IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフの特許一覧 ▶ センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィークの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ パリ−サクレーの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ・1の特許一覧 ▶ エコール ナショナル シュペリウール ドゥ シミ ドゥ レンヌの特許一覧 ▶ アンスティトゥー ナショナル デ サイエンシーズ アップリケ ドゥ レンヌの特許一覧

特表2023-533581遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用
<>
  • 特表-遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用 図1
  • 特表-遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用 図2
  • 特表-遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用 図3
  • 特表-遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用 図4
  • 特表-遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用 図5
  • 特表-遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】遅延蛍光発光及び円偏光発光を有する有機化合物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/056 20060101AFI20230727BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230727BHJP
   C07D 491/22 20060101ALI20230727BHJP
   C07D 491/153 20060101ALI20230727BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20230727BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230727BHJP
   H10K 101/20 20230101ALN20230727BHJP
【FI】
C07D491/056
C09K11/06 645
C09K11/06
C07D491/22 CSP
C07D491/153
H10K50/12
H10K85/60
H10K101:20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501784
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2021069232
(87)【国際公開番号】W WO2022013112
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】2007467
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】503261111
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ・1
(71)【出願人】
【識別番号】523011705
【氏名又は名称】エコール ナショナル シュペリウール ドゥ シミ ドゥ レンヌ
(71)【出願人】
【識別番号】523011716
【氏名又は名称】アンスティトゥー ナショナル デ サイエンシーズ アップリケ ドゥ レンヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピエターズ グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ファヴロー ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】プーラード ローリー
(72)【発明者】
【氏名】ケーロ マックス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク リュカ
(72)【発明者】
【氏名】カセムタウィーチョーク シティチョーク
(72)【発明者】
【氏名】クラッスー ジャンヌ
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC10
3K107CC45
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD69
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB04
4C050BB10
4C050CC04
4C050CC20
4C050DD02
4C050DD10
4C050EE02
4C050EE03
4C050FF02
4C050FF03
4C050GG02
4C050HH01
(57)【要約】
本発明は熱活性化遅延蛍光(TADF)特性、円偏光発光(CPL)特性及び凝集誘起発光増強(AIEE)特性を兼ね備える化合物に関する。本発明は、光触媒又はドーパント、特に発光ダイオード(OLED)の発光層における光触媒又はドーパントとしてのかかる化合物の使用、及びかかる化合物を含む発光素子又は発光ダイオード(OLED)にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C-Ry’、N、Oからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1415のアミン基を表し、R14及びR15は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1718のアミン基を表し、R17及びR18は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化2】
からなる群から選ばれるアリール若しくは複素環を形成し、R10、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
、R、R、R、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR4041のアミン基を表し、R40及びR41は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化3】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化4】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、R11、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
一方でR及びR、他方でR及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、それぞれナフチルとなり、以下の式:
【化5】
のフラグメントをもたらし、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化6】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化7】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、R11、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される)の化合物であって、以下の化合物:
【化8】
は除外される、化合物。
【請求項2】
Y及びY’がC-R、C-Ry’を表し、R及びRy’がニトリル基(-CN)を表し、R及びRz’が同一又は異なって、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表すか、
又は、
Y及びY’がC-R、C-Ry’を表し、R及びRy’が同一又は異なって、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表し、R及びRz’がニトリル基(-CN)を表すか、
又は、
Y及びY’がC-R、C-Ry’を表し、R及びRy’が同一又は異なって、水素原子、重水素、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アリールラジカルが任意に置換され、R及びRz’がニトリル基(-CN)を表すことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Y及びY’が同一又は異なって、C-R、C-Ry’、N及びOからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、R及びRy’が同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子、式NR3536のアミン基であり、R35及びR36が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
及びRz’が、それらが結合する炭素原子とともに、
【化9】
を形成し、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Y及びY’が同一又は異なって、N及びOからなる群から選ばれるヘテロ原子、C-R、C(Ry’)を表し、R及びRy’が同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、式NR3536のアミン基であり、R35及びR36が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
及びRz’が、それらが結合する炭素原子とともに、
【化10】
