(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】2-ブロモグルタル酸ジエステルを合成するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/307 20060101AFI20230728BHJP
C07C 69/63 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C07C67/307
C07C69/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502679
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021070022
(87)【国際公開番号】W WO2022013440
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591052505
【氏名又は名称】ゲルベ
【氏名又は名称原語表記】GUERBET
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パラチアン ジャン-ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】セルフ マルティーヌ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC30
4H006AD16
4H006BC10
4H006BC31
4H006BM10
4H006BM73
4H006KA31
(57)【要約】
本発明は、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを調製するための方法であって、
式(BA)のブチロラクトン酸を、酸たとえば、硫酸の存在下に、式ROHのアルコールと反応させることによって、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを形成させ;式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを、ガス状の臭化水素酸をバブリングさせることによって、臭素化することを含む方法に関する。本発明にはさらに、HPLC分析によって測定して90%以上の純度を有する式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを調製するためのプロセスであって、
【化1】
[式中、Rは、(C
3~C
6)アルキル基を表す]
(b)式(BA)のブチロラクトン酸を、式ROHのアルコールと、酸たとえば硫酸の存在下に反応させることによって式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを形成させるステップ;
【化2】
【化3】
;及び
(c)ガス状の臭化水素酸を用いてスパージングすることによって、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを臭素化して、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルとするステップ;
を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップ(b)が、式CH
3COORの酢酸エステルの存在下に実施されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(b)の際に、真空蒸留によって水が除去されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(b)において、式(BA)のブチロラクトン酸及びアルコールROHが、ROH/BAのモル比が2~10の間になるような量で導入されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)の完結時に、前記反応媒体を冷却して15℃未満の温度とし、水を添加した後で放置して、沈降により分離させて、有機相及び分離された水相とを形成させ、次いで前記水相を除去し、前記有機相を真空蒸留により脱水させるか、及び/又は真空下で濃縮してから、ステップ(c)にかけることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(c)が、以下の、
- 前記反応媒体の温度を、5℃~40℃の間に設定するステップ、
- ガス状の臭化水素酸を、ステップ(b)において使用されたブチロラクトン酸(BA)の量を基準にして、1~1.5mol.eq.の間の量で導入するステップ、
- 有利には3時間~8時間の時間をかけて真空蒸留して、前記反応媒体から水を除去するステップ、
- 前記反応媒体の温度を、5℃~40℃の間に戻すステップ、
のステップのサイクルを含み、前記複数のステップのサイクルが、有利には、3~8回繰り返されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
水溶液中でL-グルタミン酸を亜硝酸ナトリウムと反応させることにより、式(BA)のブチロラクトン酸を形成させる第一のステップ(a)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(c)の完結時に得られる反応混合物が、以下の
