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特表2023-533498GHRHアナログの低用量医薬組成物及びその使用
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  • 特表-GHRHアナログの低用量医薬組成物及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】GHRHアナログの低用量医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20230727BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230727BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230727BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230727BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230727BHJP
   C07K 14/60 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
A61K38/22
A61K47/54
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/40
A61P3/00
C07K14/60 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580982
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 CA2021050904
(87)【国際公開番号】W WO2022006657
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/048,167
(32)【優先日】2020-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222124
【氏名又は名称】ゼラテクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・マルソレ
(72)【発明者】
【氏名】キリル・シンゲル
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン・ポトヴィン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB16
4C076CC21
4C076CC41
4C076DD09
4C076DD38
4C076DD60
4C076DD67Q
4C076EE23
4C076EE39
4C076EE59
4C076FF13
4C076FF36
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB03
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA10
4C084ZC331
4H045AA10
4H045BA19
4H045CA40
4H045DA45
4H045EA27
4H045FA20
(57)【要約】
GHRH分子またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物、ならびにその用途及びこのような医薬組成物を調製するためのキットについて説明されている。1つの実施形態において、GHRH分子またはその医薬的に許容される塩は、trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩である。1つの実施形態において、約1.23~約1.32mgのGHRH分子(例えば、trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH)を約7.5mg/mL以上の濃度で含む医薬組成物、ならびにその用途及びこのような医薬組成物を調製するためのキットについて説明されている。対象において、例えばtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの血漿濃度を、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等であるように得るための、このような医薬組成物の使用についても説明されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)約7.5mg/mL以上の濃度における約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩と、(ii)少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
約1.25~約1.30mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
約1.27~約1.29mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
約1.28のtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約7.5~約8.5mg/mLの濃度である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約8mg/mLの濃度である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が希釈剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が増量剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記増量剤がマンニトールである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が安定剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記安定剤がスクロースである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が界面活性剤を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が緩衝剤を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記緩衝剤がヒスチジンである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤がシクロデキストリンを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等であるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度を得るようにtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を対象に投与する方法であって、前記対象に、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で投与することを含む、方法。
【請求項20】
約1.28mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約7.5~約8.5mg/mLの濃度である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が皮下注射によって投与される、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項19~23のいずれか1項に記載の方法であって、
凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を、好適な量の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、約7.5mg/mL以上の濃度のtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を得ることをさらに含み、
好適な体積の前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が前記対象に投与されるように投与される、方法。
【請求項25】
trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩をヒト対象に投与して、
(i)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)を得るための方法であって、
前記対象に、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で投与することを含む、方法。
【請求項26】
約1.25~約1.30mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
約1.28mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約7.5~約8.5mg/mLの濃度である、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が皮下注射によって投与される、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項25~30のいずれか1項に記載の方法であって、
凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を、好適な量の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、約7.5mg/mL以上の濃度のtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を得ることをさらに含み、
好適な体積の前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が前記対象に投与されるように投与される、方法。
【請求項32】
前記対象がHIV関連リポジストロフィーを患っている、請求項19~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
キットであって、
(a)少なくとも約1.23~約1.32mgの凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む第1の容器と、
(b)医薬的に許容される希釈剤を含む第2の容器と、
(c)請求項25に記載の方法を規定する説明書と、任意選択で
(d)少なくとも1つのシリンジと
を含む、キット。
【請求項34】
trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、対象において、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度をもたらすのに使用するためのものであり、前記医薬組成物が、約1.3~約1.6mgまたは約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で前記対象に投与するためのものである、医薬組成物。
【請求項35】
trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、ヒト対象に投与して、
(i)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)をもたらすために使用するためのものであり、
前記医薬組成物が、約1.3~約1.6mgまたは約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で前記対象に投与するためのものである、医薬組成物。
【請求項36】
前記医薬組成物が、約1.25~約1.30mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与するためのものである、請求項34または35に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物が、前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5~約8.5mg/mLの濃度、好ましくは約8.0mg/mLの濃度で投与するためのものである、請求項34~36のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項38】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、請求項34~37のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項39】
前記対象がHIV関連リポジストロフィーを患っている、請求項34~38のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項40】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が、皮下注射によって投与するためのものである、請求項34~39のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項41】
請求項34~40のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物であって、凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を好適な量の医薬的に許容される希釈剤で再懸濁してtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を約7.5mg/mL以上の濃度で得、それにより、投与するための医薬組成物を提供することをさらに含む、医薬組成物。