からなる群から選ばれる複素環を形成し、R10が水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Y及びY’が同一又は異なって、N及びOからなる群から選ばれるヘテロ原子、C-R、C-Rを表し、R及びRy’が同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)を表し、
及びRz’が同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表すことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Y及びY’がNを表し、R及びRz’が、それらが結合する炭素原子とともに、
【化11】
を形成し、R23、R24、R25及びR26が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
X及びX’がOを表し、
、R、R、R、R、R、R及びRが同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
X及びX’が同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rが水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
、R、R及びRが同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR4041のアミン基を表し、R40及びR41が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、
【化12】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、
【化13】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
11、R42、R43、R44、R45、R56、R57、R58及びR59が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
X及びX’が同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rが水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
、R、R及びRが同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、
【化14】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、
【化15】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
42、R43、R44及びR45が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1~6及び8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
X及びX’が同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rが水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換され、
、R、R及びRが同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが、上に示すように任意に置換され、
及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、
【化16】
を形成し、
及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、
【化17】
を形成し、
11、R56、R57、R58及びR59が同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルが任意に置換されることを特徴とする、請求項1~6及び8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
【化18】
からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
光触媒又はドーパント、特に発光ダイオード(OLED)の発光層における光触媒又はドーパントとしての請求項1~11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物を含む発光素子又は発光ダイオード(OLED)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱活性化遅延蛍光(TADF)、円偏光発光(CPL)及び凝集誘起発光増強(AIEE)を兼ね備える化合物に関する。
【0002】
本発明は、光触媒又はドーパント、特に発光ダイオード(OLED)の発光層における光触媒又はドーパントとしてのかかる化合物の使用、及びかかる化合物を含む発光素子又は発光ダイオード(OLED)にも関する。
【背景技術】
【0003】
遅延蛍光特性を有する分子の探索は、低エネルギーコストの効果的な発光デバイスの開発の中核をなす。これらの分子を純粋に又は発光ダイオード(OLED、すなわち有機発光ダイオード)の発光層のドーパントとして使用することで、従来のフルオロフォアの僅か25%に対し、理論的に100%の内部効率(電流の形で注入された電荷の全てが光の形で戻ってくることを意味する)を有する発光デバイスの製造が可能となる。それまで、かかる効率を達成することができる発光分子は、イリジウム又は白金等の希少金属を用いた有機金属錯体を含むリン光分子であった。したがって、製造コスト及び持続可能性の両方の理由から、純粋な有機物であり得る熱活性化遅延蛍光(TADF)分子は、低い照明消費量及び高解像度のディスプレイデバイスへの応用により、経済成長が著しい分野の研究者にとって最適な対象となっている。
【0004】
さらに、円偏光発光(CPL)の放出を可能にする有機分子の発見も、ここ数年で大きく拡大している分野である。この分野では、ランタニドを活用する錯体が発光偏光度の点で最高の性能を得ることを可能にする。しかしながら、純粋な有機CPL発光分子を開発し、製造コストを抑え、デバイスへの組込みを容易にするために多くの研究活動が現在行われている。実際、これらの小さなキラル分子は、例えば情報の光学式記憶、3Dディスプレイ又は文書のセキュリティ保護を可能にする先進技術デバイスの設計に用いることができるため、高い応用可能性を有する。
【0005】
さらに、ディスプレイに関するOLEDの応用分野では、遅延蛍光特性及び円偏光発光特性を兼ね備える分子が特に魅力的である。実際、このタイプのエミッターは、外光の反射を低減するために用いられるフィルターに起因する画面の明るさの低下を抑えることが可能である。これらの光学フィルターは殆どの場合、遅延波長板(1/4波長板)と、それを通過する発光の偏光の選択を可能にし、OLEDでの外部発光成分の反射を打ち消す偏光子とから構成される。しかしながら、円偏光発光を放出しない分子では、OLEDの発光層において分子が生み出す光強度のかなりの部分が失われる。
【0006】
円偏光発光の発光分子は、量子効率φ(光子放出の有効性の尺度)だけでなく、円偏光の振幅を考慮した非対称係数|glight|によっても特徴付けられる。このglight値は-2~2であり、値0は円偏光の欠如を表す。純粋な有機フルオロフォアの場合、|glight|値は通例、10-4~10-3である。現在のところ、φ(50%超、理想的には100%近く)及び|glight|(理想的に10-3以上)の両方が高い値を有する有機分子は非常に少ない。本発明の文脈では、量子効率は以下のように定義される:
φ=(放出される光子の数)/(吸収される光子の数)×100
【0007】
一般に、フルオロフォアの凝集は、ACQ(凝集起因消光)現象により量子効率を大きく低下させる。しかしながら、或る特定のフルオロフォアでは、凝集が化合物の蛍光を増幅させるAIEE(凝集誘起発光増強)現象が観察されることがあり、それらを高濃度又は純粋固体形態で使用することが可能である。
【0008】
さらに、TADF特性とAIEE特性との組合せにより、一般に凝集による蛍光減少又は「消光」の問題を回避するためにエミッターをマトリックスに配置するOLEDデバイスにおいて、発光分子のみから構成される発光層の使用を検討することが可能となる。
【0009】
蛍光分子の低エネルギーの励起一重項状態及び三重項状態の間のエネルギー差(ΔEST)が小さい場合(500meV未満)、遅延蛍光(TADF)による発光が可能であることが知られている。ΔESTの値は、分子のフロンティア軌道(以下では簡潔にFO)のHOMO及びLUMO(最高被占軌道及び最低空軌道)の間の重なり積分に比例する。このため、これらのFO間の重なりを制限するために、幾つかの分子構造が文献中で提案されている。最も一般的に用いられる構造は、供与体-受容体(D-A)型の分子の使用に基づくものであり、これら2つの実体の間の二面角は、可能な限り90°に近い。これによりFOの重なりが可能となり、HOMOは主に電子供与体側、LUMOは受容体側に配置される。
【0010】
非特許文献1は、キラルユニットをTADF活性発色団に付着させた、図1に示す分子を提案している。キラルユニットにより、キロプティック(chiroptic)特性(CPL)の誘導が可能となる。この場合、活性発色団は、BINOL型のキラルユニットに連結したTADF供与体-受容体システムから構成される。この設計は、他のチームによって他の供与体、受容体又はキラルパターンを用いて広く例証されている。
【0011】
CPTADF分子(CPL特性及とTADF特性とを組み合わせた分子)の合成には、面性キラリティーも用いられている。
【0012】
現在では、非特許文献2及び非特許文献3(どちらも2019年)によって発表された、[2.2]パラシクロファンの誘導体をベースとした例が2つのみ挙げられる。前者は、パラシクロファンユニットをキラリティー源として、またFO間の分離を確実にするために用いる。図2に示されるように、HOMOはアミンを有する環上に位置し、LUMOはホウ素に配置される。後者は、パラシクロファンのキラリティーを供与体基として用い、図3に示されるように、供与体と受容体との間に配置されたスペーサーの役割を果たすフェニル基によってHOMO-LUMO分離が行われる。この例では、本質的にキラルな供与体を用いてCPLを生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】G. Pieters et al. (J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 3990-3993)
