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特表2023-533750自閉症スペクトラム症に関連する症状の処置のための2’-FLの使用法
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  • 特表-自閉症スペクトラム症に関連する症状の処置のための2’-FLの使用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】自閉症スペクトラム症に関連する症状の処置のための2’-FLの使用法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/702 20060101AFI20230728BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230728BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20230728BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61K31/702
A61P25/00
A61P25/28
A61P1/00
A61P37/02
A23L33/125
A23C9/152
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501486
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021040915
(87)【国際公開番号】W WO2022011157
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/049,503
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513206809
【氏名又は名称】グリコシン リミテッド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】モロウ アーディス エル.
(72)【発明者】
【氏名】アルバーツ ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B001AC01
4B001BC01
4B001EC05
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD31
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA66
4C086ZB07
4C086ZC51
(57)【要約】
ヒト幼児または小児などの対象における自閉症スペクトラム症の症状を軽減するための組成物および方法を本明細書に提供する。方法は、精製2'-フコシルラクトースを含む組成物を対象へ投与する段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製2'-フコシルラクトースを含む組成物を対象へ投与する段階を含む、対象における自閉症スペクトラム症(ASD)の症状を軽減するための方法であって、該対象がASDの症状を含む、方法。
【請求項2】
前記対象がヒトである、請求項2記載の方法。
【請求項3】
前記対象が7歳未満である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記対象が3カ月未満である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記対象が成体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記症状が、胃腸障害、微生物ディスバイオシス、ミトコンドリア機能障害、体温調節障害、免疫調節障害、社交的欠損、または認知欠損を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
組成物が食品を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
食品がピューレ状食品を含む、請求項11記載の方法。
【請求項9】
食品が乳児用調製粉乳を含む、請求項11記載の方法。
【請求項10】
前記対象に1日当たり5~8グラムの2'FLが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記2'FLの投与後に対人社会性が改善される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
対象における自閉症スペクトラム症の症状を軽減するための処置における使用のための2'-FLを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月8日に出願された米国仮出願第63/049,503号の米国特許法第119条(e)項に基づく恩典を主張し、この内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
世界中の人口の1%以上が自閉症スペクトラム症(ASD)の影響を受けている可能性があり、これは生涯にわたる大きな影響を有する。ASDの個体は、特徴として、社会的コミュニケーションおよび相互作用の永続的な欠損、ならびに限定された反復的な行動パターンを有する。そのような行動は人生の早い時期に生じる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、ASDを有する個体を処置するという差し迫った課題に対する解決策を提供する。本発明は、精製2'-フコシルラクトースを含む組成物を対象へ投与することによって対象におけるASDの症状を軽減するための方法を特徴とする。対象は、ASDの症状を含むと特徴付けられているかまたは特定されている。ASDを含むと特徴付けられる個体を診断または特定するための基準は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載される。好ましくは、対象はヒトである。例えば、対象は、7歳未満、例えば、3カ月未満である。方法はまた、ASDの1つまたは複数の症状を有する、より年長の小児、ティーンエイジャー、およびさらには成人を処置するために使用される。例えば、症状は、社交化および/または認知における1つまたは複数の欠損を含む。他の例示的な症状には、胃腸障害、微生物ディスバイオシス、ミトコンドリア機能障害、体温調節障害、または免疫調節障害が含まれる。
【0004】
フコシル化オリゴ糖、例えば、2'-FLは、治療用または栄養用製品における使用のために精製される。2'-FLは、食用組成物または飲用組成物を用いて経口投与される。例えば、組成物は、食品、例えば、ピューレ状食品を含む。別の例において、乳児用調製粉乳の形態の組成物、例えば、液体または粉末調製粉乳製品がある。また、対象における自閉症スペクトラム症の症状を軽減するための処置における使用のための精製2'-FLを含む組成物も本発明内にある。
【0005】
上記の方法により製造された精製フコシル化オリゴ糖も本発明内にある。精製オリゴ糖、例えば、2'-FLは、重量で少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%(w/w)の所望のオリゴ糖であるものである。純度は、任意の公知の方法、例えば、薄層クロマトグラフィーまたは当技術分野で公知の他の電気泳動もしくはクロマトグラフィー技術によって評価される。本発明は、2'-FLを産生する遺伝子操作細菌によって産生されたフコシル化オリゴ糖を精製する方法を含み、この方法は、所望のフコシル化オリゴ糖(例えば、2'-FL)を、細菌細胞抽出物もしくは溶解物、または細菌細胞培養上清中の汚染物質から分離する段階を含む。汚染物質には、細菌DNA、タンパク質および細胞壁成分、ならびに培養培地中の自発的な化学反応で形成されることがある黄色/褐色糖カラメルが含まれる。
【0006】
製剤または製剤成分の用語「有効量」および「治療有効量」とは、所望の効果を提供するための製剤または成分の無毒であるが十分な量を意味する。
【0007】
「含む(including)」、「含有する」、または「特徴とする」と同義である「含む(comprising)」という移行語は、包含的またはオープンエンドであり、追加の、記載されていない要素または方法ステップを除外しない。対照的に、「からなる」という移行句は、請求項に指定されていないいかなる要素、ステップ、または成分も除外する。「本質的にからなる」という移行句は、請求項の範囲を、指定された材料またはステップおよび特許請求される発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書において引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用されたアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合、本明細書が、定義を含めて、制御する。加えて、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ASDのマウスモデルにおける雌親を含むアグレゴン(aggregon)の周辺平均値(marginal mean)を示す棒グラフである。
図2】接触行動のスコアリングを示す図である。同腹の各仔を、尾および伸ばした足を介した接触を除いて、接触した雄(青色の仔)および雌(桃色の仔)の数について毎分スコアリングした。接触の各組み合わせに、一意の識別子または「コンタクトゴン(contactogon)」を割り当てた。例えば、0M 2Fは、雄0匹および雌2匹の接触を示す。単一の性別のみについての可能なコンタクトゴン(例えば、3M 0F)は示さず、統計分析の目的で単一のカテゴリーにまとめた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
