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特表2023-533624異常センサを多変量的に特定するためのスーパーバイズなし統計的方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】異常センサを多変量的に特定するためのスーパーバイズなし統計的方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/18 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
G06F17/18 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540949
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 FR2021051273
(87)【国際公開番号】W WO2022008851
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】2007300
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188222
【氏名又は名称】イッポン・イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルジュレ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】アルヴェス,アモリ
(72)【発明者】
【氏名】アルシャンボー,オーロル
(72)【発明者】
【氏名】スアル,キャロル
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB55
5B056BB64
5B056BB66
(57)【要約】
本発明は、個体の特徴を測定する異常センサを特定する方法に関し、この方法は、
・各センサが測定する、個体の特徴の曲線を収集するステップ50と、
・所与のセンサおよび参照曲線について、当該曲線と、当該センサのその他曲線のそれぞれとの相違指数を計算する処理ステップ100と、
・同じセンサから得られる各曲線について、上記処理ステップ100が反復的に繰り返されることで、各曲線について相違指数を求める第1反復ステップ200と、
・別のセンサに対してステップ100および200を実行することで、相違指数の表を求める第2反復ステップ300と、
・表の多変量統計的処理から、各個体についての異常指数を計算するステップ400と、・異常個体を特定するステップ600と、
・異常センサを特定するステップ700と、
を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベントの母集団から個体群の特徴群を測定する複数のセンサから、異常センサと称される少なくとも1つのセンサを特定し、演算器により実行されるコンピュータソフトウェアにより実施される方法であって、
・前記センサeの各々について、前記センサが測定する、曲線と称され、それぞれ個体の特徴を表すデータ曲線を収集するステップ50と、
・所与のセンサについて、そして「参照曲線」と称する、検討用曲線について、前記参照曲線と、前記センサからのその他曲線のそれぞれとの距離を表す、「相違指数」と称される指数を計算する処理ステップ100と、
・同じセンサから得られる前記曲線の各々について、前記処理ステップ100が反復的に繰り返されることで、前記曲線の各々について相違指数を求める第1反復200と、
・別のセンサに対して前記ステップ100および200を実行することで、前記センサそれぞれについて、前記センサの前記曲線の各々の、前記センサのその他曲線群に対する相違指数の表を求める第2反復300と、
・前記第2反復ステップ300により得られた、前記相違指数の表の全体または一部に対する多変量統計的処理から、前記個体の各々についての異常指数を計算するステップ400と、
・前記計算された異常指数に応じて、少なくとも1つの異常個体を特定するステップ600と、
・少なくとも1つの異常センサを、前記センサについて計算された前記相違指数と、直前のステップにおいて特定された前記異常個体とに応じて、統計的処理を実行することで特定するステップ700と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理ステップ100は、
