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特表2023-533651超分岐超構造に基づく高度モノリシック硫黄ウェハ状カソードおよびその製造方法
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  • 特表-超分岐超構造に基づく高度モノリシック硫黄ウェハ状カソードおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】超分岐超構造に基づく高度モノリシック硫黄ウェハ状カソードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/136 20100101AFI20230728BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230728BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230728BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20230728BHJP
【FI】
H01M4/136
H01M4/58
H01M4/36 D
H01M4/1397
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571253
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021063234
(87)【国際公開番号】W WO2021233965
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175368.8
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522453407
【氏名又は名称】テイオン ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スラヴィック,マレック
(72)【発明者】
【氏名】ストラコワ,フェドルコワ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】カズダ,トマーシェ
(72)【発明者】
【氏名】クナーピラ,マッティ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA19
5H050CA26
5H050CB12
5H050DA02
5H050GA02
5H050GA06
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、活性電極材料として双晶硫黄結晶の不均質な分岐構造および/または不均質な超分岐構造を備える、モノリシック硫黄構造カソード本体、すなわち、硫黄ウェハを有する充電式電池用のカソードに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性電極材料として双晶硫黄結晶の不均質な分岐構造および/または不均質な超分岐構造を備える、結晶モノリシック硫黄構造カソード本体、すなわち、成長済み硫黄ウェハを有する充電式電池用のカソード。
【請求項2】
前記活性電極材料、好ましくは、前記結晶モノリシック硫黄構造カソード本体は、異なる結晶格子を有する少なくとも2つのタイプの硫黄同素体の組み合わせをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体は、好ましくは、人工硫黄超構造、好ましくは、高次および/または高配向の構造を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のカソード。
【請求項4】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体は、少なくとも3層の配向したおよび/またはインターレースした中空管状硫黄ナノチューブおよび/またはナノファイバおよび/またはマイクロチューブおよび/またはマイクロファイバおよび/またはスキンコア繊維構造を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項5】
例えば、前記結晶モノリシック硫黄構造カソード本体のナノチューブおよび/またはナノファイバおよび/またはマイクロチューブおよび/またはマイクロファイバおよび/またはスキンコア繊維構造等の個々の結晶エンティティの内側コアと外側シェルとの間に密度勾配を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項6】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体内の硫黄の総質量含有率は、前記硫黄同素体の92重量%以上、好ましくは95重量%超、より好ましくは98重量%超、またはそれより大きい、および/または、前記モノリシックウェハ状カソード内に存在する硫黄の重量含有率は、85重量%以上またはそれより大きいことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項7】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体は自己支持型であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項8】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体は、前記電極材料がその中に、及び/又はその上に保持またはホストされることになる、例えば、3次元グラフェンフォーム等の、任意の種類の好ましくは付加的な内部支持体から独立して提供されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項9】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体は、前記電極材料がその中に/その上に保持またはホストされることになる、例えば、3次元グラフェンフォーム等の、任意の種類の異質支持体から独立して提供されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項10】
前記硫黄ウェハの構造的完全性は、前記硫黄結晶構造および/または多結晶構造、したがって、前記成長済み結晶エンティティ自体によって提供されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項11】
前記モノリシック硫黄構造カソード本体は、その外側縁部および/または表面上に、前記モノリシック硫黄ウェハの着脱不能な一体部分である電気伝導性でかつイオン透過性の層を保持することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のカソードを有する電池。
【請求項13】
分岐および/または超分岐モノリシック硫黄構造カソード本体、すなわち、硫黄ウェハの生産方法であって、配向モノリシック硫黄結晶は、95℃~120℃の温度で母液を含む硫黄内に存在する種結晶から直接成長され、結果得られるモノリシック硫黄構造の後続のクエンチングは-8℃と-210℃との間である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度正極-アルカリイオンおよび/またはアルカリ土類金属イオン硫黄電池および同じものを有する電池用のカソードに関し、より詳細には、分岐および/または超分岐モノリシックカソード超構造を示すリチウム硫黄2次電池に関し、またより具体的には、同じモノロシック硫黄同素体構造の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
eモビリティの急速な成長および携帯電子機器についての市場需要の進展によって、電気自動車のユーザからのより大きい動作半径についての継続的な要求に適合するより大きいエネルギーを有する高度2次電池についてのまたは携帯電子デバイスの成長部門に起因するより長い電池寿命についての需要の高まりが存在する。
【0003】
KAI XI ET AL:“Binder free three-dimensional sulfur/few-layer graphene foam cathode with enhanced high-rate capability for rechargeable lithium sulphur batteries”,NANOSCALE,vol.6,1 January 2014(2014-01-01),p.5746-5753は、硫黄がその表面上に堆積される3Dグラフェンフォームバックボーンを開示する。THGsiは、硫黄溶液浸透法によって、FLG(:few-layered graphene、少数層グラフェン)の自立型の多孔質かつ相互接続済み3Dネットワーク上に硫黄を充填することによって達成される。抜き出された図7から学習されるように、この構造は、グラフェンネットワーク/フォームからなる硫黄層状バックボーンである。したがって、カソードの構造的完全性(自己支持体)/構造的バックボーンは、硫黄に由来するのではなく、代わりにグラフェンフォームに由来する。本発明による本開示を比較すると、カソードの構造的バックボーンは、硫黄結晶/結晶化度自体によって実際には提供される。
