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特表2023-533971多糖類とポリフェノールを含有する免疫恒常性の調節用アロエベース組成物
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  • 特表-多糖類とポリフェノールを含有する免疫恒常性の調節用アロエベース組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】多糖類とポリフェノールを含有する免疫恒常性の調節用アロエベース組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/886 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 36/481 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20230731BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230731BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K36/886
A61K36/53
A61K36/07
A61K31/222
A61K36/481
A61K45/00
A61P37/04
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/16
A61K31/05
A61P43/00 121
A61K31/715
A23L33/105
A23L29/206
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501088
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 US2021040797
(87)【国際公開番号】W WO2022015559
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/049,871
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521158428
【氏名又は名称】ユニゲン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イマム,メスフィン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ホーム,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ブローネル,リディア
(72)【発明者】
【氏名】ホン,メイ
(72)【発明者】
【氏名】オニール,アレグザンドリア
(72)【発明者】
【氏名】ジア,チイ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
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4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
免疫恒常性の調節に使用される組成物及び方法として、1種以上の多糖類を高濃度化したアロエ抽出物と、1種以上の多糖類を高濃度化したポリア抽出物と、1種以上のポリフェノール化合物を高濃度化したローズマリー抽出物との組み合わせを含む組成物及び方法を開示する。HMGB1を調節することにより免疫恒常性を維持するための組成物として、1種以上の多糖類と1種以上のポリフェノール化合物の組み合わせを含む組成物も開示する。哺乳動物における免疫恒常性の調節を治療、管理、促進するための方法として、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む方法も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の多糖類を高濃度化したアロエ(Aloe)抽出物と、1種以上の多糖類を高濃度化したポリア(Poria)抽出物と、1種以上のポリフェノール化合物を高濃度化したローズマリー(Rosemary)抽出物との組み合わせを含む、免疫恒常性の調節用組成物。
【請求項2】
前記組成物における前記アロエ抽出物、ポリア抽出物、又はローズマリー抽出物が、各抽出物につき1重量%~98重量%の範囲であり、アロエ:ポリア:ローズマリー(APR)の最適重量比が、3:2:1(50%:33.3%:16.7%)又は1:1:1(33.3%:33.3%:33.3%)又は3:6:1(30%:60%:10%)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アロエ抽出物が、アロエ・ベラ(Aloe vera)又はアロエ・バルバデンセ(Aloe barbadense)に由来する全葉ゲル又は葉肉ゲルであり、前記ポリア抽出物が、ポリア・ココス(Poria cocos)又はウォルフィポリア・エクステンサ(Wolfiporia extensa)の菌類又は子実体に由来し、前記ローズマリー抽出物が、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis)の葉に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アロエ抽出物が、0.01%~99.9%の多糖類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリア抽出物が、0.01%~99.9%の多糖類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ローズマリー抽出物が、0.01%~99.9%のロスマリン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アロエ抽出物に由来する前記1種以上の多糖類が、アセチル化多糖若しくはアセマンナン又は任意のそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリア抽出物に由来する前記1種以上の多糖類が、β-グルカン又はその組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1種以上の多糖類が、アロエ・ベラ(Aloe vera)、アロエ・バルバデンセ(Aloe barbadense)、アロエ・フェロクス(Aloe ferox)、アロエ・アルボレセンス(Aloe arborescens:キダチアロエ)、アストラガルス・メンブラナセウス(Astragalus membranaceus:キバナオウギ)、ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum:レイシ)、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare:オオムギ)、アガリクス・スブルフェセンス(Agaricus subrufescens:ニセモリノカサ)(アガリクス・ブラゼイ(A.blazei))、エキナセア・プルプレア(Echinacea purpurea:ムラサキバレンギク)、エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia:ホソバムラサキバレンギク)、アコニツム・ナペルス(Aconitum Napellus:ヨウシュトリカブト)、サンブクス・ニグラ(Sambucus nigra:セイヨウニワトコ)、ポリア・ココス・ウォルフ(Poria cocos Wolf:マツホド)、ウォルフィポリア・エクステンサ(Wolfiporia extensa)、ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera:アシュワガンダ)、ブプレウルム・ファルカツム(Bupleurum falcatum:ミシマサイコ)、カンゾウ属種(Glycyrrhiza spp)、パナックス・クインクエフォリウム(Panax quinquefolium:アメリカニンジン)、パナックス・ジンセン・シー・エイ・マイヤー(Panax ginseng C.A.Meyer:オタネニンジン)、コレア・レッド・ジンセン(Korea red ginseng:コウライニンジン)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、イノノツス・オブリクウス(Inonotus obliquus:カバノアナタケ)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、リキウム・バルバルム(Lycium barbarum:ナガバクコ)、リキウム・キネンセ(Lycium chinense:クコ)、フェリナス・リンテウス(Phellinus linteus:メシマコブ)(子実体)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)(子実体)、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus:クラスタマメ)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)、クラドシフォン・オカムラヌス・トキダ(Cladosiphon okamuranus Tokida:オキナワモズク)、ウンダリア・ピンナティフィダ(Undaria pinnatifida:ワカメ)、キノコ類、海藻類、酵母類、褐藻類、アガベネクター、褐海藻、発酵性食物繊維、穀類、ナマコ、アガベ、アーティチョーク、アスパラガス、リーキ、ニンニク、タマネギ、ライムギ、オオムギ穀粒、コムギ、ナシ、リンゴ、グアバ、マルメロ、プラム、セイヨウスグリ、オレンジ及び他の柑橘果樹類から構成される群又はそれらの組み合わせから選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリフェノール化合物が、メリッサ・オフィシナリス(Melissa officinalis:レモンバーム)、モモルディカ・バルサミナ(Momordica balsamina)、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita:ペパーミント)、ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens:エゴマ)、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis:セージ)、テウクリウム・スコロドニア(Teucrium scorodonia:ウッドセージ)、サニクラ・エウロパエア(Sanicula europaea:セイヨウウマノミツバ)、コレウス・ブルメイ(Coleus blumei)、イブキジャコウソウ属種(Thymus spp.)、ヒプティス・ベルティシラータ(Hyptis verticillata)、リソスペルマム・エリスロリゾン(Lithospermum erythrorhizon:ムラサキ)、アントケロス・アグレスティス(Anthoceros agrestis:ツノゴケ)、ピペル・ロングム・リンネ(Piper longum Linn:ヒハツ)、コプティス・キネンシス・フランシェ(Coptis chinensis Franch:トウオウレン)、アンジェリカ・シネンシス・(オリバー)ディールス(Angelica sinensis(Oliv.)Diels:カラトウキ)、トキシコデンドロン・ベルニシフルウム(Toxicodendron vernicifluum:ウルシ)、グリシルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra:スペインカンゾウ)、グリシルリザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis:ウラルカンゾウ)、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa:ウコン)、サルビア・ロスマリヌス(Salvia Rosmarinus:ローズマリー)、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis:ローズマリー)、ジンジベル・オフィシナリス(Zingiber officinalis:ショウガ)、ポリガラ・テヌイフォリア(Polygala tenuifolia:イトヒメハギ)、フムルス・ルプルス(Humulus lupulus:ホップ)、ロニセラ・ジャポニカ(Lonicera Japonica:スイカズラ)、サルビア・オフィシナリス・エル(Salvia officinalis L.:セージ)、センテラ・アジアティカ(Centella asiatica:ツボクサ)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carteri)、メンタ・ロンギフォリア(Mentha longifolia:ナガバハッカ)、ピセア・クラシフォリア(Picea crassifolia)、シトラス・ノビリス・ルーレイロ(Citrus nobilis Lour)、シトラス・アランチウム・エル(Citrus aurantium L:ダイダイ)、カメリア・シネンシス・エル(Camellia sinensis L:チャノキ)、プエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)、プエラリア・ロバタ(Pueraria lobata:クズ)、グリキネ・マクス(Glycine max:ダイズ)、トウガラシ属種(Capsicum species)、ファロピア・ジャポニカ(Fallopia japonica:イタドリ)、チャ、トマト、アブラナ科野菜、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、マルベリー、リンゴ、トウガラシから構成される群又はそれらの組み合わせから選択される植物種に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリフェノール化合物が、ロスマリン酸、EGCG、ECG、エピガロカテキン等の結合型カテキン類、オロキシリン、ケンペロール、ゲニステイン、ケルセチン、ブテイン、ルテオリン、クリシン、アピゲニン、クルクミン、レスベラトロール、カプサイシン、グロメラトースA、6-ショウガオール、ジンゲロール、ベルベリン、ピペリン又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記多糖類及びポリフェノールが、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、子実体、キノコ、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物部分又は菌類に由来し、高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物における前記アロエ抽出物、前記ポリア抽出物及び前記ローズマリー抽出物が、COの超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アセトン、アルコール、水混合溶媒又はそれらの組み合わせを含む任意の適切な溶媒で抽出されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記多糖類が、個々による及び/又は組み合わせでの、溶媒沈殿、限外濾過、酵素消化、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナ酸化物、ポリアミド、CG161及びサイズ排除カラム樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
1種以上のポリフェノールが、個々による又は組み合わせでの、溶媒分配、沈殿、蒸留、蒸発、限外濾過、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナ酸化物、ポリアミド、サイズ排除カラム及びCG161樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより高濃度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、更に薬学的又は栄養補強的に許容される活性成分、補助剤、基剤、希釈剤又は賦形剤を含み、前記薬学的製剤又は栄養補強製剤が、約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の活性化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記活性成分、補助剤、賦形剤又は基剤が、アサ(Cannabis sativa)種子油又はCBD/THC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア属(Boswellia)抽出物、ローズヒップ抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ属(Sophora)抽出物、ハッカ属(Mentha)又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、オメガ3又はオメガ6脂肪酸、魚油、クリルオイル、γ-リノレン酸、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウム塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、マルトデキストリン、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、食塩水、水、油類、サメ及びウシ軟骨、又はそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤又は顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、ガム剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤、液剤、チンキ剤、空中拡散剤、半固形剤、半液状剤、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ジェル基剤等の形態で製剤化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
哺乳動物における免疫恒常性の調節を治療、管理、促進する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
前記組成物が、1種以上の多糖類を高濃度化したアロエ抽出物と、1種以上の多糖類を高濃度化したポリア抽出物と、1種以上のポリフェノール化合物を高濃度化したローズマリー抽出物との組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物の投与が、経口投与、局所投与、坐剤投与、静脈内投与、皮内投与、胃内投与、筋肉内投与、腹腔内投与及び静脈内投与を含む群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
免疫応答を最適化すること又はそのバランスをとることにより免疫恒常性を維持する方法;加齢及び免疫器官老化による免疫低下を改善する方法;慢性炎症及び炎症による免疫低下を予防する方法;インフルエンザワクチン接種又はCOVID-19ワクチン接種に対して健全な免疫応答を維持するのを助ける方法;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける方法;大気汚染により誘発される酸化ストレス損傷から哺乳動物の免疫系を保護する方法を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
更に、細胞質移行を阻止すること若しくは小胞媒介性の放出を阻止することによってHMGB1の能動的若しくは受動的放出を標的として、若しくは核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、HMGB1放出の阻害すること又はその作用を妨害することにより、又は放出時のHMGB1を直接標的とし、その作用を中和することにより、又はToll様受容体(TLR)-2/4/7/9及び終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックするか、若しくはそのシグナル伝達を阻害することにより、又は物理化学的微小環境を変化させ、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害することにより、あるいはHMGB1のクラスター形成若しくは自己会合を防止することより、内因性又は外因性応答攻撃トリガーとしてのHMGB1を調節し、恒常性を回復するように宿主免疫応答をシフトさせる方法を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
更に、健全な炎症応答を支援する方法;感染に対する補体C3及びC4タンパク質、サイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する方法;TNF-α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-β/LTA、CRP、及びCINC3を低減、調節及び維持する方法を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
更に、酸化応答を制御し、酸化ストレスを緩和すること;カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、及びNrf2を増加させることにより抗酸化能を増強すること;マロンジアルデヒド(MDA)、8-イソプロスタグランジンF2α、及び終末糖化産物(AGE)を低減又は維持すること;活性酸素種を中和すること;UV及び化学酸化ストレスにより哺乳動物のDNA損傷が生じないように保護することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
更に、自然免疫を改善すること;適応免疫を改善すること;白血球の活性及び数を増加すること;ナチュラルキラー(NK)細胞機能を強化すること;Tリンパ球、Bリンパ球、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の数を増加、調節、維持すること;CD3+、CD3-CD56+NK細胞、CD3+CD56+NKT細胞、CD3+CD56-Tリンパ球、CD3-CD56-非NK非Tリンパ球、CD3-CD57+NK細胞、CD3-CD56+CD57+NK細胞、CD4+NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、CD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞及びCD8+細胞数を増加すること;CD45+細胞、CD45RAナイーブT細胞及びB細胞、CD45R0活性化及びメモリーT細胞及びB細胞を調節すること;マクロファージ貪食活性を保護及び促進すること;並びに正常な抗体IgG、IgM、IgA産生、哺乳動物の特定のウイルス株に対するヘマグルチニン阻害(HI)力価を支援又は促進することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
更に、呼吸器における健全な肺微生物叢又は共生システムを維持すること;肺浄化・解毒能を維持すること;肺構造完全性及び酸素交換能を保護すること;呼吸器通過を維持し、肺胞の酸素吸収能を強化すること;ウイルス感染、細菌感染、喫煙及び大気汚染から正常な健康肺機能を保護すること;酸化ストレスに起因する肺損傷を軽減すること;並びに肺の微小循環を促進し、哺乳動物の正常な凝固機能を保護することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
更に、身体の痛み、咽喉痛、咳、軽微な咽喉及び気管支刺激、鼻閉、副鼻腔うっ血、副鼻腔圧迫感、鼻水、くしゃみ、嗅覚低下、味覚低下、筋肉痛、頭痛、発熱及び悪寒を含む感冒/インフルエンザ様症状を緩和又は軽減すること;痰(粘液)を緩くし、気管支分泌物を薄めて咳をし易くすること;気管支刺激の重症度を低下させること;ウイルス感染、微生物感染及び大気汚染に起因する肺損傷又は浮腫又は炎症性細胞浸潤の重症度を低下させること;感冒/インフルエンザ又は汚染シーズンを通して気管支系及び快適な呼吸を支援すること;肺線維症を予防又は治療すること普通感冒/インフルエンザの持続期間又は重症度を軽減すること;呼吸器系のウイルス感染及び細菌感染の重症度又は持続期間を軽減すること;ウイルス、微生物及び大気汚染に起因する呼吸器感染症を予防又は治療又は治癒治療すること;呼吸器感染症の進行を管理又は治療又は予防又は逆転すること;肺炎の進行を管理又は治療又は予防又は逆転すること;並びに哺乳動物の肺及び呼吸器系全体の修復及び再生機能を促進及び増強及び若返らせることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
HMGB1を調節することにより免疫恒常性を維持するための組成物であって、1種以上の多糖類と1種以上のポリフェノール化合物との組み合わせを含み、前記組成物が、細胞質移行を阻止すること若しくは小胞媒介性の放出を阻止することによってHMGB1の能動的若しくは受動的放出を標的として、若しくは核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、HMGB1放出の阻害すること又はその作用を妨害することにより、又は放出時のHMGB1を直接標的とし、その作用を中和するか、又はToll様受容体(TLR)-2/4/7/9及び終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックするか、若しくはそのシグナル伝達を阻害するか、又は物理化学的微小環境を変化させ、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害するか、あるいはHMGB1のクラスター形成又は自己会合を防止することにより、HMGB1を調節する、前記組成物。
【請求項30】
前記組成物における前記多糖類及びフェノール化合物が、各種化合物につき1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の範囲である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記1種以上の多糖類が、アロエ・ベラ(Aloe vera)、アロエ・バルバデンセ(Aloe barbadense)、アロエ・フェロクス(Aloe ferox)、アロエ・アルボレセンス(Aloe arborescens:キダチアロエ)、アストラガルス・メンブラナセウス(Astragalus membranaceus:キバナオウギ)、ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum:レイシ)、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare:オオムギ)、アガリクス・スブルフェセンス(Agaricus subrufescens:ニセモリノカサ)(アガリクス・ブラゼイ(A.blazei))、エキナセア・プルプレア(Echinacea purpurea:ムラサキバレンギク)、エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia:ホソバムラサキバレンギク)、アコニツム・ナペルス(Aconitum Napellus:ヨウシュトリカブト)、サンブクス・ニグラ(Sambucus nigra:セイヨウニワトコ)、ポリア・ココス・ウォルフ(Poria cocos Wolf:マツホド)、ウォルフィポリア・エクステンサ(Wolfiporia extensa)、ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera:アシュワガンダ)、ブプレウルム・ファルカツム(Bupleurum falcatum:ミシマサイコ)、カンゾウ属種(Glycyrrhiza spp)、パナックス・クインクエフォリウム(Panax quinquefolium:アメリカニンジン)、パナックス・ジンセン・シー・エイ・マイヤー(Panax ginseng C.A.Meyer:オタネニンジン)、コレア・レッド・ジンセン(Korea red ginseng:コウライニンジン)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、イノノツス・オブリクウス(Inonotus obliquus:カバノアナタケ)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、リキウム・バルバルム(Lycium barbarum:ナガバクコ)、リキウム・キネンセ(Lycium chinense:クコ)、フェリナス・リンテウス(Phellinus linteus:メシマコブ)(子実体)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)(子実体)、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus:クラスタマメ)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)、クラドシフォン・オカムラヌス・トキダ(Cladosiphon okamuranus Tokida:オキナワモズク)、ウンダリア・ピンナティフィダ(Undaria pinnatifida:ワカメ)、キノコ類、海藻類、酵母類、褐藻類、アガベネクター、褐海藻、発酵性食物繊維、穀類、ナマコ、アガベ、アーティチョーク、アスパラガス、リーキ、ニンニク、タマネギ、ライムギ、オオムギ穀粒、コムギ、ナシ、リンゴ、グアバ、マルメロ、プラム、セイヨウスグリ、オレンジ及び他の柑橘果樹類、又はそれらの組み合わせを含む植物種に由来し、高濃度化されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリフェノール化合物が、メリッサ・オフィシナリス(Melissa officinalis:レモンバーム)、モモルディカ・バルサミナ(Momordica balsamina)、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita:ペパーミント)、ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens:エゴマ)、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis:セージ)、テウクリウム・スコロドニア(Teucrium scorodonia:ウッドセージ)、サニクラ・エウロパエア(Sanicula europaea:セイヨウウマノミツバ)、コレウス・ブルメイ(Coleus blumei)、イブキジャコウソウ属種(Thymus spp.)、ヒプティス・ベルティシラータ(Hyptis verticillata)、リソスペルマム・エリスロリゾン(Lithospermum erythrorhizon:ムラサキ)、アントケロス・アグレスティス(Anthoceros agrestis:ツノゴケ)、ピペル・ロングム・リンネ(Piper longum Linn:ヒハツ)、コプティス・キネンシス・フランシェ(Coptis chinensis Franch:トウオウレン)、アンジェリカ・シネンシス・(オリバー)ディールス(Angelica sinensis(Oliv.)Diels:カラトウキ)、トキシコデンドロン・ベルニシフルウム(Toxicodendron vernicifluum:ウルシ)、グリシルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra:スペインカンゾウ)、グリシルリザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis:ウラルカンゾウ)、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa:ウコン)、サルビア・ロスマリヌス(Salvia Rosmarinus:ローズマリー)、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis:ローズマリー)、ジンジベル・オフィシナリス(Zingiber officinalis:ショウガ)、ポリガラ・テヌイフォリア(Polygala tenuifolia:イトヒメハギ)、モルス・アルバ(Morus alba:マグワ)、フムルス・ルプルス(Humulus lupulus:ホップ)、ロニセラ・ジャポニカ(Lonicera Japonica:スイカズラ)、サルビア・オフィシナリス・エル(Salvia officinalis L.:セージ)、センテラ・アジアティカ(Centella asiatica:ツボクサ)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carteri)、メンタ・ロンギフォリア(Mentha longifolia:ナガバハッカ)、ピセア・クラシフォリア(Picea crassifolia)、シトラス・ノビリス・ルーレイロ(Citrus nobilis Lour)、シトラス・アランチウム・エル(Citrus aurantium L:ダイダイ)、カメリア・シネンシス・エル(Camellia sinensis L:チャノキ)、プエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)、プエラリア・ロバタ(Pueraria lobata:クズ)、グリキネ・マクス(Glycine max:ダイズ)、トウガラシ属種(Capsicum species)、ファロピア・ジャポニカ(Fallopia japonica:イタドリ)、チャ、トマト、アブラナ科野菜、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、マルベリー、リンゴ、トウガラシ、又はそれらの組み合わせを含む植物種に由来し、高濃度化されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記ポリフェノール化合物が、ロスマリン酸、EGCG、ECG、エピガロカテキン等の結合型カテキン類、オロキシリン、ケンペロール、ゲニステイン、ケルセチン、ブテイン、ルテオリン、クリシン、アピゲニン、クルクミン、レスベラトロール、カプサイシン、グロメラトースA、6-ショウガオール、ジンゲロール、ベルベリン、ピペリン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
