(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】レーザバリ取りおよび面取り方法ならびにシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/361 20140101AFI20230731BHJP
【FI】
B23K26/361
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500305
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2020040972
(87)【国際公開番号】W WO2022005491
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010606817.9
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523004132
【氏名又は名称】アイピージー・(ベイジン)・ファイバー・レーザー・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー・ジ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD05
4E168AD06
4E168CB04
4E168DA28
4E168DA42
4E168DA43
4E168JA02
4E168JA03
4E168JA05
(57)【要約】
被加工物の、横に延在する2つの側面の間に画定されたバリのある鋭い縁部のバリ取りおよび面取りをするための、開示された方法は、バリのある縁部に対して横に揺動するレーザビームによって側面のうちの1つに材料の溶融池を形成するステップを含む。レーザビームの揺動振幅は、振動するビームが縁部を超えて誘導されるのを防止するように制御される。溶融材料によって生成された熱が伝達されて、バリを液化する。溶融材料は、冷えて凝固するとき被加工物の表面に貯留して、高くなった滑らかな曲面層を形成し、これにより縁部を面取りする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の、横に延在する2つの側面の間に画定されたバリのある縁部の、レーザによるバリ取りおよび面取りの方法であって、
(a)前記側面のうちの1つに入射するレーザビームを揺動させることにより、照射の影響を受けた部分(RAZ)内に前記被加工物の材料の溶融池を生成するステップであって、前記溶融池が生成する熱が、前記バリのある縁部のバリに伝達されて前記バリを液化し、前記レーザビームが前記バリのある縁部を超えて誘導されない、ステップと、
(b)前記レーザビームを、前記バリのある縁部に対して平行に、前記レーザビームの振動に対して横に変位させるステップであって、前記RAZ内の材料の前記溶融池が冷えて、前記縁部を面取りする滑らかな曲面層を形成するように凝固する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、揺動する前記レーザビームを1つの前記側面に合焦するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RAZが前記バリのある縁部を含むかまたは前記バリのある縁部に隣接するように、前記レーザビームの揺動振幅を制御するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
揺動する前記レーザビームの揺動周波数およびレーザビーム出力を制御するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バリのある縁部に沿ったビーム変位の速度を制御することにより、前記レーザビームの振動を中断することなく揺動する前記レーザビームを連続的に変位させるステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被加工物の前記材料が、金属、合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被加工物がAl合金ホイールハブであり、前記ハブから半径方向に延在し、それぞれバリのある縁部を有する複数のスポークが設けられ、前記バリのある縁部が、それぞれ揺動する前記レーザビームによってバリ取りおよび面取りされ、揺動する前記レーザビームが、100~300mm/秒の範囲内の速度で変位され、200Hzから2kHzまでの揺動周波数において0.5~5mmで変化する揺動振幅で振動し、2から20kWの間の平均出力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記揺動振幅が0.5~1.5Wch内に制御され、Wchは指定された面取り幅である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
