(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】5-メチルフォレート産生微生物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230728BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230728BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230728BHJP
C12P 13/14 20060101ALI20230728BHJP
C12N 9/78 20060101ALI20230728BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12P13/14
C12N9/78
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502682
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 IB2021055845
(87)【国際公開番号】W WO2022013663
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522073700
【氏名又は名称】チーフォン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chifeng Pharmaceutical Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】#1, Chiyao Road, Chifeng Hongshan New and High-Tech Industrial Development Zone, Hongshan District, Chifeng, Inner Mongolia 024000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミンガン シー
(72)【発明者】
【氏名】シン シオン
(72)【発明者】
【氏名】ジア スン
(72)【発明者】
【氏名】ジン ヅゥオ
(72)【発明者】
【氏名】ユンチョン シァ
(72)【発明者】
【氏名】ヅァイリン ヂュウ
(72)【発明者】
【氏名】ヂーガン ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】グオイン ヂャン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ブラジッチ
(72)【発明者】
【氏名】ティナ コゲイ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴル コセッチ
(72)【発明者】
【氏名】ミリヤン シュヴァゲリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤカ ホルヴァト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フイス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA19X
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4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA79X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA17
4B065CA18
4B065CA27
(57)【要約】
本発明は、a)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドの発現および/または活性が、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変され、b)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現するように(さらに)改変され、c)5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの酵素)の発現レベルが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変され、かつ/またはd)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの発現および/または活性が、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように(さらに)改変されている5-メチルフォレート産生微生物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素の発現レベルが、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように改変され、かつ/または5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性が、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、遺伝子組換え微生物。
【請求項2】
5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素の発現レベルが、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように改変されている、請求項1記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項3】
前記5-メチルフォレートの生合成に関与する酵素が、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチド、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチド、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチド、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチド、および5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択される、請求項1または2記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項4】
5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように改変されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項5】
前記5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素である、それぞれのポリペプチドが、前記遺伝子組換え微生物に対して異種である、請求項1から4までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項6】
5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性が、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項7】
a)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性が、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して減少し、かつb)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現するように改変されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項8】
細菌である、請求項1から7までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項9】
バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)種の細菌である、請求項1から8までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物。
【請求項10】
フォレート、その前駆体または中間体を調製する方法であって、i)請求項1から9までのいずれか1項記載の遺伝子組換え微生物を好適な培養条件下にて培養培地中で培養し、前記フォレート、その前駆体または中間体を含有する発酵産物を得ることと、ii)任意に前記フォレート、その前駆体または中間体を分離および/または精製することとを含む、方法。
【請求項11】
前記フォレートが、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式I:
【化1】
の化合物である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記フォレートが、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式II:
【化2】
の化合物である、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記フォレートが式IIa:
【化3】
の化合物である、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
遺伝子組換え微生物を作製する方法であって、下記工程(a)および(b):
(a)5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素の発現レベルを、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して増加させる工程、ならびに
(b)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性を、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程
のいずれか1つを含む、方法。
【請求項15】
下記工程(c)および(d):
(c)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性を、その改変を有しないことを除いて同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、ならびに
(d)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現させる工程
をさらに含む、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー工学の分野、特に5-メチルフォレート、例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート(5-メチル-THF)を産生する微生物、ならびにその調製および使用に関する。より具体的には、本発明は、a)5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの酵素)の発現レベルが、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように改変され、b)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように(さらに)改変され、c)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように(さらに)改変され、かつ/またはd)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現するように(さらに)改変されている、5-メチルフォレート産生微生物、例えば5-メチルフォレート産生細菌を提供する。
【0002】
発明の背景
フォレートは、葉酸およびその多数の誘導体の総称であり、これらは酸化状態、プテリジン環の1炭素置換、およびγ-結合型グルタメート残基の数が異なる(
図1に示す)。フォレートのプテリジン部分は、完全に酸化(葉酸)、または還元型7,8-ジヒドロフォレート(DHF)、または5,6,7,8-テトラヒドロフォレート(THF)の3つの酸化状態で存在し得る。THFは、N5もしくはN10位に付着するか、またはこれらの位置の架橋により付着するC1基を受容、転移および供与する補酵素活性型のビタミンである。C1基の酸化状態も異なり、フォレートは、ホルメート(5-ホルミル-THF(5-FTHFまたはフォリン酸)、10-ホルミル-THF、5,10-メテニル-THFおよび5-ホルムイミノ-THF)、メタノール(5-メチル-THF;5-MTHF)またはホルムアルデヒド(5,10-メチレン-THF)の誘導体として存在する。加えて、天然に存在する殆どのフォレートは、γ-結合型ポリグルタメートコンジュゲートとして存在する。
【0003】
葉酸(プテロイル-L-グルタミン酸)は、自然界には存在しない合成化合物である。葉酸は、補酵素としては活性でなく、代謝的に活性なTHF型に変換されるには、細胞内で幾つかの代謝段階を経る必要がある。しかしながら、葉酸は商業的に最も重要なフォレート化合物であり、化学合成により工業的に生産される。哺乳動物は、フォレートを合成することができず、正常レベルのフォレートを維持するため食事補給に依存する。低フォレート状態は、低い食事摂取量、摂取したフォレートの吸収不良、および遺伝的欠陥または薬物相互作用によるフォレート代謝の変化に起因する可能性がある。殆どの国で、葉酸サプリメントまたは強化食品によるフォレートの推奨摂取量が定められている。食事補給に使用されるフォレートとしては、葉酸、フォリン酸(5-FTHF、ロイコボリン)または5-MTHFが挙げられる(Scaglione and Panzavolta 2014)。5-MTHFの2つの塩形態が現在、サプリメントとして生産されている。Merck Milliporeは、5-MTHFのカルシウム塩であるMetafolin(登録商標)を生産しており、これは天然に存在する主要な形態のフォレートの安定した結晶形である。Gnosis S.p.A.は、商標名Quatrefolic(登録商標)の(6S)-5-MTHFのグルコサミン塩を開発し、特許を取得している。
【0004】
現在、葉酸は主に化学合成によって工業的に生産されているが、他のビタミンとは異なり、現在の細菌株によって産生される葉酸の低い収率から、工業規模での葉酸の微生物生産は開発されていない(Rossi et al., 2016)。化学的に生産された葉酸は、天然に存在する分子ではないが、ヒトはジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)酵素の作用により、これを生物学的に活性な形態のフォレートへと代謝することができる。幾つかの理由から、フォレートの商業生産のために化学合成法を微生物発酵に置き換えることが支持される:第一に、還元型の葉酸を微生物によって生産することができ、ヒトはこれをより効率的に用いることができる。最も重要なことには、単一段階の発酵プロセスは、原則として多段階の化学プロセスよりもはるかに効率的であり、環境に優しい可能性がある。
【0005】
これまでの研究は、微生物におけるフォレート/葉酸産生を解明するために行われている。フォレートの産生のための微生物用途の殆どは、発酵乳製品の栄養強化およびフォレート産生プロバイオティクスに限定される。フォレートの合成を改善するための培養条件の最適化も行われ、約150μg/gの葉酸収率が達成されている(Hjortmo et al., 2008;Sybesma et al., 2003b)。幾つかの研究では、乳酸菌(Sybesma et al., 2003a)、酵母(Walkey et al., 2015)または糸状真菌(Serrano-Amatriain et al. 2016)のいずれかの遺伝子組換え株が記載されており、これらは最大6.6mg/Lの力価で葉酸を産生することができる。フォレートの微生物生産のための別の首尾よく用いられているアプローチは、パラアミノ安息香酸(pABA)の存在下での酵母または細菌株の培養である。これらの培養物の上清では、最大22mg/Lの総フォレート含量が測定された。
【0006】
(6S)-5-メチルテトラヒドロフォレート(L-5-メチルテトラヒドロフォレートまたはL-5-メチル-THF)は、葉酸(ビタミンB9)の活性型である。葉酸(プテロイル-L-グルタミン酸)は、化学合成によって工業的に生産される合成化合物であり、新鮮な天然食品には含まれていない。葉酸は補酵素としては活性でなく、代謝的に活性なフォレート形態に変換されるには、細胞内で幾つかの代謝段階を経る必要がある。一方、5-メチルテトラヒドロフォレートは食事性フォレートの主要な形態であり、ヒト体内のフォレートの主要な活性型でもあり、ヒト血漿中のフォレートのおよそ98%を占める。L-5-メチル-THFの摂取は、ビタミンB12欠乏症の血液症状を隠す可能性が低く、ジヒドロ葉酸レダクターゼを標的とする薬物との干渉が少なく、およびL-5-メチル-THFが未代謝のビタミンとしてヒト血漿中に蓄積しない等、葉酸の摂取と比べて幾つかの利点を有し得る。
【0007】
葉酸の化学合成のための工業技術は、大きな環境負荷に阻まれている。これまでのところ、葉酸または天然型のフォレートのいずれか、例えば5-メチルフォレートを生産する微生物発酵プロセスは、フォレートの非常に低い産生力価/収率のために競争力がない。
【0008】
したがって、5-メチルフォレート、例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート、またはその前駆体もしくは中間体の産生能を高めるための新たな遺伝子組換え微生物を開発する緊急の必要性がある。
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)またはその前駆体もしくは中間体の産生能を高めるための遺伝子組換え微生物を提供することである。この目的は、本発明者らによって解決される。
【0010】
本発明は、以下の項目によってまとめることができる。
【0011】
1. 遺伝子組換え微生物、例えば細菌。
【0012】
2. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、項目1記載の遺伝子組換え微生物。
【0013】
3. 前記ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、項目2記載の遺伝子組換え微生物。
【0014】
4. 内在性遺伝子の発現レベルが、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少する、項目3記載の遺伝子組換え微生物。
【0015】
5. 前記ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子が不活性化されている、項目3または4記載の遺伝子組換え微生物。
【0016】
6. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目5記載の遺伝子組換え微生物。
【0017】
7. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子をDNA切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを微生物に導入または発現させることによって不活性化されている、項目4または5記載の遺伝子組換え微生物。
【0018】
8. 前記レアカットエンドヌクレアーゼが転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼである、項目7記載の遺伝子組換え微生物。
【0019】
9. RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に不活性なCas9タンパク質である、項目8記載の遺伝子組換え微生物。
【0020】
10. 前記ポリペプチドをコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)シングルガイドRNA(sgRNA)を含む(例えば発現する)、項目13記載の遺伝子組換え微生物。
【0021】
11. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記内在性ポリペプチドの発現が、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)、項目2記載の遺伝子組換え微生物。
【0022】
12. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記内在性ポリペプチドの発現が、前記ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)阻害性核酸分子を微生物に導入または発現させることによって減少する(例えば阻害される)、項目2記載の遺伝子組換え微生物。
【0023】
13. 阻害性核酸分子がアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である、項目12記載の遺伝子組換え微生物。
【0024】
14. 干渉RNA分子がマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)である、項目13記載の遺伝子組換え微生物。
【0025】
15. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの活性が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、項目2または3記載の遺伝子組換え微生物。
【0026】
16. 前記ポリペプチドの活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する、項目15記載の遺伝子組換え微生物。
【0027】
17. 少なくとも1つの活性部位突然変異が、配列番号11に示されるアミノ酸配列の51~54、75、114~117、145、152~154、172、263、302および315位のいずれか1つに相当する位置にある、項目16記載の遺伝子組換え微生物。
【0028】
18. 少なくとも1つの活性部位突然変異が非保存的アミノ酸置換である、項目16または17記載の遺伝子組換え微生物。
【0029】
19. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が遺伝子folCである、項目2から18までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0030】
20. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が内在性遺伝子folCである、項目2から18までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0031】
21. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、配列番号5に示される核酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む、項目2から20までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0032】
22. 内在性遺伝子によってコードされるジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドが、配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸を含む、項目2から21までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0033】
23. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現するように(さらに)改変されている、項目1から22までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0034】
24. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドが、好ましくはラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)およびアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)から選択される、細菌または真菌に由来する、項目23記載の遺伝子組換え微生物。
【0035】
24. ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドが、配列番号22または23と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目23または24記載の遺伝子組換え微生物。
【0036】
25. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)またはその前駆体もしくは中間体の産生能が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して大幅に改善されるように(さらに)改変されている、項目1から24までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0037】
26. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)またはその前駆体もしくは中間体の産生能が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも2000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、少なくとも20000%または少なくとも50000%増加する、項目25記載の遺伝子組換え微生物。
【0038】
27. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から26までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0039】
28. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも2つの遺伝子(例えば少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から27までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0040】
29. 5-メチルフォレートの生合成に関与する酵素をコードする少なくとも3つの遺伝子(例えば少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から28までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0041】
30. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも4つの遺伝子(例えば少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から29までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0042】
31. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも5つの遺伝子(例えば少なくとも6つの遺伝子、少なくとも7つの遺伝子または少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から30までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0043】
32. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも6つの遺伝子(例えば少なくとも7つの遺伝子または少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から31までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0044】
33. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも7つの遺伝子(例えば少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から32までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0045】
34. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子がfolE/mtrA、folB、folK、folP/sul、folA/dfrA、glyA、purU、yitJおよびmetFからなる群から選択される、項目27から33までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0046】
35. 5-メチルフォレート、例えば5-メチル-テトラヒドロフォレートの生合成に関与する酵素が、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチド、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチド、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチド、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチド、および5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目27から34までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0047】
36. GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から34までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0048】
37. 7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から36までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0049】
38. 2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から37までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0050】
39. ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から38までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0051】
40. ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から39までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0052】
41. セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から40までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0053】
42. ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から41までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0054】
43. 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から42までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0055】
44. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が、遺伝子組換え微生物に対して異種である、項目27から43までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0056】
45. 5-メチルフォレートの生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が、好ましくはバチルス、エシェリキア、ラクトコッカス、シューワネラ、ビブリオおよびアシュビア属から選択される、細菌または真菌に由来する、項目27から44までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0057】
46. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が、バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュワネラ・ビオラセア(Shewanella violacea)、ビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)またはアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)から選択される細菌または真菌に由来する、項目27から45までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0058】
47. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して少なくとも50%、少なくとも100、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも2000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、少なくとも20000%または少なくとも50000%増加する、項目27から46までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0059】
48. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも1つの酵素(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの酵素)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0060】
49. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも2つ(例えば少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0061】
50. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも3つ(例えば少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0062】
51. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも4つ(例えば少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0063】
52. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも5つ(例えば少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0064】
53. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも6つ(例えば少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するようにさらに改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0065】
54. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも7つ(例えば少なくとも8つ)の酵素の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から47までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0066】
55. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する前記少なくとも1つの酵素が、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチド、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチド、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチド、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチド、および5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目48から54までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0067】
56. GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から55までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0068】
57. 7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から56までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0069】
58. 2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から57までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0070】
59. ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から58までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0071】
60. ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から59までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0072】
61. セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から60までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0073】
62. ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から61までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0074】
63. 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている、項目1から62までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0075】
64. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも1つの酵素である、それぞれの列挙されたポリペプチドが、遺伝子組換え微生物に対して異種である、項目48から63までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0076】
65. 5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素である、それぞれの列挙されたポリペプチドが、好ましくはバチルス、エシェリキア、ラクトコッカス、シューワネラ、ビブリオおよびアシュビア属から選択される、細菌または真菌に由来する、項目48から64までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0077】
66. 5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも1つの酵素である、それぞれの列挙されたポリペプチドが、バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュワネラ・ビオラセア(Shewanella violacea)、ビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)またはアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)から選択される細菌または真菌に由来する、項目48から65までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0078】
67. GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号7と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、36、55および56のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0079】
68. 7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号8と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、37、55および57のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0080】
69. 2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチル-ジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号9と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、38、55および58のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0081】
70. ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号10と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、39、55または59のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0082】
71. ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号12と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、40、55および60のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0083】
72. セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号79と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、41、55および61のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0084】
73. ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号81と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、42、55および62のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0085】
74. 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号83と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、43、55および63のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0086】
75. 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号84と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目35、43、55および64のいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0087】
76. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように(さらに)改変されている、項目1から75までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0088】
77. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、項目76記載の遺伝子組換え微生物。
【0089】
78. 内在性遺伝子の発現レベルが、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少する、項目77記載の遺伝子組換え微生物。
【0090】
79. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の調節領域に、発現レベルの減少をもたらす少なくとも1つの突然変異を含む、項目76または77記載の遺伝子組換え微生物。
【0091】
80. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が不活性化されている、項目76または77記載の遺伝子組換え微生物。
【0092】
81. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目76または77記載の遺伝子組換え微生物。
【0093】
82. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子をDNA切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを微生物に導入または発現させることによって不活性化されている、項目76記載の遺伝子組換え微生物。
【0094】
83. 前記レアカットエンドヌクレアーゼが転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼである、項目82記載の遺伝子組換え微生物。
【0095】
84. RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に不活性なCas9タンパク質である、項目83記載の遺伝子組換え微生物。
【0096】
85. 前記ポリペプチドをコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)シングルガイドRNA(sgRNA)を含む(例えば発現する)、項目84記載の遺伝子組換え微生物。
【0097】
86. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記内在性ポリペプチドの発現が、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)、項目76記載の遺伝子組換え微生物。
【0098】
87. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記内在性ポリペプチドの発現が、前記ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)阻害性核酸分子を微生物に導入または発現させることによって減少する(例えば阻害される)、項目76記載の遺伝子組換え微生物。
【0099】
88. 阻害性核酸分子がアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である、項目87記載の遺伝子組換え微生物。
【0100】
89. 干渉RNA分子がマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)である、項目88記載の遺伝子組換え微生物。
【0101】
90. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの活性が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている、項目76または77記載の遺伝子組換え微生物。
【0102】
91. 前記ポリペプチドの活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する、項目90記載の遺伝子組換え微生物。
【0103】
92. 少なくとも1つの活性部位突然変異が、配列番号100に示されるアミノ酸配列の18、21、112、117、119、435~437、488、494、519~521、565、601、603、605、645、647、669、730および731位のいずれか1つに相当する位置にある、項目91記載の遺伝子組換え微生物。
【0104】
92. 少なくとも1つの活性部位突然変異が非保存的アミノ酸置換である、項目16または17記載の遺伝子組換え微生物。
【0105】
93. 前記5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子が遺伝子metEである、項目76から92までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0106】
94. 5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、配列番号101に示される核酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む、項目76から93までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0107】
95. 内在性遺伝子によってコードされる5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、少なくとも70%、例えば少なくとも80、少なくとも85%、少なくとも90%、配列番号100に示されるアミノ酸配列と少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目76から94までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0108】
96. 細菌である、項目1から95までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0109】
97. バチルス科の細菌である、項目1から96までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0110】
98. バチルス属の細菌である、項目1から97までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0111】
99. バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)種の細菌である、項目1から98までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物。
【0112】
100. フォレート、その前駆体または中間体を調製する方法であって、i)項目1から99までのいずれか1つ記載の遺伝子組換え微生物を好適な培養条件下にて培養培地中で培養し、前記フォレート、その前駆体または中間体を含有する発酵産物を得ることと、ii)任意に前記フォレート、その前駆体または中間体を分離および/または精製することとを含む、方法。
【0113】
101. 工程i)を32~42℃の範囲、好ましくは34~39℃の範囲、より好ましくは36~39℃の範囲の培養温度、例えば約37℃で行う、項目100記載の方法。
【0114】
102. 工程i)を10~70時間の範囲、好ましくは24~60時間の範囲、より好ましくは36~50時間の範囲の期間にわたって行う、項目100または101記載の方法。
【0115】
103. 工程i)を6~8の範囲、好ましくは6.5~7.5の範囲、より好ましくは6.8~7.2の範囲のpHで行う、項目100から102までのいずれか1つ記載の方法。
【0116】
104. フォレートが、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式I:
【化1】
の化合物である、項目100から102までのいずれか1つ記載の方法。
【0117】
105. フォレートが、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式II:
【化2】
の化合物である、項目100から104までのいずれか1つ記載の方法。
【0118】
106. フォレートが、式IIa:
【化3】
の化合物である、項目100から105までのいずれか1つ記載の方法。
【0119】
107. フォレートが、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式III:
【化4】
の化合物である、項目100から104までのいずれか1つ記載の方法。
【0120】
108. 培養工程(i)の間にパラアミノ安息香酸(PABA)を添加する工程をさらに含む、項目100から107までのいずれか1つ記載の方法。
【0121】
109. パラアミノ安息香酸(PABA)がパラアミノ安息香酸カリウム、パラアミノ安息香酸ナトリウム、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチルまたはそれらの組合せからなる群から選択される、項目108記載の方法。
【0122】
110. 工程(i)または(ii)において得られた生成物を酸性またはアルカリ性条件に供し、誘導体化合物をさらに得ることをさらに含む、項目100から109までのいずれか1つ記載の方法。
【0123】
111. 下記工程(a)~(d):
(a)5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも1つ(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルを、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加させる工程、
