(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】キャリア基板、キャリア基板の製造方法、およびキャリア基板から製品基板への転写層の転写方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
H01L21/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022562379
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020061027
(87)【国際公開番号】W WO2021213625
(87)【国際公開日】2021-10-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ブルクグラーフ
(57)【要約】
本発明は、キャリア基板から製品基板へ転写層を転写するためのキャリア基板、キャリア基板の製造方法、およびキャリア基板から製品基板への転写層の転写方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基板(1)から製品基板(2,2’,2’’,2e)へ転写層(6)を転写するためのキャリア基板(1)であって、前記キャリア基板(1)は、少なくとも以下の層を以下の順序:
- キャリアベース基板(3)
- 保護層(5)、および
- 前記転写層(6)
で備えているキャリア基板(1)において、前記転写層(6)は、前記保護層(5)上に成長していることを特徴とする、キャリア基板(1)。
【請求項2】
前記転写層(6)がグラフェン層(6)である、請求項1記載のキャリア基板(1)。
【請求項3】
特に前記転写層(6)に面する表面上での前記保護層(5)の粗さが、100μm未満、好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満、非常に好ましくは100nm未満、最も好ましくは10nm未満である、請求項1または2記載のキャリア基板(1)。
【請求項4】
前記転写層(6)が、前記キャリアベース基板(3)と前記保護層(5)との間に配置された少なくとも1つの剥離層(4)を備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項5】
前記転写層(6)が、前記剥離層(4)および/または剥離領域に作用する剥離手段(11)によって、前記保護層(5)とともに前記キャリアベース基板(3)から剥離可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項6】
前記保護層(5)が、炭素が溶解し得る材料から構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項7】
前記保護層(5)が、電磁放射線に対して非透過性となるよう設計されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項8】
前記保護層(5)とは反対側の前記転写層(6)の面上に、特に誘電体材料、好ましくは酸化ケイ素から構成される接触層(8,8’)が配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項9】
前記保護層(5)が、単結晶金属層であり、好ましくはニッケル製である、請求項1から8までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項10】
特に請求項1から9までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)から製品基板(2,2’,2’’,2e)へ転写層(6)を転写するためのキャリア基板(1)の製造方法であって、
i)キャリアベース基板(3)を提供するステップと、
ii)前記キャリアベース基板(3)上に保護層(5)を施与するステップと、
iii)前記保護層(5)上に転写層(6)、特にグラフェン層を成長させるステップと
を有する、方法。
【請求項11】
ステップiii)における前記転写層(6)の成長の前に、前記保護層(5)を再結晶化させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ステップii)における前記保護層(5)の施与の前に前記キャリアベース基板(3)を剥離層(4)で被覆し、前記剥離層(4)上に前記保護層(5)を施与する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記保護層(5)とは反対側の前記転写層(6)の面上に接触層(8,8’)を堆積させる、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項記載のおよび/または請求項10から13までのいずれか1項記載の方法により製造されたキャリア基板(1)から製品基板(2,2’,2’’,2e)への転写層(6)の転写方法であって、
- 前記転写層(6)が前記製品基板(2,2’,2’’,2e)に面するように前記キャリア基板(1)を前記製品基板(2,2’,2’’,2e)と接触させ、
- その際、少なくとも1つの剥離手段(11)が前記キャリア基板(1)に作用することにより、前記転写層(6)を前記保護層(5)とともに前記キャリアベース基板(3)から剥離させる、方法。
【請求項15】
前記キャリア基板(1)を、前記転写層(6)上に施与された接触層(8,8’)を介して前記製品基板(2,2’,2’’,2e)と接触させるか、または前記キャリア基板(1)を、前記転写層(6)上に施与された接触層(8,8’)を介して、前記製品基板(2,2’,2’’,2e)の製品ベース基板(7,7’)上に施与されたさらなる接触層(8,8’)と接触させる、請求項14記載の転写層(6)の転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア基板、キャリア基板の製造方法、およびキャリア基板から製品基板への転写層の転写方法について説明するものである。ここで、転写層、特にグラフェン層は、まずキャリア基板上に配置されており、特に転写層はキャリア基板の層上に生成または成長されており、転写方法によって製品基板に転写される。
【0002】
層転写プロセス(英語:layer transfer processes)は、先行技術において既に存在する。これらのプロセスは、非常に薄い層、特にマイクロメートルまたはさらにはナノメートル範囲の厚さを有する層を、ある基板から別の基板に転写するために使用される。これらの層の多くは、特定の第1の表面上にのみ製造可能であるが、この第1の表面は、同時に後続の機能部品の一部となることを意図したものではない。したがって、層を第1の表面から第2の表面へ転写する必要がある。
【0003】
半導体産業において最も広く知られている層転写プロセスの1つがSmartCut(商標)プロセスである。このプロセスでは、イオン、特に水素イオンを第1の単結晶基板に照射する。水素イオンの侵入深さは運動エネルギーにより制御することができ、わずか数ナノメートルである。水素イオンは、第1の基板が酸化された第2の基板に接合されるまで、第1の基板内に留まる。その後、熱処理により、水素原子が結合して水分子を形成し、水素イオンが集まった面に沿って第1の単結晶基板が分離される。酸化物が他の2つの材料、通常はシリコンの間に挟まれた3層構造体が得られる。その際、第1の基板の転写層は非常に薄く、とりわけ単結晶である。その下方にある酸化物層は、スイッチング周波数の高い部品、特にトランジスタに有利な影響を与える。
【0004】
グラフェンを大面積で製造する試みは、数年前から産業界で行われている。従来技術には、グラフェンを製造するための方法が数多く存在する。グラフェンフレークは、既に工業的にトン規模で製造することができる。しかし、これらのグラフェンフレークはあまりにも小さく、主に湿式化学プロセス、特に溶液中で生じるものであり、基板表面上では生じないため、半導体産業にとって重要性が低い。グラフェン層の、ウェハレベルでの、すなわちウェハの全面での、またはウェハの既存のトポロジーに的を絞った製造が目指されている。しかし、ウェハレベルでのグラフェン層製造が最も有望であると考えられる。
【0005】
ここで、最大の問題は、グラフェン層やその他の感受性の高い被転写層を、コスト効率よく、迅速に、大面積かつ欠陥なく製造することにある。経験上、グラフェン層の大面積の成長は、特に単結晶の金属表面上で行うことが望ましいことがわかっている。
【0006】
