(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】FGFR4阻害剤の経口製剤によるがんの治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230731BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230731BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230731BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230731BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230731BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230731BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230731BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230731BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/12
A61K9/48
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569143
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020033291
(87)【国際公開番号】W WO2021230886
(87)【国際公開日】2021-11-18
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 2019年5月15日 掲載アドレス https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2019.37.15_suppl.4095 〔刊行物等〕 公開日 2019年6月3日 集会名 第55回米国臨床腫瘍学会年次総会
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ジャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウー, ナタリー エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD25
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE32
4C076FF31
4C076FF63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、FGFR4の阻害薬を含む医薬組成物、及びFGFR4阻害薬を使用した癌療法の方法に関する。詳細には、本明細書には、阻害薬のそれを必要としているヒト対象への有効且つ安全な投与を可能にする定義付けられた薬物動態(PK)プロファイルを有するH3B-6527の投薬が記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態であって、
前記式Iの化合物が、構造:
【化1】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約10ng/mL~約1000ng/mLの式Iの平均C
maxを実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項2】
式Iの前記平均C
maxが、約100ng/mL~約400ng/mLである、請求項1に記載の経口投薬形態。
【請求項3】
式Iの前記平均C
maxが、約100ng/mL~約300ng/mLである、請求項2に記載の経口投薬形態。
【請求項4】
式Iの前記平均C
maxが、
100ng/mLの80%~125%から
400ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項1に記載の経口投薬形態。
【請求項5】
約0.5時間~約8時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の経口投薬形態。
【請求項6】
前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約6時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項5に記載の経口投薬形態。
【請求項7】
前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約4時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項6に記載の経口投薬形態。
【請求項8】
前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約3時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項7に記載の経口投薬形態。
【請求項9】
約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む、請求項6に記載の前記経口投薬形態。
【請求項10】
約500~約1400mgの式Iの総当量を含む、請求項6に記載の経口投薬形態。
【請求項11】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態であって、
前記式Iが、構造:
【化2】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約50h・ng/mL~約5700h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-24を実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項12】
前記平均AUC
0-24が、約100h・ng/mL~約1200h・ng/mLである、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項13】
前記平均AUC
0-24が、
100h・ng/mLの80%~125%から
1200h・ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項14】
約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項15】
約600mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項16】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む、ヒト対象への投与用の経口投薬形態であって、
前記式Iが、構造:
【化3】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約1時間~約6時間の前記投薬の式Iの平均t
1/2を実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項17】
前記平均t
1/2が、約1時間~約5時間である、請求項16に記載の経口投薬形態。
【請求項18】
前記平均t
1/2が、約2時間~約3時間である、請求項17に記載の経口投薬形態。
【請求項19】
約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む、請求項16に記載の経口投薬形態。
【請求項20】
約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項16に記載の経口投薬形態。
【請求項21】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態であって、
前記式Iが、構造:
【化4】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約400h・ng/mL~約1200h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-12を実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項22】
前記平均AUC
0-12が、約400h・ng/mL~約700h・ng/mLである、請求項21に記載の経口投薬形態。
【請求項23】
前記平均AUC
0-12が、
400h・ng/mLの80%~125%から
1200h・ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項21に記載の経口投薬形態。
【請求項24】
約500mg~約700mgの式Iの総当量を含む、請求項21に記載の経口投薬形態。
【請求項25】
式I又は薬学的に許容可能な塩、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、コポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを含む内相を含むカプセルである、請求項1、11、16、及び21のいずれか一項に記載の経口投薬形態。
【請求項26】
前記カプセルが、ステアリン酸マグネシウムを含む外相を更に含む、請求項25に記載の経口投薬形態。
【請求項27】
前記内相が、ヒプロメロースカプセル中に収容される、請求項25に記載の経口投薬形態。
【請求項28】
遊離塩基型の式Iを含む、請求項25に記載の経口投薬形態。
【請求項29】
ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、
i)治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態を投与することを含む方法において、
前記式Iが、構造:
【化5】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;
前記治療有効量が、約300mg~約2000mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、
前記経口投薬形態が、約10ng/mL~約1000ng/mLの式Iの平均C
maxを有する、方法。
【請求項30】
式Iの前記平均C
maxが、約100ng/mL~約400ng/mLである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
式Iの前記平均C
maxが、約100ng/mL~約300ng/mLである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
式Iの前記平均C
maxが、
100ng/mLの80%~125%から
400ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記投薬形態が、約0.5時間~約8時間の式Iの前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記投薬形態が、約2時間~約6時間の前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記投薬形態が、約2時間~約4時間の前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記投薬形態が、約2時間~約3時間の前記平均C
