(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】抗ヒト免疫不全ウイルス-1抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230727BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20230727BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20230727BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230727BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230727BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230727BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230727BHJP
C07K 17/08 20060101ALI20230727BHJP
C07K 17/04 20060101ALI20230727BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230727BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/10
C07K17/00
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C07K17/08
C07K17/04
G01N33/569 H
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501521
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 IB2021056284
(87)【国際公開番号】W WO2022013730
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516315775
【氏名又は名称】グリフォルス ダイアグノステック ソリューションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリザベト・ナシメント
(72)【発明者】
【氏名】ジョディ・メルトン・ウィット
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CC24
4B064DA15
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA53
4H045FA74
4H045FA81
4H045FA82
(57)【要約】
L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む抗HIV-1抗体であって、L-CDR1は、配列番号15、配列番号18、配列番号21、及び配列番号15、18又は21のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号19、配列番号22、及び配列番号16、19又は22のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号17、配列番号20、配列番号23、及び配列番号17、20又は23のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択される、抗体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含む抗HIV-1抗体であって、
L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号15、配列番号18、配列番号21、及び配列番号15、18又は21のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、
L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号19、配列番号22、及び配列番号16、19、又は22のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、
L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号17、配列番号20、配列番号23、及び配列番号17、20又は23のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択される、抗HIV-1抗体。
【請求項2】
前記抗体が、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、
H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号24、配列番号27、配列番号30、及び配列番号24、27又は30のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、
H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号25、配列番号28、配列番号31、及び配列番号25、28、又は31のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、
H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号26、配列番号29、配列番号32、及び配列番号26、29又は32のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択される、請求項1に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項3】
軽鎖が、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む、請求項1又は2に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項4】
軽鎖が、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項5】
重鎖が、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項6】
重鎖が、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項7】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号15、又は配列番号15と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号16、又は配列番号16と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号17、又は配列番号17と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項8】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号18、又は配列番号18と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号19、又は配列番号19と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号20、又は配列番号20と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項9】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号21、又は配列番号21と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号22、又は配列番号22と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号23、又は配列番号23と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項10】
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号24、又は配列番号24と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号25、又は配列番号25と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号26、又は配列番号26と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項11】
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号27、又は配列番号27と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号28、又は配列番号28と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号29、又は配列番号29と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6又は8のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項12】
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号30、又は配列番号30と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号31、又は配列番号31と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号32、又は配列番号32と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6又は9のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項13】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号15、又は配列番号15と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号16、又は配列番号16と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号17、又は配列番号17と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号24、又は配列番号24と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号25、又は配列番号25と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号26、又は配列番号26と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項14】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号18、又は配列番号18と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号19、又は配列番号19と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号20、又は配列番号20と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号27、又は配列番号27と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号28、又は配列番号28と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号29、又は配列番号29と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項15】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号21、又は配列番号21と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号22、又は配列番号22と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号23、又は配列番号23と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号30、又は配列番号30と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号31、又は配列番号31と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号32、又は配列番号32と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項16】
前記抗体の軽鎖が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項17】
前記抗体の重鎖が、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項18】
前記抗体の軽鎖が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項19】
モノクローナル抗体又は組換え抗体である、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項20】
抗体断片である、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項21】
抗体断片が、可変断片(Fv)、一本鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体(sc(Fv)
2)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab')
2断片、Fab'断片、ジスルフィド連結型Fv(dsFv)、化学的コンジュゲート型Fv(ccFv)、ダイアボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、アフィボディ、ナノボディ、及びユニボディから選択される、請求項20に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項22】
マウスIgG1クラス又はマウスIgG2aクラスの定常領域を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項23】
固体支持体と結合している、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体を含む、細胞。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列、前記ヌクレオチド配列と作動可能に連結されたプロモーター、及び選択マーカーを含む核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含む細胞。
【請求項27】
抗HIV-1抗体が固体支持体と共有結合性に又は非共有結合性に結合している、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体、及び固体支持体を含む組成物。
【請求項28】
固体支持体が、粒子、ビーズ、膜、表面、ポリペプチドチップ、マイクロタイタープレート、又はクロマトグラフィーカラムの固相を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
試料中のHIV-1の存在を検出するためのキットであって、前記キットが、請求項1~23のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗HIV-1抗体、及び固体支持体を含み、前記少なくとも1つの抗HIV-1抗体が、固体支持体と共有結合性に又は非共有結合性に結合している、キット。
【請求項30】
配列番号33のアミノ酸配列を含むHIV-1 p24タンパク質のエピトープに特異的に結合することを特徴とする抗HIV-1抗体。
【請求項31】
L-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号21、又は配列番号21と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号22、又は配列番号22と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
L-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号23、又は配列番号23と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項30に記載の抗HIV-1抗体。
【請求項32】
H-CDR1のアミノ酸配列が、配列番号30、又は配列番号30と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR2のアミノ酸配列が、配列番号31、又は配列番号31と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、
H-CDR3のアミノ酸配列が、配列番号32、又は配列番号32と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む、請求項30~31のいずれか一項に記載の抗HIV-1抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、HIV-1 p24タンパク質に特異的に結合する、ヒト免疫不全ウイルス-1に対する抗体(抗HIV-1)に関する。本発明はまた、前記抗体を使用して試料中のHIV-1を検出するための方法及びアッセイにも言及する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)は、世界で3790万人が感染しているレトロウイルスであり、特に診断及び治療を受けることができない脆弱な集団において、毎年約100万人を死亡させている(Soliman, M.ら、「Mechanisms of HIV Control」、Current HIV/AIDS Reports 2017、vol.14(3);101~9頁)。HIV-1は後天性免疫不全症候群(AIDS)の主な原因であり、HIV-1感染者から性的接触によって、又は血液若しくは血液由来の汚染した製品への曝露によって伝染する不治の病である。ウイルスは、免疫細胞の機能を破壊して損なうことにより、免疫系を標的化する。感染者は免疫不全になり、他の日和見感染症、並びにある種の癌にかかりやすくなる(WHOウェブサイトの出典 - https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hiv-aids)。現在、HIV-1感染者の46%だけが自分の感染状態を知っている。したがって、急性感染時のHIV-1の検出は、公衆衛生上の重大な懸念事項である(Stone, M.ら、「Comparison of detection limits of fourth- and fifth-generation combination HIV antigen-antibody, p24 antigen, and viral load assays on diverse HIV isolates.」、Journal of Clinical Microbiology 2018、vol. 56(8);1~12頁)。
【0003】
この特定の状況では、個人が感染した直後の数週間(急性期)のうちにHIV-1を診断することが目標となるが、これは二次感染を防止する可能性が高く、治療及びケアへの早期アクセスが可能となるためである(Lewis J.ら、「Field accuracy of fourth-generation rapid diagnostic tests for acute HIV-1: a systematic review.」、AIDS 2015、vol. 29(18);2465~71頁)。この目標をタイムリーに達成するためには、HIV-1検出のための早期バイオマーカーの使用が鍵となる。HIV-1感染の診断に最も一般的に使用されるバイオマーカーは、ウイルス構造タンパク質に対する抗体である。ここで、p24は、HIV-1ウイルスエンベロープの最も豊富な構造タンパク質であり、感染の初期段階に血清中に高レベルで分泌されるため、早期のHIV-1検出にとって重要なバイオマーカーであると考えられている。p24は、ウイルスRNA分子の周りのHIV-1エンベロープの主要な構造成分として働く重合カプシドタンパク質である。p24は、HIV-1 RNAのように、セロコンバージョンの前に検出可能なGagポリタンパク質前駆体に由来する24~25kDaのタンパク質である(Gray, E.R.ら、「p24 revisited: a landscape review of antigen detection for early HIV diagnosis.」、AIDS. 2018、vol. 32(15);2089~102頁)。
【0004】
疾病管理予防センター(CDC)及び世界保健機関(WHO)の現在のガイドラインは、HIV-1スクリーニングのための好ましい方法として、第4世代の抗体-抗原アッセイの使用を推奨している。これらの検査は、p24抗原と抗HIV-1抗体を検出し、診断空白期間を曝露後4週間から2週間へと狭めた(Gray, E.R.ら、「p24 revisited: a landscape review of antigen detection for early HIV diagnosis.」、AIDS. 2018、vol. 32(15);2089~102頁; Codoner, F.ら、「Gag protease coevolution analyses define novel structural surfaces in the HIV-1 matrix and capsid involved in resistance to Protease Inhibitors.」、Scientific Reports 2017、vol. 7(3717);1~10頁; Alexander TS.、「Human Immunodeficiency Virus Diagnostic Testing: 30 Years of Evolution.」、Clinical and Vaccine Immunology 2016、vol. 23(4);249~53頁; WHO、「World Health Organization Model List of Essential In Vitro Diagnostics.」、第1版、Geneva、2018; Centers for Disease Control and Prevention、2017、「National HIV testing day and new testing recommendations.」、Morbidity and Mortality Weekly Report vol. 63(25);537~37頁).