【請求項42】
trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用であって、前記医薬組成物が、対象において、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度をもたらすためのものであり、前記医薬組成物が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で前記対象に投与するためのものである、使用。
【請求項43】
trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用であって、前記医薬組成物が、ヒト対象に投与して、
(i)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)をもたらすために使用するためのものであり、
前記医薬組成物が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約3.5mg/mL以上の濃度で前記対象に投与するためのものである、使用。
【請求項44】
医薬組成物を調製するためのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の使用であって、前記医薬組成物が、対象において、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度をもたらすためのものであり、前記医薬組成物が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で前記対象に投与するためのものである、使用。
【請求項45】
医薬組成物を調製するためのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の使用であって、前記医薬組成物が、ヒト対象に投与して、
(i)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)をもたらすためのものであり、
前記医薬組成物が、約1.3~約1.6mgまたは約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で前記対象に投与するためのものである、使用。
【請求項46】
前記医薬組成物が、約1.28mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与するためのものである、請求項42~45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
前記医薬組成物が、前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約8mg/mLの濃度で投与するためのものである、請求項42~46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、請求項42~47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
前記対象がHIV関連リポジストロフィーを患っている、請求項42~48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が、皮下注射によって投与するためのものである、請求項42~49のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
請求項42~50のいずれか1項に記載の使用であって、凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を好適な量の医薬的に許容される希釈剤で再懸濁してtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を約7.5mg/mL以上の濃度で得、それにより、投与するための製剤を提供することをさらに含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月5日に出願された米国仮特許出願第63/048,167号による利益を主張し、当該仮出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、2021年6月29日に作成され、約5KBのサイズを有する「G11718_409_SeqList.txt」という名称のコンピューター可読形式配列表を含む。このコンピューター可読形式は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、概して、成長ホルモン(GH)分泌促進物質の分野に関し、より具体的には、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アナログ(例えば、テサモレリン)の製剤及びその投与方法に関する。
【背景技術】
【0004】
テサモレリン(trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH図1))は、視床下部ペプチドGHRHの安定化合成ペプチドアナログであり、リポジストロフィーを伴うHIV感染患者の過剰な腹部脂肪の低減に用いられている。テサモレリンは、下垂体成長ホルモン分泌細胞に作用することによってその効果を媒介して、タンパク同化性であるとともに脂肪分解性である内因性GHの合成及びパルス状放出を刺激する。テサモレリンは、下垂体成長ホルモン分泌細胞にあるGHRHrに結合し、そのアゴニストとなることにより、その治療効果を発揮する。誘発されたGH放出は、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、肝細胞、及び脂肪細胞を含めた様々な標的細胞に作用して、多くの薬力学的効果がもたらされる。この効果は主に、肝臓及び末梢組織で産生されるインスリン様成長因子1(IGF-1)によって媒介される。
【0005】
リポジストロフィーを伴うHIV感染患者の過剰な腹部脂肪の低減のためのテサモレリンにおいて承認された1日当たりの薬用量は2mgで、これは、1mg/mLのテサモレリン溶液2mlを腹部皮膚に皮下注射することによって投与される。現在、患者には、各1mgの凍結乾燥テサモレリンを含むバイアルが2つ供給される。患者は、第1の混合針を備えたシリンジを用いて第1のバイアル内の凍結乾燥テサモレリンを2.2mLの滅菌水で再懸濁し、第1のバイアルから調製されたテサモレリン溶液を採取し、針を交換し、第2の混合針で第2のバイアルに調製されたテサモレリン溶液を加え、第2のバイアルから調製されたテサモレリン溶液を採取し、第2の混合針を注射針に交換し、2mLの調製されたテサモレリン溶液を皮下注射しなければならない。注射用テサモレリン溶液を調製するためのこの比較的複雑なプロセスは患者にとってあまり好都合ではなく、また、テサモレリン溶液の誤り、混入、及び不適切な取扱いが生じるリスクを高める。さらに、患者に好適な血漿テサモレリン濃度をもたらすために皮下注射しなければならない溶液の体積が比較的多く(2ml)、このことが注射部位の痛みに結び付く可能性がある(Usach et al.,Adv Ther(2019)36:2986-2996)。さらに、例えば、治療のための薬用量を含むバイアルが1つであれば、またはさらには治療のための薬用量を複数回分含む多用量バイアル(例えば、複数日数の治療用に)があれば、患者にとってより好都合である。
【0006】
したがって、テサモレリンをより簡便かつ好都合に投与する方法が必要とされている。
【0007】
本明細書は多数の文書を参照しており、これらの内容の全体が参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0008】
本開示は概して、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アナログ(例えば、テサモレリン)の製剤及びその投与方法に関する。
【0009】
1つの態様において、本開示は、GHRH分子またはその医薬的に許容される塩(例えば、trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩)と、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0010】
様々な態様及び実施形態において、本開示はさらに以下の項目を提供する。
1.(i)約7.5mg/mL以上の濃度における約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩と、(ii)少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
2.約1.25~約1.30mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む、項目1に記載の医薬組成物。
3.約1.27~約1.29mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む、項目1または2に記載の医薬組成物。
4.約1.28のtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
5.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約7.5~約8.5mg/mLの濃度である、項目1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
6.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約8mg/mLの濃度である、項目1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
7.当該少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が希釈剤を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
8.当該少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が増量剤を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
9.当該増量剤がマンニトールである、項目8に記載の医薬組成物。
10.当該少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が安定剤を含む、項目1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
11.当該安定剤がスクロースである、項目10に記載の医薬組成物。
12.当該少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が界面活性剤を含む、項目1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
13.当該界面活性剤がポリソルベート20である、項目12に記載の医薬組成物。
14.当該少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤が緩衝剤を含む、項目1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
15.当該緩衝剤がヒスチジンである、項目14に記載の医薬組成物。
16.当該少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤がシクロデキストリンを含む、項目1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
17.当該シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンである、項目16に記載の医薬組成物。
18.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、項目1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
19.2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等であるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度を得るようにtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を対象に投与する方法であって、前記対象に、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で投与することを含む、方法。
20.約1.28mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、項目19に記載の方法。
21.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約7.5~約8.5mg/mLの濃度である、項目19または20に記載の方法。
22.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、項目19~21のいずれか1項に記載の方法。
23.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が皮下注射によって投与される、項目19~22のいずれか1つに記載の方法。
24.項目19~23のいずれか1項に記載の方法であって、
凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を、好適な量の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、約7.5mg/mL以上の濃度のtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を得ることをさらに含み、
