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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】イヌリン含有組成物を取得する方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/18 20060101AFI20230728BHJP
   A23L 19/10 20160101ALI20230728BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20230728BHJP
【FI】
C08B37/18
A23L19/10
A23L29/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576806
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2021069892
(87)【国際公開番号】W WO2022013406
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】20186309.9
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522482267
【氏名又は名称】べネオ-オラフティ ソシエテアノニム
【氏名又は名称原語表記】BENEO-ORAFTI SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リムペンス,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】マーテンス,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ロー,ヤン
【テーマコード(参考)】
4B016
4B041
4C090
【Fターム(参考)】
4B016LG06
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP08
4B041LH08
4B041LP03
4B041LP05
4B041LP07
4B041LP11
4C090AA04
4C090BA43
4C090BB39
4C090BC10
4C090CA09
4C090DA27
(57)【要約】
イヌリン含有植物組成物を取得する方法が記載される。本方法は、イヌリン含有植物材料、例えば、チコリ(Cichorium intybus)の根を用意するステップと、イヌリン含有植物材料を粒子状形態で取得するステップを含み、ここで、粒子は、粒子の最大45vol%が、粒径≦0,15mmを有し、且つ粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦4,0mmを有するような粒度分布を有する。次に、任意選択で乾燥させた粒子状イヌリン含有植物材料を抽出ステップに付し、ここで、植物材料からイヌリンを抽出して、イヌリン富化ジュースとイヌリン枯渇パルプを取得した後、好ましくは、真空濾過、加圧濾過及び/又は遠心分離のいずれかにより、これらを分離する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌリン含有組成物を取得する方法において、以下:
-イヌリン含有植物材料を用意するステップと;
-粒子状形態の前記イヌリン含有植物材料を取得するステップであって、前記粒子が、前記粒子の多くとも45vol%が、粒径≦0,15mmを有し、且つ、前記粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦4,0mmを有するような粒度分布を有するステップと;
-前記粒子状イヌリン含有植物材料を抽出ステップに付すステップであって、これは、前記粒子状イヌリン含有植物材料を水性抽出剤と接触させ、前記植物材料から前記抽出剤にイヌリンを抽出して、イヌリン富化ジュースとイヌリン枯渇パルプを得ることを含む、ステップと;
-好ましくは、真空濾過、加圧濾過及び/又は遠心分離のいずれかによって、濾液としての前記イヌリン富化ジュースを残液としての前記イヌリン枯渇パルプから分離するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記イヌリン含有植物材料を前記粒子状形態で取得する前に、ISO 6496により測定して、少なくとも80wt.%の乾物含量まで前記イヌリン含有植物材料を乾燥させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イヌリン含有植物材料を前記粒子状形態で取得する前に、前記イヌリン含有植物材料を乾燥しないで、前記粒子状イヌリン含有植物材料を、前分離ステップに付して、前記抽出の前にそこから多汁画分を取り出すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子の多くとも30vol%が、粒径≦0,15mmを有し、且つ、前記粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦3,0mmを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子の多くとも30vol%が、粒径≦0,10mmを有し、且つ、前記粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦2,0mmを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子の多くとも25vol%が、粒径≦0,10mmを有し、且つ、前記粒子の少なくとも70vol%が、粒径≦1,0mmを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子の少なくとも5vol%、好ましくは少なくとも10vol%が、粒径≦0,15mm又は≦0,10mmを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子状イヌリン含有植物材料が、複数Nの抽出ステップに付され、ここで、N≧2であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出ステップ又は前記複数の抽出ステップの少なくとも1つが、向流で実施され、ここで、投入材料は、前記水性抽出剤の流れの方向と反対の方向に流れるように供給されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抽出ステップnで得られた残液が、後続の抽出ステップn+1の投入材料として使用され、ここで、n+1≦Nであり、より好ましくは、最後の抽出ステップで得られた残液は、先行抽出ステップの投入材料として使用されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出ステップn+1で得られる濾液が、前記抽出ステップnの水性抽出剤として使用されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
抽出ステップnの前記水性抽出剤が、後続の抽出ステップn+1の前記水性抽出剤より高い炭水化物含有率(°Brixで測定される)を有することを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記イヌリン含有植物材料が乾燥され、前記水性抽出剤が、0°Brix~40°Brix、より好ましくは0°Brix~35°Brix、より好ましくは0°Brix~30°Brix、最も好ましくは0°Brix~20°Brixの範囲の炭水化物含有率を有することを特徴とする、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出ステップNの合計が、少なくとも4であり、前記水性抽出剤の前記炭水化物含有率が、最初の抽出ステップの30°Brixから、最終抽出ステップの0°Brixまで減少することを特徴とする、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抽出ステップ又は前記複数Nの抽出ステップの少なくとも1つ、及び前記濾液を前記残液から分離するステップが、真空バンドフィルター、加圧フィルター及び/又は回転真空フィルター及び/又は遠心分離機によって実施されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抽出ステップ又は前記複数Nの抽出ステップの少なくとも1つ、及び好ましくは前記抽出ステップの全てが、抽出ステップ当たり10~300秒、好ましくは30~150秒、さらにより好ましくは50~70秒の持続時間を有し、及び/又は前記複数の抽出ステップは、最大で20分、好ましくは最大で10分の合計持続時間を有することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