a.前記所与のセンサについて、前記参照曲線を、前記その他曲線のそれぞれから順次減算することで、差分曲線を求めるサブステップと、
b.前記差分曲線を二乗するサブステップと、
c.得られた曲線を加算して、単一の総和曲線を求めるサブステップと、
d.前記総和曲線の平均の平方根に等しいものとして、前記相違指数を求めるサブステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理ステップ100は、前記参照曲線と、同じセンサが生成した前記曲線のそれぞれとの相関係数を計算し、前記係数の平均を計算するサブステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理ステップ100は、異常検出方法を、前記曲線の、その他曲線のそれぞれの値に対する測定値に適用することで、多変量相違指数を計算するサブステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ステップ100の前に、処理500の実行前にデータを用意する準備ステップが実行され、そこでは前記曲線が全て、同一の時間を共有するように、即ち、前記曲線が全て、同じ数の点を有するようになり、必ず同一の指数に対して揃えられるように同一の時間で区切られる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記データは、電子部品製造設備に組み込まれたセンサから得られ、物理的パラメータを示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記データは、試験飛行を実行するために、飛行機に組み込まれたセンサから得られ、物理的パラメータを示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記データは、生理学的パラメータを測定するセンサから得られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記データは、スペクトルデータを生成するセンサから得られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
画像に適用される方法であって、前記画像は画素の行列で特徴付けられ、前記センサ(1つまたは複数)は、前記画素の各々についてグレー、青、赤、または緑の色のレベルを測定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ハイパースペクトル画像に適用される方法であって、前記画像は画素の行列で特徴付けられ、前記画素の各々は波長で特徴付けられ、前記センサの各々は所与の波長を検出する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上のプロセッサによって実行されると、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実装するように前記プロセッサ(1つまたは複数)を構成するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項11に記載のコンピュータプログラム製品を格納するコンピュータメモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常センサと称するセンサを特定することについての分野に関する。センサは、異常曲線を生成する場合に異常とされる。
【0002】
本出願において、「曲線」という用語は、センサまたはその他任意のものが生成する任意の曲線を示す。これら曲線は時間、または例えばスペクトルなどその他形式であり得る。
【0003】
異常曲線は具体的には、その他曲線と統計的に異なる曲線である。ここで、異常曲線という概念が、実施される方法を決定する条件を成すという点で、根本的に重要であることに留意されたい。また、曲線は振幅、位相、形状、種類(離散的または連続的)、一変量(単一センサ)および/または多変量(複数のセンサ)の差のように、様々な形式であり得る。
【0004】
本発明の適用分野は、複数のセンサにより監視されるイベントに関する。当該センサは、イベントの母集団から、個体群の特徴を測定するものである。
【背景技術】
【0005】
関数データとも称される曲線の処理は、過去数年にわたって行われてきた。ただし、異常曲線の特定は、一般的に一変量によるものである。即ち、既存の方法は、センサ単位で行われ、所与のセンサについて異常曲線の検出を図るものであった。
【0006】
