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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】一時的ペーシングデバイスの監視
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/37 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
A61N1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502710
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2021067884
(87)【国際公開番号】W WO2022012922
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】2010794.2
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523013031
【氏名又は名称】カーディアック-テック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ミ―ス、 ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
4C053KK05
4C053KK07
(57)【要約】
心臓ペーシングデバイスを監視するように適応される一時的な心臓ペーシングデバイスの管理及び安全監視のための装置及び方法は、心臓及び前記ペーシングデバイスとの電気的接続部と、電気的接続部を介して、心臓動作を示す心臓信号、ペーシングデバイスによって放出されるペーシングインパルス、ペーシングインパルスに応答して心臓から放出される誘発信号、及び任意の未確認のノイズ信号を取得するように適応される信号取得モジュールと、信号取得モジュールから受信し、心臓信号、誘発信号、ペーシングインパルス、及び任意のノイズ信号を分析するように適応されるプロセッサと、データストアと、ディスプレイとを備え、プロセッサは、i)心臓及びペーシングデバイスの基準レベルの動作を確立し、心臓信号及び誘発信号及びペーシングインパルスの関連する品質、サイズ及び/又はタイミング値をデータストアに保存すること、ii)心臓信号及び誘発信号及びペーシングインパルスの品質、サイズ及び/又はタイミング値の瞬時値を受信し、これらの値をディスプレイに表示させること、iii)瞬時値とデータストア内の値とを比較して、それらの間の相違を確立すること、iv)a.受信されたノイズ信号、b.ステップii)で受信された即時値、及びステップiii)における品質、サイズ及びタイミングに関する相違を分析すること、及びv)ノイズ信号が発生した場合、及び/又は誘発信号が受信されなかった場合にアラームを発生させることを行うように適応される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心外膜リード又は心内膜リードを介して心臓に接続される心臓ペーシングデバイスを監視するように適応される装置であって、
前記心臓及び前記ペーシングデバイスとの電気的接続部と、
前記電気的接続部を介して、心臓動作を示す心臓信号、前記ペーシングデバイスによって放出されるペーシングインパルス、前記ペーシングインパルスに応答して前記心臓から放出される誘発信号、及び任意の未確認のノイズ信号を取得するように適応される信号取得モジュールと、
前記信号取得モジュールから受信し、前記心臓信号、前記誘発信号、前記ペーシングインパルス、及び任意のノイズ信号を分析するように適応されるプロセッサと、
データストアと、
ディスプレイと
を備え、
前記プロセッサは、
i)前記心臓及び前記ペーシングデバイスの基準レベルの動作を確立し、前記心臓信号及び前記誘発信号及び前記ペーシングインパルスの関連する品質、サイズ及び/又はタイミング値を前記データストアに保存すること、
ii)前記心臓信号及び前記誘発信号及び前記ペーシングインパルスの品質、サイズ及び/又はタイミング値の瞬時値を受信し、これらの値を前記ディスプレイに表示させること、
iii)前記瞬時値と前記データストア内の値とを比較して、それらの間の相違を確立すること、
iv)品質、サイズ及びタイミングに関してステップiii)における相違を分析し、ノイズ信号が発生した場合及び/又は心臓信号又は誘発信号が受信されなかった場合にアラームを発生させること
を行うように適応される、装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、アラームが発生する前にオーバーセンシングがあったかどうかを確立するために、ノイズ信号が受信された場合に、第1の既定のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、アラームが発生する前にアンダーセンシングがあったことを確立するために、不適切なタイミングのペーシング信号が心臓信号に関連して見つけられた場合に、第2の既定のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、アラームが発生する前に捕捉の喪失があったかどうかを確立するために、心臓信号が受信されなかった場合に、第3の既定のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、不整脈を感知し、不整脈が感知された場合にアラームを発生させるために、第4のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、QT分析又は調律分析を実行するためにオペレータの入力要求に応答し、要求された分析を実行するために第5又は第6のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記データストアは、心不整脈の原因に関連する因果データ及び値、及びそれぞれの原因に適した関連するペーシングデバイス設定を含むように適応され、前記プロセッサは、調律分析を実行するように要求されたときに、前記データストア内の値と瞬時値とを比較し、前記データストア内の前記因果データ及び値に最も一致する原因を特定し、関連するペーシングデバイス設定を表示するように適応される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記心臓及び/又は前記ペーシングデバイスの機能が正しくないことをオペレータ/医療従事者/看護師に警告するための視覚的及び/又は聴覚的アラームをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置から離れているユーザインターフェースとの間で通信するように適応される