(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】回転翼航空機のロータ・ヘッドのテンション・トーション・ストラップ
(51)【国際特許分類】
B64C 27/48 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B64C27/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567122
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2021060689
(87)【国際公開番号】W WO2021224034
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522299894
【氏名又は名称】コプター グループ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カミナダ、マリオ
(72)【発明者】
【氏名】スクジンスキー、ミハエル
(57)【要約】
開示されている本発明には、長手方向軸の方向に、連結孔70を備えた第1の辺縁領域700と、中央部分71と、連結孔72を備えた第2の辺縁領域720とを備える、回転翼航空機のロータ・ヘッド3の一部としてのテンション・トーション・ストラップ7について記載されており、一体型のテンション・トーション・ストラップ7は、接合された多数の層で作製され、申し分のない生産及び設置が得られ、それにより、整備がより簡略化される。これは、横軸を中心に畳まれたときに位置合わせすることができない、不均等に形状設定された2つの辺縁領域により、テンション・トーション・ストラップ7が横軸に対して全体的な非対称形状を示すことにより、実現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼航空機のロータ・ヘッド(3)の一部としてのテンション・トーション・ストラップ(7)であって、長手方向軸(L)の方向に、連結孔(70)を備えた第1の辺縁領域(700)と、中央部分(71)と、連結孔(72)を備えた第2の辺縁領域(720)とを備え、前記一体型のテンション・トーション・ストラップ(7)が、接合された多数の層(73、74)で作製されている、テンション・トーション・ストラップ(7)において、
前記テンション・トーション・ストラップ(7)は、不均等に形状設定された2つの辺縁領域(700、720)により、前記テンション・トーション・ストラップ(7)の本体、前記接合された層(73、74)のそれぞれに追加の構成要素を取り付けることなしに、横軸(Q)に対して全体的な非対称形状を示し、前記不均等に形状設定された2つの辺縁領域(700、720)は、前記横軸(Q)を中心に畳まれたときに位置合わせすることができないことを特徴とする、テンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項2】
前記非対称に形成された辺縁領域(700、720)が、前記中央部分(71)と前記辺縁領域(700、720)との間に、異なるように形成された曲率(cs、cw)を示し、前記長手方向軸(L)から離れた長手方向における前記外側辺縁領域(700)の前記曲率(cs)が、前記内側辺縁領域(720)の前記曲率(cw)よりも著しく小さい、請求項1に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項3】
前記辺縁領域(700、720)の一方にインデックス(75)が取り付けられて、前記テンション・トーション・ストラップ(7)の前記全体的な非対称形状を形成し、したがって、前記テンション・トーション・ストラップ(7)は、前記横軸(Q)を中心に畳まれたときに位置合わせすることができない、請求項1又は2に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項4】
前記層(73、74)が、前記インデックス(75)があろうとなかろうと非対称に形成された辺縁領域(700、720)を得るように形成されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項5】
前記インデックス(75)が、辺縁領域(700、720)の外側表面又は側方表面から突出する矢印として形成されて、その矢尻で方向を示す、請求項3又は4に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項6】
前記テンション・トーション・ストラップ(7)の少なくとも前記中央部分(71)が、異なる形状を備える直に隣接する層(73、74、74’)によって構築された、多角形の、正方形でないインデックス断面(Si)を示す、請求項1から5までのいずれか一項に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項7】
前記インデックス断面(Si)が、少なくとも部分的に、六角形形状、及び/又は正多角形形状、及び/又は星形多角形形状を有する、請求項6に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項8】
