(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】供給原料中の不純物を除去するための多孔質材料
(51)【国際特許分類】
B01J 20/08 20060101AFI20230731BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230731BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230731BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20230731BHJP
B01J 23/28 20060101ALI20230731BHJP
C10G 3/00 20060101ALI20230731BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20230731BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B01J20/08 C
B01D15/00 J
B01J20/30
B01J23/883 Z
B01J23/28 M
C10G3/00 Z
C10G1/10
C10G45/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500012
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2021068656
(87)【国際公開番号】W WO2022008508
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイセ・クレスチャン・フレズレク
(72)【発明者】
【氏名】ルテキ・ミカル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン・フランク・バートニク
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
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4D017AA05
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(57)【要約】
本発明は、アルミナを含む多孔質材料に関し、前記アルミナが、アルファ-アルミナを含み、前記多孔質材料は、Co、Mo、Ni、W、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の金属を含み、前記多孔質材料は、1~110m2/gのBET表面積を有し、水銀圧入ポロシメトリーによって測定された0.50~0.80ml/gの全細孔容積を有し、全細孔容積の少なくとも30vol%が、細孔半径≧400Åの細孔、好適には細孔半径≧500Å(50nm)の細孔、例えば細孔半径が最大5000Åの細孔である細孔サイズ分布(PSD)を有する。本発明はまた、上記多孔質材料を含むガード床と上記供給原料を接触させて再生可能な供給物などの供給原料からリン(P)等の不純物を除去する方法に関する。本発明はさらに、多孔質材料を含む水素化処理システムのためのガード床、多孔質材料を含むガード床と少なくとも1つの水素化処理触媒を含む下流水素化処理セクションとを含む水素化処理システム、ならびに水素化処理方法におけるリンガードとしての多孔質材料の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを含む多孔質材料であって、
-前記アルミナは、アルファ-アルミナを含み、
-前記多孔質材料は、Co、Mo、Ni、W、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の金属を含み、
-前記多孔質材料は、1~110m
2/gのBET表面積を有し、
ここで
-前記多孔質材料は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定された0.50~0.80ml/g、例えば、0.50~0.75ml/g、または0.55~0.70ml/g、または0.60~0.70ml/gの全細孔容積を有し、
そして
-前記多孔質材料は、全細孔容積の少なくとも30vol%、例えば、少なくとも40vol%、少なくとも50vol%、または少なくとも60vol%が、細孔半径≧400Åの細孔、好適には細孔半径≧500Åの細孔、例えば細孔半径が最大5000Åの細孔にある細孔サイズ分布(PSD)を有する、
前記多孔質材料。
【請求項2】
全細孔容積の最大60vol%、例えば全細孔容積の最大40vol%は、細孔半径400Å未満の細孔、例えば、細孔半径が40Åまで、または80Åまでの細孔にある、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項3】
アルファ-アルミナの含有量が50~100質量%である、請求項1~2のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項4】
アルミナが、さらにシータ-アルミナおよび任意にガンマ-アルミナを含む、請求項1~2のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項5】
1つ以上の金属の含有量が0.25~20質量%である、請求項1~4のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項6】
Al-ボレート、カルシウムアルミネート、ケイ素アルミネート、およびそれらの組み合わせから選択される化合物をさらに含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項7】