(d)ステップ(c)の完結時に得られる前記反応混合物を塩基性水溶液に導入するステップであって、前記得られた溶液は、典型的には7.5~9.5の間のpHを有している、ステップ;
(e)ステップ(d)で得られた前記溶液を沈降させることにより分離して、有機相及び分離された水相を形成させ、次いで前記水相を除去するステップ;
(f)ステップ(e)で得られた前記有機相を、65℃~75℃の間の温度に達するまで真空下で濃縮し、それに続けて、真空下で乾燥させるステップ;
(g)場合によっては、濾過するステップ;及び
式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを回収するステップ;
の、追加のステップにかけられることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(c)、(f)、又は(g)の完結時に得られる、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを、臭素塩、たとえばLiBr又はテトラブチルアンモニウムブロミドを添加することによる、さらなるラセミ化ステップにかけることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
Rがn-ブチル基に相当することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(b)と(c)との間で実施される前記真空蒸留操作が、共沸蒸留であることを特徴とする、請求項3~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
下記の式(I)の化合物であって、
【化4】
[式中、Rは、(C
3~C
6)アルキル基、好ましくはブチル基を表す]
HPLC分析による測定で、90%以上の純度を有する、化合物。
【請求項13】
Rがn-ブチル基に相当することを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
その純度が95%以上であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の化合物。
【請求項15】
その純度が97%以上であることを特徴とする、請求項12~14のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-ブロモグルタル酸ジエステルを調製するための新規なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
α-ハログルタル酸及びそれらのエステルは、有機合成における有用な基礎的な構成単位であり、それによって、錯体分子の中にα-グルタル酸フラグメントを、単純な求核置換反応を介して組み入れることが可能となる。
【0003】
欧州特許第1 931 673号明細書には、PCTAから誘導された、新規なガドリニウム錯体が記載されており、それらは、医用画像形成法の分野における造影剤としての用途を有している。それらの錯体のいくつか、とりわけガドピクレノールの側鎖には、α-グルタル酸フラグメントが含まれている。欧州特許第1 931 673号明細書に記載されているガドピクレノール(その立体異性体の全ての混合物の形態にある)の合成には、2-ブロモグルタル酸ジエチルを用いたピクレン(pyclene)のアルキル化が含まれ、その結果中間体のヘキサエステルが得られ、次いでそれを加水分解して相当するヘキサ酸とし、次いでそれを、ガドリニウムの供給源を用いて錯体化させる。欧州特許第1 931 673号明細書に記載されたプロセスに従って調製したガドピクレノールは、最終的には、ガドリニウムのヘキサ酸錯体を3-アミノ-1,2-プロパンジオールと反応させることにより得られる。
【化1】
【0004】
2-ブロモグルタル酸ジエチル(以後においては、EBGと呼ぶ)は、比較的に不安定な化合物であって、温度の影響又は水の存在下で、時間の経過と共に分解する。より具体的には、この特定のα-ハログルタル酸エステルは、加水分解されたり、或いは環化されたりして、それにより臭素原子を失う傾向がある。商業的なEBGを精製したり、或いは改良された純度でそれを得るための新規な合成経路を開発したり、その分解を防止したりするための試みがなされてきたが、いまだに成功していない。
【0005】
したがって、本願発明者らは、EBGよりも安定性が高く、それと同時に、たとえばガドピクレノールの合成を達成するのに十分な反応性を有するような、EBGに代わるものを探索してきた。したがって、EBGに比較して改良された安定性の基準では合格している、グルタル酸のクロロ誘導体は、それらが十分な反応性を有していないという点で、満足のいく代替え物とはなりえない。ヨード誘導体は、それ自体に関する限り、それらのブロモ類似体よりは反応性が高いが、より不安定でもある。本願発明者ら実施した探索研究により、特にガドピクレノールの合成におけるEBGの代替え物として、2-ブロモグルタル酸ジ-(C3~C6)-アルキル化合物を選択することが可能となった。しかしながら、それに相当する市販されている製品は、たとえばガドピクレノールのような、ヒトに投与することを目的とした医薬用製品の調製で使用するのに十分な、高いレベルの純度は有していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、十分なレベルの純度でそれらを得ることが可能で、且つ工業的なスケールで効率よく実施することが可能な、2-ブロモグルタル酸ジ-(C3~C6)-アルキル化合物を調製するための新規なプロセスを開発する必要がある。
