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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】患者監視システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20230727BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230727BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20230727BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20230727BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20230727BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61B5/0215 C
A61B5/11 200
A61B5/0245 100C
A61B5/107 300
A61B5/08
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578999
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 US2021038405
(87)【国際公開番号】W WO2021262670
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/043,494
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビバンズ, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シーゼル, アーレン
(72)【発明者】
【氏名】ウェリンベ, ヴィヴェック
(72)【発明者】
【氏名】ハンドラー, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ディロン, マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】ディロン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】タング, エリック
(72)【発明者】
【氏名】マッキャナ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイワード, ローレン エヌ. エム.
(72)【発明者】
【氏名】バネット, マシュー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AC03
4C017BC16
4C038SS08
4C038SV00
4C038VA04
4C038VA06
4C038VB01
4C038VB31
4C038VC20
4C117XA04
4C117XB04
4C117XC21
4C117XD11
4C117XE13
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE52
4C117XE64
(57)【要約】
本発明は、患者の身体上に位置付けられる患者を監視するためのIVシステムを提供する。IVシステムは、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するカテーテルに接続される圧力センサと、3)運動信号を測定する運動センサと、4)i)圧力センサから生理学的信号を受信し、ii)運動センサから運動信号を受信し、iii)運動信号を所定の閾値と比較することによって運動信号を処理し、患者が比較的に低い運動度を有するときを決定し、iv)生理学的信号を処理し、処理システムが運動信号が所定の閾値を下回ると決定するときの生理学的パラメータを決定する処理システムとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を監視するための静脈内(「IV」)システムであって、前記IVシステムは、前記患者の身体上に位置付けられており、前記システムは、
前記患者の静脈系の中に挿入されるように構成されたカテーテルと、
前記カテーテルに接続され、前記患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するように構成された圧力センサと、
運動信号を測定するように構成された運動センサと、
処理システムと
を備え、
前記処理システムは、
i)前記圧力センサから前記生理学的信号を受信することと、
ii)前記運動センサから前記運動信号を受信することと、
iii)前記運動信号を所定の閾値と比較することによって前記運動信号を処理し、前記患者が比較的に低い運動度を有するときを決定することと、
iv)前記生理学的信号を処理し、前記処理システムが前記運動信号が前記所定の閾値を下回ると決定するときの生理学的パラメータを決定することと
を行うように構成されている、システム。
【請求項2】
前記運動センサは、加速度計およびジャイロスコープのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記運動センサは、3軸加速度計である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理システムは、前記3軸加速度計の各軸に対応する運動信号を分析することによって、運動ベクトルを計算するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記運動に関する所定の閾値は、0.1Gのベクトル大きさに対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理システムは、前記生理学的信号をデジタル的にフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させるようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理システムは、ハイパスフィルタを用いて前記生理学的信号をデジタル的にフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理システムは、前記フィルタリングされた信号を処理し、前記患者の心拍数および呼吸数を示す信号成分を決定するようにさらに構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理システムは、前記生理学的信号を周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理システムは、FFTを使用して前記生理学的信号を前記周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理システムは、ウェーブレット変換を使用して前記生理学的信号を前記周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理システムは、連続および離散ウェーブレット変換のうちの1つを使用して前記生理学的信号を前記周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
患者を監視するためのIVシステムであって、前記IVシステムは、前記患者の身体上に位置付けられており、前記システムは、
前記患者の静脈系の中に挿入されるように構成されたカテーテルと、
前記カテーテルに接続され、前記患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するように構成された圧力センサと、
運動信号を測定するように構成された運動センサと、
処理システムと
を備え、
前記処理システムは、
i)前記圧力センサから前記生理学的信号を受信することと、
ii)前記運動センサから前記運動信号を受信することと、
iii)前記運動信号を数学モデルと比較することによって前記運動信号を処理し、前記患者の姿勢を決定することと、
iv)前記生理学的信号を処理し、前記処理システムが前記患者が所定の姿勢を有すると決定するときの生理学的パラメータを決定することと
を行うように構成されている、システム。
【請求項14】
前記運動センサは、加速度計およびジャイロスコープのうちの1つである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記運動センサは、3軸加速度計である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理システムは、前記3軸加速度計の各軸に対応する運動信号を分析することによって、運動ベクトルを計算するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記処理システムは、前記運動ベクトルを所定のルックアップテーブルと比較し、前記患者の姿勢を決定するようにさらに構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記処理システムは、前記生理学的信号を周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるようにさらに構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記処理システムは、FFTを使用して前記生理学的信号を前記周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるように構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記処理システムは、ウェーブレット変換を使用して前記生理学的信号を前記周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させるように構成されている、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張および関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が参照することによってその全体として本明細書に組み込まれ、依拠される「PATIENT-MONITORING SYSTEM」と題され、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,494号の優先権および利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に説明される発明は、薬物および流体送達のためのシステム、および、例えば、病院および医療診療所において患者を監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
用語が、語句「本明細書「___」」または類似する文言を使用して本明細書に明確に定義されない限り、その用語の意味をその明らかな意味または通常の意味以外に限定するいかなる意図も、存在しない。任意の用語が、単一の意味と一貫する様式で本書に言及される範囲について、それは、明確化のためにのみ行われ、そのような請求項用語が、その単一の意味に限定されることを意図していない。最後に、請求項要素が、任意の構造の列挙を伴わずに単語「手段」および機能を列挙することによって定義されない限り、任意の請求項要素の範囲が、35 U.S.C.§112(f)の適用に基づいて解釈されることを意図していない。
【0004】
入院患者の適切な処置は、典型的に、以下を要求する:1)静脈内(本明細書では「IV」)カテーテルおよび注入ポンプを使用する薬品および流体の送達;および、2)患者モニタを用いたバイタルサインおよび血行動態パラメータの測定。典型的に、IVカテーテルは、患者の手または腕における静脈内に挿入され、患者モニタは、患者の身体上に装着された(またはその中に挿入される)センサまたは電極に接続する。
【0005】
従来の患者モニタは、典型的に、胴体装着型電極を使用して、心電図(本明細書では「ECG」)およびインピーダンスニューモグラフィ(本明細書では「IP」)波形を測定し、それから、心拍数(本明細書では「HR」)、心拍数変動性(本明細書では「HRV」)、および呼吸数(本明細書では「RR」)が計算される。殆どの従来のモニタは、典型的に、患者の指または耳たぶにクリップ留めされるセンサを用いて、光電式指尖容積脈波(本明細書では「PPG」)波形と呼ばれる光学信号も測定する。そのようなセンサは、これらのPPG波形から血中酸素レベル(本明細書では「SpO2」)および脈拍数(本明細書では「PR」)を計算することができる。より高度なモニタは、典型的に、オシロメトリと呼ばれるカフベースの技法または動脈ラインと呼ばれる患者の動脈系の中に挿入される感圧カテーテルを使用して、血圧(本明細書では「BP」)、とりわけ、収縮期(本明細書では「SYS」)、拡張期(本明細書では「DIA」)、および平均(本明細書では「MAP」)BPも測定することができる。ポータブルおよび身体装着型デバイスのいずれかであり得るデジタル聴診器は、心音および心雑音を示す心音図(本明細書では「PCG」)波形を測定することができる。
【0006】
いくつかの患者モニタは、完全に身体装着型である。これらは、典型的に、ECG、HR、HRV、およびある場合、RRを測定するパッチの形状をとる。そのようなパッチはまた、運動(本明細書では「ACC」)波形を測定する加速度計を含むことができる。アルゴリズムが、ACC波形から患者の姿勢、運動の程度、転倒、および他の関連パラメータを決定することができる。患者は、典型的に、病院において、または代替として、歩行および自宅使用のために、これらのタイプのパッチを装着する。パッチは、典型的に、比較的に短い期間(例えば、数日から数週間)にわたって装着される。それらは、典型的に、無線であり、通常、Bluetooth(登録商標)送受信機等の技術を含み、情報を短距離にわたって二次「ゲートウェイ」デバイスに伝送し、二次デバイスは、典型的に、情報をクラウドベースのシステムに伝送するためのセルラーまたはWi-Fi無線を含む。
【0007】
さらにより複雑な患者モニタは、Swan-Ganzまたは肺動脈カテーテルと呼ばれる侵襲性センサを使用して、一回拍出量(本明細書では「SV」)、心拍出量(本明細書では「CO」)、および心楔入圧等のパラメータを測定する。測定を行うために、これらのセンサは、患者の左心内に位置付けられ、それらは、バルーンカテーテルを使用して、小さい肺血管の中に「楔留め」される。この非常に侵襲性の測定の代替として、患者モニタは、類似するパラメータを測定するために、生体インピーダンスおよび生体リアクタンス等の非侵襲性技法を使用することができる。これらの方法は、身体装着型電極(典型的に、患者の胸部、脚、および/または頸部上に展開される)を展開し、インピーダンスプレチスモグラム(本明細書では「IPG」)および/または生体リアクタンス(本明細書では「BR」)波形を測定する。IPGおよびBR波形の分析は、SV、CO、および胸部インピーダンスをもたらし、それは、患者の胸部内の流体の代理となる(本明細書では「FLUIDS」)。着目すべきこととして、IPG波形とBR波形とは、概して、類似する形状を有し、類似する測定技法を使用して感知され、したがって、本明細書では交換可能に使用される。
【0008】
SV、CO、およびFLUIDSを測定するデバイスは、患者の血液量、流体応答性、および、ある場合、中心静脈圧(本明細書では「CVP」)等の関連メトリックを確立することができる。まとめると、これらのパラメータは、ある医学的条件を診断し、蘇生活動を誘導することができる。しかし、Swan-Ganzおよび肺動脈カテーテルの非常に侵襲的な性質は、不利であり得、高い感染リスクを伴う。加えて、CVP測定値は、循環系が、末梢を犠牲にして中枢循環系の血液量レベルを保護することによって、血液量不均衡(特に、血液量減少)を補償することを試みるとき等、ある急性条件に応答して、変化がより緩慢になり得る。例えば、末梢血管における収縮は、中枢系に対する流体損失の効果を低減させ、それによって、従来のCVP測定において血液損失を一時的に隠し得る。そのようなマスキングは、患者条件の認識および治療の遅れにつながり、それによって、転帰を悪化させ得る。
【0009】
