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特表2023-5335012成分繊維を製造する方法およびこれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】2成分繊維を製造する方法およびこれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
D01F8/14 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581377
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021037159
(87)【国際公開番号】W WO2022005725
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/047,413
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519307218
【氏名又は名称】デュポン・インダストリアル・バイオサイエンシーズ・ユーエスエイ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ジェラード・マドリーン
【テーマコード(参考)】
4L041
【Fターム(参考)】
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA09
4L041BA22
4L041BA38
4L041BA46
4L041BA49
4L041BB05
4L041BD11
4L041BD20
4L041CA05
4L041CA08
4L041DD14
(57)【要約】
本開示は一般に、第1の押出成分が第2の押出成分よりも低い水分レベルを有する、2成分繊維、より詳細には2成分繊維を製造する方法およびこれを含む物品に関する。2成分繊維はポリエステルを含んでもよく、カーペットおよび布帛などの物品で有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分繊維を製造する方法であって:
a)2つまたはそれ以上の独立した溶融物流を作製することができる紡糸機で第1および第2の成分を押し出すことと;
b)2成分繊維の製造に適合した紡糸口金で溶融物流を組み合わせることと;
c)工程(b)で作製された2成分繊維を空気中でクエンチすることと;
d)クエンチされた2成分繊維を延伸し、ヒートセットすることと;
e)工程(d)の2成分繊維を任意の好適な手段によって巻き取ることと
を含み;第1の押出成分は第2の押出成分よりも低い水分レベルを有する、方法。
【請求項2】
第1および第2の成分は:ポリエステル、ナイロン、およびこれらの組合せからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の成分は:ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、およびこれらのコポリマーからなる群から独立して選択されるポリエステルであり、第2の成分は:ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、およびこれらのコポリマーからなる群から選択されるポリエステルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の成分はポリ(エチレンテレフタレート)であり、第2の成分はポリ(トリメチレンテレフタレート)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1の成分は、約10%~約20%の範囲の水分レベルを有し、第2の成分は、約90%~約80%の範囲の水分レベルを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1の成分は、約50ppmまたはそれ以下の水分レベルを有し、第2の成分は、約50ppmを超える水分レベルを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(e)で作製された2成分繊維の伸縮性測定値は、第1の押出成分が第2の押出成分の水分レベルよりも低い水分レベルを有しなかった工程(a)~(e)で製造された2成分繊維と比較して、約10%~約85%の範囲で増加した、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
伸縮性測定値の増加は:12%、17%、および40%からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
2成分繊維の第1および第2の成分は、20:80~80:20の範囲の重量パーセント比で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
2成分繊維は:サイドバイサイド、偏心シースコア構成、および三葉形からなる群から選択される構成である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)の2成分繊維の加熱後の捲縮収縮は、捲縮収縮法に従って測定したときに約10%~約85%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)の成分のうちの1つの押出機温度は、約240℃~約320℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)の2つの押出成分のうちの1つの押出機温度は:260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、および320℃からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含む衣料品。
【請求項15】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含む布帛。
【請求項16】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含む完全延伸糸。
【請求項17】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含む部分配向糸。
【請求項18】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含むステープルファイバー。
【請求項19】
カーペットの表面繊維が請求項1に記載の方法により製造された2成分繊維を含む、カーペット。
【請求項20】
2成分繊維は:サイドバイサイド、偏心シースコア構成、および三葉形からなる群から選択される構成である、請求項19に記載のカーペット。
【請求項21】
表面繊維は:嵩高連続フィラメント、合成ステープルファイバー、および天然繊維からなる群から選択される、少なくとも1種の追加の繊維をさらに含む、請求項20に記載のカーペット。
【請求項22】
少なくとも1種の追加の繊維は嵩高連続フィラメントであり、嵩高連続フィラメントはナイロン、ポリプロピレン、またはポリエステルを含む、請求項21に記載のカーペット。
【請求項23】
少なくとも1種の追加の繊維は合成ステープルファイバーであり、合成ステープルファイバーはナイロンまたはポリエステルを含む、請求項21に記載のカーペット。
【請求項24】
少なくとも1種の追加の繊維は天然繊維であり、天然繊維は羊毛、絹、または綿を含む、請求項21に記載のカーペット。
【請求項25】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含む不織繊維。
【請求項26】