maxの平均t
maxを有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記投薬形態が、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記投薬形態が、約1000~約1400mgの式Iの総当量を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、
i)治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態を1日1回投与することを含む方法において、
前記式Iが、構造:
【化6】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;
前記治療有効量が、約300mg~約2000mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、
前記経口投薬形態が、約50h・ng/mL~約5700h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-24を有する、方法。
【請求項40】
前記平均AUC
0-24が、約100h・ng/mL~約1200h・ng/mLである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記平均AUC
0-24が、
100h・ng/mLの80%~125%から
1200h・ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記投薬形態が、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記投薬形態が、約1000mg~約1400mgの式Iの総当量を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、
i)治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態を投与することを含む方法において、
前記式Iが、構造:
【化7】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;
前記治療有効量が、約300mg~約2000mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、
前記経口投薬形態が、約1時間~約6時間の前記投薬形態の式Iの平均t
1/2を有する、方法。
【請求項45】
前記平均t
1/2が、約1時間~約5時間である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記平均t
1/2が、約2時間~約3時間である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記投薬形態が、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記投薬形態が、約1000mg~約1400mgの式Iの総当量を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、
i)治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態を1日2回投与することを含む方法において、
前記式Iが、構造:
【化8】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;
前記治療有効量が、約500mg~約700mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、
前記経口投薬形態が、約400h・ng/mL~約1200h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-12を有する、方法。
【請求項50】
前記平均AUC
0-12が、約400h・ng/mL~約700h・ng/mLである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記平均AUC
0-12が、
400h・ng/mLの80%~125%から
1200h・ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記経口投薬形態が、式I又は薬学的に許容可能な塩、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、コポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを含む内相を含むカプセルである、請求項29、39、44及び49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記カプセルが、ステアリン酸マグネシウムを含む外相を更に含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記内相が、ヒプロメロースカプセル中に収容される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
遊離塩基型の式Iを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記癌が肝細胞癌である、請求項29、39、44及び49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記癌が、FGFR4又はFGF19を発現する、又は過剰発現する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記癌が横紋筋肉腫である、請求項29、39、44及び49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記癌が、FGFR4又はFGF19を発現する、又は過剰発現する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記経口投薬形態が、絶食状態の前記ヒトに投与される、請求項29、39、44及び49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記経口投薬形態が、飽食状態の前記ヒトに投与される、請求項29、39、44及び49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
適用されない。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)シグナル伝達の変化は、肝細胞癌(HCC)及び肝内胆管癌(ICC)患者の転帰と相関することが示されている。Cheng AL.Eur J Cancer.2012;48(10):1452-1465;及びYoo C.Oncotarget.2017;8(24):38592-38601。線維芽細胞成長因子19(FGF19)は、腸から分泌されるタンパク質ホルモンであり、肝臓でFGFR4を通じて胆汁酸合成を調節する働きをする。FGFR4は、FGF19の主要な受容体であり、肝臓で高発現する。ヒトにおけるゲノム研究及びマウスにおける機能研究によれば、FGF19はHCC及びICCにおける癌遺伝子として関係があるとされている。Sawey ET.Cancer Cell.2011;19(3):347-358;及びSia D.Gastroenterology.2013;144(4):829-840。ゲノム研究では、一部のHCC(約30%)においてFGF19が過剰発現することが示されており、この過剰発現がFGFR4及びその下流シグナル伝達経路を過剰に活性化させるために、HCC/ICCにおける腫瘍成長の亢進につながることが仮定される。FGFR4の標的化は、FGF19シグナル伝達の変化を伴うHCC/ICCにおいて治療利益があり得る。FGFR4の標的化は、FGF19シグナル伝達の変化を伴う肉腫、特に横紋筋肉腫において治療利益があり得る。
【0003】
最近になって、式Iの化合物が、FGFR4の強力で選択的な阻害薬であることが発見され、同定された:
【化1】
【0004】
この化合物については、米国特許第9,434,697号明細書に記載されている。その様々な結晶形態については、米国特許出願公開第2018/0093972号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
式Iは、インビトロ及びインビボモデルで有効であることが示されているが、治療を必要としているヒト癌患者に対して式Iが投与されるべき方法は、いまだ確定されていない。従って、式Iの薬物動態(以下、PK)プロファイルを決定することができるように、阻害薬をそれを必要としているヒト対象に有効且つ安全に投与することが可能となるであろうH3B-6527の製剤及び投薬レジメンを考案する必要がある。式IのPKプロファイルが推定されれば、式Iの治療的用量又は量を決定することができ、癌治療方法に用いることができる。HCC及び肉腫患者の有効性及び安全性と相関するPKプロファイルが同定されると、それらの癌に対するヒト治療方法においてそれが一般に利用可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態は、式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態であって、前記式Iの化合物が、構造
【化2】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;
及び前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約10ng/mL~約1000ng/mLの式Iの平均C
maxを実現するように製剤化される、経口投薬形態を提供し得る。更なる実施形態において、式Iの平均C
maxは、約100ng/mL~約400ng/mLである。更なる実施形態において、式Iの前記平均C
maxは、約100ng/mL~約300ng/mLである。更なる実施形態において、式Iの前記平均C
maxは、100ng/mLの80%~125%から400ng/mLの80%~125%の範囲にある。更なる実施形態において、投薬形態は、約0.5時間~約8時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される。更なる実施形態において、投薬形態は、前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約6時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される。更なる実施形態において、投薬形態は、前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約4時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される。更なる実施形態において、投薬形態は、前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約3時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される。更なる実施形態において、投薬形態は、約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む。更なる実施形態において、投薬形態は、約500~約1400mgの式Iの総当量を含む。