【0007】
今のところ、2-ブロモグルタル酸ジエステルの合成が文献に記載されることは、極めて稀である。旧チェコスロバキア特許第209266B1号明細書(特許権付与、1983年)が、本願発明者らの知る限りでは、これらの化合物の調製を述べている唯一の文献である。それは、一般的には、α-ハログルタル酸又はそのアルキルジエステルの式R’O2CCH2CH2CH(X)CO2R”(式中、R’及びR”は(C1~C5)アルキル基であり、Xは、臭素原子又は塩素原子に相当する)を調製するためのプロセスに関するが、しかしながらそこで強調されているのは明らかに、クロロ誘導体の調製である。前記誘導体は、アンチモンベースの触媒の存在下に、グルタル酸ジエステルを塩素化することにより得られる。前記文書では、記載されている方法により、従来技術のプロセスにおけるよりも良好な選択率で、α位でのモノ塩素化を実施することが可能となると断言しているものの、かなりの量のβ-クロロ又はα-ジクロロ及びトリクロロ誘導体が形成され、α-モノクロロ反応生成物についての選択率が、そのアンチモンベースの触媒の素性に依存して、63.16%~86.1%の間の範囲であり、その出発物質のエステルそのものの転化率のレベルが、86.10%~98.9%の間で振れているという事実が残ったままである。その出発物質の転化率のレベルが、最高となる条件では、得られるα-モノクロロ反応生成物が、わずか79%の選択率でしかないということに注目すべきである。このプロセスのまた別の重大な欠陥はさらに、極めて毒性の強いアンチモンを使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、次の式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを調製するためのプロセスに関する:
【化2】
[式中、Rは、(C
3~C
6)アルキル基を表す]
これには以下のステップが含まれる:
(b)式(BA)のブチロラクトン酸を、式ROHのアルコールと、酸たとえば硫酸の存在下に反応させることによって式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを形成させるステップ;
【化3】
【化4】
及び
(c)ガス状の臭化水素酸を用いてスパージングすることによって、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを臭素化して、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルとするステップ。
【0009】
本発明の目的のためには、「(C3~C6)アルキル基」という用語は、3~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素ベースの鎖を意味している。例としては、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、又はヘキシル基、特にはn-ブチル基(ブチルとも呼ばれる)を挙げることができる。
【0010】
式(BA)のブチロラクトン酸は、カルボキシ-γ-ブチロラクトンとも呼ばれる。
【0011】
一つの好ましい実施態様においては、Rが、ブチル基に相当し、本発明によるプロセスによって、式(BBG)の2-ブロモグルタル酸ジブチル(2-ブロモ-1,5-ペンタン二酸ジブチル(CAS No:104867-13-2)とも呼ばれる)を調製することが可能となる。
【化5】
【0012】
一つの具体的な実施態様においては、本発明によるプロセスには、水溶液中でL-グルタミン酸を亜硝酸ナトリウムと反応させることにより、式(BA)のブチロラクトン酸を形成させる、第一のステップ(a)が含まれる。
【0013】
ステップ(a)
この第一のステップは、一般的に入手可能な出発物質であるL-グルタミン酸から、当業者には周知である反応によって、ブチロラクトン酸(BA)を形成させることからなっている。
【0014】
L-グルタミン酸を水の中に導入するが、使用される水の質量の、導入されるL-グルタミン酸の質量に対する比率は、典型的には1より大、とりわけ1.5より大、典型的には2に等しい。水の密度は1g/mLに等しく、以後の記述においては、水(又は、類似的に、各種その他の溶媒又は溶液)の質量の、溶質の質量に対するそのような比率は、「体積当量(volume equivalent)」又はその略称として「vol.eq.」の表現で表されるであろう。
【0015】
このプロセスにおいて使用する水は、少なくとも、脱イオン水と同等の品質の水であって、たとえばα-クロロ不純物のような不純物の生成を避けるのが好ましい。特には、それが脱イオン水又は注射用水(WFI)であればよい。
【0016】
そのようにして得られた水溶液を、次いで、典型的には、撹拌しながら加熱して、有利には40℃~70℃の間、特には45℃~65℃の間、好ましくは50℃~60℃の間、とりわけ55℃の温度とする。
【0017】
次いで、先に設定した温度を保持しながら、亜硝酸ナトリウム水溶液を、L-グルタミン酸溶液に、好ましくは撹拌しながら徐々に添加する。
【0018】
前記亜硝酸ナトリウム水溶液は、それに含まれる亜硝酸ナトリウムの質量を基準にして、使用される水の量が、たとえば0.8~5.0vol.eq.の間、とりわけ1.0~3.0vol.eq.の間、典型的には2vol.eq.となるようにする。
