(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】電力供給プラントの運転方法および電力供給プラント
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20230727BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20230727BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230727BHJP
H02J 3/16 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H02J3/46
H02P9/00 Z
H02J3/32
H02J3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502622
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021070191
(87)【国際公開番号】W WO2022013458
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020119039.5
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ノブロック,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハルト,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バーンズドルフ,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】プレム,ダニエル
【テーマコード(参考)】
5G066
5H590
【Fターム(参考)】
5G066FB11
5G066HA15
5G066HA19
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5H590AA11
5H590CA08
5H590CC01
5H590CE01
5H590FC11
5H590HA02
5H590HA06
5H590HA09
5H590JA19
(57)【要約】
複数のインバータ(10.1、10.2、10.3)と、通信のためにインバータ(10.1、10.2、10.3)に接続されたプラントコントローラ(28)とを有する電力供給プラント(11)を運転する方法において、電力供給プラント(11)は、AC電圧グリッド(24)に接続されたグリッド接続(26)を有する。グリッド接続(26)を介して、インバータ(10.1、10.2、10.3)は、電力供給プラント(11)が、AC電圧グリッド(24)を使用して、それぞれの融通電力から構成される総融通電力を交換するように、AC電圧グリッド(24)と融通電力を交換する。それぞれのレギュレータ(50.1、50.2、50.3)によって、インバータ(10.1、10.2、10.3)は、それぞれの基準周波数に対するそれぞれの基準プロファイルからのグリッド電圧の電圧プロファイルのそれぞれの偏差に応じて、および/またはそれぞれのグリッド電圧とそれぞれの基準電圧との間のそれぞれの電圧振幅差に応じて、それらのそれぞれの融通電力を調整する。プラントコントローラ(28)は、総融通電力と特定の融通電力との間の電力差に応じて、インバータ(10.1、10.2、10.3)のレギュレータ(50.1、50.2、50.3)に影響を与える。本出願に係る電力供給プラント(11)は、この方法を実行するように設計されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインバータ(10.1、10.2、10.3)と、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に通信可能に接続されたプラントコントローラ(28)とを有する電力供給プラント(11)の運転方法であって、
前記電力供給プラント(11)は、AC電圧グリッド(24)に接続されたグリッド接続(26)を有し、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、前記電力供給プラント(11)が、それぞれの融通電力から構成される前記AC電圧グリッド(24)と総融通電力を交換するように、前記グリッド接続(26)を介して前記AC電圧グリッド(24)と融通電力を交換し、
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、それぞれのレギュレータ(50.1、50.2、50.3)によって、それぞれの基準周波数に基づくそれぞれの基準プロファイルからのグリッド電圧の電圧プロファイルのそれぞれの電圧プロファイル偏差に応じて、および/またはそれぞれのグリッド電圧とそれぞれの基準電圧との間のそれぞれの電圧振幅差に応じて、それらのそれぞれの融通電力を調整し、
前記プラントコントローラ(28)は、前記総融通電力と特定の融通電力との間の電力差に応じて、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)に影響を与える、方法。
【請求項2】
前記電力差は、前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)に影響を与えることによって前記プラントコントローラ(28)によって最小化される、特に、ゼロまたは略ゼロに調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の前記融通電力は、有効電力(P)および無効電力(Q)を含み、前記電力供給プラント(11)の前記総融通電力は、有効電力成分および無効電力成分を含み、前記特定の融通電力は、有効電力成分および/または無効電力成分を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定の融通電力の前記有効電力成分および/または前記無効電力成分は一定であり、特にゼロである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記特定の融通電力の前記有効電力成分は、グリッド周波数に依存する、および/または前記特定の融通電力の前記無効電力成分は、前記グリッド電圧に依存する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラントコントローラ(28)の介入ダイナミクスは、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)のダイナミクスよりも遅い、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧プロファイル偏差は、グリッド周波数とそれぞれの基準周波数(f
ref)との間の周波数差を含み、前記グリッド周波数は、好ましくはPLLによって、前記グリッド電圧から決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有効電力(P)が、前記周波数差の関数としてそれぞれの前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)によって調整される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電圧プロファイル偏差は、前記グリッド電圧のグリッド位相角とそれぞれのインバータ位相角との間の位相角差を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記インバータ位相角は、それぞれの基準有効電力およびそれぞれの基準周波数を考慮して、それぞれの前記有効電力の関数として、それぞれの前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)によって特定することができる周波数を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、それぞれの特性曲線(60、60’)に基づいてそれらのそれぞれの有効電力(P)を調整し、前記特性曲線(60、60’)のパラメータは、それぞれの前記基準周波数(f
ref)に依存し、および/または前記特性曲線(60、60’)のパラメータは、それぞれの基準電力(P
ref)に依存し、前記特性曲線(60、60’)は、それぞれの傾き(df/dP、dP/df)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
それぞれの前記ドループレギュレータ(50.1、50.2、50.3)の前記特性曲線(60、60’)は、それぞれの前記有効電力(P)とそれぞれの前記周波数差との間の関数関係を特定し、それぞれの前記ドループレギュレータ(50.1、50.2、50.3)の前記有効電力(P)は、測定変数として使用され、それぞれの前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の出力電圧の周波数および/または位相角が、操作変数として設定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラントコントローラ(28)は、それぞれの前記基準周波数(f
ref)に依存するそれぞれの前記特性曲線(60、60’)の前記パラメータ、および/または、それぞれの前記基準電力(P
ref)に依存するパラメータに影響を与えることによって、前記電力供給プラント(11)の前記総融通電力の前記有効電力成分が、特定可能な時定数を使用して前記特定の融通電力の前記有効電力成分に近似されるように、それぞれの前記有効電力(P)を調整する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
それぞれの前記基準周波数(f
ref)に依存するそれぞれの前記特性曲線(60、60’)の前記パラメータは、それぞれの前記基準周波数(f
ref)が、前記グリッド接続(26)で測定されたローパスフィルタ処理されたグリッド周波数に一致するように影響を受ける、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの前記基準周波数(f
ref)および/またはそれぞれの基準電力(P
ref)は、同じであり、前記プラントコントローラ(28)によって前記インバータ(10.1、10.2、10.3)へ送信され、前記送信は、特にブロードキャストによって行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
それぞれの前記基準周波数(f
ref)および/またはそれぞれの基準電力(P
ref)は、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)間で異なる可能性があり、前記プラントコントローラ(28)によって前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に送信することができる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記電力差は、前記プラントコントローラ(28)から前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に送信され、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)における、それぞれの前記基準周波数(f
ref)および/またはそれぞれの基準電力(P
ref)は、受信された前記電力差の関数として変更される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
