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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】注射モニタリング・モジュール
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20230731BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20230731BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/20 510
A61M5/315 550R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579755
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2020000580
(87)【国際公開番号】W WO2021260404
(87)【国際公開日】2021-12-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519266638
【氏名又は名称】バイオコープ プロダクション ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルコス、アラン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066QQ48
4C066QQ54
4C066QQ72
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】
回転可能な投与量設定ホイールと注射作動機構とを備え、且つ長手中心軸線を有する注射ペン・システムの本体上に装着される、注射モニタリング・モジュールは、長手中心孔を含む中空主本体と、孔の近位側先端部において中空主本体上に位置する磁場生成手段と、少なくとも1つの磁気センサを備える注射モニタリング・システムと、投与量設定中に投与量ホイールの外側表面と係合し、軸方向に並進することなくそれと一緒に共回転する、孔内に位置する内側スリーブとを備え、内側スリーブは、投与量設定中にスリーブ及びモニタリング・システムの両方を軸線を中心に共回転させ、ペンからの薬物の注射中に回転することなく軸線に沿ってモニタリング・システムを並進させることを可能にするように、モニタリング・システムに接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を送達するための注射ペン・システムの近位側先端部に取り外し可能に装着されるように適合及び構成されている注射モニタリング・モジュールであって、前記注射ペン・システムは、ペン本体と、前記本体に接続されている、近位側に位置する投与量設定ホイールと、注射作動機構とを有し、前記投与量設定ホイールは、投与量設定中に前記ペン注射システムの長手中心軸線を中心に回転可能であり、注射中に回転しないように固定され、前記注射モニタリング・モジュールは、
前記ペン注射システムの前記本体の周囲に同軸に装着されるように適合及び構成されている中空主本体であって、近位側先端部及び遠位側先端部を有する長手中央孔並びに長手中心軸線を有する中空主本体と、
前記長手中央孔の前記近位側先端部において前記中空主本体上に又は中に位置する磁場生成手段と、
少なくとも1つ又は複数の磁気センサを備える注射モニタリング・システムであって、前記中空主本体の前記孔の前記近位側先端部に位置する注射モニタリング・システムと
を備え、
前記中空主本体は、前記長手中央孔内に位置し、投与量設定中に前記投与量設定ホイールの外側表面と摩擦係合して、前記長手中心軸線に沿って軸方向に並進することなく、前記投与量設定ホイールと一緒に前記長手中心軸線を中心に共回転するように構成されている、内側スリーブを更に備え、
前記内側スリーブは、前記注射モニタリング・システムに接続され、
前記内側スリーブと前記注射モニタリング・システムとの間の前記接続は、投与量設定中に前記内側スリーブ及び注射モニタリング・システムの両方を前記長手中心軸線を中心に共回転させるように、並びに、前記ペン注射システムからの薬物の注射及び/又は吐出中に前記注射モニタリング・システムを前記長手中心軸線に沿って並進させるが、前記注射モニタリング・システムを前記長手中心軸線を中心に回転させないように、適合及び構成されている、注射モニタリング・モジュール。
【請求項2】
前記中空主本体は、前記投与量設定ホイールから遠位側の場所に、前記注射ペン・システムの前記本体の外側表面の周囲に延在し、これと摩擦係合する遠位本体部分を更に備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項3】
前記中空主本体は、前記注射モニタリング・モジュールが前記注射ペン・システム上の前記装着された位置にある場合に、前記長手中心軸線に沿った前記内側スリーブの軸方向並進移動を防止するように適合及び構成されている、並進当接手段を更に備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項4】
前記中空主本体の前記並進当接手段は、前記中空主本体の内側表面上に設けられた環状溝又は環状スロットとして形成されている、請求項3に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項5】
前記並進当接手段は、前記中空主本体上に設けられた遠位側に向いた表面及び前記遠位本体部分の対応する近位側に向いた表面から形成され、前記遠位側に向いた表面及び前記近位側に向いた表面は、前記内側スリーブのための協働する並進当接面を共に形成している、請求項3又は4に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項6】
前記内側スリーブは、前記内側スリーブの遠位側先端部に隣り合って又は実質的に前記遠位側先端部に位置する表面係合手段を更に備え、前記表面係合手段は、前記注射モニタリング・モジュールが前記注射ペン・システム上の前記装着された位置にある場合に、少なくとも前記中空主本体の遠位本体部分の内側表面と係合し、以って前記内側スリーブの遠位及び/又は近位方向の並進移動を防止するように構成されている、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項7】
前記表面係合手段は、前記内側スリーブの外側表面から半径方向外向きに延在する、少なくとも1つの一続きの突出部、又は複数の別個の突出部を備える、請求項6に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項8】
前記表面係合手段は、少なくとも1つの遠位側に向いた表面を備え、前記表面係合手段の前記遠位側に向いた表面は、前記中空主本体の内側表面上に設けられた並進当接手段の対応する近位側に向いた表面と係合する、請求項6又は7に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項9】
前記表面係合手段は、前記内側スリーブの外側表面から半径方向外向きに延在する、少なくとも1つの一続きの突出部、又は複数の別個の突出部を備え、前記中空主本体の前記並進当接手段は、前記中空主本体の内側表面上に設けられた環状溝又は環状スロットとして形成され、前記環状溝又は環状スロットは、前記内側スリーブの外側表面から半径方向外向きに延在する、前記少なくとも1つの一続きの突出部、又は複数の別個の突出部を、協働する近位及び遠位の表面係合で受け入れるように適合され、及び寸法決めされている、請求項3から5まで又は請求項8に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項10】
前記内側スリーブは、前記投与量設定ホイールの外側表面と摩擦係合するための少なくとも1つ又は複数の摩擦係合面を形成する、前記内側スリーブから前記長手中心軸線に向かって内向きに延在する少なくとも1つ又は複数の弾性変形可能な表面を更に備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項11】
前記内側スリーブから前記長手中心軸線に向かって内向きに延在する前記少なくとも1つ又は複数の弾性変形可能な表面は、弾性変形可能な材料のリングであり、前記リングは、前記リングから同じ方向に延在する同軸に整列され且つ半径方向に離間されている複数の歯を備え、前記リングは、前記内側スリーブの近位側先端部に設置され、前記歯は、前記スリーブの外側及び/又は内側表面に沿って遠位方向に延在するように方向付けられている、請求項10に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項12】
前記内側スリーブは、前記内側スリーブを外側表面から内側表面まで貫通している、同軸に整列され且つ半径方向に離間されている複数の開口部を更に備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項13】
前記少なくとも1つ又は複数の弾性変形可能な表面は、前記内側スリーブを貫通している、前記半径方向に離間されている複数の開口部を通って延びている、請求項10又は11、及び12に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項14】
前記内側スリーブは、前記スリーブの内側表面から延在し、前記孔の前記長手中心軸線に向かって内向きに突出している、少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面を更に備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項15】
前記スリーブの内側表面から延在し、前記孔の前記長手中心軸線に向かって内向きに突出している、前記少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面は、前記内向きに突出している接続面に設けられた少なくとも1つ又は複数の凹部を備える、請求項14に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項16】
前記注射モニタリング・システムはハウジングを備え、前記注射モニタリング・システムのハウジングは、前記ハウジングから遠位方向に延在する少なくとも1つの接続面を備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項17】
