(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】バイオリアクタ槽の操作の制御
(51)【国際特許分類】
C12M 1/36 20060101AFI20230728BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230728BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20230728BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
C12M1/36 ZNA
C12N1/00 D
C12N15/31
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502697
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 GB2021051820
(87)【国際公開番号】W WO2022013560
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペペリャエフ,スタニスラフ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB02
4B029CC01
4B029DF04
4B029DF08
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4B064AG30
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4B065AA23Y
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4B065AC14
4B065BA01
4B065BC06
4B065BC09
4B065CA24
(57)【要約】
バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御する方法であって、酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係に応じてバッチ段階から産生段階へ移行することを含む方法を提供する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御する方法であって、酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係に応じてバッチ段階から産生段階へ移行することを含む方法。
【請求項2】
前記酸素供給パラメータOは、攪拌速度、気体供給速度、および酸素供給濃度の一つ以上に応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素供給パラメータOは、攪拌速度値、気体供給速度値、および酸素供給濃度値の二つ以上の和または積である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記関係が比率O/DOである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記比率O/DOが閾値kを下回るときに、バッチ段階から産生段階へ移行することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以前に前記比率O/DOが閾値jを上回っていた場合で前記比率O/DOが閾値kを下回るときに、バッチ段階から産生段階へ移行することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以前に少なくとも所定の期間の間に前記比率O/DOが閾値jを上回っていた場合で前記比率O/DOが閾値kを下回るときに、バッチ段階から産生段階へ移行することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
記プロセスは、タンパク質発現プロセスであり、産生段階で発現する標的タンパク質は、組み換えタンパク質である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記組み換えタンパク質はボツリヌス神経毒である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一つ以上のアクチュエータを制御して前記バッチ段階中の第一の処理条件群を提供することと、前記アクチュエータを制御して前記産生段階中の第二の処理条件群を提供することをさらに含み、前記第一の処理条件と、前記第二の処理条件は、少なくとも部分的に異なる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
バッチ段階から産生段階への移行は、一つ以上の処理条件設定値を変更することを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記一つ以上の処理条件設定値は、溶存酸素設定値と、温度設定値とのうちの一つ以上を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
バッチ段階から産生段階への移行は、前記バイオリアクタ槽へ養分を供給することと、前記バイオリアクタ槽へ誘導物質を提供することとのうちの一つ以上を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
バッチ段階から産生段階への移行は、一つ以上の処理条件設定値を、バッチ段階設定値から産生段階設定値へ、所定の期間をかけて徐々に変更することを含む、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
気体供給速度および/または酸素供給濃度を、少なくとも前記攪拌の範囲で攪拌速度に比例して制御することをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
溶存酸素の変化率に応じて攪拌速度を制御することをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記産生段階から終了段階へ所定の期間をかけて徐々に移行することをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記移行は、バイオリアクタ槽への養分供給および/または酸素供給を低減すること、一つ以上の処理条件を産生段階設定値から終了設定値へ移行させること、およびバイオリアクタ槽における攪拌を低減することのうちの一つ以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記移行は、バイオリアクタ槽への養分供給を低減することと、温度を産生段階設定値から終了設定値へ移行させることとを含み、前記温度を、前記養分供給を低減する率に比例した率で移行させる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記移行は、最初にバイオリアクタ槽への養分供給を減少させ、温度を産生段階設定値から終了設定値へ移行させることと、その後攪拌を減少させることを含む、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
コンピュータによる実行時に前記コンピュータにバイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御させる命令を含む、コンピュータプログラム製品であって、
酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係、好ましくはそれらの間の比率O/DOを決定することと、
前記関係に応じて、好ましくは前記比率O/DOに応じて、バッチ段階から産生段階へ移行することと、を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項22】
コンピュータによる実行時に前記コンピュータに、請求項1~20のいずれかの方法にしたがって、バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御させる命令を含む、請求項21に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御するように調整された装置であって、前記装置は、
酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係、好ましくはそれらの間の比率O/DOを決定する手段と、
前記関係に応じて、好ましくは前記比率O/DOに応じて、バッチ段階から産生段階へ前記プロセスを移行させるように調整された制御出力と、を含む、装置。
【請求項24】
請求項1~20のいずれかの方法にしたがって、バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御するように調整された手段をさらに含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法であって、溶存酸素の変化率に応じて攪拌を調整することを含む方法。
【請求項26】
前記攪拌は、溶存酸素設定値と、第一の溶存酸素実測値と、第二の、先行する、溶存酸素実測値と、場合によっては前記第一および第二の溶存酸素値の測定時の差とに応じて調整される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
酸素供給を、少なくとも前記攪拌の範囲で、攪拌に比例して調整することをさらに含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法であって、現在のpH値と、以前のpH値と、pH設定値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整することを含む、方法。
【請求項29】
前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpHがpH設定値に一致していない時間に伴い、指数関数的に増加するように調整される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpHがpH設定値から離れがちな時間に伴い、指数関数的に増加するように調整される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記酸の供給および/または塩基の供給は、現在のpH値とpH設定値との間の差に応じてスケーリングされる、請求項28~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
溶存酸素設定値および測定された溶存酸素に応じて、同時に、または、ほぼ同時に攪拌および酸素供給を調整することをさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法であって、前記方法は、溶存酸素設定値と測定された溶存酸素とに応じて、同時に、または、ほぼ同時に攪拌および酸素供給を調整することを含む、方法。
【請求項34】
酸素供給は、少なくとも前記攪拌の範囲で、攪拌に比例する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸素供給を調整することは、気体供給の体積流量を調整すること、および/または気体供給の酸素濃度を調整することを含む、請求項32~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
最小の酸素供給は最小の攪拌に対応し、最大の酸素供給は最大の攪拌に対応する、請求項32~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
好ましくは、攪拌が最小の攪拌から増大する時、酸素供給は最小の酸素供給から、同時にまたはほぼ同時に増加する、請求項32~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
攪拌が最大攪拌に達する前に、酸素供給が最大酸素供給に達し、好ましくは、酸素供給が最大酸素供給に達すると、攪拌が最大攪拌の75%と85%との間であり、より好ましくは約80%である、請求項32~37のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオリアクタシステムにおけるバイオプロセスの操作を制御することに関する。本開示は、バイオリアクタ槽における前記バイオプロセスの操作を制御する方法および装置に、特に適用可能であり、それには、バイオプロセスの操作を異なる段階から移行すること、および/またはバイオリアクタ槽内の処理条件を制御することが含まれる。ただし、本開示はそれらに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
バイオリアクタシステムにおけるバイオプロセスが高い効率/歩留まりを有するようにするために、処理条件(温度、溶存酸素濃度、またはpHなど)が、典型的には特定の設定値になるよう制御される。多くの既存のバイオリアクタコントローラは、これを達成するために各処理条件について単一入力単一出力(SISO)制御ループを使用している。
【0003】
既存のバイオリアクタコントローラに制御されるバイオプロセスは、再現性を欠き、バッチ間の一貫性が劣りうる。多くの既存のバイオリアクタコントローラは、バイオリアクタ槽の中で生じるバイオプロセスにおける段階の間を最適に移行することができず、たとえば、バッチフェッド発酵プロセスの場合、加速的に細胞が増殖し繁殖するバッチ段階(指数関数的段階、または増殖段階、ともいう)と、集団増殖が低速化するかまたは停止して目的のバイオプロセスを行う産生段階(発現段階、またはフェッドバッチ段階ともいう)との間を最適に移行することができない。段階間を移行させることは、複雑で入り組んだプロセスであることが多い。したがって、多くの既存のバイオリアクタコントローラは自動で最適な移行を行えず、当然ながら誤りや、最適な処理条件からの偏差、望ましくない程度のバッチ間の差異を招くことになりうる。各段階では望ましい処理条件の関連が異なり、したがってこれらの条件を達成するために前記バイオリアクタシステムの異なる制御(たとえば、条件によって異なる設定値や、または完全に異なる制御信号など)が求められるため、移行の制御はとりわけ重要であろう。したがって、実際に段階を移行させることと最適な段階移行とのあいだに遅延があり、その間、バイオリアクタを不適当/最適以下の制御(たとえば、不正確な処理条件設定値の使用)で制御してしまう結果となりうる。
【0004】
本開示は、バイオリアクタシステムにおいて、より効果的な制御を可能にすることを目的とする。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様は、付随する請求項に記載されている。
【0006】
本開示の態様によると、バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御する方法が提供され、前記方法は、酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係に応じてバッチ段階から産生段階へ移行することを含む。
【0007】
前記関係を利用することにより、より高応答/高速の制御、および、より操作性の高い出力(処理条件)範囲が得られるであろう処理条件は、実際は、多数の制御パラメータによって影響を受ける可能性があり、前記関係により、段階間の特に有効な移行が可能になりうる。酸素供給パラメータOと、溶存酸素値DOとの間の関係を考慮すると、前記プロセスの酸素消費速度の概算値または推定値を提供でき、これは段階間の移行を制御するのに特に有効であり得る。
【0008】
前記酸素供給パラメータOは、攪拌速度、気体供給速度、および酸素供給濃度の一つ以上に応じて決定されてもよい。前記酸素供給パラメータOは、攪拌速度値、気体供給速度値、および酸素供給濃度値の二つ以上の和または積であってもよい。
【0009】
好ましくは、前記関係は数学的関係である。
【0010】
関係は集合パラメータによって定義されてもよい(換言すれば、前記方法は、酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOと(の両方)に依存する集合パラメータに応じて、バッチ段階から産生段階へ移行することを含んでもよい)。好ましくは、前記集合パラメータは、酸素供給Oが増加するにつれて増加し、溶存酸素DOが増加するにつれて減少する。前記関係(集合パラメータ)は、比率O/DOであってもよい。前記関係は、差であってもよく、指数関数的関係であってもよく、三角法の関係であってもよく、または対数の関係であってもよい。有効な移行のために、前記方法は、前記比率O/DOが閾値kを下回るときに、バッチ段階から産生段階へ移行することを含む。早すぎる移行を回避するために、前記方法は、以前に前記比率O/DOが閾値jを上回っていた場合で前記比率O/DOが閾値kを下回るときに、バッチ段階から産生段階へ移行することを含む。早すぎる移行を回避するために、前記方法は、以前に少なくとも所定の期間の間に前記比率O/DOが閾値jを上回っていた場合で前記比率O/DOが閾値kを下回るときに、バッチ段階から産生段階へ移行することを含む。前記の観察された処理条件に時折、炭素源の枯渇など原因となるプロセス変化によって引き起こされたわけではないスパイクが生じうる。このような時折起こるスパイクは、コントローラの早すぎる段階移行を引き起こし、前記バイオプロセスの歩留まりと有効性を低下させることになる。
【0011】
場合によっては、前記方法は、酸素供給パラメータOと溶存酸素DOとの相対的な値に応じて(すなわち、酸素供給パラメータOと溶存酸素DOとの値の比較に応じて)バッチ段階から産生段階へ移行することを含み、場合によっては酸素供給パラメータO値および/または前記溶存酸素DO値はファクタでスケーリングされる。
【0012】
前記プロセスは、タンパク質発現プロセスであってもよい。産生段階で発現する標的タンパク質は、たとえば細菌または酵母ホストによって産生される、いかなるタンパク質であってもよく、または組み換えタンパク質技術によって取得可能ないかなるタンパク質であってもよい。産生段階で発現する標的タンパク質は、組み換えタンパク質であってもよい。タンパク質の限定されない例としては、天然ボツリヌス神経毒もしくは組み換えボツリヌス神経毒などのクロストリジウム神経毒、または組み換え抗体、または組み換えホルモンなどがある。
【0013】
前記方法は、一つ以上のアクチュエータを制御することを含んでもよい。前記方法は、一つ以上のセンサからセンサデータを受領することを含んでもよい。前記方法は、一つ以上のアクチュエータを制御して前記バッチ段階中の第一の処理条件のセットを提供することと、前記アクチュエータを制御して前記産生段階中の第二の処理条件のセットを提供することを含んでもよく、前記第一の処理条件と、前記第二の処理条件は、少なくとも部分的に異なる。バッチ段階から産生段階への移行は、一つ以上の処理条件設定値を変更することを含んでもよい。前記一つ以上の処理条件設定値は、溶存酸素設定値と、温度設定値とのうちの一つ以上を含んでもよい。バッチ段階から産生段階への移行は、前記バイオリアクタ槽へ養分を供給することと、前記バイオリアクタ槽へ誘導物質を提供することとのうちの一つ以上を含んでもよい。
【0014】
処理条件を最適化するために、バッチ段階から産生段階への移行は、一つ以上の処理条件設定値を、バッチ段階設定値から産生段階設定値へ、所定の期間をかけて徐々に変更することを含んでもよい。
【0015】
処理条件を最適化するために、前記方法は、酸素供給速度および/または気体供給速度および/または酸素供給濃度を、少なくとも前記攪拌の範囲(部分範囲)で攪拌速度に比例して制御することを、さらに含む。
【0016】
円滑な処理制御のために、前記方法は、溶存酸素の変化率に応じて攪拌速度を制御することを、さらに含んでもよい。前記溶存酸素の変化率は、第一の溶存酸素実測値と、第二の、先行する、溶存酸素実測値と、場合によっては前記第一および第二の溶存酸素実測値の測定時の差とに応じて決定されてもよい。
【0017】
円滑な処理制御のために、前記方法は、前記産生段階から終了段階へ所定の期間をかけて徐々に移行することを、さらに含んでもよい。前記移行は、バイオリアクタ槽への養分供給および/または酸素供給を低減すること、一つ以上の処理条件を産生段階設定値から終了設定値へ移行させること、およびバイオリアクタ槽における攪拌を低減することのうちの一つ以上を含んでもよい。よりよい処理条件とするために、前記移行は、バイオリアクタ槽への養分供給を低減することと、温度を産生段階設定値から終了設定値へ移行させることとを含んでもよく、前記温度を、前記養分供給を低減する率に比例した率で移行させる。よりよい処理条件とするために、前記移行は、最初にバイオリアクタ槽への養分供給を減少させ、温度を産生段階設定値から終了設定値へ移行させることと、その後攪拌を減少させることを含んでもよい。
【0018】
前記溶存酸素値DOは、好ましくは、測定された溶存酸素値、または測定された溶存酸素値に応じた値である。前記溶存酸素値DOは、溶存酸素センサから受けとってもよい。
前記方法は、溶存酸素設定値および測定された溶存酸素に応じて、同時に、または、ほぼ同時に攪拌および酸素供給を調整することを、さらに含んでもよい。
【0019】
本開示の他の態様によると、コンピュータによる実行時に前記コンピュータにバイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御させる命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータプログラム製品は、酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係、好ましくはそれらの間の比率O/DOを決定することと、前記関係に応じて、好ましくは前記比率O/DOに応じて、バッチ段階から産生段階へ移行することと、を含む。前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータによる実行時に前記コンピュータに、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御させる命令を含んでもよい。
【0020】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの操作を制御するように調整された装置が提供され、前記装置は、酸素供給パラメータOと溶存酸素値DOとの間の関係、好ましくはそれらの間の比率O/DOを決定する手段と、前記関係に応じて、好ましくは前記比率O/DOに応じて、バッチ段階から産生段階へ前記プロセスを移行させるように調整された制御出力と、を含む。前記装置は、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽でのフェッドバッチプロセスの操作を制御するように調整されていてもよく、および/または、そのように調整された手段を、さらに含んでもよい。前記装置は、バイオリアクタ槽と、前記バイオリアクタ槽におけるフェッドバッチプロセスの処理条件を感知するための一つ以上センサと、前記バイオリアクタ槽における処理条件の一つ以上に作用するように調整されたアクチュエータと、をさらに含んでもよい。
【0021】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法が提供され、前記方法は、溶存酸素の変化率に応じて攪拌を調整することを含む。これにより、望ましい処理条件から実際の処理条件の偏差が少ない、バイオプロセスのよりよい制御が可能になる。
【0022】
前記攪拌は、溶存酸素設定値と、第一の溶存酸素実測値と、第二の、先行する、溶存酸素実測値と、場合によっては前記第一および第二の溶存酸素値の測定時の差とに応じて調整されてもよい。前記方法は、酸素供給を、少なくとも前記攪拌の範囲(部分範囲)で攪拌に比例して調整することを、さらに含んでもよい。
【0023】
好ましくは、前記攪拌は、さらに前記槽の大きさ(たとえば前記槽の作業容積)に応じて調整され、場合によっては最大および/または最小許容攪拌速度に応じて調整される。これによって、サイズの大きな槽にとっては特に、オーバーシュートを防止できる。
【0024】
本開示の他の態様によると、コンピュータによる実行時に前記コンピュータにバイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御させる命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。前記コンピュータプログラム製品は、溶存酸素の変化率に応じて前記攪拌を調整することを含む。前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータによる実行時に前記コンピュータに、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽の操作を制御させる命令を含んでもよい。
【0025】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御するよう調整された装置が提供され、前記装置は、溶存酸素の変化率に応じて攪拌を調整するための手段を含む。前記装置は、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽でのバイオプロセスの操作を制御するように調整されていてもよく、および/または、そのように調整された手段を、さらに含んでもよい。
【0026】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法が提供され、前記方法は、現在のpH値と以前のpH値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整することを含む。好ましくは、前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpHがpH設定値と一致していない時間に伴い、指数関数的に増加するように調整される。これは迅速かつ有効なpH制御を可能にし、pH制御におけるオーバーシュートを低減することができる。