最終ジュース又は濾液の量と、前記投入材料の量の重量比が、全ての前記抽出ステップにおける25%の新鮮な材料の典型的な乾燥物質に補正して、0,5~1,2であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記抽出ステップ又は前記複数Nの抽出ステップの少なくとも1つの前記抽出剤の温度が、55℃~95℃、より好ましくは、60℃~75℃に設定されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
以下:
a.前記抽出剤に凝集剤を添加して、前記抽出剤の少なくとも1つの混入物質を含む少なくとも1つのフロックを形成するステップと;
b.前記フロック形成後に前記フロックを排出するステップと、
をさらに含み、ここで、
c.ステップa.及びb.が、好ましくは、最終抽出ステップで実施されることを特徴とする、
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抽出若しくは前記複数Nの抽出ステップの少なくとも1つ、及び/又は少なくとも任意選択のフロック形成のステップが、3~5のpHで実施されることを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記イヌリン含有植物材料を粒子状形態で取得するステップが、前記イヌリン含有植物材料の粉砕及び/又は摩砕、任意選択でそれに続く篩分けにより、実施されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記イヌリン含有植物材料を前記乾物含量まで乾燥するステップが、30℃~200℃の温度、好ましくは40℃~100℃の温度での天日乾燥又はオーブン乾燥により実施されることを特徴とする、請求項2又は4~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キク(Compositae)科の地下材料に由来するものなどのイヌリン含有植物材料からイヌリン含有組成物を取得する方法に関し、こうした材料は、好ましくは、チコリ(Cichorium intybus)根及び/又はキクイモ(Helianthus tuberosus)塊茎を含む。イヌリン含有組成物は、例えば、食品成分として、又は生物学的に活性の食品添加物として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
イヌリンは、キク(Compositae)科の植物のa.o.塊茎及び根に存在する多糖類群の炭水化物である。イヌリンを賦与する36000を超える様々な植物があり、とりわけ、チコリ(Cichorium intybus L.)及びキクイモ(Helianthus tuberosus)が挙げられる。イヌリンは、非晶質粉末として、及び/又は温水に容易に溶解する結晶の形態で取得することができる。本明細書で意味される場合、イヌリンという用語は、オリゴフルクトース又はフラクトオリゴ糖とも呼ばれる、2~10の比較的低い重合度DPを有するオリゴ糖も含む。
【0003】
植物からイヌリンを単離するための公知の手順は、典型的には水による抽出である。周知のように、従来の抽出手順はテンサイに使用されるものと類似している。この場合、抽出は新鮮な根を用いて、収穫後間もなく又は直後にさえ行われる。これらの根は、いわゆるコセットと呼ばれる細長い屋根の形をした要素の形に切断される。この形状は、その大きな接触面積及び構造的完全性のために当技術分野において好ましい。コセットを水性抽出剤と接触させ、イヌリンを植物材料から抽出剤に抽出して、イヌリン富化ジュース及びイヌリン枯渇パルプを得る。このような公知の方法は、例えば、欧州特許第0930317号明細書に開示されている。
【0004】
公知の方法では、物質が、抽出及び処理が非常に困難などろどろした性質となるのを防ぐために、根を比較的小さくすることは一般に避けられる。実際、テンサイから砂糖を抽出する場合、例えば、長さ<1cmのコセットは避けるべきであることが一般に知られている。公開文献には、この要件について十分な証拠が存在する。
【0005】
P.W.van der Poel,H.Schiweck,T.Schwartz,Berlin,1998によるハンドブック‘Sugar Technology,Beet and Cane Sugar Manufacture’は、第328頁に、ビートの抽出技術について論じている。切断されたテンサイのマッシュ含量は、抽出手順の効率に最も重要であると言われている。コセットの総質量に対して長さ<1cmのコセットの質量として定義されるマッシュ含有率は、5%を超えるべきではない。適切なスライスの実施を考慮すると、2%の量でも最適とみなされる。
【0006】
この一般的な知識は、‘Manuel de Sucrerie’,Ed.la Raffinerie Tirlemontoise SA,1984,4th Editionなどの他の公知のハンドブックによって確認されている。第71頁に、一見したところ、ビート細胞を細断し、その内容物が容易に流れ出すように、ビートを微粉砕することによって、最も周到な抽出物が得られると述べている。しかし、微細に粉砕し過ぎると、大量の非糖を含むジュースが収集され、それらは後に排除しなければならない。さらに、ジュースと、細断された細胞壁を含有するグレーティングとの分離は非常に困難である。従って、このハンドブックは、第59頁にも、特に抽出液には入り込めない塊を形成するため、コセットを微細に切断し過ぎることに対する注意を教示している。
【0007】
また別の一般的な参考文献(Cursus Suikertechnologie CSM-RT,Ch.IV.1,page 1,4-9,1986,in Dutch)は、長さ<1cmのコセットの量が、最大3~5%に制限されるべきであるという要件を確認している。
【0008】
従って、良好な抽出挙動を達成するために、長さ<1cmのコセットを使用するべきではないか、又はわずかな程度に限り使用すべきであるという当技術分野において一貫した教示がある。1cm未満の粒径範囲は避けるべきである。
【0009】
抽出に続いて、典型的には、濾液としてのイヌリン富化ジュースを、残液としてのイヌリン枯渇パルプから分離する。抽出プロセスのイヌリン枯渇パルプ又は残液は、例えば、動物飼料として使用され得る。分離は、いくつかの方法によって実施することができ、非限定的な例は、濾過、圧搾又は遠心分離によるものである。
【0010】
イヌリン富化ジュースを含む濾液、及びイヌリン枯渇パルプを含む残液の分離後、所望によりジュースをさらに精製してもよい。このプロセスは、例えば、石灰添加と、それに続くCO添加による凝集及び濾過のステップを含み得る。イヌリン含有ジュースは、このプロセスで着色する可能性があり、これは一般的に望ましくないため、コストのかかる後処理が必要である。酸凝集法も代替策として使用され得る。濾過と組み合わせたこのような酸凝集は、不安定化タンパク質によるフィルターの閉塞を防止する濾過剤、例えば、珪藻土又は「珪藻土(kieselguhr)」の存在を必要とし得る。この問題は、遠心分離を使用した場合、防ぐことができる。この濾過剤は、酸性pHでの加水分解によりイヌリンを分解するという欠点があり、不純物の一部を除去する上で有効性が低くなり得る。
【0011】
一般的には、イヌリン含有組成物を得るための既知の方法には、分解産物の生成及び微生物汚染のリスクの増加を伴う比較的長い抽出時間という問題があり、且つ/又は比較的多量の水を消費する。抽出は、典型的に、許容可能な収率を達成するために約1時間以上かかる。新鮮な産物中25%の典型的な乾燥物質に補正して、最終ジュース又は濾液と投入材料の量の1,2~1,6以上、最大5までの重量比は稀ではない。
【0012】
本明細書の記載、特許請求の範囲及び図面では、小数点としてコンマを用いる。
【0013】
さらに、公知の方法で得られるイヌリン含有組成物には、絶対的に及び/又はイヌリンの総量に対してのいずれかで、重合度(DP)が低下したフルクトース、スクロース及び/又はイヌリンの含有率が比較的高いという問題がある。根を乾燥すれば、成長周期に依存することなく、一年中イヌリンの抽出が可能になる。乾燥によって、チコリの根の(ヘミ)セルロースが互いに付着して結合し、より多孔性の低い構造が形成され、植物材料を酵素的及び微生物学的に安定化させると予想される。従来の方法では、乾燥は、例えば、チコリの根のコセットの天日乾燥又はオーブン乾燥によって達成され得る。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、前述の公知の方法と比較して、収益性の高いイヌリン含有組成物を得る方法を提供することである。収益性の向上は、チコリの根などの植物材料からイヌリンをより高速で抽出することを要し得ると共に/又はより高濃度のイヌリンを含むジュースの取得を可能にすると考えられ、そのジュースは、有利なことに、より少ない後続の濃縮ステップでさらに処理することができる。
