(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】周波数挙動を考慮に入れた圧延
(51)【国際特許分類】
B21B 37/20 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B21B37/20 110B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501311
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2021064020
(87)【国際公開番号】W WO2022008133
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ドレスラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・コッツァン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・シェーンヘル
(72)【発明者】
【氏名】スルダン・セクリッチ
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA07
4E124BB03
4E124BB06
4E124EE13
4E124FF01
4E124GG03
(57)【要約】
圧延機の圧延スタンド(2)には、上流の供給装置(3)によって送り込み速度(v)で金属ストリップ(1)が供給され、前記金属ストリップが圧延スタンド(2)において圧延されている。供給装置(3)と圧延スタンド(2)との間の測定装置(4)が、金属ストリップ(1)の連続部分(9)に対して金属ストリップ(1)のそれぞれの厚さ値(d)を検出し、前記値をこの圧延機の制御装置(6)に供給する。制御装置(6)は、金属ストリップ(1)のそれぞれの部分(9)に対する目標厚さからのそれぞれの厚さ値(d)の偏差に基づいてそれぞれの予備偏肉、および予備偏肉に基づいて最終偏肉を決定する。制御装置(6)は、圧延スタンド(2)および/または供給装置(3)および/または測定装置(4)の逆周波数挙動の記述を考慮に入れて、金属ストリップ(1)のそれぞれの部分(9)の最終偏肉ならびに金属ストリップ(1)の複数の先行するおよび/または後続の部分(9)の最終偏肉に基づいて、金属ストリップ(1)の部分(9)に対して、圧延スタンド(2)および/または供給装置(3)に対するそれぞれの制御値(A2、A3)を決定する。それは、次いで適当な時間に圧延スタンド(2)および/または供給装置(3)にそれぞれの制御値(A2、A3)を出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機のための動作方法であって、
- 前記圧延機の圧延スタンド(2)の上流に配置される送り装置(3)によって金属ストリップ(1)が入口速度(v)で前記圧延スタンド(2)に送られ、
- 前記金属ストリップ(1)が前記圧延スタンド(2)において圧延され、
- 前記送り装置(3)と前記圧延スタンド(2)との間に配置される測定装置(4)を用いて前記金属ストリップ(1)の連続部分(9)に対して都度、前記金属ストリップ(1)の厚さに対する厚さ値(d)が検出され、
- 前記検出された厚さ値(d)が前記圧延機の制御装置(6)に送られ、
- 前記制御装置(6)が、前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)に対する設定厚さ(d*)からのそれぞれの前記厚さ値(d)の偏差を基にしてそれぞれの暫定偏肉(δd)を決定し、
- 前記制御装置(6)が、前記暫定偏肉(δd)を基にして最終偏肉(δd´)を決定し、
- 前記制御装置(6)が、前記金属ストリップ(1)の前記部分(9)に対して都度、前記圧延スタンド(2)および/または前記送り装置(3)に対する制御値(A2、A3)を決定し、適当な時間に前記圧延スタンド(2)および/または前記送り装置(3)にそれぞれの前記制御値(A2、A3)を出力する、動作方法において、
前記制御装置(6)が、前記圧延スタンド(2)および/または前記送り装置(3)および/または前記測定装置(4)の逆周波数応答の記述を考慮しつつ、前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)の前記最終偏肉(δd´)ならびに前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)に先行するおよび/または続く前記金属ストリップ(1)の複数の部分(9)の前記最終偏肉(δd´)も基にしてそれぞれの前記制御値(A2、A3)を決定すること、
を特徴とする動作方法。
【請求項2】
- 前記圧延スタンド(2)および/または前記送り装置(3)および/または前記測定装置(4)の逆周波数応答の前記記述が、逆モデル(10、13)によって前記制御装置(6)に対して指定されることと、
- 前記金属ストリップ(1)の一部分の前記最終偏肉(δd´)が都度、前記逆モデル(10、13)に送られることと、
- 前記逆モデル(10、13)を用いてそれぞれの前記最終偏肉(δd´)を使用する前記制御装置(6)が、一方では前記逆モデル(10、13)の内部状態(Z2、Z3)を補正的に調整し、他方ではそれぞれの前記制御値(A2、A3)を決定することと、
を特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
前記圧延スタンド(2)および/または前記送り装置(3)および/または前記測定装置(4)の逆周波数応答の前記記述が周波数応答特性(FG)として前記制御装置(6)に対して指定されること、ならびに前記制御装置(6)が、周波数領域への前記最終偏肉(δd´)のプロファイルの変換、次に前記周波数応答特性(FG)による前記最終偏肉(δd´)の前記変換されたプロファイルの乗算および次に時間領域への逆変換によってそれぞれの前記制御値(A2、A3)を決定すること、
を特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項4】
前記圧延スタンド(2)および/または前記送り装置(3)および/または前記測定装置(4)の逆周波数応答の前記記述が畳み込みカーネル(FK)として前記制御装置(6)に対して指定されること、ならびに前記制御装置(6)が、前記畳み込みカーネル(FK)との前記最終偏肉(δd´)のプロファイルの畳み込みによってそれぞれの前記制御値(A2、A3)を決定すること、
を特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項5】
