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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】HPK1阻害剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/506
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500011
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2021104206
(87)【国際公開番号】W WO2022002237
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/100134
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Span
2.TWEEN
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521220895
【氏名又は名称】キル・レガー・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウェンジ
(72)【発明者】
【氏名】チュー,シャオティアン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ソン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ロンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ケイト・シン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,フア
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB02
4C063CC31
4C063DD06
4C063EE01
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZC201
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、HPK1活性を阻害することにより処置可能な疾患(例えば、がん)の処置に有用である、構造式(I)または式(II):
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
式IA
【化2】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
式IB
【化3】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式II
【化4】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項5】
式IIA
【化5】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
式IIB
【化6】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
治療有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
治療有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、1つ以上の治療活性作用剤とを含む、組合せ物。
【請求項9】
がんを有する対象を処置する方法であって、対象に有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与するステップを含む、方法。
【請求項10】
がんが、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、卵巣がん、および膵がんから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
HPK1活性の阻害を必要とする対象においてHPK1活性を阻害する方法であって、対象に有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与するステップを含む、方法。
【請求項12】
対象が、がんを有し、がんが処置される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
がんが、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、卵巣がん、および膵がんから選択される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月3日に出された国際特許出願第PCT/CN/2020/100134号の優先権の利益を主張する。前述の出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
造血前駆体キナーゼ1(HPK1)は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼ1(MAP4K1)としても知られており、MAP2K(MAPキナーゼキナーゼ)を活性化し、その次に二重ThrおよびTyr MAPKファミリーメンバーJNK(c-Jun N末端キナーゼ)を活性化するMAP3K(MAPキナーゼキナーゼキナーゼ)を含む古典的3段MAPK経路の上流で作用する、プロテインキナーゼである。造血前駆細胞において最初にクローンされたHPK1/MAP4K1は、骨髄、胎生期肝臓、リンパ節、胎盤、脾臓、および胸腺が含まれるリンパ系器官/組織に主に発現する(Huら、Gene & Dev.10(18):2251~2264、1996;Kieferら、The EMBO J.15(24):7013~7025、1996)。細胞レベルでは、HPK1は、造血前駆細胞、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、好中球、およびマスト細胞が含まれる造血区画中の全ての細胞タイプにおいて発現する(Hu、上記;Kiefer、上記)。
【0003】
HPK1/MAP4K1は、HPK1(MAP4K1)、GCK(MAP4K2)、GLK(MAP4K3)、HGK/NIK(MAP4K4)、KHS/GCKR(MAP4K5)、およびMINK(MAP4K6)を含む6個のMAP4Kのうちの1つである。これらのMAP4Kは、まとめて、現在まで確認されている約26個の哺乳類Ste20様セリン/トレオニンキナーゼのメンバーであり、酵母フェロモンシグナル伝達経路においてMAP3Kを活性化する推定MAP4Kである酵母ステライル20プロテイン(Ste20p)の相同体である。これらの哺乳類Ste20様キナーゼは、ドメイン構造に基づいて2つのサブファミリーに分けられ、p21活性化キナーゼ(PAK)および胚中心キナーゼ(GCK)である。GCKサブファミリーのなかで、これらのうちのいくつかは、MAP3Kキナーゼカスケードを活性化して、JNK活性化をもたらすことができる。
【0004】
MAP4Kは、構造的に極めて類似しており、N末端キナーゼドメイン(KD)の後ろに、2~4個のプロリンリッチモチーフおよびC末端シトロン相同ドメイン(CNH)が続いている。
【0005】
HPK1のキナーゼドメインのATP結合部位は、Lys-46を含む。この残基からMetへの突然変異(HPK1-M46)は、HPK1の触媒活性化を消失させる(Hu、上記)。
【0006】
HPK1のキナーゼドメイン内に複数の保存Ser/Thrリン酸化部位、および最初の2個のプロリンリッチモチーフの間に保存Tyrリン酸化部位が存在する。LCK/ZAP70によるTyr379(マウス、またはヒトのTyr381)のリン酸化は、HPK1活性化にとって必要であると思われ、それは、LCKまたはZAP70の欠乏が、抗CD3刺激によるジャーカットT細胞におけるHPK1のTyr-379リン酸化およびキナーゼ活性を消失させるからである(Lingら、JBC 276(22):18908~18914、2001;Liouら、Immunity 12(4):399~408、2000;Sauerら、JBC 276(48):45207,45216、2001)。一方、Thr-355自己リン酸化は、HPK1のユビキチン化および分解を制御する。Thr-355は、PP4標的脱リン酸化部位であり、この脱リン酸化は、活性化HPK1のCUL7/Fbxw8媒介ユビキチン化およびプロテアソーム分解を防止し(Wangら、Cancer Res.69(3):1063~1070、2009)、したがってHPK1は、また、プロテインホスファターゼ4(PP4)によって安定化および活性化される(Zhouら、JBC 279(47):49551~49561、2004)。
【0007】
Tyrリン酸化部位は、また、カスパーゼ切断部位(DDVD)に隣接している。完全長HPK1は、アポトーシス細胞中のこの部位においてカスパーゼ-3により切断され、N末端HPK1断片の高められた触媒活性を生じ得ることが示されている(Chenら、Oncogene 18:7370~7377、1999)。
【0008】
HPK1の4個のプロリッチモチーフは、HPK1と多くのSH3ドメイン含有タンパク質との相互作用を媒介する(Boomer & Tan、JCB 95(1):34~44、2005)。
【0009】
HPK1のCNHドメインは、HPK1媒介リンパ球接着に関与することがあり、それは、別のSte20様キナーゼTNIKにおけるシトロン相同性ドメインがRap2に結合し、アクチン細胞骨格を制御するからである(Tairaら、JBC 279(47):49488~49496、2004)。
【0010】
MAP4Kは、細胞シグナル伝達、免疫細胞活性化、細胞形質転換、および細胞遊走を制御することによって、免疫系において、特にリンパ球において重要な役割を果たす。HPK1ノックアウト(KO)マウスは、KLH免疫化の後に高められたT細胞活性化、増加したサイトカイン酸性、および増加した抗体産生を示す。HPK1 KOマウスは、また、EAE誘導により多くの感受性がある。HPK1 KOのT細胞およびB細胞は、高められた細胞活性化および抗原受容体シグナル伝達を示す。HPK1 KOの樹状細胞は、より高いレベルの共刺激性分子および炎症促進性サイトカインを示す(Alzabinら、J.Immunol.182(10):6187~6194、2009;Shuiら、Nat.Immunol.8(1):84~91、2007)。
【0011】
細胞系(例えば、HEK293およびCOS-1細胞、ならびに造血ジャーカットT細胞および白血病HL-60細胞)における過剰発現は、HPK1が、全てMAP2KのMKK4およびMKK7を活性化し、その次にJNKを活性化する複数のMAP3K(TAK1、MEKK1、およびMLK3を含む)を介してMAPK JNKを活性し得る(しかし、p38またはERK MAPキナーゼを活性化しない)ことを実証した。
【0012】
興味深いことに、免疫細胞におけるMAP4Kの制御機能は、ほとんどがJNK非依存的機構によって媒介されると思われる。HPK1キナーゼ活性化がIKK-NF-κB活性化に必要であることが実証されており、HPK1はCARMA1の制御を介して行っていると思われる。CARMA1は、抗CD3刺激によりジャーカットT細胞においてIKKβ活性化を促進する、いわゆるCBM(CARMA1/BCL10/MALT1)複合体中のアダプタータンパク質である。活性化されたIKKは、IκBを切断し、関連NF-κB核転写因子を放出する。特に、HPK1は、CARMA1と誘導的に会合し、NF-κB活性化に必要であるSer-551においてCARMA1を直接リン酸化する(Brennerら、PNAS USA,196(34):14508~14513、2009)。
【0013】
T細胞では、TCR刺激により、リンパ球タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)がTCR/CD3複合体の細胞基質側の免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)をリン酸化する。次いでZap-70がTCR/CD3複合体に動員され、そこでリン酸化および活性化される。活性化されたZAP-70は、SLP-76と呼ばれるアダプタータンパク質をリン酸化し、これを細胞膜に転位置させ、HPK1を含む多数のタンパク質に結合させることによって、多タンパク質シグナルソーム複合体の形成を促進する。これらのタンパク質は、まとまってTCRシグナル伝達を異なるエフェクター分子に伝達し、Tリンパ球の活性化、生存、および増殖をもたらす。
【0014】
このプロセスの際に、HPK1はSLP-76のSH2ドメインに直接結合し、TCRシグナル伝達の負の制御因子として主に機能する。例えば、TCRシグナル伝達は、HPK1 KO初代T細胞において高められ、すなわち、In vitroでのTCRライゲーションにより過剰増殖およびIL-2産生を示す(Shui、上記)。HPK1は、Ser-376でSLP-76アダプタータンパク質をリン酸化することによって、負のフィードバックを介してTCRシグナル伝達を下降制御することができると考えられる。HPK1によるSer-376リン酸化によって、SLP-76は、リン酸化されたSer-376残基を介して14-3-3に結合し、後にプロテアソーム分解の標的になるSLP-76のLys-30(K30)残基におけるユビキチン化をもたらす。HPK1は、また、GADを含む他のアダプタータンパク質において同様の機構により(例えば、GADSのThr-254をリン酸化し、14-3-3相互作用を促進することにより)、TCRシグナル伝達を下方制御する。
【0015】
したがって、HPK1は、JNK活性化およびTCRシグナル伝達において二重および逆の役割を果たす。HPK1は、MAP3K-MAP2K-MAPK経路を介して異なる過剰発現系におけるJNK経路を直接活性化することが実証されているが、SLP-76活性化のHPK1媒介阻害は、また、TCRシグナル伝達におけるJNK活性の阻害をもたらす。このことは、HPK1ノックアウト初代T細胞が、影響されないJNK活性を示すという観察と一致している(Shui、上記)。同様に、HPK1は、一方では、HPK1が、CARMA1を直接リン酸化してIKKを活性化する、他方では、またHPK1が、SLP-76活性化を阻害してIKK活性化を負に制御するという2つの異なる対照的な機構により、IKK活性化を制御すると思われる。このHPK1が果たしている一見して対照的な二重の役割は、HPK1が、TCRシグナル伝達の初期段階ではJNKおよびIKKの活性化を促進するが、後期段階ではTCRシグナル伝達を減衰する重要な役割を果たすというように理解することが最も適している。
【0016】
HPK1は、また、細胞におけるBCR誘導性細胞活性化およびB細胞増殖における同様の負の制御にも役割を果たす。B細胞は、JNKおよびIKKの活性化を含むBCRシグナル伝達を形質導入するために、BLNKと呼ばれるSLP-76様アダプタータンパク質を使用する。B細胞では、TyrキナーゼのSykおよびLynは、HPK1のTyrリン酸化および活性化を促進し、HPK1の得られたpY379は、HPK1-BLNK結合を媒介する。BLNKのHPK1による負のフィードバックは、BLNKのThr-152を介するものである。14-3-3によるpT152結合は、複数のLys残基にBLNKユビキチン化をもたらし、続いてBLNKのプロテアソーム分解(したがって、BCRシグナル伝達の減衰)をもたらす。
【0017】
興味深いことに、HPK1は、制御性T細胞(Treg)の抑制機能の正の制御因子であると思われる(Sawasdikosolら、J Immunol.188(付録1):163、2012)。HPK1欠乏マウスFoxp3のTregは、TCR誘導性エフェクターT細胞増殖の抑制に欠陥があり、逆説的に、TCR会合の後にIL-2を産生する能力を得た(Sawasdikosol、上記)。したがって、HPK1は、Treg機能および末梢性自己寛容にとって重要な制御因子である。
【0018】
HPK1は、また、CD4のT細胞活性化のPGE2媒介阻害にも関与する(Ikegamiら、J Immunol.166(7):4689~4696、2001)。US2007/008798は、HPK1キナーゼ活性が、PGE2誘導性PKA活性化を介して、CD4のT細胞中の生理学的濃度のPGE2に暴露されると増加したことを示す。HPK1欠乏T細胞の増殖は、PGE2の抑制効果に対して抵抗力を示した(US2007/0087988)。したがって、HPK1のPGE2媒介活性化は、免疫応答を調節する新規の制御経路を表すことができる。
【0019】
TCRおよびBCRの他に、HPK1は、また、TGF-R(形質転換増殖因子受容体)(Wangら、JBC 272(36):22771~22775、1997)またはG共役PGE2受容体(EP2およびEP4)(Ikegamiら、J Immunol.166(7):4689~4696、2001)の下流にシグナルを伝達する。
【0020】
HPK1は、免疫細胞接着を負に制御する。T細胞では、TCR活性化は、また、インテグリン活性化も誘導し、T細胞接着および免疫シナプス形成を生じる。このことは、TCR誘導性インテグリン活性化に必要である脱顆粒化促進アダプタータンパク質(ADAP)のSLP-76結合によって達成されるが(Wangら、J.Exp.Med.200(8):1063~1074、2004)、活性化小GTPアーゼRap1を細胞膜に向けて標的化する構成的に会合されたSKAP55タンパク質は、インテグリン活性をもたらす(Klicheら、MCB 26(19):7130~7144、2006)。換言すると、SLP-76/ADAP/SKAP55三元複合体は、TCRシグナル伝達をインテグリンファミリーの接着分子に中継し、それによってT細胞接着を促進する。HPK1はこの経路を、SLP-76の下方制御(上記)のみならず、SLP-76の同じSH2結合部位をADAPと競合し、次にADAP下流エフェクターRap1の活性を減衰させることによっても負に制御する(Patzakら、Eur.J.Immunol.40(11):3220~3225、2010)。
【0021】
HPK1は、同様にB細胞においてインテグリン活性化および細胞接着を負に制御する。そこでは、HPK1は、SKAP-HOMと呼ばれるSKAP55相同体と会合し(Konigsbergerら、PloS One 5(9).pii:e12468、2010)、このことは、B細胞接着にとって必要である(Togniら、MCB 25(18):8052~8063、2005)。HPK1は、SKAP-HOMにネガティブリン酸化部位を誘導し、次にRap1活性化を抑制すると考えられる。
【0022】
しかし好中球では、HPK1は接着を正に制御する。遅い転がり、密接な結合、細胞の伸展、および血管外遊出を含む好中球輸送は、β2インテグリン活性化のアウトサイドイン(outside-in)シグナル伝達により制御され、このことは、アクチンとHIP-55(55kDaのHPK1相互作用タンパク質)との相互作用を誘導する。このことは、β2インテグリンの高親和性立体配座を補強し、好中球接着に寄与する(Hepperら、J.Immunol.188(9):4590~4601、2012;Schymeinskyら、Blood 114(19):4209~4220、2009)。HPK1は、β2インテグリン媒介接着により好中球のラメリポディウムにHIP-55およびアクチンと共局在化する(Jakobら、Blood 121(20):4184~4194、2013)。CXCL1媒介好中球接着は、in vitroおよびin vivoにおけるHPK1の欠乏またはHIP-55の欠乏のいずれかによって消失する(Jakob、上記;Schymeinsky、上記)。
【0023】
TCRおよびBCR機能の下方制御における役割と一致して、HPK1は、適応免疫応答を負に制御し、T細胞活性化および免疫応答のHPK1媒介制御の損失は、自己免疫性病理発生にとって重要な機構であり得る。HPK1 KOマウスでは、TおよびB細胞の発生は影響されないように思われるが(Shui、上記)、これらの動物のT細胞は、TCR近位シグナル伝達および下流ERKの劇的に増加された活性化を示し、抗CD3刺激によるin vitroにおけるこれらの細胞の過剰増殖をもたらした(Shui、上記)。免疫化されたHPK1欠乏マウスのT細胞は、抗原特異的刺激によって応答性亢進であり、有意に高いレベルの炎症性サイトカイン、例えば、IL-2、IFN-γ、およびIL-4を産生する。そのようなマウスは、また、はるかに高いレベルのIgMおよびIgGアイソフォームも産生し、HPK1ノックアウトB細胞の高められた機能を示唆している(Shui、上記)。
【0024】
HPK1は、また、マウスの自己免疫を負に制御し、それは、HPK1 KOマウスが実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘導への感受性がより高い(Shui、上記)からである。HPK1の減弱は、また、ヒト患者における異常なTおよびB細胞活性化、ならびに自己免疫にも寄与する。HPK1は、乾癬性関節炎患者の末梢血単核球または全身性エリテマトーデス(SLE)患者のT細胞を下方制御する。
【0025】
HPK1の生理学的機能はリンパ球に限定されず、HPK1では、不明の機構を介して樹状細胞(DC)の成熟および活性化も負に制御する(Alzabin、上記)。HPK1 KOマウスでは、骨髄誘導性樹状細胞(BMDC)が、共刺激性分子CD80/CD86の高められたレベル、および炎症促進性サイトカインの増加された産生を示す(Alzabin、上記)。したがって、樹状細胞の抗原提示活性は、HPK1 KOマウスにおいてより効率的である(Alzabin、上記)。より重要なことに、HPK1 KO BMDC媒介CTL応答による腫瘍消滅は、野生型BMDCより有効である(Alzabin、上記)。更に、HPK1は、また、TおよびBリンパ球依存性機構によって抗腫瘍免疫も制御する。HPK1欠乏T細胞の養子移入は、野生型T細胞より腫瘍増殖および転移を有効に制御することが示されている(Alzabinら、Cancer Immunol Immunother 59(3):419~429、2010)。同様に、HPK1ノックアウトマウスのBMDCは、野生型BMDCと比較して、ルイス肺癌を消滅させるT細胞応答を開始するのにより効率的であった(Alzabinら、J Immunol.182(10):6187~6194、2009)。
【0026】
したがって、HPK1活性の調節を介して疾患または障害を処置するための、HPK1阻害化合物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本明細書に記載されるものは、HPK1の活性を阻害する、式(I)、(IA)、(IB)、(II)、(IIA)、および(IIB)の化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩または立体異性体(まとめて「本発明の化合物」と称される)である。
【0028】
本明細書に提供されるものは、有効量の本開示の化合物、その薬学的に許容される塩またはその立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
また提供されるものは、治療有効量の本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の治療活性作用剤(therapeutically active co-agent)とを含む組合せである。
【0029】
本開示は、それを必要とする対象においてHPK1活性を阻害する方法であって、対象に治療有効量の本開示の化合物、その薬学的に許容される塩または立体異性体を投与することを含む方法を更に提供する。
【0030】
本開示は、本明細書に記載される疾患または状態、例えば、がん(例えば、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、卵巣がん、および膵がん)を有する対象を処置する方法であって、対象に治療有効量の本開示の化合物、その薬学的に許容される塩または立体異性体を投与することを含む方法を更に提供する。
【0031】
ある特定の実施形態は、医薬として、例えばHPK1阻害剤として作用する医薬として使用するための、本開示の化合物、その薬学的に許容される塩または立体異性体を開示する。
【0032】
本開示は、また、上記に記載された本開示の方法にいずれかにおける、本開示の化合物、その薬学的に許容される塩もしくは立体異性体、またはこれらを含む医薬組成物の使用も提供する。一実施形態において、提供されるものは、本明細書に記載される本開示の方法にいずれかに使用するための、本開示の化合物、その薬学的に許容される塩もしくは立体異性体、またはこれらを含む医薬組成物である。別の実施形態において、提供されるものは、記載される本開示の方法にいずれかにおける医薬の製造のための、本開示の化合物、その薬学的に許容される塩もしくは立体異性体、またはこれらを含む医薬組成物の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.概観
本明細書に記載される開示は、HPK1/MAP4K1阻害剤、その薬学的に許容されるまたは立体異性体、その医薬組成物、およびこれらを使用してHPK1/MAP4K1活性を調節(例えば、阻害)する方法を提供し、前記方法は、本開示のHPK1/MAP4K1阻害化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者/対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、本開示の化合物、その薬学的に許容される塩または立体異性体は、がんの処置において免疫を高める、刺激する、および/または増加するための治療的投与に有用である。
【0034】
例えば、HPK1相互作用の阻害に関連する疾患または障害の処置方法は、治療有効量の本明細書に提供される化合物、その薬学的に許容される塩または立体異性体を、それを必要とする患者に投与することを含むことができる。本開示の化合物を、がんを含む疾患または障害の処置のために、単独で、他の薬剤もしくは療法と組み合わせて、またはアジュバントもしくはネオアジュバント(neoadjuvant)として、使用することができる。
2.定義
本明細書で使用される場合、本発明の文脈において(とりわけ特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および類似の用語は、本明細書において別途示されるか、または文脈と明らかに矛盾するのでない限り、単数および複数の両方を含むと解釈される。
【0035】
上記式のいずれか1つの化合物は、1種または複数の異性(例えば、光学、幾何、または互変異の異性)を示し得る。そのような変異形態は、その構造特徴を参照して、そうであると定義される上記式のいずれか1つの化合物に暗に含まれ、したがって、本開示の範囲内に暗に含まれる。
【0036】
1つまたは複数のキラル中心を有する化合物は、種々の立体異性形態を示し得る、すなわち、各キラル中心は、RもしくはS配置を有し得、またはその両方の混合物であり得る。立体異性体は、その空間配置のみが異なる化合物である。立体異性体は、化合物の全てのジアステレオマーおよび鏡像異性形態を含む。鏡像異性体は、互いの鏡像である立体異性体である。ジアステレオマーは、同一(identifcal)ではなく、互いの鏡像でもない2つ以上のキラル中心を有する立体異性体である。
【0037】
実験の節の「ピーク1」とは、同じ先行する反応からの第2の目的の反応生成物化合物よりも速く溶出するクロマトグラフィー分離/精製から得られた目的の反応生成物化合物をいう。第2の目的の反応生成化合物は、「ピーク2」と称される。
【0038】
化合物が、単一の鏡像異性体を示すその化学名(例えば、配置が「R」または「S」による化学名で示される場合)またはその構造(例えば、配置が「ウェッジ」結合によって示される場合)によって示される場合、別途示されない限り、化合物は、少なくとも60%、70%、80%、90%、99%または99.9%光学的に純粋(「鏡像異性体として純粋」ともいわれる)である。光学純度は、混合物中の命名または図示された鏡像異性体の重量を、混合物中の両方の鏡像異性体の総重量で除算したものである。
【0039】
開示される化合物の立体化学が、命名または構造を図示され、その命名または図示された構造が、2種以上の立体異性体(例えば、ジアステレオマー対におけるように)を包含する場合、包含される立体異性のうちの1種または包含される立体異性の任意の混合物が含まれることが理解される。命名または図示された立体異性体の立体異性純度は、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%または99.9重量%であることが更に理解される。この場合、立体異性純度は、混合物中のその名称または構造に包含される立体異性体の総重量を、混合物中の全ての立体異性体の総重量で除算することによって決定される。
【0040】
2種の立体異性体がその化学名または構造によって図示され、化学名または構造が「および」で接続される場合、2種の立体異性体の混合物が意図される。
2種の立体異性体がその化学名または構造によって図示され、化学名または構造が「または」で接続される場合、2種の立体異性体の一方または他方が意図されるが、両方ではない。
【0041】
キラル中心を有する開示される化合物が、そのキラル中心での配置を示さずに構造によって図示される場合、その構造は、そのキラル中心でS配置を有する化合物、そのキラル中心でR配置を有する化合物、またはそのキラル中心でRおよびS配置の混合物を有する化合物を包含することが意味される。キラル中心を有する開示される化合物が、そのキラル中心での「S」または「R」による配置を示さずにその化学名によって図示される場合、その名称は、そのキラル中心でS配置を有する化合物、そのキラル中心でR配置を有する化合物、またはそのキラル中心でRおよびS配置の混合物を有する化合物を包含することが意味される。
【0042】
ラセミ混合物は、50%の1種の鏡像異性体および50%の対応する鏡像異性体を意味する。1つのキラル中心を有する化合物が、キラル中心の立体化学を示さずに命名または図示される場合、その名称または構造は、化合物の可能な鏡像異性形態の両方を(例えば、鏡像異性体として純粋、鏡像異性体が濃縮された、またはラセミのいずれも)包含することが理解される。2つ以上のキラル中心を有する化合物が、キラル中心の立体化学を示さずに命名または図示される場合、その名称または構造は、化合物の全ての可能なジアステレオマー形態(例えば、ジアステレオマーとして純粋、ジアステレオマーが濃縮された、および1種または複数のジアステレオマーの等モル量混合物(例えば、ラセミ混合物))を包含することが理解される。
【0043】
用語「幾何異性体」とは、少なくとも1つの二重結合を有する化合物をいい、ここで、二重結合は、シス(一緒(syn)またはエントゲーゲン(entgegen)(E)とも呼ばれる)またはトランス(逆(anti)またはツザメン(zusammen)(Z)とも呼ばれる)形態のほか、その混合物で存在し得る。
【0044】
幾何異性体が名称または構造により示される場合、命名または図示された異性体は、別の異性体よりも大きな度合いで存在し、つまり、命名または図示された幾何異性体の幾何異性純度は、50重量%超、例えば、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%または99.9重量%純粋であることが理解される。幾何異性純度は、混合物中の命名または図示された幾何異性体の重量を、混合物中の全ての幾何異性体の総重量で除算することによって決定される。
【0045】
個々の鏡像異性体/ジアステレオマーの調製/単離のための従来の技術としては、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用する、ラセミ体(またはラセミ体の塩もしくは誘導体)の分割が挙げられる。あるいは、ラセミ体(またはラセミ前駆体)は、好適な光学活性化合物、例えば、アルコール、または上記式のいずれか1つの化合物が酸性もしくは塩基性部分を含有する場合には、1-フェニルエチルアミンもしくは酒石酸などの塩基もしくは酸と反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶化によって分離でき、一方または両方のジアステレオ異性体は、当業者に周知の方法によって、対応する純粋な鏡像異性に変換される。上記式のいずれか1つのキラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、0~50体積%、典型的には2体積%~20体積%のイソプロパノール、および0~5体積%のアルキルアミン、典型的には、0.1%のジエチルアミンを含有する炭化水素、典型的にはヘプタンまたはヘキサンでからなる移動相により非対称樹脂においてクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、鏡像異性体が濃縮された形態で得ることができる。溶離液の濃度により、濃縮混合物が得られる。亜臨界流体および超臨界流体を使用するキラルクロマトグラフィーを用いてもよい。本開示の一部の実施形態で有用なキラルクロマトグラフィーの方法は、当技術分野で公知である(例えば、Smith、Roger M.、Loughborough University、Loughborough、UK;Chromatographic Science Series(1998)、75(Supercritical Fluid Chromatography with Packed Columns)、223~249頁およびそこで引用される参考文献を参照されたい)。カラムは、Daicel(登録商標)Chemical Industries,Ltd.、Tokyo、Japanの子会社であるChiral Technologies,Inc、West Chester、Pa.、USAから得ることができる。
