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特表2023-533523船のロール安定化を行うためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】船のロール安定化を行うためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/06 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
B63B39/06 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500403
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2021068679
(87)【国際公開番号】W WO2022013014
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020208770.9
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517070958
【氏名又は名称】エス・ケイ・エフ マリーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SKF Marine GmbH
【住所又は居所原語表記】Hermann-Blohm-Str. 5, D-20457 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・バルゲンデ
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ・コルテマイアー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・シュネッケル
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シュパルデル
(57)【要約】
本発明は、ガイドフィンが配置されるフィン担持シャフトを含む、動作時に、停泊時に、または速度ゼロのときに船のロール安定化を行うための、かつ/または船の進路に影響を与えるためのデバイスに関し、水中でガイドフィンの実際の迎角を変更するために、フィン担持シャフトは、電気機械駆動ユニットにより駆動可能であり、また駆動ユニットは、ベースを用いて船体に配置される。本発明によれば、電気機械駆動ユニットは、減速する偏心変速機を用いて、フィン担持シャフトを駆動する同期モータを備えて構成されるように提供される。デバイスは、それにより、大幅に低減された取付けスペース要件を有し、わずかな動作ノイズを生ずるだけであり、かつ電子的に最適に調整することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドフィン(112)が配置されるフィン担持シャフト(110)を含む、動作時に、停泊時に、または速度ゼロのときに船(208)のロール安定化を行うための、かつ/または前記船(208)の進路に影響を与えるためのデバイス(100)であって、
水中(220)で前記ガイドフィン(112)の実際の迎角(α)を変更するために、前記フィン担持シャフト(110)は、電気機械駆動ユニット(120)を用いて駆動可能であり、
前記電気機械駆動ユニット(120)は、ベース(200)を用いて船体(204)に配置され、前記電気機械駆動ユニット(120)は、減速する偏心変速機(130)を用いて、前記フィン担持シャフト(110)を駆動する同期モータ(126)を備えて構成されることを特徴とする、デバイス(100)。
【請求項2】
前記偏心変速機(130)は、好ましくは180°で互いに対して円周方向にオフセットされて配置された2つの歯付ホイール(132、134)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記同期モータ(126)のロータシャフト(136)は、カップリング(138)が中に一体化される中空シャフト(150)として少なくとも部分的に構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記同期モータ(126)のロータシャフト(136)は、ロッキングデバイス(146)に関連付けられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
前記同期モータ(126)は、制御および/または調整デバイス(166)により制御されるパワーエレクトロニクス(160)により制御されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