【0015】
上記及びその他の目的は、請求項1に記載の方法により達成される。この方法は、以下:
-イヌリン含有植物材料を用意するステップと;
-粒子状形態のイヌリン含有植物材料を取得するステップであって、上記粒子が、上記粒子の多くとも45vol%が、粒径≦0,15mmを有し、且つ、上記粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦4,0mmを有するような粒度分布を有するステップと;
-粒子状イヌリン含有植物材料を抽出ステップに付すステップであって、このステップは、粒子状イヌリン含有植物材料を水性抽出剤と接触させ、植物材料から抽出剤にイヌリンを抽出して、イヌリン富化ジュースとイヌリン枯渇パルプを得ることを含む、ステップと;
-好ましくは、真空濾過、加圧濾過及び/又は遠心分離のいずれかによって、濾液としてのイヌリン富化ジュースを残液としてのイヌリン枯渇パルプから分離するステップと、
を含む。
【0016】
欧州特許第0930317号明細書などの従来技術は、特に工業規模でイヌリンを抽出する際の粒度分布の重要性については触れていない。実験室規模で得られた結果は、パイロット規模及び工業規模のようなより大きな規模に容易にスケールアップできないことが一般に知られている。工業規模とは、本出願に関して、運転24時間当たり少なくとも1000kgの原料、より好ましくは少なくとも3000kgの原料、最も好ましくは24時間当たり5000kg~10000kg、さらにはそれ以上を処理することができる設備において、本方法が実施されることを意味する。本発明による工業的方法では、運転24時間当たり少なくとも1000kgの原料(イヌリン含有植物材料)、より好ましくは少なくとも3000kgの原料、最も好ましくは24時間当たり5000kg~10000kgが提供され、次に、この原料は、特許請求の範囲に記載の方法ステップに従ってさらに処理される。
【0017】
イヌリン含有植物材料は、好ましくは、キク(Compositae)科由来の、チコリデア(Cichorideae)族及びチコリウム(Cichorium)属、例えばチコリ(Chicorium intybus)若しくはタンポポ属種(Taraxacum spp)の、又は同じキク(Compositae)科及び同じチコリデア(Cichorideae)族であるが、タンポポ(Taraxacum)属、例えば、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinalis)若しくはロシアタンポポ(Taraxacum Kok-Sagyz)由来の、又は同じキク(Compositae)科であるが、ヒマワリ(Helianthus)属、例えば、キクイモ(Helianthus tuberosus)由来の地下材料、より好ましくはチコリ(Cichorium intybus)根及び/又はキクイモ(Helianthus tuberosus)塊茎を含む。
【0018】
植物材料からの抽出は、問題を回避するために1cm(10mm)を超えるコセットに対して実施することが当技術分野で一貫して教示されている。1cm未満の範囲の粒径を有する粒状植物材料を抽出する際にいつでも満足のいく抽出収率を達成できることは、一般的な知識に反しており、従って極めて予想外なことである。本発明者らは、1cm未満の「禁止された」粒径範囲内で特定の範囲を選択することにより、比較的短い抽出時間で満足な収率を得ることができること;さらに、イヌリン枯渇パルプからのイヌリン富化ジュースの好ましい分離も達成され得ることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、孔径2,0mmの篩で篩い分けたチコリ(Cichorium intybus)植物の根からの乾燥粉末を使用した場合、より大きな孔径を用いた乾燥粉末、及び乾燥根切片と比較して、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃度率が高いことを示す。
図2図2は、孔径2,0mmの篩で篩い分けたチコリ(Cichorium intybus)植物の根からの乾燥粉末を使用した場合、より大きな孔径を用いた乾燥粉末、及び乾燥根切片と比較して、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃度率が高いことを示す。
図3図3は、粒径が4,0mm未満のチコリ(Cichorium intybus)植物の根からの乾燥粉末を使用した場合、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃度が高いことを示す。
図4図4は、粒径が4,0mm未満のチコリ(Cichorium intybus)植物の根からの乾燥粉末を使用した場合、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃度が高いことを示す。
図5図5は、屈折計で測定した炭水化物含有率を、それぞれ65℃及び75℃での抽出についてプロットしたものである。
図6図6は、屈折計で測定した炭水化物含有率を、それぞれ65℃及び75℃での抽出についてプロットしたものである。
図7図7は、経時的に測定された炭水化物含有率の増加のグラフを示す。
図8図8は、本実験の各実施例のジュース中の溶解物質の濃度の経時的なプロットである。
図9図9は、本実験の各実施例のジュース中の溶解物質の濃度の経時的なプロットである。
図10図10は、実施例27及び比較例Nに対する粒度分布測定の結果を示す。
図11図11は、実施例27及び比較例Nに対する粒度分布測定の結果を示す。
図12図12は、多段階濾過実験の詳細を示す。
図13図13は、チコリ(Cichory)raspの体積%及びCE直径を示す。
図14図14は、新鮮なチコリ(Cichorium intybus)のコセットと比較して、請求項に記載の粒度分布を得るために篩で篩い分けたチコリ(Cichorium intybus)及びキクイモ(Jerusalem Artichoke)植物の根からの粉砕粉末を使用した場合、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃縮倍率が高いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の主な実施形態において、特定の範囲の粒径の選択を、抽出前に、ISO 6496により測定して、少なくとも80wt.%の乾物含量までイヌリン含有植物材料を乾燥させるステップと組み合わせる。任意の好適な順序で抽出する前に植物の根を乾燥及び摩砕(粉砕)することによって、驚くことに、イヌリン枯渇パルプからのイヌリン富化ジュースの好ましい分離が達成され得ることが見出された。
【0021】
本発明の特に有用な実施形態は、イヌリン含有植物材料を前記粒子状形態で取得する前に、ISO 6496により測定して、少なくとも80wt.%の乾物含量までイヌリン含有植物材料を乾燥させる、方法を提供する。
【0022】
別の主要な実施形態では、イヌリン含有植物材料を前記粒子状形態で取得する前に、イヌリン含有植物材料を乾燥しないで、前記粒子状イヌリン含有植物材料を、前分離ステップに付して、前記抽出の前にそこから多汁画分を取り出す方法が提供される。本明細書において意味される場合、「乾燥しない(非乾燥)」という用語は、イヌリン含有植物材料に関して、イヌリン含有植物材料が、収穫されたときに含有していた量の水の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60、70、又は少なくとも80%を含有することを意味する。実際の抽出が実施される前に、粒子から多汁画分を分離するのが有利であることが証明されている。この前分離は、当該分野で公知の方法によって、例えば、遠心分離により、実施することができる。前分離ステップは、抽出前に実行され、後続抽出ステップにおいて必要な温度及びBrixレベルへの到達を促進する。また、抽出後に実行される分離ステップ(例えば、濾過による)は、この前分離ステップから利益を得ることが証明されている。
【0023】