【非特許文献2】Zhang et al. (Org. Lett. 2018, 20, 6868)
【非特許文献3】Zysman-Colman et al. (Chem. Sci. 2019, 10, 6689)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
遅延蛍光によって発光すると同時に、円偏光発光を放出し、かつAIEE特性を有する新たな分子の必要性が依然として存在する。
【0015】
したがって、
熱活性化遅延蛍光(TADF)エミッターであり、
量子効率φ(固体状態で50%以上、理想的には100%に近い)及び円偏光の振幅を考慮した非対称係数|glight|(溶液で10-3以上)の両方の高い値を特徴とする円偏光発光(CPL)エミッターであり、
該分子の凝集が蛍光を増幅させ、高濃度又は純粋固体形態での使用を可能とするAIEE(凝集誘起発光増強)特性を有し、
既知の分子のコストよりも低い製造コストで耐久性を有する、
分子、特に有機分子が実際に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、式(I):
【化1】
(式中、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C-Ry’、N、Oからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1415のアミン基を表し、R14及びR15は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1718のアミン基を表し、R17及びR18は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化2】
からなる群から選ばれるアリール若しくは複素環を形成し、R10、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
、R、R、R、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR4041のアミン基を表し、R40及びR41は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化3】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化4】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、R11、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
一方でR及びR、他方でR及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、それぞれナフチルとなり、以下の式:
【化5】
のフラグメントをもたらし、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化6】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化7】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、R11、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される)の化合物であって、以下の化合物:
【化8】
は除外される、化合物に関する。
【0017】
式(I)の化合物の化学構造は、炭素鎖の異なる炭素上で官能基を移動させることによって得ることができる全ての可能な位置異性体及び官能基異性体、並びに式(I)の化合物の中心、軸又は個々のキラル表面の配置を変化させることによって得ることができる全ての可能な配置異性体に及ぶ。
【0018】
本発明はまた、光触媒又はドーパント、特に発光ダイオード(OLED)の発光層における光触媒又はドーパントとしての式(I)の化合物の使用に関する。
【0019】
本発明はさらに、式(I)の化合物を含む発光素子又は発光ダイオード(OLED)に関する。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになり、その理解のために添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】キラルユニットがTADF活性発色団に付着した、非特許文献1による分子を示す図である。活性発色団はこの場合、BINOL型キラルユニットに連結したTADF供与体-受容体システムから構成され、キロプティック特性(CPL)の誘導が可能となる。
図2】パラシクロファンユニットをキラリティー源として用い、同時にFO間の分離を確実にするためにも用いる、非特許文献2に記載されるCPL及びTADF分子を示す図である。HOMOはアミンを有する環上に位置し、LUMOはホウ素に配置される。
図3】パラシクロファンのキラリティーを供与体基として用い、供与体と受容体との間に配置されたスペーサーの役割を果たすフェニル基によってHOMO-LUMO分離が行われる、非特許文献3に記載されるCPL及びTADF分子を示す図である。
図4】光子の吸収後の励起状態S1の脱励起の種々の可能な方法を示す図である。励起後に存在する種々の現象をそれぞれの寿命とともに示す。提示された3つの放射脱励起プロセス、すなわち、 即時蛍光、すなわち低エネルギー励起一重項状態からの緩和による放射脱励起、 リン光、並びに、 遅延蛍光、すなわち低エネルギー励起一重項状態からの緩和に先立つ低エネルギーの一重項状態及び三重項状態の間の項間交差(逆項間)から生じる放射脱励起は、発光の現れである。励起が発光である場合、これはフォトルミネセンスである。
図5】B2-CNPyrFの蛍光減衰(アルゴンでの脱気後)を示す図である。量子効率は、トルエン中で測定した。減衰スペクトル:横軸には時間をnsで示し、縦軸には蛍光強度をカウント毎秒で示す。光電子放出の有効性の尺度である量子効率は、吸光度及び蛍光スペクトルが研究対象の化合物のものと重なる、適合させた参照に対して相対的に計算する。用いられる式は、以下の通りである:
【数1】
ここで、Sは研究対象の化合物の発光曲線下の表面積、Srefは参照の発光曲線下の表面積、A及びArefは、それぞれ研究対象の化合物及び参照の吸光度を表し、n及びnrefは、対象の分子及び参照が配置される媒体の屈折率である。最後に、φrefは参照の量子効率である。
図6】B1-TPNF(空気(O)中及びアルゴンでの脱気後)の蛍光減衰を示す図である。横軸はμsで表される時間に対応し、縦軸はカウント毎秒で表される蛍光強度に対応する。量子効率は、トルエン中で測定した。量子効率は、上に示すように計算する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、式(I):
【化9】
(式中、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C-Ry’、N、Oからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1415のアミン基を表し、R14及びR15は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1718のアミン基を表し、R17及びR18は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化10】
からなる群から選ばれるアリール若しくは複素環を形成し、R10、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
、R、R、R、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR4041のアミン基を表し、R40及びR41は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化11】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化12】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、R11、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
一方でR及びR、他方でR及びRが、それらが結合する炭素原子とともに、それぞれナフチルとなり、以下の式:
【化13】
のフラグメントをもたらし、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換されるか、
又は、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化14】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化15】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール若しくは複素環を形成し、R11、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル若しくは6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される)の化合物であって、以下の化合物:
【化16】
は除外される、化合物を提供することによって、上記で特定された要求を満たすことを目的とする。
【0023】
式(I)の化合物の化学構造は、炭素鎖の異なる炭素上で官能基を移動させることによって得ることができる全ての可能な位置異性体及び官能基異性体、並びに式(I)の化合物の中心、軸又は個々のキラル表面の配置を変化させることによって得ることができる全ての可能な配置異性体に及ぶ。
【0024】
したがって、本発明は、式(I)の化合物の全ての異性体、特に全ての位置異性体、官能基異性体及び配置異性体に及ぶものである。
【0025】
本発明による式(I)の化合物は、遅延蛍光(TADF)を介したエミッターであると同時に、円偏光発光(CPL)を放出することができ、AIEE特性を有するという利点を有する。
