の単一ピークの、50パーセントピーク高さでの幅は、2℃~10℃、2℃~8℃、2℃~6℃、2℃~4℃、4℃~10℃、4℃~8℃、4℃~6℃、6℃~10℃、6℃~8℃、又は8℃~10℃であり得る。一般に、50パーセントのピーク高さで温度範囲がより小さいということは、「より鋭い」ピークに対応する。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、「より鋭い」又は「より狭い」ピークは、分子触媒によって引き起こされる特徴であり、第1のポリエチレン画分と、第3のポリエチレン画分との間へのより高密度の分割を可能にする、より高密度の画分への最小のコモノマー組み込みを示すと考えられている。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、第3のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%(例えば、溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%、少なくとも35%、又は更には少なくとも40%)を含み得る。例えば、第1のポリエチレン画分領域は、溶出プロファイルの総面積の25%~50%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、25%~30%、30%~50%、30%~45%、30%~40%、30%~35%、35%~50%、35%~45%、35%~40%、40%~50%、40%~45%、又は45%~50%を含み得る。
【0048】
1つ以上の実施形態において、第3のポリエチレン画分の重量平均分子量は、例えば、20,000g/モル~120,000g/モル、又は40,000g/モル~65,000g/モルなど、120,000g/モル以下であり得る。追加の実施形態では、第3のポリエチレン画分の重量平均分子量は、20,000g/モル~40,000g/モル、40,000g/モル~60,000g/モル、60,000g/モル~80,000g/モル、80,000g/モル~100,000g/モル、100,000g/モル~120,000g/モル、又はこれらの範囲の任意の組み合わせであり得る。ポリエチレン画分の分子量は、以下に記載するように、GPCの結果に基づいて計算することができる。
【0049】
1つ以上の実施形態によれば、第2のポリエチレン画分の単一ピークと第1のポリエチレン画分の単一ピークとの差は、少なくとも5℃であり得る。例えば、第2のポリエチレン画分の単一ピークと第1のポリエチレン画分の単一ピークとの間の差は、少なくとも6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、14℃、16℃、18℃、又は更には少なくとも20℃であり得る。
【0050】
重合
本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を生成するためには、任意の従来の重合プロセスを用いてもよい。そのような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、撹拌槽反応器、並列式の、連続式のバッチ反応器、及び/又はそれらの任意の組み合わせを使用する、スラリー重合プロセス、溶液重合プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。多峰性ポリエチレン組成物は、例えば、1つ以上のループ反応器、等温反応器、及びこれらの組み合わせを使用する、溶液相重合プロセスを介して生成され得る。
【0051】
一般に、溶液相重合プロセスは、115~250℃の範囲の温度(例えば、115~210℃)、及び300~1,000psiの範囲の圧力(例えば、400~800psi)で、1つ以上の等温ループ反応器又は1つ以上の断熱反応器などの1つ以上のよく撹拌された反応器中で行われ得る。いくつかの実施形態において、二重反応器では、第1の反応器内の温度は、115~190℃(例えば、160~180℃)の範囲内にあり、第2の反応器の温度は、150~250℃(例えば、180~220℃)の範囲内にある。実施形態では、単一反応器において、反応器の温度は、115~250℃(例えば、115~225℃)の範囲内である。
【0052】
溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、2~30分(例えば5~25分)の範囲内にあり得る。エチレン、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、任意選択的に1つ以上の助触媒、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.(テキサス州ヒューストン)からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、多峰性ポリエチレン組成物と溶媒との得られた混合物が、反応器から取り出され、多峰性ポリエチレン組成物が単離される。溶媒は、典型的には、溶媒回収ユニット、例えば熱交換器及び気液分離器ドラムを介して回収され、次いで、重合系に再循環される。
【0053】
いくつかの実施形態において、多峰性ポリエチレン組成物は、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系内で、溶液重合を介して生成することができ、ここで、エチレンは、1つ以上の触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。加えて、1つ以上の助触媒が存在し得る。別の実施形態において、多峰性ポリエチレン組成物は、単一の反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、2つの触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。
【0054】
触媒系
本明細書に記載される多峰性ポリエチレン組成物を生成するために、1つ以上の実施形態で使用され得る触媒系の、具体的な実施形態が、ここに記載される。本開示の触媒系は、異なる形態で具現化され得、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0055】
「独立して選択される」という用語は、R1、R2、R3、R4、及びR5などのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R1、R2、R3、R4、及びR5が、全て置換アルキルであるか、又はR1及びR2が、置換アルキルであり、R3が、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は複数のヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を、補足し例示することを意図するものであり、排除するものではない。
【0056】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「助触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0057】
特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(Cx~Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態が、x及びyを含むx個の炭素原子~y個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C40)アルキルは、その非置換形態において、1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基のRS置換版は、任意の基RSがどのようなものであるかに応じて、y個を超える炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である、正確に1つの基RSで置換された(C1~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基が、1個以上の炭素原子含有置換基RSによって置換される場合、化学基の炭素原子の最小及び最大総数は、xとyとの両方に、全ての炭素原子含有置換基RS由来の炭素原子の総数を加えることによって、決定される。
【0058】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置換されることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物もしくは官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個の、但し全てよりは少ない水素原子が、置換基によって置き換えられることを意味する。
【0059】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合した水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、互換性があり、明記されていない限り同じものを意味する。
【0060】
「(C1~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、二環式を含む縮合及び非縮合多環式、3個以上の炭素原子を含む)又は非環式であり、非置換であるか、もしくは1つ以上のRSによって置換されている。
【0061】
本開示において、(C1~C40)ヒドロカルビルは、非置換もしくは置換(C1~C40)アルキル、(C3~C40)シクロアルキル、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C6~C40)アリール、又は(C6~C20)アリール-(C1~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態では、前述の(C1~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子を有し(すなわち、(C1~C20)ヒドロカルビル)、実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0062】
「(C1~C40)アルキル」及び「(C1~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている1~40個の炭素原子又は1~18個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C1~C40)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C1~C5)アルキルである1つのRSによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C1~C5)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0063】
「(C6~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換又は置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子が芳香環炭素原子で、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ1、2又は3個の環を含み、式中、単環は芳香族であり、2個又は3個の環は独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個のうちの少なくとも1つは芳香族である。非置換(C6~C40)アリールの例は、非置換(C6~C20)アリール、非置換(C6~C18)アリール、2-(C1~C5)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C1~C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンが挙げられる。置換(C6~C40)アリールの例は、置換(C1~C20)アリール、置換(C6~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0064】
「(C3~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換、又は1つ以上のRSで置換された、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(Cx~Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0065】
(C1~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換又は置換の(C6~C40)アリーレン、(C3~C40)シクロアルキレン、及び(C1~C40)アルキレン(例えば、(C1~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH2-)、又は隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、又は1個、2個、又は3個以上の介在する炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれの1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。一部のジラジカルには、α,ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0066】
「(C1~C40)アルキレン」という用語は、非置換、又は1つ以上のRSによって置換された、1~40個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にはない)を意味する。非置換(C1~C50)アルキレンの例は、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、及び-(CH2)4C*(H)(CH3)を含む、非置換(C1~C20)アルキレンであり、式中、「C*」は、水素原子が除去されて、二級又は三級アルキルラジカルを形成している炭素原子を示す。置換(C1~C50)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、及び-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRSは、一緒になって、(C1~C18)アルキレンを形成し得るため、置換(C1~C50)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0067】
「(C3~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換、又は1つ以上のRSによって置換された3~40個の炭素原子の環状ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にある)を意味する。
【0068】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。ヘテロ原子の例としては、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、P(RP)、N(RN)、-N=C(RC)2、-Ge(RC)2-、又は-Si(RC)-が挙げられ、各RC、各RN、及び各RPは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子又はヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1個又は2個の炭素原子、(2)1個又は2個のヘテロ原子、又は(3)1つの炭素原子及び1つのヘテロ原子上に存在し得る。各(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換又は(1つ以上のRSによって)置換され得るが、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であり得る。