請求項1に記載の方法で製造された2成分繊維を含む不織布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、2成分繊維、より詳細には2成分繊維を製造する方法およびこれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
2種のポリエステルのサイドバイサイド紡糸により製造される2成分繊維は、布地産業で広く使用されており、最終的な衣類または物品に伸縮性を主に付与する。伸縮性のレベルは、2種のポリエステルの相対収縮によって操作することができ、これは2種のポリマーの固有粘度(I.V.)に部分的に依存しうる。2成分繊維の製造プロセスにおいて、理想的なのは、使用するポリエステル出発材料が所望のI.V.を有し、容易に入手可能であり、安価なことである。そうでない場合、2成分繊維の所望の性能を達成するには、繊維製造プロセス、2成分繊維の物理特性、またはその両方において多くの場合妥協しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の実施形態において、2成分繊維を製造する方法であって:a)2つまたはそれ以上の独立した溶融物流を作製することができる紡糸機で第1および第2の成分を押し出すことと;b)2成分繊維の製造に適合した紡糸口金で溶融物流を組み合わせることと;c)工程(b)で作製された2成分繊維を空気中でクエンチすることと;d)クエンチされた2成分繊維を延伸し、ヒートセットすることと;e)工程(d)の2成分繊維を任意の好適な手段によって巻き取ることとを含み;第1の押出成分は第2の押出成分よりも低い水分レベルを有する、方法が本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
引用した全ての特許、特許出願、および刊行物は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0005】
範囲および変形形態
存在する場合、全ての範囲は包括的であり、組合せ可能である。例えば、「1~5」という範囲が記載されている場合、記載されている範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」などの範囲を含むものとして解釈されるべきである。数値と関連して本明細書において使用する場合、用語「約」は、文脈で別途明確に定義されない限り、数値の+/-0.5の範囲を指す。例えば、「約6のpH値」という句は、pH値が別途明確に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0006】
本明細書全般にわたり与えられるあらゆる最大数値限度は、より低いあらゆる数値限度を、そのようなより低い数値限度が本明細書に明白に書かれているようにして、含むことが意図される。本明細書全般にわたり与えられるあらゆる最小数値限度は、より高いあらゆる数値限度を、そのようなより高い数値限度が本明細書に明白に書かれているようにして、含むことになる。本明細書全般にわたり与えられるあらゆる数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内にあるより狭いあらゆる数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲が本明細書に明白に書かれているようにして、含むことになる。
【0007】
定義
本明細書において使用する場合、用語「実施形態」または「開示」は、限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲で規定されるまたは本明細書に記載される実施形態のいずれにも全般的に適用される。これらの用語は、本明細書において互換に使用する。本開示において、いくつかの用語および略語を使用する。別途明記されていない限り、以下の定義が適用される。
【0008】
要素または成分の前にある冠詞「a」、「an」、および「the」は、要素または成分の例(すなわち、存在)の数に関して非限定的であることが意図される。したがって、「a」、「an」、および「the」は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、要素または成分の単語の単数形は、数が単数であることが明らかに意図されていない限り、複数も含む。
【0009】
用語「含む」は、特許請求の範囲で言及される、述べられた特徴、構成要素、工程、または成分の存在を意味するが、1つまたはそれ以上の他の特徴、構成要素、工程、成分、またはこれらの群の存在または追加を除外するものではない。用語「含む」は、用語「から本質的になる」および「からなる」によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0010】
用語「2成分繊維」は、本明細書において使用する場合、2種の異なるポリマー成分を含む繊維を指し、2種の異なるポリマー成分は、異なるポリマー種、同じポリマー種だが異なる固有粘度を有するもの、または2種もしくはそれ以上のポリマーのブレンドで構成してもよい。2成分繊維は複合繊維と呼んでもよく、用語は互換に使用しうる。
【0011】
用語「BCF」は、バルク性のあるまたは嵩高の連続2成分フィラメントを指す。これは本質的に、カーペットを製造するのに使用される、1本の長い繊維の連続ストランドである。用語「バルク性」と「嵩高」は、本明細書において互換に使用する。
【0012】
用語「カーペット」は、本明細書において使用する場合、パイル糸または繊維、およびバッキングシステムからなる床敷物を指す。これはタフテッドまたは織物としてもよい。本明細書において使用する場合、用語「カーペット」は、床一面カーペット、カーペットタイル、ラグ、ならびに乗り物および建物入り口用マット、例えば足の汚れを取るように設計されたものを包含する。
【0013】
用語「表面」は、タフテッド糸または織糸を含有するカーペットの面を指す。
【0014】
用語「表面繊維」は、本明細書において使用する場合、観察者が見えるものを含むカーペットの繊維含有物を指す。表面繊維は糸で主に構成され、それらの糸は、カット、ループ、カットとループ、または当業者に公知のいくつかのスタイルでスタイリングしてもよい。
【0015】
用語「コポリマー」は、1種を超えるモノマーの組合せで構成されたポリマーを指す。コポリマーは、幾種かの人造繊維の主成分を形成しうる。
【0016】
用語「捲縮」は、単位長さ当たりの捲縮で表される、繊維の波打ちを指す。「クリンプ加工」は、フィラメント糸に捲縮を与えるプロセスである。
【0017】
用語「捲縮収縮」は、繊維捲縮の尺度であり、完全に伸ばした状態(すなわち、フィラメントが実質的に真っ直ぐである状態)からの糸の長さの収縮を指す。これは、特定の捲縮発生条件下での個々のフィラメントにおける捲縮の形成によるものである。これは、伸ばした長さの百分率で表される。捲縮収縮は、例えば加熱による、捲縮を部分的または完全に発生させるための繊維の処理の前および/または後に測定することができ;典型的には加熱後の捲縮収縮は、加熱により発生する捲縮を含むので、より興味深く、より多くの情報をもたらす。別途明記されない限り、本明細書に開示される捲縮収縮値は、加熱後の捲縮収縮値(Cca)である。
【0018】
用語「デニール」は、任意の線状材料の単位長さ当たりの重量の尺度である。
【0019】
用語「繊維」は、布帛および他の布地構造物の基礎的要素を形成する、天然または合成のいずれかの物質の単位を指す。これは、その直径または幅の少なくとも1000倍の長さを有することにより特徴づけられる。典型的に、布地繊維は、製織、編み、ブレーディング、フェルト化、および撚りを含めた様々な方法によって糸を紡ぐ、または布帛を製造することができる単位である。繊維は、そのデニール(繊維9000メートル当たりのグラム単位重量)および繊維に含有されるフィラメント数によって特徴づけられる。