前記同期モータ(126)は、ロータ位置角(φ)を決定するためのロータ位置センサ(178)と、前記ロータシャフト(136)の回転数nを決定するための回転速度センサ(180)と、を備える少なくとも1つのモータセンサ(176)を含むことを特徴とする、請求項5に記載のデバイス(100)。
【請求項7】
前記フィン担持シャフト(110)の実際の迎角(α)は、それに関連付けられた回転角センサ(186)を用いて直接取り込み可能であり、前記回転角センサ(186)は、前記フィン担持シャフト(110)の少なくとも1つの完全な回転を検出するように構成されることを特徴とする、請求項5または6に記載のデバイス(100)。
【請求項8】
前記ロータ位置センサ(178)および/または前記回転角センサ(186)は、好ましくは、それぞれ、絶対センサとして実施されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項9】
前記ガイドフィン(112)の目標迎角(β)は、前記制御および/または調整デバイス(166)を用いて前記ロータ位置角(φ)に基づいて計算可能であることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項10】
計算された前記目標とする迎角(β)と前記回転角センサ(186)を用いて測定された前記実際の迎角(α)との間の偏差が大きすぎる場合、特に、警告信号、再較正などのアクション(192)が、前記制御および/または調整デバイス(166)の支援によりトリガできることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項11】
前記同期モータ(126)のロータシャフト(136)、前記偏心変速機(130)の入力シャフト(140)、前記偏心変速機(130)の出力シャフト(142)、および前記フィン担持シャフト(110)は、実質的に互いに対して一直線になることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項12】
前記デバイス(100)が、前記船(208)の前記船体(204)上に配置されて、前記船(208)の進路に影響を与えることが、舵板状に実現可能になることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドフィンが配置されるフィン担持シャフトを含む、動作時に、停泊時に、または速度ゼロのときに船のロール安定化を行うための、かつ/または船の進路に影響を与えるためのデバイスに関し、フィン担持シャフトは、水中でガイドフィンの実際の迎角を変更するための電気機械駆動ユニットにより駆動可能であり、また駆動ユニットは、ベースを用いて船体に配置される。
【背景技術】
【0002】
客船、大型のヨット、浮きポンツーンなどのためのフィンスタビライザは、広範囲の変形形態において、従来技術から知られている。この場合、概して四角形のフィン形状が使用されている。四角形のフィンタイプを用いる場合、船の停泊時、または速度ゼロの時のロール安定化を行うために流体力学的に有効なフィン表面を最適化するように、フィンシャフトを、前面のフィン縁部に可能な限り近づけるように配置することが求められる。
【0003】
船の自動的な抗ロール安定化システムは、特許文献1から知られている。停泊時に船のローリング運動を安定化するための以前から知られたシステムは、特に、軸の回りで回転することができ、かつ船の船体の長手方向延長部に対して横方向に取り付けられた安定化フィンを備える。安定化フィンは、流体力学的な上昇力を生成するために、動作時に船体に対して相対運動を有する水流により衝突される流体力学的輪郭を有する。さらにシステムは、前述の軸回りで安定化フィンを回転させるように構成された作動器組立体を含み、作動器組立体は、船のロール信号に応じて、調整システムにより調整可能である。このために、調整システムは、ロール信号を生成するためのセンサ手段を含む。安定化フィンの角度位置を調整するために、調整システムは、エンコーダに結合される。調整システムはまた、センサ手段により提供されるロール信号を処理するように構成されたマイクロプロセッサ調整ユニットを含む。制御ユニットは、電気モータを制御するように働く。