【0069】
(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換又は置換(C1~C40)ヘテロアルキル、(C1~C40)ヒドロカルビル-O-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-N(RN)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2~C40)ヘテロシクロアルキル、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C19)ヘテロアルキレン、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)ヘテロアルキレン、(C1~C40)ヘテロアリール、(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)アルキレン、(C6~C20)アリール-(C1~C19)ヘテロアルキレン、又は(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)ヘテロアルキレンであり得る。
【0070】
「(C4~C40)ヘテロアリール」という用語は、4~40個の総炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の非置換又は置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ、1、2、又は3個の環を含み、2又は3個の環は、独立して、縮合又は非縮合であり、2又は3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(C4~C12)ヘテロアリールなどの(Cx~Cy)ヘテロアリール全般)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換であるか、又は1個又は2個以上のRSで置換されているものとして、同様の様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、又は3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であり得、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0071】
前述のヘテロアルキルは、(C1~C50)の炭素原子、又はより少ない炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ラジカルであり得る。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子及び1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されたようなヘテロ原子は、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、及びS(O)2を含んでもよく、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換される。
【0072】
非置換(C2~C40)ヘテロシクロアルキルの例は、非置換(C2~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルである。
【0073】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、又はヨウ化物(I-)といったハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0074】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基RS中に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を含有すること、ただし、存在するとしたら置換基RS中に存在し得るか、又は存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得るような任意の二重結合は含まないことを意味する。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、ポリエチレン組成物を生成するための触媒系は、下式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0076】
【0077】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属であり、金属は、+2、+3、又は+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、2又は3である。nが0であり、かつXが存在しない場合、又は各々のゼロではないnについて、各Xは独立して、中性、モノアニオン性、又はジアニオン性である単座配位子であるか;又は2つのXは、一体となって、中性、モノアニオン性、又はジアニオン性である、二座配位子を形成する。nが1である場合、Xは、単座配位子又は二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じであるか又は異なっており、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(RN)-、又は-P(RP)-から選択され、Lは、(C1~C40)ヒドロカルビレン又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C1~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の炭素原子~10個の炭素原子のリンカー骨格を含む部分(これにLが結合している)を有するか、又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の原子~10個の原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1個の原子~10個の原子のリンカー骨格の1~10個の原子の各々は、独立して、炭素原子又はヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RC)、又はN(RC)であり、各RCは、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル又は(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、R1及びR8は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、及び式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0078】
【0079】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、又はR51~59の各々は、独立して、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、N=CHRC、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、又は-Hから選択され、ただし、R1又はR8のうちの少なくとも一方が、式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルであることを条件とする。
【0080】
式(I)において、R2~4、R5~7、及びR9~16の各々は、独立して、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-N=CHRC、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、及び-Hから選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、多峰性ポリエチレン組成物は、第1の反応器内で式(I)による第1の触媒、及び第2の反応器内で式(I)による異なる触媒を使用して形成される。
【0082】
直列二重反応器構成が使用される1つの例示的な実施形態では、連続撹拌槽型反応器(continuously stirred tank reactor、CSTR)などの第1の反応器で使用されるプロ触媒は、ハフニウム金属中心(M)を含むことができ、構造は以下の構造(V)に示される。
【0083】
【0084】
このような実施形態では、ループ反応器などの第2の反応器で使用されるプロ触媒は、ハフニウム金属中心(M)を含むことができ、その構造は以下の構造(VI)で示される。
【0085】
【0086】
共触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含む系は、錯体を活性化助触媒と接触させるか、又は錯体を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性化され得る。本明細書で使用するのに好適な活性化助触媒としては、アルキルアルミニウム、ポリマー又はオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている);中性ルイス酸、及び非ポリマー、非配位性、イオン形成化合物(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)が挙げられる。好適な活性化技法は、バルク電気分解である。前述の活性化助触媒及び技法のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム変性メチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0087】
ルイス酸活性化剤(助触媒)としては、本明細書に記載されるような、1~3個の(C1~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物が挙げられる。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-置換-アルミニウム又はトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C1~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、及びこれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。更なる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化助触媒は、トリス((C1~C20)ヒドロカルビルボレート(例えばトリチルテトラフルオロボレート)又はトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C1~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C1~C20)ヒドロカルビル)4N+、((C1~C20)ヒドロカルビル)3N(H)+、((C1~C20)ヒドロカルビル)2N(H)2
+、(C1~C20)ヒドロカルビルN(H)3
+、又はN(H)4
+である窒素カチオンを意味し、各(C1~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0088】
中性ルイス酸活性化材(助触媒)の組み合わせとしては、トリ((C1~C4)アルキル)アルミニウムと、ハロゲン化トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマー又はオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、及び単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマー又はオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば、4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモル数の比は、1:1:1~1:10:30、又は実施形態では、1:1:1.5~1:5:10である。
【0089】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成性助触媒、強ルイス酸、又はこれらの組み合わせを組み合わせることによって、活性触媒組成物を形成し得る。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成性の化合物が挙げられる。好適な助触媒の例としては、変性メチルアルミノキサン(modified methyl aluminoxane、MMAO)、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、前述の活性化共触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C1~C4)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C1~C4)ヒドロカルビル)ボラン、又はホウ酸アンモニウムとオリゴマーもしくはポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数の1つ以上の活性化助触媒の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、いくつかの実施形態では少なくとも1:1000、及び10:1以下であり、更にいくつかの実施形態では、1:1以下である。アルモキサンを単独で活性化助触媒として使用する場合、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍であることが好ましい。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化助触媒として使用するとき、いくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数は、0.5:1~10:1、1:1~6:1、又は1:1~5:1である。残りの活性化助触媒は、概ね、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0091】
多層フィルム
ここで、本明細書に記載の多層フィルムの実施形態を参照する。
【0092】
本開示の多層フィルムは、少なくとも2個の層、更には3個、4個、5個、6個、7個、9個、11個、13個以上もの層を含み得る。多層フィルムの層の数は、例えば、多層フィルムの各層の組成、多層フィルムの所望の特性、多層フィルムの所望の最終用途、多層フィルムの製造プロセスなどを含む多数の因子に依存し得る。本明細書により詳細に記載されるように、多層フィルムの実施形態は、本開示に後述の第1の層、本開示に後述の第2の層、及び本開示に後述の1つ以上のサブスキン層を含み得る。第1の層、第2の層、又はその両方は、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含んでもよい。
【0093】
多層フィルムは、A/Bと称される2層フィルムであってもよく、第1の層は(A)と称されてもよく、第2の層は(B)と称されてもよい。本明細書で使用される場合、「直接接触」とは、互いに直接接触している2つの層の間に配置されたいかなる他の層もない可能性があることを意味する。実施形態では、第1の層(A)が、第2の層(B)と直接接触し得る。
【0094】