しかし、問題は、グラフェンを大面積で成長させる表面と、グラフェンを構造化して使用する表面とが一致することは極めて稀である、ということである。このため、グラフェンを、製造面である第1の表面から、使用面である第2の表面へ転写する必要がある。この転写の際には、通常、剥離手段、特にレーザが用いられ、レーザによる作用、特に電磁放射線は、転写層やグラフェン層を破壊または損傷させるおそれがある。
【0007】
したがって、本発明の課題は、先行技術に見られる欠点を少なくとも部分的に克服し、特に完全に克服した、キャリア基板、キャリア基板の製造方法、およびキャリア基板から製品基板への転写層の転写方法を提示することである。特に、本発明の課題は、キャリア基板から製品基板へ転写層を転写するための、改良されたキャリア基板、キャリア基板の製造方法、および転写方法を提示することである。さらに、特に本発明の課題は、転写層が特に電磁放射線によって破壊または損傷されることのない、キャリア基板、およびキャリア基板から製品基板への転写層の転写方法を提示することである。
【0008】
本発明の課題は、独立請求項の特徴により解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に明記されている。本明細書、特許請求の範囲および/または図面に示された少なくとも2つの特徴のいずれの組み合わせも、本発明の範囲内に包含される。示された値範囲において、挙げられた限界内にある値もまた、限界値として開示されているとみなされるべきであり、任意の組み合わせで請求することが可能である。
【0009】
以下の文面において、特にグラフェン層の形態の転写層または被転写層とは、製品基板へ転写すべきキャリア基板上の層を意味すると理解される。特に、転写層は、キャリア基板の保護層または成長層上に成長させたものである。ここで、保護層および成長層は、以下の文面において同義的に用いられる。
【0010】
しかし、成長層および保護層は、2つの異なる層であってもよい。その際、成長層は転写層と接触しているため、保護層は成長層とキャリアベース基板との間に位置する。以下の文面において、簡略化のため、成長層と保護層とは同一であると仮定する。この状態は、経済的にもより合理的であり、なぜならばこの場合、層を1つのみ堆積させればよく、それによりプロセスコストが低く抑えられるためである。
【0011】
したがって本発明は、キャリア基板から製品基板へ転写層を転写するためのキャリア基板であって、該キャリア基板は、少なくとも以下の層を以下の順序:
- キャリアベース基板
- 保護層、および
- 転写層
で備え、転写層は、保護層上に成長している、キャリア基板に関する。
【0012】
キャリア基板は、少なくとも前述した層を前述した順序で備えている。しかし、特に特定の機能を有するさらなる中間層が前述の層の間および/または上に配置されていることも考えられる。特に、保護層は、例えばそれぞれが転写層を保護する複数の個々の層から構成されていてよい。ここで、保護層は、特に転写に作用して転写層を損傷または破壊し得る影響から転写層を保護するためのバリアとして作用する。キャリア基板から製品基板へ転写層を転写するために、特に保護層と転写層との間の領域の付着特性を低下させるが、その際、保護層が被転写層を防護する。キャリア基板のこの層構造により、転写層の転写を、有利に容易かつ効率的に実施することができ、その際、転写層は、保護層によって保護されているため損傷されない。さらに、バリアとしての保護層と、転写層の成長層としての保護層という二重の機能によって、工業的規模でのより低コストでの製造が可能となる。
【0013】
本発明はまた、特に前記請求項のいずれか1項記載の、キャリア基板から製品基板へ転写層を転写するためのキャリア基板の製造方法であって、
i)キャリアベース基板を提供するステップと、
ii)キャリアベース基板上に保護層を施与するステップと、
iii)保護層上に転写層、特にグラフェン層を成長させるステップと
を有する、方法に関する。
【0014】
キャリア基板の製造方法では、保護層上に転写層を成長させることが想定されている。保護層は、転写層の転写の際に転写層を保護する役割を果たすとともに、転写層の生成または成長のための場所としても機能することができる。このように、保護層は二重の機能を有するため、製造において追加の層を省くことができる。さらに、保護層を備えたキャリア基板によって、転写層を損傷することなくその後の転写が可能となる。有利に、このようにして、転写層の生成または成長の場所と、製品基板上での使用とを容易に分離することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明は、キャリア基板またはキャリア基板の製造方法により製造されたキャリア基板から製品基板への転写層の転写方法であって、
- 転写層が製品基板に面するようにキャリア基板を製品基板と接触させ、
- その際、少なくとも1つの剥離手段がキャリア基板に作用することにより、転写層を保護層とともにキャリアベース基板から剥離させる、方法に関する。
【0016】
このように、この転写層の転写方法によって、有利に、転写層をある表面から別の表面へ、特に製造面から使用面へと容易かつ効率的に転写することが可能となる。
【0017】
剥離は、特にレーザの形態、好ましくは赤外線レーザの形態の少なくとも1つの剥離手段の作用によって可能となり、その際、保護層が、少なくとも1つの剥離手段の影響から転写層を保護するか、またはそうした影響から転写層を防護することで、転写層が損傷しないようにする。その際、特に、転写層を保護層とともにキャリア基板から剥離させ、次いで保護層を除去することが想定されている。キャリア基板を製品基板と接触させるため、有利に、接触面間の相対的な移動はもはや不可能である。接触の前に、キャリア基板と製品基板とを、特にそれぞれの基板保持体の位置合わせによって互いに位置合わせする。位置合わせの際には、特にキャリア基板および/または製品基板上に施されたアライメントマークを使用して、可能な限り正確な位置合わせが行われる。その結果、製品基板への転写層の転写が、有利に容易かつ効率的に可能となる。特に有利なことに、転写層が、剥離手段の作用によって損傷または破壊されることはない。その際、転写層の生成または成長は、キャリア基板上で予め実施されている。したがって、この時点で有利に、転写層を、キャリア基板上の、特に保護層上の、その生成またはその成長の場所から剥離させて、製品基板上に配置することができる。
【0018】
キャリア基板の好ましい一実施形態では、転写層がグラフェン層であることが想定されている。その際、グラフェン層は、保護層上に配置されており、保護層によって保護される。グラフェン層を転写するように設計されたキャリア基板を、転写時に保護層とともにキャリアベース基板から剥離させ、このようにしてグラフェン層をキャリア基板から分離させるように想定されているため、特に電磁放射線の形態の剥離手段によるグラフェン層の損傷または破壊は起こり得ない。したがって、キャリア基板は、グラフェン層の転写が予定されている。このキャリア基板により、有利に、グラフェン層の容易かつ効率的な製造および転写を、従来の単なる実験室規模に代えて大規模で行うことができる。グラフェン層を転写層として保護層上で成長させることが特に有利である。
【0019】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、特に転写層に面する表面上での保護層の粗さが、100μm未満、好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満、非常に好ましくは100nm未満、最も好ましくは10nm未満であることが想定されている。特に、成長層の粗さを可能な限り低く抑えることによって初めて、転写層の生成または成長が可能となる。特に薄い転写層、特にグラフェン層は、非常に平坦できれいな表面上で成長させる必要がある。このようにして、転写層は、転写時に作用する剥離手段の影響を受ける前にも転写層を保護している層上に生成される。保護層を、転写層の成長前にその製造時に再結晶化させることが好ましく、それにより、転写層、特にグラフェン層の成長がさらに簡略化または改善される。
【0020】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、キャリア基板が、キャリアベース基板と保護層との間に配置された少なくとも1つの剥離層を備えていることが想定されている。剥離層によって、有利に、キャリアベース基板における転写層の剥離の正確な位置を規定することができる。さらに、剥離層に沿った剥離を有利に容易かつ効率的に行うことができる。
【0021】