通信モジュールをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記心臓、前記装置及び前記ペーシングデバイスは、前記電気的接続部によって直列配置で接続される、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記心臓への前記電気的接続部は、心房及び心室のチャンバの一方又は両方にペーシング信号を提供するように配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、追加の生体センサからのデータを統合及び利用するように適応される、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、前記プロセッサによって確立された前記基準レベルが正しく、かつ前記心臓又は前記ペーシングデバイスの不適切な機能に対応していないことを確認するための初期設定段階の間、オペレータによって監視される、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一時的な心臓ペースメーカの動作を監視するための装置及び方法に関し、特に、ヒトの患者に関するものであるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
心臓切開手術の後で、患者は回復期に重篤な合併症を引き起こす可能性のある心拍障害を経験することがある。これに対抗するため、心臓外科の患者は、通常、心臓の調律を調節すると共に、回復期に略正常な心拍出量を維持するために、一時的ペーシングシステム、又はペースメーカを装着する。このようなシステムは、「ペーシング」によって、すなわち、所定のエネルギーレベルの電気インパルス(又は「ペーシングスパイク」)を制御された間隔で心臓の特定の位置に供給することによって機能する。
【0003】
手術後の一時的ペーシング療法は(ほとんどの場合)、心臓の心外膜(外側)表面又は心臓の心内膜(内側)表面のいずれかに専用のペーシングワイヤを取り付け、患者の腹部を通って(又は患者の脚又は首の静脈を通って)ワイヤを送り込み、そのワイヤを一時的ペーシングデバイスに挿入される延長ケーブルに取り付けることによって達成される。このようなペーシングワイヤは、不安定であると同時に変性を受けやすいことが知られている。
【0004】
この不安定さは、恒久的ペーシングで見られるような洗練さを欠くデバイスと、心臓専門医及び心臓生理学者の専門知識及び経験を持たない集中治療室(ITU)の医師及び看護師によって行われているデバイス管理と相まって、デバイス機能又は患者の基礎調律の急性及び突然の変化を特定できないことにつながる可能性がある。その結果、心拍出量が影響を受ける可能性があり、循環作動薬(筋収縮薬)の使用が増加し、ITUの滞在期間が延長し、費用がかかることになる。その他にも、ペーシング機能の変化を認識できないことのより深刻な結果は、心停止及び患者の死亡につながる可能性があることである。
【0005】
病院の監査では、手術後のITU設定における一時的ペーシングの管理における深刻な問題が定期的に特定されている。これらの調査では、捕捉の喪失の認識失敗(心臓を収縮させるのに十分なエネルギーを持たないペーシングインパルスの送達)、オーバーセンシング(ペースメーカが心臓信号ではない信号を感知してペーシングの不適切な抑制をもたらす)、アンダーセンシング(ペースメーカが心臓信号を感知しないため、抑制すべきときにペーシングを継続する)、不適切なペーシングモードの選択(ペーシングモードが患者の基礎心臓調律との関連でどのように機能すべきかをペースメーカに指示する)、その他のプログラミング上のエラーの高い発生率が報告されており、これらは全て患者にとって非常に危険な可能性がある。
【0006】
患者の安全が最大の関心事であるが、適切なデバイスの最適化(つまり、システムが患者の基礎調律に対して正しい設定を持つことを保証すること)が回復をどの程度支援できるかという問題も存在する。研究によると、房室結節(心房と心室との間の電気的接合部)を横断する心臓伝導が正常かつ通常の患者は、ペーシングを使用せずに心室を収縮させるようにデバイスを最適化した場合に、血圧が良好になることが分かっている。また、正しいモード選択が行われた患者は、より良い臨床転帰を経験することも示されている。
【0007】
ペースメーカには一般に2つの形態がある。単一のリードのみを使用して心房又は心室のいずれかに電極を配置するシングルチャンバデバイス、又は2つのリード(1つは心房、もう1つは心室)が連携するデュアルチャンバである。第3のあまり一般的ではないタイプの一時的ペースメーカが存在し、これは左心室に取り付けられた第3のリードを使用して、心不全の状況下で左心室と右心室との再同期を可能にする。
【0008】
一般的に、ペースメーカは、毎分パルス(ppm)で記録される基準レート(デバイスがペーシングする最小レート)に基づいてタイマを使用して機能する。従来のペースメーカが信号を見つけた場合、その信号は、デバイスがペーシングスパイクを供給しないようにペースメーカのタイマをリセットする。60ppmのペースに設定されたシングルチャンバデバイス(シングルチャンバモードは、ペーシングされているチャンバ(すなわち心房又は心室)に応じてAAI又はVVIと呼ばれる)では、ミリ秒(ms)単位で機能するタイミングウィンドウは1000msになる。したがって、タイマをリセットする内因性拍動がない場合(ペースメーカは、患者自身の調律と競合しないように、内因性拍動の存在下でペーシングを抑制するように設計されている)、1000msごとに、ペースメーカは心臓を収縮させるための刺激を提供する。同じ基準レートに設定されたデュアルチャンバシステムでは、心房-心室タイマ(A-Vタイマ)と心室-心房タイマ(V-Aタイマ)の2つのタイマが順番に実行され、上下のチャンバ間で通常の心拍に似た収縮が生成される。A-Vタイマは、通常、200ミリ秒でプログラムされているが、この数は調整可能である。V-Aタイマは、基準レートからA-Vタイマを引いた残りの時間に設定される。したがって、この場合は800msになる。ここでも、どちらかのチャンバに内因性信号が見つけられた場合、そのチャンバのタイマがリセットされ、デバイスはそのチャンバのペーシングを保留する。
【0009】
両心室ペーシングは、あまり一般的ではないが、ペーシングのもう1つの重要な特徴である。両心室ペーシングの必要性は心不全を患っている患者に存在する。心不全は、右心室と左心室とが互いにタイミングがずれて拍動することによって引き起こされる。両心室ペーシングは、心室を正常に近い機能に戻すように再同期させて、心不全の影響を軽減するために使用される。
【0010】
この形式のペーシングは、V-Vタイマとして知られるV-Aタイマ内のさらなるタイマを使用して達成される。
【0011】
