(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】弁送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501021
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 US2021040623
(87)【国際公開番号】W WO2022010974
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】バッカス,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アダメク-バワーズ、ジャスパー・エリントン
(72)【発明者】
【氏名】スカロ,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】オークデン,ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC05
4C097MM09
4C097SA10
(57)【要約】
弁アンカーと人工弁とを自己弁輪まで送達するための送達システムおよび方法が提供される。アンカーは、アンカーに取り付けられたひもによって自己弁輪付近に配備することができる。アンカー位置および/または人工弁の配備を調整するための有利な位置決めのために、ひもの一部を配備されたアンカーの下に反転形態で位置づけることができる。位置決めツールを、ひもの上を追従させ、アンカーを適正に位置づけるために使用することができる。位置決めツールは、配備されたアンカーの効率的な位置決めを可能にし、人工弁を配備するための余地を与えるように構成された、1つまたは複数の屈曲を含む硬直化状態に遷移するように構成可能である。アンカーが適正に位置づけられると、人工弁を人工弁輪内および弁アンカー内に配備することができる。
【選択図】
図2E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における罹患自己弁を治療する方法であって、
ひもが取り付けられたアンカーで前記罹患自己弁の腱索を取り囲むステップと、
前記アンカーが前記腱索の周囲に位置づけられた状態で、前記ひもの一部を前記罹患自己弁の弁輪を通って心臓の第1の部屋から前記心臓の第2の部屋に並進させるステップであって、前記ひもの並進が前記ひもに前記第2の部屋内で屈曲を形成させる、並進させるステップと、
弁送達デバイスに前記ひも上を追従させるステップと、
前記弁送達デバイスから人工弁を前記罹患自己弁の前記弁輪内と前記アンカー内とに解放するステップとを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
操縦可能カテーテルを含むアンカー送達デバイスによって前記アンカーを前記罹患自己弁まで送達するステップをさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記ひもの前記一部を前記罹患自己弁の前記弁輪を通って並進させるステップが、
前記操縦可能カテーテルを前記アンカーの面に向かって前進させるステップと、
前記ひもの前記アンカーへの取り付けを維持した状態で前記ひもを前進させて、前記第1の部屋内で少なくとも部分的に巻いているたるみを前記ひもに生じさせるステップと、
前記ひもの少なくとも一部を前記第2の心房内に位置づけるために、前記操縦可能カテーテルを前記アンカーの前記面を越えて前進させるステップとを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記操縦可能カテーテルを前進させるステップが、前記操縦可能カテーテルを前記第2の部屋の心尖に近い位置まで前進させるステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記アンカー送達デバイスを前記罹患自己弁から後退させるステップをさらに含む、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、前記アンカー送達デバイスが、前記操縦可能カテーテル内を並進するように構成されたアンカーガイドをさらに含み、前記アンカーガイドが前記アンカーを収容するための内部管腔を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記アンカーガイドが、前記アンカーガイドからの前記アンカーの配備時に湾曲形状を呈する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記ひもが、屈曲形態であるときに前記第2の部屋内でほぼU字形屈曲を呈する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記ひもを前記屈曲形態に位置決めするステップは、前記第2の部屋内で延長されたひも長をもたらすように、前記ひもを操縦可能カテーテルに対して相対的に遠位に並進させるステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記弁送達デバイスに前記ひもの上を追従させるステップが、弁送達カテーテルを前記罹患自己弁の前記弁輪を通って前進させるステップを含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記弁送達デバイスに前記ひもの上を追従させるステップは、屈曲した前記ひもの上に位置決めツールを配備するステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記位置決めツールを、前記位置決めツールの遠位端が、前記アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具と連結するまで遠位側に前進させるステップをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記位置決めツールを硬直化させるように前記位置決めツールに沿って圧縮力を加えるステップをさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記圧縮力を加えるステップが、前記ひもに張力をかけるように前記ひもを近位側に引くステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記ひもに張力をかけるように前記ひもを近位側に引くステップが、前記ひもに制御された張力度を加えるためにハンドルを使用するステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記圧縮力を加えるステップが、前記位置決めツールに前記アンカーの弁輪下でほぼU字形屈曲を呈させる、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記位置決めツールの遠位端を前記アンカーに解放可能に取り付けるステップをさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、前記罹患自己弁に対して相対的な前記アンカーの位置を前記位置決めツールを使用して調整するステップをさらに含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記アンカーの位置を調整するステップが、前記アンカーを前記罹患弁の前記弁輪に向かって移動させるために前記位置決めツールを近位側に引くステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記アンカーの位置が、前記罹患自己弁の前記弁輪により近くなるように調整される、方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、前記アンカーが前記弁送達デバイスの遠位端の面に対して垂直な面に位置するように、前記アンカーの位置が調整される、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記ひもを前記第2の部屋内で屈曲させるステップが、前記ひもを前記第2の部屋内で反転させるステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、操縦可能カテーテルを含むアンカー送達システムによって、前記アンカーを前記罹患自己弁まで送達するステップをさらに含む、方法。
【請求項24】
心臓の罹患弁まで人工弁を送達する送達システムであって、
弁アンカーに接続するように構成され、前記心臓の外部の位置から少なくとも前記心臓の第1の部屋を通って前記心臓の第2の部屋内に延びるようにさらに構成されたひもと、
前記ひもの上で前記第2の部屋内まで延びるように構成される弁送達カテーテルであって、中に前記人工弁を保持し、前記ひもが前記弁アンカーに接続されている状態で、前記人工弁を前記弁アンカー内に解放するように構成された弁送達カテーテルと、
を含む、送達システム。
【請求項25】
請求項24に記載の送達システムであって、前記ひもが、前記心臓の前記第2の部屋内で実質的にU字形状を呈するように構成されている、送達システム。
【請求項26】
請求項24に記載の送達システムであって、前記ひもが、前記弁アンカーに解放可能に取り付けられている、送達システム。
【請求項27】
請求項26に記載の送達システムであって、前記ひもの遠位端が、前記弁アンカーの近位端に解放可能に取り付けられるように構成されている、送達システム。
【請求項28】
請求項24に記載の送達システムであって、前記弁アンカーが螺旋形状を有し、前記弁送達カテーテルが、前記人工弁の解放の前に前記人工弁を位置合わせするように、前記弁アンカーの中央開口部を通って延びるように構成されている、送達システム。
【請求項29】
請求項28に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルが、前記人工弁の中央部を前記罹患弁に軸方向に位置合わせするように構成されている、送達システム。
【請求項30】
請求項24に記載のシステムであって、前記弁送達カテーテルの遠位端が、前記ひもを通過させる大きさおよび形状とされたポートを有するノーズコーンを含み、前記ポートが前記弁送達カテーテルの中心軸と同軸である中心軸を有する、送達システム。
【請求項31】
請求項24に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルを通り、前記ひもの上に延びるように構成された位置決めツールをさらに含み、前記位置決めツールは、前記弁アンカーに接続し、前記弁アンカーが前記心臓内に配備された後で前記弁アンカーの位置を制御するように構成されている、送達システム。
【請求項32】
請求項31に記載の送達システムであって、前記位置決めツールが、所定の形状に屈曲するように構成された1つまたは複数の領域を含む、送達システム。
【請求項33】
請求項32に記載の送達システムであって、前記領域が、相対的に低減された曲げ剛性を有する、送達システム。
【請求項34】
請求項32に記載の送達システムであって、前記1つまたは複数の領域が、前記位置決めツールに圧縮力が加えられると前記領域が前記所定の形状に屈曲することを可能にするように構成された、1つまたは複数の切り欠きを含む、送達システム。
【請求項35】
請求項32に記載の送達システムであって、前記1つまたは複数の領域が、その中の前記ひもに張力がかかると前記所定形状に屈曲するように構成されている、送達システム。
【請求項36】
請求項32に記載の送達システムであって、第1の領域が直線形状からU字形に遷移するように構成されている、送達システム。
【請求項37】
請求項36に記載の送達システムであって、第2の領域が、直線形状から、前記弁アンカーの中心に向かって半径方向内側に屈曲する湾曲形状に遷移するように構成されている、送達システム。
【請求項38】
請求項32に記載の送達システムであって、前記位置決めツールが、前記弁アンカーの近位縁または前記弁アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具の近位縁に係合するように構成された遠位縁を含む、送達システム。
【請求項39】
請求項38に記載の送達システムであって、前記位置決めツールの遠位縁は、傾斜が付けられており、前記弁アンカーの前記近位縁における、傾斜が付けられた前記遠位縁に対応するように傾斜が付けられた縁、または前記弁アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具の前記近位縁と係合するように構成されている、送達システム。
【請求項40】
請求項24に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルによる前記人工弁の送達の前に、前記弁アンカーを前記心臓内に配備するように構成されたアンカー送達デバイスをさらに含む、送達システム。
【請求項41】
請求項40に記載の送達システムであって、前記アンカー送達カテーテルが、前記弁アンカーを前記心臓内に位置づけるために屈曲するように構成された遠位端を有する操縦可能カテーテルを含む、送達システム。
【請求項42】
請求項41に記載の送達システムであって、前記アンカー送達カテーテルが、前記ひもの上で延びるように構成されている、送達システム。
【請求項43】
請求項40に記載の送達システムであって、前記アンカー送達デバイスが、前記ひもの一部を前記心臓の前記第1の部屋から前記心臓の第2の部屋内に位置づけるように構成された操縦可能カテーテルを含む、送達システム。
【請求項44】
請求項43に記載の送達システムであって、前記操縦可能カテーテルが、前記ひもを前記心臓の前記第2の部屋内で反転形態に配置するように構成されている、送達システム。
【請求項45】
請求項43に記載の送達システムであって、前記操縦可能カテーテルが、前記心臓の前記第2の部屋内で前記ひものU字形部分を形成するように構成されている、送達システム。
【請求項46】
請求項43に記載の送達システムであって、前記アンカー送達カテーテルが、前記弁アンカーの中央開口部を通って延びるように構成されている、送達システム。
【請求項47】
請求項24に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルが内側シャフトと外側シースとを含み、前記人工弁が前記内側シャフトと前記外側シースとの間で圧縮される、送達システム。
【請求項48】
請求項47に記載の送達システムであって、前記内側シャフトが位置決めツールを収容するように構成されており、前記位置決めツールは、前記弁アンカーが前記罹患弁の腱索の周囲に巻き付けられると、前記弁アンカーの位置を調整するように構成されている、送達システム。
【請求項49】
請求項48に記載の送達システムであって、前記位置決めツールが、前記内側シャフト内を並進し、前記弁送達カテーテルの遠位端から延びるように構成されている、送達システム。
【請求項50】
請求項47に記載のシステムであって、前記弁送達カテーテルの近位側への後退が、前記人工弁を拡張させるために近位側に後退させられるように構成されている、システム。
【請求項51】
心臓の罹患弁まで人工弁を送達するための送達システムであって、
前記罹患弁の腱索の少なくとも一部を取り囲む弁アンカーに接続されるように構成されたひもであって、前記心臓の外部の位置から、少なくとも前記心臓の第1の部屋を通って前記心臓の第2の部屋内まで延びるようにさらに構成されたひもと、
前記腱索の少なくとも一部を取り囲む前記弁アンカーの位置を調整するように構成された位置決めツールであって、前記ひもの上を追従し、前記弁アンカーの近位部と連結するように構成された細長い本体を含む位置決めツールと、を含み、前記位置決めツールは、前記位置決めツールに軸方向圧縮力が加えられると屈曲して前記位置決めツールを所定の形状に配置するように構成された、1つまたは複数の領域を含む、送達システム。
【請求項52】
請求項51に記載の送達システムであって、前記所定の形状が、前記心臓の前記第2の部屋内で前記弁アンカーに対して弁輪下に位置づけられるように構成された反転部を含む、送達システム。
【請求項53】
請求項51に記載の送達システムであって、前記所定の形状が、実質的にU字形の屈曲部を含む、送達システム。
【請求項54】
請求項51に記載の送達システムであって、前記1つまたは複数の領域が、前記細長い本体の周囲の一部に沿った1つまたは複数の切り欠きを含み、前記位置決めツールの圧縮により前記1つまたは複数の切り欠きの幅間隙が減少する、送達システム。
【請求項55】
請求項51に記載の送達システムであって、前記位置決めツールの前記所定の形状が、前記弁アンカーの中心に向かって半径方向内側に屈曲する、前記位置決めツールの遠位端における第2の屈曲部を含む、送達システム。
【請求項56】
請求項51に記載の送達システムであって、前記位置決めツールを中に収容するように構成された弁送達カテーテルをさらに含み、前記位置決めツールが前記弁送達カテーテル内を並進し、前記弁送達カテーテルの遠位端から延びるように構成されている、送達システム。
【請求項57】
請求項56に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルが、さらに前記人工弁を中に収容する、送達システム。
【請求項58】