【0026】
本発明者らにより、全く予期せぬことに、多環電子供与体パターンと単環又は多環電子受容体とが周囲に配置された剛直な8員の(8-link)複素環の使用が、遅延蛍光による発光分子の生成を可能にすることが観察された。このように、供与体パターンと電子受容体パターンとは8員の複素環により分離される。
【0027】
電子供与体の多環性により、キラル分子フラグメント(アトロプ異性)の使用が可能となり、これによりTADF特性(フロンティア軌道(以下では簡潔にFO)間の重なりを制限する8員環(8-cycle)の限られた幾可学的形状によって誘導される)とCPL(電子供与体のキラリティーにより生成する)との組合せが可能となる。
【0028】
このため、様々な電子供与体及び受容体を活用した多種多様な化合物を合成することができる。
【0029】
本発明の範囲において、「電子供与体」という用語は、メソメリー効果又は誘導性供与効果を有する置換基又は官能基を含む、任意のパターン、システム、試薬、分子、化合物、基等を指し、全ての過剰電子複素環が含まれる。
【0030】
「電子受容体」という用語は、メソメリー効果又は誘導性誘引効果を有する置換基又は官能基を含む、任意のパターン、システム、試薬、分子、化合物、基等を指し、全ての不足電子複素環が含まれる。「アルキル」とは、本発明の意味において、1個~12個の炭素原子、例えば1個~8個の炭素原子、例えば1個~6個の炭素原子を含む直鎖、分岐又は環状の飽和した、任意に置換された炭素ラジカルを意味する。飽和した直鎖又は分岐アルキルとしては、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、ヘプチルラジカル、オクチルラジカル、ノニルラジカル、デシルラジカル、ウンデシルラジカル、ドデカニルラジカル及びそれらの分岐異性体を挙げることができる。
【0031】
「環状アルキル」とは、本発明の意味において、3個~12個の炭素原子、例えば3個~10個の炭素原子、例えば3個~8個の炭素原子を含む環状の飽和した、任意に置換された炭素ラジカルを意味する。環状アルキルとしては、シクロプロピルラジカル、シクロブチルラジカル、シクロペンチルラジカル、シクロヘキシルラジカル、シクロヘプチルラジカル、シクロオクチルラジカル、ビシクロ[2,1,1]ヘキシルラジカル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチルラジカル、アダマンチルラジカルを挙げることができる。
【0032】
「アリール」という用語は、6個~20個の炭素原子を含む単環又は多環芳香族置換基を意味する。アリール基は、例えば6個~10個の炭素原子を含んでいてもよい。参考までに、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ビナフチル基、フェナントレニル基、ピレニル基、アントラセニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、メシチル基、p-ニトロフェニル基、o-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基及びp-メトキシフェニル基、o-メトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基、m-メトキシベンジル基、o-メチルベンジル基、p-メチルベンジル基及びm-メチルベンジル基を挙げることができる。
【0033】
「複素環」又は「複素環式」という用語は、5個~10個の成員を含み、飽和又は不飽和の、窒素、酸素又は硫黄の中から選ばれる1個~3個の同一又は異なるヘテロ原子を含有する単環置換基又は多環置換基を意味する。参考までに、モルホリニル置換基、ピペリジニル置換基、ピペラジニル置換基、ピロリル置換基、ピロリジニル置換基、ピリジニル置換基、イミダゾリジニル置換基、イミダゾリニル置換基、ピラゾリル置換基、ピラゾリジニル置換基、ピラジニル置換基、テトラヒドロフラニル置換基、テトラヒドロピラニル置換基、チアニル置換基、オキサゾリニル置換基、オキサゾリジニル置換基、イソオキサゾリジニル置換基、チアゾリジニル置換基、イソチアゾリジニル置換基、マレイミジル置換基、チアントレニル置換基、キサンテニル置換基、カルバゾリル置換基、フラザニル置換基、フェノチアジニル置換基、フェナジニル置換基、フェノキサジニル置換基、キノリニル置換基、キノキサリニル置換基を挙げることができる。アルキルラジカル及びアリールラジカル並びに複素環は、1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、1つ以上のアルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルによって任意に置換されていてもよく、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。
【0034】
本発明の文脈で言及及び/又は定義される全ての置換基、ラジカル、基等において、1つ以上の水素原子が任意に1つ以上の重水素(H)に置き換えられていてもよいことに留意されたい。
【0035】
この場合、基、置換基又は化学フラグメントとの関連で使用されるような「
【化17】
」という表現は、該基又は化学フラグメントが別の基又は化学フラグメントに共有結合している共有結合を表すことを意図している。
【0036】
第1の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X、X’、R、R、R、R、R、R、R及びRは、上で定義したようなものであり、
Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C-Ry’を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基を表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、例えば1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、アルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルとすることができ、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)であるのが好ましい。
【0037】
本実施形態の変形形態において、Y及びY’はC-R、C-Ry’を表し、R及びRy’はニトリル基(-CN)を表し、R及びRz’は同一又は異なって、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表す。
【0038】
本実施形態の別の変形形態において、Y及びY’はC-R、C-Ry’を表し、R及びRy’は同一又は異なって、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表し、R及びRz’はニトリル基(-CN)を表す。
【0039】
本実施形態の別の変形形態において、Y及びY’はC-R、C-Ry’を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アリールラジカルは、上に示すように任意に置換され、R及びRz’はニトリル基(-CN)を表す。
【0040】
この第1の実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化18】
を挙げることができる。
【0041】
第2の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X、X’、R、R、R、R、R、R、R及びRは、上で定義したようなものであり、
Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C-Ry’、N、Oからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化19】
からなる群から選ばれるアリール又は複素環を形成し、
10、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0042】
本実施形態の変形形態において、R10、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0043】
アルキルラジカルは、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル及びそれらの分岐異性体であり得る。
【0044】
アリールラジカルは、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカル、フェナントレニルラジカルであり得る。
【0045】
アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、例えば1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、1つ以上のアルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルとすることができ、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)であるのが好ましい。
【0046】
本実施形態の変形形態において、
Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C-Ry’、N、Oからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F、Clからなる群から選ばれるハロゲン原子、式NR3536のアミン基であり、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化20】
を形成し、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換される。
【0047】
本実施形態の他の変形形態において、
Y及びY’は同一又は異なって、N及びOからなる群から選ばれるヘテロ原子、C-R、C(Ry’)を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化21】