【0005】
しかしながら、現在市販されている一部の抗体は、初期のp24検出に対する感度が低いため、p24抗原に特異的に結合し、高い結合能力と優れた製造特性を備えた抗HIV-1抗体が依然として求められている。
【0006】
したがって、本発明は、類似の市販の試薬と比較して、HIV-1 p24タンパク質に対する結合能力が改善された抗HIV-1抗体を提供する。これらの抗体は、新規の非交差反応性エピトープを認識し、単体として、又は免疫診断若しくは血液スクリーニングプラットフォーム等の複数のHIV-1イムノアッセイにおける捕捉/検出パートナーとして、使用され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Soliman, M.ら、「Mechanisms of HIV Control」、Current HIV/AIDS Reports 2017、vol.14(3);101~9頁
【非特許文献2】WHOウェブサイトの出典 - https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hiv-aids
【非特許文献3】Stone, M.ら、「Comparison of detection limits of fourth- and fifth-generation combination HIV antigen-antibody, p24 antigen, and viral load assays on diverse HIV isolates.」、Journal of Clinical Microbiology 2018、vol. 56(8);1~12頁
【非特許文献4】Lewis J.ら、「Field accuracy of fourth-generation rapid diagnostic tests for acute HIV-1: a systematic review.」、AIDS 2015、vol. 29(18);2465~71頁
【非特許文献5】Gray, E.R.ら、「p24 revisited: a landscape review of antigen detection for early HIV diagnosis.」、AIDS. 2018、vol. 32(15);2089~102頁
【非特許文献6】Codoner, F.ら、「Gag protease coevolution analyses define novel structural surfaces in the HIV-1 matrix and capsid involved in resistance to Protease Inhibitors.」、Scientific Reports 2017、vol. 7(3717);1~10頁
【非特許文献7】Alexander TS.、「Human Immunodeficiency Virus Diagnostic Testing: 30 Years of Evolution.」、Clinical and Vaccine Immunology 2016、vol. 23(4);249~53頁
【非特許文献8】WHO、「World Health Organization Model List of Essential In Vitro Diagnostics.」、第1版、Geneva、2018;Centers for Disease Control and Prevention、2017、「National HIV testing day and new testing recommendations.」、Morbidity and Mortality Weekly Report vol. 63(25);537~37頁
【非特許文献9】Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、Washington D.C.
【非特許文献10】Chothiaら、Nature 342:877~883頁、1989
【非特許文献11】MacCallumら、J. Mol. Biol.、262:732~745頁、1996
【非特許文献12】Lefranc、M.-P. Nucl. Acids Res.、33、D593~D597頁、2005
【非特許文献13】Makabeら、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166頁、2008
【非特許文献14】Retterら、Nucl. Acids Res.、33(Database issue): D671~D674頁(2005)
【非特許文献15】Karlin及びAltschul、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264~2268頁
【非特許文献16】Karlin及びAltschul、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5877頁
【非特許文献17】Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215:403~410頁
【非特許文献18】Altschulら、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389~3402頁
【非特許文献19】Lefranc M-P、Lefranc G、「IMGT(登録商標) and 30 years of Immunoinformatics Insight in Antibody V and C Domain Structure and Function.」、Jefferis R;Strohl W. R.、Kato K.、Antibodies 2019、vol. 8(29);1~21頁
【非特許文献20】Liao-Chan S.ら、「Monoclonal Antibody Binding-site Diversity Assessment with a Cell-based Clustering Assay.」、Journal of Immunological Methods 2014、vol.405;1~14頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書がCDR Xの配列、又は1つ若しくは2つの置換、欠失若しくは付加によりCDR Xと異なる配列に言及する場合、そのような置換、欠失又は付加は、CDR Xによって定義されるアミノ酸の範囲の任意のアミノ酸において生じ得ることが理解されるべきである。本明細書は、そのような置換、欠失又は付加に適しているとして、CDR Xによって定義されるアミノ酸の範囲内の各特定のアミノ酸を個別化する。
【0009】
非限定的な例として、抗体#AのL-CDR1は、アミノ酸(1)~(11)の配列、RASQDISNYLH[配列番号15に概略的に示されている]を含むと定義され得る。位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、及び11のそれぞれは、別段の指定がない限り、又は後に補正によって精緻化されない限り、置換、欠失又は付加に適しているとみなされる。
【0010】
第1の態様において、本発明は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含む抗HIV-1抗体であって、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号15、配列番号18、配列番号21、及び配列番号15、18又は21のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号19、配列番号22、及び配列番号16、19又は22のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号17、配列番号20、配列番号23、及び配列番号17、20又は23のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択される、抗体を開示する。
【0011】
他の実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号24、配列番号27、配列番号30、及び配列番号24、27、又は30のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号25、配列番号28、配列番号31、及び配列番号25、28、又は31のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択され、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号26、配列番号29、配列番号32、及び配列番号26、29、又は32のいずれかと1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列からなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖は、配列番号7、又は配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む。他の実施形態において、軽鎖は、配列番号7、又は配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の重鎖は、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む。他の実施形態において、重鎖は、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号15、又は配列番号15と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号16、又は配列番号16と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号17、又は配列番号17と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。他の実施形態において、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号18、又は配列番号18と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号19、又は配列番号19と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号20、又は配列番号20と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。他の実施形態において、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号21、又は配列番号21と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号22、又は配列番号22と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号23、又は配列番号23と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号24、又は配列番号24と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号25、又は配列番号25と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号26、又は配列番号26と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。他の実施形態において、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号27、又は配列番号27と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号28、又は配列番号28と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号29、又は配列番号29と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。他の実施形態において、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号30、又は配列番号30と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号31、又は配列番号31と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号32、又は配列番号32と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号15、又は配列番号15と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号16、又は配列番号16と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号17、又は配列番号17と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号24、又は配列番号24と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号25、又は配列番号25と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号26、又は配列番号26と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号18、又は配列番号18と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号19、又は配列番号19と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号20、又は配列番号20と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号27、又は配列番号27と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号28、又は配列番号28と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号29、又は配列番号29と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号21、又は配列番号21と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号22、又は配列番号22と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号23、又は配列番号23と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号30、又は配列番号30と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号31、又は配列番号31と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号32、又は配列番号32と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の重鎖は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むHIV-1 p24タンパク質のエピトープに特異的に結合する。