【0027】
本開示の他の態様によると、コンピュータによる実行時に前記コンピュータにバイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御させる命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータプログラム製品は、現在のpH値と以前のpH値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整することを含む。好ましくは、前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpHがpH設定値と一致していない時間に伴い、指数関数的に増加するように調整される。これは迅速かつ有効なpH制御を可能にし、pH制御におけるオーバーシュートを低減することができる。前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータによる実行時に前記コンピュータに、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽の操作を制御させる命令を含んでもよい。
【0028】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御するように調整された装置が提供され、前記装置は、現在のpH値と以前のpH値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整する手段を含む。好ましくは、前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpHがpH設定値と一致していない時間に伴い、指数関数的に増加するように調整される。これは迅速かつ有効なpH制御を可能にし、pH制御におけるオーバーシュートを低減することができる。前記装置は、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽でのバイオプロセスの操作を制御するように調整されていてもよく、および/または、そのように調整された手段を、さらに含んでもよい。
【0029】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法が提供され、前記方法は、現在のpH値と、以前のpH値と、pH設定値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整することを含む。
【0030】
好ましくは、前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpHがpH設定値に一致していない時間に伴い、指数関数的に増加するように調整される。
【0031】
好ましくは、前記酸の供給および/または塩基の供給は、測定されたpH(勾配)がpH設定値から離れる傾向にある時間(たとえば、測定されたpHがpH設定値を下回れば、測定されたpHの勾配が負(またはゼロ)である時間、または測定されたpHがpH設定値を上回れば、測定されたpHの勾配が正(またはゼロ)である時間)に伴い、指数関数的に増加するように調整される。換言すると、前記酸の供給および/または塩基の供給は、好ましくは、現在のpH値が以前のpH値とpH設定値との両方より大きい(または小さい)場合、指数関数的に増加するように調整される。これは迅速かつ有効なpH制御を可能にし、pH制御におけるオーバーシュートを低減することができる。
【0032】
好ましくは、前記酸の供給および/または塩基の供給は、現在のpH値とpH設定値との間の差に応じてスケーリングされる。
【0033】
本開示の他の態様によると、コンピュータによる実行時に前記コンピュータにバイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御させる命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータプログラム製品は、現在のpH値と、以前のpH値と、pH設定値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整することを含む。前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータによる実行時に前記コンピュータに、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽の操作を制御させる命令を含んでもよい。
【0034】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御するように調整された装置が提供され、前記装置は、現在のpH値と、以前のpH値と、pH設定値とに応じて酸の供給および/または塩基の供給を調整する手段を含む。前記装置は、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽でのバイオプロセスの操作を制御するように調整されていてもよく、および/または、そのように調整された手段を、さらに含んでもよい。
【0035】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御する方法が提供され、前記方法は、溶存酸素設定値と測定された溶存酸素とに応じて、同時に、または、ほぼ同時に攪拌および酸素供給を調整することを含む。前記酸素供給は、少なくとも前記攪拌の範囲(部分範囲)で攪拌に比例していてもよい。前記酸素供給を調整することは、気体供給の体積流量を調整することを含んでもよい。前記酸素供給を調整することは、気体供給の酸素濃度を調整することを含んでもよい。好ましくは、最小の酸素供給は最小の攪拌に対応し、最大の酸素供給は最大の攪拌に対応する。好ましくは、攪拌が最小の攪拌から増大する時、酸素供給は最小の酸素供給から、好ましくは同時に、または、ほぼ同時に、増加する。
【0036】
好ましくは、攪拌が最大攪拌に達する前に、酸素供給が最大酸素供給に達し、より好ましくは、酸素供給が最大酸素供給に達すると、攪拌が最大攪拌の75%と85%との間であり、さらに好ましくは約80%である。これは、パラメータのひとつのみ(すなわち攪拌)が変化するだけであるため、酸素供給と攪拌との間のいかなる相互作用(酸素供給と攪拌との増加)も除去され、そのため溶存酸素設定値を超えたオーバーシュートの回避を可能にするので、特にバイオプロセスのバッチ段階の後期で、バイオリアクタ槽における溶存酸素のより正確な制御を可能にすると見られてきた。さらには、酸素供給(特に、気体供給速度)がバッチ段階の後期でそれほど変化せず一定になるので、あふれ出ることを回避するか、少なくともその可能性を低減することを可能にすると見られてきた。
【0037】
好ましくは、バイオプロセスのバッチ段階の最後(またはその近傍)で、最大酸素供給および/または最大攪拌に達する。
【0038】
酸素供給が最大酸素供給に達した後に、攪拌がさらに増大することが好ましく、攪拌が最大攪拌まで増大し、一方で酸素供給は最大酸素供給を維持することがさらに好ましい。
本開示の他の態様によると、コンピュータによる実行時に前記コンピュータにバイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御させる命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータプログラム製品は、溶存酸素設定値および測定された溶存酸素に応じて、攪拌および酸素供給を調整させることを、含む。前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータによる実行時に前記コンピュータに、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽の操作を制御させる命令を含んでもよい。
【0039】
本開示の他の態様によると、バイオリアクタ槽におけるバイオプロセスの操作を制御するよう調整された装置が提供され、前記装置は、溶存酸素設定値と測定された溶存酸素とに応じて攪拌と酸素供給とを調整するための手段を含む。前記装置は、前述のいずれかの方法にしたがってバイオリアクタ槽でのバイオプロセスの操作を制御するように調整されていてもよく、および/または、そのように調整された手段を、さらに含んでもよい。
【0040】
場合によっては、前記方法は出力を生成する。
【0041】
場合によっては、前記方法は出力を提示する。好ましくは、前記方法は、表示器上に、または表示器に対して、前記出力を提示する。
【0042】
場合によっては、前記方法は出力を生成することをさらに含む。
【0043】
場合によっては、前記方法は出力を提示することをさらに含む。
【0044】
場合によっては、前記方法は、表示器上に、または表示器に対して、出力を提示することをさらに含む。
【0045】
場合によっては、前記方法はコンピュータにより実施される。
【0046】
前記方法が、少なくとも部分的に、コンピュータプログラムコードを使用して実施されうることは、理解されうるであろう。したがって、本開示の他の態様によると、コンピュータ処理手段による処理が行われる場合に、上述したこれら方法を行うように調整された、コンピュータソフトウェアまたはコンピュータプログラムコードが提供される。前記コンピュータソフトウェアまたはコンピュータプログラムコードは、コンピュータコードが永久的に記憶されるかまたは上書きされるまで記憶されてもよい媒体である、コンピュータ可読媒体、および特に、非一時的なコンピュータ可読媒体によって担持されうる。前記媒体は、読み出し専用メモリ(Read Only Memory、ROM)チップなどの物理記憶媒体であってもよい。または、デジタルビデオディスク(Digital Video Disk, DVD-ROM)などのディスクや、たとえばフラッシュドライブやミニ/マイクロセキュアデジタル(SD)カード(mini/micro Secure Digital (SD) card)などの不揮発メモリカードであってもよい。また、有線を介した電子信号や、モバイル通信網(mobile telecommunication network)、地上放送網、衛星などを介した光学信号や無線信号などの信号であってもよい。本開示は、ソフトウエアまたはコードを動作させるプロセッサ、たとえば上述の方法を実行するよう構成されたコンピュータにも及ぶ。
【0047】
さらに、ハードウエアにおいて実施される特徴はソフトウエアで実施されてもよく、またその逆も同様である。本明細書におけるソフトウエアおよびハードウエアの特徴についてのいかなる言及も、それに応じて解釈されるものとする。
【0048】
本明細書に記載される装置のいかなる特徴もまた、方法の特徴とされてもよく、その逆も同様である。本明細書に記載されているように、ミーンズ・プラス・ファンクションの特徴は、そのかわりにそれに対応する構造に関して、たとえば適切にプログラムされたプロセッサや連携するメモリなどとして表現されてもよい。
【0049】
前記開示はまた、ソフトウエアコードを含むコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品であって、前記ソフトウエアコードが、データ処理装置上で実行された場合に、本明細書に記載された方法のいずれかを行うように調整され、前記方法の構成ステップのいずれか、またはすべてを含む、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品を提供する。
【0050】
前記開示はまた、ソフトウエアコードを含むコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品であって、前記ソフトウエアコードが、データ処理装置上で実行された場合に、本明細書に記載された装置の特徴のいずれかを含む、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品を提供する。
【0051】
前記開示はまた、本明細書に記載の方法のいずれかを行うための、および/または、本明細書に記載の装置の特徴のいずれかを実体化するための、コンピュータプログラムを支援するオペレーティングシステムを有する、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品を提供する。
【0052】
前記開示はまた、前述のコンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体を提供する。
【0053】
前記開示はまた、前述のコンピュータプログラムを搬送する信号と、かかる信号を送信する方法と、を提供する。
【0054】
上記の態様の各々は、前記のその他の態様に関して言及された一つ以上の特徴を含んでもよい。
【0055】
本明細書において、「または/もしくは(or)」という語は、特段の定めがない限り、排他的意味または両立的意味で解釈することができる。
【0056】
本開示は、実質的に本明細書において記載されているような、および/または、付随する図面に図示されているような、方法および/または装置を含む。
【0057】
本開示は、本明細書に記載および/または図示されている、なんらかの新規の態様または特徴を含む。さらに、装置の態様は方法の態様に適用されてもよく、その逆も同様である。さらに、一つの態様におけるいずれかの、一部の、および/またはすべての特徴は、他の態様におけるいずれかの、一部の、および/またはすべての特徴に、なんらかの適切な組み合わせで、適用できる。
【0058】
また、本発明のいずれかの態様において記載および定義される様々な特徴の特定の組み合わせは、独立して実施され、および/または、供給され、および/または使用されることができることも、理解されるべきである。
【0059】
本明細書に記載されているように、ミーンズ・プラス・ファンクションの特徴は、そのかわりにそれに対応する構造に関して、たとえば適切にプログラムされたプロセッサや連携するメモリなどとして表現されてもよい。
【0060】
「装置(apparatus、device)」、「プロセッサ(processor)」、「通信インターフェース」などの語の使用は、具体的ではなく一般的であることを意図している。本開示のこれらの特徴は、コンピュータや中央演算装置(CPU)などの個々の構成部分を使用して実施されてもよいが、他の適した構成部分または構成部分の組み合わせを使用して同様に実施することも可能である。たとえば、集積回路などのハードワイヤード回路(単数または複数)を使用したり、組み込みソフトウエアや、および/または機能、APIインターフェース、またはSDKを含むソフトウエアモジュール(単数または複数)を使用したりして実施できるだろう。さらに、それらは二つ以上の構成部分であってもよい。
【0061】
本文書で使用される「~を含む(comprising)」という語は、「少なくとも部分的に~から成る(consisting at least in part of)」を意味する。そのため、「含む(comprising)」という用語を含む、本文書中の記載を解釈する際には、前記用語の後に続く特徴(単数または複数)以外の特徴もまた存在してもよい。「含む(compriseおよびcomprises)」のような関連する用語は、同様に解釈されるものとする。本明細書において、名詞の後に続く「(単数または複数)((s))」とは、前記名詞の単数および/または複数の形態を意味する。
【0062】
本明細書において、「バイオリアクタ」は、好ましくは、生物により化学的なプロセスが行われる、または生物由来の生化学的に活性な物質により化学的なプロセスが行われる、生物学的に活性な環境を維持する(support)システムを含意する。このプロセスは、好気性であっても、嫌気性であってもよい。
【0063】
本明細書において、「発酵(fermentation)」および「バイオプロセス(bioprocess)」は、好ましくは、生物により行われる化学的なプロセス、または生物由来の生化学的に活性な物質により行われる化学的なプロセスを、同義的に含意する。このプロセスは、好気性であっても、嫌気性であってもよい。
【0064】
本明細書において、「溶存酸素(dissolved oxygen)(DO)」は、好ましくは液体に溶解する酸素の量を含意し、好ましくは液体中の溶存酸素濃度を含意する。好ましくは、溶存酸素(DO)は、溶液中の酸素の飽和濃度に対する前記溶液中の溶存酸素(DO)の濃度の比率、たとえばパーセントでの比率として定量化される。校正飽和濃度は、ある温度、圧力、および溶液組成物を特徴とする特定のバイオプロセスに対して特化してもよく、当業者であれば、特定の状況に対して適した校正を選択できるであろう。DO校正手順は、好ましくは、発酵が行われる予定の条件と同じ条件で行われる。たとえば、大腸菌については、摂氏37度、pH7、特定の増殖培地を使用、1vvm(1分間の単位体積当たりの体積)のエアレーション、500rpmの攪拌でDOを校正してもよい。
【0065】
好ましい例を、付随する下記図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、本開示の一例のバイオリアクタシステムの模式図である。
【
図2】
図2は、前記バイオリアクタシステムの一部をなす制御部の模式図である。
【
図3】
図3は、前記バイオリアクタシステムの一部をなす発酵槽の模式図である。
【
図4】
図4は、発酵槽の操作を制御する方法の例を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、発酵槽における処理条件(単数または複数)を制御するために使用される制御システムの例を示す模式図である。
【
図6a】
図6aは、発酵槽における処理条件(単数または複数)を制御する方法の例を示すフロー図である。
【
図6b】
図6bは、異なるバイオリアクタ槽用の攪拌速度およびガッシングを示すグラフである。
【
図7】
図7は、発酵プロセスの段階の例を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、段階間の移行方法の例を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、バッチ段階から産生段階への移行を検出する方法の例を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、バッチ段階から産生段階への移行の方法の例を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、フェッドバッチ段階から発酵段階の終了への移行の方法の一例を示すフロー図である。
【
図12】
図12は、従来のカスケード型DO制御により制御されるバイオプロセスの間の、攪拌速度と測定された溶存酸素とを示すグラフである。
【
図13】
図13は、
図5~11に示される制御方法により制御されるバイオプロセスの間の、攪拌速度と測定された溶存酸素とを示すグラフである。
【
図14a】
図14aは、従来のカスケード型DO制御により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、気体速度と、測定された溶存酸素と、測定された温度とを示すグラフである。
【
図14b】
図14bは、従来のカスケード型DO制御により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、測定された溶存酸素と、推定された酸素消費速度とを示すグラフである。
【
図15a】
図15aは、
図5~11に示される制御方法により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、気体速度と、測定された溶存酸素と、測定された温度とを示すグラフである。
【
図15b】
図15bは、
図5~11に示される制御方法により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、測定された溶存酸素と、推定された酸素消費速度とを示すグラフである。
【
図16a】
図16aは、
図5~11に示される制御方法により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、気体速度と、測定された溶存酸素と、測定された温度とを示すグラフである。
【
図16b】
図16bは、
図5~11に示される制御方法により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、測定された溶存酸素と、推定された酸素消費速度とを示すグラフである。
【
図17】
図17は、従来のカスケード型DO制御と、
図5~11に示される制御方法とにより制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、測定された溶存酸素を示すグラフである。
【
図18】
図18は、
図5~11に示される制御方法により制御される、1Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、気体速度と、測定された溶存酸素と、測定された温度とを示すグラフである。
【
図19】
図19は、
図5~11に示される制御方法により制御される、3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、攪拌速度と、気体速度と、測定された溶存酸素と、測定された温度とを示すグラフである。
【
図20】
図20は、
図5~11に示される制御方法により制御される、0.3L、1L、および3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、測定された溶存酸素を示すグラフである。
【
図21】
図21は、従来のカスケード型DO制御と、
図5~11に示される制御方法とにより制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、測定された温度を示すグラフである。
【
図22】
図22は、
図5~11に示される制御方法により制御される、0.3Lの作業容積を有する槽でのバイオプロセスの間の、測定されたpHを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
(好適な例の詳細な説明)
多くのバイオリアクタプロセスにとって、バイオリアクタ水溶液中の溶存酸素(DO)を特定のレベルに維持することは、生物集団の最適な増殖のために、また、前記集団が確立してからは生物集団の最適な効率のために、非常に重要である。溶存酸素が生物集団に消費され、その生物集団が増殖するため、バイオリアクタにおける溶存酸素の濃度は、複雑な挙動を示す。どの程度溶存酸素が溶液に供給されるかは、エアバブルから溶液への酸素の搬送に影響を与える多数の要因に依存する。DOの挙動は、温度、培地の組成、攪拌速度、上部空間の圧力、エアレーション速度、細胞増殖、細胞集団、発泡および界面活性剤によって、かなり変化しうる。
【0068】
バッチバイオプロセスやフェッドバッチバイオプロセスなどの、多くのバイオリアクタプロセスにおいて、微生物ははっきり分かれた段階をふんで増殖し、この異なる段階ごとには異なるプロセス設定が適している。フェッドバッチ発酵プロセスでは、バッチ段階の後に、産生段階(発現段階またはフェッドバッチ段階とも称される)が来る。バッチ段階では、微生物を、指数関数的集団増殖のためのバッチ計画下で増殖させる。微生物集団が、溶液中の栄養制限(たとえばグルコースなどの炭素源)ぎりぎりまで増殖すると、産生段階に入る。産生段階の間は、微生物を育てるために栄養が追加され、望ましいバイオプロセスが行われるようにする。バッチ段階の間は、生物集団を最大限増殖させるために、生物が培養される。産生段階の間は、望ましいバイオプロセスを最大限行うために、生物が培養される。
【0069】
フェッドバッチ発酵プロセスは高い歩留まりをもたらすことが可能で、とりわけ効率がよい一方で、バッチ段階から産生段階への移行のタイミングが難しく、適切な移行のタイミングをとりそこねると、栄養の枯渇(典型的には、炭素源の枯渇)を起こし、発酵プロセスを行えなくなる可能性がある。
【0070】
バッチ段階中は、集団の増殖が指数関数的に増加し、酸素需要が増加し、溶存酸素が消費され、一定レベルの溶存酸素を提供するために前記プロセスを制御することが求められる。DO制御の一例では、攪拌、空気流、および酸素流のカスケードを使用する。かかるカスケードの第一の工程では、望ましいDOレベルを維持するために攪拌速度をあげる。ある程度の(たとえば許容される最大値の)攪拌速度に達すると、カスケードの第二の工程が実施され、空気流を増大させる。ある程度の(たとえば許容される最大値の)空気流に達すると、カスケードの第三の工程が実施され、気体流中の酸素の割合を増大させる。
【0071】
酸素消費が増加する期間中に集団が増殖するバッチ段階では、炭素源が無くなり始める。炭素源が無くなってくると、酸素摂取率が下がり始め、やがてDOが再び上がり始める。その結果DOスパイクが検出され、産生段階の開始の合図となる。
【0072】
DOスパイクを引き起こす炭素源の枯渇はまた、微生物の代謝も変え、バイオマスのピークポテンシャルを下げるため、炭素源の枯渇のはじまりを精度良く検出することが重要である。DOスパイクが簡単に観察できる一方、DOコントローラはDOを一定のレベルに維持するよう設定されており、有効なDOコントローラは、変化する酸素摂取率に対して十分に迅速に応答できなくなった時以外は、炭素源の枯渇のはじまりでのDOの上昇を即座に検出しないようにできる。炭素源の枯渇の始まりを精度良く検出することは難しい。
【0073】
バッチ段階制御から産生段階制御への移行が、感知されたDO値のみではなく、集合パラメータに応じてなされるなら、バイオリアクタプロセスの制御が改善できると考えられる。前記集合パラメータは、感知されたDO数値とエアレーションパラメータとの両方に基づく。エアレーションパラメータは、攪拌速度、気体供給速度、および気体供給酸素濃度のうちの少なくとも一つである。感知されたDO値とエアレーションパラメータとの比率は、特に、炭素源の枯渇の始まりを精度良く検出するために有効であると考えられる。集合パラメータは、バイオリアクタプロセスの酸素消費速度の推定値を表すことができ、炭素源の枯渇の始まりの精度良い検出を可能にできる。
【0074】
(ハードウエアの構成)