好適な体積の当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が当該対象に投与されるように投与される、方法。
25.trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩をヒト対象に投与して、
(i)当該対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)当該対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)を得るための方法であって、
当該対象に、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で投与することを含む、方法。
26.約1.25~約1.30mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、項目25に記載の方法。
28.27.約1.28mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、項目25または項目26に記載の方法。当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が約7.5~約8.5mg/mLの濃度である、項目25~28のいずれか1項に記載の方法。
29.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、項目25~28のいずれか1項に記載の方法。
30.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が皮下注射によって投与される、項目25~29のいずれか1つに記載の方法。
31.項目25~30のいずれか1項に記載の方法であって、:
凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を、好適な量の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、約7.5mg/mL以上の濃度のtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を得ることをさらに含み、
好適な体積の当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が当該対象に投与されるように投与される、方法。
32.当該対象がHIV関連リポジストロフィーを患っている、項目19~31のいずれか1項に記載の方法。
33.キットであって、
(a)少なくとも約1.23~約1.32mgの凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む第1の容器と、
(b)医薬的に許容される希釈剤を含む第2の容器と、
(c)項目25に記載の方法を規定する説明書と、任意選択で
(d)少なくとも1つのシリンジと
を含む、キット。
34.trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、当該医薬組成物が、対象において、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度をもたらすのに使用するためのものであり、当該医薬組成物が、約1.3~約1.6mgまたは約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で当該対象に投与するためのものである、医薬組成物。
35.trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、当該医薬組成物が、ヒト対象に投与して、
(i)当該対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)をもたらすために使用するためのものであり、
当該医薬組成物が、約1.3~約1.6mgまたは約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で当該対象に投与するためのものである、医薬組成物。
36.当該医薬組成物が、約1.25~約1.30mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与するためのものである、項目34または35に記載の使用のための医薬組成物。
37.当該医薬組成物が、当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5~約8.5mg/mLの濃度、好ましくは約8.0mg/mLの濃度で投与するためのものである、項目34~36のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
38.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、項目34~37のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
39.当該対象がHIV関連リポジストロフィーを患っている、項目34~38のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
40.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が、皮下注射によって投与するためのものである、項目34~39のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
41.項目34~40のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物であって、凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を好適な量の医薬的に許容される希釈剤で再懸濁してtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を約7.5mg/mL以上の濃度で得、それにより、投与するための医薬組成物を提供することをさらに含む、医薬組成物。
42.trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用であって、当該医薬組成物が、対象において、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度をもたらすためのものであり、当該医薬組成物が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で当該対象に投与するためのものである、使用。
43.trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の使用であって、当該医薬組成物が、ヒト対象に投与して、
(i)当該対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)をもたらすために使用するためのものであり、
当該医薬組成物が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約3.5mg/mL以上の濃度で当該対象に投与するためのものである、使用。
44.医薬組成物を調製するためのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の使用であって、当該医薬組成物が、対象において、2mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の血漿濃度をもたらすためのものであり、当該医薬組成物が、約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で当該対象に投与するためのものである、使用。
45.医薬組成物を調製するためのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩の使用であって、当該医薬組成物が、ヒト対象に投与して、
(i)当該対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約1500~約4500pg/mLの最大血漿濃度(Cmax)、及び/または
(ii)前記対象におけるtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHもしくはその医薬的に許容される塩の約300~約1400pg・h/mLの無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)をもたらすためのものであり、
当該医薬組成物が、約1.3~約1.6mgまたは約1.23~約1.32mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約7.5mg/mL以上の濃度で当該対象に投与するためのものである、使用。
46.当該医薬組成物が、約1.28mgのtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を投与するためのものである、項目42~45のいずれか1項に記載の使用。
47.当該医薬組成物が、当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を約8mg/mLの濃度で投与するためのものである、項目42~46のいずれか1項に記載の使用。
48.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHの医薬的に許容される塩が酢酸塩である、項目42~47のいずれか1項に記載の使用。
49.当該対象がHIV関連リポジストロフィーを患っている、項目42~48のいずれか1項に記載の使用。
50.当該trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩が、皮下注射によって投与するためのものである、項目42~49のいずれか1項に記載の使用。
51.項目42~50のいずれか1項に記載の使用であって、凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を好適な量の医薬的に許容される希釈剤で再懸濁してtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH塩の溶液を約7.5mg/mL以上の濃度で得、それにより、投与するための製剤を提供することをさらに含む、使用。
【0011】
本開示の他の目的、利点、及び特徴は、以下の特定の実施形態の非限定的な説明を読むことによってさらに明らかになるが、これは添付の図面を参照しながら例として示されるものに過ぎない。
【0012】
添付の図面では以下のものが示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】テサモレリン(trans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH;配列番号1)の構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「当該(the)」という用語、ならびに主題を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)同様の指示語は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈するものとする。
【0015】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、限定されるものではないが「含む(including)」を意味する)と解釈するものとする。
【0016】
本明細書における値範囲の記載は、単に、範囲内に収まる個々の値を個別に言及する簡略的方法として供するように意図されており、本明細書で別段の指示がない限り、個々の値は、本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に援用される。範囲内の値の全ての部分集合も、それらが本明細書で個々に列挙されているかのように、本明細書に援用される。
【0017】
同様に、本明細書において、様々な置換基及びこれらの置換基に対し挙げられる様々なラジカルを有する一般的化学構造は、任意の置換基に対する任意のラジカルの組合せによって得られるあらゆる分子を個別に言及する簡略的方法として機能するように意図されている。各個別の分子は、それが本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に援用される。さらに、一般的化学構造内の全ての分子のサブセットも、それらが本明細書で個々に列挙されているかのように本明細書に援用される。
【0018】
本明細書で説明されている全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または別段に文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0019】
あらゆる例の使用、または本明細書で示される例示的な言葉(例えば、「~などの(such as)」)の使用は、本開示をより良好に例示することを意図したものに過ぎず、別の形で特許請求されない限り、本開示の範囲に限定をもたらすものではない。
【0020】
本明細書中のいかなる語も、本開示の実施に不可欠な任意の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本明細書において、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために使用されるデバイスもしくは方法についての固有の誤差変動を含むこと、または列挙された値に近い値、例えば列挙された値(または値の範囲)の10%以内を包含することを示すために使用される。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。