(b)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性を、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、
(c)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性を、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、ならびに/または
(d)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現させる工程、
のいずれか1つを含む、遺伝子組換え微生物を作製する方法。
【0124】
112. 下記工程(a)および(b):
(a)5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素の発現レベルを、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加させる工程、ならびに
(b)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性を、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程
のいずれか1つを含む、項目111記載の方法。
【0125】
113. 下記工程(c)および(d):
(c)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性を、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、ならびに
(d)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現させる工程
をさらに含む、請求項112記載の方法。
【0126】
114. aa)5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする核酸配列を含む少なくとも1つの外因性核酸分子を前記微生物に導入する工程、bb)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子を、例えば遺伝子配列の一部もしくは全体を欠失させることによって不活性化するか、もしくは前記内在性遺伝子の調節領域に、発現レベルの減少をもたらす少なくとも1つの突然変異を導入する工程、cc)前記微生物において、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子を、例えば遺伝子配列の一部もしくは全体を欠失させることによって不活性化する工程、ならびに/またはdd)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含む外因性核酸分子を前記微生物に導入する工程を含む、項目111から113までのいずれか1つ記載の方法。
【0127】
本発明の範囲内で、前記および以下の本発明の各技術的特徴を互いに組み合わせて、好ましい技術的解決策を構成することができるが、ここではスペースの制約上、明示的に記載されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図1】フォレートのコア構造を示す図である。天然のフォレートでは、プテリン環はテトラヒドロ型(図示)または7,8-ジヒドロ型で存在する。化学的に生産された葉酸では、この環は完全に酸化される。フォレートは通常、最初のグルタメートに付着した最大約8残基のγ-結合型ポリグルタミルテールを有する。1炭素単位(ホルミル、メチル等)がN5および/またはN10位に連結し、5-ホルミルフォレート、10-ホルミルフォレートまたは5-メチルフォレートが合成され得る。
【
図2】L.ラクティス(L.lactis)遺伝子からなる葉酸オペロンの一例の概略図である。
【
図3】A.ゴシッピイ(A.gossypii)遺伝子からなる葉酸オペロンの一例の概略図である。
【
図4】B.サブティリス(B.subtilis)遺伝子からなる葉酸オペロンの一例の概略図である。
【
図5】テトラサイクリン耐性遺伝子(TetR)、Pvegプロモーター下の異種folC2-LRまたはfolC2-AG遺伝子、およびネイティブfolC標的遺伝子破壊のための隣接相同性末端を有するFolC破壊カセットの概略図である。DNA破壊カセットのPCR増幅に使用されるプライマーの位置を線で示す。
【
図6】発酵ブロスサンプルのクロマトグラムである。黒色:UVシグナル、赤色:MSスキャンシグナル。
【
図7】酸素の存在下での10-ホルミルジヒドロ葉酸の10-ホルミル葉酸への酸化の概略図、過酸化水素の存在下での10-ホルミルジヒドロ葉酸の10-ホルミル葉酸への酸化の概略図、および過ヨウ素酸ナトリウムの存在下での10-ホルミルジヒドロ葉酸の10-ホルミル葉酸への酸化の概略図である。
【
図8】酸性媒体中での10-ホルミル葉酸の葉酸への脱ホルミル化の概略図である。
【
図9】アルカリ性媒体中での10-ホルミル葉酸の葉酸への脱ホルミル化の概略図である。
【
図10】フォレート産生バイオプロセスのプロファイルを示す図である。フォレート(mg/L):黒星;グルコース濃度(g/L):白四角;アセトイン濃度(g/L):黒四角;PABA濃度(mg/L):白丸;PABAフィード(mg/L):縦棒;光学密度:黒丸。
【
図11】シェーカー5ml規模実験でのB.サブティリス(B.subtilis)株w.t.168、株VBB38、株FL21およびFL23の全フォレート産生力価を示す図である。
【
図12】シェーカー5ml規模実験でのB.サブティリス(B.subtilis)株w.t.168、株VBB38、株FL21、FL825およびFL2771の5-メチルフォレート産生力価を示す図である。
【
図13】親株FL2771への人工メチル-フォレートオペロンMTHF-OP-Bでの形質転換による5-メチル-テトラヒドロフォレート産生株開発の概略図である。
【
図14】人工MTHF-OPフォレートオペロンの概略図である。構築したオペロンは、スペクチノマイシン選択可能マーカーおよびywhL遺伝子座でのゲノム組込みのための相同性を有する。MTHF-OP-Aオペロンでは、遺伝子(glyA、purUおよびyitJ)をネイティブ生物B.サブティリス(B.subtilis)から選択し、最適遺伝子発現のために付加的にコドン最適化した。さらに、E.コリ(E.coli)に由来するホモログ遺伝子(metF)をオペロンMTHF-OP-BにおいてyitJの代わりの遺伝子の構築に使用した。
【
図15】親株FL825および子孫株FL2771におけるmetE遺伝子の転写レベルを示す図である。
【
図16】B.サブティリス(B.subtilis)遺伝子からなる葉酸オペロンであるFOL-OP-BS1の概略図を示す図である。
【0129】
詳細な説明
本明細書で特に定義されない限り、使用される全ての技術用語および科学用語は、生化学、遺伝学および分子生物学の分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0130】
本明細書に記載のものと同様または同等の全ての方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができ、好適な方法および材料が本明細書に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献は、その全体が参照により援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は、特に指定のない限り、例示に過ぎず、限定を意図していない。
【0131】
本発明の実施には、特に記載のない限り、当業者の技能の範囲内の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の手法が用いられる。かかる手法は、文献中で十分に説明される。例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (Sambrook et al, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984);Mullis et al.の米国特許第4,683,195号明細書;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries & S. J. Higgins eds. 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson and M. Simon, eds.-in-chief, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ、特にVols.154 and 155 (Wu et al. eds.)およびVol. 185, “Gene Expression Technology” (D. Goeddel, ed.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);ならびにImmunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986)を参照されたい。
【0132】
本発明の遺伝子組換え微生物
一態様では、本発明は、このように遺伝子組換え微生物、例えば遺伝子組換え細菌を提供する。好適には、遺伝子組換え微生物は、5-メチルフォレート(以下に示す式(I)による)、より具体的には5-メチルテトラヒドロフォレート(5-メチル-THF)(以下に示す式(II)による)(その任意の立体異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー、例えば(6S)-5-メチルテトラヒドロフォレート(以下に示す式(IIa)による)を含む)を産生する能力を有する。
【0133】
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)等の一部の細菌では、ジヒドロプテロエートへのL-グルタメートの付加(ジヒドロ葉酸シンテターゼ(DHFS)活性、EC 6.3.2.12)およびその後のγカルボキシル基を介したテトラヒドロフォレートへのL-グルタメートの付加(ホリルポリグルタミン酸シンテターゼ(FPGS)活性、EC 6.3.2.17)は、同じ酵素FolCによって触媒される。対照的に、真核生物および他の一部の細菌では、DHFSおよびFPGSの酵素活性は、異なる遺伝子にコードされる。B.サブティリス(B.subtilis)は、他の多くの細菌と同様、フォレートにガンマ-結合型ポリ-グルタメートテールを付加して、溶解性を高め、環境中へのこの必須補因子の喪失を防ぐ。このように、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)FolCは、de novoフォレート生合成経路におけるジヒドロ葉酸シンターゼとしてのその役割に加え、ガンマ-カルボキシル基を介したフォレートのポリグルタミル化を触媒するホリルポリグルタミン酸シンテターゼ(FPGS)活性を有する。フォレートポリアニオンは、細胞外に排出されず、細胞内貯留が高められ得る(Sybesma et al., 2003c)。加えて、FPGS酵素の生成物であるホリル-ポリグルタメートは、フォレート生合成酵素の強力な阻害剤である(McGuire and Bertino, 1981)。したがって、フォレートの産生を増加させるために、本発明者らは、ネイティブ(内因性)folC遺伝子をノックアウトすることによってフォレートのポリグルタミル化を止め、必須のジヒドロ葉酸シンテターゼ(DHFS)活性のみをコードする異種folC遺伝子に置き換え、必須のグルタメート部分が1つのみ付加されたものを得た。ジヒドロ葉酸シンテターゼ(DHFS)のみを有し、ホリルポリグルタメート(FGPS)シンテターゼ活性を有しないFolCのホモログは、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)のような多くの細菌種、およびアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)のような多くの真核生物に見ることができる。
【0134】
広範かつ集中的な研究の後に、本発明者らは、驚くべきことに、微生物においてジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子、例えば遺伝子folCの発現レベルを低下させ、代わりにジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有するポリペプチドをコードする外因性遺伝子を導入すると、生合成されるフォレートにグルタメートが1つのみ付加され、フォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)、その塩、前駆体または中間体の産生能が、それにより顕著に増加することを見出した。
【0135】
このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されていてもよい。
【0136】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現レベルが、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されていてもよい。内在性遺伝子の発現レベルは例えば、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少し得る。
【0137】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
【0138】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子をDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを微生物に導入または発現させることによって不活性化されている。内在性遺伝子を不活性化するために本発明に従って使用されるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり得る。
【0139】
ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子を不活性化する方法の1つは、CRISPRiシステムを使用することである。CRISPRiシステムは、遺伝子発現の標的抑制またはゲノム上の標的位置のブロックのためのツールとして開発された。CRISPRiシステムは、触媒的に不活性な「死んだ」Cas9タンパク質(dCas9)と、DNAに対するdCas9の結合部位を画定するガイドRNAとからなる。
【0140】
このように、幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、例えば触媒的に不活性なCas9タンパク質と、前記ポリペプチドをコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)シングルガイドRNA(sgRNA)とを微生物に導入または発現させることによって不活性化される。
【0141】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)においてジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子を阻害すべき場合、シングルガイドRNA(sgRNA)は、配列番号5またはその相補体の少なくとも20個の連続ヌクレオチドを含み得る。
【0142】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現は、阻害によって減少する。
【0143】
ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記内在性ポリペプチドの発現の阻害は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)等の阻害性核酸分子の使用を伴う遺伝子サイレンシング技術によって発現を阻害することができる。
【0144】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記内在性ポリペプチドの発現は、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)。
【0145】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記内在性ポリペプチドの発現は、阻害性核酸分子を微生物に導入または発現させることによって阻害される。例えば、阻害性核酸分子は、微生物において前記阻害性核酸分子の産生を引き起こすように機能するプロモーター、例えば誘導性プロモーターに操作可能に連結した、前記阻害性核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子によって導入することができる。好適には、阻害性核酸分子は、内在性ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)ものである。標的に応じて、コードゲノムDNAの転写および/またはコードmRNAの翻訳を阻害する。
【0146】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である。好ましくは、かかる核酸分子は、対象のポリペプチドまたは酵素をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNA(例えば、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNA)の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含む。
【0147】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)においてジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現を阻害すべき場合、かかる阻害性核酸分子は、配列番号5の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含み得る。
【0148】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。
【0149】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、ハンマーヘッド型リボザイム等のリボザイムである。リボザイム分子は、ポリペプチドの翻訳を防ぐためにmRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されている。
【0150】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は干渉RNA(RNAi)分子である。RNA干渉は、RNA分子が発現を阻害する生物学的プロセスであり、通例、特定のmRNAの破壊を引き起こす。RNAi分子の例示的なタイプとしては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)および短ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はmiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はsiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はshRNAである。
【0151】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)においてジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現を阻害すべき場合、RNAi分子は、配列番号5に相補的な干渉RNAであり得る。RNAi分子は、配列番号5の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含むリボ核酸分子であってもよい。RNAi分子は、配列番号5の20~25、例えば21~23個の連続ヌクレオチドと同一の第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖とを含む二本鎖リボ核酸分子であってもよい。
【0152】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの活性が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている。
【0153】
ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの活性の減少は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、活性の低下または喪失をもたらす1つ以上の突然変異をポリペプチドの活性部位に導入することによって活性を減少させることができる。このように、幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する。少なくとも1つの活性部位突然変異は、例えば少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換であり得る。
【0154】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)においてジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの活性を減少させるべき場合、活性部位の一部を形成する、配列番号11に示されるアミノ酸配列の51~54、75、114~117、145、152~154、172、263、302および315位のいずれか1つに少なくとも1つの活性部位突然変異を生じさせることができる。オーソロガスポリペプチドの場合、少なくとも1つの活性部位突然変異は、配列番号11に示されるアミノ酸配列の51~54、75、114~117、145、152~154、172、263、302および315位のいずれか1つに相当する位置にあり得る。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、遺伝子folCである。
【0155】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、配列番号5に示される核酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、配列番号5に示される核酸配列と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、配列番号5に示される核酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0156】
幾つかの実施形態によると、内在性遺伝子によってコードされるジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドは、配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸を含む。幾つかの実施形態によると、内在性遺伝子によってコードされるジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドは、配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸を含む。幾つかの実施形態によると、内在性遺伝子によってコードされるジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドは、配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸を含む。
【0157】
本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現するように(さらに)改変されていてもよい。ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドは例えば、好ましくはラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)およびアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)から選択される、細菌または真菌に由来し得る。
【0158】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドは、配列番号22または23と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドは、配列番号22または23と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドは、配列番号22または23と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0159】
フォレート分子は、パラアミノ安息香酸(pABA)と、グルタミン酸の少なくとも1つの分子とに結合したグアノシン三リン酸(GTP)に由来する1つのプテリン部分を含有する。このように、フォレートのde novo生合成には、3つの前駆体:GTP、pABAおよびグルタミン酸が必要とされる。
【0160】
フォレート生合成は、4つの連続工程でGTPから6-ヒドロキシメチル-7,8-ジヒドロプテリンピロホスフェート(DHPPP)への変換を経て進行する。最初の工程は、GTPシクロヒドロラーゼI(EC 3.5.4.16)(遺伝子folE/mtrA)によって触媒され、GTPの広範な変化を伴い、プテリン環構造が形成される。脱リン酸化に続いて、プテリン分子は、アルドラーゼ(EC 4.1.2.25)(遺伝子folB)およびピロホスホキナーゼ反応(EC 2.7.6.3)(遺伝子folK)を受け、活性化されたピロリン酸化DHPPPが生成する。ジヒドロプテロイン酸シンターゼ(EC 2.5.1.15)(遺伝子folP/sul)によって触媒されるパラアミノ安息香酸(pABA)とDHPPPとの最初の縮合後に、ジヒドロプテロエートが生成する。第2の縮合は、ジヒドロ葉酸シンターゼ(DHFS)(EC 6.3.2.12)(遺伝子folC)によるグルタメートとジヒドロプテロエートとの反応であり、ジヒドロフォレートが形成される。次いで、DHFは、DHFレダクターゼ-DHFR(EC 1.5.1.3)(遺伝子folA/dfrA)によって生物学的に活性な補因子であるテトラヒドロフォレート(THF)へと還元される。
【0161】
タンパク質GlyA、PurU、YitJおよびMetFがテトラヒドロフォレート相互変換経路にさらに関与する。テトラヒドロフォレート(THF)は、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(遺伝子glyA)(EC:2.1.2.1)によりセリンをグリシンに変換し、続いてメチル基をテトラヒドロフォレートに転移させることで、5,10-メチレン-テトラヒドロフォレート(5,10-mTHF)を形成することによって活性化され得る。5,10-mTHFは、細胞内のC1単位の主な供給源である。さらに、テトラヒドロフォレート相互変換では、B.サブティリス(B.subtilis)のyitJ遺伝子およびエシェリキア・コリ(Escherichia coli)のmetF遺伝子が、5-メチルテトラヒドロフォレートの最終的な形成をもたらす酵素である5,10-メチレン-テトラヒドロフォレートレダクターゼ(EC 1.5.1.20)をコードする。