請求項56に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルが、前記人工弁の中央開口部内に内側シャフトを含み、前記内側シャフトが前記位置決めツールを中に収容するように構成されている、送達システム。
【請求項59】
請求項55に記載の送達システムであって、前記弁送達カテーテルの近位側への後退により前記人工弁が拡張する、送達システム。
【請求項60】
請求項51に記載の送達システムであって、前記所定の形状が、前記弁アンカーに加えられた力を前記罹患弁の面に向かう方向に伝達して前記弁アンカーを前記罹患弁の前記面に向かって移動させるように構成されている、送達システム。
【請求項61】
請求項51に記載の送達システムであって、前記位置決めツールは、前記ひもが近位側に引かれると屈曲し、硬直化するように構成されている、送達システム。
【請求項62】
請求項51に記載の送達システムであって、前記位置決めツールは、前記位置決めツールが遠位側に押されると屈曲し、硬直化するように構成されている、送達システム。
【請求項63】
心臓の罹患自己弁を治療する方法であって、
アンカーが前記罹患自己弁の腱索を取り囲むようにアンカー送達カテーテルからアンカーを配備するステップであって、前記アンカーが配備された後、ひもが前記アンカー送達カテーテルの遠位端から延び、前記アンカーに取り付けられる、配備するステップと、
前記アンカー送達カテーテルの前記遠位端を前記心臓の第1の部屋から前記心臓の第2の部屋まで並進させるステップであって、前記アンカー送達カテーテルの前記遠位端が、配備された前記アンカーの中央開口部を通って並進させられる、並進させるステップと、
前記ひものループが前記心臓の前記第2の部屋内に配置されるまで、前記ひもを前記アンカー送達カテーテルを通って前進させるステップと、
前記ひもからたるみが除去されるまで前記ひもを前記アンカー送達カテーテル内で後退させるステップであって、前記たるみの除去が前記ひもにかかる張力を解放し、前記ひもに前記心臓の前記第2の部屋内で反転形態をとらせる、後退させるステップとを含む、方法。
【請求項64】
請求項63に記載の方法であって、前記心臓から前記アンカー送達カテーテルを後退させるステップをさらに含む、方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法であって、人工弁が中に格納された弁送達カテーテルに前記ひもの上を追従させるステップをさらに含む、方法。
【請求項66】
請求項65に記載の方法であって、前記弁送達カテーテルに前記ひもの上を追従させるステップが、前記心臓の前記第2の部屋内の前記ひもの一部の上に位置決めツールを配備するステップを含む、方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法であって、前記位置決めツールの遠位端が前記アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具に係合するまで、前記位置決めツールが前進させられる、方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法であって、前記アンカーが係合した前記位置決めツールを並進させることによって、配備された前記アンカーの位置を調整するステップをさらに含む、方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、配備された前記アンカーの前記位置を調整するステップが、前記アンカーを前記罹患弁の弁輪面に近づくように移動させるステップを含む、方法。
【請求項70】
請求項65に記載の方法であって、前記人工弁を前記弁送達カテーテルから前記罹患自己弁の弁輪内と前記アンカーの前記中央開口部内とに解放するステップをさらに含む、方法。
【請求項71】
請求項63に記載の方法であって、前記ひもが、前記ひもが前記反転形態であるときに前記心臓の前記第2の部屋内でU字形屈曲を含む、方法。
【請求項72】
請求項63に記載の方法であって、前記アンカーを前記アンカー送達カテーテルから配備するステップが、前記アンカーを、前記アンカー送達カテーテル内に位置づけられているアンカーガイドの遠位端から配備することを含む、方法。
【請求項73】
請求項72に記載の方法であって、前記アンカーガイドを前記アンカー送達カテーテルに対して相対的に遠位に並進させるステップをさらに含む、方法。
【請求項74】
請求項72に記載の方法であって、前記アンカーガイドに、前記腱索の周囲への前記アンカーの配備を容易にするように構成された湾曲形状を呈させるステップをさらに含む、方法。
【請求項75】
請求項63に記載の方法であって、前記アンカー送達カテーテルの前記遠位端を前記アンカーの中央開口部を通して操縦するために、前記アンカー送達カテーテルを屈曲させるステップをさらに含む、方法。
【請求項76】
人工弁を罹患弁まで送達するための送達システムであって、
外側シースと、
中空の内側シャフトであって、ひもを受け入れるように構成された、中を通って延びるひも管腔を画定する、内側シャフトと、
を含む送達カテーテルと、
前記ひも管腔と軸方向に位置合わせされ、前記ひもを受け入れるように構成されたポートを遠位端に含むノーズコーンであって、前記ノーズコーンが前記送達カテーテルの遠位端に可逆的に結合して前記遠位端から延び、前記人工弁を前記送達カテーテル内に保持するように形成されているノーズコーンとを含む、送達システム。
【請求項77】
請求項76に記載の送達システムであって、前記ひも管腔が前記外側シースと同軸に位置づけられている、送達システム。
【請求項78】
請求項76に記載の送達システムであって、前記ノーズコーンが前記送達カテーテルに結合されると前記ポートが前記外側シースと同軸に位置づけられる,送達システム。
【請求項79】
請求項76に記載の送達システムであって、細長い位置決めツールをさらに含み、前記位置決めツールは、
前記ひも管腔内及び前記ポートを通って前記ひもの上を前記ひもの遠位端まで追従し、
患者の生体構造に対して弁アンカーの向きを調整する
ように構成された、送達システム。
【請求項80】
請求項79に記載の送達システムであって、前記細長い位置決めツールが、前記弁アンカーの前記向きを調整するための優先的に屈曲可能な少なくとも2つの領域を含む、送達システム。
【請求項81】
請求項80に記載の送達システムであって、前記向きの調整が、前記少なくとも2つの領域のうちの第1の領域および第2の領域における第1の所定の屈曲部および第2の所定の屈曲部の形成を含む、送達システム。
【請求項82】
請求項81に記載の送達システムであって、前記第1の所定の屈曲部または前記第2の所定の屈曲部が、約120度~約310度の角度を含む、送達システム。
【請求項83】
請求項82に記載の送達システムであって、前記第1の所定の屈曲部または前記第2の所定の屈曲部が、約70度~約100度の角度を含む、送達システム。
【請求項84】
請求項82に記載の送達システムであって、前記第1の所定の屈曲部または前記第2の所定の屈曲部が、約2ミリメートル(mm)~約20mmの曲率半径を含む、送達システム。
【請求項85】
請求項81に記載の送達システムであって、前記少なくとも2つの領域が、前記位置決めツールの残りの部分に対して相対的に低減された圧縮剛性を有する、送達システム。
【請求項86】
請求項82に記載の送達システムであって、前記少なくとも2つの領域が、長手方向軸に沿った前記位置決めツールへの圧縮力の印加時に屈曲するように形成されている、送達システム。
【請求項87】
請求項80に記載の送達システムであって、前記少なくとも2つの領域のうちの第1の領域が、前記位置決めツールの長手方向軸に沿って第2の領域から離隔している、送達システム。
【請求項88】
請求項80に記載の送達システムであって、前記2つの領域のうちの第1の領域が、前記位置決めツールの方位軸に沿って第2の領域から離隔している、送達システム。
【請求項89】
請求項80に記載の送達システムであって、前記位置決めツールが前記ひもの遠位部まで延ばされると、前記少なくとも2つの領域が前記送達カテーテルの前記遠位端に対して遠位に位置する、送達システム。
【請求項90】
請求項80に記載の送達システムであって、前記少なくとも2つの領域が、前記位置決めツールの外壁に複数の切り欠きを含む、送達システム。
【請求項91】
請求項79に記載の送達システムであって、前記位置決めツールの遠位端が、前記ひもの前記遠位部と相互作用する形状および大きさとされている、送達システム。
【請求項92】
請求項91に記載の送達システムであって、前記位置決めツールの前記遠位端が、前記ひもの前記遠位部の近位端と相互作用可能である形状および大きさである、送達システム。
【請求項93】
請求項91に記載の送達システムであって、前記位置決めツールの前記遠位端が、傾斜部を含み、前記傾斜部は、前記ひもの前記遠位部の近位端における、前記傾斜部に対応する傾斜部と相互作用する形状および大きさとされている、送達システム。
【請求項94】
請求項76に記載の送達システムであって、弁送達部材をさらに含み、前記弁送達部材が、
(a)前記送達カテーテルの前記遠位部内への配置のためおよび前記弁送達部材と前記送達カテーテルとの間の相対移動のため、及び(b)前記人工弁を運ぶための、形状および大きさとされ、且つ、
前記ひもを受け入れるように構成された弁送達部材管腔を画定する内側シャフトを有する、送達システム。
【請求項95】
請求項94に記載の送達システムであって、前記弁送達部材が前記ノーズコーンを含み、前記ポートが前記弁送達部材管腔の遠位端である、送達システム。
【請求項96】
人工弁を罹患弁に送達するための送達システムであって、
外側シャフトと、
前記外側シースの遠位端における弁送達部材と、
前記外側シャフトおよび前記弁送達部材内に位置づけられた中空の内側シャフトであって、前記外側シャフトと同軸であり、中にひもを通すように構成された、中空の内側シャフトとを含む、送達システム。
【請求項97】
人工弁を罹患弁に送達するための送達システムであって、
折り畳まれた状態の前記人工弁を運ぶ大きさとされた弁管腔を画定する外側シースと、
前記外側シースを通り、前記外側シースの中心軸に沿って延びる内側シャフトであって、ひもを受け入れるように構成されたひも管腔を画定する内側シャフトと、
を含む送達カテーテルと、
前記ひも管腔と同軸であるポートを遠位端に含むノーズコーンであって、前記人工弁を前記送達カテーテル内に保持するために前記送達カテーテルの遠位端に結合可能なノーズコーンとを含み、
前記送達カテーテルと前記ノーズコーンとが前記人工弁の配備のために分離可能であり、前記配備が、前記ひもに対する前記ひも管腔および/または前記ポートの並進を含む、送達システム。
【請求項98】
請求項97に記載の送達システムであって、前記ひも管腔が、前記送達カテーテルの中心軸に沿って位置づけられる、送達システム。
【請求項99】
請求項97に記載の送達システムであって、前記内側シャフトが前記外側シースと同軸である、送達システム。
【請求項100】
請求項97に記載の送達システムであって、前記ポートが前記ノーズコーンの前記遠位端の中心に配置されている、送達システム。
【請求項101】
請求項97に記載の送達システムであって、前記ひも管腔および/または前記ポートは、前記ひもが実質的に固定した位置に維持されている状態で、前記ひもに対して並進するように構成されている、送達システム。
【請求項102】
請求項101に記載の送達システムであって、前記送達カテーテルの近位部へ延びるための近位端と前記ひもの遠位部へ延びるための遠位端とを備えた細長い本体を有する位置決めツールをさらに含み、前記位置決めツールが、前記ひも管腔内および前記ポートを通って前記ひもに沿って並進し、前記ひもを前記実質的に固定した位置に維持するために前記ひもの前記遠位部と結合するように構成されている、送達システム。
【請求項103】
請求項97に記載の送達システムであって、前記ひも管腔が、前記人工弁の前記配備のために、前記ひもに対して近位に並進するように構成されている、送達システム。
【請求項104】
請求項97に記載の送達システムであって、前記ポートが、前記人工弁の前記配備のために、前記ひもに対して遠位に並進するように構成されている、送達システム。
【請求項105】
請求項97に記載の送達システムであって、弁送達部材をさらに含み、前記弁送達部材が、
(a)前記送達カテーテルの遠位端内への配置と、前記弁送達部材と前記送達カテーテルとの間の相対移動のため、及び(b)前記人工弁を運ぶための、形状および大きさを有する外壁を有する細長い本体を含み、
前記外壁と同軸であって、中を通って延びる弁送達管腔を画定する内側シャフトを有し、前記弁送達管腔が前記ひもを受け入れるように構成されている、送達システム。
【請求項106】
請求項105に記載の送達システムであって、前記弁送達部材が前記ノーズコーンを含み、前記ポートが前記弁送達部材管腔の遠位端を形成する、送達システム。
【請求項107】
請求項105に記載の送達システムであって、前記人工弁が、前記人工弁の配備時に拡張状態に拡張するように構成されている、送達システム。
【請求項108】
患者における罹患自己弁を治療する方法であって、
送達デバイスに心臓の自己弁輪付近におけるアンカーと結合されたひもの上を心臓の第1の部屋まで追従させるステップと、
前記送達デバイスによって運ばれる弁カプセルを前記自己弁輪を越えて位置づけるために、前記心臓の第2の部屋内まで前記送達デバイスに前記ひも上をさらに追従させるステップと、
人工弁を配備するために前記弁カプセルを露出させるステップとを含む、方法。
【請求項109】
請求項108に記載の方法であって、前記アンカーとの前記結合を維持した状態で、前記ひもを前記第2の部屋まで前進させるステップをさらに含む、方法。
【請求項110】
請求項108に記載の方法であって、前記ひもを前進させるステップが、前記第2の部屋内で前記ひもに第1の屈曲と第2の屈曲とを形成するステップをさらに含む、方法。
【請求項111】
請求項110に記載の方法であって、前記第1の屈曲と前記第2の屈曲とのうちの一方が約120度から約310度の角度を含む、方法。
【請求項112】
請求項110に記載の方法であって、前記ひもを前進させるステップが、前記送達デバイスを前記第1の部屋内まで追従させるステップと、前記送達デバイスを前記第2の部屋内まで追従させるステップとの間にある、方法。
【請求項113】
請求項110に記載の方法であって、前記ひもを前進させるステップが、前記アンカーの内径を通って前進させるステップを含む、方法。
【請求項114】
請求項110に記載の方法であって、前進させるステップが、前記送達デバイスから延びる前記ひもの大部分が弁輪下にあるような前進である、方法。
【請求項115】
請求項108に記載の方法であって、前記アンカーが最初は第1の位置にあり、前記アンカーを第2の位置に移動させるステップをさらに含む、方法。
【請求項116】
請求項115に記載の方法であって、前記アンカーを移動させるステップが、前記送達デバイスに前記第2の部屋内まで追従させるステップと、前記弁カプセルを露出させるステップとの間にある、方法。
【請求項117】
請求項115に記載の方法であって、位置決めツールの遠位端が前記ひもと前記アンカーとの結合部付近に位置づけられるように、前記位置決めツールに前記ひもの上を追従させるステップをさらに含む、方法。
【請求項118】
請求項117に記載の方法であって、前記位置決めツールの前記遠位端が前記ひもの遠位端と連結する、方法。
【請求項119】
請求項118に記載の方法であって、前記アンカーを移動させるステップが、前記位置決めツールの少なくとも一部を圧縮するステップおよび/または前記ひもに張力をかけるステップを含む、方法。
【請求項120】
請求項117に記載の方法であって、前記アンカーを移動させるステップが、前記アンカーの少なくとも一部が前記自己弁の弁輪面にほぼ平行であるように、前記位置決めツールの前記遠端の高さまたは角度のうちの少なくとも一方を調整するステップを含む、方法。
【請求項121】
請求項115に記載の方法であって、前記第2の位置が前記第1の位置より前記自己弁輪に近い、方法。
【請求項122】
請求項118に記載の方法であって、前記送達デバイスに前記第1の部屋内まで追従させるステップが、前記ひもの近位端を前記送達デバイスの遠位端に位置するポート内に挿入するステップを含む、方法。
【請求項123】
請求項122に記載の方法であって、前記ポートが前記送達デバイスの外側シースと同軸に位置する、方法。
【請求項124】
患者における罹患自己弁を治療する方法であって、
人工弁を運ぶ送達デバイスに心臓の第1の部屋までひもに沿って同軸に追従させるステップであって、前記ひもの遠位端が前記心臓の自己弁輪付近のアンカーに結合されている、同軸に追従させるステップと、
前記人工弁を前記自己弁輪を越えて位置づけるために、前記送達デバイスに前記ひもの上を前記心臓の第2の部屋内までさらに同軸に追従させるステップと、
前記人工弁を配備するために前記人工弁を露出させるステップとを含む、方法。
【請求項125】
請求項124に記載の方法であって、同軸に追従させる前記ステップは、前記送達デバイスの遠位端に結合されたノーズコーンのポートを通る、方法。
【請求項126】
請求項124に記載の方法であって、同軸に追従させる前記ステップは、前記送達デバイス内で前記人工弁を運ぶ弁送達部材の管腔を通る、方法。
【請求項127】