【0023】
本明細書に記載する試験において、本発明者らは、8mg/mLで製剤化したテサモレリンが、1mg/mLで製剤化した対応するテサモレリンよりも生体利用能が高いことを示した。ヒト対象における薬物動態(PK)試験において、8mg/mLで製剤化された1.28mgのテサモレリンの投与は、2mgの1mg/mLテサモレリン製剤(例えば、Egrifta(商標)製剤)(テサモレリン(EGRIFTA(登録商標))における承認された1日当たりの薬用量)の投与と生物学的に同等であることが示された。1.2mg及び1.36mgの用量(8mg/ml)については、Egrifta(商標)製剤との生物学的同等性を得る上で、それぞれ前者はわずかに低すぎ、後者はわずかに高すぎることが分かった。したがって、対象において生物学的同等性を得るには、投与されるテサモレリンの量を約36%低減(すなわち、2mgに対し1.28mg)すべきであることが分かった。これにより、投与体積が有利に低減され(2mLに対し0.16mL)、2つのバイアルではなく1つのバイアルで提供することができるため製剤の調製及び操作がより扱いやすいものとなって、エラー及び混入/感染のリスクが低減される。
【0024】
したがって、第1の態様において、本開示は、(i)約7.5mg/mL以上の濃度における1.2mg超1.36mg未満(例えば、約1.21~約1.35、約1.22~約1.33もしくは約1.34、または約1.23~約1.32mg)のGHRH分子またはその医薬的に許容される塩、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩と、(ii)少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
諸実施形態において、医薬組成物は、約1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、または1.27mgから約1.29、1.30、1.31、1.32、1.33、1.34、または1.35mgのGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は、約1.24~約1.31mgのGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は、約1.25~約1.30mgのGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は、約1.26~約1.29mgのGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は、約1.27~約1.29mgのGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は、約1.28mg~のGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む。
【0026】
1つの実施形態において、GHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH2、またはその医薬的に許容される塩は、約12、10、または8mg/mL以下の濃度である。諸実施形態において、GHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩は、約7.5~約10、9、8.5、または8mg/mLの濃度、例えば、約7.5~約8.5mg/mLの濃度である。さらなる実施形態において、GHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩は、医薬組成物中約7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9~約8.1、8.2、8.3、8.4、または8.5mg/mlの濃度である。さらなる実施形態において、GHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩は、医薬組成物中約7.80、7.82、7.84、7.86、7.88、7.9、7.92、7.94、7.95、7.96、7.97、7.98または7.99~約8.01、8.02、8.03、8.04、8.05、8.06、8.08、8.1、8.12、8.14、8.16、8.18、または8.2mg/mLの濃度である。さらなる実施形態において、GHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩は約8mg/mLの濃度である。
【0027】
本開示の文脈において使用する場合、「GHRH分子」という用語は、限定されるものではないが、ヒト天然GHRH(1~44)及びそのフラグメント(例えば、GHRH(1~40)、GHRH(1~29)、1~29及び1~44配列の範囲のフラグメント)、ならびに任意の他のフラグメント;他の種由来のGHRH及びそのフラグメント;アミノ酸の置換、付加、及び/または欠失を含むGHRHバリアント;例えば、N末端、C末端、または側鎖でGHRHアミノ酸配列に結合している有機基または部分を有するGHRHの誘導体もしくはアナログまたはそのフラグメントもしくはバリアント;ならびにGHRHの医薬的に許容される塩(ヒトまたは他の種由来)、ならびにGHRHフラグメント、バリアント、アナログ、及び誘導体の医薬的に許容される塩を含む。また、本開示のGHRH分子は、当技術分野で現在知られているGHRH分子も含み、これには限定されるものではないが、アルブミン結合体化GHRH(米国特許第7,268,113号);ペグ化GHRHペプチド(米国特許第7,256,258号及び第6,528,485号);ブタGHRH(1-40)(米国特許第6,551,996号);イヌGHRH(米国特許出願第2005/0064554号);1~29から1~44までのアミノ酸長のGHRHバリアント(米国特許第5,846,936号、第5,696,089号、第5,756,458号、及び第5,416,073号、ならびに米国特許出願第2006/0128615号及び第2004/0192593号);ならびにPro-GHRHペプチド及びそのバリアント(米国特許第5,137,872号)が含まれる。
【0028】
GHRHアナログには米国特許第5,681,379号及び第5,939,386号に記載のものが含まれ、これらの文献は当該アナログの合成方法も記載している。より特定的には、このようなGHRHアナログは以下の式Aによって定義され、
X-GHRHペプチド(A)
式中、GHRHペプチドは、以下の式B(配列番号2)のペプチドであり、
A1-A2-Asp-Ala-Ile-Phe-Thr-A8-Ser-Tyr-Arg-Lys-A13-Leu-A15-Gln-Leu-A18-Ala-Arg-Lys-Leu-Leu-A24-A25-Ile-A27-A28-Arg-A30-A31-A32-A33-A34-A35-A36-A37-A38-A39-A40-A41-A42- A43-A44-R0(B)
式中、
A1はTyrまたはHisであり、
A2はValまたはAlaであり、
A8はAsnまたはSerであり、
A13はValまたはIleであり、
A15はAlaまたはGlyであり、
A18はSerまたはTyrであり、
A24はGlnまたはHisであり、
A25はAspまたはGluであり、
A27はMet、Ile、またはNleであり、
A28はSerまたはAsnであり、
A30は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGlnであり、
A31は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGlnであり、
A32は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGlyであり、
A33は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGluであり、
A34は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはSerであり、
A35は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはAsnであり、
A36は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGlnであり、
A37は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGluであり、
A38は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはArgであり、
A39は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはGlyであり、
A40は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはAlaであり、
A41は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはArgであり、
A42は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはAlaであり、
A43は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはArgであり、
A44は存在しないか、または任意のアミノ酸、好ましくはLeuであり、
R0はNHまたはNH-(CH)n-CONHであり、n=1~12である。
【0029】
基Xは、アミド結合を介してペプチドのN末端に対し固定された疎水性尾部であり、5~7個の原子の骨格を規定する疎水性尾部である。骨格は、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、またはC6~12アリールによって置換されてもよく、骨格は、骨格の少なくとも2つの原子に結合した少なくとも1つの剛性化部分を含む。剛性化部分は、二重結合、三重結合、飽和もしくは不飽和C3~9シクロアルキル、またはC6~12アリールである。
【0030】
1つの実施形態において、X基は、
【化1】
である。
【0031】
1つの実施形態において、式B中、A30~A44は、(a)存在しないか、(b)天然のGHRHペプチド(配列番号3)の30~44位に対応するアミノ酸配列であるか、または(c)そのC末端から1~14アミノ酸欠失を有する(b)のアミノ酸配列である。
【0032】
1つの実施形態において、GHRHペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0033】
1つの実施形態において、GHRH分子は、(ヘキセノイルtrans-3)hGHRH(1~44)-NH(配列番号1)またはその医薬的に許容される塩である。[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミド(別名(ヘキセノイルtrans-3)hGHRH(1~44)NH)は、hGHRHの44個のアミノ酸配列を含む合成ヒトGHRH(hGHRH)アナログであり、C側鎖であるヘキセノイル部分がアミノ末端側のチロシン残基上で固定されている。[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミドの構造を図1に示す。
【0034】
「医薬的に許容される塩」という用語は、薬理学的に許容され、投与する対象に実質的に無毒のGHRH分子の塩を指す。より具体的には、これらの塩は、GHRH分子の生物学的有効性及び特性を保持しており、好適な無毒性の有機または無機の酸または塩基から形成される。
【0035】
例えば、これらの塩には、このような塩を形成するのに十分な塩基性を有するGHRH分子の酸付加塩が含まれる。このような酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、低級アルカンスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、またはエタンスルホン酸塩)、アリールスルホン酸塩(例えば、ベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、またはトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られている))、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、二硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、桂皮酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、硫酸水素塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過塩素酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0036】
加えて、塩基性医薬化合物からの医薬的に有用な塩の形成に適していると一般的に考えられる酸は、例えば、P.Stahl et al.,Camille G.(eds.)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley-VCH;S.Berge et al,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1-19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217;Anderson et al,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York;及びThe Orange Book(Food & Drug Administration,Washington,D.C.のウェブサイト)で論じられている。
【0037】
