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特表2023-533682補体関連病態の処置用抗C5抗体の皮下(SC)投与
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】補体関連病態の処置用抗C5抗体の皮下(SC)投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230728BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230728BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230728BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P13/02
A61P7/02
A61P27/02
A61P21/02
A61P21/04
A61P17/00
A61P37/02
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/10
C07K16/18 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579955
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 US2021031141
(87)【国際公開番号】W WO2021262329
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/043,613
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ミアーノ, ディーノ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ウェイルン エイミー
(72)【発明者】
【氏名】メジェボフスキー, タチアナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC07
4C076DD09
4C076DD26
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23
4C085AA13
4C085BB36
4C085BB42
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
補体関連病態の臨床処置のための方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含む方法が提供され、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、特定の臨床投薬量レジメンに従い(即ち、特定の用量の大きさで、及び具体的な投薬スケジュールに従い)皮下に投与される(又はそのような投与用である)。一実施形態において、患者は、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))又はラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標));特に静脈内投与のSOLIRIS(登録商標)又はULTOMIRIS(登録商標)による処置歴を過去に有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、投与サイクルの間に、配列番号19、18及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む、有効量の抗C5抗体又はその抗原結合断片を前記患者に投与することを含む方法において、前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が皮下(SC)投与される、方法。
【請求項2】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、前記有効量の前記抗C5抗体、例えば、ラブリズマブ又はエクリズマブ又はそのバイオシミラー抗体を含む機器、例えば、オンボディデリバリーシステム(OBDS)で皮下投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、その後毎週490mgの用量で投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト患者が皮下投与前に静脈内負荷用量の投与を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記負荷用量が体重換算用量であり、ここで、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mgの用量が投与される、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mgの用量が投与される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を更に含み、前記バリアントヒトFc CH3定常領域が、各々EUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基にMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、前記投与サイクルの15日目及びその後少なくとも7週間にわたって490mg q1wの用量で皮下投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記投与サイクルが合計10週間の処置である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、490mg q1wの用量で最長3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月、15ヵ月、18ヵ月、21ヵ月、2年にわたって、又は慢性的に前記患者の生涯にわたって皮下投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、エクリズマブによる処置歴を過去に有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記投与サイクルが、前記患者のエクリズマブ最終回用量から少なくとも2週間経った後に開始される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、配列番号12の重鎖可変領域と配列番号8の軽鎖可変領域とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、配列番号13の重鎖定常領域を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドと、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、pH7.4及び25℃においてヒトC5に0.1nM≦K≦1nMの範囲にある親和性解離定数(K)で結合する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、pH6.0及び25℃においてヒトC5にK≧10nMで結合する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記処置により、前記投与サイクルの間、前記抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度が100μg/mL以上に維持される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記補体関連障害が、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、補体介在性血栓性微小血管症(CM-TMA)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、子癇前症・溶血、高値肝酵素、低血小板数(PE-HELLP)、妊娠誘発性aHUS(p-aHUS)、全身型重症筋無力症(gMG)、皮膚筋炎、ギラン・バレー症候群(GBS)からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記処置により、終末補体阻害が起こる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記処置により、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによって判定したときの溶血の減少が起こる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記処置により、疲労、腹痛、呼吸困難、貧血、嚥下障害、胸痛、及び勃起不全の減少又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記処置により、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記処置により、推算糸球体濾過率(eGFR)及びスポット尿:アルブミン:クレアチニン及び血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択される慢性疾患関連バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記処置により、輸血の必要性及び/又は主要有害血管イベント(MAVE)の減少が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記処置により、前記慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4版、及び前記欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)、クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケールによって判定されるクオリティ・オブ・ライフのベースラインからの変化が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片が、オンボディデリバリーシステム(OBDS)を使用して皮下投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記OBDSが、SMARTDOSE Gen Iデリバリープラットフォームを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記OBDSが、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中のラブリズマブ(70mg/mL)を含む医薬製剤を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記SC投与により、約200μg/ml~約1000μg/ml;好ましくは約400μg/ml~約800μg/ml;特に約550μg/ml~約650μg/mlの血清ラブリズマブトラフ濃度(Cトラフ)がもたらされる、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記有効量の前記SC投与により、ラブリズマブを含む静脈内製剤と比較して血清ラブリズマブトラフ濃度(Cトラフ)の増加がもたらされ;好ましくは前記Cトラフの増加が約5%~約50%、好ましくは約15%~約35%である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記SC投与により、前記患者の遊離C5レベルが減弱し;好ましくは、前記遊離C5レベルが、前記患者において完全終末補体阻害の規定の閾値、例えば、≦0.5μg/mlを下回って減弱する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記SC投与により、前記患者においてラブリズマブの完全補体阻害閾値レベル、例えば、≧175μg/mlのインビボラブリズマブレベルがもたらされる、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記有効量の前記SC投与により、(a)前記患者のブレイクスルー溶血が減弱し;(b)前記患者の輸血回避がもたらされ;(c)前記患者のヘモグロビンレベルが安定化し;(d)前記患者の少なくとも1つのPNH症状が低下する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗C5抗体又は前記その抗原結合断片が5~9分の注射で投与される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗C5抗体又は前記その抗原結合断片がタンデム皮下(SC)機器で投与される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗C5抗体又は前記その抗原結合断片が、例えば複数の電気機械的ピンによって、一定流速で投与される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、40kg~100kgの成人患者である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下投与機器であって、
a)オンボディデリバリーシステム(OBDS);
b)前記抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下製剤
を含む、機器。
【請求項39】
前記OBDSが、SMARTDOSE Gen Iデリバリープラットフォームを含む、請求項38に記載の機器。
【請求項40】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片の前記皮下製剤が、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中のラブリズマブ(avulizumab)(70mg/mL)を含む、請求項38に記載の機器。
【請求項41】
前記機器が、1週間にわたってヒト患者に490mgの用量を送達する、請求項38に記載の機器。
【請求項42】
補体介在性病態を処置するための有効量の皮下(SC)製剤を含む機器、特にオンボディデリバリーシステム(OBDS)であって、前記SC製剤が、抗C5抗体、例えば、ラブリズマブ又はエクリズマブ又はそのバイオシミラー抗体、又は前記抗C5抗体の抗原結合断片を含み;特に前記SC製剤がラブリズマブを含む、オンボディデリバリーシステム(OBDS)。
【請求項43】
(a)前記抗C5抗体の送達用注射装置(プラットフォーム)、(b)前記プラットフォームに付属する前記抗C5抗体を含むプレフィルドカートリッジ(PFC);及び(c)伸縮ねじアセンブリ(TSA)を含む、請求項42に記載の機器。
【請求項44】
前記PFCが、約70mg/mlの濃度で約3.5mlラブリズマブを含む、請求項42に記載の機器。
【請求項45】
補体関連疾患又は障害を処置するためのキットであって、
(a)請求項38~44のいずれか一項に記載の機器;及び
(b)前記抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下投与用の前記機器の使用説明書
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043613号明細書の利益を主張するものであり、その内容は参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照により全体として本明細書に組み込まれる配列表を含有する。前記ASCIIコピーは、2021年4月28日に作成され、0633_WO_SL.txtと命名され、58,818バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
補体系は、身体の他の免疫系と連携して作用して細胞及びウイルス病原体の侵入を防御する。血漿タンパク質及び膜補因子の複合集合体として見出される少なくとも25種の補体タンパク質が存在する。血漿タンパク質は、脊椎動物血清中のグロブリンの約10%を構成する。補体成分は、一連の複雑であるが正確な酵素的開裂及び膜結合事象を相互作用させることによりそれらの免疫防御機能を達成する。得られる補体カスケードは、オプソニン、免疫調節、及び溶解機能を有する生成物の産生をもたらす。補体活性化と関連する生物学的活動の要約が、例えば、The Merck Manual,16th Editionに提供されている。
【0004】
適正に機能する補体系は感染微生物に対する強固な防御を提供する一方、補体経路の不適切な調節又は活性化は、種々の障害、例として、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の発病に関与している。PNHは、慢性的な無制御の補体活性化によって引き起こされる極めてまれな障害である。結果として生じる炎症及び細胞損傷が、この疾患の破壊的な臨床症状につながる。
【0005】
PNHは、コントロールされない補体活性が、主に血管内溶血及び血小板活性化を介して全身性合併症をもたらす病態である(Socie G,et al.,French Society of Haematology.Lancet.1996;348(9027):573-577及びBrodsky,R.,Blood.2014;124(18):2804-2811参照)。持続的な血管内溶血は、種々のストレス因子、例えば、感染症又は身体運動により誘発され得、平滑筋収縮(遊離ヘモグロビン)、慢性貧血、及び重篤な血栓塞栓症のリスク増加をもたらす。血栓塞栓症は、PNHを有する患者における最も一般的な死因として、肺高血圧症並びに重要な臓器、例えば、肝臓、腎臓、脳及び腸の末端臓器損傷をもたらし得る(Hillmen,P.,et al,Am.J.Hematol.2010;85(8):553-559)。これらの有害病原性プロセスに起因して、PNHを有する患者は減少した生活の質(QoL)を有し、それとしては消耗性疲労、慢性疼痛、不十分な身体機能、息切れ、腹痛、勃起不全、抗凝固療法、輸血の必要性及び一部の場合、透析の必要性を挙げることができる(Weitz,IC.,et al.,Thromb Res.2012;130(3):361-368)。
PNHを有する患者には、高い罹患率及び死亡率のリスクがある。したがって、本発明の目的は、PNHを有する患者を処置するための改善された方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Merck Manual,16th Edition
【非特許文献2】Socie G,et al.,French Society of Haematology.Lancet.1996;348(9027):573-577
【非特許文献3】Brodsky,R.,Blood.2014;124(18):2804-2811
【非特許文献4】Hillmen,P.,et al,Am.J.Hematol.2010;85(8):553-559
【非特許文献5】Weitz,IC.,et al.,Thromb Res.2012;130(3):361-368
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この本願は、一部には、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の処置における静脈内ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)IV)と比較した皮下ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)SC)を評価する第3相無作為化、非盲検、並行群間、多施設共同研究から得られたデータに基づいている。
【0008】
本明細書に記載されるとおり、皮下ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)SC)は、限定はされないが、PNH、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、全身型重症筋無力症(gMG)、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、補体介在性血栓性微小血管症(CM-TMA)、子癇前症・溶血、高値肝酵素、低血小板数(PE-HELLP)、妊娠誘発性aHUS(p-aHUS)、特に、PNH及びaHUSを含めた種々の補体介在性障害の処置のため、例えば、薬物送達機器を使用して投与することができる。
【0009】
PNHは、赤血球の破壊を特徴とする極めてまれな重度の血液障害である。PNHに起因する慢性溶血により、血餅の形成が生じ(これは全身の至る所にある血管に起こり得る)、重要臓器が損傷し、早期死亡につながる可能性がある。非定型HUSは、補体系が過剰に応答すると起こり、生体がそれ自身の健康な細胞を攻撃することにつながる。aHUSは、血管壁の損傷及び血餅によって重要臓器、主に腎臓の進行性の傷害を引き起こし得る。aHUSは、突然の臓器不全又は時間をかけたゆっくりとした機能喪失-移植が必要になる可能性がある-、及び場合によっては死亡につながり得る。これは成人及び小児の両方に発症し、多くの患者は危篤状態を呈し、集中治療室での透析を含めた支持療法が必要になることが多い。aHUSの予後は多くの場合に不良であり得るため、患者の転帰を改善するためには、時宜を得た正確な診断が-処置に加えて-決定的に重要である。aHUSは、他の溶血性疾患とは臨床検査によって区別することができる。
【0010】
PNH治療におけるULTOMIRIS(登録商標)SCを調べる本研究では、臨床的に安定した、研究登録前の少なくとも3ヵ月間にわたるSOLIRIS(登録商標)(エクリズマブ)による処置歴を過去に有する136例の成人患者が参加した。この研究の主要目的は、71日目におけるULTOMIRIS(登録商標)血清トラフ濃度によって判定したときの、ULTOMIRIS(登録商標)IVと比較したULTOMIRIS(登録商標)SCの薬物動態学的非劣性を判定することであった。様々な副次的評価項目もまた、安全性、免疫原性及び様々な薬物動態/薬力学(PK/PD)、クオリティ・オブ・ライフ、機器性能及び有効性尺度を含め、継続的に評価される。
【0011】
患者は体重群別に層別化され(40kg以上60kg未満及び60kg以上100kg未満)、次にULTOMIRIS(登録商標)SC又はULTOMIRIS(登録商標)IVのいずれかを受けるように2:1に無作為化された。全ての患者が1日目に初回IV負荷用量を受け、15日目に、ULTOMIRIS(登録商標)SC群の患者は、週1回自己投与する固定用量のULTOMIRIS(登録商標)SCを受け始め、ULTOMIRIS IV群の患者は、承認されている体重換算IV用量の単回注入を受けた。
【0012】
この研究では、その主要評価項目が達成され、ULTOMIRIS(登録商標)SCは、血清ラブリズマブトラフ濃度-Cトラフ)に基づけば、71日目時点でULTOMIRIS(登録商標)IVと比べたPK基準の非劣性を実証した。例えば、Cトラフレベルの幾何最小二乗平均(g-LSM)分析を用いると、ULTOMIRIS SCの患者はULTOMIRIS(登録商標)IVの患者よりもCトラフレベルが高いことが分かった(SCのg-LSM/IVのg-LSMの比は約1.257)。これらのデータは、本願のシステム及び本願の機器を使用してULTOMIRIS(登録商標)を送達すると、従来の静脈内送達方法と比較して優れたインビボPKプロファイルがもたらされることを示している。
【0013】
C5マーカーレベルの比較判定では、LDHレベル、ブレイクスルー溶血及び輸血回避、ヘモグロビン安定性並びにPNH総体症状などの有効性評価項目の分析と併せると、ULTOMIRIS(登録商標)SCの患者のプロファイルが、ULTOMIRIS(登録商標)IVの患者に優るとは言わないまでも、それに匹敵するものであることが分かった。このため、C5阻害に関して、IV群及びSC群の両方で、初回用量の後に無作為化処置期間を通して得られた結果は、0.5μg/mL;完全終末補体阻害の規定の閾値以下であった。SC投薬の結果、ラブリズマブ曝露量は175μg/mL以上となり、これが、予期せぬPK所見のない全ての対象についての完全補体阻害の閾値として規定された。有効性評価項目に関して、(a)両方のアームにおいてブレイクスルー溶血低値で、SC群では事象なし;(b)SC群及びIV群のそれぞれ94%及び87%で輸血回避が維持された;(c)SC群及びIV群のそれぞれ94%及び82%で安定ヘモグロビン結果が維持された;及び(d)SC群及びIV群のそれぞれ45%及び47%でPNHの症状が観察された。
【0014】
更に、この研究の71日間の無作為化処置期間を通じた予備的安全性データは、ULTOMIRIS(登録商標)についての公知の安全性プロファイルと整合し、いかなる予期せぬ安全性所見も生じなかった。SC処置アームの患者の26%に投与部位反応が報告された。
【0015】
1例を除く全ての参加者が、本研究の無作為化対照処置部分を完了し、進行中の非盲検延長期間も継続することを選んだ。延長期間では、全ての患者が更に最長182週間にわたってULTOMIRIS(登録商標)SCを毎週受けることになる。この延長期間は、当局への提出書類用の12ヵ月間の安全性データを提供することになる。
【0016】
本開示は、以下の非限定的な実施形態に関する:
一部の実施形態において、本開示は、補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、投与サイクルの間に、配列番号19、18及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む、有効量の抗C5抗体又はその抗原結合断片を患者に投与することを含む方法において、抗C5抗体又はその抗原結合断片が皮下(SC)投与される、方法に関する。
【0017】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、有効量の抗C5抗体、例えば、ラブリズマブ又はエクリズマブ又はそのバイオシミラー抗体を含む機器、例えば、オンボディデリバリーシステム(OBDS)で皮下投与される、方法に関する。
【0018】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、その後毎週490mgの用量で投与される、方法に関する。
【0019】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、ヒト患者が皮下投与前に静脈内負荷用量の投与を受ける、方法に関する。
【0020】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、負荷用量が体重換算用量であり、ここで(i)体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mgの用量が投与され、又は(ii)体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mgの用量が投与される、方法に関する。
【0021】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を更に含み、バリアントヒトFc CH3定常領域が、各々EUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基にMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む、方法に関する。
【0022】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、投与サイクルの15日目及びその後少なくとも7週間にわたって490mg q1wの用量で皮下投与される、方法に関する。
【0023】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、投与サイクルが合計10週間の処置である、方法に関する。
【0024】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、490mg q1wの用量で最長3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月、15ヵ月、18ヵ月、21ヵ月、2年にわたって、又は慢性的に患者の生涯にわたって皮下投与される、方法に関する。
【0025】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、患者が、エクリズマブによる処置歴を過去に有する、方法に関する。
【0026】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、投与サイクルが、患者のエクリズマブ最終回用量から少なくとも2週間経った後に開始される、方法に関する。
【0027】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、配列番号12の重鎖可変領域と配列番号8の軽鎖可変領域とを含む、方法に関する。
【0028】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、配列番号13の重鎖定常領域を更に含む、方法に関する。
【0029】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗体又はその抗原結合断片が、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドと、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドとを含む、方法に関する。
【0030】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、pH7.4及び25℃においてヒトC5に0.1nM≦K≦1nMの範囲にある親和性解離定数(K)で結合する、方法に関する。
