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特表2023-533910眼球の長さを決定するための装置及び方法
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  • 特表-眼球の長さを決定するための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】眼球の長さを決定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576490
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2021061787
(87)【国際公開番号】W WO2022008116
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】102020118331.3
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519181641
【氏名又は名称】ハイデルベルク エンジニアリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】マルテンセン ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ガーンス ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA26
4C316AB04
4C316AB11
4C316FY02
(57)【要約】
眼球(1)を測定するための装置であって、眼球(1)の角膜(5)に光線(3、4)を射出するのに適した光源(2)と、光線(3、4)を射出するように光源(2)を駆動し且つ装置に入る反射光線(3a、4a、4b)を信号(7、8)に変換するのに適した制御ユニット(6)と、を備える、装置において、制御ユニット(6)によって駆動される光源(2)が、中心光線(3)を射出し、中心光線(3)から半径方向にオフセットされた複数の周辺光線(4)を射出する、又は制御ユニット(6)によって駆動される光源(2)が、互いに対して半径方向にオフセットされた複数の周辺光線(4)を射出する。更に、方法が規定されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球(1)を測定するための装置であって、前記眼球(1)の角膜(5)に光ビーム(3、4)を射出するのに適した光源(2)と、前記光ビーム(3、4)を射出するように前記光源(2)を制御し且つ前記装置に入る反射光ビーム(3a、4a、4b)を信号(7、8)に変換するのに適した制御ユニット(6)と、を備える装置において、
前記制御ユニット(6)によって制御される前記光源(2)が、中心光ビーム(3)を射出し、前記中心光ビーム(3)から半径方向にオフセットされた複数の周辺光ビーム(4)を射出する、又は前記制御ユニット(6)によって制御される前記光源(2)が、互いに半径方向にオフセットされた複数の周辺光ビーム(4)を射出する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記周辺光ビーム(4)は、3~12mmの直径を有する円形領域(9)内にあり、すなわち前記円形領域(9)を直交して通過し、及び/又は、前記制御ユニット(6)によって制御される前記光源(2)が、前記周辺光ビーム(4)を射出して、前記眼球(1)の角膜(5)上で前記眼球(1)の頂点(10)の周りに散在する点パターンを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御ユニット(6)は、前記角膜(5)の頂点(10)を自動的に決定する、及び/又は、前記制御ユニット(6)によって制御される前記光源(2)が、前記中央光ビーム(3)から定められた距離で及び/又は互いに定められた距離で前記周辺光ビーム(4)を前記角膜(5)に射出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(6)は、前記眼球(1)によって反射された、前記周辺光ビーム(4)の入射に伴って反射され且つ各々が異なる強度を示す第1の周辺光ビーム(4b)を検出し、前記制御ユニット(6)が、前記眼球(1)によって反射された、前記周辺光ビーム(4)の入射に伴って反射され且つ各々が等しいか又は予め定められた間隔内にある強度を示す第2の周辺光ビーム(4b)を検出する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(6)は、前記検出されたそれぞれの強度を用いて、検出すべき器官を検出すべきでない器官又は構造物から区別し、及び/又は、検出すべきでない器官又は構造物からのアーチファクトを抑制又は除去する、
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
