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特表2023-533941茎の長い野菜の栽培のための装置、関連する方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】茎の長い野菜の栽培のための装置、関連する方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20180101AFI20230731BHJP
【FI】
A01G9/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500070
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 FI2021050514
(87)【国際公開番号】W WO2022003258
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20205715
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521488886
【氏名又は名称】ルオノンヴァラケスクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ナッキラ,ユハ
(72)【発明者】
【氏名】サルッカ,リーサ
(72)【発明者】
【氏名】カルフ,サイラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョキネン,カリ ユハニ
(72)【発明者】
【氏名】ターボネン,リスト
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327TC07
2B327TC15
(57)【要約】
茎の長い野菜の栽培のための装置100、関連するシステム、方法、および使用が提供される。装置100は、固定された栽培トレイ13に植え付けられた少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分31を支持するように構成された少なくとも1つの本質的に水平の栽培プラットフォーム22を伴うフレームラック10を含み、前記栽培プラットフォームは、それぞれ、運搬装置11により確立されており、前記運搬装置の速度は、たとえば植物の成長に対応するように、調節可能である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎の長い野菜の栽培のための装置(100)であって、フレームラック(10)と、固定されたトレイ(13)に植え付けられた少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分(31)を支持するように構成された少なくとも1つの本質的に水平の栽培プラットフォーム(22)とを含み、前記少なくとも1つの栽培プラットフォームが、運搬装置(11)を含むかまたはこれからなり、前記運搬装置の速度が、植物の成長の速度に対応するように調節可能であり、前記運搬装置(11)が、前記少なくとも1つの野菜の茎部分(31)を、植物の成長の方向(d2)とは反対の方向(d1)に運搬するように配置されており、前記植物の茎部分が、前記運搬装置上で支持されている、装置(100)。
【請求項2】
前記運搬装置(11)の速度が、栽培プラットフォーム(22)の中で、野菜作物(32)が収穫される収穫領域(33)を確立するように、調節可能である、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
茎回収機構(12)をさらに含む、請求項1または2のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記茎回収機構(12)が、ローラー、ホイール、またはコイルである、請求項3に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記運搬装置(11)が、ベルトコンベヤー、鎖コンベヤー、およびストリングコンベヤーのうちのいずれか1つとして構成されるコンベヤーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記運搬装置(11)の速度の調節および任意選択で前記茎回収機構(12)の作動の調節が、少なくとも部分的に自動化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記運搬装置(11)が、互いに所定の距離で横に配置されたいくつかの平行なトラックを含み、前記トラックが、それぞれ、個々の茎の長い野菜の茎部分(31)を支持するために配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記フレームラック(10)に上下に配置されたいくつかの栽培プラットフォーム(22)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項9】
照明の配置(14)をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
積み重ねておよび/または配列して配置された、請求項1~9のいずれか1項に定義されるいくつかの装置(100)を含む、栽培システム(500)。
【請求項11】
フレームラック(10)と、運搬装置(11)を含むかまたはこれからなる少なくとも1つの本質的に水平の栽培プラットフォーム(22)と、を含む装置(100)における茎の長い野菜の栽培のための方法であって、固定されたトレイ(13)に植え付けられた少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分(31)が、前記運搬装置(11)上で支持され、前記運搬装置の速度が、植物の成長の速度に対応するように調節可能であり、前記方法が、前記運搬装置(11)上に支持された前記少なくとも1つの野菜の茎部分(31)を、植物の成長の方向(d2)とは反対の方向(d1)に運搬するステップをさらに含む、方法。
【請求項12】