ASDの病因は不明であるが、胃腸症状、微生物ディスバイオシス、ミトコンドリア機能障害、および免疫調節障害を含む、多数の併存疾患が、ASDを有する個体において頻繁に生じる。併存疾患の増加は、ASD行動の重症度の増加と関連付けられた。単独でのまたは他のヒトミルクオリゴ糖(HMO)と混合しての2'-FLによる経口処置は、これらの併存疾患に対処し、自閉症の症状を軽減するために有用である。
【0011】
自閉症スペクトラム症(ASD)の診断
自閉症スペクトラム症(ASD)の診断は、障害を診断するための決定的な医学的検査、例えば、血液検査がないため、困難であり得る。医師は、診断を下すために小児の行動および発達を検討する。
【0012】
ASDは18カ月以下で検出され得る。2歳までに、経験豊富な専門家による診断は非常に信頼できると見なされ得る(Lord et al., External Autism from 2 to 9 years of age. Arch Gen Psychiatry. 2006 Jun;63(6):694-701)。しかし、多くの小児はずっと年をとるまで最終診断を受けない。この遅延は、ASDを有する小児が必要な助けを受けられない可能性があることを意味する。
【0013】
ASDの診断は2つのステップ:(1)発達スクリーニング、および(2)包括的な診断評価を含む。
【0014】
発達スクリーニングは、小児が基本的なスキルを学ぶべきときに学んでいるかどうか、または遅れを有し得るかどうかを判断するための短いテストである。発達スクリーニング中、医師は親にいくつかの質問をしたり、試験中に小児と話したり遊んだりして、小児がどのように学び、話し、行動し、動くかを確認する場合がある。これらの領域のいずれかでの遅れは、問題の徴候である場合がある。小児は、9カ月、18カ月、および24または30カ月の定期的な小児科医の健診中に、発達の遅れおよび障害についてスクリーニングされる。早産、低出生体重、またはその他の理由により、小児が発達上の問題のリスクが高い場合は、追加のスクリーニングが必要になる場合がある。小児がASDのリスクが高い場合(例えば、ASDを有する姉妹、兄弟、または他の家族がいる場合)、またはASDに時として関連する行動が存在する場合は、追加のスクリーニングが必要になる場合がある。全ての小児が発達遅延についてスクリーニングされるべきであるが、特に、早産、低出生体重、またはASDの兄弟姉妹がいるために発達上の問題のリスクが高い小児をモニタリングする。医師が問題の徴候を観察した場合は、包括的な診断評価が必要である。
【0015】
ASD診断の第2のステップは包括的な評価である。この徹底的なレビューは、小児の行動および発達を観察し、親にインタビューすること含み得る。また、聴力および視力スクリーニング、遺伝子検査、神経学的検査、およびその他の医学的検査が含まれる場合もある。場合によっては、プライマリケア医は、さらなる評価および診断のために小児および家族を専門家に紹介することを選択し得る。この種の評価を行うことができる専門家には、発達小児科医、小児神経科医、ならびに児童心理学者または精神科医が含まれる。
【0016】
ASDと診断されたかまたはこの障害を発症するリスクがある小児を、本明細書に記載されるような2'-FLで処置する。
【0017】
胃腸症状、微生物ディスバイオシス
ASDを有する多くの小児は慢性胃腸(GI)症状に苦しんでいる[Molloy CA, Manning-Courtney P. Prevalence of chronic gastrointestinal symptoms in children with autism and autism spectrum disorders. Autism 2003 Jun;7(2):165-71; Li Q, Han Y, Dy ABC, Hagerman RJ. The gut microbiota and autism spectrum disorders. Front Cell Neurosci. 2017;11:1-14]。いくつかの研究はGI症状と自閉症の重症度を相関させた[Adams JB, Johansen LJ, Powell LD, Quig D, Rubin AR. Gastrointestinal flora and gastrointestinal status in children with autism-comparisons to typical children and correlation with autism severity. BMC Gastroenterol. 2011;11:1-13; Tomova A, Husarova V, Lakatosova S, Bakos J, Vlkova B, Babinska K, Ostatnikova D. Gastrointestinal microbiota in children with autism in Slovakia. Physiol Behav. 2015;138:179-87]。これらの報告を説明するメカニズムを特定することは、とらえどころのないものであった。ある研究は、GI症状を有する自閉症児と非自閉症児の病理を比較したが、明らかな差は認められなかった[Kushak RI, Buie TM, Murray KF, Newburg DS, Chen C, Nestoridi E, Winter HS. Evaluation of intestinal function in children with autism and gastrointestinal symptoms. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2016 May;62(5):687-91. doi: 10.1097/MPG.0000000000001174. PMID: 26913756]。
【0018】
しかし、腸内微生物叢がASDにおいて役割を有するという証拠が増えている。無菌(GF)環境で飼育されたラットおよびマウスのいくつかの研究は、GFげっ歯動物が社会的探究または社交性および不安関連行動の点で障害があることを示した(Desbonnet L, Clarke G, Shanahan F, Dinan TG, Cryan JF. Microbiota is essential for social development in the mouse. Mol Psychiatry. 2014 Feb;19(2):146-8. doi: 10.1038/mp.2013.65; Arentsen T, Raith H, Qian Y, Forssberg H, Diaz Heijtz R. Host microbiota modulates development of social preference in mice. Microb Ecol Health Dis. 2015 Dec 15;26:29719. doi: 10.3402/mehd.v26.29719]。複数の研究が、健康な対照小児と比較してASDにおいて腸内微生物叢が有意に変化していることを報告した。最も一貫した差は、健康な対照小児と比較して、自閉症を有する小児においてビフィズス菌の存在量が少ないことであるようである;Adams, 2011; Li, 2017; Tomova, 2015; Coretti L et al. Gut microbiota features in young children with autism spectrum disorder. Front Microbiol. 2018; 9: 3146. doi: 10.3389/fmicb.2018.03146. PMCID: PMC6305749. PMID: 30619212]。
【0019】
ミトコンドリア機能障害
ミトコンドリア酸化的リン酸化の欠陥が、ASD患者の複数の研究によって報告された。ミトコンドリアDNAの大規模な遺伝学的研究において、ASD患者と対照患者との間でミトコンドリアハプロタイプの分布に有意差がある[Chalkia D, Singh LN, Leipzig J, Lvova M, Derbeneva O, Lakatos A, Hadley D, Hakonarson H, Wallace DC. Association between mitochondrial DNA haplogroup variation and autism spectrum disorders. JAMA Psychiatry. 2017 Nov 1;74(11):1161-1168. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2017.2604]。別の研究において、研究者らは、ASDを有するおよび有しない小児の腸粘膜におけるミトコンドリア機能を比較した[Rose S, Bennuri SC, Murray KF, Buie T, Winter H, Frye RE. Mitochondrial dysfunction in the gastrointestinal mucosa of children with autism: A blinded case-control study. PLoS One. 2017 Oct 13;12(10):e0186377. doi: 10.1371/journal.pone.0186377]。ASDを有する小児からの盲腸組織におけるミトコンドリア機能は、同様のGI症状を示したが定型発達であったか、またはクローン病を患っていた対照小児とは有意に異なっていた。したがって、自閉症の重要な要素としてミトコンドリア機能を示唆する重要な証拠がある。
【0020】