からなる群から選ばれる複素環を形成し、R10は水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換される。例えば、R10は水素原子、重水素、又はメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル及びそれらの分岐異性体、又はフェニルラジカル、ベンジルラジカル若しくはナフチルラジカルを表す。
【0048】
この他の変形形態において、例えば、Y及びY’は同一又は異なって、C-R、C(Ry’)を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、式NR3536のアミン基であり、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0049】
この他の変形形態の好ましい実施形態においては、R及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化22】
を形成し、R10は上で定義したようなものである。R10はフェニルであるのが好ましい。この第2の実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化23】
を挙げることができ、R10は、この第2の実施形態及びこれらの変形形態の範囲内で以下に定義されるようなものである。
【0050】
第3の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X、X’、R、R、R、R、R、R、R及びRは、上で定義したようなものであり、
Y及びY’は同一又は異なって、N、Oからなる群から選ばれるヘテロ原子、C-R、C-Ry’を表し、R及びRy’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)を表し、
及びRz’は同一又は異なって、水素原子、重水素、ニトリル基(-CN)、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表す。
【0051】
この第3の実施形態の変形形態において、YはC-Rを表し、Rはニトリル基(-CN)であり、Y’はNを表し、R及びRz’は同一又は異なって、F及びClからなる群から選ばれるハロゲン原子を表す。
【0052】
この第3の実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化24】
を挙げることができる。
【0053】
第4の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X、X’、R、R、R、R、R、R、R及びRは、上で定義したようなものであり、
Y及びY’は同一又は異なって、N及びOからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、
及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化25】
を形成し、R23、R24、R25及びR26は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、式NR3536のアミン基を表し、R35及びR36は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0054】
アルキルラジカルは、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル及びそれらの分岐異性体であり得る。
【0055】
アリールラジカルは、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカル、フェナントレニルラジカルであり得る。
【0056】
アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、例えば1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、1つ以上のアルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルとすることができ、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)であるのが好ましい。
【0057】
この第4の実施形態の変形形態において、Y及びY’はNを表し、R及びRz’は、それらが結合する炭素原子とともに、
【化26】
を形成し、R23、R24、R25及びR26は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0058】
アルキルラジカルは、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル及びそれらの分岐異性体であり得る。
【0059】
アリールラジカルは、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカルであり得る。
【0060】
この第4の実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化27】
を挙げることができる。
【0061】
第5の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X、X’、Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R、R、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0062】
アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、例えば1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、1つ以上のアルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルとすることができ、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)であるのが好ましい。
【0063】
この第5の実施形態の変形形態において、
X及びX’はOを表し、
Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R、R、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、式NR1213のアミン基を表し、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換される。
【0064】
この変形形態において、アルキルラジカルは、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル及びそれらの分岐異性体である。
【0065】
アリールラジカルは、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカル、フェナントレニルラジカルであり得る。
【0066】
この第5実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化28】
を挙げることができる。
【0067】
第6の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR4041のアミン基を表し、R40及びR41は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化29】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化30】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
11、R42、R43、R44、R45、R56、R57、R58及びR59は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0068】
アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、例えば1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、1つ以上のアルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルとすることができ、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)であるのが好ましい。
【0069】
この第6の実施形態の変形形態において、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換され、
Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化31】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化32】
からなる群から選ばれる環状アルキル又はアリールを形成し、
42、R43、R44及びR45は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換される。
【0070】
この第6の実施形態の他の変形形態において、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化33】
を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化34】
を形成し、
11、R56、R57、R58及びR59は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0071】
この実施形態の変形形態において、アルキルラジカルは、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル及びそれらの分岐異性体であり得る。
【0072】
アリールラジカルは、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカル、フェナントレニルラジカルであり得る。
【0073】
この第6の実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化35】