1つ以上の金属がMoを含み、その含有量が0.5~15質量%、例えば0.5~10質量%、または0.5~5質量%、または0.5~3質量%、または0.5~1.5質量%である、請求項1~6のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項8】
Ni、CoおよびWの少なくとも1つを0.1~5質量%さらに含む、請求項7に記載の多孔質材料。
【請求項9】
Niを0.05~0.5質量%さらに含有し、任意に及びCo、Wから選ばれる1つ以上の金属を含有しない、すなわちCoおよび/またはWを含有しない、請求項7に記載の多孔質材料。
【請求項10】
BET表面積が1~70m
2/g、例えば1~60m
2/g、または1~30m
2/g、例えば、10~30m
2/g、15~25m
2/gである、請求項1~9のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項11】
多孔質材料が、三葉形、四葉形、五葉形、円筒形、球形、中空、例えば、中空リングまたは中空シリンダー、およびそれらの組み合わせから選択される形状を有する押出または打錠ペレットである、請求項1~10のいずれか1つに記載の多孔質材料。
【請求項12】
供給原料から1つ以上の不純物を除去する方法であって、前記供給原料を請求項1~11のいずれか1つに記載の多孔質材料を含むガード床と接触させ、それによって精製された供給原料を提供するステップを含む、前記方法。
【請求項13】
前記1つ以上の不純物が、バナジウム含有不純物、ケイ素含有不純物、ハロゲン化物含有不純物、鉄含有不純物、リン含有不純物、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
高温、例えば、100~400℃で、任意に還元剤、例えば、水素の存在下で実施される、請求項12~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
供給原料は、以下の通りである、請求項12~14のいずれか1つに記載の方法;
i)再生可能な起源の原料、例えば、植物、藻類、動物、魚、植物油精製物、家庭廃棄物、プラスチックに富む廃棄物、産業有機廃棄物、例えば、トール油もしくは黒液に由来する原料から得られる再生可能な資源か、または、トリグリセリド、脂肪酸、樹脂酸、ケトン、アルデヒドまたはアルコールからなる群から選択される1つ以上の含酸素化合物から由来する供給原料から得られる再生可能な資源、ここで前記含酸素化合物は、生物学的資源、ガス化プロセス、熱分解プロセス、フィッシャー-トロプシュ合成もしくはメタノールベースの合成の1つ以上に由来し;あるいは、
ii)化石燃料、例えば、ディーゼル、灯油、ナフサ、真空ガス油(VGO)、使用済み潤滑油、またはそれらの組み合わせなどに由来する供給材料;
または
iii)i)による再生可能資源とii)による化石燃料に由来する供給原料との組み合わせに由来する供給原料。
【請求項16】
再生可能資源に由来する供給原料の割合が5~60質量%、例えば10または50質量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の不純物がリン(P)含有不純物であり、前記供給原料は0.5~1000ppmのPを含有する、請求項13~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
精製された供給原料が、その後、水素化処理触媒の存在下で水素化処理段階において処理される、請求項12~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
ガード床が請求項1~11のいずれか1つに記載の多孔質材料を含む、水素化処理システムのためのガード床。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか1つに記載の多孔質材料を含むガード床;および、
前記ガード床の下流に配置された、少なくとも1つの水素化処理触媒を含む水素化処理セクション、
を含む、供給原料を水素化処理するための水素化処理システム。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか1つに記載の多孔質材料の、水素化処理工程におけるリンのガードとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、アルミナからなる多孔質材料、特に、供給原料中の不純物を除去するための多孔質材料に関する。多孔質材料は、アルファ-アルミナおよび任意にシータ-アルミナを含むアルミナを含む。多孔質材料は、また、Co、Mo、Ni、Wおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの金属を含み、1~110m2/gのBET表面積を有する。多孔質材料は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定され、0.50~0.80ml/g、例えば0.50~0.75ml/g、または0.55~0.70ml/g、または0.60~0.70ml/gの全細孔容積を有し、そして、全細孔容積の少なくとも30体積%、例えば少なくとも40体積%、少なくとも50体積%、または少なくとも60体積%が、細孔半径≧400Å(40nm)を有する細孔、好適には、細孔半径≧500Å(50nm)を有する細孔、例えば細孔半径5000Å(500nm)までの細孔にある細孔サイズ分布(PSD)を有する。本発明はまた、再生可能な供給物などの不純物を含む供給原料から1つ以上の不純物、例えばリン(P)を除去する工程であって、上記供給原料を上記多孔質材料からなるガード床(ガードベッド)に接触させることによる工程に関する。本発明はさらに、前記多孔質材料を含む水素化処理システムのためのガード床に関し、水素化処理システムは前記多孔質材料を含むガード床および少なくとも1つの水素化処理触媒を含む下流の水素化処理セクション(水素化処理ステップ)を含み、ならびに、本発明は水素化処理工程における多孔質ガードとしての多孔質材料の使用に関する。本発明はさらに、金属を含むことのない前記多孔質材料、および水素化処理工程におけるリンガードとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