一時的ペースメーカは、通常、限られた時間のみ患者に装着されるため、一時的ペースメーカの動作及び患者の生理機能の監視は、通常、看護師又は医師等の経験豊富な人物によって行われる。
【0012】
そのような人物が1人の患者に与えることができる注意は限られているが、状況が一時的であるため、これは患者全員に与えることができる注意を大きく損なうものではない。時間が経てば、通常、患者の状態及び心機能が定常の動作に落ち着くことが期待され、そうでなければ、より永続的なペースメーカが検討され得る。それにもかかわらず、一時的ペースメーカの監視には、(心臓の問題は重大であるため)心臓の問題だけでなく、ペーシングデバイスと心臓との間の複雑な相互作用に対処するために特別に訓練された職員による注意が必要である。この後者の側面で監視要員を訓練する必要性は、それ以外では経験豊富な医療関係者(すなわち、特定の訓練/経験を持たない医師及び看護師)の多くが、一時的ペースメーカを装着した患者を監視するための十分な設備を備えていないことを意味する。さらに、一時的ペースメーカには、患者に危険を及ぼす可能性のある様々な異なる問題が発生する。これには以下が含まれる。
【0013】
オーバーセンシング:ペーシングデバイスが、本来心臓性ではない信号を検出するが、ペーシングを保留することによってそれに応答すること。
【0014】
アンダーセンシング:ペーシングデバイスが、(心房又は心室からの)内因性心臓信号を検出できないため、不要な場合にペーシングを継続すること。
【0015】
捕捉の喪失:ペーシングデバイスが、正しいタイミングでインパルスを送信したが、そのインパルスは心臓を収縮させるのに十分なエネルギーではないこと。
【0016】
モード選択:患者の基礎調律に基づいた誤ったモード選択が、最適ではない血行動態、循環作動薬の使用の増加、ITU滞在の長期化につながる可能性があること。
【0017】
上記の問題は、ペースメーカが単に一時的なものである患者にとって特に深刻であり、長期ペースメーカを使用している患者にも(頻度は低いが)発生する可能性がある。さらに、一時的ペースメーカを使用している患者には、不整脈等の長期ペースメーカに共通する問題が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、心臓とやり取りされる信号及び一時的ペースメーカからの信号を直接監視する一時的ペーシングデバイスを監視する手段を提供することにより、特別に訓練された人員によって監視されるそのようなデバイスの監視の必要性を軽減し、一時的及び長期的なペースメーカの両方に関連する問題に対処することができるだけでなく、通常、より経験豊富な医師、専門家又は外科医の領分である監視及び診断機能を同時に提供することができることの実現化を前提としている。これにより、心臓患者がそのような上級医療従事者から必要とする注意の量が減少され、心臓及び/又はペーシングデバイスの動作における純粋に短期的かつ重大でない障害が自動的に正常化されるが、より深刻な障害が適切な人間の介入のために警告されることが可能になる。
【0019】
したがって、本発明は、心外膜リード又は心内膜リードを介して心臓に接続される心臓ペーシングデバイス、特に一時的な心臓ペーシングデバイスを監視するように適応される装置を提供し、前記装置は、前記心臓及び前記ペーシングデバイスとの電気的接続部と、心臓動作を示す心臓信号、前記ペーシングデバイスによって放出されるペーシングインパルス、前記ペーシングインパルスに応答して前記心臓から放出される誘発信号、及び未確認のノイズ信号を前記電気的接続部を介して取得するように適応される信号取得モジュールと、前記信号取得モジュールから受信し、前記心臓信号、前記誘発信号、前記ペーシングインパルス、及び任意のノイズ信号を分析するように適応されるプロセッサと、データストアと、ディスプレイとを備え、前記プロセッサは、i)前記心臓及び前記ペーシングデバイスの基準レベルの動作を確立し、前記心臓信号及び前記誘発信号及び前記ペーシングインパルスの関連する品質、サイズ及び/又はタイミング値を前記データストアに保存すること、ii)前記心臓信号及び前記誘発信号及び前記ペーシングインパルスの品質、サイズ及び/又はタイミング値の瞬時値を受信し、これらの値を前記ディスプレイに表示させること、iii)前記瞬時値と前記データストア内の値とを比較して、それらの間の相違を確立すること、iv)a.受信された任意のノイズ信号、b.上記のステップii)で受信された瞬時値、及びc.品質、サイズ及びタイミングに関する上記のステップiii)における相違、及びv)ノイズ信号が発生した場合、及び/又は心臓性信号又は誘発信号が受信されなかった場合にアラームを発生させることを行うように適応される。
【0020】
このような配置は、心臓及びペーシングデバイスの基本動作が正しく、どちらも観察可能なやり方で異常な動作をしていないことを確認することができる適切に訓練された医療従事者、看護師又は関連する医療専門家によって設定することが可能である。その後、装置は、何か好ましくないことが起きてアラームが生成されない限り、オペレータのさらなる入力又は注意を必要とすることなく、心機能及びペースメーカの動作の両方を監視することが可能である(アラームは、ディスプレイ(又はユーザインターフェース)に表示することも、聴覚又はその他の視覚的なアラートによって表示することもできるが、患者の近くにいない医療従事者又は看護師等の遠隔地にある二次的なデバイスに、例えば、WiFi又はBluetooth(登録商標)を使用して、その人物の携帯電話又はその他のインターネット対応デバイス又はユーザインターフェース(UI)に通知することもできる)。また、分析ステップiv)において装置は、ノイズ信号の種類を識別し、適切な場合にはオーバーセンシングの兆候を示すこと、モード選択の目的又は不整脈の感知のためにステップii)で受信された瞬時値の重要性を評価すること、及びペーシングインパルスに続いて誘発信号が感知されない場合は、これが捕捉の喪失によるものかどうかを判断すること、内因性心臓信号が存在する場合にペーシングタイマがリセットされない場合は、アンダーセンシングの兆候を示すこと、及びモード選択の目的又は不整脈の感知のために品質、サイズ及び/又はタイミングの相違の重要性を評価することも可能である。
【0021】
プロセッサは、以下に説明するような既定のアルゴリズムに従って動作し、その基本動作のために一時的ペーシングデバイスを監視し、オーバーセンシング、アンダーセンシング、捕捉の喪失、ファーフィールドオーバーセンシング、及び不整脈を監視するように適応されてもよい。本発明の利点は、全てのアルゴリズムを並列又は同時に、及び任意の組み合わせで並列又は同時に実行できることである(特定の状況では、1つ又は2つ以上の機能を監視することが望ましい場合がある一方で、他の機能は重要性が低い(又は特定の患者には発生する可能性が低い)場合があり、そのため、これらは頻度を減らして監視することができるため、本発明の実施形態は、関連するアルゴリズムを適切なやり方及び頻度で実行することが可能である)。