【0162】
さらに、酵素PurUは、10-ホルミルテトラヒドロフォレートをTHFへと変換し戻し、5-メチルテトラヒドロフォレート生合成にさらに利用可能とする上でホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ(EC 3.5.1.10)として関与するため、これもテトラヒドロフォレート相互変換経路に重要である。
【0163】
【0164】
本発明者らは、微生物における5-メチル-THFの生合成に関与する1つ以上の遺伝子(例えばfolE/mtrA、folB、folK、folP/sul、folA/dfrA、glyA、purU、yitJおよびmetF)の導入または上方調節によっても5-メチル-THF、その塩、前駆体または中間体の産生能が顕著に増加し得ることを見出した。
【0165】
このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)またはその前駆体もしくは中間体の産生能が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して大幅に改善されるように(さらに)改変されていてもよい。5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)またはその前駆体もしくは中間体の産生能は例えば、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも2000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、少なくとも20000%または少なくとも50000%増加し得る。
【0166】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも1つの酵素(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。
【0167】
5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの遺伝子)の発現レベルは例えば、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも2000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、少なくとも20000%または少なくとも50000%増加し得る。
【0168】
幾つかの実施形態によると、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素は、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチド、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチド、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチド、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチド、および5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
【0169】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0170】
幾つかの実施形態によると、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号7と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号7と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号7と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0171】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0172】
幾つかの実施形態によると、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号8と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号8と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号8と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0173】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0174】
幾つかの実施形態によると、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチル-ジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号9と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチル-ジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号9と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチル-ジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号9と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0175】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0176】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号10と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号10と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号10と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0177】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0178】
幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号12と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号12と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号12と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0179】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0180】
幾つかの実施形態によると、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号79と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号79と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号79と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0181】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0182】
幾つかの実施形態によると、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号81と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号81と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号81と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0183】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加するように(さらに)改変されている。このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドの発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加していることがある。
【0184】
幾つかの実施形態によると、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号83と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号83と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号83と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0185】
幾つかの実施形態によると、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号84と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号84と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号84と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0186】
幾つかの実施形態によると、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子はfolE/mtrA、folB、folK、folP/sul、folA/dfrA、glyA、purU、yitJおよびmetFからなる群から選択される。
【0187】
幾つかの実施形態によると、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子は、遺伝子組換え微生物に対して異種である。
【0188】
幾つかの実施形態によると、5-メチルフォレートの生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子は、好ましくはバチルス、エシェリキア、ラクトコッカス、シューワネラ、ビブリオおよびアシュビア属から選択される、細菌または真菌に由来する。
【0189】
幾つかの実施形態によると、5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、シュワネラ・ビオラセア(Shewanella violacea)、ビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)またはアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)から選択される細菌または真菌に由来する。
【0190】
本発明者らは、微生物における5-メチルテトラヒドロフォレートを代謝/消費する主要な酵素である5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子(例えば遺伝子metE)の下方調節または欠失によって、5-メチルテトラヒドロフォレート、その塩、前駆体または中間体の蓄積および産生能が顕著にさらに増加し得ることをさらに見出した。
【0191】
このように、本発明の遺伝子組換え微生物は、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現レベルが、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように(さらに)改変されていてもよい。内在性遺伝子の発現レベルは例えば、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少し得る。
【0192】
幾つかの実施形態によると、遺伝子組換え微生物は、発現レベルの減少をもたらす少なくとも1つの突然変異を5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子の調節領域に含む。例えば、調節領域における少なくとも1つの突然変異は、コードされるポリペプチドの発現レベルの減少をもたらす、プリブノーボックス(TATAAT)配列に近接した(例えば、1または2ヌクレオチド上流または下流の)位置での少なくとも1つのヌクレオチド置換であり得る。特定の場合に応じて、例えば微生物がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)である場合、ヌクレオチド置換は、内在性遺伝子の開始コドンから12ヌクレオチド上流にある位置であってもよい。少なくとも1つのヌクレオチド置換は、例えば或る種のプリンの別の種類のプリンでの(例えばグアニンからアデニンへの)置換であってもよい。
【0193】
幾つかの実施形態によると、遺伝子組換え微生物は、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子に動作可能に連結した内因性プロモーターを、内因性プロモーターと比較してRNAポリメラーゼに対する親和性が弱い外因性プロモーターに置き換えることによって改変されている。当業者には理解されるように、RNAポリメラーゼに対する親和性が弱いほど、転写のレベルが減少し、ひいては微生物が産生する対応するポリペプチドのレベルが減少することになる。
【0194】
幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
【0195】
幾つかの実施形態によると、前記5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子をDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを微生物に導入または発現させることによって不活性化されている。内在性遺伝子を不活性化するために本発明に従って使用されるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり得る。
【0196】
5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子を不活性化する方法の1つは、上述のようにCRISPRiシステムを使用することである。このように、幾つかの実施形態によると、前記5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、例えば触媒的に不活性なCas9タンパク質と、前記ポリペプチドをコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)シングルガイドRNA(sgRNA)とを微生物に導入または発現させることによって不活性化される。
【0197】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtiltis)において前記5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子を阻害すべき場合、シングルガイドRNA(sgRNA)、配列番号101またはその相補体の少なくとも20個の連続ヌクレオチドを含み得る。
【0198】
幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現は、阻害によって減少する。
【0199】
5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記内在性ポリペプチドの発現の阻害は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)等の阻害性核酸分子の使用を伴う遺伝子サイレンシング技術によって発現を阻害することができる。
【0200】
幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記内在性ポリペプチドの発現は、前記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)。
【0201】
幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する前記内在性ポリペプチドの発現は、阻害性核酸分子を微生物に導入または発現させることによって阻害される。例えば、阻害性核酸分子は、微生物において前記阻害性核酸分子の産生を引き起こすように機能するプロモーター、例えば誘導性プロモーターに操作可能に連結した、前記阻害性核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子によって導入することができる。好適には、阻害性核酸分子は、内在性ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)ものである。
【0202】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である。好ましくは、かかる核酸分子は、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAの相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含む。
【0203】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)において5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現を阻害すべき場合、かかる阻害性核酸分子は、配列番号101の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含み得る。
【0204】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。
【0205】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、ハンマーヘッド型リボザイム等のリボザイムである。リボザイム分子は、ポリペプチドの翻訳を防ぐためにmRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されている。
【0206】
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は干渉RNA(RNAi)分子である。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はmiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はsiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はshRNAである。
【0207】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)において5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現を阻害すべき場合、RNAi分子は、配列番号101に相補的な干渉RNAであり得る。RNAi分子は、配列番号101の相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含むリボ核酸分子であってもよい。RNAi分子は、配列番号101の20~25、例えば21~23個の連続ヌクレオチドと同一の第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖とを含む二本鎖リボ核酸分子であってもよい。
【0208】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物は、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの活性が、前記改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少するように改変されている。
【0209】
5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの活性の減少は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、活性の低下または喪失をもたらす1つ以上の突然変異をポリペプチドの活性部位に導入することによって活性を減少させることができる。このように、幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する。少なくとも1つの活性部位突然変異は、例えば少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換であり得る。
【0210】
例としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)において5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの活性を減少させるべき場合、活性部位の一部を形成する、配列番号100に示されるアミノ酸配列の18、21、112、117、119、435~437、488、494、519~521、565、601、603、605、645、647、669、730および731位のいずれか1つに少なくとも1つの活性部位突然変異を生じさせることができる。オーソロガスポリペプチドの場合、少なくとも1つの活性部位突然変異は、配列番号100に示されるアミノ酸配列の18、21、112、117、119、435~437、488、494、519~521、565、601、603、605、645、647、669、730および731位のいずれか1つに相当する位置にあり得る。幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、遺伝子metEである。
【0211】
幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、配列番号101に示される核酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、配列番号101に示される核酸配列と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む。幾つかの実施形態によると、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、配列番号101に示される核酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0212】
幾つかの実施形態によると、内在性遺伝子によってコードされる5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号100に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、例えば少なくとも80、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸を含む。幾つかの実施形態によると、内在性遺伝子によってコードされる5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号100に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸を含む。
【0213】
幾つかの実施形態によると、内在性遺伝子によってコードされる5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号100に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸を含む。
【0214】
概して、本明細書で言及される微生物は、単細胞または多細胞の微生物、例えば細菌または酵母を含む任意の好適な微生物であり得る。
【0215】
細菌性微生物は、グラム陽性またはグラム陰性細菌であり得る。グラム陰性細菌の非限定的な例としては、エシェリキア、エルウィニア、クレブシエラおよびサイトロバクター属からの種が挙げられる。グラム陽性細菌の非限定的な例としては、バチルス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ゲオバチルス、ペディオコッカス、モーレラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ストレプトマイセス、ストレプトコッカスおよびセルロモナス属からの種が挙げられる。
【0216】
幾つかの実施形態によると、微生物は細菌であり、バチルス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、ゲオバチルス、ストレプトコッカス、ペディオコッカス、モーレラ、シュードモナス、ストレプトマイセス、エシェリキア、シゲラ、アシネトバクター、サイトロバクター、サルモネラ、クレブシエラ、エンテロバクター、エルウィニア、クライベラ、セラチア、セデセア、モーガネラ、ハフニア、エドワージエラ、プロビデンシア、プロテウスまたはエルシニア属の細菌であり得る。
【0217】
幾つかの実施形態によると、微生物はエシェリキア属の細菌である。エシェリキア属の細菌の非限定的な例は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。幾つかの実施形態によると、微生物はエシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。
【0218】
幾つかの実施形態によると、微生物はバチルス属の細菌である。バチルス属の細菌の非限定的な例は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtitlis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)およびバチルス・モジャベンシス(Bacillus mojavensis)である。幾つかの実施形態によると、微生物はバチルス・サブティリス(Bacillus subtitlis)である。
【0219】
酵母細胞は、例えばサッカロミセス、ピキア、シゾサッカロミセス、ジゴサッカロミセス、ハンセヌラ、パキソレン、クルイベロミセス、デバリオミセス、ヤロウイア、カンジダ、クリプトコッカス、コマガタエラ、リポミセス、ロドスポリジウム、ロドトルラまたはトリコスポロンに由来し得る。
【0220】
幾つかの実施形態によると、微生物はサッカロミセス属の酵母である。サッカロミセス属の酵母の非限定的な例は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。或る特定の実施形態によると、微生物はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0221】
上述のように、本発明の遺伝子組換え微生物は、本明細書に詳述するように1つ以上のポリペプチドを発現するように改変されてもよく、すなわち、前記ポリペプチド(単数または複数)をコードするヌクレオチド配列(単数または複数)を含む1つ以上の外因性核酸分子、例えばDNA分子が微生物に導入されている。DNA分子等の外因性核酸分子を様々な宿主細胞に導入する手法は、当業者に既知であり、形質転換(例えば、熱ショックまたは自然形質転換)、トランスフェクション、コンジュゲーション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションおよび微粒子ボンバードメントが挙げられる。