請求項124に記載の方法であって、同軸に追従する前記ステップ中に、前記ひもの近位端が前記患者の外部にある前記送達デバイスの部分から延びる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年7月7日に出願された「弁送達システム(VALVE DELIVERY SYSTEM)」という名称の米国仮特許出願第63/048,963号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
参照による組み込み
[0002]本明細書で言及されているすべての公開文献および特許出願は、各個別の公開文献または特許出願が参照により組み込まれるものとして具体的に個別に示されているかのように、参照によりその全体が同一程度まで本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
[0003]心臓部屋(換言すれば、房室)間の血流は、自己弁、すなわち、僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁および三尖弁によって制御される。これらの弁のそれぞれは、異なる圧力に応答して開閉する受動一方向弁である。弁膜症に罹患している患者は、少なくとも1つの弁の異常な解剖学的形態および/または機能を有する。例えば、弁は、弁が完全に閉じず、血液を逆流させると、逆流症とも呼ばれる弁閉鎖不全症に罹患する。弁狭窄症は、弁を正常に開くことができないようにすることがある。その他の疾患も、弁の機能不全に至ることがある。これらの疾患の治療のために薬物療法が使用される場合があるが、多くの場合、欠陥のある弁は、患者の生涯のある時点で修復または交換する必要がある可能性がある。既存の弁および外科的修復および/または交換処置は、比較的高いリスクがあり、寿命が限られ、および/または高侵襲性である場合がある。一部の低侵襲性の経カテーテル的選択肢が利用可能であるが、それらは一般に大動脈弁処置に限定され、患者ごとの柔軟性が限定され、多くの場合、移植するのに望ましい時間よりも長時間を要する。したがって、僧帽弁を含む心臓弁の修復および交換のための低侵襲性処置、より迅速な外科的方法、および/または多様な個々の患者に対応することができる人工弁を提供することが望ましいであろう。
【0003】
[0004]また、既存の弁修復/交換処置は、複雑で長時間を要することが多い。現在利用可能な処置は、複数の構成要素、例えば、人工弁とそれを自己生体構造に固定する機構の配置を必要とする場合が多い。そのような処置は、一般に、様々な構成要素を運ぶための複数の送達カテーテルと、弁までの各構成要素の別々の送達を使用し、これは(特に構成要素が順次に送達される場合)時間がかかり、複雑で、および/または危険な場合がある。例えば、デバイスによっては、送達時間を短縮するために、腱索などの自己生体構造を捕捉するための回転固定要素を備えるものがある。しかし、そのような固定要素は、回転時に腱索を、多くの場合意図的に、捕捉し、引っ張り、それがアンカー要素の配備時に腱索にトルクを加えるかまたはその他により応力と損傷を与える可能性があり、その結果として患者に追加的な医療介入の必要が生じることがある。また、そのような固定要素は、薄型(例えば細長い)送達形態から、自己弁における、または自己弁付近における拡張形態への押出しを必要とする場合がある。少なくとも一部の事例では、固定要素の押出しは複雑な場合があり、送達デバイスおよび/または自己生体構造に対して相対的に正しい拡張形態で確実に配備しないことがある。誤った配備の結果、固定要素を後退させ、配備し直す追加の時間が生じ、より複雑な固定手順、および/または自己組織に対する損傷を生じさせる可能性がある。したがって、弁交換および修復のための、より迅速で、複雑でなく、より危険が少なく、より確実に配備可能な弁アセンブリを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0005]本明細書では、弁アンカーと人工弁とを自己弁輪まで送達するための送達システムおよび方法について説明する。アンカーは、螺旋形状を有することができ、自己弁輪の腱索および/または弁尖の周囲に配備することができる。アンカーに接続されたテザー(換言すれば、ひも)が、心臓および/または患者の身体の外部に延びることができる。人工弁を自己弁輪内および弁アンカー内まで拡張させるように、弁送達デバイスにテザーの上を追従(track)させることができる。人工弁とアンカーとの間の対抗力により、人工弁を自己弁の弁輪内の所定位置に固定することができる。
【0005】
[0006]人工弁の配備の前に、配備された弁アンカーの位置を選択された位置に向かって正しく調整するために位置決めツールを使用することができる。例えば、人工弁が拡張され、配備されるときに、弁アンカーが人工弁の中央部と軸方向に位置合わせされることが好ましい場合がある。また、弁アンカーが自己弁輪の面に可能な限り近くにあることが望ましいことがあり、これには弁アンカーをその最初に配備された位置から上に上げる必要がある場合がある。アンカー位置を調整するために位置決めツールを有利に位置づけることができるように、位置決めツールを追従させる前に、テザーの少なくとも一部を配備されたアンカーの下に位置づけることができる。テザーは、少なくとも部分的に心室内で反転形態に位置づけることができる。位置決めツールは、位置決めツールが弁輪下(sub-annular)の位置から配備されたアンカーに効率的に力を伝えることができるようにする、1つまたは複数の屈曲を含む硬直化(stiffened)状態に遷移(換言すれば、移行)するように構成可能である。
【0006】
[0007]一部の態様によると、患者における罹患自己弁を治療する方法が、罹患自己弁の腱索をテザーが取り付けられたアンカーで取り囲むことと、アンカーが腱索の周囲に位置づけられた状態で、テザーの一部を罹患自己弁の弁輪を通って心臓の第1の部屋から心臓の第2の部屋まで並進させる(換言すれば、移動させる)ことであって、テザーの並進がテザーに第2の部屋内で屈曲部を形成させる、並進させることと、弁送達デバイスにテザーの上を追従させることと、弁送達デバイスから罹患自己弁の弁輪内でアンカー内に人工弁を解放することとを含む。
【0007】
[0008]これらの態様において、方法は、操縦可能カテーテルを含むアンカー送達デバイスによってアンカーを罹患自己弁まで送達することをさらに含むことができる。これらの態様において、テザーの一部を罹患自己弁の弁輪を通して並進させることが、操縦可能カテーテルをアンカーの面に向かって前進させることと、アンカーへの取り付けを維持した状態でテザーを前進させ、テザーに第1の部屋内で少なくとも部分的に巻くたるみを生じさせることと、テザーの少なくとも一部を第2の部屋中に位置づけるようにアンカーの面を越えて操縦可能カテーテルを前進させることとを含み得る。これらの態様において、操縦可能カテーテルを前進させることは、操縦可能カテーテルを第2の部屋の心尖の近傍である位置まで前進させることを含み得る。これらの態様において、方法は、罹患自己弁からアンカー送達デバイスを後退させることをさらに含み得る。これらの態様において、アンカー送達デバイスは、操縦可能カテーテル内で並進するように構成されたアンカーガイドをさらに含むことができ、アンカーガイドはアンカーを収容するための内部管腔を含む。これらの態様において、アンカーガイドは、アンカーガイドからのアンカーの配備時に湾曲形状を呈することができる。これらの態様において、テザーは、屈曲形態であるときに第2の部屋内でほぼU字形屈曲を呈することができる。これらの態様において、テザーを屈曲形態に位置づけることは、第2の部屋内で延長されたテザー長さをもたせるようにテザーを操縦可能カテーテルに対して相対的に遠位側に並進させることを含み得る。これらの態様において、弁送達デバイスにテザーの上を追従させることは、罹患自己弁の弁輪を通して弁送達カテーテルを前進させることを含み得る。これらの態様において、弁送達デバイスにテザーの上を追従させることは、屈曲したテザーの上に位置決めツールを配備することを含み得る。これらの態様において、方法は、位置決めツールの遠位端が、アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具と接するまで、位置決めツールを遠位側に前進させることをさらに含み得る。これらの態様において、方法は、位置決めツールを硬直化させるように位置決めツールに沿って圧縮力を加えることをさらに含み得る。これらの態様において、圧縮力を加えることは、テザーに張力をかけるためにテザーを近位側に引くことを含み得る。これらの態様において、テザーに張力をかけるためにテザーを近位側に引くことは、テザーに、制御された張力度を加えるようにハンドルを使用することをさらに含み得る。これらの態様において、圧縮力を加えることで、位置決めツールにアンカーに対して弁輪下でほぼU字形屈曲を呈させることができる。これらの態様において、方法は、位置決めツールの遠位端をアンカーに解放可能に取り付けることをさらに含み得る。これらの態様において、方法は、位置決めツールを使用して罹患自己弁に対して相対的なアンカーの位置を調整することをさらに含み得る。これらの態様において、アンカーの位置を調整することは、アンカーを罹患弁の弁輪に向かって移動させるように位置決めツールを近位側に引くことを含み得る。これらの態様において、アンカーの位置は、罹患自己弁の弁輪により近づくように調整可能である。これらの態様において、アンカーの位置は、アンカーが弁送達デバイスの遠位端の面に対して垂直な面に位置するように調整可能である。これらの態様において、テザーを第2の部屋内で屈曲させることは、テザーを第2の部屋内で反転させることを含み得る。これらの態様において、方法は、操縦可能カテーテルを含むアンカー送達システムによってアンカーを罹患自己弁まで送達することをさらに含み得る。
【0008】
[0009]一部の態様によると、人工弁を心臓の罹患弁に送達するための送達システムが、弁アンカーに接続するように構成されたテザーであって、心臓の外部の位置から少なくとも心臓の第1の部屋を通って心臓の第2の部屋内まで延びるようにさらに構成されたテザーと、テザーの上を第2の部屋内まで延びるように構成され、人工弁を中に保持し、テザーが弁アンカーに接続された状態で人工弁を弁アンカー内で解放するように構成された弁送達カテーテルとを含む。
【0009】
[0010]これらの態様において、テザーは心臓の第2の部屋内でほぼU字形状を呈するように構成可能である。これらの態様において、テザーは弁アンカーに解放可能に取り付け可能である。これらの態様において、テザーの遠位端が、弁アンカーの近位端に解放可能に取り付けられるように構成可能である。これらの態様において、弁アンカーは螺旋形状を有することができ、弁送達カテーテルは、人工弁の解放前に人工弁を位置合わせするために弁アンカーの中央開口部を通って延びるように構成される。これらの態様において、弁送達カテーテルは、人工弁の中央部を罹患弁と軸方向に位置合わせするように構成可能である。これらの態様において、弁送達カテーテルの遠位端は、テザーを通すような大きさおよび形状のポートを有するノーズコーンを含むことができ、ポートは弁送達カテーテルの中心軸と同軸である中心軸を有する。これらの態様において、システムは、弁送達カテーテルを通り、テザーの上に延びるように構成された位置決めツールであって、弁アンカーに接続し、弁アンカーが心臓内に配備された後で弁アンカーの位置を制御するように構成された位置決めツールをさらに含み得る。これらの態様において、位置決めツールは、所定の形状に屈曲するように構成された1つまたは複数の領域を含み得る。これらの態様において、領域は相対的に低減された曲げ剛性を有することができる。これらの態様において、1つまたは複数の領域は、位置決めツールに圧縮力が加えられると領域が所定の形状に屈曲することを可能にするように構成された1つまたは複数の切り欠き(cutout)を含み得る。これらの態様において、1つまたは複数の領域は、それらの領域内においてテザーに張力がかかると所定形状に屈曲するように構成可能である。これらの態様において、第1の領域が、直線形状からU字形状に遷移するように構成可能である。これらの態様において、第2の領域が、直線形状から弁アンカーの中心に向かって半径方向内側に屈曲する湾曲形状に遷移するように構成可能である。これらの態様において、位置決めツールは、弁アンカーの近位縁、または弁アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具の近位縁に係合するように構成された遠位縁を含み得る。これらの態様において、位置決めツールの遠位縁は、傾斜付きとすることができ、弁アンカーの近位縁の対応するように傾斜付きとされた縁部、または弁アンカーの近位端に取り付けられた取り付け具の近位縁と係合するように構成可能である。これらの態様において、システムは、弁送達カテーテルによる人工弁の送達の前に弁アンカーを心臓内に配備するように構成されたアンカー送達デバイスをさらに含み得る。これらの態様において、アンカー送達カテーテルは、弁アンカーを心臓内に位置づけるために屈曲するように構成された遠位端を有する操縦可能カテーテルを含み得る。これらの態様において、アンカー送達カテーテルは、テザーの上に延びるように構成可能である。これらの態様において、アンカー送達デバイスは、テザーの位置を心臓の第1の部屋から心臓の第2の部屋内に位置づけるように構成された操縦可能カテーテルを含み得る。これらの態様において、操縦可能カテーテルは、テザーを心臓の第2の部屋内に反転形態で配置するように構成可能である。これらの態様において、操縦可能カテーテルは、心臓の第2の部屋内でテザーのU字形部を形成するように構成可能である。これらの態様において、アンカー送達カテーテルは、弁アンカーの中央開口部を通って延びるように構成可能である。これらの態様において、弁送達カテーテルは、内側シャフトと外側シースとを含むことができ、人工弁が内側シャフトと外側シースとの間で圧縮される。これらの態様において、内側シャフトは、弁アンカーが罹患弁の腱索の周囲に巻き付けられると、弁アンカーの位置を調整するように構成された位置決めツールを収容するように構成可能である。これらの態様において、位置決めツールは、内側シャフト内を並進し、弁送達カテーテルの遠位端から延びるように構成可能である。これらの態様において、弁送達カテーテルの近位側への後退が、人工弁を拡張させるために近位側に後退させられるように構成可能である。
【0010】
[0011]一部の態様によると、人工弁を心臓の罹患弁まで送達するための送達システムが、罹患弁の腱索の少なくとも一部を取り囲む弁アンカーに接続されるように構成されたテザーであって、心臓の外部の位置から少なくとも心臓の第1の部屋を通って心臓の第2の部屋内に延びるようにさらに構成されたテザーと、腱索の少なくとも一部を取り囲む弁アンカーの位置を調整するように構成された位置決めツールとを含み、位置決めツールは、テザーの上を追従し、弁アンカーの近位部と接するように構成された細長い本体を含み、位置決めツールは、位置決めツールに軸方向圧縮力が加えられると屈曲し、位置決めツールを所定形状にするように構成された1つまたは複数の領域を含む。
【0011】
[0012]これらの態様において、所定形状は、心臓の第2の部屋内で弁アンカーに対して相対的に弁輪下に位置づけられるように構成された反転部を含み得る。これらの態様において、所定形状は、ほぼU字形の屈曲部を含み得る。これらの態様において、1つまたは複数の領域は、細長い本体の周囲の一部に沿って1つまたは複数の切り欠きを含むことができ、位置決めツールの圧縮が1つまたは複数の切り欠きの間隙幅を狭くする。これらの態様において、位置決めツールの所定形状は、弁アンカーの中心に向かって半径方向内側に屈曲する位置決めツールの遠位端における第2の屈曲部を含み得る。これらの態様において、システムは、中に位置決めツールを収容するように構成された弁送達カテーテルであって、位置決めツールが弁送達カテーテル内を並進し、弁送達カテーテルの遠位端から延びるように構成された、弁送達カテーテルをさらに含み得る。これらの態様において、弁送達カテーテルは、その中に人工弁をさらに収容することができる。これらの態様において、弁送達カテーテルは、位置決めツールを中に収容するように構成された内側シャフトを人工弁の中央開口部内に含み得る。これらの態様において、弁送達カテーテルの近位側への後退が人工弁を拡張させることができる。これらの態様において、所定形状は、弁アンカーを罹患弁の面に向かって移動させるように、弁アンカーに印加された力を罹患弁の面に向かう方向に伝達するように構成可能である。これらの態様において、位置決めツールは、テザーを近位側に引くと屈曲し、硬直化するように構成可能である。これらの態様において、位置決めツールは、位置決めツールを遠位側に押すと屈曲し、硬直化するように構成可能である。
【0012】
[0013]態様によっては、心臓の罹患自己弁を治療する方法が、アンカーが罹患弁の腱索を取り囲むようにアンカーをアンカー送達カテーテルから配備することであって、アンカーが配備された後、アンカー送達カテーテルの遠位端からテザーが延び、アンカーに取り付けられる、アンカーを配備することと、アンカー送達カテーテルの遠位端を心臓の第1の部屋から心臓の第2の部屋まで並進させることであって、アンカー送達カテーテルの遠位端が、配備されたアンカーの中央開口部を通って並進させられる、並進させることと、テザーのループが心臓の第2の部屋内に配置されるまでテザーをアンカー送達カテーテルを通して前進させることと、テザーからたるみが除去されるまでテザーをアンカー送達カテーテル内で後退させることであって、たるみの除去がテザーの張力を解放し、テザーに心臓の第2の部屋内で反転形態をとらせる、テザーを後退させることとを含む。