【0022】
また、プロセッサは、以下に説明するような他の既定のアルゴリズムに従って、ペーシングデバイス動作パラメータの調整を提案するための、心臓機能のQT分析、及び心臓調律分析を実行するためにオペレータ入力に応答するように適応されてもよい。プロセッサは、リアルタイム又はオフライン分析のためにデータを記録するように適応されてもよい。また、プロセッサは、この分析に基づいて最適化の提案を提供してもよい。
【0023】
前記データストアは、心不整脈の原因に関連する因果データ及び値、及びそれぞれの原因に適した関連するペーシングデバイス設定を含むように適応され、前記プロセッサは、調律分析を実行するように要求されたときに、前記データストア内の値と瞬時値とを比較し、前記データストア内の前記因果データ及び値に最も一致する原因を特定し、推奨される最適化変更として、関連するペーシングデバイス設定を表示するように適応され、それにより患者はペーシングデバイスから最も適切なペーシングインパルスを受信することができる。データストアは、事前に記録された電位図、様々な心機能及び/又は心不全に関連する所定のタイミング及び値、及びそれらに関連するペーシング値を含んでもよい。
【0024】
装置は通信モジュールを組み込んでもよく、これは二次デバイスにアラートを伝達するだけでなく、装置のリモート構成、及びアラートの生成及びリモートでの監視も可能にする。このためのユーザインターフェース(UI)は、リモートUIへの通信チャネルを介して行われてもよい。追加的に又は代替的に、本発明の実施形態は、以下の機能を提供してもよい。
【0025】
ペーシングインパルスのタイミングと監視対象デバイスの設定との比較、及びそのタイミングがどの程度適切かの評価。
【0026】
そのインパルスが心臓を捕捉したことを確立するために、ペーシングインパルスによって心外膜/心筋に発生した誘発応答を感知する能力。
【0027】
ペーシングインパルスのタイミングと内因性心内電位図(EGM)のタイミングとの比較、及び監視対象のデバイスが内因性心拍を感知したか、又はアンダーセンシングがあったかを認識すること。
【0028】
心房ペーシングリード及び心室ペーシングリードの両方から心臓内電位図を使用して、患者の基礎調律を評価及び診断すること。
【0029】
心臓内電位図を使用して、患者の基礎調律の変化を認識すること。
【0030】
内因性心拍調律とノイズとの相違を確立すること。
【0031】
調律の開始を認識し、監視対象のデバイスに障害があるかどうかを判断し、さらなる分析のために電位図を保存すること。
【0032】
心房信号及び心室信号の両方からの心臓内電位図のタイミングを使用して、患者に最適なペーシングパラメータを推奨すること。
【0033】
この装置は、追加の生物医学的センサからのデータを統合することが可能であってもよく、生のデータ又は記録されたデータを処理済み又は未処理の状態で二次デバイスに送信することが可能であってもよい。本発明は、主として、一時的ペーシングデバイスの監視に関連して本明細書に記載されているが、本発明の原理は、場合によっては、長期ペースメーカの監視にまで拡張することができることが理解されるであろう。
【0034】
本発明は、本明細書に記載されているように、一時的ペーシングデバイスの機能を監視する方法にも及ぶ。
【0035】
次に、例示として添付の図を参照して本発明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】心外膜リードを介して心臓及び監視対象のデバイスに接続された一時的ペーシング管理及び安全性(TPMS)監視デバイスの概略図である。
図2】直列接続されたTPMS監視デバイスのブロック図である。
図3】タップオフ接続されたTPMS監視デバイスのブロック図である。
図4】TPMS監視デバイスの機能ブロック図である。
図5】ペーシング機能モニタ(VVI/AAIモード)のフローチャートである。
図6】シングルチャンバモード(VVI/AAIモード)及びデュアルチャンバモード(DDD)のオーバーセンシングにつながるノイズを検出するペーシングセンシング分析のフローチャートである。
図7】ペーシングアンダーセンシングのフローチャートである。
図8】捕捉の確認のフローチャートである。
図9】デュアルチャンバモード(DDD)のオーバーセンシングにつながるファーフィールド信号に対するペースメーカのセンシング感知分析のフローチャートである。
図10】QT間隔分析のフローチャートである。
図11】調律分析及び最適化のフローチャートである。
図12】心不整脈を検出するフローチャートである。
図13】TPMS監視デバイスの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、心臓4、監視対象のペーシングデバイス6又はペースメーカ、及び二次デバイス8に接続された一時的ペーシング管理及び安全性(TPMS)監視デバイス2を示している。TPMSデバイス2は、心外膜又は心内膜リード10を介して心臓4に直接電気的に接続されている(本明細書で心外膜リードが言及されている場合は、これらが代替的に心内膜リード、又はその両方の混合物であってもよいことを理解すべきである)。監視対象のペーシングデバイス6は患者の体外にあり、追加の電気リード12を介してTPMS監視デバイス2に接続されている。スマートフォン又は他の何らかのリモート電子装置である二次デバイス8は、無線リンク又は有線リンクであり得る通信リンク14を介してTPMS監視デバイス2に接続されている。
【0038】
図2は、TPMS監視デバイスの直列配置を示しており、1つ以上の心外膜接続部10がTPMS監視デバイス2から患者の心臓4につながっており、一時的ペーシングシステム6がTPMS監視デバイス2に接続されており、それによって3つの要素が直列で接続されている。この直列配置は、電気的には(後述の)タップスタイルに似ているが、インピーダンス測定のさらなる利点を提供し、より高い診断能力を提供する。TPMS監視デバイス2は、ペーシングモード(DDD、又はデュアルチャンバモードとして)、ペーシングレート(70bpmとして示されている、これは70ppmと同じである)、心房及び心室出力電圧(両方とも8Vとして示されている)、心房及び心室の「センシング」(すなわち感度閾値)(それぞれ0.5mV及び1.0mVとして示されている)を示すディスプレイ、又はローカルユーザインターフェース26(図13により明確に示されている)を有する。
【0039】