【0046】
上記式のいずれか1つの化合物は、本明細書において単一の互変異性形態で描かれているが、全ての可能な互変異性形態が本開示の範囲内に含まれることは強調されなくてはならない。
【0047】
本明細書で使用される場合、単数または複数の用語「塩」とは、本発明の化合物の酸付加塩または塩基付加塩をいう。「塩」は、特に、「薬学的に許容される塩」を含む。用語「薬学的に許容される塩」とは、生物学的効果、および典型的には、生物学的にまたは他に望ましくないものではない、本発明の化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩をいい、多くの場合、本発明の化合物は、アミノおよび/もしくはカルボキシル基、またはそれらに類似の基の存在によって酸および/または塩基を形成可能である。
【0048】
薬学的に許容される酸付加塩、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩(bisuifafe/suifafe)、カンファースルホン酸塩、塩化物/塩酸塩、クロロテオフィリオネート(chlortheophylionate)、クエン酸塩、エタンジスルホネート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素/ヨウ化物、イソチオン酸(isothionate)塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩(laurylsuifate)、リンゴ酸塩(maiate)、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルサルフェート、ナフトエ酸塩、ナプシレート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素(hydrogen phosphafe)/リン酸二水素、ポリガラクツロ酸塩(poiygaiacturonafe)、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、次サリチル酸塩、酒石酸塩、トシレート(tosyiate)およびトリフルオロ酢酸塩は、無機酸および有機酸により形成できる。
【0049】
塩が誘導され得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
塩が誘導され得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基により形成できる。塩が誘導され得る無機塩基としては、例えば、アンモニウム塩および周期表のI~XII列からの金属が挙げられ、ある特定の実施形態では、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛および銅から誘導される。ある特定の実施形態では、好適な塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。
【0050】
塩が誘導され得る有機塩基としては、例えば、1級、2級および3級アミン、天然に生じ得る置換アミンを含む置換アミン、環式アミン、塩基性イオン交換樹脂などが挙げられる。特定の有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リシン、メグルミン、ピペラジンおよびトロメタミンが挙げられる。
【0051】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学法によって、塩基性または酸性部分から合成できる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を、化学量論量の適切な塩基(例えば、水酸化、炭酸、重炭酸Na、Ca、MgもしくはKなど)と反応させることによって、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を、化学量論量の適切な酸と反応させることによって、調製できる。そのような反応は、典型的には、水中もしくは有機溶媒中、またはその2種の混合物中で実施される。一般に、実施可能な場合、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体の使用が望ましい。追加の好適な塩の一覧は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第20版、Mack Publishing Company、Easton、PA、(1985);および「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use」、StahlおよびWermuth(Wiley-VCH、Weinheim、Germany、2002)に見出すことができる。
【0052】
用語「組成物」および「製剤」は、交換可能に使用される。
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、また、獣医学的処置の必要のある動物、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)であってもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、対象は、そのような対象がそのような処置から生物学、医学または生活の質の利益を受けると考えられる場合、処置を「必要とする」。
用語「投与する」、「投与すること」または「投与」とは、本発明の化合物またはその組成物を、対象中または対象上に導入する方法をいう。これらの方法としては、これらに限定されないが、関節腔内(関節内)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、皮下、経口、局所、くも膜下腔内、吸入により、経皮、直腸などが挙げられる。本明細書に記載の作用剤および方法と共に用いることができる投与技術は、例えば、Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics、現行版;Pergamon;およびRemington’s, Pharmaceutical Sciences(現行版)、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvaniaに見出される。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「阻害する」、「阻害」または「阻害すること」とは、所与の状態、徴候もしくは障害、もしく疾患の低減もしくは抑制、または生物活性またはプロセスのベースライン活性の大幅な低下をいう。
【0055】
用語「処置」、「処置する」および「処置すること」とは、本明細書に記載の疾患の進行を逆転、緩和または阻害することをいう。一部の実施形態では、処置は、疾患の1つまたは複数の兆しまたは徴候が発症または観察された後に投与され得る(すなわち、治療処置)。他の実施形態では、処置は、疾患の兆しまたは徴候の非存在下で投与され得る。例えば、処置は、徴候の開始前に疑いのある対象に投与されてもよい(すなわち、予防処置)(例えば、徴候の病歴に照らしておよび/または病原体への曝露に照らして)。処置はまた、徴候が消散した後も、例えば、再発を遅延または防止するために継続されてもよい。
【0056】
用語「状態」、「疾患」および「障害」は、交換可能に使用される。
一般に、本明細書で教示される化合物の有効量は、様々な要因、例えば、所与の薬物または化合物、医薬製剤、投与経路、疾患または障害の種類、処置されている対象または宿主の正体などに依存して様々であるが、いずれにしても、当業者であれば日常的な手段で決定することができる。本教示の化合物の有効量は、当技術分野で公知の日常的な方法によって、当業者によって容易に決定され得る。
【0057】
用語「有効量」は、対象に投与された場合に、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果をもたらす、例えば、対照と比較して、対象において処置されている状態の徴候を阻害、抑制または低減する量を意味する。例えば、有効量は、単位剤形(例えば、1日当たり1mg~約50g、例えば、1日当たり1mg~約5グラム)で与えられてもよい。
【0058】
本発明の化合物の用語「治療有効量」とは、対象の生物学または医学応答、例えば、酵素もしくはタンパク質活性の低減もしくは阻害、または徴候の改善、状態の緩和、疾患進行の鈍化もしくは遅延、または疾患の防止などを誘発する本発明の化合物の量をいう。非限定的な一実施形態では、用語「治療有効量」とは、対象に投与された場合、(1)(i)HPK1によって媒介される、もしくは(ii)HPK1活性に関連する、もしくは(iii)HPK1の活性(正常もしくは異常)によって特徴付けられる状態もしくは障害もしくは疾患を少なくとも部分的に緩和、阻害、防止および/もしくは改善する;または(2)HPK1の活性を低減もしくは阻害する;または(3)HPK1の発現を低減もしくは阻害する;または(4)HPK1のタンパク質レベルを変更する、本発明の化合物の量をいう。別の非限定的な実施形態では、用語「治療有効量」とは、細胞、または組織、または非細胞性生物学材料、または媒体に投与された場合、HPK1の活性を少なくとも部分的に低減もしくは阻害する;または部分的もしくは完全にHPK1の発現を低減もしくは阻害する、本発明の化合物の量をいう。
【0059】
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別途示されるか、または他に文脈と明らかに矛盾するのでない限り、任意の好適な順序で実施されてもよい。本明細書における任意のおよび別の例、または例示語(例えば、「など」)の使用は、単に、本発明をより良好に明らかにすることを意図され、別途特許請求される本発明の範囲に限定を付するものではない。
【0060】
上記式において使用される一般化学用語は、その通常の意味を有する。
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、当業者に公知である通り、任意および全て(ail)の溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存料(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存料、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素など、およびその組合せを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990、1289~1329頁を参照されたい)。任意の従来の担体が活性成分と非適合性である場合を除き、治療または医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0061】
更に、その塩を含む本発明の化合物はまた、その水和物の形態で得られてもよく、またはその結晶化のために使用される他の溶媒を含んでもよい。本発明の化合物は、本来的にまたは設計により、薬学的に許容される溶媒(水を含む)との溶媒和物を形成し、したがって、本発明は、溶媒和および非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物(薬学的に許容されるその塩を含む)の1つまたは複数の溶媒分子との分子複合体をいう。そのような溶媒分子は、レシピエントに無害であることが公知の医薬分野で通常使用されるもの、例えば、水、エタノールなどである。用語「水和物」とは、溶媒分子が水である複合体をいう。
【0062】
本発明の化合物は、その塩、水和物および溶媒和物を含め、本来的にまたは設計により、多形を形成し、別の態様では、本発明は、本発明の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、特定の投与経路、例えば、経口投与、非経口投与および直腸投与などのために製剤化されてもよい。更に、本発明の医薬組成物は、固体形態(限定なしに、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒、散剤もしくは坐剤を含む)、または液体形態(限定なしに、溶液、懸濁液もしくはエマルジョンを含む)で作製され得る。医薬組成物は、滅菌などの従来の薬学操作に供されてもよく、および/または不活性希釈剤、滑沢剤もしくは緩衝化剤、ならびに保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤および緩衝剤などのアジュバントなどを含有していてもよい。
【0063】
典型的には、医薬組成物は、a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロールおよび/もしくはグリシン;b)滑沢剤、例えば、シリカ、タルカン、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩、および/もしくはポリエチレングリコール;錠剤についてはまた、c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロール、カルボキシメチルセルロールナトリウム(sodium carboxymefhylceiluiose)および/もしくはポリビニルピロリドン;所望の場合、d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、もしくは発泡性混合物;ならびに/またはe)吸収剤、着色料、香味料および甘味料と一緒に活性成分を含む錠剤またはゼラチンカプセル剤である。錠剤は、当技術分野で公知の方法によってフィルムコーティングされているか、または腸溶コーティングされていてもよい。
【0064】
経口投与に好適な組成物としては、錠剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁液、分散性(dispersibie)粉末もしくは顆粒剤、エマルジョン、ハードもしくはソフトカプセル剤、またはシロップもしくはエリキシルの形態の、有効量の本発明の化合物が挙げられる。経口使用を目的とする組成物は、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法により調製され、そのような組成物は、薬学的にエレガントで口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、風味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含有してもよい。錠剤は、錠剤の製造に好適である、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合して、活性成分を含有してもよい。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア;ならびに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。錠剤は、コーティングされていないか、または崩壊および胃腸管での吸収を遅延し、それによってより長時間にわたる持続作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料が用いられてもよい。経口使用のための製剤は、活性成分が不活性個体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されたハードゼラチンカプセル剤として、または活性成分が水もしくは油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合されたソフトゼラチンカプセル剤として提示され得る。
【0065】
特定の注射用組成物は、等張水溶液または懸濁液であり、坐剤は、有利には、脂肪エマルジョンまたは懸濁液から調製される。上記組成物は、滅菌されてもよく、ならびに/または保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調製する塩および/または緩衝剤などのアジュバントを含有してもよい。更に、上記組成物はまた、他の治療のために価値のある物質を含有してもよい。上記組成物は、それぞれ従来の混合、造粒またはコーティング法によって調製され、約0.1~75%の活性成分を含有するか、または約1~50%の活性成分を含有する。経皮適用に好適な組成物としては、好適な担体を有する有効量の本発明の化合物が挙げられる。経皮送達に好適な担体としては、宿主の皮膚を通した通過を補助する、吸収性の薬理学的に許容される溶媒が挙げられる。例えば、経皮デバイスは、裏当て材、必要に応じて担体を含有するリザーバー、必要に応じて長時間にわたって、制御された所定の速度で化合物を送達するための宿主の皮膚の速度制御バリアおよびデバイスを皮膚に固定する手段を備える包帯の形態である。
【0066】
例えば、皮膚および眼への局所的適用に好適な組成物としては、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲルまたは例えばエアロゾルによる送達のための噴霧可能製剤などが挙げられる。そのような局所送達システムは、経皮適用、例えば、皮膚がんの処置、例えば、サンクリーム、ローション、スプレーなどの予防的使用に、特に適切である。それらは、したがって、当技術分野で周知の、化粧用を含む局所製剤における使用に特に適している。そのようなものは、可溶化剤、安定剤、張度強化剤、緩衝剤および保存料を含有し得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、局所的適用はまた、吸入または経鼻適用に関係し得る。それらは、粉末吸入器からの乾燥粉末(単独で、混合物、例えばラクトースとの乾燥ブレンドとして、もしくは例えば、リン脂質との混合成分粒子としてのいずれか)、または好適な高圧ガスを使用したまたは使用しない、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレーの体裁の形態で、好都合に送達され得る。
【0068】
本発明は、水は、特定の化合物の分解を促進し得るため、本発明の化合物を活性成分として含む無水医薬組成物および剤形を更に提供する。
本発明の無水医薬組成物および剤形は、無水または低含水成分および低水分または低湿度条件を使用して調製できる。無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製および保存され得る。したがって、無水組成物は、それらが好適な処方キットに含まれ得るように、水への曝露を防ぐ公知の材料を使用して包装される。好適な包装の例としては、これらに限定されないが、密閉シールされた箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが挙げられる。
【0069】
本発明は、活性成分としての本発明の化合物が分解する速度を低減する1種または複数の作用剤を含む医薬組成物および剤形を更に提供する。そのような作用剤は本明細書において「安定剤」と呼ばれ、これらに限定されないが、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤などが挙げられる。
3.化合物
本開示の第1の実施形態において、提供されるものは、式I
【0070】
【化1】
【0071】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
本開示の第2の実施形態において、提供されるものは、式IA
【0072】
【化2】
【0073】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
本開示の第3の実施形態において、提供されるものは、式IB
【0074】
【化3】
【0075】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
本開示の第4の実施形態において、提供されるものは、式II
【0076】
【化4】
【0077】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
本開示の第5の実施形態において、提供されるものは、式IIA
【0078】
【化5】
【0079】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
本開示の第6の実施形態において、提供されるものは、式IIB
【0080】
【化6】
【0081】
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
4.処置可能な疾患
HPK1阻害剤、その薬学的に許容される塩、その医薬組成物は、HPK1活性を調整(すなわち、阻害)する方法において使用でき、上記方法は、本明細書に記載される通り、本発明のHPK1阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者/対象に投与するステップを含む。
【0082】
特に、本発明は、疾患、特にがん(特に、造血器および固形腫瘍)、または免疫応答調節不全の状態、またはMAP4K1シグナル伝達異常と関連する他の障害の処置または予防に使用するための本発明の化合物、またはその立体異性体、互変異性体、N-オキシド、水和物、溶媒和物および塩、特に、その薬学的に許容される塩、またはその混合物の使用を提供する。本発明による化合物の薬学活性は、MAP4K1阻害剤としてのその活性によって、少なくとも部分的に説明できる。
【0083】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、これらに限定されないが、良性の過形成、アテローム硬化性障害、敗血症、自己免疫障害、血管障害、ウイルス感染、神経変性障害、炎症性障害および男性の生殖能制御障害を含む疾患または適応症を処置するための、それを必要とする対象への治療投与に有用である。
【0084】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、がんの処置において、免疫を強化、刺激および/または増大するための治療投与に有用である。
【0085】
本発明のHPK1阻害剤化合物は、単独で、または他の作用剤もしくは治療と組み合わせて、またはがんを含む疾患もしくは障害の処置のためのアジュバントもしくはネオアジュバントとして使用できる。
【0086】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、これらに限定されないが、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頚部のがん、皮膚または眼球内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮内膜がん、子宮頸の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病を含む慢性または急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓または尿道のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮細胞がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されたものを含む環境により誘発されたがん、および上記がんの組合せを含むがんを処置するのに使用され得る。
【0087】
一部の実施形態では、本発明の化合物により処置可能ながんとして、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞癌)、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺癌)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、結腸がんおよび肺がん(例えば、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がん)が挙げられる。更に、本発明の化合物を使用してその成長が阻害され得る難治性または再発悪性腫瘍もまた、処置可能である。
【0088】
一部の実施形態では、本発明の化合物を使用して処置可能ながんとして、これらに限定されないが、固形腫瘍(例えば、前立腺がん、結腸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮がん、腎臓がん、肝がん、膵臓がん、胃がん、乳がん、肺がん、呼吸器、脳がん、眼がん、甲状腺および副甲状腺がん、皮膚がん、頭頚部がん、生殖器のがん、消化管のがん、泌尿器のがん、神経膠芽腫、肉腫、膀胱がんなど)、血液がん(例えば、リンパ腫、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、DLBCL、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(再発または難治性NHLおよび再発性濾胞を含む)、ホジキンリンパ腫または多発性骨髄腫)、肉腫およびその遠隔転移が挙げられる。
【0089】
一部の実施形態では、本発明の化合物を使用して処置可能な疾患および適応症は、これらに限定されないが、血液がん、肉腫、肺がん、消化器がん、泌尿生殖器がん、肝臓がん、骨がん、神経系がん、婦人科系のがんおよび皮膚がんが挙げられる。
【0090】
例示的な血液がんとしては、リンパ腫および白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(再発または難治性NHLおよび再発性濾胞を含む)、ホジキンリンパ腫、骨髄増殖性疾患(例えば、原発性骨髄線維症(PMF)、真性多血症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、骨髄形成異常症候群(MDS)、T細胞急性リンパ腫(T-ALL)、多発性骨髄腫、皮膚T細胞リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(Macroglubulinemia)、ヘアリー細胞リンパ腫、慢性骨髄性リンパ腫およびバーキットリンパ腫が挙げられる。
【0091】
例示的な肉腫としては、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、粘液腫、横紋筋腫、横紋肉腫、線維腫、脂肪腫、過誤腫(harmatoma)およびテラトーマが挙げられる。
【0092】
例示的な肺がんとしては、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん、気管支原性肺癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、軟骨様過誤腫および中皮腫が挙げられる。
【0093】
例示的な消化器がんとしては、食道のがん(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管状腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)、および結腸直腸がんが挙げられる。
【0094】
例示的な泌尿生殖器がんとしては、腎臓のがん(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫])、膀胱および尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、ならびに精巣(精上皮腫、テラトーマ、胚性癌腫、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫)が挙げられる。
【0095】
例示的な肝臓がんとしては、肝細胞腫(肝細胞癌)、胆管細胞癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫および血管腫が挙げられる。
例示的な骨がんとしては、例えば、骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍、脊索腫、骨軟骨腫(osteochronfroma)(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨筋線維腫(chondromyxofibroma)、類骨骨腫および巨細胞腫瘍が挙げられる。
【0096】
例示的な神経系がんとしては、頭蓋骨のがん(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫)、脳(星状細胞腫、髄芽腫(meduoblastoma)、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、シュワン腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)および脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫)、ならびに神経芽細胞腫およびレルミット・デュクロ病が挙げられる。
【0097】
例示的な婦人科系のがんとしては、子宮のがん(子宮内膜癌)、子宮頸(子宮頸癌、腫瘍前子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌腫)、顆粒膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性テラトーマ)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状横紋筋肉腫(胚性横紋筋肉腫)およびファロピウス管(癌腫)が挙げられる。
【0098】
例示的な皮膚がんとしては、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、メルケル細胞皮膚がん、ほくろ異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫およびケロイドが挙げられる。一部の実施形態では、本発明の化合物を使用して処置可能な疾患および適応症として、これらに限定されないが、鎌状赤血球症(例えば、鎌状赤血球貧血)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、骨髄異形成症候群、精巣がん、胆管がん、食道がんおよび尿路上皮癌が挙げられる。
【0099】
例示的な頭頚部がんとしては、神経膠芽腫、黒色腫、横紋肉腫、リンパ肉腫、骨肉腫、扁平上皮細胞癌、腺癌、口腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、鼻腔および副鼻腔がん、ならびに甲状腺および副甲状腺がんが挙げられる。
【0100】
一部の実施形態では、主題のHPK1阻害剤は、PGE2(例えば、Cox-2過剰発現腫瘍)および/またはアデノシン(CD73およびCD39過剰発現腫瘍)を産生する腫瘍を処置するために使用され得る。Cox-2の過剰発現は、結腸直腸、乳、膵臓および肺がんなどの多数の腫瘍で検出されており、これは、不良な予後と相関する。COX-2の過剰発現は、RAJI(バーキットリンパ腫)およびU937(急性前単球白血病)などの血液がんモデル、ならびに患者の芽細胞において報告されている。CD73は、結腸、肺、膵臓および卵巣を含む種々のヒト癌において上方制御される。CD73のより高い発現レベルは、腫瘍血管新生、浸潤性および転移、ならびに乳がんのより短い患者生存時間と関連している。
【0101】
処置可能な乳がんの例としては、これらに限定されないが、トリプルネガティブ乳がん、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、in situの乳管癌およびin situの小葉癌が挙げられる。
【0102】
呼吸器のがんの例としては、これらに限定されないが、小細胞および非小細胞肺癌、ならびに気管支腺腫および胸膜肺芽腫が挙げられる。
処置可能な脳がんの例としては、これらに限定されないが、脳幹および視床下部(hypophtalmic)神経膠腫、小脳および大脳星状細胞腫、神経膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、ならびに神経外胚葉および松果体腫瘍が挙げられる。
【0103】
男性生殖器の処置可能な腫瘍としては、これらに限定されないが、前立腺および精巣がんが挙げられる。
女性生殖器の処置可能な腫瘍としては、これらに限定されないが、子宮内膜、子宮頸、卵巣、膣および外陰がん、ならびに子宮の肉腫が挙げられる。
【0104】
処置可能な卵巣がんとしては、これらに限定されないが、漿液性腫瘍、子宮内膜性腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、顆粒膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫および男性胚細胞腫が挙げられる。
【0105】
処置可能な子宮頸がんとしては、これらに限定されないが、扁平上皮細胞癌、腺癌、腺扁平上皮癌、小細胞癌、神経内分泌腫瘍、ガラス状細胞癌および絨毛腺腫癌が挙げられる。