所与の電圧プロファイル偏差に対して前記電力供給プラント(11)によって提供される有効電力瞬時予備力のレベルが、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)のパラメータを特定することによって、および/または前記プラントコントローラ(28)のパラメータを特定することによって、その最大電力およびそのエネルギーに関して調整される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)のダイナミクスは、特性曲線のそれぞれの傾きを特定することによって調整することができる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)のダイナミクスは、前記プラントコントローラ(28)によって、好ましくは特性曲線の傾きを特定することによって、調整される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
介在ダイナミクスが、前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)で、特に、前記電力差を入力変数として使用し、基準電力(P
ref)を出力する、積分コントローラまたはPIコントローラのパラメータを特定することによって調整することができることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
それぞれの前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に接続可能なそれぞれのエネルギー貯蔵装置(18.1、18.2、18.3)との電力交換は、前記エネルギー貯蔵装置(18.1、18.2、18.3)のそれぞれの特定可能な充電状態が目的とされるように制御されることができ、これは特に、それぞれの前記エネルギー貯蔵装置(18.1、18.2、18.3)の容量の50%に対応し、前記エネルギー貯蔵装置(18.1、18.2、18.3)の充電または放電は、それぞれの前記偏差(特に、それぞれの位相角差)の関数としての融通電力のそれぞれの調整により、最大融通電力よりも低い平均電力で実行される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
それぞれの前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、前記AC電圧グリッド(24)と無効電力を交換することができ、それぞれの前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)は、それぞれの前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の皮相電力限界に達したとき、前記AC電圧グリッド(24)と交換される無効電力を低減させることができ、前記AC電圧グリッド(24)と交換される有効電力を増加させることができるような方法で、融通電力に影響を与えるように設計されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記グリッド接続(26)における前記総融通電力の無効電力成分が、前記グリッド接続(26)における測定電圧の関数として調整される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの無効電力は、前記プラントコントローラ(28)と、それぞれの前記インバータ(10.1、10.1、10.2、10.3)内の無効電力レギュレータ(70)とによって調整され、前記グリッド接続(26)での前記総融通電力の無効電力成分の調整は、前記プラントコントローラ(28)によって実行される少なくとも次のステップ:
特に前記グリッド電圧の関数として、前記グリッド接続(26)で前記特定の融通電力の無効電力成分を決定するステップと、
前記グリッド接続(26)での前記無効電力成分を測定するステップと、
特に、前記特定の融通電力の前記無効電力成分と、前記グリッド接続(26)で測定された前記無効電力成分との関数として、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの無効電力設定点を決定するステップと、
前記それぞれの無効電力設定点を前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に送信するステップと、
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)によって実行される次のステップ:
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)のそれぞれの出力でそれぞれのグリッド電圧を測定するステップと、
前記それぞれの測定されたグリッド電圧を、前記グリッド電圧の平均値に対応する基準電圧と比較するステップと、
Q-U特性曲線を用いて、前記測定されたグリッド電圧の前記基準電圧からの偏差の関数として、それぞれの無効電力補正値を決定するステップと、
前記それぞれの無効電力設定点と前記それぞれの無効電力補正値の合計に基づいて、前記それぞれの無効電力を調整するステップとを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計された電力供給プラント(11)。
【請求項27】
電力供給プラント(11)内のインバータ(10.1、10.2、10.3)を動作させる方法であって、前記電力供給プラント(11)は、AC電圧グリッド(24)に接続されたグリッド接続(26)を有し、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、前記グリッド接続(26)を介して前記AC電圧グリッド(24)と有効電力および無効電力を含む融通電力を交換し、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、基準周波数に基づく基準プロファイルからのグリッド電圧の電圧プロファイルの電圧プロファイル偏差の関数として、および/またはグリッド電圧と基準電圧との間の電圧振幅差の関数として、レギュレータ(50.1、50.2、50.3)によって前記融通電力を調整し、前記ギュレータ(50.1、50.2、50.3)の特定のパラメータは、前記グリッド接続(26)での前記電力供給プラント(11)の前記融通電力と特定の融通電力との間の電力差の関数として変化する、方法。
【請求項28】
前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)の前記特定のパラメータを変化させる介入ダイナミクスは、前記レギュレータ(50.1、50.2、50.3)が、前記電力差の変化に対する前記特定のパラメータの変化よりも前記グリッド電圧の変化に対する融通電力の変化によって迅速に応答するように、前記融通電力の制御ダイナミクスよりも遅い、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の前記レギュレータは、ドループレギュレータを含み、前記ドループレギュレータは、有効電力(P)を測定変数として使用し、傾き(df/dP)を有する特性曲線(60、60’)を使用することによって、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の出力電圧の周波数および/または位相角は、操作変数として調整され、前記特性曲線(60、60’)の特定のパラメータは、基準周波数(f
ref)に依存し、および/または、前記特性曲線(60、60’)の特定のパラメータは、基準電力(P
ref)に依存し、前記基準周波数(f
ref)および/または前記基準電力(P
ref)は、前記電力差の関数として、特に前記電力差の積分の関数として変化する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記基準周波数(f
ref)が、前記グリッド接続(26)で測定されたローパスフィルタリングされたグリッド周波数と一致するように、前記基準周波数(f
ref)は変化する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記電力差が、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の外部、特にプラントコントローラ(28)内で測定され、積分器(28.2)によって前記基準電力(P
ref)に変換され、前記基準電力(P
ref)は、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に送信される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記電力差は、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の外部、特にプラントコントローラ(28)内で測定され、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)に送信され、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)は、積分器(28.2)によって前記電力差から前記基準電力(P
ref)を決定する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記積分器(28.2)は、利得係数(1/H
θ)を有する増幅器(28.3、28.6)を有する、請求項31または32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記積分器の前記利得係数(1/H
θ)および/またはドループ要素(52.1)の傾き(df/dP)が調整可能である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
インバータ位相角(θ
set)は、前記利得係数(1/H
θ)と前記傾き(df/dP)との積によって調整可能なグリッド電圧位相角に対する慣性を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
インバータ位相角(θ
set)とグリッド電圧位相角との同期は、利得係数(1/H
θ)対傾き(df/dP)の比によって調整可能な減衰を有する、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記インバータ位相角(θ
set)の前記慣性および/または減衰が、前記電力供給プラント(11)の継続的な運転中に調整可能である、請求項35または36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
慣性および/または減衰を調整するために、前記利得係数(1/H
θ)および/または前記傾き(df/dP)は、調整可能な時定数を使用するローバスフィルタを介して、または調整可能な傾きを有するランプを介して調整可能である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の調整は、以下のステップ:
前記グリッド電圧(U
is)を測定するステップと、
Q-U特性曲線(72)によって無効電力補正値(Q(U
ref))を前記基準電圧(U
ref)からの前記グリッド電圧の偏差の関数として決定するステップと、
特定の融通電力の無効電力成分とそれぞれの前記無効電力補正値(Q(U
ref))の合計に基づいて前記無効電力(Q)を調整するステップとを実行するグリッド追従無効電力レギュレータ(70)を含み、
前記基準電圧(U
ref)は、前記インバータ(10.1、10.2、10.3)の前記無効電力(Q)が、ゼロに近づく前記無効電力補正値(Q(U