既存の方法は、複数のセンサがあるような場合でも、各センサが個別に処理され、センサ間の相関は考慮されないため、多変量的ではない。ただし、一変量的観点から、即ち1つのセンサのみで見ると異常ではない曲線が、いくつかのセンサに対して正の相関を持つ一方で、曲線の多くが、それら同センサに対して負の相関を持つということも多い。このような状態を当業者は、「多変量由来異常曲線現象」と呼ぶ。本明細書においてこのような状態が特定可能となることは極めて興味深いということが理解されよう。
【0007】
過去5年間、新たな関数データに対する多変量式検出方法が文献により提案されている。それらは主に2つの手法に基づく。
【0008】
最も一般的な手法は、所与のセンサについて、異なる様々な技術により、曲線を「低減」するという方法である。より具体的には、数百、数千もの点で特徴付けられる初期曲線が、投影的方法(Bスプライン、フーリエ式、ウェーブレットなど)により係数群に変換される。そして、これら係数の一部を選択することで、関連する信号のみを残し、ノイズを除去する。このような係数の一部は、センサそれぞれについて取得され、まとめられる。その後、このように低減された曲線について異常を検出するのに、従来の統計的技術を使用することができる。
【0009】
しかし、この手法には問題も多い。第一に、投影的方法の選択は、関数データの種類(例えば、周期的であるか否か)に依存することが多いため、経験則的知識に基づくことが多い。したがって、汎用性が低い方法となる。さらに、異常の検出という面において、係数選択は極めて繊細な工程である。閾値設定が「厳し」すぎれば、信号の一部、延いては異常状態についての情報が喪失しかねないのである。
【0010】
単純な統計的指数(平均、標準偏差など)を1つ以上使用して、曲線をまとめるという
単純な発想による方法も存在する。しかしその場合、情報の喪失は極めて甚大となる。一方で、全係数を維持すれば、情報の喪失はない。ただしノイズを除去できず、曲線よりもより多くの係数が得られるという状況に陥りかねない。統計において望ましくない事態である。
【0011】
もう一つの手法は、大多数のデータに対する深度という概念から、曲線の異常を測定する指数を直接計算することを図るという手法である。曲線の深度値が大きいほど、大多数のデータに対して状態がより類似するという考えである。この手法の主な欠点は、計算が複雑になることである。即ち、たとえ10個程度まででも、センサ数が増加すると、実際のデータ群に対して適用することが難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を鑑み、本発明は、上述の欠点を解消する、異常曲線検出用の統計的方法に関する。より具体的には、本発明は、分布の種類、および/またはセンサに含まれる信号の種類ついての経験則的知識に依存しないという意味でのスーパーバイズなし方法を含む。さらに、曲線の状態についての2段式の、即ち、曲線間、センサ間の多変量分析に基づく。これにより、全曲線からの全情報がその比較に使用されるという点で独自性を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、イベントの母集団から個体群の特徴群を測定する複数のセンサから、異常センサと称される少なくとも1つのセンサを特定し、演算器により実行されるコンピュータソフトウェアにより実施される方法を提案し、この方法は、
・各センサについて、当該センサが測定する、曲線と称され、それぞれ個体の特徴を表すデータ曲線を収集するステップと、
・所与のセンサについて、そして「参照曲線」と称する、検討用曲線について、当該参照曲線と、当該センサからのその他曲線のそれぞれとの距離を表す、「相違指数」と称される指数を計算する処理ステップと、
・同じセンサから得られる各曲線について、上記処理ステップが反復的に繰り返されることで、各曲線について相違指数を求める第1反復と、
・別のセンサに対して第1反復の上記処理ステップを実行することで、当該センサそれぞれについて、当該センサの各曲線の、当該センサのその他曲線群に対する相違指数の表を求める第2反復と、
・上記第2反復ステップにより得られた、上記相違指数の表の全体または一部に対する多変量統計的処理から、各個体についての異常指数を計算するステップと、
・上記計算された異常指数に応じて、少なくとも1つの異常個体を特定するステップと、・少なくとも1つの異常センサを、当該センサについて計算された上記相違指数と、直前のステップにおいて特定された上記異常個体とに応じて、統計的処理を実行することで特定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【0014】