再生可能な燃料は、動物性脂肪および植物性油だけでなく、トール油、熱分解油、および他の非食用化合物を含む広範な様々な資源から製造され得る。再生可能な有機材料から得られる供給原料を既存の自動車エンジン、航空タービン、海洋エンジンまたは他のエンジンで使用されることができ、かつ、既存の燃料インフラを使用して流通させる前に、その材料を石油由来の輸送燃料に存在するものと同様の炭化水素に変換することが望ましい。この目的のための1つのよく確立された方法は、ガソリン、ジェット燃料またはディーゼル沸点範囲における植物油の通常のパラフィンへの変換であり、これは水素化処理工程を用いることによって行われる。
【0003】
水素化処理工程においては、再生可能な有機物を触媒反応器内で高温高圧で水素と反応させる。
【0004】
再生可能な供給原料のような供給原料の特定の問題は、リン含有種またはケイ素含有種のような不純物を含むことである。リン含有種は、種子油に由来するレシチンなどのリン脂質の形態をとることがある。廃潤滑油には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)なども含まれることがあり、このような潤滑油では耐摩耗添加剤として作用する。リン(P)は従来の水素化処理用の触媒を速やかに不活性化し、サイクルの長さを劇的に短縮する。再生可能な供給原料を処理する精製装置では、化石燃料を使用する精製プロセスと比較して、水素化処理触媒を保護するために多くの材料を装填することを余儀なくされる。このユニットでは、Pを10~20ppmから1~2ppmに下げるために、洗浄剤および/または吸着剤による原料の前処理を行うことが多いが、1~2ppmであってもガード材料が必要となる。
【0005】
したがって、供給原料として再生可能物のみ使用する場合でも、再生可能物と化石燃料の混合物(共加工)を使用する場合でも、再生可能物を処理する精製装置においては、圧力損失とバルク触媒の不活性化を防ぐために、特にP捕捉のためのより良い保護材の必要性を一様に示されている。したがって、バルク触媒に到達する前に、不純物、特にリン含有種を低減し、可能であれば除去することが重要である。
【0006】
触媒プロセスのための「ガード床」という概念が知られている。例えば、US5879642から。上流の触媒床は、ガード触媒床の下(下流)に位置する1つまたは複数の触媒床の寿命を延ばすために、炭化水素供給流から不純物の主要な割合を除去するためのガード触媒床として機能する。
【0007】
US9447334(US2011/138680)は、供給物の前処理を伴う再生可能な資源由来の供給物を変換する工程を開示し、それによって、水素化処理ステップの上流に、水素化処理条件下で不溶性のリンなどの異種元素を除去するための強力な前処理を行うステップが実施される。このステップは、高い表面積、例えば140m2/gおよび高い全細孔容積、例えば1.2ml/gを有する、触媒材料を含まない(触媒金属を含まない)吸着剤の使用を含む。
【0008】
US2004/077737は、アルミナ上に支持された3~35質量%のコバルトを含み、アルミナ支持体は<50m2/gの表面積を有する、および/または、少なくとも10%のアルファ-アルミナである、フィッシャー・トロプシュ合成に使用するための触媒を開示している。コバルト(Co)は、好適には金属プロモーターであるReまたはPtと組み合わされる。特にCoがReまたはPtでプロモートされる場合、触媒中のCoの含有量は5質量%以上である。また、Coのみを触媒に用いる場合、その含有量は12質量%以上である。
【0009】
US4510092は、表面積が<10m2/g、マイクロ細孔容積が<0.1ml/g、マクロ細孔容積が<0.6ml/g、好ましくは<0.3ml/gのアルファ-アルミナ上のニッケル触媒上で脂肪材料、特に液体植物油を連続して水素化する方法について開示する。マイクロ細孔容積とは、サイズが約117Å未満の細孔の総体積を意味し、マクロ細孔容積とは、サイズが約117Åより大きい細孔の総体積を意味する。ニッケル含有量は1~25%と高い。
【0010】
US4587012は、80%超のα-アルミナを含む触媒を用いて、金属不純物であるニッケル、バナジウムおよび鉄を除去するための炭化水素系流体の改良工程を開示している。この触媒材料は、約500ml/kg(0.5ml/g)の細孔容積(PV)しかなく、わずか10%のマクロ細孔を有し、すなわち細孔半径>500Å(直径>1000Å)の細孔に存在するPVが10%以下である。
【0011】
Pの捕捉に使用される従来および市販のガード床材料は、水素化処理活性のために金属含有量の少ない高細孔容積ガンマ-アルミナキャリアで作られた触媒の形態である。
【0012】
多くの場合、ガード材料における金属、特にMoまたはNiのような水素化処理活性を有する金属の使用は、望ましくないコーキングをもたらし、これはガード床の目詰まりに通じ、それによって不都合な圧力降下となる。また、高活性金属や昇圧による高すぎる活性は、触媒周辺の水素飢餓や発熱による高温のため、コーキングを引き起こす。
【0013】
