(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】寛骨臼カップインプラント用のホルダ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/34 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
A61F2/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501508
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 GB2021051753
(87)【国際公開番号】W WO2022008925
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518158994
【氏名又は名称】エンボディ オーソピーディック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EMBODY ORTHOPAEDIC LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ウォズンクロフト
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA06
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC04
4C097DD01
4C097DD06
4C097EE02
4C097MM09
4C097SC05
(57)【要約】
本発明においては、医療用インプラントのためのカバーが提供され、カバーは、本体部分及びシールを備え、本体部分は、遠位端及び近位端を有し、近位端は、イントロデューサに接続するよう適合された領域を含み、シールは、本体部分から離れるよう近位方向に延在する少なくとも1個のタブを有する。また、本発明においては、そのようなカバーが組み込まれたシステム、並びにその製造方法及び使用方法が開示されている。更に、カバーと共に使用するよう適合されたイントロデューサも提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントのためのカバーであって、該カバーは、本体部分及びシールを備え、前記本体部分は、遠位端及び近位端を有し、該近位端は、イントロデューサに接続するよう適合された領域を含み、前記シールは、前記本体部分から離れるよう近位方向に延在する少なくとも1個のタブを有する、カバー。
【請求項2】
請求項1に記載のカバーであって、前記少なくとも1個のタブは、前記シールを変形させるよう操作可能である、カバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカバーであって、前記本体部分は、前記近位端と前記遠位端との間に少なくとも1個の隆起部分を有し、該隆起部分は、使用時に、前記カバーと前記医療用インプラントとの間の接触を維持するのを補助し、好適には、前記少なくとも1個の隆起部分は、2個の隆起部分である、カバー。
【請求項4】
請求項3に記載のカバーであって、前記少なくとも1個の隆起部分からほぼ等距離に、少なくとも1個の更なる隆起部分が配置されている、カバー。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のカバーであって、前記本体部分の前記近位端は、前記少なくとも1個のタブのそれぞれが通過できるよう構成された少なくとも1つのスロットを有する、カバー。
【請求項6】
請求項5に記載のカバーであって、隆起部分は、前記本体部分における前記少なくとも1つのスロットのそれぞれに隣接するよう配置されている、カバー。
【請求項7】
請求項3~6の何れか一項に記載のカバーであって、前記シールは、前記少なくとも1個の隆起部分上にわたって延在している、カバー。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のカバーであって、前記シールは、複数、好適には、2個のタブを有する、カバー。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のカバーであって、前記シールは、前記本体部分に取り外し可能に取り付け可能である、カバー。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のカバーであって、前記シールは、前記本体部分の固定取り付け領域に固定的に取り付けられ、前記固定取り付け領域は、前記シールと前記本体部分との間に、気密及び/又は水密のシール、又は実質的に気密及び/又は水密のシールを形成している、カバー。
【請求項11】
請求項10に記載のカバーであって、前記本体部分は、前記固定取り付け領域から離れた領域にて、前記本体部分と前記シールとの間にクリアランスを提供するよう寸法決めされ、これにより前記シールが前記カバーの長手方向軸線に向けて及び前記長手方向軸線から離れて移動可能である、カバー。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のカバーであって、該カバーは、前記シールを前記本体部分に接続するコネクタを更に備える、カバー。
【請求項13】
請求項12に記載のカバーであって、前記本体部分の遠位端は、前記コネクタを受け入れるために、コネクタ領域にてプロファイルされている、カバー。
【請求項14】
請求項13に記載のカバーであって、前記コネクタ領域は、前記コネクタを保持するようプロファイルされ、任意的に、前記コネクタは、前記コネクタ領域上のリムと相互作用する突起を有する、カバー。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載のカバーであって、前記医療用インプラントは、カップインプラントであり、前記カバーは、前記カップ内に適合するようプロファイルされている、カバー。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載のカバーであって、前記本体部分は、リムを有し、任意的に、前記リムは、輪郭付けされ、任意的に、前記リムは、前記医療用インプラントのリムの輪郭と一致するよう輪郭付けされている、カバー。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載のカバーであって、前記シールは、前記本体部分のリムの輪郭と一致するよう輪郭付けされている、カバー。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載のカバーであって、前記シールのリムは、前記少なくとも1個のタブを除いて、前記本体部分のリムから遠位に位置している、カバー。