FD-OCTデバイス(11)に統合されるか又は前記FD-OCTデバイスと共に使用される、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(6)は、反射した前記周辺光ビーム(4a、4b)からの位相情報に基づいて、複素共役信号を正常信号から区別する、
ことを特徴とする、請求項1から6の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
眼球(1)の測定方法であって、
光ビーム(3、4)が、光源(2)により前記眼球(1)の角膜(5)に透過され、前記光源(2)を制御する制御ユニット(6)が用いられて、光ビーム(3a、4a、4b)が、前記射出された光ビーム(3、4)に応じて前記眼球(1)により反射されて、前記制御ユニット(6)によって検出されて信号(7、8)に変換される、方法において、
中心光ビーム(3)が射出され、前記中心光ビーム(3)から半径方向にオフセットされた複数の周辺光ビーム(4)が射出されることにより、前記角膜(5)の頂点(10)の周りに散在する点パターンが、前記眼球(1)の前記角膜(5)上に生成され、又は、互いに半径方向にオフセットされた複数の周辺光ビーム(4)が射出されることにより、前記角膜(5)の頂点(10)の周りに散在する点パターンが、前記眼球(1)の前記角膜(5)上に生成される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項9】
硝子体(13)と網膜(14)との間の界面層(12)によって反射された第1の周辺光ビーム(4a)が検出され、前記第1の周辺光ビーム(4a)が、前記周辺光ビーム(4)の入射時に反射され且つ入射角(16)に応じて各々異なる強度を示し、
網膜色素上皮(15)によって反射された第2の周辺光ビーム(4b)が検出され、前記第2の周辺光ビーム(4b)が、前記周辺光ビーム(4)の入射時に反射され且つ同じ又は所定間隔内にある強度を各々が示し、それぞれの前記検出された強度を用いて、網膜(14)又は網膜色素上皮(15)を検出すべきでない器官又は構造物と区別し、及び/又は、検出すべきでない器官又は構造物からのアーチファクトを抑制又は除去する、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7の何れか1項に記載の装置が、前記方法を実施するために使用される、ことを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部分による装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の眼は、いくつかの器官の中でも特に、角膜、水晶体、硝子体、網膜、色素上皮、脈絡膜及び視神経を有する。いわゆる網膜色素上皮は、網膜を脈絡膜から隔てている。
【0003】
眼球の寸法を総合的に把握するために、通常は眼球の生体計測が行われる。多くの場合、角膜から網膜までの眼球の長さ、いわゆる眼軸長を記録することは重要である。通常、眼軸長は、超音波、時間領域OCT又は低コヒーレンス干渉法(部分コヒーレンス干渉法)により測定され、その動作モードは文献に見出すことができる。
【0004】
略語OCTとは、光コヒーレンス・トモグラフィー(通常はOCTと略される)のことを指し、その動作モードは関連文献にて見出すことができる。いわゆる時間領域OCTを用いた眼の測定は、アーチファクトが多く、緩慢で、擬似信号が発生しやすい。前述の技術では、層からの偽信号が発生する可能性があり、このことは、偽信号から正しい信号を決定するために、ユーザにより識別される必要がある。これは、アルゴリズムによって自動化することができる。アーチファクトの識別及びその補償には時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、眼、特に人間の眼をできるだけ迅速にアーチファクトのない状態で測定できる装置及び方法を提供するとの課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立請求項の特徴により上述の課題を解決する。
【0007】
第1に、眼軸の長さ又は他の寸法の測定には、網膜、特に網膜色素上皮からの信頼できる信号が必要であることが認識されている。そこで、網膜又は網膜色素上皮からの信号は、他の層、特に網膜硝子体界面層からの偽信号に加えて、干渉影響及びアーチファクトがないことが必要であることが認識されている。更に、眼軸の長さを決定するためには、網膜から角膜までの長さの基準を決定する必要があることが認識されている。
【0008】
