(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】中空体の外壁及び/又は内壁を被覆する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/511 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
C23C16/511
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501554
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2021069135
(87)【国際公開番号】W WO2022013087
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118718.1
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506329971
【氏名又は名称】ライニシュ-ヴェストフェーリシェ・テヒニシェ・ホーホシューレ・(エルヴェーテーハー)・アーヘン・ケルパーシャフト・デス・エフェントリヒェン・レヒツ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ヤーリッツ・モントゴメリー
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030CA07
4K030CA15
4K030CA16
4K030FA01
4K030HA16
4K030JA09
4K030JA11
4K030KA30
4K030KA34
4K030KA39
4K030KA41
(57)【要約】
本発明は、中空体(4)をプロセスチャンバ(12)内に挿入し、プロセスチャンバ(12)は、中空体(4)によって、内側の反応室(4a)と外側の反応室(4b)とに分けられ、両方の反応室(4b、4a)のうちの一方に、プロセス圧力下で、少なくとも1種のプロセスガスを導入する一方、特に両方の反応室(4a、4b)のうちの他方を、プロセス圧力よりも低い又は高い圧力で保持し、プロセス圧力下で保持される反応室(4a、4b)内にプラズマが生成され、プラズマ状態の少なくとも1種のプロセスガスから形成されたフラグメント及び/又は反応生成物が、層を形成しつつ、中空体(4)の壁部の、プラズマに面する側で析出される、非導電性の材料からなる中空体(4)、特にプラスチックボトル又はプラスチックキャニスタの外壁及び/又は内壁を被覆する装置及び方法に関し、両方の反応室(4a、4b)を通過する磁場によって、少なくとも1つの運転変数に関してプラズマに影響を及ぼされることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体(4)をプロセスチャンバ(12)内に挿入し、プロセスチャンバ(12)は、中空体(4)によって、内側の反応室(4a)と外側の反応室(4b)とに分けられ、両方の反応室(4b、4a)のうちの一方に、プロセス圧力下で、少なくとも1種のプロセスガスを導入する一方、特に両方の反応室(4a、4b)のうちの他方を、プロセス圧力よりも低い又は高い圧力で保持し、プロセス圧力下で保持される反応室(4a、4b)内にプラズマが生成され、プラズマ状態の少なくとも1種のプロセスガスから生成されたフラグメント及び/又は反応生成物が、層を形成しつつ、中空体(4)の壁部の、プラズマに面する側で析出される、非導電性の材料からなる中空体(4)、特にプラスチックボトル又はプラスチックキャニスタの外壁及び/又は内壁を被覆する方法において、
両方の反応室(4a、4b)を通過する磁場によって、少なくとも1つの運転変数に関してプラズマに影響を及ぼすことを特徴とする、方法。
【請求項2】
磁場による影響が及ぼされる変数は、以下の
a.特に中空体(4)の被覆されるべき壁に沿って一定の距離を置いて見たプラズマの均一性、
好ましくはその際、磁場の作用下で、磁場が作用していないときのプラズマと比較してより高い均一性が得られる、
b.プラズマのエネルギ密度、
特にその際、磁場の作用下で、磁場が作用していないときのプラズマと比較してより高いエネルギ密度が得られる、
c.プラズマの局所的な位置、
特にその際、プラズマは、磁場の作用によって、磁場が作用しないときの距離と比較して、プロセスチャンバ(12)の壁部及び/又はプロセスチャンバ(12)内の要素に対してより大きな距離で保持される、
のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
磁場を発生させる複数の要素(13、16、17、18、19、20、21、22)、特に複数のコイル(13、16、17、18、19、20、21、22)又は永久磁石の磁場の重ね合わせによって、作用する磁場を発生させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