【0222】
したがって、本発明の遺伝子組換え微生物は、本明細書に詳述するようにポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含み得る。微生物におけるポリペプチドの発現を促進するために、外因性核酸分子は、宿主細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能し、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーター等の好適な調節要素を含んでいてもよい。本発明に従って有用なプロモーターは、所与の宿主細胞においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能する任意の既知のプロモーターである。多くのかかるプロモーターが当業者に既知である。かかるプロモーターとしては、通常は他の遺伝子と関連するプロモーター、および/または任意の細菌、酵母、真菌、藻類もしくは植物の細胞から単離されたプロモーターが挙げられる。タンパク質発現のためのプロモーターの使用は、一般に分子生物学の当業者に既知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. , 1989を参照されたい。外因性核酸分子は、プロモーターに加えて5’非翻訳領域(5’UTR)および3’非翻訳領域(3’UTR)から選択される少なくとも1つの調節要素をさらに含んでいてもよい。原核生物および真核生物に由来する多くのかかる5’UTRおよび3’UTRが当業者に既知である。
【0223】
外因性核酸分子は、ベクターまたはベクターの一部、例えば発現ベクターであり得る。通常、かかるベクターは、微生物において染色体外に留まり、すなわち微生物の核または核様体領域の外に見られる。外因性核酸分子が宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれることも本発明により企図される。例えば相同組換えにより微生物のゲノムに安定に組み込むための手段が当業者に既知である。
【0224】
遺伝子組換え微生物に関して本明細書で与えられる詳細が本発明の他の態様、特に以下により詳細に記載される本発明による方法に当てはまることが理解される。
【0225】
本発明の方法
第2の態様では、本発明は、フォレート、その前駆体または中間体を調製する方法を提供する。特に、フォレート、その前駆体または中間体を調製する方法は、
i)本発明による遺伝子組換え微生物を好適な培養条件下にて培養培地中で培養し、前記フォレート、その前駆体または中間体を含有する発酵産物を得ることと、ii)任意に前記フォレート、その前駆体または中間体を分離および/または精製することとを含む。
【0226】
用いられる培地は、問題の宿主細胞の培養に適した任意の従来の培地とすることができ、従来技術の原理に従って構成され得る。培地は通常、それぞれの宿主細胞の成長および生存に必要とされる全ての栄養素、例えば炭素源および窒素源、ならびに他の無機塩を含有する。好適な培地、例えば最少培地または複合培地は、商業的供給業者から入手可能であるか、または公表されているレセプト、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)の菌株カタログに従って調製することができる。当業者に既知の非限定的な標準培地としては、ルリアベルターニ(LB)ブロス、サブローデキストロース(SD)ブロス、MSブロス、酵母ペプトンデキストロース、BMMY、GMMYまたは酵母麦芽エキス(YM)ブロスが挙げられ、全て市販されている。B.サブティリス(B.subtilis)またはE.コリ(E.coli)細胞等の細菌細胞の培養に適した培地の非限定的な例としては、最少培地および富栄養培地、例えばルリアブロス(LB)、M9培地、M17培地、SA培地、MOPS培地、テリフィックブロス、YT等が挙げられる。酵母細胞等の真核細胞の培養に適した培地は、RPMI 1640、MEM、DMEMであり、いずれも培養される特定の宿主細胞の必要に応じて血清および/または成長因子を添加してもよい。また、真核細胞の培養のための培地は、酵母最少培地等の任意の種類の最少培地とすることができる。
【0227】
それぞれの微生物の培養に適した条件は、当業者に既知である。通例、遺伝子組換え微生物は32~約42℃の範囲、好ましくは34~39℃の範囲、より好ましくは36~39℃の範囲の温度、例えば約37℃で培養される。培地のpHは6~8の範囲、好ましくは6.5~7.5の範囲、より好ましくは6.8~7.2の範囲とすることができる。工程i)における培養は、10~70時間の範囲、好ましくは24~60時間の範囲、より好ましくは36~50時間の範囲の期間にわたって行うことができる。
【0228】
方法は、ii)前記フォレート、その前駆体または中間体を分離および/または精製することをさらに含み得る。フォレート、その前駆体または中間体は、培地から化学化合物を単離および精製するための任意の従来の方法によって分離および/または精製することができる。既知の精製手順としては、遠心分離または濾過、沈殿、およびクロマトグラフィー法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等が挙げられる。
【0229】
本発明の方法によって調製されるフォレートは、好ましくは、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式I:
【化5】
の化合物である。
【0230】
前記一般式(I)において、aが単結合である場合にa’が存在せず、またはa’が単結合である場合にaが存在しないことが意図される。
【0231】
或る特定の実施形態によると、本発明の方法によって調製されるフォレートは、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式II:
【化6】
の化合物(5-メチルテトラヒドロフォレート)である。
【0232】
特定の実施形態によると、本発明の方法によって調製されるフォレートは、式IIa:
【化7】
の化合物(L-5-メチルテトラヒドロフォレート;(6S)-5-メチルテトラヒドロフォレート)である。
【0233】
或る特定の実施形態によると、本発明の方法によって調製されるフォレートは、任意に立体異性体、好ましくはエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つの形態、ラセミ体の形態、または任意の混合比での立体異性体、好ましくはエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの少なくとも2つの混合物の形態の式III:
【化8】
の化合物(5-メチルジヒドロフォレート)である。
【0234】
本発明者らはまた、驚くべきことに、前記のように得られた株の培養中にパラアミノ安息香酸(PABA)を添加することで、フォレート、その塩、前駆体または中間体の産生能が顕著にさらに増加し得ることを見出した。このように、幾つかの実施形態によると、方法は、培養工程(i)の間にパラアミノ安息香酸(PABA)を添加する工程をさらに含む。
【0235】
パラアミノ安息香酸(PABA)は、例えばパラアミノ安息香酸カリウム、パラアミノ安息香酸ナトリウム、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチルまたはそれらの組合せからなる群から選択されるPABAであり得る。
【0236】
幾つかの実施形態によると、方法は、工程(i)または(ii)において得られた生成物を酸性またはアルカリ性条件に供し、誘導体化合物をさらに得ることをさらに含む。
【0237】
更なる態様では、本発明は、本発明の遺伝子組換え微生物を作製する方法を提供する。特に、本発明の遺伝子組換え微生物を作製する方法は、下記工程(a)~(d):
(a)5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する少なくとも1つ(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つ)の酵素の発現レベルを、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加させる工程、
(b)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性を、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、
(c)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有する内在性ポリペプチドの発現および/もしくは活性を、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、ならびに/または
(d)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現させる工程
のいずれか1つ(例えば全て)を含む。
【0238】
幾つかの実施形態によると、方法は下記工程(a)および(b):
(a)5-メチルフォレートの生合成に関与する少なくとも1つの酵素の発現レベルを、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して増加させる工程、および
(b)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現レベルを、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程
のいずれか1つを含み、任意に下記工程(c)および(d):
(c)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子の発現レベルを、それ以外は同一の微生物(参照微生物)と比較して減少させる工程、ならびに
(d)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドを発現させる工程
をさらに含む。
【0239】
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え微生物を作製する方法は、aa)5-メチルフォレート(例えば5-メチル-テトラヒドロフォレート)の生合成に関与する酵素をコードする核酸配列を含む少なくとも1つの外因性核酸分子を前記微生物に導入する工程、bb)5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子を、例えば遺伝子配列の一部もしくは全体を欠失させることによって不活性化するか、もしくは前記内在性遺伝子の調節領域に、発現レベルの減少をもたらす少なくとも1つの突然変異を導入する工程、cc)前記微生物において、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドをコードする内在性遺伝子を、例えば遺伝子配列の一部もしくは全体を欠失させることによって不活性化する工程、ならびに/またはdd)ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有する異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含む外因性核酸分子を前記微生物に導入する工程を含む。
【0240】
或る特定の定義
本明細書で使用される5-メチルフォレートは、5-メチルテトラヒドロフォレートおよび5-メチルジヒドロフォレートのいずれか1つを意味し、その任意の立体異性体形態およびプロトン化(酸)または脱プロトン化(塩)形態を含む。
【0241】
「5-メチルフォレートを産生する能力」という表現は、細菌等の微生物が、微生物を培地中で培養した場合に5-メチルフォレートを産生、排出もしくは分泌し、かつ/または培養培地もしくは微生物中に5-メチルフォレートを蓄積させることができることを意味する。微生物は、5-メチルフォレートを生じる生合成経路に関与する全ての酵素を発現する場合に、5-メチルフォレートを産生する能力を有するとみなすことができる。
【0242】
「5-メチル-テトラヒドロフォレート(5-メチル-THF)を産生する能力」という表現は、細菌等の微生物が、微生物を培地中で培養した場合に5-メチル-THFを産生、排出もしくは分泌し、かつ/または培養培地もしくは微生物中に5-メチル-THFを蓄積させることができることを意味する。微生物は、5-メチル-THFを生じる生合成経路に関与する全ての酵素を発現する場合に、5-メチル-THFを産生する能力を有するとみなすことができる。
【0243】
本明細書で使用される場合、「ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチド」は、反応:ATP+7,8-ジヒドロプテロエート+L-グルタメート<=>ADP+ホスフェート+7,8-ジヒドロプテロイルグルタメート(EC 6.3.2.12)および反応:ATP+テトラヒドロプテロイル-(ガンマ-Glu)(n)+L-グルタメート<=>ADP+ホスフェート+テトラヒドロプテロイル-(ガンマ-Glu)(n+1)(EC 6.3.2.17)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子folCによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のfolCに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU28080で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_390686.1も参照されたい。
【0244】
本明細書で使用される場合、「ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有するポリペプチド」は、反応:ATP+7,8-ジヒドロプテロエート+L-グルタメート<=>ADP+ホスフェート+7,8-ジヒドロプテロイルグルタメート(EC 6.3.2.12)のみを触媒するポリペプチドを意味する。例えば、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性のみを有するポリペプチドは、例えばアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)およびラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)に見られる遺伝子folC2によってコードされる。例えばアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)およびラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)のfolC2に関する更なる情報は、それぞれKEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号AGOS_AEL310CおよびLreu_1277で利用可能である。アミノ酸配列については、NCBI参照配列:NP_984550.1(アシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii))およびWP_003668526.1(ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri))も参照されたい。
【0245】
本明細書で使用される場合、「GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:GTP+H(2)O<=>ホルメート+2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-(エリスロ-1,2,3-トリヒドロキシプロピル)-ジヒドロプテリジントリホスフェート(EC 3.5.4.16)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、GTPシクロヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子folEによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のfolEに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU22780で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_390159.1も参照されたい。
【0246】
本明細書で使用される場合、「7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:7,8-ジヒドロネオプテリン<=>6-ヒドロキシメチル-7,8-ジヒドロプテリン+グリコールアルデヒド(EC 4.1.2.25)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、7,8-ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子folBによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のfolBに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU00780で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_387959.1も参照されたい。
【0247】
本明細書で使用される場合、「2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:ATP+6-ヒドロキシメチル-7,8-ジヒドロプテリン<=>AMP+6-ヒドロキシメチル-7,8-ジヒドロプテリンジホスフェート(EC 2.7.6.3)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-ヒドロキシメチルジヒドロプテリジンピロホスホキナーゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子folKによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のfolKに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU00790で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_387960.1も参照されたい。
【0248】
本明細書で使用される場合、「ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:6-ヒドロキシメチル-7,8-ジヒドロプテリンジホスフェート+4-アミノベンゾエート<=>ジホスフェート+ジヒドロプテロエート(EC 2.5.1.15)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子folPによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のfolPに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU00770で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_387958.1も参照されたい。
【0249】
本明細書で使用される場合、「ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:5,6,7,8-テトラヒドロフォレート+NADP(+)<=>7,8-ジヒドロフォレート+NADPH(EC 1.5.1.3)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子folAによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のfolAに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU21810で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_390064.1も参照されたい。
【0250】
本明細書で使用される場合、「セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:5,10-メチレンテトラヒドロフォレート+グリシン+H(2)O<=>テトラヒドロフォレート+L-セリン(EC 2.1.2.1)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子glyAによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のglyAに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU36900で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_391571.1も参照されたい。
【0251】
本明細書で使用される場合、「ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:10-ホルミルテトラヒドロフォレート+H(2)O<=>ホルメート+テトラヒドロフォレート(EC 5.5.1.10)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子purUによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のpurUに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU13110で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_389194.2も参照されたい。
【0252】
本明細書で使用される場合、「5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:5-メチルテトラヒドロフォレート+NAD(P)(+)<=>5,10-メチレンテトラヒドロフォレート+NAD(P)H(EC 1.5.1.20)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子yitJによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のyitJに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU11010で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_388982.1も参照されたい。例えば、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ活性を有するポリペプチドは、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)に見られる遺伝子metFによってコードされる。例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)のmetFに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号b3941で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_418376.1も参照されたい。
【0253】
本明細書で使用される場合、「5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド」は、反応:5-メチルテトラヒドロプテロイルtri-L-グルタメート+L-ホモシステイン<=>テトラヒドロプテロイルtri-L-グルタメート+L-メチオニン(EC 2.1.1.14)を触媒するポリペプチドを意味する。例えば、5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に見られる遺伝子metEによってコードされる。例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のmetEに関する更なる情報は、KEGG(https://www.kegg.jp/kegg/genes.html)にてアクセッション番号BSU13180で利用可能である。アミノ酸配列(B.サブティリス(B.subtilis))については、NCBI参照配列:NP_389201.2も参照されたい。
【0254】
本明細書で遺伝子または核酸分子の文脈において使用される「異種」または「外因性」は、それが存在する微生物のゲノムの一部として天然に存在しない、または天然に存在する場合とは異なるゲノム内の位置(単数または複数)に見られる遺伝子または核酸分子(すなわちDNAまたはRNA分子)を指す。このように、「異種」または「外因性」の遺伝子または核酸分子は、微生物に対して内因性ではなく、微生物に外因的に導入されたものである。「異種」遺伝子または核酸分子のDNA分子は、宿主DNAとして異なる生物、異なる種、異なる属または異なる界に由来し得る。
【0255】
本明細書でポリペプチド(例えば酵素)の文脈において使用される「異種」は、ポリペプチドが通常は宿主微生物に見られず、または宿主微生物によって作製(すなわち発現)されず、異なる生物、異なる種、異なる属または異なる界に由来することを意味する。
【0256】
本明細書で使用される場合、「オーソログ」という用語は、共通の祖先遺伝子に由来するが、異なる種に存在する遺伝子、それによりコードされる核酸分子、すなわちmRNA、またはそれによりコードされるタンパク質を指す。
【0257】
遺伝子の「発現レベルの減少」とは、遺伝子組換え微生物が産生する転写産物の量、それぞれ前記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して減少することを意味する。より詳細には、遺伝子の「発現レベルの減少」とは、遺伝子組換え微生物が産生する転写産物の量、それぞれ前記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少する。遺伝子発現のレベルは、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって決定することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるポリペプチドの量は、ELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティング等を含む既知の方法によって測定することができる。
【0258】
遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるポリペプチドの細胞内活性が、前記突然変異を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して減少するように、微生物のゲノム内の遺伝子に突然変異を導入することによって減少させることができる。遺伝子の発現の減少をもたらす突然変異としては、遺伝子によってコードされるポリペプチドにおいてアミノ酸置換を引き起こす1ヌクレオチド以上の置換(ミスセンス突然変異)、終止コドンの導入(ナンセンス突然変異)、フレームシフトを引き起こすヌクレオチドの欠失もしくは挿入、薬剤耐性遺伝子の挿入、または遺伝子の一部もしくは遺伝子全体の欠失が挙げられる(Qiu and Goodman, 1997;Kwon et al., 2000)。プロモーター、シャイン-ダルガノ(SD)配列等の発現調節配列の改変等によっても発現を減少させることができる。遺伝子の発現は、「λ-レッド媒介遺伝子置換」等の遺伝子置換によって減少させることもできる(Datsenko and Wanner, 2000)。λ-レッド媒介遺伝子置換は、本明細書に記載される1つ以上の遺伝子を不活性化する特に好適な方法である。
