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特表2023-533861車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための方法並びにボディコンポーネント及び車両ボディ
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  • 特表-車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための方法並びにボディコンポーネント及び車両ボディ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(54)【発明の名称】車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための方法並びにボディコンポーネント及び車両ボディ
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20230728BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230728BHJP
   B62D 27/02 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B05D3/12 C
B05D7/24 301P
B62D27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502913
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 IB2021056456
(87)【国際公開番号】W WO2022013837
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118934.6
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クーラ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ヤフス,ヌレッティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムスドルフ,ロベルト
【テーマコード(参考)】
3D203
4D075
【Fターム(参考)】
3D203CA04
3D203CA74
3D203CB07
4D075BB05Z
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA14
4D075EA35
(57)【要約】
本発明は、車両(20)の車両ボディ(21)のボディコンポーネント(1)を製造するための方法に関し、この方法は、以下のステップ:
(a)ボディコンポーネント(1)の、接着フィルム(4)が設けられた構造構成部材を(2)準備するステップであって、接着フィルム(4)は構造構成部材(2)の少なくとも1つの接着面(6)に被着されている、ステップ、
(b)ボディコンポーネント(1)の別の構成部材(3)を準備するステップ、
(c)接着剤(5)を接着フィルム(4)に塗布するステップ、
(d)接着フィルム(4)が設けられた構造構成部材(2)を、接着フィルム(4)上に塗布された接着剤(5)を用いて、別の構成部材(3)と接着させることによって、別の構成部材(3)と接着された、接着フィルム(4)が設けられた構造構成部材(2)としてのボディコンポーネント(1)を得るステップと、を有する。更に、本発明は、車両(20)の車両ボディ(21)のボディコンポーネント(1)、並びにその種のボディコンポーネント(1)を少なくとも1つ備えた車両(20)の車両ボディ(21)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(20)の車両ボディ(21)のボディコンポーネント(1)を製造するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
(a)前記ボディコンポーネント(1)の、接着フィルム(4)が設けられた構造構成部材(2)を準備するステップであって、前記接着フィルム(4)は前記構造構成部材(2)の少なくとも1つの接着面(6)に被着されている、ステップ、
(b)前記ボディコンポーネント(1)の別の構成部材(3)を準備するステップ、
(c)接着剤(5)を前記接着フィルム(4)に塗布するステップ、
(d)前記接着フィルム(4)が設けられた前記構造構成部材(2)を、前記接着フィルム(4)上に塗布された前記接着剤(5)を用いて、前記別の構成部材(3)と接着させることによって、前記ボディコンポーネント(1)を、前記別の構成部材(3)と接着され、かつ接着フィルム(4)が設けられた前記構造構成部材(2)として獲得するステップと、を有する、方法。
【請求項2】
