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特表2023-533518非分析物由来信号の緩和のためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】非分析物由来信号の緩和のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
A61B5/1473
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500321
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 US2021040385
(87)【国際公開番号】W WO2022010812
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/111,057
(32)【優先日】2020-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/048,614
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521146056
【氏名又は名称】バイオリンク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biolinq Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドミラー, ジョシュア レイ
(72)【発明者】
【氏名】ペイサー, トーマス アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, アラン
(72)【発明者】
【氏名】サマント, プラドニャ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ババラジュ, ナレシュ
(72)【発明者】
【氏名】セドガミズ, フーマン
(72)【発明者】
【氏名】タングニー, ジャレッド ライラン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KX02
4C038KY01
4C038KY04
4C038KY06
4C038KY11
(57)【要約】
起源が非分析物に関連する、分析物選択電気化学センサに入射する、物理的及び/又は化学的処理によって与えられた誤った信号を緩和するためのデバイス(120)及び方法(200)が、本明細書に開示される。本デバイスは、分析物選択センサと、分析物不変センサとを備える。分析物選択センサは、選択認識要素(41)及び膜(42)を有する第1の電極(40a)を備え、選択認識要素(41)と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成される。分析物不変センサは、膜(43)を有する第2の電極(40b)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体装着型分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のためのデバイスであって、前記デバイスが、
第1の電極、前記第1の電極上に配置された選択認識要素であって、前記選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素、及び前記選択認識要素上に配置された膜と、
第2の電極及び前記電極上に配置された膜と、
プロセッサと、を備え、
前記第1の電極及び第2の電極が、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けられ、
前記プロセッサが、バイアス電位又は電流が前記第1の電極及び前記第2の電極の各々に印加されるときに、前記第1の電極及び前記第2の電極の各々からの電気的応答を測定するように構成され、
前記プロセッサが、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、前記第2の電極で生成された前記電気的応答の関数として、前記第1の電極で生成された前記電気的応答に数学的変換を適用するように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記分析物が、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、DNA、又はRNAのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記分析物センサが、マイクロニードル又はマイクロニードルアレイである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の電極及び前記第2の電極の各々が、金属表面、半導体表面又はポリマー表面を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記電極が、前記マイクロニードル又は前記マイクロニードルアレイの要素の遠位端に配置されている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記選択認識要素が、酵素、アプタマー、抗体、捕捉プローブ、イオノフォア、触媒、生体触媒、DNA、RNA、細胞小器官、又は細胞のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記生成物が、化学物質、生化学物質、媒介物質、抵抗変化、電気信号、電気化学信号、コンダクタンス変化、インピーダンス変化、又は吸光度変化である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記膜が、ポリマー、親水性層、生体適合性層、拡散制限層、ヒドロゲル、フィルム、及びコーティングのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記電気的応答が、電位、電流、インピーダンス、コンダクタンス、抵抗、キャパシタンス、及びインダクタンスのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記数学的変換が、差分演算、雑音除去演算、回帰、逆畳み込み、フーリエ分解、バックグラウンド減算、カルマンフィルタリング、及び最尤推定のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記減衰が、前記コモンモード信号の除去、最小化、又は持続時間の短縮のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コモンモード信号が、着用者の皮膚への前記分析物センサの適用後のウォームアップ信号、圧力誘導信号アーチファクト、温度誘導信号変動、及びユーザの生理液中を循環する内因性又は外因性化学種に起因する干渉信号のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
追加の膜が、前記選択認識要素上の前記膜及び第2の電極上の前記膜上に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
身体装着型分析物センサシステムに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のためのデバイスであって、前記デバイスが、
第1の電極、前記第1の電極上に配置された選択認識要素であって、前記選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素、及び前記選択認識要素上に配置された膜を備える分析物選択センサと、
第2の電極及び前記第2の電極上に配置された膜を備える分析物不変センサと、
プロセッサと、を備え、
前記分析物選択センサ及び前記分析物不変センサが、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けられ、
前記プロセッサが、バイアス電位又は電流が前記分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々に印加されるときに、前記分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々からの電気的応答を測定するように構成され、
前記プロセッサが、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、前記分析物不変センサで生成された前記電気的応答の関数として、前記分析物選択センサで生成された前記電気的応答に数学的変換を適用するように構成されている、デバイス。
【請求項15】
前記分析物が、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、DNA、及びRNAのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、金属、半導体、又はポリマー表面を含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記選択認識要素が、酵素、アプタマー、抗体、捕捉プローブ、イオノフォア、触媒、生体触媒、DNA、RNA、細胞小器官、又は細胞のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記生成物が、化学物質、生化学物質、媒介物質、抵抗変化、電気信号、電気化学信号、コンダクタンス変化、インピーダンス変化、又は吸光度変化である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
前記膜が、ポリマー、親水性層、生体適合性層、拡散制限層、ヒドロゲル、フィルム、及びコーティングのうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項20】
前記数学的変換が、差分演算、雑音除去演算、回帰、逆畳み込み、フーリエ分解、バックグラウンド減算、カルマンフィルタリング、及び最尤推定のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項21】
前記減衰が、前記コモンモード信号の除去、最小化、又は持続時間の短縮のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項22】
身体装着型分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のための方法であって、前記方法が、
前記分析物センサの第1の電極及び第2の電極を、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることであって、前記第1の電極が、前記第1の電極上に配置された選択認識要素であって、前記選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素、及び前記選択認識要素上に配置された膜を備え、前記第2の電極が、前記第2の電極上に配置された膜を特徴とする、位置付けることと、
前記第1の電極及び第2の電極の各々にバイアス電位又は電流を印加することと、
前記第1の電極及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答を測定することと、
