(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】IL-10を発現する複数ドナーCD4+T細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230727BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230727BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230727BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230727BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20230727BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230727BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230727BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230727BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230727BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230727BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230727BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230727BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230727BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230727BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230727BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230727BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230727BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230727BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230727BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230727BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20230727BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20230727BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20230727BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P37/06
A61K35/28
A61K35/14
A61P35/00
A61P7/00
A61P35/02
A61P29/00
A61P31/14
A61P43/00 105
A61P11/06
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P7/06
A61P9/00
A61P21/04
A61P5/14
A61P1/04
A61P25/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P27/02
A61P3/10
A61K35/76
C12N5/0783
C07K14/54
C12N15/867 Z
C12N15/19
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524485
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2021039464
(87)【国際公開番号】W WO2022006020
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】PCT/US2020/040372
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523000846
【氏名又は名称】ティーアール1エックス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ロンカロロ,マリア,グラツィア
(72)【発明者】
【氏名】デ フリーズ,ジャン,エグバート
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB65
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA55
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4C087ZA68
4C087ZA89
4C087ZA94
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4C087ZB08
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4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB33
4C087ZC06
4C087ZC35
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、少なくとも3人の異なるT細胞ドナー由来のCD4+T細胞を遺伝子改変することによって生成された複数ドナーCD4IL-10細胞の集団を提供する。さらに、複数ドナーCD4IL-10細胞を作製する方法、並びに免疫寛容化、GvHD、細胞及び臓器の移植、癌、並びに他の免疫障害の治療のために複数ドナーCD4IL-10細胞を使用する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変されているCD4
+T細胞の集団であって、前記CD4
+T細胞が少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られた、CD4
+T細胞の集団(複数ドナーCD4
IL-10細胞)。
【請求項2】
前記CD4
+T細胞が、3、4、5、6、7、8、9、又は10人の異なるT細胞ドナーから得られた、請求項1に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項3】
前記集団中の前記CD4
+T細胞が、全体で、6、7、8、9、10、11、12又はそれ以上の異なるHLAハプロタイプを有する、請求項1又は請求項2に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項4】
前記集団中のすべての前記CD4
+T細胞が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも、5/10、6/10、7/10、8/10、又は9/10の一致を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項5】
前記集団中のすべての前記CD4
+T細胞が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、互いに少なくとも、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8の一致を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項6】
前記集団中のすべての前記CD4
+T細胞が、HLA-A遺伝子座において、互いに2/2の一致を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項7】
前記集団中のすべての前記CD4
+T細胞が、HLA-B遺伝子座において、互いに2/2の一致を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項8】
前記集団中のすべての前記CD4
+T細胞が、HLA-C遺伝子座において、互いに2/2の一致を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項9】
前記集団中のすべての前記CD4
+T細胞が、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも3/4又は4/4の一致を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項10】
前記集団中のすべてのCD4
+T細胞が、A
*02対立遺伝子を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項11】
いずれのCD4
+T細胞も不死化されていない、請求項1から10のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項12】
前記外因性ポリヌクレオチドが、発現制御エレメントに作動可能に連結されたIL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項13】
前記IL-10がヒトIL-10である、請求項1から12のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項14】
前記IL-10がウイルスIL-10である、請求項1から13のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項15】
前記IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントが、配列番号1の配列を有するタンパク質をコードする、請求項1から14のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項16】
前記IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントが配列番号2の配列を有する、請求項15に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項17】
前記発現制御エレメントが、前記コードされたIL-10の構成的発現を駆動する、請求項12から16のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項18】
前記外因性ポリヌクレオチドが選択マーカーをコードする配列をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項19】
前記選択マーカーがΔNGFRである、請求項18に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項20】
前記ΔNGFRが配列番号3の配列を有する、請求項19に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項21】
前記外因性ポリヌクレオチドが配列番号4の配列を含む、請求項19に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項22】
前記選択マーカーが切断型EGFRポリペプチドである、請求項18に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項23】
前記外因性ポリヌクレオチドが配列番号5の配列を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項24】
前記外因性ポリヌクレオチドがT細胞核ゲノムに組み込まれている、請求項1から23のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項25】
前記外因性ポリヌクレオチドがT細胞核ゲノムに組み込まれていない、請求項1から23のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項26】
前記外因性ポリヌクレオチドがレンチウイルスベクター配列をさらに含む、請求項24又は25に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項27】
前記外因性ポリヌクレオチドがT細胞核ゲノムに組み込まれていない、請求項1から26のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項28】
前記集団内の前記CD4
+T細胞の少なくとも90%がIL-10を発現する、請求項1から27のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項29】
前記集団内の前記CD4
+T細胞の少なくとも95%がIL-10を発現する、請求項28に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項30】
前記集団内の前記CD4
+T細胞の少なくとも98%がIL-10を発現する、請求項29に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項31】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞が、CD4
+T細胞10
6個/培養培地1ml当たり、少なくとも100pgのIL-10を構成的に発現する、請求項1から30のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項32】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞が、CD4
+T細胞10
6個/ml当たり少なくとも100pg、200pg、500pg、1ng、5ng、10ng、又は50ngのIL-10を構成的に発現する、請求項31に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項33】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体による活性化後に、CD4
+T細胞10
6個/ml当たり少なくとも1ngのIL-10を発現する、請求項1から32のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項34】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞が、抗CD3抗体及び抗CD28抗体による活性化後に、CD4
+T細胞10
6個/ml当たり少なくとも2ng、5ng、10ng、100ng、200ng、又は500ngのIL-10を発現する、請求項33に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項35】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞が、非改変CD4
+T細胞よりも少なくとも5倍高いレベルでIL-10を発現する、請求項1から34のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項36】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞が、非改変CD4
+T細胞よりも少なくとも10倍高いレベルでIL-10を発現する、請求項35に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項37】
前記集団内の前記CD4
+T細胞の少なくとも90%が前記外因性ポリヌクレオチドから前記選択マーカーを発現する、請求項1から36のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項38】
前記集団内の前記CD4
+T細胞の少なくとも95%が前記外因性ポリヌクレオチドから前記選択マーカーを発現する、請求項37に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項39】
前記集団内の前記CD4
+T細胞の少なくとも98%が前記外因性ポリヌクレオチドから前記選択マーカーを発現する、請求項38に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項40】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がCD49bを発現する、請求項1から39のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項41】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がLAG-3を発現する、請求項1から40のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項42】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がTGF-βを発現する、請求項1から41のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項43】
遺伝子改変CD4
+T細胞がIFNγを発現する、請求項1から42のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項44】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がGzBを発現する、請求項1から43のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項45】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がパーフォリンを発現する、請求項1から44のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項46】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がCD18を発現する、請求項1から45のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項47】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がCD2を発現する、請求項1から46のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項48】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がCD226を発現する、請求項1から47のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項49】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞がIL-22を発現する、請求項1から48のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項50】
前記CD4
+T細胞が、宿主由来の末梢血単核細胞(PBMC)の存在下でアネルギー化されていない、請求項1から49のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項51】
前記CD4
+T細胞が組換えIL-10タンパク質の存在下でアネルギー化されておらず、前記組換えIL-10タンパク質が前記CD4
+T細胞から発現されない、請求項1から50のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項52】
前記CD4
+T細胞が宿主由来のDC10細胞の存在下でアネルギー化されていない、請求項1から51のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項53】
前記CD4
+T細胞が凍結懸濁液中にある、請求項1から52のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項54】
前記CD4
+T細胞が液体懸濁液中にある、請求項1から52のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項55】
前記液体懸濁液が事前に凍結されている、請求項54に記載のCD4
+T細胞の集団。
【請求項56】
(i)請求項1から55のいずれか一項に記載のCD4
+T細胞の集団であって、
(ii)薬学的に許容される担体に懸濁された
集団を含む医薬組成物。
【請求項57】
複数ドナーCD4
IL-10細胞を作製する方法であって、
(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られた初代CD4
+T細胞をプールする工程と、
(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって前記プールされたCD4
+T細胞を改変する工程と、を含み、
それによって前記複数ドナーCD4
IL-10細胞を得る、方法。
【請求項58】
複数ドナーCD4
IL-10細胞を作製する方法であって、
(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから初代CD4
+T細胞を得る工程と、
(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって各ドナーのCD4
+T細胞を別々に改変する工程と、次いで、
(iii)前記遺伝子改変CD4
+T細胞をプールし、それにより、前記複数ドナーCD4
IL-10細胞を得る工程と、を含む方法。
【請求項59】
工程(i)の後かつ工程(ii)の前に、又は工程(ii)の後に、又は工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、又は工程(iii)の後に、
前記初代CD4
+T細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又は抗CD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズの存在下でインキュベートする工程をさらに含む、請求項57又は請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記初代CD4
+T細胞をIL-2の存在下でさらにインキュベートする、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記外因性ポリヌクレオチドが、ウイルスベクターを使用して前記初代CD4
+T細胞に導入される、請求項57から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1の配列を有するIL-10をコードするセグメントを含む、請求項57から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントが配列番号2の配列を有する、請求項53から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記外因性ポリヌクレオチドが選択マーカーをコードするセグメントをさらに含む、請求項57から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記コードされた選択マーカーがΔNGFRである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記コードされた選択マーカーが配列番号3の配列を有する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
工程(ii)の後に、前記選択マーカーを発現する前記遺伝子改変CD4
+T細胞を単離し、それにより遺伝子改変CD4
+T細胞の濃縮された集団を生成する工程をさらに含む、請求項65から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記濃縮された集団中の前記遺伝子改変CD4
+T細胞の少なくとも90%又は少なくとも95%がIL-10を発現する、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記濃縮された集団中の前記遺伝子改変CD4
+T細胞の少なくとも98%がIL-10を発現する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記濃縮された集団中の前記遺伝子改変CD4
+T細胞の少なくとも90%又は少なくとも95%が前記選択マーカーを発現する、請求項68から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記濃縮された集団中の前記遺伝子改変CD4