前記多糖類及びポリフェノール化合物が、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、子実体、キノコ、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせから構成される群から選択される植物部分又は菌類に由来し、高濃度化されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物における前記多糖類及びポリフェノール化合物が、COの超臨界流体、水、メタノール、エタノール、アルコール、水混合溶媒又はそれらの組み合わせを含む任意の適切な溶媒でバイオマスから抽出されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項36】
前記多糖類が、個々による又は組み合わせでの、溶媒沈殿、限外濾過、酵素消化、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナ酸化物、ポリアミド、サイズ排除カラム及びCG161樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより高濃度化されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項37】
1種以上のポリフェノール化合物が、個々による又は組み合わせでの、溶媒分配、沈殿、限外濾過、蒸留、蒸発、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナ酸化物、ポリアミド及びCG161樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより高濃度化されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、更に薬学的又は栄養補強的に許容される活性成分、補助剤、基剤、希釈剤又は賦形剤を含み、前記薬学的製剤又は栄養補強製剤が、約0.1重量パーセント(重量%)~約99.9重量%の活性化合物を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項39】
前記活性成分、補助剤、賦形剤又は基剤が、アサ(Cannabis sativa)種子油又はCBD/THC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア属(Boswellia)抽出物、ローズヒップ抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ属(Sophora)抽出物、ハッカ属(Mentha)又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、オメガ3又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、γ-リノレン酸、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ濃縮物、アスタキサンチン、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウム塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、マルトデキストリン、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、食塩水、水、油類、サメ及びウシ軟骨、又はそれらの組み合わせの1種以上から選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤又は顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、ガム剤、チューインガム剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤、液剤、チンキ剤、エアゾール剤、半固形剤、半液状剤、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤又はジェル基剤として製剤化されている、請求項29に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、経口投与、局所投与、坐剤投与、静脈内投与、皮内投与、胃内投与、筋肉内投与、腹腔内投与及び静脈内投与を含む投与経路を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項42】
哺乳動物における免疫恒常性の調節を治療、管理、促進する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
免疫応答を最適化すること又はそのバランスをとることにより免疫恒常性を維持する方法;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける方法;大気汚染により誘発される酸化ストレス損傷から免疫系を保護する方法;ウイルス感染、細菌感染及び大気汚染から正常な健康肺機能を保護する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
内因性又は外因性応答攻撃トリガーとしてのHMGB1を調節し、恒常性を回復するように宿主免疫応答をシフトさせる方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
健全な炎症応答を支援する方法;感染に対する補体C3及びC4タンパク質、サイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する方法;TNF-α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-β/LTA、CRP及びCINC3を低減、調節及び維持する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
酸化応答を制御し、酸化ストレスを緩和する方法;カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、及びNrf2を増加させることにより、抗酸化能を増強する方法;マロンジアルデヒド(MDA)、8-イソプロスタグランジンF2α、及び終末糖化産物(AGE)を低減又は維持する方法;活性酸素種を中和する方法;UV及び化学酸化ストレスによりDNA損傷が生じないように保護する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
自然免疫を改善する方法;適応免疫を改善する方法;白血球の活性及び数を増加する方法;ナチュラルキラー(NK)細胞機能を強化する方法;Tリンパ球、Bリンパ球、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の数を増加、調節、維持する方法;CD3+、CD3-CD56+NK細胞、CD3+CD56+NKT細胞、CD3+CD56-Tリンパ球、CD3-CD56-非NK非Tリンパ球、CD3-CD57+NK細胞、CD3-CD56+CD57+NK細胞、CD4+NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、CD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞及びCD8+細胞数を増加する方法;CD45+細胞、CD45RAナイーブT細胞及びB細胞、CD45R0活性化及びメモリーT細胞及びB細胞を調節する方法;マクロファージ貪食活性を保護及び促進する方法;正常な抗体IgG、IgM、IgA産生、特定のウイルス株に対するヘマグルチニン阻害(HI)力価を支援又は促進する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項48】
呼吸器における健全な肺微生物叢又は共生システムを維持する方法;肺浄化・解毒能を維持する方法;肺構造完全性及び酸素交換能を保護する方法;呼吸器通過を維持し、肺胞の酸素吸収能を強化する方法;酸化ストレスに起因する肺損傷を軽減する方法;肺の微小循環を促進し、正常な凝固機能を保護する方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
身体の痛み、咽喉痛、咳、軽微な咽喉・気管支刺激、鼻閉、副鼻腔うっ血、副鼻腔圧迫感、鼻水、くしゃみ、嗅覚低下、味覚低下、筋肉痛、頭痛、発熱及び悪寒を含む感冒/インフルエンザ様症状を緩和又は軽減する方法;痰(粘液)を緩くし、気管支分泌物を薄めて咳をし易くする方法;気管支刺激の重症度を低下させる方法;ウイルス感染、微生物感染及び大気汚染に起因する肺損傷又は浮腫又は炎症性細胞浸潤の重症度を低下させる方法;感冒/インフルエンザ又は汚染シーズンを通して気管支系と快適な呼吸を支援する方法;肺線維症を予防又は治療する方法;普通感冒/インフルエンザの持続期間又は重症度を軽減する方法;呼吸器系のウイルス感染及び細菌感染の重症度又は持続期間を軽減する方法;ウイルス、微生物及び大気汚染に起因する呼吸器感染症を予防又は治療又は治癒治療する方法;呼吸器感染症の進行を管理又は治療又は予防又は逆転する方法;肺炎の進行を管理又は治療又は予防又は逆転する方法;哺乳動物の肺及び呼吸器系全体の修復及び再生機能を促進及び増強及び若返らせる方法であって、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgの量である有効量の請求項29に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アロエ(アロエ・バルバデンシス・エム(Aloe barbadensis M.)、アロエ・ベラ(Aloe vera))は、ユリ科(Liliaceae)の一員であり、何世紀にもわたり、食品又は局所ジェル剤及び民間薬として使用されている。アロエ植物は高い治癒力があることが知られており、アロエの最古の医学的記録は紀元前2200年まで遡ることができる。今日では、創傷治癒加速、抗微生物作用、抗炎症作用、皮膚保護、育毛刺激、及び免疫刺激性等の有益な効果が文献で詳細に裏付けられており、アロエ・ベラはニュートラシューティカルズ及び化粧品の重要な原料成分となっており、食品、飲料、栄養補助食品、スキンケア製品等に製剤化後に多数の用途がある(Wynn et al.,2005;Djuv and Nilsen,2012;Shimpo et al.,2002)。
【0002】
種々のアロエ成分のうちで、アセチル化多糖類(ACP)は最も重要な活性成分の1つであると考えられている。多糖類の構造、化学的性質及び物理的性質については見解が大きく分かれるが、アロエゲルの主要な多糖類は、O-アセチル基で置換された3,000Da~2,000,000Daの範囲の分子量を有するβ-1,4結合型マンノースの線状鎖から構成されるアセチル化マンナン(アセマンナン、ACM又はAP)であると報告されている。アロエ多糖類は、強い抗酸化能を有することが報告されている。例えば、アロエ・バルバデンシスゲルに由来する精製多糖類では、DPPH、ヒドロキシル及びアルキルラジカル捕捉アッセイで試験した場合に強い抗酸化活性が報告されている(Kang et al.,2014)。同様に、アロエ植物齢及び機能関連試験において、3年生アロエ葉抽出物に由来する多糖類は、最強のラジカル捕捉活性(72.19%)を示すことが分かり、DPPHアッセイによると、100mg/Lの同一濃度で合成抗酸化剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(70.52%)とα-トコフェロール(65.20%)よりも有意に高かった(Hu et al.,2003)。酸化ストレスバイオマーカーであるマロンジアルデヒド(MDA)が低下し、マウスの慢性アルコール誘発肝毒性において非酵素性抗酸化物質であるGSHと酵素性抗酸化物質であるSODの肝臓中濃度がインビボで増加したことから実証されるように、アロエ・ベラから単離された多糖類も高い抗酸化効果を有することが分かっている(Cui et al.,2014)。
【0003】
アロエ・ベラは、皮膚加齢、皮膚保護、創傷治癒、歯肉炎、がん治療、糖尿病治療、ビタミンC及びビタミンEの生体利用性の強化、境界型糖尿病の治療、過敏性腸症候群、肝庇護、胃潰瘍及び口内炎の治療について臨床試験されている。多くのインビトロ及びインビボ試験により、アロエ・ベラ葉抽出物とアロエ多糖類の免疫防御又は刺激作用が示されているが、免疫関連ヒト臨床試験はさほど実施されていない。アロエ多糖類は紫外線照射後の皮膚細胞中のIL-10を低下させ(Byeon et al,1998)、アロエ・ベラゲルと分子量80~200KDaの精製多糖類を経口及び局所投与すると、UV曝露により抑制された動物の皮膚免疫機能が回復した(Qiu,et al.2000,Im,2005)。アロエ多糖類を経口投与すると、正常なマウスにカンジダ・アルビカンス(C.albicans)を静脈内注射後の脾臓と腎臓におけるカンジダ・アルビカンスの増殖が有意に抑制された(Im,2010)。アロエ多糖類は、エンドキサンを投与したマウスに由来するパイエル板細胞においてIL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IFN-γ及びGM-CSFを含むサイトカイン産生も増加した(Im,2014)。細胞モデル(Budai 2013)において、アロエ・ベラは、IL-8、TNFα、IL-6及びIL-1βサイトカイン産生を用量依存的に有意に低下させた。阻害作用は、初代細胞のほうが実質的に顕著であった。アロエ・ベラは、LPS誘発初代マクロファージにおけるpro-IL-1β、Nlrp3、カスパーゼ1及びP2X7受容体の発現を阻害し、インフラマソーム活性化を抑制した。更に、これらの細胞では、NF-κB、p38、JNK及びERK等のシグナル伝達経路のLPS誘発活性化がアロエ・ベラにより阻害された。修飾アロエ多糖類(MAP)は、リンパ球の増殖活性、オボアルブミン(OVA)特異的T細胞増殖、抗体産生、及び細胞傷害性Tリンパ球の細胞殺傷活性を回復させることにより、マウスにおける慢性ストレス誘発免疫抑制を回復させた(Lee 2016)。
【0004】
ポリア・ココス・ウォルフ(Poria cocos Wolf)は、サルノコシカケ科(Polyporaceae)の菌類であり、アカマツ(Chinese red pine)樹木及び他の針葉樹の根に生育する薬用キノコであり、中国ではブクリョウ(茯苓)、日本ではマツホドの通称があり、ホエレン(hoelen)、ポリア(poria)、タッカホー(tuckahoe)又はチャイナルート(China root)とも呼ばれる。その学名は数回変更されており、現在の学名はウォルフィポリア・エクステンサ(Wolfiporia extensa)である。中国の食品と漢方薬(TCM)における二重用途成分としてのブクリョウは、多くの古来の煎剤及び処方に含まれており、今日でも広く使用されている。ブクリョウの特性は、利尿、鎮静及び強壮として定義されている。ブクリョウの伝統的な用途は、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、及び胃潰瘍に加え、不眠症と健忘症の治療である(Rios 2011;Feng et al.2013)。この菌と菌抽出物については、抗微生物活性、抗真菌活性、抗酸化活性、神経保護活性、抗炎症活性、抗血管新生活性及び抗がん活性を含む多くの生理活性が報告されている。
【0005】
ブクリョウの主活性成分は、乾燥菌子実体の主成分である41KDa~5MDaの分子量範囲のβ-グルカンとしてのポリア・ココス(Poria cocos)多糖類(PCP)である。β-(1→3)結合型グルコース主鎖とβ-(1→6)結合型グルコース側鎖を含むPCPには、グルコース、フコース、アラビノース、キシロース、マンノース及びガラクトースが検出されている。ポリア・ココス多糖類には、抗酸化、抗高血糖、胃痛緩和、抗炎症、抗がん及び免疫調節等の種々の生理機能が報告されている(Sun 2014)。多糖類は、インビボモデルとインビトロモデルの両方で種々のがんに対する抗腫瘍活性を有することが報告されている。ポリア・ココス多糖類は、血管平滑筋細胞(VSMC)においてox-LDL誘発炎症及び酸化ストレスを抑制することが分かっている。VSMCにおける活性酸素種(ROS)値及びMDA値の低下とSOD活性の上昇により実証されるように、PCPは、ox-LDL誘発酸化ストレスを有意に軽減した。PCPは更に、VSMC泡沫細胞形成と細胞内脂質蓄積を実質的に阻害した。作用機序研究によると、PCPは、ERK1/2シグナル伝達経路を活性化し、細胞質から核内へのNrf2移行を増加し、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)発現を亢進すると考えられ、アテローム動脈硬化症の治療剤として利用できる可能性がある。
【0006】
抗がん機能、抗炎症機能及び潜在的免疫機能について研究されているトリテルペノイドも、ポリア・ココスの活性成分として同定されている(Rios 2011;Li et al.2011)。ポリアから単離されたトリテルペン類の大半はラノスタン又はセコラノスタン骨格に由来していた。ポリア・ココスの抗炎症メカニズムは完全には解明されていないが、ホスホリパーゼA酵素の阻害が複数の研究により確認されている(Rios 2011;Giner-Larza et al.2000)。ポリア・ココスのエタノール抽出物の抗炎症メカニズムは、リポ多糖(LPS)により刺激したRAW264.7マクロファージでNF-κBシグナル伝達経路の不活性化によるiNOS、COX-2、IL-1β、及びTNF-αの阻害を介することが示されている(Jeong et al.2014)。ホスホリパーゼA2(PLA2)に及ぼすポリア・ココス抽出物とラノスタントリテルペン類の阻害作用は、種々のインビトロ及びインビボモデルで明白に実証されている(Giner-Larza et al.2000)。ポリア・ココス抽出物は、経口又は非経口投与した場合にPLA2誘発マウス足蹠浮腫に対して活性であった。ポリア・ココスから単離された2種類のラノスタントリテルペノイドであるパキミン酸とデヒドロツムロス酸は、強力なホスホリパーゼA2阻害剤としてヘビ毒から同定され、デヒドロツムロス酸で測定されたIC50値は0.845mMであった(Cuellar et al 1996)。パキミン酸とヒドロツムロス酸は、テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)により誘発した急性内耳浮腫も抑制し、IC50値は夫々4.7nmol/earと0.68nmol/earであった。これらの2種類の化合物は、カラゲニンとアラキドン酸により誘発した急性浮腫にも作用し、抗炎症治療剤としてのこれらのトリテルペノイド類の可能性を示している(Cuellar et al 1997)。ポリア・ココスから単離された種々のトリテルペン類が、TPA又はアラキドン酸により誘発した内耳浮腫を同様に抑制することが報告されている(Giner,2000;Yasukawa,1998;Kaminaga,1996)。
【0007】
ポリア・ココスは、一般に伝統的な免疫調節性生薬に属する。ポリア・ココスの50%エタノール抽出物は、ヒト末梢血単球においてインターロイキン(IL)-1β及びIL-6の分泌をインビトロで用量依存的に亢進した。前記抽出物は、0.2mg/mLの投与から3時間後にトランスフォーミング成長因子(TGF)-βの分泌を抑制する一方で、0.4mg/mLの投与から6時間後に腫瘍壊死因子(TNF)-αを含むサイトカイン濃度を上昇させることができた(Yu and Tseng,1996)。ポリア・ココス抽出物は、免疫抑制剤(TGF-β)を抑制しながら、活性化されたマクロファージによる免疫刺激剤(IL-1β、IL-6及びTNF-α)の分泌を亢進するので、免疫刺激剤として機能することができる。ポリア・ココス多糖類(PCP)の潜在的メカニズムは、T細胞の活性化を介すると思われる。PCPは、アロ反応性マウス細胞傷害性Tリンパ球のインビボ誘導におけるその免疫補助剤活性について試験されている。脾細胞及び腸間膜リンパ節細胞内で細胞傷害性T-リンパ球(CTL)活性の増強が25日超持続した(Hamuro,1978)。PCPは、マクロファージ貪食作用、胸腺指数及び脾臓指数を有意に改善し(Zhang et al及びPeng et al)、血清中のIgA、IgG及びIgM濃度を上昇させることができた。PCPの免疫調節活性がTLR4/TRAF6/NF-κBシグナル伝達を介することも試験により示されており、RAW264.7マクロファージでインビトロにて実証されると共に、マウスのルイス肺癌(LLC)腫瘍でインビボでも実証されている(Tian,2019)。補助剤は、免疫応答をブースト・加速するので、ワクチン接種ストラテジーの重要な成分である。狂犬病ワクチンとB型肝炎ワクチンを含む種々のワクチンを動物で用いてPCPの補助剤活性が報告されており、PCPは、不活性ワクチンをブーストするための優れた補助剤候補であることが示されている(Wu,2016;Zhang,2019)。
【0008】
ローズマリー(Rosemary)(サルビア・ロスマリヌス(Salvia Rosmarinus)、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis))は、高さ2メートルまで生育する多年生木性草本である。葉は常緑で松葉に似ており、刺激性の香りがする。ミントシソ科(Lamiaceae)に属し、地中海地方の原産であり、米国、英国、フランス、スペイン、ポルトガル、モロッコ、中国等を含む世界中の多くの国で栽培されている。生葉と乾燥葉は、焼肉等の種々の食品に風味を付けるための香辛料として伝統的地中海料理で多用されている。ローズマリーの葉と、生の花の先端部分又は茎と葉から蒸留により製造されるローズマリー油は、いずれもアルコール飲料、冷凍乳製品、デザート、パン・焼き菓子及び肉製品を含む食品・飲料で広く利用することができる(Leung and Foster,1996)。ローズマリーは、その収斂性、強壮性、駆風性、抗痙攣性、胆汁分泌促進性、粘液溶解性、鎮痛性及び発汗性で知られる最古の薬用植物の1種である。何世紀にもわたり、ローズマリーは記憶力と精神の明晰さを高めると考えられている。精神・身心を刺激し、若返らせ、高揚させることができる(Zimmermann,1980;Newall,1996)。ローズマリーの葉は、消化不良障害、血圧障害、食欲不振及びリウマチの治療用として承認されている(PDR for Herbal Medicines,2nd Ed.)。また、消化器不調、頭痛及び片頭痛、月経障害、疲労、眩暈及び記憶低下の民間薬として使用することもできる。
【0009】
ローズマリーは、消化不良、鼓腸、流産誘導、月経血流増加、痛風、咳、頭痛、肝臓・胆嚢障害、食欲不振、及び高血圧等の心血管病態用に経口投与される(Natural Medicines Comprehensive Database,2010)。ローズマリーは、リウマチに伴う筋肉・関節痛の緩和を助けるホメオパシー薬として生薬で伝統的に使用されている(Leung and Foster,1996;ESCOP 2003)。また、循環の改善を助けることができ、筋緊張とリウマチに有益である。ローズマリーアロマセラピーは、頭痛を緩和し、ストレスを抑え、喘息及び気管支炎症状の軽減を助けることもできる。ローズマリーは、抗微生物活性、抗真菌活性、及び抗ウイルス活性について報告されている(Newall,1996)。葉粉末は有効な天然ノミ・ダニ忌避剤として使用されている。ローズマリー油は、顕著な抗細菌性、抗真菌性、及び抗ウイルス性も示した。ローズマリーの抗酸化活性については複数の報告がある(Al-Sereiti,1999)。カフェイン酸、ロスマリン酸及びフェノール性ジテルペン類であるカルノシン酸とカルノソールが、ローズマリー抽出物の抗酸化性に関連する化合物であった。
【0010】
ロスマリン酸(RA)は、水溶性カフェオイルフェノール酸化合物であり、カフェイン酸と3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)乳酸から構成されるエステルである。ロスマリン酸は、広範な生理活性、主に抗酸化、抗微生物、抗ウイルス、抗がん、抗アポトーシス及び抗炎症作用等をもつローズマリー及びアキギリ属(Salvia)種の主成分の1つであると報告されている。14種のアキギリ属植物種における強力な抗酸化活性が、ロスマリン酸含量に相関すると報告されている(Adimcilar,2019)。ロスマリン酸と、その2種類の代謝産物であるカフェイン酸及び3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)乳酸は、いずれも非細胞内及び細胞内抗酸化アッセイの両者において陽性対照であるケルセチンと同等の強力なフリーラジカル捕捉活性を示した(Adomako-Bonsu,2017)。
【0011】
ロスマリン酸(RA)の抗炎症作用は、種々のインビトロ及びインビボモデルで試験されており、関節炎、大腸炎、喘息、及びアレルギー性鼻炎等の一連の炎症性疾患で潜在的な用途がある(Amoah,2016;Luo,2020)。RAは、IL-1β誘発ラット軟骨細胞においてIL-6分泌を抑制し、ADAMTS-4とADAMTS-5の遺伝子発現とタンパク質濃度を抑制することが分かっている(Hu,2018)。この試験において、RAはACAN及びCOL2遺伝子発現も低下させ、変形性関節症の治療における使用が期待される。RAは、喘息のマウスモデルでオボアルブミン(Ova)により刺激した気道炎症を抑制することが報告されている(Liang,2016)。RAは、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の炎症性細胞とh2サイトカインを有意に減少させ、総IgE濃度とOva特異的IgE濃度を低下させ、気道過敏性亢進を有意に改善した。RAを前投与すると、肺組織中のAMCase、CCL11、CCR3、Ym2、及びE-セレクチンmRNA濃度が有意に低下し、NF-kBとMAPKの活性化を抑制することができ、RAは、潜在的にERK、JNK、及びp38リン酸化の阻害と、NF-kBの不活性化により、喘息治療の有望な候補になり得ると判断された。経口RAは、12-テトラデカノイルホルボール13-アセテート(TPA)により刺激したマウス内耳浮腫モデルで有効であることが分かり(Osakabe,2004)、鼻洗浄液中の好中球と好酸球の数が著しく減少した。
【0012】
培養RAW264.7マクロファージ様細胞と、盲腸結紮及び穿刺によりラットに誘発した敗血症モデルでロスマリン酸(RA)の抗敗血症作用が調査され(Jiang,2009)、広範囲の炎症メディエーターの局所及び全身濃度が低下することが分かった。RAは、TNF-α、IL-6、及び高移動度群ボックス1タンパク質(HMGB-1)の濃度を用量依存的にダウンレギュレートした。RAの抗炎症メカニズムは、IκBキナーゼ活性を阻害することによりNF-κB経路の調節を介すると思われる。RAは、大腸がんHT-29細胞株と非悪性乳腺上皮細胞株MCF10Aの両者で炎症性遺伝子シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の有意なダウンレギュレーションを示した(Scheckel,2008)。日本脳炎ウイルスに感染したマウスでRAの抗ウイルス作用が報告されており、RA投与群では死亡率が低下している(Swarup,2007)。RAは、非投与感染動物のレベルに比較してウイルス負荷量と炎症性サイトカイン濃度、特にIL-6、IL-12、TNF-α、IFN-γ、及びMCP-1を有意に低下させることができた。
【0013】
ロスマリン酸は、炎症性サイトカインとNF-κB経路を阻害し、腫瘍微小環境における炎症シグナル伝達を抑制することにより、H22異種移植モデルで肝細胞がん(HCC)に対して抗腫瘍作用を生じることが実証されている(Cao,2016)。RAは、CD4+/CD8+T細胞の比とIL-2及びIFN-γの分泌を調節し、IL-6、IL-10及びSTAT3の発現を低下し、Bax及びカスパーゼ3をアップレギュレートし、Bcl-2をダウンレギュレートすることにより、腫瘍増殖を有効に抑制した。これらの活性から、RAは免疫応答の調節とHCC細胞アポトーシスの誘導に関与していると考えられた(Cao,2019)。
【0014】
リポ多糖(LPS)は、グラム陰性菌の外膜の必須成分であり、エンドトキシンショックに繋がる恐れのある全身性炎症プロセスの開始における主要な寄与因子である。敗血症は、感染に対する宿主応答の調節不全により生じ、重篤な臓器機能障害に繋がり、臓器不全に至る恐れがある。敗血症は、主にマクロファージ/単球に仲介される状態であり、TNF-α、IL-1、IL-6及びIFN-γ等の数種の初期サイトカインと、HMGB1等の後期メディエーターの過剰産生に起因する。高移動度群ボックス1タンパク質(HMGB1)は、敗血症の重要なメディエーターである。このタンパク質は、内因性及び外因性炎症シグナルに応答して活性化されたマクロファージ及び単球から放出される(Wang et al.,1999)。免疫シグナル伝達の活性が過剰になると、サイトカインストームを生じ、多臓器不全をもたらし、最終的に死に至る恐れがある。HMGB1の後期持続放出により炎症応答を十分に惹き起こすことができるため、死を免れた患者も炎症応答を継続する可能性がある(Gentile and Moldawer,2014)。