それぞれの前記制御値(A2、A3)を決定するために、前記制御装置(6)が、前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)に先行する前記金属ストリップ(1)の部分(9)の最終偏肉(δd´)も、前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)に続く前記金属ストリップ(1)の部分(9)の最終偏肉(δd´)も、使用すること、
を特徴とする、請求項3または4に記載の動作方法。
【請求項6】
前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)に先行して、それぞれの前記制御値(A2、A3)を決定するために前記最終偏肉(δd´)が前記制御装置(6)によって使用される前記金属ストリップ(1)の部分(9)の数が、前記金属ストリップ(1)のそれぞれの前記部分(9)に続いて、それぞれの前記制御値(A2、A3)を決定するために前記最終偏肉(δd´)が前記制御装置(6)によって使用される前記金属ストリップ(1)の部分(9)の数に実質的に等しいこと、
を特徴とする、請求項5に記載の動作方法。
【請求項7】
前記制御装置(6)が、最終偏肉(δd´)として前記暫定偏肉(δd)1:1を採用すること、または前記制御装置(6)が、ゼロ位相フィルタリングを用いて前記暫定偏肉(δd)から前記最終偏肉(δd´)を決定すること、
を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項8】
前記暫定偏肉(δd)のローパスフィルタリングが前記ゼロ位相フィルタリングを用いて実施されること、
を特徴とする、請求項7に記載の動作方法。
【請求項9】
圧延機のための制御装置(6)によって実行できる機械コード(8)を含む制御プログラムであって、前記制御装置(6)による前記機械コード(8)の前記実行が、前記制御装置(6)が請求項1から8のいずれか一項に記載の動作方法に従って前記圧延機を動作させるという効果をもたらす制御プログラム。
【請求項10】
圧延機のための制御装置であって、請求項9に記載の制御プログラム(7)でプログラムされ、その結果、請求項1から8のいずれか一項に記載の動作方法に従って前記圧延機を動作させる制御装置。
【請求項11】
金属ストリップ(1)を圧延するための圧延機であって、
- 前記圧延機が、少なくとも1つの圧延スタンド(2)、前記圧延スタンド(2)の上流に配置される送り装置(3)、前記送り装置(3)と前記圧延スタンド(2)との間に配置される測定装置(4)、および制御装置(6)を有し、
- 前記金属ストリップ(1)が前記送り装置(3)によって入口速度(v)で前記圧延スタンド(2)に送られ、
- 前記金属ストリップ(1)が前記圧延スタンド(2)において圧延され、
- 前記測定装置(4)によって前記金属ストリップ(1)の連続部分(9)に対して都度、前記金属ストリップ(1)の厚さに対する厚さ値(d)が検出され、
- 前記検出された厚さ値(d)が前記制御装置(6)に送られ、
- 前記制御装置(6)が請求項1から8のいずれか一項に記載の動作方法に従って前記圧延機を動作させる、圧延機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機のための動作方法に基づいており、
- 圧延機の圧延スタンドの上流に配置される送り装置によって金属ストリップが入口速度で圧延スタンドに送られ、
- 金属ストリップが圧延スタンドにおいて圧延され、
- 送り装置と圧延スタンドとの間に配置される測定装置を用いて金属ストリップの連続部分に対して都度、金属ストリップの厚さに対する厚さ値が検出され、
- 検出された厚さ値が圧延機の制御装置に送られ、
- 制御装置が、金属ストリップのそれぞれの部分に対する設定厚さからのそれぞれの厚さ値の偏差を基にしてそれぞれの暫定偏肉を決定し、
- 制御装置が、暫定偏肉を基にして最終偏肉を決定し、
- 制御装置が、金属ストリップの部分に対して都度、圧延スタンドおよび/または送り装置に対する制御値を決定し、適当な時間に圧延スタンドおよび/または送り装置にそれぞれの制御値を出力する。
【0002】
本発明は、圧延機のための制御装置によって実行できる機械コードを含む制御プログラムにも基づいており、制御装置による機械コードの実行が、制御装置がそのような動作方法に従って圧延機を動作させるという効果をもたらす。
【0003】
本発明は、圧延機のための制御装置にも基づいており、制御装置はそのような制御プログラムでプログラムされ、その結果制御装置が、そのような動作方法に従って圧延機を動作させる。
【0004】
本発明は、金属ストリップを圧延するための圧延機にも基づいており、
- 圧延機が、少なくとも1つの圧延スタンド、圧延スタンドの上流に配置される送り装置、送り装置と圧延スタンドとの間に配置される測定装置、および制御装置を有し、
- 金属ストリップが送り装置によって入口速度で圧延スタンドに送られ、
- 金属ストリップが圧延スタンドにおいて圧延され、
- 測定装置によって金属ストリップの連続部分に対して都度、金属ストリップの厚さに対する厚さ値が検出され、
- 検出された厚さ値が制御装置に送られ、
- 制御装置が、動作方法それ自体に従って圧延機を動作させる。
【0005】
金属ストリップを生産する場合、スラブの鋳造後に、スラブは最初に熱間圧延され、その結果ホットストリップが作成される。ホットストリップの厚さは、通常は数ミリメートルの範囲にあり、生産工程に応じて時にはそれより多少上下もし、例えば通常の熱間圧延機の場合1.0mmと20mmとの間、いわゆるESPプラントの場合0.6mmと6mmとの間である。一部の場合には、ホットストリップは、更なる減肉なしで更に処理される。他の場合には、熱間圧延後にストリップ厚さは、冷間圧延機においてまた更に減少される。冷間圧延の目的は、最終厚さが目標厚さと一致する他に最少可能偏差で可能な冷間圧延金属ストリップの生産である。
【0006】
完成したホットストリップ-すなわち熱間圧延後であるが冷間圧延機における圧延前-は一般に偏肉を有する。偏肉は、しばしば周期成分も確率成分も有する。これらの偏差の補償なしでは、金属ストリップは、冷間圧延後もそのような偏差を有する。偏差の絶対的な程度はホットストリップの場合よりも小さいが、相対偏差は残存する。したがって-例えば-冷間圧延前に金属ストリップが3.0mmの厚さおよび30μmの範囲の偏肉を有し、冷間圧延後に金属ストリップがまだ1.0mmの厚さを有するならば、偏肉の補償なしでは金属ストリップは冷間圧延後に10μmの範囲の偏肉を有する。
【背景技術】
【0007】
そのような偏差を補償するための様々な手順が先行技術において公知である。
【0008】