【0007】
更なる実施形態は、式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態であって、前記式Iが、構造:
【化3】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;
及び前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約50h・ng/mL~約5700h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-24を実現するように製剤化される、経口投薬形態を提供する。更なる実施形態において、前記平均AUC
0-24は、約100h・ng/mL~約1200h・ng/mLである。更なる実施形態において、前記平均AUC
0-24は、100h・ng/mLの80%~125%から1200h・ng/mLの80%~125%の範囲にある。更なる実施形態において、前記投薬形態は、約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む。更なる実施形態において、前記投薬形態は、約600mg~約1000mgの式Iの総当量を含む。
【0008】
更なる実施形態は、式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、ヒト対象への投与用の経口投薬形態であって、前記式Iの化合物が、構造:
【化4】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約1時間~約6時間の前記投薬の式Iの平均t
1/2を実現するように製剤化される、経口投薬形態を提供する。更なる実施形態において、前記平均t
1/2は、約1時間~約5時間である。更なる実施形態において、前記平均t
1/2は、約2時間~約3時間である。更なる実施形態において、投薬形態は、約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む。なおも更なる実施形態において、投薬形態は、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む。
【0009】
更なる実施形態は、式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態であって、前記式Iの化合物が、構造:
【化5】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約400h・ng/mL~約1200h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-12を実現するように製剤化される、経口投薬形態を提供する。一部の実施形態において、前記平均AUC
0-12において、約400h・ng/mL~約700h・ng/mLである。一部の実施形態において、平均AUC
0-12は、400h・ng/mLの80%~125%から1200h・ng/mLの80%~125%の範囲にある。一部の実施形態において、上記に報告されるとおり、投薬形態は約500mg~約700mgの式Iの総当量を含む。
【0010】
別の実施形態は、本明細書に記載される薬物動態値を実現する手段を有する本明細書に記載されるとおりの投薬形態を含む。
【0011】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、式I又は薬学的に許容可能な塩、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、コポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを含む内相を含むカプセルである。一部の実施形態において、カプセルは、ステアリン酸マグネシウムを含む外相を更に含む。一部の実施形態において、内相は、ヒプロメロースカプセル中に収容される。一部の実施形態は、遊離塩基型の式Iを含む。
【0012】
更なる実施形態は、ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態を投与することを含む方法において、前記式Iが、構造:
【化6】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;前記治療有効量が、約300mg~約2000mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、前記経口投薬形態が、約10ng/mL~約1000ng/mLの式Iの平均C
maxを有する、方法を提供する。一部の実施形態において、式Iの平均C
maxは、約100ng/mL~約400ng/mLである。一部の実施形態において、式Iの平均C
maxは、約100ng/mL~約300ng/mLである。一部の実施形態において、式Iの平均C
maxは、100ng/mLの80%~125%から400ng/mLの80%~125%の範囲にある。一部の実施形態において、投薬形態は、約0.5時間~約8時間の式Iの前記平均C
maxの平均t
maxを有する。一部の実施形態において、投薬形態は、約2時間~約6時間の前記平均C
maxの平均t
maxを有する。一部の実施形態において、投薬形態は、約2時間~約4時間の前記平均C
maxの平均t
maxを有する。一部の実施形態において、投薬形態は、約2時間~約3時間の前記平均C
maxの平均t
maxを有する。更なる実施形態において、投薬形態は、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む。更なる実施形態において、投薬形態は、約1000~約1400mgの式Iの総当量を含む。
【0013】
更なる実施形態は、ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態を1日1回投与することを含む方法において、前記式Iが、構造:
【化7】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;前記治療有効量が、約300mg~約2000mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、前記経口投薬形態が、約50h・ng/mL~約5700h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-24を有する、方法を提供する。更なる実施形態において、前記平均AUC
0-24は、約100h・ng/mL~約1200h・ng/mLである。更なる実施形態において、前記平均AUC
0-24は、100h・ng/mLの80%~125%から1200h・ng/mLの80%~125%の範囲にある。更なる実施形態において、投薬形態は、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む。なおも更なる実施形態において、投薬形態は、約1000mg~約1400mgの式Iの総当量を含む。
【0014】
更なる実施形態は、ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態を投与することを含む方法において、前記式Iが、構造:
【化8】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;前記治療有効量が、約300mg~約2000mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、前記経口投薬形態が、約1時間~約6時間の前記投薬形態の式Iの平均t
1/2を有する、方法を提供する。更なる実施形態において、前記平均t
1/2は、約1時間~約5時間である。なおも更なる実施形態において、前記平均t
1/2は、約2時間~約3時間である。更なる実施形態において、投薬形態は、約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む。なおも更なる実施形態において、投薬形態は、約1000mg~約1400mgの式Iの総当量を含む。
【0015】
更なる実施形態は、ヒト対象の癌を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態を1日2回投与することを含む方法において、前記式Iが、構造:
【化9】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;前記治療有効量が、約500mg~約700mgの式Iの範囲にある用量であり;及び、前記経口投薬形態が、約400h・ng/mL~約1200h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-12を有する、方法を提供する。更なる実施形態において、前記平均AUC
0-12は、約400h・ng/mL~約700h・ng/mLである。更なる実施形態において、平均AUC
0-12は、400h・ng/mLの80%~125%から1200h・ng/mLの80%~125%の範囲にある。
【0016】
本明細書に報告される方法の更なる実施形態において、経口投薬形態は、式I又は薬学的に許容可能な塩、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、コポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを含む内相を含むカプセルである。更なる実施形態において、前記カプセルは、ステアリン酸マグネシウムを含む外相を更に含む。更なる実施形態において、前記内相は、ヒプロメロースカプセル中に収容される。更なる実施形態において、カプセルは、遊離塩基型の式Iを含む。更なる実施形態において、癌は肝細胞癌である。更なる実施形態において、癌は肉腫である。更なる実施形態において、癌は横紋筋肉腫である。更なる実施形態において、癌は、FGFR4又はFGF19を発現する、又は過剰発現する。
【0017】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、絶食状態のヒトに投与される。一部の実施形態において、経口投薬形態は、飽食状態のヒトに投与される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例2に更に報告するとおりの、H3B-6527の平均血漿濃度経時的プロファイル(サイクル1、8日目)を示す。予備的PK分析は、絶食状態で1000mg QDまで用量に伴いH3B-6527血漿曝露量が増加したことを示している。BIDスケジュールでは、より高い最小血漿濃度が維持された。
【
図2】以下の実施例2に一層詳しく報告するとおりの、H3B-6527治療の腫瘍奏効及び継続期間を示す。フル・アナリシス・セットでのHCC患者における300~1400mg QDのH3B-6527による治療の継続期間を示す。CR=完全奏効、PR=部分奏効、SD=病勢安定、PD=病勢進行、及びNE=未評価。
【
図3】実施例2に報告するとおりの、標的病変の直径の合計の変化率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書における冠詞「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」の使用は、本明細書に特に指示されない限り、又は文脈上明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。例えば、用語「ある崩壊剤」は、本明細書に記載される製剤に含まれる又はそれにおける使用に好適な1つ以上の崩壊剤を指す。同様に、用語「ある治療量」は、投薬形態に含まれる又はそれにおける使用に好適な1つ以上の治療量を指す。