実施形態では、多層フィルムは、A/B/Cと称される3層フィルムであってもよく、第1の層は(A)と称されてもよく、第2の層は(B)と称されてもよく、第3の層は(C)と称されてもよい。実施形態では、第2の層(B)は、第1の層(A)と第3の層(C)との間に位置付けられてもよく、第2の層(B)は、「中間層」又は「コア層」と称されてもよい。実施形態では、第1の層(A)及び第3の層(C)の一方又は両方が、多層フィルムの最外層であり得るが、それらは「外層」と呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、多層フィルムの最外層は、最外層が周囲の空気と直接接触するように、最外層上に堆積された別の層がない可能性があることを意味すると理解され得る。実施形態では、第1の層(A)が、第2の層(B)と直接接触し得る。実施形態では、第2の層(B)が、第3の層(C)と直接接触し得る。
【0095】
実施形態では、多層フィルムは、外層及びコア層に加えて、1つ以上の層を含んでもよい。そのような追加の層としては、ポリエチレンを含む追加の層が挙げられ、そのようなポリエチレンを含む追加の層は、本明細書に記載される多峰性ポリエチレン組成物を含んでいても、又は、実施形態では、本明細書に記載される多峰性ポリエチレン組成物を含んでいなくてもよい。1つ以上の実施形態では、追加のポリエチレン層は、LLDPE、LDPE、MDPE、HDPE、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物、及びそれらの組み合わせのブレンドを含み得る。様々なポリエチレン成分(例えば、LLDPE、LDPE、HDPE、及び本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物)が、達成されるべき多層フィルムの特性に従って所望される任意の量で、追加のポリエチレン層に含まれ得る。そのような追加の層は、代替的又は追加的に、1つ以上の追加の結合層を含み得る。
【0096】
前述のいずれの層も、当業者に既知の1つ以上の添加剤、例えば、可塑剤、粘度安定剤を含む安定剤、加水分解安定剤、一次及び二次酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、又は他の着色剤、無機充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維及びフレークなどの強化剤、合成(例えば、アラミド)繊維又はパルプ、フォーミング剤又は発泡剤、加工助剤、スリップ添加剤、シリカ又はタルクなどの粘着防止剤、剥離剤、粘着付与樹脂、又はそれらの2つ以上の組み合わせなどを更に含んでもよいと理解されたい。炭酸カルシウムなどの無機充填剤及びその類似体も、第1の層、第2の層、第3の層、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、スキン層、サブスキン層、結合層、バリア層、及び組み合わせが、それぞれ、各々の層の総重量に基づいて、最大5重量パーセントの上記のような追加の添加剤を含み得る。0重量%~5重量%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、本明細書で開示され、例えば、第1の層、第2の層、又は第3の層における添加剤の総量は、それぞれの層の総重量に基づいて、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~4重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、0.5重量%~1重量%、1重量%~5重量%、1重量%~4重量%、1重量%~3重量%、1重量%~2重量%、2重量%~5重量%、2重量%~4重量%、2重量%~3重量%、3重量%~5重量%、3重量%~4重量%、又は4重量%~5重量%であり得る。添加剤の組み込みは、例えば、乾式ブレンド、様々な構成成分の混合物の押出し、従来のマスターバッチ技術などの任意の既知のプロセスによって行うことができる。
【0097】
本開示の多層フィルムは、様々な厚さを有し得る。多層フィルムの厚さは、例えば、多層フィルムの層の数、多層フィルムの層の組成、多層フィルムの所望の特性、フィルムの所望の最終用途、多層フィルムの製造プロセスなどを含む多数の要因に依存し得る。実施形態では、多層フィルムは、205マイクロメートル(μm又はミクロン)未満の厚さを有し得る。実施形態では、多層フィルムは、15μm~205μm、20μm~180μm、15μm~180μm、15μm~160μm、15μm~140μm、15μm~120μm、15μm~100μm、15μm~80μm、15μm~60μm、15μm~40μm、20μm~160μm、20μm~140μm、20μm~120μm、20μm~100μm、20μm~80μm、20μm~60μm、又は20μm~40μmの厚さを有し得る。
【0098】
本開示の多層フィルムは、例えば、多層フィルムの層の数、多層フィルムの層の組成、多層フィルムの所望の特性、フィルムの所望の最終用途、多層フィルムの製造プロセスなどを含む多数の要因に依存する全体密度を有し得る。実施形態では、多層フィルムは、1立方センチメートル当たり少なくとも0.925グラム(g/cm3)の全体密度を有し得る。実施形態では、多層フィルムの全体密度は、0.925g/cm3~0.970g/cm3、0.925g/cm3~0.940g/cm3、0.925g/cm3~0.935g/cm3、0.925g/cm3~0.930g/cm3、0.930g/cm3~0.940g/cm3、0.930g/cm3~0.935g/cm3、0.935g/cm3~0.940g/cm3、又は0.935g/cm3~0.950g/cm3であり得る。
【0099】
1つ以上の実施形態では、本開示の多層フィルムは、ASTM D 5748-95に従って測定したときに、1μmのフィルム当たり少なくとも1ニュートン(N/μm)の穿刺力を有し得る。実施形態では、本開示の多層フィルムは、ASTM D 5748-95に従って測定した場合に、1N/μm~1.5N/μm、1N~1.25N/μm、又は1.25N/μm~1.5N/μmの穿刺力を有し得る。
【0100】
1つ以上の実施形態において、本開示の多層フィルムは、ASTM D 5748-95に従って測定した場合に、1立方センチメートル当たり10ジュール(J/cm3)を超える穿刺抵抗を有し得る。実施形態では、本開示の多層フィルムは、ASTM D 5748-95に従って測定した場合に、8J/cm3を超える、又は10J/cm3を超える穿刺抵抗を有し得る。
【0101】
本開示の多層フィルムは、ASTM D 5748-95に従って測定したときに、少なくとも55ミリメートル(mm)の穿刺伸びを有し得る。実施形態では、本開示の多層フィルムは、ASTM D 5748-95に従って測定した場合に、55mm~150mm、55mm~100mm、55mm~80mm、55mm~60mm、60mm~150mm、60mm~100mm、60mm~80mm、又は80mm~100mmの穿刺伸びを有し得る。
【0102】
外層
前述のように、本開示の多層フィルムは、1つ以上の外層を含み得る。多層フィルムの最外層(「外層と呼ばれる場合もあり得る」)は、最外層が周囲の空気と直接接触するように、最外層上に堆積された別の層がない可能性があることを意味すると理解され得る。外層は、伸び、加工性などを助ける特性を多層フィルムに与え得る。外層は、スキン層と称されることもある。実施形態では、第1の層(A)及び第3の層(C)の一方又は両方が、多層フィルムの最外層であり得るが、それらは、「外層」と呼ばれ得る。
【0103】
外層にはシーラント層が含まれ得る。シーラント層は、一般に、フィルムを他のフィルム、剛性材料(例えば、トレイ)、又はそれ自体に接着するために使用され得るフィルムの外層である。当業者は、本明細書の教えに基づいて、様々な実施形態において、様々なオレフィン系ポリマーがシーラント層として使用され得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、再利用可能性を促進するために、ポリエチレンが各シーラント層の主成分であり得る。シーラント層として使用され得る樹脂の1つの非限定的な例は、いくつかの実施形態によれば、SEALUTION(商標)220である。シーラント層を形成するために使用され得る他の樹脂には、これらに限定されないが、The Dow Chemical Companyから市販されているAFFINITY(商標)樹脂、ELITE AT(商標)樹脂、及びELITE(商標)樹脂が含まれる。
【0104】
実施形態では、少なくとも1つの外層は、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。実施形態では、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含む外層は、0.870g/cm3~0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンとブレンドされ得る。実施形態では、少なくとも1つの外層が、それぞれの層の総重量に基づいて、20重量%を超える、本明細書に以下に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。1つ以上の実施形態では、各外層が、それぞれの層の総重量に基づいて、20重量%を超える、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、各外層は、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~100重量%、30重量%~100重量%、50重量%~80重量%、50重量%~60重量%、60重量%~100重量%、60重量%~80重量%、又は80重量%~100重量%の、本明細に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含まない外層は、0.870g/cm3~0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンを含み得る。実施形態では、各外層は、LLDPE、HDPE、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物、MDPE、LDPE、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0105】
1つ以上の実施形態では、各外層は、ASTM D792に従って測定したときに、0.905g/cm3~0.930g/cm3の密度を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み得る。別の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.905g/cm3~0.925g/cm3、0.905g/cm3~0.920g/cm3、0.905g/cm3~0.915g/cm3、0.905g/cm3~0.910g/cm3、0.910g/cm3~0.930g/cm3、0.910g/cm3~0.925g/cm3、0.910g/cm3~0.920g/cm3、0.910g/cm3~0.915g/cm3、0.915g/cm3~0.930g/cm3、0.915g/cm3~0.925g/cm3、0.915g/cm3~0.920g/cm3、0.920g/cm3~0.930g/cm3、0.920g/cm3~0.925g/cm3、0.925g/cm3~0.930g/cm3であり得る。
【0106】
1つ以上の実施形態では、各外層は、ASTM D1238に従って測定したときに、10分当たり0.2グラム(g/10分)~6.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み得る。線状低密度ポリエチレンのメルトインデックス(I2)が、0.2g/10分~5.5g/10分、0.2g/10分~5.0g/10分、0.2g/10分~4.5g/10分、0.5g/10分~4.0g/10分、0.5g/10分~3.5g/10分、0.5g/10分~3.0g/10分、1.0g/10分~2.0g/10分、1.0g/10分~1.5g/10分、又は1.5g/10分~2.0g/10分であり得ることも企図される。
【0107】
実施形態によれば、線状低密度ポリエチレンは、重量平均分子量対数平均分子量の比率(Mw/Mn)として表される、3.5~5.5の範囲の分子量分布を有し得る。追加の実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、3.5~4.5又は4.5~5.5の範囲の分子量分布を有し得る。
【0108】
1つ以上の追加の実施形態によれば、線状低密度ポリエチレンは、本明細書に記載の試験方法に従って測定したときに、1.2~3.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、1.2~2.5、1.2~2.0、2.0~3.0、2.0~2.5、又は2.5~3.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。
【0109】
線状低密度ポリエチレンの製造について、様々な方法論が企図される。例えば、線状低密度ポリエチレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒系、ビスメタロセン触媒及び束縛幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、ポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂を使用して作製され得る。線状低密度ポリエチレン樹脂には、線状の、実質的に線状の、又は不均一な、ポリエチレンコポリマー又はホモポリマーが含まれ得る。線状低密度ポリエチレン樹脂は、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有してもよく、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、及び米国特許第5,733,155号において更に定義される、実質的に線状のポリエチレン、米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した線状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質分岐状エチレンポリマー、及びそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)を含む。線状低密度ポリエチレン樹脂は、当該技術分野において既知である任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、もしくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0110】
1つ以上の実施形態では、各外層が、それぞれの層の総重量に基づいて、50重量%を超える線状低密度ポリエチレンを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の層、第3の層、又は両方は、それぞれの層の総重量に基づいて、50重量%~100重量%、50重量%~80重量%、50重量%~60重量%、60重量%~100重量%、60重量%~80重量%、又は80重量%~100重量%のLLDPEを含み得る。
【0111】
実施形態では、各外層は、ASTM D792に従って測定したときに、0.935g/cm3~最大0.980g/cm3の密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を含み得る。別の実施形態では、高密度ポリエチレンの密度は、0.935g/cm3~0.970g/cm3、0.935g/cm3~0.960g/cm3、0.935g/cm3~0.950g/cm3、0.935g/cm3~0.940g/cm3、0.940g/cm3~0.980g/cm3、0.940g/cm3~0.970g/cm3、0.940g/cm3~0.960g/cm3、0.940g/cm3~0.950g/cm3、0.950g/cm3~0.980g/cm3、0.950g/cm3~0.970g/cm3、0.950g/cm3~0.960g/cm3、0.960g/cm3~0.980g/cm3、0.960g/cm3~0.970g/cm3、0.970g/cm3~0.980g/cm3であり得る。