前記構造構成部材(2)は、アルミニウム構成部材である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接着フィルム(4)が設けられた前記構造構成部材(2)の、周囲環境に対して露出された少なくとも1つの表面(7)を酸化させ、前記露出された少なくとも1つの表面(7)にアルミニウム酸化物層(8)を形成するか、又はアルミニウム酸化物層(8)を拡大する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、更に、接着フィルム(4)が設けられた前記構造構成部材(2)を準備するために、前記構造構成部材(2)を準備するステップと、準備された前記構造構成部材(2)の前記少なくとも1つの接着面(6)に前記接着フィルム(4)を被着させ、これによって接着フィルム(4)が設けられた前記構造構成部材(2)を獲得するステップと、を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接着フィルム(4)は、前記構造構成部材(2)の前記少なくとも1つの接着面(6)に被着された後に熱硬化される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接着フィルム(4)は、帯状製品として提供され、前記構造構成部材(2)の前記少なくとも1つの接着面(6)に被着される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記接着剤はペースト状の接着剤、特にペースト状の1成分接着剤である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの接着面(6)はコーティングされていない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記構造構成部材(2)は、押出成形材又は注型構成部材として提供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着フィルム(4)はエポキシ樹脂を含有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記接着フィルム(4)は、2つ接着層(10.1、10.2)と、前記2つの接着層(10.1、10.2)の間に配置されたキャリア層(9)と、を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
車両(20)の車両ボディ(21)のボディコンポーネント(1)であって、
前記ボディコンポーネント(1)は、前記車両ボディ(21)の構造構成部材(2)及び前記車両ボディ(21)の別の構成部材(3)を有し、前記構造構成部材(2)と前記別の構成部材(3)との間には接着フィルム(4)が配置されており、前記接着フィルム(4)には接着剤(5)が配置されており、前記接着剤(5)によって、前記構造構成部材(2)と前記別の構成部材(3)とが一緒に保持される、ボディコンポーネント(1)。
【請求項13】
前記ボディコンポーネント(1)は、請求項1から11の方法に従い製造されている、請求項12に記載のボディコンポーネント(1)。
【請求項14】
前記構造構成部材(2)は、アルミニウム構成部材であり、前記接着フィルム(4)は、前記構造構成部材(2)の少なくとも1つの接着面(6)に配置されており、前記構造構成部材(2)の露出された少なくとも1つの表面(7)には、接着フィルム(4)が配置されておらず、前記構造構成部材(2)は、前記少なくとも1つの露出された表面(7)において、アルミニウム酸化物層(8)を有し、
(a)前記構造構成部材(2)は、前記少なくとも1つの接着面(6)にはアルミニウム酸化物層(8)を有さず、又は
(b)前記少なくとも1つの接着面(6)にアルミニウム酸化物層(8)を有するが、前記露出された表面(7)に存在する前記アルミニウム酸化物層(8)は、前記少なくとも1つの接着面(6)における前記アルミニウム酸化物層(8)よりも厚い、請求項12又は13に記載のボディコンポーネント(1)。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載のボディコンポーネント(1)を少なくとも1つ備えた、車両(20)の車両ボディ(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための方法、並びに構造構成部材と、この構造構成部材に接着された別の構成部材と、を備えたボディコンポーネント、更にボディコンポーネントを備えた車両ボディに関する。
【背景技術】
【0002】
特にボディコンポーネントの構造構成部材としてのアルミニウム構成部材は、その製造後に、酸化されるまで、酸素が多い雰囲気乃至周囲環境下においては、ある程度の保持時間しか保管できないという欠点を有する。酸化時に形成されるアルミニウム酸化物層によって、構造構成部材の表面に不利な特性がもたらされる。特に、構造構成部材の表面は付着能力を失う。ボディコンポーネントのセーフティクリティカルな構造構成部材では、アルミニウム酸化物層を含むアルミニウム構成部材の構成部材表面を別の構成部材に接着させることは、もはや十分に安全かつ確実に行うことができない。
