(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】機械部品を接続するための圧縮引張部品
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20230727BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B60G7/00
B29C70/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524484
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2021035980
(87)【国際公開番号】W WO2022005697
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523001751
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル カーボン ファイバー アンド コンポジッツ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】パオロ フェラボリ
(72)【発明者】
【氏名】ボニー ウェイド
【テーマコード(参考)】
3D301
4F205
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA72
3D301AA89
3D301DA89
4F205AD16
4F205AG13
4F205AG21
4F205AH31
4F205HA19
4F205HA22
4F205HA37
4F205HB01
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
(57)【要約】
2つの機械部品を接続するための繊維強化プラスチック製の圧縮引張部品を提供する。この圧縮引張部品は、2つの連結ユニットを接続する、湾曲した接続部材を有する。湾曲した接続部材の一部は、ほぼU字形の断面形状を有する。U字形断面形状は、外側に延びる複数のウィングレットを有する直立部分を備えうる。圧縮引張部品の幾何学的形状により、金属で作られかつ異なる幾何学的形状を有する、より重い圧縮引張部品を置換することができる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの機械部品を接続するための圧縮引張部品において、
前記圧縮引張部品は、2つの端部を有する非直線状接続部材と、前記非直線状接続部材の各端部にある連結ユニットとを備え、
前記圧縮引張部品は繊維強化プラスチックを備え、
前記圧縮引張部品の平均密度が1.8g/m
3(g/cc)以下であり、かつ前記非直線状接続部材の少なくとも一部がほぼU字形である断面形状を備える、圧縮引張部品。
【請求項2】
前記非直線状接続部材の少なくとも一部は、対称的なU字形を有する断面形状を備える、請求項1に記載の圧縮引張部品。
【請求項3】
前記繊維強化プラスチックが、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維を備える、請求項1又は2に記載の圧縮引張部品。
【請求項4】
前記繊維強化プラスチックは、前記炭素繊維を備える、請求項3に記載の圧縮引張部品。
【請求項5】
前記ほぼU字形の構造は、水平基部と、2つの略垂直方向直立部分とを備え、前記2つの略垂直方向直立部分の内の少なくとも1つの略垂直方向直立部分の端部は、前記略垂直方向直立部分に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項6】
前記2つの略垂直方向直立部分の両方の略垂直方向直立部分の端部は、前記略垂直方向直立部分に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備える、請求項5に記載の圧縮引張部品。
【請求項7】
前記ウィングレットの上面は、前記水平基部の上面とほぼ平行である、請求項5に記載の圧縮引張部品。
【請求項8】
両方の前記ウィングレットの上面が前記水平基部の上面とほぼ平行である、請求項6に記載の圧縮引張部品。
【請求項9】
前記対称的なU字形の構造は、水平基部と、等しい2つの略垂直方向直立部分とを備え、前記2つの略垂直方向直立部分の内の少なくとも1つの略垂直方向直立部分の端部は、前記略垂直方向直立部分に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備える、請求項2~8のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項10】
両方の前記2つの略垂直方向直立部分の端部は、前記2つの略垂直方向直立部分に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備える、請求項9に記載の圧縮引張部品。
【請求項11】
前記ウィングレットの上面は、前記水平基部の上面とほぼ平行である、請求項9に記載の圧縮引張部品。
【請求項12】
両方の前記ウィングレットの上面が前記水平基部の上面とほぼ平行である、請求項10に記載の圧縮引張部品。
【請求項13】
前記繊維強化プラスチックは、連続繊維を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項14】
前記連続繊維が一方向であるか、織物織り込まれているか、又は、その組み合わせである、請求項13に記載の圧縮引張部品。
【請求項15】
前記連続繊維が、前記圧縮引張部品の構造全体にわたってほぼ均一な微細構造で配置されている、請求項13又は14に記載の圧縮引張部品。
【請求項16】
前記連続繊維のトウが1K~80Kである、請求項13~15のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項17】
前記非直線状接続部材の断面形状は、前記ほぼU字形の構造を備える断面形状が存在する前記非直線状接続部材の内部の領域からそれぞれの前記連結ユニットに向かって独立して延びて変化する、請求項1~16のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項18】
前記ウィングレットの外側に向かう水平方向の延伸部は、前記非直線状接続部材の内部領域で最大であり、前記非直線状接続部材の各端部に向かう各方向において減少する、請求項8に記載の圧縮引張部品。
【請求項19】
前記ウィングレットの外側に向かう水平方向の延伸部は、前記非直線状接続部材の内部領域で最大であり、前記非直線状接続部材の各端部に向かう各方向において減少する、請求項12に記載の圧縮引張部品。
【請求項20】
