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特表2023-533672嚥下の安全性及び効率を促進するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】嚥下の安全性及び効率を促進するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/20 20160101AFI20230728BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230728BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20230728BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20230728BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230728BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20230728BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230728BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 31/26 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 36/758 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 45/08 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L2/40
A23L2/68
A23L29/206
A23L2/52
A23L2/00 T
A23L2/54
A23L5/00 Z
A61K31/11
A61K31/165
A61K31/222
A61K31/26
A61K33/00
A61K36/758
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/38
A61K45/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578707
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2021069260
(87)【国際公開番号】W WO2022013120
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/052,023
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ジェドワブ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミクリグ ゴンザレス, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】レ レヴァランド, ベンジャミン ジーン, ディディア
(72)【発明者】
【氏名】サティヤヴァゲスワラン, シュリーラム
(72)【発明者】
【氏名】フランクス, メラニー
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
4B117
4C076
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG04
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(57)【要約】
本開示は、嚥下障害を有する患者の嚥下機能を改善するのに有効な投与量及び粘度で三叉神経刺激をもたらすための刺激組成物及びその使用に関する。本開示は、嚥下障害を有する人々に、増粘剤と、刺激組成物と、任意選択で適切な濃度の三叉神経用成分とを組み合わせた新規タイプの溶液を提供する。本開示は、刺激組成物、具体的には、栄養製品へと希釈するために配合された発泡性組成物又は易溶性及び/若しくは速溶性増粘剤組成物、当該組成物から作製された栄養製品、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、当該組成物の使用、当該組成物から栄養製品を作製する方法、並びに関連システムを開示する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚥下障害を有する個体への投与に適した栄養製品に溶解させるために配合された発泡性組成物であって、酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤とを含む、発泡性組成物。
【請求項2】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項3】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の発泡性組成物。
【請求項4】
亜鉛を含む桂皮アルデヒド、亜鉛を含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む三叉神経用成分を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の発泡性組成物。
【請求項5】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれかに記載の発泡性組成物。
【請求項6】
前記増粘剤が、植物性粘質物又は植物由来多糖類のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれかに記載の発泡性組成物。
【請求項7】
前記植物性粘質物又は植物由来多糖類が、オクラガム、β-グルカン、サボテン粘質物、キウイ粘質物、サイリウム粘質物、ゼニアオイ粘質物、アマニ粘質物、ウスベニタチアオイ粘質物、ヘラオオバコ粘質物、モウズイカ粘質物、又はセトラリア粘質物のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の発泡性組成物。
【請求項8】
タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1~7のいずれかに記載の発泡性組成物。
【請求項9】
前記発泡性組成物が、粉末、錠剤、可溶性包装内の粉末、ブリック、適切な包装内の液体又はゲルである、請求項1~8のいずれかに記載の発泡性組成物。
【請求項10】
前記栄養製品が、医薬処方物、栄養処方物、医療用食品、ダイエタリーサプリメント、機能性食品及び飲料製品、並びにレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料からなる群から選択される投与可能な形態である、請求項1~9のいずれかに記載の発泡性組成物。
【請求項11】
前記栄養製品が、炭酸を含む、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項12】
前記栄養製品が、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料である、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の発泡性組成物を希釈剤に溶解することによって作製された、栄養製品。
【請求項14】
請求項1に記載の発泡性組成物を希釈剤に溶解することによって作製された、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料。
【請求項15】
嚥下障害を有する個体への投与のために配合されたレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料であって、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を有する、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料。
【請求項16】
タンパク質、ビタミン類、及びミネラル類からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み、無脂肪である、請求項16に記載のレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料。
【請求項17】
嚥下機能障害を予防、緩和、及び/又は補正する必要がある患者において、嚥下機能障害を予防、緩和、及び/又は補正する方法であって、
酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む発泡性組成物を用意する工程と、
前記発泡性組成物を液体に溶解して栄養製品を用意する工程と、
前記栄養製品を前記患者に経口投与する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む桂皮アルデヒド、亜鉛を含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記増粘剤が、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を、前記栄養製品にもたらす量で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記患者における嚥下障害の重症度レベルを識別する工程と、
前記患者における嚥下障害の重症度レベルに基づき、液体に溶解させる前記発泡性組成物の量を選択する工程であって、前記発泡性錠剤の量は、各々が異なるレベルの嚥下障害の重症度に対応する複数の規定量から選択される、工程と、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記発泡性組成物の前記量が、(i)栄養補給、(ii)水分補給、又は(iii)1食以上の食事一式の代替のうちの少なくとも1つを達成するために、前記栄養製品を前記患者に投与するのに有効な量である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ある量の前記発泡性組成物が、前記液体中に溶解した後に、適切な数、密度、及び/又はサイズのCO2気泡を提供し、前記CO2気泡が、唾液由来の炭酸脱水酵素と接触したときに、三叉神経刺激をもたらすのに有効な濃度の炭酸を生じ、前記炭酸が嚥下の安全性を改善する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
嚥下の安全性及び/又は効率を促進する必要がある患者において、嚥下の安全性及び/又は効率を促進する方法であって、
酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む発泡性組成物を用意する工程と、
前記発泡性組成物を液体に溶解して栄養製品を用意する工程と、
前記栄養製品を前記患者に経口投与する工程と
を含む、方法。
【請求項28】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む桂皮アルデヒド、亜鉛を含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記増粘剤が、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を、前記栄養製品にもたらす量で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
嚥下中の誤嚥リスクを軽減する必要がある患者において、栄養製品の嚥下中の誤嚥リスクを軽減する方法であって、
酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む発泡性組成物を用意する工程と、
前記発泡性組成物を液体に溶解して栄養製品を用意する工程と、
前記栄養製品を前記患者に経口投与する工程と
を含む、方法。
【請求項35】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む桂皮アルデヒド、亜鉛を含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記増粘剤が、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を、前記栄養製品にもたらす量で存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
栄養製品を作製する方法であって、
酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む発泡性組成物を用意する工程と、
前記発泡性組成物を液体中に溶解して前記栄養製品を用意する工程であって、前記増粘剤が、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を前記栄養製品にもたらし、前記栄養製品が、嚥下障害を有する個体への投与に適している、工程と
を含む、方法。
【請求項42】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む又は含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
経口投与可能な栄養製品の調製における発泡性組成物及び液体の使用であって、前記液体が嚥下障害のない個体による摂取に適しており、前記経口投与可能な栄養製品が嚥下障害を有する個体への投与に適しており、前記発泡性組成物が、酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分と、を含む、使用。
【請求項48】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の使用。
【請求項50】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む又は含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項47に記載の使用。
【請求項51】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項47に記載の使用。
【請求項52】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項47に記載の使用。
【請求項53】
嚥下障害を有する個体に投与するための均質単相飲料を製造するためのシステムであって、