を挙げることができ、R、R、R、R、R11、R56、R57、R58及びR59は、上で定義したようなものである。R、R、R、R、R11、R56、R57、R58及びR59は同一又は異なって、水素原子、重水素、アルキルラジカル、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカルからなる群から選ばれるアルキルラジカル、及びそれらの分岐異性体、アリールラジカル、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカル及びフェナントレニルラジカルからなる群から選ばれるアリールラジカルを表すのが好ましい。
【0074】
第7の実施形態によると、式(I)の化合物において、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR4041のアミン基を表し、R40及びR41は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換され、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化36】
からなる群から選ばれるアリール又は複素環を形成し、
及びRは、それらが結合する炭素原子とともに、
【化37】
からなる群から選ばれる環状アルキル、アリール、又は複素環を形成し、
11、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、式NR6162のアミン基を表し、R61及びR62は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは任意に置換される。
【0075】
アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、例えば1つ以上のヒドロキシル基(-OH)、1つ以上のアルコキシ基(-O-アルキル)、1つ以上のアリールオキシ基(-O-アリール)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)、1つ以上のアルキルラジカル、1つ以上のアリールラジカルとすることができ、アルキル及びアリールは、本発明の範囲内で定義されるようなものである。アルキルラジカル及びアリールラジカルの置換基は、1つ以上のニトロ基(-NO)、1つ以上のニトリル基(-CN)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の中から選ばれる1つ以上のハロゲン原子、1つ以上のカルボニル基(-CO-アルキル)であるのが好ましい。
【0076】
この変形形態において、アルキルラジカルは、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル及びそれらの分岐異性体であり得る。
【0077】
アリールラジカルは、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチルラジカル、フェナントレニルラジカルであり得る。
【0078】
この第7の実施形態の変形形態において、
X及びX’は同一又は異なって、O及びN-Rからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、Rは水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル又は6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換され、
Y、Y’、R及びRz’は、上で定義したようなものであり、
、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換され、
、R、R及びRは、上で定義したようなものであり、
11、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、1個~12個の炭素原子を含むアルキルラジカル、6個~20個の炭素原子を含むアリールラジカルを表し、該アルキルラジカル及びアリールラジカルは、上に示すように任意に置換される。
【0079】
この第7の実施形態の例として、以下のフラグメント:
【化38】
を挙げることができ、R、R、R、R、R11、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R63、R64、R65及びR66は、上で定義したようなものである。
【0080】
、R、R、R、R11、R46、R47、R48、R49、R50、R51、R52、R53、R54、R55、R63、R64、R65及びR66は同一又は異なって、水素原子、重水素、アルキルラジカル、例えばメチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカルからなる群から選ばれるアルキルラジカル、及びそれらの分岐異性体、アリールラジカル、例えばフェニルラジカル、ベンジルラジカル、ナフチラジカルル及びフェナントレニルラジカルからなる群から選ばれるアリールラジカルを表すのが好ましい。
【0081】
第8の実施形態によると、式(I)の化合物は、
【化39】
からなる群から選ばれる。
【0082】
本発明の式(I)の化合物は、以下の工程を含む方法によって調製することができる:
1. NaCO、KCO又はCsCO、NaHの中から選ばれる塩基の入ったフラスコに供与体試薬(1mmol~10mmol)及び受容体(1mM~10mM)を入れ、窒素又はアルゴン雰囲気にて好適な有機溶媒、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミド(DMA)の中から選ばれる溶媒を添加する。
2. 反応混合物を常温(20±5℃)で8時間~12時間撹拌する。
3. 蒸留水と、有機溶媒、例えばジクロロメタン(CHCl)、酢酸エチル(EtOAc)又はモノクロロメタン(CHCl)の中から選ばれる有機溶媒とを添加することによって反応を停止させる。このように、有機溶媒、例えばジクロロメタン(CHCl)、酢酸エチル(EtOAc)又はモノクロロメタン(CHCl)の中から選ばれる溶媒で混合物を抽出する。合わせた有機相を、例えばMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、式(I)の化合物を得る。
【0083】
精製は、当業者に既知の任意の精製法、例えば、溶離液として溶媒の混合物(溶媒は、例えばシクロヘキサン、ナフサ、ヘキサン、酢酸エチル、DCM、CHCl、トルエンの中から選ばれる)を用いるシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって行うことができる。溶離液の例は、シクロヘキサン/ジクロロメタン(1/1)混合物である。
【0084】
上述の溶媒は一例であり、いかなる場合にも限定されるものではない。
【0085】
したがって、本発明による式(I)の化合物は、円偏光発光(CPL)の発光特性と遅延蛍光(TADF)の発光特性とを兼ね備えることを可能にする。これらの化合物は、凝集誘起発光増強(AIEE)特性も有する。同一の化合物におけるこれらの特性の組合せは、有機発光ダイオード(OLED)の発光層においてドーパントとして応用される可能性が高い。さらに、これらの化合物は、光触媒の分野にも応用され得る。
【0086】
したがって、本発明は光触媒、特にC-H結合の活性化反応、C-C結合及びC-X結合(Xはヘテロ原子である)の形成反応における光触媒、又はドーパント、特に有機発光ダイオード(OLED)の発光層におけるドーパントとしての本発明による式(I)の化合物の使用を目的とする。
【0087】
本発明は、本発明による式(I)の化合物を含む発光素子又は発光ダイオードをさらに目的とする。
【実施例
【0088】
本発明の方法及び実施例に使用される種々の試薬及び溶媒は概して、市販の化合物であるか、又は当業者に既知の任意の方法によって調製することができる。合成された化合物は、Bruker Avance 400MHz分光計でのRMN H、RMN 13C、RMN 19F分析法によって特性評価した。化学運動は、使用した重水素化溶媒の残留ピークに対して設定されるパーツパーミリオン(ppm)で報告し、結合定数をヘルツ(Hz)で示す。ピークの多重度はシングレット(s)、ダブレット(d)、トリプレット(t)によって参照する。解釈することができなかった多重度は、マルチプレット(m)として報告する。
【0089】
合成された化合物は、WatersのESI-Quadripole autopurify装置(ポンプ:2545、質量:ZQ2000)を用いた分析及び質量分析法、並びに質量分析によって特性評価した。
【0090】
可視-UVスペクトルは、Cary 50又はCary 400(Agilent)複光束分光計にて10mm軌道の石英セルを用いて記録した。
【0091】
円偏光二色性(CD)スペクトルは、ペルチェサーモスタット制御式セルキャリアとXeレーザーとを備える日本分光株式会社の分光偏光計(モデルJ-815)で記録した。データは、1mm×1cmのセルを用いて20℃で記録した。得られたシグナルは、溶媒及びセルからの寄与を差し引くことで処理した。
【0092】
発光スペクトルは、Fluoromax-3(株式会社堀場製作所)又はFluoromax-4(株式会社堀場製作所)又はFluorolog(株式会社堀場製作所)分光蛍光計で測定した。直角配置を用いた。再吸収アーチファクトを回避するために、サンプルの光学密度が0.1未満であることを確認した。
【0093】
