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特表2023-533717高磁場強度での動作のための非線形素子を有する線形ブリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】高磁場強度での動作のための非線形素子を有する線形ブリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20230728BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230728BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20230728BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20230728BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230728BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 Q
H01L29/82 Z
H10N50/10 P
H10N50/10 M
H10N50/10 S
G03B30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500038
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 US2021034432
(87)【国際公開番号】W WO2022010588
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】16/921,191
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ラサル-バリア,レミ
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AA10
2G017AD55
2G017BA09
2G017BA15
5F092AB01
5F092AC01
5F092AC02
5F092AC05
5F092AC08
5F092AC12
5F092BA02
5F092BA03
5F092BA04
5F092BA05
5F092BA17
5F092BA23
5F092BA32
5F092BA37
5F092BB08
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB53
5F092BC04
5F092BC07
5F092GA01
(57)【要約】
1つの態様において、ブリッジは、第1の基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子と並列で第1の基準角度を有する第3の磁気抵抗素子と、第3の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第4の磁気抵抗素子とを含む。ブリッジの出力は、非ゼロ値を有する水平磁場値の範囲に亘って線形応答を有し、その範囲の水平磁場強度値は、ゼロエルステッド(Oe)値を有する垂直磁場強度値と関連付けられている。基準角度は、磁気抵抗素子が磁場における変化に最も高感度である角度を示すものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジであって、
第1の基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、
前記第1の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、
前記第1の磁気抵抗素子と並列で前記第1の基準角度を有する第3の磁気抵抗素子と、
前記第3の磁気抵抗素子と直列で前記第2の基準角度を有する第4の磁気抵抗素子と
を備え、
前記ブリッジの出力は、非ゼロ値を有する水平磁場値の範囲に亘って線形応答を有し、
前記範囲の水平磁場強度値は、ゼロエルステッド(Oe)値を有する垂直磁場強度値と関連付けられており、
基準角度が、前記磁気抵抗素子が磁場の変化に最も高感度である角度を示している、ブリッジ。
【請求項2】
前記第1、第2、第3、および第4の磁気抵抗素子は、各々、巨大磁気抵抗(GMR)素子またはトンネル磁気抵抗(TMR)素子である、請求項1に記載のブリッジ。
【請求項3】
前記第1の磁気抵抗素子と直列で第3の基準角度を有する第5の磁気抵抗素子と、
前記第3の磁気抵抗素子と直列で前記第3の基準角度を有する第6の磁気抵抗素子と
をさらに含む、請求項1に記載のブリッジ。
【請求項4】
前記第5の磁気抵抗素子および前記第6の磁気抵抗素子は、同じであるように構成される、請求項3に記載のブリッジ。
【請求項5】
前記第5の磁気抵抗素子および前記第6の磁気抵抗素子は、同じピラー数で構成される、請求項4に記載のブリッジ。
【請求項6】
前記第1、第2、第3、第4、第5、および第6の磁気抵抗素子の各々の前記ピラー数、ならびに、前記第1、第2、および第3の基準角度は、前記ブリッジが、-10℃から100℃の温度範囲に亘って制御されたオフセット付きの線形出力を生成することを可能にするように選択される、請求項5に記載のブリッジ。
【請求項7】
前記第1の基準角度および前記第2の基準角度は、前記ブリッジの前記出力が、非ゼロ値を有する水平磁場強度値の当該範囲に亘って前記線形応答を有することを可能にするものである、請求項1に記載のブリッジ。
【請求項8】
前記第1の基準角度および前記第2の基準角度は、前記ブリッジの前記出力が、ゼロ値を含まない水平磁場強度値の当該範囲に亘って前記線形応答を有することを可能にする、請求項7に記載のブリッジ。
【請求項9】
前記第1の磁気抵抗素子および前記第3の磁気抵抗素子は、同じであるように構成される、請求項1に記載のブリッジ。
【請求項10】
前記第1の磁気抵抗素子および前記第3の磁気抵抗素子は、同じピラー数で構成される、請求項9に記載のブリッジ。
【請求項11】
前記第2の磁気抵抗素子および前記第4の磁気抵抗素子は、同じであるように構成される、請求項10に記載のブリッジ。
【請求項12】
前記第2の磁気抵抗素子および前記第4の磁気抵抗素子は、同じピラー数で構成される、請求項11に記載のブリッジ。
【請求項13】
前記線形応答は、200Oe以上の水平磁場値を含む範囲に亘るものである、請求項1に記載のブリッジ。
【請求項14】
前記線形応答は、300Oe以上の水平磁場値を含む範囲に亘るものである、請求項13に記載のブリッジ。
【請求項15】