作動器組立体は、遊星歯車の減速変速機を介して、安定化フィンに接続される電気モータを含み、減速変速機の入力シャフトは、電気モータの出力シャフトに取り付けられ、また減速変速機の出力シャフトは、安定化フィンを支持するシャフトに対して取り付けられ、ここで、エンコーダは電気モータと結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2172394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低減された取付けスペース要件、および最適な調整可能性を備えた、低動作ノイズを有するロール安定化を行うための、かつ/または船の進路に影響を与えるためのデバイスを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的は、減速させる偏心変速機を用いてフィン担持シャフトを駆動する同期モータを用いて形成された電気機械駆動ユニットにより達成される。電気機械駆動ユニットであるため、スペース的に小型であり、費用効果が高く、低ノイズのデバイスが、高度の効率を備え、船のロール安定化のために実現することができる。従来の電気油圧式駆動装置と比較して、デバイスは、複雑な配管を必要とせず、したがって、取付けおよび維持努力は低減される。デバイスは、わずかな油量で動作することができ、トルクを生成する横方向力は何も生じない。加えて、電気機械駆動デバイスは、特に優れて電子的に調整可能である。船体に接続されるデバイスのベースは、低い製作精度でよく、特に適合されたボルトをもはや必要としない。空気冷却に代えて、概して、水冷が必要である。同期モータが水冷であるため、空気冷却と比較して、さらに低いノイズレベル、およびより小型の設計が達成される。
【0007】
偏心変速機は、好ましくは180°で、互いに対して円周方向にオフセットされた2つの歯付ホイールを含むことが好ましい。その結果、最適な滑らかな動作特性が、最小化されたノイズ放出および高いトルク伝達能力と同時に得られる。加えて、互いに対する歯付ホイールのわずかな円周方向回転により、偏心変速機の隙間をほとんど完全になくすことができる。
【0008】
1つの技術的に有利な設計においては、同期モータのロータシャフトは、結合がその中へと一体化される中空シャフトとして少なくとも部分的に構成される。それにより、極めてスペースを節約する設計が得られる。その結合はまた、デバイスの問題のない組立、ならびに船の船体への一体化を可能にし、かつ維持を簡単化する。
【0009】
同期モータのロータシャフトは、ロッキングデバイスと関連付けられることが好ましい。その結果、デバイスは、例えば、不使用時、または休止状態のとき、指定位置に機械的に保持され得る。
【0010】
さらに有利な設計の場合、同期モータは、制御および/または調整デバイスにより制御されるパワーエレクトロニクスにより制御される。同期モータの包括的な回転速度およびトルク調整は、それにより、例えば、四象限動作において可能である。最適な調整可能性を保証するために、同期モータは、永久励起同期機として、またはいわゆるブラシのない直流モータ(「ブラシレスDCモータ」)として構成されることが好ましい。
【0011】
好ましい改良の場合、同期モータは、ロータ位置角を決定するためのロータ位置センサと、ロータシャフトの回転数を決定するための回転速度センサと、を備える少なくとも1つのモータセンサを含む。それにより、同期モータの調整をさらに最適化することができる。
【0012】
フィン担持シャフトの実際の角度は、好ましくは、それに関連付けられた回転角センサを用いて直接検出可能であり、回転角センサは、フィン担持シャフトの少なくとも1回の完全な回転を検出するように構成される。流入する水に対して、フィンを担持するシャフトの迎角は、それにより、高い精度で、また同期モータのロータ位置とは独立して直接検出可能である。同期モータのロータシャフトとフィン担持シャフトとの間の可能な円周方向オフセット、またはわずかなねじれは、したがって認識することができる。
【0013】
1つの改良において、ロータ位置センサおよび/または回転角センサは、それぞれ、絶対センサとして実施されることが好ましい。増分式ロータ位置センサ、および増分式回転角センサと比較して、例えば、停電の後、または長い動作時間の後に、規定された位置にセンサを較正することは、それにより不必要である。さらに、起こり得る測定の不正確さの蓄積が回避される。
【0014】
ガイドフィンの目標とする迎角は、制御および/または調整デバイスを用いて、ロータ位置角に基づき計算可能であることが好ましい。回転角センサとは独立したガイドフィンの位置検出が、それにより偏心変速機の減速比の知識を用いて可能になる。
【0015】
計算された目標とする迎角と回転角センサを用いて測定された実際の迎角との間の偏差が大きすぎる場合、特に、警告信号、再較正などのアクションが、制御および/または調整デバイスの支援によりトリガ可能であることが好ましい。ガイドフィンの位置調整の精度は、それにより、さらに最適化され、かつ耐用年数にわたって維持することができる。
【0016】