そのため、例えば、圧延スタンドの出口側において圧延金属ストリップの厚さを検出すること、そして圧延スタンドの厚さフィードバック制御を行うことが特許文献1から公知である。張力の変動も圧延金属ストリップの厚さに影響するので、それらの補償もある。張力の比較的高度な動的フィードバック制御を達成するために、一方では送り装置と圧延スタンドとの間に、他方では圧延スタンドと圧延スタンドの下流に配置される巻取り装置との間にも、圧延スタンドにおける圧延前および/または後に金属ストリップを偏向することができるローラまたは同様の要素がある。特許文献1の手順は、送り装置自体および巻取り装置自体によるフィードバック制御は反応するのが非常に遅く、フィードバック制御のダイナミクスは追加ローラによって高めることができるという着想に基づく。特許文献1は、金属ストリップの厚さおよび速度が圧延スタンドの入口側において検出され、圧延スタンドの調整を決定する過程において使用される手順の説明も含む。
【0009】
圧延スタンドの出口側において圧延金属ストリップの厚さを検出すること、そして圧延スタンドの厚さフィードバック制御を行うことが特許文献2から同様に公知である。周期偏差が確率偏差から分離される。周期偏差は、圧延スタンドのロールの偏心によって引き起こされると考えられる。圧延スタンドの調整の補正がそれに応じて発生する。
【0010】
特許文献3の場合には、静止し繰り出された金属ストリップの厚さが圧延スタンドの入口側において検出され、或る長さの単位にわたって平均される。平均は、圧延スタンドの調整を制御するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0435595号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3332883欧州特許出願公開第
【特許文献3】特開昭58-068414号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Stabile Neuronale Online Identifikation und Kompensation statischer Nichtlinearitaten」[Stable neural online identification and compensation of static nonlinearities]、Thomas Frenz
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
入口厚さの偏差は、先行技術の手順を用いて既にある程度まで補償できる。しかしながら、先行技術の手順は、まだ改善することができる。
【0014】
本発明の目的は、金属ストリップの入口側偏肉の優れた補償を達成できる可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、請求項1の特徴を持つ圧延機のための動作方法によって達成される。この動作方法の有利な構成が従属請求項2から8の対象である。
【0016】
本発明によれば、冒頭で述べた種類の動作方法は、この制御装置が、圧延スタンドおよび/または送り装置および/または測定装置の逆周波数応答の記述を考慮しつつ、金属ストリップのそれぞれの部分の最終偏肉ならびに金属ストリップのそれぞれの部分に先行するおよび/または続く金属ストリップの複数の部分の最終偏肉も基にしてそれぞれの制御値を決定するように構成される。
【0017】
決定された偏肉が補正される程度が偏肉自体にだけでなく偏肉の範囲にも依存することが本発明者らによって認識されている。特に、より高い周波数の偏肉の補償は一般に、より低い周波数の偏肉に対するよりも少ない程度までかつより大きな位相オフセットで提供されるだけである。より高い周波数の偏肉も完全な程度までかつ位相オフセットなしで補償することができるために、したがって、制御される装置の周波数応答に対して考慮がなされなければならず-これは一般に、圧延ギャップの大きさに関する圧延スタンドのならびに入口速度および/または入口側張力の大きさに関する送り装置の調整である。測定値獲得も周波数応答を有する場合があり得、この場合にも考慮することができる。圧延スタンドおよび/または送り装置および/または測定装置の逆周波数応答の記述を基にして考慮がなされる。
【0018】
考慮がなされる様式には様々な可能性がある。現在好まれる仕方は、
- 圧延スタンドおよび/または送り装置および/または測定装置の逆周波数応答の記述が逆モデルによってこの制御装置に対して指定されることと、
- 金属ストリップの一部分の最終偏肉が都度、逆モデルに送られることと、
- 逆モデルを用いてそれぞれの最終偏肉を使用するこの制御装置が、一方では逆モデルの内部状態を補正的に調整し、他方ではそれぞれの制御値を決定することと、である。
【0019】
この手順は、最低計算量と関連付けられる。
【0020】
代替的に、圧延スタンドおよび/または送り装置および/または測定装置の逆周波数応答の記述が周波数応答特性として制御装置に対して指定されること、ならびに制御装置が、周波数領域への最終偏肉のプロファイルの変換、次に周波数応答特性による最終偏肉の変換されたプロファイルの乗算および次に時間領域への逆変換によって、それぞれの制御値を決定すること、が可能である。この手順は、特に高品質の結果に至る。
【0021】
周波数領域での乗算が時間領域での畳み込みに相当することが一般に公知である。したがって、圧延スタンドおよび/または送り装置および/または測定装置の逆周波数応答の記述が畳み込みカーネルとして制御装置に対して指定されること、ならびに制御装置が、畳み込みカーネルとの最終偏肉のプロファイルの畳み込みによって、それぞれの制御値を決定すること、が代替的に可能かつ全体として等価である。
【0022】
周波数応答特性の検出、およびこれを基にして逆モデルの決定もしくはパラメータ化または個々の周波数範囲に対する利得の決定または畳み込みカーネルの決定が自動的に起こり得る。特に、圧延機が動作中である間、圧延スタンドの設定圧延ギャップ値に既定の軽微な外乱が加えられ得る。これらの外乱は、金属ストリップの出口側厚さの対応する変動で圧延スタンドの出口側に反映される。この出口側厚さが検出される測定装置が圧延スタンドの下流に配置されれば、周波数応答特性は、一方では加えられた外乱、他方では出口側厚さの変動の複合評価によって自動的に決定できる。これは、原則として当業者に公知である。
【0023】
好ましくは、それぞれの制御値を決定するために、制御装置は、金属ストリップのそれぞれの部分に先行する金属ストリップの部分の最終偏肉も金属ストリップのそれぞれの部分に続く金属ストリップの部分の最終偏肉も使用する。それぞれの制御値の決定は、結果として特に信頼できる。これは、金属ストリップのそれぞれの部分に先行して、それぞれの制御値を決定するために最終偏肉が制御装置によって使用される金属ストリップの部分の数が、金属ストリップのそれぞれの部分に続いて、それぞれの制御値を決定するために最終偏肉が制御装置によって使用される金属ストリップの部分の数に実質的に等しければ、特に当てはまる。
