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特表2023-533471貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイス、充填デバイスを有する燃料補給ステーション、及び貯蔵タンクを充填する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイス、充填デバイスを有する燃料補給ステーション、及び貯蔵タンクを充填する方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20230727BHJP
   B60S 5/02 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
F17C5/06
B60S5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580205
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2021067327
(87)【国際公開番号】W WO2021260100
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】102020207827.0
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522482784
【氏名又は名称】アルゴ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3D026
3E172
【Fターム(参考)】
3D026CA05
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BA04
3E172BD03
3E172BD05
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA35
3E172EA48
3E172EA51
3E172EB02
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイス100に関し、充填デバイス100は、圧縮される水素を圧縮するための圧縮装置1と、圧縮水素を一時的に貯蔵する役割を果たす少なくとも1つの高圧貯蔵タンク10と、圧縮される水素が圧縮装置1に供給され得る配管システム20とを含み、圧縮装置1内で圧縮される水素は、次いで、高圧貯蔵タンク10に、及びそこから充填される貯蔵タンクに供給され得、圧縮装置1は圧力容器2を含み、圧力容器2の中に、圧縮液体3が導入され得、圧力容器2の中に、圧縮される水素が気体状態で導入され得、且つ圧力容器2内の圧縮液体3の液体体積を増加させることによって所定の圧力Pまで圧縮され得る。さらに、本発明は、本発明による充填デバイス100を有する燃料補給ステーションと、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮された水素で充填するための充填デバイス(100)であって、
圧縮されるべき水素を圧縮するための圧縮装置(1)と、
圧縮された水素を一時的に貯蔵するための少なくとも1つの高圧貯蔵タンク(10)と、
配管システム(20)であって、前記配管システム(20)を介して、前記圧縮されるべき水素を前記圧縮装置(1)に供給した後に、前記圧縮装置(1)において圧縮された水素を前記高圧貯蔵タンク(10)に供給し、さらに前記高圧貯蔵タンク(10)から、充填されるべき前記貯蔵タンクに供給するための前記配管システム(20)と、
を備えている前記充填デバイス(100)において、
前記圧縮装置(1)が、圧力容器(2)を備えており、圧縮液体(3)、特に水が、前記圧力容器(2)に導入され、前記圧縮されるべき水素が、気体状態で前記圧力容器(2)に導入され、前記圧力容器(2)の内部における前記圧縮液体(3)の液体体積を増大させることによって所定の圧力(P)に至るまで圧縮されることを特徴とする充填デバイス(100)。
【請求項2】
前記圧縮装置(1)が、特に前記圧縮液体(3)が前記圧力容器(2)に導入される前に、前記圧縮液体(3)を所定の温度(T)に至るまで、特に1℃~5℃の温度に至るまで、好ましくは1℃の温度に至るまで冷却するように構成されている冷却デバイス(4)を有している、請求項1に記載の充填デバイス(100)。
【請求項3】
前記充填デバイス(100)が、特に下から前記圧力容器(2)に前記圧縮液体(3)を供給するための供給管(21)を備えている、請求項1又は2に記載の充填デバイス(100)。
【請求項4】
前記圧縮装置(1)が、前記圧縮液体(3)、特に前記水を一時的に貯蔵するための貯蔵タンク(5)を備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項5】
前記圧縮装置(1)が、特に最大1000barの圧力で前記圧縮液体を前記圧力容器(2)に供給するために、最大1000barの作動圧力(P)で前記圧縮液体が前記圧縮装置(1)に利用されるように構成されている圧縮デバイス(6)、特に高圧ポンプを備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項6】
前記高圧貯蔵タンク(10)が、最大1000barの圧力で圧縮水素を一時的に貯蔵するように構成されており、及び/又は