このような背景から、光源によって射出された複数の光ビームは、これらの光ビームが角膜を異なる点で通過した後、レンズによって実質的に屈折されて、網膜のほぼ同じ点又は領域に偏向されることが認識されている。本発明によれば、分散型走査手法がそれによって可能になること、すなわち、光ビームは、眼の光軸に沿って眼の上に向けることができるだけでなく、光軸の周りに散乱されることから眼の上に、好ましくは光軸に平行に偏向することができることが認識されている。従って、制御ユニットによって制御される光源は、中心光ビーム又は光軸から及び互いから半径方向にオフセットした複数の、好ましくは平行な周辺光ビームを射出して、偏心した態様で角膜に入射する光ビーム又は光ビーム束の点パターンを生成する。周辺光ビームは、角膜に順次に又は同時に入射することができる。また、周辺光ビームは、中心光ビームと同時に入射すること、又は中心光ビームに対して時間的にオフセットして入射することも考えられる。
【0009】
このように、少なくとも角膜の頂点における鏡面反射を補償することができ、これに伴うアーチファクトを抑制又は補償することができる。頂点とは、入射光ビームに面するレンズ面と光軸との交点である。
【0010】
本発明によれば、光照射に対する偏心手法はまた、眼球内のより深い層、特に網膜硝子体界面層に由来するアーチファクトを補償又は抑制することができる。
【0011】
好ましくは互いに平行である周辺光ビームは、3~12mmの直径を有する円形領域内に存在し、すなわち、この円形領域を直交方向に通過することができる。これにより、角膜上に点パターンを生成することができる。従って、制御ユニットによって制御されると、光源は、周辺光ビームを射出し、眼の角膜上に点パターンを生成し、この点パターンは、角膜の頂点の周りに散在している。点パターンは、より狭く散在させることができ、すなわち、直径3~6mm又は6~9mmの円形領域内に存在することもできる。テレセントリックイメージングに起因して、点パターンフィールド内の全ての光ビームはレンズによって網膜上のほぼ同じ点に偏向されるので、円又は点パターンフィールドのサイズは、サブアパーチャを適切に使用するよう好適に選択することができる。
【0012】
制御ユニットは、角膜の頂点を自動的に決定することができる。代替的又は追加的に、制御ユニットによって制御される光源は、周辺光ビームを中心光ビームから定義された距離で、及び/又は互いに対して定義された距離で角膜に射出することができる。このようにして、反射された光ビーム、特に反射された周辺光ビームから調整可能な分解能で位相情報を取得することができる。距離は、角膜の特性を検出することによって、又は実施可能な距離をプリセットすることによって、制御ユニットにより自動的に決定することができる。
【0013】
制御ユニットは、周辺光ビームの入射に伴って反射され且つ各々が異なる強度を示す、眼によって反射される第1の周辺光ビームを検出し、制御ユニットは、周辺光ビームの入射に伴って反射され且つ各々が等しいか又は予め定められた間隔内に位置する強度を示す、眼によって反射される第2の周辺光ビームを検出する。これにより、硝子体と網膜との界面層で反射する周辺光ビームと、網膜又は網膜色素上皮で反射する周辺光ビームとを区別することが可能になる。
【0014】
これは、硝子体と網膜との間の上記界面層で反射される周辺光ビームが、この界面層での入射角に依存する強度を示すことに起因する。この入射角によって、反射強度が決まる。
【0015】
網膜色素上皮で反射される周辺光ビームの強度は、基本的に角度不変である。網膜色素上皮の後方散乱は、基本的に等方性である。
【0016】
このような背景から、制御ユニットは、全ての反射周辺光ビームのそれぞれの検出強度を用いて、検出すべき器官と検出すべきでない器官又は構造物とを区別し、及び/又は検出すべきでない器官又は構造物からのアーチファクトを抑制又は除去することができる。具体的には、射出された周辺光ビームが網膜色素上皮又は網膜により反射されたか、又は硝子体と網膜との間の界面層により反射されたかを決定することができる。このようにして、サブアパーチャによって既に除去された角膜での反射に加えて、別のアーチファクトを除去することができる。
【0017】
本明細書に記載された装置は、FD-OCTデバイス、すなわちフーリエ領域OCTデバイスの一部とすることができる。このようなデバイスは、周波数領域OCTデバイスとも呼ばれる。本明細書において、FD-OCTデバイスはまた、掃引ソースOCTデバイス(SS-FD-OCTデバイス)を意味するとも理解される。本明細書に記載された装置及び以下に記載される方法により、FD-OCTデバイスを用いて、信頼性が高く高速でほとんどアーチファクトのない眼軸長の決定が可能である。眼軸の長さは、測定される眼軸の長さよりも小さい画像深度を用いて決定することができる。測定のために、網膜、特に網膜色素上皮からの信頼できる信号が与えられる。
【0018】
この信号は、干渉影響及びアーチファクト、他の層からの偽信号、特に硝子体/網膜移行部からの偽信号、並びにアンビギュイティが無い。FD-OCT法では、結果のエルミート対称性に起因して、アンビギュイティが発生する可能性がある。TD-OCTからFD-OCTに移行する場合、信号をエルミート平面に一義的に割り当てることができないことを考慮する必要がある。これは、特定の信号に一致する2つの眼軸長が存在することを意味する。しかしながら、FD-OCTは、感度の点でTD-OCTよりも優れているので、本明細書に記載された装置又は方法によって、FD-OCTに対して実用的に適用可能な解決策が提供される。