これらおよび他の欠点に対処するために、末梢静脈波形分析(本明細書では「PIVA」)と呼ばれる測定技法が、米国特許出願第14/853,504号(2015年9月14日に出願され、米国特許公開第2016/0073959号(特許文献1)として公開された)およびPCT出願第PCT/US16/16420号(2016年2月3日に出願され、第WO 2016/126856号(特許文献2)として公開された)(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように、開発された。これらの文書は、圧力トランスデューサを特徴とするセンサ(本明細書では「PIVAセンサ」)を説明し、圧力トランスデューサは、患者の静脈系内に挿入された留置カテーテルから信号を受信し、遠隔電子機器にケーブルを通して接続し、遠隔電子機器は、圧力トランスデューサから発生させられた信号を処理する。PIVAセンサは、典型的に、既存のIVライン(生理食塩水点滴装置または注入ポンプに取り付けられたIV管類を含む)を使用して、末梢静脈圧(本明細書では「PVP」)を示す時間依存波形を測定する。PIVAセンサを用いて行われる測定は、典型的に、高速フーリエ変換(本明細書では「FFT」)と呼ばれる方法論を使用して、遠隔コンピュータを用いて実施される周波数ドメインへのPVP波形の数学的変換を特徴とする。FFTを用いて発生させられる周波数ドメインスペクトルの分析は、それぞれ、患者のHRおよびRRを示すRR周波数(本明細書では「F0」)およびHR周波数(本明細書では「F1」)をもたらすことができる。F0およびF1のより詳細な分析、例えば、これらのピークの振幅を決定する、または代替として、最大ピーク振幅を中心とする曲線下の面積を積分するためのコンピュータアルゴリズムの使用は、これらの特徴の「エネルギー」を決定する。これらのエネルギーのさらなる処理は、患者の血液量ステータスの指示をもたらす。そのような測定は、例えば、以下の参考文献(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている:1)Hocking et al.,「Peripheral venous waveform analysis for detecting hemorrhage and iatrogenic volume overload in a porcine model.」,Shock. 2016 Oct;46(4):447-52;2)Sileshi et al.,「Peripheral venous waveform analysis for detecting early hemorrhage:a pilot study.」,Intensive Care Med. 2015 Jun;41(6):1147-8;3)Miles et al.,「Peripheral intravenous volume analysis(PIVA) for quantitating volume overload in patients hospitalized with acute decompensated heart failure - a pilot study.」,J Card Fail. 2018 Aug;24(8):525-532;および、4)Hocking et al.,「Peripheral i.v. analysis(PIVA) of venous waveforms for volume assessment in patients undergoing haemodialysis.」,Br J Anaesth. 2017 Dec 1;119(6):1135-1140。
【0010】
残念ながら、PIVAセンサを用いた典型的な測定中、HRおよびRR事象によって誘発されるPVP波形(典型的に、5~20mmHg)は、それらの動脈圧の相対物(典型的に、60~150mmHg)よりはるかに弱い。これは、従来の圧力トランスデューサによって測定される時間依存PVP波形における対応する信号の大きさが、多くの場合、非常に弱い(典型的に、5~50 V)ことを意味する。加えて、PVP波形は、典型的に、患者から遠隔に位置する電子システムを用いて増幅され、調整され、デジタル化され、最終的に処理される。したがって、これらのステップに先立って、波形のアナログバージョンが、ケーブルを通して進行し、それは、それらを減衰させ、(例えば、運動に起因して)雑音を追加し得る。また、ある場合、PVP波形は、単純に、F0およびF1に対応するシグネチャを欠く。または、一方の一次周波数のピークは、他方の一次周波数の「高調波」(すなわち、所与の周波数の整数倍)によって不明瞭にされる。これは、自動化医療デバイスがF0およびF1およびこれらの特徴に関連付けられるエネルギーを正確に決定することを困難または不可能にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0073959号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/126856号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述を考慮して、従来のPIVAセンサが弱い雑音の多いPVP波形およびF0およびF1の不適正な検出に関連する従来の問題を克服するように、従来のPIVAセンサを改良することが、有益であろう。そのようなシステムは、患者が病院および医療診療所において監視される方法を改良し得る。これらおよび他の欠陥を解決するために、本明細書に説明されるものは、1)圧力センサが(例えば、患者の身体の直上で)それらを検出した直後にPVP波形を増幅、フィルタリング、およびデジタル化する留置静脈カテーテルに近接近して位置する回路基板、および、2)F0およびF1を位置特定することを支援し、次いで、これらの特徴を処理し、それらの対応するエネルギーを決定し得るHRおよびRRを含むバイタルサインの正確な独立した測定を行う胸部装着型生理学的センサ(本明細書では「パッチセンサ」)を特徴とする強化され、改良されたPIVAセンサ(本明細書では「iPIVAセンサ」)である。本発明によるiPIVAセンサは、これらの改良点のうちの一方または両方を含むことができる。加えて、本発明によると、iPIVAセンサからの測定は、血行動態パラメータ、例えば、SV、CO、およびFLUIDSの独立した測定(パッチセンサまたは匹敵する患者モニタを用いて行われ得る)と組み合わせられ、患者の流体ステータスの改良された理解をもたらすことができる。最終的に、これらの技術の組み合わせ、すなわち、バイタルサインおよび血行動態パラメータの両方を測定する補完パッチセンサと組み合わせられる新規の信号調整回路基板を特徴とするiPIVAセンサは、患者が病院および医療診療所において監視および蘇生される方法を改良し得る。
【0013】
本明細書に説明されるiPIVAセンサは、従来のIVシステムと協働するように設計され、留置カテーテルを用いて患者に接続し、それらの両方が、標準的機器である。カテーテルは、患者の身体に近接して、またはその上に、典型的に、患者の腕または手の上に装着され、アナログPVP波形を増幅、フィルタリング、およびデジタル化する複雑な回路網を特徴とする信号調整回路基板を封入する筐体を含む。回路基板は、デジタル化信号を処理および記憶し、運動を測定し(例えば、加速度計および/またはジャイロスコープ)、情報を無線で伝送する(例えば、Bluetooth(登録商標)送信機)ためのコンポーネントも含み得る。このように、回路基板は、パッチセンサからのPVP波形および補完情報を集合的に分析し得る遠隔プロセッサ(例えば、サーバ、ゲートウェイ、タブレット、スマートフォン、コンピュータ、注入ポンプ、またはそれらのある組み合わせ)と統合することができる。
【0014】
本明細書に説明されるiPIVAセンサは、複数のデバイスを伴い得、遂行するために数分かかり得るバイタルサインおよび血行動態パラメータの従来的な測定を簡略化する。iPIVAセンサおよびパッチセンサの両方と無線で結合する遠隔プロセッサは、加えて、病院電子医療記録(本明細書では「EMR」)システム等の既存の病院インフラストラクチャおよび通知システムと統合することができる。そのようなシステムは、患者の条件の変化を介護者に警告およびアラートし、それによって、介護者が介入することを可能にすることができる。
【0015】
パッチセンサは、SV、CO、およびFLUIDS等の複雑な血行動態パラメータとともに、HR、HRV、RR、SpO2、TEMP、およびBP等のバイタルサインを測定する。BPの測定は、典型的に、カフなしであり、オシロメトリに基づくもの等のカフベースのデバイスを用いて較正される。パッチセンサは、典型的に、患者の胸部に接着し、上で言及されるパラメータを連続的かつ非侵襲的に測定する身体装着型デバイスである。胸部は、そのような測定が病院ベースの患者に対して行われるときの理想的な場所であり、それは、通常、容易にアクセス可能であり、そこに設置されたセンサは、典型的に、邪魔にならず、快適であり、手(典型的に、比較的に大量の運動を受ける)から除去される。パッチセンサは、小さく、したがって、種々の他の患者監視デバイスよりかなり目立たず、邪魔にならないので、それを装着することに対する感情的不快感は、低減させられ、それによって、長期のコンプライアンス、治癒、および全般的な患者の健康を促進することができる。
【0016】
代替として、パッチセンサの代わりに、HR、RR、および血行動態パラメータの独立した測定を提供するシステムは、Newton Center,MA,USAに拠点を置くCheetah Medicalによって製造されるStarlingTM SV患者モニタ等の従来のバイタルサインまたは血行動態モニタであり得る。
【0017】
パッチセンサは、運動検出加速度計およびジャイロスコープも含むことができ、それは、姿勢、運動の程度、活動レベル、呼吸が誘発する胸部の持ち上がり、および転倒等の運動関連パラメータを決定することができる。そのようなパラメータは、例えば、入院中の患者の姿勢または移動を決定し得る。パッチセンサは、運動関連パラメータを処理する追加のアルゴリズムを動作させ、運動が最小化されているとき、または所定の閾値を下回るときにのみ、パッチセンサがバイタルサインおよび血行動態パラメータを測定することを可能にし、それによって、アーチファクトを低減させることができる。さらに、パッチセンサは、バイタルサインおよび血行動態パラメータに関する計算の正確度を改良するために、姿勢等の運動関連パラメータを推定する。
【0018】
パッチセンサの底面上の使い捨て電極は、煩わしいケーブルを要求することなく、それを患者の身体に固定する。実施形態において、そのような電極は、磁石を用いてセンサに容易に接続し(およびそれから接続解除し)、したがって、センサが、それが除去される場合、適切な位置に容易に迅速に戻ることを可能にする。パッチセンサは、典型的に、軽量であり、約20グラムの重さである。これは、従来のケーブルを用いて、または無線機構を使用して再充電され得るLiイオンバッテリを用いて給電される。
【0019】
上記を前提として、一側面では、本発明は、患者の身体上に位置付けられる患者を監視するためのIVシステムを提供する。IVシステムは、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するカテーテルに接続される圧力センサと、3)運動信号を測定する運動センサと、4)i)圧力センサから生理学的信号を受信し、ii)運動センサから運動信号を受信し、iii)それらを所定の閾値と比較することによって運動信号を処理し、患者が比較的に低い運動度を有するときを決定し、iv)生理学的信号を処理し、処理システムが運動信号が所定の閾値を下回ると決定するときの生理学的パラメータを決定する処理システムとを含む。
【0020】
別の側面では、運動センサは、患者の運動とは対照的に、患者の姿勢を測定するために使用され、処理システムは、患者が所定の姿勢にあるときの生理学的パラメータを決定する。
【0021】
別の側面では、本発明は、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するカテーテルに接続される圧力センサと、3)運動信号を測定する運動センサと、4)運動信号が所定の閾値を下回るときのみ、生理学的信号またはこれらの信号から計算されたパラメータを伝送する処理システムとを含む患者を監視するためのIVシステムを提供する。
【0022】
実施形態において、運動センサは、運動センサは、加速度計(例えば、3軸加速度計)および/またはジャイロスコープである。実施形態において、処理システムは、3軸加速度計の各軸に対応する運動信号を分析することによって、運動ベクトルを計算する。患者の運動が激しすぎ、正確な測定を行うことができないかどうかを決定するために使用される所定の運動閾値は、典型的に、0.1Gのベクトル大きさに対応する。他の実施形態において、処理システムは、運動ベクトルを所定のルックアップテーブルと比較し、患者の姿勢を決定する。
【0023】
他の実施形態において、処理システムは、(例えば、デジタルハイパスフィルタを用いて)信号をデジタル的にフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させる。これは、次いで、フィルタリングされた信号を処理し、患者の心拍数/呼吸数を決定する。実施形態において、処理システムは、加えて、患者の心拍数および呼吸数を示す信号成分を処理し、患者の流体ステータスを示す生理学的パラメータ(例えば、楔入圧、中心静脈圧、血液量、流体量、および肺動脈圧)を決定する。
【0024】
実施形態において、処理システムは、生理学的パラメータを決定することに先立って、信号を周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させる。変換のための方法は、典型的に、FFT、連続ウェーブレット変換、または離散ウェーブレット変換である。
【0025】
別の側面では、本発明は、患者を監視すると同時にIV流体を患者に供給するためのシステムを提供する。システムは、患者の身体上に位置付けられる筐体を特徴とする。筐体は、患者の静脈系の中に挿入され、IV流体を供給するカテーテルと、筐体に接続され、患者の静脈系内の圧力を示す時間依存圧力信号を測定する圧力センサとを含む。筐体は、圧力センサに接続され、圧力センサが発生させる時間依存信号を受信する回路システムも含む。回路システムは、i)時間依存圧力信号を増幅し、増幅された信号を発生させる差動増幅器と、ii)増幅された信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させるローパスフィルタと、iii)フィルタリングされた信号を増幅し、2回増幅された信号を発生させる二次増幅器システムとを特徴とする。
【0026】
実施形態において、差動増幅器、ローパスフィルタ、および二次増幅器は、上で説明されるものと異なる回路内に任意の順序で位置付けられることができる。
【0027】
別の側面では、システムは、加えて、2回増幅された信号を分析し、患者に対応するバイタルサイン(例えば、HR、RR)を推定するコンピュータコードを動作させる処理システムを含む。また別の側面では、システムは、加えて、遠隔受信機にバイタルサインのデジタル表現を伝送する無線送信機と、電力を圧力センサ、回路システム、処理システム、および無線送信機に供給する電源とを含む。
【0028】
実施形態において、IVシステムは、回路システムおよび圧力センサを完全に封入し、カテーテルに取り付けられた筐体を含む。カテーテルは、例えば、患者の手または腕上に装着されることができる。
【0029】
実施形態において、差動増幅器は、少なくとも10倍の利得を特徴とする。ローパスフィルタは、典型的に、増幅された信号から、心拍数および呼吸数成分を含む信号成分を分離する。ローパスフィルタは、典型的に、10~30Hzのフィルタカットオフを発生させる回路コンポーネントを含む。他の実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号を受信し、応答して、2回フィルタリングされた信号を発生させるハイパスフィルタを含む。この場合、ハイパスフィルタは、典型的に、0.01~1Hzのフィルタカットオフを発生させる回路コンポーネントを含む。
【0030】
実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号を受信し、応答して、3回フィルタリングされた信号を発生させる二次ローパスフィルタを含む。この場合、二次ローパスフィルタは、典型的に、10~30Hzのフィルタカットオフを発生させる回路コンポーネントを含む。
【0031】
他の実施形態において、回路システムは、加えて、加速度計またはジャイロスコープ等の運動センサを含む。他の実施形態において、回路システムは、加えて、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、またはセルラー送信機等の無線送信機を含む。他の実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号またはそれから導出された信号を処理するためのアルゴリズムを動作させるマイクロプロセッサを含む。また、なおも他の実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号またはそれから導出された信号のデジタル表現を記憶するフラッシュメモリシステムを含む。
【0032】
別の側面では、本発明は、患者に接続され、患者の流体ステータスを示すパラメータの第1の組を測定する生体インピーダンスおよび/または生体リアクタンス感知要素を特徴とする生理学的センサを含む患者を監視するためのシステムを提供する。システムは、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)カテーテルから流体を受け取り、応答して、患者の静脈系内の圧力を示す波形を測定する圧力センサと、3)波形を受信し、それ、または。それから導出された新しい信号を処理し、患者の流体ステータスを示すパラメータの第2の組を推定する第1の処理システムとを特徴とするIVシステムも含む。第2の処理システムが、次いで、パラメータの第1および第2の組、または、それらから導出された新しいパラメータを受信し、それらを集合的に処理し、患者からの生理学的パラメータを推定する。
【0033】
別の側面では、本発明は、生理学的センサのみが患者上に装着される類似するシステムを提供する。それは、生体インピーダンスおよび/または生体リアクタンス感知要素と、第1の処理システムとを含む。