前記連結ユニットの近くの前記非直線状接続部材の断面形状が、前記非直線状接続部材の前記ほぼU字形の構造とは異なる少なくとも1つの直立部分を有する水平基部を備える、請求項1~19のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項21】
前記ほぼU字形の構造は、水平基部と、2つの略垂直方向直立部分とを備え、前記水平基部の上面は、少なくとも1つの構造隆起部を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項22】
前記水平基部の前記上面が、前記非直線状接続部材の両端から互いに向かってそれぞれが延びている2つの構造隆起部を有する、請求項21に記載の圧縮引張部品。
【請求項23】
圧縮負荷応力解析の下で、前記非直線状接続部材の前記ほぼU字形の構造が圧縮引張応力切換点を備えない、請求項1~22のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項24】
圧縮負荷又は引張負荷の下において、前記非直線状接続部材の長さの少なくとも80%が圧縮引張応力切換点を備えない、請求項1~23のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項25】
前記圧縮負荷又は前記引張負荷が少なくとも10kNである、請求項24に記載の圧縮引張部品。
【請求項26】
前記圧縮引張部品は、車両用サスペンションアームである、請求項1~25のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項27】
前記圧縮引張部品は、前記非直線状接続部材において少なくとも1つの取付ユニットをさらに備える、請求項26に記載の圧縮引張部品。
【請求項28】
前記非直線状接続部材は、側部取付構造をさらに備える、請求項27に記載の圧縮引張部品。
【請求項29】
前記少なくとも1つの取付ユニットが、締結装置を挿入するための空洞を備える、請求項27又は28に記載の圧縮引張部品。
【請求項30】
前記圧縮引張部品が、シートモールディングコンパウンド(SMC)、プリプレグ樹脂組み合わせ、及び、液体モールディングコンパウンドの内の少なくとも1つの圧縮成形構造である、請求項1~29のいずれか一項に記載の圧縮引張部品。
【請求項31】
サスペンション部材において、
前記サスペンション部材は、2つの端部と、その各端部にある開口部とを有する非直線アームを備え、前記サスペンション部材は繊維強化プラスチックを備え、前記サスペンション部材の平均密度は1.8g/m
3(g/cc)以下であり、前記サスペンション部材はほぼU字形である断面形状を備える、サスペンション部材。
【請求項32】
自動車用サスペンション部材において、
前記自動車用サスペンション部材は、2つの端部と、その各端部にある開口部とを非直線アームを備え、
前記自動車用サスペンション部材は炭素繊維強化プラスチックを備え、前記非直線アームは、低流動成形プロセスによって作られ、前記非直線アームは、ほぼU字形である断面形状を備える、自動車用サスペンション部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年7月1日に出願された米国仮出願第63/046,958号についての優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、部品に引張、圧縮又はその両方を付与する機械部品を接続するために使用される圧縮引張部品を対象とする。
【背景技術】
【0003】
このような圧縮引張部品は、例えば、車輪アセンブリのサスペンションアームとして、車両の構造に採用されている。しかしながら、ここで提供される材料及び概念は、1つの機械部品の動きを他の機械部品に伝えるように2つの機械部品が接続される、加えられた引張力及び/又は圧縮力の下で実行しなければならない任意の接続構造に適用されうる。あらゆるタイプの車両の燃費性能向上に大きな努力が払われている。この動作の一態様において、部品部分の重量を最小化しつつその部品部分の強度及び耐久性を維持することで燃料性能を増すことができます。全般的には、鋼からアルミニウムへ、プラスチック部品、特に繊維強化プラスチック(FRP)への移行が精査中である。これは、鋼の密度が一般的に7.75g/cm3~8.05g/cm3の範囲であり、アルミニウムの密度は2.7g/cm3であり、プラスチックの密度は約0.6g/cm3~約3.0g/cm3であることを考慮すると興味深い。繊維強化プラスチックの密度は、母材のプラスチック、強化に使用される繊維、及び、繊維の含有量に依存し、その密度は、1.0g/cm3~3.8g/cm3で変化し得る。
【0004】
鋼やアルミニウムよりも低い密度から出発することにより、繊維強化プラスチックは、構成部品の重量を大幅に減少させることができる。しかしながら、圧縮引張部品におけるアルミニウム又は鋼の繊維強化プラスチックへの直接的な置換が試みられる時、繊維強化プラスチックの部品は元のアルミニウム又は鋼の部品より低い圧縮負荷及び/又は引張負荷で破損することが一般的に見出されてきた。
【0005】
しばしば、圧縮引張部品の構造は、形状及び幾何学的要求によって制約され、それは繊維強化プラスチックの部品の下側破壊負荷をさらに悪化させる。そのような部品の多くは、直線でなく(例えば、湾曲し又は以下にさらに定義されるような場合があり)、他の部品及び構造部品によって制限された空間内に適合しなければならない。さらに、部品が他の機械部品と連結するためのアセンブリを有さなければならないという要求は、さらなる設計の困難性につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、幾何学的な設計の制約にも適合しつつ、強度及び剛性に対する要求を満たす、サスペンションアームアセンブリの非直線状部品などの、繊維強化プラスチック製の圧縮引張部品に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の構造の実施形態において、2つの機械部品を接続するための圧縮引張部品において、圧縮引張部品は、2つの端部と、その各端部にある連結ユニットとを有する、非直線状接続部材を備え、圧縮引張部品は繊維強化プラスチックを備え、圧縮引張部品の平均密度は、1.8g/cm3以下であり、非直線状接続部材の少なくとも一部は、ほぼU字形である断面形状を備える、圧縮引張部品を提供する。
【0008】
この第1の構造の実施形態の態様において、圧縮引張部品の非直線状接続部材の少なくとも一部は、対称的なU字形を有する断面形状を備える。一実施形態において、U字形を「C字形」又は「C字形チャネル」と記載することもある。
【0009】