【0019】
このような背景から、制御ユニットは、反射光ビーム、特に反射周辺光ビームからの位相情報に基づいて、正常信号から複素共役信号を区別することができる。追加の位相情報を導入することで「フルレンジOCT」を可能にするイメージングを実現するために、既に様々なアルゴリズムが知られるようになってきている。しかしながら、前述のような区別化により「フルレンジイメージング」は不要となる。複素共役信号を付加的な位相情報に基づいて正常信号と区別することにより、角膜までの長さの基準を一義的に定めることができる。
【0020】
眼軸の長さを決定するために、網膜から角膜までの長さ基準を決定することができる。長さ基準は、眼球の前方領域と網膜とを交互に切り替えることによって決定することができるが、ここではその詳細な説明は省略する。
【0021】
しかしながら、長さ基準を動きアーチファクトとは無関係に決定するために、2つのデータセットの軸方向の移動軌跡を決定し、長さ基準を考慮に入れる。
【0022】
有利には、網膜色素上皮は、装置及び/又は以下の方法によって自動的に検出される。
【0023】
眼を測定する方法が実施されるときには、光源によって光ビームが眼の角膜に透過され、ここで、光源を制御する制御ユニットが使用され、光ビームは、射出された光ビームに応答して眼によって反射され、制御ユニットによって検出されて信号に変換される。中央の光ビームが射出され、中央の光ビームから半径方向にオフセットした複数の周辺光ビームが射出されて、眼の角膜上に、角膜の頂点の周りに散在する点パターンを生成する。また、互いに半径方向にオフセットされた複数の周辺光ビームが射出されて、角膜の頂点の周りに散在する点パターンを眼の角膜上に生成することもできる。
【0024】
網膜色素上皮を決定するときには、正しい構造物又は器官が識別されるのを確実にしなければならない。1つの主要なアーチファクト、すなわち角膜との界面における鏡面反射は、方法又は装置によって記載される偏心走査手法によって除去されるか又は少なくとも実質的に抑制される。眼の光軸に沿った中心走査の代わりに、本明細書に記載されたテレセントリック光学走査装置は、この反射の外側に異なる点を分布させることができる。それにもかかわらず、光源によって射出された全ての光ビームは、中央の光ビームとほぼ同じ網膜上の点に結像される。
【0025】
有利には、点は、好ましくは自動的に検出される角膜の頂点から定義された距離にて走査される。テレセントリックイメージングの結果として、ほぼ同じ点のサブアパーチャが通過されるが、これは、いわゆるスペックルを回避するために文献で示唆されているものである。
【0026】
これにより、硝子体と網膜との間の界面層によって反射された第1の周辺光ビームであって、周辺光ビームの入射に伴って反射され、入射角度に依存して各々が異なる強度を示す第1の周辺光ビームを検出することができるので、第2のアーチファクトを抑制することが可能になる。網膜色素上皮によって反射された第2の周辺光ビームが検出され、第2の周辺光ビームは、周辺光ビームの入射に伴って反射され、入射角度に関係なく正確であるように各々が同じ又は所定間隔内にある強度を示している。それぞれの検出された強度は、網膜又は網膜色素上皮を、検出すべきでない器官又は構造物から区別するため、及び/又は検出すべきでない器官又は構造物からの上記第2のアーチファクトを抑制又は除去するために使用することができる。第2のアーチファクトは、硝子体から網膜への移行部における反射に起因するものである。
【0027】
このような背景から、本明細書に記載されるタイプの装置は、第1のアーチファクト及び/又は第2のアーチファクトの何れかを抑制又は除去する方法を実行するのに使用することができる。好ましくは、本明細書に記載されたタイプの装置は、人間の眼を検査するために使用される。最終的な診断は、医師によって行われる。本明細書に記載された方法は、診断方法ではなく、医師が最終的に評価しなければならないデータを提供するだけである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】平行光ビームを人間の眼に向ける装置の概略断面図である。
図2】光軸の周りに散在した平行光ビームの入射点を示し、これによって角膜上に点パターンを生成する人間の眼の平面図である。
図3】アーチファクトの低減を示す図であり、異なる視野角又は光ビームの入射角における構造物又は器官の2つの信号が比較して示されており、上側の信号は、網膜硝子体界面層上のほぼ垂直な入射で記録され、下側の信号は、90°から大きく偏位した周辺光ビームの入射角で記録されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、人間の眼球1を測定するための装置であって、人間の眼球1の角膜5に光ビーム3、4を照射するのに適した光源2と、光源2を制御して光ビーム3、4を射出し、装置に入射した反射光ビーム3a、4a、4bを信号7、8に変換してこれを表示するのに適した制御ユニット6と、を備える、装置を示している。