さらに有利に、剥離層の設計により、キャリアベース基板と保護層との間に要求される接着力を規定することができる。特に、剥離層の設計によって、どのような影響下であれば転写層の剥離が可能となるかを規定することができる。
【0022】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、転写層が、剥離層および/または剥離領域に作用する剥離手段によって、保護層とともにキャリアベース基板から剥離可能であることが想定されている。剥離工程を行う場合には、剥離手段がキャリア基板に作用する。その際、剥離層または剥離領域と剥離手段とは、互いに適合されている。その際、剥離層は固有の材料層であるのに対して、剥離領域は、キャリアベース基板と保護層との間の接触面によって規定されている。剥離領域における剥離は、例えば接触面領域に導入された材料の膨張によって起こり得る。したがって、剥離領域とは、キャリア基板の固有の層を表すわけではないが、特に同じ機能を果たす。剥離手段が剥離領域または剥離層に作用すると、特に、剥離層の付着特性、または接触している保護層およびキャリアベース基板の付着特性が変化し、その結果、保護層を転写層とともにキャリアベース基板から剥離させることができる。このようにして、キャリア基板から製品基板への転写層の転写を、特に容易かつ効率的に実施することができる。
【0023】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、保護層が、炭素が溶解し得る材料から構成されていることが想定されている。保護層が、炭素の溶解度が特に高い材料である場合、特にグラフェンから構成される転写層を、保護層上で加熱および冷却することにより生成または成長させることができる。その際、保護層の表面上に炭素が堆積され、キャリア基板上に転写層が生成される。キャリア基板のこの特定の有利な層構造によって、生成された転写層を、今や、容易かつ効率的に製品基板へ転写することができる。
【0024】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、保護層が電磁放射線に対して非透過性となるよう設計されていることが想定されている。剥離層を剥離させるまたは剥離層の付着特性を低下させるために電磁放射線、例えばレーザを使用する場合、保護層が放射線を吸収することで、転写層の損傷または破壊を防止することができる。本実施形態では、キャリアベース基板は、電磁放射線に対して少なくとも部分的に透過性であることが好ましい。例えば、キャリアベース基板は、ガラス製であり、好ましくはサファイアガラス製である。
【0025】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、保護層とは反対側の転写層の面上に、特に誘電体材料、好ましくは酸化ケイ素から構成される接触層が配置されていることが想定されている。このような接触層により、製品基板への転写の際により簡便かつ確実に接触させることができる。さらに、接触層に誘電体材料、例えば酸化ケイ素を用いることにより、製品基板における短絡を防止するか、または製品基板と転写層との間の電気伝導を所望の箇所でのみ許容することができる。また、製品基板上にさらなる接触層を配置することも可能である。接触層と製品基板のさらなる接触層とは、好ましくは同じ材料から構成されており、キャリア基板と製品基板との特に容易な接触を可能にする。
【0026】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、保護層が単結晶金属層であり、好ましくはニッケル製であることが想定されている。転写層の生成または成長は、有利に単結晶材料上で行われる。単結晶金属層を使用することにより、有利に転写層を保護層上で成長させることができる。同時に、単結晶金属層は、電磁線による剥離手段、例えばレーザの影響から転写層を保護するのにも適している。ニッケル製の保護層は、グラフェン層がそのようなニッケルベースの層の上で特に良好に生成または成長できるため、最も好ましい。
【0027】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、転写層を保護層上に生成することが想定されている。本実施形態によれば、被転写層は、保護層の直上に生成される。このように、転写層は、有利に保護層の直上に配置されているため、転写層は、保護層の反対側から作用する影響から保護層によって直接保護されている。キャリア基板のこの特定の層構造により、キャリア基板から製品基板への転写層の容易かつ効率的な転写が可能となる。
【0028】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、保護層が、同時に転写層の成長層としても設計されているため、転写層が保護層上で成長できることが想定されている。本実施形態では、保護層は2つの機能を果たす。第1の機能は、保護層の保護機能であり、これは特に、保護層が剥離手段の影響から転写層を保護することを意味する。第2の機能は、保護層上での転写層の成長を可能にし、この場合、保護層を、同時に成長層としても使用することができる。こうすることで、有利に、転写層、特にグラフェン層の保護および生成に必要な層が1つのみとなる。保護層が複数の層から構成されていることも考えられる。その際、剥離層に面する1つ以上の層が、保護層として設計されている。剥離層とは反対側の1つ以上の層により、転写層の生成が可能となる。よって、保護層の二重機能は、2つ以上の層によって達成され、その際、保護層は少なくとも2つの層からなる。しかし、1つの層が保護層を形成し、この層によって保護機能と転写層の生成とが同時に可能となることが好ましい。
【0029】
キャリア基板のもう1つの好ましい実施形態では、剥離層または剥離領域に作用する少なくとも1つの剥離手段によって、転写層を保護層とともにキャリアベース基板から剥離できることが想定されている。好ましくはレーザの形態の剥離手段が剥離層に作用することで剥離層の付着特性を低下させ、転写層を保護層とともにキャリア基板から剥離させることができる。その際、剥離手段は、好ましくは剥離層に作用する。剥離手段から生じるさらなる影響は、保護層によって低減され、好ましくは防止される。その際、保護層は、転写層に対して、好ましくは剥離手段から生じる影響に対するバリアとして作用する。このようにして有利に、転写層を損傷することなく転写層の剥離を実施することができる。
【0030】
キャリア基板の製造方法の好ましい一実施形態では、ステップiii)における転写層の成長の前に、保護層を再結晶化させることが想定されている。このようにして、好ましくは非常に低い粗さを有する保護層上で、成長層としてのその機能をさらに良好に果たすことができる。このようにして、保護層上での転写層、特にグラフェン層の成長が簡略化または改善される。
【0031】
キャリア基板の製造方法の好ましい一実施形態では、ステップii)における保護層の施与の前にキャリアベース基板を剥離層で被覆し、剥離層上に保護層を施与することが想定されている。こうすることで、生成された転写層をその後に転写する際に、剥離を有利に容易に行うことができる。さらに、剥離層の施与によって、有利に剥離の位置を規定することができる。
【0032】
キャリア基板の製造方法の好ましい一実施形態では、保護層とは反対側の転写層の面上に接触層を堆積させることが想定されている。接触層により、有利に転写層の転写時に行われる接合工程が簡略化される。さらに、接触層は、製品基板とのより良好な接触にも役立ち得る。さらに、機能化接触層によって、例えば導電性領域によって、特定の所定の領域における転写層との接触が可能となり得る。
【0033】
キャリア基板の製造方法の好ましい一実施形態では、保護層が、同時に保護層上に転写層を成長させるための成長層としても設計されており、保護層上に転写層を成長させることが想定されている。このようにして、保護層は、有利に保護機能を果たすとともに、保護層上での転写層の生成を可能にする。したがって、有利に、使用される層は1つのみである。しかし、保護層が2つ以上の層から構成されることも考えられるであろう。その場合、剥離層に面する1つ以上の層は、剥離手段の影響から保護するように設計されている。さらなる1つ以上の層は、成長層として転写層の生成を可能にする。しかし、保護層が二重機能を有する1つの層から構成されていることが好ましい。こうすることで、キャリア基板の製造方法を有利に容易かつ効率的に実施することができる。
【0034】