図1を参照すると、本例では、バイオリアクタシステム100は槽102と制御部104とを含む。前記槽102は、微生物細胞などの生物が培養される液体培地を保持することができ、微生物培養プロセス用の環境を提供することができる。前記バイオリアクタシステム100は、前記槽102に連携する一つ以上のアクチュエータ(単数または複数)106と一つ以上のセンサ(単数または複数)108とをさらに含む。前記アクチュエータ(単数または複数)106は、槽102内部の(処理)条件に影響を及ぼし、前記センサ(単数または複数)108は、前記槽102内部の(同じおよび/または別の)条件をモニターする。前記アクチュエータ(単数または複数)106およびセンサ(単数または複数)108は、前記槽102の内蔵の構成部分であってもよく、または前記槽102に連携した別々の構成部分であってもよい。前記センサ(単数または複数)108からの測定値は、124で、制御部104への入力として提供されている。前記制御部104は、センサ入力データを処理し、前記槽102への制御出力(単数または複数)を122とする。前記制御出力(単数または複数)は、前記アクチュエータ(単数または複数)106のうちの一つ以上の操作に影響し、したがって前記槽102内部の条件に影響し、それによってフィードバックループを完成させる。
【0075】
前記制御部104によるセンサ入力データの処理は、各処理条件について設定値(発酵の開始以前にあらかじめ定めてあってもよいし、発酵プロセスを通じて決定/更新してもよい)を有するセンサ読み取り値を比較することと、前記条件が設定値になるよう(または近くなるよう)に調節されるよう必要な制御出力(単数または複数)を決定することと、を含む。このように、モニターされている槽条件がその設定値に(またはその近くに)維持される制御システムが実施されてもよい。モニターされている条件は、必ずしも正確にその設定値に維持されなくてもよく、むしろ設定値周辺の値の範囲内であればよい。たとえば設定値のパーセンテージ内(たとえば、設定値の±1%、または±5%以内)や、設定値周辺の数値範囲内(たとえば、7.0pH設定値とすると、pHは7.0±0.3以内に維持されてもよい)であればよい。前記範囲は、設定値に対して対称であっても(示された例のように)、非対称であってもよい。
【0076】
本例において、前記アクチュエータ(単数または複数)106とセンサ(単数または複数)108と制御部104とは、上述したように122、124で通信できるように物理的な電気的接続を介して接続されている。または、前記アクチュエータ(単数または複数)106とセンサ(単数または複数)108、ならびに前記制御部104は、インターネットを介して成立した接続を介して通信してもよく、この場合、前記アクチュエータ(単数または複数)106とセンサ(単数または複数)108、ならびに前記制御部104は、たとえば有線型イーサネット接続とアクセスポイントを介してインターネットで通信するように配置されてもよく、および/または、Global System for Mobile Communications(GSM)、Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)、またはLong-Term Evolution(LTE)などの適切な通信スタンダードを使用したセルラー無線ネットワークリンクを介してインターネットで通信するように配置されてもよい。前記アクチュエータ(単数または複数)106とセンサ(単数または複数)108、ならびに前記制御部104は、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、IR無線接続、ZigBee(登録商標)接続、その他同様の接続など、別の近距離無線通信を介して互いに(および/またはアクセスポイントと)通信するよう配置されてもよい。前記制御部104と、前記アクチュエータ(単数または複数)106とセンサ(単数または複数)108との間の上記のありうる接続のいずれかを組み合わせて使用してもよく、たとえば、一次接続が失敗した場合の一つ以上のバックアップ接続を提供するために使用してもよい。または、および/または、たとえば各接続において使用される帯域を減少させるために、送信されたデータを共有/分散させるために使用してもよい。
【0077】
センサ(単数または複数)108によって測定され、測定値として124と示され前記制御部104へ提供される、パラメータ(または処理条件)の例は、下記表1に示されている。パラメータ測定値を得るために使用される前記センサ(単数または複数)108は、従来のセンサであってもよい。たとえば、pHを測定するためにトランスデューサ(pH電極など)が使用され、また、培地中の一つ以上の成分(たとえば、二酸化炭素やメタン)の濃度を測定するために、赤外線(IR)分光法やラマン分光法が使用されてもよい。表1に示されたパラメータの一部は、他の測定されたパラメータの値に基づいて間接的に測定され決定されてもよい。たとえば、酸素消費は溶存酸素濃度(DO)処理値にたいする攪拌速度の比率を使用して推定してもよい。表1に記載のパラメータ、および、記載されていないさらなるパラメータは、光化学、電気化学、放射線、電波探知法、音響学、視覚、粘度、系統、分光法、ガスクロマトグラフィーおよび/または液体クロマトグラフィー、トモグラフィー、熱および/または電気的導電性など、幅広い方法によって測定してもよい。前記センサ(単数または複数)108は、前記槽102の液体培地および/またはヘッドスペースガスに直接的接するものであってもよい前記センサ(単数または複数)108は、前記槽102の内部または外部に配置されてもよい。前記センサ(単数または複数)108は、前記バイオリアクタの非接触センシングを提供してもよい。前記センサ108は、リアルタイムセンサであっても、遅延センサ(たとえば、サンプルを培地から除去することを必要とするセンサ)、またはそれらの組み合わせ(たとえば、リアルタイムであるセンサのサブセットと、遅延のサブセット)であってもよい。本例において、前記制御システムのよりどころは、処理条件のモニターおよび測定をリアルタイム(ほぼリアルタイム)で提供する、遅延(ラグタイム)がごくわずか(たとえば1秒より小さい)あるだけの、リアルタイム(ほぼリアルタイム)センサである。
【0078】
【0079】
前記アクチュエータ(単数または複数)106は、槽102内部の(処理)条件に影響を及ぼす。たとえば、前記アクチュエータ106は、加熱システム(たとえば温度加熱システム(たとえばサーマルジャケット)を介して温度を変更してもよく、様々な材料(たとえば、酸素を液体培地に供給するための空気や、液体培地のpHを調節するための塩基性(または酸)溶液)を前記槽へ供給し、前記槽内での混合(たとえば、モータにより駆動される攪拌器を介して)を改善するために動作する。これらアクチュエータおよびその他のアクチュエータの例のリストを、下記の表2に示す。前記槽102内の他の処理条件に影響を与える(かつ、それらの制御を可能にする)ために、さらにアクチュエータ(単数または複数)を前記槽102に連携させてもよい。
【0080】
【0081】
表1に記載されているパラメータのサブセットを測定する、多数の特定のセンサを含み、かつ、表2に記載のアクチュエータのサブセットを含む、バイオリアクタの例を、
図3を参照しながら以下に説明する。請求項の範囲から逸脱しない範囲で、センサ(表1に記載されたパラメータおよび/またはその他のパラメータを測定)またはアクチュエータ(表2に記載および/またはその他)のその他の組み合わせが、バイオリアクタシステム100に設けられてもよいことは、当業者なら理解するであろう。
【0082】
図2を参照すると、制御部104は、バス214によって互いに結合される中央演算部(CPU)202、メモリ204、記憶部206、センサ入力(単数または複数)224、および制御出力(単数または複数)222を含むコンピュータデバイスである。前記制御部104は、バス214によって同様に互いに、かつ上述の制御部構成部分に結合される、着脱可能記な記憶部208およびユーザインターフェース212をさらに含んでもよい。
【0083】
上記のように、前記制御部104はセンサ入力データを処理し、前記槽102に連携されたアクチュエータ106へ122の制御出力(単数または複数)を提供する。換言すれば、前記制御部104は、前記槽102でセンサによって測定された処理条件に基づいて、前記槽102の前記アクチュエータ(単数または複数)106のための制御信号を決定する。制御モジュール250を、このタスクを行うために前記制御部104に設置してもよい。前記制御モジュールは、前記センサ入力(単数または複数)224(および、場合によっては前記ユーザインターフェース212を介したデータ入力)からのデータの処理を担当し、また、前記槽102用のアクチュエータ(単数または複数)106を制御するために使用される制御出力(単数または複数)222の決定を担当しているソフトウエアアプリケーションである。前記制御モジュール250は、コンピュータ実行可能コードの形態でもある命令を連携し、前記メモリ204、記憶部206および/または着脱可能記憶部208に記憶している。前記制御モジュール250の内部動作を、下記部分にさらに詳細に記載する。
【0084】
前記制御モジュール250は、さらに場合によっては、槽102におけるアクチュエータ(単数または複数)106の制御のためのユーザ入力のために使用されてもよく、特に、ユーザインターフェース212がある場合に使用されてもよい。前記制御モジュール250は、ユーザによる制御部104の操作のためのインターフェースを提供する、ユーザインターフェース(UI)モジュールを含んでもよい。前記制御モジュール250はまた、バイオリアクタシステム100に関するデータ(たとえば、124で制御部104に提供された処理条件測定値)について様々なデータ解析を行うために使用することができる、解析モジュールを含んでもよい。
【0085】
前記センサ入力(単数または複数)224は、典型的には槽102に設けられたセンサ108から処理条件測定値(単数または複数)を受け取るための手段を含み、前記制御出力(単数または複数)は、典型的には槽102に設けられたアクチュエータ(単数または複数)106に制御信号(単数または複数)を提供するための手段を含んでもよい。本例において、これら手段は、前記制御部104と前記センサ(単数または複数)108およびアクチュエータ(単数または複数)106との物理的電気的接続のための入出力ポート(またはソケットまたはコネクタ)であり、ツイストペアコネクタ、同軸ケーブルコネクタ、光ファイバコネクタなどである。たくさんの代替の手段(無線手段を含む)が利用可能であり、請求項の範囲を逸脱することなく使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0086】
前記ユーザインターフェース212は、この例では表示器216,キーボード218、およびマウス220である入出力装置を含む。別の例では、前記入出力デバイスは、薄膜トランジスタ(TFT)液晶ディスプレイ(LCD)表示器や、有機発光ダイオード(OLED)表示器などのタッチスクリーンや、その他の適切な表示器を含む。前記ユーザインターフェースは、CPU202の制御下でユーザに対して(たとえば、槽102の現在の処理条件などの)指示を提供し、場合によってはユーザからの入力を受け取り、これら入力をコミュニケーションバス214を介してCPU202へ伝達するように配置されている。前記ユーザインターフェース212はこのように、バイオリアクタシステム100の制御の手動の調整を行うために使用してもよく、たとえば、所望の設定値を特定したり、パラメータを制御したり、センサやアクチュエータを校正したり、自動制御を無効にしたりするために使用してもよい。これは、たとえば、もしなんらかの測定された処理条件(たとえば温度)が定義された範囲外となっていても自動制御を手動で無効にすることにより、有用なフェイルセイフメカニズムを提供するであろう。
【0087】
前記CPU202は、コンピュータプロセッサ、たとえばマイクロプロセッサである。前記CPU202は、前記メモリ204、記憶部206および/または着脱可能記憶部208に記憶された命令を含む、コンピュータ実行可能コードの形態の命令を実行するように配置されている。前記CPU202によって実行される命令は、制御出力(単数または複数)222や、ユーザインターフェース212および/またはオーディオシステム(図示せず)などの制御部104の他の特徴などを制御するための命令など、制御部104の他の構成部分の操作を調和させる命令を含む。
【0088】
前記メモリ204は、CPU202による使用のための命令やその他の情報を記憶する。前記メモリ204は、制御部104の主たるメモリである。前記メモリ204は、通常は、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、読み出し専用メモリ(Read Only Memory、ROM)との両方を含む。前記メモリ204は、コンピュータ実行可能コードの形態で、CPU202に処理された命令を記憶するように配置されている。典型的には、コンピュータ実行可能コードの選択された要素のみが、いつでもメモリ204によって記憶され、前記選択された要素は、特定の時間に行われている制御部104の操作に肝要な命令を定義する。換言すれば、一部の特定のプロセスがCPU202により取り扱われる一方で、前記コンピュータ実行可能コードは、メモリ204に一時的に記憶される。
【0089】
前記記憶部206は、制御部104用の大容量記憶を提供する。異なるインプリメンテーションにおいて、前記記憶部206は、ハードディスク装置、フラッシュメモリ、その他の同様のソリッド・ステート・メモリ装置、またはかかる装置のアレイなどの形態の統合記憶装置である。前記記憶部206は、CPU202に処理された命令を定義するコンピュータ実行可能コードを記憶する。前記記憶部206は、永久的に、またはたとえば上書きされるまでなど半永久的に、コンピュータ実行可能コードを記憶する。つまり、コンピュータ実行可能コードが、非一時的に記憶部206に記憶される。典型的には、記憶部206に記憶されたコンピュータ実行可能コードは、CPU202の操作、様々な入出力(たとえば、ユーザインターフェース212、制御出力(単数または複数)222、センサ入力(単数または複数)224、およびその他のインストールされたアプリケーションやソフトウエアモジュール(制御モジュール250など)に必須である命令に関する。
【0090】
前記着脱可能記憶部208は、制御部104用の補助記憶を提供する。異なるインプリメンテーションにおいて、前記着脱可能記憶部208は、たとえばデジタルバーサタイルディスク(DVD)などの光ディスク、携帯型フラッシュドライブ、その他の同様の携帯型ソリッド・ステート・メモリ装置、またはかかる装置のアレイなど、着脱可能記憶装置用の記憶媒体である。他の例では、前記着脱可能記憶部208は、制御部104から離れており、ネットワーク記憶装置、またはクラウド型の記憶装置を含む。
【0091】
上述のように、前記制御システムは、コンピュータプログラム製品として実施される制御ユニット型ソフトウエア(制御モジュール250)を介して管理される。前記コンピュータプログラム製品は、異なる段階で、メモリ204、記憶装置206、および/または着脱可能記憶部208に記憶される。コンピュータプログラム製品の記憶は、コンピュータプログラム製品に含まれる命令がCPU202によって実行されている時は、前記命令がCPU202またはメモリ204に一時的に記憶されている場合もあるが、それ以外は、非一時的である。ただし、着脱可能記憶部208は制御部104から着脱可能であり、コンピュータプログラム製品が制御部104から離されて保持される場合があってもよい。
【0092】
別の実施例において、前記制御部104は、インターネットとの接続を確立するように構成されたインターネット通信モジュールをさらに含んでもよい。Theインターネット通信モジュールは、典型的には、前記バス214をイーサネットソケットに結合するイーサネットネットワークアダプタを含んでもよい。前記イーサネットソケットを、ネットワークに結合してもよい。
【0093】
図3にバイオリアクタの例を示す。本例において、バイオリアクタは、攪拌タンク発酵槽328である。前記発酵槽328は、(液体)培地308、センサプローブ326、および様々なアクチュエータ(たとえば314、316、318、330、312)を保持する。発酵槽328は、単回使用の槽であるが、再使用可能な槽であってもよい。単回使用の槽の利点は、使用後に槽を洗浄して前記発酵槽の全体的な効率を減少させてしまうような汚れを回避する、という必要が無いことである。
【0094】
前記発酵槽328は、ポリスチレンおよびポリカーボネート製で、50mLから50Lの間の作業(内部)容積を有するが、様々な異なる材料で、多くの異なる大きさで適切な槽が作成されてもよい。たとえば、前記槽は、ポリマーまたはガラスまたは鉄鋼(とりわけステンレス鋼)で形成されてもよく、またはポリマーブレンドやポリマーの組み合わせ、ガラスライニング鋼、またはポリマーライニング鋼などの材料の組み合わせで形成されてもよい。前記槽は、使い捨て可能なライナーと剛性支持体で形成されてもよい。槽の大きさは、1L未満から10,000L以上まで、様々であってもよい。
【0095】
前記アクチュエータは、加熱/冷却システム、攪拌システム、酸素供給システムを含む。前記アクチュエータは、養分供給部、酸/塩基供給部、および/または誘導物質供給部など、さらに別の供給システムを含んでもよい。
【0096】
前記加熱/冷却システムは、発酵プロセスの効率を改善するために、発酵槽の内容物を望ましい温度(発酵プロセスを通じて変化しうる)に(または望ましい温度近くに)維持するために使用される。発酵槽328内の反応は、典型的には、発熱性または吸熱性であり、攪拌システムは液体培地を攪拌することにより発熱するが、それらにかかわらず前記加熱/冷却システムは所定の温度を維持するために使用できる。本例において、前記加熱/冷却システムは、サーマルジャケット318である。前記サーマルジャケットは、様々な異なる方法で、伝熱流体を使用して、または使用しないで、加熱または冷却されてもよい。たとえば、前記サーマルジャケットは、入口320を通ってジャケット318に入り出口322を通って出る、熱を加えたり除去したりするための伝熱流体を使用して、加熱/冷却されてもよく、ペルチェ効果に基づく、液体を使用しない熱電性冷却システム(装置を流れるDC電流が一方から他方へ熱を移動させる)(図示せず)を使用して、加熱/冷却されてもよい。伝熱流体型サーマルジャケットは、たとえば次のようなものであってもよい:単独の外部ジャケット(発酵槽328を囲む単独のチャンバジャケット)、ハーフコイルジャケット(half coil jacket)(ハーフパイプが発酵槽328に取り付けられて(たとえば周囲に溶接され)半円形のフローチャネルを作る)、または、複数の小さいジャケット素子を含み、一度につきその一部のみが発酵槽を加熱/冷却するために使用される、コンスタントフラックスジャケット(constant flux jacket)。
【0097】
前記攪拌システムは、均質な条件で細胞を維持し、前記所望の産物(単数または複数)への栄養および/または酸素の搬送を改善するように、発酵槽328の内容物を混合するために使用される。前記攪拌システムは、今度は発酵槽328における勾配、たとえば濃度(細胞、媒体、養分、誘導物質、酸素)の勾配を解消(または低減)するよう働く混合をさせる。本例において、前記攪拌システムは、撹拌機シャフト304を駆動するモータ(駆動ユニット)302と、撹拌機シャフト304上に設置された一つ以上のインペラブレード306とを含む。前記インペラブレードは、ラシュトン型、パドル型、マリン型、またはピッチ型などのいずれの設計であってもよい。場合によっては、前記撹拌機システムは、バッフル(図示せず)をさらに含んでもよい。前記バッフルは、回転撹拌機によって生じた流れを区切り、発酵槽328内の混合と物質移動とを改善する、一つ以上のステーション羽根を含む。
【0098】
好気発酵(および一部の嫌気発酵)プロセスでは、酸素が槽に供給されなければならない。酸素は相対的に液体培地308(典型的には、大部分が水から成る)に不溶であるため、継続的に頻繁に、酸素を発酵槽328に追加する。本例において、前記酸素供給システムは、発酵槽328への酸素の継続的な供給を提供する。前記酸素供給システムは、入口312を通って空気(および/または精製酸素)が供給される通気装置310を含む。
【0099】
前記発酵槽は、発酵槽328に材料を供給するように配置された、養分供給部314、酸/塩基供給部316、および誘導物質供給部330をさらに含んでもよい。本例において、前記酸/塩基供給部は塩基の供給部であり、培地308のpHを調節するために塩基性溶液を供給する。または/さらに、前記酸/塩基供給部は酸性溶液を供給してもよい。前記養分供給部は、発酵槽328での発酵プロセスを行う生物または細胞が必要とする栄養素(単数または複数)を供給する。本例において、前記養分供給部は、炭素源(たとえばサトウキビ汁、グルコース、スクロース、グリセロール、またはその他なんらかの適した炭素源(候補となる選択肢は、出力製品に大きく依存する))を供給する。前記誘導物質供給部は、産生段階における化学的および/または生物学的プロセスを改善および/または容易にするための誘導物質/触媒を供給する。たとえば、発酵プロセスの産生段階で、標的タンパク質がより効率よく産生されるように、誘導物質が転写および遺伝子発現を改善し、および/または容易に生じるようにしてもよい。これら供給部は、典型的には液状(水溶液状)の材料を供給し、たとえば蠕動ポンプなどの形態のポンプをアクチュエータとして含んでもよい。示された例において、前記酸/塩基供給部は、塩基ポンプ(以下、ポンプBと称する)を含み、前記養分供給部は養分ポンプ(以下、ポンプAと称する)を含み、前記誘導物質供給部は誘導物質ポンプ(以下、ポンプCと称する)を含む。
【0100】
多くのセンサ326が、発酵槽328内の処理条件および/または発酵槽102に関連する条件をモニターし測定し、その測定値を、電気的接続(単数または複数)324を介して制御部104へ提供する。上記に示した例のセンサ326は、以下を含む:温度センサ、pHセンサ、攪拌速度センサ、一つ以上気体流量センサ(たとえば発酵槽328へ供給される空気の流量(たとえば入口312での流量)を測定するため)、溶存酸素濃度(DO)センサ、酸素濃度センサ(空気供給部における酸素濃度を測定するために使用される)、および、場合によっては、発酵槽328へ供給される(たとえばポンプ輸送される)材料(たとえば、上記のようなアクチュエータポンプの例としての養分供給部314、酸/塩基供給部316、および誘導物質供給部330によって供給される材料)の、単位時間当たりの体積を測定する、一つ以上の流量(たとえばポンプ輸送速度)センサ。前記センサ326は、発酵槽の作業容積を(たとえば、発酵槽328中の液体培地308の水位を測定することにより)測定する作業容積センサを、さらに含んでもよい。
【0101】
一般的に、バイオリアクタ用の槽102には、さらなる特徴が加わってもよく、または、上記のものよりも少ない特徴を含んでもよい。さらなる追加されうる特徴の例としては、入口または出口(たとえばポンプ)(たとえば、排水用、排気ガス/廃ガス用の出口;消泡剤などの供給部;および/または、上記表1および2を参照して記載されたような、センサ(単数または複数)やアクチュエータ(単数または複数)がある)。
【0102】
本開示は、Eppendorf(登録商標)BioBlu(登録商標)(0.3f,1f,または3f)単回使用の槽を使用したEppendorf(登録商標)DASbox(登録商標)ミニバイオリアクタシステム、および/またはEppendorf(登録商標)BioBLU(登録商標)単回使用の槽を使用した、Eppendorf(登録商標)DASGIP(登録商標)、Eppendorf(登録商標)BioFlo(登録商標)120/320バイオリアクタシステムなど、オートクレーブ処理可能な槽や単回使用の槽を使用した、多数の既製のバイオリアクタシステムを使用して実施することができるだろう。前記槽102、アクチュエータ(単数または複数)106、センサ(単数または複数)108、および制御部104は、かかる従来公知のバイオリアクタシステムの特徴のいずれかを含んでもよい。
【0103】
前記槽102、アクチュエータ(単数または複数)106、センサ(単数または複数)108、および制御部104は、様々な程度で組み込まれていてもよい。別のバイオリアクタシステムの設計が多数、当業者に公知であり、かかる別のバイオリアクタシステムが下記に記載された方法を実施するために使用できることもまた、理解されるべきである。
【0104】
別の例において、制御部に対して多数の発酵槽が設けられ(および/または接続され)る。
【0105】
さらに別の実施例において、各発酵槽に対して多数の制御部が接続される。たとえば、各制御部が、発酵槽内の一つの処理条件(たとえばpH)の制御を担当してもよいし、または、多数の制御部の各々が、発酵槽用の制御信号(単数または複数)を決定するために必要な処理のサブセットを行ってもよい。たとえば、一つの制御部が前記入力センサデータの前処理を行い、別の制御部がその後、制御信号(単数または複数)を決定してもよい。
【0106】
(制御モジュール)
前記制御モジュール250は、前記センサ入力(単数または複数)224(および、場合によっては前記ユーザインターフェース212を介したデータ入力)からのデータの処理を担当し、また、前記発酵槽102用のアクチュエータ(単数または複数)を制御するために使用される制御出力(単数または複数)/信号(単数または複数)222の決定を担当する。特に、前記制御モジュール250は、発酵プロセスの所定の段階(たとえばバッチ段階)および/または多数の発酵段階にわたって、および/またはそのあいだに、発酵槽における処理条件の自動制御を実施するために使用されてもよい。特に、前記制御モジュール250は、バッチ段階と産生段階との間の移行の制御を担当する。
本例において、前記制御モジュール250の主要な機能は、以下の通りである。
【0107】
・制御される変数(単数または複数)(制御される処理条件(単数または複数))を、それぞれの設定値に(またはその近傍に)の維持。制御される変数の例としては、発酵槽102内のpH、温度および/または溶存酸素濃度(DO)がある、