前記栽培プラットフォーム(22)の中で、野菜作物(32)が収穫される収穫領域(33)を確立するために、前記運搬装置(11)の速度を調節するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記運搬装置(11)の速度の調節および任意選択で前記茎回収機構(12)の作動の調節が、少なくとも部分的に自動化されている、先行する請求項11または12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
つる野菜および茎の長い草本植物のいずれか1つとして提供される茎が長く高く成長する成長野菜の栽培のための、請求項1~9のいずれか1項に定義される装置(100)および/または請求項10に定義されるシステム(500)の使用。
【請求項15】
前記茎が長く高く成長する野菜が、種の群に属した植物であり、前記群が、キュウリ属の種、ナス属の種、スイカ属の種、トウガラシ属の種、カボチャ属の種、インゲンマメ属の種、カラハナソウ属の種、ブドウ属の種、およびマタタビ属の種からなる、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、水平に茎の長い野菜を成長させるためのトレリス型の装置に関する。特に本発明は、任意選択で異なるレベルで配置された、1つ以上の水平のコンベヤートラックループを含む栽培装置、関連するシステム、方法、および使用に関する。本装置は、長いつる野菜、たとえばキュウリおよびトマトの屋内栽培に適している。
【背景技術】
【0002】
十分な量の安全で栄養のある食糧へのアクセスは、生活の持続および良好な健康の促進の鍵である。食糧に対する世界的需要は、今後何年間も増加し、食糧を生産するための天然資源に対する競合も同様に増大するであろう。
【0003】
食物貿易のグローバリゼーション、着実に増加している世界人口、および気候変動は、世界の食糧資源の長期間の利用可能性に有害な影響を有し得る。これは、土地および水資源の蓄えの枯渇、主要作物の潜在的な収率の停滞およびエネルギー価格の上昇、ならびに発展途上国での生産可能性の不十分な活用などの結果をもたらす。
【0004】
ヒトの人口は、2050年までに約96億人まで増加すると予想されている。広範囲の都市化、生産農地の低減、および世界的な気候条件の極端な変動と共に、これは、農業の部門に特定の圧力をかけるであろう。当面の間、世界の人口の約50%は都市に住んでいるが、2030年までに、この数字は、70%に達すると推定されている。
【0005】
さらに、従来の植物の露地栽培は、広大な土地を必要とする。作物の質および量は、気候および天気の変動の影響を受ける。天気の影響は、気候変動により将来的にさらにより深刻になっている。計算方法にもよるが、農業産業は、世界的に、温室効果ガス排出量の最大20~30%を生み出している。
【0006】
変動する気候条件の有害な作用を克服するための1つの方法は、温室栽培などの保護された栽培である。しかしながら、従来の温室栽培もまた、作物を成長させるために大きな領域を必要とする欠点を有する。従って、土地の価格が農村地域よりも高い都市地域では、露地または従来の温室での栽培は、限定された(小さな)スケールでのみ行うことができる。
【0007】
多くの国では、都市化および増大する交通問題のため、新鮮な成長した食物を都市の中心へ輸送することがより困難となっている。さらに、消費者の間での環境意識が向上すると、地場の栽培が望まれるようになった。よって、都市環境の近くまたは都市環境における栽培の必要性および関心が増大している。植物工場は、従来の露地での栽培が可能ではない場所、たとえば都市地域での植物の栽培を可能にする。植物工場では、栽培環境は著しく制御されており、栽培される作物のニーズを満たすように設計されている。殺虫剤の使用および望ましくない気候条件の有害な影響は低減または排除され得る。理論的に、栽培は、作物の質が変動することなく1年中、24時間可能である。
【0008】
土地の単位面積あたりの作物栽培量を増大させるために、垂直にまたは水平に、好ましくは複数の垂直なレベルで農業が行われる異なる種類の収穫システムが開発されている。通常、植物工場では、レタスおよびハーブなどの丈が低い葉物野菜を収穫するが、つる植物などの茎の長い植物に適したいくつかの適用が存在する。
【0009】
つる野菜の高度な垂直栽培のための装置および方法が、最新技術から知られている。中国特許公開公報第108401719号(Guang,Mら)は、キュウリの垂直栽培のための自動化したトレリスシステムを開示する。キュウリの実生苗は、ループ状のトレリスに配置された別々の垂直のガイドワイヤ上で支持されている。ガイドワイヤは、実生苗が上方向に成長すると巻き機構により延在される。米国特許公開公報第2003121205号(Van Weel)は、フレームの形態に成形されたガイドワイヤ上で、キュウリ、トマトなどの個々の茎の長い植物を成長させるための装置を開示する。米国特許公開公報第2010192458号(Van Zijl)は、植物が固定された支持基盤に対して回転する円周媒体上で垂直に成長するように配置された、キュウリ、トマト、ピーマン(pepper)、ナスなどの茎の長い温室植物の成長の速い茎を収容するための装置を開示する。
【0010】
茎の長い植物の垂直の成長のための上述のシステムは、いくつかの欠点で妨げられている。既存の垂直栽培システムの主な欠点は、上方向に高く成長する植物の茎の長さを制御するための対策の欠如である。さらに、つる植物が並んで成長する垂直栽培の条件では、利用可能な(通常人工の)光は、植物の全長にわたり十分に均一な照明を提供せず、植物の生育能力を低下させ、作物の収率を減少させる。垂直栽培の解決策は、一般的にかなり広い施設を必要とし、従って、このような施設の空間の最適化は困難であり、多くの場合不可能である。
【0011】
従来の垂直方向のハイワイヤ誘引(ハイワイヤ栽培)システムは、年間で約180kgのキュウリおよび/または70kgのトマトを生産し得る。
【0012】
植物が本質的に水平のプラットフォームまたはレベルを使用して成長する栽培システムも、最新技術から知られている。たとえば、国際特許公開公報第2019104431号(Vesty)は、トレイで成長する複数の植物を運搬するコンベヤーベルト配置を含む自動の再循環植物栽培システムを開示する。国際特許公開公報第2016023947号(Aschheimら)は、レタス植物の水平方向の水耕栽培のための配置であって、その中に生育培地を配置するための開口部を有するメッシュ様のコンベヤーベルトを含む、配置を開示する。前記コンベヤーベルトの運搬速度は、成長が短い植物がベルト上で過ごす期間の間、成熟するまで成長するように、調節される(通常3~10週間)。しかしながら、これら全てのシステムは、レタスおよびハーブなどの短い葉物野菜の栽培のために設計されている。