【0034】
また別の側面では、本発明は、1)患者に接続され、第1の時間依存波形を測定する生体インピーダンスおよび/または生体リアクタンス感知要素と、2)第2の時間依存波形を測定する圧力センサを特徴とする患者の静脈系内に挿入されるIVシステムと、3)第1および第2の波形の両方から計算されたパラメータを分析し、それらを集合的に処理し、患者からの生理学的パラメータを推定する処理システムとを含む患者を監視するためのシステムを提供する。
【0035】
実施形態において、第2の処理システムは、コンピュータ、タブレットコンピュータ、およびモバイル電話から成る群から選択される。システムは、パラメータの第1の組をパラメータの第2の組を比較し、生理学的パラメータを推定するアルゴリズムを動作させることができる。他の実施形態において、生理学的センサは、第1の無線送信機を含み、IVシステムは、第2の無線送信機を含み、第2の処理システムは、第3の無線送信機を含む。ここでは、第3の無線送信機は、第1および第2の無線送信機の両方と無線で通信することができる。
【0036】
他の実施形態において、患者の流体ステータスを示すパラメータの第1の組は、BP、SpO2、SV、拍出指数、CO、心指数、胸部インピーダンス、FLUIDS、細胞間液、および細胞外液を含む群から選択される。他の実施形態において、パラメータの第2の組は、F0、F1、F0およびF1に関連付けられるエネルギー、F0およびF1の数学的組み合わせ、およびこれらから決定されるパラメータを含む群から選択される。
【0037】
第2の処理システムは、パラメータの第1および第2の組を集合的に処理するための線形数学モデルを動作させることができる。代替として、それは、パラメータの第1および第2の組を集合的に処理するための人工知能に基づくアルゴリズムを動作させることができる。
【0038】
実施形態において、第2の処理システムによって推定される生理学的パラメータは、患者の流体ステータスを示す。例えば、推定される生理学的パラメータは、患者の血液量、楔入圧、および肺動脈圧のうちの1つであり得る。
【0039】
別の側面では、本発明は、1)患者に接続され、患者の生理学を示す信号の第1の組を測定する感知要素を特徴とする生理学的センサと、2)i)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、ii)カテーテルからの流体を感知し、応答して、患者の静脈系内の圧力を示す信号の第2の組を測定する圧力センサとを特徴とするIVシステムと、3)信号の第1および第2の組を受信し、それら、または、それらから導出された新しい信号を集合的に処理し、患者のステータスを示す生理学的パラメータを推定する処理システムとを含む患者を監視するためのシステムを提供する。
【0040】
別の側面では、本発明は、全ての要素、すなわち、生理学的センサ、圧力センサ、および処理システムのみが患者の身体上に装着される類似するシステムを提供する。
【0041】
また別の側面では、本発明は、1)心拍数および/または呼吸数を測定する感知要素とともに患者の身体上に装着される生理学的センサと、2)患者の静脈系の中に挿入され、流体を収集するカテーテルと、3)カテーテルに接続され、流体を感知し、応答して、患者の静脈系内の圧力を示す信号を測定する圧力センサと、4)生理学的センサから心拍数および/または呼吸数の値を受信し、この値および患者の静脈系内の圧力を示す信号、または、これらから導出された新しい信号を集合的に処理し、患者のステータスを示す生理学的パラメータを推定する処理システムとを特徴とする患者を監視するためのシステムを提供する。
【0042】
実施形態において、生理学的センサは、ECG波形を測定し、次いで、これを処理し、HRの値を決定する。生理学的センサは、IPGまたはBR波形も測定し、次いで、これを処理し、RRの値を決定することができる。これらの実施形態において、HRおよびRRの両方は、本明細書に使用されるように、「信号の第1の組」を表す。
【0043】
実施形態において、圧力センサは、患者の静脈系内の圧力を示す時間依存圧力波形を測定し、これは、本明細書に使用されるように、「信号の第2の組」を表す。処理システムは、次いで、アルゴリズム(例えば、FFT、連続ウェーブレット変換、または離散ウェーブレット変換を実施するためのアルゴリズム)を用いて時間依存波形を処理し、周波数ドメインスペクトルを発生させるように構成されることができる。一実施形態において、処理システムは、次いで、HRの値および周波数ドメインスペクトルを集合的に処理し、HRに対応する周波数ドメインスペクトル(すなわち、F1)における特徴を決定し、それは、次いで、F1またはそれから推定されたパラメータ(例えば、本明細書に説明されるように、その振幅または対応するエネルギー)を処理し、患者のステータスを示す生理学的パラメータを推定する。関連する実施形態において、処理システムは、RRの値および周波数ドメインスペクトルを集合的に処理し、RRに対応する周波数ドメインスペクトル(すなわち、F0)における特徴を決定し、それは、次いで、F0またはそれから推定されたパラメータ(例えば、本明細書に説明されるように、その振幅または対応するエネルギー)を処理し、患者のステータスを示す生理学的パラメータを推定する。また別の実施形態において、F0およびF1の両方、または、それらから導出されたパラメータは、患者のステータスを示す生理学的パラメータを推定するために集合的に処理される。このパラメータは、例えば、楔入圧、中心静脈圧、肺動脈圧、血液量、流体量、または関連する値であり得る。
【0044】
別の側面では、本発明は、患者の身体上に位置付けられる患者を監視するためのIVシステムを提供する。システムは、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)カテーテルに接続され、患者の静脈系内の圧力を示す信号を測定する圧力センサと、3)圧力センサから信号を受信し、応答して、それらを処理し、生理学的パラメータを測定する処理システムとを特徴とする。
【0045】
別の側面では、本発明は、患者の身体上に位置付けられる患者を監視するためのIVシステムを提供する。システムは、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)カテーテルに接続され、患者の静脈系内の圧力を示す信号を測定する圧力センサと、3)圧力センサから信号を受信し、それらを処理し、患者の心拍数および呼吸数のうちの一方(または両方)を示す信号成分を決定する処理システムとを特徴とする。
【0046】
また別の側面では、本発明は、患者の身体上に位置付けられる患者を監視するためのシステムを提供する。システムは、1)患者の静脈系の中に挿入され、流体を収集するカテーテルと、2)カテーテルに接続され、流体を感知し、応答して、患者の静脈系内の圧力を示す信号を測定する圧力センサと、3)圧力センサから信号を受信し、応答して、それらを処理し、患者の心拍数および呼吸数のうちの一方(または両方)を決定する処理システムとを特徴とする。
【0047】
実施形態において、処理システムは、(例えば、デジタルハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、および/またはバンドパスフィルタを用いて)信号をデジタル的にフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させる。それは、次いで、フィルタリングされた信号を処理し、患者の心拍数/呼吸数を決定する。実施形態において、処理システムは、加えて、患者の心拍数および呼吸数を示す信号成分を処理し、患者の流体ステータスを示す生理学的パラメータ(例えば、F0、F1、F0に関連付けられるエネルギー、F1に関連付けられるエネルギー、楔入圧、中心静脈圧、血液量、流体量、および肺動脈圧)を決定する。
【0048】
実施形態において、処理システムは、信号を周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させる。変換のための方法は、典型的に、FFT、連続ウェーブレット変換(本明細書では「CWT」)、または離散ウェーブレット変換(本明細書では「DWT」)である。
【0049】
実施形態において、処理システムは、マイクロプロセッサである。マイクロプロセッサは、典型的に、コンピュータプログラムを記憶するランダムアクセスメモリと、圧力センサからの信号のデジタル表現を記憶するフラッシュメモリとを含む。他のなおも他の実施形態において、処理システムは、加えて、加速度計またはジャイロスコープ等の運動センサを含む。他の実施形態において、処理システムは、加えて、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、またはセルラー送信機等の無線送信機を含む。
【0050】
別の側面では、本発明は、患者を監視し、患者の身体上にその全体として位置付けられるIVシステムを提供する。IVシステムは、1)患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、2)カテーテルに接続され、患者の静脈系内の圧力を示す信号を測定する圧力センサと、3)圧力センサから信号を受信する回路システムとを含む。回路システムは、i)信号を増幅し、増幅された信号を発生させる差動増幅器と、ii)増幅された信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させるローパスフィルタと、iii)フィルタリングされた信号を増幅し、2回増幅された信号を発生させる二次増幅器システムとを特徴とする。
【0051】
別の側面では、本発明は、同様に患者の身体上にその全体として位置付けられ、上で説明されるものに類似するカテーテルと、圧力センサと、回路システムとを含む類似するIVシステムを提供する。ここでは、回路システムは、i)信号を増幅し、増幅された信号を発生させる増幅器と、ii)増幅された信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号を発生させるフィルタと、iii)フィルタリングされた信号を増幅し、2回増幅された信号を発生させる二次増幅器システムと、iv)2回増幅された信号またはそれから導出された信号をデジタル化するアナログ/デジタルコンバータとを特徴とする。
【0052】
実施形態において、上で説明される増幅器、フィルタ、および二次フィルタは、回路システム内に任意の順序で配置されることができる。
【0053】
また別の側面では、本発明は、患者の静脈系の中に挿入されるカテーテルと、患者の身体上にその全体として位置付けられ、1)カテーテルからの流体を感知し、応答して、圧力信号を測定するように構成された圧力センサと、2)圧力信号を増幅、フィルタリング、およびデジタル化し、患者のHRおよびRRを示す信号成分を識別する回路要素を伴う回路システムとを封入する筐体とを特徴とする患者を監視するためのシステムを提供する。
【0054】
実施形態において、IVシステムは、回路システムおよび圧力センサを完全に封入し、カテーテルに取り付けられた筐体を含む。筐体は、例えば、患者の手または腕上に装着されることができる。例えば、それは、バンドまたは接着剤を使用してこれらの身体部分に取り付けられることができる。
【0055】
実施形態において、差動増幅器は、少なくとも10倍の利得を特徴とする。ローパスフィルタは、典型的に、増幅された信号を、HRおよびRRの両方に関連する成分を含む第1の増幅信号成分およびこれらの成分を欠く第2の増幅信号成分に分離する。ローパスフィルタは、典型的に、10~30Hzのフィルタカットオフを発生させる回路コンポーネントを含む。他の実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号を受信し、応答して、2回フィルタリングされた信号を発生させるハイパスフィルタを含む。この場合、ハイパスフィルタは、典型的に、0.01~1Hzのフィルタカットオフを発生させる回路コンポーネントを含む。
【0056】
実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号を受信し、応答して、3回フィルタリングされた信号を発生させる二次ローパスフィルタを含む。この場合、二次ローパスフィルタは、典型的に、10~30Hzのフィルタカットオフを発生させる回路コンポーネントを含む。
【0057】
他の実施形態において、回路システムは、加えて、加速度計またはジャイロスコープ等の運動センサを含む。他の実施形態において、回路システムは、加えて、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、またはセルラー送信機等の無線送信機を含む。他の実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号またはそれから導出された信号を処理するためのアルゴリズムを動作させるマイクロプロセッサを含む。なおも他の実施形態において、回路システムは、加えて、2回増幅された信号またはそれから導出された信号のデジタル表現を記憶するフラッシュメモリシステムを含む。
【0058】
本発明の利点は、以下の詳細な説明および請求項から明白となるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、パッチセンサおよびiPIVAセンサの両方を特徴とする本発明のシステムの図面である。
【0060】
図2A図2Aは、図1のiPIVAセンサが患者に取り付けられる方法を示す概略図面である。
【0061】
図2B図2Bは、iPIVAセンサにおいて使用される回路基板を封入する腕装着型筐体の機械的図面である。
【0062】
図2C図2Cは、図2Bに示される腕装着型筐体によって封入される回路基板の画像である。
【0063】
図2図2Dおよび2Eは、それぞれ、図2Cに示される画像によって示される回路基板の画像および写真である。
【0064】
図3図3は、PVP-ACおよびPVP-DC波形をフィルタリング、増幅、およびデジタル化するための回路を特徴とする図2Dおよび2Eの回路基板の電気概略図である。
【0065】
図4図4Aは、図3の電気概略図によって説明される第1の増幅器段階の後に測定される第1のPVP-AC波形の時間依存プロットである。図4Bは、図3の電気概略図によって説明される第2の増幅器/フィルタ段階の後に測定される第2のPVP-AC波形の時間依存プロットである。図4Cは、PVP-AC波形を処理するための回路を特徴とする図3の電気概略図から得られる回路基板の電気概略図である。
【0066】
図5図5は、図3の電気概略図によって説明され、図2Eの回路基板上に製作される、フィルタおよび増幅器の理論的な理想的応答と比較される図2Eの回路基板を用いて測定されるPVP-ACおよびPVP-DC信号の対数の周波数依存プロットである。
【0067】
図6-1】図6Aは、本発明によるシステムを用いて30分間にわたって患者から測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットである。図6B、6C、および6Dは、図6Aのプロットから得られ、それぞれ、420、780、および1,310秒の期間で開始される、PVP-AC波形(すなわち、波形断片)の時間依存プロットである。
【0068】
図6-2】図6E、6F、および6Gは、それぞれ、図6B、6C、および6Dに示される波形断片のFFTを表す、周波数ドメインスペクトルである。
【0069】
図7図7は、図1のiPIVA生理学的センサの機械的図面である。
【0070】
図8図8A-8Eは、図1のパッチセンサおよびiPIVAセンサによって同時に測定されるECG、PPG、IPG/BR、PCG、およびPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0071】
図9図9A、9B、および9Cは、それぞれ、本発明によるiPIVA生理学的センサの底面、上面、および分解図の機械的図面である。
【0072】
図10図10A、10B、および10Cは、それぞれ、本発明によるiPIVA生理学的センサの実施形態を装着する患者の概略図面、図10AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPPG波形の時間依存プロット、および図10AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0073】
図11図11A、11B、および11Cは、それぞれ、本発明によるiPIVA生理学的センサの実施形態を装着する患者の概略図面、図11AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPPG波形の時間依存プロット、および図11AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0074】
図12図12A、12B、12C、および12Dは、それぞれ、本発明によるiPIVA生理学的センサの実施形態を装着する患者の概略図面、図12AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPPG波形の時間依存プロット、図12AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPCG波形の時間依存プロット、および図12AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0075】