特に、磁場を発生させる要素(13、16、17、18、19、20、21、22)を中空体形状に依存して制御することによって、特に、コイル(13、16、17、18、19、20、21、22)に、中空体形状に依存して通電することによって、作用する磁場の磁力線の進行を、中空体(4)の被覆されるべき壁部の経過に少なくとも部分的に適合させることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つのコイル群(16、18、20/17、19、21)によって、時間的に前後して、特に2つの群の通電を一時的に重ねて、プラズマに影響を及ぼす磁場、特にそれぞれ同一のプラズマに影響を及ぼす磁場を発生させることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサ(23)によって、生成されたプラズマの局所的な位置を、特に磁場による影響を受けている間に検知し、好ましくは非接触式に検知し、少なくとも1つのセンサ(23)の検知したデータに依存して、磁場を発生させる少なくとも1つの要素(13、16、17、18、19、20、21、22)を制御し、特にこれにより前記データに依存して磁場に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a.プロセスチャンバ(12)であって、プロセスチャンバ(12)内に中空体(4)が挿入可能であり、プロセスチャンバ(12)は、挿入された中空体(4)によって、内側の反応室(4a)と外側の反応室(4b)とに分けられる、プロセスチャンバ(12)と、
b.少なくとも1つの真空ポンプ(15)であって、真空ポンプ(15)によって、反応室(4a、4b)が特に選択的に排気可能である、真空ポンプ(15)と、
c.少なくとも1つのプロセスガス供給部(3)であって、プロセスガス供給部(3)によって、少なくとも1種のプロセスガスが、特に選択的に反応室(4a、4b)のうちの1つに導入可能であり、特にプロセスガス供給部(3)によって、少なくとも1つの真空ポンプ(12)と相俟って、両方の反応室(4a、4b)のうちの1つにおいて、少なくとも1種のプロセスガスによるプロセス圧力が調整可能である、プロセスガス供給部(3)と、
d.少なくとも1つのエネルギ発生ユニット(1)、特に少なくとも1つのマイクロ波発生器(1)であって、エネルギ発生ユニット(1)によって、特に選択的に両方の反応室(4a、4b)のうちの一方に、プラズマを生成するために、好ましくは他方の反応室(4b、4a)を通して、エネルギが放射可能である、エネルギ発生ユニット(1)と、
を備える、非導電性の材料からなる中空体(4)、特にプラスチックボトル又はプラスチックキャニスタの外壁及び/又は内壁を被覆する装置において、
当該装置は、少なくとも1つの要素(16、17)を備え、要素(16、17)によって、特に、プラズマの少なくとも1つの変数に関して、生成可能なプラズマに影響を及ぼすために、プロセスチャンバ(12)を通過する磁場が発生可能であることを特徴とする、装置。
【請求項8】
当該装置は、複数の要素(13、16、17、18、19、20、21、22)を備え、要素(13、16、17、18、19、20、21、22)によって、それぞれの要素(13、16、17、18、19、20、21、22)によって発生させられる磁場の重ね合わせによって、プロセスチャンバ(12)を通過する磁場が発生可能であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの要素(13、16、17、18、19、20、21、22)は、通電可能なコイル(13、16、17、18、19、20、21、22)又は永久磁石として構成されていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
複数の要素(13、16、17、18、19、20、21、22)、特にコイル(13、16、17、18、19、20、21、22)は、特に被覆されるべき中空体(4)の長手方向に一致する、プロセスチャンバ(12)の軸線の延伸方向(A)で相前後して配置されていることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
要素の少なくとも1つ、特にコイルの少なくとも1つ(13、17、22)が、プロセスチャンバ(12)の端部に、特に軸方向の端部に、特に中空体(4)の軸方向の端面に対向して配置されていて、特にその際、そのようなコイルは、特にプロセスチャンバ(12)の外側で周囲に配置された別のコイル(16から21)又はプロセスチャンバ(12)内に配置されたときにはプロセスチャンバ(12)内に挿入可能な少なくとも1つの中空体(4)を外側で包囲する別のコイル(16から21)よりも小さな巻径を有することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
軸方向に隣り合う、磁場を発生させる複数の要素(13、16、17、18、19、20、21、22)、特に異なるコイル(13、16、17、18、19、20、21、22)の間、又は同一のコイル(13、16、17、18、19、20、21、22)の軸方向に隣り合う巻回部分の間の軸方向の距離範囲に、少なくとも1つのエネルギ伝達要素(7)、特に少なくとも1つの導波管(7)が配置されていて、エネルギ伝達要素(7)を通して、プロセスチャンバ(12)にエネルギが放射可能であることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
当該装置は、少なくとも1つのセンサ(23)を備え、センサ(23)によって、特に磁場による影響が及ぼされている間、生成されたプラズマの局所的な位置が検知可能であり、好ましくは非接触式に検知可能であり、検知した測定値に依存して、磁場を発生させる少なくとも1つの要素が制御可能であることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項の装置。
【請求項14】
影響を及ぼす磁場を発生させる複数の要素は、当該要素が少なくとも2つの群の通電可能なコイル(17、19、21/16、16、20)を形成するように構成されていて、2つの群のコイルによって、それぞれプラズマに影響を及ぼす磁場が発生可能であり、特にそれぞれ少なくとも本質的に同一の磁場が発生可能であることを特徴とする、請求項7から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