キャリア基板の製造方法のもう1つの好ましい実施形態では、転写層上に接触層を堆積させることが想定されている。接触層は、好ましくは誘電体材料、特に好ましくは酸化ケイ素で構成されている。その結果、製品基板におけるその後の短絡を防止することができる。さらに、キャリア基板と製品基板との接触を、特に容易かつ安全に実施することができる。
【0035】
転写層の転写方法の好ましい一実施形態では、キャリア基板を、転写層上に施与された接触層を介して製品基板と接触させるか、またはキャリア基板を、転写層上に施与された接触層を介して、製品基板の製品ベース基板上に施与されたさらなる接触層と接触させることが想定されている。このように、製品基板は、さらなる接触層を備えている。接触層は、好ましくは誘電体材料から構成されており、特に好ましくは酸化ケイ素から構成されている。キャリア基板が転写層上に同様に接触層も備えている場合、キャリア基板の接触層と製品基板のさらなる接触層とは、特に好ましくは同じ材料から構成されている。このようにして、転写時の接触を、特に容易かつ効率的に行うことができる。さらに、接触層によって短絡が防止される。
【0036】
転写層の転写方法のもう1つの好ましい実施形態では、転写層を製品基板と接続させるか、または転写層上に配置された接触層を製品基板と接続させることが想定されている。転写層が製品基板と接続され、その結果、転写が完了する。
【0037】
接合工程は、好ましくは、予備接合とその後の永久接合とに分けられる。予備接合では、理論的には破壊することなく再び剥離可能な比較的弱い接続が2つの基板間に生じ、これは好ましくは表面効果に基づくものである。この場合、親水性表面が特に有利である。その後の永久接合は、予備接合で生じた接続の強化によって特徴付けられる。永久接合は、好ましくは昇温によって達成される。しかし、転写層または存在し得る設備部分の損傷の可能性を低減または好ましくは完全に排除するために、温度は可能な限り低いことが望ましい。したがって、永久接合時の温度は、好ましくは300℃未満、好ましくは200℃未満、さらに好ましくは100℃未満、非常に好ましくは50℃未満、最も好ましくは室温である。このような予備接合および永久接合は、当業者に知られている。
【0038】
保護層は、特に転写層と製品基板との接続の前、間または後に転写層から剥離される。この方法によって、欠陥のない、大面積で感受性の高い転写層の転写を、特に容易かつ効率的に行うことができる。製品基板へのグラフェン層の転写が特に好ましい。製品基板自体には、機能部品が予め組み込まれている場合があり、特にビアが存在する場合があるため、製品基板と転写層との間の目標とする所望の電気伝導性は、これらの領域でのみ可能である。
【0039】
以下では、成長層という用語を保護層に対して用いる。多くの場合、保護層は転写層の保護および生成または成長のために設計されているため、成長層および保護層という用語は、以下では成長層と呼ばれる。しかし、これは保護機能を持たない単一の成長層だけを意味するのではなく、成長層は保護層であり、その上に転写層を成長または生成することができる。
【0040】
本発明の思想の特定の一態様は、個々の被転写層またはグラフェン層の成長または生成、キャリア基板の製造面から製品基板の使用面への転写および剥離を実施することができる方法の提示を包含する。ここで、基本的思想は、キャリアベース基板と、剥離層と、成長層と、グラフェン層(転写層)と、好ましくは誘電体層とからなる層系を、層転写を問題なく実施できるように十分に規定された順序で製造することにある。
【0041】
本発明のさらなる態様では、キャリア基板上に非常に特殊な層構造体を生成することが想定されており、この層構造体の個々の層は、異なる機能的タスクを実行する。特に、キャリア基板からグラフェン層を分離するための剥離層が使用される。成長層または保護層は、転写層またはグラフェン層の成長に用いられると同時に、保護にも用いられる。
【0042】
その上で被転写層またはグラフェンを製造することができるキャリア基板と、その上で被転写層またはグラフェンが使用される製品ベース基板とは、一般に異なる。それにより、転写層の製造またはグラフェンの成長のプロセスは、転写層の使用またはグラフェンの使用の場所から分離されている。それに応じて、このような感受性の高い転写層またはグラフェン層の生成は、柔軟で費用対効果が高いものとなる。
【0043】
キャリア基板および転写層の転写方法は、原理的には、いかなる種類の被転写層または転写層の転写にも用いることができる。しかし一例として、転写層としてのグラフェン層の転写について説明する。なぜならば、そのような単原子層の転写は、特定の要件を満たす必要があり、これまで産業界でこのように実施することができなかったためである。
【0044】
しかし、本発明による方法は、決してグラフェン層の転写に限定されるものではない。例えば、転写層は、別の炭素系の、特に単原子の層であることも可能である。
【0045】
転写層は、好ましくは少なくとも以下の材料クラスまたは材料のうちの1つからなる。
【0046】
・2次元層材料、特に
・グラフェン
・グラフィン
・ボロフェン
・ゲルマネン
・シリセン
・Si2BN
・ガレネン
・スタネン
・プランベン
・ホスホレン
・アンチモネン
・ビスムテン
・2次元超結晶
・化合物
・グラファン
・ボロニトレン
・炭窒化ホウ素
・ゲルマナン
・ゲルマニウムリン化物
・遷移金属ダイカルコゲナイド
・MXene
・様々な元素組成を有する層材料、特に
・MoS2、WS2、MoSe2、hBN、Ti4N3、Ti4AlN3
・ファンデルワールスヘテレオ構造、特に
・MoS2-G;MoS2-hBN、MoS2-hBN-G
・金属、特に
・Cu、Ag、Au、Al、Fe、Ni、Co、Pt、W、Cr、Pb、Ti、Ta、Zn、Sn
・半導体、特に
・Ge、Si、α-Sn、B、Se、Te
・化合物半導体、特に
・GaAs、GaN、InP、InxGa1-xN、InSb、InAs、GaSb、AlN、InN、GaP、BeTe、ZnO、CuInGaSe2、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x)Cd(x)Te、BeSe、HgS、AlxGa1-xAs、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、CuInSe2、CuInS2、CuInGaS2、SiC、SiGe
・セラミック
・ポリマー
・さらなる材料
・SiO2
・Si3N4
・MnO2
・TBAxH(1.07-x)Ti1.73O4*H2O
・CoO2
-
・TBAxH(1-x)Ca2Nb3O10
・Bi2SrTa2O9
・Cs4W11O36
2-
・Ni(OH)5/3DS1/3
・Eu(OH)2.5(DS)0.5
・Co2/3Fe1/3(OH)2
1/3+
・[Cu2Br(IN2)]n]
【0047】
転写層は、最も好ましくは、グラフェン製の層である。
【0048】
転写層の転写方法は、特に、製品基板およびキャリア基板を必要とする。製品基板およびキャリア基板は、一般に、製品ベース基板およびキャリアベース基板からなる。一般に、製品ベース基板および/またはキャリアベース基板上に複数の層を堆積させることができる。
【0049】
製品ベース基板およびキャリアベース基板は、原則として任意の材料からなることができるが、好ましくは、以下の材料クラスのうちの1つに属する:
1. 半導体材料、特に
1.1 Ge、Si、α-Sn、B、Se、Te
2. 金属、特に
2.1 Cu、Ag、Au、Al、Fe、Ni、Co、Pt、W、Cr、Pb、Ti、Ta、Zn、Sn
3. 化合物半導体、特に
3.1 GaAs、GaN、InP、InxGa1-xN、InSb、InAs、GaSb、AlN、InN、GaP、BeTe、ZnO、CuInGaSe2、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x)Cd(x)Te、BeSe、HgS、AlxGa1-xAs、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、CuInSe2、CuInS2、CuInGaS2、SiC、SiGe
4. ガラス、特に
4.1 金属ガラス
4.2 非金属ガラス、特に
4.2.1 有機非金属ガラス
4.2.2 無機非金属ガラス、特に
4.2.2.1 非酸化物ガラス、特に
4.2.2.1.1 ハロゲン化物ガラス
4.2.2.1.2 カルコゲナイドガラス
4.2.2.2 酸化物ガラス、特に
4.2.2.2.1 リン酸塩ガラス
4.2.2.2.2 ケイ酸塩ガラス、特に
4.2.2.2.2.1 アルミノケイ酸塩ガラス
4.2.2.2.2.2 ケイ酸鉛ガラス
4.2.2.2.2.3 アルカリケイ酸塩ガラス、特に
4.2.2.2.2.3.1 アルカリ・アルカリ土類ケイ酸塩ガラス