前記圧縮装置(1)が、前記水素を最大1000barの圧力に至るまで圧縮するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの高圧貯蔵タンク(10)が、好ましくは互いに独立して充填すること及び/若しくは空にすることができる複数の貯蔵セグメント(10A,10B,10C)に分割されており、並びに/又は、好ましくは互いに独立して充填すること及び/若しくは空にすることができる複数の高圧貯蔵タンク(10)を有している、請求項1~6のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項8】
前記充填デバイス(100)、特に制御デバイス(60)が、貯蔵タンクを充填する場合に、前記貯蔵セグメントそれぞれ及び/又は前記高圧貯蔵タンクそれぞれの温度が所定の閾値(Tmin)に至るまで減少して初めて、前記貯蔵セグメント(10A,10B,10C)のうち一の貯蔵セグメント及び/又は前記高圧貯蔵タンク(10)のうち一の高圧貯蔵タンクから一時的に貯蔵された水素を除去するように構成されており、前記所定の閾値が、-20℃~-40℃、好ましくは-25℃~-35℃の範囲にある、請求項7に記載の充填デバイス(100)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記高圧貯蔵タンク(10)が、冷却チャンバ(30)の内部において所定の温度(Tcooling-chamber)に至るまで冷却されるように、又は前記所定の温度(Tcooling-chamber)に維持されるように、好ましくは断熱されている前記冷却チャンバ(30)に設けられており、前記冷却チャンバ(30)の前記所定の温度(Tcooling-chamber)が、-40℃~10℃、好ましくは-20℃~5℃の範囲にあり、特に好ましくは1℃である、請求項1~8のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項10】
前記充填デバイス(100)が、好ましくは温度制御デバイス(50)を具備する分配デバイス(40)(分配器)を有しており、前記分配デバイス(40)によって少なくとも1つの前記貯蔵タンクに、特に車両の少なくとも1つの前記貯蔵タンクに供給される前記水素が、個別に存在する構成条件に対して調整され、好ましくは、前記水素が、350bar~700barの圧力且つ-33℃~-40℃の温度で前記貯蔵タンクに供給される、請求項1~9のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項11】
前記充填デバイス(100)が、クイックカップリング(220)を有しており、携行式水素貯蔵ユニット(230)が、前記クイックカップリング(220)を介して、前記充填デバイス(100)と流体導通可能に接続されており、圧縮水素で充填される、請求項1~10のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)。
【請求項12】
車両に圧縮水素を補給するための燃料補給ステーション(200)、特に水素燃料補給ステーションであって、
好ましくは燃料補給されるべき車両に設けられた対応する受容デバイスに対応するように構成されている少なくとも1つの燃料補給デバイスと、
請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの貯蔵タンクを充填するための充填デバイス(100)であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の充填デバイス(100)と、
を備えている、燃料補給ステーション(200)。
【請求項13】
水素貯蔵ユニット(210)、及び/又は、
クイックカップリング(220)であって、携行式水素貯蔵ユニット(230)が、前記クイックカップリング(220)を介して、前記充填デバイス(100)と流体導通可能に接続され、気体状の水素が、1bar~500barの圧力で前記水素貯蔵ユニット(210)及び/又は前記携行式水素貯蔵ユニット(230)に貯蔵され、高圧貯蔵タンク(10)に一時的に貯蔵するために、前記充填デバイス(100)の圧縮装置(1)によって最大1000barの圧力に至るまで圧縮される、前記クイックカップリング(220)と、
を備えている、請求項12に記載の燃料補給ステーション(200)。
【請求項14】
前記燃料補給ステーション(200)、特に制御デバイス(60)が、クラウドベースサーバ及び/又は携行式アプリを介して、クライアント、特に燃料補給されるべき車両と、例えば燃料補給量、燃料補給温度、燃料補給圧力、燃料補給速度(グラム/秒)、燃料及び補給時間等の、前記クライアントの燃料補給要件についての情報を交換することによって、少なくとも1つの燃料補給プロフィール及び/又は燃料補給予測を決定するように構成されている、請求項12又は13に記載の燃料補給ステーション(200)。
【請求項15】
前記燃料補給ステーション(200)、特に前記制御デバイス(60)が、少なくとも1つの前記高圧貯蔵タンク(10)に一時的に貯蔵された水素の少なくとも1つの前記燃料補給プロフィール及び/又は前記燃料補給予測に基づいて、前記充填デバイス(100)を制御及び/又は調整するように、特に、例えば貯蔵された水素量、水素の温度、及び貯蔵された水素の圧力のような状態パラメータを制御及び/又は調整するように構成されている、請求項14に記載の燃料補給ステーション(200)。