【0013】
[0014]これらの態様において、方法は、心臓からアンカー送達カテーテルを後退させることをさらに含み得る。これらの態様において、方法は、弁送達カテーテルにテザーの上を追従させることをさらに含むことができ、弁送達カテーテルは中に格納された人工弁を有する。これらの態様において、弁送達カテーテルにテザーの上を追従させることは、テザーの一部の上の位置決めツールを心臓の第2の部屋内に配備することを含み得る。これらの態様において、位置決めツールは、位置決めツールの遠位端がアンカーの近位端に取り付けられた取り付け具と係合するまで前進させることができる。これらの態様において、方法は、アンカーが係合した位置決めツールを並進させることによって、配備されたアンカーの位置を調整することをさらに含み得る。これらの態様において、配備されたアンカーの位置を調整することは、アンカーを罹患弁の弁輪面に近づけるように移動させることを含み得る。これらの態様において、方法は、人工弁を弁送達カテーテルから罹患自己弁の弁輪内でアンカーの中央開口部内に解放することをさらに含み得る。これらの態様において、テザーは、テザーが反転形態にあるときに心臓の第2の部屋内でU字形屈曲部を含み得る。これらの態様において、アンカー送達カテーテルからアンカーを配備することは、アンカーをアンカーガイドの遠位端から配備することを含むことができ、アンカーガイドはアンカー送達カテーテル内に位置づけられる。これらの態様において、方法は、アンカーガイドをアンカー送達カテーテルに対して相対的に遠位側に並進させることをさらに含み得る。これらの態様において、方法は、アンカーガイドに、アンカーの腱索の周囲への配備を容易にするように構成された湾曲形状を呈させることをさらに含み得る。これらの態様において、方法は、アンカーの中央開口部を通してアンカー送達カテーテルの遠位端を操縦するために、アンカー送達カテーテルを屈曲させることをさらに含み得る。
【0014】
[0015]一部の態様によると、人工弁を罹患弁まで送達する送達システムが、外側シースと、中を通って延び、テザーを受け入れるように構成されたテザー管腔を画定する中空の内側シャフトとを含む送達カテーテルと、テザー管腔と軸方向に位置合わせされ、テザーを受け入れるように構成された遠位端におけるポートを含むノーズコーンであって、ノーズコーンが送達カテーテルの遠位端と可逆的に結合し、送達カテーテルの遠位部から延び、送達カテーテル内に人工弁を保持するように形成されているノーズコーンとを含む。
【0015】
[0016]これらの態様において、テザー管腔は外側シースと同軸に位置づけ可能である。これらの態様において、ポートは、ノーズコーンが送達カテーテルに結合されると外側シースと同軸に位置づけられることができる。これらの態様において、送達システムは、テザー管腔内で、ポートを通ってテザーの上をテザーの遠位端まで追従させられ、患者の生体構造に対して相対的な弁アンカーの向きを調整するように構成された、細長い位置決めツールをさらに含み得る。これらの態様において、細長い位置決めツールは、弁アンカーの向きの調整のために優先的に(preferentially)屈曲可能な少なくとも2つの領域を含み得る。これらの態様において、向きの調整は、少なくとも2つの領域のうちの第1の領域と第2の領域における第1の所定の屈曲部と第2の所定の屈曲部との形成を含み得る。これらの態様において、第1の所定の屈曲部または第2の所定の屈曲部は、約120度から約310度の角度を含み得る。これらの態様において、第1の所定の屈曲部または第2の所定の屈曲部は、約70度から約100度の角度を有し得る。これらの態様において、第1の所定の屈曲部または第2の所定の屈曲部は、約2ミリメートル(mm)から約20mmの曲率半径を有し得る。これらの態様において、少なくとも2つの領域は、位置決めツールの残りの部分との関係で相対的に低減された圧縮剛性を有し得る。これらの態様において、少なくとも2つの領域は、長手方向軸に沿って位置決めツールに圧縮力が加えられると屈曲するように形成可能である。これらの態様において、少なくとも2つの領域のうちの第1の領域は、位置決めツールの長手方向軸に沿って第2の領域から離隔させることができる。これらの態様において、上記少なくとも2つの領域のうちの第1の領域は、位置決めツールの方位軸(換言すれば、水平軸)に沿って第2の領域から離隔させることができる。これらの態様において、少なくとも2つの領域は、位置決めツールがテザーの遠位部まで延ばされると送達カテーテルの遠位端に対して遠位に位置することができる。これらの態様において、少なくとも2つの領域は、位置決めツールの外壁に複数の切り欠きを含み得る。これらの態様において、位置決めツールの遠位端は、テザーの遠位部と相互作用する形状および大きさとすることができる。これらの態様において、位置決めツールの遠位端は、テザーの遠位部の近位端と相互作用可能な形状および大きさとすることができる。これらの態様において、位置決めツールの遠位端は、テザーの遠位部の近位端の対応する傾斜部と相互作用する形状および大きさとされた傾斜部を含み得る。これらの態様において、送達システムは弁送達部材をさらに含むことができ、弁送達部材は、(a)送達カテーテルの遠位部内への配置および弁送達部材と送達カテーテルと間の相対移動とのためと、(b)人工弁を運ぶための、形状および大きさとされ、テザーを受け入れるように構成された弁送達部材管腔を画定する内側シャフトを有する。これらの態様において、弁送達部材はノーズコーンを含むことができ、ポートは弁送達部材管腔の遠位端である。
【0016】
[0017]一部の態様によると、人工弁を罹患弁まで送達するための送達システムが、外側シャフトと、外側シースの遠位端における弁送達部材と、外側シャフトおよび弁送達部材内に位置づけられた中空の内側シャフトとを含み、中空の内側シャフトは外側シャフトと同軸であり、テザーを通すように構成されている。
【0017】
[0018]一部の態様によると、人工弁を罹患弁まで送達するための送達システムが、折り畳まれた状態で人工弁を運ぶような大きさとされた弁管腔を画定する外側シースと、外側シースを通り、外側シースの中心軸に沿って延びる内側シャフトであって、テザーを受け入れるように構成されたテザー管腔を画定する内側シャフトとを含む送達カテーテルと、テザー管腔と同軸である遠位端におけるポートを含むノーズコーンであって、人工弁を送達カテーテル内に保持するために送達カテーテルの遠位端に結合可能なノーズコーンとを含み、送達カテーテルとノーズコーンとが人工弁の配備のために分離可能であり、配備はテザーに対して相対的なテザー管腔および/またはポートの並進を含む。
【0018】
[0019]これらの態様において、テザー管腔は、送達カテーテルの中心軸に沿って位置づけられ得る。これらの態様において、内側シャフトは、外側シースと同軸とすることができる。これらの態様において、ポートは、ノーズコーンの遠位端の中心に配置可能である。これらの態様において、テザー管腔および/またはポートは、テザーが実質的に固定した位置に維持された状態で、テザーに対して相対的に並進するために構成可能である。これらの態様において、送達システムは、送達カテーテルの近位端まで延びるための近位端と、テザーの遠位端まで延びるための遠位端とを備えた細長い本体を有する位置決めツールをさらに含むことができ、位置決めツールはテザー管腔内でテザーに沿ってポートを通って並進し、テザーを実質的に固定された位置に維持するためにテザーの遠位端と結合するように構成される。これらの態様において、テザー管腔は、人工弁の配備のためにテザーに対して相対的に近位側に並進するために構成可能である。これらの態様において、ポートは人工弁の配備のためにテザーに対して相対的な遠位側に並進するように構成可能である。これらの態様において、送達システムは、弁送達部材をさらに含むことができ、弁送達部材は、(a)送達カテーテルの遠位部内への配置および弁送達部材と送達カテーテルとの間の相対移動のためと、(b)人工弁を運ぶための、形状および大きさとされた外壁を有する細長い本体を含み、外壁と同軸であって中を通る弁送達管腔を画定する内側シャフトを有し、弁送達管腔はテザーを受け入れるように構成されている。これらの態様において、弁送達部材はノーズコーンを含むことができ、ポートが弁送達部材管腔の遠位端を形成する。これらの態様において、人工弁は人工弁の配備時に拡張状態に拡張するように構成可能である。
【0019】
[0020]一部の態様によると、患者における罹患自己弁を治療する方法が、送達デバイスに心臓の自己弁輪付近のアンカーに結合されたテザーの上を心臓の第1の部屋内まで追従させることと、自己弁輪を越えて送達デバイスによって運ばれる弁カプセルを位置づけるために送達デバイスにテザーの上を心臓の第2の部屋内までさらに追従させることと、人工弁を配備するために弁カプセルを露出させることとを含む。
【0020】
[0021]これらの態様において、方法は、アンカーとの結合を維持した状態でテザーを第2の部屋内まで前進させることをさらに含み得る。これらの態様において、テザーの前進は、第2の部屋内でテザーに第1の屈曲部と第2の屈曲部とを形成することを含み得る。これらの態様において、第1の屈曲部と第2の屈曲部とのうちの一方が、約120度から約310度の角度を含み得る。これらの態様において、テザーの前進は、送達デバイスを第1の部屋内まで追従させることと送達デバイスを第2の部屋内まで追従させることとの間とすることができる。これらの態様において、テザーを前進させることは、アンカーの内径を通して前進させることを含み得る。これらの態様において、前進は、送達デバイスから延びるテザーの大部分が弁輪下にあるような前進とすることができる。これらの態様において、アンカーは最初は第1の位置に位置することができ、アンカーを第2の位置まで移動させることを含む。これらの態様において、アンカーを移動させることは、送達デバイスを第2の部屋内まで追従させることと弁カプセルを露出させることとの間とすることができる。これらの態様において、方法は、位置決めツールの遠位端がテザーとアンカーの結合部付近に位置づけられるように、位置づけツールにテザーの上を追従させることをさらに含み得る。これらの態様において、位置決めツールの遠位端は、テザーの遠位端と接することができる。これらの態様において、アンカーを移動させることは、位置決めツールの少なくとも一部を圧縮すること、および/または、テザーに張力をかけることを含み得る。これらの態様において、アンカーを移動させることは、アンカーの少なくとも一部が自己弁の弁輪の面に実質的に平行であるように、位置決めツールの遠位端の高さまたは角度のうちの少なくとも一方を調整することを含み得る。これらの態様において、第2の位置は第1の位置よりも自己弁輪の近くとすることができる。これらの態様において、第1の部屋内まで送達デバイスを追従させることは、テザーの近位端を、送達デバイスの遠位端に位置するポートに挿入することを含み得る。これらの態様において、ポートは送達デバイスの外側シースと同軸に位置づけることができる。
【0021】
[0022]一部の態様によると、患者における罹患自己弁を治療する方法が、人工弁を同軸に運ぶ送達デバイスに、遠位端が心臓の自己弁輪付近でアンカーに結合されているテザーに沿って心臓の第1の部屋内まで同軸に追従させることと、人工弁を自己弁輪を越えて位置づけるために送達デバイスにテザーの上を心臓の第2の部屋内までさらに同軸に追従させることと、人工弁を配備するために人工弁を露出させることとを含む。
【0022】
[0023]これらの態様において、同軸の追従は、送達デバイスの遠位端に結合されたノーズコーンのポートを通ることができる。これらの態様において、同軸の追従は、送達デバイス内で人工弁を運ぶ弁送達部材の管腔を通ることができる。これらの態様において、同軸の追従中、テザーの近位端が、患者の外部にある送達デバイスの部分から延びることができる。
【0023】
[0024]本明細書では上記およびその他の態様について説明する。
【0024】
[0025]本発明の新規な特徴は、後続の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の原理が使用される例示の実施形態について記載する以下の詳細な説明と添付図面とを参照すれば、本発明の特徴および利点をよりよく理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】[0026]自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図1B】自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図1C】自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図1D】自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図1E】自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図1F】自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図1G】自己弁付近に人工弁のためのアンカーを送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図2A】[0027]人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2B】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2C】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2D】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2E】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2F】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2G】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図2H】人工弁の送達の一部としてのテザー反転手順の一実施形態を示す図である。
【
図3A】[0028]自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3B】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3C】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3D】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3E】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3F】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3G】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3H】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3I】自己弁輪付近に予め配備されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3J】自己弁輪付近に予め配置されたアンカーまで人工弁を送達する方法の一実施形態を示す図である。
【
図4A】[0029]
図4Aは、テザーの遠位端と位置決めツールの遠位端との相互作用の実施形態を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、テザーの遠位端と位置決めツールの遠位端との相互作用の実施形態を示す異なる視点から見た図である。
【
図4C】
図4Cは、テザーの遠位端と位置決めツールの遠位端との相互作用の実施形態を示す異なる視点から見た図である。
【
図5A】[0030]
図5Aは、人工弁を送達するために使用される位置決めツールと弁送達カテーテルの実施形態を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、人工弁を送達するために使用される位置決めツールと弁送達カテーテルの実施形態を示す図である。
【
図6A】[0031]
図6Aは、優先的に屈曲可能な領域の配置構成を有する位置決めツールの一部を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、優先的に屈曲可能な領域の配置構成を有する位置決めツールの一部を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、優先的に屈曲可能な領域の配置構成を有する位置決めツールの一部を示す図である。
【
図6D】
図6Dは、優先的に屈曲可能な領域の配置構成を有する位置決めツールの一部を示す図である。
【
図7A】[0032]
図7Aは、弁送達カテーテル内を運ばれる人工弁を示す透視図である。
【
図7B】