バリのある鋭い縁部に沿って互いに隣接する少なくとも2つの側面を有する被加工物の前記バリのある鋭い縁部をバリ取りおよび面取りするためのシステムであって、
RAZを照射するように、レーザビームが揺動し、前記側面のうちの1つに揺動する前記レーザビームを合焦するように構成されたレーザヘッドであって、揺動する前記レーザビームの光線エネルギーが、材料の溶融池を形成するように、前記RAZ内の前記被加工物の材料によって吸収され、前記溶融池が生成する熱が前記縁部のバリに伝達されて前記縁部のバリを液化する、レーザヘッドと、
前記レーザヘッドを支持し、揺動する面に対して横方向に、前記バリのある縁部に沿って誘導するアクチュエータであって、前記RAZにおける溶融材料が冷えて凝固し、その結果、前記縁部を面取りする湾曲した表面平滑層が形成され、揺動する前記レーザビームが前記縁部を超えて誘導されるのを阻止するように揺動振幅が制御される、アクチュエータと
を備える、システム。
【請求項10】
前記レーザヘッドに入射する前記レーザビームを生成し、連続的方法(QW)、疑似QWまたはパルス様式で動作するソリッドステートレーザ源または炭酸ガスレーザ源をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記RAZが前記バリのある縁部に隣接して配置されるかまたは前記バリのある縁部を含むように、前記揺動振幅が制御される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記レーザビームが、100Wから20kWの間で変化する平均ビーム出力で生成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記レーザヘッドが、ビームを誘導しかつ合焦する光学部品を用いて構成されており、前記ビームを誘導する光学部品が、100Hzから2KHzまでの揺動周波数において0.1~5mmで変化する前記揺動振幅を有する前記レーザビームを供給するように機能する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記揺動振幅と、揺動周波数と、ビーム出力と、前記バリのある縁部に沿ったレーザヘッド変位の経路とを制御するためのソフトウェアを実行する少なくとも1つのコンピュータと、
前記レーザヘッドを支持し、前記バリのある縁部に沿って制御された速度で誘導する多軸ロボットアームと、
をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記バリのある縁部が、直線であるか、湾曲しているか、または直線と曲線とを組み合わせた縁部形状である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記被加工物が、CWファイバレーザによって生成された揺動する前記レーザビームによる照射によって処理されるAl合金ホイールハブである、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バリのある鋭い縁部のレーザバリ取りおよび面取りのためのシステム、ならびにこのシステムを利用するレーザバリ取りおよび面取りの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示されるバリ取りは、アルミニウム(Al)、鋼および他の種類の金属で作製され得る目的物の粗い縁部を平滑化するプロセスである。したがって、バリは、とりわけ、切削、穿孔、研削、摩砕、剪断、溶接、プレス加工および彫刻などの通常の生産方法に由来する不完全性または突起である。バリは、部品の摩耗の結果でもあり得る。
【0003】
バリがあると、製品の見栄えが悪くなるばかりでなく、完成品の機能にも大きな影響があり得、品質が低下して危害にさえなり得る。バリがあると、粉体塗装や電気めっきなどの他の仕上工程の適用の妨げになり得る。したがって、部品の品質および機能性を確保するためにバリ取りが重要である。バリは、そのままにしておくと、製造業者にとって、可能性として高くつく問題を起こす恐れがある。そこで、部品のバリ取りおよび縁部仕上げが部品コストの30%にも寄与し得るのは当然のことである。
【0004】
バリには5つの一般的なクラスがある。クラス1~2のバリは非常に小さく、大抵の場合容易に除去することができる。クラス3のバリも小さいが、除去するために、仕上げ工具のより広範な使用を必要する。クラス4および5のバリはかなり大きく、金属に強く付着しており、除去するにはバリ取りツールを使用してかなり努力する必要がある。