前記ブリッジは、-10℃から100℃の温度範囲に亘って前記線形応答を有する、請求項13に記載のブリッジ。
【請求項16】
前記第1の基準角度は、前記第2の基準角度に対してほぼ直角である、請求項1に記載のブリッジ。
【請求項17】
前記第1の基準角度は、センサが感知する磁場に対してほぼ直角である、請求項16に記載のブリッジ。
【請求項18】
ブリッジを含む磁場センサを備えたカメラであって、
前記ブリッジは、
第1の基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、
前記第1の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、
前記第1の磁気抵抗素子と並列で前記第1の基準角度を有する第3の磁気抵抗素子と、
前記第3の磁気抵抗素子と直列で前記第2の基準角度を有する第4の磁気抵抗素子と
を含み、
前記ブリッジの出力は、非ゼロ値を有する水平磁場強度値の範囲に亘って線形応答を有し、
前記範囲の水平磁場強度値は、ゼロエルステッド(Oe)値を有する垂直磁場強度値と関連付けられており、
基準角度が、前記磁気抵抗素子が磁場における変化に最も高感度である角度を示している、カメラ。
【請求項19】
前記カメラがセルラーデバイス内に配置される、請求項18に記載のカメラ。
【請求項20】
磁性ターゲットと、焦点制御器と、レンズとをさらに備え、
前記磁性ターゲットの動きは、前記焦点制御器に出力を供給して前記レンズの焦点距離を変化させるために、前記磁場センサにより検出される、請求項18に記載のカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]これは、「LINEAR BRIDGES HAVING NONLINEAR ELEMENTS(非線形素子を有する線形ブリッジ)」を名称とする2020年3月18日付け出願の米国特許出願第16/822,488号の一部継続(CIP)出願、かつ、その米国特許出願の利益および優先権を主張するものであり、その全体において参照することにより本明細書に組み込まれるものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]用語「磁場感知素子」は、磁場を感知し得る種々の電子素子を説明するために使用される。磁場感知素子は、限定されるものではないが、ホール効果素子、磁気抵抗素子、または磁気トランジスタであり得る。知られているように、異なるタイプのホール効果素子、例えば、平面ホール素子、垂直ホール素子、および円形垂直ホール(CVH)素子が存在する。さらには知られているように、異なるタイプの磁気抵抗素子、例えば、アンチモン化インジウム(InSb)などの半導体磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗素子(AMR)、トンネル型磁気抵抗(TMR)素子、および磁気トンネル接合(MTJ)のものが存在する。磁場感知素子は、単一の素子であり得、または代替として、様々な構成、例えば、ハーフブリッジもしくはフル(ホイートストン)ブリッジをなして配置構成される、2つ以上の磁場感知素子を含み得る。デバイスタイプおよび他の用途要求に応じて、磁場感知素子は、ケイ素(Si)もしくはゲルマニウム(Ge)などのIV型半導体材料、または、ガリウムヒ素(GaAs)もしくは例えばアンチモン化インジウム(InSb)などのインジウム化合物といったIII-V型半導体材料から作製されるデバイスであり得る。
【0003】
[0003]知られているように、上記で説明された磁場感知素子のうちの一部は、磁場感知素子を支持する基板に平行な最大感度軸を有する傾向があり、上記で説明された磁場感知素子のうちの他のものは、磁場感知素子を支持する基板に垂直の最大感度軸を有する傾向がある。特に、平面ホール素子は、基板に垂直の感度軸を有する傾向があり、一方で、金属系または金属性の磁気抵抗素子(例えば、GMR、TMR、AMR)および垂直ホール素子は、基板に平行な感度軸を有する傾向がある。
【発明の概要】
【0004】
[0004]1つの態様において、ブリッジは、第1の基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子と並列で第1の基準角度を有する第3の磁気抵抗素子と、第3の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第4の磁気抵抗素子とを含む。ブリッジの出力は、非ゼロ値を有する水平磁場値の範囲に亘って線形応答を有し、その範囲の水平磁場強度値は、ゼロエルステッド(Oe)値を有する垂直磁場強度値と関連付けられている。基準角度は、磁気抵抗素子が磁場における変化に最も高感度である角度を示すものである。
【0005】
[0005]先の態様は、後に続く特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。2.第1、第2、第3、および第4の磁気抵抗素子は、各々、巨大磁気抵抗(GMR)素子またはトンネル磁気抵抗(TMR)素子であり得る。ブリッジは、第1の磁気抵抗素子と直列で第3の基準角度を有する第5の磁気抵抗素子と、第3の磁気抵抗素子と直列で第3の基準角度を有する第6の磁気抵抗素子とを含み得る。第5の磁気抵抗素子および第6の磁気抵抗素子は、同じであるように構成され得る。第5の磁気抵抗素子および第6の磁気抵抗素子は、同じピラー数で構成され得る。第1、第2、第3、第4、第5、および第6の磁気抵抗素子の各々のピラー数、ならびに、第1、第2、および第3の基準角度は、ブリッジが、10℃から100℃の温度範囲に亘って制御されたオフセット付きの線形出力を生成することを可能にするように選択され得る。第1の基準角度および第2の基準角度は、ブリッジの出力が、非ゼロ値を有する水平磁場強度値の前述の範囲に亘って線形応答を有することを可能にし得る。第1の基準角度および第2の基準角度は、ブリッジの出力が、ゼロ値を含まない水平磁場強度値の前述の範囲に亘って線形応答を有することを可能にし得る。第1の磁気抵抗素子および第3の磁気抵抗素子は、同じであるように構成され得る。第1の磁気抵抗素子および第3の磁気抵抗素子は、同じピラー数で構成され得る。第2の磁気抵抗素子および第4の磁気抵抗素子は、同じであるように構成され得る。第2の磁気抵抗素子および第4の磁気抵抗素子は、同じピラー数で構成され得る。線形応答は、200Oe以上の水平磁場値を含む範囲に亘るものであり得る。線形応答は、300Oe以上の水平磁場値を含む範囲に亘るものであり得る。ブリッジは、10℃から100℃の温度範囲に亘って線形応答を有し得る。第1の基準角度は、第2の基準角度に対してほぼ直角であり得る。第1の基準角度は、センサが感知する磁場に対してほぼ直角であり得る。