・発酵段階(好ましくは現在の発酵段階)を決定。特に、バッチ段階から産生段階への移行の検出。特に、前記制御される変数の設定値は、決定された発酵段階に応じてもよい、
・発酵段階間(特に、バッチ段階と産生段階との間)の移行の管理。これには、発酵槽328へ材料(たとえば、養分および/または誘導物質)を供給すること、および/または異なる発酵段階の間で、制御される変数の設定値の漸進的(たとえば、ガタガタした、直線的な、などの)変化を実施すること、が含まれてもよい。
【0108】
図4を参照して、発酵槽102の操作を制御する方法400の例を示す。
【0109】
まず、前記制御システムがステップ402で初期化される。このステップは、以下のような、一定の変数についてのパラメータの設定を含む:発酵槽102の寸法、発酵槽の中のアクチュエータ(単数または複数)の特性(たとえば、最小/最大供給(ポンプ輸送)速度、最小/最大攪拌(かき混ぜ)速度、最小/最大気体(たとえば空気)流量等);発酵プロセス関連の変数(たとえば、開始段階、段階期間(単数または複数)、または開始処理条件(単数または複数)設定値(単数または複数));養分および/または誘導物質の特性等);および/または制御システム関連変数(たとえばサンプル時刻(サイクル間の間隔)、方法400のステップ404~408がどれだけ頻繁に繰り返されるかを定義)。
【0110】
次に、前記設定値(単数または複数))が、制御される処理条件について(換言すると、制御される変数について)ステップ404で設定される。前記設定値(単数または複数)は、発酵段階に応じてもよいので、好ましくは、方法400の各サイクルでリセットされる。本例において、制御される前記処理条件(すなわち、対応するアクチュエータ(単数または複数)について制御信号が決定されて、設定値に(またはその近傍に)維持されるような、処理条件)は、少なくとも溶存酸素濃度(DO)、pH、および温度である。好ましくは、前記処理条件は、発酵槽328内の処理条件のことをいう。
【0111】
続いて、センサ入力データ424(事前処理されていてもよい)と、ステップ404で設定された設定値とに基づいて、制御モジュール250がステップ406で、発酵槽アクチュエータ(単数または複数)用の制御信号(単数または複数)を決定し、上述したように発酵槽アクチュエータ(単数または複数)へ送信された制御出力データ422を出力する。制御信号(単数または複数)の決定は、さらに発酵段階に基づいてもよい(たとえば、一部のアクチュエータ(たとえば誘導物質供給部)が、前記処理条件設定値に基づくかわりに、またはそれに加えて、発酵段階に基づいて制御される)。ステップ406を、下記の記載でさらに詳細に説明する。
【0112】
次に、ステップ408で制御モジュール250が発酵段階を決定する。好ましくは、この決定は現在のサイクルでの発酵段階に対応する。上述のように、ステップ404および406でそれぞれ決定された設定値(単数または複数)および/または制御信号は、発酵段階に基づいていてもよい。発酵段階のさらなる詳細と、それらがどのように決定されたかについては、以下に記載する。
【0113】
好ましくは、方法400がリアルタイムで(または、ほぼリアルタイムで)行われ、制御モジュール250が迅速に反応して発酵槽102での処理条件を変更するようにする。
【0114】
好ましくは、サイクル間の時間間隔は500ms~1分、さらに好ましくは10秒である。間隔が短すぎると、制御される変数(単数または複数)に影響する時間がないうちに不必要に制御信号(単数または複数)を修正するかもしれないという意味で「過剰制御」となるかもしれないが、間隔が長すぎると、システムに長すぎる遅延をもたらし、発酵槽328内の変化する条件に対するシステムの反応を遅れさせる(たとえば、段階間の移行の検出が遅れたり、全く検出しなかったりする)ことになるかもしれない。上記範囲は、このトレードオフのバランスをとるように選択された。
【0115】
ステップ404~408の順序がいずれかの組み合わせで入替可能であることは、理解されるべきである。
図4に示すように、制御信号(単数または複数)は、現在のサイクルでステップ404で設定された設定値と、場合によっては前回のサイクルのステップ408で決定された発酵段階とに基づいてステップ406で決定される。しかしながら、制御信号(単数または複数)を、前回の(または現在の)サイクルで設定された設定値(単数または複数)と、場合によっては現在の(または前回の)サイクルで決定された発酵段階とに基づいて設定することも可能であろう。
【0116】
ステップ402~408の区別は任意であり、単に明瞭性のために区別されたこともまた、理解されるべきである。これら工程内の動作は、実際はさらに細分化できるし(それによりステップ402~408の各々はそれ自体が方法と考えられてもよい)、また、より少ない工程とすることも可能である。
【0117】
(処理条件(単数または複数)制御システム)
制御される変数(単数または複数)をそれぞれの設定値に(またはその近傍に)維持するために、制御モジュール250は一つ以上の制御ループ(またはコントローラ)を実施する。制御ループ(単数または複数)は、単一入力単一出力(SISO)制御ループ(単数または複数)、および/またはマルチ入力マルチ出力(MIMO)制御ループ(単数または複数)を含んでもよい。前記コントローラは、非適応性(non-adaptive)(固定された設定値を使用)であってもよく、適応性(adaptive)であってもよい(それにより、コントローラは処理条件に基づいて設定値(単数または複数)を調節し、その場合、それは発酵プロセスの数学モデルに基づいてもよく、またはモデルフリー型適応性コントローラ(モデルではなく動的フィードバックシステムを使用)であってもよい)。さらに、各コントローラは、決定論的方法でアクチュエータ(単数または複数)について制御信号(単数または複数)を決定してもよく(たとえば、システムの所定のモデル、および/または入力(単数または複数)と出力(単数または複数)との間の相互作用に基づいて)、または経験主義的方法で(たとえば、制御される変数が設定値になるまで観察された処理条件に基づき反復的に制御信号(単数または複数)を修正して)、アクチュエータ(単数または複数)について制御信号(単数または複数)を決定してもよい。
【0118】
図5および6aを参照すると、方法406のインプリメンテーション600の例と、制御システム500の例とが示されている。
図5および6aは、単一の制御される変数を有する単一入力コントローラ504と、一つ以上の出力(制御信号(単数または複数)512)とに対応する。好ましくは、
図6aに示されるように、方法600は周期的に(サイクルで)反復される。
図5は、
図1~4を参照して説明された特徴と同一の特徴を多数含み、対応する参照符号がそれら特徴に言及するために使用される。
【0119】
図5を参照して、槽102における処理条件(単数または複数)を制御するために使用される制御システムの例を示す。制御システム500は、制御される変数の設定値508と測定された制御される変数の値516との間の差(または誤差)510を、センサ(単数または複数)108による前記制御される変数の値514の測定に基づき、決定する。この誤差510は、入力として、制御部104のコントローラに送られ、前記コントローラはコントローラ機能を実施して、アクチュエータ106についてのアクチュエータ/制御信号(単数または複数)512を決定する。前記アクチュエータ(単数または複数)106は、槽102における制御される変数に影響し、前記変数を設定値508に一致させる。pHを制御される変数の例として使用し、設定値508が所望のpH(典型的には7.0)を表すとし、前記アクチュエータが酸/塩基供給部316であり、センサ326がpH電極であるとする。
【0120】
図6aは、槽における処理条件(単数または複数)を制御する方法の例を示す。制御モジュール250は、まずステップ602で、測定された制御される変数の値514と設定値508との間の誤差510決定する。
【0121】
誤差510があらかじめ決めてあった閾値を下回ると(たとえば、誤差510がゼロまたは設定値あたりの定められた範囲内(たとえば設定値の±1%または5%以内や、ゼロより大きい/小さいなら)であるとき)、方法600は終了し、制御信号がその以前の値(たとえば、前回のサイクルで決定された値)に維持される。方法600は、ステップ602で開始する次のサイクルで反復される。
【0122】
誤差510があらかじめ決めた閾値を上回る場合、制御モジュール250はコントローラ機能に基づいて、前記制御信号(単数または複数)512を決定する。pHおよびDOの制御について(pHおよびDOの制御される変数について)のコントローラ機能の例を、より詳細に以下に記載する。制御モジュール250は、ステップ608で、制御される変数および/または制御信号(単数または複数)値を記憶してもよく、それらが次のサイクル(単数または複数)でのステップ604用の入力として使用されてもよい。方法600は、ステップ602で開始する次のサイクルで反復される。
【0123】
制御信号(単数または複数)が所定の処理条件を制御するよう調節される頻度は、条件によって変わってもよい。たとえば、制御信号(単数または複数)の調節の頻度は、温度についての調節の頻度よりも少なくてもよい。
【0124】
(pHコントローラ機能の例)
本例において、発酵槽328内のpHは、
図5および6aを参照して記載されたアクチュエータとしてはたらく酸/塩基供給部316(たとえばポンプB)を使用して制御される。塩基の供給(pHの上昇または下降を目的とした酸性および/または塩基性溶液の供給)の流量(またはポンプ輸送速度)は、経験主義的方法で決定してもよく、それにより、一サイクル中(好ましくは現在のサイクル中)に測定されたpH(pH
1)、設定値pH(pH
SP)、および前の(好ましくは前回の)サイクルで測定されたpH(pH
0)に応じて、流量が設定される。より詳しくは、酸/塩基(この場合、塩基のみ)供給流量を決定するアルゴリズムは以下のとおりであってもよい。
【0125】
(1)以前のサイクルから値(単数または複数)をロード:counter
pH((pH
1/pH
0)≦1を満たす連続したサイクルの数をカウント);pH
0、
(2)pH
1<pH
SPである場合、
(2-1)(pH
1/pH
0)≦1である場合、
(2-1-1)counter
pHを1だけ増加させる;
(2-1-2)ポンプB速度を、
【数1】
に設定する。なお、kおよびcは、少ないサイクルで設定値に達し、同時に設定値をオーバーシュートしないように、ポンプ輸送速度を徐々に上げるよう選択された任意の定数である。kは、最大ポンプB速度に比例してもよい。kおよびcの数値の例は、それぞれ、0.35*(最大ポンプB速度)および1.025であってもよい、
(2-2)(pH
1/pH
0)≦1でない場合、
(2-2-1)counter
pHをリセット(counter
pHをゼロに設定);
(2-2-2)前回のポンプB速度を維持
(2-3)後のサイクル(単数または複数)のためにpH
1およびcounter
pHを記憶する(たとえば、pH
1は、pH
0として使用してもよい)。(このステップは、(pH
1/pH
0)≦1のif/else条件から独立している)
(3)pH
1<pH
SPでない場合、ポンプBを停止し(ポンプB速度をゼロに設定する)、かつ、counter
pHをリセットする。
【0126】
上記アルゴリズムの例は、塩基の供給(塩基性溶液のみを供給)に関して説明したが、これは酸/塩基供給が無いと液体培地308のpHが低下する発酵プロセスに関していてもよい。この説明が酸の供給(酸性溶液のみを供給)、または酸/塩基の供給(酸性溶液および塩基性溶液の両方を供給)に容易に拡張できることを、当業者は理解するであろう。
【0127】
(DOコントローラ機能の例)
本例において、発酵槽328内のDOレベルは、攪拌システムおよび/または
図5および6aを参照して記載されたアクチュエータとしてはたらく酸素供給システムを使用して制御される。攪拌システムのかき混ぜ速度(N)、および/または酸素濃度(たとえば空気対O
2富化)および/または酸素供給システムの体積流量が、制御信号(単数または複数)512を介して制御され、DOをその設定値(またはその近傍)に維持するようにする。
【0128】
上述のように、前記攪拌システムは、今度は発酵槽328における勾配、たとえば酸素(液体/溶解および/または気体の形態での)濃度の勾配を解消(または低減)するよう働く混合をさせる。また、攪拌により酸素気泡(たとえば通気装置310により提供される)を分散させ、気体-液体(培地)インターフェースを介した気体気泡の物質移動を促進する。攪拌により、このように、気体から液体形態への酸素移動率(OTR)が改善される。したがって、全体的に攪拌を増加することにより、DOレベルを増加できる。前記酸素供給システムも同様にOTRに影響を与えるであろう(発酵槽328への酸素供給を増加することが、酸素利用性を上げ、それがOTRおよびDOレベル/濃度を上げるであろう)。
【0129】
前記DOレベルは、以下に基づいて、一サイクル(好ましくは現在のサイクル)におけるかき混ぜ速度(N1)を調節することにより、制御されてもよい。以前の(好ましくは前回の)サイクル(N0)のかき混ぜ速度、DO設定値(DOset)、あるサイクルでのDO値(DO1)、および好ましくは、ある/前記以前の(好ましくは前回の)サイクルのDO値(DO0)。より詳しくは、決定論的方法でN1を設定するための式の例を、以下の等式(1),(2a)および(2b)として示す。
【0130】
【0131】
上記において、τは前記一つのサイクルと以前のサイクルとの間の時間間隔を示し(好ましくは、サンプリング時間、またはサイクル間時間)を示し、Nmax/VBRは相対的な混合パワーを特徴づけるスケーリングファクタ(Nmax:最大攪拌速度、VBR:バイオリアクタの作業容積)である。
【0132】
式(2a)は、小さいτを想定し、
【数3】
として概算されるDO変化率(dDO/dτ)を考慮する。式(2b)は、式(DO
1-DO
0)としての変化率を考慮する。式(2a)は、
【数4】
としても表すことができる。
【0133】
式(1)と比較して、式(2a)および(2b)は、上記のDO値に応じて前記変化を減少または増大させる。これは、特に設定値に近づける場合に、減衰または先取効果を有する。直近で変化したDO数値の変化が急速であればあるほど、制御または減衰効果が大きい。かかる制御によって、設定値に関する変動をほぼ無くすことができ、DO値をより円滑に制御でき、バイオプロセスについてより一様な条件を提供できる。
【0134】
式(2a)と比較すると、式(2b)は所定の槽の相対的な混合パワーを考慮する。スケーリングファクタNmax/VBRは、攪拌の変化を槽のサイズに対してスケーリングする。特に、大きな槽については、これによりオーバーシュートが防止できる。異なるサイズの槽での混合プロセスは、体積当たりの混合パワー(W/L)により特徴づけられる。前記送達された混合パワーは、攪拌器の物理的寸法の三乗、すなわちpower~linear_size3に関する。より大きな槽は、典型的にはより大きなサイズの攪拌器を使用し、より効率的なパワー送達を示すことが多い。たとえば、3Lのバイオリアクタ中で1200rpmで混合することは、0.3Lのバイオリアクタ中で2000rpmで混合することに匹敵する。別の例では、0.3Lのバイオリアクタ中でN0=1000rpmを20rpm増加させることは、1Lのバイオリアクタ中でN0=800rpmを3rpm増加させるのと、DOに対する同様の効果を有すると考えられている。
【0135】
場合によっては、式(2b)中のスケーリングファクタは(Nmax-Nmin)/VBRであってもよい。
【0136】
したがって、式(1)または式(2a)または式(2b)に基づいて、DOをDOSPに維持するように攪拌システムかき混ぜ速度(N1)を決定するためのアルゴリズムの例は、以下のようであってもよい。
【0137】
(1)以前のサイクルからの値(単数または複数)をロード:DO0
(2)(DO1>(i*DOSP))または(DO1<(j*DOSP))である場合(iおよびjは、設定値周辺のDO値の望ましい範囲を定義する任意の定数であり、たとえばi=1.02、j=0.98である)、
(2-1)式(2a)に基づいて(もしくは、式(1)または式(2b)に基づいて)N1制御信号を決定する;
(2-2)場合によっては、前記コントローラの機能は、制御信号をN1に設定する前に、N1が許容範囲内(所定の攪拌システムおよび/または発酵槽および/または発酵プロセスについて、たとえば最小許容値(Nmin)を下回らず、最大許容値(Nmax)を上回らない)にあるかをチェックすることを含んでもよい。たとえば、培地内で細胞の死滅を起こしかねない過剰な剪断力を防止するために、攪拌速度(混合)に対して上限があってもよい;
(2-3)後のサイクル(単数または複数)のためにDO1およびN1値を記憶(たとえば、DO1は、DO0として使用してもよい)する。
(3)(DO1>(i*DOSP))または(DO1<(j*DOSP))である以外の場合、かき混ぜ速度を以前のサイクルからの値に維持(N1=N0)。
【0138】
上述したようなかき混ぜ速度を調節することのかわりに、またはそれに加えて、発酵槽への酸素供給を調節することにより、前記DOレベルをさらに制御してもよい。たとえば、酸素供給(ガッシング)(G)制御信号(単数または複数)は、上記で決定したようなN1(またはN0)に比例してもよく、前記二つの特性は、aおよびbが適切な定数である、G=N1×a+bにより関連している。定数aおよびbは、最大および/または最小許容ガッシング速度および/またはかき混ぜ速度の値に依存してもよい。たとえばガッシング速度(G)とかき混ぜ速度(N1)との間の関係は、G=(N1-Nmin)/(Nmax-Nmin)×Gmaxであってもよく、前記式においてGmaxは発酵槽328への最大許容酸素流量である。別の例において、前記ガッシング速度Gは、かき混ぜ範囲の部分範囲のみにおいて、かき混ぜ制御信号N1に比例する。前記ガッシングG制御信号を、かき混ぜ制御信号N1に加えて、またはそのかわりに、適用してもよい。後者について、N1は上述したように決定されてもよいが、制御信号は適用されず(前記かき混ぜ速度はそのかわりN0に(すなわち、一定値のNに)維持され)、ガッシング速度Gが上述のようにN1に基づいて決定された後に制御信号として適用されてもよい。かき混ぜ制御信号N1に依存し、次はDOに依存して、前記ガッシングGを調節する例を、下記の式(3a)および(3b)に示す。
【0139】
【0140】
式(3a)と比較すると、式(3b)は、最大かき混ぜ速度Nmaxへの到達と同時に最大ガッシングGmaxへ到達するのではなく、最大かき混ぜ速度Nmaxへの到達前に最大ガッシングGmaxへ到達するという効果を有する。式(3b)は、Nmaxに達する前のかき混ぜ範囲の最終15~20%でもかき混ぜ速度が増加する一方、前記ガッシング速度をGmaxで一定値に保つことができる。一部のバイオプロセスにおいて、式(3b)は、改善されたDO制御を提供できることが観察される。
【0141】
図6bは、異なるG
max、N
max、およびN
minを有する三つの異なるバイオリアクタ槽について、式(3b)による、かき混ぜ速度Nに対するガッシング速度Gを示す例を提供する。1Lの作業容積を有する槽610(Eppendorf(登録商標)BioFlo(登録商標)1L)において、ガッシング速度が700rpmで1vvm(volume per volume per minute、1分間の単位体積当たりの体積)から、1050rpmで3vvmに増加し、その後、攪拌速度が1200rpmでN
maxへ増加する一方で、ガッシング速度は3vvmの一定値に保たれる。3Lの作業容積を有する槽612(Eppendorf(登録商標)BioFlo(登録商標)3L)において、ガッシング速度が650rpmで1vvmから、1100rpmで2.5vvmに増加し、その後、攪拌速度が1200rpmでN
maxへ増加する一方で、ガッシング速度は2.5vvmの一定値に保たれる。0.3Lの作業容積を有する槽614(Eppendorf(登録商標)DASbox(登録商標))において、ガッシング速度が950rpmで1vvmから、1850rpmで3.3vvmに増加し、その後、攪拌速度が2000rpmでN
maxへ増加する一方で、ガッシング速度は3.3vvmの一定値に保たれる。
【0142】
ガッシング(G)制御信号は、供給された空気中の酸素濃度、および/または前記空気供給の体積流量に影響しうる。好ましくは、操作の簡便化のために、酸素濃度を一定に保ち、体積流量を調節する。これは、単一の供給(たとえばポンプ輸送)のみを必要とするため酸素供給を簡便化しうるが、一方で、濃度の変更には複数の供給が必要とされる(たとえば、空気用の一回の供給、酸素含有気体増加用の一回の供給)。
【0143】
場合によっては、前記コントローラの機能は、制御信号をGに設定する前に、Gが許容範囲内(所定の酸素供給システムおよび/または発酵槽および/または発酵プロセスについて、たとえば最小許容値(Gmin)を下回らず、最大許容値(Gmax)を上回らない)にあるかをチェックすることを含んでもよい。体積流量が過剰に高いと、剪断力および/または過剰な発泡(これは、下流の処理には望ましくないであろう高濃度の消泡剤を必要としうる)のせいで細胞の損傷/細胞の死滅を起こしかねないので、たとえば、酸素供給体積速度に対して上限があってもよい。
【0144】
好ましくは、DOレベルは、攪拌制御信号(N)と酸素供給制御信号(G)との両方を介して制御される。この結果、NのみまたはGのみを使用するよりも、より迅速/より応答性の良い制御となる。これは、DOの設定値からの偏差が、攪拌および酸素供給の両方を介して打ち消されるからである。また、GおよびNの両方を制御することで、DO設定値の操作範囲を大きくし、および/または特に高いDO設定値で剪断力を低減(およびそれゆえに細胞の損傷/細胞の死滅を低減)しうる。攪拌と酸素供給との両方を使用することで、攪拌または酸素供給のどちらかのみを制御して他方を固定するような場合よりも、低いDO設定値(攪拌および酸素供給のどちらも最小許容値を下回っていない)でも、高いDO設定値(攪拌および酸素供給のどちらも最大許容値を上回っていない)、安全な操作が可能になる。同様に、攪拌または酸素供給のどちらか一方のみを制御して高いDO設定値を達成すると、過剰な剪断力が起き(たとえば、過剰な攪拌や過剰な空気流量によって)、細胞の死滅を起こしかねないが、これは攪拌と酸素供給の両方が制御されていれば起こらない。さらに、攪拌制御信号(N)と酸素供給制御信号(G)との両方を使用することには、一つの制御信号の、他方の制御信号の値に対する有効性の強い相関を利用している。たとえば、大量の酸素供給の効果が最大化されるために、好ましくは、大量の酸素の供給を液体培地308全体に確実に混合/拡散されるよう攪拌速度が十分に高い値であるべきである。一方で、攪拌(したがって混合)が制限されていると、酸素供給の増加はDOレベルに対してほとんど効果が無く、液体培地308内の細胞に損傷を与える剪断力を生じさせる可能性がある。
【0145】
かき混ぜ、ガッシング、および/またはその他の制御信号(単数または複数)に対して有り得る上限および加減は、発酵槽の実際の作業容積に見合うように調節されればよい。たとえば、Gminは、毎分1Lの気体流という最小値に設定されてもよい。
【0146】
(発酵段階)
ステップ408で制御モジュール250が、処理条件(単数または複数)設定値(単数または複数)および/またはアクチュエータ(単数または複数)用の制御信号(単数または複数)に影響しうる、発酵段階の(および/または発酵段階間の移行の(検出))決定をおこなう。好ましくは、前記決定は方法400の各サイクルで行われる。
【0147】
詳細には、多くの(好ましくは連続)発酵段階が、制御モジュール250内で定義され、制御モジュール250はあらかじめ定められた条件を評価して発酵プロセスの段階を決定する。制御モジュール250は、前記決定された段階に対応するアクチュエータ(単数または複数)用の制御信号(単数または複数)をさらに決定してもよい。特に、制御モジュール250は、発酵プロセス中のバッチ段階から産生段階への移行を(たとえば、後述する方法900により)検出する。制御モジュール250は、直接的に(たとえば制御モジュール250が養分供給部のスイッチのon/offを切り替えてもよい)および/または間接的に(たとえば制御モジュール250が設定値(たとえば温度用の設定値)を修正して、それら設定値に到達することを上述のコントローラ機能にまかせてもよい)設定された、バッチ段階と産生段階の間の移行(たとえば方法1000を参照)、および/または産生段階と発酵プロセスの終了との間の移行(たとえば方法1100を参照)を、発酵槽102中のアクチュエータ(単数または複数)用の制御信号(単数または複数)によって、さらに実施してもよい。
【0148】
設定値が発酵段階に依存するような処理条件の例には、DOおよび温度がある。たとえば、温度設定値は、バッチ段階中の最適細胞増殖、および/または温度上昇にともなう液体培地中の酸素溶解性の低下、などのファクタのバランスをとるために、産生段階のものよりもバッチ段階のものが高くてもよい。温度設定値は、発酵段階の終了中ではさらに低くてもよい。同様に、バッチ段階中に細胞増殖を促進するために、また、産生段階で発現した酸化に敏感なタンパク質を保護するために、DO設定値は、産生段階中および/または段階間の移行中りも、バッチ段階中で大きくてもよい。DO設定値は、発酵段階の終了中ではさらに異なってもよい。
【0149】
図7を参照して、制御モジュール250中に定義された連続発酵段階700のリストの例を示す。前記段階700は、バッチ段階706(段階2)、および産生段階716(段階7)を含む。段階700は、バッチ段階706に先行する、多数の段階を含んでもよく、たとえば、「発酵開始」段階702(段階0)、および/または「植菌前/植菌待機」段階704(段階1)などがある。段階700は、バッチ段階と、バッチ段階から産生段階への発酵プロセスの移行を管理する移行段階との間の段階をさらに含んでもよく、それらには、「バッチ段階から産生段階への移行を検出する」段階706(段階3)、「養分供給を開始する」段階710(段階4)、「バッチ段階から産生段階へ温度を移行する」段階712(段階5)、および/または「誘導物質を供給する」段階714(段階6)などがある。最後に、段階700は、発酵プロセスの終了への移行を制御する産生段階716の後の段階をさらに含んでもよく、それらには、「産生段階から発酵の終了への移行」段階718(段階8)、および/または「発酵の終了」段階720(段階9)などがある。
