(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】切断された血管を吻合するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/11 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
A61B17/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501338
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 US2021035754
(87)【国際公開番号】W WO2022010601
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501271033
【氏名又は名称】バンダービルト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ヒグドン,ケント・ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ステファン・エー.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC03
4C160CC37
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】切断された血管を吻合するための装置を提供する。
【解決手段】当該装置は、内管腔を画定する内表面を有する第1リングを含む。内管腔は、切断された血管の第1血管端部を収容するように構成される。第1リングの内表面は、少なくとも1つの針を有し、当該針は、第1血管端部に刺し込むとともに第1リングを第1血管端部に固定するように構成される。第2リングは、内管腔を画定する内表面を有し、当該内管腔は、切断された血管の第2血管端部を収容するように構成される。第2リングの内表面は、少なくとも1つの針を有し、当該針は、第2血管端部に刺し込むとともに第2リングを第2血管端部に固定するように構成される。第1リング及び第2リングは、第1血管端部及び第2血管端部に固定された後、切断された血管を吻合するように、互いに連結されて直接接合されるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断された血管を吻合するための装置であって、
第1リングと、第2リングとを含み、
前記第1リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有し、前記内表面は、前記切断された血管の第1血管端部を収容するように構成される内管腔を画定し、前記内表面は、前記内表面から離れて前記内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有し、前記第1リングの前記少なくとも1つの針は、前記第1血管端部の血管壁に刺し込むとともに、前記第1リングを前記第1血管端部に固定するように構成され、
前記第2リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有し、前記内表面は、前記切断された血管の第2血管端部を収容するように構成される内管腔を画定し、前記内表面は、前記内表面から離れて前記内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有し、前記第2リングの前記少なくとも1つの針は、前記第2血管端部の血管壁に刺し込むとともに、前記第2リングを前記第2血管端部に固定するように構成され、
前記第1リング及び前記第2リングは、前記第1血管端部及び前記第2血管端部に固定された後、前記切断された血管を吻合するように、互いに連結されて直接接合されるように構成されることを特徴とする切断された血管を吻合するための装置。
【請求項2】
前記第1リングの前記少なくとも1つの針は、前記第1リングの前記内表面に対して、約四十五(45)~約六十(60)度の角度で延在し、且つ前記第2リングの前記少なくとも1つの針は、前記第2リングの前記内表面に対して約四十五(45)~約六十(60)度の角度で延在することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1リングの前記第1リング表面は、少なくとも1つの柱を含み、前記少なくとも1つの柱は、前記第1リング及び前記第2リングが互いに連結されているとき、前記第2リングの前記第1リング表面における対応する収容凹部に収容されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの柱の一部は、前記対応する収容凹部の一部に接合するように構成されることで、前記少なくとも1つの柱が前記対応する収容凹部から離脱することを少なくとも部分的に防止することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの柱が前記対応する収容凹部中に収容されているとき、前記第1リングと前記第2リングが互いに相対回転することを少なくとも部分的に防止することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1リングは、複数の柱を含み、且つ前記第2リングは、前記複数の柱を収容するための複数の収容凹部を含み、前記柱のうちの少なくとも1つは、対応して構成された1つの収容凹部のみに収容されるように構成されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第1リングは、前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する外表面を含み、前記第1リングの前記外表面は、配向指示器を有し、且つ、
前記第2リングは、前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する外表面を含み、前記第2リングの前記外表面は、配向指示器を有し、前記第1リングと前記第2リングとの前記配向指示器は、前記第1リング及び前記第2リングが互いに連結されているとき、互いに位置合わせるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁と側方向に延在する凹部底面とによって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記少なくとも1つの針は、前記第1血管端部の外反部分に刺し込むために用いられ、且つ、
前記第2リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁と側方向に延在する凹部底面とによって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記少なくとも1つの針は、前記第2血管端部の外反部分に刺し込むために用いられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1リングは、前記第1リングと別体に形成され且つ前記第1リングの前記内表面に連結された第1材料層を有し、前記第1リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1材料層に設けられ、前記第1リングは、前記第1リングと別体に形成され且つ前記第1リングの前記凹部底面に連結された第2材料層を有し、前記第1リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2材料層に設けられ、且つ、