【0013】
よって、最先端技術は、限定された空間および/または人工照明の条件での、つる野菜および/または茎の長いハーブなどの高く成長する実用的な植物の水平栽培の合理的な解決策が未だ利用可能ではない点で、限定されている。
【0014】
これに関して、つる作物などの茎の長い野菜を栽培することを目的とする技術分野の更新が、限られた空間条件での生産収率の維持および/または改善に関連した課題に対処する観点から、依然として望まれている。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、関連する技術の限定および欠点から生じる問題のそれぞれを解決または少なくとも緩和することである。この目的は、つる野菜などの茎の長い野菜の水平栽培のための装置、関連する栽培システム、方法、および使用の様々な実施形態により達成される。これにより、本発明の一態様では、独立請求項1に定義されるものに係る、茎の長い野菜の栽培のための装置が提供される。
【0016】
実施形態では、装置は、フレームラックと、固定された栽培トレイに植え付けられた少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分を支持するように構成された少なくとも1つの本質的に水平の栽培プラットフォームとを含む。装置では、上記栽培プラットフォームは、運搬装置により確立されており、上記運搬装置の速度は、たとえば植物の成長の速度に対応するように、調節可能である。
【0017】
実施形態では、運搬装置は、本質的に水平の平面に沿って、上記少なくとも1つの野菜の茎部分を、植物の成長の方向d2とは反対の方向d1に運搬するように配置されており、上記野菜の茎部分は、運搬装置上で支持されている。
【0018】
実施形態では、上記運搬装置の速度は、たとえば、栽培プラットフォームの中で、野菜作物が回収される収穫領域を確立するように、調節可能である。
【0019】
実施形態では、装置は、茎回収機構をさらに含む。上記茎回収機構は、ローラー、ホイール、コイル、または茎の長い野菜の茎の受領および回収に適した他のいずれかの装置として提供されている。
【0020】
実施形態では、運搬装置は、任意選択で茎の長い野菜(long-step plant)の茎部分を支持するための、クランプ、クリップなどの適切な留め具を備えた、ベルトコンベヤー、鎖コンベヤー、およびストリングコンベヤー(ワイヤコンベヤー)のいずれか1つとして構成されたコンベヤー装置である。
【0021】
実施形態では、上記運搬装置の速度および任意選択により茎回収機構の作動は、少なくとも部分的に自動化されている。
【0022】
実施形態では、運搬装置は、互いに所定の距離で横に配置されたいくつかの平行なトラックを含み、上記トラックは、それぞれ、個々の茎の長い野菜の茎部分を支持するために配置されている。
【0023】
実施形態では、装置は、いわゆるスタック構成を形成するようにフレームラックに上下に配置されたいくつかの栽培プラットフォームを含む。
【0024】
実施形態では、装置は、たとえばLED照明などの人工照明の配置をさらに含む。
【0025】
態様では、独立請求項10に定義されるものに係る栽培システムが提供される。
【0026】
別の態様では、独立請求項11に定義されるものに係る茎の長い野菜の栽培のための方法が提供される。本方法は、好適には、記載される実施形態に係る装置で実施される。本方法では、固定された栽培トレイに植え付けられた少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分は、装置の栽培プラットフォーム上で支持され、上記栽培プラットフォームは運搬装置により確立されており、上記運搬装置の速度は、たとえば植物の成長の速度に対応するように、調節可能である。
【0027】
さらなる態様では、独立請求項14に定義されるものに係る、茎が長く高く成長する野菜の栽培のための、実施形態に係る装置および/またはシステムの使用が提供される。
【0028】
実施形態では、上記茎が長く高く成長する野菜は、つる野菜、茎の長い草本植物、および他のいずれかのつる様植物のうちのいずれか1つから選択される。
【0029】
実施形態では、茎が長く高く成長する野菜は、種の群に属する植物であり、上記群は、キュウリ属の種(Cucumis spp.)、ナス属の種(Solanum spp.)、スイカ属の種(Citrullus spp.)、トウガラシ属の種(Capsicum spp.)、カボチャ属の種(Cucurbita spp.)、インゲンマメ属の種(Phaseolus spp.)、カラハナソウ属の種(Humulus spp.)、ブドウ属の種(Vitis spp.)、およびマタタビ属の種(Actinidia spp.)からなる。よって、つる野菜は、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン(ピーマン(bell pepper)とも呼ばれる)、メロン、カボチャ、ズッキーニ、マメ、ホップ、および他のつる様の実用的な植物(たとえばブドウ、キウイフルーツなど)からなる群から選択され得る。
【0030】
本発明の有用性は、その各特定の実施形態に応じた様々な理由から生じる。主に本発明は、全般的に、本開示による、限定するものではないがキュウリ、ピーマン、トマト、および他の実用的な植物を含む実がなる野菜などの茎の長い(つるの長い)野菜を生産するための費用効果が高い解決策を提供することを目的とする。
【0031】
本発明は、都市環境に適した植物工場ベースの栽培方法での利用に特に有用である。本明細書により提示される生産施設は、閉鎖された農業環境に位置し得、気候領域とは無関係に生産を行う。この工場は、従来の緑色野菜の栽培が不可能である困難な環境(たとえば砂漠、北極帯等)に位置づけられ得る。
【0032】
本発明は、いくつかの装置(フレームラック)および/またはいくつかの本質的にコンベヤートラック(同一フレームラックの中に提供)を積み重ねることができる解決策を提供し、これにより複数の層状の栽培を可能にし、よって立方メートルあたりの収率を増大させる。著しい、そして多くの場合予想できない気候変動による損失は回避することができ、かつ、他の場所からの(新鮮な)作物の輸送によりもたらされる費用が回避され得る。総合的に、本発明は、つる野菜の商業的な栽培方法、特に現代の温室および植物工場で使用される方法に、持続可能性およびコストパフォーマンスを付加する。
