(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ヘパラナーゼ中和A54モノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230728BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20230728BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230728BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230728BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230728BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230728BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230728BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230728BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230728BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230728BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230728BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230728BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230728BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230728BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230728BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230728BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230728BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P3/10
A61P29/00
A61P13/12
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K45/00
A61K35/76
A61P35/02
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581658
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 IL2021050830
(87)【国際公開番号】W WO2022009203
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504127647
【氏名又は名称】テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514263687
【氏名又は名称】ハダシット メディカル リサーチ サービシズ アンド ディベラップメント リミテッド
【住所又は居所原語表記】Jerusalem BioPark, Hadassah Ein Kerem Medical Center, P.O.B. 12000 Jerusalem, 9112001 Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴロダフスキー イスラエル
(72)【発明者】
【氏名】バラシュ ウリ
(72)【発明者】
【氏名】ウー リャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA52
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4C084MA56
4C084MA66
4C084NA05
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4C084ZA811
4C084ZA812
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4C084ZC352
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4C085AA14
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C085GG01
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4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA17
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4C087MA66
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4C087ZA81
4C087ZB11
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4C087ZB27
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4C087ZC35
4C087ZC75
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヘパラナーゼ結合及びヘパラナーゼ中和モノクローナル抗体(IgG-1 mAb A54)(そのエピトープ(HBD-II)及びヘパラナーゼとの相互作用の様式を含む)に、それを含む医薬組成物に、並びに例えば、癌、炎症、ウイルス感染症、糖尿病及び関連する合併症が挙げられるがこれらに限定されないヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を阻害又は治療するためのその使用に関する。本発明は、ヘパラナーゼ中和mAbと、化学療法又は放射線等のさらなる抗癌治療とを含む組合せ癌治療をさらに提供する。
【選択図】
図6(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパラナーゼ酵素に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体であって、前記抗体、その抗原結合断片、類似体又は誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記CDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体。
【請求項2】
ヘパラナーゼ酵素のHBD-II領域(ヘパリン結合ドメイン2)に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体であって、前記抗体、その抗原結合断片、類似体又は誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記CDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体。
【請求項3】
少なくとも3つの異なるCDRを含み、前記3つの異なるCDRが、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む請求項1又は請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
少なくとも3つの異なるCDRを含み、前記3つの異なるCDRが、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列、及び配列番号6のアミノ酸配列を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体又は断片が、マウス若しくはヒトの抗体若しくは断片であるか、又はヒト化抗体又はヒト化断片である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号7のアミノ酸配列を含む請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号8のアミノ酸配列を含む請求項5又は請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fd’、Fv、dAb、単離CDR領域、単鎖抗体、ダイアボディ、及び線状抗体からなる群から選択される請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項10】
配列番号11から配列番号13のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
配列番号9に示されるヌクレオチド配列を含む請求項9又は請求項10に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項12】
配列番号14から配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項13】
配列番号10に示されるヌクレオチド配列を含む請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項1に記載の抗体、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド配列、又は請求項14に記載のベクターを含む細胞。
【請求項16】
請求項1又は請求項2に記載の抗体、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド配列、請求項14に記載のベクター、又は請求項15に記載の細胞と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項17】
必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を阻害又は治療する方法であって、前記対象に治療有効量のヘパラナーゼ酵素に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体を投与する工程を含み、前記抗体、又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記CDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む方法。
【請求項18】
必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を阻害又は治療する方法であって、前記対象に治療有効量のヘパラナーゼ酵素のHBD-II領域(ヘパリン結合ドメイン2)に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体を投与する工程を含み、前記抗体、又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記CDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む方法。
【請求項19】
前記疾患又は障害が悪性増殖性疾患である請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記悪性増殖性疾患が、癌腫、肉腫、黒色腫、又はこれらの組合せを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記悪性増殖性疾患が血液悪性腫瘍を含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍進行を阻害すること、腫瘍転移を阻害すること、又はこれらの組合せを含む請求項18から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
さらなる抗癌治療を前記対象に投与することをさらに含む請求項18から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記さらなる抗癌治療が、化学療法、放射線療法、又はその両方を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患又は障害が、1型糖尿病、炎症性障害、腎疾患、又はこれらの組合せである請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパラナーゼ中和モノクローナル抗体、それを含む医薬組成物、及び対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパラナーゼは、限られた数の部位でヘパラン硫酸(HS)側鎖を切断することができるエンド-β-D-グルクロニダーゼである。ヘパラナーゼ活性は、腫瘍由来細胞の転移能と相関し、これは、上皮細胞及び内皮細胞の下にある細胞外マトリクス(ECM)及び基底膜のHS切断及びリモデリングの結果としての細胞播種の増強に起因する。ヘパラナーゼ発現は、すべての主要なタイプのヒトの癌、すなわち癌腫、肉腫及び血液悪性腫瘍において誘導される。ヘパラナーゼレベルの増加は、手術後の患者の生存の減少、腫瘍転移の増加、及び微小血管密度の上昇に関連することが最も多い。加えて、ヘパラナーゼの上方制御は、より大きいサイズの腫瘍と関連していた。同様に、ヘパラナーゼ過剰発現は増強したが、抗ヘパラナーゼsiRNAの局所送達は腫瘍異種移植片の増殖を阻害した。これらの結果は、ヘパラナーゼ機能が腫瘍転移に限定されず、原発巣の進行に関与することを示唆し、従って、腫瘍進行におけるヘパラナーゼの密接な関与を決定的に支持し、抗癌治療剤としてのヘパラナーゼ阻害剤の開発を促す。
【0003】
ヘパラナーゼは、自己免疫、炎症(Lernerら、J Clin Invest 2011;121(5):1709-21)及び血管新生(Vlodavskyら、Invasion & Metastasis 1992;12、112-127)に関連する細胞浸潤を促進することも示されている。加えて、ヘパラナーゼ発現の増加が腎臓(Levidiotisら、Kidney Int. 60、1287-1296、2001;Abassi及びGoligorsky MS. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:685-702;van der Vlag及びBuijsers. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:647-667)、肝臓(Xiaoら、Hepatology Res. 26、192~198、2003)及び糖尿病性(Katzら、Isr.Med.Assoc. 4、996~1002、2002;Gilら、Diabetes 2012;61:208~16、Simeonovicら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:607-630、及びZiolkowskiら、2012;122:132-41)の障害において認められている。ヘパラナーゼは、急性膵炎(Khamaysiら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:703-719)、心筋症(Shangら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:721-745)、アミロイドーシス(Li JP及びZhang X. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:631-645)、ウイルス感染症(Agelidis A、Shukla D. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:759-770)にも関与する。
【0004】
ヘパラナーゼが多種多様な病理学的プロセスに関与するという知見は、この酵素を阻害する治療用化合物の開発につながっており、これには、PI-88、ホスホマンノペンタオース硫酸(Chhabra及びFerro、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:473-491)、PG545(Hammond及びDredge、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:539-565)並びにロネパルスタット(Roneparstat)、100%N-アセチル化され25%グリコール開裂されている修飾ヘパリンが含まれる。ロネパルスタットは、抗凝固活性をほとんど又は全く有さず、ECM結合血管新生促進因子(すなわち、bFGF)の非常に減少した望ましくない放出及び活性化を発揮し(Casuら、Pathophysiol Haemost Thromb 2008;36(3-4):195-203);Naggiら、J Biol Chem 2005;280(13):12103-13)、いくつかの腫瘍モデル系において有効であることが証明されている(Ritchieら、2011、同上;Yangら、Blood 2007;110(6):2041-8、Noseda及びBarbieri、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:523-538)が、依然としてヘパラナーゼ酵素活性に関連しない特性を示しうる(Levidiotisら、Nephrology(Carlton) 2005;10(2):167-73)。
【0005】