前記第2リングは、前記第2リングと別体に形成され且つ前記第2リングの前記内表面に連結された第1材料層を有し、前記第2リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1材料層に設けられ、前記第2リングは、前記第2リングと別体に形成され且つ前記第2リングの前記凹部底面に連結された第2材料層を有し、前記第2リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2材料層に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1リング及び前記第2リングのそれぞれは、漏斗、溝、円錐台又は半八角形に成形されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1リングの前記内管腔は、前記第1リングの前記第1リング表面から前記第2リング表面へ内向きに徐々に収縮し、且つ、
前記第2リングの前記内管腔は、前記第2リングの前記第1リング表面から前記第2リング表面へ内向きに徐々に収縮することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
切断された血管を吻合する方法であって、
前記方法は、
請求項1に記載の装置を提供することと、
前記第1リングを前記切断された血管の第1血管端部に位置決めし、前記第1血管端部を前記内管腔中に位置させ、且つ前記第1リングの前記内表面に囲ませることと、
前記第1リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針で前記第1血管端部の血管壁に刺し込んで、前記第1リングを前記第1血管端部に固定することと、
前記第2リングを前記切断された血管の第2血管端部に位置決めし、前記第2血管端部を前記内管腔中に位置させ、且つ前記第2リングの前記内表面に囲ませることと、
前記第2リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針で前記第2血管端部の血管壁に刺し込んで、前記第2リングを前記第2血管端部に固定することと、
前記第1リング及び前記第2リングが前記第1血管端部及び前記第2血管端部に固定されている場合、前記第1リング及び前記第2リングを連結して前記切断された血管を吻合することとを含むことを特徴とする切断された血管を吻合する方法。
【請求項13】
前記第1リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁及び側方向に延在する凹部底面によって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、且つ、
前記第2リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁及び側方向に延在する凹部底面によって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記方法は、さらに、
前記第1血管端部の縁を前記第1リングの中心凹部に外反させることと、
前記第1リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針で前記第1血管端部の前記血管壁に刺し込んで、前記第1リングを前記第1血管端部の前記縁に固定することと、
前記第2血管端部の縁を前記第2リングの中心凹部に外反させることと、
前記第2リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針を前記第2血管端部の前記血管壁に刺し込んで、前記第2リングを前記第2血管端部の前記縁に固定することとを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
切断された血管を吻合するための装置であって、
前記装置は、第1リングと、第2リングとを含み、
前記第1リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有し、前記内表面は、前記切断された血管の第1血管端部を収容するように構成される内管腔を画定し、前記第1リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁及び側方向に延在する凹部底面によって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記少なくとも1つの針は、前記第1血管端部の血管壁に刺し込むように構成され、
前記第2リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有し、前記内表面は、前記切断された血管の第2血管端部を収容するように構成される内管腔を画定し、前記第2リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁及び側方向に延在する凹部底面によって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記少なくとも1つの針は、前記第2血管端部の血管壁に刺し込むように構成され、
前記第1リング及び前記第2リングは、前記第1血管端部及び前記第2血管端部に固定された後、互いに連結されて前記切断された血管を吻合するように構成されることを特徴とする切断された血管を吻合するための装置。
【請求項15】
前記第1リングの前記内表面は、前記内表面から離れて前記内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有し、前記第1リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1血管端部の血管壁に刺し込むとともに前記第1リングを前記第1血管端部に固定するように構成され、
前記第2リングの前記内表面は、前記内表面から離れて前記内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有し、前記第2リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2血管端部の血管壁に刺し込むとともに前記第1リングを前記第2血管端部に固定するように構成されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1リングは、前記第1リングと別体に形成され且つ前記第1リングの前記内表面に連結された第1材料層を有し、前記第1リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1材料層に設けられ、前記第1リングは、前記第1リングと別体に形成され且つ前記第1リングの前記凹部底面に連結された第2材料層を有し、前記第1リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2材料層に設けられ、且つ、