+T細胞の少なくとも98%が前記選択マーカーを発現する、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞の濃縮された集団をインキュベートする工程をさらに含む、請求項68から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞の濃縮された集団をインキュベートする工程は、IL-2の存在下、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又はCD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズの存在下で行われる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記遺伝子改変CD4
+T細胞を凍結する後続する工程をさらに含む、請求項57から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
工程(i)において、前記初代CD4
+T細胞が、3、4、5、6、7、8、9又は10人の異なるT細胞ドナーから得られる、請求項57から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーが、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも、5/10、6/10、7/10、8/10又は9/10の一致を有する、請求項76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーが、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、互いに少なくとも、4/8、5/8、6/8、7/8又は8/8の一致を有する、請求項57から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーが、HLA-A遺伝子座において互いに2/2の一致を有する、請求項57から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーが、HLA-B遺伝子座において互いに2/2の一致を有する、請求項57から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーが、HLA-C遺伝子座において互いに2/2の一致を有する、請求項57から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーが、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも3/4又は4/4の一致を有する、請求項57から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記少なくとも3人のT細胞ドナーの各々がA
*02対立遺伝子を有する、請求項57から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
工程(i)において、前記初代CD4
+T細胞が1つ又はそれ以上の凍結ストックから得られる、請求項57から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
工程(i)において、前記初代CD4
+T細胞が、前記少なくとも3人の異なるT細胞ドナーの非凍結末梢血単核細胞から得られる、請求項57から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記末梢血単核細胞からCD4
+T細胞を単離する工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
患者を治療する方法であって、
請求項1から55のいずれか一項に記載の複数ドナーCD4
IL-10細胞又は請求項56に記載の医薬組成物を、免疫寛容化を必要とする患者に投与する工程を含む方法。
【請求項88】
複数ドナーCD4
IL-10細胞の凍結懸濁液を解凍する先行する工程をさらに含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物が、前記患者における病原性T細胞応答の重症度を予防又は軽減する、請求項87又は88に記載の方法。
【請求項90】
単核細胞を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項87から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物と、前記単核細胞とが同時に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記単核細胞が、前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記プールされたドナーCD4
IL-10細胞又は医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに、前記患者にHSCドナーの造血幹細胞(HSC)を投与する工程
をさらに含む、請求項87から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記HSCドナーが、前記患者に対して部分的にHLA不一致である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記HSCドナーが、前記患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記HSCドナーが、前記患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8、5/8、6/8、7/8又は8/8未満の一致を有する、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記HSCドナーが、前記患者に対して、HLA-A、HLA-B又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記HSCドナーが、前記患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において3/4未満又は4/4未満の一致を有する、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記患者に対してHLA不一致又は部分的にHLA不一致である、請求項87から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8、5/8、6/8、7/8又は8/8未満の一致を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記患者に対して、HLA-A、HLA-B又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、2/4、3/4又は4/4未満の一致を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記HSCドナーに対して、HLA不一致又は部分的HLA不一致である、請求項87から103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8、5/8、6/8、7/8又は8/8未満の一致を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
1又はそれ以上の前記T細胞ドナーが、前記HSCドナーに対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、3/4又は4/4未満の一致を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物が、前記移植された造血幹細胞によるGvHDの重症度を予防又は軽減する、請求項79から108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物が、前記移植された造血細胞由来のリンパ球系細胞の病原性応答の重症度を防止又は軽減する、請求項93から109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記患者が新生物細胞を有する、請求項87から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記新生物細胞が、CD13、HLA-クラスI及びCD54を発現する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記新生物細胞が、CD112、CD58又はCD155を発現する、請求項111から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記患者が癌を有し、任意選択で前記癌が固形又は血液新生物である、請求項111から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記患者が、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、成人の脳/CNS腫瘍、小児の脳/CNS腫瘍、乳癌、男性の乳癌、原発不明の癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性栄養膜疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び低咽頭癌、白血病、急性リンパ球性(ALL)、急性骨髄(骨髄性肉腫及び皮膚白血病を含むAML)、慢性リンパ球性(CLL)、慢性骨髄(CML)白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、小児の白血病、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、小児の非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫-成人軟部組織癌、皮膚癌、皮膚癌-基底細胞及び扁平細胞、皮膚癌-黒色腫、皮膚癌-メルケル細胞、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍からなる群から選択される癌を有する、請求項87から114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記患者が骨髄性癌を有する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記患者がAML又はCMLを有する、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記患者が炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する、請求項87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記炎症性又は自己免疫性疾患が、1型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性狼瘡、炎症性腸疾患、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎、悪性貧血、潰瘍性大腸炎、水疱性疾患、強皮症、及びセリアック病からなる群から選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記炎症性又は自己免疫性疾患が、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、1型糖尿病、狼瘡、乾癬、乾癬性関節炎、又は関節リウマチである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記患者が、NLPR3インフラマソームの超活性を伴う疾患又は障害を有する、請求項87から113又は118から120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記患者が、2型糖尿病、神経変性疾患、心血管疾患又は炎症性腸疾患を有する、請求項87から113又は118から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記患者が、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-1β産生の増加を伴う疾患又は障害を有する、請求項87から113又は118から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記患者が、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-18産生の増加を伴う疾患又は障害を有する、請求項87から113又は118から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記患者が、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞による成熟カスパーゼ1産生の増加を伴う疾患又は障害を有する、請求項87から113又は118から121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記患者がアレルギー性又はアトピー性疾患を有する、請求項87から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記アレルギー性又はアトピー性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎及び鼻炎からなる群から選択される、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記患者が食物アレルギーを有する、請求項87から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記CD4
+T細胞の集団又は前記医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに、前記患者への臓器移植の工程をさらに含む、請求項87から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物が、前記臓器移植の宿主拒絶の重症度を予防又は軽減する、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記CD4
+T細胞の集団又は前記医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに、iPS細胞由来の細胞又は組織を前記患者に移植する工程をさらに含む、請求項87から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物が、前記細胞移植の宿主拒絶の重症度を防止又は軽減する、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物の投与前又は投与後に、組換えAAVを前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項87から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞又は前記医薬組成物が、前記組換えAAVに対する免疫応答を低下させる、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記患者が、ウイルス感染又は細菌感染に対して過剰な免疫応答を有する、請求項87から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記患者がコロナウイルス感染症を有する、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記患者から得られた生物学的試料において選択マーカーを検出し、
それにより、複数ドナーCD4
IL-10T細胞の有無を検出する工程をさらに含む、請求項87から136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記生物学的試料が、前記患者由来の生検材料又は血液である、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
悪性腫瘍を有する患者を治療する方法であって、
同種HSCT移植片を前記患者に投与する工程と、
治療有効量の複数ドナーCD4
IL-10細胞を投与する工程とを含む方法。
【請求項140】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞の前記CD4
IL-10細胞のドナーのいずれも前記HSCT移植片のドナーではない、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
血液癌を治療する方法であって、
抗癌効果を誘導するのに十分な量の複数ドナーCD4
IL-10細胞を血液癌患者に投与する工程を含み、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られ、及び構成的プロモーターの制御下でヒトIL-10のコード配列のベクター媒介遺伝子導入によって遺伝子改変されたCD4
+T細胞を含む、方法。
【請求項142】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞の投与の前又は後に、同種HSCT移植片を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞の量が、同種HSCTの移植片対白血病(GvL)又は移植片対腫瘍(GvT)の効力を抑制することなく移植片対宿主病(GvHD)を抑制するのにさらに十分な量である、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記血液癌が骨髄性白血病である、請求項141から143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、CD13を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる、請求項141から142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、HLA-クラスIを発現する癌細胞を標的化し、死滅させる、請求項141から145のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記骨髄性白血病が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項141から146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記同種HSCT移植片が、前記レシピエントに対して血縁又は非血縁のドナーから得られる、請求項141から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記レシピエントにとって非自己である、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
前記複数ドナーCD4IL-10細胞が、前記レシピエントに対して同種である、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記宿主へ投与する前に宿主の同種抗原に対してアネルギー化されていない、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞がTr1様細胞である、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞がポリクローナルである、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞がポリクローナルであり、前記レシピエントにとって非自己である、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、少なくとも3人のドナーから単離された後に遺伝子改変される、請求項141から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記少なくとも3人のドナーのいずれも、前記同種HSCTドナーと同じドナーではない、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記同種HSCT移植片が、前記レシピエントに対して一致又は不一致のドナーから得られる、請求項141から156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、CD54を発現する細胞を標的化し、死滅させる、請求項141から157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、HLA-クラスI及びCD54を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる、請求項141から158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、CD112を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる、請求項141から159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、CD58を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる、請求項141から160のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記宿主中の癌細胞を標的化し、死滅させる、請求項141~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
同種造血幹細胞移植(同種HSCT)によって血液癌を治療する方法であって、
対象(宿主)へ同種HSCT移植片を投与する工程と、
前記同種HSCT移植片の移植片対白血病(GvL)又は移植片対腫瘍(GvT)の効力を抑制することなく移植片対宿主病(GvHD)を抑制するのに十分な量の複数ドナーCD4
IL-10細胞を前記同種HSCTのレシピエント(宿主)に投与する工程と、を含み、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、少なくとも3名の異なるT細胞ドナーから得られ、構成的プロモーターの制御下でヒトIL-10のコード配列のベクター媒介性遺伝子導入によって遺伝子改変されたCD4
+T細胞を含み、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記レシピエントにとって非自己であり、前記同種HSCTドナーにとって非自己であり、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記宿主へ投与する前に宿主の同種抗原に対してアネルギー化されておらず、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞がポリクローナル及びTr1様である、方法。
【請求項164】
同種造血幹細胞移植(同種HSCT)によって血液癌を治療する方法であって、
対象(宿主)へ同種HSCT移植片を投与する工程と、
前記同種HSCT移植片の移植片対白血病(GvL)又は移植片対腫瘍(GvT)の効力を抑制することなく移植片対宿主病(GvHD)を抑制するのに十分な量の複数ドナーCD4
IL-10細胞を前記同種HSCTのレシピエント(宿主)に投与する工程と、を含み、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、少なくとも3名の異なるT細胞ドナーから得られ、構成的プロモーターの制御下でヒトIL-10のコード配列のベクター媒介性遺伝子導入によって遺伝子改変されたCD4
+T細胞を含み、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記宿主中の癌細胞を標的化し、死滅させ、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記宿主へ投与する前に宿主の同種抗原に対してアネルギー化されておらず、
前記複数ドナーCD4
IL-10細胞が、前記レシピエントにとって非自己であり、ポリクローナルであり、Tr1様である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月30日に出願されたPCT出願であるPCT/US2020/040372号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.配列表
本出願は、5つの配列を有する配列表を含む。
【背景技術】
【0003】
3.背景
制御性T細胞は、自己抗原及び非病原性抗原に対する免疫寛容を維持し、免疫恒常性を維持するT細胞の小さいが重要なサブセットに属する。制御性T細胞の2つの主要な集団-CD4+、Foxp3+CD25+T細胞(Foxp3+細胞)及び1型制御性T(Tr1)細胞が存在する。Foxp3+及びTr1細胞の両方が、臓器及び膵島移植、GvHD、並びに種々の自己免疫疾患及び炎症性疾患の種々の前臨床モデルにおいて病原性T細胞応答を下方制御する。
【0004】