【0106】
消化管の処置可能な腫瘍としては、これらに限定されないが、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸および唾液腺がんが挙げられる。
処置可能な食道がんとしては、これらに限定されないが、食道細胞癌および腺癌、ならびに扁平上皮細胞癌、平滑筋肉腫、悪性黒色腫、横紋筋肉腫およびリンパ腫が挙げられる。
【0107】
処置可能な胃がんとしては、これらに限定されないが、腸型およびびまん型胃腺癌が挙げられる。
処置可能な膵臓がんとしては、これらに限定されないが、管状腺癌、腺扁平上皮癌および膵内分泌腫瘍が挙げられる。
【0108】
泌尿器の処置可能な腫瘍としては、これらに限定されないが、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、尿道およびヒト乳頭状腎がんが挙げられる。
処置可能な腎臓がんとしては、これらに限定されないが、腎細胞癌、尿路上皮細胞癌、傍糸球体細胞腫(腎腫)、血管筋脂肪腫、腎膨大細胞腫、ベリーニ管癌、腎臓の明細胞肉腫、中胚葉腎腫およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0109】
処置可能な膀胱がんとしては、これらに限定されないが、移行上皮癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、肉腫および小細胞癌が挙げられる。
処置可能な眼がんとしては、これらに限定されないが、眼球内黒色腫および網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0110】
処置可能な肝臓がんとしては、これらに限定されないが、肝細胞癌(線維層状変異体ありまたはなしの肝臓細胞癌腫)、胆管細胞癌(肝内胆管癌)および混合型肝細胞胆管癌が挙げられる。
【0111】
処置可能な皮膚がんとしては、これらに限定されないが、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞がんおよび非黒色腫皮膚がんが挙げられる。
処置可能な頭頚部がんとしては、これらに限定されないが、頭頚部の扁平上皮細胞がん、喉頭、下咽頭、鼻咽頭、中咽頭がん、唾液腺がん、口唇および口腔がん、ならびに扁平上皮細胞が挙げられる。
【0112】
処置可能なリンパ腫としては、これらに限定されないが、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫が挙げられる。
【0113】
処置可能な肉腫としては、これらに限定されないが、軟部組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫が挙げられる。
処置可能な白血病としては、これらに限定されないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ性(ymphoblastic)白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病およびヘアリー細胞白血病が挙げられる。
【0114】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、MAP4K1が関与する様々な他の障害、例えば、心血管および肺疾患を処置するために使用され得る。
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、心血管、炎症性および線維性障害、腎障害、特に急性および慢性腎機能不全(renal insufficiency)、ならびにまた急性および慢性腎不全(renal failure)の処置および/または予防のための医薬として使用され得る。
【0115】
ここで、用語「腎機能不全」は、腎機能不全の急性および慢性症状の両方を含み、また基礎的なまたは関連する腎障害、例えば、糖尿病性および非糖尿病性腎症、高血圧性腎症、虚血性腎障害、腎低灌流、透析による低血圧、閉塞性尿路疾患、腎狭窄、糸球体症、糸球体腎炎(例えば、原発性糸球体腎炎;微小変化型糸球体腎炎(リポイドネフローゼ);膜性糸球体腎炎;巣状分節性糸球体硬化症(FSGS);膜性増殖性糸球体腎炎;半月体形成性糸球体腎炎;メサンギウム増殖性糸球体腎炎(IgA腎炎、ベルジェ病);感染後糸球体腎炎;続発性糸球体腎炎)、糖尿病、エリテマトーデス、アミロイドーシス、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、顕微鏡的多発血管炎、急性糸球体腎炎、腎盂腎炎(例えば、尿路結石、良性の前立腺肥大、糖尿病、形成異常、鎮痛剤の乱用、クローン病の結果として生じたもの)、糸球体硬化症、腎臓の細動脈壊死、尿細管間質性疾患、腎障害、例えば、原発性および先天性または後天性腎障害、アルポート症候群、腎炎、免疫的腎障害、例えば、腎移植拒絶反応および免疫複合体により誘発された腎障害、有害物質によって誘発された腎症、造影剤によって誘発された腎症、糖尿病性および非糖尿病性腎症、腎嚢胞、腎硬化症、高血圧性腎硬化症およびネフローゼ症候群を含み、これは、診断により、例えば、クレアチニンおよび/もしくは水分排泄の異常な低下、尿素、窒素、カリウムおよび/もしくはクレアチニンの血中濃度の異常な上昇、腎臓酵素、例えばグルタミル合成酵素の活性の変化、尿浸透圧もしくは尿量の変化、高ミクロアルブミン尿、顕性アルブミン尿、糸球体および小動脈の病変、尿管拡張、高リン酸塩血症ならびに/または透析の必要性により特徴付けられ得る。
【0116】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、腎機能不全の後遺症、例えば、肺水腫、心不全、尿毒症、貧血症、電解質異常(例えば、高カリウム血症(hypercalemia)、低ナトリウム血症)、ならびに骨および糖代謝の乱れの処置および/または予防に使用され得る。
【0117】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、腎機能不全の後遺症、例えば、肺水腫、心不全、尿毒症、貧血症、電解質異常(例えば、高カリウム血症、低ナトリウム血症)、ならびに骨および糖代謝の乱れの処置および/または防止に使用され得る。
【0118】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、多発性嚢胞腎疾患(PCKD)および不適切ADH分泌(SIADH)症候群の処置および/または防止に更に好適である。
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、メタボリック症候群、高血圧、抵抗性高血圧、急性および慢性心不全、冠動脈性心疾患、安定および不安定狭心症、末梢および心血管障害、不整脈、心房性および心室性不整脈および伝達障害、例えば、房室ブロックl~lll度(ABブロックl~lll)、上室性頻脈性不整脈、心房細動、心房粗動、心室細動、心室粗動、心室性頻脈性不整脈、多形性心室頻拍、心房性および心室性期外収縮、AV接合部期外収縮、洞不全症候群、卒倒、AV結節リエントリー性頻拍、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、急性冠動脈症候群(ACS)、自己免疫心臓障害(心膜炎、心内膜炎、弁膜炎(valvolitis)、大動脈炎、心筋症)、ショック、例えば、心原性ショック、敗血症性ショックおよびアナフィラキシーショック、動脈瘤、ボクサー心筋症(心室性期外収縮(PVC))の処置および/または予防、血栓塞栓性障害および虚血、例えば、心筋虚血、心筋梗塞、卒中、心肥大、一過性の虚血発作、炎症性心血管障害、冠動脈および末梢動脈のけいれん、浮腫形成、例えば、肺水腫、脳浮腫、腎性浮腫または心不全によって引き起こされた浮腫、末梢循環障害、再灌流障害、動脈および静脈血栓、心筋不全、内皮機能障害の処置および/または予防、例えば、血栓溶解治療、経皮的血管形成術(PTA)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、心臓移植およびバイパス術の後の再狭窄、ならびにまた、微小および大血管損傷(血管炎)、高レベルのフィブリノーゲンおよび低密度リポタンパク質(LDL)および高濃度のプラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PAI-1)の防止、ならびにまた勃起不全および女性性機能不全の処置および/または予防に好適である。
【0119】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、喘息障害、肺動脈性肺高血圧症(PAH)および左心疾患、HIV、鎌状赤血球貧血、血栓塞栓症(CTEPH)、サルコイドーシス、COPDまたは肺線維症関連肺高血圧を含む肺高血圧(PH)の他の形態、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏(AATD)、肺線維症、肺気腫(例えば、タバコの煙によって誘発された肺気腫)および嚢胞性繊維症(CF)の処置および/または予防に好適である。
【0120】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、NO/cGMP系の乱れによって特徴付けられる中枢神経系障害の制御に有効である。本発明の化合物は、特に、環境/疾患/症候群、例えば、軽度の認知障害、年齢に関連する学習および記憶障害、年齢に関連する記憶喪失、血管性認知症、頭蓋脳外傷、卒中、卒中後に生じる痴呆(卒中後痴呆症)、外傷後頭蓋脳外傷、全般的な集中力の欠失、学習および記憶の問題を伴う小児の集中力の欠失、アルツハイマー病、レビー小体病、ピック症候群、パーキンソン病を含む前頭葉の退化による痴呆、皮質基底核変性、筋萎縮性側索硬化症(amyolateral sclerosis)(ALS)、ハンチントン病、髄鞘脱落、多発性硬化症、視床変性、クロイツフェルト・ヤコブ痴呆(Creutzfeld- Jacob dementia)、HIV痴呆、痴呆を伴う精神分裂病またはコルサコフ精神病による進行性痴呆に関連して生じるもののような認知障害後の知覚、集中力、学習または記憶を改善するのに特に好適である。
【0121】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、中枢神経系障害、例えば、不安、緊張および憂うつの状態、CNS関連性機能不全および睡眠障害の処置および/または予防、ならびに食物、刺激物および習慣性物質の摂取の病的な乱れを制御するのに好適である。
【0122】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は更にまた、脳血流を制御するのに好適であり、したがって、片頭痛を制御するのに効果的な作用剤を表す。
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、脳梗塞(脳卒中)の後遺症、例えば、卒中、脳虚血および頭蓋脳外傷の予防および制御に好適である。本発明による化合物は、同様に、疼痛および耳鳴の状態を制御するために使用され得る。
【0123】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、抗炎症作用を有し、したがって、敗血症(SIRS)、多臓器不全(MODS、MOF)、腎臓の炎症性障害、慢性腸炎症(IBD、クローン病、UC)、膵炎、腹膜炎、リウマチ性障害、炎症性皮膚障害、および炎症性眼障害の処置および/または予防のための抗炎症剤として使用され得る。
【0124】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、自己免疫疾患の処置および/または予防のために使用され得る。
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、内臓、例えば、肺、心臓、腎臓、骨髄および特に肝臓の線維性障害、ならびにまた皮膚の線維症および線維性眼障害の処置および/または予防に好適である。
【0125】
本明細書で使用される場合、用語「線維性障害」は、特に、肝線維症、肝臓の硬変、肺線維症、心内膜心筋線維症、腎症、糸球体腎炎、間質性腎線維症、糖尿病、骨髄線維症および同様の線維性障害から生じる線維傷害、強皮症、斑状強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕(また外科手技後)、母斑、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(proliferative vitroretinopathy)および結合組織の障害(例えば、サルコイドーシス)を含む。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、例えば、緑内障手術の結果としての術後の傷の制御に好適である。
ある特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、老化および角化した皮膚に化粧用として使用できる。
【0127】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、肝炎、新生物、骨粗しょう症、緑内障および胃不全麻痺の処置および/または予防に好適である。
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、ウイルス感染(例えば、HIVおよびカポジ肉腫)、炎症性自己免疫疾患(例えば、大腸炎、関節炎、アルツハイマー病、糸球体腎炎および創傷治癒)、細菌、真菌および/または寄生虫感染;皮膚疾患(例えば、乾癬)、細胞数の増加によって特徴付けられる過形成に基づく疾患(例えば、線維芽細胞、肝細胞、骨および骨髄細胞、軟骨もしくは平滑筋細胞、または上皮細胞(例えば、子宮内膜増殖症));骨疾患、ならびに心血管疾患(例えば、再狭窄および肥大)の処置および/または予防に好適である。
【0128】
別の実施形態では、本発明の化合物はまた、女性における子宮類線維症(子宮平滑筋腫または子宮筋腫)を処置または防止するために使用され得る。子宮類線維症は、子宮の平滑筋層である子宮筋の良性の腫瘍である。子宮類線維症は、女性の一生にわたってゆっくりと成長し、その成長は、女性ホルモンであるエストラジオールおよびプロゲステロンに依存する。したがって、白人およびアフリカ系アメリカ人女性においてそれぞれおよそ70%および>80%の子宮類線維症の最高有病率が、35歳から、ホルモンレベルの低下に起因して退縮する閉経期までにおいて見られる。白人およびアフリカ系アメリカ人女性のそれぞれおよそ30%および45%は、線維症に起因する臨床的に関連する徴候として、月経周期に関連する重度の月経出血および疼痛を示す(Davidら、Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol.199:137~140、2016)これに関して重度の月経周期は、月経出血期間における80mL超の失血によって定義される。子宮類線維症の粘膜下の位置、例えば、子宮内膜の直下に位置するものは、子宮出血に対して更により重度の作用を有するようであり、これにより、罹患女性は貧血を生じ得る。更に、子宮類線維症は、その徴候に関して、罹患女性の生活の質に深刻な影響を及ぼす。
【0129】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、慢性腎障害、急性および慢性腎機能不全、糖尿病、炎症性または高血圧性腎症(nephropaties)、線維性障害、心機能不全、狭心症、高血圧、肺高血圧、虚血、血管障害、血栓塞栓性障害、動脈硬化症、鎌状赤血球貧血、勃起不全、良性前立腺肥大症、良性前立腺肥大症に関連する排尿障害、ハンチントン、認知症、アルツハイマーおよびクロイツフェルト・ヤコブの処置および/または予防に有用である。
【0130】
本発明は、慢性腎障害、急性および慢性腎機能不全、糖尿病、炎症性または高血圧性腎症(nephropaties)、線維性障害、心機能不全、狭心症、高血圧、肺高血圧、虚血、血管障害、血栓塞栓性障害、動脈硬化症、鎌状赤血球貧血、勃起不全、良性前立腺肥大症、良性前立腺肥大症に関連する排尿障害、ハンチントン、認知症、アルツハイマーおよびクロイツフェルト・ヤコブの処置および/または予防のための方法を提供する。
【0131】
本発明は、障害、特に上で挙げた障害の処置および/または予防のための本発明による化合物の使用を更に提供する。
本発明は、障害、特に上で挙げた障害の処置および/または予防のための方法であって、有効量の、本発明による化合物のうちの少なくとも1種を使用する方法を更に提供する。
【0132】
したがって、本発明の化合物は、腫瘍成長の低減および調節不全免疫応答の調整のための外因性および/または内因性リガンドを活性化させて、例えば、がんおよびがん免疫治療の文脈において、免疫抑制を遮断し、免疫細胞活性化および浸潤を増加させることによって、MAP4K1活性を阻害、遮断、低減または低下するために利用できる。この方法は、ヒトを含むそれを必要とする哺乳動物に、障害を処置するのに有効である、ある量の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体、多形、代謝産物、水和物、溶媒和物もしくはエステルを投与するステップを含む。
【0133】
本発明はまた、MAP4K1が関与する様々な他の障害、例えば、これらに限定されないが、調節不全免疫応答、炎症、感染症&がんのワクチン接種、ウイルス感染、肥満および食事性肥満、代謝障害、脂肪肝ならびに子宮類線維症による障害を処置する方法を提供する。これらの障害は、ヒトにおいて十分特徴付けられているが、また、他の哺乳動物においても同様の病因で存在し、本発明の医薬組成物を投与することによって処置できる。
5.併用療法
本発明の化合物は、主題化合物により処置可能な疾患または適応症を処置するのに好適な1種または複数の追加の/2次治療剤との併用療法で使用され得る。
【0134】
したがって、ある特定の実施形態では、例えば、本発明の化合物を使用する本発明の方法は、それを必要とする対象に更なる治療剤を投与するステップを含み得る。更なる治療剤は、(i)NF-κB経路の成分であってもなくてもよい免疫系チェックポイントを遮断もしくは阻害する免疫調節剤、および/または(ii)免疫エフェクター応答を直接刺激する作用剤、例えばサイトカイン、もしくは腫瘍特異的養子移入T細胞集団、もしくは腫瘍細胞が発現するタンパク質に特異的な抗体;および/または(iii)腫瘍抗原もしくはその免疫原性断片を含む組成物;および/または(iv)化学療法剤であり得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、PI3K-AKT-mTOR経路の阻害剤、Raf-MAPK経路の阻害剤、JAK-STAT経路の阻害剤、ベータカテニン経路の阻害剤、notch経路の阻害剤、ヘッジホッグ経路の阻害剤、Pimキナーゼの阻害剤、ならびに/またはタンパク質シャペロンおよび細胞周期進行の阻害剤を含む。ある特定の実施形態では、本発明の併用療法は、細胞集団において生じる薬物耐性の可能性を低減し、および/または処置の毒性を低減する。
【0136】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、がんの処置のための以下のキナーゼ、すなわち、Akt1、Akt2、Akt3、TGF-βΡν、PKA、PKG、PKC、CaM-キナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、MEKK、ERK、MAPK、mTOR、EGFR、HER2、HER3、HER4、INS-R、IGF-1R、IR-R、PDGFαR、PDGFβR、CSFIR、KIT、FLK-II、KDR/FLK-1、FLK-4、flt-1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、c-Met、Ron、Sea、TRKA、TRKB、TRKC、FLT3、VEGFR/Flt2、Flt4、EphAl、EphA2、EphA3、EphB2、EphB4、Tie2、Src、Fyn、Lck、Fgr、Btk、Fak、SYK、FRK、JAK、ABL、ALKおよびB-Rafのうちの1種または複数の阻害剤と併用され得る。
【0137】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、FGFR阻害剤(FGFR1、FGFR2、FGFR3またはFGFR4、例えば、AZD4547、BAY1187982、ARQ087、BGJ398、BIBF1120、TKI258、ルシタニブ、ドビチニブ、TAS-120、J J-42756493、Debiol347、INCB54828、INCB62079およびINCB63904)、JAK阻害剤(JAK1および/またはJAK2、例えば、ルキソリチニブ、バリシチニブまたはイタシチニブ(INCB39110))、IDO阻害剤(例えば、エパカドスタットおよびNLG919)、LSD1阻害剤(例えば、GSK2979552、INCB59872およびINCB60003)、TDO阻害剤、PI3K-デルタ阻害剤(例えば、INCB50797およびINCB50465)、PI3K-ガンマ阻害剤、例えば、PI3K-ガンマ選択的阻害剤、CSF1R阻害剤(例えば、PLX3397およびLY3022855)、TAM受容体チロシンキナーゼ(Tyro-3、AxlおよびMer)、アリール炭化水素受容体(AhR)調節剤(例えば、ラキニモド、アミノフラボン、CB7993113、CH223191、6,2’,4’-トリメトキシフラボン(TMF)、GNF351(N-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-9-イソプロピル-2-(5-メチルピリジン-3-イル)-9H-プリン-6-アミン)、アミノフラボン、NKI150460、インドール-3-カルビノール、β-ナフトフラボンおよびその二量体、ジインドリルメタン(DIM)、4-ヒドロキシタモキシフェン、レフルノミド、ラロキシフェン、トラニラスト、フルタミド、メキシレチン、ニモジピン(nimodiphine)、オメプラゾール、スリンダク、トラニラスト、ならびにTCDD(2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン))、血管新生阻害剤、インターロイキン受容体阻害剤、ブロモおよび特異的末端ファミリーメンバー阻害剤(例えば、ブロモドメイン阻害剤またはBET阻害剤、例えば、OTX015、CPI-0610、INCB54329およびINCB57643)、ならびにアデノシン受容体アンタゴニストまたはその組合せを含む、がんの処置のための阻害剤のうちの1種または複数と併用され得る。
【0138】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、HDACの阻害剤、例えば、パノビノスタットおよびボリノスタットと併用され得る。
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、c-Metの阻害剤、例えば、オナルツズマブ(onartumzumab)、チバンチニブ(tivantnib)およびカプマチニブ(INC-280)と併用され得る。
【0139】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、BTKの阻害剤、例えば、イブルチニブと併用され得る。
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、mTORの阻害剤、例えば、ラパマイシン、シロリムス、テムシロリムスおよびエベロリムスと併用され得る。
【0140】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、MEKの阻害剤、例えば、トラメチニブ、セルメチニブおよびGDC-0973と併用され得る。
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、Hsp90の阻害剤(例えば、タネスピマイシン)、サイクリン依存性キナーゼ(例えば、パルボシクリブ)、PARP(例えば、オラパリブ)、ならびにPimキナーゼ(LGH447、INCB053914およびSGI-1776)と併用され得る。
【0141】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、DNAセンサーのアゴニスト(c-GAS)および/またはその下流アダプタータンパク質STINGと併用され得る。
【0142】
cGAS(環式GMP-AMPシンターゼ)-STING(Stimulator of Interferon Genes)経路は、サイトゾルDNAの存在を検出し、応答時、炎症性遺伝子の発現を引き起こすように機能し、これにより老化または防御機構の活性化をもたらし得る、自然免疫系の成分である。通常の核局在化からサイトゾルへのDNAの局在化は、腫瘍形成またはウイルス感染に関連する。cGASは、サイトゾルにおいて見出され、サイトゾルDNAに直接結合すると、cGASは二量体を形成して、ATPおよびGTPからの2’3’-cGAMPの生成を触媒する。生じたcGAMPは、次いで、STINGと結合し、転写因子IRF3の活性化を引き起こす第2のメッセンジャーとして作用する。IRF3の活性化により、1型IFN-βが転写され、多数の下流の標的遺伝子が、多様な生物学的応答、例えば、ウイルス応答、腫瘍監視、自己免疫および細胞性老化を開始する。多くの腫瘍細胞では、構成的に活性なDNA損傷応答は、核外DNAの蓄積およびcGAS/STING経路の活性化につながる。リンパ腫細胞において、NKG2DリガンドであるRae1は、STING/IRF3依存式に上方制御されて、NK-媒介腫瘍クリアランスを助けたことが示されている。樹状細胞などの抗原提示細胞におけるc-GAS-STING経路の活性化は、その機能を強化し、抗腫瘍免疫をブースとすることが示されている。
【0143】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤化合物は、1種または複数の免疫チェックポイント阻害剤と併用され得る。
エフェクターT細胞の活性化は、通常、MHC複合体により提示されるTCR認識抗原ペプチドによって引き起こされる。達成される活性化の種類およびレベルは、次いで、エフェクターT細胞応答を刺激するシグナルと、阻害するシグナルとの間のバランスにより決定される。「免疫系チェックポイント」は、本明細書において、エフェクターT細胞応答の阻害に利益となるようにバランスを変更する任意の分子相互作用をいうために使用される。つまり、生じると、エフェクターT細胞の活性化を負に調節する分子相互作用である。そのような相互作用は、阻害シグナルをエフェクターT細胞に伝達するリガンドと細胞表面受容体との間の相互作用などの直接的なものであり得る。または、相互作用は、そうでなければ活性シグナルをエフェクターT細胞に伝達するリガンドと細胞表面受容体との間の相互作用の遮断もしくは阻害、または阻害分子もしくは細胞の上方制御を促進する相互作用、またはエフェクターT細胞が必要とする代謝産物の酵素による枯渇、またはその任意の組合せなどの間接的なものであり得る。
【0144】
免疫系チェックポイントの例としては、a)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)とその基質との間の相互作用;b)PD1とPD-L1および/またはPD1とPD-L2との間の相互作用;c)CTLA-4とCD86および/またはCTLA-4とCD80との間の相互作用;d)B7-H3および/またはB7-H4とそのそれぞれのリガンドとの間の相互作用;e)HVEMとBTLAとの間の相互作用;f)GAL9とTIM3との間の相互作用;g)MHCクラスIまたはIIとLAG3との間の相互作用;ならびにh)MHCクラスIまたはIIとKIRとの間の相互作用;i)OX40(CD134)とOX40L(CD252)との間の相互作用;j)CD40とCD40L(CD154)との間の相互作用;k)4-1BB(CD137)と4-1BBLを含むリガンドとの間の相互作用;l)GITRとGITRLを含むリガンドとの間の相互作用が挙げられる。
【0145】
例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、免疫チェックポイント分子、例えば、CD20、CD27、CD28、CD39、CD40、CD122、CD96、CD73、CD47、OX40、GITR、CSF1R、JAK、PI3Kデルタ、PI3Kガンマ、TAM、アルギナーゼ、CD137(4-1BBとしても公知)、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、LAG3、TIM3、VISTA、PD-1、PD-L1およびPD-L2に対する阻害剤が挙げられる。
【0146】
本発明の目的のための代表的なチェックポイントは、チェックポイント(b)、すなわち、PD1とそのリガンドPD-L1およびPD-L2いずれかとの間の相互作用である。PD1は、エフェクターT細胞において発現する。いずれかのリガンドとの係合の結果、活性化を下方制御するシグナルが生じる。リガンドは、一部の腫瘍により発現する。特にPD-L1は、黒色腫を含む多くの固形腫瘍により発現する。これらの腫瘍は、したがって、T細胞での阻害PD-1受容体の活性化による免疫媒介抗腫瘍作用を下方制御し得る。PD1とそのリガンドの一方または両方との相互作用を遮断することにより、免疫応答のチェックポイントが除去され、抗腫瘍T細胞応答の増加がもたらされ得る。したがって、PD1およびそのリガンドは、本発明の方法における標的であり得る免疫系チェックポイントの成分の例である。
【0147】
本発明の目的のための別のチェックポイントは、チェックポイント(c)、すなわち、T細胞受容体CTLA-4とそのリガンドであるB7タンパク質(B7-1およびB7-2)との間の相互作用である。CTLA-4は、通常、初期活性化後、T細胞表面で上方制御され、リガンド結合の結果、更なる/連続活性化を阻害するシグナルが生じる。CTLA-4は、B7タンパク質への結合に関して、やはりT細胞表面で発現するが、活性化を上方制御する受容体CD28と競合する。したがって、B7タンパク質とのCTLA-4相互作用を遮断するが、B7タンパク質とのCD28相互作用は遮断しないことで、正常な免疫応答のチェックポイントの1つが除去され、抗腫瘍T細胞応答の増加がもたらされ得る。したがって、CTLA-4およびそのリガンドは、本発明の方法における標的であり得る免疫系チェックポイントの成分の例である。
【0148】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CD27、CD28、CD40、ICOS、OX40、GITRおよびCD137から選択される刺激チェックポイント分子である。
【0149】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIΜ3、SIGLEC7、SIGLEC9およびVISTA、ならびにその結合パートナー(例えば、PD-L1およびPD-L2)から選択される阻害チェックポイント分子である。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書で提供される化合物は、KIR阻害剤、TIGIT阻害剤、LAIR1阻害剤、CD160阻害剤、2B4阻害剤およびTGFRベータ阻害剤から選択される1種または複数の作用剤と組み合わせて使用され得る。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書で提供される化合物は、典型的には、低有機分子である、低分子阻害剤(SMI)である免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用され得る。例えば、ある特定の実施形態では、IDO1の阻害剤は、エパカドスタット(INCB24360)、インドキシモッド(Indoximod)、GDC-0919(NLG919)およびF001287を含む。IDO1の他の阻害剤としては、1-メチルトリプトファン(1MT)が挙げられる。
【0152】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、「免疫調節剤」としても公知であり、これには、対象に投与された場合に、免疫系チェックポイントの作用を遮断または阻害して、対象における免疫エフェクター応答、典型的には、抗腫瘍T細胞エフェクター応答を含んでもよいT細胞エフェクター応答を上方制御する任意の作用剤が含まれる。
【0153】
本発明の方法において使用される免疫調節剤は、上記の免疫系チェックポイントのいずれかを遮断または阻害し得る。作用剤は、抗体、または上記遮断もしくは阻害をもたらす任意の他の好適な作用剤であってもよい。したがって、作用剤は、一般に、上記チェックポイントの阻害剤と呼ばれる。
【0154】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、全抗体および任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)またその一本鎖を含む。抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、任意の好適な方法により産生され得る。抗体の用語「抗原結合性部分」に包含される結合性断片の例としては、Fab断片、F(ab’)断片、Fab’断片、F断片、Fv断片、dAb断片および単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。scFvなどの一本鎖抗体、ならびにVHHおよびラクダ抗体などの重鎖抗体もまた、抗体の用語「抗原結合性部分」に包含されることが意図される。