【0259】
「不活性化する」、「不活性化」および「不活性化した」は、遺伝子の文脈において使用される場合、問題の遺伝子がもはや機能性タンパク質を発現しないことを意味する。遺伝子配列の一部もしくは全体の欠失、遺伝子のリーディングフレームの移動、ミスセンス/ナンセンス突然変異の導入、または遺伝子発現を制御する配列、例えばプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等を含む遺伝子の隣接領域の改変のために改変DNA領域が遺伝子を天然に発現することができない可能性がある。好ましくは、対象の遺伝子は、遺伝子置換等による遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化される。不活性化は、対象の遺伝子をDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを導入または発現させることによっても達成され得る。本発明の文脈における「レアカットエンドヌクレアーゼ」としては、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)およびRNA誘導型エンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0260】
微生物、例えば細菌のゲノム内の遺伝子の有無は、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって検出することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEに続くイムノブロッティングアッセイ(ウエスタンブロッティング分析)等を含む既知の方法によって測定することができる。
【0261】
遺伝子の「発現レベルの増加」とは、遺伝子組換え微生物が産生する転写産物の量、それぞれ前記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して増加することを意味する。より詳細には、遺伝子の「発現レベルの増加」とは、遺伝子組換え微生物が産生する転写産物の量、それぞれ前記遺伝子によってコードされるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。遺伝子発現のレベルは、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって決定することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるポリペプチドの量は、ELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティング等を含む既知の方法によって測定することができる。
【0262】
ポリペプチドの「発現レベルの増加」とは、遺伝子組換え微生物が産生する問題のポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して増加することを意味する。より詳細には、ポリペプチドの「発現レベルの増加」は、遺伝子組換え微生物が産生する問題のポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約2000%、少なくとも約3000%、少なくとも約4000%、少なくとも約5000%、少なくとも約6000%、少なくとも約7000%、少なくとも約8000%、少なくとも約9000%または少なくとも約10000%増加することを意味する。所与の細胞において産生されるポリペプチドの量は、当該技術分野で既知の任意の好適な定量化法、例えばELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティングによって決定することができる。
【0263】
ポリペプチド発現の増加は、当業者に既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、ポリペプチド発現の増加は、微生物においてポリペプチドをコードする遺伝子(単数または複数)のコピー数を増加させること、例えば微生物においてmRNA分子の産生を引き起こすように機能するプロモーターに操作可能に連結した、ポリペプチドをコードする遺伝子(単数または複数)を含む外因性核酸、例えばベクターを微生物に導入することによって達成され得る。ポリペプチド発現の増加は、ポリペプチドをコードする遺伝子(単数または複数)の少なくとも第2のコピーを微生物のゲノムに組み込むことによって達成され得る。ポリペプチド発現の増加は、ポリペプチドをコードする遺伝子(単数または複数)に操作可能に連結したプロモーターの強度を増大させることによっても達成することができる。ポリペプチド発現の増加は、ポリペプチドをコードするmRNA分子上のリボソーム結合部位を改変することによっても達成することができる。リボソーム結合部位の配列を改変することで、翻訳開始速度を高め、それにより翻訳効率を向上させることができる。
【0264】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(例えば、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドまたは5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド)の発現が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変微生物における前記ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(対照)における前記ポリペプチドの発現と比較して低下することを意味する。改変微生物におけるポリペプチドの発現は、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(対照)における前記ポリペプチドの発現と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数(例えば6%、7%、8%等)の任意のパーセンテージで低下し得る。より詳細には、ポリペプチドの発現が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、微生物におけるポリペプチドの量が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(対照)における前記ポリペプチドの量と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数(例えば6%、7%、8%等)の任意のパーセンテージで低下することを意味する。微生物におけるポリペプチドの発現または量は、ELISA、免疫組織化学、ウエスタンブロッティングまたはフローサイトメトリー等の手法を含む当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって決定することができる。
【0265】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(例えば、ジヒドロ葉酸シンターゼ活性およびホリルポリグルタミン酸シンテターゼ活性の両方を有するポリペプチドまたは5-メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド)の活性が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変微生物における前記ポリペプチドの触媒活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(対照)における前記ポリペプチドの触媒活性と比較して低下することを意味する。改変微生物におけるポリペプチドの活性は、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(対照)における前記ポリペプチドの発現と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数(例えば6%、7%、8%等)の任意のパーセンテージで低下し得る。微生物におけるポリペプチドの活性は、任意の好適なタンパク質および酵素活性アッセイによって決定することができる。
【0266】
本明細書で使用される場合、遺伝子の「調節領域」は、コード配列の発現に影響を与える核酸配列を指す。調節領域は、当該技術分野で既知であり、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、マトリックス付着領域、および/またはコード配列の発現を調節する他の要素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
本明細書で使用される場合、「発現」は転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌を含むが、これらに限定されない、ポリペプチド(例えば、コードされる酵素)の産生に関与する任意の工程を含む。
【0268】
「置換」または「置換された」は、或るアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることによるポリペプチドの改変を指し、例えばポリペプチド配列中のセリン残基をグリシンまたはアラニン残基で置き換えることは、アミノ酸置換である。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、「置換」または「置換された」は、或るヌクレオチドを別のヌクレオチドで置き換えることによるポリヌクレオチドの改変を指す。例えば、ポリヌクレオチド配列中のシトシンをチミンで置き換えることは、ヌクレオチド置換である。
【0269】
「非保存的置換」は、ポリペプチドに関して使用される場合、ポリペプチド中のアミノ酸を側鎖の特性が顕著に異なるアミノ酸で置換することを指す。非保存的置換では、定義された基の中ではなく、その間のアミノ酸を使用することができ、(a)置換(例えば、グリシンの代わりにセリン)の領域におけるペプチド骨格の構造、(b)電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さに影響を与える。例として、限定されるものではないが、例示的な非保存的置換は、塩基性または脂肪族アミノ酸で置換された酸性アミノ酸;小型のアミノ酸で置換された芳香族アミノ酸;および疎水性アミノ酸で置換された親水性アミノ酸であり得る。
【0270】
「配列同一性のパーセンテージ」、「%配列同一性」および「パーセント同一性」は、本明細書においてアミノ酸配列と参照アミノ酸配列との間の比較を指すために使用される。本明細書で使用される「%配列同一性」は、2つのアミノ酸配列から以下のように算出される:Genetic Computing GroupのGAP(グローバルアラインメントプログラム)バージョン9を用い、デフォルトのBLOSUM62行列を-12のギャップオープンペナルティ(ギャップの最初のヌルに対する)および-4のギャップ伸長ペナルティ(ギャップ内の追加の各ヌルに対する)で用いて配列をアラインメントする。アラインメント後に、参照アミノ酸配列中のアミノ酸の数に対するパーセンテージとしてマッチの数を表すことによって、パーセンテージ同一性を算出する。
【0271】
数値の限界または範囲が本明細書において定められる場合、端点が含まれる。また、数値の限界または範囲内の全ての値および部分範囲は、明示的に書き出されるかのように具体的に含まれる。
【0272】
本発明を一般的に説明したが、例示のみを目的として本明細書に提示され、特に指定のない限り、限定を意図するものではない或る特定の具体例を参照することによって更なる理解を得ることができる。
【0273】
実施例
実施例1:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のゲノムにおけるフォレート生合成遺伝子の同定
フォレート生合成経路に関与する遺伝子および酵素は、文献中で知られており、KEGGデータベース(www.genome.jp/kegg/pathway.html)に詳細に記載されている。B.サブティリス(B.subtilis)の重要なフォレート生合成遺伝子のヌクレオチド配列およびタンパク質配列を、BLASTアルゴリズムを用いてB.サブティリス(B.subtilis)のゲノムおよびタンパク質データベースを調査することによって得た。フォレート生合成遺伝子および酵素の配列を「クエリー」として導入し、対応するB.サブティリス(B.subtilis)配列を「ヒット」として同定した。フォレート生合成遺伝子の配列を下記表2に示す。
【0274】
【0275】
実施例2:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)に最適化された葉酸生合成のための合成遺伝子の合成
B.サブティリス(B.subtilis)におけるタンパク質発現を改善するために、アミノ酸配列(配列番号7、8、9、10、12、79、81および83)を遺伝子コドン最適化(IDT Integrated DNA TechnologiesのCodon Optimization Tool)に使用した。合成されるDNAフラグメント(それぞれ配列番号13、14、15、16、17、91、92および93)は、RBS配列、遺伝子過剰発現のための調節プロモーター配列(例えば配列番号38のp15)、また葉酸オペロン発現カセットの更なるアセンブリに必要とされる短いアダプター配列を両末端に付加して設計した。
【0276】
実施例3:葉酸オペロンのアセンブリ
・バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)遺伝子からアセンブリした葉酸オペロン
DNAフラグメント(配列番号13、14、15、16および17)として合成したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)遺伝子の重要なフォレート生合成遺伝子を葉酸オペロン(FOL-OP-BS2)のアセンブリに使用した。葉酸オペロンをB.サブティリス(B.subtilis)ゲノムに組み込むために、lacA相同性およびエリスロマイシン選択可能マーカーを有する2つの付加的なDNAフラグメント(配列番号18および19)を設計し、安定したゲノム組込みのために合成した。
【0277】
葉酸オペロンアセンブリの最初の工程では、別個のDNAフラグメントのPCR増幅は、プライマーの特定のセット(配列番号13のフラグメントについては配列番号26および配列番号27のプライマー対;配列番号17のフラグメントについては配列番号32および配列番号28のプライマー対;配列番号15のフラグメントについては配列番号33および配列番号29のプライマー対;配列番号16のフラグメントについては配列番号34および配列番号30のプライマー対;配列番号14のフラグメントについては配列番号35および配列番号31のプライマー対)を用いて行った。
【0278】
フラグメントは、EppendorfのサイクラーおよびPhusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)を用い、200μM dNTP、5%DMSO、0.5μMの各プライマーおよびおよそ20ngの鋳型を添加した製造業者により提供されるバッファーを50μlの最終容量で用いて、32サイクル増幅した。
【0279】
使用したプログラム:98℃で2分
(98℃で30秒、65℃で15秒、72℃で30秒)を32サイクル
72℃で5分
10℃ホールド
【0280】
各フラグメントのPCRを0.8%アガロースゲルで行い、Wizard PCRクリーニングキット(Promega)で提供されるプロトコルによってゲルからクリーニングした。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工フォレートオペロンにアセンブリした。ライゲーションの成功に適合した制限末端を確実にするために、NdeIおよびAseI制限部位の組合せを使用した。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。5μlのFD greenバッファー、3μlの選択酵素およびおよそ1500ngのPCRフラグメントを添加して50μl容量で制限を行った。フラグメントを制限後にWizard SV Gel and PCR Clean-up systemでクリーニングし、最初の2つをライゲーションに使用した。2.5UのT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)を製造業者により提供されるバッファーとともに、5%PEG 4000を添加し、両方のフラグメントを1:1のモル比で最終容量15μlとして使用した。次の工程では、1μlの不活性化ライゲーションを鋳型として、配列番号26および配列番号28のプライマー、ならびに同じプログラム(伸長時間をより長くする)、ならびに上で使用したミックスを用いる新たな50μLのPCRに使用した。PCRを0.8%アガロースゲルで行い、フラグメントをゲルから切り出し、クリーニングした。クリーニングした新たなフラグメント(配列番号13および配列番号17のアセンブリ)をAseI制限酵素で切断し、更なるクリーニング後に、既にNdeIで切断し、その後クリーニングした第3のフラグメント(配列番号15)とのライゲーションに使用した。ライゲーションを鋳型とした新たなPCRに続いて、同じプロトコルによってフラグメント4および5を追加し、最大5つのフォレート生合成遺伝子のフラグメントを作製した。
【0281】
株FL722を生成するために、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)遺伝子からアセンブリした構築葉酸オペロン(
図4に示す)を形質転換に使用し(実施例5を参照されたい)、培養後に全フォレートの測定を行った(実施例12を参照されたい)を参照されたい。
【0282】
・ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)遺伝子に由来する葉酸オペロン
ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)オペロンFOL-OP-LL(配列番号49)からの異種遺伝子(folA、clpX、ysxL、folB、folE、folP、ylgGおよびfolC)をPCRによって増幅し、単離されたゲノムDNAを鋳型として使用した。PCR増幅用のプライマーを2つの別個のPCR反応のために設計し、第1のPCR反応では、プライマー(配列番号45および配列番号46)をゲノムDNAからの遺伝子の特異的増幅に使用し、第2のPCR反応では、プライマー(配列番号47および配列番号48)を用いて、さらに制限部位(NheIおよびNotI)をオペロンの両末端に導入した。PCR産物を低コピーベクターpFOL1にサブクローニングし、強力な構成的プロモーターP
15(配列番号38)をFOL-OP-LLオペロンの初めに付加した。FOL-OP-LLオペロンの組込みカセットの構築のために、クロラムフェニコール耐性カセットおよびamyE遺伝子座の下流相同性を導入した。最終工程では、SbfI制限酵素を用いて組込みカセットをクローニングベクターから実現し、セルフライゲーションに使用して多コピーゲノム組込みを達成した。株FL84を生成するために、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)遺伝子からアセンブリした構築葉酸オペロン(
図2に示す)を形質転換に使用し、培養後に全フォレートの測定を行った(実施例12を参照されたい)。
【0283】
・バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)遺伝子からアセンブリした葉酸オペロンFOL-OP-BS1
FOL-OP-BS1(人工フォレートオペロン)のアセンブリは、合成技術の2つの別個のDNAフラグメント(BS-FOLOP1-COMBおよびBS-FOLOP2-COMB、配列番号77および78)から行った。合成DNAフラグメントBS-FOLOP2-COMBは、カナマイシン耐性カセットおよびamyE遺伝子座の下流相同性を有する低コピー数プラスミドにクローニングした。FOL-OP-BS1組込みカセットの構築の最終工程では、ギブソンアセンブリプロトコルを用い、BS-FOLOP1-COMB(パートA)の増幅のために特別に設計したプライマー対(配列番号87および88)およびBS-FOLOP2-COMB+KnR+amyE-HOM(パートB)の増幅のためのプライマー対(配列番号89および90)を用いてin vitroでアセンブリを行った。フォレート生合成のためのオペロンFOL-OP-BS1は、強力な構成的プロモーターPvegおよび選択マーカーとしてのカナマイシン耐性カセットの発現下にある(
図16)。アセンブリした組込みカセットFOL-OP-BS1をPCR増幅し、さらにセルフライゲーションに用いて、B.サブティリス(B.subtilis)ゲノムのamyE遺伝子座への多コピーゲノム組込みを可能にした。
【0284】
・アシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)(エレモテシウム・ゴシッピイ(Eremothecium gossypii))遺伝子からの葉酸オペロン
既知のB2ビタミン産生糸状真菌であるアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)(エレモテシウム・ゴシッピイ(Eremothecium gossypii))からの発現カセット(FOL-OP-AG)を、2つの合成フォレート生合成遺伝子fol1-AG(配列番号50)およびfol2-AG(配列番号51)を用いて構築した。遺伝子をB.サブティリス(B.subtilis)の最適発現のためにコドン最適化し、付加的な調節プロモーター配列(プロモーターP
15)を導入した2つの別個のDNAフラグメントFOL1-AG(配列番号52)およびFOL2-AG(配列番号53)として合成した。FOL1-AGフラグメントを、初めにSpeI/BamHI制限部位を用いて低コピーベクターpFOL1にクロラムフェニコール耐性カセットおよび強力な構成的プロモーターP
15の下流でサブクローニングした。第2の工程では、FOL2-AGフラグメントを、EcoRV制限部位を用いて低コピーベクターpFOL2にamyE遺伝子座の相同性の上流でサブクローニングした。次の工程では、P
15-fol2-AGおよびamyE相同性を含むDNAフラグメントを、プライマー(配列番号54および配列番号55)を用いてPCR増幅し、BamHI制限部位を用いてプラスミドpFOL1にクロラムフェニコール耐性カセットおよびP
15-fol1-AGの下流でクローニングした。最終工程では、アセンブリした組込みカセットFOL-OP-AGを、プライマー(配列番号56および配列番号57)を用いてPCR増幅し、PCR産物を細胞の形質転換に使用した。株FL260を生成するために、アシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)遺伝子からアセンブリした構築葉酸オペロン(
図3に示す)を形質転換に使用し、培養後に全フォレートの測定を行った(実施例12を参照されたい)。
【0285】
実施例4:folC置換のための遺伝子構築物のアセンブリ
フォレートに複数のグルタメート残基を付着させることが可能なネイティブホリルポリグルタミン酸シンターゼ(folC)を、フォレート生合成において最初のグルタメート残基のみを付着させることが可能な変異体に置き換えるために、対応する遺伝子構築物の生成を試みた。配列番号43および配列番号44の対応するプライマー対を用いてgDNA B.サブティリス(B.subtilis)VBB38からPCRによって増幅したfolC相同性末端を用いることで、folC破壊カセットをアセンブリした。PCRミックスは、Phusionポリメラーゼ(Thermo Fisher)および製造業者により提供されるバッファーを用い、5%DMSO、200μM dNTPおよび0.5μMの各プライマーを添加して50μLの最終容量とし、32サイクル行った(アニーリング温度65℃、伸長時間2分)。増幅したPCRフラグメントを0.8%アガロースゲルから切り出し、Wizard Gel and PCR Clean-up systemキットでクリーニングし、1mM ATPを添加した、製造業者により提供されるバッファーA中にてT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Thermo Fisher)でリン酸化した。
【0286】
予めFspAIおよびXhoIで切断し、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)フラグメント(Thermo Fisher)で平滑末端化し、FastAP感熱性アルカリホスファターゼ(Thermo Fisher)で脱リン酸化した低コピープラスミドpET-29c(Novagen)に、調製したフラグメントをライゲートした。
【0287】
テトラサイクリン耐性カセット(配列番号21)を用いてfolC遺伝子配列を破壊した。テトラサイクリン耐性カセットは、プラスミドをBsp119I制限酵素で切断し、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)フラグメント(Thermo Fisher)で平滑末端化し、FastAPを用いて脱リン酸化し、T4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher)を用いてライゲートしてfolC配列に挿入した。
【0288】
さらに、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(folC2-LR)(配列番号22)およびアシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)(folC2-AG)(配列番号23)に由来する異種folC2タンパク質配列を、folC2-LR(ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri))(配列番号24)およびfolC2-AG(アシュビア・ゴシッピイ(Ashbya gossypii))(配列番号25)の異種遺伝子発現のためのコドン最適化DNA配列の設計に使用した。DNAフラグメントを合成し(IDT Integrated DNA Technologies)、2つの組込みカセットの構築に使用した(
図5に示す)。初めに、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)フラグメント(Thermo Fisher)を用いて平滑末端化した、Pvegプロモーター(配列番号37)を含むフラグメントを生成し、予めXbaIで切断し、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)フラグメント(Thermo Fisher)で平滑末端化した、folC相同性を有するプラスミドにライゲートした。
【0289】
次に、新たに構築したプラスミドをBcuIおよびFspAI制限酵素で切断し、FastAPを用いて脱リン酸化した。その後、プラスミドを、予めBcuIおよびFspAI制限酵素で切断した、folC2-LR中の秩序化された最適化配列folC2-AGとライゲートした。このプラスミドに、予めEcoRI制限酵素で切断し、平滑末端化したテトラサイクリン耐性を、プラスミドをFspAIで制限し、脱リン酸化した後にライゲートした。構築したプラスミドを配列番号43および配列番号44のPCRプライマーの鋳型として使用し、形質転換用のfolC破壊/置換カセットを生成した。