前記層(73、74、74’)が、異なる形状及び/又は材料、並びにそれに伴う特性を備える、異なる層の群で形成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項9】
異なる形状及び/又は材料を備える、少なくとも2つの異なる層(73、74、74’)の群が、前記中央部分(71)において前記インデックス断面(Si)を形成している、請求項8に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項10】
包装(76)が取り付けられ、前記包装(76)は、前記中央部分(71)を覆い、合成材料で作製され、前記中央部分(71)の前記外側表面と接触するホース状の形状を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項11】
前記包装(76)が、好ましくはエラストマーで作製される、請求項10に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項12】
前記包装(76)が、好ましくは透明又は半透明なポリマーで作製される、請求項10に記載のテンション・トーション・ストラップ(7)。
【請求項13】
少なくともロータ・ハブ(4)と、ロータ・ドライブ・トレイン・ハブ(5)と、多数のブレード・ホルダ(6)とを備え、前記多数のブレード・ホルダ(6)が、請求項1から12のいずれか一項に記載の関連付けられた多数のテンション・トーション・ストラップ(7)を用いて前記ロータ・ドライブ・トレイン・ハブ(5)に固定可能であり、前記ロータ・ハブ(4)の貫通穴を通って突出する、回転翼航空機のロータ・ヘッド(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明には、長手方向軸の方向に、連結孔を備えた第1の辺縁領域と、中央部分と、連結孔を備えた第2の辺縁領域とを備える、回転翼航空機のロータ・ヘッドの一部としてのテンション・トーション・ストラップであって、一体型のテンション・トーション・ストラップが、接合された多数の層で作製されている、テンション・トーション・ストラップ、並びに少なくともロータ・ハブと、ロータ・ドライブ・トレイン・ハブと、多数のブレード・ホルダとを備え、多数のブレード・ホルダが、関連付けられた多数のテンション・トーション・ストラップを用いて固定可能である、回転翼航空機のロータ・ヘッドについて記載されている。
【背景技術】
【0002】
回転翼航空機のロータ・ヘッドの一部としてのテンション・トーション・ストラップが知られている。ロータ・ヘッドは、少なくとも、ロータ・ハブと、ロータ・ドライブ・トレイン・ハブと、多数のブレード・ホルダとを備え、多数のブレード・ホルダは、関連付けられた多数のテンション・トーション・ストラップを用いてロータ・ドライブ・トレイン・ハブに固定可能である。テンション・トーション・ストラップ、又は回転翼機の反トルク装置若しくはロータ・ヘッドの一部としての部材により、飛行動作中に遠心力が吸収される。
【0003】
EP3315403から単一のテンション・トーション・ストラップが知られており、ねじれることができるこうしたビームのそれぞれは、具体的にはブレードが受ける遠心力を吸収するために、ブレード及びハブに固定される。それぞれのテンション・トーション・ストラップは十分に低いねじり剛性を有して、そのピッチ軸を中心にブレードが回転することを可能にする。EP3315403に明示的に言及され、示されているように、テンション・トーション・ストラップは層で構成され、層は、辺縁領域の全く同様に形成された連結孔部分を備えた、全体的に対称な形状を示している。
【0004】
米国特許第8834128号のテンション・トーション・ストラップは、層構造を示しており、他の従来技術のテンション・トーション・ストラップよりも全体的に厚い。辺縁領域の連結孔又はアイレットは全く同様に形成され、辺縁領域が横軸を中心に畳まれた場合、両方の辺縁領域は完全に合同である。辺縁領域の傾斜した平面も、両側において合同であり、したがって、長手方向軸及び横軸に対して、テンション・トーション・ストラップの鏡像対称性が存在する。それにより、従来技術のテンション・トーション・ストラップの横軸に対して全体的に対称な形状、又は言い換えれば回転対称性が結果として得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP3315403
【特許文献2】米国特許第8834128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、回転翼航空機のロータ・ヘッド向けに、最適化された種類のテンション・トーション・ストラップ、及び多数のこうしたテンション・トーション・ストラップを備える回転翼航空機のロータ・ヘッドを作り出すことであり、それにより、申し分のない生産及び設置が保証される。簡略化された整備を結果として得ることができ、破壊する前に、任意選択の弱い箇所を見ることができるようになり得る。ロータ・ヘッドのテンション・トーション・ストラップのより簡略化された整備作業がその結果であり、回転翼航空機のより効率的な整備につながる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