【0033】
本発明では、水平に成長する茎の長い植物は、植物の全長に沿ってかつ/またはあらゆる角度から光が当てられ、これにより成長を顕著に増強し、作物の収率を改善する。さらに本発明は、これが完全に自動的に作動できる意味で有用であり、これは、植物の移動、つるの切断または葉の除去、および実の収穫の操作をするためのマンパワーが必要ではないことを意味する。よって本発明は、農業者の肉体労働の量を低減することを可能にする。栽培プラットフォーム(栽培レベル)を層状化することは、生産施設のエネルギー効率を改善する。
【0034】
自動化および洗練された複数層の構成により、本開示に係る野菜作物の水平栽培のための装置および方法は、労働に関連する費用の低減および職業的安全性の改善を可能にする。後者は、本発明の解決策が、必然的に遅く労働集約型である数メートルの高さでの手動での収穫および/または野菜作物の処理(従来の垂直方向のハイワイヤ栽培では珍しいことではない)の必要性を排除するため、改善される。
【0035】
予備試験では、本発明の概念は、従来のハイワイヤ栽培と比較して、植物あたり約20~30%、つる野菜の生産収率の増大を可能にする。
【0036】
本明細書により提示される装置およびシステムはさらに、効率的な水のリサイクルならびに栄養素および/または関連する廃棄物の量の制御を可能にする。
【0037】
本開示では、「茎の長い野菜」の語句は、いわゆるつる野菜、特には食用の作物を生産できる、つるの長い野菜を表すように利用される。「茎の長い野菜」「つる野菜」、および「つるの長い野菜」の語句は互換可能に使用されており、非限定的な方法で、高く成長する茎を有する野菜作物の植物および草本植物/緑色作物の植物を表す。
【0038】
「いくつかの」の語句は、本明細書により、1から開始したいずれかの正の整数、たとえば1、2、または3を表す。「複数の」の語句は、本明細書により、2から開始したいずれかの正の整数、たとえば、2、3、または4を表す。
【0039】
用語「第1の」および「第2の」は、順序、量、または重要性のいずれも表すようには意図されておらず、むしろ単に、他の意味が明記されていない限り、1つの要素を別の要素と区別するために使用される。
【0040】
本発明の異なる実施形態は、詳細な説明を検討することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】一実施形態に係る茎の長い野菜の栽培のための装置100を示す。
図2】実施形態に係る装置100の斜視図および側面図を示す。
図3】実施形態に係る装置100の斜視図および側面図を示す。
図4】いくつかの装置100を含む、栽培システム500を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
添付の図面を参照しつつ、本発明の詳細な実施形態が本明細書において開示される。図面を通して、同じ参照文字が、同じ部材を表すために使用される。部材に関して以下の記載が使用される。
100-茎の長い野菜の栽培のための装置
10-フレームラック
10A、10B-それに応じたフレームラック10の第1の端部および第2の端部
11-運搬装置;
11A、11B-コンベヤートラック
12-茎回収機構
13-(栽培)トレイ
14-照明装置
15-収穫機装置
16-葉刈り取り装置;
17-分離器
18-支持脚
21、23-フレームラック10の上部および基部
22-栽培プラットフォーム;
31-茎の長い野菜(植物の茎部分);
32-茎の長い野菜の作物(実)
33-収穫領域
41-制御部
【0043】
図1は、100での、茎の長い野菜の栽培のための装置の様々な実施形態の根底にある概念を示す。装置100は、限定するものではないがキュウリ、トマト、ピーマン(bell pepper)としても知られているピーマンなどのトウガラシ、ナス、ズッキーニ、カボチャなどを含む実のなる野菜など、(長い)つるの野菜作物の栽培;マメおよびホップなどの茎の長い草本植物の栽培、ならびに高く成長する茎を有する他のいずれかのつる様植物(たとえばブドウおよびキウイフルーツ)の栽培に特に適している。装置は、温室および/または植物工場、並びに野外での、上記作物の屋内および屋外での栽培で使用され得る。
【0044】
装置100は、金属または他のいずれかの適切な物質から作製されたラック型のフレームワークとして具現化されているフレームラック10を含む。フレームラック10(および装置100、結果的に)は、第1の端部10Aおよび第2の端部10Bを有する。フレームラックは、上部21および基部23をさらに有する。上部レベルは、開口し得る。一部の構成では、基部23は、格子または網として提供される。フレームラックは、ラックの再配置を促進するためのホイールまたは同様の配置を任意選択で備えたいくつかの支持脚18を有し得る。
【0045】
装置100は、フレームラックの上部21(上部レベル)および基部23(基部レベル)の間に本質的に配置された少なくとも1つの栽培プラットフォーム22をさらに含む。栽培プラットフォーム22は、本質的に水平に、すなわち本質的に長手方向の平面に沿って配置されており、後者は、ラック10の長さを画定する距離10A-10Bに沿いかつ10A-10Bと交わる平面として画定される。あるいは、栽培プラットフォームは、端側10Aまたは10Bのいずれか1つに向かう方向にて、所定の角度で傾斜し得る。
【0046】
栽培プラットフォーム22は、フレームラック10に搭載された運搬装置11を含むかまたはこれよりなる。運搬装置11は、1つ以上のトラック11A、11Bを伴うベルト型のコンベヤーとして実施され得る(図2)。運搬装置11は、従来のベルトコンベヤー、鎖コンベヤー、ストリングコンベヤーもしくはワイヤ型のコンベヤーとして、または他のいずれかの適切なタイプのコンベヤーとして構成され得る。運搬装置は、フレームラック10の長さに沿って(すなわち端部10Aと10Bの間に)延在するいくつかのストリングまたはワイヤとして構成され得、栽培された植物の茎部分はこのようなストリングまたはワイヤ上で支持される。上記ストリングまたはワイヤはそれぞれ、プラットフォーム22の中で栽培トラック11A、11Bを形成し得る。