【0004】
国際公開第2011/147924号は、リチウム/硫黄固体複合電池における膨張黒鉛の使用を開示する。ページ13によれば、リチウムカソードは、硫黄および膨張黒鉛を含むスラリーから実際には作られ、スラリーを基材上にキャスト(cast)するかまたはモールド内に配置し、スラリーから液体媒体の一部または全てを除去して、固体複合物を形成する。そのため、国際公開第2011/147924号は、スラリーからの、したがって、固体複合物になるように、乾燥されそれにより圧密化される固体粒子の懸濁物からの硫黄カソードの生産を教示する。これは、硫黄粒子が結晶化度を有することができるが、カソードが、界面を有するより小さいピースの結晶を備えることを意味する。対照的に、本発明によれば、巨視的結晶硫黄構造、すなわち、成長済み硫黄ウェハである結晶モノリシック硫黄構造カソード本体が提供される。
【0005】
米国特許出願公開第2013/164626号は、充電式リチウム硫黄電池用のバインダーなし硫黄カーボンナノチューブ複合カソードを開示する。硫黄カーボン複合物の提供は、硫黄が水溶液からその上で核形成するカーボンナノチューブのシートの形態で行われる。これらの層状カーボンナノチューブの自己組織化によって、固体電極材料は、バインダーなしで形成される(段落70)。そのため、それは、カーボンナノチューブ上の個々の硫黄結晶である(段落16)。しかしながら、これらの結晶はナノ結晶である(段落86)。したがって、バックボーンが、自己支持型である結晶硫黄自体、したがって、結晶モノリシック硫黄構造カソード本体、すなわち、成長済み硫黄ウェハからなるカソードは開示されない。
【0006】
最近、小さくかつコンパクトなエネルギーキャリアに向かうトレンドに一致することは、ここで、Wh/lとして述べられる高い容積容量(volumetric capacity)を有する電池として規定され、また、Wh/kgとして述べられる高い重量エネルギー含有率を有する電池として規定される。より詳細には、「高エネルギー電池(high energy battery)」という用語の規定を理解するときのミスマッチが存在し、電池に対する最も好ましい要求はWh/kgにおける高い重量エネルギーを有することであるが、実際には、それと反対の容積容量Wh/lがより要求が厳しく、その理由は、利用可能な空間、例えば、スマートフォン、ノートブックへの電池の挿入のための利用可能な空間/容積、または、電気自動車プラットフォームにおける利用可能な空間/容積が重量より制限的な因子であるからであり、そのため、高い容積エネルギー含量と高い重量エネルギー含量の両方を有する電池の必要性が存在する-Li-S(:lithium sulphur、リチウム硫黄)電池は、最も有望なタイプのポストリチウム電池の1つであり、硫黄原子当たり2e移動に基づく1672mAh/gの理論的エネルギー含量を有する多段階酸化還元変換反応であり、S+16Li+16e→8LiSであるため、S当たり全部で16eになり、それは、約2650Wh/kgおよび約2860Wh/lを与える。
【0007】
Li-S電池が、低いイオンおよびe伝導率、低密度、斜方晶系α(orthorhombic-α)同素体について79%および単斜晶系β(monoclinic-β)同素体について70%で規定される容積変動、および低いエリア活性質量利用因子等の硫黄の幾つかの制限的因子に対処する必要が依然としてあることになることが明らかである。LiS電池に関連する既存の発明および特許は、提案された解決策、そしてその後、特許請求の範囲が、伝統的なLiイオン電池で使用される既存のスラリーベースセル生産方法に適合させることにその焦点を当てるため、硫黄の特異的な特性を適切に扱うことができない可能性があることを示し確認する。LiS電池を用いて容積エネルギー密度において本Liイオンセル化学物質と競合するために、硫黄2.07g/cmと比較して2倍より大きい5.1g/cm(LiCoO)の範囲内の真の密度を有するカソードとして好ましくはTM(:transition metal、遷移金属)に基づく既存の先行技術のLiイオン電池において、非常に高度な概念、そしてそれに続いて、非常に高度な方法が、カソード活性質量としての硫黄の理論的可能性を解き放つために必要とされる。
【0008】
この特定の特許は、先行技術のLiイオン電池において使用される従来のカソードの合成に必要とされる前駆体を生産し、その後、輸送するために、TM(遷移金属)であって、その生産プロセスが、広範囲のマイニング、精製、および化学処理に縛られる、TMを使用しないことによって、自然に対する敬意を払いながら、高い容積エネルギー含量と高い重量エネルギー含量の両方を有する、安全で費用効果的で環境に優しい硫黄カソードについての必要性に対処する。硫黄は、安価で豊富であり非毒性であり、最も重要なことは、そのグローバルな存在が、主に、化学精製、例えば天然ガスの副産物(廃棄物)としてのものであるため、最初から、Li-S電池が、最もポジティブな環境影響を地球に及ぼすことである。
【0009】
リチウム硫黄電池技術を最適化するために、硫黄同素体の特性、そしてその後、生産プロセスおよび関連するパラメータならびにセル内の電気化学的プロセスと化学プロセスの両方に対する硫黄同素体の影響を完全に理解することが非常に重要である。
【0010】
リチウム硫黄電池は、既存の先行技術のLiイオン電池より3倍高いエネルギー含量を有すると予想されるが、それらの実用的な使用は、適切に解決される必要がある科学的および技術的な多くの問題の存在によって妨げられている。それにより、細かい点に従って、パラメータ700/700/700(Wh/kg、Wh/l、80%DoDおよび1Cレートにおける700×サイクルライフ)を有する実験的20Ah Li-Sパウチ電池としてここで規定するリチウム硫黄電池の商品化に関連する課題が要約され、No.1として最も難しいものから始められる。
【0011】
1.電流分布不均一性およびカソードに対するその影響
これは、例えば、実験室スケールのコインセルからより現実的な数十Ahのパウチセルにわたって集電体タブのタイプ、位置、およびサイズと共に、電極のサイズ/面積が増加することになるため支配的になる、最も問題のある課題である。このプロセスは、硫黄複合カソードの構造的および形態的変化と、既存の電子(伝導性添加物によって提供される)の後続の再分布と、カソード内に存在するイオン分布チャネルまたは経路(電解質を充填されるカソード内の開放ボイドによって提供される)とによって特徴付けられる。集電体フォイルは、活性質量と、複合カソード内に存在する伝導性添加物、バインダー等の支持材料との間に無数の電気接触点を確立し、機能的イオン/電子輸送システムを形成することによって、電子が、外部回路を通して電極へ/から流れることを可能にする。
【0012】
LiS電池をサイクル試験(充電および放電)すると、カソードの容積変動が反復して起こり、その容積変動は過剰な機械的力にさらに変換され、過剰な機械的力は、膨張(放電)および収縮(充電)によって、硫黄/バインダー/添加物の間の既存の確立済みの結合(bond)を損傷することによって、硫黄複合カソードの構造的完全性に深い影響を及ぼす、そのような不具合は、高い容積変化、例えば、S(79%)、Si(276%)、Sn(260%)等を有する活性材料に特徴的である。
【0013】
ここで屈曲度係数(tortuosity factor)として規定される、本イオンチャネルと併せた硫黄複合カソード内の有効な電子伝導経路は、硫黄の可能性を完全に実現するためにイオン/電子屈曲度ができる限り短くなければならない、成功裏の高いエネルギーおよびサイクルライフLiS電池の非常に重要な部分である。
【0014】
カソードを作るための最も一般的に使用されるレシピは、硫黄を使用することで始まり、それは、カソードが、より高密度のSから「充電状態(charged state)」で構築されるため、カソード内に存在する全ての内部構造、接合部、および材料が、最初のフォーマッティングサイクル-放電による膨張を許容することができなければならないことを意味する。
【0015】
カソードが「放電状態(discharged state)」で構築される場合、Sより密度が低いLiSを使用することになるため、そのようなタイプのカソードは、充電時の収縮を許容しなければならない。技術的観点から、LiSから硫黄カソードを作り始めることが有利である―その理由は、より大きい圧延力が加えられる可能性があり、よりコンパクトな、したがって、より高密度のカソード構造が作られる可能性があり、特に、活性質量-バインダー-添加物のよりよく相互接続された構造が作成されるからである。それは、放電時にLiSに対するさらなる膨張に必要とされる空間/孔を圧延-圧密化(compacting)プロセスが維持する必要がある充電状態カソードと逆である。