【0031】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、pH6.0及び25℃においてヒトC5にK≧10nMで結合する、方法に関する。
【0032】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、投与サイクルの間、抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度が100μg/mL以上に維持される、方法に関する。
【0033】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、補体関連障害が、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、補体介在性血栓性微小血管症(CM-TMA)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、子癇前症・溶血、高値肝酵素、低血小板数(PE-HELLP)、妊娠誘発性aHUS(p-aHUS)、全身型重症筋無力症(gMG)、皮膚筋炎、ギラン・バレー症候群(GBS)からなる群から選択される、方法に関する。
【0034】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによって判定したときの終末補体阻害又は溶血の減少が起こる、方法に関する。
【0035】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、疲労、腹痛、呼吸困難、貧血、嚥下障害、胸痛、及び勃起不全の減少又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果が生じる、方法に関する。
【0036】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連の血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる、方法に関する。
【0037】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、推算糸球体濾過率(eGFR)及びスポット尿:アルブミン:クレアチニン及び血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択される慢性疾患関連バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる、方法に関する。
【0038】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、輸血の必要性及び/又は主要有害血管イベント(MAVE)の減少が生じる、方法に関する。
【0039】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、処置により、慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4版、及び欧州癌研究治療機関(European Organization for Research and Treatment of Cancer)、クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケールによって判定されるクオリティ・オブ・ライフのベースラインからの変化が生じる、方法に関する。
【0040】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、オンボディデリバリーシステム(OBDS)を使用して皮下投与され;好ましくは、OBDSが、SMARTDOSE Gen Iデリバリープラットフォームを含み;より好ましくは、OBDSが、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中のラブリズマブ(70mg/mL)を含む医薬製剤を含む、方法に関する。
【0041】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、皮下投与により、約200μg/ml~約1000μg/ml;好ましくは約400μg/ml~約800μg/ml;特に約550μg/ml~約650μg/mlの血清ラブリズマブトラフ濃度(Cトラフ)がもたらされる、方法に関する。
【0042】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、有効量の皮下投与により、ラブリズマブを含む静脈内製剤と比較して血清ラブリズマブトラフ濃度(Cトラフ)の増加がもたらされ;好ましくはCトラフの増加が約5%~約50%、好ましくは約15%~約35%である、方法に関する。
【0043】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、皮下投与により、患者の遊離C5レベルが減弱し;好ましくは、遊離C5レベルが、処置を受けた患者では、完全終末補体阻害の規定の閾値を下回るまでに、例えば、0.5μg/ml以下に減弱する、方法に関する。
【0044】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、皮下投与により、患者においてラブリズマブの完全補体阻害閾値レベル、例えば、175μg/ml以上のインビボラブリズマブレベルがもたらされる、方法に関する。
【0045】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、有効量のSC投与により、(a)患者のブレイクスルー溶血が減弱し;(b)患者の輸血回避がもたらされ;(c)患者のヘモグロビンレベルが安定化し;(d)患者の少なくとも1つのPNH症状が低下する、方法に関する。
【0046】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が5~9分の注射で投与される、方法に関する。
【0047】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、シングル又はタンデム皮下(SC)機器で;好ましくはタンデム機器で投与される、方法に関する。
【0048】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片が、例えば複数の電気機械的ピンによって、一定流速で投与される、方法に関する。
【0049】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法であって、患者が、40kg~100kgの成人患者である、方法に関する。
【0050】
一部の実施形態において、本開示は、補体介在性病態を処置するための抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下投与機器であって、(a)オンボディデリバリーシステム(OBDS);及び(b)抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下(SC)製剤を含む機器に関する。
【0051】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体介在性病態を処置するための機器であって、OBDSが、SMARTDOSE Gen Iデリバリープラットフォームを含む、機器に関する。
【0052】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体介在性病態を処置するための機器であって、抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下製剤が、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中のラブリズマブ(70mg/mL)を含む、機器に関する。
【0053】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体介在性病態を処置するための機器であって、1週間にわたってヒト患者に490mgの用量を送達する機器に関する。
【0054】
一部の実施形態において、本開示は、補体介在性病態を処置するための有効量の皮下(SC)製剤を含む機器、特にオンボディデリバリーシステム(OBDS)であって、SC製剤が、抗C5抗体、例えば、ラブリズマブ又はエクリズマブ又はそのバイオシミラー抗体、又は抗C5抗体の抗原結合断片を含み;特にSC製剤がラブリズマブを含む、オンボディデリバリーシステム(OBDS)に関する。
【0055】
一部の実施形態において、本開示は、上記又は下記に係る補体介在性病態を処置するためのオンボディデリバリーシステム(OBDS)であって、(a)抗C5抗体の送達用注射装置(プラットフォーム)、(b)プラットフォームに付属する抗C5抗体を含むプレフィルドカートリッジ(PFC);及び(c)伸縮ねじアセンブリ(TSA)を含むOBDSに関する。一部の実施形態において、PFCは、約70mg/mlの濃度の約3.5mlラブリズマブを含む。
【0056】
一部の実施形態において、本開示は、補体関連疾患又は障害を処置するためのキットであって、(a)前述の機器のいずれか1つに係る機器、例えば、オンボディデリバリーシステム(OBDS);及び(b)患者、例えば、ヒト患者への抗C5抗体又はその抗原結合断片の皮下投与用の機器の使用説明書を含むキットに関する。
【0057】
本明細書には、ヒト患者の補体関連病態(例えば、PNH)を処置するための組成物及び方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含む組成物及び方法が提供され、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、特定の臨床投薬量レジメンに従い(即ち、特定の用量の大きさで、及び具体的な投薬スケジュールに従い)皮下に投与される(又はそのような投与用である)。一実施形態において、患者は、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))又はラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標));特に静脈内投与のSOLIRIS(登録商標)又はULTOMIRIS(登録商標)による処置歴を過去に有する。一部の実施形態において、患者は、処置未経験者、特に、抗C5抗体、例えば、(SOLIRIS(登録商標))又はラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))又はそのバイオシミラー抗体による処置の未経験者である。
【0058】
例示的抗C5抗体は、配列番号14及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むラブリズマブ(別名ULTOMIRIS(登録商標)、ALXN1210及び抗体BNJ441)、又はその抗原結合断片及びバリアントである。他の実施形態において、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)又は可変領域(VR)を含む。したがって、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブの重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインと、配列番号8に示される配列を有するラブリズマブの軽鎖可変(VL)領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列とを含む。
【0059】
別の実施形態において、抗体は、配列番号12及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号13に示されるとおりの重鎖定常領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号14に示されるとおりの重鎖ポリペプチドと、配列番号11に示されるとおりの軽鎖ポリペプチドとを含む。別の実施形態において、抗体は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、ここでバリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基にMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0060】
別の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列並びにヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングにおける天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基におけるMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0061】
別の実施形態において、抗体は、上記抗体と同じC5上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はそれに結合する。別の実施形態において、抗体は、上記抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性を有する(例えば、配列番号12及び配列番号8と少なくとも約90%、95%又は99%の可変領域同一性)。
【0062】
別の実施形態において、抗体は、0.1nM≦K≦1nMの範囲の親和性解離定数(K)でpH7.4及び25℃においてヒトC5に結合する。別の実施形態において、抗体は、pH6.0及び25℃においてK≧10nMでヒトC5に結合する。更に別の実施形態において、抗体の[(pH6.0及び25℃におけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のK)/(pH7.4及び25℃におけるヒトC5に対する抗体又はその抗原結合断片のK)]は、25超である。
【0063】
本明細書に記載される方法に従い処置することのできる例示的補体関連病態としては、限定はされないが、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血-再灌流傷害、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、デンスデポジット病、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、補体介在性血栓性微小血管症(CM-TMA)、子癇前症・溶血、高値肝酵素、低血小板数(PE-HELLP)、妊娠誘発性aHUS(p-aHUS)、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、黄斑変性症、HELLP症候群、自然胎児消失、血栓性血小板減少性紫斑病、微量免疫型脈管炎、表皮水疱症、反復胎児消失、外傷性脳傷害、心筋炎、脳血管障害、末梢血管障害、腎血管障害、腸間膜血管/腸内血管障害、脈管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病腎炎、全身性エリテマトーデス関連脈管炎、関節リウマチに関連する脈管炎、免疫複合体性血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管障害、川崎病、静脈ガス塞栓、ステント留置後の再狭窄、回転性粥腫切除術、経皮経管冠動脈形成術、全身型重症筋無力症(gMG)、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、抗リン脂質症候群、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身性炎症反応敗血症、敗血症性ショック、脊髄傷害、糸球体腎炎、移植片拒絶反応、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、デゴス病、劇症型抗リン脂質症候群、及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(別名「SARS-CoV-2」、「COVID-19」、及び「コロナウイルス」)が挙げられる。詳細な実施形態において、補体関連病態は、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)である。別の詳細な実施形態において、補体関連病態は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)である。
【0064】
一態様において、患者(例えば、PNH患者)に抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を400mg~600mgの用量で皮下投与する方法が提供される。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に450~550mgの用量で皮下投与される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に約400mg、405mg、410mg、420mg、425mg、430mg、435mg、440mg、445mg、450mg、455mg、460mg、465mg、470mg、475mg、480mg、485mg、490mg、495mg、500mg、505mg、510mg、515mg、520mg、525mg、530mg、535mg、540mg、545mg、550mg、555mg、560mg、565mg、570mg、575mg、580mg、585mg、590mg、595mg、又は600mgの用量で皮下投与される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に又は約490mgの用量で皮下投与される。
【0065】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者(例えば、PNH患者)に又は約490mgの用量で週1回(例えば、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、2年、3年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって)皮下投与される。
【0066】
別の態様において、補体関連病態(例えば、PNH)を有する患者を処置する方法が提供され、ここで患者は、初回用量(例えば、負荷用量)の抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を静脈内投与され、続いて抗C5抗体、又はその抗原結合断片を(例えば、2週間後に)皮下投与される。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の静脈内用量は、患者の体重で換算したものである。例えば、一実施形態において、体重が40kg以上60kg未満の患者は、抗C5抗体、又はその抗原結合断片による皮下処置の前に、2400mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を静脈内投与される。別の実施形態において、体重が60kg以上100kg未満の患者は、抗C5抗体、又はその抗原結合断片による皮下処置の前に、2700mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を静脈内投与される。
【0067】
別の実施形態において、患者は、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の皮下投与を(例えば、490mgの用量で)週1回(例えば、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、2年、3年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって)投与される。
【0068】
別の実施形態において、患者は、ある用量(例えば、2400mg又は2700mg)の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与サイクルの1日目に静脈内投与され、続いて抗C5抗体、又はその抗原結合断片を(例えば、490mgの用量で)投与サイクルの15日目及びその後毎週(例えば、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、2年、3年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって)皮下投与される。
【0069】
別の実施形態において、補体関連病態(例えば、PNH)を有するヒト患者を処置する方法が提供され、この方法は、投与サイクルの間に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に1回、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与される。
【0070】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が40kg以上60kg未満の患者に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で静脈内に;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。
【0071】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が60kg以上100kg未満の患者に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で静脈内に;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。
【0072】
別の実施形態において、補体関連病態(例えば、PNH)を有するヒト患者を処置する方法が提供され、この方法は、投与サイクルの間に、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3軽鎖配列とを含む、有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に1回、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与される。
【0073】
別の実施形態において、補体関連病態(例えば、PNH)を有するヒト患者を処置する方法が提供され、この方法は、投与サイクルの間に、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3軽鎖配列と、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域とを含む、有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、ここでバリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基にMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与される。
【0074】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、静脈内投与用に(例えば、初回負荷用量として)製剤化される。例えば、一実施形態において、静脈内投与用の製剤は、10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、及び注射用水中の300mgのラブリズマブ(10mg/mL)を含む。別の実施形態において、静脈内投与用の製剤は、10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、及び注射用水中の300mgのラブリズマブ(10mg/mL)からなる。別の実施形態において、静脈内投与用のラブリズマブは、単回使用の30mLバイアルに入った無菌で保存剤無添加の濃縮水溶液(10mg/mL)として製剤化される。
【0075】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、皮下投与用に製剤化される。例えば、一実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)からなる。別の実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)からなる。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、7.4のpHで製剤化される。
【0076】
本明細書に記載される方法に従う抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)の皮下投与は、任意の好適な手段によって達成することができる。加えて、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、医療専門家によって皮下投与することができ、又は自己投与することができる。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、オンボディデリバリーシステム(OBDS)を使用して皮下投与される。一実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、3.5mL単回使用カートリッジに供給される。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブの各カートリッジは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を収容する。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブの各カートリッジは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を収容する。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、単回使用のオンボディデリバリーシステムで使用するように設計された単回使用の3.5mLプレフィルドカートリッジ内にある、無菌で保存剤無添加の濃縮水溶液(70mg/mL)として製剤化される。一実施形態において、OBDSは、SmartDose(登録商標)ドラッグデリバリープラットフォームである。別の実施形態において、ラブリズマブは、West SmartDose(登録商標)Gen.I 3.5mLを使用して単回使用のOBDSで皮下注射によって投与される。
【0077】
一実施形態において、投与サイクルは、合計10週間の処置である。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、投与サイクル後週1回、490mgの用量で、最長3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月、15ヵ月、18ヵ月、21ヵ月、2年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって皮下投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法に従い処置される患者は、補体阻害薬による処置歴を過去に有する。一実施形態において、患者は、エクリズマブによる処置歴を過去に有する。別の実施形態において、患者は、少なくとも1ヵ月、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも5ヵ月、少なくとも6ヵ月、少なくとも7ヵ月、少なくとも8ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも10ヵ月、少なくとも11ヵ月、少なくとも12ヵ月、少なくとも18ヵ月、又は少なくとも24ヵ月にわたるエクリズマブによる処置歴を過去に有する。詳細な実施形態において、患者は、少なくとも6ヵ月にわたるエクリズマブによる処置歴を過去に有する。別の実施形態において、患者は、2週間毎に900mgの用量のエクリズマブによる処置歴を過去に有する。別の実施形態において、処置は、患者のエクリズマブ最終回用量から少なくとも2週間経った後に開始される。
【0078】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法に従い処置される患者は、処置の開始前3年以内に、又は開始時点で、髄膜炎菌感染症に対するワクチンを接種済みである。一実施形態において、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で処置を受けた患者は、ワクチン接種後2週間まで適切な予防的抗生物質によっても処置される。別の実施形態において、本明細書に記載される方法に従い処置される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135、及び/又はBに対するワクチンを接種される。
【0079】
別の態様において、本明細書に記載される処置レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するために十分なものである。例えば、一実施形態において、処置は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395又は400μg/ml以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は100μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は150μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は200μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は250μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は300μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は100μg/ml~200μg/mlに維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は約175μg/mlに維持される。
