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特表2023-533513胃腸障害を有する伴侶動物を支援するための組成物および関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】胃腸障害を有する伴侶動物を支援するための組成物および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20230727BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230727BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230727BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P1/04
A61P1/12 171
C12N1/20 E ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500290
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 CA2021050889
(87)【国際公開番号】W WO2022000080
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/045,283
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523003962
【氏名又は名称】キャンバイオシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CanBiocin Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】オウ,チーシン
(72)【発明者】
【氏名】バーレット,ジョン エフ
(72)【発明者】
【氏名】コレバ,ペトヤ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA30X
4B065CA43
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
(57)【要約】
組成物は、炎症性腸疾患(IBD)および/または過敏性腸症候群(IBS)に罹患した伴侶動物に支援を提供するために提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、オオカミプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株およびイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含む。また、組成物を調製するための、および対象においてIBSおよび/またはIBDを処置するための関連する方法も提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株、ここで該オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株はラクトバチルス科の種である;
オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株、ここで該オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株はエンテロコッカス科の種である;および
イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株、ここで該イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株はラクトバチルス科の少なくとも1つの種を含む
を含む、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのプレバイオティクスが、マルトデキストリン、フミン酸、およびフルボ酸のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株がレビラクトバチルス種であり、オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株がエンテロコッカス種である、請求項1-3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株がレビラクトバチルス・ブレビスであり、オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株がエンテロコッカス・フェシウムである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株がレビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株であり;およびオオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株がエンテロコッカス・フェシウム株WF-3 IDAC受託番号181218-03またはその変異株である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株が、ラクチカゼイバチルス種およびリモシラクトバチルス種を含む、請求項1-6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの株が、ラクチカゼイバチルス・カゼイおよびリモシラクトバチルス・ファーメンタムを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株が、以下:
ラクチカゼイバチルス・カゼイ株K9-1 IDAC受託番号210415-01またはその変異株;およびリモシラクトバチルス・ファーメンタム株K9-2 IDAC受託番号210415-02またはその変異株
を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が、以下:
レビラクトバチルス・ブレビス株WF-1B IDAC受託番号051120-02;
エンテロコッカス・フェシウム株WF-3 IDAC受託番号181218-03;
ラクチカゼイバチルス・カゼイ株K9-1 IDAC受託番号210415-01;
リモシラクトバチルス・ファーメンタム株K9-2 IDAC受託番号210415-02;
マルトデキストリン、フミン酸、およびフルボ酸の少なくとも1つ
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
対象において炎症性腸疾患(IBD)および/または過敏性腸症候群(IBS)を処置するための、請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
対象が飼い犬である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象においてIBDおよび/またはIBSを処置するための方法。
【請求項14】
対象が飼い犬である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組成物が経口投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物と、IBDおよび/またはIBSを処置するための組成物を投与するための説明書とを含む、キット。
【請求項17】
IBDおよび/またはIBSを処置するための組成物を作製する方法であって、以下:
オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株を提供すること、ここでオオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株はラクトバチルス科の種である、提供すること;
オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株を提供すること、ここでオオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株はエンテロコッカス科の種である、提供すること;
イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株を提供すること、ここでイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株はラクトバチルス科の少なくとも1つの種を含む、提供すること;および
オオカミプロバイオティクス細菌の第1および第2の単離された株と、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの株とを組み合わせること
を含む、方法。
【請求項18】
少なくとも1つのプレバイオティクスを提供すること、および該少なくとも1つのプレバイオティクスをオオカミプロバイオティクス細菌の第1および第2の単離された株ならびにイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株と組み合わせることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02。
【請求項20】
レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株および少なくとも1つの追加の成分を含む組成物。
【請求項21】
対象において腸内細菌叢症を処置または予防するための薬剤の調製におけるレビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株の使用。
【請求項22】
レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株を対象に投与することを含む、対象において腸内細菌叢症を処置または予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:
本開示は、2020年6月29日に出願された米国仮特許出願第63/045,283号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野:
本開示は、胃腸障害を処置するための組成物に関する。より具体的には、本開示は、伴侶動物における炎症性腸疾患(IBD)および過敏性腸症候群(IBS)に罹患した伴侶動物を支援するための組成物および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
炎症性腸疾患(IBD)または過敏性腸症候群(IBS)を有する動物は、下痢、腹痛、胃腸通過時間の加速、および食餌嗜好の変化を含むがこれらに限定されない症状を一般に呈する。一般的な関与する特徴は、遺伝的素因、腸バリア機能の障害、および変化した腸内微生物叢を含む。可能性のある治療法は、抗生物質、プロバイオティクス、プレバイオティクス、および糞便移植の適用を含む(Major & Spiller, 2014)。
【0004】
ヒトのIBDおよびIBSを処置するために様々な治療法が開発されてきたが、かかる治療法は一般に動物では有効ではない。飼い犬などの伴侶動物のIBSおよびIBDの処置に最適化された市販の治療薬はほとんどない。
【発明の概要】
【0005】
概要:
一態様において、以下を含む組成物が提供される:オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株、ここで該オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された菌株がラクトバチルス科の種である;オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株、ここで該オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株は、エンテロコッカス科の種である、およびイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株、ここで該イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株は、ラクトバチルス科の少なくとも1つの種を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのプレバイオティクスは、マルトデキストリン、フミン酸、およびフルボ酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株はレビラクトバチルス種であり、オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株はエンテロコッカス種である。
【0009】
いくつかの実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株はレビラクトバチルス・ブレビス(Levilactobacillus brevis)であり、オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株はエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)である。
【0010】
いくつかの実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株は、レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株である。オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株は、エンテロコッカス・フェシウム株WF-3 IDAC受託番号181218-03またはその変異株である。
【0011】
いくつかの実施形態において、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株は、ラクチカゼイバチルス(Lacticaseibacillus)種およびリモシラクトバチルス(Limosilactobacillus)種を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの株は、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei)およびリモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株は、以下を含む:リモシラクトバチルス・ファーメンタム株K9-2 IDAC受託番号210415-02またはその変異株。
【0014】
いくつかの実施形態において、組成物は以下を含む:エンテロコッカス・フェシウム株WF-3 IDAC受託番号181218-03;ラクチカゼイバチルス・カゼイ株K9-1 IDAC受託番号210415-01;リモシラクトバチルス・ファーメンタム株K9-2 IDAC受託番号210415-02;マルトデキストリン、フミン酸、およびフルボ酸の少なくとも1つ。
【0015】
別の態様において、対象の炎症性腸疾患(IBD)および/または過敏性腸症候群(IBS)を処置するための、請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物の使用が提供される。
【0016】
別の態様において、請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象においてIBDおよび/またはIBSを処置する方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、対象は飼い犬である。
【0018】
いくつかの実施形態において、組成物は経口投与される。
【0019】
別の態様において、容器中の請求項1-10のいずれか一項に記載の組成物と、IBDおよび/またはIBSを処置するための組成物の投与に関する説明書とを含むキットが提供される。
【0020】
別の態様において、IBDおよび/またはIBSを処置するための組成物を作製する方法であって、オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株を提供すること、ここでオオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株はラクトバチルス科である、提供すること;オオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株を提供すること、ここでオオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株はエンテロコッカス科の種である、提供すること;イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株を提供すること、ここでイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株は、ラクトバチルス科の少なくとも1つの種を含む、提供すること;およびオオカミプロバイオティクス細菌の第1および第2の単離された株と、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの株を組み合わせることを含む方法が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1つのプレバイオティクスを提供すること、および少なくとも1つのプレバイオティクスをオオカミプロバイオティクス細菌の第1および第2の単離された株ならびにイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株と組み合わせることをさらに含む。
【0022】
別の局面において、レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02が提供される。
【0023】
別の態様において、レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株および少なくとも1つの追加の成分を含む組成物が提供される。
【0024】
別の態様において、対象において腸内細菌叢症を処置または予防するための薬剤の調製におけるレビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株の使用が提供される。
【0025】
別の態様において、レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株を対象に投与することを含む、対象の腸内細菌叢症を処置または予防する方法が提供される。
【0026】
本開示の他の態様および特徴は、本開示の特定の実施形態の以下の説明を検討すると、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
ここで、添付の図面を参照して、本開示のいくつかの態様をより詳細に説明する。図面において:
【0028】
図1-1】図1Aは、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)WF-1の16S rDNA配列(配列番号1)を示す。図1Bは、リジラクトバチルス・アニマリス(Ligilactobacillus animalis)WF-2の16S rDNA配列(配列番号2)を示す。図1Cは、エンテロコッカス・フェシウムWF-3の16S rDNA配列(配列番号3)を示す。図1Dは、ラクチプランティバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)WF-4の16S rDNA配列(配列番号4)を示す。図1Eは、L.ブレビスWF-5の16S rDNA配列(配列番号5)を示す。図1Fは、ラチラクトバチルス・クルバタス(Latilactobacillus curvatus)WF-6の16S rDNA配列(配列番号6)を示す。図1Gは、L.ロイテリWF-7の16S rDNA配列(配列番号7)を示す。
図1-2】図1Aは、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)WF-1の16S rDNA配列(配列番号1)を示す。図1Bは、リジラクトバチルス・アニマリス(Ligilactobacillus animalis)WF-2の16S rDNA配列(配列番号2)を示す。図1Cは、エンテロコッカス・フェシウムWF-3の16S rDNA配列(配列番号3)を示す。図1Dは、ラクチプランティバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)WF-4の16S rDNA配列(配列番号4)を示す。図1Eは、L.ブレビスWF-5の16S rDNA配列(配列番号5)を示す。図1Fは、ラチラクトバチルス・クルバタス(Latilactobacillus curvatus)WF-6の16S rDNA配列(配列番号6)を示す。図1Gは、L.ロイテリWF-7の16S rDNA配列(配列番号7)を示す。
図1-3】図1Aは、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)WF-1の16S rDNA配列(配列番号1)を示す。図1Bは、リジラクトバチルス・アニマリス(Ligilactobacillus animalis)WF-2の16S rDNA配列(配列番号2)を示す。図1Cは、エンテロコッカス・フェシウムWF-3の16S rDNA配列(配列番号3)を示す。図1Dは、ラクチプランティバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)WF-4の16S rDNA配列(配列番号4)を示す。図1Eは、L.ブレビスWF-5の16S rDNA配列(配列番号5)を示す。図1Fは、ラチラクトバチルス・クルバタス(Latilactobacillus curvatus)WF-6の16S rDNA配列(配列番号6)を示す。図1Gは、L.ロイテリWF-7の16S rDNA配列(配列番号7)を示す。
図1-4】図1Aは、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)WF-1の16S rDNA配列(配列番号1)を示す。図1Bは、リジラクトバチルス・アニマリス(Ligilactobacillus animalis)WF-2の16S rDNA配列(配列番号2)を示す。図1Cは、エンテロコッカス・フェシウムWF-3の16S rDNA配列(配列番号3)を示す。図1Dは、ラクチプランティバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)WF-4の16S rDNA配列(配列番号4)を示す。図1Eは、L.ブレビスWF-5の16S rDNA配列(配列番号5)を示す。図1Fは、ラチラクトバチルス・クルバタス(Latilactobacillus curvatus)WF-6の16S rDNA配列(配列番号6)を示す。図1Gは、L.ロイテリWF-7の16S rDNA配列(配列番号7)を示す。
【0029】
図2図2は、L.ブレビスWF-1Bの16S rDNA配列(配列番号10)を示す。
【0030】
図3図3Aは、カゼイK9-1の16S rDNA配列(配列番号8)を示す図である。図3Bは、L.ファーメンタムK9-2の16S rDNA配列(配列番号9)を示す。
【0031】
図4図4は、いくつかの実施形態による、組成物を調製するための方法のフローチャートである。
【0032】