テンション・トーション・ストラップの製造が最適化され、組立て中の誤りが防止されるので、整備間隔を延長することすら可能になる場合がある。
【0008】
亀裂又は差し迫った破損が検出しやすくなるということは、時間をかけて多くの構成要素を分解するのを当分の間避けられるということを意味する。
【0009】
いくつかの追加の任意選択の特徴を備えた本発明の主題の好ましい例示的な実施例について、添付の図面を併用して以下に説明する。
【0010】
各図において、図は本発明の異なる実施例をいつも示しているとは限らず、同じ部品に同じ参照符号又は同じ構成要素名が提供されていることに留意されたい。説明全体に含まれる各開示は、同じ参照符号又は同じ構成要素符号を備えた同じ部品に類似的に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】部分的に分解されたロータ・ヘッドを備える回転翼航空機のロータの分解図であり、テンション・トーション・ストラップに取り付けられる前のロータ・ブレード取付け装置を一実例として示す図である。
【
図2a】ロータ・ヘッド内の、実際にはハブ・キャップを取り外した後の、ロータ・ハブ内へのインサイト図(insight view)である。
【
図2b】
図2aの断面
図A-Aであり、設置された状態のテンション・トーション・ストラップの縦断面図を示す。
【
図3a】テンション・トーション・ストラップの斜視図であり、非対称性が明確に見て取れる。
【
図3b】ここでは3つの異なる層領域を備える金属材料のいくつかの層で形成された、典型的に形成されたテンション・トーション・ストラップの縁部を通る部分断面図である。
【
図3c】辺縁領域又は境界領域の異なる曲率が示された、
図3aによるテンション・トーション・ストラップの上面図である。
【
図4】一方の辺縁領域にインデックスを備え、中央部分を覆う包装を備えた、テンション・トーション・ストラップの斜視図である。
【
図5a】ここでは六角形の形状のインデックス付けされた断面を備えたテンション・トーション・ストラップの斜視図である。
【
図5b】層状構造を示す、C-Cに沿ったインデックス付けされた断面をより詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を説明するための実例として、回転翼航空機のテール・ロータの一部が
図1に示してある。簡潔にするために、ロータの考えられるシュラウド及び多数のロータ・ブレードは割愛されている。ロータ・ヘッド3は、ギア・ボックスに連結されたロータ・ドライブ・トレインに連結され得る。ロータ・ヘッド3は、ロータ・ハブ4と、ロータ・ハブ4から分離されるか又はロータ・ハブ4に一体化された、結合要素の形を取るロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5と、関連付けられたテンション・トーション・ストラップ7を備える多数のブレード・ホルダ6とを備え、テンション・トーション・ストラップ7は、マウント・ボルト8を用いて着脱可能に固定される。少なくとも多数のブレード・ホルダ6に回転可能に連結されたピッチ制御ユニット9、及びロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5全体などは、ハブ・キャップ10で覆われ得る。ロータ・ヘッド3は、点線の中心軸を中心に回転することができる。
【0013】
ここでは、ブレード・ホルダ6は2つの部分、ストラップ保持部分60及びブレード保持部分61を備える。ロータ・ブレードはここで対象とするものではないので、ブレード保持部分61についてはここではこれ以上説明しない。両方の部分は、ここでは一体に成形されている。ストラップ保持部分60は連結ボア600を提示し、そこにストラップ保持ボルト601を挿入して、テンション・トーション・ストラップ7の片側を保持することができる。一体成形されたピッチ・ホーン602、又は固定ピッチ・ホーン602により、すべてのブレード・ホルダ6の、また間接的にはすべてのロータ・ブレードのピッチ制御ユニット9に結合部が提供される。組み立てられると、ブレード・ホルダ6は、ロータ・ハブ4の内部の穴の中に部分的に位置付けられる。少なくとも、それぞれのブレード・ホルダ6のブレード保持部分61は、穴から突出する。
【0014】
テンション・トーション・ストラップ7は、本質的に3つの部分、第1の連結孔70、中央部分71、及び第2の連結孔72を提示する。すべての部分は平面的な又は平坦な層で作製されているが、第1の連結孔70は中央部分71へと一体化し、中央部分71は第2の連結孔72へと一体化する。
【0015】