ヘパラナーゼの3つの潜在的なヘパリン結合ドメインは、本発明者ら及び共同研究者によって特定された(Levy-Adamら、Id J Biol Chem 2005;280(21):20457-66)。この配列に対応するペプチド(KKDCと呼ばれる)は、ヘパリン及びHSと高い親和性で物理的に相互作用し、ヘパラナーゼ酵素活性を阻害するので、Lys158-Asp171ドメインが特に注目された。さらには、このドメインを欠く欠失構築物は酵素活性を示さず、この領域に向けられたポリクローナル抗体(Ab#733)はヘパラナーゼ活性を阻害する(Zetserら、J Cell Sci 2004;117(11):2249-58)。
【0006】
ヘパラナーゼ酵素活性を阻害する試みは、この活性の新たな臨床的関連性と並行して、ヘパラナーゼ研究の初期に既に開始された。より最近では、ペプチド、小分子(Gianniniら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:567-603)、ヘパリンの修飾された非抗凝固種、並びにラミナラン硫酸、スラミン、PI-88、及びPG545等のいくつかの他のポリアニオン性分子(Dredgeら、Br J Cancer 2011、635-42、Hammond及びDredge、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:539-565)を含む様々な阻害分子が開発されている。同様に、抗ヘパラナーゼポリクローナル抗体が開発され、この抗ヘパラナーゼポリクローナル抗体がヘパラナーゼ酵素活性を中和し、細胞浸潤(He Xら、Cancer Res 2004;64(11):3928-33)、タンパク尿症(Levidiotis Vら、Nephrology(Carlton) 2005;10(2):167-73)及び新生内膜形成(Myler HAら、J Biochem 2006;139:339-45)を阻害することが実証された。中和抗ヘパラナーゼモノクローナル抗体が最近報告された(Weissmannら、PNAS 113:704-709、2016)。
【0007】
本発明の発明者らの一部による米国特許第7,772,187号明細書は、ヘパラナーゼの50KdサブユニットのN’末端領域に由来するアミノ酸配列に関し、特にヒトヘパラナーゼのLys158-Asn171の配列に関する。この’187特許はさらに、その配列に対するポリクローナル抗体、並びにヘパラナーゼ阻害剤としてのその組成物及び使用を開示する。
【0008】
本発明の発明者及び共同研究者による米国特許第6,562,950号明細書は、ヘパラナーゼ活性を特異的に阻害する、ヘパラナーゼタンパク質又はその免疫原性部分によって誘発されるモノクローナル抗体を提供する。この’950特許は、2つのモノクローナル抗体HP-130及びH-239を開示した。注目すべきことに、アミノ酸130~230に局在する内部エピトープを認識するHP-239はヘパラナーゼ活性の阻害を引き起こさなかったが、ヘパラナーゼのC末端に対して形成されたHP-130はほぼ完全にその活性を阻害した。
【0009】
本発明の発明者及び共同研究者による米国特許第8,048,993号明細書は、ヘパラナーゼタンパク質の246位のチロシンをフェニルアラニンが置換するという条件で、ヘパラナーゼタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。
【0010】
国際公開第2017/064716A1号パンフレットは、ヘパラナーゼのLys158-Asp171ドメインに結合し、ヘパラナーゼ酵素活性を中和し、リンパ腫及び骨髄腫の腫瘍進行を減弱する、9E8と呼ばれる特異的モノクローナル抗体を記載する(Weissmannら、PNAS 113:704-709、2016)。IgGクローンS9-C1及びC6-S4-C3は、IgM 9E8に由来した。
【0011】
従って、ヘパラナーゼ活性に関連する医学的状態を予防及び治療するために使用することができる高度に特異的なヘパラナーゼ中和モノクローナル抗体を提供する必要性は満たされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,772,187号明細書
【特許文献2】米国特許第6,562,950号明細書
【特許文献3】米国特許第8,048,993号明細書
【特許文献4】国際公開第2017/064716A1号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Lernerら、J Clin Invest 2011;121(5):1709-21
【非特許文献2】Vlodavskyら、Invasion & Metastasis 1992;12、112-127
【非特許文献3】Levidiotisら、Kidney Int. 60、1287-1296、2001
【非特許文献4】Abassi及びGoligorsky MS. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:685-702
【非特許文献5】van der Vlag及びBuijsers. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:647-667
【非特許文献6】Xiaoら、Hepatology Res. 26、192~198、2003
【非特許文献7】Katzら、Isr.Med.Assoc. 4、996~1002、2002
【非特許文献8】Gilら、Diabetes 2012;61:208~16
【非特許文献9】Simeonovicら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:607-630
【非特許文献10】Ziolkowskiら、2012;122:132-41
【非特許文献11】Khamaysiら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:703-719
【非特許文献12】Shangら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:721-745
【非特許文献13】Li JP及びZhang X. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:631-645
【非特許文献14】Agelidis A、Shukla D. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:759-770
【非特許文献15】Chhabra及びFerro、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:473-491
【非特許文献16】Hammond及びDredge、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:539-565
【非特許文献17】Casuら、Pathophysiol Haemost Thromb 2008;36(3-4):195-203
【非特許文献18】Naggiら、J Biol Chem 2005;280(13):12103-13
【非特許文献19】Yangら、Blood 2007;110(6):2041-8
【非特許文献20】Noseda及びBarbieri、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:523-538
【非特許文献21】Levidiotisら、Nephrology(Carlton) 2005;10(2):167-73
【非特許文献22】Levy-Adamら、Id J Biol Chem 2005;280(21):20457-66
【非特許文献23】Zetserら、J Cell Sci 2004;117(11):2249-58
【非特許文献24】Gianniniら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:567-603
【非特許文献25】Dredgeら、Br J Cancer 2011、635-42
【非特許文献26】He Xら、Cancer Res 2004;64(11):3928-33
【非特許文献27】Myler HAら、J Biochem 2006;139:339-45
【非特許文献28】Weissmannら、PNAS 113:704-709、2016
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ヘパラナーゼ中和IgGモノクローナル抗体(mAb A54)、それを含む医薬組成物、及び悪性増殖性疾患を含むがこれに限定されないヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療するためのその使用を提供する。
【0015】
本発明のmAb A54は、単剤として、又は化学療法若しくは放射線を含むがこれらに限定されない少なくとも1つのさらなる従来の療法と組み合わせて、ヘパラナーゼ酵素活性に関連する疾患及び障害を軽減及び治療するのに有用である。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、中和モノクローナル抗体(mAb)、又は少なくともその抗原結合部分を含む抗体断片を提供する。別の実施形態によれば、このmAb又はその抗体断片は、ヘパラナーゼ中和効果を有する。
【0017】
別の実施形態によれば、上記抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fd’、Fv、dAb、単離CDR領域、単鎖抗体、ダイアボディ、及び線状抗体からなる群から選択される。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、本発明のmAb又はその抗体断片をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0019】
別の態様によれば、本発明のmAb又はその抗体断片をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターが提供される。さらに別の態様によれば、本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0020】
別の態様によれば、本発明のmAb又はその抗体断片と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0021】
別の態様によれば、必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療する方法であって、その対象に治療有効量の本発明のmAb又はその抗体断片を投与し、これによりこの対象におけるヘパラナーゼに関連する疾患又は障害を治療する工程を含む方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、当該方法は、本発明のmAb又はその抗体断片と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物をその対象に投与することを含む。
【0023】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、ヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害は、悪性増殖性疾患、炎症性障害、自己免疫障害、ウイルス感染症、糖尿病及び関連する腎機能障害からなる群から選択される。
【0024】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、ヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害は、癌等の悪性増殖性疾患である。
【0025】
別の実施形態によれば、上記増殖性疾患は、癌腫(細胞腫)及び肉腫を含むがこれらに限定されない固形悪性腫瘍である。特定の実施形態によれば、この固形悪性腫瘍は黒色腫である。特定の実施形態によれば、固形悪性腫瘍は、乳癌、前立腺癌、皮膚癌、結腸癌、肺癌、膵癌、頭頸部癌、腎癌、卵巣癌、子宮頸癌、骨癌、肝癌、甲状腺癌、舌癌及び脳癌からなる群から選択される。
【0026】
特定の実施形態によれば、上記増殖性疾患は、リンパ腫、白血病及び多発性骨髄腫等の造血器悪性腫瘍である。特定の実施形態によれば、この造血器悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病、急性骨髄球性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、肥満細胞白血病、多発性骨髄腫、骨髄性リンパ腫、ホジキン(Hodgkin)リンパ腫、非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0027】
別の実施形態では、本発明の方法は、上記対象において腫瘍転移を低減又は阻害する。別の実施形態では、本発明の方法は、上記対象において腫瘍進行を阻害する。
【0028】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、ヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害は、炎症性障害、自己免疫障害、ウイルス感染症、及び腎障害である。
【0029】
本発明の方法の特定の実施形態では、上記対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は男性(雄)である。いくつかの実施形態では、対象は女性(雌)である。いくつかの実施形態では、対象は成人(成体)である。いくつかの実施形態では、対象は小児である。
【0030】
別の態様によれば、ヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明のmAb又はその断片を、少なくとも1つの抗癌治療と組み合わせて投与し、これによりそのヘパラナーゼに関連する疾患又は障害を治療する工程を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、上記抗癌治療は化学療法及び放射線療法から選択される。
【0031】
別の態様によれば、ヘパラナーゼ活性を中和する方法であって、細胞を本発明のmAb又はその抗体断片と接触させる工程を含む方法が提供される。
【0032】
本発明のさらなる実施形態及び適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。
【0033】
別の態様によれば、ヘパラナーゼ酵素に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体であって、この抗体、その抗原結合断片、類似体又は誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、このCDRは配列番号1から配列番号6、若しくはこれらの組合せを含む抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体が提供される。
【0034】
別の態様によれば、ヘパラナーゼ酵素のHBD-II領域(ヘパリン結合ドメイン2)に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体であって、この抗体、その抗原結合断片、類似体又は誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、このCDRは、配列番号1から配列番号6、若しくはこれらの組合せを含む抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、上記抗体又は断片は、マウス若しくはヒトの抗体若しくは断片であるか、又はヒト化抗体若しくは断片である。
【0036】
別の態様によれば、必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を抑制、阻害、予防又は治療する方法であって、その対象に治療有効量の、ヘパラナーゼ酵素に向けられた、若しくはHBD-II領域(ヘパリン結合ドメイン2)に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体を投与する工程を含み、この抗体、又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、このCDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む方法が提供される。
【0037】
別の態様によれば、必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を阻害又は治療する方法であって、その対象に治療有効量のヘパラナーゼ酵素に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体を投与する工程を含み、この抗体、又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、このCDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む方法が提供される。
【0038】
別の態様によれば、必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を阻害又は治療する方法であって、その対象に治療有効量のヘパラナーゼ酵素のHBD-II領域(ヘパリン結合ドメイン2)に向けられた抗体又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体を投与する工程を含み、この抗体、又はその抗原結合断片、類似体若しくは誘導体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、このCDRは、配列番号1から配列番号6、又はこれらの組合せを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、様々なハイブリドーマを用いたヘパラナーゼの活性アッセイを表す折れ線グラフである。