コモンモード信号の減衰を引き起こすために、前記第2の電極で生成された前記電気的応答の関数として、前記第1の電極で生成された前記電気的応答に数学的変換を適用することと、を含む、方法。
【請求項23】
前記分析物が、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、DNA、及びRNAのうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記電極が、金属、半導体、又はポリマー表面を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記選択認識要素が、酵素、アプタマー、抗体、捕捉プローブ、イオノフォア、触媒、生体触媒、DNA、RNA、細胞小器官、又は細胞のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記生成物が、化学物質、生化学物質、媒介物質、抵抗変化、電気信号、電気化学信号、コンダクタンス変化、インピーダンス変化、又は吸光度変化である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記膜が、ポリマー、親水性層、生体適合性層、拡散制限層、ヒドロゲル、フィルム、及びコーティングのうちの少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記数学的変換が、差分演算、雑音除去演算、回帰、逆畳み込み、フーリエ分解、バックグラウンド減算、カルマンフィルタリング、及び最尤推定のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記減衰が、前記コモンモード信号の除去、最小化、又は持続時間の短縮のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記コモンモード信号が、着用者の皮膚への前記分析物センサの適用後のウォームアップ信号、圧力誘導信号アーチファクト、温度誘導信号変動、及びユーザの生理液中を循環する内因性又は外因性化学種に由来する干渉信号のうちの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、分析物選択センサ及びその同じ構成のための方法、並びに装着可能センサ本体筐体の内部に統合されたマイクロニードルアプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
循環血糖値の持続的評価は、真性糖尿病を管理するために、特に、定期又は持続的インスリン注入を必要とする人達の間で、この慢性疾患の管理のために依然として極めて重要である。この課題は、インスリン依存性真性糖尿病を有する人達によって広く使用されている持続血糖モニタ(continuous glucose monitor、CGM)によって対処される。CGMは、低頻度の指穿刺毛細血管採血のみに頼るのではなく、治療上のインスリン送達を誘導するための更なる粒度(granularity)を提供するために、1990年代を通じて開発され、1999年に初めて商品化された。指穿刺毛細血管採血に対する持続血糖モニタリングの臨床上の利点についてはあまり議論されていないにもかかわらず、今日、集中的にインスリン管理された患者におけるCGMの採用は、そのようなシステムの信頼性及び精度が限られていることに部分的に起因して、依然として不十分である。実際に、精度は、多くの場合、本質的に内因性(センサのウォームアップ、原位置における活性酸素種の存在、間質液の対流)のみならず外因性(圧力誘起信号減衰、温度変動)の信号摂動が原因で損なわれる。これらのシナリオでは、単一の感知要素は、多くの場合、血糖又は生理学的に関連する他の循環分析物の動的変動を忠実に追跡するその能力が損なわれ得る。しかしながら、デバイス精度を改善する目的に沿って、持続分析物モニタ(CGMなど)内の分離可能構成要素としての分析物選択感知様式及び分析物不変感知様式の両方の統合は、開発の活発な分野である。上記で述べたように、当該感知要素の統合は、それ自体の固有の課題のセット、すなわち、複数の感知要素を単一の変換器に統合し、当該感知要素間の過度の相互作用を最小限に抑え、当該変換器内の固有の分析物選択及び分析物不変感知化学物質の正確な堆積のための堅牢な方法を開発することを提示する。これらの課題を考慮して、従来技術の多くは、分析物の検出のためだけに構成された単一変換器設計を教示してきた。そのような実施形態では、分析物感知システムは、可撓性基板上の隣接する金属ワイヤ又は隣接する金属導管で構成される複数の電極に付託される。
【0003】
先行技術の解決策は、主に、物理的、化学的、アルゴリズム的、及び文脈的方法を介して、非分析物関連信号摂動の緩和に関係してきた。最も適切で基本的な実施例は、特定の活動に参加しているときにシステムに通知するように、ソフトウェアインターフェースを通じて、ユーザに要求するか、又は別様に促すことを含み、これらの活動は、運動、特定の治療剤(すなわち、アセトアミノフェン、インスリン)の投与、又は(CGMに関連する)炭水化物の消費を含む。物理的方法は、別の実施例として、分析物信号の圧力誘起摂動に対する感受性を低減するために、身体装着型感知構成物質の外形の低減を含む。化学的領域内では、これまで以上に選択な受容体分子及び拡散性フラックス制限膜の合成は、生理液に適合する内因性(すなわち、代謝産物、ホルモン、神経伝達物質、小分子)及び外因性(すなわち、医薬品、サプリメント、乱用薬物)分析物の錯体アレイによって与えられた過度の影響を受けて、センサ選択性を増加させることを目的とする。同様に、外れ値検出、故障補償、及び非生理学的変化率を標的とした高度信号処理アルゴリズムの実装は、多くの場合、信号アーチファクトの優勢並びにセンサ性能に対する、様々な物理的及び化学的処理の有害な寄与を低減するために採用される。より最近では、ユーザ及びその身体装着型センサの状態のコンテキスト評価を目的としたセンサ融合方法が、信号アーチファクトの優勢を低減するための潜在的な対策として研究されている。そのような解決策では、直交測定(とりわけ、運動感覚センサ、電気生理学的センサ、皮膚電気センサ、光生理学センサ)からのデータが、分析物選択センサによって変換された信号に対する非分析物由来の寄与の可能性をより良く理解するために、融合アルゴリズムに統合される。
【0004】
マイクロニードルアレイ(Microneedle array、MNA)は、特定の速度範囲内での挿入を必要とする。通常、MNAは、電子機器、筐体、接着剤、及びセンサ本体に取り付けられたMNAを含む、機械的に剛性のアセンブリの構成要素である。このセンサ本体全体を挿入することは、短い距離である力を有する速度まで質量を加速すること、皮膚がピンと張り、衝撃時にMNAから離れる方向に変位しないようにセンサ本体を皮膚内に加速する前に皮膚を伸張すること、その後、センサ本体をアプリケータから解放することに加えて、アプリケータの総コスト及びサイズなどの無数の他の懸念、並びにこの複雑な多段階機構の意図しない誤用を防止することを含む、いくつかの課題を提示する。
【0005】
皮膚を伸張することは、ユーザに不快感を引き起こし、皮膚に対するセンサの衝撃もまた、ユーザに不快感を引き起こす。
【0006】
比較的高速で移動するセンサ本体のこの同じ衝撃はまた、センサが設置されたエリアにおける発赤、腫脹、紅斑、及び/又は浮腫などの免疫学的反応で人体を反応させる場合もある。この反応は、センサのウォームアップ時間を長くし、ユーザの不快感及び苦痛を増大させる。
【0007】
標的分析物(すなわち、血糖)の選択検出のために構成された既存のニードルベース、トロカールベース、及びカニューレベースの分析物センサはまた、標的分析物又は複数の分析物の正確な決定を損なう外部の機械的、電気的、及び化学的刺激に対しても敏感である。具体的には、これらの刺激は、当該分析物選択センサから変換された信号(単数又は複数)の望ましくない摂動として主に現れ、これは、測定に誤差を導入するように働き、それによって、そのようなデバイスで達成可能な最終的な精度を損なう。実際に、これらの誤差は、多くの場合、分析物選択センサによって与えられる分析物決定が慢性疾患を管理するように構成された閉ループシステムにおいて利用されるときに、悪化し、潜在的に生命を脅かす状況になる可能性がある。そのようなシナリオでは、潜在的に致死用量の治療剤は、知覚された病態生理学的読み取り値に対抗するための応答として、自律的にかつユーザ介入なしに送達されることができ、適切な実施例は、強力インスリン管理糖尿病を有する人達のための自動インスリン送達(automated insulin delivery、AID)の領域内にある。分析物選択センサは、受容体分子(すなわち、酵素、抗体、アプタマー)、捕捉プローブ(すなわち、一本鎖DNA)、又は選択触媒(すなわち、貴金属、無機種、電気化学メディエータ)の実装を介して、標的分析物に対する選択性を強化する方式で動作するが、これらのデバイスは、多くの場合、いくつかの他のものの中でも、圧力誘起信号減衰、受容体分子への外来分析物の非特異的結合、平衡条件の変化、並びに生理学的環境を占有する内因性及び外因性化学種との相互作用を含む外因性影響に屈する。これは主に、本質的に主に非決定論的かつ確率論的である外部刺激によって与えられた寄与を分離又は別様に測定することができないことと関連付けられる課題が原因である。この課題に対処するために、分析物感知システムは、分析物選択センサ応答をレシオメトリックにスケーリングして過度の信号影響の外部源を緩和するために、各々が固有の化学要素構成を具現化する分析物選択及び分析物不変感知要素の両方を特徴として構築されてきた。しかしながら、実際には、分析物選択及び分析物不変センサの両方が単一の集合感知要素/変換器内に併置するか、又は非常に近接して混ぜ合わされるセンサジオメトリ上に異なる化学物質を堆積しようと試みるときに、著しい困難が生じ、これはクロストークなどの望ましくない影響をもたらす可能性がある。より最近の努力は、第2の感知様式の追加を必要とせずに分析物信号を雑音除去するアルゴリズム的及び文脈的方法で標的とされているが、これらのアプローチは、非常に限られた成功しか収めていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
起源が非分析物である信号寄与を識別する能力は、外部影響から生じる信号から起源が純粋に分析物由来である信号を逆畳み込み又は別様に分離するための様々な数学的方法の実装を可能にする。本発明は、マイクロニードルアレイ内に存在する少なくとも2つの別個の感知要素の実装を教示し、それによって、少なくとも1つの固有の感知要素は、標的分析物の存在を定量化する能力を具現化し(分析物選択センサ)、望ましくないが、外部刺激に対して別様に感受性であり、少なくとも1つの固有の感知要素は、標的分析物の存在に対して選択ではなく(分析物不変センサ)、望ましくは、外部刺激に対して別様に感受性である。
【0009】