【0150】
図8を参照して、段階700のうちの一つの段階(たとえば段階x)と次の段階(たとえば段階(x+1)との間の移行を制御する方法800の例を示す。方法800は間接的に発酵段階を決定することを可能にするので、方法408のインプリメンテーションとして考えられてもよい(なお、方法800もまた、方法406のある態様を含む)。各段階(段階xなど)は、単に処理条件(単数または複数)が確実にそれらの設定値(単数または複数)になるようにする以上に、発酵槽102における発酵プロセス全体の制御を可能にする、アクチュエータ(単数または複数)用の連携した制御信号(単数または複数)を有してもよい(換言すると、段階特異的な制御であってもよい)。方法800の第一のステップは、ステップ802において、かかる(段階x)特異的な制御を実施している。たとえば、段階710~720(または4~9)は、養分を所定の速さで供給したり、前記供給(たとえば、酸/塩基供給部)のうちの一つを止めたりなどの、段階特異的な制御を実施することを含んでもよい。段階4~9で実施される段階特異的な制御の詳細は後述される。
【0151】
次に、ステップ804で制御モジュール250が段階xから段階(x+1)への移行のための条件が満たされているかを決定する。たとえば、制御モジュール250は、段階xの開始からの時間(段階xの長さ)があらかじめ定められた閾値を超えているかどうかを決定してもよい。
【0152】
段階移行条件の例を下記表3に示す。表3に示された段階条件の例は、様々な処理条件および/またはタイムスケールの閾値に基づく。段階の長さに関する閾値(第一および第八の閾値)は、典型的には、1~1000秒の範囲であり、好ましくは、10~300秒である(下限は、方法400のサンプリング時間に依存する)。供給された材料の量(たとえば体積)に関する閾値(第5および第7の閾値)は、材料が供給される前記速さ(たとえば体積流量)を(たとえば、数の上では制御サンプリング速度と等しいサンプリング速度と)積分して、あるサイクルまでに供給される材料の総量を求め、それを、その段階中に供給されるべき材料の量(所望の量)すなわち閾値と比較することによって、実施されてもよい。または、材料が供給される速度が一定である、より単純な場合については、あるサイクルまでに供給された材料の量は、現在までの段階の長さ(たとえば段階開始からの時間)と材料供給の速度との積によって決定してもよい。段階5および8は、主に、一つの段階(または、段階群)の開始設定値から別の段階(または、段階群)の目標設定値へ温度(発酵槽328における温度および/または温度設定値であってもよい)を移行させることに関する。このように、第六および第八の閾値は、目標温度設定値に依存(たとえば、比例)してもよい。たとえば、産生段階温度設定値(TSP,exp)がバッチ段階温度設定値よりも低ければ、段階5から段階6への移行のための、ステップ804での条件は、以下のようであってよい:T<TSP,exp+c,ただし、前記式においてcは正の定数である。
【0153】
バッチ段階から産生段階への移行(および/または、バッチ段階の終了および/または産生段階の開始)を検出することに関する、前記段階2(706)および段階3(708)の間の移行の条件、ならびに段階3(708)および段階4(710)の間の移行の条件のさらなる詳細、および、推定された酸素消費量に関する閾値の詳細は、下記のセクションで提供される。
【0154】
ステップ804での条件(単数または複数)が満たされていれば、ステップ806において前記段階は次のサイクル用の(x+1)に設定される。満たされていなければ、前記段階は、xに設定されたままであり、前記方法800が次のサイクルで繰り返される。
【0155】
【0156】
段階700は明瞭化のために上述したように段階0~9に分割されていることが、理解されるべきである。段階700は、より数の少ない段階に「まとめられ」ることができ、またはさらなる段階に分けることができるだろう。たとえば、段階0~3は、単一のバッチ段階にまとめることができ;段階4~6は、「バッチから産生への移行」段階にまとめることができ;および/または、段階8~9は、「産生から発酵終了への移行」段階にまとめることができるだろう。
【0157】
(バッチ段階から産生段階への移行を検出)
制御モジュール250は、発酵槽328内での推定酸素消費速度をモニターすることにより、バッチ段階から産生段階への移行を検出する。酸素は、特に好気性発酵プロセスにとって、バッチ段階中の細胞増殖の主要基質である。したがって、バッチ段階中の時間経過とともに細胞集団(および/または密度)が増加するにつれて、酸素の需要が増えることになる(および/または、酸素消費が増えることになる)。バッチ段階の終了に向かって、酸素消費速度が供給を超えることが頻繁にあり(たとえば、最大許容攪拌および/または酸素供給)、DOレベルが低下する。しかしながら、最初に提供された養分(たとえば炭素源)が使いつくされると、細胞集団の増殖が止まり、酸素の需要/消費が減少する。したがって、バッチ段階から産生段階への移行は、高酸素消費速度のあとの酸素消費速度の(典型的に はかなりの)減少を検出することによって、検出してもよい。
【0158】
図9を参照して、バッチ段階の終了を検出する方法900の例を示す。方法900は実際には、個別/単独の機能として、および/または、上述したような段階の間の移行を介して、実施されてもよく、たとえば、バッチ段階から産生段階への移行は、前記段階が4 710に設定される場合に(すなわち、次の段階へ移行するための、ステップ804での条件(単数または複数)が、段階2について満たされ、その後段階3について満たされる場合に)検出されてもよい。後者の場合、段階2はステップ904~908を含んでもよく、段階3はステップ910~912とともにステップ904を含んでもよい。
【0159】
制御モジュール250はまず、ステップ904で、発酵槽328および/または発酵槽102における酸素消費(速度)(oxygen_consumption)の推定値を決定する。本例において、酸素消費速度は、増加したときにDOレベルを増加するように働く酸素化アクチュエータ制御信号(単数または複数)O(たとえば攪拌速度および/または酸素供給)を反映する酸素化パラメータOの、DOレベルに対する比率O/DOとして、推定される。たとえば、酸素消費速度は、以下のように推定してもよい。
【0160】
oxygen_consumption=N/DO (4)、
oxygen_consumption=G/DO (5)、
oxygen_consumption=(N+G)/DO (6)、または
oxygen_consumption=(N×G)/DO (7)
【0161】
前記式において、Nは攪拌速度であり、Gは酸素供給に関連する処理条件(たとえば、供給された気体の体積流量、供給された気体中の酸素濃度、またはこれら値の組み合わせ)である。これら式の例におけるNおよび/またはGおよび/またはDOは、無次元化されるようにスケーリングされる。たとえば、NおよびGは、その最大許容値または最小許容値によってスケーリングされてもよく、DOはその設定値によってスケーリングされてもよい。
【0162】
かかる比率を使用して酸素消費速度を推定することは、酸素消費速度の物理値を提供しないが、発酵プロセスにおける様々な時期での、特に発酵プロセスのバッチ段階中の、酸素消費速度を比較するために使用できる相対的な測定値を提供する。例を挙げると、時点(1)で、たとえばバッチ段階の開始近くでは、DOは比較的低いかき混ぜ速度Nでの設定値に維持され、時点(2)で、たとえばバッチ段階の終了近くで、高速のかき混ぜ速度(たとえば最大許容かき混ぜ速度)にもかかわらず前記と同じ設定値よりも低くまでDOレベルが低下していれば、これは、酸素消費速度が時点(1)よりも時点(2)で大きいことを示す。なぜなら、時点(2)で、DOレベルを上げると予測されるアクチュエータ動作(高速のかき混ぜ速度N)が、実際にそうなっていないということは、時点(2)では酸素がより高速で消費されていることを示唆するからである。
【0163】
上記で詳細に記載したように、比率を使用して酸素消費速度を推定するかわりに、酸素化パラメータO(たとえば、拡散速度、および/または酸素供給)とDOレベルとの間の別の数学的関係を使用して、適切に決定された閾値を用いて、上述の比率と類似した酸素消費速度を推定できる。たとえば、差(O-DO)により、酸素消費速度の推定値を好適に提供できる。パラメータのうち一つをスケーリングにより、便利な集合パラメータの提供を支援できる(たとえば、かきまぜは典型的には数万rpmであり、DOは数十%である)。対数関係(たとえばlog
DO(o))または下式の指数関数的関係
【数6】
も同様に、酸素消費速度の推定値を提供できる。
【0164】
上述したように、DOが先行するDO値に応じて制御される(たとえば上記式(2a)および(2b))DO制御は、減衰または先取効果を有することができる(特に、設定値に近づく場合。直近で変化したDO数値の変化が急速であればあるほど、制御または減衰効果が大きい。)このように従来の方法によって制御されたDOにおけるスパイクを検出すること(閾値を上回るΔDO)は、前記制御がスパイキングを抑制および防止するためのものであるため、不確かであり得る。下地となっているそのシステムよってスパイキングが生じるが、そのスパイクの検出は、かかる制御計画を有するシステムの移行の最適なマーカーではない。酸素消費速度を上述したように推定することは、DO制御が減衰/先取機能を含む場合にシステムの移行の検出には、より効果的であることがわかる。
【0165】
酸素消費速度がステップ904で推定されると、ステップ908で制御モジュール250が、この推定された酸素消費速度を(第三の)閾値jと比較する。この閾値jは、バッチ段階の終了(またはその近傍)での(相対的に高い)酸素消費速度に対応する。
【0166】
酸素消費速度が閾値(j)を下回るなら、これは、バッチ段階がまだ初期であり、そのピークに近づいていないことを意味し、方法900は終了する。次のサイクルでステップ902からもう一度開始する。
【0167】
酸素消費が閾値(j)を上回っていれば、発酵プロセスがバッチ段階の終了である(またはそれに近づいている)ことを意味し、制御モジュール250は、炭素源が枯渇して産生段階を開始するのが適切であることを意味する、推定された酸素消費速度の低下をモニタリングする(好ましくは次のサイクルでモニタリングを開始する)。ステップ910でこの推定された酸素消費速度を(第四の)閾値kと比較することにより、制御モジュール250が、この動作を行う。この閾値kは、産生段階の開始(またはその近傍)での(相対的に低い)酸素消費速度に対応する。
【0168】
酸素消費速度が閾値(k)を上回るなら、これは、微生物集団がまだ増殖しており炭素源がまだ枯渇しておらず、したがってバッチ段階から産生段階への移行が時期尚早であることを意味し、方法900は終了する。次のサイクルでステップ902からもう一度開始する。
【0169】
酸素消費速度が閾値(k)を下回るなら、これは、炭素源が枯渇している、または枯渇に近づいているために、集団増殖挙動の移行が生じており、バッチ段階から産生段階への移行を開始することが適切であることを意味している。
【0170】
閾値jは、好ましくは閾値kよりも大きい。また、閾値jは閾値kに依存していてもよく、その逆も同様である。たとえば、閾値kは閾値jと比例する(または閾値kに対してスケーリングされる)。たとえば、j=2kである。これにより、閾値の一つだけを決定しさえすればよい(たとえば、経験主義的/実験的に)ので、閾値j,kを決定するプロセスが単純化されうる。
【0171】
場合によっては、ステップ908で、制御モジュールが、第二の推定された酸素消費速度が相対的に高いかどうかをチェックし、これはたとえば、式(4)~(7)の分子の二番目(Nおよび/もしくはG、またはそれらの組み合わせ)を、閾値(たとえば最大許容攪拌速度と比例)と比較すること、場合によっては所定の時間のあいだそれを行う(これは短時間の「異常値」を解消しうるので、信頼性をさらに改善する)ことにより行う。
【0172】
上記の閾値j、k、および/またはtと、表3の閾値とは、制御モジュール250を多数の閾値で試験し、最適なもの(単数または複数)(たとえば、バッチ段階から産生段階への移行の検出で最も信頼できる、閾値j、k、および/またはt)を決定することにより、経験主義的に決定してもよい。前記閾値は、発酵プロセス(特に、媒体および/または出力製品(たとえば標的タンパク質)組成物)に依存してもよく、および/または発酵槽102(たとえば最大/最小攪拌速度および/または酸素供給(ガッシング)、または発酵槽(作業)容積、および/または制御部104の特性)に依存してもよい。
【0173】
(バッチ段階から産生段階への移行)
バッチ段階から産生段階への移行を検出する(たとえば、上記の方法900を介して)ことに加えて、前記制御モジュール250は、バッチ段階を出るための、および/または産生段階を開始するための前記適切なアクチュエータ制御信号(単数または複数)を決定し提供することにより段階間の移行/切り替え自体を自動化するように、構成されてもよい。
【0174】
図10を参照し、バッチ段階と産生段階との間の移行の方法1000の例を示す。方法1000は、好ましくは方法900に続く(たとえば、集団増殖挙動の移行912が検出された後、次のサイクルで開始する)。
図10におけるステップは、
図10で示すように、段階4(710、段階5(712)、および段階6(714)の一部として行われてもよい。このように、各段階のステップ群は、次の段階のステップが行われる前に、複数回繰り返されてもよい(および/または並行して実行されてもよい)。
【0175】
炭素源の枯渇により、ステップ912で集団増殖挙動において移行が検出された後、培地中の細胞の飢餓を回避して産生段階にとっての最適環境(たとえば、標的タンパク質の発現のための最適環境)を提供するために、まずステップ1002で、養分(たとえば炭素源)が発酵槽328へ供給される。ステップ1002の結果、養分供給でのチューブのプライミングも行い(チューブ中にあるかもしれない空気を除去)、後に産生段階で、養分供給がさえぎられないようにしてもよい。ステップ1002で供給される養分は、好ましくは養分のショットである。つまり、相対的に短い期間で相対的に多い量(体積、重量、またはモル数で測定された量)が(たとえば、最大許容養分供給速度で)供給される。好ましくは、ステップ1002で、あらかじめ定められた量が発酵槽328へ供給されるまで、前記養分が供給される。
【0176】
ステップ1002で養分ショットが供給されると、ステップ1004で養分の速度が産生段階設定値に調節される(たとえば、養分供給体積流量(L/h)で定義されているように調節される)。前記養分速度は、好ましくは、産生段階の終了まで(たとえば、段階712、714、および716を通して)このレベルに維持される。
【0177】
場合によっては、前記養分速度は、所定の槽用の養分ポンプの校正に基づいてさらに調節(すなわち、補正)される。たとえば、前記養分速度は、線形回帰法を使用して補正されてもよい。補正された養分速度と養分速度産生段階設定値との間の関係(直線で表されるとされている。すなわち、y=ax+bにおける係数aおよびb)は、(たとえば実験的に、および/または計算(たとえば機械学習)モデリングを使用して)決定され、その後、所望の養分速度産生段階設定値に基づいて補正された養分速度を決定するために使用される。
【0178】
次に、ステップ1006において、(たとえば、加熱/冷却システムコントローラ機能を介して達成される温度設定値を変更することにより)温度がバッチ段階設定値から産生段階設定値へ変更される。好ましくは、温度のゆっくりした/円滑な変化を提供するために、この変更は徐々に、相対的にゆっくりと、かつ、相対的に段階なく(温度の急上昇/変化が無く)行われる。たとえば、温度設定値は、バッチ段階設定値および産生段階設定値、ならびに温度移行期間あらかじめ定められた期間長さに応じた直線的な率で変更されてもよい。これにより、槽の加熱/冷却システムの加熱/冷却インターフェース近くで(たとえば、加熱/冷却ジャケットが加熱/冷却システムとして使用された場合、発酵槽328の表面近くの培地で)、熱点/冷点(格段に上昇/低下した温度の領域)が発生することを回避する(またはその頻度/可能性を低減する)。かかる熱点/冷点は、標的タンパク質発現にとって有害であり、および/または、細胞の損傷/細胞の死滅を起こしうる。もし温度の移行が速すぎれば、加熱/冷却システムはその加熱/冷却素子を非常に高い/低い温度に設定する必要があり、したがって加熱/冷却素子に隣接して(またはその近くに)熱点/冷点を生じさせるだろう。
【0179】
最後に、ステップ1008で、産生段階における化学的および/または生物学的プロセス(たとえば、転写および遺伝子発現)を改善および/または容易にするために、誘導物質が供給される。好ましくは、ステップ1002で供給される養分と同様に、誘導物質はステップ1008で「ショット」として供給される。つまり、相対的に短い期間で相対的に多い量(体積、重量、またはモル数で測定された量)が(たとえば、最大許容養分供給速度で)供給される。好ましくは、ステップ1008で、前記誘導物質が供給されるのはあらかじめ定められた量(たとえば体積)が発酵槽328へ供給されるまでであり、その時点で誘導物質の供給は中断/停止される。
【0180】
場合によっては、材料供給速度(単数または複数)(たとえば酸素供給速度、養分供給速度、および/または誘導物質供給速度)は、発酵槽の実際の作業容積(作業容積は、培地(および気泡など培地中の物質)が占める全容積の数分の一であり、したがって残りの上部空間は考慮しない)に見合うように調整される。たとえば、制御モジュール250は、あらかじめ定められた目標養分供給速度(たとえば、一時間ごと、作業容積の1Lごとの養分のグラム数で計測される)feed_targetを有し、作業容積Vと養分供給中の養分濃度Cとに基づく、この目標に対応する養分供給速度feed_supply_rateを、たとえば、feed_supply_rate=(feed_target*V)/Cによって決定する。好ましくは、この調節は、材料(たとえば養分)が供給される各サイクルで行われる。この調節は、前記段階0(702)~段階9(720)のいずれかの一つ以上で行われてもよい。
【0181】
(産生段階から発酵の終了への移行)
前記制御モジュール250は、産生段階から発酵段階の終了への移行を自動化するように、さらに構成され(configured)てもよい。産生段階の終了は、たとえば、産生段階時間をあらかじめ定められた閾値(たとえば、表3の8番目の閾値)と比較することによって検出してもよい。
【0182】
図11を参照し、産生段階と発酵段階の終了との間の移行の方法1100の例を示す。方法1100は、好ましくは、産生段階7(716)の後に続く(たとえば、段階8(718)への段階移行の、ステップ804での条件が満たされた後の、次のサイクルで開始する)。
図11におけるステップは、
図7で示すように、段階8(718)、および段階9(720)の一部として行われてもよい。このように、各段階のステップ群は、次の段階のステップが行われる前に、複数回繰り返されてもよい(および/または並行して実行されてもよい)。
【0183】
方法1100は、産生段階処理条件(たとえば、標的タンパク質の発現を促進することを目的とする)から、発酵プロセスの終了での条件(たとえば、発現した標的タンパク質の調質)への円滑な移行を行うと同時に、(たとえば過剰な剪断力や飢餓による)細胞の死滅を低減/回避するために設計されている。
【0184】
第一のステップとして、ステップ1102において、酸素供給を減らす。この減少は、酸素供給における酸素濃度および/または酸素供給の流量の減少に対応させてもよい。好ましくは、培地中の剪断力を制限するために、酸素供給の流量のみを減少させるか、またはそれを主に減少させる。産生段階に続いて、発酵槽328中の酸素消費が、典型的には有意に減少し、したがって、資源を浪費せず酸素供給を原因とする細胞の死滅を回避するために、酸素供給が低減されてもよい。しかしながら、酸素消費は、典型的には、ゼロにまで下がることがなく、好ましくは、酸素供給を、ゼロではない、相対的に低い数値であって、飢餓による細胞の死滅を回避/低減するには十分に高い数値(たとえば、約1vvm(1分間に培地1Lを通過する空気1L))まで低減する。
【0185】
その後、ステップ1104で、温度を産生段階設定値から、典型的にはより低い、発酵終了設定値に移行させる。たとえば、ステップ1104で、温度設定値を発酵終了設定値に設定し、温度コントローラ機能に発酵槽328においてこの温度を達成させることにより、温度が移行してもよい。最終的な細胞の飢餓を回避/低減するために、好ましくは、ステップ1104での温度移行に比例して、ステップ1106で養分を減少させる。たとえば、発酵槽328における温度が産生段階設定値から発酵終了設定値へ移行するのと同じ率で、養分速度を、その産生段階での値からそれより低い値(好ましくはゼロ)へ低下させてもよい。ステップ1104および1106は、好ましくは複数のサイクルにわたり、並行しておよび/または次々に反復して行われる。
【0186】
次に、ステップ1108で、材料供給システム(たとえば、養分および酸/塩基供給部)を止める。場合によっては、ステップ1108に先だって、上述した養分供給の低減と同様に、酸/塩基供給を徐々に減らしてもよい。
【0187】
最後に、ステップ1110で、攪拌により生じる剪断力を低減するために、攪拌(たとえば攪拌/かき混ぜ速度)を相対的に低いレベルへ低減し、一方で飢餓を低減/回避するために、発酵槽328へ供給される、同様に相対的に小さい量の酸素を確実に混合する。ステップ1102~1108で処理条件が修正されるので液体培地の濃度の勾配を低減/解消するために(たとえば、DO、温度、養分、および/または酸/塩基濃度勾配を低減するために)攪拌は好ましくは、(
図11に示すように)最後にステップ1110で低減される。
【0188】
バイオプロセスの例:ボツリヌス神経毒
【0189】
記載された制御をさまざまなバイオプロセスに適用することができるが、上記の制御方法を使用して制御されたバイオプロセスを用いて生成できる生成物の一例として、クロストリジウム神経毒をここでより詳細に記載する。
【0190】
クロストリジウム属中の細菌は、高度に強力な、特異的なタンパク質毒素を産生し、それらが送達されるニューロンおよび他の細胞を毒することができる。このようなクロストリジウム毒素の例として、C.テタニ(tetani)(TeNT)およびC.ボツリヌム(botulinum)(BoNT)によって産生される神経毒血清型A~GならびにC.バラティ(baratii)およびC.ブチリカム(butyricum)によって産生されるものが挙げられる。
【0191】
クロストリジウム神経毒は(例えば、天然には)、末梢神経系において、特に、神経筋接合部でコリン作動性伝達を阻害することによって筋肉麻痺を引き起こし、したがって、致死性である場合がある。天然では、クロストリジウム神経毒は、単鎖ポリペプチドとして合成され、これがタンパク質分解による切断事象によって翻訳後修飾されて、ジスルフィド結合によって一緒につなげられた2つのポリペプチド鎖を形成する。切断は、鎖間ジスルフィド結合を提供するシステイン残基間に位置する、活性化部位と呼ばれることが多い特定の切断部位で起こる。毒素の活性形態は、この二本鎖形態である。2つの鎖は、およそ100kDaの分子量を有する重鎖(H鎖)およびおよそ50kDaの分子量を有する軽鎖(L鎖)と呼ばれる。H鎖は、N末端転位置成分(HNドメイン)およびC末端標的化成分(HCドメイン)を含む。切断部位は、L鎖とHNドメインの間に位置する。
【0192】
クロストリジウム神経毒の作用様式は、5つの別個のステップに依存している:(1)HCドメインのその標的ニューロンの細胞膜への結合と、それに続く(2)エンドソームによる結合された毒素の細胞への内部移行、(3)エンドソーム膜を超えてサイトゾル中へのHNドメインによるL鎖の転位置、(4)非細胞傷害性プロテアーゼ機能を提供するL鎖によるSNAREタンパク質として知られる細胞内輸送タンパク質のタンパク質分解切断、および(5)標的細胞からの細胞性分泌の阻害。
【0193】
非細胞傷害性プロテアーゼは、SNAREタンパク質として知られる細胞内輸送タンパク質(例えば、SNAP-25、VAMPまたはシンタキシン)をタンパク質分解性に切断することによって作用する-Gerald K (2002) “Cell and Molecular Biology” (4th edition) John Wiley & Sons, Inc.を参照されたい。頭字語SNAREは、可溶性NSF付着受容体(Soluble NSF Attachment Receptor)という用語に由来し、ここで、NSFは、N-エチルマレイミド感受性因子(N-ethylmaleimide-Sensitive Factor)を意味する。SNAREタンパク質は、細胞内小胞融合に不可欠であり、したがって細胞からの小胞輸送を介した分子の分泌に不可欠である。プロテアーゼ機能は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性であり、SNAREタンパク質に対して高い基質特異性を示す。したがって、ひとたび所望の標的細胞に送達されると、非細胞傷害性プロテアーゼは、標的細胞からの細胞性分泌を阻害可能である。クロストリジウム神経毒のL鎖プロテアーゼは、SNAREタンパク質を切断する非細胞傷害性プロテアーゼである。
【0194】
ボツリヌス毒素などのクロストリジウム神経毒は、その独特の特性のおかげで、広範囲な治療適用において、特に、運動および自律神経障害のために、例えば、活動亢進神経終末の活性を正常レベルに回復させるために成功裏に利用されてきた。これまでに少なくとも7種の抗原性に別個のBoNT血清型、すなわち、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/Gが記載されている(Rossetto, O. et al., “Botulinum neurotoxins: genetic, structural and mechanistic insights.” Nature Reviews Microbiology 12.8 (2014): 535-549)。