【0290】
実施例5:形質転換用の葉酸オペロン構築物のアセンブリ
葉酸オペロンのアセンブリ後に(実施例3を参照されたい)、フォレート生合成遺伝子を有するDNAフラグメントをさらにXbaI制限酵素で切断し、配列番号40および配列番号41のプライマーを用いてエリスロマイシン耐性カセット用の合成DNAフラグメント(配列番号19)とライゲートし(62℃、40秒)、XbaIで切断し、ライゲーションに適合したDNA末端を確実にした。ライゲーション後に、プライマー(配列番号36および配列番号39)を用いてフラグメント全体をPCR増幅した。
【0291】
アセンブリの最終工程では、lacA相同性および調節プロモーター領域を有するフラグメント(配列番号18)を付加した。フラグメントをSpeI制限酵素で切断し、ライゲーションに使用した。ライゲーション混合物を、プライマー(配列番号42および配列番号39)を用いてPCR鋳型として使用し、これによりB.サブティリス(B.subtilis)株へのゲノム形質転換用の発現カセット(配列番号20)としての人工フォレートオペロン(
図4に示す)のアセンブリを完成させた。
【0292】
実施例6:可能なバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)フォレート産生工学のための宿主株の選択
フォレート産生工学のための出発株として種々のバチルス株を使用することができる(表3)。バチルス株は自然界から単離するか、またはカルチャーコレクションから得ることができる。中でも、フォレート産生のための出発株は、プリン生合成経路に関連する代謝産物を過剰産生するために、既に突然変異誘発および選択の古典的方法に供したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の中から選択され得る。例えば、リボフラビン、イノシンおよびグアノシンを過剰産生する株を選択することができる。ランダム突然変異誘発ならびにプリンおよびリボフラビン経路からの毒性代謝阻害剤に供した株が好ましく、表3に挙げられる。
【0293】
【0294】
VKPM B2116株は、B.サブティリス(B.subtilis)168株(およそ4Mbpのゲノムを有する最も一般的なB.サブティリス(B.subtilis)宿主株)と株B.サブティリス(B.subtilis)W23に由来するDNAの6.4kbpのアイランドとのハイブリッド株である。かかる構造は、殆どのB.サブティリス(B.subtilis)工業株に共通しており、168株(トリプトファン栄養要求株trpC-)をW23(原栄養性TrpC+)DNAで形質転換することで得られた。これは、ゲノムが公開されているB.サブティリス(B.subtilis)レガシー株の1つである、一般に使用されているB.サブティリス(B.subtilis)SMY株と同じ6.4kbpのW23アイランドをゲノム中に有する(Ziegler et al., The origins of 168, W23 and other Bacillus subtilis legacy strains, Journal of Bacteriology, 2008, 21, 6983 - 6995)。VKPM B2116株は、古典的な突然変異誘発および選択によって得られたSMY株の直系の子孫である。この株の別名は、B.サブティリス(B.subtilis)VNII Genetika 304である。株の構築の説明は、1980年に出願されたソ連国特許発明第908092号明細書に記載されている。この突然変異は、その後の突然変異誘発および代謝阻害剤の選択によって得られた。株VKPM B2116は、フラビンキナーゼをコードするribC遺伝子の突然変異により、ビタミンB2の毒性類似体であるロゼオフラビンに耐性を示す。この株は、プリン塩基の毒性類似体である8-アザグアニンにも耐性を示す。
【0295】
実施例7:folCの置換および葉酸産生に最適な宿主株の生成
異種folC2(folC2-AGまたはfolC2-LR)遺伝子発現カセットの構築後に(実施例4および
図5を参照されたい)、B.サブティリス(B.subtilis)VBB38およびB.サブティリス(B.subtilis)VBB38Δribの形質転換を行った。ネイティブfolC遺伝子の破壊のための相同性を有する発現カセットを、配列番号43および配列番号44のプライマーを用いてPCRにより増幅した。形質転換後に、テトラサイクリンに耐性を示すコロニーを選択し、異種folC2遺伝子(A.ゴシッピイ(A.gossypii)またはL.ロイテリ(L.reuteri))によるネイティブfolC遺伝子の置換を、cPCRおよび得られたPCR産物のシークエンシングによって遺伝学的に確認した。新たな株を用いて全フォレートの産生収率を試験し(
図11を参照されたい)、上清と細胞バイオマスとの間の全フォレートの分布を比較した。
【0296】
実施例8:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の形質転換
i)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のナチュラルコンピテンス形質転換
10mLのSpC培地にB.サブティリス(B.subtilis)の新鮮プレートから接種し、一晩培養する。1.3mLの一晩培養物を10mLの新鮮SpC培地に希釈する(9倍希釈)。OD450を測定し、約0.5と予想される。培養物を37℃、220RPMで3時間10分成長させる。OD450を再び測定し、1.2~1.6と予想される。培養物をSpII(飢餓培地)で1:1希釈する。3.5mlの培養物を3.5mlの飢餓培地と混合し、濃度50ug/mlのトリプトファンを添加する。培養物を37℃、220RPMでさらに2時間成長させる。インキュベーション後に、培養物を1時間最大限にコンピテントとする。500uLのコンピテント細胞を2mLエッペンドルフチューブ内でDNA(濃度に応じて5~20uL)と混合し、振盪しながら37℃で30分間インキュベートする。コンピテント細胞の回復のために300uLの新鮮LBを添加し、37℃でさらに30分間インキュベートする。エッペンドルフチューブを3000RPMで5分間遠心分離する。ペレットを再懸濁し、適切な抗生物質を含むLBプレートにプレーティングする。
【0297】
培地:
10×T-base
150mM硫酸アンモニウム
800mM K2HPO4
440mM KH2PO4
35mMクエン酸ナトリウム
【0298】
SpC(最少培養培地)
100mL 1×T-base
1mL 50%グルコース
1.5mL 1.2%MgSO4
2ml 10%酵母エキス
2.5ml 1%カザミノ酸
【0299】
SpII(飢餓培地)
100ml 1×T-base
1ml 50%グルコース
7ml 1.2%MgSO4
1ml 10%酵母エキス
1ml 1%カザミノ酸
0.5ml 100mM CaCl2
【0300】
実施例9:qPCRを用いたフォレートオペロンコピー数の決定
組み込まれたB.サブティリス(B.subtilis)の人工フォレートオペロン遺伝子のコピー数の決定にリアルタイム定量PCR(qPCR)法を用いた。フォレート産生B.サブティリス(B.subtilis)形質転換体における人工フォレートオペロン中の遺伝子folP、folK、folE、dfrAおよびKnR(カナマイシン耐性遺伝子)のコピー数をSYBR Green I検出による(qPCR)によって推定した。人工B.サブティリス(B.subtilis)フォレートオペロン上のカナマイシン耐性遺伝子(KnR)のコピー数およびフォレート生合成遺伝子folP、folK、folE、dfrAのコピー数をqPCRによって定量化した。B.サブティリス(B.subtilis)株のゲノムDNAをSW Wizard Genomic DNA Purification Kit(Promega)によって単離した。gDNAの濃度および純度をOD260およびOD280にて分光光度法で評価した。全ての実験で使用したgDNAの量は、参照株のgDNAの量に等しかった。遺伝子folP、folK、folE、dfrAおよびKnRを含む人工フォレートオペロンの単一コピーを有するB.サブティリス(B.subtilis)を、遺伝子コピー数の相対定量化に参照株として使用した。B.サブティリス(B.subtilis)ゲノム中の単一コピー遺伝子であるハウスキーピング遺伝子DxSを内因性制御遺伝子として使用した。フォレート生合成遺伝子の遺伝子コピー数の定量化は、プライマーの特定のセット(folP遺伝子については配列番号59および配列番号60のプライマー対、folK遺伝子については配列番号61および配列番号62のプライマー対、folE遺伝子については配列番号63および配列番号64のプライマー対、dfrA遺伝子については配列番号65および配列番号66のプライマー対)を用いて行い、フォレートオペロンに付着したカナマイシン耐性マーカーの定量化には(配列番号67および配列番号68のプライマー対)、参照DxS遺伝子については配列番号71および配列番号72のプライマー対を使用した。qPCR分析は、StepOne(商標) Real-Time PCR Systemで行い、2-ΔΔCT法を用いて定量化を行った。
【0301】
人工BS-FOL-OP株における遺伝子の遺伝子コピー数は、1コピーの遺伝子を有する株と比べて定量化した。B.サブティリス(B.subtilis)形質転換株における人工フォレートオペロン中の遺伝子の遺伝子コピー数の相対定量化には、コピー数が1のB.サブティリス(B.subtilis)株のKnR遺伝子を参照株として使用した。遺伝子folP、folK、folE、dfrAおよびKnR遺伝子のqPCR相対定量化により、単一コピー遺伝子を有するB.サブティリス(B.subtilis)株と比較してRQ値の6倍の増加が示された。フォレート過剰産生株FL179およびFL722は、葉酸合成オペロンの多コピー組込みを有することが確認された。
【0302】
実施例10:バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の培養
凍結クライオバイアルからの段階希釈を行い、適切な抗生物質を含むMBプレートにプレーティングし、37℃でおよそ48時間インキュベートする。更なる試験のために、MBプレートからの少なくとも10~20個の単一コロニーを各株について使用する。初めに、10~20個の単一コロニーを試験のために新鮮MBプレート(同じ濃度の抗生物質を含む)に再パッチする。
【0303】
栄養生長期については、MC培地を用い、ファルコンチューブ1本当たり1プラグ(またはバッフル付きエルレンマイヤーフラスコ1本当たり5プラグ、もしくはマイクロタイタープレートのパッチのごく一部)で接種する。適切な抗生物質を培地に添加する。マイクロタイタープレートでは、96ディープウェルに500ulの培地を用い、ファルコンチューブでは、5mlの培地(50mlファルコンチューブ内)を用い、エルレンマイヤーフラスコでは、25ml(250mlフラスコ内)を用いる。培養物を220RPMにて37℃で18~20時間インキュベートする。
【0304】
産生培地(MD)への接種は、植生培地において18~20時間後である。10%の接種材料を使用する(MWでは50ul、ファルコンチューブでは0.5ml、エルレンマイヤーフラスコでは2.5ml)。各株を2つのアリコートで試験する。マイクロタイタープレートでは、48ディープウェルで500ulの培地を用い、ファルコンチューブでは5mlの培地を用い、バッフル付きエルレンマイヤーフラスコでは25mlを用いる。エルレンマイヤーフラスコでストッパーの代わりにガーゼを使用するように、より良好な通気のためにファルコンチューブにワイヤーを使用する。培養物を220RPMにて37℃で48時間インキュベートする。24時間後および48時間後に、開発された手順に従い、微生物学的アッセイを用いて全フォレートの力価を測定した。
【0305】
最良の候補株を同様の方法で再試験し、数回の確認後にバイオリアクターでの試験のために調製する。バイオリアクター試験のために選択した株の凍結培養物100ulを、適切な抗生物質を含むMBプレート上に塗布し、37℃でおよそ48時間インキュベートする。完全なバイオマスを1プレート当たり2mlの滅菌20%グリセロールで回収する。回収したバイオマスを100ulアリコートに分配し、-80℃で凍結する。これをワーキングセルバンクとしてバイオリアクター試験に使用する。
【0306】
培地組成:
1)MB(プレート)
トリプトン 10g/l
酵母エキス 5g/l
NaCl 5g/l
マルトース 20g/l
寒天20g/l
pH7.2~7.4
30分間、121℃のオートクレーブ処理
【0307】
オートクレーブ処理および冷却後に適切な抗生物質を添加する。
【0308】
2)MC(植生培地)
糖蜜 20g/l
CSL 20g/l
酵母エキス 5g/l
MgSO4・7H2O 0.5g/l
(NH4)2SO4 5g/l
【0309】
成分を混合し、pHを7.2~7.4とする。次いで、KH2PO4-K2HPO4溶液をKH2PO4 1.5g/lおよびK2HPO4 3.5g/lの最終濃度で添加する。培地をファルコンチューブ(5ml/50mlファルコンチューブ)またはエルレンマイヤーフラスコ(25ml/250ml-バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ)に分配し、121℃で30分間オートクレーブ処理する。滅菌グルコースをオートクレーブ処理後に最終濃度7.5g/lで添加する。抗生物質を接種前に添加する。
【0310】
3)MD(産生培地)
酵母 20g/l
コーンスティープリカー(CSL) 5g/l
MgSO4・7H2O 0.5g/l
パラアミノ安息香酸(pABA) 0.5g/L
【0311】
成分を混合し、pHを7.2~7.4とする。次いで、KH2PO4-K2HPO4溶液をKH2PO4 1.5g/lおよびK2HPO4 3.5g/lの最終濃度で添加する。培地を121℃で30分間オートクレーブ処理する。滅菌尿素溶液(20mlのストック溶液、最終濃度は6g/Lである)、滅菌グルコース溶液(250mlのストック溶液、最終濃度は100g/Lグルコースである)、滅菌pABA溶液(100mlのストック溶液、最終濃度は0.5g/Lである)および150mlの滅菌水をオートクレーブ処理後に添加し、1LのMD+pABA500培地を得る。適切な抗生物質を接種前に添加する。次いで、培地を滅菌エルレンマイヤーフラスコ(25ml/250ml-バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ)に分配する。
【0312】
実施例11:発酵ブロス中の全フォレートの定量化のための微生物学的アッセイ
エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)NRRL B-1295を用いる微生物学的アッセイを、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の株において産生される全フォレートの検出に用いた。B.サブティリス(B.subtilis)が産生する細胞内(バイオマスに保持される)および細胞外(培養培地に放出される)全フォレートの評価に微生物学的アッセイを用いた。微生物学的アッセイには、フォレートまたは葉酸について栄養要求性の指標生物エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)NRRL B-1295を使用する。フォレートを含有する富栄養成長培地(ラクトバチルスAOACブロス)において、E.ヒラエ(E.hirae)を37℃で18~24時間前培養する。次いで、フォレートを含まない成長培地(葉酸アッセイ培地)で洗浄し、残留フォレートを除去する。洗浄したE.ヒラエ(E.hirae)培養物を、葉酸を含まないアッセイ培地に接種する。微生物学的アッセイを96ウェルマイクロタイタープレートにおいて開始する。アッセイ対象の適切に希釈した培地サンプルおよび葉酸の標準溶液を、指標株を含有する成長培地に添加し、プレートを37℃で20時間インキュベートする。指標生物の成長反応は、培地サンプル/対照に含まれる葉酸/フォレートの量に比例する。葉酸の一連の標準溶液を成長培地および指標株に添加することで、標準曲線を各アッセイについて構築する。光学密度(OD)を波長600nmで測定することで成長を測定する。試験サンプルに対するE.ヒラエ(E.hirae)の成長反応を既知の標準溶液の反応と定量的に比較する。様々な濃度の葉酸を含有する希釈系列を調製し、前記のようにアッセイする。既知濃度の葉酸で測定したOD600をプロットすることによって標準曲線を得る。標準曲線を用いて試験サンプル中の全フォレートの量を算出する。指標生物E.ヒラエ(E.hirae)NRRL B-1295を用いて、全フォレートの濃度を測定サンプルにおいて0.05~0.7ng/mLの範囲で検出する。B.サブティリス(B.subtilis)株が産生する細胞外および細胞内の全フォレートは、適切に希釈した試験サンプルを葉酸アッセイ培地中の指標生物E.ヒラエ(E.hirae)に添加することで推定することができる。
【0313】
実施例12:異なる出発株および初期folC置換株および葉酸オペロン増幅株の全フォレート収率
folC遺伝子をA.ゴシッピイ(A.gossypii)(B.サブティリス(B.subtilis)株FL21)またはL.ロイテリ(L.reuteri)(B.サブティリス(B.subtilis)株FL23)のいずれかに由来する異種folC2遺伝子によって置き換えた形質転換体および葉酸オペロンを増幅させた形質転換体を、シェーカー規模(5mlの産生培地MD)で全フォレート量について試験した。発酵後に、発酵ブロスのサンプル(200μl)を慎重に回収して均一なサンプルを得て、氷冷抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)で10倍希釈した。サンプルを14000rpmおよび4℃で10分間遠心分離し、濾過滅菌した(細孔径0.22um)。微生物学的アッセイのためにサンプルを抽出バッファーで段階希釈し、微生物学的アッセイを開始するまで4℃に保った。表4に微生物学的アッセイによって測定された選択株の結果を示す。
【0314】
【0315】
実施例13:LC-MSを用いたフォレート形態および関連化合物の濃度の決定、ならびに2つの主要産物としての10-ホルミル-ジヒドロ葉酸および10-ホルミル葉酸の同定
微生物学的アッセイに加えて、分析実行時間が適度に短い高感度の汎用的な分析法を開発することが目的であった。方法は揮発性移動相に適合するLCMSである必要があり、さらにはUV検出が可能であり、可能な限り多くのフォレート関連分析物の良好なクロマトグラフィー分離をもたらす必要があった。
【0316】
機器および材料:
方法は、hESI源を備えるMS/MS可能質量分析計Thermo TSQ Quantum Access MAXと組み合わせた、PDA検出器を有するThermo Accela 1250 HPLC機器で開発した。方法は、粒径2.2μmのThermo Acclaim RSLC PA2、150×2.1mm HPLCカラムで開始した。PDA検出器を282nmに設定し、バンド幅9nmおよび80Hz走査速度、さらには200~800nmのDADスキャンとした。カラムオーブンを60℃、トレイ冷却を12℃に設定する。注入溶媒は水中10%メタノールであり、洗浄およびフラッシュ量:2000μlとする。注入量を10μlに設定し、より高濃度の分析物が予想される場合には1μlに設定することもできる。移動相Aは水中650mM酢酸であり、移動相Bはメタノールである。移動相の流量は0.5ml/分であり、総実行時間は20分である。方法には、表5の勾配プログラムおよび表6に記載のMS分光計パラメーターを用いる。
【0317】
【0318】
【0319】
LCMS検出器をDAD検出器の後に連結し、分析物を400~600m/zのスキャンモード、M.W.+1でのSIMモード、およびMS/MSモードで観察する(表6)。標準物質を0.1M NaOH溶液に秤量および溶解して調製し(表7および表8)、即座にHPLC機器に投入する。
【0320】
【0321】
【0322】
方法は最大1000mg/Lの分析物のMS/MS検出で線形応答を有し、全ての標準物質について90%を超える相関を有する。
【0323】
実施例14:遺伝子組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)による異なる比率の葉酸および誘導体の産生
folC遺伝子をA.ゴシッピイ(A.gossypii)(B.サブティリス(B.subtilis)株FL21)またはL.ロイテリ(L.reuteri)(B.サブティリス(B.subtilis)株FL23)のいずれかに由来する異種folC2遺伝子によって置き換えた形質転換体および葉酸オペロンを増幅させた形質転換体を、シェーカー規模(5mlの産生培地MD)で全フォレート量について試験した。
【0324】
適切な抗生物質を含むMBプレートに株をパッチし、37℃で2日間インキュベートした。振盪フラスコ実験については、成長させた株をFalcon 50mLコニカル遠心チューブ内の5mlのMC(シード)培地に移し(1プラグ/5ml)、ロータリーシェーカーにて220RPMおよび37℃で16~18時間培養した。シード培養物の10%接種材料を用いて5mLの産生培地(MD+pABA500)に接種した。ロータリーシェーカーにて220RPMおよび37℃で48時間、暗所で株を培養した。発酵後に、発酵ブロスのサンプル(200μl)を慎重に回収して均一なサンプルを得て、氷冷抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)で10倍希釈した。サンプルを14000rpmおよび4℃で10分間遠心分離し、濾過滅菌した(細孔径0.22um)。異なるフォレート種の定量化については、実施例13に記載のようにHPLC法を用いた。異なるB.サブティリス(B.subtilis)株の結果を表9に示し、発酵ブロスサンプルの代表的なHPLCクロマトグラムを
図6に示す。
【0325】
【0326】
B.サブティリス(B.subtilis)に由来する異種folC-AGおよび過剰発現フォレート生合成遺伝子を有する株FL179は、野生型バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)168株と比較して43297%の10-ホルミル葉酸産生の増加を示した。
【0327】
実施例15:10-ホルミルジヒドロ葉酸の10-ホルミル葉酸への酸化的変換
発酵の終了後、ブロスのHPLC分析により、比較的多量(85面積%)の10-ホルミルジヒドロ葉酸(10F-DHF)が検出された。さらに、10-ホルミルジヒドロ葉酸が10-ホルミル葉酸へと酸化的に変換され得ることが観察された(
図7を参照されたい)。したがって、10-ホルミル葉酸への定量的変換をもたらすプロトコルの開発を始めた。その後の脱ホルミル化工程により、葉酸が最大限の収率で得られると期待される。文献検索から、特定のpH値での水溶液中の空気によるテトラヒドロ葉酸の酸化を記載している報告が明らかになった(Reed 1980)。この報告に基づくと、pH値4、7および10では、酸化の主要産物はp-アミノベンゾイルグルタミン酸(PABG)および6-ホルミルプテリンである。加えて、7,8-ジヒドロフォレート中間体はpH=10でのみ検出された。10-ホルミルジヒドロ葉酸から10-ホルミル葉酸へのシフト変換を促進するために、発酵ブロス上清での一連の酸化実験を行った。O
2、H
2O
2およびNaIO
4等の幾つかの酸化試薬を試験した(
図7を参照されたい)。
【0328】
【0329】
実験は50mL丸底フラスコ内で10mLの発酵ブロス上清を用いて行った。1.0Mおよび0.1M NaOH溶液によってpH値を設定した。反応の進行および結果をHPLCによって測定した。HPLCサンプルは、抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)中で調製した。全ての反応物を常温(25℃)で48時間、遮光して撹拌した。
【0330】
必要なpH値は、1Mおよび0.1MのHClまたはNaOHで調整した。より低pH値での反応はより遅く、フォレートの合計が比較的高く維持される(表10、項目2~4)。逆に、より高pH値での反応(表10、項目5~7)では、フォレートの合計が大幅に減少するにもかかわらず、10-ホルミルジヒドロ葉酸の消費が改善される。過酸化水素または過ヨウ素酸ナトリウム等の代替的な酸化試薬が使用され得ることが予想される。
【0331】
代表的な実験手順:
発酵ブロスを4500rpmで遠心分離し、上清をデカントした。10mLの発酵ブロス上清を撹拌子、pHメーターおよび遮光用アルミ箔を備える50mL丸底フラスコにピペットで移した。水酸化ナトリウムまたは塩酸(微調整のため1.0Mおよび0.1M)を滴加してpH値を設定し、反応物を常温(25℃)下で24時間激しく撹拌した。反応混合物をバルーンからの空気でパージした。48時間の撹拌後に、1mLの各発酵ブロスを9mLの抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)により二連で希釈した。懸濁液をボルテックスで撹拌し、4500rpmで遠心分離し、0.22μmフィルターで濾過し、HPLCで分析した。
【0332】
【0333】
実験は50mL丸底フラスコ内で10mLの発酵ブロス上清を用いて行った。過酸化水素を30%水溶液として滴加した。反応の進行および結果をHPLCによって測定した。HPLCサンプルは、抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)中で調製した。全ての反応物を常温(25℃)で48時間、遮光して撹拌した。
【0334】
10-ホルミルジヒドロ葉酸の10-ホルミル葉酸への酸化的変換のための代替的な酸化剤である過酸化水素を50~500mg/Lの濃度範囲で添加すると、より高度な結果が得られた(表11)。反応の最初の24時間で、10-ホルミルジヒドロ葉酸の濃度が初期値の50%まで低下した。反応を48時間まで延長すると、良好な変換が得られ、全フォレートの合計が比較的高く維持された。
【0335】
代表的な実験手順:
発酵ブロスを4500rpmで遠心分離し、上清をデカントした。10mLの発酵ブロス上清を撹拌子、pHメーターおよび遮光用アルミ箔を備える50mL丸底フラスコにピペットで移した。過酸化水素を30%水溶液として滴加し、反応混合物を常温(25℃)下で24~48時間激しく撹拌した。48時間の撹拌後に、1mLの各発酵ブロスを9mLの抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)により二連で希釈した。懸濁液をボルテックスで撹拌し、4500rpmで遠心分離し、0.22μmフィルターで濾過し、HPLCで分析した。
【0336】
【0337】
実験は50mL丸底フラスコ内で10mLの発酵ブロス上清を用いて行った。過ヨウ素酸ナトリウムを一度に添加した。反応の進行および結果をHPLCによって測定した。HPLCサンプルは、抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)中で調製した。全ての反応物を常温(25℃)で48時間、遮光して撹拌した。
【0338】
過ヨウ素酸ナトリウムは、予測できない基質の最適な試薬として使用されることが多い。この試薬を用いた本発明者らの初期実験では、酸化的変換の有効濃度が1~10g/Lであることが明らかとなった。過ヨウ素酸ナトリウムは、5g/Lおよび10g/Lの2つの異なる濃度で添加した。反応の最初の24時間で、10-ホルミルジヒドロ葉酸の濃度が初期値から大幅に低下した(表12)。反応を48時間まで延長すると、優れた変換が得られ、全フォレートの合計が比較的高く維持された。
【0339】
代表的な実験手順:
発酵ブロスを4500rpmで遠心分離し、上清をデカントした。10mLの発酵ブロス上清を撹拌子、pHメーターおよび遮光用アルミ箔を備える50mL丸底フラスコにピペットで移した。過ヨウ素酸ナトリウムを一度に添加し、反応混合物を常温(25℃)下で24時間激しく撹拌した。48時間の撹拌後に、1mLの各発酵ブロスを9mLの抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)により二連で希釈した。懸濁液をボルテックスで撹拌し、4500rpmで遠心分離し、0.22μmフィルターで濾過し、HPLCで分析した。
【0340】
実施例16:5Lバイオリアクター容量でのフォレートの産生
フォレートの産生は、適切な条件をフォレートの培養および産生に用いるバイオリアクターにおいて大幅に改善され得る。このプロセスには、前培養物の調製および主なフェドバッチバイオプロセスが含まれる。
【0341】
i)前培養物の調製
フラスコ内の前培養培地(FOL-MC、表13)に株FL179のワーキングセルバンクを播種し、37℃および220RPM(2インチスロー)のロータリーシェーカーで11~14時間培養した。
【0342】
ii)フェドバッチバイオプロセス
フォレートの産生を5Lバイオリアクター内でFOL-ME培地(表14)を用いて行う。バイオリアクターの開始パラメーターは撹拌=600RPM、通気=1vvmであり、水酸化アンモニウム溶液を用いてpHを7に制御する。バイオリアクターに10%の前培養物を接種する。30%を超える空気飽和度を維持するためにDOを撹拌および気流によって制御する。発酵ブロス中のグルコースが枯渇した時点で、グルコースおよびCSL混合物(表15)の供給を開始する。フィード添加速度は慎重に制御する必要があり、供給速度は、アセトイン(10g/L以下)の蓄積をもたらさないレベルに制御する。アセトインが発酵ブロス中に検出されない場合、供給速度は過度に低い。発酵ブロス中のパラアミノ安息香酸(PABA)濃度を一定間隔で測定し、濃縮PABAストック溶液(50g/L)のバッチ供給により500mg/L超に維持する必要がある。バイオプロセスは、通常は50時間で完了する。フォレート産生バイオプロセスのプロファイルを
図10に示す。
【0343】
【0344】
【0345】
【0346】
実施例17:qPCRを用いたフォレート生合成遺伝子の発現レベルの決定
培養物成長条件:B.サブティリス(B.subtilis)培養物をLB培地中で指数増殖期まで成長させた。培養物を2容量のRNA protect Bacteria Reagent(QIAGEN)と混合し、4500rpmで10分間遠心分離し、-80℃で凍結するか、または即座に処理した。1mg/mLリゾチームを含有する200μLのTEバッファーに細胞ペレットを15分間再懸濁し、細胞壁を除去した。QIAGENのRneasy miniキットを用い、製造業者のプロトコルに従ってRNAを単離した。得られたRNAは、分光光度法で濃度および品質を確認した。単離したRNAをDNase(Ambionキット)で処理し、RevertAid H Minus First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Scientific)を用いてcDNAに逆転写した。得られたcDNAを希釈し、cDNAの最終収率は約2.5ng/μLである。
【0347】
得られたcDNAをqPCR分析(StepOne Real-Time PCR System、Applied Biosystems)によってSYBR Green I(Thermo Scientific)検出で分析した。組み込まれたB.サブティリス(B.subtilis)の人工フォレートオペロン遺伝子folP、folK、folE、dfrAにおけるフォレートオペロン遺伝子の発現を、リアルタイム定量PCR(qPCR)法によって定量化した。
【0348】
定量qPCR発現データの正規化のために参照として使用される内部標準遺伝子である、B.サブティリス(B.subtilis)の16S rRNA遺伝子を使用した。フォレート生合成遺伝子の発現は、プライマーの特定のセット(folP遺伝子については配列番号59および配列番号60のプライマー対、folK遺伝子については配列番号61および配列番号62のプライマー対、folE遺伝子については配列番号63および配列番号64のプライマー対、dfrA遺伝子については配列番号65および配列番号66のプライマー対)を用いて決定し、内部標準として選択された16S遺伝子については配列番号69および配列番号70のプライマー対を使用した。qPCR分析をStepOne(商標) Real-Time PCR Systemで行い、2-ΔΔCT法を用いて定量化を行った。
【0349】
多コピーの合成フォレートオペロンを2つの別個のゲノム位置(amyEおよびlacA)に有する最良のフォレート産生株FL722が、フォレート生合成遺伝子の最も強い発現レベルを有することが確認された。
【0350】
実施例18:10-ホルミル葉酸の葉酸への化学変換
酸媒介脱ホルミル化
10-ホルミル葉酸の脱ホルミル化を0.01mmol規模(5mg)で行った。10-ホルミル葉酸を、撹拌子を備える2mLエッペンドルフチューブに秤量し、蒸留水(1mL)に懸濁した。懸濁液を酸(50当量、0.5mmol)で処理し、常温で16時間撹拌した。続いて、懸濁液(200μL)をDMSO(800μL)で希釈し、ボルテックススターラーでホモジナイズし、HPLCで分析した。脱ホルミル化の結果を表16に示す。
【0351】
【0352】
全ての実験を2mLエッペンドルフチューブで10-ホルミル葉酸(5mg、0.01mmol)を用いて行った。a変換率はHPLCによって測定した。bn.d. - 不検出。本実験では、分析物がDowex 50WX2樹脂に吸着している可能性が高いため、10-ホルミル葉酸も検出されなかった。cTFA - トリフルオロ酢酸。dTCA - トリクロロ酢酸。ePTSA - p-トルエンスルホン酸。
【0353】
無機強酸による10-ホルミル葉酸の脱ホルミル化は、ほぼ定量的に葉酸へと進行した(表16、項目1および8)。一方、より強い有機酸による脱ホルミル化は、ほぼ等しい効率で葉酸をもたらした(表16、項目3、4および6)。予想されるように、ギ酸および酢酸による脱ホルミル化は、変換をもたらさなかった(表16、項目5および7)。Dowex 50WX2樹脂を用いた脱ホルミル化のHPLC分析では、分析物がおそらくは樹脂に吸着したままであり、溶出の必要があるため、出発物質も産物も検出されなかった。
【0354】
発酵ブロス中の10-ホルミル葉酸の酸媒介N-脱ホルミル化
先の実験では、強酸を用いた10-ホルミル葉酸標準物質の脱ホルミル化により、
図8に示す葉酸へのきれいな変換が得られることを説明した。ここでは、同じ原理をより複雑な系である発酵ブロスに適用した。生体サンプルに対する実験を続けるために、非常に効果的であり、研究した他の酸よりも安価であることから、塩酸(HCl)を脱ホルミル化試薬として選択した。実施例16からの発酵ブロスのHPLC分析では、生合成時に形成された幾つかのフォレートの中でも相当量の10-ホルミル葉酸が示された(10-ホルミル葉酸46面積%;5-イミドメチルテトラヒドロ葉酸47面積%および5-メチルテトラヒドロ葉酸7面積%)。発酵ブロスのサンプルを1M HClで異なるpHレベル(pH=4、3、2、1および0)まで処理し、遮光して常温(25℃)で24時間撹拌した。本発明者らのHPLCアッセイによると、低いpHレベル(pH=1および0)でのみ、脱ホルミル化により適度の量の葉酸が得られた。これらの結果に基づき、酸媒介脱ホルミル化戦略が葉酸の下流の処理に適用可能な可能性があることが確信される。発酵ブロス等の複雑な系におけるホルミルフォレート種のコスト効率の良い脱ホルミル化プロトコルを開発するためには、酸の量および反応温度の更なる最適化が不可欠である。
【0355】
よく撹拌した実施例16の発酵ブロスを、撹拌子およびpH電極を備える6本の100mL丸底フラスコにピペットで移した。塩酸を撹拌しながら滴加し、表17に記載の幾つかのpH値(pH=4、3、2、1、0)を達成した。
【0356】
【0357】
発酵混合物を、フラスコをアルミ箔で包んで紫外線から保護して常温(25℃)で24時間撹拌した。酸が存在しないが、全く同じ条件下で対照サンプルを調製した(実験1)。24時間の撹拌後に、1mLの各発酵ブロスを9mLの抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)により二連で希釈した。懸濁液をボルテックスで撹拌し、4500rpmで遠心分離し、0.22μmフィルターで濾過し、HPLCで分析した。HPLC結果を表18にまとめる。本発明者らのHPLCアッセイによると、低いpHレベル(pH=1および0)でのみ、脱ホルミル化により適度の量の葉酸が得られた。結論として、発酵の主要産物である10-ホルミル葉酸の酸媒介脱ホルミル化が開発された。
【0358】
【0359】
塩基媒介脱ホルミル化
化学文献を通覧することで、葉酸がより高pH値でより高い安定性を示すことを記載している幾つかの報告が確認された。かかるpH値では、葉酸はより高い溶解性を示し、合成操作、精製および下流の処理が簡単になる。したがって、0.1M NaOHを用いた一連のN-脱ホルミル化実験において、発酵ブロスからの標的産物の単離を簡単にする、10-ホルミル葉酸から葉酸へのきれいで効率的な変換を目指す(
図9を参照されたい)。10-ホルミル葉酸の分析標準に対し、0.01mmol規模(5mg)を用いて初期脱ホルミル化実験を行った。
【0360】
代表的な実験手順:
10-ホルミル葉酸を、撹拌子およびゴム隔膜を備える10mL丸底フラスコに秤量した。懸濁液を0.1M水酸化ナトリウム(50当量、0.5mmol、5mL)で処理し、遮光して常温で24~48時間撹拌した。続いて、溶液(100μL)を葉酸抽出バッファー(900μL)で希釈し、ボルテックススターラーでホモジナイズし、HPLCで分析した。時間に依存した3つのアリコートをサンプリングし、HPLCで分析した。脱ホルミル化の結果を表19に示す。0.1M NaOHによる10-ホルミル葉酸の脱ホルミル化は、24時間後の最初のサンプリングにおいて、ほぼ定量的に葉酸へと進行した(表19、項目1)。48時間撹拌した後、HPLC分析によると反応が完了まで進行した。同じ条件下で長時間撹拌することで、新たに形成された葉酸が144時間(6日間)後でも分解を受けないことが明らかとなった。
【0361】
【0362】
10mL丸底フラスコ内で10-ホルミル葉酸(5mg、0.01mmol)を用いて実験を行った。NaOH 0.1Mを50.0当量、5mLで過剰に添加した。実験の開始時の10-FFAの質量濃度は、およそ1000mg/Lである。反応の進行をHPLCによって測定した。HPLCサンプルは、抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)中で調製した。
【0363】
発酵ブロス中の10-ホルミル葉酸の塩基媒介N-脱ホルミル化
先の実験では、0.1M NaOHを用いた10-ホルミル葉酸標準物質の脱ホルミル化により、
図9に示す葉酸へのきれいな変換が得られることを説明した。ここでは、同じ原理をより複雑な系である発酵ブロスに適用した。脱ホルミル化前の実施例16からの発酵ブロスのHPLC分析では、相当量の10-ホルミルジヒドロ葉酸(10F-DHF;60面積%);および10-ホルミル葉酸(10F-FA;40面積%)が示された。実施例16からの発酵ブロスのサンプル(10mL)を異なるv/v比の0.1M NaOH(1:1、1:2、1:3および1:4)で処理し、遮光して常温(25℃)で24時間撹拌した。本発明者らのHPLCアッセイによると、v/v 1:1および1:2の発酵ブロス/NaOHを用いた実験では、表20(項目2および3)に示されるように、脱ホルミル化ではなく、10-ホルミルジヒドロ葉酸の10-ホルミル葉酸への酸化的変換がもたらされた。続いて、NaOHの量を発酵ブロスに対して増加させると(1:3および1:4)、表20(項目4および5)に示されるように、相当量の葉酸がHPLCによって検出された。興味深いことに、相当量の10F-DHFがHPLCによって検出されることから、より多量のNaOHが10F-DHFの10F-FAへの酸化的変換を幾らか妨げていた。
【0364】
代表的な実験手順:
よく撹拌した実施例16の発酵ブロス(10mL)を、撹拌子および遮光用アルミ箔を備える50~100mL丸底フラスコにピペットで移した。水酸化ナトリウム(0.1M)を滴加し、反応物を常温(25℃)下で24時間激しく撹拌した。24時間の撹拌後に、1mLの各発酵ブロスを9mLの抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)により二連で希釈した。懸濁液をボルテックスで撹拌し、4500rpmで遠心分離し、0.22μmフィルターで濾過し、HPLCで分析した。
【0365】
【0366】
50~100mL丸底フラスコ内で実施例16からの発酵ブロス(FB3148、10mL)を用いて実験を行った。FB3148に対する容量/容量比(1:1、1:2、1:3および1:4)に基づいてNaOH 0.1Mを添加した。反応の進行および結果をHPLCによって測定した。HPLCサンプルは、抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)中で調製した。全ての反応物を常温(25℃)で24時間、遮光して撹拌した。
【0367】
実施例19:10-ホルミル葉酸の単離
収集後に、50gの葉酸を含有する発酵ブロスを、5M NaOH水溶液を用いてpH=12に調整した。溶液を10000rpmで15分間、4℃で遠心分離した。上清に50gの水酸化カルシウムを添加し、懸濁液を室温で2時間撹拌した。得られた懸濁液を沈殿させ、デカントし、100の珪藻土(セライト)を用いて上清液を濾過した。濾過ケーキを500mLの水で洗浄し、濾過した。濾液を合わせ、10リットルの最終容量まで希釈した。清澄化した葉酸の希アルカリ溶液を1N HClでpH7.0に調整し、70℃に加熱した後、室温まで冷却した。次に、溶液を濾過して、中性pHで沈殿する不純物を除去した。清澄化した濾液を、1N HClを用いてpH=3に調整し、氷上で4時間冷却した。懸濁液を濾別し、pH=12(1M NaOHで調整)の熱アルカリ溶液8Lに再溶解した。この溶液に50グラムの活性炭(1当量/葉酸の重量)を添加し、溶液を50℃に加熱し、30分間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを3Lのアルカリ化水溶液(pH=12にNaOHで調整)で洗浄した。濾液を合わせ、撹拌を続けながら1N HClを添加してpHを3.0に調整した。得られたスラリーを氷上で24時間または一晩冷却した。懸濁液を濾別し、pH=3(pHを1N HClで調整)を有する酸性化水溶液1Lに再懸濁した。懸濁液を再び濾過した後、得られた濾過ケーキを凍結および乾燥させて、10%の水分を含有し、無水ベースで90.1%の葉酸とアッセイされた43グラムの葉酸を得た。
【0368】
実施例20:葉酸の単離
収集後に、30gの葉酸を含有する発酵ブロスを、1M NaOH水溶液を用いてpH=10に調整した。溶液を10000rpmで15分間、4℃で遠心分離した。得られた上清を1N HClでpH4.0に調整し、70℃に加熱した後、室温まで冷却した。次に、100gのセライトを用いて溶液を濾過した。濾過ケーキをpH=10(1M NaOHで調整)のアルカリ溶液5Lに再懸濁した。この溶液に50グラムの活性炭(1当量/葉酸の重量)を添加し、溶液を50℃に加熱し、30分間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを2Lのアルカリ化水溶液(pH=12にNaOHで調整)で洗浄した。濾液を合わせ、撹拌を続けながら1N HClを添加してpHを3.0に調整した。得られた沈殿物を氷上で16~24時間冷却した後、濾別し、pH=3(pHを1N HClで調整)を有する酸性化水溶液1Lに再懸濁した。懸濁液を再び濾過し、得られた沈殿ケーキを乾燥させて、92%とアッセイされた21グラムの10-ホルミル葉酸を得た。
【0369】
実施例21.5-メチルフォレートオペロン(MTHF-OP)のアセンブリ
フォレート生合成遺伝子(glyA、purU、yitJおよびmetF)の合成は、B.サブティリス(B.subtilis)の最適発現のためにコドン最適化された遺伝子ヌクレオチド配列を有する別個の合成DNAフラグメント(配列番号91、92、93および94)として行った。制限およびライゲーションの繰り返し工程により、フラグメントを人工オペロンにアセンブリした(実施例3)。ライゲーションの成功に適合した制限末端を確実にするために、NdeIおよびAseI制限部位の組合せを使用した。ライゲーションの各工程の後に、組み合わせたフラグメントを次のPCR増幅に新たな鋳型として使用した。ywhL遺伝子座(配列番号95)およびスペクチノマイシン選択可能マーカー(配列番号96)に対する相同性を有する異なる生合成遺伝子を組み合わせるために、オペロンを段階的にアセンブリした。組込み遺伝子座ywhL(特徴付けられていないタンパク質)を新たな染色体組込み部位として選択した。フォレート生合成遺伝子メチル-フォレートオペロン(MTHF-OP)は、5-メチルテトラヒドロフォレート生合成の最終工程に関与する遺伝子の組合せとして設計されたものであり、強力な構成的P15プロモーターの制御下にある(
図14)。MTHF-OP-Aオペロン(配列番号97)において、遺伝子(glyA、purUおよびyitJ)はネイティブ宿主生物B.サブティリス(B.subtilis)から選択され、B.サブティリス(B.subtilis)最適遺伝子発現のために付加的にコドン最適化された。さらに、E.コリ(E.coli)に由来するホモログ遺伝子(metF)をオペロンMTHF-OP-B(配列番号98)におけるyitJ遺伝子の代替の構築のために使用した。
【0370】
実施例22:B.サブティリス(B.subtilis)の突然変異誘発
メタンスルホン酸エチル(EMS)突然変異誘発をB.サブティリス(B.subtilis)株FL825に対して行った。適切な抗生物質を含む液体LB培地中で培養物を指数増殖期まで成長させた。次いで、培養物を3000RPMで3~5分間遠心分離し、上清を除去した。細胞ペレットを滅菌0.9%NaClで2回洗浄し、上清を遠心分離によって除去した。ペレットを0.9%NaClに再懸濁した。100μLの細胞懸濁液を900μLの3%メタンスルホン酸エチル(EMS)に希釈した。細胞を常に撹拌/混合しながら対応する時間にわたってEMSに曝露した。インキュベーション後に、細胞懸濁液1容量当たり1容量の10~15%のチオ硫酸Naを添加して、突然変異誘発反応を停止させた。液体を遠心分離によって除去した。細胞ペレットを滅菌0.9%NaClで2回洗浄し、上清を遠心分離によって除去した。突然変異誘発した細胞の段階希釈物を、適切な抗生物質を含むMBプレートにプレーティングし、37℃でおよそ48時間インキュベートした。単一コロニーを5-メチルテトラヒドロフォレート産生についてさらに試験した(実施例25)。
【0371】
実施例23:qPCRを用いたmetE遺伝子の発現レベルの決定
B.サブティリス(B.subtilis)株FL2771を液体LB培地中で指数増殖期まで成長させた。培養物を2容量のRNA protect Bacteria Reagent(QIAGEN)と混合し、4500rpmで10分間遠心分離し、-80℃で凍結するか、または即座に処理した。1mg/mLリゾチームを含有する200μLのTEバッファーに細胞ペレットを15分間再懸濁し、細胞壁を除去した。RNeasy miniキット(QIAGEN)を用い、製造業者のプロトコルに従ってRNAを単離した。得られたRNAは、分光光度法で濃度および品質を確認した。単離したRNAをDNase(Ambionキット)で処理し、RevertAid H Minus First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Scientific)を用いてcDNAに逆転写した。得られたcDNAを希釈し、cDNAの最終収率はおよそ2.5ng/μLであった。
【0372】
得られたcDNAをリアルタイム定量PCR(qPCR)法(StepOne Real-Time PCR System、Applied Biosystems)SYBR Green I(Thermo Scientific)検出で分析した。5-Me-THF産生株におけるmetE遺伝子の発現をqPCRによって定量化した。
【0373】
内部標準遺伝子である、B.サブティリス(B.subtilis)の16S rRNA遺伝子を定量qPCR発現データの正規化のための参照として使用した。B.サブティリス(B.subtilis)VBB38を対照株として使用した。metE遺伝子の発現は、特定のプライマー対であるQ_metE_F(配列番号73)およびQ_metE_R(配列番号74)を用いて決定し、内部標準遺伝子として選択した16S遺伝子については、配列番号69および配列番号70のプライマー対を使用した。qPCR分析は、StepOne(商標) Real-Time PCR Systemで行い、2-ΔΔCT法を用いて定量化を行った。
【0374】
株FL2771は、出発親株FL825と比較して70%超下方調節されたmetE遺伝子の発現を有していた(
図15)。
【0375】
実施例24:5-メチルテトラヒドロフォレート産生株の生成
5-メチルテトラヒドロフォレート産生株を出発株VBB38から開発した(
図13を参照されたい)。組換え株の全フォレート産生能を改善するために2つの重要な遺伝子改変を行った。初めに、B.サブティリス(B.subtilis)のネイティブfolC遺伝子を破壊し、フォレート上のγ-グルタメートテールの合成を止め、ジヒドロ葉酸シンテターゼ(DHFS)活性のみをコードするfolCホモログに置き換え、γ-グルタメートテールを有しない必須のグルタメート部分を1つのみ付加した。したがって、フォレート生合成経路を介した高い代謝フローを確実にするために、細胞から発酵培地へのフォレートの排出の増強が可能表現型を有する株FL21を開発した。以下の株開発の工程では、「de novo」生合成経路(GTP前駆体からTHFへ)を上方調節するために、フォレート生合成遺伝子(例えばfolE/mtrA、folB、folK、folP/sul、folA/dfrA)の過剰発現を導入した。選択フォレート生合成遺伝子を有する人工フォレートオペロン(BS-FOL-OP1およびBS-FOL-OP2 - 実施例3を参照されたい)を構築し、B.サブティリス(B.subtilis)に複数のゲノム位置(amyEおよびlacA遺伝子座)で組み込み、高レベルの遺伝子発現をもたらした。新たに組み換えた株FL184(BS-FOL-OP1)および株FL825(BS-FOL-OP1+BS-FOL-OP2)におけるフォレート生合成遺伝子の上方調節により、全フォレートの産生能が出発株と比較して大幅に改善された。
【0376】
5-メチルテトラヒドロフォレートの過剰産生のためのB.サブティリス(B.subtilis)の更なる組換え株を、ネイティブmetE遺伝子の下方調節/欠失およびフォレート形態の相互変換(THFから5-メチルテトラヒドロフォレートへ)に関与する遺伝子(例えばglyA、purU、yitJおよびmetF)の過剰発現によって生成した。ネイティブmetE遺伝子の下方調節は、親株FL825のランダム突然変異誘発および5-メチルテトラヒドロフォレート産生の改善に基づく突然変異株の選択によって達成された。野生型株(0.35mg/L)と比較して顕著に高い力価の5-メチルテトラヒドロフォレート(220mg/L超)を達成する新たな株FL2771を生成した。株FL2771を全ゲノムシークエンシングのためにさらに選択した。FL2771ゲノムのバイオインフォマティクス分析および祖先出発株B.サブティリス(B.subtilis)VKPM B2116の全ゲノム配列データとの比較から、株開発時にランダム突然変異誘発導入された、幾つかの観察されるSNP変化/突然変異とフォレート代謝サイクルとを合理的に関連付けることができた。1つの突然変異がmetE遺伝子の直接上流に位置し(配列番号75および配列番号76)、この突然変異は、5-メチルテトラヒドロフォレートの消費に関与するメチオニンシンターゼをコードする遺伝子の調節領域に位置する。
【0377】
5-メチルテトラヒドロフォレート産生株の開発の最終工程では、フォレート形態の相互変換に極めて重要な遺伝子(glyA、purU、yitJおよびmetF)の過剰発現を行った。選択遺伝子の過剰発現は、10F-フォレートと5-メチルテトラヒドロフォレートとの比率を改善するために、5-メチルテトラヒドロフォレート生合成の最終工程に関与する遺伝子(glyAおよびyitJ/metF)および10F-THFのTHFへの変換に関与する遺伝子purU(ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ)から構築される新たなメチルフォレート生合成オペロン(MTHF-OP)として設計された。新たな遺伝子組換え株FL5416は、300mg/Lを超える最高の5-メチルテトラヒドロフォレート収率をもたらすことが実証され、5-メチルテトラヒドロフォレート形態は、測定された全フォレートの75%を占めていた。
【0378】
実施例25:B.サブティリス(B.subtilis)の遺伝子組換え株における異なる形態のフォレートの比率の決定
適切な抗生物質を含むMBプレートに株をパッチし、37℃で2日間インキュベートした。振盪フラスコ実験については、成長させた株をFalcon 50mLコニカル遠心チューブ内の5mlのMC(シード)培地に移し(1プラグ/5ml)、ロータリーシェーカーにて220RPMおよび37℃で16~18時間培養した。シード培養物の10%接種材料を用いて5mLの産生培地(MD+pABA500)に接種した。ロータリーシェーカーにて220RPMおよび37℃で24時間、暗所で株を培養した。発酵後に、発酵ブロスのサンプル(200μl)を慎重に回収して均一なサンプルを得て、氷冷抽出バッファー(1%(w/v)アスコルビン酸を含む0.1Mリン酸バッファー)で10倍希釈した。サンプルを14000rpmおよび4℃で10分間遠心分離し、濾過滅菌した(細孔径0.22um)。異なるフォレート種の定量化については、実施例13に記載のようにHPLC法を用いた。異なるB.サブティリス(B.subtilis)株の結果を表21に示し、発酵ブロスサンプルの代表的なHPLCクロマトグラムを
図6に示す。
【0379】
【0380】
異種folC-AGおよび過剰発現フォレート生合成遺伝子(フォレートオペロンFOL-OP-BS1、FOL-OP-BS2およびMTHF-OP-B)を有する株FL5416は、野生型バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)168株と比較して191462%の5-メチルフォレート産生の増加を示した。
【0381】
比較例1
B.サブティリス(B.subtilis)野生型株「168」、本発明者らの出発非GMO株VBB38(株VKPM B2116=B.サブティリス(B.subtilis)VNII Genetika 304)、およびネイティブfolC遺伝子が、A.ゴシッピイ(A.gossypii)(B.サブティリス(B.subtilis)株FL21)またはL.ロイテリ(L.reuteri)(B.サブティリス(B.subtilis)株FL23)のいずれかに由来する異種folC2(FOL3)遺伝子に1工程で置き換えられた、その形質転換体について全フォレート産生を決定した。株をシェーカー規模(5mlの産生培地MD)で試験し、フォレート検出のための標準微生物学的アッセイを用いて全フォレートを決定した。
【0382】
結果から、異種folC2遺伝子を同時に発現しないB.サブティリス(B.subtilis)ネイティブfolC遺伝子単独を欠失させたノックアウト突然変異体が標準培養条件(T=37℃、栄養素に富んだLB培地中で好気的)で成長することができないことが示された。
【0383】
本明細書に引用した参照文献のリスト
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【配列表】
【国際調査報告】