4.2.2.2.2.4 ホウケイ酸塩ガラス
4.2.2.2.2.5 石英ガラス
4.2.2.2.3 ホウ酸塩ガラス、特に
4.2.2.2.3.1 アルカリホウ酸塩ガラス
4.3 ガラスと称されるがガラスでない材料
4.3.1 サファイアガラス
【0050】
以下、基板について詳しく説明する。
【0051】
製品基板
第1の実施形態では、製品基板は、製品ベース基板のみからなる。したがって、製品基板は、コーティングを全く含まない。層のない製品ベース基板は、特に転写グラフェン層の出発層として機能し、この転写グラフェン層は、その後、導電層として構造化される。その後、この導電層にさらなる基板を接合することができる。また、個々のチップを装備することも考えられる。最も好ましい製品ベース基板は、ウェハ、特にシリコンウェハである。
【0052】
第2の実施形態では、製品ベース基板上に層が存在し、この層を、以下で接触層と呼ぶ。接触層は、好ましくは誘電体層であり、非常に好ましくは酸化ケイ素層である。この層は、被転写層、特にグラフェン層、またはその上に堆積される層と後のプロセスステップで接触されるため、接触層と呼ばれる。接触層は、好ましくは誘電体層であり、非常に好ましくは酸化物であり、最も好ましくは酸化ケイ素である。酸化物は、熱的に生成することも、酸素雰囲気中でネイティブに成長することもできる。このような誘電体層は、転写層またはグラフェン層の転写プロセスを促進することができ、また所望の最終結果にとって必要である場合もある。
【0053】
第3の実施形態では、機能ユニット、特にマイクロチップ、メモリ、MEM、LED等が、製品ベース基板において予め製造されている。非常に特に好ましい拡張実施形態では、製品ベース基板は、特に機能ユニットが製造された後に接触層で被覆される。次いでさらなるプロセスステップで、誘電体接触層は、特にリソグラフィにより機能ユニットの接触部の上方で開口される。こうしてできた開口部に、次いでさらなるプロセスステップで導体、特に金属を充填することができる。このビアは、半導体業界ではTSV(英語:through silicon vias)と呼ばれている。これにより、接触層はハイブリッド層となる。ビアは電気的領域を表し、それを囲む誘電体層は誘電体領域を表す。次いで、その後のプロセスステップで接触層へ転写層またはグラフェン層が転写されることで、グラフェンと機能ユニットとの間にTSVを介した接触部が製造される。また、接触層を用いずに、機能ユニットを備えた製品ベース基板のみを使用して、その上に転写層を転写することも考えられる。
【0054】
接触層により、製品基板自体が有していない所定の特性を有する材料を選択することができる。例えば、シリコンは固有の半導体であるため、室温でも非常にごくわずかな導電性を有する。転写層またはグラフェン層を転写する表面は、多くの場合、転写層の材料であるグラフェンの構造化後の短絡を防ぐために、誘電体であることが望ましい。シリコンは公知の方法で酸化させることができるため、酸化ケイ素は誘電体層の好ましい材料である。
【0055】
次に、前述の製品基板の1つに、本方法を用いて転写層、例えばグラフェン層を転写することができ、この転写層をその後で構造化することができる。特に、転写層は、機能ユニットのこの導電性接触部が特にTSVを介して相応して接続するように、構造化される。
【0056】
製品ベース基板は、好ましくはウェハであり、特に好ましくはシリコンウェハである。
【0057】
キャリア基板
キャリア基板は、少なくとも1つのキャリアベース基板と、成長層と、その上に配置された転写層、特に予め生成されたグラフェン層とからなる。これらの層は、キャリア基板上に特定の順序で施与される。前述の層は、必然的に前述の順序で施与されなければならない。しかし、前述の層の間に、特に他の目的に使用されるさらなる層が存在することも考えられる。特に、キャリアベース基板と保護層との間に剥離層が配置されていてよい。
【0058】
第1の実施形態では、キャリア基板は、少なくとも1つのキャリアベース基板と、その上に堆積された剥離層と、剥離層上に生成された成長層と、その上に配置された、特にその上に生成されたグラフェン層の形態の転写層とからなる。
【0059】
第1の層は剥離層であり、その役割は、剥離プロセスにおいてキャリアベース基板を他の層から分離できるようにすることである。
【0060】
第2の層は成長層であり、その上に転写層が配置されているか、またはグラフェン層が成長または生成される。成長層は、原則的に任意の形態および粒構造を有することができるが、好ましくは単結晶である。成長層は、好ましくは金属層であり、非常に特に好ましい一実施形態では、炭素が溶解し得る金属層である。炭素の溶解度は、好ましくは、特に成長層の表面での析出が可能となるように、温度の低下とともに減少することが望ましい。
【0061】
成長層または保護層の特に好ましい有利な特徴の1つとして、この層が、用いられる剥離法でバリアとして作用することが挙げられる。この層によって少なくとも、確かに剥離層の剥離工程に必要ではあるが転写層またはグラフェン層には作用しないことが望ましい影響の通過が防止または低減される。このような影響には、熱入力、特に電磁放射線、特にレーザ光線の作用が含まれる。したがって、成長層は、グラフェン成長のための場所としてだけでなく、グラフェン層と、剥離層で行われる剥離プロセスの場所との間のバリアとしても機能する。保護層の特徴は特に、一方では転写層の生成を行うことができ、それと同時にこの転写層が保護層によって剥離法の過度に強い影響から保護されるように、用いられる剥離法と関連づけて設計されることにある。
【0062】
保護層または成長層はまた、可能な限り低い粗さを有する。粗さは、平均粗さ、二乗粗さ、または平均粗さ深さのいずれかで示される。平均粗さ、二乗粗さ、および平均粗さ深さの測定値は、一般に同一の測定区間または測定面で異なるが、同じオーダー範囲にある。したがって、以下の粗さの数値範囲は、平均粗さ、二乗粗さ、または平均粗さ深さのいずれかの値として理解されるべきである。成長層の粗さは、100μm未満、好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満、非常に好ましくは100nm未満、最も好ましくは10nm未満である。
【0063】
同様に、特に剥離層上に形成される成長層の粗さを可能な限り低く抑えるために、剥離層の粗さも可能な限り低くする。その際、剥離層の粗さは、100μm未満、好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満、非常に好ましくは100nm未満、最も好ましくは10nm未満である。剥離層は、原則として、前述の剥離法を用いて成長層からの分離を生じる任意の材料からなることができる。しかし、好ましくは、剥離層はポリマーではない。なぜならば、ポリマーは、本発明による方法において、使用される設備の不要で望ましくない汚染を引き起こすためである。したがって、剥離層は、好ましくは、金属、合金または半導体材料からなる。完全を期すために、剥離層として使用できる最も重要な材料クラスを列挙する。
【0064】
1. 半導体材料、特に
1.1 Ge、Si、α-Sn、B、Se、Te
2. 金属、特に
2.1 Cu、Ag、Au、Al、Fe、Ni、Co、Pt、W、Cr、Pb、Ti、Ta、Zn、Sn
3. 化合物半導体、特に
3.1 GaAs、GaN、InP、InxGa1-xN、InSb、InAs、GaSb、AlN、InN、GaP、BeTe、ZnO、CuInGaSe2、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x)Cd(x)Te、BeSe、HgS、AlxGa1-xAs、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、CuInSe2、CuInS2、CuInGaS2、SiC、SiGe
4. ポリマー
4.1. 炭素系ポリマー
4.2. シリコン系ポリマー
【0065】
剥離層は、最も好ましくは、エピタキシャル生成したGaN層からなる。その際、GaN層は、キャリア基板、特にサファイア基板上にエピタキシャル生成される。非常に薄いGaN層を使用することによって、汚染ポリマー層を排除することができる。
【0066】
さらなる一実施形態では、剥離層は、剥離領域として設計されており、イオン、好ましくは水素イオンが成長層および/またはキャリア基板に注入されて熱負荷時に成長層および/またはキャリア基板の損傷を招く場合に、剥離層を排除する。このプロセスは、半導体業界ではSmartCut(商標)プロセスとして知られている。このように、剥離領域は、導入されたイオンを伴って剥離層の機能を担っている。