【0030】
制御ユニット6によって制御されて、光源2は、中心光ビーム3を射出し、中心光ビーム3から半径方向にオフセットして中心光ビーム3に平行に複数の周辺光ビーム4を射出する。
【0031】
図2は、周辺光ビーム4が直径3~12mmの円形領域9内に存在し、すなわちこの円形領域9を直交して通過していることを示している。これは、図1において破線の円形領域9で示されている。制御ユニット6によって制御される光源2は、人間の眼球1の角膜5上に、角膜5の頂点10を中心に散在する点パターンを生成するように周辺光ビーム4を放射する。この点で、制御ユニット6は、点パターンの幾何形状を生成する。
【0032】
制御ユニット6は、角膜5の頂点10、すなわちその空間位置を自動的に決定する。制御ユニット6によって制御される光源2は、周辺光ビーム4を、中心光ビーム3から定義された距離で互いに対して角膜5に向けて放射する。
【0033】
制御ユニット6は、周辺光ビーム4の入射に伴って人間の眼球1によって反射され且つ各々が異なる強度を示す第1の周辺光ビーム4aを検出する。また、制御ユニット6は、周辺光ビーム4の入射に伴って反射され且つ各々が同じ又は所定の間隔内にある強度を示す、人間の眼球1によって反射される第2の周辺光ビーム4bを検出する。
【0034】
制御ユニット6は、それぞれの検出された強度を用いて、検出すべき器官と検出すべきでない構造物とを区別し、検出すべきでない構造物からのアーチファクトを抑制又は除去する。
【0035】
この装置は、包括的なFD-OCTデバイス11に統合される。
【0036】
人間の眼球1の測定方法は、この目的のために光源2を制御する制御ユニット6を用いて、光源2によって人間の眼球1の角膜5に光ビーム3、4を透過させることによって行われる。射出された光ビーム3、4に応じて光ビーム3a、4a、4bが人間の眼球1により反射され、制御ユニット6により検出されて信号7、8に変換される。光ビーム3、4の反射は、図1において両頭矢印で示されている。反射した光ビーム3a、4a、4bは、眼球1の構造物にて反射後、制御ユニット6に戻る。
【0037】
中心光ビーム3が射出されて、中心光ビーム3から半径方向にオフセットした複数の平行な周辺光ビーム4が射出され、人間の眼球1の角膜5上に角膜5の頂点10の周りで散在する点パターンを生成する。
【0038】
硝子体13と網膜14との界面層12により反射された第1の周辺光ビーム4aが検出されるが、第1の周辺光ビーム4aは、周辺光ビーム4の入射に伴って反射され、入射角16に応じて異なる強度を各々が示す。網膜色素上皮15により反射された第2の周辺光ビーム4bが検出されるが、第2の周辺光ビーム4bは、周辺光ビーム4の入射に伴って反射され、同じか又は所定の間隔内にある強度を各々が示す。これらの反射された第2の周辺光ビーム4bの強度は、これらに関連する入射周辺光ビーム4の入射角とは無関係である。
【0039】
それぞれの検出強度を用いて、網膜14又は網膜色素上皮15を検出されるべきでない構造物との区別、及び検出されるべきではない構造物からの第2のアーチファクトの抑制又は除去を行う。
【0040】
図3は、制御ユニット6からの信号7、8が、装置のディスプレイに表示されることを示している。この点で、装置は、検出された器官又は構造物の信号7、8の光学的表現のためのディスプレイ20を有する。
【0041】
ディスプレイ20は、上部表示及び下部表示の各々において2つの信号7、8を示し、第1の信号7は、硝子体網膜界面層に由来するアーチファクトに由来し、第2の信号8は、網膜色素上皮15に由来している。
【0042】
ディスプレイ20の上部表示の信号7、8は、光ビーム又は光束を網膜硝子体界面層12にほぼ垂直に入射させて記録した。ディスプレイ20の下側表示の信号7、8は、周辺光ビームの入射角が90°から大きく偏位している状態で検出された。
【0043】
アーチファクトの信号7に著しい減少があること、すなわち、網膜色素上皮に由来する検出すべき信号8よりも小さいことが明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 眼球
2 光源
3 中心光ビーム
3a 反射された中央光ビーム
4 周辺光ビーム
4a 第1の反射周辺光ビーム
4b 第2の反射周辺光ビーム
5 角膜
6 制御ユニット
7 12からの信号
8 14又は15からの信号
9 円形領域
10 1の頂点
10a 光軸
11 FD OCTデバイス
12 13と14の間の界面層
13 硝子体
14 網膜
15 網膜色素上皮
16 入射角
17 1の脈絡膜
18 1の水晶体
19 視神経
20 6のディスプレイ又はスクリーン
図1
図2
図3
【国際調査報告】