このような塩は、標準的な技法を用いて当業者によって非常に容易に形成することができる。実際に、医薬化合物(すなわち、薬物)の塩への化学的修飾は、製薬化学者に周知されている技法である(例えば、H.Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)(pp.196及び1456-1457)を参照)。GHRH分子の塩は、例えば、GHRH分子を、塩が沈殿する媒体などの媒体中または水性媒体中で、ある量(例えば、当量)の酸または塩基に反応させ、次に凍結乾燥することにより、形成することができる。
【0038】
1つの実施形態において、GHRH分子(好ましくは[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミド)の医薬的に許容される塩は酢酸塩である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される賦形剤」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、活性成分(薬物)そのものではない任意の成分のことである。賦形剤としては、例えば、結合剤、滑沢剤、希釈剤、増量剤(充填剤)、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング剤、バリア層製剤、滑沢剤、安定剤、放出遅延剤、及びその他の成分が挙げられる。本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される賦形剤」とは、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、対象に対し毒性でない任意の賦形剤を指し。すなわち、賦形剤の1つのタイプであり、かつ/または対象に対し毒性でない量で使用するためのものである。賦形剤は当技術分野で周知されており、本発明の組成物はこれらの観点において限定されない。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を含み、これには例えば、限定されるものではないが、1つ以上の結合剤(binder)(結合剤(binding agent))、増粘剤、界面活性剤、希釈剤、放出遅延剤、着色剤、香味剤、充填剤、崩壊剤/溶解促進剤、滑沢剤、可塑剤、シリカフローコンディショナー、流動化剤、凝結防止剤、粘着防止剤、安定化剤、帯電防止剤、膨張剤、及びこれらの任意の組合せが含まれる。当業者であれば認識するであろうように、単一の賦形剤は、同時に2つを超える機能を満たすことができ、例えば、結合剤及び増粘剤の両方として作用することができる。これもまた当業者が認識するであろうように、これらの用語は必ずしも相互に排他的ではない。治療用製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分を、1つ以上の任意の医薬的に許容される担体、賦形剤、及び/または安定剤と混合することにより、当技術分野で知られている標準的方法を用いて調製される。賦形剤は、例えば、静脈内、非経口、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心室内、嚢内、脊髄内、髄腔内、硬膜外、大槽内、腹腔内、鼻腔内、または肺(例えば、エアロゾル)の投与に適している可能性がある(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,by Loyd V Allen,Jr,2012,22nd edition,Pharmaceutical Press;Handbook of Pharmaceutical Excipients,by Rowe et al.,2012,7th edition,Pharmaceutical Pressを参照)。1つの実施形態において、医薬組成物は注射用組成物(例えば、注射用溶液または懸濁液)である。1つの実施形態において、医薬組成物は、皮下投与/注射のための1つ以上の賦形剤を含む。
【0040】
1つの実施形態において、医薬組成物は増量剤を含む。本明細書で使用する場合、「増量剤」という用語は、凍結乾燥製剤の再構成から生じる溶液の妥当なまたは所望の張度を提供するために使用される化合物を指す。好ましくは、溶液の妥当なまたは所望の張度は、溶液を投与する対象の生理的体液と等張であるか、または等張に近い。例えば、1つ以上の糖を増量剤として使用することができる。本明細書で使用する場合、糖には、限定されるものではないが、単糖、オリゴ糖、及び多糖が含まれる。好適な糖の例としては、限定されるものではないが、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びデキストランが挙げられる。また、糖には、糖アルコール、例えば、マンニトール、イノシトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールも含まれる。糖の混合物も本開示に従って使用することができる。1つの実施形態において、増量剤はマンニトールである。例えば、グリシンなどの1つ以上のアミノ酸を増量剤として使用することができる。増量剤は、医薬組成物中で約1%~約10%(w/w)または約2%~約8%(w/w)の濃度である。1つの実施形態において、増量剤は、医薬組成物中で約3~約5%(w/w)の濃度である。さらなる実施形態において、増量剤は医薬組成物中で約4%(w/w)の濃度である。
【0041】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物はさらに、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤の典型的な例としては、以下のものが挙げられる:ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルチミン酸ソルビタン;グリセリン脂肪酸エステル、例えば、モノカプリル酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン;ポリグリセリン脂肪酸エステル、例えば、モノステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート;ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えば、ポリエチレングリコールジステアレート;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水添ヒマシ油);ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールミツロウ;ポリオキシエチレンラノリン誘導体、例えば、ポリオキシエチレンラノリン;ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド;C10~18アルキル基を有するアルキル硫酸塩、例えば、セチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム;平均EOモル数が2~4でありC10~18アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム;C8~18アルキル基を有するアルキルスルホコハク酸エステル塩、例えば、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム;レシチン;グリセロリン脂質;スフィンゴリン脂質、例えば、スフィンゴミエリン;C12~18脂肪酸のスクロース脂肪酸エステル。
【0042】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物の界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。さらなる実施形態において、本開示の医薬組成物の界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル(例えば、ポリソルベート)である。またさらなる実施形態において、本開示の医薬組成物の界面活性剤はポリソルベート-20(T20またはTween-20(商標))である。
【0043】
別の実施形態において、本開示の医薬組成物中の界面活性剤の量は、約0.0001%~約10%(w/w)である。さらなる実施形態において、本開示の医薬組成物中の界面活性剤の量は、約0.001%~約5%、1%、もしくは0.1%(w/w)、または約0.005%~約0.05%である。またさらなる実施形態において、本開示の医薬組成物中の界面活性剤の量は約0.01%(w/w)である。
【0044】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物はさらに、1つ以上の安定化剤または安定剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、「安定剤」という用語は、治療薬剤の治療活性を低減する物理的、化学的、または生化学的プロセスに対し治療薬剤を安定化するために使用される化合物を意味するように意図されている。適切な安定剤は、非還元糖(例えば、限定されるものではないが、スクロース(またはサッカロース)及びトレハロースを含む)、ならびに非還元ポリオールまたは糖アルコール(例えば、限定されるものではないが、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、グリコール、グリセロール、及びエチレングリコールを含む)である。1つの実施形態において、本開示の医薬組成物中の安定剤の量は約0.05%~約10%(w/w)である。さらなる実施形態において、本開示の医薬組成物中の安定剤の量は、約1%~約5%、約2%~約4%、または約2.5%~約3.5%(w/w)である。またさらなる実施形態において、本開示の医薬組成物中の界面活性剤の量は約3%(w/w)である。
【0045】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は非還元糖を含む。本明細書で使用する場合、「非還元糖」とは、ヘミアセタールを含まない糖、例えば、糖単位の還元末端間にグリコシド結合が形成され、一方の糖単位の還元末端と他方の糖単位の非還元末端との間にはグリコシド結合が形成されないことを特徴とする炭水化物または糖を指す。さらなる実施形態において、上述の非還元糖はトレハロースまたはスクロースである。さらなる実施形態において、上述の非還元糖はスクロースである。1つの実施形態において、非還元糖は、本開示の医薬組成物中で約0.1%~約5%(w/w)の濃度である。1つの実施形態において、非還元糖は約1%~約3%(w/w)の濃度である。さらなる実施形態において、非還元糖は約2%(w/w)の濃度である。
【0046】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は、緩衝剤、すなわち選択された値に近い医薬組成物のpHを維持する薬剤を含む。緩衝剤の例としては、酢酸バッファー、コハク酸バッファー、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、及びヒスチジンバッファーが挙げられる。1つの実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジンバッファーである。1つの実施形態において、医薬組成物中のヒスチジンの濃度は、約0.01%~約1%、例えば、約0.05%~約0.5%または約0.1%~約0.3%である。さらなる実施形態において、ヒスチジン糖は約0.15%の濃度である。
【0047】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は、オリゴ糖、例えば、シクロデキストリンなどの環状オリゴ糖を含む。本明細書で使用する場合、「シクロデキストリン」という用語は、α-1,4グリコシド結合によって連結したグルコピラノシドサブユニット(5つ以上)の大環状環を含む環状オリゴ糖のファミリーを指す。シクロデキストリンの例としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリン(これらはそれぞれ6、7、8つのグルコピラノシドサブユニットを含む)、ならびにこれらのアナログ(例えば、修飾シクロデキストリン)が挙げられる。1つの実施形態において、シクロデキストリンはβ-シクロデキストリンまたは修飾β-シクロデキストリンである。
【0048】
β-シクロデキストリンは以下の構造を有する。
【化2】
【0049】
1つ以上の糖単位の1つ以上のヒドロキシル基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、もしくはアルキニル基で、または置換されたアルキル基、アルケニル基、もしくはアルキニル基で修飾されてもよい。したがって、諸実施形態において、β-シクロデキストリンは、修飾または置換されていない場合もあれば、修飾または置換されている場合もある。そのため、さらなる実施形態において、β-シクロデキストリンは修飾β-シクロデキストリンである。本明細書で使用する場合、「修飾β-シクロデキストリン」とは、β-シクロデキストリンの1つ以上の糖単位の1つ以上のヒドロキシル基での修飾を含むβ-シクロデキストリン、すなわち、β-シクロデキストリンの1つ以上の糖単位の1つ以上のヒドロキシル基に結合している基または部分を含むβ-シクロデキストリンを指す。そのため、諸実施形態において、修飾β-シクロデキストリンは、アルキル-、アルケニル-、アルキニル、置換アルキル-、置換アルケニル-、または置換アルキニル-β-シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシル置換を伴う)である。諸実施形態において、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基は、(C~C)アルキル基、(C~C)アルケニル基、または(C~C)アルキニル基である。さらなる実施形態において、修飾β-シクロデキストリンは、(C~C)アルキルβ-シクロデキストリン、さらなる実施形態においてはメチル-β-シクロデキストリン(M-β-CD)である。さらなる実施形態において、修飾β-シクロデキストリンは、ヒドロキシ(C~C)アルキルβ-シクロデキストリンであり、さらなる実施形態においてはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)である。