ref))によって、特定可能な時定数を使用して前記特定の融通電力の前記無効電力成分に近似するように、前記Q-U特性曲線の特定のパラメータとして変化する、請求項27~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給プラントの運転方法および電力供給プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力供給プラント、特に火力発電プラントは、同期発電機またはタービンのグリッド同期回転フライホイールマスと、それぞれのドライブトレインを備えている。電力供給プラントは、電力をAC電圧グリッドと交換し、グリッド内のプラントのフライホイールマス全体がAC電圧グリッドの安定化に大きく貢献する。特に、このフライホイールマスの慣性は、内部に蓄えられた回転エネルギーにより、電力供給プラントの回転電圧空間ベクトルの慣性を引き起こすため、AC電圧グリッド内での電圧空間ベクトルの位相ジャンプおよび/または周波数変化が発生した場合に、特に誘導効果と、フライホイールマスの電圧空間ベクトルとグリッド電圧の電圧空間ベクトルとの間の位相角の差とによって引き起こされる、電力供給プラントの瞬間的な電力変化が発生する。その結果、特に電力の供給と放電との間で、すなわち、AC電圧グリッド内での生成と消費の間で、電力の不均衡が発生した場合、いわゆる瞬時予備力が提供され、AC電圧グリッドのグリッド周波数の変化率が制限される。
【0003】
電力供給プラントとAC電圧グリッドとの間で瞬時予備電力として交換されるエネルギーは、フライホイールマスを減速または加速することによって回転質量から除去または回転質量に供給され、交換される電力および交換されるエネルギーは、電力供給プラントの物理的特性によって全体として制限される。フライホイールマスの電圧空間ベクトルがグリッドの電圧空間ベクトルと同期し、その回転周波数がグリッド周波数と一致するとすぐに、すなわち、特に、例えば、さらなる周波数保持メカニズムまたはグリッド自己調整効果によって電力平衡が解消された後、グリッド周波数のドリフトを停止させるとすぐに、瞬時予備力の提供は終了する。
【0004】
対照的に、太陽光発電所、風力発電所、グリッド接続されたエネルギー貯蔵所など、電力-電子的電力コンバータを介してAC電圧グリッドと電力を交換する電力供給プラントは、一般的に回転質量をもたないため、機械的慣性がなく、実質的に機械的な貯蔵能力はなく、重大な過電流能力はない。そのような電力供給プラントの電力-電子電力コンバータ、特にインバータは、既存のAC電圧グリッドと電力を交換するように構成することができるか、またはそれ自体でマイクログリッドを構成することができる。
【0005】
マイクログリッドを構成するインバータは、マイクログリッド内のAC電圧を振幅と周波数自体に関して特定し、マイクログリッド内の交流電圧の振幅と周波数をそれぞれの許容値範囲内に保つのに適した電流をマイクログリッドに供給する。この目的のために、例えば、WO2018/122726A1に記載されているように、いわゆるドループ調整を使用することができる。この電圧を印加し、グリッドを形成するドループ調整では、インバータとマイクログリッドの間で交換される電流またはそれぞれ交換される電力が、f(P)特性曲線に基づいて調整されるため、マイクログリッド内の電力の不均衡、ひいては周波数偏差またはグリッド電圧の位相ジャンプが、インバータの反作用につながる。具体的には、例えば、電力不足でマイクログリッドが低周波数になると、グリッドに供給される電力が増加する。その目的は、規範的に許容される制限内でマイクログリッドを操作できるようにするために、マイクログリッドで電力平衡を達成することである。
【0006】
マイクログリッド用のインバータに適用するための電力コンバータベースの方法として、f(P)経路内にローパスフィルタを備えたドループ調整が、例えば、EP1286444B1から知られている。この制御方法は、グリッド結合インダクタンスを介して共通の電源線に接続された、並列接続され誘導結合されたインバータでの実装に関連している。ここで、各々のインバータは、出力電圧の周波数が有効電力から導出される制御ループを有し、予め選択された周波数スタティックスを考慮して、出力電圧の位相の値も有効電力から導出することができる。
【0007】
電流を印加する方法で動作することにより、既存のAC電圧グリッドと電力を交換するインバータは、AC電圧グリッド内のAC電圧に従い、グリッド準拠の交流を生成し、その周波数は、AC電圧グリッドのAC電圧の電流周波数とその振幅にほぼ対応し、したがってその電力は、外部境界条件に向けることができる。特に、供給される交流電流は、(特に、最大に利用可能な発電機電力を利用するための)直流電源としてのPV発電機の場合、電力供給プラントの所望の融通電力(例えば、直流電源としてのバッテリーの充電電力または放電電力)に基づいて、および/または接続された直流電源の電流特性に基づいて、調整することができる。また、交換される有効電力は、公称周波数からのグリッド周波数の偏差に応じて、電力-周波数特性曲線を用いて、いわゆるP(f)調整で調整することができる、および/または交換される無効電力は、公称電圧からのグリッド電圧の偏差に応じて、無効電力-電圧特性曲線を用いて無効電力調整で調整することができる。
【0008】
インバータは、一般的に、高速ダイナミクスを有する、すなわち、1キロヘルツをはるかに超える高いクロック周波数とそれに対応する1ミリ秒未満の小さな時定数を使用して、それらの出力電圧、出力電流、および必要に応じて、その他のパラメータを調整できる。インバータにドループ調整を適用すると、グリッドイベント、特に周波数偏差または位相ジャンプが発生した場合に準瞬時の電力変化が発生する。ドループ調整の比例電力-周波数特性曲線は、位相角の差が発生した場合、すなわち、特に公称周波数に対するグリッド周波数の偏差による電力変化の場合に、AC電圧の1周期未満において、周波数が変化した新しい動作点、したがって安定した位相角差、および結果としての融通電力が確立されることを意味する。P(f)調整では、特定の状況下でP(f)調整を備えたインバータが、原理的に、周波数ドリフトに対する融通電力および/または出力電流の変化に対して遅延を伴うだけでなく、位相ジャンプに対しても必要に応じて応答し得ないように、例えば位相同期回路(PLL)を使用して、グリッド周波数の特定の決定が一般的に最初に必要である。
【0009】
グリッド周波数が公称周波数から逸脱しているが、それ以外は一定である場合、ドループ調整と従来の電流印加P(f)調整の両方で、公称周波数に等しいグリッド周波数での電力からの同様に一定の電力偏差が発生する。この点で、ドループ調整とP(f)調整は、周波数保持予備力、いわゆる一次制御予備力の性質を有する。これは、公称電圧からのグリッド電圧の一定の電圧偏差の場合に、一定の無効電力の提供にも同様にあてはまる。しかしながら、瞬時予備力として動作する場合、瞬時予備電力、すなわち瞬時予備力を提供するためにAC電圧グリッドと交換される電力が、グリッドイベントの前、すなわち特にグリッド電圧角度またはグリッド周波数の変化の前に、元の値に減衰し、別の方法で特定された値(例えば、より高いレベル)を想定することが望ましいことがよくある。
【0010】
US9,859,828B2は、ACグリッドと電力を交換する風力タービン発電機およびプラントコントローラを含む、エネルギー貯蔵装置と組み合わされた風力発電所を記載している。風力発電所は、交換される電力を調整することにより、グリッドを支援する方法で機能するように設計されている。
【0011】
US2016/0268818A1は、電力供給システムを記載している。システムコントローラは、複数のバッテリーのドループ特性曲線を調整する。バッテリーコントローラは、ドループ特性曲線に基づいて複数のバッテリーの充電および放電を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特に慣性によって、瞬時予備力を提供し、したがってグリッドサービス効果を有する、電力供給プラントおよび電力供給プラント内のインバータを動作させる方法を提供するという目的に基づいている。本発明はさらに、特に瞬時予備力を提供することによって、電圧および/または周波数支援効果を有する電力供給プラントを提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の構成を有する方法と、請求項25の構成を有する電力供給プラントによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0014】
複数のインバータ、インバータに通信可能に接続されたプラントコントローラ、および電力供給プラントを交流電圧グリッドに接続することができるグリッド接続を有する電力供給プラントを運転する方法において、インバータは、電力供給プラントが、インバータのそれぞれの融通電力から構成される総融通電力をAC電圧グリッドと交換するように、グリッド接続を介してAC電圧グリッドと融通電力を交換する。ここで、インバータは、基準位相角を有するおよび/またはそれぞれの基準周波数に基づくそれぞれの基準プロファイルからのグリッド電圧の電圧プロファイルのそれぞれの電圧プロファイル偏差の関数として、それぞれのレギュレータによってそれらのそれぞれの融通電力を調整する。代替的または追加的に、インバータは、それぞれのレギュレータによって、それぞれのグリッド電圧とそれぞれの基準電圧との間のそれぞれの電圧振幅差の関数としてそれらのそれぞれの融通電力を調整する。プラントコントローラは、総融通電力と特定の融通電力との間の電力差の関数として、インバータのレギュレータに影響を与える。
【0015】
本発明に係るインバータ自体によるそれぞれの融通電力の制御と、プラントコントローラによるインバータのレギュレータの重畳された影響とを分離することによって、一方ではインバータのレベルで、特にグリッドパラメータが対応する公称値から一時的に逸脱した場合にグリッドを支援するために、他方では電力供給プラント全体のレベルでより高いレベルの目標を追求するために、特に電力供給プラントのエネルギー源および/またはエネルギーシンクの最適利用のために、特に有利な方法で、電力供給プラントの総融通電力を動的に調整することが可能になる。特に、グリッド接続点で行われるグリッド支援電力の寄与、例えば、予備として保持され実際に提供される瞬時予備力電力に関して、高度の精度を達成することができる。
【0016】
好ましくは、インバータは、蓄電インバータとして設計され、それぞれ、エネルギー貯蔵システムとエネルギー貯蔵装置およびエネルギー貯蔵管理装置とを接続する、特にバッテリーシステムとバッテリーおよびバッテリー管理装置とを接続するための貯蔵接続を有する。電力は、必要に応じて、エネルギー貯蔵システム(例えば、バッテリーまたは二重層コンデンサー(ウルトラキャップまたはスーパーキャップ))のエネルギー貯蔵装置から引き出され、エネルギー貯蔵装置を放電することによってAC電圧グリッドに供給される。電力がAC電圧グリッドから取り出されると、貯蔵インバータのそれぞれのエネルギー貯蔵装置を充電することができる。
【0017】
一実施形態では、インバータは、太陽光発電プラント(PVプラント)のための接続を任意選択で有するインバータとして設計される。必要に応じて、AC電圧グリッドに給電するための電力を、PVプラントを介して生成することができ、生成された電力は、照射に依存する最大可能電力とゼロの間で変化させることができ、PVプラントは、AC電圧グリッドから電力を引き込み、それをPVプラントに戻して供給することによってシンクとしてさらに機能することができる。
【0018】