第1の連結孔70を用いて、ブレード・ホルダ6での連結が可能になる。両方の構成要素は、ストラップ保持ボルト601を連結ボア600に通した後、ねじ連結又はソケット・ピンを用いて連結される。このように、直線的な不変的締結が実現される。締結されると、テンション・トーション・ストラップ7はロータ・ハブ4の開口を通ってロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5へと突出する。他方の側では、テンション・トーション・ストラップ7はブレード・ホルダ6に、より具体的にはロータ・ハブ4の外周の内側にマウントされたストラップ保持部分60に連結される。ブレード・ホルダ6の設計は異なる方式でなされる場合もあることは、当業者には明らかである。
【0016】
テンション・トーション・ストラップ7の第2の連結孔72を用いて、ロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5への着脱可能な取付けを行うことができる。この目的のために、対応する開口がロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5に提供され、そこにマウント・ボルト8を押し込んで、第2の連結孔72を保持することができる。異なるタイプの連結部、ここではねじ連結部又はプラグ連結部も考えられる。テンション・トーション・ストラップ7全体は、それに応じてピッチ制御ユニット9がブレード・ホルダ6を用いてロータ・ブレードを偏向させることを可能にするために、一定の柔軟性を有しなければならない。
【0017】
図2aによるロータ・ヘッド3内のインサイト図には、それぞれが片側でロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5に連結され、開口を通ってロータ・ハブ4に到達し、対応するブレード・ホルダ6へと半径方向に突き出た、多数のテンション・トーション・ストラップ7が示してある。テンション・トーション・ストラップ7の内部側では、それらはマウント・ボルト8を用いて固定され、マウント・ボルト8はナットによって固着される。ストラップ保持部分60では、ストラップ保持ボルト601がブレード・ホルダ6の内側にテンション・トーション・ストラップ7を保持する。ここでも、ピン連結部を用いた着脱可能な連結部が使用される。それぞれのピッチ・ホーン602をピッチ制御ユニット9に連結した後、それぞれのテンション・トーション・ストラップ7を最小限の角度だけ長手方向に枢動させることができる。いくつかのロータ・ブレードが点線で図示されており、テンション・トーション・ストラップ7の長手方向軸も示されている。
【0018】
マウントされたテンション・トーション・ストラップ7を通る対応する断面図が
図2bに示してある。テンション・トーション・ストラップ7は、テンション・トーション・ストラップ7の長手方向軸Lの方向に、ロータ・ハブ4とロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5との間にクランプされ且つ着脱可能に連結されている。テンション・トーション・ストラップ7の外側領域700はロータ・ハブ4に連結され、内側領域720はロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5に連結される。
【0019】
テンション・トーション・ストラップ7の形状により、ここに記載する本発明の有利な結果が保証される。
【0020】
テンション・トーション・ストラップ7は、その長手方向軸Lに沿って、外側領域700の第1の連結孔70と、中央部分71と、内側領域720の第2の連結孔72とを提示する。テンション・トーション・ストラップ7は、異なる材料の層を備えた少なくとも2種類の層領域を備える層構造を有する。所望のねじり特性を得るために、層構造を使用することが有利である。
【0021】
テンション・トーション・ストラップ7の長手方向軸Lに沿った全体的な形状は、
図3aに示してあるように非対称でなければならない。非対称性により、異なる形状の辺縁領域700、720、又は辺縁領域700、720の不一致な設計が意味される。非対称性の程度は、辺縁領域700、720の違いがそれに対応して肉眼で見えるような程度でなければならない。
【0022】
こうした非対称なテンション・トーション・ストラップ7を用いると、設置のための正しい配向の指示を得ることができ、これは目で容易に判定することができる。この視覚的な支援以外に、非対称な形状はそれらの相手部品に適合され、これにより、その部品を誤って設置することが不可能になる。このことにより、真のミス防止システムが得られる。
【0023】
追加的に、特に辺縁領域におけるこうした非対称性により、異なる特性を備えた辺縁領域がもたらされ得る。ここでは、外側領域700は、より弱い部分720である内側領域720よりも、強度の点でより強い部分700である。テンション・トーション・ストラップ7の一部としてより弱い部分720が得られた場合、この端部が最初に疲労破損の兆候を示す。これにより、より弱い部分720のみを検査することができるので、点検がより容易になる。したがって、関連付けられた切り欠き部が、ブレード・ピッチ制御スパイダ、又はロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5、又はロータ・ヘッド3のカバーに配設されるべきである。