【請求項19】
請求項1~18の何れか一項に記載のカバーを医療用インプラントに固定する方法であって、該方法は、
(i)任意的に、カバーを受け入れる前記医療用インプラントの領域に流体を加えるステップと、
(ii)前記カバーが前記医療用インプラントの表面に当接するまで、前記カバーを、前記医療用インプラントの前記領域内に導入することにより、前記カバーが前記流体を変位させるステップと、
(iii)任意的に、前記カバーに付加的な力を加えることにより、前記シールが本体部分と前記医療用インプラントとの間で圧縮されるステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項21に記載の方法であって、該方法は、前記カバーを前記医療用インプラントから解放することを更に含み、該付加的なステップは、
(iv)前記カバーと前記医療用インプラントとの間の前記シールを妨害するために、前記シール上における前記1個以上のタブを操作するステップと、
(v)前記カバーを、前記医療用インプラントから取り外すステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項1~18の何れか一項に記載の医療用インプラントのためのカバーと、イントロデューサとを備えるシステムであって、前記カバーは、前記イントロデューサに解放可能に固定可能であり、前記イントロデューサは、駆動シャフト及びコネクタハブを有し、前記イントロデューサは、前記コネクタハブを前記カバーに固定するラッチ手段を有し、任意的に、前記コネクタハブは、医療用インプラントのためのカバー内における相補的な谷と係合するリムを有する、システム。
【請求項22】
医療用インプラントと、請求項1~18の何れか一項に記載のカバーとを備えるシステムであって、前記カバーは、前記医療用インプラントの内面に解放可能に固定可能である、システム。
【請求項23】
駆動シャフトと、コネクタハブとを備えるイントロデューサであって、該イントロデューサは、前記コネクタハブを医療用インプラントのためのカバーに固定するラッチ手段を備え、任意的に、前記カバーは、請求項1~18の何れか一項に記載のカバーである、イントロデューサ。
【請求項24】
請求項23に記載のイントロデューサであって、前記コネクタハブは、医療用インプラントのためのカバー内における相補的な谷と係合するリムを有する、イントロデューサ。
【請求項25】
請求項23又は24に記載のイントロデューサであって、前記ラッチ手段は、前記駆動シャフトに対して移動可能である、イントロデューサ。
【請求項26】
請求項23~25の何れか一項に記載のイントロデューサであって、前記駆動シャフトは、前記コネクタハブの長手方向軸線からオフセットされている、イントロデューサ。
【請求項27】
請求項23~26の何れか一項に記載のイントロデューサであって、該イントロデューサは、前記イントロデューサのハンドル領域から前記コネクタハブに負荷を伝達するための衝撃シャフトを備え、前記衝撃シャフトは、前記駆動シャフトとは異なる、イントロデューサ。
【請求項28】
請求項27に記載のイントロデューサであって、前記駆動シャフトは、前記衝撃シャフトに対して独立して移動可能であることにより、前記駆動シャフトが前記コネクタハブに向かうよう及び前記コネクタハブから離れるよう(好適には、前記駆動シャフトの長手方向軸線と平行に)回転及び/又は移動可能である、イントロデューサ。
【請求項29】
請求項23~28の何れか一項に記載のイントロデューサであって、該イントロデューサは、前記駆動シャフトを前記コネクタハブに向けて付勢する手段を備え、好適には、前記付勢手段がばねを含む、イントロデューサ。
【請求項30】
請求項29に記載のイントロデューサであって、前記駆動シャフトを前記コネクタハブに向けて付勢する手段は、ラッチ手段から独立している、イントロデューサ。
【請求項31】
請求項23~30の何れか一項に記載のイントロデューサであって、前記駆動シャフトは、遠位端(即ち、前記コネクタハブの端)を有し、該遠位端は、オフセット角度で前記駆動シャフトを医療用インプラントのためのカバーと係合して回転させることを可能にするアダプタ、例えばボール駆動端を有し、該ボール駆動端は、任意的に、四角い側面を含む、イントロデューサ。
【請求項32】
請求項23~25の何れか一項に記載のイントロデューサであって、該イントロデューサの前記駆動シャフトは、前記イントロデューサのハンドル領域から前記コネクタハブに負荷を伝達するための衝撃シャフトとして機能する、イントロデューサ。
【請求項33】
請求項32に記載のイントロデューサであって、ラッチ手段は、前記コネクタハブに向けて付勢され、任意的に、前記ラッチ手段が前記コネクタハブから離れるよう移動されたときにのみ付勢が生じる、イントロデューサ。
【請求項34】
請求項32又は33に記載のイントロデューサであって、前記コネクタハブは、回転防止機能部、例えば突起を有し、好適には、前記突起は、医療用インプラントのためのカバー内における相補的な凹部と相互作用する、イントロデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寛骨臼カップインプラント用のホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