【0003】
従って、従来技術においては、相互に接着される構造構成部材及び別の構成部材から成る車両ボディのボディコンポーネントの製造時に、構造構成部材の固有の表面特性を得るために、構造構成部材は別の構成部材との接着の前にディップコーティングされる。つまりアルミニウム構成部材では、表面の酸化が低減され、別の構成部材との後の接着接続のための、アルミニウム構成部材の表面の良好な付着特性が得られる。
【0004】
構造構成部材をディップコーティングすることによって表面特性を得ることは非常に効果的であるが、しかしながら時間も費用も掛かる。この場合、ボディコンポーネントが使用されている、組み立てられた車両(ホワイト)ボディのディップコーティングは、いずれにせよ遅くとも車両メーカのもとで行われる。これによって、構造構成部材は、2回同じようにディップコーティングされる。つまり1回は別の構成部材との接着前に、もう1回は車両(ホワイト)ボディの組み立て後にディップコーティングされる。このプロセスは、冗長的であって、従って既にコストが掛かるだけでなく、ディップコーティングに必要とされる1つ又は複数のディップ槽における、ディップコーティングに必要とされる化学物質に起因して、環境に更なる負荷を強いる。
【0005】
しかしながら、アルミニウムから成る構造構成部材では酸化までの保持時間が短いことに起因して、構造構成部材が別の構成部材と接着されるまでにその保持時間を超過することを容易に回避できないため、従来技術における製造プロセスではディップコーティングを省略することができない。このために、構造構成部材は多くの場合、車両メーカ以外のサプライヤによって製造され、別の構成部材との接着のために、若しくはボディコンポーネントの製造のために車両メーカに供給される。続いて、車両メーカは、複数のボディコンポーネントを接着によって組み立てる。その後になって漸く、車両メーカは、ボディコンポーネントと共に車両ボディ全体を組み立て、ディップコーティングを行う。車両メーカが構造構成部材を別の構成部材と接着するまで、とりわけ、サプライヤから車両メーカまでの輸送に起因して多くの時間が掛かる。構造構成部材の保持時間を維持することはできず、アルミニウムから成る構造構成部材は、先行してディップコーティングが行われなければ酸化し、その良好な付着特性を失うことになる。
【0006】
従って、本発明の課題は、構造構成部材及び別の構成部材から成るボディコンポーネントの製造時の前述の欠点を回避することであり、特に、廉価で環境に優しいやり方で衝突安全性、ボディ剛性等の車両ボディの要求を満たす、車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための方法を提供することである。
【0007】
前述の課題は、請求項1の特徴を備えた車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための方法、並びに請求項12の特徴を備えたボディコンポーネント、及び請求項15の特徴を備えた車両ボディによって解決される。本発明の更なる特徴及び詳細は、従属請求項、明細書及び図面から明らかになる。この際、本発明による方法と関連させて説明する特徴及び詳細は、勿論、本発明によるボディコンポーネントとの関係、並びに本発明による車両ボディとの関係においてもそれぞれ該当し、またその逆も該当するので、本発明の個々の態様についての開示に関して、常に相互的な関係にある、乃至相互的な関係にすることができる。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、上記の課題は、車両の車両ボディのボディコンポーネントを製造するための以下のステップを有する方法によって解決される:
(a)ボディコンポーネントの、接着フィルムが設けられた構造構成部材を準備するステップであって、接着フィルムは構造構成部材の少なくとも1つの接着面に被着されている、ステップ、
(b)ボディコンポーネントの別の構成部材を準備するステップ、
(c)接着剤を接着フィルムに塗布するステップ、
(d)接着フィルムが設けられた構造構成部材を、接着フィルム上に塗布された接着剤を用いて、別の構成部材と接着させることによって、別の構成部材と接着された、接着フィルムが設けられた構造構成部材としてのボディコンポーネントを得るステップと、を含む。
【0009】
従って本発明による方法によって、ボディコンポーネントを製造するために、別の構成部材との構造構成部材の確実な接着が達成され、その際に、構造構成部材をが前に付加的にディップコーティングする必要はない。ディップコーティングの代わりに、接着フィルムが、別の構成部材との接着のための良好な付着特性の提供に用いられる。これによって、別の構成部材が、構造構成部材自体の少なくとも1つの接着面ともはや接着されずに、接着フィルムを用いて接着されるか、若しくは接着フィルムの表面において、少なくとも1つの接着面の位置において接着剤を用いて接着される。これによって、ボディコンポーネントを製造するために構造構成部材を準備するコストが削減され、それと共に、車両ボディの製造コストが総じて削減される。更には、構造構成部材のみのディップコーティングを省略できるので、ボディコンポーネント、ひいては車両ボディの製造の環境バランスが改善される。