【0024】
最も単純なケースでは、制御装置は、最終偏肉として暫定偏肉1:1を採用する。好ましくは、しかしながら、制御装置は、ゼロ位相フィルタリングを用いて暫定偏肉から最終偏肉を決定する。この手順は、圧延スタンドおよび/または送り装置のより安定かつよりロバストな動作に至る。これは、暫定偏肉のローパスフィルタリングがゼロ位相フィルタリングを用いて実施されれば、特に当てはまる。
【0025】
上記目的は、請求項9の特徴を持つ制御プログラムによっても達成される。本発明によれば、制御プログラムの実行は、制御装置が本発明に係る動作方法に従って圧延機を動作させるという効果をもたらす。
【0026】
上記目的は、請求項10の特徴を持つ制御装置によっても達成される。本発明によれば、制御装置は本発明に係る制御プログラムでプログラムされ、その結果制御装置は、本発明に係る動作方法に従って圧延機を動作させる。
【0027】
上記目的は、請求項11の特徴を持つ圧延機によっても達成される。本発明によれば、制御装置は、本発明に係る動作方法に従って圧延機を動作させる。
【0028】
本発明の上記の性質、特徴および利点ならびにそれらが達成される仕方は、概略の図面と併せて更に詳細に説明される例証的な実施形態の以下の記載と関連付けて、より明らかになり、より明らかに理解されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図6】制御装置の更なる構造的構成を示す図である。
【
図8】制御装置の更なる構造的構成を示す図である。
【
図10】制御装置の更なる構造的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1によれば、金属ストリップ1を圧延するための圧延機は、圧延スタンド2を有する。金属ストリップ1は、圧延スタンド2において圧延される。圧延スタンド2は、特に冷間圧延スタンドでよく、圧延スタンド2においては、結果的に金属ストリップ1の冷間圧延が行われる。圧延スタンド2のワーキングローラだけが
図1に例示される。一般に、圧延スタンド2は、少なくとも2つのバックアップローラ(4段スタンド)、一部の場合には更に多くのローラを追加的に含む。例えば、圧延スタンド2は、6段スタンド(2つのワーキングローラ、2つの中間ローラ、2つのバックアップローラ)としてまたは12ローラ圧延スタンドとしてまたは20ローラ圧延スタンドとして形成されてよい。金属ストリップ1は、鋼から、アルミニウムから、または何らかの他の金属から、例えば銅からもしくは真鍮から成ってよい。
【0031】
圧延機は、送り装置3も有する。送り装置3は、圧延スタンド2の上流に配置される。金属ストリップ1は、送り装置3によって入口速度vで圧延スタンド2に送られる。
図1によれば、送り装置3は、コイラとして形成される。それは、しかしながら、異なって、例えばドライバとしてまたは圧延スタンド2と異なる更なる圧延スタンドとしても形成され得る。送り装置3は、いわゆるSローラ、すなわち金属ストリップ1が結局S字状に案内される多数のローラとしても形成されてよい。
【0032】
厳密に言えば、金属ストリップ1が圧延スタンド2に入る速度および金属ストリップ1が送り装置3から出される(例えば巻き出される)速度は、互いと区別されなければならない。金属ストリップ1が圧延スタンド2に入る速度は、圧延スタンド2のワーキングローラの周速度および圧延スタンド2における遅れによって決定される。コイラの場合には、例えば、金属ストリップ1が送り装置3によって出される速度は、コイラがコイルを回転させる回転速度およびコイルの現在の直径によって決定されており、この直径は時間とともに変化する。これらの2つの速度間の僅かな差が瞬間的に存在し得る。そのような瞬間的な差が存在すれば、送り装置3と圧延スタンド2との間の金属ストリップ1にかかる張力は変化する。しかしながら、以降入口速度vだけが参照される。明示的に言及されない限り、以下、不確かな場合には、金属ストリップ1が送り装置3によって出される速度を意味する。
【0033】
送り装置3と圧延スタンド2との間に測定装置4が配置される。金属ストリップ1の厚さに対する厚さ値dが測定装置4を用いて反復的に繰り返し検出される。更には、更なる測定装置5が追加的に存在してよく、これを用いて入口速度vに対する測定値が繰り返し検出される。
【0034】
それぞれ検出された厚さ値dおよび任意選択で入口速度vに対するそれぞれ検出された値も制御装置6に送られるが、これは同じく圧延機の構成部品である。制御装置6は、圧延スタンド2および/または送り装置3に対する制御値A2、A3を繰り返し決定する。制御装置6は、一般に両制御値A2、A3を決定する。
【0035】
圧延スタンド2に対する制御値A2は、非常に一般的に少なくとも圧延スタンド2の調整、すなわち圧延ギャップの設定に影響する。例として、それぞれの制御値A2は、いわゆるHGC(=液圧ギャップ制御)に出力できる。代替的に、制御値A2は、圧延スタンド2の主駆動に影響して、すなわち圧延トルクまたは圧延速度を変化させてよい。制御値A2は、しばしば圧延スタンド2の調整にもその主駆動にも影響する。この場合には、圧延スタンド2に対する制御値A2は、圧延スタンド2の調整のためのおよび圧延スタンド2の主駆動のための成分を都度有するベクトル量とみなすことができる。
【0036】
制御値A3は、送り装置3に対する回転速度またはトルクフィードバック制御に送られて、圧延スタンド2の入口側で入口速度vおよび/または金属ストリップ1にかかる張力に影響する。必要であれば、送り装置3の上流に配置される更なる装置も、送り装置3の制御との関連で付随して制御されなければならない。そのような更なる装置を考慮することで制御値A3の計算をより複雑にするが、それは本発明の原理に関して何も変化させない。
【0037】
制御装置6は制御プログラム7でプログラムされる。制御プログラム7は、制御装置6によって実行できる機械コード8を含む。制御プログラム7での制御装置6のプログラミングまたは制御装置6による機械コード8の実行は、制御装置6が以下に更に詳細に説明される動作方法に従ってこの圧延機を動作させるという効果をもたらす。この場合、最初に
図2が、次いで
図3および
図4が参照される。
【0038】
図2によれば、ステップS1で、制御装置6は、それぞれ検出された厚さ値dおよび任意選択で入口速度vに対するそれぞれ検出された値も受信する。ステップS2では、制御装置6は、設定厚さd*から検出された厚さ値dの偏差δdを決定するが、以降略して偏肉δdと称される。