股関節表面置換術(HRA)カップ又は大径の股関節全置換術(THR)カップなど、大径支持面を有する寛骨臼カップインプラントは、移植中の保持が困難である。外科医は、機能にとって重要な正しい角度及び方位でカップが移植されていることを確認しつつ、準備された僅かに小さなサイズの寛骨臼ソケット内にカップを強制的に押し込まなければならない。更に、この押し込み過程で、超仕上げの支持面を損傷から保護することが不可欠である。従来のTHRカップの多くは、外側シェルと、金属シェルが埋め込まれた後に嵌め込まれる別個の支持ライナで構成されている。従って、金属シェルの内側は、イントロデューサシャフト、例えばねじ山又はバヨネットアタッチメント用の保持機能部を提供するのに使用される。しかしながら、この領域は、ライナが予め取り付けられたHRAカップ又はTHRカップでは使用できない。なぜなら、内面が支持面を形成しているからである。更に、外面は通常、骨ソケット内に完全に埋め込まれている。これまでのHRAカップの設計においては、様々な方法によってこの問題の解決が試みられてきたが、結果的にこれら方法は設計に関して妥協を余儀なくされるものである。即ち、支持面を減少させる或いは外側固定面を減少させることにより、又はカップリム近傍の軟部組織、例えば腰の筋腱に引っ掛かり及び悪化をもたらす保持機能部を含めることにより妥協するものである。
【0003】
ジルコニア強化アルミナセラミック(ZTA)及び架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの非金属支持材料を使用する新世代HRAインプラント及び大径THRは、移植中のカップ保持がより困難である。ZTAの場合、製造工程の制約及び材料の硬度により、金属製の股関節カップに時々見られる小さな保持機能部を追加することは技術的に難しいだけでなく費用もかかる。UHMWPEの場合、摩耗特性及び材料強度にとって、壁厚全体が維持されることが重要であるので、壁部分を減少させる保持機能部は望ましくない。更に、新世代の装置の幾つかにおいては、カップ上における非対称的機能部の特定の回転位置合わせが想定されており、これもカップの保持及び位置決めを複雑にする。
【発明の概要】
【0004】
これらの問題を解決するために、本発明は、カップ上における特別な保持機能部を必要とせずに、大径支持面を有する任意の股関節カップに適用可能な、カップを保持するための解決策を提供する。この解決策は、カバーアセンブリ及びカップインプラントの両者を確実に保持する液圧シールを、その両者の間に確立することにより機能する。カバーは、別個の機械的接続部を介してイントロデューサシャフトに接続され、そのイントロデューサシャフトは、準備された寛骨臼内にカップインプラントを位置決めすると共に、強制的に押し込むのに使用される。取り付けられた後、イントロデューサは取り外され、カバーは依然としてカップインプラントに取り付けられたままである。その後、カバーとカップインプラントとの間の液圧シールは、カバー上の解放タブを引っ張ることにより破壊され、カバーを容易に取り外すことができる。
【0005】
特許文献1(英国特許出願公開第2552173号明細書)において、同様の液圧シールは、(1)カップインプラント、(2)カバー、並びに(3)イントロデューサの3個の要素間で確立されるのに対して、最新の発明においては、(1)カップインプラントと(2)カバーとの間の2個の要素間でのみ確立される。これは、幾つかの利点を提供する。第1に、移植中に、外科医は、液圧シールを妨害することなく、イントロデューサをカバーから取り外したり再接続したりすることができる。これにより、寛骨臼内におけるカップの位置を確認できると共に、カップの位置を更に前進又は調整するためにイントロデューサを再び取り付けることができる。第2に、寛骨臼に接近するときにカップインプラントを回転させ、カップリム上の非対称的機能部を目的位置に配置し、寛骨臼の骨格的構造と一致させることができれば有利である。これは、ストレートイントロデューサシャフトが使用される場合、アセンブリ全体をシャフトの軸線周りで回転させることによって行うことができるが、オフセットシャフトが使用される場合、シャフトのオフセット位置に影響を及ぼさずにカップを独立して回転させることが望ましい。なぜなら、外科手術のアクセスに制約があるので、オフセットシャフトは、手術部位内における利用可能なスペースの狭いウィンドウ内に配置されるからである。更に、オフセットの最適な位置は、外科的アプローチ及び外科医の好みに応じて異なるので、オフセットシャフト及びカップリムの回転機能部を互いに独立して配置することが有利である。液圧シールがイントロデューサ上の機能部に依存しない場合、カバーが設けられたカップは、イントロデューサから独立して回転させる方がより容易である。イントロデューサを介してカップを回転させる機構については、以下において説明する。第3に、液圧シールは、2個の要素内に含まれているので、必要な流体量が減少し、保持力を低下させる気泡が流体システム内に残留する可能性が減少する。最後に、従来の発明に含まれている逆止弁及び解除機構は新規の発明にとっては不要であるので、液圧シールに寄与する構成要素が少なくなると共に、故障も少なくなる。
【0006】
特許文献1においては、流体中に低圧を確立する(又は吸引下に維持する)ための手段が記載されている。これは、密閉されたキャビティから余分な流体を逃がし、空気又は流体の再侵入を防ぐことによって十分な保持力が得られるので、必須ではないことが経験から判明している。従って、最新の発明に関しては、同様の減圧手段についての記載はない。更に、特許文献1においては、保持力を確立するために流体を使用するのが望ましいが、流体なしでも機能すると記載されている。この場合、密閉されたキャビティ内には空気のみが存在し保持力は低下する。最新の発明においても、流体なしで機能するが、保持力は低下する。
【0007】
本明細書においては、カップインプラントとカバーとの間の液圧シールに重点を置いている。第3の要素であるイントロデューサの説明は、文脈上含まれている。カバー及びイントロデューサは、好適には、滅菌された使い捨て器具として供給される。ただし、代替的に、使用前に汚染の除去、洗浄、滅菌を行えば、再使用可能な器具として供給することができる。
【0008】