この第1の構造の実施形態の態様において、圧縮引張部品の非直線状接続部材の少なくとも一部は、部分的に対称的なU字形である断面形状を備える。別の実施形態において、U字形は、非対称的であるとみなされうる。
【0010】
第1の構造の実施形態の態様において、繊維強化プラスチックは、炭素繊維、ガラス繊維、及びアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維を備え、これらの繊維は、玄武岩、黒鉛又はザイロン及び様々な他のものなどの群から選択された繊維を有しうるが、これらに限定されるものではなく、特別な態様において、繊維強化プラスチックは炭素繊維を備える。
【0011】
第1の構造の実施形態のさらなる態様において、ほぼU字形の構造は、水平基部と、2つの略垂直方向直立部分とを備え、2つの直立部分の内の少なくとも1つは、直立部分の端部にある直立部分の内面に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備える。さらなる特別な態様において、両方の直立部分はウィングレットを備える。これらの態様による構成では、これらウィングレットの内の少なくとも1つは、直立部分の端部から水平に外側に延びている。
【0012】
他の実施形態において、これらウィングレットの内の少なくとも1つは、直立部分の端部から外側に、直立部分から水平方向の上又は下の角度で延びている。
【0013】
第1の構造の実施形態の別のさらなる態様において、ほぼU字形の構造は、水平基部と、2つの略垂直方向直立部分とを備え、これらの2つの略垂直方向直立部分の内の少なくとも1つは、ウィングレットを備えても備えなくてもよい。一実施形態において、ウィングレットは、存在する場合、直立部分の端部において直立部分の内面に対してある角度で外側に延びていても延びなくてもよい。一実施形態において、両方の直立部分がウィングレットを有していない。
【0014】
第1の構造の実施形態の態様において、U字形構造は、水平基部と、2つの略垂直方向直立部分とを備える。これらの直立部分は、互いに等しくても等しくなくてもよい。さらに、これらの直立部分の内の少なくとも1つは、直立部分の端部で直立部分の線に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備え、この態様の特別な形態においては、両方の直立部分は、直立部分の端部で直立部分の内面に対してある角度で外側に延びるウィングレットを備える。これらの態様によれば、これらのウィングレットの一方又は両方は、直立部分の内面に対して水平に外側に延びうる。
【0015】
第1の構造の実施形態の別の態様において、繊維強化プラスチックは、連続繊維を備え、この態様の特別な形態においては、連続繊維は、一方向であってもよく、又は、織物に織り込まれてもよく、又はそれらの組み合わせとしうる。この態様のさらに特別な形態においては、連続繊維は、圧縮引張部品の構造全体にわたってほぼ均一な微細構造で配置され得る。これらの態様によれば、連続繊維のトウは、1K~80Kとしうる。
【0016】
第1の構造の実施形態のより詳細な態様において、圧縮引張部品の接続部材の断面形状は、ほぼU字形の構造を備える断面形状が存在する接続部材の内部の領域からそれぞれの連結ユニットに向かって独立して延びて変化する。
【0017】
第1の構造の実施形態のこれらのより詳細な態様のさらなる説明では、ウィングレットの外側に向かう水平方向の延伸部が、接続部材の内部領域で最大であり、非直線状接続部材の各端部に向かう各方向において減少する。
【0018】
第1の構造の実施形態のこれらのより詳細な態様についてさらに説明すると、連結ユニットの近くの接続部材の断面形状は、接続部材の内部のほぼU字形の構造とは異なる少なくとも1つの直立部分を有する水平基部を備えうる。
【0019】
明示的な一実施形態において、本発明は、車両用のサスペンションアームを提供する。
【0020】
この明示的な実施形態のさらなる態様において、サスペンションアームは、接続部材内に少なくとも1つの取付ユニットを備え、さらに、少なくとも1つの取付ユニットは、締結装置を挿入するための空洞を備える。
【0021】
第1の構造の実施形態の別の態様において、接続部材は、引張又は圧縮解析によって求められる軸線方向応力の符号の変化を最小限に抑える。
【0022】
第1の実施形態のさらなる態様において、圧縮引張部品は、シートモールディングコンパウンド(SMC)技術、プリプレグ(繊維と樹脂の組合せ)技術、及び/又は、液体成形技術(RTM又は他の様々なタイプ)を含みうるが、これらに限定されない、主流の複合技術を使用して作られる圧縮成形構造である。
【0023】
他の明示的な実施形態において、本発明は、2つの端部とその各端部に開口部を有する非直線アームを備えるサスペンション部材を備え、サスペンション部材は、繊維強化プラスチックを備え、サスペンション部材の平均密度は1.8g/m3(g/cc)以下であり、サスペンション部材は、ほぼU字形である断面形状を備える。
【0024】
更に、2つの端部とその各端部に開口部を有する非直線アームを備える自動車サスペンション部材であって、自動車サスペンション部材は、炭素繊維強化プラスチックを備え、アームは、圧縮成形プロセスによって作られ、アームは、ほぼU字形である断面形状を備える、自動車サスペンション部材が提供される。
【0025】
更に、2つの端部とその各端部に開口部を有する、曲がった又は非直線アームを備えるサスペンション部材であって、前記サスペンション部材は、繊維強化プラスチックを備え、前記非直線アームは、低流動SMC成形プロセスによって作られ、前記サスペンション部材は、ほぼU字形である断面形状を備える、サスペンション部材が提供される。
【0026】
前述の段落は、一般的な導入として提供されたものであり、以下の特許請求の範囲を限定するものではない。説明される実施形態は、さらなる利点と共に、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【0027】
本開示及びその付随する利点の多くをより完全に理解することは、添付図面に関連して考察するときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解されるように、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】
図1Aは、従来技術のアルミニウム製サスペンションアームの等角正面斜視図を示す。
【
図2A】
図2Aは、
図1Aの従来技術のアルミニウム製サスペンションアームの側面図を示し、断面の印が付いている。
【
図2B-2K】
図2B~
図2Kは、それぞれ、線2B~線2Kに沿ったそれぞれの断面図を示す。
【
図3A】
図3Aはサスペンションアームの等角正面斜視図を示す。