腸機能に影響を与えるミトコンドリアの欠損は、2'-FL投与によって緩和され得る。マウスモデルにおいて、2'-FLの投与は、電子伝達鎖、酸化的リン酸化、およびミトコンドリアへのタンパク質ターゲティングに関連する経路を介して胃腸ミトコンドリア機能を増加させる;Mezoff EA, Hawkins JA, Ollberding NJ, Karns R, Morrow AL, Helmrath MA. The human milk oligosaccharide 2'-fucosyllactose augments the adaptive response to extensive intestinal resection. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2016;310(6):G427-38. Epub 2015/12/25. doi: 10.1152/ajpgi.00305.2015. PubMed PMID: 26702137; PMCID: PMCPMC4796291]。
【0021】
体温調節障害
自閉症の行動は、感染に伴う発熱の間に正常化することが一般的に観察され[Good P. Simplifying study of fever's dramatic relief of autistic behavior. Clin Nutr ESPEN. 2017 Feb;17:1-7. doi: 10.1016/j.clnesp.2016.09.002]、体温調節障害がASDに寄与することを示唆している。細菌のコロニー形成、または抗生物質によるその枯渇は、代謝および体温調節に影響を与える。
【0022】
子孫に対する微生物の枯渇の影響を決定するために、周産期のマウスの母親に抗生物質を投与した。次に、子孫の微生物叢、社会的行動、母子分離に対する反応、および体温調節機能を調べた。データは、抗生物質にさらされた雌親およびそれらの子孫が、ASDと一致する、行動および生理における多数の微妙な差を呈したことを示した。これらの差は、母子分離後に有意により冷えた子孫、および発達の初期におけるハドリングを含んだ。ミトコンドリアの生体エネルギーを増強することによって、2'-FLは体温調節を改変するのに有用である。
【0023】
免疫調節障害
Eftekharianら[Eftekharian MM et al. Cytokine profile in autistic patients. Cytokine. 2018 Aug;108:120-126. doi: 10.1016/j.cyto.2018.03.034. https://doi.org/10.1016/j.cyto.2018.03.034]はASD患者および健康対照を研究し、炎症性サイトカインTNF-α、IL-6およびIL-17がASD患者でアップレギュレートされることを見出した(P<0.001)。別の研究では、自閉症スペクトラム症を有する小児20人からの末梢血単核細胞におけるサイトカイン産生が、適合対照小児と比較された[Molloy CA, Morrow AL, et al. Elevated cytokine levels in children with autism spectrum disorder. J Neuroimmunol. 2006 Mar;172(1-2):198-205]。結果は、ASDを有するものは、Th2優位で、適応免疫応答のTh2アームおよびTh1アームの両方の活性化が増加したが、制御性サイトカインIL-10の予想される代償性増加がなかったことを示した。単独でまたはHMO混合物の一部として投与された2'-FLは、前臨床試験において、IL-10を増加させ、炎症性サイトカイン発現を減少させることを示した[Xiao L et al. Human milk oligosaccharides promote immune tolerance via direct interactions with human dendritic cells. Eur J Immunol. 2019 Mar 22. doi: 10.1002/eji.201847971; Castillo-Courtade L. Attenuation of food allergy symptoms following treatment with human milk oligosaccharides in a mouse model. Allergy. 2015 Sep;70(9):1091-102. doi: 10.1111/all.12650; Comstock SS, Wang M, Hester SN, Li M, Donovan SM. Select human milk oligosaccharides directly modulate peripheral blood mononuclear cells isolated from 10-d-old pigs. Br J Nutr. 2014 Mar 14;111(5):819-28. doi: 10.1017/S0007114513003267; He Y, Liu S, Kling DE, Leone S, Lawlor NT, Huang Y, et al. The human milk oligosaccharide 2'-fucosyllactose modulates CD14 expression in human enterocytes, thereby attenuating LPS-induced inflammation. Gut. 2016;65(1):33-46. Epub 2014/11/29. doi: 10.1136/gutjnl-2014-307544. PubMed PMID: 25431457; Yu ZT, Chen C, Kling DE, Liu B, McCoy JM, Merighi M, Heidtman M, Newburg DS.The principal fucosylated oligosaccharides of human milk exhibit prebiotic properties on cultured infant microbiota. Glycobiology. 2013 Feb;23(2):169-77. doi: 10.1093/glycob/cws138. PMID: 23028202]。2'-FLは、自閉症におけるサイトカインプロファイルを改善するのに有用である。
【0024】
自閉症関連の併存疾患および行動の処置としての2'-FL
単独でまたは他のHMOと組み合わせて、2'-FLは、ビフィズス菌の増殖および相対的存在量を増加させ[Yu, 2013; Elison E, Vigsnaes LK, Rindom Krogsgaard L, Rasmussen J, Sorensen N, McConnell B, et al. Oral supplementation of healthy adults with 2'-O-fucosyllactose and lacto-N-neotetraose is well tolerated and shifts the intestinal microbiota. Br J Nutr. 2016;116(8):1356-68]、これはASD患者において典型的に欠けている。2'-FLは、ミトコンドリアエネルギー処理を増強することによって、ASD患者のミトコンドリア機能の欠損に対処し、体温調節を高めるために使用される。さらに、2'-FLは免疫調節を高め、炎症反応を管理し、IL-10および制御性T細胞を増強する。腸内微生物叢および宿主免疫状態は、神経行動に影響を与えることが示されている。したがって、2'-FLは、自閉症における症状および行動の処置として有用である。
【0025】
およそ1~100 g/日、例えば、5~10 g/日の用量での健康補助食品としての2'-FLの経口投与は、自閉症スペクトラム症(ASD)を有する個体において、胃腸症状を軽減し、ミトコンドリア機能を改善し、免疫の健康を増強し、社会的行動を改善する。
【0026】
治療用組成物
2'-フコシルラクトース粉末(2'-FL)は、ヒトミルクオリゴ糖プレバイオティクスである。2006年付けの食品医薬品局によるFDA Guidance for Industry on Complementary and Alternative Medicine Products and Their Regulationによれば、プレバイオティクスは、結腸内の細菌の増殖および/または活性を選択的に刺激することによって宿主に有益に影響を与える、非消化性の食品成分である。
【0027】
2'-フコシルラクトース(2'-FL)は白色の均質な粉末であり、無味からわずかに甘く、異臭はない。乾燥物質は96%を占め、水分含有量は4%である。分析の結果は、全体の含有量が、2'-フコシルラクトース93%、他の糖3%および水分4%であることを示す。処置のために、対象は、毎朝(例えば、飲料または食物に必要量を加えることによって朝食時に)および任意で毎日午後/夜に2'-FLを服用する(または投与される)。
【0028】
例えば、オリゴ糖の投与は、ASDの診断後いつでもあらゆる年齢の小児に推奨され、日常的な毎日の健康補助食品として継続される。2'-FLは、1日当たり0.1グラム~50グラム/日、例えば、1~25グラム/日、2.5~10グラム/日、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9 10グラム/日の用量で投与される。例示的な投薬レジメンは、5~8グラム/日の2'-FL単独または2'-FL+ガラクトオリゴ糖(GOS)、ラクト-n-テトラオース(LNT)、ラクト-n-ネオ-テトラオース(LNneoT)、イヌリン、もしくはフラクトオリゴ糖、または他のオリゴ糖である。オリゴ糖は、牛乳もしくは他の飲料、またはシリアルもしくは他の食物(調理後)にそれを含めて提供することができる、粉末である。オリゴ糖の用量は、典型的に、体重依存性として投与されず、または対象の単位重量当たりで投与されないが、体重1kg当たりのおおよその用量は、0.08 g~0.8 gオリゴ糖/kg体重の範囲内である。