【0016】
電子伝導経路の絶え間ない破壊および再形成が全てのフルサイクルで起こる連続サイクル試験からの悪影響は、CNTまたはカーボンファイバ等の長距離電気伝導性添加物の使用によって部分的に補償される可能性がある。
【0017】
2.電流分布不均一性および電解質に対するその影響
前のセクションと同様に、カソードの容積変動は、電極の内部構造と充填されたセパレータとの間での電解質の存在、分布、および交換にも影響を及ぼす。その理由は、膨張/収縮(放電/充電サイクル)時に、カソードの平面表面内の非一様電流分布が、深い内部カソード表面から電解質が吐出されるエリアを形成し始め、このエリア内の有効イオン伝導経路に悪影響を及ぼし始めるように、カソード多孔度の変化が進行するからである。それは、活性質量の損失および低い活性質量利用レベルにさらに変換される。
【0018】
このプロセスは、多孔度目詰まり(porosity clogging)が、放電時にLiSの沈殿に対する影響を呈するという異なる方法である。リチウム金属フォイル-アノードは、放電時にストリップされるため、アノードの厚さは、硫黄と反応するカソードにLiイオンが移送されるにつれて低下する。そうするために、カソードは、反応生成物を収容することができなければならない-アノードにおける容積/厚さの損失が、放電時にカソードにおいて容積の増大によって補償され、充電時にその逆である緩衝効果。
【0019】
硫黄カソードの開放多孔度(open porosity)は、LiS電池の全てのパラメータに多大な影響を及ぼすため、変換反応が、可逆的相転移-放電時に、固体Sから液体PS(:polysulfide、ポリスルフィド)に、その後、PSから固体LiS(電解質から沈殿する)に-によって進行することを完全に理解することが重要である。本発明によれば、カソード厚さの変化を30%未満に最小にするために、内部的に容積変動に対処しそれを補償することになる調節された多孔度を有する人工カソード構造についての必要性が存在することが見出された。
【0020】
3.硫黄容積膨張
硫黄カソードで起こる循環的膨張-収縮サイクルは、斜方晶系α S 15.49cm/mol-完全に充電された状態、および、LiS 27.68cm/mol-完全に放電された状態としてここで規定され、容積変化は79%であるが、実際の知見によれば、16.38cm/molを有する単斜晶系β硫黄が、再充電時に最初に沈殿するため、硫黄カソードの容積変動は70%に制限される。
【0021】
硫黄カソードを作るための伝統的なスラリーベースプロセスは、硫黄を効率的に収容し、内部孔内に正確な緩衝空間を設けるために必要とされる、調節された多孔度(tailored porosity)を有する複雑な電極構造を、カソード厚さの変動に対する影響が最小化された状態で生産することが可能でなく、本スラリーベースカソードは、約45%多孔度に限界を設定しており、このポイントを超えると、圧延圧力を減少させることによって駆動される多孔度の任意のさらなる増加は、低いコンパクト密度、および、電解質によって充填される必要がある過剰量の死容積/重量空間の存在、および、その後、構造的完全性の喪失をさらにもたらすことになる。
【0022】
これは、カソード圧延が、スラリー内の近傍粒子硫黄/バインダー/添加物の相互作用によって提供される効率的な電流伝導経路(ネットワーク化メカニズム)を確立するために非常に重要であるプロセスの重要な部分であることによる。
【0023】
硫黄カソードは、放電時の膨張が最も難しい事例であるイオンと電子の両方の伝導経路を提供しなければならない。その理由は、膨張が、孔目詰まり(イオンブロッキング)効果の発生源であるからであり、短鎖硫黄化合物が沈殿し始める活性表面の大部分の存在が、カソードの深い構造内での電解質のイオン拡散/Li屈曲度を厳しく制限し、その後、イオン流と電子流の両方が必要とされるため電流を制限する。
【0024】
そのため、微調整された生産プロセスは、高い圧延力に対して存在する高い電子伝導およびよりコンパクトな構造の両方のバランスをとるために好ましいが、減少したイオン電流交換は、高くなり過ぎもせず、弱くなり過ぎもせず適切にバランスがとられる。
【0025】
伝統的に、それらの限界は、硫黄の全放電電位を実現することに関する厳しい制限によって明瞭に見ることができるが、Li金属アノードの相互作用を理解するために、かなりの努力が必要とされる。その理由は、めっき/ストリッピングプロセス中に、Li金属アノードが構造的完全性を喪失し、例えば、放電時に、フォイルの表面からのLiのストリッピングが起こり、対向する側面上で-カソード膨張が起こり、そのため、見事に、Li金属フォイルは十分に密であり、そのため、全ての変化は、容積/厚さ変動を緩衝することになる内部構造が存在しないために厚さの変化をもたらすことになり、それにより、電極間に相乗効果が存在し、カソードが膨張するとアノードが収縮することになる-Liのストリッピング。
【0026】
4.硫黄の低い電気伝導率
硫黄は、先行技術による、多電子酸化還元反応の活性部分になるために、5×10-30S/cm(充電脱リチウム化状態)、一方、LiS(放電リチウム化状態)3.6×10-7S/cmを有する最良の電気絶縁体の1つであり、伝導性添加物のかなりの部分は、硫黄粒子を覆うコーティングとしての導電性ポリマーの生産ステップ中にカソードに添加される必要があり、硫黄収容および不動化概念等の封止または浸透の種々の方法は、CDC炭化物由来マイクロメソポーラスカーボン等の多孔質であるが伝導性の構造内に適用される。
【0027】
5.ポリスルフィド溶出(PS(:polysulphide)シャトル)および活性硫黄の損失
PSは、一般的な液体電解質内で自由に溶解可能である、Li、4≦n≦8として規定される硫黄酸化還元反応の中間生成物である。サイクル試験中にカソード内に存在する硫黄活性質量は、放電時に、固体-液体(最初に、溶出相)および液体-固体(第2に、沈殿相)として規定される相変化を経験し、その後、充電時に、プロセスは反転する。
【0028】
カソードからの活性硫黄の損失および電極間のPS種のその後のマイグレーションは、PSポリスルフィドシャトルと一般に呼ばれ、PSポリスルフィドシャトルは、高い自己放電、急速容量低下、Li金属毒作用、および低クーロン効率をもたらす。種々の方策が、文献において適用されて、導電性ポリマー封止硫黄および/または硫黄によって浸透されたマクロ-メソ-ミクロポーラスホストを有する複合カソードとして規定されるPSシャトルを扱い、制限されたPS可溶性を有する溶媒を使用すること、PS固着添加物(官能基またはドーピング方策の導入)またはバインダーおよび最も使用される方法、セパレータ上にまたは硫黄カソードの表面上に堆積された機能的PSシャトル中間層を使用することによって、電解質を最適化する。
【0029】
PSサイクルは、カソードからアノードへ自由に拡散される、S 2-、S 2-、およびS 2―等の電解質内の高い可溶性を有する溶媒和(solvated)PSアニオン種の存在によって提供される電極間の濃度勾配によって駆動されるプロセスであり、それらのアニオン種は、リチウム金属アノードと相互作用し、短鎖PSに還元され、その後、不溶性堆積物の形態でLi金属の表面上に沈殿する。
【0030】
これは、Li/LiSの可溶性が非常に制限されているからである。PSシャトルサイクルは、既に沈殿したLiSの後続の反応によって閉じられ、電解質内に存在する長鎖PSは、可溶性中鎖イオンをやはり生じ、可溶性中鎖イオンは、その後、カソードに戻るように拡散され、カソードで酸化される。
【0031】
6.硫黄粒子凝集-融合
硫黄ベース複合スラリーは、活性材料、伝導性添加物としてここで規定される種々のタイプの基本構造および形態で構成され、それぞれは、(0D、1D、2D、3D)等の種々の形状の主粒子、ナノからミクロの凝集物、およびクラスターとして共存する可能性がある。凝集物は、粒子-伝導性添加物-バインダー、および/または、増粘剤、分散剤、または架橋ポリマー等の技術的処理添加物内で静電力の相互作用によって形成される構造であり、クラスターは、凝集物をより複雑な構造になるように接合することによって形成される-ファンデルワールス相互作用によって共に保持されるクラスター。
【0032】
これら全てのコンポーネントは、ここで、カソードスラリーの一部であり、カソードスラリーは、その後、主にスロット-ダイコーターによって集電体フォイル上にコーティングされ、厚いコーティングの乾燥中に、コーティングむらおよび微細構造欠陥をさらにもたらすバインダーマイグレーションが起こる。
【0033】
乾燥時に溶媒が湿式電極から蒸発するため、内部応力が収縮効果によって電極の平面表面上に生じ、収縮効果は、クラック形成、伝播、およびさらに集電体フォイルからの剥離を引き起こす。
【0034】