【請求項16】
少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための方法であって、
a)特に気体状の圧縮されるべき水素を、圧縮液体(3)を導入するための圧力容器(2)に導入するステップと、
b)前記圧縮液体(3)を前記圧力容器(2)に導入することによって、すなわち前記圧力容器(2)の内部における前記圧縮液体(3)の液体体積を増大させることによって、圧縮されるべき前記水素を所定の圧力(P)に至るまで圧縮するステップと、
を備えている、方法。
【請求項17】
前記圧縮されるべき水素を圧縮する際に、前記圧縮液体と接触させることによって前記圧縮されるべき水素を受動的に冷却するために、前記圧力容器(2)に導入される前記圧縮液体が、前記圧縮液体が導入又は供給される前に、特に1℃~5℃の範囲内の温度に至るまで、特に1℃の温度に至るまで冷却される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記圧縮されるべき水素を前記圧縮する際に、前記圧縮液体(3)の充填レベルが、最小充填レベル(Hmin)から所定の充填レベル(HSetpoint)に至るまで引き上げられ、これにより、前記圧縮されるべき水素の圧力が所定の目標値に至るまで高められる、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、
c)前記圧縮水素を少なくとも1つの高圧貯蔵タンク(10)に供給し、前記圧縮水素を少なくとも1つの前記高圧貯蔵タンク(10)に一時的に貯蔵するステップと、
d)前記圧力容器(2)の内部の前記圧縮液体(3)の充填レベルを、特に最小充填レベル(Hmin)に戻るまで引き下げるステップと、
e)排出された前記圧縮液体(3)を貯蔵タンク(5)に一時的に貯蔵するステップと、
を備えている、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、
f)好ましくは高圧ポンプによって、前記圧縮液体を最大1000barの作動圧力(P)に至るまで加圧するステップと、
g)前記作動圧力(P)の下、前記圧縮液体を再冷却するステップと、
h)前記作動圧力の下、前記圧縮液体を前記圧力容器(2)に供給するステップであって、これにより、ステップa)において前記圧力容器(2)に導入された前記水素が、前記所定の圧力(P)に至るまで圧縮される、ステップと、
を備えている、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイスに関する。さらに、本発明は、説明したタイプの充填デバイスを有する燃料補給ステーション、特に水素燃料補給ステーションに関する。その上、本発明は、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にガソリン及びディーゼルで燃料補給する役割を果たす従来の燃料補給ステーションはよく知られている。さらに、いわゆる天然ガス車両が、400bar~1000barの圧力で存在する圧縮天然ガスで燃料補給される燃料補給ステーションはよく知られている。ここでは、天然ガスは、大抵は、1000barまでの圧力において地下貯蔵タンクに貯蔵されて、燃料補給される車両に供給される。
【0003】
加えて、最近、ますます多くの水素燃料補給ステーションが実現されており、そこにおいて、相応に修正された車両又は近代的な燃料電池車両が、気体及び/又は液体の水素で燃料補給され得る。以後、水素燃料補給ステーションと呼ばれるこれらの燃料補給ステーションにおいて、気体及び/又は液体の水素が、適切な燃料補給カップリングによって燃料補給される車両に転送される。
【0004】
ますます多くの車両メーカーが、天然ガス、LPG又は水素などの気体燃料を動力源とするモータ車両を提示している。これらは、乗用車のみでなく、バス、トラック及びフォークリフトも含む。圧縮ガスで動作する車両の増加する数と平行して、燃料補給ステーションの数、特に水素燃料補給ステーションの数も増加している。水素燃料補給ステーションは、個人顧客によってより多く使用される。天然ガス又はLPGと比較して水素の圧力はより高く、温度はより低いため、燃料補給方法及び他のデバイスに対する新しい開発が、特に水素で燃料補給するために必要である。加えて、しかしながら、他の燃料と比較して、水素に対するコストは、受け入れを高めるためにできるだけ低く保たれなければならない。これは、燃料補給ステーションに対する投資コストも、低く保たれなければならないことを意味する。
【0005】
水素燃料補給ステーションはすでに存在し、そこにおいて、車両に気体水素で燃料補給することは、700barまでの圧力で実現されている。数台の車両を連続して及び/又は同時に燃料補給することができるようにするために、通常、大量の加圧された気体水素が、対応する圧力バッファ内に一時的に貯蔵される燃料補給方法が使用される。加えて、備えられるべき圧縮器システムは、所要の体積流量が保証され得るように寸法付けられるか又は設計されなければならない。
【0006】