【0029】
1日量を、朝および晩に食べ物または飲み物と一緒に与えられるほぼ等しい量に分けることが推奨され;したがって、オリゴ糖は、1日2回以上、例えば、1日2回または3回投与され得る。処置結果には、便の改善(頻度の改善)、微生物コロニー形成の改善(ビフィズス菌または短鎖脂肪酸代謝産物を産生することができる他の微生物の増加;16S rDNA、PCRまたは全ゲノムシーケンスによって測定)、胃腸症状の軽減、免疫マーカーの改善(制御性免疫マーカーとしての血清IL-10の増加、アレルギーの減少または炎症性サイトカインの減少;Molloy CA, Morrow AL, et al. Elevated cytokine levels in children with autism spectrum disorder. J Neuroimmunol. 2006 Mar;172(1-2):198-205)、社会的行動の増加、および反社会的行動の減少が含まれる。社会的およびコミュニケーション行動(例えば、対人的社会性)の改善ならびに反社会的および反復的行動の減少は、当技術分野で公知の方法を使用して評価される;例えば、Sparrow, S. S., Balla, D. A., & Cicchetti, D. V. (1984) Vineland Adaptive Behavior Scales, Classroom Edition. Circle Pines, MN: American Guidance Service and Bodfish, J. W., Symons, F. J. & Lewis, M. H. (1998). The Repetitive Behavior Scale: A test manual. Morganton: Western Carolina Center Research Reports。例えば、対人社会性は、2'-FL処置の非存在下で検出される対人社会性のレベルと比較して、少なくとも10%、例えば、20%、25%、50%、75%、2倍、5倍、10倍またはそれ以上増加する。
【0030】
組成物は、異なる構成で製剤化されてもよい。例えば、組成物は、固体構成に、例えば、粉末として加工される。粉末として存在する場合、粉末を構成する粒子の寸法は変化し得、場合によっては0.1~1000ミクロン、例えば1~500ミクロンの範囲である。
【0031】
また、2'-FLおよび生理学的に許容される送達ビヒクルを含む生理学的に許容される組成物も提供される。組成物は、対象への投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より詳細には、組成物は、好適な生理学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて生理学的に許容される組成物に製剤化することができ、固体、半固体、液体または気体の形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルならびに局所用組成物に製剤化することができる。製剤は、経口、頬側、舌下、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内(intracheal)などの投与を含む多数の異なる経路を介した投与のために設計され得る。
【0032】
生理学的組成物は、例えば、食品、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤、ガムなどとして、経口使用に適した形態であってもよい。経口使用を意図した組成物は、薬学的組成物の製造のための任意の好都合なプロトコールに従って調製されてもよく、そのような組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群より選択される1つまたは複数の薬剤を含有してもよい。
【0033】
ある態様において組成物は食品である。関心対象の食品は、食品送達ビヒクルと組み合わせた組成物を含む。食品送達ビヒクルとは、生命の維持、エネルギーの提供、成長の促進などのために、食べられ、飲まれ、またはその他の方法で体内に取り込まれる栄養物質である、送達ビヒクルを意味する。関心対象の食品送達ビヒクルまたは食品の例としては、赤子または乳児用調製粉乳、離乳食(例えば、乳幼児の消費に適したピューレ状食品)、チップス、クッキー、パン、スプレッド、クリーム、ヨーグルト、液体飲料、チョコレート含有製品、キャンディー、アイスクリーム、シリアル、コーヒー、ピューレ状食品などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
また、経口製剤として興味深いのは栄養補助食品である。経口製剤が栄養補助食品として提供される場合、栄養補助食品は、甘味剤、安定剤、香味剤または着色剤などのうちの1つまたは複数をさらに含み得る。本開示に従う経口製剤は、糖衣錠剤もしくはロゼンジ剤、丸剤、ゼラチンカプセル剤、またはシロップ剤の形態で提供され得る。経口製剤は、バルクサンプル、例えば、対象によって測定され得る粉末形態の複数回用量を有する容器として、または単位用量形態、例えば、丸剤、パウチ、単回使用容器などで、提供され得る。
【0035】
錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の生理学的に許容される賦形剤と混合した状態で活性成分を含有し得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア、および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または胃腸管における崩壊および吸収を遅らせ、それによってより長い期間にわたって持続的な作用を提供するために公知の技術によってコーティングされてもよい。
【0036】
経口使用のための製剤はまた、2'-FLが不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、または組成物が水もしくは油性媒体と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として、提示することができる。
【0037】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合した状態で2'-FLを含有する。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムを含み得る;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁剤はまた、1つまたは複数の保存剤、例えば、エチル、またはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の香味剤、および1つまたは複数の甘味剤、例えば、スクロース、サッカリンまたはアスパルテームを含有し得る。
【0038】
油性懸濁剤は、活性成分を植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁することによって製剤化することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有し得る。口当たりの良い経口調製物を提供するために、上記に記載したもののような甘味剤、および香味剤を添加してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存され得る。
【0039】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散性散剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つまたは複数の保存剤と混合した状態で、活性成分を提供する。好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、既に上述したものによって例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も存在し得る。
【0040】
本発明の生理学的に許容される組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油性相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤は、天然に存在するホスファチド、例えば大豆、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってよい。エマルジョンはまた、甘味剤および香味剤を含有してもよい。
【0041】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースと共に製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤ならびに香味剤および着色剤を含有してもよい。薬学的組成物は、滅菌注射可能な水性または油性懸濁剤の形態であり得る。この懸濁剤は、上述した好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液剤または懸濁剤であってもよい。使用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油が、従来、溶媒または懸濁化媒体として用いられている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無味無臭の固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製に用いられる。
【0042】