前記少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面及び前記少なくとも1つの注射システムのハウジングの接続面は、前記注射モニタリング・システムのハウジングの回転が前記内側スリーブを共回転させる第1の位置において互いに相互に係合するように、及び、前記注射モニタリング・システムが前記注射モニタリング・システムのハウジングを前記長手中心軸線を中心として回転させることなく前記長手中心軸線に沿って遠位又は近位方向に並進するのみである第2の位置において互いに係合するように、適合及び構成されている、請求項15及び16に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項18】
前記注射モニタリング・システムのハウジングから延在する前記少なくとも1つの接続面は、前記ハウジングの遠位側先端部から延在し、前記長手中心軸線と同軸に整列されている、少なくとも1つ又は複数の遠位方向に延在する突出部を備える、請求項16に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項19】
前記第1の位置において、前記注射モニタリング・システムのハウジングの前記少なくとも1つ又は複数の遠位方向に延在する突出部は、前記内向きに突出している接続面に設けられた前記少なくとも1つ又は複数の凹部の対応する内向きに面する表面と摩擦係合する、外向きに面する接続面を各々備える、請求項14から18までのいずれか一項に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項20】
前記第2の位置において、前記注射モニタリング・システムのハウジングから延在する前記少なくとも1つ又は複数の遠位方向に延在する突出部は、前記注射作動機構と接触する少なくとも1つの遠位側に向いた接触面を更に備える、請求項14から19までのいずれか一項に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項21】
前記注射モニタリング・システムは、前記注射モニタリング・システムが前記ペン注射システムのペン作動機構と物理的に接触している間に経過した時間を判定するように更に構成されている、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項22】
前記注射モニタリング・システムは、電子コンポーネント基板を更に備える、請求項1に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項23】
前記1つ又は複数の磁場センサは、前記電子コンポーネント基板に電気接続されている、請求項1及び22に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項24】
前記電子コンポーネント基板は、前記1つ又は複数の磁場センサと電気接続する少なくとも1つのマイクロ・コントローラを備える、請求項21又は22に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項25】
前記電子コンポーネント基板は、前記少なくとも1つのマイクロ・コントローラと電気接続する通信ユニットを備える、請求項22及び24に記載の注射モニタリング・モジュール。
【請求項26】
前記電子コンポーネント基板は、再充電可能な電源を備える、請求項22に記載の注射モニタリング・モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に注射可能薬物送達デバイスのためのモニタリング・システムに関し、特に注射ペン・システムのための注射モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
注射モニタリングは、注射可能薬物送達デバイスに関連のある、例えば特に点滴システムに関する、よく知られている分野である。時間の経過と共に、ここ最近ではそのようなモニタリング・システムは薬物を送達するための注射ペン・システムに移行してきており、そのようなペン注射システムの使用者並びにそのような患者の治療及び経過観察に関与する医療専門家が、より良好な健康管理上の転帰をもたらすことを意図して、患者の注射レジーム及び多くの場合実際に投与される投与量をより詳細にモニタすることを可能にしている。これらの発展にはソフトウェア及びタブレット又はスマートフォンなどのポータブル通信デバイスの関連使用の増加が伴ってきたが、それらは、使用者又は医療専門家にオン・ザ・フライで又はモニタリング・システムに含まれている適切な通信ユニットを介して一定の間隔で情報を提供するために、モニタリング・システムから情報を受信する、及びそれと対話するようにプログラムされている。
【0003】
例えば特にペン注射システムに関して、以前からの課題の1つは、多数存在するそのような市販のペン注射システムの様々な異なる変形形態に適合させることのできる、使用し易く、信頼性が高く、妥当なフェールセーフ性を有するシステムを提供することであった。これまでのそのようなモニタリング・システムを提供する試みは通常、ペン注射システムの本体を、そこに1つ又はそれ以上のセンサと共に電子コンポーネントを含めることによって適応させることを含んでいた。しかしながら、そのようなシステムの主な欠点のうちの1つは、全ての電子コンポーネントを組み込んだときに、それらのシステムによって最終製品がかなり嵩張り、扱いにくい物体になり、したがって使用者から見ればより使用しにくくることである。更に、そのような修正されたシステムは所与のブランド又は製造者に固有のものとなり、したがって他の製造者に関してはほとんど又は全く用を成さない傾向にある。また更に、修正したペン注射システムの嵩張り及び扱いにくさの問題を克服するために、注射ペン本体の全体体積を複雑な電子コンポーネントの小型化を通して可能な限り小さくするよう試みる傾向が以前から存在するが、この結果、必要な又は所望の統合された機能性を提供する複数の回路が密に近接していることに起因して、特に様々な構成要素間の電磁干渉に関して、それ自体の問題をもたらしている。そのようなモニタリング・システム内のセンサを電磁干渉源から更に離れる方に移動させることは事態を更に複雑にするだけであり、場合によっては読み取りの誤りにつながる、又はその他の電子コンポーネント、例えば様々な構成要素に対する制御及び命令を行いそれらの相互作用を管理するように設計されているマイクロ・コントローラからの、センサの物理的分離を補償するための、更なるシステムが必要になる。
【0004】
問題の注射ペン・システムはそれ自体よく知られているもので、近位側に配置されている投与量設定ホイールと注射作動機構とを一般に備えており、投与量設定ホイールはペン注射システムの長手中心軸線を中心に回転可能である。使用者はホイールを回転させて投与すべき薬物の投与量を選択する。ペンは一般に、注射作動機構を作動させると機械的に又は電気機械的にのいずれかで注射を実行するように構成されている。そのような注射作動機構は非常に一般的には、ペン注射システム内に配置されている分注機構と機械的又は電気的に接触している単純な押圧(press)又は押し(push)ボタンであり、これを押圧することによって注射機構は、ペン注射システム内に収容されている薬物を発射及び注射する。一部のペン注射器システムでは、投与量設定ホイールは、投与量設定中だけではなく注射中にも回転するように構成されている。このことは一般に、1つ又はそれ以上の金属構成要素、例えば、注射ペン・システムのハウジング本体内に配置されており投与量設定ホイールに物理的に連結されているらせん巻きの駆動ばねを含めることによって、達成される。そのような金属要素は今日多くのペン注射システムに含まれている電子コンポーネントシステムと比較して相対的に大きい物体であるので、これらの大きい金属物体は、そのような電子コンポーネントシステム内のセンサによって捕捉される又は拾われるように設計されている信号を更に撹乱する可能性があり、場合によってはシステムの正確度を低下させ、且つ/又は、計算エラーを回避するために複雑な補正機構を所定位置に置くことが必要になる。
【0005】
電子コンポーネントの統合の難点を克服しようとする試みが特許文献に既にいくつか記載されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、パターン状に配置された複数の個々の導電センサ領域を備えた第1の回転センサ部分と、第1の部分に対して回転するように配置されており、第1のセンサの回転部分上の導電センサ領域と接触するように適合されている複数の接触構造を備える、第2の回転センサ部分と、を有するセンサ・アセンブリに関する。接触構造は、回転センサの第1及び第2の部分が互いに対して回転するときに異なるセンサ領域に係合し接続するように構成されており、形成された接続は第1の部分と第2の部分との間の回転位置関係を示している。接触構造のうちの1つは、第1の部分に対して軸方向に移動可能な作動可能接触構造であり、作動可能接触構造がセンサ領域と接触する接続位置と、作動可能接触構造がセンサ領域と接触していない切断位置と、を有する。このシステムはペン注射器本体内に、少なくとも部分的に投与量設定ホイールの内側の容積内に収容される。システムはまた、注射作動機構ボタン上に又はその代わりに配置されている、LCDディスプレイなどの視覚ディスプレイも備える。
【0007】
これに対して、特許文献2は、アクチュエータに取り付けられており投与量設定部材に取り付けられている連結構成要素に対して回転可能に且つ軸方向に移動可能な投与構成要素を含み、医薬品送達デバイスによって送達される投与量を検出するために連結構成要素及び投与構成要素の相対回転を検出するように動作可能な電子センサを含むモジュールを備える、投与量検出システムに関連している。投与量検出モジュールはペン注射システムの近位端に取り外し可能に連結されており、そこに取り付けられている間にペン注射システムによって分注される医薬品の量を検出し、検出された投与量をメモリに保存し、検出された投与量を表す信号を遠隔の通信デバイスに送信するための手段として機能するように意図されている。システムは、投与量設定を含む注射投与動作の様々な状態又は位置を示すためにシリンダ表面上に設けられた電気コンタクトを介して互いに相互作用する、回転可能且つ並進可能なシリンダの対を備え、電気コンタクトは、取り外し可能に連結された本体内に重畳した折り畳み部をアコーディオン式に構成して配設されており、生じ得る電気的、電子的、及び電磁的干渉を防止するために回路基板の重なり合う層の間で非導電性スペーサ層によって絶縁されている、フレキシブル・プリント回路基板上に収容されている、電子コンポーネントの集合に接続されている。
【0008】
上記した構成を観察して直接分かることの1つは、電子コンポーネントを位置付けるための複数の表面を提供するために、折り畳んだフレキシブル・プリント回路基板を使用しているにも関わらず、それらの相対空間密度及び互いに対する位置付けでは、電子的構成部品の層同士の間に非導電性スペーサを設けることが必要になるということである。このことの直接的な帰結として、モジュールの高さが高くなり、必然的に同明細書に記載されているクリップ・オン式投与量検出モジュールの複雑さが増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/128156号