【0015】
刺激を受けた単核細胞から能動的に放出されると、あるいは壊死細胞から受動的に放出されると、HMGB1は、宿主免疫応答を活性化させるように機能するアラーミン(危険信号)として作用する。HMGB1は、感染部位への免疫細胞の移動を助けるケモカインとして機能すると共に、他の免疫細胞を活性化させて炎症性サイトカインを分泌させるダメージ関連分子パターン(DAMP)として機能することにより、自然免疫応答の活性化に重要な役割を果たす(Yang et al.,2001)。炎症性サイトカインが最適な低濃度で産生される場合には、ウイルス又は細菌侵入に対する防御免疫応答を生じるであろう。しかし、「サイトカインストーム」の場合のように過剰に産生されると、有害な炎症応答を仲介することにより宿主に有害となる。大半の場合、基礎疾患、免疫不全症又は免疫低下を患っている対象や高齢者では、サイトカインストームにより急性全身性炎症症候群を生じると思われ、死を免れた者も、遅延型炎症仲介を発現する可能性があり、持続的な炎症応答、免疫抑制応答及び/又は異化応答を生じる恐れがある。HMGB1は、全炎症性細胞を含む多数の細胞種の化学誘引物質として機能する以外に、より多くのTNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、及びマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)を炎症性細胞に分泌させるので、「サイトカインストーム」に関与していると考えられる(Bianchi and Manfredi,2007)。細胞外HMGB1が破滅的な炎症応答を誘起することができ、敗血症と急性肺傷害の進行を促進することも多くの研究で報告されている(Entezari et al.,2014)。内毒素刺激から数分以内に分泌されるTNF-α及びIL-1βとは対照的に、HMGB1はインビトロ及びインビボのどちらでも数時間後に分泌され、後期炎症を仲介すると判断される。実際に、敗血症の発症から24時間後にHMGB1中和抗体を投与すると、致死性内毒素血症に対する防御が得られ、HMGB1が致死性敗血症の後期メディエーターとして主要な役割を果たしていることが分かる(Wang et al.,1999)。臨床面では、持続的な高濃度のHMGB1と、敗血症の後期の対象又は敗血症で死亡した対象との間には強い関連があることも立証されている(Angus et al.,2007)。
【0016】
加齢は、時間の経過に伴って心身両面の機能に影響を与える複雑な変性プロセスであり、免疫応答不良は、老化に最もよく見られる変化の1つである。高齢者に起きる免疫応答低下の基礎メカニズムを解明することがその緩和の主要な第一段階である。D-ガラクトース誘発胸腺損傷・免疫老化マウスモデル等の化学的に誘発した加齢加速モデルは、加齢が免疫系に及ぼす影響を研究するために好ましい選択肢である。化学的に誘発した動物加齢モデルにおいて、動物は、高齢者に頻繁に認められる免疫応答低下に似た免疫老化を示す(Azman 2019)。D-ガラクトース誘発加齢モデルは、抗加齢研究で広く使用され、十分に検証されている動物モデルの1種である。D-ガラクトースは正常な濃度では動物体内でグルコースに変換されるが、高濃度ではアルドースとヒドロペルオキシドに変換され易く、酸素に由来するフリーラジカルの生成に繋がる。タンパク質及びペプチドの遊離アミンと反応して非酵素的糖化により終末糖化産物(AGE)を生じる可能性もある。このモデルでこれらの活性酸素種(ROS)が蓄積し、AGEが増加すると、正常な臓器及び免疫系恒常性が不均衡になり、その結果、酸化ストレス、炎症、免疫応答低下、ミトコンドリア機能不全、及び(例えば、胸腺細胞の)アポトーシスを生じ、最終的に加齢プロセスが加速される。これらの変化は、老化及び加齢の自然発生的病理学的特徴に数えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Wynn et al.,2005
【非特許文献2】Djuv and Nilsen,2012
【非特許文献3】Shimpo et al.,2002
【非特許文献4】Kang et al.,2014
【非特許文献5】Hu et al.,2003
【非特許文献6】Cui et al.,2014
【非特許文献7】Byeon et al,1998
【非特許文献8】Qiu,et al.2000
【非特許文献9】Im,2005
【非特許文献10】Im,2010
【非特許文献11】Im,2014
【非特許文献12】Budai 2013
【非特許文献13】Lee 2016
【非特許文献14】Rios 2011
【非特許文献15】Feng et al.2013
【非特許文献16】Sun 2014
【非特許文献17】Li et al.2011
【非特許文献18】Giner-Larza et al.2000
【非特許文献19】Jeong et al.2014
【非特許文献20】Cuellar et al 1996
【非特許文献21】Cuellar et al 1997
【非特許文献22】Yasukawa,1998
【非特許文献23】Kaminaga,1996
【非特許文献24】Yu and Tseng,1996
【非特許文献25】Hamuro,1978
【非特許文献26】Zhang et al
【非特許文献27】Peng et al
【非特許文献28】Tian,2019
【非特許文献29】Wu,2016
【非特許文献30】Zhang,2019
【非特許文献31】Leung and Foster,1996
【非特許文献32】Zimmermann,1980
【非特許文献33】Newall,1996
【非特許文献34】PDR for Herbal Medicines,2nd Ed
【非特許文献35】Natural Medicines Comprehensive Database,2010
【非特許文献36】ESCOP 2003
【非特許文献37】Al-Sereiti,1999
【非特許文献38】Adimcilar,2019
【非特許文献39】Adomako-Bonsu,2017
【非特許文献40】Amoah,2016
【非特許文献41】Luo,2020
【非特許文献42】Hu,2018
【非特許文献43】Liang,2016
【非特許文献44】Osakabe,2004
【非特許文献45】Jiang,2009
【非特許文献46】Scheckel,2008
【非特許文献47】Swarup,2007
【非特許文献48】Cao,2016
【非特許文献49】Cao,2019
【非特許文献50】Wang et al.,1999
【非特許文献51】Gentile and Moldawer,2014
【非特許文献52】Yang et al.,2001
【非特許文献53】Bianchi and Manfredi,2007
【非特許文献54】Entezari et al.,2014
【非特許文献55】Angus et al.,2007
【非特許文献56】Azman 2019
【発明の概要】
【0018】
所期保護対象は、免疫恒常性の調節用組成物として、多糖類とポリフェノールを含有する新規アロエベース組成物に関する。本願の所期保護対象については、宿主防御機構に対して2種類の異なる応答トリガーから免疫恒常性を達成するようにアプローチした。分かり易くするために、これらの応答トリガーをその攻撃起源に基づいて内因性/内在性及び外因性/外来性に分類した。本願の所期保護対象では、汚染、感染、慢性疾患、及びあらゆる外来侵入への曝露は、外因性起源の範疇に該当し、炎症、酸化ストレス、ストレスホルモン、加齢とそれに伴う変化は、内因性起源に分類される。原因に関係なく、本願に開示する内因性及び/又は外因性攻撃トリガーのいずれからの回復、保護及び/又は予防も、宿主免疫応答が恒常性を回復する能力に依存する。
【0019】
ある種の実施形態において、所期方法は、免疫応答を最適化すること又はそのバランスをとることにより免疫恒常性を維持する方法;加齢及び免疫器官老化による免疫低下を改善する方法;慢性炎症及び炎症による免疫低下を予防する方法;インフルエンザワクチン接種又はCOVID-19ワクチン接種に対して健全な免疫応答を維持するのを助ける方法;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける方法;大気汚染により誘発される酸化ストレス損傷から哺乳動物の免疫系を保護する方法を含む。
【0020】
本願の所期保護対象に記載する多糖類とポリフェノールを含有する新規アロエベース組成物であるUP360は、内因性と外因性の両方の攻撃シナリオに対応することが分かった。リポ多糖類(LPS)誘発敗血症、LPS誘発急性肺傷害、高酸素曝露・微生物感染マウスモデル、免疫モデルを使用して外因性影響を模倣し、免疫状態及び非免疫状態におけるD-ガラクトース誘発加齢加速モデルを使用して所期組成物の内因性作用を模倣した。どちらの場合も、本願の所期保護対象は、宿主の免疫応答の統計的に有意な改善を示し、この新規組成物が恒常性を回復するためにプラスに作用していることを示唆している。HMGB1等の主要な免疫及び/又は炎症応答バイオマーカーに認められる変化と、免疫老化に関連する変化に基づいて所期組成物の効力を評価した。多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物であるUP360は、HMGB1を調節することにより、生存率を上昇させながら、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-6、CRP及びCINC3を有意に低下させることが実証され、免疫恒常性を回復、調節及び維持することが可能な免疫レギュレーターとして利用できると判断された。同様に、アロエベース組成物UP360は、自然免疫応答と適応免疫応答の刺激(IgA増加、CD3+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、及びCD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞の増加)、抗酸化能の増強(SODとNrf2の増加)及び胸腺等の主要な免疫器官の加齢関連損傷からの保護により立証されるように、免疫老化の逆転を示すことも分かった。
【0021】
多糖類とポリフェノールを含有する新規アロエベース組成物であるUP360は、二重盲検無作為化プラセボ対照比較ヒト臨床試験等の別の範疇の試験で、免疫監視強化及び/又は堅牢な応答のために宿主免疫系をプライミング及び活性化することが実証された。具体的には、UP360を28日間毎日補充後の被験者と、28日目にインフルエンザワクチン接種により免疫感作し、この栄養補助食品を合計56日間摂取した被験者では、TCRγδ+ガンマデルタT細胞が増加した。循環TCRγδ+ガンマデルタT細胞の増加は、皮膚、腸及び肺等のTCRγδ+ガンマデルタT細胞の百分率が高い末梢組織で免疫監視が強化されたことを示唆している。本願の所期保護対象で薬用植物に由来するこれらの標準化・高濃度化抽出物を併用する利点についても、LPS誘発敗血症モデルでインビボにて試験すると共に、LPS感作マクロファージでインビトロにて試験した処、所期保護対象の本文で記載するように、予想外の相乗作用が認められた。一般に、免疫系をレバーとみなし、多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物をピボット点とみなすと、レバーの片側のHMGB1作用と、反対側のガンマデルタT細胞反作用を調節することにより、免疫恒常性が達成された。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】転換点であるHMGB1をシフトさせることにより免疫機能の恒常性を維持するためのアロエベース組成物(同図のUP360)の新規性を示す。
図2】500mg/kgのUP360を投与したLPS誘発ラットに由来する肺組織のH&E染色を示す。A=正常対照、B=溶媒対照、C=酪酸ナトリウム、D=UP360(500mg/kg)。倍率100倍。
【発明を実施するための形態】
【0023】
保護対象の概要
免疫恒常性の調節用組成物として、1種以上の多糖類を高濃度化したアロエ抽出物と、1種以上の多糖類を高濃度化したポリア抽出物と、1種以上のポリフェノール化合物を高濃度化したローズマリー抽出物との組み合わせを含む組成物を開示する。
【0024】
HMGB1を調節することにより免疫恒常性を維持するための組成物として、1種以上の多糖類と1種以上のポリフェノール化合物の組み合わせを含む組成物も開示し、前記組成物は、細胞質移行を阻止すること若しくは小胞媒介性の放出を阻止することによってHMGB1の能動的若しくは受動的放出を標的として、若しくは核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、HMGB1放出の阻害すること又はその作用を妨害することにより、又は放出時のHMGB1を直接標的とし、その作用を中和するか、又は;Toll様受容体(TLR)-2/4/7/9及び終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックする、又はそのシグナル伝達を阻害するか、又は;物理化学的微小環境を変化させ、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害するか;あるいはHMGB1のクラスター形成又は自己会合を防止することにより、HMGB1を調節する。
【0025】
哺乳動物における免疫恒常性の調節を治療、管理、促進するための方法として、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む方法も開示する。
【0026】
詳細な説明
適応免疫又は自然免疫の何らかの成分を調節、抑制及び刺激することが可能な天然化合物は、免疫調節剤、免疫回復剤、免疫増強剤、又は生体応答調節剤として知られている。免疫調節剤は、臨床プラクティスにおいて一般に免疫補助剤、免疫刺激剤、及び免疫抑制剤に分類される。免疫補助剤は、ワクチンの効果を強化する特異的免疫刺激剤である。免疫系のメディエーター又は成分を活性化又は誘導する物質を免疫刺激剤と言う。自己免疫、がん、アレルギー及び感染に対する防御は、免疫刺激剤により強化される。他方、免疫抑制剤は、免疫系を抑制する分子であり、臓器移植後等の病的免疫反応を制御するために使用することができる。
【0027】
免疫恒常性を厳密に維持することは、外部から侵入する微生物、ウイルス、真菌類、汚染物質に対する生体防御機能が死細胞を除去し、呼吸器及び胃腸機能の再建・再生を開始するために不可欠である。免疫機能が過剰に刺激されると、アレルギー反応や、破壊的な自己免疫疾患を生じる可能性がある。加齢、酸化ストレス、心理的ストレス、全身性炎症に加え、糖尿病、肥満症、及び代謝症候群等の多くの慢性疾患は、恒常性転換点をシフトさせ、免疫機能低下に繋がる可能性がある。毎日のバランスのとれた栄養、運動、ストレス管理に加え、抗酸化性、抗炎症性及び免疫調節性の(個々の事例に応じて免疫抑制性及び/又は免疫刺激性の)天然化合物や、抗ウイルス剤、抗生物質、ステロイド及びNTHEの処方薬又はOTC薬の補充を含む健康的な生活習慣は、免疫機能のバランスをとるために有益な効果を発揮することができる。これらの手段により、全身性慢性炎症を抑制することができる。
【0028】
活性が過剰になると、健全なレベルから下方スパイラルに向かう免疫応答のシフトを加速し、サイトカインストームを生じることが可能な転換点因子として重要な役割を果たす主要な生物学的、生理的及び病理学的経路及びバイオマーカーが存在するか否かに関する情報は残念ながら非常に少なく、また、その解明についても注目されていない。このような転換点を見出すことは重要である。このような転換点を破壊方向から遠ざけ、免疫恒常性を回復させることができる組成物を製造するために、活性化合物を見出すことはより重要である。HMGB1は、破壊的な免疫応答低下に繋がるコロナウイルス、SARS-CoV-2等のウイルス、細菌感染、及びPM2.5汚染物質に対する生体応答を増強するための転換点として作用することができるこのようなバイオマーカーであると確信する。多糖類とポリフェノールを含有する上記アロエベース組成物は、免疫恒常性を回復、調節及び維持するようにHMGB1を制御することにより転換点をシフトさせることができる(図1)。
【0029】
HMGB1は、ヌクレオソームの構造を安定化させ、DNAのコンフォメーション変化を仲介することにより転写を調節する核内タンパク質として当初は同定された。核内のその役割とは対照的に、細胞外HMGB1は顕著な炎症応答を誘導する。気道に高濃度の細胞外HMGB1が蓄積すると、マクロファージ機能の障害により細菌及びウイルス感染に対する宿主防御機構が直接低下し得ることは、数件の肺感染症動物モデルでエビデンスが集積されている。長期酸化ストレスに曝露した動物及びヒトの気道では、核内HMGB1タンパク質濃度が圧倒的に高い(健全な対照に比較して100倍)。したがって、COVID-19感染等のサイトカインストームにより生じる酸化ストレスに曝露される集団は増加しつつあるが、気道中のHMGB1濃度を低下及び/又はその活性を阻止すると、このような集団に加え、炎症性疾患を抱えている患者に重要な治療及び予防ストラテジーになると思われる。
【0030】
免疫恒常性の調節用組成物として、1種以上の多糖類を高濃度化したアロエ抽出物と、1種以上の多糖類を高濃度化したポリア抽出物と、1種以上のポリフェノール化合物を高濃度化したローズマリー抽出物との組み合わせを含む組成物を開示する。所期実施形態では、以下に詳述するように、前記組成物における前記アロエ抽出物又はポリア抽出物又はローズマリー抽出物は、各抽出物が1重量%~98重量%の範囲であり、アロエ:ポリア:ローズマリー(APR)の最適重量比は3:2:1(50%:33.3%:16.7%)又は1:1:1(33.3%:33.3%:33.3%)又は3:6:1(30%:60%:10%)である。
【0031】
ある種の実施形態において、所期ポリフェノール化合物は、ロスマリン酸、EGCG、ECG、エピガロカテキン等の結合型カテキン類、オロキシリン、ケンペロール、ゲニステイン、ケルセチン、ブテイン、ルテオリン、クリシン、アピゲニン、クルクミン、レスベラトロール、カプサイシン、グロメラトースA、6-ショウガオール、ジンゲロール、ベルベリン、ピペリン又はそれらの組み合わせを含み、ある種の実施形態では、これらから構成される群から選択される。
【0032】
HMGB1を調節することにより免疫恒常性を維持するための組成物として、1種以上の多糖類と1種以上のポリフェノール化合物の組み合わせを含む組成物も開示し、前記組成物は、細胞質移行を阻止すること若しくは小胞媒介性の放出を阻止することによってHMGB1の能動的若しくは受動的放出を標的として、若しくは核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、HMGB1放出の阻害すること又はその作用を妨害することにより、又は放出時のHMGB1を直接標的とし、その作用を中和するか、又はToll様受容体(TLR)-2/4/7/9及び終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックするか、若しくはそのシグナル伝達を阻害するか、又は物理化学的微小環境を変化させ、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害するか、あるいはHMGB1のクラスター形成又は自己会合を防止することにより、HMGB1を調節する。図1は、転換点であるHMGB1をシフトさせることにより免疫機能の恒常性を維持するためのアロエベース組成物(同図のUP360)の新規性を示す。
【0033】
哺乳動物における免疫恒常性の調節を治療、管理、促進するための方法として、前記哺乳動物の体重1kg当たり0.01mg~500mgである有効量の組成物を投与することを含む方法も開示する。ある種の実施形態において、所期組成物は、1種以上の多糖類を高濃度化したアロエ抽出物と、1種以上の多糖類を高濃度化したポリア抽出物と、1種以上のポリフェノール化合物を高濃度化したローズマリー抽出物との組み合わせを含む。
【0034】
細胞外HMGB1の蓄積を減らすことができる試薬が、大気汚染物質、細菌及びウイルス感染に対する自然免疫を強化し、マクロファージ機能の改善により炎症応答を弱めることにより、呼吸器機能を改善するのに有効であることは、公開済みの研究と進行中の研究により実証されている。本モデルは、COVID-19患者や肺感染症の酸素療法中に広く使用されている高酸素にマウスを曝露し、潜在的な治療物質を試験し、このような治療物質が、自然免疫と呼吸機能を改善し、気道及び循環中の細胞外HMGB1の蓄積を抑制することにより、生存率を含む臨床アウトカムを改善するための有効なツールとして使用できるか否かを判定するものである。本願の所期保護対象は、多糖類とポリフェノールを含有するユニークなアロエベース組成物を開示し、前記組成物は、これらのモデルでHMGB1をシフトさせることにより、自然免疫を改善し、呼吸機能低下を緩和した(実施例12~17)。実施例51に詳述するように、前記アロエベース組成物を補充すると、気道中の細菌負荷量が有意に低下すると共に、高酸素に曝露して緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)で感作した動物の死亡率が低下し、高酸素と微生物感染の作用を妨害するのに利用すると有益であると判断された。
【0035】
所期保護対象は、多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物により、免疫応答の自然後期イベントである血流へのHMGB1の分泌を標的とすることにより免疫の恒常性を調節する。アロエベース組成物の個々の成分をインビトロで高酸素マクロファージに投与した処、HMGB1分泌が低下することが分かった(実施例12)。酸化ストレスは、細胞核からのHMGB1放出の最も強力な誘導源の1つであるので、アロエ組成物とその個々の成分が、UVAとUVBにより誘導したヒトケラチノサイトにおける活性酸素種(ROS)を低減させ(実施例13~14)、ヒト線維芽細胞における過酸化水素誘発DNA損傷から保護する(実施例15)ことを実証した。これらの細胞アッセイによると、薬用植物から抽出したこれらの生理活性化合物は、フリーラジカル生成の阻害とDNA損傷の修復によりHMGB1値の低下に統計的に有意な影響を与えることが分かり、その標準化製剤は、本願に開示する機構を疾患病理に含む病態におけるアウトカムを向上すると予想される。UP360は、LPS誘発生存率試験で動物の死亡率を有意且つ相乗的に低下させた(実施例20~22)ことに加え、高酸素誘発・緑膿菌感染マウスにおける動物の生存率を有意に上昇させ、気道中の細菌負荷量を低減させた(実施例51)。HMGB1と共にIL-1β、TNF-α、IL-6、IL-10、CRP及びCINC-3等の主要な炎症性サイトカイン及びケモカイン(実施例12~31)をインビボアッセイから評価した処、多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物であるUP360を投与した動物では、免疫恒常性の転換点であるHMGB1がシフトした結果として、溶媒投与群に比較してこれらのバイオマーカーの統計的に有意な低下が認められた。
【0036】
所期保護対象の本文に記載するように、(LPS誘発敗血症モデル、高酸素誘発・緑膿菌感染マウス生存率モデル及び急性肺傷害モデル等の)複数のインビボ試験で対象治療物質と応答作用を評価した(実施例18~31、51)。所期保護対象の実施例に記載するデータによると、敗血症、高酸素誘発・緑膿菌感染マウス又は急性肺傷害被験対象にアロエベース組成物を経口投与した処、有意な免疫恒常性作用があることが分かった。血清、気管支肺胞洗浄液(BAL)及び肺ホモジネートからのバイオマーカー濃度のこれらの有意な変化と、BAL中総タンパクの低下から、転換点であるHMGB1をシフトさせることにより免疫恒常性が改善されたことが実証され、これらの結果はその後、組織学的試験で確認された。アロエベース組成物を投与した動物では、肺損傷の総合重症度と肺水腫の統計的に有意な軽減が認められた。免疫刺激性の多糖類と免疫抑制性のポリフェノールという2種類の異なる分類の天然活性化合物を含むアロエベース植物抽出物を製剤化する利点をLPS誘発敗血症モデルで評価した処、予想外の相乗作用も認められた(実施例22)。本願の所期保護対象からのデータによると、多糖類とポリフェノールから構成されるアロエベース組成物は、転換点であるHMGB1をシフトさせることにより免疫の恒常性を維持するのを助けた。したがって、大気汚染、季節性インフルエンザ及び/又はウイルス及び細菌感染時には、敗血症及び/又は呼吸器系の急性及び/又は慢性傷害から呼吸器及び肺機能を保護するためにバランスのとれた免疫応答が必要であるが、このような時に前記アロエベース組成物を使用することができる。
【0037】
本試験からのデータを総合すると、疾患病理の指標となる主要なバイオマーカーにより証明されるように、アロエベース組成物(これらの所期組成物の1種を本願ではUP360と言う場合がある)には、HMGB1を妨害することにより、気管内LPSにより誘発した急性肺傷害の有意な軽減に繋がる予想外の相乗活性があることが分かった(実施例23~29)。LPSを肺に直接点滴注入すると、有意量のHMGB1を放出する肺胞マクロファージにより常在自然免疫応答が活性化され、TNF-α、IL-1β及びIL-6等の一次サイトカインと炎症性タンパク質CRPの産生増加に繋がることが知られている。これらのサイトカインは単独で又は協働して顕著な肺病状を生じ、疾患病理に不可欠なサイトカイン及びケモカインカスケードの活性化を誘発する可能性がある。例えば、急性炎症応答時に、走化性サイトカインに誘導された好中球化学誘引物質(CINC-3)は、LPS誘発急性肺傷害で好中球の肺動員に重要な役割を果たす。肺の急性炎症応答に関与するこれらの主要なサイトカインと走化性因子を制御するために免疫恒常性の主要な転換点であるHMGB1を抑制することは、サイトカインストーム介入と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の重症度の軽減に重要な臨床関連性がある。
【0038】
滲出液の増加は呼吸器疾患重症度の指標となるため、間質空間へのタンパク質及び/又はフィブリン漏出は、肺水腫における重要な要素である。多糖類とポリフェノールから構成されるアロエベース組成物を投与すると、気管支肺胞洗浄液(BAL)中の総タンパク質が低下するので、このような組成物は、肺病状の緩和に意義があると判断される(実施例28)。血清、BAL及びホモジネート中のバイオマーカーのこれらの有意な変化から、多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物の投与ストラテジーは、肺損傷の総合重症度と肺水腫の統計的に有意な軽減をもたらすことが実証され、このような軽減は、病理組織学的評価により確認された。本願に示すサイトカイン及び病理組織学的データによると、アロエベース組成物(この場合はUP360)は、免疫恒常性の転換点を調節し、サイトカインストーム抑制と急性炎症性肺損傷重症度の軽減に導いた。
【0039】
マウスをD-ガラクトースに曝露して免疫加齢表現型を誘発し、多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物(UP360)を2種類の濃度で投与した後、免疫感作としてインフルエンザワクチンを導入し、複数のアッセイで免疫機能を測定し、所期アロエベース組成物が免疫器官を保護し、免疫系の恒常性を維持したか否かを調べた(実施例32)。正常対照群と2種類のUP360+D-gal投与群の胸腺指数は、D-gal群よりも有意に高く、この免疫器官がアロエベース組成物により老化から保護されていることが実証された(実施例33及び35)。D-gal群に比較して脾臓指数が有意に高かったのは正常対照群のみであったが、UP360+D-galを投与した動物は、脾臓を酸化ストレスから保護する方向にプラスの傾向を示した(実施例34)。
【0040】
免疫群間で液性免疫に有意差が認められた。UP360+D-gal群は、D-gal群に比較して血清中IgA抗体濃度が上昇した(実施例36)。血清中IgA濃度のこの上昇から、UP360投与により、粘膜でより高レベルの免疫防御が達成されたと判断された。
【0041】
種々の群からの全血中の白血球を測定し、細胞集団に対する百分率として変動を表した処、免疫マウス群間で大差が認められた(実施例37~42)。D-gal群では、生細胞を占めるCD45+細胞(全白血球)の百分率が他のどの免疫群よりも高かった。免疫UP360+D-gal群では、免疫D-gal単独群に比較してCD3+T細胞、CD45+ヘルパーT細胞、NKp46+ナチュラルキラー細胞、及びTCRγδ+ガンマデルタT細胞がいずれも増加していた。これらのデータから、多糖類とポリフェノールから構成されるアロエベース組成物であるUP360は、免疫細胞集団の増大を助け、免疫恒常性の重要なメディエーターとして自然免疫細胞及び適応免疫細胞の百分率を上昇させると判断された。
【0042】
全血1μL当たりの総細胞数として表すと、非免疫マウス群間で顕著な差が認められた(実施例43~48)。400mg/kgUP360+D-gal群は、CD3+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、及びCD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞が免疫低下したD-gal単独群よりも増加していた。これらのデータから、多糖類とポリフェノールから構成されるアロエベース組成物であるUP360は、不活性化された免疫系をプライミングし、免疫細胞集団を増大させ、非免疫マウスの免疫「レディネス」を増強すると判断された。
【0043】
ナチュラルキラー細胞の活性化と増大は、免疫恒常性を維持するための主要な免疫調節方法である。ナチュラルキラー細胞は、広範な病的感作;大気汚染物質;ウイルス、微生物及び真菌感染;並びに細胞酸化・ホルモン障害に対して、プライミング又は事前活性化なしに迅速に応答することが知られている自然免疫系の重要な成分である。ナチュラルキラー細胞は、細胞完全性の監視を担い、細胞表面分子の変化を検出し、その細胞傷害性エフェクター機構を展開する。ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞傷害性リンパ球及び免疫調節性サイトカインの産生細胞として機能する。刺激後、NK細胞は大量のサイトカイン、主にインターフェロンγ(IFN-γ)と腫瘍壊死因子(TNF)を産生する。NK細胞により産生されるこれらのサイトカイン等は、初期免疫応答時に直接作用すると共に、T細胞とB細胞に仲介される後期適応免疫応答の重要なモジュレーターである。多糖類とポリフェノールから構成される所期アロエベース組成物(UP360)の経口投与の結果として、本願の所期保護対象ではNK細胞が著しく増加し(実施例41及び45)、所期保護対象が自然免疫調節に重要な影響を与えることを明白に示しており、その即座の有効な免疫誘発活性が、免疫恒常性の基礎を築くのに関与していることを示唆している。
【0044】