【
図2(1)】
図2Aは、固定化潜在性ヘパラナーゼへの漸増濃度のmAb54の結合対対照マウスIgGの結合を表す折れ線グラフである。
【
図2(2)】
図2Bは、A54 mAb重鎖(HC)及び軽鎖(LC)のSDS-PAGEであり、
図2Cは、A54 mAb重鎖(HC)及び軽鎖(LC)のウェスタンブロット分析である。
【
図3A】
図3Aは、0.1μg/mlの精製mAb A54と共にプレインキュベートした精製した組換えの活性ヘパラナーゼ対対照マウスIgGと共にプレインキュベートした精製した組換えの活性ヘパラナーゼの活性アッセイを表す線グラフである。
【
図3B】
図3Bは、1μg/mlの精製mAb A54と共にプレインキュベートした精製した組換えの活性ヘパラナーゼ対対照マウスIgGと共にプレインキュベートした精製した組換えの活性ヘパラナーゼの活性アッセイを表す線グラフである。
【
図4(1)】
図4A~4Cは、マウスIgG又はmAb A54の存在下でのU87ヒト神経膠腫細胞の浸潤を描く。
図4A~4Bは顕微鏡写真を示す。
【
図4(2)】
図4A~4Cは、マウスIgG又はmAb A54の存在下でのU87ヒト神経膠腫細胞の浸潤を描く。
図4Cは、再構成された基底膜を通る細胞浸潤の程度を表す棒グラフである。
【
図5(1)】
図5A~5Bは、mAb A54の不存在下(PBS)及び存在下でNOS/SCIDマウスにおいて増殖するヒト骨髄腫腫瘍のルシフェラーゼインビボイメージング(IVIS)を表す写真である。
【
図5(2)】
図5Cは、それぞれのルシフェラーゼシグナルの定量を表す棒グラフである。
図5D~5Eは、mAb A54の不存在下(PBS)及び存在下でNOS/SCIDマウスにおいて増殖するヒト神経膠腫腫瘍のルシフェラーゼインビボイメージング(IVIS)を表す写真である。
【
図5(3)】
図5Fは、それぞれのルシフェラーゼシグナルの定量を表す棒グラフである。
【
図6(1)】
図6A~6Bは、PBSで処置した腫瘍担持マウス(対照)と比較した、MPC-11マウス骨髄腫腫瘍増殖の減弱におけるmAb A54の効果を表す。
【
図6(2)】
図6Cは、PBSで処置した腫瘍担持マウス(対照)と比較した、MPC-11マウス骨髄腫腫瘍増殖の減弱におけるmAb A54の効果を表す。
【
図7(1)】
図7A~7Bは、mAb A54の不存在下(PBS)及び存在下で、Balb/cマウスの乳腺脂肪体において増殖するマウス4T1乳癌腫瘍のルシフェラーゼ蛍光インビボイメージング(IVIS)を表す写真である。
【
図7(2)】
図7Cは、それぞれのルシフェラーゼシグナルの定量を表す棒グラフである。
【
図7(3)】
図7Dは、
図7A及び
図7Bに記載されるビヒクル(PBS)又はmAb A54で処置されたBalb/cマウスから切除された4T1原発性腫瘍の重量を表す棒グラフである。
図7E及び
図7Fは、ビヒクル(PBS)又はmAb A54で処置された、原発性腫瘍の除去後にBalb/cマウスにおいて検出された4T1転移巣のルシフェラーゼ蛍光インビボイメージング(IVIS)を表す写真である。
【
図7(4)】
図7Gは、それぞれのルシフェラーゼシグナルの定量を表す棒グラフである。
【
図8(1)】
図8A~8Dは、NOS/SCIDマウスにおいて、mAb A54の不存在下(PBS)及び存在下(それぞれ
図8A及び8B)並びにボルテゾミブ(Brotezomib)の存在下及びmAb A54+ボルテゾミブの存在下(それぞれ
図8C及び8D)で増殖するヒト骨髄腫腫瘍のルシフェラーゼ蛍光インビボイメージング(IVIS)を表す写真である。
【
図8(2)】
図8Eは、それぞれのルシフェラーゼシグナルの定量を表す棒グラフである。
【
図9(1)】
図9A及び
図9Bは、mAb A54の不存在下(PBS)及び存在下で、Balb/cマウスの乳腺脂肪体において増殖するマウス乳癌腫瘍のルシフェラーゼ蛍光インビボイメージング(IVIS)を表す写真である。
【
図9(2)】
図9Cは、それぞれのルシフェラーゼシグナルの定量を表す棒グラフである。
図9Dは、
図9A及び
図9Bに記載されるビヒクル(PBS)又はmAb A54で処置されたBalb/cマウスから切除された腫瘍の重量を表す棒グラフである。
【
図10】
図10は、A54 mAb、ロネパルスタット又はPBSで処置されたC57BL/6マウスの生存率を表す折れ線グラフである。
【
図11(1)】
図11Aは、ビヒクル(PBS)、mAb A54、ゲムシタビン、又はmAb A54+ゲムシタビンの組合せで処置されたC57BL/6マウスから切除された腫瘍のサイズを表すグラフである。
【
図11(2)】
図11Bは、ビヒクル(PBS)、mAb A54、ゲムシタビン、又はmAb A54+ゲムシタビンの組合せで処置されたC57BL/6マウスから切除された腫瘍の重量を表すグラフである。
図11Cは、腫瘍の写真を示す。
【
図12(1)】
図12Aは、パパイン及びフィシンプロテアーゼによるIgG消化の概略図である。
図12Bは、A54 Fabの切断及び精製を示すSDS-PAGEゲルである。
【
図12(2)】
図12Cは、非結合Fab(右肩)からの結合A54-HPSE複合体(主ピーク)のサイズ排除クロマトグラフィー分離である。
【
図13】
図13は、A54 CDRループの三次Fab構造の概略図である。
【
図14】
図14A及び14Bは、2つの異なる角度からのHPSE(β/α)
8-バレルとのA54結合相互作用を示す概略図である。
図14Cは、A54-HPSE結合に対する静電荷の強い寄与を示す静電表面表示である。
【
図15(1)】
図15Aは、A54 H2ループ(緑)とHPSE(青)との間の相互作用を示す概略図である。
図15Bは、A54 H3ループ(緑)とHPSE(青)との間の相互作用を示す概略図である。
【
図15(2)】
図15Cは、A54 L1ループ(赤)とHPSE(青)との間の相互作用を示す概略図である。
図15Dは、A54 L3ループ(赤)とHPSE(青)との間の相互作用を示す概略図である。
【
図15(3)】
図15Eは、HPSE HBD-II残基(青)とA54 VH(緑)及びVL(赤)由来の残基との間の相互作用を示す概略図である。
図15Fは、PDB 5E9C由来のdp4四糖(シアン)とA54-HPSE複合体との重なりを表示する概略図であり、A54がHPSE結合溝をどのように立体的に閉塞するかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、ヘパラナーゼ中和モノクローナル抗体(mAb)、それを含む医薬組成物、及び悪性疾患を含むがこれに限定されないヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療するためのその使用に関する。
【0041】
本発明は、ヘパラナーゼタンパク質(HPSE)に結合し(
図2A~2C)、ヘパラナーゼ酵素活性を中和する(
図1及び3A~3B)mAbの開発に部分的に基づく。本明細書において実証されるように、このmAbは、マトリゲル、再構成された基底膜を介した細胞浸潤を著しく阻害した(
図4A~4C)。単剤としてのmAbでの処置は、ルシフェラーゼ蛍光のインビボイメージングシステム(IVIS)によって明らかにされるように、NOD/SCIDマウスにおいて増殖するより小さいヒト骨髄腫(CAG)及び神経膠腫(U87)腫瘍異種移植片(
図5A、5B、5D及び5E)をもたらした(
図5C及び5F)。同様に、mAb A54は、同系Balb/cマウスモデルにおいてマウス骨髄腫(MPC-11)腫瘍増殖を減弱した(
図6A~6C)。mAb A54は、同所性同系Balb/cマウスモデルにおいて4T1マウス乳癌の自然転移も阻害した(
図7A~7D)。さらに、ヘパラナーゼタンパク質は、HBD-I(ヘパリン結合ドメイン1)及びHBD-II(ヘパリン結合ドメイン2)を含むがこれらに限定されない複数の結合位置を有する。mAb A54相互作用の大部分は、HBD-IIとの相互作用である(実施例12に詳述)。mAb A54 CDRループは、ほぼすべてのA54-HPSE結合相互作用を媒介する。A54 Fabは、HBD-II(Gln270-Lys280;
図14A及び14B)の真上の(β/α)
8-バレルドメイン上でHPSEに結合する。この相互作用は、HPSEがそのHS基質に結合するのを酵素結合溝の立体閉塞によって防止する。タンパク質表面電荷は、A54-HPSE相互作用に大きい静電的寄与を示す。HBD-IIは実質的に正に帯電しているのに対して、A54の結合交接部(界面、interface)は負に帯電している(
図14C)。
【0042】
mAb A54は高い特異性を発揮し、ヘパラナーゼ酵素活性の標的化のみを可能にする。従って、本発明の抗体は、単剤として、又は化学療法若しくは放射線を含むがこれらに限定されない少なくとも1つのさらなる療法と組み合わせて、腫瘍進行、炎症、1型糖尿病、糖尿病性腎症、及びウイルス感染症を含むがこれらに限定されないヘパラナーゼ活性に関連する疾患及び障害を軽減及び治療するのに有用である。
【0043】
別の実施形態によれば、配列番号1に示される配列(GYTFTN)を含む重鎖CDR1(CDR-H1)、配列番号2に示される配列(YINPTTGYTEYNQKFKD)を含む重鎖CDR2(CDR-H2)、及び配列番号3に示される配列(GGAGYDYDEDYAMDY)を含む重鎖CDR3(CDR-H3)からなる群から選択される少なくとも1つの重鎖CDRを含むmAb又はその抗体断片が提供される。
【0044】
別の実施形態によれば、配列番号1に示される配列(GYTFTN)(短い配列)を含む重鎖CDR1(CDR-H1)、配列番号2に示される配列(YINPTTGYTEYNQKFKD)を含む重鎖CDR2(CDR-H2)、及び配列番号3に示される配列(GGAGYDYDEDYAMDY)を含む重鎖CDR3(CDR-H3)を含むmAb又はその抗体断片が提供される。
【0045】
別の実施形態によれば、配列番号4に示される配列(RASESVEYFGTSYMN)を含む軽鎖CDR1(CDR-L1)、配列番号5に示される配列(LASILES)を含む軽鎖CDR2(CDR-L2)、及び配列番号6に示される配列(QQSNEDPYT)を含む軽鎖CDR3(CDR-L3)からなる群から選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含むmAb又はその抗体断片が提供される。
【0046】
別の実施形態によれば、配列番号4に示される配列(RASESVEYFGTSYMN)を含む軽鎖CDR1(CDR-L1)、配列番号5に示される配列(LASILES)を含む軽鎖CDR2(CDR-L2)、及び配列番号6に示される配列(QQSNEDPYT)を含む軽鎖CDR3(CDR-L3)を含むmAb又はその抗体断片が提供される。
【0047】
別の実施形態によれば、配列番号1に示される配列(GYTFTN)を含む重鎖CDR1(CDR-H1)、配列番号2に示される配列(YINPTTGYTEYNQKFKD)を含む重鎖CDR2(CDR-H2)、及び配列番号3に示される配列(GGAGYDYDEDYAMDY)を含む重鎖CDR3(CDR-H3)からなる群から選択される少なくとも1つの重鎖CDRを含み、かつ配列番号4に示される配列(RASESVEYFGTSYMN)を含む軽鎖CDR1(CDR-L1)、配列番号5に示される配列(LASILES)を含む軽鎖CDR2(CDR-L2)、及び配列番号6に示される配列(QQSNEDPYT)を含む軽鎖CDR3(CDR-L3)からなる群から選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含むmAb又はその抗体断片が提供される。
【0048】
別の実施形態によれば、配列番号1に示される配列(GYTFTN)を含む重鎖CDR1(CDR-H1)、配列番号2に示される配列(YINPTTGYTEYNQKFKD)を含む重鎖CDR2(CDR-H2)、及び配列番号3に示される配列(GGAGYDYDEDYAMDY)を含む重鎖CDR3(CDR-H3)を含み、かつ配列番号4に示される配列(RASESVEYFGTSYMN)を含む軽鎖CDR1(CDR-L1)、配列番号5に示される配列(LASILES)を含む軽鎖CDR2(CDR-L2)、及び配列番号6に示される配列(QQSNEDPYT)を含む軽鎖CDR3(CDR-L3)を含むmAb又はその抗体断片が提供される。
【0049】
別の実施形態によれば、配列番号1に示される短い配列(GYTFTN)を含む重鎖CDR1(CDR-H1)は、配列番号17に示される長い配列(GYTFTNYWMH)を含む重鎖CDR1(CDR-H1)によって置換されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、配列番号7に示されるアミノ酸配列:QVQLQQSGAELAKPGASVRMSCKASGYTFTNYWMHWVKQRPGQGLEWIGYINPTTGYTEYNQKFKDKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARGGAGYDYDEDYAMDYWGQGTSVTVSSを有する重鎖可変ドメイン配列、若しくはこの重鎖配列と少なくとも70%の配列同一性を有するその類似体若しくは誘導体を含むmAb又はその抗体断片を提供する。いくつかの実施形態では、上記類似体又は誘導体は、配列番号7と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0051】
別の実施形態によれば、本発明は、配列番号8に示されるアミノ酸配列:DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVEYFGTSYMNWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGIPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQQSNEDPYTFGGGTKLEIKを有する軽鎖可変ドメイン配列、若しくはこの軽鎖配列と少なくとも70%の配列同一性を有するその類似体若しくは誘導体を含むmAb又はその抗体断片を提供する。いくつかの実施形態では、上記類似体又は誘導体は、配列番号8と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0052】
具体的な実施形態によれば、当該抗体又はその断片は、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。
【0053】
参照配列の抗原結合部分と少なくとも70%の配列同一性を有する当該モノクローナル抗体又はその断片の類似体及び誘導体も本発明の範囲内にある。いくつかの実施形態によれば、参照配列の抗原結合部分と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有する当該モノクローナル抗体又はその断片の類似体及び誘導体が提供される。
【0054】
用語「少なくともXパーセントの同一性を有する」は、配列が最適にアラインメントされた場合の2つの比較される配列において同一であるアミノ酸残基のパーセントを指す。従って、70%のアミノ酸配列同一性は、2つ以上の最適にアラインメントされたポリペプチド配列中の70%のアミノ酸が同一であることを意味する。
【0055】
本発明に係るモノクローナル抗体は、マウス、ラット及びヒトを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物種由来の定常領域を含有してもよい。本発明に係るモノクローナル抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、異種抗体、及び抗体の少なくとも抗原結合部分を含む抗体断片が含まれる。
【0056】
本発明は、ハイブリドーマ細胞又は他の生物学的系から単離されたモノクローナル抗体、並びに組換え又は合成により生成されたモノクローナル抗体を包含する。このハイブリドーマは、当該技術分野で公知の方法のいずれかによって調製されてもよい(例えば、Kohler,G.及びMilstein,C.、Nature、256:495-497(1975))。ハイブリドーマ細胞株の上清は、典型的には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又はラジオイムノアッセイ(RIA)等の当該技術分野で公知の方法のいずれか1つによって抗体結合活性についてスクリーニングされる。上清は、ヘパラナーゼ酵素活性を阻害するmAbの産生についてスクリーニングされてもよい。
【0057】
上記のmAbの重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNA配列も本発明の範囲内に包含される。当業者には疑いなく明らかであるように、遺伝コードの縮重性に起因して、複数の核酸配列が、配列番号9又は配列番号10に示されるもの以外でも本発明のmAbをコードする可能性がある。本発明は、上記DNA配列を有するプラスミド等の発現ベクター、及びこれらの発現ベクターのうちの1つ以上を含有する宿主細胞も提供する。
【0058】
抗体又は免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって互いに連結された2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、各軽鎖は、「Y」字形の構成でジスルフィド結合によってそれぞれの重鎖に連結されている。抗体のタンパク質消化により、Fv(可変断片)及びFc(結晶性断片)ドメインが得られる。抗原結合ドメイン、Fabは、ポリペプチド配列が変化する領域を含む。用語F(ab’)2は、ジスルフィド結合によって連結された2つのFab’アームを表す。抗体の中心軸はFc断片と呼ばれる。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、続いていくつかの定常ドメイン(CH)を有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、他端に定常ドメイン(CL)を有し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列しており、軽鎖定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列している。軽鎖及び重鎖の各対の可変ドメインは、抗原結合部位を形成する。軽鎖及び重鎖上のドメインは同じ一般構造を有し、各ドメインは4つのフレームワーク領域を含み、このフレームワーク領域は、その配列は比較的保存されており、相補性決定領域(CDR1~3)として知られる3つの超(高頻度)可変ドメインによって連結されている。これらのドメインは、抗原結合部位の特異性及び親和性に寄与する。重鎖のアイソタイプ(γ、α、δ、ε又はμ)は、免疫グロブリンのクラス(それぞれIgG、IgA、IgD、IgE又はIgM)を決定する。軽鎖は、すべての抗体のクラスにおいて見出される2つのアイソタイプ(カッパ、κ又はラムダ、λ)のいずれかである。