【0155】
ある特定の実施形態では、本発明のHPK1阻害剤と共に使用される免疫調節剤は、抗PD1抗体、抗PD-Ll抗体、抗PD-L2抗体または抗CTLA-4抗体である。
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-1の阻害剤、例えば、抗PD-1モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブ(MDX-1106)、ペンブロリズマブ(Merck3475またはランブロリズマブ)、ピディリズマブ(CT-011)、チスレリズマブ(BGB-A317)、カムレリズマブ(SHR-1210)、スパルタリズマブ(PDR001)またはAMP-514(MEDI0680)である。一部の実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブまたはペンブロリズマブである。一部の実施形態では、抗PD1抗体はペンブロリズマブである。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、カムレリズマブ(SHR-1210)である。ある特定の実施形態では、PD-1の阻害剤は、AMP-224(PD-1に結合するPD-L2 F融合タンパク質)またはAUNP-12(抗PD-1ペプチド)である。
【0156】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-L1の阻害剤、例えば、抗PD-L1モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、BMS-935559、BMS-936559(MDX-1105)、MEDI-4736(デュルバルマブ)、MPDL3280A(RG7446としても公知)、YW243.55.S70(HPAB-0381-WJ)またはMSB0010718Cである。一部の実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、MPDL3280AまたはMEDI-4736である。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブまたはMEDI-4736およびMPDL3280Aを含む。
【0157】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、CTLA-4の阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体である。一部の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ、トレメリムマブまたはWO2014/207063(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される抗体の任意のものである。他の分子としては、ポリペプチド、または可溶性変異体CD86ポリペプチドが挙げられる。ある特定の実施形態では、抗体はイピリムマブ(Ipilumumab)である。
【0158】
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、本明細書に記載の調節剤のうちの2種以上の組合せ、例えば、2種以上の異なる標的(例えば、PD-1、PD-L1およびPD-L2)を標的とする組合せである。例示的な組合せとしては、α-PD-1およびα-PD-L1;α-CTLA-4、α-PD-L1およびα-CD20などが挙げられる。
【0159】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、ウトミルマブを含む、4-1BBとそのリガンドとの間の相互作用を遮断または阻害する抗体である。
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、CSFIRの阻害剤、例えば、抗CSF1R抗体である。一部の実施形態では、抗CSF1R抗体は、IMC-CS4またはRG7155である。
【0160】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、LAG3の阻害剤、例えば、抗LAG3抗体である。一部の実施形態では、抗LAG3抗体は、BMS-986016、LAG525、IMP321またはGSK2831781である。
【0161】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、GITRの阻害剤、例えば、抗GITR抗体である。一部の実施形態では、抗GITR抗体は、TRX518、MK-4166、MK1248、BMS-986156、MEDI1873またはGWN323である。
【0162】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、OX40の阻害剤、例えば、抗OX40抗体またはOX40L融合タンパク質である。一部の実施形態では、抗OX40抗体は、MEDI0562、MEDI6469、MOXR0916、PF-04518600またはGSK3174998である。一部の実施形態では、OX40L融合タンパク質は、MEDI6383である。
【0163】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、TIM3の阻害剤、例えば、抗TIM3抗体である。一部の実施形態では、抗TIM3抗体はMBG-453である。
【0164】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、CD20の阻害剤、例えば、抗CD20抗体である。一部の実施形態では、抗CD20抗体は、オビヌツズマブまたはリツキシマブである。
【0165】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、1種または複数の代謝酵素阻害剤と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、代謝酵素阻害剤は、IDO1、TDOまたはアルギナーゼの阻害剤である。IDO1阻害剤の例としては、エパカドスタットおよびNGL919が挙げられる。アルギナーゼ阻害剤の例は、CB-1158である。
【0166】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、二特異性抗体と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、二特異性抗体のドメインの1つは、PD-1、PD-L1、CTLA-4、GITR、OX40、TIM3、LAG3、CD137、ICOS、CD3またはTGFβ受容体を標的とする。
【0167】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、がんなどの疾患の処置のための1種または複数の作用剤と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、作用剤は、アルキル化剤、プロテアソーム阻害剤、コルチコステロイドまたは免疫調節剤である。アルキル化剤の例としては、ベンダムスチン、ナイトロジェンマスタード、エチレンアミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレアおよびトリアゼン、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミドが挙げられる。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤はカーフィルゾミブである。一部の実施形態では、コルチコステロイドはデキサメタゾン(DEX)である。一部の実施形態では、免疫調節剤は、レナリドミド(LEN)またはポマリドミド(POM)である。
【0168】
本開示の化合物は、更に、例えば、化学療法、放射線療法、腫瘍標的化治療、アジュバント治療、免疫療法または手術による、がんを処置する他の方法と組み合わせて使用できる。免疫療法の例としては、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)、CRS-207免疫療法、がんワクチン、モノクローナル抗体、養子T細胞移入、腫瘍溶解性ウイルス療法およびサリドマイドまたはJAK1/2阻害剤などを含む免疫調節低分子が挙げられる。
【0169】
本発明の化合物は、化学療法薬などの1種または複数の抗がん薬物と組み合わせて投与できる。化学療法薬の例としては、アバレリックス、アビラテロン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、バリシチニブ、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ(bortezombi)、ボルテゾミブ、ブリバニブ、ブパリシブ、ブスルファン静脈内、ブスルファン経口、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セジラニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダコミチニブ、ダクチノマイシン、ダルテパリンナトリウム、ダサチニブ、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキン、デニロイキンディフティトックス、デオキシコホルマイシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロロキサフィン(droloxafine)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エンザルタミド、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、クエン酸フェンタニル、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロンアルファ2a、イリノテカン、ジトシル酸ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸リュープロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン(meclorethamine)、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトキサレン、ミスラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ナベルビン(navelbene)、ネシツムマブ、ネララビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニルタミド、ノフェツモマブ、ゴセレリン(oserelin)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、パゾパニブ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピララリシブ、ピポブロマン、プリカマイシン、ポナチニブ、プレドニゾン、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、レゴラフェニブ、レロキサフィン(reloxafine)、リツキシマブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、マレイン酸スニチニブ、タモキシフェン、テガフール、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、トリプトレリン、ウラシルマスタード、バルルビシン、バンデタニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタットおよびゾレドロネートのうちの任意のものが挙げられる。
【0170】
他の抗がん剤としては、抗体療法薬、例えば、トラスツズマブ(ハーセプチン)、共刺激分子に対する抗体、例えば、CTLA-4(例えば、イピリムマブもしくはトレメリムマブ)、4-1BB、PD-1およびPD-L1に対する抗体、またはサイトカイン(IL-10、TGF-βなど)に対する抗体が挙げられる。がんまたは感染、例えばウイルス、細菌、真菌および寄生中感染の処置のために本開示の化合物と併用され得るPD-1および/またはPD-L1に対する抗体の例としては、これらに限定されないが、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MPDL3280A、MEDI-4736およびSHR-1210が挙げられる。
【0171】
他の抗がん剤としては、キナーゼ関連細胞増殖障害の阻害剤が挙げられる。これらのキナーゼとしては、これらに限定されないが、オーロラA、CDK1、CDK2、CDK3、CDK5、CDK7、CDK8、CDK9、エフリン受容体キナーゼ、CHK1、CHK2、SRC、Yes、Fyn、Lck、Fer、Fes、Syk、Itk、Bmx、GSK3、JNK、PAK1、PAK2、PAK3、PAK4、PDK1、PKA、PKC、RskおよびSGKが挙げられる。
【0172】
他の抗がん剤としてはまた、免疫細胞遊走を遮断するもの、例えば、CCR2およびCCR4を含むケモカイン受容体のアンタゴニストが挙げられる。本開示の化合物は、更に、1種または複数の抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤または治療抗体と組み合わせて使用され得る。
【0173】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、免疫エフェクター応答を直接刺激する更なる治療剤、例えば、サイトカイン、または腫瘍特異的養子移入T細胞集団、または腫瘍細胞が発現するタンパク質に特異的な抗体と組み合わせて使用され得る。
【0174】
本明細書で使用される場合、「免疫エフェクター応答を直接刺激する作用剤」は、任意の好適な作用剤を意味するが、典型的には、サイトカインまたはケモカイン(またはそれらのいずれかの産生を刺激する作用剤)、腫瘍特異的養子移入T細胞集団、または腫瘍細胞が発現するタンパク質に特異的な抗体をいう。
【0175】
サイトカインは、IFNα、ΙΡΝβ、IFNγおよびIFNAから選択されるインターフェロン、またはIL-2などのインターロイキンであり得る。ケモカインは、例えば、CXCL9、10および11から選択される炎症メディエーターであってもよく、これは、CXCR3を発現するT細胞を誘引する。サイトカインまたはケモカインの産生を刺激する作用剤は、ヒトへの投与に好適なアジュバントであり得る。一例は、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)であり、これは、典型的には、膀胱がんの処置のために膀胱内(すなわち、尿道カテーテルにより)投与される。膀胱がんのためのBCGの典型的な投与量レジメンは、1週間に1回を6週間であるが、その安全性が長い間確認されていることを考慮し、それはまた、維持のために無期限で投与される。BCGは、膀胱がんへの免疫応答を刺激することが示されている。BCGはまた、典型的には皮内投与される場合、特に結腸がん用の腫瘍抗原を含む組成物(すなわち、がんワクチン)との組合せのアジュバントとして使用されている。BCGのそのような使用もまた、本発明において想定される。腫瘍特異的養子移入T細胞集団は、個体において腫瘍特異的T細胞集団のサイズを直接増加させ、任意の好適な手段で生成され得る。しかしながら、典型的には、その方法は、患者から得た腫瘍試料から腫瘍特異的T細胞を単離し、それらの細胞を選択的に培養した後、腫瘍特異的T細胞の増殖させた集団を患者に戻すことを含む。あるいは、腫瘍特異的T細胞集団は、T細胞受容体遺伝子座の遺伝子操作の後、変性細胞の増殖によって生成され得る。
【0176】
腫瘍細胞が発現するタンパク質に特異的な抗体は、典型的には、腫瘍細胞に結合し、抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を介して細胞の破壊を促進することによって免疫活性を刺激する。この種類の抗体の例としては、抗CD20抗体、例えば、オファツムマブまたはリツキシマブ、および抗CD52抗体、例えば、アレムツズマブが挙げられる。
【0177】
したがって、ある特定の例示的な実施形態では、本発明の化合物は、カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンAまたはFK506;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40-0-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、バイオリムス-7またはバイオリムス-9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えば、ABT-281、ASM981;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキセート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸または塩;ミコフェノール酸モフェチル;IL-1β阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0178】
別の実施形態では、本発明の化合物は、PI3キナーゼ阻害剤である共作用剤と併用される。
別の実施形態では、本発明の化合物は、BTK(ブルトンチロシンキナーゼ)に影響を及ぼす共作用剤と併用される。
【0179】
腫瘍学的疾患の処置のために、本発明の化合物は、B細胞調節剤、例えば、リツキシマブ、BTKまたはSyk阻害剤、PKC、PI3キナーゼ、PDK、PIM、JAKおよびmTORの阻害剤、ならびにBH3模倣物と組み合わせて使用され得る。
【0180】
一部の実施形態では、その塩を含む本発明の化合物は、別の免疫原性作用剤、例えば、がん性細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトした細胞と併用され得る。使用され得る腫瘍ワクチンの非限定例としては、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MARTIおよび/もしくはチロシナーゼのペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトした腫瘍細胞が挙げられる。
【0181】
一部の実施形態では、本発明の化合物またはその塩はまた、がんの処置のためのワクチン接種プロトコールと組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、GM-CSFを発現するように形質導入される。一部の実施形態では、腫瘍ワクチンは、ヒトがんに関連するウイルス、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)、ならびにカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)由来のタンパク質を含む。一部の実施形態では、本開示の化合物は、腫瘍特異的抗原、例えば、腫瘍組織自体から単離されたヒートショックタンパク質と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、本発明の化合物またはその塩は、強力な抗腫瘍応答を活性化する樹状細胞免疫化と併用され得る。
【0182】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、腫瘍細胞に対するFeαまたはFeγ受容体発現エフェクター細胞を標的とする二特異的大環状ペプチドと組み合わせて使用され得る。本発明の化合物はまた、宿主免疫応答性を活性化する大環状ペプチドとも併用できる。
【0183】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、造血性起源の種々の腫瘍の処置のために骨髄移植と組み合わせて使用され得る。
本発明の化合物と組み合わせて使用することが企図される好適な抗ウイルス剤は、ヌクレオシドおよびヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤、ならびに他の抗ウイルス薬を含む。好適なNRTIの例としては、ジドブジン(AZT);ジダノシン(ddl);ザルシタビン(ddC);スタブジン(d4T);ラミブジン(3TC);アバカビル(1592U89);アデホビルピボキシル[ビス(POM)-PMEA];ロブカビル(BMS-180194);BCH-10652;エムトリシタビン(emitricitabine)[(-)-FTC];ベータ-L-FD4(ベータ-L-D4Cとも呼ばれ、ベータ-L-2’,3’-ジデオキシ-5-フルオロ-シチジン(beta-L-2’,3’-dicleoxy-5-fluoro-cytidene)と命名される);DAPD((-)-ベータ-D-2,6,-ジアミノ-プリンジオキソラン);およびロデノシン(FddA)が挙げられる。典型的な好適なNNRTIとしては、ネビラピン(BI-RG-587);デラビルジン(delaviradine)(BHAP、U-90152);エファビレンツ(DMP-266);PNU-142721;AG-1549;MKC-442(1-(エトキシ-メチル)-5-(1-メチルエチル)-6-(フェニルメチル)-(2,4(1H,3H)-ピリミジンジオン);ならびに(+)-カラノリドA(NSC-675451)およびBが挙げられる。典型的な好適なプロテアーゼ阻害剤としては、サキナビル(Ro31-8959);リトナビル(ABT-538);インジナビル(MK-639);ネルフィナビル(nelfnavir)(AG-1343);アンプレナビル(141W94);ラシナビル(lasinavir)(BMS-234475);DMP-450;BMS-2322623;ABT-378;およびAG-1549が挙げられる。他の抗ウイルス剤としては、ヒドロキシウレア、リバビリン、IL-2、IL-12、ペンタフシドおよびYissum Project No.11607が挙げられる。
【0184】
本発明の方法において使用される更なる治療剤の多くは、静脈内、腹腔内またはデポー剤投与を必要とする生物学的製剤であり得ることが認識される。更なる実施形態では、本発明の化合物は経口投与され、更なる治療剤は、非経口、例えば、静脈内、腹腔内またはデポー剤として投与される。
【0185】
本明細書に記載の併用療法の任意のものにおいて、2種以上の医薬品が患者に投与される場合、それらは、同時に、別々に、逐次、または組み合わせて(例えば、3種以上の作用剤の場合)投与されてもよい。
【0186】
一実施形態では、本発明は、治療において同時に、別々にまたは逐次使用するための組合せ調製物として、本発明の化合物、例えば、主題化合物またはその任意のサブグループ、および少なくとも1種の他の治療剤を含む製品を提供する。組合せ調製物として提供される製品は、本発明の化合物もしくはその任意のサブグループおよび他の治療剤を、同じ医薬組成物中に一緒に、または主題化合物またはその任意のサブグループおよび他の治療剤を、別々の形態で、例えばキットの形態で含む組成物を含む。
【0187】
一実施形態では、本発明は、2種以上の別々の医薬組成物を含むキットであって、その少なくとも1種は主題化合物を含有し、別のものは本明細書で論じた第2の治療剤を含有する、キットを提供する。一実施形態では、キットは、上記組成物を別々に保持する手段、例えば、容器、分割ボトルまたは分割箔包を含む。そのようなキットの例は、錠剤、カプセル剤などの包装に典型的に使用されるブリスターパックである。本発明のキットは、例えば、経口および非経口の異なる剤形を投与するため、別々の組成物を異なる投薬間隔で投与するため、または別々の組成物を互いに用量調節するために使用され得る。コンプライアンス補助のために、本発明のキットは、典型的には、投与指示を含む。
6.化合物スクリーニング/アッセイ法
本発明の化合物は、HPK1のキナーゼ活性を阻害し、このキナーゼ活性は、多数の生化学アッセイ、例えば、実施例1に記載のアッセイを使用して直接アッセイできる。任意の化合物のIC50値が、阻害剤濃度の範囲にわたって、これに従って決定できる。更に、化合物の阻害効果もまた、生物学アッセイを使用して評価でき、TCRおよびCD28刺激後のT細胞によるサイトカイン分泌に対する化合物の効果が決定される。
【0188】
例えば、実施例5は、汎T細胞の刺激時のIL-2&IFN-γ放出に対するHPK1阻害剤の効果を決定するためのそのような機能性アッセイを記載している。分泌されたIL-2&IFN-γは、標準的なELISAアッセイにより測定/定量化できる。簡潔には、汎T細胞は、MACS(Miltenyl Biotec)汎T単離キット(カタログ番号130-096-535)などの市販のキットを使用して、末梢血(PB)単核細胞(MNC)またはPBMCから単離できる。1次ヒト汎T細胞は、CD4およびCD8 T細胞、ならびにいくつかのガンマ/デルタT細胞サブセットを含む。汎T細胞は、カラムを使用しないネガティブ免疫磁気分離技術を使用して単離できる。
【0189】
単離された汎T細胞は、96ウェルプレートに100,000個の細胞/ウェルで投入し、固定抗CD3抗体および可溶性抗CD28抗体、または陽性対照としてPMA/イオノマイシン(または陰性対照として培養培地)により刺激され得る。異なる濃度の試験化合物を細胞に添加して、TCR刺激/CD28共刺激後のサイトカイン分泌に対する化合物の効果を評価され得る。刺激細胞は、更に2日間インキュベートした後、ELISAアッセイならびにIL-2およびIFN-γの定量化のために上清(汎T細胞によって分泌されたサイトカインを含有する)を各ウェルから収集する。
【0190】
追加のアッセイを、HPK1を阻害する任意のHPK1阻害剤の能力を評価するため、またはHPK1阻害活性を有する化合物をスクリーニングするために使用され得る。
例えば、1つのアッセイでは、HPK1キナーゼ活性の阻害を、以下に記載される通りのTregアッセイ(調節性T細胞増殖アッセイ)を使用してアッセイできる。詳細には、1次CD4/CD25 T細胞およびCD4/CD25調節性T細胞を、Thermo Fisher Scientific(カタログ番号11363D)からのものなどの好適なキットを使用して、ヒト由来の末梢血単核球(PBMC)から単離する。CD4/CD25 T細胞を、ベンダーにより提供されるプロトコールに従ってCFSE(Thermo Fisher Scientific、C34554)で標識する。CFSE標識T細胞およびCD4/CD25調節性T細胞を、RPMI-1640培地中に1×10個の細胞/mLの濃度で再懸濁する。100μLのCFSE標識T細胞を、50μLのCD4/CD25調節性T細胞ありまたはなしで混合し、5μLの抗CD3/CD28ビーズ(Thermo Fisher Scientific、11132D)および50μLのRPMI-1640培地中で希釈された様々な濃度の化合物で処理する。混合された細胞集団を、5日間(37℃、5%CO)培養し、CFSE標識T細胞の増殖を、FITCチャンネルを使用してBD LSRFortessa X-20により、5日目に分析する。主題化合物によるHPK1の阻害は、Treg機能を強化し、CFSE標識1次CD4/CD25 T細胞の増殖を阻害することが予想される。
【0191】
別の例では、HPK1キナーゼ活性の阻害を、以下に記載の通り、p-SLP-76 S376 HTRFアッセイ(Cisbio)を使用してアッセイできる。このHTRF細胞に基づくアッセイにより、HPK1によりセリン376でリン酸化されたSLP-76の迅速な定量的検出が可能になる。ホスホ-SLP-76は、重要なシグナル複合体が構築されるスキャフォールドを創出し、Tリンパ球活性化のマーカーである。製造元によると、ホスホ-SLP-76(Ser376)アッセイは、一方はドナーフルオロフォアで、他方はアクセプターで標識された2つの抗体を使用する。第1の抗体は、SLP-76でのリン酸化S376モチーフへの結合に特化し、第2の抗体は、そのリン酸化状態に依存することなくSLP-76を認識する能力に特化する。タンパク質リン酸化により、両方の標識抗体が関与する免疫複合体形成が可能になり、これは、ドナーフルオロフォアをアクセプターに近接させ、それによってFRETシグナルが生じる。その強度は、試料中に存在するリン酸化タンパク質の濃度に直接比例し、非洗浄アッセイ形式でのタンパク質のリン酸化状態を評価する手段を提供する。
【0192】
簡潔には、Jurkat細胞(10%FBSを含むRPMI1640培地中で培養)を収集し、遠心分離し、続いて、3×10個の細胞/mLで適切な培地に再懸濁する。Jurkat細胞(35μL)を次いで、384ウェルプレートの各ウェルに投入する。試験化合物を、細胞培養培地で40倍希釈に希釈する(1μLの化合物に39μL細胞培養培地を添加する)。ウェルプレート中のJurkat細胞を、様々な濃度(5μL希釈化合物を35μL Jurkat細胞に添加し、1:3希釈で3μΜから開始する)の試験化合物で、37℃、5%COで1時間、処理し、続いて、抗CD3(5μg/ml、OKT3クローン)で30分間処理して、TCRおよびHPK1を活性化させる。4×溶解緩衝液(LB)を含む100×ブロッキング試薬(p-SLP76 ser376HTRFキットから)の1:25希釈物を調製し、ブロッキング試薬を含む15μLの4×LB緩衝液を各ウェルに添加し、穏やかに振とうしながら室温で45分間インキュベートする。細胞溶解物(16μL)をGreiner白色プレートに添加し、p-SLP76 Ser376 HTRF試薬(2μLドナー、2μLアクセプター)で処理し、4℃で終夜インキュベートする。翌日、均一時間分解蛍光(HTRF)を、PHERAstarプレートリーダーで測定する。IC50の決定を、GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを使用して、パーセント阻害対阻害剤濃度の対数曲線を一致させることによって実施する。
【0193】
上記のアッセイはいずれも、より大きな規模または高スループットスクリーニング(HTS)に拡張できる。上記のアッセイの任意のものを使用して、主題化合物のIC50値を決定できる。
7.医薬組成物
本発明は、本明細書に記載の化合物のいずれか1つまたはその薬学的に許容される塩と、1種または複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0194】
「薬学的に許容される賦形剤」および「薬学的に許容される担体」とは、活性剤の製剤化および/または対象への投与および/または対象による吸収を助ける物質をいい、対象に重大な有害毒性作用を引き起こすことなく本開示の組成物に含まれ得る。薬学的に許容される担体および賦形剤の非限定例としては、水、NaCl、生理食塩液、乳酸リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香味料、塩溶液(例えば、リンゲル溶液)、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物、例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジンおよび着色料などが挙げられる。そのような調製物は、滅菌されてもよく、所望の場合、本明細書で提供される化合物の活性と有害に反応せず、それに干渉もしない補助剤、例えば、滑沢剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調節するための塩、緩衝剤、着色および/または芳香物質などと混合されてもよい。当業者であれば、他の医薬担体および賦形剤が、開示される化合物との使用に好適であることを認識するであろう。
【0195】
これらの組成物は、必要に応じて、1種または複数の追加の治療剤を更に含む。あるいは、本発明の化合物は、それを必要とする患者に、1つまたは複数の他の治療レジメン(例えば、グリベックまたは他のキナーゼ阻害剤、インターフェロン、骨髄移植、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ビスホスホネート、サリドマイド、がんワクチン、ホルモン療法、抗体、放射線など)の投与と組み合わせて投与されてもよい。例えば、共投与または本発明の化合物を含む医薬組成物への包含のための追加の治療剤は、別の1種または複数の抗がん剤であってもよい。
【0196】
本明細書に記載されるように、本発明の組成物は、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に合わせて、任意および全ての溶媒、希釈剤または他のビヒクル、分散または懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤などを含む薬学的に許容される担体と一緒に本発明の化合物を含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1975)は、医薬組成物の製剤化に使用される様々な担体およびその調製のための公知の技術を開示している。任意の望ましくない生物学的効果が生じるまたは他に医薬組成物の任意の他の成分と有害に相互作用するなど、任意の従来の担体媒体が本発明の化合物と非適合性である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であることが企図される。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、これらに限定されないが、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェン不含水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液が挙げられ、他の非毒性適合性滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味、香味および芳香剤、保存料および酸化防止剤も、組成物中に存在してもよい。