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体のL-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号21、又は配列番号21と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号22、又は配列番号22と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号23、又は配列番号23と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体のH-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号30、又は配列番号30と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号31、又は配列番号31と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含み、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号32、又は配列番号32と1つ又は2つの置換、欠失又は付加により異なる配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記抗体の軽鎖は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の重鎖は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、モノクローナル抗体又は組換え抗体である。他の実施形態において、前記抗体は抗体断片である。抗HIV-1抗体が抗体断片である場合には、可変断片(Fv)、単鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体(sc(Fv)2)、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、化学的にコンジュゲートされたFv(ccFv)、ダイアボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、アフィボディ、ナノボディ及びユニボディから選択される。
【0026】
いくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、マウスIgG1クラス又はマウスIgG2aクラスの定常領域を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、固体支持体に結合している。
【0028】
いくつかの態様において、本発明は、本発明の抗HIV-1抗体を含む細胞を開示する。
【0029】
他の態様では、本発明は、抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター、及び選択マーカーを含む核酸を開示する。前記核酸を含む細胞もまた、本明細書に開示される。
【0030】
本発明はまた、本明細書に記載された抗HIV-1抗体及び固体支持体を含む組成物も開示し、抗HIV-1抗体は固体支持体に共有的又は非共有的に結合している。いくつかの実施形態において、固体支持体は、粒子、ビーズ、膜、表面、ポリペプチドチップ、マイクロタイタープレート、又はクロマトグラフィーカラムの固相を含む。
【0031】
また、本発明は、試料中のHIV-1の存在を検出するためのキットも開示し、前記キットは、本発明による少なくとも1つの抗HIV-1抗体及び固体支持体を含み、前記少なくとも1つの抗体は、固体支持体に共有的又は非共有的に結合している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】抗体#AのSE-UPLC分析によるモノマーの割合、及び抗体#A単一クローンのSDS-PAGE(レーン1、2及び3は、それぞれ還元及び非還元条件で泳動させたサブクローンを表す)。
【
図2】抗体#BのSE-UPLC分析によるモノマーの割合、及び抗体#B単一クローンのSDS-PAGE(レーン1、2及び3は、それぞれ還元及び非還元条件で泳動させたサブクローンを表す)。
【
図3】抗体#DのSE-UPLC分析によるモノマーの割合、及び抗体#D単一クローンのSDS-PAGE(レーン1、2及び3は、それぞれ還元及び非還元条件で泳動させたサブクローンを表す)。
【
図4】抗体#A、#B及び#DのPDB予測構造(それぞれ4A、4B及び4D)。抗体#Aについては、PDB構造コード2XKNを相同性クエリにおいて使用し、抗体B#及び#Dについては、コード5OPY及び1F3Dをそれぞれ使用した。
【
図5】飽和した抗体#Aと、競合する#B及び#Dのセンサーグラム。抗体#B及び#Dは#Aにシグナルを追加し、これらの抗体が同じエピトープ領域内での結合について競合しないことを示している。
【
図6】飽和した抗体#Bと、競合する#A及び#Dのセンサーグラム。抗体#A及び#Dは#Bにシグナルを追加し、これらの抗体が同じエピトープ領域内での結合について競合しないことを示している。
【
図7】飽和した抗体#Dと、競合する#A及び#Bのセンサーグラム。抗体#A及び#Bは#Dにシグナルを追加し、これらの抗体が同じエピトープ領域内での結合について競合しないことを示している。
【
図8】競合する抗体の非存在下におけるHIV-1 p24への抗体#A、#B及び#Dの会合のセンサーグラム。各抗体は、その完全な結合シグナルを達成している(実験対照)。
【
図9】バイオレイヤー干渉法(BLI)によって計算した抗体#A、#B及び#D並びに市販のmAb #1の抗原HIV-1 p24への結合動態。センサーグラムを0.1~33nMの勾配濃度で実施し、ka(会合速度定数)、kd(解離速度定数)、KD(平衡解離定数)を算出するために1:1結合モデルでフィッティングを行った。
【
図10】間接ELISA法による抗体#A、#B及び#D並びに市販のmAb #2のHIV-1 p24カプシドタンパク質への結合。各抗体の滴定曲線は2μg/mLの濃度で始まり、その後1:10希釈される(左)。抗体濃度200ng/mLの信号対雑音データが右に示されており、これは、抗体#A、#B及び#Dと比較した際に市販のmAb #2の性能が低いことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、単に、本開示の様々な実施形態を例示することを意図している。そのようなものとして、論じられる特定の改変は、限定することを意図するものではない。本明細書に提示された主題の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な等価物、変化、及び改変が生み出され得ることは当業者に明らかであろうし、そのような等価の実施形態が本明細書に含まれるべきであることは理解されている。
【0034】
この明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他に指図しない限り、複数の指示物を含む。
【0035】
この明細書を通して、文脈が別段に要求しない限り、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」等の変形は、言及された要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群の包含を意味するが、任意の他の要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群の排除を意味しないことは理解されているだろう。
【0036】
他に定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、この発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。例示的な方法及び材料が下で記載されているが、本明細書に記載されたものと類似した又は等価の方法及び材料もまた、用いることができ、当業者に明らかだろう。本明細書で言及された全ての刊行物及び他の参考文献は、全体として参照により組み入れられている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が、支配するものとする。材料、方法、及び例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0037】
この明細書における各実施形態は、別段に明確に述べられていない限り、変更すべき所は変更して、あらゆる他の実施形態へ適用され得る。
【0038】
以下の用語は、他に指示がない限り、以下の意味をもつものと理解されるべきである。
【0039】
本明細書で用いられる場合、用語「核酸」は、DNA又はRNAで構成される任意の材料を指す。核酸は、合成的に又は生細胞により生成され得る。
【0040】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」は、リン酸基、5炭素糖及び窒素含有塩基からなる核酸のサブユニットである。RNA中に見出される5炭素糖はリボースである。DNAでは、5炭素糖は2'-デオキシリボースである。この用語には、そのようなサブユニットの類似体も含まれる。
【0041】
本明細書で用いられる場合、用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマー鎖を指す。その用語は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノム若しくは合成DNA)及びRNA分子(例えば、mRNA又は合成RNA)、加えて非天然ヌクレオチド類似体、非天然ヌクレオシド間結合、又は両方を含有するDNA又はRNAの類似体を含む。核酸は、任意のトポロジー構造をとり得る。例として、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四重鎖、部分的二本鎖、分岐型、ヘアピン型、環状、又はパッドロック構造であり得る。
【0042】
本明細書で用いられる場合、用語「タンパク質」は、アミノ酸残基の1つ又は複数の鎖からなる大きな生体分子又は高分子を指す。多くのタンパク質は、生化学的反応を触媒する酵素であり、代謝にとって極めて重要である。タンパク質はまた、構造的又は機械的な機能を有し、例えば、筋肉におけるアクチン及びミオシン、並びに細胞の形を維持する足場のシステムを形成する、細胞骨格におけるタンパク質である。他のタンパク質は、細胞シグナル伝達、免疫応答、細胞接着、及び細胞周期において重要である。しかしながら、タンパク質は、完全に人工的又は組換え体であってもよく、すなわち、天然で生体系に存在しなくてもよい。
【0043】
本明細書で用いられる場合、用語「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質と天然に存在しないタンパク質の両方、並びにその断片、変異体、誘導体、及び類似体を指す。ポリペプチドは、モノマー又はポリマーであり得る。ポリペプチドは、いくつかの異なるドメイン(ペプチド)を含み得、それらのドメインのそれぞれが、1つ又は複数の別個の活性を有する。
【0044】
本明細書で用いられる場合、用語「組換え体」は、(1)それの天然に存在する環境から取り出されている、(2)その遺伝子が、天然で見出されるポリヌクレオチドの全部若しくは一部分と関連していない、(3)それが天然では連結されていないポリヌクレオチドと作動可能に連結されている、又は(4)天然では存在しない、生体分子、例えば、遺伝子又はタンパク質を指す。用語「組換え体」は、クローニングされたDNA単離物、化学合成されたポリヌクレオチド類似体、又は異種系により生体で合成されるポリヌクレオチド類似体、加えて、そのような核酸によりコードされるタンパク質及び/若しくはmRNAに関連して用いることができる。
【0045】
本明細書で用いられる場合、用語「融合タンパク質」は、天然に存在するタンパク質内に共存しない2つ以上のアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。融合タンパク質は、同じ又は異なる生物体由来の2つ以上のアミノ酸配列を含み得る。融合タンパク質の2つ以上のアミノ酸配列は、典型的には、インフレームであり、それらの間に終止コドンを含まず、典型的には、融合タンパク質の一部としてmRNAから翻訳される。
【0046】
(3)によるタンパク質に言及する場合、用語「融合タンパク質」及び用語「組換え」は、本明細書では交換可能に使用され得る。
【0047】
本明細書で用いられる場合、用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、同じ意味を有し、本発明において同等に使用される。本明細書で用いられる場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。したがって、抗体という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗体断片又は誘導体もまた包含する。
【0048】