本発明は、起源が非分析物に関連する、分析物選択電気化学センサに入射する、物理的及び/又は化学的処理によって与えられた誤った信号を緩和するためのデバイス及び方法を教示する。これらの処理は、多くの場合、当該分析物選択センサによって与えられる測定信号を損なうように働く。本明細書に記載される解決策は、感知システムに入射する、物理的及び化学的摂動に対して別様に敏感である分析物不変測定の実装に関する。これは、少なくとも1つの分析物選択センサ及び少なくとも1つの分析物不変センサを特徴とする感知システムの構築を必要とする。好ましい実施形態では、分析物不変センサは、標的分析物に対して選択的である活性生体認識要素、親和性分子、触媒、又は捕捉プローブの添加を除いて、分析物選択センサと同一の構造及び要素構成を示す。代替的な実施形態では、残差生体特異的活性を発現しない不活性化生体認識要素は、分析物不変センサに含まれ得る。更に別の実施形態では、当該活性生体認識要素は、分析物不変センサに組み込まれ得るが、センサ製造中に不活性化処理を受ける。このようにして、任意の非分析物信号摂動は、分析物選択感知要素及び分析物不変感知要素の両方に入射し、測定の精度及び信頼性を最大化するために、様々な数学的変換を通して、基本的な分析物由来信号から分離されることができる。この方式では、分析物不変センサによっても検出される分析物選択センサに対するコモンモードの影響の緩和を達成することができ、したがって、分析物信号忠実度(例えば、信号対雑音比又は同様の特徴)に対する全体的な改善を期待することができる。
【0010】
別の目的は、MNAを挿入するために皮膚を伸張する必要性を排除することである。
【0011】
別の目的は、鈍い又は鋭い多種多様なニードルを効果的に挿入する能力である。
【0012】
本発明の一態様は、身体装着型マイクロニードルアレイベースの分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のためのデバイスである。デバイスは、第1の電極と、第2の電極とを備える。第1の電極は、マイクロニードルアレイの第1のマイクロニードルの表面上に位置付けられている。選択認識要素は、第1の電極上に配置され、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる、生成物又は物理的状態の変化を生成するように構成されている。膜は、選択認識要素上に配置されている。第2の電極は、マイクロニードルアレイの第2のマイクロニードルの表面上に位置付けられ、膜は、第2の電極上に配置されている。第1の電極及び第2の電極は、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けられる。バイアス電位又は電流は、第1の電極及び第2の電極の各々に印加される。第1の電極及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答は、測定される。数学的変換は、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、第2の電極で生成された電気的応答の関数として、第1の電極で生成された電気的応答に適用される。
【0013】
本発明の別の態様は、身体装着型分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動を緩和するためのデバイスである。デバイスは、第1の電極と、第2の電極とを備える。選択認識要素は、第1の電極上に配置され、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成されている。膜は、選択認識要素上に配置されている。膜は、第2の電極上に配置されている。第1の電極及び第2の電極は、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けられる。バイアス電位又は電流は、第1の電極及び第2の電極の各々に印加される。第1の電極及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答は、測定される。数学的変換は、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、第2の電極で生成された電気的応答の関数として、第1の電極で生成された電気的応答に適用される。
【0014】
本発明の更に別の態様は、身体装着型分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動を緩和するための、分析物選択センサ及び分析物不変センサを有するデバイスである。本デバイスは、分析物選択センサと、分析物不変センサとを備える。分析物選択センサは、第1の電極と、第1の電極上に配置された選択認識要素であって、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる、生成物又は物理的状態の変化を生成するように構成された、選択認識要素とを備える。膜は、選択認識要素上に配置されている。分析物不変センサは、第2の電極と、電極上に配置された膜とを備える。分析物選択センサ及び分析物不変センサは、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けられる。バイアス電位又は電流は、分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々に印加される。後続の電気的応答は、分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々から測定される。数学的変換は、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、分析物不変センサで生成された電気的応答の関数として、分析物選択センサで生成された電気的応答に適用される。
【0015】
本発明の更に別の態様は、身体装着型マイクロニードルアレイベースの分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のための方法である。本方法は、マイクロニードルアレイの第1のマイクロニードル及び第2のマイクロニードルを、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることであって、当該第1のマイクロニードルが、第1の電極と、当該第1の電極上に配置された選択認識要素であって、当該選択認識要素と分析物との相互作用から生じる、生成物又は物理的状態の変化を生成するように構成された、選択認識要素とを特徴とし、膜が、選択認識要素上に配置されている、選択認識要素であり、第2のマイクロニードルが、第2の電極及び第2の電極上に配置された膜を特徴とする、位置付けることを含む。本方法はまた、第1の電極及び第2の電極の各々にバイアス電位又は電流を印加することを含む。本方法はまた、第1の電極及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答を測定することを含む。本方法はまた、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、第2の電極で生成された当該電気的応答の関数として、第1の電極で生成された当該電気的応答に数学的変換を適用することを含む。
【0016】
本発明の更に別の態様は、身体装着型分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動を緩和するための方法である。本方法は、分析物センサの第1の電極及び第2の電極を、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることであって、第1の電極が、第1の電極上に配置された選択認識要素であって、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる、生成物又は物理的状態の変化を生成するように構成された、選択認識要素を備え、膜が、選択認識要素上に配置されている選択認識要素であり、第2の電極が、第2の電極上に配置された膜を備える、位置付けることを含む。本方法はまた、第1の電極及び第2の電極の各々にバイアス電位又は電流を印加することを含む。本方法はまた、第1の電極及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答を測定することを含む。本方法はまた、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、第2の電極で生成された電気的応答の関数として、第1の電極で生成された電気的応答に数学的変換を適用することを含む。
【0017】
本発明の更に別の態様は、身体装着型分析物センサシステムに入射する非分析物由来信号摂動を緩和するための方法である。本方法は、分析物センサシステムの分析物選択センサ及び分析物不変センサを、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることであって、分析物選択センサが、第1の電極と、第1の電極上に配置された選択認識要素であって、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる、生成物又は物理的状態の変化を生成するように構成された、選択認識要素と、選択認識要素上に配置された膜とを特徴とし、分析物不変センサが、第2の電極及び第2の電極上に配置された膜を含む、位置付けることを含む。本方法はまた、分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々にバイアス電位又は電流を印加することを含む。本方法はまた、分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々からの後続の電気的応答を測定することを含む。本方法はまた、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、分析物不変センサで生成された電気的応答の関数として、分析物選択センサで生成された電気的応答に数学的変換を適用することを含む。
【0018】
分析物は、好ましくは、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、病原体、感染因子、アレルゲン、酵素、タンパク質、核酸、DNA、及びRNAのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
分析物センサシステムは、好ましくは、マイクロニードル又はマイクロニードルアレイであり、各マイクロニードル構成物質が、好ましくは、200~2000μmの垂直範囲を有する。
【0020】
マイクロニードル又はマイクロニードルアレイは、好ましくは、ユーザの生存表皮又は真皮に挿入することが可能である少なくとも1つの突起を含む。
【0021】
第1の電極及び第2の電極は、好ましくは、金属、金属合金、金属酸化物、半導体、又はポリマー表面を含む。
【0022】
第1の電極及び第2の電極は、マイクロニードルのテーパ状遠位領域又はマイクロニードルアレイの要素に制限される。
【0023】
選択認識要素は、好ましくは、酵素、アプタマー、抗体、捕捉プローブ、イオノフォア、触媒、生体触媒、DNA、RNA、細胞小器官、又は細胞のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
生成物は、好ましくは、化学物質、生化学物質、媒介物質、抵抗変化、電気信号、電気化学信号、コンダクタンス変化、インピーダンス変化、又は吸光度変化である。
【0025】
膜は、好ましくは、ポリマー、親水性層、生体適合性層、拡散制限層、ヒドロゲル、フィルム、及びコーティングのうちの少なくとも1つである。
【0026】
バイアス電位又は電流は、好ましくは、直流又は交流のいずれかである。
【0027】
電気的応答は、好ましくは、電位、電流、インピーダンス、コンダクタンス、抵抗、キャパシタンス、及びインダクタンスのうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