図7Bは、弁送達カテーテル内を運ばれる人工弁を示す透視図である。
【
図7C】
図7Cは、弁送達カテーテル内を運ばれる人工弁を示す断面図である。
【
図7D】
図7Dは、弁送達カテーテル内を運ばれる人工弁を示す断面図である。
【
図8】[0033]テザーを使用して人工弁を配備する方法を示すフローチャートである。
【
図9】[0034]テザーと位置決めツールとを使用して人工弁を配備する方法を示すフローチャートである。
【
図11A】[0036]
図11Aは、別の例示の位置決めツールを示す側面図である。
【
図12】[0037]人工弁に追従させるためにテザーを反転させることを含む、人工弁の送達方法を示すフローチャートである。
【
図13A】[0038]
図13Aは、子羊の心臓内で行われた例示のテザー反転手順の画像を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、子羊の心臓内で行われた例示のテザー反転手順の画像を示す図である。
【
図13C】
図13Cは、子羊の心臓内で行われた例示のテザー反転手順の画像を示す図である。
【
図14A】[0039]
図14Aは、アンカーの軸方向高さを制御するための心臓内での位置決めツールの使用例の画像を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、アンカーの軸方向高さを制御するための心臓内での位置決めツールの使用例の画像を示す図である。
【
図14C】
図14Cは、アンカーの軸方向高さを制御するための心臓内での位置決めツールの使用例の画像を示す図である。
【
図15A】[0040]
図15Aは、位置決めツールの長さに関連する問題を示す、心臓内の人工弁の配備例の画像を示す図である。
【
図15B】
図15Bは、位置決めツールの長さに関連する問題を示す、心臓内の人工弁の配備例の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0041]本明細書では、例えば僧帽弁交換時に、弁フレームと弁とを送達する際に使用するためのデバイスおよび方法について説明する。デバイスおよび方法は、弁フレームを送達するために使用される、予め配置されたアンカーと併せて使用することができる。デバイスおよび方法は、人工弁の配備の前に、アンカーを(例えば弁輪下空間内の)自己弁輪から離隔した第1の位置から自己弁輪により近い第2の位置に遷移させる(例えば移動させる)ために使用可能である。
【0027】
[0042]
図1A~
図1Gに、アンカー送達デバイスまたはシステムを使用して人工弁システムのアンカーを送達する方法を示す。
図1Aで、経中隔穿刺が行われる。次に、ガイドワイヤ102が穿刺部位を通され、左心房104内に、または僧帽弁を越えて左心室106内に位置づけられる。
図1Bで、外側シース108(アンカー送達カテーテルまたは操縦可能カテーテルとも呼ぶ)が、外側シース108の遠位端が左心房104内に突出するまでガイドワイヤ102の上を追従させられる。実施例によっては、外側シースは任意選択により内部拡張器110を含む。その後、ガイドワイヤ102と内部拡張器110(使用される場合)は外側シース108から取り外される。
図1Cで、遠位側に配置されたアンカーガイド112を有する内側シースが、アンカーガイド112の遠位先端が左心房104内に延びるまで外側シース108に挿入される。アンカーガイド112は、所定の湾曲形状を呈するように構成可能である。アンカーガイド112は、管108の遠位端を操縦することによって、および/または、管108内で内側シャフトとアンカーガイド112とを回転させることによって、望み通りの位置および/または向きに位置づけることができる。実施例によっては、外側シース108の遠位部が直線形態と屈曲形態との間で屈曲可能である。このような屈曲は、例えば、アンカー送達カテーテルに操作可能に接続されたハンドルにおいて制御可能である。
図1Dで、アンカーガイド112が選択された向きに配置されると、アンカー114がアンカーガイド112の遠位先端から押し出される。アンカーガイド112の幾何形状(例えば湾曲)が、配備時にアンカー114にねじれを生じさせることができる。
【0028】
[0043]
図1Eで、アンカーガイド112が、アンカー114を外側シース108の遠位部と同軸に心房104内に配備するように付勢する。
図1Fで、送達システム116全体を(例えば外側シース108内の操縦機構を介して)心室106の心尖に向かって、僧帽弁を越えるように押し、操縦することができる。実施形態によっては、アンカー114の(内側シャフトおよびガイド112の逆回転を介した)逆回転により、腱索の巻き込みなしに僧帽弁を越えてアンカーを前進させることを支援してもよい。アンカー114が心室106内の選択された深度に達すると、(内側シャフトおよびガイド112の順方向回転を介した)アンカー114の順方向回転により、アンカー114が僧帽弁尖と腱索とを取り囲むことができるようになる。実施形態によっては、僧帽弁尖の動きを妨害するのを回避しやすくするために、アンカー114は(例えば最初に)心尖に向かって配備される。
図1Gで、外側シースと内側シースがアンカーガイド112とともに取り外され、所定位置にあるテザー118が残される。テザーは取り付け具128においてアンカー114に取り付けられたままであり、送達路を通って患者の外部に延びる。アンカー/人工弁を送達する方法およびデバイスの実施形態が、2020年3月19日に出願された米国特許出願第16/824,576号と、2019年10月7日に出願された米国特許出願第16/594,946号で開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
[0044]実施形態によっては、アンカーに取り付けられたテザーは、人工弁を送達するために弁送達デバイス(弁送達カテーテルまたは弁送達部材とも呼ぶ)が追従するガイドワイヤとして機能することができる。弁送達デバイスは、テザーが通って追従する管腔を含むことができる。実施形態によっては、テザーは心室などの心臓の部屋(chamber)内で反転またはループさせることができる。例えば、テザーは(例えば僧帽弁付近の)アンカーから心室に向かって延びることができ、次に、僧帽弁輪を通って(例えば心房内に)延びて戻るように、屈曲、湾曲、ループまたは反転させることができる。テザーの反転は、弁輪下位置からアンカーにアクセスすることを可能にするので有利である。実施例によっては、テザーのループは、アンカーの中央開口部(例えば内側半径)内に形成され、および/または収容される。アンカーの中央開口部内でループにされたテザーは、テザー上の弁の同軸送達を可能にすることができる。また、テザー上の弁送達デバイスの同軸追従は、患者の生体構造を通る弁送達デバイスの前進を有利に改善させることができる。例えば、経中隔処置時の弁送達デバイスの横断を向上させるように、弁送達デバイスの先端を同軸のテザーを介して中隔内の(既存の)穿刺部を通って誘導することができる。また、テザーをガイドワイヤとしても使用することができるため、同軸送達は、弁送達のためのデバイスの総数を減らすことができる。テザー上の弁送達デバイスの同軸追従は、(1)自己(換言すれば、自然の)心臓弁の部屋(例えば左心室)に対しての弁送達デバイスの遠位端、および/または、(2)自己心臓弁(例えば僧帽弁)の弁輪に対しての人工弁、の配置を改善させることができるので有利である。テザーは、以下の材料のうちの1つまたは複数の材料を含むように形成されてもよい。すなわち、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金(例えばニチノール)、コバルトクロムニッケル合金(例えばElgiloy(登録商標))、コバルトクロム、ポリマー、またはポリアミドとポリエステルを含むブロックコポリマー(例えばPebax(登録商標))。
【0030】
[0045]
図2A~
図2Hに、患者内での人工弁システムのアンカー送達の一部としての、一部の実施形態によるテザー118を反転させる例示の方法を示す。
図2Aに、少なくとも部分的に僧帽弁面を越えて押され、アンカー114をアンカー114が僧帽弁尖および/または腱索を(
図1Fに示すように)取り囲むように位置づけるために使用された後のアンカーガイド112を示す。
図2Bでは、アンカーガイド112の遠位端が外側シース108内まで近位側に後退させられ、テザー118が外側シース108の遠位端から露出している。テザー118は、患者の血管および心臓を通過するときに横方向に屈曲するのに十分に柔軟であるが、外側シース108から出ると、操作されるときにもつれにくいように十分に剛性でもあるように構成可能である。テザー118の剛性は、アンカー114の中央開口部を通してテザー118を送り込もうとするときに多少の抵抗を与えてもよい。
【0031】
[0046]テザー118の一部をアンカー114を介して前進させるために、外側シース108の操縦可能遠位先端を使用することができる。例えば、
図2Cで、外側シース108の操縦機構を使用して外側シース108が自己弁輪を通って(例えば同軸に)前進させられる。さらに、テザー118のたるみ122を生じさせるように外側シース108を通ってテザー118を遠位側に送り込むことができる。一般に、たるみを含むテザーは、テザー118の近位側への漸進的な(例えばわずかな)後退が、アンカー114に実質的な力を加えずに外側シース108から露出しているテザー118の長さを短くする役割を果たす、テザーの状態を含み得る。この文脈では、実質的な力とは、自己生体構造に対して相対的にアンカー114の位置を変更するのに十分な大きさの力である。テザー118内のたるみは、テザー118の一部に心房104および/または心室106内で巻きまたはループを形成させることができる。
図2A~
図2Hの例に示す心臓の心室内ではテザーのたるみとループ/巻きが形成されているが、本開示の他の実施例は、これに代えて、またはこれに加えて、心房内で形成されたテザーたるみおよびループ/巻きを含むことがわかるであろう。
【0032】
[0047]
図2Dで、外側シース108の遠位端が弁輪アンカー114の中央開口部を通り、アンカー114の面(plane)を越え、さらに前進させられて、テザー118のループがアンカーの中央開口部を通って左心室106内に入ることができるようになる。
図2Eで、テザー118は、外側シース108を通してさらに送り込まれ、左心室106内に配備される。
図2Fで、外側シース108が左心室心尖に向かってさらに前進させられる。場合によっては、テザー118がアンカー114の弁輪(annulus)を通って前進させられるときにテザー118にかかる張力に起因して、テザー118がアンカー114内に拘束される可能性がある。
図2Gで、人工弁の送達時にアンカー114に対して相対的な弁輪下位置からアンカー114にアクセスすることを可能にするために、心室106内にテザー118の十分な長さをまだ残している状態で、心室106内に残っているテザー114のたるみ122の少なくとも一部を取り除くのに十分に、テザー118が外側シース108に対して相対的に近位側に後退させられる。図のように、これによって、テザー118は拘束された/巻かれた形態から反転形態に巻きを解くことができ、テザー118は向きを逆にし、テザー118の弁輪下部分がU字形屈曲を呈する。
図2Hで、外側シース108が近位側に後退させられ、テザー118上での人工弁のその後の同軸送達のために、テザー118が左心室106内で反転位置に残される。
【0033】
[0048]
図2A~
図2Hに示す手順は一連の操作として示されているが、これらの操作のうちの1つまたは複数の操作が異なる順序で行われ得ることも理解されたい。例えば、アンカー114に向かう方向/離れる方向の外側シース108の前進/後退と、外側シース108に対して相対的なテザー118の前進/後退のいくつかの異なる組合せを使用して、テザー118が心室106内に反転形態で位置づけられてもよい。
【0034】
[0049]
図3A~
図3Jに、(例えば
図2Hに示すように)アンカー送達デバイスまたはシステムによってアンカーがすでに配置された後の弁の送達の一実施形態を示す。少なくとも部分的に自己弁の腱索および/または弁尖を囲むアンカー114に、テザー118が取り付けられることができる。テザー118は、弁送達デバイスのガイドワイヤとして機能することができる。
【0035】
[0050]上述のように、実施形態によっては、人工弁の送達の前および/または送達中に、アンカー送達カテーテルを使用してテザー118を(例えば
図2Fに示すような)第1の形態から(例えば
図2Gに示すような)第2の形態に位置づけることができる。実施形態によっては、第2の形態のテザー118は、テザー118の向きを反転させるかまたはほぼ逆にする少なくとも1つの屈曲部を含む(すなわち、テザー118はU字屈曲部を含み得る)。実施形態によっては、テザー118のU字屈曲または反転は、心臓の心尖の付近または心尖に隣接して生じさせることができる(例えば
図3Aの120)。実施形態によっては、テザー118の反転形態は、テザーの遠位端がアンカー114に取り付けられたままの状態で、テザー118の中央の軸方向部分が自己弁輪145、弁尖および/または腱索に対して相対的に中央に位置するような形態とすることができる。実施形態によっては、弁送達カテーテル302の遠位先端が第2の部屋106内に延び、人工弁のくびれ部分を自己弁輪145に位置合わせするために(例えば実質的に)同軸の追従経路を与える状態で、テザー118の1つまたは複数の屈曲が、テザー118がアンカーとの結合を維持することができるようにする(
図3Aの121)。実施形態によっては、テザー118の第2の形態(すなわち反転形態)は、弁送達カテーテル302が、第1の部屋104から弁輪を通って第2の部屋106内までテザー118に沿って(例えば同軸に)追従させられることができるような形態とすることができる。他の実施形態では、テザー118の1つまたは複数の屈曲は、アンカー114の近位端が心室内に向いているときに、テザー118がアンカー114との結合を維持することができるようにする。
【0036】
[0051]
図3Aに示すように、テザー118は、近位部が患者の外部にあり、中央部が患者の脈管構造を通り、遠位部がアンカー114に取り付けられるように十分な長さを有することができる。さらに、中央部は、経中隔穿刺部を通って心臓の第1の部屋(例えば心房)内に延び、心臓弁(例えば僧帽弁)を越え、その後、心臓の第2の部屋(例えば心室)内でU字屈曲状にループまたは反転(すなわち逆方向)することができる。実施形態によっては、
図3Aに示すように、テザー118は、心臓の第1の部屋104(例えば屈曲部119)と第2の部屋106(例えば屈曲部120、121)の両方で屈曲するように前進させることができる。実施形態によっては、テザー118の少なくとも2つの屈曲部が異なる屈曲角度を含む。実施形態によっては、テザー118の少なくとも2つの屈曲部が異なる曲率半径を有する。実施形態によっては、テザー118の少なくとも2つの屈曲部が実質的に同じ屈曲角度を備える。実施形態によっては、テザー118の少なくとも2つの屈曲部が実質的に同じ曲率半径を有する。実施形態によっては、1つまたは複数のテザー屈曲部が弁輪下空間(例えば左心室内)に生じる。実施形態によっては、テザー118の1つまたは複数の屈曲部が、第1の部屋104および/または第2の部屋106の内壁の一部と接触する。心臓部屋の壁とのテザー118の一部の接触は、テザー118の1つまたは複数の屈曲部の形成を促進し得る。内壁の一部との接触は、弁送達カテーテルの操作者によって制御される、選択された(例えば所定の)時間だけとすることができる。
【0037】
[0052]実施形態によっては、テザー118は(その上を弁送達カテーテル302に追従させる前および/または追従中に)実質的に張力がない状態に維持されることができる。テザー118は、(例えばその送達のため、またはその上を弁送達カテーテル302に追従させるために)押されると、患者の生体構造内および/または弁送達カテーテル302を通るかまたは沿って前進させられるように、よじれに対して十分に耐性があるように形成されてもよい。実施形態によっては、テザー118は、押されると湾曲部(例えば、本明細書に記載のような1つまたは複数の屈曲部)を生じるように十分に柔軟性がある。
【0038】
[0053]
図3Bに示すように、弁送達カテーテル302は、テザー118の上を経中隔穿刺部を通って心臓の第1の部屋104内まで追従させることができる。一実施形態では、弁送達カテーテル302は同軸送達カテーテルとすることができる。この実施形態では、弁送達カテーテル302は、テザー118の上を追従させるための同軸ポート304を有することができる(すなわち、ポート304は弁送達カテーテル302の中心軸と同軸である中心点または軸を含み得る)。ポート304は、弁送達カテーテル302の遠位端の円錐状部分であるノーズコーンにあってもよい。弁送達カテーテル302は、テザー118を受け入れるための形状および大きさである管腔を形成する内側中空シャフト(「内側シャフト」)を有し得る(例えば