【0050】
1つの実施形態において、シクロデキストリンは、医薬組成物中に約2~約15%(w/v)の濃度で存在し、さらなる実施形態においては約2~約12.5%(w/v)の濃度、例えば、約2~約10%(w/v)、約2.5~約15%(w/v)、約2.5~約12.5%(w/v)、約2.5~約10%(w/v)、約5~約15%(w/v)、約5~約12.5%(w/v)、約5~約10%(w/v)、約7.5~約12.5%(w/v)、約7.5~約10%(w/v)、約5、7.5、10、12.5、もしくは15%(w/v)、または約10%(w/v)の濃度で存在する。
【0051】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物のpHは約4.5~約6.5、例えば約5.0~約6.0である。別の実施形態によれば、医薬組成物のpHは約5.0である。さらなる実施形態によれば、医薬組成物のpHは約5.5である。別のさらなる実施形態によれば、医薬組成物のpHは約5.9~6.0である。
【0052】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は、希釈剤、例えば水溶液を含む。さらなる実施形態において、医薬組成物は水(典型的には無菌水)を含む。
【0053】
本開示の医薬組成物はさらに、所望に応じて、他の希釈剤、可溶化剤、賦形剤、pH修飾剤、緩和剤、バッファー、硫黄含有還元剤、抗酸化剤などを含むことができる。例えば、硫黄含有還元剤としては、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、メチオニン、ならびにスルフヒドリル含有化合物(例えば、1~7炭素原子のチオアルカン酸)が挙げられる。抗酸化剤としては、メチオニン、エリトルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、パルミチン酸L-アスコルビル、ステアリン酸L-アスコルビル、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピル、またはキレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムが挙げられる。一般的に添加される他の成分、例えば、無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム)及び有機塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム)が含まれてもよい。
【0054】
1つの実施形態において、医薬組成物は室温で安定している。安定している組成物とは、中に含まれる活性主成分、すなわちGHRH分子(例えば、[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミド)が、保存時に物理的及び化学的な安定性及び完全性を本質的に保持する組成物のことである。タンパク質またはペプチドの安定性を測定するための様々な分析技法が当技術分野で利用可能であり、このような技法については、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)で概説されている。安定性は、選択された温度で、選択された時間の間測定することができる。迅速なスクリーニングについては、組成物を、例えば40℃で2週間~1か月間(最長6か月間)保管し、その時の安定性を測定することができる。また、組成物を、例えば、周囲室温条件(約15~30℃、好ましくは約20~25℃)で少なくとも6か月間保存し、その時の安定性を測定してもよい。本開示の組成物は、凍結乾燥形態のGHRH分子(例えば、[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミド)の安定性を、室温(すなわち20~25℃)で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、または少なくとも12か月の保存期間の間保持する。例えば、「安定している」組成物は、分解されていない活性薬剤の約80%超、約90%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、または約99%超が保存期間時に組成物中に存在するものとすることができる。本開示の組成物の安定性は、例えば、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて測定することができる。
【0055】
1つの実施形態において、医薬組成物のpHは約5.8~約6.2であり、以下を含む。
●約7.8~約8.2mg/mlのGHRH分子(例えば、[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミド)
●約8%~約12%のシクロデキストリン、例えば、β-シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD))
●約2%~約4%の糖アルコール(例えば、マンニトール)
【0056】
1つの実施形態において、医薬組成物のpHは約5.9~約6.1であり、以下を含む。
●約7.9~約8.1または約8mg/mlのGHRH分子(例えば、[trans-3-ヘキセノイル]hGHRH(1~44)アミド)
●約9%~約11%または約10%のシクロデキストリン、例えば、β-シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD))
●約2.5%~約3.5%または約3%の糖アルコール(例えば、マンニトール)
【0057】
本開示の医薬組成物は、対象におけるGH分泌を誘導または増加させるのに有用であり得る。
【0058】
したがって、別の態様において、本開示は、GH分泌の誘導または増加を、それを必要とする対象において行うための方法であって、当該対象に、上述の製剤または組成物の有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0059】
別の態様において、本開示は、対象における成長ホルモン分泌を誘導または増加させるための、上述の製剤または組成物の使用を提供する。
【0060】
別の態様において、本開示は、対象におけるGH分泌を誘導または増加させるための医薬の調製のための、上述の製剤または組成物の使用を提供する。
【0061】
本明細書で使用する場合、「刺激する」、「増加させる」、もしくは「誘導する」という用語、またはこれらの用語の任意の変形形態は、生物学的活性の測定可能な増加を指す。諸実施形態において、増加とは、生物学的活性が対照に対し少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、90%、95%、100%(2倍)、200%(3倍)増加することである。例えば、対象(例えば、動物、ヒト)にGHRH分子を投与した後、GHRH分子を投与していない対象と比較してGHレベルの増加が測定されたときに、GRFアナログがGHRHr活性を刺激することが分かっている。
【0062】
GHRHrアゴニスト活性及びGH放出特性を考慮すれば、本開示の組成物は、GH分泌の刺激が望ましい予防及び/または治療用途、例えばGHRH及び/またはGH機能に関連する(例えば、GH及び/またはGHRH機能の低減が疾患/障害の病因に関連する)状態/障害/疾患の治療または予防のための医薬として有用であり得る。GH、GHRH、またはGHRHアナログ/誘導体の投与が有益となり得る疾患及び状態については、当技術分野で広範に説明されている(例えば、WO2009/009727、WO2006/042408、WO2005/037307、WO2004/105789を参照)。このような状態/障害/疾患としては、例えば、脂肪蓄積に関連する症候群、高コレステロール血症、肥満、シンドロームX、脂肪肥大症、脂肪萎縮症、リポジストロフィー(例えば、HIV関連リポジストロフィー症候群)、認知機能の異常、日中の覚醒状態の異常、免疫系の機能低下(例えば、T細胞欠損などの免疫不全)、筋タンパク質異化作用、筋消耗、例えば、サルコペニア、フレイル、(例えば、HIV感染患者及びがん患者における)放射線治療及び/もしくは化学療法関連の副作用に関連する疾患/状態、(例えば、がん患者における)カヘキシー、視床下部下垂体性小人症、熱傷、骨粗鬆症、腎不全、癒着不良骨折、急性/慢性衰弱性疾病もしくは感染症、創傷治癒、術後の問題、授乳障害、女性における不妊症、神経変性疾患、GRF受容体依存性腫瘍、加齢に関連する状態、睡眠障害/不良、肝臓の疾患または状態(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)もしくは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)(線維化ありもしくはなし)、または肝硬変)が挙げられる。したがって、1つの実施形態において、組成物または製剤を投与する対象は、本明細書に記載の疾患または状態のうちの1つ以上を患っている。1つの実施形態において、対象はリポジストロフィー(例えば、HIV関連リポジストロフィー症候群)を患っている。1つの実施形態において、対象はNAFLDまたはNASHを患っている。
【0063】
そのため、他の態様において、本開示は、(1)(例えば、加齢、軽度認知障害(MCI)、プレアルツハイマー症状(発症前アルツハイマー病)、認知症、及び/または睡眠障害に関連する状態(例えば、加齢性睡眠障害)における)日中の覚醒状態及び/または認知機能を刺激する方法、(2)脂肪蓄積及び/または高コレステロール血症に関連する代謝状態(肥満、腹部肥満/脂肪過多症、代謝障害を伴う腹部肥満、相対的GH欠乏症を伴う腹部肥満、代謝症候群またはシンドロームX、脂肪肥大症、脂肪萎縮症、リポジストロフィー(例えば、HIV関連リポジストロフィー症候群)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、NAFLD/NASH)を改善/予防/治療する方法、(3)異化/消耗状態、例えば、以下で観察されるもの:急性または慢性腎不全(例えば、急性または慢性腎不全消耗)、慢性心不全(例えば、慢性心不全消耗)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(例えば、成人における嚢胞性線維症消耗)、フレイル、熱傷、感染症(敗血症)、筋ジストロフィー、うっ血性心不全、神経変性疾患(アルツハイマー病、プレアルツハイマー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、後天性免疫不全症候群(AIDS)、長期コルチコステロイド療法後のタンパク質栄養障害、癒着不良骨折、股関節骨折、外傷、または大手術後(術後の問題)、骨粗鬆症、長期の運動抑制、がん関連カヘキシー、サルコペニア(例えば、加齢性サルコペニア)、胃腸(GI)吸収不良(短腸症候群(SBS)、クローン病)、特に高齢の対象におけるものの同化作用を改善して、例えば、筋肉量及び/または筋機能を増大させる方法、(4)免疫機能の改善または免疫不全状態(例えば、T細胞免疫不全)の再構成、例えば、加齢、HIV感染/AIDS、または高用量化学療法及び/もしくは放射線療法後(HIV感染者及びがん患者において)に関連する状態を改善する方法、(5)脂質パラメーターを変更する((a)コレステロールを減少させる;(b)非HDLコレステロールを減少させる;(c)トリグリセリドを減少させる;及び/または(d)総コレステロール/HDLコレステロール比を減少させる)方法、(6)身体組成パラメーターを変更する((a)除脂肪体重を増加させる;(b)体幹脂肪を減少させる;(c)内臓脂肪を減少させる;(d)腹囲を減少させる;(e)内臓脂肪組織(VAT)を減少させる;及び/または(f)VAT/皮下脂肪組織(SAT)比を減少させる)方法、(7)(女性において)受胎能力を増強するまたは不妊症を治療する;授乳障害を治療する方法、(8)GH欠乏症(例えば、腹部肥満を伴うGH欠乏症)を治療する、GH補充療法(例えば、成人において)を提供する、特発性低身長(ISS)を治療する方法、(9)GHRH受容体関連腫瘍を治療する方法、(10)視床下部下垂体性小人症を治療する方法、(11)創傷治癒を改善する方法、(12)熱傷を治療する方法、(13)急性/慢性衰弱性疾病または感染症を治療する方法、ならびに/あるいは(14)骨形成の不全または減少を特徴とする状態(例えば、骨粗鬆症)を予防/治療する方法を提供し、当該方法は、上述の組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0064】
他の態様において、本開示は、上記の生物学的/治療的効果(1)~(14)のうちの1つ以上を達成するための(例えば、上記の状態、疾患、もしくは障害を改善、予防、及び/もしくは治療するための、または上記の状態、疾患、もしくは障害を改善、予防、及び/もしくは治療するための医薬の調製/製造のための)上述の組成物の使用を提供する。他の態様において、本開示は、上記の状態、疾患、もしくは障害の改善、予防、及び/もしくは治療で使用するための、または上記の状態、疾患、もしくは障害を改善、予防、及び/もしくは治療するための医薬の調製/製造のための、上述の組成物を提供する。
【0065】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、障害/疾患、障害/疾患の症状、または障害/疾患を患う素因に治療、治癒、緩和、遅延、軽減、改変、矯正、回復、改善、または作用をもたらすことを目的とする、障害、疾患、障害もしくは疾患の症状、または障害もしくは疾患を患う素因を有する対象への治療薬剤の適用もしくは投与、または対象からの単離組織もしくは細胞株への治療薬剤の適用もしくは投与として定義される。
【0066】