図13図13A、13B、13C、13D、および13Eは、それぞれ、本発明によるiPIVA生理学的センサの実施形態を装着する患者の概略図面、図13AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるECG波形の時間依存プロット、図13AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPPG波形の時間依存プロット、図13AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるIPG/BR波形の時間依存プロット、および図13AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0076】
図14図14A、14B、14C、14D、14E、および14Fは、それぞれ、本発明によるiPIVA生理学的センサの実施形態を装着する患者の概略図面、図14AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるECG波形の時間依存プロット、図14AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPPG波形の時間依存プロット、図14AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるIPG/BR波形の時間依存プロット、図14AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPCG波形の時間依存プロット、および図14AのiPIVA生理学的センサを用いて測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0077】
図15-1】図15Aは、患者を監視するためにiPIVAおよびパッチセンサの両方からの信号を処理する図1のシステムによって使用されるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0078】
図15-2】図15Bは、それぞれ、図8A、8B、および8Cに示されるECG、PPG、およびIPG/BR波形の時間依存プロットである。
【0079】
図15-3】図15Cは、iPIVAセンサを用いて測定されるPVP-AC波形(図15Aのフローチャートでは「PVP-ACtime」と称される)の時間依存プロットである。図15Dは、図15CのPVP-AC波形の時間依存プロットから得られる波形断片(図15Aのフローチャートでは「PVP-ACtime,segment」と称される)の時間依存プロットである。
【0080】
図15-4】図15Eは、図15Cに示される時間ドメイン波形断片のDWTのアンサンブル平均を示す周波数ドメインスペクトル(「PVP-ACfrequency,segment,ave」と称される)である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下の文章は、多数の異なる実施形態の詳細な説明を記載するが、本明細書に説明される本発明の法的範囲が、本特許の終わりに記載される請求項の言語によって定義されることを理解されたい。詳細な説明は、例示的としてのみ解釈されるものであり、それは、これが不可能ではないにしても、非実践的であろうから、全ての可能な実施形態を説明するわけではない。当業者は、多数の代替実施形態を実装し得、それは、依然として、請求項の範囲内に該当するであろう。
【0082】
(iPIVAセンサ)
図1を参照すると、iPIVA生理学的センサ70と協働するiPIVAセンサ15を組み込むIVシステム19を特徴とするシステム10は、病床24に配置される患者11からのバイタルサインおよび血行動態パラメータを特性評価する。iPIVAセンサ15は、PVP信号を増幅、フィルタリング、およびデジタル化するように構成されるガラス繊維回路基板(図2Bおよび2Dに示され、下記に詳細に説明される)を封入する腕装着型筐体20を含む。腕装着型筐体20は、患者の手または腕における静脈の中に挿入される静脈カテーテル21で終端する。遠隔プロセッサ36(例えば、タブレットコンピュータまたは匹敵する機能性を伴うデバイス)は、ケーブル22を通して腕装着型筐体20に接続し、無線インターフェース(例えば、Bluetooth(登録商標))を通してiPIVA生理学的センサ70に接続する。実施形態において、遠隔プロセッサ36は、有線(例えば、ケーブル)または無線(例えば、Bluetooth(登録商標))手段を通して腕装着型筐体20およびiPIVA生理学的センサ70の両方に接続することができる。測定中、遠隔プロセッサ36は、iPIVAセンサ15からのPVP信号およびiPIVA生理学的センサ70からのバイタルサインおよび血行動態パラメータを受信し、下記に詳細に説明されるようにそれらを集合的に分析し、患者を監視する。
【0083】
iPIVAセンサ15およびiPIVA生理学的センサ70の両方が、しっかりと結合され、IVシステム19内に統合される。これらのコンポーネントの組み合わせは、それらが測定する情報の集合的分析(例えば、遠隔プロセッサによる)とともに、本明細書において説明される本発明の焦点である。より具体的に、測定中、iPIVA生理学的センサ70は、患者のバイタルサイン(例えば、HR、HRV、RR、BP、SpO2、TEMP)および血行動態パラメータ(SV、CO、FLUIDS)を測定する一方、iPIVAセンサ15は、PVP波形を測定し、PVP波形は、処理を用いてF0およびF1をもたらす。これらのデータセットのデジタルバージョンが、後続処理のために遠隔プロセッサ36に流れる。例えば、実施形態において、遠隔プロセッサ36は、デジタル化PVP波形を分析し、FFT、CWT、およびDWT等の技法を使用して、それらの周波数ドメイン変換を計算し、周波数ドメインスペクトルをもたらす。これは、次いで、iPIVA生理学的センサ70からのHRおよびRR値を使用し、周波数ドメインスペクトルからF0およびF1を検出し、次いで、これらの特徴の関連付けられるエネルギーを決定し、患者の流体ステータスを示すパラメータ(例えば、楔入圧)を推定する。実施形態において、F0およびF1に関連付けられるエネルギーは、iPIVA生理学的センサからの測定値とともに、図15Aを参照して下でより詳細に説明されるように、肺動脈圧および血液量等の患者の流体ステータスに関連する他のパラメータを推定するために使用されることができる。遠隔プロセッサは、アイコン39によって示されるように、アンテナ57を通して病院のEMRシステムに情報を送信する内部無線送信機(例えば、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fi送信機)も含むことができる。それは、iPIVAセンサ15およびiPIVA生理学的センサ70によって測定される生理学的パラメータが、ある所定の閾値を上回る、または下回る患者のステータス傾向を示すとき、オーディオおよび/または視覚的「アラーム」および「アラート」を発生させ、それによって、患者が代償不全になっていることを示すこともできる。
【0084】
IVシステム19は、患者のための医薬化合物および/または流体(本明細書では「薬品」17)を含む、バッグ16を特徴とする。バッグ16は、第1の管14を通して注入ポンプ12に接続する。標準的IV支柱28が、バッグ16、注入ポンプ12、および遠隔プロセッサ36を支持する。注入ポンプ12の正面パネル上のディスプレイ13は、患者に送達される薬品のタイプ、その流量、測定時間等を示す。薬品17は、バッグ16から第1の管14を通して注入ポンプ12の中に通過する。注入ポンプ12から、薬品17は、適切に計測制御され、第2の管18を通して、コネクタ58およびケーブル区画42を通して、腕装着型筐体20の中に通過し、最後に、静脈カテーテル21を通して、患者の静脈系23の中に通過する。腕装着型筐体20は、典型的に、例えば、医療用テープ等の接着剤または使い捨て電極を使用して、患者の腕または手に貼り付けられる。
【0085】
静脈カテーテル21は、標準的静脈アクセスデバイスであり得、したがって、針、カテーテル、カニューレ、または、カテーテル21と患者の末梢静脈系23との間の流体接続を確立する他の手段を含み得る。静脈アクセスデバイスは、静脈カテーテル21に接続される別個のコンポーネントであり得るか、または、それの一体部分として形成され得る。このように、IVシステム19は、薬品17を患者の静脈系23に供給する一方、圧力測定システムを特徴とし、下でより詳細に説明されるiPIVAセンサ15およびiPIVA生理学的センサ70は、同時に、患者のPVP、バイタルサイン、および血行動態パラメータに関連する信号を測定する。
【0086】
重要なこととして、下でより詳細に説明されるように、腕装着型筐体20は、それが患者の身体に近接して(またはその直上に)展開されている間、患者の循環系(特に、静脈系)と常に「流体接続」するように設計される。それは、電子システムを特徴とし、電子システムは、患者の静脈系内のアナログ圧力信号を測定し、PVP波形を発生させ、次いで、これらを増幅およびフィルタリングし、それらの信号対雑音比を最適化する。腕装着型筐体内のアナログ/デジタルコンバータは、ケーブルを通してそれらを伝送することに先立って、アナログPVP波形をデジタル化し、それによって、通常、伝送されるアナログ信号に影響を及ぼし、最終的に、下流で測定されるF0およびF1(およびそれらの関連付けられるエネルギー)の値に不正確さを導入するであろういかなる雑音(例えば、ケーブルの運動によって引き起こされる)も最小化する。とりわけ、この設計は、PVP波形が最初に検出された場所と、次いで処理およびデジタル化される場所との間に比較的に短い伝導経路を提供し、最終的に、これは、楔入圧(および実施形態において、肺動脈圧(特に、この圧力に対する拡張期成分)、血液量、および他の流体関連パラメータ)の非常に正確な値をもたらす可能性がより高い信号をもたらす。
【0087】
図2A-Dは、腕装着型筐体20、その動作の方法、およびその中に含まれる種々のコンポーネントをより詳細に示す。筐体20は、患者に近接して、またはその上に快適に載りながら、1)IVシステムからの流体(および/または薬品)が患者の静脈系の中に(図2Aの矢印25によって示されるように)流動することを可能にし(図2Aのボックス27)、2)圧力センサを用いて患者の静脈系からの圧力信号を測定し(図2Aのボックス29)、3)アナログ増幅器およびフィルタとして機能する回路を特徴とする小規模印刷回路基板を用いて圧力信号をフィルタリング/増幅し(図2Aのボックス31)、4)アナログ/デジタルコンバータを用いてフィルタリング/増幅された信号をデジタル化し(図2Aのボックス33)、5)遠隔プロセッサによるさらなる処理のためにシリアルプロトコル(例えば、SPI、I2C)を使用してデジタル化信号を伝送する(図2Aの矢印35)ように設計される。
【0088】
図2Bおよび2Cは、それぞれ、本発明による回路基板62を封入する腕装着型筐体20の機械的図面と、第2の管18(IVシステムから薬品を受け取る)およびケーブル22(信号を遠隔プロセッサに伝送する)に接続される腕装着型筐体20の写真とを示す。具体的に、回路基板62は、集積回路(本明細書では「IC」)および別々の電気コンポーネントの集合を支援し、それらは、協働しながら、図2Aに図式的に示される機能を実施し、図3に示され、下でより詳細に説明される電気概略図に従って、回路基板62上に展開される。回路基板62は、筐体の遠位端上の背面パネル64を通して、短いケーブル区画37に接続し、ケーブル区画37は、マルチピンコネクタ(図に図示せず)で終端され、オーバーモールド54によって封入され、マルチピンコネクタは、類似するオーバーモールド56によって封入される対応するコネクタ(同様に図に図示せず)と篏合する。オーバーモールド56は、ケーブル22に接続し、それは、順に、遠隔プロセッサ36に接続する。この機構では、ケーブル22は、例えば、患者が移動させられる場合、または新しい注入システムに接続される場合、腕装着型筐体20から容易に取り外されることができる。ケーブル22は、下でより詳細に説明されるように、電力(5V、3.3V、GND)を回路基板に供給し、加えて、後続処理のためにデジタル化PVP波形をシリアルプロトコル(例えば、SPI、I2C)を介して遠隔プロセッサ36に伝送する個々の電気コネクタを特徴とする。他の実施形態において、回路基板62は、それが遠隔プロセッサ、注入ポンプ、および病院のEMR等の遠隔システムと無線で通信し得るように、内部無線送受信機(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、またはセルラー送受信機)を含むことができる。それは、腕装着型筐体20の運動を推定するための加速度計と、情報を記憶するためのフラッシュおよびRAMメモリと、PVP波形および他の信号を分析するためのハイエンドマイクロプロセッサと、バッテリと、バイタルサイン(PR、HR、HRV、SpO2、RR、BP)および血行動態パラメータ(FLUID、SV、CO)が計算されるTEMPおよび生理学的波形(例えば、PPG、ECG、IPG、およびBR)を測定するための追加の回路およびセンサとも含み得る。一般に、回路基板62は、米国特許第10,314,496号および第10,188,349号(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるもの等の従来のバイタルサインモニタにおいて展開されるものに匹敵するアプローチを用いて、他の生理学的信号とともにPVP信号を増幅および調整するように設計される。
【0089】
図2Bを参照すると、腕装着型筐体20は、フランジ50によって包囲され、測定中、患者の静脈系の中に挿入される留置静脈カテーテル(図に図示せず)に接続する、コネクタ60を特徴とする。カテーテルは、典型的に、篏合プラスチックコンポーネント(同様に図に図示せず)内に格納され、篏合プラスチックコンポーネントは、フランジ50に固定され、ゴムガスケット66を使用して防止シールを形成する。回路基板62は、プラスチック肋材59の組を用いて腕装着型筐体内に定位置に確実に保持される。それは、典型的に、長さが数センチメートルのみである短いケーブル区画37を用いてケーブル22に接続する。
【0090】
図2Dおよび2Eは、それぞれ、腕装着型筐体内の回路基板62の画像および写真を示す。回路基板62は、図3(具体的に、コンポーネント100)に示され、下でより詳細に説明される電気概略図に従って製作された。図に示される回路基板62は、金属パッドを含む4層ガラス繊維/金属構造であり、金属パッドは、他のコンポーネントの中でもとりわけ、アナログ/デジタルコンバータ68、加速度計75、演算増幅器71a-f、および電力調整器72a-bにはんだ付けされる。より具体的に、演算増幅器71a-dは、アナログハイパスおよびローパスフィルタを構成し、演算増幅器71e-fおよび電力調整器72a-bは、回路基板62における種々のコンポーネントに関する電力レベルを集合的に調整する。加速度計75は、回路基板62の運動を測定し、この際、それが取り付けられる患者の身体の任意の部分の運動を測定する。アナログ/デジタルコンバータ68は、アナログPVP波形がフィルタリングされた後、アナログPVP波形をデジタル化し、それらを16ビット分解能および200キロサンプル/秒(本明細書では「Ksps」)の最大デジタル化率を伴うデジタル波形に変換する。
【0091】
回路基板62は、加えて、4ピンコネクタ69、2つの6ピンコネクタ77、78、および3ピンコネクタ79を支持する金属めっき孔の組を含む。より具体的に、コネクタ69は、圧力トランスデューサに直接接続し、圧力トランスデューサは、共通接地信号、および患者の静脈系内の圧力を表すアナログPVP波形を受信する。これらの波形は、下でより詳細に説明されるようにフィルタリングされ、デジタル化される。コネクタ79を通して、回路基板は、外部電力供給源、例えば、腕装着型筐体内に位置するバッテリまたは電力供給源から電力(+5V、+3.3V、および接地)を受け取る。これらの電力レベルは、本発明の他の実施形態において異なり得る。アナログ/デジタルコンバータ68からのデジタル信号および対応する接地は、コネクタ78において終端され、それらは、この点で、例えば、図2Cに示されるケーブル区画37を通して回路基板62から離れる。コネクタ77は、主として、試験およびデバッギング目的のために使用され、特に、アナログPVP信号が、それらがアナログハイパスおよびローパスフィルタを通過すると、オシロスコープ等の外部デバイスを用いて測定されることを可能にする。
【0092】