前記均質単相飲料へと希釈するために配合された発泡性組成物を収容している容器であって、前記発泡性組成物が、酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分と、を含む、容器と、
前記容器に接続され、規定量の前記発泡性組成物を分注するように構成された計量装置と
を備える、システム。
【請求項54】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む又は含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項58】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項59】
前記均質単相飲料を分注するように構成されたノズルを更に備える、請求項53に記載のシステム。
【請求項60】
嚥下中の誤嚥リスクを軽減する必要がある患者において、栄養製品の嚥下中の誤嚥リスクを軽減する方法であって、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を有する、配合されたレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料を前記患者に経口投与する工程を含む、方法。
【請求項61】
嚥下の安全性及び/又は効率を促進する必要がある患者において、嚥下の安全性及び/又は効率を促進する方法であって、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を有する、配合されたレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料を前記患者に経口投与する工程を含む、方法。
【請求項62】
嚥下機能障害を予防、緩和、及び/又は補正する必要がある患者において、嚥下機能障害を予防、緩和、及び/又は補正する方法であって、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を有する、配合されたレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料を前記患者に経口投与する工程を含む、方法。
【請求項63】
嚥下障害を有する個体への投与に適した栄養製品に溶解させるために配合された易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物であって、酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む、易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項64】
発泡作用を利用して、その後の撹拌をほとんど又は全く伴わずに液体に溶解させて栄養組成物にするために配合された、易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物であって、前記栄養製品が、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を有する、易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項65】
前記易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物が、ある持続時間にわたってCO2を放出するように配合されている、請求項63又は64に記載の易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項66】
前記酸化合物が、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物又は塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項63又は64に記載の易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項67】
前記アルカリ化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、又は酒石酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項63又は64に記載の易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項68】
前記三叉神経用成分が、亜鉛を含む又は含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、又はイソチオシアネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項63又は64に記載の易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項69】
前記増粘剤が、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含む、請求項63又は64に記載の易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【請求項70】
前記栄養製品が、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項63又は64に記載の易溶性及び/又は速溶性増粘剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]嚥下障害は、嚥下が困難な症状に対する医学的用語である。嚥下障害は、固形物又は液体(すなわち、栄養製品)を口から胃に送り込むのが難しいことを想起させる感覚であり得る。
【0002】
[0002]口内での栄養製品の処理及び嚥下の間、剪断力により栄養製品の粘度は変化する。ほとんどの場合、栄養製品に作用する剪断力及び剪断速度(例えば、咀嚼力)が増加すると、栄養製品の粘度が低下する。嚥下障害を有する個体は、多くの場合、増粘した栄養製品を必要とする。栄養製品の増粘は、特に、製品の剪断粘度を増加するためにデンプン又はガム増粘剤などの増粘剤を添加することによりなされる。増粘した栄養製品は、嚥下障害を有する個体の口から胃までの通過中に栄養製品が誤嚥されてしまう傾向を減じる。
【0003】
[0003]嚥下障害を有する個体は、栄養製品が、咳、吹き出し、又は更には窒息を起こすこと、したがって増粘した栄養製品であれば嚥下障害を有する個体でも安全に嚥下可能であることを認識し得る。増粘剤の添加は、食塊の制御及び嚥下のタイミングを改善すると考えられているが、添加により得られる粘度では、嚥下に普段よりも労力が必要とされるため、嚥下障害を有する個体に嫌われる場合がある。更に、増粘剤は、高レベルの粘度を有する残留物を残し、望ましくない官能特性をもたらす。このことは、液体及び飲料の場合に特に関連するものであり、なぜなら、嚥下障害患者は、高粘度を示す液体製品ではなく、実際の粘度の低い液体(a real thin liquid)の官能特性を依然として有する液体を期待するからである。更に、単に剪断粘度を増加させて増粘された栄養製品は、通常、唾液により食塊に対し典型的に提供される凝集性を欠く。口腔の唾液は弾性かつ高い伸長粘度を有し、食塊形成において重要な役割を果たし、咀嚼された粒子の食塊凝集性を増強する。
【0004】
[0004]嚥下障害は、3種類の主要な型:口腔咽頭嚥下障害(OD)、食道嚥下障害(ED)、及び機能性嚥下障害(FD)に分類される。
【0005】
[0005]口腔咽頭嚥下障害は、概して投薬により治療することができない。口腔咽頭嚥下障害は全年齢で個体に悪影響を及ぼすが、高齢者に一層多く見られる。世界中で、50歳より高齢のおよそ2200万人が口腔咽頭嚥下障害に罹患している。口腔咽頭嚥下障害は、急性事象、例えば、脳卒中、脳損傷、又は口腔がん若しくは咽頭がんの手術の結果であることが多い。加えて、放射線療法及び化学療法は、筋肉を弱らせ、嚥下反射の生理機能及び神経支配に関わる神経に障害を生じることがある。また、パーキンソン病などの進行性神経筋疾患を有する個体でも口腔咽頭嚥下障害は一般的であり、嚥下を開始することを次第に難しく感じるようになる。口腔咽頭嚥下障害の代表的な原因としては、神経性疾病(脳幹腫瘍、頭部外傷、脳卒中、脳性麻痺、ギラン-バレー症候群、ハンチントン病、多発性硬化症、ポリオ、ポリオ後症候群、遅発性ジスキネジー、代謝性脳症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、認知症)、感染性疾病(ジフテリア、ボツリヌス中毒、ライム病、梅毒、粘膜炎[ヘルペス、サイトメガロウイルス、カンジダなど])、自己免疫疾病(狼瘡、強皮症、シェーグレン症候群)、代謝性疾病(アミロイド症、カッシング症候群、甲状腺中毒症、ウィルソン病)、筋障害性疾病(結合組織15病、皮膚筋炎、重症筋無力症、筋硬直性ジストロフィー、眼球咽頭ジストロフィー、多発性筋炎、サルコイドーシス、腫瘍随伴症候群、炎症性筋疾患)、医原性疾病(薬剤副作用[例えば、化学療法、神経弛緩薬など]、術後筋肉又は神経原性、放射線療法、腐食[錠剤による傷害、意図的])、及び構造上の疾病(輪状咽頭筋圧痕、ツェンカー憩室、頸部ウエブ、中咽頭腫瘍、骨増殖体、及び骨格異常、先天的なもの[口蓋裂、憩室、嚢状部など])に関するものが挙げられる。
【0006】
[0006]食道嚥下障害は全年齢の個体に影響を及ぼし得る。食道嚥下障害は、通常は投薬により治療可能であり、嚥下障害のさほど深刻でない形態と考えられている。食道嚥下障害は、粘膜疾患、縦隔疾患、又は神経筋疾患の結果であることが多い。粘膜(内在性)疾患は、様々な状態(例えば、胃食道逆流症に続く消化性狭窄、食道リング及びウエブ[例えば、鉄欠乏性嚥下障害又はプランマー・ヴィンソン症候群]、食道腫瘍、化学的傷害[例えば、アルカリ性物質の摂取、錠剤による食道炎、静脈瘤に対する硬化療法]、放射線傷害、感染性食道炎、及び好酸球性食道炎)に関連する炎症、線維形成、又は新形成を通じて、内腔を狭める。縦隔(外来性)疾患は、様々な状態(腫瘍[例えば、肺がん、リンパ腫]、感染症[例えば、結核、ヒストプラスマ症]、及び心血管系[心耳拡張、及び血管圧迫])に関連する直接浸潤又はリンパ節拡大によって、食道を閉塞する。神経筋疾患は、一般に様々な状態(アカラシア[突発性とシャガス病関連の両方]、強皮症、他の運動障害、及び手術の帰結[すなわち、胃底皺襞形成術後、及び逆流防止介入後])に付随して、食道の平滑筋及びその神経支配を冒し、蠕動運動若しくは下部食道括約筋の弛緩、又はその両方を中断させる場合がある。管腔内異物を有する個体は、一般に急性食道嚥下障害に罹患する。
【0007】
[0007]機能性嚥下障害は、嚥下障害に関係する器質的原因が全く見られない一部の患者において定義される。
【0008】
[0008]通常、嚥下障害は診断されない。嚥下障害は、主に嚥下障害を有する個体の健康及び医療費に影響する。重度の嚥下障害を有する個体は、嚥下直後に、口から胃への栄養製品の送り込みに障害を感じる。地域社会において生活を営んでいる場合、嚥下障害を有する個体が症状を自覚し、医師による診察を受ける可能性がある。施設に入居している場合、医療従事者が、症状を観察し、あるいは嚥下障害を有する個体又はその家族から嚥下機能不全を示唆する説明を聞き、嚥下障害を有する個体に専門家による診断を勧める場合がある。対応に当たる医療従事者間で、嚥下機能不全に関する一般的な認識度が低いため、嚥下障害は診断されず、治療されないことが多い。しかし、嚥下専門家(例えば、言語病理学者(SLP))への紹介を通すことで、患者を臨床的に評価することができ、嚥下障害の診断をなすことができる。
【0009】
[0009]対応に当たる医療従事者間で、嚥下機能不全に関する一般的な認識度は低い。多くの人々(特に高齢者)は、嚥下機能不全の診断を受けず、かつ治療を受けずにいる。一因には、対応に当たる地域ケア従事者(例えば、一般開業医/老年病専門医、訪問看護師、理学療法士など)が、通常、状態を検査しないということがある。嚥下機能不全の重症度を認識している場合でも、一般に、従事者はエビデンスベースの検査手法を用いない。
【0010】
[0010]嚥下障害の重症度は、(i)栄養製品を安全に嚥下するのがやや困難である(自覚がある)、から、(ii)誤嚥又は窒息の顕著なリスクを伴わずに栄養製品を嚥下することができない、及び(iii)栄養製品の嚥下が完全に不能である、まで様々であり得る。栄養製品の適切な嚥下が不能であることは、栄養製品の食塊が小塊に分解されて、嚥下プロセス中に気道に入り込む恐れのあること又は口腔咽頭及び/若しくは食道管に望ましくない残留物を残し得ることに起因し得る(例えば、誤嚥)。ある程度の食塊がまとまって肺に進入した場合、患者は肺内に堆積した栄養製品で窒息する恐れがある。誤嚥した栄養製品が少量であったとしても気管支肺炎感染症が生じる恐れがあり、また慢性誤嚥では気管支拡張症が生じる恐れがあり、場合によっては喘息を引き起こす恐れもある。嚥下効率は、咽頭内の残留物の量に関連している。
【0011】
[0011]不顕性誤嚥は高齢者に一般的な状態であり、睡眠中の口腔咽頭内容物の誤嚥を指す。人々は、重症度の低い嚥下機能不全を、自主的な食事制限により補う場合もある。老化の過程そのものが、高血圧又は骨関節炎などの慢性疾患と関係し、高齢者の臨床未満の嚥下障害の素因となり、この嚥下障害は、肺炎、脱水、栄養不良及び関連する合併症などの臨床上の合併症が生じるまで、診断されず、治療されない可能性がある。
【0012】
[0012]嚥下障害及び誤嚥は、生活の質、罹患率及び死亡率に影響を与える。施設ケアを受けている嚥下障害者及び誤嚥者の12ヶ月死亡率は高い(45%)。したがって、嚥下障害の診断及び早期管理がなされないことによる臨床的帰結による経済的負担は著しい。
【0013】
[0013]上述のとおり、肺炎は、嚥下障害の一般的な臨床的帰結である。肺炎は、緊急入院及び救急外来受診を必要とすることがある。誤嚥が原因で肺炎を発症した場合、現行の診療実施の結果として、必ずしも「誤嚥性肺炎」の鑑別診断が示されるとは限らない。近年の米国保健医療実態調査によれば、肺炎を原因としての退院は100万件を超え、更に392,000件が誤嚥性肺炎によるものであった。一般的な肺炎を主診断として受けた個体は、平均して入院期間が6日であり、18,000ドル超の入院診療費用を負う。誤嚥性肺炎では、平均して入院期間が8日であることから、入院診療費用は更に高額になると予測される。肺炎は、嚥下障害者にとって生命に関わり、3ヶ月以内に死亡する確率は約50%である(van der Steen et al.(2002))。加えて、肺炎などの急性侵襲により、高齢者の健康の悪循環が始まることが多い。侵襲は、摂食不良及び不活動を伴い、栄養障害、機能低下及び虚弱をもたらす。個別の介入(例えば、口腔衛生の促進、正常な嚥下の回復の援助、又は嚥下に安全な食塊の補強)は、反復性肺炎(不顕性誤嚥を含む、口腔咽頭内容物の誤嚥による)のリスクがある者又は反復性肺炎に罹患している者にとって、有益であろう。嚥下の安全性は、誤嚥性肺炎に関連し、咽頭侵入誤嚥スケール(Penetration-Aspiration Scale、PAS)又はRosenbekスケールで定量化される。