主な機能は、カップインプラントとカバーとの間に保持力を確立することであり、その保持力は、カップインプラントが正しく配置された後に、寛骨臼ソケット内におけるカップの適合性を損なうことなく解放することができる。イントロデューサに外科用ハンマーで衝撃を与えることによってカップインプラントを僅かに小さなサイズの寛骨臼ソケット内に取り付けつつ、イントロデューサからカップインプラントに衝撃力を伝達するためにカップインプラント及びカバーの合わせ面は互いに完全に接触していなければならない。同時に、カップインプラント、特に超仕上げされた支持面は、保護されていなければならない。
【0009】
カバーは、シール構成要素(好適にはシリコーンゴム)及びカバー本体を備える。幾つかの好適な構成において、コネクタ(例えばスナップリングの形態)を使用することもできる。カバーとカップインプラントとの間の相互作用により、(a)余分な流体を逃して合わせ面間を完全に接触させることが可能であり、(b)液圧シールが確立されると共に、合わせ面が互いに保持され、(c)カップが正しく移植された後にカバーを除去するために液圧シールを妨害することが可能である。
【0010】
使用時に、カップインプラントは、流体(例えば滅菌水)で満たされ、カバーは、回転位置合わせされると共に、満たされたカップインプラントと互いに押し付けられる。カバー及びカップは、別々に押し付けられるか、又はカバーは、先にイントロデューサに取り付けられてからカップインプラントに押し付けられる。カバー及びカップインプラントの両者が一緒に押し付けられると、合わせ面が接触するまで、余分な流体がシールの周囲から排出される。別々に組み立てる場合、カップインプラント及びカバーは、その後にイントロデューサに取り付けられる。カップインプラントはその後、イントロデューサを介して手術部位に移動され、イントロデューサの端部をハンマーでたたいて寛骨臼ソケット内に押し込む前に、正しく位置合わせされる。カップの取り付け中、外科医による位置の確認及び評価をするために、イントロデューサはカバーが設けられたカップから取り外したり再接続したりすることができ、その際に液圧シールが影響を受けることはない。正しく配置されたら、カップリムから上方に向けて突出しているシールタブの1個を指又は鉗子で掴んで引っ張ることにより、カバーがカップから取り外される。この場合、以下において説明するように、小さな力で引っ張るだけでよい。
【0011】
液圧シールを維持するために、シールの幾つかの部分(通常は3つだが、2つ、4つ、5つ、又はそれ以上も利用可能)は、タブに隣接する領域及び他の領域を含め、カバー本体とカップ支持面との間で圧縮される。他の場所では、カバー本体とカップ支持面との間のシールに関して僅かなクリアランスが存在する。これにより、組み立て時に余分な流体が排出され、またこの領域において、シールのエッジが支持面に押し付けられることによって液圧シールが維持される。このように、液圧シールは、シールの圧縮又はシールのエッジが接触することによって全周にわたって維持される。シールのエッジは、支持面に接触する方向に付勢される。なぜなら、通常は平坦なシートから切り取られるシール(例えばシリコーン)部分は、球形に変形されつつ、その弾性によって自由形状に戻ろうとするからである。これにより、シールエッジのみならず、エッジに隣接するシール外側面も支持面に接触し、効果的な流体密又は気密のシールが形成される。
【0012】
シールは、タブを引っ張ることによって妨害される。なぜなら、シリコーンが伸びるにつれて、シリコーンが圧縮される量を超えて薄くなり、密閉されたキャビティに空気が流入する小さなギャップが生じるからである。タブを伸ばすには小さな力だけで十分であり、これによりタブを内方に向けて(カップの中心に向けて)伸ばすことができるので、カップの固定に対抗する力を回避することができる。
【0013】
カップと相互作用するシールの外側エッジに加えて、内側エッジもカバー本体とシールを形成し、完全に密閉されたキャビティを作る必要がある。これは、カバー本体と(存在する場合には)コネクタ(例えばスナップリング)との間で内側シールエッジを挟み、これによりシリコーンを圧縮して効果的な二次シールを形成することで実現することができる。二次シールを形成するための他の方法は当業者に周知されており、例えば、シール要素を(例えば、熱結合、接着結合を介して)カバー本体に接着するか、又はシールをカバーにオーバーモールディングすることを含むことができる。代替的に、シャフトのОリング溝にОリングを伸ばして嵌めるように、シールのより小径の中央孔を、カバーのより大径の溝に伸ばして嵌めることによって効果的なシール作ることができる。
【0014】
更に、カバーには、ラッチ機構及び回転駆動機構を介してイントロデューサを確実に取り付けることを可能にする機能が組み込まれているので、カバーが設けられたカップをイントロデューサ軸線周りで回転させることができる。これは、イントロデューサを完全に回転させることなく、カップリムの特徴を寛骨臼リムの骨格的特徴に意図したとおりに位置合わせするのに役立つ。イントロデューサがカバーに組み付けられると、ばね負荷されたラッチが自動的に係合し、その後に調整ノブを介して回転できると共に、特定の回転位置でロックすることができる。イントロデューサをカバーが設けられたカップから取り外すには、ノブを使用者に向けて引き戻してラッチを解除する。
【0015】
以下、本開示の好適な構成について説明する。
【0016】
医療用インプラントのためのカバーであって、カバーは、本体部分及びシールを備え、本体部分は、遠位端及び近位端を有し、近位端は、イントロデューサに接続するよう適合された領域を含み、シールは、本体部分から離れるよう近位方向に延在する少なくとも1個のタブを有する。
【0017】
少なくとも1個のタブは、シールを変形させるよう操作可能である。
【0018】
本体部分は、好適には、近位端と遠位端との間に少なくとも1個の隆起部分を有し、隆起部分は、使用時に、カバーと医療用インプラントとの間の接触を維持するのを補助し、好適には、少なくとも1個の隆起部分は、2個の隆起部分である。
【0019】
幾つかの構成においては、少なくとも1個の隆起部分からほぼ等距離に、少なくとも1個の更なる隆起部分が配置されている。
【0020】
好適な構成において、本体部分の近位端は、少なくとも1個のタブのそれぞれが通過できるよう構成された少なくとも1つのスロットを有する。
【0021】