図3は、TPMS監視デバイスのための代替の「タップオフ」スタイルの配線配置を示しており、一時的ペーシングシステム6を心臓4にリンクする直接接続14(1つ以上の心外膜接続を含む)があり、TPMS監視デバイス2はリード16によって接続部14に接続されている。このタップオフ配置は、直列配置と同様に電気的に機能し、より簡単な配線を可能にするが、タップオフ配置によるインピーダンス又は信号負荷の測定はそれほど単純ではない。
【0040】
図4は、信号取得モジュール20、プロセッサ22、データストレージモジュール24、ローカルユーザインターフェース26、及び通信モジュール28を備えるTPMS監視デバイス2の機能図を示している。ローカルユーザインターフェース及び通信モジュールは、どちらか又は両方が異なる配置で組み込まれ得るため、薄く示されている。
【0041】
信号取得モジュール20は、プロセッサ22に入る電気信号の物理的接続を提供する。これは、心臓からの心外膜信号と監視対象デバイスからのペーシング信号との2種類の信号を捕捉するように設計されている。信号取得モジュール20及びプロセッサ22は、全ての信号のノイズ又は予期しない形状を監視し、機能的な安全性を確保し、信号の完全性を維持するために、測定されたインピーダンスとデータベース(データストレージモジュール24又はTPMS監視デバイス2の他の場所に保持されている)からの期待値とを比較する。そのため、劣化した信号、欠落した信号、及び/又は誤った信号が検出され、適切な応答/アラートが提供される。
【0042】
プロセッサ22は、信号取得モジュール20によって提供される信号に応答し、監視対象のペーシングデバイス6の出力パラメータと心外膜リードからの信号のパラメータとを比較するように適応される。信号は、パラメータ及びアルゴリズム分析の対象となる。パラメータの変更は、TPMSデバイス2、及び/又は二次デバイスにおいて視聴覚応答又はアラームを生成する。信号はデータストレージモジュール24に格納される。信号は、存在する場合、ローカルユーザインターフェース26に表示される。信号は、存在する場合、通信ブロック28を介してTPMS監視デバイス2の外部に転送される。心外膜リード10、14からの信号(図2及び3を参照)、及び監視対象デバイス6からの信号も処理に利用できることが理解される。ローカルユーザインターフェース26は、リアルタイムのイベント、アラーム、及び図2及び3に示すパラメータ等のその他の情報をユーザに表示することを可能にする。TPMS監視デバイス2のパラメータを調整できるようにするためのコントロール(図示せず)が組み込まれてもよい。通信モジュール28は、TPMS監視デバイス2からスマートフォン又はその他のリモートデバイス等の二次デバイスへのデータ転送を可能にする。
【0043】
図5から図11は、TPMS監視デバイス2に組み込まれ得るアルゴリズムを示している。これらのアルゴリズムは、DSP(デジタル信号処理)技術として、又は高速フーリエ変換(FFT)、相関技術及び畳み込み変換を含む当技術分野で知られている他の信号処理方法によって、手続き的に実現されてもよい。
【0044】
図5は、通常の(非エラー)状態時のTPMS監視デバイス2の動作を示している。ステップ51のパラメータ設定の後で(パラメータ入力は手動又は自動であり得る)、ステップ52で装置は制御ループステップを開始し、ペースメーカ又は患者からの信号を待機する。そのような信号が発生しない場合、タイマステップ54はこのループを繰り返すか、又は時間が経過し過ぎた場合、ステップ56でオペレータがクリアできるアラートステップ55を引き起こす。その後、オペレータが適切と判断した場合は、ステップ57でパラメータを変更するように促されてもよい。有効な信号が受信された場合、タイマステップ57及び比較ステップ58を含む連続ループが設定される。
【0045】
このループは、連続的に正常な又は望ましいパラメータ内に確実にあるように、システムの動作を監視する。信号が許容可能な時間ウィンドウの外で受信された場合は、別のアラートステップ59がアクティブになり、ユーザはステップ53でパラメータを変更するよう再び促されてもよく、その時点でループはステップ52でメイン制御ループに戻る。
【0046】
図6は、監視対象デバイス6による、シングルチャンバモード(すなわち、VVI/AAIモード)63a及びデュアルチャンバモード(DDD)63bの両方でのノイズのオーバーセンシングを検出するためのフローチャートを示している。ステップ61で監視が開始されると、ノイズが検出されない場合は、上記の図5に示すように通常の監視が継続される。
【0047】
ペースメーカがシングルチャンバモードで動作しており、ノイズが監視安全デバイスによって検出された場合、アルゴリズムはペーシングタイミングウィンドウ内でペーシングインパルス及び/又は内因性心臓信号を探し始める。これはステップ64a、65a及び66aで実行される。そのようなペーシングされたインパルスが見られない場合、又はデバイスの基準レートよりも遅い(タイミングウィンドウよりも遅い)内因性心臓信号が検出された場合、デバイスはステップ67aでアラームを発行する。ステップ64aでノイズが消えたと判断された場合、アルゴリズムはブロック61aで制御ループに入ることにより通常の監視に戻る。ステップ64bでDDDモードの心房リードにノイズが検出された場合、シングルチャンバモードと同じ応答が適用される。ペースメーカがDDDモードの間に監視及び安全ウィンドウによって心室リードにノイズが検出された場合、アルゴリズムは心房-心室遅延(AV遅延)ステップ66bで内因性心臓信号を探す。応答が見られない場合、デバイスはステップ67bでアラームを発する。この機能は、シングルチャンバモードのプロセスと同様のやり方で実行される。どちらのモードでも、判定ステップ68は、オーバーセンシングの問題が(パラメータの調整又は配線の再配置等によって)修正されたかどうかを判断し、シングルチャンバモードの場合はステップ63aで、又はデュアルチャンバモードの場合はステップ63bで、以前のループに戻る。
【0048】
従来のペースメーカが信号を見つけると、その信号はペースメーカのタイマをリセットするため、デバイスはペーシングインパルスを送出しない。しかしながら、ペースメーカはその信号が存在するという事実以外に、その信号が何であるかについての知識を持たない。本発明に従った装置は、その信号が実際の心臓信号であったか(すなわち、デバイスが適切に動作したか)、又はノイズ等の心臓外信号であったか、すなわち不適切に動作したかを確認することができる。この時点で、装置は、患者を担当する看護師及び/又は患者に責任を負う医療従事者に不適切な動作を警告する。
【0049】