【特許文献2】国際公開第2018/013419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、薬物を送達するための注射ペン・システムの近位側先端部に取り外し可能に取り付けられるように適合及び構成されている注射モニタリング・モジュールであって、注射ペン・システムが、注射されることになる薬物の投与量を設定するためにペン注射システムの長手中心軸線を中心に回転可能であり、注射中は回転しないように固定される、投与量設定ホイールを有する、注射モニタリング・モジュール、を提供することであり、この場合注射モニタリング・モジュールの構成ははるかに単純であり、同時に、モニタリング・モジュール内の電子コンポーネントの密度が比較的高いことによって引き起こされるあらゆる望まれない電気的、電子的、又は電磁的効果に対処するための、複雑なシールド又は保護ソリューションの必要がなくなる。
【0011】
本発明の別の目的は上記のような注射モニタリング・モジュールを提供することであり、この場合、上記モニタリング・モジュールは、注射中に投与量設定ホイールが回転しないペン注射システムにおいて注射終了ポイントを判定するように適合及び構成されている。本発明の目的上、「注射終了ポイント」という表現は、本明細書で使用する場合、使用者が単一の動作で注射可能物質の必要投与量を注射する場合の、薬物などの注射可能物質の投与量の注射の完了を意味するだけではなく、注射モニタリング・モジュールが注射ペン・システム上に装着されているときに、投与量設定ホイールを介した投与量の選択又はダイアル操作後に、ペン注射システムによって実際に吐出された任意の量の薬物も含む。このことは、使用者が例えば注射作動機構の繰り返しの連続的な作動によって一連の短い反復注射動作を実行する場合、注射ステップごとの対応する終了ポイントが登録され、注射可能物質の対応する量がペン注射システムから注射又は吐出されたものとして計算されることを意味する。
【0012】
本発明の更に別の目的は上記のような注射モニタリング・モジュールを提供することであり、その場合、上記モジュールは、ペン注射システム内に収容されている注射可能物質の投与量又は使用者が設定した量、上記ペン注射システムにおける注射始動又は開始ポイント、及び注射終了ポイントを検出又は計算し、そこから投与量又はペン注射システムの使用者が設定した量が全て上記ペン・システムから吐出されたか否かを判定するように適合及び構成されている。
【0013】
本発明のこれらの及び他の目的は、本明細書を完全に読むことで容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって上記の目的のいずれかによれば、薬物を送達するための注射ペン・システムの近位側先端部に取り外し可能に装着されるように適合及び構成されている注射モニタリング・モジュールであって、注射ペン・システムは、ペン本体と、近位側に配置されており本体に接続されている投与量設定ホイールと、注射作動機構と、を有し、投与量設定ホイールは、投与量設定中はペン注射システムの長手中心軸線を中心に回転可能であり、注射中は回転しないように固定されている、注射モニタリング・モジュールにおいて、
ペン注射システムの本体の周囲に同軸に装着されるように適合及び構成されている中空主本体であり、近位側先端部及び遠位側先端部を有する長手中央孔並びに長手中心軸線を有する、中空主本体と、
長手中央孔の近位側先端部において中空主本体の表面又は中に配置されている磁場生成手段と、
少なくとも1つ又は複数の磁気センサを備える注射モニタリング・システムであり、中空主本体の孔の近位側先端部に配置されている、注射モニタリング・システムと、を備え、
中空主本体は、長手中央孔内に配置されており、投与量設定中に投与量設定ホイールの外側表面と摩擦係合して、長手中心軸線に沿って軸方向に並進することなく、投与量設定ホイールと一緒に長手中心軸線を中心に共回転するように構成されている、内側スリーブを更に備え、
内側スリーブは注射モニタリング・システムに接続されており、
内側スリーブと注射モニタリング・システムとの間の接続は、投与量設定中には内側スリーブ及び注射モニタリング・システムの両方を長手中心軸線を中心に共回転させるように、並びに、ペン注射システムからの薬物の注射及び/又は吐出中には注射モニタリング・システムは長手中心軸線に沿って並進させるが注射モニタリング・システムは長手中心軸線を中心に回転させないように、適合及び構成されている、注射モニタリング・モジュール、が提供される。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「ペン注射システム」及び「注射ペン・システム」は、一般に片手持ちであるペン形状の注射システムを指定するように入れ替え可能に使用されるが、そのようなシステムはそれ自体でそのまま良く知られており、市販されて多くの様々な医療適用の処置で使用されている。これらのシステムはまた多くの場合、所与の医療適用に関する処置が必要なときの使用者による薬物の自己注射のために全体的に設計されている。これは例えば、糖尿病の症状の治療を意図するインスリンに関する場合であり、1つのそのような例は、Novo NordiskからFlexTouch(登録商標)のブランド名で市販されているペン注射器である。ただし、例えば生命の危険の可能性のある状況に対処するために必要な、アナフィラキシー・ショック治療薬、抗凝血剤、オピオイド受容体作動薬及び拮抗薬などといった必要な薬物の即時の緊急注射を可能にする、医療デバイスのこの範疇には、他の薬物も該当しており、このことは、そのような病気に苦しむ又はかかり易い患者がこれらのデバイスを身の周りに持ち歩くのが一般的なことになった程度に対応している。
【0016】
注射ペン・システムは近位側に配置されている投与量設定ホイールと注射作動機構とを備えており、本発明に係る注射モニタリング・モジュールは、この注射ペン・システムに取り外し可能に取り付けられるように適合及び構成されている。投与量設定ホイールはペン注射システムの長手中心軸線を中心に回転し、これにより使用者は注射のための薬剤の投与量を設定することができる。投与量設定ホイールは一般に時計回り及び反時計回りの両方向に回転可能であり、これらの方向は一般に、投与されることになる選択された投与量の増加及び選択された投与量の減少にそれぞれ対応している。注射作動機構は多くの場合、通常は投与量設定ホイールの近位側に、及び大部分の注射ペンにおいては注射ペン・システムの近位側先端部に配置されている、押しボタンで表される。投与量の設定後、次いで注射システムの使用者が注射作動機構を遠位方向に押すと、プランジャに接続されているピストンが駆動されて、注射ペン本体内のチャンバから、使用者が投与すべき薬物のタイプに応じた適切な注射部位、例えば皮膚、脂肪組織、又は筋肉に挿入したニードルを通して、薬物が外に放出される。投与量設定ホイールは必須ではないが多くの場合、薬物の注射が進行するにつれ回転もするように、注射駆動機構に連結されている。そのような注射システムの機能様式は当技術分野でそれ自体よく知られている。しかしながら、本発明に係るモニタリング・モジュールは、吐出/注射の動作段階において投与量設定ホイールが回転しないペン注射システム上に装着される。
【0017】
本発明に係る注射モニタリング・モジュールはしたがって、そのような注射ペン・システムの近位側先端部に取り外し可能に取り付けられるように適合及び構成されている。本明細書で使用される場合のある「取り外し可能に取り付けられる」、「取り外し可能に取り付け可能」、「取り外し可能に装着される」又は「取り外し可能に装着可能」という表現は、例えば注射モニタリング・モジュールを別のペン注射システムに移し替える場合に、又は、例えばモニタリング・モジュールが使用中に損傷し交換が必要な場合に、注射モニタリング・モジュールの取り付け又は装着、及びその後の取り外しが可能であることを指すものと理解すべきである。そのような取り付け及びその後に取り外しができることはモニタリング・モジュール上の連結手段によって達成でき、この連結手段は例えば、摩擦若しくは弾性係合を介して又は他の解放可能な固止手段、例えばクリップ、ストラップ、ねじ山と対応する締め付けリングなどを介してペン注射システムの近位側先端部と解放可能な様式で係合し、投与量設定ホイール若しくは注射作動機構のいずれか又は両方と係合する。
【0018】
注射モニタリング・モジュールの中空主本体は近位側先端部と遠位側先端部とを有する長手中央孔を備え、この孔は、ペン注射システムの本体の周囲に被さるような中空主本体の同軸装着を許容するように寸法決めされている。
【0019】
中空主本体は、長手中央孔内に配置されており、投与量設定中に投与量設定ホイールの外側表面と摩擦係合して、上記長手中心軸線に沿って軸方向に並進することはないが、投与量設定ホイールと一緒に長手中心軸線を中心に共回転するように構成されている、内側スリーブを更に備え、内側スリーブが回転する場合には、投与量設定ホイールも同じ方向に実質的に同じ又は同一の回転度まで回転するようになっている。このようにして、内側スリーブが投与量設定ホイールと共回転すると言うことができる。
【0020】
中空主本体は任意の好適な材料で、例えば高耐久性ポリマー又はプラスチック材料、例えば高密度又は高衝撃ポリプロピレンで、適切に製作される。有利には、使用者が発光ダイオードなどの何らかの視覚的手がかりを把握及び認識できるようにするために、中空本体は透明、半透明、又は不透明材料から製作されるが、そのような手がかりは注射モニタリング・モジュールに設けられても又は組み込まれてもよく、そのような手がかりは注射モニタリング・システムの動作の様々な状態を示すために任意選択的に使用され得る。同様に、内側スリーブもまた好適な材料、例えばABSなどの高耐久性ポリマー又は高衝撃プラスチック材料で、適切に製作される。
【0021】
内側スリーブはまた更に、注射モニタリング・システムに接続又は連結されている。内側スリーブと注射モニタリング・システムとの間の接続又は連結は、投与量設定中には内側スリーブ及び注射モニタリング・システムの両方を長手中心軸線を中心に共回転させるように、並びに、ペン注射システムからの薬物の注射及び/又は吐出中には注射モニタリング・システムは長手中心軸線に沿って並進させるが注射モニタリング・システムは長手中心軸線を中心に回転させないように、適合及び構成されている。この目的のために、内側スリーブと注射モニタリング・システムとの間の接続は、長手中心軸線を中心に選択的に回転し、次いで上記長手軸線に沿って選択的に並進するように構成されており、2つの移動は互いから相互排他的である。