当該装置は、制御ユニットを備え、制御ユニットは、コイル群(17、19、21/16、16、20)に、群ごとに前後して、特に2つの群の通電が一時的に重なって、特に2つの群の同一時間の部分通電が一時的に重なって通電するように調整されていることを特徴とする、請求項7から14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空体を、プロセスチャンバ内に挿入し、プロセスチャンバは、中空体によって、内側の反応室と外側の反応室とに分けられ、両方の反応室のうちの一方に、プロセス圧力下で、少なくとも1種のプロセスガスを導入する一方、両方の反応室のうちの他方を、プロセス圧力よりも低い又は高い圧力で保持し、プロセス圧力下で保持される反応室内にプラズマが生成され、プラズマ状態の少なくとも1種のプロセスガスから形成されたフラグメント及び/又は反応生成物が、層を形成しつつ、中空体の壁部の、プラズマに面する側で析出される、非導電性の材料からなる中空体、好ましくはPE(HD-PE、LD-PE)、PET、PP、PC又はPLAからなる特にプラスチックボトル又はプラスチックキャニスタの外壁及び/又は内壁を被覆する方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、プロセスチャンバであって、プロセスチャンバ内に中空体が挿入可能であり、プロセスチャンバは、挿入された中空体によって、内側の反応室と外側の反応室とに分離可能である、プロセスチャンバと、少なくとも1つの真空ポンプであって、真空ポンプによって、反応室が特に選択的に排気可能である、真空ポンプと、少なくとも1つのプロセスガス供給部であって、プロセスガス供給部によって、少なくとも1種のプロセスガスが、特に選択的に反応室のうちの1つに導入可能であり、特にプロセスガス供給部によって、少なくとも1つの真空ポンプと相俟って、両方の反応室のうちの1つにおいて、少なくとも1種のプロセスガスによるプロセス圧力が調整可能である、プロセスガス供給部と、少なくとも1つのエネルギ発生ユニット、特に少なくとも1つのマイクロ波発生器であって、エネルギ発生ユニットによって、特に選択的に両方の反応室のうちの一方に、プラズマを生成するために、エネルギが放射可能である、エネルギ発生ユニットと、を備える、非導電性の材料からなる中空体、特にプラスチックボトル又はプラスチックキャニスタの外壁及び/又は内壁を被覆する装置に関する。好ましくは、プラズマを点火するエネルギは、プラズマが点火されない反応室から、中空体を通して、プラズマが点火されるべき反応室に放射される。そのために、放射が通過する反応室は、プロセス圧力より低い圧力に保持される。
【背景技術】
【0003】
このような装置は、選択的に内壁、外壁又はその両方に連続して順次層を設けるために、特にそれぞれの壁部で、前駆体を含む少なくとも1種のプロセスガスからなる拡散バリアの層や別の機能層をそれぞれの壁部で析出するために使用可能である。
【0004】
例えば、プロセスガスとして、ガス状のモノマーを含む気体を使用してよい。例えば、前駆体として酸素とヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)とを含むプロセスガス混合物SiOxを、拡散バリアとして、中空体、例えばボトルに析出することが知られている。本発明は、好ましくは、このような使用例にも同様に使用されるが、これに限定されるものではない。別のプロセスガスは、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、シラン(SiH4)、エチン(C2H2)、メタン(CH4)、ジフルオロエチレン(C2H2F2)等である。
【0005】
そのために、プラズマの条件を作り出すために、プロセスガスを含む又はプロセスガスが供給される反応室に、周囲の大気圧よりも低いプロセス圧力が発生させられる。特に、このプロセス圧力は、10Paから30Paの範囲にある。プロセス圧力下のプロセスガスを含む反応室内で、エネルギ発生ユニットによって作り出されるエネルギ放射、例えばマイクロ波放射によって、プラズマが生成される。プラズマは、少なくとも1種のプロセスガスのフラグメント化を行う。フラグメント及び/又はフラグメントから形成された反応生成物は、層として、プラズマに面する、中空体の壁部に堆積する。他方の反応室でのプラズマ点火を回避するために、他方の反応室は、例えばプロセス圧力より低い圧力へと排気される。例えばこの圧力は、10Pa未満、好ましくは5Pa以下である。代替的に、プラズマが点火されるべきでない反応室は、プロセス圧力よりも高い圧力に、例えば周囲の大気圧に保持される。
【0006】
エネルギ供給は、好ましくは他方の反応室を通して、プロセスガスを含む反応室にマイクロ波を放射することによって行われる。好ましくは、本発明ではその手順は同一であるが、これに制限されない。一般的に、あらゆる電磁放射は、エネルギ発生ユニットの少なくとも1つの信号発生器によって発生可能である。信号発生器は、選択されたプロセスガスを用いたプラズマの点火に適した周波数を有する放射を発生させる。放射は、好ましくは、使用されるプロセスガスの吸収帯域に合わせて調整できる。更に好適には、放射をパルス状に放射してよい。使用される信号発生器、特に内側被覆又は外側被覆のためのそれぞれ1つの信号発生器は、電磁放射の発生のための構成要素と放射のための構成要素とが組み合わされたモジュールとして構成されてよく、この場合、各モジュールは、プラズマが点火されない反応室にのみ配置される。それぞれの信号発生器は、マイクロ波帯域及び/又はHF帯域の電磁波を発生できる。
【0007】