Tr1細胞は、臨床研究において有効であることが分かっている。クローン化された抗原特異的な自己Tr1細胞を進行中の中等度から重度のクローン病を有する患者に投与すると、客観的な一時的寛解がもたらされた(Desreumaux et al.,Gastroenterology.2012;143(5):1207-1217.e2.)。
さらに、同種HSCT後の白血病患者へのTr1細胞が濃縮されたドナー由来の自己特異的CD4+T細胞集団の養子移入は、重度のGvHDを伴うことなく、免疫系の迅速な再構成、並びに微生物感染及びウイルス感染に対する防御をもたらした。奏効した患者では、治癒をもたらす長期寛解及び耐性(7年超)が達成された(Bacchetta et al.,Front Immunol.2014;5:16)。
【0005】
これらの有望な結果にもかかわらず、満たされていない医療ニーズが高い患者の大規模治療のためのドナー由来又は自己Tr1細胞の産生は、常に実現可能であるとは限らず、非常に面倒であり、大量の純粋なTr1細胞の生成も可能にしない。
【0006】
最近、Locafaroらは、ヒトIL-10遺伝子を含有する双方向レンチウイルスベクターを用いて、単一のドナーからの精製CD4+T細胞を形質導入することによって、これらの問題のいくつかを回避した。得られた単一ドナーCD4IL-10集団は、天然に存在するTr1細胞の主要な機能を共有していた。Tr1細胞と同様に、単一ドナーCD4IL-10細胞は高レベルのIL-10を産生し、同種CD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方の増殖を下方制御する。さらに、それらは、正常な骨髄性細胞(抗原提示細胞、APCなど)及び骨髄性白血病細胞の両方に対して細胞傷害性である。これらの単一ドナーCD4IL-10細胞は、移植片対白血病(GvL)活性を保持しながら、ヒト化異種GvHDモデルにおいてGvHDを減少させるのに有効であることが示された。Locafaro et al.Mol Ther.2017;25(10):2254-2269及び国際公開第2016/146,542号を参照されたい。
【0007】
治療的使用のための高度に精製された単一ドナーCD4IL-10細胞を産生することは可能であるが、様々な個々のバッチ間の定性的及び定量的差異のために依然として重大な制限があり、これはバフィーコートの質の変動に加えて様々なドナー間の固有の差異に関連する可能性が最も高い。
【発明の概要】
【0008】
4.概要
本開示は、複数ドナーCD4IL-10細胞の集団を使用する新しいTr1ベースの治療を提供する。複数ドナーCD4IL-10細胞は、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られ、次いでIL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変されたCD4+T細胞を指す。T細胞ドナーは、複数ドナーCD4IL-10細胞で治療される宿主でも、HSC又は臓器移植ドナーでもない第三者のドナーである。複数ドナーCD4IL-10細胞は、同種抗原特異的ではなく、換言すれば、投与前に宿主由来の細胞でプライミング又は刺激されていない。
【0009】
本出願人は、複数ドナーCD4IL-10細胞が、単一ドナーCD4IL-10細胞のそれに匹敵するサイトカイン産生プロフィール、免疫抑制能及び細胞傷害能を有することを実証した。さらに、インビボでは、それらは単独ドナーCD4IL-10細胞よりもCD4+T細胞によって媒介される異種GvHDを予防するのにより有効であるが、それらは単独ではGvHDを誘導しない。全体として、これらの複数ドナーCD4IL-10細胞の機能的特性は、インビトロ及びインビボの両方で、単一ドナーCD4IL-10細胞の機能的特性と同等か又はそれより良好であった。
【0010】
これらの結果に基づいて、本出願人は、複数ドナー同種CD4IL-10細胞が、GvHD、細胞及び臓器移植、自己免疫疾患及び炎症性疾患における治療目的のために使用され得ることを主張する。
【0011】
さらに、第三者のT細胞を使用し、自己特異性の必要性を排除することによって、複数ドナーCD4IL-10細胞は、Tr1ベースの細胞療法を様々な遺伝的背景を有する患者のより大きな集団に利用可能にする。
【0012】
したがって、本開示は、IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変されたCD4+T細胞の集団であって、当該CD4+T細胞が、少なくとも3人の異なるT細胞ドナー(複数ドナーCD4IL-10細胞)から得られた細胞である、集団を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、3、4、5、6、7、8、9、又は10人の異なるT細胞ドナーから得られたものである。いくつかの実施形態では、集団中のCD4+T細胞は、全体で、6、7、8、9、10、11、12、又はそれ以上の異なるHLAハプロタイプを有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも、5/10、6/10、7/10、8/10、又は9/10の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、互いに少なくとも、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-A遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-B遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-C遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において互いに少なくとも3/4又は4/4の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、A*02対立遺伝子を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、CD4+T細胞のいずれも不死化されない。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、発現制御エレメントに作動可能に連結される、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、IL-10はヒトIL-10である。いくつかの実施形態では、IL-10はウイルスIL-10である。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号1の配列を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号2の配列を有する。いくつかの実施形態では、発現制御エレメントは、コードされたIL-10の構成的発現を駆動する。いくつかの実施形態では、発現制御エレメントは活性化CD4+T細胞におけるIL-10の発現を駆動する。いくつかの実施形態では、発現制御エレメントは組織特異的又はCD4+T細胞特異的発現を駆動する。
【0016】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、選択マーカーをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーはΔNGFRである。いくつかの実施形態では、ΔNGFRは、配列番号3の配列を有する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号4の配列を含む。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは配列番号5の配列を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、選択マーカーは、切断型EGFRポリペプチドである。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、切断型ヒトEGFRポリペプチドである。
【0018】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、T細胞核ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドはT細胞核ゲノムに組み込まれない。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドはT細胞核ゲノムに組み込まれない。
【0019】
いくつかの実施形態では、集団内のCD4+T細胞の少なくとも90%がIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、集団内のCD4+T細胞の少なくとも95%がIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、集団内のCD4+T細胞の少なくとも98%がIL-10を発現する。
【0020】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞は、CD4+T細胞106個/培養培地1ml当たり、少なくとも100pgのIL-10を構成的に発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞は、CD4+T細胞106個/ml当たり、少なくとも200pg、500pg、1ng、5ng、10ng、又は50ngのIL-10を構成的に発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で活性化した後、CD4+T細胞106個/ml当たり、少なくとも1又は2ngのIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で活性化した後、CD4+T細胞106個/ml当たり、少なくとも2ng、5ng、10ng、100ng、200ng、又は500ngのIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞は、非改変CD4+T細胞よりも少なくとも5倍高いレベルでIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞は、非改変CD4+T細胞よりも少なくとも10倍高いレベルでIL-10を発現する。
【0021】
いくつかの実施形態では、集団内のCD4+T細胞の少なくとも90%が外因性ポリヌクレオチドから選択マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、集団内のCD4+T細胞の少なくとも95%が外因性ポリヌクレオチドから選択マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、集団内のCD4+T細胞の少なくとも98%が外因性ポリヌクレオチドから選択マーカーを発現する。
【0022】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はCD49bを発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はLAG-3を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はTGF-βを発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はIFNγを発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はGzBを発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はパーフォリンを発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はCD18を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はCD2を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はCD226を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞はIL-22を発現する。
【0023】
いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、宿主由来の末梢血単核細胞(PBMC)の存在下でアネルギー化されていない。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、組換えIL-10タンパク質の存在下でアネルギー化されておらず、組換えIL-10タンパク質はCD4+T細胞から発現されない。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、宿主由来のDC10細胞の存在下でアネルギー化されていない。
【0024】
いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は凍結懸濁液中にある。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は液体懸濁液中にある。いくつかの実施形態では、液体懸濁液は予め凍結されている。
【0025】
本開示の別の態様では、
(i)上記請求項のいずれか一項に記載のCD4+T細胞の集団であって、
(ii)薬学的に許容される担体に懸濁された
集団を含む医薬組成物が提供される。
【0026】
さらに別の態様では、本開示は、複数ドナーCD4IL-10細胞を作製する方法であって、
(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られた初代CD4+T細胞をプールする工程と、
(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによってプールされたCD4+T細胞を改変する工程と、を含み、
それによって遺伝子改変CD4+T細胞を得る、方法。
【0027】
一態様では、本開示は、複数ドナーCD4IL-10細胞を作製する方法であって、
(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから初代CD4+T細胞を得る工程と、
(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって各ドナーのCD4+T細胞を別々に改変する工程と、次いで
(iii)遺伝子改変CD4+T細胞をプールし、それによって遺伝子改変CD4+T細胞を得る工程と、
を含む方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(i)の後かつ工程(ii)の前に、又は工程(ii)の後に、又は工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、又は工程(iii)の後に、
初代CD4+T細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又は抗CD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズの存在下でインキュベートする工程をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、IL-2の存在下で、さらに初代CD4+T細胞をインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターを使用して初代CD4+T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1の配列を有するIL-10をコードするセグメントを含む。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号2の配列を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、選択マーカーをコードするセグメントをさらに含む。いくつかの実施形態では、コードされた選択マーカーはΔNGFRである。いくつかの実施形態では、コードされた選択マーカーは、配列番号3の配列を有する。いくつかの実施形態では、コードされる選択マーカーは、切断型EGFRポリペプチドである。いくつかの実施形態では、コードされる選択マーカーは、切断型ヒトEGFRポリペプチドである。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(ii)の後に、
選択マーカーを発現する遺伝子改変CD4+T細胞を単離し、それにより遺伝子改変CD4+T細胞の濃縮された集団を生成する工程をさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも90%又は少なくとも95%がIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも98%がIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも90%又は少なくとも95%が選択マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも98%が選択マーカーを発現する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、遺伝子改変CD4+T細胞の濃縮された集団をインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変CD4+T細胞の濃縮された集団をインキュベートする工程は、IL-2の存在下、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又はCD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズの存在下で行われる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、遺伝子改変CD4+T細胞を凍結する後続する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は、3、4、5、6、7、8、9、又は10人の異なるT細胞ドナーから得られる。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも、5/10、6/10、7/10、8/10、又は9/10の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、互いに少なくとも、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-A遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-B遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-C遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において互いに少なくとも3/4又は4/4一致する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーの各々は、A*02対立遺伝子を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は、1つ又はそれ以上の凍結ストックから得られる。いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーの非凍結末梢血単核細胞から得られる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本方法は、末梢血単核細胞からCD4+T細胞を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、末梢血単核細胞はバフィーコート又はアフェレーシスから得られる。
【0037】
別の態様では、本開示は、患者を治療する方法であって、
本開示の複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物を、免疫寛容を必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数ドナーCD4IL-10細胞の凍結懸濁液を解凍する先行する工程をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、患者における病原性T細胞応答の重症度を予防又は軽減する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本方法は、造血幹細胞(HSC)ドナー由来の単核細胞を患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物及びHSCドナー由来の単核細胞を同時に投与する。いくつかの実施形態では、HSCからの単核細胞は、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに投与される。いくつかの実施形態では、単核細胞はPBMC中にあるものである。いくつかの実施形態では、単核細胞は骨髄中にあるものである。いくつかの実施形態では、単核細胞は臍帯血中にあるものである。いくつかの実施形態では、単核細胞は、PBMC、骨髄又は臍帯血から単離されたものである。
【0041】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに、HSCドナーの造血幹細胞(HSC)を患者に投与する工程をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10未満、6/10未満、7/10未満、8/10未満、9/10未満又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8未満、5/8未満、6/8未満、7/8未満又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、3/4未満又は4/4未満の一致を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA不一致又は部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8未満、5/8未満、6/8未満、7/8未満又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、2/4未満、3/4未満又は4/4未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーとHLA不一致又は部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において3/4又は4/4未満の一致を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、移植された造血幹細胞によるGvHDの重症度を予防又は軽減する。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、移植された造血幹細胞由来のリンパ系細胞の病原性応答の重症度を予防又は軽減する。
【0046】
いくつかの実施形態では、患者は癌を有する。いくつかの実施形態では、患者は新生物細胞を有する。いくつかの実施形態では、新生物細胞は、CD13、HLA-クラスI及びCD54を発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞は、CD112、CD58又はCD155を発現する。
【0047】
いくつかの実施形態では、患者は癌を有する。いくつかの実施形態では、癌は、固形又は血液新生物である。いくつかの実施形態では、患者は、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、成人の脳/CNS腫瘍、小児の脳/CNS腫瘍、乳癌、男性の乳癌、原発不明の癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性栄養膜疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び低咽頭癌、白血病、急性リンパ球性(ALL)、急性骨髄(骨髄性肉腫及び皮膚白血病を含むAML)、慢性リンパ球性(CLL)、慢性骨髄(CML)白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、小児の白血病、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、小児の非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫-成人軟部組織癌、皮膚癌、皮膚癌-基底細胞及び扁平細胞、皮膚癌-黒色腫、皮膚癌-メルケル細胞、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍からなる群から選択される癌を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、癌は骨髄性癌である。いくつかの実施形態では、癌はAML又はCMLである。
【0049】