【0080】
一部の実施形態において、有効な応答を得るため、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。
【0081】
本明細書に提供される処置方法の有効性は、任意の好適な手段を用いて判定することができる。一実施形態において、PNH患者については、処置により、疲労、腹痛、呼吸困難、貧血[ヘモグロビン<10g/dL]、嚥下障害、胸痛、及び勃起不全の減少又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果が生じる。
【0082】
別の実施形態において、処置により、終末補体阻害が起こる。
【0083】
別の実施形態において、処置により、輸血の必要性の減少が生じる。
【0084】
別の実施形態において、処置により、患者の処置前ベースラインからのヘモグロビン安定化の増加が生じる。
【0085】
別の実施形態において、処置により、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる。
【0086】
別の実施形態において、処置により、エクリズマブによる処置と比べてブレイクスルー溶血の減少が起こる。別の実施形態において、処置により、処置期間中のブレイクスルー溶血の消失が起こる。別の実施形態において、処置により、処置前ベースラインブレイクスルー溶血量と比較してブレイクスルー溶血の減少が起こる。
【0087】
別の実施形態において、処置により、主要有害血管イベント(MAVE)の減少が生じる。別の実施形態において、処置により、推算糸球体濾過率(eGFR)及びスポット尿:アルブミン:クレアチニン及び血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択される慢性疾患関連バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる。
【0088】
別の実施形態において、処置により、慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4版及び欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)、クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケールによって判定したときのクオリティ・オブ・ライフのベースラインからの変化が生じる。
【0089】
詳細な実施形態において、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルを使用して、治療に対する反応性が評価される(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによって判定したときの溶血の減少は、PNHの少なくとも1つ徴候の改善の指標となる)。例えば、一実施形態において、本明細書に記載される処置により、LDHレベルの正常化が起こる。
【0090】
一実施形態において、本開示の方法に従い処置される患者には、LDHレベルがほぼ正常レベルになる、又は正常レベルと見なされるものから上に10%以内、又は20%以内(例えば、105~333IU/L(国際単位毎リットル)の範囲内)になるような減少が見られる。別の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置の維持期間全体を通じて正常化する。別の実施形態において、治療された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中にある時間の少なくとも少なくとも95%で正常化する。別の実施形態において、治療された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中にある時間の少なくとも少なくとも90%、85%又は80%で正常化する。
【0091】
一実施形態において、本開示の方法に従い処置される患者には、LDHレベルが正常レベルの範囲内になる、又は正常レベルの上限と見なされるものから下に10%、20%、30%、40%以内又は50%以内(例えば、105~333IU/L(国際単位毎リットル)の範囲内になるような減少が見られる。
【0092】
別の態様において、
(a)投与サイクルの1日目に、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与のための、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む、抗C5抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
【0093】
また、本明細書に記載される方法における使用に適している処置有効量の、ラブリズマブなど、抗C5抗体、又はその抗原結合断片と、薬学的に許容可能な担体とを含有する医薬組成物を含むキットも提供される。例えば、一実施形態において、補体関連病態(例えば、PNH)を有するヒト患者を処置するためのキットが提供され、このキットは、(a)配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む、ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片;及び(b)本明細書に記載される方法における抗C5抗体、又はその抗原結合断片の使用についての説明書を含む。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が40kg以上60kg未満の患者に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で静脈内に;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が60kg以上100kg未満の患者に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で静脈内に;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。詳細な実施形態において、抗C5抗体はラブリズマブである。
【0094】
更に、オンボディ注射装置と一体に包装された皮下投与用のラブリズマブのプレフィルドカートリッジを含む機器が提供される。一実施形態において、この機器は、無菌であり、単回使用向けであり、ディスポーザブルであり、及び/又は電気機械的である。別の実施形態において、オンボディ注射装置は、29ゲージ針を含む。別の実施形態において、プレフィルドカートリッジは、3.5mLカートリッジである。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)からなる。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)からなる。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、約7.4のpHで製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)疲労サブスケール第4版質問票を示す。
図2A】[図2A-2B]欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)クオリティ・オブ・ライフ質問票(コア30)を示す。
図2B】[図2A-2B]欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)クオリティ・オブ・ライフ質問票(コア30)を示す。
図3】治療投与満足度質問票、静脈内投与用(Treatment Administration Satisfaction Questionnaire for Intravenous Administration:TASQ-IV)の見本を示す。
図4】治療投与満足度質問票、皮下投与用(Treatment Administration Satisfaction Questionnaire for Subcutaneous Administration:TASQ-SC)の見本を示す。
図5】現在エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))で処置されている成人PNH患者における(IV)静脈内に対して皮下投与(SC)されるラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))の第3相非劣性研究のデザインを図示する概略図である。ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))SC投薬量は、以下のとおりである:1日目負荷用量(IV)=40kg以上60kg未満の患者について2400mg及び60kg以上100kg未満の患者について2700mg;15日目及び全ての後続のSC用量=全ての患者について490mg毎週。ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))IV投薬量は、以下のとおりである:1日目負荷用量(IV)=40mg以上60kg未満の患者について2400mg及び60kg以上100kg未満の患者について2700mg;15日目維持用量(IV)=40kg以上60kg未満の患者について3000mg、60kg以上100kg未満の患者について3300mg。延長期間維持用量(SC)は、全ての患者について490mg毎週である。
図6】患者の配分及び解析対象集団の要約。
図7A】[図7A-7B]患者の人口統計学的情報及びベースライン特性評価を示す。
図7B】[図7A-7B]患者の人口統計学的情報及びベースライン特性評価を示す。
図8】一次PK非劣性分析を示す。以下の略語を用いる:SE=標準誤差;LSM=最小二乗平均;CI=信頼区間。
図9】PK非劣性のフォレストプロットである。
図10】血清ラブリズマブ濃度平均値を図示する。
図11】遊離C5濃度を図示する。
図12】乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)平均値を図示する。
図13】ブレイクスルー溶血及び輸血回避を示す。
図14】ヘモグロビン安定性及びPNH総体症状を示す。
図15】治療下で発現した有害事象(AE)の概要を提供する。
図16】重篤有害事象(SAE)の要約である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
I.定義
本明細書で使用されるとき、用語「対象」又は「患者」は、ヒト患者(例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を有する患者)である。
【0097】
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、成人において最も高頻度で生じる後天性溶血性障害である(Brodsky,RA.,Blood.2015;126:2459-65)。この疾患は、PIGA遺伝子における体細胞突然変異を獲得した造血幹細胞のクローン性増殖から開始する(Brodsky,RA.,Blood.2014;124:2804-11)。結果として、PNH血球はグリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質を欠き、膜結合補体阻害タンパク質CD55及びCD59を欠損している。CD55の不存在下で、血球膜表面上の補体タンパク質C3開裂産物の沈着が増加し、後にC5のC5a及びC5bへの開裂をもたらす。PNHを有する患者における病変及び臨床所見は、コントロールされない終末補体活性化により引き起こされる。
【0098】
C5aは、複数の炎症促進及び血栓形成促進活性を媒介する強力なアナフィラトキシン、化学走化性因子、及び細胞活性化分子である(Matis,LA,et al.,Nat.Med.1995;1:839-42;Prodinger et al.,Complement.In:Paul WE、editor.Fundamental immunology(4th ed).Philadelphia:Lippincott-Raven Publishers;1999.p.967-95)。C5bは、終末補体成分C6、C7、C8及びC9を動員して炎症促進性で血栓形成促進性の細胞溶解細孔分子C5b-9を形成し、これは通常の状況下では赤血球(RBC)膜上でCD59により遮断されるプロセスである。しかしながら、PNHを有する患者において、これらの最終ステップは、チェックされずに進行し、溶血及び遊離ヘモグロビンの放出、並びに血小板活性化に至る(Hill,et al.,Blood.2013;121:4985-96)。PNHの徴候及び症状は、慢性のコントロールされない補体C5開裂、並びにRBC溶血をもたらすC5a及びC5b-9の放出に起因し得、それらが一緒になって、溶血の直接的結果としての細胞内遊離ヘモグロビン及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の循環中への放出、ヘモグロビンによる一酸化窒素(NO)への不可逆的結合及びその不活性化、並びにNO合成の阻害、血管拡張性NOの不存在に起因する血管収縮及び組織層虚血、並びに腹痛、嚥下困難、及び勃起不全として現れる可能性のある微小血栓、血小板活性化、並びに炎症促進性及び血栓形成促進性状態をもたらす(Hill,et al.,Blood 2013;121:4985-96;Brodsky RA.,Blood.2014;124:2804-1)。
【0099】
かなりの割合のPNH患者に腎機能不全及び肺高血圧症が見られる(Hillmen,et al.,Am J Hematol.2010;85:553-9.[erratum in Am J Hematol.2010;85:911.];Hill,et al.,Br.J Haematol.2012;158:409-14.;Hill,et al.,Blood 2013;121:4985-96)。患者にはまた、腹部又は中枢神経系を含めた様々な部位における静脈又は動脈血栓症も見られる(Brodsky RA.,Blood.2014;124:2804-1)。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「有効な処置」とは、有益な効果、例えば、疾患又は障害の少なくとも1つの症状の緩和を生み出す処置を指す。有効な処置とは、PNHの少なくとも1つの症状(例えば、疲労、腹痛、呼吸困難、貧血、嚥下障害、胸痛、又は勃起不全)の軽減を指し得る。有益な効果は、ベースラインと比べた改善、即ち、本方法に係る治療の開始前に行われた測定又は観察と比べた改善の形をとり得る。
【0101】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状若しくは原因の1つ以上の低減、好転、緩和、低下、遅延、及び/又は軽減、又は生物系の任意の他の所望の変更であり得る。一例では、「有効量」は、PNHの少なくとも1つの症状(例えば、疲労、腹痛、呼吸困難、貧血、嚥下障害、胸痛、又は勃起不全)を軽減することが臨床的に証明された抗C5抗体、又はその抗原結合断片の量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。
【0102】
本明細書で使用されるとき、用語「誘導」及び「誘導相」は同義的に使用され、処置の第1段階を指す。
【0103】
本明細書で使用されるとき、用語「維持」及び「維持相」は同義的に使用され、処置の第2段階を指す。特定の実施形態において、処置は、臨床的有益性が観察されている限り、又は管理不能な毒性若しくは病勢進行が発生するまで継続される。
【0104】
本明細書で使用されるとき、用語「負荷用量」は、患者に投与される初期用量を指す。例えば、負荷量は、2400mg又は2700mgであってもよい。負荷用量は、体重換算で力価が決定され得る。一実施形態において、負荷用量は、患者に静脈内投与される。別の実施形態において、負荷用量は、患者に皮下投与される。
【0105】
本明細書で使用されるとき、用語「維持用量」は、負荷用量の後に患者に投与される用量を指す。例えば、維持用量は、約400mg、405mg、410mg、420mg、425mg、430mg、435mg、440mg、445mg、450mg、455mg、460mg、465mg、470mg、475mg、480mg、485mg、490mg、495mg、500mg、505mg、510mg、515mg、520mg、525mg、530mg、535mg、540mg、545mg、550mg、555mg、560mg、565mg、570mg、575mg、580mg、585mg、590mg、595mg、又は600mgの用量であってもよい。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の維持用量は、490mgである。一実施形態において、負荷用量は、患者に皮下投与される。
【0106】
本明細書で使用されるとき、用語「血清トラフレベル」は、薬剤(例えば、抗C5抗体、又はその抗原結合断片)又は医薬が血清中に存在する最も低いレベルを指す。対照的に、「ピーク血清レベル」は、血清中の薬剤の最も高いレベルを指す。「平均血清レベル」は、時間の経過に伴う血清中の薬剤レベルの平均値を指す。
【0107】
一実施形態において、記載される処置レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。例えば、一実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、又は400μg/ml以上に維持される。一実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は100μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は150μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は200μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は250μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は300μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は100μg/ml~200μg/mlに維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は約175μg/mlに維持される。
【0108】
一部の実施形態において、有効な反応を得るため、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、又は260μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。
【0109】
別の実施形態において、有効な反応を得るため、抗C5抗体は、最低遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。例えば、一実施形態において、抗C5抗体は、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mL又はそれ未満の遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態において、抗C5抗体は、0.309~0.5μg/mLの遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態において、本明細書に記載される処置により、処置期間全体を通じて遊離C5濃度が99%を超えて減少する。別の実施形態において、処置により、処置期間全体を通じて遊離C5濃度が99.5%を超えて減少する。
【0110】
用語「抗体」は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域若しくはFv、又はCDR)を含むポリペプチドを記載する。抗体としては、公知の形態の抗体が挙げられる。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、又はキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディ、又はドメイン抗体でもあり得る。抗体は、以下のアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、及びIgEのいずれかのものでもあり得る。抗体は、天然に存在する抗体であり得、又はタンパク質工学操作技術により(例えば、突然変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションにより)変更された抗体であり得る。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1つ以上のバリアントアミノ酸(天然に存在する抗体と比較して)を含み得る。例えば、多数のそのような変更は当技術分野で公知であり、それらは、例えば、患者における抗体の半減期、エフェクター機能、及び/又はそれに対する免疫応答に影響を及ぼす。抗体という用語には、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工又は工学操作ポリペプチド構築物も含まれる。
【0111】
II.抗C5抗体
本明細書に記載される抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、C5が断片C5a及びC5bへと切断されるのを阻害する。本発明での使用に好適な抗C5抗体(又はそれに由来するVH/VLドメイン)は、当技術分野で周知の方法を用いて生成することができる。或いは、当技術分野で認められている抗C5抗体を使用することができる。当技術分野で認められているこれらの抗体のいずれかとC5への結合に関して競合する抗体もまた使用することができる。
【0112】
エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標)としても公知)は、配列番号10及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗C5抗体、又はその抗原結合断片及びバリアントである。エクリズマブは、PCT/US1995/005688及び米国特許第6,355,245号に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、抗C5抗体は、配列番号7に示される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号1、2、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号7及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0113】
例示的な抗C5抗体は、配列番号14及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含むラブリズマブ、又はその抗原結合断片及びバリアントである。ラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標)、BNJ441及びALXN1210としても公知)は、PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。ULTOMIRIS(登録商標)、BNJ441、及びALXN1210という用語は、本文書全体を通して互換的に使用され得るが、全て同じ抗体を指す。ラブリズマブは、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化の間のそのC5a及びC5bへの開裂を阻害する。この阻害は、微生物のオプソニン化及び免疫複合体のクリアランスに不可欠な補体活性化の近位又は早期成分(例えば、C3及び3b)を保存しつつ、炎症促進性メディエーターC5aの放出及び細胞溶解細孔形成膜侵襲複合体(MAC)C5b-9の形成を防止する。
【0114】
他の実施形態において、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。例えば、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するラブリズマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号12及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0115】
別の例示的な抗C5抗体は、配列番号20及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗体BNJ421、又はその抗原結合断片及びバリアントである。BNJ421(ALXN1211としても公知)は、PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
他の実施形態において、抗体は、BNJ421の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。したがって、一実施形態において、抗体は、配列番号12に示される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びに配列番号8に示される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号4、5、及び6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号12及び配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0117】
CDRの正確な境界は、様々な方法に従って様々に定義されてきた。一部の実施形態において、軽鎖又は重鎖可変ドメイン内のCDR又はフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.[(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]により定義され得る。このような場合、CDRは、「Kabat CDR」(例えば、「Kabat LCDR2」又は「Kabat HCDR1」)と称することができる。一部の実施形態において、軽鎖又は重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883により定義されるとおりであり得る。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」又は「Chothia HCDR3」)と称することができる。一部の実施形態において、軽鎖及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothia組み合わせ定義により定義されるとおりであり得る。このような実施形態において、これらの領域は、「組み合わせKabat-Chothia CDR」と称することができる。Thomas et al.[(1996)Mol Immunol 33(17/18):1389-1401]は、Kabat及びChothiaの定義に従うCDR境界の同定を例示している。
【0118】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
【化1】
を含み、又はそれからなる重鎖CDR1を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
【化2】
を含み、又はそれからなる重鎖CDR2を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
【化3】
を含む重鎖可変領域を含む。
【0119】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIK(配列番号8)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0120】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載の7086抗体である。一実施形態において、抗体は、7086抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む(米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書参照)。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号21、22、及び23にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号24、25、及び26にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号27に示される配列を有する7086抗体のVH領域、及び配列番号28に示される配列を有する7086抗体のVL領域を含む。
【0121】
別の例示的な抗C5抗体は、同様に米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載の8110抗体である。一実施形態において、抗体は、8110抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号29、30、及び31にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号32、33、及び34にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号35に示される配列を有する8110抗体のVH領域、及び配列番号36に示される配列を有する8110抗体のVL領域を含む。