【0006】
[0006]別の態様において、カメラは、ブリッジを含む磁場センサを含む。ブリッジは、第1の基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、第1の磁気抵抗素子と並列で第1の基準角度を有する第3の磁気抵抗素子と、第3の磁気抵抗素子と直列で第2の基準角度を有する第4の磁気抵抗素子とを含む。ブリッジの出力は、非ゼロ値を有する水平磁場強度値の範囲に亘って線形応答を有し、その範囲の水平磁場強度値は、ゼロエルステッド(Oe)値を有する垂直磁場強度値と関連付けられている。基準角度は、磁気抵抗素子が磁場における変化に最も高感度である角度を示すものである。
【0007】
[0007]先の態様は、後に続く特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。カメラは、セルラーデバイス内に配置され得る。カメラは、磁性ターゲットと、焦点制御器と、レンズとをさらに備えることができ、磁性ターゲットの動きは、焦点制御器に出力を供給してレンズの焦点距離を変化させるるために、磁場センサにより検出され得る。
【0008】
[0008]上述の特徴は、以下の図面の説明からより十二分に理解され得る。図面は、開示される技術を説明し理解する点で助けとなる。可能性のあるあらゆる実施形態を例示および説明することは、非実際的または不可能であることが多いので、提供される図は、1つまたは複数の例示的な実施形態を表している。よって、図は、本明細書において説明される広範な概念、システム、および技術の範囲を限定することを意図するものではない。図中の同様の番号は、同様の構成要素を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]線形磁場センサについての磁場の軌跡(magnetic field trajectory)を例示するグラフである。
図2】[00010]トンネル型磁気抵抗(TMR)素子の先行技術例のブロック図である。
図3】[00011]磁気抵抗(MR)素子を含むブリッジについての磁場の線形な軌跡を例示するグラフである。
図4】[0012]MR素子を含むブリッジの例の回路図である。
図5】[0013]MR素子について基準角度を決定するためのプロセス例のフロー図である。
図6A】[0014]磁場の軌跡の例のグラフである。
図6B】[0015]磁場の軌跡の別例のグラフである。
図7】[0016]磁場の軌跡に関するMR素子の抵抗を例示するグラフである。
図8】[0017]MR素子を含むブリッジについてゼロオフセット付きの磁場の軌跡を例示するグラフである。
図9】[0018]ゼロ電圧を有する線形応答を生成するために使用されるMR素子を含むブリッジの例の回路図である。
図10】[0019]図9におけるブリッジの出力例のグラフである。
図11】[0020]図9のブリッジにおける第3のタイプのMR素子についての基準角度に対するプロセス例のフロー図である。
図12】[0021]図5および/または図11のプロセスのうちのいずれかが実現され得るコンピュータの例のブロック図である。
図13】[0022]外部磁場バイアス無しの磁場の軌跡を例示するグラフである。
図14】[0023]図13に表されるようなH軸に基準方向がアラインメントされたときの、トンネル型磁気抵抗(TMR)素子の応答例のグラフである。
図15】[0024]図13に表されるようなH軸に対して基準方向が垂直であるときの、TMRの応答例のグラフである。
図16】[0025]図13の磁場の軌跡を検出するために使用される線形ブリッジの例の回路図である。
図17】[0026]図16のブリッジの出力例のグラフである。
図18A】[0027]図13における磁場の軌跡を検出するための線形ブリッジの別例の回路図である。
図18B】[0028]図18AのブリッジにおけるMR素子についての基準方向の例のグラフである。
図19】[0029]図19A図19Bおよび図19Cは、図18Aの線形ブリッジにおけるMR素子について、複数の異なる温度での抵抗対水平磁場強度値の例のグラフである。
図20】[0030]様々な温度での、図18Aにおける線形ブリッジの例示出力のグラフである。
図21】[0031]図20におけるグラフを得るために使用されるピラー数および基準方向を例示するテーブルである。
図22】[0032]MR素子を含むブリッジを含むカメラを例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0033]本明細書において説明されるのは、例えば、巨大磁気抵抗(GMR)素子またはトンネル型磁気抵抗(TMR)素子などの、非線形磁気抵抗素子を使用して、線形磁気計に関するブリッジ(線形ブリッジ)を製作するための技法である。一部の例において、本明細書において説明される技術は、磁気抵抗素子が典型的には線形でない場合に、磁場の軌跡および範囲において線形である線形磁気計を構成するために使用され得る。
【0011】
[0034]図1を参照すると、線形な軌跡は、HxおよびHy空間において直線であり、ここで、Hxは水平磁場強度を表し、Hyは垂直磁場強度を表す。グラフ100は、Hx=0エルステッド(Oe)を中心とする、線形磁場センサからの線形な軌跡の例を含む。1つの例において、線形な軌跡102は、Hx=ゼロOeを中心とされ、Hy=0Oeを有する。別の例において、線形な軌跡104は、Hx=ゼロOeを中心としてHy=固定がなされた非ゼロ値を有する。
【0012】
[0035]本明細書においてさらに説明されることになるように、TMR素子およびGMR素子は、線形応答を有するブリッジを構成するために使用され得る。例えば、本明細書において説明される技法を使用すると、TMR素子またはGMR素子を含むブリッジの出力は、水平磁場に関して線形応答を有する。
【0013】
[0036]図2を参照すると、例示的なTMR素子200は、マルチピラー型TMR素子の1つのピラー(pillar:柱状体)を表す、層206、210、214、218、222、226、228、232の積層体202を有し得る。一般には、層206は、シード層(例えば、銅ニッケル(CuN)層)であり、層210は、シード層206上に配置される。層210は、例えば、白金マンガン(PtMn)またはイリジウムマンガン(IrMn)を含む。層214は、層210上に配置され、層218は、層214上に配置される。1つの例において、層214は、コバルト鉄(CoFe)を含み、層218は、スペーサ層であり、ルテニウム(Ru)を含む。層218上で、酸化マグネシウム(MgO)層226が、2つのコバルト鉄ボロン(CoFeB)層222、228の間に挟まれる。キャップ層232(例えば、タンタル(Ta))が、CoFeB層228上に配置される。層214は、層210に磁気的に結合される単層のピン止め層(ピン止めされた層:pinned layer)である。層210,214を一体で結合している物理機構は、交換バイアスと呼ばれることがある。