【0047】
よって、フレームラック10では、少なくとも1つの栽培プラットフォーム22が、上記運搬装置11により確立されている。あるいは、運搬装置11は、別々の支持デッキ、フレーム、またはレール上で支持され得る。
【0048】
一部の構成では、装置100は、平行な「スタック」構造を形成するために上下にフレームラック10に搭載された2以上の栽培プラットフォーム22を含む(不図示)。このような構成は、層状化されたつる野菜の栽培を可能にし、ここで各層は、栽培プラットフォーム(運搬装置)により確立されている。このような複数層の構成では、各栽培プラットフォーム22は、別々の運搬装置11により確立されている。
【0049】
距離10A-10Bにより実質的に画定されている例示的な栽培プラットフォーム22(図2、3)は、約4メートルの長さおよび約0.8メートルの幅を有する。栽培プラットフォーム22とフレームラックの上部21との間の距離(つまり高さ)は、約1メートルである。
【0050】
一部の構成(不図示)では、フレームラック10の基部レベル23の提供は省略されている。このような事象では、基部レベルは、任意選択で支持デッキまたはフレーム上で支持されている栽培レベル22/運搬装置11により形成される。
【0051】
運搬装置11は、少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分31を支持するように構成されている。本発明の目的のため、これが、運搬装置11上で支持および運搬される上記茎の長い野菜の茎部分であることが重要である。よって、運搬装置11は、その上に支持された少なくとも1つの茎の長い植物の茎部分に対して運搬活動を行う。従って、参照番号31は、本明細書中以下で、上記植物の茎部分を表すように使用される。少なくとも1つの野菜は、装置100に近接して配置された少なくとも1つのトレイ13(栽培トレイ)に植え付けられている。トレイ13は、装置の1つの端側(10A、「植え付け端部」と呼ばれる;図1)に配置されることが好ましい。トレイ13は、全栽培サイクルを通して固定されている。トレイは、適切な基質材料(播種床材料または発根床材料)を含む容器またはいくつかの容器として提供され得る。
【0052】
基質/床材料の選択は、必然的に装置100で栽培される植物に応じて変化する。例示的な基質材料として、限定するものではないが、たとえば本質的に固体の基質、たとえば適切な肥料を補充した土壌、ピート、モス(たとえばミズゴケモス)、および/またはロックウール、ならびに液体または懸濁液として提供される本質的に液体の基質が挙げられる。トレイ13は、上記基質材料で充填され得る。あるいは、ミスト栽培(空中栽培)を適合することができ、ここでは栄養素を含む水が、たとえばトレイ13の中に、噴霧により分布される。よって、作製されたミストは、トレイに配置された植物の根により捕捉される。
【0053】
よって装置100は、本質的に固体の基質での従来の栽培方法および水耕ベースの方法(栄養溶液において植物を成長させる)、ならびに気耕栽培ベースの方法(ミスト状の空気環境で植物を成長させる)を利用し得る。
【0054】
栽培トレイ13には、少なくとも1つの茎の長い(高く成長する)野菜が植えられる。トレイ13は、再利用するための排水を回収するための器具が搭載され得る。いくつかの容器または複数の区画を伴うより大きな容器を使用することは、同じ装置100において異なる種または属を栽培することを可能にする。
【0055】
上記で明記した寸法を有する例示的な装置100は、運搬装置11上で横に配置された3つまたは4つの植物を支持するために設計されている。全体として本開示を採用することで、当業者は、いずれかの適切な数の茎の長い野菜の同時栽培のため装置100を改変することは困難ではないことが推測される。
【0056】
装置では、上記運搬装置11の運動および運搬速度は、植物の成長の速度に本質的に対応するように調節可能である。
【0057】
上記運搬装置11の運動および運搬速度は、たとえばモーター駆動のかさ歯車などの適切な歯車により調節され得る。かさ歯車は、そのかさ歯車システムが歯車のトルクの力を増大させ、コンベヤーを滑らかかつ効率的に作動させるため、特にベルトコンベヤーに有用である。
【0058】
作動において、運搬装置11は、少なくとも1つの野菜の茎部分31を、第1の方向d1に運搬するように調節され(図1、3)、上記第1の方向は、植物の成長の方向とは本質的に反対である(本明細書において、後者は、第2の方向d2として定義される)。植物の成長の方向d2は、本明細書において、本質的に水平の栽培プラットフォーム22上に配置および支持されたその茎部分を有する植物に関して、定義されている。本発明の目的のため、運搬装置の作動の間(すなわち運搬の間)、上記少なくとも1つの植物の茎部分31が、栽培プラットフォーム22上(本明細書では運搬装置11の上)で支持されていることが重要である。
【0059】
植物は、任意選択で、いくつかの適切な留め具および/または支持/固定器具、たとえばブラケット、クランプ、またはクリップにより、栽培プラットフォーム上で支持され得る(不図示)。植物の茎部分は、適切な方向に植物の頂部を導くために、栽培プラットフォーム/運搬装置に手動で、すなわち作業者により付着され得る。これら留め具および/または固定器具の作動は、少なくとも部分的に自動化され得る。にもかかわらず、植物は、いずれの固定器具も用いることなく配置かつ支持され得る。
【0060】
本発明は、栽培プラットフォーム22の中に、いわゆる収穫領域の形成の概念を認識する。野菜が野菜作物32を生産するために十分成熟した時点で(図1)、これら作物は、収穫領域33と呼ばれる栽培プラットフォーム22上の所定の領域の中で回収される。
【0061】
用語「野菜作物」は、装置100上で栽培された茎の長い野菜により産出およびこれから収穫されたいずれかの所望される作物(結実産物)を表し、ここで上記作物は、野菜、果実、花、ベリー、さや(マメさや)、葉(緑色の葉)、塊茎などのいずれか1つとして植物学的に定義される。
【0062】