nsレジームでの蛍光減衰曲線は、ダブルNd:YVO4レーザー(Millennia Xs、Spectra-Physics)によって励起するチタンサファイアレーザー(Tsunami、Spectra-Physics)から構成されるフェムト秒レーザー励起による時間相関単一光子計数法(TCSPC)によって得た。発振器の990nmの発光パルスを音響光学結晶によって4MHzの繰返し率で選択した後、非線形結晶によって330nmに三倍化した。蛍光光子は、Becker & HicklのTCSPC SPC-630モジュールに接続した浜松ホトニクス株式会社のMCP R3809U光電子増倍管により、モノクロメーター及びマジック角の偏光子を介して90°で検出した。装置の応答関数は、各減衰測定の前に約25psのfwhm(半値全幅)で記録した。蛍光データは、再コンボリューション分析及び非線形最小二乗の全最小化法を含む、イリノイ大学アーバナ-シャンペーン校のLaboratory for Fluorescence Dynamicsで開発されたGlobalsソフトウェアパッケージを用いて分析した。蛍光μsの減衰曲線は、Edimbourgのフラッシュレーザー光分解分光計LP920と、非線形結晶によって355nmに三倍化したNd:YAGレーザー(Continuum)とを組み合わせて用いることによって得られた。この第三高調波は、425nmのシグナルを生成し得るOPOを励起するように最適化されている。蛍光光子は、浜松ホトニクス株式会社のR928光電子増倍管を用い、ハイパスフィルター及びモノクロメーターを通して90°で検出した。ソフトウェアL900(Edimbourg instrument)に実装されているようなレーベンバーグ-マーカートアルゴリズムを最小二乗の非線形調整(テールの調整)に用いた。調整の品質を推定するために、重み付き残差を計算した。
【0094】
円偏光発光(CPL)測定(一般的ポイント)
分子は、好ましくは円偏光発光を吸収することができ、同様に放射脱励起によって発光(蛍光、遅延蛍光又はリン光)の形で過剰な円偏光発光を放出することもできる。この円偏光発光(CPL)現象を観察するためには、フルオロフォアに力場を加える必要がある。力場は、研究対象のキラル蛍光色素から生じる可能性があり(分子に内在するキラル力場)、CPLと称されるか、又は放出される光の伝搬方向にある外部磁場から生じる可能性もあり、この場合、研究対象の分子は、必ずしもキラルではなく、MCPLと称される(磁気円偏光発光)。
【0095】
本発明の範囲においては、CPLのみを研究し、MCPL特性に基づく研究は行わない。
【0096】
CPLを測定するためには、円偏光二色性と同様、右円偏光発光の放出(I(λ))に対する左円偏光発光の放出(I(λ))の強度差(ΔI(λ))を測定する:
ΔI(λ)=I(λ)-I(λ)
【0097】
ΔI(λ)測定は、多数の実験アーチファクト(直線偏光発光、複屈折現象)及び検出限界に関連する問題が起こり得ることから非常に複雑である。実際、一般に円偏光発光の割合は、放出される全発光I(λ)に対して非常に低いため、使用する光電子増倍管は、非常に効率の高いものでなくてはならない。フルオロフォア間の円偏光発光の放出を比較可能にするためには、発光非対称係数を用いる必要がある:
light(λ)=2(ΔI(λ))/(I(λ))
(式中、I(λ)は全発光強度を表す)。「係数2」のために、glightは-2~2の値をとることができ、gabsと同様に右円偏光発光又は左円偏光発光の全放出を表す。CDの場合と同様に、glight値が0の場合、分子は過剰な円偏光発光を放出しない。
【0098】
CPL測定は、化合物の放射脱励起に伴う遷移キラル環境、ひいては蛍光(遅延又は遅延でない)及びリン光の原因となる低エネルギーの一重項状態又は三重項状態についての情報を与える。しかしながら、吸収及び内部転換現象(リン光については項間交差)の間に、分子の幾可学的形状がその基底状態(fundamental state)に対して変化することとなる。そのため、gabsが0とは異なり、glighが0となることが可能である(理論的には、その逆も可能であるが、観察されたことはない)。分子の幾可学的形状が変化し、放射脱励起遷移により分子の本質的にキラルな部分が活用されない場合、キラル情報の喪失が起こり得る。
【0099】
理論的に、すなわちモデリング及び計算によって、glight値を以下の式により決定することも可能である:
【数2】
【0100】
この式において、μ及びmは、それぞれ励起状態の電気双極子及び磁気双極子の遷移モーメントを表し、θは、これら2つのベクトルのなす角である。
【0101】
この式を用いて、ベクトルのノルムの値が大きいほど、glight値が大きくなる(θ≠π/2の場合)ことが容易に理解される。それにもかかわらず、実際には、mがμと比べて非常に小さいことが多く(そのため、近似式glight(λ)≒4cosθ|m|/|μ|)、glightは|m|に正比例し、|μ|に反比例する。このため、磁気的に許容され、電気的に禁制される遷移では高いglight値が予想される。そのため、CPL測定は当初、主にランタニド錯体に適用されていた。これらの化合物は、非常に高い磁気遷移モーメント及び低い電気遷移モーメントを与える特定の遷移(理論的には禁制されるが、スピン-軌道相互作用により観測可能なラポルテ遷移f-f)を行うことができるという特殊性を有する。そのため、高いglight値が得られるにもかかわらず(これまでに測定された最大値は1.38)、このタイプの錯体の量子効率は低い(最良の場合で数%程度)。
【0102】
遅延蛍光
逆項間交差(rISC)
上述のように、分子が状態Tから励起一重項状態Sに戻ることが可能である。これは三重項-三重項消滅又は項間交差によって行われ得る。後者の場合、低エネルギー一重項状態Sと低エネルギー三重項状態T(ΔEST)との間のエネルギー差が極めて低い場合、逆項間交差(rISC)と称され、これにより以下の遷移が達成される:
→S
【0103】
項間交差と同様、逆項間交差は、初期状態(T)が十分に長い寿命を有し、かつ逆項間交差の速度が十分に高い場合にのみ起こり得る。
【0104】
この現象は、低エネルギー状態(T)から高エネルギー状態(S)に移行するため、エネルギー的に依存する。したがって、常温(20±5℃)で自発的に逆項間交差が生じるためには、SとTとの間のエネルギー差が100meV未満でなければならないと考えられる:ΔEST≦100meV。この値は、研究対象のフルオロフォアに依存するため、議論されることが多い。ΔESTが100meVを超える或る特定の分子が全く同様に遅延蛍光特性を有することがある。文献では、360meVという上限値も見られる。ΔESTは、分子のHOMOとLUMOとの間の軌道の重なりに正比例する。このため、これら2つの軌道間の分離が大きくなるほど、ΔESTは小さくなる。顕著な項間交差を有する分子設計の課題は、これらのフロンティア軌道の良好な空間的分離を得ることにある。これらの条件を満たすために様々な分子設計が開発されてきたが、最も一般的に使用されるのは供与体-受容体型のフルオロフォアを活用するものであり、すなわちこれら2つの単位が可能な限り90°に近い二面角を形成する。これにより、HOMOを主に供与体基側、LUMOを主に受容体側に配置することが可能となる。しかしながら、量子効率がHOMOとLUMOとの間の軌道の重なりに比例するため、2つのフロンティア軌道が完全に分離しないようにする必要がある。したがって、ΔESTを最小にするための良好な分離と、興味深い量子効率の維持との妥協点を見出さなければならない。
【0105】
熱活性化遅延蛍光
逆項間交差後に、分子は状態Sに戻る。続いて、分子が即時蛍光と同じ発光波長を有する蛍光を放出することができる(脱励起S→S)。しかしながら、分子が幾つかの状態を経て移行するため、この蛍光の寿命は異なり、10-8秒~10-5秒程度と長くなるため、この現象は「遅延蛍光」と呼ばれる。しかしながら、「遅延蛍光」という用語では、この現象の重要な部分が省かれている。この現象の正式な名称は、「熱活性化遅延蛍光」(TADF)である。温度依存的なプロセスである逆項間交差のために、遅延蛍光も温度に依存する。したがって、媒体の温度が上昇するほど、項間交差が支持され、分子が状態Sに戻り、遅延蛍光を放出することができるようになる。
【0106】
図4は、励起後に存在する種々の現象をそれぞれの寿命とともに示す。提示された3つの放射脱励起プロセス、すなわち即時蛍光、リン光及び遅延蛍光は、発光の現れである。励起が発光である場合、これはフォトルミネセンスである。
【0107】
光物理的データ及びTADF:
本発明の化合物のTADF特性を実証するために、
蛍光減衰が双指数関数的:1ナノ秒程度の短い寿命及び脱気溶液での長い寿命(空気中の酸素が三重項状態を消光する)であることを確認し、
空気中の溶液とアルゴン中の脱気溶液との間で量子効率(φ)の増加が観察されるかを確かめる必要がある。
【0108】
実施例1:B2-CNPyrFの合成
化学式:C3422
モル質量:556.57g/mol
【化40】
【0109】
【表1】
【0110】
3,3’,9,9’-テトラメチル-9H,9’H-[1,1’-ビカルバゾール]-2,2’-ジオール(B2、0.0310g、0.07mmol)、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ピリジンカルボニトリル(CNPyrF、0.0167g、0.09mmol)及びKCO(0.0376g、0.27mmol)の入ったフラスコに、DMF(1mL)を窒素雰囲気下で添加する。反応混合物を常温(20±5℃)で16時間撹拌する。形成された淡黄色の懸濁液に蒸留水及びジクロロメタンを添加することによって反応を停止させる。混合物をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、シクロヘキサン/ジクロロメタン(1/1)混合物を溶離液として用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、精製された黄色の粉末を得る。
【0111】
5,6-ジフルオロ-2,9,15,16-テトラメチル-15,16-ジヒドロピリド[2’,3’:2,3][1,4]ジオキソシノ[6,5-a:7,8-a’]ジカルバゾール-7-カルボニトリル(B2-CNPyrF)が白色の固体の形態として得られ(0.0470g、効率(出発BICOL B2に対して計算)=99%)、RMNによって特性評価する。次いで、2つの鏡像異性体を超臨界相でのキラルクロマトグラフィーによって分離する。
【0112】
RMN1H (CDCl3, 400MHz): θ (ppm) = 149.19, 148.50, 142.89, 142.79, 126.39, 126.35, 123.09, 123.04, 122.33, 122.15, 122.10, 121.41, 120.31, 120.29, 119.96, 119.93, 112.02, 111.84, 109.19, 109.17, 30.66, 30.59, 17.91, 17.26。
【0113】
トルエン中で測定した量子効率:
φ(O)=5%(prompt fluo);φ(Ar)=11%(prompt fluo+delayed fluo)。
【0114】
「prompt fluo」は即時蛍光、すなわち、三重項状態を経由しない状態Sから基底状態への放射脱励起に対応する10ns程度の短寿命蛍光を意味する。