1つの技術的に有利な設計の場合、同期モータのロータシャフト、偏心変速機の入力シャフト、偏心変速機の出力シャフト、およびフィン担持シャフトは、実質的に互いに一直線に延びる。最適な機械的効率が、最適な滑らかな動作特性と共に同時にそれにより得られる。
【0017】
デバイスの1つの技術的改良において、船の進路への影響が、舵板状に実現可能になるように、船の船体上にデバイスが配置されるように提供される。デバイスのさらなる機能性が、それにより与えられる。例えば、少なくとも1つのデバイスを、船の船尾の領域に設けることができる、ここで、ガイドフィンを含むフィン担持シャフトは、船体の長手方向軸に対して実質的に直角に舵または舵板のように方向付けられ、また同時に、ここで重力方向に、または水の床に向けて方向付けられる。フィンスタビライザとして使用される場合、デバイスまたはガイドフィンは、対照的に、水面に対して実質的に平行に、またはそれに対してわずかな角度で、船の船体上に配置される。フィンスタビライザとして使用される場合、少なくとも2つのデバイスが対で、かつ船の船体の長手方向軸に対して互いに対称的に、または船体の右舷および左舷に配置される。それとは対照的に、舵板は、少なくとも1つのデバイスを用いて実現することができる。さらに、船の進路に影響を与えるために、デバイスを舵、もしくは舵板として使用する場合、水中において、船の船体のローリング運動に対して、一定の安定化作用が達成され得る。
【0018】
以下では、本発明の好ましい例示的な実施形態が、概略的な図を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】船舶のフィンスタビライザとして例示的に構成されたデバイスのブロック図である。
図2】上から斜めに見た図1のフィンスタビライザの斜視図である。
図3図2のフィンスタビライザの部分的な長手方向断面を示す図である。
図4】フィンスタビライザの電気機械駆動ユニットの拡大された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、船舶のフィンスタビライザとして例示的に構成されたデバイスのブロック図を示す。水を介して、動作時に、停泊時に、または速度ゼロのときに、ここに示されていない船のロール安定化を行うための、かつ/または船の進路に影響を与えるためのデバイス100が、フィンスタビライザ102として例示のために過ぎないがここに具体化されている。加えて、船の船体上にデバイス100を配置することが可能であり、船の進路に影響を与えることも可能になり、したがって、デバイスは、従来の舵板の機能を備えるようになる。この構成は、図に示されていない。
【0021】
デバイス100またはフィンスタビライザ102は、特に、枢動可能なフィン担持シャフト110を備え、その上に、ガイドフィン112または安定化フィンが船のローリング運動を優先的に抑制するために取り付けられる。フィン担持シャフト110は、船舶として構成されることが好ましい、船の船体の、ここで示されていないが、長手方向軸に対して実質的に平行に方向付けられ、フィンスタビライザ102の休止状態、または非活動状態において、ガイドフィン112は、水面に対して実質的に平行に延びる(図2の参照番号222を参照のこと)。ガイドフィン112の実際の迎角αを変えるために、フィン担持シャフト110は、それに応じて、電気機械駆動ユニット120を用いて枢動可能である。
【0022】
電気機械駆動ユニット120は、特に、非常に減速的に動作する偏心変速機130を用いて、フィン担持シャフト110を回転駆動する同期モータ126を備える。偏心変速機130は、好ましくは、互いに対して180°で円周方向にオフセットされた2つの歯付ホイール132、134を含み、それにより、遊びからの大幅な自由度が保証される。従来のインボリュート歯型を用いて動作する偏心変速機130の詳細な構成設計は、電気機械駆動技術の分野で活動する専門家には十分に知られたものであり、したがって、この点において、記述の簡素化および簡潔さのために、偏心変速機130の詳細な説明は省略することができる。同期モータ126は、偏心変速機130の入力シャフト140に、動作中に解放できないカップリング138を介して接続されるロータシャフト136をさらに含み、したがって、ロータシャフト136および入力シャフト140は共に回転する。偏心変速機130は、その実際の迎角αが、0°から360°(360°を含む)の範囲で枢動可能であるようにゆっくりと回転する出力シャフト142により、ガイドフィン112を含むフィン担持シャフト110を駆動する。ロータシャフト136は、ロッキングデバイス146にさらに関連付けられ、それを用いて、ロータシャフト136は一時的に固定可能であり、したがって、例えば、フィンスタビライザ102が、非活動状態にあるとき、ガイドフィン112は、最も低い可能な流れ抵抗で周囲の水に抗する適切な枢動位置に固定可能である、または保持される。同期モータ126のロータシャフト136は、中空シャフト150として少なくとも部分的に実施されることが好ましく、その中に、カップリング138が、スペースを節約するように一体化される。このために、中空シャフト150は、少なくとも部分的に、同期モータ126のロータシャフト136を同軸に囲む。その結果、電気機械駆動ユニット120の軸方向の取付けスペース要件の大幅な低減が得られる。