この分野における最近の進歩にもかかわらず、改良された材料、特にPのような不純物の除去のためのガード床に使用するための多孔質材料、特に100%再生可能物、すなわち100%再生可能な供給物を含む再生可能物を多く含む供給原料にも需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】US5879642
【特許文献2】US9447334(US2011/138680)
【特許文献3】US2004/077737
【特許文献4】US4510092
【特許文献5】US4587012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の概要
本発明の課題は、炭化水素供給原料中の不純物、特にPを捕捉することができ、操業中のコーキングを最小化する、水素化処理活性を有する1つ以上の金属を含む材料を提供することである。
【0016】
本発明の別の課題は、従来の材料よりも高いP浸透性を有し、それによってP捕捉が改善された材料を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる課題は、再生可能な資源に由来する供給原料、または再生可能な資源と化石燃料とを組み合わせた供給原料中の不純物、特にPを捕捉するための高い能力を有する材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの課題および他の課題は、本発明によって解決される。
【0019】
従って、第1の態様において、本発明は、多孔質材料、特に、供給原料から1つ以上の不純物を除去するための多孔質材料であって、アルミナを含む、多孔質材料であり、
-前記アルミナが、アルファ-アルミナを含み、
-前記多孔質材料は、Co、Mo、Ni、W、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の金属を含み、
-前記多孔質材料は、1~110m2/gのBET表面積を有し
ここで
-前記多孔質材料は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定された0.50~0.80ml/g、例えば、0.50~0.750ml/g、または0.55~0.70ml/g、または0.60~0.7ml/g(600~700ml/kg)の全細孔容積を有し、
そして
-多孔質材料は、全細孔容積の少なくとも30vol%、例えば、少なくとも40vol%、少なくとも50vol%、または少なくとも60vol%が、細孔半径≧400Å(40nm)の細孔、好適には細孔半径≧500Å(50nm)の細孔、例えば細孔半径が最大5000Å(500nm)の細孔にある細孔サイズ分布(PSD)を有する。
【0020】
本発明の第1の態様による実施形態では、全細孔容積の最大60vol%(体積%)、例えば全細孔容積の最大40vol%は、細孔半径400Å未満の細孔中、例えば、細孔半径が40Åまで、または80Åまでの細孔中に存在する。
【0021】
水銀圧入ポロシメトリーは、ASTM D4284に従って実施される。
【0022】
細孔半径が400Åもしくは400Å超(400Å以上)、または500Åもしくは500Å超(500Å以上)のより大きな細孔は、P捕捉のために役立つが、細孔半径が400Å未満のより小さな細孔は、水素化処理活性を提供するために多孔質材料中の1つ以上の金属をより良く使用することを可能にする。多孔質材料は、例えば、単峰性細孔系として幅広いピークを示すこともあれば、二峰性細孔系または三峰性細孔系を示すことさえあり、この場合、特により小さい細孔が多孔質材料に水素化処理活性を与える可能性を付加する。
【0023】
BET-表面積は、ASTM D4567-19、すなわちBET式による表面積の一点測定に従って測定される。
【0024】
本発明の第1の態様による実施形態において、アルファ-アルミナ(α-アルミナ)の含有量は、XRDによって測定され、50~100質量%、例えば、65~95質量%、または60~80質量%などである。
【0025】
本発明の第1の態様による実施形態では、アルミナは、シータ-アルミナ(θ-アルミナ)および任意選択的にガンマ-アルミナ(γ-アルミナ)をさらに含む。
【0026】
本発明の第1の態様による実施形態において、θ-アルミナの含有量は、XRDによって測定され、0~50質量%、例えば、35~45質量%、または30~40質量%などである。
【0027】
本発明の第1の態様による実施形態において、ガンマ-アルミナの含有量は、XRDによって測定され、0~10質量%、例えば、5質量%以下、例えば1質量%である。したがって、特定の実施形態において、ガンマ-アルミナの含有量は0質量%であり、すなわち、多孔質材料はガンマ-アルミナを含まない。
【0028】
本発明の第1の態様による実施形態において、1つ以上の金属の含有量は、0.25~20質量%、例えば0.25~15質量%、0.25~10質量%、または0.25~5質量%である。
【0029】
上記の特徴の組合せも包含される。したがって、第1の態様による実施形態において、XRDによって測定され、アルファ-アルミナの含有量は、50~100質量%であり、例えば、65~95質量%であり、シータ-アルミナの含有量は、0~50質量%であり、例えば、35~45質量%であり、そして、ガンマ-アルミナの含有量は、0~10質量%であり、例えば、5質量%であり、1つ以上の金属の含有量は、0.25~20質量%、例えば0.25~15質量%、0.25~10質量%、または0.25~5質量%である。
【0030】
XRD(X線回折)は、CuKα放射を使用してBragg-Brentanoモードで構成されたXPertPro装置で粉末X線回折パターンを収集し、TOPASソフトウェアを使用してRietveld(リートベルト)分析を行い、相組成を定量化する、標準XRD分析に従って実施される。