【0059】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長又はインタクトなモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含む。
【0060】
本発明に係る抗体は、抗体の抗原結合部分を少なくとも含む分子である。具体的な実施形態では、本発明に係る抗体(複数種可)は、モノクローナル抗体(mAb)、並びにFab又はF(ab’)2断片等のそのタンパク質分解断片である。さらに、キメラ抗体、ヒト抗体及びヒト化抗体、組換え及び操作された抗体、並びにそれらの断片が本発明の範囲内に含まれる。さらには、抗体の可変領域をコードするDNAを他の抗体をコードするDNAに挿入してキメラ抗体を作製することもできる。単鎖抗体も本発明の範囲内に入る。
【0061】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を含み、概してインタクトな抗体の抗原結合部位を含み、従って抗原に結合する能力を保持する。本定義に包含される抗体断片の例としては、(i)VLドメイン、CLドメイン、VHドメイン及びCH1ドメインを有するFab断片、(ii)CH1ドメインのC末端に1個以上のシステイン残基を有するFab断片であるFab’断片、(iii)VHドメイン及びCH1ドメインを有するFd断片、(iv)VHドメイン及びCH1ドメイン並びにCH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を有するFd’断片、(v)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインを有するFv断片、(vi)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature 1989、341、544-546)、(vii)単離されたCDR領域、(viii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(ix)単鎖抗体分子(例えば、単鎖Fv;scFv)(Birdら、Science 1988、242、423-426;Hustonら、PNAS(USA)1988、85、5879-5883)、(x)同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む2つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ(二重特異性抗体)」(例えば、欧州特許出願公開第404,097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993、90、6444-6448を参照);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線状抗体(Zapataら、Protein Eng.、1995、8、1057-1062;及び米国特許第5,641,870号明細書)」が挙げられる。
【0062】
単鎖抗体は、抗原結合能を有し、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の可変領域と相同又は類似のアミノ酸配列、すなわち連結されたVH-VL又は単鎖Fv(scFv)を含む単鎖複合ポリペプチドであることができる。
【0063】
本明細書で使用する場合の「中和抗体」は、本明細書に従ってインビボアッセイ又はインビトロアッセイによって決定されるように、標的を介する活性又はシグナル伝達を低減又は阻害(遮断)することができる特異的リガンド標的(例えば、ヘパラナーゼ又はHBD-II)に対する抗原結合部位を有する分子を指す。
【0064】
本明細書で使用する場合の用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在してもよい起こりうる天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対して向けられる。さらには、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語「モノクローナル」は、いずれかの特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されるべきではない。mAbsは当業者に公知の複数の方法により得られてもよい。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 1975、256、495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら、Nature 1991、352、624-628又はMarksら、J.Mol.Biol.、1991、222:581-597に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0065】
本発明のmAbは、IgG、IgM、IgE、IgA、及びそれらの任意のサブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスのものであってもよい。mAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養されてもよい。高力価のmAbは、個々のハイブリドーマからの細胞が新鮮感作(pristine-primed)Balb/cマウスに腹腔内注射されて高濃度の所望のmAbを含有する腹水が生成されるインビボ産生によって得ることができる。アイソタイプIgM又はIgGのmAbは、このような腹水から、又は培養液上清から、当業者にとって周知であるカラムクロマトグラフィー方法を用いて精製されてもよい。
【0066】
本発明におけるモノクローナル抗体は、具体的には、「キメラ」抗体、及び、この抗体の断片が所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含み、キメラ抗体では、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、鎖の残りは、別の種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である(米国特許第4,816,567号明細書、及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。加えて、親和性又は特異性を含む抗体分子の特定の特性を変更するために、相補性決定領域(CDR)移植が実施されてもよい。CDR移植の非限定的な例は、米国特許第5,225,539号明細書に開示されている。
【0067】
キメラ抗体は、マウスmAbに由来する可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの等、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。実質的にヒト抗体(アクセプター抗体と呼ばれる)由来の可変領域フレームワーク残基及び実質的にマウス抗体(ドナー抗体と呼ばれる)由来の相補性決定領域を有する抗体は、ヒト化抗体とも呼ばれる。キメラ抗体は、適用における免疫原性を低減し、産生における収率を増加させるために主に使用され、例えば、マウスmAbがハイブリドーマからのより高い収率を有するがヒトにおいてより高い免疫原性を有する場合に、ヒト/マウスキメラmAbが使用される。キメラ抗体及びそれらの産生方法は、当該技術分野において公知である(例えば、国際公開第86/01533号パンフレット、国際公開第97/02671号パンフレット、国際公開第90/07861号パンフレット、国際公開第92/22653号パンフレット及び米国特許第5,693,762号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,530,101号明細書及び米国特許第5,225,539号明細書)。
【0068】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトの残基によって置換される。さらには、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾(改変)は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、この場合、超可変ループのすべて又は実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRのすべて又は実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 1986、321、522-525;Riechmannら、Nature 1988、332、323-329;及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、1992、2、593-596を参照。
【0069】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、かつ/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を使用して生成することができる。1つの実施形態では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら、Nature Biotechnology 1996 14、309-314;Sheetsら、PNAS(USA)、1998、95、6157-6162);Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、1991、227、381;Marksら、J.Mol.Biol.、1991、222、581)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されているマウスに導入することによっても作製することもできる。負荷(チャレンジ)すると、ヒト抗体の産生が観察され、これは、遺伝子再構成、アセンブリ、及び抗体レパートリーを含むすべての点で、ヒトにおいて見られるものとよく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号明細書;米国特許第5,545,806号明細書;米国特許第5,569,825号明細書;米国特許第5,625,126号明細書;米国特許第5,633,425号明細書;米国特許第5,661,016号明細書、並びに以下の科学刊行物に記載されている:Marksら、Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonbergら、Nature 368:856-859(1994);Morrison、Nature 368:812-13(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845-51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826(1996);Lonberg及びHuszar、Intern.Rev.Immunol. 13:65-93(1995)。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に向けられた抗体を産生するヒトBリンパ球(このようなBリンパ球は、個体から回収されてもよいし、又はインビトロで免疫化されたものでもよい)の不死化を介して調製されてもよい。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss(アラン・アール・リス)、77頁(1985年);Boernerら、J.Immunol.、147(1):86-95(1991);及び米国特許第5,750,373号明細書を参照。
【0070】
「単鎖可変(領域)フラグメント(scFv)」という用語は、短い(通常はセリン、グリシン)リンカーと一緒に連結された、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の融合物を意味する。単鎖抗体は、抗原結合能を有し、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の可変領域(連結VH-VL又は単鎖Fv(scFv))に相同又は類似のアミノ酸配列を含む単鎖複合ポリペプチドであることができる。VH及びVLの両方が、天然のモノクローナル抗体配列をコピーしてもよく、又は鎖の一方若しくは両方が、米国特許第5,091,513号明細書に記載されるタイプのCDR-FR構築物を含んでもよい。この米国特許第5,091,513号明細書の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。軽鎖及び重鎖の可変領域に類似する別個のポリペプチドは、ポリペプチドリンカーによって共に保持される。このような単鎖抗体の生成方法は、特にVH鎖及びVL鎖のポリペプチド構造をコードするDNAが公知である場合、例えば、米国特許第4,946,778号明細書、米国特許第5,091,513号明細書及び米国特許第5,096,815号明細書に記載される方法に従って達成されてもよく、これらの特許文献の各々の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
本明細書で使用する場合の「抗体の抗原結合部分を有する分子」は、任意のアイソタイプのものであり、任意の動物細胞株又は微生物によって生成されるインタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片を含むがこれらに限定されないその抗原結合反応性画分、その重鎖及び/若しくは軽鎖の可変部分、Fabミニ抗体(全内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第93/15210号パンフレット、米国特許出願第08/256,790号、国際公開第96/13583号パンフレット、米国特許出願第08/817,788号、国際公開第96/37621号パンフレット、米国特許出願第08/999,554号を参照)、二量体二重特異性ミニ抗体(Mullerら、1998を参照)、並びにそのような反応性画分を組み込むキメラ抗体若しくは単鎖抗体、並びにそのような抗体反応性画分が物理的に挿入されている任意の他のタイプの分子若しくは細胞、例えばキメラT細胞受容体若しくはそのような受容体を有するT細胞、又はそのような反応性画分を含有する分子の一部によって治療部分を送達するように開発された分子も含むことが意図される。このような分子は、酵素的切断、ペプチド合成又は組換え技術を含むがこれらに限定されない任意の公知の技術によって提供されてもよい。
【0072】
モノクローナル抗体の調製のために、連続細胞株培養によって産生される抗体を提供する当該技術分野で公知の任意の技術を使用することができる。例としては、Kohler,G.及びMilstein,C.、Nature 256:495-497(1975);Kozborら、Immunology Today 4:72(1983);「Monoclonal antibodies and cancer therapy」、Alan R.Liss,Inc.(1985)におけるColeら、77-96頁における技術等の様々な技術が挙げられる。
【0073】
抗体をインビボで産生させる従来の方法に加えて、抗体は、ファージディスプレイ技術を用いてインビトロで生成することができる。このような組換え抗体の生成は、従来の抗体産生と比較してはるかに速く、そのような組換え抗体は膨大な数の抗原に対して生成することができる。さらには、従来の方法を使用する場合、多くの抗原は、非免疫原性又は極めて毒性であることが明らかにされ、それゆえ、動物において抗体を生成するためには使用することができない。さらに、組換え抗体の親和性成熟(すなわち、親和性及び特異性の増加)は、非常に単純であり、比較的迅速である。最後に、特定の抗原に対する多数の異なる抗体が、1つの選択手順において生成されることが可能である。組換えモノクローナル抗体を作製するために、すべてディスプレイライブラリーに基づく様々な方法を使用して、異なる抗原認識部位を有する抗体の大きいプールを作製することができる。このようなライブラリーは、いくつかの方法で作製することができる。重鎖生殖系列遺伝子のプールにおいて合成CDR3領域をクローニングすることによって合成レパートリーを生成することができ、従って、様々な特異性を有する組換え抗体断片を選択することができる大きい抗体レパートリーを生成することができる。ヒトのリンパ球プールを、抗体ライブラリーの構築のための出発材料として使用することができる。ヒトIgM抗体のナイーブレパートリーを構築し、従って、大きい多様性のヒトライブラリーを作製することが可能である。この方法は、異なる抗原に対する多数の抗体を選択するために首尾よく広く使用されている。バクテリオファージライブラリーの構築及び組換え抗体の選択のためのプロトコルは、周知の参考文献Current Protocols in Immunology、Colliganら(編)、John Wiley & Sons,Inc.(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ)(1992-2000)、第17章、17.1節に提供されている。