好適には、隆起部分は、本体部分における少なくとも1つのスロットのそれぞれに隣接するよう配置されている。好適な構成において、シールは、少なくとも1個の隆起部分上にわたって延在している。
【0022】
シールは、複数、好適には、2個のタブを有することができる。
【0023】
シールは、好適には、本体部分に取り外し可能に取り付け可能である。
【0024】
シールは、好適には、本体部分の固定取り付け領域に固定的に取り付けられ、固定取り付け領域は、シールと本体部分との間に、気密及び/又は水密のシール、又は実質的に気密及び/又は水密のシールを形成している。
【0025】
本体部分は、好適には、固定取り付け領域から離れた領域にて、本体部分とシールとの間にクリアランスを提供するよう寸法決めされ、これによりシールがカバーの長手方向軸線に向けて及び長手方向軸線から離れて移動可能である。
【0026】
幾つかの構成において、カバーは、シールを本体部分に接続するコネクタを更に備える。本体部分の遠位端は、コネクタを受け入れるために、コネクタ領域にてプロファイルすることができる。コネクタ領域は、コネクタを保持するようプロファイルすることができ、任意的に、コネクタは、コネクタ領域上のリムと相互作用する突起を有する。
【0027】
好適には、医療用インプラントは、カップインプラントであり、カバーは、カップ内に適合するようプロファイルされている。
【0028】
本体部分は、リムを有し、任意的に、リムは、輪郭付けされ、任意的に、リムは、医療用インプラントのリムの輪郭と一致するよう輪郭付けされている。
【0029】
幾つかの構成において、シールは、本体部分のリムの輪郭と一致するよう輪郭付けされている。
【0030】
幾つかの構成において、シールのリムは、少なくとも1個のタブを除いて、本体部分のリムから遠位に位置している。
【0031】
更に、カバーを医療用インプラントに固定する方法が提供され、該方法は、
(i)任意的に(例えば空気の代わりに液体を使用する場合)、カバーを受け入れる医療用インプラントの領域に流体を加えるステップと、(ii)カバーが医療用インプラントの表面に当接するまで、カバーを、医療用インプラントの領域内に導入することにより、カバーが流体を変位させるステップと、(iii)任意的に、カバーに付加的な力を加えることにより、シールが本体部分と医療用インプラントとの間で圧縮されるステップとを含む。
【0032】
この方法は、カバーを医療用インプラントから解放することを更に含むことができ、この付加的なステップは、(iv)カバーと医療用インプラントとの間のシールを妨害するために、シール上における1個以上のタブを操作するステップと、(v)カバーを、医療用インプラントから取り外すステップとを含む。
【0033】
更に、医療用インプラントのためのカバーと、イントロデューサとを備えるシステムが提供され、このシステムにおいて、カバーは、イントロデューサに解放可能に固定可能であり、イントロデューサは、駆動シャフト及びコネクタハブを有し、イントロデューサは、コネクタハブをカバーに固定するラッチ手段を有し、任意的に、コネクタハブは、医療用インプラントのためのカバー内における相補的な谷と係合するリムを有する。
【0034】
更に、医療用インプラントと、カバーとを備えるシステムが提供され、このシステムにおいて、カバーは、医療用インプラントの内面に解放可能に固定可能である。
【0035】
更に、駆動シャフトと、コネクタハブとを備えるイントロデューサが開示され、イントロデューサは、コネクタハブを医療用インプラントのためのカバーに固定するラッチ手段を備える。
【0036】
コネクタハブは、医療用インプラントのためのカバー内における相補的な谷と係合するリムを有することができる。
【0037】
好適には、ラッチ手段は、駆動シャフトに対して移動可能である。
【0038】
駆動シャフトは、コネクタハブの長手方向軸線からオフセットしていてもよい。このような構成において、イントロデューサは、イントロデューサのハンドル領域からコネクタハブに負荷を伝達するための衝撃シャフトを備え、衝撃シャフトは、駆動シャフトとは異なる。好適には、駆動シャフトは、衝撃シャフトに対して独立して移動可能であることにより、駆動シャフトがコネクタハブに向かうよう及びコネクタハブから離れるよう(好適には、駆動シャフトの長手方向軸線と平行に)回転及び/又は移動可能である。幾つかの構成において、イントロデューサは、駆動シャフトをコネクタハブに向けて付勢する手段を備え、好適には、付勢手段がばねを含む。駆動シャフトをコネクタハブに向けて付勢する手段は、ラッチ手段から独立している。
【0039】
駆動シャフトは、遠位端(即ち、コネクタハブの端)を有し、遠位端は、好適には、オフセット角度で駆動シャフトを医療用インプラントのためのカバーと係合して回転させることを可能にするアダプタ、例えばボール駆動端を有し、ボール駆動端は、任意的に、四角い側面を含む。
【0040】
駆動シャフトは、コネクタハブの長手方向軸線と平行であってもよい。イントロデューサの駆動シャフトは、イントロデューサのハンドル領域からコネクタハブに負荷を伝達するための衝撃シャフトとして機能することができる。幾つかの構成において、ラッチ手段は、コネクタハブに向けて付勢され、任意的に、ラッチ手段がコネクタハブから離れるよう移動されたときにのみ付勢が生じる。幾つかの構成において、コネクタハブは、回転防止機能部、例えば突起を有し、好適には、突起は、医療用インプラントのためのカバー内における相補的な凹部と相互作用する。
【0041】
以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】カバー本体を断面図及び詳細図と共に示す側面図である。
【
図4】カバーの全ての部品(カバー本体、シール、並びにスナップリング)を示す分解図である。
【
図5】組み立てられた状態のカバーを示す説明図である。
【
図6】組み立てられた状態のカバーを示す代替的な説明図である。
【
図7】カバーを断面図及び詳細図と共に示す上面図である。
【
図8】寛骨臼カップインプラントを示す説明図である。
【
図9】液体が充填されているカップインプラントを示す説明図である。
【
図10】カップインプラントに提供されるときのカバーを示す説明図である。
【
図11】組み立てられた状態のカバー及びカップインプラントを示す説明図である。