【0020】
用語「~を含む(comprising)」、「~を有する(having)」、「~を包含する(including)」、及び「~を含有する(containing)」は、特に注記しない限り、オープン形式の用語(即ち、「~を含むがそれに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。加えて、ある実施形態において「~を含む(comprising)」又は別のオープンエンド形式の用語が用いられるときは常に、その実施形態について、中間的な用語「~から本質的になる(consisting essentially of)」又はクローズドエンド形式の用語「~からなる(consisting of)」を用いて特許請求の範囲を狭め得ることが理解されるべきである。
【0021】
表現「生物学的に同等な」又は「生物学的同等性」は、専門用語であり、アメリカ合衆国保健福祉省(U.S Department of Health and Human Services)が発行する「治療的同等性評価のある承認医薬品(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations)」第34版、通称「オレンジブック(Orange Book)」に従い定義されることが意図される。同じ原薬である異なる製剤の生物学的同等性とは、薬物吸収の速度及び程度に関する同等性を含む。被験製剤の吸収の程度及び速度が参照製剤と比較され、これらの2つの製剤が生物学的に同等かどうかが決定される。標準的な生物学的同等性試験は、単回用量の被験薬及び参照薬を幾例ものボランティア、通常は12~24例の正常な健常成人に投与すること、次に時間の経過に伴う薬物の血中又は血漿レベルを測定することを含む広範な試験によってクロスオーバー方式で行われる。ある製剤の参照製剤との生物学的同等性を確立するための詳細なガイドラインが、FDAジェネリック医薬品局生物学的同等性部(FDA Office of Generic Drugs,Division of Bioequivalence)から発行されている。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「平均」は、独立した測定値の集合から決定される幾何平均を指す。例えば、独立した測定値は、統計的に有意味な集団から収集されてもよい。更なる例として、薬物動態パラメータ(「平均Cmax」、「平均AUC0-x」、「平均AUC0-t」、「平均AUC0-inf」、「平均tmax」、又は「平均t1/2」(又は「平均半減期」)など)について記載するために使用されるとき、「平均」は、個々の測定値がそれぞれ収集された元の集団から導き出された幾何平均薬物動態値を指す。従って、本明細書で使用されるとき、ある投薬形態がヒト対象に投与されてもよく、ここでその投薬形態は、個々に測定された値の集合から導き出された平均薬物動態値を有する。
【0023】
本願において使用される用語の略語及び定義のリストは、以下のとおりである。AUC:血漿濃度-時間曲線下面積;AUC0-x:時間ゼロから投与後x時間までの血漿濃度-時間曲線下面積(例えば、xは12又は24時間を指し得る);AUC0-t:時間ゼロから濃度を定量化可能な最後の時点までの血漿濃度-時間曲線下面積;AUC0-inf:時間ゼロから無限大までの血漿濃度-時間曲線下面積;ANCOVA:共分散分析;CI:信頼区間;Cmax:最高血中濃度;Cx:投与後x時間における血漿濃度;CV:変動係数;LC-MS/MS:液体クロマトグラフィー-質量分析/質量分析;MAD:反復投与用量漸増;MTD:最大耐用量;PD:薬力学;PK:薬物動態学;RT:反応時間;SAD:単回投与用量漸増;SD:標準偏差;t1/2:終末相消失半減期;tmax:薬物投与後に最高(ピーク)濃度に到達するまでの時間。本明細書で使用されるとき、t1/2には薬物濃度の終末相消失半減期が含まれ、これはCmaxの終末相消失半減期であり得る。本明細書で使用されるとき、Cmaxにはヒト血漿中で測定したときの物質の最高薬物濃度が含まれる。
【0024】
吸収の速度及び程度の差が-20%/+25%以下である2つの投薬形態は、概して「生物学的に同等」と見なされる。別の平均的生物学的同等性に関する手法は、被験製品及び参照製品の測定値の平均(母集団幾何平均値)の比についての90%信頼区間の計算を含む。BE(生物学的同等性)を確立するには、この計算した信頼区間が、通常は製品平均の比の80~125%の範囲内に入らなければならない。この一般的な手法に加えて、他の手法が、(1)薬物動態データの対数変換、(2)シーケンス効果を評価する方法及び(3)外れ値データを評価する方法を含め、生物学的同等性の確立に有用となり得る。例えば、上記の(1)において、信頼区間は、通常は対数変換したPKパラメータの平均値の差について80~125%の範囲内に入らなければならない。
【0025】
本明細書で使用されるとおりの用語「約」、「近似的に」、又は「近似で」は、量、時間的持続期間などの計測可能な値に言及するとき、指定される値から±20%又は10%、より好ましくは5%、更により好ましくは1%、及びなおもより好ましくは0.1%の変動を、所与の文脈上かかる変動が適切であるものとして包含することが意図される。
【0026】
投薬量又は投薬範囲が、「式Iの化合物」、又は「H3B-6527」、又は「H3B-6527の遊離塩基」のフォーマットでの質量又は重量によって言及されるとき、当業者は、薬学的に許容可能な塩としての活性化合物のモル当量を提供するには、典型的には化合物単独の投与によるとき必要となる(即ち、遊離塩基の量と塩の量とが1:1のモル比を有する)であろうよりも大きい質量の塩の投与が必要となることを理解するであろう。例えば、語句「25mg~50mgの式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩」は、25mg以上50mg以下の量の式Iの遊離塩基、並びに26mg以上53mg以下の量の式Iの化合物の一塩酸塩を企図する。この変換は、例えば、「塩変換係数」、「塩補正係数」、又は「効力調整係数」と称されることもある。
【0027】
効力調整係数変換はまた、i)水和物又は溶媒和物及びii)塩対イオンの両方を有する式Iの水和物、溶媒和物、又は結晶形態として存在する式Iの結晶形態にも適用可能である。更に、かかる効力調整係数変換は、共結晶化した溶媒分子及び/又は塩対イオンが結晶形態で存在するときの化学量論比が整数であろうと、又は非整数であろうと、適用可能である。従って、当業者は、H3B-6527の一塩酸塩、H3B-6527、のヘミ塩酸塩又は1:1.3、1:1.25等の他の比について異なる効力調整が行われ得ることを理解する。
【0028】
上記の前出の段落と一致して、本明細書で使用されるとき、式I(又はH3B-6527、H3B-6527の遊離塩基又は本明細書で使用されるとおりのその同義語の任意の他のもの)の「当量」の分量(例えば、質量、重量、投薬量等)とは、その効力調整係数に従う任意の塩及び/又は水和物の分量を指す。
【0029】
「H3B-6527原薬」は、米国特許第10,562,888号明細書(これは参照により本明細書に援用される)に報告されるとおりのH3B-6527の遊離塩基を指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「ヒト対象」は、「治療を必要としているヒト対象」、又は「それを必要としているヒト対象」と同義であり、これらは全て、肝細胞癌又は肉腫を有するヒト対象、又は集団全体と比べて肝細胞癌又は肉腫の発症リスクが高いヒト対象を指す。それを必要としているヒト対象は、過去に肝細胞癌又は肉腫又は前癌病態を有すると診断又は同定されたことがある者であり得る。或いは、それを必要としているヒト対象は、集団全体と比べてかかる障害の発症リスクが高い者(即ち、集団全体と比べてかかる障害を発症し易い素因がある対象)であり得る。それを必要としているヒト対象は、前癌病態を有し得る。
【0031】
それを必要としているヒト対象は、難治性癌又は抵抗性癌(即ち、治療が奏効しないか、又はまだ奏効していない癌)を有し得る。対象は、治療開始時点で抵抗性であることもあり、又は治療中に抵抗性になることもある。一部の実施形態において、それを必要としている対象は、直近の療法で寛解した後に癌の再発を有する。一部の実施形態において、それを必要としている対象は、癌治療のあらゆる公知の有効な療法を受けて失敗した。一部の実施形態において、それを必要としている対象は、少なくとも1つの先行療法を受けた。好ましい実施形態において、対象は癌又は癌性病態を有する。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「絶食条件」は、投与前に少なくとも10時間の一晩の絶食を行った、それを必要としているヒト対象を表す。投与後少なくとも4時間は、いかなる食物も許可されてはならない。薬物投与前後の1時間を除き、水は必要に応じて許可され得る。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「飽食状態」は、薬力学評価前の2時間にわたって絶食した、且つ試験薬物投与前又はそれと併せて食事を摂ったヒト対象を表す。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「治療すること」又は「治療する」は、疾患、病態、又は障害と闘うことを目的としたヒト対象の管理及びケアを表し、H3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩、多形、水和物、若しくは溶媒和物の投薬形態の投与によって疾患、病態若しくは障害の症状若しくは合併症を軽減すること、又は疾患、病態若しくは障害を消失させることを含む。
【0035】
H3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩及び/又は溶媒和物はまた、関連性のある疾患、病態又は障害の予防にも使用することができ、又は使用されてもよく、又はかかる目的に好適な候補の同定にも使用することができ、又は使用されてもよい。本明細書で使用されるとき、「予防すること」、「予防する」、又は「~から予防すること」は、かかる疾患、病態又は障害の症状又は合併症の発生を低減すること又はなくすことを表す。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「試料」は、限定はされないが、細胞、組織試料、体液(限定はされないが、粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液、及び精液を含む)、腫瘍細胞、及び腫瘍組織を含めた、ヒト対象に由来する任意の生体試料を意味する。好ましくは、試料は、骨髄、末梢血細胞、血液、血漿及び血清から選択される。試料は、治療下又は検査下の対象が提供することができる。或いは試料は、医師によって当該技術分野の日常的業務に従い入手されてもよい。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「投薬形態」は、治療しようとするヒト対象に対する単位毎の投薬として適している物理的に分離した単位を指す;各単位が、必要な医薬担体と合わせて所望の治療効果を生み出すように計算された予め決められた分量の活性化合物を含有する。投薬形態は、例えば、経口、局所、直腸、経膣、静脈内、皮下、筋肉内、眼科的、経鼻、経眼及び吸入投与を含め、投与経路及び適用部位の点で分類される。或いは、投薬形態は、固体、半固体又は液体など、物理的形態の点で分類される。投薬形態は、例えば、IVバッグ、錠剤、エアロゾルインへラーに付いているシングルポンプ又はバイアルを含め、種々の形態のいずれであってもよい。「経口投薬形態」は、ヒト対象に口から投与し易い投薬形態を指す。経口投薬形態の非限定的な例としては、カプセル及び錠剤が挙げられる。単位用量中の活性成分(例えば、開示される化合物又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物の製剤)の分量が有効量であり、それは関わる治療の詳細に応じて変わる。