【0022】
別の目的によれば、中空主本体は、投与量設定ホイールから遠位側の場所に、注射ペン・システムの本体の外側表面の周囲に延在しこれと摩擦係合する遠位本体部分を更に備える。このようにして、中空主本体は投与量設定ホイールから遠位側でペン注射システムの表面及び周囲で所定位置に維持され、投与量設定ホイールは結果的に中空主本体の孔内で自由に回転できる。そのような摩擦性の弾性構成は例えば、中空主本体の内周面、例えば1つ若しくはそれ以上の区域上に配置された適切なエラストマー・コーティング又は堆積物によって、又は別法として、中空主本体の上記内周面上に堆積された一続きの、連続した、若しくは一部が一続きの/連続したコーティングとして、提供され得る。そのような摩擦性の弾性コーティング又は堆積物の目的は、注射ペン本体に対する中空の遠位本体部分の適正な位置決めを維持するために、遠位本体部分と注射ペン本体との間に摩擦把持力を提供することである。対応する摩擦係合を提供できる適切なタイプのエラストマー材料は、当技術分野でそれ自体知られている。
【0023】
注射モニタリング・モジュールはまた、少なくとも1つの又は複数の磁気センサを備える注射モニタリング・システムであり、中空主本体の孔の近位側先端部に配置されている、注射モニタリング・システム、も備える。注射モニタリング・システムについて以下で更に詳細に記載するが、基本的には、注射モニタリング・システムは、例えば以下などの注射状態のモニタリングを提供する、いくつかの異なる構成要素及び手段を備える:
-注射動作の開始、
注射動作の終了、この場合、注射動作の終了とは、注射すべき物質の選択された投与量の完全な投与、又は、使用者が投与量の一部しか注射しないか若しくは選択された投与量の一部をペン注射システムから吐出させる、別々の注射動作の、両方を含むものとして理解すべきである。
【0024】
また更に、本発明の別の目的によれば、注射モニタリング・システムは、注射モニタリング・システムが注射作動機構の近位側表面に当接接触していない第1のモニタリング位置から、注射モニタリング・システムが注射作動機構の近位側表面に当接接触している第2のモニタリング位置へと、長手中心軸線に沿って移動可能である。注射モニタリング・システムは有利には、孔の近位側先端部に装着されており、孔の上記近位側先端部を完全に覆うか、又は少なくとも実質的に覆う。
【0025】
上記から、注射モニタリング・システムは、モニタリング・システムと作動機構ボタンとの間の物理的接触のない初期位置から、モニタリング・システムと注射作動機構の近位側表面との間に物理的接触が確立される異なる位置へと、移動され得ることが理解されよう。そのような移動は一般に、第1の位置から第2の位置への長手中心軸線に沿ったモニタリング・システムの並進移動となる。注射モニタリング・モジュールは、内側スリーブの回転及び投与量設定ホイールの対応する連結による投与量の設定後は、上記したような注射モニタリング・システムの長手中心軸線に沿った並進移動が注射始動及び/又は終了ポイントの検出又は決定を担うように、更に構成されている。例えば、モニタリング・モジュールは、モニタリング・システムが遠位方向に並進したときに、注射の始動ポイントを検出するように構成され得る。反対の様式で、上記モニタリング・システムは、モニタリング・システムが近位方向に並進しこのことによりペン注射システムの作動機構ボタンとモニタリング・システムとの間の物理的接触が解除されると、注射可能物質の注射又は吐出の終了ポイントを検出するように構成され得る。これを達成するための1つの手法は例えば、注射モニタリング・システムがペン注射システムのペン作動機構と物理的に接触している間に経過した時間を判定することによる。注射の方向とは反対方向への並進移動、すなわち使用者の手又は親指に向かって戻るモニタリング・システムの近位方向への並進は、そのようなペン注射システムにおいて、使用者が作動機構ボタンを解放した後で、例えば上記ボタンに対する親指又はそれ以外の指の圧力を取り除くことで、注射ペン内部に配置されている回り止めばねの反発エネルギーを直接的に又は間接的にのいずれかで利用することによって好適に実現することができ、この反発エネルギーは、ペン注射システムの作動機構ボタンの近位側表面と接触しているあらゆるものに反発して働き、したがって注射モニタリング・システムをペンの作動機構ボタンから離れる方に移動させ、その結果注射モニタリング・システムはもはやペンの作動機構ボタンと接触しなくなる。
【0026】
本発明の別の目的によれば、本発明のモニタリング・モジュールは、長手中央孔の近位側先端部において中空主本体の表面又は中に配置されている、磁場生成手段を備える。「中空主本体の表面又は中に配置されている」という表現によって、磁場生成手段を例えば、中空主本体の中央孔の近位側先端部にある近位側の向かい合う面上に設置できることが理解されよう。別法として、磁場生成手段は、中空主本体の中央孔の近位側先端部に設けられている空洞又は凹部内に設置され得る。
【0027】
従来の磁石、電磁石、及び混合材料の磁石など、磁場を生成するための様々な手段が知られている。そのような磁石は典型的には磁性又は常磁性を有する磁化可能材料から製作することができ、天然のものであるか、それとも上記材料を電流若しくは他のエネルギーを与える流れが通過するときに上記材料に磁場が生成若しくは誘導されるものであるかは問わない。好適な材料は以下から適切に選択することができる:
-フェライト磁石、特に焼結フェライト磁石、例えば鉄、酸素、及びストロンチウムの結晶化合物、
-熱可塑性母材と等方性ネオジム-鉄-ホウ素粉末とから成る複合材料、
-熱可塑性母材とストロンチウム系ハード・フェライト粉末とから構成される複合材料、この場合得られる磁石は等方性すなわち非配向性又は異方性すなわち配向性のフェライト粒子を含有し得る、
-熱硬化性プラスチック母材と等方性ネオジム-鉄-ホウ素粉末とから構成される複合材料、
-例えば、合成ゴム又はPVCと混合された重荷電ストロンチウム・フェライト粉末で製造され、その後所望の形状に押し出されるかカレンダ処理されて微細シートにされる、磁性エラストマー、
-概して茶色いシートの外観を有し、その厚さ及びその組成に依存して多かれ少なかれ可撓性を有する、カレンダ処理された可撓性複合材。これらの複合材は決してゴムのような弾性は有さず、約40~70Shore D ANSIの範囲のショア硬度を有する傾向がある。そのような複合材は一般に、ストロンチウム・フェライト粒体が充填された合成エラストマーから形成される。得られる磁石は異方性又は等方性であり得、様々なシートは一般に、カレンダ処理に起因する磁性粒子のアライメントを有する、
-上記のような可撓性複合材を一般に含む、軟鉄極板で相互に積層される積層複合材、
-ネオジム-鉄-ホウ素磁石、
-アルミニウム-ニッケル-コバルト合金で製作され磁化された鋼、
-サマリウムとコバルトの合金。
【0028】
本発明で使用するのに適した磁場生成手段の上記のリストのうち、ネオジム-鉄-ホウ素永久磁石、磁性エラストマー、熱可塑性母材とストロンチウム系ハード・フェライト粉末とから構成される複合材料、及び熱硬化性プラスチック母材と等方性ネオジム-鉄-ホウ素粉末とで作製された複合材料から成る群から選択されたものが好ましい。そのような磁石は、比較的高い磁場強度を維持しながら比較的小さいサイズに寸法決めできることで知られている。
【0029】
磁場生成手段は、任意の好適な全体形状、例えば、円形、楕円形、又は任意の他の好適な多角形形状を含む円盤形状のものとすることができるが、直径方向において対置される北磁極及び南磁極の単一の対を有する単一の双極子だけを有するのが好ましい。磁場生成手段はまた、任意選択的に実質的に円盤形状であってもよいが、そのような円盤形状は好ましくはまた、実質的に円盤の中心にある開口を有してリング又は環形状の磁石を形成している磁石も含む。そのようなリング又は環形状の磁石は、中空主本体の近位側先端部において、その近位側に面した環状の外周面上に有用に設置され得る。
【0030】
更に別の目的によれば、中空主本体は、注射モニタリング・モジュールが注射ペン・システム上の装着された位置にあるときに長手中心軸線に沿った内側スリーブの軸方向並進移動を防止するように適合及び構成されている、並進当接手段を更に備える。並進当接手段は、長手中心軸線に沿って少なくとも遠位方向において、ただし有利には及び好ましくは上記長手中心軸線に沿って近位方向においても、中空主本体内部の事前に決定された地点を越える内側スリーブの軸方向並進移動を防止するような、形状及び寸法となっている。
【0031】
更に別の目的によれば、中空主本体の並進当接手段は、中空主本体の内側表面上に設けられた環状溝又は環状スロットとして形成されている。
【0032】
別の更なる目的によれば、並進当接手段は中空主本体上に設けられた遠位側に向いた表面及び遠位本体部分の対応する近位側に向いた表面から形成されており、遠位側に向いた表面及び上記近位側に向いた表面は上記内側スリーブのための協働する並進当接面を共に形成している。
【0033】
別の目的によれば、内側スリーブは、内側スリーブの遠位側先端部に隣り合って又は実質的に遠位側先端部に配置されている、表面係合手段を更に備え、表面係合手段は、注射モニタリング・モジュールが注射ペン・システム上の装着されている位置にあるときに、少なくとも中空主本体の遠位本体部分の内側表面と係合し、以って内側スリーブの遠位及び/又は近位方向への並進移動を防止するように構成されている。
【0034】
また別の更なる目的によれば、表面係合手段は、内側スリーブの外側表面から半径方向外向きに延在する、少なくとも1つの一続きの突出部、又は複数の個別の突出部を備える。
【0035】
有利には、及び更に別の目的によれば、表面係合手段は少なくとも1つの遠位側に向いた表面を備え、表面係合手段の上記遠位側に向いた表面が、中空主本体の内側表面上に設けられた並進当接手段の対応する近位側に向いた表面と係合する。
【0036】
また更に別の目的によれば、表面係合手段は、内側スリーブの外側表面から半径方向外向きに延在する少なくとも1つの一続きの突出部又は複数の別個の突出部を備え、中空主本体の並進当接手段は、中空主本体の内側表面上に設けられた環状溝又は環状スロットとして形成されており、環状溝又は環状スロットは、内側スリーブの外側表面から半径方向外向きに延在する少なくとも1つの一続きの突出部又は複数の別個の突出部を、協働する近位及び遠位の表面係合のかたちで受け入れるように適合され寸法決めされている
【0037】
上記をまとめると、中空主本体の並進当接手段及び内側スリーブの表面係合手段には、中空主本体がペン注射システムの本体上に装着されているときに近位方向又は遠位方向のいずれかのどのような並進移動も防止するように互いに協働する、適切な形状の表面及び領域が与えられる。
【0038】