【0014】
[0014]肺炎と同様に、脱水は、死亡につながるおそれのある嚥下障害の臨床的合併症である。脱水は、神経変性疾患に罹患している(したがって、嚥下機能不全を有する可能性が高い)入院者に一般的な共存症である。アルツハイマー病、パーキンソン病、及び多発性硬化症の状態は、米国において年間約400,000件の退院を占め、これらの患者のうち最大15%が脱水にかかる。脱水を主診断とした場合、平均して入院期間は4日となり、入院診療費用は11,000ドルを超える。但し、脱水は、嚥下障害の臨床上回避可能な合併症である。
【0015】
[0015]栄養不良及び関連する合併症(例えば、[尿路]感染症、褥瘡、嚥下障害の重症化[食品の選択肢の更なる制限、経管栄養、及び/又は経皮内視鏡的胃瘻造設(PEG)による管配置の必要性、並びに生活の質の低下]、脱水、機能低下及び関連する帰結[転倒、認知症、虚弱、移動能力の低下、及び自律性の低下])は、嚥下機能不全によって、食品及び液体に対する窒息の不安、摂取速度の低下、並びに食品の選択の自主的制限が引き起こされるときに生じる可能性がある。回復されなければ、生理的予備能が減少するにつれて、正常な嚥下を容易にするのを助ける筋肉が萎縮するため、不適切な栄養摂取により嚥下障害が悪化する。栄養不良では、感染症のリスクは3倍超になる。感染症は、神経変性疾患者(よって、食事が十分でなくなる恐れがある慢性的な嚥下機能不全を有する可能性が高い)によく見られる。アルツハイマー病、パーキンソン病、及び多発性硬化症の状態は、米国において年間約400,000件の退院を占め、これらの患者のうち最大32%が尿路感染症にかかる。
【0016】
[0016]栄養不良は、患者の回復と密接に関わっている。栄養不良の患者は、入院期間が長くなり、再入院する可能性も高く、入院診療費用もより高額になる。栄養不良を主診断とした場合、平均して入院期間は8日となり、入院診療費用は約22,000ドルとなる。更に、栄養不良は、意図しない体重減少並びに筋肉及び体力の顕著な減少をもたらし、最終的には移動能力及び自己管理能力を損なわせる。機能性の喪失により、介護者の負担は一般により重くなり、私的介護者、次いで公的介護者、更には施設収容が必要となる。しかしながら、栄養不良は、嚥下障害の臨床上回避可能な合併症である。
【0017】
[0017]神経変性状態(例えば、アルツハイマー病)者では、意図せぬ体重減少(栄養不良の指標となる)が、認知低下に先行する。加えて、身体活動は、健全な認知を安定化するのに役立ち得る。したがって、神経変性状態を有する者に十分な栄養を確保させることで、定期的な運動療法に参加する体力と持久力を持つように支援することと、意図しない体重減少、筋消耗、身体機能及び認知機能の低下、虚弱、認知症、並びに介護者の負担の漸増を防ぐこととが重要である。
【0018】
[0018]転倒及びそれに伴う負傷は、機能の低下を伴う神経変性状態を有する高齢者にとって特に懸念事項である。転倒は、高齢者の負傷死亡の主因である。更に、近年、米国では、高齢者の転倒による負傷での緊急処置室への搬送は180万件超にものぼった。直接医療費は、年単位では、致死性の転倒による負傷については総計1億7900万ドル、非致死性の転倒による負傷については総計193億ドルであった。2008年の10月に米国の病院で導入されたパフォーマンス・イニシアチブ(performance initiative)による大規模な不払いが影響し、高齢者向け医療保険制度は、もはや病院に対し、入院中の転倒及びそれに伴う負傷についての治療費を支払わなくなった。病院は、病院での看護中に転倒及び腰部骨折にあった高齢患者ごとに、約50,000ドルもの損失を負うことになる。この新しいクオリティ・イニシアチブ(quality initiative)は、転倒は回避可能な医療過誤であるとする前提に基づく。言い換えれば、高齢者の転倒及びそれに伴う負傷(例えば、骨折)の予防には栄養学的な介入が有効であることから、医学的な栄養療法を含むエビデンスベースの診療を行うことにより、転倒は合理的に予防可能なものとなる。
【0019】
[0019]咀嚼及び嚥下困難は、褥瘡の発生のリスク因子として認識されている。褥瘡は、エビデンスベースの診療を行うことにより(栄養状態が不充分であるときに褥瘡は生じやすいため、栄養管理を含む)合理的に予防可能となる、回避可能な医療過誤であると考えられる。褥瘡は、ヘルスケア業務においてかなりの負担である。2006年の米国の病院では、322,946件もの医療過誤が褥瘡の発生に関係した。段階に応じ、褥瘡の平均治療費は、約1,100ドル(褥瘡のフェーズII)~約10,000ドル(褥瘡のフェーズIII及びIV)の範囲である。したがって、褥瘡の発生に伴う医療過誤の症例の推定治療費は、1年あたり3億2300万ドル~32億ドルである。2008年の10月に米国の病院で導入されたパフォーマンス・イニシアチブ(performance initiative)による大規模な不払いが影響し、高齢者向け医療保険制度は、もはや病院に対し、病院滞在中に生じる褥瘡の治療費(最大で年間32億ドル)を支払わなくなった。褥瘡は、ある程度は栄養摂取を保証することにより合理的に予防可能である。更に、特殊処方した栄養補給剤の使用を含む、個別の介入は、褥瘡の発生後に見込まれる治癒時間を短縮する助けとなる。
【0020】
[0020]上述のようなこれらの状態は、これらの状態を有する個体の社会的孤立をもたらし得る。社会的孤立とは、個体と社会との接触が完全又はほぼ完全に欠如した状態である。いかなる年齢の個体においても問題であり得るが、症状は年齢群ごとに異なり得る。嚥下障害を有する個体は、多くの場合、経管栄養を受ける必要があり及び/又はPEG配置を必要とし、したがって、長期間にわたって家庭若しくはケア施設及び/又は病院に留まる必要があり得る。彼らは、十分な嚥下能力の欠如により、一般的な幸福と関係する栄養製品の心理社会的な側面を体験することができず、これは非常にネガティブな心理的及び/又は感情的な影響をもたらし得る。これらの個体は、家族、知人、又は友人との交流を制限する、又は全く交流しないという傾向があり得、並びに/あるいは彼らの身体的な隔離及び/又はネガティブな心理的状態及び/若しくは情動状態のために、交流の機会が生じる場合であっても他の人間とのいかなる接触も頑なに回避する傾向があり得る。そして、社会的孤立は、孤独感、その他の不安、又はネガティブな自尊心を更にもたらす可能性があり、それは個体のネガティブな心理的状態及び/又は情動状態を更に悪化させる。
【0021】
[0021]米国の長期療養施設では、ケアの質の基準は、監督機関による頻繁な調査によって守られている。調査員は、現実的に又は潜在的に傷害/死亡を生じるエビデンスを見つけると、その施設をコンプライアンス外のものとしてみなす。ペナルティの範囲には、罰金、強制閉鎖、並びに訴訟及び示談金が含まれる。Tag F325(栄養)調査では、計画外の顕著な体重変化、不十分な食品/流体摂取、想定に満たない創傷治癒、指定されたとおりの治療食提供における不備、機能低下、及び流体/電解質不均衡を、規準を満たさない栄養管理を行っているエビデンスとしてみなす。Tag F314(褥瘡)調査では、施設は、不可避だと判断されない限り、褥瘡のない状態で収容した入居者に褥瘡を負わせないようにしなければならないと要求している。更に、褥瘡を有する入居者に対しては、治癒促進、感染症予防、及び新規褥瘡発生の予防のため、必要な治療及びサービスを提供するように要求している。
【0022】
[0022]したがって、嚥下障害の有病率及び嚥下障害に関係して生じ得る合併症、並びにこれらに関係する医療費を考慮すると、嚥下障害を有する個体における栄養製品塊の更に安全な嚥下を促進する栄養製品を提供することは、有益であり得る。このような栄養製品は、大勢の、そして増加している、嚥下障害を有する個体の生活を改善し得る。個別の介入(例えば、口腔衛生の促進、正常な嚥下の回復援助、又は嚥下に安全な食塊の補強)により、個体に対し、経管栄養を受けさせるのではなく及び/又はPEG配置を要求するのではなく、食物を口から食べさせることができ、嚥下能力が十分でないことから生じる可能性のある負の結果を防ぎながら、一般的な幸福と関係する栄養製品の心理社会的な側面を体験させることができる。嚥下障害を有する個体による栄養製品の摂取における改善はまた、そのような個体による、より多様な栄養製品の安全で快適な嚥下も可能にし得、ひいてはその個体を全体としてより健康な状態へと導き、健康に関係するそれ以上の機能低下を予防し得る。
【0023】
[0023]既存の解決策は、本質的に、患者の嚥下を改善するために任意の液体に添加される増粘剤である。増粘剤は、缶又は単回用量サシェに入った粉末として利用可能であり得る。増粘剤は、ディスペンサに入った濃縮物の形態であることもできる。
【0024】
[0024]例えば、特許第6045237(B2)号は、手撹拌などの緩い撹拌条件で容易に分散可能な増粘多糖類を含有する、咀嚼/嚥下機能低下者用の錠剤型増粘化剤を提供している。かかる錠剤型増粘化剤は、キサンタンガム、カラギーナン及びグアーガムからなる群から選択される少なくとも1種の増粘多糖類を15~40質量%、崩壊用寒天を15~40質量%、水溶性糖類を10~70質量%、並びに金属塩を0.2~10質量%含有し、硬度が15~70Nである。
【0025】
[0025]天然の気泡性又はスパークリングミネラルウォーターは、数千年にわたって人気がある。例えば、古代ギリシャ人及びローマ人は、天然の鉱泉に入浴していた。炭酸飲料は、長年にわたって消費者に広く受け入れられてきた。摂取された炭酸飲料中の二酸化炭素(CO2)ガスは、神経系を介して、並びに直接の機械的及び化学的手段によって、消化管に影響を及ぼす。CO2ガスは飲料の口当たりを変えることができ、侵害受容器又は味覚受容体を刺激する可能性がある。これらの飲料中の気泡の視覚イメージはまた、より強い食欲をもたらすグレリンの増加など、胃腸(GI)の知覚を変化させることができ、侵害受容シミュレーションの効果を有することができる。食道において、CO2ガスは、HS中での下部食道括約筋(LES)圧を低下させることができる。胃では、300mL未満のCO2ガスは満腹感に影響を及ぼさないが、300mLを超えるCO2ガスは満腹感を増すことができる。CO2ガスは胃内容排出に影響を及ぼさず、酸分泌のわずかな誘導のみを有する。
【0026】
[0026]炭酸化は嚥下障害リハビリテーションのための官能候補(sensory option)である。炭酸化は、化学的感覚(chemesthesis)と呼ばれるプロセスを通して作用し、このプロセスでは、炭酸飲料の「気泡性」又は「泡立ち性」はわずかな灼熱感を作り出す三叉神経刺激物として作用する。この刺激物は、炭酸脱水酵素に依存するプロセスを介して舌の侵害受容器を刺激し、次に三叉神経脊髄路核尾側亜核中のニューロンを刺激する。三叉神経又は第5脳神経は、主要な嚥下神経のうちの1つである。三叉神経は裸の神経終末を有し、そのため、感覚入力又は求心性入力に対する感受性が高い。炭酸飲料は、嚥下のための感覚刺激を実際に増加させることができる。感覚入力(求心性駆動)は、運動出力(遠心性駆動)を駆動する。
【0027】
[0027]増粘液体と比較した炭酸液体の効果についての臨床研究が行われている。例えば、「Videoradiographic analysis of how carbonated thin liquids and thickened liquids affect the physiology of swallowing in subjects with aspiration on thin liquids」、Bulow et al.,Acta Radiologica 44(2003)366-372は、炭酸液体が気道への侵入/誤嚥を減少させ、咽頭残留を減少させ、咽頭通過時間が短くなることを示した。したがって、炭酸液体は、侵入/誤嚥を起こす患者にとって有益な治療選択肢となり得る。増粘液体は、炭酸液体に耐容できない患者にとって、依然として1つの選択肢となる場合があり、この粘稠度を有する液体は、希薄液体よりも安全である。
【0028】
[0028]「Effects of carbonated liquid on swallowing dysfunction in dementia with Lewy bodies and Parkinson’s disease dementia」、Larsson et al.Clinical Interventions in Aging 2017:12 1215-1222に記載されている別の研究において、研究者らは、炭酸液体の咽頭通過時間(PTT)(中央値633ms、四分位数間範囲[IQR]516~786ms)が、希薄液体(760ms、IQR 613~940ms、P=0.014)及び増粘液体(880.0ms、IQR 600~1,500ms、P、0.001)よりも短いことを見出した。残留物又は侵入に有意な影響は見られなかった。造影検査で、嚥下機能障害を有するこれらの患者のうち、87%で、炭酸液体による全体的な嚥下機能の改善が確認された。
【0029】
[0029]非炭酸希薄液体と比較した炭酸液体の効果についても臨床研究が行われている。例えば、「Effects of Carbonated Liquids on Oropharyngeal Swallowing Measures in People with Neurogenic Dysphagia」、Sdravou et al.,Dysphagia(2012)27:240-250において、研究者らは、炭酸希薄液体が、非炭酸希薄液体と比較して、5mL(P=0.028)及び10mL(P=0.037)の嚥下において侵入及び誤嚥を有意に減少させることを見出した。更に、炭酸希薄液体は、いかなる体積の食塊に対しても、口腔通過時間(OTT)、咽頭通過時間(PTT)、咽頭嚥下の開始(IPS)、及び咽頭残留(PR)に有意な影響を及ぼさなかった。1人の参加者のみが炭酸希薄液体の刺激を嫌った。
【0030】