一実施形態では、インバータは、それぞれの測定装置を介してAC電圧グリッドのグリッド電圧を測定する。グリッド電圧の電圧プロファイルは、グリッド電圧の測定値の時間プロファイルをマッピングし、位相角および回転周波数を有する位相空間ベクトルを含むことができる。次いで、グリッド周波数および/または電圧振幅が、それぞれのインバータによって、好ましくはそれらのそれぞれのレギュレータによって、電圧プロファイルから、特に位相同期回路(略してPLL)によって決定することができる。
【0019】
一実施形態では、インバータのそれぞれのレギュレータは、基準周波数および/または基準電圧に対して調整されるそれぞれのインバータの出力電圧の基準プロファイルを特定するために使用される基準周波数および/または基準電圧を含む。この場合、基準プロファイルは、特に、基準周波数、または基準周波数から制御量だけ逸脱した周波数を有することができ、制御量は、特にドループ調整におけるそれぞれのインバータの融通電力に依存することができる。
【0020】
記載された方法は、電力供給プラント、特にPVプラントまたはエネルギー貯蔵プラントによる電力コンバータベースの瞬時予備力を提供する。そのプロセスで、電圧設定および/または電流設定方式で動作し、電圧偏差および/またはグリッド電圧とそれぞれのインバータの公称値との間の電圧振幅差の関数としてそれらのそれぞれの融通電力を調整するインバータのそれぞれのレギュレータは、より高いレベルのプラントコントローラによって補完される。プラントコントローラは、特にレギュレータの少なくとも1つのパラメータを特定および/または変更することによって、および/または対応するパラメータを計算するためにインバータのレギュレータ内で使用されるグリッド接続での電力値を送信することによって、電力供給プラントの複数のインバータの調整に影響を与える。一実施形態では、プラントコントローラはまた、例えば隣接する複数のエネルギー供給プラントに割り当てられてもよいし、プラントコントローラは、特に非常に大きな電力供給プラントの場合、電力供給プラントのサブセクションに割り当てられてもよい。
【0021】
プラントコントローラは、インバータのそれぞれのレギュレータを補完する。プラントコントローラは、電力供給プラントの総融通電力と特定の融通電力との間の電力差に応じて、インバータのそれぞれのレギュレータに影響を与える。電力差への依存性は、例えばプラントコントローラが測定された電力差から特定のパラメータを決定し、それをインバータのレギュレータに送信することによって明示的である場合もあれば、測定された電力差がプラントコントローラによってインバータのレギュレータに送信され、そこで特定のパラメータを変更するために使用されるという点で暗示的である場合もある。このようにして、総融通電力は、所望の形で影響を受けることができ、例えば、グリッド周波数の変化によって引き起こされるインバータの融通電力の変化の後にさらに変化することができ、特に、グリッド周波数変更前の初期状態に戻すことができる。特に、インバータのレギュレータとプラントコントローラとの相互作用は、グリッド接続での電力差を最小化し、必要に応じてそれをゼロに調整することで、総融通電力を特定の融通電力に近づけることができる。ここで、プラントコントローラは、プラントコントローラが共に通信可能に相互作用するインバータを提供し、特にグリッド接続での電力差、またはインバータのレギュレータのためにそこから導き出されたパラメータを提供する。
【0022】
インバータの融通電力は、有効電力と無効電力を含むことができるので、電力供給プラントの総融通電力は、有効電力成分と無効電力成分を含む。同様に、特定の融通電力は、有効電力成分および/または無効電力成分を含むことができる。
【0023】
特定の融通電力の有効電力成分および/または無効電力成分は、正または負の場合がある、すなわち、基本状態において、電力供給プラントは、エネルギー貯蔵装置および/または太陽光発電装置から有効電力を引き出し、それをAC電圧グリッドに供給し、またはその逆を行い、さらに容量性および誘導性の電気無効電力を提供することができる。特定の融通電力の有効電力成分および/または無効電力成分は、例えば、より高いレベルのグリッド運転制御によって、電力供給プラントの制御電力機能によって、または電力供給プラントの内部で発生する需要(例えば、負荷または貯蔵装置の再充電)によって、プラントコントローラに対して特定することもできる。
【0024】
特定の融通電力の有効電力成分および/または無効電力成分は、例えば、時間にわたってほぼ一定であり、特にゼロに等しくすることができる。特定の融通電力の有効電力成分がゼロの場合、電力供給プラントは、有効電力の瞬時予備力を提供することにより、グリッドの役割を果たすための純粋なフライホイールマスの意味で機能し、それによって総融通電力の有効電力成分が、その後、一定のグリッド周波数で一定時間経過後、プラントコントローラによって電力がゼロまで低減して戻される。特定の融通電力の非ゼロの有効電力成分の場合、電力供給プラントは、有効電力の瞬時予備力を提供することによってグリッドの役割を果たすようにも機能するが、有効電力の瞬時予備力の提供を超えて、個々のインバータとAC電圧グリッド間の電力の追加の継続的な交換を、目標とすることができる。ここでは、瞬時予備力を提供した後の総融通電力が、特定の融通電力の定数または可変値に調整される。その結果、例えば、PV発電機の時間的に変化する電力をエネルギー的に適切な方法で個々のインバータで使用し、AC電圧グリッドに供給することができる。
【0025】
特定の融通電力の有効電力成分は、特にグリッド周波数に応じて、周波数に依存し得る。代替的または追加的に、特定の融通電力の無効電力成分は、グリッド電圧に依存し得る。このような一実施形態では、電力供給プラントは、最初に、瞬時予備力を提供することによってグリッドを形成するように動作し、さらに、一次制御電力を提供することによってグリッドを支援するようにも動作する。この方法は、AC電圧グリッドの過渡的な電力不均衡時にグリッド周波数の傾きを緩和する有効電力、および/または過渡的な不足電圧または過電圧時にグリッド電圧の傾きを緩和する無効電力を瞬時に供給することにより、蓄電インバータを介した電力供給プラントの瞬時予備力提供機能を容易に実現することができる。同時に、電力供給プラントは、瞬時予備力を超えたその挙動に関して柔軟に構成することができ、特に、総融通電力の有効電力成分を、周波数安定時の電力供給プラントの様々な内部および/または外部要件に適合させることができる。
【0026】
プラントコントローラの介入ダイナミクスは、インバータのそれぞれのレギュレータのダイナミクスよりも遅いことが好ましい。ダイナミクスは、コントローラまたはレギュレータの時間挙動を意味すると理解されている。特に、ダイナミクスは、コントローラまたはレギュレータのクロック周波数によって制限される可能性があり、例えば、コントローラまたはレギュレータの操作変数の傾きの制限によって影響を受ける可能性がある。具体的には、インバータのそれぞれのレギュレータのパラメータは、高いダイナミクスでインバータの瞬間的または高周波挙動を決定するが、プラントコントローラのパラメータは、より低い介入ダイナミクスで、時間平均で電力供給プラントの挙動に影響を与える。
【0027】
この方法の一実施形態では、それぞれの融通電力を調整するために使用される電圧プロファイル偏差は、グリッド周波数とそれぞれの基準周波数との間の周波数差を含む。ここで、グリッド周波数は、好ましくはPLLによって、グリッド電圧から決定される。この周波数差に応じて、インバータのそれぞれの有効電力をそれぞれのレギュレータによって調整することができる。
【0028】
代替の一実施形態では、電圧プロファイル偏差は、グリッド電圧のグリッド位相角とそれぞれのインバータ位相角との間の位相角差を含む。この場合、インバータ位相角は、それぞれの基準有効電力およびそれぞれの基準周波数を考慮して、それぞれの有効電力の関数としてそれぞれのレギュレータによって特定可能であり得る周波数を有する。
【0029】
一実施形態では、インバータは、それぞれの特性曲線、特にドループ特性曲線を使用して、それらのそれぞれのレギュレータによってそれぞれの有効電力を調整する。特性曲線のパラメータは、それぞれの基準周波数に依存する。代替的または追加的に、特性曲線のパラメータは、それぞれの基準電力に依存する。ここで、特性曲線は傾きを有する。
【0030】
一実施形態では、特性曲線は、それぞれの有効電力とそれぞれの周波数差との間の関数関係を示す。これは、例えばドループ調整において、特に傾きdf/dPを有する直線の形で与えられる、いわゆるf(P)スタティックスに対応する。好ましい一実施形態では、特性曲線は、それぞれのドループ調整で実現され、それぞれの有効電力は、それぞれのドループ調整で測定変数として使用され、それぞれのインバータの出力電圧の周波数および/または位相角は、操作変数として設定される。これは、特に、グリッド周波数とそれぞれの基準周波数との間の差、および/またはそれぞれのf(P)スタティックスのそれぞれの基準電力に依存し得る、それぞれのインバータのそれぞれの有効電力をもたらす。
【0031】
このように、本発明に係る方法は、例えば、電圧印加ドループ調整を使用し、したがって単純で、堅牢で、高速で、予測可能である、インバータにおける制御の利点を、プラントレベルでの総融通電力の経過の制御を可能にするプラントコントローラと巧みに組み合わせる。代替的または追加的に、インバータで無効電力調整を実行することができ、これは、特に、単純で、堅牢で、高速で、予測可能であるように設計されており、この場合、プラントコントローラは、プラントレベルでの総融通電力の経過の制御も実行する。特に、インバータのドループ調整および/または無効電力調整のパラメータは、プラントコントローラによって変更されて、総融通電力の所望のプロファイルを達成することができる。
【0032】
一実施形態では、プラントレベルでの調整はフィードイン調整であり、すなわち、プラントコントローラは、通信接続を介してそれぞれのインバータのそれぞれのレギュレータに値を(特に、それぞれのドループ調整および/またはそれぞれの無効電力調整のパラメータを)特定する。したがって、プラントレベルでの調整は、簡単にパラメータ化でき、状況に応じて構成でき、インバータのそれぞれのレギュレータを個別に調整できる。この組み合わせでは、フライホイールマスの挙動をシミュレートするために必要な、それぞれのインバータのそれぞれのレギュレータのインバータの電圧空間ベクトルの慣性は、プラントコントローラのパラメータを使用したドループ調整または無効電力調整のパラメータの適切なマッチングによって調整されることが好ましい場合がある。プラントコントローラによる重畳制御の待ち時間、特にプラントコントローラとインバータとの間の通信待ち時間は、それぞれのインバータの高速なそれぞれの制御に影響を与えない。これは、分散型の自律型インバータの個別ドループ調整およびそれぞれの無効電力調整に特に有利である。特に、この方法は、インバータ調整の高速制御ループにおいて遅延要素なしで行うことができる。これにより、振動する可能性のある傾向および起こり得る不安定性を回避することができる。
【0033】
一実施形態では、プラントコントローラは、インバータのレギュレータのそれぞれの特性曲線のパラメータに影響を与えることによって、インバータのそれぞれの有効電力を調整する。特に、プラントコントローラは、基準周波数に依存するパラメータおよび/または基準電力に依存するパラメータにそれぞれ影響を与える。ドループ調整の場合、これは特に静的なシフトに対応し、これにより、特にグリッド位相角とインバータ位相角との間のそれぞれの位相角差は、所望の方向におけるそれぞれの有効電力の変化が確立されるように影響を受ける。この影響は、電力供給プラントの総融通電力の有効電力成分が、特定可能な時定数を用いて特定の融通電力の有効電力成分に近似されるように、この影響を特に有利に受ける。
【0034】