【0039】
ステップS2で決定される偏肉δdは、単に暫定偏肉δdである。ステップS3では、制御装置6は、暫定偏肉δdを基にしてそれぞれの最終偏肉δd´を決定する。最も単純なケースでは、ステップS3は自明なものである。この場合には、制御装置6は、最終偏肉δd´として暫定偏肉δd 1:1を採用する。
【0040】
しかしながら、真の決定は、好ましくは最終偏肉δd´が非自明な決定仕様を用いて暫定偏肉δdから決定されるように行われる。例として、最終偏肉δd´を決定するために制御装置6は、ステップS3でゼロ位相フィルタリングを実施してよい。ゼロ位相フィルタリングを用いて、値の元のプロファイル(ここでは暫定偏肉δdの時間プロファイル)から値のフィルタプロファイル(ここでは最終偏肉δd´の時間プロファイル)が決定され、元のプロファイルとフィルタプロファイルとの間には系統的位相オフセットが発生しない。一般にかつ本発明の文脈でも、ゼロ位相フィルタリングはローパスフィルタリングであり、そのため高周波変動が除去されるという結果になる。ローパスフィルタリングは、特に、圧延スタンド2、送り装置3、および/または測定装置4の逆モデリングの安定性を有意に改善する。
【0041】
ゼロ位相フィルタリングのためには、最終偏肉δd´が決定されると意図される部分9に続く部分9の暫定偏肉δdを知ることも必要である。ゼロ位相フィルタリングの場合には、したがって、ステップS3は、別の部分9に対して実施されるが、その暫定偏肉δdは既に検出されている。
【0042】
ゼロ位相フィルタリングプロセスは、一般に当業者に公知である。いわゆるIIR(=無限インパルス応答)が単に例として言及されてよい。ゼロ位相フィルタリングを実装するための別の可能性は、FIRフィルタ(FIR=有限インパルス応答)の対称インパルス応答との暫定偏肉δdの畳み込みである。
【0043】
ステップS4で、制御装置6は、最終偏肉δd´を使用して制御値A2、A3を決定する。ステップS5で、制御装置6は、圧延スタンド2および/または送り装置3に制御値A2、A3を出力する。制御装置6は、次いでステップS1に戻る。
【0044】
図2と併せて上で説明した手順は、そのため周期的に繰り返し実施される。通常、それは、厳密にクロックベースで、すなわち、例えば8msの固定サイクル時間Tでさえ実施される。
【0045】
本発明に係る手順は、
図3および
図4と併せて以下により詳細に再び説明される。
【0046】
図3は、上から金属ストリップ1を示す。金属ストリップ1は、仮想的に部分9へ分割される。
図3では、部分9の一部は、それらを個々に参照することができるために、参照符号9に加えて小文字(例えばa、b、等)によって補足される。
【0047】
各サイクルの間、すなわちステップS1の各実行の間、特定の部分9-例えば部分9a-に対して、その厚さ値dが検出されて、制御装置6に照会される。検出された厚さ値d、関連する暫定偏肉δd、および関連する最終偏肉δd´は、そのためこの部分9aに関する。
【0048】
同じサイクルの間、別の部分9-例えば部分9b-が圧延スタンド2において圧延される。金属ストリップ1上の部分9aおよび9b間の幾何学的距離は、測定装置4と圧延スタンド2との間の幾何学的距離aに相当する。
【0049】
測定装置4から圧延スタンド2に部分9aを搬送するために特定の時間T´が必要とされる。この時間T´は、通常輸送時間と称される。それは、金属ストリップ1の入口速度vおよび測定装置4と圧延スタンド2との間の距離aによって決定される。一定の入口速度vが与えられれば、関係T´=a/vが成り立つ。
【0050】
時間T´は、サイクル時間Tよりも非常に一般的にかなり大きい。したがって、部分9aおよび9b間に多数の更なる部分9、例えば部分9cがある。これらの部分9に対して、それぞれの厚さ値dは、部分9bの圧延の前に既に検出されている。更には、金属ストリップ1は、圧延スタンド2において既に圧延されている部分9、例えば部分9dを有する。
【0051】
測定装置4から圧延スタンド2にそれぞれの部分9を搬送するために時間T´が必要とされるという状況により、特定のサイクルにおいてステップS1で実際に部分9aに対する厚さ値dを検出すること、そしてこの部分9aに対する暫定偏肉δdを決定すること、しかしステップS4で、例えば部分9cに対する制御値A2、A3を決定すること、更にはステップS5で圧延スタンド2および/または送り装置3にステップS4において決定された制御値A2、A3を出力すること、が可能である。任意選択で、部分9cと部分9bとの間の一部分9に対して予め既に決定されている制御値A2、A3も、圧延スタンド2および/または送り装置3に出力できる。最後に言及したケースでは、単に、それぞれのサイクルにおいて検出された厚さ値d、それぞれのサイクルにおいて決定された偏肉δd、δd´、およびそれぞれのサイクルにおいて決定された制御値A2、A3、がそれぞれの部分9に割り当てられること、ならびに部分9の経路追跡が実施されること、が必要である。対応する手順が、ステップS1からS5では、それぞれのステップS1からS5が実施されるそれぞれの部分9a、9b、9cにも同様に指示されるという事実により
図4に示される。制御装置6によって出力される制御値A2、A3が部分9bにではなく、むしろ部分9cまたは部分9bと部分9cとの間の部分9に関する理由は、圧延スタンド2および/または送り装置3の或る不感時間に対して考慮がなされなければならないということである。
【0052】
経路追跡の実装は、一般に当業者に公知である。結果として、そのため適当な時間に圧延スタンド2および/または送り装置3に制御値A2、A3を出力することが可能である。本発明の文脈では、適当な時間にとは、圧延スタンド2および/または送り装置3に出力される制御値A2、A3が、金属ストリップ1のそれぞれの部分9が圧延スタンド2において圧延されている時点で、金属ストリップ1に影響することを意味する。この場合には、必要に応じて時間T´ならびに、適切であれば圧延スタンド2および/または送り装置3の反応時間(不感時間)に対しても考慮することができる。反応時間は、圧延スタンド2および/または送り装置3に新たに送られる制御値A2、A3に反応するために圧延スタンド2および/または送り装置3によって必要とされる時間である。更には、異なる装置間の通信にまたは自動化に発生する不感時間に対しても考慮することができる。制御値A2、A3の決定は、もちろん出力する前に完結されなければならない。
【0053】