前述の方法及び既知の装置との関連において、複数の問題が生じるおそれがある。例えば5Lより大きな容積を有する比較的大きな中空体では、大きなプラズマの拡がりが必要になる。ちょうどプラズマのマイクロ波励起の好適な利用で、反応室内でマイクロ波強度の極小値及び極大値、並びにマイクロ波エネルギの局所的な吸収が生じ得、これにより不均一なプラズマが生じ、そこから次に不均一な層が生成され得る。
【0008】
プラズマの大きな拡がりによって、さらに、プラズマ全体に十分なエネルギ密度を発生させるために、エネルギ所要量が増加する。このことは、一方では大きな中空体でも、他方では外側被覆でも重要である。というのも、ここでは、プラズマは、中空体の内部容積によって制限されるのではなく、むしろ必要な場合には常に中空体よりも大きな、中空体を包囲するプロセスチャンバによって制限されるからである。
【0009】
さらに、外側被覆では、被覆されるべき中空体の外壁の他に、常にプロセスチャンバの内側も一緒に被覆されることが問題である。したがって、これまでは、洗浄による中断なくそのような被覆法を連続的に実施することは不可能であった。さらに、プロセスチャンバ要素の同時被覆によって、例えばマイクロ波放射の透過性に関して、プロセス変数の変化が生じるので、層の一定の品質を保証するために、方法を実施する間、プロセス変数の適合を行わなければならない。
【0010】
欧州地域では、特定の用途に、例えば化学工業では、主に、例えばペットボトル等の中空体の内側被覆が確立されているが、ただし、達成可能なバリアは、一部で少なすぎる。プラズマ重合体のバリア層に、層成長プロセスの間、層厚の増加とともに、特定の層厚から層の亀裂を招く内部応力が形成される。したがって、層厚の増加によるバリア性能の向上は、不可能である。さらに、析出条件に依存して、層に、バリアに不都合な影響を及ぼし得る開いた細孔が形成される。
【0011】
バリアの改善は、既に、プラズマの均一性の観点から正しいプロセス設定と、例えば交互の有機ケイ素(SiOCH)被覆と酸化ケイ素(SiOx)被覆とからなる多層系の析出とによって可能である。SiOCH層は、固有の引張応力を形成し、SiOx層は、圧縮応力を形成するので、系全体の層応力を減らし、ひいては層厚及び透過バリアを増やせる。透過路の延長が生じる。というのも、多層系の個々の層における細孔が、不確実にしか直接上下に位置しないからである。しかも、層の数の増加が、結果として同様にバリアの線形の増加とはならないことも十分に知られている。このことは、一方、層系における層応力の発生が部分的にしか制限できないことに起因する。他方、層における欠陥及び細孔は、中間層にもかかわらず、次の層に広がる。後者は、両側から被覆を取り付けるだけで克服できる。したがって、両側の被覆によって、系を通る気体の透過をほとんどゼロに減らせる。このことは、とりわけ化学工業の企業にとって魅力的である。したがって、例えば農芸化学の分野では、それぞれ1つの機能(例えば水に対するバリア、気体に対するバリア等)を有する異なる複数のプラスチックからなる包装が用いられることが多い。そのような複合材料は、もはや経済的に相互に分離できないので、発生する使い古した廃棄物は、焼却しかできないことが多い。プラズマ重合のハイバリアコーティングは、この問題を解決し、高いバリア特性を有するリサイクル可能な容器を実現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べたような方法及び装置において、プロセスチャンバの同時被覆を回避して、又は少なくとも低減して、均一な内側被覆及び外側被覆が達成可能であるとともに、好ましくは被覆側に関係なく、特に5リットルより大きい、好ましくは50リットルより大きい、更に好ましくは100リットルより大きい、その上さらに好ましくは少なくとも200リットルまでの容積を有する比較的大きな中空体でも高品質に被覆可能であるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、冒頭で述べた方法において、とりわけ、プロセスチャンバ、特に両方の反応室を通過する磁場によって、少なくとも1つの運転変数に関してプラズマに影響が及ぼされることによっても解決される。
【0014】
装置では、この課題は、当該装置が、少なくとも1つの要素を備え、要素によって、特にプラズマの少なくとも1つの変数に関して、生成可能なプラズマに影響を及ぼすために、プロセスチャンバを通過する磁場が発生可能であることによって解決される。
【0015】
少なくとも1つの要素によって、プロセスチャンバを通過する磁場が発生可能であり、要素は、好ましくは、エネルギ発生ユニットに対して付加的に及び/又はプラズマ発生時にエネルギ発生ユニットと相互作用する装置に対して付加的に設けられている少なくとも1つの要素であって、当該要素によって、プラズマが生成される。したがって、まさにプラズマ生成のためのマイクロ波の好ましい使用に際して、マイクロ波によって電磁放射が発生させられ、電磁放射によって、経時的に変化する、特にマイクロ波の周波数によって経時的に変化する磁場が発生させられる。したがって、本発明は、そのような場合、プロセスチャンバを通過する、プラズマに影響を及ぼす磁場は、場合によっては存在する磁場(磁場によりプラズマが生成される)とは別の磁場である、又は別の装置によって発生させられる。したがって、プロセスチャンバ内でプラズマに影響を及ぼす磁場は、プラズマ生成とは別個に調整及び/又は変化でき、これによりそうして生成されたプラズマに影響を及ぼすことが可能になる。
【0016】
プラズマに影響を及ぼす磁場は、好ましくは時間的に静的であってよく、好ましくは少なくともプラズマが存在する間、又は経時的に変化する場合には、プラズマを生成する磁場と比較して、時間変化の僅かな周波数を有する。
【0017】