【0122】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2016/0176954A1号明細書に記載の305LO5抗体である。一実施形態において、抗体は、305LO5抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号37、38、及び39にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン、並びに配列番号40、41、及び42にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号43に示される配列を有する305LO5抗体のVH領域、及び配列番号44に示される配列を有する305LO5抗体のVL領域を含む。
【0123】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa T.,et al.,Rep.2017 Apr 24;7(1):1080)に記載のSKY59抗体である。一実施形態において、抗体は、SKY59抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む。
【0124】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第20170355757号明細書に記載のREGN3918抗体(H4H12166PPとしても公知)である。一実施形態において、抗体は、配列番号47を含む重鎖可変領域及び配列番号48を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態において、抗体は、配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む。
【0125】
別の実施形態において、抗体は、上述の抗体(例えば、エクリズマブ、ラブリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体、又はREGN3918抗体)と結合に関して競合し、及び/又はそれとC5上の同じエピトープに結合する。別の実施形態において、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の可変領域同一性)を有する。
【0126】
本明細書に記載の抗C5抗体は、一部の実施形態において、バリアントヒトFc定常領域が由来した天然ヒトFc定常領域の親和性よりも高い親和性でヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含む。例えば、Fc定常領域は、バリアントヒトFc定常領域が由来した天然ヒトFc定常領域と比べて1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、又は8つ以上の)アミノ酸置換を含み得る。pH6.0において、置換は、相互作用のpH依存性を維持しつつ、バリアントFc定常領域を含有するIgG抗体のFcRnに対する結合親和性を増加させ得る。
【0127】
抗体のFc定常領域のFcRnに対する結合親和性を向上させる置換は当技術分野で公知であり、それとしては、例えば、(1)Dall’Acqua et al.(2006)J Biol Chem 281:23514-23524により記載されているM252Y/S254T/T256E三重置換;(2)Hinton et al.(2004)J Biol Chem 279:6213-6216及びHinton et al.(2006)J Immunol 176:346-356に記載のM428L又はT250Q/M428L置換;並びに(3)Petkova et al.(2006)Int Immunol 18(12):1759-69に記載のN434A又はT307/E380A/N434A置換が挙げられる。追加の置換ペア:P257I/Q311I、P257I/N434H、及びD376V/N434Hが、例えば、Datta-Mannan et al.(2007)J Biol Chem 282(3):1709-1717に記載されており、その開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。抗体のFc定常領域における1つ以上の置換により、pH6.0でのFcRnに対するFc定常領域の親和性が(この相互作用のpH依存性は維持しつつ)増加するかどうかを試験する方法は、当技術分野で公知であり、実施例に例示される。例えば、PCT/US2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書(これらの各々の開示は、全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0128】
一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基255においてバリンについての置換を有する。一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基309におけるアスパラギンについての置換を有する。一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基312においてイソロイシンについての置換を有する。一部の実施形態において、バリアント定常領域は、EUアミノ酸残基386における置換を有する。
【0129】
一部の実施形態において、バリアントFc定常領域は、それが由来した天然定常領域に対して30個以下(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2つ以下)のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を含む。一部の実施形態において、バリアントFc定常領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I、及びV308Fからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントヒトFc定常領域は、EUナンバリングで各々天然ヒトIgGのFc定常領域の428位におけるメチオニン及び434位におけるアスパラギンを含む。一部の実施形態において、バリアントFc定常領域は、例えば、米国特許第8,088,376号明細書に記載のとおり428L/434S二重置換を含む。
【0130】
一部の実施形態において、バリアント定常領域は、天然ヒトFc定常領域に対してアミノ酸237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434、又は436位(EUナンバリング)における置換を含む。一部の実施形態において、置換は、全てEUナンバリングで、237位におけるグリシンに代えてメチオニン;238位におけるプロリンに代えてアラニン;239位におけるセリンに代えてリジン;248位におけるリジンに代えてイソロイシン;250位におけるトレオニンに代えてアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシン;252位におけるメチオニンに代えてフェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシン;254位におけるセリンに代えてトレオニン;255位におけるアルギニンに代えてグルタミン酸;256位におけるトレオニンに代えてアスパラギン酸、グルタミン酸、又はグルタミン;257位におけるプロリンに代えてアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、トレオニン、又はバリン;258位におけるグルタミン酸に代えてヒスチジン;265位におけるアスパラギン酸に代えてアラニン;270位におけるアスパラギン酸に代えてフェニルアラニン;286位におけるアスパラギンに代えてアラニン、又はグルタミン酸;289位におけるトレオニンに代えてヒスチジン;297位におけるアスパラギンに代えてアラニン;298位におけるセリンに代えてグリシン;303位におけるバリンに代えてアラニン;305位におけるバリンに代えてアラニン;307位におけるトレオニンに代えてアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシン;308位におけるバリンに代えてアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、又はトレオニン;309位におけるロイシン又はバリンに代えてアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、又はアルギニン;311位におけるグルタミンに代えてアラニン、ヒスチジン、又はイソロイシン;312位におけるアスパラギン酸に代えてアラニン又はヒスチジン;314位におけるロイシンに代えてリジン又はアルギニン;315位におけるアスパラギンに代えてアラニン又はヒスチジン;317位におけるリジンに代えてアラニン;325位におけるアスパラギンに代えてグリシン;332位におけるイソロイシンに代えてバリン;334位におけるリジンに代えてロイシン;360位におけるリジンに代えてヒスチジン;376位におけるアスパラギン酸に代えてアラニン;380位におけるグルタミン酸に代えてアラニン;382位におけるグルタミン酸に代えてアラニン;384位におけるアスパラギン又はセリンに代えてアラニン;385位におけるグリシンに代えてアスパラギン酸又はヒスチジン;386位におけるグルタミンに代えてプロリン;387位におけるプロリンに代えてグルタミン酸;389位におけるアスパラギンに代えてアラニン又はセリン;424位におけるセリンに代えてアラニン;428位におけるメチオニンに代えてアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、又はチロシン;433位におけるヒスチジンに代えてリジン;434位におけるアスパラギンに代えてアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、又はチロシン;及び436位におけるチロシン又はフェニルアラニンに代えてヒスチジンからなる群から選択される。
【0131】
一部の実施形態において、これらの突然変異の厳密な位置は、抗体操作に起因して天然ヒトFc定常領域の位置からシフトし得る。例えば、IgG2/4キメラFcで使用されるときの428L/434S二重置換は、米国特許第9,079,949号明細書(この開示は全体として参照により本明細書に援用される)に記載される、BNJ441(ラブリズマブ)に見られるM429L及びN435Sバリアントにあるとき429L及び435Sに対応し得る。
【0132】
本明細書に記載の方法における使用のための好適な抗C5抗体は、一部の実施形態において、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。或いは、本明細書に記載の方法における使用のための抗C5抗体は、一部の実施形態において、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0133】
一実施形態において、抗体は、25℃においてpH7.4(そうでなければ生理学的条件下で)少なくとも0.1(例えば、少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95、又は0.975)nMの親和性解離定数(K)でC5に結合する。一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片のKは、1nM以下(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、又は0.2nM以下)である。
【0134】
他の実施形態において、解離指数[(pH6.0、25℃におけるC5に対する抗体のK)/(pH7.4、25℃におけるC5に対する抗体のK)]は、21超(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、又は8000超)である。
【0135】
抗体がタンパク質抗原に結合するか否か及び/又はタンパク質抗原に対する抗体についての親和性を決定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、抗体のタンパク質抗原への結合は、種々の技術、例えば、限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)、又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して検出及び/又は定量化することができる。例えば、Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,”Humana Press(ISBN:1588290921);Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198;Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26;及びJonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627参照。更に、親和性(例えば、解離及び会合定数)を測定する方法は実施例に示される。
【0136】
本明細書において使用される場合、用語「k」は、抗原への抗体の会合についての速度定数を指す。用語「k」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を指す。そして、用語「K」は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、速度論的速度定数の比K=k/kから推定される。このような決定は好ましくは、25℃又は37℃において測定される(実施例参照)。例えば、ヒトC5への抗体結合のキネティクスは、抗体を固定化するための抗Fc捕捉方法を使用してBIAcore3000機器での表面プラズモン共鳴(SPR)を介してpH8.0、7.4、7.0、6.5及び6.0において決定することができる。
【0137】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5a及び/又はC5b活性断片の生成又は活性を遮断する。この遮断効果を介して、抗体は、例えば、C5aの炎症促進効果及び細胞の表面におけるC5b-9膜侵襲複合体(MAC)の生成を阻害する。
【0138】
本明細書に記載の特定の抗体がC5開裂を阻害するか否かを決定する方法は、当技術分野で公知である。ヒト補体成分C5の阻害は、対象の体液中の補体の細胞溶解能を低減し得る。体液中に存在する補体の細胞溶解能のそのような低減は、当技術分野で周知の方法により、例えば、慣用の溶血アッセイなど、例えば、Kabat and Mayer(eds.),“Experimental Immunochemistry,2ndEdition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages 135-139により記載されている溶血アッセイ、又はそのアッセイの慣用の変法、例えば、Hillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載のニワトリ赤血球溶血法により測定することができる。候補化合物がヒトC5の形態C5a及びC5bへの開裂を阻害するか否かを決定する方法は、当技術分野で公知であり、Evans et al.(1995)Mol Immunol 32(16):1183-95に記載されている。例えば、体液中のC5a及びC5bの濃度及び/又は生理学的活性は、当技術分野で周知の方法により測定することができる。C5bについては、本明細書に考察される溶血アッセイ又は可溶性C5b-9についてのアッセイを使用することができる。当技術分野で知られている他のアッセイを使用することもできる。これらの又は他の好適なタイプのアッセイを使用して、ヒト補体成分C5を阻害し得る候補剤をスクリーニングすることができる。
【0139】
免疫学的技術、例えば、限定されるものではないが、ELISAを使用してC5及び/又はその分割産物のタンパク質濃度を測定して抗C5抗体、又はその抗原結合断片がC5の生物学的に活性な生成物への変換を阻害する能力を決定することができる。一部の実施形態において、C5aの生成を測定する。一部の実施形態において、C5b-9ネオエピトープ特異的抗体を使用して終末補体の形成を検出する。
【0140】
溶血アッセイを使用して補体活性化に対する抗C5抗体、又はその抗原結合断片の阻害活性を決定することができる。例えば、溶血素で被覆したヒツジ赤血球又は抗ニワトリ赤血球抗体で感作したニワトリ赤血球を標的細胞として使用して、抗C5抗体、又はその抗原結合断片がインビトロで血清試液中の古典的補体経路媒介性溶血に及ぼす効果を決定することができる。溶解の割合は、阻害剤の不存在下で生じる溶解に等しい100%の溶解を考慮することにより正規化する。一部の実施形態において、古典的補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Classical Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL CP310,Euro-Diagnostica,Sweden)において利用されるように、ヒトIgM抗体により活性化される。簡潔に述べると、検査血清をヒトIgM抗体の存在下で抗C5抗体、又はその抗原結合断片とインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、混合物を酵素コンジュゲート抗C5b-9抗体及び蛍光性基質と接触させ、適切な波長において吸光度を測定することにより測定する。対照として、検査血清を抗C5抗体、又はその抗原結合断片の不存在下でインキュベートする。一部の実施形態において、検査血清は、C5ポリペプチドで再構成されたC5欠損血清である。
【0141】
非感作ウサギ又はモルモット赤血球を標的細胞として使用して、抗C5抗体、又はその抗原結合断片が代替経路媒介性溶血に及ぼす効果を決定することができる。一部の実施形態において、血清検査溶液は、C5ポリペプチドで再構成されたC5欠損血清である。溶解の割合は、阻害剤の不存在下で生じる溶解に等しい100%の溶解を考慮することにより正規化する。一部の実施形態において、代替補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標)Alternative Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL AP330,Euro-Diagnostica,Sweden)において利用されるように、リポ多糖分子により活性化される。簡潔に述べると、検査血清をリポ多糖の存在下で抗C5抗体、又はその抗原結合断片とインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、混合物を酵素コンジュゲート抗C5b-9抗体及び蛍光性基質と接触させ、適切な波長において蛍光度を測定することにより測定する。対照として、検査血清を抗C5抗体、又はその抗原結合断片の不存在下でインキュベートする。
【0142】
一部の実施形態において、C5活性、又はその阻害は、CH50eqアッセイを使用して定量化する。CH50eqアッセイは、血清における総古典的補体活性を測定する方法である。これは溶解アッセイ検査であり、古典的補体経路の活性化因子としての抗体感作赤血球及び検査血清の種々の希釈物を使用して50%溶解を得るために要求される量(CH50)を決定する。溶血率は、例えば、分光光度計を使用して決定することができる。CH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC)形成の間接的尺度を提供するが、それはTCC自体が、測定された溶血を直接担うためである。
【0143】
このアッセイは周知であり、当業者により一般的に実施される。簡潔に述べると、古典的補体経路を活性化させるため、非希釈血清サンプル(例えば、再構成されたヒト血清サンプル)を、抗体感作赤血球を含有するマイクロアッセイウェルに添加し、それによりTCCを生成する。次に、活性化された血清を、捕捉試薬(例えば、TCCの1つ以上の成分に結合する抗体)で被覆されたマイクロアッセイウェル中で希釈する。活性化されたサンプル中に存在するTCCは、マイクロアッセイウェルの表面を被覆するモノクローナル抗体に結合する。ウェルを洗浄し、検出可能に標識され、結合したTCCを認識する、検出試薬を各ウェルに添加する。検出可能な標識は、例えば、蛍光標識又は酵素標識であり得る。アッセイ結果は、1ミリリットル当たりのCH50単位当量(CH50U Eq/mL)で表現する。
【0144】
阻害としては、例えば、終末補体活性に関する場合、同様の条件下で等モル濃度において対照抗体(又はその抗原結合断片)の効果と比較して、例えば、溶血アッセイ又はCH50eqアッセイにおいて終末補体の活性の少なくとも5(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60)%の減少が挙げられる。有意な阻害は、本明細書において使用される場合、少なくとも40(例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、若しくは95又はそれを超える)%の所与の活性(例えば、終末補体活性)の阻害を指す。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗C5抗体は、エクリズマブのCDR(すなわち、配列番号1~6)に対して1つ以上のアミノ酸置換を含有し、溶血アッセイ又はCH50eqアッセイにおいてエクリズマブの補体阻害活性の少なくとも30(例えば、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95)%を依然として保持する。
【0145】
本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいて少なくとも20(例えば、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、又は55)日の血清半減期を有する。別の実施形態において、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいて少なくとも40日の血清半減期を有する。別の実施形態において、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいて約43日の血清半減期を有する。別の実施形態において、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいて39~48日の血清半減期を有する。抗体の血清半減期の測定方法は、当技術分野で公知である。一部の実施形態において、本明細書に記載される抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、例えば、実施例に記載されるマウスモデル系の1つ(例えば、C5欠損/NOD/SCIDマウス又はhFcRnトランスジェニックマウスモデル系)で測定したとき、エクリズマブの血清半減期より少なくとも20(例えば、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、500)%長い血清半減期を有する。
【0146】
一実施形態において、抗体は、本明細書に記載の抗体と同じC5上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はそれに結合する。2つ以上の抗体に関する用語「同じエピトープに結合する」は、抗体が、所与の方法により決定してアミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が本明細書に記載の抗体と「同じC5上のエピトープ」に結合するか否かを決定するための技術としては、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析及び水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)が挙げられる。他の方法は、抗原のペプチド抗原断片又は突然変異バリエーションへの抗体の結合をモニタリングし、その場合、抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の損失がエピトープ成分の指標と見なされることが多い。更に、エピトープマッピングのためのコンビナトリアル計算法を使用することもできる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特異的な短いペプチドを親和性単離する目的抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合することが予測される。
【0147】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他の抗体の結合を(部分的又は完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するか否か、すなわち、一方の抗体が他方の抗体の標的への結合を阻害するか否か及びその程度は、公知の競合実験を使用して決定することができる。ある実施形態において、抗体は、別の抗体と競合し、標的への別の抗体の結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%だけ阻害する。阻害又は競合のレベルは、どの抗体が「遮断抗体」(すなわち、標的と最初にインキュベートされるコールド抗体)であるかに応じて異なり得る。競合する抗体は、同じエピトープ、重複エピトープ、又は隣接エピトープに結合する(例えば、立体障害により証明される)。
【0148】
本明細書に記載の方法において使用される本明細書に記載の抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、種々の当技術分野で認識されている技術を使用して生成することができる。モノクローナル抗体は、当業者が精通する種々の技術により得ることができる。簡潔に述べると、所望の抗原で免疫された動物からの脾細胞を、一般に骨髄腫細胞との融合により不死化させる(Kohler & Milstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)参照)。不死化の代替的方法としては、エプスタインバールウイルス、癌遺伝子、若しくはレトロウイルスを用いる形質転換、又は当技術分野で周知の他の方法が挙げられる。単一不死化細胞から生じたコロニーを、抗原に対する所望の特異性及び親和性の抗体の産生についてスクリーニングし、そのような細胞により産生されたモノクローナル抗体の収率は、種々の技術、例として、脊椎動物宿主の腹腔中への注射により向上させることができる。或いは、Huse,et al.,Science 246:1275-1281(1989)により概説されている一般的なプロトコルに従ってヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによりモノクローナル抗体、又はその結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。
【0149】
III.組成物
また、本明細書には、本明細書に記載される処置方法における使用のための、抗C5抗体、又はその抗原結合断片を含む組成物(例えば、製剤)も提供される。一実施形態において、この組成物は、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む抗C5抗体を含む。別の実施形態において、抗C5抗体は、配列番号14及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む。別の実施形態において、抗C5抗体は、配列番号20及び11にそれぞれ示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0150】
組成物は、例えば、PNHなどの補体関連病態の処置又は予防のための対象への投与のための医薬溶液として配合することができる。医薬組成物は一般に、薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合性の任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張化及び吸収遅延剤などを指し、それらを含む。組成物は、薬学的に許容可能な塩、例えば、酸付加塩若しくは塩基付加塩、糖、炭水化物、ポリオール及び/又は張力改変剤を含み得る。
【0151】
組成物は、標準的方法に従って配合することができる。医薬配合は、確立された技術であり、例えば、Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20thEdition,Lippincott,Williams & Wilkins(ISBN:0683306472);Ansel et al.(1999)“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,”7thEdition,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);及びKibbe(2000)“Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,”3rdEdition(ISBN:091733096X)に更に記載されている。一部の実施形態において、組成物は、例えば、好適な濃度の2~8℃(例えば、4℃)における貯蔵に好適な緩衝溶液として配合することができる。一部の実施形態において、組成物は、0℃未満の温度(例えば、-20℃又は-80℃)における貯蔵のために配合することができる。一部の実施形態において、組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における最大で2年(例えば、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、1年半又は2年)間の貯蔵のために配合することができる。したがって、一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、2~8℃(例えば、4℃)における少なくとも1年間の貯蔵において安定である。