部分9aと部分9cとの間の部分9に対してそれぞれの厚さ値dが既に検出されており、それに応じてそれぞれの暫定偏肉δdも既に知られており、更には、少なくとも部分9aの方向に部分9cに隣接する部分9に対して最終偏肉δd´も知られているという状況により、例えば部分9cに対する制御値A2、A3の決定のために、部分9cの最終偏肉δd´だけでなく、追加的にその他の最終偏肉δd´のいずれかも、それらが実際に既に決定されているという条件で、考慮することが可能である。例として、部分9cの偏肉δd´に加えて、制御装置6は、部分9aに向かう複数の隣接部分9の最終偏肉δd´を考慮することができる。代替的または追加的に、部分9cの偏肉δd´に加えて、制御装置6は、部分9bに向かう、任意選択で部分9bも越えて複数の隣接部分9の最終偏肉δd´を考慮することができる。
【0054】
それぞれの制御値A2、A3の決定の文脈では、制御装置6は、更には圧延スタンド2および/または送り装置3および/または測定装置4の逆周波数応答の記述を考慮する。対応する周波数応答それ自体を直接特徴付ける記述が、そのため制御装置6に対して指定される。別の言い方をすれば、周波数応答は、上述の記述を基にして決定できる。周波数応答の記述を指定するための可能性は、以下に更に詳細に説明される。制御装置6は、したがって、対応する逆周波数応答に対して考慮がなされる様式でそれぞれの制御値A2、A3を決定するだけでない。むしろ、制御装置6は、対応する逆周波数応答それ自体を明示的に特定する。したがって、逆周波数応答を定義する特性変数は、制御装置6に知られている。これは、圧延スタンド2と関連付けて以下により具体的に説明される。類似した記載が都度送り装置3、および適切であれば、測定装置4にも同様に当てはまる。
【0055】
圧延スタンド2は、様々な仕方でモデル化できる。最も単純なケースでは、圧延スタンド2は、PT1要素としてモデル化される。代替的に、高次モデリングが考慮に入る。モデリングは、圧延スタンド2それ自体を、適用可能であればその制御を含めて、記述する。対照的に、輸送時間、すなわち時間T´はモデリングの一部でない。
【0056】
圧延スタンド2の周波数応答は、例えば伝達関数によって記述できる。-一般に慣習的な仕方で-伝達関数それ自体がGによって示され、ラプラス演算子が文字sによって示される場合、伝達関数G(s)は、以下のように書くことができる。
【0057】
【0058】
この場合、bi(式中i=1,2...m)およびcj(式中j=1,2...n)は定係数である。分子多項式の次数mは、最大で、分母多項式の次数nに等しい。圧延スタンド2がPT1要素としてモデル化される場合、伝達関数G(s)は、例えば、以下のように得られる。
【0059】
【0060】
式中のT2は圧延スタンド2の特性時定数である。
【0061】
関連する逆伝達関数G-1(s)に対して、以下が一般のケースにおいて当てはまる。
【0062】
【0063】
逆伝達応答G-1(s)は、結果的に明らかに定義される。圧延スタンド2がPT1要素としてモデル化される場合、関連する逆伝達関数G-1(s)は、以下のように正確に得られる。
【0064】
【0065】
逆伝達関数G-1(s)が正確にモデル化されれば、しかしながら圧延スタンド2のモデル化された応答は、しばしば不安定になる。一部の場合には、現実の圧延スタンド2の応答さえ不安定になり得る。例えば、PT1要素の逆数は、PD要素を与える。PD要素は、極めて高周波を増幅する。また、PD要素の理論的に決定可能な出力信号は、現実には実装できない。この原因は、ここでは圧延スタンド2の、アクチュエータの限界を設定していることである。安定性および実現可能性を保証するために、逆伝達関数G-1(s)の分母多項式は、したがって逆伝達関数G-1(s)の分子におけるsの最高べきと比例する成分によって拡張される。これは、原則として当業者に公知である。この点で非特許文献1を参照することができる。圧延スタンド2の周波数応答の実際に使用される逆モデリングは、結果的に修正逆伝達関数G-1(s)によって記述され、これは以下の形式を有する。
【0066】
【0067】
TCは、小さな時間、すなわち圧延スタンド2の特性時定数T2よりもかなり小さな時間である。時間TCをより小さく選ぶことができるほど、圧延スタンド2の逆周波数応答のモデリングは良好になる。実際に、時間TCは、サイクル時間Tに等しいかまたはサイクル時間Tにほぼ等しいように選ばれるであろう。
【0068】
類似した記載が、既に言及したように、送り装置3に当てはまる。圧延スタンド2に類似して、送り装置3がPT1要素によってモデル化される場合、送り装置3に対する結果的な逆伝達関数G-1(s)は、修正逆伝達関数G-1(s)によって記述され、これは以下の形式を有する。
【0069】
【0070】
式中のT3は送り装置3の特性時定数である。
【0071】
上記の事実のため、
図5における表現に相当する仕方で、制御装置6に対して圧延スタンド2の対応する逆モデル10を指定することが可能である。既に説明したように、逆モデル10は、圧延スタンド2の逆周波数応答を、適用可能であれば測定装置4の逆周波数応答を含めて、記述する。微分動作時間T2´の範囲内で逆モデル10内または逆モデル10外で一定の不感時間等のための要件に従って考慮することができる。
図5における表現に相当する仕方で、例えば、逆モデル10は、以下の形式の逆伝達関数G
-1(s)を実装できる。
【0072】
【0073】
逆モデル10には-サイクル10Tのクロックベースで-金属ストリップ1の一部分9の最終偏肉δd´が都度送られる。制御装置6は、逆モデル10を用いて、逆モデル10の内部状態Z2を追加的に考慮しつつ、圧延スタンド2に対するそれぞれの制御値A2を決定し、圧延スタンド2に制御値A2を出力する。更には、制御装置6は、それぞれの最終偏肉δd´および逆モデル10の直前の内部状態Z2を使用することによって内部状態Z2を補正的に調整する。内部状態Z2に対する考慮および内部状態Z2の補正調整が必要とされるのは、さもなければ圧延スタンド2の逆モデル10が最終偏肉δd´の直前の経過のいかなる知識も記憶できず、常に周波数応答でなく単に純粋な比例応答しかモデル化できないからである。
【0074】
逆モデル10の上流に輸送モデル11が配置される。輸送モデル11には-サイクル時間Tのクロックベースで-それぞれの最終偏肉δd´および入口速度vが送られる。輸送モデル11は、それぞれの最終偏肉δd´が割り当てられるそれぞれの部分9の経路追跡をモデル化する。更には、微分動作時間T2´が輸送モデル11に送られる。輸送モデル11は、それぞれの最終偏肉δd´が輸送モデル11に送られた時点に関して時間遅れを伴いつつそれぞれの最終偏肉δd´を出力する。既に言及したように、時間遅れは、特定の部分9に対して出力された制御値A2が、金属ストリップ1の対応する部分9が圧延スタンド2において圧延される時点において有効となるというように選ばれる。
【0075】
経路追跡のモデリングおよび実装は、一般に当業者に公知である。したがって、それは、更に詳細に説明される必要はない。