【
図12】カバー及びカップインプラントを断面図及び詳細図と共に示す上面図である。
【
図13】カバー及びカップインプラントを断面図及び詳細図と共に示す上面図である。
【
図13A】組み立て中に余剰水が排出されている状態を示す説明図である。
【
図13B】液圧シールで完全に組み立てられた状態を示す説明図である。
【
図14】カップをイントロデューサで寛骨臼内に圧入している状態を示す説明図である。
【
図15】寛骨臼内に取り付けられたカップ及びカバーを示す説明図である。
【
図16】カップからカバーが取り外されている状態を示す説明図である。
【
図17】カップからカバーが取り外されている状態を示す断面図である。
【
図18】オフセットイントロデューサシャフトを示す斜視図である。
【
図19】オフセットイントロデューサシャフトを示す半分解斜視図である。
【
図20】ラッチ(ロック)された位置にある、組み立てられた状態のカップインプラント、カバー、並びにイントロデューサシャフトを断面図及び詳細図と共に示す側面図である。
【
図21】ラッチ解除(解放)された位置にある、組み立てられた状態のカップ、カバー、並びにイントロデューサシャフトを示す断面詳細図である。
【
図22】ストレートイントロデューサシャフトを示す斜視図である。
【
図23】ストレートイントロデューサシャフトを断面図及び詳細図と共に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1~
図3は、組み立て前のカバー本体1を示す。カバー本体は、押し込み中にカップインプラントが損傷しないよう適切な材料で製造することができ、通常は高分子材料で製造することができる。カバーリム5は、カップインプラントリム26(例えば
図8参照)の輪郭形状と一致するようプロファイルすることができる。代替的に、カバーリムは、カップインプラントリムと一致するようプロファイルしなくてもよい。凹部4は、イントロデューサハブ44,58(
図19~
図23参照)を受け入れる。中央ボス2は、任意的に、イントロデューサラッチ50,62(
図19~
図23参照)を受け入れるために、外径にリム13及び/又は凹溝14を有することができる。中央ボス2は更に、任意的に、イントロデューサ34上の係合ボール駆動端53を受け入れる四角形凹部3を有することができる。四角形凹部は、代替的に、六角形、又は星形、又は軸線外駆動シャフトによって駆動可能な任意の形状にしてもよい。カップリム5は、好適には、シール15上のタブ17を収容する1つ以上のスロット10によって中断されている。カップは、カップインプラント25(
図8参照)の球形孔と実質的に一致するほぼ球形又は球形の直径を有する。この球形直径は、凹部領域11及び端部領域12を含む。凹部領域11は、スロット10に隣接する任意的に1個以上又は任意的に2個の隆起パッド8と、スロット10の中間にある任意的に少なくとも1個の付加的な隆起パッド9を有する。これらパッドは、以下において説明するように、シールが圧縮される領域に対応している。円筒形直径6は、隆起フランジ7によって保持されるスナップリング19を受け入れる。好適な構成において、カバーは、2個の隆起パッド、(即ちスロット10にそれぞれ隣接する1個の隆起パッド)と、これら2個の間の付加的な(第3)隆起パッドを備える。
【0044】
図4は、カバー22、カバー本体1、シール15、並びにスナップリング19の3個の構成要素全ての配置の分解図を示す。上述したように、スナップリングは任意的であってもよく、本明細書において、スナップリングを備えるカバーの配置に関する様々な要素の説明は、スナップリングが設けられない配置にも同様に適用可能である。シールは、シリコーンゴムなどの可撓性弾性材料で製造され、通常は例えば約1.5 mmの厚さの平坦なシート材料から型抜きされる。代替的に、シールは、ニトリルゴム、熱可塑性エラストマ(TPE)、ポリウレタン、又は当業者であれば認識している医療用途に適する他の任意の弾性材料で製造することができる。シールは、カバー本体上の円筒形直径6よりも小さい円形中央孔16を有し、組み立て時に伸ばされると、平坦なシールが円錐形に変形する(
図5及び
図6参照)。外側プロファイル18は、任意的に、カバーがカップインプラントと一緒に押されたときに、シールのエッジがカバーリム5とほぼ一致するが僅かに直前で留まり、2個のタブ17は、スロット10を通ってカップリムを越えて突出するよう輪郭付けされている(
図11~
図15参照)。スナップリング19が使用される場合、その形状は円形であると共に、フランジ21及び内周に多数のフィンガ20を有する。スナップリングは、カバー本体と同様の高分子材料で製造されているので、フィンガは半可撓性を有する。カバー本体及びスナップリングの両方は、ナイロンなどの高分子材料で3Dプリント又は型成形又は機械加工することができる。
【0045】
図5~
図7は、使用するために組み立てられたカバー本体22を示す。
図7(断面図及び詳細図)は、中央孔16に隣接すると共に、カバー本体1とスナップリング19上のフランジ21との間に挟まれたシール領域23を示す。この場合、領域23において、弾性材料は圧縮状態に留まり、シール15とカバー本体1との間に流体/気密のシールが形成されている。これら図は更に、スナップリングフィンガ20の位置も示し、フィンガ20は、スナップリングを所定位置に保持すると共に、領域23においてシールの圧縮を維持するカバー本体の隆起エッジ7と係合している。
【0046】
図8は、通常はHRAで使用されるカップインプラントを示す。この場合、カップ24は、半球形のシェルであると共に、支持面を形成する内面25を有し、その内面は、大腿骨頭インプラント(図示せず)と一致するよう極めて滑らかであると共に、正確に形成されている。外面27は通常、テクスチャ加工された生体適合性の表面及び/又はコーティングを有し、患者の寛骨臼ソケット内に直接的に圧入される。リム26は、図示の実施形態においては輪郭付けされているが、代替的な実施形態においては平坦又は平面的であってもよい。このタイプのカップインプラントは通常、ジルコニア強化アルミナセラミック(ZTA)又は架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)又はコバルトクロムモリブデン合金で製造される。他の実施形態(図示せず)において、カップインプラントは、上述した材料の組み合わせを使用して予め一緒に組み立てられた外側シェル及び内側支持面で構成してもよい。