[0030]小児嚥下障害についての別のそのような研究が、「Analysis of carbonated thin liquids in pediatric neurogenic dysphagia」、Lundine et al.Pediatr Radiol.2015 August;45(9):1323-1332に記載されている。研究者らは、炭酸希薄液体が、非炭酸希薄液体と比較して、貯留(P=0.0006)、喉頭侵入/誤嚥(P=0.0044)、及び咽頭侵入誤嚥スケールスコア(P=0.0127)を有意に減少させることを見出した。平均して、炭酸希薄液体は、非炭酸希薄液体を誤嚥した参加者について、咽頭侵入誤嚥スケールのスコアを3.7ポイント改善した。咽頭残留物については、炭酸希薄液体と非炭酸希薄液体との間に有意差は認められなかった(P=0.0625)。これらの知見は、炭酸希薄液体が、神経性嚥下障害を有する小児のための増粘液体の代替物を提供し得るという仮説を支持する。
【0031】
[0031]従来の増粘剤は、塊状の小片を有する一貫性のない飲料を避けるために、計量して繰り返し撹拌する必要がある。撹拌及び計量を行っても、塊状の小片及び雑味を有する一貫性のない飲料となることが一般的である。飲用者は、通常、非常に甘い塊状の飲料を押し付けられ、これにより、そもそも炭酸飲料を使用する目的が果たせなくなる。更に、増粘剤は嚥下応答の生理機能を改善しない。
【0032】
[0032]更に、辛味刺激性の感覚を形成する分子機構についての研究により、口腔内に分布する体性神経において発現している2種類のカチオンチャネル、TRPV1(一過性受容器電位V1)及びTRPA1(一過性受容器電位A1)の存在が明らかになっている。TRPV1は、トウガラシの辛味化合物であるカプサイシン、及びワサビの特有の風味化合物であるイソチオシアネートなどによる温熱感及び灼熱感の受容体である。TRPA1は、冷温感及び辛味刺激をもたらす化合物に応答する。中程度の濃度において、TRPA1アゴニストはまた、心地よい刺激感を示す。炭酸液体は、嚥下反射の三叉神経活性化をもたらす経口TRP受容体を刺激することによって嚥下行動に影響を及ぼす有望なフォーマットであることが実証されている。これは主に、炭酸水を吐き出してからずっと後でさえも「灼熱感及び刺激-しびれ感」の後感覚をもたらすことが報告されている、炭酸液体中の炭酸の形成に起因する。
【0033】
[0033]TRPV1アゴニストであるカプサイシンの経口投与は嚥下反射を促進することが示されているが、カプサイシンは特に辛味刺激性かつ毒性のある化合物である。カプサイシンの経口投与に関係する生理作用としては、舌の中央部から喉に至る灼熱感、息切れ、失神、悪心、及び自己誘発性嘔吐が挙げられる。結果として、不快感を生じさせずに個体に投与できるカプサイシン量はごく少量である。カプサイシンを含有する食品製品は、かかる製品が非常に不快な口腔感覚をもたらすため、多くの場合、消費者に受け入れられない。特に、灼熱効果は非常に不快なものとして捉えられ、食品製品の消費に影響を与える。
【0034】
[0034]ワサビにおいて初期の辛味刺激をもたらす化学物質は、天然チオグルコシドの加水分解によって生成する揮発性化合物のアリルイソチオシアネートである。ワサビの特有の風味は、シニグリンからグルコース及びメチルチオアルキルイソチオシアネートへのチオグルコシドの加水分解から生じるものを含む、植物の破壊された細胞からの複雑な化学混合物の結果である。ワサビの灼熱感は、トウガラシにおけるカプサイシンの効果と比較して持続性が短く、更なる食物又は液体で洗い流される。灼熱感は主に鼻腔で感じられ、摂取された量によっては非常に痛みを生じ得る。
【発明の概要】
【0035】
[0035]本開示は、嚥下障害を有する患者の嚥下機能を改善するのに有効な投与量及び粘度で三叉神経刺激をもたらすための発泡性又は泡立ち性組成物及びその使用に関する。本開示は、嚥下障害を有する人々に、増粘剤と、任意選択で有効濃度の三叉神経用成分とを、予め投与量とされた(pre-dosed)発泡性組成物と組み合わせた新規タイプの溶液を提供し、発泡性組成物は、希釈剤又は水などの液体に溶解することができ、嚥下障害を有する人々に適した栄養製品又はレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料を提供できる。
【0036】
[0036]本開示は、栄養製品に溶解させるために配合された発泡性組成物又は易溶性及び/若しくは速溶性増粘剤組成物、当該組成物の使用、当該組成物から栄養製品を作製する方法、当該組成物から作製された栄養製品、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料、並びに関連システムに関する。
【0037】
[0037]第1の態様では、本開示は、嚥下障害を有する個体への投与に適した栄養製品に溶解させるために配合された発泡性組成物又は易溶性及び/若しくは速溶性増粘剤組成物であって、酸化合物と、アルカリ化合物と、増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む組成物を提供する。
【0038】
[0038]組成物は、粉末、錠剤、可溶性包装に入った粉末、ブリック、適切な包装内の液体又はゲルなどの任意の適切なフォーマットであり得る。
【0039】
[0039]酸化合物は、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、これらの無水物、塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0040】
[0040]アルカリ化合物は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アルギニン、重酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0041】
[0041]三叉神経用成分は、亜鉛を含む又は含まない桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、イソチオシアネート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0042】
[0042]増粘剤は、ガム及び/又はデンプンを含んでもよい。ガムは、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はタラガムのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0043】
[0043]組成物は、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、又はビタミンのうちの少なくとも1つを更に含み得る。
【0044】
[0044]栄養製品は、医薬処方物、医療用食品、栄養処方物、ダイエタリーサプリメント、機能性食品及び飲料製品、並びにレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料からなる群から選択される投与可能な形態であってもよい。
【0045】
[0045]別の態様では、本開示は、栄養製品を作製する方法であって、発泡性組成物を用意する工程と、発泡性組成物を液体に溶解して、前記栄養製品を用意する工程と、を含む、方法を提供する。増粘剤は、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を、栄養製品にもたらすことができる。栄養製品は、嚥下障害を有する個体への投与に適している。
【0046】
[0046]別の態様では、本開示は、嚥下障害を有する個体への投与のために配合されたレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料を提供する。レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料は、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃で10ms超の緩和時間、及び/又は20℃で、50s-1の剪断速度で測定したときに、最大約2,000mPasの剪断粘度を有し得る。レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料は、タンパク質、ビタミン類、及びミネラル類からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含むことができる。レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料は、無脂肪であることができる。
【0047】
[0047]更なる態様では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料は、嚥下機能障害を予防、緩和、及び/又は補正する必要がある患者において、嚥下機能障害を予防、緩和、及び/又は補正するために使用できる。
【0048】
[0048]更なる態様では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料は、嚥下の安全性及び/又は効率を促進する必要がある患者において、嚥下の安全性及び/又は効率を促進するために使用できる。
【0049】
[0049]更なる態様では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はレディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料は、嚥下中の誤嚥リスクを軽減する必要がある患者において、嚥下中の誤嚥リスクを軽減するために使用できる。
【0050】
[0050]別の態様では、本開示は、経口投与可能な栄養製品の調製における発泡性組成物及び液体の使用を提供し、上記液体は嚥下障害のない個体による摂取に適しており(場合により、嚥下障害を有する個体には適していない)、経口投与可能な栄養製品は嚥下障害を有する個体への投与に適している。
【0051】
[0051]別の態様では、本開示は、嚥下障害を有する個体に投与するための均質単相飲料を製造するためのシステムであって、均質単相飲料へと希釈するために配合された発泡性組成物を収容している容器と、当該容器に接続され、予め決められた量の発泡性組成物を分注するように構成された計量装置と、を備える、システムを提供する。
【0052】
[0052]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、嚥下障害を有する個体において口当たりの良い栄養製品の食塊のより安全でより効果的な嚥下を促進することである。
【0053】
[0053]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、嚥下障害を有する個体の嚥下のための感覚刺激を増加させることである。感覚入力(求心性駆動)は、運動出力(遠心性駆動)を駆動する。
【0054】
[0054]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、容易な嚥下と、タンパク質及び必須栄養素などの栄養素で強化された高栄養レシピとの2つの利益を、嚥下障害を有する個体に1回のサービングで提供することである。
【0055】
[0055]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、様々な風味を提供し、それにより、嚥下障害を有する個体に対し、栄養製品の味覚疲労を最小にする効果があることである。
【0056】
[0056]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、より良好な水分補給、コンプライアンス、及び移動時の個別の使用を提供し、嚥下障害を有する個体の様々な風味の選好性を満たすことである。
【0057】
[0057]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、撹拌を必要とせずに、又は最小限の撹拌で、水又は個体の選択した液体に容易に溶解できる栄養製品を提供すること、及び嚥下障害を有する個体に、一貫した、十分に混合された、すぐに飲むことができる栄養製品を提供するための、発泡性によって提供される「自己増粘」効果である。この利点は、利便性に起因する使いやすさの向上、及びそれによるコンプライアンス向上をもたらす。
【0058】
[0058]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、嚥下反射の改善において増粘された液体を提供し、嚥下障害を有する個体の、より良好な水分補給及びコンプライアンスをもたらすことである。
【0059】
[0059]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、積極的な視覚的合図を提供することであり、この提供は、コンプライアンスにとって重要であり、診断された嚥下障害患者が処方された介入に従うように動機付けし、子供などの若い患者にも魅力的である。
【0060】
[0060]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、大勢の、そして増加している嚥下障害を有する個体の生活を改善することである。
【0061】
[0061]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、個別の介入(例えば、口腔衛生の促進、正常な嚥下の回復援助、又は嚥下に安全な食塊の補強)を支援することであり、この介入によって、個体に対し、経管栄養を受けさせるのではなく及び/又はPEG配置を要求するのではなく、食物を口から食べさせることができ、十分な嚥下能力の欠如から生じる可能性のある負の結果を防ぎながら、一般的な幸福と関係する栄養製品の心理社会的な側面を体験させることができ、したがって、社会的孤立を防ぐことができる。
【0062】
[0062]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、嚥下障害を有する個体による栄養製品の摂取を改善し、したがってそのような個体による、より多様な栄養製品の安全、快適かつ心地よい嚥下を可能にし、ひいてはその個体を全体としてより健康な状態へと導き、健康に関係するそれ以上の機能低下を予防し得ることである。
【0063】
[0063]更に、本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、食塊の侵入及び誤嚥、並びに/又は増粘剤がキサンタンベースの場合には残留物の低減を防止するよう栄養製品のレオロジー特性を変更することである。
【0064】
[0064]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、栄養製品が既知の増粘された栄養製品より優れた官能特性を有することである。
【0065】