【0019】
亜硝酸ナトリウムは、とりわけ、化学量論比よりも少し過剰になるようにして、L-グルタミン酸溶液の中に導入するのがよい。そうすると、亜硝酸ナトリウムとして導入される物質の量の、L-グルタミン酸として最初に導入される物質の量に対する比率が、1より大となるが、典型的には1.5未満、とりわけ1.3未満、有利には1.2未満とする。別の言い方をすれば、導入される亜硝酸ナトリウムの量が、最初に導入されるL-グルタミン酸の量(これ自体が、1モル当量に相当する)を基準にして、1モル当量(mol.eq.,)より大であるが、典型的には1.5mol.eq.未満、とりわけ1.3mol.eq.未満、有利には1.2mol.eq.未満である。
【0020】
亜硝酸ナトリウム及びL-グルタミン酸を含む反応混合物を、次いで、典型的には、溶液の中に存在する各種の化合物が溶解するまでの時間、典型的には2時間~10時間の間、好ましくは2時間~5時間の間、有利には40℃~70℃の間、特には45℃~65℃の間、好ましくは50℃~60℃の間、とりわけ55℃の温度で撹拌下に維持する。
【0021】
次いでそれを、有利には10℃~45℃の間、好ましくは10℃~35℃の間、特には15℃~30℃の間、好ましくは20℃~25℃の間の温度にまで冷却し、次いで、酸、たとえば好ましくは33%m/mの塩酸の溶液を添加することによって中和するが、そこで、塩酸として導入される物質の量が近いか、典型的には等しい。したがって、塩酸として導入される物質の量は、最初に導入されたL-グルタミン酸の量を基準にして、1モル当量(mol.eq.,)より大ではあるが、典型的には1.5mol.eq.未満、とりわけ1.3mol.eq.未満、有利には1.2mol.eq.未満である。
【0022】
そのようにして中和された反応混合物を次いで、典型的には、真空下で、最高で50℃より高い温度、たとえば60℃まで温度を徐々に上げて、濃縮する。
【0023】
以後の記述においては、「真空下」という表現は、10~500mbarの間、とりわけ10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力を指すが、その温度は、適切に特定される。
【0024】
ステップ(a)の完結時の、粗製のブチロラクトン酸(BA)を得るための減圧濃縮操作に関しては、これは、典型的には、100mbar未満の圧力で、温度は徐々に、60℃に達するまで上げてゆくことにより、実施される。
【0025】
ステップ(a)と(b)とは、ワンポットの実施態様で、すなわち単離又は精製の中間ステップなしで実施するのが好ましい。
【0026】
ステップ(b)
ステップ(b)は、式(BA)のブチロラクトン酸を、式ROHのアルコールと反応させることによる、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルの形成を目的としている。
【化6】
【0027】
一つの好ましい実施態様においては、ブチロラクトン酸(BA)が先に述べたステップ(a)から得られ、精製すること無く、次いでステップ(b)で採用される。
【0028】
このステップの間に、そのラクトンの開環と、二つのエステル官能基-C(O)ORの生成とが、並行的又は連続的に起きる。
【0029】
アルコールROHは、ブチロラクトン酸に対して過剰に導入するのが好ましい。したがって、導入されるROHの量は、最初に導入されたブチロラクトン酸の量を基準にして、好ましくは2モル当量(mol.eq.,)以上、とりわけ4mol.eq.以上、有利には2~10mol.eq.の間、特には4~10mol.eq.の間、典型的には5mol.eqに等しい。ステップ(a)からブチロラクトン酸が得られた場合、導入されるROHの量は、最初に導入されたL-グルタミン酸の量に対しての表現であって、mol.eq.の数字は、未変化のままで示されるということに注意されたい。
【0030】
一つの好ましい実施態様においては、ステップ(b)を、式CH3COORの酢酸エステルの存在下に実施する。そこで、導入される酢酸エステルの量は、導入されるアルコールROHの量を基準にして、典型的には0.1~0.7mol.eq.の間、とりわけ0.2~0.5mol.eq.の間、有利には0.3~0.4mol.eq.の間である。
【0031】
ステップ(b)の間に起きる、二つのエステル官能基-C(O)ORの生成は、酸触媒作用により実施するのが有利となり得る。したがって、ステップ(b)は、触媒量の酸、たとえば硫酸の存在下に実施するのが好ましい。そのような条件下では、ラクトンが容易に開環して、式(HG)の2-ヒドロキシグルタル酸が形成され、それに続けて、そのカルボン酸官能基のアルコールROHとのエステル化が起きる。
【化7】
【0032】
したがって、本発明によるプロセスのステップ(b)にはさらに、式(HG)の2-ヒドロキシグルタル酸と式ROHのアルコールとの反応による、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルの生成も含まれる。
【0033】
それとは逆に、ブチロラクトン酸(BA)が、開環するより前に、第一のエステル化反応を行って、下記の式(BR)のエステル化されたラクトンを形成することも可能である。
【化8】
【0034】