【0067】
剥離法が電磁放射線、特にレーザを使用する方法である場合、転写層への電磁放射線の透過を、既に保護層の厚さによって防止または少なくとも低減することができる。この場合、保護層は、1nmより厚く、好ましくは100nmより厚く、さらに好ましくは1μmより厚く、非常に好ましくは100μmより厚く、最も好ましくは1mmより厚い。
【0068】
剥離法が熱を用いる方法である場合、少なくとも剥離プロセスが終了するまで熱輸送を延長するために、熱伝導率が可能な限り低い材料から構成される保護層を使用することができる。熱伝導率は、0.1W/(m・K)~5000W/(m・K)、好ましくは1W/(m・K)~2500W/(m・K)、さらにより好ましくは10W/(m・K)~1000W/(m・K)、非常に好ましくは100W/(m・K)~450W/(m・K)である。
【0069】
第3の層は、転写層または被転写グラフェン層であり、任意のプロセスによって生成、敷設または堆積される。
【0070】
第2の実施形態では、グラフェン層上に、少なくとも1つのさらなる層、特に接触層がさらに堆積される。製品基板が接触層をも備えている限り、接触層は、製品基板の接触層と同じ材料または非常に類似した材料から構成されていることが好ましい。したがって、接触層も同様に好ましくは酸化物、特に好ましくは酸化ケイ素である。特に、グラフェン層上の最後の層として酸化物を施与することには、キャリア基板をフュージョン接合によって製品基板と接合できるという利点がある。この場合、製品基板も、好ましくは酸化物層を備えている。それにより、両基板間の接続を生じさせることが特に容易となる。
【0071】
接触層は、好ましくは親水性である。疎水性または親水性の指標は、試験液滴、特に水と測定表面との間に形成される接触角である。液体と親水性表面との間の付着力は液体の凝集力よりも支配的であるため、親水性表面によって液滴が平らになり、その結果、接触角がより小さくなる。液体と疎水性表面との間の付着力よりも液体の凝集力の方が支配的であるため、疎水性表面により、液滴の形状が球状になる。接触角は、90°未満、好ましくは45°未満、より好ましくは30°未満、非常に好ましくは10°未満、最も好ましくは5°未満である。親水性接触層は、特により良好かつより容易な転写に役立つ。
【0072】
キャリアベース基板は、用いられる剥離法に対して可能な限り最適な特性を有する材料からなることが好ましい。熱による剥離工程を行う場合、剥離層まで極めて迅速に熱を伝えるために、熱伝導率の高い材料が推奨される。熱伝導率は、0.1W/(m・K)~5000W/(m・K)、好ましくは1W/(m・K)~2500W/(m・K)、さらにより好ましくは10W/(m・K)~1000W/(m・K)、非常に好ましくは100W/(m・K)~450W/(m・K)である。
【0073】
以下に、グラフェン層の転写プロセスについて説明する。
【0074】
プロセス
キャリア基板の製造プロセス
キャリア基板の製造プロセスの第1のプロセスステップでは、キャリアベース基板を剥離層(英語:release layer)で被覆する。
【0075】
キャリア基板の製造プロセスの第2のプロセスステップでは、剥離層上に成長層を施与、特に堆積させる。成長層は、好ましくは単結晶である。単結晶の成長層を特にポリマーの剥離層上に製造することは、ほぼ不可能である。したがって、特定の一実施形態では、成長層を、堆積プロセスによって剥離層上に生成するのではなく、別の層転写プロセスによって剥離層へ転写する。この場合、SmartCut(商標)プロセスが考えられる。また、他のいずれの層転写プロセスも同様に適していると考えられる。
【0076】
キャリア基板の製造プロセスの第3のプロセスステップでは、成長層上に転写層を配置または生成する。転写層は、好ましくはグラフェン層であり、これを生成または成長させる。ここで、グラフェン層の成長は、従来技術の任意の既知の方法によって行うことができる。
【0077】
例えば、生成した成長層において炭素原子をより高温で溶解させ、さらなる中間ステップで材料中での炭素の溶解度を下回る程度に系を冷却させることが考えられるであろう。これにより、炭素を特に表面でも析出させ、グラフェン層を形成することができる。
【0078】
もう1つの実施形態では、炭素は成長層に存在しておらず、適切な堆積プロセスによって外部から成長層に炭素を供給する。例えば、分子線エピタキシー、PVDまたはCVDプロセス等の使用が考えられる。
【0079】
第3のプロセスステップの拡張形態では、転写層またはグラフェン層上にさらなる層を堆積させ、このさらなる層は、特にその後のプロセスステップにおける接触を最適化する役割を果たす。したがって、この層は接触層と呼ばれる。接触層は、特に酸化物層であり、好ましくは製品基板の接触層と同じ材料から構成されている。
【0080】
層転写プロセス
層転写プロセスについて、以下に詳細に説明する。
【0081】
第1のプロセスステップでは、キャリア基板を製品基板に対して位置合わせする。その際、位置合わせは、機械的および/または光学的に行われる。キャリア基板および製品基板をアライメントマークにより互いに位置合わせする固有のアライメント設備を使用することが好ましい。
【0082】
第2のプロセスステップでは、キャリア基板を製品基板と接触させる。その際、接触を、直ちに全面的に行うことも、点状の接触により行うことも可能である。好ましくは、フュージョン接合設備が使用される。
【0083】
第3のプロセスステップでは、キャリアベース基板を、剥離法、特にレーザを用いて剥離層に沿って成長層から分離する。その際、成長層は、グラフェン層に対してバリアとして機能する。成長層は、用いられる剥離法、特にレーザが転写層またはグラフェン層を損傷することのないように、特に破壊することのないように設計されていることが好ましい。それにより、層構造は、従来技術とは対照的な新規の特徴となる。個々の可能な剥離法について、以下に詳細に説明する。
【0084】
剥離法
第1の好ましい剥離法では、電磁放射線、特にレーザを使用する。キャリアベース基板は、電磁放射線に対して少なくとも部分的に透過性であり、一方で剥離層は、好ましくは最大の吸収性を示す。成長層も電磁放射線に対して吸収性であるため、成長層は、特に剥離層によって吸収されなかった光子が次の転写層またはグラフェン層に浸透するのを防止する。
【0085】
剥離層は、好ましくは、水に対して高い溶解度を有する。したがって、水の容量加熱により熱を局所的に導入するためのマイクロ波源の使用は、剥離のための考えられるさらなる選択肢となるであろう。
【0086】
第2の、さほど好ましくない剥離法では、剥離層に電場および/または磁場を印加する。その場合、剥離層は、特定の電界および/または磁界の強度を超えると、剥離層の剥離、または少なくとも成長層および/もしくは第1の基板に対する剥離層の接着性の低減につながる物理的効果が生じるように設計されている。
【0087】
第3の、最も好ましくない剥離法では、熱を使用する。その場合、熱源は、好ましくはキャリアベース基板の面上に存在する。好ましくは、製品ベース基板の面上には、ヒートシンク、特に能動冷却体が存在する。熱が好ましくは剥離層まで運ばれることにより、そこでキャリア基板または剥離層と成長層との分離が生じる。転写層またはグラフェン層の熱負荷は、好ましくは最小限である。したがって、この場合、成長層は、熱伝導性が低く、理想的には熱蓄積性も低くなるように設計されていることが望ましい。本実施形態は、温度上昇の発生により層系の各層の熱膨張が起こるため、さほど好ましくない。総じて、各層は、異なる熱膨張係数を有する。剥離層がポリマー系である場合、確かに熱応力は流動によって緩和され得るが、層系の他の層は熱応力の影響をはるかに受けやすい。
【0088】
第4のプロセスステップでは、成長層を異なる様式で処理することが可能である。
【0089】
第4のプロセスステップの第1の変形例では、成長層を単に除去して転写層またはグラフェン層を露出させる。この除去は、化学的および/または物理的なプロセスによって行うことができる。成長層の除去は、特に、転写層またはグラフェン層を層転写後の時点で初めて構造化させなければならない場合に不可欠である。
【0090】
第4のプロセスステップの第2の変形例では、成長層を、その下方にある転写層またはグラフェン層のエッチングマスクとして機能するように、複数のプロセスステップによって構造化させる。転写層またはグラフェン層のエッチング後、構造化されたエッチング層は、エッチングマスクとしてもはや必要ではないため、完全に除去することができる。
【0091】