この方法のより好ましい実施形態が提供され、この場合、粒子の多くとも30vol%が、粒径≦0,15mmを有し、且つ、粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦3,0mmを有する。
【0024】
粒子の多くとも30vol%が、粒径≦0,10mmを有し、且つ、粒子の少なくとも90vol%が、粒径≦2,0mmを有する方法の実施態様が、さらにより好ましい。
【0025】
最も好ましい実施形態は、粒子の多くとも25vol%が、粒径≦0,10mmを有し、且つ、粒子の少なくとも70vol%が、粒径≦1,0mmを有する方法に関する。
【0026】
本発明の一実施形態では、粒子の少なくとも3又は5vol%、好ましくは少なくとも8又は10vol%は、粒径≦0,15mm、好ましくは≦0,12mm又は≦0,10mmを有する。流動は、好ましくは、高速過ぎて最適収率を下回ったり、低速過ぎて本発明の方法の過度に長い持続時間を招いたりするべきではないことから、上記は、粒子状塊を通る抽出剤及び/又はイヌリン富化ジュースの最適流動を確実にするのに役立ち得ることが判明した。
【0027】
粉砕された植物材料の粒子は、典型的には、特定の粒度分布を示す。こうした分布は、特定の孔径を有する篩に材料を通過させることによって得られた画分を除去又は添加することによってさらに操作することができる。例えば、粉砕植物材料を孔径1mmの篩に通すと、粒径≧1mmの粒子を有する実質的な画分を除去することができる。別の可能性は、特定の粒径の画分を除去し、それを別の重量分率で粉砕植物材料に再び添加することである。例えば、粒子の多くとも30vol%が、粒径≦0,10mmを有する材料を得るために、最初に粒径≦0,10mmを有する粒子の画分を除去し、次に、30vol%未満の所望の量を再度添加することができる。
【0028】
一実施形態に従って予め乾燥させた粒子状イヌリン材料の粒度分布は、フラウンホーファー(Fraunhofer)モデルを用いて、ISO 13320に準拠したレーザー粒度測定により好都合に測定される。このような分布において、粒径Dは、粒子のx vol%がDより小さい粒径として定義される。特に、分布中のD90=3mmは、粒子の90vol%が、3mmより小さい粒径を有することを意味し、また、分布中のD45=0.15mmは、粒子の45vol%が、0,15mmより小さい粒径を有することを意味する。
【0029】
別の実施形態に従って予め乾燥されなかった粒子状イヌリン材料の粒度分布は、画像解析によって好都合に測定される。画像解析により、粒径及び形状分布の定量的解釈が得られる。デジタル画像解析では、以下のステップ:画像取得、画像復元、セグメンテーション及びフィルタリングが識別されて、画像測定により、特定の粒度分布及び所定の形状クラスを取得することができる。
【0030】
他の好ましい実施形態は、粒子の少なくとも95vol%が、粒径≦3.0mmを有し、さらにより好ましくは、粒子の少なくとも99vol%が、粒径≦3,0mmを有し、最も好ましくは、実質的に全ての粒子が粒径≦3,0mmを有することを特徴とする。
【0031】
本発明の方法の利点は驚くほど重要であることが判明し、これにより、依然として高い抽出収率を得ながら、先行技術から知られているように、約1時間以上の抽出時間から、20分未満、さらには10分未満の総計抽出時間まで短縮する可能性がある。この方法はさらに、イヌリン枯渇パルプからのイヌリン富化ジュースの比較的迅速な分離を可能にすると共に、少なくとも同程度の抽出、及び既知の方法で達成されるよりも実際に高い抽出をもたらし得る。他の利点としては、抽出後の乾物含量のパーセンテージの増加、使用する水量の減少、及び/又は既知の水/固体比の低下が挙げられる。
【0032】
本発明の方法はまた、典型的に、3~4ヶ月の収穫期間に限定されるのではなく、一年を通してイヌリンを生産することができることから、抽出及びジュース精製工場又は施設の規模を縮小し得る。施設の規模を縮小すると、設備投資(CAPEX)を削減することができる。
【0033】
イヌリン含有植物材料を少なくとも80wt.%の乾物含量まで乾燥させる場合、これは、実施形態では、イヌリン含有植物材料を天日乾燥(sun-drying)若しくは天日乾燥(solar-drying)するステップ、又は前記材料をオーブンで乾燥するステップ、或いはこれらの方法の組合せを含み得る。一実施形態では、オーブンで乾燥する場合、乾燥温度は30℃~200℃であり、好ましくは40~120℃、より好ましくは50~100℃、さらにより好ましくは90℃又はその前後である。温度が高くなると、植物材料中のイヌリンの分解を引き起こす恐れがある。典型的に、乾燥は、一方では乾燥時間(可能な限り短くすべきである)と、他方では乾燥温度(分解を引き起こさないレベルにすべきである)との間の最適なものを見出すプロセスを伴う。他の好ましい方法では、真菌が増殖しにくい、微生物学的に安定な生成物を取得するために、乾燥は、少なくとも88wt.%の乾物まで、より好ましくは少なくとも90~95wt.%の乾物までの乾燥として定義される。上記のような程度までの乾燥は、30~200℃の温度で、1~24時間、より好ましくは1,5~6時間の期間にわたってオーブン乾燥することにより達成され得る。
【0034】
本発明による方法のステップは、粒子状形態のイヌリン含有植物材料又は乾燥イヌリン含有植物材料を提供し、ここで、粒子は、特許請求の範囲に記載の特定の粒度分布を有する。本発明に関して粒子状物質は、請求項に記載される範囲内の粒子の集団を意味する。植物材料の摩砕は好ましい方法であり、ここで、ミルは、任意選択で、後続の篩い分けステップによって、特許請求の範囲に記載の粒度分布を有する粒子状形態の植物材料をもたらすように構成される。請求項に記載される範囲内の粒径を有する粒子状イヌリン含有植物材料は、収率に関してより優れた性能を発揮することが判明している。
【0035】
本発明のいくつかの利点を達成するには、1つの抽出ステップで十分であり得るが、この方法の好ましい実施形態は、任意選択で乾燥された粒子状イヌリン含有植物材料を、複数Nの抽出ステップに付すことを特徴とする。これらの好ましい実施形態は、最終的に得られる植物材料において大幅に低下したイヌリン濃度と共に、イヌリン含有ジュース中の比較的高いイヌリン含有率を得ることを可能にする。
【0036】
本発明の方法のさらに別の実施形態によれば、抽出ステップ又は複数の抽出ステップのうちの少なくとも1つは、向流(又は逆流)の流れで実施され、ここで、投入材料は、水性抽出剤の流れの方向と反対の方向に流れるように供給される。このような実施形態では、第1抽出ステップn=1(又は向流での連続抽出プロセスの開始)は、好ましくは、全ての抽出溶液の中で最も濃縮されている(°Brixに関して)水性イヌリン抽出溶液を用いて実施される。
【0037】
抽出ステップnで得られた残液が後続の抽出ステップn+1の投入材料として使用され、且つ/又は抽出ステップn+1で得られた濾液が抽出ステップnの水性抽出剤として使用される方法の実施形態により、さらに改良された方法が提供される。ここで、nは、無作為に選択された抽出ステップを示し、ここで、n+1≦Nである。抽出ステップn及び後続の抽出ステップn+1と言うとき、複数の抽出ステップNが2つの抽出ステップに限定されることを意味するわけではない。抽出ステップn及びn+1は、ステップn+1が抽出ステップnに続く限り、一連の抽出ステップ内でランダムに規定され得る。
【0038】
別の実施形態では、抽出ステップnで得られた濾液が、後続の抽出ステップn+1の水性抽出剤として使用される方法を提供する。さらには、最後の抽出ステップで得られた濾液を先行抽出ステップの水性抽出剤として用いる態様がより好ましい。
【0039】
別の好ましい方法では、抽出ステップn+1で得られた濾液を抽出ステップnの水性抽出剤として用いる。
【0040】
抽出は、典型的には水を用いて行われるが、複数Nの抽出ステップにおいて、炭水化物溶質を含む抽出水溶液を用いた抽出又は少なくとも1つの抽出ステップを実施することが好ましい場合があり、上記炭水化物溶質は、好ましくはイヌリンを含む。水溶液は、例えば、最大20°Brixの炭水化物濃度を有し得る。このようにして、非常に高い炭水化物、好ましくはイヌリン濃度が達成され得る。いずれの場合も、抽出を誘導するために、粒子状出発材料中のイヌリンの濃度は、抽出剤中の濃度よりも高くなければならない。そのため、出発原料を乾燥して、こうした濃度の粒状出発原料を得ることが好ましい。
【0041】
濾液中の最大約30°Brixの濃度は、特に、乾燥イヌリン含有植物材料を使用する場合に、本発明に従って達成されている。40°Brixを超える濃度、より好ましくは35°Brixを超える濃度、及び最も好ましくは約30°Brixを超えるイヌリン溶液は、温度によって結晶化する及び/又はスラリーを形成する傾向になり得るため、上記のような濃度は技術的限界に近い可能性がある。このような結晶化/スラリー形成は、イヌリン富化ジュースとイヌリン枯渇パルプの分離を明らかに妨げ、従って、イヌリン収率の損失をもたらし得る。