[0065]更に、本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、嚥下障害を有する個体が嚥下に要する力を低減することである。
【0066】
[0066]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、嚥下障害を有する個体に対して、その個体が、耐容できない風味/味及び/又は口腔感覚を伴うことなく、より多様な食品及び飲料製品を安全かつ快適に嚥下することを可能にすることによって、したがって、嚥下障害を有する個体に、自身がより広範囲の製品を心地よく摂取することができるという自信を与えることによって、栄養摂取を改善することである。
【0067】
[0067]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、嚥下能力及び効率が改善され、したがって、肺への誤嚥のリスクを低減すること、及び/又は増粘剤がキサンタンベースの場合には残留物を低減することにより安全性が改善されることである。
【0068】
[0068]更に、本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、食支援からの独立性がより大きいこと及び/又は食事摂取中の食支援に費やす時間が短縮されることである。
【0069】
[0069]更なる特徴及び利点が本明細書において記述されており、下記の「発明を実施するための形態」から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0070】
[0070]本明細書に記載の、本開示による様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法を例示するものであり、特許請求の範囲及び詳細な説明と共に考慮するにあたり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の態様及び実施形態に由来する特徴を、本発明の同じ又は異なる態様及び実施形態に由来する更なる特徴と組み合わせてもよいことも理解されたい。
【0071】
[0071]発明を実施するための形態及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示が文脈上明確にない限り、複数の参照物も含まれる。例えば、「成分(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、かかる「成分」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」又は「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」又は「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。同様に、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかし、本開示により提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素を含まない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、開示される構成成分「を本質的に含む」、及び「を含む」実施形態の開示でもある。「から本質的に構成される」とは、実施形態又はその構成成分が、個別に特定された構成成分を50重量%超、好ましくは個別に特定された構成成分を少なくとも75重量%、より好ましくは個別に特定された構成成分を少なくとも85重量%、最も好ましくは個別に特定された構成成分を少なくとも95重量%、例えば、個別に特定された構成成分を少なくとも99重量%含むことを意味する。
【0072】
[0072]記載の全ての範囲は、この範囲内に含まれる全ての数値、整数、又は分数を包含することを意図する。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。本明細書で使用するとき、重量%は、参照される組成物の総重量に対する特定の構成成分の重量を指す。本明細書に記載の範囲は、2つの終点間の全ての変形例を含む。
【0073】
[0073]相対的な用語「促進する」、「改善する」、「増加させる」、「増進する」などは、発泡性組成物から作製されてはいないが他の点では同一である製品と比較した、本明細書に開示される発泡性組成物、及び/又は発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料の効果を指す。
【0074】
[0074]一態様では、本開示は、酸化合物と、アルカリ化合物と、任意選択で増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む発泡性組成物を提供する。発泡性組成物は、適切な量の水などの希釈剤での希釈により、嚥下障害を有する個体に適した粘度と、炭酸及び任意選択で三叉神経用成分の存在から得られる三叉神経感覚の最適な組み合わせとを有する栄養製品を提供するように、配合される。
【0075】
[0075]本明細書で使用するとき、「発泡性」組成物は、二酸化炭素を放出しながら、希釈剤(例えば、液体、水など)に溶解することができる組成物を意味する。希釈剤に溶解したとき、発泡性組成物は、溶液から二酸化炭素を小さな泡として放出することによって、発泡し(すなわち、泡立ち)、これが溶液を発泡性又は泡立ち性にする。酸化合物とアルカリ化合物とが希釈剤に溶解されると、酸化合物とアルカリ化合物との間の反応から二酸化炭素が発生する。
【0076】
[0076]酸化合物は、少なくとも1つの食用酸、例えば、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、アジピン酸、及び/若しくはリンゴ酸;並びに/又は少なくとも1つの酸無水物、例えば、無水グルタル酸、無水コハク酸など;並びに/又は少なくとも1種の酸の塩、例えば、アミノ酸塩酸塩、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸塩などを含み得る。
【0077】
[0077]アルカリ化合物は、炭酸塩又は酒石酸塩の少なくとも1つを含み得る。炭酸塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、又は炭酸アルギニンなどの任意の適切な炭酸塩であってもよい。重炭酸ナトリウムは、溶解度が高く、反応が激しく、低コストであることから、好ましい炭酸塩である。酒石酸塩は、重酒石酸カリウム又は酒石酸ナトリウムなどの任意の適切な酒石酸塩であり得る。
【0078】
[0078]アルカリ化合物対酸化合物の比は、当該技術分野において既知である。好ましい実施形態では、1分子のクエン酸を中和するのに3分子の重炭酸ナトリウムが必要であり、その結果、二酸化炭素が遊離する。例えば、組成物は、約1.3gの無水クエン酸(Sigma-Aldrich GmbH,Germany)及び約4gの重炭酸ナトリウム粉末(Sigma-Aldrich)を含み得る。
【0079】
[0079]酸性成分とアルカリ性成分との反応の完了後、得られた液体生成物は、もはやスパークリングではない場合がある。スパークリングは、徐放性の泡立ちを得るために、例えば、炭酸のカプセル化又はN注入によって、液体製品において増進できる。追加の二酸化炭素を液体製品に添加して、炭酸液体製品を製造することもできる。
【0080】
[0080]加えて、液体製品が増粘し始めると、粘度のレベルは、増粘飲料が気泡を保持する能力に影響を及ぼす。すなわち、高レベルの粘度(プディング)は、低レベル(ネクター)よりも気泡を保持する可能性が高い。
【0081】
[0081]液体製品中の二酸化炭素の一部は、スパークリング/炭酸化されていてもいなくても、水と混合して炭酸を形成することができる。液体製品が摂取されると、二酸化炭素は唾液中の炭酸脱水酵素と反応し、その後、炭酸を生成する。炭酸は舌に刺激感を生じ、これは心地よいものであり得る。摂取された炭酸はまた、摂取者の体内で二酸化炭素を放出し、二酸化炭素は細胞内に拡散し、細胞内レベルで酸性化をもたらし、その結果TRP1チャネルを活性化する。
【0082】
[0082]炭酸飲料の泡立ち及び刺激知覚は、味覚及び体性感覚入力を含む多モード感覚に起因する可能性が高いと仮定される。炭酸飲料を摂取したときに人間が知覚する泡立ちの感覚は、唾液中の炭酸脱水酵素IVによって介され、これにより炭酸が生成される。
【0083】
[0083]三叉神経用成分もまた、心地よい刺激感を作り出すことができる。心地よい刺激感は、嚥下反射を促進することができる。嚥下反射の促進は、例えば、嚥下反射を誘発すること、個体の嚥下能力を増大させること、嚥下の有効性を増大させること、嚥下の遅延を低減させること、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0084】
[0084]三叉神経用成分は、桂皮アルデヒド、p-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、チグリンアルデヒド、花椒、カプサイシン、カプシエイト、イソチオシアネート、他のTRPV1及びTRPA1受容体アゴニスト、又はこれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含み得る。桂皮アルデヒドは、亜鉛を含んでも、亜鉛を含まなくても使用することができる。
【0085】
[0085]三叉神経用成分は、イソチオシアネート、例えば、アリルイソチオシアネート、6-(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート(6-MITC又は6-MSITC)、7-メチルチオヘプチルイソチオシアネート、及び/又は8-メチルチオオクチルイソチオシアネートを含み得る。アリルイソチオシアネートは、ワサビの辛味成分である。ワサビの特有の風味は、6-(メチルスルフィニル)ヘキシルイソチオシアネート(6-MITC又は6-MSITC)、7-メチルチオヘプチルイソチオシアネート、及び8-メチルチオオクチルイソチオシアネートの複雑な化学混合物の結果である。
【0086】
[0086]三叉神経用成分は、カプサイシン、カプサイシン誘導体、及びカプシノイド化合物を含み得る。カプサイシン誘導体の例としては、N-バニリル-アルカジエンアミド、N-バニリル-アルカンジエニル、N-バニリル-シス-一不飽和アルカンアミド、ジヒドロカプサイシン、ノルヒドロカプサイシン、ノルヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、及びジヒドロカプサイシンが挙げられる。カプシノイド化合物は、バニリルアルコールの脂肪酸エステルであり、代表例としては、カプシエイト、ジヒドロカプシエイト、ノルジヒドロカプシエイト、バニリルデカノエイト、バニリルノナノエイト、及びバニリルオクタノエイトなどのカプシエイトが挙げられる。更に、ノルジヒドロカプシエイトと同程度の脂肪酸鎖長を有する、各種直鎖又は分岐鎖脂肪酸及びバニリルアルコールの脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
[0087]三叉神経用成分は、桂皮アルデヒド及び亜鉛を含み得る。この組み合わせは、風味への影響が最小限であり、嚥下反射を促進するのに有効である。桂皮アルデヒド及び亜鉛は、TRPA1の薬理活性に対して相乗作用を有する。この相乗作用を利用して、桂皮アルデヒドに少量の亜鉛を補給することで桂皮アルデヒドの有効な量を低減することができる。結果として、桂皮アルデヒドと亜鉛との組み合わせは、風味/味及び胃腸管の両方において耐容可能な食物中濃度で嚥下反射を促進することができる。更に、この相乗作用は低濃度の亜鉛(in vitro試験管内で1μM未満)のみを必要とする。したがって、三叉神経用成分は、経口的に耐容可能であり(例えば、不快な口腔感覚を引き起こさない)、亜鉛と組み合わせて嚥下反射を促進するのに有効な量の桂皮アルデヒドを含むことができる。
【0088】
[0088]発泡性組成物中の桂皮アルデヒドは、シナモン精油抽出物、例えば、ケイ皮油の蒸気蒸留からの抽出物で提供されてもよく;単離された桂皮アルデヒド、例えば、シナモン精油から単離された桂皮アルデヒドでもよく;又は、合成桂皮アルデヒド、例えば、ベンズアルデヒドとアセトアルデヒドとのアルドール縮合の生成物であってもよい。発泡性組成物中の桂皮アルデヒド濃度は、好ましくは、31.87ppm(調味料、香辛料)~6191ppm(チューインガム)の香味付与濃度である(Fenaroli’s Handbook;Burdock,2010)。一実施形態では、桂皮アルデヒドは、約100ppm以下の量で発泡性組成物中に存在する。100pmは、Fenaroli’s Handbook(Burdock,2010)によるゼラチンの香味付与範囲である約756μMに相当する。
【0089】
[0089]好ましい亜鉛形態としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛及びクエン酸亜鉛が挙げられる。桂皮アルデヒド:亜鉛の比は、好ましくは、1:0.5~1:0.005、より好ましくは1:0.03(モル濃度)である。
【0090】
[0090]他のTRPV1アゴニストとしては、ピペリン、ジアルデヒドセスキテルペン(例えば、ワーブルガナール(wobble ganal)、ポリゴジアール又はイソベレラル(isoberellal))、スクチゲラール、トリプレニルフェノール等のバニリル官能基を欠く化合物を挙げることができる。
【0091】
[0091]増粘剤は、デンプン、又はキサンタンガムなどのガムのうちの少なくとも1つを含み得る。増粘剤は、オクラガム、コンニャクマンナン、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フェヌグリークガム、タマリンドガム、カッシアガム、アカシアガム、ガムガッチ、ペクチン、セルロース誘導体、トラガカントガム、カラヤガム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される植物抽出ガム;並びに/又はサボテン粘質物、サイリウム粘質物、ゼニアオイ粘質物、アマニ粘質物、ウスベニタチアオイ粘質物、ヘラオオバコ粘質物、モウズイカ粘質物、セトラリア粘質物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される植物由来粘質物を含み得る。いくつかの実施例では、増粘剤は、アラビアガム、カラギーナン(ラムダ)、カラギーナン(イオタ)、カラギーナン(カッパ)、アルギン酸ナトリウム、コンニャク、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キトサン、イヌリン、ペクチン(シトラス由来)、ペクチン(リンゴ由来)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、タラガム、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0092】