【0076】
一般的に、更には、それぞれの最終偏肉δd´は、輸送モデル11によって圧延スタンド2の逆モデル10に直接送られるのでなく、むしろ乗算器12において静的利得係数V2が予め乗算される。乗算器12を用いて、それぞれの最終偏肉δd´は、例えば圧延スタンド2の圧延ギャップまたは圧延スタンド2の主駆動に対する追加の設定値へ変換される。原則として、しかしながら、圧延スタンド2の逆モデル10へ利得係数V2を付随して組み込むことも可能である。
【0077】
全く類似した様式で、既に言及したように、送り装置3の逆周波数応答のモデリングを、任意選択で測定装置4の逆周波数応答を含めて、遂行することも可能である。
図5における表現に相当する仕方で、これは、逆モデル13、輸送モデル14、および乗算器15を含む全く類似した構成に至る。T3´は送り装置に対する微分動作時間であり、V3は利得係数である。乗算器15を用いて、それぞれの最終偏肉δd´は、金属ストリップ1の入口速度vに対する追加の設定値へ変換される。送り装置3が入口速度vでなく、むしろ圧延スタンド2の入口側で金属ストリップ1にかかる張力を制御する場合、送り装置3の慣性モーメントにも同様に考慮することが追加的に必要であってよい。
【0078】
制御値A2は、圧延スタンド2の調整のためのおよび圧延スタンド2の主駆動のための成分を都度有するベクトル量であり、圧延スタンド2に対して上で説明したモデリングは、ベクトル量の各成分に対して別々に実装されなければならない。適用可能であれば、したがって、圧延スタンド2に対して複数の逆サブモデルがそのため存在する。しかしながら、これは、原理に関して何も変化させない。
【0079】
圧延スタンド2の対応する制御は、圧延スタンド2の出口側に金属ストリップ1の厚さの可能な限り最小の変動だけが存在するように、制御値A2を用いて遂行される。送り装置3の対応する制御は、入口速度vおよび/または金属ストリップ1における入口側張力が可能な限り一定に保たれるように、制御値A3を用いて遂行される。特に、張力は、圧延スタンド2におけるパス削減に影響する。金属ストリップ1にかかる張力の変化がパス削減に不所望の影響を有しないために、入口速度vは、圧延スタンド2の調整の変化および圧延スタンド2のワーキングローラの周速度の変化に関して同期して適合させなければならない。
【0080】
既に言及したように、最終偏肉δd´は、暫定偏肉δdのゼロ位相フィルタリングを用いて決定される。したがって、輸送モデル11、14の上流または下流にそれぞれのゼロ位相フィルタ16、17を配置できる。それぞれの輸送モデル11、14へゼロ位相フィルタリングを組み込むことも可能である。
【0081】
輸送モデル11、14は、それらが実質的に同一種類のものであるように具現化される。
図5における制御装置6の構造は、したがって
図6における構造に従って修正できる。結果として、輸送モデル11、14の一方は、
図6に従う構成において省略できる。代わりに遅れ要素18が存在し、これを用いて微分動作時間T2´およびT3´間の差が補償される。微分動作時間T3´は、通常微分動作時間T2´よりも大きくなるであろう。この場合には、
図6に例示されるが、輸送モデル14が省略され、更には遅れ要素18が制御値A2のための経路に配置される。
【0082】
図5および
図6と併せて上で説明された制御装置6の構造は、制御装置6にソフトウェアブロックとして具現化される。それらは、そのため制御プログラム7のプログラミングおよび機械コード8の実行を基にして形成される。
【0083】
本発明の代替構成は、圧延スタンド2の逆周波数応答の記述を-任意選択で測定装置4の逆周波数応答特性との複合記述としても-周波数応答特性FGとして指定することにある。
図7における表現に相当する仕方で、様々な周波数範囲FBk(式中k=1,2...)に対して、周波数応答特性FGは、それぞれの周波数範囲FB内の周波数を有する時変偏肉が完全に補償されるために用いて増幅されなければならないそれぞれの複合利得Vを示す。
【0084】
周波数応答特性FGは以下の考察に基づく:一定の厚さの金属ストリップ1が圧延スタンド2に送られる場合かつ、更には、圧延スタンド2に送られる制御値A2が特定の振幅および特定の周波数で変動する場合、制御値A2(=入力変数)の同じ振幅に対して、出口側(=出力変数)に関して圧延スタンド2によって金属ストリップ1に厚さの変化が付与される程度が周波数に依存することが見出される。具体的には、出口側の振幅も位相角も厚さ変化に変化する。特に、実際に、周波数が上がるにつれて、出口側偏肉の振幅が減少し、位相遅れが増加することが見出される。入口側最終偏肉δd´の周波数に応じて、補正変数による「圧延スタンド2の位置の変化」および/または「ワーキングローラのトルクの変化」もしくは「ワーキングローラの回転速度の変化」が、したがって最適な補正信号を生成するために振幅および位相角に関して動的に適合されなければならない。圧延スタンド2の入口側により高い周波数で発生する最終偏肉δd´を補償するために、圧延スタンド2は、そのためより大きな程度まで制御されなければならない。
【0085】
それぞれの制御値A2への圧延スタンド2の反応の振幅および位相角は、それぞれの周波数に対する複合因子へ結合できる。それぞれの周波数に対して、それぞれの複合因子の逆数は、それぞれの周波数の偏肉が、それが圧延スタンド2の出力側において完全に補償されるために用いてスケーリングされなければならない-複合-利得係数Vに相当する。これらの利得係数Vの全体、すなわち異なる周波数または周波数範囲FBに対する利得係数Vが、制御装置6に対して指定される周波数応答特性FGを形成する。
【0086】
周波数応答の記述がそのような周波数応答特性FGとして制御装置6に対して指定される場合、それぞれの制御値A2の決定のために
図8における表現に相当する手順を採用できる。
図8における手順は、それぞれの制御値A2の各成分に対して別々に実施される必要があり得る。
【0087】
図8によれば、それぞれの部分9および複数の更なる部分9に対して、それぞれの最終偏肉δd´が制御装置6に対して指定される。最終偏肉δd´は、時間プロファイルを形成する。制御装置6は、変換ブロック19において時間プロファイルを周波数領域へ変換する。例として、制御装置6は、変換ブロック19において、フーリエ変換(FT)、特にSTFT(=短時間フーリエ変換)を実施できる。フーリエ変換は、必要に応じて、連続的または離散的であることができる。それは、同じく必要に応じて、アナログまたはデジタルであることができる。更には、他の変換、例えば離散コサイン変換も、フーリエ変換に代わるものとして考え得る。
【0088】