【0074】
非ヒト抗体は、当該技術分野で公知の任意の方法によってヒト化されてもよい。1つの方法では、非ヒト相補性決定領域(CDR)は、ヒト抗体又はコンセンサス抗体フレームワーク配列に挿入される。次いで、さらなる変化を抗体フレームワークに導入して、親和性又は免疫原性を調節することができる。
【0075】
組成物、投与及び投与量
本発明の方法において使用するために、当該モノクローナル抗体は、1種以上の薬学的に許容できる担体、安定剤又は賦形剤(ビヒクル)を使用して従来の方法で製剤化されて、特にタンパク質活性剤に関して当該技術分野で公知の医薬組成物が形成されてもよい。担体は、組成物の他の原材料(成分)と適合性であり、そのレシピエント(被投与者)に有害でないという意味で「許容できる」。適切な担体は、典型的には、生理食塩水又はエタノール、ポリオール、例えばグリセロール若しくはプロピレングリコールを含む。
【0076】
当該抗体は、中性又は塩形態として製剤化されてもよい。薬学的に許容できる塩には、酸付加塩(遊離アミノ基で形成される)が含まれ、この酸付加塩は、塩酸若しくはリン酸等の無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸及びマレイン酸等の有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄等の無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン及びプロカイン等の有機塩基から誘導されてもよい。
【0077】
当該組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、又は腹腔内の投与用に適切に製剤化されてもよく、好都合には、好ましくはレシピエントの血液と等張である抗体の滅菌水溶液を含む。このような製剤は、典型的には、生理学的に適合性の物質、例えば、塩化ナトリウム、グリシン等を含有し、生理学的条件と適合性の緩衝pHを有する水に固体活性成分を溶解して水溶液を生成し、この溶液を滅菌することによって調製される。これらは、単位用量又は複数回用量の容器、例えば、密封アンプル又はバイアル中で調製されてもよい。
【0078】
当該組成物は、安定剤、例えばポリエチレングリコール、タンパク質、糖類(例えばトレハロース)、アミノ酸、無機酸及びそれらの混合物を組み込んでもよい。安定剤は、適切な濃度及びpHで水溶液中で使用される。水溶液のpHは、5.0~9.0の範囲内、好ましくは6~8の範囲内になるように調整される。抗体の製剤化において、抗吸着剤が使用されてもよい。他の好適な賦形剤は、典型的には、アスコルビン酸等の抗酸化剤を含んでもよい。
【0079】
当該組成物は、上記タンパク質を複合体化又は吸収するためのポリマーの使用によって達成されてもよい制御放出調製物として製剤化されてもよい。制御放出製剤のための適切なポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニル、及びメチルセルロースが挙げられる。制御放出のための別の可能な方法は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)又はエチレン酢酸ビニルコポリマー等のポリマー材料の粒子に上記抗体を組み込むことである。あるいは、これらの薬剤をポリマー粒子に組み込む代わりに、これらの材料を、例えばコアセルベーション技術又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、又はコロイド状薬物送達系、例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセルに、又はマクロエマルションに封入することが可能である。
【0080】
経口調製物が望ましい場合、当該組成物は、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶性セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム又はアラビアゴム等の担体と組み合わされてもよい。
【0081】
本発明のmAbは、非経口的に、一般的には静脈内注入によって投与されてもよい。投与は、腹腔内、経口、皮下、又は筋肉内経路によるものであってもよい。抗体は概して、約0.1~約20mg/kg患者体重、通常約0.5~約10mg/kg、多くの場合約1~約5mg/kgの範囲に投与される。これに関して、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも4日、より好ましくは21日までの循環半減期を有する抗体を使用することが好ましい。キメラ抗体及びヒト化抗体は、それぞれ4日まで及び14~21日までの循環半減期を有すると予想される。いくつかの場合では、処置期間にわたって、大きい負荷用量、続いて定期的な(例えば、毎週の)維持用量を投与することが有利であってもよい。抗体は、徐放性送達システム、ポンプ、及び持続注入のための他の公知の送達システムによって送達することもできる。投与レジメンは、特定の抗体の薬物動態に基づいてその特定の抗体の所望の循環レベルを提供するように変更されてもよい。従って、用量は、治療剤の所望の循環レベルが維持されるように計算される。
【0082】
典型的には、有効用量は、対象の状態、及び治療される対象の体重又は表面積によって決定される。用量のサイズ及び投与レジメンも、特定の対象におけるmAb又はさらなる治療剤の組合せの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によって決定される。投与される治療用組成物の有効量を決定する際に、医師は、とりわけ、循環血漿レベル、毒性、及び疾患の進行を評価する必要がある。
【0083】
化学療法
さらに別の実施形態によれば、本発明のmAb及び少なくとも1種の化学療法剤の投与を含む併用癌療法が提供される。
【0084】
化学療法薬は、癌細胞に対するその効果、その薬物が干渉する細胞活性若しくは細胞プロセス、又はその薬物が影響を及ぼす細胞周期の特定の段階に基づいていくつかのグループに分けられる。従って、化学療法薬は以下のカテゴリーの1つに入る:アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼI及びII阻害剤、有糸分裂阻害剤、とりわけ白金系薬物、ステロイド及び抗血管新生剤。
【0085】
「ヌクレオシド類似体」とも呼ばれる代謝拮抗剤は、DNA分子中のビルディングブロック(基本単位)としての天然物質を置換し、これにより細胞代謝及びタンパク質合成に必要な酵素の機能を変化させる。代謝拮抗剤が細胞増殖に必要な栄養素を模倣する場合、細胞は最終的に溶解を受ける。ヌクレオシドが非機能性ヌクレオシド類似体で置き換えられる場合、非機能性ヌクレオシド類似体はDNA及びRNAに組み込まれ、最終的に、細胞のDNAを合成する能力を阻害することによって細胞周期停止及びアポトーシスを誘導する。代謝拮抗剤は主として新しい細胞の形成のために新しいDNAの合成を受ける細胞に作用するので、代謝拮抗剤は細胞周期特異的であり、細胞分裂のS期の間に最も有効である。これらの薬物に関連する毒性は、急速に成長及び分裂している細胞において見られる。代謝拮抗剤の例としては、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、及び葉酸アンタゴニストが挙げられる。これらの薬剤は、S期の間に細胞を損傷し、白血病、乳房、卵巣、及び胃腸管の腫瘍、並びに他の癌を治療するために一般に使用される。代謝拮抗剤の具体例としては、5-フルオロウラシル(5FUとしても知られる)、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン及びペメトレキセドが挙げられる。
【0086】
白金系化学療法薬は、いくつかの異なる方法でDNAを架橋し、有糸分裂による細胞分裂を妨害する。損傷したDNAはDNA修復機構を誘発し、これは次に、修復が不可能であることが判明したときにアポトーシスを活性化する。DNA変化の中で最も顕著なものは、プリン塩基との1,2-鎖内架橋である。これらには、付加物のほぼ90%を形成する1,2-鎖内d(GpG)付加物及びあまり一般的でない1,2-鎖内d(ApG)付加物が含まれる。1,3-鎖内d(GpXpG)付加物が生じるが、ヌクレオチド切除修復(NER)によって容易に切除される。他の付加物としては、白金系薬物の活性に寄与すると仮定されている鎖間架橋及び非機能性付加物が挙げられる。細胞タンパク質、特にHMGドメインタンパク質との相互作用も有糸分裂を妨害する機構として進展しているが、これはおそらくその主要な作用方法ではない。白金系化学療法薬としては、シスプラチン(シスプラチナ又はcis-ジアンミンジクロリド白金II(CDDP)としても知られる)、カルボプラチン及びオキサリプラチンが挙げられる。シスプラチンはしばしばアルキル化剤として指定されるが、アルキル基を有さず、アルキル化反応を行うことはできない。正しくは、シスプラチンはアルキル化様と分類される。白金系化学療法薬は、肉腫、いくつかの癌腫(細胞腫)(例えば、小細胞肺癌及び卵巣癌)、リンパ腫並びに胚細胞性腫瘍を含む様々な種類の癌を治療するために使用される。
【0087】
有糸分裂阻害剤は細胞分裂を妨害する。このカテゴリーで最も知られている化学療法剤はパクリタキセル(タキソール(登録商標)、「植物アルカロイド」、「タキサン」及び「抗微小管剤」としても知られている)である。ドセタキセルと共に、パクリタキセルはタキサンの薬物カテゴリーを形成する。しかしながら、エトポシド、ビンブラスチン及びビンクリスチンを含むがこれらに限定されない他の有糸分裂阻害剤が公知である。パクリタキセルは、細胞分裂中の正常な微小管成長を妨害することによって、その機能を停止させることによって作用する。パクリタキセルは、それらの構造を過安定にする。これは、細胞のその細胞骨格を柔軟に使用する能力を破壊する。具体的には、パクリタキセルは、微小管の「ビルディングブロック」であるチューブリンのβサブユニットに結合し、パクリタキセルの結合は、これらのビルディングブロックを適所に固定する。得られた微小管/パクリタキセル複合体は、分解する能力を有さない。これは細胞機能に悪影響を及ぼす。これは、微小管の短縮及び伸長(動的不安定性と呼ばれる)が、他の細胞成分を輸送する機構としてのそれらの機能のために必要であるためである。例えば、有糸分裂中、微小管は、その複製及びその後の2つの娘細胞核への分離によって染色体をすべて位置付ける。さらには、パクリタキセルは、アポトーシス停止タンパク質Bcl-2(B細胞白血病2)に結合し、従ってその機能を停止させることによって、癌細胞においてプログラム細胞死(アポトーシス)を誘導する。
【0088】
抗癌化学療法において広く使用されるDNA相互作用薬の別の群は、とりわけ、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)及びドキソルビシン塩酸塩としても知られている)、レスピノマイシンD及びイダルビシンを含むアントラサイクリン抗生物質の群である。これらの薬物は、インターカレーション及び高分子生合成の阻害によってDNAと相互作用し、これにより、転写のためにDNAを巻き戻す酵素トポイソメラーゼIIの進行を阻害する。これらは、トポイソメラーゼII複合体が複製のためにDNA鎖を破壊した後、トポイソメラーゼII複合体を安定化し、DNA二重らせんが再封入されるのを防止し、これにより複製のプロセスを停止させる。これは、広範ながんの治療に通常使用される。
【0089】
アルキル化抗腫瘍剤はDNAを直接攻撃する。それらは、アルキル基をDNAに結合させ、DNA二重らせん鎖中のグアニン核酸塩基を架橋する。これにより、鎖はほどけて分離することができなくなる。これはDNA複製において必要であるので、細胞はもはや分裂することができない。これらの薬物は非特異的に作用する。シクロホスファミドはアルキル化剤であるが、非常に強力な免疫抑制物質である。
【0090】
トポイソメラーゼI及びII阻害剤は、それぞれトポイソメラーゼI及びトポイソメラーゼ2の酵素活性を妨害し、最終的にDNAの複製及び転写の両方の阻害をもたらす。トポイソメラーゼI阻害剤の例としては、トポテカン及びイリノテカンが挙げられる。イリノテカンは、カルボキシルエステラーゼ変換酵素によって生物学的に活性な代謝産物7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN-38)に変換されるプロドラッグである。SN-38は、その親化合物であるイリノテカンよりも1000倍強力であり、トポイソメラーゼIとDNAとの間の切断可能な複合体を安定化することによってトポイソメラーゼI活性を阻害し、その結果、DNA複製を阻害してアポトーシス細胞死を誘発するDNA切断をもたらす。イリノテカンがその細胞毒性効果を発揮するためには進行中のDNA合成が必要であるため、イリノテカンはS期特異的薬剤としても分類される。トポイソメラーゼII阻害剤の例としては、エトポシド及びテニポシドが挙げられる。
【0091】
抗血管新生剤は、新しい血管の生成を妨害し、最終的に腫瘍の「飢餓」をもたらす。抗血管新生剤の非限定的な例としては、モノクローナル抗体ベバシズマブ、ドーパミン及びテトラチオモリブデン酸(塩)が挙げられる。
【0092】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管拡張、血管透過性の増加及び内皮細胞の有糸分裂誘発を媒介する32~42kDaの二量体糖タンパク質である。VEGF遺伝子の差異的エクソンスプライシングは、3つの分泌アイソフォームをコードする3つの主要mRNA種をもたらす(下付き文字はアミノ酸の番号を示す):VEGF189、VEGF165、及びVEGF121。多数のマイナーなスプライス変異体も記載されている(VEGF206、VEGF183、VEGF145及びVEGF148)。VEGFポリペプチドの変異体及び癌治療におけるそれらの使用は、例えば、国際公開第2003/012105号パンフレットに開示されている。
【0093】
様々な実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、代謝拮抗剤、白金系薬物、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗血管新生剤及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト及び葉酸アンタゴニストを含む代謝拮抗剤である。いくつかの実施形態によれば、代謝拮抗剤はピリミジンアンタゴニストである。いくつかの実施形態によれば、代謝拮抗剤は、メトトレキサート、ペメトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、6-メルカプトプリン、ネララビン、ペントスタチン、カペシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ウラシルマスタード、ウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素及びフルダラビンからなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンを含むがこれらに限定されない白金系薬物である。
【0096】
さらに他の実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビンを含むがこれらに限定されない有糸分裂阻害剤である。
【0097】
さらに他の実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、ダウノルビシン、レスピノマイシンD及びイダルビシンを含むがこれらに限定されないアントラサイクリン抗生物質である。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、ベバシズマブ、ドーパミン、テトラチオモリブデン酸(塩)、及びVEGFの抗血管新生変異体を含むがこれらに限定されない抗血管新生剤である。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド及びミトキサントロンを含むがこれらに限定されないトポイソメラーゼ阻害剤である。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、上記少なくとも1種の化学療法剤は、カルムスチン、ロムスチン、ベンダムスチン、ダカルバジン及びプロカルバジンを含むがこれらに限定されないアルキル化剤である。
【0101】
密封小線源治療
さらに別の実施形態によれば、本発明のmAb及び放射線治療を含む併用癌療法が提供される。放射線は、AECL Theratron及びVarian Clinac等のこの目的のために製造された標準的な装置を使用して、周知の標準的な技術に従って投与される。
【0102】
外部放射線源と患者への進入点との間の距離は、標的細胞の死滅と副作用の最小化との間の許容可能なバランスを表す任意の距離であってもよい。典型的には、外部放射線源は、患者への進入点から70~100cmにある。
【0103】
本発明のmAb及び化学療法剤と組み合わせて使用されてもよい放射線源は、治療される患者の外部又は内部のいずれにあることも可能である。線源が患者の外部にある場合、この療法は、外照射放射線療法(EBRT)として知られている。放射線源が患者の内部にある場合、この治療は密封小線源治療(ブラキセラピー、BT)と呼ばれる。
【0104】
密封小線源治療は、概して、患者の中に放射線源を配置することによって行われる。典型的には、放射線源は、治療される組織から約0~3cmに配置される。公知の技術には、組織内密封小線源治療、腔内密封小線源治療、及び表面密封小線源治療が含まれる。放射性シードは、永久的又は一時的に移植することができる。永久インプラントにおいて使用されているいくつかの典型的な放射性原子としては、ヨウ素-125及びラドンが挙げられる。一時的なインプラントに使用されているいくつかの典型的な放射性原子としては、ラジウム、セシウム-137、及びイリジウム-192が挙げられる。密封小線源治療で使用されているいくつかの追加の放射性原子としては、アメリシウム-241及び金-198が挙げられる。