【0024】
テンション・トーション・ストラップ7に関する典型的な層構造の構成が
図3bに示してある。試験で示されたように、第1の材料又は様々な金属の好ましい金属シートが使用され、これは、プラスチック層と交互に提供されるか又はそれに固定され得る。異なる層73、74、74’にいくつかの材料を使用することにより、可能な限りより低いねじり剛性を示すが、軸方向の張力強度を保った構造体になる。複数の材料を使用する結果、単一の材料を使用するよりもねじり剛性が低くなる。第1の層領域73、第2の層領域74、及び第3の層領域74’において異なる金属/プラスチック複合物を使用したときに、最も良い結果が得られた。特に、これらの異なる層73、74、74’が
図3bに示されているように交互に配置されているとき、最小のねじり剛性を得ることができる。本発明者らは、少なくとも2つの異なる層領域73、74の交互配置により、良好な結果が示されることを見出した。いくつかの層はプラスチックからでもよく、好ましくは繊維によって補強され得る。しかし、それらは単一の層であり、1枚の完全なストラップではない。このため、製造においてより容易な2Dプレートから、それらを切り取ることができると言える。
【0025】
図3cに明確に示してあるように、テンション・トーション・ストラップ7、特に辺縁領域700、720の非対称性は、異なる曲率形態によって得ることができる。
【0026】
外側領域700はより強い部分の曲率csを示し、内側領域720はより弱い部分の曲率cwを示す。長手方向軸Lから離れた長手方向における外側領域700の曲率csは、内側領域720よりも著しく小さい。したがって、第1のアイレット70の形状は、長手方向において第2のアイレット72の形状よりも長い。両方のアイレット70、72は、互いから区別するのが容易であり、こうしたテンション・トーション・ストラップ7の位置合わせは、容易に正しく行うことができる。テンション・トーション・ストラップ7の、使用される個々の層は、テンション・トーション・ストラップ7の全体的な非対称性が得られるように構成されなければならない。
【0027】
製造している間、及びロータ・ハブ4とロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5との間に配設する間にテンション・トーション・ストラップ7を正しく配置することを確実にするための別の特徴は、インデックス75の配置である。
【0028】
少なくとも1つの辺縁領域700、720にインデックス75を用いても、非対称な辺縁領域700、720を備えた非対称なテンション・トーション・ストラップ7を得ることができる。
【0029】
こうしたインデックス75は、外側領域700又は内側領域720の領域で、端面又は側面のうちの1つに位置付けることができる。この場合、インデックス75は、好ましくは内側領域720の領域に位置付けられて、内側領域720の外面から突出し、内側領域720の側面から離れるように長手方向Lに突出する。
【0030】
したがって、インデックス75のみを用いても、上に説明した、テンション・トーション・ストラップ7全体の全体的な非対称性を得ることができる。
【0031】
テンション・トーション・ストラップ7を正しく事前組立てする視認性のために、たとえばここで示されているように矢印として形成されたインデックス75が、テンション・トーション・ストラップ7の片側に追加される。矢印75は、ここでは第2の連結孔72の側で、辺縁領域700、720の外側表面から突出し、その矢尻で方向を示す。
【0032】
ここで説明した手段によって得られるテンション・トーション・ストラップ7の非対称性により、テンション・トーション・ストラップ7にインデックス75があろうとなかろうと、ロータ・ヘッド3に、ロータ・ハブ4及び/又はロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5にそれぞれ、テンション・トーション・ストラップ7全体を誤って設置するのを防止することができる。
【0033】
ここでは、より強い部分700及びより弱い部分720が正しい位置に存在するのを可能にすることが重要である。したがって、ロータ・ヘッド3内のテンション・トーション・ストラップ7を囲繞する部品は、突出するインデックス75、又は以下に説明する別の形態のインデックス75’がそれらとぶつかる方式で設計される。これにより、テンション・トーション・ストラップ7をロータ・ヘッド3に間違った形で設置することができなくなる。
【0034】
ねじり挙動を改善するために、異なる層73、74、74’は異なる形状及び材料でもよい。
【0035】
不均等に形状設定された2つの辺縁領域700、720の場合、非対称なテンション・トーション・ストラップ7は、横軸Qに対して非対称である。これらの辺縁領域700、720は、横軸Qを中心に畳まれたときに位置合わせすることができない。
【0036】
インデックス75があろうとなかろうと、非対称なテンション・トーション・ストラップ7の主な意図は、部品を誤って設置するのを不可能にすることである。
【0037】