実施形態において、回路基板62は、加えて、アナログ/デジタルコンバータ68によってデジタル化されるデータを処理、記憶、および伝送するためのコンポーネントを含む。例えば、回路基板62は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または類似する集積回路を含むことができ、加えて、iPIVA生理学的センサのためのアナログおよびデジタル回路網を提供することができる。実施形態において、マイクロプロセッサまたはその上のマイクロコントローラは、iPIVAセンサおよびiPIVA生理学的センサの両方からのPVP-AC、PVP-DC、ECG、PCG、PPG、IPG、BP、および他の時間依存波形を処理し、バイタルサイン(例えば、HR、HRV、RR、BP、SpO2、TEMP)、血行動態パラメータ(CO、SV、FLUIDS)、PVP波形の成分(例えば、F0、F1、およびそれに関連付けられる振幅およびエネルギー)、および患者の流体ステータスに関連する関連付けられるパラメータ(例えば、楔入圧、中心静脈圧、血液量、流体量、および肺動脈圧)を決定するためのコンピュータコードを動作させることができる。このようなマイクロプロセッサによる「処理」は、本明細書に使用されるように、当技術分野で公知のアルゴリズムを用いて、波形およびパラメータおよびそれから導出された構成物をデジタル的にフィルタリングし(例えば、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、および/またはバンドパスフィルタを用いて)、変換し(例えば、FFT、CWT、および/またはDWTを使用して)、数学的に操作し、概して、処理および分析するためのコンピュータコードまたは匹敵するアプローチを使用することを意味する。そのようなアルゴリズムの例は、以下の同時係属中の発行された特許(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)、すなわち、2015年12月18日に出願された「NECK-WORN PHYSIOLOGICAL MONITOR」、米国第14/975,646号、2014年8月21日に出願された「NECKLACE-SHAPED PHYSIOLOGICAL MONITOR」、米国第14/184,616号、および2014年7月3日に出願された「BODY-WORN SENSOR FOR CHARACTERIZING PATIENTS WITH HEART FAILURE」、米国第14/145,253号に説明されるものを含む。
【0093】
関連する実施形態において、回路基板は、マイクロプロセッサによる処理の前または後のいずれかで、時間依存波形および数値を記憶するためのフラッシュメモリおよびランダムアクセスメモリの両方を含むことができる。なおも他の実施形態において、回路基板は、情報の伝送および受信の両方のためのBluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi送受信機を含むことができる。
【0094】
再び図1および図2A-2Eを参照すると、iPIVAセンサを用いた測定中、静脈カテーテルは、注入ポンプ12によって計測制御される薬品17を第2の管18を通して患者の静脈系23の中に送達する。第2の管18は、短いケーブル区画42を通して腕装着型筐体に接続する、コネクタ58で終端される。これは、腕装着型筐体が、IVシステム19から容易に結合解除(すなわち、分離)されることを可能にする。本実施形態において、第2の管18は、患者の内外への流体の流動を塞ぐために、小さいプラスチック部分60を用いて一時的に挟まれることができる。関連する実施形態において、腕装着型筐体20は、電源(内部バッテリ等)と、プロセッサと、オンボード無線送信機とを含むことができる。このように、iPIVAセンサ15は、例えば、外来患者のための身体装着型デバイスとして機能することができ、それは、PVP波形を測定し、それらを処理し、F0およびF1に関連付けられるエネルギーを決定することができ、次いで、これらの成分のデジタル化バージョンを遠隔デバイスに伝送する。そのようなシステムは、iPIVA生理学的センサ70とも効果的に結合し得、iPIVA生理学的センサ70は、身体装着型バイタルサインおよび血行動態モニタでもあり、無線およびバッテリ給電の両方であり、したがって、外来患者からのバイタルサインおよび血行動態パラメータを測定することができる。これは、上で言及される実施形態に従って協働すると、iPIVAセンサおよびiPIVA生理学的センサが、病床に割り当てられる患者、および病院の異なるエリアに移送され、最終的に、病院から自宅に移行する患者のための効果的な単体デバイスとして機能し得ることを意味する。
【0095】
本明細書に説明されるシステムを用いて測定されるPVP波形は、時間に伴って非常に急速に変動し得る心拍および呼吸事象に関連する信号成分を特徴とする。そのような信号成分は、本明細書では「PVP-AC」波形と称され、「AC」は、通常、交流を説明するために使用される用語であるが、信号が発展するとき、時間において急速に変化する信号成分を説明するために本明細書では使用される。図6A-Dは、PVP-AC波形の例と、それらがそれらの信号対雑音比を改良するために腕装着型筐体20における回路基板62によって増幅および調整される方法とを示す。同様に、比較的に安定し、経時的に変動しないPVP波形の低周波数成分は、本明細書では「PVP-DC」波形と称され、用語「DC」は、通常、直流を説明するために使用されるが、時間に伴って急速に変化しない信号を説明するために本明細書では使用される。
【0096】
より具体的に、PVP波形は、典型的に、処理することが困難であり得る比較的に弱い振幅である5~50 V範囲内の信号レベルを有する。そのような信号は、以前に(例えば、米国特許出願第16/023,945号(2018年6月29日に出願され、米国特許公開第2019/0000326号として公開された)、米国特許出願第14/853,504号(2015年9月14日に出願され、米国特許公開第2016/0073959号)として公開された)、およびPCT出願第PCT/US16/16420号(2016年2月3日に出願され、第WO 2016/126856号として公開された)に)説明されている。これらの係属中の特許出願の内容は、参照することによって本明細書に前述で組み込まれる。従来のPIVA測定では、これらの文書に説明されるように、PVP波形は、アナログ信号を発生させる患者に近位の圧力センサを用いて測定され、これらは、典型的に、比較的に長いケーブルを通過し、患者から遠隔に位置するシステムを用いて増幅、フィルタリング、およびデジタル化される。加えて、前述で開示されるもの等の従来のPIVAセンサは、典型的に、(典型的に、例えば、FFTを使用する)周波数ドメインへのPVP波形の変換を含み、次いで、これらのパラメータのいかなる二次決定も伴わずに、F0(RRに関連する周波数を示す)およびF1(HRに関連する周波数を示す)を識別しようと試みる。F0およびF1に関連付けられるエネルギーが、次いで、患者の流体ステータスに関連する他のメトリック(例えば、楔入圧、肺動脈圧)を推定するために分析される。しかしながら、PVP波形は、非常に弱く、低信号対雑音比によって特徴付けられるため、それらは、測定することが極めて困難であり得る。加えて、周波数ドメインに変換されると、F0、F1、およびそれらの個別の高調波(すなわち、F0およびF1の整数倍に対応する周波数)に関連する信号成分は、互いに重複し、それらを区切りし、明示的に測定することを困難にし得る。これらおよび他の因子は、最終的に、F0およびF1に関連付けられるエネルギーから決定されるパラメータ、例えば、患者の流体ステータスの決定を複雑にし得る。
【0097】
本発明は、以下によって、PVP波形、および最終的に、F0およびF1に関連付けられるエネルギーを測定することにおけるこれらの欠陥を解決しようと試みる:1)(最初に長い雑音誘発ケーブルにアナログ信号を通すことと対照的に)それらが圧力トランスデューサによって感知された直後にPVP波形を増幅、フィルタリング、デジタル化、およびある場合、処理し、それらの信号対雑音比を改良し、ケーブル誘発雑音に影響されないそれらのデジタル表現を作成しりこと;2)iPIVAセンサとしっかりと統合された外部iPIVA生理学的センサを用いてHRおよびRRを同時に独立して測定すること;および、3)iPIVA生理学的センサからのHRおよびRR測定値とともに増幅/フィルタリング/デジタル化されたPVP波形を集合的に処理し、F0およびF1に関連付けられるエネルギーをより良好に決定すること。加えて、BP、SV、CO、およびFLUIDS等のiPIVA生理学的センサからの他の測定値は、iPIVAセンサからの測定値と組み合わせられ、患者の流体ステータスをより良好に決定し、それによって、病院内の患者の処置を改良する。
【0098】
図3は、図2A-Cに説明される回路基板62の概略図100を示す。概略図100は、1)PVP-AC波形を増幅およびフィルタリングするように設計される回路要素102の第1の組と、2)PVP-DC波形を増幅およびフィルタリングするように設計される回路要素104の第2の組と、3)PVP-ACおよびPVP-DC波形の両方をデジタル化するための16ビット、200Kspsアナログ/デジタルコンバータ106とを含む。
【0099】
より具体的に、概略図100によって説明される回路は、着信PVP波形に対して以下の機能を連続的に実施するように設計される。
【0100】
(着信PVP波形)
1)ゼロドリフト増幅器を使用して100倍利得で信号を増幅する
2)追加の10倍利得で信号を差動的に増幅する
3)25Hz、2極ローパスフィルタを用いて増幅された信号をフィルタリングする
【0101】
回路のこの第1の部分は、着信PVP波形に関するほぼ1,000倍の組み合わせられた利得を提供し、それによって、入力信号(典型的に、 V範囲内である)をより大きい信号(mV範囲内)に増幅する。後続ローパスフィルタは、いかなる高周波数雑音も除去する。最終的に、これらのステップは、下記に説明されるように、PVP-ACおよびPVP-DC波形の両方の処理を促進する。
【0102】
本明細書に提供される説明では、用語「差動的に増幅する」は、回路が正(図3のP_IN)と負(図3のN_IN)の端子との間の差異を測定するプロセスを指す。とりわけ、差動増幅器の出力は、システムの中点電圧においてゼロにされるシングルエンド信号である。代替として、それは、0Vにおいてゼロにされ得るが、電圧レールの間の中心点は、概して、より正確かつクリアな出力信号を提供する。
【0103】
同様に、用語「ゼロドリフト増幅器」は、1)温度および他の形態の低周波数信号誤差を内部で補正し、2)非常に高い入力インピーダンスを有し、3)非常に低いオフセット電圧を有する増幅器を指す。ゼロドリフト増幅器によって受信される着信信号は、典型的に、極めて小さく、それが干渉、利得シフト、または増幅器入力の発生させられた電流のブリードアウトを受け得ることを意味し、増幅器のゼロドリフトアーキテクチャは、これを低減または排除することに役立つ。
【0104】
入力PVP波形を処理した後、概略図100によって説明される回路は、PVP-ACおよびPVP-DC波形に対して以下の機能を連続的に実施するように設計される。
【0105】
(PVP-AC波形のみ)
1)0.1Hz、2極ハイパスフィルタを用いて信号をフィルタリングする
2)15Hz、2極ローパスフィルタを用いて信号をフィルタリングする
3)50倍利得で信号を増幅する
【0106】
(PVP-DC信号のみ)
1)0.07Hz、2極ローパスフィルタを用いて信号をフィルタリングする
2)0.13Hz、2極ローパスフィルタを用いて信号をフィルタリングする
3)10倍利得で信号を増幅する
【0107】
(PVP-ACおよびPVP-DC波形の両方)
1)16ビット、200Kspsデルタシグマアナログ/デジタルコンバータを用いて信号をデジタル化する
【0108】
本レベルのデジタル信号処理では、回路基板62は、患者の身体の直上のPVP波形、より具体的に、呼吸数(F0)および心拍数(F1)に関連付けられる信号を処理することができる。これは、雑音および他の信号アーチファクトを追加し、したがって、F0、F1、および上で説明されるようなそれらの関連付けられるエネルギーの測定に悪影響を及ぼし得るアプローチである外部ケーブルを通して信号を送信する必要性を伴わずにこれらの機能を実施する。
【0109】
当業者によって理解されるように、図3に示される回路要素102、104、および106は、図3に示されるものとわずかに異なる概略図を用いて上で説明されるステップを遂行する匹敵する設計を有し得る。加えて、それは、F0、F1、およびそれらの関連付けられるエネルギーの測定を改良し、したがって、追加の機能性を提供するための他の集積回路およびコンポーネントを含み得る。例えば、回路基板62は、温度/湿度センサ、多軸加速度計、統合ジャイロスコープ、または患者(例えば、患者の腕、手首、または手の移動)に関連付けられる運動信号を感知するように構成される他の運動検出センサも含み得る。実施形態において、例えば、運動信号は、PVP波形と連動して処理され、運動成分を除去するための適応フィルタとして使用されることができる。代替として、これらのコンポーネントのうちの1つによって測定される運動信号は、処理され、既存の閾値と比較されることができ、信号が、所定の閾値を超える場合、それは、患者が過剰に移動しており、正確な測定を行うことができないことを示すことができ、信号が、所定の閾値を下回る場合、それは、患者が安定しており、正確な測定が行われ得ることを示すことができる。
【0110】
そのような回路102、104、および106は、典型的に、図2Bおよび2Cに示される腕装着型筐体の内側に適合するように設計される寸法によって特徴付けられる図2Eに示されるもの等の小さいガラス繊維回路基板上に製作される。
【0111】
図4-Cは、それぞれ、図2A-Cおよび3に示されるような回路基板62および関連付けられる回路要素102が、PVP-AC波形のアナログバージョンを増幅し、概して、改良する方法を示す。より具体的に、図4Aは、初期アナログフィルタリングおよび増幅段階に対応する回路要素102内の場所130において測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットを示す。図から明白であるように、この時点におけるPVP-AC波形の信号対雑音比は、比較的に弱く、実際の生理学的成分、例えば、心拍または呼吸誘発パルスに対応する任意の特徴を検出することを(不可能ではないにしても)困難にする。対照的に、3つの追加の増幅/フィルタリング段階、すなわち、1)追加の10倍利得を伴う差動増幅器、2)25Hz 2極ローパスフィルタ、次いで、0.1Hz 2極ハイパスフィルタ、次いで、15Hz 2極ローパスフィルタを伴うフィルタ、3)50倍利得を伴う増幅器を通過した後、信号は、大きく改良される。図4Bは、回路の増幅器チェーンのさらに下の第2の場所132において測定される時間依存波形を示し、それは、比較的に高い信号対雑音比および明確な心拍誘発パルスを特徴とする(すなわち、それは、HRに対応する明確に定義された時間ドメイン信号を示す)。そのような波形は、上で説明されるような周波数ドメインにおいて処理されると、F1に対応する明確な特徴をもたらし、それによって、F0、F1、およびそれらの関連付けられるエネルギーの測定を改良するであろう。
【0112】
重要なこととして、上で説明されるように、図4A-Cに示されるアナログ信号処理およびPVP波形のデジタル化は、理想的に、可能な限り信号源に近接して、すなわち、図2A-Dに示される腕装着型筐体において実施される。そのような構成は、長い「損失のある」ケーブル(加えて、運動を受けやすい)を通して遠隔フィルタ/増幅回路まで伝搬する信号によって引き起こされる雑音および減衰を最小化する。最終的に、このアプローチは、最も高い可能な信号対雑音比を伴う時間依存波形をもたらし、それによって、F0、F1、およびそれらの関連付けられるエネルギーが最終的に決定され得る正確度を最大化する。
【0113】
図5は、PVP-ACおよびPVP-DC信号の両方を分離および増幅するための図2Eに示される回路基板の有効性を検証するように設計される実際の実験の結果を示す。実験に関して、関数発生器および信号低減回路が、患者から測定されるそれらに類似するPVP-ACおよびPVP-DC信号を表す入力アナログ正弦波形を発生させるために組み合わせられた。これらの信号の実際のバージョンのように、入力波形は、0.5~100Hzに及ぶ周波数および20 V範囲内の振幅を有していた。実験では、波形は、図2Eに示されるそれに類似する回路基板を通過し、回路基板において、それらは、上で説明される(また、図3に示される)パラメータに従ってフィルタリングおよび増幅され、次いで、アナログ/デジタルコンバータ(図3に示されるコンポーネント106)を用いてデジタル化された。デジタル化波形は、メモリ内に記憶され、ピークツーピーク電圧が、次いで、デジタル化信号から計算された。最後に、これらの値は、回路/シミュレータプログラムを用いて決定されるように、PVP-ACおよびPVP-DC信号に関する理想的な理論的な周波数依存利得と比較された。
【0114】
図5に示されるように、PVP-ACおよびPVP-DC信号に関する測定されたピークツーピーク電圧出力は、実線(PVP-AC信号に関する三角形信号マーカおよびPVP-DC信号に関する正方形信号マーカを伴う)およびグラフの左側のy軸によって示される。回路基板の理想的な理論的な利得応答は、破線およびグラフの右側のy軸によって示される。x軸は、入力正弦波形に対応する周波数の対数を示す。
【0115】
図5は、回路基板の理想的な理論的な利得と増幅およびフィルタリングされた後の正弦波形の測定されたピークツーピーク電圧との間の強い一致が存在することを示す。一致は、約0.5~50Hzに及ぶ周波数から持続する。これは、図2Eに示される回路基板が、予期されるように機能し、PVP-ACおよびPVP-DC信号の両方を効果的にフィルタリングおよび増幅していることを示す。
【0116】