【
図4A】
図4Aは、
図3Aのサスペンションアームの正面立面図であり、断面の印が付いている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、アルミニウム製の圧縮引張部品の置換、特に、より重量の低い繊維強化プラスチック(FRP)材料及び特定の三次元設計による車両用車輪アセンブリのサスペンションアームの置換に向けた広範な研究を行った。
【0030】
以下の方法及び説明は、金属製の圧縮引張部品をFRP製の圧縮引張部品に置換する、特に、車両の車輪アセンブリのためのサスペンションアーム、更に特に、非直線形状を有するサスペンションアームに置換するために適用することができる。従って、以下の説明の多くはサスペンションアームに向けられているが、説明されるべき材料及び構造は一般に、圧縮負荷及び/又は引張負荷の力の下で機能するように設計された任意の部品に適用可能であることに留意されたい。
【0031】
材料
繊維強化プラスチック材料は、従来、当業者によって知られており、少なくとも1つの樹脂成分と少なくとも1つの強化繊維とを含んでいる。
【0032】
樹脂成分は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂とすることができ、各タイプの樹脂は、選択された最終使用装置に適用されうる。例えば、熱可塑性樹脂は、PA6及びPA66又はポリプロピレンなどの(これらに限定されない)ポリアミドを有することができ、一方、繊維強化プラスチック産業における公知の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂及びビニル樹脂を有する。一般に、ユニットをシート成形法で製造する場合には、熱硬化性樹脂が用いられ、ユニットを射出成形法で形成する場合には熱可塑性樹脂が用いられる。これらの例は限定的なものではなく、繊維強化プラスチック産業で従来採用されている樹脂が本発明に含まれる。
【0033】
補強繊維は、少なくとも1つの主流の複合補強繊維を有することができ、これは、炭素繊維、ガラス繊維、及び、アラミド繊維を有することができ、玄武岩、黒鉛又はザイロン及び様々な他のものなどの群から選択された繊維を有しうるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、炭素繊維が好ましい場合があり、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、当業界において周知である。
【0034】
この繊維は、樹脂マトリクス内で連続的又は不連続的としうる。不連続強化プラスチックの場合、繊維は強化プラスチックマトリックス中でランダムに配向し、樹脂によって互いに接着する。不連続繊維の長さは、0.5mm~100mmの範囲、あるいは25mm~50mmの範囲で変えることができである。
【0035】
装置設計及び三次元形状
圧縮引張部品、特に車両用車輪アセンブリのサスペンションアームは、その端部において引張又は圧縮状態で装填することができ、その最長軸線の全体にわたってほぼ同様の断面を有する略プリズム形状を有するバーなどの、直線バーにすることができる。このように、直線バーの部品によって支持される負荷は、かけられた負荷を断面積(P/A)で割った値によって与えられる、純粋な軸線方向引張又は圧縮応力状態に分解することになる。理想的な場合には、圧縮引張部品は、
図5A~
図5Cに示されるような、直線バーの形態とし得る。
図5A~
図5Cの部品によって支持される負荷は、かけられた負荷を断面積(P/A)で割った値で与えられる純粋な軸線方向引張又は圧縮応力状態に分解する。
【0036】
しかしながら、隣接する部品に対する位置及び要求に起因する他の幾何学的制約によって、直線バーの形状を排除する場合がある。これらの制約は、部品構造における湾曲部をしばしば含む、複雑な三次元空間構成に部品を適合させることを要求することがある。これらの1つ又は複数の湾曲部の結果は、
図1A~
図1C及び
図3A~
図3Cに示すような非直線状の又は曲がった部品である。
【0037】
幾何学的形状におけるこれらの湾曲部によって、曲げ応力を生じさせ、これは、構造部品/部品/要素が受ける純粋な軸線方向引張又は圧縮応力を重ね合わせ、さらに、部品が受ける全体的な応力状態を大いに増す。全体的な応力状態は、P/Aで計算した公称軸線方向応力状態よりも3倍~7倍高くなりうる。これらの曲げ応力は部品の厚さを通して変化し、中立軸線で符号が変化することがある。さらに、部品の幾何学的形状に応じて、曲げ応力は、与えられた位置において、それらが応力状態の符号を変化させることができるようなものとなりうる。例えば、部品が圧縮状態で負荷を受ける場合、部品は大部分の位置で圧縮応力を受けることがあるが、特定の地点では応力状態が符号を切り換えて純粋に引っ張り状態になることがある。応力状態の符号が変化する場所では、応力集中点が存在し、このような応力集中点は、サスペンションアームなどの圧縮引張部品における負荷下の部品の早期破損につながる可能性がある。したがって、圧縮引張部品の設計は、これらの応力点を考慮しなければならない。
【0038】
また、本願の発明者らは、効果を最大限に発揮させるために、材料が部品の幾何学的形状と連動して機能しなければならないことを見出した。間違った材料を使用すると、サスペンションアームなど、既存の金属部品を置換するのに十分でない可能性のある、性能の低い部品になりうる。
【0039】
この例は、従来採用されているアルミニウム製サスペンションアームのための低重量の置換サスペンションアームを説明する。この例は、圧縮引張アームの明示的な実施例を開示しているが、本発明は、その明示的な実施例のみに限定されるものではなく、本明細書に開示する圧縮引張部品として有用な複数の実施形態の態様を含む。
【0040】
このように、第1の実施形態において、本発明は、2つの機械部品を接続するための圧縮引張部品10であって、この部品10は、2つの端部14、16と、その各端部にある連結ユニット18、20を有する非直線状接続部材12を有し、圧縮引張部品は繊維強化プラスチックを備え、圧縮引張部品の平均密度が1.8g/m
3(g/cc)以下であり、非直線状接続部材の少なくとも一部が、ほぼU字形である断面形状を備える、部品10を提供する。より詳細には、ほぼU字形の断面形状を備える接続部材の部分(単数又は複数)は、接続部材12の非直線状部分において、中央部分において、端部付近もしくは端部において、又はこれらの何らかの組合せにおいて見られる。
図3Cは、ほぼU字形の断面形状を備える接続部材の部分44を示す。
【0041】
この第1の実施形態に係る圧縮引張部品に課せられる可能性がある、構造上の制約によっては、接続部材の構造にバラツキがある場合がある。例えば、一態様において、接続部材12の少なくとも一部は、対称的なU字形を有する断面形状を備える。例えば、