多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)のヒト臨床試験の結果、免疫感作前後に摂取集団で特定の免疫細胞が集積されることも実証された(実施例52)。健康な中年の被験者に、その免疫系をインフルエンザワクチンで感作する前に28日間毎日UP360又はプラセボを補充した。被験者は更に28日間UP360を摂取し続け、ベースライン、28日間摂取後、及び56日間摂取後(ワクチン接種の28日後)に免疫細胞測定を実施した。ガンマデルタ(γδ)T細胞集団は、56日(ワクチン接種の28日後)にベースライン濃度と28日の濃度のいずれよりも有意に増加することが分かった。UP360摂取群では、56日に循環ガンマデルタ(γδ)T細胞がプラセボ群よりも有意に高く、UP360摂取群では、0日から56日までと28日から56日までのガンマデルタ(γδ)T細胞数の変化がプラセボ群よりも有意に高かった。恐らく、この臨床試験予備データからの最も顕著な一次アウトカムは、これらのガンマデルタT細胞に認められた変化であった。補充期間を通して、多糖類とポリフェノールから構成されるアロエベース組成物を摂取した被験者は、28日から56日までにこれらのT細胞の濃度の漸増を示し、アロエベース組成物は、夫々摂取後28日と56日にTCRγδ+細胞集団の百分率の21.5%と24.5%の上昇を示した。一方、プラセボ群は、同一時間枠内でこれらの細胞集団の減少を示し、夫々摂取後28日と56日にTCRγδ+細胞の百分率の10.5%と5.6%の低下が認められた。プラセボに比較すると、多糖類とポリフェノールから構成されるアロエベース組成物を摂取した被験者は、夫々被験品の摂取後28日と56日にTCRγδ+細胞集団の百分率の23.5%と38.9%の上昇を示した。これらの結果から、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)は、病原体に対する最前線防御を担う細胞種であるガンマデルタ(γδ)T細胞集団を増強することができると判断された。
【0045】
第一に、免疫調節、免疫監視の促進及び免疫恒常性を担うことが知られているガンマデルタ(γδ)T細胞で(臨床試験と前臨床試験の両方で)認められた誘導レベルにより、本願の所期保護対象の免疫調節、監視及び恒常性活性が確認された。γδT細胞は、腸と肺を含む生体内の多くの流入口に主に存在するユニークなT細胞亜集団であり、発生初期にこのような場所に移動し、常在細胞として存続する。その戦略的な解剖学的位置(胃腸及び呼吸器系の粘膜層)により、γδT細胞は自然免疫様応答に基づく最前線防御を提供し、感染細胞を直接殺傷し、他の免疫細胞を動員し、貪食作用を活性化させ、病原体又は汚染物質が全身区画に移行するのを制限する。これらの細胞は、二次感作で急速に集団を増大し、病原体に特異的な防御を提供することが知られている。腸及び呼吸器管におけるそれらの理想的な位置により、腸及び呼吸器上皮完全性の維持にも役立つ。一般に、γδT細胞の生理的役割としては、細胞外及び細胞内病原体又は汚染物質に対する防御免疫、自然免疫応答と適応免疫応答の監視、調節、組織治癒及び上皮細胞維持、並びに生理的臓器機能の調節が挙げられる。γδT細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞と共通する特徴があり、いずれも通常では自然免疫の成分とみなされ、形質転換/損傷細胞を認識し、抗ウイルス防御に顕著な役割を果たし、下流の適応免疫応答を助け、強力な細胞溶解性リンパ球である。更に、γδT細胞は、抗原提示細胞の役割もある(Ribot et al.,2021;Bonneville et al.,2010)。本願の所期保護対象における多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)(実施例42及び48)により、これらの急速に応答する免疫細胞(γδT細胞とNK細胞)が誘導され、免疫調節、監視及び恒常性を達成するというこれらのT細胞の特徴が前記組成物により強化された。
【0046】
D-ガラクトース誘発免疫老化モデルにおける抗酸化経路を調査するために、抗酸化酵素とバイオマーカーを試験した。D-galモデルにより誘発される加齢表現型は、終末糖化産物の増加に基づいており、高齢動物で見られるようなレベルと同様の酸化ストレスと免疫器官損傷を生じる(Azman KF,2019)。抗酸化経路を亢進することにより、酸化ストレスの有害作用を阻止できると思われる。免疫UP360(2種類の濃度)+D-gal群からのマウス血清中のスーパーオキシドジスムターゼ酵素(SOD)は、D-gal単独群に比較して増加していることが分かった(実施例49)。したがって、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)は、抗酸化経路を亢進し、動物は非投与加齢動物よりも良好にフリーラジカルを中和することができたと判断された。
【0047】
所期保護対象では、免疫群からの動物の脾臓におけるタンパク質濃度についても調査した。脾臓は、免疫系の主要な臓器の一つである。脾臓は、高濃度の白血球を含有しており、血液中の免疫細胞種の濃度を制御する。Nrf2は、炎症と長期酸化ストレスに応答して抗酸化経路の活性化に関与する転写因子であるが、Nrf2を測定した処、UP360+D-gal群からの脾臓ホモジネートでは、D-gal単独群に比較して有意に増加していることが分かった(実施例50)。
【0048】
以上をまとめると、D-ガラクトース誘発免疫老化モデルにおいて、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)を投与した動物では、免疫細胞集団、抗酸化ストレス経路、及び免疫器官の保護の有意な変化が認められ、免疫系プライミング及び活性化が亢進していると判断され、正常マウスの表現型への復帰が実証された。免疫UP360+D-gal群における胸腺指数、血清抗体、T細胞、ナチュラルキラー細胞、及び抗酸化因子は、D-gal単独群よりも高く、UP360投与群の免疫系は、D-gal単独群よりもワクチン接種に良好に応答することができたと判断された。非免疫UP360+D-gal群における胸腺指数、T細胞、及びナチュラルキラー細胞は、D-gal単独群よりも高かった。これらのデータから、未感作の免疫系でも、UP360は、免疫系をプライミング及び活性化し、免疫細胞を増大させたと判断された。これらの結果から、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)は、免疫系を感染に対してプライミングするように、活発な感染中と予防手段のいずれにおいても免疫系の恒常性を活性化及び維持するのを補助できることが実証された。
【0049】
アロエ、ポリア及びロスマリン酸抽出物、特に特定の成分を高濃度化させたこれらの抽出物を併用する臨界値を評価し、LPS誘発生存率試験と、LPS感作後のマクロファージのHMGB1とTNF-αの分泌から得られたデータで常用式(コルビーの式)を使用して確認した。コルビー法によると、2種以上の材料を含む標準化製剤は、予想外の相乗作用があると推定され、実測値が予想値よりも低いとき(即ち、死亡率、HMGB1とTNF-αの分泌の低下)には、予想外の阻害作用がある。本願の所期保護対象において、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)が、死亡率低下に予想外の相乗作用と、HMGB1及びTNF-αの分泌に予想外の阻害作用を有することの確認を意図した。実施例20で例証するように、どちらのエンドポイント測定でもこれらの抽出物の併用から死亡率の低下に予想外の相乗作用が認められた。所期組成物を投与した場合に認められた有益な効果は、指定した比のその成分の各々で得られる予想効果を上回った。LPS感作の6日後に統計的に有意な死亡率低下に達したのは、アロエベース組成物のみである。実際に、投与から36時間後に、アロエベース組成物で動物の死亡は認められなかったが、成分の各々(即ち、アロエ、ポリア及びロスマリン酸)を単独投与した場合には、少数の動物の死亡が認められた。この事実は、LPS感作後のマクロファージからのHMGB1とTNF-αの分泌が、アロエベース組成物では個々の成分に比較して最低であったという点で正しい(実施例16及び17)。本願の所期保護対象の背景技術の項で個別に詳述したように、これらの薬用植物の有益な用途については報告されているが、本発明者らの知る限り、これらの薬用植物を併用して製剤化し、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)とし、敗血症動物の死亡率低下や、マクロファージからのHMGB1とTNF-αの分泌の阻害等の予想外のアウトカムを生じたのは今回が最初である。これらのアウトカムに加え、他の好ましい自然免疫応答及び適応免疫応答、特にヒト臨床試験で認められ、本願の所期保護対象に記載するガンマデルタT細胞の増加により、多糖類とポリフェノールを含有する組成物は、宿主免疫応答の方向を必要に応じてバランスのとれた刺激及び/又は阻害活性に導き、総合的な免疫恒常性をもたらすというユニークな独自性を備える。
【0050】
以上及び以下の記載では、本開示の種々の実施形態を十分に理解できるようにするために、所定の特定の事項について記載する。しかし、当業者に自明の通り、これらの事項を用いなくても所期保護対象を実施することができる。
【0051】
本願の記載において、全濃度範囲、百分率範囲、比の範囲又は整数範囲は、特に指定しない限り、明記する範囲内の全整数値と、適切な場合にはその分数(例えばある整数の10分の1や100分の1)を含むものと理解すべきである。また、多糖サブユニット、サイズ又は厚さ等の全物理的特徴に関して本願中に明記する全数値範囲は、特に指定しない限り、明記する範囲内の全整数を含むものと理解すべきである。本願で使用する「約」及び「から本質的に構成される」なる用語は、特に指定しない限り、指定範囲、数値又は構造の平均±20%を意味する。当然のことながら、本願で使用する不定冠詞は、列挙する要素の「1以上」を意味する。選択肢(例えば、「及び/又は」)の使用は、その選択肢の一方、両方、又は任意のそれらの組み合わせを意味すると理解すべきである。文脈が矛盾しない限り、本明細書と特許請求の範囲の随所において、「含む」及びその変形である「(単数形の)含む」や「含んでいる」と、「包含する」や「有する」及びその変形等の同義語は、広義の包括的な意味で解釈すべきであり、即ち、「含むが、これらに限定されない」と言う意味である。
【0052】
本明細書の随所において「1つの実施形態」又は「1実施形態」と言う場合には、この実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、組成又は特性が本願の所期保護対象の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の随所の各所で「1つの実施形態において」又は「1実施形態において」なる表現を用いる場合には、必ずしも全てが同一の実施形態を意味するものではない。
【0053】
また、「プロドラッグ」なる用語は、本開示の活性化合物を任意の担体に共有結合させ、このようなプロドラッグを哺乳動物対象に投与したときにインビボで放出するものを意味する。本開示の化合物のプロドラッグは、日常的操作又はインビボで開裂して本開示の親化合物に戻るように、本開示の化合物に存在する官能基を修飾することにより製造することができる。プロドラッグとしては、本開示の化合物のいずれかの基にヒドロキシ基、アミノ基又はメルカプト基を結合し、本開示の化合物のプロドラッグを哺乳動物対象に投与したときに、開裂して夫々遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基又は遊離メルカプト基を形成するものが挙げられる。プロドラッグの例としては、本開示の化合物におけるアルコール部分の酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体又はアミン官能基のアミド誘導体等が挙げられる。
【0054】
「安定な化合物」及び「安定な構造」とは、反応混合物から有用な純度まで単離して有効な治療剤に製剤化するために十分に堅牢な化合物を意味する。
【0055】
「バイオマーカー」又は「マーカー」成分又は化合物とは、本願に開示する植物、植物抽出物又は2~3種の植物抽出物の併用組成物に固有の1種以上の化学成分又は化合物であって、所期組成物の品質、コンシステンシー、完全性、安全性及び/又は生物学的機能を制御するために利用されるものを意味する。
【0056】
「哺乳動物」は、ヒトに加え、実験動物又は家族ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)等の家庭動物と、野生動物等の非家庭動物を含む。
【0057】
「任意の」又は「任意に」とは、この語により修飾される要素、成分、事象又は環境が存在してもしなくてもよく、これらの要素、成分、事象又は環境が存在する場合と存在しない場合があることを意味する。例えば、「任意に置換されたアリール」とは、このアリール基が置換されていてもいなくてもよく、置換アリール基と置換されていないアリール基の両方を含むことを意味する。
【0058】
「薬学的又は栄養補強的に許容される基剤、希釈剤又は賦形剤」は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によりヒト又は家庭動物で使用するのに許容されるとして承認されているあらゆる補助剤、基剤、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバーエンハンサー、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶剤、溶媒又は乳化剤を含む。
【0059】
「薬学的又は栄養補強的に許容される塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。「薬学的又は栄養補強的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性及び性質を維持し、生物学的又は他の点で不適切ではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、及び酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、サイクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、蓚酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸等の有機酸と共に形成される塩を意味する。
【0060】
「薬学的又は栄養補強的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性及び性質を維持し、生物学的又は他の点で不適切ではない塩基付加塩を意味する。これらの塩は、無機塩基又は有機塩基を遊離酸に付加することにより製造される。無機塩基から誘導される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等が挙げられる。所定の実施形態において、前記無機塩はアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩である。有機塩基から誘導される塩としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられ、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等の塩が挙げられる。特に有用な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0061】
結晶化により本開示の化合物の溶媒和物を形成することが多い。本願で使用する「溶媒和物」なる用語は、本開示の化合物1分子以上と、溶媒1分子以上を含む凝集物を意味する。溶媒は水とすることができ、その場合には、溶媒和物は水和物とすることができる。あるいは、溶媒は有機溶媒でもよい。したがって、本願の所期保護対象の化合物は水和物として存在することができ、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物等、及び、対応する溶媒和物が挙げられる。本開示の化合物は真の溶媒和物とすることができるが、本開示の化合物は単に偶発的な水を保持しているだけもよいし、水と多少の偶発的な溶媒の混合物でもよい。
【0062】
「薬学的組成物」又は「栄養補強的組成物」とは、本開示の化合物と、この生理活性化合物を哺乳動物(例えば、ヒト)に送達するために当技術分野で一般に許容されている媒体から成る製剤を意味する。例えば、本開示の薬学的組成物は、単独組成物として製剤化又は使用してもよいし、政府機関により審査・承認された処方薬、市販(OTC)薬、植物性薬品、生薬、天然薬、ホメオパシー剤、又は他の任意形態のヘルスケア製品における成分として製剤化又は使用してもよい。典型的な本開示の栄養補強的組成物は、単独組成物として製剤化又は使用してもよいし、食品、機能性食品、飲料、バー、食品フレーバー、医療食、栄養補助食品又は生薬製品における栄養成分又は生理活性成分として製剤化又は使用してもよい。当技術分野で一般に許容されている媒体は、この目的で薬学的又は栄養補強的に許容される全ての基剤、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0063】
本願で使用する「高濃度化」とは、抽出又は他の製造工程の前に植物材料又は他の原料の重量中に存在する1種以上の活性化合物の量に比較して、1種以上の活性化合物を少なくとも2倍から約1000倍まで増加させた植物抽出物又は他の製剤を意味する。所定の実施形態において、抽出又は他の製造工程の前の植物材料又は他の原料の重量は、乾燥重量、湿潤重量又はそれらの組み合わせとすることができる。ある種の所期実施形態では、個々による又は組み合わせでの、溶媒沈殿、限外濾過、酵素消化、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナ酸化物、ポリアミド、CG161及びサイズ排除カラム樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより、多糖類が高濃度化されている。ある種の所期実施形態では、個々による又は組み合わせでの、溶媒分配、沈殿、蒸留、蒸発、限外濾過、シリカゲル、XAD、HP20、LH20、C-18、アルミナ酸化物、ポリアミド、サイズ排除カラム及びCG161樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより、1種以上のポリフェノールが高濃度化されている。
【0064】
本願で使用する「主活性原料成分」又は「主活性成分」とは、植物抽出物若しくは他の製剤中に存在するか又は植物抽出物若しくは他の製剤中で高濃度化させた1種以上の活性化合物であり、少なくとも1種の生理活性を発揮できるものを意味する。所定の実施形態において、高濃度化抽出物の主活性原料成分は、前記抽出物中で高濃度化させた1種以上の活性化合物となるであろう。一般に、1種以上の主活性成分は、他の抽出物成分に比較して、1種以上の測定可能な生理活性又は作用の大半(即ち、50%超、30%超又は20%超又は10%超)を直接的又は間接的に提供するであろう。所定の実施形態において、主活性原料成分は、抽出物の過半数に満たない重量百分率の成分(例えば、抽出物に含まれる成分の50%未満、25%未満、又は10%未満又は5%未満又は1%未満)でもよいが、所望の生理活性の大半を提供することができる。主活性原料成分を含有する本開示の全組成物は更に、副次活性原料成分を含有していてもよく、前記副次活性原料成分は、高濃度化した組成物の薬学的又は栄養薬学活性に寄与してもしなくてもよいが、主活性成分の濃度には寄与せず、副次活性成分は、主活性原料成分の不在下で単独では有効でなくてもよい。
【0065】
「有効量」又は「治療有効量」とは、ヒト等の哺乳動物に投与したときに、(1)自然免疫の刺激、(2)適応免疫の強化、特にCD3+、CD4+、CD8+、NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、及びCD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞の増加、(3)慢性全身性炎症と酸化ストレスの抑制、(4)HMGB1誘発サイトカインストーム損傷に対する免疫細胞と肺細胞の保護、(5)酸化ストレスを抑制し、スーパーオキシドジスムターゼ酵素(SOD)とNrf2を増加させる強力な抗酸化剤としての機能の提供、(6)自然免疫応答と適応免疫応答の恒常性の維持、(7)液性免疫応答と細胞性免疫応答におけるマクロファージの貪食指数の増加、(8)NF-kB、NFAT、及びSTAT3等の転写因子の活性化の阻害、(9)リンパ球活性化と炎症性サイトカイン遺伝子及び/又はタンパク質発現(IL-2、iNOS、TNF-α、COX-2、及びIFN-γ)の阻害、(10)HMGB1、IL-1β、IL-6及びTNF-α等の炎症性サイトカイン濃度の低下、(11)HMGB1、COX-2、NOS-2、及びNF-κBの遺伝子及び/又はタンパク質発現のダウンレギュレーション、(12)ホスホリパーゼA2及びTXA2シンターゼ、COX1、COX2、5-LOX、12-LOX、13-LOX活性を阻害することによるエイコサノイド生成の阻害、(13)Th1細胞とTh17細胞の応答抑制、(14)ICAMとVCAMの発現低下による好中球走化性低下、(15)MAPKリン酸化、接着分子発現、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT-3)の阻害、(16)転写因子NRF2の活性化とヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の誘導、及び細胞核からのHMGB1の移行の阻害、HMGB1単量体の二量体及び三量体の形成の抑制のいずれか1種以上を含む免疫機能の改善をもたらすように免疫恒常性の転換点をシフトさせるために十分な本開示の化合物又は組成物の量を意味する。
【0066】
多糖類とポリフェノールを含有する本願の所期保護対象によるHMGB1の調節は、HMGB1放出の阻害、及び/又はその作用の妨害とすることができる。アロエベース組成物のHMGB1調節作用は、a)細胞質移行を阻止することにより、及び/又は小胞を介する放出を阻止することにより、及び/又は核内の分子内ジスルフィド結合形成を阻害することにより、能動的及び/又は受動的なHMGB1放出を標的とする、b)HMGB1の放出を直接標的とし、その作用を中和する、c)Toll様受容体(TLR)-2/4/7/9や終末糖化産物受容体(RAGE)等のHMGB1パターン認識受容体をブロックする、又はそのシグナル伝達を阻害する結果として発現することができる。感染、炎症及び細胞死における酸化ストレス仲介HMGB1放出の阻害は、1)活性化された免疫細胞におけるCRM1によるHMGB1の核外輸送、2)壊死におけるPARP1によるHMGB1放出、3)アポトーシスにおけるカスパーゼ3/7によるHMGB1放出、4)オートファジーにおけるATG5によるHMGB1放出、5)パイロトーシスにおけるPKRによるHMGB1放出、及び6)ネトーシスにおけるPAD4によるHMGB1放出を標的とすることができる。アロエベース組成物の作用は、HMGB1のクラスター形成又は自己会合の防止により発現することもでき、イオン強度(イオン強度の増加と共にHMGB1四量体の濃度が低下する)、pH(pH4.8で自己会合度最高)、金属イオン、特に亜鉛(低用量Zn2+の配合はHMGB1四量体形成を促進する)、及び酸化還元環境(細胞外環境に似た酸化性条件下では、HMGB1は主に四量体として存在し、細胞内環境のような還元性条件下では、より多くの二量体種が存在する)等の特定の物理化学的因子を標的とすることにより達成される。多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物は、物理化学的微小環境を変化させることにより、HMGB1四量体の形成を防止し、TLR及びRAGEに対するHMGB1の結合親和性を妨害する。
【0067】
多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成され、2~3種の植物抽出物の種々の組み合わせで免疫恒常性を調節するための所期アロエベース組成物(限定されないが、例えば、本開示のUP360を含む)により調節される免疫機能と肺構造完全性及び機能に関連する「バイオマーカー」としては、限定されないが、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-17、GM-CSF、G-CSF、CCL2/3/5、IP-10、CXCL10、CRP、HMGB1、INF-α/β/γ、NF-κB、PDGF-BB、MIP-1α、Dダイマー、アンギオテンシンII、心筋トロポニン、VEGF、PDGF、アルブミン、Nrf2、SOD、MDA、iNOS、COX1、COX2、LO5、LO12、LO13が挙げられる。
【0068】
本願で使用する「ウイルス」としては、限定されないが、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1ウイルスA型)、インフルエンザA(H1N1)、A型、B型、C型及びD型肝炎ウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2(COVID-19)、MERS-CoV(MERS)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、エンテロウイルスA71(EV71)が挙げられる。
【0069】
「治療有効量」を構成する本開示の化合物、抽出物又は組成物の量は、生理活性化合物、治療する病態とその重症度のバイオマーカー、投与方式、投与期間、又は治療する対象の年齢により異なるが、当技術分野における通常の知識を有する者が自身の知識と本開示に照らして日常的に決定することができる。所定の実施形態において、「有効量」又は「治療有効量」は、哺乳動物の体重に対する多糖類とポリフェノールの組成物の量(即ち、0.005mg/kg、0.01mg/kg、又は0.1mg/kg、又は1mg/kg、又は5mg/kg、又は10mg/kg、又は20mg/kg、又は50mg/kg、又は100mg/kg、又は200mg/kg又は500mg/kg)として表すことができる。動物とヒトの総体表面積及び体重の差を考慮してFDAガイドラインを利用することにより、動物試験における「有効量」又は「治療有効量」からヒト等価1日用量を推定することができる。
【0070】
本願で使用する「栄養補助食品」は、恒常性、バランス、自然状態若しくは生物学的プロセス、又は構造的及び機能的完全性に関連する特定の病態、生物学的機能若しくは表現型状態のアンバランス若しくは低下若しくは抑制若しくは過剰刺激を改善、促進、増進、管理、制御、維持、最適化、修飾、抑制、阻害又は予防する製品である(即ち、疾患を診断、治療、緩和、治癒又は予防するためには使用されない)。例えば、免疫に関しては、ワクチンの効力を強化し、マクロファージの貪食活性を増強し、NK細胞の自然殺傷活性を改善し、炎症性サイトカインの産生レベルを調節し、炎症と組織損傷を軽減し、抗体の応答と産生を誘導し、抗体依存性細胞傷害作用を強化し、T細胞増殖を刺激し、免疫抑制細胞である制御性T細胞の生成を促進し、免疫細胞と肺細胞をHMGB1誘発サイトカインストーム損傷から保護し、臓器及び/又は組織を酸化ストレスから保護する免疫刺激剤に特異的な免疫補助剤として、適応免疫又は自然免疫の何らかの成分を調節、維持、管理、均衡、抑制又は刺激するために栄養補助食品を使用することができる。所定の実施形態において、栄養補助食品は特殊分類の食品、機能性食品、医療食、栄養、栄養製品であり、医薬品ではない。
【0071】
本願で使用する「治療する」又は「治療」とは、該当疾患又は病態をもつヒト等の哺乳動物における前記該当疾患又は病態の治療を意味し、(i)特に、哺乳動物に前記疾患又は病態の素因があるが、まだその疾患等をもつと診断されていない場合に、前記疾患又は病態が前記哺乳動物に発生するのを予防すること;(ii)前記疾患又は病態を抑制すること、即ち、その発生を止めること;(iii)前記疾患又は病態を緩和又は修飾すること、即ち、前記疾患又は病態の退縮を生じること;(iv)根底にある疾患又は病態に対処せずに、前記疾患又は病態に起因する症状を緩和すること(例えば、咳と発熱を緩和すること、疼痛を緩和すること、炎症を抑えること、肺水腫を抑制すること、肺炎を緩和すること);(v)免疫恒常性の調節のバランスをとること、あるいは前記疾患又は病態の表現型を変化させることを含む。
【0072】
本願で使用する「疾患」及び「病態」なる用語は同義に使用する場合もあるし、特定の病的状態又は病態の原因物質が不明である(したがって、病因がまだ突き止められていない)ため、まだ疾患として認められず、多少の特定の症状群が臨床医により確認されているが、望ましくない病態又は症候群としてしか認められていないという意味で同義でない場合もある。疾患又は病態は、ウイルス感染症(SARS、COVID-19、MERS、肝炎、インフルエンザ)や微生物感染症のように急性の場合もあるし、大気汚染や喫煙への曝露に起因する肺損傷のように慢性の場合もある。恒常性のアンバランスにより免疫機能が低下した結果、疾患又は病態を生じたり、哺乳動物が感染症や細胞の突然変異を生じ易くなったり、ウイルス若しくは細菌感染又は大気汚染物質に直接的又は間接的に関連する二次的な臓器・組織損傷に繋がる可能性もある。
【0073】
本願で使用する「統計的有意性」なる用語は、スチューデントのt検定を使用して計算した場合にp値が0.05以下であることを意味し、特定の事象又は測定結果が偶然に生じたとは考えにくいことを示す。
【0074】
投与の目的では、本願の所期保護対象の化合物を粗原料成分として投与してもよいし、薬学的又は栄養補強的組成物として製剤化してもよい。本願の所期保護対象の薬学的又は栄養補強的組成物は、本願の所期保護対象に記載する構造の化合物と、薬学的又は栄養補強的に許容される基剤、希釈剤又は賦形剤を含有している。本願に記載する構造の化合物は、特定の該当疾患又は病態を治療するために有効な量、即ち、自然免疫又は適応免疫又は免疫恒常性全般又は本願に記載する他の関連する効能のいずれかを促進するために十分であり、一般に患者への毒性及び/又は安全性プロファイルが許容されるような量で前記組成物中に存在する。
【0075】
純形態又は適切な薬学的若しくは栄養補強的組成物としての本開示の化合物若しくは組成物、又はその薬学的若しくは栄養補強的に許容される塩の投与は、同様の用途の薬剤に許容される投与方式のいずれかにより実施することができる。本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、本開示の化合物に適切な薬学的又は栄養補強的に許容される基剤、希釈剤又は賦形剤を加えることにより製造することができ、固形、半固形、液状又は気体状の製剤に製剤化することができ、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ソフトジェル剤、ガム剤、軟膏剤、溶液剤、飲料、坐剤、注射剤、吸入剤、ジェル剤、クリーム剤、ローション剤、チンキ剤、サシェ剤、即席飲料、マスク剤、マイクロスフェア剤、及びエアゾール剤が挙げられる。このような薬学的又は栄養補強的組成物の典型的な投与経路としては、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、経直腸、経膣、又は鼻腔内が挙げられる。本願で使用する非経口なる用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は輸液技術を含む。所期実施形態において、前記組成物の投与は、経口投与、局所投与、坐剤投与、静脈内投与、皮内投与、胃内投与、筋肉内投与、腹腔内投与及び静脈内投与を含む群から選択される。
【0076】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、前記組成物を患者に投与すると、前記組成物に含まれる活性成分が生体利用性になるように製剤化される。対象又は患者又は哺乳動物に投与される組成物は、1用量単位以上の形態をとり、例えば、錠剤1錠を1用量単位とすることができ、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物の組成物をエアゾール剤として充填した容器は複数の用量単位を保持することができる。このような形態の実際の製造方法は当業者に公知であり、又は容易に理解されよう。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)参照。投与する組成物はいずれにせよ、本願の所期保護対象の教示に従って該当疾患又は病態を治療するために、治療有効量の本開示の化合物又はその薬学的若しくは栄養補強的に許容される塩を含有するであろう。