【0038】
本明細書で使用されるとき、語句「薬学的に許容可能」は、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なリスク対効果比に見合った、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織と接触した状態で使用するのに好適な化合物、材料、組成物、担体、及び/又は投薬形態を指す。
【0039】
本明細書で使用されるとき、語句「薬学的に許容可能な賦形剤」は、概して安全で非毒性の、生物学的にも他の点でも望ましくないものでない、医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、動物への使用並びにヒト医薬品としての使用に許容可能な賦形剤が含まれる。「薬学的に許容可能な賦形剤」には、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、1つ及び2つ以上の両方のかかる賦形剤が含まれる。例えば、本発明の製剤に使用される薬学的に許容可能な賦形剤は、希釈剤又は不活性担体、滑沢剤、結合剤、又はこれらの組み合わせであり得る。本発明の製剤に使用される薬学的に許容可能な賦形剤には、充填剤、抗菌剤、抗酸化剤、固化防止剤、コーティング剤、又はこれらの混合物が更に含まれる。
【0040】
用語「組成物」には、本明細書で使用されるとき、特定の原料を特定の量で含む製品及び特定の量の特定の原料の組み合わせによって直接又は間接的にもたらされる任意の製品が含まれる。かかる用語には、それが医薬組成物に関するとき、活性成分(ここでは、式I又はその薬学的に許容可能な塩、水和物及び/又は溶媒和物のいずれか)と、担体を構成する不活性原料とを含む製品が含まれ、任意の2つ以上の原料の組み合わせ、錯化若しくは凝集又は1つ以上の原料の解離、他の種類の反応若しくは相互作用によって直接又は間接的にもたらされる任意の製品が含まれることが意図される。従って、本発明の医薬組成物には、式Iによって与えられる化合物(又は薬学的に許容可能な塩、水和物及び/又は溶媒和物)を薬学的に許容可能な賦形剤と混合することによって調製される任意の組成物が含まれる。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「治療有効量」は、ヒト対象において治療効果を生み出すことのできるH3B-6527の量を指す。治療有効量は、同定された疾患若しくは病態を治療、改善、若しくは予防することのできる量、又は検出可能な治療効果若しくは阻害効果を呈する量である。効果は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ方法により検出することができる。ある対象についての正確な有効量は、対象の体重、大きさ、及び健康;病態の性質及び程度;並びに投与に選択される治療薬に依存することになる。所与の状況に対する治療有効量は、臨床医の技能及び判断の範囲内にあるルーチンの実験によって決定することができる。
【0042】
好ましい態様において、治療されることになる疾患又は病態は、癌である。別の態様において、治療されることになる疾患又は病態は、細胞増殖性障害である。治療有効量のH3B-6527は、投薬形態で投与されてもよい。治療有効量H3B-6527は、遊離塩基、薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、及び/又は水和物の形態であってもよい。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「治療効果」は、あらゆる種類の医学的治療の帰結であって、その結果が望ましく有益であると判断されるものである。これは、結果がその治療の予想された帰結であろうと、予想外の帰結であろうと、更には意図せぬ帰結であろうと当てはまる。望ましい又は有益な結果は、変化した細胞シグナル伝達経路の阻害、細胞成長、好ましくは癌細胞成長の阻害、細胞死、好ましくは癌細胞死の促進、又は腫瘍の縮小であってよく、これらは全て、重篤な有害作用なしに観察される。腫瘍の成長を遅らせること、好ましくは退縮させること、また好ましくは癌の完全な退縮を生じさせることも、治療効果の別の例である。治療効果はまた、臨床医又は他の適格な観察者が認めるとおりの客観的に同定可能な改善であり得る。例えば、患者の腫瘍の退縮は、腫瘍の直径に基づき測定されてもよい。腫瘍の直径の減少が、退縮を指示している。退縮はまた、治療を中止した後に腫瘍が再び出現しないことによっても指示される。
【0044】
重篤な有害作用には、生命を脅かすもの(肝不全、心調律の異常、及び特定の種類のアレルギー反応など)、持続性の又は重大な身体障害又は入院を招くもの、又は先天性異常を引き起こすものが含まれ得る。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作ることによって修飾されているH3B-6527の誘導体を指す。薬学的に許容可能な塩の例としては、限定はされないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられる。薬学的に許容可能な塩には、例えば非毒性無機酸又は有機酸で形成される、親化合物の従来の非毒性塩又は第4級アンモニウム塩が含まれる。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「定量化可能」は、分量又は数値として測定、計算、又は表現が可能であることを意味する。定量化可能な血漿濃度は、投与後にヒト対象の血漿中で検出及び測定が可能なH3B-6527の濃度である。定量化可能なAUCバイオアベイラビリティは、設定した時間にわたってヒト対象から採取された血漿試料中のH3B-6527の血漿濃度の分析から計算することが可能なヒト対象の体循環に到達するH3B-6527の割合である。定量化可能な半減期は、H3B-6527の血漿濃度がH3B-6527の濃度-時間曲線に沿って50%低下するような検出可能な時間又は計算で求められる時間である。前述のPKパラメータを定量化するために必要な方法及び材料については、一般に当業者に公知である。具体的な定量化方法は、本願の中に提示する。
【0047】
本明細書で使用されるとき、用語「溶媒和物」は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有する溶媒付加形態を意味する。
【0048】
具体的に記載されるか又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用されるとき、用語「又は」は、包括的であると理解される。
【0049】
本発明の態様は、それを必要としているヒト対象に投与することのできる、治療有効量のH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む投薬形態を提供し、ここで治療有効量は、投与後に定量化可能な血漿濃度を実現する。
【0050】
本発明のある実施形態において、投薬形態は、経口投薬形態である。本発明の別の実施形態において、投薬形態は、固形投薬形態である。本発明の別の実施形態において、投薬形態は、固形経口投薬形態である。更に別の実施形態において、固形経口投薬形態は、即時放出型経口固形投薬形態であってもよい。経口固形投薬形態は、錠剤又はカプセルの形態であってもよい。これらの形態は、例えば、内相及び外相を含め、複数の相を有し得る。
【0051】
一実施形態において、投薬形態は実質的に水を含まない。これに関連して、「実質的に」水を含まないとは、包装時の製剤の含水量が製剤の総重量の7%未満、5%未満、1%未満、又は0.5%未満であることを意味する。一実施形態において、水の量は、製剤の総重量の0.1~5%(例えば、0.1~1%又は0.1~0.5%)である。一実施形態において、スプレーコーティング過程を経て製造された本発明の製剤中の水の量は、0.5%未満である。
【0052】
少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤は、希釈剤又は不活性担体、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、又はこれらの組み合わせであってもよい。薬学的に許容可能な賦形剤にはまた、充填剤、抗菌剤、抗酸化剤、固化防止剤、コーティング剤、又はこれらの混合物も含まれ得る。
【0053】
例示的結合剤としては、限定はされないが、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、他のデンプン類、ゼラチン、天然及び合成ゴム、例えば、アカシア、キサンタン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン、クロスポビドン、コポビドン等)、メチルセルロース、メトセル(methocel)、アルファ化デンプン(例えば、STARCH 1500(登録商標)及びSTARCH 1500 LM(登録商標)、販売元Colorcon,Ltd.)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース(FMC Corporation、Marcus Hook、PA、米国)、エムデックス(Emdex)、プラスドン(Plasdone)、又はこれらの混合物;充填剤、例えば、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、リン酸水素カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、デキストロース、フルクトース、蜂蜜、ラクトース無水物、ラクトース一水和物、ラクトース及びアスパルテーム、ラクトース及びセルロース、ラクトース及び微結晶性セルロース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微結晶性セルロース&グアーガム、糖蜜、スクロース、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
例示的崩壊剤としては、限定はされないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(エクスプロタブ(Explotab)など)、ジャガイモ又はタピオカデンプン、他のデンプン類、アルファ化デンプン、粘土、他のアルギン類、他のセルロース類、ガム類(ジェランのような)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプラスドン(ployplasdone)、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