【0152】
医薬組成物は、種々の形態であり得る。これらの形態としては、例えば、液体、半固体及び固体剤形、例えば、液剤(例えば、注射及び注入液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム及び坐剤が挙げられる。好ましい形態は、部分的に、意図される投与方式及び治療用途に依存する。例えば、全身又は局所送達が意図された組成物を含有する組成物は、注射又は注入液の形態であり得る。したがって、組成物は、非経口方式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射)による投与のために配合することができる。「非経口投与」、「非経口投与する」、及び他の文法的に同等の語句は、本明細書において使用される場合、通常は注射による、腸内及び外用投与以外の投与方式を指し、それとしては、限定されるものではないが、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。
【0153】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、静脈内投与用に製剤化される。例えば、一実施形態において、静脈内投与用の製剤は、10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、及び注射用水中の300mgのラブリズマブ(10mg/mL)を含む。別の実施形態において、静脈内投与用の製剤は、10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、及び注射用水中の300mgのラブリズマブ(10mg/mL)からなる。別の実施形態において、静脈内投与用のラブリズマブは、単回使用の30mLバイアルに入った無菌で保存剤無添加の濃縮水溶液(10mg/mL)として製剤化される。
【0154】
一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は、皮下投与用に製剤化される。例えば、一実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用の製剤は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、7.4のpHで製剤化される。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、3.5mL単回使用カートリッジに供給される。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブの各カートリッジは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を収容する。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブの各カートリッジは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を収容する。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、単回使用のオンボディデリバリーシステムで使用するように設計された単回使用の3.5mLプレフィルドカートリッジ内にある、無菌で保存剤無添加の濃縮水溶液(70mg/mL)として製剤化される。
【0155】
IV.方法
本明細書には、ヒト患者の補体関連病態(例えば、PNH)を処置するための組成物及び方法であって、抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含む組成物及び方法が提供され、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、特定の臨床投薬量レジメンに従い(即ち、特定の用量の大きさで、及び具体的な投薬スケジュールに従い)皮下に投与される(又はそのような投与用である)。一実施形態において、患者は、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))による処置歴を過去に有する。
【0156】
本明細書に記載される方法に従い処置することのできる例示的補体関連病態としては、限定はされないが、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血-再灌流傷害、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、定型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、デンスデポジット病、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、補体介在性血栓性微小血管症(CM-TMA)、子癇前症・溶血、高値肝酵素、低血小板数(PE-HELLP)、妊娠誘発性aHUS(p-aHUS)、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、黄斑変性症、HELLP症候群、自然胎児消失、血栓性血小板減少性紫斑病、微量免疫型脈管炎、表皮水疱症、反復胎児消失、外傷性脳傷害、心筋炎、脳血管障害、末梢血管障害、腎血管障害、腸間膜血管/腸内血管障害、脈管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病腎炎、全身性エリテマトーデス関連脈管炎、関節リウマチに関連する脈管炎、免疫複合体性血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管障害、川崎病、静脈ガス塞栓、ステント留置後の再狭窄、回転性粥腫切除術、経皮経管冠動脈形成術、全身型重症筋無力症(gMG)、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、抗リン脂質症候群、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身性炎症反応敗血症、敗血症性ショック、脊髄傷害、糸球体腎炎、移植片拒絶反応、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、デゴス病、劇症型抗リン脂質症候群、及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(別名「SARS-CoV-2」、「COVID-19」、及び「コロナウイルス」)が挙げられる。詳細な実施形態において、補体関連病態は、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)である。別の詳細な実施形態において、補体関連病態は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)である。
【0157】
一態様において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を患者(例えば、PNH患者)に400mg~600mgの用量で皮下投与する方法が提供される。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者(例えば、PNH患者)に450~550mgの用量で皮下投与される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に約400mg、405mg、410mg、420mg、425mg、430mg、435mg、440mg、445mg、450mg、455mg、460mg、465mg、470mg、475mg、480mg、485mg、490mg、495mg、500mg、505mg、510mg、515mg、520mg、525mg、530mg、535mg、540mg、545mg、550mg、555mg、560mg、565mg、570mg、575mg、580mg、585mg、590mg、595mg、又は600mgの用量で皮下投与される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、患者に又は約490mgの用量で皮下投与される。
【0158】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、補体関連病態(例えば、PNH)を有する患者に又は約490mgの用量で週1回(例えば、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、2年、3年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって)皮下投与される。
【0159】
別の態様において、補体関連病態(例えば、PNH)を有する患者を処置する方法が提供され、ここで患者は、初回用量(例えば、負荷用量)の抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)を静脈内投与され、続いて抗C5抗体、又はその抗原結合断片を(例えば、2週間後に)皮下投与される。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の静脈内用量は、患者の体重で換算したものである。例えば、一実施形態において、体重が40kg以上60kg未満の患者は、抗C5抗体、又はその抗原結合断片による皮下処置の前に、2400mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を静脈内投与される。別の実施形態において、体重が60kg以上100kg未満の患者は、抗C5抗体、又はその抗原結合断片による皮下処置の前に、2700mgの抗C5抗体、又はその抗原結合断片を静脈内投与される。
【0160】
別の実施形態において、患者は、ある用量(例えば、2400mg又は2700mg)の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を投与サイクルの1日目に静脈内投与され、続いて抗C5抗体、又はその抗原結合断片を(例えば、490mgの用量で)投与サイクルの15日目及びその後毎週(例えば、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、2年、3年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって)皮下投与される。
【0161】
別の実施形態において、補体関連病態(例えば、PNH)を有するヒト患者を処置する方法が提供され、この方法は、投与サイクルの間に有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に1回、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与される。
【0162】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が40kg以上60kg未満の患者(例えば、PNH患者)に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で静脈内に、及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。
【0163】
別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が60kg以上100kg未満の患者(例えば、PNH患者)に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で静脈内に、及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。
【0164】
別の実施形態において、補体関連病態を有するヒト患者を処置する方法が提供され、この方法は、投与サイクルの間に、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3軽鎖配列とを含む、有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、ここで抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に1回、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与される。
【0165】
別の実施形態において、補体関連病態(例えば、PNH)を有するヒト患者を処置する方法が提供され、この方法は、投与サイクルの間に、配列番号19、18、及び3にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3重鎖配列と、配列番号4、5、及び6にそれぞれ示されるとおりのCDR1、CDR2、及びCDR3軽鎖配列と、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域とを含む、有効量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、ここでバリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングで、天然ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基にMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)投与サイクルの1日目に、
i.体重が40kg以上60kg未満の患者に2400mg、又は
ii.体重が60kg以上100kg未満の患者に2700mg
の用量で静脈内に;及び
(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に
投与される。
【0166】
一実施形態において、投与サイクルは、合計10週間の処置である。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、投与サイクル後週1回、490mgの用量で、最長3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月、15ヵ月、18ヵ月、21ヵ月、2年にわたって、又は慢性的に、例えば、患者の生涯にわたって皮下投与される。
【0167】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法に従い処置される患者は、補体阻害薬による処置歴を過去に有する。一実施形態において、患者は、エクリズマブによる処置歴を過去に有する。別の実施形態において、患者は、少なくとも1ヵ月、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも5ヵ月、少なくとも6ヵ月、少なくとも7ヵ月、少なくとも8ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも10ヵ月、少なくとも11ヵ月、少なくとも12ヵ月、少なくとも18ヵ月、又は少なくとも24ヵ月にわたるエクリズマブによる処置歴を過去に有する。詳細な実施形態において、患者は、少なくとも6ヵ月にわたるエクリズマブによる処置歴を過去に有する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)が患者に投与され、ここで患者は、投与サイクルの1日目に先立つ少なくとも約1ヵ月、少なくとも約2ヵ月、少なくとも約3ヵ月、少なくとも約4ヵ月、少なくとも約5ヵ月、少なくとも約6ヵ月、少なくとも約7ヵ月、少なくとも約8ヵ月、少なくとも約9ヵ月、少なくとも約10ヵ月、少なくとも約11ヵ月、又は少なくとも約12ヵ月にわたってエクリズマブによる処置歴を有する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片が患者に投与され、ここで患者は、投与サイクルの1日目に先立つ少なくとも約1年にわたってエクリズマブによる処置歴を有する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片が患者に投与され、ここで患者は、投与サイクルの1日目に先立つ少なくとも約6ヵ月にわたってエクリズマブによる処置歴を有する。
【0168】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片が患者に投与され、ここで患者は、2週間毎に約600mg、約700mg、約800mg、又は約900mgの用量のエクリズマブによる処置歴を過去に有する。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は患者に投与され、ここで患者は、2週間毎([q2w])に約900mgの用量のエクリズマブによる処置歴を過去に有する。
【0169】
一部の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は患者に投与され、ここで投与サイクルは、患者のエクリズマブ最終回用量から少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、又は少なくとも約8週間経った後に開始される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片(例えば、ラブリズマブ)は患者に投与され、ここで投与サイクルは、患者のエクリズマブ最終回用量から少なくとも2週間経った後に開始される。
【0170】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法に従い処置される患者は、処置の開始前3年以内に、又は開始時点で、髄膜炎菌感染症に対するワクチンを接種済みである。一実施形態において、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で処置を受けた患者は、ワクチン接種後2週間まで適切な予防的抗生物質によっても処置される。別の実施形態において、本明細書に記載される方法に従い処置される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135、及び/又はBに対するワクチンを接種される。
【0171】

別の態様において、記載される処置レジメンは、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するために十分なものである。例えば、一実施形態において、処置は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395又は400μg/ml以上の抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は100μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は150μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は200μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は250μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は300μg/ml以上に維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は100μg/ml~200μg/mlに維持される。別の実施形態において、処置により、抗C5抗体、又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度は約175μg/mlに維持される。
【0172】
別の実施形態において、有効な応答を得るため、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり50μg~250μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。別の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり100μg~200μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。一部の実施形態において、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり約175μgの抗体を維持するための量及び頻度で患者に投与する。
【0173】
V.アウトカム
本明細書において、患者におけるPNHを処置する方法が提供される。PNHの症状としては、限定されるものではないが、疲労(例えば、疲労感、日常活動の実行困難、集中力散漫、眩暈、衰弱)、疼痛(例えば、胃痛、下肢の疼痛又は腫れ、胸痛、背部痛)、暗色尿、息切れ、貧血、嚥下困難、皮膚及び/又は眼の黄変、貧血、血球減少症、勃起不全、凝血塊、腎疾患、臓器損傷、卒中又は心臓発作が挙げられる。本明細書に開示される方法に従って処置される患者は、PNHの少なくとも1つの徴候の改善を好ましくは経験する。例えば、処置は、疲労、腹痛、呼吸困難、嚥下障害、胸痛及び勃起不全の低減又は停止からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果を生じさせ得る。
【0174】
LDHは、血管内溶血のマーカーである(Hill,A.et al.,Br.J.Haematol.,149:414 25,2010;Hillmen,P.et al.,N.Engl.J.Med.,350:552 9,2004;Parker,C.et al.,Blood,106:3699-709,2005)。赤血球は大量のLDHを含有し、無細胞ヘモグロビンとLDH濃度との相関がインビトロ(Van Lente,F.et al.,Clin.Chem.,27:1453-5,1981)及びインビボ(Kato,G.et al.,Blood,107:2279-85,2006)で報告されている。溶血の結果は貧血と無関係である(Hill,A.et al.,Haematologica,93(s1):359 Abs.0903,2008;Kanakura,Y.et al.,Int.J.Hematol.,93:36-46,2011)。ベースライン時及び次いで処置期間全体にわたり連続的に得られるLDH濃度は、溶血の重要な尺度である。無細胞血漿ヘモグロビンのベースラインレベルは、正常値上限の≧1.5倍超のLDH(LDH≧1.5×ULN)のPNHを有する患者において非常に上昇し、LDHと無細胞血漿ヘモグロビンとの間に有意な相関がある(Hillmen,P.et al.,N.Engl.J.Med.,355:1233-43,2006)。正常LDH値範囲は、105~333IU/L(1リットル当たりの国際単位)である。
【0175】
既発表のデータは、LDHが、PNH患者における血管内溶血の信頼性のある客観的で直接的な尺度であることを裏付けており、専門家によれば、PNH疾患活動性の顕著な特徴である補体介在性溶血の最良の尺度であると考えられている(Dale J.et al.,Acta Med Scand.,191(1-2):133-136,1972;Parker C.et al.,Blood.106(12):3699-3709,2005;Canalejo K et al.,Int J Lab Hemat.,36(2):1213-1221,2013)。エクリズマブ臨床プログラムの結果から、未処置(プラセボ)患者では、LDH濃度が著しく上昇したまま変化しなかった一方、エクリズマブで処置した患者では血清LDHが即時に(処置開始後1週間以内に)正常又はほぼ正常レベルにまで減少したことが明らかになった(Brodsky RA et al.,Blood,111(4):1840-1847,2008;Hillmen P et al.,Am J Hematol.,85(8):553-559,2010.Erratum in Am J Hematol.2010;85(11):911)。この減少は、急速な症状低下及び疲労の改善に反映された(Hillmen P et al.,Am J Hematol.,85(8):553-559,2010;Brodsky RA et al.,Blood,111(4):1840-1847,2008)。
【0176】
LDHレベルは、任意の好適な検査又はアッセイ、例えば、Ferri FF,ed.Ferri’s Clinical Advisor 2014.Philadelphia:Pa:Elsevier Mosby;2014:Section IV-Laboratory tests and interpretation of resultsにより記載されているものを使用して測定することができる。LDH濃度は、患者から得られた種々のサンプル、特に血清サンプル中で測定することができる。本明細書において使用される場合、用語「サンプル」は、対象からの生物学的材料を指す。血清LDH濃度を対象とするが、サンプルは、他の資源、例として、例えば、単一細胞、複数の細胞、組織、腫瘍、体液、生物学的分子又は上記のもののいずれかの上清若しくは抽出物に由来し得る。例としては、生検のために取り出された組織、切除の間に取り出された組織、血液、尿、リンパ組織、リンパ液、脳脊髄液、粘膜及び糞便サンプルが挙げられる。使用されるサンプルは、アッセイフォーマット、検出方法及びアッセイすべき腫瘍、組織、細胞又は抽出物の性質に基づき変動する。サンプルを調製する方法は当技術分野において公知であり、利用される方法と適合性のサンプルを得るように容易に適合させることができる。
【0177】
一実施形態において、LDHレベルを用いて、治療に対する反応性が評価される(例えば、LDHレベルによって判定したときの溶血の減少は、PNHの少なくとも1つの徴候の改善の指標となる)。例えば、一実施形態において、本明細書に記載される処置により、LDHレベルの正常化が起こる。別の実施形態において、本開示の方法に従い処置される患者には、LDHレベルがほぼ正常レベルになる、又は正常レベルと見なされるものから上に10%以内、又は20%以内(例えば、105~333IU/L(国際単位毎リットル)の範囲内になるような減少が見られる。別の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置開始前に正常上限の1.5倍以上(LDH≧1.5×ULN)である。別の実施形態において、患者のLDHレベルは、処置の維持期間全体を通じて正常化する。別の実施形態において、治療された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中にある時間の少なくとも95%で正常化する。別の実施形態において、治療された患者のLDHレベルは、処置の維持期間中にある時間の少なくとも90%、85%又は80%で正常化する。一実施形態において、患者のLDHレベルは、処置開始前に正常上限の1.5倍以上(LDH≧1.5×ULN)である。
【0178】
別の実施形態において、処置により、エクリズマブによる処置と比べてブレイクスルー溶血の減少が起こる。別の実施形態において、処置により、処置期間中のブレイクスルー溶血の消失が起こる。別の実施形態において、処置により、処置前ベースラインブレイクスルー溶血量と比較してブレイクスルー溶血の減少が起こる。
【0179】
別の実施形態において、処置により、輸血の必要性の減少が生じる。別の実施形態において、処置により、輸血回避の増加が生じる。別の実施形態において、処置により、輸血回避の少なくとも50%の増加が生じる。別の実施形態において、処置により、輸血回避の少なくとも60%の増加が生じる。別の実施形態において、処置により、輸血回避の70%より高い増加が生じる。いずれの場合にも、輸血回避は、処置前における輸血を受ける必要が生じる頻度に対して測定される。
【0180】
別の実施形態において、処置により、実施例に更に詳細に記載されるとおりの主要有害血管イベント(MAVE)(例えば、血栓性静脈炎/深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、腎静脈血栓症/腎動脈血栓症/糸球体血栓症、腎梗塞、急性末梢血管閉塞、腸間膜/内臓静脈/動脈血栓症又は梗塞、肝静脈/門脈血栓症、大脳動脈閉塞/脳血管発作、脳静脈閉塞、腎動脈血栓症、又は多発脳梗塞性認知症)の減少が生じる。
【0181】
別の実施形態において、処置により、遊離ヘモグロビン、ハプトグロビン、網状赤血球数、PNH赤血球(RBC)クローン及びD-ダイマーからなる群から選択される溶血関連血液学的バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる。別の実施形態において、処置により、患者の処置前ベースラインからのヘモグロビン安定化の増加が生じる。
【0182】
別の実施形態において、処置により、推算糸球体濾過率(eGFR)及びスポット尿:アルブミン:クレアチニン及び血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択される慢性疾患関連バイオマーカーの正常レベルに向かうシフトが生じる。
【0183】
別の実施形態において、処置により、慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4版及び欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)、クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケールによって判定したときの、及び実施例に更に詳細に記載されるクオリティ・オブ・ライフのベースラインからの変化が生じる。別の実施形態において、処置により、慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4版及び欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)、クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケールによって判定したとき、患者の未処置ベースラインスコアから少なくとも7点のクオリティ・オブ・ライフのベースラインからの変化が生じる。