【0010】
少なくとも1つの接着面は、少なくとも2つ以上の接着面を含むことができる。特に、構造構成部材は、3から30まで、更には特に5から20までの接着面を有することができる。典型的には、構造構成部材は、10の接着面を有することができる。
【0011】
接着剤は、構造構成部材を別の構成部材と接着するために、接着フィルムの表面全体に、又は接着フィルムの一部の表面に塗布することができる。
【0012】
構造構成部材の準備は、構造構成部材の製造を含むことができる。更に、別の構成部材の準備は、別の構成部材の製造を含むことができる。
【0013】
構造構成部材は、金属から成るものであっても良いし、金属性であっても良い。更に、別の構成部材は、金属から成るものであって良いし、金属性であっても良い。別の構成部材は、例えば、鋼薄板であっても良い。鋼薄板として形成されていることで、例えば、車両ボディのライナを形成することができる。しかしながら、別の構成部材は例えば、プラスチック等から成る複合材料であっても良い。
【0014】
構造構成部材は、アルミニウム構成部材であっても良い。換言すれば、構造構成部材は、アルミニウム乃至アルミニウム合金から成るものであっても良いし、少なくともアルミニウムを含有しても良い。アルミニウム構成部材では、表面特性が変化するまでの保持時間が短く、特に付着特性が酸化に起因して劣化する。
【0015】
この際、接着フィルムが設けられた構造構成部材の、周囲環境に対して露出された少なくとも1つの表面が酸化され、その結果、露出された少なくとも1つの表面にアルミニウム酸化物層が形成されるか、アルミニウム酸化物層が拡大する恐れがある。露出された少なくとも1つの表面は、接着フィルムが配置されていない、若しくは接着面ではない構造構成部材の表面である。これに対して、別の構成部材との接着のために設けられている表面だけが接着面となる。相応に、露出された複数の表面が構造構成部材に存在していても良い。露出された少なくとも1つの表面は、酸素が豊富な周囲環境に対して露出されているので、その少なくとも1つの露出された表面は酸化する。露出された少なくとも1つの表面は、構造構成部材を別の構成部材に接着させるために使用されないので、従って、露出された表面を酸化に対して保護すること、つまり例えば、同様に接着フィルムを設けること、又は従来技術のようにコーティングすることを意図的に省略することができる。これによって、保持時間中に、露出された少なくとも1つの表面における構造構成部材の良好な付着特性を意図的に放棄することができる。後に、最終的には、構造構成部材の露出された少なくとも1つの表面も、車両ボディ乃至車両ホワイトボディと共にディップ槽においてコーティングすることができる。
【0016】
この場合、構造構成部材が少なくとも1つの接着面においてアルミニウム酸化物層を有しないようにすることができるか、又は構造構成部材の露出された少なくとも1つの表面におけるアルミニウム酸化物層を、少なくとも1つの接着面におけるアルミニウム酸化物層よりも厚くすることができる。このことは、構造構成部材の製造直後又は製造後間も無く(例えば最大で3時間、特に最大で1時間又は最大で30分)、又は酸素が少ない又は酸素が無い雰囲気への収容後に、少なくとも1つの接着面の上に接着フィルムを覆うことによって達成することができる。これによって、少なくとも1つの接着面における接着フィルムの非常に良好な付着特性を達成することができる。何故ならば、接着面は、接着フィルムを被着させる時点においては、未だ酸化していないか、又は極僅かにしか酸化していないからである。
【0017】
本方法は更に、接着フィルムが設けられた構造構成部材を準備するために、構造構成部材を準備するステップと、準備された構造構成部材の少なくとも1つの接着面に接着フィルムを被着させ、接着フィルムが設けられた構造構成部材を得るステップと、を有する。接着フィルムの被着は、特に機械により行うことができ、更には、特に自動的に、例えばロボットにより行うことができる。構造構成部材への別の構成部材の接着は、車両ボディのメーカ乃至車両の車両メーカのもとで行うことができるが、その一方で、接着フィルムの製造及び/又は被着はサプライヤのもとで行うことができる。
【0018】
この場合、接着フィルムを帯状製品として提供し、構造構成部材の少なくとも1つの接着面に被着させることができる。接着フィルムの被着は、特に機械により行うことができ、更には、特に自動的に、例えばロボットにより行うことができる。相応に、接着フィルムを帯状製品として提供し、少なくとも1つの接着面又は複数の接着面に合わせて切断することができる。帯状製品は、例えばロールから巻き出すことができる。代替的に、接着フィルムを、少なくとも1つの接着面のための少なくとも1つのカッティング部の形態で、又は各接着面のための複数のカッティング部の形態で提供することができる。