上で説明されるように測定されると、プロセッサが、PVP波形を分析し、F0、F1、およびそれらの関連付けられるエネルギーを決定する。図6A-Gは、図1に示されるものに類似するIVシステムを使用して入院患者から測定された典型的な時間依存PVP-AC波形を示す。より具体的に、図6Aは、約30分の期間にわたって測定された波形を示す。ボックス110a、110b、および110cは、従来のPIVAセンサの課題および本明細書に説明される本発明がこれらの課題を克服するように設計される方法の両方を示すために選択された1分間の「波形断片」を示す。
【0117】
図6Bは、ボックス110aによって示されるような図6AのPVP-AC波形からの420~480秒にわたって選択された1分間の時間依存波形断片(すなわち、w(t))およびその第1の時間依存導関数(すなわち、dw(t)/dt)を示す。波形断片およびその導関数は、一連の心拍誘発パルスを特徴とする。ここでは、導関数は、呼吸に起因するそれら等の低周波数成分を信号から除去し、心拍に起因するそれら等の高周波数信号を増幅するハイパスフィルタとして効果的に役割を果たす。図6Eは、図6Bに示される未加工非微分化波形断片のFFTを示す。図のピークは、F1(70心拍/分に対応する)およびF1の2倍および3倍高調波を示すために標識化されている。
【0118】
F1に関連付けられる信号成分が、図6Bおよび6Eで容易に明白であるが、F0(すなわち、呼吸)に関連付けられるものは、不在である。患者は、明確に生きており、この1分間中に呼吸している可能性が高く、したがって、呼吸関連信号の欠如は、カテーテルによる移動、F0に関連付けられる低信号、運動誘発雑音、浅い呼吸等のいくつかの因子に起因し得る。実際、F0に対応するピークが、図6Eに存在し得るが、単純に非常に弱く、患者の真のRRのある事前知識を伴わずに検出することができない。しかしながら、例えば、図1に示されるiPIVA生理学的センサを用いた患者のRRの独立した測定は、F0の明示的かつ独立した決定を促進するであろう。変換されたPVP波形を処理する心拍ピッキングアルゴリズムが、次いで、F0に関する周波数ドメインにおける「探索」を行い、パッチセンサによって決定されるような呼吸周波数の周囲にこの探索を集中させ得る。これは、次に、F0、F1の両方、およびそれらの関連付けられるエネルギーの決定を可能にし得る。代替として、適応フィルタが、ソフトウェアにおいて実装され得、フィルタは、iPIVA生理学的センサを用いて測定されるようなRRを中心とした信号成分を増幅するように具体的に設計される。
【0119】
図6Cは、ボックス110bによって示されるような図6Aの時間依存PVP-AC波形からの780~840秒にわたって選択された第2の1分間の波形断片を示す。この断片では、F0(呼吸数)およびF1(心拍数)の両方に起因する信号成分は、図6Bおよび6Eに示されるものと比較してより顕著である。より具体的に、心拍誘発パルスが、時間ドメイン(図6C)において明確に顕著であり、周波数ドメイン(図6F)における対応する2倍および3倍高調波とともに、明確に定義されたF1ピーク(72心拍/分の心拍数に対応する)をもたらす。加えて、この断片に関する呼吸成分は、図6Bおよび6Eに示されるそれより良好に定義される。呼吸誘発起伏が、時間ドメインにおいて明白であり、17呼吸/分に対応する、周波数ドメインにおけるかなり明確に定義されたF0ピークをもたらす。上で説明される事例と同様、パッチセンサを用いて決定されるような心臓および呼吸事象の両方の事前知識は、対応するHRおよびRR値を知らされたアルゴリズムが、周波数ドメインにおける関連するピークをより正常に検出する可能性が高いであろうことを意味する。最終的に、これは、iPIVAセンサ、および、それによって行われるいずれの測定も改良するであろう。
【0120】
これの明白な例が、ボックス110cによって示されるように、図6Aに示されるPVP-AC波形からの1,310~1,370秒にわたって選択された第3の1分間の波形断片において示される。ここでは、F0(すなわち、RR)およびF1(すなわち、HR)の両方に起因する信号成分は、前述の事例に説明されるものと比較してより顕著である。HRおよびRRに対応すると推定される起伏が、時間ドメイン(図6D)において明白であり、周波数ドメイン(図6G)において明確に定義されたF0およびF1ピークをもたらす。しかしながら、この断片における呼吸成分は、非常に明確に顕著であるので、F1ピーク(64心拍/分において測定される)は、実際に、呼吸事象の4倍高調波(4×17心拍/分=68心拍/分)に対応し得る。言い換えると、図6Gのスペクトルの単純な検証から、1Hz付近のピーク(すなわち、60心拍/分)がF1またはF0の4倍高調波に起因するかどうかは明白ではない。前述のように、パッチセンサを用いたHRの独立した測定は、それがF1の決定を知らせるために使用され得るため、この問題を解決するであろう。
【0121】
F0およびF1(例えば、それらの振幅またはエネルギー)に関連付けられる特徴は、流体関連パラメータ、例えば、楔入圧および/または肺動脈圧を推定するために、異なる方法で処理され得る。エネルギーのさらなる処理は、次いで、適切な流体関連パラメータをもたらす。そのような処理の例が、以下の参考文献(その内容は、参照することによって本明細書にすでに組み込まれている)に説明されている。
【0122】
1)Hocking et al.,「Peripheral venous waveform analysis for detecting hemorrhage and iatrogenic volume overload in a porcine model.」,Shock. 2016 Oct;46(4):447-52、
【0123】
2)Sileshi et al.,「Peripheral venous waveform analysis for detecting early hemorrhage:a pilot study.」,Intensive Care Med. 2015 Jun;41(6):1147-8、
【0124】
3)Miles et al.,「Peripheral intravenous volume analysis(PIVA) for quantitating volume overload in patients hospitalized with acute decompensated heart failure - a pilot study.」,J Card Fail. 2018 Aug;24(8):525-532、および、
【0125】
4)Hocking et al.,「Peripheral i.v. analysis(PIVA) of venous waveforms for volume assessment in patients undergoing haemodialysis.」,Br J Anaesth. 2017 Dec 1;119(6):1135-1140。
【0126】
本明細書に説明されるように協働するiPIVAセンサおよびiPIVA生理学的センサの両方を用いて決定されるような楔入圧等のパラメータは、典型的に、患者の流体ステータスを示し、したがって、患者の処置を管理し、患者を蘇生させることにおいて有用である。これらのパラメータは、流体送達を用いて治療され得るある苦痛(例えば、敗血症)または流体除去を用いて治療されるそれら(例えば、心不全)の場合に有用であり得る。特に、敗血症は、通常、IV流体および抗生物質を用いて集中治療室で治療され、その両方は、典型的に、条件が検出されるとすぐに投与される。流体は、典型的に、血圧が維持されるように交換される。実際、敗血症のような流体に関連する病気を伴う患者を適切に治療することは、生死を分けることを意味し得る。敗血症での死亡のリスクは、30%と同程度に高く、重度の敗血症では50%と同程度に高く、敗血症ショックでは80%と同程度に高い。年間数百万人が敗血症にかかり、先進国では、年間で1,000人あたり約0.2~3人が敗血症にかかり、米国では年間で約100万件の症例をもたらしていると推定されている。
【0127】
(iPIVA生理学的センサ)
患者の流体ステータス、例えば、BP、FLUIDS、SV、およびCOに直接関連するiPIVA生理学的センサからの測定値は、楔入圧のようなパラメータを補完し、敗血症のような条件を患う患者を管理することを支援し得る。そのようなパラメータを測定するセンサは、典型的に、生体インピーダンスおよび生体リアクタンス測定を展開し、以下の係属中の特許出願(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)、すなわち、米国特許出願第62/845,097号(2019年5月8日に出願された)および米国特許出願第16/044,386号(2018年7月24日に出願された)に説明されるものに類似するハードウェアシステムおよびアルゴリズムを動作させる。
【0128】
一般に、再び図1を参照すると、本発明によるiPIVA生理学的センサ70は、典型的に、患者の腕に取り付けられる可撓性の腕装着型ラップ82に統合された中央処理ユニット83を特徴とする。図10-14に説明されるもの等の実施形態において、腕装着型ラップ82は、図8および10-14に示され、下でより詳細に説明されるもの等の時間依存生理学的波形を測定するために、反射型または透過型光学センサと、1つ以上の使い捨て電極(図1に図示せず)とを含むことができる。図1および12-14に示されるもの等の実施形態において、腕装着型ラップ82およびその中に含まれる中央処理ユニットは、ケーブル81を通して二次センサ80に接続し、二次センサ80は、患者の肩(図1および13Aに示されるように)、胸部(図14Aに示されるように)、または上腕(図12Aに示されるように)上に装着されることができる。
肩装着型実施形態において、二次センサ80は、電極の対を含み、これらは、典型的に、接着性ヒドロゲル包含電極であり、それらは、二次センサ80を患者の皮膚に接着させると同時に、処理を伴い、電極の類似する対(例えば、腕装着型ラップ82におけるもの)と組み合わせられると、ECG、IPG、およびBR波形をもたらす生体電気信号を測定する。胸部装着型実施形態において、二次センサは、上で説明されるように機能する電極の対とともに、患者の胸部において下にある心臓弁からのPCG波形を測定するデジタルマイクロホンも含み得る。最後に、上腕装着型実施形態において、腕装着型ラップ82も、患者の下にある上腕動脈からのPCG波形を測定するデジタルマイクロホンと、上で説明されるように機能する電極の対とを含む。
【0129】
中央処理ユニット83は、波形を処理し、最終的に、HR、HRV、RR、BP、SpO2、TEMP、SV、CO、FLUIDS等のパラメータをもたらすためのアルゴリズムを動作させるマイクロプロセッサを特徴とする。測定が完了すると、iPIVAセンサ15およびiPIVA生理学的センサの両方は、情報を(有線および/または無線手段を通して)遠隔プロセッサ36に伝送し、遠隔プロセッサ36は、マイクロプロセッサと、ディスプレイコンポーネント38とを含む。遠隔プロセッサ36におけるマイクロプロセッサ上で実行されるコンピュータコードを通して動作するアルゴリズムは、パッチセンサ30およびiPIVAセンサ15の両方からの信号を処理し、患者のバイタルサインおよび流体ステータスを決定する。例えば、上で説明されるように、アルゴリズムの実施形態は、(例えば、インピーダンスおよびECG波形から)iPIVA生理学的センサによって独立して決定されたHRおよびRRの値を使用し、iPIVAセンサ15によって測定されたF0およびF1値(それぞれ、RRおよびHRに対応する)の「探索」を知らせ得る。アルゴリズムは、次いで、F0およびF1の対応するエネルギーを決定し、最後に、これらのエネルギーを処理し、患者の流体ステータスを決定する。そのようなアルゴリズムは、図15Aに示されるフローチャートによって示される。ここでは、探索は、心拍ピッキングアルゴリズムを使用し、PVP波形の周波数ドメインスペクトル(上で説明される方法論のうちの1つを使用して発生させられる)を処理するステップを伴い得る。
【0130】
アルゴリズムの別の実施形態は、iPIVA生理学的センサ70によって測定されたもの(例えば、BP、SpO2、FLUIDS、SV、およびCO)とともにiPIVAセンサ15によって測定されたパラメータ(例えば、F0、F1、またはそれらのある組み合わせに関連付けられるエネルギーと互いに関係し得る楔入圧および血液量)を集合的に処理し、患者の流体ステータスを決定し、患者を蘇生させる間(例えば、敗血症および/または流体過負荷の期間中)、流体の送達を効果的に知らせ得る。一般に、iPIVAセンサ15およびiPIVA生理学的センサ70の両方からの情報を使用することによって、臨床医は、生命を脅かす条件を特性評価することによって患者11をより良好に管理し、患者の蘇生を誘導することに役立つことができる。
【0131】
より具体的な例として、実施形態において、iPIVA生理学的センサによって測定されたBPおよびSpO2の値は、患者の血流および灌流を推定するために、iPIVAセンサから決定された体積ステータスと組み合わせられることができる。これらのパラメータの知識は、次に、臨床医が蘇生時に送達する必要がある流体の量の推定を知らせることができる。同様に、iPIVA生理学的センサによって測定されたSV、CO、BP、およびSpO2は、iPIVAセンサによって測定されたF0およびF1エネルギーの比率とともに、各々、患者の灌流のレベルを示す。それらは、この条件をより良好に推定するために、数学的「指数」において組み合わせられることもできる。次いで、これらのパラメータまたは指数は、患者が、重症者におけるさらなる補液蘇生の必要性を評価するための試験である「受動的脚上げ」と呼ばれる技法を受けている間、測定されることができる。受動的脚上げは、患者の脚を上げることを伴い(典型的に、患者の能動的な参加を伴わない)、それは、重力が血液を脚から中心器官の中に引き込むことを引き起こし、それによって、静脈リザーバの量に応じて、約150~300ミリリットルだけ心臓に利用可能な循環量(典型的に、「心前負荷」と呼ばれる)を増加させる。iPIVAおよびパッチセンサによって測定される上で言及されるパラメータまたは指数が、増加する場合、それは、脚上げが患者の中心器官における灌流を効果的に増加させていることを示し、それによって、患者が流体に応答するであろうことを示すことができる。臨床医は、IVシステムを通して流体のボーラスを患者に提供し、次いで、iPIVAおよびパッチセンサによって測定されたパラメータまたは指数の増加または減少を監視することによって、類似する試験を実施することができる。
【0132】
実施形態において、臨床研究からの結果と組み合わせられる、単純な線形算出方法が、iPIVAセンサおよびiPIVA生理学的センサによって発生させられたデータを集合的に処理するモデルを開発するために使用されることができる。他の実施形態において、人工知能および/または機械学習を伴うもの等のより洗練された算出モデルが、集合的処理のために使用されることができる。
【0133】
図7は、本発明によるiPIVA生理学的センサ70の具体的実施形態を示す。そのようなパッチ70は、以下の2つの機能を果たすために、上で説明されるiPIVAセンサと統合することができる:1)HRおよびRR等のパラメータを独立して測定し、F0、F1、およびそれらの関連付けられるエネルギーの測定をより良好に促進すること、2)加えて、楔入圧、肺動脈圧、血液量、および流体ステータス等のiPIVAセンサ15を用いて測定されるパラメータを補完するBP、FLUIDS、SV、およびCO等のパラメータを測定し、患者を管理することを支援すること。
【0134】
iPIVA生理学的センサ70は、患者からのECG、PPG、PCG、IPG、およびBR波形を測定し、これらから、下記に詳細に説明されるようなバイタルサイン(HR、HRV、SpO2、RR、BP、TEMP)および血行動態パラメータ(FLUIDS、SV、およびCO)を計算する。この情報が決定されると、パッチセンサ30は、それがiPIVAセンサからの情報とともに分析され、患者を特性評価し得るように、それを遠隔モニタに無線で伝送する。
【0135】
図7に示されるiPIVA生理学的センサ70は、2つの主要なコンポーネントを特徴とする:1)患者の手首の近傍に装着される中央処理ユニット83;および、2)患者の左肩の近傍に装着される二次センサ80。可撓性ワイヤ包含ケーブル81が、中央処理ユニット83および二次センサ80を接続する。中央処理ユニットは、反射モード幾何学形状を使用して患者の腕からPPG波形を測定する(図9により詳細に示される)光学センサをその底面上に含む。電極リード(中央処理ユニットにおける2つの90a、90b、二次センサにおける2つの107a、107b)が、各々、単回使用接着性電極(図に図示せず)に接続し、iPIVA生理学的センサ70(特に、光学センサ)を患者に固定することに役立つ。
中央感知/電子機器モジュール130は、
2つの「半体」139A、139Bを特徴とし、2つの半体の各々は、下でより詳細に説明される感知コンポーネントと電子コンポーネントとを格納し、それらは、第1の可撓性ゴムガスケット138によって分離される。センサ30内の可撓性回路は、典型的に、埋め込まれた電気トレースを伴うKapton(登録商標)から作製され、電気トレースは、中央感知/電子機器モジュール130の2つの半体139A、139B内のガラス繊維回路基板(同様にセンサ内にある)を接続し、それによって、センサが撓曲し、患者の胸部に形状適合することを可能にする。
【0136】