【0112】
1つ以上の実施形態では、各外層は、2.16kgの負荷及び190℃の温度でASTM D1238に従って測定したときに、10分当たり0.1グラム(g/10分)~10.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有する高密度ポリエチレンを含み得る。高密度ポリエチレンのメルトインデックス(I2)が、0.1g/10分~5.0g/10分、0.1g/10分~1.0g/10分、1.0g/10分~10.0g/10分、1.0g/10分~5.0g/10分、又は5.0g/10分~10.0g/10分であり得ることも企図される。
【0113】
高密度ポリエチレンの製造について、様々な方法論が企図される。例えば、高密度ポリエチレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒系、クロム触媒、又はビスメタロセン触媒及び束縛幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され得る。
【0114】
1つ以上の実施形態では、各外層が、それぞれの層の総重量に基づいて、最大50重量%の高密度ポリエチレンを含み得る。いくつかの実施形態では、各外層は、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~90重量%、15重量%~80重量%、15重量%~50重量%、20重量%~50重量%、30重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%の高密度ポリエチレンを含み得る。
【0115】
1つ以上の実施形態において、各外層は、MDPEを含んでもよい。「MDPE」という用語は、単独で使用される場合、0.917~0.936g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。MDPEは、典型的には、クロム若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又は置換モノ-若しくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される。MDPEは、1つ以上の外層で使用され得るということに留意されたい。
【0116】
1つ以上の実施形態では、各外層が、それぞれの層の総重量に基づいて、最大50重量%のMDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、各外層は、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~90重量%、15重量%~80重量%、15重量%~50重量%、20重量%~50重量%、30重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%のMDPEを含み得る。
【0117】
実施形態では、各外層は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み得る。1つ以上の実施形態では、低密度ポリエチレンは、2.16kgの負荷及び190℃の温度でASTM D1238に従って測定したときに、0.1g/10分~10.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。実施形態では、低密度ポリエチレンは、0.1g/10分~5.0g/10分、又は0.5g/10分~5.0g/10分、又は0.5g/10分~2.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。実施形態では、低密度ポリエチレンは、ASTM D792に従って測定したときに、0.916g/cm3~0.935g/cm3の密度を有し得る。別の実施形態では、低密度ポリエチレンは、0.916g/cm3~0.925g/cm3の密度を有し得る。
【0118】
1つ以上の実施形態では、各外層が、それぞれの層の総重量に基づいて、50重量%未満の低密度ポリエチレンを含み得る。いくつかの実施形態では、各外層は、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~50重量%、0重量%~40重量%、0重量%~35重量%、5重量%~35重量%、10重量%~35重量%、又は15重量%~35重量%の低密度ポリエチレンを含み得る。
【0119】
実施形態では、本開示の多層フィルムの外層は、様々な厚さを有し得る。各外層の厚さは、例えば、各外層の組成、多層フィルムの所望の加工性特性などを含む多くの要因に依存し得る。実施形態では、各外層は、1マイクロメートル(μm又はミクロン)~40μmの厚さを有し得る。実施形態では、各外層は、1μm~40μm、1μm~30μm、1μm~20μm、1μm~10μm、10μm~40μm、10μm~30μm、10μm~20μm、20μm~40μm、20μm~30μm、又は30μm~40μmの厚さを有し得る。
【0120】
本明細書で開示された多層フィルムの各外層の厚さは、多層フィルムの総厚の5%~20%を構成し得る。いくつかの実施形態では、各外層の厚さは、多層フィルムの総厚の5%~15%、5%~10%、10%~20%、10%~15%、又は15%~20%を構成し得る。
【0121】
サブスキン層
前述のように、本開示の多層フィルムは、1つ以上のサブスキン層を含み得る。本明細書で使用される場合、サブスキン層は、多層フィルムの外層と外層との間に位置付けられた層を指し得る。本明細書で使用される場合、多層フィルムの中心サブスキン層は、「中間層」又は「コア層」と称され得る。様々な実施形態において、各サブスキン層は、従来の多層フィルムと比較して、多層フィルムに改善されたダート及び穿刺特性を与える1つ以上の材料を含み得る。
【0122】
複数のサブスキン層を含む実施形態では、各サブスキン層が、同じ材料を含み得るか、又は各サブスキン層が異なる材料を含み得る。例えば、A/B/C/D/Eとして指定された5層フィルムでは、層(B)及び層(D)は、同じ材料又は異なる材料を含み得る。A/B/C/D/E/F/Gとして指定された7層フィルムでは、層(B)、層(C)、層(E)、及び層(F)のうちの1つ以上が、同じ材料又は異なる材料を含み得る。A/B/C/D/E/F/G/H/Iとして指定された9層フィルムでは、層(B)、層(C)、層(G)、及び層(H)のうちの1つ以上が、同じ材料又は異なる材料を含み得る。
【0123】
実施形態では、少なくとも1つのサブスキン層は、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。実施形態では、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含むサブスキン層は、0.870g/cm3~0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンとブレンドされ得る。実施形態では、少なくとも1つのサブスキン層が、それぞれの層の総重量に基づいて、20重量%を超える本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。1つ以上の実施形態では、各サブスキン層が、それぞれの層の総重量に基づいて、20重量%を超える本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、各サブスキン層は、それぞれの層の総重量に基づいて、30重量%~100重量%、50重量%~80重量%、50重量%~60重量%、60重量%~100重量%、60重量%~80重量%、又は80重量%~100重量%の、本明細に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含み得る。
【0124】
実施形態では、各サブスキン層は、LLDPE、HDPE、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物、MDPE、LDPE、及びそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含まないサブスキン層は、0.870g/cm3~0.970g/cm3の密度を有するポリエチレン組成物を含み得る。
【0125】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層は、ASTM D792に従って測定したときに、0.905g/cm3~0.930g/cm3の密度を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み得る。別の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.905g/cm3~0.925g/cm3、0.905g/cm3~0.920g/cm3、0.905g/cm3~0.915g/cm3、0.905g/cm3~0.910g/cm3、0.910g/cm3~0.930g/cm3、0.910g/cm3~0.925g/cm3、0.910g/cm3~0.920g/cm3、0.910g/cm3~0.915g/cm3、0.915g/cm3~0.930g/cm3、0.915g/cm3~0.925g/cm3、0.915g/cm3~0.920g/cm3、0.920g/cm3~0.930g/cm3、0.920g/cm3~0.925g/cm3、0.925g/cm3~0.930g/cm3であり得る。
【0126】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層は、ASTM D1238に従って測定したときに、10分当たり0.2グラム(g/10分)~6.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み得る。線状低密度ポリエチレンのメルトインデックス(I2)が、0.2g/10分~5.5g/10分、0.2g/10分~5.0g/10分、0.2g/10分~4.5g/10分、0.5g/10分~4.0g/10分、0.5g/10分~3.5g/10分、0.5g/10分~3.0g/10分、1.0g/10分~2.0g/10分、1.0g/10分~1.5g/10分、又は1.5g/10分~2.0g/10分であり得ることも企図される。
【0127】
実施形態によれば、線状低密度ポリエチレンは、重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)として表される、3.5~5.5の範囲の分子量分布を有し得る。追加の実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、3.5~4.5又は4.5~5.5の範囲の分子量分布を有し得る。
【0128】
1つ以上の追加の実施形態によれば、線状低密度ポリエチレンは、本明細書に記載の試験方法に従って測定したときに、1.2~3.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、1.2~2.5、1.2~2.0、2.0~3.0、2.0~2.5、又は2.5~3.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。
【0129】
線状低密度ポリエチレンの製造について、様々な方法論が企図される。例えば、線状低密度ポリエチレン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒系、ビスメタロセン触媒及び束縛幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、ポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂を使用して作製され得る。線状低密度ポリエチレン樹脂には、線状の、実質的に線状の、又は不均一な、ポリエチレンコポリマー又はホモポリマーが含まれ得る。線状低密度ポリエチレン樹脂は、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有してもよく、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、及び米国特許第5,733,155号において更に定義される、実質的に線状のポリエチレン、米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した線状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質分岐状エチレンポリマー、及びそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)を含む。線状低密度ポリエチレン樹脂は、当該技術分野において既知である任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、もしくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0130】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層が、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~80重量%、0重量%~60重量%、0重量%~40重量%、0重量%~20重量%、20重量%~80重量%、20重量%~60重量%、20重量%~40重量%、40重量%~80重量%、40重量%~60重量%、又は60重量%~80重量%のLLDPEを含み得る。
【0131】
実施形態では、各サブスキン層は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み得る。1つ以上の実施形態では、低密度ポリエチレンは、2.16kgの負荷及び190℃の温度でASTM D1238に従って測定したときに、0.1g/10分~10.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。実施形態では、低密度ポリエチレンは、0.1g/10分~5.0g/10分、又は0.5g/10分~5.0g/10分、又は0.5g/10分~2.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。実施形態では、低密度ポリエチレンは、ASTM D792に従って測定したときに、0.916g/cm3~0.935g/cm3の密度を有し得る。別の実施形態では、低密度ポリエチレンは、0.916g/cm3~0.925g/cm3の密度を有し得る。
【0132】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層が、それぞれの層の総重量に基づいて、50重量%未満のLDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、各サブスキン層は、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~50重量%、0重量%~40重量%、0重量%~35重量%、5重量%~35重量%、10重量%~35重量%、又は15重量%~35重量%のLDPEを含み得る。
【0133】
1つ以上の実施形態において、各サブスキン層はMDPEを含んでもよい。「MDPE」は、典型的には、クロム若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又は置換モノ-若しくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)が挙げられるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される。MDPEは、1つ以上のサブスキン層で使用され得ることに留意されたい。