インデックス75があろうとなかろうと、非対称なテンション・トーション・ストラップ7の安定性を高めるために包装76が使用され、中央部分71の周りに巻かれる。こうした包装76は合成的な部品であり、好ましくは透明又は半透明なエラストマーで作製される。好ましくは、包装76はエンドレスに、又はホース状に設計される。包装は、少なくとも部分的に、中央部分71の外側表面と直接接触するべきである。
【0038】
包装76用の考えられるエラストマー又はポリマーは、具体的には熱収縮チューブの形を取る、十分に柔軟なポリマーである。意図しない追加の剛性又は誘因応力注入(attracting stress injection)を与えないために、シリコーンのような成形エラストマーである非常に柔らかい材料の包装76が好ましい。
【0039】
包装76は、固く巻かれ、直線的に動かないように構成され、熱収縮により取り付けられて、テンション・トーション・ストラップ7の中央部分71においてすべての層73、74、74’を囲繞することができる。
【0040】
図5aによるテンション・トーション・ストラップ7の斜視図では、層状構造を容易に認識することができる。遠心力の吸収を向上させること、及び十分なねじり特性を引き続き提供すること以外に、層状構造は、インデックス75’として使用され得る。
【0041】
ここでは、インデックス75’として、テンション・トーション・ストラップ7のインデックス付けされた断面Siが使用され、隣接する層は、規定の形状を作り出すように設計された異なる形状又は異なる層外形を有して、ロータ・ヘッド3内のテンション・トーション・ストラップ7の正しい組立てを可視化する。ここでのインデックス付けされた断面Siは、異なる層外形を備えた多数の層73、74を備える六角形の形状を示す。直に隣接する層は異なる層外形を示して、全体的な六角形のインデックス断面Siをもたらす。個々の層73、74が不正確な順序で配置されていることを直接的に読み取ることができるので、テンション・トーション・ストラップ7の正しい組立ては容易に認識される。
【0042】
やはり、テンション・トーション・ストラップ7のインデックス付け、インデックス断面Siは、ロータ・ハブ4、ロータ・ドライブ・トレイン・ハブ5、及び/又はブレード・ホルダ6のような周囲の部品の形状に対応することができる。断面Siは、ねじり剛性を最適化し、テンション・トーション・ストラップ7の応力を促進(drive)するように形成される。
【0043】
当然、インデックス断面Siは、多角形、星形多角形、具体的には正多角形のような六角形形状以外の形状を有してもよく、それぞれ、異なる形状を有する直に隣接する層を用いて構築される。
【0044】
図5bに示すように、層73、74は、異なる材料及び/又は形状を備える層の群も備えることができ、ここでは、強度及び剛性を調整するための、層73、74内の異なる形状及び材料の少なくとも2つの群が使用される。従来、これは異なる層の形状によってなされていたが、本発明者らは、ここに、異なる材料を選択することによる1つの追加的な調整方法を追加する。
【0045】
断面Siの内側層73の材料は、具体的には、使用されている外側層74の材料よりもより剛性であるか又はより剛直である。追加的に、異なる材料を用いると、層同士の間の摩耗挙動を改善することができる。
【0046】
一般に、テンション・トーション・ストラップ7は、全体的な非対称な本体を得るために、テンション・トーション・ストラップ7の本体、接合された層73、74、74’のそれぞれに、追加の構成要素又は外部構成要素を取り付ける必要はない。したがって、構成要素が誤った方式で取り付けられるか又は望まずして脱落する可能性はない。
【0047】
本発明によるすべてのテンション・トーション・ストラップ7は、一体型の層構造体として説明され得る。テンション・トーション・ストラップ7、それぞれの層73、74、74’の形状のそれぞれの形状設定により、技術的利点がもたらされ、課題が解決される。形状設定により、本発明者らのテンション・トーション・ストラップ7は、横軸に対して回転対称を示さない。
【符号の説明】
【0048】
3 ロータ・ヘッド
4 ロータ・ハブ
5 ロータ・ドライブ・トレイン・ハブ
6 ブレード・ホルダ
60 ストラップ保持部分/チューブ状部分
600 連結ボア
601 ストラップ保持ボルト
602 ピッチ・ホーン
61 ブレード保持部分
7 テンション・トーション・ストラップ(層構造/非対称な全体的形状、異なるように形成された層、片側にインデックス、特別な断面)
70 第1の連結孔
700 辺縁領域/より強い部分
cs より強い部分の曲率
71 中央部分
72 第2の連結孔
720 辺縁領域/より弱い部分
cw より弱い部分の曲率
73 第1の層領域/シート材料(好ましくは金属)
74、74’ 第2の層領域/第3の層領域/シート材料(好ましくは金属)
75 インデックス
75’ 断面層インデックス
76 包装
Si TTストラップのインデックス付けされた断面
8 マウント・ボルト
9 ピッチ制御ユニット
10 ハブ・キャップ
L テンション・トーション・ストラップの長手方向軸
Q 横軸
【国際調査報告】