図5Aの520参照)。弁送達カテーテル302の管腔を形成する内側シャフトは、例えば弁送達カテーテル302の中心軸に沿って、ほぼ中央に位置することができる。人工弁510は、弁送達カテーテル302の内側シャフトと外側シースとの間の空間内で圧縮可能である。したがって、弁送達カテーテル302の内側シャフトは、人工弁510の中央開口部を通って延びることができる。ポート304は、弁送達カテーテル302の管腔を形成する内側シャフトに接続可能である。ポート304は、弁送達カテーテル302の遠位端(例えば先端)に位置することができる。実施形態によっては、テザー118は、弁送達カテーテル302が患者の外部にある状態でポート304内に配置され、弁送達カテーテル302はその後、テザー118の上を追従させられる。テザー118は、経中隔穿刺部から心臓の第1の部屋104(例えば左心房)を通り、弁輪(例えば僧帽弁)を通って心臓の第2の部屋106(例えば左心室)まで延びることができる。
【0039】
[0054]
図3Cに、人工弁を運ぶ弁送達部材308(例えば弁カプセル)が自己弁輪145を越えて位置づけられるまで、テザー118の上を追従させられる例示の同軸弁送達カテーテル302を示す。実施形態によっては、人工弁は、弁送達部材308を使用せずに直接、弁送達カテーテル302内に保持される。例えば、人工弁302は、折り畳まれた状態で弁送達カテーテル302の遠位部で弁送達カテーテル302内に嵌めることができる。実施形態によっては、人工弁は弁送達カテーテル302のノーズコーンに結合され、弁送達カテーテルのノーズコーンと遠位端との分離によって配備される。実施形態によっては、人工弁は人工弁を弁送達カテーテル302の遠位端を越えて遠位に移動させるためのプッシャーカテーテルの使用により配備される。弁送達部材308(または送達カテーテル302の遠位端)が自己弁輪を越えて位置づけられた状態で、弁送達カテーテル302のポート304からアンカー114まで延び得るテザー118の大部分(例えば全部)が第2の部屋106(例えば左心室)内にある。実施形態によっては、アンカー114は、弁送達カテーテル302が自己弁輪を越えてテザー118上を追従させられている間、第1の離隔位置130またはその付近に留まる。
【0040】
[0055]実施形態によっては、弁送達カテーテル302がテザー118の上で追従させられている間、アンカー114は弁輪から相対的に離隔した第1の位置130に位置することができる。第1の離隔位置130において、アンカー114は、アンカー114と自己弁尖および/または腱索の動きとの間の干渉を最小限にするために、弁輪から十分に移動させることができる。弁輪に対して相対的なアンカー114の第1の離隔位置130は、例えば人工弁の配備の前のアンカーと自己弁尖および/または腱索との干渉に起因する弁周囲漏出(PVL)の発生を抑えることができる。実施形態によっては、第1の離隔位置130にあるアンカー114は、頂点方向に自己弁の弁輪に対して約10ミリメートル(mm)から約40mm離れている。
【0041】
[0056]時には、テザーの上を弁送達デバイスを追従させた後(例えば人工弁の配備の前または配備時)、アンカー114を第1の(離隔)位置から自己弁輪145により近いまたは付近の第2の位置に移動すると有利な場合がある。アンカー114をより近い位置(例えば自己弁輪145に隣接するかまたは当接する位置)に位置づけることにより、僧帽弁尖本体および/または腱索の周囲の人工弁フレームおよびアンカー114のシールを容易にすることができる。この密閉は、配備された人工弁のPVLを実質的に低減または防止することができる。実施形態によっては、アンカー114は、本明細書でさらに説明するように、(例えば張力がかかった)テザーおよび/または(例えば硬直化させた)位置決めツールを使用して、第1位の離隔位置130から第2のより近い位置140に移動させることができる。実施形態によっては、第2の位置140は約3mmから約0.5mm未満とすることができる。実施形態によっては、第2の位置140は、自己弁輪145の少なくとも一部と接触していることができる。アンカー114の移動の結果、心臓の生体構造に対して相対的なアンカーの高さの(例えば上方および/または下方への)変化および/またはアンカー角度(すなわち、実質的にアンカーを含む面と自己弁(例えば弁輪の)面との間に延びる角度)の変化が生じ得る。
【0042】
[0057]実施形態によっては、テザー78が反転された後でアンカー114の位置を調整するために位置決めツールを使用することができる。
図3Dに、弁送達カテーテル302が自己弁輪を越えて位置づけられた後、反転されたテザー118に沿って遠位側に追従させられる位置決めツール306の一実施例を示す。実施形態によっては、位置決めツール306は、中空の細長い本体であるかまたは中空の細長い本体を含むことができ、弁送達カテーテル302および/または弁送達部材308の管腔内でテザー118の上に嵌まり、追従させるのに十分な潤滑性と形状と大きさとを有することができる。位置決めツール306は、テザー118の上を追従し、テザー118の湾曲を呈するのに十分に柔軟にすることができる。位置決めツール306は、テザー118を追従するときに屈曲し、回転するように構成可能である。位置決めツール306は、テザー118が左心室106内でとり得る可変の湾曲に従うことができる。追従時の位置決めツール306の柔軟性は、位置決めツール306がテザー118と相互作用し、および/または荷重をかけ、アンカー114を回転させるかまたは取り囲みを解く可能性を低くすることができる。位置決めツール306の近位部が、患者の外部に延びることができ、弁送達カテーテル302の操作を可能にする弁送達カテーテル302の制御部に嵌め込むことができる。制御部は、例えば、弁送達カテーテル302の近位端のハンドルの1つまたは複数のアクチュエータ(例えば、ボタン、ノブ、回転式部材および/またはスイッチ)を含み得る。位置決めツール306の操作には、並進、回転および/または圧縮が含まれ得る。位置決めツール306は、位置決めツール306の遠位端がテザー118の遠位部および/またはアンカー114の近位端とつながる(例えば連結する(interface))まで、テザー118の上を遠位側に前進させることができる。場合によっては、位置決めツール306の遠位端はアンカー114の近位端をテザー118の遠位端に取り外し可能に取り付ける取り付け具とつながって(例えば連結して)もよい。位置決めツールは、テザーを形成するために使用されるような任意の材料または材料の組合せで形成可能である。
【0043】
[0058]位置決めツール306を硬直化させるため、および/または、位置決めツール(例えば取り囲まれたテザーも)の選択された部分で所定の湾曲および/または屈曲を生じさせるために、位置決めツール306の軸方向の圧縮を使用することができる。例えば、
図4A~
図4Cを参照されたい。選択された部分は、優先的に屈曲可能な領域とすることができる(例えば
図4A~
図4C参照)。実施形態によっては、位置決めツール306を硬直化させることで、テザー118を所定の形状および/または形態をとるように付勢する。位置決めツール306の屈曲/圧縮/硬直化は、例えば、テザー118に対して相対的に位置決めツール306を押すこと、および/または、位置決めツール306に対して相対的にテザー118を引くことによって駆動させられてもよい。実施形態によっては、この圧縮力は、弁送達カテーテル302の1つまたは複数のアクチュエータによって制御されてもよい。場合によっては、位置決めツール306の駆動は、弁送達カテーテル302から分離したハンドル/システムによって制御されてもよい。1つまたは複数のアクチュエータは、位置決めツール306に対して制御された張力度を与えるように構成されてもよい。場合によっては、1つまたは複数のアクチュエータは、位置決めツール306を硬直化し屈曲した形態にロックするように構成されてもよい。
【0044】
[0059]
図3Eに、連結領域128において位置決めツール306の遠位端がテザー118の遠位端と連結するまで、テザー118の上を追従させられた位置決めツール306の一例を示す。位置決めツール306は、反転され、所定形状に圧縮/硬直化されている。したがって、位置決めツール306は、150(例えば心臓の心尖に向かうU字形屈曲)および151(アンカー114への取り付け具に隣接する)において1つまたは複数の所定の屈曲を呈している。硬直化した位置決めツール306は、さらに、アンカー114の移動の精密な制御を可能にするために、(例えば、連結領域におけるテザー118と位置決めツール306との相互作用により)テザー118に張力を与えるために使用可能である。
【0045】
[0060]
図3Fに、アンカー114を第1の位置(例えば
図3Aの130)から自己弁輪により近い第2の位置(例えば
図3Gの140)に向かって移動させるための硬直化した(例えば圧縮された)位置決めツール306の使用の一例を示す。これに代えて、またはこれに加えて、アンカー114を移動させるためにテザー118に張力をかけることができる。一実施形態では、硬直化し反転した位置決めツール306は、アンカー114と弁送達カテーテル302との軸方向位置合わせを実現するために使用することができる。位置合わせは、アンカー114を、弁送達カテーテル302の遠位端の面に垂直な面に位置づけられるように位置合わせすることを含み得る。硬直化し反転した位置決めツール306は、弁尖とよりうまく係合し、弁/アンカーの周囲の漏出(弁周囲漏出)を低減するために、
図3Fおよび
図3Gに示すようにアンカー114を弁輪に向かって上方に(近位側に)移動させるためにも使用可能である。実施形態によっては、硬直化し反転した位置決めツール306は、アンカー114が弁輪145との平面性を実現することができるようにし、それによって僧帽弁輪に対して相対的な弁フレームの平面位置決めを確実にしやすくする。位置決めツール306は、アンカー114が自己生体構造(例えば腱索および心尖)の良好な取り囲みを確実に維持するようにすることもできる。
【0046】
[0061]
図3Gに、弁送達カテーテル302の弁送達部材308からの人工弁の配備の準備として、自己弁輪付近にある(第2の)位置140におけるアンカー114の一例を示す。実施形態によっては、人工弁の配備の前および/または配備時に、アンカー114の位置決めが評価されてもよい。位置決めツール306および/またはテザー118は、臨床医によって必要とみなされたときに、アンカー114の位置に選択された調整を加えるために使用することができる。
【0047】
[0062]
図3Hに、同軸弁送達カテーテル302の弁送達部材308からの人工弁の配備の第1の部分の一例を示す。配備の第1の部分は、人工弁の部分的配備とすることができる。
図3Hに示す実施例では、人工弁310を運ぶ弁送達部材308の遠位部を露出させるように弁送達カテーテル302の外側シースが近位側に後退させられる。実施形態によっては、人工弁310は自己展開する。保持外側シースを後退させると、人工弁310がアンカー114によって囲まれている自己弁尖および/または腱索に接触するように拡張することができる。実施形態によっては、配備される人工弁310の第1の部分は、人工弁310のうちの弁輪下空間内または心臓の第2の部屋106内にある部分を含む。実施形態によっては、配備される人工弁310の第1の部分は、人工弁310のうちの弁輪上空間または心臓の第1の部屋104にある部分を含む。
【0048】
[0063]
図3Iに、弁送達部材308から人工弁310の第2の部分を続けて配備する一例を示す。人工弁310の継続配備は、弁送達部材カテーテル302のさらなる近位後退を含み得る。人工弁310の継続配備は、人工弁310の残りの部分の拡張を含み得る。実施形態によっては、第2の部分は、第1の部分の配備時に配備されなかった人工弁310の残りの部分を含む。実施形態によっては、配備される人工弁310の第2の部分は、弁輪上空間内または心臓の第1の部屋104内にある人工弁310の部分を含む。実施形態によっては、配備される人工弁の第2の部分は、弁輪下空間または心臓の第2の部屋106内にある人工弁の部分を含む。弁310は弁310とアンカー114との圧縮嵌めを使用して所定位置に保持可能である。
図3Hに示すように、弁310は1つまたは複数のフレア、例えば心室フレアと心房フレアを含んでもよい。人工弁は、弁310の中央部を形成するくびれを含み得る。弁310は、アンカーが弁310のくびれ部分を囲むようにアンカー114に接して据えられてもよい。
【0049】
[0064]上記では同軸弁送達カテーテル302の近位側への後退による人工弁310の配備について説明しているが、人工弁310の配備の代替方式も可能であることを理解されたい。例えば、実施形態によっては、弁送達部材308は、人工弁310の第1の部分を少なくとも部分的に露出させるように、その(例えば最初の)位置から僧帽弁を越えて遠位側に前進させることができる。これに代えて、またはこれに加えて、弁送達カテーテル302は、人工弁の第2の部分を少なくとも部分的に露出させるように、近位側に後退させることができる。実施形態によっては、第1の部分は人工弁310の遠位部であり、第2の部分は近位部である。実施形態によっては、第1の部分は人工弁の近位部であり、第2の部分は遠位部である。
【0050】
[0065]さらに、上記では同軸送達カテーテルからの弁の配備について説明しているが、反転したテザーおよび/または位置決めツールによる人工弁310の配備の代替方式が可能であることを理解されたい。例えば、弁送達カテーテルはテザーのためのモノレール管腔を含むことができる。本明細書に記載のような反転したテザーおよび/または位置決めツールとともに使用可能な弁送達システムの例は、2021年4月8日に出願された「VALVE DELIVERY SYSTEM」という名称のPCT出願PCT/US2021/026463号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
[0066]実施形態によっては、反転した位置決めツール306および/またはテザー118は、人工弁310の一部または全部の配備の前、配備時、および/または配備後に、アンカー114の位置を調整するために使用されてもよい。位置の調整は、自己弁尖、腱索、血行動態、および/または人工弁の性能の臨床医評価に応答して行われてもよい。人工弁310が完全に配備され、位置が設定されると、位置決めツール306が後退させられてもよく、テザー118がアンカー114から解放され、引き出されてもよい。実施形態によっては、テザー118が解放結合によりアンカーから分離可能である。解放可能な結合の例は、米国特許出願第16/824,576号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。弁送達カテーテル302と弁送達部材308も、同様に引き出され、取り外し可能である。
図3Jに、アンカー114と人工弁310とを所定位置に残して、本体から引き出され、取り外される弁部材308を含む弁送達カテーテル302を示す。
【0052】
[0067]
図4A~
図4Cに、(例えば、
図3A~
図3Jに関連して説明したようなアンカーおよびテザーの配備時の)アンカーの近位端とテザーの遠位部と、位置決めツールの遠位端との間の相互作用の方式の一例を示す。
図4Aおよび
図4Bは、アンカー402の近位端とテザー404の遠位部と位置決めツール406の遠位端のそれぞれ透視図および側部断面図を示している。
図4Aに示すように、アンカー402の近位端は、解放可能取り付け具408においてテザー404に取り付けられる。取り付け具は、接着接合、はんだ接合、圧着、または締め具を含み得る。実施形態によっては、テザー404とアンカー402は、アンカー402の送達の前に取り付けられる。実施形態によっては、取り付け具は、位置決めツール406と相互作用するための大きさおよび形状である選択された幾何形状を有する少なくとも1つの端部を含む。
図4A~
図4Cの実施例では、取り付け具408は概ね、位置決めツール406の角度または傾斜の付いた遠位端412と相互作用または一致(mate)する(換言すれば、かみ合う)ような形状とされた、角度または傾斜の付いた近位端410を有する楔形部を含む。位置決めツール406がテザー404に沿って遠位側に前進させられると、位置決めツール404は最終的にテザー404の楔形部408に突き当たる。楔形部408と位置決めツール406との相互作用により、テザー404(および取り付けられたアンカー402)と位置決めツール406との位置合わせされたねじりに対して剛性のある相互作用を生じさせることができる。端部がねじりに対して剛性のある方法で互いに相互作用する形状である限り、テザーの遠位部410と位置決めツールの遠位端412の他の形状も可能であることを理解されたい。例えば、位置決めツール406の遠位端412は、(例えば、直線形態のときに位置決めツール406の軸に対して垂直な)直線カットの縁部とすることができる。
【0053】
[0068]位置決めツール406は、1つまたは複数の遠位部に沿った空間、間隙または切り欠き(例えば414)を含み得る。軸方向の圧縮下で、切り欠きは、選択された(例えば所定の)方向および/または角度における位置決めツールの選択的たわみを促進する。