【0195】
この多様性にもかかわらず、BoNT/Aが依然として療法において最適な血清型であり、3種の一般的に利用可能な市販の調製物(Botox(登録商標)、Dysport(登録商標)およびXeomin(登録商標))があるが、BoNT/B製品は1種のみが市場で入手可能である(Neurobloc(登録商標)/Myobloc(登録商標))。今日まで、クロストリジウム株から精製された毒素であるこれらのBoNT/AおよびBoNT/B製品が、中でも、痙攣、膀胱機能障害または多汗症(BoNT/Aについて)(例えば:参照によりその全文で本明細書に組み込まれる、https://www.medicines.org.uk/emc/medicine/112、https://www.medicines.org.uk/emc/medicine/870、https://www.medicines.org.uk/emc/medicine/2162を参照されたい)から頸部ジストニア(BoNT/Bについて)(例えば、その全文で参照により本明細書に組み込まれるhttps://www.medicines.org.uk/emc/medicine/20568を参照されたい)にわたる適用のためにヒトにおいて使用するために規制機関によって現在承認されている2種だけのBoNT血清型である。
【0196】
その天然の標的細胞を死滅させることによって作用する細胞傷害性プロテアーゼ(例えば、リシン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素)とは対照的に、クロストリジウム神経毒は、その天然の標的細胞の細胞機能を一過性に無力化することによって作用する非細胞傷害性プロテアーゼである。重要なことに、非細胞傷害性プロテアーゼは、作用する際に天然の標的細胞を死滅させない。クロストリジウム神経毒(例えば、DysportTM、NeuroblocTMおよびBotoxTMなどの名称のもとで販売されているボツリヌス神経毒)に加えて、非細胞傷害性プロテアーゼの最も知られている例の一部として、IgAプロテアーゼ(例えば、WO99/032272を参照されたい)およびアンタレアーゼ(antarease)プロテアーゼ(例えば、WO2011/022357を参照されたい)が挙げられる。
【0197】
「クロストリジウム神経毒」という用語は、本明細書で使用される場合、ニューロンに侵入し、神経伝達物質放出を阻害する任意のポリペプチドを意味する。このプロセスは、神経毒の低または高親和性受容体への結合、神経毒の内部移行、神経毒のエンドペプチダーゼ部分の細胞質への転位置および神経毒基質の酵素的修飾を包含する。より詳しくは、「神経毒」という用語は、ニューロンに侵入し、神経伝達物質放出を阻害する、クロストリジウム属の細菌によって産生される任意のポリペプチド(クロストリジウム神経毒)および組換え技術または化学技術によって生成されたこのようなポリペプチドを包含する。好ましくは、クロストリジウム神経毒は、ボツリヌス神経毒(BoNT)である。
【0198】
これまでに少なくとも7種の抗原性に別個のBoNT血清型、すなわち、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/Gが記載されている(Rossetto, O. et al., “Botulinum neurotoxins: genetic, structural and mechanistic insights.” Nature Reviews Microbiology 12.8 (2014): 535-549)。
【0199】
BoNT血清型A~Gは、特異的中和抗血清による不活性化に基づいて区別でき、このような血清型による分類は、アミノ酸レベルでの配列同一性パーセンテージと相関する。所与の血清型のBoNTタンパク質は、アミノ酸配列同一性パーセンテージに基づいて異なる亜型にさらにわけられる。
【0200】
BoNT/A神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号1(UniProt受託番号P0DPI1)として、または配列番号11(UniProt受託番号P0DPI0)として提供されている。BoNT/B神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号2(UniProt受託番号B1INP5)として提供されている。BoNT/C神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号3(UniProt受託番号P18640)として提供されている。BoNT/D神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号4(UniProt受託番号P19321)として提供されている。BoNT/E神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号5(NCBI参照配列、受託番号WP_003372387)として提供されている。BoNT/F神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号6(UniProt受託番号Q57236)として、または配列番号9(UniProt/UniParc受託番号UPI0001DE3DAC)として提供されている。BoNT/G神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号7(受託番号WP_039635782)として提供されている。BoNT/D-C神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号8(UniProt受託番号C6KZT4)として提供されている。BoNT/X神経毒アミノ酸配列の一例は、配列番号10(UniProt受託番号P0DPK1)として提供されている。
【0201】
本発明のクロストリジウム神経毒は、組換え技術を使用して生成できる。したがって、一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、組換えクロストリジウム神経毒である。
【0202】
一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、1以上の核酸またはアミノ酸突然変異を含むボツリヌス神経毒である。
【0203】
一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、キメラボツリヌス神経毒である。
【0204】
1つの例示的バイオプロセスでは、クロストリジウム神経毒は、組換え大腸菌(E.coli)によって産生される。手短には、所望のクロストリジウム神経毒をコードするDNA構築物を合成し、適したベクター中にクローニングし、次いで、過剰発現のために適した大腸菌株の細胞中に形質転換する。所望のクロストリジウム神経毒の過剰発現のために、大腸菌を上記のような流加発酵バイオプロセスで培養する。クロストリジウム神経毒は、従来技術を使用して大腸菌溶解物から精製できる。このようなバイオプロセスを、さまざまなクロストリジウム神経毒の生成のために使用できる。
【0205】
一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号1~11から選択される1以上であり得る。
【0206】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/A神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号1または11のいずれか1つに対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号1または11のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号1または11のいずれか1つで示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0207】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/B神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号2で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0208】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/C神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号3に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号3に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号3で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0209】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/D神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号4に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号4に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号4で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0210】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/E神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号5に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号5に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号5で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0211】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/F神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号6または9のいずれか1つに対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号6または9のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号6または9のいずれか1つで示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0212】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/G神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号7に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号7に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号7で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0213】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/D-C神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号8に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号8で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0214】
本発明のクロストリジウム神経毒は、BoNT/X神経毒であり得る。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号10に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。一実施形態では、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号10に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。好ましくは、本発明のクロストリジウム神経毒は、配列番号10で示されたポリペプチド配列を含み得る(またはより好ましくは、からなり得る)。
【0215】
配列相同性
【0216】
限定するものではないが、グローバル法、ローカル法およびハイブリッド法、例えば、セグメントアプローチ法などを含む種々の配列アラインメント法のいずれも、同一性パーセントを決定するために使用できる。同一性パーセントを決定するためのプロトコールは、当業者の範囲内の常法である。グローバル法は、分子の開始から最後まで配列をアラインし、個々の残基対のスコアを合計することによって、およびギャップペナルティーを課すことによって最良アラインメントを決定する。限定されない方法として以下が挙げられる、例えば、CLUSTAL W、例えば、Julie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680 (1994)を参照されたい、および反復改良、例えば、Osamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. MoI. Biol. 823-838 (1996)を参照されたい。ローカル法は、インプット配列のすべてによって共有される1以上の保存されたモチーフを同定することによって配列をアラインする。限定されない方法として以下が挙げられる、例えば、Match-box、例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501 -509 (1992)を参照されたい、Gibbsサンプリング、例えば、C. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262(5131 ) Science 208-214 (1993)を参照されたい、Align-M、例えば、Ivo Van WaIIe et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20(9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)を参照されたい。
【0217】
したがって、配列同一性パーセントは、従来法によって決定される。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986およびHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. ΜSA 89:10915-19, 1992を参照されたい。手短には、2つのアミノ酸配列が、10のギャップ開始ペナルティー、1のギャップ伸長ペナルティーおよび以下に示されるようなHenikoff and Henikoff(同書)の「blosum 62」スコアリングマトリックス(アミノ酸は標準一文字コードによって示される)を使用してアラインメントスコアを最適化するようにアラインされる。
【0218】
2つ以上の核酸またはアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列によって共有される同一位置数の関数である。したがって、同一性%は、ヌクレオチド/アミノ酸の総数によって除され、100が乗じられた同一ヌクレオチド/アミノ酸数として算出できる。配列同一性%の算出はまた、2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さも考慮する場合がある。2つ以上の配列の間の配列比較および同一性パーセントの決定は、当業者が精通するであろう、特定の数学的アルゴリズム、例えば、BLASTを使用して実施できる。
【0219】
配列同一性を決定するためのアラインメントスコア
A R N D C Q E G H I L K M F P S T W Y V
A 4
R -1 5
N -2 0 6
D -2 -2 1 6
C 0 -3 -3 -3 9
Q -1 1 0 0 -3 5
E -1 0 0 2 -4 2 5
G 0 -2 0 -1 -3 -2 -2 6
H -2 0 1 -1 -3 0 0 -2 8
I -1 -3 -3 -3 -1 -3 -3 -4 -3 4
L -1 -2 -3 -4 -1 -2 -3 -4 -3 2 4
K -1 2 0 -1 -3 1 1 -2 -1 -3 -2 5
M -1 -1 -2 -3 -1 0 -2 -3 -2 1 2 -1 5
F -2 -3 -3 -3 -2 -3 -3 -3 -1 0 0 -3 0 6
P -1 -2 -2 -1 -3 -1 -1 -2 -2 -3 -3 -1 -2 -4 7
S 1 -1 1 0 -1 0 0 0 -1 -2 -2 0 -1 -2 -1 4
T 0 -1 0 -1 -1 -1 -1 -2 -2 -1 -1 -1 -1 -2 -1 1 5
W -3 -3 -4 -4 -2 -2 -3 -2 -2 -3 -2 -3 -1 1 -4 -3 -2 11
Y -2 -2 -2 -3 -2 -1 -2 -3 2 -1 -1 -2 -1 3 -3 -2 -2 2 7
V 0 -3 -3 -3 -1 -2 -2 -3 -3 3 1 -2 1 -1 -2 -2 0 -3 -1 4
【0220】
次いで、同一性パーセントは、以下として算出される:
[同定されたマッチの総数×100]/[長い方の配列の長さおよび2つの配列をアラインするために長い方の配列中に導入されたギャップの数]
【0221】
実質的に相同なポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失または付加を有すると特性決定される。これらの変化は、好ましくは、小さい性質のもの、すなわち、保存的アミノ酸置換(以下を参照されたい)およびポリペプチドのフォールディングまたは活性に著しく影響を及ぼさない他の置換、通常1個~約30個のアミノ酸の小さい欠失ならびに小さいアミノ-またはカルボキシル-末端伸長、例えば、アミノ-末端メチオニン残基、最大約20~25残基の小さいリンカーペプチドまたは親和性タグである。
【0222】
保存的アミノ酸置換
塩基性: アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性: グルタミン酸
アスパラギン酸
極性: グルタミン
アスパラギン
疎水性: ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族: フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小さい: グリシン
アラニン
セリン
トレオニン
メチオニン
【0223】
20個の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリンおよびα-メチルセリン)を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換できる。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸および非天然アミノ酸を、ポリペプチドアミノ酸残基と置換できる。本発明のポリペプチドはまた、天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る。
【0224】
天然に存在しないアミノ酸として、限定するものではないが、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチル-トレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、t-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニンおよび4-フルオロフェニルアラニンが挙げられる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質中に組み込むためのいくつかの方法が、当技術分野で公知である。例えば、ナンセンス突然変異が、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを使用して抑制されるin vitro系を使用できる。アミノ酸を合成し、tRNAをアミノアシル化する方法は、当技術分野で公知である。ナンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写および翻訳は、大腸菌S30抽出物および市販の酵素および他の試薬を含む無細胞系において実施される。タンパク質は、クロマトグラフィーによって精製される。例えば、Robertson et al., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991; Ellman et al., Methods Enzymol. 202:301, 1991; Chung et al., Science 259:806-9, 1993;およびChung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10145-9, 1993)を参照されたい。第2の方法では、翻訳は、突然変異されたmRNAおよび化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションによってアフリカツメガエル卵母細胞において実施される(Turcatti et al., J. Biol. Chem. 271:19991-8, 1996)。第3の方法内では、大腸菌細胞が、置き換えられるべき天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の不在下および所望の天然に存在しないアミノ酸(複数可)(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニンまたは4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。天然に存在しないアミノ酸は、その天然の対応物の代わりにポリペプチド中に組み込まれる。Koide et al., Biochem. 33:7470-6, 1994を参照されたい。天然に存在するアミノ酸残基を、in vitro化学修飾によって天然に存在しない種に変換できる。置換の範囲をさらに拡大するために、化学修飾が部位特異的突然変異誘発と組み合わされることもある(Wynn and Richards, Protein Sci. 2:395-403, 1993)。
【0225】
限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸および非天然アミノ酸を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換できる。
【0226】
本発明のポリペプチド中の必須アミノ酸は、当技術分野で公知の手順、例えば、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発に従って同定できる(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-5, 1989)。生物学的相互作用の部位もまた、推定接触部位アミノ酸の突然変異と併せて、核磁気共鳴、結晶学、電子回折または光親和性標識のような技術によって決定されるような構造の物理的分析によって決定できる。例えば、de Vos et al., Science 255:306-12, 1992; Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899-904, 1992; Wlodaver et al., FEBS Lett. 309:59-64, 1992を参照されたい。必須アミノ酸の同一性もまた、本発明のポリペプチドの関連成分(例えば、転位置またはプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推論できる。
【0227】
突然変異誘発およびスクリーニングの公知の方法、例えば、Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53-7, 1988)またはBowie and Sauer (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)によって開示されるものを使用して、複数のアミノ酸置換を行い、試験できる。手短には、これらの著者は、ポリペプチド中の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次いで、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置で許容可能な置換の範囲を決定する方法を開示している。使用できる他の方法として、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30:10832-7, 1991; Ladner et al.、US5,223,409号;Huse, WIPO公開WO92/06204)および領域によって指示される突然変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986; Ner et al., DNA 7:127, 1988)が挙げられる。
【0228】