【0014】
[0037]自由層230は、CoFeB層228を含む。一部の例において、自由層230は、ニッケル鉄(NiFe)の追加的な層(図示せず)と、CoFeB層228とNiFe層との間のタンタルの薄層(図示せず)とを含み得る。
【0015】
[0038]TMR素子200を流通する駆動電流は、シード層206とキャップ層232との間を、すなわち、下部電極204の表面に垂直に流れて積層体の層を流通することが理解されることになる。TMR素子200は、最大応答軸を有することができ、この最大応答軸は、下部電極204の表面に対して平行かつ方向229に沿っており、さらには、層210、214、218、および222から(中でもとりわけ層CoFeB222において)構成される基準層250の磁化方向に対して平行である。
【0016】
[0039]TMR素子200は、矢印229に合わせて方向付けされて基準層250(とりわけ、ピン止め層222)の磁場に平行な最大応答軸(外部の場に対する最大応答)を有する。さらには、一般的に、TMR素子200の抵抗の変化を結果的に生じさせるのは、外部磁場により引き起こされる自由層230の磁気方向の回転であり、そのことは、外部バイアスが存在する場合の角度変化または振幅変化に起因し得る。なぜならば、外部の場およびバイアスの和のベクトルが、基準層と自由層との間の角度変化を引き起こしているからである。
【0017】
[0040]図3を参照すると、TMR素子およびGMR素子は、線形な軌跡を有するブリッジを構成するために使用され得るが、これらの軌跡は、垂直軸(Hy)を中心とせず、もしくは、センサ高感度軸に平行でなく、または、その両方である。例えば、線形な軌跡302および線形な軌跡304は、垂直軸(Hy軸)を中心とするものではない。これらの線形な軌跡は、水平磁場(Hx)に関する線形応答をもつ出力を有するブリッジを構成するために使用され得る。
【0018】
[0041]図4を参照すると、線形ブリッジの例は、ブリッジ402である。1つの例において、ブリッジ402は、電流駆動されるブリッジである。
【0019】
[0042]ブリッジ402は、磁気抵抗(MR)素子404aと、MR素子404bと、MR素子406aと、MR素子406bとを含む。各MR素子404a、404b、406a、406bは、基準方向を有する。例えば、MR素子404aは、基準方向414aを有し、MR素子404bは、基準方向414bを有し、MR素子406aは、基準方向416aを有し、MR素子406bは、基準方向416bを有する。本明細書において使用される際、基準方向(以下、基準角度と呼ぶこともある。)は、MR素子が外部磁場に最も高感度である方向を示すものである。
【0020】
[0043]MR素子404aおよびMR素子404bは、第1のタイプのMR素子であり、すなわち、MR素子404a、404bは、電気的に同じであり、それらの基準角度414a、414bは等しい。第1のタイプのMR素子は、抵抗Rtype1を有する。
【0021】
[0044]MR素子406aおよびMR素子406bは、第2のタイプのMR素子であり、すなわち、MR素子406a、406bは、電気的に同じであり、それらの基準角度416a、416bは等しい。第2のタイプのMR素子は、抵抗Rtype2を有する。
【0022】
[0045]本明細書においてさらに説明されることになるように、線形応答をもつ出力を有するブリッジを実現するために、基準角度414a、414bおよび基準角度416a、416bが決定される。例において、線形ブリッジ402が、電流駆動されるブリッジである場合、ブリッジの出力電圧は、Icc*(Rtype1-Rtype2)に等しく、ここで、Iccは、ブリッジ402供給の電流である。
【0023】
[0046]基準角度414a、414bおよび基準角度416a、416bが決定される、1つの例において、MR素子404a、404bは、基準方向を定めることにより、線形ブリッジ402からの信号の大部分を供給し、第2のタイプのMR素子406a、406bは、第2のタイプのMR素子404a、404bの非線形性を相殺し得る。
【0024】
[0047]図5を参照すると、基準角度を決定するためのプロセスの例は、プロセス500である。プロセス500は、複数の異なる傾き角度でのMR素子について磁場応答を測定する(502)。
【0025】
[0048]プロセス500は、第1および第2のタイプのブリッジMR素子の抵抗の組合せの各々についての値を決定する(514)。例えば、抵抗の組合せは、第2のタイプのMR素子の抵抗を減じた第1のタイプのMR素子の抵抗である(例えば、MR素子406aの抵抗を減じたMR素子404aの抵抗(図4参照)、すなわち(Rtype1-Rtype2)である。抵抗の組合せの各々は、値を有する。1つの例において、その値は、ゼロから100の間の値をもつ線形な値であり、ここで、ゼロは、最も線形な値であり、100は、最も非線形な値である。
【0026】
[0049]プロセス500は、最も線形な応答を表す抵抗の組合せの値の中から値を選択する(518)。例えば、ゼロに最も近い線形な値が選択される。
【0027】
[0050]プロセス500は、当該選択された値に対応する各タイプのブリッジMR素子について基準角度を選択する(522)。例えば、処理ブロック518から選択された値は、第1のタイプのMR素子404a、404bについての基準角度414a、414bおよび第2のタイプのMR素子406a、406bについての基準角度416a、416bと関連付けられている、関連付けられた抵抗の組合せである。
【0028】
[0051]図6Aを参照すると、グラフ600は、MR素子について、傾斜し繰り返された磁場の軌跡の様々な例を表すものである。それぞれの異なるティルド角度は、異なる基準角度との関連である。例えば、傾斜した磁場の軌跡は、第1の基準角度と関連付けられている磁場の軌跡606である。別の例において、傾斜した磁場の軌跡は、第2の基準角度と関連付けられている磁場の軌跡608である。MR素子のピニング方向の例は、(層222(図2)上のピニング方向と同様の)ピニング方向602である。
【0029】
[0052]図6Bを参照すると、グラフ600の別の例は、グラフ600’である。グラフ600’は、200よりも多くの傾斜した磁場の軌跡を表すものである。グラフ600’において、200よりも多くの傾斜した磁場の軌跡を生成するために、1.5°の角度の刻みが使用され、2.5Oeの磁場の刻みが使用される。それぞれの磁場の軌跡は、異なる基準角度を表す。例えば、磁場の軌跡612は、135°の基準角度と関連付けられ、磁場の軌跡614は、0°の基準角度と関連付けられる。