図5図5は、L.ブレビスWF-1Bの細菌形態を示すグラム染色結果の写真である。
【0033】
図6図6は、ブレビスWF-1Bの自己凝集結果を示すグラフである。
【0034】
図7図7は、ブレビスWF-1Bの細胞表面疎水性アッセイの結果を示すグラフである。
【0035】
図8図8は、L.ブレビスWF-1Bの低pH耐性アッセイ結果を示すグラフである。
【0036】
図9図9は、L.ブレビスWF-1Bの胆汁塩耐性アッセイの結果を示すグラフである。
【0037】
図10図10は、L.ブレビスWF-1Bの胃消化酵素(3.2mg/mLペプシン)耐性アッセイ結果を示すグラフである。
【0038】
図11図11は、L.ブレビスWF-1Bの腸消化酵素(10mg/mLパンクレアチン)耐性アッセイ結果を示すグラフである。
【0039】
図12図12は、L.ブレビスWF-1Bの細胞結合アッセイ結果を示すグラフである。
【0040】
図13図13は、対照群(プラセボを与えられたイヌ;黒色バー)および試験群(プロバイオティクスを与えられたイヌ;白色バー)(パネルA=総細菌;パネルB=ラクトバチルス属;パネルC=エンテロコッカス属;パネルD=L.カゼイ;パネルE=L.ファーメンタム;パネルF=L.ブレビス;パネルG=E.フェシウム)から-1日目(処置前)および19日目(処置中)に収集された糞便試料中の特定の細菌群/種の相対的存在量を示す一連のグラフであり;縦棒は平均±SEMを表す;アスタリスク()は、2つのデータセットが統計的に有意であることを示し(P<0.10);共通の上付き文字のない2つのデータセットは、それらが統計的に有意に異なることを示す(P<0.05)。
【0041】
図14図14は、対照群(黒色バー)および試験群(白色バー)から-1日目および19日目に収集された糞便試料中に存在する総短鎖脂肪酸(SCFA)の定量化を示すグラフである(垂直棒は平均±SEM)を表す);および
【0042】
図15図15は、対照群(パネルAおよびB)ならびに試験群(パネルCおよびD)から-1日目(白色バー)および19日目(灰色バー)に収集された糞便試料中に存在するSCFAの定量化を示す一連のグラフである(垂直バーは平均±SEMを表す)。
【0043】
詳細な説明:
一般に、本開示は、オオカミ(カニス・ループス(Canis lupus))プロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株およびイヌ(C.l.ファミリアリス(famialis))プロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含む。また、組成物を調製するための関連する方法、ならびに対象においてIBSおよび/またはIBDを処置するための方法も提供される。
【0044】
組成物はシンバイオティック組成物であってもよい。本明細書で使用される場合、「シンバイオティック」は、少なくとも1つのプロバイオティクス成分および少なくとも1つのプレバイオティック成分を含む組成物を指す。本明細書で使用される場合、「プロバイオティクス」は、宿主生物に対して少なくとも1つの有益な効果を有する微生物細胞培養物または調製物を指す。宿主生物に対する有益な効果は、例えば、宿主の消化器系、免疫系、および脳-腸-マイクロバイオーム系のうちの少なくとも1つに対する有益な効果を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「プレバイオティクス」とは、少なくとも1つの有益な微生物の成長および/または活動を支援する物質を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「単離された」または「単離物」は、細株に関して使用される場合、それらの自然環境から分離された細菌を指す。いくつかの実施形態において、単離された株または単離物は、細菌の特定の株の生物学的に純粋な培養物である。本明細書で使用される場合、「生物学的に純粋」とは、生物の他の株を実質的に含まない培養物を指す。
【0046】
組成物は、オオカミプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「オオカミプロバイオティクス細菌」は、オオカミから単離されたプロバイオティクス活性を有するバクテリアを指す。本明細書で使用される場合、「オオカミ」は、カニス・ループス・ファミリアリスを除いて、任意の既知の亜種を含むカニス・ループス種の動物を指す。オオカミは、ハイイロオオカミ(gray wolf)、ハイイロオオカミ(grey wolf)、シンリンオオカミ、またはツンドラオオカミとしても知られていてもよい。いくつかの実施形態において、オオカミは放し飼いのオオカミである。いくつかの実施形態において、オオカミは、カナダのサスカチュワン州にあるプリンス・アルバート国立公園原産の放し飼いのオオカミである。
【0047】
オオカミプロバイオティクス細菌の各単離された株は、オオカミの胃腸管に固有の胃腸細菌の単離された株であってもよい。いくつかの実施形態において、単離された株はオオカミの糞から単離される。他の実施形態において、各単離された株は、任意の他の適切な手段によってオオカミから単離されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は乳酸菌の株である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、リモシラクトバチルス、リジラクトバチルス、ラクチプランチバチルス、レビラクトバチルス、もしくはラチラクトバチルス属の種、または以前のラクトバチルス属の任意の他の種(「乳酸桿菌(lactobacilli)」という)を含むがこれらに限定されないラクトバチルス科の種である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、例えば、エンテロコッカス属の種を含むエンテロコッカス科の種である。他の実施形態において、単離された株は、オオカミの胃腸管に由来する胃腸細菌の任意の他の属である。
【0049】
いくつかの実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株は、リモシラクトバチルス・ロイテリ(以前のラクトバチルス・ロイテリ)、リジラクトバチルス・アニマリス(以前のラクトバチルス・アニマリス)、エンテロコッカス・フェシウム、ラクチプランティバチルス・プランタルム(以前のラクトバチルス・プランタルム)、レビラクトバチルス・ブレビス(以前のラクトバチルス・ブレビス)、およびラチラクトバチルス・クルバタス(以前のラクトバチルス・クルバタス)であった。当業者は、現在および以前の名前が同じ種を指し、実施形態が特定の用語に限定されないことを理解するであろう。
【0050】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、以下の表1に列挙された株から選択され、国際PCT(特許協力条約)特許出願PCT/CA2019/051140に開示され、WO2020/037414として公開され、参照により本明細書に組み込まれる。表1の各細株について、2018年12月18日のブダペスト条約に基づき、各単離された株の生物学的に純粋なストックがカナダ国際寄託機関(IDAC)(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に寄託された。
【表1】
【0051】
いくつかの実施形態において、16SリボソームDNA(rDNA)配列を使用して、細菌の属および種を同定することができる。16S rDNA配列の配列決定は、PCT/CA2019/051140に記載されている方法を使用して実行できる。表1に記載されている単離された株の部分16S rDNA配列を図1Aから1Gに示す。
【0052】
いくつかの実施形態において、単離された株の1つは、カナダ、サスカチュワン州のプリンス・アルバート国立公園原産の放し飼いのオオカミの糞から単離されたレビラクトバチルス・ブレビスWF-1Bである。L.ブレビスWF-1Bの生物学的に純粋な株は、2020年11月5日のブダペスト条約に基づき、カナダ国際寄託機関(IDAC)(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に寄託され、受託番号051120-02が割り当てられた。L.ブレビスWF-1Bの部分16S rDNA配列を図2(配列番号10)に示す。
【0053】
以下の実施例で実証されるように、L.ブレビスWF-1Bの細菌は、低pHおよび胆汁塩の存在に対して耐性を示す。細菌はまた、少なくとも1つの胃および/または腸の消化酵素の存在に対して耐性を示す。これらの結果は、L.ブレビスWF-1Bが、酸性のイヌの胃およびイヌの腸を通過しても生き残ることができることを示している。本明細書で使用される場合、「生き残る」とは、試験培養物の生細胞数(1mL当たりのコロニー形成単位(CFU)で測定される)が検出限界[1.7log10(CFU/mL)または50CFU/mL]を超えていることを意味する。
【0054】
以下の実施例はまた、L.ブレビスWF-1Bの細菌が自己凝集能力および細胞表面疎水性を有することを示しており、細菌細胞が対象の宿主腸上皮細胞に結合して胃腸管のコロニー形成を促進することができる可能性があることを示している。L.ブレビスWF-1Bの細菌は、インビトロでイヌの上皮細胞に結合することもわかっている。
【0055】
L.ブレビスWF-1Bの細菌は、少なくとも1つの病原微生物または腐敗微生物の増殖を阻害する阻害物質を産生することも示されている。以下で説明するように、WF-1Bは、大腸菌、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、およびエンテロコッカス・フェカリスを含む病原微生物または腐敗微生物のいくつかの株を阻害することがわかっている。
【0056】
L.ブレビスWF-1Bは、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、およびエリスロマイシンに対して感受性であるが、アンピシリン、カナマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、およびクロラムフェニコールに対して耐性である。抗生物質感受性は、病原性細菌を含む他の細菌への抗生物質耐性遺伝子の伝達を防ぐために望ましい場合がある。細菌の増殖が観察されない最低の抗生物質濃度は、最小発育阻止濃度(MIC)と呼ばれる。いくつかの実施形態において、L.ブレビスWF-1Bは、欧州食品安全機関(the European Food Safety Authority)(EFSA)によって設定されたMICカットオフ値以下の少なくとも1つの抗生物質のMIC値を有する。全ゲノム配列解析により、L.ブレビスWF-1Bのアンピシリン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、およびクロラムフェニコールに対する耐性は、固有耐性またはゲノム変異による獲得耐性のいずれかに分類されることが示されている。水平抗生物質耐性(AR)遺伝子伝達のリスクは低い。したがって、L.ブレビスWF-1Bを動物栄養の飼料添加物として使用することは安全であると考えられる。
【0057】