前記第2リングは、前記第2リングと別体に形成され且つ前記第2リングの前記内表面に連結された第1材料層を有し、前記第2リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1材料層に設けられ、前記第2リングは、前記第2リングと別体に形成され且つ前記第2リングの前記凹部底面に連結された第2材料層を有し、前記第2リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2材料層に設けられていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1リングの前記第1リング表面は、少なくとも1つの柱を含み、前記少なくとも1つの柱は、前記第1リング及び前記第2リングが互いに連結されているとき、前記第2リングの前記第1リング表面における対応する収容凹部に収容されるように構成されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの柱の一部は、前記対応する収容凹部の一部に接合するように構成されることで、前記少なくとも1つの柱が前記対応する収容凹部から離脱することを少なくとも部分的に防止することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの柱が前記対応する収容凹部に収容されているとき、前記第1リングと前記第2リングが互いに相対回転することを少なくとも部分的に防止することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記第1リングは、複数の柱を含み、且つ前記第2リングは、前記複数の柱を収容するための複数の収容凹部を含み、前記柱のうちの少なくとも1つは、対応して構成された1つの収容凹部のみに収容されるように構成されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記第1リングは、前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する外表面を含み、前記第1リングの前記外表面は、配向指示器を有し、且つ、
前記第2リングは、前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する外表面を含み、前記第2リングの前記外表面は、配向指示器を有し、前記第1リング及び前記第2リングの前記配向指示器は、前記第1リング及び前記第2リングが互いに連結されているとき、互いに位置合わせるように構成されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項22】
切断された血管を吻合する方法であって、
前記方法は、
請求項14に記載の装置を提供することと、
前記第1リングを前記切断された血管の第1血管端部に位置決めし、前記第1血管端部を前記内管腔中に位置させ、且つ前記第1リングの前記内表面に囲ませることと、
前記第1血管端部の縁を前記第1リングの前記中心凹部に外反させることと、
前記第1リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針で前記第1血管端部の前記血管壁に刺し込んで、前記第1リングを前記第1血管端部の前記縁に固定することと、
前記第2リングを前記切断された血管の第2血管端部に位置決めし、前記第2血管端部を前記内管腔中に位置させ、且つ前記第2リングの前記内表面に囲ませることと、
前記第2血管端部の縁を前記第2リングの前記中心凹部に外反させることと、
前記第2リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針で前記第2血管端部の前記血管壁に刺し込んで、前記第2リングを前記第2血管端部の前記縁に固定することと、
前記第1リング及び前記第2リングが前記第1血管端部及び前記第2血管端部に固定されている場合、前記第1リング及び前記第2リングを連結して前記切断された血管を吻合することとを含むことを特徴とする切断された血管を吻合する方法。
【請求項23】
前記第1リングの前記内管腔は、前記第1リングの前記第1リング表面から前記第2リング表面へ内向きに徐々に収縮し、且つ、
前記第2リングの前記内管腔は、前記第2リングの前記第1リング表面から前記第2リング表面へ内向きに徐々に収縮することを特徴とする請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本願は、出願日が2020年7月8日であって番号が63/049,270である米国仮出願の優先権を主張し、その仮出願の全体は、引用によって本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、切断された血管を吻合するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
吻合と呼ばれる顕微外科血管の接続は、従来の縫合技術を用いて行うことができ、血管中に複数の微小なマイクロ縫合糸を配置する複雑さのため、このような縫合技術は、血管ごとに30分又は2時間あるいはもっと長くかかる可能性があり、又は、静脈の場合、静脈連結器装置を用いて行うことができる。静脈連結器装置は、2つの単独なプラスチックリングを含むことができる。それぞれのプラスチックリングは、いずれも縦方向に延在する金属針を有する。静脈の吻合中に、医学の専門家は、静脈の切断端の縁を針に巻き取る。ピンセット又は別の装置を用いて、静脈切断端の縁を針に下向きに押し付ける。そして、プラスチックリングを搬送装置に連結し、当該搬送装置は、一方のプラスチックリングの針を他方のプラスチックリングにおける収容孔に押し込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動脈は、静脈よりも拡張性がはるかに小さく、コンプライアンスがはるかに小さく、且つより厚い。動脈は、さらに静脈と異なる血管壁特性を有する。したがって、静脈を接続するための静脈連結器装置を設計することは、動脈吻合に使用するのに十分ではない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、切断された血管を吻合するための装置を提供する。当該装置は、第1リングを含み、当該第1リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び第1リング表面と第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有する。内表面は、内管腔を画定し、当該内管腔は、切断された血管の第1血管端部を収容するように構成される。内表面は、内表面から離れて内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有する。第1リングの少なくとも1つの針は、第1血管端部の血管壁に刺し込むとともに、第1リングを第1血管端部に固定するように構成される。第2リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び第1リング表面と第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有する。内表面は、内管腔を画定し、当該内管腔は、切断された血管の第2血管端部を収容するように構成される。内表面は、内表面から離れて内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有する。第2リングの少なくとも1つの針は、第2血管端部の血管壁に刺し込むとともに第2リングを第2血管端部に固定するように構成される。第1リング及び第2リングは、第1血管端部及び第2血管端部に固定された後、切断された血管を吻合するように、互いに連結されて直接接合されるように構成される。
【0006】
一態様において、単独で或いは任意の他の態様と組み合わせて、切断された血管を吻合する方法を提供する。当該方法は、装置を提供することを含む。第1リングを切断された血管の第1血管端部に位置決めし、第1血管端部を内管腔中に位置させ、且つ第1リングの内表面に囲ませる。第1リングの内表面から離れて延在する少なくとも1つの針で第1血管端部の血管壁に刺し込んで、第1リングを第1血管端部に固定する。第2リングを切断された血管の第2血管端部に位置決めし、第2血管端部を内管腔中に位置させ、且つ第2リングの内表面に囲ませる。第2リングの内表面から離れて延在する少なくとも1つの針で第2血管端部の血管壁に刺し込んで、第2リングを第2血管端部に固定する。第1リング及び第2リングが第1血管端部及び第2血管端部に固定されている場合、第1リング及び第2リングを連結して切断された血管を吻合する。