例示的滑沢剤としては、限定はされないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、コンプリトール(compritol)、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム(プルブ(Pruv)など)、植物由来の脂肪酸滑沢剤、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油(com oil)及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、シロイド(syloid)シリカゲル(AEROSIL 200、W.R.Grace Co.、Baltimore、MD USA)、合成シリカの凝固エアロゾル(Deaussa Co.、Piano、TX USA)、発熱性二酸化ケイ素(CAB-O-SIL、Cabot Co.、Boston、MA USA)、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0056】
例示的コーティング剤としては、限定はされないが、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬品用グレーズ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテートフタレート、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋(camauba wax)、微晶蝋、ジェランガム、マルトデキストリン、メタクリレート類、微結晶性セルロース及びカラギーナン又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0057】
一実施形態において、投薬形態は、コーティング系(例えば、Opadry(登録商標)fxフィルムコーティング系)によって任意選択で処理されてもよい、例えば、Opadry(登録商標)ブルー(OY-LS-20921)、Opadry(登録商標)ホワイト(YS-2-7063)、Opadry(登録商標)ホワイト(YS-1-7040)、及びブラックインク(S-1-8 106)でコートされることになる固形経口投薬形態である。
【0058】
一実施形態において、経口投薬形態は、治療有効量のH3B-6527又はその薬学的に許容可能な塩、ラクトース一水和物、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びコロイド無水シリカを含む内相を備えるカプセルとなるように構成される。カプセルはまた、ステアリン酸マグネシウムを含む外相も備える。
【0059】
一実施形態において、カプセルは、ヒプロメロースである。
【0060】
別の実施形態において、カプセルはヒプロメロースであり、赤色酸化鉄及び二酸化チタンを更に含む。
【0061】
薬学的に許容可能な塩には、例えば非毒性無機酸又は有機酸で形成される、親化合物の従来の非毒性塩又は第4級アンモニウム塩が含まれ得る。例えば、かかる従来の非毒性塩としては、限定はされないが、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸(glycollyarsanilic)、ヘキシルレゾルシン酸(hexylresorcinic)、ヒドラバミン酸(hydrabamic)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸(salicyclic)、ステアリン酸、スバセチン酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及びよく見られるアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン等から選択される無機酸及び有機酸に由来するものが挙げられる。
【0062】
薬学的に許容可能な塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ムコン酸などを挙げることができる。本発明はまた、親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオンに置き換わるとき;又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合するときのいずれかに形成される塩も包含する。塩形態では、化合物と塩のカチオン又はアニオンとの比は1:1であるか、又は1:1以外の任意の比、例えば、3:1、2:1、1:2、又は1:3であってもよいことが理解される。
【0063】
別の実施形態において、投薬形態はまた、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤又は担体との組み合わせでの1つ以上の活性化合物(例えば、H3B-6527又はその塩)も含み得る。
【0064】
溶媒和物の例を挙げることができ、溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり;及び溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコール和物である。水和物は、水の1つ以上の分子と物質の1つの分子との組み合わせによって形成され、ここでは水がその分子状態をH2Oとして保持している。半水和物は、水の1つの分子と物質の2つ以上の分子との組み合わせによって形成され、ここでは水がその分子状態をH2Oとして保持している。
【0065】
それを必要としているヒト対象に投与することのできる、治療有効量のH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む経口投薬形態は、投与後約2時間~約6時間、約3時間~約5時間、約3時間~約4時間、又は約4時間で定量化可能な血漿濃度を実現し得る。
【0066】
経口投薬形態中に存在し得るH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩の治療有効量は、約300mg~約2000mg、約500mg~約1400mg、約600mg~約1000mg、又は約600mg~約700mgの範囲である。
【0067】
それを必要としているヒト対象に投与することのできる、治療有効量のH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む経口投薬形態は、投与後に約10ng/mL~約900ng/mL、約20ng/mL~約800ng/mL、約100ng/mL~約400ng/mL、又は約150ng/mL~約250ng mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現し得る。
【0068】
それを必要としているヒト対象に投与することのできる、治療有効量のH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む経口投薬形態は、投与後約2時間~約7時間、約2時間~約5時間、約3時間~約4時間、又は約4時間で半減期を実現し得る。
【0069】
それを必要としているヒト対象に投与することのできる、治療有効量のH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む経口投薬形態は、投与後に約50ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mL、約150ng・hr/mL~約5,700ng・hr/mL、約400ng・hr/mL~約700ng・hr/mL、又は約500ng・hr/mL~約650ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティを実現し得る。
【0070】
それを必要としているヒト対象に投与することのできる、治療有効量のH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む経口投薬形態は、8日サイクル、15日サイクル、20日サイクル、21日サイクル、22日サイクル、23日サイクル、24日サイクル、25日サイクル、26日サイクル、27日サイクル、28日サイクルの間、又はそれを必要としている対象の体内に治療効果が生じるまで、単回用量として1日1回経口投与されてもよい。投薬形態はまた、20日未満のサイクルで投与されてもよい。
【0071】
A.約300mg~約2000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態。
【0072】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。一部の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約100ng/mL~約970ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度、Cmax(ng/mL単位)を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約150ng/mL~約850ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約250ng/mL~約650ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約350ng/mL~約550ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。これらの実施形態において、提示されるCmaxは、約2時間~約6時間;約2時間~約4時間;約4時間~約6時間;又は約5時間の時間で実現し得る。
【0073】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。それらの実施形態の一部において、この投薬形態は、飽食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に、約2.0時間~約7.0時間の半減期;約3.0時間~約6.0時間の半減期;又は約4.0時間~約5.0時間の半減期を実現する。
【0074】
一実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。かかる実施形態において、この投薬は、飽食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に、約500ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mL;約1,000ng・hr/mL~約5,070ng・hr/mL;約3,000ng・hr/mL~約5,070ng・hr/mL;又は約1,000ng・hr/mL~約3,100ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティ(0~12又は0~24)を実現し得る。
【0075】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。一部の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に、約10ng/mL~約370ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度、Cmax(ng/mL単位)を実現する。他の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に約20ng/mL~約146ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に約100ng/mL~約260ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。これらの実施形態において、提示されるCmaxは、約0.5時間~約4時間;約0.5時間~約2時間;約1時間~約3時間;又は約2時間の時間で実現し得る。