この場合、本発明では、プラズマ中に存在する、1種又は複数種のプロセスガスのフラグメント及び/又は反応生成物のイオンが磁場によって偏向可能であり、すなわちこれにより特に影響が及ぼされることが利用される。したがって、方法を実施する間、プロセスチャンバを通過する、ひいては同様に両方の反応室、特にプラズマが存在する反応室も通過する磁場によって、1つ又は2つ以上の変数に関してプラズマに影響を及ぼすことが可能である。
【0018】
したがって、磁場は、ローレンツ力によって、磁力線に沿ってイオンを加速させる。これにより、プラズマの空間的な均一化がもたらされ、空間的な均一化とは、特に、磁場の作用下で、磁場が作用しないときのプラズマと比較してより高い均一性が得られることと解される。例えば、均一性は、中空体の、被覆されるべき壁部に沿って一定の距離を置いて観察してよい。特に比較的大きな中空体で、この作用は有利である。
【0019】
好ましくは、磁場は、中空体の長手方向が設定されていて、長手方向に中空体の大部分が延在するとき、磁力線が大体においてこの長手方向に延びるように、選択できる。このことは、例えば発生させられる磁場の極がこの長手方向で相互に距離を置いているときに達成できる。これに応じて、磁場を発生させる要素は、これが得られるように、装置に位置決めできる。
【0020】
さらに、本発明では、磁場によってプラズマのエネルギ密度を増加させ、特にその際、磁場の作用下で、磁場が作用していないときのプラズマと比較してより高いエネルギ密度が得られることが想定され得る。したがって、特に比較的大きな中空体で、エネルギ所要量を減らせる。
【0021】
別の変数として、磁場によって、プラズマの局所的な位置に影響を及ぼせる。好ましくは、このことは、プラズマが、磁場の作用によって、磁場が作用しないときに存在し得る距離と比較して、プロセスチャンバ壁部又はプロセスチャンバ内の要素に対してより大きな距離を置いて保持されるように行われる。したがって、まさにこれにより、プラズマは、被覆されるべき中空体の直接的な周囲の領域に制限されることになる。したがって、プラズマは、磁場がないときのプラズマと比較して中空体のより近くに位置する。したがって、磁場の作用によって、特に中空体の外壁に層が析出されるとき、プロセスチャンバ又はプロセスチャンバ内の要素の同時被覆を減らせる又は有利には完全に阻止できる。外壁被覆は、これにより、これまで実現されてきたよりもはるかに経済的に実施できる。
【0022】
特に、磁場によってプラズマの局所的な位置に影響が及ぼされることに関連して、少なくとも1つのセンサ、好ましくは光学センサ、特にカメラが装置又は方法に用いられることが想定され得る。センサによって、生成されたプラズマの局所的な位置が、特に磁場による影響が及ぼされる間に検知され、好ましくは非接触式に検知され、少なくとも1つのセンサの検知したデータに依存して、磁場を発生させる少なくとも1つの要素が制御され、特にこれにより、このデータに依存して磁場に影響が及ぼされる又は磁場が変化させられる。例えば、被覆されるべき中空体の壁部及び/又はプロセスチャンバ壁部に対して所定の最小距離又は所定の距離範囲でプラズマを保持する制御を実現できる。
【0023】
プラスチック包装産業では、様々な容積と一部で複雑なジオメトリとを有する数多くの容器が使用される。本発明によれば、容器に機能層を被覆するプラズマプロセスは、好ましくは、それぞれの容器に対応するように適合されていて、特にこれにより、所望の機能性を有する均一な被覆を保証できる。同時に、本発明は、被覆されるべき容器サイズ及び容器ジオメトリに関して、被覆設備の高い柔軟性を提供できる。
【0024】
容器に対応して設定された磁場の使用によって、プラズマを、内側被覆及び外側被覆の両方で容器のジオメトリに柔軟に適合させられる。
【0025】
したがって、本発明の考えられる別の形態では、磁力線によって影響が及ぼされるプラズマの拡がり及び強度が、前述の少なくとも1つの光学センサ、好ましくは、例えばCCDカメラ系又は赤外線カメラ系等の撮像センサによって検知され、これらのデータのフィードバックがコイル系を介して行われることが、想定され得る。
【0026】
少なくとも1つのセンサによる容器内及び/又は容器外のプラズマの空間的な拡がりの評価に依存する、磁場を発生させるコイルの様々な通電によって、磁場ひいてはプラズマは、プロセス中、各容器ジオメトリ及び容器サイズに柔軟に適合及び補正できる。
【0027】
磁場を発生させる要素として、好ましくは、コイルを使用できる。その利点によれば、電流強度によって、磁場強度に直接に影響を与えられる。したがって、プラズマ変数は、通電の変化によって変更可能である。好ましくは、通電は、被覆されるべき中空体の形状及び/又はサイズに応じて選択できる。したがって、装置又は方法は、中空体に個別に適合できる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、磁場を発生させる複数の要素、特に複数のコイルの磁場の重ね合わせによって、作用する磁場が発生させられることが想定され得る。
【0029】
例えば、これにより、作用する磁場の磁力線は、特に中空体形状に依存する、磁場を発生させる要素の制御によって、特に中空体形状に依存するコイルの通電によって、磁力線の進行を、少なくとも部分的に、中空体の被覆されるべき壁部の経過に適合できる。
【0030】
一般的に、本発明は、複数の要素を備え、要素によって、プロセスチャンバを通過する磁場が、それぞれの要素によって発生させられた磁場の重ね合わせによって発生可能であることが想定され得る。少なくとも1つの要素は、有利には、通電可能なコイルとして構成されてよい。
【0031】