第4のプロセスステップの第3の変形例では、成長層自体を転写層またはグラフェン層の上方に機能層として残し、必要であれば構造化させる。しかし、ほとんどの場合、成長層は導体、すなわち導電性の特に金属層であり、これは、場合により構造化された転写層またはグラフェン層を特に全面にわたって短絡させるため、大抵の場合、成長層は除去されることになる。
【0092】
もう1つの実施形態では、剥離法は、単純な機械的分離である。両基板は、両基板のうち少なくとも一方に作用したときに応力、好ましくは引張応力が剥離層と成長層との間に生じて剥離層が成長層から分離されるように、固定される。当然のことながら、分離が転写層と成長層との間で起こる方がより有利であろう。この場合、剥離層を完全に省くことができる。さらに、成長層をさらなるプロセスステップで転写層から除去する必要がなくなる。しかし、転写層と成長層との接着力は通常非常に強いため、この好ましいケースはほとんど発生しない。両基板を互いに分離するために用いられる力は、好ましくは、小面積で、特に基板の周縁部の少なくとも1点で特に点状に印加される。その際、力は、0.01Nより大きく、好ましくは0.1Nより大きく、さらに好ましくは1Nより大きく、非常に好ましくは10Nより大きく、最も好ましくは100Nより大きい。機械的分離は、所定の破断箇所が剥離層に生成される場合に特に容易に行うことができる。所定の破断箇所は、ブレード、特にカミソリの刃、ワイヤ、または剥離層に流体を押し付けるノズルを用いて生成することができる。
【0093】
しかし、剥離には、電磁放射線を用いることが特に好ましい。特に、剥離手段としてレーザを使用することが好ましい剥離法である。この場合、キャリア基板は、使用される電磁放射線に対して可能な限り高い透明性、より正確には透過率を有することが望ましい。キャリア基板は、好ましくはガラス基板であり、最も好ましくはサファイア基板である。透明性は、透過率で表すのが望ましく、これは、透過した放射線と照射された放射線との比率を示す。しかし、透過率は被照射体の厚さに依存するため、材料固有の特性ではない。よって、透過率の値は、1cmの単位長さに対して示される。選択された1cmの厚さに対して、またそれぞれ選択された波長に対して、材料は特に、10%より大きい、好ましくは20%より大きい、さらに好ましくは50%より大きい、非常に好ましくは75%より大きい、最も好ましくは99%より大きい透過率を有する。
【0094】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例の以下の説明から、かつ図面を用いて明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】本発明によるキャリア基板の第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】キャリア基板の第2の実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】製品基板の第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4】製品基板の第2の実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】製品基板の第3の実施形態を概略的に示す図である。
【
図6a】本発明による第1の方法の第1のプロセスステップを概略的に示す図である。
【
図6b】本発明による第1の方法の第2のプロセスステップを概略的に示す図である。
【
図6c】本発明による第1の方法の第3のプロセスステップを概略的に示す図である。
【
図6d】本発明による第1の方法の第4のプロセスステップを概略的に示す図である。
【0096】
図中、同一の構成要素、または同一の機能を有する構成要素は、同一の参照符号で示されている。
【0097】
図中、不要な構成要素、特に基板保持体の図示は、プロセスの説明に必要ではないため完全に省略されている。また、図面および図示の各部分は、縮尺どおりではない。図示が縮尺どおりでないことによって、図面がより理解し易くなる。特に、以下では例示的にグラフェン層6の形態で説明する転写層6は、単原子層に過ぎないが、非常に厚く示されている。また、保護層5または成長層5は、図中では1つの層として示されている。これは、保護層5が保護に加えて成長層5としても設計されている好ましい実施形態である。いずれにしても、保護層5が設けられている。しかし、転写層6を生成するために、保護層5上に追加の成長層を配置することも考えられる。しかし、保護機能を有する層が、転写層6を生成または成長させるのにも適していることが好ましい。
【0098】
図1は、第1の実施形態における、製造された層系を備えたキャリア基板1を示す。この層系は、キャリアベース基板3上に施与された剥離層4からなる。剥離層4上に存在するのは、成長層5または保護層5である。成長層5は、好ましくはそれ自体が層転写プロセスによって剥離層4上に転写されたか、または物理的もしくは化学的な堆積プロセスによって剥離層4上に直接堆積されたものである。成長層5上には、転写層6またはグラフェン層6が生成されている。キャリアベース基板3、剥離層4、成長層5、および特にグラフェン層6の厚さは、縮尺どおりに図示されていない。特に、単原子層としてのグラフェン層6は、非常に薄く、特に一本の線としてのみ図示されるべきであった。しかし、図示をより良好なものとするため、縮尺どおりの図示は省略されている。
【0099】
図2は、第2の実施形態における、製造された層系を備えたキャリア基板1’を示す。キャリア基板1’は、転写層6またはグラフェン層6上に、堆積または転写された接触層8をさらに備えている。
【0100】
図3は、第1の実施形態における製品基板2を示す。製品基板2は特に、製品ベース基板7のみからなる。
【0101】
図4は、第2の実施形態における製品基板2’を示す。製品基板2’は、製品ベース基板7、およびその上に堆積または転写された接触層8からなる。接触層8は、好ましくは誘電体層であり、最も好ましくは酸化ケイ素層である。
【0102】
図5は、第3の実施形態における製品基板2’’を示す。製品基板2’’は、製品ベース基板7’からなる。製品ベース基板7’において既に、特に機能部品9が製造されている。好ましくは、製品ベース基板7’の上に接触層8’が堆積されている。この接触層8’は、好ましくは導電性ビア10を備え、これらのビアは、特に機能部品9を、転写される転写層またはグラフェン層(図示せず)と接続させるためのものである。本実施形態は、接触層8’を省略することも考えられるであろう。この場合、ビア10も存在せず、転写される転写層またはグラフェン層(図示せず)は、特に機能部品9(図示せず)の接触箇所と直接接触することになる。接触層8’も、好ましくは誘電体層、最も好ましくは酸化ケイ素層である。
【0103】
以下の
図6a~
図6dは、転写層を転写するための第1の方法またはプロセスを、例示的にキャリア基板2’および製品基板2’を用いて示す。しかし、このプロセスは、剥離層4と、成長層5と、転写される転写層6またはグラフェン層6とからなる層系が特にこの順序で存在する限り、キャリア基板と製品基板との任意のいかなる組み合わせによっても実施することができ、特に、明示的に図示されていないキャリア基板および/または製品基板によっても実施することができる。
【0104】
さらに、以下の図面では、製品基板2’を上側、キャリア基板1’を下側で図示している。また、キャリア基板1’が上側に存在し、製品基板1’が下側に存在することも考えられる。また、わかりやすくするために、基板保持体、接合装置、およびアライメント装置の図示は省略する。
【0105】
図6aは、転写層を転写するための第1の方法または第1のプロセスの第1のプロセスステップを示し、製品ベース基板7と接触層8とからなる製品基板2’を、キャリア基板1に対して位置合わせする。接触層8は、好ましくは酸化物であり、最も好ましくは酸化ケイ素である。キャリア基板1は、キャリアベース基板3と、剥離層4と、成長層5と、転写される転写層6またはグラフェン層6とからなる。どのようにグラフェン層6が成長層5上に生成または転写されたかはプロセスの理解には関係なく、したがって詳細には説明しない。位置合わせは、機械的および/または光学的に行うことができる。光学的な位置合わせの場合、特にアライメントマーク(図示せず)が製品基板2’上およびキャリア基板1上に存在する。
【0106】