様々なタイプのピストン又はダイヤフラムの圧縮器が、ガス産業において知られている。特に、ピストン駆動の圧縮器は、ピストンの運動に追従して、相応に高い応力を受けるシール又は二重シールを有するという問題を有する。シールが漏出するとすぐに、圧縮器はもはや働かず、分解修理されなければならない。さらに、起こり得る漏出を検出することが必要であり、漏出が確認されない場合、環境を危険にさらす可能性がある。ダイヤフラム圧縮器は、ピストンの代わりに大きいダイヤフラムを使用する。ダイヤフラム圧縮器は、非常に低い圧力で起動することができ、ほんの小さい振動又はストロークを発生することができる。同様に漏出をもたらす可能性がある、ダイヤフラムの中の微小クラックは、検出が困難である。両システムには、密閉手段の高速移動という問題があり、この問題は、シールに高いストレスを与える。圧縮器は、ガス(水素)と接触しているので、これらの圧縮器を修理するには時間がかかる。
【0007】
さらに、ピストン圧縮器は、通常、圧縮空気又は油圧オイルによって駆動される。圧縮器内部の熱膨張によって、圧縮されるガス、特に水素は、熱くなり冷却されなければならず、それは極めて多くのエネルギーを消費する。
【0008】
ダイヤフラム圧縮器を用いて、ダイヤフラムが備えられるヘッドは非常に重く、それは、維持管理に非常に時間がかかり、且つダイヤフラム圧縮器は多くの空間を必要とすることを意味する。特定の箱の解決策が提供されなければならず、圧縮器の上の空間は、維持管理のために必要であるので、使用することはできない。ダイヤフラム圧縮器は繊細であり、1日に数回(1日に3~5回以内)動作又は起動するのみであるべきであり、それは、ダイヤフラム圧縮器の制御を極めて柔軟性の無いものにする。これは、変動する燃料補給サイクルを有する燃料補給ステーションにとって不可能である。ダイヤフラム圧縮器が極めてまれに起動される、すなわち連続的に動作されるならば、それらは長い耐用年数を有する。それゆえ、ダイヤフラム圧縮器は、通常、24時間年中無休で圧縮器が動作される産業において使用される。
【0009】
それに応じて、現在知られているピストン及びダイヤフラムの圧縮器は、変動する短い燃料補給サイクルを有する燃料補給ステーション、特に水素燃料補給ステーションにおいて、限定的に使用され得るのみである。
【0010】
さらに、車両を水素で燃料補給するために特に備えられた既知の燃料補給ステーションは、多くの冷却エネルギーを必要とする。たとえば、乗用車の燃料補給は、ポンプ内のガス(水素)を-40℃に事前冷却する必要がある。-40℃において、車両は、車両のタンクシステムを過剰に熱することなしに約5分以内に約5kgの量の水素を燃料補給され得る。
【0011】
車両は、通常、圧縮器によって直接燃料補給されるか、又は周囲温度を有する高圧バンドルを形成する。より多くの水素を必要とする産業用トラックのために、燃料補給流量は、乗用車に対して一般的である60グラム/秒から、たとえば、120グラム/秒又はさらには180グラム/秒まで増大されなければならない。しかしながら、これは、ガス又は水素が、より冷却されなければならないこと、及びより多くの冷却エネルギーが必要となることを意味する。
【0012】
上記で簡単に説明したように、圧縮装置(圧縮器)の気密性が、ガスを圧縮するとき、特に水素を圧縮するときの主要な問題である。水素は、地球上で見られる最小の分子であり、それは、圧縮装置及び水素燃料補給ステーション全体の気密性を確保することを困難にする。システム、特に圧縮装置が気密でない場合、漏出した場合に非常に危険である。水素は、ピストン又はダイヤフラムの圧縮器によって既知の圧縮の間に非常に熱くなり、それが、圧縮ガス(水素)を冷却する冷却器が備えられなければならない理由である。
【0013】
ガス(水素)を圧縮した後に必要な冷却のため、既知の水素燃料補給ステーションのエネルギー消費は極めて高い。従来の水素の圧縮では、圧縮された水素を冷却するために投入されるエネルギーは、実際に水素の圧縮に必要なエネルギーとほぼ同じ高さである。
【0014】
圧縮水素の利用可能性に関して上記で説明した新しい要件、特に増大する燃料補給流量を満たすために、特許文献1は、たとえば、貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための配置を提案しており、その配置は、a)液体及び/又は気体の状態で水素を貯蔵する役割を果たす少なくとも1つの貯蔵容器と、b)貯蔵容器内に貯蔵された水素を圧縮する役割を果たす少なくとも1つの低温ポンプ及び/又は少なくとも1つの圧縮器と、c)圧縮水素を一時的に貯蔵する役割を果たす少なくとも1つの高圧貯蔵タンクと、d)貯蔵タンク及び/又は高圧貯蔵タンクからの水素が、高圧貯蔵タンクに割り当てられる冷却及び/又は加熱手段を用いて、充填される貯蔵タンクに供給される配管システムとを含む。
【0015】
同じく、水素燃料補給ステーションを教示する特許文献2に記述されるように、液体水素を貯蔵するときのボイルオフガスの問題がある。特許文献2は、貯蔵タンクのボイルオフガスを排出してそれを配管を冷却するために使用することを提案している。液体水素の生産は、極めて多くのエネルギーを消費し、そのような水素燃料補給ステーションの効率は、ボイルオフ効果によって相応に大きく損なわれる。水素燃料補給ステーションへの液体水素の輸送も、水素の温度が低いために極めて複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009039645号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102016009672号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