一実施形態では、影響は、それぞれの基準周波数がグリッド接続で測定され、ローパスフィルタリングされたグリッド周波数に一致するようなものとなり得る。これにより、基準周波数がグリッド接続点で測定されたグリッド周波数の平均値に対応し得るように、グリッド周波数のローパスフィルタリングによる基準周波数の動的追跡が可能になる。その結果、インバータの位相角は、最終的に(時間の遅延を伴って)プラントコントローラによってグリッドの位相角と同期される。この実施形態は、調整可能な時間遅延がローパスフィルタリングによってプラントコントローラに提供されるため、特に有利である。この点で、プラントコントローラは、インバータのレギュレータと比較して遅れて反応することができ、特に、有効電力および/または無効電力に関して瞬時予備力の提供後に、瞬時予備力の規定された減衰および電力供給プラントの電力交換を調整することができる。
【0035】
プラントコントローラからインバータへの送信は、例えば有線または無線送信による通信である。インバータのレギュレータで調整されるパラメータ(複数可)は、特にブロードキャストを介して、プラントコントローラからインバータのレギュレータに送信することができる。ここで、インバータに送信されるそれぞれのパラメータは、それぞれの場合に同じとすることができ、すなわち、特に、共通の基準周波数および/または共通の基準電力をインバータに送信することができる。インバータのそれぞれのレギュレータのパラメータを、異なるインバータに対して個別に別々に調整することもできる。
【0036】
この方法は、特に、インバータ内のレギュレータの組み合わせ、特に、ドループ特性曲線によるドループ調整および/またはQ(U)特性曲線による無効電力調整、およびレギュレータのパラメータの重畳変更に基づく。変更されたパラメータは、プラントコントローラによって決定され、変更されたパラメータの計算に使用されるか、または変更されたパラメータの対応する自律的な計算のためにインバータに送信されるグリッド接続での電力差に依存する。特に、ドループ特性曲線の基準周波数および/または基準電力は、グリッド接続での電力差の関数としてインバータ内で自律的に、またはブロードキャストまたはインバータへの個別の通信によって動的に基準周波数および/または基準電力を特定するプラントコントローラによって変更され得る。これにより、グリッド周波数の周波数変化によって引き起こされる有効電力の変化が一定時間後に抑制される。全体として、電力供給プラントは、電気機械式フライホイールマスに類似した特性を有する瞬時予備力を提供できる。瞬時予備電力の時系列は、インバータのレギュレータのダイナミクスとプラントコントローラの介入ダイナミクスの影響を受け、インバータのレギュレータのダイナミクスは、プラントコントローラの介入ダイナミクスよりも高速である。
【0037】
一実施形態では、それぞれのインバータのレギュレータのダイナミクスを調整することができる。これは、例えば、それぞれのレギュレータのパラメータを特定することによって、好ましくはそれぞれのレギュレータのそれぞれの特性曲線のそれぞれの傾きを特定することによって行うことができる。重畳パラメータ調整の介入ダイナミクスを、任意選択で調整できるように設計することもできる。調整は、例えば、グリッド接続での電力差の積分器の利得係数および/またはグリッド接続で測定されたグリッド周波数のローパスフィルタリングのフィルタ定数を特定することによって行うことができる。これにより、電力供給プラントのグリッド支援挙動の時間挙動、特に瞬時予備力の提供の時間挙動をさらに洗練したものとすることができるため、インバータにおけるグリッド周波数および/またはグリッド電圧の「速い」変化は、それぞれのレギュレータのパラメータの「より遅い」トラッキングによって減少する電力の変化につながる。
【0038】
特に、所与の電圧プロファイル偏差で電力供給プラントによって提供される有効電力の瞬時予備力のレベルは、インバータのレギュレータのパラメータを特定することによって、および/またはプラントコントローラのパラメータを特定することによって、その最大電力およびエネルギーに関して調整することができる。また、特に特性曲線のそれぞれの傾きを特定することによって、インバータのそれぞれのレギュレータのダイナミクスを調整することができる。一実施形態では、好ましくは特性曲線の傾きを特定することによって、それぞれのレギュレータのダイナミクスを調整することができる。追加的または代替的に、特に重畳パラメータ調整のIコントローラまたはPIコントローラのパラメータを特定することによって、プラントコントローラの介入ダイナミクスを調整することができる。
【0039】
特に、本発明は、グリッド同期インバータを有するAC電圧グリッドに接続された電力供給プラントにおいて、特にマイクログリッドで実証されたドループ調整を使用することを可能にし、同時により高いレベルのAC電圧グリッドへの電流印加フィードインを可能にする。
【0040】
一実施形態では、それぞれのインバータに接続可能なそれぞれのエネルギー貯蔵装置との電力交換は、特にそれぞれのエネルギー貯蔵装置の容量の50%に対応し得る、エネルギー貯蔵装置のそれぞれの特定可能な充電状態が目標とされるように制御することができる。好ましくは、エネルギー貯蔵装置の充電または放電は、それぞれの偏差(特に、それぞれの位相角差)に応じてインバータの融通電力をそれぞれ制御することにより、最大融通電力よりも低い平均電力で実行される。
【0041】
一実施形態では、瞬時予備力が1回以上提供された直後に、電力供給プラントまたはPVプラントのPV発電機の対応するエネルギー貯蔵装置が初期始動状態に調整される。PV発電機の場合、これはPV特性曲線上の対応する動作点(最大電力点(MPP)以下)まで駆動することによって行われる。エネルギー貯蔵の場合、エネルギー貯蔵状態は、初期状態に駆動される。これは、例えば、グリッドイベントによって刺激されたり、ドループ調整による電力交換が発生したりすることさえなく、グリッドまたはPVプラントとエネルギーを交換できるようにすることで実現される。グリッドとのAC結合エネルギー交換の場合、この初期状態の復元は、有効電力の瞬時予備力の提供よりも大幅に小さい電力で実行されるため、時定数が遅くなる。このように、蓄電容量は、一方では短期間で高い有効電力を使用してAC電圧グリッドを効果的に支援するために、他方ではゆっくりと初期状態に戻る間にAC電圧グリッドにわずかな負荷しか与えないために、最適に使用される。
【0042】
このように、プラントコントローラと、インバータとの通信によって行われるパラメータ化により、電力供給プラントが瞬時予備力を提供する能力が向上する。個々のインバータの個々のパラメータ化に加えて、インバータのエネルギー貯蔵システムを個別にパラメータ化することもできる。これにより、例えば、プラント内のどのインバータおよび/またはどの蓄電ユニットがどの瞬時予備力に寄与するかを柔軟に定義することが可能になる。これにより、負荷分散が可能になり、これは、例えば、エネルギー貯蔵装置が異なる貯蔵状態を有する(例えば、満タンまたは空である、および/またはそれらのそれぞれの最大有効電力または無効電力に関して異なる能力を有する)場合に有利である。
【0043】
別の利点は、瞬時予備力の交換中の過渡電流および/または過渡電力が、自己保護の範囲内で、それぞれのインバータのそれぞれのレギュレータによって最大許容値に制限できることである。これは、インバータ自体によるインバータのレギュレータの高速ダイナミクスによって行うことができる。この場合、インバータは、必要に応じて、電圧印加・グリッド形成状態のままにすることができる。これは、特に、仮想インピーダンスの電流制限方法によって実行することができる。
【0044】
この方法の一実施形態では、それぞれのインバータは、AC電圧グリッドと無効電力を交換することができ、それぞれのインバータのそれぞれの調整は、それぞれのインバータの皮相電力限界に達したときに、AC電圧グリッドと交換される電力が減少することができ、AC電圧グリッドと交換される有効電力が増加することができるように、融通電力に影響を与えるように設計されている。その結果、インバータの過負荷を回避することができる。
【0045】
グリッド周波数の変化前に静止無効電力が出力された場合、瞬時予備力の提供中に変化する可能性があり、特に、瞬時予備力の提供中に有効電力交換のために減少させることができるので、これは有利である。その結果、特に局所的な電圧制限の範囲内に留まることによって、インバータを過負荷から保護することができる。この方法のさらなる展開では、有効電力の寄与および/または有効電流の寄与に加えて、グリッド電圧支援の無効電力の寄与および/または無効電流の寄与も可能であり、調整可能である。好ましくは、調整は、例えばプラントコントローラによって、またはプラントコントローラの測定データの関数として、インバータの調整のパラメータ化を介して実行される。好ましくは、この方法はまた、特に短絡の場合の電圧支援のために、無効電力の瞬時予備力を提供する。
【0046】
この方法のさらなる一実施形態では、グリッド接続での総融通電力の無効電力成分は、プラントコントローラによって、グリッド接続での測定電圧の関数として調整することができる。追加的または代替的に、インバータのそれぞれの無効電力は、プラントコントローラおよびそれぞれのインバータにおける無効電力調整によって調整することができる。この場合、グリッド接続での総融通電力の無効電力成分を調整することは、特にグリッド電圧の関数として、グリッド接続で特定の融通電力の無効電力成分を決定することと、グリッド接続での無効電力成分を測定することと、特に、特定の融通電力の無効電力成分と、グリッド接続で測定された無効電力成分との関数として、インバータのそれぞれの無効電力設定点を決定することと、プラントコントローラによってそれぞれの無効電力設定点をインバータに送信することとを含む。また、グリッド接続における総融通電力の無効電力成分の調整は、インバータのそれぞれの出力でそれぞれのグリッド電圧を測定することと、それぞれの測定されたグリッド電圧を、グリッド電圧の平均値に対応する基準電圧と比較することと、Q-U特性曲線を用いて、測定されたグリッド電圧の基準電圧からの偏差の関数として、それぞれの無効電力補正値を決定することと、インバータによるそれぞれの無効電力設定点とそれぞれの無効電力補正値の合計に基づいて、それぞれの無効電力を調整することとを含む。
【0047】
本発明に係る電力供給プラントは、AC電圧グリッドに接続するためのグリッド接続と、複数のインバータと、プラントコントローラとを有する。プラントコントローラは、インバータに通信可能に接続されている。インバータは、それぞれの電気融通電力をAC電圧グリッドと交換するように設計されている。電力供給プラントは、グリッド接続を介してAC電圧グリッドと電気的総融通電力を交換するように設計されており、総融通電力はそれぞれの電気融通電力から構成される。インバータは、グリッド周波数とそれぞれの基準周波数との間のそれぞれの周波数差の関数として、それぞれのレギュレータによってそれらのそれぞれの融通電力を調整するように設計されている。プラントコントローラは、総融通電力と特定可能な基準融通電力との間の電力差の関数として、個々のインバータのそれぞれのレギュレータに影響を与えるように設計されている。
【0048】
AC電圧グリッドに接続されたグリッド接続を有する電力供給プラントにおいてインバータを動作させるための本発明に係る方法では、インバータは、グリッド接続を介して、有効電力および無効電力を含む電気融通電力をAC電圧グリッドと交換する。インバータは、基準周波数に基づく基準プロファイルからのグリッド電圧の電圧プロファイルの電圧プロファイル偏差の関数として、および/またはグリッド電圧と基準電圧との間の電圧振幅差の関数として、レギュレータによってその融通電力を調整する。この場合、ギュレータの特定のパラメータは、グリッド接続での電力供給プラントの融通電力と特定の融通電力との間の電力差の関数として変化する。
【0049】