【0020】
「フィラメント」は、繊維の細いスレッドまたは連続ストランドを指す。2種のフィラメント:モノフィラメントおよびマルチフィラメントがある。フィラメントは、1フィラメント当たりのそのデニール(「dpf」)によって特徴づけられる。
【0021】
用語「ホモフィラメント」は、フィラメントが1つのポリマー種で製造されていることを意味する。
【0022】
「ステープル」は、天然繊維、またはフィラメントから切断された長さのもののいずれかを指す。
【0023】
用語「固有粘度」(「IV」)は、濃度ゼロに外挿した、既知濃度溶液の比粘度と溶質の濃度との比を指す。
【0024】
用語「タフティング」は、特殊な多針機で布地、例えばカーペットを作り出すプロセスを指す。「タフト」は、布帛に通され、切断された糸やループの形態で表面から突出している柔らかい糸の集まりである。切断されたまたは切断されていないループは、タフテッドカーペットまたは織物カーペットの表面を形成する。
【0025】
用語「糸」は、単独で、または別のフィラメントの集合体と一緒に撚り合わされた、個々のフィラメントの集合体を指す。用語「繊維」と「糸」は、本明細書において互換に使用する。
【0026】
用語「クエンチする」は、水、油、または空気中で急速に冷却して、ある特定の物理的または材料特性を得ることを指す。
【0027】
用語「ポリ(エチレンテレフタレート)」すなわちPETは、実質的にエチレングリコールとテレフタル酸(または同等物、例えばテレフタル酸ジメチル)のみから誘導されるポリマーを意味し、ポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマーとも呼ばれる。本明細書で使用する場合、用語「ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー」すなわち「co-PET」は、エチレングリコールとテレフタル酸(または同等物)から誘導される繰り返し単位を含み、追加のモノマー、例えばイソフタル酸(IPA)またはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)から誘導される少なくとも1種の追加の単位も含有するポリマーを指す。ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーは、約1モル%~約30モル%の追加のモノマー、例えば約1モル%~約15モル%の追加のモノマーを含有することができる。
【0028】
用語「ポリ(ブチレンテレフタレート)」すなわちPBTは、実質的に1,4-ブタンジオールとテレフタル酸のみから誘導されるポリマーを意味し、ポリ(ブチレンテレフタレート)ホモポリマーとも呼ばれる。本明細書で使用する場合、用語「ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー」は、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸から誘導される繰り返し単位を含み、追加のモノマー、例えば本明細書に開示されるPTTコポリマー用のコモノマーから誘導される少なくとも1種の追加の単位も含有するポリマーを指す。
【0029】
用語「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」すなわちPTTは、1,3-プロパンジオールとテレフタル酸を重合することによって製造されるポリエステルを指す。これは、その高い弾性回復および弾力性で有名である。PPTは、耐汚染性、耐静電気性、および改良された可染性をもたらすことが公知である。用語「ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマー」は、実質的に1,3-プロパンジオールとテレフタル酸(または同等物)のみのポリマーを意味する。用語「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」はPTTコポリマーも含み、PTTコポリマーは、1,3-プロパンジオールとテレフタル酸(または同等物)から誘導される繰り返し単位を含み、追加のモノマーから誘導される少なくとも1種の追加の単位も含有するポリマーを意味する。
【0030】
PTTコポリマーの例としては、それぞれが2個のエステル形成基を有する3種またはそれ以上の反応物を使用して製造されたコポリエステルが挙げられる。例えば、コポリ(トリメチレンテレフタレート)を使用することができ、ここで、コポリエステルを製造するのに使用されるコモノマーは、4~12個の炭素原子を有する直鎖、環状、および分枝鎖の脂肪族ジカルボン酸(例えば、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸);テレフタル酸以外の、8~12個の炭素原子数を有する芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸);2~8個の炭素原子を有する直鎖、環状、および分枝鎖の脂肪族ジオール(1,3-プロパンジオール以外、例えば、エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、および1,4-シクロヘキサンジオール);ならびに4~10個の炭素原子を有する脂肪族および芳香族エーテルグリコール(例えば、ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、またはジエチレンエーテルグリコールを含めた約460未満の分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール)からなる群から選択される。コモノマーは、典型的に約0.5モル%~約15モル%の範囲のレベルでコポリエステル中に存在し、最大約30モル%の量で存在しうる。
【0031】
用語「トリエクスタ(Triexta)」は、ポリエステルの下位分類であるPTTの一般名を指す。用語トリエクスタとPTTは、本明細書において互換に使用しうる。
【0032】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、典型的に約0.5デシリットル/グラム(dl/g)またはそれ以上であり、典型的に約2dl/gまたはそれ以下である固有粘度を有する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、好ましくは約0.7dl/gまたはそれ以上、より好ましくは0.8dl/gまたはそれ以上、さらにより好ましくは0.9dl/gまたはそれ以上であり、典型的には約1.5dl/gまたはそれ以下、好ましくは1.4dl/gまたはそれ以下である固有粘度を有し、現在入手可能な商品は、1.2dl/gまたはそれ以下の固有粘度を有する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、デラウェア州ウィルミントンのE.I.du Pont de Nemours and Companyから「Sorona(登録商標)」の商標で市販されている。