いくつかの実施形態において、L.ブレビスWF-1Bは、1つまたは複数の他の望ましい特性を示し、かかる特性は、本明細書に記載のものだけに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、組成物は、上記の株のうちの1つの突然変異体を含む。本明細書で使用する場合、「突然変異体」または「突然変異株」は、参照細株の16S rDNA配列と少なくとも95%の相同性、少なくとも96%の相同性、少なくとも97%の相同性、少なくとも98%の相同性、少なくとも99%の相同性、または少なくとも99.5%の相同性を有するが、それ以外の場合、細菌ゲノムの1つまたは複数の他のDNA配列に1つまたは複数のDNA変異を有する細株を指す。DNA変異は、遷移および転移を含む塩基置換、欠失、挿入、およびその他の任意の種類の自然または誘導されたDNA修飾を含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、組成物は、オオカミプロバイオティクス細菌の単離された株の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、オオカミプロバイオティクス細菌の第1の単離された株およびオオカミプロバイオティクス細菌の第2の単離された株を含む。いくつかの実施形態において、第1の単離された株はラクトバチルス科の種であり、第2の単離された株はエンテロコッカス科の種である。
【0060】
第1の単離された株は、例えば、リモシラクトバチルス属、リジラクトバチルス属、ラクチプランチバチルス属、レビラクトバチルス属、またはラチラクトバチルス属(または以前のラクトバチルス属の任意の他の種)の単離された株を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の単離された株は、レビラクトバチルス・ブレビスなどのレビラクトバチルス種である。いくつかの好ましい実施形態において、第1の単離された株は、レビラクトバチルス・ブレビスWF-1B IDAC受託番号051120-02またはその変異株である。
【0061】
第2の単離された株は、例えば、エンテロコッカス属の単離された株を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の単離された株はエンテロコッカス・フェシウムである。いくつかの好ましい実施形態において、第2の単離された株は、エンテロコッカス・フェシウム株WF-3 IDAC受託番号181218-03またはその変異株である。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物は、第3、第4、第5の単離された株などのオオカミプロバイオティクス細菌の追加の単離された株をさらに含んでもよい。他の実施形態において、組成物は、オオカミプロバイオティクス細菌の単離された株の他の適切な組み合わせを含んでもよい。
【0063】
組成物は、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株をさらに含んでもよい。本明細書で使用される場合、「イヌ(canine)プロバイオティクス細菌」または「イヌ(dog)プロバイオティクス細菌」は、イヌから単離されたプロバイオティクス活性を有する細菌を指す。本明細書で使用される場合、「イヌ」または「飼い犬」は、カニス・ループス・ファミリアリス亜種の動物を指す。一部の分類学当局は、飼い犬を別の種のカニス・ファミリアリス(Canis familiaris)として認識している。
【0064】
イヌプロバイオティクス細菌の各単離された株は、イヌの胃腸管に固有の胃腸細菌の単離された株であってもよい。いくつかの実施形態において、単離された株はイヌの糞から単離される。他の実施形態において、各単離された株は、任意の他の適切な手段によってイヌから単離されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株は、乳酸菌の株である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、リモシラクトバチルスまたはラクチカゼイバチルス属の種(または以前のラクトバチルス属の任意の他の種)を含むがこれらに限定されないラクトバチルス科の種である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(以前のラクトバチルス・カゼイ)またはリモシラクトバチルス・ファーメンタム(以前のラクトバチルス・ファーメンタム)から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、表2に列挙され、参照により本明細書に組み込まれるカナダ特許第2,890,965号に開示される株から選択される。表2の各細株について、2015年4月21日のブダペスト条約に基づいて、各単離された株の生物学的に純粋なストックがカナダ国際寄託機関(IDAC)(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に寄託された。表2の株の部分16S rDNA配列を図3Aおよび3Bに示す。
【表2】
【0066】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの単離された株は、表2に列挙された株のうちの1つの突然変異体である。
【0067】
組成物は、イヌプロバイオティクス細菌の単離された株の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、イヌプロバイオティクス細菌の第1の単離された株およびイヌプロバイオティクス細菌の第2の単離された株を含む。第1および第2の株は両方ともラクトバチルス科の種であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の単離された株はラクチカゼイバチルス・カゼイなどのラクチカゼイバチルス種であり、第2の単離された株はリモシラクトバチルス・ファーメンタムなどのリモシラクトバチルス種である。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、ラクチカゼイバチルス・カゼイK9-1 IDAC受託番号210415-01およびリモシラクトバチルス・ファーメンタム株K9-2 IDAC受託番号210415-02を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物は、第3、第4、第5の単離された株などのイヌプロバイオティクス細菌の追加の単離された株をさらに含んでもよい。
【0069】
以下の実施例で実証されるように、オオカミプロバイオティクス細菌およびイヌのプロバイオティクス細菌の単離された株は、飼い犬に経口投与された場合、一般的に良好に忍容される。単離された株はまた、イヌの胃腸管を通過しても生き残ることができる。いくつかの実施形態において、以下でより詳細に説明するように、各単離された株は対象に対して1つまたは複数の有益な生理学的効果を有する。
【0070】
いくつかの実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌およびイヌプロバイオティクス細菌の単離された株は、生存可能な形態であってもよい。いくつかの実施形態において、単離された株は、凍結乾燥(凍結乾燥)された形態であってもよい。他の実施形態において、単離された株は液体懸濁液の形態である。
【0071】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含むシンバイオティック組成物である。いくつかの実施形態において、プレバイオティクスは、多糖プレバイオティクスを含む。例えば、プレバイオティクスはマルトデキストリンを含んでもよい。他の実施形態において、プレバイオティクスは、フミン酸および/またはフルボ酸を含む少なくとも1つの腐植物質成分を含む。「フミン酸」および「フルボ酸」なる語は、それぞれフミン酸およびフルボ酸の異種混合物、ならびにそれらの任意の塩、エステル、または他の誘導体を含むと理解される。フミン酸は一般にアルカリ性pHで水溶性であるが、酸性条件下では溶解しにくくなるが、フルボ酸は一般にすべてのpH値で水溶性である。
【0072】
いくつかの実施形態において、組成物は、2つ以上のプレバイオティクスの組み合わせを含む。例えば、組成物は、マルトデキストリンとフミン酸および/またはフルボ酸との組み合わせを含んでもよい。他の実施形態において、組成物は、任意の他の適切なプレバイオティクスまたはプレバイオティクスの組み合わせを含んでもよい。組成物のプレバイオティック成分は、液体形態、粉末形態、またはいずれか1つの適切な形態であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのプレバイオティクスは、組成物中のオオカミプロバイオティクス細菌および/またはイヌプロバイオティクス細菌の増殖および/または活性を支援してもよい。一部の実施形態において、以下でより詳細に説明するように、少なくとも1つのプレバイオティクスが、対象に対して1つまたは複数の有益な生理学的効果を有してもよい。
【0074】
1つの特定の例として、組成物は、以下を含むシンバイオティック組成物であってもよい:エンテロコッカス・フェシウム株WF-3 IDAC受託番号181218-03;ラクチカゼイバチルス・カゼイ株K9-1 IDAC受託番号210415-01;リモシラクトバチルス・ファーメンタム株K9-2 IDAC受託番号210415-02;およびマルトデキストリン、フミン酸、およびフルボ酸の少なくとも1つ。
【0075】
いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、細胞数または光学密度によって、単離された株のそれぞれを等しい割合で含む。他の実施形態において、組成物は、単離された株を他の適切な比率で含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも約1×10CFU/gの各単離された株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約1×10CFU/gから約1×1011CFU/gの間を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも約1mg/mLのプレバイオティクス、または約1mg/mLから約20mg/mLの間、または約5mg/mLから約15mg/mLのプレバイオティクスを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約10mg/mLのマルトデキストリンまたは約10mg/mLのフミン酸および/またはフルボ酸を含む。他の実施形態において、組成物は、任意の他の適切な濃度のマルトデキストリン、フミン酸および/またはフルボ酸を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、組成物は、相乗的に有効な量のオオカミプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株;相乗的に有効な量のイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株;および/または相乗的に有効な量の少なくとも1つのプレバイオティクスを含む。本明細書で使用される場合、「相乗的に有効な量」は、組成物中の少なくとも1つの他の成分との相乗効果を誘発するのに十分な1つの成分の量を指す。
【0078】