複数の要素を、磁場が重ね合わされる第1の数の永久磁石と第2の数のコイルとによって構成することも想定され得る。したがって、例えばプラズマ変数を変更するための磁場の変化は、コイル通電の変化によって引き起こせ、特にその際、永久磁石によって、基本磁場強度が発生可能であり、これによりそれを起点に変化が可能である。
【0032】
考えられる一形態では、重畳磁場を発生させる複数のコイルが、特に被覆されるべき中空体の長手方向と一致する、プロセスチャンバの軸線の延在方向で、相前後して配置されていることが想定され得る。したがって、冒頭で述べたように、極の間隔の方向は、長手延伸方向に設定してよい。
【0033】
この場合、本発明の一発展形態では、コイルの少なくとも1つが、プロセスチャンバの軸方向の端部に、特に中空体の軸方向の端面に対向して配置されていて、コイルは、特にプロセスチャンバの外側で周りに配置されている又はプロセスチャンバ内に配置されるときにはプロセスチャンバ内に挿入可能な少なくとも1つの中空体を外側で包囲する別のコイルよりも小さな巻径を有することが想定され得る。軸方向の端部に配置されたコイルによって、磁気鏡の作用を生じさせることができ、これにより、プラズマを、中空体の軸方向長さに制限でき、特にその際、軸方向のプロセスチャンバ壁に対して間隔を置いて保持できる。
【0034】
プラズマを径方向で制限するための、複数のコイルのうちの少なくとも1つ又は単一のコイルが、好ましくは、プロセスチャンバ壁部の外側で周りに配置されている。特に、このことは、例えばガラス、好ましくはホウケイ酸ガラス又は石英ガラスからなる、プロセスチャンバ壁の非金属の構成で可能でありかつ好ましい。中空体の軸方向の端面に対向する、軸方向の端部におけるコイルは、プロセスチャンバ内に又はその外に配置されてよい。特に軸方向のプロセスチャンバ壁の材料選択に依存する。
【0035】
さらに、本発明の一形態では、軸方向に隣り合う異なるコイルの間又は同一のコイルの軸方向に隣り合う巻回部分の間の軸方向の距離範囲に、少なくとも1つのエネルギ伝達要素、特に少なくとも1つの導波管が配置されていて、エネルギ伝達要素を通して、プロセスチャンバにエネルギが放射可能であることが想定され得る。したがって、このようにして、エネルギを、コイル集合体を通して放射できる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、影響を及ぼす磁場を発生させる複数の要素が、通電可能なコイルの少なくとも2つの群を有する又は形成するように構成されていて、コイルの群によって、特に各群に対して依存せずに及び/又は別の群にも依存せずに、プラズマに影響を及ぼす磁場がそれぞれ発生可能である又は方法において発生させられることも想定され得る。少なくとも2つの群によって、時間的に前後して、特に様々な中空体の順次行われる被覆サイクルについて、又は同一の中空体の1つの被覆サイクルについて、特に2つの群の通電が一時的に重複して、プラズマに影響を及ぼす、特にそれぞれ同一のプラズマに影響を及ぼす磁場を発生させることが想定され得る。群のそのような連続する通電のために、装置は、対応する通電のために調整された制御ユニットを有してよい。
【0037】
好ましくは、各群は、通電可能な少なくとも1つのコイル、好ましくは通電可能な複数のコイルを有し、特に、コイルは、前述の集合体の1つを有してよく、特に、磁場を、容器長手軸線に対して径方向に及び/又は軸方向に制限する、好ましくは前述の磁気鏡の形態のコイルを有してよい。
【0038】
特に、コイルの各群によって、少なくとも本質的に同一の磁場構成又は磁場ジオメトリを発生させ、特にそれぞれのいわゆる磁気ボトルを形成することが想定され得る。好ましくは、全群の磁気ボトルは、特にプラズマ発生中のそれぞれ少なくとも一時的に静的な状況で同一である。
【0039】
特に同一の磁場構成/磁気ジオメトリとは、群によって発生させられる磁場が、特に少なくとも本質的に同一の磁力線の進行で、プロセスチャンバ内にそれぞれ局所的に同一の磁場強度を有することと解される。
【0040】
1つの群では、特に上述したように、磁場を発生させるために、コイルと永久磁石とを組み合わせてもよい。好ましくは、本発明は、0.2Lから500L、好ましくは1Lから100L、より好適には5Lから30Lの容積を有する中空体の内側及び/又は外側の被覆を想定している。
【0041】
プラズマに影響を及ぼすために必要な磁束密度を発生させるために、特に前述の容積の大容積の中空体では、巻数に依存して数アンペアの電流を流さなければならない、相応の大きなコイルが必要とされる。
【0042】
導入される電力は、コイルにおいて、対流及び放射を介する熱エネルギ損失よりも高くてよいので、連続運転中にコイルの強い加温が生じ得る。この場合、本発明では、コイルに少なくとも1つの冷却システムを割り当てることが想定され得る。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、特に冷却システムを回避するために、前述のタイプの群の連続的な切換及び通電によって又は通電計画によってコイルの加温を低減し、特にこれにより、コイルの付加的な冷却を省けることも想定され得る。本発明の目的の1つは、好ましくは、これらのコイル又は群にそれぞれ十分に長い冷却時間が供与されることによって、コイル材料の疲労強度範囲内でコイルの平均温度を保持することである。このことは、影響を及ぼす磁場を発生させるために1つの群を通電するときに少なくとも1つの別の群を冷却できることによって得られる。
【0044】
コイルの疲労強度を保証できるように、コイルは、好ましくは90℃より高温になってはならない、又は特に時間平均で、コイルを通る電流が、約2.5A/mm2の値を超えてはらない。
【0045】
群の連続的な切換及び/又は通電計画を実行する手段を、以下、実施例を用いて説明する。