【0030】
[0053]図7を参照すると、グラフ700は、各線(例えば、線702、線704)が、例えば、線形な軌跡612に関して、基準602に対するMR素子の抵抗を示すことを表している。
【0031】
[0054]図8を参照すると、グラフ800は、線形な軌跡802、804が位置806、808それぞれを含むことを除いて、グラフ300と同一である。位置806、808は、線形ブリッジがゼロ電圧出力を生成することが望ましい領域が水平磁場(Hx)のどこであるのかを示すものである。
【0032】
[0055]図9を参照すると、線形であるが、出力電圧がゼロである点を含む出力をもつ線形ブリッジの例は、ブリッジ902である。ブリッジ902は、ブリッジ402と同様であるが、第3のタイプのMR素子を含む。第3のタイプのMR素子についての基準角度は、所望の位置(例えば、位置806または位置808のいずれか)における水平磁場強度(Hx)値が、ブリッジ902がゼロ出力を有する点であるということを可能にするように決定される。
【0033】
[0056]ブリッジ902は、MR素子904aと、MR素子904bと、MR素子906aと、MR素子906bと、MR素子908aと、MR素子908bとを含む。各MR素子904a、904b、906a、906b、908a、908bは、基準方向を有する。例えば、MR素子904aは、基準方向914aを有し、MR素子904bは、基準方向914bを有し、MR素子906aは、基準方向916aを有し、MR素子906bは、基準方向916bを有し、MR素子908aは、基準方向918aを有し、MR素子908bは、基準方向918bを有する。
【0034】
[0057]MR素子904aおよびMR素子904bは、第1のタイプのMR素子であり、すなわち、MR素子904a、904bは、電気的に同じであり、それらの基準角度914a、914bは等しい。
【0035】
[0058]MR素子906aおよびMR素子906bは、第2のタイプのMR素子であり、すなわち、MR素子906a、906bは、電気的に同じであり、それらの基準角度916a、916bは等しい。
【0036】
[0059]MR素子908aおよびMR素子908bは、第2のタイプのMR素子であり、すなわち、MR素子908a、908bは、電気的に同じであり、それらの基準角度918a、918bは等しい。
【0037】
[0060]図10を参照すると、グラフ1000は、曲線1002を含んでおり、これは、例えばブリッジ902(図9)などのブリッジの電圧出力の曲線の例である。曲線1002は、実質的に線形であり、ブリッジ出力が水平磁場に対して線形応答を有することを示すものである。
【0038】
[0061]図11を参照すると、第3のタイプのMR素子の基準角度を決定するためのプロセスは、プロセス1100である。プロセス1000は、最も小さな動作抵抗対(印加磁場の軌跡全体に亘る)平均抵抗比を有する抵抗を決定する(1102)。例えば、グラフ700において、動作抵抗が、印加される磁場に関して変動する場合に、最も小さな動作抵抗対平均抵抗比を有する抵抗が決定される。
【0039】
[0062]プロセス1100は、最も小さな動作抵抗対(印加磁場の軌跡全体に亘る)平均抵抗比を有する抵抗の組合せと関連付けられた基準角度を選択する(1106)。例えば、グラフ700において、最も小さな動作抵抗対平均抵抗比を有する抵抗と関連付けられた基準角度が選択される。
【0040】
[0063]他の例において、MR908a、908b素子を追加することの代わりに、複数の異なる基準方向をもつ複数のMR素子の組合せが追加されてもよく、直列で、または並列で一体に接続されると、小さい動作抵抗対平均抵抗比を生成することになり得る。
【0041】
[0064]図12を参照すると、コンピュータの例は、プロセッサ1202と、揮発性メモリ1204と、不揮発性メモリ1206(例えば、ハードディスク)と、ユーザインターフェース(UI)1208(例えば、グラフィカルユーザインターフェース、マウス、キーボード、ディスプレイ、タッチスクリーン等々)とを含むコンピュータ1200である。不揮発性メモリ1206は、コンピュータ命令1212と、オペレーティングシステム1216と、データ1218とを記憶する。1つの例において、コンピュータ命令1212は、本明細書において説明されるプロセス(例えば、プロセス500および1100)のすべてまたは一部分を遂行するために、揮発性メモリ1204からプロセッサ1202により実行される。
【0042】
[0065]本明細書において説明されるプロセス(例えば、プロセス500および1100)は、図12のハードウェアおよびソフトウェアでの使用に限定されず、それらのプロセスは、任意のコンピューティングまたは処理の環境における、および、コンピュータプログラムを実行させる能力をもつ任意タイプのマシンまたはマシンのセットでの、適用性を見出し得る。本明細書において説明されるプロセスは、ハードウェア、ソフトウェア、または、それら2つの組み合わせにおいて実現され得る。本明細書において説明されるプロセスは、プロセッサと、(揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む)プロセッサにより読み取り可能である非一時的マシン可読媒体または他の物品と、少なくとも1つの入力デバイスと、1つまたは複数の出力デバイスとを各々が含むプログラマブルなコンピュータ/マシン上で実行されるコンピュータプログラムにおいて実現され得る。プログラムコードは、本明細書において説明されるプロセスのうちのいずれかを実行するために、および、出力情報を生成するために、入力デバイスを使用して入力するデータに適用され得る。
【0043】