【0134】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層が、それぞれの層の総重量に基づいて、20重量%を超えるMDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、各サブスキン層は、それぞれの層の総重量に基づいて、30重量%~100重量%、50重量%~80重量%、50重量%~60重量%、60重量%~100重量%、60重量%~80重量%、又は80重量%~100重量%のMDPEを含み得る。
【0135】
実施形態では、各サブスキン層は、ASTM D792に従って測定したときに、0.935g/cm3~最大0.980g/cm3の密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を含み得る。別の実施形態では、HDPEの密度は、0.935g/cm3~0.970g/cm3、0.935g/cm3~0.960g/cm3、0.935g/cm3~0.950g/cm3、0.935g/cm3~0.940g/cm3、0.940g/cm3~0.980g/cm3、0.940g/cm3~0.970g/cm3、0.940g/cm3~0.960g/cm3、0.940g/cm3~0.950g/cm3、0.950g/cm3~0.980g/cm3、0.950g/cm3~0.970g/cm3、0.950g/cm3~0.960g/cm3、0.960g/cm3~0.980g/cm3、0.960g/cm3~0.970g/cm3、又は0.970g/cm3~0.980g/cm3であり得る。
【0136】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層は、2.16kgの負荷及び190℃の温度でASTM D1238に従って測定したときに、10分当たり0.1グラム(g/10分)~10.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有するHDPEを含み得る。高密度ポリエチレンのメルトインデックス(I2)が、0.1g/10分~5.0g/10分、0.1g/10分~1.0g/10分、1.0g/10分~10.0g/10分、1.0g/10分~5.0g/10分、又は5.0g/10分~10.0g/10分であり得ることも企図される。
【0137】
高密度ポリエチレンの製造について、様々な方法論が企図される。例えば、HDPE樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒系、クロム触媒、又はビスメタロセン触媒及び束縛幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され得る。
【0138】
1つ以上の実施形態では、各サブスキン層は、それぞれの層の総重量に基づいて、最大50重量%のHDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、各サブスキン層が、それぞれの層の総重量に基づいて、0重量%~90重量%、15重量%~80重量%、15重量%~50重量%、20重量%~50重量%、30重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%のHDPEを含み得る。
【0139】
実施形態では、本開示の多層フィルムの各サブスキン層は、様々な厚さを有し得る。各サブスキン層の厚さは、例えば、サブスキン層の組成、多層フィルムの所望の全体的なダート及び穿刺特性などを含む多くの要因に依存し得る。実施形態では、各サブスキン層は、1マイクロメートルμm~85μmの厚さを有し得る。実施形態では、各外層は、1μm~80μm、1μm~60μm、1μm~40μm、1μm~20μm、20μm~80μm、20μm~60μm、20μm~40μm、40μm~80μm、40μm~60μm、又は60μm~80μmの厚さを有し得る。
【0140】
多層フィルムの実施形態においてサブスキン層が存在する場合、その多層フィルムの各サブスキン層の厚さは、多層フィルムの総厚の5%~40%を構成し得る。いくつかの実施形態では、各サブスキン層は、多層フィルムの総厚の5%~20重量%、5%~15%、5%~10%、10%~40%、10%~20%、10%~15%、15%~40%、15%~20%、又は20%~40%を構成し得る。
【0141】
バリア層
実施形態では、多層フィルムはバリア層を含み得る。本明細書で使用される「バリア層」という用語は、多層フィルム内への及び多層フィルムから外への蒸気又はガスの拡散を低減する層を指す。例えば、バリア層は、多層フィルム内への及び多層フィルムから外への芳香、水、又は酸素の拡散を低減し得る。
【0142】
実施形態では、バリア層は極性材料を含み得る。本明細書で使用される「極性材料」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つのモノマーから形成されたポリマーを指す。ヘテロ原子のいくつかの例としては、O、N、P、及びSが挙げられる。様々な実施形態において、極性材料は、エチレンビニルアルコールポリマー(ethylene vinyl alcohol polymer、EVOH)(Kuraray社によって販売されているEval H171Bなど)又はEVOHとポリアミド(PA)との組み合わせ(DuPont社によって販売されているNylon6、Nylon66、及びNylon6/66など)から選択され得る。様々な実施形態において、バリア層は、エチレンビニルアルコール(EVOH)からなる。いくつかの実施形態では、バリア層は、ポリアミドを含まないか、又は実質的にポリアミドを含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」とは、バリア層が、バリア層の総重量に基づいて、1重量%未満のポリアミドを含むことを意味し得る。実施形態では、バリア層は、0.5重量%未満又は0.1重量%未満のポリアミドを含み得る。実施形態では、極性材料を含むバリア層が、極性材料を含むか、又はそれからなり得ることを理解されたい。極性材料を含む層が極性材料を含む実施形態では、極性材料は、例えば、LLDPE、LDPE、ULDPE、MDPE、HDPE、及び本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物などのポリエチレンを含む任意のポリマーとブレンドされ得る。様々な実施形態において、極性材料は、0.1g/10分~40g/10分、0.2g/10分~20g/10分、又は0.5g/10分~10g/10分のメルトインデックス(I2)(2.16kg、190℃)を有する。様々な実施形態において、極性材料は、1.00g/cm3~1.30g/cm3、又は1.10g/cm3~1.20g/cm3(1cm3=1cc)の密度を有する。
【0143】
実施形態では、本開示の多層フィルムのバリア層は、様々な厚さを有し得る。バリア層の厚さは、例えば、バリア層の組成、多層フィルムの所望の全体的な再利用可能性及びバリア特性などを含む多くの要因に依存し得る。実施形態では、バリア層は、0.1μm~20μm、0.1μm~15μm、0.1μm~10μm、0.1μm~5μm、0.1μm~1μm、0.1μm~0.5μm、0.5μm~20μm、0.5μm~15μm、0.5μm~10μm、0.5μm~5μm、0.5μm~1μm、1μm~20μm、1μm~15μm、1μm~10μm、1μm~5μm、5μm~20μm、5μm~15μm、5μm~10μm、10μm~20μm、10μm~15μm、又は15μm~20μmの厚さを有し得る。
【0144】
本明細書で開示された多層フィルムのバリア層の厚さは、多層フィルムの総厚の1%~10%、1%~8%、1%~6%、1%~4%、1%~2%、2%~10%、2%~8%、2%~6%、2%~4%、4%~10%、4%~8%、4%~6%、6%~10%、6%~8%、又は8%~10%を構成し得る。
【0145】
結合層
実施形態では、多層フィルムは、1つ以上の結合層を含み得る。本明細書で使用される「結合層」という用語は、2つの層を互いに接着する層を指す。例えば、結合層は、極性材料を、極性材料を含まない1つ以上の層に結合し得る。例えば、結合層を、極性材料を含む層に隣接して配置して、極性材料を含む層を、ポリエチレンを含む層に接着させることができる。実施形態では、結合層をバリア層に隣接して配置して、極性材料を含むバリア層を、1つ以上のサブスキン層又は外層など、ポリエチレンを含む1つ以上の層に接着させることができる。
【0146】
実施形態では、本明細書の教示に基づいて、ポリエチレンを含む層に、極性材料(例えば、EVOH又はポリアミドなど)を含む層を接着するのに有用なものとして当業者に知られている多種多様なポリマーを、結合層に使用してよい。
【0147】
実施形態では、結合層は、エチレン及び酸コポリマーを含み得る。1つ以上の実施形態では、結合層は、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーを含み得る。本明細書で使用される「無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー」という用語は、共有結合によって連結された少なくとも1つの無水物基を含むエチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーを指す。無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、そこに無水物グラフティングモノマーがグラフトされている、エチレン系ポリマーであり得る。低溶融粘度の無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンにおいて好適なエチレン系ポリマーとしては、ポリエチレンホモポリマー及びα-オレフィンとのコポリマー、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマー、並びにエチレン及び1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーが挙げられるが、限定されない。特定の実施形態では、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、マレイン酸無水物グラフト化線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み得る。
【0148】
1つ以上の実施形態では、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーの総重量に基づいて、最大10重量%、最大5重量%、又は1~4重量%のマレイン酸無水物グラフティングモノマーを含む。エチレン系ポリマーの重量パーセントは、エチレン系ポリマーとマレイン酸無水物グラフト化モノマーとの重量パーセントの合計が100重量%になるように、マレイン酸無水物グラフティングモノマーの量と相補的である。したがって、マレイン酸無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、マレイン酸無水物グラフト化ポリオレフィンの総重量に基づいて、最大90重量%、最大95重量%、又は96~99重量%のエチレン系ポリマーを含む。
【0149】
無水物グラフティング部分の例としては、限定されるものではないが、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、2-メチルマレイン酸無水物、2-クロロマレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]-5-ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物及び4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、lo-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-オキサ-1,3-ジケトスピロ(4.4)ノナ-7-エン、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボル-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヒミック酸無水物、メチルヒミック酸無水物、並びにx-メチル-ビ-シクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物を挙げることができる。一実施形態では、無水物グラフト部分は、無水マレイン酸を含む。
【0150】
更なる実施形態では、マレイン酸無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、ASTM法第D792-91号に従って測定したときに、1立方センチメートル当たり0.940グラム(g/cm3)未満、又は0.855g/cm3~0.940g/cm3の密度を有する。別の密度範囲としては、0.855g/cm3~0.900g/cm3、0.855g/cm3~0.880g/cm3、0.855g/cm3~0.860g/cm3、0.860g/cm3~0.940g/cm3、0.860g/cm3~0.910g/cm3、0.860g/cm3~0.880g/cm3、0.880g/cm3~0.910g/cm3、又は0.880g/cm3~0.900g/cm3があり得る。
【0151】
1つ以上の実施形態では、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、190℃及び2.16kgでASTMの方法D1238に従って決定したときに、10分当たり300グラム(g/10分)~1500g/10分、又は300g/10分~1000g/10分、500g/10分~800g/10分、500g/10分~600g/10分、600g/10分~1000g/10分、600g/10分~800g/10分、又は800g/10分~1000g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0152】
1つ以上の実施形態では、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーが、本開示で後述する試験方法に従って177℃で測定したときに、200,000cP未満の溶融粘度を有し得る。実施形態では、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、本開示で後述する試験方法に従って177℃で測定したときに、2,000cP~200,000cP、2,000cP~100,000cP、2,000cP~50,000cP、2,000cP~10,000cP、10,000cP~200,000cP、10,000cP~100,000cP、10,000cP~50,000cP、50,000cP~200,000cP、50,000cP~100,000cP、又は100,000cP~200,000cPの溶融粘度を有し得る。
【0153】
様々な商業的実施形態が好適であると考えられる。例えば、好適な無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーは、BYNEL(登録商標)41E710の商標の下でThe Dow Chemical Companyから市販で入手でき得る。
【0154】
様々な量のエチレン及び酸コポリマー又は無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーが、本明細書に記載の多層フィルムの結合層内で好適であると考えられる。いくつかの実施形態では、結合層が、結合層の総重量に基づいて、20重量%以下のエチレン及び酸コポリマー又は無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーを含み得る。実施形態では、結合層が、結合層の総重量に基づいて、5重量%~15重量%、又は10重量%~15重量%のエチレン及び酸コポリマー又は無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーを含み得る。結合層の残りの部分は、LDPE、HDPE、MDPE、又は本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物などのポリエチレンであり得る。