【0033】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモファイバーを用いて製造されたカーペットおよびその製造、ならびにそのホモファイバーおよびそのホモファイバーの製造は、米国特許第5,645,782号 Howellら、同第6,109,015号 Roarkら、および同第6,113,825号 Chuah;米国特許第6,740,276号、同第6,576,340号、および同第6,723,799号;WO99/19557 Scottら;H.Modlich、「Experience with Polyesters Fibers in Tufted Articles of Heat-Set Yarns」、Chemiefasern/Textilind.41/93、786~94頁(1991年);ならびにH.Chuah、「Corterra Poly(trimethylene terephthalate)-New Polymeric Fiber for Carpets」、The Textile Institute Tifcon ’96(1996年)に記載されており、これらは全て参照によって本明細書に組み入れる。住居用カーペットを製造するには、ステープルファイバーが主に使用される。BCF糸は全ての種類のカーペットを製造するのに使用され、通常、カーペット用に好ましい。
【0034】
典型的に、PTT含有2成分繊維は、耐久性があり伸縮性の性質を有する布帛および衣服を製造するのに使用される。対照的に、そのような伸縮性の性質は、カーペットの製造で必要とされない。むしろ、カーペットの製造で使用するための繊維は、高レベルのバルク性をもたらすように、典型的には機械的に嵩高くされており;そのような繊維は典型的に「BCF」繊維と呼ばれる。
【0035】
全般
本出願人は、出発ポリマーのライン上でのI.V.を制御することにより:繊維製造プロセスで安価なポリマーを場合により使用すること;およびポリマーI.V.に限定されずにバルク繊維特性を最適化することが可能になる、2成分繊維を製造する方法を有利に発見した。
【0036】
本出願人は、出発ポリマーのI.V.をライン外で制御することによる、2成分繊維を製造する方法も有利に発見した。
【0037】
2成分繊維を製造する方法が本明細書に開示される。
【0038】
方法は:a)2つまたはそれ以上の独立した溶融物流を作製することができる紡糸機で第1および第2の成分を押し出すことと;b)2成分繊維の製造に適合した紡糸口金で溶融物流を組み合わせることと;c)工程(b)で作製された2成分繊維を空気中でクエンチすることと;d)クエンチされた2成分繊維を延伸し、ヒートセットすることと;e)工程(d)の2成分繊維を任意の好適な手段によって巻き取ることとを含み;第1の押出成分は第2の押出成分よりも低い水分レベルを有する。
【0039】
本明細書に開示される方法の第1および第2の成分は、ポリエステルおよびナイロン、ならびにこれらの組合せを独立して含んでもよい。
【0040】
2成分繊維の第1および第2の成分は、20:80~80:20の範囲の重量パーセント比で存在してもよい。重量パーセント比は、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、および80:20からなる群から選択してもよい。
【0041】
第1および第2の成分は、ポリエステルおよびナイロンのホモポリマー、コポリマー、ブレンド、およびこれらの組合せを独立して含んでもよい。
【0042】
一実施形態において、第1および第2の成分は:ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリエステルを独立して含んでもよい。
【0043】
一実施形態において、2成分繊維中のポリエステルはコポリエステルとすることができ、このようなコポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)の意味に含まれ、但しこのような変形形態は、交絡糸の捲縮の量または繊維の加工特性に悪影響を及ぼさないことが前提である。例えば、コポリ(エチレンテレフタレート)を使用することができ、ここで、コポリエステルを製造するのに使用されるコモノマーは、4~12個の炭素原子を有する直鎖、環状、および分枝鎖の脂肪族ジカルボン酸(例えば、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸);テレフタル酸以外の、8~12個の炭素原子数を有する芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸);3~8個の炭素原子を有する直鎖、環状、および分枝鎖の脂肪族ジオール(例えば、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、および1,4-シクロヘキサンジオール);ならびに4~10個の炭素原子を有する脂肪族および芳香脂肪族エーテルグリコール(例えば、ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、またはジエチレンエーテルグリコールを含めた約460未満の分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール)からなる群から選択される。コモノマーは、約0.5~約15モルパーセントのレベルでコポリエステル中に存在してもよい。イソフタル酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、1,3-プロパンジオール、および1,4-ブタンジオールは、商業的に容易に入手可能で安価なため、典型的に使用される。コポリエステルは、少量の他のコモノマーも含有してもよい。このような他のコモノマーとしては、限定されるものではないが、約0.2~約5モルパーセントのレベルの5-スルホイソフタル酸ナトリウムが挙げられる。極少量の3官能性コモノマー、例えばトリメリト酸も粘度制御のために組み込んでもよい。
【0044】
一実施形態において、第1および第2の成分は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマーもしくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(co-PET)、ポリ(トリメチレン)テレフタレート(PTT)ポリマー、またはPTTとPETホモポリマーもしくはPETコポリマー(co-PET)とのブレンドを独立して含んでもよい。
【0045】
2成分繊維の一実施形態において、第1の成分はPTTを含んでもよく、第2の成分はPETを含んでもよく、2成分繊維は収縮差に起因する自己伸縮性がある。第1の成分は、約0.9dL/g~約1.25dL/gの範囲のペレット固有粘度を有するPTTを含んでもよく、第2の成分は、約0.50dL/g~約0.80dL/gの固有粘度を有するPETペレットの混合物を含んでもよく、ここでPETペレットは、乾燥ペレット(水分レベル約50ppm)と未乾燥ペレット(水分レベル約2500ppm)のブレンドを含む。
【0046】
一実施形態において、本明細書に記載の未乾燥PETペレットの水分レベルは、300ppm~約5000ppmの範囲とすることができる。ペレットの水分レベルの例としては、限定されるものではないが:300ppm、310ppm、320ppm、330ppm、340ppm、350ppm、360ppm、370ppm、380ppm、390ppm、400ppm、410ppm、420ppm、430ppm、440ppm、450ppm、460ppm、470ppm、480ppm、490ppm、500ppm、510ppm、520ppm、530ppm、540ppm、550ppm、560ppm、570ppm、580ppm、590ppm、600ppm、610ppm、620ppm、630ppm、640ppm、650ppm、660ppm、670ppm、680ppm、690ppm、700ppm、710ppm、720ppm、730ppm、740ppm、750ppm、760ppm、770ppm、780ppm、790ppm、800ppm、810ppm、820ppm、830ppm、840ppm、850ppm、860ppm、870ppm、880ppm、890ppm、900ppm、910ppm、920ppm、930ppm、940ppm、950ppm、960ppm、970ppm、980ppm、990ppm、1000