【0077】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物において、前記活性成分、補助剤、賦形剤又は基剤は、アサ(Cannabis sativa)種子油又は抽出物又はCBD又はTHC、ターメリック抽出物又はクルクミン、ターミナリア抽出物、ヤナギ樹皮抽出物、デビルズクロー根抽出物、カイエンペッパー抽出物又はカプサイシン、アメリカザンショウ樹皮抽出物、フィロデンドロン樹皮抽出物、ホップ抽出物、ボスウェリア属(Boswellia)抽出物、ローズヒップ抽出物、緑茶抽出物、ソフォラ属(Sophora)抽出物、ハッカ属(Mentha)又はペパーミント抽出物、ジンジャー又はブラックジンジャー抽出物、緑茶又はブドウ種子ポリフェノール、オメガ3及び/又はオメガ6脂肪酸、クリルオイル、γ-リノレン酸、柑橘系バイオフラボノイド、アセロラ濃縮物、アスタキサンチン、アメリカニンジン、オタネニンジン、エルダーベリー、ニンニク抽出物、ニンニク油、エキナセア抽出物、アガベネクター、ユーカリ油、アスコルビン酸、ピクノジェノール、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンA、L-リジン、カルシウム、マンガン、亜鉛、アミノ酸キレートミネラル、アミノ酸、ボロン及びボロングリシネート、シリカ、プロバイオティクス、樟脳、メントール、カルシウム塩、シリカ、ヒスチジン、グルコン酸銅、CMC、β-シクロデキストリン、セルロース、デキストロース、食塩水、水、油類、サメ及びウシ軟骨の1種以上から選択される。
【0078】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は固形でも液状でもよい。1態様において、前記基剤は粒状であり、したがって、前記組成物は例えば錠剤又は散剤形態である。前記基剤は液状でもよく、前記組成物は例えば、経口シロップ剤、注射液剤、又は例えば吸入投与に有用なエアゾール剤である。
【0079】
経口投与用の場合、前記薬学的又は栄養補強的組成物は固形又は液状であり、半固形、半液状、懸濁剤及びジェル形態は本願で固形又は液状とみなす形態に含まれる。
【0080】
経口投与用固形組成物として、前記薬学的又は栄養補強的組成物は散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム剤、ガム剤、ソフトジェル剤、サシェ剤、ウエハース剤、バー剤等の形態に製剤化することができる。このような固形組成物は、一般的に1種以上の不活性希釈剤又は可食性基剤を含有する。更に、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、シクロデキストリン、微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等の結合剤;澱粉、ラクトース又はデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムやSterotex等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の滑剤;ショ糖やサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー等のフレーバー剤;及び着色剤の1種以上を添加してもよい。
【0081】
前記薬学的又は栄養補強的組成物がカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の形態である場合には、上記種類の材料に加え、ポリエチレングリコールや油類等の液状基剤を含有することができる。
【0082】
前記薬学的又は栄養補強的組成物は液剤の形態でもよく、例えば、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤又は懸濁剤とすることができる。前記液剤は、2例を挙げると、経口投与用又は注射による送達用とすることができる。経口投与用の場合には、有用な組成物は本願の化合物に加え、甘味剤、保存剤、乳化剤、色素/着色剤及びフレーバーエンハンサーの1種以上を含有する。注射投与用組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤及び等張剤の1種以上を添加することができる。
【0083】
本開示の液状の薬学的又は栄養補強的組成物は、溶液剤、懸濁剤等の形態のいずれであるかに関係なく、以下の補助剤、即ち、注射用水、生理食塩水等の食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、溶媒又は懸濁媒として利用できる合成モノ又はジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶剤等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールやメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝液;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の張度調節剤の1種以上を含有することができる。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又はマルチドーズバイアルに封入することができる。生理食塩水が一般に有用な補助剤である。注射用の薬学的又は栄養補強的組成物は無菌とする。
【0084】
本開示の非経口又は経口投与用の液状の薬学的又は栄養補強的組成物は、適切な投与量が得られるような量の本開示の化合物を含有すべきである。
【0085】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は局所投与用としてもよく、その場合には、前記基剤は適宜、溶液剤、乳剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、又はジェル基剤を含むことができる。前記基剤は、例えば、ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水やアルコール等の希釈剤、乳化剤及び安定剤の1種以上を含むことができる。局所投与用の薬学的又は栄養補強的組成物には、増粘剤を添加してもよい。経皮投与用の場合には、前記組成物は、経皮パッチやイオントフォレシス装置を含むことができる。
【0086】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は経直腸投与用とすることもでき、例えば、直腸内で溶けて薬物を放出する坐剤の形態とすることができる。直腸投与用の前記組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有することができる。このような基剤としては、ラノリン、カカオ脂及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0087】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、固形又は液状用量単位の物理的形状を変える種々の材料を含むことができる。例えば、前記組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は、一般的に不活性であり、例えば、糖、シェラック及び他の腸溶性コーティング剤から選択することができる。あるいは、活性成分をゼラチンカプセルに封入してもよい。
【0088】
固形又は液状の本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、本開示の化合物と結合して前記化合物の送達を補助する物質を含むことができる。この機能を行うことができる適切な物質としては、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、タンパク質又はリポソームが挙げられる。
【0089】
固形又は液状の本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、例えば、生体利用性を改善するために粒子のサイズを小さくすることができる。賦形剤の有無を問わずに組成物中における粉末、顆粒、粒子、マイクロスフェア等のサイズは、サイズと嵩密度を改善するように、マクロ(例えば、目視可能又は少なくとも100μmのサイズ)、マイクロ(例えば、約100μm~約100nmの範囲のサイズとすることができる)、ナノ(例えば、100nm以下のサイズとすることができる)、及びその中間の任意のサイズ又は任意のそれらの組み合わせとすることができる。
【0090】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、エアゾール剤として投与することができる用量単位から構成することもできる。エアゾールなる用語は、コロイド状のシステムをはじめ、加圧パッケージから構成されるシステムに至る種々のシステムを表すために使用される。液化ガス若しくは圧縮ガス又は活性成分を分配する適切なポンプシステムにより送達を行うことができる。本開示の化合物のエアゾール剤は、活性成分を送達するために、単相、二相又は三相系で送達することができる。エアゾール剤の送達は必要な容器、アクチベーター、バルブ、内側容器等を含み、全体でキットを形成することができる。当業者は、過度の実験を経ずに最適なエアゾール剤を決定することができる。
【0091】
本開示の薬学的又は栄養補強的組成物は、薬学又は栄養薬学分野で周知の手法により製造することができる。例えば、本開示の化合物に滅菌蒸留脱イオン水を加えて溶液を形成することにより、注射投与用の薬学的又は栄養補強的組成物を製造することができる。均一な溶液又は懸濁液の形成を助けるために界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤は、本開示の化合物と非共有結合的に相互作用し、水性送達系における前記化合物の溶解又は均一な懸濁を助ける化合物である。
【0092】
本開示の化合物又はその薬学的若しくは栄養補強的に許容される塩は治療有効量を投与されるが、このような有効量は、利用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性と作用時間、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与方式及び時期、排泄速度、薬物併用、特定の障害又は病態の重症度、並びに治療を受ける対象等の種々の因子により異なるであろう。
【0093】
本開示の化合物又は薬学的若しくは栄養補強的に許容されるその誘導体は更に、食品、水及び1種以上の他の治療剤と同時に投与してもよいし、その前に投与してもよいし、その後に投与してもよい。このような併用療法は、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と、1種以上の他の活性剤を含有する単一の薬学的又は栄養補強製剤を投与する方法に加え、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と各活性剤を夫々別々の薬学的又は栄養補強製剤として投与する方法を含む。例えば、本開示の化合物又は抽出物又は2~3種の植物抽出物から成る組成物と別の活性剤を錠剤又はカプセル剤等の単一の経口投与組成物として一緒に患者に投与することもできるし、各活性剤を別々の経口投与製剤として投与することもできる。別々の投与製剤を使用する場合には、本開示の化合物と1種以上の他の活性剤を本質的に同一時点で、即ち、同時に投与することもできるし、時間をずらせて別々に、即ち、逐次投与することもでき、併用療法はこれらの全てのレジメンを含むものと理解されたい。
【0094】
当然のことながら、本願の記載では、表記する式の置換基又は変数を組み合わせて安定な化合物が得られる場合に限り、このような組み合わせが許容される。
【0095】
また、当業者に自明の通り、本願に記載する方法では、中間化合物の官能基を適切な保護基で保護することが必要な場合がある。このような官能基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基及びカルボン酸基が挙げられる。ヒドロキシ基の適切な保護基としては、トリアルキルシリル基又はジアリールアルキルシリル基(例えば、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基又はトリメチルシリル基)、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基等が挙げられる。アミノ基、アミジノ基及びグアニジノ基の適切な保護基としては、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。メルカプト基の適切な保護基としては、C(O)-R”(式中、R”はアルキル、アリール又はアリールアルキルである。)、p-メトキシベンジル基、トリチル基等が挙げられる。カルボン酸基の適切な保護基としては、アルキル基、アリール基又はアリールアルキルエステル基が挙げられる。保護基は標準技術に従って付加又は除去することができ、このような技術は当業者に公知であり、本願に記載する通りである。保護基の使用については、Green,T.W.and P.G.M.Wutz,Protective Groups in Organic Synthesis(1999),3rd Ed.,Wileyに詳細に記載されている。当業者に自明の通り、保護基はWang樹脂、Rink樹脂又は2-クロロトリチルクロリド樹脂等のポリマー樹脂でもよい。
【0096】
同様に当業者に自明の通り、本願の所期保護対象の化合物のこのような保護誘導体はその状態では薬理活性を有していなくてもよいが、哺乳動物に投与した後、体内で代謝されて薬理的に活性な本開示の化合物を形成することができる。したがって、このような誘導体は、「プロドラッグ」と言うことができる。本願の所期保護対象の化合物の全てのプロドラッグが本開示の範囲に含まれる。
【0097】
更に、遊離塩基又は遊離酸形態で存在する本開示の全化合物又は抽出物は、当業者に公知の方法により適切な無機塩基、有機塩基、無機酸又は有機酸で処理することにより、その薬学的又は栄養補強的に許容される塩に変換することができる。本開示の化合物の塩は、標準技術によりその遊離塩基又は遊離酸形態に変換することができる。
【0098】
所期化合物、薬用組成物及び組成物は、少なくとも1種の活性成分を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。ある種の実施形態において、少なくとも1種の生理活性成分は、植物粉末又は植物抽出物等を含むこと、又はそれらから構成することができる。
【0099】
上記実施形態のいずれにおいても、抽出物又は化合物の混合物を含む組成物は、特定の重量比で混合することができる。例えば、多糖類を含むアロエ葉ゲル粉末と、ロスマリン酸を含有するローズマリー抽出物を夫々1:2の重量比でブレンドすることができる。所定の実施形態において、本開示の2種類の抽出物又は化合物の(重量)比は、約0.5:5~約5:0.5の範囲である。3種類以上(例えば、3種、4種、5種)の抽出物又は化合物を使用する場合にも同様の範囲が適用される。実施例10で実証する典型的な比としては、0.5:1、0.5:2、0.5:3、0.5:4、0.5:5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:2、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:3、3:4、3:5、4:1、4:2、4:3、4:4、4:5、5:1、5:2、5:3、5:4、5:5、1:0.5、2:0.5、3:0.5、4:0.5、又は5:0.5が挙げられる。所定の実施形態では、本願に開示するアロエ、及び/又はポリア、及び/又はローズマリーの個々の抽出物を夫々1:1:1、2:1:1、3:1:1、4:1:1、5:1:1、1:2:1、1:3:1、1:4:1、1:5:1、1:1:2、1:1:3、1:1:4、1:1:5、1:2:3、1:2:4、1:2:5、1:2:6、1:2:6、1:2:8、1:2:9又は1:2:10等の重量比でブレンドし、実施例9及び10で実証する3種の個々の抽出物を含む組成物とする。他の実施形態では、本願に開示するアロエ、ポリア及びローズマリーの個々の抽出物を非限定的な1例として3:6:1又は1:1:1又は3:2:1のアロエ:ポリア:ローズマリーのブレンド比で配合し、UP360と呼ぶ所期組成物とした。
【0100】
他の実施形態では、アロエ、ポリア及びローズマリーの個々の抽出物の2~3種を種々に組み合わせ、非限定的な例として多糖類とポリフェノールを含有するUP360としたこのような配合物を、認められる生物学的機能の利点/不利点及び予想外の相乗作用/阻害作用と、免疫機能の恒常性の有効な調節と、サイトカインストーム、酸化ストレス及び敗血症に起因する臓器損傷の軽減について、インビトロ、及び/又はエクスビボ及び/又はインビボモデルで評価した。各抽出物中の化学成分の多様性と、各抽出物中の異なる種類の生理活性化合物からの異なる作用機序と、生物学的出力を最大にするように組成物中の天然化合物のADMEを向上する可能性により、インビトロ、及び/又はエクスビボ及び/又はインビボモデルで測定された予想外の相乗作用に基づいて、アロエ又はポリア又はカバノアナタケ又はローズマリーの個々の抽出物を特定のブレンド比で含む最良の組成物を選択した。
【0101】
上記実施形態のいずれにおいても、抽出物又は化合物の混合物を含む組成物は、所定の百分率レベル又は比で存在することができる。所定の実施形態において、アロエ全葉若しくは葉肉ゲル粉末(実施例3及び4)及び/又はローズマリー抽出物(実施例6)を含む組成物は、0.1%~49.9%若しくは約2%~約40%若しくは約0.5%~約10%の多糖類、0.1%~99.9%若しくは約1%~約10%若しくは約5%~約50%のロスマリン酸、又はそれらの組み合わせを含有することができる。所定の実施形態において、アロエ・ベラゲル粉末(実施例3又は4)又はポリア水性抽出物(実施例5)又はローズマリー抽出物(実施例6)を含む組成物は、約0.01%~約99.9%の多糖類を含有することができ、又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%又は90%のロスマリン酸を含有することができる。
【0102】
所定の例(実施例9)において、本開示の組成物は、薬学的又は栄養補強的に許容される基剤、希釈剤又は賦形剤を更に含むように製剤化することができ、前記薬学的製剤又は栄養補強製剤は、抽出物混合物の活性成分又は主活性成分を約0.05重量パーセント(重量%)、又は0.5重量パーセント(重量%)、又は5%、又は25%~約95重量%の割合で含有する。他の実施形態(実施例9)において、前記薬学的製剤又は栄養補強製剤は、多糖類約0.05重量パーセント(重量%)~約90重量%、ロスマリン酸約0.5重量%~約80重量%、総ポリフェノール約0.5重量%~約75重量%、抽出物混合物中の主活性成分約0.5重量%~約70重量%、約0.5重量%~約50重量%、約1.0重量%~約40重量%、約1.0重量%~約20重量%、約1.0重量%~約10重量%、約3.0重量%~約9.0重量%、約5.0重量%~約10重量%、約3.0重量%~約6重量%等を含有する。上記製剤のいずれかにおいて、本開示の組成物は、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトジェルカプセル剤、散剤又は顆粒剤として製剤化される。
【0103】
本願では、本願に開示する化合物の変換物も想定される。このような生成物は、例えば、投与した化合物の主に酵素的過程による酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化等により得られる。したがって、想定される化合物は、所期化合物又は組成物の代謝産物を生じるために十分な時間にわたって前記化合物又は組成物を哺乳動物に投与することを含む方法により生成される化合物である。このような生成物は、一般的に、本開示の化合物を放射性標識して又は放射性標識せずにラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、サル、又はヒト等の動物に検出可能な用量で投与し、代謝が生じるために十分な時間を経た後に、尿、血液又は他の生体試料からその変換物を単離することにより同定される。
【0104】
所期化合物、薬用組成物及び組成物は更に、少なくとも1種の薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される基剤、希釈剤又は賦形剤を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。本願で使用する「薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される基剤、希釈剤又は賦形剤」なる用語は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によりヒト又は家庭動物で使用するのに許容されるとして承認されているあらゆる補助剤、基剤、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバーエンハンサー、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶剤、又は乳化剤を含む。所期化合物、薬用組成物及び組成物は、少なくとも1種の薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される塩を含むこと、又は更に含むこと、又はそれらから構成することができる。本願で使用する「薬学的又は栄養補強的又は美容的に許容される塩」なる用語は、酸付加塩と塩基付加塩を含む。
【0105】
天然免疫抑制剤は、免疫系を阻害し、慢性全身性炎症と酸化ストレスを抑制し、免疫細胞と肺細胞をHMGB1誘発サイトカインストーム損傷から保護し、酸化ストレスを抑制してNF-kbを低下させるための強力な抗酸化剤を提供し、炎症性経路(COX/LOX及びサイトカインIL-1、IL-6、TNF-a)を抑制する分子であり、したがって、本願の所期保護対象で実証するように、免疫機能の恒常性を達成するように生理的及び/又は病的免疫反応を制御するために使用することができる。上記のような天然フェノール性化合物としては、限定されないが、ロスマリン酸、ケンペロール、ゲニステイン、ケルセチン、ブテイン、ルテオリン、クリシン、アピゲニン、クルクミン、レスベラトロール、カプサイシン、グロメラトースA、6-ショウガオール、ジンゲロール、ジンゲロン、ベルベリン、ピペリン、エピガロカテキン、コルヒチン、リコリンが挙げられる。
【0106】
ロスマリン酸は、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis:ローズマリー)、メリッサ・オフィシナリス(Melissa officinalis:レモンバーム)、モモルディカ・バルサミナ(Momordica balsamina)、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita:ペパーミント)、ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens:エゴマ)、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis:コモンセージ)、テウクリウム・スコロドニア(Teucrium scorodonia:ウッドセージ)、サニクラ・エウロパエア(Sanicula europaea:セイヨウウマノミツバ)、コレウス・ブルメイ(Coleus blumei)、イブキジャコウソウ属種(Thymus spp.)、ヒプティス・ベルティシラータ(Hyptis verticillata)、リソスペルマム・エリスロリゾン(Lithospermum erythrorhizon:ムラサキ)及びアントケロス・アグレスティス(Anthoceros agrestis:ツノゴケ)の少なくとも1種又はそれらの組み合わせの全植物部分の1種から単独又は組み合わせて誘導、取得又は選択されると想定される。
【0107】
上記免疫抑制性の天然フェノール性化合物を含有する植物種としては、限定されないが、ピペル・ロングム・リンネ(Piper longum Linn:ヒハツ)、コプティス・キネンシス・フランシェ(Coptis chinensis Franch:トウオウレン)、アンジェリカ・シネンシス・(オリバー)ディールス(Angelica sinensis(Oliv.)Diels:カラトウキ)、ソフォラ・フラベセンス・エイトン(Sophora flavescens Ait:クララ)、トキシコデンドロン・ベルニシフルウム(Toxicodendron vernicifluum:ウルシ)、グリシルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra:スペインカンゾウ)、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa:ウコン)、サルビア・ロスマリヌス(Salvia Rosmarinus:ローズマリー)、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis:ローズマリー)、ジンジベル・オフィシナリス(Zingiber officinalis:ショウガ)、ポリガラ・テヌイフォリア(Polygala tenuifolia:イトヒメハギ)、フムルス・ルプルス(Humulus lupulus:ホップ)、ロニセラ・ジャポニカ(Lonicera Japonica:スイカズラ)、サルビア・オフィシナリス・エル(Salvia officinalis L.:セージ)、センテラ・アジアティカ(Centella asiatica:ツボクサ)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carteri)、メンタ・ロンギフォリア(Mentha longifolia:ナガバハッカ)、ピセア・クラシフォリア(Picea crassifolia)、シトラス・ノビリス・ルーレイロ(Citrus nobilis Lour)、シトラス・アランチウム・エル(Citrus aurantium L:ダイダイ)、カメリア・シネンシス・エル(Camellia sinensis L:チャノキ)、プエラリア・ミリフィカ(Pueraria mirifica)、プエラリア・ロバタ(Pueraria lobata:クズ)、グリキネ・マクス(Glycine max:ダイズ)、リコリス・ラジアータ(Lycoris radiate:ヒガンバナ)、コルチカム・オータムナーレ(Colchicum autumnale:イヌサフラン)、トウガラシ属種(Capsicum species)、ファロピア・ジャポニカ(Fallopia japonica:イタドリ)が挙げられる。例えば、チャ、トマト、アブラナ科野菜、ブドウ、ブルーベリー、エルダーベリー、ラズベリー、クランベリー、マルベリー、リンゴ、トウガラシ等の種々の果樹及び野菜にも多くのフェノール性化合物を検出することができる。
【0108】
免疫抑制性の天然フェノール性化合物と共に製剤化することにより、自然免疫を刺激し、適応免疫、特にCD3+、CD4+、CD8+、NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、及びCD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞を強化し、免疫細胞と肺細胞をHMGB1誘発サイトカインストーム損傷から保護し、自然免疫応答と適応免疫応答の恒常性を維持する天然多糖類としては、限定されないが、マンナン、アセチルマンナン、ガラクトマンナン、グルカン、(例えばポリア抽出物に由来する)βグルカン、α-1,6及びα-1,4グルカン、β-1,3-グルカン、フコイダン、フルクタン及びペクチンが挙げられる。
【0109】
上記免疫刺激性の天然多糖類化合物を含有する植物種としては、限定されないが、アロエ・ベラ(Aloe vera)、アロエ・バルバデンセ(Aloe barbadense)、アロエ・フェロクス(Aloe ferox)、アロエ・アルボレセンス(Aloe arborescens:キダチアロエ)、アストラガルス・メンブラナセウス(Astragalus membranaceus:キバナオウギ)、ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum:レイシ)、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare:オオムギ)、アガリクス・スブルフェセンス(Agaricus subrufescens:ニセモリノカサ)(アガリクス・ブラゼイ(A.blazei))、エキナセア・プルプレア(Echinacea purpurea:ムラサキバレンギク)、エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia:ホソバムラサキバレンギク)、アコニツム・ナペルス(Aconitum Napellus:ヨウシュトリカブト)、サンブクス・ニグラ(Sambucus nigra:セイヨウニワトコ)、ポリア・ココス・ウォルフ(Poria cocos Wolf:マツホド)、ウォルフィポリア・エクステンサ(Wolfiporia extensa)、ウィタニア・ソムニフェラ(Withania somnifera:アシュワガンダ)、ブプレウルム・ファルカツム(Bupleurum falcatum:ミシマサイコ)、ラディックス・ブプレウリ(Radix Bupleuri:サイコ)、ラディックス・グリシリザ(Radix Glycyrrhiza)、フルクトゥス・フォルシティアエ(Fructus Forsythiae:レンギョウ)、パナックス・クインクエフォリウム(Panax quinquefolium:アメリカニンジン)、パナックス・ジンセン・シー・エイ・マイヤー(Panax ginseng C.A.Meyer:オタネニンジン)、コレア・レッド・ジンセン(Korea red ginseng:コウライニンジン)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、イノノツス・オブリクウス(Inonotus obliquus:カバノアナタケ)、レンティヌラ・エドデス(Lentinula edodes:シイタケ)、リキウム・バルバルム(Lycium barbarum:ナガバクコ)、フェリナス・リンテウス(Phellinus linteus:メシマコブ)(子実体)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)(子実体)、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus:クラスタマメ)、トラメテス・ベルシコロール(Trametes versicolor:カワラタケ)、クラドシフォン・オカムラヌス・トキダ(Cladosiphon okamuranus Tokida:オキナワモズク)、ウンダリア・ピンナティフィダ(Undaria pinnatifida:ワカメ)が挙げられる。例えば、キノコ類、海藻類、酵母類、褐藻類、アガベネクター、褐海藻、発酵性食物繊維、穀類、ナマコ、アガベ、アーティチョーク、アスパラガス、リーキ、ニンニク、タマネギ、ライムギ、オオムギ穀粒、コムギ、ナシ、リンゴ、グアバ、マルメロ、プラム、セイヨウスグリ、オレンジ及び他の柑橘果樹類等の種々の果樹及び野菜にも多くの多糖類化合物を検出することができる。
【0110】
アセチル化多糖類は、植物細胞壁ポリマーの部分である。アセチル化多糖類は、通常の多糖類に比較して抗酸化性が高く、免疫調節性が良好であると報告されている。O-アセチル化度は、植物種、部分及び発生状態により変動し得る。o-アセチル化機構はまだ完全に解明されていないが、数種の天然多糖類におけるアセチル含量はその生理活性に重要な役割を果たすことが実証されている。