組成物は、即時放出、高速放出、遅延放出、持続放出、もしくは遅延放出組成物、または任意の他の適切なタイプの組成物であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの薬学的または栄養的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。適切な賦形剤の非限定的な例は、充填剤、結合剤、担体、希釈剤、安定剤、潤滑剤、流動促進剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、保存剤、吸着剤、甘味料、および任意の他の薬学的または栄養的に許容される賦形剤を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの封入材料をさらに含んでもよい。適切な封入材料の非限定的な例は、アルギン酸塩、植物/微生物ゴム、キトサン、デンプン、k-カラギーナン、酢酸フタル酸セルロースなどの多糖類;ゼラチンまたは乳タンパク質などのタンパク質;脂肪;およびその他の適切な封入材料を含む。単離された株は、噴霧乾燥、押出、ゲル化、液滴押出、エマルジョン、凍結乾燥、または任意の他の適切な封入化方法によって、封入材料に封入化されてもよい。単離された株の細菌細胞の封入化は、細胞を保護し、組成物の貯蔵寿命を延ばすことができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1つの追加の医薬または栄養成分をさらに含んでもよい。追加の成分の非限定的な例は、少なくとも1つのビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸、アミノ酸、または任意の他の適切な医薬品または栄養成分を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、組成物は摂取可能な組成物である。本明細書で使用される場合、「摂取可能な」は、対象が経口摂取できる物質を指す。
【0083】
いくつかの実施形態において、摂取可能な組成物は栄養補助食品の形態である。栄養補助食品は、粉末、カプセル、ゲルカプセル、マイクロカプセル、ビーズ、錠剤、咀嚼錠、グミ、液体、または任意の他の適切な形態の栄養補助食品の形態であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、摂取可能な組成物は食品の形態である。いくつかの実施形態において、食品は伴侶動物、特に飼い犬に適した任意の形態である。いくつかの実施形態において、食品は固形食品である。いくつかの実施形態において、固形食品は、乾燥、湿った、半湿潤、冷凍、脱水、凍結乾燥、または任意の他の適切な形態であってもよい。適切な固形食品の例は、キブル、ビスケット、チュー、湿ったドッグフード、生肉を含む生のドッグフード、凍結乾燥ヨーグルトなどのドッグフードを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、固形食品は、例えば、凍結乾燥されたイヌのおやつを含むイヌのおやつの形態であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、固形食品は、その中に組成物とともに配合される。他の実施形態において、組成物は、製造後に固形食品に添加することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、摂取可能な組成物は、固形食品用の表面コーティングの形態であってもよい。いくつかの実施形態において、表面コーティングは、細菌が固形食品の表面に付着することを可能にする担体を含む。担体は、例えば、食用油または任意の他の適切な担体であってもよい。一例として、オイルベースの表面コーティングは、キブルしたドッグフードの製造後および冷却後に適用できる。
【0087】
他の実施形態において、摂取可能な組成物は、固形食品の表面にふりかけるのに適した粉末形態で提供されてもよい。他の実施形態において、摂取可能な組成物は、固形食品の表面に噴霧、注ぎ、または滴下するために液体形態で提供されてもよい。
【0088】
他の実施形態において、食品は液体食品である。液体食品の非限定的な例は、飲料、ブロス、油性懸濁液、グレービー、乳ベースの製品、液体または半固体のヨーグルトなどを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、液体食品は、その中に組成物とともに配合される。他の実施形態において、組成物は製造後に液状食品に添加することができる。いくつかの実施形態において、摂取可能な組成物は粉末形態で提供されてもよく、粉末は、水、牛乳、または任意の他の適切な液体に溶解されて、液体食品を形成してもよい。他の実施形態において、摂取可能な組成物は、液体の形態で提供されてもよく、水、牛乳、または任意の他の適切な液体と混合されて、液体食品を形成してもよい。あるいは、液体食品は、対象の口に直接噴射する、注ぐ、または落下させてもよい。
【0090】
他の実施形態において、摂取可能な組成物は、伴侶動物、特に飼い犬による摂取に適した任意の他の形態であってもよい。 他の実施形態において、組成物は、非摂取形態、例えば座薬、または任意の他の適切な形態であってもよい。
【0091】
本明細書では、上記の組成物を用いて対象の胃腸障害を処置する方法が提供される。また、本明細書では、対象の胃腸障害を処置するための組成物の使用も提供される。本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。その効果は、健康状態またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的である可能性があり、および/または健康状態の少なくとも1つの症状および/または健康状態に起因する悪影響を完全にまたは部分的に改善するという点で治療的である可能性がある。より明確にするために、この文脈における「処置する」または「処置」なる語は、対象に何らかの有益な生理学的効果を提供することを含むことを意図しており、それらの意味は、特定の障害または健康状態を予防または治癒することに限定されないことが理解されるであろう。
【0092】
いくつかの実施形態において、対象は、飼い犬を含むがこれに限定されない伴侶動物である。いくつかの実施形態において、イヌは成犬である。他の実施形態において、イヌは、他の発育段階にある。
【0093】
いくつかの実施形態において、組成物は、対象において炎症性腸疾患(IBD)および/または過敏性腸症候群(IBS)を処置するために使用されてもよい。本明細書で使用される場合、「IBD」は、例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む胃腸管の炎症状態を指す。本明細書で使用される場合、「IBS」は、対象が再発性または慢性の胃腸症状を経験する機能性腸障害を指す。一般的な症状には、下痢、腹痛、消化管通過時間の短縮、食事の好みの変化などがあるが、これらに限定されない.いくつかの実施形態において、組成物は、IBDおよび/またはIBSの1つ以上の症状を処置するために使用されてもよい。他の実施形態において、組成物は、例えば、他の機能性腸障害を含む他の胃腸障害を処置するために使用されてもよい。
【0094】
理論に制限されることなく、オオカミプロバイオティクス細菌およびイヌプロバイオティクス細菌の単離された株の組み合わせは、プレバイオティック成分とともに、相乗的に作用して少なくとも1つの有益な生理学的効果を誘導し、対象においてIBDおよび/またはIBSに関連する不快感を改善する。
【0095】
IBDおよびIBSなどの胃腸障害は、局所腸炎症および腸バリアの完全性の喪失に関連する。いくつかの実施形態において、組成物の有益な生理学的効果は、腸タイトジャンクションタンパク質機能に対する正の効果、および腸組織のバリア障害の回復または予防を含む。いくつかの実施形態において、有益な生理学的効果は、腸組織の生存能力の維持を助けることも含む。組成物はまた、例えばTNF-αを含む腸内の炎症促進性サイトカインの発現を減少させてもよい。
【0096】
さらに、IBDおよびIBSはまた、腸内微生物叢の変化および腸内細菌による繊維の発酵によって産生される短鎖脂肪酸(SCFA)のレベルの低下と関連している。SCFAは、腸の恒常性を維持する上で重要な代謝産物である。いくつかの実施形態において、組成物の有益な生理学的効果は、腸内微生物叢の構成および/またはSCFAの産生に対する正の効果、例えば酢酸、プロピオン酸および/または酪酸のレベルの増加を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、組成物は、1つまたは複数の追加の有益な生理学的効果を提供し、実施形態は、本明細書に開示される利益のみに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態において、オオカミおよびイヌプロバイオティクス細菌の単離された株およびプレバイオティクス成分はすべて、同じ有益な生理学的効果の1つまたは複数に寄与してもよい。あるいは(またはさらに)、オオカミプロバイオティクス細菌、イヌプロバイオティクス細菌、および/またはプレバイオティクス成分は、1つまたは複数の異なる有益な生理学的効果に寄与してもよい。例えば、以下の実施例で実証されているように、オオカミおよびイヌプロバイオティクス細菌の4株のカクテルは、腸バリアの完全性および腸の炎症にプラスの効果を示した一方、マルトデキストリンなどのプレバイオティクスは、株自体よりも腸内微生物叢の組成およびSCFA産生に大きな影響を示した。したがって、組成物のプロバイオティクスおよびプレバイオティック成分は、IBDおよび/またはIBSの症状の改善において全体的な利益を達成するための補完的な効果を有してもよい。
【0099】
組成物は、対象に有効量で投与されてもよい。本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」は、症状または健康状態を予防、軽減、または排除するのに有効であってもよい組成物の量を指す。
【0100】
いくつかの好ましい実施形態において、組成物は対象に経口投与可能である。他の実施形態において、組成物は、被験体に経腸および/または直腸投与可能であってもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、少なくとも月に1回、少なくとも週に1回、または少なくとも1日に1回を含む任意の適切な間隔で対象に投与されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、有効量を1日1回の用量で投与することができる。他の実施形態において、有効量は、1日を通して適切な間隔で2回以上の部分用量で、または1日を通して微量用量として投与されてもよい。単離された株およびプレバイオティクスを1回の投与で一緒に投与することが好ましいが、本明細書の実施形態は、組成物の1つまたは複数の成分を別々に投与することを意図している。
【0102】
本明細書に記載の組成物における使用に加えて、L.ブレビスWF-1Bは、PCT/CA2019/051140に記載されている個々の菌株と同様に、対象の健康を改善または維持するためのプロバイオティクスとして単独で使用されてもよい。いくつかの実施形態において、L.ブレビスWF-1Bは、対象において腸内細菌叢症を処置または予防するために、または健康状態もしくは障害について対象を処置するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、L.ブレビスWF-1Bを使用して、対象の下痢を処置または予防することができる。他の実施形態において、L.ブレビスWF-1Bを使用して、対象に任意の他の健康上の利益を提供することができる。いくつかの実施形態において、L.ブレビスWF-1Bは、腸内細菌叢症、下痢、または任意の他の適切な健康状態の処置または予防のための医薬品の調製において使用されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、L.ブレビスWF-1Bは、細株および1つ以上の追加の成分を含む組成物の一部として投与されてもよい。追加の成分は、多株組成物について上述した成分のいずれかを含むことができる。追加の成分の非限定的な例は、1つまたは複数の薬学的または栄養的に許容される賦形剤、封入材料、食用成分および/または食品を含む。L.ブレビスWF-1B組成物は、例えば、サプリメントおよび食品を含む、上記の組成物と同じ形態のいずれであってもよい。
【0104】
IBDまたはIBSを有する対象に投与するための組成物を調製するための方法も、本明細書において提供される。この方法は、本明細書に開示される組成物の実施形態を調製するために使用されてもよい。
【0105】