8.製剤
本発明は、本発明の活性化合物を、1つ以上の薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント(まとめて「担体」物質と本明細書において称される)、ならびに望ましい場合に他の活性成分と合わせて含むあるクラスの組成物も包含する。
【0197】
ある特定の実施形態において、本発明は、がん、特に本明細書に記載されているがんを処置するための医薬製剤であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬製剤を提供する。
【0198】
ある特定の実施形態において、本発明は、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、卵巣がん、および膵がんからなる群から選択されるがんを処置するための医薬製剤であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬製剤を提供する。
【0199】
本発明の化合物は、任意の適切な経路により、好ましくはそのような経路に適合された医薬組成物の形態、および意図される処置に有効な用量で投与され得る。本発明の化合物および組成物は、例えば、経口的、経粘膜的、局所的、直腸内、例えば吸入スプレーにより肺内、または血管内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経皮、眼窩内、鞘内、脳室内、腫瘍内、鼻腔内、胸骨内、移植、吸入および注入技術を含む非経口的に、従来の薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する投与量単位製剤で投与され得る。
【0200】
典型的には、医薬組成物は、活性成分を、a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコール(polyethyieneglycol);錠剤にはまた、c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(magnesium aluminum silicate)、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルビロリドン;望ましい場合は、d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡混合物;ならびに/あるいはe)吸収剤、着色料、風味料、および甘味料と一緒に含む、錠剤またはゼラチンカプセル剤である。錠剤は、当該技術に既知の方法に従ってフィルムコーティングまたは腸溶コーティングされ得る。
【0201】
経口投与に適した組成物は、有効量の本発明の化合物を、錠剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、分散性(dispersibie)散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤の形態で含む。経口使用が意図される組成物は、医薬組成物の製造における当該技術に既知の任意の方法に従って調製され、そのような組成物は、薬学的に洗練された口当たりのよい調合剤を提供するため、甘味剤、風味剤、着色剤、および防腐剤からなる群から選択される1つ以上の作用物質を含有することができる。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合して含有してもよい。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア;ならびに滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクである。錠剤はコーティングされていない、または消化管での崩壊および吸収を遅延させ、それにより長期間にわたって持続的作用を提供するために、既知の技術によりコーティングされている。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延物質を用いることができる。経口用途の製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、または活性成分が水もしくは油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として存在し得る。
【0202】
特定の注射用組成物は、水性等張液剤また懸濁剤であり、坐剤は、有利には脂肪乳剤または懸濁剤から調製される。この記組成物は、滅菌され得る、ならびに/あるいは防腐剤、安定剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節する塩、および/または緩衝液などのアジュバントを含有することができる。加えて、これらは他の治療上貴重な物質を含有することもできる。この組成物は、従来の混合、造粒、またはコーティング方法によりそれぞれ調製され、活性成分を約0.1~75%含有する、または約1~50%含有する。経皮適用に適した組成物は、有効量の本発明の化合物を適切な担体と共に含む。経皮送達に適した担体には、宿主の皮膚を通過するのを助けるための、薬学的に許容される吸収性溶媒が含まれる。例えば、経皮デバイスは、裏部材と、任意選択で担体を有する化合物を含有するリザーバーと、任意選択で、長時間にわたって制御された所定の速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための速度制御バリアと、デバイスを皮膚に固定する手段とを含む包帯の形態である。
【0203】
例えば皮膚および眼への局所適用に適した組成物には、水性液剤、懸濁剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、または例えばエアロゾルによる送達用の噴霧製剤などが含まれる。そのような局所送達系は、例えば皮膚がんの処置のため、例えばサンクリーム、ローション、スプレーなどによる予防的使用のための皮膚適用に特に適している。したがって、これらは、化粧品を含む当該技術に周知の局所用製剤における使用に特に適している。そのような製剤は、可溶化剤、安定剤、張性向上剤、緩衝液、および防腐剤を含有することができる。
【0204】
本明細書において使用されるとき、局所適用は、吸入または鼻腔内適用に関することもある。これらは、適切な噴射剤の使用を伴う、または伴わない、乾燥散剤吸入器からの乾燥散剤(単独、混合物、例えばラクトースとの乾燥ブレンド、もしくは例えばリン脂質との混合成分粒子のいずれか)の形態、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、もしくはネブライザーからのエアロゾル噴霧の提示形態によって、都合よく送達され得る。
【0205】
本発明は、水が特定の化合物の分解を促進し得るので、本発明の化合物を活性成分として含む無水の医薬組成物および剤形を更に提供する。
本発明の無水の医薬組成物および剤形は、無水または低水分含有成分、および低水分または低湿度条件を使用して調製され得る。無水の医薬組成物は、無水の性質が維持されるように調製および保存され得る。したがって、無水組成物は、適切な製剤化キットに含まれ得るように、水への曝露を防止することが知られている材料を使用して包装される。適切な包装の例には、密閉箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが含まれるが、これらに限定されない。
【0206】
本発明は、活性成分としての本発明の化合物が分解する速度を低減する1つ以上の作用物質を含む、医薬組成物および剤形を更に提供する。本明細書において「安定剤」と称されるそのような作用物質には、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、pH緩衝液、または塩緩衝液などが含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
本発明の薬学的に活性な化合物を、薬学における従来の方法に従って加工して、ヒトおよび他の哺乳動物を含む患者に投与される医薬剤を生成することができる。
投与される化合物の量、ならびに本発明の化合物および/または組成物により疾患状態を処置するための投与量レジメンは、対象の年齢、体重、性別および医学的状態、疾患のタイプ、疾患の重症度、投与の経路および頻度、ならびに用いられる特定の化合物を含む様々な要因によって左右される。したがって、投与量レジメンは、広範囲に変わり得るが、標準的な方法を使用して日常的に決定することができる。前述の通り、1日用量を1回の投与で与えることができる、または2、3、4回、もしくはそれ以上回数の投与に分けてもよい。
【0208】
治療の目的において、本発明の活性化合物は、通常、指定された投与経路に適した1つ以上のアジュバント、賦形剤または担体と組み合わされる。経口投与される場合、化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアルコールと混合され、次いで都合の良い投与のために錠剤化またはカプセル化され得る。そのようなカプセル剤または錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散体で提供され得る制御放出製剤を含有してもよい。
【0209】
皮膚の状態の場合では、本発明の化合物の局所調合剤を罹患域に1日2~4回適用することが好ましいことがある。局所投与に適した製剤には、皮膚への浸透に適した液体または半液体調合剤(例えば、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、またはペースト剤)、および目、耳または鼻への適用に適した滴下剤が含まれる。局所投与では、活性成分は、製剤の0.001%~10%w/w、例えば、1重量%~2重量%を構成してもよく、製剤の10%w/wまで構成してもよいが、好ましくは5%w/w以下、より好ましくは0.1%~1%を構成し得る。
【0210】
本発明の化合物は、経皮デバイスにより投与することもできる。好ましくは、経皮投与は、リザーバーおよび多孔質膜タイプ、または固体マトリックス型のいずれかのパッチを使用して達成される。いずれの場合でも、活性剤は、リザーバーまたはマイクロカプセルから、膜を介して、レジピエンの皮膚または粘膜に接触する活性剤透過性接着剤に連続的に送達される。活性剤が皮膚を介して吸収される場合、制御された所定の活性剤流がレシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合、カプセル化剤は、膜として機能することもできる。本発明の乳剤の油相は、既知の成分から既知の方法によって構成され得る。
【0211】
相は単に乳化剤のみを含有し得るが、少なくとも1つの乳化剤と脂肪もしくは油、または脂肪と油の両方との混合物を含むことができる。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。脂肪と油の両方を含むことも好ましい。まとめると、安定剤を伴う、または伴わない乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを構成し、油および脂肪と一緒にしたワックスは、クリーム製剤の油状分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を構成する。本発明の製剤における使用に適した乳化剤および乳剤の安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリンが単体で、またはワックスもしくは当該技術に周知の他の物質を伴って含まれる。
【0212】
製剤に適した油または脂肪の選択は、医薬乳剤製剤に使用される可能性のある大部分の油における活性成分の溶解度が非常に低いので、所望の化粧用特性を達成することに基づいている。したがって、クリーム剤は、好ましく、チューブまたは他の容器からの漏れを避けるのに適した粘度を有した、べたべたしない、汚さない、可洗性生成物であるべきである。直鎖または分岐酸一塩基または二塩基アルキルエステル、例えば、ジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチル酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、2-エチルヘキシルパルミテート、または分岐鎖エステルのブレンドが使用され得る。これらは、必要とされる特性に応じて単独で、または組み合わせて使用され得る。
【0213】
あるいは、高融点脂質、例えば、白色液性パラフィンおよび/もしくは流動パラフィン、または他の鉱物油を使用することができる。
目への局所適用が適した製剤には、活性成分が適切な担体、とりわけ活性成分用の水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼剤も含まれる。
【0214】
活性成分は、好ましくは0.5~20%、有利には0.5~10%、特に約1.5%w/wの濃度で、そのような製剤中に存在する。
非経口投与用の製剤は、水性または非水性の等張滅菌注射液剤または懸濁剤の形態であり得る。これらの液剤または懸濁剤は、経口投与用の製剤における使用が記述された1つ以上の担体もしくは希釈剤を使用して、または他の適切な分散もしくは湿潤剤および懸濁化剤を使用して、滅菌粉末または顆粒から調製され得る。化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカントガム、および/または様々な緩衝液に溶解され得る。他のアジュバントおよび投与様式は、薬学技術において広範囲に良く知られている。食塩水、デキストロースもしくは水を含む適切な担体を伴う、またはシクロデキストリン(すなわち、Captisol)、共溶媒可溶化(すなわち、プロピレングリコール)もしくはミセル可溶化(すなわち、Tween 80)を伴う組成物として、活性成分を注射により投与することもできる。
【0215】
滅菌注射用調合剤は、また、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液剤または懸濁剤、例えば1,3-ブタンジオールの液剤であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒のうちで用いてもよいものは、水、リンゲル液および塩化ナトリウム等張液である。加えて、滅菌の固定油が溶媒または懸濁化媒体として慣用的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸には、注射剤の調製における用途が見出される。
【0216】
肺内投与では、医薬組成物をエアロゾルの形態で、または乾燥粉末エアロゾルを含む吸入器により投与することができる。
薬物の直腸内投与用の坐剤は、薬物を、常温で固体であるが、直腸内の温度で液体となり、したがって、直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤、例えばココアバターおよびプロピレングリコールと混合することによって調製され得る。
【0217】
医薬組成物を従来の薬学的操作、例えば滅菌に付すことができる、および/または慣用のアジュバント、例えば、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液などを含有することができる。加えて錠剤および丸剤は、腸溶コーティングを用いて調製され得る。そのような組成物は、湿潤剤、甘味剤、風味剤および香味剤などのアジュバントを含むこともできる。本発明の医薬組成物は、本明細書に記載されている式の化合物またはその薬学的に許容される塩;キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体など)、免疫抑制剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、または抗血管過剰増殖化合物から選択される追加の作用物質;および任意の薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む。
【0218】
本発明の代替的組成物は、本明細書に記載されている式の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む。そのような組成物は、例えば、キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体など)、免疫抑制剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質または抗血管過剰増殖化合物を含む1つ以上の追加の治療剤を、任意選択で含むことができる。
【0219】
用語「薬学的に許容される担体またはアジュバント」は、本発明の化合物と一緒に患者に投与することができ、本発明の化合物の薬理学的活性を壊さず、本発明の化合物の治療量を送達するのに十分な用量で投与されたときに非毒性である、担体またはアジュバントを指す本発明の医薬組成物に使用することができる薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルには、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型薬物送達系(SEDDS)、例えば、d-α-トコフェロール(d-atocopherol)ポリエチレングリコール1000スクシネート、医薬剤形に使用される界面活性剤、例えば、Tweenまたは他の同様のポリマー送達マトリックス、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム(potassium hydrogen phosphate)、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づいた物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。シクロデキストリン、例えばu-、P-およびy-シクロデキストリン、または化学修飾誘導体、例えば、2および3-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリン、または他の可溶化誘導体を、本明細書に記載されている式の化合物の送達を高めるために有利に使用することもできる。
【0220】
医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、乳剤、ならびに水性懸濁剤、分散剤および液剤が含まれるが、これらに限定されない任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。経口用途の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に添加される。カプセル剤形態の経口投与では、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁剤および/または乳剤が経口投与される場合には、油相に懸濁または溶解されていてもよい活性成分が乳化剤および/または懸濁化剤と組み合わされる。
【0221】
望ましい場合には、ある特定の甘味剤、風味剤および/または着色剤を添加することができる。医薬組成物は、リポソームまたはマイクロカプセル化技術を利用する製剤を含むことができ、様々な例が当該技術において知られている。
【0222】
医薬組成物は、鼻内エアロゾルまたは吸入に従ってより投与することができる。そのような組成物は、医薬製剤の分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティーを高める吸収促進剤、フルオロカーボン、および/またはその例が当該技術において周知でもある他の可溶化もしくは分散剤を用いて、食塩水中の液剤として調製することができる。
9.処置キット
本発明の一態様は、本発明に従って好都合および効果的に方法を実施または使用するためのキットに関する。一般に、医薬パックまたはキットは、本発明の医薬組成物の成分の1種または複数が充填された1つまたは複数の容器を含む。そのようなキットは、とりわけ、錠剤またはカプセル剤などの固体経口形態の送達に適している。そのようなキットは、好ましくは、いくつかの単位投与量を含み、また、目的の使用に向けた投与量を有するカードも含み得る。所望の場合、投与量が投与され得る処置スケジュールの日を示す、例えば、数、文字もしくは他の印の形態の、またはカレンダー挿入物による記憶補助物が提供され得る。そのような容器には、必要に応じて、医薬製品の製造、使用または販売を統制する政府機関により定められた形態の注意文書が付随し、注意文書は、ヒト投与のための製造、使用または販売の官庁による認可を反映している。
【0223】
以下の代表例は、様々な実施形態およびその等価物における本発明の実施に適合され得る重要な追加情報、適例および手引きを含有する。これらの例は、本発明の例示を助けることを意図され、その範囲を制限することは意図されず、その範囲を制限すると解釈されるべきでもない。実際、以下に続く例および本明細書で引用される科学および特許文献への参照を含む本文書を検討することで、当業者には、本明細書に示され記載されるものに加えて、本発明の様々な変更、およびその多くの更なる実施形態が、明らかになる。
【0224】
引用される参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれて、最新技術を例示するのを助ける。
更に、本発明の目的で、化学元素は、元素周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、見返しに従って特定される。更に、有機化学の一般原理、ならびに特定の官能部分および反応性は、いずれもその全内容が参照により本明細書に組み込まれる、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito、1999および「Organic Chemistry」、Morrison&Boyd(第3版)に記載されている。
10.合成スキーム
本発明の化合物は、当技術分野で認識される技術および手順に従って、当業者により調製され得る。より詳細には、本発明の化合物は、以下に示されるスキーム、方法および例に示される通りに調製され得る。当業者であれば、以下のスキームにおける個々のステップは、本発明の化合物を提供するために変更されてもよいことを認識するであろう。試薬および出発材料は、当業者であれば容易に入手可能である。全ての置換基は、別途指定されない限り、既に定義した通りである。
【実施例
【0225】
以下は本明細書で使用される略語およびその意味である。
Ac:アセチル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
EtOAc:酢酸エチル
DCM:ジクロロメタン
ACN:アセトニトリル
THF:テトラヒドロフラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
DMAP:4-(ジメチルアミノ)ピリジン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
NMR:核磁気共鳴
LC-MS:液体クロマトグラフィー質量分析
TLC:薄層クロマトグラフィー
TCR:T細胞受容体
BCR:B細胞受容体
mM:ミリモル濃度
μM:マイクロモル濃度
mL:ミリリットル
ng:ナノグラム
nM:ナノモル濃度
nm:ナノメートル
IC50:50%阻害濃度(Half maximal inhibitory concentration)
OD:光学密度
A.生物学的実施例
生物学実施例1 HPK1生化学アッセイ
この実施例はADP-GLO(商標) Kinase Assayを使用して潜在的なHPK1阻害剤化合物のHPK1キナーゼ活性に対する効果を測定した。
【0226】
ADP-GLO(商標) Kinase Assay(Promega Corp.、Madison、WI)はキナーゼ反応から形成されるADPを測定する。製品によると、キナーゼアッセイで形成されるADPが最初にATPに変換され、これが次いで使用されてルシフェラーゼ反応で光を発生する。生成された発光はキナーゼ活性と相互に関連する。代表的な実験的設定が以下に記載されるが、個々のアッセイにおいて多少の調整がなされることができる。
材料および機器
1.試薬
【0227】
【表1】
【0228】
2.機器および消耗品
【0229】
【表2】
【0230】
3.プレート設定
10μM(最高濃度)~0.508nM(最低濃度)の化合物(compoound)の連続3倍希釈。陽性対照は10μM参照+酵素+基質である。陰性対照は1%DMSO+酵素+基質である。
4.手順
1.緩衝剤調製
40mMトリス pH7.5、20mM MgCl、0.1mg/ml BSA、50μM DTT
緩衝剤ストック
【0231】
【表3】
【0232】
20mLの1Mトリスおよび10mLの1M MgClを470mLのddHOに加えて緩衝剤ストックを得、RTで貯蔵する。
2.新鮮な1アッセイ緩衝剤を調製する
【0233】
【表4】
【0234】
3.化合物調製
1)化合物は、10mMのそれぞれの化合物ストックの10μLを90μLのDMSOと混合することによって1mMに希釈された。
【0235】
2)化合物は次いでBRAVOにより10用量用に3倍希釈された(5μL~10μL希釈)。最高化合物濃度(conc.)は1mM(100×)であり、DMSO濃度は100%であった。
【0236】
3)100nLの各々の希釈された化合物試料をECHOにより384ウェルプレート(Corning-4512)に移す。
4)プレートを1,500rpmで1分遠心分離する。
【0237】
4.2×ATP-MBP混合物の調製
キナーゼ緩衝剤中20μM ATP、0.2μg/μL MBP(最終濃度:10μM ATP、0.1μg/μL MBP)
【0238】
【表5】
【0239】
5.アッセイ緩衝剤を用いた2×HPK1ワーキング溶液の調製
HPK1最終濃度は0.6ng/μLであった。効力が高い化合物では、より低い濃度のHPK1が使用された(0.26ng/μL~0.065ng/μL)。
【0240】
6.5μL/ウェルの2×HPK1ワーキング溶液を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
7.5μL/ウェルの2×ATP基質を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
【0241】
8.25℃で1時間(または効力の高い化合物では6時間)インキュベートする。
9.5μL/ウェルのADP-GLO(商標) Reagentを加えてキナーゼ反応を停止し、未消費のATPを枯渇させる。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0242】
10.10μLのKinase Detection Reagentを加えてADPをATPに変換する。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0243】
11.発光シグナルをEnvisionプレートリーダー(384-CTG)に記録する。
5.データ分析
化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有される高および低対照ウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。高対照ウェルは0%阻害として役立ち、化合物を含有しないがDMSO(最終濃度=0.5%)を含有する低対照ウェルは100%阻害として役立った。供試化合物に対する濃度および%阻害値がプロットされ、50%阻害に必要とされる化合物の濃度(IC50)が3パラメーターロジスティック用量応答式で決定された。参照ペプチド/化合物に対する終点値(IC50)が各々の実験において品質管理の手段として評価された。終点値が期待値の3倍以内であれば、その実験は許容可能であるとみなされた。
生物学実施例2 PKC-シータ生化学アッセイ
この実施例はADP-GLO(商標) Kinase Assayを使用して潜在的なHPK1阻害剤化合物のPKC-シータキナーゼ活性に対する効果を測定した。代表的な実験的設定が以下に記載されるが、個々のアッセイにおいて多少の調整がなされることができる。
材料および機器
1.試薬
【0244】
【表6】
【0245】
2.機器および消耗品
【0246】
【表7】
【0247】
3.プレート設定
10μM(最高濃度)~0.508nM(最低濃度)の化合物(compoound)の連続3倍希釈。陽性対照は10μM参照+酵素+基質である。陰性対照は1%DMSO+酵素+基質である。
4.手順
1.緩衝剤調製
40mMトリス pH7.5、20mM MgCl、0.1mg/ml BSA、50μM DTT
緩衝剤ストック
【0248】
【表8】
【0249】
20mLの1Mトリスおよび10mLの1M MgClを470mLのddHOに加えて緩衝剤ストックを得、RTで貯蔵する。
2.新鮮な1アッセイ緩衝剤を調製する
【0250】
【表9】
【0251】
3.化合物調製
1)化合物は、10mMのそれぞれの化合物ストックの10μLを90μLのDMSOと混合することによって1mMに希釈された。
【0252】
2)化合物は次いでBRAVOにより10用量用に3倍希釈された(5μL~10μL希釈)。最高化合物濃度は1mM(100×)であり、DMSO濃度は100%であった。
【0253】
3)50nLの各々の希釈された化合物試料をECHOにより384ウェルプレート(Corning-4512)に移す。
4)プレートを1,500rpmで1分遠心分離する。
【0254】
4.キナーゼ緩衝剤中2×酵素ワーキング溶液の調製
【0255】
【表10】
【0256】
5.2×ATP-sub混合物の調製
【0257】
【表11】
【0258】
6.2.5μL/ウェルの2×酵素ワーキング溶液を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
7.2.5μL/ウェルの2×ATP基質を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
【0259】
8.25℃で60minインキュベートする。
9.5μL/ウェルのADP-GLO(商標) Reagentを加えてキナーゼ反応を停止し、未消費のATPを1時間後枯渇させる。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0260】
10.10μLのキナーゼKinase Detection Reagentを加えてADPをATPに変換する。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0261】
11.発光シグナルをEnvisionプレートリーダー(384-USL)に記録する。
5.データ分析
化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有される高および低対照ウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。高対照ウェルは0%阻害として役立ち、化合物を含有しないがDMSO(最終濃度=0.5%)を含有する低対照ウェルは100%阻害として役立った。供試化合物に対する濃度および%阻害値がプロットされ、50%阻害に必要とされる化合物の濃度(IC50)が3パラメーターロジスティック用量応答式で決定された。参照ペプチド/化合物に対する終点値(IC50)が各々の実験において品質管理の手段として評価された。終点値が期待値の3倍以内であれば、その実験は許容可能であるとみなされた。
生物学実施例3 TBK1生化学アッセイ
この実施例はADP-GLO(商標) Kinase Assayを使用して潜在的なHPK1阻害剤化合物のTBK1キナーゼ活性に対する効果を測定した。代表的な実験的設定が以下に記載されるが、個々のアッセイにおいて多少の調整がなされることができる。
材料および機器
1.試薬
【0262】
【表12】
【0263】
2.機器および消耗品
【0264】
【表13】
【0265】
3.プレート設定
上記参照。
4.手順
1.緩衝剤調製
40mMトリス pH7.5、20mM MgCl、0.1mg/ml BSA、50μM DTT
緩衝剤ストック
【0266】
【表14】
【0267】
20mLの1Mトリスおよび10mLの1M MgClを470mLのddHOに加えて緩衝剤ストックを得、RT(室温)で貯蔵する。
2.新鮮な1アッセイ緩衝剤を調製する
【0268】
【表15】
【0269】
3.化合物調製
1)化合物は、10mMのそれぞれの化合物ストック10μLを90μLのDMSOと混合することによって1mMに希釈された。
【0270】