ppm、1010ppm、1020ppm、1030ppm、1040ppm、1050ppm、1060ppm、1070ppm、1080ppm、1090ppm、1100ppm、1110ppm、1120ppm、1130ppm、1140ppm、1150ppm、1160ppm、1170ppm、1180ppm、1190ppm、1200ppm、1210ppm、1220ppm、1230ppm、1240ppm、1250ppm、1260ppm、1270ppm、1280ppm、1290ppm、1300ppm、1310ppm、1320ppm、1330ppm、1340ppm、1350ppm、1360ppm、1370ppm、1380ppm、1390ppm、1400ppm、1410ppm、1420ppm、1430ppm、1440ppm、1450ppm、1460ppm、1470ppm、1480ppm、1490ppm、1500ppm、1510ppm、1520ppm、1530ppm、1540ppm、1550ppm、1560ppm、1570ppm、1580ppm、1590ppm、1600ppm、1610ppm、1620ppm、1630ppm、1640ppm、1650ppm、1660ppm、1670ppm、1680ppm、1690ppm、1700ppm、1710ppm、1720ppm、1730ppm、1740ppm、1750ppm、1760ppm、1770ppm、1780ppm、1790ppm、1800ppm、1810ppm、1820ppm、1830ppm、1840ppm、1850ppm、1860ppm、1870ppm、1880ppm、1890ppm、1900ppm、1910ppm、1920ppm、1930ppm、1940ppm、1950ppm、1960ppm、1970ppm、1980ppm、1990ppm、2000ppm、2010ppm、2020ppm、2030ppm、2040ppm、2050ppm、2060ppm、2070ppm、2080ppm、2090ppm、2100ppm、2110ppm、2120ppm、2130ppm、2140ppm、2150ppm、2160ppm、2170ppm、2180ppm、2190ppm、2200ppm、2210ppm、2220ppm、2230ppm、2240ppm、2250ppm、2260ppm、2270ppm、2280ppm、2290ppm、2300ppm、2310ppm、2320ppm、2330ppm、2340ppm、2350ppm、2360ppm、2370ppm、2380ppm、2390ppm、2400ppm、2410ppm、2420ppm、2430ppm、2440ppm、2450ppm、2460ppm、2470ppm、2480ppm、2490ppm、2500ppm、2510ppm、2520ppm、2530ppm、2540ppm、2550ppm、2560ppm、2570ppm、2580ppm、2590ppm、2600ppm、2610ppm、2620ppm、2630ppm、2640ppm、2650ppm、2660ppm、2670ppm、2680ppm、2690ppm、2700ppm、2710ppm、2720ppm、2730ppm、2740ppm、2750ppm、2760ppm、2770ppm、2780ppm、2790ppm、2800ppm、2810ppm、2820ppm、2830ppm、2840ppm、2850ppm、2860ppm、2870ppm、2880ppm、2890ppm、2900ppm、2910ppm、2920ppm、2930ppm、2940ppm、2950ppm、2960ppm、2970ppm、2980ppm、2990ppm、3000ppm、3010ppm、3020ppm、3030ppm、3040ppm、3050ppm、3060ppm、3070ppm、3080ppm、3090ppm、3100ppm、3110ppm、3120ppm、3130ppm、3140ppm、3150ppm、3160ppm、3170ppm、3180ppm、3190ppm、3200ppm、3210ppm、3220ppm、3230ppm、3240ppm、3250ppm、3260ppm、3270ppm、3280ppm、3290ppm、3300ppm、3310ppm、3320ppm、3330ppm、3340ppm、3350ppm、3360ppm、3370ppm、3380ppm、3390ppm、3400ppm、3410ppm、3420ppm、3430ppm、3440ppm、3450ppm、3460ppm、3470ppm、3480ppm、3490ppm、3500ppm、3510ppm、3520ppm、3530ppm、3540ppm、3550ppm、3560ppm、3570ppm、3580ppm、3590ppm、3600ppm、3610ppm、3620ppm、3630ppm、3640ppm、3650ppm、3660ppm、3670ppm、3680ppm、3690ppm、3700ppm、3710ppm、3720ppm、3730ppm、3740ppm、3750ppm、3760ppm、3770ppm、3780ppm、3790ppm、3800ppm、3810ppm、3820ppm、3830ppm、3840ppm、3850ppm、3860ppm、3870ppm、3880ppm、3890ppm、3900ppm、3910ppm、3920ppm、3930ppm、3940ppm、3950ppm、3960ppm、3970ppm、3980ppm、3990ppm、4000ppm、4010ppm、4020ppm、4030ppm、4040ppm、4050ppm、4060ppm、4070ppm、4080ppm、4090ppm、4100ppm、4110ppm、4120ppm、4130ppm、4140ppm、4150ppm、4160ppm、4170ppm、4180ppm、4190ppm、4200ppm、4210ppm、4220ppm、4230ppm、4240ppm、4250ppm、4260ppm、4270ppm、4280ppm、4290ppm、4300ppm、4310ppm、4320ppm、4330ppm、4340ppm、4350ppm、4360ppm、4370ppm、4380ppm、4390ppm、4400ppm、4410ppm、4420ppm、4430ppm、4440ppm、4450ppm、4460ppm、4470ppm、4480ppm、4490ppm、4500ppm、4510ppm、4520ppm、4530ppm、4540ppm、4550ppm、4560ppm、4570ppm、4580ppm、4590ppm、4600ppm、4610ppm、4620ppm、4630ppm、4640ppm、4650ppm、4660ppm、4670ppm、4680ppm、4690ppm、4700ppm、4710ppm、4720ppm、4730ppm、4740ppm、4750ppm、4760ppm、4770ppm、4780ppm、4790ppm、4800ppm、4810ppm、4820ppm、4830ppm、4840ppm、4850ppm、4860ppm、4870ppm、4880ppm、4890ppm、4900ppm、4910ppm、4920ppm、4930ppm、4940ppm、4950ppm、4960ppm、4970ppm、4980ppm、4990ppm、および5000ppmが挙げられる。
【0047】
乾燥ペレットと未乾燥ペレットの重量比は、0~100%で変えてもよい。乾燥ペレット対未乾燥ペレットの重量%比の例としては、限定されるものではないが、0:100、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5、および100:0が挙げられる。
【0048】
一実施形態において、乾燥ペレットと未乾燥ペレットの重量%比(上に記載)を変えることと組み合わせて、未乾燥PETペレットの水分レベル(上に記載)を変えて、続いて形成する2成分繊維の最終的なバルク性測定値(捲縮%)を制御することができる。