図7は、心房及び/又は心室チャネルの両方のアンダーセンシングを検出するためのフローチャートを示している。アルゴリズムはステップ71で始まり、ステップ72で内因性(患者が生成した)信号が発生するまで待機する。そのような信号が発生した場合、タイマステップ73が開始され、ステップ74は、望ましくないペーシング信号が特定の時間内に発生したかどうかを確認する(不必要なペーシングされたインパルスを引き起こすペースメーカが見つけていない信号があるかどうかを調べる)。発生しなかった場合、ループはステップ71に戻る。しかしながら、望ましくないパルスが検出された場合は、ステップ75で適切なアラートが発行される。上記では、VVI、AAI、及びDDDモードでのアンダーセンシングを検出するためのアルゴリズムについて説明している。心房又は心室のいずれかから内因性心臓信号が本体によって見つけられると、ペースメーカのタイミング設定に設定されたタイミングウィンドウがトリガされる。その後、デバイスはペーシングインパルスがこのウィンドウの中で送られるかどうかを監視する。ペーシングインパルスが送られることが検出された場合、これはシステムの不適切な動作と見なされ、デバイスはアラートを発する。
【0050】
図8は、監視対象のペーシングデバイス6による捕捉、つまり、心臓が必要に応じて収縮するための正しい時間及びエネルギーレベルでペーシングデバイスがインパルスを送信していることを確認するためのアルゴリズムを示している。アルゴリズムは開始ステップ81で開始され、決定ステップ82ではペーシングされたインパルスが検出されるのを待機する。ペーシングされたインパルスが検出されると、アルゴリズムは誘発応答ウィンドウステップ83に進む。決定ステップ84は、ウィンドウステップ83内で誘発応答信号が検出されるのを待機し、これは患者の心臓がペーシングされたインパルスに応答したかどうかを示す。ウィンドウ内で誘発応答が検出された場合、アルゴリズムフローはステップ82でペーシングされたインパルスの待機に戻る。ウィンドウ内で誘発応答が検出されなかった場合、デバイスはステップ85でアラートを発する。上記では、監視対象のデバイス6における捕捉を確認するためのアルゴリズムについて説明している。ペースメーカがインパルスを送る場合、使用されるエネルギーの量は、心拍をトリガするのに十分な量である必要がある。心臓に対する心外膜リードの位置、リードが取り付けられている組織の健康状態、及び/又はリードと心筋との接触の質等の要因により、必要なエネルギーの量は患者によって異なり得る。さらに、一時的ペーシングでは、リードのパラメータは、リードの移動により突然変化するか、又は心臓がリードを越えて内皮化(組織の成長)を開始するにつれて経時的にゆっくりとした変化し得る。このような変化は、捕捉の喪失につながる可能性があり、すなわち、送信されたエネルギーの量が心拍を刺激するのに十分ではない。
【0051】
TPMS監視デバイス2は、誘発応答と呼ばれるものを探すことによって、ペーシングされたインパルスの捕捉を確立できるようになる。これは、インパルスが収縮を引き起こすときに心筋によって生成される信号である。デバイスがペースメーカからのペーシングされたインパルスを感知すると、誘発応答を探すウィンドウが開始される。それが見つけられた場合、デバイスは何もしない。誘発応答を見つけられなかった場合、デバイスはアラートを発する。
【0052】
図9は、監視対象のペーシングデバイス6によるシングルチャンバVVI及びAAIモードでのファーフィールドオーバーセンシングを検出するためのアルゴリズムを示している。アルゴリズムは(図5に関連して説明されたペーシング機能の継続的監視に関する)開始ステップ91から始まり、感知された信号が検出されるまで決定ステップ92がループする。ステップ92で信号が検出されると、その信号が心房か心室かによって新しい分岐が開始され、さらなる決定ステップ93v/93aによって、その信号がニアフィールド信号のための正しい成分(したがって正しいチャンバから)を持っているか、又は非心臓性であると見なされるかどうかが確認される。ニアフィールドであると見なされると、アルゴリズムは通常の監視91にループして戻り、非心臓性であると見なされると、決定ステップ94v/94aによって、非心臓性信号が反対側のチャンバのペーシング/感知された信号と同じタイミングを有するかどうかが評価される。そうでない場合は、ステップ95v/95aでノイズのオーバーセンシングのアラートが出される。
【0053】
そうである場合、アルゴリズムはステップ95v/95aでファーフィールド信号のオーバーセンシングのアラートを発するように移動する。このアルゴリズムは、心房及び心室の両方のチャネルに同時に適用される。上記は、デュアルチャンバモードでのみ、ファーフィールド信号(反対側のペーシングリードで検出された1つのペーシングリードからの信号)によるオーバーセンシングを検出するためのアルゴリズムについて説明している(この種のオーバーセンシングはシングルチャンバモードでは見られない)。Aチャネル又はVチャネルのいずれかで内因性信号が見つけられる場合、デバイスは心臓の成分について信号を評価する(ニアフィールド信号は心臓成分を表示し、ファーフィールドは表示しない)。信号が関連する心臓の成分を持たないことが確認された場合、安全モニターはAチャネルとVチャネルとを比較して、信号が同時に発生するかどうかを確認する。発生する場合、デバイスはファーフィールドオーバーセンシングのアラームを発する。発生しない場合、デバイスはノイズのオーバーセンシングのアラームを発する。
【0054】
図10は、QT分析のアルゴリズムを示している(QT間隔は、心室収縮(脱分極)期の開始から心室リセット(再分極)期の終了までの間隔である)。分析は、通常の監視101中のステップ102でQT分析が要求されることから始まり、ステップ104で(ステップ103でシステムを一時停止するオプションの後)、現在のQT間隔を決定するための拍数のサンプリングで始まる。QT間隔105aの測定後、決定ステップ106は、決定されたQT間隔が制限内であるかどうかをチェックする。QT間隔が制限内である場合、ステップ104で定義された拍数にわたって1拍ごとに分析が継続され、QT間隔が制限内でない場合、ステップ107でデバイスはアラートを発する。上記は、QT分析のためのソフトウェアアルゴリズムについて説明している。QT間隔は、インパルスが心室を通過し、次の収縮に備えて心室組織がそれ自体を「リセット」するのにかかる合計時間として定義される。これが発生する合計時間は、通常420msから460msの間に収まる。QT間隔がこれより長い患者は、危険な心室性不整脈のリスクがあると見なされる。QT間隔は、手術後の状況で頻繁に投与される特定の薬剤によって変化する可能性があるため、QT間隔の詳細な分析は、治療方針を決定する際に医療チームにとって有益であろう。
【0055】
QT分析アルゴリズムは、監視開始時に患者のQT間隔を測定することによって機能する。これは(内因性又はペーシングのいずれかの)拍動を測定することによって行われ、T波として定義され得る後続信号を探す。次に、それは収縮の最も早い兆候(ペーシングされた拍動では、これは誘発応答である)からT波の最後の測定可能な点までの間隔を測定する。この時点でデバイスが通常の間隔から外れていることを検出すると、それはアラートを発してもよい。ただし、QT間隔が通常の測定値の範囲内に収まった場合、デバイスは信号を1拍ごとに測定し続ける。QT間隔の延長が見られた場合、デバイスは警告を発してもよい。