いくつかの実施形態では、患者は、炎症性疾患又は自己免疫疾患を有する。いくつかの実施形態では、炎症性又は自己免疫性疾患は、1型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性狼瘡、炎症性腸疾患、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎、悪性貧血、潰瘍性大腸炎、水疱性疾患、強皮症、及びセリアック病からなる群から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、炎症性又は自己免疫性疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、1型糖尿病、狼瘡、乾癬、乾癬性関節炎、又は関節リウマチである。
【0051】
いくつかの実施形態では、患者は、NLPR3インフラマソームの超活性を伴う疾患又は障害を有する。いくつかの実施形態では、患者は、2型糖尿病、神経変性疾患又は炎症性腸疾患を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、患者は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-1β産生の増加を伴う疾患又は障害を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、患者は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-18産生の増加を伴う疾患又は障害を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、患者は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞による成熟カスパーゼ1産生の増加を伴う疾患又は障害を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、患者は、アレルギー性又はアトピー性疾患を有する。いくつかの実施形態では、アレルギー性又はアトピー性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎及び鼻炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、患者は食物アレルギーを有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本方法は、CD4+T細胞の集団又は医薬組成物の投与の前又は後のいずれかに、患者へ細胞及び臓器を移植する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、細胞及び臓器移植の宿主拒絶の重症度を予防又は軽減する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本方法は、CD4+T細胞の集団又は医薬組成物の投与の前又は後に、iPS細胞由来の細胞又は組織を患者に移植する工程をさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、移植の宿主拒絶の重症度を予防又は軽減する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物の投与前又は投与後に、組換えAAVを患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、組換えAAVに対する免疫応答を低下させる。
【0060】
いくつかの実施形態では、患者は、ウイルス感染又は細菌感染に対する過剰な免疫応答を有する。いくつかの実施形態では、患者は、コロナウイルス感染症を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者から得られた生物学的試料において選択マーカーを検出し、それにより、複数ドナーCD4IL-10T細胞の有無を検出する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は患者由来の生検試料又は血液である。
【0062】
一態様では、本開示は、悪性腫瘍を有する患者を治療する方法であって、同種HSCT移植片を患者に投与する工程と、治療有効量の複数ドナーCD4IL-10細胞を投与する工程とを含む方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞のCD4IL-10細胞のドナーのいずれも、HSCT移植片のドナーではない。
【0064】
別の態様では、本開示は、血液癌を治療する方法であって、抗癌効果を誘導するのに十分な量の複数ドナーCD4IL-10細胞を血液癌患者に投与する工程を含み、複数ドナーCD4IL-10細胞が、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られ、次いで構成的プロモーターの制御下でヒトIL-10のコード配列のベクター媒介遺伝子導入によって遺伝子改変されたCD4+T細胞を含む、方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数ドナーCD4IL-10細胞の投与に先立って、又はその後に患者に同種HSCT移植片を投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞の量は、同種HSCTの移植片対白血病(GvL)又は移植片対腫瘍(GvT)の効力を抑制することなく移植片対宿主病(GvHD)を抑制するのにさらに十分な量である。
【0066】
いくつかの実施形態では、血液癌が骨髄性白血病である。
【0067】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、CD13を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、HLA-クラスIを発現する癌細胞を標的化し、死滅させる。いくつかの実施形態では、骨髄性白血病は急性骨髄性白血病(AML)である。
【0068】
いくつかの実施形態では、同種HSCT移植片は、レシピエントの血縁ドナー又は非血縁ドナーから得られる。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、レシピエントにとって非自己である。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、レシピエントに対して同種である。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、宿主へ投与する前に宿主の同種抗原に対してアネルギー化されない。
【0069】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞はTr1様細胞である。
【0070】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞はポリクローナルである。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、ポリクローナルであり、レシピエントにとって非自己である。
【0071】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、少なくとも3人のドナーから単離された後に遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のドナーのいずれも、同種HSCTドナーと同じドナーではない。いくつかの実施形態では、同種HSCT移植片は、レシピエントに対して一致するドナー又は不一致のドナーから得られる。
【0072】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、CD54を発現する細胞を標的化し、死滅させる。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、HLA-クラスI及びCD54を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、CD112を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、CD58を発現する癌細胞を標的化し、死滅させる。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、宿主中の癌細胞を標的化し、死滅させる。
【0073】
本開示の一態様は、同種造血幹細胞移植(同種HSCT)によって血液癌を治療する方法であって、
対象(宿主)へ同種HSCT移植片を投与する工程と、
同種HSCT移植片の移植片対白血病(GvL)又は移植片対腫瘍(GvT)の効力を抑制することなく移植片対宿主病(GvHD)を抑制するのに十分な量の複数ドナーCD4IL-10細胞を同種HSCTのレシピエント(宿主)に投与する工程と、を含み、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、少なくとも3名の異なるT細胞ドナーから得られ、構成的プロモーターの制御下でヒトIL-10のコード配列のベクター媒介性遺伝子導入によって遺伝子改変されたCD4+T細胞を含み、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、レシピエントにとって非自己であり、同種HSCTドナーにとって非自己であり、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、宿主へ投与する前に宿主の同種抗原に対してアネルギー化されておらず、
複数ドナーCD4IL-10細胞がポリクローナル及びTr1様である、方法を提供する。
【0074】
本開示の他の態様は、同種造血幹細胞移植(同種HSCT)によって血液癌を治療する方法であって、
対象(宿主)へ同種HSCT移植片を投与する工程と、
同種HSCT移植片の移植片対白血病(GvL)又は移植片対腫瘍(GvT)の効力を抑制することなく移植片対宿主病(GvHD)を抑制するのに十分な量の複数ドナーCD4IL-10細胞を同種HSCTのレシピエント(宿主)に投与する工程と、を含み、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、少なくとも3名の異なるT細胞ドナーから得られ、構成的プロモーターの制御下でヒトIL-10のコード配列のベクター媒介性遺伝子導入によって遺伝子改変されたCD4+T細胞を含み、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、宿主中の癌細胞を標的化し、死滅させ、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、宿主へ投与する前に宿主の同種抗原に対してアネルギー化されておらず、
複数ドナーCD4IL-10細胞が、レシピエントにとって非自己であり、ポリクローナルであり、Tr1様である、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
5.図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、ヒトIL-10及びΔNGFRコード配列を複数のドナー由来のCD4
+T細胞に送達して複数ドナーCD4
IL-10細胞を産生するための双方向レンチウイルスベクターの部分構造を示す。
【
図2】
図2は、ヒトIL-10及びΔNGFRコード配列を複数のドナーからCD4
+T細胞に送達して複数ドナーCD4
IL-10細胞を産生するための双方向レンチウイルスベクター(hPGK.IL10.WPRE.mhCMV.ΔNGFR.SV40PA)の完全かつ環状の構造を示す。
【
図3】
図3は、CD4
IL-10細胞を作製するための例示的なプロトコルを示す。
【
図4A】
図4Aは、LV-IL-10/ΔNGFR(ヒトIL-10及び切断型ヒトNGF受容体をコードする双方向レンチウイルスベクター)で形質導入されたヒトCD4
+T細胞におけるCD4
+ΔNGFR+細胞(平均±SD、n=10、灰色バー)及びベクターのコピー数(VCN、平均±SD、n=10、オレンジ色のバー)のパーセンテージを示す。
【
図4B】
図4Bは、LV-IL-10/ΔNGFRで形質導入され、抗CD271マイクロビーズを使用して精製された2人の代表的なドナー(ドナーB及びドナーC)由来のヒトCD4
+T細胞におけるCD4及びΔNGFRの発現のFACS分析を示す。
【
図5】
図5は、2回目(TF2)及び3回目(TF3)の再刺激後の単一ドナーCD4
IL-10細胞のサイトカイン産生プロファイルを示す。TF2細胞及びTF3CD4
IL-10細胞を刺激せずに放置した(オレンジ色のバー)、又は固定化抗CD3及び可溶性抗CD28mAb(灰色のバー)で48時間刺激した。培養上清を回収し、IL-10、IL-4、IL-5、IFN-γ及びIL-22のレベルをELISAで測定した。すべての試料を3連で試験した。平均±SD、試験したドナー(n=8)を示す。
【
図6】
図6Aは、FACSによって分析された2回目の刺激(TF2)後のグランザイムB(GzB)を発現するCD4
IL-10細胞のパーセンテージを示す。ドナー(n=7)及び単一ドナーのボックス及びウィスカーを示す。
図6Bは、CD4
IL-10細胞(10
5/ウェル)をK562及びALL-CM細胞(10
5/ウェル)と1:1の比で3日間共培養した場合の死細胞%を示す。ボックス及びウィスカーはn=4のドナーのデータを表し、点は単一のドナーのデータを表す。
【
図7A】
図7A及び
図7Bは、単一ドナーCD4
IL-10細胞が同種CD4
+T細胞の増殖を抑制し得ることを示す。同種PBMC細胞をeFluor(登録商標)670(10
5細胞/ウェル)で標識し、CD4
IL-10細胞の非存在下又は存在下(10
5細胞/ウェル)、1:1のレスポンダー:サプレッサー比で同種成熟樹状(DC)細胞(5×10
4細胞/ウェル)及び可溶性抗CD3mAbで刺激した。4日間の培養後、CD4
+ΔNGFR
-T細胞でゲーティングしてから、フローサイトメトリーを用いてeFluor(登録商標)670希釈によって増殖応答細胞の割合を求めた。
図7Aは、ドナーC、ドナーE及びドナーFの結果を示し、
図7Bは、ドナーH、ドナーI及びドナーLの結果を示す。増殖及び抑制の割合を示す。CD4
IL-10細胞によって媒介される抑制を以下のように計算した:100-([CD4
IL-10細胞の存在下での応答細胞の増殖/応答細胞単独での増殖]×100)。
【
図8A】
図8A及び
図8Bは、単一ドナーCD4
IL-10細胞が同種CD8
+T細胞の増殖を抑制し得ることを示す。同種PBMC細胞をeFluor(登録商標)670(10
5細胞/ウェル)で標識し、CD4
IL-10細胞の非存在下又は存在下(10
5細胞/ウェル)、1:1のレスポンダー:サプレッサー比で同種成熟樹状(DC)細胞(5×10
4細胞/ウェル)及び可溶性抗CD3mAbで刺激した。4日間の培養後、CD4
+ΔNGFR
-T細胞でゲーティングしてから、フローサイトメトリーを用いてeFluor(登録商標)670希釈によって増殖応答細胞の割合を求めた。
図8Aは、ドナーC、ドナーE及びドナーFの結果を示し、
図8Bは、ドナーH、ドナーI及びドナーLの結果を示す。増殖及び抑制の割合を示す。CD4
IL-10細胞によって媒介される抑制を以下のように計算した:100-([CD4
IL-10細胞の存在下での応答細胞の増殖/応答細胞単独での増殖]×100)。
【
図9】
図9は、8名の個々のドナー由来のCD4
IL-10細胞によって産生される平均レベル(+/-SD)と比較した、3回目の(TF3)再刺激後の複数ドナーCD4
IL-10細胞のサイトカイン産生プロファイルを示す。3人のドナー由来のTF3CD4
IL-10細胞を1:1:1の比でプールし、固定化抗CD3及び可溶性抗CD28mAbで48時間刺激した。培養上清を回収し、IL-10、IL-4、IL-5、IFN-γ及びIL-22のレベルをELISAで測定した。点は複数ドナーCD4
IL-10細胞の結果であり、灰色のバーは平均±SD、単一ドナー(n=8)を表す。
【
図10】
図10Aは、プールを生成するために使用した単一ドナー(n=3)のCD4
IL-10細胞によるグランザイムB発現の平均%レベル(+/-SD)と比較した、グランザイムBを発現する複数ドナーCD4
IL-10細胞(GzB)のパーセンテージを示す。3回目の刺激(TF3)後にFACSによって細胞を分析した。
図10Bは、複数ドナーCD4
IL-10細胞(10
5個/ウェル)をK562細胞及びALL-CM細胞(10
5個/ウェル)と1:1の比で3日間共培養した場合の死細胞%を示す。残存白血病細胞(CD45
+CD33
+)を各標的細胞についてFACSによって計数した。点は複数ドナーCD4
IL-10の結果であり、灰色のバーはプールを生成するために使用された単一ドナー(n=3)の平均±SDを表す。
【
図11A】
図11A及び
図11Bは、複数ドナーCD4
IL-10細胞が同種CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の増殖を抑制し得ることを示す。同種PBMC細胞をeFluor(登録商標)670(10
5細胞/ウェル)で標識し、複数ドナーCD4
IL-10細胞の非存在下又は存在下(10
5細胞/ウェル)、1:1のレスポンダー:サプレッサー比で同種成熟樹状(DC)細胞(5×10
4細胞/ウェル)及び可溶性抗CD3mAbで刺激した。4日間の培養後、増殖応答細胞の割合を、CD4
+ΔNGFR
-T細胞及びCD8
+ΔNGFR
-T細胞でゲーティングしてから、フローサイトメトリーを用いてeFluor(登録商標)670希釈によって求めた。
図11Aは、ドナーC、ドナーE及びドナーFからプールされたCD4
+細胞を含有する複数ドナーCD4
IL-10細胞の結果を示す。
図11Bは、ドナーH、ドナーI及びドナーLからプールされたCD4
+細胞を含有する複数ドナーCD4
IL-10細胞の結果を示す。CD4
IL-10細胞によって媒介される抑制を以下のように計算した:100-([CD4
IL-10細胞の存在下での応答細胞の増殖/応答細胞単独での増殖]×100)。
【
図12】
図12は、照射後0日目に注射したヒトPBMC及び/又は複数ドナーCD4
IL-10細胞によるGvHDの誘導を試験するためのプロトコルを示す。
【
図13】
図13は、PBMC(5×10
6細胞/マウス)、複数ドナー(3名のドナー)CD4
IL-10細胞(5×10
6細胞/マウス)又はPBMC(5×10
6細胞/マウス)を複数ドナーCD4
IL-10細胞(3名のドナー)(5×10
6細胞/マウス)と組み合わせて注射した後の各日においてGvHDを示すNSGマウスの%を示す。
【
図14】
図14は、PBMC(5×10
6細胞/マウス)、複数ドナー(3名のドナー)CD4
IL-10細胞(5×10
6細胞/マウス)、又は複数ドナーCD4
IL-10細胞(3名のドナー)(5×10
6細胞/マウス)と組み合わせたPBMC(5×10
6細胞/マウス)を注射したNSGマウスにおける脾臓及び骨髄へのCD4
IL-10細胞の遊走を示す。ドナー(n=8)及び単一ドナーのボックス及びウィスカーを示す。
【
図15】
図15は、照射後0日目に注射したCD4+T細胞及び複数ドナー又は単一ドナーCD4
IL-10細胞によるGvHDの誘導を試験するためのプロトコルを示す。
【
図16】
図16は、注射後の各日におけるGvHDを示すNSGマウスの%を示す。
【
図17】
図17A及び
図17Bは、循環白血病細胞の減少及び長期の無白血病生存に基づいて試験した移植片対白血病(GvL)効果を示す。白血病を以前に報告されているように測定した(Locafaro G.et al Molecular Therapy 2017)。0日目に、NSGマウスに亜致死量の放射線を照射し、骨髄性白血病細胞(ALL-CM)(5×10
6個)を静脈内注射した。
図17Aは、3日目にPBMC(5×10
6個)又は単一ドナー(ドナーBC-I及びドナーBC-H由来)のCD4
IL-10細胞(2.5×10
6個)を注射した動物の無白血病生存率を示す。
図17Bは、3日目にPBMC(5×10
6個)又は複数ドナーCD4
IL-10細胞(2.5×10
6個)を注射した動物の無白血病生存率を示す。
【
図18】
図18A及び
図18Bは、0日目に亜致死量の放射線を照射し、ALL-CM細胞(5×10
6個)が静脈内注射されたNSGマウスにおいて測定された長期の無白血病生存率を示す。
図18Aは、3日目に単核細胞(PBMC)(5×10
6個)単独又は単核細胞(PBMC)(5×10
6個)+単一ドナー(ドナーBC-H及びドナーBC-I由来)CD4
IL-10細胞(2.5×10
6個)を注射した動物のデータを示す。
図18Bは、3日目に単核細胞(PBMC)(5×10
6個)単独又は単核細胞(PBMC)(5×10
6個)+複数ドナーCD4
IL-10細胞(2.5×10
6個)を注射した動物のデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
これらの図面は、例示のみを目的として本発明の様々な実施形態を示す。当業者は、以下の説明から、本明細書に記載される本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に示される構造及び方法の代替実施形態が使用され得ることを容易に理解するであろう。
【0077】
6.詳細な説明
6.1.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下に帰する意味を有する。
【0078】
「移植片対白血病効果」又は「GvL」は、同種造血幹細胞移植(HSCT)又は骨髄移植(BMT)の後に現れる効果を指す。同種移植片のTリンパ球は、悪性の残留する宿主白血病細胞を排除する。
【0079】
「移植片対腫瘍効果」又は「GvT」は、同種造血幹細胞移植(HSCT)又は骨髄移植(BMT)の後に現れる効果を指す。
同種移植片のTリンパ球は、悪性の残存する宿主癌細胞、例えば、骨髄腫並びにリンパ性及び骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫及びおそらくは乳癌の細胞を排除する。GvTという用語は、GvLの総称である。
【0080】
「治療」、「治療すること」などの用語は、本明細書では、医学分野で理解されている最も広い意味で使用される。特に、これらの用語は、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、疾患、状態、又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であり得、及び/あるいは、疾患若しくは状態及び/又は有害作用、例えば、その疾患若しくは状態に起因する症状の部分的又は完全な治癒の点で治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトの疾患又は状態のあらゆる治療を包含し、(a)その疾患又は状態にかかりやすい可能性があるが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患又は状態が発生するのを予防する工程、(b)その疾患又は状態を阻害する工程(例えば、その発症を阻止する工程)、あるいは、(c)その疾患又は状態を軽減する工程(例えば、その疾患又は状態を退縮させ、1つ又はそれ以上の症状の改善をもたらす工程)を含む。
いずれの状態の改善も、当分野で公知の標準的な方法及び技術に従って容易に評価することができる。疾患の方法によって治療される対象の集団には、望ましくない状態又は疾患に罹患している対象、並びにその状態又は疾患の発症のリスクがある対象が含まれる。
【0081】
本明細書で使用される「HLA一致」は、HLAクラスI(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)及びクラスII(HLA-DRB1及びHLA-DQB1)遺伝子座において一致するHLA対立遺伝子を有し、個体が互いに免疫学的に適合することを可能にするその個体のペアを指す。HLA適合性は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Tiervy,Haematologica 2016 Volume 101(6):680-687に記載されているような、当分野で利用可能な方法のいずれかを使用して決定することができる。
【0082】
所与の遺伝子座について、個体のペアは、一方の個体の2つの対立遺伝子の各々が他方の個体の2つの対立遺伝子と一致する場合、2/2の一致を有する。個体のペアは、一方の個体の2つの対立遺伝子の一方のみが他方の個体の2つの対立遺伝子の一方と一致する場合、1/2の一致を有する。個体のペアは、一方の個体の10個の対立遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座の各々について2つ)のすべてが他方の個体の10個の対立遺伝子のすべてと一致する場合、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において10/10の一致を有する。
【0083】
好ましい実施形態では、対立遺伝子レベルタイピングがHLA適合性の決定のために使用される。対立遺伝子レベルタイピングは、例えば、A*02:01:01:01のように第1、第2、第3及び第4の区域のすべての数字を使用することによって定義されるHLA遺伝子の固有のヌクレオチド配列に対応する。
機能的には、コード配列におけるサイレント置換及び非コード配列における置換によってそれぞれ異なる対立遺伝子を特徴付ける第3及び第4の区域は、置換がHLA対立遺伝子の発現を妨げる場合(例えば、ヌル対立遺伝子B*15:01:01:02N)を除いて、無関係である。ヌル対立遺伝子を欠くことは、同種反応性T細胞によって認識される可能性が非常に高く、有害な臨床的影響を有するミスマッチをもたらすことが多い。非コード配列における置換は、発現レベルに影響を及ぼし得る(例えば、A24low対立遺伝子A*24:02:01:02L)。そのような変動性はまた、抗HLA非自己認識に影響を及ぼし得る。