【0005】
熟練工に既知のバリ取りプロセスは豊富にある。プロセスのうちいくつかは、いわゆる接触バリ取りクラスにグループ分けされ得、手作業のバリ取り、電気機械的バリ取り、バレル研磨、およびバレル仕上げを含む。これらの方法のすべてに、バリ取りツールが、バリ取りする表面と接触するステップが含まれる。
【0006】
手作業のバリ取りは融通性があってコスト効率も良いが、かなり時間がかかり、大量の部品を仕上げるためには不適当である。電気機械的バリ取りは、電流を、バリを溶解するための塩またはグリコール水溶液と組み合わせて使用する。電気機械的バリ取りは、到達するのが困難な箇所のバリ取りを必要とする小さい精密部分に対して有効である。バレル研磨は、部品を、液体と、セラミック、プラスチック、鋼の仕上げ媒体などの摩耗性成分との混合物とともに、回転する樽または振動するボウルの中に入れるステップを含む。機械が回転するとき、媒体が螺旋状に動いて部品を連続的に研磨し、鋭い縁部および他の金属不完全性を除去する。バレル仕上げは、高速回転するタンブラに1つまたは複数の被加工物を入れ、被加工物とともに磨きをかけて所望の仕上げを達成するステップを含む。一般に、接触バリ取り技法には、接触ツールの広範な消耗による高額の消耗コストと、特に隠れたコーナーといった複雑なプロファイルに関連した困難さとを含む、いくつかの課題があることが知られている。
【0007】
実質的に、上記接触法のすべてが自動化され得る。従来の自動化されていない接触プロセスが直面する課題が残されたまま、ロボット化により、機械部品や電子部品の数が急激に増加するので、構造的複雑さおよび機能的複雑さが追加される。実際、バリ取りツールは、ホイールハブコーナーなどの被加工物に干渉なく接触するようにプログラムされなければならないので、ロボットシステムのプロセス経路および機械的動作は、非常に正確にプログラムして制御する必要がある。そうしないと、そのようなロボットシステムに深刻な機械的干渉問題が生じて、ツールが崩壊する恐れがある。その上、動作軸を保護するために、全体の組立体に協働力解析システムも組み込む必要があり、さらなる複雑さおよび保守を必然的に伴う。
【0008】
バリ取りプロセスのさらに別のグループは、様々な電気化学的方法など、非接触の性質を基にグループ化され得る。しかしながら、電気化学的方法は、様々な残留物を除去するための後処理が必要になる可能性がある。
【0009】
別の例には、本開示の主題であるレーザバリ取りがあり、これは非接触のバリ取りプロセスである。レーザバリ取りは、基本的にはレーザ療法の応用であるので、十分に練られたレーザ技術の利点をすべて利用することができる。レーザ加工は、工具なしの非接触プロセスであるので、レーザ処理される材料の熱的物性および十分なプロセス制御が適切である限り、非常に融通性のある機械加工を提供することができる。
【0010】
したがって、レーザ加工には、上記で論じられた接触プロセスの不都合のうち少なくともいくつかがない。明らかに、この技法を利用すると、消耗品はほとんどないかまたはゼロである。レーザ加工中に、レーザビーム経路は、所望の面取りをもたらすために柔軟に調節され得る。レーザベースのバリ取りシステムは、構造が比較的簡単であるため、上記で開示された従来の機械的方法のうちいくつかを実施するシステムと比較して容易に作動される。
【0011】
既知のレーザバリ取りのうちの1つを開示するRU2695092(C1)は、チタン合金からのスタンプ鍛造のドロスを切削するための方法を教示している。開示されている方法は、20~30バールの圧力で60~90m/時の流速のプロセスガスを用い、15~50kWの電力の連続波(CW)イッテルビウム(Yb)ファイバレーザによって、被加工物を切削するステップを含む。切削速度は600-1,200mm/分に保たれ、プロセスガスはアルゴンおよび/または窒素を含む。この方法は、55mmまでのドロス厚さにおいて実行される、切削する被加工物部品を調整するステップをさらに提供する。しかしながら、このように処理された部品には鋭い縁部があり、これは様々な工業用途において受け入れ難い。
【0012】
図2は、2つの直交する表面3と4との間に画定されたガラス縁2を処理する方法を教示する、RU2543222で開示された既知のレーザベースのバリ取りシステムのうちの1つを示す。結果として、両方の直交する表面は焼きなまされる。どちらの表面のレーザ処理も、レーザビーム1が、表面3に対する角度φでガラス縁2に入射する必要がある。しかしながら、この条件は2つの有害な結果を伴う可能性がある。第1に、金属バリは、レーザ照射を反射して、照射された金属の溶融を妨害する傾向があるので、鋭いバリのある金属縁部のレーザ処理は受け入れ難いものになる可能性がある。第2に、この条件により、利用するのが容易ではない可能性がある特別に構成された作業環境が必要になる。