[0092]発泡性組成物は、粉末であり得る。本明細書で使用するとき、「粉末」は、投与前に希釈されるように配合された固体である。更にこの点に関して、本明細書に開示される粉末は、液体希釈剤、好ましくは水などの別の成分の添加後にのみ投与される。
【0093】
[0093]発泡性組成物は、錠剤であり得る。発泡性錠剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)又は任意の他の適切なバインダーなどのバインダーも含んでもよい。バインダーは、好ましくは水溶性である。バインダーは、乾燥粉末として、又は水溶液若しくは含水アルコール溶液として湿潤形態で添加することができる。少量のマンニトール、PEG6000及び水も、バインダーとして使用できる。3%の使用レベルのPEG6000を乾燥バインダーとして使用できる。バインダーの理想的な量は、錠剤を、取り扱うのに十分な硬さであるが、崩壊するのに十分に軟らかく、安定であるのに十分に乾燥しているようにする量である。発泡性錠剤はまた、バインダーなしで配合されてもよい。
【0094】
[0094]発泡性組成物は、可溶性包装内の粉末、ブリック、適切な包装内の液体又はゲルなどの任意の他の適切なフォーマットであり得る。
【0095】
[0095]崩壊剤、滑沢剤及び食品材料などの他の成分が含まれてもよい。崩壊剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、α化デンプン、及び部分α化デンプンなど、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、酒石酸カリウムナトリウム、軽質無水ケイ酸、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素が挙げられ、例として、ケイ素及び硬化油が挙げられる。
【0096】
[0096]湿潤性を増加させるために界面活性剤も添加してもよい。場合によっては、泡の形成を低減し、ひいては組成物の成分がコップの液面より上の壁部に付着する傾向を低減するために、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)が配合物中に含まれてもよい。
【0097】
[0097]発泡性錠剤は、従来の錠剤と同様に製造及び制御することができる。これらの制御には、硬度、重量変動、破砕性、溶解時間、pH及び含量均一性などの物理化学的特性が含まれる。発泡性錠剤は、直接圧縮法、融合法、湿式若しくは乾式造粒法、又は任意の他の適切な方法によって製造することができる。顆粒又は錠剤が打錠機に付着するのを防止するために、低い相対湿度(例えば、最大25%以下)及び中温から低温(例えば、約25℃又は77°F)の環境が必須となり得る。
【0098】
[0098]直接圧縮法では、発泡性錠剤は、粉末の形態の成分を、例えば打錠機によって高密度の塊に圧縮することによって形成することができる。粉末混合物が、粒子の分離を生じさせずに優れた流動性を有するように、粉末成分を錠剤にする前にまずは類似サイズ又は等サイズに造粒してもよい。造粒は、自由流動、非分離、圧縮可能な粉末ブレンドを達成するように原材料が選択される場合には、必要ではない場合がある。次いで、錠剤を、空気循環式オーブンなどで、適切な温度で適切な時間加熱することによって乾燥させることができ、冷却後、適切な包装に梱包することができる。
【0099】
[0099]融合法では、成分をブレンダーなどの適切なミキサー内で適当な時間混合することができる。次いで、得られた混合物を適切な温度に加熱することができる。粉末は、クエン酸の結晶水がバインダー因子として放出されるまで(例えば、およそ30分)定期的に混合されてもよく、適切なペースト状の塊が得られる。この湿潤塊を篩に通して所望の顆粒を得ることができ、次いでこれを適切な温度で適当な時間乾燥させることができる。乾燥後、顆粒を再び篩に通すことができる。他の成分を顆粒塊に添加し、適切な時間混合することができる。次いで、顆粒混合物を打錠機によって圧縮して錠剤にすることができる。最後に、錠剤を乾燥させ、適切な包装に梱包することができる。
【0100】
[0100]湿式造粒法では、成分を別々に又はエタノール、エタノール-水混合物、イソプロパノールなどとの混合物としてのいずれかで、粉砕機によって粉砕してもよく、得られた粉末を篩に通し、次いでブレンドすることができる。バインダー溶液を混合物に添加してペースト状の塊を形成することができる。次いで、このペースト状の塊を篩に通して所望の顆粒を得ることができ、次いでこれを乾燥させることができる。乾燥した塊を再び篩に通すことができ、他の成分を添加して混合することができる。次いで、得られた顆粒混合物を打錠機によって圧縮して錠剤にすることができる。最後に、錠剤を乾燥させ、適切な包装に梱包することができる。湿式造粒はまた、良質な錠剤を製造するために必要とされる均一性、圧縮性、及び流動性を有するが、必要とされる結合特性を欠く原材料のブレンドに、0.1~1.0パーセントの水(重量対重量ベース)を注意深く添加することによっても実施できる。適切なブレンダー中で混合しながら、選択された製剤構成成分に微細スプレーの形態で通常添加される遊離水は、バインダーとして作用する。造粒工程は、正確に時間を計測しなければならず、成分を十分に混合して顆粒化流体をブレンド中に均一に分布させなければならない。次いで、ミックスを乾燥オーブンに素早く排出する。乾燥後、顆粒を分粒し、最終混合を実施する。次いで、打錠機を用いて顆粒を圧縮して錠剤にする。
【0101】
[0101]乾式造粒法は、「ローラーコンパクタ-」又は「チルソネーター」として知られる特別な加工装置を使用できる。これらの機械は、予混合粉末を、超高圧下、2つの逆回転ローラーの間で圧縮する。ローラーの構成に応じて、供給材料は、フレーク(平滑ロール)として知られる高密度リボン状材料、又はローラーが溝付き表面若しくはエッチングされた表面を有する場合には高密度ブリケット(アーモンド又はスティック形状)に圧縮されてもよい。圧縮された材料は、錠剤造粒の目的で適切なサイズに縮小される。別の乾式造粒手順は、スラッギングであり、この手順では、打錠機又はより一般的には強力錠剤圧縮装置を使用して、粉末粒子を圧縮して、大きく平坦な錠剤又はペレットにする。得られた錠剤又はスラグを粉砕して、所望の顆粒特性を得る。
【0102】
[0102]発泡性錠剤は、任意の形状で作製することができ、任意の適切なサイズを有することができる。非限定的な例として、錠剤は、5mm~20mmの長さ、厚さ、及び/又は直径(円形を有する場合)であり得る。錠剤のサイズは、5mm~10mm、5mm~15mm、10mm~15mm、10mm~20mm、又は15mm~20mmであり得る。
【0103】
[0103]発泡性組成物は、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)試験によって特定したときに、20℃の温度で10ms超、好ましくは50ms超、例えば50ms~450ms、より好ましくは100ms超、例えば100ms~450ms、より好ましくは400ms超、例えば400ms~450ms、より好ましくは約200msの緩和時間を、当該発泡性組成物が溶解した栄養製品にもたらし得る量の増粘剤を含み得る。増粘剤の量は、最大約2,000mPas、好ましくは最大約500mPas、より好ましくは最大約200mPas、最も好ましくは最大約50mPasの剪断粘度を栄養製品にもたらすことができ、全ての値は、20℃で、50s-1の剪断速度で測定される。
【0104】
[0104]剪断粘度の測定は、異なる剪断速度、例えば、0~100s-1の別の剪断速度で、又は異なる温度、例えば0~100℃の別の温度で実施されてもよいが、このような測定値は、本明細書に開示される20℃で、50s-1の標準条件に戻して関連付ける必要があることは理解される。
【0105】
[0105]剪断流は、平行な平板が、互いに平行である方向に移動する溶液の流れである。剪断粘度は測定可能なレオロジー特性である。剪断粘度は、多くの場合粘度と称され、印加された剪断応力に対する物質の作用を表す。換言すれば、剪断応力は、流体の表面に対し横断又は水平方向に加えられた「応力」(単位面積あたりの力)の、流体内を下に動くときの流体の速度変化(「速度勾配」)に対する比率である。栄養製品の剪断粘度は、製品に適用する剪断速度を正確に制御しつつ剪断応力を測定することができる、又はその逆も可能である、任意の方法によって測定することができる。多くの場合、使用されるのは、一般に、流体に特定の応力場又は変形を課し、結果として生じる変形又は応力を監視するレオメーターである。これらの器具は、定常流又は振動流、及び剪断で動作し得る。標準方法には、同心円筒、円錐平板、及び平板-平板形状の使用が含まれる。
【0106】
[0106]物質の別のレオロジー特性には、伸長粘度がある。伸長流は、伸長に抵抗し、圧縮又は引っ張りを受けながらコイル構造に戻る溶液の挙動である。伸長粘度は、液体をその流動方向に伸長させるのに必要とされる応力の、伸長速度に対する比率である。伸長粘度係数は、剪断粘度から単純に計算又は推定することのできない、高分子の特性評価に広く使用される。
【0107】
[0107]伸長粘度は、多くの場合、伸長応力を印加するレオメーターの一例である、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)を使用して特定された緩和時間によって測定される。栄養製品の緩和時間を測定するために本明細書で実施されたCaBER試験においては、平行に垂直に並べた、共に直径6mmを有する2枚の円形の金属表面の間に、上記製品の液滴を配置する。次いで、金属表面は、50msの時間間隔にわたって直線的に即座に分離される。この広げる動作で形成されたフィラメントは、その後、界面張力の作用下で細くなり、この細くなるプロセスを、その中間点でフィラメント径を測定するデジタルカメラ及び/又はレーザーシートを使用して定量的に追跡する。CaBER試験における緩和時間は、細くなるプロセス中のフィラメント径の正規化した自然対数を時間に対してプロットし、この曲線の直線部の勾配(dln(D/D)/d)を特定することによって求められ、式中、Dはフィラメント径、Dは時間0におけるフィラメント径、tはフィラメントが細くなっていく時間である。次いで、この文脈における緩和時間を、この傾きの逆数にマイナス3分の1(-1/3)をかけたもの、すなわち、-1/(3dln(D/D)/d)と定義する。
【0108】
[0108]栄養組成物又はその食塊の粘着性又は凝集性は、栄養組成物又はその食塊が、口腔内及び嚥下プロセスを通して結合してひとまとまりになる能力である。粘着性又は凝集性は、緩和時間の代用(proxy)であり、緩和時間に直接関連する栄養組成物又はその食塊の「曳糸性」によって測定され得る。
【0109】
[0109]本栄養製品において、緩和時間は、それぞれ20℃の温度で、10ms~2000ms、好ましくは20ms~1000ms、同様に好ましくは50ms~450ms、100ms~2000ms、100ms~450ms、より好ましくは200ms~2000ms、200ms~450ms、又は約200msであることが好ましい。
【0110】
[0110]更に、いくつかの実施形態では、栄養製品のフィラメント径は、CaBER試験中に、時間に対して線形的減少を下回って減少し、好ましくは指数関数的に減少する。フィラメント径は、デジタルカメラ及び/又はレーザーシート測定装置を使用して測定され得る。
【0111】
[0111]本明細書で使用するとき、特徴的な「食塊」は、嚥下に備えて口腔内で形成される、栄養製品の任意のまとまりを含む。食塊は、任意の形状、サイズ、組成物及び/又はテクスチャーであってもよく、したがって液体であってもよい。
【0112】
[0112]本明細書で使用するとき、用語「栄養製品」は、嚥下障害を有する個体による経口投与用の栄養組成物を指す。栄養製品は、嚥下障害を有する個体の、栄養補給、水分補給、又は1食以上の食事一式(full meal)の代替としてみなされる。本開示は、栄養製品の特定の実施形態に限定されない。
【0113】
[0113]更に、本開示は、発泡性組成物が溶解される希釈剤の特定の実施形態に限定されず、希釈剤は、動物又はヒトによる摂取に適した任意の液体であり得る。
【0114】
[0114]用語「個体」は、栄養製品から利益を得ることのできる、任意のヒト、動物、哺乳類、又は嚥下障害を有する個体を指す。動物には哺乳類が挙げられるがこれに限定されないことは理解されたい。哺乳類としては、限定はされないが、齧歯類、水生哺乳類、家庭用動物(イヌ及びネコなど)、家畜(ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなど)、並びにヒトが挙げられる。
【0115】
[0115]いくつかの実施例では、希釈剤は、水、乳、水と追加の少なくとも1つの構成成分をこの水に加えて更に含む飲料、液体経口栄養補助食品(ONS)、又は食品製品のうちの1つ以上であり得る。
【0116】
[0116]希釈剤による発泡性組成物の希釈は、栄養製品が希釈剤及び発泡性組成物を本質的に含むか、又はそれらを含むように、栄養製品を直接形成できる。
【0117】
[0117]いくつかの実施形態では、希釈剤による発泡性組成物の希釈は、水溶液を形成し、その後、少なくとも1つの他の経口投与可能な組成物に水溶液を添加して、栄養製品が、希釈剤、発泡性組成物、及び少なくとも1つの他の経口投与可能な組成物を本質的に含むか、又はそれらを含むように、栄養製品を形成する。いくつかの実施形態では、栄養製品は、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料であり得る。
【0118】
[0118]発泡性組成物は、増粘剤が発泡性組成物中に含まれる場合であっても、撹拌を必要とせずに、又は最小限の撹拌で希釈剤中に溶解されて、栄養製品を形成することができる。
【0119】
[0119]いくつかの実施形態では、栄養製品は、(i)栄養補給、(ii)水分補給、及び(ii)1食以上の食事一式の代替のうちの少なくとも1つを達成するために、嚥下障害を有する個体への栄養製品の投与に有効な量の増粘成分を含む単位剤形である。
【0120】
[0120]本明細書で使用するとき、「有効量」とは、欠乏を予防する、個体の疾患又は医学的状態を治療する、あるいはより一般的には、症状を軽減させる、疾患の進行を管理する、又は個体に対して栄養学的、生理学的若しくは医学的利益を提供する、量である。