【0019】
更に、接着フィルムを、構造構成部材の少なくとも1つの接着面への被着後に熱硬化させることができる。相応に、この場合、接着フィルムは熱硬化可能な接着剤である。熱硬化は、例えば、炉において行うことができるか、又は誘導的に行うことができる。
【0020】
更に、接着剤がペースト状の接着剤、特にペースト状の1成分接着剤であっても良い。接着剤は、接着フィルムとは異なる接着剤であっても良いし、他の化学組成又は基剤を有しても良い。接着剤として、相応に、それ自体公知のボディ接着剤を選択することができる。
【0021】
また、少なくとも1つの接着面がコーティングされていなくても良い。特に、構造構成部材をコーティングされていない構造構成部材として提供すること、若しくは構造構成部材への接着フィルムの被着前に構造構成部材がコーティングされていないことも可能である。これによって、構造構成部材の表面を酸化から保護することが意図的に省略され、それによって、この酸化に付随する欠点、例えば増加するコスト及び環境への負荷を回避することができ、また接着フィルムにのみ限定することができる。
【0022】
この場合、構造構成部材、特にボディコンポーネントを一度だけ、車両ボディと共にディップコーティングすることが可能であり、特に陰極ディップコーティングすることが可能である。この場合、車両ボディ乃至車両ホワイトボディは、全体として1つ又は複数のディップ槽に浸漬されるので、必然的に、構造構成部材も露出された表面においてコーティングされる。これに対して接着面は、接着フィルムによって覆われたままであり、また接着フィルム自体も、その上に別の構成部材が接着されている。従って、接着面はコーティングされない。
【0023】
また、構造構成部材の少なくとも1つの接着面への接着フィルムの被着と、ボディコンポーネントのディップコーティングとの間に、少なくとも12時間、特に少なくとも24時間又は少なくとも48時間の期間を置くことも可能である。これによって、その間の期間を輸送に利用することができるようになる。これによって、接着フィルムをサプライヤのもとで接着面に被着させることができ、その一方で、ディップコーティングは、輸送後に、また車両ボディが製造された後になった段階で車両メーカのもとで行われる。
【0024】
構造構成部材が押出成形材又は注型構成部材として提供されても良い。構造構成部材は、この場合、強い力に耐えることができるか、相応の力作用時に、例えば衝突時に僅かにしか変形しない。
【0025】
それ以外では、接着フィルムはエポキシ樹脂を含有しても良い。特に、接着フィルムは主としてエポキシ樹脂を含有しても良く、換言すれば、接着フィルムはエポキシベースであっても良い。
【0026】
更に、接着フィルムは2つ接着層と、それら2つの接着層の間に配置されたキャリア層と、を有することができる。その種の接着フィルムは、構造接着剤フィルムとも称することができる。接着層は、接着作用をもたらすことができる。キャリア層は接着層と一体化することができ、また接着フィルムを補強することができる。キャリア層は、網状構造を有することができる。網状構造を有するキャリア層は、例えば、織物から成るものであっても良い。一般的に、接着フィルムは、接着層においてシートによって覆うことができ、このシートによって、不所望な接着が回避される。シートを引き剥がした後に漸く、接着剤の炉時間が開始されるか、若しくは接着フィルムを続けて構造構成部材に接着させることができる。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、上記の課題は、車両の車両ボディのボディコンポーネントによって解決され、このボディコンポーネントは、車両ボディの構造構成部材及び車両ボディの別の構成部材を有し、構造構成部材と別の構成部材との間には接着フィルムが配置されており、また接着フィルムには接着剤が配置されており、この接着剤によって、構造構成部材及び別の構成部材が一緒に保持される。
【0028】
従って、本発明の第2の態様によるボディコンポーネントは、本発明の第1の態様による方法に関して詳細に説明した利点と同じ利点を有する。
【0029】
この場合、ボディコンポーネントは、本発明の第1の態様による方法に従い製造することができる。
【0030】
更に、構造構成部材は、アルミニウム構成部材であり、接着フィルムは、構造構成部材の少なくとも1つの接着面において接着フィルムが配置されており、構造構成部材の露出された少なくとも1つの表面には、接着フィルムが配置されておらず、構造構成部材は、少なくとも1つの露出された表面において、アルミニウム酸化物層を有し、(a)構造構成部材は、少なくとも1つの接着面において、アルミニウム酸化物層を有さず、又は(b)少なくとも1つの接着面において、アルミニウム酸化物層を有するが、露出された表面に存在するアルミニウム酸化物層は、少なくとも1つの接着面におけるアルミニウム酸化物層よりも厚い。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、上記の課題は、第2の態様による少なくとも1つのボディコンポーネントを備えた車両の車両ボディによって解決される。