車両に燃料補給するための燃料補給ステーションにおける圧縮水素の圧縮及び提供(provision)における上記の問題を考慮して、本発明の1つの目的は、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイスと、説明したタイプの充填デバイスを有する燃料補給ステーションと、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法を提供することであり、それらは、一方で、提供及び燃料補給のために必要なエネルギー投入を低減すること、及び他方で、維持管理の努力及び動作コストを最小化することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
記述される目的は、請求項1による、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイスと、請求項12による、燃料補給ステーション、特に水素燃料補給ステーションと、請求項16による、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法とによって解決される。
【0019】
本発明の望ましいさらなる開発が、従属請求項において示され、充填デバイスならびに燃料補給ステーションの主題が、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法において使用され得、その逆も成り立つ。
【0020】
ここで、本発明の基本的な考え方のうち1つは、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイスが、水素を圧縮するために、圧縮される水素が導入され得る圧力容器を有する圧縮装置を装備されることであり、水素は、好ましくは弁によってこの圧力容器内に閉じ込められ得、水素は、圧力容器に導入され得る圧縮液体、特に水の液体体積を増大させることによって圧縮され得る。
【0021】
このようにして、水素を圧縮する間に水素と直接接触する、上記で説明した従来のピストン又はダイヤフラムの圧縮器は、なしで済ますことができ、その結果として、上記で説明した漏出の影響を非常に受けやすいこと及び関連する高い維持管理努力の問題が除去され得る。さらに、圧縮液体として水が使用されるとき、水素の汚染(無関係な原子の拡散)が除外され得る。その上、説明した水素を圧縮する方式で、水素の温度がほんのわずかに高くなり、それは、従来の、ピストン又はダイヤフラムの圧縮器による圧縮の後の水素の再冷却をなしで済ますことができることを意味し、その結果として、圧縮プロセスの、及びしたがって全充填プロセスのエネルギー効率は、かなり高められ得る。
【0022】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイスは、圧縮される水素を圧縮するための圧縮装置と、圧縮水素を一時的に貯蔵する役割を果たす少なくとも1つの高圧貯蔵タンクと、圧縮される水素が圧縮装置に供給され得る配管システムとを有し、圧縮装置内で圧縮される水素は、次いで、高圧貯蔵タンクに、及びそこから充填される貯蔵タンクに供給され得、圧縮装置は圧力容器を有し、圧力容器の中に圧縮液体、特に水が導入され得、圧力容器の中に圧縮される水素が気体状態で導入され得、且つ圧力容器内の圧縮液体の液体体積を増大させることによって所定の圧力Pまで圧縮され得る。
【0023】
言い換えれば、圧縮される水素のための圧力容器内で利用可能な貯蔵体積が、圧縮液体を圧力容器内に導入することによって低減され得、圧縮液体の一部は、すでに圧力容器内に存在しており、それにより、水素が所定の又は所望の圧力まで圧縮されることを可能にする。それに応じて、圧力容器内に導入される圧縮液体の量が、圧縮される水素に対して利用可能な貯蔵体積の体積における変化、ひいては、水素の圧縮すなわち圧力上昇を決定する。圧縮液体を導入することによって圧力容器内の水素を圧縮することができるようにするために、水素は、弁によって圧力容器内に閉じ込められることが望ましい。
【0024】
この関連において、圧縮装置は、特に圧縮液体が圧力容器内に導入又は供給される前に、圧縮液体を所定の温度Tに、特に1℃~5℃の範囲内、好ましくは1℃の温度まで冷却するように構成された冷却デバイスを有することが有利であり得る。
【0025】
このようにして、圧縮される水素は、冷却された圧縮液体と接触することによって圧縮プロセスの間に受動的に冷却され得る。
【0026】
さらに、圧縮装置が、特に下から圧力容器に圧縮液体が供給され得る供給管を有するならば有利である。
【0027】
その上、圧縮装置は、圧縮液体、特に水が一時的に貯蔵され得る貯蔵タンクを有することが望ましい。このようにして、すでに冷却された圧縮液体が再使用され得、その結果として、圧縮流体を冷却するためのエネルギー投入が低減され得る。
【0028】