【0013】
米国特許第10442719号は、連続波(CW)炭酸ガスレーザをピコ秒パルスレーザと組み合わせて利用することによって様々な部品の縁部を面取りする方法を開示している。100μmまでの溶解深度を達成することができるCWレーザは、切削、摩砕または浸食の機械加工によって形成されたものなどの粗い表面に対する優れた選択肢である。対照的に、低粗度の面の加工については、ピコ秒のパルス持続時間を有し溶解深さが数μmであるパルスレーザが普通の選択肢である。しかしながら、バリを処理するために使用されるパルスレーザの効率には疑問の余地がある。また、この参考文献は、たった今上記で論じたような技法のすべての不都合を有する縁部に対するレーザビームの合焦を教示しているように見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】露国特許第2695092(C1)号明細書
【特許文献2】露国特許第2543222号明細書
【特許文献3】米国特許第10442719号明細書
【特許文献4】WO/国際広報第2016/205805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、既知の従来技術の上記で開示された不都合を克服するレーザバリ取りプロセスが必要である。
【0016】
発明のプロセスを実施するレーザバリ取りシステムに対する別の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の概念は、間に被加工物の鋭いバリのある縁部を画定する、被加工物の2つの側面の一方のみに合焦した揺動レーザビームを利用する。揺動レーザビームは、当初は照射の影響を受けた部分(RAZ)内の材料を溶融する。溶融材料が冷えると、湾曲した滑らかな面取りされた縁部を形成する。
【0018】
本開示の一態様によれば、本発明のレーザバリ取りプロセスは、被加工物の1つの側面に高エネルギー揺動レーザビームを合焦するステップを包含することにより、指定された面取り幅に依拠して、鋭く、ぎざぎざがある縁部を含むかまたはその近くで終結するRAZ内の材料を溶融する。RAZ内の材料が液化されて溶融池を形成する。液化物によって生成された熱が縁部に伝達されて、バリが融解する。レーザビームが縁部に沿って連続的に進むとき、液化物は実質的に瞬間的に冷えて凝固し、縁部をその全長に沿って面取りして曲面層を形成する。
【0019】
上記で開示された態様の方法の1つの特徴によれば、レーザビームは、鋭い縁部に沿ったビームの変位方向を横切る面において揺動する。揺動振幅は、所望の幅を有するRAZをもたらし、かつレーザビームが縁部を超えて伝搬するのを防止するように決定され、かつ制御される。言い換えれば、揺動振幅は、RAZが、縁部の隣に配置される、すなわち縁部に隣接するかまたは縁部を含むように、選択される。しかしながら、レーザビームは縁部を超えて誘導されない。
【0020】
一態様による方法の別の特徴は、縁部に沿ったレーザビーム変位の速度と揺動の振幅および周波数とを制御するステップを含む。これらおよび他のパラメータは、レーザ処理される材料、縁部形状、RAZの幅および他の局所条件に依拠して、制御可能に変化し得る。
【0021】
本開示のさらなる態様は、本発明の方法を実行するレーザバリ取りシステムに関する。この態様によれば、本発明のシステムはモジュール式である。各モジュールが、それぞれ高出力レーザ源、揺動レーザヘッドおよび多軸ロボットを含む。レーザヘッドは、RAZ内の被加工物の表面においてビームを合焦しかつ揺動させるよう構成された、ビームを誘導して合焦する光学部品を用いて構成される。
【0022】
本発明のシステムは自動化されており、したがって、システムモジュールの多くのパラメータを制御し調節するためのソフトウェアを実行するコンピュータを有する。これらのモジュールがそれぞれ専用のコンピュータを有してもよいが、好ましくは1つのオンボードコンピュータだけが全体のシステムを管理する。
【0023】
当業者なら容易に理解するように、開示された方法を実行することができるのは本発明のレーザシステムのみである。両方の態様の特徴は交換可能であり、互いに任意の可能な組合せで利用され得る。
【0024】