更に別の目的によれば、内側スリーブは、投与量設定ホイールの外側表面と摩擦係合するための少なくとも1つの又は複数の摩擦係合面を形成する、上記内側スリーブから長手中心軸線に向かって内向きに延在する少なくとも1つの又は複数の弾性変形可能な表面を更に備える。
【0039】
また別の目的によれば、内側スリーブから長手中心軸線に向かって内向きに延在する少なくとも1つの又は複数の弾性変形可能な表面は、弾性変形可能な材料のリングであり、リングはリングから同じ方向に延在する同軸に整列され且つ放射状に離間されている複数の歯を備え、リングは内側スリーブの近位側先端部に設置されており、歯はスリーブの外側及び/又は内側表面に沿って遠位方向に延在するように方向付けられている。有利には、弾性変形可能な材料は好適なエラストマー、例えばSEBSエラストマーである。
【0040】
更に別の目的によれば、内側スリーブは、内側スリーブをその外側表面から内側表面まで貫通している、同軸に整列され且つ放射状に離間されている複数の開口部を更に備える。
【0041】
有利には、別の目的によれば、少なくとも1つの又は複数の弾性変形可能な表面は、内側スリーブを貫通している放射状に離間されている開口部を通って延びている。
【0042】
先行する段落から容易に理解されるように、弾性変形可能な表面は有利には、内側スリーブの一方側、例えば外側表面から、内側スリーブの本体材料を通り、貫通して他方側、例えば内側スリーブの内側表面へと延在する。
【0043】
更に別の目的によれば、内側スリーブは、スリーブの内側表面から延在し孔の長手中心軸線に向かって内向きに突出している、少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面を更に備える。
【0044】
有利には、及び更なる別の目的によれば、スリーブの内側表面から延在し孔の長手中心軸線に向かって内向きに突出している、少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面は、上記内向きに突出している接続面に設けられた少なくとも1つの又は複数の凹部を備える。
【0045】
更に別の目的によれば、注射モニタリング・システムはハウジングを備え、上記注射モニタリング・システムのハウジングは、上記ハウジングから遠位方向に延在する少なくとも1つの接続面を備える。
【0046】
また別の更なる目的によれば、少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面及び少なくとも1つの注射システムのハウジングの接続面は、注射モニタリング・システムのハウジングの回転が内側スリーブを共回転させる第1の位置において互いと相互に係合するように、及び、注射モニタリング・システムが注射モニタリング・システムのハウジングの長手中心軸線を中心とした回転を伴わずに上記長手中心軸線に沿って遠位又は近位方向に並進するのみである第2の位置において互いと係合するように、適合及び構成されている。
【0047】
上記から容易に理解されるであろうが、少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面及び少なくとも1つの注射システムのハウジングの接続面は、それぞれ一方と他方が係合する。第1の位置では、例えば投与量の設定中に、それぞれの表面が互いと係合して長手中心軸線を中心に一緒に回転し、第2の位置では、少なくとも1つの注射システムのハウジングの接続面が、少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面に当接して、作動ボタンが押されているか対応して解放されているかに応じて、遠位又は近位方向に並進する。
【0048】
更なる目的によれば、注射モニタリング・システムのハウジングから延在する少なくとも1つの接続面は、ハウジングの遠位側先端部から延在し長手中心軸線と同軸に整列されている、少なくとも1つの又は複数の遠位方向に延在する突出部を備える。
【0049】
更に別の目的によれば、第1の位置では、注射モニタリング・ハウジングの少なくとも1つの又は複数の遠位方向に延在する突出部は、上記内向きに突出している接続面に設けられた少なくとも1つの又は複数の凹部の対応する内向きに面する表面と摩擦係合する、外向きに面する接続面を各々備える。
【0050】
別の更なる目的によれば、第2の位置では、上記注射モニタリング・システムのハウジングから延在する少なくとも1つの又は複数の遠位方向に延在する突出部は、注射作動機構と接触する少なくとも1つの遠位側に向いた接触面を更に備える。
【0051】
別の更なる目的によれば、注射モニタリング・システムは、注射モニタリング・システムがペン注射システムのペン作動機構、例えばペン作動機構押しボタンと物理的に接触している間に経過した時間を判定するように、更に構成されている。
【0052】
磁場生成手段が提供され、これにより、投与量設定中に磁場センサが例えば磁場生成手段に対する内側スリーブの回転移動に起因する磁場の何らかの変化を検出し、以って投与量設定ホイールを介して設定されたダイアルされた投与量を判定することが可能になる。また更に、注射中、注射モニタリング・システムのハウジングに対して長手中心軸線に沿った遠位方向への指の圧力がかかっているとき、磁場生成手段へと向かう遠位方向に、次いで注射モニタリング・システムから指の圧力が解放される際に反対の近位方向に、長手軸線に沿ってセンサが並進することに起因して、磁場センサは磁場の変化を検出することになる。
【0053】
磁場センサはこのように、磁場生成手段によって生成される磁場を測定するために使用される。磁場生成手段の固定された中空本体近位側先端部配置に対する、投与量ホイールがこれと接触している内側スリーブを介して回転する際の長手中心軸線を中心とした磁場センサの移動を使用して、使用者がダイアル又は設定した注射ペン・システムにおける注射可能物質の投与量が、計算又は判定される。投与量が設定されると、注射モニタリング・システムのハウジング及びこれと一緒に設けられた対応して収容されている磁場センサの長手中心軸線に沿った並進移動をもたらす、近位側作動機構ボタンの作動が、注射が始動されたかどうかを判定又は計算するために使用される。逆に、対応するかたちで、近位側作動機構ボタンに対する親指以外の指又は親指の圧力が解放されると、注射ペンに備わった反動エネルギーによってペン注射作動機構ボタンが反動し、注射モニタリング・システムのハウジングの長手中心軸線に沿った使用者の親指又はそれ以外の指に向かう近位方向への並進移動を誘起し、以って注射モニタリング・システム内に収容されている磁場センサをも近位方向に移動させる。このように移動するときに磁場センサが検出する磁場信号の変化は、注射モニタリング・システムによって、対応する注射又は吐出動作の終了を判定するために処理される。注射の始動及び終了に関する生成された信号を処理することによって、注射始動信号と注射終了信号との間で実際に注射された投与量の判定を行うことが可能になる。
【0054】
判定すべき磁場を測定するための手段が当技術分野で知られている。例えば磁気抵抗器はよく知られている手段である。そのような磁気抵抗器は多くの場合それらの略語、例えばAMR、GMR、TMRセンサによって表されるが、これらはそれらのセンサ構成要素が機能する物理的機序を表している。巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant magnetoresistance)は、交互の強磁性導電層及び非磁性導電層から構成されている薄膜構造において観察される、量子力学的磁気抵抗効果である。異方性磁気抵抗、又はAMR:Anisotropic magnetoresistanceは、電流の方向と磁化の方向との間の角度に対する電気抵抗の依存性が観察される材料に存在すると言われている。トンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel magnetoresistance)は、薄い絶縁体によって分離された2つの強磁性体から成る構成要素である磁気トンネル接合(MTJ:magnetic tunnel junction)において生じる磁気抵抗効果である。これらの様々な特性を使用する抵抗器がそれら自体知られている。
【0055】
上記に照らして、本発明に係る注射モニタリング・モジュール及び/又はシステムは好ましくは、1つの、又はそれ以上の、又は複数の磁力計を、1つの、それ以上の、又は複数の磁場センサとして使用する。そのような磁力計は、それが磁場強度を直接測定するという点でGMR、AMR、又はTMRセンサとは異なっている。磁力計は主に2つの手法で磁場を測定する、すなわち、ベクトル磁力計は磁場のベクトル成分を測定し、全磁場磁力計又はスカラー磁力計はベクトル磁場の大きさを測定する。別のタイプの磁力計は絶対磁力計であり、これは絶対的な大きさ又はベクトル磁場を、磁気センサの内部較正又は知られている物理定数を使用して測定する。相対磁力計は、固定されているが未較正のベースラインに対する大きさ又はベクトル磁場を測定するもので、地磁気変化計とも呼ばれ、磁場の変動を測定するために使用される。
【0056】
本発明に係る注射モニタリング・モジュールで使用するのに好ましいタイプの磁力計はこの場合、超低電力高性能3軸ホール効果磁力計である。3つの互いに垂直な又は直交する軸に対して磁場を測定するように磁力計を構成することが可能であるが、本願の場合には、磁場センサが3つの直交軸のうちただ2つ、例えばX軸及びZ軸に対して磁場を測定するように構成されるのが好ましい。
【0057】
本発明の更に別の目的によれば、注射モニタリング・システムは、電子コンポーネント基板を備える。
【0058】
有利には、及び本発明の更なる目的によれば、電子コンポーネント基板に、1つ若しくはそれ以上の又は複数の磁場センサが電気接続される。1つ又はそれ以上の磁場センサは、長手中心軸線を中心に、電子コンポーネント基板上に、電子コンポーネント基板に直径方向に対置させた位置で配置する又はそれ以外で放射状に分散させることができるのが有用であり、長手中心軸線上に単一の磁場センサが配置されているのが好ましい。
【0059】
より一層有利には、電子コンポーネント基板は、磁場センサから受信した情報を処理するための、1つ若しくはそれ以上の又は複数の磁場センサに電気接続される集積型制御及びデータ処理ユニット、例えば少なくとも1つのマイクロ・コントローラを備える。電子コンポーネント基板はしたがって例えば、対応する適切な寸法のプリント回路基板であるのが好適である。本発明で企図される構成では、そのようなプリント回路基板は、その中心が長手中心軸線との交点と一致している円盤形状であるのが有利である。
【0060】