【0047】
使用時に、カップ24は通常、滅菌包装から取り出されて平坦な表面上に置かれる。その後、流体(例えば滅菌水28)で充填される(
図9参照)。こぼれを回避するためにカップを平坦な表面上に置いた状態で、カバー22がカップ24内に嵌め込まれ、
図10に示すように、(存在する場合には)輪郭付けられたリム5,26がほぼ揃えられる。カバー及びカップが一緒に押し付けられると、合わせ面(カバーリム5及びカップリム26)が互いに接触するまで、余分な流体がシールの一部から排出される。
図11は、カバーがカップに完全に押し付けられ、合わせ面が完全に接触すると共に、液圧シールによって一緒に保持されている状態を示す。代替的に、カバーは、先にイントロデューサに取り付けられてからカップインプラントに押し付けられる。別々に組み立てる場合、カップインプラント及びカバーは、その後にイントロデューサに取り付けられる。
【0048】
図12は、液圧シールによって一緒に保持されているカップ及びカバーの断面図を示す。上述したように、密閉されたキャビティ27を維持するために、シールの一部は、タブ17に隣接する領域を含め、カバー本体とカップ支持面との間で圧縮されている。他の場所では、カバー本体とカップ支持面との間のシールに関して僅かなクリアランスが存在する。この僅かなクリアランスにより、シールは、余分な流体を排出する開放位置と、密閉されたキャビティを維持するための閉鎖位置との間で変動することができる。
【0049】
図12Bは、プルタブ17に隣接するシール15の部分28が、カバー本体1とカップ支持面25との間で自由厚さ未満に圧縮されている状態を示す。図に例示されているように、カバーが3個の隆起パッドを備える場合、圧縮は、矢印29で示すように、2個のプルタブ17に隣接する領域と、これらプルタブの中間にある第3位置との3つの領域で生じる。これら圧縮領域は、カバー本体1上の3個の隆起パッド8,9に対応している。第3位置9は、安定化効果のために含まれており、特にプルタブ位置8で圧縮が維持されることを保証する。
【0050】
図12Aは、カバー本体1とカップ支持面25との間のシール15に関して僅かなクリアランスが存在する部分30を示す。この場合、シールは、シール自体の厚さよりも僅かに広いギャップを占有しており、これにより組み立て時に余分な流体がシールの外側周りから排出され、その後に流体又は空気が密閉キャビティ内に再び流入するのを防ぐために閉鎖される。流体力学に精通している者であれば、シールが「アンブレラチェックバルブ」と同様に機能し、流体の流れを一方向において許容し、逆方向において逆流を防ぐことを理解するであろう。図示の実施形態において、充填されたカップインプラントからの余分な流体は、逃がすことが可能になっている。なぜなら、余分な流体からの圧力により、シールがカバー表面に向けて内側に押されてカップ支持面から離れ、僅かな開口が形成されるからである。余分な流体が排出された後に圧力が正常化し、シールは再びカップ支持面に接触し、キャビティが密閉される。シールのエッジは、自由形状に戻ろうとする材料の弾性バイアスに起因し、支持面に向けて接触するよう付勢されている。これにより、シールエッジのみならず、エッジ近傍のシール外側面も支持面と面一に接触する。これに加えて、カバーをカップインプラントから分離しようとする力が存在する場合、例えばカップが寛骨臼内に操作される際、シール内側面上の正圧により、支持面と面一に接触する外側面が押され、シールが維持されると共に分離に抵抗する。このことは、
図13にシミュレートされている。この場合に
図13Aにおいて、シール15は、流出する余剰流体32の圧力により、カバー本体1の矢印31方向に内方に向けて押される。
図13Bにおいて、シールは、(a)材料の弾性バイアスと、(b)カバーをカップから分離しようとする力が存在する場合、内側面上の正圧とにより、矢印33方向に外方に向けて押される。
【0051】
別々に組み立てる場合、カップインプラント及びカバーは、その後にイントロデューサに取り付けられる。液圧シールが確立されたら、カップインプラントを手術部位に移動させ、
図14に示すように、骨盤36において予め準備された寛骨臼ソケット37内に操作することができる。これは、カップが完全に着座するまで、外科用ハンマー(図示せず)でイントロデューサ34の遠位端35に衝撃を与えることによって行われる。上述したように、イントロデューサ34は、
図15に示すように、外科医による確認のために及び/又は最終的な取り付けのために、押し込みのどの段階でもカバーが設けられたカップから取り外したり再接続したりすることができる。外科的アプローチに応じて、タブ17の少なくとも1個は、
図16に示すように、指で掴むか、又は鉗子38など標準的な外科器具を使用してカバーを取り外すために、アクセス可能である。シールは、タブ17を引っ張ることによって妨害される。なぜなら、弾性材料が伸びるにつれて、タブが領域28で圧縮される量を超えて薄くなり、密閉されたキャビティに空気が流入する小さなギャップが生じるからである。弾性材料は比較的軟らかく伸縮性を有するので、タブを引っ張ったり伸ばしたりするのに必要な力は小さくて済む。更に、タブは、内方に向けて(カップの中心に向けて)伸ばすことができるので、カップの固定に対抗する力を回避することができる。
【0052】
図17は、タブの1個を伸ばす効果のシミュレーションを示す。この場合にタブ17は、親指と人差し指で掴まれ、矢印39方向に引っ張られている。タブ17が伸ばされるにつれて、シール15とカップ支持面25との間で小さなギャップ41が生じるまで、タブが薄くなる。これにより、密閉されたキャビティ27に空気が流入して液圧シールが妨害され、カバーを容易に取り外すことが可能である。代替的に、タブは、カップの中心に向けて矢印40方向に引っ張り、これによりカップをソケットから引き出そうとする力を回避してもよい。
【0053】
図14及び
図18~