【0007】
一態様において、単独で或いは任意の他の態様と組み合わせて、切断された血管を吻合するための装置を提供する。当該装置は、第1リングを含み、当該第1リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び第1リング表面と第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有する。内表面は、内管腔を画定し、当該内管腔は、切断された血管の第1血管端部を収容するように構成される。第1リングは、内表面と第1リング表面との間にある環状中心凹部を含む。環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁及び側方向に延在する凹部底面によって画定される。凹部底面は、凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含む。少なくとも1つの針は、第1血管端部の血管壁に刺し込むように構成される。第2リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び第1リング表面と第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有する。内表面は、内管腔を画定し、当該内管腔は、切断された血管の第2血管端部を収容されるように構成される。第2リングは、内表面と第1リング表面との間にある環状中心凹部を含む。環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁及び側方向に延在する凹部底面によって画定される。凹部底面は、凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含む。少なくとも1つの針は、第2血管端部の血管壁に刺し込むように構成される。第1リング及び第2リングは、第1血管端部及び第2血管端部に固定された後、切断された血管を吻合するように、連結されるように構成される。
【0008】
一態様において、単独で或いは任意の他の態様と組み合わせて、切断された血管を吻合する方法を提供する。当該方法は、装置を提供することを含む。第1リングを切断された血管の第1血管端部に位置決めし、第1血管端部を内管腔中に位置させ、且つ第1リングの内表面に囲ませる。第1血管端部の縁を第1リングの中心凹部に外反させる。第1リングの凹部底面から離れて延在する少なくとも1つの針で第1血管端部の血管壁に刺し込んで、第1リングを第1血管端部の縁に固定する。第2リングを切断された血管の第2血管端部に位置決めし、第2血管端部を内管腔中に位置させ、且つ第2リングの内表面に囲ませる。第2血管端部の縁を第2リングの中心凹部に外反させる。第2リングの凹部底面から離れて延在する少なくとも1つの針で第2血管端部の血管壁に刺し込んで、第2リングを第2血管端部の縁に固定する。第1リング及び第2リングが第1血管端部及び第2血管端部に固定されている場合、第1リング及び第2リングを連結して切断された血管を吻合する。
添付図面を参照して以下の説明を読む時に、本開示の前記と他の特徴は本公開が関わる分野の技術者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一態様に係る吻合連結器装置の断面図であり、それが例示的な使用環境における装置を含む。
【
図4】
図1の態様における素子の例示的な構造の断面図である。
【
図5】
図1の態様における素子の例示的な構造の斜視図である。
【
図6】本発明の一態様に係る吻合連結器装置の側面図であり、それが例示的な使用環境における装置を含む。
【
図9】
図6の態様における一部の断面図であり、それが例示的な使用環境における装置を含む。
【
図10】装置と組み合わせて使用可能な素子の側面図である。
【
図11】
図1の態様における素子の例示的な構造の断面図である。
【
図12】
図1の態様における素子の例示的な構造の断面図である。
【
図13】
図1の態様における素子の例示的な構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に定義しない限り、本明細書に用いられるすべての科学技術用語は本開示の属する分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0011】
本明細書で使用されるように、用語「ユーザ」は交換可能に使用され、準備、補助及び/又は実行プロセスの個体を指す。
【0012】
本明細書で使用されるように、単数形「一」、「一つ」及び「当該」は、文脈で別途明示しない限り、複数形を含むことができる。さらに、本明細書で使用される用語「含む」は説明された特徴、ステップ、操作、素子及び/又は部品の存在を指定することができるが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、操作、素子、部品及び/又はそのグループの存在又は追加を排除しない。
【0013】
本明細書で使用されるように、「X及びYの少なくとも一方」という語句は、X、Y又はX及びYを含む組み合わせと解釈することができる。例えば、素子がXとYの少なくとも一方を有するように記述されていれば、素子は、特定の時刻においてX、Y又はXとYの組み合わせを含むことができ、X、Y又はXとYの選択は、時間によって変化することができる。逆に、「Xのうちの少なくとも1つ」という語句は1つ又は複数のXを含むと解釈することができる。
【0014】
素子が他の素子の「上」にあり、他の素子に「取り付けられ」、他の素子に「接続され」、他の素子に「接触する」などと呼ばれる時、当該素子は他の素子に直接、他の素子に取り付けられ、他の素子に接続されるか又は他の素子に接触することができ、又は中間素子が存在してもよいと理解されるべきである。逆に、素子が例えば他の素子に「直接接触する」と呼ばれる場合、中間素子が存在しない。
【0015】
説明の便宜上、本明細書において「上方」などの相対空間に関する用語を用いて図に例示される一方の素子又は特徴が、他方或いは複数の素子又は特徴との関係を説明できる。理解すべきことは、図に描かれた配向以外に、相対空間に関する用語は、さらに装置の使用又は操作における異なる配向を含むことができる。例えば、図中の装置を反転させると、他の素子又は特徴の「上方」にある素子は、他の素子又は特徴の「下方」に配向されると説明される。
【0016】
理解すべきことは、用語「第1」、「第2」等は本明細書において様々な素子を説明するために用いられるが、これらの素子はこれらの用語に限定されるべきではない。これらの用語は一つの素子と他の素子を区別するために用いられる。これにより、本開示の教示を逸脱しない場合に、以下に説明する「第1」素子は「第2」素子と呼ばれてもよい。特に指摘しない限り、そうでなければ、操作(又はステップ)の順序は特許請求の範囲又は図面に示された順序に限定されない。
【0017】
本発明は以下の特徴を含むか又は実質的に以下の特徴により任意の組み合わせで構成される。
【0018】
本開示の態様に係る装置は、従来技術における吻合連結器装置の問題を解決することができる。従来技術における吻合連結器装置の設計は、静脈の特性のみに基づくため、動脈吻合に用いられる場合、従来技術における吻合連結器装置は、十分ではない可能性がある。動脈壁は、静脈壁と異なる。動脈に比べて、静脈は、より細く、より拡張可能であり、そして、より吻合連結器装置の縁に外反しやすい。外反した動脈及び静脈は、吻合中に内膜対する内膜の接合を実現することに寄与し、これは、吻合中に望ましくない血栓形成(血管接続の血液凝固失敗)が生じることを排除することに寄与する。本開示の態様に係る装置によれば、動脈の使用に用いられるように設計されることにより、従来技術における吻合連結器装置の問題を解決した。