図4D~
図4Fによって示される断面は、対称的なU字形を示す。一実施形態において、対称的なU字形は、「等しい」略垂直方向直立部分26、28を有するとみなすことができる。他の実施形態において、断面形状は、非対称的なU字形を有する。例えば、
図4G~
図4Hによって示される断面は、非対称的なU字形を示す。さらにさらなる実施形態において、部品部分の断面形状は、その長さに沿って対称的なU字形と非対称的なU字形の間で変化しうる。例えば、この対称的なU字形断面と非対称的なU字形断面における変化は、
図4D~
図4Fの対称的なU字形と
図4G~
図4Hの非対称的なU字形とが、非直線状接続部材12の長さに沿って見た断面であるという事実によって明らかである。
図4Aの接続部材12などの好ましい実施形態において、対称的なU字形と非対称的なU字形の間の変化は滑らかに起こり得る。しかしながら、代替実施形態において、変化が急激としうる。いくつかの実施形態において、接続部材の断面形状は、接続部材の長さに沿って独立して変化する。非対称的なU字形は、直立部分26、28の長さ又は角度によって、又は、ウィングレット30、32又は他の構造の有無によって、かつ/又は、ウィングレット延伸部の角度又は長さによって、非対称的としうる。
【0042】
圧縮引張部品のさらなる詳細な態様において、ほぼU字形部分44は、上面38と2つの略垂直方向直立部分26、28とを有する水平基部24によって形成され得る。一実施形態において、接続部材12の長さに沿った特定の断面における2つの略垂直方向直立部分は、水平基部の上面から突出し、90°~130°の範囲、好ましくは90°~120°の範囲、より好ましくは90°~110°の範囲、又は、約100°又は約95°の内角40を形成する。この実施形態において、90°の角度は、正確に垂直であるとみなすことができる。
図4Eに示されるように、この内角40は、直立部分の内面48と水平基部の上面38とによって形成される。別の実施形態において、特定の断面は、上面と垂直な角度をなす2つの略垂直な直立部分の一方又は両方を有することができ、これは、この一方又は両方の直立部分が正確に垂直であることを意味する。
【0043】
代替的な実施形態において、一方又は両方の直立部分26、28が水平基部の下部46の下に突出しうる。この一例を、代替接続部材の断面が水平基部62の上下に突出する直立部分60を有する
図5Dに示す。
【0044】
上記実施形態において説明したように、「U字形」は、基部及び2つの側部からなる3つの線分のみからなるUを描いている。代替の実施形態において、U字形は、2つの線分を接合する、湾曲した曲線基部により近くしうる。別の実施形態において、接続部材の一部分において、U字形ではなく、V字形の断面を使用又は存在しうるが、本開示及びここに記載の請求項の目的のために、このような形状はU字形とみなされるものとする。関連の実施形態において、接続部材12又は圧縮引張部品10が「非直線状(non-straight)」であることは、直線状の構成又は幾何学的形状からの実質的な逸脱が存在することを意味する(例えば、直線状の構成の1つの変形例についての従来技術の圧縮部材を参照されたい。その中央部材は、そこから突出する特定の突出部にもかかわらず、ほぼ直線状である)。好ましくは、非直線状接続部材又は非直線状圧縮引張部品は湾曲している。しかし、他の実施形態において、非直線状部品は、角度が付いているか、曲がっているか、ギザギザになっているか、又は角度が付いた線分と曲がった線分との組み合わせとしうる。
【0045】
一実施形態において、接続部材の1つ又は複数の部分は、一方又は両方の略垂直方向直立部分を有していなくてもよい。例えば、
図4Bの断面における接続部材は、いずれの略垂直方向直立部分も有していないが、
図4J及び
図4Kの断面は、1つの略垂直方向直立部分26のみを示している。略垂直方向直立部分を有する領域と有していない領域との間の接続部材の長さに沿って、略垂直方向直立部分の高さは滑らかに変化し得る。
【0046】
一実施形態において、接続部材12の一部の長さ又は全長は、水平基部の上面38上に位置する構造隆起部34、36を有しうる。一実施形態において、接続部材は、
図3Cに示されるように、接続部材の第1の端部14及び第2の端部16から互いに向かって延びる構造隆起部34、36を有しうる。ここで、構造隆起部は、互いに向かって延びて上面と同一平面になり得るので、上面からの高さが滑らかに減少し得る。例えば、
図4D及び
図4Hの断面では、構造隆起部(それぞれ、36及び34)が見えるが、
図4E~
図4Gの断面では、構造隆起部は存在しない。
【0047】
前述のように、接続部材の少なくとも一部は、ほぼU字形である断面形状を備える。一実施形態において、U字形断面は、接続部材の内部領域に存在しうる。一実施形態において、内部領域は、接続部材のほぼ中央の第3の領域としうる。別の実施形態において、内部領域は、接続部材の任意の長さとしうるが、接続部材のいずれの端部までは延びない。さらなる実施形態において、内部領域は、接続部材の中間点又は中間を含む長さであるか、又は連結ユニット18、20の中心を結ぶ線分の中間点を含む長さである。
【0048】
一実施形態においては、ほぼU字形部分44の長さは、2つの略垂直方向直立部分26、28の両方が存在する接続部材の長さによって表記されうる。この長さは、接続部材12の長さの50%~95%、好ましくは60%~90%、より好ましくは70%~85%、又は、約80%とすることができる。
【0049】
圧縮引張部品のさらなる詳細な態様において、ほぼU字形部分は、水平基部24及び2つの略垂直方向直立部分26、28を備え得、これら直立部分の内の少なくとも1つの直立部分の端部は、直立部分の内面48及び外面52に対してある角度で外側に延びるウィングレット30、32を備える。ここで、ある角度で外側に延びるウィングレットとは、ウィングレットの上面42が、直立部分の内部48及び/又は外面52に対して、45°~135°、好ましくは60°~120°、より好ましくは70°~110°、さらに好ましくは75°~105°の範囲の角度をなすことを意味する。
【0050】
さらなる態様において、両方の直立部分は、それぞれ、例えば
図4D~
図4Iに示されるように、単一のウィングレットを備える。一実施形態において、ウィングレットの上面42は、ほぼ平面状である。さらに、
図4D~
図4Iなどの接続部材12の横断面では、ウィングレットの上面42の線は水平基部38の上面とほぼ平行である。換言すれば、一方又は両方のウィングレット30、32は、直立部分26、28から水平方向に外側に延びうる。しかし、他の実施形態において、又は、接続部材の特定の断面では、一方又は両方のウィングレット30、32は、ウィングレットの上面42がある角度で水平基部38の上面とほぼ平行ではないように、外側に延びうる。