電極リード141、142、147、148は、単回使用電極(図に図示せず)に接続し、リードの2つの「対」を形成し、各対におけるリード141、147の一方は、IPGおよびBR波形を測定するために電流を注入し、各対における他方のリード142、148は、生体電気信号を感知し、それらは、次いで、中央感知/電子機器モジュール130における電子機器によって処理され、ECG、IPG、およびBR波形を決定する。電極リード143、145も、単回使用電極(同様に図に図示せず)に接続するが、いかなる電気的機能も果たさず(すなわち、それらは生体電気信号を測定しない)、パッチセンサ30を患者に固定することにのみ役立つ。
【0137】
IPGおよびBR測定は、電流注入電極141、147が高周波数(例えば、100kHz)、低アンペア(例えば、4mA)電流を患者の胸部の中に注入しているとき、行われる。実施形態において、注入された電流は、順次、ある範囲の周波数(例えば、5~1,000kHz)を有するように調節されることができる。特に、低周波数測定(例えば、5kHz)は、典型的に、患者の身体内の細胞壁を貫通せず、したがって、これらの壁の外側に配置される流体、すなわち、細胞外液に対して特に敏感である。
【0138】
電極142、148は、注入された電流が遭遇するインピーダンスを示す電圧を感知する。電圧は、アナログフィルタおよび差動増幅器を特徴とする一連の電気回路を通過する。これらは、それぞれ、ECG、IPG、およびBR波形の選択された成分をフィルタリングおよび増幅する。IPGおよびBR波形の両方は、下記および本明細書に引用される参考文献により詳細に説明されるように、異なるインピーダンス波形を測定するために、さらにフィルタリングおよび処理される低周波数(DC)および高周波数(AC)成分を有する。IPG波形は、容量性変化(例えば、呼吸事象によって誘発されるもの)および伝導性変化(例えば、例えば、流体および血流の変化によって誘発されるもの)によって注入された電流に対して加えられる位相および振幅変化の両方に敏感である。BR波形は、主として、これらの同一の成分によって誘発される注入された電流に対して加えられる位相変化に敏感である。
【0139】
中央感知/電子機器モジュール130および光学センサ136を接続するためのケーブル134の使用は、パッチセンサ30が患者の胸部に取り付けられるとき、電極リード(中央感知/電子機器モジュール130における141、142、二次バッテリ157における147、148)が比較的に長い距離だけ分離され得ることを可能にする。例えば、二次バッテリ157は、患者の左肩の近傍に取り付けられることができる。電極リード141、142、147、148間のそのような分離は、典型的に、これらの波形が、典型的に、電極分離に伴って増加する単回使用電極によって収集される生体電気信号の差異から決定されるので、パッチセンサ30によって測定されるECG、IPG、およびBR波形の信号対雑音比を改良する。最終的に、電極リードの分離は、HR、HRV、RR、BP、SV、CO、およびFLUIDS等のこれらの波形から検出される任意の生理学的パラメータの正確度を改良する。
【0140】
音響モジュール146は、典型的に、発泡体基板によって包囲される薄い圧電ディスクである、固体音響マイクロホンを特徴とする。発泡体基板は、測定中、患者の胸部に接触し、患者の心臓からの音を圧電ディスクに結合し、圧電ディスクは、次いで、患者からの心音を測定する。プラスチック封入体が、音響モジュール146全体を封入する。
【0141】
心音は、典型的に、聴診器を用いて心臓から聞こえる「ルブ/ダブ」音であり、それらは、下にある僧帽弁および三尖弁(本明細書では「S1」または「ルブ」音)および大動脈弁および肺動脈弁(本明細書では「S2」または「ダブ」音)が閉鎖するときを示す(注記:いかなる検出可能な音も、弁が開放するときに発生させられない)。信号処理を用いて、心音は、下でより詳細に説明されるように、BPを決定するために他の信号とともに使用されるPCG波形をもたらす。他の実施形態において、複数の固体音響マイクロホンが、冗長性を提供し、S1、S2、心雑音、および患者の心臓からの他の音をより良好に検出するために使用される。
【0142】
光学センサ136は、赤色および赤外スペクトル領域内の放射を放出するLED161を包囲する、円形パターンにおいて配置される光検出器162のアレイを含む、光学システム160を特徴とする。測定中、LED161から順次放出される赤色および赤外放射は、患者の胸部内の下にある組織を照射し、それから反射し、光検出器162のアレイによって検出される。検出された放射は、下にある組織内の毛細血管床を通して流動する血液によって変調される。中央感知/電子機器モジュール130における電子機器を用いて反射された放射を処理することは、赤色および赤外放射に対応するPPG波形をもたらし、それは、下記に説明されるように、BPおよびSpO2を決定するために使用される。
【0143】
光学センサ136の外面は、加熱要素によって覆われ、加熱要素は、例えば、蛇行パターンにおいて配置される埋め込まれた電気導体を伴う薄いKapton(登録商標)フィルム165を特徴とする。電気導体の他のパターンも、使用されることができる。Kapton(登録商標)フィルム165は、LED161によって放出され、それが患者の皮膚から反射した後に光検出器162によって検出される放射を通過させる切り抜き部分を特徴とする。薄いKapton(登録商標)フィルム165上のタブ部分167は、それがパッチセンサ30内の回路基板に差し込まれ得るように、折り返される。使用中、パッチセンサ30上で動作するソフトウェアが、回路基板上の電力管理回路網を制御し、電圧を薄いKapton(登録商標)フィルム165内の埋め込まれた導体に印加し、それによって、それらに電流を通す。埋め込まれた導体の抵抗は、フィルム165が下にある組織を徐々に加熱し、温めることを引き起こす。印加された熱は、組織への灌流(すなわち、血流)を増加させ、それは、次に、PPG波形の信号対雑音比を改良する。Kapton(登録商標)フィルム上またはその近傍に位置する温度センサが、電力管理回路網と統合し、ソフトウェアが、閉ループ様式で動作し、印加される温度を慎重に制御および調節することを可能にする。ここでは、「閉ループ様式」は、ソフトウェアが、PPG波形の心拍誘発パルスの振幅を分析し、必要な場合、Kapton(登録商標)フィルム165に印加される電圧を増加させ、その温度を増加させ、PPG波形における心拍誘発パルスを最大化することを意味する。典型的に、温度は、41~42℃のレベルにおいて調整され、それは、下にある組織に対して殆ど影響を及ぼさず、米国食品医薬品局(FDA)によって安全と見なされている。
【0144】
パッチセンサ30は、典型的に、3軸デジタル加速度計と、温度/湿度センサ(図に具体的に識別されず)とも含み、それぞれ、3つの時間依存運動波形(x、y、およびz軸に沿って)、湿度、およびTEMP値を測定する。
【0145】
パッチセンサ30は、典型的に、比較的に高い周波数(例えば、250Hz)において時間依存波形をサンプリングする。ファームウェアを実行する内部マイクロプロセッサが、算出アルゴリズムを用いて波形を処理し、約1分に一回の周波数でバイタルサインおよび血行動態パラメータを発生させる。アルゴリズムの例が、以下の同時係属中の発行された特許(その内容は、参照することによって本明細書にすでに組み込まれている)、すなわち、2015年12月18日に出願された「NECK-WORN PHYSIOLOGICAL MONITOR」、米国第14/975,646号、2014年8月21日に出願された「NECKLACE-SHAPED PHYSIOLOGICAL MONITOR」、米国第14/184,616号、および2014年7月3日に出願された「BODY-WORN SENSOR FOR CHARACTERIZING PATIENTS WITH HEART FAILURE」、米国第14/145,253号に説明されている。
【0146】
図7に示されるパッチセンサ30は、患者上に展開されるとき、快適さを最大化し、「ケーブルの乱雑さ」を低減させると同時に、それが測定するECG、IPG、BR、PPG、およびPCG波形を最適化し、HR、HRV、BP、SpO2、RR、TEMP、FLUIDS、SV、およびCO等の生理学的パラメータを決定するように設計される。可撓性ゴムガスケット138は、センサ30が、患者の胸部上で撓曲することを可能にし、それによって、男性および女性の両方の患者にとっての快適さを改良する。その胸部装着型構成の追加の利益は、波形を歪め、バイタルサインおよび血行動態パラメータの誤った値を報告させ得る運動アーチファクトの低減である。これは、部分的に、日常の活動中、胸部が、典型的に、手および指より動かず、後続アーチファクト低減が、最終的に、患者から測定されるパラメータの正確度を改良する事実に起因する。
【0147】
(時間依存生理学的波形の測定およびバイタルサインおよび血行動態パラメータの計算)
上で説明されるパッチセンサは、図8A-Eに示されるように、時間依存ECG、IPG、BR、PPG、PCG、およびACC波形を集合的に処理することによって、バイタルサイン(HR、RR、SpO2、TEMP)および血行動態パラメータ(FLUIDS、SV、CO)を決定する(注記:BRおよびIPG波形は、類似する形態を有し、したがって、簡略化のみのために、IPG波形のみが、図8Dに示される)。ECG、IPG、BR、PPG、およびPPG波形は、典型的に、心拍誘発「パルス」によって特徴付けられ、これらは、図に破線170a、170bによって示される。パルスの時間的分離は、図8Aに示されるように、HRに反比例する。波形のうちのいくつか、中でも最も注目すべきは、IPGおよびBR波形は、呼吸事象によって強く影響を受ける。これは、そのような事象が患者の胸部における静電容量、したがって、インピーダンスを変化させるためである。とりわけ、図8Cは、RRに反比例する分離を伴う破線180a、180bによって示される起伏を特徴とする。これらのバイタルサイン、すなわち、HRおよびRRに対応する値は、上記に詳細に説明されるように、周波数ドメインスペクトルにおいてF0およびF1を位置特定するために使用される心拍ピッカアルゴリズムに知らせるために使用されることができる。
【0148】
測定中、パッチセンサ上で動作する内蔵ファームウェアは、「心拍ピッキング」アルゴリズムを用いて、上で説明されるもののように、これらの波形におけるパルスを処理し、各パルスの特徴に対応する基準マーカを決定し、これらのマーカは、次いで、本明細書に説明される追加のアルゴリズムを用いて処理され、バイタルサインおよび血行動態パラメータを決定する。
【0149】
例えば、図8Aは、本明細書に説明されるパッチセンサによって測定されたECG波形を示す。それは、各心臓サイクルの開始を非公式にマーキングする心拍誘発QRS複合体を含む。他の生理学的波形と比較して、ECG波形は、典型的に、比較的に良好な信号対雑音比を有し、心拍ピッキングアルゴリズムを用いて分析することが容易であり、したがって、それらは、多くの場合、HRを測定するために使用され、QRS複合体は、下記に説明されるより複雑な波形のうちのいくつかを分析するための「基準」マーカとして機能する。図8Bは、光学センサによって測定されるPPG波形を示し、心拍誘発血流によって引き起こされる下にある毛細血管の体積変化を示す。当技術分野で周知であるように、赤色(約660nm)および赤外(約940nm)における光学放射を用いて測定されるPPG波形のACおよびDC成分は、SpO2の値を決定するために集合的に処理されることができる。
【0150】
IPG波形は、ACおよびDC成分の両方を含み、DC成分は、ベースライン電気インピーダンスを測定することによって胸部における流体の量を示し、Zの平均値は、上記に参照されるように、FLUIDSを決定するために使用される。図8Cに示されるAC成分は、胸部脈管内の血流を追跡し、IPG波形の脈動成分を表す。AC成分の時間依存導関数は、胸部脈管内の血流の最大加速度を示す明確に定義されたピークを含む。ACおよびDC成分の両方は、左心室駆出時間(本明細書では「LVET」)と呼ばれるパラメータおよびSramek-Bernstein方程式と呼ばれる式(またはそれと同等の式)とともに処理され、SVを決定することができる。LVETは、大動脈弁の開放と閉鎖との間の時間的分離を示し、当技術分野で公知であるように、それは、AC成分の時間依存導関数から直接決定されることができる、または代替として、Weissler回帰と呼ばれる標準回帰方程式を使用してHR値から、またはPCG波形におけるS1およびS1ピークの時間的分離から推定されることができる。COは、SVおよびHRの数学的積である。
【0151】
図8Dに示されるPCG波形は、各心拍に対応する2つの特徴、すなわち、S1(下にある僧帽弁および三尖弁の閉鎖を示す)およびS2(大動脈弁および肺動脈弁の閉鎖を示す)を含む。S1およびS2の振幅、タイミング、および周波数ドメインスペクトルは、BPに敏感であることが公知である。加速度計によって単一の軸に沿って測定された運動波形が、図8Eに示される。運動波形は、典型的に、x、y、およびz軸に沿って測定され、患者の運動の程度およびタイプ、および患者の姿勢を特性評価するために使用されることができる。
【0152】
BPに関連するパラメータは、異なる波形における特徴間の時間差を分析することによって決定されることができる。例えば、パッチセンサ上のファームウェアにおいて動作するアルゴリズムが、QRS複合体と他の波形の各々の上の基準マーカとの間の時間間隔を計算することができる。1つのそのような間隔は、パルス到着時間(本明細書では「PAT」)と称されるPPG波形におけるパルスの「足」(図8B)およびQRS複合体(図8A)を分離する時間である。PATは、BPおよび全身血管抵抗に反比例する。同様に、血管通過時間(本明細書では「VTT」)は、ECG以外の波形における基準マーカ、例えば、PCG波形におけるパルスのS1またはS2点(図8D)とPPG波形の足(図8B)との間の時間差である。または、波形におけるパルスのピーク(図8C)およびPPG波形の足(図8B)である。一般に、ECG以外の波形から決定される時間依存基準の任意の組が、VTTを決定するために使用されることができる。集合的に、4つの生理学的波形におけるパルスから抽出されたPAT、VTT、および他の時間依存パラメータは、「収縮期時間間隔」と称され、典型的に、BPに反比例する。
【0153】
典型的に、収縮期時間間隔に基づくBP測定方法は、BPの変化を示し、それらは、BPの絶対値を決定するために、カフベースのシステム(例えば、手動聴診または自動化オシロメトリ)からの較正を要求する。典型的に、そのような較正方法は、初期BP値およびBPとPAT/VTTとの間の患者特有の関係を提供する。カフなし測定中、PAT/VTT値は、準連続的様式で測定され、次いで、較正の間に決定されたBPおよびPAT/VTTの値と組み合わせられ、BPの準連続的値をもたらす。そのような較正は、典型的に、オシロメトリを採用するカフベースのBPモニタを用いて患者を複数回(例えば、2~4回)測定すると同時に、上で説明されるもののようなPATおよびVTT値を収集することを伴う。各カフベースの測定は、別個のBP値をもたらす。較正は、典型的に、約1日持続し、その後、それらは、繰り返される必要がある。
【0154】
実施形態において、カフベースのBP測定のうちの1つは、患者のBPを改変する「課題事象」、例えば、ハンドグリップを握ること、姿勢を変えること、または患者の脚を上げることと一致する。これは、較正測定における変動を加え、それによって、BPの揺れに対する較正後測定の感度を改良する。他の実施形態において、「ユニバーサル較正」(例えば、全ての患者に対する単一の較正)が、BP測定のために使用されることができる。他の実施形態において、BP測定は、較正されないままであり、BPの相対的測定値のみが、計算される。
【0155】
(代替パッチセンサ)
本明細書に説明されるパッチセンサは、図7に示されるものと異なる形状因子を有することができる。例えば、図9A-Bは、それぞれ、そのような代替実施形態の上部および底部画像を示す。図7に説明されるパッチセンサのように、図9A-Bに示されるパッチセンサ230は、2つの主要なコンポーネント、すなわち、患者の胸部の中心の近傍に装着され、反射型光学センサ274を特徴とする中央感知/電子機器モジュール252と、細いケーブル258を用いて中央感知/電子機器モジュール252に接続する、二次モジュール254とを特徴とする。中央感知/電子機器モジュール252は、測定中、単回使用電極(図に図示せず)における篏合される磁気的に活性の支柱に接続する円形磁石251a-dを組み込む、電極リード250a-dを特徴とする。単回使用電極は、中央感知/電子機器モジュール252を患者の胸部に固定する。加えて、電極リード250aは、処理後、上で説明されるようなECG、IPG、およびBR波形をもたらす生体電気信号を検出するために、「感知」電極としての役割を果たす。同様に、電極リード250bは、IPGおよびBR測定のために高周波数、低アンペア電流を患者の胸部の中に注入するために、「駆動」電極としての役割を果たす。電極リード250c-dは、磁石251c-dとともに、いかなる電気的機能も果たさず、単純に、感知/電子機器モジュール252を患者の胸部により良好に固定するために使用される。ECG、IPG、およびBR測定を完了するために、二次モジュール254は、単一の感知電極256aおよび対応する磁石257a、および単一の駆動電極256bおよび対応する磁石257bを含む。それらは、感知電極リード250aおよび駆動電極リード250bを伴う電極対を形成する。前述のように、IPGおよびBR波形は、約5~1,000KHzに及ぶ複数の周波数において測定されることができる。