有利に、曲線の情報は、曲線と他との間の相違情報が維持された状態で、点で集約される。
【0015】
言い換えると、本発明の特徴により、各曲線は、単一の代表値で特徴付けられる。これにより有利に、特定するステップ時に処理するデータを極めて少なくできる。それでいて、曲線の状態についての全情報が維持される。したがって、従来の方法では検出できなかった異常曲線が検出される。
【0016】
より具体的には、各センサの曲線の数は、一桁の実数まで低減される。したがって、通
常の多変量異常検出方法を、機能しなくなったデータに適用できる。
【0017】
さらに、本発明の方法によると、異常個体がより正確に検出可能となる。これは、センサによる当該個体の特徴の測定値が集約されたことによる効果である。
【0018】
この態様はさらに、誤警報の防止または低減を可能とする。
【0019】
本発明は有利に、故障したセンサ、およびイベントの母集団における、異常な個体群の特定を可能とする。即ち、異常個体(1つまたは複数)は、当該イベントの特徴の想定されるまたは通常の状態とは一致しない状態の特徴を有するのである。
【0020】
方法は、計算回数の低減および、多数のデータ、したがって、多数のセンサの処理を可能とする。
【0021】
特定の実装では、本発明は、以下の1つ以上の特徴を単独で、または技術的に妥当な任意の組み合わせでさらに含み得る。
【0022】
特定の実装では、上記処理ステップは、上記所与のセンサについて、上記参照曲線を、上記その他曲線のそれぞれから順次減算することで、差分曲線を求めるサブステップと、上記差分曲線を二乗するサブステップと、得られた曲線を加算して、単一の総和曲線を求めるサブステップと、上記総和曲線の平均の平方根を計算するサブステップと、を含む。
【0023】
特定の実装では、上記処理ステップ100は、上記参照曲線と、同じセンサが生成した上記曲線のそれぞれとの相関係数を計算し、当該係数の平均を計算するサブステップを含む。
【0024】
特定の実装では、上記処理ステップ100は、異常検出方法を、上記曲線の、その他曲線のそれぞれの値に対する測定値に適用することで、多変量相違指数を計算するサブステップを含む。
【0025】
特定の実装では、上記処理ステップ100の前に、処理500の実行前にデータを用意する準備ステップが実行され、そこでは上記曲線が全て、同一の時間を共有するように、即ち、上記曲線が全て、同じ数の点を有するようになり、必ず同一の指数に対して揃えられるように同一の時間で区切られる。
【0026】
特定の実装では、本発明に係る方法において、上記データは、電子部品製造設備に組み込まれたセンサから得られ、物理的パラメータを示す。
【0027】
特定の実装では、本発明に係る方法において、上記データは、試験飛行を実行するために、飛行機に組み込まれたセンサから得られ、物理的パラメータを示す。
【0028】
特定の実装では、本発明に係る方法において、上記データは、生理学的パラメータを測定するセンサから得られる。
【0029】
特定の実装では、本発明に係る方法において、上記データはスペクトルデータである。
【0030】
特定の実装では、本発明に係る方法は画像に適用され、当該画像は画素の行列で特徴付けられ、上記センサ(1つまたは複数)は、各画素についてグレー、青、赤、または緑の色のレベルを測定する。
【0031】
本発明はまた、プログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関し、このプログラムコード命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、前述の方法を実装するように当該プロセッサ(1つまたは複数)を構成する。
【0032】
このコンピュータプログラム製品は有利に、1つ以上のプロセッサに、異常曲線を生成するセンサを特定可能とする。
【0033】
本発明はまた、前述のコンピュータプログラム製品を格納するコンピュータメモリに関する。
本発明は、非限定的な例として提示され、以下の図面を参照する以下の説明を読むことでよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る方法のフローチャートである。
図2】センサによって実施される3つの測定周期の表である。
図3図2の測定周期に対応する曲線である。