数学的変換は、好ましくは、差分演算、雑音除去演算、回帰、逆畳み込み、フーリエ分解、バックグラウンド減算、カルマンフィルタリング、及び最尤推定のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
減衰は、好ましくは、コモンモード信号の除去、最小化、又は持続時間の短縮のうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
コモンモード信号は、好ましくは、装着者の皮膚へのマイクロニードルアレイベースの分析物センサの適用後のウォームアップ信号、圧力誘起信号アーチファクト、温度誘導信号変動、及びユーザの生理液中を循環する内因性又は外因性化学種に起因する干渉信号のうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
内因性又は外因性化学種は、好ましくは、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、病原体、感染因子、アレルゲン、酵素、タンパク質、核酸、DNA、及びRNAのうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
生理液は、好ましくは、ユーザの間質液、皮膚間質液、又は血液のうちの少なくとも1つである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】分析物信号を雑音除去するために分析物選択信号と共に分析物不変信号の使用を示すブロック図である。
図2A】分析物不変センサ及び分析物選択センサに起因する生信号トレースである。
図2B】分析物不変センサ及び分析物選択センサに起因する生信号トレースである。
図2C】分析物不変センサ及び分析物選択センサに起因する生信号トレースである。
図3A】複数の分析物選択センサに起因する生信号トレースである。
図3B】複数の分析物選択センサに起因する生信号トレースである。
図3C】複数の分析物選択センサに起因する生信号トレースである。
図4】分析物選択センサ精度の改善を示す棒グラフである。
図5】従来技術の分析物選択センサブロック/処理フロー図の図である。非分析物信号は、分析物信号に加算的である。
図6】分析物不変センサのブロック/処理フロー図である。
図7】起源が非分析物である分析物信号(及び加算的)への摂動を除去するシステムのブロック/処理フロー図である。
図8】起源が非分析物である分析物信号(及び加算的)への摂動を除去するシステムのブロック/処理フロー図である。
図9】起源が非分析物である摂動から生じるコモンモード信号を除去するシステムのブロック/処理フロー図である。
図10】起源が非分析物である摂動から生じるコモンモード信号を除去するシステムのブロック/処理フロー図である。
図11】起源が非分析物である信号摂動を除去するデバイスのブロック図である。
図12】マイクロニードルの実施形態下での本発明の方法のフローチャートである。
図13】電極の実施形態下での本発明の方法のフローチャートである。
図14】分析物選択及び分析物不変の実施形態下での本発明の方法のフローチャートである。
図15A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
図15B】本発明のデバイスの実施形態の側面図である。
図15C】MNAが引き込まれた、図15Bのデバイスの断面図である。
図15D】MNAが解放された、図15Bのデバイスの断面図である。
図15E】筐体が取り外され、MNAが引き込まれた、本発明のデバイスの実施形態の側面図である。
図15F】筐体が取り外され、MNAが解放された、本発明のデバイスの実施形態の側面図である。
図15G図15Cのデバイスの斜視図である。
図16】電極を有する皮下埋め込み型マイクロニードルを有する皮膚の断面図である。
図17A】第1の電極上に配置された選択認識要素を有する第1の電極と、選択認識要素上に配置された膜と、第2の電極上に配置された膜とで構成されたマイクロニードルアレイの図である。
図17B】第1の電極上に配置された選択認識要素を有する第1の電極と、膜(ブランケット配置)とで構成されたマイクロニードルアレイの図である。
図17C】第1の電極上に選択認識要素を収容して配置された膜を有する第1の電極と、第2の電極上に配置された膜とで構成されたマイクロニードルアレイの図である。
図17D】主要な構成要素及び測定値を示すマイクロニードルアレイの図である。
図18A】本発明のデバイスの実施形態の上面図である。
図18B図18Aのデバイスの側面図である。
図18C図18Aのデバイスの分解図レンダリングを示す。
図19】マイクロニードルベースのバイオセンサデバイスと直接インターフェース接続するように設計されたプロトタイプ装着可能デバイスエンクロージャに収容される電子回路を示す。
図20】マイクロニードルベースのバイオセンサデバイスと直接インターフェース接続するように設計されたプロトタイプ装着可能デバイスエンクロージャに収容される電子回路の別の図を示す。
図21】筐体の視認可能表面上に位置する金めっき圧力コネクタを介して提供される、マイクロニードルデバイスへのアクセスを伴う、密閉筐体に収容される電子回路を示す。
図22】マイクロニードルアレイの各要素が選択バイオセンシング能力を与えるように機能化された、おおよそ1000μmの垂直範囲を有する複数の突出部を備える皮膚貫通中空マイクロニードルアレイを示す。
図23A】中空の機能化されていないマイクロニードルアレイを示す。
図23B】選択バイオセンシング能力を有する中空の「充填された」機能化マイクロニードルアレイを示す。
図24】マイクロニードルバイオセンサと、埋め込まれた無線送受信機を介して外部デバイスに無線伝送されることができるデジタルデータに生化学信号を変換するために必要とされる電子回路を収容するプリント回路基板とを含む、全ての機能的構成要素を示す、完全マイクロニードルバイオセンシングシステムの分解図レンダリングを示す。
図24A図24のマイクロニードルバイオセンサ構成要素の分離拡大図である。
図25】装着可能マイクロニードルバイオセンシングシステムの別の図を示す。
図26】電子部品の後面図を示す。
図27】詳細なブロック/処理フロー図を示す。
図28】独立型ポテンショスタット集積回路の回路図である。
図29】多成分ポテンショスタットの回路図である。
図30】差動増幅器のブロック図である。
図31】本発明の信号フロー図である。
図32】集積アナログフロントエンド及びセンサインターフェースの回路図である。
図33】ミラー差動増幅器及びフィルタリングの回路図である。
図34】固定ミラー計装増幅器の回路図である。
図35】デジタルポテンショメータ調整可能ミラー計装増幅器の回路図である。
図36】大きなフォームファクタにおける手持ち式分析器の図である。
図37】小さなフォームファクタにおける手持ち式分析器の図である。
図38】サンプルアルゴリズムのブロック図である。
図39】小さなフォームファクタにおける手持ち式分析器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
持続血糖モニタなどの身体装着型分析物選択センサは、高い精度を有する選択的様式で1つの分析物又は複数の分析物を感知するように構成されている高感度電気化学システムである。この精度は、様々な外部刺激によって過度に影響を受ける可能性があり、これは、分析物選択センサから変換される信号(単数又は複数)の望ましくない摂動を生じさせ、それによって測定に誤差を導入し、そのようなデバイスで達成可能な最終的な精度を損なう。このように、最も優れた分析物選択センサでさえ、多くの場合、起源が化学的、電気的、又は機械的であり得る外部摂動の影響を受ける。本技術革新は、標的分析物又は複数の分析物の測定の忠実度に対する過度の物理的、化学的、及び別様に外因性の影響の優勢を緩和することを目的とする。これは、分析物選択センサのうちの少なくとも1つ及び分析物不変センサのうちの少なくとも1つの実装を介して達成され、それによって、分析物選択センサは、選択認識要素を特徴とし、分析物不変センサは、選択認識要素を欠くが、別様に分析物選択センサと構造及び要素構成が同一である。数学的変換、アルゴリズム、又はそれらの組み合わせを使用して、分析物選択センサ及び分析物不変センサの両方に現れるコモンモード信号は、最小限にされ、軽減され、又は完全に排除され、それによって、より高い忠実度及び/又は精度の分析物信号をもたらし得る。
【0035】
図1は、分析物信号14(電流Ch1クリーン、電流Ch2クリーン、電流Ch3クリーン)を雑音除去するための分析物選択(電流Ch1、電流Ch2、電流Ch3)信号13と共に分析物不変(非酵素)信号11の使用を示すブロック図10を示す。**温度信号12についてはどうか?処理1/RLSフィルタ15は?
【0036】
身体装着型マイクロニードルアレイベースの分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動を緩和するために、デバイスは、図17Aに示されるように、分析物選択センサの少なくとも1つ及び分析物不変性センサの少なくとも1つを特徴とするように構成され、両方ともアレイの固有のマイクロニードル構成物質上に位置する。具体的には、分析物選択センサは、マイクロニードルアレイの第1のマイクロニードル30aの表面上の電極40a、第1の電極40a上に配置された選択認識要素41であって、選択認識要素41と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素41、及び選択認識要素41上に配置された膜42を特徴とするように構成されている。同様に、分析物不変センサは、マイクロニードルアレイの第2のマイクロニードル30bの表面上の電極40bと、電極上に配置された膜43とを特徴とするように構成されている。分析物選択センサ及び分析物不変センサは、図16に示されるように、ユーザの生存表皮131又は真皮132内の空間的に別個の場所における感知動作を促進するために、マイクロニードルアレイ内に配置され、それによって、あるセンサから別のセンサへの任意の過度の影響又はクロストークを最小限にするように機能する。図11に示されるように、同一又は固有のバイアス信号(DC又はAC電位又は電流)を分析物選択センサ及び分析物不変センサの両方に印加すると、後続の電気的応答(電位、電流、インピーダンス、コンダクタンス、抵抗、キャパシタンス、又はインダクタンス)は、第1の電極及び第2の電極の両方から測定される。続いて、数学的変換は、分析物選択センサ及び分析物不変センサの両方に入射するコモンモード信号を除去するために、第2の電極で生成された電気的応答の関数として、第1の電極で生成された電気的応答に適用される。これらの数学的変換は、差分(減算)測定、逆畳み込み、フーリエ分解、バックグラウンド減算、カルマンフィルタリング、及び最尤推定を含むことができる。
【0037】
本発明の別の実施形態では、図17Bに示されるように、分析物選択センサは、マイクロニードルアレイの第1のマイクロニードル30aの表面上の電極40a、第1の電極40a上に配置された選択認識要素41、並びに選択認識要素41上及び第2のマイクロニードル30bの第2の電極40b上に配置された膜42を特徴とするように構成されている。
【0038】
本発明の更に別の実施形態では、図17Cに示されるように、センサは、マイクロニードルアレイの第1のマイクロニードル30aの表面上の電極40a、及び第1の電極40a上に配置された選択認識要素41を収容する膜42を特徴とするように構成されている。膜43は、第2のマイクロニードル30bの表面上の第2の電極40b上に配置されている。