【0076】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。それらの実施形態の一部において、この投薬形態は、絶食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約1.0時間~約6.0時間の半減期;約2.0時間~約5.0時間の半減期;又は約3.0時間~約4.0時間の半減期を実現する。
【0077】
一実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。かかる実施形態において、この投薬は、絶食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約50ng・hr/mL~約1,500ng・hr/mL;約400ng・hr/mL~約1,500ng・hr/mL;約400ng・hr/mL~約1,000ng・hr/mL;又は約400ng・hr/mL~約650ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティ(0~12又は0~24)を実現し得る。
【0078】
B.約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態。
【0079】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。一部の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に、約100ng/mL~約270ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度、Cmax(ng/mL単位)を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約163ng/mL~約255ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約150ng/mL~約241ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。これらの実施形態において、提示されるCmaxは、約2時間~約4時間の時間で実現し得る。
【0080】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。それらの実施形態の一部において、この投薬形態は、飽食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約2.0時間~約4.0時間の半減期;又は約2.0時間~約3.0時間の半減期を実現する。
【0081】
一実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。かかる実施形態において、この投薬は、飽食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約500ng・hr/mL~約1,300ng・hr/mL;約500ng・hr/mL~約1,000ng・hr/mL;約500ng・hr/mL~約800ng・hr/mL;又は約500ng・hr/mL~約650ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティ(0~12又は0~24)を実現し得る。
【0082】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。一部の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に、約11ng/mL~約255ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度、Cmax(ng/mL単位)を実現する。他の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に約20ng/mL~約125ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に約11ng/mL~約200ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。これらの実施形態において、提示されるCmaxは、約0.5時間~約4時間;約0.5時間~約2時間;約1時間~約3時間;又は約2時間の時間で実現し得る。
【0083】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。それらの実施形態の一部において、この投薬形態は、絶食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約1.0時間~約5.0時間の半減期;約2.0時間~約4.0時間の半減期;又は約3.0時間~約4.0時間の半減期を実現する。
【0084】
一実施形態において、経口投薬形態は、約300mg~約700mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。かかる実施形態において、この投薬は、絶食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約50ng・hr/mL~約1,200ng・hr/mL;約50ng・hr/mL~約650ng・hr/mL;約50ng・hr/mL~約200ng・hr/mL;又は約400ng・hr/mL~約650ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティ(0~12又は0~24)を実現し得る。
【0085】
C.約1000mg~約2000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む経口投薬形態。
【0086】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約1,000mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。一部の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に、約182ng/mL~約965ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度、Cmax(ng/mL単位)を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約182ng/mL~約904ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、飽食時の治療を必要としている対象への投与後に約650ng/mL~約965ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。これらの実施形態において、提示されるCmaxは、約2時間~約6時間;約3時間~約5時間;約2時間~約4時間;又は約4時間の時間で実現し得る。
【0087】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約1,000mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。それらの実施形態の一部において、この投薬形態は、飽食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約3.0時間~約7.0時間の半減期;約4.0時間~6.0時間の半減期;又は約4.0時間~約5.0時間の半減期を実現する。
【0088】
一実施形態において、経口投薬形態は、約1,000mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。かかる実施形態において、この投薬は、飽食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約800ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mL;約1,000ng・hr/mL~約6,000ng・hr/mL;約3,000ng・hr/mL~約6,000ng・hr/mL;又は約5,000ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティ(0~12又は0~24)を実現し得る。
【0089】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約1,000mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。一部の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に、約135ng/mL~約365ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度、Cmax(ng/mL単位)を実現する。他の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に約130ng/mL~約150ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。他の実施形態において、この投薬は、絶食時の治療を必要としている対象への投与後に約195ng/mL~約365ng/mLの定量化可能な最高血漿濃度を実現する。これらの実施形態において、提示されるCmaxは、約1時間~約2時間の時間で実現し得る。
【0090】
一部の実施形態において、経口投薬形態は、約1,000mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。それらの実施形態の一部において、投薬形態は、絶食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約4.0時間~約5.0時間の半減期を実現する。
【0091】
一実施形態において、経口投薬形態は、約1,000mg~約2,000mgのH3B-6527、又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。かかる実施形態において、投薬は、絶食時のそれを必要としているヒト対象への投与後に約400ng・hr/mL~約1,500ng・hr/mL;約400ng・hr/mL~約1,000ng・hr/mL;約400ng・hr/mL~約650ng・hr/mL;又は約600ng・hr/mL~約1,500ng・hr/mLの定量化可能なAUCバイオアベイラビリティ(0~12又は0~24)を実現し得る。
【実施例】
【0092】
実施例
実施例1:カプセル製剤
50mg、100mg及び200mg強度のカプセルを以下の表のとおりに製剤化した:
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