図4は、いくつかの実施形態による、組成物を作成するための例示的な方法100のフローチャートを示す。ブロック102では、オオカミプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株が提供される。ブロック104では、イヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株が提供される。この文脈における「提供する」なる語は、単離された株を作製すること(単離することまたは培養することを含む)、受け取ること、購入すること、または別の方法で得ることを指してもよい。
【0106】
オオカミプロバイオティクス細菌およびイヌプロバイオティクス細菌の単離された株は、本明細書に開示される株のいずれであってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌の単離された株は、L.ブレビスWF-1BIDAC受託番号051120-02およびE.イヌプロバイオティクス細菌の単離された株は、L.カゼイ株K9-1IDAC受託番号210415-01およびL.ファーメンタム株K9-2IDAC受託番号210415-02である。
【0107】
ブロック106において、オオカミプロバイオティクス細菌の単離された株は、イヌプロバイオティクス細菌の単離された株と組み合わされる。この文脈における「組み合わせる」なる語は、単離された株を混合、ブレンド、または他の方法で一緒にすることを指す。
【0108】
いくつかの実施形態において、方法100は、少なくとも1つのプレバイオティクスを提供することをさらに含む。例えば、プレバイオティクスは、マルトデキストリン、フミン酸および/またはフルボ酸を含んでもよい。いくつかの実施形態において、方法100は、プレバイオティクスをオオカミおよびイヌプロバイオティクス細菌の単離された株と組み合わせることをさらに含む。いくつかの実施形態において、単離された株およびプレバイオティクスを同時に組み合わせる。他の実施形態において、単離された株を最初に組み合わせて混合物を形成し、混合物をプレバイオティクスと組み合わせる。
【0109】
いくつかの実施形態において、方法100は、1つまたは複数の追加の成分を提供すること、および追加の成分を単離された株およびプレバイオティクスと組み合わせることをさらに含む。追加の成分の非限定的な例は、1つまたは複数の薬学的または栄養的に許容される賦形剤、封入材料、食用成分および/または食品を含む。
【0110】
また、本明細書では、容器内の組成物と、IBDおよび/またはIBSを有する対象に組成物を投与するための説明書とを含むキットが提供される。組成物は、オオカミプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株およびイヌプロバイオティクス細菌の少なくとも1つの単離された株を含んでもよい。オオカミプロバイオティクス細菌およびイヌプロバイオティクス細菌の単離された株は、本明細書に開示される株のいずれであってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、オオカミプロバイオティクス細菌の単離された株は、L.ブレビスWF-1BIDAC受託番号051120-02およびE.イヌプロバイオティクス細菌の単離された株は、L.カゼイ株K9-1IDAC受託番号210415-01およびL.ファーメンタム株K9-2IDAC受託番号210415-02である。
【0111】
キット中の単離された株は、凍結乾燥形態、液体形態、または任意の他の適切な形態で提供することができる。単離された株は好ましくは単一の容器内で組み合わされるが、1つまたは複数の株が別々の容器内で提供され、キットが株を一緒に組み合わせるための説明書を含む実施形態も企図される。
【0112】
いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、マルトデキストリン、フミン酸、および/またはフルボ酸を含む、少なくとも1つのプレバイオティクスをさらに含む。いくつかの実施形態において、プレバイオティクスは、単離された株と同じ容器内で組み合わされる。他の実施形態において、少なくとも1つのプレバイオティクスを別個の容器で提供することができ、キットは、プレバイオティクスを組成物の残りと組み合わせる説明書を含むことができる。
【0113】
組成物の投与のための説明書は、飼い犬などの伴侶動物に組成物を投与するための説明書を含んでもよい。説明書は、組成物を投与するための推奨用量および頻度を含んでもよく、また、食物の有無にかかわらず、他の薬剤の有無にかかわらず組成物を摂取するための指示も含んでもよい。
【0114】
前述のものに限定されることなく、本組成物、使用、および方法は、以下の実施例によってさらに説明される。
【0115】
実施例1-L.ブレビスWF-1Bの分離および同定
2017年3月23日、カナダのサスカチュワン州にあるプリンス・アルバート国立公園から、放し飼いのオオカミの糞便試料が採取された。WF-1Bと標識された新規株を、PCT/CA2019/051140に記載されている方法を使用して分離および同定した。
【0116】
グラム染色を、標準的な方法を用いて行い、グラム染色された細菌を、OMAX(登録商標)LED40x-2000xデジタル双眼生物学的化合物顕微鏡上の100xレンズを用いて視覚化し、写真を、顕微鏡に接続される3.0MP USBカメラを用いて得た。単離された株WF-1Bの棒状細菌の形態を示すグラム染色の結果を、図5に示す。
【0117】
株の種を同定するために、PCT/CA2019/051140に記載されているように、16SリボソームDNA(rDNA)をコードする部分遺伝子をPCRによって増幅し、サンガー配列決定によって配列決定した。16S rDNA配列決定の結果を図2に示し、単離された株をレビラクトバチルス・ブレビスと同定した。
【0118】
株レベルで単離された株を同定するために、全ゲノム配列決定(Illumina(登録商標)Sequencing)を実施して、株に関するより詳細な情報を得た。L.ブレビスWF-1Bの全ゲノム配列決定のデータ解析結果を、以下の表3に示す。
【表3】

【0119】
単離された株L.ブレビスWF-1Bの生物学的に純粋な培養物の試料は、2020年11月5日にブダペスト条約、および割り当てられた受託番号051120-02下で、カナダ国際寄託機関(IDAC)(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に寄託された。
【0120】
実施例2-L.ブレビスWF-1Bの特徴付け
L.ブレビスWF-1Bの生物学的活性を、以下に概説するように、PCT/CA2019/051140に記載された方法を使用して特徴付けた。
【0121】
実施例2.1自己凝集機能
単離された株の自己凝集活性を評価するために、自己凝集アッセイを実施した。十分に成長した培養液30mLをボルテックスで完全に混合した。600nmでの初期光学密度(OD600、A)を測定し、記録した。残りの細胞懸濁液を静置し、周囲温度で5時間静置した。OD600nm(A)を測定するために、上部懸濁液(細胞懸濁液はボルテックスされていない)100μLを1時間間隔で採取した。自己凝集のパーセンテージを次のように表した。
【数1】
[式中、Aは0時間でのOD600を表し、Aは1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間でのOD600を表す。]
【0122】
L.ブレビスWF1Bの自己凝集率(パーセンテージ)を図6に示す。これらの結果は、単離された株が宿主の腸上皮細胞表面に付着する可能性があることを示している。
【0123】
実施例2.2細胞表面の疎水性
L.ブレビスWF1Bの細菌細胞表面の疎水性を評価するために、炭化水素への微生物接着(MATH)アッセイ(Oteroら、2004)を実施して、接着に関して株の疎水性を測定した。8,000rpmで2分間遠心分離し、続いて細胞を生理食塩水で3回洗浄することにより、十分に増殖した培養液10mLを回収した。細胞ペレットを生理食塩水で再懸濁し、各細胞懸濁液のOD600を0.5±0.1に調整した。各細胞懸濁液の実際の最終OD600を測定し、記録した。細胞懸濁液の3.6mLをガラス試験管に分注し、続いて溶媒(トルエンまたはキシレン)0.6mLを同じガラス試験管に分注し、1分間激しくボルテックスした。試験管を1時間静置して、混和しない溶媒と水相を分離させた。水層をパスツールピペットで除去し、OD600(ODtest)を測定して記録した。各株の疎水性のパーセンテージを、次の式として計算した。
【数2】
【0124】
L.ブレビスWF-1Bの疎水性パーセンテージを図7に示す。これらの結果は、単離された株が宿主腸上皮細胞表面に付着する可能性を有することを示している。
【0125】
実施例2.3-低pHおよび胆汁塩耐性アッセイ
L.ブレビスWF-1Bの酸性条件に対する耐性を評価するために、完全に増殖した培養物(10μL)の1%を、種々のpH値(pH=2.0、2.5、3.0、および7.0)を使用して、シミュレートされた胃液(SGF、ペプシンなし)の1mL溶液のセットに継代培養した。異なるpH値を有するSGF溶液は、SGFのpHをHClおよびNaOHで調整し、続いて濾過による滅菌を行うことによって調製した。各継代培養物を各SGF溶液に接種したら、混合物をボルテックスで完全に混合し、各混合物の60μLを96ウェルマイクロタイタープレートの最初の列に分注して、希釈および播種した。残りの培養物は、すぐに気密条件下で37°Cで6時間インキュベートした。60μLの各培養液を新しい96ウェルマイクロタイタープレートの最初の列に分注し、それぞれ2時間、4時間、および6時間のインキュベーション後に、希釈および播種を行った。
【0126】
胆汁塩に対する単離された株の耐性を評価するために、1%の完全に成長した培養物(10μL)を、さまざまな胆汁塩濃度(0%、3%、および5%)を含む1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH=7.2)のセットに継代培養した。異なる胆汁塩濃度のPBS溶液を、対応する量の胆汁塩を無菌PBSに溶解することによって調製した。培養物を各PBS溶液に接種したら、混合物をボルテックスで完全に混合し、各混合物の60μLを96ウェルマイクロタイタープレートの最初の列に分注して、希釈および播種した。残りの培養物を気密条件下、37°Cで24時間直ちにインキュベートした。6時間および24時間のインキュベーション後、希釈および播種のために、それぞれの培養液60μLを新しい96ウェルマイクロタイタープレートの最初の列に分注した。
【0127】
各培養物の連続10倍希釈液を調製し、適切な希釈液をMRS寒天プレートに播種し、37°Cで2日間インキュベートした。生細胞数を記録し、少なくとも3回の独立した複製の平均[log10(CFU/mL)]±標準誤差として表した。
【0128】
L.ブレビスWF-1Bの低pHおよび胆汁塩耐性アッセイの結果を、それぞれ図8および9に示す。低pH研究は、WF-1BがpH2の溶液中で2時間生き残り、pH2.5および3.0の溶液中で6時間生き残ることを示した。胆汁塩耐性アッセイは、WF-1Bが3%および5%の胆汁塩で24時間生き残ることを示した。
【0129】
実施例2.4-胃および腸の消化酵素耐性アッセイ
L.ブレビスWF-1Bの胃消化酵素に対する耐性を評価するために、1%の完全に成長した培養物(10μL)を、さまざまなpH値(pH=2.0、2.5、および3.0)のSGF溶液(3.2mg/mLのペプシンを含む)1mLのセットに継代培養した。培養物を気密条件下で37°Cで6時間インキュベートした。各培養液60μLを96ウェルマイクロタイタープレートの最初の列に分注し、それぞれ0時間、2時間、4時間、および6時間のインキュベーション後に、希釈および播種を行った。
【0130】