【0105】
放射線量は、当該技術分野で周知のように、多数の要因に依存する。そのような要因には、治療される臓器、不注意に悪影響を受ける可能性がある放射線の経路内の健康な臓器、放射線療法に対する患者の耐性、及び治療を必要とする身体の領域が含まれる。線量は、典型的には1~100Gy、より具体的には2~80Gyである。報告されているいくつかの線量としては、脊髄に対して35Gy、腎臓に対して15Gy、肝臓に対して20Gy、及び前立腺に対して65~80Gyが挙げられる。しかしながら、本発明はいかなる特定の線量にも限定されないことが強調されるべきである。線量は、上記の因子を含む所与の状況における特定の因子に従って処置する医師によって決定されることになる。
【0106】
密封小線源治療のための放射線量は、外照射放射線療法について上述した線量と同じであることができる。外照射放射線療法の線量を決定するための上述の因子に加えて、使用される放射性原子の性質も、密封小線源治療の線量を決定する際に考慮される。
【0107】
別の実施態様では、抗癌治療は、グリコール開裂ヘパリン化合物(例えば、ロネパルスタット)を含むがこれに限定されないヘパラナーゼ阻害剤である。
【0108】
本発明の組合せ方法の様々な実施形態では、当該mAb及び少なくとも1種の薬物又は治療(例えば、化学療法、放射線療法)は、各活性薬剤の投与の頻度及び投与の順序に言及する「投薬スケジュール」及び「投与レジメン」とも呼ばれるいくつかの処置スケジュールのいずれに従って投与されてもよい。例えば、当該mAb及び少なくとも1種の化学療法剤は、例えば、組み合わせた剤形又は別々の剤形を使用して、実質的に同時に、すなわち同じ時に投与されてもよい。この投与形態は、「随伴(concomitant)」投与とも呼ばれてもよい。併用(concurrent)投与は、同じ全体期間内、例えば、同じ日であるが必ずしも同じ時ではない、活性薬剤の投与を指す。例えば、一方の活性薬剤は、食物との投与を必要としてもよく、他方は、半絶食状態での投与を必要とする。交互(alternate)投与は、特定の期間にわたる、例えば数日又は1週間の経過にわたる1種の薬剤の投与と、その後の同じ期間にわたる他の薬剤の投与と、次いで1つ以上のサイクルにわたるこのパターンの反復とを含む。逐次的又は連続的な投与は、1つ以上の用量を使用する第1の期間中の1種の薬剤の投与と、それに続く1つ以上の用量を使用する第2の期間中の他の薬剤の投与を含む。必ずしも規則的な順序に従ってではなく、治療期間にわたる異なる日における活性薬剤の投与を含む重複スケジュールも採用されてもよい。使用される薬剤及び対象の状態に応じて、これらの一般的なガイドラインのバリエーションが採用されてもよい。
【0109】
プロテアソーム阻害剤
さらに別の実施形態によれば、本発明のmAb及びプロテアソーム阻害剤を含む併用癌療法が提供される。プロテアソーム阻害剤は、プロテアソームを遮断する薬物である。プロテアソームは、不要な又は損傷したタンパク質を分解する酵素である。
【0110】
いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである。
【0111】
本発明の方法
本発明のmAbは、必要とする対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療するのに有用である。いくつかの実施形態では、ヘパラナーゼ活性に関連する疾患又は障害を治療するための医薬の調製のための本発明のmAbの使用が提供される。
【0112】
本明細書で使用される場合、用語「ヘパラナーゼ活性」、「ヘパラナーゼ酵素活性」又は「ヘパラナーゼ触媒活性」は、β脱離によってヘパリン又はヘパラン硫酸を分解する細菌酵素(ヘパラナーゼI、II及びIII)の活性とは対照的に、ヘパリン又はヘパラン硫酸基質に特異的な動物エンドグリコシダーゼ加水分解活性を指す。
【0113】
本発明に従って阻害又は中和されるヘパラナーゼ活性は、組換えヘパラナーゼ又は天然ヘパラナーゼの活性のいずれであることも可能である。このような活性は、例えば、米国特許第6,177,545号明細書及び米国特許第6,190,875号明細書に開示されており、これらの特許文献は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。ヘパラナーゼ活性及び抗体中和効果を決定する方法は、当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、ヘパラナーゼ中和効果は、本明細書に記載される活性アッセイ(例えば、実施例1及び3)によって測定されてもよい。別の実施形態では、ヒトヘパラナーゼのLys158-Asp171ドメイン等のヘパラン硫酸(HS)結合ドメインに対する抗体の親和性が測定されてもよい。さらなる実施形態では、ヘパラナーゼの細胞取り込みが測定されてもよい。
【0114】
本明細書で使用する場合、用語「ヘパラナーゼ触媒活性に関連する」は、ヘパラナーゼの触媒活性に少なくとも部分的に依存する状態を指す。多くのそのような状態下でのヘパラナーゼの触媒活性は正常であることができるが、そのような状態下でのその阻害は罹患個体の改善をもたらすことが理解されている。
【0115】
本発明に係る医薬組成物は、独立型治療として、又は任意の他の治療剤による治療に加えて投与されてもよい。具体的な実施態様によれば、本発明に係る抗体は、少なくとも1種の抗癌剤と組み合わせた治療レジメンの一部として、その抗体を必要とする対象に投与される。本発明に係る医薬組成物は、他の薬剤と共に投与されてもよいし、別々に投与されてもよい。
【0116】
本発明を説明するために本明細書で使用される場合、「悪性増殖性障害」、「癌」、「腫瘍」及び「悪性腫瘍」はすべて、組織又は器官の過形成に同等に関連する。すべてのタイプの腫瘍が、本発明の方法によって治療されてもよい。腫瘍は、固形であってもよく、又は非固形であってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、本発明のmAb又はそれを含む組成物は、非固形癌、例えば、造血性悪性腫瘍、例えば、あらゆる種類の白血病、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、肥満細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキット(Burkitt)リンパ腫及び多発性骨髄腫の治療又は阻害に使用することができる。
【0118】
別の実施形態によれば、増殖性疾患は、癌腫、肉腫、神経膠腫及び黒色腫が挙げられるがこれらに限定されない固形悪性腫瘍である。さらなる実施形態によれば、本発明のmAb又はそれを含む組成物は、口唇及び口腔、咽頭、喉頭、副鼻腔、大唾液腺、甲状腺、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、肛門管、肝臓、胆嚢、肝外胆管、ファーター膨大部、膵外分泌部、肺の腫瘍、胸膜中皮腫、骨の腫瘍、軟部肉腫、皮膚、乳房、外陰部、膣、子宮頸部、子宮体、卵巣、卵管、ファロピウス管(輸卵管)の癌腫及び悪性黒色腫、妊娠性栄養芽腫瘍、陰茎、前立腺、精巣、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、尿道の癌腫及び悪性黒色腫、眼瞼の癌腫、結膜の癌腫、結膜の悪性黒色腫、ブドウ膜の悪性黒色腫、網膜芽細胞腫、涙腺の癌腫、眼窩の肉腫、脳、脊髄、血管系の肉腫、血管肉腫及びカポジ肉腫等の固形腫瘍の治療又は阻害に使用することができる。
【0119】
それゆえ、本発明の組成物は、あらゆる段階での腫瘍、すなわち腫瘍形成、原発性腫瘍、腫瘍進行若しくは腫瘍転移を治療又は阻害するのに有用であることを理解されたい。
【0120】
別の実施形態では、本発明のmAbは、血管新生の阻害に使用することができ、従って、血管新生又は血管化に関連する疾患及び障害、例えば、限定されないが、腫瘍血管新生、眼科障害、例えば糖尿病性網膜症及び黄斑変性症、特に加齢黄斑変性症、並びに胃潰瘍の再灌流の治療に有用である。
【0121】
本発明のmAb又はその任意の組成物は、乾癬、肥厚性瘢痕、座瘡及び硬化症/強皮症等の他の細胞増殖性の疾患若しくは障害を阻害又は治療するために、並びにポリープ、多発性外骨腫症、遺伝性外骨腫症、後水晶体線維増殖症、血管腫、及び動静脈奇形等の他の疾患若しくは障害を阻害又は治療するために有用である。
【0122】
ヘパラナーゼ触媒活性は、免疫系の活性化細胞が循環系から離れて炎症反応及び自己免疫反応の両方を誘発する能力と相関する。血小板、顆粒球、Tリンパ球及びBリンパ球、マクロファージ並びに肥満細胞と内皮下ECMとの相互作用は、ヘパラナーゼ触媒活性によるヘパラン硫酸(HS)の分解に関連する(Vlodavsky,I.ら、Invasion & Metastasis 12、112-127(1992))。この酵素は、種々の活性化シグナル(例えば、トロンビン、カルシウムイオノフォア、免疫複合体、抗原、マイトジェン)に応答して細胞内区画(例えば、リソソーム、特異的顆粒)から放出され、これは、炎症部位及び自己免疫病変におけるその調節された関与及び存在を示唆する。血小板及びマクロファージによって放出されるヘパラナーゼは、アテローム性動脈硬化病変に存在する可能性が高い(Campbell,K.H.ら、Exp.Cell Res. 200、156-167(1992))。従って、本発明のmAb又はその任意の組成物は、自己免疫疾患及び炎症性疾患を阻害又は治療するのにも有用である。
【0123】
それゆえ、別の実施形態では、本発明の組成物は、免疫抑制及び/又は炎症抑制が有益である任意の疾患、状態又は障害における炎症症状の治療又は改善、例えば、限定はされないが、関節における炎症症状(Liら、Arthritis Rheum 2008、58:1590-600)、筋骨格障害及び結合組織障害、若しくは過敏症に関連する炎症症状(Edovitskyら、Blood 2005、3609-16)、アレルギー反応、喘息、アテローム性動脈硬化症(Planerら、Plos ONE 2011;6(4):e18370)、耳炎及び他の耳鼻咽喉科疾患、皮膚炎及び他の皮膚疾患、後部ブドウ膜炎及び前部ブドウ膜炎、結膜炎、視神経炎、強膜炎並びに他の免疫性並びに/若しくは炎症性の眼疾患の治療又は改善に有用であってもよい。
【0124】
別の実施形態では、本発明の組成物は、自己免疫疾患、例えば、限定されないが、イートン-ランバート(Eaton-Lambert)症候群、グッドパスチャー(Goodpasture)症候群、グレーヴス(Greave)病、ギラン・バレー(Guillain-Barr)症候群、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、神経叢障害、例えば、急性腕神経炎、多腺性機能不全症候群、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ(Liら、Arthritis Rheum 2008、58:1590-600)、強皮症、血小板減少症、甲状腺炎、例えば、橋本病、シェーグレン(Sjbgren)症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、ウェゲナー(Wegener)肉芽腫症、ライター(Reiter)症候群、ベーチェット(Behget)症候群、強直性脊椎炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎(ヘルペス状皮膚炎)、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病(Lernerら、J Clin Invest 2011、121:1709-21)の治療又は改善に有用である。
【0125】
なおさらに、ヘパラナーゼは、糸球体基底膜内のヘパラン硫酸プロテオグリカンの負に帯電した側鎖を選択的に分解することによってタンパク尿の病態形成に関与することが提唱されている。負に帯電したヘパラン硫酸プロテオグリカンの喪失は、糸球体基底膜の透過選択特性の変化、糸球体上皮及び内皮細胞アンカーポイントの喪失、並びに増殖因子の遊離をもたらす可能性があり、潜在的に、受動ハイマン(Heymann)腎炎(PHN)及びピューロマイシンアミノヌクレオシドネフローゼ(PAN)等の異なる腎障害をもたらす可能性がある。Levidiotis,V.ら(Levidiotis,V.ら、J.Am.Soc.Nephrol. 15、68-78(2004))によって記載されているように、ヘパラナーゼに対するポリクローナル抗体は、糸球体の組織学的外観、及びPHNを生じる免疫機構に影響を及ぼすことなくタンパク尿を有意に低減し、それゆえ、タンパク尿を低減するためにヘパラナーゼの阻害が用いられてもよい。特に、ヘパラナーゼ阻害剤ロネパルスタットは、1型及び2型糖尿病に関連するタンパク尿を減少させた(Gilら、Diabetes 2012;61:208-16)。それゆえ、別の実施形態では、本明細書に記載される組成物及びmAbは、任意の腎障害及び臓器線維症(Abassi及びGoligorsky MS. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:685-702;van der Vlag及びBuijsers. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:647-667;Masolaら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:669-684)の治療又は改善に有用である。
【0126】
別の実施形態では、本明細書に記載される組成物及びmAbは、糖尿病性腎症の治療又は改善に有用である。別の実施形態では、本明細書に記載される組成物及びmAbは、1型糖尿病(Ziolkowskiら、2012;122:132-41、Simeonovicら、Adv Exp Med Biol. 2020;1221:607-630)の治療又は改善に有用である。
【0127】
別の実施形態では、本明細書に記載される組成物及びmAbは、アミロイドーシス(Li JP及びZhang X. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:631-645)及びウイルス感染症(Agelidis A、Shukla D. Adv Exp Med Biol. 2020;1221:759-770)の治療又は改善に有用である。別の実施形態では、本発明の組成物及びmAbは、敗血症の治療又は改善に有用である。
【0128】
用語「哺乳動物」は、イヌ及びネコ等のペット動物、ブタ、ウシ、ヒツジ及びヤギ等の家畜、マウス及びラット等の実験動物、サル、類人猿及びチンパンジー等の霊長類、並びに好ましくはヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。
【0129】
以上、本発明について概説してきたが、これは、例示として提供され本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0130】
材料及び方法
マウスモノクローナル抗体(mAb)の生成。BALB/cマウスを、完全フロイントアジュバント(CFA;Sigma(シグマ))中のキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)に結合した50μgの組換え65kDa潜在性プロヘパラナーゼ(pro-heparanase)で免疫し、続いて、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のKLH-ヘパラナーゼを2週間ごとに5回注射した(50μg)。尾静脈注射後、脾細胞を単離し、NSO骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマを、本質的に記載されるように(Gingis-Velitskiら、Faseb J 2007;Levy-Adamら、J Biol Chem 2010;285(36):28010-9;Shafatら、Biochem Biophys Res Commun 2006;341(4):958-63)、ELISAによってプロヘパラナーゼに結合するそれらの能力についてスクリーニングした。陽性ハイブリドーマを選択し、増殖させ、クローニングした。ハイブリドーマサブクラスを、アイソタイピングキットによって製造業者(Serotec(セロテック)、オックスフォード、英国)の指示に従って決定した。mAb A54をIgG1-κとして特徴付け、製造業者(Pierce Biotechnology(ピアース・バイオテクノロジー)、ロックフォード(Rockford)、イリノイ州)の指示に従ってプロテインGセファロース(Sepharose)4でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0131】
精製mAb A54抗体をSDS-PAGEによって分離し、重鎖及び軽鎖タンパク質のバンドを抽出し、配列決定した。次いで、対応するヌクレオチド配列を明らかにし、遺伝子をRT-PCRによって増幅し、クローニングした。簡潔には、TRIzol(トリゾール)(登録商標)試薬を用いて上記ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。次いで、この全RNAを、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマーを用いてcDNAに逆転写した。VH及びVLの抗体断片を、標準的なcDNA末端の迅速増幅(RACE)に従って増幅した。増幅した抗体断片を標準クローニングベクターに別々にクローニングした。コロニーPCRを実施して、正しいサイズの挿入断片を有するクローンについてスクリーニングした。正しいサイズの挿入断片を有する5つ以上のコロニーを各断片について配列決定した。異なるクローンの配列をアラインメントした。これらのクローンのコンセンサスヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を表1に提供する。マウスIgG(Sigma)を対照として使用した。