図4Cに、位置決めツール406の遠位端が取り付け具408に連結するように前進させられており、圧縮下で切り欠き416が狭くなった間隙を呈している、位置決めツール406の圧縮の一例を示す。位置決めツール406の圧縮は、1つまたは複数の部分に湾曲(例えば曲がりまたは屈曲)を生じさせることができる。生じる湾曲の量は、切り欠きの幾何形状および/または位置決めツールに加えられる圧縮の量に依存し得る。相互作用またはかみ合いは、テザー404と位置決めツール406との相対的回転が実質的に防止されるような相互作用またはかみ合いである。テザー404における取り付け具と結合しているときの位置決めツール406の遠位端の回転が、テザー404の遠位端において回転を生じさせ、アンカー402の回転を促す。アンカー402の回転は、アンカー402が腱索、心尖および/または弁輪に対して相対的に位置づけられる角度を調整するために使用可能である。位置決めツールとテザーについては、2021年4月8日に出願された「VALVE DELIVERY SYSTEM」という名称のPCT/US2021/026463号にさらに記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
[0069]実施形態によっては、反転し硬直化した位置決めツールに、位置決めツールの異なる円周側面または面に沿って、複数の湾曲部または屈曲が形成され得る。
図5Aに、弁送達部材508を運ぶ弁送達カテーテル502の遠位部の一例の透視図を示し、ここで、位置決めツール506は、遠位部内の内側シャフトおよび/またはシースによって形成された管腔を通って延びている。
図5Bに、弁送達カテーテル502の近位後退によって露出した、弁送達部材508によって運ばれる人工弁510の一部を異なる透視図で示す。わかりやすいように、位置決めツールが上を追従させるテザーと、テザーが取り付けられる人工弁のためのアンカーは図面から省かれている。
図5Aおよび
図5Bの例示の位置決めツールは、位置決めツールが圧縮/硬直化状態であるときに、Y-Z面に第1の屈曲514と、X-Y面に第2の屈曲512を有する。実施形態によっては、圧縮された位置決めツールは約5°から約310°の屈曲を含む。位置決めツール506の屈曲は、アンカーに結合され、弁送達カテーテル502の位置決めと人工弁510の配備とを可能にするテザーの形態(例えば屈曲)を維持するように、テザーと位置合わせされ、および/または、テザーを付勢することができる。実施形態によっては、圧縮された位置決めツール506は、
図5Aの屈曲512に示すように、約70°から約100°、例えば約90°の屈曲を含む。実施形態によっては、位置決めツール506は、
図5Aの屈曲514に示すように約150°から約310°、例えば約180°の屈曲を含む。実施形態によっては、屈曲は約2ミリメートル(mm)から約20mmの曲率半径を含む。実施形態によっては、位置決めツール506は、第1の屈曲と第2の屈曲との間にあるほぼ直線の部分を有する(例えば
図5A)。ほぼ直線の部分は、約10mmから約35mmの長さを有し得る。
【0055】
[0070]
図6A~
図6Dに、位置決めツール606の反転を可能にすることが意図された優先的屈曲可能領域の配置構成を有する位置決めツール606の一部を示す。位置決めツール606は、長手方向軸Lと放射軸Rと方位軸(例えば角度軸)φとを有する極座標系とともに示されている。また、優先的屈曲可能領域は、使用時に位置決めツール606が、(1)心臓におけるアンカーの位置決めが可能な硬直化形態を呈し、(2)弁送達カテーテルを位置決めし、人工弁を配備するための空間を与える湾曲(屈曲)部を生じさせることができるようにする。位置決めツール606は、弁送達カテーテル内での並進と回転とを可能にする、概ね一定した断面(例えば
図6Cの断面B-B608)の環状壁を有する細長い本体を含む。実施形態によっては、優先的屈曲可能領域は、位置決めツール606の外壁に少なくとも部分的に外接する1つまたは複数の切り欠きを含む。実施形態によっては、切り欠きは概ね一定した幅を有する(例えば
図6Aの616)。実施形態によっては、切り欠きは変化する幅を有する(例えば
図6Aの626)。実施形態によっては、屈曲可能領域における隣接切り欠き間の間隔は概ね一定している(例えば
図6Aの618)。実施形態によっては、屈曲可能領域における隣接切り欠き間の間隔は可変である(例えば
図6Aの628)。実施形態によっては、位置決めツールの長手方向軸に沿って第1の屈曲可能領域(例えば
図6Aの614)が第2の屈曲可能領域(例えば
図6Aの624)から離隔している。実施形態によっては、位置決めツール606の方位軸に沿って、第1の屈曲可能領域(例えば
図6Bの断面A-A610)が第2の屈曲可能領域(例えば
図6Dの断面C-C612)から離隔している。
図6Aに示す切り欠きの様々な形状、大きさおよび配置は例示に過ぎず、すべてが含まれる必要はないことを理解されたい(例えば、1つの位置決めツールは、位置決めツール606に示されている変形の一部のみを含んでもよい)。また、上記では切り欠きを優先的屈曲可能な領域を形成するものとして説明しているが、当業者には、位置決めツールにおいて優先的屈曲可能な領域を形成するためにいくつかの技術が使用可能であることがわかるであろう。例えば、位置決めツールの外壁を補強する編みパターンが、補強が低減された領域を含んでもよい。例えば、位置決めツールは可変デュロメータポリマー材料、または1つまたは複数の機械式ヒンジを含んでもよい。
【0056】
[0071]本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、位置決めツール306は、反転したテザー118の上をアンカー114の取り囲みを解かずにループし、追従するように構成可能である。位置決めツール306は、弁輪下空間内でアンカー114を軸方向に自己弁の面により近く持ち上げるように構成されてもよい。位置決めツール306は、人工弁310の配備に影響を与えずにアンカー114を所定位置に支持するように構成されてもよい。位置決めツール306は、弁送達カテーテル302にアンカー114を通して(例えば同軸に)追従するように強制するように構成されてもよい。
【0057】
[0072]
図10Aに、反転したテザーの上に位置づけられ、アンカー1014と係合した例示の位置決めツール1006を示す。位置決めツール1006は、第1の優先的屈曲可能領域1044と第2の優先的屈曲可能領域1046とを含み得る。第1の優先的屈曲可能領域1044は、第1の面(例えばY-Z面)に沿って屈曲するように構成可能であり、第2の優先的屈曲可能領域1046は、第1の面とは異なる第2の面(例えばX-Y面)に沿って屈曲するように構成可能である。実施例によっては、第2の面は第1の面に対して直角である。実施例によっては、第2の面は第1の面に対して非直角である。第1の優先的屈曲可能領域1044は、(例えば心臓の心尖に向かって位置する)U字形屈曲を呈するように構成することができる。第2の優先的屈曲可能領域1046は、第1の優先的屈曲可能領域1044と比較して位置決めツール1006の遠位端1050により近く位置することができ、アンカー1014の中心に向かって半径方向内側に屈曲するように構成可能である。第1の優先的屈曲可能領域1044と第2の優先的屈曲可能領域1046のそれぞれが、(例えば
図4A~
図4Cに関連して上述したように)位置決めツール1006に圧縮力が加えられると、これらの部分が直線形態から所定の形状に優先的に屈曲することを可能にする空間または間隙(例えば切り欠き)を含み得る。例えば、第1の優先的屈曲可能領域1044の一方の側が、硬直化状態になるように駆動されるとU字形を形成するように構成された切り欠きを含み得る。この形状は、位置決めツール1006がアンカーを自己弁輪に向かって近づくように支持および/または押すことを可能にすることができる。第2の優先的屈曲可能領域1046の一方の側は、位置決めツール1006を所定角度だけ半径方向内側に屈曲させるように構成された切り欠きを含み得る。
【0058】
[0073]位置決めツール1006は、第1の区画1030と第2の区画1040とを有し得る。第1の区画1030は、アンカー面1032と第1の優先的屈曲可能領域1044の湾曲が始まる面1034との間にある。第2の区画1040は、面1034と第2の優先的屈曲可能領域1046の湾曲が始まるところとの間にある。第2の区画1040は、第1の区画1030とほぼ平行であってもよい。第1の区画1030の軸方向長さL1は、人工弁の配備時にアンカー1014を弁送達カテーテル(および人工弁)との軸方向位置合わせにとって十分な高さに保持し、人工弁の配備のための空間を与えるように選定されてもよい。実施例によっては、長さL1は、15mm、20mm、25mm、30mmおよび40mmのうちの任意の2つの値の間の範囲である。
【0059】
[0074]
図10Bに、位置決めツール1006の遠位部の拡大図を示す。図のように、遠位端1050は、テザーおよび/またはアンカーの一部(例えば取り付け具408)の対応する傾斜縁と相互作用するまたはかみ合う形状とすることができる傾斜縁を含み得る。
図10Bに、位置決めツール1006に軸方向圧縮力が加えられると所定の形状(例えば
図10Aに示すような円弧形状の第2の優先的屈曲可能領域1046)への屈曲を可能にするための、第2の選択可能屈曲可能領域1046の一方の側の円周方向の切り欠き1054を示す。例えば、第2の優先的屈曲可能領域1046は、切り欠き1054からなる間隙が狭くなるように、切り欠き1054に向かって屈曲するように構成可能である。
図10Bには示されていないが、第1の優先的屈曲可能領域1044も、
図10Aに示す所定のU字形を形成する円周方向切り欠きを含み得る。
【0060】
[0075]
図10Bに示すように、位置決めツール1006の第2の区画1040は、切り欠き1066も含み得る。切り欠き1066のパターンは、第2の区画1040がテザー上を追従するときには横方向に曲がり/屈曲することを可能にするが、位置決めツール1006に軸方向圧縮力が加えられるときには第2の区画1040がまっすぐなままであることができるように構成可能である。一部の実施例では、位置決めツール1006の外周の周りに切り欠き1066が螺旋パターンで配置される。場合によっては、第1の区画1030は、位置決めツール1006に軸方向圧縮力が加えられるときには第1の区画1030がまっすぐなままであることを可能にするが、テザーの上の追従時には第1の区画1030が曲がる/屈曲することができるようにするために、切り欠き1066と同じかまたは類似した切り欠きを含む。
【0061】
[0076]
図11Aおよび
図11Bに、位置決めツール1006と類似した特徴を有するが、いくつか異なる特徴を備えた別の例示の位置決めツール1106を示す。アンカー面1132と第1の優先的屈曲可能領域1144の湾曲が始まる面1134との間の第1の区画1130の長さL
2は、
図10Aおよび
図10Bの位置決めツール1006の第1の区画1030の長さL
1よりも長い。このより長い長さは、アンカー1114が人工弁配備のための空間を与えるのに十分な高さに確実に保持されやすくすることができる。実施例によっては、長さL
2は25mm、30mm、35mm、40mm、45mmおよび50mmのうちのいずれか2つの値の間の範囲である。
【0062】
[0077]
図10Aおよび
図10Bの位置決めツール1006と比較すると、第2の区画1140は、第1の区画1130と非平行とすることができる。この角度の付いた構成は、人工弁(例えば人工弁のフレーム部)の配備のためのより広い空間を与えることができる。例えば、この構成は、遠位端1150と第2の優先的屈曲可能領域1146を第1の区画1130からより遠くに配置することができ、それによって、配備時に遠位端1150および/または第2の優先的屈曲可能領域1146が人工弁と干渉し、人工弁の位置ずれを生じさせる可能性を低くすることができる。
【0063】
[0078]
図11Bに示すように、位置決めツール1006の遠位端1150はまっすぐな(例えば傾斜のない)縁を有し得る。このまっすぐな形態は、遠位端がテザーに切り込むのを防ぐことができる。さらに、位置決めツール1106の遠位区画1159が、第2の優先的屈曲可能領域1146に対して遠位にある遠位区画1159を含み得る。遠位区画1159は、人工弁の配備のためのより広い余地を与えることができる。遠位区画1159は、遠位区画1159がテザー上を追従させられるときに曲がる/屈曲することを可能にするが、位置決めツール1106に圧縮力が加えられているときは遠位区画1159がまっすぐなままであることができるように構成された、切り欠き1166を含み得る。実施例によっては、切り欠き1166は、位置決めツール1106の外周の周囲に螺旋パターンで配置される。場合によっては、第1の区画1130および/または第2の区画1140も、テザーの上を追従している間、第1の区画1130および/または第2の区画1140が曲がる/屈曲することができるようにし、一方、位置決めツール1106に軸方向圧縮力が加えられたときは第1の区画1130および/または第2の区画1140がまっすぐなままであることができるようにする、切り欠き1166と同じかまたは類似した切り欠きを含む。
【0064】
[0079]
図7A~
図7Dに、テザーに同軸に沿った送達時に弁送達カテーテル内を運ばれる人工弁の例の透視図と断面図を示す。この例示の同軸弁送達カテーテル700(
図7Aに示す)では、人工弁は、弁送達カテーテル700の遠位端にある弁送達部材708によって運ばれる。
図7Cは、弁送達カテーテル700と弁送達カテーテル内に位置づけられ、人工弁を中央管腔720の周囲に維持する弁送達部材708の外壁702(本明細書では外側シースとも呼ぶ)を示す。中央管腔は、遠位端(例えばノーズコーン部)から近位端まで延び、その中での並進のための位置決めツール706とテザー718とを収容する大きさとされた弁送達部材の内側シャフトによって形成される。例示の人工弁は、フレーム710とそれによって支持され、中心管腔720の周囲に詰め込まれた弁尖材712とを有する。
【0065】
[0080]
図7Bの例示の同軸弁送達カテーテル705は、この実施形態では弁送達部材が存在しないこと以外は、
図7Aのカテーテル700と類似している。この例示の弁送達カテーテル705では、人工弁が弁送達カテーテルの遠位端のノーズコーンによって保持される。
図7Dに、弁送達カテーテルの外壁752(本明細書では外側シースとも呼ぶ)と、テザー管腔の遠位部を画定する内側シャフト770とを示す。テザー管腔は、弁送達カテーテルの遠位端から近位端(例えば患者の外部)まで延び、その中での並進のために位置決めツール756とテザー768とを中に収容する大きさとされる。例示の人工弁は、フレーム760と、それによって支持され、中心管腔の周囲に詰め込まれた弁尖材762とを有する。弁送達カテーテルの遠位端にノーズコーンが結合される。実施形態によっては、弁送達部材がノーズコーンを含む。ノーズコーンは、テザーと位置決めツールとを収容する大きさとされたポートを含み得る。ポートは、ノーズコーンの外側周囲部(例えば外周)に対して相対的に中心に位置することができる。結合されると、ポートとテザー管腔は互いに隣接して位置し、互いに位置合わせされる。
【0066】
[0081]
図8は、弁送達カテーテルに人工弁を配備するためにテザーの上を追従させる方法を示すフローチャート800である。例示の操作802は、送達デバイスに心臓の第1の部屋内までテザーの上を追従させることを含み、テザーは心臓の自己弁輪付近にあるアンカーに結合されている。例示の操作804は、送達デバイスによって自己弁輪を越えて運ばれる人工弁カプセルを位置づけるために、送達デバイスにテザーの上を心臓の第2の部屋内まで追従させることを含む。例示の操作806は、自己弁輪内への配備のために人工弁を露出させることを含む。
【0067】
[0082]
図9は、人工弁を配備するために弁送達カテーテルにテザーの上を同軸に追従させる方法を示すフローチャート900である。例示の操作902は、テザーの一部を、テザーが取り付けられているアンカーを介して患者の部屋(例えば心室)内に移動させることを含む。例示の操作904は、位置決めツールをアンカー、またはテザーおよび/またはアンカーの近位端に取り付けられた取り付け具に向かって、テザーに沿って配備することを含む。次に、位置決めツールの遠位縁が、アンカーの近位縁、またはテザーおよび/またはアンカーの近位端に取り付けられた取り付け具の近位縁に係合することができる。例示の操作906は、位置決めツールを硬直化させ、および/または、テザーに張力をかけることを含む。場合によっては、位置決めツールは、圧縮/硬直化させられると湾曲形状を呈する。例えば、位置決めツールは、位置決めツールの遠位端がアンカーの方に向けられるように、アンカーに対して弁輪下でU字形屈曲を呈してもよい。位置決めツールの遠位端は、アンカーの近位端に直接または間接的に係合または結合するように構成された係合面を含み得る。このようにして、硬直化した位置決めツールがアンカーの移動を制御するためにアンカーと係合することができる。場合によっては、位置決めツールは、位置決めツールの遠位端付近に、アンカーの幾何形状に対応するように半径方向内側に屈曲する第2の屈曲を含む。
【0068】
[0083]例示の操作908は、位置決めツールおよび/またはテザーを使用して、患者の自己生体構造に対して相対的なアンカーの位置を、選択された位置に調整することを含む。例えば、アンカーが可能な限り自己弁の弁輪に近いことが望ましい場合がある。場合によっては、アンカーは自己弁の弁輪に向かって上方に調整されてもよい。例示の操作910は、弁カプセルに、患者の生体構造を通り、自己弁の面を越えてテザーに沿って同軸に追従させることを含む。例示の操作912は、弁カプセルから人工弁をアンカー内に配備することを含む。上記は一連の操作として示されているが、操作のうちの1つまたは複数の操作が異なる順序で行われることも可能であることを理解されたい。例えば、実施形態によっては、位置決めツールを硬直化させること、および/またはテザーに張力をかけることは、弁送達カテーテルに心臓の自己弁を越えて追従させた後で行われる。例えば、実施形態によっては、位置決めツールの配備は、心臓の自己弁を越えて弁送達カテーテルを追従させた後で行われる。