さらに、本発明の文脈では、以下で使用される「車両」もしくは「輸送手段」という用語、又は他の同様の用語は、一般に、スポーツ用多目的車(SUV)を含む乗用車、バス、トラック、様々な商用車、様々なボート及び船舶を含む水上輸送手段(water vehicle)、航空機、空中ドローン及び同等物、ハイブリッド車両、電気車両、プラグインハイブリッド電気車両、水素車両及び他の代替車両などのモータ車両を含む。本明細書で記述するように、ハイブリッド車両は、2つ以上のエネルギー源を有する車両、たとえば、ガソリン駆動であると同時に電気駆動である車両である。
【0029】
さらなる実施形態によれば、圧縮装置は、圧縮デバイス、特に高圧ポンプを有し、圧縮装置は、特に1000barまでの圧力において圧縮液体を圧力容器に供給するために、圧縮液体を、1000barまでの作動圧力Pにおいて圧縮装置に対して利用可能にするように構成される。
【0030】
さらに、高圧貯蔵タンクは、1000barの圧力までの圧縮液体を一時的に貯蔵するように構成されること、及び/又は圧縮装置は、1000barまでの圧力に水素を圧縮するように構成されることが望ましい。
【0031】
さらに、少なくとも1つの高圧貯蔵タンクが、好ましくは互いに個別に充填され得る及び/又は空にされ得る複数の貯蔵セグメントに分割されること、及び/又は、好ましくは互いに個別に充填され得る及び/又は空にされ得る複数の高圧貯蔵タンクが存在することが望ましい。
【0032】
その上、充填デバイス、特に制御デバイスが、貯蔵タンクを充填するとき、それぞれの貯蔵セグメント及び/又はそれぞれの高圧貯蔵タンクの温度が所定の閾値(Tmin)まで減少するまでのみ、貯蔵セグメントのうち一の貯蔵セグメント及び/又は高圧貯蔵タンクのうち一の高圧貯蔵タンクから一時的に貯蔵された水素を除去するように構成されるならば有利であり、所定の閾値は、-20℃~-40℃、好ましくは-25℃~-35℃の範囲内である。水素が現在除去されている貯蔵セグメント及び/又は高圧貯蔵タンクの温度が、所定の閾値に到達した場合、それぞれの貯蔵セグメント及び/又は高圧貯蔵タンクを過剰に冷却すること又は凍結させることを防止するために、別の貯蔵セグメント及び/又は別の高圧貯蔵タンクに切り替えることが可能である。
【0033】
ここで、有利には、少なくとも1つの高圧貯蔵タンクは、好ましくは断熱され、その中で所定の温度Tcooling-chamberまで冷却され得るか、又はその温度に保持され得る冷却チャンバ内に備えられることが可能であり、冷却チャンバの所定の温度Tcooling-chamberは、-40℃~10℃、好ましくは-20℃~5℃の範囲内、より好ましくは1℃であり得る。
【0034】
さらに、充填デバイスは、好ましくは温度制御デバイス50が備えられた分配デバイス(分配器)を有することができ、分配デバイスによって、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の少なくとも1つの貯蔵タンクに供給される水素が、個別に存在する構成条件に対して調整され得、水素は、好ましくは、350barと700barとの間の圧力において及び-33℃~-40℃の温度において貯蔵タンクに供給される。
【0035】
本発明のさらなる実施形態によれば、充填デバイスは、さらに、クイックカップリングを有し、クイックカップリングによって、携行式水素貯蔵ユニットが、流体導通方式で充填デバイスと接続され得、圧縮水素で充填され得る。
【0036】
さらに、本発明は、車両を圧縮水素で燃料補給するための燃料補給ステーション、特に水素燃料補給ステーションに関し、燃料補給ステーションは、好ましくは燃料補給される車両内に備えられた対応する受容デバイスに合致するように構成された、少なくとも1つの燃料補給デバイスと、少なくとも1つの貯蔵タンクを充填するための上記で説明した充填デバイスとを有する。
【0037】
さらに、燃料補給ステーションが水素貯蔵ユニット及び/又はクイックカップリングを付加的に有し、その手段によって、携行式水素貯蔵ユニットが流体導通方式で充填デバイスと接続され得るならば有利であり、気体水素が、1bar~500barの圧力で水素貯蔵ユニット及び/又は携行式水素貯蔵ユニット内に貯蔵され得、充填デバイスの圧縮装置によって高圧貯蔵タンク内に一時的に貯蔵するために、1000barまでの圧力に圧縮され得る。
【0038】
さらに、燃料補給ステーション、特に制御デバイスが、クライアント、特に燃料補給される車両とクラウドベースサーバ及び/又は携行式アプリを介して、燃料補給量、燃料補給温度、燃料補給圧力、燃料補給速度(グラム/秒)、燃料補給時間及び同等物など、前記クライアントの燃料補給要件についての情報を交換し、それに応じて、交換された情報に基づいて少なくとも1つの燃料補給プロフィール及び/又は燃料補給予測を決定又は生成するように構成されるならば有利である。
【0039】
さらに、本発明は、少なくとも1つの貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法に関し、方法は、a)圧縮される水素、特に気体の水素を、圧縮液体が導入され得る圧力容器内に導入するステップと、b)圧縮液体を圧力容器内に導入することによって、又は圧力容器内の圧縮液体の液体体積を増大させることによって、圧縮される水素を所定の圧力(P)まで圧縮するステップとを含む。
【0040】
さらに、圧縮される水素を圧縮する間に水素を圧縮液体と接触させることによって受動的に冷却するために、圧力容器内に導入される圧縮液体が、導入又は供給される前に、特に1℃~5℃の範囲内の温度に、特に1℃の温度に冷却されるならば望ましい。
【0041】