図4】上記曲線のそれぞれと、同じセンサが生成した全てのその他曲線との距離を示す値の表であり、当該表は第1反復から得られる。
図5】2つのセンサ群からの曲線の相違指数の表であり、当該表は第2反復ステップから得られる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、コンピュータのプロセッサなどの演算器により実行されるコンピュータソフトウェアにより実現される。
【0036】
本明細書は非限定的な例として提示される。実施形態の各特徴は、有利に任意の別の実施形態の任意の別の特徴と組み合せ可能である。
【0037】
上述のように、本発明は、複数のセンサから、異常センサと称するセンサを特定する方法に関する。方法のステップを図1に示す。
【0038】
当該センサは、イベントの母集団から個体群の特徴群を測定する。特徴は、具体的には圧力、温度、輝度などの物理的特徴であり得る。したがって、各個体は、互いに異なり得る、上記センサが測定した特徴で特徴付けられる。言い換えると、各センサは、個体の異なる特徴を測定し得る。
【0039】
個体とは、統計的意味での個体であり得る。それはイベントまたはその一部であり得る。
【0040】
様々なイベントがあり得る。非限定的に、それは試験飛行、部品またはシステム製造工程、監視システムによる所与の空間の監視であり得る。
【0041】
したがって、複数のセンサは、圧力、温度、湿度、輝度、電流、変位、画像などのセンサを含み得る。各センサの性質は異なり得る。これは、ある測定技術が専門とする測定対象データの種類についても言える。例えば、圧力センサ群については、歪ゲージに基づくセンサ、および/または容量性圧力センサ、および/またはピエゾ抵抗圧力センサ、および/または延いては共振圧力センサがあり得る。
【0042】
センサは、アナログ式またはデジタル式であり得る。
【0043】
センサからのデータは、同じ、または異なる物理的パラメータに関し得る。例えば、第1センサが圧力を測定し、第2センサが温度を測定するということがあり得る。好適な実施形態において、センサは異なる物理的パラメータを測定する。実際、これにより、製造設備についてより多くの情報を得られる。
【0044】
これら測定は、一般的に、毎秒1つ以上の測定点で実施される。測定周期の終わりには、曲線と称するデータ曲線が各センサについて得られる。この曲線は時間に関するものであり得る。より具体的には、各曲線は、個体の特徴に関し、縦座標にセンサが測定したパラメータ特有の領域をとり、横座標に時間領域をとり得る。
【0045】
センサは、この発明の非限定的な例において、物理的環境に組み込まれる。
【0046】
異常センサと称するセンサは、当該センサがその動作に問題があり故障していることを意味し得る。さらに、それがイベントの母集団における個体群の特徴を測定し、この特徴が、予想されていない状態である、または当該イベントにおける特徴の状態として通常ではないという点で異常であることも意味し得る。
【0047】
この異常は、特徴付けられた環境に甚大な影響を及ぼすような、システム故障を強調し得る。さらに、例えば空間監視時における異物の出現のような、当該環境における予期せぬイベントまたは不具合の発生を強調し得る。
【0048】
イベント、またはセンサの測定する個体で異常が強調されるものを異常と称し、異常と見做す。
【0049】
方法の最初のステップは、各センサについて、当該センサが測定したデータの曲線を収集するステップ50である。各データの曲線は、個体の特徴を表す。
【0050】
例えば、図2は、センサにより実行される3つの測定周期C1、C2、およびC3から得られたデータの表を示す。図3は、対応する曲線を示す。
【0051】
本発明で収集される、曲線を特徴付けるデータは、例えば半導体などの電子部品を製造する設備に組み込まれたセンサから得られ得る。これらセンサは、温度、圧力、湿度など、物理的パラメータの測定値群を提供できる。したがって、異常曲線を生成した1つ以上のセンサを特定することで、製造中の、またはセンサ(1つまたは複数)がこれら異常曲線を生成した際に当該製造設備にて製造されていた製品に、1つ以上の不具合がある可能性が高いことが強調可能となり得る。したがって、本発明は、予知保全を実行する手段を成し得る。さらに方法は、1つ以上の故障したセンサを強調可能とし得る。
【0052】