電子コンポーネント基板は中空主本体の近位側に配置されているハウジング内に収容されるのが有利であり、中央孔の近位側先端部を越えて配置されている注射モニタリング・システムのハウジング内に収容されるのが好ましい。更に、電子コンポーネント基板は、コンポーネント基板の水平面が上記長手中心軸線と実質的に直交する平面内に配置されるように保持されるのが有利である。電子コンポーネント基板は更に、例えば投与量設定中、第1の位置において内側スリーブと固定された回転関係で配置されており、その結果、中空主本体の回転によって、電子コンポーネント基板が、内側スリーブの移動と整合して同期した動きで回転する。このことは、内側スリーブを回転させると、電子コンポーネント基板上に配置されている少なくとも1つ若しくはそれ以上の又は複数の磁力計も長手中心軸線を中心に回転する。第1の位置における内側スリーブに対する注射モニタリング・システムの固定された回転関係は、例えば本明細書で少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面及び少なくとも1つの注射システムのハウジングの接続面によって形成されている連結に関して上記したような、上記第1の位置において内側スリーブと注射モニタリング・システムとの間に確立される、任意の好適な連結を介して保証され得る。
【0061】
少なくとも1つのマイクロ・コントローラを備える集積型制御及びデータ処理ユニットは、電子コンポーネント基板の様々な電子コンポーネントと磁場センサとの間の、あらゆる電気通信及び信号伝達に対処する。このユニットはまた、磁場センサの精確な位置の計算及び判定を可能にする計算の実行、並びに、例えばスマートフォン上のローカル又はリモートのデータ処理システムと通信する、注射モニタリング・システムに組み込まれた自立電源及び通信手段からの信号への対処も担う。そのような集積型制御及びデータ処理ユニットはそれ自体知られており、多くの場合、中央処理装置、実時間クロック、1つ又はそれ以上のメモリ・ストレージ・システム、及び任意選択的に通信システム又はサブシステムが、他の所望の構成要素と共に組み込まれている。
【0062】
更に別の目的によれば、電子コンポーネント基板は、少なくとも1つのマイクロコントローラと電気接続する通信ユニットを備える。そのような通信ユニットは、ワイヤレス通信ユニットなどの任意の数のそれ自体知られている通信ユニットのうちの1つ又はそれ以上とすることができ、例えば、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth LE(登録商標)、又は任意の他の短距離若しくは長距離ワイヤレス通信技術である。
【0063】
本発明の別の更なる目的によれば、電子コンポーネント基板は、場合によっては再充電可能な自立電源、例えば、消耗したときに容易に交換可能なリチウム・イオン・バッテリ、又は別法として、再充電可能なリチウム・イオン・バッテリなどの再充電可能なバッテリを備える。再充電可能なバッテリが提供される場合、上記再充電可能なバッテリは消耗したら、注射モニタリング・モジュールに設けられて再充電可能なバッテリに接続されている対応する充電ポート、例えばUSB充電ポートを介して充電することができる。再充電不可能な、すなわち単回使用のバッテリ、及び再充電可能なバッテリが、当業者にそれら自体一般に知られている。充電技術の進歩により今日ではワイヤレス充電も実現されており、例えば誘導充電システムを使用するそのようなワイヤレス充電可能なバッテリも、本発明の目的の中の可能性として予見される。
【0064】
各図及び例示のモニタリング・モジュールに関連する以下の説明において、本発明のこれらの及び他の目的が明らかになり、それらがより詳細に記載される。
【0065】
ここで本発明について、例示及び説明の目的で提供される添付の図を参照してより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】片手持ちペン注射システム上に装着されている注射モニタリング・モジュールの概略斜視表現である。
図2】片手持ちペン注射システム上に装着されている図1の注射モニタリング・モジュールの概略断面表現である。
図3図1又は図2の注射モニタリング・モジュールの概略斜視表現である。
図4図1又は図2の注射モニタリング・モジュールの、その遠位側先端部からモジュールの長手中心軸線に沿って見た概略軸方向表現である。
図5図1又は図2の注射モニタリング・モジュールの概略斜視分解図である。
図6A】投与量設定位置における長手中心軸線を中心とした第1及び第2の位置にある、図1又は図2の注射モニタリング・モジュールの概略断面表現である。
図6B】投与量設定位置における長手中心軸線を中心とした第1及び第2の位置にある、図1又は図2の注射モニタリング・モジュールの概略断面表現である。
図7】投与量吐出又は投与位置にある、図1又は図2の注射モニタリング・モジュールの概略断面表現である。
図8図1又は図2の、また図5にも表されている、注射モニタリング・モジュールの一部を形成する注射モニタリング・システムのハウジングの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
ここで図1及び図2を見ると、本発明に係る注射モニタリング・モジュール(1)の概略斜視表現が示されている。注射モニタリング・モジュール(1)は片手持ち注射ペン・システム(2)上に装着され、片手持ち注射ペン・システム(2)は、外周面(4)を有するペン注射システム本体(3)と、ペン注射システムの遠位側先端部を覆うペン・キャップ(5)と、ペン注射システムの本体(3)の近位側先端部に配置されている投与量設定又はダイアリング・ホイール(6)と、ペン注射システムの使用者によってダイアルされた投与量を表示する、投与量設定ホイール(6)の遠位側に配置されているダイアル済み投与量視覚化窓(7)と、を備える。本発明に係る注射モニタリング・モジュール(1)は、注射ペン・システム(2)の近位側先端部(8)と隣り合って、特に外周面(4)の少なくとも部分的に周囲にこれと接触するように、ペン本体(3)を取り囲み且つこれと接触するように、及び近位方向においてペン本体(3)の近位側先端部(8)を越えて、特に投与量設定ホイール(6)を越えて延在するように、配置されている。注射モニタリング・モジュール(1)及び注射ペン・システム本体(3)の両方の長手軸方向中心を通っている、長手中心軸線(9)も示されている。注射ペン・システムは、市販のいくつかの注射ペン・システムに見ることができるように、投与量設定又はダイアリング・ホイール(6)から近位側に配置されている、作動機構ボタン(10)を備えている。図1及び図2に示すタイプのペン注射システムでは、投与量設定ホイールは、投与量設定中に長手中心軸線(9)を中心に回転されるが、注射中には回転しないように固定されている。そのようなペンの実例は、Novo Nordiskから市販されているFlexTouch(登録商標)インスリン注射ペンの製品群として入手可能である。
【0068】
注射モニタリング・モジュール(1)は、ペン注射システム(2)の本体(3)の周囲に同軸に装着されるように寸法決め及びサイズ決めされる、中空主本体(11)を備える。この目的のために、中空主本体(11)は、近位側先端部(13)及び遠位側先端部(14)を有する長手中央孔(12)と、長手中心軸線(9)と一致する長手中心軸線と、を備える。中空主本体は、投与量設定ホイール(6)から遠位側のペン本体(3)上の場所に、注射ペン・システム(2)の本体(3)の外側表面(4)の周囲に延在しこれと摩擦係合する、遠位本体部分(15)を更に備える。中空主本体(11)とペン本体(3)の外側表面(4)との摩擦係合は、中空主本体の内周面(17)上に、遠位部分(15)とペン本体(3)の外側表面(4)との押しばめ又は滑りばめ係合を実現するためのエラストマー摩擦材料(16)を付設することによって達成できるが、そのような摩擦係合材料は当技術分野でそれ自体容易に知られている。中空主本体はペン注射システム(2)の作動機構ボタン(10)の境界を越えて近位方向に延在し、このとき孔(12)には投与量設定ホイール(6)及び作動機構ボタン(10)が収容され、投与量設定ホイールは孔(12)の中で自由に回転できるようになっている。孔の近位側先端部(13)は中空主本体(11)の近位側先端部に対応している。
【0069】
中空主本体(11)は、長手中央孔(12)の近位側先端部(13)において中空主本体(11)の表面又は中に配置されている、磁場生成手段(18、19)を更に備える。磁場生成手段(18、19)は、一方と他方が直径方向に対置されて配置されている単一の双極子磁石(18、19)の対によって好適に提供され、各磁石はそれぞれ北(N:north)極(18a、19a)及び南(S:south)極(18b、19b)を有し、極の対は好ましくは各々長手中心軸線に沿ってNからSへと軸方向に整列して方向付けられており、北極は近位側に、南極は遠位側に配置されている。例えば図5を参照されたい。双極子磁石(18、a、18b、19a、19b)は棒の形状へと、又は別法として円盤若しくはリング若しくは任意の他の好適な形状として、好適に形成され得る。磁石は中空主本体(11)に設けられた好適に寸法決めされた凹部(20、21)内に配置されており、凹部(20、21)は本体(11)の近位側先端部(13)に配置されている。別法として、磁場生成手段を単一のリング形状の双極子磁石とすることができ、これは中空主本体(11)の近位周面上又は上記中空主本体の近位側先端部(13)にある対応する環状凹部内に設置される。上記から、磁場生成手段は長手中心軸線を中心に自由に回転しないが、その理由は、中空主本体(11)がペン本体(3)上に上記長手中心軸線(9)を中心として中空主本体(11)と固定された位置関係で装着され、それが摩擦係合手段(16)を介してペン本体(3)の外側表面(4)に被さるように遠位部分の所定位置に摩擦力によって保持されるからであることが理解されよう。
【0070】
中空主本体(11)は、長手中央孔(12)内に配置されており、投与量設定中に投与量設定ホイール(6)の外側表面と摩擦係合して、上記長手中心軸線に沿って軸方向に並進することはないが、投与量設定ホイール(6)と一緒に長手中心軸線(9)を中心に共回転するように構成されている、内側スリーブ(22)を更に備える。内側スリーブ(22)について、特に図5図6A、及び図6Bに関連して、以下でより詳細に記載する。
【0071】
図3には注射モニタリング・モジュールが概略斜視表現で示されている。この図では、中空主本体(11)と、遠位部分(15)と、対応する近位先端部(13)及び遠位先端部(14)とが示されている。図3はまた、主中空本体(11)が、近位側先端部から遠位部分(15)の遠位側先端部(14)と隣り合うか近接している地点(23)に向かって次第に拡開する直径を有する形状であることも示す。この拡開する直径は、中空主本体がペンの近位側先端部の周囲に被さるように差し入れられペンの投与量設定ホイール(6)を覆って嵌合するのを可能にする孔(12)の拡開に対応しており、このとき孔内には内側スリーブ(22)を受け入れるのに十分な余地が残されており、内側スリーブ(22)が投与量設定ホイールの外側表面と係合できるようになっている。遠位部分(15)は、中空主本体(11)の直径が最も広くなる地点(23)から遠位側先端部(14)に向かって延在する、対応する形状の狭くなる直径を備える。図5図6A、及び図6Bを参照して以下でより詳細に記載するように、最も広い直径の地点(23)は、中空主本体(11)及び遠位部分(15)が、内側スリーブ(22)の長手中心軸線に沿った並進移動を防止するように好適に構成されている地点でもある。