その上、圧縮される水素を圧縮する間、圧縮液体の充填レベルが、最小充填レベルHminから所定の充填レベルHSetpointまで引き上げられ、それにより、水素の圧力を所定の目標値まで高めるならば有利である。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によれば、方法は、以下の、c)圧縮水素を少なくとも1つの高圧貯蔵タンクに供給してその中に一時的に貯蔵するステップと、d)圧力容器内の圧縮液体の充填レベルを、特に元の最小充填レベルHminまで引き下げるステップと、e)排出された圧縮液体を貯蔵タンク内に一時的に貯蔵するステップとをさらに含む。
【0043】
さらに、方法が以下の、f)好ましくは高圧ポンプによって、圧縮液体を1000barまでの作動圧力Pに加圧するステップと、g)作動圧力Pに置かれた圧縮液体を再冷却するステップと、h)作動圧力に置かれた圧縮液体を圧力容器に供給するステップとを付加的に含み、それにより、ステップa)において圧力容器内に導入された水素は、所定の圧力Pまで圧縮され、それゆえ、少なくとも1つの高圧貯蔵タンク内に一時的に貯蔵するための準備ができ、その結果として、プロセスサイクルが閉じられて、新しいサイクルが開始され得るならば望ましい。
【0044】
少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填するための充填デバイスが、燃料補給ステーション、特に水素燃料補給ステーション内に統合され得る。さらに、説明された充填デバイスは、少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法において使用され得る。それゆえ、充填デバイスの上記の説明に関連して開示されるさらなる特徴が、同じく、燃料補給ステーション、特に水素燃料補給ステーションに、及び少なくとも1つの貯蔵タンクを圧縮水素で充填する方法に適用され得る。燃料補給ステーションならびに方法に対して逆も当てはまる。
【0045】
デバイス、使用法、及び/又は方法のさらなる特徴及び利点は、添付の図面に関連する実施形態の以下の説明から明らかになろう。これらの図面は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】従来技術による既知の燃料補給デバイスを概略的に示す図である。
図2】本発明による充填デバイスの一実施形態を簡略的に示す図である。
図3】携行式水素貯蔵ユニットを有する本発明による燃料補給ステーションの一実施形態を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
異なる図において与えられる同一の参照番号は、同一の、対応する、又は機能的に同様の要素を示す。
【0048】
図1は、従来技術によって、既知の燃料補給デバイスを概略的に示す。図1は、液化水素のための貯蔵容器Sを示し、貯蔵容器は、水素の10mと200mとの間の貯蔵体積を有する。液化水素のためのそのような貯蔵タンクは、従来技術からよく知られている。水素燃料補給ステーションの文脈では、それらは、好ましくは地下に設置され、その上を燃料補給される車両が移動することができる。
【0049】
低温ポンプV及び圧縮器V′も備えられる。低温ポンプVは、好ましくは真空断熱であるように構成された配管1を介して貯蔵容器Sから液体水素を供給される。実際に使用される低温ポンプVは、車両に燃料補給するときに存在する要件を満たすように、厳密に設計されている。低温ポンプVは、2段階圧縮プロセスにおいて約1barから900barまで液体水素を圧縮する可能性を提示する。気体水素は、配管1′を介して貯蔵容器Sから取り除かれ、圧縮器又は圧縮ユニットV′によって100barと700barとの間の圧力まで圧縮され得る。
【0050】
貯蔵容器Sに加えて、いくつかの高圧貯蔵タンクA及びBが備えられる。実際、これらは、通常、少なくとも3つの異なる圧力範囲をカバーする貯蔵バンク内で組み合わされる。たとえば、高圧貯蔵タンクAは、400barと700barとの間の貯蔵圧力に対して設計される一方で、高圧貯蔵タンクBは、300barと500barとの間の貯蔵圧力に対して設計される。通例、たとえば、50barと400barとの間の貯蔵圧力に対して設計される追加の貯蔵タンクが備えられる。しかしながら、1つもしくは2つの貯蔵バンクのみ、又はさらには1つもしくは2つの高圧貯蔵タンクのみが備えられる方法も実現され得る。
【0051】
図2は、貯蔵タンク、特に車両の貯蔵タンクを圧縮された気体水素で充填するための、本発明による充填デバイス100の一実施形態を簡略的に示す。図2から分かるように、この目的に対する充填デバイス100は、水素を圧縮するための圧縮装置1を有する。図示の実施形態では、圧縮される水素が、たとえば、水素がたとえば30barの圧力において液体及び/又は気体の形で貯蔵される、地下に備えられた貯蔵タンク(図示せず)から水素供給配管21を介して圧縮装置1に供給される。水素を圧縮するために、圧縮装置は、圧縮液体3が導入され得る、特に圧力下で圧力容器2内に導入され得る、圧力容器2を有する。導入ステップでは、気体水素が水素供給配管21を介して加圧されていない圧力容器2内に導入されるとき、圧縮液体は、Hminで示される充填レベルにある。言い換えれば、圧力容器2はほぼ空であり、圧縮される水素を受け入れる準備ができている。
【0052】