代替的には曲線は、試験飛行を行うため、数百に及ぶ物理的パラメータを測定することを目的として、飛行機に組み込まれたセンサから得られ得る。この実装において、センサは、飛行機のシステムまたはサブシステム、あるいはその周辺に組み込まれ得る。この用途では、センサの曲線は、飛行時に実施された測定周期に対応する。この実装において、方法は、当該センサにより監視されたシステムまたはサブシステムが、異常な状態であることを強調し得る。さらに方法は、1つ以上の故障したセンサを強調可能とし得る。
【0053】
さらに代替的には、データは、被験者の生理学的パラメータを測定することを意図するためのセンサから得られ得る。この場合、センサは、被験者上またはその近傍に配置され得る。この利用形態の場合、非限定的に、一連のセンサは、移動センサまたは延いては脳波図を生成可能とするセンサを含み得る。この実装において、方法は、被験者が、所与の疾患または疾病に罹りやすい可能性があることを強調し得る。さらに方法は、1つ以上の
故障したセンサを強調可能とし得る。
【0054】
曲線群は、画像群をも表し得る。これら画像は、サーマルカメラなどのカメラが有し得る、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ、CCD(電荷結合素子)から得られ得る。実際、画像は画素行列により特徴付けられ得る。各画素は、白黒画像の場合にグレーレベル、カラー画像の場合は緑、青、および赤のレベルで特徴付けられ得る。白黒画像の場合、センサはグレーレベルを測定する。カラー画像の場合、3つのセンサが、各画素の赤のレベル、緑のレベル、および青のレベルを測定する。個体は、画像の全体または一部であり得る。好ましくは、各個体は、画素の行または列である。したがって、白黒画像について、測定曲線は画像の全部または一部の画素に応じたグレーレベルとなり、カラー画像について、曲線は画像の全部または一部の画素に応じた赤、青、または緑のレベルとなる。
【0055】
方法は、ハイパースペクトル画像における異常領域検出を可能とし得る。ハイパースペクトル画像は、それぞれが波長にて特徴付けられた画素の行列により定義され得る。各センサは、所与の波長を検出するように構成される。個体は、画像の全部または一部であり得る。好ましくは、各個体は、画素の行または列である。各曲線は、ハイパースペクトル画像の全部または一部の画素に応じた波長である。
【0056】
画像群において異常画像を検出することは有利に、例えば、動画または衛星画像で経時的に繰り返し生じる「異常」要素をスーパーバイズなし手法で特定するという、本発明の適用分野である。
【0057】
方法は、曲線処理ステップ100を含む。ここでは、所与のセンサについて、当該センサにより得られる全ての曲線が、「参照曲線」という検討用の曲線に対して、当該参照曲線と、このセンサにより生成されたその他曲線のそれぞれとの距離を示す指数を計算するために、回収される。
【0058】
このステップは、それぞれこの指数を異なる方法で取得する、3つの実施形態において後述する。
【0059】
後述のように、この指数は、相違指数の形態を採り得る。
【0060】
有利に、この相違指数は、曲線の異常特徴を評価しやすくする。
【0061】
本発明の第1実施形態において、曲線処理ステップは、以下のように実施される。
【0062】
所与のセンサについて、上述のように曲線が選択される。この曲線を「参照曲線」と称する。この参照曲線は、図2の列C1からC3の内の1つのデータにより特徴付けられる。
【0063】
この参照曲線を、その他曲線のそれぞれから、点毎に順次減算する。例として、図2に示すように、C1が参照曲線であれば、各時点tにおけるそのデータを、曲線C2およびC3の同じ時点tでのデータから順次減算する。
【0064】
より具体的には、所与のセンサについて、N個の処理済み曲線が成す群に関して、各参照曲線に対し、N個の「差分曲線」と称される曲線が得られる。これらはサイズが参照曲線と同一である。その後、各差分曲線を二乗するが、これも同様に点毎に行われる。
【0065】
二乗後の差分曲線を加算して、単一の総和曲線が得られる。最後の演算は、この総和曲
線の平均を取り、その平方根を取ることとなる。これらの演算の最後に、当該参照曲線と、センサにより生成されたその他曲線のそれぞれとの距離を示す指数が得られる。これを図3のグラフに示す。この指数を本明細書では「相違指数」と称する。
【0066】
図3のグラフにおいて、曲線C3の相違指数が、曲線C1およびC2の相違指数と比較して、異常に高いことがわかり得る。したがって、本発明の方法により、C3がC1およびC2と比較して異常な状態であるということが演繹できる。
【0067】