【0019】
本明細書に開示された装置は、吻合を完了するのに係る時間を短縮することにより動脈吻合のコストを低下する。従来技術における吻合連結器装置が動脈吻合に用いられる場合、十分ではないため、医学の専門家は、複数の微小なマイクロ縫合糸を使用せざるを得ず、それぞれの吻合は、平均で30~60分がかかり、さらに、複雑な場合、120分又はそれ以上に時間がかかることがある。本開示に係る装置を用いて動脈吻合を行うことは、平均吻合時間を30~60分から約5分まで減少させることができる。これにより、本発明に係る装置は、動脈吻合のための手術時間を短縮することで手術コストを削減する。
【0020】
図1乃至
図3は、本開示による教示から設計された例示である吻合連結器装置100を描く。吻合連結器装置100は、第1リング102及び第2リング104を含む。第1リング102は、第1リング表面106から第2リング表面108へ内向きに徐々に収縮する直径を有する。第1リング表面106及び第2リング表面108は、縦方向における逆の方向に面する。用語「縦方向」は、本明細書において
図1の配向における略垂直な方向を指すために用いられ、また、
図1において「LO」で示される。第1リング102は、内向きに徐々に収縮して、第1リング102が漏斗、溝又は円錐台に成形される。第1リング102の内表面110及び外表面112は、第1リング表面106から第2リング表面108に向かって縦方向に延在する。第1リング102は、内表面110によって画定される内管腔114を有する。
図1に示すように、第1リング102の形状に対応して、内管腔114は、概ね漏斗、溝又は円錐台に成形されてもよい。
【0021】
第1リング102は、内表面110と第1リング表面106との間に、環状の中心凹部116を有する。中心凹部116は、第1リング表面106から概ね縦方向に延在する凹部側壁118と、内表面110から概ね側方向に延在する凹部底面120とに画定される。用語「側方向」は、本明細書において「縦方向」に略垂直な方向を指すために用いられ、
図1の配向において水平方向と示され、また、
図1において「LA」で示される。
【0022】
図1乃至
図3に示すように、複数の針122、124は、第1リング102の内表面110と凹部底面120のうちの少なくとも1つから離れて(例えば、直接離れて)延在する。例えば、第1グループの針122は、内表面110に対して所定の角度(例えば約1~90度の角度であるが、それに限定されなく、また、好ましくは、約45~60度の角度)で内表面110から離れて延在し、内管腔114に入る。第2グループの針124は略垂直に凹部底面120から離れて(例えば、直接離れて)延在する。これにより、第2グループの針124は、縦方向に延在する。第1リング102は、複数の柱126をさらに含み、当該柱は、略垂直に且つ縦方向に第1リング表面106から離れて(例えば、直接離れて)延在する。
【0023】
第2リング104は、概ね第1リング102と鏡像になっている。これにより、第2リング104は、互いに対向する第1リング表面128及び第2リング表面130、第1リング表面128から第2リング表面130に向かって縦方向に延在する内表面132及び外表面134、内管腔136、及び凹部側壁140と凹部底面142に画定される中心凹部138を含む。第2リング104及び対応する第2リング104の内管腔136も漏斗、溝又は円錐台に成形される。第2リング102は、第1グループの針144を含み、当該第1グループの針は、内表面132に対して所定の角度(例えば約1~90度の角度であるが、それに限定されなく、さらに好ましくは、約45~60度の角度)で延在し、内表面132から離れて(例えば、直接離れて)内管腔136に入る。第2リング104は、第2グループの針146をさらに含み、当該第2グループの針は、略垂直に凹部底面142から離れて(例えば、直接離れて)延在してもよい。ただし、第1リング102と異なり、第2リング104の第1リング表面128は、複数の収容凹部148を含み、当該収容凹部は、第1リング102及び第2リング104が連結されている場合、複数の柱126を収容するように構成される。
【0024】
図1に示すように、使用中、第1リング102は、切断された血管152の第1血管端部150の上方に位置決めされ、それにより、第1血管端部150を内表面110に接合させる。血管は、任意の流体の搬送管であってもよく、例えば動脈、静脈、小動脈、毛細血管、小静脈、気管支、細気管支及び腸であるが、それらに限定されない。例えば、
図1に示す血管152は、動脈である。第1血管端部150が内表面110に接合する際、第1グループの針122は、血管壁154中に刺し込んで、第1血管端部150が第1リング102に接合することを保つ。器具1080(例えばゴムミニカラム栓1080(
図10参照))を用いて第1グループの針122を軽く押して血管壁154に刺し込むことができる。それらの角が延在するため、第1グループの針122は、血管壁154の外層(外膜)156及び中間層(中膜)158に刺し込むことができるが、最内層(内膜)160に刺し込まない。代わりに、第1グループの針122は、血管壁154の外層156に刺し込むことができるが、中間層158及び最内層160に刺し込まない。いずれの場合に、第1グループの針122は、血管壁154に刺し込むが、血管152の内張りを破ることがない。
【0025】
そして、第1血管端部150の縁162は、第1リング102の中心凹部116に外反する。第1血管端部150の縁162が中心凹部116に外反すると、第2グループの針124は、血管壁154に刺し込んで、第1リング102を第1血管端部150の縁162に固定する。ミニカラム栓1080を用いて第2グループの針124を軽く押して血管壁154に刺し込む。第1グループの針122と類似して、第2グループの針124は、それらが血管壁154に刺し込むが、血管152の内張りを破ることがないように構成されてもよい。
【0026】
第1リング102が第1血管端部150に固定される前または後に、第2リング104は、上記と類似する形態で切断された血管152の第2血管端部164に固定される。第1リング102及び第2リング104がそれらの各自の血管端部150、164に固定されている場合、第1リング102及び第2リング104は、一体に連結されて、第1リング102及び第2リング104の第1表面106、128が互いに当接する(例えば、直接接触或直接接合)。第1リング102及び第2リング104が一体に連結されているとき、第1血管端部150及び第2血管端部164の外反部分162、166は、互いに接触する。第1血管端部150及び第2血管端部164のこのような端から端までの接触は、吻合の成功につながり、且つ血栓形成の進展を防止することに役立つ。
【0027】
既知の静脈連結器装置と異なり、吻合連結器装置100の第1リング102及び第2リング104は、内向きに徐々に収縮する内表面110、132を有すると理解されるべきである。内表面110、132が内向きに徐々に収縮することと、第1グループの針122、144が、内向きに徐々に収縮する内表面110、132に対して角度をなして延在することとの組み合わせは、第1グループの針122、144を第1血管端部150及び第2血管端部164に刺し込むための所定の位置にガイドすることに役立つ。したがって、内表面110、132が内向きに徐々に収縮することと、第1グループの針122、144が、内向きに徐々に収縮する内表面110、132に対して角度をなして延在することととの組み合わせは、第1血管端部150及び第2血管端部164が意外に第1リング102及び第2リング104から離脱することを防止することに役立つ。