2'-FLは、それらを水性または非水性溶媒、例えば植物油または他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステルまたはプロピレングリコールに溶解、懸濁または乳化することによって注射用の調製物に製剤化することができ;所望により、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤などの従来の添加剤を用いる。組成物は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤に利用することができる。組成物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、または窒素などの加圧された許容可能な噴射剤中へ製剤化することもできる。
【0043】
組成物は、乳化基剤または水溶性基剤などの種々の基剤と混合することにより坐剤にすることができる。本発明の化合物は、坐剤を介して直腸に投与することができる。坐剤は、体温で融解するが室温で固化するカカオバター、カルボワックスおよびポリエチレングリコールなどのビヒクルを含むことができる。
【0044】
また、興味深いのは、例えば、組成物が局所送達ビヒクル成分と組み合わされている、局所用組成物である。本発明の送達組成物の局所送達ビヒクル成分は、所望に応じて変化し得、ここで、所与の送達ビヒクル成分の特定の成分は、少なくとも部分的には、特定の組成物の性質に依存するであろう。関心対象の送達組成物は、液体製剤、例えば、ローション(スプレーローションを含む外用に意図された、懸濁液またはエマルジョンの形態の不溶性物質を含む液体)および水溶液、半固体製剤、例えば、ゲル(分散相が分散媒と結合して半固体物質を生成しているコロイド、例えばゼリー)、クリーム(柔らかい固体または濃厚な液体)および軟膏(柔らかい油質の調製物)、ならびに固形製剤、例えば、局所パッチを含む。そのため、関心対象の送達ビヒクル成分には、水中油型(O/W)および油中水型(W/O)のエマルジョン、ミルク調製物、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、血清、粉末、マスク、パック、スプレー、エアロゾルまたはスティックが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
単回投薬形態を製造するために担体材料と組み合わせることができる2'-FL組成物の量は、処置されるホストおよび特定の投与様式に応じて変化する。例えば、ヒトの経口投与を意図した単位製剤は、全組成物の約0.1~約95パーセント、または例えば約0.1~約10パーセント、約0.1~約4重量パーセント、または全組成物の約5~約95パーセントで変動し得る、適切なまたは好都合な量の担体材料と組み合わされた0.5 mg~5 gの組成物を含有し得る。しかしながら、特定の患者の特定の用量レベルは、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合わせ、および治療を受けている特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存することが理解されるであろう。したがって、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤などの経口または直腸投与のための単位投薬形態が提供され得、ここで、各投薬単位、例えば、小さじ一杯、大さじ一杯、錠剤または坐剤は、1つまたは複数の阻害剤を含有する所定量の組成物を含有する。同様に、注射または静脈内投与のための単位投薬形態は、滅菌水、生理食塩水または別の薬学的に許容される担体中の溶液としての組成物中に阻害剤を含み得る。上記の「単位投薬形態」は、ヒトおよび動物対象に対する単位投薬量として適した物理的に別個の単位を含み、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと共同して所望の効果をもたらすのに十分な量で計算された所定量の組成物を含む。
【0046】
ASDの処置のための2'-FLの臨床使用
任意の2'-FL化合物[遊離(非結合)オリゴ糖、複合糖質形態、または組み合わせ、例えば、オリゴ糖の混合物]および/またはそれを含む組成物、例えば、本明細書に記載されるものが、ASDを処置するために、それを必要とする対象、例えば本明細書に記載されるものへ投与される。例えば、対象は、ASDを発症するリスクがあるヒト患者であるか、または対象は、ASDを有するヒト患者、例えば、ASDに関連する神経行動障害を有すると診断されたヒト患者である。例えば、対象は、ASD関連療法(例えば、薬物療法、生理学的療法、および/または理学療法)を受けた、または受けているヒトASD患者である。例えば、対象は、活動性ASDと診断されたヒトASD患者、またはASDの寛解状態にあり、ASD関連療法(例えば、薬物療法、生理学的療法、および/または理学療法)を受けているヒトASD患者である。
【0047】
任意の2'-FL化合物および/またはそれを含む組成物、例えば、本明細書に記載されるものは、ASD処置を必要とする任意の年齢の対象に投与することができる。いくつかの例において、本明細書に記載される2'-FL化合物および/または組成物を投与される対象は、小児、例えば、18歳以下、例えば、6カ月~18歳(6カ月および18歳を含む)である対象であり得る。いくつかの態様において、対象は、11歳以上、例えば、11~18歳(11歳および18歳を含む)の小児であり得る。いくつかの態様において、対象は、5~10歳の小児であり得る。いくつかの態様において、対象は、5歳未満、例えば、6カ月~4歳(6カ月および4歳を含む)の小児であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される2'-FL化合物および/または組成物を投与される対象は、18歳を超える、例えば、19~80歳(19歳および80歳を含む)である成人であり得る。いくつかの態様において、成人対象は、19~25歳である。いくつかの態様において、本明細書に記載される2'-FL化合物および/または組成物を投与される成人対象は、25歳以上(例えば、25~80歳(25歳および80歳を含む))であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される2'-FL化合物および/または組成物を投与される成人対象は、65歳を超える、例えば、66~80歳である高齢者であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される2'-FL化合物および/または組成物を投与される対象は、11~25歳であり得る。
【0048】
本明細書において使用される用語「処置する」または「処置」は、疾患、疾患の症状、または疾患の素因を治癒し、治し、緩和し、軽減し、変更し、救済し、改善し、好転させ、または影響を与える目的での、ASD、ASDの症状、またはASDの素因を有する対象への単剤療法としてのまたは併用処置としての(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤としての)、2'-FL化合物の適用または投与を指す。用語「処置する」または「処置」はまた、寛解を維持し、したがって再発の発生を緩和し、軽減し、予防しまたは遅らせる目的での、ASDの寛解状態にある対象への単剤療法としてのまたは併用処置としての(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤としての)、2'-FL化合物の適用または投与を含む。
【0049】
いくつかの態様において、処置は予防的である。「予防的」という用語は、ASDの発生を予防する、または発症を遅らせる、ASDのリスクがある対象への単剤療法としてのまたは併用処置としての(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤としての)2'-FL化合物の適用または投与を指す。
【0050】
いくつかの態様において、処置は治療的である。「治療的」という用語は、例えば、胃腸症状、微生物ディスバイオシス、ミトコンドリア機能障害、および/もしくは体温調節障害の軽減、ならびに/または症状再発の頻度の減少を含む、本明細書に記載されるような、ASDに関連する少なくとも1つまたは複数の症状を改善する、ASDまたはASDの症状を有する対象への単剤療法としてのまたは併用処置としての(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤としての)2'-FL化合物(例えば、精製オリゴ糖として、混合物、または本明細書に記載されるような複合糖質形態中のいずれかの、本明細書に記載されるもの)の適用または投与を指す。
【0051】
例えば、処置は、単剤療法としてのまたは併用処置としての(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤としての)2'-FL化合物(例えば、精製オリゴ糖として、または本明細書に記載されるような複合糖質形態中のいずれかの、本明細書に記載されるもの)の適用または投与がASD症状再発のリスクを軽減または低減する場合、治療的である。本明細書で使用される場合、用語「再発」は、ASDに関連する少なくとも1つまたは複数の症状の発生または悪化を指す。
【0052】