したがって、本発明によるプロセスのステップ(b)にはさらに、式(BR)のエステル化されたラクトンと式ROHのアルコールとの反応による、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルの生成も含まれる。
【0035】
当業者にとっては明瞭なことであろうが、本発明によるプロセスを、ステップ(b)のための出発物質として、ブチロラクトン酸(BA)に代えて、式(HG)の2-ヒドロキシグルタル酸又は式(BR)のエステル化されたラクトンを使用して実施することも可能である。
【0036】
一つの好ましい実施態様においては、ステップ(b)の反応混合物の中に存在する、典型的にはインシッツで生成した水を、2%(w/w)未満、好ましくは1.5%(w/w)未満、有利には0.8%(w/w)未満の水の質量分率を有する反応媒体が得られるまで、真空蒸留により除去する。
【0037】
ステップ(b)の前記反応混合物にはさらに、とりわけ、式(BA)のブチロラクトン酸、式ROHのアルコール、及び有利には、式CH3COORの酢酸エステルが含まれる。
【0038】
その真空蒸留が、真空共沸蒸留であれば有利である。
【0039】
本発明の目的のためには、「真空共沸蒸留」という用語は、10~500mbarの間、とりわけ10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力で実施される共沸混合物の蒸留を意味しており、それによって、その共沸混合物の成分の一つを除去することが可能となる。
【0040】
本発明の場合においては、その共沸混合物が、水/ROH/CH3COORの三元共沸混合物であり、その真空共沸蒸留によって、その混合物から水を除去することが可能となる。
【0041】
一つの好ましい実施態様においては、Rが、ブチル基(Bu)に相当し、その共沸混合物が、水/BuOH/CH3COOBuの三元混合物である。この共沸混合物は、大気圧で、85℃~95℃の間、より精確には87℃~93℃の間、さらにより精確には89℃~91.5℃の間、典型的には89.4℃に等しい沸点を特徴としている。
【0042】
水/BuOH/CH3COOBuの三元混合物の真空共沸蒸留は、典型的には10~500mbarの間、とりわけ10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~125mbarの間の圧力、及び20℃~100℃の間、とりわけ30℃~70℃の間の温度で実施される。
【0043】
一つの好ましい実施態様においては、ステップ(b)の完結時に、その反応媒体を冷却して、15℃未満、とりわけ10℃未満、特には0℃~5℃の間の温度とする。
【0044】
この冷却ステップは、典型的には、好ましくは先に述べたような、反応混合物の真空共沸蒸留である、真空蒸留の後で実施される。
【0045】
一つの好ましい実施態様においては、ステップ(b)の完結時に、その冷却した反応媒体を、水を添加した後で放置して、沈降により分離させて、有機相と分離した水相とを形成させ、次いで前記水相を取り除く。
【0046】
この操作は、有利には数回、典型的には2~5回の間、特には3回実施する。
【0047】
添加する水の量は、最初に使用されたブチロラクトン酸の質量を基準にして、たとえば、0.1~2vol.eq.の間で表される。ブチロラクトン酸がステップ(a)から来る場合、添加される水の量は、最初に導入されたL-グルタミン酸の質量に対して表され、vol.eq.の数字は、未変化のままであることに注意されたい。
【0048】
水の添加/沈降操作による分離を数回実施する場合、最初のサイクルで添加する水の量は、典型的には1~2vol.eq.の間であり、そしてそれ以降のサイクルで添加する水の量は、典型的には0.1~0.5vol.eq.の間である。
【0049】
ステップ(b)の完結時に得られる反応媒体、好ましくは水の添加/沈降操作による分離の後で回収される有機相には、典型的には、アルコールROH中の溶液中に、主たる化学種としての式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステル、さらには式(BR)のエステル化されたラクトンが、有利には式CH3COORの酢酸エステルとの混合物として含まれる。
【0050】
一つの好ましい実施態様においては、Rがブチル基(Bu)に相当し、ステップ(b)の完結時に得られる反応媒体、好ましくは水の添加/沈降操作による分離の後で回収される有機相には、ブタノールBuOHの中の溶液中に、典型的には、主たる化学種としての式(BHG)の2-ヒドロキシグルタル酸ジブチル、及びさらには式(BBE)のブチロラクトン酸ブチルエステルが、有利には酢酸ブチルCH
3COOBuとの混合物として含まれる。
【化9】
【0051】
一つの好ましい実施態様においては、ステップ(b)の完結時に得られる反応媒体、好ましくは水の添加/沈降操作による分離の後で回収される有機相が、次いで、10~500mbarの間、とりわけ10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力で、真空蒸留により脱水される。
【0052】
これが、水/ROH/CH3COOR混合物、特には水/BuOH/CH3COOBuの真空共沸蒸留であるのが有利であり、真空共沸蒸留によって、その混合物から水を除去することが可能となる。
【0053】