腸消化酵素に対する単離された株の耐性を評価するために、1%の完全に成長した培養(10μL)を、pH=6.8で10mg/mLのパンクレアチンを含む模擬腸液(SIF)溶液の1mLのセットに継代培養した。培養物を気密条件下、37°Cで24時間インキュベートした。各培養液60μLを96ウェルマイクロタイタープレートの最初の列に分注し、それぞれ0時間、6時間、24時間のインキュベーション後に、希釈および播種を行った。
【0131】
各培養物の連続10倍希釈物を調製し、適切な希釈物をMRS寒天プレートに播種し、37°Cで2日間インキュベートした。生細胞数を記録し、少なくとも3回の独立した複製の平均[log10(CFU/mL)]±標準誤差として表した。
【0132】
ブレビスWF-1Bの胃消化酵素および腸消化酵素耐性アッセイの結果を、それぞれ図10および11に示す。胃消化酵素耐性アッセイは、WF-1BがSGF(3.2mg/mLのペプシンを含む)中でpH2.0で4時間、pH2.5および3.0で6時間生存したことを示した。腸消化酵素耐性アッセイでは、WF-1BがSIF(10mg/mLのパンクレアチンを含む)で24時間生存したことが示された。
【0133】
実施例2.5-阻害物質の生産
L.ブレビスWF-1Bが一連の病原微生物および腐敗微生物に対する阻害物質を産生する能力を評価するために、単離された株を一連の指標株の存在下で増殖させた。完全に成長した培養液1μLを強化クロストリジウム寒天(RCA)プレートにスポットし、37°Cで一晩インキュベートした。10の指標株を、0.6%酵母抽出物(TSBYE)を含むトリプチケースソイブロスで37°Cで一晩培養した。各指標株(0.1%、6μL)を6mLのRCA軟寒天(0.75%寒天を含む)に接種し、斑点のあるRCAプレートの上に混合物を注いた。固化した寒天プレートを37°Cで一晩インキュベートした。指標株の目に見える増殖を伴わない阻害ゾーンのサイズを測定し、記録した。
【0134】
結果を表4に示す。表4において、「はい」は、単離された株が対応する指標株に対して阻害物質を産生することを示す。「いいえ」は、当該株が対応する指標株に対して阻害物質を産生しないことを示す。「MRSA」は、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスを指す。「VRE」は、バンコマイシン耐性エンテロコッカスを指す。
【表4】
【0135】
表4に示されるように、WF-1Bは、この研究で試験された10の指標株すべてに対して阻害物質を産生した。
【0136】
実施例2.6-抗生物質感受性アッセイおよび配列分析
ブロスの微量希釈を使用して、L.ブレビスWF-1B単離物の8つの一般的に使用される臨床抗生物質に対する感受性を決定した。ブロス微量希釈は、国際標準化機構、牛乳および乳製品-ビフィズス菌および非腸球菌性乳酸菌(LAB)に適用される抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)の決定(International Organization for Standardization, Milk and milk products - Determination of the minimal inhibitory concentration (MIC) of antibiotics applicable to bifidobacteria and non-enterrococcal lactic acid bacteria (LAB))(ISO10932:2012)による方法に従って行った。抗生物質原液は、CLSI、抗菌薬感受性試験の性能基準、第23版、CLSI基準M100、ウェイン、PA:臨床および検査基準協会;2013年(Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing, 23rd edition, CLSI Standard M100, Wayne, PA: Clinical and Laboratory Standards Institute; 2013)による方法に従って調製した。
【0137】
L.ブレビスWF-1Bの抗生物質感受性アッセイから測定された最小発育阻止濃度(MIC)および微生物学的カットオフ値を以下の表5に示す。
【表5】
【0138】
表5に示されるように、WF-1Bは、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、およびエリスロマイシンを含むいくつかの抗生物質に対して感受性があり、そのMICは欧州食品安全機関(EFSA)のカットオフ値を下回る。
【0139】
耐性の性質を調査するために、最初にMIC分布を種レベルでまとめた。第二に、全ゲノムショットガン配列(コンティグまたは足場)を、包括的な抗生物質耐性を含む最新のデータベースのリストと比較することにより、臨床的に重要な抗菌剤に対する耐性をコードする、または耐性に寄与する遺伝子の存在について、調査し、これは包括的な抗生物質耐性データベース(CARD)、抗生物質耐性遺伝子アノテーションデータベース(ARG-ANNOT)、ReFinder4.1、およびサブシステム技術を使用する迅速なアノテーション(Rapid Annotation Using Subsystem Technology)(RAST)を含む。
【0140】
L.ブレビスWF-1Bは、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、およびエリスロマイシンに対して感受性であったが、アンピシリン、カナマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、およびクロラムフェニコールに対して耐性であった。L.ブレビスWF-1Bに対するアンピシリン、カナマイシン、クリンダマイシン、およびクロラムフェニコールのMICは、L.ブレビスの種レベルでのMIC分布範囲に収まった。これは、これらの耐性が固有または自然耐性に属する可能性が高いことを示している。L.ブレビスWF-1Bに対するテトラサイクリンのMICは、L.ブレビスの種レベルでのMIC分布範囲から外れた。これは、L.ブレビスWF-1Bのテトラサイクリン耐性が獲得耐性に属することを示している。
【0141】
L.ブレビスWF-1Bについては、RGI(耐性遺伝子識別子)分析を行うことによるデータベースCARD、取得した抗菌剤耐性遺伝子を検索することによるResFinder4.1、およびblastを行うことによるARG-ANNOTと比較することにより、ヒットは見出されなかった。
【0142】
さらに、病原性因子、抗生物質耐性、および転移因子は、病原性、疾患および防御サブシステム、ならびにプロファージ、転移因子、およびプラスミドサブシステムで同定された因子について、RAST出力のサブシステム特徴カウントを検索することによって注釈付けされた。L.ブレビスWF-1Bにおいて、病原性因子または病原性島は特定されなかった。L.ブレビスWF-1Bで同定された抗生物質耐性(AR)決定因子は、翻訳伸長因子G、リボソーム保護型テトラサイクリン耐性関連タンパク質(群2)、DNAジャイレースサブユニットAおよびB、多剤排出ポンプオペロンの転写調節因子、TetR(AcrR)ファミリー、マルチ抗菌押出タンパク質(Na(+)/薬物アンチポーター)、およびMDR排出ポンプのMATEファミリーを含む。
【0143】
したがって、L.ブレビスWF-1Bは、リボソーム保護型テトラサイクリン耐性関連タンパク質(群2)、翻訳伸長因子G、および多剤耐性流出ポンプの存在により、上に挙げた抗生物質に対して耐性であり、これらはプラスミド上の存在の代わりにL.ブレビスWF-1Bの染色体上に存在していた。さらに、上記の遺伝子に隣接する上流および下流の配列は、それらを類似の生物のものと比較することによって特徴付けられ、可動性の遺伝要素は特定されなかった。さらに、L.ブレビスWF-1Bでは、転移因子および遺伝子導入剤は特定されなかった。したがって、耐性は、固有の耐性またはゲノム変異による獲得耐性のいずれかに分類される。AR遺伝子の水平伝播のリスクは低い。したがって、L.ブレビスWF-1Bを動物栄養の飼料添加物として使用することは安全であると考えられる。
【0144】
実施例2.7-細胞結合アッセイ
L.ブレビスWF-1B単離物のインビトロでの接着能力を評価するために、2つのイヌ細胞株、MDCKおよびDH82をこの研究で使用した。カニス・ファミリアリス(Canis familiais)ATCC CCL-34(MDCK(NBL-2))およびカニス・ファミリアリス(Canis familiais)ATCC CRL-10389(DH82)を、組織培養フラスコ内の完全培地を含む液体窒素タンクに保存された凍結ストックから蘇生させた。この研究で細胞株の培養に使用された基本培地は、高グルコースレベル、グルタミン、およびピルビン酸ナトリウムを含むDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(Dubecco’s Modified Eagle Media);Gibco(登録商標))であった。完全培地は、DMEMおよび10%の熱不活化(56°Cで30分間)ウシ胎児血清(FBS;Gibco(登録商標))で構成されていた。生育条件は、37°C、5%COであった。細胞分散に使用した溶液は、0.53mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む0.25%(w/v)トリプシンであった。接着アッセイの前に完全な分化を可能にするために、合流後2週間細胞系培養物を維持した。細胞計数について血球計を使用した。
【0145】
3,500gで10分間の遠心分離により完全に増殖した培養物5mLを採取し、続いて細胞をPBS(pH=7.4)で3回洗浄することにより、細菌細胞懸濁液を調製した。細胞ペレットを基本培地DMEMに再懸濁し、WF-1B単離物について約1.0のOD600nmに調整し、対照株S.エンテリカATCC13311について約0.1に調整した。これは、WF-1B単離物について約5×10CFU/mLに相当し、対照株について約1×10CFU/mLに相当する。
【0146】
MDCKおよびDH82細胞の細胞単層を12ウェル組織培養プレートで調製した。細胞をウェルあたり4×10細胞の濃度で接種して合流させ、分化させた。培地は2日ごとに交換した。細胞が合流したら、完全培地を除去した後、細胞をPBSで3回洗浄した。1mLの基本培地DMEMを各ウェルに加え、接着アッセイの前に37°C、5%COで1時間インキュベートした。
【0147】
細菌細胞懸濁液の1mLアリコートを合流単層細胞に添加し、37°Cで5%CO雰囲気とともに2時間インキュベートした。1mLの基本培地DMEMを1つのウェルに加えて、無菌対照として使用した。2時間後、単層細胞をPBSで3回洗浄した。トリプシン-EDTA溶液250μLを細胞層が分散するまで各ウェルに加えた後、完全培地1.75mLを加え、ピペッティングにより細胞を吸引した。
【0148】
各培養物の連続10倍希釈物を調製し、適切な希釈物をMRS寒天プレートに播種し、37°Cで2日間インキュベートした。生細胞数を記録し、少なくとも3回の独立した複製の平均[log10(CFU/mL)]±標準誤差として表した。細胞結合率は、細胞株への細菌細胞懸濁液の元の接種されたCFUを超えて細胞株に結合した生細胞数として計算された。
【0149】
細胞結合アッセイの結果を図12に示す。細胞結合アッセイの結果は、L.ブレビスWF-1Bが高い細胞表面結合能力を示すことを実証した。
【0150】
実施例3-オオカミおよびイヌの単離された株およびプレバイオティクスの生物学的効果
実施例3.1-イヌの給餌試験
1つはカナダで実施され、2つはアイルランド共和国で実施された3つの独立したイヌ給餌試験は、乳酸菌の4つの株、L.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1BおよびE.フェシウムWF-3は、健康なビーグル犬に1日1回28日間経口投与した場合、良好に忍容された。