電極乾燥は、複雑なTPB(:triple phase boundary、3相境界)層プロセスである。その理由は、そのプロセスが、溶媒蒸発、バインダーの拡散およびマイグレーション、ならびに粒子の沈降として規定される固相、液相、および気相における熱および質量移動を含むからである。乾燥時のバインダーマイグレーションは、バインダーならびに電気活性ポリマー等の他の添加物の存在が上部電極構造と下部電極構造との間で変動する勾配構造を構築し、一方、乾燥時の溶媒蒸発は、周囲構造を圧壊することなく上部表面に向かって孔を空にすることによって孔形成および安定化プロセスを担当する。
【0035】
電池の電気化学特性を規定する最終生産ステップは、多孔度および屈曲度に顕著な影響を及ぼすため、電極圧延であり、電極圧密化中に、電極圧延は、電極厚さの低減につながり、一方、多孔度の低減、したがって、増加する面積活性質量負荷mg/cm、および、電極密度の増加、したがって、より高い容積容量mAh/cmが達成される。
【0036】
圧延は、粒子/凝集物/クラスターの分布を変更することによって電極形態に影響を及ぼし、圧力が高ければ高いほど、より少ない単一粒子が存在し、単一粒子はより複雑である-クラスターが形成される。硫黄ベースカソードは、固体-液体-固体状態の間の相変化のために非常に特異的な事例であり、そのため、硫黄融合プロセスに関連する課題に対処するために特異的な解決策を必要とし、その解決策は、硫黄粒子の凝集および融合によって特徴付けられ、硫黄粒子は、その後、急速にサイズが増大し、セル容積を低下させ、それは、延長サイクル中の反復する硫黄の溶出および沈殿の結果である。
【0037】
既に堆積された硫黄複合カソードの元々の形態は、小さいナノ粒子が再充電時により大きいミクロンに再形成されるため、融合プロセスによって破壊されて、周囲の硫黄材料は、このプロセス中に除去され、活性硫黄クラスターであって、その後、イオン拡散経路に影響を及ぼす、活性硫黄クラスターによって以前に占められた、空のボイドを残し、質量輸送速度(mass transport kinetics)は、プリスティンナノ硫黄の高い表面と比較した融合硫黄のより小さい活性表面のために、益々制限的になる。
【0038】
伝統的なLiイオン化学物質は、サイクル試験中に相を変更しないため、融合は、LiS電池についてだけの特異的なプロセスであり、したがって、伝統的なパウチ状、円柱状、または角柱状と異なることになる新規のタイプの電池ケースが開発される必要がある。
【0039】
7.低容積容量mAh/cm
先行技術において、硫黄の低い電気伝導率5×10-30S/cmは、バインダー等の支持添加物、種々の伝導性添加物、および/または多機能バインダーを、重量組成(composition per weight)、例えば、70%ならびに他の30%であって、伝導性添加物について20%およびバインダーについて10%を予約された、他の30%以内で添加することによって、カソード内で補償され、伝統的なLiイオン電池において、カソード内の活性質量の重量含有率は約95%である。
【0040】
例えば、10-4S/cmと10-2S/cmとの間の電子伝導率を有するNCAカソードは、放電状態(リチウム化)に依存するため、硫黄ベース複合カソードの利用率と共にe伝導率および面積活性質量容積を改善するために、ずっと多い量、平均20重量%ベースの伝導性添加物が、複合カソード内に存在する必要がある。
【0041】
LiSについての主な障害は、非常に低い質量密度を有する添加物の存在であり、その添加物は、平均密度0.25g/cmを有する伝導性カーボン添加物に20%の重量含有率を与え、NCAカソードを有する伝統的なLiイオンは、硫黄の真の密度2.07g/cmおよびリチウムジスルフィドの真の密度1.66g/cmに頼ることによって3%より低い値を有し、硫黄カソード内のバインダーの要求される量は、高い比表面積によって、硫黄および高度ナノカーボン材料内の電子を交換するため数十億の接触点を共に接着させ確立するために、しばしば、最大10重量%であり、カソード内に存在する全てのこの死容積/重量材料は、活性材料と非活性支持材料との間の比をさらに下げることになる。
【0042】
これは、カソードスラリー内に20重量%のカーボン伝導性添加物を添加することが、カソード内で50%を超える容積を容易に占めることになり、それがより肉厚のカソードに変換されるため、セルの全体エネルギー密度を最後に不可避的に下げ、より肉厚のカソードは、別の有意の問題を生じる。その理由は、単に過剰量の低密度カーボンが電極容積/厚さを著しく上げたためにこれらの死容積/空間が存在するからである。そのため、増加した量の電解質は、ボイドに充填されなければならないため、ES比およびmAh/cm単位の面積活性質量負荷およびmAh/cm単位の容積負荷の間でタイトにバランスがとられる。
【0043】
8.硫黄についての低利用レート
エネルギーキャリアとしての硫黄の理論的可能性を探求する(explore)ために、配向多孔度(aligned porosity)、低イオンおよび電子屈曲度係数、ならびに低下した量の死容積/重量添加物および材料として規定される調節された特性を有する電極等のカソードアーキテクチャにおいてかなりの変更が行われるべきである。
【0044】
既存の先行技術のLiイオン電池内に存在するランダムに配向した電極微細構造から1に近い屈曲度を有する次世代人工3D電極アーキテクチャへの移行は、特に、高い充電/放電レート中の、活性容積利用レベルならびにmAh/cmおよびmAh/cm単位の面積および容積容量を増加させることに基づいてセル容量を改善させる可能性を明確に立証した。
【0045】
硫黄特有の複雑な酸化還元反応は、十分に相互接続された電極構造によって提供されるイオン/電位を交換することに基づいて進行し、その後、S/LiS粒子による電気化学反応を媒介し、それらの表面が直接電気接触状態になく、電気伝導性ネットワークから分離される場合、周囲電解質からの溶出したPSまたは硫黄によって提供される化学ステップが必要とされる。
【0046】
垂直配向開放孔チャネル等の調節された特性を有するうまく組織化されたカソードを構築することは、硫黄ならびに短縮したイオン伝導経路-屈曲度を収容する所望の内部孔ネットワークを有するカソードを実現することを可能にする。カソード用の本湿式スラリーベース生産方法は、電子/イオン電流の両方の流れの不均一性および後続の孔目詰まり効果をもたらすランダムに分布した内部構造/孔およびコンポーネントのせいで、放電時の非一様膨張によるバルクカソードからのLi拡散をブロックしながら、成功裏の3D硫黄複合カソードを構築するために使用することができず、LiSの沈殿は、伝導性ネットワークの一部である周囲構造上で進行する。
【0047】
3D構造化電極を製造するための技術およびプロセスは、同時押し出し、凍結鋳造、レーザー構造化/アブレーション、スラリー内に存在する活性材料または添加物の磁場または電場配向、犠牲孔形成剤、活性または非活性テンプレート支援法、濾過法、または半固体電極概念として要約することができる。
【0048】
9.硫黄の過剰E/S比電解質容積/重量ml/g
リチウムイオン電池内の電解質は、エネルギー貯蔵反応に積極的に関与しないことになり、電解質は、可逆的金属めっき/ストリッピング、溶媒和、および脱溶媒和、ならびに、最も重要なイオン移動-電極間のイオンの移動-イオン電流を容易にすべきであり、Liカチオンのみが電荷キャリアであるため、セル内の電解質の存在は、できる限り低く維持されなければならず、LTN(:lithium transference number、リチウム輸率)は、1、非活性アニオンに勝る電荷キャリアとしてのカチオンの支配的な移動に近くなければならない。
【0049】
伝統的に、実験室スケールセルのE/S比は、6ml/gと18ml/gとに間にあるため、そのような不十分な比によって、カソード内の過剰量の死容積/重量電解質のせいで、商業的に受け入れ可能なLiS電池を得ることについて「ノーゴー(no-go)」が存在し、より現実的な比は<3ml/gである。原理的に、E/Sについての制限因子が存在し、それはカソード内の材料のサイズ/形状である。その理由は、セル内の電解質の量を決定するため電極反応速度において重要な役割を果たす電極多孔度を、カソード生産プロセス中に、粒子の形状が規定するからであり、多孔度についての考えられる最良のシナリオは、古典的なスラリー鋳造プロセスおよび後続の圧延によって生産される硫黄ベースカソードについて約50%である。
【0050】
10.アノード上のリチウム過剰
セルのサイクル試験中のリチウムの連続消費は、アノードの全体の厚さを通して肉厚でかつ多孔質のSEI層およびコケ状Li構造を形成することによる電解質の急速な劣化/消耗としてここで規定され、層および構造は、その後、電気化学的にアクセス不能なデッドLiの凝集によってLi金属フォイルの元々の厚さの100%を超えて膨張する。
【0051】