しかしながら、栽培プラットフォーム22が(従来の解決策と同様に)静止して維持される場合、茎の長い植物は、栽培領域に過成長し、その頂部は(播種床が配置される、端部10Aとは反対の端部10Bを介して)フレームラックを「逃れる」だろう。これら新規に形成された植物の頂端部に近接して生産された野菜作物は、回収することが困難である。この問題を解決するために、装置100では、運搬装置11の運搬速度が、栽培プラットフォーム22の中で、成熟した野菜作物32が回収される収穫領域33を確立するために調節可能である。上記栽培プラットフォーム上の収穫領域33の位置を実質的に一定に保つために、運搬装置11の速度は、植物の成長の速度に対応するように調節される。同時に、運搬装置11は、上記植物の成長の方向(d2)とは反対の方向(d1)に植物の茎部分31を運搬するように調節される。このような配置では、持続的な収穫領域33が、移動する栽培プラットフォーム22上で確立される。プラットフォーム22の移動は、連続した方法または所定の期間の間(移動および停止を繰り返す期間を伴う)で実現される。
【0063】
運搬装置11の速度は、植物の茎部分31が栽培プラットフォーム22で過ごす期間が上記植物の成熟期間に対応するように、さらに調節され得る。
【0064】
栽培プラットフォーム22/運搬装置11の作動は、半自動化または完全に自動化され得る。少なくとも上記運搬装置の運搬速度ならびに/または停止期間の持続時間および周期性は、自動化され得る。
【0065】
運搬装置11の運搬速度を制御することにより、収穫領域33を画定する領域が調節され得る。生産速度を改善するために、栽培プラットフォーム全体、すなわち距離10A-10Bに沿って(かつ横断して)作物を生産することが望ましいとされ得る。
【0066】
野菜作物32は、手動で、または装置100と共に提供される自動化された収穫機装置15/収穫機ロボットにより、集められ得る(図1)。
【0067】
運用において、実生苗は、装置100の1つの端部(植え付け端部10A)に配置された栽培トレイ13に植えられる。トレイ13は、基質表面が、栽培プラットフォーム22/運搬装置11と本質的に同じレベルで配置されるような高さで配置され得る(不図示)。あるいは、栽培トレイ13は、基部レベル23で配置され得(図1~3)、これにより、成長する実生苗が、栽培プラットフォーム22/運搬装置11に達するまで上方向に導かれる(不図示)。実生苗がプラットフォーム22上に配置されると、これは、栽培プラットフォーム22(および運搬装置11)により画定される本質的に水平な平面に沿って、成長方向d2を採用する。次に、成長する実生苗は、水平の運搬装置11に沿って誘引される。実生苗が植え付けられる端部(10A)とは反対の栽培プラットフォームの端部(10B)に達する、かつ/または植物が作物を生産し始めるまで、運搬装置11の運動は、作動される必要はない。
【0068】
運搬装置11は、好ましくは、野菜作物32を手動または自動化した収穫機装置15により回収することを容易にするために構成されている。図1に示されるように、成熟した野菜作物32は、栽培プラットフォーム22から吊り下がる。よって、運搬装置11は、互いに所定の距離で横に配置されたいくつかの平行トラック11A、11Bを含み得(図2)、ここで各トラックは、個々の茎の長い野菜の茎部分31を支持するように配置されている。さらにまたはあるいは、運搬装置は、成熟した野菜作物32が回収され得るいくつかの開口部を伴い提供され得る。
【0069】
運搬装置11上に支持される植物(その茎部分)は、分離器17により互いにさらに分離され得る。また分離器17は、いくつかのコンベヤートラック上に配置された植物を互いに分離するために使用され得る。分離器17は、好ましくは、プラスチック(たとえばポリカーボネート)または比較的軽量であり洗浄が容易な他のいずれかの物質から作製された取り外し可能な器具である。
【0070】
作物をこれ以上生産しない茎の部分を回収するために、装置100は、茎回収機構12をさらに含む。茎回収機構は、収穫期間が終了した植物の茎部分を、たとえばこれら部分がフレームラック10およびプラットフォーム22からぶら下がりかつ/または落下することを予防するために、回収および保持するように構成されている。茎回収機構は、たとえば、ビーム、ローラー、ホイール、またはコイルであり得る。他のいずれかの適切な解決策が採用され得る。図1~3に示される装置100は、ローラーとして実施される茎回収機構12を含む。茎部分は、巻きコイル様の方法において上記ローラーの周りに巻かれるように、ローラー周辺の下端/植え付け端部(10A)から、引き抜かれる。図1~3に示される構成では、茎回収機構12は、本質的に栽培プラットフォーム22より下に配置されている。植え付け端部10A(たとえば播種床13の近く)への茎回収機構の提供は、除外されない。
【0071】
装置100では、茎回収機構12の作動は、少なくとも部分的に自動化され得る。このような事象では、上記茎回収機構12の作動は、たとえば回転速度の観点からまたは茎を回収する動作を決定する他のいずれかの作動パラメータの観点から、上記に定義されるように、運搬装置11の作動、特に上記運搬装置の運搬速度と協調している。
【0072】
茎回収機構12上で茎部分を受領することを容易にするために、装置100は、葉刈り取り装置16をさらに備え得る(図1)。葉刈り取り装置16の作動は、好ましくは自動化されている。
【0073】
装置100は、照明の配置14をさらに含む。照明の配置14は、栽培プラットフォーム22の上部に配置されたいくつかの光源、たとえばLEDアレイを含む人工的な照明の配置として提供されている。さらにまたはあるいは、いくつかの適切な光源が、上記栽培プラットフォーム22に対して横に配置され得る。装置100がスタック構成のいくつかの栽培プラットフォーム22を含む場合(不図示)、栽培プラットフォーム22により確立された各レベルは、装置100における全ての野菜栽培の茎部分にわたる均一な照明を確実にするために、いくつかの光源で照射され得る。
【0074】
照明の配置14の中に提供される光源の輻射強度および/または質は、たとえば、栽培プラットフォームにわたり最適な生産収率を達成するために、調節され得る。光源の調節は、まとめてまたは個別になされ得る。照明の配置14は、好適には、可視スペクトラム(約380nm~約740nmの範囲内)の電磁放射を発することにより、日光に置き換わるように構成されている。さらにまたはあるいは、一部の照射に関連したパラメータ、たとえば質および日長は、いくつかのさらなる機能を達成するため、たとえば発芽および広がりを阻害するために、調節され得る。後者の目的では、たとえば遠赤色照射(約700~800nmの範囲内)または青色照射(約400nm~500nmの範囲内)を発するように構成された光源が利用され得る。