【0111】
ある種の実施形態において、本開示の多糖類及び/又はフェノール性化合物又は抽出物は、植物及び/又は海洋資源、例えば、実施例1~8及び本願の他の随所で言及する植物資源から単離することができる。前記化合物の単離に適した植物部分としては、葉、樹皮、幹、幹樹皮、茎、茎樹皮、小枝、塊茎、根、根茎、根樹皮、樹皮表層、新梢、種子、果実、子実体、雄蕊群、雌蘂群、萼、雄蕊、花弁、萼片、心皮(雌蘂)、花、又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。ある種の関連する実施形態において、前記化合物又は抽出物は植物資源から単離され、あるいは全合成され、あるいは植物又は真菌組織、幹細胞及びトランスジェニック微生物を使用して生合成され、あるいは明記した置換基のいずれかを含むように合成的に修飾される。この点に関して、植物から単離された化合物の合成的修飾は、当技術分野で公知の多数の技術を使用して実施することができ、このような技術は、当技術分野における通常の知識を有する者の知識の範囲内に十分に含まれる。
【0112】
所期保護対象の他の実施形態は、多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物(限定されないが、例えば、本開示におけるUP360)の使用方法として、2~3種の植物抽出物の種々の組み合わせで免疫恒常性を調節するための方法に関し、限定されないが、免疫応答を最適化する方法及び/又はそのバランスをとる方法;ウイルス感染及び細菌感染に対して健全な免疫機能を維持するのを助ける方法;大気汚染及び喫煙により誘発される酸化ストレス損傷から免疫系を保護する方法;ウイルス感染、細菌感染及び大気汚染から正常な健康肺機能を保護する方法;健全な炎症応答を支援する方法;感染に対するサイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する方法;IL-10等の抗炎症性サイトカインを増加及び維持する方法;酸化応答を制御し、酸化ストレスを緩和する方法;肺浄化・解毒能を維持する方法;肺構造完全性及び酸素交換能を保護する方法;呼吸器通過を維持し、肺胞の酸素吸収能を強化する方法;酸化ストレスに起因する肺損傷を軽減する方法;肺の微小循環を促進し、正常な凝固機能を保護する方法;白血球の活性及び数を増加する方法;ナチュラルキラー(NK)細胞機能を強化する方法;Tリンパ球及びBリンパ球の数を増加する方法;CD3+、CD4+NKp46+ナチュラルキラー細胞、TCRγδ+ガンマデルタT細胞、CD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞及びCD8+細胞数を増加する方法;マクロファージ貪食活性を保護及び促進する方法;正常な抗体産生を支援及び/又は促進する方法;呼吸器における健全な肺微生物叢及び/又は共生システムを維持する方法;限定されないが、身体の痛み、咽喉痛、咳、軽微な咽喉・気管支刺激、鼻閉、副鼻腔うっ血、副鼻腔圧迫感、鼻水、くしゃみ、嗅覚低下、味覚低下、筋肉痛、頭痛、発熱及び悪寒を含む感冒/インフルエンザ様症状を緩和及び/又は軽減する方法;痰(粘液)を緩くし、気管支分泌物を薄めて咳をし易くする方法;気管支刺激の重症度を低下させる方法;ウイルス感染、微生物感染及び大気汚染に起因する肺損傷及び/又は浮腫及び/又は炎症性細胞浸潤の重症度を低下させる方法;感冒/インフルエンザ及び/又は汚染シーズンを通して気管支系と快適な呼吸を支援する方法;肺線維症を予防及び/又は治療する方法;普通感冒/インフルエンザの持続期間及び/又は重症度を軽減する方法;呼吸器系のウイルス感染及び細菌感染の重症度及び/又は持続期間を軽減する方法;ウイルス、微生物及び大気汚染に起因する呼吸器感染症を予防及び/又は治療及び/又は治癒治療する方法;呼吸器感染症の進行を管理及び/又は治療及び/又は予防及び/又は逆転する方法;肺及び呼吸器系全体の修復及び再生機能を促進及び増強及び若返らせる方法等を含む。
【実施例
【0113】
[実施例1]有機抽出物と水性抽出物の調製
各植物の乾燥粉砕した植物粉末(20g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE300自動抽出装置を80℃、1500psiで使用し、有機溶媒混液(1:1比の塩化メチレン/メタノール)で2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した後、新鮮な溶媒でフラッシュし、窒素ガスでパージして乾燥した後、50℃での水性抽出に切り替えた。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗有機抽出物(OE)を得た。バイオマスを風乾し、DI水で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物(AE)を得た。
【0114】
有機溶媒混液をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール抽出物(EE)、エタノール:HO(7:3)抽出物、エタノール:HO(1:1)抽出物、エタノール:HO(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0115】
[実施例2]アロエ・ベラ(Aloe vera)葉ゲル粉末の試料調製
アロエ・ベラ植物の生葉を洗浄し、外皮を取り除いた。葉ゲルの滲出液をセルロース酵素で処理し、活性炭で濾過した。濾液を低圧蒸発により濃縮し、凍結乾燥、展延乾燥又はQmatrix(R)処理により脱水し、乾燥粉末とした。8%以上の多糖類を含有する200:1~100:1の比の凍結乾燥物としてアロエ・ベラ葉ゲル粉末が生成された。
【0116】
[実施例3]エタノール沈殿法によるアロエ多糖類の調製
アロエ葉ゲル粉末を40g/Lの濃度で水に溶解し、磁気攪拌棒で絶えず攪拌しながら、エチルアルコールを溶液にゆっくりと加え、溶液を80%エタノールとした。2500rpmで遠心することにより沈殿を上清から分離し、Speedvacにより濃縮乾燥した。合計で、アロエ葉ゲル粉末(ロットWM180141)1kgを処理し、沈殿379gを得ることができた。沈殿と上清をサイズ排除カラム(SEC)クロマトグラフィーに供し、HPLC分析した処、上清中に10K超の多糖類は検出されず、沈殿は分子量が10KD超の多糖類を40.5%含有していることが分かった(表1)。
【0117】
【表1】
【0118】
[実施例4]限外濾過による3個のアロエ多糖類画分の調製
アロエ沈殿379gを20g/Lの濃度で水に溶解した。水溶液を流速毎時0.5~10Lで順次異なる細孔径の有機限外濾過膜に通して限外濾過(Jinan Bona Biotechnology社製BONA-GM-18)し、夫々分子量1KD、5KD、50KD、300KD及び500KDの多糖類を濾取した。>500kD(45.7g)、50~500kD(30.1g)及び5~50KD(19.8g)の3個の多糖類画分を採取し、フリーズドライ凍結乾燥機により乾燥した。分子量分布と多糖類純度をSEC HPLC法とNMR法により分析した。
【0119】
[実施例5]ポリア・ココス(Poria cocos)抽出物の調製
乾燥粉砕した植物ポリア・ココス菌核粉末(20g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE300自動抽出装置を80℃、1500psiで使用し、有機溶媒混液(1:1比の塩化メチレン/メタノール)で2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した後、新鮮な溶媒でフラッシュし、窒素ガスでパージして乾燥した後、50℃での水性抽出に切り替えた。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗有機抽出物(OE)0.82gを得た(収率4.10%)。バイオマスを風乾し、水で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物(AE)0.51gを得た(収率2.55%)。
【0120】
乾燥粉砕した植物ポリア・ココス菌核粉末(20g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE300自動抽出装置を80℃、1500psiで使用し、エタノールで2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した後、新鮮な溶媒でフラッシュし、窒素ガスでパージして乾燥した後、50℃での水性抽出に切り替えた。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗エタノール抽出物0.3893gを得た(収率1.95%)。バイオマスを風乾し、水で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物(AE)0.3581gを得た(収率1.79%)。
【0121】
有機溶媒をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール抽出物(EE)、エタノール:HO(7:3)抽出物、エタノール:HO(1:1)抽出物、エタノール:HO(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0122】
ポリア・ココスの乾燥粉砕子実体粉末を水で抽出し、抽出収率15対1でロット番号210317のポリア水抽出物を得た。フェノール硫酸法を使用し、UV波長490nmでグルコースと比較してポリア抽出物中の多糖類を比色法により定量した。バニリン硫酸法によりUV波長548nmでオレアノール酸と比較してポリア抽出物中の総トリテルペノイドを定量した。多糖類含量が10~40%の範囲の種々のポリア抽出物の活性成分含量を比色法により求めた(表2)。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
多糖類を含有するポリア抽出物試料を20mg/mLの濃度で調製し、PolySep-SEC-P5000カラム(Phenomenex OOH-3145KO,30×0.78cm)を担体とし、50℃で流速0.7mg/分の100mM NaCl溶液によるアイソクラティック溶出下にサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)HPLC法により分析し、分子量範囲9.9KDa~2,285KDaの一連のデキストラン分子量標準を使用してRI検出器により検出した。(必要に応じて標準校正曲線から予め計算した)各分子量カットオフに基づく目標ピーク上でカーソルを上下移動させて多糖類を積分する。表3に示すように、多糖類分布と総多糖類含量を各試料について計算した。
【0126】
分子量が5KDa超の総多糖類含量を計算した処、ポリア抽出物L784では、このSEC-HPLC法によると33.05%であり、主に5~2000KDaの範囲であった。このSEC-HPLC法によると、ポリア多糖類含量は5%~40%の範囲である。
【0127】
[実施例6]ローズマリー抽出物の調製
乾燥粉砕した植物ローズマリー(Rosmarinus officinalis)地上部粉末(20g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE300自動抽出装置を80℃、1500psiで使用し、有機溶媒混液(1:1比の塩化メチレン/メタノール)で2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した後、新鮮な溶媒でフラッシュし、窒素ガスでパージして乾燥した後、50℃での水性抽出に切り替えた。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗有機抽出物(OE)2.19gを得た(収率10.95%)。バイオマスを風乾し、水で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物(AE)1.26gを得た(収率6.31%)。
【0128】
乾燥したローズマリー葉をエタノール/水で抽出し、濾液を濃縮した。上液を分離し、更に真空乾燥し、カラムにより高濃度化させ、ロスマリン酸含量が5~95%の範囲のローズマリー抽出物を得た。
【0129】
有機溶媒混液をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール抽出物(EE)、エタノール:HO(7:3)抽出物、エタノール:HO(1:1)抽出物、エタノール:HO(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0130】
乾燥したローズマリー葉をエタノールと水の混合溶媒で抽出し、更に酢酸エチルで抽出し、ロスマリン酸を高濃度化させ、約30%のロスマリン酸を含有するローズマリー抽出物を100:1の抽出比で得た。ロスマリン酸抽出物を検出し、HPLC法により定量した処、含量は10~90%の範囲であった(表4)。
【0131】
【表4】
【0132】
[実施例7]カバノアナタケ抽出物の調製
乾燥粉砕した植物カバノアナタケ(Inonotus obliquus)粉末(20g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE300自動抽出装置を80℃、1500psiで使用し、有機溶媒混液(1:1比の塩化メチレン/メタノール)で2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した後、新鮮な溶媒でフラッシュし、窒素ガスでパージして乾燥した後、50℃での水性抽出に切り替えた。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗有機抽出物(OE)を得た。バイオマスを風乾し、水で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物(AE)を得た。
【0133】
粉砕乾燥したカバノアナタケ粉末を水で抽出し、多糖類含量が5~95%の範囲の水抽出物を4:1の比で得た。有機溶媒混液をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール抽出物(EE)、エタノール:HO(7:3)抽出物、エタノール:HO(1:1)抽出物、エタノール:HO(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0134】
[実施例8]キバナオウギ(Astragalus membranaceus)抽出物の調製
乾燥粉砕した植物キバナオウギ根粉末(20g)を100mlステンレス鋼製チューブに入れ、ASE300自動抽出装置を80℃、1500psiで使用し、有機溶媒混液(1:1比の塩化メチレン/メタノール)で2回抽出した。抽出物溶液を自動濾過し、採取した後、新鮮な溶媒でフラッシュし、窒素ガスでパージして乾燥した後、50℃での水性抽出に切り替えた。有機抽出物溶液を合一し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗有機抽出物(OE)1.68gを得た(収率8.42%)。バイオマスを風乾し、水で1回抽出した。水溶液を濾過し、凍結乾燥し、水性抽出物(AE)2.93gを得た(収率14.68%)。
【0135】
粉砕乾燥したキバナオウギ根粉末を1:8の比となるように水で抽出し、10%以上の多糖類を含有する水抽出物を4対1の抽出収率で得た。有機溶媒混液をメタノール又はエタノールに変え、夫々メタノール抽出物(ME)又はエタノール抽出物(EE)、エタノール:HO(7:3)抽出物、エタノール:HO(1:1)抽出物、エタノール:HO(3:7)抽出物及び水抽出物を得た以外は同一手順を使用し、同様の結果を得た。
【0136】
[実施例9]アロエベース組成物UP360及び他の配合物の調製
上記実施例で実証したように、10%以上の多糖類を含有する200:1の比の凍結乾燥物としてアロエ・ベラ葉ゲル粉末が生成された。20%以上の多糖類を含有するポリア・ココス抽出物が水抽出により生成された。30%以上のロスマリン酸を含有するローズマリー葉抽出物がエタノール/水抽出により生成された。3成分を3:6:1の重量比でブレンドし、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)の最終的な配合物を得た。3成分をYUCHENGTECH 10L Lab乾燥粉末ミキサーで1時間混合することにより、ロット番号APR-05012020-1及びAPR-05012020-2(表5)の2バッチのUP360を調製し、実施例5に記載したようなSEC-HPLC法により多糖類含量(>5KDa)を定量した処、12.07%であった。
【0137】
アロエ・ベラ葉肉ゲル粉末、ポリア・ココス抽出物、及びローズマリー葉抽出物を1:1:1の重量比でブレンドし、ロット番号UP0319の配合組成物UP360を得た。
【0138】
アロエ・ベラ葉肉ゲル粉末、ポリア・ココス抽出物、ローズマリー葉抽出物、及び賦形剤としてLitesse(R)(Gillco)を3:2:1:4の重量比でブレンドし、ロット番号UP360-APR-09012020(4.011kg)の別の配合組成物UP360を得、SEC-HPLC法により多糖類含量(>5KDa)を定量した処、11.01%であった(表6)。
【0139】
アロエ・ベラ葉肉ゲル粉末、ポリア・ココス抽出物、ローズマリー葉抽出物、及び賦形剤としてLitesse(R)(Gillco)を3:3:1:3の重量比でブレンドし、ロット番号UP360-Lit-1の別の配合組成物UP360を得た。SEC-HPLC法により多糖類含量(>5KDa)を定量した処、16.73%であった(表6)。
【0140】
【表5】
【0141】
【表6】
【0142】
[実施例10]配合物1及び配合物2の調製
配合物1は、個々の各成分の重量比を1:1:1としたアロエ・ベラ葉ゲル粉末(L0765,多糖類10%)と、ポリア・ココス抽出物(L0761,多糖類20%)と、ローズマリー抽出物(L0762,ロスマリン酸30%)の混合物である。
【0143】
配合物2は、カバノアナタケ抽出物(L0762,多糖類30%)と、キバナオウギ抽出物(L0759,アストラガロシド>0.3%,多糖類>10%)の重量比1:1の混合物である。配合物2は、カバノアナタケ抽出物とキバナオウギ抽出物を1:99~99:1の比で混合することにより生成することができた。
【0144】
[実施例11]多糖類を高濃度化した試料とα-アミラーゼの酵素反応、並びにポリア・ココス抽出物、アロエ・ベラゲル粉末及びUP360のサイズ排除クロマトグラフィーによる多糖類定量
植物抽出物200mgをpH値6.87のNaHPO・HO及びNaHPO・7HOの緩衝液10mLに溶解し、α-アミラーゼ酵素溶液(2mg/mL)200μLで室温にて終夜処理した。反応混合物をSpeedVacで乾燥し、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。
【0145】
多糖類を含有する試料を20mg/mLの濃度で調製し、PolySep-SEC-P5000カラム(Phenomenex OOH-3145KO,30×0.78cm)を担体とし、50℃で流速0.7mg/分の100mM NaCl溶液によるアイソクラティック溶出下にサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)HPLC法により分析し、分子量範囲9.9KDa~2,285KDaの一連のデキストラン分子量標準を使用してRI検出器により検出した。(必要に応じて標準校正曲線から予め計算した)各分子量カットオフに基づく目標ピーク上でカーソルを上下移動させて多糖類を積分した。多糖類分布と総多糖類含量を各試料について計算した。
【0146】
ポリア多糖類はこの酵素に耐性であり、アミラーゼ酵素処理前後の変化が33.50%から30.04%と非常に僅かであった。最終的なUP360組成物(APR-09012020)における反応前後の多糖類についても同様であった。主にα型多糖類から構成されるマルトデキストリンは、アミラーゼによりほぼ完全に消化され、処理後の多糖類(>5Ka)は反応前の64.1%に対しては僅かに0.97%であった。
【0147】
【表7】
【0148】
[実施例12]機能低下マクロファージからの高酸素誘発HMGB1放出の阻害
高酸素条件下で培養したマクロファージは酸化ストレスを受け、細胞培養培地中にHMGB1を分泌した。培養マクロファージの細胞外HMGB1の蓄積の低減におけるアロエベース組成物とその成分の効力を調べるために、RAW264.7細胞を25μg/mLの濃度の試験物質の存在下又は不在下で21%O(室内気(RA))又は95%Oに24時間曝露した。単一の試験物質濃度で細胞培養上清中のHMGB1濃度をELISAにより2本ずつ測定した。2本ずつアッセイした1種類の実験の平均±SEMとしてデータを表す。高酸素下に溶媒単独で処理したマクロファージと比較して、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001とする。陽性対照として、高酸素下のマクロファージ機能低下と酸化ストレス誘発HMGB1放出を抑制するサリチル酸ナトリウム(SS)で対照細胞を処理した。
【0149】
【表8】
【0150】
[実施例13]高酸素誘発機能低下マクロファージ貪食アッセイ
培養マクロファージ中のHMGB1の細胞外蓄積レベルはその貪食能と相関していることが複数の研究から分かっている。RAW264.7細胞を試験物質又はその溶媒の存在下で24時間、室内気(21%O)に維持するか又は95%Oに曝露した。MTTアッセイにより細胞生存率を測定した。各数値は、3本ずつ実施した4種類の独立した実験の平均±SEMを表す。T24(21%O;0μg/ml)対照群と比較して、*P≦0.05とする。
【0151】
【表9】
【0152】
【表10】
【0153】
RAW264.7細胞を試験物質の存在下で24時間、室内気(21%O)に維持するか又は95%Oに曝露した。次に細胞をFITC標識ラテックスミニビーズと共に1時間インキュベートし、ファロイジンとDAPIで染色し、夫々アクチン細胞骨格と核を可視化した。貪食活性の定量では、少なくとも各群200個の細胞を計数し、細胞1個当たりのビーズ数を21%O(0μg/ml)対照群と比較した増加百分率として表した。各数値は、各群で2本ずつ実施した3種類の独立した実験の平均±SEMを表す。21%O2(0μg/ml)対照群と比較して、*P≦0.05とする。
【0154】
純ロスマリン酸(実施例6)、カバノアナタケの水性抽出物(実施例7)及び2種類の組成物(実施例10)を試験し、結果を表9及び10にまとめた。
【0155】
[実施例14]HaCaT細胞におけるUVA及びUVB誘発ROSアッセイ
HaCaT細胞(ヒト不死化角化細胞)を96ウェル組織培養プレートに8,000個/ウェルの密度で播種し、25μg/mLの試験物質で24時間処理した。細胞毒性を評価し、偽陽性を排除した(CCK生存率>80%)。ROS生成を検出するためにDCFH-DA(蛍光プローブ)を細胞に加え、37℃で25分間インキュベートした。紫外線フィルターを搭載したソーラーシミュレーター(Sol-UV-6 Solar Simulator)で10分間UV照射に曝露後、マルチモードリーダーにより488nm(励起)と525nm(発光)で蛍光値を測定した。ビタミンCを陽性対照として使用し、40μg/mLで処理すると、ROS生成が43%低下した。25μg/mLでロスマリン酸は、UVに曝露したHaCaT細胞のレベルに比較してROS生成を24%低下させた。有機抽出物(OE)は50μg/mLで試験し、水性抽出物は100μg/mLで試験した。画分又は純化合物は本アッセイでは25μg/mLで試験した。
【0156】
【表11】
【0157】
[実施例15]30%過酸化水素アッセイにより誘発したヒト線維芽細胞のDNA損傷
HSF細胞(ヒト線維芽細胞)を96ウェル組織培養プレートに播種し、37℃で5%CO及び95%空気下に試験物質と共にインキュベートした。処理後のHSF細胞を1mMの濃度のHと共に4時間インキュベートすることによりDNA損傷を与えた後、DNA二本鎖切断のマーカーであるリン酸化ヒストンγH2AXを免疫染色した。DAPIを使用し、細胞核を染色した。Image Xpressにより画像を撮影し、Meta Xpressで解析した。カテキン(100μg/ml)を陽性対照として使用し、γH2AX染色結果の定量により評価した処、DNA損傷が70%抑制された。ロスマリン酸は25μg/mLでDNA損傷を24%抑制した。
【0158】
[実施例16]多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物(UP360)は、LPS感作後のマクロファージにおいてHMGB1とTNFの用量相関的阻害を示した。
(対照群を除いて)リポ多糖(LPS)1μg/mLを添加した無血清培地を60mmディッシュに加え、RAW264.7マウスマクロファージ様細胞10個を撒いた。実施例9で調製した多糖類とポリフェノールを含有するUP360組成物を、UP360濃度が125μg/mL、250μg/mL及び500μg/mLとなるように夫々2枚ずつに添加した。細胞を24時間処理した後、培地を吸引し、10,000MWCOフィルターで遠心濃縮した。培地をSDS-PAGEで泳動させ、PVDF膜に転写し、HMGB1とTNF-αをブロットした。ブロットをポンソーS(Ponceau S)で染色し、デンシトメトリーを総タンパク量に正規化した。
【0159】
アロエベース組成物であるUP360は、LPS感作後のマクロファージにおいてHMGB1とTNF-αの用量相関的な有意な阻害を示した。ウェスタンブロット半定量データによると、マクロファージをLPS感作した場合には、溶媒対照に対するHMGB1とTNF-αの相対バンド強度が夫々1.1±0.17と9.8±0.33であることが分かった。一方、LPS感作後のマクロファージをUP360で処理すると、HMGB1バンド強度のレベルは、125μg/mL、250μg/mL及び500μg/mLの濃度で夫々0.48±0.02、0.27±0.01及び0.17±0.01まで低下した。同様に、250μg/mL及び500μg/mLのUP360濃度では、TNF-αの分泌の有意低下、即ち、夫々0.54±0.01及び0.37±0.01も検出された。
【0160】
マクロファージを2枚ずつ未処理(対照)、LPS単独(溶媒)、又はLPSと指定濃度(左)の抽出物若しくは組成物で24時間処理した後、培地を採取し、10,000MWCOフィルターで濃縮した。濃縮した培地をSDS-PAGEで泳動させ、指定タンパク質(最上行)をブロットした。ブロットにデンシトメトリーを実施し、総ポンソー染色に正規化し、タンパク質発現を対照に比較して計算した。
【0161】
【表12】
【0162】
[実施例17]多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物(UP360)は、HMGB1とTNF-αに対して予想外の相乗的阻害活性を示した。
(対照群を除いて)リポ多糖(LPS)1μg/mLを添加した無血清培地を60mmディッシュに加え、RAW264.7マウスマクロファージ様細胞10個を撒いた。実施例9でUP360を調製するのに利用した植物抽出物を以下の濃度、即ちアロエ葉ゲル粉末37.5μg/mL、75μg/mL及び150μg/mL、ポリア抽出物75μg/mL、150μg/mL及び300μg/mL、並びにローズマリー抽出物12.5μg/mL、25μg/mL及び50μg/mLの濃度で夫々2枚ずつに添加した。アロエ、ポリア、及びローズマリーのこれらの3種類の濃度は、上記実施例で125μg/mL、250μg/mL及び500μg/mLのUP360における夫々の濃度と等価であった。細胞を24時間処理した後、培地を吸引し、10,000MWCOフィルターで遠心濃縮した。培地をSDS-PAGEで泳動させ、PVDF膜に転写し、HMGB1とTNF-αをブロットした。ブロットをポンソーSで染色し、デンシトメトリーを総タンパク量に正規化した。
【0163】
終夜LPS感作後のマクロファージからの上清を利用し、アロエ、ポリア及びRAに由来する抽出物を特定の比で配合したときに予想外の阻害作用があるか否かをコルビー法により評価した。この方法では、所定のエンドポイント測定の実測値が仮計算した予想値よりも大きいならば、2種以上の材料を含む製剤に予想外の相乗作用があると推定される。予想値と実測値が等しいときには、相加作用がある。一方、実測値が予想値よりも低いときには、予想外の阻害作用がある。本シナリオでは、このアッセイでモニターした両方の炎症マーカー(HMGB1とTNF-α)の濃度が低下し、望ましい有意義な抗炎症アウトカムを達成することを意図した。
【0164】
【表13】
【0165】
【表14】
【0166】
マクロファージを2枚ずつ未処理(対照)、LPS単独(溶媒)、又はLPSと指定濃度(左)の抽出物若しくは組成物で24時間処理した後、培地を採取し、10,000MWCOフィルターで濃縮した。濃縮した培地をSDS-PAGEで泳動させ、指定タンパク質(最上行)をブロットした。ブロットにデンシトメトリーを実施し、総ポンソー染色に正規化し、タンパク質発現を対照に比較して計算した。
【0167】
表に示すように、HMGB1とTNF-αの両方の濃度の有意低下が認められ、これらの薬用植物材料を配合してUP360とすると、予想外の阻害作用が得られると判断される。個々の濃度が125μg/mL、250μg/mL及び500μg/mLのUP360の用量に相当するように抽出物をインキュベートした場合には、125μg/mLでTNF-αの実測値が予想値よりも高かった点を除き、標準化組成物UP360の阻害作用は、どちらのマーカーでも各用量で理論的に計算した予想値よりも大きかった。これらの値は、夫々125μg/mL、250μg/mL及び500μg/mLでHMGB1では、0.48と2.38、0.27と2.01及び0.17と2.43であり、TNFでは、6.6と3.05、0.54と2.97及び0.37と2.73であった。このように、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)の投与による有益な予想外の阻害作用は、培地へのHMGB1とTNF-αの分泌の低下に関して予想されるアウトカムを上回った。
【0168】
[実施例18]動物及び飼育
USDAで認可されている販売業者からCD-1マウスを購入した。8週齢の雄性CD-1マウスをCharles River Laboratories,Inc.(Wilmington,MA)から購入した。到着後、動物を馴化させ、11週齢で試験に使用した。試験時に動物の平均体重は33.6±2.4グラムであった。動物を温度制御室(71~72°F)に入れて12時間明暗サイクルで飼育し、飼料と水を自由に摂取させた。
【0169】
動物をポリプロピレンマウスケージに3~5匹ずつ収容し、尾に固有の番号を付けて個々に識別した。各ケージにマウスワイヤーバー蓋とフィルターマウストップ(Allentown,NJ)を被せた。プロジェクト番号、試験品名、用量レベル、群名、動物番号及び雌雄別をケージカードに記入し、個々のケージに付けて識別した。Harlan T7087ソフトトウモロコシ穂軸床材を使用し、少なくとも週2回交換した。動物に新鮮な水とHarlan社(Harlan Teklad,370W,Kent,WA)から市販されている齧歯類用チャウ飼料#T2018を自由に摂取させた。
【0170】
[実施例19]外因性攻撃トリガー応答としてのリポ多糖(LPS)誘発敗血症モデル