別の態様において、本開示は、2mgのGHRH分子(例えば、5%マンニトールを含むEGRIFTA(商標)製剤)を1mg/mLの濃度で投与するのと生物学的に同等なGHRH分子の血漿濃度を得るようにGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHを対象に投与する方法であって、当該対象に、1.2mg超かつ1.36mg未満、例えば約1.21~約1.35、約1.22~約1.33または1.34、または約1.23~約1.32mgのGHRH分子を 約7.5mg/mL以上の濃度で投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、GHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHは、本明細書に記載の医薬組成物中で製剤化される。1つの実施形態において、対象は、上記の状態、疾患、または障害のうちの1つ以上を患っている。さらなる実施形態において、対象はHIV関連リポジストロフィーを患っている。別の実施形態において、対象はNAFLDまたはNASHを患っている。
【0067】
本明細書で使用する場合、「生物学的に同等」という用語は、対象にGHRH分子を投与した後の1つ以上の薬物動態(PK)パラメーターが、2つの治療レジメン間で、好適な統計的基準を用いた決定において有意差がないことを意味する。1つの実施形態において、少なくとも2つのPKパラメーターは、2つの治療レジメン間で有意差がない。1つの実施形態において、少なくとも3つのPKパラメーターは、2つの治療レジメン間で有意差がない。1つの実施形態において、1つ以上のPKパラメーターは、最大血漿濃度(Cmax)を含む。1つの実施形態において、1つ以上のPKパラメーターは、無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)を含む。1つの実施形態において、1つ以上のPKパラメーターは、線形台形法を用いて0からTLQC(最後に観察された定量化可能な血漿濃度時間)まで計算された累積血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-T)を含む。1つの実施形態において、生物学的に同等とは、相対平均Cmax、AUC(0-t)、及びAUC(0-∞)の90%CIが、空腹状態において参照物質(EGRIFTA(登録商標))の80%~125%以内であることを意味する。
【0068】
1つの実施形態において、1つ以上のPKパラメーターの自然対数(ln)変換が統計解析に使用される。1つの実施形態において、使用される統計的基準は、以下の実施例に記載のように、80.00%~125.00%の範囲内にあるln変換PKパラメーターの最小二乗平均(LSmean)における2つの治療レジメン間の差の指数関数に対する幾何LSmeanと対応する90%信頼区間(CI)との比である。
【0069】
1つの実施形態において、当該方法は、ヒト対象において、GHRH分子の最大血漿濃度(Cmax)が約1500~約4500pg/mLに達するのを可能にする。別の実施形態において、当該方法は、ヒト対象の集団において、GHRH分子の平均Cmaxが約2500~約3500pg/mLに達するのを可能にする。さらなる実施形態において、当該方法は、ヒト対象の集団において、GHRH分子の平均最大血漿濃度Cmaxが約2600または2700~約3000、3100、または3200pg/mLに達するのを可能にする。
【0070】
1つの実施形態において、当該方法は、対象において、GHRH分子の無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-∞)が約300~約1400pg・h/mLに達するのを可能にする。1つの実施形態において、当該方法は、ヒト対象の集団において、GHRH分子の平均AUC0-∞が約500~約1000pg・h/mLに達成するのを可能にする。さらなる実施形態において、当該方法は、ヒト対象の集団において、GHRH分子の平均AUC0-∞が約600、650、または700~約750、800、850、または900pg/mLに達成するのを可能にする。
【0071】
1つの実施形態において、当該方法は、(a)凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、好適な体積の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約7.5mg/mL以上で得ることと、(b)1.2mg超1.36mg未満(例えば、約1.21~約1.35、約1.22~約1.33もしくは1.34、または約1.23~約1.32mg)のGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩が対象に投与されるように、好適な体積のGHRH溶液を投与することとを含む。
【0072】
1つの実施形態において、当該方法は、(a)凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、好適な体積の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約7.5~約8.5mg/mLで得ることと、(b)約0.144~約0.176mLの(a)のGHRH分子溶液を対象に投与して、約1.23~約1.32mgのGHRH分子を投与することとを含む。
【0073】
1つの実施形態において、当該方法は、(a)凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、好適な体積の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約7.8~8.2mg/mLで得ることと、(b)約0.150~約0.170mLの(a)のGHRH分子溶液を対象に投与して、約1.23~約1.32mgのGHRH分子を投与することとを含む。
【0074】
さらなる実施形態において、当該方法は、(a)凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、好適な体積の医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約8mg/mLで得ることと、(b)約0.16mLの(a)のGHRH分子溶液を対象に投与して、約1.28mgのGHRH分子を投与することとを含む。
【0075】
さらなる実施形態において、当該方法は、(a)約12.5mgの凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、約1.4mLの医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約8mg/mLで得ることと、(b)約0.16mLの(a)のGHRH分子溶液を対象に投与して、約1.28mgのGHRH分子を投与することとを含む。
【0076】
1つの実施形態において、凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩は、容器、好ましくは密閉容器(例えば、バイアル)に入っている。1つの実施形態において、凍結乾燥されたGHRH分子はシリンジを用いて再懸濁される。1つの実施形態において、GHRH分子溶液は、注射(例えば、皮下注射)によって投与される。
【0077】
本明細書で使用する場合、「対象」または「患者」という用語は、哺乳類などの温血動物、例えば、ネコ、イヌ、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、ヒツジまたはヒトを意味するものと解釈される。1つの実施形態において、対象は哺乳類である。さらなる実施形態において、上述の対象はヒトである。
【0078】
また、別の態様において、本開示は、キットであって、(a)少なくとも約1.21mg、例えば少なくとも約1.23~約1.32mgの凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む第1の容器と、(b)医薬的に許容される希釈剤を含む第2の容器と、(c)凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約7.5mg/mL以上で得るための説明書とを含む、キットも提供する。
【0079】
1つの実施形態において、キットは、(a)少なくとも約1.21mg、例えば少なくとも約1.23~約1.32mgの凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を含む第1の容器と、(b)少なくとも0.16mLの医薬的に許容される希釈剤を含む第2の容器と、(c)凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩を、医薬的に許容される希釈剤に再懸濁して、GHRH分子溶液を約7.8~約8.2mg/mLで得るための説明書とを含む。
【0080】
1つの実施形態において、第1の容器は、約12.5mgの凍結乾燥されたtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NHまたはその医薬的に許容される塩を含む。1つの実施形態において、第2の容器は、約1.4mLの医薬的に許容される希釈剤を含む。
【0081】
1つの実施形態において、医薬的に許容される希釈剤は水溶液(例えば、滅菌水)である。
【0082】
1つの実施形態において、凍結乾燥されたGHRH分子、好ましくはtrans-3-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-NH、またはその医薬的に許容される塩は、密閉容器(例えば、バイアル)に入っている。1つの実施形態において、キットはさらに、少なくとも1つのシリンジを含む。
【0083】
1つの実施形態において、キットはさらに、1.2mg超1.36mg未満(例えば、約1.21~約1.35、約1.22~約1.33もしくは約1.34、または約1.23~約1.32mg)のGHRH分子を、例えば皮下注射により、対象に投与するための説明書を含む。
【実施例
【0084】
本開示を以下の非限定的な実施例によってさらに詳細に例示する。
実施例1:ヒトにおける1.2mg、1.36mg、及び1.6mgの8mg/mlテサモレリン製剤の生物学的同等性試験
【0085】
本試験は、16例の健康な男女対象における単一施設ランダム化単回投与盲検化4剤4期4群クロスオーバーデザインであった。以下の治験薬(IP)を空腹条件下で投与した。
【0086】
試験製品:テサモレリン12.5mg/バイアル皮下注射用滅菌凍結乾燥粉末(10%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)及び3%マンニトール(pH5.9~6)を含む溶液に8mg/mlで再懸濁)。
【0087】
参照製品:EGRIFTA(登録商標)(テサモレリン)1mg/バイアル皮下注射用滅菌凍結乾燥粉末(5%マンニトールを含む溶液に1mg/mlで再懸濁)。
【0088】
ランダム化スキームに従い、各試験期間に以下の4つの治療のうちの1つの単回皮下用量を投与した。
【0089】
治療A:1.2mg(0.15mL)の単回皮下用量の試験製品
【0090】
治療B:1.36mg(0.17mL)の単回皮下用量の試験製品
【0091】
治療C:1.6mg(0.20mL)の単回皮下用量の試験製品
【0092】
治療D:2mg(2.00mL)の単回皮下用量の参照製品
【0093】
表1に従って治療を投与した。
【表1】
【0094】
選択基準
1.署名及び日付が入ったICFの提供
2.全ての試験手順を遵守する意思があることと、試験期間にわたり都合がつくこととを表明していること
3.健康な成人男性または女性
4.女性の場合、以下の基準のうちの1つを満たすものとした。
a)妊娠可能であり、最初の試験薬投与の少なくとも28日前から最終の試験薬投与の少なくとも30日後まで、一般に認められている避妊レジメンのうちの1つを使用することに同意していること。以下のうちの1つが許容される避妊法に含まれた:
●異性との性交渉の禁止
●全身性避妊薬(複合経口避妊薬、注射/インプラント/挿入式ホルモン避妊製品、経皮吸収型パッチ)
●子宮内避妊器具(ホルモンありまたはなし)
●殺精子剤を伴う男性用コンドームまたは膣用殺精子剤(ゲル、泡沫、または座剤)を伴う男性用コンドーム
●最初の試験薬投与の少なくとも6か月前に精管切除を受けた男性パートナー
あるいは
b)投与前6か月未満に精管切除を受け、最初の試験薬投与から最終の試験薬投与の少なくとも30日後まで、追加の許容される避妊法の使用に同意している男性パートナー
あるいは
c)妊娠の可能性がない、外科的に不妊と定義されている(すなわち、子宮全摘術、両側卵巣摘除術、もしくは卵管結紮を受けた)、または閉経後状態にある(すなわち、最初の試験薬投与の前に代替的な医学的条件なしで少なくとも1年間月経がない)
5.18歳以上55歳以下
6.体格指数18.5kg/m~30.0kg/m(両端値を含む)
7.軽喫煙者、非喫煙者、または元喫煙者(軽喫煙者は、最初の試験薬投与前に少なくとも90日間、1日当たり10.0ニコチン単位以下を使用する者と定義し、元喫煙者は、最初の試験薬投与前に少なくとも180日間、ニコチン製品の使用を完全に止めた者と定義した)
8.臨床検査値が検査機関の記載正常範囲内にあること(この範囲内にない場合、治験責任医師が臨床的重要性を伴わないと判断したものでなければならない)
9.病歴に臨床的に重要な(CS)疾患が含まれていないこと、または身体検査(バイタルサインを含む)、血糖測定値、及び/もしくはECGにおいてCS所見の証拠が認められないこと(治験担当医師の判断による)
【0095】
除外基準
1.スクリーニング時に授乳中だった女性
2.スクリーニング時または最初の試験薬投与前に妊娠検査に基づき妊娠していた女性
3.テサモレリン、マンニトール、ベータデクス、または任意の関連製品(製剤の賦形剤を含む)に対する重大な過敏症の既往、及び任意の薬物に対する(血管浮腫のような)重度の過敏症反応の既往があること