まとめると、処理ステップ100は、センサにより得られる曲線に関連付けられた相違指数として、偏差値の和の平均の平方根を計算することとなる。
【0068】
したがって、本発明に係る方法によって、参照曲線とその他曲線群との差に関する情報が、単一の値である相違指数へと集約される。
【0069】
一般的に、本発明の第1実施形態に係る曲線処理ステップは、以下のように定式化することができる。Nは曲線の数、Pはセンサの数、
【0070】
【数1】
【0071】
はセンサpのn番目の曲線であり、
・全ての曲線
【0072】
【数2】
【0073】
について、点毎の差の二乗が計算される。
(Cp,n-Cp,k (式1)
・その後、これの点毎の総和が計算される。
【0074】
【数3】
【0075】
・最後に、総和曲線の全ての点の平均を計算することによって、相違指数を得る。
【0076】
【数4】
【0077】
次に、これらの処理動作は、同じセンサにより得られる各曲線nに対して、第1反復ステップ200の間に反復的に、繰り返される。言い換えると、当該センサにより得られる各曲線が、順次参照曲線になる。したがって、このステップの終わりには、図3に示すよ
うな、それぞれの曲線に対する相違指数が得られる。
【0078】
本発明の第2実施形態において、曲線処理ステップ100は、以下のように実施される。
【0079】
所与のセンサおよび所与の参照曲線について、参照曲線と当該センサにより得られるその他曲線のそれぞれとの相関係数が計算される。この相関係数は、ブラベー・ピアソン法、スピアマン係数法などの当業者に公知の任意の方法によって得られる。
【0080】
より具体的には、所与のセンサについて、N本の処理済み曲線が成す群に全体で、各参照曲線についてN-1相関係数となる。
【0081】
その後、曲線のそれぞれについて、相関係数の平均が計算される。これにより、参照曲線とセンサにより得られるその他曲線のそれぞれとの距離を示す指数が得られる。この指数は、本明細書において「相違指数」と呼ばれる。
【0082】
本発明の第1実施形態について記載された処理ステップ100と同様にして、有利に、参照曲線とその他曲線群との偏差に関する情報が、単一の値へと集約される。
【0083】
一般的に、本発明の第2実施形態に係る曲線処理ステップ100は、以下のように定式化することができる。Nは曲線の数、Pはセンサの数、
【0084】
【数5】
【0085】
であり、
・曲線nとN本の曲線のそれぞれとの相関係数が計算される。
corr[(C,C)],n≠k (式4)
・所与のパラメータpと曲線nとの平均相関が計算される。
φ=平均[corr(C)] (式5)
【0086】
また、これらの処理動作は、同じセンサにより得られる各曲線に対して、第1反復ステップ200の間に、反復的に繰り返される。したがって、このステップの終わりには、図3および図4に示すような、それぞれの曲線に対する相違指数が得られる。
【0087】
この第3例示実施形態において、処理ステップ100は、曲線の、その他曲線のそれぞれの値に対する、測定値に適用される、例えば、マハラノビス距離法などの当業者に公知の異常検出方法によって得られる多変量相違指数を計算するステップを含む。したがって、時点が統計的意味において変数となる。
【0088】
一般的に、本発明の第3実施形態に係る曲線処理ステップ100は、以下のように定式化することができる。Nは曲線の数、Pはセンサの数、
【0089】
【数6】
【0090】
はパラメータpに対する曲線群を含む行列であり、
・N個の曲線に対する全ての相違指数が多変量的に計算され、したがって、時点が統計的意味において変数となる。
Ф=(φ,...,φ)=f[M] (式6)
【0091】
このステップは、センサの曲線のそれぞれについて繰り返される。特に、ステップ100と200とは、この計算において組み合わされている。
【0092】
したがって、このステップの終わりには、図4に示すような、それぞれの曲線に対する相違指数が得られる。
【0093】
第2反復ステップ300の間、第1反復ステップ200を含む曲線処理ステップ100が、その他のセンサからの曲線について、これらのセンサのそれぞれについてそれぞれの曲線の相違指数を得るために実施される。この第2反復ステップを図5に示す。
【0094】