カプセルは、以下のとおり形成する:H3B-6527原薬、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、コポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びコロイド状二酸化ケイ素を高剪断ミキサーに入れて混合し、最初の混合物を形成する。次に高剪断ミキサーを使用して最初の混合物とステアリン酸マグネシウムを混合して、最終混合物を形成する。この最終混合物が、ローラーコンパクターを使用したリボン状へのその圧縮、及び次に得られたリボンを篩に通過させることによる分級による造粒を受ける。分級した顆粒をエンカプスレーターを使用してHPMCカプセルに充填する。重量検査機を使用して重量超過及び重量不足のカプセルを取り除く。
【0097】
実施例2:患者におけるカプセルの薬物動態(PK)測定値
H3B-6527のファースト・イン・ヒューマン臨床試験の記載については、ClinicalTrials.govにて治験識別番号NCT02834780で検索することにより参照し得る。要約すれば、この治験には、以下の特性を有する研究対象集団を組み入れた:進行したHCC又はICCを有する18歳以上の成人患者;少なくとも1回の過去の治療後における進行;ECOGスコア0又は1;十分な代償性の肝機能;FGF19陽性(用量拡大フェーズのみ);患者が重大な活動性感染症[B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)を除く]、胃若しくは食道静脈瘤、又はFGF19-FGFR4ターゲット療法歴を有する場合は除外した。
【0098】
計画した時点で各患者から血液試料を採取し、遠心する。次に各試料の血漿分をK2EDTAチューブに移し、次に、LC-MS/MSを用いた濃度測定のため、それをバイオ分析検査室に発送する。次に、Phoenix(登録商標)WinNonlinソフトウェアを使用して濃度データを分析し、PKパラメータを入手する。入手されたPKパラメータについて、分析ソフトウェアを使用して更に要約する。
【0099】
用量漸増についての薬物投与及び投薬量:H3B-6527を21日サイクルでQD又はBIDで経口投与した。用量漸増は、300、600、1000、及び1400mg QD絶食又は500及び700mg BID飽食の用量コホートによる標準3+3コホートデザインに従った。用量漸増フェーズの患者は、FGF19状態に関係なく治療した。6週間毎に、RECIST1.1/修正版RECISTによって奏効を決定した
【0100】
薬物動態(PK)結果:
・H3B-6527は急速に吸収され、血漿t
max中央値は約1~3時間(絶食時)であった
・H3B-6527血漿レベルは300から1000mg QDまで用量と共に増加し、プラトーに達した(絶食時)(
図1)
・H3B-6527は、1000mgの投与後に(絶食時)、約4~5時間の終末相半減期平均値を示した
・
図1.H3B-6527の平均血漿-濃度経時的プロファイル(サイクル1、8日目)。予備的PK分析は、絶食状態で1000mg QDまで用量に伴いH3B-6527血漿曝露量が増加したことを示している。BIDスケジュールでは、より高い最小血漿濃度が維持された。
【0101】
1日1回絶食時スケジュールでは:
・2例(7.4%)のHCC患者が部分奏効を実現した
・20例(74.1%)は病勢安定が得られた
【0102】
【0103】
図2.H3B-6527治療の腫瘍奏効及び継続期間。フル・アナリシス・セットでのHCC患者における300~1400mg QDのH3B-6527による治療の継続期間を示す。CR=完全奏効、PR=部分奏効、SD=病勢安定、PD=病勢進行、及びNE=未評価。
【0104】
図3は、本実施例について測定されたとおりの標的病変の直径の合計の変化率を示す。
【0105】
実施例3:更なるPK分析
実施例2の治験の後の時点におけるPK結果のうち間に合ったものについて更なる収集及び照合を以下の表5に反映する:
【0106】
【0107】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許文献は、かかる刊行物又は文献が各々、参照により本明細書に援用されることが具体的且つ個別的に指示されたものとして参照により本明細書に援用される。刊行物及び特許文献の引用は、いずれかが関連する先行技術であることの承認とする意図はなく、またそれがその内容又は日付に関するいかなる承認を成すものでもない。ここで本発明は、本明細書の記載をもって説明されたことになるが、当業者は、本発明を様々な実施形態で実施し得ること、及び前述の説明及び以下の例が、以下の特許請求の範囲の限定ではなく、その例示を目的としていることを認識するであろう。
【0108】
本発明は、その趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。従って前述の実施形態は、あらゆる点で、本明細書に記載される発明の限定というよりむしろ、例示と見なされるべきである。このように、本発明の範囲は、前述の説明によるのでなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって指示され、特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲に入るあらゆる変更が、それに包含されることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態であって、
前記式Iの化合物が、構造:
【化1】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約10ng/mL~約1000ng/mLの式Iの平均C
maxを実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項2】
式Iの前記平均C
maxが、約100ng/mL~約400ng/mLである、請求項1に記載の経口投薬形態。
【請求項3】
式Iの前記平均C
maxが、約100ng/mL~約300ng/mLである、請求項2に記載の経口投薬形態。
【請求項4】
式Iの前記平均C
maxが、
100ng/mLの80%~125%から
400ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項1に記載の経口投薬形態。
【請求項5】
約0.5時間~約8時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の経口投薬形態。
【請求項6】
前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約6時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項5に記載の経口投薬形態。
【請求項7】
前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約4時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項6に記載の経口投薬形態。
【請求項8】
前記ヒト対象への前記投薬形態の投与後約2時間~約3時間で前記平均C
maxの平均t
maxを実現するように製剤化される、請求項7に記載の経口投薬形態。
【請求項9】
約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む、請求項6に記載の前記経口投薬形態。
【請求項10】
約500~約1400mgの式Iの総当量を含む、請求項6に記載の経口投薬形態。
【請求項11】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態であって、
前記式Iが、構造:
【化2】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約50h・ng/mL~約5700h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-24を実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項12】
前記平均AUC
0-24が、約100h・ng/mL~約1200h・ng/mLである、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項13】
前記平均AUC
0-24が、
100h・ng/mLの80%~125%から
1200h・ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項14】
約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項15】
約600mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項11に記載の経口投薬形態。
【請求項16】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む、ヒト対象への投与用の経口投薬形態であって、
前記式Iが、構造:
【化3】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約1時間~約6時間の前記投薬の式Iの平均t
1/2を実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項17】
前記平均t
1/2が、約1時間~約5時間である、請求項16に記載の経口投薬形態。
【請求項18】
前記平均t
1/2が、約2時間~約3時間である、請求項17に記載の経口投薬形態。
【請求項19】
約300mg~約2000mgの式Iの総当量を含む、請求項16に記載の経口投薬形態。
【請求項20】
約500mg~約1000mgの式Iの総当量を含む、請求項16に記載の経口投薬形態。
【請求項21】
i)式Iによって与えられる化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び
ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤
を含む経口投薬形態であって、
前記式Iが、構造:
【化4】
によって表されるN-(2-((6-(3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-メチルウレイド)ピリミジン-4-イル)アミノ)-5-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニル)アクリルアミドであり;及び
前記経口投薬形態が、ヒト対象に経口投与されるとき、約400h・ng/mL~約1200h・ng/mLの式Iの平均AUC
0-12を実現するように製剤化される、経口投薬形態。
【請求項22】
前記平均AUC
0-12が、約400h・ng/mL~約700h・ng/mLである、請求項21に記載の経口投薬形態。
【請求項23】
前記平均AUC
0-12が、
400h・ng/mLの80%~125%から
1200h・ng/mLの80%~125%
の範囲にある、請求項21に記載の経口投薬形態。
【請求項24】
約500mg~約700mgの式Iの総当量を含む、請求項21に記載の経口投薬形態。
【請求項25】
式I又は薬学的に許容可能な塩、ラクトース一水和物、炭酸カルシウム、コポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを含む内相を含むカプセルである、請求項1、11、16、及び21のいずれか一項に記載の経口投薬形態。
【請求項26】
前記カプセルが、ステアリン酸マグネシウムを含む外相を更に含む、請求項25に記載の経口投薬形態。
【請求項27】
前記内相が、ヒプロメロースカプセル中に収容される、請求項25に記載の経口投薬形態。
【請求項28】
遊離塩基型の式Iを含む、請求項25に記載の経口投薬形態。
【国際調査報告】