[0066]システムは、データ処理装置(例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または、複数個のコンピュータ))による実行のための、または、そのデータ処理装置の動作を制御するための、(例えば、非一時的マシン可読記憶媒体における)コンピュータプログラム製品によって、少なくとも部分において実現され得る。各そのようなプログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高水準手続き型またはオブジェクト指向のプログラミング言語において実現され得る。しかしながら、プログラムは、アセンブリまたはマシン言語において実現されてもよい。言語は、コンパイラ型またはインタプリタ型の言語であり得、言語は、スタンドアロンプログラムとして、または、モジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくは、コンピューティング環境における使用に適した他のユニットとしてということを含めて、任意の形式で展開され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または、1つのサイトにおける、もしくは、複数のサイトのあちこちに分散される、および、通信ネットワークにより相互接続される、複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。コンピュータプログラムが、汎用または専用のプログラマブルコンピュータにより読み取り可能である非一時的マシン可読媒体上に記憶されることが実行され得、その非一時的マシン可読媒体がそのコンピュータにより読み出されるときに、本明細書において説明されるプロセスを遂行するように、そのコンピュータを構成し動作させるために行われ得る。例えば、本明細書において説明されるプロセスは、さらには、コンピュータプログラムによって構成される非一時的マシン可読記憶媒体として実現され得、その場合、実行時に、コンピュータプログラムにおける命令が、コンピュータに、プロセスによって動作することを行わせる。非一時的マシン可読媒体は、限定されるものではないが、ハードドライブ、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、磁気ディスケット等々を含み得、本質上、一時的信号を含まない。
【0044】
[0067]本明細書において説明されるプロセスは、説明される特定の例に限定されない。例えば、プロセス500および1100は、図5および図11それぞれの特定の処理順序に限定されない。むしろ、図5および図11の処理ブロックのうちのいずれかは、上記した結果を得るために、必要な際に、再順序付けされ、組み合わされ、または除去され、並列で、もしくは連続して実行され得る。
【0045】
[0068]システムを実現することと関連付けられる処理ブロック(例えば、プロセス500および1100)は、システムの機能を遂行するために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサにより遂行され得る。システムのすべてまたは部分は、専用論理回路網(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)および/またはASIC(特定用途向け集積回路))として実現され得る。システムのすべてまたは部分は、例えば、プロセッサ、メモリ、プログラマブル論理デバイス、または論理ゲートのうちの少なくとも1つなどの電子デバイスを含む電子ハードウェア回路網を使用して実現され得る。
【0046】
[0069]図13を参照すると、一部の用途は、外部磁場バイアスの非存在下で磁場強度に高感度である線形ブリッジを要する。例えば、グラフ1300は、線形ブリッジが検出することができるということが所望の磁場の軌跡1302を表している。この例において、磁場の軌跡1302は、非ゼロ水平磁場強度値と、ゼロ垂直磁場強度値とを有する。特に、磁場の軌跡1302の非ゼロ水平磁場強度値は、200Oeより大である。
【0047】
[0070]図14を参照すると、典型的には、GMRおよびTMR素子は、高磁場において機能せず、なぜならば、そのことは、それらの素子の線形範囲、および、それらの素子の飽和領域を超えるからである。例えば、グラフ1400において示されるように、TMR素子の抵抗曲線1402は、水平磁場軸に沿ってアラインメントされた基準方向を有するTMR素子に対して、500Oeより上の磁場に対して降下する。抵抗における降下は、基準層の方向性の破れであるスピンフロップにより引き起こされる。
【0048】
[0071]図15を参照すると、スピンフロップは、基準層の向きに応じて、異なる曲線を生み出し得る。例えば、グラフ1500は、水平磁場軸に対して垂直に向きを定められるTMR素子の曲線1502を表している。150Oeから800Oeの間、TMR素子は線形挙動を呈する。かくして、TMRまたはGMR素子のMRブリッジが、GMRまたはTMR素子単独の線形および飽和範囲の上側限界より並外れて高い磁場強度を伴って動作し得る線形センサを実現するために、従来の型にとらわれない(すなわち、センサの高感度方向に対して垂直の)基準方向を使用するセンサに対して構成され得る。
【0049】
[0072]図16を参照すると、200Oeより大である磁場において動作する線形ブリッジの例は、線形ブリッジ1602である。1つの例において、線形ブリッジ1602は、電流駆動されるブリッジである。線形ブリッジ1602は、線形ブリッジ1602の高感度方向である方向1650において、磁場強度における変化を検出するように構成される。1つの例において、ブリッジ1602は、磁場の軌跡1302(図13)などの磁場の軌跡を検出し得る。
【0050】
[0073]ブリッジ1602は、MR素子1604aと、MR素子1604bと、MR素子1606aと、MR素子1606bとを含む。各MR素子1604a、1604b、1606a、1606bは、基準方向を有する。例えば、MR素子1604aは、基準方向1614aを有し、MR素子1604bは、基準方向1614bを有し、MR素子1606aは、基準方向1616aを有し、MR素子1606bは、基準方向1616bを有する。
【0051】
[0074]MR素子1604aおよびMR素子1604bは、方向1650に沿った(例えば、200Oeより大である)高磁場強度に対して、磁場強度の変化に、より高感度である、使用されるMR素子、すなわち、感度MR素子のタイプである。例えば、MR素子1604a、1604bは、MR素子1606a、1606bと比較されると、線形ブリッジ1602における磁場強度の変化に、より高感度である。MR素子1604a、1604bは、電気的に同じであり、それらの基準方向1614a、1614bは等しい。
【0052】
[0075]1つの例において、基準方向1614a、1614bは、方向1650に対してほぼ垂直である。1つの個別の例において、基準方向1614a、1614bは、方向1650から、80°から130°の間でオフセットされる。別の個別の例において、基準方向1614a、1614bは、方向1650から、-80°から-130°の間でオフセットされる。
【0053】
[0076]MR素子1606aおよびMR素子1606bは、他のMR素子の非線形性に対して補償するために使用されるMR素子、すなわち、補償MR素子のタイプである。例えば、MR素子1606a、1606bは、MR素子1604a、1604bの非線形性に対して補償するために使用される。1つの個別の例において、MR素子1606a、1606bについてのピラー(柱状体)の数は、所望の磁場強度値においてブリッジ出力の制御されたオフセットを定めるように選択される。MR素子1606a、1606bは、MR素子1604a、1604bと比較されると、線形ブリッジ1602における磁場強度の変化に対して、ほとんど全く感度をもたらさない。