【0184】
VI.キット
また、本明細書には、前出の方法における使用に適している処置有効量の、ラブリズマブなど、抗C5抗体、又はその抗原結合断片と、薬学的に許容可能な担体とを含有する医薬組成物を含むキットも提供される。このキットはまた、任意選択で、補体関連病態(例えば、PNH)を有する患者に組成物を投与するため実施者(例えば、医師、看護師、又は患者)がそれに入っている組成物を投与することが可能となるように、例えば、投与スケジュールを含む、説明書も含み得る。このキットはまた、シリンジ又はオンボディデリバリーシステム(OBDS)も含み得る。一実施形態において、OBDSは、SmartDose(登録商標)ドラッグデリバリープラットフォームである。別の実施形態において、ラブリズマブは、West SmartDose(登録商標)Gen.I 3.5mLを使用して単回使用のOBDSで皮下注射によって投与される。
【0185】
一実施形態において、ヒト患者の補体関連病態(例えば、PNH)を処置するためのキットが提供され、このキットは、(a)配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む、ある用量の抗C5抗体、又はその抗原結合断片;及び(b)本明細書に記載される方法における抗C5抗体、又はその抗原結合断片の使用についての説明書を含む。一実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が40kg以上60kg未満の患者に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で静脈内に;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。別の実施形態において、抗C5抗体、又はその抗原結合断片は、体重が60kg以上100kg未満の患者に、(a)投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で静脈内に;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後毎週、490mgの用量で皮下に投与される。詳細な実施形態において、抗C5抗体はラブリズマブである。
【0186】
VII.機器
更に、オンボディ注射装置と一体に包装された皮下投与用のラブリズマブのプレフィルドカートリッジを含む機器(例えば、オンボディデリバリーシステム(OBDS)が提供される。一実施形態において、機器は、無菌であり、単回使用向けであり、ディスポーザブルであり、及び/又は電気機械的である。別の実施形態において、オンボディ注射装置は、29ゲージ針を含む。別の実施形態において、プレフィルドカートリッジは、3.5mLカートリッジである。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の262.5mgラブリズマブ(70mg/mL)からなる。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)を含む。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgラブリズマブ(70mg/mL)からなる。別の実施形態において、皮下投与用のラブリズマブは、約7.4のpHで製剤化される。
【0187】
本明細書に記載されるとおりの皮下投与用のラブリズマブと併せた使用のための例示的機器は、West Pharmaceuticals,Inc.によって製造されるオンボディデリバリーシステム(OBDS)であり、これは、現在、米国では併用薬としてエボロクマブ(Repatha(登録商標))との使用が承認されており、欧州連合ではクラスIIA医療機器としてCEマークが付与されている。一実施形態において、OBDSは、SmartDose(登録商標)ドラッグデリバリープラットフォームである(ワールド・ワイド・ウェブのwestpharma(dot)com/products/self-injection-platforms/smartdose/smartdose-gen-I;West Catalog # 11262 0919(2019)を参照のこと)。別の実施形態において、機器は、コンパクトな、無菌の、単回使用の、ディスポーザブルの、電気機械的な(電池式、マイクロプロセッサ制御式)、ピストン及び伸縮ねじアセンブリ(TSA)付きのプレフィルド打栓済みCrystal Zenith(登録商標)カートリッジと共に使用するように設計された29ゲージ一体型針付き治験医療機器(West Pharmaceuticals,Inc.によって製造される)である。別の実施形態において、ラブリズマブは、West SmartDose(登録商標)Gen.I 3.5mLを使用して単回使用のOBDSで皮下注射によって投与される。別の実施形態において、OBDSは、ドラッグデリバリープラットフォーム用の機器構成要素と、組み付けられたTSAを備えた、3.5mLラブリズマブ70mg/mLが入ったプレフィルドカートリッジ(PFC)とからなる、完全な一体包装型コンビネーション製品である。別の実施形態において、「オンボディ注射装置」は、機器構成要素のみ(PFC及びTSAのないOBDS)である。別の実施形態において、起動力など、OBDSを起動させるのに、ユーザー対話が必要である。別の実施形態において、使用の点での、及び使用目的を実現するために必須の設計要件(例えば、送達可能な容積/用量の正確さ)が、関連するリスク/重大性レベル(低い又は高い)に関係なく、基本重要性能要求事項である。別の実施形態において、基本重要性能要求事項は、注射終了時の送達状態通知(即ち、使用者に送達の成否を知らせる通知)である。
【0188】
以下の例は単に例示に過ぎず、当業者には、本開示を読めば多数の変形例及び均等物が明らかになるであろうことに伴い、いかなる形であってもそれらの例が本開示の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0189】
本願全体を通じて引用される全ての参考文献、GENBANK/UNIPROT/PUBMEDエントリー、特許及び特許出願公開の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【実施例
【0190】
実施例1:第3相臨床試験
現在エクリズマブで処置されている発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)成人患者におけるラブリズマブの静脈内投与に対する皮下投与の第3相、無作為化、並行群間、多施設共同、非盲検、薬物動態、非劣性研究を以下のプロトコルに従い行う。
【0191】
この研究の目的は、臨床的に安定している、及び研究登録前の少なくとも3ヵ月にわたってエクリズマブによる処置歴を過去に有する発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者におけるオンボディデリバリーシステム(OBDS)で投与されるラブリズマブ皮下(SC)の薬物動態(PK)をラブリズマブ静脈内(IV)と比較することである。ラブリズマブIVのPK曝露量と臨床的有効性との間の確立された関係に基づけば、ラブリズマブIVに対してラブリズマブSCのPKが非劣性であることにより、ラブリズマブIVからラブリズマブSCへの有効性及び安全性データの橋渡しが可能となる。研究仮説は、71日目ラブリズマブSC血清Cトラフが71日目ラブリズマブIV血清Cトラフと比較して非劣性であるというものである。本研究はまた、ラブリズマブSC、及び薬物-機器コンビネーション製品であるラブリズマブOBDSの安全性及び忍容性を実証することも意図される。
【0192】
1.目的及び評価項目
本研究の主要目的は、成人PNH患者における(例えば、71日目血清ラブリズマブCトラフ(投与前濃度)によって判定したときのラブリズマブIVと比べたラブリズマブSCのPK非劣性を評価することである。
【0193】
副次的目的には、(1)(例えば、時間の経過に伴うCトラフによって判定したときの、ラブリズマブSCのPKを特徴付けること(2)ラブリズマブSCのPD(例えば、時間の経過に伴う遊離血清C5濃度によって判定したときの)を特徴付けること、(3)(例えば、時間の経過に伴う治療下で発現した抗薬物抗体(ADA)の発生率によって判定したときの、ラブリズマブSCの免疫原性を特徴付けること(4)ラブリズマブ皮下(SC)に関する健康関連の生活の質(HRQoL)及び治療満足度(例えば、(a)慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4版のベースラインから183日目までの変化、(b)欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer:EORTC)クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケール(QLQ-C30)第3.0版のベースラインから183日目までの変化、及び(c)ベースライン時及び183日目における治療投与満足度質問票(Treatment Administration Satisfaction Questionnaire:TASQ)スコアによって測定したときの報告される治療満足度及び患者の選択によって判定したときの)を評価すること、(5)ラブリズマブSC及びラブリズマブOBDSの安全性(例えば、(a)時間の経過に伴う理学的検査、バイタルサイン、心電図、及び臨床検査判定の変化、(b)有害事象及び重篤有害事象の発生率、及び(c)機器による有害作用及び機器による重篤な有害作用の発生率によって判定したときの)を評価すること、(6)ラブリズマブSCの有効性(例えば、(a)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の時間の経過に伴う変化、(b)ブレイクスルー溶血の発生率、(c)輸血回避の達成、及び(d)ヘモグロビン安定化の達成によって判定したときの)を評価すること、及び(7)ラブリズマブOBDSの性能(例えば、企図した規定用量投与の報告アウトカム(機器の不具合/誤動作を含む)によって判定したときの)を判定することが含まれる。
【0194】
2.全般的デザイン
これは、臨床的に安定している、及び研究登録前の少なくとも3ヵ月にわたってエクリズマブによる処置歴を過去に有する成人PNH患者における静脈内投与されるラブリズマブIVと比較したOBDSによって投与されるラブリズマブSCのPK非劣性を評価するための第3相、無作為化、非盲検、並行群間、多施設共同研究である。
【0195】
本研究は、最長30日間のスクリーニング期間と、10週間の無作為化処置期間と、最長3.5年(182週間)か、又は本製品が(国毎の規制に準じて)登録若しくは承認されるまでか、いずれか先に到来する方までの延長期間とからなる。患者は、体重群別(40kg以上60kg未満及び60kg以上100kg未満)に層別化され、次にラブリズマブSC又はラブリズマブIVのいずれかの投与を受けるように2:1の比で無作為化される。
【0196】
無作為化処置期間中のラブリズマブIV投薬は、診療所にて、施設研究チームの熟練したメンバーによって投与される。研究治療の1日目は、患者のエクリズマブ最終回用量から12~16日に行われる。治験薬投与及び投与前PKサンプル採取のタイミングは、評価可能なPKデータのある患者を適切な人数だけ確保するのに決定的に重要である(表1)。1日目に投与される用量の開始時間が、全ての後続用量及びPK/PDサンプル採取についての名目時間である。具体的には、無作為化処置期間中の全ての後続用量が、1日目にその用量が投与されたのと同じ時刻に投与される。PKサンプルは、用量の投与に(又は投与のない日は1日目用量の開始による名目時間から)可能な限り近い時点で採取される。
【0197】
ラブリズマブOBDSは、単回使用注射装置と一体に包装された無菌の単回使用プレフィルドカートリッジアセンブリに245mgのラブリズマブSCを含むキットで供給される。2つのキットを使用して規定の490mg用量のラブリズマブSCを送達する。
【0198】
ラブリズマブIV負荷用量及び維持用量は、表1に示されるとおり、投薬来院毎の投与前患者体重で換算したものである。
【0199】
無作為化処置期間中、ラブリズマブSC群に割り付けられた患者は、1日目にラブリズマブIVの負荷用量を受け、続いて15日目及びその後毎週(qw)、無作為化処置期間の完了まで、ラブリズマブSCの維持用量を受ける。ラブリズマブIV群に割り付けられた患者は、表1に示されるとおり、1日目にラブリズマブIVの負荷用量を受け、続いて15日目にラブリズマブIVの維持用量を受ける。
【0200】
【表1】
【0201】
71日目は無作為化処置期間の終わりであり、延長期間の始まりである。投薬前に完了した全ての71日目判定は、無作為化処置期間のパートと考える。71日目の投薬が、延長期間の始まりである。延長期間中、ラブリズマブSC群に無作為化された患者は、71日目及びその後毎週、延長期間の終わり(最長1275日目)まで、引き続き2つのOBDSキットを使用して490mgのラブリズマブSCを受ける。ラブリズマブIV群に無作為化された患者は、71日目及びその後毎週、延長期間の終わり(最長1275日目)まで、2つのOBDSキットを使用した490mgのラブリズマブSCに切り替える。
【0202】
延長期間中のラブリズマブSC投薬は、ラブリズマブSCが診療所において投与される場合を除き、患者が自宅で自己投与することができる。ラブリズマブIV群に無作為化された患者については、71日目のラブリズマブSC 490mg用量は、在宅自己投与に向けた必要な訓練プログラムの一環として、診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に患者が自己投与する。全ての患者について、活動スケジュールに指定された研究来院と重なる用量は、診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に患者が自己投与する。許可を得て、患者は、予定された対面診療来院でない投薬日に診療所でラブリズマブSCを(熟練した研究施設職員の監督下に)自己投与することができる。
【0203】
各患者の研究の終了は、安全性フォローアップが完了したときに発生する。安全性フォローアップは、最終回用量の30日後の電話連絡からなる。安全性フォローアップ中のデータ収集は、有害事象の訴え及び併用薬物療法に限られる。患者が処置を中断したが、研究は中断していない場合、かかる患者の研究終了は、その最終回用量から30日を超えている限りにおいて、その最終回の来院である。研究の終了は、患者来院又は安全性フォローアップ最終日のいずれか遅く到来する方として定義される。
【0204】
本研究には、約105例の患者(ラブリズマブSC群に70例の患者及びラブリズマブIV群に35例の患者)が登録する。標本サイズ再推定のための中間分析が行われ、標本サイズを最大144例の患者にまで増加させることができる。
【0205】
3.組入れ及び除外基準
患者は全ての組入れ基準を満たし、及びいかなる除外基準も満たしてはならない。研究適格性のない患者は、討議及び合意に基づき1度再スクリーニングすることができる。患者は、以下判定基準の全てを満たしている場合に限り、本研究への組入れに適格である:
A.患者はインフォームドコンセントへの署名時点で少なくとも18歳でなければならない。
B.研究登録前の少なくとも3ヵ月にわたってPNHについての推奨用量表示(14日±2日毎に900mg)に従いエクリズマブで処置され、研究登録前の2ヵ月以内に用量を抜かしたことがなく、及び来院ウィンドウ外が2用量を超えなかった。
C.スクリーニング時、中央検査室によれば、乳酸デヒドロゲナーゼレベル≦1.5×ULN(正常上限)。サンプルは、予定されているエクリズマブ用量投与前の24時間以内又はその直前に(即ち、トラフエクリズマブレベルで)入手しなければならない。
D.高感度フローサイトメトリー評価によって確認されたPNHの診断の文書記録がある(例えば、Borowitz et al.,「フローサイトメトリーによる発作性夜間ヘモグロビン尿症及び関連障害の診断及びモニタリングガイドライン(Guidelines for the diagnosis and monitoring of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria and related disorders by flow cytometry)」,Cytometry B.Clin.Cytom.2010;78(4):211-230を参照のこと)。
E.治験薬の開始前3年以内に、又は開始時点で、髄膜炎菌感染症に対するワクチン接種済みであり、髄膜炎菌感染症(髄膜炎菌(N meningitidis))のリスクが低下している。
F.体重40kg以上100kg未満であり、研究期間中、この体重範囲内にとどまるものと見込まれる。
G.妊娠可能な女性患者及び妊娠可能な女性パートナーを持つ男性患者は、処置継続中及び治験薬の最終回用量後少なくとも8ヵ月にわたってプロトコル指定の避妊の手引きに従わなければならない。
H.患者は、書面によるインフォームドコンセントを提出し、及び、ラブリズマブSC用量の自己投与、及び患者データを直接記録する任意の1つ又は複数のデータ収集機器の使用を含め、全ての研究来院及び手順を遵守する意思及び能力がなければならない。
【0206】
患者は、以下の判定基準のいずれかを満たした場合、研究から除外される:
A.研究登録前3ヵ月以内の1回を超えるLDH値>2×ULN。
B.研究登録前の6ヵ月における主要有害血管イベント(MAVE)。
C.スクリーニング時に血小板数<30,000/mm(30×10/L)。
D.スクリーニング時に好中球絶対数<500/μL(0.5×10/L)。
E.骨髄移植歴。
F.髄膜炎菌(N meningitidis)への感染症歴。
G.原因不明の感染症歴。
H.1日目の治験薬投与前14日以内の活動性全身性細菌、ウイルス、又は真菌感染症。
I.1日目の治験薬投与前7日以内に発熱≧38℃(100.4°F)がある。
J.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症(HIV-1又はHIV-2抗体力価によるエビデンスあり)。
K.スクリーニングから5年以内の悪性腫瘍歴、但し、処置済みで再発のエビデンスのない非黒色腫皮膚癌又は子宮頸部上皮内癌は例外とする。
L.治験臨床研究への患者の参加の妨げとなる重大な心疾患、肺疾患、腎疾患、内分泌疾患、又は肝疾患(例えば、活動性肝炎)の既往歴がある又はそれが進行中である。
M.患者がプロトコルの要件を忍容しなくなるであろうと思われる不安定な医学的状態(例えば、心筋虚血、活動性の胃腸出血、重症うっ血性心不全、1日目から6ヵ月以内の予想される大手術の必要性、PNHと無関係な合併する慢性貧血))。
N.マウスタンパク質に対する過敏症を含め、治験薬に含まれる任意の原料に対する過敏症歴。
O.妊娠する計画がある、又は現在妊娠中若しくは授乳中である女性患者。
P.スクリーニング時又は1日目の妊娠検査結果が陽性の女性患者。
Q.本研究への患者の完全参加を妨げる可能性のある1つ又は複数の公知の医学的若しくは心理学的病態又はリスク要因は、患者に更なるリスクをもたらし、又は本研究のアウトカムを混同させる。
R.スクリーニング前の1年以内における既知の又は疑われる薬物又はアルコール乱用歴又は依存症歴。
S.SC自己投与の要求事項を完遂できない。
T.無作為化処置期間中、指定された来院のため診療所まで出向くことができない、又は治験薬の物流要件を満たすことができない。
U.研究登録前の少なくとも2週間にわたって安定レジメンを継続中でない場合、抗凝固薬の併用は禁止される。
V.本研究の治験薬開始前30日以内又はその治験製品の5半減期以内のいずれか長い方における別の研究への参加又は任意の実験的治療法の使用(観察研究[例えば、PNH Registry]への参加は除く)。
W.任意の時点で任意の他の実験的C5拮抗薬を受けた。
【0207】
4.活動スケジュール
スクリーニング及び無作為化処置期間の活動スケジュール(SoA)を、ラブリズマブSC群について表2に、ラブリズマブIV群について表3に提供する。71日目が無作為化処置期間の終わりである。71日目の判定は全て、投薬前に実施される。15日目、施設研究チームの資格のあるメンバーが、OBDSキットを使用したラブリズマブSCの自己投与に関して、ラブリズマブSCに無作為化された患者を患者による自己投与前に訓練する。患者は、ラブリズマブSCの15日目用量を診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に自己投与する。22、36、及び50日目、ラブリズマブSCは、患者が自宅で自己投与することができる。これらの日は、許可を得て、患者は診療所で(熟練した研究施設職員の監督下に)ラブリズマブSCを自己投与することができる。29、43、57、及び64日目、ラブリズマブSCは、診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に患者が自己投与する。
【0208】
延長期間の評価スケジュールを表4及び表5に提供する。71日目の投薬が、延長期間の始まりである。無作為化処置期間中にラブリズマブIVに無作為化された患者のラブリズマブSCの初回用量は、71日目である。71日目、施設研究チームの資格のあるメンバーが、OBDSキットを使用したラブリズマブSCの自己投与に関して、ラブリズマブIVに無作為化された患者を患者による自己投与前に訓練する。患者は、ラブリズマブSCの71日目用量を診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に自己投与する。ラブリズマブSCに無作為化された患者について、71日目の投薬は、対面診療来院中の自己投与による。延長期間の残りについては、全ての患者のラブリズマブSCの毎週の投薬が、患者による自宅での又は診療所にて表4及び表5に指定される来院時における自己投与によることができる。許可を得て、患者は、予定された対面診療来院でない投薬日に診療所で(熟練した研究施設職員の監督下に)ラブリズマブSCを自己投与することができる。
【0209】
患者のルーチンの臨床管理(例えば、血液学判定)の一環として行われる、及びインフォームドコンセント用紙(ICF)への署名前に達成される手順は、それらの手順がプロトコル指定の判定基準を満たし、及び評価スケジュールに指定された時間フレーム内に実施された場合には、スクリーニング目的で利用されてもよい。
【0210】
本研究全体を通じて、クオリティ・オブ・ライフ判定が施行され、書類上記録される。ラブリズマブSC投薬に関連するデータは、それが延長期間中に在宅セッティングで投与される場合、患者e-ダイアリーに記録される。
【0211】
施設は、無作為化処置期間中(ラブリズマブSCに無作為化された患者)、予定されている在宅投薬日に、患者によるラブリズマブSCの自己投与を患者への電話連絡でモニタして、患者が治験薬の投与用量及び機器状態に関して問い合わせを受けることを確実にする。延長期間中、施設は78日目に患者に電話によって連絡して、患者に治験薬投与及び患者e-ダイアリーの記入に関して問い合わせる。78日目の後、施設は患者e-ダイアリーでラブリズマブSCの自己投与をモニタする。
【0212】
検査標本の取扱い及び処理の指図は、研究検査室マニュアルに提供される。血液サンプルは、ヘパリン添加ラインからは採取しない。IV用量後(両方のコホートについて1日目、及びラブリズマブIVコホートについては15日目も)の血液サンプルは、反対側の腕から採取しなければならない。
【0213】
プロトコル指定の来院外に発生する予定外の来院は、自由裁量で許可される。予定外の来院の間に行われる手順、検査、及び判定は、自由裁量で実施される。
【0214】
ブレイクスルー溶血が疑われる場合、中央検査室での分析のため、LDH、PK、PD、及び抗薬物抗体(ADA)サンプルを採取しなければならない。ブレイクスルー溶血の疑われる事象が、予定されている来院外に発生した場合、患者は、必要なLDH、PK、PD、及びADAサンプルの評価及び採取のための予定外来院に施設を再訪することが予想される。ブレイクスルー溶血を確定する目的上、LDHの判定は、中央検査値に基づかなければならない。
【0215】
【表2-1】
【0216】
【表2-2】
【0217】
【表2-3】
【0218】
【表3-1】
【0219】
【表3-2】
【0220】
【表4-1】
【0221】
【表4-2】
【0222】
【表5-1】
【0223】
【表5-2】
【0224】
【表5-3】
【0225】
5.ラブリズマブ
治験薬製剤を表6に示す。
【0226】
【表6】
【0227】
ラブリズマブSCはpH7.4で製剤化され、3.5mL単回使用カートリッジに供給される。ラブリズマブSCの各カートリッジには、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、5%スクロース、0.05%ポリソルベート80、及び注射用水中の245mgのラブリズマブ(70mg/mL)が入っている。
【0228】
ラブリズマブIVはpH7.0で製剤化され、30mL単回使用バイアルに供給される。ラブリズマブIVの各バイアルには、10mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、及び注射用水中の300mgのラブリズマブ(10mg/mL)が入っている。
【0229】
ラブリズマブSC製剤及びラブリズマブIV製剤の両方とも、ヒトへの使用に好適であり、医薬品適正製造基準(current Good Manufacturing Practices)に基づいて製造される。
【0230】
ラブリズマブSC製剤及びラブリズマブIV製剤に関する詳細を表7に掲載する。ラブリズマブSC群及びラブリズマブIV群の投薬参照表を、それぞれ、表8及び表9に掲載する。
【0231】
【表7】
【0232】
【表8】
【0233】
【表9】
【0234】
ラブリズマブIVは、施設研究チームの熟練したメンバーによって調製及び投与される。ラブリズマブSCは、ラブリズマブSCの自己投与に必要とされる訓練を完了した患者が自己投与することができる。治験薬は、参加が適格との確認が得られている登録済みの患者にのみ分配されるべきである。
【0235】
無作為化処置期間中15日目(ラブリズマブSCに無作為化された患者について)及び延長期間中71日目(ラブリズマブIVに無作為化された患者について)、施設研究チームの資格のあるメンバーが、どのようにすれば2つの必要とされるOBDSキットを使用してラブリズマブSCを適切に自己投与できるかに関して初回の(及び適宜進行中に)訓練を提供する。必要とされる訓練の完了後、全ての患者が、活動スケジュールに指定された日にその週1回SC注入を自宅で、又は診療所にて(熟練した研究施設職員の監督下に)自己投与する。許可を得て、患者は、予定された対面診療来院でない投薬日に診療所でラブリズマブSCを自己投与することができる。
【0236】
患者は、使用説明書(IFU)の記載どおりに従うよう求められる。治験薬の自己投与に関する詳細な説明は、IFUに提供される。
【0237】
OBDSの誤動作で用量又は用量の一部が送達されない場合には、患者は新しいOBDSを使用し、患者が少なくとも490mgのラブリズマブSCを受けることを確実にする。
【0238】
ラブリズマブIVは、IVプッシュ又はボーラス注射としては投与されない。ラブリズマブIVの注入は無菌法を用いて調製される。患者のラブリズマブ所要用量は、表7及び表8に指定されるとおり更に希釈される。患者用の投薬溶液が調製され次第、それは当該の患者にのみ投与することができる。薬物は、IVチューブセットを使用して輸液ポンプによって投与される。ラブリズマブIVの注入時、0.2ミクロンフィルタの使用が求められる。治験薬のバイアルは1回の使用に限り、バイアルに残った薬物製品があっても、それを別の患者に使用しない。
【0239】
投薬溶液の使用時有効期間は、周囲温度で6時間である。投薬溶液の有効期限の日時は、1本目のバイアルの超過から計算する。用量は、有効期限の日時を過ぎないうちに投与する。
【0240】
ラブリズマブIVの一次包装は、栓及びシール付きの30mLバイアル(I型ホウケイ酸ガラス)からなる。二次包装は、一重のバイアル用ボール箱からなる。一次(バイアル)及び二次(ボール箱)の両方の包装とも、関連情報が載ったブックレットラベルを含む。
【0241】
6.オンボディデリバリーシステム
ラブリズマブSCは、維持用量の投薬用にラブリズマブOBDSを使用して診療所又は在宅セッティングでSC注入によって自己投与されることが意図される。SC機器の選択を促す要因となるのは、用量容積容量、実証された信頼性、及び患者中心の使用性要件、即ち、手順が最小限で使い勝手が良い、不快感が最小限である、針が隠れている、並びに注入中に、歩く、手を伸ばす、及び体を曲げるなど、動き回ったり、適度の身体活動を行ったりできることなどであった。West SmartDose Gen 1機器プラットフォームは、これらの基準を満たしている。
【0242】
ラブリズマブOBDS薬物-機器コンビネーション製品は、ラブリズマブSCが入ったプレフィルドカートリッジとオンボディ注射装置とからなる。ラブリズマブOBDSは、コンパクトで、無菌で、単回使用の、電気機械的な装着型輸液用機器であり、一定用量のラブリズマブをプレフィルドカートリッジアセンブリからSC組織内へとステンレス鋼29ゲージ針を通じて一定速度で投与する。この機器は、医療機器指令(Medical Device Directive)93/42/EECによる定義に従えば、一時的使用のための無菌で単回使用の外科的侵襲性を伴う能動医療機器である。この機器は、取り外しができない電池を含み、生体適合性粘着パッチを備えている。粘着剤を含むこの機器は、用量投与完了後に皮膚から取り外される。
【0243】
一次密閉容器(カートリッジ)は、クロロブチルエラストマーセプタム、クロロブチルエラストマーピストン、及びピストンに螺入されているTSAを有する5mL CZカートリッジからなる。このプレフィルドCZカートリッジは、2区画に仕切られたブリスタートレイにオンボディ注射装置と共に一体に包装される。プレフィルドカートリッジアセンブリは、患者が使用直前に機器に装填する。この機器は、提供される3.5mLプレフィルドカートリッジとの使用向けにのみ設計されている。