「有効量」は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の応答、例えば、症状の排除または緩和、ASDにおける症状再発のリスクの予防または低減、本明細書に記載されるASDの少なくとも1つの症状の軽減をもたらす、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)の量を指す。所望の応答は、疾患の症状の進行または再発を抑制することである。これには、疾患の進行を永久に停止することを含み得るが、疾患の進行を単に一時的に遅らせることを含む場合がある。場合によっては、これは、疾患の再発を永久に防ぐことを含み得るが、疾患の再発を単に一時的に遅らせることを含む場合がある。これは、日常的な方法によってモニタリングできる。疾患の処置に対する所望の応答はまた、疾患の発症を遅らせるか、または疾患の発症を予防することでさえあり得る。そのような量は、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、体調、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、処置期間、同時療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および専門知識内の同様の要因に依存するであろう。これらの要因は、当業者には周知であり、日常的に過ぎない実験で対処することができる。個々の成分またはそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断による最高安全用量が使用されることが一般に好ましい。しかしながら、当業者には、患者が、医学的理由、心理的理由または事実上任意の他の理由のためにより低い用量または耐容用量を主張し得ることが理解されよう。
【0053】
例えば、有効量の2'-FL化合物は、それを必要とする対象へ投与されると、例えば、2'-FL化合物の投与無しでの短鎖脂肪酸産生腸内微生物の存在量と比較して、短鎖脂肪酸を産生する腸内微生物の存在量を少なくとも約10%またはそれ以上(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む)増加させることによって、もたらす。短鎖脂肪酸(例えば、酪酸)を産生する腸内微生物の例としては、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)、バクテロイデス属(Bacteroides)、および/またはパラバクテロイデス属(Parabacteroides)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、有効量の2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)は、それを必要とする対象へ投与されると、2'-FL化合物の投与無しでの腸内ビフィドバクテリウム属の存在量と比較して、腸内ビフィドバクテリウム属の存在量を少なくとも約10%またはそれ以上(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む)増加させる。このような治療的特徴は、糞便微生物(例えば、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、および/またはパラバクテロイデス属)の存在量を測定することによって決定することができる。
【0054】
いくつかの態様において、有効量の2'-FL化合物[(例えば、遊離(非結合)オリゴ糖として、または複合糖質形態中、または本明細書に記載されるようなオリゴ糖の混合物中のいずれかの、本明細書に記載されるもの]は、それを必要とする対象へ投与されると、例えば、2'-FL化合物の投与無しでの微生物酪酸産生と比較して、微生物酪酸産生を少なくとも約10%またはそれ以上(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む)増加させることによって、もたらす。このような治療的特徴は、例えば酪酸を含む、糞便短鎖脂肪酸の存在量を測定することによって決定することができる。
【0055】
いくつかの態様において、有効量の2'-FL化合物は、それを必要とする対象へ投与されると、例えば、2'-FL化合物の投与無しでの腸炎症と比較して、腸炎症を少なくとも約10%またはそれ以上(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む)減少させることによって、もたらす。このような治療的特徴は、本明細書に記載されるような診断および測定方法によって決定することができる。
【0056】
いくつかの態様において、有効量の2'-FL化合物は、それを必要とする対象へ投与されると、例えば、2'-FL化合物の投与無しでの腸炎症と比較して、腸炎症を少なくとも約10%またはそれ以上(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む)減少させることによって、もたらす。このような治療的特徴は、本明細書に記載されるような診断および測定方法によって決定することができる。本明細書に記載される方法における使用のための2'-FL化合物の例示的な有効量は、少なくとも0.5 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも1 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも2 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも3 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも4 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも5 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも6 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも7 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも8 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも9 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも10 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも11 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも12 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも13 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも14 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも15 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも16 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも17 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも18 mg/日の2'-フコシルラクトース、少なくとも19 mg/日の2'-フコシルラクトース、または少なくとも20 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当し得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法における使用のための2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)の有効量は、20 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、15 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、10 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、9 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、8 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、7 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、6 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、5 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、4 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、3 mg/日以下の2'-フコシルラクトース、または2 mg/日以下の2'-フコシルラクトースに相当し得る。上記に記載される範囲の組み合わせも含まれる。例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載される方法における使用のための2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)の有効量は、0.5 mg/日~20 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~20 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~15 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~10 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~8 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、または1 mg/日~5 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当し得る。処置を必要とする対象が11~25歳であるいくつかの態様において、本明細書に記載される方法における使用のための2'-FL化合物の有効量は、1 mg/日~20 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~15 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~10 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、1 mg/日~8 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当、または1 mg/日~5 mg/日の2'-フコシルラクトースに相当し得る。