天然抗体において、2つの重鎖が、互いにジスルフィド結合によって連結されており、各重鎖が、軽鎖とジスルフィド結合によって連結されている。2つのタイプの軽鎖、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ): IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEがある。各鎖は、異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)の2つのドメインを含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、まとめてCHと呼ばれる)の4つのドメインを含む。軽鎖(VL)と重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動性、補体結合、及びFc受容体(FcR)との結合等の重要な生体特性を与える。Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1つの軽鎖の可変部分及び1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性に存する。抗体結合部位は、主として超可変又は相補性決定領域(CDR)由来である残基で構成される。たまに、非超可変又はフレームワーク領域(FR)由来の残基が、全体のドメイン構造、及びそれゆえに、結合部位に影響する。相補性決定領域又はCDRは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性をまとまって定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖はそれぞれ、3つのCDRを有し、それらは、それぞれ、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と名付けられている。したがって、抗原結合部位は、通常、重鎖V領域及び軽鎖V領域のそれぞれからのCDRセットを含む、6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に挿入されたアミノ酸配列を指す。
【0049】
CDRは、Kabat、Chothia、KabatとChothiaの両方の蓄積、AbM、contact、IMGT unique numbering、及び/又は立体構造定義、又は当技術分野において周知されているCDR決定の任意の方法の定義に従って同定することができる。抗体CDRは、Kabatらにより最初に定義された超可変領域として同定され得る。例えば、Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、Washington D.C.参照。CDRの位置は、Chothia他により最初に記載された構造のループ構造としても同定され得る(例えば、Chothiaら、Nature 342:877~883頁、1989参照)。CDR同定への他のアプローチには、「AbM定義」(KabatとChothiaの折衷であり、Oxford Molecular's AbM抗体モデリングソフトウェア(現在、Accelrys0)を用いて導かれる)、観察される抗原接触に基づいたCDRの「contact定義」(MacCallumら、J. Mol. Biol.、262:732~745頁、1996に示されている)、又は「IMGT unique numbering」(可変領域の構造の高い保存性に頼る(Lefranc、M.-P. Nucl. Acids Res.、33、D593~D597頁、2005参照))が挙げられる。本明細書でCDRの「立体構造定義」と呼ばれる、別のアプローチにおいて、CDRの位置は、抗原結合へのエンタルピー寄与を生じる残基として同定され得る。例えば、Makabeら、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166頁、2008参照。更に他のCDR境界定義は、上記のアプローチの1つに厳密に従うわけではないが、それでもなお、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複し、ただし、特定の残基又は残基群又は更にCDR全体が抗原結合へ有意には影響しないという予測又は実験的所見を踏まえると、それらは短縮又は延長され得る。本明細書で用いられる場合、CDRは、アプローチの組合せを含む、当技術分野において知られた任意のアプローチにより定義されるCDRを指す。本明細書で用いられる方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されたCDRを利用し得る。複数のCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDRは、特に指定しない限り、Kabat番号付け、Chothia番号付け、拡張番号付け、AbM番号付け、コンタクト番号付け、IMGT固有の番号付け、及び/又はコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0050】
抗体配列の例示的なデータベースは、www.bioinf.org.uk/absにおける「Abysis」ウェブサイト(Department of Biochemistry & Molecular Biology University College London、London、EnglandのA. C. Martinにより維持されている)及びRetterら、Nucl. Acids Res.、33(Database issue): D671~D674頁(2005)に記載されているようなwww.vbase2.orgにおけるVBASE2ウェブサイトに記載され、それらを通してアクセスすることができる。好ましくは、配列は、Kabat、IMGT、及びタンパク質データバンク(Protein Data Bank)(PDB)からの配列データをPDBからの構造データと共に統合するAbysisデータベースを用いて分析される。他に指示がない限り、本明細書に示された全てのCDRは、Abysisデータベースウェブサイトに従って、示されたスキームの通り、導き出されている。
【0051】
本明細書で用いられる場合、用語「抗体」は、単離された抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全又は部分ヒト化)、動物抗体、組換え抗体、キメラ抗体、及び抗体断片を含む。
【0052】
本明細書で用いられる場合、用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、同じエピトープと結合する均一な抗体集団を有する抗体組成を指す。その用語は、抗体の種又は供給源に関して限定されず、それが作製される方法によって限定されることも意図されない。したがって、その用語は、マウスハイブリドーマから得られた抗体、加えてマウスハイブリドーマよりむしろヒトを用いて得られたヒトモノクローナル抗体を包含する。この用語はまた、一過性又は安定トランスフェクションによる真核細胞株の樹立等、当技術分野で知られているモノクローナル抗体を産生するための他の方法によって得られる抗体も包含する。
【0053】
本明細書で用いられる場合、用語「組換え抗体」は、抗体のコード配列を含む1つ又は複数の発現ベクターでトランスフェクトされた細胞又は細胞株から発現される抗体を指し、前記コード配列は細胞と天然には関連していない。組換え抗体又はその断片は、当業者に周知のように、任意の組換え手段によって調製、発現、作成又は単離される。
【0054】
いくつかの実施形態において、「組換え抗体」は、同じエピトープに結合する均一な抗体集団に由来する場合、「モノクローナル抗体」でもあり得る。
【0055】
したがって、用語「抗体断片」は、本明細書で用いられる場合、可変断片(Fv)、一本鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体(sc(Fv)2)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、ジスルフィド連結型Fv(dsFv)、化学的コンジュゲート型Fv(ccFv)、ダイアボディ及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上記のいずれかの機能的活性エピトープ結合性断片を含むが、それらに限定されない。ある特定の実施形態において、抗体はまた、アフィボディ、ナノボディ、及びユニボディを含む。ある特定の実施形態において、特定の抗体は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAi及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0056】
本明細書で用いられる場合、用語「抗原結合断片(Fab)」は、重鎖及び軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインを含む抗体断片を指す。可変ドメインは抗原結合部位を含有する。一般的に、抗体は、結晶化可能領域の断片(fragment crystallizable region)(Fc)及び2つの抗原結合性断片(Fab)を含む。Fab断片は、Fc領域から分離されて、2つのFab断片を生じることができ、その2つのFab断片は、F(ab')2断片又は抗原結合性の二量体断片(dimeric fragment antigen binding)としても知られている。
【0057】
用語「単離された」は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないタンパク質(例えば、抗体)又は核酸を指す。例えば、単離された抗体が異なる種由来の細胞によって発現される場合、例えば、マウス細胞で発現されるヒト抗体は、異なる種由来の他のタンパク質を実質的に含まない。タンパク質は、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を用いて単離することにより、天然に関連する成分(又は抗体を産生するために使用される細胞発現系に関連する成分)を実質的に含まないようにされ得る。
【0058】
本明細書で用いられる場合、用語「抗原」は、それぞれの抗体と特異的に結合する生体分子を指す。多様なレパートリーからの抗体は、それの可変領域相互作用によって特異的な抗原構造を結合する。
【0059】
本明細書で用いられる場合、用語「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原の一部分を指す。したがって、用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又はT細胞受容体との特異的な結合の能力がある任意のタンパク質決定因子を含む。
【0060】
ポリペプチドは、それが、そのポリペプチド内に含有される特定のエピトープの抗体認識により抗体と結合する場合、抗体と「免疫学的に反応性」である。免疫学的反応性は、抗体結合、より具体的には、抗体結合の速度論により、及び/又は抗体が方向づけられているエピトープを含有する既知のポリペプチドを競合相手として用いる結合における競合により、決定され得る。ポリペプチドが抗体と免疫学的に反応性であるかどうかを決定するための技術は当技術分野において知られている。
【0061】
本明細書で用いられる場合、用語「試料」は、対象又は患者から得られる任意の生体材料を指す。一態様において、試料は、血液、腹水、CSF、唾液、又は尿を含み得る。他の態様において、試料は、全血、血漿、血清、血液試料から濃縮されたB細胞、及び培養細胞(例えば、対象由来のB細胞)を含み得る。試料にはまた、神経組織を含む、生検又は組織試料を挙げることができる。更に他の態様において、試料は、細胞全体及び/又は細胞の可溶化液を含み得る。
【0062】
試料を処理して、組織又は細胞の構造を物理的又は機械的に破壊し、これにより、細胞内成分を溶液中に放出させてもよく、この溶液には更に、標準法を用いて、分析用の生物学的試料を調製するために使用される酵素、バッファー、塩、界面活性剤等が含まれていてもよい。また、試料は、濾過装置に試料をかける若しくは通すことで、又は遠心分離後、又は媒体、マトリックス、若しくは支持体への付着によって得られるもの等、処理された試料も含み得る。
【0063】
用語「患者」又は「個体」は、本明細書で交換可能に用いられ、診断又は治療される哺乳動物対象を指し、ヒト患者が好ましい。場合によっては、本発明の方法は、実験動物において、獣医学的適用において、並びに非限定的に、マウス、ラット、及びハムスターを含むげっ歯類;及び霊長類を含む、疾患の動物モデルの開発において、用いられる。
【0064】
用語「ベクター」は、それに結合した別の核酸を細胞内に導入するために使用され得る核酸を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、その中に追加の核酸セグメントが連結され得る直鎖状又は環状の二本鎖DNA分子を指す。別のタイプのベクターはウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)であり、ここでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノム中に導入され得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を含む細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。
【0065】
「発現ベクター」は、選択されたポリヌクレオチドの発現を指示し得るタイプのベクターである。「発現細胞」は、発現ベクターを含む細胞である。
【0066】
ヌクレオチド配列は、調節配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミング、又は位置)に影響を与える場合、調節配列に「作動可能に連結」されている。「調節配列」は、作動可能に連結された核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミング、又は位置)に影響を及ぼす核酸である。調節配列は、例えば、調節される核酸に直接的に、又は1つ若しくは複数の他の分子(例えば、調節配列及び/又は核酸に結合するポリペプチド)の作用を通して、その効果を及ぼし得る。調節配列の例には、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメントが含まれる。
【0067】
本明細書で用いられる場合、用語「診断の」又は「診断される」は、病的状態の存在若しくは性質又は疾患に罹りやすい患者を同定することを意味する。診断方法は、それらの感度及び特異度が異なる。診断アッセイの「感度」は、検査で陽性と出る罹患個体のパーセンテージ(「真の陽性のパーセント」)である。そのアッセイにより検出されなかった罹患個体は「偽陰性」である。罹患せず、且つそのアッセイにおいて陰性と出る対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異度」は、1マイナス偽陽性率であり、「偽陽性」率は、検査で陽性と出る、疾患をもたない者の割合として定義される。特定の診断方法が状態の確定診断を提供し得るわけではないが、その方法が、診断に役立つ陽性の表示を提供するならば、それは十分である。
【0068】