一つの好ましい実施態様においては、ステップ(b)の完結時に得られる反応媒体、好ましくは水の添加/沈降操作による分離の後で回収される有機相が、有利には、10~500mbarの間、特には10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力での真空蒸留により脱水され、次いでステップ(c)にかける前に、真空下で濃縮されて、ROH/CH3COORの混合物、特にはBuOH/CH3COOBuの幾分かが除去される。
【0054】
除去される前記混合物の量は、最初に使用されたブチロラクトン酸の質量を基準にして、又はそのブチロラクトン酸がステップ(a)から得られたものである場合には、最初に導入されたL-グルタミン酸の質量を基準にして、典型的には1~2vol.eq.の間である。
【0055】
以後の記述においては、先に述べた、冷却、水の添加/沈降による分離、真空蒸留による脱水、及び/又は真空下での濃縮の操作は、それらが実施された場合には、ステップ(b)の一体の部分と考えるべきである。
【0056】
ステップ(b)と(c)とは、ワンポットの実施態様で、すなわち単離又は精製の中間ステップなしで実施するのが好ましい。
【0057】
ステップ(c)
ステップ(c)は、ステップ(b)で得られた式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを臭化することによる、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルの形成を目的としている。
【0058】
ステップ(b)の詳細な記述から当業者にとっては明瞭なことであろうが、ステップ(b)の完結時に得られる反応媒体には、典型的には、主たる化学種としての式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステル、それと共に式(BR)のエステル化されたラクトンが、アルコールROH中の溶液の中に、有利には式CH3COORの酢酸エステルとの混合物として含まれている。
【0059】
したがって、ステップ(c)は、式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルを臭素化させることによる、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルの形成を目的としてはいるが、式(BR)のエステル化されたラクトンとアルコールROHとの反応による式(II)の2-ヒドロキシグルタル酸ジエステルの生成は、典型的には、このステップの間でも続くことが可能であって、その反応媒体の中に臭素化剤を導入することによって、ラクトンの開環が、より容易となる。
【0060】
ステップ(c)は、典型的には、反応媒体の温度を、5℃~40℃の間、有利には10℃~30℃の間、特には20℃の数値に設定することにより、開始される。
【0061】
次いで、ガス状の臭化水素酸を、その反応媒体の中に、スパージングにより、徐々に導入する。
【0062】
一つの好ましい実施態様においては、導入されるガス状の臭化水素酸の量は、ステップ(b)において使用されたブチロラクトン酸の量を基準にするか、又はステップ(a)において最初に導入されたL-グルタミン酸の量を基準にして、典型的には1~1.5mol.eq.の間、とりわけ1.2~1.3mol.eq.の間である。
【0063】
一つの好ましい実施態様においては、ガス状の臭化水素酸を導入した後で得られる反応媒体を、次いで、典型的には10~500mbarの間、とりわけ10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力で、典型的には3時間~8時間の間、有利には5時間~7時間かけて、真空蒸留により脱水させる。
【0064】
その真空蒸留が、水/ROH/CH3COORの混合物、特には水/BuOH/CH3COOBuの真空共沸蒸留であるのが、有利である。そのような真空共沸蒸留によって、その混合物から水を除去することが可能となる。
【0065】
次いで、反応媒体の温度を、典型的には5℃~40℃の間、有利には10℃~30℃の間、特には20℃の数値に戻す。
【0066】
一つの好ましい実施態様においては、先に述べた操作のサイクル、すなわち、反応媒体の温度を5℃~40℃の間の数値に設定し;ステップ(b)において使用されたブチロラクトン酸の量を基準にするか、又はステップ(a)で最初に導入されたL-グルタミン酸の量を基準にして、典型的には1~1.5mol.eq.の間の量でガス状の臭化水素酸を導入し;3時間~8時間の時間をかけて真空蒸留をして、反応媒体から水を除去し;そして、反応媒体の温度を5℃~40℃の間の値に戻す;ということを、3~8回、好ましくは4~6回繰り返す。
【0067】
ステップ(c)の完結時に得られる反応媒体には、典型的には、アルコールROH中の溶液の中に、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルが、有利には式CH3COORの酢酸エステルとの混合物として含まれる。
【0068】
一つの好ましい実施態様においては、Rがブチル基に相当し、ステップ(c)の完結時に得られる反応媒体には、典型的には、ブタノールBuOH中の溶液中に、式(BBG)2-ブロモグルタル酸ジブチルが、有利には酢酸ブチルCH3COOBuとの混合物として含まれる。
【0069】
別な方法として、共沸蒸留の際に、臭化水素酸をインシッツで生成させることも可能である。この代替え法においては、ガス状の臭化水素酸に代えて、臭素の塩、典型的にはNaBr又はKBrが、反応媒体の中に導入され、次いで強酸、たとえば濃硫酸(>96%)が添加される。