図21に示すイントロデューサ34の実施形態は、多くの外科医が好むオフセットシャフトを特徴としている。オフセットシャフトが好まれるのは、特に前方外科的アプローチ及び/又は切開サイズを小さくするために外科的アクセスを最小にする場合、ストレートイントロデューサシャフトによる寛骨臼への直接的なアクセスを妨げる障害が存在する可能性があるからである。イントロデューサは、ハンドル42と、オフセットシャフト43と、コネクタハブ44と、ラッチサブアセンブリ45と、ばねホルダ46と、ばね47とを備える。図示のオフセットシャフトは、2個のプレートで構成され、アセンブリ全体は、多数のリベットナット48で固定されている。ただし、オフセットシャフトは、単一のピース又は複数のピースで構成することもでき、またアセンブリを一緒に固定する手段は、リベットナットに限定されず、当業者に知られている適切で任意の固定手段であってもよいことが理解されるであろう。
【0054】
ラッチサブアセンブリ45には、カバーを保持するためのラッチ50を有するハウジング49と、イントロデューサの長手方向軸線周りでカバーを回転させるための回転駆動シャフト51と、回転駆動シャフトを特定の位置にロックするカムレバー52などのラッチ手段とが組み込まれている。駆動シャフトは、その遠位端にアダプタを有し、そのアダプタによって駆動シャフトがオフセット状態でカバーを回転させることが可能である。図示の構成において、このアダプタは、四角い側面を有するボール駆動端53として表されており、これら四角い側面は、カバー上の四角い凹所駆動機能部3と係合する。ボール駆動端53は、ねじに対して軸線外の角度で工具を使用可能とする標準的なボール端アレンキーに類似しているが、アレンキーボール駆動部は側面が六角形であるのに対して、図示のボール駆動端は側面が四角い。この場合、ボール駆動端により、回転駆動シャフトは、カバー回転軸線に対して軸線外になることが可能である。これは、イントロデューサシャフトの形状がオフセットされているので必要である。代替的に、ボール駆動端53及びカバー本体1上の嵌合凹部3は、六角形、又は星形、又は軸線外の駆動シャフトを介して回転可能な任意の形状であってもよい。
【0055】
ラッチサブアセンブリ45は、駆動シャフト軸線と平行な方向に短距離だけ自由にスライドできるが、ばねホルダ46の位置は(例えばリベットナットによって)固定されているので、ばね47がラッチサブアセンブリをハブ44に向けて付勢している。これにより、ラッチ50及びボール駆動部53は、カバーに係合したりカバーから離脱したりすることができる。カバーがイントロデューサと一緒に組み立てられると、ハブ44は、カバー凹部4と係合する。ラッチ及びボール駆動部は、ラッチ及びボール駆動部がそれぞれの係合部内に落ち込むまで、カバーボスリム13によって矢印54方向に押し戻される。これは、使用者がそれらを一緒に押すと、ばね力で自動的に生じる。カバーを離脱及び解放するには、使用者はまず、駆動シャフト51上のノブを介してラッチアセンブリを
図21に示す矢印54方向にばね力に抗してある距離(例えば3~4ミリメートル)だけ引っ張る必要がある。駆動シャフトの回転をロックするラッチ手段(例えばカムレバー52)は、ラッチサブアセンブリの動作とは独立しており、いつでも係合又は離脱させることができる。
【0056】
図20は、ラッチ及びボール駆動部を係合位置で示し、
図21は、ラッチ及びボール駆動部をラッチアセンブリが矢印54方向に引き戻された離脱位置で示す。
【0057】
図22及び
図23は、ストレートシャフト55を備えるイントロデューサの代替的な構成を示す。このストレートイントロデューサは、ハンドル56と、シャフト57と、コネクタハブ58と、キャリッジ59とを備え、(例えば多数のリベットナット48によって)互いに固定されている。ストレートシャフトの場合、カバーを回転させるための機構を含む必要はない。なぜなら、イントロデューサ全体を回転させてカップインプラントを適切な回転方向に合わせることができるからである。ストレートイントロデューサコネクタハブには、任意的に、回転防止ピン60が組み込まれており、カバー本体1の相補的なスロット61に係合するので、カバー及びイントロデューサが一体に回転する(オフセットイントロデューサはそのようなピンを含む必要はないが、幾つかの構成においては設けられていてもよい)。ストレートイントロデューサは、シャフト軸線と平行な方向に自由に移動可能なキャリッジを備える。キャリッジには、カバーボス14の凹部と係合する(任意的に2個の)ラッチ62が組み込まれている。ラッチは、ハブ58の(任意的に三角形の)部分64と係合する半可撓性のフィンガ/プロング63上に配置されている。キャリッジが矢印65方向に移動すると、ラッチプロングが(三角形の)部分64に沿って移動するので、結果として矢印66方向にラッチがカバーボス凹部14から出るよう移動してカバーが解放される。当業者であれば、キャリッジがコネクタハブから遠ざかる際にラッチフィンガが外方に向けて強制的に移動する同様の効果を実現するために、他の適切な形状が使用可能であることを認識するであろう。ばねの代わりに、キャリッジは、3個のリベットナット48のうちの1個に隣接して位置する狭窄部68(図示の構成においては2個)を有するスロット67を含む。キャリッジが矢印65方向に戻ると、狭窄部68がリベットナット(又は他の同様のピン)の直径を越えて上方に移動し、その際にキャリッジをハブ58に向けて付勢する効果を発揮し、ばねのように作用する。当業者であれば、同様の効果を実現するために利用可能な他の付勢手段(例えばばねの使用)を認識するであろう。キャリッジは更に、ラッチを解放するためのフィンガグリップを形成するフランジ69を含む。
【0058】
カバーはユニバーサル式であるので、外科医の好みに応じてストレートイントロデューサ又はオフセットイントロデューサの何れかに対応している。好適には、カバーは使い捨て使用のために滅菌状態で提供されるか、又は洗浄し、再滅菌し、複数回にわたって再使用することができる。当業者であれば、互換性を高めると共に、器具の在庫を減らすために、ストレートイントロデューサ及びオフセットイントロデューサの両方に適合するよう共通に設計されたカバーを有するのが有利であることを理解するであろう。
【関連特許文献】
【0059】
【特許文献1】英国特許出願公開第2552173号明細書
【国際調査報告】