【0032】
車両ボディのボディコンポーネントを製造するための本発明による方法、本発明によるボディコンポーネント、並びに本発明による車両ボディを、以下では、図面に基づき例示的かつ概略的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施例によるボディコンポーネントの概略断面図を示す。
図2図1に示したボディコンポーネントの別の概略断面図を示す。
図3】本発明の一実施例による車両ボディを備えた車両の側面図を示す。
図4】本発明の一実施例による、図1及び図2に示したボディコンポーネントを製造するための方法における各方法ステップの経過の概略図を示す。
【0034】
同一の機能及び作用を有する要素には、図1から図4それぞれにおいて、同一の参照符号を付している。
【0035】
図1は、車両20の車両ボディ21(図3を参照されたい)のためのボディコンポーネント1の概略的な断面図を示す。ボディコンポーネント1は、車両ボディ21の可視領域又は車両ボディ21の不可視領域に配置することができる。
【0036】
図1の断面図には、ボディコンポーネント1の構成部材及び例示的な配置が図示されている。ボディコンポーネント1は、構造構成部材2を有する。ここで、構造構成部材2は、アルミニウム構成部材である。構造構成部材2は、捩り耐性のある構成部材であり、ボディコンポーネント1において、車両ボディ21における安全技術的な衝突要求に対応するために高い剛性を提供する。
【0037】
更に、ボディコンポーネント1は、別の構成部材3を有する。別の構成部材3は、以下において詳細に説明するような接着によって構造構成部材2と結合されている。接着は、同様に、車両ボディ21の安全技術的な衝突要求に対応していなければならない。即ち、ある程度の最小負荷に耐えなければならず、またその際に剥がれてはならない。別の構成部材3は同様に、例えばアルミニウムから成る構造構成部材2であっても良いが、しかしながら金属薄板、例えば鋼薄板、特に車両ボディ21のライナのようなより簡単な構成部材であっても良い。
【0038】
接着は、エポキシベースの接着フィルム4.1、4.2が、構造構成部材2の異なる接着面6に、ここでは例示的であるが10個の接着面6に被着されているように形成されている。ただし図においては、1つの接着面6のみが図示されている。接着フィルム4.1、4.2は、この実施例においては例示的に、帯状製品から巻き出された2つの部分乃至接着フィルム片として示されている。しかしながら、接着フィルム4は、ただ1つの接着フィルム部分乃至接着フィルム片であっても良いし、2つより多くの部分であっても良い。特に、各接着面6につき、接着フィルム4のそれぞれ1つの部分が被着されても良い。接着フィルム4.1、4.2の部分間には、製造に起因する公差間隔が存在する。接着フィルム4.1、4.2のこれらの部分は、熱硬化されている。
【0039】
接着フィルム4は、構造構成部材2の製造直後又は製造後間も無く接着面6に被着されているので、接着面6における構成部材2のアルミニウムが酸化する可能性はないか、又は酸化しても極僅かでしか有り得ない。これによって、接着フィルム4.1、4.2と構成部材2との間の良好な付着作用を達成することができている。
【0040】
アルミニウム酸化物層8(図2を参照されたい)が接着面6に形成されていた場合、又はアルミニウム酸化物層8が比較的厚い場合、その上における接着フィルム4.1、4.2の付着が悪くなるか、若しくは安全性が重要な衝突要求を満たせるようには、接着剤5を用いて別の構成部材3を接着フィルム4.1、4.2に固定できない恐れがある。
【0041】
これに対して、接着フィルム4.1、4.2は、構造構成部材2に良好に付着され、更に、接着フィルム4.1、4.2の表面において構造構成部材2を別の構成部材3と接着させるための良好な付着特性を提供する。これによって、構造構成部材2は、接着フィルム4.1、4.2を用いて、またその上に配置されている接着剤5を用いて、ここでは1成分接着剤を用いて、別の構成部材3に接着されている。そのようにして製造されたボディコンポーネント1自体は、車両ボディ21の別のボディコンポーネント1に組み付けることができるか、若しくは接合させることができ、またそれによって、構造構成部材2と別の構成部材3との間の接合接続に関して、必要とされる衝突要求が満たされる。
【0042】
従来技術とは異なり、構造構成部材2は、別の構成部材3との接合前に、別個にディップコーティングする必要はない。また、構造構成部材2のアルミニウムは接着面6において酸化し得ないので、構造構成部材2をサプライヤから購入して、ボディメーカ又は車両メーカのもとで初めて別の構成部材3に接合させることができる。その代わりに、接着フィルム4の表面は、接着剤5を用いて別の構成部材3と接着させるために利用される。更には、構造構成部材2を後の時点において、車両ボディ21全体と共に、陰極ディップ槽においてディップコーティングすることができる。