この方法では、レギュレータの特定のパラメータの変化の介入ダイナミクスは、レギュレータが、グリッド接続点での電力差の変化に対する特定のパラメータの変化よりもグリッド電圧の偏差に対する融通電力の変化によって速く反応するように、インバータの融通電力の調整ダイナミクスよりも遅い。
【0050】
特に、インバータのレギュレータは、ドループコントローラを含むことができ、ドループコントローラは、インバータの有効電力を測定変数として使用し、傾きを有する特性曲線を使用して、インバータの出力電圧の周波数および/または位相角を操作変数として調整する。この場合、特性の特定のパラメータは、基準周波数および/または基準電力に依存し、基準周波数および/または基準電力は、電力差の関数として、特に電力差の積分の関数として変化する。その結果、グリッド接続での有効電力は、特定可能な時定数を使用して、特定の融通電力の有効電力成分に近似することができる。
【0051】
この方法の一実施形態では、基準周波数は、グリッド接続で測定されたローパスフィルタリングされたグリッド周波数に一致する。その結果、ドループスタティックスを介してインバータの有効電力の変化につながる周波数偏差は、使用されるローパスフィルタの時定数で最小化され、有効電力の変化はそれに応じて相殺される。
【0052】
この方法の別の一実施形態では、電力差は、インバータの外部、特にプラントコントローラ内のグリッド接続で測定され、積分器によって基準電力に変換される。次に、基準電力がインバータに送信され、出力電力を調整するための修正されたパラメータとして使用される。
【0053】
別の一実施形態では、電力差は、インバータの外部、特にプラントコントローラ内で測定され、インバータに送信され、インバータは積分器によって電力差から基準電力を決定し、それを修正パラメータとして使用して、出力電力を調整する。
【0054】
特定のパラメータ、特に基準電力を計算するための積分器は、増幅率を有する増幅器を有することができる。積分器の利得係数とドループ統計の傾きは、調整可能とすることができる。その結果、インバータの位相角は、グリッド電圧の位相角に対して慣性を有し、これは増幅率と傾きの積によって調整できる。追加的に、または代替的に、インバータ位相角とグリッド電圧位相角との同期は、傾きに対する利得係数の比によって調整することができる減衰を有する。
【0055】
インバータ位相角の慣性および/または減衰は、電力供給プラントの継続的な運転中に調整可能とすることができ、それによって、慣性および/または減衰の調整のために、利得係数および/または傾きは、調整可能な時定数を使用するローバスフィルタを介して、または調整可能な傾きを有するランプを介して調整可能とすることができる。
【0056】
この方法の一実施形態では、インバータのレギュレータは、以下のステップ:
グリッド電圧を測定するステップと、
Q-U特性曲線によって無効電力補正値を基準電圧からのグリッド電圧の偏差の関数として決定するステップと、
特定の融通電力での無効電力成分とそれぞれの無効電力補正値の合計に基づいて無効電力を調整するステップとを実行するグリッド追従無効電力調整を含むことができる。
【0057】
ここで、Q-U特性曲線の特定のパラメータとしての基準電圧は、インバータの無効電力が、無効電力補正値がゼロに近づく特定可能な時定数を使用して特定の融通電力の無効電力成分に近似するように変化する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明は、図に示される例示的な実施形態を参照して、以下でさらに説明および記載される。
【0059】
【
図1】エネルギー貯蔵システムを備えた3つのインバータを有する電力供給プラントを示す。
【
図2】例として、インバータの調整の概略図を示す。
【
図2a-d】電力供給プラントにおけるインバータの調整の実施形態の概略図を示す。
【
図3】例として、インバータの調整の特性曲線を示す。
【
図4】例として、インバータの融通電力の様々な時間プロファイルを示す。
【
図5】例として、インバータの融通電力と基準電力の様々な時間プロファイルを示す。
【
図7】例として、インバータのさらなる調整の概略図を示す。
【
図8】例として、グリッド電圧、インバータの有効電力および無効電力の様々なプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、3つのインバータ10.1、10.2、10.3を有する電力供給プラント11を示し、これらのインバータの各々は、電圧を印加し、グリッドを形成するドループレギュレータ50.1、50.2、50.3を備えている。3つのインバータ10.1、10.2、10.3の数は例示であり、1つまたは2つだけ、または3つのインバータ10.1、10.2、10.3を超えるインバータを有する電力供給プラント11も考えられる。エネルギー貯蔵装置18.1、18.2、18.3(例えば、バッテリー)は、それぞれDC電圧線40.1、40.2、40.3を介して各々のインバータ10.1、10.2、10.3に接続される。インバータ10.1、10.2、10.3はそれぞれ、パワースイッチからなるブリッジ回路12.1、12.2、12.3を有する。ブリッジ回路12.1、12.2、12.3は、DC電圧線40.1、40.2、40.3からの直流電流をAC電圧線42.1、42.2、42.3上の交流電流に、および/またはその逆に変換するように設計されている。この目的のために、それぞれのブリッジ回路12.1、12.2、12.3は、それぞれのドループレギュレータ50.1、50.2、50.3によって適切なスイッチング信号で作動される。さらに、それぞれのドループレギュレータ50.1、50.2、50.3は、それぞれのデータ線38.1、38.2、38.3を介してエネルギー貯蔵装置18.1、18.2、18.3のそれぞれのエネルギー貯蔵管理装置22.1、22.2、22.3に接続することができる。エネルギー貯蔵装置18.1、18.2、18.3およびエネルギー貯蔵管理装置22.1、22.2、22.3はそれぞれ、共にエネルギー貯蔵システム20.1、20.2、20.3を形成する。
【0061】
インバータ10.1、10.2、10.3は、それぞれのAC電圧線34.1、34.2、34.2を介して共通のグリッド接続26に接続される。それぞれのブリッジ回路12.1、12.2、12.3とそれぞれのAC電圧線34.1、34.2、34.3のそれぞれの接続との間の電力経路では、測定装置14.1、14.2、14.3および結合インピーダンス16.1、16.2、16.3がそれぞれ配置されている。それぞれの測定装置14.1、14.2、14.3は、AC電圧グリッド24のグリッド電圧、ならびにそれぞれのブリッジ回路12.1、12.2、12.3とAC電圧グリッド24との間を流れるAC電流を測定し、グリッド周波数、位相角、および必要に応じて、そこからのそれぞれの融通電力を決定するように設計されている。それぞれの結合インピーダンスは、電圧源としての動作モードでインバータを互いに分離するように設計されている。
【0062】
それぞれのインバータ10.1、10.2、10.3は、それぞれのデータ線36.1、36.2、36.3を介して電力供給プラント11のプラントコントローラ28に接続される。プラントコントローラ28とそれぞれのインバータ10.1、10.2、10.3との通信は、それぞれのデータ線36.1、36.2、36.3を介して実行することができる。
【0063】
インバータ10.1、10.2、10.3は、AC電圧グリッド24上で、電圧印加方式で動作し、それぞれ、AC電圧線34.1、34.2、34.3の接続において、定義された周波数fおよび位相角θを有する電圧Uを調整し、特に、それぞれの周波数fは、有効電力の流れP
WRおよび無効電力の流れ、および/または有効電流および無効電流の流れの関数として調整される。この目的のために、インバータ10.1、10.2、10.3は、特に、
図2に係るレギュレータ50.1および/または
図7に係る無効電力レギュレータを含むことができる。代替的または追加的に、インバータ10.1、10.2、10.3は、電流に影響を与える方法で動作させることができ、それによって特にそれらの有効電力をグリッド周波数の関数として、および/またはそれらの無効電力をグリッド電圧の関数として調整することができる。
【0064】
電力供給プラント11はさらに、電力供給プラント11のグリッド接続26で有効電力PWRおよび/または無効電力Qを捕捉し、データ線30を介して測定値をプラントコントローラ28に中継する測定装置をグリッド接続26に、またはグリッド接続26内に含む。プラントコントローラ28は、グリッド接続26にある測定装置からの測定情報を制御アルゴリズムで処理し、それぞれのデータ線36.1、36.2、36.3を介してインバータ10.1、10.2、10.3に送信される少なくとも1つの基準値を生成する。特に、この基準値は、グリッド接続での現在の融通電力と特定の融通電力との間のグリッド接続での電力差を含むことができ、そこから電圧印加インバータ10.1、10.2、10.3のドループレギュレータ50.1、50.2、50.3のために基準有効電力Prefまたは基準周波数frefを形成することができる。代替的または追加的に、基準値は、電力供給プラント11の任意の電圧印加インバータの無効電力レギュレータ80のための基準無効電力を含むことができる。
【0065】
プラントコントローラ28によってグリッドイベントに迅速に応答できるようにするために、十分に迅速なダイナミクスを備えたプラントコントローラ28およびグリッド接続26内の測定装置を選択することが有利である。プラントコントローラ28の応答時間は、例えば、その内部クロックレート、その計算能力、および/またはそれぞれのデータ線36.1、36.2、36.3を介したそれぞれのインバータ10.1、10.2、10.3との通信のデータレートによって影響を受ける。好ましくは、プラントコントローラ28は、10秒未満(好ましくは、1秒未満)の時定数を実現できるように設計される。
【0066】
図2は、インバータ10.1のレギュレータ50.1の一例を概略的に示している。インバータ10.2および10.3のレギュレータ50.2および50.3は、同様の構造を有する。
【0067】
測定された有効電力Pisは、インバータ10.1の測定装置14.1から受信され、コンパレータ46.1において基準電力Prefから減算される。結果は、任意選択のフィルタ要素48.1でフィルタリングされる。ドループ要素52.1では、設定周波数fsetを形成するためにコンパレータ54.1で基準周波数frefと結合されるドループ係数df/dPとの乗算によってこれから周波数が生成される。得られた設定周波数fsetは、同期56.1において位相角θsetに変換される。
【0068】
測定された無効電力Qisは、インバータ10.1の測定装置14.1から受信され、設定電圧Usetが、U(Q)ドループ特性曲線によって無効電力レギュレータ58.1で生成される。パルス幅変調59.1では、位相角θsetおよび設定電圧Usetが結合され、パルス幅変調制御信号PWMに変換され、ブリッジ回路12.1を駆動してAC電圧線34.1に単相または三相出力電圧を印加し、得られたAC電流をAC電圧グリッド24と交換するために使用される。
【0069】
このようにして、例えば突然発生する電力の不均衡などによるグリッド周波数の突然の変化の場合に、突然の周波数変化時のインバータ10.1、10.2、10.3のドループレギュレータ50.1、50.2、50.3によって特定される制御電力を交換することが可能になる。具体的には、グリッド電圧の位相角からの位相角θsetの偏差は、測定された有効電力Pisの変化をもたらし、それは次いでドループ要素52.1を介して設定周波数の変化をもたらすため、位相角θsetはグリッド電圧の位相角を追跡する。しかしながら、設定周波数fsetがグリッド周波数に戻される場合でも位相角差が残るため、得られた制御電力は、グリッド周波数と基準周波数との間の周波数差に依存する。電力供給プラント11の総融通電力は、グリッド周波数と基準周波数との間に周波数差がある限り、さらなる手段なしで恒久的にこの制御電力を含む。