【0051】
一実施形態において、一方又は両方のウィングレット30、32は、接続部材の長さに沿って、直立部分26、28から異なる長さで外側に延びうる。例えば、
図3Cのウィングレット30、32の上面は、接続部材の端部から接続部材の中央の第3の部分に向かうにつれて、水平基部38の上面からさらに離れて延びるように見える。代替の実施形態において、一方又は両方のウィングレットが、直立部分の端部から内側に延びうる。別の代替実施形態において、一方又は両方のウィングレットが、直立部分から内側及び外側の両方に延びうる。
【0052】
接続部材12の断面形状は、ほぼU字形の構造44を備える断面形状が存在する接続部材の内部の領域から、それぞれの連結ユニット18、20に向かって独立して延びて変化しうる。ウィングレット(単数又は複数)30、32が水平方向外側に延びている態様において、ウィングレットの水平方向延伸部が、接続部材12の内部領域で最大となり、例えば
図3Cに示すように、接続部材の各端部に向かう各方向において減少し得る。
【0053】
一実施形態において、水平基部の上面38は、横方向において直線状であるが、長手方向には湾曲しうる。例えば、
図4B~
図4Kの断面全体に示されているような上面38は水平に見える。しかし、接続部材12の長さ全体にわたって、また、
図3B及び
図4Aの側面図によって明らかなように、上面は曲線に従う。接続部材の端部14、16のいずれかから、上面は正の曲率に従い、次いで負の曲率に従い、次いで正の曲率に従う。一実施形態において、負の曲率を有する上面の長さは、接続部材12の長さの30~70%、好ましくは40~60%としうる。接続部材12の全長は、第1の端部14から第2の端部16までの直線の長さとして、又は、代替的に、連結ユニット18と連結ユニット20の間の距離として規定されうる。
【0054】
接続部材12の長さは、10cm~50cmの範囲、好ましくは15cm~40cmの範囲、より好ましくは20cm~35cmの範囲、さらに好ましくは25cm~32cmの範囲、又は、28cm~35cmの範囲、又は約30cmでとしうる。一実施形態において、接続部材12の幅は、2.8cm~8cmの範囲、好ましくは3.2cm~7.2cmの範囲内とすることができ、接続部材12の長さ全体にわたって変化しうる。連結ユニットは、2.5cm~5.5cmの範囲、好ましくは3.0cm~5.2cmの範囲、より好ましくは3.4cm~5.0cmの範囲の直径を有する筒状穴を備えうる。直立部分26、28及びウィングレット30、32は、2mm~10mmの範囲、好ましくは3mm~8mmの範囲、より好ましくは4mm~7mmの範囲の側壁厚さを有しうる。直立部分26、28は、水平基部の上面38から独立して、1.0cm~5.0cmの範囲、好ましくは1.5cm~4.5cmの範囲、より好ましくは2.2cm~4.0cmの範囲、又は、2.3cm~3.5cmの範囲の最大高さで延びうる。ウィングレット30、32は、直立部分26、28から、最大長さが3~20mmの範囲、好ましくは4~10mmの範囲で、独立して延びうる。水平基部24は、5mm~20mmの範囲、好ましくは6mm~15mmの範囲、より好ましくは7~12mmの範囲の厚さを有し得る。構造隆起部34、36は、水平基部の上面38から、2mm~10mmの範囲、好ましくは3mm~8mmの範囲の最大高さで延びうる。代替的な実施形態において、接続部材の断面は、水平基部の上面上に2つ以上の構造隆起部を有することができ、又は、直立部分の内面48又は外面52上、ウィングレット30、32上、又は、水平基部の下部46上に位置する1つ以上の構造隆起部を有しうる。例えば、
図5Dにおいて、圧縮引張部品56の代替実施形態は、上面及び下面上に3つの構造隆起部54を有する直線状の接続部材58を有する。
【0055】
一実施形態において、接続部材12に沿った最小断面積は、200mm2~550mm2の範囲、好ましくは250mm2~500mm2の範囲、より好ましくは300mm2~480mm2の範囲、更に好ましくは350mm2~450mm2の範囲内としうる。一実施形態において、接続部材12に沿った最大断面積は、400mm2~mm2の範囲、好ましくは500mm2~800mm2の範囲、より好ましくは600mm2~780mm2の範囲、更に好ましくは650mm2~750mm2の範囲内としうる。
【0056】
圧縮引張部品10は、200g~500gの範囲、好ましくは250g~450gの範囲、より好ましくは280g~400gの範囲、より好ましくは300g~380gの範囲、より好ましくは320g~370gの範囲の質量を有し得る。圧縮引張部品10は、0.9g/m3(g/cc)~3.5g/m3(g/cc)の範囲、好ましくは1.0g/m3(g/cc)~3.0g/m3(g/cc)の範囲、より好ましくは1.2g/m3(g/cc)~2.8g/m3(g/cc)の範囲、さらに好ましくは1.3g/m3(g/cc)~2.2g/m3(g/cc)の範囲、又は1.2g/m3(g/cc)~2.0g/m3(g/cc)の範囲、1.3g/m3(g/cc)~1.8g/m3(g/cc)の範囲、1.3g/m3(g/cc)~1.7g/m3(g/cc)の範囲内の密度、又は、約1.5g/m3(g/cc)の密度を有し得る。一実施形態において、圧縮引張部品10は、2.5g/m3(g/cc)以下、2.2g/m3(g/cc)以下、2.0g/m3(g/cc)以下、1.8g/m3(g/cc)以下、1.6g/m3(g/cc)以下、又は、1.5g/m3(g/cc)以下の密度を有し得る。
【0057】
一実施形態において、水平基部46の下面は、例えば、
図4B及び
図4Cの断面に示されるように、横方向に直線としうる。また、下部46は、
図4D、
図4H及び
図4Iの断面図に示すように、上方に僅かに湾曲した線分を有しうる。下部46は、
図4E、
図4F、
図4G、
図4J及び
図4Kに示すように、さらに、角度が付いた部分又は傾斜部分50を有しうる。水平基部の上面38が長手方向において湾曲しているのと同様に、水平基部46の下部の1つ又は複数の面は、接続部材12を一端部から他端部まで横断しつつ湾曲しうる。これは、水平基部の上面38について論じたように、下部46の最下点が一連の正の曲率及び負の曲率を有することが観察される
図3B及び
図4Aの側面図で観察される。一実施形態において、下部46の最下点は、2つの連結ユニット18、20の中心を結ぶ線分によって決定される、圧縮引張部品10の中心軸線より上に上昇することができる。一実施形態において、構造隆起部34は、
図4Jに示されるように、下部46の一部から突出しうる。
【0058】