【0023】
同期モータ126のロータシャフト136、偏心変速機130の入力シャフト140、偏心変速機130の出力シャフト142、およびフィン担持シャフト110は、互いに対して実質的に一直線に方向付けられ、それにより、小さな取付けスペース要件と対になって高いエネルギー効率が得られる。
【0024】
同期モータ126は、船または船舶の電気システム162から供給されるパワーエレクトロニクス160により制御される。電気システム162は、ここでは、中性線を用いた3相、3相ネットワークとして例示的にだけであるが実施される。可能な保護導体は示されていない。パワーエレクトロニクス160は、強力なデジタル電子制御、および/または調整デバイス166により包括的に制御され、または駆動される。例えば、位置センサ170を用いて、船または船舶の空間位置、ならびに動きもしくは回転速度を、3つのすべての空間方向において完全に取り込むことができる。したがって、船舶の船体のすべてのロール、ピッチ、およびヨー運動を測定することができる。簡単化するために、位置センサ170は、ロールセンサ172として実施することができ、したがって、船の船体の少なくともローリング運動は、制御および/または調整デバイス166によって取り込むことができる。
【0025】
同期モータ126は、ロータシャフト136に結合されたモータセンサ176をさらに含み、そのモータセンサ176は、少なくとも1つのロータ位置センサ178と少なくとも1つの回転速度センサ180とを備える。ロータ位置センサ178の支援を得て、同期モータ126のロータ位置角φを決定することができ、したがって、同期モータ126のステータまたはロータの巻取りは、それに応じて、時期をずらして(staggered basis)制御可能である、または付勢可能である。加えて、回転速度センサ180は、ロータシャフト136により実施される回転数nの少なくとも1つの記録を可能にする。さらに、フィン担持シャフト110の、したがって、水中におけるガイドフィン112の現在の実際の迎角αは、回転角センサ186を用いて、すなわち、同期モータ126のロータ位置とは独立して、制御および/または調整デバイス166により高精度で直接検出可能である。フィン担持シャフト110上の回転角センサ186は、フィン担持シャフト110の少なくとも1回の完全な回転を記録するように構成されることが好ましい。流入する水に対してフィン担持シャフト110の現在の実際の迎角αは、それにより、高精度で、かつ同期モータのロータ位置とは独立して制御および/または調整デバイス166から直接取り込むことができる。同期モータ126のロータシャフト136とフィン担持シャフト110との間の起こり得る円周方向オフセット、またはわずかなねじれは、制御および/または調整デバイス166により制御されるパワーエレクトロニクス160を用いて、同期モータ126を適切に制御することにより検出可能であり、かつ補償可能であり、それにより、船舶の最適なロール安定化が得られる。
【0026】
ロータ位置センサ178と回転角センサ186とは共に、それぞれ、高精度を有するいわゆる絶対センサとして実施されることが好ましく、したがって、特に、蓄積された測定の不正確さによる、または停電後の再較正は不必要である。
【0027】
制御および/または調整デバイス166はまた、測定されるロータ位置角φ、船舶の最適なロール安定化のために指定されるガイドフィン112の目標とする迎角βに基づいて決定するように構成され、したがって、パワーエレクトロニクス160により制御される同期モータ126を用いて、ガイドフィン112のフィン担持シャフト110は、それに応じて、介在する偏心変速機130により回転され得る。この調整プロセスは、水中の船舶の空間位置に対して、位置センサ170により供給される測定値を同時に考慮して実施されることが好ましい。計算された目標とする迎角βと回転センサ186の回転角を用いて測定された実際の迎角αとの間に、大きすぎる偏差がある場合、制御および/または調整デバイス166は、例えば、警告信号、フィンスタビライザ102の再較正などの形で、制御および/または調整デバイス166によりアクション192をさらにトリガするようにさらに構成される。