突然変異誘発およびスクリーニングの公知の方法、例えば、Reidhaar-Olson and Sauer (Science 241:53-7, 1988)またはBowie and Sauer (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)によって開示されるものを使用して、複数のアミノ酸置換を行い、試験できる。手短には、これらの著者は、ポリペプチド中の2つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次いで、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置で許容可能な置換の範囲を決定する方法を開示している。使用できる他の方法として、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al., Biochem. 30:10832-7, 1991; Ladner et al.、US5,223,409号;Huse, WIPO公開WO92/06204)および領域によって指示される突然変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986; Ner et al., DNA 7:127, 1988)が挙げられる。
【0229】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 20 ED., John Wiley and Sons, New York (1994)およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、当業者に、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を提供する。
【0230】
本開示は、本明細書において開示される例示的方法および材料によって限定されず、本明細書において記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施形態の実施または試験において使用できる。数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。特に断りのない限り、それぞれ、任意の核酸配列は、5’から3’配向で左から右に書かれ、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ配向で左から右に書かれる。
【0231】
アミノ酸は、アミノ酸の名称、三文字略語または一文字略語を使用して本明細書において言及される。「タンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを含む。本明細書において使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語および/または「タンパク質」という用語と同義である。一部の例では、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。一部の例では、「アミノ酸配列」という用語は、「酵素」という用語と同義である。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書において同義的に使用される。本開示および特許請求の範囲では、アミノ酸残基の従来の一文字および三文字コードを使用できる。生化学的命名法に関するIUPACIUB合同委員会(JCBN)に準拠して定義されたアミノ酸の3文字コード。また、ポリペプチドは、遺伝暗号の縮重のために1つより多いヌクレオチド配列によってコードされる場合があるということも理解される。
【0232】
(実施例)
図12は、従来のカスケード型DO制御により制御される発酵プロセスの間の、攪拌速度と測定された溶存酸素とを示す。
図13は、
図5~11に示される上述したような制御方法により制御される、同じバイオプロセスの間の、攪拌速度と測定された溶存酸素とを示す。特に、
図13に示される例では、DOに応じた攪拌システムかき混ぜ速度(N)を、上記の式(2a)を使用して制御し、酸素消費速度を、上記の式(4)を使用し攪拌速度(N)と測定されたDOとの間の比率を使用して推定する。
【0233】
図13に示された例では、設定値からの変動や偏差がより小さい、相対的に安定的なDO制御が提供される。この例では、DO設定値はバッチ段階および産生段階で30%であり、測定されたDO値は約25%~35%の範囲内であり、したがってDO条件は30%+/-5%で維持されている。対照的に、従来のコントローラを用い、DO設定値を同じく30%に設定した、
図12に示された例では、測定されたDO設定値は約15%~45%というさらに大きい範囲内であり、DO条件は30%+/-15%で維持されている。従来のコントローラを用いた、
図12に示された例では、段階移行へ至るまでは、攪拌速度が増加する一方、測定されたDOは設定値レベルに維持されず、徐々にDO設定値を下回るようになることも観察される。対照的に、上述したようなコントローラを用いた、
図13に示された例では、測定されたDOは、バッチ段階が進むにつれて、最大攪拌に至るまでに、設定値レベルにより近いレベルに維持され、これ以上攪拌速度が上がらなくなると、測定されたDOが一貫して下がり始め、設定値レベルを下回るようになる。
【0234】
また、上述した制御方法を用いると、バッチ段階から産生段階への移行において、プロセスの円滑な制御が提供される。移行領域のプロットされた数値を抽出したものを、下記表4および5に示す。
【0235】
【0236】
【0237】
本開示の制御方法を用いて、炭素源の枯渇の始まりが検出され、それとともに段階間の移行の最適時が相対的に早く、溶存酸素が増加し始めた数分のうちに、検出される。
【0238】
図14a~22は、異なる制御方法によるいくつかの例からのデータを示す。示された例のすべてにおいて、酸素供給濃度は全体を通じて一定であり、気体供給速度と攪拌速度は変化している。
【0239】
図14aおよび14bは、従来のカスケード型DO制御により制御される発酵プロセスの間の、攪拌速度、測定された溶存酸素(DO)、気体速度(ガッシング、G)、および測定された温度を示す。実証のため、
図14bは、従来のカスケード型DO制御(推定された酸素消費ではなくDOスパイクが段階移行のために使用されていた)にはなかった、推定された(酸素)消費(速度)(「O/DO」;上記の式(4)を使用し攪拌速度(N)と測定されたDOとの間の比率を使用して決定された)をさらに示す。
【0240】
図15aおよび15b、ならびに16aおよび16bは、
図5~11に示される上述したような制御方法により制御される、同じバイオプロセスの間の、攪拌速度、測定された溶存酸素、気体速度、測定された温度、および推定された酸素消費(「O/DO」;上記の式(4)を使用し攪拌速度(N)と測定されたDOとの間の比率を使用して決定された)を示す。特に、
図15aおよび15bに示された例では、DOに応じた攪拌システムかき混ぜ速度(N)を、槽スケーリングファクタを含まない上記の式(2a)を使用して制御し(前記第一の制御方法)、
図16aおよび16bに示された例では、DOに応じた攪拌システムかき混ぜ速度(N)を、槽スケーリングファクタを含む上記の式(2b)を使用して制御する(前記第二の制御方法)。
【0241】
図17は、以下の方法で制御された、同じ発酵プロセスの間の、測定された溶存酸素を示す:
図14aおよび14bの従来のカスケード型DO制御;
図15aおよび15bの第一の制御方法;および
図16aおよび16bの制御方法(換言すれば、
図17は、
図14a、14b、15a、15b,および16a、16bからの、測定された溶存酸素プロットを重ねたものを示す)。表6は、
図14a、14bのカスケードコントローラ、
図15a、15bの第一の制御方法、
図16a、16bの第二の制御方法についての、測定された溶存酸素(DO)数値の平均値および標準偏りを示す。表6において、平均値および標準偏りの演算処理は、バッチ段階、バッチ段階と産生段階の間の遷移期間、および産生段階のあいだで分割されている。
【0242】
図14a~17は、
図12および13に類似した傾向を示す。
図15a、15b、16a、16bに示された例(特に
図16a、16bに示された例)では、変動や偏差が小さい、相対的に安定的なDO制御が達成されている。表6に示すように、バッチ段階と産生段階との両方で、
図5~11に示され、かつ上述したような制御方法(前記第一および第二の制御方法)の結果、30%という設定値に近い平均DO値となり、また、従来のカスケード駆動コントローラよりも小さい標準偏差となった。前記第二の制御方法は、たとえば、産生段階で平均値29.860%、標準偏差1.256%を有する、30%という設定値に近い安定的なDO値を維持する。さらに、前記第一および第二の制御方法は、従来のカスケード駆動コントローラよりも、移行期間中のDO値の変動を小さくすることができる(移行期間中の、かなり小さい標準偏差によって示されるとおりである)。
【0243】
【0244】
図14b、15b、および16bを比較すると、カスケード駆動コントローラと対照して、第一または第二の制御方法が使用された時にDOスパイクがかなり目立たない(顕著ではない)ことがわかる。したがって、従来のDOスパイク検出は、第一および第二の制御方法での段階移行((の始まり)の検出)には実用的ではない(および/または、正確な方法ではない)(上記に示したように、この結果、DO制御の改善となる)。これに対して、推定された酸素消費における顕著なスパイクを、
図14b、15b、および16bのすべてにおいて(すなわち、三つの制御方法すべてについて)見ることができる。したがって、推定された消費速度(O/DO)型アプローチは、段階の移行、および/または段階移行の始まりの検出の精度を妥協することなく、改善されたDOコントローラ(制御方法)を使用することを可能にする。従来のDOスパイク検出と対照して、前記O/DO型アプローチは、第一および第二のPD(Potential-Derivative)コントローラを使用する場合に特に有用である。PDコントローラは、DO制御の減衰/先取効果を生じさせかねないので、通常のスパイク検出(たとえば、閾値を上回るDO)のPDコントローラを使用することは、許容できない遅延を起こしかねない。換言すれば、段階の移行のために、別の、推定された酸素消費(たとえばO/DO)型アプローチを使用するので、(円滑な制御ができる)PDコントローラを使用する、という場合に限って実行可能であろう。
【0245】
表7は、攪拌速度、測定された溶存酸素、および推定された酸素消費(上記の式(4)を使用し攪拌速度(N)と測定されたDOとの間の比率を使用して決定された)を示す、
図14aおよび14b(従来のカスケード駆動コントローラ)から抽出した値を示す。
図14aおよび14bの従来のカスケードコントローラは、DOをモニターし、DOレベルが所定の数値(表7によると、この場合60%)を超えたときに移行することにより、バッチ段階と産生段階との間を移行する。この標準的な方法を使用して、従来のカスケードコントローラは、10.548hの時点で移行を開始する。しかしながら、前記の時点よりも前に炭素源枯渇がすでに始まっており、これは上述したように、推定された酸素消費(O/DO)をモニターすることにより検出できる。つまり、この方法は、10.423hの時点での(すなわち、DOスパイク型の方法の7分30秒前に)移行を可能にする。前述のように、実際に段階を移行させることと最適な段階移行とのあいだに遅延があり、その間、バイオリアクタを不適当/最適以下の制御(たとえば、不正確な処理条件設定値の使用)で制御してしまう結果となりうる。上述した推定された酸素消費に基づく方法を使用して移行を検出することは、炭素源枯渇の始まりのより正確な検出と、バイオリアクタのより効果的な制御を可能にし得る。
【0246】
【0247】
図15a、16a、18、および19に示すように、バッチ段階の終了にむけて、攪拌速度以前に気体速度がその最大許容値に達する。気体速度が最大値に達すると、攪拌速度はその最大許容値の約80%である。したがって、攪拌速度範囲(最大値の)80%~100%では、気体供給が最大に維持され、すなわち最大値の100%で維持される。このことにより、バッチ段階の後期で、パラメータが一つだけ変化する(すなわち、攪拌速度)ので、DOをより正確に制御することが可能になり、ガッシングと攪拌(および対応する相乗効果)の間の相互作用が解消され、オーバーシュートを低減しうる。また、攪拌速度の前に気体速度が「頭打ち」になることにより、エアレーションがあまり変化しないため、あふれ出る確率を低減しうる。
【0248】
図14a、14b、15a、15b、16a、および16bは、0.3Lの作業容積を有する槽(Eppendorf(登録商標)DASbox(登録商標))における発酵プロセスについて測定される処理条件を示す。
図17および18は、
図16aの第二の制御方法を使用して制御される、1Lの作業容積を有する槽(Eppendorf(登録商標)BioFlo(登録商標)1L)(
図18)、および3Lの作業容積を有する槽(Eppendorf(登録商標)BioFlo(登録商標)3L)(
図19)における同じ発酵プロセスについて、同じ処理条件を示す。
図20は、以下の槽における、同じ発酵プロセスの間の、測定された溶存酸素を示す:
図16aの、0.3Lの作業容積を有する槽;
図18の、1Lの作業容積を有する槽;および
図19の、3Lの作業容積を有する槽(換言すれば、
図20は、
図16a、18、および19からの、測定された溶存酸素プロットを重ねたものを示す)。このように、
図18~20は、上記の制御方法が、幅広い槽の大きさにわたってスケーリング可能であることを示す。
【0249】
図21は、
図14a(「カスケード制御(Cascaded control)」)および
図16a(「漸進的T制御(Gradual T control)」)から抽出された、発酵プロセスの間の測定された温度を示す。カスケードコントローラについては、バッチ段階および産生段階の設定値の間の温度移行が、変化の無い期間と高い温度勾配の期間とが混ざり、顕著にガタガタしている。上述したように、かかる高勾配は、槽と冷却しシステムとの界面で冷点を作り出すことになり、細胞損傷/細胞死を招きかねない。これに対して、
図16aのコントローラは、定常な温度勾配(カスケードコントローラについての高勾配よりもかなり低い)を達成し、したがってこの潜在的な問題を克服している。
【0250】
図22は、
図16aおよび16bについての、同じ発酵プロセスおよびDO制御方法において、測定されたpHを示す。pHは、
図5~11に示された、上述したような制御方法により制御される。pHの設定値は、6.67に設定された。
図22に示されるように、pHコントローラは、円滑で応答性の良い制御を達成する。発酵プロセス全体にわたって、平均pHは6.673(標準偏差は0.051)である。産生段階(期間12:00:00~36:00:00)の間、平均pHが6.669(標準偏差が0.020)という、より精密な制御が達成された。
【0251】
バイオプロセスの例では、タンパク質が組み換え大腸菌により産生される。手短に言えば、望ましいタンパク質をコードするDNAコンストラクトが合成され、好適なベクターにクローニングされ、高発現のために好適な大腸菌細胞株に形質転換される。前記大腸菌は、望ましい組み換えタンパク質の高発現のために、上述したようなフェッドバッチ発酵バイオプロセスで培養される。前記組み換えタンパク質は、従来の技術を使用して、大腸菌ライセートから精製することができる。かかるバイオプロセスは、上述したようなクロストリジウム神経毒など、多種多様な生体分子の産生に使用できる。本開示の制御方法は、組み換え大腸菌によるタンパク質発現に基づくバイオプロセスや、クロストリジウム神経毒を産生するためのバイオプロセスに限定されず、多種多様なバイオプロセスにおいて、また、多種多様な産物を産生するために、使用することができる。
【0252】
(その他の実施例および実施形態)
図1~13を参照して説明された実施形態および実施例の様々な組み合わせが、変更なく単独で使用されてもよく、または互いに組み合わせて使用されてもよいことは、当業者は理解するであろう。
【0253】
本発明の前記実施例は、発明がどのように実施されるかについての単なる例である。適切な技術と知識を有する者であれば、前記実施例に対する、修正、変形、および変更に想到するであろう。これら修正、変形、および変更は、請求の範囲から逸脱することなく為され得る。
【0254】
特に、バイオプロセスは、細菌、酵母、およびカビなどを含む多種多様な微生物に基づいてもよい。バイオプロセスは、タンパク質発現のためのベクター修飾組み換え微生物を含む、多種多様な産生モデルに基づいてもよい。バイオプロセスは、好気性代謝プロセス含む、多種多様な培地組成および気体供給に基づいてもよい。バイオプロセスは、pH、温度、溶存酸素、および養分速度など、多種多様な培養条件に基づいてもよい。
【0255】
DO制御アルゴリズムなど、制御の特徴のいくつかは、フェッドバッチプロセスではないバイオプロセス、特に、連続培養プロセスやバッチプロセスではないバイオプロセスに、適用することができる。
【0256】
ある変形においては、三つの発酵段階を有するバイオプロセスを実施するよう、制御ストラテジが調整される。三つの発酵段階とは、初期バッチ段階と、それに続く、たとえば養分組成を変更することにより、微生物がある一つの代謝状態から別の代謝状態へ移行する移行段階と、最後の、所望の産物の産生が行われる産生段階である。
【0257】
配列表
【0258】
最初のMetアミノ酸残基または対応する最初のコドンが、以下の配列番号のうちいずれかにおいて示される場合には、前記残基/コドンは任意選択である。
【0259】
配列番号1-BoNT/A1、受託番号P0DPI1、アミノ酸配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【0260】
配列番号2-BoNT/B1、受託番号B1INP5、アミノ酸配列
MPVTINNFNYNDPIDNNNIIMMEPPFARGTGRYYKAFKITDRIWIIPERYTFGYKPEDFNKSSGIFNRDVCEYYDPDYLNTNDKKNIFLQTMIKLFNRIKSKPLGEKLLEMIINGIPYLGDRRVPLEEFNTNIASVTVNKLISNPGEVERKKGIFANLIIFGPGPVLNENETIDIGIQNHFASREGFGGIMQMKFCPEYVSVFNNVQENKGASIFNRRGYFSDPALILMHELIHVLHGLYGIKVDDLPIVPNEKKFFMQSTDAIQAEELYTFGGQDPSIITPSTDKSIYDKVLQNFRGIVDRLNKVLVCISDPNININIYKNKFKDKYKFVEDSEGKYSIDVESFDKLYKSLMFGFTETNIAENYKIKTRASYFSDSLPPVKIKNLLDNEIYTIEEGFNISDKDMEKEYRGQNKAINKQAYEEISKEHLAVYKIQMCKSVKAPGICIDVDNEDLFFIADKNSFSDDLSKNERIEYNTQSNYIENDFPINELILDTDLISKIELPSENTESLTDFNVDVPVYEKQPAIKKIFTDENTIFQYLYSQTFPLDIRDISLTSSFDDALLFSNKVYSFFSMDYIKTANKVVEAGLFAGWVKQIVNDFVIEANKSNTMDKIADISLIVPYIGLALNVGNETAKGNFENAFEIAGASILLEFIPELLIPVVGAFLLESYIDNKNKIIKTIDNALTKRNEKWSDMYGLIVAQWLSTVNTQFYTIKEGMYKALNYQAQALEEIIKYRYNIYSEKEKSNINIDFNDINSKLNEGINQAIDNINNFINGCSVSYLMKKMIPLAVEKLLDFDNTLKKNLLNYIDENKLYLIGSAEYEKSKVNKYLKTIMPFDLSIYTNDTILIEMFNKYNSEILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFKKEEEKLFLAPISDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
【0261】
配列番号3-BoNT/C1、受託番号P18640、アミノ酸配列
MPITINNFNYSDPVDNKNILYLDTHLNTLANEPEKAFRITGNIWVIPDRFSRNSNPNLNKPPRVTSPKSGYYDPNYLSTDSDKDPFLKEIIKLFKRINSREIGEELIYRLSTDIPFPGNNNTPINTFDFDVDFNSVDVKTRQGNNWVKTGSINPSVIITGPRENIIDPETSTFKLTNNTFAAQEGFGALSIISISPRFMLTYSNATNDVGEGRFSKSEFCMDPILILMHELNHAMHNLYGIAIPNDQTISSVTSNIFYSQYNVKLEYAEIYAFGGPTIDLIPKSARKYFEEKALDYYRSIAKRLNSITTANPSSFNKYIGEYKQKLIRKYRFVVESSGEVTVNRNKFVELYNELTQIFTEFNYAKIYNVQNRKIYLSNVYTPVTANILDDNVYDIQNGFNIPKSNLNVLFMGQNLSRNPALRKVNPENMLYLFTKFCHKAIDGRSLYNKTLDCRELLVKNTDLPFIGDISDVKTDIFLRKDINEETEVIYYPDNVSVDQVILSKNTSEHGQLDLLYPSIDSESEILPGENQVFYDNRTQNVDYLNSYYYLESQKLSDNVEDFTFTRSIEEALDNSAKVYTYFPTLANKVNAGVQGGLFLMWANDVVEDFTTNILRKDTLDKISDVSAIIPYIGPALNISNSVRRGNFTEAFAVTGVTILLEAFPEFTIPALGAFVIYSKVQERNEIIKTIDNCLEQRIKRWKDSYEWMMGTWLSRIITQFNNISYQMYDSLNYQAGAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNEFDRNTKAKLINLIDSHNIILVGEVDKLKAKVNNSFQNTIPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNNINDSKILSLQNRKNTLVDTSGYNAEVSEEGDVQLNPIFPFDFKLGSSGEDRGKVIVTQNENIVYNSMYESFSISFWIRINKWVSNLPGYTIIDSVKNNSGWSIGIISNFLVFTLKQNEDSEQSINFSYDISNNAPGYNKWFFVTVTNNMMGNMKIYINGKLIDTIKVKELTGINFSKTITFEINKIPDTGLITSDSDNINMWIRDFYIFAKELDGKDINILFNSLQYTNVVKDYWGNDLRYNKEYYMVNIDYLNRYMYANSRQIVFNTRRNNNDFNEGYKIIIKRIRGNTNDTRVRGGDILYFDMTINNKAYNLFMKNETMYADNHSTEDIYAIGLREQTKDINDNIIFQIQPMNNTYYYASQIFKSNFNGENISGICSIGTYRFRLGGDWYRHNYLVPTVKQGNYASLLESTSTHWGFVPVSE
【0262】
配列番号4-BoNT/D、受託番号P19321、アミノ酸配列
MTWPVKDFNYSDPVNDNDILYLRIPQNKLITTPVKAFMITQNIWVIPERFSSDTNPSLSKPPRPTSKYQSYYDPSYLSTDEQKDTFLKGIIKLFKRINERDIGKKLINYLVVGSPFMGDSSTPEDTFDFTRHTTNIAVEKFENGSWKVTNIITPSVLIFGPLPNILDYTASLTLQGQQSNPSFEGFGTLSILKVAPEFLLTFSDVTSNQSSAVLGKSIFCMDPVIALMHELTHSLHQLYGINIPSDKRIRPQVSEGFFSQDGPNVQFEELYTFGGLDVEIIPQIERSQLREKALGHYKDIAKRLNNINKTIPSSWISNIDKYKKIFSEKYNFDKDNTGNFVVNIDKFNSLYSDLTNVMSEVVYSSQYNVKNRTHYFSRHYLPVFANILDDNIYTIRDGFNLTNKGFNIENSGQNIERNPALQKLSSESVVDLFTKVCLRLTKNSRDDSTCIKVKNNRLPYVADKDSISQEIFENKIITDETNVQNYSDKFSLDESILDGQVPINPEIVDPLLPNVNMEPLNLPGEEIVFYDDITKYVDYLNSYYYLESQKLSNNVENITLTTSVEEALGYSNKIYTFLPSLAEKVNKGVQAGLFLNWANEVVEDFTTNIMKKDTLDKISDVSVIIPYIGPALNIGNSALRGNFNQAFATAGVAFLLEGFPEFTIPALGVFTFYSSIQEREKIIKTIENCLEQRVKRWKDSYQWMVSNWLSRITTQFNHINYQMYDSLSYQADAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNKFDLRTKTELINLIDSHNIILVGEVDRLKAKVNESFENTMPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNSINDSKILSLQNKKNALVDTSGYNAEVRVGDNVQLNTIYTNDFKLSSSGDKIIVNLNNNILYSAIYENSSVSFWIKISKDLTNSHNEYTIINSIEQNSGWKLCIRNGNIEWILQDVNRKYKSLIFDYSESLSHTGYTNKWFFVTITNNIMGYMKLYINGELKQSQKIEDLDEVKLDKTIVFGIDENIDENQMLWIRDFNIFSKELSNEDINIVYEGQILRNVIKDYWGNPLKFDTEYYIINDNYIDRYIAPESNVLVLVQYPDRSKLYTGNPITIKSVSDKNPYSRILNGDNIILHMLYNSRKYMIIRDTDTIYATQGGECSQNCVYALKLQSNLGNYGIGIFSIKNIVSKNKYCSQIFSSFRENTMLLADIYKPWRFSFKNAYTPVAVTNYETKLLSTSSFWKFISRDPGWVE
【0263】
配列番号5-BoNT/E1、受託番号WP_003372387、アミノ酸配列
MPKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPERNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGILLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFETNSSNISLRNNYMPSNHGFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNSMNEFIQDPALTLMHELIHSLHGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLLADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSFTEFDLATKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLNPRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIRKSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINTPKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSDIEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKPVQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDALELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVYSFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDIKQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKLINEVKINKLREYDENVKTYLLNYIIQHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMRYKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKNFSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTLQDNAGINQKLAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNILFKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYLLNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKNDQVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNNCTMNFKNNNGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
【0264】
配列番号6-BoNT/F1、受託番号Q57236、アミノ酸配列
MPVVINSFNYNDPVNDDTILYMQIPYEEKSKKYYKAFEIMRNVWIIPERNTIGTDPSDFDPPASLENGSSAYYDPNYLTTDAEKDRYLKTTIKLFKRINSNPAGEVLLQEISYAKPYLGNEHTPINEFHPVTRTTSVNIKSSTNVKSSIILNLLVLGAGPDIFENSSYPVRKLMDSGGVYDPSNDGFGSINIVTFSPEYEYTFNDISGGYNSSTESFIADPAISLAHELIHALHGLYGARGVTYKETIKVKQAPLMIAEKPIRLEEFLTFGGQDLNIITSAMKEKIYNNLLANYEKIATRLSRVNSAPPEYDINEYKDYFQWKYGLDKNADGSYTVNENKFNEIYKKLYSFTEIDLANKFKVKCRNTYFIKYGFLKVPNLLDDDIYTVSEGFNIGNLAVNNRGQNIKLNPKIIDSIPDKGLVEKIVKFCKSVIPRKGTKAPPRLCIRVNNRELFFVASESSYNENDINTPKEIDDTTNLNNNYRNNLDEVILDYNSETIPQISNQTLNTLVQDDSYVPRYDSNGTSEIEEHNVVDLNVFFYLHAQKVPEGETNISLTSSIDTALSEESQVYTFFSSEFINTINKPVHAALFISWINQVIRDFTTEATQKSTFDKIADISLVVPYVGLALNIGNEVQKENFKEAFELLGAGILLEFVPELLIPTILVFTIKSFIGSSENKNKIIKAINNSLMERETKWKEIYSWIVSNWLTRINTQFNKRKEQMYQALQNQVDAIKTVIEYKYNNYTSDERNRLESEYNINNIREELNKKVSLAMENIERFITESSIFYLMKLINEAKVSKLREYDEGVKEYLLDYISEHRSILGNSVQELNDLVTSTLNNSIPFELSSYTNDKILILYFNKLYKKIKDNSILDMRYENNKFIDISGYGSNISINGDVYIYSTNRNQFGIYSSKPSEVNIAQNNDIIYNGRYQNFSISFWVRIPKYFNKVNLNNEYTIIDCIRNNNSGWKISLNYNKIIWTLQDTAGNNQKLVFNYTQMISISDYINKWIFVTITNNRLGNSRIYINGNLIDEKSISNLGDIHVSDNILFKIVGCNDTRYVGIRYFKVFDTELGKTEIETLYSDEPDPSILKDFWGNYLLYNKRYYLLNLLRTDKSITQNSNFLNINQQRGVYQKPNIFSNTRLYTGVEVIIRKNGSTDISNTDNFVRKNDLAYINVVDRDVEYRLYADISIAKPEKIIKLIRTSNSNNSLGQIIVMDSIGNNCTMNFQNNNGGNIGLLGFHSNNLVASSWYYNNIRKNTSSNGCFWSFISKEHGWQEN
【0265】
配列番号7-BoNT/G、受託番号WP_039635782、アミノ酸配列
MPVNIKNFNYNDPINNDDIIMMEPFNDPGPGTYYKAFRIIDRIWIVPERFTYGFQPDQFNASTGVFSKDVYEYYDPTYLKTDAEKDKFLKTMIKLFNRINSKPSGQRLLDMIVDAIPYLGNASTPPDKFAANVANVSINKKIIQPGAEDQIKGLMTNLIIFGPGPVLSDNFTDSMIMNGHSPISEGFGARMMIRFCPSCLNVFNNVQENKDTSIFSRRAYFADPALTLMHELIHVLHGLYGIKISNLPITPNTKEFFMQHSDPVQAEELYTFGGHDPSVISPSTDMNIYNKALQNFQDIANRLNIVSSAQGSGIDISLYKQIYKNKYDFVEDPNGKYSVDKDKFDKLYKALMFGFTETNLAGEYGIKTRYSYFSEYLPPIKTEKLLDNTIYTQNEGFNIASKNLKTEFNGQNKAVNKEAYEEISLEHLVIYRIAMCKPVMYKNTGKSEQCIIVNNEDLFFIANKDSFSKDLAKAETIAYNTQNNTIENNFSIDQLILDNDLSSGIDLPNENTEPFTNFDDIDIPVYIKQSALKKIFVDGDSLFEYLHAQTFPSNIENLQLTNSLNDALRNNNKVYTFFSTNLVEKANTVVGASLFVNWVKGVIDDFTSESTQKSTIDKVSDVSIIIPYIGPALNVGNETAKENFKNAFEIGGAAILMEFIPELIVPIVGFFTLESYVGNKGHIIMTISNALKKRDQKWTDMYGLIVSQWLSTVNTQFYTIKERMYNALNNQSQAIEKIIEDQYNRYSEEDKMNINIDFNDIDFKLNQSINLAINNIDDFINQCSISYLMNRMIPLAVKKLKDFDDNLKRDLLEYIDTNELYLLDEVNILKSKVNRHLKDSIPFDLSLYTKDTILIQVFNNYISNISSNAILSLSYRGGRLIDSSGYGATMNVGSDVIFNDIGNGQFKLNNSENSNITAHQSKFVVYDSMFDNFSINFWVRTPKYNNNDIQTYLQNEYTIISCIKNDSGWKVSIKGNRIIWTLIDVNAKSKSIFFEYSIKDNISDYINKWFSITITNDRLGNANIYINGSLKKSEKILNLDRINSSNDIDFKLINCTDTTKFVWIKDFNIFGRELNATEVSSLYWIQSSTNTLKDFWGNPLRYDTQYYLFNQGMQNIYIKYFSKASMGETAPRTNFNNAAINYQNLYLGLRFIIKKASNSRNINNDNIVREGDYIYLNIDNISDESYRVYVLVNSKEIQTQLFLAPINDDPTFYDVLQIKKYYEKTTYNCQILCEKDTKTFGLFGIGKFVKDYGYVWDTYDNYFCISQWYLRRISENINKLRLGCNWQFIPVDEGWTE
【0266】
配列番号8-BoNT/D-C、受託番号C6KZT4、アミノ酸配列
MTWPVKDFNYSDPVNDNDILYLRIPQNKLITTPVKAFMITQNIWVIPERFSSDTNPSLSKPPRPTSKYQSYYDPSYLSTDEQKDTFLKGIIKLFKRINERDIGKKLINYLVVGSPFMGDSSTPEDTFDFTRHTTNIAVEKFENGSWKVTNIITPSVLIFGPLPNILDYTASLTLQGQQSNPSFEGFGTLSILKVAPEFLLTFSDVTSNQSSAVLGKSIFCMDPVIALMHELTHSLHQLYGINIPSDKRIRPQVSEGFFSQDGPNVQFEELYTFGGSDVEIIPQIERLQLREKALGHYKDIAKRLNNINKTIPSSWSSNIDKYKKIFSEKYNFDKDNTGNFVVNIDKFNSLYSDLTNVMSEVVYSSQYNVKNRTHYFSKHYLPVFANILDDNIYTIINGFNLTTKGFNIENSGQNIERNPALQKLSSESVVDLFTKVCLRLTRNSRDDSTCIQVKNNTLPYVADKDSISQEIFESQIITDETNVENYSDNFSLDESILDAKVPTNPEAVDPLLPNVNMEPLNVPGEEEVFYDDITKDVDYLNSYYYLEAQKLSNNVENITLTTSVEEALGYSNKIYTFLPSLAEKVNKGVQAGLFLNWANEVVEDFTTNIMKKDTLDKISDVSAIIPYIGPALNIGNSALRGNFKQAFATAGVAFLLEGFPEFTIPALGVFTFYSSIQEREKIIKTIENCLEQRVKRWKDSYQWMVSNWLSRITTQFNHISYQMYDSLSYQADAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNKFDLKTKTELINLIDSHNIILVGEVDRLKAKVNESFENTIPFNIFSYTNNSLLKDMINEYFNSINDSKILSLQNKKNTLMDTSGYNAEVRVEGNVQLNPIFPFDFKLGSSGDDRGKVIVTQNENIVYNAMYESFSISFWIRINKWVSNLPGYTIIDSVKNNSGWSIGIISNFLVFTLKQNENSEQDINFSYDISKNAAGYNKWFFVTITTNMMGNMMIYINGKLIDTIKVKELTGINFSKTITFQMNKIPNTGLITSDSDNINMWIRDFYIFAKELDDKDINILFNSLQYTNVVKDYWGNDLRYDKEYYMINVNYMNRYMSKKGNGIVFNTRKNNNDFNEGYKIIIKRIIGNTNDTRVRGENVLYFNTTIDNKQYSLGMYKPSRNLGTDLVPLGALDQPMDEIRKYGSFIIQPCNTFDYYASQLFLSSNATTNRIGILSIGSYSFKLGDDYWFNHEYLIPVIKIEHYASLLESTSTHWVFVPASE
【0267】
配列番号9-BoNT/F7、受託番号UPI0001DE3DAC、アミノ酸配列
MPVNINNFNYNDPINNTTILYMKMPYYEDSNKYYKAFEIMDNVWIIPERNIIGKKPSDFYPPISLDSGSSAYYDPNYLTTDAEKDRFLKTVIKLFNRINSNPAGQVLLEEIKNGKPYLGNDHTAVNEFCANNRSTSVEIKESKGTTDSMLLNLVILGPGPNILECSTFPVRIFPNNIAYDPSEKGFGSIQLMSFSTEYEYAFNDNTDLFIADPAISLAHELIHVLHGLYGAKGVTNKKVIEVDQGALMAAEKDIKIEEFITFGGQDLNIITNSTNQKIYDNLLSNYTAIASRLSQVNINNSALNTTYYKNFFQWKYGLDQDSNGNYTVNISKFNAIYKKLFSFTECDLAQKFQVKNRSNYLFHFKPFRLLDLLDDNIYSISEGFNIGSLRVNNNGQNINLNSRIVGPIPDNGLVERFVGLCKSIVSKKGTKNSLCIKVNNRDLFFVASESSYNENGINSPKEIDDTTITNNNYKKNLDEVILDYNSDAIPNLSSRLLNTTAQNDSYVPKYDSNGTSEIKEYTVDKLNVFFYLYAQKAPEGESAISLTSSVNTALLDASKVYTFFSSDFINTVNKPVQAALFISWIQQVINDFTTEATQKSTIDKIADISLVVPYVGLALNIGNEVQKGNFKEAIELLGAGILLEFVPELLIPTILVFTIKSFINSDDSKNKIIKAINNALRERELKWKEVYSWIVSNWLTRINTQFNKRKEQMYQALQNQVDGIKKIIEYKYNNYTLDEKNRLKAEYNIYSIKEELNKKVSLAMQNIDRFLTESSISYLMKLINEAKINKLSEYDKRVNQYLLNYILENSSTLGTSSVQELNNLVSNTLNNSIPFELSEYTNDKILISYFNRFYKRIIDSSILNMKYENNRFIDSSGYGSNISINGDIYIYSTNRNQFGIYSSRLSEVNITQNNTIIYNSRYQNFSVSFWVRIPKYNNLKNLNNEYTIINCMRNNNSGWKISLNYNNIIWTLQDTTGNNQKLVFNYTQMIDISDYINKWTFVTITNNRLGHSKLYINGNLTDQKSILNLGNIHVDDNILFKIVGCNDTRYVGIRYFKIFNMELDKTEIETLYHSEPDSTILKDFWGNYLLYNKKYYLLNLLKPNMSVTKNSDILNINRQRGIYSKTNIFSNARLYTGVEVIIRKVGSTDTSNTDNFVRKNDTVYINVVDGNSEYQLYADVSTSAVEKTIKLRRISNSNYNSNQMIIMDSIGDNCTMNFKTNNGNDIGLLGFHLNNLVASSWYYKNIRNNTRNNGCFWSFISKEHGWQE
【0268】
配列番号10-BoNT/X、受託番号P0DPK1、アミノ酸配列
MKLEINKFNYNDPIDGINVITMRPPRHSDKINKGKGPFKAFQVIKNIWIVPERYNFTNNTNDLNIPSEPIMEADAIYNPNYLNTPSEKDEFLQGVIKVLERIKSKPEGEKLLELISSSIPLPLVSNGALTLSDNETIAYQENNNIVSNLQANLVIYGPGPDIANNATYGLYSTPISNGEGTLSEVSFSPFYLKPFDESYGNYRSLVNIVNKFVKREFAPDPASTLMHELVHVTHNLYGISNRNFYYNFDTGKIETSRQQNSLIFEELLTFGGIDSKAISSLIIKKIIETAKNNYTTLISERLNTVTVENDLLKYIKNKIPVQGRLGNFKLDTAEFEKKLNTILFVLNESNLAQRFSILVRKHYLKERPIDPIYVNILDDNSYSTLEGFNISSQGSNDFQGQLLESSYFEKIESNALRAFIKICPRNGLLYNAIYRNSKNYLNNIDLEDKKTTSKTNVSYPCSLLNGCIEVENKDLFLISNKDSLNDINLSEEKIKPETTVFFKDKLPPQDITLSNYDFTEANSIPSISQQNILERNEELYEPIRNSLFEIKTIYVDKLTTFHFLEAQNIDESIDSSKIRVELTDSVDEALSNPNKVYSPFKNMSNTINSIETGITSTYIFYQWLRSIVKDFSDETGKIDVIDKSSDTLAIVPYIGPLLNIGNDIRHGDFVGAIELAGITALLEYVPEFTIPILVGLEVIGGELAREQVEAIVNNALDKRDQKWAEVYNITKAQWWGTIHLQINTRLAHTYKALSRQANAIKMNMEFQLANYKGNIDDKAKIKNAISETEILLNKSVEQAMKNTEKFMIKLSNSYLTKEMIPKVQDNLKNFDLETKKTLDKFIKEKEDILGTNLSSSLRRKVSIRLNKNIAFDINDIPFSEFDDLINQYKNEIEDYEVLNLGAEDGKIKDLSGTTSDINIGSDIELADGRENKAIKIKGSENSTIKIAMNKYLRFSATDNFSISFWIKHPKPTNLLNNGIEYTLVENFNQRGWKISIQDSKLIWYLRDHNNSIKIVTPDYIAFNGWNLITITNNRSKGSIVYVNGSKIEEKDISSIWNTEVDDPIIFRLKNNRDTQAFTLLDQFSIYRKELNQNEVVKLYNYYFNSNYIRDIWGNPLQYNKKYYLQTQDKPGKGLIREYWSSFGYDYVILSDSKTITFPNNIRYGALYNGSKVLIKNSKKLDGLVRNKDFIQLEIDGYNMGISADRFNEDTNYIGTTYGTTHDLTTDFEIIQRQEKYRNYCQLKTPYNIFHKSGLMSTETSKPTFHDYRDWVYSSAWYFQNYENLNLRKHTKTNWYFIPKDEGWDED
【0269】
配列番号11-BoNT/A1、受託番号P0DPI0、アミノ酸配列
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNVGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
【符号の説明】
【0270】
(
図1)
102 槽
104 制御部
106 アクチュエータ(単/複)
108 センサ(単/複)
(
図2)
204 メモリ
206 記憶部
208 着脱可能記な記憶部
212 ユーザインターフェース
222 制御出力(単/複)
224 センサ入力(単/複)
250 制御モジュール
(
図4)
START 開始
402 制御システムを初期化
404 制御される変数(単/複)用の設定値を(場合によっては培養段階に基づき)設定
406 槽アクチュエータ(単/複)用の制御信号(単/複)を決定
408 発酵段階を決定
422
出力 制御出力データ
424
入力 センサ入力データ
Next cycle 次のサイクル
(
図5)
102 槽
104 制御部
106 アクチュエータ(単/複)
326 センサ(単/複)
(
図6a)
START 開始
602 制御される変数の値が設定値からずれているか
604 制御信号(単/複)を決定
606 制御される変数、および/または制御信号値を記憶
Next cycle 次のサイクル
No, next cycle No、次のサイクル
(
図6b)
Gassing dependance of stirring 攪拌に応じたガッシング
Gassing ガッシング
Stirring 攪拌
(
図7)
START 開始
702 段階0 ― 発酵開始
704 段階1 ― 植菌待機
706 段階2 ― バッチ段階
708 段階3 ― バッチ段階から産生段階への移行を検出
710 段階4 ― 養分供給を開始
712 段階5 ― バッチから産生へ温度移行
714 段階6 ― 誘導物質を供給
716 段階7 ― 産生段階
718 段階8 ― 産生段階から発酵終了へ移行
720 段階9 ― 発酵終了
END 終了
(
図8)
802 (段階x)に特異的な制御を実施
804 段階xから段階(x+1)への移行条件(単/複)が満たされているか?
806 段階を段階(x+1)に設定
No, next cycle No、次のサイクル
(
図9)
START 開始
904 酸素消費を推定(Oxygen_consumption)
906 高攪拌の期間の決定(Stirring_time)
908 (Oxygen_consumption > j)および(Stirring_time > t)であるか?
910 (Oxygen_consumption > k)であるか?
No, next cycle No、次のサイクル
912 移行を検出
(
図10)
710 養分供給を開始/チューブをプライミング
1004 養分速度を産生段階設定値に調節
1006 バッチ段階設定値から産生段階へ温度移行
1008 誘導物質を供給
(
図11)
1007 酸素供給を低減
1104 温度を発酵終了設定値へ下げる
1106 養分速度を温度変化に比例して下げる
1108 酸/塩基供給と養分供給を停止
1110 攪拌を低減
(
図12)
Agitation speed 攪拌速度
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition DO spike 移行DOスパイク
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
Dissolved Oxygen 溶存酸素
Dissolved oxygen (% saturation) 溶存酸素(%飽和)
(
図13)
Agitation speed 攪拌速度
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition:estimated oxygen consumption rate 移行:推定された酸素消費速度
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
Dissolved Oxygen 溶存酸素
Dissolved oxygen (% saturation) 溶存酸素(%飽和)
(
図14a)
Dissolved oxygen 溶存酸素
Gas rate 気体速度
Temperature 温度
Agitation speed 攪拌速度
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition DO spike 移行DOスパイク
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
(
図14b)
Dissolved oxygen 溶存酸素
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition: DO spike 移行:DOスパイク
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
Agitation speed 攪拌速度
Estimated consumption rate 推定された消費速度
(
図15a、16a)
Agitation speed 攪拌速度
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition:estimated oxygen consumption rate 移行:推定された酸素消費速度
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
Dissolved Oxygen 溶存酸素
Temperature 温度
Gass rate 気体速度
(
図15b、16b)
Agitation speed 攪拌速度
Estimated consumption rate 推定された消費速度
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition:estimated oxygen consumption rate 移行:推定された酸素消費速度
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
Dissolved Oxygen 溶存酸素
(
図17)
Dissolved Oxygen 溶存酸素
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition:estimated oxygen consumption rate 移行:推定された酸素消費速度
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
Cascade control カスケード制御
1
st DO control (equation (2a)) 第一の制御(式(2a))
2
nd DO control (equation (2b)) 第二の制御(式(2b))
Cascade カスケード
1
st DO control 第一の制御
2
nd DO control 第二の制御
(
図18、19)
Dissolved oxygen 溶存酸素
Gas rate 気体速度
Temperature 温度
Agitation speed 攪拌速度
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition:estimated oxygen consumption rate 移行:推定された酸素消費速度
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
(
図20)
Dissolved oxygen 溶存酸素
Duration 期間
Batch phase バッチ段階
Transition:estimated oxygen consumption rate 移行:推定された酸素消費速度
Production phase 産生段階
End fermentation 発酵終了
bioreactor バイオリアクタ
(
図21)
Temperature 温度
Duration 期間
Cascade control カスケード制御
Gradual T control 漸進的T制御
(
図22)
Duration 期間
【配列表】
【国際調査報告】