【0057】
2'-FL化合物の1日有効量は、単回1日用量で投与することができ、または一日の間の所与の時間間隔での投与のために複数回用量(例えば、2~4用量)に分割することができる。いくつかの態様において、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)の1日有効量は、朝に単回1日用量として、例えば、単独で、または食品もしくは飲料と組み合わせて投与することができる。一日の間の任意の他の時間での2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)の投与もまた好適である。
【0058】
2'-FL化合物は、ASDの処置のための単一のオリゴ糖として、または少なくとも1つの追加のオリゴ糖(例えば、本明細書に記載されるもの)と組み合わせて、それを必要とする対象へ投与することができる。いくつかの態様において、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)は、単一のオリゴ糖としてそれを必要とする対象へ投与され、すなわち、対象は、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)を、他のオリゴ糖(例えば、本明細書に記載されるもの)と共使用されない唯一のオリゴ糖として与えられる。他の態様において、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)を、少なくとも1つの異なるオリゴ糖と同時投与する。「同時投与する」または「と組み合わせて」とは、対象に、処置過程において、例えば、同時に、連続的に、断続的に、または他のレジメンで、異なるオリゴ糖と共に2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるようなもの)を提供することを意味する。
【0059】
2'-FL化合物は、ASD処置剤(例えば、ヒトASD患者によって服用されるもの)の補助剤として投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「補助剤」は、第2薬剤の補足として提供される第1薬剤を指す。第1薬剤は、第2薬剤の投与前、同時、または後に投与することができる。いくつかの態様において、ASD処置剤または療法のアジュバントとしての2'-FL化合物の投与は、例えば、ASDの再発のリスクを軽減または低減することを含む、ASDの処置に対する相乗効果を提供することができる。例えば、治療効果は、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)と任意選択のASD処置剤または療法との組合せによって達成される平均寛解期間が、同じ用量の2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)およびASD処置剤または療法による個々の処置から生じる相加効果よりも有意に大きい場合、相乗的である。いくつかの態様において、相乗的治療効果は、平均寛解期間を少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上増加させる。
【0060】
2'-FL化合物を第2薬剤(例えば、本明細書に記載されるような他のオリゴ糖および/または他のASD処置剤もしくは療法)と同時投与する場合、それは、本明細書に記載されるような任意の好適な形態(例えば、経口投与用の散剤または錠剤)であってよい単一の組成物中に第2薬剤と一緒に製剤化されてもよい。あるいは、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)および第2薬剤(例えば、本明細書に記載されるような他のオリゴ糖および/または他のASD処置剤もしくは療法)は別々に製剤化されてもよい。
【0061】
本明細書に記載されるASD処置の投与は、当技術分野において公知の任意の方法によって達成され得る(例えば、Harrison's Principle of Internal Medicine, McGraw Hill Inc., 18th ed., 2011を参照されたい)。併用処置について、各薬剤は、同じ経路または異なる経路を介して投与することができる。投与は局所的または全身的であり得る。投与は、例えば、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、動脈内または皮内)、または経口であり得る。異なる投与経路のための組成物は、当技術分野において周知である(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Pharmaceutical Press, 22nd ed., 2012を参照されたい)。組成物はまた、遅延、延長、長期、持続、パルス、制御、加速および高速、標的指向、プログラム放出、および胃保持剤形を含む、改変放出剤形として製剤化することもできる。これらの剤形は、当業者に公知の従来の方法および技術に従って調製することができる。投薬量は、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、体調、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、処置期間、同時療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および専門知識内の同様の要因に依存するであろう。投薬量は、当業者によって決定することができる。いくつかの態様において、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)および/または第2薬剤(例えば、本明細書に記載されるような他のオリゴ糖および/または他のASD処置剤もしくは療法)を経口投与することができる。経口投与はまた、頬側、舌、および舌下投与を含む。いくつかの態様において、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物は、経口投与のための固体、半固体、または液体組成物(例えば、薬学的組成物または健康補助食品)で提供され得る。好適な経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、パステル剤、カシェ剤、ペレット剤、薬用チューインガム、顆粒剤、バルク散剤、発泡性または非発泡性散剤または顆粒剤、液剤、乳剤、懸濁剤、液剤、ウエハー剤、スプリンクル剤、エリキシル剤、およびシロップ剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性成分に加えて、組成物は、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、色素移行阻害剤、甘味剤、および香味剤を含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の薬学的に許容されるまたは食用の担体または賦形剤を含有し得る。
【0062】
いくつかの態様において、2'-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)は、注射によって(例えば、静脈内または腹腔内などの非経口的に)投与することができる。
【0063】
非経口投与のための調製物には、滅菌水性または非水性液剤、懸濁剤、および乳剤が含まれる。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油などの植物油、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。このような剤形はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のうちの1つまたは複数を含有してもよい。剤形は、例えば、組成物の濾過によって、組成物を照射することによって、または組成物を加熱することによって滅菌することができる。また、使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体を使用して製造することもできる。2'FLの投与に関する付加的な情報は、例えばMorrowら, PCT公開公報番号WO2018/187792 A1 (国際出願番号PCT/US2018/026631)に記載されているように、当技術分野において公知であり;参照により本明細書に組入れられる。
【0064】
いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載されるASD処置以外のまたはそれに加えて行動をとることをさらに含む。いくつかの態様において、この方法は、ASDのリスクがある対象のASD症状の発症をモニタリングすること、または処置の有効性をモニタリングすることをさらに含む。モニタリングは、例えば、腸炎症および/または腸内微生物叢を評価するための、身体検査、内視鏡検査、および/または便サンプル検査を含み得る。対象が2'-FL化合物の投与用量に反応しない場合、医師は、増加した用量が膨満感、腹痛、吐き気、軟便、および/またはガス発生などの重大な胃腸症状を引き起こさないことを条件として、例えば、対象の医学的および/または身体的状態に基づいて、2'-FL化合物の用量を増加させることができる。