本明細書で用いられる用語「結合親和性」は、抗原のエピトープと抗体の抗原結合部位との間の相互作用の強さを指す。
【0069】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)p24タンパク質の検出に特異的な新規抗体に関する。これらの抗体は、HIV-1 p24タンパク質の新規で非交差反応性のエピトープを認識し、他の市販の製品と比較して高い度合いの親和性と感度を示す。したがって、本明細書に記載された抗体は、早期のHIV-1検出のためのイムノアッセイにおける診断試薬、標準又は陽性対照として利用され得る。それらは3つの主要なHIV-1のグループ(グループM(主系統)、グループN(新型)、及びグループO(分類外))のいずれかの検出に使用され得る。
【0070】
本発明はまた、試料中のHIV-1の存在を検出するための前記抗HIV-1抗体を含む組成物及びキットに関する。
【0071】
I. 抗HIV-1抗体
本明細書で用いられる場合、用語「相同性」、「類似性」又は「同一性」は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、最大の一致のために比較及び整列された場合に、同一であるか、同一なヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の特定のパーセンテージを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。パーセント相同性/同一性を決定するために、最適な比較の目的で配列が整列される(例えば、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸配列又は核酸配列にギャップが導入され得る)。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占められている場合、それらの分子はその位置において同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置(例えば、重複する位置)の総数×100)。いくつかの実施形態において、比較される2つの配列は、必要に応じて、それらの配列内にギャップが導入された後、同じ長さである(例えば、比較されることになっている配列を超えて伸長する追加の配列を除く)。2つの配列間の配列比較について、「対応する」CDRは、両方の配列における同じ場所におけるCDR(例えば、各配列のCDR-H1)を指す。
【0072】
パーセント同一性、パーセント類似性、又は2つの配列間のパーセント類似性の決定は、数学的なアルゴリズムを用いて達成され得る。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的例は、Karlin及びAltschul、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5877頁においてのように改変された、Karlin及びAltschul、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264~2268頁のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215:403~410頁のNBLAST及びXBLASTプログラムへ組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、目的のタンパク質をコードする核酸と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索は、目的のタンパク質と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施することができる。比較を目的として、ギャップドアライメントを得るために、ギャップドBLASTを、Altschulら、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389~3402頁に記載されているように利用することができる。BLAST及びギャップドBLASTを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的例は、Myers及びMiller、CABIOS (1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)へ組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いることができる。
【0073】
本明細書に記載された一実施形態において、組換え抗体は、軽鎖及び重鎖を含む。本明細書に記載された他の実施形態において、組換え抗体は、2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む。本発明の組換え抗体の軽鎖は、2つのドメインである、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含み得る。本発明の組換え抗体の重鎖は、4つのドメインである、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、まとめてCHと呼ばれる)を含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、モノクローナル抗体である。他の実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、組換え抗体である。他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、本発明の定義による組換えモノクローナル抗体である。他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、単離された抗体である。
【0075】
いくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、抗体断片である。好ましい実施形態において、前記抗体断片は、可変断片(Fv)、一本鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体(sc(Fv)2)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、ジスルフィド連結型Fv(dsFv)、化学的コンジュゲート型Fv(ccFv)、ダイアボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、アフィボディ、ナノボディ、及びユニボディから選択される。
【0076】
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、Fc領域及び2つのFab断片を含む。本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、抗原結合性断片であり、Fc領域を含まない。本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、1つのFab断片からなる。本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は2つのFab断片(F(ab)2)からなる。
【0077】
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、当業者に知られている任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、又は当業者に知られている任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAi及びIgA2)若しくは任意の既知のサブクラスであり得る。
【0078】
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、IgGタイプである。好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体はIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4クラスである。別の好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、IgG1又はIgG2クラスである。別の好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体はIgG2aクラスである。
【0079】
本発明の抗体の定常領域の種は、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、又は前記の種のいずれかのキメラであり得るが、本発明の抗体の種は特に限定されるものではない。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV抗体は、マウスIgG1クラス又はマウスIgG2aクラスの定常領域を含む。
【0080】
A. 軽鎖
本明細書に記載されたいくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖を含む。前記CDRは、当業者により知られた任意のCDR定義アプローチに従って同定された配列に対応する。いくつかの好ましい実施形態において、CDR領域は、Kabat番号付けスキームに従って同定される配列に対応する。他の好ましい実施形態において、CDR領域は、他の番号付け方法又はKabat及び他の番号付け方法の組合せに従って同定される配列に対応し得る。例えば、CDR領域は、Chothia番号付けスキームに従って同定される配列に対応し得る。
【0081】
本明細書に記載されたいくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、それらの各々は、配列番号7、又は配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列から選択される少なくとも5つの連続するアミノ酸の配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、L-CDR1の配列は、配列番号15、配列番号18及び配列番号21からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、L-CDR2の配列は、配列番号16、配列番号19及び配列番号22からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、L-CDR3の配列は、配列番号17、配列番号20及び配列番号23からなる群から選択される。他の好ましい実施形態において、L-CDR1の配列は、配列番号15、配列番号18及び配列番号21からなる群から選択され、L-CDR2の配列は、配列番号16、配列番号19及び配列番号22からなる群から選択され、L-CDR3の配列は、配列番号17、配列番号20及び配列番号23からなる群から選択される。
【0082】
本明細書に記載された別の実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖の可変領域は、配列番号7、又は配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態において、組換え抗体の軽鎖の可変領域は、配列番号7、又は配列番号8、又は配列番号9からなるアミノ酸配列に対して、約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有し得る。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖は、配列番号7、又は配列番号8、又は配列番号9のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む。
【0083】
本明細書に記載された別の実施形態において、組換え抗体は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。他の実施形態において、組換え抗体の軽鎖は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなるアミノ酸配列に対して、約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有し得る。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む。
【0084】
B. 重鎖
本明細書に記載されたいくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域(CDR)を含む重鎖を含む。前記CDRは、当業者に知られている任意のCDR定義アプローチに従って同定される配列に対応する。いくつかの好ましい実施形態において、CDR領域は、Kabat番号付けスキームに従って同定される配列に対応する。他の好ましい実施形態において、CDR領域は、他の番号付け方法又はKabat及び他の番号付け方法の組合せに従って同定される配列に対応し得る。例えば、CDR領域は、Chothia番号付けスキームに従って同定される配列に対応し得る。
【0085】
本明細書に記載されたいくつかの実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、それらの各々は、配列番号10、又は配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列から選択される少なくとも5つの連続するアミノ酸の配列を含む。いくつかの好ましい実施形態において、H-CDR1の配列は、配列番号24、配列番号27及び配列番号30からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、H-CDR2の配列は、配列番号25、配列番号28及び配列番号31からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、H-CDR3の配列は、配列番号26、配列番号29及び配列番号32からなる群から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、H-CDR1の配列は、配列番号24、配列番号27及び配列番号30からなる群から選択され、H-CDR2の配列は、配列番号25、配列番号28及び配列番号31からなる群から選択され、H-CDR3の配列は、配列番号26、配列番号29及び配列番号32からなる群から選択される。
【0086】