【0031】
あらゆる理論に束縛されることなく、従来の材料または触媒における例えば主にガンマ-アルミナ相に反して、多孔質材料の主要なアルミナ相としてアルファ-アルミナおよび任意にシータ-アルミナが形成されることにより、P-種に対する多孔質材料の表面反応性が劇的に低下すると考えられる。これにより、P種に対する反応性も低下し、Pが多孔質材料の表面にのみ捕捉されることはない。同時に、孔径が大きくなった多孔質材料は、供給物、特に再生可能な供給物をよりよく浸透させ、それによってP-種を浸透させることができるようになる。さらに、水素化処理活性を有する1つ以上の金属の使用によって、多孔質材料上でのコーキングが有意に少なくなることも見出されており、これもまた、いかなる理論にも拘束されないが、金属、例えばMoが残りの酸性サイトをブロックすること、または金属が存在する場合の多孔質材料の何らかの小さな水素化活性に起因すると考えられる。
【0032】
第1の態様による実施形態においては、多孔質材料は、Al-ボレート(ホウ酸塩)、例えば、Al5BO9、カルシウムアルミネート(アルミン酸カルシウム)、シリコンアルミネート(アルミン酸ケイ素)、およびそれらの組み合わせから選択される化合物をさらに含む。これらの化合物は、結晶の形態で存在してもよい。
【0033】
特定の実施形態では、XRDによって測定される、シータ、アルファおよびガンマ-アルミナ、並びにカルシウムアルミネートなどの結晶形態で存在する上記化合物の任意のものの合計は、100質量%に添加される。
【0034】
別の特定の実施形態では、多孔質材料は、前記化合物を含まない。したがって、XRDによって測定される、シータ、アルファおよびガンマアルミナの合計は、100質量%に添加される。
【0035】
多孔質材料の製造中、アルミナを含み、相当量、特にXRDによって測定される50質量%以上のガンマ-アルミナを有する出発(前駆)材料は、1050℃、または1050℃超の温度、例えば1100℃または1200℃または1300℃または1400℃で、空気中で1~10時間、例えば4、6または8時間;一例は1100℃で2時間焼成されて、それによってガンマ-アルミナがアルファ-アルミナとシータ-アルミナに変換される。他のアルミナ前駆体、例えば、ボエマイト(boehmite)もまた、例えばバインダーとして製造に使用されることができる。
【0036】
添加剤、例えば、ホウ酸(H3BO3)、カルシウム含有化合物、例えば硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、またはシリカ(SiO2)を、その調製中に材料、すなわち出発材料に加えることにより、焼成中に特にアルミナ相への焼結および/または変質をよりよく制御し、それによってより円滑かつ堅牢な転移を実現することができる。また、表面積と細孔サイズのより良い制御もそれによって達成される。したがって、添加剤は、多孔質材料の製造中に安定化剤として作用する。
【0037】
そのような添加剤が使用される場合、これらは次に、例えばSiO2として多孔質材料中に存在し、および/または、アルミナ中に、例えばAl-ボレート中、Ca-アルミネート中若しくはSi-アルミネートとしてに存在する。
【0038】
別の実施形態においては、アルミナを含む出発材料、例えばアルミナキャリアは、450~850℃、好ましくは450~750℃の温度で予備焼成された材料である。
【0039】
供給物を水素化処理のための主な下流触媒床と接触させる際に、コーキングおよび高い発熱を避けるために、ガード材料はある程度の(低いとはいえ)水素化処理活性を有するものである。供給物中の最も反応性の高い分子が変換され、それによって、ガム化を生じさせる可能性のある過度の温度上昇の危険性を低減する。したがって、本発明によってトレードオフが実現され:金属がないと材料にコーキングが発生し、金属活性が多すぎると高すぎる発熱のためにコーキングやガム化が発生する。低い金属含有量、例えば15質量%またはそれ未満のMo、10質量%またはそれ未満のMo、5質量%またはそれ未満のMo、であり、例えば、3質量%Mo、1質量%Mo、または0.5質量%Moなどのより低い、以下に述べるような対応範囲に好適には、これら二つの不活性化効果をバランスさせるには丁度良いと考慮される。さらに、供給物がバルク触媒に到達する前のいくらかの予備加熱も達成される。
【0040】
第1の態様による実施形態において、1つ以上の金属はMoを含み、その含有量は0.5~15質量%、例えば0.5~10質量%、または0.5~5質量%、または0.5~3質量%、例えば0.5~1.5質量%、または0.5~1質量%、例えば、0.7もしくは0.9質量%、または1~2質量%であり、任意に、Ni、Co、およびWの少なくとも1つを0.1~5質量%、例えば、0.1~3質量%、0.1~1質量%、0.1~0.5質量%、または0.1~0.2質量%含む。第1の態様による別の実施形態では、1つ以上の金属はMoを含み、その含有量は0.5~15質量%、例えば0.5~10質量%、または0.5~5質量%、または0.5~3質量%、例えば0.5~1.5質量%であり、例えば、0.7または0.9質量%であり、または1~2質量%であり、任意にさらに0.05~0.5質量%のNiを含み;任意にまた多孔質材料は、Co、Wから選択される1つまたは複数の金属を含まない、すなわち多孔質材料は、Coおよび/またはWを含有しない。
【0041】