【0028】
制御および/または調整デバイス166は、パワーエレクトロニクス160の支援を用いて、同期モータ126の適切な制御により、センサにより供給される測定信号、または測定値に基づき、水中における船舶の、少なくとも周期的なローリング運動、および理想的な場合はまた、すべてのピッチおよびヨー運動を、可能な限り有効に抑制するためにさらに提供される。このために、対応する調整アルゴリズムが、デジタルの電子制御および/または調整デバイスの内部に実装されることが好ましい。
【0029】
図2は、上から斜めに見た図1のフィンスタビライザの斜視図を示す。フィンスタビライザ102は、ベース200を用いて、船舶206の船体204の船殻202に対して内側に取り付けられる。船舶206は、本発明のフィンスタビライザ102を使用することのできる、船体を含む任意の船208の例として、本明細書において例示的にだけ述べられる。ガイドフィン112は、船殻202を介してガイドされるフィン担持シャフト110に取り付けられる。フィン担持シャフト110の長手方向中心軸210は、船舶206の船体204の長手方向軸216に対して実質的に直角に延びる。電気機械駆動ユニット120を用いると、フィン担持シャフト110の、したがって、ガイドフィン112の実際の迎角αは、各間隔の限度を含み、好ましくは0°から360°の範囲、または±180°の範囲で、制御および/または調整デバイスにより周囲の水220に対して枢動され得る。図2で示されるガイドフィン112の位置において、それは、ここでは、単なる例に過ぎないが、単に図で示された水面222に対して実質的に平行に、かつその下に延びる、すなわち、ガイドフィン112の実際の迎角αは、ここでは、例示的に、約0°の実際の迎角αに設定されている。
【0030】
フィン担持シャフト110の長手方向中心軸210と座標系224のxy平面に対して平行に延びる水平面との間の取付け角γは、原理的に0°と90°とに含まれ得る。90°の取付け角γを用いると、フィンスタビライザ102のガイドフィン112のフィン担持シャフト110の長手方向中心軸210は、水平面に対して直角に、したがって、重力場gの方向に対して平行に延び、船殻202は、船舶206の、または船208のベース領域において延びる。
【0031】
フィンスタビライザ102が、例えば、船尾領域(船尾)に、約90°の取付け角γを備えて配置され、かつ船舶206または船208のスクリューの後部に通常配置される場合、デバイス100は、船舶206の進路に影響を与えるための舵としてさらに動作することができる。
【0032】
長手方向中心軸210が、ほぼ0°の取付け角γで、すなわち、水平面にほぼ平行に、またはxy平面224に(水面222)平行に、したがってまた、重力gの方向に直角に延びる場合、フィンスタビライザ102の舵作用は排除される。概して、船舶206の、または船208の船体204において枢動可能ではないフィンスタビライザの取付け角γは、約45°の値になる。
【0033】
直角座標系224は、すべての構成要素の互いに対する空間位置を示す。船舶206の船体204の長手方向軸216は、x軸に対してほぼ平行に延び、またフィン担持シャフト110の長手方向中心軸210は、y軸に対して実質的に平行に、または船体204の長手方向軸216に対して横方向に方向付けられるが、座標系224のz軸は、水面222に対してほぼ直交する、重力に平行に、または重力の作用方向に向けられる。制御および/もしくは調整デバイス100、またはフィンスタビライザ102を用いて主として抑制される船舶206の船体204のローリング運動は、座標系224のx軸回りで生ずるが、ピッチ運動はy軸回りで生じ、ヨー運動はz軸回りで生ずる。
【0034】
電気機械駆動ユニット120は、次いで、高い機械的減速を実現するために、その下流に接続される偏心変速機130を含む同期モータ126を特に備える。
【0035】
図3は、図2のフィンスタビライザの部分的な長手方向断面を示す。フィンスタビライザ102は、ベース200を用いて、船舶206の、または船208の船体204の船殻202に固定して接続される。フィン担持シャフト110は、船舶206の船殻202を通り封止してガイドされ、電気機械駆動ユニット120を用いてその長手方向中心軸210回りで回転することができる。フィン担持シャフト110に接続されるガイドフィン112は、図3には描かれていない。再度、本発明のフィンスタビライザ102の電気機械駆動ユニット120は、同期モータ126を備え、そのロータシャフト136は、中空シャフト150として構成されることが好ましく、ロータシャフト136および偏心変速機130が共に回転するように、カップリング138を用いて偏心変速機130に接続される。偏心変速機130は、その一部においてフィン担持シャフト110に結合され、それらは共に回転するようになる。