【0054】
[0077]MR素子1606a、1606bは、電気的に同じであり、それらの基準方向1616a、1616bは等しい。1つの例において、基準方向1616a、1616bは、方向1650にほぼ平行である。1つの個別の例において、基準方向1616a、1616bは、方向1650から、-20°から20°の間でオフセットされる。
【0055】
[0078]図17を参照すると、グラフ1700は、線形ブリッジ1602(図16)の出力信号の例である曲線1702を表すものである。曲線1702は、約350Oeの(例えば、約300Oeから約650Oeの)線形範囲を有し、線形ブリッジの出力信号の制御されたオフセットは、約470Oeにおいて0mVに定められる。曲線1702は、0.7%積分非線形性(INL)を有し、感度は、250マイクロワットの電力消費に対して、約0.18mV/Oeである。
【0056】
[0079]図18Aおよび図18Bを参照すると、200OEより大である磁場強度において動作する線形ブリッジの別の例は、線形ブリッジ1802である。ブリッジ1802は、ブリッジ1602(図16)と同様であるが、非線形性に対する補償を行うMR素子(図16におけるMR素子1606a、1606b)は、各々、本明細書において説明されるような2つのMR素子により置換される。1つの例において、線形ブリッジ1802は、電流駆動されるブリッジである。
【0057】
[0080]本明細書においてさらに説明されるように、ブリッジ1802は、ある決められた温度範囲(例えば、-10℃から100℃)について温度に依存しない線形出力を有するように構成され得る。本明細書においてさらに説明されることになるように、MR素子1804a、1804b、1806a、1806b、1808a、1808bの各々に対するピラー数の選択、および、基準方向1814a、1814b、1816a、1816b、1818a、1818bの選択が、温度に対して補償するために使用され得る。例えば、各素子1804a、1804b、1806a、1806b、1808a、1808bの、ピラーの数、および、正確な基準方向1814a、1814b、1816a、1816b、1818a、1818bは、所望の磁場強度値において制御オフセットをゼロに定めながら、温度全体でブリッジ1802の最大抵抗を超えないように、ならびに、制御されたオフセットおよび感度の温度依存性を可能な限り低減するように選択される。
【0058】
[0081]線形ブリッジ1802は、磁場の軌跡1842などの磁場の軌跡における磁場強度変化を検出するために、線形ブリッジ1802の高感度方向である方向1850において、磁場強度変化を検出するように構成される。磁場の軌跡1302(図13)と同様に、磁場の軌跡1842は、非ゼロ水平磁場強度値と、ゼロ垂直磁場強度値とを有する。特に、磁場の軌跡1842の非ゼロ水平磁場強度値は、200Oeより大である。
【0059】
[0082]ブリッジ1802は、MR素子1804aと、MR素子1804bと、MR素子1806aと、MR素子1806bと、MR素子1808aと、MR素子1808bとを含む。MR素子1804aは、基準方向1814aを有し、MR素子1804bは、基準方向1814bを有し、MR素子1806aは、基準方向1816aを有し、MR素子1806bは、基準方向1816bを有し、MR素子1808aは、基準方向1818aを有し、MR素子1808bは、基準方向1818bを有する。
【0060】
[0083]MR素子1804aおよびMR素子1804bは、MR素子1604a、1604b(図16)と同様の感度MR素子である。MR素子1804a、1804bは、電気的に同じであり、それらの基準方向1814a、1814bは等しい。
【0061】
[0084]1つの例において、基準方向1814a、1814bは、線形センサ1802の高感度方向1850に垂直である。1つの個別の例において、基準方向1814a、1814bは、方向1850から、80°から130°の間でオフセットされる。別の個別の例において、基準方向1814a、1814bは、方向1850から、-80°から-130°の間でオフセットされる。
【0062】
[0085]MR素子1806a、1806bおよびMR素子1808a、1808bは、MR素子1606a、1606b(図16)と同様の補償MR素子であり、MR素子1804a、1804bの非線形性に対して補償するために使用される。MR素子1806a、1806bは、電気的に同じであり、それらの基準角度1816a、1816bは等しい。MR素子1808a、1808bは、電気的に同じであり、それらの基準角度1818a、1818bは等しい。
【0063】
[0086]MR素子1806a、1806b、1808a、1808bは、MR素子1804a、1804bと比較されると、線形ブリッジ1802において、ほとんど全く感度をもたらさない。MR素子1806a、1806b、1808a、1808bは、MR素子1804a、1804bの非線形性に対して補償するために使用される。1つの個別の例において、MR素子1806a、1806b、1808a、1808bについてのピラーの数は、MR素子1804a、1806bの非線形性を相殺するように選択される。
【0064】
[0087]1つの例において、基準方向1816a、1816bは、方向1850にほぼ反平行である。1つの個別の例において、基準方向1816a、1816bは、方向1850から、160°から200°の間でオフセットされる。1つの個別の例において、基準方向1816a、1816bは、MR素子1806a、1806の抵抗がそれらのMR素子の最大抵抗におけるものであるように選択される。
【0065】
[0088]1つの例において、基準方向1818a、1818bは、方向1850にほぼ平行である。1つの個別の例において、基準方向1816a、1816bは、方向1850から、-20°から20°の間でオフセットされる。1つの個別の例において、基準方向1818a、1818bは、MR素子1808a、1808bの抵抗がそれらのMR素子の最小抵抗におけるものであるように選択される。
【0066】
[0089]1つの個別の例において、MR素子1806a、1806bおよびMR素子1808a、1808bのピラーの数は、MR素子1806a、1806bおよびMR素子1808a、1808bの合計の温度係数がMR素子1804a、1804bの温度係数に相対的に近いように選択される。1つの例において、MR素子1804a、1804b、1806a、1806b、1808a、1808bの各々についてのピラーの数は、最適化プロセスにおいて基準方向とともに選択される。