追加の量のリチウムを導入することによってLi損失を補償する必要性が存在し、追加の量のリチウムは、黒鉛のような伝統的なアノード材料を有する既存のLiイオン化学物質の損失をカバーすることになる。サイクル試験中に最小のLi損失が存在し、損失のほとんどは、フォーマッティングプロトコル中のSEI層形成に由来する。しかしながら、状況は、シリコンアノードまたは高エネルギーLiリッチ層状複合スピネル(layered-layered-spinel)高電圧カソードのような活性材料について変化することになり、Liの損失は著しく(カソードおよびアノードは共に損失を有する)、これらに対処するために、機械的に活性化され安定化されたリチウム金属粉末であって、既存のスラリーベースセル生産プロセスに耐性があるように、保護層で覆われる、リチウム金属粉末等の、既存のLiイオンセル内へのLiの新しい導入ルートが開発された。
【0052】
アノードとしてリチウム金属フォイルを使用することは、最終セルパラメータに有意の影響を及ぼすことになるが、主に理論側面から、電気化学的セルは、カソードとアノードの両方についてのmAh/cm単位の適切にバランスがとれた容積容量であって、その後、電極の異なる負荷、そしてその後、厚さに変換される、適切にバランスがとれた容積容量を、一般的な黒鉛アノード837mAh/cmまたはシリコンの場合の8334mAh/cmに対して2062mAh/cmの理論的容積容量によってここで規定される高容量リチウム金属フォイルを使用して、有さなければならないため、アノード側の容量を増加させることが、カソードの負荷を増加させることによってこの特別なアノード容量のバランスをとり、より高い容量を有するカソードを使用する必要が依然としてあることになるが、120μmにおいて存在する臨界カソード厚およびセルの全体パラメータを制限する30%まで下がる多孔度が依然として存在することになることが明らかである。
【0053】
ここで、非活性Liの存在下で高い多孔性でかつコケ状のアノードになるようにするLi金属フォイルの構造的再配置が、最終容積容量mAh/cmを、先行技術の黒鉛アノードとの競合性がないように低下させることになることを理解することが重要である。
【0054】
国際公開第2019/081367号は、3D構造としてメッシュまたはファブリックを形成するナノチューブおよびナノファイバからなるカソードを教示する。硫黄はそのカソード中の活性コンポーネントである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】国際公開第2011/147924号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/164626号
【特許文献3】国際公開第2019/081367号
【非特許文献】
【0056】
【非特許文献1】KAI XI ET AL:“Binder free three-dimensional sulfur/few-layer graphene foam cathode with enhanced high-rate capability for rechargeable lithium sulphur batteries”,NANOSCALE,vol.6,1 January 2014(2014-01-01),p.5746-5753
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0057】
上記で述べた問題を解決するために、改善されたサイクル寿命、重量および容積エネルギー含量、ならびに、面積活性質量利用レベルを示す、好ましくはアルカリイオン硫黄電池用の正電極を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0058】
これらのおよび他の目的を達成するために、例えば、リチウム硫黄電池用の正電極が、モノリシックアーキテクチャを有するカソードとして提供され、モノリシックアーキテクチャは、好ましくは、硫黄または硫黄ベースの不均質な主構造ならびに分岐および/または超分岐硫黄(図2参照)または硫黄ベース支持構造の組み合わせとしてここで規定することができ、それらは共に、自己支持型硫黄または硫黄ベース構造を形成する―それらは、硫黄ウェハであって、それ自身の内部および/または外部構造内に長距離電子伝導経路を提供することが可能である、硫黄ウェハとも呼ぶことができる。
【0059】
本発明のカソードは、結晶モノリシック硫黄構造カソード本体を備える。好ましくは、モノリシック硫黄構造カソード本体は、活性電極材料として双晶硫黄結晶の不均質な分岐構造および/または不均質な超分岐構造を備える。これらの構造は、サブ構造とも呼ぶことができる。好ましくは、結晶本体、したがって、活性電極材料は、結晶成長によって、好ましくは種結晶から得られる。好ましくは、モノリシック(結晶)硫黄構造の巨視的構造は、双晶成長(twined-grown)または相互成長(intergrown)またはインターヒューズ(interfused)のあるいは双晶結晶のシステムである。
【0060】
代替的に、本発明のカソードは、好ましくは、活性電極材料として双晶硫黄結晶の不均質な分岐構造および/または不均質な超分岐構造を備える、成長済みモノリシック硫黄構造カソード本体、すなわち、結晶硫黄ウェハを備えるものとして説明することができる。
【0061】
本発明によれば、ウェハは、スラリーなし構造である、したがって、スラリー、したがって粒子の懸濁物から作られない。好ましくは、ウェハは、相互成長/双晶結晶構造/結晶システムである。ウェハは、好ましくは硫黄の、無数の小さい(ナノ)種結晶から好ましくは成長することができる。好ましくは、これらの種結晶は配向している。配向は、例えば、種結晶の静電気的に支持された配置構成によって達成することができる。そのため、種結晶は、磁場または電場によって影響を受けることができるキャリアに付着することができる。
【0062】
ウェハの成長は、単斜晶系硫黄同素体が存在する温度で、好ましくは少なくとも準安定で行うことができる。第1世代結晶化ベースとも呼ぶことができる種結晶は、1Dのニードル/ロッド/ワイヤ/チューブ様の構造として提供することができる。結晶成長が起こると、さらなる伸長が起こり、基本的なまたは個々の種結晶(複数可)は多結晶体になる。初期基本種構造の接続は、バインダーまたは他の作用物質によってではなく、結晶構造の直接相互成長、したがって、結晶双晶化/分岐/超分岐によって媒介される。
【0063】
したがって、好ましく調節された多孔度を有する自立型3Dモノリシック単一体-多結晶硫黄ウェハが形成される。本発明によるモノリス、バインダーの支援なしで、しかし、直接結晶相互双晶(inter-twining)/相互分岐(inter-branting)メカニズムを用いて形成された(単一の)構造は、Liイオン電池を生産する先行技術の方法として知られる、スラリー電極について特徴的であるPACなし構造粒子-凝集体-クラスターとしても特徴付けることができる。
【0064】
0.2℃において、セルレベル≧600Wh/kgにおいて、重量容量≧1200mAh/g、容積容量≧1200mAh/cm、および面積容量≧10mAh/cmを有するカソードを有するリチウム硫黄電池。
【0065】
好ましくは、本発明は、環境的にポジティブな(優しい)スラリーなし電極およびその製造プロセスを含み、自己支持型モノリシック硫黄および/またはモノリシック分岐および/または超分岐硫黄または硫黄ベース支持構造が、スラリーなし方法によって作成される。その方法の生成物は、好ましくは、生産中に使用される全ての前駆体および材料が最終硫黄カソードのビルディングブロックになる電極である。
【0066】
好ましくは、ビルディングブロックは、エネルギーを貯蔵すること、エネルギーを伝達すること、好ましくは、相転移なし(界面なし、したがって、電子/イオンの粒子・粒子交換なし)が可能である電極の活性コンポーネントである。したがって、バインダーおよび/または他の充填材料はこの規定を満たすことができない。
【0067】
本リチウム硫黄電池に関連する既存の発明内で先行技術の規定を比較すると、本発明者等の発明は、カソードの、高度な、好ましくは全て硫黄のまたはほぼ全て硫黄の(硫黄ベースの、好ましくは、82%より多い硫黄、より好ましくは、95%または98%または99%または99.9%より多い硫黄)不均質構造を製造するためのビルディングブロックとしての硫黄の直接使用を立証する。
【0068】
全ての硫黄は、「不可避的不純物を除いて硫黄のみ(sulphur only besides inevitable impurities)」を意味することができる。
【0069】
そのような電極は、一般的な湿式スラリーベースコーティングと比較して非常に有利である。スラリーベース電極を用いると、活性硫黄および/または硫黄キャリアならびにカソードスラリー内に存在するバインダー、伝導性添加物、および/または技術的添加物等の非活性コンポーネントは、特定のタイプのホスト構造等の硫黄を収容するための支持用内部電極構造であって、主にカーボンベースである、支持用内部電極構造を形成するプロセスに関与しなければならない。
【0070】
しかしながら、そのような知られているカソードは、圧縮粒子+バインダー構造を備え、その構造は、電子が、幾つかの粒子・粒子または粒子・バインダー・粒子バリアを通過することを必要にさせる。一方、バインダーは、活性電極材料のために使用できない多くの空間を消費する。
【0071】