このモデルは、動物の生存率/死亡率をエンドポイント測定として使用している(Wang et al.,1999)。外因性攻撃トリガーであるLPSは、グラム陰性菌の外膜の必須成分であり、エンドトキシンショックに繋がる恐れのある全身性炎症プロセスの開始における主要な寄与因子である。エンドトキシンショックは、主にマクロファージ/単球に仲介される状態であり、TNF、IL-1、IL-6及びγインターフェロン等の数種の初期サイトカインと、後期メディエーターHMGB1の過剰産生に起因する。半数致死量のLPS(25mg/kg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Lifeline,ロット番号07641)に溶解して投与後、動物は内毒素血症を発症し、8時間で血清中にHMGB1が検出され、LPS投与の16~32時間後にピークプラトーレベルに達する。無治療の場合、マウスは24時間以内に死亡し始める。本試験では、LPS注入後4日間マウスをモニターした。LPS+酪酸ナトリウム(SB;Aldrich,St.Louis,MO;ロット番号MKCG7272)、LPS+溶媒(0.5%CMC;Spectrum,New Brunswick,NJ;ロット番号1IJ0127)及びLPS+UP360(実施例9で調製した多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物)について、生存率/死亡率を比較した。以下の群を試験した。
【0171】
【表15】
【0172】
このモデルで、10mL/kgの量のPBSと共に25mg/kgの致死量のLPS(大腸菌055:B5由来;Sigma,St.Louis,MO;ロット番号081275)を腹腔内注入する前に、実施例9に記載したUP360をマウスに1週間(7日間)事前投与した。動物を毎時観察した。酪酸ナトリウムはHMGB1放出の抑制によりマウスにおけるLPS誘発損傷を改善したという事実に鑑み、この化合物を本試験の陽性対照として選択した(Li et al.,2018)。
【0173】
[実施例20]アロエベース組成物(UP360)は、致死量の毒素下で動物生存率を改善した。
LPSの腹腔内注入から3時間後に、マウスは内毒素血症の初期徴候を示し始めた。マウスの探索行動は累減し、起毛(立毛)、可動性低下、嗜眠、及び下痢を伴った。これらの徴候と症状は、全投与群に存在しているようであったが、重症度は溶媒投与群でより顕著であった。
【0174】
溶媒投与群の2匹と、陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群の1匹は、LPS注入から24時間後に死亡していることが分かった。表16から明らかなように、これらの群の生存率を測定した処、夫々62.5%と75%であることが分かった。アロエベース組成物(UP360)を投与したマウスは、LPS注入から24時間後の生存率が100%であった。多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)、酪酸ナトリウム(SB)及び溶媒を投与したマウスでは、LPS注入から34時間後に夫々87.5%、62.5%及び50%の生存率が認められた。アロエベース組成物(UP360)を投与したマウスでは、LPS注入から48時間後に恐らく最も有意な結果が認められた。この時点で、溶媒を投与したマウスの生存率は僅か12.5%であったが、アロエベース組成物(UP360)を投与したマウスは、62.5%の生存率を示した。陽性対照群であるSBでも、この時点で半数が死亡していた。3日目(LPS注入から72時間後)に、UP360、酪酸ナトリウム及び溶媒の各群の生存率は、夫々62.5%、50%及び12.5%であった。
【0175】
溶媒対照群の全マウスは、LPS注入から82時間後に死亡しており、この群の生存率は0%であった。他方、アロエベース組成物(UP360)と陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)を投与したマウスは、62.5%と50%の生存率を示し、LPS注入から96時間後と120時間後も変わらなかった。これらの生存率は、アロエベース組成物(UP360)と陽性対照のいずれも統計的に有意であった(表16)。これらの群の生存動物は、それらの良好な健康状態の漸進的改善を示した。マウスは肉体的に良好なようであり、次第に正常な行動を再開した。これらのデータによると、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)は、敗血症時のサイトカインとHMGB1の急上昇を抑えるための予防的及び/又は介入的栄養補助食品として使用できる可能性がある。
【0176】
【表16】
【0177】
[実施例21]LPS誘発敗血症モデルにおけるアロエベース組成物(UP360)とその成分の比較
アロエ、ポリア及びロスマリン酸(RA)を配合し、特定の比で多糖類とポリフェノールを含有するUP360とする利点については、実施例9で実証したが、この利点をリポ多糖(LPS)誘発内毒素血症で評価した。実施例9でUP360を調製するために利用したアロエ、ポリア及びロスマリン酸(RA)を、LPS注入前に7日間、夫々150mg/kg、300mg/kg及び50mg/kgの用量で雄性CD-1マウス(n=13)に投与した。8日目に、10mL/kgのPBSに溶解したLPS25mg/kgをマウスに腹腔内注入した。UP360投与群のマウスには、500mg/kgの1日用量のUP360を投与した。試験期間中、全マウスに夫々の投与物質を毎日投与し続けた。半数致死量のLPS(25mg/kg)の腹腔内投与後、動物は数時間以内に敗血症を発症すると予想される。無治療の場合、マウスは24時間以内に死亡し始めるであろう。動物を毎時観察した。本試験では、LPS注入後6日間マウスをモニターした。LPS+酪酸ナトリウム(SB)、LPS+溶媒(0.5%CMC)、LPS+UP360、LPS+アロエ、LPS+ポリア及びLPS+ロスマリン酸について、生存率を比較した。正常対照動物にはPBS単独を腹腔内投与し、溶媒0.5%CMC単独を経管投与した。酪酸ナトリウム(SB)はHMGB1放出の抑制によりマウスにおけるLPS誘発損傷を改善したという事実に鑑み、この化合物を本試験の陽性対照として選択した(Li et al.,2018)。
【0178】
多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)の生存率と死亡率を同一製剤に含まれる等価用量の個々の抽出物と比較し、コルビーの式(Colby,1967)を使用して配合の潜在的な相加作用、拮抗作用又は相乗作用を調査した。これらの植物抽出物のブレンドが予想外の相乗作用を生じるためには、実測阻害値が計算値を上回ることが必要である。
【0179】
LPSの腹腔内注入から数時間後に、マウスは敗血症の初期徴候を示し始めた。マウスの探索行動は累減し、起毛(立毛)、可動性低下、嗜眠、下痢、及び振戦を伴い、眼瞼閉鎖を伴うものもあった。これらの徴候と症状は、全投与群に存在していたが、重症度は溶媒投与群でより重度であった。
【0180】
【表17】
【0181】
【表18】
【0182】
【表19】
【0183】
表17、18及び19から明らかなように、アロエベース組成物(UP360)を投与したマウスでは、モデル誘発後最初の36時間に死亡は認められなかった。アロエベース組成物(UP360)を投与すると、最初の36時間に100%の生存率が得られた。他方、アロエ、ポリア及びロスマリン酸等の成分を投与したマウスは、生存率が夫々69.2%、76.9%及び69.2%であった。この時間枠(注入後36時間-hpi)内で溶媒群の生存率は53.8%であった。各群の最高死亡率は、LPS後2日(48hpi)に認められた。
【0184】
アロエ、ポリア及びロスマリン酸を投与したマウスでは、LPS注入の48時間後に夫々61.5%、46.2%及び61.5%の死亡率が認められた。アロエベース組成物(UP360)群のマウスの死亡率は僅か15.4%であった。溶媒を投与したマウスは、LPS注入の48時間後の時点で84.6%の死亡率を示し、残りの試験期間も変わらなかった。3日目(LPS注入から72時間後)に、投与群の生存率は、アロエ組成物(UP360)、アロエ、ポリア及びロスマリン酸で夫々76.9%、30.8%、46.2%及び38.5%であった。陽性対照はこの時間枠で38.5%の生存率を示した。
【0185】
6日目の終わり(144hpi)に、アロエベース組成物(UP360)は、69.2%の生存率を示したが、アロエ群、ポリア群及びRA群のマウスの生存率は夫々23.1%、46.2%及び38.5%であった(表17、18、19)。アロエベース組成物で認められた生存率は、溶媒投与群に比較して統計的に有意に上昇していた。SB群は30.8%の生存率で試験を終了した。この群の生存動物は、それらの良好な健康状態の漸進的改善を示した。マウスは肉体的に良好なようであり、次第に正常な探索行動を再開した。
【0186】
[実施例22]多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物(UP360)では、死亡率の低下における予想外の相乗作用が認められた。
このLPS誘発生存率試験を利用し、アロエ、ポリア及びロスマリン酸(RA)に由来する抽出物を特定の比で配合したときに、可能な相乗作用又は予想外の効果があるか否かをコルビー法により評価した。マウスにアロエベース組成物(UP360)を500mg/kgの用量で投与すると、死亡率は理論的に計算した予想値よりも各分析時点で低かった(表20)。例えば、LPS注入から24時間後と60時間後の予想死亡率は、夫々33.9%と94.5%であったが、アロエベース組成物(UP360)の実測死亡率は夫々0%と15.4%であった。これらの結果から、アロエ、ポリア及びRAに由来するこれらの3種の標準化抽出物を3:6:1の特定の比で配合すると、アロエ、ポリア又はRA抽出物を単独で使用するよりも、敗血症時に被験対象の生命を延長させるのに遥かに有利であると思われる。
【0187】
【表20】
【0188】
観察期間の終わりに被験対象の95.9%が死亡すると予想されたが、アロエベース組成物(UP360)の実際の死亡率は30.8%であることが分かった。
【0189】
このように、このLPS誘発生存率試験では、コルビーの式を使用してアロエ、ポリア及びRA抽出物を配合する利点を評価し、確認した。この方法では、所定のエンドポイント測定の実測値が仮計算した予想値よりも大きいならば、2種以上の材料を含む製剤に予想外の相乗作用があると推定される。LPS注入から24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後、96時間後、120時間後及び144時間後のこれらの薬用植物の死亡率値を使用し、効力計算値を求め、特定時点のアロエベース組成物(UP360)の死亡率実測値と比較した。本試験では、アロエ、ポリア及びRA抽出物の配合の結果として予想外の相乗作用が認められた。アロエベース組成物(UP360)投与の有益な効果は、これらの抽出物を単独で投与した場合に比較して死亡率に予想されるアウトカムを上回った。観察期間の終わりに、アロエベース組成物(UP360)の死亡率は30.8%であったが、各アロエ、ポリア及びRA抽出物投与群の死亡率は夫々76.9%、53.9%及び61.5%であり、多糖類とポリフェノールを含有するこれらの植物抽出物には、サイトカインストームを防ぎ、したがって、敗血症時の患者の死亡率を低下させるのに予想外の相乗作用があると思われる(表20)。
【0190】
[実施例23]外因性攻撃トリガー応答としてのラットにおけるリポ多糖(LPS)誘発急性炎症性肺傷害の軽減に及ぼすアロエベース組成物(UP360)の効果
本試験は、実施例9で調製したアロエベース組成物(UP360)を500mg/kgと250mg/kgで経口投与した場合にLPS誘発急性肺傷害を緩和する直接影響を評価するように計画した。急性肺傷害は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で見られるようなびまん性肺傷害に繋がる肺胞上皮細胞及び毛細血管上皮細胞損傷を特徴とする臨床症候群である。本試験では、LPSによるモデル誘発前に7日間試験材料をラットに経口投与した。8日目に、経口投与の1時間後に、0.1mL/100gのPBSに溶解したLPS10mg/kgを各ラットの気管内(i.t.)に点滴注入した。正常対照ラットには同一体積のPBS単独を気管内投与した。
【0191】
【表21】
【0192】
LPSは全身応答と肺応答を誘発し、好中球やマクロファージ等の炎症性細胞と、IL-1、IL-8、IL-6、MIP-2/CINC-3及びTNF-α等の炎症性サイトカインの蓄積に繋がることが知られている。この結果、間質性及び肺胞性肺水腫と上皮細胞損傷を生じ、HMGB1がマクロファージと単球により能動的に分泌され、及び/又は壊死細胞から受動的に放出される。
【0193】
ラットに気管内LPS投与から24時間後に生存動物を屠殺した。剖検時に、PBS1.5mLを右肺葉に気管内注入した後、少なくとも3回静かに吸引することにより、気管支肺胞洗浄液(BAL)を採取した。回収した洗浄液をプールし、4℃にて1500rpmで10分間遠心し、サイトカイン(例えば、IL-6)と肺タンパク質濃度を測定するために使用した。この同一右肺葉を組織ホモジナイズ用に各ラットから採取し、MIP-2/CINC-3タンパク質分析に用いた。左肺葉をホルマリンで固定し、公認病理医による解析用にNationwide Histologyに送り、病理組織学的評価に供した。剖検時に採取した血清を使用し、TNF-αやIL-1β等のサイトカインを測定した。10mg/kgのLPSの気管内点滴注入後に、全動物は感作後24時間生存した。急性肺感染症の病理に関与すると考えられる主要なサイトカイン及び化学誘引物質と、病理組織学的解析からのデータを以下の実施例にまとめた。
【0194】
[実施例24]アロエベース組成物(UP360)は、血清中TNF-αの用量相関的な統計的に有意な低下を示した。
R&D Systems社製ラットTNF-α Quantikine ELISAキット(製品番号RTA00)を使用して、実施例23からの未希釈ラット血清中のTNF-αの存在量を以下のように測定した。TNF-α抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加えた。室温で2時間後に、血清中のTNF-αをプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したTNF-α抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。TNF-α標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてTNF-αの濃度を計算した。
【0195】
表22から明らかなように、溶媒を投与してLPS感作したラットでは、血清中TNF-αの統計的に有意な上昇が認められた。多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)をラットに投与すると、この上昇は有意に低下した。500mg/kg及び250mg/kgのアロエベース組成物(UP360)を経口投与したラットでは、統計的に有意な用量相関的な低下が認められた。血清中TNF-α濃度のこれらの低下を溶媒対照に対して計算した処、500mg/kgと250mg/kgのアロエベース組成物(UP360)投与群では夫々91.9%と73.6%であることが分かった。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)は、血清中TNF-α濃度の統計的に有意な(67.9%)低下を示した。
【0196】
【表22】
【0197】
[実施例25]アロエベース組成物(UP360)は、血清中IL-1βの用量相関的な統計的に有意な低下を示した。
R&D Systems社製ラットIL-1β Quantikine ELISAキット(製品番号RLB00)を使用して、実施例23からの未希釈ラット血清中のIL-1βの存在量を以下のように測定した。IL-1β抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈血清を加えた。室温で2時間後に、血清中のIL-1βをプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したIL-1β抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。IL-1β標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-1βの濃度を計算した。
【0198】
この場合も、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)を投与したラットでは、IL-1βの用量相関的な統計的に有意な低下が認められた。溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットでは、IL-1βの血清中濃度の統計的に有意な上昇が認められた。アロエベース組成物(UP360)を投与したラットは、夫々500mg/kgと250mg/kgを経口投与した場合にIL-1β濃度の80.0%と63.0%の低下を示した(表23)。酪酸ナトリウム(SB)群は、血清中IL-1βの65.3%の低下を示した。実証された血清IL-1β低下は、アロエベース組成物(UP360)群と酪酸ナトリウム(SB)群のいずれでも統計的に有意であった。
【0199】
【表23】
【0200】
[実施例26]アロエベース組成物(UP360)は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中のIL-6濃度の用量相関的な統計的に有意な低下を示した。
R&D Systems社製ラットIL-6 Quantikine ELISAキット(製品番号R6000B)を使用して、実施例23からの未希釈ラット気管支肺胞洗浄液(BAL)中のIL-6の存在量を以下のように測定した。IL-6抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈BALを加えた。室温で2時間後に、BAL中のIL-6をプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したIL-6抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。IL-6標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-6の濃度を計算した。
【0201】
上記TNF-αとIL-1βのデータに一致し、アロエベース組成物(実施例9で調製したUP360)は、BAL中IL-6濃度の用量相関的な統計的に有意な低下を示した。高用量(500mg/kg)では、BAL中IL-6濃度は82.0%低下したが、低用量(250mg/kg)では、BAL中IL-6濃度の低下は51.0%であった(表24)。多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)を高用量で投与すると、溶媒を投与した急性肺傷害ラットに比較して前記低下は統計的に有意であった。低用量のアロエベース組成物(UP360)でも強い傾向が認められた(即ち、p=0.087)。酪酸ナトリウム(SB)群は、溶媒を投与した疾患モデルに比較してBAL中IL-6の統計的に有意でない37.7%の低下を示した。
【0202】
【表24】
【0203】
[実施例27]アロエベース組成物(UP360)を投与すると、CINC-3の統計的に有意な低下を生じた。
CINC-3/マクロファージ炎症性タンパク質2(MIP-2)は、ケモカインと呼ばれる走化性サイトカインのファミリーに属する。MIP-2はCXCケモカインファミリーに属し、CXCL2と呼ばれ、CXCR1とCXCR2の結合により作用する。主にマクロファージ、単球及び上皮細胞により産生され、炎症源への走化性と好中球の活性化に関与している。
【0204】
モノクローナルCINC-3抗体をコーティングした96ウェルマイクロプレートのウェルに、実施例23からの各ラット肺ホモジネート試料(溶媒、酪酸ナトリウム(SB)、低用量UP360、高用量UP360では各群10個、対照では各群7個)50μLと、アッセイ希釈剤バッファー50μLを加え、2時間結合させた。プレートを5回洗浄した後、酵素標識したポリクローナルCINC-3を加え、2時間結合させた。ウェルを更に5回洗浄した後、基質溶液をウェルに加え、酵素反応を開始させ、遮光下に室温で30分間反応させた。酵素反応は青色色素を生じ、停止溶液を加えると、黄色に変化した。各ウェルの450nmの吸光度を読み取り(580nmで補正)、各ラット肺ホモジネート試料中のCINC-3の量を概算するためにCINC-3の標準曲線と比較した。
【0205】
多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)(実施例9で調製したUP360)を500mg/kgの用量で1週間毎日経口投与すると、LPS誘発急性肺傷害におけるサイトカイン誘発好中球化学誘引物質の統計的に有意な低下を生じた(表25)。PBS単独を気管内投与した正常対照ラットにおけるCINC-3の濃度はほぼゼロであった。他方、溶媒を投与した気管内LPS誘発急性肺傷害ラットは、肺ホモジネート中の平均CINC-3濃度が563.7±172.9pg/mLであった。500mg/kgのアロエベース組成物(UP360)を投与したラットでは、この濃度は平均値280.92±137.84pg/mLまで低下した。500mg/kgのアロエベース組成物(UP360)を投与したラットにおけるCINC-3濃度のこの50.2%の低下は、溶媒を投与した疾患モデルに比較して統計的に有意であった。低用量のアロエベース組成物(UP360)は、溶媒対照群に比較して中程度(即ち、27.6%)のCINC3濃度の低下を生じた。酪酸ナトリウム(SB)群のみは、溶媒を投与したラットに比較して肺ホモジネート中のCINC-3濃度の低下が僅か(即ち、17.7%)であった。
【0206】
【表25】
【0207】
[実施例28]アロエベース組成物(UP360)は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中の総タンパク質を低下させた。
ThermoFisher Scientific社製Pierce BCAタンパク質アッセイキット(製品番号23225)を使用して、実施例23からの気管支肺胞洗浄液(BAL)試料中の総タンパク量を以下のように測定した。BALを5倍に希釈し、マイクロプレートでビシンコニン酸(BCA)試薬と混合し、37℃で30分間インキュベートした。580nmの吸光度を読み取り、ウシ血清アルブミン標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてBAL中のタンパク質濃度を計算した。
【0208】
溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットでは、BALからの肺総タンパク質濃度が正常対照ラットに比較して3倍上昇していることが分かった。多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)(実施例9で調製したUP360)を500mg/kgと250mg/kgの用量でラットに1週間毎日経口投与すると、BAL中総タンパク質含量は、溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットに比較して夫々40.1%(溶媒に対してp=0.12)と38.3%(p=0.17)低下した(表26)。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群は、BAL中総タンパク質濃度が溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットに比較して30.2%(p=0.27)低下した。
【0209】
【表26】
【0210】
[実施例29]アロエベース組成物(UP360)は、気管支肺胞洗浄液(BAL)中のC反応性タンパク質の統計的に有意な低下を示した。
Abcam社製C反応性タンパク質(PTX1)ラットELISAキット(製品番号ab108827)を使用して、ラットBAL1,000倍希釈液中のC反応性タンパク質(CRP)の存在量を以下のように測定した。CRP抗体をコーティングしたマイクロプレートにBALの1,000倍希釈液を加えた。プレートシェーカーに載せて室温で2時間後に、BAL中のCRPをプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。ビオチン化C反応性タンパク質抗体をプレートに加え、プレートシェーカーに載せて室温で1時間結合させた。洗浄を繰り返し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲートをプレートに加えた。室温で30分間インキュベーション後、洗浄を繰り返し、色原性基質を加えた。室温で10分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。CRP標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてCRPの濃度を計算した。
【0211】
溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットでは、正常対照ラットに比較してBAL中CRP濃度の統計的に有意な5.6倍の上昇が認められた。実施例9で調製した多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)を500mg/kgの用量でラットに1週間経口投与すると、BAL中CRP濃度は、溶媒を投与した疾患モデルに比較して38.2%(p=0.06)低下した(表27)。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群と低用量UP360群は、溶媒を投与した疾患ラットに比較してCRP濃度の変化がごく僅かであった。
【0212】
【表27】
【0213】
[実施例30]アロエベース組成物(UP360)は、気管支肺胞洗浄液中のIL-10の統計的に有意な低下を示した。
R&D Systems社製ラットIL-10 Quantikine ELISAキット(製品番号R1000)を使用して、実施例23からの未希釈気管支肺胞洗浄液(BAL)試料中のIL-10の存在量を以下のように測定した。IL-10抗体をコーティングしたマイクロプレートに未希釈BALを加えた。室温で2時間後に、血清中のIL-10をプレートに結合させ、プレートを十分に洗浄した。酵素標識したIL-10抗体をプレートに加え、室温で2時間結合させた。洗浄を繰り返し、プレートに酵素基質を加えた。室温で30分間展開させた後、停止溶液を添加し、450nmの吸光度を読み取った。IL-10標準曲線の吸光度読み取り値に基づいてIL-10の濃度を計算した。
【0214】
多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)(実施例9で調製したUP360)を500mg/kgと250mg/kgの用量で誘発前7日間毎日経口投与後、LPSの気管内点滴注入の24時間後に屠殺した疾患ラットのBAL中の抗炎症性IL-10濃度を測定した。IL-10濃度は、感染又は傷害時に宿主に必要な感染及び炎症応答の重症度に対応することが多い。表28から明らかなように、溶媒を投与したラットでは、IL-10の濃度が有意に上昇している(即ち、正常対照ラットに比較して80倍)ことが分かり、急性肺傷害の重症度が高いと判断された。他方、多糖類とポリフェノールを含有し、場合によってはこれらから構成されるアロエベース組成物(UP360)群のラットは、BAL中IL-10の用量相関的な低下を示した。これらの低下率を計算した処、夫々500mg/kgと250mg/kgのアロエベース組成物(UP360)では、73.2%と41.0%であることが分かった。高用量(500mg/kg)のアロエベース組成物(UP360)では、低下率は統計的に有意であり、p≦0.05であった。少なくともこの特定モデルでは、疾患重症度の軽減により宿主の炎症応答を弱める効果があり得るという事実により、アロエベース組成物(UP360)投与の結果としての抗炎症性サイトカインの低下を説明することができる。この仮説の裏付けとして、多糖類とポリフェノールを含有し、場合によってはこれらから構成されるアロエベース組成物(UP360)は、強い炎症応答に繋がるIL-1β、IL-6及びTNF-α等の炎症性サイトカインを統計的に有意に低下させたため、IL-10等の抗炎症性サイトカインの必要性が宿主にさほど重要でなくなっている。実際に、正常対照群のIL-10濃度はほぼゼロであり、急性肺傷害の存在及び/又は重症度により抗炎症性サイトカインが誘導されることを示唆している。
【0215】
【表28】
【0216】
[実施例31]アロエベース組成物(UP360)は、肺水腫と肺損傷の総合重症度を抑制した。
H&E染色肺組織を使用し、実施例23における気管内LPSの結果としての肺損傷の重症度を評価した。左肺葉を病理組織学的解析に使用した。下表29及び図2から明らかなように、溶媒投与群のラットは、肺損傷重症度(3.5倍上昇)、肺水腫(2.5倍上昇)及び多形核(PMN/PMC)白血球の浸潤(2.4倍上昇)の統計的に有意な上昇を示した。500mg/kgの高用量アロエベース組成物(実施例9で調製したUP360)をラットに1週間毎日経口投与すると、溶媒を投与したLPS誘発急性肺傷害ラットに比較して肺損傷の総合重症度の統計的に有意な37.9%の低下を生じた(表29、図2)。同様に、高用量のアロエベース組成物(UP360)では、溶媒を投与したラットに比較して肺水腫の顕著な統計的に有意な低下(37%低下)が認められた。多糖類とポリフェノールを含有し、場合によってはこれらから構成されるアロエベース組成物(UP360)を高用量で投与したラットでは、PMN浸潤低下の明確な傾向も認められた。陽性対照である酪酸ナトリウム(SB)群は、溶媒を投与した疾患ラットに比較して病理組織学的評価の変化がごく僅かであった。
【0217】
【表29】
【0218】
[実施例32]内因性及び外因性攻撃トリガー応答としてのD-ガラクトース誘発免疫老化加齢加速モデル
D-ガラクトースの全身投与は、免疫細胞老化の加速を誘発し、加齢マウスと同様に感作時の免疫応答に影響を与える。これらの現象は、高齢者の免疫応答プロファイルに似ていると推定される。多糖類とポリフェノールを含有する新規な所期保護対象(実施例9で調製したUP360)をこの実験的加齢マウスモデルで試験し、その免疫刺激効果を実証した。実験用CD-1マウス(12週齢)を購入し、2週間馴化後に加齢加速試験に使用した。マウスを免疫群4群と、非免疫群3群にランダムに割り当てた。免疫群は、G1=正常対照+溶媒(0.5%CMC)、G2=D-ガラクトース+溶媒、G3=D-ガラクトース+400mg/kgUP360及びG4=D-ガラクトース+200mg/kgUP360とした。非免疫投与群は、G1=正常対照+溶媒(0.5%CMC)、G2=D-ガラクトース+溶媒、及びG3=D-ガラクトース+400mg/kgUP360とした。免疫セットの各投与群には10匹ずつ割り当て、非免疫セットの各群には8匹ずつ割り当てた。
【0219】
マウスにD-ガラクトース500mg/kgを9週間毎日皮下注射し、加齢を誘発させた。誘発の4週目に、0.5%CMCに懸濁した2種類の用量(低用量200mg/kgと高用量400mg/kg)のUP360の経口投与を開始した。400mg/kgのUP360群をもう1群加え、非免疫マウスの対照として使用した。7週目に、非免疫群のマウスを除く各マウスに、GSK社製Fluarix4価IM(2020~2021年シーズンインフルエンザワクチン)3μgを注射した。このワクチンは、0.5mLのヒト1回投与量当たり60μgのヘマグルチニン(HA)を含有していた。このワクチンは、単回免疫用に(H1N1、H3N2、B-ビクトリア系統及びB-山形系統等の)4種類のインフルエンザ株各15μgを含有するように製剤化されている。
【0220】
多糖類とポリフェノールを含有し、場合によってはこれらから構成されるUP360を4週目から9週目までの期間にわたって毎日経口経管投与した。剖検時(即ち、免疫から14日後)に、全血(1mL)を採取し、フローサイトメトリー免疫パネル用に110μLを分取し(氷上に保存してFlow Contract Site Laboratory,Bothell,WAに輸送し)、残りの血液から抗体ELISAと酵素アッセイ(Unigen,Tacoma WA)用に血清を分離し(血清収量約400μL)、サイトカイン分析用に60μLをチューブ2本に入れ、Fedexにより終夜かけてSirona DX,Portland,ORに輸送した。各動物の胸腺と脾臓の重量を測定し、胸腺指数と脾臓指数を求めた。各群から胸腺と脾臓の代表的な画像を撮影した。剖検時に脾臓をドライアイスで保冷し、将来の使用に備えて-80℃に移した。パラホルムアルデヒドとスクロースで固定した胸腺を、老化関連β-ガラクトシダーゼ染色・分析のためにNationwide histologyに送った。