【0070】
しかしながら、以下では、電力供給プラント11の総融通電力は、所定の時間内にインバータ10.1、10.2、10.3のドループレギュレータ50.1、50.2、50.3に介入し、特に、ドループレギュレータ50.1、50.2、50.3内の基準有効電力Prefおよび/または基準周波数frefを修正するプラントコントローラ28によって、異なる値に(例えば、制御電力の提供前の有効電力と無効電力の値を有する電力出力に)調整することができる。
【0071】
この目的のために、電力供給プラント11のグリッド接続26からの電力測定信号を評価することができ、特性曲線基準値P
refまたはf
refを修正することができ、特性曲線基準値P
refまたはf
refは、例えば、グリッド接続26での融通電力の設定点と実際の値の関数としての統合コントローラによって生成される。このようにして特定された動的特性曲線基準値P
refまたはf
refに基づいて、インバータ10.1、10.2、10.3のドループ特性曲線60は、融通電力が、パラメータ化可能な時間内に、瞬時予備力を提供する前の有効電力出力に、またはこのためにその間に変更された設定点値に調整されるようにそれらの原点においてシフトされる(
図3参照)。適切な設計により、周波数偏差イベントごとのグリッド支援の平均および最大エネルギーフローを最小限に抑えることができる。
【0072】
図2aは、無効電力レギュレータ58.1がより詳細に実装されている、電力供給プラント11のインバータ10.1のレギュレータ50.1の一実施形態を示している。測定された無効電力Q
isは、無効電力レギュレータ58.1内のコンパレータ58.11によって基準無効電力Q
refから減算される。結果は、任意選択のフィルタ要素58.12でフィルタ処理される。ドループ要素58.13において、電圧値は、ドループ係数dU/dQとの乗算によってこれから生成され、コンパレータ58.14内で基準電圧U
refと結合されてインバータ電圧振幅U
setを形成する。パルス幅変調59.1では、f(P)ドループ調整から生じる位相角θ
setとインバータ電圧振幅U
setが結合され、ブリッジ回路12.1を作動させるために使用されるパルス幅変調制御信号PWMに変換される。
【0073】
図2aに係る実施形態では、f(P)ドループ調整に影響を与えるためにそれぞれ使用される特性曲線基準値P
refおよびf
refに加えて、さらなる特性曲線基準値Q
refおよびU
refがそれぞれ、インバータ10.1、10.2、10.3のドループレギュレータ50.1、50.2、50.3内で、特に対応する特性曲線基準値を提供するプラントコントローラ28によって変更される。その結果、U(Q)ドループ調整のドループ特性曲線が影響を受け、f(P)特性曲線のドループ特性曲線60(
図3参照)と同様に、インバータ10.1、10.2、10.3の融通電力の無効電力成分が、パラメータ化可能な時間内に、例えばグリッド電圧の電圧変化によって、無効電力出力の変化後に、電圧変化前の無効電力出力またはその間に変化したグリッド接続26での無効電力の変更された設定値に調整されるように、U(Q)ドループ調整が影響を受けるように、それらの原点でシフトされ得る。
【0074】
図2bは、電力供給プラント11の調整のさらなる一実施形態を示す。その構成要素を備えたプラントコントローラ28は、その中でより詳細に示されている。レギュレータ50.1の表現は、
図2aに係る図に対応し、もちろん、いくつかのインバータ10.1、10.2、10.3のいくつかのレギュレータ50.1、50.2、50.3は、同じプラントコントローラ28に接続され得る。プラントコントローラ28は、電力供給プラント11の所望の出力電力を表すグリッド接続設定点P
refPOIおよびQ
refPOIを使用し、特に無効電力設定点Q
refPOIは任意選択であり、特に値ゼロを有し得る。グリッド接続設定点P
refPOIおよびQ
refPOIは、より高いレベルの動作制御80(例えば、グリッド制御ステーション)によって特定されてもよいし、プラントコントローラ28自体に格納されてもよい。この場合、グリッド接続設定点P
refPOIおよびQ
refPOIは、一度固定された方法で特定されてもよく、特に値ゼロを有するか、または必要に応じて運転管理装置80および/またはプラントコントローラ28自体によって動的に変更されてもよい。
【0075】
プラントコントローラ28は、グリッド接続設定点P
refPOIおよびQ
refPOIとそれぞれの測定出力電力P
isPOIおよびQ
isPOIとの間の制御偏差ΔP
POIおよびΔQ
POIを決定するコンパレータ28.1、28.4を有する。制御偏差ΔP
POIおよびΔQ
POIは、それぞれ積分器28.2および28.5に積分され、増幅器28.3、28.6でそれぞれ利得係数1/H
θおよび1/H
Uと乗算される。それらのそれぞれのグリッド接続設定点P
refPOIおよびQ
refPOIに対する出力電力P
isPOIまたはQ
isPOIの、得られた統合され正規化された制御偏差は、特性曲線基準値P
refまたはU
refとしてインバータ10.1のレギュレータ50.1に送信され、必要に応じて、さらなるインバータ10.2、10.3のレギュレータ50.2、50.3(図示せず)に送信され、それぞれのブリッジ回路12.1の作動を計算するために、
図2および
図2aに係る実施形態に従ってそこでさらに使用される。
【0076】
図2cは、電力供給プラント11の調整のさらなる一実施形態を示し、これは、
図2bに係る調整と本質的に同じ構成要素を有し、これによりプラントコントローラ28は、
図2bから逸脱して、制御偏差ΔP
POIおよびΔQ
POIのみを決定し、それらをレギュレータ50.1に、必要に応じてさらなるレギュレータ50.2、50.3に送信する。これは、特性曲線基準値P
refまたはQ
refの計算を、インバータ10.1、10.2、10.3のレギュレータ50.1、50.2、50.3内で実施することができ、そこでパラメータ化され、それぞれの条件に最適に調整することができるという利点を有する。また、特に、プラントコントローラ28は、制御偏差ΔP
POIおよびΔQ
POIを決定するだけであり、さらなる計算または制御タスクを実行する必要がなく、この点において、インバータ10.1、10.2、10.3のいかなる特別な特性のフィードバック効果も、プラントコントローラ28上で生じないという点で、プラントコントローラ28自体、ならびにインバータ10.1、10.2、10.3との通信を簡素化することができる。
【0077】
図2dは、電力供給プラント11の調整のさらなる一実施形態を示しており、これは、
図2bおよび
図2cに係る調整と本質的に同じ構成要素を有し、これにより、さらにグリッド接続設定点P
refPOI、Q
refPOIが、一次制御90によって動的に決定され、プラントコントローラ28に送信される。一次制御90は、別個のユニットで設計されてもよいし、プラントコントローラ28に統合されてもよい。一次制御90の範囲内で、グリッド接続24での対応する測定装置26.2の電流グリッド周波数f
isおよび電流グリッド電圧振幅U
isの測定値が、公称値f
nom、U
nomから減算され、公称値f
nom、U
nomは、特に、AC電圧グリッド24の公称値として固定することができる、および/または動作制御80によって送信される。得られた制御偏差Δf
POIおよびΔU
POIは、P(f)コントローラ90.1またはQ(U)コントローラ90.2において、グリッド接続設定点値P
refPOIおよびQ
refPOIにそれぞれ変換され、それらは
図2bおよび
図2cに係る実施形態によれば、特性曲線基準値P
ref、U
refおよび制御偏差ΔP
POI、ΔQ
POIをそれぞれ計算し、それらをレギュレータ50.1に供給するために、プラントコントローラ28に送信され、そこでさらに使用される。
【0078】
図2a~
図2dに係る実施形態では、有効電力および無効電力は、それぞれ独立して周波数および電圧に関連付けられる。したがって、有効電力周波数調整および/または無効電力電圧調整は、それぞれ個別に実施することができ、特に無効電力成分の調整は任意選択であり、必要に応じて省略できることが理解される。
【0079】
図3は、傾きdf/dPを有する特性曲線60の同じ傾きdf/dPを有する特性曲線60’へのシフトの2つの変形例を示す。このようなシフトは、例えば、基準周波数f
refからf’
refへの変化によって引き起こされ得る(
図3の左のグラフ)。この場合、特性曲線60は、下方にシフトされる。そのようなシフトは、例えば、基準電力P
refをP’
refに変更することによって、代替的または追加的に実行され得る(
図3の右のグラフ)。この場合、特性曲線60は左にシフトする。どちらの場合も、シフトされた同じ特性曲線60’が得られる。
【0080】
図4は、インバータ10.1、10.2、10.3のドループレギュレータ50.1、50.2、50.3と、特性曲線基準値P
refまたはf
refまたは特性曲線60から特性曲線60への重畳され定義された遅延変化とを組み合わせることにより、有効電力の瞬時予備力を提供する際に周波数差が発生した後のインバータ10.1、10.2、10.3の融通電力の一例を示している。融通電力の異なる時間プロファイルは、特性曲線60の異なる傾きdf/dPに対応する。レギュレータ50.1、50.2、50.3の応答ダイナミクス、ならびに有効電力の瞬時予備力として提供される総エネルギーは、特性曲線60の傾きdf/dPを介して影響を受ける可能性があることが分かる。大きな傾きが選択されるほど、所与の周波数変化に対する有効電力の瞬時予備力の最大量が高くなる。
【0081】
特性曲線60の傾きdf/dPを使用して、インバータ10.1、10.2、10.3が瞬時電力フローの中でまさに最初の瞬間にグリッド位相のそれらのそれぞれのインバータ位相角を追跡する速さを調整することができる。小さな(平坦な)傾きdf/dPは、インバータ10.1、10.2、10.3のそれぞれの出力周波数が、高電力フローであっても比較的わずかしか変化せず、その結果、位相角差が比較的大きくなる可能性があり、したがって比較的多くの瞬時予備力エネルギーが交換されることを意味する。一方、傾きが大きいdf/dPの場合、出力周波数は、グリッド周波数に比較的迅速に調整されるため、位相角差は、比較的小さく保たれ、交換される瞬時エネルギーは少なくなる。具体的には、電力供給プラント11は、例えば、特にインバータ10.1、10.2、10.3の定格電力に関連するエネルギー貯蔵装置18.1、18.2、18.3の適切な設計によって、電力供給プラント11の全定格電力が、少なくとも1秒間有効電力瞬時予備力として利用可能となるように設計することができる。あるいはまた、特にAC電圧グリッド24のグリッドオペレータが、電力供給プラント11によるAC電圧グリッド24の支援に対してより大きなまたはより小さな貢献を必要とする場合、他の設計が可能である。
【0082】
図5の上半分は、本発明に係る有効電力瞬時予備力の提供中に周波数差が発生した後のインバータ10.1、10.2、10.3の融通電力の一例を示す。
図5の下半分には、インバータ10.1、10.2、10.3のドループレギュレータ50.1、50.2、50.3のパラメータとして調整された場合の、基準電力P
refのプロファイルがプロットされている。基準電力P
refの異なるプロファイルは、それによって積分器28.2の異なる増幅率1/H
θに対応し、したがって、プラントコントローラ28によるドループレギュレータ50.1、50.2、50.3(
図2b参照)内の、またはインバータ10.1、10.2、10.3自体(