【0067】
[0090]図19Aを参照すると、グラフ1900は、複数の異なる温度でのMR素子1804a、1804bの抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1902は、-9.5℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1904は、27.5℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1906は、59.0℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1908は、69.7℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1910は、90.7℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。
【0068】
[0091]図19Bを参照すると、グラフ1940は、複数の異なる温度でのMR素子1806a、1806bの抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1942は、-9.5℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1944は、27.5℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1946は、59.0℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1948は、69.7℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1950は、90.7℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。
【0069】
[0092]図19Cを参照すると、グラフ1960は、複数の異なる温度でのMR素子1808a、1808bの抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1952は、-9.5℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1954は、27.5℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1956は、59.0℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1958は、69.7℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。例えば、曲線1960は、90.7℃の温度での抵抗R対水平磁場強度を表している。
【0070】
[0093]図20を参照すると、グラフ2000は、図19Aから図19Cにおいて使用される複数の異なる温度にでの線形ブリッジ(例えば、線形ブリッジ1802(図18A))の出力対水平磁場強度値を表している。図20において示されるように、MR素子1804a、1804b、1806a、1806b、1808a、1808bについて、ピラー数、および、基準方向1814a、1814b、1816a、1816b、1818a、1818bの選択は、線形ブリッジの出力が、-10℃から100℃の間の温度に依存しないことを可能にする。
【0071】
[0094]例えば、曲線2002は、-9.5℃の温度でのブリッジ出力対水平磁場強度を示すものである。例えば、曲線2004は、27.5℃の温度でのブリッジ出力対水平磁場強度を表すものである。例えば、曲線2006は、59.0℃の温度でのブリッジ出力対水平磁場強度を表すものである。例えば、曲線2008は、69.7℃の温度でのブリッジ出力対水平磁場強度を表すものである。例えば、曲線2010は、90.7℃の温度でのブリッジ出力対水平磁場強度を表すものである。
【0072】
[0095]図21を参照すると、テーブル2100は、図20における線形曲線2002、2004、2006、2008、2010を得るために、MR素子1804a、1804b、1806a、1806a、1808a、1808aに対して選択されるピラー数および基準角度を示すものである。例えば、MR素子1804a、1804bは、各々17.5のピラー数を有し、基準角度1814a、1814bは、各々-112.75°であり、MR素子1806a、1806bは、各々6のピラー数を有し、基準角度1816a、1816bは、各々175°であり、MR素子1808a、1808bは、各々12.5のピラー数を有し、基準角度1818a、1816bは、-8°である。
【0073】
[0096]図22を参照すると、本明細書において説明される線形ブリッジ(例えば、ブリッジ402、ブリッジ1002、ブリッジ1602、ブリッジ1802)は、カメラにおいて使用され得る。1つの例において、カメラは、モバイルフォンにおいて使用され得る。カメラ2200は、磁場センサ2204と、焦点制御器2224と、レンズ2236と、磁性ターゲット2236とを含む。
【0074】
[0097]磁場センサ2204は、ブリッジ2212を含む。1つの例において、ブリッジ2212は、ブリッジ402と同様である。別の例において、ブリッジ2212は、ブリッジ1002と同様である。さらなる例において、ブリッジ2212は、ブリッジ1602と同様である。なおもさらなる例において、ブリッジ2212は、ブリッジ1902と同様である。
【0075】
[0098]1つの例において、磁性ターゲット2236は、動かされ、焦点制御器2224に出力を供給してレンズ2236の焦点距離を変化させるために、磁場センサ2204により検出され得る。
【0076】
[0099]本明細書において説明される異なる実施形態の要素は、上記で具体的に論述されない他の実施形態を形成するために組み合わされ得る。単一の実施形態の文脈において説明される様々な要素は、さらには、別々に、または、任意の適した副組み合わせをなして提供され得る。本明細書において具体的に説明されない他の実施形態が、さらには、添付の特許請求の範囲の中にある。
図1
図2
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図5
図6A
図6B
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【国際調査報告】