【0151】
さらに、PMA-qPCR(プロピジウムモノアジド-定量的ポリメラーゼ連鎖反応)技術によるイヌ給餌試験から収集された糞便試料からの生細胞計数は、4つすべてのプロバイオティクス株(L.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1B、およびE.フェシウムWF-3)は、イヌの消化管をうまく通過して生き残る。
【0152】
健康なイヌにおけるL.カゼイ、L.ファーメンタム、L.ブレビス、およびE.フェシウムを含む特定の細菌種の存在量に対する組成物の効果をqPCRによって決定し、結果を図13に示す。図13では、縦棒は平均±SEMを表し、データ分析は、対照群(プラセボを与えられたイヌ)および試験群(K-9 Heritage Probiotic Blend(登録商標)を与えられたイヌ)の間、または-1日目(処置前)およびD19(処置19日目)の試料は、細菌、ラクトバチルス属、L.カゼイ、L.ファーメンタム、およびL.ブレビスの総数について同じ試験群から収集された。試験群からD19に収集された糞便試料に存在するエンテロコッカス属の数は、試験群から-1日目に収集されたもの(P<0.05)および対照群からD19に収集されたもの(P<0.10)よりも有意に高かった。試験群からD19に収集された糞便試料に存在するE.フェシウムの数は、対照群と試験群の両方から-1日目に収集されたもの(P<0.05)および対照群からD19に収集されたもの(P<0.05)よりも有意に高かった)。
【0153】
健康なイヌにおける、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびイソ吉草酸を含む短鎖脂肪酸(SCFA)の産生に対する組成物の効果は、も決定。結果を図14および15に示す。データ分析は、対照群および試験群からの-1日目に収集された糞便試料に存在する酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、吉草酸、およびイソ吉草酸を含むSCFAの総量が、糞便1g当たり約200μmolであることを示した。19日目に対照群および試験群から採取した糞便試料に存在するSCFAの総量は、それぞれ約1,200μmol/gの糞便および約1,000μmol/gの糞便に有意に増加した。全体として、対照群と試験群との間で、-1日目または19日目に収集された糞便試料中に存在するSCFAの総量または個々のSCFAの両方に関して、有意差は観察されなかった。しかしながら、対照群または試験群のいずれかから収集された糞便試料に存在する全SCFAまたは個々のSCFA(吉草酸を除く)の量は、-1日目から19日目にかけて劇的に増加した。
【0154】
実施例3.2-インビトロ胃腸モデル
イヌの胃および小腸を通過中のL.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1B、およびE.フェシウムWF-3の生存を、TIM-1と呼ばれるイヌの状態をシミュレートする動的インビトロ胃腸モデルにおいてシミュレートした。TIM-1システムは、オランダのTNO(オランダ応用科学研究機構(The Netherlands Organization for Applied Scientific Research))によって開発されたもので、消化管内の生理学的プロセスおよび状態をシミュレートするコンピューター制御モデルである。TIM-1システムは、消化管通過を調節するバルブによって相互接続された複数のコンパートメントで構成されている。
【0155】
乾燥イヌ食餌(キブル)と混合した凍結乾燥粉末フォーマットの4つの株をTIM-1システムに供給し、PMA-qPCR技術によって回腸流出液中の生細胞当量を決定した。
【0156】
実施例3.3-インビトロ腸組織モデル
L.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1B、およびE.フェシウムWF-3の腸上皮バリア機能およびイヌ腸組織の抗炎症反応に対する効果を、プラットフォーム中に固定された健康なイヌの結腸組織の一部を使用してインビトロ腸モデル(InTESTine(登録商標)platform, TNO, The Netherlands)において研究した。サルモネラ・エンテリカ株を炎症誘発剤として使用し、サイトカラシンDを腸のバリア機能妨害剤として使用した。
【0157】
S.エンテリカの接種は結腸組織のバリア機能を有意に破壊し、タイトジャンクション機能に特異的な影響を与えた。4つのプロバイオティクス株、L.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1B、およびE.フェシウムWF-3のカクテルがS.エンテリカの接種の30分前に接種された場合に、マンニトールの傍細胞輸送の増加(傍細胞輸送指標)は10-15%減少し、このことは、これらのプロバイオティクス菌株が腸のタイトジャンクションタンパク質の機能にプラスの効果をもたらし、腸組織のバリア障害を回復または防止することを示している。
【0158】
頂端および側底コンパートメントへの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH、細胞毒性指標)の累積漏出は、すべてのインキュベーションで低く、6時間のインキュベーション中の適切な腸組織生存率を示した。4つのプロバイオティクス株、L.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1B、およびE.フェシウムWF-3のカクテルを添加したすべてのインキュベーションで、LDH放出の減少が示された。プロバイオティクス株は、腸組織の生存率を維持する上でプラスの効果がある。このプラスの効果は、主に先端コンパートメントへのLDH分泌の3倍から4倍の減少によって引き起こされた。
【0159】
結腸組織におけるIL-4、IL-6、IL-12α、IL-12β、IFN-γ、およびTNF-αおよびGAPDHの遺伝子発現を、qPCRによって決定した。サルモネラ・エンテリカとのインキュベーションにおけるIL-6、IL-12β、IFN-γ、およびTNF-αの発現増加の傾向が観察された。興味深いことに、L.カゼイK9-1、L.ファーメンタムK9-2、L.ブレビスWF-1B、およびE.フェシウムWF-3の4つのプロバイオティクス株のカクテルをS.エンテリカの接種の30分前に接種した場合に、これらのサイトカイン遺伝子の発現増加がわずかに減少した。特に、TNF-αの発現が、有意に減少した。これらの結果は、4つのプロバイオティクス株の混合物が、サルモネラ菌によって誘発される腸内の炎症反応の減少にプラスの効果があることを示唆している。
【0160】
実施例3.4-インビトロ腸内微生物叢モデル
イヌ結腸における短鎖脂肪酸(SCFA)の産生および微生物叢組成の変化に対するプロバイオティクス株およびプレバイオティックの効果を、インビトロ腸モデル(i-screen(登録商標)platform, TNO, The Netherlands)。6匹の健康なイヌから提供された糞便材料は、i-screenの基本的な接種材料の調製に使用された。フミン酸とフルボ酸またはマルトデキストリンの混合物を添加して、または添加せずに、単一のプロバイオティクス株または複数のプロバイオティクス株のカクテルを、i-screenインキュベーションシステムの96ウェルのうちの1つのウェルに接種した。SCFAの産生をガスクロマトグラフィー(GC)によって定量化し、糞便微生物叢の組成を、24時間のインキュベーション後にV4超可変領域の16S rDNA遺伝子アンプリコン配列決定によって決定した。
【0161】
データ分析は、マルトデキストリンと、より少ない程度ではあるがフミン酸およびフルボ酸の存在が、アセテートを犠牲にしてプロピオン酸の生成を支援することを示した。マルトデキストリンも酪酸を大量に生成した。E.フェシウムWF-3を除くプロバイオティクス株は、SCFA産生の変化が少なく、レベルは対照条件に匹敵する(微生物叢のみ)。しかしながら、10CFU/mLの初期カウントでE.フェシウムWF-3単独またはL.ブレビスWF-1Bまたはラチラクトバチルス・クルバタスWF-6と組み合わせて存在すると、他の暴露条件と比較してより高い酢酸産生が支援された。
【0162】
38°Cで24時間のインキュベーション後、微生物叢における乳酸桿菌および腸球菌(enterococci)の相対存在量が変化した。具体的には、乳酸桿株は、i-screenでイヌの腸内微生物叢に高い相対量でコロニーを形成していないように見えたが、24時間のインキュベーション後、微生物叢にわずかな割合で残っていた。一方、エンテロコッカス・フェシウムは、乳酸菌と比較してより高いレベルでi-screenのイヌの腸内細菌叢に存在したままであった。プレバイオティクスのマルトデキストリンは微生物叢の組成に強く影響を与えたが、フミン酸およびフルボ酸の混合物はそれほど影響を与えなかった。マルトデキストリンは、特に10mg/mLの濃度で、プレボテラ(Prevotella)属、メガモナス(Meganomonas)属、パスコラークトバクテリウム(Phascolarctobaterium)属、スクシニビブリオ(Succinivibrio)属、および狭義クロストリジウム(Clostridium sensustricto)属の増加を支援した。これは、クロストリジウムXI、フソバクテリウム(Fusobacterium)、バクテロイデス、パラサテレラ(Parasutterella)、分類されていないラクノスピラ(Lachnospiraceae)科、およびドレア(Dorea)を犠牲にして行われた。
【0163】
実施例4-フミン酸および/またはフルボ酸を用いた以前の動物給餌試験の概要
他の研究者によって実施されたフミン酸および/またはフルボ酸を用いた動物給餌試験は、フミン酸およびフルボ酸が以下を含む多くの異なる有益な効果を提供することを実証し、以下を含む:望ましくない腸内微生物の増殖を抑制するが、望ましい腸内微生物の増殖を刺激すること;カビの成長および毒素の生成を減らすこと;免疫力を増強すること;腸の健康を改善すること;栄養素の消化率および利用率を改善すること;成長促進剤として働くこと;生産的な性能を向上させること;血中脂質およびコレステロールを減らすこと;および抗酸化力を高めること (Islam et al., 2005; Kuhnert et al., 2015; van Rensburg, 2015; Kaevska et al., 2016; Arif et al., 2019; Visscher et al., 2019; Mudronova et al., 2020)。
【0164】
特定の実施形態を示して説明してきたが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことができることを理解するであろう。前述の明細書で使用されている用語および表現は、本明細書では説明の用語として使用されており、限定するものではなく、かかる用語および表現を使用して、示され、説明されている機能またはその一部の均等物を除外する意図はない。さらに、本開示を解釈する際、すべての用語は、文脈と一致する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」なる語は、非排他的な方法で要素、構成要素、または工程を指すものとして解釈する必要があり、このことは参照された要素、構成要素、または工程が、明示的に参照されていない他の要素、構成要素、または工程と存在する、または利用される、または組み合わされてもよいことを示す。
【0165】
参考文献
以下の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13
図14
図15
【配列表】
2023533513000001.app
【国際調査報告】