特定の実施形態においては、少なくとも1つ以上の金属はMoである。別の特定の実施形態では、1つ以上の金属は、MoおよびNiである。したがって、多孔質材料は、Co、Wから選択される1つ以上の金属を含まない。例えば、多孔質材料は、0.5~1.5質量%のMo、例えば1質量%のMo、および0.1~0.2質量%のNiを含むことができる。多孔質材料の表面積が低いため、Moの負荷(Mo含有量)が低くなるにもかかわらず、プロモーター(促進剤)として例えばNiを添加することにより、低い金属含有量を補うことが可能である。さらに、本発明の多孔質材料の表面積が低いにもかかわらず、少量のモリブデン、例えば0.5~3質量%のMo、例えば約1質量%により、コークの形成が有意に低くなる結果となる。モリブデンの使用は、モリブデンが多孔質材料中に存在しない場合に関してP-捕捉が有意に増加するので、100%再生可能な供給原料で操業する場合に特に有利である。さらに、少量のニッケル例えば0.05~0.5質量%Ni、例えば約0.1質量%Niの存在は、コーク形成をさらに低減させる。
【0042】
本発明は、P捕捉を提供するためにいかなる金属も使用する必要はないが、Moの添加は、コーキングを著しく低減し、多孔質材料を含むユニットにおいて活性勾配を達成するという望ましい効果も可能にする。さらに、プロモーターとしてCoまたはNiを添加することは、活性を飛躍的に高めるので望ましいが、これは少なくとも1つの水素化処理触媒を含む下流の水素化処理セクションにおいて実際に有害な場合がある。より具体的には、再生可能な原料を処理する際の水素化処理/水素化脱酸素(HDO)選択性(収率損失)にとって実際に有害である可能性がある。HDOにおける再生可能な供給原料からの酸素除去が主にH2Oの除去によって進行することが望ましいが、約0.5質量%超の量の特にニッケルを有することは、望ましくない脱炭酸をもたらし、したがってHDO選択性を低下させる。
【0043】
水素化処理/HDOにおいて触媒的に活性な材料は、通常、活性金属(ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンなどの硫化卑金属だけでなく、白金、パラジウムなどの貴金属もまた可能である)および耐熱性支持体(アルミナ、シリカ、チタニア、またはそれらの組み合わせなど)から構成される。
【0044】
水素化処理条件は、250~400℃の範囲の温度、30~150bar(バール)の範囲の圧力、および0.1~2の範囲の液空間速度(LHSV)を含み、任意に、冷水素、供給物または生成物のクエンチによる中間冷却と一緒に行われる。
【0045】
第1の態様による実施形態において、BET表面積は、1~70m2/g、例えば1~60m2/g、または1~30m2/g、例えば10~30m2/g例えば15~25m2/g、または1~28m2/g、5~28m2/g、10~28m2/g、15~28m2/g、20~28m2/g、20~25m2/g、5~20m2/gまたはそれらの組合せである。特定の実施形態は、3~15m2/g例えば9~10m2/g;または25~30m2/g、40~45m2/g、または50~55m2/gである。
【0046】
第1の態様による実施形態では、少なくとも1つの金属は、酸化物または硫化物の形態である。
【0047】
第1の態様による実施形態において、多孔質材料は、押出ペレットまたは打錠ペレットであり、三葉形、四葉形、五葉形、円筒形、球形、中空リングまたは中空シリンダーなどの中空、およびそれらの組み合わせから選択される形状を有する。例えば
図4に示されるような四葉形状のペレットは、体積比に対する外表面積が改善されるため、特に有利である。
【0048】
第2の態様において、本発明は、供給原料から1つ以上の不純物を除去するための工程も包含し、前記工程は、前記供給原料を、先の実施形態のいずれか1つによる多孔質材料からなるガード床と接触させ、それによって精製された供給原料を提供するステップを含む。
【0049】
本発明の第2の態様による実施形態において、1つ以上の不純物は、バナジウム含有不純物、ケイ素含有不純物、ハロゲン化物含有不純物、鉄含有不純物、リン含有不純物、およびそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、1つ以上の不純物は、リン(P)-含有不純物である。
【0050】
本発明の第2の態様による実施形態では、工程は、100~400℃、例えば250~350℃などの高温で、任意選択的に水素などの還元剤の存在下で実施される。
【0051】
本発明の第2の態様による実施形態において、供給原料は、以下の通りである。
i)再生可能な起源の原料、例えば、植物、藻類、動物、魚、植物油精製物、家庭廃棄物、プラスチックに富む廃棄物、産業有機廃棄物、例えば、トール油または黒液から得られる再生可能な資源、または、トリグリセリド、脂肪酸、樹脂酸、ケトン、アルデヒドまたはアルコールからなる群から選択される1つ以上の含酸素化合物から由来する供給原料であって、前記含酸素化合物が、生物学的資源、ガス化プロセス、熱分解プロセス、フィッシャー-トロプシュ合成またはメタノールベースの合成の1つ以上に由来し、また、含酸素化合物は、さらなる合成工程に由来することもある。これらの供給原料の中には、芳香族、特に熱分解プロセスからの生成物や、フライ油などの廃棄物を含むものもある。上記の供給原料の任意の組み合わせも想定される。
または、
ii)化石燃料、例えば、ディーゼル、灯油、ナフサ、減圧軽油(VGO)、使用済み潤滑油、またはそれらの組み合わせに由来する供給材料;
または
iii)i)による再生可能な資源とii)による化石燃料に由来する供給原料との組み合わせに由来する供給原料。
【0052】
本発明の文脈において、用語「再生可能な資源」および「再生可能な供給物」は、互換的に使用される。
【0053】
特定の実施形態において、再生可能な資源に由来する供給原料の割合は、5~60質量%、例えば、10または50質量%である。別の特定の実施形態では、再生可能な資源に由来する供給原料の割合は、60質量%より高く、例えば70~90質量%である。
【0054】