【0039】
図17Dに示されるように、マイクロニードルアレイ20の各マイクロニードル30は、好ましくは、マイクロニードル30内に埋め込まれたシリコン貫通ビア33を有する。マイクロニードル30は、好ましくは、酸化物からなる絶縁体34を有する。これは、センサがマイクロニードルアレイ20の分離された構成物質として個々にプローブされる(probed)ことを可能にする。マイクロニードルアレイは、好ましくは、集積回路のような、ほぼ全ての回路基板にリフローはんだ付けされることができる。各マイクロニードル30は、好ましくは、マイクロニードル30の遠位先端に、好ましくは、マイクロニードル30の遠位端から1~1500μmの領域に、閉じ込められた個々のセンサ31を有する。マイクロニードル30は、好ましくは、裏面金属接点32、貫通ニードルVIA33、マイクロニードル30を電気的に絶縁する絶縁体34、及びマイクロニードル30の遠位先端36上のパターン化金属接点35を有する。裏面金属接点32は、好ましくは、内側部分37がアルミニウム材料から構成されるニッケル/金材料から構成される。マイクロニードル30は、好ましくは、シリコン材料からなる貫通ニードルVIA33を有する。遠位先端36は、好ましくは、酸化物部分及び白金部分を有する。マイクロニードル30の長さLmは、好ましくは、200~2000μmの範囲であり、最も好ましくは、625μmである。マイクロニードル30の幅Wmは、好ましくは、100~500μmの範囲であり、最も好ましくは、160μmである。遠位先端部36は、好ましくは、50~200μmの範囲の長さLdを有し、最も好ましくは、100μmである。
【0040】
提示されるデバイス及び方法は、バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、アプタマー、DNA、及びRNAのうちの少なくとも1つを含む分析物の決定が可能である。更に、これらのシステムは、ユーザの生存表皮又は真皮に挿入することができる少なくとも2つの突起を収容するマイクロニードルアレイを使用し、各突起が、近位端から遠位端まで200~2000マイクロメートルの範囲を有する。上で考察された電極構成物質は、前述の突出部の遠位領域に限定され、金属、半導体、又はポリマー表面を含む。考察された選択認識要素は、酵素、アプタマー、抗体、捕捉プローブ、イオノフォア、触媒、生体触媒、DNA、RNA、細胞小器官、又は細胞のうちの少なくとも1つを含み、分析物への曝露時に、化学物質、生化学物質、媒介物質、抵抗変化、電気信号、コンダクタンス変化、インピーダンス変化、又は吸光度変化を生成するように構成されている。上述の膜は、ポリマー、親水性層、生体適合性層、拡散制限層、ヒドロゲル、フィルム、及びコーティングのうちの少なくとも1つである。
【0041】
本発明の他の新規かつ実用的な特徴は、分析物選択センサから分析物不変センサへの生成物の拡散輸送が原因のクロストークの効果を否定する本質的な能力を含む。本発明はまた、分析物選択センサに拡散することができる分析物の量を制限するように働く、分析物枯渇領域又は拡散層効果の影響を減少させる。
【0042】
図2A図2Cは、図2Aに示されるような分析物不変センサ(非酵素)、及び図2Bに示されるような分析物選択センサ(生Ch1)に起因する生信号トレースを示し、赤の四角で強調されたコモンモード信号摂動を示す。数学的変換の実施は、図2Cに示されるように、分析物不変センサ及び分析物選択センサの両方に現れるため、起源が非分析物である、コモンモード信号摂動(赤線)の除去を可能にする。
【0043】
図3A図3Cは、図3Aに示されるような複数の分析物選択センサ(生Ch1、生Ch2、生Ch3)、及び図3Bに示されるような分析物不変センサ(非酵素)に起因する生信号トレースを示し、組織への移植後のセンサ平衡化に必要な2時間のウォームアップ期間を示す。数学的変換の実施は、図3Cに示されるように、見かけ上のウォームアップ期間を1時間未満に短縮することを可能にする。ウォームアップ期間は、分析物不変センサ及び分析物選択センサの両方に現れるため、起源が非分析物である。
【0044】
図4は、ウォームアップ期間を延長すること、又は分析物選択センサ信号から分析物不変センサ信号を減算するように構成されたアルゴリズムの実装によって、センサ使用の1日目における分析物選択センサ精度(平均絶対相対差-mean absolute relative difference、MARDによって証明される)の改善を示す棒グラフを示す。
【0045】
分析物選択センサが(分析物信号に加えて)非分析物信号摂動に敏感であり、分析物不変センサが純粋に非分析物信号摂動の関数である(すなわち、分析物信号によって影響されない)と仮定すると、真の分析物信号は、差分測定によって分離される。
真の分析物信号=分析物選択センサ信号-分析物不変センサ信号
【0046】
上記の関係は、デバイスのファームウェア又はソフトウェアにおいて実行される単純なデジタル信号処理ルーチン(減算器/差分エンジンなど)において実施される。それは、同様に、差動増幅器のような簡単なアナログハードウェアで実現されることができる。
【0047】
分析物選択センサ及び分析物不変センサの両方に現れるコモンモード信号は、いくつかの方法を使用して分離される。まず、それは、減算関係によって分析物信号から減算される。
真の分析物信号=[分析物選択センサ信号+コモンモード信号]-[分析物不変センサ信号+コモンモード信号
【0048】
上記は、差動増幅器を介して簡単なアナログ信号処理ルーチンで実現される。
【0049】
コモンモード信号が加算的ではなく、分析物不変センサにおいてその全体が存在し、分析物選択センサによって与えられる信号の変調として存在すると仮定すると、コモンモード信号は、以下の関係によってレシオメトリックに分離される。
【0050】
【数1】
【0051】
畳み込み方法は、他の雑音源から純粋な分析物選択信号成分を分離するために採用され得る。分析物選択センサからの測定信号[m(x)]が、分析物不変センサによって測定されるように、純粋に分析物に由来する信号の成分[a(x)]と、起源が非被分析物である誤った信号測定値のソースによって与えられた成分[n(x)]との畳み込みを表すと仮定する。
m(x)=a(x)n(x)
【0052】
分析物選択信号及び分析物不変信号の両方のフーリエ又はウェーブレットベースの分解は、分析物信号と任意の非分析物由来信号摂動の過度の影響との間でスペクトル的に区別するために採用され得る。
【0053】
【数2】
【0054】
スペクトル成分上に等しい重みを置くために、正規化は、採用され得る。
NORM(jω)=ANORM(jω)NNORM(jω)
又は、書き直して
NORM(jω)=MNORM(jω)/NNORM(jω)
【0055】
したがって、分析物選択信号から生じるスペクトル的に純粋なトーンは、上記の関係を使用して計算される。次に、逆フーリエ又はウェーブレット変換は、時間又はデータ系列領域に戻るために採用される。
【0056】
【数3】
【0057】
そのようなシステムによって生じる信号対雑音比(signal-to-noise ratio、SNR)は、分析物選択センサ信号と分析物不変センサ信号との比の対数(底10)として計算される。
【0058】
【数4】
【0059】
これは、システムの雑音指数(noise figure、NF)の計算を可能にする。
【0060】
【数5】
式中、SNRは、特定の分析物レベルにおけるシステムの信号対雑音比であり、SNRは、特定の測定によって具現化される測定された信号対雑音比である。
【0061】
同相除去比(common-mode rejection ratio、CMRR)は、分析物選択センサ信号と分析物不変センサ信号との比の対数(底10)として計算される。
【0062】
【数6】
【0063】
非分析物由来信号の影響を測定する能力を考慮すると、以下のルーチンのリストは、信号からの非分析物の影響を補償するか、又は分析物濃度の最適推定値を生成するために、採用され得る。
【0064】
適応フィルタ:
ほとんどの信号処理用途5~7では、非分析物効果は、加算的であると仮定され、これは、乗法モデルが解くべきより大きな課題を表すという事実が原因である。これらのアプローチでは、各離散サンプルnにおける一般モデルは、以下の通りである。
s(n)=a(n)+i(n)+e(n)
式中、s(n)は、全検出信号であり、a(n)は、所望の分析物信号であり、i(n)は、非分析物寄与が原因の加算的寄与であり、e(n)は、フィルタ残差である。上記の式を解くために、適応フィルタは、非分析物信号をs(n)に回帰させるために、時変フィルタW(n)の係数を調整する。コスト関数は、
min{norm(W’i-s,2)}と定義される。
【0065】
サンプルnで、フィルタ残差は、
【0066】
【数7】
であり、
式中、pは、フィルタの次数である。残差は、基準干渉信号とs(n)との間の相関を見つけるために最小化され、出力は、「クリーニングされた」信号プラス無相関白色雑音として分類され得る。この回帰問題をリアルタイムで解くために、再帰的最小二乗(Recursive Least Square、RLS)、最小平均二乗(Least Mean Squares、LMS)、カルマンフィルタ(Kalman Filter、KF)、及びカーネル適応フィルタリング(Kernel Adaptive filtering、KAF)のような多種多様なアルゴリズムが存在する。
【0067】
図5図10は、センサの処理フローのブロック図を示す。
【0068】
図5は、従来技術の分析物選択センサのブロック図を示す。非分析物信号は、分析物信号に加算的である。図6は、分析物不変センサを示す。図7は、起源が非分析物である分析物信号(及び加算的)への摂動を除去するシステムを示す。図8は、起源が非分析物である分析物信号(及び加算的)への摂動を除去するシステムを示す。図9は、起源が非分析物である摂動から生じるコモンモード信号を除去するシステムを示す。この実施形態では、分析物信号は、コモンモード信号によって変調されるのに対して、分析物不変センサは、コモンモード信号に直接感応する。図10は、起源が非分析物である摂動から生じるコモンモード信号を除去するシステムを示す。この実施形態では、分析物信号は、コモンモード信号によって変調されるのに対して、分析物不変センサは、コモンモード信号に直接感応する。
【0069】
図11は、起源が非分析物である信号摂動を除去するデバイスのブロック図180を示す。特定の実施形態では、分析物選択センサは、分析物/生体認識要素を有する膜を含む。他の実施形態では、分析物不変センサは、分析物/生体認識要素を欠く膜を含む。更に他の実施形態では、分析物選択センサ及び分析物不変センサは、少なくとも2つの別個の電極である。他の実施形態では、分析物選択センサは、マイクロニードルアレイの少なくとも1つのマイクロニードル上の電極上に位置する。更に他の実施形態では、分析物不変センサは、マイクロニードルアレイの少なくとも1つのマイクロニードル上に位置する。別の実施形態では、分析物センサは、マイクロニードルアレイである。他の実施形態では、分析物センサシステムは、分析物選択マイクロニードルアレイセンサである。他の実施形態では、分析物選択マイクロニードルアレイセンサは、ユーザの皮膚表面上に身体装着される。更に他の実施形態では、アルゴリズムは、デバイスの内部で処理される。他の実施形態では、アルゴリズムは、無線接続されたデバイスで処理される。更に他の実施形態では、アルゴリズムは、クラウドサービスで処理される。更に他の実施形態では、分析物測定値は、ディスプレイ上でユーザに提供される。他の実施形態では、分析物測定値は、自動インスリン送達システムにおける治療的介入を導くために使用される。更に別の実施形態では、分析物測定値は、無線接続されたデバイスに送達される。更に別の実施形態では、分析物測定値は、クラウドサービスに記憶される。