図6bは、第1のプロセスの第2のプロセスステップを示し、キャリア基板1と製品基板2’との接触を行う。接触がどのように正確に行われるかはプロセスに関係しないため、図には図示されていない。しかし、接触は、好ましくは、両基板1、2’のうち少なくとも一方を曲げる装置によって行われる。したがって、接触プロセスは、好ましくはフュージョン接合設備を用いて行われる。このプロセスの非常に特に好ましい一実施形態では、特に上方の製品基板2’を曲げ、一方で、特に下方のキャリア基板1を全面的に固定する。
【0107】
図6cは、第1のプロセスの第3のプロセスステップを示す。剥離層4に、剥離手段11を作用させる。剥離手段11は、好ましくはレーザである。剥離手段を、好ましくはキャリアベース基板3を介して剥離層4に作用させる。その際、成長層5は、その背後にあるグラフェン層6の保護シールドとして機能する。グラフェン層6は単原子層であるため、グラフェン層6は、高い強度を有する剥離手段11によって破壊される可能性がある。したがって、好ましくはグラフェン層6を生成するためにも用いられる成長層5を、保護シールドとして使用する。したがって、成長層5は、その都度使用される剥離手段11が剥離工程時に最良の様式で遮断されるか、または剥離手段11から生じる転写層6への影響が少なくとも非常に顕著に減少するように、設計されていなければならない。剥離手段11がレーザである場合、成長層5は、レーザ11の光子に対して可能な限り低い透過率を有することが望ましい。剥離手段11が、例えば熱源によって導入される熱である場合、グラフェン層6への熱の輸送を困難にするために、成長層5が可能な限り低い熱伝導率を有することが望ましい。
【0108】
剥離層4と成長層5との間に、転写層6の保護という特定の役割を果たし得る任意の数の他の層が存在してよいことは、当業者にとって明らかである。したがって、剥離層4と成長層5との間に、剥離手段11のレーザ光線または熱を極めて良好に吸収するさらなる層を挿入することが考えられる。しかし、説明も図示も複雑とならないように、簡略化のためにこの特性は単一の成長層5にまとめられる。特に、好ましくはグラフェン層6の成長に使用される成長層5が、同時に、使用される剥離手段11のその保護層としても機能することが有利である。それにより、高コストのさらなる層を堆積させる必要がないため、非常に費用対効果の高いプロセスを実施することができる。さらなる利点の1つとして、成長層5が特に好ましくは金属層であり、非常に好ましくはニッケル層であることが挙げられる。周知のように、金属は非常に良好な赤外線吸収体である。最も好ましい剥離手段11は、レーザ、好ましくは赤外線レーザである。したがってこの特別な場合には、金属成長層11は、その固体特性ゆえに、成長層5として、および保護層として同時に機能することができる。剥離手段11が熱源である場合、金属成長層5は、熱伝導率が比較的高いため当然のことながら最適ではないであろう。この場合、成長層5と剥離層4との間にさらなる層、特に熱伝導率の低い層が挿入されることが好ましい。
【0109】
図6dは、第1のプロセスの第4のプロセスステップの第1の変形例を示し、ここでも同様に転写される成長層5(図示せず)が既に除去されている。よって、転写層6またはグラフェン層6が、プロセスの最終生成物である製品基板2e上に得られる。製品基板2e、特に転写されたグラフェン層6を、その後、さらなるプロセスステップでさらに加工することができる。既に言及されている成長層5の使用に関する他の2つの変形例は、実際の方法に関するさらなる結論をそれらから引き出すことができないため、ここでは図式的に示されていない。
【符号の説明】
【0110】
1 キャリア基板
2,2’,2’’,2e 製品基板
3 キャリアベース基板
4 剥離層
5 成長層、保護層
6 転写層、グラフェン層
7,7’ 製品ベース基板
8,8’ 接触層
9 機能ユニット
10 ビア
11 剥離手段
【手続補正書】
【提出日】2022-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基板(1)から製品基板(2,2’,2’’,2e)へ転写層(6)を転写するためのキャリア基板(1)であって、前記キャリア基板(1)は、少なくとも以下の層を以下の順序:
- キャリアベース基板(3)
- 保護層(5)、および
- 前記転写層(6)
で備えているキャリア基板(1)において、
前記キャリア基板(1)は、前記キャリアベース基板(3)と前記保護層(5)との間に配置された少なくとも1つの剥離層(4)を備えており、前記転写層(6)は、前記保護層(5)上に成長して
おり、前記保護層(5)は、前記転写層(6)を防護していることを特徴とする、キャリア基板(1)。
【請求項2】
前記転写層(6)がグラフェン層(6)である、請求項1記載のキャリア基板(1)。
【請求項3】
特に前記転写層(6)に面する表面上での前記保護層(5)の粗さが、100μm未満、好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満、非常に好ましくは100nm未満、最も好ましくは10nm未満である、請求項1または2記載のキャリア基板(1)。
【請求項4】
前記転写層(6)が、前記キャリアベース基板(3)と前記保護層(5)との間に配置された少なくとも1つの剥離層(4)を備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項5】
前記転写層(6)が、前記剥離層(4)および/または剥離領域に作用する剥離手段(11)によって、前記保護層(5)とともに前記キャリアベース基板(3)から剥離可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項6】
前記保護層(5)が、炭素が溶解し得る材料から構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項7】
前記保護層(5)が、電磁放射線に対して非透過性となるよう設計されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項8】
前記保護層(5)とは反対側の前記転写層(6)の面上に、特に誘電体材料、好ましくは酸化ケイ素から構成される接触層(8,8’)が配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項9】
前記保護層(5)が、単結晶金属層であり、好ましくはニッケル製である、請求項1から8までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のキャリア基板(1)から製品基板(2,2’,2’’,2e)へ転写層(6)を転写するためのキャリア基板(1)の製造方法であって、
i)キャリアベース基板(3)を提供するステップと、
ii)前記キャリアベース基板(3)上に保護層(5)を施与するステップと、
iii)前記保護層(5)上に転写層(6)、特にグラフェン層を成長させるステップと
を有する、方法。
【請求項11】
ステップiii)における前記転写層(6)の成長の前に、前記保護層(5)を再結晶化させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ステップii)における前記保護層(5)の施与の前に前記キャリアベース基板(3)を剥離層(4)で被覆し、前記剥離層(4)上に前記保護層(5)を施与する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記保護層(5)とは反対側の前記転写層(6)の面上に接触層(8,8’)を堆積させる、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項記載のおよび/または請求項10から13までのいずれか1項記載の方法により製造されたキャリア基板(1)から製品基板(2,2’,2’’,2e)への転写層(6)の転写方法であって、
- 前記転写層(6)が前記製品基板(2,2’,2’’,2e)に面するように前記キャリア基板(1)を前記製品基板(2,2’,2’’,2e)と接触させ、
- その際、少なくとも1つの剥離手段(11)が前記キャリア基板(1)に作用することにより、前記転写層(6)を前記保護層(5)とともに前記キャリアベース基板(3)から剥離させる、方法。
【請求項15】
前記キャリア基板(1)を、前記転写層(6)上に施与された接触層(8,8’)を介して前記製品基板(2,2’,2’’,2e)と接触させるか、または前記キャリア基板(1)を、前記転写層(6)上に施与された接触層(8,8’)を介して、前記製品基板(2,2’,2’’,2e)の製品ベース基板(7,7’)上に施与されたさらなる接触層(8,8’)と接触させる、請求項14記載の転写層(6)の転写方法。
【国際調査報告】