【0056】
図11は、調律分析及び最適化のアルゴリズムの概略を示している。通常の動作111の間、ステップ112で調律分析の要求が行われ、(ステップ113でシステムを一時停止するオプションの後で)ステップ114で分析が開始される。調律の分析が行われ、分析が完了すると、ステップ115でサンプル間のA-V関係が確立される。調律シーケンス116a、116bのデータベースが比較ソースとして使用される。分析されたシーケンスに最も近い一致が見つかり、その結果はステップ115で、監視対象のペーシングデバイス6の設定を変更するための目標とされる提案117としてデバイスオペレータにフィードバックされる。
【0057】
両心室デバイスの場合、最適化プロセスには、適切な再同期に必要な設定を計算するために、右心室収縮と左心室収縮との間のタイミング(V-V間隔)を測定することが含まれる。
【0058】
図11の上記概要は、モード選択を支援する調律分析のアルゴリズムを説明している。発表されたデータは、ペーシングデバイスのプログラミングが最適でない場合、血行動態の低下、循環作動薬の使用の増加、及びITU滞在期間の延長につながり得ることを示している。例えば、完全心臓ブロックと呼ばれる調律にある(心房で発生したインパルスが心室に伝達されず、上チャンバと下チャンバとの解離につながる)ことが判明しているが、シングルチャンバ(心室のみ)でのペーシングのみがプログラムされている患者は、心拍出量の30%も血行動態が低下する。これは、心房(心臓を流れる血液の30%を占める)の収縮が心室の収縮と同期していないためである。ペースメーカをデュアルチャンバモードにプログラムすることで、上チャンバの底部との同期性が回復するため、心拍出量は患者の正常な容積の100%に回復する。
【0059】
分析を行うためには、ペーシングの一時停止が必要である(これは、ペーシング速度を低下させるか、又はペーシング機能を一時停止することによって、ペースメーカ自体で行う必要がある)。これを考慮し、誤った調律分析のリスクを減らすために、ペーシングの一時停止が行われることを可能にするようにアルゴリズムの3秒の遅延が開始される。これが発生すると、5秒の分析ウィンドウにより、デバイスは上下のチャンバから来る信号間の関係を分析し、記録することが可能になる。次に、この情報を調律データベースに入力し、診断された調律をオペレータにフィードバックする前に、記録されたシーケンスに最も近いシーケンスを比較して強調表示する。その結果に基づいて、一時的ペーシング管理及び安全性監視デバイスは、患者のためにペーシングデバイスを最適化するためのプログラミングの提案も提供し得る。
【0060】
ペーシングの最適化を可能にするために、デバイスは調律検出アルゴリズム(図11)に見られるものと同じアルゴリズムを使用してもよいが、レイヤが追加されている。AとVとの関係は上記と同じやり方でも評価されるが、最適化の一部として、アルゴリズムはステップ115でAV遅延を最適化するために上下のチャンバ間のタイミング(PR間隔として知られる)を測定する。
【0061】
心不整脈を検出するアルゴリズムを図12に示す。アルゴリズムの開始時に、ペーシングデバイスの通常の動作121中に、TPMS監視デバイスは心調律の突然の変化122を検出する。次に、V(心室)信号の周波数と比較してA(心房)信号の周波数を検出するための待機があり、その時点123で、アルゴリズムはこれらの信号のどちらがより頻繁であるかを確立する。調律の突然の変化が発生し、ステップ124でA信号の周波数がV信号の周波数よりも大きい場合、不整脈発生のデータスナップショットが取得され、ステップ125で心房性不整脈を示すアラームが発生する。次に、オペレータはステップ130で30秒以内に不整脈の存在を確認する必要がある。これに失敗すると、第2のアラートがトリガされる。このプロセスは、不整脈の存在が確認されるまで繰り返される。調律の突然の変化が発生し、ステップ126でV信号の周波数がA信号よりも大きい場合、不整脈発症のデータスナップショットが再度取得され、ステップ127で心室性不整脈を示すアラームが発生する。この場合も、オペレータはステップ130で30秒以内に不整脈の存在を確認する必要がある。この確認が時間内に行われなかった場合は、第2のアラートがトリガされる。以前と同様に、このプロセスは、不整脈の存在が確認されるまで繰り返される。ステップ128でA信号とV信号とに周波数の差がない場合は、再び不整脈発症のデータスナップショットが取得され、ステップ129で未知の不整脈の存在を示すアラームが発生する。この場合も、オペレータは30秒以内に不整脈の存在を確認する必要がある。この確認が時間内に行われなかった場合は、第2のアラートがトリガされる。以前と同様に、このプロセスは、不整脈の存在が確認されるまで繰り返される。A-V同期への復帰が検出された場合、デバイスは監視対象のペーシングデバイスに対して提案される最適化パラメータのセットをユーザに提供してもよい。また、デバイスは、心室に起因する不整脈を特定するために、電位図テンプレート及び方向分析を使用してもよい。これは、不整脈の原因が不明な場合に使用される。
【0062】
図13は、TPMS監視デバイス2をより詳細に示している。デバイスは1つ以上のI/O接続から信号を受信し、これらの信号は次の2つのソースから送信される。すなわち、心臓からの心外膜信号、及び監視対象デバイスからのペーシング信号である。これらの信号から情報を抽出できるようにするには、本体ファームウェアに実装されたアルゴリズムが必要であり、抽出された情報は、ユーザに警告するため、又は望ましい可能性のある監視対象のデバイスへの可能な調整に関するフィードバックを提供するためにさらに使用される。ユーザフィードバックは、ディスプレイ3(「タッチスクリーン」であり得るか、又は、コントロール、スイッチ等があり得る)を介してローカルユーザに、又は通信モジュール28を介してリモートユーザに提供され、これらの手段は、アルゴリズムの動作を制御する変数を調整するためにも使用され得る。ディスプレイ26は、ペーシング設定のデジタル表示を提供する。このデバイスは、プラスチック製の硬化された外側ケース202を有する。電源オン/オフボタン204、監視開始ボタン206、分析ボタン208がある。ペーシングリード210及び心外膜リード212の入力がある。
【0063】
これらは必要に応じてリードを受け入れて保持又は解放するために締め付け又は緩められ得る絶縁されたコレットであってもよい。WAP/Bluetooth(登録商標)の信号強度214及びバッテリーレベル216を示すディスプレイもある。この装置は、拡声器、ブザー、点滅光等を介して、可聴信号及び/又は視覚信号の形式であり得るアラーム(図示せず)を含む。