【0069】
[0084]
図12は、人工弁を追従させるためにテザーを反転することを含む、人工弁を送達する方法を示すフローチャート1200である。例示の操作1202は、罹患自己弁の腱索にアンカーを係合させることを含む。アンカーの配備は、アンカーを適正な位置まで操縦するために屈曲および伸展するように構成可能なアンカー送達カテーテル(操縦可能カテーテルまたは外側シースとも呼ぶ)を含み得るアンカー送達デバイスまたはシステムを使用して行われてもよい。場合によっては、アンカー送達デバイスまたはシステムは、操縦可能カテーテル内で並進可能なアンカーガイドをさらに含み得る。アンカーガイドは、中にアンカーを収容するための内部管腔を含み得る。アンカーガイドは、アンカーガイドからのアンカーの配備時に湾曲形状を呈することができる。一部の実施例では、アンカーは、配備されると中心軸を中心に巻き、平面形状を有するワイヤを含む。アンカーは、巻きが自己弁の腱索を取り囲むように配備可能である。アンカーの近位端は、後で人工弁を配備する間にアンカーへの接続を維持するテザーに解放可能に取り付けることができる。
【0070】
[0085]アンカーが配備されると、操作1204において、テザーの一部を自己弁を通って並進させ、反転形態に位置づけることができる。一部の実施例では、これはアンカー送達デバイスまたはシステムの操縦可能カテーテルを使用して行われる。例えば、操縦可能カテーテルが(例えばアンカーの配備後に)テザーの上をまだ追従させられている間に、操縦可能カテーテルを弁輪とアンカーの面とを通って前進させることができる。操縦可能カテーテルのこの前進は、テザーの一部を心臓の第1の部屋(例えば心房)から心臓の第2の部屋(例えば心室)まで並進させることができる。場合によっては、テザーを反転形態に位置づけることは、テザーにU字形屈曲を呈させることを含む。場合によっては、テザーを反転形態に位置づけることは、第2の部屋内で追加のテザー長さをもたせるために、テザーを操縦可能カテーテルに対して相対的に遠位側に並進させることを含む。
【0071】
[0086]テザーが反転形態になると、操作1206において、弁送達デバイスにテザーの上を追従させることができる。弁送達デバイスにテザーの上を追従させることは、テザーの上で弁送達デバイスを自己弁の弁輪を通して前進させることを含み得る。弁送達デバイスは、自己弁輪に対して相対的なアンカーの軸方向高さを調整するために使用可能な位置決めツールを含み得る(例えば
図9参照)。位置決めツールは、(例えば弁送達デバイス内で患者の血管を通過するための)直線状形態から、所定の湾曲形状(例えばU字形)に遷移するように構成されてもよい。操作1208において、人工弁を弁送達デバイスから自己弁輪内およびアンカー内に解放することができる。人工弁とアンカーとの間の対抗力により、人工弁を自己弁の弁輪内の所定位置に固定することができる。人工弁が完全に配備されると、弁送達デバイスとテザーとを心臓および患者の身体から取り外すことができる。
【0072】
[0087]人工弁は、既存の経カテーテル送達弁のものと類似していてもよい。人工弁は、既存の外科生体弁および機械弁に類似し得る。弁区画の少なくとも一部が、例えば人工弁のフレーム構造体を備えた人工弁の少なくとも一部内に位置してもよい。弁区画は、選択的機能のために多層材で形成された心尖を含み得る。弁区画は、内層と外層を有する少なくとも1つの心尖を含み得る。弁区画は、人工弁に直接取り付けられてもよい。あるいは、弁区画は、人工弁に接続される中間弁構造体に取り付けられてもよい。弁区画は、人工弁が自己弁に隣接して配備される前または後に、人工弁に接続されてもよい。人工弁は、人工弁の1つまたは複数の端部において、弁区画の心尖、例えば心尖の外層に取り付けられてもよい。人工弁は、人工弁の1つまたは複数の中間部において弁区画の心尖、例えば心尖の外層に取り付けられてもよい。弁区画は、複数の心尖を含んでもよい。弁区画は、生体適合性の一方向弁を含み得る。一方向の流れが心尖をそらせて開き、反対方向の流れが心尖を閉じさせることができる。
【0073】
[0088]フレーム構造体は、ステントのように構成可能である。フレーム構造体は、例えば、形状記憶材料(例えばニチノールNiTi)から形成されるダイヤモンドパターンの骨格材を含み得る。当業者には、フレーム構造体のために多くの他の構造体、材料および構成も採用可能であることがわかるであろう。例えば、フレーム構造体は、十分な弾性のあるポリマーから形成されてもよい。フレーム構造体は、ポリマーで被覆された金属(例えば形状記憶材料)など、金属とポリマーとの組合せから形成されてもよい。フレーム構造体は、ダイヤモンド形の他にも様々なパターンを含み得る。実施形態によっては、フレーム構造体は、血流が弁区画を通って中に強制的に流入させられるように、閉じたフレームである。1つまたは複数のスカートおよび/または封止材が、血液を強制的に弁区画を通すのに役立ち得る。
【0074】
[0089]本明細書の説明に基づいて、当業者には、本明細書に記載の人工弁のいずれも、フレーム構造体の形状、フレーム構造体の設計、フレーム構造体の材料、アンカーの形状、アンカーの巻き、アンカーの材料、自由先端、心尖構成、または本明細書に記載の可変特徴の任意の他の特徴のいずれか、または必要に応じて任意の組合せで含み得ることがわかるであろう。
【0075】
[0090]実施例1
[0091]
図13A~
図13Cに、子牛の心臓内で行われた例示のテザー反転手順の蛍光透視画像を示す。
図13Aは、(例えば
図2Bのように)腱索の周囲に位置づけられ、外側シース108から来るテザー118に取り付けられたアンカー114を示す。
図13Bは、左弁尖に向かって前進させた外側シース108を示す。図のように、アンカー114の上方にテザー118のたるみ122部分があり、(例えば
図2Fのように)テザー118は張力に起因して拘束された/ねじれた形態を呈し得る。
図13Cは、(例えば
図2Gのように)たるみ122を取り除き、テザー118がアンカー114に対して弁輪下でU字形形態に巻きを解くことができるように、外側シース108内で部分的に後退させた後の反転形態のテザー118を示す。
【0076】
[0092]実施例2
[0093]
図14A~
図14Cに、心臓内のアンカー114の軸方向高さを制御するために使用される例示の位置決めツール1006の蛍光透視画像を示す。これらの画像は、腱索の周囲に位置づけられ、テザーに取り付けられたアンカーを示しており、位置決めツール1006がテザーの上の弁送達カテーテル302から前進させられている。位置決めツール1006は、硬直化し、湾曲した状態で示されている。
図14Aは、自己弁輪145に対して相対的な第1の軸方向高さにアンカー114を支持する位置決めツール1006を示している。
図14Bでは、位置決めツール1006はアンカー114を介して遠位側に押され、それによってアンカー114を自己弁輪145からより遠い第2の軸方向高さまで遠位側に移動させている。
図14Cでは、位置決めツール1006が硬直化/屈曲形態の状態で近位側に引かれ、それによってアンカー114を自己弁輪145により近い第3の軸方向高さまで近位側に移動させている。これらの画像は、アンカー114の軸方向高さを制御するために位置決めツール1006をどのように使用することができるかを示している。
【0077】
[0094]実施例3
[0095]
図15Aおよび
図15Bに、位置決めツール1506の長さに関連して発生する可能性のある問題を示す、心臓における人工弁310の配備例の蛍光透視画像を示す。上述のように、位置決めツール1506の長さ(例えばL
1またはL
2)は、人工弁310の配備を妨げないように十分な長さである必要がある。
図15Aは、弁送達カテーテル302からの人工弁310の配備の前に、弁輪の近くでアンカー114を支持する位置決めツール1506を示している。
図15Bは、アンカー114内への配備のために前進させられる人工弁310を示している。しかし、位置決めツール1506のU字形端部が、人工弁310の配備のための十分な空間を設けるにはアンカー114に近すぎる。上述のように、位置決めツール1506の長さは、人工弁配備のための十分な空間をもたせるのに十分に長く選定することができる。
【0078】
[0096]本明細書で機構または要素が別の機構または要素「上に」あると言う場合、それはその別の機構または要素の直接上に存在することができるか、または介在する機構および/または要素も存在してもよい。それに対して、機構または要素が別の機構または要素の「直接上に」あると言う場合、介在する機構または要素は存在しない。また、機構または要素が別の機構または要素に「接続される」、「取り付けられる」または「結合される」と言う場合、それはその別の機構または要素に直接、接続、取り付け、または結合されることができるか、または介在する機構または要素が存在してもよいことを理解されたい。それに対して、機構または要素が「直接接続される」、「直接取り付けられる」、または「直接結合される」と言う場合、介在する機構または要素は存在しない。一実施形態に関連して説明し、図示しているが、そのように説明または図示している機構および要素は他の実施形態にも適用可能である。また、別の機構に「隣接して」配置されている構造体または機構と言う場合、その隣接する機構に重なるかまたは下にある部分を有し得ることが当業者にはわかるであろう。
【0079】
[0097]本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態について説明することを目的としているに過ぎず、本発明の限定であることは意図されていない。例えば、本明細書で使用されている単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が他の解釈を明確に示していない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、「含んでいる」および/または「含む」という用語が本明細書で使用されている場合、記載されている機構、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を指定しているが、1つまたは複数の他の機構、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはこれらのグループの存在または追加を排除しないことを理解されたい。本明細書で使用されている「および/または」という用語は、関連する列挙されている項目のうちの1つまたは複数の項目のいずれかまたはすべての組合せを含み、「/」と略されている場合がある。
【0080】
[0098]本明細書では、「下方」、「下」、「下部」、「上」、「上部」などの空間的相対語が、図面に図示されているような1つの要素または機構の別の要素または機構との関係を説明する説明しやすさのために使用されている場合がある。これらの空間的相対語は、図面に示されている向きに加えて、使用時または操作時のデバイスの異なる向きも包含することが意図されていることを理解されたい。例えば、図中のデバイスが反転された場合、他の要素または機構の「下方」または「下」にあると記載されている要素はその別の要素または機構の「上」の向きにあることになる。したがって、「下方」という例示の用語は、上と下の両方の向きを包含し得る。デバイスは他の向き(90度回転またはその他の向き)とされる場合があり、本明細書で使用されている空間的相対記述語はそれに応じて解釈される。同様に、「上方へ」、「下方へ」、「垂直」、「水平」などの用語は、本明細書では、具体的に別に示されていない限り、説明を目的として使用されている。
【0081】
[0099]本明細書では、様々な機構/要素(ステップを含む)を説明するために「第1」および「第2」という用語が使用されている場合があるが、文脈が他の解釈を示していない限り、これらの機構/要素はこれらの用語によって限定されてはならない。これらの用語は、1つの機構/要素を別の機構/要素から区別するために使用されている場合がある。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下で記載されている第1の機構/要素は第2の機構/要素と称されることも可能であり、同様に、以下で記載されている第2の機構/要素は第1の機構/要素と称されることも可能である。
【0082】
[0100]本明細書および後続の特許請求の範囲全体を通じて、文脈が別の意味を要求していない限り、「含んでいる(comprise)」という語と、「含んでいる(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、方法および物(例えば、デバイスおよび方法を含む構成物および装置)において様々な構成要素が一緒に採用可能であることを意味する。例えば、「含む(comprising)」という用語は、任意の記載されている要素またはステップを含むことを含意するが、他の要素またはステップを除外しないものと理解される。
【0083】
[0101]実施例で使用されているものを含み、明示的に規定されていない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用されているすべての数値は、「約」または「おおよそ」という用語が明示的に記載されていない場合であってもこれらの語が前置されているかのように読むことができる。「約」または「おおよそ」という語句は、記載されている値および/または位置が、値および/または位置の妥当な期待範囲内にあることを示すために、大きさおよび/または位置を記載するときに使用されていることがある。例えば、数値は記載されている値(または値の範囲)の+/-0.1%、記載されている値(または値の範囲)の+/-1%、記載されている値(または値の範囲)の+/-2%、記載されている値(または値の範囲)の+/-5%、または記載されている値(または値の範囲)の+/-10%である値を有し得る。本明細書で示されているいずれの数値も、文脈が他の解釈を示していない限り、約またはおおよそのその値を含むものとも解釈されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書に記載されているいずれの範囲も、本明細書に包含されるすべての部分範囲を含むことが意図されている。また、ある値が開示されている場合、当業者に適切に理解されるように、その値「以下」、「その値以上」および値の間の可能な範囲も開示されていることも理解されたい。例えば、値「X」が開示されている場合、「X以下」および「X以上」(例えば、Xが数値である場合)も開示されている。また、本出願全体を通して、データがいくつかの異なる形式で示されていること、およびこれらのデータが終点と始点、およびこれらのデータ点の任意の組合せの範囲を表すことも理解されたい。例えば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点「15」が開示されている場合、10および15超、10および15以上、10および15未満、10および15以下と、10および15に等しい値も、10と15の間の値として開示されているとみなされるものと理解されたい。また、2つの特定の単位量間の各単位量も開示されているものと理解されたい。例えば、10と15が開示されている場合、11、12、13および14も開示されている。
【0084】
[0102]以上、様々な例示の実施形態について説明したが、特許請求の範囲によって記述されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に多くの変更のいずれでも加えることができる。例えば、記載されている様々な方法ステップが行われる順序は、多くの場合、代替実施形態では変更可能であり、他の代替実施形態では1つまたは複数の方法ステップが完全にスキップされてもよい。様々なデバイスおよびシステムの実施形態の任意選択の特徴は、一部の実施形態には含まれ、他の実施形態には含まれていなくてもよい。したがって、上記の説明は、主として例示のために示されており、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0085】
[0103]本明細書に含まれる実施例および例示は、例示を目的とし、限定を目的としておらず、本主題が実施され得る特定の実施形態を示している。上述のように、本開示の範囲から逸脱することなく構造的および論理的代替および変更が加えられるような方式で、他の実施形態も使用可能であり、導き出すことができる。本発明の主題のそのような実施形態を、本明細書では、本出願の範囲を、実際には複数開示されている場合にいかなる単一の発明または発明の概念にも自発的に限定することを意図せずに、単に便宜上、「発明」という用語で個別またはまとめて称する場合がある。したがって、本明細書では特定の実施形態について例示し、説明しているが、同じ目的を達成するために意図された任意の構成を、示されている特定の実施形態の代わりに用いることができる。本開示は、様々な実施形態のあらゆる改変または変形を対象として含むことが意図されている。上記の説明を検討すれば、当業者には、上記の実施形態の組合せ、および本明細書で具体的に記載されていない他の実施形態が明らかになるであろう。
【国際調査報告】