【0070】
身体装着型マイクロニードルアレイベースの分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のための方法200は、図12に示される。ステップ201は、マイクロニードルアレイの第1のマイクロニードル及び第2のマイクロニードルを、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることである。好ましくは、第1のマイクロニードルは、第1の電極、第1の電極上に配置された選択認識要素であって、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成するように構成された、選択認識要素、及び選択認識要素上に配置された膜を特徴とし、第2のマイクロニードルは、第2の電極及び第2の電極上に配置された膜を特徴とする。ステップ202は、第1及び第2の電極の各々にバイアス電位又は電流を印加することである。ステップ203は、第1及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答を測定することである。最後に、ステップ204は、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、第2の電極で生成された電気的応答の関数として、第1の電極で生成された電気的応答に数学的変換を適用することである。
【0071】
身体装着型分析物センサに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のための別の方法205は、図13に示される。ステップ206は、分析物センサの第1の電極及び第2の電極を、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることから開始する。好ましくは、第1の電極は、第1の電極上に配置された選択認識要素であって、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素、及び選択認識要素上に配置された膜を特徴とし、第2の電極は、第2の電極上に配置された膜を特徴とする。ステップ207は、第1及び第2の電極の各々にバイアス電位又は電流を印加することである。第1及び第2の電極の各々からの後続の電気的応答を測定することは、ステップ208である。ステップ209は、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、第2の電極で生成された電気的応答の関数として、第1の電極で生成された電気的応答に数学的変換を適用することである。
【0072】
身体装着型分析物センサシステムに入射する非分析物由来信号摂動の緩和のための更に別の方法210は、図14に示される。ステップ211は、分析物センサシステムの分析物選択センサ及び分析物不変センサを、ユーザの生存表皮又は真皮内の空間的に別個の場所に位置付けることである。好ましくは、分析物選択センサは、第1の電極、及び第1の電極上に配置された選択認識要素であって、選択認識要素と分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素を特徴とする。更に、選択認識要素上に配置された膜、及び分析物不変センサは、第2の電極及び第2の電極上に配置された膜を特徴とする。分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々にバイアス電位又は電流を印加することは、ステップ212である。ステップ213は、分析物選択センサ及び分析物不変センサの各々からの後続の電気的応答を測定することである。ステップ214は、コモンモード信号の減衰を引き起こすために、分析物不変センサで生成された電気的応答の関数として、分析物選択センサで生成された電気的応答に数学的変換を適用することである。
【0073】
図19は、マイクロニードルベースのバイオセンサデバイスと直接インターフェース接続するように設計された装着可能デバイスエンクロージャ60に収容される電子回路を示す。デバイスの電子回路は、無線送受信機(好ましくは、BLUETOOTH LOW ENERGY)と、統合アナログデジタル変換器61及び高増幅回路62を伴うマイクロコントローラとを備える。図20は、マイクロニードルベースのバイオセンサデバイスと直接インターフェース接続するように設計されたプロトタイプ装着可能デバイスエンクロージャ60に収容される電子回路の別の図を示す。電子回路は、高感度電気化学アナログフロントエンド63と、フィルタリング回路64とを備える。
【0074】
図21は、装着可能デバイスエンクロージャ60の視認可能表面上に位置する金めっき圧力コネクタ67を介して提供される、マイクロニードルデバイスへのアクセスを伴う、装着可能デバイスエンクロージャ60に収容される電子回路を示す。接続ポート65もまた、示されている。
【0075】
図22は、マイクロニードルアレイの各要素が選択バイオセンシング能力を与えるように機能化された、おおよそ1000μmの垂直範囲を有する複数の突出部を備える皮膚貫通中空マイクロニードルアレイ70を示す。図23Aは、中空の機能化されていないマイクロニードルアレイ70aを示す。図23Bは、選択バイオセンシング能力を有する中空の「充填された」機能化マイクロニードルアレイ70bを示す。
【0076】
図24及び図24Aは、筐体部材125と、マイクロニードルバイオセンサ130と、埋め込まれた無線送受信機を介して外部デバイスに無線伝送されるデジタルデータに生化学信号を変換するために必要とされる電子回路を収容するプリント回路基板127とを含む、機能的構成要素を示す、完全マイクロニードルバイオセンシングシステム120の分解図レンダリングを示す。
【0077】
図25は、電子バックボーン(突出部)及び接着パッチを収容する装着可能マイクロニードルバイオセンシングシステム120の上面斜視図を示す。マイクロニードルは、接着パッチ(図示せず)の後面上に位置する。
【0078】
図26は、マイクロニードルベースのバイオセンシングシステム120の構成物質130と、マイクロニードルアレイ127を収容する皮膚装着型接着パッチとを収納する電子部品の後面図を示す。
【0079】
図27は、マイクロニードルベースのバイオセンシングシステム及びサポート電子システムの主要な機能構成要素を示す詳細なブロック/処理フロー図1200を示す。ブロック1201で、マイクロニードルアレイは、マイクロニードルベースのバイオセンシングシステムのユーザの表皮及び真皮の層を占める生存生理媒体(間質液、血液)から経皮生化学分析物を取得するために利用される。ブロック1202で、電気化学アナログフロントエンドは、マイクロニードルベースのバイオセンシングシステムで生じる電気化学反応の制御及び読み出しを容易にするために、ボルタンメトリ、アンペロメトリ、ポテンシオメトリ、伝導度測定、インピーダンス測定、及びポーラログラフィなどのいくつかの電気分析技術のうちの1つ(又は複数)を実行する。ブロック1203で、電気化学アナログフロントエンドの出力で生成された電気信号は、信号強度をラインレベルに増加させるために増幅回路に向けられる。ブロック1204で、増幅回路からの出力は、対象の信号を抽出し、任意の望ましくない雑音を除去するために、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタに向けられる。ブロック1205で、信号は、その後、アナログ信号をデジタルビットストリームに変換するために、ADCでアナログデジタル変換を受ける。ブロック1206で、信号は、更なる情報処理、解釈、表示、アーカイブ、及びトレンド分析のために、信号(生化学分析物のレベルに対応する)をモバイル通信デバイス1208に伝送するために、無線伝送器又は送受信機(BLUETOOTH(登録商標)、WiFi、RFID/NFC、Zigbee(登録商標)、Ant+)1207にルーティングされる。
【0080】
電気化学アナログフロントエンドは、好ましくは、Texas Instruments LMP91000 Sensor AFE System、低電力化学センシング用途のための構成可能なAFEのポテンショスタット、低電力化学センシング用途のための構成可能なAFEのTexas Instruments LMP91200、又はCortex-M3及び接続性を有するチップ上の16ビット精度、低電力メータのAnalog Devices AuDCM350を含む。無線送受信機は、好ましくは、BLUEGIGA BLE-113A BLUETOOTH Smart Module、又はUSBを有するTexas Instruments CC2540 SimpleLink BLUETOOTH Smart Wireless MCUである。付随するモバイルデバイスは、好ましくは、ANDROID(登録商標)又はiOS(商標)ベースのスマートフォン、Samsung GALAXY GEAR、又はAPPLE WATCH(商標)である。
【0081】
マイクロニードルアレイ電気化学バイオセンサは、間質液からの生化学信号を有用な電気信号に変換する。
【0082】
電気化学アナログフロントエンドは、好ましくは、以下の、電気化学反応を誘発するためにマイクロニードルアレイに固定電位又は時変電位を印加し、それによって電流の流れを生じさせることと、マイクロニードルアレイに固定電流又は時変電流を印加して電気化学反応を誘導し、それによって電位を生じさせることと、電気化学反応又はイオン勾配によって生成される時変開回路電位を測定することと、マイクロニードル変換器で電気化学反応又は生体親和性反応によって生成された周波数依存インピーダンスを測定することと、マイクロニードル変換器で電気化学反応又は生体親和性反応によって生成された比抵抗又はコンダクタンスを測定することと、のうちの少なくとも1つ以上を実行する。
【0083】
電気化学アナログフロントエンドは、好ましくは、上記の実施形態のいずれか1つを達成するように動的に構成される。同様に、入力は、好ましくは、システムの感知能力を拡張するために順次又は並列に動作するように配列される。
【0084】
無線送受信機は、いくつかの標準化された無線伝送プロトコル(Bluetooth(登録商標)、WiFi、NFC、RFID、Zigbee(登録商標)、Ant+)のうちの任意の1つを使用して、電気化学アナログフロントエンドによって生成された電気信号をモバイル又は装着可能デバイスに無線で中継する。任意選択で、アナログフロントエンドによって生成された電気信号は、無線送受信機によって中継される前に、増幅され、フィルタリングされ、及び/又はアナログデジタル変換及び更なる信号処理を受けることができる。
【0085】
モバイル又は装着可能デバイスは、容易に理解されるフォーマットにおいてセンサ読み取り値をユーザに表示し、必要な任意の追加の信号処理を実行する。
【0086】
図28に示されるように、調整可能バイアスアナログフロントエンド/ポテンショスタット69は、高入力インピーダンス演算増幅器及びデジタルアナログ変換器、又は独立型アナログフロントエンド(「analog front end、AFE」)若しくはアナログインターフェース集積回路パッケージから構成される。