【0043】
図2は、図1に示したボディコンポーネント1の別の断面図を示す。図2には、接着面6の他に、周囲環境に対して露出されている表面7も構造構成部材2に設けられていることが示されている。それらの露出された表面7は、接着フィルム4を有さず、またディップコーティングもされない。従って、露出された表面7は、サプライヤから車両メーカへの道程において酸化し、それによって、露出された表面7にはアルミニウム酸化物層8が形成される。しかしながらこのことは、別の構成部材3における構造構成部材2の付着にとっては不利ではない。何故ならば、構造構成部材2は、接着面6を覆う接着フィルム4の面においてのみ別の構成部材3と接着されるからである。そこでは、付着特性が、接着フィルム4に基づき、露出された表面7におけるアルミニウム酸化物層8における付着特性よりも良好である。
【0044】
更に図2は、接着フィルム4の構造を示す。接着フィルム4は、網状のキャリア層9と、その上下に設けられている接着層10.1、10.2と、を有する。接着フィルム4のこの構造は、構造構成部材2における良好な付着をもたらし、また同様に、接着剤5についての良好な付着ももたらす。
【0045】
図4は、図3の車両ボディ21において使用されるような、図1及び図2に示したボディコンポーネント1を製造するための方法における方法ステップの経過を概略的に示す。
【0046】
第1の方法ステップ31においては、構造構成部材2が製造される。構造構成部材2のこの製造は、車両ボディ21のメーカ若しくは車両20の車両メーカのサプライヤのもとで行われる。例えば、構造構成部材2は、押出成形によって、アルミニウムから成る押出成形材として製造することができる。代替的に、構造構成部材2は、注型による注型構成部材として製造することができる。
【0047】
第2の方法ステップ32においては、帯状製品として提供される接着フィルム4が、構造構成部材2の接着面6に被着される。このことは、構造構成部材2の製造直後に行われるか、又は製造後間も無く行われ、それによって、接着面6にアルミニウム酸化物層8は形成されないか、又は形成されたとしても可能な限り小さいアルミニウム酸化物層8しか形成されない。これによって、接着面6における接着フィルム4の良好な付着を保証することができる。相応に、この第2の方法ステップ32は、好適には同様にサプライヤのもとで行われる。
【0048】
第3の方法ステップ33においては、接着フィルム4が熱硬化される。このことは、例えば、接着フィルム4が設けられた構造構成部材2が入れられた炉内で行うことができる。代替的に、このことは、接着面6における誘導的及び局所的な加熱によって行うことができる。
【0049】
第4の方法ステップ34においては、熱硬化された接着フィルム4を備えた構造構成部材2が、車両ボディ21のメーカ乃至車両20の車両メーカに輸送され、それらのメーカに提供される。ここで長い期間が経過する可能性がある。この際、構造構成部材2において露出された表面7が酸化する可能性がある。もっとも、構造構成部材2における接着面6には、硬化された接着フィルム4が設けられているので、構造構成部材2は更に、良好な付着作用、即ち接着面6において硬化された接着フィルム4において付着作用を有する。
【0050】
第5の方法ステップ35においては、ボディコンポーネント1の別の構成部材3が、車両ボディ21のメーカ乃至車両20の車両メーカに提供され、この別の構成部材3自体は他のサプライヤに由来するものであっても良い。
【0051】
第6の方法ステップ36においては、構造構成部材2が接着フィルム4において接着剤5を用いて別の構成部材3に接着される。つまり、ボディコンポーネント1は、別の構成部材3に接着された、接着フィルム4が設けられた構造構成部材2として得られる。
【0052】
第7の方法ステップ37においては、構造構成部材2及び別の構成部材3から成るボディコンポーネント1が最終的に別のコンポーネントに接合されて、車両ボディ21となる。
【0053】
第8の方法ステップ38においては、最終的に、1つ又は複数のディップ槽においてボディコンポーネント1を備えた車両ボディ21の陰極ディップコーティングが行われる。この際、露出された表面7においてそれまでの期間に形成されたアルミニウム酸化物層8が一緒にコーティングされる。このことは、構造構成部材2の露出された表面7の最初のコーティングを表す。
【符号の説明】
【0054】
1 ボディコンポーネント
2 構造構成部材
3 別の構成部材
4 接着フィルム
5 接着剤
6 接着面
7 露出された表面
8 アルミニウム酸化物層
9 キャリア層
10 接着層
20 車両
21 車両ボディ
31~38 方法ステップ
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】