少なくとも1つの実施形態の様々な態様が添付図を参照しながら以下で論じられ、添付図は原寸に比例するようには意図されていない。図は、様々な態様および実施形態の図解およびさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成するが、何らかの特定の実施形態の範囲の定義として意図されたものではない。図面は、明細書の残りとともに、記述されて特許請求される態様および実施形態の原理および動作を説明するのに役立つ。図において、様々な図に示されるそれぞれの同一またはほぼ同一の構成要素は、類似の数字で表される。明瞭さのために、すべての図におけるすべての構成要素がラベルを付けられるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】既知のレーザバリ取り方法のうちの1つを示す図である。
【
図4】
図3A~
図3Cのプロセスを実行するように構成された本発明のレーザバリ取りシステムの線図である。
【
図5A】
図4のシステムのレーザ源を示す図である。
【
図5B】
図4のシステムのレーザヘッドを示す図である。
【
図5C】
図4のシステムのロボット構成要素を示す図である。
【
図6A】例示的なAl合金ホイールハブの、
図3の本発明のシステムによる処理の前後を示す図である。
【
図6B】例示的なAl合金ホイールハブの、
図3の本発明のシステムによる処理の前後を示す図である。
【
図7A】本発明のプロセスによるレーザ処理前の、
図6Aおよび
図6Bのホイールハブの一部をより詳細に示す図である。
【
図7B】本発明のプロセスによるレーザ処理後の、
図6Aおよび
図6Bのホイールハブの一部をより詳細に示す図である。
【
図8B】
図8Aのものとは別の寸法に面取りされた縁部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の態様は、レーザバリ取りの方法と、開示された方法を実行するシステムとを含む。本発明の方法およびシステムは、既知のバリ取り技法および装置が直面する問題を克服するかまたは解決する。以下の説明では、Al合金ホイールハブなどの金属被加工物を基に本発明の概念が開示されるが、開示された方法およびシステムによれば、構造的な修正なしで、または冶金学およびレーザ技術における当業者にとって明白な最小限の修正で、ステンレス鋼、チタンなどの他の金属が効果的に処理され得る。同様に、プラスチック製またはガラス製の被加工物は、するにしても表面的な改変の対象となる開示された方法およびシステムを使用してバリ取りされ得る。その上、本発明の方法およびシステムによって後に処理される被加工物を製造するために使用される方法は、切断、穿孔、研削、摩砕、剪断、溶接、プレス加工、彫刻、鋳造等を制限なく含み得る。
【0027】
図3A~
図3Cは、被加工物25の縁部のバリ取りおよび面取りのための、本発明のプロセスの順次ステップを示す。被加工物25は、何らかの特定の形状に限定されることなく、無制限の多種多様な縁部形状を伴う無数の規則的な幾何学的形状および不規則な幾何学的形状を有し得る。被加工物のいかなる具体的な形状にも関係なく、被加工物の、たとえば側面20および30といった複数の側面が、縁部15に沿って互いに隣接する。縁部15には望ましくない突起またはバリ10があり、本発明の方法を利用して除去するべきである。バリ取りは、レーザビーム50を生成するレーザベースのシステムによって、以下で開示されるやり方で実行される。
【0028】
特に
図3Aを見ると、本発明のプロセスの最初のステップは、レーザビーム50によって側面30を照射するステップを含む。以下で説明されるように、ビーム50は、側面30に合焦され、レーザビーム50が縁部15に沿って誘導される方向に対して横の、両矢印ODで指示される方向に揺動する。ビーム50は、揺動するとき、RAZ内に、ビームの揺動振幅よりも少し大きくなり得る幅の、材料の溶融池を形成する。レーザ照射を吸収することによって生成された熱が、バリ10に伝達されて、これを融解する。揺動振幅は、ビーム50が、OD方向において、縁部15に形成されたバリ10を超えて誘導されないように選択されて制御される。言い換えれば、被加工物25の側面20は直接照射されない。
【0029】
図3Bに示されるように、RAZ内の材料は、レーザ照射を吸収すると、レーザビーム出力、揺動振幅および揺動周波数などの制御されたレーザビームパラメータによって実現される溶融池へと急激に加熱される。材料が溶融池の中で溶融するとき、バリ10に熱が伝達されて融解させる。一般的には、面取り幅が指定されているので、一般に、RAZに対応する揺動振幅は、最大でも面取り幅(Wch)を少し上回るように選択される。しかしながら、揺動振幅は、好ましくは、指定されたWchの1/2である。前述のことに基づき、揺動振幅は与えられた0.5~1.5Wchの範囲内で変化し得、ただし、当然のことながら、ビームは縁部を画定する側面のうちの1つには入射しない。揺動周波数はレーザ源の出力および処理速度に依拠する。