本発明の第2の態様による実施形態においては、1つ以上の不純物はリン(P)含有不純物であり、前記供給原料は0.5~1000ppmのPを含む。Pの含有量は供給原料によって大きく異なることがある。例えば、熱分解プロセスから由来する酸素化物に由来する油、例えば熱分解油では50~60ppmのP、または動物、特に動物脂肪に由来する供給原料では100~300ppm例えば200ppmのPである。
【0055】
本発明の第2の態様による実施形態においては、精製された供給原料は、その後、水素化処理触媒の存在下で水素化処理段階において処理される。特定の実施形態において、水素化処理段階は、任意の加熱/冷却を間に挟んで直接下流にある。別の特定の実施形態では、水素化処理触媒は、好ましくは、Co、Mo、Ni、Wおよびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの金属を含む。
【0056】
第3の態様において、本発明は、水素化処理システム(水素化処理装置)のためのガード床を含み、前記ガード床は、本発明の第1の態様による多孔質材料を含む。
【0057】
第4の態様において、本発明は、供給原料を水素化処理するための水素化処理システムを含み、前記水素化処理システムは、以下を備える;
本発明の第1の態様に係る多孔質材料を含むガード床;および
前記ガード床の下流に配置された、少なくとも1つの水素化処理触媒を含む水素化処理セクション。
【0058】
第5の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による多孔質材料を、水素化処理工程におけるリンのガードとして使用することも含む。
【0059】
第6の態様において、多孔質材料は金属を含まない、例えば、多孔質材料は、Co、Mo、Ni、W、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の金属を含んでいない。本発明は、P捕捉を提供するために、いかなる金属も使用する必要がない。従って、アルミナを含む多孔質材料も提供される。
-前記アルミナは、アルファ-アルミナを含み、
-前記多孔質材料は、Co、Mo、Ni、W、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の金属を含まない、
-前記多孔質材料は、1~110m2/gのBET表面積を有し、
ここで
-前記多孔質材料は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定された0.50~0.80ml/g、例えば、0.50~0.75ml/g、または0.55~0.70ml/g、または0.60~0.70ml/gの全細孔容積を有し
そして、
-前記多孔質材料は、全細孔容積の少なくとも30体積%、例えば少なくとも40体積%、少なくとも50体積%、または少なくとも60体積%が、細孔半径≧400Å(40nm)を有する細孔、好適には、細孔半径≧500Å(50nm)を有する細孔、例えば細孔半径5000Å(500nm)までの細孔にある細孔サイズ分布(PSD)を有する。
【0060】
本発明の第1の態様による実施形態のいずれも、本発明の第2、第3、第4、第5および第6の態様による実施形態のいずれかと共に使用することができ、またはその逆もまた可能である。また、Co、Mo、Ni、Wおよびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の金属の使用に関連する、第1から第5の態様による実施形態は、本発明の第6の態様と共に使用されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、本発明による多孔質材料の水銀圧入ポロシメトリーによる細孔サイズ分布(PSD)を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明による多孔質材料の水銀圧入ポロシメトリーによる細孔容積分布および全細孔容積を示す図である。
【
図3】
図3は、細孔半径が400Åより大きい細孔の体積%をX軸で示したものである。
【
図4】
図4は、先行技術(Pの低浸透性)および本発明(Pの深浸透性)によるサンプルにおけるP捕捉のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【実施例】
【0062】
詳細な説明
実施例
本発明による多孔質材料を、参照多孔質材料、すなわち3質量%のMoを含浸させた主としてガンマ-アルミナキャリアを有する従来および市販の精製触媒とともに、別々の区画にパックし、一定期間、通常は8~12ヶ月、水素化処理条件下で、50%再生可能な供給物および50%化石供給物、ならびに100%再生可能な供給物の混合物と接触させる。試験の前に、サンプルは、例えばアルミナ相を決定するためにXRDによって分析された。試験終了後、サンプルはキシレン抽出により洗浄され、真空乾燥され、金属/P捕捉(XRF、EN ISO 12677:2011による蛍光X線分析)、SEM、炭素および硫黄(C+S、LECO分析、ASTM E1915-13)およびBET-表面積(ASTM D4567-19)によって分析された。
【0063】
アルミナ相の測定には、XRDが使用される。従って、粉末X線回折パターンは、CuKアルファ放射を使用してBragg-Brentanoモードで構成されたXPertPro装置で収集された。相の組成を定量化するために、TOPASソフトウェアを用いたリートベルト(Rietveld)分析が使用された。
【0064】
全細孔容積および細孔サイズ分布の測定には、ASTM D4284に従って水銀圧入ポロシメトリーを実施した。
【0065】
触媒キャリアとして使用される50質量%以上のガンマ-アルミナを含むアルミナ材料の添加物を加えることなく、空気中1100~1200℃の高温で2~3時間焼成して、多孔質材料を製造した。