【0084】
本明細書で使用される「HLA不一致」という用語は、HLAクラスI(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)及びクラスII(HLA-DRB1及びHLA-DQB1)遺伝子座に不一致のHLA対立遺伝子を有し、個体を互いに免疫学的に不適合にする個体のペアを指す。
【0085】
本明細書で使用される「部分的HLA不一致」という用語は、HLAクラスI(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)及びクラスII(HLA-DRB1及びHLA-DQB1)遺伝子座に不一致のHLA対立遺伝子を有し、許容される程度に個体を互いに免疫学的に不適合にする個体のペアを指す。いくつかの研究では、許容された不一致が特定されている。いくつかのHLAクラスIの非適合性は、より許容性が高いと考えられる。
【0086】
「HLAハプロタイプ」は、染色体ごとの一連のHLA遺伝子座対立遺伝子を指し、1つは母親から渡され、1つは父親から渡される。HLAクラスI(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)及びクラスII(HLA-DRB1及びHLA-DQB1)遺伝子座の遺伝子型を使用して、HLAハプロタイプを決定することができる。
【0087】
「治療有効量」という用語は、疾患を治療し、ひいては疾患の症状を改善するのに有効な量である。予防は治療と考えられ得るので、治療有効量は「予防有効量」であり得る。
【0088】
「改善する」という用語は、予防、重症度若しくは進行の軽減、寛解又は治癒を含む、疾患状態、例えば、神経変性疾患状態の治療における任意の治療上有益な結果を指す。
【0089】
6.2.他の解釈規則
本明細書に記載された範囲は、記載された終点を含む範囲内のすべての値の省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0090】
6.3.実験観察のまとめ
本開示は、ヒトIL-10遺伝子及び切断型非シグナル伝達形態のヒトNGFRを含有する双方向レンチウイルスベクターで形質導入された高度に精製された同種CD4+T細胞の産生及び使用のための方法を提供する。首尾よく形質導入されたCD4+T細胞を、NGFR特異的モノクローナル抗体を利用して精製して、95%超の純粋なIL-10を産生しNGFRを発現するCD4+T細胞(CD4IL-10細胞と命名)を得た。3人の異なる同種HLA不一致ドナー由来のCD4IL-10細胞を1:1:1の比でプールした。
【0091】
本明細書で複数ドナーCD4IL-10細胞とも呼ばれるこれらのプール集団は、単一ドナーCD4IL-10細胞及び天然由来の1型制御性T(Tr1)細胞のサイトカイン産生プロファイルに匹敵するサイトカイン産生プロファイルを有していた。それらは、高レベルのIL-10、IL-22、IFN-γ、IL-5及び低レベルのIL-4を産生する。複数ドナーCD4IL-10細胞はポリクローナルであり(複数の抗原特異性を有する)、インビトロで同種CD4+細胞及びCD8+T細胞の両方の増殖を抑制した。さらに、それらはインビトロで骨髄性白血病細胞を特異的に死滅させた。移植片対宿主病(GvHD)のヒト化マウスモデルにおける複数ドナーCD4IL-10細胞の養子移入は、これらの細胞が脾臓に効率的にホーミングすることを示した。GvHDのヒト化マウスモデルにおける複数ドナーCD4IL-10細胞の養子移入は、ヒトCD4+T細胞によって誘導される重度の異種GvHDを阻害した。重要なことに、高濃度であっても、複数ドナーCD4IL-10細胞は単独ではGvHDを誘導しなかった。これらの結果は、複数ドナーCD4IL-10細胞が、GvHDの治療及び/又は予防のために使用することができ、白血病及び他の悪性腫瘍を治療するための同種造血幹細胞移植(HSCT)の補助として使用してHSCTのGvL又はGvTの治療効果を維持しながらGvHDを軽減することができ、細胞及び臓器の拒絶並びに自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するために使用できることを示している。
【0092】
6.4.複数ドナーCD4IL-10細胞
第1の態様では、IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変されたCD4+T細胞の集団(CD4IL-10細胞)が提供される。この集団は、少なくとも3人の異なるT細胞ドナー(複数ドナーCD4IL-10細胞)から得られたCD4+T細胞を含む。
【0093】
6.4.1.CD4+T細胞及びT細胞ドナー
複数ドナーCD4IL-10集団に使用されるCD4+T細胞は、当分野で利用可能な方法を使用して、末梢血、臍帯血、又はドナー由来の他の血液試料から単離することができる。典型的な実施形態では、CD4+T細胞は末梢血から単離される。特定の実施形態では、CD4+T細胞は、第三者の血液バンクから得られた末梢血から単離される。
【0094】
いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、血液の事前に凍結されたストック又は末梢血単核細胞(PBMC)の事前に凍結されたストックから単離される。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、末梢血から、又は事前に凍結されていないPBMCから単離される。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、複数のドナーから得られた血液又はPBMCから別々に単離され、次いでプールされる。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、複数のドナーから最初にプールされた血液又はPBMCから単離される。
【0095】
いくつかの実施形態では、CD4+T細胞は、3、4、5、6、7、8、9、又は10人の異なるT細胞ドナーから得られるものである。
【0096】
いくつかの実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーは、遺伝子型に関係なく選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーは、遺伝子型に基づいて選択される。
【0097】
特定の実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーは、それらのHLAハプロタイプに基づいて選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーの一部又は全員が、一致するHLAハプロタイプを有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーの一部又は全員が、不一致のHLAハプロタイプを有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも、5/10、6/10、7/10、8/10、又は9/10の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、互いに少なくとも、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-A遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-B遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-C遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、HLA-DRB1及びHLA DQB1遺伝子座において互いに少なくとも3/4又は4/4の一致を有する。いくつかの実施形態では、集団中のすべてのCD4+T細胞は、A*02対立遺伝子を有する。
【0100】
好ましい実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーのいずれも、CD4IL-10細胞で処理される宿主ではない。好ましい実施形態では、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーのいずれも、本明細書に記載の治療方法においてCD4IL-10細胞と共に使用される幹細胞(例えば、HSC)、組織又は臓器のドナーではない。
【0101】
いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、治療される患者(宿主)に対して、HLA不一致又は部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8未満、5/8未満、6/8未満、7/8未満又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、2/4未満、3/4未満又は4/4未満の一致を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーとHLA不一致又は部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において3/4又は4/4未満の一致を有する。
【0103】
好ましい実施形態では、CD4+T細胞のいずれも不死化されない。
【0104】
6.4.2.IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチド
本開示の複数ドナーCD4IL-10細胞は、IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変されているCD4+T細胞である。外因性ポリヌクレオチドは、発現制御エレメントに作動可能に連結されるIL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントを含む。
【0105】
IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、ヒト、ボノボ又はアカゲザルのIL-10をコードし得る。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号1の配列を有するヒトIL-10をコードする。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号1と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するヒトIL-10の変異体をコードする。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号2のヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号2と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドはウイルス-IL-10をコードする。様々な実施形態では、外因性ポリペプチドは、HCMV、GMCMV、RhCMV、BaCMV、MOCMV、SMCMV、EBV、Bonobo-HV、BaLCV、OvHV-2、EHV-2、CyHV-3、AngHV-1、ORFV、BPSV、PCPV、LSDV、SPV、GPV、又はCNPV由来のIL-10をコードする。いくつかの実施形態では、外因性ポリペプチドは、EBV又はORFV由来のウイルスIL-10をコードする。
【0107】
外因性ポリヌクレオチドは、形質導入されたCD4+T細胞におけるコードされたIL-10の発現を指令する発現制御エレメントをさらに含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、発現制御エレメントは、CD4+T細胞におけるIL-10の発現を指令することができるプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターはCD4+T細胞におけるIL-10の構成的発現を駆動する。いくつかの実施形態では、プロモーターは、活性化CD4+T細胞におけるIL-10の発現を駆動する。
【0109】
いくつかの実施形態では、治療上適切な場合に、誘導性プロモーターを使用してIL-10の発現を誘導する。いくつかの実施形態では、IL-10プロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、組織特異的プロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、系統特異的プロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、遍在的に発現されるプロモーターが使用される。
【0110】
いくつかの実施形態では、天然のヒトプロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、ヒト伸長因子(EF)1αプロモーターが使用される。いくつかの実施形態では、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)が使用される。いくつかの実施形態では、ヒトユビキチンCプロモーター(UBI-C)が使用される。
【0111】
いくつかの実施形態では、合成プロモーターが使用される。特定の実施形態では、最小CMVコアプロモーターが使用される。特定の実施形態では、誘導性の又は構成的な双方向プロモーターが使用される。特定の実施形態では、Amendola et al.,Nature Biotechnology,23(1):108-116(2005)に開示されている合成双方向プロモーターが使用される。このプロモーターは、遍在的又は組織特異的な態様で2つのmRNAの協調転写を媒介することができる。特定の実施形態では、双方向プロモーターは、IL-10及び選択マーカーの発現を誘導する。
【0112】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、首尾よく形質導入されたCD4+T細胞の選択を可能にする選択マーカーをコードするセグメントをさらに含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーはΔNGFRである。特定の実施形態では、選択マーカーは、配列番号3の配列を有するポリペプチドである。特定の実施形態では、選択マーカーは、配列番号3と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチドである。特定の実施形態では、ΔNGFR選択マーカーをコードするヌクレオチド配列は、配列番号4の配列を有する。いくつかの実施形態では、ΔNGFR選択マーカーをコードするヌクレオチド配列は、配列番号4と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、選択マーカーは、切断型のEGFRポリペプチドである。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、その全体が本明細書に組み込まれる、Wang et al.“A transgene-encoded cell surface polypeptide for selection,in vivo tracking,and ablation of engineered cells”,Blood,v.118,n.5(2011)に開示されているヒトEGFRポリペプチドの切断型、任意選択でhuEGFRtである。
【0114】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、抗生物質耐性遺伝子をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、アンピシリン耐性遺伝子をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、カナマイシン耐性遺伝子をコードする配列を含む。
【0115】
典型的な実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、ベクターを使用してCD4+T細胞に送達される。いくつかの実施形態では、ベクターはプラスミドベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。
【0116】
特定の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクターを使用してCD4+T細胞に送達され、外因性ポリヌクレオチドはレンチウイルスベクター配列を含む。特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、Matrai et al.,Molecular Therapy 18(3):477-490(2010)(「Matrai」)に開示されているレンチウイルスベクターが使用される。
【0117】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、T細胞核ゲノムに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、T細胞核ゲノムに組み込むことができない。いくつかの実施形態では、組込み欠損レンチウイルスベクターが使用される。
例えば、いくつかの実施形態では、Matraiに開示されている組込み欠損又は他のレンチウイルスベクターが使用される。いくつかの実施形態では、インテグラーゼ欠損レンチウイルスが使用される。例えば、インテグラーゼ(D64V)に不活性化変異を含有するインテグラーゼ欠損レンチウイルスを、参照により本明細書に組み込まれるMatrai et al.,Hepatology 53:1696-1707(2011)に記載されるように使用することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、T細胞核ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、核ゲノムに組み込まれない。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、T細胞の細胞質に存在する。
【0119】
特定の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5の配列を有する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5と少なくとも90%、95%、98%、又は99%の配列同一性を有する。
【0120】
6.4.3.複数ドナーCD4IL-10T細胞の遺伝子発現
複数ドナーCD4IL-10T細胞はIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、IL-10を構成的に発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、活性化されるとIL-10を発現する。
【0121】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、CD4+T細胞106個/培養培地1ml当たり、少なくとも100pgのIL-10を構成的に発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、CD4+T細胞106個/培養培地1ml当たり、少なくとも200pg、500pg、1ng、5ng、10ng、又は50ngのIL-10を構成的に発現する。
【0122】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、抗CD3抗体と抗CD28抗体の組み合わせ又は抗CD3抗体と抗CD28抗体でコーティングされたビーズで活性化した後、CD4+T細胞106個/培養培地1ml当たり、少なくとも1ng又は2ngのIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10 T細胞は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体又はCD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズで活性化した後、CD4+T細胞106個/培養培地1ml当たり、少なくとも5ng、10ng、100ng、200ng又は500ngのIL-10を発現する。
【0123】
様々な実施形態では、IL-10産生量は、タンパク質の検出及び測定のための様々な方法、例えば、ELISA、分光学的手順、比色法、アミノ酸分析、放射性標識、エドマン分解、HPLC、ウェスタンブロッティングなどを使用して、活性化の12時間後、24時間後又は48時間後に測定される。好ましい実施形態では、IL-10産生量は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体による活性化の48時間後にELISAで測定する。
【0124】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、非改変CD4+T細胞よりも少なくとも5倍高いレベルでIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、非改変CD4+T細胞よりも少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、又は50倍高いレベルでIL-10を発現する。
【0125】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、選択マーカーをさらに発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、典型的にはTr1細胞において発現されるタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、Tr1細胞に特徴的なマーカータンパク質を発現する。
【0126】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞はCD49bを発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞はLAG-3を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、TGF-βを発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞はIFNγを発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、GzBを発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、骨髄性抗原提示細胞で活性化されるとGzBを放出する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、パーフォリンを発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、骨髄性抗原提示細胞で活性化されるとパーフォリンを放出する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、CD18を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、CD2を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、CD226を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、IL-22を発現する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、IL-10を発現する。
【0127】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、Tr1細胞の少なくとも1つの表現型機能を示す。様々な実施形態では、その機能は、IL-10の分泌、TGF-βの分泌、並びにグランザイムB(GzB)及びパーフォリンの放出による骨髄性抗原提示細胞の特異的殺滅によるものである。
【0128】
6.4.4.プロセスごとの生成物
典型的な実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドでCD4+T細胞を修飾することによって得られる。
【0129】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、ウイルスベクター又はプラスミドベクターによってCD4+T細胞に導入される。特定の態様では、CD4+T細胞は、IL-10のコード配列を含有するレンチウイルスで形質導入される。
【0130】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られた初代CD4+T細胞をプールする工程と、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによってプールされたCD4+T細胞を改変する工程と、によって生成される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから初代CD4+T細胞を得る工程と、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって各ドナーのCD4+T細胞を別々に改変する工程と、次いで、(iii)遺伝子改変CD4+T細胞をプールする工程と、によって生成される。