【0072】
図4は、中空主本体(11)の遠位部分(15)の遠位側先端部(14)から孔(12)及び長手中心軸線(9)に沿って見たときの、本発明に係る注射モニタリング・モジュールの概略的表現であり、長手中心軸線(9)は十字線A’-A’’及びB’-B’の交点で表されている。この図では、中空主本体の遠位部分(15)の内周面(17)が示されており、内側スリーブ(22)も示されている。内側スリーブ(22)の近位側先端部にそれぞれ設けられた接触又は係合面(24)と、注射モニタリング・システムのハウジング(26)上に設けられそこから孔(12)内へと遠位方向に延在する対応する接触又は係合面(25)と、が更に表されており、係合面(24)及び対応する係合面(25)は、以下でより詳細に記載するように互いと協働する。
【0073】
図5には、本発明に係る例示的な注射モニタリング・モジュールの構成要素の、概略分解斜視図が提示されている。中空主本体(11)及び遠位部分(15)はこの表現では、遠位部分(15)及び中空主本体がペン注射システム(2)の本体(3)上に装着されるときに1つに組み付けることのできる、別個の構成要素として示されている。必須ではないが、そのような2構成要素での提示は、それが孔(12)への内側スリーブ(22)の挿入及びペン注射システム(2)の本体(3)の外側表面に対するその配置を更に容易にするだけでなく、遠位部分(15)及び中空主本体に対するその相対的位置付けをも容易にし、モニタリング・モジュールが本体(3)ペン注射システム上に装着されると近位又は遠位方向への内側スリーブの並進がブロックされる、という点で、特に有利である。この目的のために、中空主本体(11)及び遠位部分(15)の両方の直径が最も広い地点(23)は好適には、注射モニタリング・モジュールの装着時にこれらの構成要素が1つに結合される地点であり、例えばこのことは、中空主本体(11)のその遠位側先端部(29)上に、遠位環状スカート(27)及びスカート(27)と比較して直径が小さくなっている近位側に突出している遠位環状壁(28)を、並びに、遠位部分の近位側先端部(31)に、遠位側に突出している環状壁(28)及び対応する遠位環状スカート(27)と係合する、遠位側に突出している対応する環状壁(30)を設けることによって、行われる。中空主本体(11)及び遠位部分(15)は、最も幅広の地点(23)において互いに好適にクリップ留め、接着、及び/又は接合することができ、このことは例えば、超音波溶着若しくは任意の他の適切な形態の接合技術、又は中空主本体(11)と遠位部分(15)を強固に一体に維持することを可能にする他の係合手段を使用して行われる。別法として、中空主本体(11)及び遠位部分(15)の両方を、対応する注射ペン本体(3)の周囲に嵌合してこれと係合するように適切に寸法決めされ構成されている、単一のユニットとして提供することができる。
【0074】
内側スリーブ(22)は、投与量設定ホイールの外側表面と摩擦係合するための少なくとも1つの又は複数の摩擦係合面(32)を形成する、上記内側スリーブ(22)から長手中心軸線(9)に向かって内向きに延在する少なくとも1つの又は複数の弾性変形可能な表面(32)を更に備える。内側スリーブ(22)から長手中心軸線に向かって内向きに延在する少なくとも1つの又は複数の弾性変形可能な表面(32)は、弾性変形可能な材料のリング(33)として好適に設けることができ、リング(33)は上記リング(33)から同じ方向に延在する同軸に整列され且つ放射状に離間されている複数の歯を備え、上記リングは内側スリーブ(22)の近位側先端部(34)に有用に設置されており、歯は上記スリーブ(22)の外側及び/又は内側表面に沿って遠位方向に延在するように方向付けられている。有利には、弾性変形可能な材料は好適なエラストマー、例えば、それ自体一般に知られているSEBSエラストマーである。弾性変形可能な表面(32)又は歯は、内側スリーブ(22)をその外側表面(36)から内側表面(37)まで貫通している、同軸に整列され且つ放射状に離間されている対応する複数の開口部(35)を通って延びている。上記から容易に理解されるように、弾性変形可能な表面は有利には、一方側から、例えば内側スリーブ(22)の外側表面(36)から、内側スリーブ(22)の本体材料を通り、貫通して他方側、例えば内側スリーブの内側表面(37)まで延在し、以ってペン注射システムの投与量設定ホイール(6)の外側表面と接触する、1つ又はそれ以上の摩擦係合接触面を提供し、内側スリーブのいかなる回転も投与量設定ホイールに伝達され、逆も成り立つことが保証される。
【0075】
ここまで述べてきたように、並びに本発明に係る注射モニタリング・デバイスの代表的な断面図である図6A及び図6Bにより詳細に示すように、内側スリーブ(22)は、長手中心軸線(9)に沿って近位又は遠位方向に並進移動しないようにブロックされる。図6A及び図6Bは、第1の位置又は投与量設定位置、すなわち、ペン注射本体上への装着後にモニタリング・モジュールがあるであろう位置にある、注射モニタリング・モジュールを表す。図6A図6Bとの間の違いは、単に長手中心軸線(9)を中心にした断面の回転の違いである。中空主本体(11)はしたがって、注射モニタリング・モジュール(1)が注射ペン・システム(2)上の装着されている位置にあるときに、内側スリーブ(22)の長手中心軸線に沿った軸方向並進移動を防止するように適合及び構成されている、並進当接手段(38)を更に備える。並進当接手段(38)は、長手中心軸線(9)に沿って少なくとも遠位方向において、ただし有利には及び好ましくは上記長手中心軸線(9)に沿って近位方向においても、中空主本体の中又は表面の事前に決定された地点(23)を越える内側スリーブの軸方向並進移動を防止するような、形状及び寸法となっている。この目的のために、中空主本体(11)の並進当接手段は、中空主本体(11)の内側表面(17)上に設けられた環状溝(38)又は環状スロットとして形成されている。環状溝(38)は好適には、中空主本体(11)上に設けられた遠位側に向いた表面(39)と、それぞれ対応するように遠位本体部分(15)の近位側に向いた表面(40)とから形成されている、協働する表面によって形成され得る。
【0076】
更に、内側スリーブは、上記内側スリーブの遠位側先端部に隣り合って又は実質的に遠位側先端部に配置されている、表面係合手段(41)を更に備え、上記表面係合手段は、注射モニタリング・モジュール(1)が注射ペン・システム(2)上の装着されている位置にあるときに、少なくとも遠位本体部分(15)及び中空主本体(11)の内側表面、例えば遠位側に向いた表面(39)及び近位側に向いた表面(40)によって形成されている環状溝(38)と係合し、以って内側スリーブの遠位及び/又は近位方向への並進移動を防止するように構成されている。この目的のために、表面係合手段(41)は、上記内側スリーブ(22)の外側表面(36)から半径方向外向きに延在する、少なくとも1つの一続きの突出部(41)又は複数の別個の突出部(41a、41b、41c、等)によって、適切に形成され得る。上記突出部(41)は少なくとも1つの遠位側に向いた表面(42)を備え、この遠位側に向いた表面(42)は、中空主本体(11)の内側表面(17)上に設けられた環状溝(38)の対応する近位側に向いた表面(40)と係合する。注射モニタリング・モジュールがペン注射システム上に装着されているとき、突出部(41)の協働する表面と環状溝(38)及び対応する表面(39、40)との間の相互作用は長手中心軸線に沿った内側スリーブのいかなる実質的な並進移動も防止するが、上記溝(38)及び突出部(41)はこれにかかわらず長手中心軸線(9)を中心にした内側スリーブ(22)の回転を許容するように適切に及び対応するように寸法決めされ、例えば投与量設定中に内側スリーブ(22)に回転力又は進行力が加わると、突出部(41)は溝(38)の中で上記軸線(9)を中心に自由に移動できる。
【0077】
図、特に図5図6A、及び図6Bから見ることができるように、内側スリーブはまた更に、いくつかの構成要素を備える角括弧内に示された注射モニタリング・システム(43)に接続されており、それら構成要素の中に注射モニタリング・システムのハウジング(26)がある。注射モニタリング・システムのハウジング(26)は、脚を有するカップに似た形状及び構成とされており、基部壁(44)が中空主本体(11)と実質的に同じ又は類似の直径にわたって長手中心軸線に対して実質的に垂直に延在し、第1の環状壁(45)が基部壁(44)の外周から上記基部壁(44)から近位方向に離れる方へと延在し、以って押しボタンを形成する近位キャップ(46)によって閉じられる内部容積を有するカップ形状部分を形成し、近位キャップ(46)は上記近位方向に延在する第1の環状壁(45)に、上記第1の環状壁の近位側先端部(47)において、スナップばめ若しくは押しばめ又は接着又はその他で固止される。基部壁(44)は、基部壁(44)を起点にして長手中心軸線(9)から半径方向に離間した場所から遠位方向に延在する、中空主本体の孔(12)の直径よりも小さい直径を有する第2の環状壁(48)を更に備える。第2の環状壁(48)はその遠位側先端部(49)において、カップの脚を形成するように横断壁(50)によって閉じられる。カップの脚は中空主本体の孔(12)の中に収まる。カップ形状の内部容積によって画定されている注射モニタリング・システムのハウジング(26)は、電子コンポーネント基板(51)を受け入れ定着させる。第2の環状壁(48)と横断壁(50)とによって形成される脚の内部容積には、単回使用の又は再充電可能なバッテリ、例えば、電子コンポーネント基板(51)に電気接続されてそこに電力供給するリチウム・イオン電池などの、自立電源(52)が受けられる。電子コンポーネント基板(51)は一般に、適切には、基部壁(44)と近位方向に延在する第1の環状壁(45)とによって形成されているカップの内部容積内に配置するのに好適な寸法の、プリント回路基板である。注射モニタリング・ハウジング(26)は任意選択的に、第1の環状壁(45)に組み込まれているか又はその一部である導光窓(54)、例えば、例えば任意選択的に存在する発光ダイオード又は他の光波生成構成要素によって生成されるようなカップの内側容積からの光波を注射モニタリング・システムのハウジング(26)の外側へと導くように選択された結晶特性を有する、成形された半透明、不透明、又は透明材料を更に備える。
【0078】