【0046】
以下の図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1に示された本発明に係る装置は、連続的に、それぞれ内側被覆及び/又は外側被覆だけを、プラスチックからなる中空体、例えばプラスチックからなる大容積の容器4に被着可能にする。層を生成するために、少なくとも1種のプロセスガスが、それぞれの中空アンテナ3のうちの1つを介して、それぞれの反応室4a又は4bに導入され、励起されてプラズマが生じ、これにより、プラズマ重合が引き起こされる。この場合、反応室4aは、中空体4の内室によって供与されている。反応室4bは、中空体4の外壁とプロセスチャンバ12との間の空間によって供与されている。
【0049】
被覆法は、総じて低圧下で、すなわち周囲の大気圧よりも低い圧力下で行われる。2つの反応室4a/4bのそれぞれに対して、必要な圧力は、真空ポンプ15を用いて発生できる。プラズマの点火は、パルス状のマイクロ波の励起によって引き起こされ、これは、信号発生器1によって発生させられ、中空アンテナ3及び/又は導波管5を通じて放出される。ここでは、プラズマは、本発明によれば、通電されたコイル13、16及び17によって発生させられる磁場による影響を受ける。
【0050】
方法では、中空体4は、プロセスチャンバ12内に気密に固定されている。プロセスチャンバ12が閉じられた後、例えば外側被覆のために、先ずは、プロセスガスが、反応器蓋2に位置し、同時に内側被覆用のマイクロ波アンテナであるガスランス3を通して、外側の反応室4bに導入され、例えば10Paから30Paのプロセス圧が調整される。
【0051】
その際、容器4の内側の反応室4aは、好ましくは、大気圧以下に又は大気圧付近に保持される。マイクロ波放射は、特に容器ジオメトリに適合された、特にやはり内側被覆用のガスランスでもあるアンテナ3を介して、プロセスチャンバ12に導入される。放射は、ほとんど損失なく中空体4の内側の反応室4aを通過する。内側の反応室4a内の、相対的に著しく高い圧力は、ここでは、プラズマの点火を妨げる。マイクロ波放射は、中空体4の外側の反応室4bに到達し、そこで、プラズマ状態に適した条件を満たし、これにより、中空体4の外側の壁部で析出プロセスが開始される。
【0052】
同時に、コイル16及び17からなるコイル集合体を介して磁場が発生させられる。磁場は、生じた荷電粒子の加速によって磁力線に沿ってプラズマを均一化し、同時に、プラズマを、磁気閉じ込めによってプロセスチャンバ12のチャンバ壁から隔離する。
図1では、中空体4の長手軸線Aに関して、軸方向の片側で、中空体4の上側の軸方向の端壁に対向するコイル17が設けられている。コイル17は、コイル16よりも小さな直径を有し、コイル17は、軸方向の端部で磁力線を狭窄し、これによりプラズマに対する磁気鏡の作用を引き起こす。ここでは、そのようなコイル17は、中空体4の一方の軸方向の端部、ここでは上側の端部にのみ配置されている。本発明では、特に
図2が示すように、中空体の他方の端部、ここでは下側の端部にも、そのようなコイル17を設けてもよい。
【0053】
図2は、両方の軸方向の端部に配置されたコイル17を有する、略示された一形態の磁力線の進行を可視化している。効果的に作用する磁場の磁力線の進行が示されていて、軸方向Aの磁極間隔が明確に示されている。磁力線の狭窄は、軸方向の端部側で明確に認められる。軸方向の狭窄は、コイル17によって引き起こされる。コイル17は、軸線Aに対して径方向に中空体4の周りに配置されたコイル16よりも小さな巻径を有する。この場合、磁場の磁力線は、強制的にボトルネック状に進行させられるので、特に、磁力線は、その大部分で、閉じ込め容積の内側に曲げ戻される。このような装置によって、プラズマを、中空体の被覆されるべき表面の直接的な周囲に制限し、プロセスチャンバ壁から隔離できる。さらに、プラズマは、均一化され、好ましくは圧縮され、これにより、エネルギ密度、ひいては層析出速度が増加する。
【0054】
プラズマに対する磁気的影響は、ここでは、ローレンツ力に起因する。ローレンツ力は、荷電プラズマ粒子と電子とイオンとを、磁場において、螺旋状の軌道上に保持し、特にこれにより、生じ得る局所的な滞留範囲を制限し、プラズマを均一化し、好ましくは局所的なエネルギ密度を増加させる。
【0055】
好ましくは、この磁気閉じ込めは、ここでは本例で達成できるが、本発明にとって一般的な有効範囲では、円筒コイルでも達成できる。というのも、そのようなコイルの磁場は、コイル軸線に対して平行に向けられていて、これが、径方向の粒子の損失を妨げるからである。
【0056】
外側被覆に連続する内側被覆が所望される場合には、外側被覆のプロセスの後、これに続く内側被覆のために、外側の反応室4bへのガス供給が終了し、外側の反応室4bは、プロセス圧以下の圧力レベルまで、好ましくは約5Paへと排気されてよい。
【0057】
プロセスガスは、ガスランス3を介して、中空体4の内側の反応室4aに導入され、プロセス圧へと、例えば約10Paから30Paの圧力へと調整される。マイクロ波放射は、ここでは対向するアンテナ3と側方のスロット状の導波管5とを介してプロセスチャンバ12に導入される。マイクロ波放射は、増大した自由な行路の長さに対応する、著しく低い圧力によって、損失なく外側空間を通過する。
【0058】
ここで、放射は、中空体4の内室4aで、プラズマ状態に適した条件を満たし、これにより、中空体4の内壁で層析出プロセスが開始される。再び、磁場が接続され、そのときには好ましくは専らプラズマを均一化するために接続され、特にこれは大きな中空体の内側被覆で有利である。
【0059】
内側被覆及び外側被覆の全体のサイクルタイムは、中空体容積に依存して、例えば10秒から120秒であり、特にその際、被覆にそれぞれ1秒から30秒必要となる。残りの秒は、排気及び試料交換に必要となる。