本明細書に記載された別の実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の重鎖の可変領域は、配列番号10、又は配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態において、組換え抗体の重鎖の可変領域は、配列番号10、又は配列番号11、又は配列番号12からなるアミノ酸配列に対して、約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有し得る。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の重鎖は、配列番号10、又は配列番号11、又は配列番号12のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む。
【0087】
本明細書に記載された別の実施形態において、組換え抗体は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。他の実施形態において、組換え抗体の重鎖は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなるアミノ酸配列と約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有し得る。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の重鎖は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6のアミノ酸配列と約90%の相同性を有する配列を含む。
【0088】
C. 例示的な抗HIV-1抗体
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号15であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号16であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号17である。
【0089】
本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号18であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号19であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号20である。
【0090】
本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号21であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号22であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号23である。
【0091】
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号24であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号25であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号26である。
【0092】
本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号27であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号28であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号29である。
【0093】
本明細書に記載された他の実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号30であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号31であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号32である。
【0094】
本発明の抗HIV-1抗体は、本明細書に記載された軽鎖及び重鎖の両方のCDR領域の任意の組合せを含み得る。
【0095】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号15であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号16であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号17であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号24であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号25であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号26である。
【0096】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号15であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号16であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号17であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号27であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号28であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号29である。
【0097】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号15であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号16であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号17であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号30であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号31であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号32である。
【0098】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号18であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号19であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号20であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号24であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号25であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号26である。
【0099】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号18であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号19であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号20であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号27であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号28であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号29である。
【0100】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号18であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号19であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号20であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号30であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号31であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号32である。
【0101】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号21であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号22であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号23であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号24であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号25であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号26である。
【0102】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号21であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号22であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号23であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号27であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号28であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号29である。
【0103】
本明細書に記載された好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は配列番号21であり、L-CDR2のアミノ酸配列は配列番号22であり、L-CDR3のアミノ酸配列は配列番号23であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を含み、H-CDR1のアミノ酸配列は配列番号30であり、H-CDR2のアミノ酸配列は配列番号31であり、H-CDR3のアミノ酸配列は配列番号32である。
【0104】
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0105】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0106】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0107】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0108】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0109】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0110】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0111】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0112】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0113】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0114】
他の好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体の軽鎖は、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9からなるアミノ酸配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有していてもよく、抗HIV-1抗体の重鎖は、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12からなるアミノ酸配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有していてもよい。
【0115】
本明細書に記載された一実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0116】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0117】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0118】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0119】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0120】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0121】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0122】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0123】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0124】
好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0125】