【0030】
図3Cは、溶融材料が急激に冷えて凝固するステップを示す。材料は、凝固するとき、溶融領域の表面張力によって貯留し、基体の表面において丸まる。結果として、本発明のプロセス中に、レーザビーム50が、縁部に沿って、振動方向ODに対して垂直な方向に連続的に誘導されるとき、凝固した材料の少し高くなった滑らかな屈曲層40が、縁部15を、その全長に沿って面取りする。
【0031】
図4は、上記で開示された、被加工物25の縁部15のバリを取るための方法を実行するように構成された本発明のシステムの動作原理を図解的に示す。このシステムは、たとえば被加工物25の上面30といった表面にレーザビーム50を合焦するレーザヘッド70を用いて構成される。被加工物25の側面30と側面20とは直交し得、または直角とは異なる角をなして延在することもある。側面20と30とは、この角度に関係なく、隣接して延長する縁部15を画定し、これは、被加工物の生産方法の結果として、その全長に沿って、過度に鋭くかつ/またはバリ10を伴って形成される可能性がある。レーザヘッド70は、上記で論じられた従来技術によって教示されるように、レーザビーム50を側面30の縁部15ではなくRAZ上に導くように配置され、RAZは、縁部15の近くで終結してよく、縁部15を含んでもよい。ビーム50の入射角は、側面30に対して実質的に90°に示されている。しかしながら、この角度は90°から少し外れてよく、これは、本発明のシステムの基本構成を変更することはないが、本発明の方法の効率に影響を及ぼす可能性がある。
【0032】
図5A~
図5Cは、本発明のシステムのそれぞれの不可欠な構成要素を示す。特に
図5Aを参照して、レーザ源80は、好ましくはW~kWの出力範囲のレーザビーム50を生成するように構成された高出力の連続波Ybファイバレーザである。出力は、被加工物25の材料、厚さおよびバリサイズに依拠して、制御可能に変化し、低い方は100Wになり得る。出力の上限に対する制約はビーム生成パラメータ(BPP)しかない。たとえば、単一モード(SM)ビームが必要とされる場合には、出力は、低い方は100W、高い方は、5kW、20kW、または必要に応じて少し大きいBPPを用いたより高いものになり得る。たとえば、
図6Aおよび
図6BのAl合金ホイールハブ110は、SMファイバレーザ80を有する本発明のシステムによって2から6kWの間の出力で試験された。光線の品質が重要でなければ、CWマルチモードレーザは、比較的優れたBPPを用いてかなり高い出力を生成することができる。
【0033】
レーザ源80は、連続波(CW)、疑似連続波(QCW)またはCWレーザと同一の出力範囲内の平均パルス出力によって特徴付けられるパルス様式において、別の等級の効率でも動作し得る。何らかの所与の材料が1μmの波長範囲の外の波長においてより効率よく処理されることが分かっているなら、波長さえ変化させてよい。また、レーザ源80は、固体レーザおよび炭酸ガスレーザのすべての構成を含み得る。
【0034】
レーザ源80には、大抵の場合オンボードコンピュータ90が備わっていて、必須ではないが、好ましくは、
図5A~
図5Cに破線で示されるように、レーザ源80、レーザヘッド70およびロボット100といったすべての不可欠なシステム構成要素のパラメータを制御する。あるいは、不可欠な構成要素の各々に、それ自体の専用コンピュータがあってもよい。コンピュータの記憶装置は、レーザ源関連、レーザヘッド関連およびロボット関連の、様々なパラメータを含有し得る。たとえば、レーザ源80は、ビーム出力、デューティサイクルなどによって特徴付けられる。レーザ関連のパラメータおよびロボット関連のパラメータは、ビーム振動の振幅および周波数、焦点距離、レーザヘッドの速度および縁部15に沿った変位の軌道などを含む。複数の制御フィードバックループがあって、すべてのパラメータが、縁部形状、レーザ処理される材料およびRAZの所望の寸法に依拠して、リアルタイムで調節され得る。
【0035】
図5Bを参照して、レーザヘッド70は、示されていないがWO/2016/205805において詳細に開示されている、ビーム誘導しかつ合焦する光学部品を用いて組み立てられており、この文献の内容の全体が参照によって組み込まれる。この参考文献は、それぞれのミラーを互いに対して角度的に変位させるように構成された2つのガルバノメータまたは他のアクチュエータを有する揺動レーザヘッド70を教示している。これらのミラーは、ビームの縁部15に沿った変位方向に対して横方向の面において揺動するビーム50を形成する。揺動振幅は、揺動ビーム50が縁部15を超えて誘導されないように選択される。言い換えれば、被加工物25の側面20は直接照射されない。