【0042】
抽出直後に高濃度のイヌリンを得ることができるため、例えば、蒸発により乾物含量を増加させる後続の既知の処理ステップを、有利なことに除外するか、又は少なくともかなり縮小することができる。
【0043】
一連の抽出ステップにおいて、抽出ステップnの水性抽出剤が、後続の抽出ステップn+1の水性抽出剤よりも高い炭水化物含有率(°Brixで測定される)を有する方法の一実施形態を提供するのが有利であることは証明されている。これは、抽出ステップnと後続の抽出ステップn+1との1つの組合せに当てはまるが、好ましくは、複数Nの抽出ステップを有する実施形態では、抽出ステップnと後続の抽出ステップn+1との任意の組合せに当てはまる。
【0044】
この方法の他の好ましい実施形態が提供され、ここで、水性抽出剤は、0°Brix~20°Brixの範囲の炭水化物含有率を有する。
【0045】
複数Nの抽出ステップを含む方法の実施形態において、抽出ステップNの量は、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、さらにより好ましくは少なくとも4、最も好ましくは少なくとも5である。水性抽出剤の炭水化物含有率は、例えば、最初の抽出ステップの約20°Brixから、最終抽出ステップのほぼ0°Brixまで減少し得る。従来のイヌリン抽出は、40以上の抽出ステップを含み得るのに対し、いくつかの実施形態に従う本発明の方法における抽出ステップの数はそれより有意に少なく、好ましくは多くとも10、より好ましくは多くとも7、最も好ましくは多くとも5である。
【0046】
本発明によれば、上記抽出ステップに、又は多段階の実施形態のいくつかの若しくは各抽出ステップに変形を付与することができる。例えば、他所から得られたイヌリン抽出水溶液を1つ又は複数の抽出ステップに使用すること、抽出ステップの持続時間を最適化すること、抽出ステップにおける温度及び/若しくはpHを最適化すること、並びに/又は具現化された方法で使用される抽出ステップの数を変更することが可能である。
【0047】
本発明の方法の有用な実施形態では、抽出ステップ又は複数の抽出ステップのうちの少なくとも1つにおける抽出剤の温度は、55℃~95℃、より好ましくは60℃又は65℃~75℃で提供される。複数Nの抽出ステップを含む実施形態では、抽出ステップのうちの少なくとも2つは、異なる温度で実施され得る。温度の上昇は、低温での抽出と比較して抽出を高速にし、しかも、より高い炭水化物含有率(°Brix)をもたらすことが証明されている。95℃を超える温度での抽出ステップの実施は、植物材料の構造がそのような温度で分解される可能性があるため、望ましくない。
【0048】
抽出ステップの持続時間は、変化し得る。本方法の好ましい実施形態において、抽出ステップ又は複数Nの抽出ステップのうちの少なくとも1つ、及び好ましくは全ての抽出ステップは、抽出ステップ当たり10~300秒(sec)、好ましくは30~150秒、さらにより好ましくは50~70秒という短い持続時間を有する。好ましい実施形態では、複数Nの抽出ステップは、最大で20分(min)、好ましくは最大で15又は10分の合計持続時間を有する。これに関連して、異なる抽出ステップの持続時間は、同じである必要はないことが認められている。例えば、6回の抽出ステップを実行する場合、持続時間は、1分が3回、2分が2回、及び4分が1回であってもよい。
【0049】
さらなる実施形態では、複数の抽出ステップを含む方法において、各抽出ステップの後に、分離ステップが実施される。一実施形態において、分離ステップは、植物材料を配置した浴から抽出剤液体を除去することを含む。分離は、従来用いられているものとは異なる種類の装置で実施するのが好ましく、その場合、重力に加えて外力を適用する点が、従来の分離手段とは主に異なる。外力は、部分的又は実質的に完全な真空を適用することを含み得る。このような真空は、例えば、50~700ミリバール、より好ましくは100~600ミリバール、さらにより好ましくは300~500ミリバールの範囲であり得る。実用的な実施形態は、真空濾過を含む。しかしながら、遠心分離機での分離も可能であるが、とりわけ、コストが高くなることから、あまり好ましくない。
【0050】
この方法の特に好ましい実施形態が提供され、ここで、抽出ステップ(又は複数Nの抽出ステップのうちの少なくとも1つ)、並びに濾液を残液から分離するステップの両方が、真空バンドフィルター及び/又は回転フィルター及び/又は遠心分離機によって行われる。本発明の好ましい実施形態では、複数Nの抽出ステップの少なくとも2つ又は全てが、1つのバンドフィルター、回転フィルター及び/又は遠心分離機によって実施され、それらはそのとき全て、混合及び分離のために構成されたいくつかの交互セクションを含み、向流抽出を可能にする。
【0051】
向流抽出プロセスでは、抽出ステップb(ここで、植物材料サンプルは、再度抽出される)で得られた濾液ジュースが抽出ステップaに導かれ、そこで、濾液ジュースは、その前に抽出されなかった植物材料サンプルの抽出のために使用される。ステップbで使用される濾液ジュースは、3つの早期抽出ステップc、d、及びeから得られているため、富化ジュースであり、これらのステップでは、チコリなどの植物材料、サンプルのそれぞれ3回目、4回目、5回目の抽出が実施されている。
【0052】
完全な向流抽出が最も有益であると考えられるが、これに対する変形は除外されない。例えば、植物材料サンプルは、(例えばステップcにおいて)所定の位置に留まり、異なる抽出剤ジュースと一緒に数回抽出することができる。さらに、異なる抽出ステップに異なる供給源の植物材料を使用することができる。
【0053】
本発明者らは、本発明の方法を用いたイヌリンの抽出度が、従来の方法と少なくとも同じか、又はそれより高くすることさえできることを見出した。この有益な効果は、同じ抽出時間を使用する方法を比較する場合に特に顕著であり、抽出度は、従来の方法で得られるものよりも本発明の方法で高くなり得る。
【0054】
観察されるより高い抽出度はまた、濾液が平均してより高いDPを有するより多くのイヌリンを含むことを意味し得る。この予測は、低DPイヌリンの方が水に溶けやすく、より早く抽出されるという理解に基づいている。従って、抽出度が高い場合、抽出される余分なイヌリンは、DPが高いイヌリン、又は少なくともDP画分が高いイヌリンである可能性が最も高い。より高いBrix値を有する水溶液による抽出がこれに寄与することができる。また、本発明の方法は、より良い抽出(即ち、チコリの根などの植物材料への水の優れた浸透)をもたらすことができるので、より多くの高DPイヌリン鎖がこのプロセスで溶解し得る。
【0055】
最終濾液は、やや長い鎖(5以上の重合度を有する、「DP5+」)と不純物の量の比によって特徴付けることができる。後者には、陰イオン、陽イオン、より小さな糖(すなわち、フルクトース、グルコース、及びスクロース)並びにアミノ酸が含まれる。この比は、従来の抽出で得られる典型的な比と比較して、いくつかの実施形態において増加し得ることが判明した。
【0056】
水性抽出剤のpHは、本発明の方法に関連して実施される抽出ステップに影響を与え得る。一実施形態では、抽出プロセスの1つ以上のステップは、3~5、より好ましくは4~4,2付近のpHで実施され得る。好ましくは、これが最終抽出ステップである。従来の方法では、このようなかなり低いpH値は、主に加水分解によるイヌリンの分解を防ぐために、抽出ステップにおいて回避しなければならなかった。しかし、本発明の方法の本実施形態では、最先端の方法と比較して有意に短い抽出時間を使用することができるため、加水分解の重要性をはるかに低くすることができる。
【0057】
別の実施形態では、本発明の方法に凝集ステップを追加してもよく、これは、抽出剤に凝集剤を添加して、抽出剤の少なくとも1つの混入物質を含む少なくとも1つのフロックを形成するステップと;フロック形成後にフロックを排出するステップと、を含む。凝集ステップは、最終抽出ステップに実施することが好ましい。加えて、粒子状形態の乾燥イヌリン含有植物材料は、粒子が請求項に記載される粒径を有し、上記凝集ステップに用いられる濾過手段として有効となり得る。
【0058】
本発明の方法から得られる濾液ジュースは、好ましくは最初からかなり透明となり得るため、例えば、フィルターの目詰まりを防ぐために珪藻土を必要とせずに、不要なタンパク質はイヌリン枯渇パルプ残液中に残留すると考えられる。本明細書のさらに別の利点は、パルプがより栄養素に富む可能性があることである。パルプは、動物飼料として使用される可能性があるため、これは重要である。