【0121】
[0121]「レディ・トゥ・ドリンク」飲料又は「RTD」飲料は、液体を更に追加せずとも摂取することのできる液体形態の飲料である。好ましくは、RTD飲料は無菌である。「経口栄養補助食品」又は「ONS」は、少なくとも1つの主要栄養素及び/又は少なくとも1つの微量栄養素を含む組成物であり、例えば、滅菌液、半固体又は粉末の形態であり、食品によるものなどの他の栄養摂取を補うことを意図する組成物である。ONSは、唯一の栄養源として配合することもできる。市販のONS製品の非限定的な例としては、例えば、MERITENE(登録商標)、BOOST(登録商標)、NUTREN(登録商標)、SUSTAGEN(登録商標)、RESOURCE(登録商標)、及びCLINUTREN(登録商標)が挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「単位剤形」は、ヒト及び動物対象に対する投与量の単位として適切な物理的に個別の単位を指し、各単位は、規定量の本明細書に開示される組成物を、所望の効果をもたらすのに十分な量で、好ましくは医薬的に許容される希釈剤、キャリア、又は媒体と共に含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及びホスト体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。一実施形態では、単位剤形は、ディスペンサによって分注される、又はパウチなどの容器内に収容される、予め決められた量の液体濃縮物であり得る。
【0122】
[0122]一態様では、本開示はRTD栄養飲料を提供する。RTD栄養飲料は、発泡性組成物から作製された栄養製品と同じ組成及び/又は特性を有することができる。RTD栄養飲料は、嚥下障害を有する個体に適しているが炭酸入りである、RTD栄養飲料であり得る。いくつかの実施形態では、RTD栄養飲料は、無脂肪で、爽やかな果実風味の栄養飲料であり得る。RTD栄養飲料は、嚥下が容易であり、嚥下障害を有する個体の栄養ギャップを埋める。RTD栄養飲料は、スパークリング飲料又は炭酸飲料であり得る。RTD栄養飲料はまた、非スパークリング飲料/非炭酸飲料であってもよいが、刺激感をもたらし及び/又は細胞内レベルで酸性化をもたらし、ひいてはTRP1チャネルを活性化して嚥下反射を促進するのに有効な量の炭酸を含む。
【0123】
[0123]栄養製品はまた、任意の数の任意選択の成分(例えば、栄養製品が作製される発泡性組成物に対する追加の成分)も含んでもよい。適切な任意選択の成分の非限定的な例としては、例えば、1つ以上の酸味料、追加の増粘剤、pH調節用緩衝剤若しくはpH調節剤、キレート剤、電解質、着色剤、乳化剤、賦形剤、香料、ミネラル類、浸透剤、医薬的に許容されるキャリア、保存料、安定剤、糖、甘味料、調質剤、及び/又はビタミン(類)などの従来の食品添加物が挙げられる。RTD栄養飲料はまた、任意の数の上記の成分を含むことができる。任意選択の成分は、任意の適切な量で添加することができる。
【0124】
[0124]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、タンパク質、脂質、繊維、炭水化物、プレバイオティクス、プロバイオティクス、アミノ酸、脂肪酸、植物栄養素、酸化防止剤、電解質、及びビタミンのうちの1つ以上、並びに/又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0125】
[0125]タンパク質は、乳性タンパク質、植物性タンパク質、若しくは動物性タンパク質、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。乳性タンパク質としては、例えば、カゼイン、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウムを含む全ての形態)、カゼイン加水分解物、乳清(例えば、濃縮物、単離物、脱塩物を含む全ての形態)、乳清加水分解物、乳タンパク質濃縮物、及び乳タンパク質単離物が挙げられる。植物性タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、エンドウマメタンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、キャノーラタンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、市販品としては小麦及び分画小麦タンパク質、トウモロコシ及びゼインを含むその画分、米、オート麦、ジャガイモ、落花生、グリーンピース粉末、サヤエンドウ粉末である他の植物タンパク質、並びに腎臓形の豆(beans)、レンズマメ(lentils)、及び豆類(pulses)由来の任意のタンパク質が挙げられる。動物性タンパク質は、牛肉、鶏肉、魚、ラム、海産食品、又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好ましくは、タンパク質は、米タンパク質又はレンズマメタンパク質のうちの少なくとも1つである。
【0126】
[0126]脂質は、植物性脂質(例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、菜種油、ヘーゼルナッツ油、大豆油、パーム油、ココナッツ油、キャノーラ油、レシチンなど)、動物性脂質(例えば、乳脂肪)、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0127】
[0127]繊維は、可溶性繊維及び不溶性繊維の混合物を含有し得る繊維ブレンドであってもよい。可溶性繊維としては、例えば、フラクトオリゴ糖、アカシアガム、イヌリンなどを挙げることができる。不溶性繊維としては、例えば、エンドウマメ外皮の繊維を挙げることができる。
【0128】
[0128]炭水化物は、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固体、マルトデキストリン、変性デンプン、アミロースデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0129】
[0129]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、次のプレバイオティクス:アカシアガム、αグルカン、アラビノガラクタン、デキストラン、フラクトオリゴ糖、フコシルラクトース、ガラクトオリゴ糖、ガラクトマンナン、ゲンチオオリゴ糖、グルコオリゴ糖、グアーガム、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ラクトネオテトラオース(lactoneotetraose)、ラクトスクロース、ラクツロース、レバン、マルトデキストリン、ミルクオリゴ糖、部分加水分解グアーガム、ペクチンオリゴ糖(pecticoligosaccharide)、難消化性デンプン、老化デンプン、シアロオリゴ糖、シアリルラクトース、大豆オリゴ糖、糖アルコール、キシロオリゴ糖、若しくはこれらの加水分解物、若しくはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。プレバイオティクスは、選択的に腸内の有益細菌の生育を促進する、又は病原細菌の生育若しくは粘膜付着を阻害する食物物質である。プレバイオティクスは、胃及び/若しくは上部腸管では不活性化されず、又は摂取した個体の胃腸管で吸収されないものの、胃腸管内の微生物叢及び/又はプロバイオティクスによって発酵される。プレバイオティクスは、例えば、Glenn R.Gibson and Marcel B.Roberfroid,Dietary Modulation of the Human Colonic Microbiota:Introducing the Concept of Prebiotics,J.Nutr.1995 125:1401-1412によって定義されている。
【0130】
[0130]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、少なくとも1つのプロバイオティクスを含むことができる。プロバイオティクスは、食品用微生物(半生存可能、又は弱毒化、及び/又は非複製を含む生菌)、代謝産物、微生物細胞調製物又は微生物細胞成分であり、投与された場合に宿主に対して健康上の利益を与えることができ、より詳細には、プロバイオティクスは、腸内微生物バランスを改善し、宿主の健康又は幸福に対する効果をもたらすことによって宿主に有益な影響を及ぼすものである。Salminen S,Ouwehand A.Benno Y.et al.,Probiotics:how should they be defined?,Trends Food Sci.Technol.1999:10,107-10を参照されたい。一般に、これらのプロバイオティクスは、腸管内の病原性細菌の生育及び/又は代謝を阻害する、又はそれに影響を与えると考えられている。プロバイオティクスはまた、宿主の免疫機能も活性化させ得る。プロバイオティクスとしては、アエロコッカス(Aerococcus)、アスペルギルス(Aspergillus)、バシラス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、カンジダ(Candida)、クロストリジウム(Clostridium)、デバロマイセス(Debaromyces)、エンテロコッカス(Enterococcus)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、メリソコッカス(Melissococcus)、マイクロコッカス(Micrococcus)、ムコール(Mucor)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ペニシリウム(Penicillium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostrepococcus)、ピキア(Pichia)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、シュードカテニュレイタム(Pseudocatenulatum)、リゾプス(Rhizopus)、サッカロミケス(Saccharomyces)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トルロプシス(Torulopsis)、ワイセラ(Weissella)、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0131】
[0131]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、シンバイオティクスを含んでもよい。シンバイオティクスは、プレバイオティクス(前述のうちの少なくとも1種)と、プロバイオティクス(前述のうちの少なくとも1種)の両方を含む補給剤であり、協調的に作用して腸の微生物叢を改善する。
【0132】
[0132]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、次のアミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、シトルリン、システイン、グルタミン酸塩、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシセリン、ヒドロキシチロシン、ヒドロキシリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンのうちの少なくとも1種のアミノ酸、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0133】
[0133]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、少なくとも1つの脂肪酸、例えば、α-リノレン酸(「ALA」)、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)、及びエイコサペンタエン酸(「EPA」)などのω-3脂肪酸、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。脂肪酸は、魚油、オキアミ、鶏肉、卵、植物素材、藻類及び/又はナッツ素材、例えば、亜麻仁、クルミ、アーモンドに由来し得る。
【0134】
[0134]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、少なくとも1つの植物栄養素を含むことができる。植物栄養素は、フラバノイド、連結フェノール化合物、ポリフェノール化合物、テルペノイド、アルカノイド、又は硫黄含有化合物のうちの少なくとも1つであり得る。植物栄養素は、多くの食品に見られる非栄養性化合物である。植物栄養素は、基本的な栄養以外の健康上の利益を有する機能性食品であり、植物素材から得られる健康増進化合物である。植物栄養素は、1つ以上の健康上の利益を使用者に付与する、植物によって産生される任意の化学物質を指す。適切な植物栄養素の非限定的な例としては、
[0135]i)モノフェノール(例えば、アピオール、カルノソール、カルバクロール、ジラピオール、ローズマリノールなど);フラボノール(例えば、クエルセチン、フィンゲロール(fingerol)、ケンペロール、ミリセチン、ルチン、イソラムネチンなど)、フラバノン(例えば、フェスペリジン(fesperidin)、ナリンゲニン、シリビン、エリオジクチオールなど)、フラボン(例えば、アピゲニン、タンゲレチン、ルテオリンなど)、フラバン-3-オール(例えば、カテキン、(+)-カテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキン、(-)-エピガロカテキンガラート(EGCG)、(-)-エピカテキン3-ガラート、テアフラビン、テアフラビン-3-ガラート、テアフラビン-3’-ガラート、テアフラビン-3,3’-ジガラート、テアルビジンなど)、アントシアニン(フラボナール(flavonal))及びアントシアニジン(例えば、ペラルゴニジン、ペオニジン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペツニジンなど)、イソフラボン(植物エストロゲン)(例えば、ダイゼイン(ホルモノネチン)、ゲニステイン(ビオカニンA)、グリシテインなど)、ジヒドロフラボノール、カルコン、クメスタン(植物エストロゲン)、及びクメストロール、を含む、フラボノイド(ポリフェノール);フェノール酸(例えば、エラグ酸、没食子酸、タンニン酸、バニリン、クルクミンなど);ヒドロキシ桂皮酸(例えば、カフェー酸、クロロゲン酸、桂皮酸、フェルラ酸、クマリンなど);リグナン(植物エストロゲン)、シリマリン、セコイソラリシレシノール、ピノレシノール、及びラリシレシノール);チロソールエステル(例えば、チロソール、ヒドロキシチロソール、オレオカンタール、オロイロペインなど);スチルベノイド(例えば、レスベラトロール、プテロスチルベン、ピセアタンノールなど)及びプニカラギン、を含む、フェノール化合物、