【0156】
図9A-9Bに示されるパッチセンサ230は、図7に示されるもののように、赤色および赤外波長を放出するLED272を特徴とする反射型光学センサ274を含む。光検出器270の円形アレイが、LED272を包囲する。埋め込まれた電気トレースを伴う薄いKapton(登録商標)フィルム273が、光検出器270およびLED272を包囲し、電圧が印加されるときに熱を発生させ、熱は、閉ループシステムを使用して、皮膚を41℃~42℃まで穏やかに温め、それによって、灌流を増加させ、対応するPPG波形を増幅する。
【0157】
パッチセンサ230は、測定中、温度センサ(図に図示せず)および患者の皮膚に接続する、熱伝導性金属支柱264を含む。これを用いて、パッチセンサ230は、皮膚温度を測定することができる。それは、小規模なUSBポート261を通して、または代替として、無線充電を実施する埋め込まれた変圧器を用いて充電され得る再充電可能Liイオンバッテリによって給電される。単純なオン/オフスイッチ260が、センサ230を電源オンにする。センサ230は、音響センサを欠き、それは、センサ230が上で説明されるようにS1およびS2を測定することができないことを意味する。
【0158】
他の実施形態において、パッチセンサ230は、他の形状因子を有することができ、追加のセンサを含み得る。例えば、二次モジュール254は、図7に示される音響センサ(コンポーネント146)に類似する音響センサを含み得る。反射型光学センサ274は、図7に示される光学センサ(コンポーネント136)のように、光検出器およびLEDの他の非円形構成を含み得る。例えば、実施形態において、光検出器は、線形、正方形、または長方形アレイにおいて配置され得る。
【0159】
図10-14は、それらが測定する波形の時間依存プロットとともに、本発明によるパッチセンサの代替実施形態を示す。これらの場合、各パッチセンサの付番されたコンポーネントは、図1に説明されるものと同じ機能を有する。例えば、図10Aは、患者11の手首上に装着されるパッチセンサ70の実施形態を示す。図10Bおよび10cは、それぞれ、パッチセンサによって測定されるPPGおよびPVP-AC波形を示す。ここでは、腕装着型ラップ82は、患者の手首からのPPG波形を測定する反射型光学センサを含む。図11Aは、光学センサ210のみが患者11の親指の周囲にバンドとして装着され、細いケーブル112を通して中央処理ユニット83に接続する、パッチセンサ70の類似する実施形態を示す。本実施形態に関して、センサによって測定されるPPGおよびPVP-AC波形が、それぞれ、図11Bおよび11Cに示される。
【0160】
図12Aは、患者の肘前窩の周囲に巻かれるバンド113において埋め込まれる音響センサ114を特徴とする2部分パッチセンサ70を示す。音響センサ114は、細いケーブル181を通して中央処理ユニット83に接続し、下にある上腕動脈を通して脈動する血液によって発生させられる音響音からPCG波形を測定する。本実施形態において、図10Aに示されるもののように、光学センサは、反射型であり、患者の手首からのPPG波形を測定する。本実施形態に対応する時間依存PPG、PCG、およびPVP-AC波形が、それぞれ、図12B-12Dに示される。
【0161】
図13Aは、本発明による別の2部分パッチセンサ70を示す。ここでは、電極包含二次センサ80が、患者11の肩の近傍に配置され、ケーブル181を通して中央処理ユニット83に接続する。電極包含二次センサ80は、ECGおよびIPG/BR波形が、上で説明されるものに類似する方法論を使用して、患者の上腕動脈に沿って測定されることを可能にする。図13B-13Eは、それぞれ、本発明の本実施形態を用いて測定されるECG、PPG、ICG/BR、およびPVP-AC波形を示す。
【0162】
図14Aは、パッチセンサ70のまた別の実施形態を示す。図13Aのように、本実施形態も、電極包含二次センサ85を含む。この場合のみ、二次センサ85は、電極と、患者11の下にある心臓からのPPG波形を測定する心音図センサとの両方を含む。パッチセンサ70によって測定される時間依存ECG、PPG、IPG/BR、PCG、およびPVP-AC波形が、それぞれ、図14B-14Fに示される。
【0163】
(iPIVAおよびパッチセンサの両方からの信号を処理するためのアルゴリズム)
図15Aは、患者の流体ステータスに関連するパラメータ(例えば、楔入圧、肺動脈圧、血液量、流体ステータス)を決定するために、本明細書に説明されるiPIVAおよびパッチセンサの両方からの信号を処理するアルゴリズムによって使用されるステップを示すフローチャート300を示す。図15B-Eは、フローチャート300に列挙される異なるステップに対応するグラフィカルプロットを示す。
【0164】
アルゴリズムは、上で説明されるように、パッチセンサを用いてHR/RRパラメータを明示的に決定するステップ(ステップ320)によって開始される。図10B図8A-Cから直接得られる)に示されるように、そのような測定に関して、パッチセンサは、典型的に、ECG、PPG、および/またはIPG/BR波形を測定し、上で説明されるようにそれらを処理し、HRおよびRRを決定する。アルゴリズムは、次いで、PVP-ACtimeを発生させるために、iPIVAセンサを使用して、時間ドメインにおけるPVP波形を収集する(ステップ322)。このステップに関して、アルゴリズムは、加えて、ポンプに起因するアーチファクトを低減または排除するために、フィルタリングアルゴリズム(例えば、バンドパスフィルタリング)または他の信号処理技法(例えば、適応フィルタまたは平均化技法、ポンプ誘発移動および雑音を考慮するための加速度計または音響センサの使用)を含み得る。信号は、典型的に、少なくとも数分の期間にわたって収集される。アルゴリズムは、次いで、PVP-ACtimeをより短い時間間隔にセグメント化し(例えば、図6A-Dに示される波形断片と同様に)、それは、PVP-ACtime,segmentsとして分類される(ステップ324)。PVP-ACtimeの例が、図10Cに示され、PVP-ACtime,segmentsは、図の破線340の間の波形の時間的領域によって示される。図15Dは、影付き円342によって示される区画に対応するPVP-ACtime,segmentsの時間依存プロットを示し、それは、心拍および呼吸事象の両方を示す特徴を有する。
【0165】
アルゴリズムがPVP-ACtime,segmentsを発生させると、各区画は、(例えば、FFT、CWT、またはDWTを使用して)周波数ドメインに変換され、PVP-ACfrequency,segmentsとして分類される個々の周波数ドメイン区画を発生させる(ステップ326)。アルゴリズムは、次いで、PVP-ACfrequency,segmentsの集合のアンサンブル平均をとり、PVP-ACfrequency,segments,aveを形成する(ステップ328)。PVP-ACfrequency,segments,aveが決定されると、アルゴリズムは、ステップ320中にパッチセンサによって独立して決定されたHR/RR値を使用し(ステップ330)、F0およびF1に対応する値およびエネルギーを識別するピークピッキングアルゴリズムに知らせる(ステップ332)。より具体的に、アルゴリズムは、パッチセンサからのHR/RR値を「真実」として使用し、次いで、アルゴリズムが周波数ドメインにおける誤ったピークを選択しないようにするフィルタにこれらを組み込む。代替として、ステップ330中、パッチセンサから決定されたHR/RR値は、適応フィルタまたは匹敵する数学的フィルタにおいて使用され、周波数ドメインスペクトルから誤ったピークおよび他の特徴(例えば、運動または雑音に関連付けられる)を除去し、それによって、F0およびF1を検出することをより容易にすることができる。
【0166】
図15Eは、この場合、離散ウェーブレット変換を用いて発生させられたF0(上側プロット)およびF1(下側プロット)のプロットを示す。プロットから明白であるように、このアプローチを使用して決定されたF0およびF1の両方の信号対雑音比は、高く、これらの基準マーカに関連付けられるパラメータを処理することを比較的に容易にする。
【0167】
F0およびF1が選択されると、それらの周波数は、ピーク最大値から決定され、それらのエネルギーは、それらのピーク振幅から、または代替として、最大ピーク振幅を中心とした曲線下の面積を積分することによって決定される(ステップ332)。アルゴリズムは、次いで、F0およびF1またはそれらの組み合わせに対応するパラメータを処理し、患者の流体ステータスに関連するパラメータを決定する(ステップ334)。臨床医は、次いで、そのようなパラメータを使用し、患者を治療することができる。
【0168】
図15Aのステップ334によって示されるアルゴリズムは、いくつかの形態をとることができる。例えば、それは、iPIVAを用いて測定されたF0およびF1に関連するパラメータ(例えば、大きさ、平均、変動性、位相、上り傾き、または下り傾き)を患者の流体ステータスに関連するパラメータ(楔入圧、血液量、肺動脈圧)に変換する単純な線形回帰方程式であり得る。ここでは、線形回帰の定数(傾き、y切片)は、典型的に、以下を同時に測定する臨床治験を用いて前もって決定される:1)本明細書に説明されるシステムを用いたiPIVA;および、2)肺動脈カテーテル等の基準デバイスを用いた患者の流体ステータスに関連するパラメータ。これらのデータが測定されると、線形回帰の傾きおよびy切片は、情報を処理することによって決定されることができ、それは、次いで、患者の流体ステータスに関連するパラメータを決定するために、iPIVA測定値とともにその後使用される。線形回帰の定数は、患者の体重、性別、またはバイタルサイン(例えば、HR、BP)等の患者に関連付けられる生体メトリックパラメータに従って群化され得る。関連する実施形態において、線形回帰は、多項式、指数、または非線形方程式等のより複雑な数学的関数と置換されることができ、そのパラメータは、上で説明されるアプローチを用いて前もって決定され、次いで、iPIVA値を患者の流体ステータスに関連するパラメータに変換するために使用される。
【0169】
代替として、機械学習アプローチが、iPIVAを用いて測定されたF0およびF1に関連するパラメータを患者の流体ステータスに関連するそれらに変換するモデルを開発するために使用されることができる。1つのそのような機械学習アプローチは、サポートベクターマシン(本明細書では「SVM」)と呼ばれる。アプローチは、ここでは、線形回帰と共に使用されるそれに類似し、臨床治験から決定されたデータは、SVMを構築するために使用され、それは、次いで、iPIVAパラメータを心臓楔入圧のようなものに変換するためにその後使用される。類似する用途において使用され得る他の算出モデルは、ガウスカーネル関数、ブースティングアンサンブル、およびバギングアンサンブルを含む。
【0170】
(他の代替実施形態)
本発明の実施形態において、iPIVAセンサ上で動作するアルゴリズムは、RR(すなわち、F0)およびHR(すなわち、F1)に関連付けられる特徴を識別するために、以下のステップを使用することができる。
【0171】
ステップ1)時間ドメインにおいてPVP波形を収集し、処理すべき所望の区分を選択する。
【0172】
ステップ2)PVP波形の所望の区分を36秒区画に分割し、各区画のCWTをとる。
【0173】
ステップ3)各区画のCWTに関するF0の可能な値を0~0.5Hzの最も大きいエネルギーに関連付けられる周波数の中央値として識別する。次いで、5つの連続する区画に関する中央F0値を計算し、それは、以下のステップに関するF0の作業推定値となる。
【0174】
ステップ4)ステップ3において決定されるようなF0の2倍、3倍、および4倍高調波における中央値エネルギーを識別する。4倍高調波のエネルギーが、3つのうちの最も高い場合、4倍高調波の周波数が、F1に関する候補となる。
【0175】
ステップ5)F0の4倍高調波を上回る周波数からの全ての局所最大値を検出する。各最大値に関して、その最大値の周波数の倍数の10%以内である周波数を伴う他の最大値の数をカウントする。最も大きい数の倍数を伴う最大値は、この区画に関する最終F1である。しかしながら、複数のピークが同数の倍数を有する場合、または、1つのみのピークが存在する場合、または、いかなるピークも存在しない場合、下記のステップ6に進む。
【0176】
ステップ6)F0の4倍高調波を上回り、最も大きい対応するエネルギー(すなわち、ピーク下の積分面積)を有する周波数を見出す。これは、F1に関する新しい候補となる。ステップ4からの候補F1も、存在する場合、2つの候補F1におけるエネルギーを比較し、より大きい関連付けられるエネルギーを伴う候補F1を選定する。ステップ4からの候補F1が存在しない場合、新しい候補F1が、このステップに説明されるように計算され、この区画に関する最終F1となる。
【0177】
ステップ7)以前の5つの区画からの中央値F1が、F1の作業推定値となる。
【0178】
実施形態において、(例えば、CWTの代わりにFFTまたはDWTを使用する)このアプローチの変形例が、F0およびF1の値を決定するために、上記に列挙されるステップと共に使用されることができる。
【0179】
本発明の他の実施形態において、S1またはS2のうちの一方(または両方)の心音の振幅が、BPを予測するために使用されることができる。このパラメータは、典型的に、心音の振幅に伴って線形様式で増加する。実施形態において、この線形関係を説明するユニバーサル較正が、心音振幅をBPの値に変換するために使用され得る。BPを決定するためのアルゴリズムは、機械学習または人工知能を使用する技法、例えば、SVMを使用する技法にも基づき得る。
【0180】
BP測定のための較正は、例えば、多数の対象で行われる臨床治験において収集されるデータから決定され得る。ここでは、BPと心音振幅との間の関係を説明する数値係数が、治験中に収集されるデータをフィッティングすることによって決定される。これらの係数および線形アルゴリズムは、実際の測定中の使用のためにセンサにコード化される。代替として、患者特有の較正が、実際の測定を進める較正測定中に、基準血圧値および対応する心音振幅を測定することによって決定されることができる。較正測定からのデータは、次いで、患者特有の較正を決定するために上で説明されるようにフィッティングされることができ、それは、次いで、心音をBP値に変換するためにその後使用される。
【0181】
IPG、BR、およびPCG波形の時間および周波数ドメイン分析が、咳、喘ぎ等の呼吸事象を区別し、呼吸一回換気量を測定するために使用されることができる。特に、呼吸一回換気量は、IPGまたはBR波形(図8Cに示されるもの等)における「呼吸パルス」下の面積を積分し、次いで、これを所定の較正と比較することによって決定される。そのような事象は、患者の代償不全を予測することに役立つために、iPIVAセンサからの情報と組み合わせられ得る。他の実施形態において、本発明は、バイタルサインおよび血行動態パラメータを決定するための上で説明されるアルゴリズムの変形例を使用し得る。例えば、IPG、PCG、およびPPG波形内のパルスの信号対雑音比を改良するために、パッチセンサ上で動作する内蔵ファームウェアは、「心拍スタッキング」と呼ばれる信号処理技法を動作させることができる。心拍スタッキングでは、例えば、平均パルスが、IPG波形からの複数(例えば、7つ)の連続するパルスから計算され、それは、ECG波形における対応するQRS複合体の分析によって区切られ、次いで、一緒に平均化される。IPG波形のAC成分の導関数が、次いで、アンサンブル平均として7サンプルウィンドウにわたって計算され、次いで、上で説明されるように使用される。
【0182】
他の実施形態において、敏感な加速度計が、患者の下にある拍動する心臓によって駆動される胸部の小規模な振動性運動を測定するために、(例えば、図9A-Bに示されるパッチセンサにおける)音響センサの代わりに使用されることができる。そのような波形は、振動性心臓図(SCG)と称され、S1およびS2心音を測定するために、PCG波形の代わりに(またはそれと共同して)使用されることができる。
【0183】
他の実施形態において、PIVAおよびiPIVAからの信号が、IV浸潤、血管外漏出、およびIV閉塞等の条件を推定するために使用されることができる。ここでは、時間および周波数ドメインPVP波形の変化は、これらの条件を示すことができる。例えば、F0およびF1の漸進的な低減と組み合わせられるPVPの漸進的な増加は、IVカテーテルが患者の静脈から外に、かつ周辺組織の中に滑動していることを示し得る。代替として、F0およびF1の急速な排除と組み合わせられるPVPの急速な増加は、IVカテーテルが閉塞されていることを示し得る。他の実施形態において、これらの信号は、IVポンプ性能(例えば、流量)またはIVシステムが自由流動状態にあるかどうかを監視するために使用されることができる。
【0184】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の請求項の範囲内であると見なされる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
【国際調査報告】