【0132】
【0133】
細胞及び細胞培養。ヒトHEK293、U87-MG神経膠腫、及びCAG骨髄腫細胞、並びにマウス4T1乳癌、及びMPC-11骨髄腫細胞を、American Type culture Collection(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関)(ATCC、マナサス(Manassas)、バージニア州)から購入した。CAG骨髄腫(Ramaniら、Matrix Biol. 2016;55:22-34)、U87神経膠腫(Barashら、Int J Cancer、2019;145(6):1596-1608)及び4T1乳癌(Hammondら、PLoS One 2012;7(12):e52175)細胞は以前に記載されている。10%ウシ胎仔血清及び抗生物質を補充したダルベッコ変法イーグル培地(Biological Industries(バイオロジカル・インダストリーズ)、ベイト・ヘメック(Beit Haemek)、イスラエル)中で細胞を増殖させた。
【0134】
細胞溶解物、ヘパラナーゼ活性及びタンパク質ブロッティング。細胞溶解物の調製、タンパク質ブロッティング、及びヘパラナーゼ酵素活性の測定は、記載のように行った(Arvatzら、Faseb J 2011;24(12):4969-76)。阻害研究のために、高度に精製された組換えヘパラナーゼ(200ng)を、中性pH条件(pH7.2)下で氷上で30分間、示された抗体(2μg)とプレインキュベートした後、ヘパラナーゼの天然産生基質として使用される35S標識ECM(Gingis-Velitskiら、2007、前出)に添加した。
【0135】
ECM分解アッセイ。細胞外マトリクス(ECM)基質は、培養された内皮細胞によって沈着され、従って、その組成、生物学的機能及びバリア特性において内皮下基底膜によく似ている。数年の経験は、このアッセイにおいて上記酵素を効果的に阻害する化合物が前臨床動物モデルにおいても有効であることを示す。この基質の調製及びヘパラナーゼアッセイのためのその使用に関するさらなる詳細は、以下に見出すことができる:Current Protocols in Cell Biology(Vlodavsky 2001;10.4.1~10.4.14頁)。簡潔には、35mm組織培養皿の表面をコーティングする硫酸塩[35S]標識ECMを、A54 mAbの不存在下及び存在下で組換えヒトヘパラナーゼ(200ng/ml)と共にインキュベートする(4時間、37℃、pH6.0、最終容量1ml)。反応混合物は以下を含有する:50mM NaCl、1mM DTT、1mM CaCl2、及び10mMリン酸-クエン酸緩衝液、pH6.0。プロテオグリカン分解の発生を評価するために、インキュベーション培地を回収し、ゲル濾過のためにセファロース6Bカラム(0.9×30cm)に加える(載せる)。画分(0.2ml)をPBSで溶出し、放射活性について計数する。排除体積(Vo)はブルーデキストランでマークし、全内包体積(Vt)はフェノールレッドでマークする。HS側鎖の分解断片は、0.5<Kav<0.8(ピークII)でセファロース6Bから溶出される。結果は、実際のゲル濾過パターンによって最もよく表される(vlodavskyら、Nature Med. 5:793-802、1999)。
【0136】
マトリゲル(Matrigel)浸潤アッセイ。本質的に記載されるように(Arvatzら、2011、前出)、ポリカーボネートNucleopore(ヌクレオポア)膜を有する改変Boydenチャンバーを用いて浸潤アッセイを実施した。簡単に述べると、フィルター(直径6.5mm、細孔径8μm)をマトリゲル(30μl)でコーティングした。100μlの無血清培地中の細胞(2×105)を、示された抗体の存在下で各チャンバーの上部に三連で播種し、下部区画を、10%FCSを補充した600μlの培地で満たした。5%CO2インキュベーター中で37℃で5時間インキュベートした後、フィルターの上面上の非浸潤細胞を綿棒で拭き取り、フィルターの下面上の遊走細胞を固定し、0.5%クリスタルバイオレット(Sigma)で染色し、少なくとも7つの顕微鏡視野の検査によって計数した(Barashら、J Natl Cancer Inst. 110:1102-1114、2018)。
【0137】
腫瘍形成能
U87神経膠腫。ルシフェラーゼ標識U87神経膠腫細胞の指数関数的培養物からの細胞をトリプシン/EDTAで剥離し、PBSで洗浄し、5×107細胞/mlの濃度にした。細胞懸濁液(5×106/0.1ml)を、5週齢の雌SCID/Beigeマウス(n=7)の右側腹部に皮下接種した。細胞接種の3日後、マウスを、(a)ビヒクル(PBS)、及び(b)A54 mAb(500μg/マウス、3回/週)を受ける2つのコホート(各5~10匹のマウス)に無作為に割り当てる。腫瘍形成を、記載されているように(Barashら、FASEB J 2010;24:1239-48、Barashら、J Natl Cancer Inst. 110:1102-1114、2018)、ルシフェリンの投与後にIVISイメージングによって腫瘍形成を検査する(1週間に1回)(下記参照)。実験の最後に、マウスを殺処分し、病理学的検査のために異種移植片を切除し、秤量し、ホルマリン中で固定する。
【0138】
4T1マウス乳癌(実験的転移)。ルシフェラーゼ標識4T1乳癌細胞(1×105/Balb/cマウス)を静脈内注射する(n=10マウス/群;2つの群:未処置対照、A54 mAb)。細胞接種の20分前に抗体を注射する(腹腔内、500μg/マウス、3回/週)。IVIS生物発光イメージングを、細胞接種の6日後、10日後及び14日後に行う。終了時に、マウスを殺処分し、肺を病理学的検査及び5顕微鏡視野あたりの細胞コロニーの計数に供する。細胞は主に肺に転移し、発光シグナルは再現性があり、定量的であり、信頼性がある。
【0139】
4T1マウス乳癌(自然転移)。ルシフェラーゼ標識4T1乳癌細胞(1×105/Balb/cマウス)を第3乳腺脂肪体に直接注射し、マウスの処置(PBS対照対mAb A54 500μg/マウス、3回/週)を4T1細胞接種の3日後に開始した。接種の4日後(0日目)に、マウスを6匹のマウスの2つの群に無作為化した。研究の15日目に、原発性腫瘍を含む乳腺脂肪体を、2%イソフルラン麻酔下ですべてのマウスから切除した。マウスを上記のようにmAb A54で処置し、乳房切除の12日後及び18日後にIVIS生物発光イメージングを実施する。終了時に、マウスを殺処分し、肺の表面上の顕性マクロ転移の数を手動で数えた(Hammondら、PLoS One 2012;7(12):e52175)。
【0140】
CAG骨髄腫。ルシフェラーゼ標識CAGヒト骨髄腫細胞(5×106)をNOD/SCIDマウスの尾静脈に注射する。細胞接種の3日後、マウスを、(a)ビヒクル(PBS)、及び(b)A54 mAb(500μg/マウス、3回/週)を受ける2つのコホート(各5~10匹のマウス)に無作為に割り当てる。ルシフェリン投与後にIVISイメージングによって腫瘍形成を検査する(週に1回)(下記参照)。終了時に、マウスを殺処分し、骨格を切除し、ホルマリン中で固定し、10%EDTA溶液で脱灰した後、パラフィンに包埋し、組織学的及び免疫組織化学的分析に供する。
【0141】
MPC-11骨髄腫。マウスMPC-11骨髄腫細胞をトリプシン/EDTAで剥離し、PBSで洗浄し、5×105細胞/0.2mlの濃度にし、6~8週齢のBalb/cマウスの右側腹部に皮下接種する。細胞接種の3日後、マウスを、(a)ビヒクル(PBS)、及び(b)A54 mAb(500μg/マウス、3回/週)を受ける2つのコホート(各6匹のマウス)に無作為に割り当てる。異種移植片サイズを、7日目、10日目及び14日目に、ノギスを使用して二次元で腫瘍を外部測定することによって決定する。実験の最後に、マウスを殺処分し、腫瘍異種移植片を取り出し、秤量する。
【0142】
B16黒色腫。B16-BL6マウス黒色腫細胞(2×105)を、示された化合物と共にC57/BLマウスの尾静脈に注射し、その後18日目に肺転移を測定した。すべての動物実験は、ハイファ(Haifa)、イスラエルのTechnion(テクニオン)のAnimal Care Committee(動物実験委員会)によって承認された。
【0143】
IVISイメージング。ルシフェラーゼ発現腫瘍の生物発光イメージングは、遮光標本ボックスに搭載された高感度の冷却電荷結合素子(CCD)カメラを用いて行う(IVIS;Xenogen Corp.(キセノジェン)、ウォルサム(Waltham)、マサチューセッツ州)。イメージング(画像化)はリアルタイムで行い、非侵襲的であり、定量的データを提供する。簡潔には、マウスに150mg/kgのD-ルシフェリン基質を腹腔内注射し、このマウスを麻酔し、イソフルラン(EZAnesthesia(イーゼットアネスシージア)、パーマー(Palmer)、ペンシルベニア州)に連続的に曝露しながら、遮光カメラボックス内の温めたステージ上に置く。生物発光細胞から放出された光は、IVISカメラシステムによって検出され、画像は、5×104~1×107に設定された対数スケール色範囲を使用して腫瘍量について定量化し、Living Imageソフトウェア(Xenogen)を使用して総光子カウント/秒(PPS)の測定を行う。
【0144】
統計。データは、平均±SEとして提示する。統計的有意性を両側スチューデント(Student)のt検定によって分析した。P<0.05の値を有意とみなす。
【0145】
実施例1. 最も活性なヘパラナーゼ中和モノクローナル抗体の特定及び選択.
ヘパラナーゼ酵素活性を最もよく阻害するハイブリドーマクローンを選択するために、65kDa潜在性ヘパラナーゼタンパク質に対して産生した様々なハイブリドーマの上清を回収し、組換えヘパラナーゼとプレインキュベートし、硫酸標識ECMからのヘパラン硫酸(HS)分解断片の放出を阻害する能力について調べた。この目的のために、精製した組換え活性ヘパラナーゼ(200ng)を、氷上の無血清RPMI培地中で2時間、様々なハイブリドーマ上清と共にプレインキュベートした。次いで、この混合物を
35S標識ECMコーティングした皿に加え、ヘパラナーゼ活性を上記の「材料及び方法」に記載したように決定した。
図1に示すように、ハイブリドーマ#A54とのプレインキュベーションは、すべての他のハイブリドーマ上清と比較して最良のヘパラナーゼ阻害活性(放出された硫酸塩標識HS分解産物の量のほぼ80%の減少)をもたらした。
【0146】
実施例2. mAb A54は、ヘパラナーゼを優先的に認識する.
ELISA法を適用して、mAb A54対対照マウスIgGによるヘパラナーゼの優先的認識を特徴付けた(
図2A)。この目的のために、マイクロタイター96ウェルプレートを潜在性65kDaヘパラナーゼ(Hpa65)でコーティングした。次いで、精製した(プロテインGセファロース)mAb A54又は対照マウスIgGを示した濃度で添加し、固定化したヘパラナーゼへの結合の程度をELISAによって決定した。非免疫マウスIgGとの相互作用はなかったが、A54抗体はこの酵素に対する高親和性結合を示した(IC50=0.45nM)。次に、精製したA54 mAbをSDS-PAGE(
図2B)及びウェスタンブロット(
図2C、二次抗体:ヤギ抗マウスκ-HRP)分析に供して、抗体の軽鎖及び重鎖の純度、分子量及びアイソタイプをさらに特徴付けた。レーンM1及びM2:タンパク質マーカー;レーン1:還元条件;レーン2:非還元条件;レーンP:陽性対照としてのマウスIgG1、κ。(Ab:抗体:ヤギ抗マウスIgG-HRP)。簡潔には、pcDNA3.4発現ベクター及び無血清(Expi293F)培地を適用して、mAb A54を293F細胞で発現させた。抗体アイソタイプは、IgG1-κとして特徴付けた。
【0147】
実施例3. mAb A54はヘパラナーゼ酵素活性を阻害する.
次に、精製したmAb A54がヘパラナーゼ酵素活性を阻害する能力を調べた。この目的のために、組換え活性ヘパラナーゼ(200ng)を、氷上の無血清RPMI培地中で1時間、対照マウスIgG又は精製したmAb A54(0.1及び1μg/ml)と共にプレインキュベートした。次いで、この混合物を、
35S標識ECMでコーティングした皿に加え、ヘパラナーゼ酵素活性を、「方法」に記載したように決定した。
図3Aに示すように、0.1μg/mlの上記抗体とのプレインキュベーションは、この酵素のほぼ75%の阻害をもたらし、完全な阻害(すなわち、セファロース6Bでのゲル濾過に供した場合の画分番号15~30に溶出したHS分解断片の放出)は、
図3Bに示すように、1μg/mlの上記抗体の存在下で得られた。非免疫マウスIgGに対する阻害効果はなかった。
【0148】
実施例4. mAb A54は細胞浸潤を減弱する.
その後、細胞浸潤に対する上記抗体の効果を調べた。簡潔には、U87神経膠腫細胞(1×10
5)を、対照マウスIgG又はmAb A54(2μg)の存在下で、マトリゲルコーティングした8μm Transwell(トランスウェル)フィルター上に播種した。膜の下側に接着する浸潤細胞を6時間後に可視化し(
図4A~B)、「方法」に記載したように定量した(
図4C;高倍率視野あたりの浸潤細胞の数;
*p=0.001)。
図4A~Cに示すように、マトリゲル(再構成された基底膜)を通るU87神経膠腫細胞の浸潤は、mAb A54の存在下でほぼ90%減弱された。
【0149】
実施例5. 抗ヘパラナーゼmAb A54は、ヒト骨髄腫及びヒト神経膠腫腫瘍増殖を減弱する.
mAb A54が経時的に骨髄腫腫瘍形成を減弱する能力を調べた。簡潔には、NOD/SCIDマウス(n=5)にLuc-CAGヒト骨髄腫細胞(5×10
6)を静脈内(i.v.)に接種し、細胞接種後3日目に開始して、マウスをA54 mAb(500μg/マウス、3回/週)又は対照としてのPBSで処置した。腫瘍増殖を3週間後にIVISイメージングによって評価した(
図5A及び5B)。ルシフェラーゼシグナルの定量もグラフで示す(
図5C)。
図5Bに示すように、骨髄腫増殖速度の顕著な低下が認められた(P=0.02)。
【0150】
同様に、Luc-U87ヒト神経膠腫細胞(5×10
6/0.1ml)を、5週齢の雌NOD/SCIDマウス(n=5)の右側腹部に皮下(s.c.)接種した。マウスをmAb A54(500μg/マウス、3回/週)又は対照としてのPBSで処置した。IVISイメージングによって腫瘍増殖を評価し(
図5D及び5E)、ルシフェラーゼシグナルの定量をグラフで示す(
図5F)。
図5Eに示すように、神経膠腫腫瘍増殖速度の顕著な阻害が抗体処置マウスにおいて認められた(P=0.04)。
【0151】
実施例6. 抗ヘパラナーゼmAb A54は、マウス骨髄腫腫瘍増殖を減弱する.
免疫無防備状態のマウスモデルにおけるmAb A54の阻害効果を実証したので、次に同系(免疫適格性)マウスモデルにおける上記抗体の効果を調べた。簡潔には、Balb/cマウスにMPC-11マウス骨髄腫細胞(0.5×10
6)を接種した(s.c.)。mAb A54(250又は500μg/マウスを隔日)による処置を、細胞接種の2日後に開始した。対照細胞にはPBSを投与した。異種移植片サイズを、ノギスを用いて二次元で腫瘍を外部から測定することによって週に2回決定し、腫瘍体積を計算した(
図6A)。実験の終了時(14日目)に、異種移植片を取り出し、秤量し(
図6B)、ホルマリン中で固定し、写真撮影した(
図6C)。結果は、mAb A54での処置が骨髄腫腫瘍増殖を顕著に(4倍)減弱し、より高い用量の抗体がより有効であったことを示す。以上の結果から、抗ヘパラナーゼmAb A54により原発性腫瘍の形成を抑制できることが示唆される。
【0152】
実施例7. mAb A54は、マウス乳癌の自然転移を減弱する.
その後の研究において、ヘパラナーゼ活性の特徴である癌転移に対するmAb A54の効果を検討した。ヒトにおけるシナリオに類似する同系乳癌モデルを適用した。簡潔には、ルシフェラーゼ標識4T1乳癌細胞(0.5×10
5)を、Balb/cマウスの第3乳腺脂肪体に同所的に注射した。マウスの処置(PBS対照対mAb A54;500μg/マウス、3回/週)は、4T1細胞接種の3日後に開始した。12日目に実施したIVISイメージングは、原発性腫瘍によって生成されたルシフェラーゼシグナルに差異を示さなかった(
図7A及び7B)。研究の15日目に、この原発性腫瘍を含む乳腺脂肪体を(2%イソフルラン麻酔下で)すべてのマウスから切除し、秤量した。A54処置マウス由来の腫瘍と未処置マウス由来の腫瘍との間に重量の差はなかった(
図7C)。マウスを上記のようにmAb A54でさらに処置し、IVIS生物発光イメージングを35日目(例えば乳房切除後23日目)に行った。
図7E及び7Fに示すように、A54処置マウス(1匹のマウスが実験の15日目に死亡した)において明らかになったほとんど検出されないシグナルと比較して、5匹の未処置マウスのうちの2匹のみが肺転移を発症した。実験を繰り返したところ同様の結果が得られ、これは、このモデル系において肺コロニー形成のほぼ完全な阻害をさらに示す。
【0153】
実施例8. A54 mAbとボルテゾミブとの組合せは骨髄腫腫瘍増殖を減弱する
その後の研究において、骨髄腫腫瘍増殖に対するボルテゾミブと組み合わせたmAb A54の効果を検討した。NOD/SCIDマウス(n=5)にCAGルシフェラーゼ細胞(5×10
6)を接種(i.v.)し、マウスをA54 mAb(360μg/マウス、2回/週)又はボルテゾミブ(Brot;0.5mg/kgを週2回)又はA54 mAb+ボルテゾミブ(記載のように)又は対照としてのPBSで処置した。IVISイメージングによって腫瘍増殖を評価した(
図8A~D)。ルシフェラーゼシグナルの定量をグラフで示す(
図8E)。これらの結果は、A54 mAbとボルテゾミブとの組合せによる骨髄腫の処置が腫瘍増殖を減弱することを示す。
【0154】
実施例9. A54 mAbは乳癌腫瘍増殖を減弱する.