他の好ましい実施形態において、抗HIV-1抗体の軽鎖は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からなるアミノ酸配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有していてもよく、抗HIV-1抗体の重鎖は、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6からなるアミノ酸配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性を有していてもよい。
【0126】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、HIV-1 p24タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、HIV-1 p24タンパク質のエピトープに結合する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、HIV-1 p24タンパク質の直鎖状エピトープに結合する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、HIV-1 p24タンパク質のアミノ酸配列(配列番号35)又は前記配列と少なくとも90%の相同性を有する配列から選択される少なくとも5つの連続するアミノ酸を含む直鎖状エピトープに結合する。他の実施形態において、HIV-1 p24タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号36に規定される。
【0127】
他の好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むことを特徴とするHIV-1 p24タンパク質のエピトープに結合する。
【0128】
より好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするHIV-1 p24タンパク質のエピトープに結合し、前記抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号15、配列番号18、及び配列番号21からなる群から選択され、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号16、配列番号19及び配列番号22からなる群から選択され、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号17、配列番号20及び配列番号23からなる群より選択され、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を更に含み、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号24、配列番号27及び配列番号30からなる群から選択され、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号25、配列番号28及び配列番号31からなる群から選択され、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号26、配列番号29及び配列番号32からなる群から選択される。
【0129】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むことを特徴とするHIV-1 p24タンパク質のエピトープに結合し、前記抗体は、相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3を含む軽鎖を含み、L-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号18であり、L-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号19であり、L-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号20であり、また、相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3を含む重鎖を更に含み、H-CDR1のアミノ酸配列は、配列番号27であり、H-CDR2のアミノ酸配列は、配列番号28であり、H-CDR3のアミノ酸配列は、配列番号29である。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、固体支持体に結合している。
【0131】
D. 親和タグ
本発明による抗HIV-1抗体は、親和タグを含んでもよい。親和タグは、精製に有用である。例示的な親和タグには、ポリヒスチジン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合性タンパク質、マルトース結合性タンパク質(MBP)、ストレプトアビジン結合性ペプチド(Strepタグ)、イソペプチド結合形成、FLAGタグ、V5タグ、Mycタグ、HAタグ、NEタグ、AviTag、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸、Sタグ、SBPタグ、Softag 1、Softag 3、TCタグ、VSVタグ、Xpressタグ、Isopeptag、SpyTag、SnoopTag、ビオチンカルボキシル担体タンパク質、緑色蛍光タンパク質タグ、HaloTag、Nusタグ、及びチオレドキシンタグが挙げられるが、親和タグの選択は特に限定的なわけではない。そうとは言え、抗HIV-1抗体は、例えば、使用後、親和タグが除去される場合、又は抗HIV-1抗体が、親和タグを必要としない戦略を用いて精製される場合には、親和タグを欠き得る。例示的な親和タグはポリヒスチジンであり、それは、典型的には、4個から10個の間の連続したヒスチジンを含むアミノ酸配列を含む。
【0132】
本発明の抗HIV-1抗体は、親和タグを含んでもよく、前記親和タグを用いて精製されてもよい。抗HIV-1抗体の精製のいくつかの方法が最先端技術において利用可能であり、当業者はそれらを周知している。親和タグを含む又は含まない、抗HIV-1抗体のための精製の例示的な方法は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、プロテインA/G親和性、交換クロマトグラフィー(IEX又はIEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、並びに/又はIMAC若しくはプロテインA/Gを超えるタグ及びアフィニティークロマトグラフィー技術の追加の使用である。利用される精製方法及びタグは、限定するものとみなされるべきではない。
【0133】
II. 核酸、クローニング細胞、及び発現細胞
本発明はまた、本明細書に記載された抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。核酸は、単離された核酸であってもよい。核酸は、DNA又はRNAであり得る。本明細書に記載された抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列を含むDNAは、典型的には、ヌクレオチド配列と作動可能に連結されているプロモーターを含む。プロモーターは、好ましくは、目的の発現細胞においてヌクレオチド配列の構成的又は誘導性発現を駆動させる能力がある。前記核酸はまた、目的の前記核酸を含有する細胞を選択するために有用な選択マーカーを含み得る。有用な選択マーカーは当業者により周知されている。核酸の正確なヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列が本明細書に記載された抗HIV-1抗体をコードする限り、特に限定的なわけではない。コドンは、例えば、目的の発現細胞(例えば、ヒト細胞等の哺乳動物細胞)のコドンバイアスに適合するように、及び/又はクローニング中の便宜のために、選択され得る。DNAは、複製起点(例えば、原核細胞におけるプラスミドの複製のための)を含み得る、例えばプラスミドであり得る。
【0134】
本明細書に記載された一実施形態において、核酸は、本発明の抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列、前記ヌクレオチド配列と作動可能に連結されたプロモーター、及び選択マーカーを含む。
【0135】
いくつかの好ましい実施形態において、核酸は、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号42からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。より好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖の核酸は、配列番号37、配列番号39、及び配列番号41からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、本発明の抗HIV-1抗体の重鎖の核酸は、配列番号38、配列番号40、及び配列番号42からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖及び重鎖の核酸は、配列番号37のヌクレオチド配列及び配列番号38のヌクレオチド配列をそれぞれ含む。他の実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖及び重鎖の核酸は、配列番号39のヌクレオチド配列及び配列番号40のヌクレオチド配列をそれぞれ含む。他の実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体の軽鎖及び重鎖の核酸は、配列番号41のヌクレオチド配列及び配列番号42のヌクレオチド配列をそれぞれ含む。
【0137】
本発明の様々な態様はまた、本明細書に記載されているような抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む細胞に関する。細胞は、発現細胞又はクローニング細胞であり得る。核酸は、典型的には、大腸菌(E. coli)においてクローニングされるが、他のクローニング細胞を用いてもよい。
【0138】
細胞が発現細胞である場合には、核酸は、染色体の核酸であってもよく、すなわち、そのヌクレオチド配列が染色体へ組み込まれる場合であり、とは言え、その時、核酸は、発現細胞において、例えば、染色体外DNA又はベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ等として存在し得る。ベクターの型式は、限定的とみなされるべきではない。
【0139】
本明細書に記載された一実施形態において、細胞は、典型的には、発現細胞である。発現細胞の性質は特に限定的なわけではない。哺乳動物発現細胞は、組換え抗体又はオリゴマー組換え抗体の都合良いフォールディング、翻訳後修飾、及び/又は分泌を可能にし得るが、他の真核細胞又は原核細胞が発現細胞として用いられてもよい。例示的な発現細胞には、TunaCHO又はExpiCHOなどのCHO細胞株、Expi293、BHK、NS0、Sp2/0、COS、C127、HEK、HT-1080、PER.C6、HeLa、及びJurkat細胞が挙げられる。細胞はまた、ベクターの組込みのため、より好ましくはプラスミドDNAの組込みのために、選択され得る。
【0140】
本発明の抗HIV-1抗体は、抗HIV-1抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸の哺乳動物細胞への適切なトランスフェクション戦略により産生され得る。当業者は、核酸のえり抜きの細胞株へのトランスフェクションに利用可能な種々の技術(リポフェクション、エレクトロポレーション等)を知っている。したがって、哺乳動物細胞株及びトランスフェクション戦略の選択は、限定的とみなされるべきではない。細胞株は更に、プラスミドDNAの組込みについて選択され得る。
【0141】
本明細書に記載された一つの好ましい実施形態において、細胞は、本発明の抗HIV-1抗体を含む。
【0142】
III. 組成物、及びキット
本発明の様々な態様は、本明細書に記載されているような抗HIV-1抗体を含む組成物に関する。
【0143】
本明細書に記載された一実施形態において、組成物は、本発明の抗HIV-1抗体及び固体支持体を含む。
【0144】
他の実施形態において、組成物は、本発明の抗HIV-1抗体及び固体支持体を含み、前記抗HIV-1抗体が前記固体支持体と共有結合性に又は非共有結合性に結合している。本明細書で用いられる場合、用語「非共有結合性に結合した」は、例えば、ストレプトアビジン結合性タンパク質とストレプトアビジンとの間又は抗体とそれの抗原との間の相互作用による等に例示される、抗体とそれの抗原の間、リガンドとそれの受容体の間、又は酵素とそれの基質の間等の特異的な結合を指す。
【0145】
他の実施形態において、組成物は、本発明の抗HIV-1抗体及び固体支持体を含み、前記抗HIV-1抗体が固体支持体と直接的に又は間接的に結合している。本明細書で用いられる場合、用語「直接的」結合は、分子の固体支持体への直接的コンジュゲーション、例えば、抗HIV-1抗体のシステインチオールを金表面へ結合する金-チオール相互作用を指す。本明細書で用いられる場合、用語「間接的」結合は、固体支持体と直接的に結合している別の分子との抗HIV-1抗体の特異的結合を含み、例えば、抗HIV-1抗体が、固体支持体と直接的に結合している抗体を結合し、それにより、前記抗HIV-1抗体を前記固体支持体と間接的に結合させ得る。用語「間接的」結合は、(a)分子のデイジーチェーン間の各相互作用が特異的又は共有結合性相互作用であり、且つ(b)デイジーチェーンの末端分子が固体支持体と直接的に結合している限り、抗HIV-1抗体と固体支持体の間の分子の数とは無関係である。
【0146】
固体支持体は、粒子、ビーズ、膜、表面、ポリペプチドチップ、マイクロタイタープレート、又はクロマトグラフィーカラムの固相を含み得る。好ましくは、固体支持体はラテックスビーズであり得る。
【0147】
組成物は、複数のビーズ又は粒子を含み得、前記複数のビーズ又は粒子の各ビーズ又は粒子が、本明細書に記載されているような少なくとも1つの抗HIV-1抗体と直接的に又は間接的に結合している。組成物は、複数のビーズ又は粒子を含み得、前記複数のビーズ又は粒子の各ビーズ又は粒子が、本明細書に記載されているような少なくとも1つの抗HIV-1抗体と共有結合性に又は非共有結合性に結合している。
【0148】
実施形態の様々な態様は、試料中のHIV-1の存在を検出するためのキットに関し、前記キットは、少なくとも1つの抗HIV-1抗体と、本明細書に記載された固体支持体又は組成物とを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗体は、固体支持体に共有的又は非共有的に結合されている。