本発明によれば、活性電極材料は、好ましくは、エネルギーを貯蔵または放出する(電池を充電する、放電させる)ときの電気化学的酸化還元反応中の活性質量である。
【0072】
これは、カソードの重量および容積容量の低減に直接つながる。他方、そのような知られている電極のエネルギー損失は検出可能であり、エネルギー損失は、上記で述べたバリアを横切る電子の移動に直接リンクする。
【0073】
したがって、先行技術の電極と比較して、高い重力および容積容量を有すると共に、エネルギーの損失の低減を有する、電極、特にカソードを提供することが本発明のタスクである。
【0074】
本発明による双晶は、好ましくは、成長済み結晶、したがってさらに結晶部分による、結晶または結晶部分の相互接続を特に意味することができる。双晶は、例えば、第1世代の結晶の上部に少なくとも第2世代の結晶を成長させる(例えば、図2参照)ことによって、または、個々の部分を、個々の部分の少なくとも1つの部分が成長するときに、単一結晶ユニットに融合させる個々の結晶の相互成長によって起こることができる。結晶の双晶は、本発明によれば、好ましくは、硫黄結晶の分岐または超分岐部分に存在する。好ましくは、少なくとも2つの世代の結晶は、双晶セクションにおいて互いの上部に塗布される。同様に、好ましくは、2つ以上の周囲/近傍結晶は上記で説明したように、融合によって双晶される。
【0075】
このタスクは、請求項1によるカソードによる本発明に従って解決される。
【0076】
本発明によれば、好ましくは、活性電極材料として双晶硫黄結晶の不均質な分岐構造および/または不均質な超分岐構造を備える、モノリシック硫黄構造カソード本体、すなわち、硫黄ウェハを有する充電式電池用のカソードが提供される。
【0077】
本発明を用いて、電極を通る、いわば(ほぼ)バリアなしの電子の移動が、スラリーから形成された粉末ベース電極と比較して可能にされる。
【0078】
本発明によれば、硫黄ウェハは、好ましくは、成長済み結晶硫黄エンティティの構造的特徴を有する硫黄構造を備える/有する。
【0079】
より好ましくは、硫黄ウェハは、本発明の少なくとも1つの従属請求項による特性を含むモノリシック硫黄または構造を備える。
【0080】
同様に、本発明によれば、硫黄ウェハは、モノリシック硫黄ベース構造、成長済み硫黄結晶構造、および/または、第1世代硫黄結晶および/または硫黄ナノチューブおよび/または硫黄マイクロチューブおよび/または硫黄ナノファイバおよび/または硫黄マイクロファイバ(任意の組み合わせの)サブソイル上に成長した第2世代硫黄結晶の第2世代硫黄構造とすることができる。そのような構造は、超構造、したがって、分岐および/または超分岐硫黄構造、特に、ニードル(図2参照)とすることができる。
【0081】
モノリシック硫黄構造は、好ましくは、カソード本体を形成する。
【0082】
そのため、本発明の請求項1によれば、好ましくは、単結晶エンティティから作られるカソードが提供される。そのような結晶エンティティは、硫黄から作られた、好ましくは主に硫黄から作られたモノリシック本体を備える/有することができる。
【0083】
そのモノリシック本体は超構造を備えることができる。
【0084】
用語、超構造は、ここで好ましくは、高次の構造、特に、樹状システムおよび/または分岐および/または超分岐システムを意味し、それらは、一実施形態によれば、不均質構造に遭遇することができる。そのようなシステムは、例えば、上記で指摘した第2世代結晶成長によって形成することができる。
【0085】
用語、超構造は、(付加的にまたは代替的に)、モノリシック構造内の異なる種類の硫黄または硫黄ベース材料の組み合わせを意味することもできる。
【0086】
用語、(構造的に)不均質は、ここで好ましくは、硫黄の、少なくとも1つ種類の、好ましくは、2つ以上の種類の構造、すなわち、ナノチューブおよび/またはマイクロチューブおよび/またはナノワイヤおよび/またはナノロッドならびにナノファイバおよび/またはマイクロファイバを、その上部に2次結晶硫黄構造を成長させるための基材として、好ましくは1Dニードルおよび/または2Dプレートレットおよび/または分岐および/または超分岐結晶構造の形態で使用することの説明である。そのような2次硫黄構造は、木様のおよび/または樹状の(2次)構造に導くことができる(図2)。
【0087】
不均質は、好ましくは、配向した/インターレースした中空管状硫黄ナノ/マイクロファイバおよび/または層および/またはナノ/マイクロチューブの少なくとも≧3の層を積層することによって提供される構造を指す。
【0088】
好ましくは、3~200の積層された層、より好ましくは80の層は、15°と120°との間でインターレースされ、モノリシック硫黄構造内に含まれる。
【0089】
本発明による不均質は、好ましくは、モノリシック硫黄構造が少なくとも2つの異なる同素体(異なる固体状態)の硫黄を含むこと、および/または、モノリシック硫黄カソードの巨視的構造がモノリシック本体にわたって多孔度の不均等分布を含むこと、および/または、モノリシック硫黄構造の巨視的構造が個々の/多様な/変動する密度および/または個々の/多様な/変動する分布および/または個々の/多様な/変動する形状および/または個々の/多様な/変動する多孔度の分岐および/または超分岐結晶構造を備えることを(同様に)意味することができる。
【0090】
用語、モノリシックは、好ましくは、単一の/唯一の本体として作られることを意味するその一般的な規定に従って本発明に従って使用される。
【0091】
しかしながら、本発明によれば、この単一の/唯一の本体は、圧縮、圧密によっておよび/または粉末+バインダーを用いてではなく、準じた母液からの結晶成長によって、好ましくは単一結晶として作られる。本発明のモノリシック本体は、特に請求項のうちの少なくとも1つの請求項によれば、したがって、1つまたは多くの硫黄結晶化種(複数可)からの成長済みまたは培養済みモノリシック本体として、および/または、硫黄マイクロ/ナノチューブおよび/またはファイバサブソイル上で成長したものとして説明することができる。
【0092】
このサブソイルは、本発明の一実施形態によれば、本発明のモノリシック硫黄構造を自己支持型にすることができる本発明のモノリシック硫黄構造の構造的完全性を提供する。サブソイルは、活性電極材料を構成することもできる。
【0093】
本発明の別の実施形態による硫黄結晶化種からのモノリシック本体は、自己支持型モノリシック硫黄構造に導くこともできる。好ましくは、結晶化は、構造的完全性を高めるために層内で行われる。自己支持型は自立型とも呼ぶことができる。
【0094】
上記で説明した生産方法によって、多孔度として説明することもできる、モノリシック硫黄構造内の、したがって、カソード内の死容積は、非常に低いパーセンテージ(50%未満、好ましくは30%)に低減される。人工内部カソード構造の結果である開放(Liアクセス可能)多孔度の低いパーセンテージは、電解質からのイオンを用いた適切な反応速度のために十分な電解質を運ぶのに依然として十分であると共に、サイクル試験時の容積変動を可能にする。
【0095】
したがって、重量および容積容量は、好ましくは、0.2℃において、セルレベル≧600Wh/kgにおいて、重量容量≧1200mAh/g、容積容量≧1200mAh/cm、および面積容量≧10mAh/cmまで著しく増加する。
【0096】
したがって、本発明のモノリシック硫黄カソードの容量を増加させることができるものは、本発明のモノリシック硫黄のバインダーなし構造だけではなく、好ましくは、制御可能な低い多孔度でもある。
【0097】
同様に、結晶または成長済みモノリシック硫黄構造は、カソードとアノードとの間を移動する電子によって横切られる必要がある相転移表面がずっと少なく、ほぼない。その理由は、本発明のモノリシックウェハ状本体が、硫黄の単一種結晶からおよび/または多結晶システム(複数可)から成長するからであり、好ましくは、不均質本体のワンピースは、配向結晶であって、電極内のサイズ、形状、および/または場所において高い程度の孔均一性を示す人工内部電極多孔度を好ましくは有しながら、分岐アーキテクチャを共に生成する、配向結晶から形成される。
【0098】
そのような構造は、好ましくは、配向結晶によって示されるよくバランスがとれた量の一様性だけでなく構造的異方性によって示される不均質性を有しており、それは、サイクル試験時の硫黄(硫黄構容積)の変動がモノリシック硫黄本体内で好ましくは補償される内部容積自己補償メカニズムを或る程度可能にするために非常に重要であるとすることができる。
【0099】
ワンピース本体は、巨視的スケールのクラックまたはフラグメント、例えば、モノリシック本体の成長後の、モノリシック本体の最終カソードにするさらなる処理による一部の不可避的なブレークポイントまたは構造欠陥を含むことができる。しかしながら、これらのクラックおよび欠陥は、好ましくは、カソードのモノリシックインプレッション/キャラクタを消失させない、好ましくは、いずれのこれらの欠陥も、圧縮された粉末+バインダーカソードに匹敵するスケールである。
【0100】