【0070】
当業熟練者ならば、それに続くプロセスの処理ステップを採用し、特には存在している塩、たとえばこの代替えの実施態様においては硫酸塩を除去する方法を知っているであろう。
【0071】
ステップ(d)~(e)
本発明によるプロセスの一つの好ましい実施態様においては、ステップ(c)の完結時に得られる反応混合物を、以下の追加のステップにかける:
(d)ステップ(c)の完結時に得られる反応混合物を塩基性水溶液に導入するステップ(そのようにして得られた溶液は、典型的には7.5~9.5の間のpHを有している);
(e)ステップ(d)で得られた溶液を沈降させることにより分離して、有機相及び分離された水相を形成させ、次いで前記水相を除去するステップ;
(f)ステップ(e)で得られた有機相を、65℃~75℃の間の温度に達するまで真空下で濃縮し、それに続けて、真空下で乾燥させるステップ;
(g)場合によっては、濾過をして、
式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを回収するステップ。
【0072】
一つの代替えの実施態様においては、ステップ(d)及び(e)は実施せずに、ステップ(c)の完結時に得られる反応混合物について、直接ステップ(f)を実施し、そして場合によっては、その後で濾過ステップ(g)を続ける。
【0073】
ステップ(d)を、とりわけ、ステップ(c)の完結時に得られる反応混合物を、重炭酸塩(炭酸水素塩とも呼ばれる)のイオンの水溶液に添加することにより実施してもよいが、採用される重炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウム及び水の量は、ステップ(d)の完結時に、溶液が、典型的には7.5~9.5の間、特には8~9の間のpHを有していて、ステップ(e)の際に、水相と有機相との間の分離が実施できるように、当業熟練者によって決めることができる。
【0074】
ステップ(e)において得られる有機相、又はステップ(c)の完結時に得られる反応混合物は、次いで、ステップ(f)において、典型的には10~500mbarの間、とりわけ10~350mbarの間、好ましくは10~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力で、50℃より高い、特には60℃より高い、たとえば70℃の温度に達するまで、真空下で濃縮されて、ROH/CH3COOR混合物の幾分かが除去され、そして次いで、典型的には10~350mbarの間、好ましくは50~150mbarの間、特には50~100mbarの間の圧力で、温度が50℃より高い、特には60℃より高い、たとえば70℃に達するまで、真空下で乾燥される。
【0075】
このステップに続けて、濾過ステップ(g)を実施してもよいが、それは、当業者に周知の各種の方法を使用して実施することができる。
【0076】
本発明によるプロセスによって、式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルを、85%より大、有利には90%より大の収率で、そしてHPLC分析で測定して、90%以上、特には93%以上、典型的には95%以上、好ましくは97%以上、とりわけ98%以上、有利には99%以上の純度で得ることが可能となる。
【0077】
一つの好ましい実施態様においては、Rがブチル基に相当し、そして本発明によるプロセスによって、式(BBG)の2-ブロモグルタル酸ジブチルを、上で述べた収率及び純度で、調製することが可能となる。
【0078】
したがって、本発明はさらに、HPLC分析で測定して、90%以上、特には93%以上、典型的には95%以上、好ましくは97%以上、とりわけ98%以上、有利には99%以上の純度を有する、次の式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルに関する:
【化10】
[式中、Rは、(C
3~C
6)アルキル基、好ましくはブチル基を表す]
【0079】
ラセミ化ステップ
式(I)の2-ブロモグルタル酸ジエステルは、各種の鏡像異性体過剰率で得られる可能性がある。それがラセミ体でない場合には、当業者に周知の方法に従って、臭素塩、たとえばLiBr又はテトラブチルアンモニウムブロミドを使用する、追加のラセミ化ステップで、それをラセミ化させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【発明を実施するための形態】
【0081】
実施例
以下の略称を使用している:
【0082】
【0083】
I:2-ブロモグルタル酸ジブチルの合成
I.1:プロトコル
147.1g(1mol)のL-グルタミン酸を、294gの水の中に溶解させる。この溶液を加熱して、55℃±5℃とする。152gの水の中に溶解させた76g(1.1mol)の亜硝酸ナトリウムを、徐々に添加する。55℃±5℃で少なくとも2時間、溶解が完了するまで、この接触状態を維持し、次いでその溶液を冷却して、20~25℃とする。約122g(1.1mol)の33%塩酸を用いて中和してから、その媒体を、真空下(100mbar未満)で、温度を徐々に60℃になるまで上げながら濃縮する。
【0084】