【0066】
図1は、試験に使用した4つのサンプルのPSDを示したものである。なお、X軸は対数軸である。サンプル1は、先行技術による基準、すなわち、主にガンマ-アルミナキャリアを有する上記の従来および市販の精製触媒である。サンプル2~4は、本発明による多孔質材料である。本発明によるサンプルについては、細孔のかなりの部分が細孔半径400Åか400Å超(400Å以上)、または500Åか500Å超(500Å以上)を有することが観察される。P捕捉に役立つこれらの大きな細孔の形成は、アルファ-アルミナおよび任意にシータ-アルミナの形成に起因するものである。
【0067】
400Å未満または500Å未満の小さな細孔は、多孔質材料にある程度の水素化処理能力を促進するのに有利であると考えられる。それゆえ、特にサンプル3~4は、少量の金属、例えば約1質量%のMo、を収容するために小さな細孔を提供する。
【0068】
不純物捕捉、特にP捕捉のための高い能力を有し、同時に水素化処理のための金属を収容することができ、しかもコーキングを促進しない多孔質材料を見出すことのバランスは、非常に微妙である。このような大きな細孔が、より良いガードを保証するものではない。例えば、
図1の2500Å以上約5000Åまでの細孔領域におけるピークであるからといって、対応する多孔質材料(サンプル2~4)が、同様の多孔質材料、すなわち全細孔容積の少なくとも30vol%が細孔半径400Å以上または細孔半径500Å以上の細孔を有するがこの細孔領域2500~5000Åにピークを示さず、またはこの領域(2500~5000Å)に細孔を有さないものと比べて、必ずしも優れたガード材料となるとは限らない。同時に、金属の堆積のための高い表面積を提供し、それによって触媒的な水素化分解活性を提供するために通常望まれるように、約80Å未満または40Å未満のかなりの量の微細孔または孔を有する多孔質材料を単に有することは、微細孔がより大きな孔へのアクセスをブロックすることによって、P-ガードとしての多孔質材料の能力を損なうことになる。
【0069】
図2および
図3は、全細孔容積(PV)とそれに対応する細孔分布を示す。本発明によるサンプル2~4に対応する多孔質材料は、全細孔容積が0.50~0.80ml/gの範囲にあり、より具体的には約0.60ml/gであり、全孔容積の少なくとも30%が細孔半径400Å超える細孔である。例えば、約90質量%のアルファ-アルミナと約10質量%のシータ-アルミナであるサンプル2は、全細孔容積の99%が400Å超の細孔であることを示しているが、参照サンプル1は全細孔容積のわずか約20%が400Å超の細孔であることを示している。
【0070】
表1は、XRDで測定したサンプル中のアルミナ相の含有量である。製造時に安定化剤として添加物を使用していないため、Al-ボレート、カルシウムアルミネートまたはシリコン-アルミネート結晶相の結晶相は検出されない。
【0071】
【0072】
表2は、再生可能物50%と再生可能物100%からの多孔質材料を使用した場合の、不純物捕捉率、特にPとFe、およびコーキング(C質量%)の結果を示す。
【0073】
再生可能物50%で操業されたサンプルは、参照(サンプル1)よりも最大600%高いP捕捉率を示す。一方、再生可能物100%を使用したサンプルでは、51%もの高いP捕集率を示す。また、新鮮な多孔質材料中に少量のMo、例えば約1質量%Moが含まれている場合、金属を含まない対応するサンプル(3’、4’)と比較して、コーキングが大幅に減少することが示されている(下線部の値を参照)。驚くべきことに、本発明のサンプルの表面積が低いにもかかわらず、例えば0.9および0.7質量%のMoを添加すると、コーク形成が著しく低くなった。
【0074】
図4は、四葉形状を有する多孔質材料へのPの浸透をP-map(明るいほどPが多い)で表したSEM写真であり、参照サンプル1(上)とサンプル2(下)を示している。参照サンプルでは、Pは材料の表面にしか存在しないが、サンプル2では高いレベルのPの浸透が生じていることが観察される。
【0075】
【0076】
別の100質量%の再生可能な供給原料を用い、XRDで測定した新鮮な多孔質材料(サンプル5、6、7;下記表3参照)中のアルミナ相の含有量が約70質量%のアルファ-アルミナと30質量%のシータ-アルミナ、および表面積が25~40m2/gの範囲である状態で、さらなる実験を実施した。サンプル1’-参照は、サンプル5~7とともに試験された新しい参照である。サンプル1’-参照は100質量%のガンマアルミナ、約150m2/gの表面積を持ち、サンプル1-参照よりわずかに多くのモリブデン(約3.1質量%)を含む。ここでも、製造時に安定化剤としての添加物を使用していないため、Al-ボレート、カルシウムアルミネートまたはシリコン-アルミネート結晶相は検出されない。サンプル5は、モリブデン、ニッケルを含まない。サンプル6は、約1質量%のモリブデンを含有している。サンプル7は、約1.2質量%のモリブデンを含み、さらに約0.1質量%のニッケル、より具体的には0.14質量%のNiを含む。すべての新鮮な多孔質材料(サンプル1~7)は、Coおよび/またはWを含まない。サンプルの結果は表3に示すとおりである。
【0077】
有意なP捕捉が再び達成される。本発明のサンプルの表面積が低いにもかかわらず、約1質量%のMoを添加することにより、コーク形成が著しく低くなった。約0.1質量%という少量のニッケルをさらに添加することによって、P捕捉を著しく損なうことなく、コーク形成がさらに低減される。
【0078】
モリブデンを任意にニッケルと一緒に使用すると、モリブデンを使用しないサンプルに関してP捕捉が著しく増加するので、100%再生可能な供給原料で操業する場合に特に有利である。
【0079】
【国際調査報告】