【0075】
よって、装置100は、同じフレームラック10において上下に配置されたいくつかの栽培プラットフォーム22を含むように構成され得る。このような複数層のスタックされた解決策の提供は、栽培効率および収率の顕著な改善を可能にする。1つ以上の栽培プラットフォーム22を備えたいくつかの装置100が、本発明の1つの別の態様により、モジュール式の栽培システムの中にさらに配置され得る。
【0076】
図4は、本発明の一部の態様に係る栽培システム500を概略的に示す。システム500は、本明細書中上述の実施形態のいずれか1つに係るいくつかの装置100(破線)を含む。システム500において、装置100は、個々のユニットまたはモジュールを形成し、モジュールは、参照番号100-1、100-2、100-3、100-4、および100-5により図4に記載されている。このシステムでは、上記装置は、スタック状(モジュール100-3、100-2、および100-1は、互いに上部に配置され、例示的なスタック1を形成しており、モジュール100-5および100-4は、例示的なスタック2を形成していることを参照されたい)、ならびに/またはアレイ状(たとえば互いに対して横向き)に配置されている。アレイ間に形成される通路は、両矢印により図4に示されている。モジュール式システム500は、いずれかの適切な数の装置100(モジュール100)で確立され得ることが明らかである。モジュールがスタック構成で提供される場合、上部のモジュールから下部のモジュールまで滴る水を回収するためにモジュール間に保護トレイ(不図示)を有することが好適であり得る。これら保護トレイからの水は、本明細書中上記で論述されるように、栽培トレイ13と共に提供される排水器具の中に回収され得る。
【0077】
システム500における各装置100の少なくとも部分的に自動化された作動にわたる制御は、少なくとも運搬装置11、照明の配置14、収穫機ロボット15、および/または葉刈り取り装置16(不図示)に提供される様々な検出器、センサー、および/または測定装置からの出力を受領し、上述の装置11、14、15、および/または16に提供される複数のスイッチおよび関連する器具を作動および停止させるためのシグナルをもたらすように構成された制御部41を介して実施される。制御部41は、好ましくは、緊急スイッチを備える。制御部41は、好ましくは、独立型のプロセッサおよび/またはリモート制御型のソリューションとして構成された少なくとも1つの処理部と、ユーザインターフェースとを含む。モジュール構成では、有線または無線の伝達が、モジュール100の制御部41と中央処理装置(CPU)モジュール(不図示)との間で有効となり得る。よって、CPUモジュールは、システム500の全ての装置モジュールの状態をモニタリングし、入力および出力のデータの協調された伝送およびプロセシングを可能にするためのネットワーク伝達へのリンクを提供する。
【0078】
(たとえばCPUモジュールを用いた)装置100およびシステム500における集中制御は、少なくとも部分的に自動化された方法または完全に自動化された方法で実施され得る。
【0079】
別の態様では、装置100での茎の長い野菜の栽培のための方法であって、前記装置が、フレームラック10と、少なくとも1つの本質的に水平の栽培プラットフォーム22とを含む、方法が提供される。栽培プラットフォームは、それぞれ、運搬装置11により確立される。本方法では、固定された栽培トレイ13に植え付けられた少なくとも1つの茎の長い野菜の茎部分31は、運搬装置上で支持され、上記運搬装置の運搬速度は、植物の成長の速度に対応するように調節可能である。栽培方法は、好適には、任意選択でシステム500の一部として提供され、本明細書中上述される実施形態のいずれか1つにより実施される装置100を利用する。
【0080】
実施形態では、本方法は、本質的に水平の平面に沿って、運搬装置11上で支持された少なくとも1つの野菜の茎部分を、植物の成長の方向d2とは反対の方向d1に運搬するステップを含む。
【0081】
実施形態では、本方法は、栽培プラットフォーム22の中に、野菜作物32が収穫される収穫領域33を確立するために、上記運搬装置の運搬速度を調節するステップを含む。
【0082】
実施形態では、運搬装置11の運搬速度および任意選択で茎回収機構12の作動の調節は、少なくとも部分的に自動化されている。
【0083】
本方法は、好適には、たとえば野外、温室、および/または植物工場で、つるの長い野菜の屋内および屋外での栽培で利用され得る。
【0084】
さらなる態様では、本明細書中上述される実施形態のいずれか1つに係る装置100および/またはシステム500の使用は、つる野菜および茎の長い草本植物のいずれか1つとして提供される茎が長く高く成長する野菜の栽培のために提供される。茎が長く高く成長する野菜は、種の群に属する植物として提供され得、上記群は、キュウリ属の種(Cucumis spp.)、ナス属の種(Solanum spp.)、スイカ属の種(Citrullus spp.)、トウガラシ属の種(Capsicum spp.)、カボチャ属の種(Cucurbita spp.)、インゲンマメ属の種(Phaseolus spp.)、カラハナソウ属の種(Humulus spp.)、ブドウ属の種(Vitis spp.)、およびマタタビ属の種(Actinidia spp.)からなる。
【0085】
栽培される植物として、限定するものではないが、キュウリ(キュウリ属(Cucumis);C.sativus)、トマト(ナス属(Solanum);S.lycopersicum)、ナス(ナス属(Solanum);S.melongena)、メロン(ウリ科(Cucurbitaceae)に属する植物、限定するものではないが、スイカ(スイカ属(Citrullus);C.lanatus)、およびハニーデューメロン(キュウリ属(Cucuis);C.meloを含む));ピーマン(またはピーマン(bell pepper);Capsicum spp.;C.annuum)、ならびにカボチャ(Cucurbita spp.、ズッキーニ、カボチャ(squashe)、およびカボチャ(pumpkins)を含む)が挙げられる。茎の長い草本植物として、限定するものではないが、マメ(インゲンマメ属(Phaseolus);P.vulgaris)、およびホップ(カラハナソウ属(Humulus);H.lupulus)が挙げられる。さらにまたはあるいは、装置100および/またはシステム500は、たとえばブドウ(Vitis spp.)およびキウイフルーツ(Actinidia spp.)などの他のいずれかの高く成長する茎を有するつる様植物を成長させるために利用され得る。