2)化合物は次いでBRAVOにより10用量用に3倍希釈された(5μL~10μL希釈)。最高化合物濃度は1mM(100×)であり、DMSO濃度は100%であった。
【0271】
3)50nLの各々の希釈された化合物試料をECHOにより384ウェルプレート(Corning-4512)に移す。
4)プレートを1,500rpmで1分遠心分離する。
【0272】
4.キナーゼ緩衝剤中2×酵素ワーキング溶液の調製
【0273】
【表16】
【0274】
5.2×ATP-sub混合物の調製
【0275】
【表17】
【0276】
6.2.5μL/ウェルの2×酵素ワーキング溶液を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
7.2.5μL/ウェルの2×ATP基質を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
【0277】
8.25℃で60minインキュベートする。
9.5μL/ウェルのADP-GLO(商標) Reagentを加えてキナーゼ反応を停止し、未消費のATPを1時間後枯渇させる。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0278】
10.10μLのKinase Detection Reagentを加えてADPをATPに変換する。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0279】
11.発光シグナルをEnvisionプレートリーダー(384-USL)に記録する。
5.データ分析
化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有される高および低対照ウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。高対照ウェルは0%阻害として役立ち、化合物を含有しないがDMSO(最終濃度=0.5%)を含有する低対照ウェルは100%阻害として役立った。供試化合物に対する濃度および%阻害値がプロットされ、50%阻害に必要とされる化合物の濃度(IC50)が3パラメーターロジスティック用量応答式で決定された。参照ペプチド/化合物に対する終点値(IC50)が各々の実験において品質管理の手段として評価された。終点値が期待値の3倍以内であれば、その実験は許容可能であるとみなされた。
生物学実施例4 JAK3生化学アッセイ
この実施例はADP-GLO(商標) Kinase Assayを使用して潜在的なHPK1阻害剤化合物のJAK3キナーゼ活性に対する効果を測定した。代表的な実験的設定が以下に記載されるが、個々のアッセイにおいて多少の調整がなされることができる。
材料および機器
1.試薬
【0280】
【表18】
【0281】
2.機器および消耗品
【0282】
【表19】
【0283】
3.手順
1.JAK3キナーゼ緩衝剤を調製する
DTTおよびBSAを新たに緩衝剤に加える(最終濃度:40mMトリス pH7.5、20mM MgCl、0.1mg/ml BSA、50μM DTT)。
【0284】
【表20】
【0285】
2.化合物調製
供試化合物の場合、化合物は、10mMの化合物ストック5μLを45μLのDMSOに混合することにより1mMに希釈された。化合物溶液は次いで10用量用に連続的に3倍希釈された。最高化合物濃度は1mM(100×)であり、DMSO濃度は100%であった。
【0286】
50nLの各々の10用量の希釈された化合物がECHOにより384ウェルアッセイプレート(Corning #4512)に加えられた。
陽性対照の場合、50nLの1mM参照化合物がECHOにより384ウェルアッセイプレート(Corning #4512)に加えられた。
【0287】
陰性対照の場合、50nLのDMSOが陰性対照として384ウェルアッセイプレートに移された。
アッセイプレートは1,500rpmで1分遠心分離された。
【0288】
3.化合物は次のレイアウトに従ってECHOにより移された。
参照および供試化合物1~15:10μM~0.508nMの連続3倍希釈(10用量);陰性対照は0.78ngのJAK3、4μMのATPおよび0.2μg/μLのポリ、1%のDMSOであり、陽性対照は最高用量の参照化合物、0.78ngのJAK3、0.2μg/μLのPoly(E4Y1)、4μMのATP、1%のDMSOである。
【0289】
4.ピペット(Thermo、30μLマルチチャンネル)を用いて2.5μL/ウェルの2×JAK3ワーキング溶液を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
5.ピペット(Thermo、30μLマルチチャンネル)を用いて2.5μL/ウェルの2×ATP-Poly(E4Y1)ワーキング混合物を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
【0290】
6.アッセイプレートを25℃で60minインキュベートする。
7.5μL/ウェルのADP-GLO(商標) ReagentをBRAVOにより加えてキナーゼ反応を停止し、未消費のATPを1時間後枯渇させる。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0291】
8.10μLのKinase Detection ReagentをBRAVOにより加えてADPをATPに変換する。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0292】
9.発光シグナルをEnvisionプレートリーダー(384-USL)に記録する。
10.XL-フィットを用いてデータを処理する。阻害%=[1-(試験ウェル-陰性対照)/(陽性対照-陰性対照)]×100%。
5.データ分析
化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有される陰性および陽性対照ウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。陰性対照ウェルは0%阻害として役立ち、陽性対照ウェルは100%阻害として役立った。供試化合物に対する濃度および%阻害値がプロットされ、50%阻害に必要とされる化合物の濃度(IC50)が3パラメーターロジスティック用量応答式で決定される。参照ペプチド/化合物に対する終点値(IC50)が各々の実験において品質管理の手段として評価される。終点値が期待値の3倍以内であればその実験は許容可能であるとみなされた。
生物学実施例5 ZAP70生化学アッセイプロトコル
この実施例はADP-GLO(商標) Kinase Assayを使用して潜在的なHPK1阻害剤化合物のZAP70キナーゼ活性に対する効果を測定した。代表的な実験的設定が以下に記載されるが、個々のアッセイにおいて多少の調整がなされることができる。
材料および機器
1.試薬
【0293】
【表21】
【0294】
2.機器および消耗品
【0295】
【表22】
【0296】
3.手順
1.ZAP70キナーゼ緩衝剤調製
DTTおよびBSAを新たに緩衝剤に加える(最終濃度:40mMトリス pH7.5;20mM MgCl、0.1mg/ml BSA、50μM DTT、2mM MnCl)。
【0297】
【表23】
【0298】
2.化合物調製
供試化合物の場合、化合物は最初に、10mMの化合物ストック5μLを45μLのDMSOに混合することにより1mMに希釈された。これらの化合物は次いで10用量用に3倍希釈された。最高化合物濃度は1mM(100×)であり、DMSO濃度は100%であった。
【0299】
50nLの化合物溶液がECHOにより384ウェルアッセイプレート(Corning #4512)に移された。
陽性対照の場合、50nLの1mMスタウロスポリンが陽性対照として384ウェルアッセイプレートに移された。
【0300】
陰性対照の場合、50nLのDMSOが陰性対照として384ウェルアッセイプレートに移された。アッセイプレートを1,500rpmで1分遠心分離する。
3.化合物は以下のレイアウトに従ってECHOにより移された。
【0301】
スタウロスポリンおよび供試化合物1-15:10μM~0.508nMの連続3倍希釈(10用量);陰性対照は6.25ngのZAP70、10μMのATPおよび0.4μg/μLのポリ、1%DMSOであり、陽性対照は10μMのスタウロスポリン、6.25ngのZAP70、10μMのATPおよび0.4μg/μLのポリ、1%DMSOである。
【0302】
4.キナーゼ緩衝剤中で2×ATP-Poly(E4Y1)混合物:20μMのATP、0.8μg/μLのPoly(E4Y1)を調製する(最終濃度:10μMのATP、0.4μg/μLのPoly(E4Y1)。
【0303】
5.キナーゼ緩衝剤中で2×ZAP70ワーキング溶液:(2.5ng/μL)を調製する(最終濃度は1.25ng/μLであった)。
6.ピペット(Thermo、30μLマルチチャンネル)を用いて2.5μL/ウェルの2×ZAP70ワーキング溶液を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
【0304】
7.ピペット(Thermo、30μLマルチチャンネル)を用いて2.5μL/ウェルの2×ATP-Poly(E4Y1)ワーキング混合物を加え、1,500rpmで1分遠心分離する。
【0305】
8.アッセイプレートを25℃で60minインキュベートする。
9.5μL/ウェルのADP-GLO(商標) ReagentをBRAVOにより加えてキナーゼ反応を停止し、未消費のATPを1時間後枯渇させる。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0306】
10.10μLのKinase Detection ReagentをBRAVOにより加えてADPをATPに変換する。1,500rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0307】
11.発光シグナルをEnvisionプレートリーダー(384-USL)に記録する。
12.XL-フィットを用いてデータを処理する。阻害%=[1-(試験ウェル-陰性対照)/(陽性対照-陰性対照)]×100%。
5.データ分析
化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有される陰性および陽性対照ウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。陰性対照ウェルは0%阻害として役立ち、陽性対照ウェルは100%阻害として役立った。供試化合物に対する濃度および%阻害値がプロットされ、50%阻害に必要とされる化合物の濃度(IC50)が3パラメーターロジスティック用量応答式で決定される。参照ペプチド/化合物に対する終点値(IC50)が各々の実験において品質管理の手段として評価される。終点値が期待値の3倍以内であればその実験は許容可能であるとみなされた。
生物学実施例6 LCK生化学アッセイプロトコル
この実施例はADP-GLO(商標) Kinase Assayを使用して潜在的なHPK1阻害剤化合物のLckキナーゼ活性に対する効果を測定した。代表的な実験的設定が以下に記載されるが、個々のアッセイにおいて多少の調整がなされることができる。
材料および機器
1.試薬
【0308】
【表24】
【0309】
2.機器および消耗品
【0310】
【表25】
【0311】
3.手順
1.LCKキナーゼ緩衝剤調製
DTTおよびBSAを新たに緩衝剤に加える(最終濃度:40mMトリス pH7.5;20mM MgCl、0.1mg/ml BSA、50μM DTT、2mM MnCl)。
【0312】
【表26】
【0313】
2.化合物調製
供試化合物の場合、化合物は最初に10mMの化合物ストック5μLを45μLのDMSOに混合することにより1mMに希釈された。化合物溶液は次いで10用量用に連続的に3倍希釈された。最高化合物濃度は1mM(100×)であり、DMSO濃度は100%であった。
【0314】
陽性対照の場合、スタウロスポリンが3μLの10mMストックを97μLのDMSOに混合することにより300μMに希釈された。
50nLの化合物溶液および300μMスタウロスポリンがBRAVOにより384ウェルアッセイプレート(Corning #4512)に移された。
【0315】
陰性対照の場合、50nLのDMSOが陰性対照として384ウェルアッセイプレートに移された。アッセイプレートを1,500rpmで1分遠心分離する。
3.化合物はECHOにより以下のレイアウトに従って移された。
【0316】
スタウロスポリンおよび供試化合物1-15:10μM~0.508nMの連続3倍希釈(10用量);陰性対照は7ngのLCK、20μMのATPおよび0.4μg/μLのポリ、1%DMSOであり、陽性対照は3μMのスタウロスポリン、7ngのLCK、20μMのATPおよび0.4μg/μLのポリ、1%DMSOである。
【0317】
4.キナーゼ緩衝剤中で2×ATP-Poly(E4Y1)混合物:40μMのATP、0.8μg/μLポリ(E4Y1)を調製する(最終濃度:20μMのATP、0.4μg/μLのポリ(E4Y1)。
【0318】
5.キナーゼ緩衝剤中で2×LCKワーキング溶液(2.8ng/μL)を調製する(最終濃度は1.4ng/μLであった)。
6.ピペット(Thermo、30μLマルチチャンネル)を用いて2.5μL/ウェルの2×LCKワーキング溶液を加え、1,000rpmで1分遠心分離する。
【0319】
7.ピペット(Thermo、30μLマルチチャンネル)を用いて2.5μL/ウェルの2×ATP-Poly(E4Y1)ワーキング混合物を加え、1,000rpmで1分遠心分離する。
【0320】
8.アッセイプレートを25℃で60minインキュベートする。
9.5μL/ウェルのADP-GLO(商標) ReagentをBRAVOにより加えてキナーゼ反応を停止し、未消費のATPを1時間後枯渇させる。1,000rpmで1分遠心分離する。25℃で40minインキュベートする。
【0321】
10.10μLのKinase Detection ReagentをBRAVOにより加えてADPをATPに変換する。1,000rpmで1分遠心分離する。25℃で30minインキュベートする。
【0322】
11.発光シグナルをEnvisionプレートリーダー(384-USL)に記録する。
12.XL-フィットを用いてデータを処理する。阻害%=(陰性対照-試験ウェル)/(陰性対照-陽性対照)×100%。
4.データ分析
化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有される陰性および陽性対照ウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。陰性対照ウェルは0%阻害として役立ち、陽性対照ウェルは100%阻害として役立った。供試化合物に対する濃度および%阻害値がプロットされ、50%阻害に必要とされる化合物の濃度(IC50)が3パラメーターロジスティック用量応答式で決定される。参照ペプチド/化合物に対する終点値(IC50)が各々の実験において品質管理の手段として評価される。終点値が期待値の3倍以内であればその実験は許容可能であるとみなされた。
生物学実施例7 MAP4K3タンパク質キナーゼアッセイ
この実施例はタンパク質キナーゼMAP4K3によるペプチド基質のリン酸化を測定するためのアッセイプロトコルを提供する。
【0323】
簡単に言うと、MAP4K3、その基質、および補因子(ATPおよびMg2+)がマイクロタイタープレートのウェル内で混合され、5時間25℃でインキュベートされる。インキュベーションの終了時、EDTAを含有する緩衝剤の添加により反応がクエンチされる。基質および産物が分離され、Caliper Life Sciencesのマイクロ流体に基づくLabChip 3000 Drug Discovery Systemを用いて電気泳動的に定量化される。
【0324】
このアッセイの場合、MAP4K3基質はFAM-GAGRLGRDKYKTLRQIRQ-NH2である(FAMはカルボキシフルオレセインである)。ペプチド基質は好ましくはCapillary Electrophoresisにより>98%純粋である。
【0325】
典型的なアッセイ設定および条件が以下に提供される。
1.384ウェルプレートのウェルに5μLの2×酵素緩衝剤(または対照)を加える。
【0326】
2.100nLの100×化合物を加える。所望であればこの時点で酵素および化合物はプレインキュベートされてもよい。
3.5μLの2×基質緩衝剤を加える。
【0327】
4.プレートを25℃で5時間インキュベートする。
5.40μLの1.25×停止緩衝剤を加えることにより反応を終了させる。
6.下記表の値を用いてCaliper LabChip(登録商標)3000 Drug Discovery Systemでジョブを作成する。
【0328】
12 Sipper Chipのための分離条件
【0329】
【表27】
【0330】
7.プレートをロードし、励起用に青色レーザー(480nm)を、検出用に緑色CCD(520nm)(CCD2)を用いて電気泳動を始める。
上記アッセイは次の反応条件で行われる:5合計時間;25℃、20mMの100%阻害剤EDTAの存在下。
【0331】
最終アッセイ反応混合物は100mMのHEPES、pH7.5、0.1%BSA、0.01%Triton X-100、1mMのDTT、5mMのMgCl、10μMオルトバナジン酸ナトリウム、10μMベータグリセロリン酸 20μMのATP、1%DMSO(化合物由来)、0.5μMのFAM-GAGRLGRDKYKTLRQIRQ-NH2、0.5nMのMAP4K3酵素である。
【0332】
MAP4K3の比活性はロット間で変化し、酵素濃度は基質から産物への約10~20%の変換を得るように調節される必要があり得ることに注意するべきである。
各々の試料中に存在する基質および産物ペプチドはLabChip 3000キャピラリー電気泳動機器を用いて電気泳動的に分離される。基質および産物ペプチドが分離されると2つの蛍光のピークが観察される。基質および産物ピークの相対蛍光強度の変化が測定されるパラメーターであり、酵素活性を反映する。キャピラリー電気泳動図(RDA取得ファイル)はHTS Well Analyzerソフトウェア(Caliper Life Sciences)を用いて分析される。各々の試料のキナーゼ活性は産物対総和比(PSR)、すなわちP/(S+P)として決定され、ここでPは産物ペプチドのピーク高さであり、Sは基質ペプチドのピーク高さである。
【0333】
各々の化合物に対して、酵素活性が様々な濃度(3×希釈間隔で離れた12の化合物濃度)で測定される。陰性対照試料(0%-阻害剤の不在下での阻害)および陽性対照試料(100%-20mMのEDTAの存在下での阻害)が4回繰り返して集められ、各々の濃度の各々の化合物に対する%阻害値を計算するのに使用される。
【0334】
パーセント阻害(Pinh)は次の式を用いて決定される。
inh=(PSR0%-PSRinh)/(PSR0%-PSR100%)×100
ここで、PSRinhは阻害剤の存在下での産物総和比であり、PSR0%は阻害剤の不在下での平均の産物総和比であり、PSR100%は100%阻害対照試料の平均の産物総和比である。
【0335】
阻害剤のIC50値はXL-フィット4ソフトウェア(IBDS)を用いて4パラメーターS字状用量応答モデルにより阻害曲線(Pinh対阻害剤濃度)をフィットさせることにより決定される。
【0336】
アッセイに使用されたいくつかの材料および緩衝剤が参考値として以下に示される。
【0337】
【表28】
【0338】
生物学実施例8 ヒト汎T細胞により放出されるIL2およびIFN-γに関する化合物有効性研究
この実施例は汎T細胞およびELISAアッセイフォーマットを用いてIL2およびIFN-γ放出に対する化合物の効果を決定するのに使用されることができるアッセイ方法である。
材料および機器
1.試薬
【0339】
【表29】
【0340】
2.機器および消耗品
【0341】
【表30】
【0342】
3.手順
汎T単離および試薬調製のための手順(0日目)
1.細胞増殖培地
RPMI1640:ATCC、Cat#30-2001
10%FBS:Gibco、Cat#10099141
1%Pen-Strep:Gibco、Cat#15140122
1%非必須アミノ:Gibco、Cat#11140050
ベータ-メルカプトエタノール:Gibco、Cat#21985023
2.汎T単離緩衝剤調製
MACS(登録商標)BSAストック溶液(#130-091-376)を自動MACS(登録商標)濯ぎ溶液で20倍に希釈することによりリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、および2mMのEDTAを含有する溶液を調製する。緩衝剤を4℃に保つ。気泡がカラムを塞ぐ可能性があるので使用前に緩衝剤を脱気する。
【0343】
【表31】
【0344】
3.冷凍PBMCを解凍する
1)培地を37℃の水浴で予熱する。
2)細胞を37℃の水浴中で急速に解凍する。
【0345】
3)予め温めた培地を15mLのチューブに加える。細胞をチューブに移す。
4)300×gで8min遠心分離する(遠心分離増大0、減少0)。
5)濯ぎ緩衝剤を用いてPBMCを洗浄する。
【0346】
6)PBMCを300×gで8min遠心分離し、2回洗浄する(遠心分離増大9、減少1)。
7)細胞を汎T細胞単離緩衝剤で再懸濁し、細胞数をカウントする。
【0347】
4.汎T細胞単離
マイクロビーズカクテルで細胞染色する
1)細胞を調製し、細胞数を決定する。細胞を70μmセルストレーナーにより濾過する。
【0348】
2)細胞ペレットを10の総細胞当たり40μLの緩衝剤に再懸濁する。
3)10の総細胞当たり10μLの汎T細胞ビオチン-抗体カクテルを加える。
4)よく混合し、10分間冷凍機(氷)内でインキュベートする。
【0349】
5)10の総細胞当たり30μLの緩衝剤を加える。
6)10の総細胞当たり20μLの汎T細胞マイクロビーズカクテルを加える。
7)よく混合し、15分間冷凍機(氷)内でインキュベートする。
【0350】
8)その後の磁気細胞分離に進む。
注意:a.速やかに作業し、細胞を冷たく保ち、予冷された溶液(2~8℃)を使用する。b.所与の磁気標識の容積は最大10の総細胞に対する。少なめの細胞で作業する場合は示したのと同じ容積を使用する。c.多めの細胞数で作業する場合は全ての試薬容積、従って総容積をスケールアップする。d.最適な性能のためには磁気標識の前に単細胞懸濁液を得ることが重要である。
【0351】
その後の手動の細胞分離
1)LSカラムを適切なMACS Separatorの磁場内に入れる。詳細については、それぞれのMACS Columnデータシートを参照すること。
【0352】
2)3mLの緩衝液で濯ぐことによりカラムを準備する。
3)細胞懸濁液をカラムにアプライする。富化されたT細胞を表すフロースルーを集める。
【0353】
4)カラムを5mLの緩衝液で洗浄する。通過する、富化されたT細胞を表す未標識細胞を集める。
注意:次のステップに進む前に、カラムリザーバーが空になるまで必ず待つこと。
【0354】
5.汎T細胞FACS
1)50μLのPBMCおよび汎T細胞をそれぞれFACSチューブに取る。
2)細胞を抗ヒトCD3/CD4/CD8抗体(1μL/1μL/1μL/チューブ)と共に20min4℃でインキュベートする。未染色対照では、細胞をFACS染色緩衝液と共にインキュベートする。
【0355】
3)冷たい染色緩衝液(0.2%BSAおよび1mMEDTAを含むPBS)で2回洗浄する。
4)FACSを行う。CD3、CD3CD4、およびCD3CD8集団%分析用にゲートする。
【0356】
5)汎T細胞の純度が90%より高ければ、適当な容積の細胞培養培地で細胞懸濁液を百万細胞/mLに希釈する。
6)細胞懸濁液を後の使用のために無菌の使い捨てリザーバーに分注する。
化合物および抗ヒトCD3/CD28の調製手順(0日目)
1.化合物調製
化合物連続希釈(ソースプレート1000×)
化合物が100%DMSO中で10mMの濃度に可溶化される。次いでそれらは8点用量に3倍連続希釈された。
【0357】
4×化合物用量調製(インタープレート:Corning-3599)
培養培地中4×化合物溶液を調製する。ピペットで上下させる。ZPE対照では、培養培地中0.4%DMSO(4×)を調製する。HPE対照では、0.4μMの培養培地中RGT003-026(4×)を調製する。
【0358】
2.抗ヒトCD3(ストック濃度6.76mg/ml):4℃で貯蔵。
1)抗ヒトCD3をPBSで0.5μg/mLの最終濃度に希釈する。
2)陽性および陰性対照ウェルを除き各々のウェルに50μL/ウェルのCD3を加える。陽性および陰性対照ウェルはCD3/CD28刺激を有さない。
【0359】
3)5%COインキュベーター内37℃で2時間インキュベートする。
4)50μLの抗体溶液を細胞培養プレートから取り出す。各回200μLの無菌PBSで各々のウェルを2回濯ぐ。
【0360】
3.抗ヒトCD28(4×)調製
抗体は培養培地により11.07mg/mLのストック濃度から2μg/mL(4×)に希釈された。
【0361】
4.PMA/イノマイシン(Inomycin)調製(4×)
1)PMAを培地中400ng/mL(8×)に希釈する。
2)イノマイシンを培地中8μM(8×)に希釈する。
【0362】
3)等量のPMAをイオノマイシンと混合して4×混合物を得る。
細胞を刺激する手順(0日目)
1.1×10細胞/ウェル(100μL/ウェル)の細胞懸濁液を96ウェルプレート(細胞プレート:greiner-655180)に移す。
【0363】
2.供試化合物およびZPE/HPE対照では50μL/ウェルの抗ヒトCD28を加える。陽性または陰性対照では、それぞれ50μL/ウェルの4×PMA/イノマイシン溶液または培養培地を加える。
【0364】
3.50μL/ウェルの化合物を以下に示すプレートマップに従って細胞プレートに加える。ZPE/HPE対照では、それぞれ50μL/ウェルの0.4%DMSO溶液または0.4μMのRGT003-026(4×)を加える。陽性または陰性対照では、50μL/ウェルの培養培地を加える。
【0365】
4.プレートを48時間インキュベートする。
IL-2およびIFN-γELISAの手順
1日目:コーティングプレート
1)マイクロウェルをウェル当たり100μLの、コーティング緩衝液に希釈されたIL-2およびIFN-γ捕捉抗体で覆う。推奨される抗体コーティング希釈については、ロット特定のInstruction/Analysis Certificate参照。プレートをシールし、一晩4℃でインキュベートする。
2日目:試料収集
1)37℃、5%COインキュベーターで48時間インキュベーション後、細胞プレートを1,000rpmで10min遠心分離する。100μL/ウェルの上清を集め、次いでIL-2およびIFN-γELISAアッセイを行う。上清は-80℃で貯蔵されることができ、IL-2およびIFN-γELISAアッセイは翌日行われることができる。上清は、アッセイがIL-2およびIFN-γ標準曲線の直線範囲を越えないように保証するため30~40倍希釈される必要があり得る。
2)新しい培地(抗CD28、P/Iおよび化合物を含有する)をプレートに100μL/ウェル加える。
3)プレートマップ:
3~4日目:IL-2およびIFN-γELISA:
1)ウェルを吸引し、≧300μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄する。最後の洗浄後、プレートを逆さにし、吸収紙で吸い取って残留する緩衝液を除く。
2)プレートを≧200μL/ウェルのアッセイ希釈剤でブロックする。RTで1時間インキュベートする。
3)ステップ2と同様に吸引/洗浄する。
4)アッセイ希釈剤中の標準を調製する。
IL-2標準ストック調製
1mLの脱イオン水をバイアルに加え(235ng/バイアル)、ストック濃度は235ng/mLである。標準ストックを10μL/バイアルで採り、-80℃で凍結する。
IFN-γ標準ストック調製
1mLの脱イオン水をバイアルに加え(145ng/バイアル)、ストック濃度は145ng/mLである。標準ストックを10μL/バイアルで採り、-80℃で凍結する。
IL-2/IFNγの標準曲線の調製
標準試料を500pg/mLの最高濃度に希釈する。次いで2倍連続希釈を10点用量(ブランク対照を含む)に行う。いろいろな濃度の標準をELISAプレート、100μL/ウェルに移す。
1)ピペットで100μLの各々の標準、試料、および対照を適当なウェルに入れる。プレートをシールし、2時間RTでインキュベートする。
2)ステップ2と同様に吸引/洗浄するが、合計5回洗浄する。
3)100μLのWorking Detector(Detection Antibody+SAv-HRP試薬)を各々のウェルに加える。プレートをシールし、1時間RTでインキュベートする。
4)ステップ2と同様に吸引/洗浄するが、合計7回洗浄する。注意:この最終洗浄ステップでは、各々の洗浄に対してウェルを洗浄緩衝液に30秒~1分浸すこと。
5)100μLの基質溶液を各々のウェルに加える。プレートを(プレートシーラーなしで)30分室温で暗所においてインキュベートする。
6)50μLの停止溶液を各々のウェルに加える。
7)反応を停止してから30分以内に450nmで吸光度を読む。OD450nmは570nmのOD値に規格化された。
4.データ分析
生化学アッセイの場合、化合物の各々の濃度におけるパーセント(%)阻害は各々のアッセイプレート内に含有されるHPEおよびZPEウェルのシグナルに基づいて、それに対して計算される。HPEウェルは100%有効と思われ、化合物を含有しないがDMSO(最終濃度=0.1%)を含有するZPEウェルは0%有効とみなされた。
【0366】
細胞アッセイでは、化合物の各々の濃度におけるIL-2またはIFN-γ(データは示さない)のDMSO対照と比較した応答が計算される。EC2xは200%応答(2倍)を与える化合物の濃度(concertation)を表し、EC50はGraphPad Prismを用いて計算される。
生物学的実施例9 動的溶解度アッセイ
このプロトコールは、試験物のアッセイ緩衝剤への動的溶解度を測定するために設計する。この研究は国際生命倫理基準「World Medical Association Declaration of Helsinkiに従って行われる。
1.試薬
対照:
DMSO中10mMプロプラノロール
DMSO中10mMケトコナゾール
DMSO中10mMタモキシフェン
脱イオン18.2MΩ-cm MQ超純水
リン酸、85%(HPO
ジメチルスルホキシド
アッセイ緩衝剤
100 リン酸緩衝液、pH7.4
2.手順
較正曲線調製:
300μM化合物溶液:6μLの化合物ストック溶液を192μLのMeOH/HO(1:1)に加える。
【0367】
MeOH/HO(1:1)中ワーキング溶液を調製する。
【0368】
【表32】
【0369】
1)10mM濃度でDMSO中試験化合物用ストック溶液を調製する。1.5ml Eppendorf管中、ストック溶液を100mMリン酸緩衝液に3連で、1%の最終DMSO濃度の100μMの標的濃度に希釈する。
【0370】
2)4μLの10mM DMSOストック溶液を396μLのアッセイ緩衝剤に。
3)試料管を室温で1時間振とう(1000rpm)したままにする。
4)試料管を12000rpm(Eppendrof-5424、約13500g)で10分遠心分離して未溶解粒子を沈殿させる。
【0371】
5)上清を様々な希釈(未希釈、10倍希釈、100倍希釈または他の希釈倍率)で新しい管に移す。
6)5μLのワーキング溶液および希釈した上清を95μL ACN(ISを含有)に加える。
【0372】
試料を較正曲線に対してLC-MS-MSにより分析する。
3.データ分析
標準較正曲線をメタノール/HO(1:1)中で調製する。1時間のインキュベーション後の上清中の試験化合物濃度は、ピーク面積を0.02μM~60μMの動作範囲で名目濃度に対してプロットすることにより構築した較正曲線から決定し、試験化合物の水溶液を評価するために使用する。
生物学的実施例10 MDCK透過性アッセイ
このアッセイは、スクリーニングデータのみを生成し、薬物候補の腸管吸収能を推定するためのものである。この研究は国際生命倫理基準「World Medical Association Declaration of Helsinkiに従って行われる。
機器
◆24ウェル細胞培養プレート(PET膜):Millipore
◆24ウェルフィーダートレイ:Millipore
◆ピペッターおよび管(Eppendorf)
◆Millicell ERS System
◆96ウェルU型プレート(Greiner)
◆96ウェルマイクロプレート(Greiner)
◆37℃ COインキュベーター
◆FlexStation 3(Molecular Devices)
試薬
細胞系:
・MDCK(ATCC)またはMDCK MDR1(NKI)。
【0373】
細胞培養増殖培地(MEM+10%FBS+1%NEAA):
50mL FBSおよび5mL NEAAを445mLのMEMに加えることにより増殖培地を調製する、または実際の必要に従って最終体積を調節する。
【0374】
Trypsin-EDTA(Invitrogen、Cat# 25200-072)
アッセイおよび投薬溶液緩衝剤:
25mM HEPESを含むHanks平衡塩溶液(HBSS、Invitrogen,)、pH7.4
Hanks平衡塩溶液(HBSS、Invitrogen)
【0375】
【表33】
【0376】
ドナー緩衝液の調製:
AからB方向について:
レ0.3%DMSOおよび5μM Lucifer Yellow(LY)を含むHBSS緩衝液:150μL DMSOおよび125μL LY(2mM)を50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
【0377】
レ0.1%DMSOおよび5μMLucifer Yellow(LY)を含むHBSS緩衝液:50μL DMSOおよび125μL LY(2mM)を50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
【0378】
レ5μM Lucifer Yellow(LY)を含むHBSS緩衝液:125μL LY(2mM)を50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
BからA方向について:
レ0.3%DMSOを含むHBSS:150μL DMSOを50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
【0379】
レ0.1%DMSOを含むHBSS緩衝液:50μL DMSOを50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
レDMSOを含まないHBSS緩衝液。
レシーバー緩衝液の調製:
AからB方向について:0.4%DMSOを含むHBSS緩衝液を調製する:200μL DMSOを50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
【0380】
BからA方向について:0.4%DMSOおよび5μM LYを含むHBSS緩衝液を調製する:200uL DMSOおよび125μL LY(2mM)を50mL HBSS緩衝液(pH7.4)に加える。
対照:
以下の式:
(実際の重量/分子量)/溶媒のmL=10mM
を使用してアッセイ緩衝剤中DMSOおよびLucifer Yellow中の10mMストック濃度の化合物を調製する。
【0381】
参照化合物:エリスロマイシン、メトプロロール、アテノロール
ドナー溶液の調製(化合物について10μMおよびLucifer Yellowについて5μM):
【0382】
【表34】
【0383】
希釈溶液を4000rpmで5分遠心分離する。上清を化合物投薬のために収集する。
標準曲線で化合物溶液を調製する(3μM/1μM/0.2μM/0.04μM/0.01μM/0.005μM):
20×溶液:
≫15 μL(10mM)+485μL(MeOH:HO=1:1)---500μL(300μM)
≫200μL(300μM)+800μL(MeOH:HO=1:1)---1000μL(60μM)
≫200μL(60μM)+400μL(MeOH:HO=1:1)---600μL(20μM)
≫200μL(20μM)+800μL(MeOH:HO=1:1)---1000μL(4μM)
≫200μL(4μM)+800μL(MeOH:HO=1:1)---1000μL(0.8μM)
≫200μL(0.8μM)+600μL(MeOH:HO=1:1)---800μL(0.2μM)
≫200μL(0.2μM)+200μL(MeOH:HO=1:1)---400μL(0.1μM)
1×溶液:3μLの20×溶液(0.1~60μM)+57μL 0.4%DMSO HBSS+IS(200ng/mLオサルミド)を含む60μL ACN。
研究設計
◆試験濃度:治験依頼者により決定される
◆インキュベーション温度および時点:37℃で0および60分
◆試料サイズ:1~3
手順
日常的な培養および維持
◆ストック培養物は、MEM+10%FBS+1%NEAA中で維持し、75cm組織培養物処理フラスコ中で増殖させ、週に2回分割(継代)して、所望のコンフルーエンスを維持する。
【0384】
◆維持継代について:トリプシン処理した細胞を新しいフラスコに1:20の標準継代比で日常的に分布させる。
◆副次培養プロトコール:
レ培養培地を除去し、廃棄する。
【0385】
レ細胞層を0.25%(w/v)トリプシン - 0.53mM EDTA溶液で2回濯いで、トリプシン阻害剤を含有する全ての微量の血清を除去する。
レ2.0~3.0mLのトリプシン-EDTA溶液をフラスコに加え、細胞層が分散するまで(通常5~15分以内)倒立顕微鏡下で細胞を観察する。
【0386】
(注意:集塊を回避するため、フラスコを叩いたり揺らしたりすることによって細胞をかき混ぜず、細胞が剥離するのを待つ。剥離するのが困難な細胞は、37℃で静置して分散を促進する。)
レ6.0~8.0mlの完全増殖培地を加え、優しくピペッティングすることによって細胞を吸引する。
【0387】
レ細胞懸濁液の適切なアリコートを新しい培養容器に加える。
レ培養物を37℃でインキュベートする。
播種アッセイプレート
MDCKアッセイプレートに、アッセイを行う2~4日前に播種する。24ウェルプレートに、400μLの頂部チャンバー容積(2.2×10/mL)中0.88×10/ウェルの細胞密度で、24ウェル基部チャンバーへの25mL体積の増殖培地で播種する。アッセイプレートは、一般に、アッセイ24時間前に増殖培地を交換する。
アッセイプレートの調製および経上皮電気抵抗(TEER)測定
MDCKアッセイプレートを、アッセイを行う前にHBSS+緩衝液で濯ぐ。濯いだ後、新鮮なHBSS+を、400μL頂部チャンバー容積および0.8mL HBSS+基部チャンバー容積中、アッセイプレートに加える。Millicell ERSシステムオームメーターを使用して単層にわたる電気抵抗を測定する。(TEERが100オーム*cm超である場合細胞が使用される)。
標準曲線の調製
細胞プレートの調製:
◆緩衝液を頂部側および基底側から除去する。600μLのドナー溶液(AからBについて)または500μLのレシーバー溶液(BからAについて)をプレートマップに基づいて頂部ウェルに加える。
【0388】
◆新鮮な基底プレートを、800μLのレシーバー溶液(AからBについて)または900μLのドナー溶液(BからAについて)を新しい24ウェルプレートのウェルに加えることによって調製する。
【0389】
◆頂部プレートおよび基底プレートを37℃インキュベーターに入れる。
分析プレートの調製:
◆5分後、100μLの試料を全てのドナー(AからBおよびBからAの両方について)からD0の試料プレートの適切なウェルに移す。そして、100μLの試料を全ての頂部チャンバー(AからBのドナーおよびBからAのレシーバー)からLucifer Yellow D0(D0 LY)のマイクロプレートの適切なウェル中に移す。
【0390】
◆頂部プレートを基底プレートに積んで、輸送プロセスを開始する。
◆90分の時点で、頂部および基底プレートを分離し、100μLの試料を全てのドナー(AからBおよびBからAの両方について)からD90の新しい試料プレートの適切なウェル中に移し、200μLの試料を全てのレシーバーからR90の試料プレートの適当なウェル中に移す。100μLの試料を全ての基底チャンバー(AからBのレシーバーおよびBからAのドナー)からLucifer Yellow R90(R90 LY)の新しいマイクロプレートの適切なウェル中に移す。
【0391】
◆D0 LYおよびR90 LYを、蛍光プレートリーダーを使用して、485nmの励起波長および535nmの発光波長で読みとることによってLY透過性を決定する。
◆試料調製:
≫レシーバー溶液について:60μLの試料+IS(200ng/mLオサルミド)を含む60μL ACN
≫ドナー溶液について:6μLの試料+54μL 0.4%DMSO/HBSS+IS(200ng/mLオサルミド)を含む60μL ACN
計算
経上皮電気抵抗(TEER)=(抵抗sample-抵抗blank)×有効膜面積
Lucifer Yellow透過性:
app=(V/(面積×時間))×([RFU]accepter-[RFU]blank)/(([RFU]initial,dоnоr-[RFU]blank)×希釈係数)×100
7.1 以下の式を使用するプレート薬物輸送アッセイ:
経上皮電気抵抗(TEER)=
(抵抗sample-抵抗blank)×有効膜面積
Lucifer Yellow透過性:
app=(V/(面積×時間))×([RFU]accepter-[RFU]blank)/(([RFU]initial,dоnоr-[RFU]blank)×希釈係数)
薬物透過性:
app=(V/(面積×時間))×([薬物]receiver/(([薬物]initial,dоnоr)×希釈係数)
式中、Vはレシーバーウェルの容積(AからBについて0.8mLおよびBからAについて0.4mL)であり、面積は膜の表面積(Millipore-24細胞培養プレートについて0.7cm)であり、時間は、単位秒の総輸送時間である。
【0392】
パーセンテージ回収=100×(90分におけるドナー中の総化合物×希釈係数+90分におけるレシーバー中の総化合物)/(0分における総化合物×希釈係数)
データ分析
試験化合物の見かけ浸透係数(Papp)を、以下の式を使用して計算する:
app=(V/(面積×時間))×([薬物]receiver/(([薬物]initial,dоnоr)×希釈係数)
式中、Vはレシーバーウェルの容積(AからBについて0.8mLおよびBからAについて0.4mL)であり、面積は膜の表面積(Millipore-24細胞培養プレートについて0.7cm)であり、時間は、単位秒の総輸送時間である。レシーバー側およびドナー側の試験化合物濃度は、ピーク面積を名目濃度に対してプロットすることによって構築した標準較正曲線から決定する。
【0393】
流出率(ration)は、平均頂部から基底(A-B)Pappデータおよび基底から頂部(B-A)Pappデータから計算する:流出率=Papp(B-A)/Papp(A-B)
【0394】
経上皮電気抵抗(TEER)測定を使用して、細胞間のタイトジャンクション形成を決定し、TEER値が100Ω・cm超の場合、細胞単層を使用する。細胞単層の完全性を評価するために、5μMのLucifer Yellowを、ドナーコンパートメント中で試験化合物と共に共処理する。共処理したLucifer YellowのPappは5×10-6cm/秒超の場合、データ点は計算から除外する。
生物学的実施例11 肝ミクロソームにおける代謝安定性アッセイ
このアッセイは、肝ミクロソームにおける試験化合物の安定性を決定するためのものである。この研究は、国際生命倫理基準「World Medical Association Declaration ofに従って行われる。
肝ミクロソーム試料
BD GentestまたはRILDから購入したヒト、Sprague Dawleyラット、CD-1マウス、ビーグル犬およびカニクイザル肝ミクロソーム試料。
機器
インキュベーター(37℃)
遠心分離機(Eppendorf 5810)
Eppendorfピペットおよび管
96ウェルプレート(Greiner)
試薬
化合物ストック溶液:
DMSO中10mM試験化合物、-80℃で保存
アッセイ緩衝剤
0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4:
- 緩衝液A:1.0mM EDTAを含有する0.1M第一リン酸カリウム緩衝液の1.0L
- 緩衝液B:1.0mM EDTAを含有する0.1M第二リン酸カリウム緩衝液の1.0L
- 緩衝液C(リン酸K緩衝液):0.1Mリン酸カリウム緩衝液、1.0mM EDTA、pHメーターでモニタリングしながら700mLの緩衝液Bを緩衝液Aで滴定することによりpH7.4
スパイク溶液
- 3×試験化合物または陽性対照溶液を調製する:
500μMスパイク溶液:10μLの10mM DMSOストック溶液を190μL ACNに加える。
【0395】
- ミクロソーム(0.75mg/mL)中1.5μMスパイク溶液:1.5μLの500μMスパイク溶液および18.75μLの20mg/mL肝ミクロソームを479.75μLのリン酸K緩衝液に加える。
他の溶液
- 0.1Mリン酸K緩衝液中6mM NADPH:
- 25.1mgのNADPHテトラナトリウム塩を5mLのリン酸K緩衝液に溶解する。
手順
0.75mg/mlミクロソーム溶液を含有する1.5μMスパイク溶液の30μLを、45分、30分、15分、5分および0分と表示されたウェルに加える。プレートを37℃で5分間予備インキュベートする。
【0396】
15μLのNADPHストック溶液(6mM)を全てのウェルに加え、時間調整を開始する。直ちに、ISを含有するACNの135μLを時間0と表示されたウェルに加える。
【0397】
5分、15分、30分および45分の時点で、ISを含有するACNの135μLをそれぞれウェルに加える。
インキュベーションの終了時、15μLのNADPHストック溶液(6mM)を時間0と表示されたウェルに加える。
【0398】
クエンチした後、反応混合物を3220×gで10分遠心分離する。
50μLの上清を各ウェルから、LC/MS分析のために50μLの超純水(Millipore)を含有する96ウェル試料プレート中に移す。
【0399】
【表35】
【0400】
計算
結果は、各時点における試験化合物の%残留として表される:
%残留=ピーク面積比t/ピーク面積比t(式中、
=0分インキュベーション
=所与のインキュベーション時間)
in vitro半減期は、単位分で報告され、以下の通り計算される:
1/2=-(0.693/スロープ)
スロープ=x=0分でy切片=100%のときのln(%残留)対インキュベーション時間。
【0401】
in vitro固有クリアランス、Cl’intは、以下の通りT1/2から計算した。
Cl’int=(0.693/T1/2)×(1/(ミクロソームタンパク質濃度(0.5mg/mL))×倍率
各種に使用した倍率は、表11-2に列挙される。
【0402】
各種についての肝クリアランス予想値は、十分撹拌されたモデルを使用して半減期から計算した。
CLhep=(Q×Cl’int×fub)/(Q+Cl’int×fub)(式中、
は、肝血流(mL/分/kg)(表11-2)であり、
ubは、血漿中の未結合薬物の分率であり、
Cl’intは、in vitro固有クリアランスである)。
【0403】
【表36】
【0404】
データ分析
各インキュベーション時点における%パーセント残留は、T(0分インキュベーション)におけるピーク面積比(化合物ピーク面積/内部標準ピーク面積)と比較することによって計算する。lnピーク面積比を、時間に対してプロットし、線の勾配を決定する。化合物の半減期および代謝は、相対ピーク面積対時間の自然対数線形回帰に基づいて計算する。ミクロソーム中の半減期および固有クリアランス(Clint)は、以下の式を使用して計算する。
【0405】
In Vitro T1/2(分)=0.693/消失速度定数(k)
Clint(μL/分/ミクロソームタンパク質のmg)=(0.693/In Vitro T1/2)(インキュベーション体積/ミクロソームのmg)
十分撹拌されたモデルを使用して、半減期計算値から各種についての試験化合物のクリアランス予想値を決定する。
【0406】
陽性対照をアッセイに含む。陽性対照が指定の限度内ではない場合、化合物の値は除く。
生物学的実施例12 本開示の化合物およびアナログの比較
本開示で提供されるプロトコールに基づいて、本開示の化合物および複数の化合物アナログの生物学的特性を試験した。試験結果を、以下の表12-1および表12-2にまとめる。表1によると、本開示の化合物(実施例1、2、4および5)は、優れたHPK1阻害活性(1nM未満)を示した。それらはまた、IL-2産生を誘導する良好な有効性も示した。更に、表12-2は、これらの化合物が、溶解度、透過性および代謝安定性を考慮した場合、近いアナログ(化合物7~10)よりも予想外に全体として良好な特性を有し、全体として良好な特性を有することを示す。
【0407】
【表37-1】
【0408】
【表37-2】
【0409】
【表38-1】
【0410】
【表38-2】
【0411】
B.合成実施例
機器の説明
NMRスペクトルは、400MHz(H)、376MHz(19F)または75MHz(13C)で作動するVarian Mercury分光計で測定した。試料に使用される溶媒は、各化合物について実験手順に明示している。化学シフトは百万分率(ppm、δ単位)で表現される。カップリング定数はヘルツ(Hz)の単位である。分裂パターンは見かけ上の多重度を示し、s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、quint(五重項)、m(多重項)、br(幅広)として表される。
【0412】
以下のシステムをLCMSに使用した:Agilent 6120(Binary Gradient Moduleポンプ)、XBridge分析カラムC18、5μm、4.6×50mm、25℃、注入体積5μL、2mL/分、以下のタイミングに従う0.1%酢酸アンモニウム水溶液中アセトニトリルの勾配:
【0413】
【表39】
【0414】
実験手順:全ての反応は、特に指定しない限り、乾燥窒素の雰囲気下で行った。TLCプレートは紫外光で可視化した。フラッシュクロマトグラフィーは、ガラス製カラムを使用するシリカゲル(40~60μm)上でのカラムクロマトグラフィーを指す。あるいは、自動化クロマトグラフィーは、220または254nmにおける紫外検出でBiotage SP1またはBiotage Isoleraシステムを使用しておよびBiotage順相または逆相シリカカートリッジを使用して実行した。適切な実験手順下でさらなる詳細を見ることができる。
【0415】
一般的方法および調製
本開示の化合物および中間体は、本明細書に記載される合成法により調製される。実験手順において、温度、溶液の濃度、溶媒の体積、マイクロ波条件の適用、反応時間またはそれらの組合せ等の反応条件の変更は本発明の一部として認識され、具体的に記述される酸、塩基、試薬、カップリング試薬、溶媒等の他、代替の好適な酸、塩基、試薬、カップリング試薬、溶媒等を使用でき、本開示の範囲内に含まれる。全ての可能な幾何異性体、立体異性体、塩形態は、本開示の範囲内と認識される。
中間体0
【0416】
【化7】
【0417】
1-(tert-ブチル)3-メチル3-メチルインドリン-1,3-ジカルボキシレート
【0418】
【化8】
【0419】
ステップ1:1-(tert-ブチル)3-メチルインドリン-1,3-ジカルボキシレート(320mg、1.15mmol)およびヨードメタン(491.36mg、3.46mmol)のDMF(8mL)中溶液に、25℃で水素化ナトリウム(50.77mg、1.27mmol、鉱油中60%)を加えた。混合物を25℃で2時間撹拌し、EA(200mL)で希釈し、次いで水(20mL×3)およびブライン(30mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(EA/PE:15%)により精製して、1-(tert-ブチル)3-メチル3-メチルインドリン-1,3-ジカルボキシレートを薄黄色の油状物として得た(244mg、収率70%)。LC-MS(ESI)m/z:236[M+H-56]
中間体1
【0420】
【化9】
【0421】
メチル2-(3-メチルインドリン-3-イル)アセテート
【0422】
【化10】
【0423】
ステップ1:1-(tert-ブチル)3-メチル3-メチルインドリン-1,3-ジカルボキシレート(730mg、2.51mmol)のTHF(20mL)中溶液に、水酸化ナトリウム(3.01g、75.17mmol)の水(1.41mL)中水溶液を加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、1M HCl水溶液で酸性化し、EtOAc(100mL×3)で抽出した。有機相をブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮して、粗製の1-tert-ブトキシカルボニル-3-メチルインドリン-3-カルボン酸を黄色の油状物として得た(620mg、収率85%)。LC-MS(ESI)m/z:222[M+H-56]
【0424】
ステップ2:1-tert-ブトキシカルボニル-3-メチルインドリン-3-カルボン酸(630mg、2.27mmol)のDCM(15mL)中混合物に、0℃で二塩化オキサリル(865.1mg、6.82mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(8.3mg、0.114mmol)をゆっくり加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、真空で濃縮した。残渣(670mg、1.13mmol)をTHF(10mL)およびMeCN(5.00mL)に溶解し、ジアゾメチル(トリメチル)シラン(258.75mg、2.27mmol)(ジエチルエーテル中2M溶液)を上記溶液にゆっくり加えた。反応混合物をN下2時間撹拌し、10%クエン酸(10mL)を用いてクエンチし、DCM(50mL)と水(50mL)との間で分配した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(EA/PE=0~10%)により精製して、tert-ブチル3-(2-ジアゾアセチル)-3-メチルインドリン-1-カルボキシレートを黄色の油状物として得た(200mg、収率56%)。
【0425】
ステップ3:tert-ブチル3-(2-ジアゾアセチル)-3-メチルインドリン-1-カルボキシレート(200mg、0.664mmol)のメタノール(5mL)中溶液に、安息香酸銀(76.0mg、0.332mmol)を加えた。反応混合物をN下室温で1.5時間撹拌し、DCM(50mL)および水(50mL)で希釈した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(EA/PE=0~15%)により精製して、tert-ブチル3-(2-メトキシ-2-オキソエチル)-3-メチルインドリン-1-カルボキシレートを無色の油状物として得た(100mg、収率42%)。LC-MS(ESI)m/z:250[M+H-56]
【0426】
ステップ4:tert-ブチル3-(2-メトキシ-2-オキソエチル)-3-メチルインドリン-1-カルボキシレート(100mg、0.278mmol)およびHCl/EA(4M、1.5mL)のDCM(3mL)中混合物を、室温で2時間撹拌し、真空で濃縮して、粗製のメチル2-(3-メチルインドリン-3-イル)アセテートを得、更には精製しなかった。LC-MS(ESI)m/z:206[M+H]
【0427】
代替合成方法:
【0428】
【化11】
【0429】
ステップ1:3-メチルインドリン-2-オン(20g、135.89mmol)のTHF(200mL)中溶液に、0℃でNaH(6.52g、163.09mmol、鉱油中60%懸濁)を30分かけて加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、続いてジ-tert-ブチルカルボネート(29.07g、133.18mmol)のTHF(50mL)中溶液を滴下添加した。反応混合物を1時間撹拌し、飽和NHCl水溶液(50mL)で希釈し、CHCl(100mL×2)で抽出した。合わせた有機相を無水NaSOで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=9/1)により精製して、tert-ブチル3-メチル-2-オキソインドリン-1-カルボキシレート(30g、収率74%)を黄色の油状物として得た。LC-MS(ESI)m/z:192[M+H]
【0430】
ステップ2:tert-ブチル3-メチル-2-オキソインドリン-1-カルボキシレート(30g、103.12mmol)のTHF(300mL)中溶液に、0℃でNaH(4.95g、123.74mmol、鉱油中60%)を30分かけて加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、続いてメチル2-ブロモアセテート(18.93g、123.74mmol)を滴下添加した。反応混合物を1時間撹拌し、飽和NHCl水溶液(100mL)を用いてクエンチし、CHCl(200mL×2)で抽出した。合わせた有機相を無水NaSOで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=8/2)により精製して、tert-ブチル3-(2-メトキシ-2-オキソエチル)-3-メチル-2-オキソインドリン-1-カルボキシレート(28g、収率83%)を白色の固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:264[M+H-56]
【0431】
ステップ3:1,4-ジオキサン中4M HCl(35mL)およびtert-ブチル3-(2-メトキシ-2-オキソエチル)-3-メチル-2-オキソインドリン-1-カルボキシレート(28g、87.68mmol)のCHCl(200mL)中混合物を、室温で2時間撹拌し、真空で濃縮した。残渣をCHCl(200mL)と飽和NaHCO水溶液(50mL)との間で分配した。分離した水性層をCHCl(50mL×3)で抽出し、合わせた有機層を無水NaSOで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮して、メチル2-(3-メチル-2-オキソインドリン-3-イル)アセテート(17.6g、収率82%)を得た。LC-MS(ESI)m/z:220[M+H]
【0432】
ステップ4:メチル2-(3-メチル-2-オキソインドリン-3-イル)アセテート(15.6g、71.16mmol)およびローソン試薬(14.71g、36.38mmol)のトルエン(220mL)中混合物を、130℃で1.5時間撹拌し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=80:20)により精製して、メチル2-(3-メチル-2-チオキソインドリン-3-イル)アセテート(15.5g、収率74%)を白色の固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:236[M+H]
【0433】
ステップ5:メチル2-(3-メチル-2-チオキソインドリン-3-イル)アセテート(9.5g、40.37mmol)および塩化ニッケル(10.46g、80.75mmol)の混合したTHF(70mL)およびメタノール(70mL)中混合物に、0℃でNaBH(9.16g、242.24mmol)を1時間かけて一部ずつ加えた。得られた混合物を10分間撹拌し、セライトのパッドに通して濾過した。固体のケーキをMeOH(100mL)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。残渣をEA(200mL)に溶解し、水(60mL×3)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl:メタノール=95:5)により精製して、メチル2-(3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(6.5g、収率75%)を黄色の油状物として得た。LC-MS(ESI)m/z:206[M+H]
中間体2
【0434】
【化12】
【0435】
6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-アミン
【0436】
【化13】
【0437】
ステップ1:2-(3-メトキシフェニル)エタンアミン(20.0g、132.27mmol、19.23mL)のHCl水溶液(1N、192mL、192mmol)中混合物に、ホルムアルデヒドの水溶液(37重量%、41.64g、529.08mmol)を加えた。混合物を60℃で1時間撹拌し、0℃に冷却し、50%NaOH水溶液(17.44g、218mmol)を0℃で滴下添加することにより塩基性化した。得られた混合物を室温で終夜撹拌し、濾過した。濾液を濃縮して、ビス(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)メタンを白色の固体として得た(23g、収率100%)。
【0438】
ステップ2:ビス(6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)メタン(28g、82.73mmol)のi-PrOH(200mL)中懸濁液に、0℃で濃HCl(15.20g、182.01mmol、15.3mL)を滴下添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。MTBE(70mL)を上記混合物に加え、懸濁液を室温で更に4時間撹拌した。濾過した後、ケーキをMTBE/i-PrOHの混合物(100mL、1/1v/v)で洗浄し、乾燥して、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン塩酸塩を白色の固体として得、これをDCM(300mL)に懸濁した。混合物に飽和NaHCO水溶液(500mL)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。分離した後、水性層をDCM(50mL×4)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンを黄色の油状物として得た(10g、収率75%)。LC-MS(ESI)m/z:164[M+H]
【0439】
ステップ3:6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1.63g、9.99mmol)のMeOH(30mL)中溶液に、室温でホルムアルデヒド水溶液(37%w/w、4.8g、59.92mmol、1.67mL)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌し、0℃に冷却し、これにNaBH(1.13g、29.96mmol)を一部ずつ加えた。混合物を室温で3時間撹拌し、氷水(10mL)を用いてクエンチし、DCM(20mL×5)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1v/v)で精製して、6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンを黄色の油状物として得た(1.7g、収率96%)。LC-MS(ESI)m/z:178[M+H]
【0440】
ステップ4:予め冷却した(0℃)濃硫酸の溶液(4mL)に、0℃で6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(2g、11.28mmol)およびグアニジン硝酸塩(1.17g、9.59mmol)を順次加えた。得られた混合物を0℃で30分間撹拌し、氷水(20mL)を用いてクエンチし、NaOH水溶液(4N)でpH10~11に塩基性化し、DCM(50mL×4)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE100%v/v、PE/EA=1/1v/v、EA100%v/v、次いでDCM/MeOH=20/1、v/v)で精製して、6-メトキシ-2-メチル-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンを黄色の固体として得た(0.9g、収率36%)。LC-MS(ESI)m/z:223[M+H]
【0441】
ステップ5:6-メトキシ-2-メチル-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(-tetrohydroisoquinoline)(4.2g、14.40mmol)のEA(32mL)、HO(16mL)およびEtOH(144mL)中溶液に、Fe粉(5.5g、93.99mmol)および塩化アンモニア(793.96mg、13.08mmol)を加えた。混合物を60℃で48時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。ケーキをメタノール(30mL×3)で洗浄し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1から10/1v/v)で精製して、6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-アミン塩酸塩を黄色の固体として得た(4.5g、収率100%)。LC-MS(ESI)m/z:193[M+H]
【0442】
代替合成方法:
【0443】
【化14】
【0444】
ステップ1:トリエチルアミン(13.38g、132.27mmol、18.44mL)、2-(3-メトキシフェニル)エタンアミン(10g、66.13mmol)およびDMAP(807.96mg、6.61mmol)のDCM(100mL)中溶液に、0℃でBocO(15.88g、72.75mmol、16.70mL)をゆっくり加えた。次いで混合物を室温で16時間撹拌し、氷水(200mL)で希釈し、EtOAc(3×200mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで脱水し、濾過し、真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=10/1)で精製して、tert-ブチル(3-メトキシフェネチル)カルバメート(14.6g、収率79.06%、純度90%)を無色液体として得た。LC-MS(ESI)m/z:196[M+H-56]
【0445】