【0244】
カートリッジが機器に装填され、機器が皮膚に接着され、機器が作動した後、10分未満で3.5mL用量が送達される。
【0245】
施設研究チームの資格のあるメンバーによる機器の使用訓練の完了後、全ての患者がSoAに指定されるとおりラブリズマブSC用量を自己投与する。更なる指示はIFUに提供される。この機器に関する更なる詳細については、ラブリズマブOBDS治験薬概要書に見出される。
【0246】
ラブリズマブOBDS薬物-機器コンビネーションは、2つの部品:ラブリズマブが入ったプレフィルドカートリッジとオンボディ注射装置とからなる。プレフィルドカートリッジ及び機器構成要素部品は、無菌バリアを提供するため機器が入った区画を覆うタイベック(Tyvek)製の蓋の付いた熱成形ブリスターパックに一体包装される。二次包装は、ブリスターパックと関連する説明書が載ったブックレットラベルとが入った無地のボール箱からなる。
【0247】
タイベック(Tyvek)カバー付きのブリスターに、機器の側面に付される通し番号ラベルである識別トレースラベルが付され、及び各カートリッジにシングルパネルラベルが貼られる。
【0248】
7.ラブリズマブIV及びラブリズマブSC-対面診療投与
適用され得る規制に基づく全ての必要書類を受領次第、各施設に治験薬キットが出荷される。
【0249】
治験薬キットが研究施設に届き次第、薬剤師又は被指名人が速やかに配送用クーラーから治験薬キットを取り出し、それらを元のボール箱に入れて2℃~8℃(35°F~47°F)の遮光された冷蔵条件下に保存する。
【0250】
ラブリズマブIV混合薬物製品及びラブリズマブOBDSキットは、投与前に周囲温度である。材料を(例えば、マイクロ波又は他の熱源を使用することにより)加熱してはならない。
【0251】
権限を与えられた施設スタッフのみが、治験薬を供給し、又は時に投与し得る。
【0252】
患者は、施設研究チームの資格のあるメンバーによる訓練を受けることにより、15日目に(ラブリズマブSCに無作為化された患者)、及び延長期間中の71日目に(ラブリズマブIVに無作為化された患者)、ラブリズマブOBDSを使用して自己投与する。訓練の完了後、注記される時点で患者が自宅でラブリズマブSCを自己投与するか、又は診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に自己投与することができる。治験薬は全て、アクセスが治験責任医師及び権限を与えられた施設スタッフに限られた、表示されている保存条件に従う、安全で環境制御された、及び監視下(手動又は自動)にある区域に保存しなければならない。
【0253】
治験責任医師、機関、薬剤師、又は医療機関の代表(該当する場合)は、治験薬の出納、照合、及び記録管理(即ち、受領、照合、及び最終的な配分の記録)の責任を負う。
【0254】
機関内手順上、使用済みラブリズマブIV薬物を直ちに破壊することが必要でない限り、使用済み及び未使用のIV治験薬バイアルに関して出納管理が実施される。
【0255】
ラブリズマブOBDSは、薬物投与後にバイオ廃棄物用容器に直ちに処分される単回使用機器である。使用済み及び未使用のカートリッジ及び機器に関して出納管理が実施される。
【0256】
治験薬キットの供給、分配、及び続く破壊時、又はAlexionへの返送時。
【0257】
8.ラブリズマブSC-在宅投与
自己投与用のラブリズマブOBDSキットは、地域及び現場の要件に従い患者に提供される。
【0258】
ラブリズマブOBDSキットを受領次第、患者はIFUに従いそれを速やかに保存することが期待される。
【0259】
患者は、各投薬日に、そのラブリズマブ用量の適切な投与を確実にするため、訓練指示及びIFUに従うことが期待される。研究施設職員は、無作為化処置期間中、予定されている在宅投薬日に患者への電話連絡でラブリズマブSCの自己投与をモニタして、患者が治験薬の投与用量及び機器状態に関して問い合わせを受けることを確実にする。延長期間中、ラブリズマブSCは、患者が自宅で自己投与するか、又は予定の来院日に診療所にて熟練した研究施設職員の監督下に自己投与する。許可を得て、患者は、予定された対面診療来院でない投薬日に診療所でラブリズマブSCを自己投与することができる。71日目、ラブリズマブIV群に無作為化された患者は、在宅での自己投与に向けた必要な訓練プログラムの一環として、診療所にて熟練した研究施設職員の監督下にラブリズマブSCを自己投与する。
【0260】
使用済みのラブリズマブOBDSの自宅での処分のため、各患者にバイオ廃棄物用容器が供給される。
【0261】
9.バイアスを最小限に抑えるための対策:無作為化及び盲検化
これは、非盲検研究である。可能性のあるバイアスを低減するために実行される対策としては、層別化及び無作為化が挙げられる。体重による層別化(40kg以上60kg未満又は60kg以上100kg未満)の後、集中型音声又はウェブ自動応答装置を使用して各患者を処置群に2:1の比で無作為に割り付ける。
【0262】
10.先行治療及び併用治療
スクリーニングの開始前28日以内から治験薬の初回用量までに患者が服用する又は受ける、除外基準で考察したものを含めた、先行する薬物療法(ビタミン類及び生薬製剤を含む)及び手技(手術/生検又は理学療法など、任意の治療介入)を患者の電子症例報告書(eCRF)に記録する。加えて、治験薬の初回用量に先立つ3年間の髄膜炎菌ワクチン接種歴を収集する。
【0263】
初回治験薬投与に先立つ1年以内に受けた濃厚赤血球の輸血を患者のeCRFに記録する。
【0264】
研究中に行われる薬物療法使用及び手技は全て、患者の原資料/カルテ及びeCRFに記録する。この記録には、全ての処方薬、生薬製品、ビタミン、ミネラル、市販の薬物療法、及び現行のPNHに対する薬物療法が含まれる。患者がPNHに対する別の処置に移行しない限り、治験薬の初回注入から患者の治験薬最終回用量の30日後までの併用薬物療法を記録する。併用薬物療法のいかなる変更も、患者の原資料/カルテ及びeCRFに記録する。研究中、患者の標準治療に必要と見なされるか、又は任意のAEの処置に必要と見なされる任意の併用薬物療法が、以下に記載する許容される薬物療法と共に自由裁量で与えられてよい。
【0265】
抗凝固薬の併用は、研究登録前の少なくとも2週間にわたって安定用量レジメンを継続中でない場合、禁止される。患者の割り付けられた研究処置以外の補体阻害薬の使用は、禁止される。
【0266】
11.用量又は処置群の修正
無作為化処置期間中にラブリズマブIVを受けた患者は、延長期間の開始時にラブリズマブSC 490mg週1回に切り替え、研究期間中にわたってその処置を継続する。
【0267】
無作為化処置期間中、ラブリズマブIVを投与される任意の患者が71日目までに体重100kg以上に達した場合、主要評価項目分析からその患者のデータを除外し、患者は研究を中断する。71日目に患者の体重が100kg未満である場合、その患者のデータは一次分析に組み入れる。その患者は71日目の投与前判定の完了後に研究を中断する。
【0268】
無作為化処置期間中、ラブリズマブSCを投与される任意の患者が体重100kg以上に達した場合、その患者は処置を中断する。その患者のかかる体重が初めて観察されたのが71日目の判定時であった場合を除き、その患者のデータは主要評価項目分析に組み入れない。その患者は研究を中断する。
【0269】
ラブリズマブSCを投与される任意の患者が体重100kg以上に達した場合、その患者は処置を中断する。
【0270】
研究中、他の用量又は処置群修正は許可されない。
【0271】
12.潜在的な及び確認されたリスク
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)による感染症への易罹患性の増加は、終末補体阻害に関連する公知のリスクである。エクリズマブと同様に、ラブリズマブに関連する主要なリスクは、髄膜炎菌感染症リスクである。
【0272】
このリスクに対処するため、特別なリスク軽減対策が設けられる。
【0273】
ラブリズマブを含め、任意の治療用タンパク質を投与すると、免疫原性反応が誘導され、ADAが生じる可能性があり得る。潜在的な臨床的帰結の範囲には、重篤な過敏症型反応及び中和ADAの発生に起因する有効性(PK及び/又はPD中和)の低下が含まれ得る。
【0274】
ラブリズマブIV臨床研究においてラブリズマブで処置した261例のPNH患者のうち1例の患者に、治療下で発現したADAが発生した。治療下で発現したADAは、研究ALXN1210-SC-101では、ラブリズマブSCで処置した3例の健常対象及びラブリズマブIVで処置した1例の健常対象に、及び研究ALXN1210-HV-104では4例の健常な日本人対象に観察されている。ADA陽性力価値はいずれも低く、エクリズマブ交差反応性に関して陰性であった。ラブリズマブのPK又はPDに対する免疫原性の影響は明らかでなかった。
【0275】
非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する患者の研究では、治療下で発現したADAはラブリズマブで1例のみ報告されている。
【0276】
SC又はIVのいずれかで投与されるタンパク質療法には、局所的な反応(注入部位反応)及び全身性の反応(注入関連反応)を引き起こす潜在的リスクがある。注入部位反応は、SC又はIV薬物投与部位に限局的なものであり、紅斑、掻痒、及び皮下出血などの反応が含まれ得る。注入関連反応は、全身的な性質の、概して薬物投与から数時間以内に発生する免疫介在性又は非免疫介在性のものであり得る。免疫介在性反応にはアレルギー反応が含まれてもよく(例えば、アナフィラキシー)、一方、非免疫介在性反応は非特異的である(例えば、頭痛、眩暈、悪心)。これらの反応のモニタリングは、本研究のルーチンの安全性判定の一環として行われる。
【0277】
ラブリズマブの研究が妊婦で行われたことはない。
【0278】
妊娠中又は授乳中の女性患者は本臨床試験から除外される。本研究に登録した患者、及びその配偶者/パートナーは、高度に有効な又は許容される避妊方法を用いる。妊娠した場合には、その患者は治験薬を中断する。
【0279】
ラブリズマブOBDSの臨床経験はない。これは治験医療機器と見なされ、そのため機器の不具合又は使用者の過失によって生じる潜在的リスクを幾らか負っている。リスクマネージメント活動(リスク管理及び軽減対策)が行われている。機器のより完全な説明及び潜在的利益/リスクについては、ラブリズマブOBDS治験薬概要書を参照し得る。
【0280】
ラブリズマブOBDSの開発を裏付けるデータには、SmartDose機器を使用した健常ボランティア研究からのデータが含まれ、そこでは、この機器が良好に忍容され、安全に使用できることが示された。ラブリズマブOBDSに関してAlexion及びWest Pharmaceutical Services,Inc.によりリスクマネージメント研究が実施され、EN ISO 14971:2012に従いリスク分析が実施された。このリスク判定の結果は、全ての残存リスクが、低い/許容できる又は中間/要調査のリスク分類に入ることを示している。中間/要調査の分類のリスクを更に軽減するため、管理戦略が設けられる。したがって、これらの潜在的リスクは、慢性処置を必要とする患者における代替的な、より便利な薬物投与方法としてラブリズマブOBDSを開発する機会によってバランスが保たれると考えられる。
【0281】
13.研究終了の定義
各患者の研究の終了は、安全性フォローアップが完了したときに発生する。安全性フォローアップは、最終回用量の30日後の電話連絡からなる。安全性フォローアップ中のデータ収集は、有害事象の訴え及び併用薬物療法に限られる。患者が処置を中断したが、研究は中断していない場合、かかる患者の研究終了は、その最終回用量から30日を超えている限りにおいて、その最終回の来院である。研究の終了は、患者来院又は安全性フォローアップ最終日のいずれか遅く到来する方として定義される。
【0282】
14.有効性判定
評価スケジュールに指示される時点で血液及び尿サンプルを採取する。研究中、以下の疾患関連臨床検査パラメータを測定する:(1)乳酸デヒドロゲナーゼ、(2)網状赤血球数、(3)高感度フローサイトメトリーによって評価される発作性夜間ヘモグロビン尿症RBCクローンサイズ、(4)推算糸球体濾過率(MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)の式を用いて計算する)。
【0283】
輸血回避の達成は、輸血を用いないままであった、治験薬の初回用量後に輸血が必要なかった患者として定義される。
【0284】
ブレイクスルー溶血は、中央検査室が判定したときの、上昇したLDH≧2×ULNの存在下における血管内溶血の少なくとも1つの新規の又は悪化する症状又は徴候(疲労、ヘモグロビン尿症、腹痛、息切れ[呼吸困難]、貧血[ヘモグロビン<10g/dL]、血栓症を含むMAVE、嚥下障害、又は勃起不全)として定義される。
【0285】
安定化ヘモグロビンは、ベースラインから目的の期間の終了まで輸血がない中でのヘモグロビンレベルのベースラインからの2g/dL以上の低下の回避として定義される。
【0286】
治験責任医師又は被指名人は、各患者について、以下が含まれ得るPNHの徴候及び症状を判定する:疲労、胸痛、腹痛、呼吸困難、嚥下障害、勃起の
【0287】
治験薬投与前及び評価スケジュールに指定される時点で、2つのバリデートされたHRQoL評価尺度が患者に対して施行される。慢性疾患治療の機能的評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)-疲労スケール、第4.0版は、慢性病に起因する疲労症状の管理に関する一群のHRQoL質問票である(図1を参照)。FACIT-疲労は、13項目の質問票であり、直近7日間の自己申告による疲労並びにそれが日常の活動及び機能に与える影響を判定する。患者は、各項目に5段階評価で点数を付ける:0(全くない)~4(とてもある)。合計点数は0~52の範囲であり、点数が高いほど、HRQoLが良好であることを示している。
【0288】
欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer:EORTC)クオリティ・オブ・ライフ質問票-コア30スケール(QLQ-C30)、第3.0版は、癌患者のHRQoLを判定するために開発された質問票である(図2A図2Bを参照)。この質問票は、以下の下位尺度を含む:全般的健康状態、機能尺度(身体機能、役割機能、情緒的機能、認知機能、及び社会的活動)、症状尺度(疲労、悪心嘔吐、及び疼痛)、及び単独項目(呼吸困難、不眠症、食欲不振、便秘、下痢、及び金銭的困難)。30個の質問がHRQoLに関係し、ここで最初の28個の質問は、4段階評価で点数が付けられ(1=全くない~4=とてもある)、患者の全般的な健康及びHRQoLを探る最後の2個の質問は、1(極めて悪い)~7(極めて良い)の段階で点数が付けられる。各下位尺度が0%~100%の範囲を有し、ここでは高い点数が、より高い回答レベルに相当する。したがって、機能尺度の高い点数は、高いレベルの機能に相当し、しかし症状尺度の高いスコアは、高いレベルの総体症状/問題に相当する。
【0289】
評価スケジュールに指定される時点で、治療満足度もまた判定されることになる。治療投与満足度質問票(Treatment Administration Satisfaction Questionnaire:TASQ)は、エクリズマブIV、ラブリズマブIV、又はラブリズマブSC処置に関する患者の見解及び満足度を判定することになるバリデートされた質問票である(図3図4、及びTheodore-Oklota et al.,Patient Prefer Adherence.2016;10:1767-1776を参照)。TASQは、5つのドメイン:身体的影響、心理的影響、ADLへの影響、便利さ、及び満足度を通じて治療満足度に点数を付ける。各ドメインが最大5つの回答選択肢を提供し、ここでは低い点数が、より肯定的な回答を示す。5つのドメインの各々を足し合わせることにより、点数評価が完成する。
【0290】
FACIT-疲労、EORTC QLQ-C30、及びTASQ-IV/TASQ-SCが施行され、書類上記録される。
【0291】
15.安全性判定
治験責任医師又は被指名人が患者と面会し、ラブリズマブSC、ラブリズマブOBDS、及びラブリズマブIVの潜在的安全性リスクについて話し合うことにより、治験責任医師に、患者の本研究に関する安全性への任意の懸念に対処する機会が与えられる。
【0292】
全ての安全性判定の時点は、評価スケジュールに提供される。
【0293】
主要有害血管イベント(MAVE)の記載は、診断方法(例えば、磁気共鳴画像法、超音波、血管造影図)、診断日、及び解消した日(又は進行中)を含め、患者の病歴の一部として(ベースライン前)、及び研究全体を通じてeCRFに収集される。
【0294】
MAVEは、以下のとおり定義される:血栓性静脈炎/深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、腎静脈血栓症、急性末梢血管閉塞、腸間膜/内臓静脈血栓症又は梗塞、腸間膜/内臓動脈血栓症又は梗塞、肝静脈/門脈血栓症(バッド・キアリ症候群)、大脳動脈閉塞/脳血管発作、脳静脈閉塞、腎動脈血栓症、壊疽(非外傷性;非糖尿病性)、切断(非外傷性;非糖尿病性)、皮膚血栓症、又はその他(具体的に記すこと)
【0295】
理学的検査には、以下の判定が含まれる:全体的な外観;皮膚;頭部、耳、眼、鼻、及び咽頭;頸部;リンパ節;胸部;心臓;腹腔;肢;中枢神経系;及び筋骨格系。簡易理学的検査は、治験責任医師の判断及び患者の症状に基づく身体の各系についての関連する検査からなる。
【0296】
評価スケジュールに指定される時点で皮下又は静脈内注入部位評価を実施する。
【0297】
バイタルサイン測定値は、患者が少なくとも5分間安静にした後に取り、これには、収縮期及び拡張期血圧(BP;mmHg)、心拍数(拍/分)、呼吸数(回/分)、及び体温(℃又は°F)が含まれる。
【0298】
単極12誘導心電図(ECG)は、評価スケジュールに概説されるとおり、心拍数及び測定値PR、QRS、QT、及びQTc間隔を自動で計算するECG機械を使用して入手する。
【0299】
患者は、ECG収集前の約5~10分間は仰臥位とし、ECG収集の間、仰臥位のままで、但し覚醒していなければならない。
【0300】
治験責任医師又は被指名人は、ECGを判読して、そのECGが正常範囲内にあるかどうかを判定し、結果の臨床的意義を決定することに責任を負う。これらの判定は、eCRFに指示される。
【0301】
尿サンプルは、表10に掲載されるパラメータに関して分析する。肉眼的分析の結果が異常であった場合、尿サンプルの顕微鏡検査を実施する。尿サンプルはまた、タンパク質及びクレアチニンの測定のため分析し、尿タンパク:クレアチニン比も計算する。
【0302】
【表10】
【0303】
登録前に、HIV-1及びHIV-2に関するヒト免疫不全ウイルス検査が全ての患者に必須である。HIV陽性の患者は登録されない。
【0304】
治験薬投与前、血清中のラブリズマブに対するADAの存在に関して検査するため、血液サンプルを採取する。ラブリズマブの結合抗体及び中和抗体、PK/PD、安全性、及び活性を含め、抗体応答の更なる特徴付けを適宜行ってもよい。ラブリズマブに対する抗体は、評価スケジュールに従い全ての患者から採取した血清サンプルで評価する。ラブリズマブに結合する抗体に関して血清サンプルをスクリーニングし、確認された陽性サンプルの力価を報告する。バリデートされたアッセイを用いてラブリズマブに対する抗体の検出及び特徴付けを実施する。
【0305】
有害事象及び重篤有害事象を報告する。有害事象(AE)は、医薬製品を投与された患者における任意の厄介な医学的出来事であり、この処置と必ずしも因果関係があるわけではない。したがって有害事象とは、医薬品に関係すると見なされるか否かにかかわらず、時間的に医薬品の使用と関連性のある任意の好ましくない又は意図しない徴候(例えば、異常な臨床検査所見)、症状、又は疾患であり得る。
【0306】
有害事象の定義に該当する事象には、以下が含まれる:(1)治験責任医師の医学的及び科学的判断で臨床的に重大と見なされる(即ち、基礎疾患の進行とは関係のない)、ベースラインから悪化するものを含めた、任意の異常な臨床検査結果(血液学、臨床化学、又は検尿)又は他の安全性判定(例えば、ECG、X線スキャン、バイタルサイン測定値)、(2)病態の頻度及び/又は強度のいずれかの増加を含めた、慢性又は間欠性の既存病態の増悪、(3)研究開始前に存在していた可能性があるとしても、治験薬投与後に検出又は診断される新規の病態、(4)疑わしい薬物間相互作用の徴候、症状、又は臨床的続発症、(5)本質的にAE又はSAEとして報告されるものである「有効性の欠如」又は「期待された薬理作用の不足」。かかる事例は、有効性判定において捕捉される。しかしながら、有効性の欠如によって生じる徴候、症状、及び/又は臨床的続発症は、それがAE又はSAEの定義を満たす場合には、AE又はSAEとして報告される、及び(6)有効性の欠如によって生じる徴候、症状、及び/又は臨床的続発症は、それがAE又はSAEの定義を満たす場合には、AE又はSAEとして報告される。
【0307】
有害事象の定義に該当しない事象には、以下が含まれる:(1)医学的又は外科的手技(例えば、内視鏡検査、虫垂切除術):その手技につながる病態は、AEである。厄介な医学的出来事が発生しなかった状況(例えば、ICFへの署名前に計画されていた場合の待機手術のための入院、社会的理由又は便宜上の措置入院)、(2)研究開始時に存在する又は検出される既存の1つ又は複数の疾患又は1つ又は複数の病態で悪化しないものについての見込まれる日々の変動、(3)臨床試験の目的は薬物効果を確立することであるため、薬物効果の欠如は臨床試験におけるAEではない、(4)投薬過誤の結果として厄介な医学的出来事が発生しない限り、投薬過誤(製品の意図的な不正使用、乱用、及び過量摂取を含む)又はプロトコルに定義されたもの以外の使用は、AEとは見なされない、及び(5)治験製品への母性又は父性曝露中に発生する妊娠の症例は、治験責任医師/施設が把握してから24時間以内に報告される。規制当局への報告及び安全性判定のため、胎児アウトカム及び母乳哺育に関するデータが収集される。
【0308】
ある事象が、上記の定義に従うところの有害事象でない場合には、それが重篤な状態(例えば、研究中の疾患の徴候/症状による入院、疾患の進行に起因する死亡)に該当したとしても、それを重篤有害事象(SAE)とすることはできない。入院患者又は外来患者セッティングで投与される輸血は、有害事象又は重篤有害事象としては捉えず、但し、治験責任医師がそのようなものとして特定した場合はその限りでない。重篤有害事象の定義は表11に示す。
【0309】
【表11】
【0310】
疑わしい予期せぬ重篤有害反応(SUSAR)は、IBに掲載されていない、及び治験責任医師が治験製品又は手技に関係があると特定する重篤な事象である。
【0311】
機器による有害作用(ADE)は、治験医療機器の使用に関係があると見なされる有害事象である。これには、治験医療機器の使用説明書、開発、設置、操作に不足がある又はそれが不適切であること、又は任意の誤動作によって生じる任意の有害事象が含まれる。ADEには、使用過誤又は意図的な不正使用の結果である任意の事象が含まれる。使用過誤とは、製造者又は使用者が意図したものと異なる機器反応を生じさせる行為又は行為の省略を指す。対象の予期せぬ生理学的反応は、それ自体は使用過誤を成さない。機器の使用に伴い発生する投薬漏れ(未投薬)及び部分投薬(過少投薬)投薬過誤は、ADEと見なされる。各ADEが、1つの研究機器(即ち、現在の研究では1つのOBDSキット)と関連付けられなければならない。複数のOBDSキットが関わるラブリズマブSC過量摂取は、SC薬物投与経路に関する投薬過誤であり、したがってADEとは見なされない。
【0312】
ADEは、以下の場合に発生し得る:(1)通常の使用例:いかなる明らかな機器不具合、機器の使用過誤又は異常使用にも関連しない注射部位反応(2)機器不具合の例:注射部位の裂傷につながる曲がった針、(3)使用過誤の例:IFUに従って必要な投薬を完了しようとする意図が精一杯ありながら、対象が体毛を取り除いて機器適用部位の皮膚を適切に準備するのを忘れたため、投薬の最中に機器が剥がれ落ちることにつながり、それが部分投薬につながった、(4)不正使用(異常使用)の例:対象が、ラブリズマブOBDS IBに指定される機器の使用説明に反して、治験薬以外の物質の投与に機器を使用したため、その物質から毒性が生じることになった。
【0313】
2つのOBDSキットを使用して規定の490mg用量のラブリズマブSCを送達する。研究機器又は研究機器の使用に関連する投薬漏れ(未投薬)及び部分投薬(過少投薬)といった投薬過誤は、ADEと見なされる。OBDSを使用したラブリズマブSC投与に関連するいかなる用量の送達漏れ又は用量の未送達も、ADEと見なされる。ADEと共に、未投薬ADEに関連するキット番号を記録しなければならない。部分投薬後、1つの機器に関連するADEがあり得る。したがって、1例の部分投薬ADEが1つのOBDSユニットに関連し、部分投薬ADEの記録においては、1つのキット番号が必要である。
【0314】
機器による重篤な有害作用(SADE)は、SAEに特有の帰結のいずれかを起こすことになったADEである。
【0315】
予期せぬ機器による重篤な有害作用(USADE)は、その性質上、現行版のラブリズマブOBDS IBにおいて発生率、重症度又はアウトカムが予想される事象として特定されていないSADEである。
【0316】
機器不具合は、その識別性、品質、耐久性、信頼性、安全性又は性能に関係する治験医療機器の不適切さである。これは、誤動作、不正使用、使用者の過誤、不適切な表示又は製造者によって提供される情報の不足に起因し得る。投薬過誤が機器不具合/誤動作に関連する場合、それはADEと見なされる。
【0317】
治験責任医師は、研究中に報告される各AE及びSAEについて重症度の判定を行い、それを、2010年6月14日刊行の国立癌研究所(National Cancer Institute)有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(CTCAE)v4.03による以下の分類のうちの1つに割り当てる。各CTCAE用語は、MedDRAによる下層語(Lowest Level Term:LLT)である。各LLTが、MedDRA基本語にコード化されることになる:(1)グレード1:軽度(無症候又は軽度の症状;臨床観察又は診断観察のみ;介入は適応されない)、(2)グレード2:中等度(最小限の、局所的な又は非侵襲性の介入が適応される;年齢に応じた手段的ADLの制限)、(3)グレード3:重度(重度又は医学的に重大であるが、直ちに生命を脅かすものではない;入院又は入院の延長の適応;身体障害がある;セルフケアADLの制限)、(4)グレード4:生命を脅かす(緊急介入の適応)、及び(5)グレード5:致死的(AEに関連する死亡)。AEの重症度に変化があれば、eCRF記入ガイドライン(eCRF Completion Guidelines)の具体的な指針に基づいて文書記録に残さなければならない。重症度と重篤度とは区別しなければならない:重症度は、AEの強度を表し、一方、重篤度という用語は、上記に記載したとおりのSAEの具体的な判定基準を満たしたAEを指す。
【0318】
治験責任医師は、治験薬と各AE/SAEの発生との間、及び研究機器と各ADE/SADEの発生との間の関係を判定する義務がある。治験責任医師の因果関係判定は、全てのAE及びADE(非重篤及び重篤の両方)について提供されなければならない。この判定は、eCRF及び任意の追加的なフォームに適宜、記録されなければならない。因果関係判定の定義は以下のとおりである:(1)関係なし(無関係):薬物が有害事象を引き起こしたという合理的な可能性があったことを示唆するエビデンスはない、及び(2)関係あり:薬物が有害事象を引き起こしたという合理的な可能性があったことを示唆するエビデンスがある。治験責任医師は、臨床上の判断を用いて治験薬又は治験医療機器との関係を決定することになる。1つ又は複数の基礎疾患、併用療法、及び他のリスク要因などの別の原因、並びに事象と治験薬投与との時間的関係が考察され、調査される。このプロトコルは、現行のIBを安全性参照資料(Reference Safety Document)として使用する。SAEの予測可能性及び報告基準は、治験依頼者が安全性参照資料(Reference Safety Document)に基づき決定する。SAEが発生し、治験責任医師が初回報告に載せる最小限の情報しか有しないという状況があり得る。しかしながら、SAEデータの初回送信前に、あらゆる事象について治験責任医師が常に因果関係の判定を行うことが極めて重要である。
【0319】
評価スケジュールに指定されるICFの署名からフォローアップ連絡まで、全ての事象を収集する。
【0320】
任意の終末補体拮抗薬と同様に、ラブリズマブを使用すると、髄膜炎菌感染症(髄膜炎菌(N meningitidis))への患者の易罹患性が増加する。髄膜炎菌感染症のリスクを低減するため、全ての患者が、治験薬の開始前3年以内に、又は開始時点で、髄膜炎菌感染症に対するワクチンを接種済みでなければならない。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で治験薬処置を開始する患者は、ワクチン接種後2週間まで、適切な予防的抗生物質による処置を受けなければならない。
【0321】
利用可能な場合、共通の病原性髄膜炎菌血清型の予防のため、血清型A、C、Y、W135、及びBに対するワクチンが推奨される。患者は、現行の国のワクチン接種指針又は現地の補体阻害薬(例えば、エクリズマブ)とのワクチン使用慣行に基づきワクチンを接種又は再接種しなければならない。
【0322】
ワクチン接種が髄膜炎菌感染症の予防に十分でないこともある。公式のガイダンス及び現地の適切な抗菌剤使用に関する慣行に従い検討を行わなければならない。全ての患者について、髄膜炎菌感染症の初期徴候をモニタし、感染が疑われる場合には直ちに評価し、必要であれば、適切な抗生物質で処置する。
【0323】
研究の過程で患者が見舞われる感染症についてのリスク認識を高め、任意の可能性のある徴候又は症状の速やかな開示を促すため、患者に安全性カードが提供され、患者はそれを常時携帯する。来院毎に、評価スケジュールに記載されるとおりの患者安全性カードのレビューの一環として、潜在的リスク、徴候、及び症状に関する更なる議論及び説明が発生する。髄膜炎菌(N meningitidis)の1つ又は複数のワクチン接種は、患者のeCRFに記録される。