フラグメント/セグメントは、好ましくは、バインダーなしであり、粉末ベース硫黄+バインダーカソードからの粒より10倍大きいとすることができる。
【0101】
本発明の意味における「バインダーなし(binder free)」は、結晶モノリシック硫黄構造カソード本体の構造的完全性が、いずれのバインダーからも独立であることを特に意味することができる。したがって、カソード本体を共に内部に保持するときに、全くまたは実質上全くバインダーが含まれない。そのため、カソード本体は、特に、カソード本体が、カソード本体の構造的完全性を提供する成長済みエンティティ、または、その結晶格子/結晶構造によるそのカソード本体フラグメント/セグメントであるため、好ましくは、内部的にバインダーなしである。
【0102】
本発明の好ましい実施形態によれば、モノリシック超構造は不均質である。不均質性は、モノリシック電極本体内の不均一結晶(硫黄)パターンによって本発明に従って表現することができる。
【0103】
しかしながら、不均質性は、例えば、特に上記で説明したように、第1世代硫黄結晶および/または硫黄ベースおよび/または硫黄含有サブソイル上での硫黄結晶の第2世代結晶成長によって得ることができる分岐または超分岐結晶構造を本発明に従って意味することもできる。
【0104】
そのような第1世代硫黄結晶および/または硫黄ベースおよび/または硫黄含有サブソイルは、モノリシック不均質硫黄構造内に(第2世代結晶成長後に)好ましくは含まれる、配向したおよび/またはインターレースした中空硫黄ナノチューブおよび/または硫黄ナノファイバおよび/または分散硫黄結晶の1つまたは幾つかの層とすることができる。硫黄ナノチューブまたはナノファイバは、MHDES(:MAGNETO-Hydro-Dynamic Electro-Spinning、マグネトハイドロダイナミックエレクトロスピニング)(メルトスピニング)プロセスによって作ることができる。このプロセスは、所望の温度で溶融状態の常磁性硫黄種に適用されるローレンツの法則に基づくことができる。述べたチューブは、国際公開第2019/081367号に従って製造することができる。
【0105】
第1世代硫黄結晶(複数可)は、(直接)結晶印刷によって形成することができる。
【0106】
したがって、モノリシック硫黄カソードを構築するための前駆体としての、好ましくは連続ファブリックの形態の、好ましくは配向した中空1D硫黄ファイバ(ナノチューブ)は、高度メルトエレクトロスピニング法によって作製することができる。
【0107】
ナノファイバは、ナノチューブの生産中の中間物とすることができる。同じことがマイクロチューブおよびマイクロファイバに当てはまることができる。
【0108】
そのようなチューブおよびファイバの径は、好ましくは、120nm(ナノチューブ)から最大25μm(マイクロチューブ)に及ぶことができる。
【0109】
中空および固体硫黄活性質量の組み合わせを有するカソードは、好ましくはさらに、予め説明したように、硫黄ナノおよび/またはマイクロチューブおよび/またはナノまたはマイクロロッドまたはワイヤおよび/またはナノまたはマイクロプレートレットからなる/を含むことになる、好ましくは、そのモノリシック硫黄構造は、好ましくは、単斜晶系硫黄同素体の8重量%と65重量%との間、より好ましくは、単斜晶系硫黄同素体の35重量%以上を含む、したがって、中空/固体活性硫黄の間の比は、例えば、共に活性硫黄質量を形成する、分岐構造および/または不均質な超分岐構造を形成する硫黄ナノチューブ(中空)の65重量%含有率および硫黄ナノワイヤ(固体)の35重量%含有率を有するモノリシック硫黄ウェハについてここで規定される65/35である。好ましい比は50/50~90/10の範囲内であるとすることができる。
【0110】
固体硫黄活性質量のみを有するカソードは、予め説明したように、硫黄ナノまたはマイクロロッドまたはワイヤおよび/またはナノまたはマイクロプレートレットからさらに構成される、好ましくは、そのモノリシック硫黄構造は、単斜晶系硫黄同素体の64重量%と99.9重量%との間、より好ましくは、共に活性硫黄質量を形成する、分岐構造および/または超分岐構造を形成する例えば(固体)硫黄ナノワイヤとしてここで規定される98重量%を含む。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、モノリシック硫黄構造は、自立型または自己支持型であり、したがって、モノリシック硫黄構造は、電極材料がその上に保持される任意の種類の、好ましくは内部の支持体から独立して設けられる。
【0112】
一実施形態によれば、カソードは、不可避的な不純物を除いて硫黄のみの構造である。予め説明した構造エンティティは、活性元素(硫黄)なし支持体、例えば、硫黄が付着することができるカーボンサブ構造なしでの、カソードの提供を可能にする。
【0113】
別の実施形態によれば、構造的完全性は、硫黄に基づく樹状結晶システムおよび/または上記で説明したサブソイルによって、硫黄結晶および/または多結晶構造自体によって提供される。
【0114】
好ましい実施形態によれば、単斜晶系硫黄結晶が、1Dおよび2D粒子によってホストされる種結晶から、または、硫黄含有プロセス液内のナノチューブ/マイクロチューブ/ナノファイバ/マイクロファイバエンティティ上で成長するモノリシック硫黄超構造は、好ましくは、95℃と120℃との間の温度である。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、モノリシック硫黄本体用の保護層は、モノリシック硫黄本体の表面上に、イオンおよび/または電子伝導率を有する適切な1つまたは複数のポリマー、好ましくは、混合されたイオン/電子伝導率を有する適切な1つまたは複数のポリマー、金属装飾rGO、および/または金属酸化物層として設けられて、硫黄構造を完全なままに維持することができる。これは、適切なポリマーおよび/または金属酸化物層を用いてモノリシック硫黄本体全体にわたる単一または複合層として塗布される全封止が、単一複合硫黄粒子に適用される伝統的に使用されるPS溶出防止法より効果的であることを意味し、一方、本発明者等の発明のモノリシック硫黄ウェハは、ポリスルフィド溶出効果を大幅に低減する。
【0116】
この1つの層および/または複数の層(複合物)は、伝導性層(電子およびイオン輸送層)とすることもでき、ポリマーおよび/または金属酸化物および/または金属装飾rGOの1つまたは複数の層は、スプレーコーティング、ディップコーティング、および/または化学酸化重合および/またはEPD等の電気化学的方法によって作ることができ、堆積されるまたは共堆積される適切な1つまたは複数の材料は、分極可能(正または負電荷キャリア)であるかまたは誘起ダイポールを維持する能力を持たなければならない。
【0117】
好ましい複合封止層は、機能的保護複合層を共に形成する少なくとも3つのタイプの層、すなわち、a)硫黄リッチ交差架橋ポリマーおよび/またはコポリマー層、b)Mn7+等の適切な酸化体を用いた硫黄の直接酸化による、化学的に生成された金属酸化物、好ましくはMnO層、およびc)カソードEPD(:electrophoretic depostion、電気泳動堆積)およびMX+還元法およびその後のGOの電気化学的脱酸素化による、グラフェン酸化物層上で吸収された正に帯電した金属カチオンから堆積された金属装飾rGO層、の組み合わせからさらに構成される。吸収された金属カチオンの金属装飾rGOへの還元において、好ましいカチオンはFe2+であるが、rFeGOに限定されない。そのような複合層の好ましい配置構成は、a+b+cであるが、3層b+a+cまたはa+c等の2層等の任意の組み合わせに限定されない。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、電子輸送層およびイオン輸送層は、好ましくは均一な、好ましくはπ電子共役のポリマーおよび/または金属および/または金属酸化物伝導性層によってモノリシック硫黄本体の表面上に設けられる。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー伝導性層は、既存のモノリシック硫黄本体の表面と光化学的に交差架橋され、反応用の自由電子は、光励起された硫黄ジラジカルによって提供され、励起用のエネルギー源は、強いパルス光および/またはレーザービームおよび/またはガンマ照射である可能性がある。
【0120】