【0036】
Al合金ホイールハブ110(
図6A)を包含する試験において、レーザビーム50を振動させるように構成されたレーザヘッド70が使用された。ハブ110は、パラメータのセットのうちの1つに従って、連続波(CW)様式、100Hz~2kHzの間で変化する揺動周波数、0.1~5mmの間で変化する揺動振幅、および60~100mm/秒の処理速度で動作する、2.5~3kWのマルチモード(MM)ファイバレーザを用いて処理された。パラメータの別のセットは、3~6kWの連続波MMレーザ、100~2000Hzの揺動周波数、0.5~5mmの振幅、約100~300mm/秒の処理速度を含むものであった。一般に、レーザ源の出力が大きければ処理速度がより高くなる。
【0037】
図5Cは例示的な多軸ロボット100を示す。多軸ロボット100は、レーザヘッド70を支持し誘導するアーム105を含む。ロボット100の構成は、レーザ源80およびレーザヘッド70の構成と同様に、それぞれのシステム構成要素の必要な機能が実行される限り、無制限の多種多様な設計を有し得る。ロボットアーム105により、多種多様な面に延在する様々な輪郭の縁部のバリ取りおよび面取りが可能になる。たとえば、ホイールハブ110に対する試験に参加するロボット100は、レーザヘッド70を、縁部15に沿って、100~300mm/秒の範囲で変化する速度で変位させるように構成されたものであった。速度は、レーザヘッド70の振動と直線/回転の運動とを同時にもたらすように制御される。直線および/または回転の運動は、直線のプロファイル、湾曲したプロファイルおよびより複雑なプロファイルを含み得る縁部ジオメトリに依拠する。
【0038】
次に
図6Aおよび
図6Bを見ると、前述のように、本発明の方法およびシステムは、ハブ130から半径方向に延在する複数のスポーク120を有する
図6AのAL合金ホイールハブ110に対して試験された。知られているように、ホイールは最初に旋盤で加工される。旋盤加工の後に、たとえばそれぞれのスポーク120の後方の縁部といった多くの縁部は鋭く、ぎざぎざがある。従来の自動バリ取り方法は、たとえばスポーク120とハブ130との間のコーナーを含むホイールの少なくともいくつかの領域の処理において、あまり効果的ではない。
【0039】
図6Bに示されるように、開示されたプロセスは、伝統的方法に関連したある特定の困難さを克服することが証明された。詳細には、示されたスポーク120には、本発明の方法による面取りが未了の縁部140がある。対照的に、他の縁部150はレーザ処理されている。見られるように、処理された縁部150は面取りされていてバリがない。この試験が示したのはホイールハブ110の鋭いコーナーの局部加熱のみであり、ホイールの全体的な温度上昇は、需要家による要求温度範囲である60~100℃未満であったことを意味する。実際には、全体のホイールハブ110の全体的な温度上昇は、10℃未満であり処理要件を満たし、ホイールハブの構造強度や他の特性には影響がない。
【0040】
図7Aおよび
図7Bは、縁部150の拡大像を有するそれぞれの被加工物サンプルAおよびBを示し、
図7Aは、本発明のプロセスが行われる以前の、バリ10がある縁部を示す。
図7Bは、本発明のレーザ処理後の、縁部の鋭さを平滑化して凝固された材料のバリがない屈曲層40を示す。
【0041】
図8Aおよび
図8Bは、本発明の方法によってレーザ処理された、バリのない滑らかな縁部を有するそれぞれのサンプルAおよびBを示す。これらのサンプル間の唯一の相違は、サンプルAが2.5mm幅の広いRAZを有し、サンプルBが2mm幅のRAZを有して形成されていることである。
【0042】
このように、少なくとも1つの例のいくつかの態様を説明してきたが、当業者には、様々な改変形態、修正形態、および改善が容易に思い浮かぶはずであることを理解されたい。態様の各々の開示された特徴のすべてが、互いに組み合わされ得、または任意の望ましい組合せで使用され得る。上記で開示された動作パラメータは例示であり、必要に応じて、本開示の独創的な範囲を含むことなく制御可能に変化され得る。したがって、前述の説明および図は、ほんの一例である。
【符号の説明】
【0043】
1 レーザビーム
2 ガラス縁
3 表面
4 表面
10 バリ
15 縁部
20 側面
25 被加工物
30 側面、上面
40 屈曲層
50 レーザビーム、揺動ビーム
70 レーザヘッド、揺動レーザヘッド
80 レーザ源、SMファイバレーザ
90 オンボードコンピュータ
100 ロボット、多軸ロボット
105 アーム、ロボットアーム
110 Al合金ホイールハブ
120 スポーク
130 ハブ
140 縁部
150 縁部
【国際調査報告】