【0036】
本発明の部分的な態様として、カップリング138は、少なくとも部分的に、中空シャフト150の内側に同軸に配置され、それにより、フィンスタビライザ102の必要な軸方向取付け空間のかなりの低減が、長手方向中心軸210に沿って得られる。機械的なカップリング138は、短期間の開口または解放が意図されていない。そうではなくて、カップリング138は、特に修理のため、維持管理のためなどを行うためなどに、フィンスタビライザ102の取付け、およびおそらく必要になる取外しを簡単化する。加えて、図3から、同期モータ126のロータシャフト136、カップリング138、偏心変速機130、およびフィン担持シャフト110は、長手方向中心軸210に沿って互いに一直線になり、それにより、フィンスタビライザ102の高いエネルギー効率が得られることが分かる。
【0037】
図4は、フィンスタビライザの電気機械駆動ユニットの拡大された斜視図を示す。
【0038】
フィンスタビライザ102は、ベース200を用いて船舶206の船体204の船殻202の内側に取り付けられる。フィン担持シャフト110は、駆動ユニット120によりその長手方向中心軸210回りで回転可能であり、また防水して船殻202を通ってガイドされる。電気機械駆動ユニット120は、同期モータ126、カップリング138、ならびにフィン担持シャフト110、およびそれに取り付けられたガイドフィン112を含む偏心変速機130を備える。回転角センサ186に対する純粋に視覚的な例示の実施形態として、同期モータ126は、船舶206の船体204の内部において、ガイドフィン112のフィン担持シャフト110の現在の実際の迎角αを見る人のために光学的な視覚化を提供するように、針タイプの、機械的なインジケータ要素230を含む。このために、インジケータ要素230は、適切な方法で、フィン担持シャフト110に機械的に結合される。ガイドフィン112は、周囲の水220に対する流入縁部234および流出縁部236を含む流線形の横断面輪郭232を含む。
【0039】
船舶のロール安定化のための発明性のあるデバイスに対する単なる例として、本明細書に述べられたフィンスタビライザ102は、低減された取付けスペース要件を必要とするが、最小の動作ノイズを生ずるに過ぎず、船舶206の長手方向軸回りにおける望ましくないローリング運動の最適な抑制のための最適な調整可能性を有する。
【0040】
本発明は、ガイドフィン(112)が配置されるフィン担持シャフト(110)を含む、動作時に、停泊時に、または速度ゼロのときに、船(208)のロール安定化を行うための、かつ/または船(208)の進路に影響を与えるためのデバイス(100)に関し、水中(220)でガイドフィン(112)の実際の迎角(α)を変更するために、フィン担持シャフト(110)は、電気機械駆動ユニット(120)により駆動可能であり、また駆動ユニット(120)は、ベース(200)を用いて船体(204)に配置される。本発明によれば、電気機械駆動ユニット(120)は、減速する偏心変速機(130)を用いて、フィン担持シャフト(110)を駆動する同期モータ(126)を備えて構成されるように提供される。デバイス(100)は、それにより、大幅に低減された取付けスペース要件を有し、わずかな動作ノイズを生ずるだけであり、かつ電子的に最適に調整することもできる。
【符号の説明】
【0041】
100 デバイス
102 フィンスタビライザ
110 フィン担持シャフト
112 ガイドフィン
120 駆動ユニット(迎角)
126 同期モータ
130 偏心変速機
132 歯付ホイール
134 歯付ホイール
136 ロータシャフト(同期モータ)
138 カップリング
140 入力シャフト
142 出力シャフト
146 ロッキングデバイス
150 中空シャフト
160 パワーエレクトロニクス
162 電気システム
166 制御および/または調整デバイス
170 位置センサ
172 ロールセンサ
176 モータセンサ
178 ロータ位置センサ
180 回転速度センサ
186 回転角センサ
192 アクション
200 ベース
202 船殻
204 船体
206 船舶
208 船
210 長手方向中心軸(フィン担持シャフト)
216 長手方向軸(船体)
220 水
222 水面
224 座標系
230 インジケータ要素
232 横断面輪郭
234 流入縁部
236 流出縁部
g 引力による力(重力)
α 実際の迎角(安定化フィン)
β 目標とする迎角(安定化フィン)
γ 取付け角
φ ロータ位置角
n 回転数
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】