【0064】
もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に多くのバリエーションを加え得ることは理解されるであろう。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、さらなる病理及びそれに関連する信号パラメータを包含するように、さらにアルゴリズムが追加されてもよい。図面に示されているよりも多くの心外膜リード及び監視対象のデバイス接続があり得ることが理解されるであろう。図12は、本発明の可能な実装の例示である。実装は、本発明の具現化された態様によって異なる。
【0065】
上記の装置及びアルゴリズムを両心室ペーシング用に修正することは容易であり(上記のペーシング機能の全ては、既存の両心室ペーシングデバイスによって提供することが可能であり、左心室と右心室とを互いに独立してペーシングすることもできる(V-Vオフセットとして知られている))、上記の監視機能の全ては、適切な場合には、単に各アルゴリズムに左心室アームを含めることによって、両心室形式で提供され得ることが理解されるであろう。
【0066】
TPMS監視デバイスには、様々なアルゴリズムの差動設定を可能にし、オペレータがどのアルゴリズムを同時に及び/又はどの頻度で実行するべきかを設定し、他のアルゴリズムを同時に及び/又は異なる頻度で実行するように設定することを可能にするためのコントロールが設けられてもよい。
【0067】
上記で異なるバリエーション又は代替的な配置が説明されている場合、本発明の実施形態は、そのようなバリエーション及び/又は代替を任意の適切な組み合わせで組み込んでもよいことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体外に位置し、かつ心外膜リード又は心内膜リードを介して前記患者の心臓に接続される一時的心臓ペーシングデバイスを監視するように適応される装置であって、
前記患者の体外に位置し、かつ前記心臓及び前記ペーシングデバイスとの電気的接続部と、
前記電気的接続部を介して、心臓動作を示す心臓信号、前記ペーシングデバイスによって放出されるペーシングインパルス、前記ペーシングインパルスに応答して前記心臓から放出される誘発信号、及び任意の未確認のノイズ信号を取得するように適応される信号取得モジュールと、
前記信号取得モジュールから受信し、前記心臓信号、前記誘発信号、前記ペーシングインパルス、及び任意のノイズ信号を分析するように適応されるプロセッサと、
データストアと、
ディスプレイと
を備え、
前記プロセッサは、
i)前記心臓及び前記ペーシングデバイスの基準レベルの動作を確立し、前記心臓信号及び前記誘発信号及び前記ペーシングインパルスの関連する品質、サイズ及び/又はタイミング値を前記データストアに保存すること、
ii)前記心臓信号及び前記誘発信号及び前記ペーシングインパルスの品質、サイズ及び/又はタイミング値の瞬時値を受信し、これらの値を前記ディスプレイに表示させること、
iii)前記瞬時値と前記データストア内の値とを比較して、それらの間の相違を確立すること、
iv)品質、サイズ及びタイミングに関してステップiii)における相違を分析し、ノイズ信号が発生した場合、又ノイズ信号が発生しかつ心臓信号又は誘発信号が受信されなかった場合に、アラームが発生する前にオーバーセンシングがあったかどうかを確立するために、ノイズ信号が受信された場合に第1の既定のアルゴリズムに従うこと
を行うように適応される、装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、アラームが発生する前にアンダーセンシングがあったことを確立するために、不適切なタイミングのペーシング信号が心臓信号に関連して見つけられた場合に、第2の既定のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、アラームが発生する前に捕捉の喪失があったかどうかを確立するために、心臓信号が受信されなかった場合に、第3の既定のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、不整脈を感知し、不整脈が感知された場合にアラームを発生させるために、第4のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、QT分析又は調律分析を実行するためにオペレータの入力要求に応答し、要求された分析を実行するために第5又は第6のアルゴリズムに従うように適応される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記データストアは、心不整脈の原因に関連する因果データ及び値、及びそれぞれの原因に適した関連するペーシングデバイス設定を含むように適応され、前記プロセッサは、調律分析を実行するように要求されたときに、前記データストア内の値と瞬時値とを比較し、前記データストア内の前記因果データ及び値に最も一致する原因を特定し、関連するペーシングデバイス設定を表示するように適応される、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記心臓及び/又は前記ペーシングデバイスの機能が正しくないことをオペレータ/医療従事者/看護師に警告するための視覚的及び/又は聴覚的アラームをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置から離れているユーザインターフェースとの間で通信するように適応される通信モジュールをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記心臓、前記装置及び前記ペーシングデバイスは、前記電気的接続部によって直列配置で接続される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記心臓への前記電気的接続部は、心房及び心室のチャンバの一方又は両方にペーシング信号を提供するように配置される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、追加の生体センサからのデータを統合及び利用するように適応される、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記プロセッサによって確立された前記基準レベルが正しく、かつ前記心臓又は前記ペーシングデバイスの不適切な機能に対応していないことを確認するための初期設定段階の間、オペレータによって監視される、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置を使用する方法。
【国際調査報告】