【0049】
2成分繊維の別の実施形態において、第1の成分はPTTを含んでもよく、第2の成分はPETを含んでもよく、ここで、第1の成分は、約0.9dL/g~約1.25dL/gの範囲のPTTペレット固有粘度を有してもよく、PTTペレットは、約245℃~265℃で押し出してもよく、第2の成分は、約0.50dL/g~約0.80dL/gのPETペレット固有粘度を有してもよく、PETペレットは未乾燥(水分レベル約2500ppm)であってもよく、約250℃~280℃の温度で押し出してもよい。
【0050】
一実施形態において、未乾燥PETペレットの水分レベルは、300ppm~約5000ppmの範囲とすることができる。
【0051】
未乾燥PETペレットに使用する押出温度としては、限定されるものではないが、250℃、255℃、260℃、265℃、270℃、および280℃を含みうる。
【0052】
一実施形態において、未乾燥PETペレットの押出温度(上に記載)を変えることと組み合わせて、未乾燥PETペレットの水分レベル(上に記載)を変えて、続いて形成する2成分繊維の最終的なバルク性測定値(捲縮%)を制御することができる。
【0053】
本明細書に記載の方法の一実施形態において、PET押出機には、乾燥PETペレット供給物と未乾燥PETペレット供給物とを本明細書に記載のような所望の比で供給してもよく、異なる点は、未乾燥PETペレットと乾燥PETペレットが予め混合されるのではなく押出機に個別に添加されることである。
【0054】
本明細書に記載の方法の一実施形態において、PETペレット供給ホッパーの乾燥条件は、加水分解に必要な水分を与えるように調整することができる。例えば、PETペレットは、2成分製造中に、典型的には水分50ppmに乾燥させる。PETペレットを「過少乾燥(under-drying)」(例えば、水分300ppmまで)させることにより、維持されるペレット水分が押出機での加水分解を促進して、所望のより低いI.V.を達成しうる。この方法で、紡糸プロセスに対し所望のPET IVを「ダイヤル調節(dialed in)」しうる。
【0055】
本明細書に記載の方法の一実施形態において、PET押出機は、減圧システムを備えてPET I.V.を制御してもよい。この方法で、ほとんどまたは全く乾燥させていない高IV PET湿潤ペレットを、供給する減圧の量によって「調節(trimmed)」して、所望のI.V.を達成することができる。
【0056】
本明細書に記載の方法の一実施形態において、PETペレットは、本明細書に記載の方式で乾燥(約50ppm)させてもよく、加熱した押出機に少量の水を注入して所望のレベルの加水分解およびその後のI.V.値に影響を与えることができる。
【0057】
本明細書に記載のライン上の加水分解法は、I.V.を制御するのに効率的な方法である。本明細書に記載の技術をライン外で使用することが望ましいことがある。例えば、本明細書に記載の加水分解法は、繊維紡糸と関連しない押出機においてライン外で実行することができる。押出機に存在する加水分解したPETは、所望のI.V.を有してもよく、次いで再度ペレットにしてもよい。所望のI.V.を有する、再度ペレットにしたペレットは、I.V.をライン上で制御する必要なく、次いで通常の方式で乾燥させることができる。
【0058】
本明細書に開示される方法によって製造された2成分繊維の伸縮性測定(捲縮%)値は、約10%~約85%の範囲で増加しうる。増加する伸縮性測定値の例としては、限定されるものではないが、10%、12%、17%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、および85%が挙げられる。
【0059】
2成分繊維の別の実施形態において、第1の成分はPTTを含んでもよく、第2の成分はPETを含んでもよく、ここで、第1の成分は、約0.9dL/g~約1.25dL/gの範囲のPTTペレット固有粘度を有してもよく、PTTペレットは、260℃で押し出してもよく、第2の成分は、約0.50dL/gのPETペレット固有粘度を有してもよく、PETペレットは、乾燥ペレット(水分約50ppm)と未乾燥ペレット(水分約2500ppm)のブレントを含んでもよい。乾燥ペレットと未乾燥ペレットの重量比は、0~20%で変えてもよい。
【0060】
第1および第2の成分は、独立して、PETまたはco-PET、およびPTTまたはPTTとPETもしくはcoPETとのブレンドとしてもよく、2成分繊維中に約80:20~約20:80の範囲の重量比で存在してもよい。例えば、第1の成分と第2の成分の重量比は、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45、50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25:75、20:80、またはこの範囲内の任意の比としてもよい。
【0061】
一実施形態において、本明細書に開示される方法によって製造された2成分繊維の伸縮性測定(捲縮%)値は、増加する必要はなくてもよいが:未乾燥成分の水分レベル;成分の乾燥ペレットと未乾燥ペレットの比、および/または特定の成分の押出温度を変えることによって制御してもよい。伸縮性測定値を増加させること、およびそれを制御することは、特定の2成分繊維を製造するのに使用するポリマーの種類による。
【0062】
第1および第2の成分の1つまたは両方のポリマーに種々の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、限定されるものではないが、潤滑剤、核形成剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、防汚剤、防しみ剤、抗菌剤、および難燃剤が挙げられる。
【0063】
2成分繊維は、ポリマーを所望の体積または重量比で紡糸口金に送ることによって製造してもよい。任意の慣例的な多成分紡糸技術を使用してもよいが、2成分繊維を製造するための例示的な紡糸装置および方法は、Hillsの米国特許第5,162,074号に記載されており、これは参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0064】
本明細書に記載の2成分繊維は、サイドバイサイド(「S/S」)または偏心シースコア(「S/C」)構成とすることができる。2成分繊維は、例えば米国特許第6,803,102号に開示されている、各形状用の特定の紡糸口金を使用することにより、様々な断面形状、例えば、丸形、デルタ形、三葉形、スカラップ、または他の形状で製造することができ、当該特許は参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0065】
本明細書に記載の方法によって製造される2成分繊維を含む物品も本明細書において開示される。物品としては、限定されるものではないが、衣料、布帛、完全延伸糸(FDY)、部分配向糸(POY)、ステープルファイバー、不織繊維、不織布帛、およびカーペットが挙げられる。
【0066】
一実施形態において、カーペットの表面繊維が本明細書において開示される方法により製造された2成分繊維を含む、カーペットが本明細書において開示される。
【0067】
カーペットで使用するには、本明細書において開示される2成分繊維は、約300~約1400グラム/デニールの範囲のデニールを有しうる。1フィラメント当たりの有用なデニールは、約2~約20の範囲としうる。
【0068】