得られたブチロラクトン酸を、206gの酢酸ブチル及び1.47g(0.015mol)の硫酸の存在下、共沸蒸留下及び真空下で、370g(5mol)のブタノールを用いてエステル化する。次いでその反応媒体を冷却して0~5℃とし、221gの水の中に投入する。下側の水相を除去し、その有機相を、30gの水を用いて、2回以上洗浄する。得られた有機相には、ヒドロキシグルタル酸ブチル/ブチロラクトンのブチルエステルの混合物(HPLC s/s:90/10)が含まれる。その混合物を、50~100mbarの下での共沸蒸留により脱水し、195gの溶媒に相当する量を除去することにより、濃縮する。
【0085】
臭素化は、以下の操作を連続して5回実施することにより実施される:20±10℃で、共沸蒸留の真空下で少なくとも5時間、100g(1.2mol)の臭化水素酸をスパージングする。その反応媒体を、約60gの水の中に溶解させた6gの炭酸水素カリウムの水溶液を用いて洗浄する。水相を廃棄し、水を用いてその有機相を洗浄してから、真空下で、温度が約70℃に達するまで、濃縮する。BBGが、90%の収率で、そしてHPLCで測定して97.1% s/sの純度で得られる。
【0086】
I.2:BBGのキャラクタリゼーション
- 沸点:115~120℃/0.2~0.3mmHg、すなわち、約380℃(大気圧)。
- NMR(JEOLの500MHz機器で実施):
1H NMR(CDCl
3,400MHz)4.34-4.39(m,1H,Br-CH-COO),4.16-4.22(m,2H,Br-CH-COOCH
2),4.06-4.11(m,2H,CH
2-COOCH
2),2.50-2.59(m,2H,OOC-CH
2-CH
2-CHBr),2.25-2.43(m,2H,OOC-CH
2-CH
2-CHBr),1.55-1.69(m,4H,CH
2-CH
2-CH
2),1.34-1.45(m,4H,CH
3-CH
2-CH
2),0.92-0.96(m,6H,CH
3-CH
2-CH
2)
- 質量分光測定
分子中での臭素の存在は、Waters I-Class UHPLC機器を備えたWaters QDa質量分析計を使用して実施した質量スペクトルにより確認された。質量スペクトルの記録は、正のエレクトロスプレーモードで、コーン電圧10Vで実施した。
得られた質量スペクトルを
図1に示す。
差が2である二重線は、その分子中における臭素の存在を裏付けている。
323~325での質量は、親ピークに相当し、249~251での質量は、ブトキシドの切断に相当する。
【0087】
I.3.:HPLC分析
・ 装置:
- HPLC機器は、ポンピング系、インジェクター、クロマトグラフィーカラム、UV検出器、及びデータステーションからなっている。
- Spherisorb ODS 2、250×4.6mm - 5μmカラム。
- 96%硫酸、Suprapur(登録商標)(Merck、1.00714又は等価物)。
- アセトニトリル(HPLCグラジエントグレード、J.T Baker、参照番号8143又は等価物)。
- 脱イオン水(Elga HPLCグレード、又は等価物)。
【0088】
・ 方法:
- 移動相:
経路A:100%アセトニトリル
経路B:0.1%v/v硫酸水溶液
- 試料の調製:
0.2gの分析対象のBBGを20mLのメスフラスコの中に入れ、それに続けて、十分な量のアセトニトリルを加えて、20mLの溶液とする。
【0089】
- 分析条件:
【0090】
【0091】
- グラジエント:
【0092】
【0093】
II.:2-ブロモグルタル酸ジブチルのラセミ化
その合成の間、不斉炭素はその立体配置を保持し、臭素化の際には部分的にラセミ化される。典型的には、50%~80%の範囲の鏡像異性体過剰率を有するBBGが得られる。得られたBBGがラセミ体でない場合には、臭素塩を使用してそれをラセミ化させることが可能である。
【0094】
II.1.:LiBrの使用
1mol%のLiBrを用い、60℃で2時間接触させることによる、BBGのラセミ化
25℃で、0.1M重炭酸ナトリウム溶液の2×2重量当量を用いて、ラセミ体のBBGを洗浄。
【0095】
真空下(圧力:30mbar以下)、反応媒体の温度70℃以下で、0.5重量当量の水を用いて洗浄。
【0096】
このプロセスを、3418gのBBG及び9.22gのLiBrに適用して、97.9%の収率を得た。
【0097】
キラルHPLCのモニタリングを実施して、ラセミ化を達成した。
【0098】
・ 装置:
- HPLC装置、UV検出器付き。
- Chiralpak IC-5μm-250×4.6mmカラム(ダイセル(Daicel)製)
【0099】
・ 方法:
- 移動相:95%ヘプタン/5%イソプロピルアルコール
- 試料の調製:
50mgの分析対象のBBGを、10mLのメスフラスコの中に入れ、それに続けて十分な量のヘプタンを加えて、10mLの溶液とする。
- 分析条件:
順相HPLC、移動相の溶出:アイソクラチックモード。
【0100】
【0101】
- 鏡像異性体過剰率の計算:
%ee=(ピーク面積1-ピーク面積2)/(ピーク面積1+ピーク面積2)×100
【0102】
【0103】
II.2.:TBABの使用
LiBrの場合と同じ条件下で、TBABを用いても、溶媒を使用せず、室温で、ラセミ化が可能であることが分かった。
【0104】
3.2gのTBABを、323gのBBGに添加する。その媒体を少なくとも5時間撹拌すると、eeが1%未満に達する。150mLの水を用いて2回続けて洗浄することにより、TBABを除去する。真空下、70℃未満の温度で、BBGを濃縮する。
【国際調査報告】