【0155】
理論に拘束されるものではないが、無水物グラフト化エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーを極性材料を含む層に隣接して配置して、極性材料を含む層を非極性層に結合させることができると考えられている。実施形態では、結合層は、極性材料を含む層と直接接触させて配置され得る。実施形態では、結合層は、極性材料を含む層と、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物を含む層との間に、かつそれらの層に直接接触されて配置され得る。
【0156】
実施形態では、本開示の多層フィルムの各結合層が、様々な厚さを有し得る。各結合層の厚さは、例えば、結合層の接着特性などを含む多くの要因に依存し得る。実施形態では、各結合層が、0.1μm~20μmの厚さを有し得る。実施形態では、各結合層が、0.1μm~15μm、0.1μm~10μm、0.1μm~5μm、0.1μm~1μm、0.1μm~0.5μm、0.5μm~20μm、0.5μm~15μm、0.5μm~10μm、0.5μm~5μm、0.5μm~1μm、1μm~20μm、1μm~15μm、1μm~10μm、1μm~5μm、5μm~20μm、5μm~15μm、5μm~10μm、10μm~20μm、10μm~15μm、又は15μm~20μmの厚さを有し得る。
【0157】
本明細書で開示された多層フィルムの各結合層の厚さは、多層フィルムの総厚の1%~10%、1%~8%、1%~6%、1%~4%、1%~2%、2%~10%、2%~8%、2%~6%、2%~4%、4%~10%、4%~8%、4%~6%、6%~10%、6%~8%、又は8%~10%を構成し得る。
【0158】
本明細書に記載のフィルムの生成方法
多層フィルムの製造について、様々な方法論が企図される。1つ以上の実施形態では、多層フィルムを製造するプロセスは、キャストフィルムの押出し又はインフレーションフィルムの押出しを含み得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、多層フィルムを製造するプロセスは、インフレーションフィルムバブルを形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、インフレーションフィルムバブルは、多層インフレーションフィルムバブルであり得る。この実施形態によれば、更に、多層インフレーションフィルムバブルは、少なくとも2つ、3つ、5つ、7つ、9つ、又はそれより多くの層を含み得る。また、これらの層は、互いに接着していてもよい。
【0160】
インフレーションフィルムプロセスの実施形態において、押出成形ダイからの押出成形フィルムが、形成され(インフレートされ)、タワーを上方に、ニップ上まで引き上げられ得る。次に、そのフィルムをコアに巻き付けることができる。フィルムをコアに巻き付ける前に、折り畳み装置を使用してフィルムの端を切断して折り畳むことができる。それにより、フィルムの層を分離することが困難になり、これは、輸送用途全般、又は頑丈な輸送用サック用途に重要であり得る。
【0161】
更なる実施形態では、インフレーションフィルムバブルは、30対1以上の長さ対直径(「L/D」)比を有するインフレーションフィルム押出成形ラインを介して形成され得る。いくつかの実施形態では、押出ラインは、1~5、1~3、2~5、又は2~3のブローアップ比を有し得る。いくつかの実施形態では、押出成形ラインは、内部気泡冷却を有するダイを利用し得る。いくつかの実施形態では、ダイギャップは、1ミリメートル(mm)~5mm、1mm~3mm、2mm~5mm、又は2mm~3mmであり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、押出成形ラインは、フィルム厚ゲージスキャナーを利用し得る。いくつかの実施形態では、押出成形プロセス中、多層フィルム厚は、15μm~115μmに維持され得る。実施形態では、多層フィルム厚は、15μm~100μm、15μm~75μm、15μm~50μm、15μm~25μm、25μm~115μm、25μm~100μm、25μm~75μm、25μm~50μm、50μm~115μm、50μm~100μm、50μm~75μm、75μm~115μm、75μm~100μm、又は100μm~115μmに維持され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、多層インフレーションフィルム気泡形成ステップが、温度が華氏350~500°、又は華氏375~475°の温度で実施され得る。出力速度は、5lb/時/in~25lb/時/in、5lb/時/in~20lb/時/in、5lb/時/in~15lb/時/in、5lb/時/in~10lb/時/in、10lb/時/in~25lb/時/in、10lb/時/in~20lb/時/in、10lb/時/in~15lb/時/in、15lb/時/in~25lb/時/in、15lb/時/in~20lb/時/in、又は20lb/時/in~25lb/時/inであり得る。
【0164】
物品
本開示の実施形態はまた、本開示の多層フィルムから形成されたパッケージなどの物品に関する。このようなパッケージは、本明細書に記載される本開示の任意の多層フィルムから形成され得る。本開示の多層フィルムは、良好な穿刺特性が望まれる物品において特に有用である。
【0165】
そのような物品の例としては、軟包装材、パウチ、自立型パウチ、及び既製包装材又は既製パウチを挙げることができる。
【0166】
本明細書で開示された多層フィルムから物品の実施形態を製造する様々な方法は、当業者によく知られているであろう。
【0167】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
【0168】
メルトインデックス
ポリマー試料のメルトインデックスI2(又はI2)及びI10(又はI10)を、それぞれ、190℃並びに2.16kg及び10kgの荷重で、ASTM D-1238(方法B)に従って測定した。それらの値を、単位をg/10分として報告する。ポリマー試料の画分は、ポリマー組成物のその特定の画分又は部分を生成する反応器から生成物ポリマーを収集することによって測定した。例えば、第1のポリエチレン画分は、ポリマー組成物のより低密度でより高分子量の成分を製造する反応器から収集することができる。メルトインデックス測定の前に、ポリマー溶液を真空下で乾燥させる。
【0169】
密度
密度測定用の試料を、ASTM D4703に従って調製した。測定を、試料加圧の1時間以内に、ASTM D792、方法Bに従って行った。
【0170】
ASTM D1709のダート落下
フィルムダート落下試験は、自由落下ダートによる衝撃の指定された条件下で、プラスチックフィルムを破損させるエネルギーを決定する。試験結果は、試験される試験片の50%の破損をもたらすことになる、指定された高さから落ちる加撃体の重量として表現されるエネルギーである。
【0171】
フィルムを生成した後、そのフィルムを、ASTM標準に従って23℃(±2℃)及び50%(±5)の相対湿度で、少なくとも40時間コンディショニングする。標準試験条件は、ASTM標準に従って23℃(±2℃)及び50%の相対湿度(±5)である。
【0172】
試験結果は、直径2インチのダートヘッド及び60インチの落下高さを使用する方法Bによって報告する。試料の厚さは試料の中央で測定し、次いで、試料を5インチの内径を有する環状試験片ホルダーで固定する。ダートを、試料の中心、上方に装填し、空気圧又は電磁気のいずれかのメカニズムによって放出する。
【0173】
試験は、「ステアケース」法に従って実施される。試料が破損した場合、ダートの重量を既知の固定量だけ低減して新たな試料を試験する。試料が破損していない場合、ダートの重量を既知の量だけ増加した新たな試料を試験する。20個の試験片が試験された後、破損した試験片の数が決定される。この数が10である場合、試験を完了する。この数が10未満である場合、10個の破損が記録されるまで試験を継続する。その数が10超である場合、破損しなかったものの総計が10になるまで試験を継続する。ダート落下強度を、ASTM D1709に従って、これらのデータから決定し、タイプBのダート落下衝撃性として、グラム単位で表現した。
【0174】
計装化ダート衝撃
計装化ダート衝撃法は、Instron社製CEAST9350衝撃試験機を使用して、ASTM D7192に従って、プラスチックフィルム試験片上で測定する。試験は、半球形のヘッドを備えた直径12.7mmのタップ、ゴム面のグリップを備えた直径75mmのクランプアセンブリを使用して実施される。機器に、低温又は高温で試験するための環境チャンバを装備する。典型的な試験片のサイズは125mm×125mmである。標準的な試験速度は200m/分である。フィルム厚は2ミルである。
【0175】
クリープゼロ剪断粘度測定方法
ゼロ剪断粘度を、190℃で直径25mmの平行プレートを使用して、AR-G2応力制御レオメータ(TA Instrument社(デラウェア州ニューキャッスル))で行われたクリープ試験を介して得る。取付け器具をゼロにする前に、レオメータオーブンを少なくとも30分間試験温度に設定する。その試験温度で、圧縮成形された試料ディスクをプレート間に挿入し、5分かけて平衡状態にする。次いで、上側プレートを、所望の試験間隙(1.5mm)より50μm上に下げる。あらゆる余分な材料をトリミングして除去し、上側プレートを所望の間隙まで下げる。測定は、5L/分の流量の窒素パージ下で行われる。初期値のクリープ時間は、2時間に設定される。
【0176】
定常状態の剪断速度が、ニュートン領域で十分に低くなることを確実にするために、試料の全てに20Paの一定の低剪断応力を加える。得られた定常状態の剪断速度は、この調査における試料については、10-3~10-4/秒の範囲内である。定常状態は、log(J(t))対log(t)のプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内の全てのデータについて線形回帰を取ることによって決定され、ここでJ(t)は、クリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間である。線形回帰の勾配が0.97より大きい場合、定常状態に達したとみなし、次いで、クリープ試験を停止する。この調査では、全ての場合において、勾配は、2時間以内に基準を満たす。定常状態の剪断速度は、ε対t(εは歪みである)のプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内のデータ点の全ての線形回帰の勾配から決定される。ゼロ剪断粘度は、加えられた応力の定常状態の剪断速度との比から決定される。
【0177】
クリープ試験中に試料が劣化しているかどうかを決定するために、0.1~100rad/秒で同じ試験片についてクリープ試験の前後に小振幅振動剪断試験を行う。2つの試験の複素粘度値を比較する。0.1rad/秒での粘度値の差が5%より大きい場合、クリープ試験中に試料が劣化したとみなし、結果を廃棄する。
【0178】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備するPolymerChar社(スペイン、バレンシア)製GPC-IR高温GPCクロマトグラフで構成されている。オートサンプラオーブンコンパートメントを摂氏160°に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150°に設定した。カラムには、4本のAgilent「Mixed A」30cm 20ミクロン線形混床式カラム及び20μmのプレカラムを使用した。使用されたクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用された注入体積は、200μLであり、流量は、1.0mL/分であった。
【0179】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10倍の間隔を有する6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準物質を、Agilent Technologies社から購入した。1,000,000以上の分子量については、50mLの溶媒中の0.025gで、1,000,000未満の分子量については、50mLの溶媒中の0.05gで、ポリスチレン標準物質を調製した。ポリスチレン標準物質を、穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り)。
【0180】
【数1】
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0181】
五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点に当てはめた。Aに対してわずかな調整(約0.375~0.445)を行い、カラム分解能及びバンド拡張効果を、線状ホモポリマーポリエチレン標準物質が120,000Mwで得られるように補正した。
【0182】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、デカン(50mLのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて実行した。プレートカウント(式2)及び対称性(式3)を、200μLの注入に対して、以下の式に従い測定した。
【0183】
【数2】
式中、RVは、mL単位での保持体積であり、ピーク幅は、mL単位であり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の1/2の高さである。
【0184】
【数3】
式中、RVは、保持体積(mL)であり、ピーク幅は、mL単位であり、1/10高さは、ピーク最大値の1/10の高さであり、後部ピークは、ピーク最大値よりも後ろの保持体積でのピークの尾部を指し、前方ピークは、ピーク最大値よりも前の保持体積におけるピークの前部を指す。クロマトグラフィのプレートカウントは、18,000を超えなければならず、対称性は0.98~1.22の間でなければならない。
【0185】
試料を、PolymerChar社製「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、2mg/mLを試料の目標重量とし、PolymerChar社製高温オートサンプラを介して、予め窒素スパージされたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪下で、摂氏160度で2時間溶解した。
【0186】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar社製GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ回収点(i)におけるベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式1の点(i)における狭い標準物質較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用して、式4~6に従って、PolymerChar社製GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用した、GPC結果に基づいた。
【0187】