本明細書において開示される2成分繊維は、カーペットの製造で使用される、合成および天然の全ての他の種類の繊維と共に使用してもよい。カーペットは、機械式または手動式のタフティング、製織、および手作業の糸結びによって製造することができる。例としては、1)タフテッドカーペットが、家庭または商業用途向けに、数メートル幅の長い連続した長さで製造された、広幅カーペット(床一面カーペットとしても知られる)、2)設置を容易にするために様々な大きさの正方形で作製されたタイルカーペット、3)家庭で使用するためのラグ、または4)乗り物用、および建物に入る前に足の汚れを取るように設計された建物入り口用のマットが挙げられる。
【0069】
本明細書に記載のカーペットの製造において、繊維からカーペットを製造する、当業者に公知の任意の方法を使用してもよい。典型的に、本明細書において開示される2成分繊維は、他の合成および天然繊維が使用される、同じカーペット製造プロセスで使用することができる。2成分繊維は、カーペット製作において単独で(すなわち、「単」糸として)使用してもよく、または同様の2成分繊維または他の繊維種(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル)と一緒に撚り合わせてデニールを増加させてもよい。場合により、単糸および撚り合わせ繊維は、撚り合わせの前にエアジェットを用いて交絡させてもよく、また単糸およびタフテッド糸の物理特性を熱的にセットするように特に設計された機械によるヒートセットにかけてもよい。
【0070】
この目的に適合したヒートセット機の一例は、Superba(登録商標)(フランス、ミュルーズ)によって製造されている。2成分繊維が場合によりエア交絡、撚り合わせ、またはヒートセットされていても、次に、カーペット産業の典型である標準的な不織布または織物のバッキングシートに繊維をタフティングしてもよい。タフテッドカーペットの表面繊維ループは、カットループカーペットをもたらすように切断してもよい。タフティング後、多くの場合、接着剤をカーペットの裏面(すなわち、表面繊維と反対側)に塗布して、タフトを定位置に保持する。追加のバッキング層もカーペットの裏面に追加してもよい。接着剤層は、特定のカーペットの最終用途に応じて、充填剤または難燃剤を含有してもよい。カーペットは次いで、カーペット製作産業に一般的な標準プロセスによる染色にかけてもよく;あるいは、繊維押出中に2成分繊維および/または同伴繊維に顔料を添加して、完成品の布帛に色を与えてもよい。加えて、表面糸は、耐火性、帯電防止性、またはしみおよび汚れ抵抗性を与えるように設計された材料で処理してもよい。完成品のカーペットは多くの場合乾燥させて、染色プロセスから残っている水を除去する。
【0071】
上記の製造プロセスは、広幅タフテッドカーペットに典型的である。当産業で公知のこのプロセスの変形を、ラグ、カーペットタイル、および乗り物用マットの作製で使用してもよい。
【0072】
2成分繊維を含む表面繊維は、円形または非円形の断面、例えば三葉形を有してもよい。
【実施例
【0073】
本開示は、以下の実施例においてさらに定義される。実施例は、ある特定の実施形態を示すが、単に例示する目的で与えられるものであることを理解すべきである。上記考察および実施例から、当業者であれば、本開示の本質的な特性を確かめることができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適合するように様々な変更および改変を行うことができる。
【0074】
本明細書で使用する場合、「Comp.Ex.」は比較例を意味し;「Ex.」は実施例を意味し;「No.」は番号を意味し;「%」はパーセントまたは百分率を意味し;「wt%」は重量パーセントを意味し;「IV」は固有粘度を意味し;「dL/g」はデシリットル毎グラムであり;「g」はグラムであり;「mg」はミリグラムであり;「℃」は摂氏度を意味し;「°F」は華氏度を意味し;「temp」は温度を意味し;「min」は分であり;「h」は時間であり;「sec」は秒であり;「lb」はポンドであり;「kg」はキログラムであり;「mm」はミリメートルであり;「m」はメートルであり;「gpl」はグラム毎リットルであり;「m/min」はメートル毎分であり;「mol」はモルであり;「kg」はキログラムであり;「ppm」は百万分率であり;「wt」は重量であり;「dpf」は1フィラメント当たりのデニールであり;「gpd」または「g/d」は1デニール当たりのグラムであり;「dtex」はデシテックスを意味し;「dN/tex」は1テックス当たりのデシニュートンを意味し;「mL」はミリリットルを意味し;「IV」は固有粘度を意味する。
【0075】
別途記載がない限り、全ての材料は受けとったまま使用した。
【0076】
試験方法
加熱後の捲縮収縮(CCa%)の測定-捲縮収縮法:
加熱後の捲縮収縮(CCa%、伸縮性値としても知られる)を、本明細書に記載の方法に従って測定した。綛枠を用い、約0.1gpd(0.09dN/tex)の張力で、各実施例および比較例の繊維を約5000+/-5の総デニール(5550dtex)の綛に独立して形成した。次に、ヒートセットに使用するオーブンの内部に入るように綛を2つ折りにして、綛の長さを半分にした。折りたたんだ綛をその中央部でフックから吊るし、70+/-1°F(21+/-1℃)および相対湿度65+/-2%で最低16時間コンディショニングした。次に、折りたたんだ綛をラックで実質的に垂直に、その中央部でフックから吊るし、綛の底部で1.5mg/den(1.35mg/dtex)の重りを、折りたたんだ綛の2つのループに通して吊るした。次に、荷重をかけた綛をオーブン中250°F(121℃)で5分間加熱し、その後、ラックおよび綛を取り出して5分間冷却させ、次いで1.5mg/デニールの重りを試験の残りの期間綛に残したまま、70°F+/-1°F(21+/-1℃)および相対湿度65%+/-2%で最低2時間コンディショニングさせた。綛の長さを1mm以内まで測定し、「Ca」として記録した。次に、1000gの重りを綛の底部から吊るし、平衡に到達させ、綛の長さを1mm以内まで測定し、「La」として記録した。加熱後の捲縮収縮「CCa」値(%)は、式:
CCa%=100×(La-Ca)/La
に従って計算した。
【0077】
固有粘度の測定
固有粘度(IV)は、Viscoteck Y501C Forced Flow Viscometer(Malvern Corporation、米国テキサス州ヒューストン)を使用して測定した。溶媒(フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40重量パーセント))30mLおよび撹拌子を含有する40mLガラスバイアルに、サンプル0.15gを量り入れた。次に、100℃に予熱したヒートブロックにサンプルを入れ、30分間加熱および撹拌し、ブロックから取り出し、30~45分間冷却し、その後これを粘度計のオートサンプラーのラックに入れた。次に、ASTM法D5225-92(示差粘度計を使用してポリマーの溶液粘度を測定するための標準試験法)によってサンプルを分析した。
【0078】
ポリマー製造
2つの等級のPTTホモポリマーペレットを、米国デラウェア州ウィルミントンのE.I.du Pont de Nemours and Companyから入手した。1つの等級はIVが1.02dL/gであり、第2の等級はIVが0.92dL/gであった。PETホモポリマーペレットは、中華人民共和国上海のSinopec Shanghai Petrochemical Company,Ltd.から入手し、IVは0.50dl/gであった。IVが0.80dl/gのPETコポリマー(イソフタル酸を1.9モル%含有)ペレットを、米国ニュージャージー州リビングストンのNanYa Plastics Corporationから入手した。
【0079】