【0131】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、CD4+T細胞を活性化することができるタンパク質の存在下で培養されたものである。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングされたビーズの存在下で培養されたものである。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、抗CD3抗体、抗CD28抗体及びIL-2、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングされたビーズ及びIL-2の存在下で培養されている。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞を、Miltenyi Biotec製のT Cell TransAct(商標)の存在下で培養した。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞を、STEMCELL Technologies製のImmunoCult Human T Cell Activator(商標)の存在下で培養した。
【0132】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は凍結ストック中にある。
【0133】
6.5.医薬組成物
別の態様では、医薬組成物が提供される。本薬剤は、本明細書に開示される複数ドナーCD4IL-10T細胞及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。
【0134】
本医薬組成物は、人間医学又は獣医学に適した任意の投与経路による投与のために製剤化することができる。典型的な実施形態では、本組成物は、静脈内(IV)投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本組成物は静脈内(IV)注入のために製剤化される。IV投与のために製剤化された実施形態では、本医薬組成物は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態である。
【0135】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体又は希釈剤は、生理食塩水、乳酸リンゲル液、又は他の生理学的に適合性の溶液である。様々な実施形態では、本医薬組成物溶液は、2~20%、好ましくは5%のヒト血清アルブミンを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、全身投与、特に、静脈内投与による医薬組成物の投与に適合した本医薬組成物の単位剤形が提供される。
【0137】
いくつかの実施形態では、単位剤形は、104から1011個の複数ドナーCD4IL-10T細胞、104から1010個の複数ドナーCD4IL-10T細胞、104から109個の複数ドナーCD4IL-10T細胞、105から1010個の複数ドナーCD4IL-10T細胞、105から109個の複数ドナーCD4IL-10T細胞、105から108個の複数ドナーCD4IL-10T細胞、又は105から107個の複数ドナーCD4IL-10T細胞を含む。
【0138】
典型的な実施形態では、単位剤形の本医薬組成物は液体形態である。
【0139】
6.6.複数ドナーCD4IL-10細胞の作製方法
別の態様では、本開示は、複数ドナーCD4IL-10細胞を作製する方法を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られた初代CD4+T細胞をプールする工程と、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによってプールされたCD4+T細胞を改変する工程と、を含む。他の実施形態では、本方法は、(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから初代CD4+T細胞を得る工程と、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって各ドナーのCD4+T細胞を別々に改変する工程と、次いで、(iii)遺伝子改変CD4+T細胞をプールし、それにより、複数ドナーCD4IL-10細胞を得る工程と、を含む。当分野で公知の様々な方法を使用して、IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを初代CD4+T細胞に導入することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、本方法は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングされたビーズの存在下で、初代CD4+T細胞又は遺伝子改変CD4+T細胞をインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗CD3抗体、抗CD28抗体及びIL-2、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングされたビーズ及びIL-2の存在下で、初代CD4+T細胞又は遺伝子改変CD4+T細胞をインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、フィーダー細胞の混合物の存在下で、初代CD4+T細胞又は遺伝子改変CD4+T細胞をインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体のナノ調整物の存在下で、初代CD4+T細胞又は遺伝子改変CD4+T細胞をインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、Miltenyi Biotec製のT Cell TransAct(商標)の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、STEMCELL Technologies製のImmunoCult Human T Cell Activator(商標)の存在下で行われる。
【0142】
いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入する前に行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから得られた初代CD4+T細胞をプールする工程の後であるが、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによってプールされたCD4+T細胞を改変する工程の前に行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、(i)少なくとも3人の異なるT細胞ドナーから初代CD4+T細胞を得る工程の後であるが、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって各ドナーのCD4+T細胞を別々に改変する工程の前に行われる。
【0143】
いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は工程(ii)の後に行われる。換言すれば、いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによってプールされたCD4+T細胞を改変する工程の後で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、(ii)IL-10をコードする外因性ポリヌクレオチドを導入することによって各ドナーのCD4+T細胞を別々に改変する工程の後であるが、(iii)遺伝子改変CD4+T細胞をプールし、それによって遺伝子改変CD4+T細胞を得る工程の前に行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、(iii)遺伝子改変CD4+T細胞をプールし、それによって複数ドナーCD4IL-10細胞を得る工程の後に行われる。
【0144】
いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は2回以上行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーション工程は、CD4+T細胞の遺伝子改変の前と後の両方で行われる。
【0145】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターを使用して初代CD4+T細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1の配列を有するIL-10をコードするセグメントを含む。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するIL-10をコードするセグメントを含む。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号2の配列を有する。いくつかの実施形態では、IL-10をコードするポリヌクレオチドセグメントは、配列番号2と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、首尾よく形質導入されたCD4+T細胞の選択を可能にするマーカーをコードするセグメントをさらに含む。いくつかの実施形態では、コードされた選択マーカーはΔNGFRである。ある特定の実施形態では、コードされた選択マーカーは、配列番号3の配列を有する。特定の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号4の配列を含む。いくつかの実施形態では、コードされた選択マーカーは、切断型のヒトEGFRポリペプチドである。
【0146】
いくつかの実施形態では、本方法は、選択マーカーを発現する遺伝子改変CD4+T細胞を単離し、それにより遺伝子改変CD4IL-10細胞の濃縮された集団を生成する工程をさらに含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも90%が選択マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも95%が選択マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも96、97、98、又は99%が選択マーカーを発現する。
【0148】
いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも90%がIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも95%がIL-10を発現する。いくつかの実施形態では、濃縮された集団中の遺伝子改変CD4+T細胞の少なくとも96、97、98、又は99%がIL-10を発現する。
【0149】
いくつかの実施形態では、本方法は、遺伝子改変CD4+T細胞の濃縮された集団をインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体でコーティングされたビーズの存在下で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、さらにIL-2の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、フィーダー細胞の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、抗CD3抗体及び抗CD28抗体のナノ調整物の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、Miltenyi Biotec製のT Cell TransAct(商標)の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、STEMCELL Technologies製のImmunoCult Human T Cell Activator(商標)の存在下で行われる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本方法は、遺伝子改変CD4+T細胞を凍結する工程をさらに含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、初代CD4+T細胞は、HLAハプロタイプに基づいて選択されたドナーに由来する。いくつかの実施形態では、本方法は、それらの遺伝情報を分析することによってT細胞ドナーを選択する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、候補となるT細胞ドナーの遺伝情報又はHLAハプロタイプを分析する工程を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、初代CD4+T細胞は、初代CD4+T細胞又はその改変物で治療される宿主と少なくとも部分的にHLA一致を有するドナーに由来する。いくつかの実施形態では、初代CD4+T細胞は、幹細胞(HSC)、組織又は臓器のドナーと少なくとも部分的にHLA一致を有するドナーに由来する。いくつかの実施形態では、初代CD4+T細胞は、宿主と生物学的につながりのない第三者のドナーから得られる。いくつかの実施形態では、初代CD4+T細胞は、幹細胞、組織又は臓器のドナーと生物学的につながりのない第三者のドナーから得られる。
【0153】
いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は、3、4、5、6、7、8、9、又は10人の異なるT細胞ドナーから得られる。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、互いに少なくとも、5/10、6/10、7/10、8/10、又は9/10の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、互いに少なくとも、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-A遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-B遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-C遺伝子座において互いに2/2の一致を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーは、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において互いに少なくとも3/4又は4/4一致する。いくつかの実施形態では、少なくとも3人のT細胞ドナーの各々は、A*02対立遺伝子を有する。
【0154】
いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は、1つ又はそれ以上の凍結ストックから得られる。いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は、少なくとも3人の異なるT細胞ドナーの非凍結末梢血単核細胞から得られる。いくつかの実施形態では、本方法は、末梢血単核細胞からCD4+T細胞を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、工程(i)において、初代CD4+T細胞は液体懸濁液から得られる。いくつかの実施形態では、液体懸濁液は、以前に凍結されたストックから得られる。
【0155】
いくつかの実施形態では、ドナー由来のCD4+T細胞を患者の抗原提示細胞(単球、樹状細胞、又はDC-10細胞)と接触させて、同種特異的CD4+T細胞を生成し、これは後に高レベルのIL-10(同種CD4IL-10細胞)を産生するように改変される。
【0156】
いくつかの実施形態では、本方法は、宿主由来の末梢血単核細胞(PBMC)の存在下でCD4+T細胞をアネルギー化する工程を含まない。いくつかの実施形態では、本方法は、組換えIL-10タンパク質の存在下でCD4+T細胞をアネルギー化する工程を含まず、組換えIL-10タンパク質はCD4+T細胞から発現されない。いくつかの実施形態では、本方法は、宿主由来のDC10細胞の存在下でCD4+T細胞をアネルギー化する工程を含まない。
【0157】
6.7.複数ドナーCD4IL-10細胞の使用方法
さらに別の態様では、本開示は、患者を治療する方法であって、免疫寛容化を必要とする患者に、本明細書で提供される複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0158】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数ドナーCD4IL-10細胞の凍結懸濁液を解凍する先行する工程をさらに含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、患者における病原性T細胞応答の重症度を予防又は軽減する。
【0160】
いくつかの実施形態では、治療方法は、投与後の患者の複数ドナーCD4IL-10細胞をモニタリングする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、患者から得られた生物学的試料において選択マーカーを検出し、それにより、複数ドナーCD4IL-10T細胞の有無を検出する工程を含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、患者の複数ドナーCD4IL-10細胞の存在下における変化を追跡するために複数の時点で検出される。いくつかの実施形態では、生物学的試料は患者由来の生検試料又は血液試料である。
【0161】
複数ドナーCD4IL-10T細胞は、治療有効量で投与される。その量は、体重及び他の臨床的要因に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、103細胞/kgから109細胞/kgが投与される。いくつかの実施形態では、103細胞/kgから108細胞/kgが投与される。いくつかの実施形態では、103細胞/kgから107細胞/kgが投与される。いくつかの実施形態では、103細胞/kgから106細胞/kgが投与される。いくつかの実施形態では、103細胞/kgから105細胞/kgが投与される。いくつかの実施形態では、103細胞/kgから104細胞/kgが投与される。
【0162】
様々な実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞は、治療有効スケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10T細胞を1回投与する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、毎日、3日ごと、7日ごと、14日ごと、21日ごと、又は毎月投与される。
【0163】
複数ドナーCD4IL-10T細胞は、異なる投与経路に従って、例えば、全身、皮下又は腹腔内に投与することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、2~20%、好ましくは5%のヒト血清アルブミンを含有し得る生理食塩水又は生理学的溶液内に投与される。
【0164】
6.7.1.GvHDを軽減又は予防する方法
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は複数ドナーCD4IL-10細胞を含む医薬組成物は、造血幹細胞(HSC)移植(HSCT)の前に、HSCTと同時に、又はHSCTの後に患者を治療するために使用される。
【0165】
様々な実施形態では、HSCTは、一致した血縁HSCTである。様々な実施形態では、HSCTは、ハプロタイプ一致HSCT、ミスマッチ血縁HSCT又はミスマッチ非血縁HSCTである。
【0166】
いくつかの実施形態では、患者は、同種HSCTによる治療を必要とする血液悪性腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、血液悪性腫瘍は異常な骨髄細胞によって媒介される。
【0167】
いくつかの実施形態では、T細胞ドナーは、複数ドナーCD4IL-10細胞及びHSCで治療される患者の遺伝情報、及び/又はHSCドナーの遺伝情報に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、T細胞ドナーは、複数ドナーCD4IL-10細胞及びHSCで治療される患者のHLAハプロタイプ、並びに/又はHSCドナーのHLAハプロタイプに基づいて選択される。いくつかの実施形態では、本方法は、CD4IL-10細胞を投与する前に、T細胞ドナーの遺伝情報又はHLAハプロタイプを分析する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、宿主の遺伝情報又はHLAハプロタイプを分析する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、HSCドナーの遺伝情報又はHLAハプロタイプを分析する工程をさらに含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、T細胞ドナー、宿主及びHSCドナーは生物学的につながりがない。いくつかの実施形態では、T細胞ドナー、宿主及びHSCドナーは、異なるHLAハプロタイプを有する。いくつかの実施形態では、T細胞ドナー、宿主及びHSCドナーは、HLAハプロタイプにおいて少なくとも部分的に不一致を有する。いくつかの実施形態では、T細胞ドナーは、それらが閾値を超えるHLA一致を有するHLAハプロタイプを有する場合に選択される。
【0169】
いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10未満、6/10未満、7/10未満、8/10未満、9/10未満又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8未満、5/8未満、6/8未満、7/8未満又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、HSCドナーは、患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、3/4未満又は4/4未満の一致を有する。
【0170】
いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA不一致又は部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8未満、5/8未満、6/8未満、7/8未満又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、患者に対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において、2/4未満、3/4未満又は4/4未満の一致を有する。
【0171】
いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーとHLA不一致又は部分的にHLA不一致である。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、及びHLA-DQB1遺伝子座において、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRB1遺伝子座において、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-A、HLA-B、又はHLA-C遺伝子座において2/2未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上のT細胞ドナーは、HSCドナーに対して、HLA-DRB1及びHLA-DQB1遺伝子座において3/4又は4/4未満の一致を有する。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、移植された造血幹細胞によるGvHDの重症度を予防又は軽減する。
【0172】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、移植された造血細胞による病理学的T細胞応答の重症度を予防又は軽減する。特定の実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、GvHDを予防又は低減する。
【0173】
6.7.2.癌の治療方法
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、癌の治療のために使用される。好ましい実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、抗腫瘍効果(移植片対腫瘍、GvT)を直接媒介し、特定の実施形態では抗白血病効果(移植片対白血病、GvL)を直接媒介する。