【0324】
注入部位反応は、SC又はIV投薬部位に限局的なものであり、紅斑、掻痒、及び皮下出血などといったものが含まれ得る。注入関連反応は、全身的な性質の、概して薬物投与から数時間以内に発生する免疫介在性又は非免疫介在性のものであり得る。免疫介在性反応にはアレルギー反応が含まれてもよく(例えば、アナフィラキシー)、一方、非免疫介在性反応は非特異的である(例えば、頭痛、眩暈、悪心)。これらの反応のモニタリングは、本研究のルーチンの安全性判定の一環として行われる。
【0325】
注入関連反応は、IV又はSC注入中、又はその開始から24時間以内に発生する、治験責任医師によって治験薬と関係があると判定される全身性の有害事象(例えば、発熱、悪寒、潮紅、心拍数及びBPの変化、呼吸困難、悪心、嘔吐、下痢、及び全身性の皮膚発疹)として定義される。
【0326】
機器性能は、IFUの要件に従い、企図される規定用量投与の報告アウトカム(機器の不具合/誤動作を含む)を用いて判定される。
【0327】
機器不具合の場合、投薬漏れに関連するか否かにかかわらず、ラブリズマブOBDSは分析のため中心検査室に送られ得る。
【0328】
この研究について、プロトコルに指定/要求されるよりも高い任意のIV又はSCラブリズマブ用量は、過量摂取の投薬過誤と見なされる。過量摂取は、それによって生じる厄介な医学的出来事がない限り、AE又はADEとは見なされない投薬過誤である。
【0329】
OBDSによるラブリズマブのSC投与に関連する過量摂取とは、2本の全量OBDSカートリッジに含まれる用量よりも多いラブリズマブSCの投与として定義される。この定義は、規定用量のラブリズマブSC投与が、一定用量/容積のラブリズマブが入ったカートリッジを各々備えた複数のOBDSユニットの使用を伴うという実際上の考慮点のために作られる。この定義は、治験薬についての過量摂取の定義及び以前に臨床試験が行われたラブリズマブの広い安全許容用量範囲(最大5400mg IV、10本以下の規定量OBDSカートリッジ中のラブリズマブに相当する)に基づく。
【0330】
16.薬物動態判定
PK用サンプルの採取タイミングは、本研究の主要評価項目にとって決定的に重要である。1日目に投与される用量の開始時間が、全ての後続用量、及び関連するサンプルの名目時間である。割り当てられたPK来院ウィンドウ外で入手されたサンプルは、プロトコル逸脱と見なされる。次のサンプル採取タイミングは、依然として1日目の用量投与開始の名目時間に対するタイミングのままである。
【0331】
血清薬物濃度を決定するための血液サンプルは、評価スケジュールに指示される時点及びウィンドウ内で治験薬の投与前に採取する。SC群の1日目並びにIV群の1及び15日目については、注入終了から30分以内に投与後血液サンプルを採取する。IV群の57日目については、血液サンプルは施設来院時に採取する;57日目に用量は投与されない。各サンプル取得の日付及び時刻(24時制)を記録する。
【0332】
ブレイクスルー溶血が起こった場合、追加のPKサンプルが必要となる。必要に応じて追加のラブリズマブ関連判定を実施するため、未使用のサンプルを最長5年間にわたって確保しておいてもよい。
【0333】
主要評価項目(71日目のCトラフ)を目的の主要PKパラメータとして、時間の経過に伴う血清ラブリズマブ濃度を評価する。他のPKパラメータを探索してもよい。
【0334】
17.薬力学
時間の経過に伴う遊離C5濃度を評価する。血液サンプルは、評価スケジュールに指示される時点及びウィンドウ内で治験薬の投与前に採取する。SC群の1日目並びにIV群の1及び15日目については、注入終了から30分以内に投与後血液サンプルを採取する。IV群の57日目については、血液サンプルは施設来院時に採取する;57日目に用量は投与されない。割り当てられた来院ウィンドウ外で入手されたサンプルは、プロトコル逸脱と見なされる。ブレイクスルー溶血が起こった場合、追加のPDサンプルが必要となる。必要に応じて追加の判定を実施するため、未使用のサンプルを最長5年間にわたって確保しておいてもよい。
【0335】
サンプル採取に関する更なる詳細は、血液量の要件を含め、臨床検査マニュアルに提供される。
【0336】
18.統計的方法及び計画上の分析
統計的仮説は、OBDSによってラブリズマブSCで処置した患者の71日目Cトラフ濃度が、ラブリズマブIVで処置した患者に対して非劣性であるというものである。
【0337】
トラフの幾何平均比(SC/IV)が1.03であり、変動係数が0.4であると仮定すると、ラブリズマブSC群の62例の患者及びラブリズマブIV比較群の31例の患者が、0.05のαレベル及び0.8のPK非劣性境界(NIB)で片側検定を用いて非劣性を検出する90%の検出力を達成した。αレベル及びNIBは、それぞれ米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)及び欧州医薬品庁(European Medicines Agency)からの指針書「生物学的同等性を確立するための標準的アプローチ(Standard Approaches to Establishing Bioequivalence)」及び「生物学的同等性研究のガイドライン(Guideline on the Investigation of Bioequivalence)」にある推奨に基づく。PK解析対象集団への組入れ判定基準を満たさない患者が最大10%あり得るという可能性を考慮して、この標本サイズを105例の患者(ラブリズマブSC群に70例の患者及びラブリズマブIV群に35例の患者)に増加させる。無益性を評価し、標本サイズ再推定を実施する中間分析を実施する。この標本サイズ再推定は、最大144例の患者(最大でラブリズマブSC群の96例の患者及びラブリズマブIV比較群の48例の患者)の増加につながり得る。
【0338】
分析集団を表12に定義する。PK解析対象集団に組み入れるための投薬ウィンドウを表13に提示する。
【0339】
【表12】
【0340】
【表13】
【0341】
一次分析には、PK解析対象集団を使用する。
【0342】
全てのデータ及びデータから導き出される全てのアウトカムを詳細なデータ一覧又は要約表にして提示する。適切な場合には、グラフもまた提供し得る。分析は全て、SAS(登録商標)リリース、バージョン9.4以降(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)又は他のバリデートされた統計ソフトウェアを使用して実施することになる。連続変数は、観察件数及び平均値、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値を含め、記述統計量を用いて要約する。カテゴリー変数は、患者の頻度数及び百分率によって要約する。
【0343】
データベース固定及び分析前に、別個の統計解析計画書(SAP)に、以下に記載する統計的分析の詳細を指定する。プロトコルに記載されるデータ分析方法の任意の変更について、それによって主要目的又は研究実施が変わる場合に限り修正が必要である。プロトコル又はSAPに記載されるデータ分析方法の任意の他の変更、及び変更を行うことを正当化する理由は、臨床研究報告書に記載される。適切と見なされる場合、更なる探索的データ分析を行い得る。
【0344】
無作為化処置期間におけるプロトコルによって要求される全ての判定が全ての患者について完了した後に、ラブリズマブIVと比較したラブリズマブSCの血清Cトラフの非劣性を評価する一次分析を行う。
【0345】
一次分析は、PK解析対象集団で実施する。
【0346】
主要評価項目は、71日目血清ラブリズマブCトラフである。ラブリズマブIV群からの幾何平均Cトラフに対するラブリズマブSC群からの幾何平均Cトラフの比を両側90%CIと共に計算する。幾何平均比(ラブリズマブSC/ラブリズマブIV)に関する90%CIの下限が80%のNIBよりも高い場合、ラブリズマブSC処置はラブリズマブIV処置に対して非劣性であると結論付けられる。
【0347】
上述の90%CIを入手するため、考慮中のCトラフデータを分散分析を用いて分析する。製剤(SC又はIV)に加えて、この統計的分析モデルは体重を考慮に入れる。データは分析前に対数変換を用いて変換する。対数変換したパラメータの差の平均について点推定値及びCIを計算し、作成する。これらを次に逆変換して、比のスケールで提示する。
【0348】
評価可能なPKデータのある最大解析対象集団(FAS)患者及びプロトコル遵守対象集団(PPS)に対してこの一次分析を繰り返すことにより、感度分析を実施する。
【0349】
二次分析は、最大解析対象集団(FAS)に対して実施する。適用可能な場合、無作為化処置期間の結果を処置群別に並行して提示し、但し、正式な比較が実施されることはない。患者がラブリズマブのSC投与を受けている間の時間の経過に伴うデータの要約は、ラブリズマブSCへの初回曝露から経った時間に基づく。延長期間の開始時、SC群に無作為化された患者についてはラブリズマブSCのその初回用量から56日経っている一方、当初IV群に無作為化された患者は、ラブリズマブSCのその初回用量を受けることになる。この曝露量の差を考慮に入れて、例として、(ラブリズマブSCの初回用量から)183日目の要約には、SC群に無作為化された患者からの研究183日目のデータ及びIV群に無作為化された患者からの研究239日目のデータを使用する。
【0350】
PK解析対象集団において記載したとおりの、FASからの評価可能なPKデータを有する全ての患者について薬物動態分析を実施する。これは多施設患者研究であるため、サンプル採取又は取扱いミスが推測される場合には、PK又はPDデータの打ち切りが検討されてもよい。
【0351】
時間に対する血清ラブリズマブ濃度平均値のグラフを作成する。個々の患者についての時間に対する血清濃度のグラフもまた提供し得る。全ての計算に、実際の用量投与及びサンプル採取時間を用いる。必要に応じて、各サンプル採取時間における血清濃度データについて記述統計量を計算する。
【0352】
FASからの評価可能なPDデータを有する全ての患者について、薬力学的分析を実施する。時間の経過に伴う遊離C5血清濃度の絶対値の判定により、ラブリズマブのPD効果を評価する。適宜、各サンプル採取時点毎にPDデータの記述統計量を計算する。血清遊離C5濃度の更なる判定を適宜考慮し得る。
【0353】
クオリティ・オブ・ライフは、FACIT-疲労第4版質問票、並びにEORTC QLQ-C30第3.0版質問票を用いて評価する。これらの質問票からのデータは、ベースライン時及び183日目に、並びにベースライン後の各適用可能な時点で、観察された値の連続変数の記述統計量、並びにベースラインからの変化を用いて要約する。
【0354】
処置に対する患者満足度は、TASQスコアを用いて評価する。これらのデータは、ベースライン時及び183日目に、並びにベースライン後の各適用可能な時点で、観察された値の連続変数の記述統計量、並びにベースラインからの変化を用いて要約する。この質問票から生成された任意の安全性データは、治験責任医師の医学的判断に従いAE eCRFに有害事象として文書記録に残す。
【0355】
乳酸デヒドロゲナーゼは、ベースライン時及びベースライン後の各適用可能な時点で、観察された値の連続変数の記述統計量、並びにベースラインからの変化を用いて要約する。
【0356】
ベースライン後の各適用可能な時点についてブレイクスルーがある患者の数及び比率を両側95%CIと共に提示することにより、ブレイクスルー溶血がある患者の数及び比率を時間の経過に伴い要約する。輸血が不要な患者の数及び比率、並びに安定化ヘモグロビンを有する患者の数及び比率も同様に要約する。
【0357】
安全性分析は全て、少なくとも1用量のラブリズマブの投与を受ける全ての患者として定義される安全性対象集団について行う。
【0358】
AE及びADEについては、以下の定義を使用する。処置前有害事象とは、インフォームドコンセントの提供後、但し治験薬の初回注入前に始まる任意の有害事象である。治療下で発現したAE(TEAE)とは、治験薬の初回注入の最中又はその後に始まる任意の有害事象である。ADEは全て、定義上、初回注入の最中又はその開始後に発生するものである。
【0359】
TEAEの発生率は、全体として器官別大分類(SOC)及び基本語別に、重症度別、並びに処置との関係別に要約する。SAEの発生率もまた要約する。ADE及びSADEの発生率も同様に、SOC及び基本語別並びに重症度別に要約する。AE及びADEは全て、国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)、第18版以降を使用してコード化する。
【0360】
理学的検査所見のベースラインからの有害な変化は有害事象として分類され、それに応じて分析される。
【0361】
全ての適用可能な研究来院について、ECG、バイタルサイン、及び臨床検査判定の観察された値及びベースラインからの変化(ラブリズマブ前の最後の判定)を要約する。全ての適用可能な研究来院について、正常範囲値に基づき正常、低値、又は高値に分類することのできる検査結果についての分類のベースラインからのシフトを要約する。
【0362】
全ての適用可能な研究来院について、ECG間隔(PR、RR、QT、及びQTcF)のベースラインからの変化を要約する。QT間隔は、フリデリシア(Fridericia)の式を用いて心拍数で補正する(QTcF)。
【0363】
免疫原性データについて、ラブリズマブに対するADAを生じる患者の数及び比率並びに力価値を要約する。時間の経過に伴う少なくとも1回の陽性ADA結果がある患者の比率(かつて陽性)及び常に陰性の患者の比率を調べてもよい。
【0364】
機器性能は、企図された全ての規定用量投与のうち、完全な投与が成功した用量の数及び比率によって評価する。完全に投与されなかった用量について理由を要約する。「機器に関連する技術的故障」として報告される理由については、それらの技術的故障を更にカテゴリー別に要約する。
【0365】
必要と考えられる場合には、PK、PD、ラブリズマブOBDS性能データ、及び患者報告アウトカムの更なる探索を実施してもよい。
【0366】
計画された患者(n=105)の50%の主要評価項目を判定し終えたとき(即ち、ラブリズマブSC群の34例の患者及びラブリズマブIV比較群の17例の患者)、中間分析を実施する。これにより、PK解析対象集団への組入れ基準を満たす患者が少なくとも45例生じることが期待される。
【0367】
分析の初期パートは、有意な最終結果につながる可能性が低い場合に治験依頼者が研究を早期中止することが可能となるように、無益性を判定することである。これにより、非劣性である可能性は極めて低いと見られる場合には資源が保護されることになり、それ以上の患者が治験薬に曝露されることがなくなる。
【0368】
無益性判定後、但し同じセットの患者及びデータを使用して、主要評価項目の推定に基づき研究に必要なサイズを再判定する標本サイズ再推定の中間分析もまた実施する。
【0369】
この分析が進行している間、中断なしに患者の登録を進める。
【0370】
中間分析時点では、非劣性を実証するために研究を中止する計画はない。
【0371】
20%の非劣性の条件付き検出力(CPni)に基づく拘束力のない(nonbinding)無益性境界を使用し、そのため治験依頼者が研究を継続すると決めた場合、無益性境界が交差したとしても、一次分析の第1種の過誤率に影響はない。
【0372】
標本サイズ再推定(SSR)分析はまた、この中間分析で得られた結果を用いて計算されるCPniに基づく。CPniは、「観察された効果」値を仮定して計算される;即ち、集団平均Cトラフは、標本サイズ再推定時点での標本平均Cトラフに等しい。最大患者総数は144例である。標本サイズは、105例の患者という計画の標本サイズから決して減少させない。105例の患者という計画の総標本サイズについてCPniが少なくとも90%である場合には、標本サイズの増加は行わない。
【0373】
この標本サイズ再推定分析に基づき行われる決定は、以下の規則に従う(表14を参照のこと):
【0374】
CPmin≦CPni<0.9の場合、144例の患者という上限を設けて、CPniが90%に増加するのにちょうどぴったりの量だけ標本サイズを増加させる。範囲CPmin≦CPni<0.9は、非劣性の見込みのある区域(promising zone)と呼ばれる。具体的には、CPniがその見込みのある区域にあるとき、この決定規則により、144例の患者又はCPniを90%にまで押し上げるのに必要な数のうち小さい方にまで標本サイズが増加する。
【0375】
【表14】
【0376】
見込みのある区域の下限、CPminは、Mehta et al.(Mehta et al.,Stat Medicine.2011;30:3267-3284)に説明される手法に従い決定し、この標本サイズ再推定分析に基づき行われた任意の決定後に研究バイアスが生じる可能性を回避するため、ここでは明示的に述べない。更なる詳細はSAPに提供する。
【0377】
1日目の判定が欠測している場合、スクリーニング判定をベースライン判定として使用する。
【0378】
HRQoLインストルメントの欠測データは、各インストルメントの説明書に指定されるとおり取り扱われる。
【0379】
実施例2:第3相臨床試験の中間結果
エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))で3ヵ月以上安定している成人PNH患者において、実質的に上記の実施例1に示すプロトコルに従い、静脈内投与されるラブリズマブ(RAV-IV)と比べた皮下投与されるラブリズマブ(ULTOMIRIS(登録商標))(RAV-SC)の第3相、無作為化、並行群間、多施設共同、非盲検、PK非劣性研究(「ALXN1210-PNH-303」と称される)を行った。
【0380】
具体的には、本研究は、RAV-IVと比べたRAV-SCの第3相、無作為化、並行群間、非盲検、PK非劣性研究である。エクリズマブで3ヵ月以上安定している成人PNH患者で切り替えを行った。無作為化(2:1、SC対IV)は、ベースライン体重カテゴリー別に層別化した(40kg以上60kg未満及び60kg以上100kg未満)。無作為化処置期間は、10週間にわたって2:1で処置アームに無作為化した(ravRAV-SC対RAV-IV)。
【0381】
136例の参加者が登録し、少なくとも1用量を受けた。施設0657の7例の参加者は全員、原資料管理の逸脱が理由で主要解析対象集団から除外した。1例の参加者は、無作為化処置期間の完了前に中断した。113例の患者を一次解析対象集団(PK解析対象集団)に組み入れる。
【0382】
全ての患者が、1日目に体重換算IV負荷用量を受けた。15~71日目:患者は、QW SC用量(2つのRAV-OBDSによる490mg)又はシングルQ8W RAV IV維持用量のいずれかを受けた。延長期間については、全ての患者がQW SC用量(2つのRAV-OBDSによる490mg)を最長182週間まで自己投与した。標本サイズは105例(70例のSC及び35例のIV)であった。計画された総標本サイズの50%が主要評価項目判定を完了したとき、無益性分析及び標本サイズ再推定分析を行った(2020年1月に行った)。登録中止はなかった。研究スキームを図5に示す。患者の配分及び解析対象集団を図6に要約する。患者の人口統計学的情報及びベースライン特性評価を図7A図7Bに示す。
【0383】
具体的な投薬は、以下のとおりである:
ラブリズマブSC投薬量:1日目負荷用量(IV)=40kg以上60kg未満の患者について2400mg及び60kg以上100kg未満の患者について2700mg;15日目及び延長期間維持用量(SC)=全ての患者について490mg qw。
【0384】
ラブリズマブIV投薬量:1日目負荷用量(IV)=40mg以上60kg未満の患者について2400mg及び60kg以上100kg未満の患者について2700mg;15日目維持用量(IV)=40kg以上60kg未満の患者について3000mg、60kg以上100kg未満の患者について3300mg。
【0385】
延長期間維持用量(SC)=全ての患者について490mg qw。
【0386】
A.目的及び評価項目
主要目的は、静脈内投与と比べた皮下投与のラブリズマブトラフ濃度の非劣性を実証することであった。主要評価項目は、71日目血清ラブリズマブトラフ濃度(Cトラフ)であった。データを組み入れ、過去に本研究を中断したことのない全ての患者に関する10週間無作為化処置期間からのものである。
【0387】
安全性目的は、皮下投与されるラブリズマブ及びラブリズマブオンボディデリバリーシステム(OBDS)の安全性を評価することであった。安全性評価項目には、理学的検査、バイタルサイン、臨床検査判定、機器による有害作用(ADE)を含めた有害事象(AE)が含まれた。
【0388】
副次的目的及び評価項目には、(1)ラブリズマブSCのPK、PD、及び免疫原性を特徴付けること(即ち、時間の経過に伴うCトラフ、遊離C5、及び抗薬物抗体)、(2)ラブリズマブSCに関する健康関連の生活の質及び治療満足度を評価すること(即ち、FACIT-疲労、EORTC QLQ-30、治療投与満足度質問票)、(3)ラブリズマブSCの有効性を評価すること(即ち、LDH、ブレイクスルー溶血、輸血回避、安定ヘモグロビン、PNH総体症状)、及び(4)ラブリズマブOBDSの性能を判定すること(即ち、企図した規定用量投与の報告アウトカム)が含まれた。中間評価項目は、2020年6月までのものであり、無作為化処置期間(10週間)からのデータに限定される。
【0389】
B.一次分析
PK解析対象集団に対して一次分析を実施した。これには、評価可能なPKデータを有する患者であって、その患者について、(1)最長64日目までの全ての用量が、計画用量及びプロトコルに指定される投薬時間ウィンドウを遵守している、及び(2)71日目の投与前PKサンプルが1日目の初回用量の名目時間から±3時間以内に採取された全ての患者が含まれる。
【0390】
幾何平均比(ラブリズマブSC/ラブリズマブIV)に90%CIがある。これは、標本サイズ再推定中間分析を考慮に入れ、第1種の過誤が膨らむのを回避するため、重み付き検定統計量を用いて行った。CIの下限が80%の非劣性境界値(NIB)よりも高い場合には、非劣性を主張した。
【0391】
分析には、以下が含まれた:(1)処置(SC及びIV)及び体重カテゴリーを制御するANOVA、(2)分析前に対数変換したCトラフデータ、(3)対数変換データの平均値の差について求めた点推定値及びCI、及び(4)比のスケールで提示するため逆変換したもの。
【0392】
C.他の解析対象集団:
プロトコル遵守対象集団、PK対象集団中で以下の判定基準の全てもまた満たした全ての患者:
(1)以下の組入れ基準を満たした:
#1:研究登録前の少なくとも3ヵ月にわたってPNHについての推奨用量表示(14日±2日毎に900mg)に従いエクリズマブで処置され、研究登録前の2ヵ月以内に用量を抜かしたことがなく、及び来院ウィンドウ外が2用量を超えなかった。
#2:スクリーニング時、中央検査室によれば、乳酸デヒドロゲナーゼレベル≦1.5×ULN。サンプルは、予定されているエクリズマブ用量投与前の24時間以内又はその直前に(即ち、トラフエクリズマブレベルで)入手しなければならない。
#3:高感度フローサイトメトリー評価によって確認されたPNHの診断の文書記録がある。
#4:体重40kg以上100kg未満であり、治験責任医師の見解では、研究期間中、この体重範囲内にとどまるものと見込まれる。
#5:患者は、書面によるインフォームドコンセントを提出し、及び、ラブリズマブSC用量の自己投与、及び患者データを直接記録する任意の1つ又は複数のデータ収集機器の使用を含め、全ての研究来院及び手順を遵守する意思及び能力がなければならない。
(2)以下の除外基準のいずれも満たさなかった:
#1:研究登録前3ヵ月以内の1回を超えるLDH値>2×ULN。
#2:研究登録前6ヵ月のMAVE。
#3:スクリーニング時に血小板数<30,000/mm(30×10/L)。
#4:スクリーニング時に好中球絶対数<500/μL(0.5×10/L)
PD解析対象集団には、少なくとも1用量のラブリズマブの投与を受けた、及び評価可能なPDデータを有した全ての患者が含まれた。最大解析対象集団及び安全性対象集団には、少なくとも1用量のラブリズマブの投与を受けた登録済みの解析対象集団中の全ての患者(施設0657の者を除く)が含まれた。修正最大解析対象集団及び修正安全性対象集団には、FAS及び安全性対象集団中の全ての患者が含まれたが、少なくとも1用量のラブリズマブの投与を受けた施設0657の患者もまた含まれた。
【0393】
D.結果:
一次PK非劣性分析を図8に示す。ステージ1集団は、標本サイズ再推定分析に含まれる全ての患者である。ステージ2集団は、標本サイズ再推定分析の一部として分析されない全ての患者である。混合モデルは対数変換したパラメータで実施しており、処置及び層別化した体重群を固定効果として含む。幾何最小二乗平均は、元のスケールに逆変換した後の混合モデルからの最小二乗平均である。90%信頼区間は、元のスケールに逆変換した後に提示される。zスコアはステージ毎に計算し、0.5及び0.5の予め指定された重みを使用して複合スコアとして示す。重み付けした全体のzスコアが1.645を超える場合に統計的有意性に達した。PK非劣性のフォレストプロットを図9に示す。血清ラブリズマブ濃度平均値を図10に示す。遊離C5濃度を図11に図示する。
【0394】
静脈内と比べた皮下トラフラブリズマブ濃度の非劣性がPK解析対象集団で実証された。1.257の幾何平均比(GMR)で90%CI(1.160,1.361)、p値<0.0001であった。薬物動態学(PK)及び薬力学(PD)に関して、両方の処置群とも、初回用量後に無作為化処置期間を通じて得られた全ての遊離C5結果が、0.5μg/mL(即ち、完全終末補体阻害の規定の閾値)以下であった。予期せぬPK所見のない全ての対象について、皮下投薬の結果、ラブリズマブ曝露量が、完全補体阻害の閾値として規定された175μg/mL以上となった。いずれの参加者にも、治療下で発現したADA陽性結果は観察されなかった。
【0395】
有効性に関して、平均乳酸デヒドロゲナーゼを図12に示し、ブレイクスルー溶血/輸血回避を図13に示し、及びヘモグロビン安定性/PNH総体症状を図14に示す。ブレイクスルー溶血は、両方のアームとも低かった(即ち、皮下アームについて事象はなかったのに対し、静脈内アームでは1例の事象があった)。皮下群及び静脈内群の両方について、参加者のそれぞれ94%及び87%で輸血回避が維持された。輸血回避とは、無輸血を保ち、治験薬の初回用量後に輸血を必要としなかった患者として定義される。皮下群及び静脈内群について、参加者のそれぞれ94%及び82%で安定ヘモグロビン結果が維持された。皮下群及び静脈内群について、参加者のそれぞれ45%及び47%でPNHの症状が観察された。
【0396】
安全性に関して、いずれの参加者にも、治療下で発現したADA陽性結果は観察されなかった。治療下で発現したAEの概要を図15に示し、及び重篤有害事象の要約を図16に示す。少なくとも1つの有害事象(AE)がある患者の比率が、それぞれ81%及び60%と、皮下アームでは静脈内アームと比べて高かった。機器による有害作用(ADE)を除外したとき、比率は同程度であった:皮下(64%)に対して静脈内(60%)。ADEについて、23%は注射関係であり、4%は接触に関係するものであった。重篤有害事象(SAE)について、皮下の結果は5/84例(6%)であり、対して静脈内1/45例(2%)であった。機器による重篤な有害作用(SADE)は報告されなかった。髄膜炎菌症例はなかった。
【0397】
安全性に関して、焦点となる主要な分野は2つある:(1)TEAE(ADEに関係しないもの)及び(2)ADE。TEAは、皮下アームで発生率が高かった:(1)発熱-6例の患者、全てG1、全て無関係、(2)無力症-4例の患者、大多数がG1、2例は関係あり、及び2例は無関係、(3)疲労-6例の患者(2例が疲労の悪化)、大多数がG1、1例は関係あり、及び(4)下痢-10例の患者(11例の事象)、全てG1、3例は関係のある事象。ADEについて、n:38例(45.2%)E=107。(1)適用部位事象:n=3例(3.6%)E=3、(2)注射部位事象n=19例(22.6%)E=73、及び(3)機器使用n=20例(23.8%)E=31があった。
【0398】
E.まとめ:
要約すれば、一次結果から、PK解析対象集団における静脈内と比べた皮下トラフラブリズマブ濃度の非劣性が実証され、幾何平均比(GMR)は1.257で90%CI(1.160,1.361)、p値<0.0001であった。PK/PDに関して、両方の処置群とも、初回用量後に無作為化処置期間を通じて得られた遊離C5結果は全て、0.5μg/mL;完全終末補体阻害の規定の閾値以下であった。予期せぬPK所見のない全ての対象について、皮下投薬の結果、ラブリズマブ曝露量が、完全補体阻害の閾値として規定された175μg/mL以上となった。いずれの参加者にも、治療下で発現したADA陽性結果は観察されなかった。安全性に関して、少なくとも1つのAEを有する患者の比率は、それぞれ81%及び60%と、皮下アームでは静脈内アームと比べると高かった。機器による有害作用(ADE)を除外すると、比率は同程度であった:SC 64%に対してIV 60%。ADEについて、投与部位病態があった:26%(注射関係:23%、接触関係:4%)。SAEについて:SC 5/84例(6%)対IV 1/45例(2%)。SADEは報告されず、髄膜炎菌性症例はなかった。
【0399】
有効性に関して、ブレイクスルー溶血は両方のアームとも低かった:SC(事象なし)に対してIV(1事象)。SC群及びIV群の参加者のそれぞれ94%及び87%で輸血回避が維持された。SC群及びIV群について、参加者のそれぞれ94%及び82%において安定したヘモグロビン結果が維持された。SC群及びIV群について、参加者のそれぞれ45%及び47%にPNHの症状が観察された。
【0400】
【表A-1】
【0401】
【表A-2】
【0402】
【表A-3】
【0403】
【表A-4】
【0404】
【表A-5】
【0405】
【表A-6】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2023533682000001.app
【国際調査報告】