【0059】
本発明による方法の有用な実施形態は、最終抽出ステップで、少なくとも25°Brix、好ましくは少なくとも26又は28°Brix、より好ましくは少なくとも29°Brixの炭水化物含有率を有するイヌリン富化ジュースを得るために、複数の抽出ステップが、抽出ステップの過程でイヌリン富化ジュースの炭水化物含有率を増加するように構成される。
【0060】
本方法のさらに別の実施形態では、複数の抽出ステップは、植物材料中のイヌリンの総初期重量の少なくとも80又は90%、より好ましくは少なくとも95%の全体的イヌリン枯渇度を有するイヌリン枯渇パルプを取得するように構成される。
【実施例
【0061】
実施例及び比較例
下記実施例は、本発明をさらに説明するために提供され、いかなる方法でも本発明を限定するものと解釈されるべきではない。下記実施例において、イヌリン含有植物材料を本発明による方法に従って処理し、比較例において、未処理又は本発明に従って処理されていない材料と比較する。
【0062】
分析
直列に接続され、72±2℃に加熱され、K形態のAminex HPX-87Kイオン排除樹脂がロードされ、HPLCポンプと、4℃の冷却システムを備えたオートサンプラーが取り付けられた長さ30cm、直径7,8mmの2本のカラムのセットを用意することにより、HPLC分析を実施した。カラムのセットは、0,50cm/分の流量でpH9,5~9,6のKOH溶離液溶液と共に使用した。本実施例の下記実験の各々において、サンプルサイズは100μLに設定した。カラムを最初に、異なる糖及びフラクトオリゴ糖のストック溶液、即ち、フルクトース(F)、グルコース(G)、スクロース(GF)及び既知の平均重合度nを有する複数のフラクトオリゴ糖GF溶液を含む溶液で較正した。この較正の最中に、クロマトグラムのピーク位置を決定するために原液をいずれも希釈せずに注入し、応答係数を決定するために希釈(溶液1グラム当たり5、10、15、及び30グラムのストック)し、ピーク下面積を定量分析に使用できるようにした。
【0063】
サンプルについてのHPLC測定の定量結果を表す1つの方法は、「100グラム当たりのグラム数°Brix」の形式であり、即ち、結果は、°Brixに寄与する化合物に帰せられる総重量の重量パーセンテージとして表される。定量結果を表現する別の方法は、サンプル中の可溶性炭水化物の総量の重量パーセンテージとして表され、典型的には「炭水化物100グラム当たりのグラム数」と呼ばれる。
【0064】
クロマトグラムの分析では、HPLCカラムは、重合度DPが5以上のイヌリン(フラクトオリゴ糖を含む)を互いに分離することができなかったが、これは、重合度5以上のイヌリン(フラクトオリゴ糖を含む)が単一のピークを形成する(典型的には「DP5+」と呼ばれる)ことを示唆している。これは、イヌリンのHPLC分析でよく知られている。
【0065】
乾物含量は、予備調整なしでISO 6496(1999)を使用して評価され、以下のケースの全てにおいて、規格で定義されるマージン内にある105℃で4時間の乾燥手順を用いて実施された。乾物含量とは、水分又は揮発分ではない物質を全て乾物とみなして、水分及びその他の揮発分含量(重量)wから推測される。
【0066】
事前に乾燥したサンプルの粒度分布測定は、ISO 13320:2009に準拠し、Malvern Mastersizer 2000及び分散圧力1バールを用いるScirocco 2000モジュールを使用して、三重反復(in triplo)で実施し、フラウンホーファー(Fraunhofer)モデルに従って解釈し、平均した。
【0067】
事前に乾燥していない/新鮮なサンプルに対する粒度分布測定は、以下の方法に従い、画像解析により行った。高精度XYステージ上の静的分散粒子用のエピスコピック及びディアスコピック照明を有するMorphologi G3を使用する。5メガピクセルカメラは、0.5~3000μmの粒径範囲、さらには0.5μm未満及び3000μm超の個々の粒子の画像を収集する。粒子の個々の画像は全て、統計的に有意な粒径と形状情報をもたらすソフトウェアによって分析される。粒径及び粒度分布が決定され、生成された個々の粒子及び形状分布のそれぞれについて複数の形状パラメータが算出される。ピクセル及びマイクロメートル単位の面積、主軸、長さ、幅、最大距離、周囲長などの基本的な形態学的寸法は、様々な形状分布の基礎である。形状分布に適用される形態学的パラメータは、粒子画像の投影面積と同じ面積を有する円の直径として定義されるCE直径である。
【0068】
イメージングの主な結果は、数値ベースの粒度分布であり、この場合、粒度は、それらの同等の円直径に関連する。定量的粒子形状分布は、2つの粒径寸法の比から得られる形状記述子によって定義される。
【0069】
下記の装置及び方法を使用した。サンプルは、Nikon CFI明視野/暗視野検査顕微鏡(Eclips L200ND)及びBaumer 5MピクセルCCDデジタルカラーカメラを備えるMalvern Morphologi G3SEを特徴とする。顕微鏡イメージングでは、機器の最大範囲をカバーする異なるピッチの4つのキャリブレーショングレーティングを使用する。サンプルジャーから、凍結サンプルの小さな塊を取り出し、ビーカーに入れた。サンプルを入れたビーカーに水を添加し、サンプルの大きな塊が完全に解凍されて分散するまで、サンプルを攪拌した。分散液から、3mlを取り出し、顕微鏡のガラスプレートに載せて、解析した。前述した手順を3回実施する。大小の3次元粒子のボディ全体にわたって正焦点を達成するために、粒子の異なる焦点で最大4つの画像を撮影した後、組み合わせて、単一の合成画像を取得する。
【0070】
水溶液中の溶解物質の濃度を決定するために、屈折計を使用し、水(0°Brix)で毎日、スクロースに基づき炭水化物含有率15°Brix又は35°Brixのいずれかを有するスクロース溶液で毎月較正する。
【0071】
実験1:様々な出発材料を用いた抽出
最初のサンプルセットは、チコリ(Cichorium intybus)植物から調製され、その根をスライスして、保存に適した乾物量まで乾燥させたが、これは、上に明示される通り、ISO 6496(1999)に準拠して88.0%の乾物含量に相当する。続いて、乾燥した根切片は、比較のためにそのまま使用されるか、又は本発明に従うサンプルを取得するために、粒子状の出発材料に粉砕され、特定の孔径を有する篩で篩い分けられ、さらにまた本発明によるものではない粒度分布を有する粉末との比較試験のために使用される。サンプルを表1にまとめる。これに関して、粉末の篩範囲は、出発材料を得るために使用される篩によって規定される。例えば、1,0mm~2,0mmの粉末のふるい範囲は、サンプルが、孔径2,0mmの篩を通過することはできたが、孔径1,0mmのふるいを通過できなかった出発材料で構成されていることを意味する。
【0072】
各サンプル15グラムずつを100グラムの水と接触させた。抽出中、水を表1に記載されている温度Textrに保ち、屈折計を使用して、2,5分後、5分後、及び1時間に達するまで継続して5分間隔で、ジュース中の溶解物質の濃度を決定した。
【0073】
図1及び2は、孔径2,0mmの篩で篩い分けたチコリ(Cichorium intybus)植物の根からの乾燥粉末を使用した場合、より大きな孔径を用いた乾燥粉末、及び乾燥根切片と比較して、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃度率が高いことを示している。
【0074】
実験2:様々な出発材料及び様々な抽出期間を用いた抽出
種々のチコリ(Cichorium intybus)植物の根サンプルを、表2に要約されるような方法で、実験1に記載したのと同じ植物材料から調製した。それ以外は実験1と同様の方法で抽出を行ったが、この実験は、20分後に完了した実験をさらに含む(実施例6A及び8A)。
【0075】
実験の生成物を、抽出後に800mbarの真空による真空濾過を用いて、濾液(これはHPLCで分析した)と残液に分離した。完全抽出をシミュレートするために、残液を75℃の温度にて60分間水で抽出し、再び残液(廃棄した)と濾液(これはHPLCで分析した)に分離した。
【0076】
表3は、抽出物(抽出から)及び残液(完全抽出をシミュレートした抽出の抽出物から推定)の溶質濃度、並びに重合度5以上のフラクトオリゴ糖の量の概要を示す。
【0077】
この表の結果は、本発明によるサンプルから比較的高い重合度でより多くのイヌリンをより短期間のうちに抽出することが可能であり、その場合、より小さな粒子での抽出が、一般に、並びにDPが5以上の鎖に関しても、より高い収率をもたらすことを実証するものである。さらに、この手順が、抽出後の残液中に存在する可溶性炭水化物の量の減少をもたらすことは明らかである。