【0060】
図3は、本発明の別の実施例を示す。本例では、円筒コイル13及び22は、コイル16から21と比較して小さな直径を有して、また好ましくは強磁性材料からなるコアを有して構成されてよいので、低い電流強度で高い磁束密度が実現可能である。したがって、これらのコイル13及び22は、温度負荷に関してあまり問題とはならない。
【0061】
一方、円筒コイル16から21は、プロセス及び設備に基づいて、より大きな内径(特にプロセスチャンバ12の外径に相当する又はそれよりも大きい)を有し、好ましくは、本形態では、コアを有しない。
【0062】
代替的な形態では、アンテナ/ガスランス3は、好ましくは強磁性材料から構成されてよく、これにより外側のコイル16から21の磁束密度の増加が達成される。この形態は、特に、容器壁の外周で、すなわち反応室4b内で点火されるプラズマの磁気的閉じ込めにとって重要である。というのも、この場合、磁力線が通過してアンテナ3の方へ進行するからである。
【0063】
マイクロ波-プラズマ中のイオンの運動エネルギEkinは、典型的には、30eV又は4.8E-18Jまでの値を占めてよく、被覆プロセス及び設備タイプに依存する。荷電粒子を磁場によって偏向させるには、Ekinに依存して、0.01Tから1Tまでの磁束密度が必要となる。プロセスチャンバ12の内径は、10L容器に対して例えば約350mmでなければならない。このような内径を有し、好ましくはコアレスで、例えば5000の巻数を有する円筒コイルでは、3Aの通電で、例えば約0.05Tの磁束密度を達成できる。磁場の強度は、引き続きコイル13及び22によって、必要な出力に応じて、さらに増加できる。本例では、コイルは、約30秒後、対流(v=2m/sで流れる層流)によるエネルギ損失を含めて、疲労強度にとって臨界的な例えば90℃の温度に達する。コイルの遮断後、コイルが再び十分に冷えるまで、数分必要であり得る。プロセス中のコイルの冷却時間を考慮するために種々の可能性がある。考えられる使用例は、以下のとおりである。
【0064】
1.各被覆サイクルにおいて異なるコイル群が使用される
装填工程及び取出工程、真空発生及びガス導入は、好ましくは全体のサイクルタイムに含まれるので、これらは、容器サイズに依存して設定されていて、例えば10秒から120秒であってよい。各被覆工程では、プラズマに影響を及ぼす磁場を発生させるために、特定のコイル群のコイルのみが接続されるので、少なくとも1つの別のコイル群のコイル、特に以前使用されたコイルを冷却できる。例えば、第1の被覆プロセスで、まず第1の群のコイル16、18及び20を使用でき、これに続くプロセスで、次に別の群のコイル17、19及び21を使用できる。このようにすると、それぞれ一様な磁場を、特にそれぞれ少なくとも本質的に同一の磁場を発生でき、群のコイルは、後続のプロセスにおいて新たに使用するために十分な強さで冷却される。
【0065】
2.コイル群は、被覆サイクル内で交互に接続/遮断される
とりわけこの場合、コイルの充電プロセス及び放電プロセスに注意しなければならない。誘導によって強められる電流は、その発生の原因(磁場の変化)に常に対抗する。充電工程の間、電流の流れは、コイルの自己誘導電圧によって妨げられる。コイルの放電プロセス及び充電プロセスは、コイルの構成及びサイズに依存して、数ミリ秒継続し得るが、数十秒継続することもある。これらの充電プロセス及び放電プロセスに注意しつつ、コイル群は、被覆プロセスの間、交互に通電されるので、特に、十分に低い最大運転温度で、十分に高い平均磁束密度が実現される。一方の群では、経時的に相互に適合された電流増加によって、インダクタンスを考慮できる一方、他方の群では、磁場を発生させるために一方の群が他方の群と交代するまで、電流が低下される。この場合、好ましくは、2つの群の重畳磁場が、両方の群が同時に通電される時点で、各群が別の群の遮断後に単独でも発生させる磁場に相応することが保証される。
【0066】
したがって、一方の群の単独の運転時にも、一方の群から他方の群への運転切換の時間間隔の間にも、同一の磁場が発生させられる。
【0067】
図3は、符号23で、特にプラズマ位置に関して、又はプラズマとプロセスチャンバ壁との間若しくはプラズマと中空体壁との間の間隔に関して、センサ測定値に基づいて運転を調整するために、運転中にプラズマを検知する光学センサを補足的に示す。
【符号の説明】
【0068】
1 信号発生器
2 特にガイドロッド(例えば空圧式に運転される)によって移動可能な、プロセスチャンバの蓋
3 ガスランス/アンテナ(選択的に強磁性材料からなる)
4 中空体
5 導波管カーブ
6 エネルギ分配器
7 導波管
8 マイクロ波及び磁場に対して高い透過性を有する、例えばPEEK又は同等の材料からなるガイドロッド
9 弁
10 ガス流調整器
11 ガスリザーバ
12 マイクロ波及び磁場に対する高い透過率を有する、例えばホウケイ酸ガラス又は同等の材料からなる径方向の壁部を有する、プロセスチャンバ
13 中空体を収容するためのシール面を有するプロセスチャンバの基部、及び場合によっては軸方向の端部で磁気鏡として作用するための、強磁性材料からなるコアを有するコイル
14 圧力測定器
15 少なくとも1つの真空ポンプを有するポンプスタンド
16 磁場を発生させるコイル
17 磁場を発生させるコイル
18 磁場を発生させるコイル
19 磁場を発生させるコイル
20 磁場を発生させるコイル
21 磁場を発生させるコイル
22 中空体の軸方向の端部で磁気鏡として作用するための、特に、強磁性材料から成るコアを有する、磁場を発生させるコイル
23 プラズマの空間的な拡がりを検知するセンサ
【国際調査報告】