【0087】
図29は、電気化学セル71を備えた多成分ポテンショスタット230の回路図である。
【0088】
ポテンショスタット操作の方法ステップは、以下の通りである。
アナログフロントエンド/ポテンショスタット操作。ポテンショスタット/AFEユニットは、以下の配置で構成された2つ(図28)又は3つ(図29)の精密計装演算増幅器(A1/OA1、OA2、及びTIA/OA3)から構成されており、制御増幅器A1/OA1は、可変(プログラム可能)バイアスと接地との間で測定された差動電圧(図20のV)を(利得Aで)増幅し、対向電極(counter electrode、CE)を通して電流を供給する。基準電極(reference electrode、RE)で生成された電圧を感知すると、A1/OA1は、その出力電圧を入力(VRE)値に維持するために十分な電流を吸い込む(sink)。次に、REは、調整され、A1/OA2(バッファ又は単位利得増幅器)の出力電位/電流は、それに応じて修正される。したがって、制御増幅器は、基準電極を一定電位に維持し、電気化学反応を調整するのに十分な電流を送達する電圧制御電流源として機能する。負のフィードバックを実施する際に、A1/OA2は、化学合成に必要とされる完全な電圧コンプライアンスを可能にするために極端な電位までスイングすることができることが必須である。更に、無視できる電流を引き出すために、OA2が非常に高い入力インピーダンスを有することが重要であり、別様に、基準電極は、その意図された動作電位から逸脱し得る。実際には、20fA(又はそれ以下)の入力バイアス電流を有する精密増幅器を使用することは、ほぼ全ての電気化学的研究に適したサブピコアンペアレベルまでの無減衰動作を可能にする。TIA/OA3は、作用電極(working electrode、WE)を通して供給される電流を受容し、電極WEを通過する電流の量に比例する電圧(抵抗器/コンデンサネットワークRTIA/C+Rによって変換される)を出力する。
【0089】
アナログフロントエンド及び印加された基準/動作バイアス。図28及び図29に示されるシステムでは、基準電圧(VRE/RE)は、それぞれ、演算増幅器A1/OA2の反転及び非反転入力において一定に保持され、一方、動作電圧は、接続されたセンサ上に動作バイアスを生成するために、電圧分割器、抵抗器ネットワーク、又は他の手段を通して変化させられる。CEからWEに流れる電流は、可変利得トランスインピーダンス増幅器の非反転入力に向けられ、この増幅器は、関係VOUT/Vo=-icell4/TIAに従って、電流フローをスケーリングされた電圧出力(C2及び/又はVOUT/Voで)に変換する。
【0090】
差動増幅段75は、図30に示される。差動増幅器は、印加された基準電圧(内部IC図におけるRE又はC1)及びトランスインピーダンス増幅器からの出力(バッファ段あり又はなし)を許容するように構成されている。入力は、2つの増幅器の間で並置され、すなわち、基準入力は、増幅器の一方の正端子(負の印加電圧/電流の場合)及び他方の負端子(正の印加電圧/電流の場合)に接続される。VOUTは、反対側の増幅器入力に接続される。使用されない増幅器(印加される電流/電圧の極性に対抗する)は、その入力をゼロに駆動され、しかしながら、システム内に接地バイアスが存在する場合、接地バイアスを依然として有する。差動増幅器の利得は、AFEによって読み込まれる電圧/電流の量にスケーリングするように、製造を通じて、又はリアルタイムで構成されることができる。
【0091】
フィルタリングステップ。差動増幅器対から生成された出力は、その後、外部雑音を除去するためにフィルタリング回路にかけられる。信号における振動又はランダムな変動は、接地バイアス、RF干渉、主電源振動、(3電極センサからの)入力インピーダンス不整合、又は他の原因を含む、いくつかの理由が原因で存在することができる。
【0092】
アナログデジタル変換器ステップ。フィルタリングされた信号は、最後に、外部集積回路(「integrated circuit、IC」)に位置するか、又はマイクロコントローラ若しくは他のIC内に(同じ場所に配置)併置するアナログデジタル変換器(「analog to digital converter、ADC」)に入射し、代表的なデジタル信号に変換される。増加したサンプリング分解能は、追加の感度を獲得し、量子化誤差を最小化するために実装され得る。
【0093】
収集アルゴリズムステップ。雑音を更に低減するために、正及び負のバイアス線の両方についての時間平均値は、(ADCによるデジタル化に続いて)数秒の期間にわたって、マイクロコントローラ/マイクロプロセッサによって収集及び計算される。活性バイアス増幅器(印加電圧/電流)は、デバイス内に存在する任意のバイアスを除去するために、非活性バイアス増幅器(接地オフセット)の値が減算される。この処理が原因で、遮蔽ケージは、ピコアンペアレベルの感度に達する必要がない。非活性バイアス増幅器、時間平均データ収集、及びフィルタリングスキームは、常に安定かつスケーラブルな出力をマイクロコントローラ/プロセッサに提供する。
【0094】
電気化学セル又はセンサの入力、分析物は、制御電位技術(アンペロメトリ、ボルタンメトリなど)によって測定される。測定された電圧及び計算された電流値(電気化学セル又はセンサの作用電極及び対電極を流れる電流の決定)から構成される感知システムの出力は、サンプル中の分析物の濃度に対応する。
【0095】
図31は、電気化学セルを流れる電流を検出するための信号フロー図80を示す。電気化学セル66からの電流信号は、調整可能バイアスアナログフロントエンド81に送信される。この信号は、トランスインピーダンス増幅器82に送信される。信号は、調整可能バイアスアナログフロントエンド81及びトランスインピーダンス増幅器82の両方からミラー差動増幅器84に送信される。ミラー差動増幅器84から生成された出力は、その後、外来雑音を除去するためにフィルタリング回路86及び87にかけられる。信号における振動又はランダムな変動は、接地バイアス、RF干渉、主電源振動、(3電極センサからの)入力インピーダンス不整合、又は他の原因を含む、いくつかの理由が原因で存在することができる。収集アルゴリズム88で、雑音を更に低減するために、正及び負のバイアス線の両方についての時間平均値は、(ADCによるデジタル化に続いて)数秒などの適切な期間にわたって、マイクロコントローラ/マイクロプロセッサによって収集され及び計算される。活性バイアス増幅器(印加電圧/電流)は、デバイス内に存在する任意のバイアスを除去するために、非活性バイアス増幅器(接地オフセット)の値が減算される。この処理が原因で、遮蔽ケージは、ピコアンペアレベルの感度に達する必要がない。非活性バイアス増幅器、時間平均データ収集、及びフィルタリングスキームは、常に安定かつスケーラブルな出力をマイクロコントローラ/プロセッサ/ADCに提供する。
【0096】
図32は、集積アナログフロントエンド150及びセンサインターフェースの詳細な回路図である。これは、中央マイクロコントローラ/マイクロプロセッサユニットと通信し(SCL及びSDAライン)、CE(counter electrode、対電極)、WE(作用電極)、及びRE(参照電極)ラインを介して電気化学センサを制御する、製造業者から入手可能な統合AFEの回路図である。トランスインピーダンス増幅器(transimpedance amplifier、TIA)のための構成可能な回路構成要素は、9及び10にわたって存在し、画像において構成されるような積分器を形成する。
【0097】
図33は、ミラー差動増幅器84’及びフィルタリングの詳細な回路図である。ここでは、個々の演算増幅器構成要素(左側)及び出力上のローパスフィルタ(右側)を利用する、ミラー差動増幅器のセットが示されている。AMORP及びAMORNは、正及び負の差動信号であり、AMOUTN及びAMOUTPは、フィルタリングされた差動信号である。出力利得は、増幅器に接続された受動抵抗器によって制御される。
【0098】
図34は、固定ミラー計装増幅器84a及び84bの詳細な回路図である。ここでは、1組のミラー差動増幅器が、一対の集積計装増幅器を使用して示されている。出力利得は、RG端子に接続された単一の抵抗器によって制御される。
【0099】
図35は、デジタルポテンショメータ調整可能ミラー計装増幅器84cの詳細な回路図である。これは、図34と同様であるが、受動構成要素ではなくプログラム可能/デジタル選択可能利得抵抗器集積回路(IC3)を利用する。
【0100】
図36は、大きなフォームファクタにおける手持ち式分析器220の図である。
【0101】
図37は、小さなフォームファクタにおえる手持ち式分析器220aの図である。
【0102】
図39は、小さなフォームファクタにおける手持ち式分析器220bの図である。
【0103】
サンプリング及び測定アルゴリズムは、回路ハードウェアを使用して補償又は別様に除去されない雑音源を最小限にするように設計される。図38のブロック図90に示されるように、各「サンプル」は、正及び負の差動出力の両方を読み取り、一方を他方から減算することを伴う。複数のサンプルは、測定値を得るために、収集され、統計的演算を介して分析されることができる。最も単純な形態は、個々のサンプルのセットから平均及び分散/標準偏差を計算することである。サンプリング周期は、他の電源からの雑音の可能性を最小にする方式で選択されなければならない。
【0104】
主な雑音源は、浮遊接地及び接地ドリフト、主電源、並びに高周波干渉である。
【0105】
浮遊接地及び接地ドリフトは、様々な手段によって補償される。浮動接地(DC雑音)は、対になった差動増幅器の存在によって補償される。接地ドリフトは、複数のサンプルを平均化することによって補償される。正のバイアス/電流を測定する場合、負の出力は、浮動接地に等しくなる。正の出力から負の出力を減算することは、接地ドリフトによって引き起こされる雑音を除去する。逆のことは、負のバイアス/電流を測定するときに、実行されることができる。減算ステップは、複数の読み取り値の平均を使用することよりはむしろ、各サンプルで実行されるべきである。
【0106】
主電源はまた、様々な方式で補償される。AC電力ラインに接続されたとき、又は他のACライン電力供給機器への近接によって誘導されたときのいずれかの主電源が原因で生じる雑音は、アルゴリズムサンプリング周期の選択によって補償される。サンプリングは、ライン電力サイクルの周期(60Hz及び50Hz電力システムに対してそれぞれ16又は20ms)又はその任意の倍数(すなわち、2の倍数に対して32~40msなど)と同じ遅延で決して実行されるべきではない。サンプリング遅延がライン電力サイクル(16~20ms)未満である場合、少なくとも1つのサイクル(50~60Hz)は、複数のサンプルによって捕捉されなければならない。適切な統計分析のために、十分なサンプルは、標準偏差の適切な推定値を確立し、電力線高調波を緩和するために、収集されなければならない。例えば、タイプ1(偽陽性)及びタイプ2(偽陰性)エラーの95%信頼区間では、少なくとも13個のサンプルが、測定されなければならない。これは特定用途向けであるが、最低10個のサンプルが推奨される。最大サンプル数は、用途に依存する(身体装着型センサの場合、動きなどの外部要因が原因で突然の変化の可能性)。
【0107】
無線伝送及び他の高周波信号が原因の高周波干渉、雑音は、ハードウェアフィルタリング、特にローパスフィルタリングによって完全に排除される。