一実施形態において、構造隆起部34、36の頂部は、同一の幾何学的平面内にあり、接続部材の端部から延びている間、構造隆起部34、36の頂部の高さは、湾曲した経路をたどる水平基部38の上面の結果である。
【0059】
この圧縮引張部品10の第1の実施形態の別の態様において、連結ユニットの近くの接続部材12の断面形状は、接続部材の中央領域の近くの断面のほぼU字形の構造とは異なる少なくとも1つの直立部分を有する水平基部24を備えうる。これは、例えば、
図4C及び
図4J~
図4Kに見られる。
【0060】
繊維強化プラスチックは、通常、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、及び、それらの内部に嵌合する全ての繊維からなる群から選択される、1つ以上の主流強化繊維を有することができ、これらに限定されないが玄武岩及び黒鉛を含みうる。ガラス繊維及び炭素繊維が好ましく、炭素繊維が最も好ましい。
【0061】
この第1の実施形態の別の態様において、繊維強化プラスチックは、連続繊維を備えることができ、この連続繊維は、一方向に織り込まれて、織物になるか、又はそれらの組み合わせにされうる。1つの特別な態様において、連続繊維は、圧縮引張部品の構造全体にわたってほぼ均一な微細構造で配置される。
【0062】
連続繊維のトウ(tow)は、1K~80K、好ましくは2~30K、最も好ましくは3~15Kとしうる。
【0063】
第1の実施形態のさらなる態様において、圧縮引張部品10は、シートモールディングコンパウンド技術、プリプレグ(繊維と樹脂の組合せ)技術、及び/又は、液体成形技術(樹脂トランスファー成形(RTM)又は他のタイプなど)の3つの主流の複合技術の1つ又は組合せで作られる成形構造である。SMCは、使用される場合、低流動(例えば、材料充填物による高い成形範囲率)又は高流動(材料充填物による低い成形範囲率)のいずれかを呈し得る。
【0064】
シートモールディングコンパウンド(SMC)は、成形の準備が整った、ロール又はフェストーンの形態で通常利用可能な複合シート材料の形態である。シート材料は、細断されかつ通常はランダムに分布された、繊維のトウ、ストランドからなり、熱硬化性樹脂フィルム層同士の間に挟まれている。樹脂は、ポリエステル、エポキシ、ビニルエステル、又は他のポリマーの組み合わせとしうる。繊維の長さは、1.27cm(0.5インチ)~10.3cmm(4インチ)の間で変化し、通常は2.54cm(1インチ)~5.1cmm(2インチ)の間で変化する。しかし、いくつかの用途では、(当業界ではその用語が理解されているように無限に長い)連続的な繊維も、特に局部補強材として使用される。SMCのロール又はフェストーンから、成形する必要がある部品の一般的な形状に従って、より小さな部分(単数又は複数)が切り取られ、通常、この部品の所望の厚さ、体積又は重量に達するように、複数の層が重畳して積み重ねられる。この積み重ねは充填物と呼ばれる。この充填物は、上記部品の最終形状と比較して小さくすることができ、すなわち、材料が所望の形状となるように、著しい材料の流れ(移動)が生じ、このプロセスは、通常、標準成形(standard molding)又は高流動成形(high-flow molding)と呼ばれる。さもなければ、その充填物を最終部品の正確な又はほぼ正確な形状にすることができ、ひいては、成形中の材料の流れ(移動)を最小限にすることができ、それは、通常、低流動成形(low-flow molding)又はネットシェイプ成形(net-shape molding)と呼ばれる。充填物の形状や寸法は部品の性能に劇的な影響を及ぼす。次いで、SMC充填物は、通常、硬化プロセスのために対応する金型内に配置され、熱及び圧力を加えて最終部品に変形させる。このプロセスは、通常、圧縮成形として知られている。しかしながら、非金属金型、開放型、及び、オートクレーブ(autoclave)サイクルを含む、これらに限定されない代替の方法でSMC充填物を硬化することができるという例外がある。
【0065】
プリプレグは、通常、ロールの形態で利用可能な複合シート材料の形態である。このシート材料は、部分的に固化された(Bステージ化された(B-staged))樹脂浴で予め含浸されている、個々のトウの炭素繊維を広げて平行にすることによって得られる、連続した(無限に長い)繊維の薄い層で構成されている。熱硬化性樹脂は、通常、エポキシであるが、フェノール、シアネートエステル、ビスマレイミド(bismalmeidic)、又は他の熱硬化性ポリマーを含みうる。これら繊維の全てが、通常、ゼロ方向として知られている長手方向(ロール)に整列しており、従って、一方向プリプレグと呼ばれる。さもなければ、繊維は、いわゆる平織り又はあや織り(twill)パターンを含みうるがこれらに限定されない、異なる方向で共に織り上げることができ、これは、通常、織布(woven fabrics)と呼ばれる。プリプレグロールから、通常、成形する必要のある部品の特定の形状に従って、いくつかのより小さな部分が切断され、この部分の所望の形状、厚さ及び体積に到達するように、複数の層が、通常、互いに隣り合いかつ重畳するように配置される。また、ロール材料は、1つ又は数個の限定された材料配向しか有さず、その厚さを介して得られる各部品の配向が所望の堆積手順と呼ばれるものをもたらすので、これらの部品の各々の部品の配向は非常に重要である。この動作は、多少粗いものから極端に細かく詳細なものまであり、通常はネスティング動作と呼ばれる。所望の形状を達成するために、これらの小さな部分を互いに隣り合う複数の層及びサブセクションに配置することは、レイアップ(lay-up)動作と呼ばれる。ネスティング、堆積手順、及び、レイアップ手順は、全て、部品の性能に劇的な影響を及ぼす。次いで、プリプレグのレイアップは、通常、成形工具の内部に配置され、この成形工具は、通常、これに限定されるものではないが、硬化プロセスのための対応する金型又は片側非金型を含み、この硬化プロセスは、通常、常にではないが、加熱、真空及び圧力を加えて最終部品に変形させる。硬化プロセスは、オーブン、オートクレーブ(加圧オーブンの一種)、加熱プレスで行われるが、他の方法も同様に用いることができる。
【0066】