伝導性ポリマーは、好ましくは、硫黄リッチであり、電解質に対して可溶性でなく、PANI(:polyaniline、ポリアニリン)、PPY(:polypyrrole、ポリピロール)、PTH(:polythiophene、ポリチオフェン)、PEDOT(:poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS(:polystyrene sulfonate))、PAN(:poly(1-acrylonitrile)、ポリ(1-アクリロニトリル))、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-co-ポリ(エチレングリコール)(PEDOT-co-PEG(:poly(ethylene glycol)))、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV:poly(phenylenevinylene))、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT:Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-フルオレノン-co-メチルベンゾイックエステル)(PFM:poly(9,9-dioctylfluorene-co-fluorenone-co-methylbenzoic ester))からなる群から選択することができる。
【0121】
硫黄溶融物へのヨウ素の導入は、硫黄ナノおよび/またはマクロチューブにするその処理に先立って、その粘度を低減することができる。
【0122】
電池、好ましくは、0.2℃において、セルレベル≧600Wh/kgにおいて、重量容量≧1200mAh/g、容積容量≧1200mAh/cm、および面積容量≧10mAh/cmとしてここで規定される閾値パラメータを超えるカソードを有するリチウム硫黄電気化学電池は、以下の好ましいパラメータを有する本発明のカソードを備えることができる。
【0123】
50μmと250μmとの間の片側厚、および/または、モノリシック本体-好ましくは、カソード内の活性硫黄含有率≧85%、より好ましくは90%を有する、好ましくは120nm(ナノチューブ)から最大85μm(マイクロチューブ)に及ぶ径を有する、配向した/インターレースした中空管状硫黄ファイバの少なくとも≧3の層を好ましくは積層することによって提供される不均質構造を好ましくは示す硫黄ウェハ、そして、モノリシック硫黄ウェハは、好ましくは、カソード用の分岐および/または超分岐不均質モノリシック硫黄本体を形成する、2次活性質量、好ましくは硫黄ナノロッドおよび/またはナノチューブの相互成長のための基材を提供し、結果として得られるモノリシック本体の配向の程度は、好ましくは≧85%であり、好ましくは、容積および面積負荷によってここで示されるそれぞれの製造されたカソード間のセル容量再現性は、容量ミスマッチについて0.8%未満の偏差を残しながら、高い程度の均一性≧99.2%を示す。
【0124】
本発明によれば、カソードは、好ましくは、モノリシックおよび/または不均質本体-硫黄ウェハカソード-を有する。
【0125】
本発明の一態様によれば、本発明は、モノリシック硫黄ウェハ状カソードの生産方法を対象とすることもでき、硫黄は、繊維および/または中空繊維特性を有し、その特性は、1.01325バールにおいて119℃~415℃のまたは10バールにおいて140℃と650℃との間の好ましい温度で常磁性特性を示す液体硫黄溶融物からの高度メルトスピニング法、および、好ましくは、結果として得られる硫黄ファイバおよび/または硫黄ナノチューブまたはマイクロチューブの引き抜き、引き伸ばし、および/またはクエンチングサイクルの後続の組み合わせに好ましくは起因する。
【0126】
本発明の別の態様によれば、本発明は、自立型硫黄構造を有する分岐および/または超分岐モノリシック硫黄ウェハ状カソード、基材内に存在する利用可能なボイド内での相互成長が提供する2次硫黄構造、および/またはサイクル試験時に硫黄の容積変化を内部的に補償することが可能な調節された多孔度を有する人工モノリシック分岐硫黄カソードの生産方法を対象とすることもできる。
【0127】
さらなる態様によれば、本発明は、本明細書で説明したモノリシック硫黄ウェハ状カソードを構築するための、溶媒なしおよび/またはスラリーなしおよび/またはIR乾燥なしおよび/または圧延なしおよび/またはバインダーなし電極生産方法を対象とすることもでき、その方法は、好ましくはさらに、伝導性充填剤およびポリマーマトリックスを有する電気伝導性接着剤の層でコーティングされた集電体フォイルおよび/または基材へのモノリシック硫黄ウェハカソードの接着結合からなる。
【0128】
好ましくは、カソード、その後、電池生産プロセスに入る、モノリシック硫黄構造とも呼ぶことができる(不均質)モノリシック硫黄本体は、好ましくはレーザーカットおよびピックおよびプレース生産プロセスが適用可能であるように、好ましくは自己支持型特性を示しながら、好ましくは、硫黄の≧96重量%、より好ましくは98重量%からなる。
【0129】
好ましい実施形態によれば、カソードは、a)円形、b)正方形、c)六角形、d)八角形、および、集電体タブであって、各単一電極が、集電体フォイル/基材上に対称に分配された≧2のタブを有するものとしてここで規定される、対等にバランスがとれた数の集電体タブを収容することが可能な他の後続の対称形状によってここで示される、サイズ標準偏差≦15%、より好ましくは≦1.5%を有する対称形状を有する。
【0130】
好ましくは、カソードは、1次支持正質量―ビルディングブロックとして硫黄ナノチューブからなる(不均質)モノリシック本体を備える―硫黄ウェハを備え、カソードは、好ましくは、伝導性添加物を含む集電体フォイルの正味の形状に適合した形状およびサイズを有し、カソードは、付加的にまたは代替的に、2次正質量、すなわち、モノリシック硫黄ウェハの1次正質量内で相互成長した硫黄カソード質量も備える。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1図1は、モノリシック硫黄ウェハ―カソードの一実施形態の図である。
図2図2は、デンドリマーの分岐構造または超分岐構造の基本原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0132】
カソードに組み立てられた最終のモノリシック硫黄ウェハ―カソードは、図1に配置された以下の構造の任意の構造を任意の組み合わせで備えることができる。任意の特徴A~Hは、別々に開示され、別個のユニットを可能にし、A~Hの組み合わせでだけでなく、別個の特徴としても開示されることが理解される。
A.好ましくは、1次正質量は、2D構造を示す、ナノまたはマイクロチューブおよび/またはナノまたはマイクロワイヤおよび/またはナノまたはマイクロロッドおよび/またはナノまたはマイクロプレートレット、および/または、ビルディングブロック(中空構造)としての硫黄ナノまたはマイクロファイバ等の結晶硫黄を備えるまたはそれからなる-したがって、硫黄ウェハ(3D硫黄構造)、カソードは、好ましくは、伝導性添加物およびバインダーを含む集電体フォイルの正味の形状に適合した形状およびサイズを有する。
B.そのような質量が適用可能である場合、好ましくは、2次正質量は-硫黄同素体、モノリシック硫黄ウェハAの主本体、すなわち、1次正質量内で相互成長した、より好ましいモノリシック1Dロッドおよび/または1Dニードルおよび/または2Dプレートレットを備える。2次正質量は、好ましくは、ナノチューブ/マイクロチューブおよび/またはナノファイバ/マイクロファイバ1次正質量に適用される。質量Bは、質量Aの内部に、特にAの構造の内部ボイド内に少なくとも部分的に配置することができ、Aの元の多孔度を下げる、また好ましくは同様に、個々の孔の孔および/または側面を相互接続する/架橋する。
C.組み立てられたモノリシック硫黄カソード
D.任意選択でパターン化表面を示す、厚さ≦10μm、より好ましくは6μmを有する電気伝導性接着剤層
E.好ましくは、最終カソードは、8~20μm、より好ましくは12μmの厚さを有する集電体フォイルを備える
F.好ましくは、2~10μm、より好ましくは5μmの厚さを有する中間カソード/イオン透過性遷移層
G.好ましくは、8~25μm、より好ましくは14μmの厚さを有するカソード支持式で着脱不能の電気絶縁性であるがイオン透過性である層
H.A、好ましくはBを有する不均質モノリシック硫黄ウェハ
【0133】
図2は、デンドリマー、したがって、分岐構造または超分岐構造の基本原理を示す。硫黄ナノチューブ/マイクロチューブおよび/またはナノファイバ/マイクロファイバの(モノリシック)フィラメントであるとすることができる1次ベース構造または結晶構造自体で始めて、好ましくは、堆積された結晶質量の1D(1次元、したがって、1つの軸に沿って成長している/成長した、したがって、ニードル/チューブ様)分岐は、1次ベース構造上で成長/配置される(第2世代の双晶または結晶成長)。そのプロセスは、3次またはより高次の世代の双晶を成長させるために反復することができ、好ましくは、次の世代の1D構造は、最後の双晶世代上で、少なくとも部分的に、好ましくは主に、最も好ましくは排他的に成長される。
【0134】
このプロセスによって、同様に、個々の硫黄ナノチューブ/マイクロチューブおよび/またはナノファイバ/マイクロファイバの相互接続が達成することができ、電子/イオン交換ネットワークを拡張する。
【0135】
そのような配置構成によって、硫黄構造は、硫黄ベース構造上で成長することができ、モノリシック硫黄(スラリーなし)構造(調節された多孔度を有する人工構造)を形成する。
図1
図2
【国際調査報告】