【0028】
第1リング102及び第2リング104が一体に連結されているとき、第1リング102の柱126は、第2リング104の収容凹部148中に収容される。吻合連結器装置100は、柱126が使用中に血管壁154に刺し込まないように構成される。柱-凹部の接合は、第1リング102及び第2リング104を一体に固定することに役立つ。柱126及び/又は収容凹部148のうちの少なくとも1つは、柱126が意外に収容凹部148から離脱ことを防止するように、ロック特徴(例えば、バーブ)を有してもよい。例えば、
図4に示すように、少なくとも1つの柱126は、略矢印状であり、また側方向に延在する少なくとも1つの突出部468を有する。突出部468及び/又は柱126は、弾性材料で形成されてもよく、それにより、突出部468は、希望に応じて少なくとも部分的に撓むことができる。関連する収容凹部148は、第1部分470を有してもよく、当該第1部分は、第2部分472の側方向幅よりも小さい側方向幅を有する。
【0029】
柱126は、柱126が収容凹部148中に挿入されるとき、突出部468が撓むように構成されてもよく、それにより、柱126が収容凹部148の第1部分470を通すことを可能にする。柱126が完全に収容凹部148に挿入されると、突出部468は、第2部分472中に位置決めされ、且つ突出部468の撓み前の状態に戻る。突出部468と第2部分472の当接表面474との接合は、柱126が意外に収容凹部148から離脱することを少なくとも部分的に防止する。ただし、ユーザが収容凹部148から柱126を取り除こうとすると、ユーザは所定の力を加えることができ、当該力は、突出部468を撓ませて、柱126が収容凹部140の第1部分470を通すことを可能にするように設定されている。
【0030】
代わりに、又は上記内容以外に、柱126が収容凹部148から離脱することを少なくとも部分的に防止する、柱126と収容凹部148とのロック特徴は、柱128及び収容凹部148の寸法及び/又は形状を設計して柱126と収容凹部148との摩擦又は干渉係合を提供する。別の代替又は補足として、ロック特徴は、柱126及び収容凹部148が磁性体及び鉄磁性材料の少なくとも一種を有するように設計して、柱126と収容凹部148との磁性接合を提供することを含むことができる。
【0031】
第1リング102及び第2リング104が一体に固定されると、柱126と収容凹部148との接合も第1血管端部150と第2血管端部164のうちに一方が第1血管端部150と第2血管端部164のうちの他方に対して側方向に回転することを防止することに寄与する。吻合する第1血管端部150と第2血管端部164が互いに相対回転すると、第1血管端部150、第2血管端部164及び血管152のうちの少なくとも1つは、全体として締め付けられる可能性があり、これは、遅れる血管血栓の形成を引き起こし得る。ただし、柱126と収容凹部148との接合は、第1リング102と第2リング104のうちの一方が第1リング102と第2リング104のうちの他方に対して側方向に回転することを防止し、これは、第1血管端部150と第2血管端部164のうちの一方が第1血管端部150と第2血管端部164のうちの他方に対して側方向に回転することを防止することにに寄与する。したがって、ユーザは、第1血管端部150及び第2血管端部164のそれぞれを所定の配向まで側方向に回転し、そして、柱126を収容凹部148中に挿入して第1血管端部150及び第2血管端部164を吻合することができ、それにより、第1血管端部150と第2血管端部164が互いに対して側方向に回転することを防止する。
【0032】
第1リング102と第2リング104のうちの少なくとも1つは、配向特徴を有してもよく、当該配向特徴は、第1リング102と第2リング104が互いに対して望ましく配向されていることを確認するように構成される。例えば、
図5に示すように、少なくとも1つの柱126は、対応して構成された1つの収容凹部148のみに収容されるように構成されることができる。
図5の例示的な構造において、1つの柱126(ここで柱126aと示す)は、概ね四角柱状に成形されており、他の柱126は、概ね円柱状に成形されている。類似的に、一方の収容凹部148(ここで収容凹部148aと示す)は、概ね正方形であり、他の収容凹部148は、概ね円形である。柱126aは、方形の収容凹部148aのみに挿入可能である。したがって、柱126aと収容凹部148aが位置合わせるときだけに、第1リング102と第2リング104は、互いに当接して接合することができる。このような構成は、第1リング102と第2リング104が互いに接続される前に希望に応じて配向することを確認することに寄与する。
【0033】
さらに、
図5の例示的な構造に示すように、第1リング102及び第2リング104のそれぞれは、第1リング102及び第2リング104の外表面112、134中に位置し又は埋まる配向指示器576、578を有してもよい。第1リング102及び第2リング104は、第1リング102及び第2リング104が希望に応じて互いに対して配向されるときのみに、配向指示器576、578が互いに位置合わせるように構成されてもよい。
【0034】
図6乃至
図9は、本開示の教示から設計された別の例示である吻合連結器装置100を描く。
図4乃至
図7に示す吻合連結器装置100’は、
図1乃至
図3に示す吻合連結器装置100と類似するため、
図1乃至
図3を参照して説明する構成と同じ又は類似する構成は、同じ符号を有し、「’」の表記を追加しただけである。
図1乃至
図3に記載の吻合連結器装置100における素子及び操作と類似する素子及び操作についての説明は、
図6乃至
図9に示す吻合連結器装置100’に対して繰り返さなくてもよく、以下に参考として適当に組み合わせるとみなすべきである。なお、例示である吻合連結器装置100、100’における図示又は説明する素子は、例示である吻合連結器装置100、100’のうちの他方の素子に共有されてもよく、明示的に陳述、図示するか否かを問わない。
【0035】
図6乃至
図9に示す吻合連結器装置100’は、
図6乃至
図9に示す吻合連結器装置100’が第1リング102’及び第2リング104’において中心凹部116を含まないことを除き、
図1乃至
図3に示す吻合連結器装置100と類似する。したがって、吻合連結器装置100’の第1リング102’及び第2リング104’は、第2グループの針124を含まない。ただし、吻合連結器装置100’の第1リング102’及び第2リング104’が中心凹部116及び第2グループの針124を含むように構成されると考えられる。
【0036】
吻合連結器装置100’が吻合連結器装置100と異なる点は、第1リング102’及び第2リング104’が、漏斗、溝又は円錐台ではなく、半八角形又は台形に成形されることにもある。したがって、
図9に示すように、第1リング102’の内管腔114’は、第1リング102’の形状に対応し、且つ半八角形又は台形である。示されていないが、第2リングの内管腔136’も半八角形又は台形である。
【0037】
吻合連結器装置100’は、上記と類似する形態で吻合の過程に用いることができる。したがって、簡潔にするために、上記使用の説明を繰り返さないが、必要な変更を加えて引用の方式で結合する。上記のように、吻合の過程において、器具1080(例えばゴムミニカラム栓1080)を用いて針122、122’、144、144’、124、124’、146、146’が血管壁154に刺し込むことを軽く確保することができる。
図10は、ハンドル部分1082及びゴム先端部分1084を含む例示であるゴムミニカラム栓1080を描く。
【0038】