【0149】
本明細書に記載された抗HIV-1抗体、組成物及びキットは、例えば、試料中のHIV-1の存在を検出するための、又は試料中のHIV-1の濃度を測定するためのアッセイにおいて使用するためのものであり得るが、それらは前記アッセイに限定されない。本発明の抗HIV-1抗体、組成物及びキットはまた、HIV-1のみの検出のために、又は多重アッセイ及び方法等の他の病原体の検出のための他の抗体と組み合わせて使用され得る。
【0150】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗HIV-1抗体は、他のRNAウイルスもまた検出される方法及びアッセイにおいて使用される。他の実施形態において、前記抗HIV-1抗体及び他の抗HIV-2抗体は、試料中のHIV-1及びHIV-2の同時検出のための方法及びアッセイにおいて使用される。より好ましい実施形態において、前記抗HIV-1抗体及び他の抗HIV-2抗体は、試料中のHIV-1 p24タンパク質及びHIV-2 p26タンパク質の特異的検出のための方法及びアッセイにおいて使用される。
【0151】
試料中のHIV-1を検出するための方法及びアッセイにおいて、本明細書に記載された複数の抗HIV-1抗体を使用することも、本発明の範囲内において企図されている。
【0152】
以下、本発明を例示的な実施例を参照してより詳細に説明するが、これは本発明の限定を構成するものではない。
【実施例】
【0153】
(実施例1)
好ましい抗HIV抗体と安定細胞株の生成
本明細書に開示されるように、本発明の軽鎖及び重鎖の特定の組合せは、好ましい抗体をもたらした:
【0154】
【0155】
各抗体の可変領域と定常領域をバイシストロン性ベクターにクローニングし、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させた。各抗体の製造特性をそれぞれの安定細胞株クローンを生成する能力、並びに機能的抗体の再現可能な発現及び精製に基づいて評価した。
【0156】
プールの開発
トランスフェクション:抗体#A、#B及び#D(配列番号37~42)のヌクレオチド配列を含む3つのコンストラクトの発現は、各抗体の重鎖及び軽鎖を含むバイシストロン性発現ベクターにおいて生成した。抗体を発現させるために、CHO細胞に200μgのDNAをエレクトロポレーションして、安定細胞株を作製した。24時間後、トランスフェクトされた細胞を計数し、タンパク質遺伝子の安定した組込みのために選択培地下に置いた。
【0157】
プールの生成:トランスフェクトされた細胞を、0.5×106細胞/mLの細胞密度で、50mLの作業容積を持つ250mLのシェーカーフラスコ中の選択培地に播種し、37℃、5%のCO2でインキュベートした。選択プロセス中、プールがその増殖速度及び生存率を回復するまで、細胞をスピンダウンし、2~3日ごとに新鮮な選択培地に再懸濁した。生細胞密度(VCD)、パーセント生存率、及び力価を介して、細胞培養物を増殖についてモニターした。
【0158】
生産プール:VCD、力価、及び生存率を評価するために、安定したプールをもとに1リットルの生産過程を実施した。細胞は、3Lの振盪フラスコ(作業容量1L)中の生産培地にスケールアップした。各安定プール生産過程から採取した馴化培地上清を遠心分離により清澄化し、プロテインAカラムを使用したアフィニティー精製によりタンパク質を精製した(Table 2(表2)~Table 4(表4))。
【0159】
細胞株バンキング:細胞を1mLあたり2.5×106個まで増殖させた。細胞バンキングのための採取時において、生存率は95%を超えていた。次に細胞を遠心分離し、細胞ペレットを7.5%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma-Aldrich社、D1435)を含むCHO完全培地に再懸濁して、1バイアルあたり15×106細胞/mLの細胞数とした。各プールの合計5本のバイアルを作製し、液体窒素中で保存するために凍結保存した。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
安定な抗体の生成
抗体#A、#B及び#Dのバンキングされたベストなプール細胞株から始めて、単一細胞クローニングによって安定なクローンを得た。各抗体のベストなクローンは、発現レベルと、製造過程からの抗体#A、#B及び#Dの精製材料の生物分析の特徴付けに基づいて選択した。生物分析の特徴付けには、SE-UPLC及びSDS-PAGEが含まれていた(
図1~3)。
【0164】
(実施例2)
抗体のモデリングと評価
計算モデリングソフトウェアのBioiluminate(Schrodinger社)、バージョン3.5を使用して、抗体#A、#B及び#Dの三次元構造モデルを抗体相同性によって構築した。簡単に述べると、抗体#A、#B及び#DのVH及びVL領域のアミノ酸配列をBioiluminateにロードした。タンパク質データバンク(PDB)で抗体構造を検索し、高い配列類似性及び構造適合性に基づきPDBテンプレートを選択することによって、フレームワーク領域及びCDRを同定した(Table 5(表5))。本発明の各抗体について予測されるCDR配列をTable 5(表5)に示し、抗体#A、#B及び#DのPDB予測構造をそれぞれ
図4A、4B及び4Dに示す。抗体#Aについては、PDB構造コード2XKNを相同性クエリにおいて使用し、抗体B#及び#Dについては、コード5OPY及び1F3Dをそれぞれ使用した。
【0165】
抗体#A及び#Bは、IgG1kアイソタイプの結果であり、抗体#Dは、IgG2akアイソタイプの結果であった。
【0166】
【0167】
3つの抗体のヌクレオチド配列の分析は、ImMunoGeneTics Database(IMGT)データベースに対する免疫グロブリン可変ドメイン配列の解析を容易にする国立生物工学情報センター(NCBI)が開発したアルゴリズムであるIgBLASTに対してクエリを実行したところ、生成された全ての重鎖(VH)及び軽鎖(VL)が、固有の相補性決定領域(CDR)を有していることを示している(Lefranc M-P、Lefranc G、「IMGT(登録商標) and 30 years of Immunoinformatics Insight in Antibody V and C Domain Structure and Function.」、Jefferis R;Strohl W. R.、Kato K.、Antibodies 2019、vol. 8(29);1~21頁)。
【0168】
(実施例3)
mAb Dのエピトープマッピング
切断されたペプチドを避けるために、HIV-p24の配列をC末端とN末端において中性GSGSGSGリンカーによって伸長させた。伸長させた抗原配列を14アミノ酸のペプチド-ペプチド重複を有する15アミノ酸の直鎖状ペプチドへと翻訳させた。結果として得られたHIV-p24ペプチドマイクロアレイには、2つずつプリントされた232の異なる直鎖状ペプチド(464スポット)が含まれており、追加のHA(YPYDVPDYAG、38スポット)及びc-Myc(EQKLISEEDL、38スポット)対照ペプチドによって形作られていた。
【0169】
洗浄バッファー:0.05% Tween 20を含むPBS、pH 7.4;各インキュベーション工程の後、10秒の洗浄×3回
【0170】
ブロッキングバッファー:RocklandブロッキングバッファーMB-070(最初のアッセイの30分前)
【0171】
インキュベーションバッファー:10%ブロッキングバッファーを含む洗浄バッファー
【0172】
アッセイ条件:インキュベーションバッファー中、1μg/ml、10μg/ml及び100μg/mlの抗体濃度;4℃で16時間のインキュベーション;140rpmで振盪
【0173】
二次抗体:ヤギ抗マウスIgG(H+L)DyLight680(0.2μg/ml); RTにおいてインキュベーションバッファー中で45分間染色
【0174】
対照抗体:マウスモノクローナル抗HA(12CA5) DyLight800(0.5μg/ml);RTにおいてインキュベーションバッファー中で45分間染色
【0175】
スキャナー:LI-COR Odyssey Imaging System;スキャンオフセット0.65mm、解像度21μm、スキャン強度7/7(赤=680nm/緑=800nm)
【0176】
HIV-p24ペプチドマイクロアレイの前染色は、主要なアッセイに干渉し得る抗原由来ペプチドとのバックグラウンド相互作用を調査するために、インキュベーションバッファー中の二次ヤギ抗マウスIgG(H+L)DyLight680抗体を用いて行った。その後の、他のHIV-p24ペプチドマイクロアレイコピーと、インキュベーションバッファー中の1μg/ml、10μg/ml及び100μg/mlの濃度のモノクローナル抗体Dとのインキュベーション後、二次抗体及び対照抗体で染色し、7/7(赤/緑)のスキャン強度で読み取りを行った。ペプチドマイクロアレイを形作る追加のHAペプチドは、その後、アッセイの品質とペプチドマイクロアレイの完全性を確認するための内部品質対照として染色した。
【0177】
mAb DについてのHIV-p24に対するエピトープマッピングと、その後のエピトープ置換スキャンは、保存された7アミノ酸のコアモチーフPIAPGQM(配列番号33)を強調した。
【0178】
(実施例4)
エピトープビニング試験
抗体#A、#B及び#Dの分子ドッキング及びウェスタンブロット評価は、これらの抗体がHIV-1 p24タンパク質の領域1、4及び7における直鎖状エピトープをそれぞれ認識することを示唆した。これらの観察を更に確認するために、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用してタンデムエピトープビニングアッセイを実施した。酵母由来バージョンのHIV-1 p24抗原をビオチン化し(bt-p24)、ストレプトアビジン(SA)バイオセンサーに300秒間ロードした。ロードしたセンサーを飽和抗体(100μg/mL)に600秒間浸し、続いて競合抗体(25μg/mL)に300秒間浸した。結果は、抗体#AがHIV-1 p24に結合している場合、抗体#B及び#DがBLIシグナル応答に増加を追加することを示しており、これは、抗体Aと比較して抗体#B及び#Dが異なるエピトープに結合することを示している。同様に、抗体#A又は#Dを飽和抗体として使用した場合、残りの抗体は同じエピトープに対して競合を示さない(
図9~10)。
【0179】
Table 6(表6)は、抗体#A、#B及び#Dのエピトープビニングデータをまとめたものである。簡単に述べると、競合抗体と飽和抗体のBLIシグナルをバッファーに対して正規化した。抗体のブロッキング又は結合を決定するための閾値を0.02に設定して、マトリックスの対角線で自己ブロッキング対を認識できるようにした(灰色は結合を、太字は自己ブロッキングを指す)。Microsoft ExcelのPEARSON関数を用いて、第1の抗体#Aに対するPEARSON相関係数を算出した(Liao-Chan S.ら、「Monoclonal Antibody Binding-site Diversity Assessment with a Cell-based Clustering Assay.」、Journal of Immunological Methods 2014、vol.405;1~14頁)。抗体#A、#B及び#Dについて、3つの異なるビンを同定した。抗体のブロッキングは観察されなかった。
【0180】
【0181】
(実施例5)
抗HIV-1抗体#A、#B及び#Dの親和性評価
抗体#A、#B及び#DとHIV-1 p24抗原との間の相互作用をより詳細に調査するために、BLIによる親和性分析を行った。抗体#A、#B及び#Dを市販のモノクローナル抗体(市販mAb #1)と比較した。抗マウスFcで特異的にコーティングしたバイオセンサーチップ(ForteBio社)を使用して、抗体#A、#B及び#D、並びに市販mAb #1を捕捉した。各抗体に使用した濃度勾配は0.1から33nMの範囲で、各希釈は0.01%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)と0.02%(v/v)の界面活性剤Tween-20を含むリン酸バッファー(PBS)で調製した。記録されたセンサーグラムを1:1結合モデルを用いてフィッティングし、解離速度と会合速度の比(kd/ka)から平衡定数KDを算出した。試験された抗体は、計算された親和性定数に基づいて次のようにランク付けされた:抗体#B≒抗体#D>抗体#A>市販mAb #1。観察された解離曲線が長いため、抗体#B及び#Dの正確なKD値を計算することはできなかったが、提示されたデータは、抗体#A、#B及び#Dについて計算されたKD値が、市販mAb #1で観察された値よりも低いことを示している(Table 7(表7))。このデータは、抗体#A、#B及び#Dが市販mAb #1よりもHIV-1 p24に対して高い親和性を示すという観察を裏付けている。
【0182】
【0183】
(実施例6)
抗HIV-1抗体#A、#B及び#Dの結合能力
HIV-1 p24抗原に対する抗体#A、#B及び#Dの結合を更に評価するために、間接ELISAアッセイをやり遂げた。各抗体の滴定曲線は、2μg/mLの開始濃度を用い、2×10
-2ng/mLの低濃度に達するまで1:10の連続希釈を行うことで生成した。各抗体の性能を市販のクローン(市販mAb #2)と比較した(
図10、左)。データは、抗体#A、#B及び#Dが、主に20~2000ng/mLの濃度で市販の抗体よりも高い信号対雑音比(S/N)で結合すること、また、これらは市販mAb #2と比較して低いEC50値も呈することを示している(
図10、右)。
【0184】
結論
抗HIV-1抗体#A、#B及び#Dを市販mAb #1及び#2からの市販の抗HIV-1 p24抗体と比較する機能アッセイを実施した。各抗体の結合親和性と効力をBLIと間接ELISAによって評価した。両方の実験において、HIV-1抗体#A、#B及び#Dは、試験した市販の抗体よりも優れた親和性と優れたEC50値を示している(速度論的分析については
図9及びTable 7(表7)、ELISAデータについては
図10)。
【0185】
ここに示した実験データは、本発明の抗HIV-1抗体を使用してHIV-1のp24構造タンパク質を検出できることを示している。前記抗体は、市販の同様な製品と比較した場合、親和性、感度、効力、発現、溶解性、及び製造可能性に関して改善された特性を示し、また、血清学的検査におけるそれらの使用は、HIV-1感染と診断イベントとの間の時間枠の短縮に寄与し、したがって、ウイルスの二次感染を防ぐことができる。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【配列表】
【国際調査報告】