この方法はまた、各個体についての異常指数を計算するステップ400を含む。当該異常指数は、各個体に特有のものであってもよい。これは、第2反復ステップ300により得られた、相違指数表の全体または一部に対する多変量統計的処理から決定可能である。例えば、多変量統計的処理は、当業者に公知の非関数データに多変量統計的アルゴリズムを適用することを含み得、例えば、マハラノビス距離、ホテリングT2などが挙げられる。これらの多変量統計的方法は、一般的に、閾値と比較可能なフォーマットの1つ以上の値を引き出すために、反復ステップ300により得られた相違指数表の処理を要する。多変量統計的方法はさらに、あらかじめ統計的閾値を決定することを要し、当該閾値を超える(またはそれぞれ下回る)値を選択し、それらを異常であると見做すことを意図している。一方、当該閾値を下回る(またはそれぞれ超える)値は正常と見做される。この閾値は、必要とされる所望検出感度に応じて修正可能である。したがって、閾値は、あらかじめ定められた許容異常曲線の最大率に基づき得る。
【0095】
この方法は、イベントの母集団から、異常個体600を特定するステップを含む。これは、計算された異常指数から実行される。これらが上記閾値と比較され得る。
【0096】
この方法は、その後、少なくとも1つの異常センサを特定するステップを含む。このために、当該センサについて計算された相違指数と、直前ステップにおいて特定された異常個体とに応じて、統計的処理が実行される。
【0097】
異常曲線を生成するセンサを特定するために、統計的処理が実行される。各センサについて、当該センサから特定された異常個体を特徴付ける曲線の相違指数の距離を、このセンサからその他個体を特徴付けるその他曲線の全ての相違指数の平均と比較し得る。この計算により、例えば、平均からの標準偏差として表現され得る距離の計算が可能となり得る。
【0098】
したがって、距離が長いほど、そのセンサの個体の異常への関与が深いことを示している。一方、距離が短いほど、そのセンサの個体の異常への関与が薄いことを示している。
【0099】
異常に最も深く関与しているセンサの曲線がプロットされ、同じセンサからの異常でない個体の曲線と比較され得る。
【0100】
その後、センサの異常のより正確な原因が強調され得る。例えば、ある異常センサからの異常曲線が所定の閾値より多ければ、そのセンサは故障と見做され得る。
【0101】
センサが故障と特定される場合、手動または自動でそのセンサは停止される。その後、それは再起動または交換され得る。
【0102】
ある異常センサからの異常曲線の数が所与の閾値未満であると、その個体は欠陥であると見做され得る。
【0103】
本発明によって実装されるアルゴリズムが適切に動作するために、本発明のこれら3つの実施形態では、曲線が全て、同じ数の点を有するようになり、必ず同一の指数、特に同じ時間領域、または同じスペクトルに対して揃えられる。
【0104】
この目的のため、本発明に係る方法は、好ましくは、処理ステップ100を実施する前に、アルゴリズムによって直接利用可能となるように、処理の前にデータの準備をする準備ステップを含む。そこでは、曲線が全て、同一の時間を共有するように同一の時間で区切られる。言い換えると、このデータ準備ステップでは、例えば動的時間歪曲法などの当業者にそれ自体が公知の方法で、曲線が全て互いに対応付けられる。
【0105】
有利に、本発明は、製造機械の問題を予期することができるように、予知保全を構成する。
【0106】
さらに、その適用分野によっては、例えば、飛行機の乗組員の異常な行動、1つ以上のセンサの故障などを明らかにする可能性のある、飛行機による異常飛行を検出可能とする。
【0107】
別の分野において、本発明は、パーキンソン病を患う患者の、震えまたは閉塞症の発症などの症状の出現を予知することを可能とする。同様の分野において、これらのデータは、異常の検出がなんらかの病状を明らかにし得る、脳波図または心電図から取り得る。
【0108】
ここでコンピュータプログラム製品の例を説明する。当該プログラム製品は、プログラムコード命令を含む。このプログラムコード命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、任意の形態の方法のうちの1つを実装するように当該プロセッサ(1つまたは複数)を構成する。
【0109】
さらにコンピュータメモリの例を説明する。当該コンピュータメモリは、上述のコンピュータプログラム製品を格納する。一例として、USBキー、ハードドライブ、さらにはクラウドであってもよい。
【0110】
さらに一般的に、上述の実装および実施形態は非限定的な例として記載されており、したがって、その他の変形も可能であることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】