【0174】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、癌の治療のために同種単核細胞又はPBMCと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、PBMCの投与の前、又はその後に投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞及び同種単核細胞又はPBMCは、同時に投与される。
【0175】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞及び同種単核細胞又はPBMCは、1:3、1:2、1:1、2:1又は3:1の比で投与される。
【0176】
いくつかの実施形態では、新生物細胞はCD13を発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞はHLA-クラスIを発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞はCD54を発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞は、CD13、HLA-クラスI及びCD54を発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞はCD112を発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞はCD58を発現する。いくつかの実施形態では、新生物細胞はCD155を発現する。いくつかの実施形態では、腫瘍は、CD112、CD58又はCD155を発現する。様々な実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍又は血液腫瘍である。
【0177】
いくつかの実施形態では、患者は、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、成人の脳/CNS腫瘍、小児の脳/CNS腫瘍、乳癌、男性の乳癌、原発不明の癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性栄養膜疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び低咽頭癌、白血病、急性リンパ球性(ALL)、急性骨髄(骨髄性肉腫及び皮膚白血病を含むAML)、慢性リンパ球性(CLL)、慢性骨髄(CML)白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、小児の白血病、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、小児の非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫-成人軟部組織癌、皮膚癌、皮膚癌-基底細胞及び扁平細胞、皮膚癌-黒色腫、皮膚癌-メルケル細胞、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍からなる群から選択される癌を有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、癌は骨髄性腫瘍である。特定の実施形態では、癌はAML又はCMLである。いくつかの実施形態では、癌は骨髄性腫瘍である。
【0179】
いくつかの実施形態では、本方法は、血液、骨髄及びリンパ節に影響を及ぼす血液癌を治療するために使用される。様々な実施形態では、血液癌は、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、リンパ球性白血病、骨髄腫である。様々な実施形態では、血液癌は、急性又は慢性骨髄性(骨髄)白血病(AML、CML)、又は骨髄異形成症候群である。
【0180】
いくつかの実施形態では、癌は、治療的介入に対して難治性又は抵抗性である。
【0181】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、治療的介入と組み合わせて使用される。この組み合わせは、同時に行われてもよいし、異なる時間に行われてもよい。好ましくは、治療的介入は、化学療法、放射線療法、同種HSCT、免疫抑制、輸血、骨髄移植、成長因子、生物学的製剤からなる群から選択される。
【0182】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、腫瘍浸潤骨髄系細胞(例えば、単球、マクロファージ、好中球)の細胞死を誘導する。
【0183】
6.7.3.他の障害を治療する方法
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、自己免疫疾患を治療するために投与される。
【0184】
いくつかの実施形態では、自己免疫性疾患は、1型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性狼瘡、炎症性腸疾患、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎、悪性貧血、潰瘍性大腸炎、水疱性疾患、強皮症、及びセリアック病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自己免疫性疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、1型糖尿病、狼瘡、乾癬、乾癬性関節炎、又は関節リウマチである。いくつかの実施形態では、患者は、アレルギー性又はアトピー性疾患を有する。アレルギー性又はアトピー性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎及び鼻炎からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、患者は食物アレルギーを有する。
【0185】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、HSCT以外の細胞移植及び臓器移植に対する病原性T細胞応答の重症度を予防又は軽減するために投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、複数ドナーCD4IL-10T細胞又は医薬組成物の投与の前又は後のいずれかにおいて、患者への臓器移植の工程を含む。特定の実施形態では、臓器は、腎臓、心臓、又は膵島細胞である。好ましい実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物は、臓器移植の宿主拒絶の重症度を予防又は軽減する。
【0186】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、遺伝子療法、例えば、組換えAAV(rAAV)の投与に伴う免疫応答を予防又は低減するために投与される。これらの実施形態では、方法は、複数ドナーCD4IL-10細胞又は医薬組成物の投与前又はその後に、組換えAAVを患者に投与する工程をさらに含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、iPS由来の組織又は細胞の移植に伴う免疫応答を防止又は低下させるために投与される。iPS由来の組織及び細胞としては、心筋細胞、肝細胞、上皮細胞、軟骨、骨及び筋肉細胞、ニューロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、炎症を治療するために投与される。炎症は、冠動脈疾患(CAD)、2型糖尿病、神経変性疾患、又は炎症性腸疾患に関連し得るが、これらに限定されない。
【0189】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、NLPR3インフラマソームの活性亢進を伴う疾患又は障害を治療するために投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-1β産生の増加を伴う疾患又は障害を治療するために投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-18産生の増加を伴う疾患又は障害を治療するために投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞による成熟カスパーゼ1産生の増加を伴う疾患又は障害を治療するために投与される。
【0190】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-1β産生を減少させるために投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞によるIL-18産生を減少させるために投与される。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、活性化単球、マクロファージ又は樹状細胞による成熟カスパーゼ1産生を減少させるために投与される。
【0191】
いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、ウイルス感染に対する患者の過剰活性免疫応答を低下させるために投与される。いくつかの実施形態では、ウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、複数ドナーCD4IL-10細胞は、細菌感染に対する過剰に活性な免疫応答、例えば、毒性ショック及びサイトカインストームを低下させるために投与される。
【実施例】
【0192】
6.8.実施例
以下の実施例は、限定ではなく例示として提供される。
【0193】
6.8.1.実施例1:複数ドナーCD4
IL-10細胞の作製ベクター産生
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2016/146542号に記載されているように、ヒトIL-10及びNGFRの切断型形態(ΔNGFR)(
図1及び
図2)の両方のコード配列を含有するレンチウイルスベクターによる形質導入によって、複数ドナーCD4
IL-10細胞を産生した。ベクターの配列は、配列番号5として示す。手短に言えば、レンチウイルスベクターは、pH15C(ATCC68192)の549bp断片由来のヒトIL-10のコード配列をプラスミド#1074.1071.hPGK.GFP.WPRE.mhCMV.dNGFR.SV40PAにライゲーションすることによって生成した。双方向プロモーター(ヒトPGKプロモーター+反対方向のCMVプロモーターの最小コア要素)の存在は、2つの導入遺伝子の同時発現を可能にする。プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン又はカナマイシン)のコード配列をさらに含む。
【0194】
レンチウイルスベクターを、293T細胞へのCa3PO4一過性4プラスミド同時トランスフェクションによって作製し、超遠心分離によって濃縮し、1μMの酪酸ナトリウムをベクター回収のために培養物に添加した。限界希釈によって293T細胞上の力価を推定し、ベクター粒子をHIV-1 Gag p24抗原免疫捕捉(NEN Life Science Product、ウォルサム、マサチューセッツ州)によって測定した。ベクター感染価を力価と粒子の比として計算した。濃縮ベクターの場合、力価は5×108から6×109形質導入単位/mlの範囲であり、感染価は5×104から5×105形質導入単位/ngの範囲であった。
【0195】
CD4
IL-10細胞の産生
図3は、CD4
IL-10細胞の産生プロセスの概略図である。健常ドナー由来のCD4
+T細胞を精製した。ヒトCD4
+T細胞を可溶性抗CD3mAb、可溶性抗CD28mAb及びrhIL-2(50U/mL)で48時間活性化した後、20の感染多重度(MOI)で、ヒトIL-10及び切断型ヒトNGF受容体(LV-IL-10/ΔNGFR)をコードする双方向レンチウイルスベクターによる形質導入を行った。
【0196】
11日後、形質導入された細胞を、ΔNGFRの発現についてFACSによって分析し、ベクターコピー数(VCN)をデジタル液滴PCR(ddPCR)によって定量した。
【0197】
10人の異なるドナー由来のCD4
+T細胞の平均形質導入効率は45±17%であり、VCNは2.7±0.6%であった。
図4Aは、LV-IL-10/ΔNGFR(ヒトIL-10及び切断型ヒトNGF受容体をコードする双方向レンチウイルスベクター)で形質導入されたヒトCD4
+T細胞におけるCD4
+ΔNGFR
+細胞(平均±SD、n=10、左バー)及びベクターコピー数(VCN、平均±SD、n=10、右バー)のパーセンテージを示す。CD4
+ΔNGFR
+細胞の頻度及びベクターコピー数を、CD4
IL-10細胞におけるデジタル液滴PCR(ddPCR)によって定量した。
【0198】
ΔNGFR
+T細胞を、抗CD271mAbコーティングマイクロビーズを使用して精製し、95%超の純粋なCD4
IL-10細胞集団を得た。精製後、細胞をCD4及びΔNGFRのマーカーで染色し、FACSによって分析した。データは、精製工程から得られた純度が98%を超えることを示した。
図4Bは、試験した10人のドナーのうちの2人の代表的なドナー(ドナーB及びドナーC)から得られたFACSデータを示す。精製CD4
IL-10細胞を14日間隔で3回再刺激し、第2の再刺激(TF2)及び又は第3の再刺激(TF3)機能の後にそれらのインビトロ及びインビボ機能を試験した。
【0199】
静止CD4IL-10細胞は、構成的にIL-10を産生した。活性化されると、産生されたIL-10のレベルが強く増強された。
【0200】
CD4
IL-10細胞は、天然由来のTr1細胞のサイトカイン産生プロファイルに匹敵するサイトカイン産生プロファイルを有する。
2回目(TF2)及び3回目(TF3)の再刺激後に、単一ドナーCD4
IL-10細胞のサイトカイン産生プロファイルを分析し、結果を
図5に示す。
具体的には、CD4
IL-10細胞(200μl中2×10
5細胞)を以前に報告されているように再刺激した(Andolfi et al.Mol Ther.2012;20(9):1778-1790 and Locafaro et al.Mol Ther.2017;25(10):2254-2269)。14日目に、2回目(TF2)及び3回目(TF3)の再刺激の後、CD4
IL-10細胞を刺激せずに放置し(オレンジ色のバー)、又は固定化抗CD3及び可溶性抗CD28mAbで48時間刺激した(灰色のバー)。培養上清を回収し、IL-10、IL-4、IL-5、IFN-γ及びIL-22のレベルをELISAで測定した。すべての試料を3連で試験した。
平均±SD、試験したドナー(n=8)を示す。
図5に示す結果は、固定化抗CD3及び可溶性抗CD28mAbで刺激されたCD4
IL-10細胞がTr1細胞サイトカイン産生プロファイルを示すことを示す。
【0201】
異なるドナー間でかなりの変動が観察されたが、2回目(TF2)又は3回目(TF3)の再刺激後の全体的なサイトカイン産生プロファイルは同等であり、Tr1細胞のそれを反映していた(Roncarolo et al.,Immunity,2018)。Tr1細胞と同様に、CD4IL-10細胞は、高レベルのIL-10、IL-5、IFN-γ及びIL-22を産生したが、IL-4は低レベルであり、IL-2は検出不能なレベルであった。
【0202】
CD4
IL-10細胞は高レベルのグランザイムBを発現し、骨髄性白血病細胞を選択的に死滅させる
CD4
IL-10細胞を、2回目の再刺激(TF2)の後にグランザイムB(GzB)の発現についてさらに分析した。
図6Aのデータは、ほとんどのCD4
IL-10細胞がGzBを発現したことを示す。7名の異なるドナーに由来する全CD4
IL-10細胞の95%超が高レベルのグランザイムBを発現した。
【0203】
2回目(TF2)の再刺激から得られたCD4IL-10細胞を、骨髄性白血病細胞(ALL-CM)及び赤血球白血病細胞株(K562)に対するそれらの細胞傷害効果についてさらに分析した。CD4IL-10細胞(105個/ウェル)をK562細胞及びALL-CM細胞(105個/ウェル)と1:1の比で3日間共培養した。残存白血病細胞株(CD45lowCD33+)を各標的細胞についてFACSによって計数した。
【0204】
CD4
IL-10細胞は、
図6Bに示すように骨髄性白血病細胞(ALL-CM)を選択的に死滅させた。死滅したALL-CM細胞の%は62%~100%の間で変動したが、赤血球白血病細胞株K562(非特異的細胞傷害活性に対して非常に感受性である)の死滅は0~27%の間で変動した(4人の異なるドナーで試験)。まとめると、これらのデータは、CD4
IL-10細胞がグランザイムBを発現し、骨髄性白血病細胞を効率的に死滅させることを裏付けている。予想されたように、個々のドナー由来のCD4
IL-10細胞の殺滅能力における多少のばらつきが観察された。
【0205】
CD4
IL-10細胞は、同種CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の両方の増殖応答を抑制する
CD4
IL-10細胞を、同種CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞に対するそれらの効果についても分析した。具体的には、同種PBMC細胞をeFluor(登録商標)670(10
5細胞/ウェル)で標識し、CD4
IL-10細胞の非存在下又は存在下(10
5細胞/ウェル)、1:1のレスポンダー:サプレッサー比で同種成熟樹状(DC)細胞(5×10
4細胞/ウェル)及び可溶性抗CD3mAbで刺激した。4日間の培養後、増殖応答細胞の割合を、CD4
+ΔNGFR
-T細胞又はCD8
+ΔNGFR
-T細胞でゲーティングしてから、フローサイトメトリーを用いてeFluor(登録商標)670希釈によって求めた。
図7A及び
図7Bは、6人の異なるプールされていないドナー(
図7AのドナーC、ドナーE及びドナーF並びに
図7BのドナーH、ドナーI及びドナーL)由来のCD4
IL-10細胞のCD4
+T細胞に対する効果を増殖及び抑制の割合で示す。
図8A及び
図8Bは、6人の異なるプールされていないドナー(
図8AのドナーC、ドナーE及びドナーF並びに
図8BのドナーH、ドナーI及びドナーL)由来のCD4
IL-10細胞のCD8
+T細胞に対する効果を示す。
【0206】
これらの結果は、プールされておらず、別個に試験された6人の異なるドナー由来のCD4IL-10細胞が、同種CD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方の増殖応答を下方制御したことを示した。CD4+T細胞に対する抑制効果は51%~96%の間で変動したが、CD8+T細胞に対する抑制効果は62%~73%の間で変動した。
【0207】
複数ドナーCD4
IL-10細胞の作製及び特性評価
複数のドナー由来のCD4
+細胞を使用して、上記及び
図3のようにCD4
IL-10細胞を生成した。各ドナー由来のCD4
IL-10細胞を、2回目(TF2)及び3回目(TF3)の再刺激によって刺激した。3回目の刺激の後、3名のドナー由来のCD4
IL-10細胞を1:1:1の比でプールし、固定化抗CD3及び可溶性抗CD28mAbで48時間刺激した。
【0208】
複数ドナーCD4
IL-10細胞は、個々のドナー及びTr1細胞のCD4
Il-10細胞のサイトカイン産生プロファイルに匹敵するサイトカイン産生プロファイルを有する。
培養上清を回収し、IL-10、IL-4、IL-5、IFN-γ及びIL-22のレベルをELISAで測定した。
図9に提供される結果は、3名の異なる同種ドナー由来のプールされた(1:1:1でプールされた)複数ドナーCD4
IL-10細胞のサイトカイン産生(赤色ドット)が、個々のドナー(n=8)由来のCD4
IL-10細胞由来のCD4
IL-10細胞のサイトカイン産生(灰色バー)と同等であったことを示す。複数ドナーCD4
IL-10細胞は、高レベルのIL-10、IL-5、IFN-γ及びIL-22並びに低レベルのIL-4及び検出不能レベルのIL-2を産生した(図示せず)。これらのデータは、CD4
IL-10細胞をプールすることが実行可能であり、これらの複数ドナーCD4
IL-10細胞が、単一ドナー由来CD4
IL-10細胞及びTr1細胞のサイトカイン産生シグネチャーを維持することを示す。重要なことに、プールされた同種細胞集団は95%超の生存細胞を含有しており、それらが互いに死滅させなかったことを示した。
【0209】
複数ドナーCD4
IL-10細胞は高レベルのグランザイムBを発現し、骨髄性白血病細胞株を死滅させる。
複数ドナーCD4
IL-10細胞を、グランザイムB(GzB)の発現について3回目の再刺激(TF3)の後にさらに分析した。
図10Aのデータは、ほとんどの複数ドナーCD4
IL-10細胞がGzBを発現することを示す。複数ドナーCD4
IL-10細胞の95%超がグランザイムBを発現し、単一ドナー由来CD4
IL-10細胞のGzB発現に匹敵した。
【0210】
3回目(TF3)の再刺激から得られたCD4
IL-10細胞を、骨髄性白血病細胞(ALL-CM細胞株)又はK562に対するそれらの細胞傷害効果についてさらに分析した。複数ドナーCD4
IL-10細胞(10
5個/ウェル)をK562細胞及びALL-CM細胞(10
5個/ウェル)と1:1の比で3日間共培養した。残存白血病細胞株(CD45
lowCD33
+)を各標的細胞についてFACSによって計数した。
図10Bに示す結果は、非特異的細胞傷害性に対して非常に感受性であるK562細胞に対するある程度の細胞傷害性を示す。それにもかかわらず、骨髄性白血病細胞(ALL-CM)に対するあるレベルの選択性が得られ、これは、単一ドナー由来のCD4
IL-10細胞の選択性に匹敵する。
【0211】
複数ドナーCD4
IL-10細胞は、同種CD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方の増殖応答を抑制する。
複数ドナーCD4
IL-10細胞を、同種CD4
+T細胞又はCD8
+T細胞に対するそれらの効果についても分析した。具体的には、同種PBMC細胞をeFluor(登録商標)670(10
5細胞/ウェル)で標識し、複数ドナーCD4
IL-10細胞の非存在下又は存在下(10
5細胞/ウェル)、1:1のレスポンダー:サプレッサー比で同種成熟樹状(DC)細胞(5×10
4細胞/ウェル)及び可溶性抗CD3mAbで刺激した。4日間の培養後、増殖応答細胞の割合を、CD4
+ΔNGFR
-T細胞及びCD8
+ΔNGFR
-T細胞でゲーティングしてから、フローサイトメトリーを用いてeFluor(登録商標)670希釈によって求めた。
図11Aは、ドナーC、ドナーE及びドナーF由来のCD4
IL-10細胞を含有する複数ドナーCD4
IL-10細胞の結果を示す。
図11Bは、試験前に凍結され、保存され、解凍されたドナーH、ドナーI及びドナーL由来のCD4
IL-10細胞を含有する複数ドナーCD4
IL-10細胞の結果を示す。
【0212】
図11Aは、複数ドナーCD4
IL-10細胞(3人の異なるドナー由来)が、CD4
+及びCD8
+T細胞応答をそれぞれ96%及び74%抑制することを示す。試験前に細胞を凍結し、保存し、解凍した後に試験した第2の異なるバッチの複数ドナーCD4
IL-10細胞を用いて、同等の結果を得た(
図11B)。CD4
+及びCD8
+T細胞増殖の抑制は、それぞれ68%及び75%であった。これらのデータは、複数ドナーCD4
IL-10細胞を凍結し、機能を失うことなく保存することができることを示している。
【0213】
まとめると、複数ドナーCD4IL10細胞を用いて得られたデータは、これらの細胞調製物を問題なくプールすることができることを示している。それらは95%超の生存細胞を含有し、単一ドナーCD4IL-10細胞の関連する機能(サイトカイン産生、細胞傷害能、及び同種T細胞応答の抑制)をすべて維持する。複数ドナーCD4IL-10細胞のより大きなプールの使用は、異なる個々のドナーに由来するCD4IL-10細胞ロット間で観察される当然のばらつきを減少させるはずであり、ヒト治療のための大量の画一的なCD4IL-10細胞を提供するはずである。
【0214】
複数ドナーCD4IL-10細胞産物は、より均質な産物という点で有意な利点を有しており、これにより十分に定義された、ロット間のばらつきが少ない、効力及び放出の基準を決定することが可能になるであろう。さらに、それは連続的な大規模セル製造プロセスの開発を可能にする。
【0215】
複数ドナーCD4IL-10細胞の他の産生方法
レンチウイルス形質導入の前に、最低3~5人の異なるドナー由来のバフィーコートをプールする。CD4+細胞は、抗CD4抗体を使用した正の選択によってバフィーコートから単離される。プールされたCD4+細胞の純度をFACSによって確認する。あるいは、凍結ヒトCD4+細胞は、最低3~5人の正常な健常ドナーから得られる。凍結したヒトCD4+細胞を使用前に解凍する。バフィーコート又は凍結ストック由来のCD4+細胞を、IL-2の存在下でCD3抗体及びCD28抗体の組み合わせ又はCD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズによって24~48時間活性化する。場合によって、バフィーコート又は凍結ストック由来のCD4+細胞を可溶性抗CD3、可溶性抗CD28mAb及びrhIL-2(50U/mL)で48時間活性化し、CD4IL-10細胞の産生のために上記のヒトIL-10をコードする双方向レンチウイルスベクターで形質導入する。
【0216】
場合によっては、T細胞ドナー(又はそのドナーから単離されたCD4+細胞)のHLAハプロタイプを最初に決定し、所望のHLAハプロタイプを有するCD4+細胞を選択的にプールして使用する。