容器2が圧縮される水素で完全に充填されたとき、圧力容器2は、遮断弁24を介して閉じられ、それは、導入された圧縮される水素が漏出できないことを意味する。次いで、圧縮デバイス6、特に高圧ポンプが、所定の圧力における圧縮液体を供給配管7を介して下から圧力容器内に導入し、その結果として、圧力容器2内の圧縮液体3の充填レベルがゆっくりと上昇し、その中に閉じ込められた水素が圧縮される。圧力容器内の圧縮液体の充填レベルが目標の充填レベルHSetpointに到達すると、圧縮プロセスが完了し、水素が所望の圧力に圧縮済みとなる。
【0053】
この文脈では、特にタイプIVのカーボンファイバー材料で作られた従来の蓄圧器を圧力容器として使用することが、特に有利であり得る。さらに、この文脈では、圧力容器、特に蓄圧器が、水が導入される入口が、圧縮水素が排出される出口より大きい直径を有するOTV(オンタンク弁)を備えられることが有利であり得る。
【0054】
圧縮液体3を能動的に冷却するために、図示の圧縮装置1は、たとえば、好ましくは水である圧縮液体3を約1℃の温度まで冷却することができる冷却デバイス4を備えられ、このようにして、水素を圧縮する間、水素は、圧縮液体3と接触することによって冷却され、それは、下流における水素の再冷却を廃れさせるか、又は少なくともそれを簡素化する。
【0055】
さらに、図示の圧縮装置は、冷却デバイスによって冷却された圧縮液体3が、圧力容器2が空になった後で且つ新しい圧縮プロセスの前に一時的に貯蔵され得る貯蔵タンク5を有し、それにより、冷却デバイス4の冷却作業が低減され得る。さらに、圧力センサPT及び温度センサTTが、冷却デバイス4の下流で接続され、それらのセンサは制御デバイス60に接続され、その結果、制御デバイス60は、圧縮液体3が所望の温度及び所望の圧力において圧力容器2内に導入され得るように、圧縮デバイス6及び冷却デバイス4を制御することを可能にする。
【0056】
圧縮プロセスが完了した後、遮断弁24のうち出口弁が開かれ、圧縮水素が流体配管22を介して高圧貯蔵タンク10に導通され、高圧貯蔵タンク10において、圧縮(気体)水素は、燃料補給配管23を介して充填される車両に導通されるまで、1000barまでの圧力において一時的に貯蔵され得る。本明細書で図示の高圧貯蔵タンク10は、互いに個別に圧縮水素で充填され得る複数の貯蔵セグメント10A~10Cを有する。高圧のもとで貯蔵セグメント内に貯蔵された水素は、同じく、これらの貯蔵セグメント10A~10Cから個別に除去され得、このようにして、たとえばトラックを充填/燃料補給するときに、水素が大量に引き出される場合、個別の貯蔵セグメント10A~10Cが、過度に冷却されないことが確保され得る。
【0057】
図3は、携行式水素貯蔵ユニット230を有する本発明による燃料補給ステーション200の一実施形態を簡略的にさらに示す。図3の左側において、本発明による充填デバイス100が、単に概略的に示され、このデバイスは、たとえば、水素がたとえば風力発電基地において作成されるロケーションに設置され得る。風力によってそこで生成された電気は、たとえば、特に、送電網内に電気の余剰があるときに水素を作成するように、効率的に使用され得る。そこで生成される水素は、本発明による充填デバイス100によって、たとえば700bar~1000barの所望の圧力に圧縮されて、携行式水素貯蔵ユニット230内に一時的に貯蔵され得、携行式水素貯蔵ユニット230は、たとえば、トラック本体内に一体化され得るか、又はトラックによって交換可能に収容され得る。次いで、トラックは、携行式水素貯蔵ユニット230を燃料補給ステーション200に輸送することができ、そこにおいて、携行式水素貯蔵ユニット230は、クイックカップリング220を介して燃料補給ステーションの燃料補給システムに接続され得る。
【0058】
図3に示す燃料補給ステーション200は、温度制御デバイス50、特に冷却デバイスが備えられた分配デバイス40(分配器)を有する。このようにして、水素は、車両、この場合はたとえばバス又は乗用車の貯蔵タンクを充填する間に調整され得る。言い換えれば、車両に供給される水素の温度ならびに圧力は、水素のパラメータが車両の要件を満たすように、緩和及び弛緩される。燃料補給ステーション200は、本発明による充填デバイス100を随意に備えられてもよく、それによって、携行式水素貯蔵ユニット230から除去された水素は、必要に応じて、再び圧縮され得る。
【0059】
異なる実施形態において説明される個別の特徴は、それらが構造的に非互換でないならば、単一の実施形態においても実施され得ることは、当業者には明らかである。同様に、単一の実施形態の文脈において説明される様々な特徴もまた、いくつかの実施形態において個別に、又は任意の適切な副結合において提供され得る。
【符号の説明】
【0060】
1 圧縮装置
2 圧力容器
3 圧縮液体
4 冷却デバイス
5 貯蔵タンク
6 圧縮デバイス
7 供給配管
10 高圧貯蔵タンク
10A,10B,10C 貯蔵セグメント
20 配管システム
21 水素供給配管
22 流体配管
23 燃料補給配管
24 遮断弁
30 冷却チャンバ
40 分配デバイス(分配器)
50 温度制御デバイス
60 制御デバイス
100 充填デバイス
200 燃料補給ステーション
210 水素貯蔵ユニット
220 クイックカップリング
230 携行式水素貯蔵ユニット
図1
図2
図3
【国際調査報告】