具体的な手順にかかわらず、制御装置6は、変換ブロック19を用いて上述のプロファイルの周波数成分FAを決定する。下流の決定ブロック20において-個々の周波数範囲FBに対して別々に-それぞれの周波数成分FAは、それぞれの周波数範囲FBに対する利得係数Vにより乗算される。変換されたプロファイルは、そのため周波数応答特性FGにより乗算される。複合周波数領域での乗算のため、結果として、振幅がスケーリングされ、位相もシフトされる。この乗算を通じて、周波数領域に最終偏肉δd´の補正スペクトルが発生され、前記スペクトルが、圧延スタンド2の周波数依存伝達応答を最適に補償する。
【0089】
更なる変換ブロック21において、制御装置6は、決定ブロック20の出力信号-すなわち周波数的にスケーリングされた周波数プロファイル-を時間領域へ逆に変換する。変換ブロック21における変換は、変換ブロック19における変換の逆である。変換ブロック21の出力信号から、制御装置6は、それぞれの部分9に対して決定されたものを最終的に選び出す。
【0090】
図8に係る手順との関連で使用される最終偏肉δd´の数は、必要に応じて決定できる。それが2のべきに等しいというようにその数を選ぶことが特に適切である。その時のためにフーリエ変換は、高速フーリエ変換として実装できる。
【0091】
周波数領域での乗算が時間領域での畳み込みに相当することが一般に当業者に公知である。周波数応答特性FGを指定することに代わるものとして、したがって
図9における表現に相当する仕方で制御装置6に対して畳み込みカーネルFKを指定することが可能である。畳み込みカーネルFKは、例えば
図7および
図8からの周波数応答特性FGの時間領域への分離変換を通じて決定できる。
【0092】
周波数応答の記述が制御装置6に対してそのような畳み込みカーネルFKとして指定される場合、それぞれの制御値A2の決定のために
図10における表現に相当する手順を次の通りに採用できる:
【0093】
それぞれの部分9および複数の更なる部分9に対して-
図8の場合にも同様に-それぞれの最終偏肉δd´が制御装置6に対して指定される。最終偏肉δd´は-
図8の場合にも同様に-時間プロファイルを形成する。決定ブロック22において、制御装置6は、このプロファイルの畳み込みカーネルFKとの畳み込みを実施する。決定ブロック22の出力信号から、制御装置6は、それぞれの部分9に対して決定されたものを制御値A2として選び出す。
【0094】
図8および
図10に係る手順との関連で、また、都度単一の最終偏肉δd´だけが制御装置6に明示的に新しく送られる。必要とされるその他の最終偏肉δd´は、以前のサイクルの実装との関連で制御装置6に既に送られている。したがって、それらは、そこでバッファ記憶され、再び読み出されて使用される必要があるだけである。
【0095】
図8および
図10における手順は、圧延スタンド2に対する制御値A2の決定と関連付けて上で説明された。送り装置3に対する制御値A3の決定のために全く類似した手順が可能である。どちらの場合も、それぞれの装置2、3の周波数応答に加えて、必要に応じて、測定装置4の周波数応答に対しても付随して考慮することができる。
【0096】
図8および
図10と併せて上で説明された制御装置6の構造-
図5および
図6に係る制御装置6の構造とまさしく同様-は、制御装置6にソフトウェアブロックとして具現化される。それらは、そのため制御プログラム7のプログラミングおよび機械コード8の実行を基にして形成される。
【0097】
本発明の構成の各々において、それぞれの制御値A2、A3を決定することとの関連で最終偏肉δd´が考慮に入る更なる部分9が、専ら金属ストリップ1のそれぞれの部分9に先行する部分9であることが可能である。同じく、
図8および
図10における構成において、更なる部分9が、専ら金属ストリップ1のそれぞれの部分9に続く部分9であることが可能である。一般に、しかしながら、
図8および
図10における構成の場合には、混合手順が実装されれば、すなわち更なる部分9の一部が金属ストリップ1のそれぞれの部分9に先行し、更なる部分9の更なる一部が金属ストリップ1のそれぞれの部分9に続けば、より良好な結果が得られる。例として-それぞれのサイクルにおいて厚さdが検出される部分9に対して-
図3に23によって示される領域に位置する部分9を使用することが常に可能である。
【0098】
図3は、更なる有利な構成も同時に示す。これは、部分9cに対して都度、制御値A2、A3が決定される場合、
図3における表現に相当する仕方で、金属ストリップ1のそれぞれの部分9に先行して、それぞれの制御値A2を決定するために最終偏肉δd´が制御装置6によって使用される金属ストリップ1の部分9の数が、金属ストリップ1のそれぞれの部分9に続いて、それぞれの制御値A2、A3を決定するために最終偏肉δd´が制御装置6によって使用される金属ストリップ1の部分9の数に実質的に等しいからである。僅かな偏差(例えば部分9が2つまで多いまたは少ない)は、しかしながら、一般に問題がない。更には、合計で2
nの部分を使用することがしばしば適切である。この場合には、金属ストリップ1のそれぞれの部分9に先行する部分9の数は、好ましくは金属ストリップ1のそれぞれの部分9に続く金属ストリップ1の部分9の数よりも厳密に1大きいまたは1少ない。
【0099】
本発明は、多くの利点を有する。特に、入口側偏肉δdのほぼ完全な補正が簡単な仕方で得られる。これは、制御値A2も制御値A3も本発明に係る様式で決定されれば、特に当てはまる。更には本発明に係る様式で既存の圧延機を改造することが直接的に可能である。これは、ハードウェアそれ自体、すなわち圧延スタンド2、送り装置3、測定装置4、5、および制御装置6が修正される必要がないからである。必要である全ては、制御装置6のための制御プログラム7が修正されることである。
【0100】
本発明が好ましい例証的な実施形態を用いてより具体的に例示され、詳細に記載されたが、それでも本発明は、開示された例によって制限されず、そこから当業者によって本発明の保護の範囲から逸脱することなく他の変形を導き出すことができる。
【符号の説明】
【0101】
1 金属ストリップ
2 圧延スタンド
3 送り装置
4、5 測定装置
6 制御装置
7 制御プログラム
8 機械コード
9 部分
10、13 逆モデル
11、14 輸送モデル
12、15 乗算器
16、17 ゼロ位相フィルタ
18 遅れ要素
19、21 変換ブロック
20、22 決定ブロック
23 領域
a 距離
A2、A3 制御値
d 厚さ値
d* 設定厚さ
FA 周波数成分
FB 周波数範囲
FG 周波数応答特性
FK 畳み込みカーネル
G 伝達関数
s ラプラス演算子
S1~S5 ステップ
T サイクル時間
T2、T3 特性時定数
T2´、T3´ 微分動作時間
v 入口速度
V、V2、V3 利得係数
Z2、Z3 内部状態
δd、δd´ 偏肉
【国際調査報告】