【0217】
複数ドナーCD4IL-10細胞は、上記の活性化CD4+細胞を、上記のヒトIL-10及びΔNGFRコード配列を含有するレンチウイルスベクターで形質導入することによって作製される。
【0218】
形質導入の5~9日後である7~11日目に、細胞を回収し、形質導入に成功したT細胞を抗NGFR抗体を利用して精製した。このプロセスは、通常、95%の純粋な複数ドナーCD4IL-10細胞集団をもたらす。
【0219】
精製された複数ドナーCD4IL-10細胞を計数し、IL-2の存在下、CD3抗体及びCD28抗体の混合物、CD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズによって、任意選択でフィーダー細胞の存在下で、さらに8~10日間再刺激する。場合によっては、精製複数ドナーCD4IL-10細胞をフィーダー細胞の存在下で再刺激する。
【0220】
14~18日間の全培養期間の後、CD4IL-10細胞を回収し、計数し、自発的にIL-10を産生するそれらの能力、又はCD3抗体及びCD28抗体若しくはCD3抗体及びCD28抗体でコーティングされたビーズによる活性化後にIL-10を産生するそれらの能力について試験する。さらに、GrzB及びパーフォリンのレベルを測定する。併せて、ヒトT細胞(PBMC)並びに精製CD4+及びCD8+T細胞増殖を抑制するそれらの能力も試験する。
【0221】
加えて、IL-22の産生は、構成的に、かつ、他のサイトカイン、例えば、IFNγ、IL-10、IL-4及びIL-5の産生について先に記載したように、CD3抗体及びCD28抗体の組み合わせを使用して、200マイクロリットルの体積の200,000個のCD4IL-10細胞を活性化した後に測定される。IL-22の産生レベルは、国際公開第2016/146542号に他のサイトカインについて記載されているように、IL-22特異的ELISAで測定される。保存する前に、プールされたCD4IL-10細胞を凍結する。
【0222】
6.8.2.実施例2:複数ドナーCD4
IL-10細胞を用いたGvHDの治療又は予防
インビボでの複数ドナーCD4
IL-10細胞の効果
複数ドナーCD4
IL-10細胞の集団を、
図12に示すように、ヒトPBMCによって誘導されるGvHDに対するそれらの効果について、ヒト化xeno GvHD疾患モデルであるNSGマウスモデルで試験した。NSGマウスに亜致死量の放射線を照射し、ヒトPBMC(5×10
6細胞/マウス)、複数ドナー(3名のドナー)CD4
IL-10細胞(5×10
6細胞/マウス)、又は複数ドナーCD4
IL-10細胞(3名のドナー)(5×10
6細胞/マウス)と組み合わせたヒトPBMC(5×10
6細胞/マウス)を静脈内注射した。GvHDを、以前に報告されているように(Bondanza et al.Blood 2006)、体重減少(20%超の体重減少)、皮膚病変、毛並み、活動性及び姿勢に基づいて評価した。
【0223】
図13は、注射後の各日におけるGvHDを示すNSGマウスの%を示す。照射されたNSGマウスへの5×10
6個のヒトPBMCの投与は、予想外にも、異常に興奮性のGvHDをもたらした。すべてのマウスは10日目に死亡し、これは非常に致死的なGvHDを反映している。5×10
6個の複数ドナーCD4
IL-10細胞の同時投与は、この劇症型GvHDを遅延させたが、マウスは、屠殺のための予め指定されたヒトの20%体重減少基準に達したので、14日目に屠殺した(
図13)。とは言え、これらの結果は、複数ドナーCD4
IL-10が非常に重度のGvHDを遅延させ得ることを示している。重要なことに、PBMCと同じ用量で単独で投与された複数ドナーCD4
IL-10細胞(5×10
6細胞)は、GvHDのいかなる徴候も誘導しなかった。
【0224】
また、ヒトPBMC(5×10
6細胞/マウス)、複数ドナー(3名のドナー)CD4
IL-10細胞(5×10
6細胞/マウス)又はヒトPBMC(5×10
6細胞/マウス)を複数ドナーCD4
IL-10細胞(3名のドナー)(5×10
6細胞/マウス)と組み合わせて注射したNSGマウスの脾臓(
図14、左パネル)及び骨髄(
図14、右パネル)におけるヒトCD4
IL-10細胞の存在を注射の14日後に調べた。
図14に示す結果は、複数ドナーCD4
IL-10細胞が脾臓及び骨髄に遊走したことを示す。細胞の注入の14日後に、これらの細胞が低い割合で存在することが見出された。これらの結果は、複数ドナーCD4
IL-10細胞がヒトPBMCによって誘導された劇症GvHDを遅延させ、それら自体はいかなる異種GvHDも誘導しないことを示している。
【0225】
複数ドナーCD4
IL-10細胞は、精製CD4
+細胞によって重度の異種GvHDを阻害する。
図15に示すように、2.5×10
6個の精製ヒトCD4+T細胞の投与によってGvHD疾患が誘導されたヒト化異種GvHDモデルにおいて、複数ドナーCD4
IL-10細胞を試験した。0日目にNSGマウスに亜致死量の放射線を照射し、3日目にヒトCD4
+T細胞(2.5×10
6細胞/マウス)を単独で、又は複数ドナーCD4
IL-10細胞(3人の異なるドナー)(2.5×10
6細胞/マウス)と組み合わせて、又はプールからの単一ドナー由来のCD4
IL-10細胞(2.5×10
6細胞/マウス)と組み合わせて静脈内注射した。GvHDを、以前に報告されているように(Bondanza et al.Blood 2006)、体重減少(20%超の体重減少)、皮膚病変、毛並み、活動性及び姿勢に基づいて評価した。
【0226】
図16は、注射後の各日におけるGvHDを示すNSGマウスの%を示す。これらの結果は、複数ドナーCD4
IL-10細胞がヒト同種CD4
+T細胞によって媒介されるGvHDを阻害することができることを示している。この特定の実験では、CD4+T細胞を投与された対照群のすべてのマウスが20日目に死亡したことから、異種GvHDは非常に重症であった。対照的に、2.5×10
6個の複数ドナーCD4
IL-10の同時投与は、GvHDを75%阻害した。単一ドナーCD4
IL-10細胞も保護的ではあったが、効果はそれほど強力ではなかった。
【0227】
他の実験
複数ドナーCD4IL-10細胞の治療効果を、4つの異なるマウス群、すなわち、(i)CD4IL-10細胞とは非血縁のドナー由来のヒトPBMCを投与されたマウス(GvHD陽性対照)、(ii)複数ドナーCD4IL-10細胞を投与されたマウス(陰性対照)、
(iii)PBMCと複数ドナーCD4IL-10細胞の組み合わせを1:1の比で投与されたマウス、及び
(iv)PBMCと複数ドナーCD4IL-10細胞の組み合わせを2:1の比又は異なる比で受けたマウス、において試験する。PBMCと複数ドナーCD4IL-10細胞の組み合わせを投与された動物の中で、一部の動物はPBMCと複数ドナーCD4IL-10細胞とを同時に投与され、一部の動物はPBMCを投与された数日後(例えば、5日後)に複数ドナーCD4IL-10細胞を投与され、一部の動物はPBMCを投与される数日前(例えば、5日前)に複数ドナーCD4IL-10細胞を投与される。
【0228】
PBMC及び/又は複数ドナーCD4IL-10細胞の投与後、1、2、3、4週目、及び必要に応じて5週目に体重を測定することによって、マウスをGvHDの発症についてモニタリングする。体重減少に加えて、マウスを皮膚病変、毛の状態及び活性について検査する。治療群のマウスをさらなる期間にわたってモニタリングして、長期生存に対する複数ドナーCD4IL-10細胞の影響を調べる。
【0229】
複数ドナーCD4IL-10細胞の量及び局在化もまた、投与後に末梢血及び組織においてモニタリングする。具体的には、末梢血及び炎症部位、すなわち、リンパ節、脾臓、腸及び骨髄における複数ドナーCD4IL-10細胞の存在をモニタリングする。治療群のマウスをさらに3週間モニタリングして、長期生存を確認する。
【0230】
これらの結果は、複数ドナーCD4IL-10細胞が異種GvHDの低減及び予防に有効であることを示している。
【0231】
6.8.3.実施例3:GvHDの阻害及び癌の治療
複数ドナーCD4IL-10細胞の集団を、ヒトPBMC及びAML腫瘍細胞を移植したNSGマウスモデルにおいて、ヒトPBMCによって誘導される異種GvHDに対するそれらの効果及び抗腫瘍効果について試験する。AML細胞(ALL-CM)は、国際公開第2016/146542号に以前に記載されているようにi.v.投与される。PBMC又は複数ドナーCD4IL-10細胞又はそれらの組み合わせを3日後に投与する。
【0232】
実施例1に記載されるように、複数ドナーCD4IL-10細胞を得る。複数ドナーCD4IL-10細胞の治療効果を、それぞれが0日目に照射を受け、5×106個のALL-CM細胞を有する4つの異なる群のマウス(AMLマウス)、すなわち、(i)さらなる治療を行わないAMLマウス、(ii)複数ドナーCD4IL-10細胞とは非血縁のドナー由来の5×106個のヒトPBMCを投与されたAMLマウス-PBMCは重篤な異種GvHDを引き起こす、(iii)2.5×106個の複数ドナーCD4IL-10細胞を投与されたAMLマウス、及び(iv)PBMCと複数ドナーCD4IL-10細胞との組み合わせを1:1若しくは2:1の比で、又は異なる比で投与されたAMLマウス、において試験する。マウスの1つのさらなる群は、ALL-CML細胞を投与されないが、照射後3日目に5×106個のヒトPBMCを投与される。
【0233】
ヒトPBMCによって誘導された異種GvHDに対する複数ドナーCD4IL-10細胞の効果を、体重減少、皮膚病変、毛の状態、活性、死亡率及び長期生存に基づいて試験する。複数ドナーCD4IL-10細胞の抗腫瘍又は移植片対白血病(GvL)効果を、血液循環中の腫瘍細胞の減少及び長期の無腫瘍生存に基づいて試験する。
【0234】
一部のマウスは、長期生存及び完全な腫瘍寛解をモニタリングするために7週間までモニタリングされる。
【0235】
結果は、複数ドナーCD4IL-10細胞が、異種GvHDの阻害及び癌の治療の両方において有効であることを示している。
【0236】
6.8.4.実施例4:複数ドナーCD4IL-10細胞を用いた癌の治療
複数ドナーCD4IL-10細胞の集団を、NSGマウスにおけるT細胞療法のALL-CM白血病モデルにおいて試験する。
【0237】
0日目に、NSGマウスに亜致死量の放射線を照射し、骨髄性白血病細胞(ALL-CM)(5×106個)を静脈内注射した。動物の第1の群では、PBMC(5×106個)又は単一のドナー(ドナーBC-I及びドナーBC-H由来)のCD4IL-10細胞(2.5×106個)を3日目に注射した。動物の第2の群では、PBMC(5×106個)又は複数ドナーCD4IL-10細胞(2.5×106個)を3日目に注射した。移植片対白血病(GvL)効果を、動物において、血中白血病細胞の減少及び長期の無白血病生存に基づいて試験した。白血病を以前に報告されているように測定した(Locafaro G.et al Molecular Therapy 2017)。
【0238】
図17A及び
図17Bに示されるように、ALL-CM骨髄白血病細胞を注射されたマウスのすべてが、17日目に広範な白血病進行を有していた。5×10
6個のPBMCの投与は、白血病進行の強力な阻害をもたらした。興味深いことに、白血病進行の同程度の阻害レベルが、より少ない数(2.5×10
6個)の単一ドナーCD4
IL10(
図17A)又は複数ドナーCD4
IL10(
図17B)によって得られた。これらのデータは、単一ドナー及び複数ドナーCD4
IL10が強い直接的な抗白血病効果を有することを示している。
【0239】
単一ドナーCD4
IL10及び複数ドナーCD4
IL10の移植片対白血病(GvL)効果を、ALL-CM骨髄性白血病細胞を注射したマウスにおいてPBMCと組み合わせてさらに試験した。5×10
6個のPBMCの投与は白血病進行の強力な阻害をもたらし、単一ドナーCD4
IL10(2.5×10
6個)と組み合わせた5×10
6個のPBMCの投与は相乗効果を有した(
図18A)。興味深いことに、2.5×10
6個の複数ドナーCD4
IL10と組み合わせた5×10
6個のPBMCの投与は、同等の相乗的GvL効果を有した(
図18B)。これらのデータは、複数ドナーCD4
IL10がPBMCと相乗的に作用して強力なGvL効果を媒介することを示している。
【0240】
6.8.5.実施例5:複数ドナーCD4IL-10細胞を用いた慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療
【0241】
NLPR3インフラマソームの活性化は、多くの慢性炎症性及び自己免疫疾患に関与している。NLPR3インフラマソームは、単球/マクロファージによる炎症促進性サイトカインIL-1β及びIL-18のカスパーゼ1媒介産生をもたらす「危険シグナル」によって活性化され得る。ヒト単球によるNLPR3インフラマソーム及びIL-1β/IL-18産生に対する複数ドナーCD4IL-10細胞の効果を調べるために、一連のインビトロ実験を行う。
【0242】
最初に、ヒトPBMCを、Ficoll/Paque(Sigma-Aldrich)を用いた標準密度遠心分離によって末梢血から単離する。単球単離キットII(Miltenyi)を製造者の説明書に従って使用して、負の選択によってヒトPBMCから単球を単離する。正の選択又は接着は細胞の望ましくない活性化をもたらし得るので、負の選択が好ましい。3%の毒素を含まないヒトAB血清を含有する培養培地中の96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、1つのウェルにつき、200μ当たり、2×105個又は1×105個の複数ドナーCD4IL-10細胞が存在するところに、単離された単球を、5×104細胞/200μlで播種する。
【0243】
表1は、各セットが6ウェルの細胞を含む17セットの単球に適用された治療条件をまとめたものである。LPS単独で、ATPによって提供される第2のシグナルなしにヒト単球を活性化できることが知られている。
【表1】
【0244】
表1に概説した処理の後、各群につき6つのウェルから上清を回収し、IL-1β/IL-18産生を、成熟IL-1β又はIL-18(Biolegend)に特異的なELISAによって測定する。グループNo.3、10、13、14及び17について6ウェルから回収した細胞をウエスタンブロットによって分析して、活性化カスパーゼ1のレベルを調べる。
【0245】
実験から得られたデータは、複数ドナーCD4IL-10細胞が活性化単球によるIL-1β及びIL-18産生を下方制御することを示す。本発明者らはさらに、複数ドナーCD4IL-10細胞が活性化単球における成熟カスパーゼ-1産生を下方制御することを示す。さらに、複数ドナーCD4IL-10及び複数ドナーCD4IL-10によって産生されるIL-10は、インフラマソームを下方制御する。
【0246】
単球の代わりにヒトマクロファージ又は樹状細胞を用いて同様の実験を行う。実験の結果は、複数ドナーCD4IL-10細胞が、活性化マクロファージ及び樹状細胞由来のIL-1β、IL-18及び成熟カスパーゼ-1産生をさらに下方制御することを示している。
【0247】
これらの結果は、複数ドナーCD4IL-10細胞が、NLPR3インフラマソームの過剰活性化を伴う疾患又は障害を治療するために使用され得ることを示唆している。具体的には、複数ドナーCD4IL-10細胞を使用して、慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療することができる。NLPR3インフラマソームは、外因性又は内因性の「危険シグナル」、例えば、病原体関連分子パターン(PAMP)、シリカ、アスベスト、損傷ミトコンドリア、壊死細胞及びストレス細胞からの危険関連分子パターン(DAMP)様産物、及び尿毒症酸結晶によって活性化され得る。
【0248】
6.8.6.実験方法及び材料
細胞調製物及び細胞株末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Hypaque勾配での遠心分離によって調製した。CD4+T細胞をCD4 T細胞単離キット(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach、Germany)で精製し、95%超の純度が得られた。成熟樹状細胞(DC)を、CD14+MicroBeads(Miltenyi Biotech、ドイツ)を製造者の説明書に従って使用して正の選択を行った末梢血CD14+単球から生成し、10%ウシ胎児血清(FBS、Lonza、イタリア)、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、イタリア)、2mMのL-グルタミン(Lonza、イタリア)を補充したRPMI1640(Lonza、イタリア)中、10ng/mLの組換えヒト(rh)IL-4(R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州、米国)及び100ng/mLのrhGM-CSF(Genzyme、シアトル、ワシントン州)の存在下、37℃で5日間培養し、1mg/mLのリポ多糖(LPS、Sigma、カリフォルニア州、米国)でさらに2日間成熟させた。
【0249】
プラスミド構築ヒトIL-10のコード配列をpH15C(ATCCn°68192)から切り出し、549bp断片をpBluKSM(Invitrogen)のマルチクローニングサイトにクローニングして、pBluKSM-hIL-10を得た。pBluKSM-hIL-10からhIL-10を切除し、1074.1071.hPGK.GFP.WPRE.mhCMV.dNGFR.SV40PA(ここではLV-ΔNGFRと呼ぶ)にライゲーションして555bpの断片を得て、LV-IL-10/ΔNGFRを得た。双方向プロモーター(ヒトPGKプロモーター+反対方向のCMVプロモーターの最小コア要素)の存在は、2つの導入遺伝子の同時発現を可能にする(Locafaro et al.Mol Ther.2017;25(10):2254-2269)。LV-IL-10/ΔNGFRの配列をパイロシーケンシング(Primm)によって検証した。
【0250】
ベクター作製及び滴定VSV-G-シュードタイプ化第3世代双方向レンチウイルスベクターを、293T細胞へのCa3PO4一過性4プラスミド共トランスフェクションによって作製し、報告されているように超遠心分離によって濃縮した(Locafaro et al.Mol Ther.2017;25(10):2254-2269)。限界希釈によって力価を推定し、HIV-1 Gag p24抗原免疫捕捉(NEN Life Science Product、ウォルサム、マサチューセッツ州)によってベクター粒子を測定し、ベクター感染価を力価と粒子の比として計算した。力価は、5×108から6×109形質導入単位/mLの範囲であり、感染価は、5×104から105形質導入単位/p24のngの範囲であった。
【0251】
CD4IL-10細胞株の作製ポリクローナルCD4形質導入細胞を以前に報告されているように得た(Andolfi et al.Mol Ther.2012;20(9):1778-1790)。端的に言えば、CD4精製T細胞を可溶性抗CD3モノクローナル抗体(mAb、30ng/mL、OKT3、Janssen-Cilag、Raritan、ニュージャージー州、米国)、抗CD28mAb(1μg/mL、BD)及びrhIL-2(50U/mL、PROLEUKIN、ノバルティス、イタリア)で48時間活性化した。T細胞に、20の感染多重度(MOI)を有するLV-IL-10/ΔNGFR(CD4IL-10)を形質導入した。11日目に、CD271+マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を使用してCD4+ΔNGFR+細胞をビーズ選別し、5%ヒト血清(BioWhittaker-Lonza、ワシントン州)、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(BioWhittaker)及び50U/mLのrhIL-2(PROLEUKIN、ノバルティス、イタリア)を含むX-VIVO15培地で増殖させた。7日目及び10日目に、培地を、50U/mLのrhIL-2を補充した新鮮な培地と交換した。14日目に、細胞を回収し、洗浄し、以前に報告されているように同種フィーダー混合物で再刺激した(Andolfi et al.Mol Ther.2012;20(9):1778-1790)。14日後、細胞を回収し、凍結した。解凍したCD4IL-10細胞を再刺激し、2回目及び3回目の再刺激及び増殖の後、インビトロで機能的特性解析を行って、インビボ実験に使用した。
【0252】
ベクターコピー数分析非組込み型ベクター形態を取り除くために、形質導入後11日間細胞を培養した。QIAamp DNA Blood Mini Kit(QIAgen、51106)を用いて製造者の説明書に従ってゲノムDNAを単離した。ベクターの組み込みを、QX200 Droplet Digital PCR System(Bio-Rad)によって、製造業者の説明書に従って定量化した。
【0253】
サイトカインの測定サイトカイン産生を測定するために、2回目及び3回目の再刺激の後、単一ドナー及び複数ドナーのCD4IL-10細胞を刺激せずに放置するか、又は最終体積200μlの培地(96ウェル丸底プレート、2×105/ウェル)中の固定化抗CD3(10μg/mL)及び可溶性抗CD28(1μg/mL)mAbで刺激した。48時間の培養後に上清を回収し、IL-10、IL-4、IL-5、IFN-γ及びIL-22のレベルを製造者の説明書(BD Biosciences)に従ってELISAによって測定した。
【0254】
フローサイトメトリー分析CD4による表面染色後のグランザイムB(クローンMHGB04、Invitrogen、米国)の発現のために、CD4IL-10細胞を固定し、透過処理し、BD Cytofix/Cytoperm(商標)キットを製造者の説明書(カタログ番号554714、Biolegend、米国)に従って使用して染色した。染色した細胞を、1%FBSを補充したPBSで2回洗浄し、FlowJo10ソフトウェアを利用して分析したBD LSRFortessaで分析した。
【0255】
殺滅アッセイ2回目及び3回目の再刺激の後、単一ドナー及び複数ドナーのCD4IL-10細胞の細胞傷害性を共培養実験において分析した。端的に言えば、非骨髄性白血病株及び骨髄性白血病細胞株である、それぞれK562及びALL-CMを標的細胞として使用し、CD4IL-10細胞を1:1の比(105個の標的細胞及び105個のCD4IL-10細胞)で3日間プレーティングした。共培養の終了時に、細胞を回収し、K562及びALL-CM細胞を分析し、FACSによって計数した。
【0256】
抑制アッセイ単一ドナー及び複数ドナーCD4IL-10細胞の抑制能を測定するために、製造者の説明書に従って、同種PBMCをCell Proliferation Dye eFluor(登録商標)670(Invitrogen、カリフォルニア州、米国)で標識した後に、同種成熟DC(5×104細胞/ウェル)及び可溶性抗CD3(50ng/mL)mAbによって刺激した。PBMC及びサプレッサー細胞を1:1の比(105個のPBMC及び105個のCD4IL-10細胞)で添加した。培養3日後、CD4+ΔNGFR-又はCD8+ΔNGFR-T細胞のeFluor670希釈物をFACSによって分析することによって、応答細胞の増殖を調べた。
【0257】
移植片対宿主病モデル:すべての実験において、6/8週齢の雌NSGマウスを使用した。0日目に、マウスは、マウスの体重に応じて線形加速器から175~200cGyの単回用量の全身照射を受け、PBMC細胞(5×106個)、又はCD4IL-10細胞(単一ドナー又は複数ドナー(3名のドナーのプール)5×106個又は2.5×106個)、又はCD4IL-10細胞(5×106個又は2.5×106個)と組み合わせたPBMC(5×106個)を静脈内投与した。生存率、体重減少、活動性、毛、皮膚及び姿勢を、以前に報告されているように週に少なくとも3回モニタリングした(Bondanza et al.Blood.2006;107(5):1828-1836)。マウスの体重減少が20%となったとき、倫理上の理由からマウスを安楽死させた。
【0258】
あるいは、0日目に、マウスは上記のように全身照射を受けた。3日目に、CD4+T細胞(2.5×106個)、単一及び複数ドナー(3人のドナーのプール)CD4IL-10細胞(2.5×106個)、又はCD4+T細胞(2.5×106個)を単一及び複数ドナー(3人のドナーのプール)CD4IL-10細胞(2.5×106個)と組み合わせてマウスに注射した。GvHD誘導を上記のようにモニタリングした。
【0259】
7.参照による組み込み
本出願で引用されたすべての刊行物、特許、特許出願及び他の文献は、各個々の刊行物、特許、特許出願又は他の文献がすべての目的のために参照により組み込まれることが個別に示されているのと同程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0260】
8.均等物
様々な具体的な実施形態を図示して説明してきたが、上記の明細書は限定的なものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されよう。本明細書を検討すれば、当業者には多くの変形形態が明らかになるであろう。
9.配列
配列番号1(ヒトIL-10のアミノ酸配列)
配列番号2(ヒトIL-10の例示的なnt配列)
配列番号3(ΔNGFRのアミノ酸配列)
配列番号4(ΔNGFRの例示的なnt配列)
配列番号5(bd.ΔNGFR.PGK.IL-10のヌクレオチド配列)
【国際調査報告】