ステップ2:tert-ブチル(3-メトキシフェネチル)カルバメート(7g、27.85mmol)および2-クロロピリジン(4.74g、41.78mmol、3.92mL)のCHCl(50mL)中溶液に、-78℃でTfO(8.64g、30.64mmol、5.15mL)のCHCl(5mL)中溶液を加えた。20分後、BH・EtO(19.77g、139.26mmol)を上記溶液に滴下添加した。次いで反応混合物を室温に加温し、2時間撹拌し、飽和NaHCO溶液を用いて注意深くクエンチした。得られた混合物をCHCl(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで脱水し、濾過し、真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル/メタノール=5/1/0から10/10/1)で精製して、6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン(3.4g、収率68.89%)を灰白色の固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:178[M+H]
【0446】
ステップ3:6-メトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン(3.8g、21.44mmol、9.62mL)の濃HSO(50mL)中溶液に、-20℃でHNO(2.16g、22.29mmol、純度65%)を滴下添加した。混合物を-20℃~-25℃で3時間撹拌し、氷水(300mL)中に注ぎ入れた。水性層をジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を真空で濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル/メタノール=10/1/0~10/10/1)で精製して、6-メトキシ-7-ニトロ-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン(2.02g、収率40.78%)を得た。LC-MS(ESI)m/z:223[M+H]
【0447】
ステップ4:6-メトキシ-7-ニトロ-3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン(2.02g、9.09mmol)のTHF(200mL)中溶液に、1M BH/THF(45.46mmol、45.5mL)を加えた。混合物を還流下で20時間撹拌し、メタノール(30mL)を用いて注意深くクエンチした。得られた溶液を真空で濃縮した。残渣を2N HCl(50mL)中80℃で3時間加熱し、冷却し、水酸化アンモニウム水溶液で塩基性化し、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮して、6-メトキシ-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1.89g、収率100.00%)を得た。LC-MS(ESI)m/z:209[M+H]
【0448】
ステップ5:6-メトキシ-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1.89g、9.08mmol、9.62mL)のメタノール(30mL)中溶液に、室温でホルムアルデヒド(1.64g、54.46mmol、1.51mL)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌し、0℃に冷却した。次いでNaBH(1.03g、27.23mmol)を上記混合物に一部ずつ加えた。得られた混合物を室温で3時間撹拌し、氷水(10mL)を用いてクエンチし、DCM(20mL×5)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1、v/v)で精製して、6-メトキシ-2-メチル-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1.4g、収率69.40%)を黄色の油状物として得た。LC-MS(ESI)m/z:223[M+H]
【0449】
ステップ6:6-メトキシ-2-メチル-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1.3g、5.85mmol)のEtOAc(2mL)、HO(1mL)およびEtOH(10mL)中溶液に、Fe(2.19g、39.19mmol)および塩化アンモニア(284.74mg、5.32mmol)を加えた。混合物を60℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。ケーキをメタノール(30mL×3)で洗浄し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1から10/1v/v)で精製して、6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-アミン塩酸塩を黄色の固体として得た(0.85g、収率75.6%)。LC-MS(ESI)m/z:193[M+H]
【0450】
中間体3
【0451】
【化15】
【0452】
6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-アミン
【0453】
【化16】
【0454】
ステップ1:6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-イソキノリン-1-オン(20.0g、121.09mmol)のHSO(160mL)中混合物を-5℃に冷却し、硝酸カリウム(12.85g、127.15mmol)を少しずつ加えた。得られた混合物を同じ温度で4時間撹拌し、氷水中に注ぎ入れた。固体を濾過により収集し、水で洗浄し、真空で乾燥して、6-フルオロ-7-ニトロ-3,4-ジヒドロ-2H-イソキノリン-1-オン(25.2g、119.91mmol、収率99.0%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.46 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.33 (d, J = 27.5 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 11.8 Hz, 1H), 3.43 (td, J = 6.6, 2.8 Hz, 2H), 3.04 (t, J = 6.5 Hz, 2H).LCMS(ESI)[(M+H)]:211。
【0455】
ステップ2:6-フルオロ-7-ニトロ-3,4-ジヒドロ-2H-イソキノリン-1-オン(25.2g、119.91mmol)に1Mボランテトラヒドロフラン(599.54mmol、600mL)を加えた。混合物を還流下で20時間撹拌し、室温に冷却し、メタノール(150mL)を用いて注意深くクエンチした。得られた溶液を真空で濃縮した。残渣を2N HCl水溶液(500mL)中80℃で3時間撹拌し、室温に冷却し、水酸化アンモニウム溶液でpH8~9に塩基性化し、ジクロロメタン(500mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮して、6-フルオロ-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(22.3g、113.67mmol、収率94.8%)を黄色固体として得た。LCMS(ESI)[(M+H)]:197。
【0456】
ステップ3:6-フルオロ-7-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(22.3g、113.67mmol)のDCM(500mL)中溶液にホルムアルデヒド(20.48g、682.03mmol)を室温で加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、0℃に冷却した。この混合物をトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(96.37g、454.69mmol)を一部ずつ加えた。得られた混合物を室温で36時間撹拌し、氷水(400mL)を用いてクエンチし、DCM(600mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1 v/v)で精製して、6-フルオロ-2-メチル-7-ニトロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン(21.3g、101.33mmol、収率89.1%)を黄色油状物として得た。LCMS(ESI)[(M+H)]:211。
【0457】
ステップ4:6-フルオロ-2-メチル-7-ニトロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン(21.3g、101.33mmol)のEtOH(213mL)およびHO(40mL)中溶液に、塩化アンモニウム(37.22g、709.31mmol)および鉄粉末(56.59g、1.01mol、7.20mL)を加えた。混合物を60℃で3時間撹拌し、室温に冷却し、濾過した。固体ケーキをメタノール(100mL×2)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1~10/1 v/v)で精製して、6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-アミン(17.3g、95.99mmol、収率94.7%)を黄色固体として得た。LCMS(ESI)[(M+H)]:181。
【0458】
実施例1
【0459】
【化17】
【0460】
2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸
ステップ1:中間体1(67mg、0.248mmol)のn-BuOH(3mL)中混合物に2,4,5-トリクロロピリミジン(45.5mg、0.248mmol)およびDIPEA(96.19mg、0.744mmol)をゆっくり加えた。混合物を100℃で16時間撹拌し、氷冷水(20mL)を用いてクエンチし、EA(30mL×3)で抽出した。有機相をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/PE=0から100%)で精製して、メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(80mg、収率83.3%)を黄色固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:352[M+H]
【0461】
ステップ2:メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(80mg、0.227mmol)のi-PrOH(5mL)中混合物に、中間体2(51.5mg、0.227mmol)およびTsOH・HO(43.2mg、0.227mmol)をゆっくり加えた。混合物を100℃で16時間撹拌し、飽和NaHCO水溶液(10mL)を用いてクエンチし、DCM/MeOH(v/v=10/1、30mL×3)で抽出した。有機相をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=0から15%)で精製して、メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(70mg、収率42.5%)を黄色固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:508[M+H]1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.26 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.30 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.98 (s, 1H), 6.74 (s, 1H), 4.38 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.05 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.50 (s, 3H), 3.27 (s, 2H), 2.78 (dd, J = 10.3, 4.8 Hz, 3H), 2.68 (s, 1H), 2.55 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 2.30 (s, 3H), 1.36 (s, 3H).
ステップ3:メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(70mg、0.096mmol)およびLiOH水溶液(2N、1mL)のTHF(5mL)中混合物を、室温で16時間撹拌し、ギ酸でpH約5に調整し、DCM(30mL×3)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣を分取HPLC(MeCN/10mM NHHCO、0.025%NH・HO)により精製して、2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸(23.0mg、収率46.2%)を白色の固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:494[M+H]1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.25 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.29 (dd, J = 17.2, 7.6 Hz, 2H), 7.11 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 4.42 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.02 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.30 (s, 2H), 2.78 (s, 2H), 2.69 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 2.58 (d, J = 6.1 Hz, 3H), 2.32 (s, 3H), 1.34 (s, 3H).
実施例2および3
【0462】
【化18】
【0463】
(R)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸および(S)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸
方法1:
ステップ1:メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(157mg)をSFCキラル分離して、(R)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートおよび(S)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(67mg、63mg)を各々得た。立体化学は完全には決定されなかった。
【0464】
成分はピーク1に対応する:(R)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートまたは(S)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート。
LC-MS(ESI)m/z:508[M+H]。キラル-HPLC保持時間:1.829分;ee値:98.3%。
【0465】
成分はピーク1に対応する:(S)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートまたは(R)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート。
LC-MS(ESI)m/z:508[M+H]。キラルHPLC保持時間:3.427分;ee値:>99%。
【0466】
SFC分離条件:
装置:SFC-80(Thar、Waters)
カラム:AD-H 20250mm、10μm(Daicel)
カラム温度:35℃
移動相:CO/EtOH(0.2%メタノール/アンモニア)=50/50
流速:80g/分
逆圧:100bar
検出波長:214nm
サイクル時間:6.9分
ステップ2:(R)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートおよび(S)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートを、実施例1のステップ3と同様の条件下で各々加水分解して、(R)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸および(S)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸(各々17.6mg、33.8mg)を得た。
【0467】
実施例2:((R)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸または(S)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸)は、方法1のステップ1におけるSFC分離のピーク1に由来する生成物に対応する。
【0468】
LC-MS(ESI)m/z:494[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.25 (s, 1H), 8.00 (s, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.30 (dd, J = 13.7, 7.7 Hz, 2H), 7.11 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.97 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 4.42 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.02 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.30 (s, 2H), 2.78 (s, 2H), 2.69 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 2.62-2.54 (m, 3H), 2.32 (s, 3H), 1.34 (s, 3H).
キラルHPLC保持時間:1.384分;ee値:>99%。
【0469】
実施例3:((S)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸または(R)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸)は、方法1のステップ1におけるSFC分離のピーク2に由来する生成物に対応する。
【0470】
LC-MS(ESI)m/z:494[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.25 (s, 1H), 8.00 (s, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.29 (dd, J = 13.6, 7.4 Hz, 2H), 7.10 (t, J = 7.1 Hz, 1H), 6.97 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 4.41 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 4.02 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.29 (s, 2H), 2.77 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.69 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 2.57 (dd, J = 13.1, 7.1 Hz, 3H), 2.30 (d, J = 11.1 Hz, 3H), 1.34 (s, 2H).
キラルHPLC保持時間:1.132分;ee値:>99%。
【0471】
方法2:
ステップ1:メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートをSFCキラル分離して、(R)-メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートおよび(S)-メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートを得た。
【0472】
成分はピーク1に対応する:LC-MS(ESI)m/z:352[M+H]。キラル-HPLC保持時間:1.191分(ピーク1);ee値:>99%。
成分はピーク2に対応する:LC-MS(ESI)m/z:352[M+H]。キラル-HPLC保持時間:1.519分(ピーク2);ee値:>99%。
【0473】
SFC分離条件:
装置:SFC-80(Thar、Waters)
カラム:AD-H 20250mm、10μm(Daicel)
カラム温度:35℃
移動相:CO/イソプロパノール(0.2%メタノール/アンモニア)=87/13
流速:80g/分
逆圧:100bar
検出波長:214nm
サイクル時間:2.8分
(R)-メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートおよび(S)-メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートを得るためのメチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートのSFCキラル分離の追加の大きなバッチを、同様または同一の条件下で行った。
(ステップ2および3の代表例としての1つの立体異性体)
ステップ2:中間体2(1.36g、5.96mmol)、(S)-メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートまたは(R)-メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(2.1g、5.96mmol、方法2のステップ1のSFC分離のピーク2に由来した)、およびTsOH・HO(1.13g、5.96mmol)のt-ブタノール(25mL)中混合物を100℃で12時間撹拌し、室温で冷却し、飽和aNaHCO水溶液(10mL)中に注ぎ入れ、EA(30mL×3)で抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20:1)で精製して、(S)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートまたは(R)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(1.8g、収率56.3%)を明黄色固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:508[M+H]
【0474】
ステップ3:水酸化リチウム水和物(264mg、6.3mmol)の水(5mL)中溶液および(S)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートまたは(R)-メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(1.6g、3.15mmol)のMeOH(5mL)中混合物を室温で16時間撹拌し、酢酸でpH約3に酸性化した。得られた混合物を分取HPLC(MeCN/10mM NHHCO)で精製して、実施例3:((S)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸または(R)-2-(1-(5-クロロ-2-((6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸)(839.3mg、収率53.9%)を淡黄色固体として得、これは、方法2のステップ1のSFC分離のピーク2に由来した。LC-MS(ESI)m/z:494[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.30 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 7.63 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.16 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.02 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 4.48 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 4.08 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 2.83 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.74 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 2.66-2.59 (m, 3H), 2.37 (s, 3H), 1.40 (s, 3H).
キラルHPLC保持時間:1.132分;ee値:>99%。
【0475】
実施例4
【0476】
【化19】
【0477】
2-(1-(5-クロロ-2-((6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸
ステップ1:メチル2-(1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテート(195.4mg、0.555mmol)、中間体3(100mg、0.555mmol)およびTsOH・HO(105.5mg、0.555mmol)のi-PrOH(4mL)中溶液を、120℃で16時間撹拌し、室温に冷却し、飽和NaHCO水溶液でpH約8に中和した。混合物をDCM/MeOH(v/v、10/1、20mL×3)で抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1)により精製して、メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートおよびイソプロピル2-(1-(5-クロロ-2-((6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートの混合物(440mg)を薄黄色の固体として得、これを更には精製せずに次のステップに使用した。LC-MS(ESI)m/z:496(メチルエステル)、524(イソプロピルエステル)[M+H]
【0478】
ステップ3:メチル2-(1-(5-クロロ-2-((6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートおよびイソプロピル2-(1-(5-クロロ-2-((6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)アセテートの混合物(220mg)ならびにLiOH水溶液(2N、4mL)のTHF(4mL)中混合物を、室温で5時間および50℃で16時間撹拌し、ギ酸でpH約5に調整し、DCM/MeOH(10/1、20mL×3)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣を分取HPLC(MeCN/10mM NHHCO)により精製して、2-(1-(5-クロロ-2-((6-フルオロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-3-メチルインドリン-3-イル)酢酸(26.5mg、収率12.4%)を白色の固体として得た。LC-MS(ESI)m/z:482[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.93 (s, 1H), 8.22 (s, 1H), 7.35-7.24 (m, 3H), 7.07-6.92 (m, 3H), 4.41 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.03 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.36 (s, 2H), 2.78 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 2.68 (d, J = 15.5 Hz, 1H), 2.60-2.54 (m, 3H), 2.32 (s, 3H), 1.33 (s, 3H).
実施例5および6
【0479】
【化20】
【0480】
実施例2および3の方法2が続いた。
ステップ1:実施例2および3の方法2のステップ1に記載される((R)-メチル2-[1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチル-インドリン-3-イル]アセテートまたは(S)-メチル2-[1-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-3-メチル-インドリン-3-イル]アセテート)(27.8g、78.93mmol)の第1の溶離液(ピーク1)のn-ブタノール(無水、99.9%、600mL)中溶液に、6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-アミン(中間体3、17.07g、94.71mmol)および4-メチルベンゼンスルホン酸(14.95g、86.82mmol)を加えた。混合物を120℃で20時間撹拌した。LCMSで判断して反応の完了後、反応混合物を室温に冷却し、飽和NaHCO水溶液(100mL)を用いてクエンチし、DCM(600mL×3)で抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=50/1から10/1 v/v)で精製して、(R)-メチル2-[1-[5-クロロ-2-[(6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル]-3-メチル-インドリン-3-イル]アセテートまたは(S)-メチル2-[1-[5-クロロ-2-[(6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル]-3-メチル-インドリン-3-イル]アセテート(22.6g、45.57mmol、収率57.7%、ブチルエステルと混合)を黄色固体として得た。LCMS(ESI)[(M+H)]:496。
【0481】
ステップ2:(R)-メチル2-[1-[5-クロロ-2-[(6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル]-3-メチル-インドリン-3-イル]アセテートまたは(S)-メチル2-[1-[5-クロロ-2-[(6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル]-3-メチル-インドリン-3-イル]アセテート(22.6g、45.57mmol)および水酸化リチウム水溶液(5.46g、227.83mmol)(HO中1N)のTHF(200mL)およびMeOH(100mL)中混合物を、LCMSにより示される通り反応が完了するまで25℃で6時間撹拌した。pHを0℃で、FAで5~6に調節し、DCM(500mL×3)中10%MeOHで抽出した。有機相を無水NaSOで乾燥し、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣を(20g、純度80~90%)を分取HPLC(NHHCO)で精製して、実施例5((R)-2-[1-[5-クロロ-2-[(6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル]-3-メチル-インドリン-3-イル]酢酸または(S)-2-[1-[5-クロロ-2-[(6-フルオロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-7-イル)アミノ]ピリミジン-4-イル]-3-メチル-インドリン-3-イル]酢酸)(9.6g、19.92mmol、収率43.7%)を明黄色固体として得た。LCMS(ESI)[(M+H)]:482。旋光度:-7.24(溶媒:CAN中1%DEA:水=50:50;濃度:0.3g/100mL;温度:25℃)。キラル-HPLC保持時間:13.962分(カラム条件:ColumnIG(4.6×250mm 5μm);移動相:n-ヘキサン(0.1%DEA):EtOH(0.1%DEA)=80:20;波長:225nm;流量:1.0ml/分;温度:40℃)。実施例5は、より強力な生成物をもたらした実施例2および3の方法2におけるステップ1のSFC分離のピーク1に由来した生成物に対応する。
【国際調査報告】