その後の研究において、乳癌腫瘍増殖に対するmAb A54の効果を検討した。Balb/cマウス(n=3)に、EMT-6ルシフェラーゼ細胞(0.5×10
6)を乳腺脂肪体に接種し、マウスを、A54 mAb(360μg/マウス、2回/週)又は対照としてのPBSで処置した。IVISイメージングによって腫瘍増殖を評価した(
図9A及び9B)。ルシフェラーゼシグナルの定量をグラフで示す(
図9C)。実験の最後に、腫瘍を切除し、秤量した(
図9D)。これらの結果は、A54 mAb処置が乳癌の増殖を減弱することを示す。
【0155】
実施例10. A54 mAbはマウスをLPS誘導性敗血症から効果的に保護する.
その後の研究において、LPS誘導性敗血症に対するmAb A54の効果を検討した。C57BL/6マウス(n=8)を、A54 mAb(500μg/マウス)若しくはロネパルスタット(SST)(1.2mg/マウス)又は対照としてのPBSで処置し、その30分後にLPS注射(15mg/kg、i.p.)を行った。LPS投与の16時間後にSSTを再度与えた(1.2mg/マウス)。マウスの生存を12時間毎に8日間モニタリングした(
図10)。結果は、A54 mAbがマウスをLPS誘導性敗血症から効果的に保護することを示す。
【0156】
実施例11. A54 mAbとゲムシタビンとの組合せは膵腫瘍増殖を減弱する.
膵腫瘍増殖に対するmAb A54の効果を検討した。C57BL/6マウス(n=7)にPanc02細胞(1×10
6)を接種(s.c.)し、マウスを、A54 mAb(360μg/マウス、2回/週)、ゲムシタビン(Gem;30mg/kgを週に2回)、A54 mAb+ゲムシタビン(記載のように)又は対照としてのビヒクル単独(PBS)で処置した。腫瘍形成を外部ノギス腫瘍測定から計算した(
図11A)。32日目の実験終了時に、腫瘍を切除し、写真撮影し(
図11C)、秤量した(
図11B)。結果は、A54 mAbとゲムシタビンとの組合せによる膵癌の処置が腫瘍増殖を減弱することを示す。
【0157】
実施例12. A54 mAb及びヘパラナーゼの相互作用.
A54 mAbとヘパラナーゼとの相互作用をX線結晶学によって調べた。Fab断片を、Thermo Scientific(サーモ・サイエンティフィック)マウスIgG1 Fab及びF(ab’)2調製キット並びに標準的な製造業者のプロトコルを使用して、インタクトなA54抗体から調製した。単離したFab断片をサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製して夾雑物を除去し、緩衝液を20mM HEPES pH7.4、200mM NaCl、1mM DTTに交換した(
図12A~12B)。精製A54を精製ヘパラナーゼ(=HPSE)と約2:1のFab:HPSE比で混合した。この混合物を室温で2時間インキュベートし、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによって再度精製して、未結合のFab断片を除去した(
図12C)。
【0158】
精製したA54+Fab複合体を5.4mg/mLに濃縮し、市販のスクリーンを使用して結晶化について試験した。結晶は、PACT Premier結晶化スクリーン(Molecular Dimensions(モレキュラー・ディメンジョンズ))条件E5(0.2M硝酸ナトリウム、20%ポリエチレングリコール3350)で見出された。結晶を凍結保護溶液(0.2M硝酸ナトリウム、20%ポリエチレングリコール3350、25%エチレングリコール)に移し、その後、X線データ収集のために回収し、液体窒素中でフラッシュ冷却した。
【0159】
X線回折データをDiamond Light Source(ダイヤモンド・ライト・ソース)、英国のビームラインI04-1上で収集し、XDS2及びSTARANISO3パイプラインを使用して3.54Åに処理した。構造は、非リガンド化HPSE(PDBアクセッションコード5E8M)及び無関係のマウスIgG Fab断片(PDBアクセッションコード1AE6)の構造を用いた分子置換によって位相決定した。構造は、それぞれCOOT及びREFMAC5を使用した手動モデル構築及び最大尤度精密化(maximum-likelihood refinement)の反復ラウンドによってさらに改善した。精密化は、参照モデルとして5E8M及び1AE6を使用して、TLS拘束、jelly body拘束、及びProsmart拘束を使用して実施した。wwPDB検証サーバーを用いて最終モデルをチェックした。
【0160】
結晶学的データは、A54 Fabが、HBD-II(Gln270-Lys280;
図14A及び14B)の真上の(β/α)
8-バレルドメイン上でHPSEに結合することを示す。この相互作用は、HPSEがそのHS基質に結合するのを酵素結合溝の立体閉塞によって防止する(
図15Fに描く)。タンパク質表面電荷を検討すると、A54-HPSE相互作用に対する大きい静電的寄与が示される。HBD-IIは実質的に正に帯電しているのに対して、A54の結合交接部は負に帯電している(
図14C)。
【0161】
この結果は、A54-HPSE交接部(界面)におけるHPSEの単一の最重要領域がHBD-IIであることを示す。いくつかの負に帯電したA54アミノ酸(Asp123VH、Asp125VH、Glu78VH、Asp20VL、Glu116VL、Asp117VL)は、A54-HPSE交接部でクラスター化し、結合相互作用を強く安定化する塩橋のネットワークを形成する。Tyr124VH及びTyr55VLも強い電荷成分を有するが、このTyr124VH及びTyr55VLが関与する陽イオン-π相互作用も優勢である。予想通り、CDRループは、ほぼすべてのA54-HPSE結合相互作用を媒介する。
図13は、A54 CDRループの三次Fab構造の概略図である。各CDRループ相互作用は、以下により詳細に記載される。
【0162】
H1相互作用
A54 H1ループは、HPSEと何らの相互作用も有さない。
【0163】
H2相互作用(
図15A)
H2(Tyr68-Asp85)は、Tyr298-Asp309あたりのHPSE領域、及びいくつかの近くの残基(Tyr348、Lys231)と相互作用する。A54 Lys93は、厳密にはH2ループに属さないが、空間的にH2相互作用に近いように見える。この領域における特に重要な相互作用には、Glu78
A54とLys231
HPSEとの間、及びLys293
A54とAsp309
HPSEとの間の塩橋が含まれる。
【0164】
H3相互作用(
図15B)
H3(Gly118-Tyr132)は、Asn312-Lys325あたりのHPSEα-ヘリックス及びHBD-IIのいくつかの残基(Pro271-Ala276)と相互作用する。Asp123
A54とLys325
HPSEとの間、及びAsp125
A54とArg273
HPSEとの間に明らかな静電相互作用がある。
【0165】
L1相互作用(
図15C)
L1(Arg43-Asn57)相互作用は、主にHPSEのHBD-II領域(Arg272-Ser281)及びいくつかの近くの残基との相互作用である。A54のAsp20-Ile21も、それらがL1ループの近くにあるので、含まれる。L1相互作用に関与する明らかな塩橋又はH結合は存在しないが、Tyr55はArg273と陽イオン-π相互作用を起こすように良好に配置される。
【0166】
L2相互作用
A54 L2ループは、HPSEと何らの相互作用も有さない。
【0167】
L3相互作用(
図15D)
L3(Gln111-Thr120)相互作用は、主にHPSEのHBD-II領域(Arg272-Ser281)との相互作用である。重要な塩橋は、Glu116
A54とLys277
HPSE、及びAsp117
A54とArg273
HPSEとの間で形成される。
【0168】
図15Eは、HPSE HBD-II残基(青)とA54 VH(緑)及びVL(赤)由来の残基との間の相互作用を示す概略図である。
【0169】
図15Fは、PDB 5E9C由来のdp4四糖(シアン)とA54-HPSE複合体との重なりを表示する概略図であり、A54がHPSE結合溝をどのように立体的に閉塞するかを示す。A54は、dp4の位置に非常に近いHPSEに結合する。dp4の位置を超えて延在する天然のHS基質は、HPSE活性部位の溝(赤矢印)への接近を立体的にブロックされるであろう。
【0170】
相互作用の概要
表2及び表3は、PISA5分析によって決定した、結合交接部に関与するA54及びHPSEの残基を要約する。分析は抗体鎖によって分類される。表2は重鎖(VH)相互作用を提示し、表3は軽鎖(VL)相互作用を提示する。いくつかのHPSE残基は、VH及びVLの両方と相互作用するので、両方の表に現れる。このHPSEモデルは、このタンパク質の50kDa(A)及び8kDa(B)鎖に対応する2つの鎖を含有する。結合に関与するHPSE残基は鎖A由来である。A54残基は、残基のCDRループに従ってグループ分けされる。いくつかのA54相互作用残基は、CDRループに属さない。
【0171】
残基がH結合又は塩橋相互作用に関与するか否か(H/S)、相互作用の推定接近可能表面積/埋没表面積(ASA/BSA)、及び結合エネルギーに対する推定寄与(ΔG)も示す。
1. ASA:接近可能表面積 - 溶媒に接近可能なモノマー単位、残基又は原子の面積。ASAは平方オングストロームで測定される。
2. BSA:埋没表面積 - 例えばタンパク質の折り畳み時又は交接部形成の過程で溶媒に接近できなくなる表面積。平方オングストロームで測定される。
3. ΔG:交接部形成時の溶媒和エネルギー増加、kcal/mol。溶媒和エネルギー(SE)は、溶媒和効果に起因するモノマー単位、残基又は原子の結合状態と非結合状態との間のエネルギー差である。結合(交接)状態では、構造の表面の一部は溶媒に接近できなくなる。結合した表面が正の溶媒和効果を有する場合、総エネルギーは結合時に減少し、これは疎水性相互作用として知られている。
【0172】
【0173】
【0174】
特定の実施形態の上述の説明は、本発明の一般的性質を完全に明らかにするので、当業者は、現在の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなく、かつ包括的な概念から逸脱しない範囲で、そのような特定の実施形態を容易に改変及び/又は様々な応用に適合させることができ、それゆえ、そのような適合例及び改変例は、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲内に包含されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で用いられる表現又は用語は、説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではないことを理解されたい。様々な開示された機能を実行するための手段、材料、及び工程は、本発明から逸脱しない範囲で、様々な代替形態をとってもよい。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパラナーゼ酵素に向けられた抗体又はその抗原結合断
片であって、前記抗体
又はその抗原結合断
片は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記
少なくとも1つのCDRは、配列番号1から配列番号6
のいずれかのアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合断
片。
【請求項2】
前記ヘパラナーゼ酵素のHBD-II領域(ヘパリン結合ドメイン2)に向けられた
ものである請求項1に記載の抗体又
は抗原結合断
片。
【請求項3】
少なくとも3つの異なるCDRを含み、前記3つの異なるCDRが、配列番号
1、配列番号
2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む
か、又は前記3つの異なるCDRが、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列を含む請求項1又は請求項2に記載の抗体
又は抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体又は断片が、マウス若しくはヒトの抗体若しくは断片であるか、又はヒト化抗体又はヒト化断片である請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の抗体
又は抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号7
又は配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fd’、Fv、dAb、単離CDR領域、単鎖抗体、ダイアボディ、及び線状抗体から選択される請求項
4に記載の抗体
又は抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号
9から配列番号16のいずれか1つ
のヌクレオチド配列を含む請求項
6に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項
6又は請求項
7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載の抗体
若しくは抗原結合断片、請求項
6若しくは請求項7に記載の単離されたポリヌクレオチド、又は請求項
8に記載のベクターを含む細胞。
【請求項10】
請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載の抗体
若しくは抗原結合断片、請求項
6若しくは請求項7に記載の単離されたポリヌクレオチド、請求項
8に記載のベクター、又は請求項
9に記載の細胞と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
医薬として使用するための請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
対象においてヘパラナーゼ活性に関連する疾患若しくは障害を阻害若しくは治療することに使用するための請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
前記疾患若しくは障害が、癌腫、肉腫、黒色腫若しくは血液悪性腫瘍等の悪性増殖性疾患であるか、又は前記疾患若しくは障害が、1型糖尿病、炎症性障害、腎疾患、若しくはこれらの組合せである請求項12に記載の使用するための抗体又は抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体又は抗原結合断片が、腫瘍進行を阻害するか、腫瘍転移を阻害するか、若しくはこれらの組合せを行う請求項12若しくは請求項13に記載の使用するための抗体又は抗原結合断片。
【請求項15】
前記対象が悪性増殖性疾患を有しており、化学療法若しくは放射線療法等のさらなる抗癌治療が前記対象に投与される請求項12から請求項14に記載のいずれか1項に記載の使用するための抗体又は抗原結合断片。
【国際調査報告】