電子コンポーネント基板(51)は、長手中心軸線上に、及び実質的に円形状のコンポーネント基板の場合には長手中心軸線上に整列されるように実質的にその中心に、有利に配置されている、少なくとも1つの磁力計(53)を更に備える。磁力計(53)に加えて、注射モニタリング・システム(43)は、磁力計(53)に電気接続されている、磁力計から受信した情報を処理するための、集積型制御及びデータ処理ユニット(55)も備える。集積型制御及びデータ処理ユニット(55)は、注射モニタリング・システムの様々な電子コンポーネント間のあらゆる電気通信及び信号伝達に対処する。このユニットはまた、投与量管理システム及び磁石の精確な位置の計算及び判定を可能にする計算の実行、並びに自立電源(52)からの信号への対処も担う。電子コンポーネント基板は更にUSBポート(56)に接続可能であり、USBポート(56)は、再充電可能なバッテリ(52)用の電源再充電ポートとして構成可能である、及び/又は、電子コンポーネント基板上の任意のプログラム可能メモリの基本セットアップを可能にするように、若しくはデータ処理ユニット(55)を設定するように、構成可能である。集積型制御及びデータ処理ユニット(55)は通常、スマートフォン上のローカル又はリモートのデータ処理システムと通信する、ワイヤレス通信回路などの通信手段も備えており、好適な通信手段の多くのタイプの中から2つだけを挙げれば、例えばBluetooth(登録商標)又はBluetoothLE(登録商標)ワイヤレス通信システムである。集積型制御及びデータ処理ユニット(55)は、最初の使用時にリモートで好適にプログラムされ得るか、又は、集積型制御及びデータ処理ユニットを含む今日の他の電子デバイスと類似の手法で、例えばワイヤレスで若しくはUSBポート(56)などの任意の他の好適なリンクを介して、情報を受信及び更新する。そのような集積型制御及びデータ処理ユニットはそれ自体知られており、多くの場合、中央処理装置、実時間クロック、1つ又はそれ以上のメモリ・ストレージ・システム、及び任意選択的に通信システム又はサブシステムが、他の所望の構成要素と共に組み込まれている。電子コンポーネント基板(51)は注射モニタリング・システムのハウジング(26)の基部壁(44)及び第1の環状壁(45)によって形成されているカップ内に、回路基板の水平面に実質的に沿って、すなわち長手中心軸線(9)に対して概ね直交して垂直に、設置又は配置されている。
【0079】
注射モニタリング・ハウジングは、基部壁(44)の周縁部に、上記基部壁(44)から中空主本体(11)に向かって遠位方向に延在する、第3の環状壁(57)を更に備える。図6A図6B、及び図7に見ることができるように、この第3の環状基部壁(57)は、第1の投与量設定位置にあるとき、並びに作動機構ボタン(10)が作動中である、言い換えれば注射ペン・システムからの物質の注射及び/又は吐出中であるときの両方で、特にこれが中空主本体のその近位側先端部(13)における外周を取り囲むように寸法決めされる範囲において、注射モニタリング・システムのハウジング(26)に軸方向の安定をもたらす。
【0080】
図7及び特に図8はいずれも、内側スリーブ(22)と注射モニタリング・システムのハウジング(26)との間の物理的接続に関連する詳細の一部を示す。特に、この接続は、第1の位置においてすなわち投与量設定中に、内側スリーブ(22)及び注射モニタリング・システムのハウジング(26)の両方の長手中心軸線(9)を中心にした共回転を可能にするように、並びに次いで、第2の位置においてすなわちペン注射システムからの薬物の注射及び/又は吐出中に、注射モニタリング・システムのハウジング(26)の長手中心軸線(9)に沿った並進は許容するが回転は許容しないように、適合及び構成されている。
【0081】
内側スリーブ(22)と注射モニタリング・システムのハウジングとの間の接続は、相互作用及び相互協働する一連の接続面(24、25)を通して提供されるのが有利である。これに応じて、内側スリーブ(22)は少なくとも1つの注射モニタリング・システムの接続面(24)、すなわち上記注射モニタリング・システムと接続、接触、又は係合する表面を備えており、この接続面はスリーブの内側表面(22)から延在し、孔の長手中心軸線(12)に向かって内向きに突出している。注射モニタリング・モジュール(1)が吐出又は注射位置へと移動されてペン注射システムの作動機構ボタンを作動させている図7に示されているように、接続面(24)は、内側スリーブ(22)の近位側先端部から孔(12)内へと半径方向内向き延在する環状肩部(59)の最も内側の周縁部(58)上に形成されている環状表面である。そのような接続面(24)は、上記内向きに突出している接続面に設けられた少なくとも1つの又は複数の凹部(60)を更に備えるのが有用である。
【0082】
相手方として、注射モニタリング・ハウジング(26)は、上記ハウジング(26)から遠位方向に延在する、少なくとも1つの対応する接続面(25)を備える。図に示されているように、注射モニタリング・ハウジング(26)から遠位方向に延在する接続面(25)は、複数の1つ又はそれ以上の小突出部(61)として設けられ、それらのうちの1つ又はそれ以上には、遠位側先端部接触面(62)が更に設けられている。小突出部(61)は、基部壁(44)から、及び/又は第2の環状壁(48)の遠位側先端部(49)から、及び/又は横断壁(50)から、のいずれかで延在し、長手中心軸線(9)を中心として互いから放射状に離間されている。小突出部(61)のうちのいくつか、例えば3つの小突出部は、内向きに突出している環状肩部(59)に設けられた対応する凹部(60)に差し込まれるような形状及び寸法となっている。残りの小突出部(61)はこの場合、第1の投与量設定位置において、内側スリーブ(22)と注射モニタリング・システムのハウジング(26)との間に回転ロックを提供する。残りの小突出部(61)は遠位方向に更に遠くまで突出しており、ペン注射システムを使用して注射及び/又は吐出動作が実行されるときに、例えば薬物などの注射可能物質の投与量を投与するときに、ペン注射システムの作動機構ボタン(10)に係合及び接触するのに十分な長さを有する。これは、注射モニタリング・モジュールが、第1の投与量設定位置から第2の投与量吐出及び/又は注射位置へと移動される場合である。
【0083】
相互に協働する接続又は接触面(24、25)はこの場合、第1の位置において互いと係合し、記載したタイプの注射ペン・システムの通常の動作モードに従う、使用者が親指以外の指及び/又は親指を使用することによる、注射モニタリング・システムのハウジング(26)の回転によって、内側スリーブ(22)の共回転が引き起こされ、内側スリーブもまた投与量設定ホイール(6)の外側表面に係合するため、投与量の設定が可能になる。投与量が設定されると、キャップを親指及び/又はそれ以外の指で遠位方向に押すことで、接続面(24、25)がどのような回転移動も伴わずに長手中心軸線(9)に沿って並進移動して、互いに対して摺動係合することになる。そのようにする際に、小突出部(61)は、遠位側先端部接触面(62)が作動機構ボタン(10)と接触するまで、孔(12)内を長手中心軸線(9)に沿って移動される。これは第2の位置に対応している。作動機構ボタンによる遠位表面(62)の非接触と遠位表面(62)の接触との間の長手距離は僅か数ミリメートルであり、この軸方向並進移動距離は既知の値なので、データ処理ユニットは、どれくらいの間遠位側先端部接触面が作動機構ボタンと接触したままであるかを計算するように構成することができる。例えば、そのような状況では経過時間法を使用することができるが、この方法は、磁場センサが第1の投与量設定位置から第2の投与量吐出/注射位置へと移動され、その後また注射システム(2)の作動機構ボタン(10)にそのようなペン注射システムの内部戻り止めばねによって付与される反発エネルギーに起因して元に戻るときの、事前に決定された検出可能な長手軸線に沿った磁場の変化について較正される。データ処理ユニットによる経過時間の計算によってまた、注射開始ポイント及び対応する注射終了ポイントを判定するための更なる事前プログラムされた計算も可能になるが、それらは、後で通信ユニットを介して、例えばワイヤレス通信を介して、リモートのデバイス、例えばスマートフォン、タブレット、又は他のリモートのコンピューティング・デバイスに送信するために、注射モニタリング・モジュールのデータ処理ユニットに一時的に格納される。
【0084】
注射モニタリング・モジュールをどのように使用できるかの実例として、以下の説明を示す:
モニタリング・モジュールはペン注射デバイス、例えばFlextouch(登録商標)インスリン・ペン上に装着される、
使用者が、一方の手にペンの本体を保持しながら、他方の手の親指以外の指及び/又は親指を使用して注射モニタリング・システムのハウジングを回転させる、
接続面(24、25)を介して内側スリーブ(22)と回転がロックされている注射モニタリング・システムのハウジング(26)が回転することによって、内側スリーブと投与量設定ホイール(6)の外側表面との間の摩擦接触に起因する、注射ペンの投与量設定ホイール(6)の回転が引き起こされる、
投与量設定中の長手中心軸線(9)を中心とした磁力計(53)の回転によって、磁力計(53)は、磁場の変動を、データ処理ユニットを用いて磁石に対する磁力計の角度位置の関数として登録することになる、
使用者が近位キャップ(46)を押すと、注射モニタリング・ハウジング(26)が長手中心軸線(9)に沿って遠位方向に並進する、
この並進移動の結果として、磁力計はまた上記軸線に沿って遠位方向に並進し、検出された磁場の何らかの変化がデータ処理ユニットに信号として送られる、
小突出部(61)の遠位接触面(62)は作動機構ボタンと接触し、以って注射/吐出動作が開始される、
注射/吐出動作中に近位方向への並進移動はそれ以上行われないが、その理由は、作動機構ボタンには長手軸方向移動に関して、通常1mm未満の事前に決定された制約限度があるからである。使用者がキャップ(46)に対する親指又はそれ以外の指の圧力を解放すると、作動機構ボタンは、ペン・システムによってそれに付与された反動エネルギーの勢いを受けて上記反動エネルギーを小突出部(61)の遠位表面(62)に伝達するのに丁度十分なだけ反動し、以って注射モニタリング・ハウジング(26)を第2の位置から近位方向へと再び第1の位置まで移動させる。磁力計は、中心軸線に沿って同じ並進距離だけ磁石から離れる方へと移動し、対応する磁場変化を信号としてデータ処理ユニットに送る、
次いでデータ処理ユニットは、例えば、既知の移動距離及び信号化された磁場に基づく経過時間相関法を使用して、注射開始ポイント、注射終了ポイント、並びに吐出及び/又は注射された実際の投与量を判定するために、計算を行う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】