液体成形は、液体の熱硬化性樹脂を利用して、予備成形された層又は一連の層の乾燥繊維注入又は投入する、一群の複合加工技術である。注入又は投入は、金属製又は非金属製の、開放型又は対応する型のいずれかで行うことができる。熱硬化性樹脂は、通常、エポキシ樹脂である。予備成形された乾燥繊維層(単数又は複数)は、通常、プレフォームと呼ばれ、これは、複数のプロセスを通して得ることができ、この複数のプロセスは、これらに限定されないが、ブレイディング(braiding)、個々の平らな層の熱成形、細断及び噴霧、又は、プリプレグで行われたものと同様な、ネスティング、堆積手順、レイアップ動作を通した、乾燥繊維の個々の小さな部分の位置決めを含む。繊維は、連続(無限長)と不連続(有限長)の両方にしうる。乾式繊維プレフォームの配向、堆積及び成形は、部品の性能に劇的な影響を及ぼす。次いで、プレフォームは、通常、成形工具の内部に配置され、この成形工具は、これらに限定されるものではないが、対応する金型又は片側非金型を備え、投入又は注入プロセスを施し、これにより、液体樹脂混合物(例えば、樹脂、触媒、及び硬化剤)が、乾燥したプレフォーム全体を濡らし、乾燥したプレフォームの全体を包囲する。この注入又は投入は、真空のみで、高圧で、低圧で、また、真空と圧力の組み合わせで行うことができる。その時点で、硬化プロセスが開始し、通常、常にではないが、加熱、真空及び圧力を加えて、乾燥プレフォームの周りの液体の樹脂を固体の複合最終部品に変換する。硬化プロセスは、オーブン、オートクレーブ(加圧オーブンの一種)、加熱プレスで行われるが、他の方法も同様に用いることができる。様々な投入又は注入、硬化及び成形方法に基づいて、液体成形プロセスは、これらに限定されないが、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空支援樹脂トランスファー成形(VaRTM)、液体樹脂注入(LRI)、液体圧縮成形(LCM)、真空支援樹脂注入(VARI)などを含む様々なサブタイプのプロセスを含む。
【0067】
圧縮引張部品が圧縮負荷応力下で解析される時の第1の実施形態のさらなる態様において、接続部材の内部のほぼU字形の構造は圧縮引張応力切換点を備えない。圧縮引張部品が圧縮負荷応力下で解析される場合のさらなる態様において、接続部材12の長さの少なくとも80%は圧縮引張応力切換点を備えない。圧縮引張部品10が圧縮負荷応力下で解析される場合の他の実施形態において、接続部材12の長さの少なくとも82%、少なくとも85%、又は少なくとも90%が圧縮引張応力切換点を備えない。一実施形態において、圧縮負荷応力は、少なくとも1kN、少なくとも5kN、少なくとも7kN、少なくとも10kN、少なくとも15kN、少なくとも20kN、又は少なくとも25kNの圧縮又は引張負荷の結果としうる。一実施形態において、この圧縮負荷応力は、30kN以下、25kN以下、20kN以下、又は、15kN以下の圧縮又は引張負荷の結果としうる。
【0068】
1つの特定の実施形態において、第1の実施形態の圧縮引張部品10は、車両用のサスペンションアームである。車両用サスペンションアームは、接続部材内に少なくとも1つの連結ユニット又は取付ユニット18、20を備えることができ、更に別の態様において、少なくとも1つの連結ユニットは、締結装置を挿入するための空洞を備える。好ましくは、サスペンションアームの各端部は、
図3A~
図3Cに示されているように、連結ユニット18、20を有している。一実施形態において、接続部材12は、
図3A、
図3B及び
図4Jの断面に示されるような側部取付構造22を有しうる。他の実施形態において、又は異なる用語では、圧縮引張部品は、スタビライザバー、スウェイバー(sway bar)、スウェイバーリンク(sway bar link)、コントロールアーム、自動車のサスペンションアーム、又は、サスペンションアームアセンブリの一部として使用するか又は考慮することができる。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態によれば、接続部材がその長さを横切ってY等距離区間に分割される場合、圧縮又は引張解析の下での軸線方向応力は、Y区間の少なくとも50%を横切って、好ましくはY区間の少なくとも60%を横切って、より好ましくはY区間の少なくとも80%を横切って、理想的にはY区間の100%を横切って、接続部材の上面又は下面のいずれにおいても符号を変えない。
【0070】
例
本発明の方法を、
図1A~
図1Cに示すアルミニウム製サスペンションアームの置換に適用した。
図1Bは、本発明の一実施形態による、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の置換について研究された従来のアルミニウム製サスペンションアームの側面図を示し、
図1Cは、同じサスペンションアームの上面図を示す。
図2B~
図2Kは、
図2Aに示されるアルミニウム製サスペンションアームに沿った線2B~線2Kに対応する断面を示す。鍛造アルミニウム部品の質量は602gであった。
【0071】
図1A~
図1Cの鍛造アルミニウム部品などの従来の金属設計では、サスペンションアームは、目がある端部の近くで十字の形状(+)の断面を持つように設計されている。十字の形状の断面を
図2B、
図2C及び
図2Kに示す。サスペンションアームは、
図2D~
図2Hに示すように、中心に向かってT字形の断面(補剛された梁)に移行する。
【0072】
本研究において、発明者らは、同一形状のサスペンションアームを作るために鍛造アルミニウムをCFRPで直接置換することでおよそ半分の減量をもたらすことができるという結論に達した。しかしながら、結果として生じたCFRPアームは鍛造アルミニウムアームと比較して応力性能が劣っていて、従って自動車におけるアルミニウム製サスペンションアームの代替に使用できなかった。結果として生じたCFRPアームは、目標よりも低い負荷で故障し、所望の目標を満たさなかった。
【0073】
図1A~
図1C及び
図2A~
図2Kに記載された鍛造アルミニウム製サスペンションアーム用の置換の炭素繊維強化プラスチックの部品を準備するために、発明者は、その部品を構造上の制約内で再設計し、使用する材料を再評価した。これにより、応力ピークを低減し、サスペンションアームの長さに沿った応力分布を改善する設計を伴った。
【0074】
このように、構造の設計と材料を協調的に考慮することにより、元のアルミニウムユニットに置換するべく、適切なサスペンションアームを特定しかつ準備した。
【0075】
上記の説明は、当業者が本発明を使用することを可能にするために提示され、特定の用途及びその要件に照らして提供される。好ましい実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかになるであろうし、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で定義される一般的原理を他の実施形態及び用途に適用することもできる。したがって、本発明は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴に一致する最も広い範囲に従うものとする。この点に関し、本発明内の特定の実施形態は、広義には考慮される本発明の全ての利益を示すものではない。
【国際調査報告】