【0086】
栽培された植物が受粉を必要とするかに関わらず、多くの生物学的および/または人工的な受粉の選択肢が考慮され得る。
【0087】
全体的に、装置100およびシステム500は、任意の大きさの野菜作物/果実を生産する茎の長い結実性野菜の種および栽培品種の成長を可能にする。しかしながら、例えば、いわゆる「ピクルス」キュウリ果実などの小さいサイズの果実を生産するつるの長い栽培品種の栽培は、上記小型の植物種の果実が栽培プラットフォーム22間および/またはモジュール100間に良好に適合し得るため、一定の利点を有し得る。
【0088】
以下のセクションは、非限定的な方法で、いくつかの実験で得た結果を提示する。
【0089】
実施例1.設備の説明
装置100は、薄い壁17により互いから分離した3つまたは4つのキュウリ植物体の並んだ栽培のために設計される(図2)。栽培プラットフォーム22は、運搬装置11により確立される。栽培プラットフォームは、約4m長および約0.8m幅である。栽培プラットフォーム22と装置の上部21との間の距離は、約1mである。
【0090】
植物は、フレームラックの一端(10A)に提供される固定された栽培トレイ13に植え付けられた。各キュウリのつるの茎31は、栽培プラットフォーム上に水平に成長するように誘引され、キュウリの作物/果実は、下方向につるされる。装置は、本明細書中上述されるように作動した。作動中、最下部の葉が、自動的に葉刈り取り装置16により切断された。その後、葉のない茎31は、基部レベル23に配置された茎回収機構12により回収された。
【0091】
栽培プラットフォーム22上で支持されたキュウリのつるは、植物の全成長段階の間、当該植物へ均一な照射を提供するように配置されたLED光14により照射された。さらに、LED照明器具により提供される遠赤色領域での照射を使用して、発芽を阻害した。本実施例では、光は、Itumic Multi Station 100 climate controllerを使用して制御され、灌漑は、Itumic Mix Station 300 fertilizer mixerを使用して操作した。運搬装置11の動きを媒介するために、400Vの電力供給システムで作動するモーター駆動のかさ歯車を利用した。
【0092】
よって、実験は、1つのモジュール100を含むモジュールシステム500を利用した(実施例2)。モジュール100は、栽培プラットフォーム22を含んでいた。モジュール100で行った水平栽培では、収穫期間は、従来の垂直のハイワイヤの設備(植物は垂直に成長するように配置された)と比較して速く開始し、従って、収穫週数の平均数は増大した(表1の列IVを参照)。
【0093】
比較試験を、従来の静止したハイワイヤ栽培の設備で垂直に成長したキュウリのつるを用いて行った。収率の比較は、収穫中に回収した果実の数に基づき行った(実施例2)。
【0094】
実施例2.この実験では、キュウリ(品種 Jawell)が異なる状況で栽培された。対照の設定(0)では、キュウリ植物は、従来の垂直のハイワイヤ栽培の設備で成長していた。植物は、約130cm離れて列を作り成長させた(植物の列は、約60cm幅であり、植物の列の間の通路は、約70cm幅であった)。列にある実生苗は、25cm離した。
【0095】
実験1では、キュウリは、並んで配置された3つの植物を受領するように構成された0.8m幅の運搬装置(3つのトラックと呼ばれる)により確立された栽培プラットフォームを含む1つの栽培モジュール(すなわち装置100)を含むシステム500で栽培された。
【0096】
これら結果を、表1にまとめる。
【表1】
【0097】
キュウリのつるを用いて行った実験は、本開示に係る装置および方法を使用すると、果実の数が、植物あたり約25%増加し得ることを明確に表している(実施例2、表1)。よって、装置100で栽培する場合、各キュウリは、従来の垂直のハイワイヤ法で栽培した植物と比較して約25%増加した果実の数を生産する(表1の列Iに提示された結果(得られたキュウリの平均数/植物/週)を、実験1(10.6)と対照(8.5)で比較)。この生産性の増大は、つる(の長い)植物の茎に沿った光のより均一な分布により向上した光合成能力により説明され得る。さらに、水平栽培は、水および/または栄養素溶液が、これらの液体が(従来のシステムのように)重力に反して上昇する必要がないため、植物によりアクセスしやすくさせる。
【0098】
従来の垂直ハイワイヤシステムにおいて、植物の密度(1mあたりの植物の数)は、2.7であったが、装置100における植物の密度は、0.6であり、すなわち従来の解決策よりも4倍少ない(実施例2、表1)。
【0099】
キュウリ植物は、1週間あたり約1メートル成長し、数週間で数メートルの長さを達成する。装置100をスタック状の構成に配置することは、建物と統合した温室または植物工場などの、小型の栽培施設であっても効率的な複数層の農業を可能にする。
【0100】
積み重ねて配置された、および/または隣どうしに配置された栽培ラック(モジュール/装置100)の数に応じて、栽培表面の単位面積あたりの果実の収率(生産される果実の量)は、顕著に増加し得る。後者は、特に、空間の不足(およびそれに伴う土地の高コスト)が従来の温室生産の経済的に実行可能な実施を厳しく制限する都市地域で、生産施設の収益性を著しく改善する。よって、本明細書により提示される解決策は、労働コストの効率性および操作上の安全性に関連する要因の観点から著しく改善された、従来の垂直のハイワイヤ栽培の解決策に対する実行可能な代替案を提供する。
【0101】
本開示に記載された実施形態が、要望通りに適合され組み合わされ得ることは当業者に理解されている。よって本開示は、添付の特許請求の範囲内にある、当業者が認識可能な、本明細書中記載される装置および方法の全ての可能性のある改変を包有するように意図されている。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】