【0078】
図3及び4は、粒径が4,0mm未満のチコリ(Cichorium intybus)植物の根からの乾燥粉末を使用した場合、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃度が高いことを示している。
【0079】
実験3:炭水化物含有率の高い抽出剤を用いた抽出
種々のチコリ(Cichorium intybus)植物の根サンプルを、表4に要約する方法で、実験1に記載したのと同じ植物材料から調製した。抽出及び完全抽出シミュレーションは、実験2と同様の方法で行ったが、使用する抽出剤を、チコリ(Cichorium intybus)由来の噴霧乾燥イヌリンと水で混合し、屈折率計により確認して、出発炭水化物含有率が20°Brixの水性抽出剤を得た。
【0080】
屈折計で測定した炭水化物含有率を、それぞれ65℃及び75℃での抽出について図5及び6にプロットする。これらの図は、°Brixで表される高溶質濃度のジュースを得る可能性を示している。
【0081】
実験4:異なるために、より小さな割合を用いた向流シミュレーション
0°Brixの水性抽出剤として水から出発して、炭水化物含有率がそれぞれ20°Brix、15°Brix、10°Brix、及び5°Brixの水性抽出剤をさらに得るために、所定量の噴霧乾燥イヌリンを水と混合することにより、複数の抽出剤を取得した。抽出剤は各々、抽出剤のpHを5,5にするために10%の量の硫酸を含む。
【0082】
様々なチコリ(Cichorium intybus)植物の根サンプルを植物から調製し、その根をスライスした後、乾燥させた。出発原料の乾物含量は、88,0%であることを確認した(上に明示されるISO 6496(1999))。スライスし、乾燥した根を続いて粒子状の出発材料に粉砕し、表7に要約する特定の孔径を有する篩で篩い分けた。
【0083】
以下のステップを実施することによって、向流抽出をシミュレートした:1サンプルからの15グラムの粒子状(出発)材料を100グラムの調製20°Brix抽出剤とtextr秒間一度に接触させた後、真空濾過により濾過して、第1の濾液及び第1の残液を得た。第2ステップとして、第1の残液を、所定量の調製15°Brix抽出剤とtextr秒間接触させて、第1の残液と合計して115グラムにし、真空濾過により濾過して、第2の濾液及び第2の残液を得た。第3ステップとして、第2の残液を、所定量の調製10°Brix抽出剤とtextr秒間接触させて、第2の残液と合計して115グラムにし、真空濾過により濾過して、第3の濾液及び第3の残液を得た。第4ステップとして、第3の残液を、所定量の調製5°Brix抽出剤とtextr秒間接触させ、第の3残液と合計して115グラムとし、真空濾過により濾過して、第4の濾液及び第4の残液を得た。第5ステップとして、第4の残液を所定量の水(0°Brix)とtextr秒間接触させ、第4の残液と合計して115グラムにし、真空濾過により濾過して、最終濾液及び最終残液を得た。これらの各シミュレーションの間、抽出浴の浴温は65℃であった。
【0084】
各シミュレーションの後、濾液の溶解物質の濃度を前述の手順に従って屈折計で測定した。さらに、完全抽出をシミュレートするために、各実験の最終残液60グラムを300グラムの水で温度75℃にて60分間抽出し、真空濾過により濾過した。この濾液中の溶解物質の量(シミュレーションの完了後もまだ存在する量を表す)を屈折計で決定した。結果を表8に記載する。
【0085】
この表の結果は、65℃の抽出浴温度で、抽出時間60秒と150秒の間の抽出品質の差が有意性の範囲内にあることを示している。各60秒の5ステップを用いた向流抽出は、優れた品質の高収率を得るのに十分である。
【0086】
実験5:より小さな割合を用いた向流シミュレーション
0°Brixの水性抽出剤として、水から出発して、炭水化物含有率がそれぞれ20°Brix、15°Brix、10°Brix、及び5°Brixの水性抽出剤をさらに得るために、所定量の噴霧乾燥イヌリンを水と混合することにより、複数の抽出剤を取得した。抽出剤は各々、抽出剤のpHを5,5にするために10%の量の硫酸を含む。
【0087】
様々なチコリ(Cichorium intybus)植物の根サンプルを植物から調製し、その根をスライスした後、乾燥させた。出発原料の乾物含量は、91,9%wであることを確認した(上に明示されるISO 6496(1999))。続いて、乾燥した材料を粒子状の出発材料に粉砕し、特定の孔径を有する篩で篩い分けた。サンプルを表9に要約する。
【0088】
以下のステップを実施することによって、向流抽出をシミュレートした:1サンプルからの15グラムの粒子状(出発)材料を100グラムの調製20°Brix抽出剤と一度に60秒間一度に接触させた後、真空濾過により濾過して、第1の濾液及び第1の残液を得た。第2ステップとして、第1の残液を、所定量の調製15°Brix抽出剤と60秒間接触させて、第1の残液と合計して115グラムにし、真空濾過により濾過して、第2の濾液及び第2の残液を得た。第3ステップとして、第2の残液を、所定量の調製10°Brix抽出剤と60秒間接触させて、第2の残液と合計して115グラムにし、真空濾過により濾過して、第3の濾液及び第3の残液を得た。第4ステップとして、第3残液を、所定量の調製5°Brix抽出剤と60秒間接触させ、第の3残液と合計して115グラムとし、真空濾過により濾過して、第4の濾液及び第4の残液を得た。第5ステップとして、第4の残液を所定量の水(0°Brix)と60秒間接触させ、第4の残液と合計して115グラムにし、真空濾過により濾過して、最終濾液及び最終残液を得た。これらの各シミュレーションの間、抽出浴の浴温は65℃であった。
【0089】
各シミュレーションの後、濾液の溶解物質の濃度を前述の手順に従って屈折計で測定し、濾過を完了するのに必要な時間を記録した。さらに、完全抽出をシミュレートするために、各実験の最終残液60グラムを300グラムの水で温度75℃にて60分間抽出した後、真空濾過により濾過した。この濾液中の溶解物質の量(シミュレーションの完了後もまだ存在する量を表す)を屈折計で決定した。結果を表10に記載する。
【0090】
この表の結果は、比較的小さい粒径の出発材料を用いた抽出物中に溶解した物質の量の増加を実証するものであるが、粒径が0,20mm未満の粒子は、実用的な実装には不適な持続時間を伴う濾過を招くことも示している。
【0091】
実験6:根切片とそれに基づく粒子状物質との比較
チコリ(Cichorium intybus)植物の根をスライスし、105℃にて一晩オーブンで乾燥させ、97,5%の乾物含量まで乾燥させた(上に明示したISO 6496を用いて確認した通り)。乾燥材料の一部を粒子状出発材料に粉砕し、特定の細孔粒径を有する篩で篩い分けた。サンプルを表11に要約する。
【0092】
サンプル19の粒度分布を測定し、表12に要約する。この測定はまた、サンプルが、63μmのD、619μmのD50、1269μmのD95を有することを示した。
【0093】
15グラムの各サンプルを100グラムの水と接触させた。抽出中、水を65℃の温度に保持し、屈折計(既知の炭水化物含有率を有する複数の水溶液で較正)を使用して、5分後のジュース中の溶解物質の濃度を決定し、これを表13に要約する。
【0094】
抽出の濾液をHPLCにより分析し、これについて、DP5+の測定量(100g°Brix当たりのグラム数で表される)も表13に記載する。
【0095】
これらの結果は、同じ植物からの材料切片と比較して、粒径が2,0mm未満、特に1,0mm未満の粒子の場合、同じ期間内で、より高い溶質濃度に達することが可能であることを実証している。
【0096】
実験7:実施例21、タンポポの抽出
セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)(タンポポ)の根を10月に収穫し、60℃で12時間オーブン乾燥させた後、粒子状物質に粉砕した。粒状材料を孔径1,0mmの篩で篩い分けし、篩を通過した材料から出発原料を取得した。
【0097】
篩い分けたサンプル15グラムを100グラムの水と接触させた。抽出中、水を65℃の温度に保ち、屈折計を使用して、プラトーに達する(即ち、3回の連続した測定に値の差がなくなる)まで、5分間隔でジュース中の溶解物質の濃度を測定した。図7は、経時的に測定された炭水化物含有率の増加のグラフを示す。
【0098】