【0108】
ニューラルネットワーク:
多種多様なニューラルネットワーク(neural networks、NN)は、マルチチャネル信号測定値を融合する、また望ましくない信号を除去することの両方のために、使用され得る。NNへの入力は、入力測定値を含み、ネットワークは、所望の信号測定値(すなわち、間質血糖値)に対して訓練されている。ネットワークは、信号(すなわち、電流)、温度、非分析物及び他の干渉源と標的の所望の分析物信号との間の数学的モデルマッピングを開発するために、教師あり学習法又は教師なし学習法のいずれかを使用して訓練される。深層ニューラルネットワーク及び浅層ニューラルネットワークの異なる形態は、以下の層、リカレントニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、の組み合わせで構築され得る。
【0109】
凸最適化:
いくつかの実施形態では、リアルタイム凸最適化は、相互参照信号の平滑性の事前知識又は他の周波数ベースの知識を適用するために、それらのコスト関数に追加のペナルティ因子を有する回帰コスト関数を構築することによって、望ましくない影響を逆畳み込みするために採用される。
【0110】
投影技術:
線形及び非線形(カーネル)主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)並びに独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)などの射影技術はまた、ブラインド音源分離のための選択された実施形態で採用される。この場合、入力行列Xは、分析物選択信号及び非分析物選択信号、並びに温度などの任意の無関係な信号読み出しを含む全ての信号を含む。これらのアプローチは、入力ソースの分離をもたらす分散(PCAの場合)及び独立性(ICAの場合)を最大化する回転行列Aを作成する。
【0111】
連続ウェーブレット変換:
分析物選択センサ測定値及び分析物不変センサ測定値の連続ウェーブレット変換(Continuous Wavelet Transform、CWT)は、特定の実施形態では、非分析物信号測定値及び「汚染」分析物信号測定値の2次元対応時間周波数を構築することができるように計算される。基準非分析物信号と汚染分析物信号との間で時間的に相関される対応する周波数係数は、当該影響を除去するためにゼロに設定される。
【0112】
分析物選択センサにおいて観察可能な非分析物由来信号摂動は、多くの生理化学処理からの起源を主張することができ、そのうちのいくつかは、生物学的環境に対して内因性であり、他のものは、当該センサの装着者によって引き起こされる外因性効果が原因で生じる。実際に、身体装着型分析物選択センサは、多くの場合、当該センサエンクロージャ若しくは筐体への圧力又は力の不注意な印加が原因である圧力誘起信号不規則性に屈してしまい、これらは、圧力誘起センサ減衰(pressure-induced sensor attenuations、PISA)と称される。これは、多くの場合、センサへの灌流の誘発された変化、又は酸素などの対象の分析物若しくは補因子の局所的な枯渇によって引き起こされる。拡散層(ナノメートルからミリメートルの範囲)の破壊はまた、当該分析物選択センサによって可能にされる感知動作が本質的に拡散制限されるので、当該PISA事象の原因である。分析物不変測定の実行は、当該分析物不変センサの応答が当該PISA事象に対して大きく影響を受けないことが概して理解されているので、特に急性期において、これらの事例の識別を可能にする。更に、全ての電気化学センサは、電気刺激による励起の直後に非ファラデー処理を受け、後続の信号応答は、コットレル関係によって分析物濃度に比例せず、むしろ溶液抵抗を通じた二重層キャパシタンスの充電に比例する。これは、電圧又は電流刺激による電気化学センサの励起時に常に現れ、Rdl時定数に従って有限時間内に無視できるレベルまで減衰し、式中、Rは、溶液抵抗であり、Cdlは、二重層キャパシタンスである。分析物選択センサと同じ非ファラデー信号減衰を受ける分析物不変センサは、非ファラデー信号応答から真の分析物信号を分離するために、差動構成において採用され得る。同様に、埋め込まれた分析物選択センサは、分析物レベルの正確な表示を測定する前に、「ウォームアップ時間」又は「バーンイン」と称される特定の持続時間を必要とする。ウォームアップ又はバーンイン処理は、複雑な生理化学的相互作用であり、これは、センサ膜の水和、センサ膜と周囲の間隙媒体との間の平衡の確立、及び分析物選択センサの感知表面上の循環内因性タンパク質(間隙空間を占有する)の吸着の間の相互作用によって支配される。分析物選択センサと同じウォームアップ処理を受ける分析物不変センサは、図3A図3C及び図4に示されるように、非ファラデー信号応答から真の分析物信号を分離するために、差動構成において採用され得、したがって、センサ適用後により適時に測定値を得る。
【0113】
本発明の好ましい実施形態は、システムのアナログフロントエンド、センサフロントエンド、組み込みコンピュータ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラにおいて、スマートフォン、スマートウォッチ、若しくはタブレットなどの無線接続されたモバイルデバイスにおいて、又はクラウドサービスにおいて、当該非分析物信号摂動の除去を含む。他の実施形態では、分析物不変センサの幾何形状及び/又は要素構成は、生体認識要素(すなわち、酵素、抗体、アプタマー)が存在しないことを除いて、分析物選択センサの幾何形状及び/又は要素構成と同一である。更に他の実施形態では、分析物不変センサの幾何形状及び/又は要素構成は、生体認識要素(すなわち、酵素、抗体、アプタマー)が不活性であるか、又は製造処理中に不活性にされていることを除いて、分析物選択センサの幾何形状及び/又は要素構成と同一である。更に他の実施形態では、システムは、複数の分析物選択センサと、単一の分析物不変センサとを含む。更に他の実施形態では、システムは、各々が固有の分析物に対して選択である、複数の分析物選択センサと、少なくとも1つの分析物不変センサとを含む。更に他の実施形態では、分析物不変センサからの読み出しは、分析物選択センサの温度依存性を分離及び除去するために利用される。更に他の実施形態では、分析物不変センサからの読み出しは、分析物選択センサが部分的感度を示す可能性がある共循環分析物からの干渉を分離及び除去するために利用される。更に他の実施形態では、分析物選択センサに入射する非分析物信号摂動の緩和の現在の方法は、対象の分析物の測定の信頼性及び/又は精度を改善するために、センサ融合アルゴリズムにおいて採用される。更に他の実施形態では、分析物選択センサ及び分析物不変センサは、マイクロニードルアレイ内の同じマイクロニードル構成物質を占有する。
【0114】
「アレイ」は、ユーザの生理液中の特定の生理学的状態又は代謝状態を示す、真皮間質内の内因性又は外因性の生化学物質、代謝産物、薬物、薬理学的、生物学的、又は薬剤を測定するように構成された、マイクロニードル又はマイクロニードルアレイベースの電気化学、電気光学、又は完全電子デバイスである。具体的には、当該マイクロニードルアレイは、200~2000μmの垂直範囲を有し、生存表皮又は真皮内、及び乳頭神経叢、乳頭下神経叢、又は真皮神経叢の近傍に位置する少なくとも1つの分析物のレベルを選択に定量化するように構成された複数のマイクロニードルを含む。当該マイクロニードルアレイは、電源、電子測定回路、マイクロプロセッサ、及び無線伝送器を収容するエンクロージャ又は筐体に収容され、並びに/又は取り付けられる。センサは、所望の着用期間にわたってセンサを接着するように意図された皮膚対向接着剤(センサ接着剤)で構成される。
【0115】
分析物選択センサ(「選択センサ」)は、当該マイクロニードルアレイの少なくとも1つのマイクロニードルの表面上の電極と、当該電極上に配置された選択認識要素であって、当該選択認識要素とユーザの生理液中の特定の生理学的状態又は代謝状態を示す分析物との相互作用から生じる生成物を生成するように構成された、選択認識要素と、当該選択認識要素上に配置された膜とである。当該分析物は、少なくとも1つの内因性又は外因性の生化学物質、代謝産物、薬物、薬理学的、生物学的、又は薬剤から構成されている。
【0116】
分析物不変センサ(「不変センサ」)は、「選択センサ」とは異なる当該マイクロニードルアレイの少なくとも1つのマイクロニードルの表面上の電極、及び当該電極上に配置された膜である。
【0117】
アルゴリズム(「アルゴリズム」)は、両方のセンサに存在するコモンモード信号を除去するために、「不変センサ」で生成された電気的応答の関数として、「選択センサ」で生成された電気的応答に適用される数学的変換である。
【0118】
方法では、測定値は、「選択センサ」で記録される。ユーザの生理液内を循環する標的バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、DNA、又はRNAのレベルの定性的又は定量的決定。次に、「アルゴリズム」は、「選択センサ」及び「不変センサ」で記録された測定値に適用される。したがって、数学的変換は、両方のセンサに存在するコモンモード信号を除去するために、「不変センサ」で生成された電気的応答の関数として、「選択センサ」で生成された電気的応答に適用される。当該アルゴリズムは、差分演算、雑音除去演算、回帰、逆畳み込み、フーリエ分解、バックグラウンド減算、カルマンフィルタリング、及び最尤推定のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0119】
本発明の入力は、分析物測定と、分析物不変測定とを含む。分析物測定は、ユーザの生理液内を循環する標的バイオマーカー、化学物質、生化学物質、代謝産物、電解質、イオン、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン、ミネラル、薬物、治療薬、毒素、酵素、タンパク質、核酸、DNA、又はRNAのレベルの定性的又は定量的決定である。測定は、「選択センサ」によって提供される。分析物不変測定は、起源が非分析物に関連する、分析物選択電気化学センサに入射する任意の内因性又は外因性、確率的又は非確率的、物理的及び/又は化学的処理の定性的又は定量的決定である。これらの処理は、多くの場合、当該分析物選択センサによって与えられる測定信号を損なうように働く。測定は、「不変センサ」によって提供される。
【0120】
本発明の出力は、コモンモード信号が除去された分析物測定値であり、これは、特定の対象分析物の内因性レベルの定性的又は定量的測定値である。
【0121】
図18A図18Cは、センサの図である。図18Cは、カバー109と、バッテリーを有するメインボード108と、コネクタボード107と、マイクロニードルアレイ110と、シール付きのベース106と、接着パッチ105とを含む主要構成要素を示すマイクロニードルセンサ100の分解レンダリングである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
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図17B
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図17D
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【国際調査報告】