[0136]ii)カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコピン、ニューロスポレン、フィトフルエン、フィトエンなど)及びキサントフィル(例えば、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン(aeaxanthin)、アスタキサンチン、ルテイン、ルビキサンチン)を含むカロテノイド(テトラテルペノイド);モノテルペン(例えば、リモネン、ペリリルアルコールなど);サポニン;フィトステロール(例えば、カンペステロール、βシトステロール、γシトステロール、スチグマステロールなど)、トコフェロール(ビタミンE)、並びにγ-3、γ-6、及びγ-9脂肪酸(例えば、γ-リノレン酸など)を含む脂質;トリテルペノイド(例えば、オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸、モロン酸など)を含む、テルペン(イソプレノイド)、
[0137]iii)ベータシアニン(例えば、ベタニン、イソベタニン、プロベタニン、ネオベタニン);及びベタキサンチン(非糖鎖付加型)(例えば、インジカキサンチン、及びブルガキサンチンなど)を含むベタレイン、
[0138]iv)例えば、ジチオールチオン(dithiolthione)(イソチオシアネート)(例えば、スルフォラファンなど);及びチオスルホナート(アリウム化合物)(例えば、アリルメチルトリスルフィド、及びジアリルスルフィドなど)、インドール、例えば、インドール-3-カルビノールを含むグルコシノレート;スルフォラファン;3,3’-ジインドリルメタン;シニグリン;アリシン;アリイン;アリルイソチオシアネート;ピペリン;syn-プロパンチアール-S-オキシドを含む、オルガノスルフィド、
[0139]v)例えば、プロテアーゼ阻害剤を含む、タンパク質阻害剤、
[0140]vi)シュウ酸、フィチン酸(イノシトール六リン酸);酒石酸;及びアナカルジン酸を含む、他の有機酸、
が挙げられる。
【0135】
[0141]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、少なくとも1つの酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、他の分子の酸化を遅らせること又は防止することができる分子である。酸化防止剤は、アスタキサンチン、カロテノイド、コエンザイムQ10(「CoQ10」)、フラボノイド、グルタチオンゴジ(クコ)、ヘスペリジン、ラクトウルフベリー(lactowolfberry)、リグナン、ルテイン、リコピン、ポリフェノール、セレン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ゼアキサンチン、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つであってもよい。
【0136】
[0142]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、ホウ素、カルシウム、クロム、銅、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、カリウム、セレン、ケイ素、スズ、バナジウム、亜鉛、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含むミネラル(類)などの成分を更に含むことができる。ミネラルは、塩化物の塩などの任意の適切な摂取可能な塩の形態であり得る。
【0137】
[0143]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、身体の正常な発育及び活動に不可欠な量のビタミンA、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン又はナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、又はピリドキサミン、又は塩酸ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、及びビタミンB12(各種コバラミン;ビタミンサプリメントでは、通常、シアノコバラミン)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、及びビオチン)、又はこれらの任意の組み合わせを含むビタミン(類)などの成分を更に含むことができる。
【0138】
[0144]更なる態様では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、嚥下機能障害の予防及び/又は緩和、及び/又は補正を、そのような治療を必要とする患者において行うために使用できる。本明細書で使用するとき、用語「予防する」、「予防」、「緩和する」、及び「補正する」、及び「補正」には、抑止的又は予防的治療(標的とする病的状態又は障害を予防する及び/又はその発症を遅らせる治療)と、診断された病的状態又は障害の進行を遅らせる、その症状を軽減する、及び/又はその進行を停止させる治療手段を含む治療又は疾患修飾療法/補正療法(compensation treatment)と、疾患に罹患する危険性がある患者、又は疾患に罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態を有すると診断された患者の治療が含まれる。この用語は、必ずしも完治するまで対象が治療されることを意味するものではない。用語「予防する」、「予防」、「緩和する」、及び「補正する」、及び「補正」はまた、疾患を有さないが、窒素不均衡又は筋肉損失などの不健康な状態を生じやすい可能性のある個体における健康の維持及び/又は促進を指す。用語「予防する」、「予防」、「緩和する」、及び「補正する」、及び「補正」はまた、1つ以上の主たる予防手段又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合は増進を含むことも意図している。用語「予防する」、「予防」、「緩和する」、及び「補正する」、及び「補正」は更に、疾患若しくは状態の食事療法、又は疾患若しくは状態の発症予防(prophylaxis)若しくは予防(prevention)のための食事療法を含むことも意図している。
【0139】
[0145]更なる態様では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、嚥下の安全性及び/又は効率を促進する必要がある患者において、栄養製品の嚥下の安全性及び/又は効率を促進するために使用できる。
【0140】
[0146]更なる態様では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、嚥下中の誤嚥リスクを軽減する必要がある患者において、栄養製品の嚥下中の誤嚥リスクを軽減するために使用できる。
【0141】
[0147]栄養製品及び/又はRTD栄養飲料は、好ましくは、投与可能な形態、例えば経口投与可能な形態であり得る。投与可能な形態は、医薬処方物、栄養処方物、ダイエタリーサプリメント、機能性食品、医療用食品及び飲料製品、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つであり得る。
【0142】
[0148]更なる態様では、栄養製品を作製する方法は、食用酸と、炭酸塩と、任意選択で増粘剤と、任意選択で三叉神経用成分とを含む発泡性組成物を用意する工程と、発泡性組成物を液体中で希釈して栄養製品を用意する工程とを含む。
【0143】
[0149]発泡性組成物が液体に溶解されているとき、発泡作用は自動的な「撹拌」効果を有し、この効果により、その後の撹拌をほとんど又は全く伴わずに組成物を容易に及び/又は速く溶解させる。
【0144】
[0150]一般に、希釈剤の温度は、栄養製品の調製に重要ではない場合があり、限定するものではないが、高温、低温、又は室温の希釈剤を挙げることができる。発泡性組成物中のいくつかの特定の増粘剤では、固有の特性により、他のものよりも温度の選択が重要になる。
【0145】
[0151]必要又は所望に応じて、酸、塩基、酸性化剤(acidulate)、キレート剤、香料、着色剤、ビタミン類、ミネラル類、甘味料、不溶性食品、及び/又は保存料などの構成成分を、調製中の任意の適切な時点で発泡性組成物及び希釈剤混和物に組み込むことができる。このような微量構成成分は、好ましくは微量及び低濃度、すなわち、増粘には実質的に関連しない量で存在する。
【0146】
[0152]例示的な実施形態では、本明細書に開示されるRTD栄養飲料の各サービングは、約8グラムの高品質タンパク質、約15種の必須ビタミン類及びミネラル類、約180の栄養カロリー、約0グラムの脂質を含有し得る。本明細書に開示されるRTD栄養飲料の各サービングは、任意の他の適切な量の成分、栄養素、及び/又はカロリーを含有してもよい。例示的な実施形態では、使用される特定の混和機器及び材料の適切な取り扱いに応じて、栄養製品を混和するための時間は、約2分~約180分、好ましくは約5分~約60分であるが、所望又は必要に応じてより長時間及び短時間を用いることができる。
【0147】
[0153]任意選択的に、必要又は所望に応じて、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、貯蔵安定性をもたらすために処理されてもよい。最も一般的には、限定するものではないが、処理は、上述の微量構成成分のうちの1つ以上と組み合わせた加熱であり得る。
【0148】
[0154]発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料の包装は、嚥下障害に罹患している個体に有効及び/又は適切な製品を送達する限り、重要ではない場合がある。例示的には、包装は、トート、ビン、ホイルパウチ、バケツ、バッグ、シリンジなどであってもよい。所望であれば、増粘剤の使用は、飲料ディスペンサ又は容器内での栄養製品のインライン混合及び調製を容易にすることができる。包装は、製品を分注する計量装置及び/又はインライン混合システムを含むことができる。包装は、スイッチを入れるだけで増粘又は非増粘飲料を分注するように設計されてもよい。
【0149】
[0155]発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、医療提供者が嚥下された液体量を安全に管理することを可能にし、個体の誤嚥リスクの低減に役立つように構成されたデバイス(Bionix SafeStraw(商標)など)によって嚥下障害を有する個体に投与することができる。そのようなデバイスは、誤嚥リスクを低減するのに役立ち、患者がカップ及びボトルなどの様々な容器から、安全に、慎重に、かつ独立して飲むことを可能にする。そのようなデバイスは、包装と共に提供されてもよく、又は別個に提供されてもよい。そのようなデバイスは、特定量の栄養製品及び/又はRTD栄養飲料を送達するために計量装置と一体化することができる。例えば、Bionix SafeStraw(商標)を使用して、例えば、一口当たり6.2mLを個体に送達することができる。
【0150】
[0156]いくつかの実施形態では、発泡性組成物、発泡性組成物から作製された栄養製品、及び/又はRTD栄養飲料は、成分の適切な投与量を提供する1回使用分サイズで包装することができ、個体又は患者は、望むときはいつでも容易に利用することができる。
【0151】
[0157]本明細書に開示される発泡性組成物は、乾燥状態で、又は十分に、完全に、かつ全体的に水和されて、気密容器によりエンドユーザーに送達され、出荷時の沈降又は分離を最小限に抑えることができる、又は回避することができる。好ましくは、密度は経時的に変化せず、製品は安定である。
【0152】
[0158]本明細書に開示されている栄養製品及びRTD栄養飲料は、摂食するのに安全であり、及び精神的な判断力が低下している者の前に置いておいても安全である。これらの製品の摂取は、窒息の危険性を呈さない。乾燥粉末を溶解前に口に入れること及び/又は嚥下しようとすることは、精神的な判断力が低下している患者に危険を与える可能性がある。多くの施設では、開封した粉末容器(open containers of powder)がテーブル上若しくは部屋に残される、又は個々のサイズの包みがトレー上に提供される。介護者が何かに気を取られていると、ハンチントン舞踏病患者などの衝動的な摂食者は、すぐに乾燥粉末を摂取しようとする可能性があり、重大な危険を孕んでいる。本明細書に開示される栄養製品及びRTD栄養飲料は、再構成及び/又は完全に水和され、したがって、かかる問題はない。
【0153】
[0159]本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、本方法は、患者における嚥下障害の重症度レベルを識別する工程と、患者における嚥下障害の重症度レベルに基づき、希釈する発泡性組成物の量を選択する工程であって、発泡性組成物の量は、各々が異なるレベルの嚥下障害の重症度に対応する複数の規定量から選択される、工程と、を含む。
【0154】
[0160]別の態様では、本開示は、経口投与可能な栄養製品の調製における発泡性組成物及び液体の使用を提供し、上記液体は嚥下障害のない個体による摂取に適しており、経口投与可能な栄養製品は嚥下障害を有する個体への投与に適している。
【0155】
[0161]別の態様では、本開示は、嚥下障害を有する個体に投与するための均質単相飲料を製造するためのシステムであって、発泡性組成物を収容している容器と、当該容器に接続され、予め決められた量の発泡性組成物を分注するように構成された計量装置と、を備える、システムを提供する。このシステムは、発泡性組成物を均質単相飲料に混合するように構成された静的インラインミキサー、及び/又は均質単相飲料を分注するように構成されたノズルを更に備えることができる。
【0156】
[0162]本明細書に記載した現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】