抽出の濾液をHPLCにより分析した。第1の態様において、この分析は、濾液中のイヌリンの量が、炭水化物100グラム当たり89,8グラムであったことを明らかにし、粒子状形態のチコリ(Cichorium intybus)以外の他の材料からも大量のイヌリンを抽出することが可能であることを実証している。第2の態様において、抽出されたイヌリンは、°Brix100グラム当たり69,2グラムのDP5+割合を有し、これは、炭水化物100グラム当たり79,0グラムに低下する。濾液の平均DPは、AOAC Method 997.08により10,4であると決定された。
【0099】
これらの結果は、高収率の迅速な達成によって、また、得られたイヌリンの高い重合度(DP)によって証明されるように、チコリ(Cichorium intybus)以外の粒子状出発材料、例えば、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)を本発明の方法に有利に使用できることを示している。
【0100】
実験8
チコリ(Cichorium intybus)植物の根をスライスし、上に明示したISO 6496(1999)に準拠して、88,0%の乾物含量まで乾燥させた。スライス及び乾燥した材料を粒子状出発材料に粉砕し、特定の孔径を有する篩で篩い分けた。
【0101】
得られた画分を用いて、組成物中の各画分の重量百分率を列挙する表14に従って混合物を調製した。
【0102】
記載される実施例による混合物を各々45グラムずつ300グラムの水で抽出した。屈折計を使用して、2,5分後、次いで20分に達するまで連続的に2,5分間隔で、ジュース中の溶解物質の濃度を決定し、1時間後に最後の測定を行った。
【0103】
図8は、本実験の各実施例のジュース中の溶解物質の濃度の経時的なプロットである。図9は、同じデータを示すが、差を(即ち、毎回実施例22との差として)表し、その差を「抽出損失」と呼ぶ。これは、有意な量の粒径4mm超の粒子を有する組成物が、特に抽出の最初の10分間の間に、より遅い抽出をもたらし、さらには、より低い最終抽出度をもたらすことを実証する。粒径4mm未満の粒子を含む範囲内では、より小さな粒子を有する組成物は、抽出の増加を示しながら、驚くことに依然として良好な濾過性を示す。
【0104】
実験9
チコリ(Cichorium intybus)植物の根をスライスし、上に明示したISO 6496(1999)に準拠して乾物含量88,0%wに相当する、保存に適した乾物量まで乾燥させた。スライスし、且つ乾燥させた材料を粒子状出発材料に粉砕した。孔径100ミクロンの篩を使用して、「微粉」画分を(現在は「微粉」が枯渇した)主画分から分離した。続いて、「微粉」画分の一部と主画分の一部を再び合わせて、2つの組成物:粒径100ミクロン未満の粒子を20重量%含有する組成物(実施例27)と、粒径100ミクロン未満粒子を30重量%含有する組成物(比較例N)とを調製した。これらの実施例27及び比較例Nに対する粒度分布測定は、前述した手順に従って実施したものであり、その結果を図10(累積)及び図11に示す。
【0105】
図12に従って多段階濾過実験を行った。実験は、1、2、...、nのサイクル数を含み、これらのサイクルは各々、5つのステップ11~15;21~25;n1~n5を含む。サイクル1では、ステップ11において45グラムの組成物(111)を、温度75℃の300グラムの温水(112)浴中と150秒間接触させた後、真空濾過により濾過して、亀裂のないフィルター上の残液又はケーク(113)と、ジュース又は濾液(114)を得た。濾液114を収集した。このサイクルの後続のステップ12~15の各々において、200グラムの温水(75℃)を前ステップのケークを含むフィルターに注ぎ、濾液を収集した。最後のステップ15では、ケークに亀裂が見えるようになるまで濾過を行い、濾液を手でさらに圧搾した。後続のサイクルも同様の方法で実施したが、温水を使用する代わりに、前サイクルで得られた濾液の混合物を最後のステップを除く全てのステップで使用した。第1サイクルに続くサイクルの第1ステップにおいて、浴は、212aとしての前サイクルの第2ステップ(即ち、ステップ12)の濾液から構成され、212bとしての前サイクルの第1ステップ(即ち、ステップ11)の濾液で合計300グラムまで補充され、これは、必要であれば、抽出中の結晶化を回避するために、16°Brixの入口で最大計算溶質濃度を得るように、212cとしての前サイクルの最後のステップ(すなわちステップ15)から得られた濾液で希釈する。後続のサイクルの第2~第4ステップでは、温水を使用するのではなく、前サイクルの次のステップから得られた濾液と、前サイクルの最終ステップから得られた濾液との混合物を、合計200グラム及び75℃の温度で使用した。
【0106】
実施例27では、2つの実験を10サイクルで完了することができ、第10サイクルの総濾過時間は1292及び986秒になり、従って1ステップ当たり平均228秒であった。比較例Nでは、2つの実験を行ったが、第3サイクルの濾過時間が1ステップ当たり900秒以上かかったため、いずれも第3サイクル中に中止した。
【0107】
この実験では、粒径100μm未満の粒子の割合が総組成物の20体積%である材料の処理が好ましく進行したが;対照的に、粒径100μm未満の粒子の割合が総組成物の30体積%である材料の処理は、濾過時間が許容できないほど長いため、重大な問題を呈示した。
【0108】
実験10:新しく粉砕した様々な植物の根
チコリ(Cichorium intybus)の根をスライスし、新しく粒子状出発材料に粉砕した後、特定の孔径を有する篩で篩い分けた。実施例28のサンプルの粒度分布を画像解析により測定した。サンプルは、454μmのD10、1405μmのD50、2778μmのD90を有した。サンプルには、0,15mm未満の粒子は、2vol.%しかなく、4,0mmを超える粒子はなかった。
【0109】
キクイモ(Jerusalem Artichoke)の根をスライスし、粒子状の出発材料に新たに粉砕し、特定の孔径を有する篩で篩い分けた。実施例29のサンプルの粒度分布を画像解析により測定した。サンプルは、907μmのD10、1913μmのD50、及び3406μmのD90を有した。サンプルには、0,15mm未満の粒子は、0,3vol.%しかなく、4,0mmを超える粒子はなかった。
【0110】
新しくスライスしたチコリ(Cichorium intybus)植物の根を、比較例Pとしてコセット状で用意した。
【0111】
55グラムのサンプルを60グラムの水と接触させた。抽出中、水を65℃の温度Textrに保ち、屈折計を使用して、約1時間(3600秒)の時間枠にわたり溶解物質の濃度を測定した。
【0112】
図14は、新鮮なチコリ(Cichorium intybus)のコセットと比較して、請求項に記載の粒度分布を得るために篩で篩い分けたチコリ(Cichorium intybus)及びキクイモ(Jerusalem Artichoke)植物の根からの粉砕粉末を使用した場合、1時間後の抽出速度が速く、最終溶質濃縮倍率が高いことを示している。
【0113】
実験11:抽出前に新しく遠心分離した植物の根
チコリ(Cichorium intybus)植物の根をスライスし、粒子状の出発材料に新たに粉砕し、特定の孔径を有する篩で篩い分けた。実施例30のサンプルの粒度分布を画像解析により測定した。サンプルは、885μmのD10、1909μmのD50、及び3216μmのD90を有した。サンプルには、0,3vol.%の0,15mm未満の粒子と、6vol.%の4,0mmを超える粒子しか含まなかった。粒子状の植物根は、21,8wt.%の固形分を有した。
【0114】
次に、粒状植物根を前分離ステップで遠心分離して、パルプから分離されたジュースを得た。ジュースは、23.5wt.%のBrixを含有する。パルプは、固形分は27.3wt.%固形分を有し、そこからの可溶分は18.6°Bxである。
【0115】
続いて、5Bx溶液(55gパルプ/60g水の比)を用いて、65℃で2,5分間パルプを抽出に付した後、固形分からジュースを濾過すると、Brixが11.5%のジュースが得られた。
【0116】
次いで、残液をさらに、2回目の抽出(残液38,8g/水76,2g)に65℃で2,5分間付した。濾過したジュースは、3.8°のBrixを有した。固体部分は、18.7wt.%の固形分を有し、そこからの可溶分は、3,8°Bxである。
【0117】
実験11(即ち、前分離ステップを含む)を、実験10(即ち、前分離ステップなし)と比較すると、イヌリン含有植物材料を粒子状形態で提供する前に、イヌリン含有植物材料を乾燥させない場合に、前分離ステップを実施すると、以下:
・抽出のための所望の温度への到達を有意に促進し;
・抽出後の濾過の機能を有意に改善し;
・濾過ジュースから水を蒸発させる必要性を有意に低減し;
・イヌリンの分解のリスクを低下した
ことが立証された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】