第1グループの針122、122’、144、144’、第2グループの針124、124’、146、146’及び/又は柱126、126’は、それぞれ第1及び第2リング102、102’、104、104’と同じ材料で製造されてもよい。このような構造において、第1グループの針122、122’、144、144’、第2グループの針124、124’、146、146’及び/又は柱126、126’は、それぞれ第1及び第2リング102、102’、104、104’と一体に又は全体に単一の部材に形成されてもよく、あるいは、第1及び第2リング102、102’、104、104’と別体に形成されて当該第1及び第2リングに連結されてもよい。代わりに、第1グループの針122、122’、144、144’、第2グループの針124、124’、146、146’及び/又は柱126、126’は、それぞれ第1リング102、102’、104、104’を形成するための材料と異なる材料から製造されてもよい。このような構造において、第1グループの針122、122’、144、144’、第2グループの針124、124’、146、146’及び/又は柱126、126’は、それぞれ第1及び第2リング102、102’、104、104’と別体に形成されて当該第1及び第2リングに連結されてもよい。第1グループの針122、122’、144、144’、第2グループの針124、124’、146、146’及び/又は柱126、126’は、それぞれ第1及び第2リング102、102’、104、104’と別体に形成されて、粘着、シール、接着、押圧係合、インサート成形、被覆モールディング、任意の他の適切の直接又は間接的な取付又は接続装置又はそれらの組み合わせにより当該第1及び第2リングに連結されてもよい。
【0039】
図11は、例示的な構造を描き、その中、第1グループの針122、第2グループの針124及び柱126は、それぞれ第1リング102と別体に形成され、そして、当該第1リングに連結されてもよい。第2リング104は、
図11に示されていないが、以下に説明する部分は、第1及び第2グループの針144、146を第2リング104に連結するのに適用することができる。
図11に示すように、第1グループの針122は、第1材料層1186に設けられてもよい。第1グループの針122は、第1材料層1186と一体に単一の部材に形成され、或いは、第1材料層1186と別体に形成され、そして、当該第1材料層に連結されてもよい。第1グループの針122が第1材料層1186に位置する場合、第1材料層1186は、第1リング102の内表面110に連結されてもよい。このような構造において、第1材料層1186は、内管腔114を画定するのに役立ち、且つ使用時に血管壁154に接触することができる。
【0040】
第2グループの針124は、第2材料層1188に設けられてもよい。第2グループの針124は、第2材料層1188と一体に単一の部材に形成され、あるいは、第2材料層1188と別体に形成され、そして当該第2材料層に連結されてもよい。第2グループの針124が第2材料層1188に位置する場合、第2材料層1188は、第1リング102の凹部底面120に連結されてもよい。このような構造において、第2材料層1188は、内管腔114を画定するのに役立ち、且つ使用時に血管壁154に接触することができる。凹部底面120が環状であり得るため、第2材料層1188は、環状の凹部底面120に突き合わせるように、環状であり得る。
【0041】
柱126は、第3材料層1190に設けられてもよい。柱126は、第3材料層1190と一体に単一の部材に形成され、あるいは、第3材料層1190と別体に形成され、そして当該第3材料層に連結されてもよい。柱126が第3材料層1190に位置する場合、第3材料層1190は、第1リング102の第1リング表面106に連結されてもよい。第1リング102の第1リング表面106が環状であり得るため、第3材料層1190は、環状の第1リング表面106に突き合わせるように、環状であり得る。
【0042】
第1リング102、102’、第2リング104、104’、第1グループの針122、122’、144、144’、第2グループの針124、124’、146、146’、柱126、126’、器具1080、第1材料層1186、第2材料層1188及び/又は第3材料層1190は、それぞれ少なくとも部分的にシリコーン樹脂、ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ステンレス鋼、チタン、任意の他の金属、任意の他の生体適合性材料又はそれらの任意の組み合わせにより形成されてもよい。
【0043】
リング102、104は、漏斗、溝、円錐台又は半八角形に成形されると説明したが、リング102、104は、任意の望ましい形状を有してもよい。例えば、
図12に示すように、リング102、104の外表面112、134は、円柱に成形されてもよく、それにより、リング102、104の外径は、概ね第1リング表面106、128から第2リング表面108、130へ内向きに又は外向きに徐々に収縮せず、リング102、104の内表面110、132によって画定される内径は、第1リング表面106、128から第2リング表面108、130へ内向きに徐々に収縮する。
図12に示すリング102、104の内管腔114、136は、これにより、第1リング表面106、128から第2リング表面108、130へ内向きに徐々に収縮する。代わりに、
図13に示すように、第1リング102及び第2リング104は、連続する外径及び内径(即ち、概ね第1リング表面106、128から第2リング表面108、130へ内向きに又は外向きに徐々に収縮しない直径)を有するリング又は円柱に成形されてもよい。これにより、
図13に示すリング102、104の内管腔114、136は、概ね円柱に成形される。
【0044】
要するに、且つ換言すれば、本発明は、以下の内容を含むことができる形態を有すると説明される。
【0045】
(1)例えば、漏斗、溝、円錐台、半八角形、又は円柱のリングに成形される。
【0046】
(2)針は、血管壁の外層中に刺し込んで血管壁の最内層を中断することなく切断された血管の血管端部を保持するように、リングの内管腔に対して約45~60度の角をなしてもよい。
【0047】
(3)リングの内表面と第1リング表面との間にある環状中心凹部であって、血管端部の一部は、当該環状中心凹部に外反することができる。
【0048】
(4)複数の針は、血管端部の外反部分に刺し込んで保持するように、中心凹部の凹部底面から概ね垂直に縦方向に延在する。
【0049】
(5)第1リングにおける柱は、第1リング及び第2リングを一体に固定して、第1リング及び第2リングが互いに対して側方向に回転することを防止するように、第2リングにおける収容凹部に収容される。
【0050】