溶融紡糸のための準備として、PETおよびPTTペレットを真空オーブン中窒素下で、水銀柱25インチの真空度で、温度120℃で15時間乾燥させた。これらの条件下で、PETとPTTの両方のペレットの水分は約50ppmに減少した。乾燥ペレットを、紡糸機の窒素パージした供給ホッパーに直接移した。乾燥PETペレットと未乾燥PETペレットの混合物を使用する実施例において、未乾燥ペレットは袋から直接取り、その残留水分含量は約2500ppmであった。
【0080】
繊維製造
2成分繊維の第1および第2の成分は、例えば、米国特許第6,641,916 B1号、同第6,803,102号、および同第7,615,173 B2号に開示されている、サイドバイサイドおよび偏心シース/コア2成分繊維の紡糸に一般に適用可能なプロセスおよび装置を使用して溶融紡糸し、当該特許は参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0081】
実施例の2成分繊維の紡糸において、0.5~40ポンド/時間(0.23~18.1kg/時間)の能力を有する1対のWerner&Pfleiderer共回転28mm2軸スクリュー押出機でポリマーを溶融した。1台の押出機(本明細書において東の押出機と呼ぶ)を使用して、1)約50ppmまで乾燥させたPETペレットまたは2)ペレットの一部を残留水分レベル約50ppmまで乾燥させ、残りのペレットは未乾燥で残留水分レベルが約2500ppmであった、PETペレットの混合物を溶融した。第2の押出機(本明細書において西の押出機と呼ぶ)を使用して、残留水分レベル約50ppmまで乾燥させたPTTペレットを溶融した。西の押出機、紡糸ブロック、および東の押出機の温度は、実施例において述べる。各押出機は、埋込み型紡糸口金を含有する紡糸ブロックに供給した。使用した紡糸口金は、円形に配置された34対の毛管(各対の毛管間の内角30度、毛管直径0.64mm、および毛管長4.24mm)を有する、後合体サイドバイサイド2成分紡糸口金であった。
【0082】
公称20℃および面速度0.5mm/秒のクロスフロークエンチエアにより、紡糸口金を出る2成分フィラメントを冷却させた。次に、延伸比に応じて約800~1200メートル/分で作動する複式供給ロールにフィラメントを送った。紡糸口金と供給ロールの間で、仕上剤アプリケータを使用してフィラメント束に潤滑剤を塗布した。供給ロールは、延伸に影響を与えるように典型的に70℃に加熱した。次に、所望の延伸比に応じて約3000~3600m/分の速度で作動するアニールロールへとフィラメント束を加速させ、アニールロール温度は典型的には170℃であった。次に、アニールされた2成分繊維を、室温で作動する2組の複式レットダウン(letdown)ロールに送り、その後、Barmag SW6 600巻取機で巻いた。繊維は、雪だるま形(長円形)の断面形状を有した。全ての実施例における2成分繊維は、75デニール、34フィラメントであった。
【0083】
比較例Aおよび実施例1~3 ペレット水分含量の違い
比較例Aでは、PET/PTT2成分繊維を製造するための典型的な製造方法であって、0.50 I.V. PETペレットを残留水分約50ppmまで乾燥させ、次いで東の押出機により270℃で押し出し、1.02 I.V. PTTペレットを残留水分約50ppmまで乾燥させ、西の押出機により260℃で押し出す、製造方法を例示する。2成分繊維中のPET対PTTの比は50/50である。測定される伸縮性値48%は、市販の2成分繊維の典型的な範囲にある。
【0084】
実施例1~3では、0.80 I.V. PETを使用して、2成分繊維で生成される繊維伸縮性の量を制御するための、ライン上の加水分解の使用を例示する。実施例1~3において、1.02 IV PTTを約50ppmまで乾燥させ、示された温度で押し出した。これらの実施例において唯一変わるのは、乾燥PETと混合する未乾燥PET(残留水分約2500ppm)の量であった。実施例1で明らかなように、0.80 IVをPTTと同じレベル(例えば、水分50ppm)まで乾燥させると、結果として伸縮性がほぼない繊維となる。PETとPTTのペレットI.V.の比較的小さい差では、繊維の収縮差または伸縮率が促進されない。実施例2において、未乾燥PETペレット対乾燥PETペレットの比は、10/90重量パーセントであった。これらのプロセス条件下で、未乾燥ポリマー中の残留水分は、加熱した押出機での0.80 I.V. PETの加水分解を促進する。加水分解の効果は、パック圧が950psiから370psiに減少したことからわかる。このパック圧の減少は、ポリマー溶融粘度の減少、ポリマー分子量の減少、収縮差の増加、および繊維伸縮性の増加と関連している。実施例は、未乾燥PET対乾燥PETの比を20/80重量パーセントに増加させることの効果を示しており、追加の残留水分が、パック圧および溶融粘度の減少、ならびに収縮差および伸縮率の増加をさらに促進する。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例4~7 押出温度の違い
実施例4~7では、PET押出機で加水分解が生じる温度を変えることにより、2成分繊維で生成される繊維伸縮性の量を制御するための、ライン上の加水分解の使用を例示する。実施例4~7において、0.92 IV PTTは約50ppmまで乾燥させ、0.80 IV PETは100%未乾燥(すなわち、残留水分約2500ppm)であった。繊維中のPETとPTTのポリマー比は、70/30重量パーセントであった。未乾燥ペレットの濃度によって加水分解に影響を与えるのではなく、PET押出機温度によって加水分解の程度を制御した。加水分解は、ポリエステルと残留水分との化学反応であり、反応の程度は、押出温度が高くなると増加する。実施例4において、PET押出機は250℃に設定した。この比較的低い温度において、加水分解はほとんど起こらず、パック圧は高く、分子量は高いままであり、繊維の収縮差はほとんど生じず、繊維収縮性レベルは低い(10.8%)。実施例5において、PET押出機温度は260℃へと10℃増加させた。このより高い押出温度において、加水分解は増加し、パック圧は減少し、分子量は減り、繊維収縮差は増加し、繊維伸縮性は22%に増加した。実施例4と5を比較すると、PETを10℃増加させることによって、繊維収縮性は2倍超えになることが示されている。実施例6および7は、PET押出機を270℃および280℃に増加させると、伸縮性測定値がそれぞれ27.2%および50.5%に増加することを示している。これらの実施例は、加水分解の程度および繊維特性における押出温度の重要な役割を示している。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例8~10 伸縮性の形成
実施例8~10では、従来の手段によって得られるよりも高い伸縮性値を有する2成分繊維を作製するための、ライン上の加水分解の使用を例示する。低IV PETはペレット化することが困難であるため、PET/PTT2成分繊維の製造で好ましい0.50 I.V. PETは、典型的に、商業的に作製しうる最も低いIVのPETである。0.50 IV PETを用いて典型的に得ることができるレベルよりも高いレベルに伸縮性を増加させることが望まれているため、加水分解によってPET IVを低くすることは1つの選択肢である。実施例8は、完全に乾燥させた(残留水分約50ppm)0.50 I.V. PETおよび1.02 IV PTTを用いて製造した、50/50重量比のPET/PTT2成分繊維のプロセスおよび結果を示している。実施例9および10は、それぞれ5%および10%の未乾燥0.50 I.V. PET(残留水分約2500ppm)と乾燥PETを混合することによって製造した繊維の伸縮性の結果を示している。伸縮性値65.8%および69.3%は、市販の繊維よりもかなり高い。これらの実施例において、追加の残留水分は、パック圧および溶融粘度の減少、ならびに収縮差および伸縮率の増加をさらに促進している。
【0089】
【表3】
【国際調査報告】