【0188】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar社製GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して、各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を用いて、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))と、狭い標準物質較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれとを、RV整合させることによって、各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正した。次いで、デカンマーカーピークの時間のいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準となる較正に対する)有効流量を式7として計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar社製GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量補正は、有効流量が公称流量の±0.5%以内でなければならない。
【0189】
【0190】
コモノマー含有量分析のための改善された方法(iCCD)
改善されたコモノマー含有量分析法(iCCD)は、2015年に開発された(Cong and Parrott et al.、国際公開第2017040127(A1)号)。iCCD試験を、IR-5検出器(PolymerChar社(スペイン))及び二角光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors社製、現在はAgilent Technologies社製)を備えた結晶化溶出分画機器(Crystallization Elution Fractionation、CEF)(PolymerChar社(スペイン)製)を用いて実施した。検出器オーブン中のIR-5検出器の直前に、5cm又は10cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレス鋼に20~27ミクロンのガラス(MoSCi Corporation社(米国))を充填したガードカラムを設置した。オルトジクロロベンゼン(ortho-dichlorobenzene、ODCB、99%無水グレード又はテクニカルグレード)を使用した。EMD Chemicalsからシリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)を入手した(先にODCB溶媒を乾燥させるために使用され得る)。CEF機器に、N2パージ能力を備えたオートサンプラを装備する。使用前に、ODCBを乾燥窒素(N2)で1時間スパージする。試料調製は、160℃で1時間振盪しながら、オートサンプラを4mg/mLで用いて(特に指定のない限り)行われた。注入量は300μLであった。iCCDの温度プロファイルは、3℃/分での105℃~30℃への結晶化、30℃での2分間の熱平衡(可溶性画分溶出時間を2分に設定することを含む)、3℃/分での30℃~140℃への溶出であった。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は0.50mL/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0191】
iCCDカラムを、15cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレス管中の金でコーティングされたニッケル粒子(Bright 7GNM8-NiS(Nippon Chemical Industrial Co.製))で充填した。カラム充填及び調整は、参考文献(Cong,R.;Parrott,A.;Hollis,C.;Cheatham,M.国際公開第2017040127(A1)号)によるスラリー法で行った。TCBスラリー充填を用いた最終圧力は、150バールであった。
【0192】
カラム温度較正を、ODCB中の参照物質の線状ホモポリマーポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I2)が1.0、多分散度Mw/Mnが従来のゲル浸透クロマトグラフィで約2.6、1.0mg/mL)と、エイコサン(2mg/mL)との混合物を使用して実行した。iCCD温度較正は、以下の4つのステップからなった:(1)エイコサンの測定されたピーク溶出温度間の温度オフセットから30.00℃を引いたものとして定義される遅延体積を計算するステップと;(2)iCCD生温度データから、溶出温度の温度オフセットを差し引く(この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることに留意されたい)ステップと;(3)線状ホモポリマーポリエチレン参照物質が、101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが、30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲にわたって溶出温度を変換する線形較正ラインを作成するステップと;(4)30℃で等温で測定される可溶性画分について、30.0℃未満の溶出温度を、参考文献(Cerk and Cong et al.、米国特許第9,688,795号)に従って3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿するステップ。
【0193】
コモノマー含有量対iCCDの溶出温度は、12個の参照物質(エチレンホモポリマー及びシングルサイトメタロセン触媒で作製されたエチレン-オクテンランダムコポリマー、35,000~128,000の範囲のエチレン等価重量平均分子量を有する)を使用することで構築した。これらの参照物質の全てを、4mg/mLで以前に指定したものと同じ手法で分析した。報告された溶出ピーク温度は、線形方程式y=-6.3515xにフィットさせた。+101.00に線形に適合し、式中、yは、iCCDの溶出温度を表し、xは、オクテンのモル%を表し、R2は、0.978であった。
【0194】
ポリマーの分子量及びポリマー画分の分子量は、フォームファクタを1及び全てのビリアル係数をゼロと仮定することによって、Rayleigh-Gans-Debys近似(Striegel及びYau、「Modern Size Exclusion Liquid Chromatogram」、242ページ及び263ページ)に従って、LS検出器(90度の角度)及び濃度検出器(IR-5)から直接決定した。23.0~120℃の範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で、全てのクロマトグラムを積分するために積分ウィンドウを設定する。
【0195】
iCCDからの分子量(Mw)の計算には、次の4つのステップが含まれる。
(1)検出器間オフセットを測定するステップ。オフセットは、濃度検出器に対するLS検出器間の幾何学的体積オフセットとして定義される。これは、濃度検出器とLSクロマトグラムとのポリマーピークの溶出量(mL)の差として計算される。これが、溶出熱速度及び溶出流量を使用することによって、温度オフセットに変換される。線状高密度ポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I2)が1.0、多分散度Mw/Mnがコンベンショナルゲル浸透クロマトグラフィで約2.6)を使用する。上記の通常のiCCD法と同じ実験条件が使用されるが、ただし以下のパラメータを除く:10℃/分での140℃~137℃への結晶化、137℃での可溶性画分溶出時間としての1分間の熱平衡、7分間の可溶性画分(SF)時間、3℃/分での137℃~142℃への溶出を除く。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は、0.80mL/分である。試料濃度は、1.0mg/mLである。
(2)LSクロマトグラムの各LSデータポイントをシフトして、積分前に検出器間オフセットを補正するステップ。
(3)ベースラインを差し引いたLS及び濃度クロマトグラムが、ステップ(1)の溶出温度範囲全体について積分されるステップ。MW検出器定数を、100,000~140,000Mwの範囲内の既知のMWのHDPE試料、及びLSと濃度積分信号との面積比を使用して計算する。
(4)ポリマーのMwを、統合光散乱検出器(90度の角度)と濃度検出器との比を使用し、MW検出器定数を使用して計算するステップ。
【0196】
半値幅の計算は、最大ピーク高さの半分での前方温度と後方温度との温度差として定義され、最大ピークの半分での前方温度は、35.0℃から前方へ探索され、最大ピークの半分での後方温度は、119.0℃から後方へ探索される。
【0197】
ゼロ剪断粘度比(Zero-Shear Viscosity Ratio、ZSVR)
ZSVRは、以下の式(EQ)8及び9に従って、等価重量平均分子量(Mw-gpc)における分岐ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)の線状ポリエチレン材料のZSVに対する比率として定義する。
【0198】
【0199】
ZSV値は、上述した方法により190℃でのクリープ試験から得た。Mw-gpc値は、コンベンショナルGPC法(コンベンショナルGPC法の説明における式5)によって決定される。線状ポリエチレンのZSVとそのMw-gpcとの間の相関を、一連の線状ポリエチレン参照物質に基づいて確立した。ZSV-Mwの関係についての説明は、ANTECの要旨:Karjala,Teresa P.,Sammler,Robert L.,Mangnus,Marc A.,Hazlitt,Lonnie G.,Johnson,Mark S.,Hagen,Charles M.Jr.,Huang,Joe W.L.,Reichek,Kenneth N.,「Detection of low levels of long-chain branching in polyolefins」,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891において見出し得る。
【0200】
MD引裂
MD引裂をASTM D-1922に従って測定した。フィルム試験片にわたって引裂を伝播させるのに必要な力(グラム)は、Elmendorf Tear試験機を使用して測定する。重力によって作用して、振り子は円弧を描いて振動し、予め切断されたスリットから試験片を引き裂く。引裂は、横断方向に伝播する。試料を、試験前の温度で最低40時間コンディショニングする。
【0201】
動的レオロジー分析
実質的に線状のエチレンポリマーのレオロジー挙動を特徴付けるために、S Lai及びG.W.Knightは、(ANTEC’93 Proceedings,Insite(TM) Technology Polyolefins(ITP)-New Rules in the Structure/Rheology Relationship of Ethylene &-01efin Copolymers,New Orleans,La.,May 1993)新しいレオロジー測定値であるDow Rheology Index(DRI)(これは、ポリマーの「長鎖分岐の結果としての正規化された緩和時間」を表現する)を導入した。S.Lai et al;(ANTEC’94,Dow Rheology Index (DRI) for Insite(TM) Technology Polyolefins(ITP):Unique structure-Processing Relationships,pp.1814-1815)は、ポリマー骨格に長鎖分岐を組み込んだITP(Dow’s Insite Technology Polyolefins)として既知のエチレン-オクテンコポリマーのレオロジーが以下の正規化された等式によって長鎖分岐(LCB)を有しないと報告されている従来の線状均質ポリオレフィンのレオロジーから逸脱している程度としてDRIを定義した:
【0202】
【数7】
式中、τ
0は、材料の特徴的な緩和時間であり、材料のゼロ剪断速度複素粘度である。DRIは、米国特許第6,114,486号に記載されるような、以下の一般化されたCross等式を用いたレオロジー曲線の最小二乗適合(動的複素粘度η
*(ω)対適用周波数(ω)、例えば、0.01~100rad/秒)によって計算し、すなわち
【0203】
【数8】
式中、nは、材料のべき乗則指数、η
*(ω)及びωは、それぞれ、測定した複素粘度及び適用周波数データである。
【0204】
動的レオロジー測定は、ASTM D4440に従って、不活性雰囲気下で、動的モードにある、直径25mmの平行板を備えた動的レオメータ(例えば、TA Instruments社製のARESレオメータ)で実行される。全ての実験については、レオメータは、適切に安定化された(酸化防止添加剤を用いて)圧縮成形された試料を平行プレートの上に挿入する前に、190℃で少なくとも30分間熱的に安定になっている。次いで、プレートは、メーターに登録された正の法線力で閉じられて、良好な接触を保証する。190℃で約5分経った後、プレートを軽く圧縮し、プレートの周囲の余分なポリマーをトリミングする。熱安定性及び法線力がゼロに戻るまで、更に10分間かかる。つまり、全ての測定は、試料が190℃で約15分間平衡化された後に実行され、完全な窒素ブランケット下で実行される。
【0205】
2つのひずみ掃引(strain sweep、SS)実験を最初に190℃で実施して、全周波数(例えば、0.01~100rad/秒)範囲にわたって、トランスデューサーのより低いスケールの10%超であるトルク信号を生じさせる線形粘弾性ひずみを決定する。第1のSS実験は、0.1rad/秒の低い適用周波数で実施する。この試験を使用して、低周波数でのトルクの感度を判定する。第2のSS実験は、100rad/秒の高い適用周波数で実施する。これは、振動レオロジー測定が試験中にポリマーに構造変化を誘発しないように、選択された適用ひずみがポリマーの線形粘弾性領域内に十分に収まることを保証するためである。加えて、時間掃引(TS)実験を、選択されたひずみ(SS実験によって決定したように)で0.1rad/秒の低い適用周波数で実施して、試験中の試料の安定性をチェックする。
【0206】
貯蔵弾性率(又は弾性率)、損失弾性率(又は粘性率)(G”)、複素弾性率(G*)、複素粘度(η*)、及びtanδ(損失弾性率の貯蔵弾性率との比率、G’VG’)は、所与の温度(例えば、190℃)で周波数(ω)の関数として得た。
【0207】
ASTM D1922 MD(機械方向)及びCD(交差方向)Elmendorf引裂タイプB
Elmendorf引裂試験は、Elmendorf型引裂試験機を使用して、引裂が開始された後に、プラスチックフィルム又は非硬質シートの指定された長さを通して引裂を伝播させる平均力を判定する。
【0208】
試験すべきサンプルからフィルムを製造した後、そのフィルムをASTM規格に従って23℃(±2℃)及び50%の相対湿度(±5)で少なくとも40時間馴化させた。標準試験条件は、ASTM標準に従って23℃(±2℃)及び50%(±5)の相対湿度であった。
【0209】
フィルム又はシート試験片に引裂を伝播させるのに必要なグラム単位での力を、正確に較正された振り子装置を使用して測定した。試験では、重力によって作用して振り子が円弧を描いてスイングし、予めカットしたスリットから試験片を引裂いた。試験片は、片側が振り子によって保持され、反対側が固定部材によって保持される。振り子によるエネルギーの損失は、ポインタ又は電子スケールによって示される。スケール表示は、試験片を引裂くのに必要な力の関数である。
【0210】
Elmendorf引裂試験で使用された試料試験片の形状は、ASTM D1922に規定されているような「一定半径の形状」であった。試験は、典型的には、フィルムのMD方向及びCD方向の両方から切断された試験片に対して行われる。試験前に、フィルム試験片の厚さをサンプルの中央で測定した。各フィルム方向当たり合計15個の試験片が試験され、平均引裂強度及び平均厚さが報告された。平均引裂強度は平均厚さに対して正規化した。
【0211】
ASTM D882によるMD及びCDの1%及び2%割線係数
フィルムのMD(機械方向)及びCD(交差方向)割線係数をASTM D882に従って決定した。報告された割線係数値は、5回の測定の平均であった。
【0212】
穿刺強度