【0115】
「delayed fluo」は遅延蛍光、すなわち、低エネルギー励起一重項からの緩和に先立つ低エネルギーの一重項状態及び三重項状態の間の項間交差(逆項間)から生じる放射脱励起を意味する。
【0116】
これらのパラメーターの測定に使用される装置及び方法は、既に指定した。
【0117】
量子効率を決定するために、得られた生成物の蛍光シグナルを、近くの波長範囲で発光する既知のφ参照と比較する。本例では、上記既知のφ参照はクマリン102である。
【0118】
この化合物のglightは、0.8×10-3(トルエン=C=10-5)である。
【0119】
実施例2:B2-TPNFの合成
化学式:C3622
モル質量:580.59g/mol
【化41】
【0120】
【表2】
【0121】
BicolB(0.0500g、0.12mmol)、テトラフルオロテレフタロニトリル(0.0287g、0.14mmol)及びKCO(0.0551g、0.40mmol)の入ったフラスコに、DMF(1.5mL)を窒素雰囲気下で添加する。反応混合物を常温(20±5℃)で12時間撹拌する。形成された淡黄色の懸濁液に蒸留水及びジクロロメタンを添加することによって反応を停止させる。混合物をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、シクロヘキサン/ジクロロメタン(1/1)混合物を溶離液として用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、精製された黄色の粉末を得る。
【0122】
化合物B-TPNFが黄色の固体の形態で得られる(0.0455g、効率(出発BICOL B2に対して計算)=65%)。次いで、2つの鏡像異性体を超臨界相でのキラルクロマトグラフィーによって分離する。
【0123】
RMN1H (CDCl3, 400MHz): θ (ppm) = 8.03 (d, 7.50Hz, 2H), 8.00 (s, 2H), 7.41 (dd, 11.45Hz, 3.97Hz, 2H), 7.23 (d, 4H), 7.17, 3.12 (s, 6H), 2.52 (s, 6H)
RMN13C (CDCl3, 100MHz): θ (ppm) = 149.49, 142.91, 138.10, 126.54, 123.35, 122.44, 122.03, 121.23, 120.36, 120.06, 111.90, 109.24, 29.86, 18.04。
【0124】
トルエン中で測定した量子効率:
φ(O)=10%(prompt fluo);φ(Ar)=26%(prompt fluo+delayed fluo)。
【0125】
この化合物について測定されたglightは、1.8×10-3(トルエン=C=10-5)である。
【0126】
実施例3:B1-TPNFの合成
化学式:C3418
モル質量:552.54g/mol
【化42】
【0127】
【表3】
【0128】
9,9’-テトラメチル-9H,9’H-[4,4’-ビカルバゾール]-3,3’-ジオール(B1、0.040g、0.13mmol)、テトラフルオロテレフタロニトリル(TPNF、0.022g、0.13mmol)及びKCO(0.070g、0.63mmol)の入ったフラスコに、DMF(5mL)をアルゴン雰囲気下で添加する。反応混合物を常温(20±5℃)で16時間撹拌する。形成された淡黄色の懸濁液に蒸留水及び酢酸エチルを添加することによって反応を停止させる。混合物を酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、シクロヘキサン/酢酸エチル(1/1)混合物を溶離液として用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、精製された黄色の粉末を得る。
【0129】
5,6-ジフルオロ-2,9,15,16-テトラメチル-15,16-ジヒドロピリド[2’,3’:2,3][1,4]ジオキソシノ[6,5-a:7,8-a’]ジカルバゾール-7-カルボニトリル(B1-TPNF)が白色の固体の形態で得られる(0.0430g、効率(出発BICOLに対して計算)=76%)。次いで、2つの鏡像異性体を超臨界相でのキラルクロマトグラフィーによって分離する。
【0130】
RMN1H (CD2Cl2, 400MHz): θ (ppm) = 7.64 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.56 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.45 (d, J = 8.3Hz, 2H), 7.34 (ddd, J = 8.3, 7.1, 1.2Hz, 2H), 6.94 (d, J = 8.0Hz, 2H), 6.64 (ddd, J = 8.0, 7.0, 1.0Hz, 2H), 3.98 (s, 6H)。
RMN13C (CD2Cl2, 100MHz): θ (ppm) = 148.5, 147.8, 145.3, 145.2, 144.7, 142.2, 139.4, 126.5, 122.8, 122.0, 121.6, 120.9, 118.9, 118.6, 110.0, 109.1, 108.7, 102.8, 29.4。
【0131】
HRMS [M+Na](C3418Na)についての計算値:575.129 実測値575.1288(0ppm)。
【0132】
トルエン中で測定した量子効率:
φ(O)=6%(prompt fluo);φ(Ar)=15%(prompt fluo+delayed fluo)。
【0133】
この化合物について測定されたglightは、0.7×10-3(トルエン=C=10-5)である。
【0134】
実施例4:C1-(S)-TPNBINOL-(R)の合成
化学式:C6034
モル質量:842.2682g/mol
【化43】
【0135】
【表4】
【0136】
DMF(1mL)に溶解したN2,N2’-ジフェニル-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジアミン(C1(S)、0.060g、0.14mmol)の入ったフラスコに、NaH(0.012g、0.30mmol)をアルゴン雰囲気下にて0℃で添加する。反応混合物を0℃で5分間撹拌した後、反応混合物を放置して常温に戻す(約10分間)。次いで、DMF(1mL)中の化合物TPNBINOLF(0.061g、0.14mmol)の溶液を反応混合物にゆっくりと添加する。この添加後に、溶液を常温で一晩撹拌する。蒸留水及び酢酸エチルを添加することによって反応を停止させる。混合物を酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、シクロヘキサン/酢酸エチル(80/20)混合物を溶離液として用いたシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって、精製された黄色の粉末を得る。
【0137】
生成物C1-(S)-TPNBINOL-(R)が黄色の固体の形態で得られ(0.0740g、効率(出発ジアミンに対して計算)=64%)、RMNによって特性評価する。
【0138】
RMN1H (400MHz, CDCl3) θ 8.13 (d, J = 8.8Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.2Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.5Hz, 2H), 7.79 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.75 (d, J = 8.5Hz, 2H), 7.71 (d, J = 8.3Hz, 2H), 7.56-7.52 (m, 2H), 7.47 (d, J = 8.0Hz, 2H), 7.43-7.37 (m, 2H), 7.32-7.38 (m, 2H), 7.14-7.06 (m, 4H), 6.59 (t, J = 7.4Hz, 2H), 6.45, (d, J = 8.1Hz, 2H), 6.31 (t, J = 7.4Hz, 2H), 6.21 (dd, J = 7.8, 6.8Hz, 2H), 5.48 (d, J = 8.0Hz, 2H)。
RMN13C (101MHz, CDCl3) θ 149.7, 148.6, 141.4, 139.6, 137.0, 132.8, 132.2, 132.2, 132.0, 131.3, 130.6, 128.4, 128.3, 127.7, 127.6, 127.4, 127.3, 126.6, 126.3, 126.2, 126.0, 125.9, 125.0, 121.0, 120.7, 118.4, 114.2, 112.8, 112.3。
【0139】
HRMS [M+Na](C3418Na)についての計算値:843.2760 実測値843.2760(0ppm)。
【0140】
トルエン中で測定した量子効率:
φ(O)=5%(prompt fluo);φ(Ar)=9%(prompt fluo+delayed fluo)。
【0141】
この化合物について測定されたglightは、1.6×10-3(トルエン=C=10-5)である。
【0142】
実施例5:比較例
図1に示され、非特許文献1に記載される式A1
【化44】
の分子を、この文献に記載の操作様式に従って合成した。
【0143】
分子A1及び実施例1の化合物B2-CNPyrF及び実施例2のB2-TPNFのCPLデータを上記の方法に従って計算し、比較した。
【0144】
分子A1:glight(λmax)=0.3×10-3
B2-CNPyrF:glight(λmax)=0.8×10-3
B2-TPNF:glight(λmax)=1.8×10-3
B1-TPNF:glight(λmax)=0.7×10-3
C1-TPNBinol:glight(λmax)=1.6×10-3
【0145】
結論として、AIEE特性を有するCPTADF分子(分子A1)に対して、化合物B2-TPNF、B2-CNPyrF、B1-TPNF及びC1(S)-TPNBINOL(R)は、より大きい(最大で6倍の)非対称係数値(glum)を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】