【0065】
治療法
組成物は、ASDを有する、乳児、幼児、小児、または成体に適している。例えば、方法は、単独でまたは他のヒトミルクオリゴ糖と組み合わせて、2'-FLを使用して対象の微生物叢をより好ましい状態にシフトさせるのに有用であり、それによって障害の改善をもたらす。
【0066】
ASD関連社会性障害の評価
げっ歯動物モデルは、非ヒト動物(例えば、実験用げっ歯動物)の「社会性」、および特に社会的所属がどのように確立、形成、維持されるかを理解するために開発された。自閉症スペクトラム症(ASD)および多くの他の精神疾患に沿ったすべての症候群は、社会的行動、愛着、および社会的反応性の障害を伴うため、自閉症の動物モデルなどの、このモデルは「トランスレーショナル」問題に非常に関連している。このような障害は現在、発達障害と見なされており、したがって、社会性の発達の研究は、そのようなタイプの疾患の病因/基礎に関係する。
【0067】
研究は、ラットおよびマウスの仔の同腹仔によって示される「集団行動」に取り組み、そのような家族集団(母親を含む)が行動的および生理的単位としてどのように機能するかを明らかにする。さらに、個体が集団として機能する一方で、研究はまた集団内の個体を評価し、これは、集団行動および個体行動がどのように相互依存的に共存し、それぞれが他方をどのように形作るかを観察および分析することを可能にする。この二重の視点は、個体行動の規則、集団内の性差がどのように異なる社会的経験につながるか、およびオキシトシンなどの神経ホルモンが母親との特定の相互作用によってどのように刺激されるか、およびほんの一部の仔でさえ、子孫の脳内のオキシトシンの操作が、合法の定量化可能な方法で家族全体のダイナミクスをどのように変えることができるかについての新事実に基づいて、集団行動の形成およびダイナミクスを説明する計算モデルに至った。
【0068】
図2は、同時の個体および集団の行動の複雑さを捉えるために使用するさまざまな関連方法の1つを示す。この例は、このスナップショットにおける接触パターン、位置、性別(雌=明るい灰色、雄=暗い灰色)および「ターゲット」個体(黒色)の識別を描写する集団編成の4つの別個の例を示す。これらのような自動的にキャプチャーされたフレームを時系列に組み立て、分析して、個体の接触ならびに集団メンバー間での「分裂」および「融合」の変化を追跡する。
【0069】
集団によって囲むように包まれた面積も測定し、これは個体間の親密さまたは密着の別の客観的尺度を提供する。母親(「雌親」とも呼ばれる)の場所も観察し、雌親に関連するまたは雌親の関与なしでの家族の社会的ダイナミクスを観察する。これらのさまざまな記述様式に加えて、「アグレゴン」、「コンタクタゴン(contactagon)」、ファミリー「サイズ」、およびその他の分析単位を定義する一連のツールを開発した。
【0070】
仔を互いにおよび母親に引き付ける主な感覚的および生理学的要因は体温である。体間の熱伝達(伝導)は、仔が母親と同腹仔に引き付けられる方法の重要な部分である。結果として生じる伝導熱交換は、母親および同胞の匂いが社会的所属および好みの手がかりとなる学習所属の基礎である。これは彼らの社会的絆の基礎であり、彼らの社会性のその側面の形成の鍵である。
【0071】
ラット、マウス、ヒトの初期発生の間(これはすべての哺乳動物の基本である)、生理学的にも社会的にも体温が特に重要である。密接な接触(皮膚と皮膚)は、ラットの仔の脳内の「社会性ホルモン」オキシトシンを増加させる。社会的絆を確立する社会的相互作用(前述の匂い学習)の間に乳児の脳内のオキシトシンの伝達をブロックすることは、学習をブロックする。
【0072】
すべての哺乳動物の乳児は、熱の生成および認識を伴う多くの分化組織(specialization)を有する。乳児の熱生成(熱発生)能力の源である、褐色脂肪組織(BAT)と呼ばれる、哺乳動物に特有の特殊器官がある。減少した社会的反応の提示のために遺伝子操作された突然変異マウスは、熱生成および体温調節の欠損を示す。同様に、BAT生理機能の欠損(BAT-ノックアウト)として飼育された動物は、社交的欠損を示すと報告されている。このようなデータは、生理的熱の生成および交換を広く伴う正常および異常な社会性発達についての発達基盤があるという前提を支持している。
【0073】
BAT熱発生によって生成される熱は、褐色脂肪細胞のミトコンドリア内の代謝経路の特定の変化から生じるため、注目に値する。このようなミトコンドリア機能と正常および異常な社会性の発現との間に多くの重複する手がかりがある。ミトコンドリア機能の調節、体温の生成の増大における2'-FLの能動的役割、腸内菌共生バランス失調の仔におけるより低い体温および対応する社会性の欠損の知見、ならびに2'-FLによる体温調節および社会的反応の回復は、腸内微生物叢の改善、体温調節機能、および若い哺乳動物における正常で適応性のある社会性の発達のための、単独でのおよび他の物質との組み合わせてのオリゴ糖の治療的使用についての強力な基盤を示す。
【実施例
【0074】
実施例1:ASD対象への2'-FLの投与によって対人社会性が救済される
ASDは、罹患した個体が社会的コミュニケーションおよび相互作用の永続的な欠損(ASDの症状)を有する神経行動障害である。社会的コミュニケーションおよび相互作用に対する2'-FL投与の影響に取り組むために、ASDのマウスモデルを設計し、対人社会性などのASD関連神経行動障害を研究するために実験を実施した。接触行動をスコアリングするために使用されたシステムの描写は、公知の方法、例えば、Harshaw, C. et al. (2014). “Sex Differences in Thermogenesis Structure Behavior and Contact within Huddles of Infant Mice.” Plos One, 9(1), 1-15およびSokoloff G, Blumberg MS. Competition and cooperation among huddling infant rats. Dev Psychobiol. 2001 Sep;39(2):65-75. doi: 10.1002/dev.1030. Erratum in: Dev Psychobiol 2001 Nov;39(3):229によって記述されたものから適応させた。
【0075】
取り組むべき問題は、社会的相互作用が撹乱されたマウスの仔の正常な社会性が、2'-FLを提供することで救済されるかどうかであった。行動の撹乱は、以前に開発および検証された方法を使用する母親の抗生物質処置によって達成した。(a)雌親および仔のハドリングまたは(b)集団中に仔のみを意味する、「アグレゴン」の客観的測定によって、社会性を測定する。
【0076】
マウス実験は、対照群(n = 28匹の仔を含む7組の同腹)、抗生物質処置群(28匹の仔を含む7組の同腹)、および2'-FL処置群(32匹の仔を含む8組の同腹)を含む、22組の母親-同腹仔を伴った。
【0077】
母親を妊娠12日目から抗生物質カクテルで処置し、出産は20日目であった。産後の母親に抗生物質の使用を継続した。2'-FLの処置は、水分摂取を通じて母親および仔へ与えた。マウスは夜行性動物であるため、アグレゴン(社会集団)の平均数を用いて社会性を夜間に測定した。アグレゴンは、他のマウスとハドリングしていない場合にのみ、個々のマウスからなり得、または、雌親を含む1匹または複数の仔、または雌親を含まない2匹以上の仔のいずれかとして定義される集団であり得た。実験の結果を産後7日目に測定した。アグレゴンの数が多いほど、より低い社会性を意味し(1匹でいる時間が長いか、より少数の個体による集団中での時間が長い)、一方、アグレゴンの数が少ないほど、より高い社会性を意味する(より大きな集団中を含めて、個体が他者と過ごす時間が長い)。
【0078】
7日目の夜に、抗生物質処置群(2'-FL無し)は、雌親を含むアグレゴンのみを考慮した場合、41アグレゴンの周辺平均値を有し、対照についての26アグレゴンである周辺平均値よりも有意に(p<0.05)高かった(図1)。2'-FL処置群は、25アグレゴンの周辺平均値で、対照のパターンに従った。実験群によるアグレゴンにおけるこのパターンは、仔のみのアグレゴンについても観察された(p<0.05)。これは、抗生物質処置マウス(雌親およびそれらの子孫)の社会性は対照よりも有意に低かったが、正常な社会性が2'-FLの投与によって救済されたことを意味する。
【0079】
これらのデータは、2'-FLの投与が対象におけるASDの症状を軽減するのに有用であり、それによって、ASDを含むと特徴付けられた個体に、有意な臨床的利益をもたらすことを示している。
【0080】
他の態様
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明するものであり、限定するものではない。他の局面、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0081】
本明細書で言及される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書において引用される全ての米国特許および公開されたまたは未公開の米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において引用される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用されたアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
【国際調査報告】