4.重大な胃腸疾患、肝疾患、または腎疾患が存在すること、あるいは薬物の吸収、分布、代謝、もしくは排泄を妨害することが知られている、または望ましくない作用を増強もしくは誘発することが知られている任意の他の状態が存在するか、またはその既往があること
5.重大な心血管、肺、血液学的、神経学的、精神医学的、内分泌、免疫学的、または皮膚科学的な疾患の既往があること
6.スクリーニング受診時に、医学的判断によって定義されるCS ECG異常が存在すること
7.注射部位(腹部)の瘢痕、打撲傷、発赤、感染、または過敏が存在すること
8.注射部位(腹部)に、視覚的な皮膚評価に影響を及ぼし得る任意のタトゥー、皮膚の変色、または皮膚の触感の異常が存在すること
9.任意の薬物による維持療法、または薬物依存もしくはアルコール乱用(1日当たり3単位を超えるアルコール、急性または慢性の過剰なアルコール摂取)の重大な既往。
10.最初の試験薬投与の28日前以降に任意のCS疾病があること
11.最初の試験薬投与の28日前以降に、治験責任医師の見解において参加者の健康者としての状態を疑わせるような任意の処方薬(ホルモン避妊薬またはホルモン補充療法を除く)を使用していること
12.任意の結核の既往があること
13.スクリーニング時または最初の試験薬投与前に乱用アルコール及び/または薬物の検査結果が陽性であること
14.HIV Ag/Abコンボ、B型肝炎表面抗原、またはC型肝炎ウイルスの検査に対するスクリーニング結果が陽性であること
15.本臨床試験の前試験群に含まれていること
16.テサモレリンの摂取歴があること
17.最初の試験薬投与の28日前以降にIPを摂取していること
18.最初の試験薬投与の28日前以降に50mL以上の献血を行っていること
19.最初の試験薬投与の56日前以降に500mL以上の献血(Canadian Blood Services、Hema-Quebec、臨床試験など)を行っていること
【0096】
この試験には合計16例の対象が参加し、ランダム化の後、16例全てに治療A、治療B、治療C、及び治療Dを投与した。全ての対象が試験を完了した。
【0097】
薬物投与の前及び投与の最大4.00時間後に血液試料をKEDTAバキュテナーに採取した。分析対象物を著しく分解しないことが示された条件下で試料を処理し保管した。簡潔に説明すると、試料を4℃及びおよそ1000gで10分間遠心分離した。得られた血漿をポリプロピレントランスファーチューブに移した。その後、1800μLの生成した血漿を200μLの安定化溶液(最終体積の10%)が入ったポリプロピレンチューブに移した。安定化した血漿試料を直ちにドライアイスの上に置き、アッセイを行うまで-80℃で凍結保存した。
【0098】
検証済みのELISAアッセイを用いてテサモレリン血漿濃度を評価した。定量下限(LOQ)及び定量上限をそれぞれ150pg/mL及び6000pg/mLとした。
【0099】
本試験において関心対象となる主なPKパラメーターは以下の通りである。
●Cmax(観察された最高血漿濃度)
●AUC0-T(線形台形法を用いて0から最後に観察された定量化可能な血漿濃度の時間(TLQC)まで計算された累積血漿濃度時間曲線下面積)
●AUC0-INF(無限大まで外挿された血漿濃度時間曲線下面積(AUC0-T+CLQC/λとして計算;式中、CLQCは時間TLQCにおける測定濃度であり、λは、時間曲線に対するlog濃度の末端線形部分の線形回帰によって推定された見かけ上の消失速度定数である))
【0100】
その他のパラメーター、例えば、Tmax(観察された最大血漿濃度の時間;複数の時点で発生した場合、Tmaxはこの値を伴う最初の時点として定義される)、AUC0-T/INF(AUC0-INFに対するAUC0-Tの相対的パーセンテージ)、λ、及びThalf(最終消失半減期;ln(2)/λとして計算)も定量した。
【0101】
主な吸収及び廃棄パラメーターは、対数線形終末相仮定を用いたノンコンパートメントアプローチによって推定した。台形則を使用してAUCを推定し(線形台形線形補間)、対数線形回帰モデルから推定された決定係数を最大化することによって終末相を推定した。ただし、対数線形終末相が以下の基準を用いて確実に特徴付けることができる個々の濃度-時間プロファイルについては、廃棄パラメーターを推定しなかった。
●Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)ベストフィット範囲選択:少なくとも80%のR
●対応する最終半減期の値が、λが推定された時間間隔の2倍以下(すなわち、Thalf≦2×TLQCとTLINとの時間間隔の差)であった
【0102】
各個々の時点における血漿濃度及び全てのPKパラメーターについて記述統計量を計算した。個々の血漿濃度/時間プロファイルは実際のサンプリング時間を用いて提示し、平均血漿濃度/時間プロファイルは理論上のサンプリング時間を用いて提示した。
【0103】
max、AUC0-T、及びAUC0-INFの自然対数変換を全ての統計的推論に使用した。Tmaxパラメーターは、ノンパラメトリックアプローチを用いて解析した。固定された期間、順序、及び治療効果の検定は、ウィルコクソン順位和検定(Mann-Whitney U検定)に基づいた。他のPKパラメーターは全て、分散分析(ANOVA)モデルを用いて統計的に解析した。
【0104】
生物学的同等性の実証は、Cmax、AUC0-T、及びAUC0-INFにおける幾何最小二乗平均(LSmean)と90%CIとの8mg/mL:1mg/mL比が80~125%の許容範囲にあることに基づいた。ln変換パラメーター(幾何LSmeanの治療A、B、またはC:治療D比)における試験製品と参照製品とのLSmeanの差の指数関数に対する90%信頼区間(CI)を計算した。
【0105】
対象内CVを推定する式は
【数1】
であり、
式中、MSEは、ln変換パラメーターのANOVAモデルから得られる平均二乗誤差である。
【0106】
安全性は、有資格の試験スタッフにより、報告された有害事象(AE)、臨床検査結果、バイタルサイン測定値、ECG所見、身体診察所見、視覚的皮膚評価、及び血糖を評価することによって評価した。
【0107】
結果
【0108】
テサモレリンにおけるCmax及びAUCの統計解析の概要を表2((治療A vs治療D)、表3(治療B vs治療D)、及び表4(治療C vs治療D)に示す。
【表2】
【0109】
試験製品の1.2mg皮下投与(治療A)後、テサモレリンは迅速に吸収され、Tmaxの中央値は0.15時間(範囲=0.10~0.20時間)となり、参照製品の2mg皮下投与で観察された結果(治療D、中央値[範囲]=0.20[0.15~0.25]時間)と概ね同様であった。1.2mgの試験製品で観察されたCmax、AUC0-T、及びAUC0-∞値は、それぞれ2889.6pg/mL、807.6pg・h/mL、及び879.2pg・h/mLであり、これに対し2mgの参照製品では、それぞれ3097.7pg/mL、949.3pg・h/mL、及び1057.2pg・h/mLであった。幾何最小二乗平均の比の点推定値は、Cmax、AUC0-T、及びAUC0-∞において、それぞれ92.68%、84.44%、及び83.93%であった。AUCにおける幾何LSmeanの治療A:治療D比に対する90%信頼区間の下限は、80.00%の生物学的同等性基準を下回った。したがって、1.2mgの8mg/ml製剤の投与は、2mgの「EGRIFTA(登録商標)」の投与と生物学的に同等ではない。
【表3】
【0110】
試験製品の1.36mg皮下投与(治療B)後、テサモレリンは迅速に吸収され、Tmaxの中央値は0.15時間(範囲=0.10~0.25時間)となり、参照製品の2mg皮下投与で観察された結果(治療D、中央値[範囲]=0.20[0.15~0.25]時間)と概ね同様であった。1.36mgの試験製品で観察されたCmax、AUC0-T、及びAUC0-∞値は、それぞれ3462.6pg/mL、957.1pg・h/mL、及び1029.8pg・h/mLであり、これに対し2mgの参照製品では、それぞれ3097.7pg/mL、949.3pg・h/mL、及び1057.2pg・h/mLであった。幾何最小二乗平均の比の点推定値は、Cmax、AUC0-T、及びAUC0-∞において、それぞれ112.77%、110.32%、及び108.31%であった。Cmax及びAUC0-Tにおける幾何LSmeanの治療B:治療D比に対する90%信頼区間の上限は、125.00%の生物学的同等性基準をわずかに上回った。したがって、1.36mgの8mg/ml製剤の投与は、2mgの「EGRIFTA(登録商標)」の投与と生物学的に同等ではない。
【表4】
【0111】
試験製品の1.6mg皮下投与(治療C)後、テサモレリンは迅速に吸収され、Tmaxの中央値は0.15時間(範囲=0.10~0.25時間)となり、参照製品の2mg皮下投与で観察された結果(治療D、中央値[範囲]=0.20[0.15~0.25]時間)と概ね同様であった。1.6mgの試験製品で観察されたCmax、AUC0-T、及びAUC0-∞値は、それぞれ3918.1pg/mL、1126.6pg・h/mL、及び1260.1pg・h/mLであり、これに対し2mgの参照製品では、それぞれ3097.7pg/mL、949.3pg・h/mL、及び1057.2pg・h/mLであった。幾何最小二乗平均の比の点推定値は、Cmax、AUC0-T、及びAUC0-∞において、それぞれ131.65%、125.05%、及び122.04%であった。Cmax及びAUCにおける幾何LSmeanの治療C:治療D比に対する90%信頼区間の上限は、125.00%の生物学的同等性基準を上回った。したがって、1.36mgの8mg/ml製剤の投与は、2mgの「EGRIFTA(登録商標)」の投与と生物学的に同等ではない。
【0112】
試験製品A、B、及びCにおけるCmax及びAUC0-Tは用量に比例して増加するように思われ、用量が1.2mgから1.6mgに1.33倍増加した場合にCmaxが1.36倍、AUC0-Tが1.39倍増加した。
【0113】
全体的に見ると、これらの結果からは、2mgのEGRIFTA(登録商標)の投与と生物学的に同等にするには、1.2mg超1.36mg未満の用量の8mg/ml製剤の投与が適しているであろうことが示唆される。
【0114】
実施例2:ヒトにおける1.28mgの8mg/mlテサモレリン製剤の生物学的同等性試験
本試験の主要目的は、健康な対象において、2つのテサモレリン製剤(1mg/バイアル及び12.5mg/バイアル)を単回皮下(SC)投与した後の薬物動態(PK)を評価することであった。
【0115】
治験薬は以下の通りであった。
●試験製品:注射用テサモレリン滅菌凍結乾燥粉末、12.5mg/バイアル(10%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)及び3%マンニトール(pH5.9~6)を含む溶液に再懸濁後8mg/mL)。
●参照製品:EGRIFTA(登録商標)、注射用テサモレリン、滅菌凍結乾燥粉末、1mg/バイアル(5%マンニトールを含む溶液に再懸濁後1mg/mL溶液)。
【0116】
単回投与クロスオーバー非盲検試験において、対象に1.28mgの試験製剤及び2mgの参照製品を腹部の注射として皮下投与した。したがって、以下の製品を投与した。
【表5】
【0117】
Food and Drug Administration(FDA)及びTherapeutic Products Directorate(TPD)の規定に従い、異なる基準を用いて相対的生体利用能を評価した。
【0118】
FDA:
●ln変換パラメーターCmax、AUC0-T、及びAUC0-INFにおける試験製品と参照製品との差の指数関数から計算された幾何LSmeanと対応する90%信頼区間との比は、いずれも80.00~125.00%の生物学的同等性の範囲内であった。
【0119】
TPD:
●ln変換パラメーターCmaxにおける試験製品と参照製品との差の指数関数から計算された幾何LSmeanの比は、80.0~125.0%の生物学的同等性の範囲内であった。
●ln変換パラメーターAUC0-tにおける試験製品と参照製品との差の指数関数から計算された幾何LSmeanと対応する90%信頼区間との比は、80.0~125.0%の生物学的同等性の範囲内であった。
【0120】
投与を行った36例のうち33例の対象を薬物動態解析及び統計解析に含めた。本明細書に提示する薬物動態解析及び統計解析は、QCを行った未監査濃度データに基づいたものである。実時間を使用して薬物動態解析を実施した。
【0121】
選択/除外基準、試験プロトコル、及びデータ解析は、実施例1で報告した試験と同様であった。
【0122】
結果
【0123】
テサモレリンにおけるCmax及びAUCの統計解析の概要を表6に示す。
【表6】
【0124】
統計解析の結果により、全てのPKエンドポイント(Cmax、AUC0-t、及びAUC0-INF)が予め定義された許容範囲の80~125%以内であることから、1.28mg投与(試験)と2mg投与(参照)との間で吸収の速度及び程度が同様であることが確認された。
【0125】
TPD追加要件:外れ値は認められなかった。さらに、参照製品及び試験製品のロットにおける測定された薬物含量は、互いに5%(表示量のパーセント)を上回る差がなかったため、効力補正済み含量を比及び信頼区間に対し使用しなかった。
【0126】
1.28mg(0.16mL)のテサモレリン8mg/mL製剤の投与は、2mg(2mL)の1mg/mL製剤の投与と生物学的に同等と判断され、また対象において安全であり忍容性が良好であることが分かった。
【0127】
本開示をその具体的な実施形態として上記で説明してきたが、本開示は、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の趣旨及び性質から逸脱することなく修正することができる。特許請求の範囲において、「~を含む」という語は、「~を含むがこれに限定されない」という語句と実質的に等価である無制限の用語として使用される。文脈による明確な別段の定めがない限り、単数形「1つの(a/an)」及び「当該(the)」には対応する複数の指示対象が含まれる。
図1
【配列表】
2023533498000001.app
【国際調査報告】