穿刺試験は、標準低速、単一試験速度でのプローブの貫通に対するフィルムの耐性を決定する。穿刺試験方法はASTM D5748に基づいている。フィルム製造後、そのフィルムを、ASTM標準に従って23℃(±2℃)及び50%の相対湿度(±5)で少なくとも40時間馴化させた。標準試験条件は、ASTM標準に従って23℃(±2℃)及び50%(±5)の相対湿度である。穿刺は引張試験機で測定した。正方形の試験片を、シートから6インチ×6インチのサイズに切断する。試験片を、直径4インチの円形試験片ホルダーに挟み、穿刺プローブを10インチ/分のクロスヘッド速度で、挟まれたフィルムの中心に押し込んだ。内部試験方法は、1つの修正を加えてASTM D5748に準拠している。この方法は、ASTM D5748の方法とは、使用されたプローブが(D5748において規定されている直径0.75インチの洋ナシ型プローブではなく)、「0.25インチ」の支持具上の「直径0.5インチ」の磨製鋼球であったという点において異なった。
【0213】
試験治具への損傷を防止するために、「7.7インチ」の最大移動長を設けた。ゲージ長は存在せず、試験前、プローブは、試験片に、接触はしないが可能な限り近付けられた。単回の厚さ測定を試験片の中心で行った。各試験片について、最大力、破断時の力、貫通距離、及び破断までのエネルギーを決定した。合計5つの試験片を試験して、平均穿刺値を決定した。穿刺プローブは、各試験片で使用後に、「キムワイプ」を使用して洗浄した。
【実施例】
【0214】
以下の実施例は、本開示の特徴を例示するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以下の実験で、本明細書に記載の多峰性ポリエチレン組成物の実施形態の性能を分析した。
【0215】
実施例1:多峰性ポリエチレン組成物1の調製
詳細な説明のうちの1つ以上の実施形態に従って説明される多峰性ポリエチレン組成物1は、以下に記載の触媒及び反応器を利用する方法によって、調製された。
【0216】
エチレン-1-オクテン二峰性コポリマー試料を、
図2に示すものなどの直列二重反応器構成における液体完全溶液重合プロセスを使用して生成した。このサンプルの製造のために、第1の反応器は連続撹拌タンク反応器(CSTR)であり、第2の反応器はループ反応器(loop reactor、LR)であった。各反応器供給物は、再循環溶媒(Isopar E、エチレン、1-オクテン、及び水素からなる)、並びに新しいエチレン、1-オクテン、及び水素を含んでいた。リサイクル溶媒、エチレン、及び1-オクテンは、業界標準のコリオリ流量計技術を用いて測定し、水素流量は、業界標準の熱質量流量計を用いて測定した。業界標準昇降型ステムプラグバルブを使用して、各反応器供給成分の流れを制御した。独自のデジタル制御システム(digital control system、DCS)が、各昇降型ステムプラグバルブの位置を自動的に操作して、各反応物質の質量流量をその目標値に制御した。
【0217】
単一の業界標準容積式ポンプ技術を使用して各反応器に、リサイクル溶媒圧力を送達した。各反応器への再循環溶媒流を計量して、以下の表に記載のIsopar E対ポリマー生成比率を維持した。エチレンの圧力は、業界標準のガス圧縮機技術を用いて供給した。単一の圧縮機を使用して、エチレン供給物を両方の反応器に供給した。各反応器へのエチレンを計量して、以下の表に記載のIsopar E対エチレン比を維持した。エチレンを、再循環溶媒流量計及び1-オクテン供給物注入位置の両方の下流で再循環溶媒と合わせた。1-オクテン圧力は、業界標準の容積式ポンプ技術を使用して送達された。反応器系への1-オクテン流を計量して、以下の表1に示される1-オクテン対エチレン比を維持した。1-オクテン反応器システム供給物全体を、再循環溶媒計量システムの下流で、第1の反応器供給物に注入した。新たな1-オクテンは、第2の反応器供給物と共には注入されなかった。水素供給圧力は、1,500psigのガスシリンダから送達された。各反応器についての水素対生成比率目標をDCSによって自動的に操作して、それぞれの反応器溶液粘度を目標に維持した。水素対生成比率目標を水素流量に変換し、DCSが昇降型ステムプラグバルブ位置を操作して、流量を目標値に制御した。各反応器についての水素対生成比率及び溶液粘度目標を以下の表に示す。水素をエチレン流量制御器の下流でエチレンガスと混合した。第1の反応器については、合わせたガス流を、合わせた液体流と、再循環溶媒中への1-オクテン注入点の下流で混合し、第2の反応器については、合わせたガス流を、液体流と、再循環溶媒流量制御装置の下流で合わせた。
【0218】
各反応器の合わせた供給流を、別々の熱交換器システムに通して、以下の表に示す目標供給温度まで冷却した。熱交換器システムから、流れを各反応器に向け、そこでそれらを重合液に注入した。供給圧力は直接的には制御しなかった。制御点は反応器圧力であった。したがって、測定された供給圧力は、所与の総流量に対する供給システム内の圧力降下の結果であった。
【0219】
各触媒成分を各反応器に注入するのに必要な圧力は、業界標準容積式ポンプ技術を用いて送達した。流量は、コリオリ流量計を用いて測定した。各成分を別々にポンプ輸送し、計量した。触媒錯体を、助触媒とは別に反応器に注入した。助触媒2(MMAO)を助触媒1の流量計の下流で助触媒1と合わせ、合わせた流れを第2の注入器を通して反応器に注入した。この構成の結果として、各反応器の触媒錯体は重合溶液中で活性化された。
【0220】
各反応器への触媒錯体の流れをDCSによって操作して、エチレン転化率を以下の表1に示す値に制御した。助触媒1及び助触媒2の流れは、各成分対触媒の一定モル比を維持するように操作され、それらの値も表に記載されている。結果として、目標助触媒対触媒比率を制御することにより、触媒錯体流の各調整のための各成分流の自動調整がもたらされた。1-オクテン転化率は直接的には制御されなかった。代わりに、1-オクテン転化率は、選択された触媒錯体、並びに表に記載されるようなエチレン転化率設定点及び選択された反応器温度に対応したエチレンの1-オクテンに対するその相対反応性から生じた。第2の反応器に注入された再循環及び新鮮な供給物に加えて、第2の反応器に注入された第1の反応器流出物中に、未反応エチレン、1-オクテン、及び水素が存在した。
【0221】
溶液粘度は直接的には測定しなかった。その代わりに、摩擦圧力損失を測定し、ファニング方程式を用いてポリマー溶液の粘度を計算した。粘度を計算するために、パイプ寸法、総質量流量、密度、及び既知の寸法(内径、表面粗さ、及び長さ)のパイプにわたる圧力降下)が既知でなければならない。業界標準のコリオリ流量計を使用して、反応器流出物の質量流量及び密度の両方を測定した。業界標準のダイアフラム式差圧トランスミッタを使用して、既知の寸法のパイプにわたる圧力降下を測定した。次に、以下の式に従って、粘度をもとめるために解く、再構成されたファニング方程式に上記の測定値を挿入することによって、粘度を計算した。
【0222】
【数9】
式中、μ=粘度(lbsm/ft-s)、dP=摩擦圧低下(psi)、D=パイプ内径(ft)f=ファニング摩擦係数、ρ=密度lbs/ft
3、v=速度(ft/s)、L=パイプ長さ(ft)、gc=単位換算(lbsm-ft/lbsf-s2)。
【0223】
各反応器について、DCSは、水素対生成比率を操作し、これを水素流量目標に変換して、溶液粘度を表1に示した目標に制御した。
【0224】
多峰性ポリエチレン組成物1は、上記のように、ビス-ビフェニルフェノキシ触媒を使用して作製した。上に記載され示された構造を有するビス-ビフェニルフェノキシ触媒錯体は、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成助触媒、強ルイス酸、又は組み合わせと組み合わせることによって活性化され得る。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、及び不活性、相溶性の非配位イオン形成化合物が挙げられる。例示的な好適な助触媒としては、変性メチルアルミノキサン(modified methyl aluminoxane、MMAO)、ビス(水素化獣脂アルキル)メチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1<->)アミン(すなわち、[HNMe(C18H37)2][B(C6F5)4]及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
ビス-ビフェニルフェノキシファミリーからの2つの異なる触媒錯体を使用して、多峰性ポリエチレン組成物1を生成した。触媒Aを使用して第1の反応器画分を生成し、触媒Bを使用して第2の反応器画分を生成した。両方の触媒は、ハフニウム金属中心(M)を含有し、構造は以下のように示される。
【0226】
【0227】
触媒は、金属配位子錯体を、ビス(水素化獣脂アルキル)メチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1<->)アミン(助触媒1)及びMMAO(助触媒2)活性化助触媒と接触させることによって活性化され、それらの構造は以下のように示される。
【0228】
【0229】
第1の反応器については、重合の発熱は、供給物から反応器温度への、溶媒及び反応物の断熱温度上昇によって除去された。第2の反応器については、供給物から反応器温度への反応物及び溶媒の断熱温度上昇によっても、熱の一部を除去した。残りの重合熱は、ループ反応器内の熱交換器を用いて第2の反応器から非断熱的に除去した。各反応器の目標温度を以下の表に示す。
【0230】
ポリマー分割は、各反応器で生成されたポリマーの重量%として定義される。多峰性ポリエチレン組成物1を製造する間、ポリマー分割は直接制御されなかった。代わりに、反応物の供給速度及び各反応器のエチレン転化率を表1に示した目標に制御することによって、目標ポリマー分割を達成した。選択された触媒錯体及びそのエチレン対1-オクテンの反応性比率と共に、上記のものは、生成されるポリマーの量及びその画分の密度を決定する。
【0231】
全体のポリマー密度が以下の表に記載された目標となることを確実にするために、1-オクテン対エチレン比率に対する微調整を行った。ポリマー密度を減少させるために、1-オクテン対エチレン比率を増加させて、反応器への1-オクテン流量を増加させた。ポリマー密度を増加させるために、1-オクテン対エチレンの比率を減少させ、反応器へのより小さい1-オクテン流量をもたらした。
【0232】
先に述べたように、ポリマー粘度は、水素対ポリマー生成比率を操作することによって制御した。ポリマー粘度を低下させるためには、水素対ポリマー比率を増加させて、反応器への水素流量を増加させた。ポリマー粘度を増加させるためには、水素対ポリマー比率を減少させて、反応器への水素流量を減少させた。
【0233】
反応器流出物中に水を注入して、重合反応を停止させた。3つの触媒成分の合計に対する化学量論量の水は、触媒を中和し、活性を停止させるのに十分であるが、触媒の完全な加水分解及び失活を確実にするために20%以上のモル過剰を使用した。
【0234】
酸化防止剤を反応器流出物中に注入して、プラントの脱揮部分において、並びに貯蔵中及び転化器の設備でのその後の処理中にポリマーを酸化から保護した。各実験の酸化防止剤パッケージを、機械的に撹拌した容器中で溶媒と混合した。業界標準容積式ポンプを使用して、スラリーパッケージを反応器流出物中に注入するための供給圧力を提供した。流量は、コリオリ技術を用いて、以下の表に示されるようなポリマー中の酸化防止剤濃度を生成する速度で計量された。
【0235】
反応を停止させ、保護酸化防止剤パッケージを添加した後、スチームを熱交換器に流して、ポリマー分離に備えてストリーム温度を上昇させた。熱交換器の下流に位置する昇降型ステムプラグバルブを(DCSによって)自動的に操作して、液体充満反応器系圧力を以下の表に記載の値に制御した。反応器圧力制御バルブを通過した後、溶媒並びに未反応エチレン、1-オクテン、及び水素を、標準の溶液重合脱揮/分離技術を使用してポリマーから分離した。
【0236】
脱揮システムにおいて不揮発性エチレン-1-オクテンコポリマーから揮発性成分を分離した後、標準的なコリオリ流量計技術を使用して当該流れの質量流量を測定した。従来のガスクロマトグラフィ技術を使用して、ポリマーを含まない流れの組成を測定した。この流れの情報を供給流情報と共に用いて、以下の式に示すように、エチレン及び1-オクテンの転化率を計算した:
【0237】
【0238】
ASTM D4703を使用して、密度分析用のポリマープラークを作製した。ASTM D792を使用して、以下の表に示す各ポリマー試料の密度を測定した。ASTM D1238を使用して、ポリマーのメルトインデックス及びメルトフロー比率(I10/I2)を測定した。第1の反応器及び第2の反応器の密度及びメルトインデックス値は、モデル推定値である。全体密度、メルトインデックス、及びメルトフロー比率は、二峰性ポリマーの測定値である。
【0239】
【0240】
ポリエチレン組成物1をiCCDによって分析した。ポリエチレン組成物1のiCCD試験から得られたデータを表2に示す。表2は、それぞれのポリエチレン画分(25℃~35℃、35℃~70℃、70℃~85℃、及び85℃~120℃)の領域を含むiCCDデータを示す。
【0241】
【0242】
実施例2:比較のポリエチレン組成物A
比較のポリエチレン組成物Aは、一般に、国際公開第2015/200743号における発明の第1の組成物を調製するために提供された触媒系及びプロセスを使用して調製される二峰性ポリエチレン組成物であった。
【0243】
実施例3:ポリエチレン組成物1及び比較の組成物Aの分析
実施例1のポリエチレン組成物1及び比較のポリエチレン組成物Aを、iCCDによって分析した。両方の試料(実施例1のポリエチレン組成物1及び比較のポリエチレン組成物A)のiCCD試験から生成されたデータを、表3に提供する。表3は、比較のポリエチレン組成物A及びポリエチレン組成物1の各試料についての追加のデータを提供し、全体的密度、メルトインデックス、ZSVR、及び第1の画分の分子量の全体の分子量に対する比率を含む。これらの特性を、本明細書に記載される試験方法に基づいて測定した。
【0244】
【0245】
実施例4:比較のフィルムA~F及びフィルム1の調製
表4は、比較のポリエチレン組成物B~Eの市販のポリエチレン組成物を特定する。
【0246】
【0247】
この実施例では、ポリエチレン組成物1を含む1つのフィルムと、6つの比較のフィルムとを調製した。それぞれの全体の厚さが70μmであった。各フィルムの層Aはフィルム全体の厚さの20%であり、各層Bはフィルム全体の厚さの60%であり、各層Cはフィルム全体の厚さの20%であった。実施例4のフィルム試料のそれぞれを生成するための材料を表5に提供し、比較のフィルムA~F及びフィルム1を生成するために使用した押出成形条件を表6に要約する。
【0248】
【0249】
【0250】
実施例5:比較のフィルムA~F及びフィルム1の分析。
フィルム1及び比較のフィルムA~Fの性能を比較するために、穿刺力、穿刺抵抗、穿刺伸び、穿刺エネルギー、ダート落下衝撃性、平均エルメンドルフCD引裂強さ、及び平均エルメンドルフMD引裂強さを、上記の試験方法に従って測定した。フィルム1及び比較のフィルムA~Fの穿刺特性及びダート落下衝撃性の結果を表7に示す。
【0251】
【0252】
表7に示すように、フィルム1は、他の比較のフィルムサンプルA~Fの全てよりも高い穿刺特性(穿刺力、穿刺抵抗、穿刺伸び、及び穿刺エネルギー)を示した。本開示のポリエチレン組成物に最も近い密度を有する比較のポリエチレン組成物を利用したフィルムD及びEについては、フィルム1が優れた穿刺特性並びにダート落下衝撃性(方法B)を示した。
【0253】
添付の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正及び変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において、好ましいか、又は特に有利なものとして特定されるが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
【国際調査報告】