以上の例示的な形態を参照して本開示の態様を具体的に示しかつ説明したが、当業者であれば理解されるように、様々な追加の態様を想定することができる。例えば、上記該装置を使用するための具体的な方法は例示的である。当業者は上記装置又はその部品を本明細書に示された位置とほぼ類似する位置に配置するための任意の数のツール、ステップシーケンス又は他の手段/オプションを容易に決定することができる。任意の前記構造及び部材は全体的に単一全体又は単一の部材に形成されてもよく、又は単独のサブ部材で構成されてもよく、これらの構造のうちのいずれかは任意の適切な在庫又はカスタマイズ部品及び/又は任意の適切な材料又は材料の組み合わせに関する。しかしながら、選択された材料は多くの使用アプリケーションに対して生体適合性であるべきである。任意の前記構造及び部材は使い捨て又は繰り返し使用可能であり、例えば特定の使用環境に望まれる。任意の部材にユーザが感知できるマークが設置されて該部品の材料、構造、少なくとも一つの寸法等を指示することができ、ユーザが感知できるマークはユーザが使用環境を特定するための類似部品のアレイから一つの部品を選択することを潜在的に助けることができる。「所定」状態は操作された構造が実際に該状態に達する前の任意の時間に確定することができ、該「所定」は最も遅く該構造が所定の状態に達する前に行われる。用語「略」は本明細書では一つの品質を指示するために用いられ、それは大きい程度であるが完全には所定の品質である。「略」の品質は相対的に少なくて非品質項目を含む可能性がある。本明細書に記載のいくつかの部材は特定の幾何学的形状を有するように示されるが、本開示の全ての構造は任意の適切な形状、寸法、構造、相対関係、断面積、又は特定の応用に望まれる任意の他の物理的特性を有することができる。一つの態様又は構造を参照して説明された任意の構造又は特徴は単独で又は他の構造又は特徴と組み合わせて任意の他の態様又は構造に提供することができ、本明細書に記載された各態様及び構造を全ての他の態様及び構造に関連して説明された全てのオプションを有することは実際的ではない。これらの特徴のうちの任意の特徴を組み合わせた装置や方法は添付の特許請求の範囲及びその均等物に基づいて決定された本開示の範囲内に含まれると理解されるべきである。
【0051】
図面、開示内容及び添付の要求保護範囲を研究することにより、他の態様、目的及び利点を得ることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断された血管を吻合するための装置であって、
第1リングと、第2リングとを含み、
前記第1リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有し、前記内表面は、前記切断された血管の第1血管端部を収容するように構成される内管腔を画定し、前記内表面は、前記内表面から離れて前記内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有し、前記第1リングの前記少なくとも1つの針は、前記第1血管端部の血管壁に刺し込むとともに、前記第1リングを前記第1血管端部に固定するように構成され、
前記第2リングは、縦方向に間隔をあけた第1リング表面と第2リング表面、及び前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する内表面を有し、前記内表面は、前記切断された血管の第2血管端部を収容するように構成される内管腔を画定し、前記内表面は、前記内表面から離れて前記内管腔中に延入する少なくとも1つの針を有し、前記第2リングの前記少なくとも1つの針は、前記第2血管端部の血管壁に刺し込むとともに、前記第2リングを前記第2血管端部に固定するように構成され、
前記第1リング及び前記第2リングは、前記第1血管端部及び前記第2血管端部に固定された後、前記切断された血管を吻合するように、互いに連結されて直接接合されるように構成されることを特徴とする切断された血管を吻合するための装置。
【請求項2】
前記第1リングの前記少なくとも1つの針は、前記第1リングの前記内表面に対して、約四十五(45)~約六十(60)度の角度で延在し、且つ前記第2リングの前記少なくとも1つの針は、前記第2リングの前記内表面に対して約四十五(45)~約六十(60)度の角度で延在することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1リングの前記第1リング表面は、少なくとも1つの柱を含み、前記少なくとも1つの柱は、前記第1リング及び前記第2リングが互いに連結されているとき、前記第2リングの前記第1リング表面における対応する収容凹部に収容されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの柱の一部は、前記対応する収容凹部の一部に接合するように構成されることで、前記少なくとも1つの柱が前記対応する収容凹部から離脱することを少なくとも部分的に防止することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの柱が前記対応する収容凹部中に収容されているとき、前記第1リングと前記第2リングが互いに相対回転することを少なくとも部分的に防止することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1リングは、複数の柱を含み、且つ前記第2リングは、前記複数の柱を収容するための複数の収容凹部を含み、前記柱のうちの少なくとも1つは、対応して構成された1つの収容凹部のみに収容されるように構成されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第1リングは、前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する外表面を含み、前記第1リングの前記外表面は、配向指示器を有し、且つ、
前記第2リングは、前記第1リング表面と前記第2リング表面との間に縦方向に延在する外表面を含み、前記第2リングの前記外表面は、配向指示器を有し、前記第1リングと前記第2リングとの前記配向指示器は、前記第1リング及び前記第2リングが互いに連結されているとき、互いに位置合わせるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁と側方向に延在する凹部底面とによって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から離れて縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記少なくとも1つの針は、前記第1血管端部の外反部分に刺し込むために用いられ、且つ、
前記第2リングは、前記内表面と前記第1リング表面との間にある環状中心凹部を含み、環状凹部は、縦方向に延在する凹部側壁と側方向に延在する凹部底面とによって画定され、前記凹部底面は、前記凹部底面から縦方向に延在する少なくとも1つの針を含み、前記少なくとも1つの針は、前記第2血管端部の外反部分に刺し込むために用いられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1リングは、前記第1リングと別体に形成され且つ前記第1リングの前記内表面に連結された第1材料層を有し、前記第1リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1材料層に設けられ、前記第1リングは、前記第1リングと別体に形成され且つ前記第1リングの前記凹部底面に連結された第2材料層を有し、前記第1リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2材料層に設けられ、且つ、
前記第2リングは、前記第2リングと別体に形成され且つ前記第2リングの前記内表面に連結された第1材料層を有し、前記第2リングの前記内表面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第1材料層に設けられ、前記第2リングは、前記第2リングと別体に形成され且つ前記第2リングの前記凹部底面に連結された第2材料層を有し、前記第2リングの前記凹部底面から離れて延在する前記少なくとも1つの針は、前記第2材料層に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1リングの前記内管腔は、前記第1リングの前記第1リング表面から前記第2リング表面へ内向きに徐々に収縮し、且つ、
前記第2リングの前記内管腔は、前記第2リングの前記第1リング表面から前記第2リング表面へ内向きに徐々に収縮することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【国際調査報告】