図2cおよび
図2d参照)内の異なる介入ダイナミクスに対応する。時間t=3秒に発生した周波数偏差により、融通電力P
WRはまず、ゼロから大きさが増加し、その傾きは傾きdf/dPの特定の選択により与えられることが分かる(
図4参照、融通電力の符号はカウント方向に応じて任意である)。
【0083】
特定の値からの総融通電力の結果として生じる偏差によってトリガーされ、周波数差の発生までのわずかな遅延がある限り、基準電力P
refは、特に積分器28.2によって、ゼロからほぼ公称電力(1pu)まで様々な傾きで変化する。これは、まず、融通電力の最初の大きさの増加を、公称電力の半分(-0.5pu)と公称電力(-1pu)の間の値で遮断し、それが進行すると、融通電力は基準電力P
refの変化に比例して変化し、その結果、融通電力は、ゼロに戻るように調整される。
図5の下半分に見られるステップは、インバータ10.1、10.2、10.3のそれぞれのレギュレータ50.1、50.2、50.3によって基準電力よりも(かなり)大きな間隔で更新される、プラントコントローラ28のプラント制御のサイクルに対応する。
【0084】
本発明の実施形態では、パラメータ1/Hθまたは1/HUおよび/またはdf/dPまたはdU/dQを調整可能とすることができる。ここで、グリッド電圧位相角に対するインバータ位相角θsetの慣性は、ドループ要素52.1での利得係数1/Hθとドループ特性曲線60の傾きdf/dPとの積に依存する。また、インバータ位相角θsetとグリッド電圧位相角との同期の減衰は、利得係数1/Hθと傾きdf/dPとの間の比率を介して調整することができる。代替的または追加的に、グリッド電圧振幅に対するインバータ電圧振幅Usetの慣性は、ドループ要素58.13での利得係数1/HUと傾きdU/dQとの積、ならびに利得係数1/HUと傾きdU/dQの間の比率を介したインバータ電圧振幅のUsetとグリッド電圧振幅の同期の減衰を介して調整可能とすることができる。
【0085】
パラメータ1/Hθまたは1/HUおよび/またはdf/dPまたはdU/dQは、インバータ10.1、10.2、10.3、および必要に応じてプラントコントローラ28を用いて、電力供給プラント11を試運転する前に一度調整することができる。代替的または追加的に、パラメータは、例えば、プラントコントローラ28を介して、またはより高いレベルの動作制御80から、動作中に変更することができる。特に、これにより、電力供給プラント11の動的挙動を、制御電力に対する現在の需要に適合させることができ、特に、瞬時予備力と一次制御電力との間の比率を調整することができる。この比が大幅に変化した場合に、電力供給プラント11および/またはAC電圧グリッド24の調整が不安定になるのを回避するために、慣性および/または減衰を変更するためのそれぞれのパラメータ1/Hθ、1/HU、df/dP、またはdU/dQの調整は、調整可能な時定数を備えたローパスフィルタを介して、または調整可能な傾きを備えたランプを介して実行され得る。
【0086】
図6は、上記の電力供給プラント11の運転方法を示している。ステップS1では、インバータ10.1、10.2、10.3が、それらのそれぞれのドループレギュレータ50.1、50.2、50.3によって、グリッド周波数とそれらのドループレギュレータ50.1、50.2、50.3のそれぞれの基準周波数f
refとの間のそれぞれの周波数差の関数として、それらのそれぞれの融通電力をそれぞれ調整する。ステップS2では、それぞれのインバータ10.1、10.2、10.3のそれぞれのドループレギュレータ50.1、50.2、50.3が影響を受ける。ステップS2における影響は、特に、総融通電力と特定の融通電力との間の電力差の関数として、ドループレギュレータ50.1、50.2、50.3で使用される基準電力P
refおよび/または基準周波数f
refの変化を含み得る。
【0087】
特に、電力供給プラント11は、瞬時予備電力を提供するように設計することができる。そのような電力供給プラント11は、その後、グリッド周波数が一定である場合(特に、グリッド周波数と基準周波数が等しい場合)、AC電圧グリッド24と一定の電力を交換するかまたは電力を交換しないように設計することができる。周波数変化および/または位相ジャンプが発生した場合にのみ、それぞれのレギュレータ50.1、50.2、50.3がグリッド形成方式で介入し、AC電圧グリッド24とのインバータ10.1、10.2、10.3の電力交換が変化する(ステップS1)。この電力変化の検出により、グリッド形成機能が影響を受け、電力供給プラント11の総融通電力は、特定可能な介入ダイナミクスにより、ゼロまたは別の特定値(特に、周波数の変化前の融通電力の値)に戻る。
【0088】
例えば、エネルギー貯蔵装置18.1、18.2、18.3を一緒にまたは個別に目標通りに充電するために、グリッド周波数とそれぞれの基準周波数が等しい場合でも、他の仕様によりインバータの融通電力がゼロに等しくないこともあり得る。その後、ステップS1の瞬時予備力は、このすでに与えられた融通電力に加えて提供される。さらに、ステップS1、S2の実行中に特定の融通電力が変化する可能性があるため、ステップS2の終わりに、ステップS1の前の出力状態と比較して、変更された出力電力がグリッド接続を介して流れる。
【0089】
図7は、電力供給プラント11の動作の代替または追加として使用できる無効電力レギュレータ70を示す。この場合、無効電力レギュレータ70は、レギュレータ50.1に統合されることによって、または別個に実装されることによって、インバータ10.1、10.2、10.3内で実行され得る。
【0090】
無効電力レギュレータ70は、例えば、インバータ10.1、10.2、10.3のそれぞれの測定装置14.1、14.2、14.3から、瞬時グリッド電圧Uisの測定値を受信する。フィルタ71において、動的基準電圧Urefがグリッド電圧Uisから決定され、これは特にグリッド電圧Uisの時間平均値に対応することができ、好ましくはローパスフィルタによって生成され得る。動的無効電力寄与Q(Uref)は、無効電力スタティックス72によってグリッド電圧Uisから決定される。無効電力スタティックス72は、傾きdQ/dUを有し、無効電力寄与Q(Uref)に対する基準電圧Urefに値ゼロを割り当てる。
【0091】
無効電力レギュレータ70は、プラントコントローラ28から無効電力設定点Qsetを受け取る。加算器74において、無効電力寄与Q(Uref)と無効電力設定点Qsetが加算され、無効電力設定点QWRとしてインバータ10.1、10.2、10.3の電流制御75に転送される。電流制御75は、任意選択でグリッド電圧Uがフィルタ76内でフィルタリングされることを考慮して、無効電力設定点QWRから、それぞれのインバータ10.1、10.2、10.3のそれぞれのブリッジ回路12.1、12.2、12.3のための適切な駆動信号を生成する。
【0092】
図8は、
図7に係る無効電力レギュレータ70を有するインバータ10.1、10.2、10.3の有効電力Pおよび無効電力Qの例示的な時間プロファイルを示す。時刻t
0において、グリッド電圧は値U
0を有し、インバータ10.1、10.2、10.3は、有効電力P
0および無効電力Q
0をAC電圧グリッド24と交換する。このほぼ定常状態では、無効電力Q
0は、プロファイル81を有し、プラントコントローラ28によってインバータ10.1、10.2、10.3に特定された無効電力設定点Q
setに本質的に対応し、無効電力レギュレータ70のグリッド電圧U
isは、基準電圧U
refに対応し、無効電力寄与Q(U
ref)は、無効電力スタティックス72によりゼロの値を有する。
【0093】
時間t
1で、グリッド電圧Uが突然変化する。これにより、無効電力レギュレータ70内の基準電圧U
refからのグリッド電圧U
isの偏差が発生し、フィルタ71により時間t
1での電圧ジャンプに遅れて反応する。無効電力スタティックス72は、基準電圧U
refからのグリッド電圧U
isの偏差に基づいて、無効電力寄与Q(U
ref)を出力し、無効電力設定点Q
setと合計される。これにより、無効電力設定点Q
WRが急激に増加するため、インバータ10.1、10.2、10.3は、無効電力Qを大幅に変更する(
図8のプロファイル82を参照)。
【0094】
無効電力Qは、最大値に達し、その後、フィルタ71によって基準電圧U
refを変更されたグリッド電圧Uに近づけることによって、プロファイル83で元の値Q
0に戻される。例えば、時間t
2において、基準電圧U
refは、グリッド電圧Uからわずかにしか逸脱しないので、無効電力スタティックス72は、比較的小さな無効電力寄与Q(U
ref)を特定し、無効電力は無効電力設定点Q
set(
図8のQ
0に対応)からわずかに逸脱するだけである。最後に、無効電力Qは、プロファイル84を有し、プラントコントローラ28は、グリッド電圧の変化にも反応することができ、時間t
0と比較して(わずかに)異なる無効電力設定点Q
setを特定することができる。
【0095】
グリッド電圧Uの所与の変化における無効電力Qの最大値と、無効電力寄与Q(Uref)の減衰の持続時間の両方が、フィルタ71の適切なパラメータ化によって調整できる。
【0096】
固定基準値からのグリッド電圧の偏差に応じて一定のグリッド電圧で一定の無効電力を特定し、またグリッド電圧の変化に比較的ゆっくりと反応する従来の無効電力レギュレータとは対照的に、無効電力レギュレータ70は、グリッド電圧の変化後数ミリ秒以内に、無効電力の瞬時予備力がインバータ10.1、10.2、10.3によって提供され、その後調整可能な時定数を使用してプラントコントローラ28によって特定された値にフィードバックされるように動的に調整され得る。この場合、無効電力レギュレータ70は、プラントコントローラ28の無効電力設定点Qsetから分離され、無効電力の瞬時予備力を提供することによって、特にグリッド電圧の過渡変化の場合に、一時的な電圧支援効果のみを有する。
【符号の説明】
【0097】
10.1、10.2、10.3 インバータ
11 電力供給プラント
12.1、12.2、12.3 ブリッジ回路
14.1、14.2、14.3 インバータの測定装置
16.1、16.2、16.3 分離インピーダンス
18.1、18.2、18.3 エネルギー貯蔵装置
20.1、20.2、20.3 エネルギー貯蔵システム
22.1、22.2、22.3 エネルギー貯蔵管理装置
24 AC電圧グリッド
26 グリッド接続
26.1、26.2 グリッド接続の測定装置
28 プラントコントローラ
28.1、28.4 コンパレータ
28.2、28.5 積分器
28.3、28.6 アンプ
30 データ線
34.1、34.2、34.3 AC電圧線
36.1、36.2、36.3 データ線
38.1、38.2、38.3 データ線
40.1、40.2、40.3 DC電圧線
46.1 コンパレータ
48.1 フィルタ要素
50.1、50.2、50.3 (ドループ)レギュレータ
52.1 ドループ要素
54.1 コンパレータ
56.1 同期
58.1 無効電力レギュレータ
58.11 コンパレータ
58.12 フィルタ要素
58.13 ドループ要素
58.14 コンパレータ
59.1 パルス幅変調
60、60’ 特性曲線
70 無効電力レギュレータ
71 フィルタ
72 無効電力スタティックス
74 加算器
75 電流制御
76 フィルタ
80 運転管理装置
81~84 プロファイル
90 一次制御
U 電圧
Uis グリッド電圧
Uref 基準電圧
Uset 公称電圧
f 周波数
fref、f’ref 基準周波数
fset 設定周波数
Pref、P’ref 基準有効電力
Pis 測定された有効電力
Qis 測定された無効電力
Qset 無効電力設定点
Q(Uref) 無効電力寄与
QWR 無効電力設定点
S1、S2 方法ステップ
【国際調査報告】