【0221】
[実施例33]UP360は、胸腺指数の統計的に有意な上昇を生じた。
D-ガラクトースをマウスに繰り返し皮下投与すると、正常な加齢過程で生じる変化に似た免疫応答不良を生じる。胸腺は、D-galへの慢性曝露により影響を受ける最も重要な免疫器官の一つである。胸腺指数は、生体の免疫機能の強さの良好な指標である。胸腺指数が高いほど、非特異的免疫応答が強い。免疫マウスでは、溶媒を投与したD-galマウスが正常対照マウスに比較して胸腺指数の有意な低下(54.5%)を示した。胸腺指数のこの低下は、多糖類とポリフェノールを含有するUP360を2種類の用量で投与することにより逆転した。400mg/kgと200mg/kgのUP360を経口投与したマウスは、溶媒を投与したD-gal群に比較して夫々52.9%と50.6%の胸腺指数の上昇を示した。この逆転は、どちらの用量のUP360でも、溶媒を投与したD-galマウスに比較して統計的に有意であった。同様に、400mg/kgのUP360を投与した非免疫マウスも、胸腺指数の統計的に有意な上昇を示した。この上昇は、溶媒を投与したD-galマウスと比較した場合に26.9%であることが分かった。本試験では、免疫状態に関係なく、UP360補充は、マウスを年齢関連胸腺退縮から防ぐらしいということが分かった。
【0222】
【表30】
【0223】
[実施例34]UP360補充は、健全な脾臓指数の回復に向かう傾向を示した。
脾臓は、免疫系におけるもう一つの重要な器官であり、その指数は健全な免疫機能に極めて重要である。500mg/kgのD-ガラクトースを注射すると、本試験における免疫マウスの脾臓指数は統計的に有意な25.4%の低下を生じた。非免疫マウスは、脾臓指数の16.3%の低下を示した。
【0224】
免疫群と非免疫群で400mg/kg、免疫群で200mg/kgのUP360を経口投与したマウスでは、脾臓指数のごく僅か~中程度の上昇が認められた。これらの改善は統計的有意には達しなかったが、UP360投与は、脾臓指数の上昇により証明されるように、組織萎縮を抑制する傾向を示した。
【0225】
【表31】
【0226】
[実施例35]UP360補充は、マウスを年齢関連胸腺退縮から防いだ。
剖検時に、各マウスから胸腺を切り出し、予め冷却しておいたパラホルムアルデヒドで24時間固定した後、30%スクロース溶液で置換し、更に24時間固定した。固定した組織を次に液体窒素で瞬間凍結し、ドライアイスを詰めて梱包し、解析用にNationwide histologyに輸送した。組織を凍結保護剤に浸して急速凍結し、厚さ10ミクロンの切片を薄切りし、スーパーフロストプラススライドグラスに貼り付けた。次に組織をPBSでリンスし、Cell Signaling Technologies社製β-ガラクトシダーゼ染色キットのプロトコールに従った。コントラストをよくするために低濃度エオシン対比染色液を加え、スライドに非水性マウント媒体をマウントした。次に老化細胞を四分画領域で計数し、陽性細胞の合計百分率を求めた。オリンパスBH2、ニコンEclipse 800顕微鏡にオリンパスDP26カメラを取り付け、cellSens Standard 1.9ソフトウェアで動作させ、細胞計数とイメージングに使用した。
【0227】
SA-β-gal染色により各胸腺中の老化細胞を検出し、多糖類とポリフェノールを含有するUP360の免疫器官保護作用を評価した。SA-β-Gal陽性細胞は、青色に染色され(高度に老化特異的なβ-ガラクトシダーゼを発現し)、皮質と髄質全体にランダムに散乱していることが分かった。低用量のUP360で認められた胸腺の組織学的変化は、胸腺指数データと一致していた。表32から明らかなように、UP360(200mg/kg)を投与した免疫マウスは、溶媒を投与したD-galマウスと比較して老化細胞の割合の統計的に有意な低下を示した。これらの結果から、多糖類とポリフェノールを含有する新規組成物UP360の免疫細胞及び/又は器官保護能が更に確認された。D-galを皮下投与すると、正常対照マウスと比較して老化細胞が157.8%増加したが、200mg/kgのUP360を投与したマウスは、溶媒を投与したD-galマウスに比較して老化細胞が42.7%減少した。
【0228】
【表32】
【0229】
[実施例36]アロエベース組成物UP360は、D-gal誘発血清中IgAを上昇させた。
試験の終わりに血清を採取し、IgGを含む液性免疫のマーカーについて評価した。免疫対照群は、非免疫対照群と比較してIgA抗体濃度に有意差がなかった。D-gal+200mg/kgUP360群は、血清中IgAがD-gal群よりも高くなる傾向があり(p=0.06)、D-gal+400mg/kgUP360群は、D-gal群よりも有意に高かった。
【0230】
【表33】
【0231】
[実施例37]CD45+細胞(白血球)に及ぼすアロエベース組成物UP360の効果
試験開始から9週間後に、マウス全血を採取し、白血球集団全般と、特に免疫細胞の亜集団を評価した。特異的マーカーに対して陽性であった細胞の百分率と、血液1μL当たりの細胞数の2種類の方法を使用してデータを分析した(Alvarez DF)(Vera EJ)。D-galを投与したマウスは、CD45+細胞(白血球)の濃度が高かったので、CD45+細胞の百分率としての結果報告は、血液1μL当たりの細胞数としての結果報告との相違が顕著であった。どちらのデータセットも、免疫ブースターとしてのUP360の性能を示した。
【0232】
【表34】
【0233】
全血から赤血球を除去した後、7-アミノアクチノマイシンDを使用して生細胞と死細胞を区別し、CD45を使用して白血球を指示した。表34は、各群からの生細胞集団におけるCD45+細胞(白血球)の量を示す。免疫対照群は、非免疫対照群に比較して白血球の百分率が有意に低下し、インフルエンザワクチン接種後に他の細胞種が増大することを潜在的に実証している。免疫対照群に比較すると、D-gal群は、生細胞集団当たりの血液中の白血球の百分率が有意に高かったが、200mg/kgUP360+D-gal群(低用量UP360)では対照のレベルまで低下した。
【0234】
[実施例38]全血中のCD3+T細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすアロエベース組成物の効果
CD3+CD45+細胞はT細胞集団である。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、免疫対照動物では非免疫対照に比較して循環T細胞が減少する傾向があることが分かった(p=0.07)。400mg/kgのUP360+D-galを投与した免疫動物は、循環T細胞の百分率がD-gal群よりも有意に高く、多糖類とポリフェノールを含有するUP360が、インフルエンザワクチン接種に応答するCD3+T細胞増大又は分化を亢進したと判断された。
【0235】
【表35】
【0236】
[実施例39]全血中のCD4+ヘルパーT細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすアロエベース組成物の効果
CD45+CD3+CD4+細胞はヘルパーT細胞であり、抗原提示細胞上の抗原を認識し、細胞分裂とサイトカイン分泌により応答する細胞である。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、200mg/kgと400mg/kgのUP360+D-galを投与した免疫動物は、循環ヘルパーT細胞の百分率がD-gal群よりも有意に高く、多糖類とポリフェノールを含有するUP360が、インフルエンザワクチン接種に応答するヘルパーT細胞増大又は分化を亢進したと判断された。
【0237】
【表36】
【0238】
[実施例40]全血中のCD8+細胞傷害性T細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすアロエベース組成物の効果
CD45+CD3+CD8+細胞は細胞傷害性T細胞であり、免疫感作に対して細胞分裂とアポトーシス促進酵素の分泌により応答し、感染細胞を死滅させる細胞である。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、200mg/kgと400mg/kgのUP360+D-Galを投与した免疫動物は、循環細胞傷害性T細胞の百分率がD-gal群よりも高くなる傾向があり、免疫対照群と非免疫D-gal群では、循環細胞傷害性T細胞の百分率が非免疫対照群よりも有意に低いことが分かった。
【0239】
【表37】
【0240】
[実施例41]全血中のNKp46+ナチュラルキラー細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすアロエベース組成物の効果
マウスCD49b及びNKp46の2種類の異なるナチュラルキラー細胞マーカーを利用し、白血球集団におけるナチュラルキラー細胞の百分率を求めた。ナチュラルキラー細胞は、自然免疫系に関与している。活性化されると、サイトカインと顆粒を分泌し、免疫細胞を動員し、病原体に感染した細胞に細胞死を直接もたらすので、病原体に対する即時型免疫応答に重要であり、全身感染症の初期に活性である。CD49bは、大半のナチュラルキラー細胞と、ナチュラルキラーT(NKT)細胞であると思われるT細胞のサブセットに特異的に存在するインテグリンである。NKp46は、ナチュラルキラー細胞に排他的に存在し、NKT細胞を指示しない天然細胞傷害性受容体である。NKは一般にCD45+CD3-CD49b+NKp46+であるが、NKT細胞とNK様T細胞もCD3を発現するため、除外される(Goh W)(Narni-Mancinelli E)。全白血球(CD45+細胞)に対する百分率として表した場合、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、どの群でもCD3-CD49b+集団に有意差はないことが分かった。一方、CD3-NKp46+集団に注目すると、D-galを投与した免疫動物は、ナチュラルキラー細胞の百分率が免疫対照群よりも有意に低く、200mg/kgと400mg/kgのUP360+D-galを投与した免疫群はどちらも、循環ナチュラルキラー細胞の百分率が免疫D-gal群よりも有意に高かった。非免疫400mg/kgUP360+D-gal群も、循環ナチュラルキラー細胞の百分率が非免疫D-gal群よりも有意に高かった。
【0241】
【表38】
【0242】
2種類のナチュラルキラー細胞マーカーは著しく異なる結果を生じたので、これらの結果は矛盾していた。ナチュラルキラー細胞マーカーは、マウス系列によって大きく変動する。NKp46は大半のマウス系列でナチュラルキラー細胞に非常に特異的なマーカーであるが、CD49bは他の細胞種も指示することができるので、NKp46のほうが、信頼性が高いと思われる。一方、CD45+細胞中のNK細胞の百分率はCD49bに比較してNKp46のほうが高く、末梢血中のヒトNK数とより密接に整合する(Angelo LS)。マウス末梢血中のNK細胞はヒトと同様であるか、又はNKp46で検出されたと同程度に高いと思われる。
【0243】
[実施例42]全血中のTCRγδ+ガンマデルタT細胞(リンパ球集団に対する%)に及ぼすアロエベース組成物の効果
CD45+CD3+TCRγδ+細胞はガンマデルタT細胞であり、多様な活性があり、自然免疫応答と適応免疫応答の両方に影響を与えると思われるT細胞の小集団である。この細胞は粘膜に局在し、病原体に対する防御の最前線を誘導し、適応免疫応答を開始するのを助ける。
【0244】
【表39】
【0245】
全T細胞(CD3+細胞)に対する百分率として表した場合、インフルエンザワクチン接種から2週間後に、200mg/kgのUP360+D-galを投与した免疫動物は、循環ガンマデルタT細胞の百分率がD-gal群よりも有意に高く、400mg/kgUP360+D-gal群は、循環ガンマデルタT細胞の百分率がD-galよりも高くなる傾向があることが分かった。したがって、多糖類とポリフェノールを含有するUP360を投与した群は、粘膜中で遭遇した病原体に対して免疫応答を開始するように良好に装備されていると思われる。
【0246】
[実施例43]全血中のCD45+リンパ球(細胞数/μL)に及ぼすアロエベース組成物の効果
更に、非免疫マウス群とインフルエンザワクチン接種マウス群に由来する全血中の細胞集団を全血1μL当たりの細胞数として分析した。これらのデータは、CD45+細胞とCD3+細胞の相違を考慮していない免疫細胞集団に相当し、これらのマーカーに陽性の細胞の百分率により表されるデータと矛盾する可能性がある。一般に、データをこのように解析することにより得られる有意差は、免疫群ではなく、非免疫マウス群で認められることが分かった。
【0247】
【表40】
【0248】
血液1μL当たりのCD45+細胞は、非免疫マウス群と免疫マウス群で有意差がなかったが、非免疫400mg/kgUP360+D-gal群のCD45+細胞数は非免疫D-gal単独群よりも高かった。
【0249】
[実施例44]全血中のCD3+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞及びCD8+細胞傷害性T細胞(細胞数/μL)に及ぼすアロエベース組成物の効果
D-gal非免疫群に比較して、非免疫400mg/kgUP360+D-gal群は、全血1μL当たりのCD3+細胞数が有意に高かった。CD3+CD4+ヘルパーT細胞とCD3+CD8+細胞傷害性T細胞でも同様の増加が見られた。これらの結果から、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞及びT細胞全般の濃度は、D-gal単独群に比較してUP360+D-gal非免疫群のほうが高いと判断され、UP360投与群のほうが免疫監視及び「レディネス」が良好であると思われる。
【0250】
【表41】
【0251】
【表42】
【0252】
【表43】
【0253】
[実施例45]全血中のCD49b+ナチュラルキラー細胞(細胞数/μL)に及ぼすアロエベース組成物の効果
ナチュラルキラー細胞を検出するために使用した2種類のマーカーで同様の結果が得られ、非免疫400mg/kgU360+D-gal群では、非免疫D-gal単独群に比較してCD49b+NK細胞が増加する傾向があると共に、NKp46+NK細胞が有意に増加した。先に分析したCD45+細胞の百分率の変動と同様に、各マーカーの細胞数は大きく変動した。どちらのマーカーも、非免疫UP360+D-gal群では非免疫D-gal単独群に比較してNK細胞が集積していることを示し、この点からも、UP360投与群では免疫監視と免疫「レディネス」が得られると思われる。
【0254】
【表44】
【0255】
【表45】
【0256】
[実施例46]全血中のLy6C+顆粒球(細胞数/μL)に及ぼすアロエベース組成物の効果
1μL当たりのCD3-Ly6C+顆粒球は、投与群とD-gal群で有意差がなかった。非免疫D-gal群と非免疫400mg/kgUP360+D-gal群では、顆粒球が非免疫対照群に比較して有意に増加し、免疫UP360+D-gal群では、1μL当たりの顆粒球が免疫D-gal群と対照群に比較して減少する傾向があった。免疫400mg/kgUP360+D-gal群では、非免疫400mg/kgUP360+D-gal群に比較して顆粒球の統計的に有意な低下が認められた。
【0257】
【表46】
【0258】
[実施例47]全血中のB220+B細胞(細胞数/μL)に及ぼすアロエベース組成物の効果
全血1μL当たりの細胞数により表したCD3-B220+B細胞には、投与群間で有意差がなかったが、非免疫400mg/kgUP360+D-gal群では、非免疫D-gal単独群に比較してB細胞が増加する傾向があった。
【0259】
【表47】
【0260】
[実施例48]全血中のTCRγδ+ガンマデルタT細胞、CD4+TCRγδ+ガンマデルタヘルパーT細胞、CD8+TCRγδ+ガンマデルタ細胞傷害性T細胞(細胞数/μL)に及ぼすアロエベース組成物の効果
非免疫400mg/kgUP360+D-gal群では、全血1μL当たりのCD3+TCRγδ+ガンマデルタT細胞が非免疫D-gal単独群に比較して増加した。これは、CD3+CD4+TCRγδ+ヘルパーガンマデルタT細胞集団でも認められた。CD3+CD8+TCRγδ+細胞傷害性ガンマデルタT細胞集団に有意差はなかった。これらの結果から、粘膜のT細胞集団で免疫監視と免疫「レディネス」が増強していると判断された。
【0261】
【表48】
【0262】
【表49】
【0263】
【表50】
【0264】
[実施例49]アロエベース組成物は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を有意に増加させた。
D-galが加齢表現型を生じる機序は、フリーラジカル、特に終末糖化産物の生成を介する。そこで、抗酸化酵素濃度とフリーラジカル濃度を測定し、UP360がマウスモデルのこの側面に影響を与えるか否かを調べようと試みた(Azman KF)。
【0265】
【表51】
【0266】
スーパーオキシドジスムターゼは、酸素ラジカルを中和し、細胞構造、タンパク質、及び核酸の酸化損傷を防ぐ。活性酸素種は免疫シグナル伝達のセカンドメッセンジャーとして使用される(Ighodaro OM)。抗酸化酵素の発現亢進は、過剰の活性酸素種を中和する能力の指標である。免疫マウス血清試料をスーパーオキシドジスムターゼ酵素濃度について試験した処、UP360+D-Gal群は、スーパーオキシドジスムターゼ濃度がD-Gal群よりも有意に高いことが分かった。
【0267】
[実施例50]Nrf2のタンパク質発現に及ぼすアロエベース組成物の効果
Nrf2は、酸化ストレス条件下で活性化され、アップレギュレートされ、抗酸化応答に関与する転写因子である。長期免疫系活性化や酸化ストレスは、Nrf2のアップレギュレーションを生じる。脾臓ホモジネートをSDS-PAGEで泳動させ、転写し、上記タンパク質をブロットした。バンド強度をデンシトメトリーにより測定し、着目タンパク質毎にβ-アクチンローディングコントロールに正規化した。各着目タンパク質の半定量を各群で比較した処、免疫200mg/kgUP360+D-gal群と400mg/kgUP360+D-gal群は、Nrf2がD-gal単独群よりも有意に高いことが分かり、UP360群では抗酸化経路活性化が亢進していると判断された。
【0268】
【表52】
【0269】
[実施例51]酸化ストレスと肺感染により誘発したマウスの死亡率及び急性炎症性肺傷害の軽減に及ぼすアロエベース組成物(UP360)の効果
高酸素と微生物(緑膿菌:pseudomonas aeruginosa(PA))感染により誘発したマウスを使用し、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される実施例9で調製した所期アロエベース組成物(UP360を含む)が死亡率に及ぼす効果を評価した。
【0270】
マウスを誘発前に1週間馴化させた。UP360が動物死亡率を低下させ、その生存率を上昇させることができるか否かを調査するために、UP360を7日間投与後、マウスを高酸素に(>90%酸素に72時間)曝露し、この曝露を3日間続けた後、PAを接種した。細菌接種後、マウスを48時間観察した。高酸素に予め曝露した場合の死亡率(O)は、室内気(表53、RA)に維持したマウスに比較して有意に高かった。興味深いことに、PA接種前に高酸素に48時間だけ曝露したマウスでも、PA接種から24時間後に実質的な死亡率となることが予想外に判明した。室内気(RA)に維持して同一量のPAを接種したマウスの死亡率が9%であったのに対し、PA接種前に2日間高酸素に曝露したマウスでは、64%の死亡率が認められた。他方、2日間の高酸素曝露とその後のPA接種の前に、レスベラトロール(RES)及び多糖類とポリフェノールを含有するUP360を7日間予防投与したマウスは、接種から24時間後の死亡率が夫々27%と31%であった。これらの結果は、UP360が動物死亡率を低下させるのに有利であることを示唆している。実施例20~22のLPS誘発生存率試験では、UP360補充により動物の死亡率の統計的に有意な低下を生じたが、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)で確認された上記生存率データは、実施例20~22の生存率試験で記載したデータに一致する。
【0271】
【表53】
【0272】
アロエベース組成物には高酸素とPAで誘発した動物の死亡率を低下させるのに有益な効果があることを確認した後、細菌感染により誘発し、酸化ストレスで悪化させた急性肺傷害の試験を実施した。マウスを1週間馴化させた。高酸素曝露前に動物にUP360(500mg/kg)とレスベラトロール(50mg/kg)を7日間経口投与した。試験材料の毎日経口投与を維持しながら、マウスを>99%Oに48時間曝露した。更に、試験材料の毎日投与を維持しながら、マウスにPA(5×10CFU)を鼻腔内吸引により接種した。接種後に、マウスを21%Oに戻した。感染から24時間後に気管支肺胞洗浄液(BAL)を回収し、血液試料と肺組織を採取した。BAL中の総タンパク含量を測定し、BAL及び肺における生存細菌数を求めた。アッセイを実施し、表54に示すように、TNF-α、IL-1、IL-6、CRP、IL-8、IL-10、HMGB-1、MPO、MIP-2、NF-κB、Nrf2、マクロファージ数、好中球数、組織学的疾患重症度等のバイオマーカーを測定した。
【0273】
表54から明らかなように、アロエベース組成物は、高酸素に曝露して微生物に感染させたマウスにおける気道の細菌クリアランスに統計的に有意な効果を示した。従来、高酸素に曝露すると、細菌感染症に対する宿主防御が低下し、気道中の細菌負荷量が高くなることが示されている(Patel et al.,2013)。表54の結果によると、室内気(RA)に維持したマウスに比較して、マウスを高酸素(O2)に予め曝露することにより、気道中の細菌負荷量が有意に上昇する。レスベラトロールを投与したマウスでは肺傷害が有意に抑制されたため、これらのマウス(RES)では、気道細菌負荷量が有意に低かった。
【0274】
【表54】
【0275】
【表55】
【0276】
同様に、UP360を投与したマウスは、高酸素に曝露して溶媒単独を投与したマウスに比較して、その気道中の細菌負荷量が有意に低かった。気道中の細菌負荷量の差は、高酸素に曝露して溶媒を投与した対照マウス(O2)に比較して統計的に有意であった。これらの結果は、UP360が実際に気道中の細菌負荷量を低減できることを示唆している。
【0277】
[実施例52]ヒト臨床試験における多糖類とポリフェノールを含有するアロエベース組成物の評価
プロトコール:健康な成人における免疫機能の支援について被験品を調査するための無作為化三重盲検プラセボ対照並行群間臨床試験。本試験の目的は、多糖類とポリフェノールを含有し、場合によってはこれらから構成される実施例9で調製したUP360を被験品(IP)とし、健康な成人における免疫機能の支援に及ぼす効果を調査することであった。
【0278】
無作為化三重盲検プラセボ対照並行群間試験において、ワクチン接種の28日前と28日後に健康な成人集団における免疫機能を支援する効果について被験品を評価した。本試験は、インフルエンザワクチンをまだ接種していないが、接種する意志があり、インフルエンザワクチン接種歴を口頭で伝えることに同意しており、食事、投薬、栄養補助食品、運動及び睡眠を維持する各自の能力に応じて、全試験期間を通して可能な限り現在の生活習慣を維持し、新たな栄養補助食品を摂取しないことに同意しており、認定調査者(QI)が既往歴と検査結果を評価して健康であると判断され、試験に関連する問診票と日誌を完遂し、通院を完遂する意志があり、自由意思により本試験への参加に同意するインフォームドコンセントを書面で表明している40歳以上80歳以下の男女を対象とした。
【0279】
以下の被験者は除外した。1.試験中に妊娠中、授乳中、又は妊娠計画中であった女性。2.UP360、プラセボ、又はインフルエンザワクチンの活性成分又は不活性成分に対してアレルギーがあることが分かっている参加者。3.2020年9月時点のベースライン以前又は28日目のワクチン接種以前にインフルエンザワクチンを接種していない参加者。4.ベースライン以前又は28日目のワクチン接種以前にCOVID-19であると診断されたことを自己申告している参加者。5.COVID-19ワクチンを接種済みの参加者。6.ベースラインから4週間以内で免疫抑制剤又は免疫刺激剤等の処方免疫調節剤(コルチコステロイドを含む)を現在使用中である。7.免疫系のブースト又は調節に関連する栄養補助食品又は生薬を現在使用中であり、ウォッシュアウトする意志のない参加者。
【0280】
【表56】
【0281】
被験者が最長で56日間まで試験に参加することを期待した。1回目来院(スクリーニング、-45日~-4日)はインフォームドコンセントのため、2回目来院(ベースライン、0日)は適格性の確認と無作為化のために、被験者に試験に参加してもらった。
【0282】
2回目来院(0日)、3回目来院(28日)、及び4回目来院(56日)では、試験の一次及び二次効果と安全性エンドポイントを評価した。スクリーニング来院時に人口統計学的情報と既往歴を記録した。インフルエンザワクチン接種(28日)まで毎日被験者にUP360を摂取してもらい、更に4週間(56日まで)毎日UP360を摂取し続けてもらった。
【0283】
一次試験アウトカムは、ベースラインから28日及び56日まで血液中のリンパ球集団(CD3+、CD4+、CD8+、CD45+、TCRγδ+、CD3-CD16+56+)と免疫グロブリン(IgG、IgM、及びIgA)により評価した免疫パラメーターの変化についてUP360とプラセボの差を調査した。
【0284】
統計分析を実施し、人口統計学的特性とアウトカム測定値の平均、中央値、標準偏差、最小値、最大値、割合(カテゴリカルな場合)を含む要約統計量を試料全体と試験群毎に得た。正規性の仮定が満足された場合には、分散分析(ANOVA)を使用し、2種類の摂取群(UP360とプラセボ)間の連続変数の平均の差を試験し、正規性の仮定が満足されなかった場合には、クラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis test)を使用した。必要に応じてカイ二乗検定と(細胞数が5個未満の場合には)フィッシャーの正確確率検定を使用し、カテゴリカル変数の差を調査した。反復測定分散分析(線形混合効果モデル)を使用し、摂取群間の経時的なアウトカム平均値の差を試験した。ベースライン値を共変量として各モデルに含めた。同様に反復測定分散分析(線形混合効果モデル)を使用し、(ベースラインから28日、56日及び28日から56日の)経時的なアウトカム変化の平均値の2摂取群間の差を試験し、ベースライン値を共変量として各モデルに含めた。LMM(群間及び群内)からペアワイズ統計的有意性を判定した。ボンフェローニ補正をペアワイズ比較に使用した。統計的有意性はp値≦0.05として定義される。Statistical Analysis Systemソフトウェアバージョン9.4(SAS Institute Inc.,Cary,NC,米国)を使用して分析を実施した。
【0285】
予備臨床データ報告では、一次エンドポイント(TCRγδ+細胞とCD45+細胞)に統計的に有意なアウトカムが認められた。表56から明らかなように、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)を摂取した被験者は、プラセボを摂取した被験者に比較して複数の時点で細胞集団に対するガンマデルタT細胞百分率の統計的に有意な上昇を示した。プラセボ群の被験者は、摂取後28日と56日に夫々TCRγδ+細胞の百分率の10.5%と5.6%の低下を示したが、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)は、TCRγδ+細胞集団の百分率の21.5%と24.5%の上昇を示した。プラセボと比較すると、アロエベース組成物を摂取した被験者は、摂取後28日と56日に夫々TCRγδ+細胞集団の23.5%と38.9%(P≦0.001)の増加を示した。0日から56日(p=0.0002)と28日から56日(p<0.0108)に認められたTCRγδ+細胞集団百分率の変化のこれらの増加は、実施例9で調製したアロエベース組成物(UP360)ではプラセボに比較して統計的に有意であった。同様に、同一時間枠のこれらの変化は、アロエベース組成物では群内でも統計的に有意であった。前臨床データと同様に、多糖類とポリフェノールを含有し、実施形態によってはこれらから構成される所期アロエベース組成物(UP360を含む)は、ガンマデルタT細胞の統計的に有意な誘導を示した。本願に記載したこのユニークなT細胞亜集団の特徴に鑑み、これらのデータから、免疫調節、監視及び恒常性におけるアロエベース組成物の主な活性はこれらの細胞の誘導の結果であることが明白に判明した。
【0286】
【表57】
【0287】
【表58】
【0288】
アロエベース組成物の補充の結果として、同様ではあるが、逆のパターンがCD45+細胞のレベルに認められた。表57から明らかなように、56日のCD45+細胞の%は、UP360を摂取した参加者のほうがプラセボを摂取した参加者に比較して平均で3.761低かった(p=0.0066)。0日から56日までのCD45+細胞の%の変化は、UP360を摂取した参加者のほうがプラセボを摂取した参加者に比較して平均で3.811低かった(p=0.0175)。同様に、28日から56日までのCD45+細胞の%の変化は、UP360を摂取した参加者のほうがプラセボを摂取した参加者に比較して平均で3.220低かった(p=0.0442)。
【0289】
二次アウトカムは、以下の事項を評価した。1.確認されたCOVID-19感染者数;2.確認されたインフルエンザ症例数;3.QoLに及ぼすCOVID-19の影響問診票により評価したクオリティオブライフに及ぼすCOVID-19の影響;4.市販感冒・インフルエンザ薬使用。以上については、28日及び56日におけるUP360とプラセボの差を評価した。
【0290】
1.COVID-19による入院者数;2.インフルエンザによる入院者数。以上については、56日におけるUP360とプラセボの差を評価した。1.赤血球沈降速度(ESR)とC反応性タンパク(CRP);2.血液学的パラメーター:白血球(WBC)数と分画(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)、網状赤血球数、赤血球(RBC)数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、RBC指数(平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、及び赤血球分布幅(RDW));3.補体C3及びC4タンパク質;4.改変版ウィスコンシン上気道症状調査票(Wisconsin Upper Respiratory Symptom Survey(WURSS)-24)の毎日症状スコアの曲線下面積(AUC)により測定した平均全般重症度指数;5.WURSS-24の毎日重症度症状スコアのAUCにより測定した平均症状重症度スコア;6.改変版WURSS-24問診票により評価した健康日数(「本日の体調はいかがですか?」という質問に対して0(無病)と回答された日数として定義する);7.改変版WURSS-24問診票により評価した有病日数(「本日の体調はいかがですか?」という質問に対して1~7(有病)のいずれかの数値と回答された日数として定義する);8.改変版WURSS-24問診票により評価した一般上気道感染症(UTRI)症状の頻度;9.改変版WURSS-24問診票により評価した一般UTRI症状の持続期間;10.改変版WURSS-24問診票により評価した一般UTRI症状の重症度;11.活力と生活の質(QoL)問診票により評価した活力と生活の質。以上については、ベースラインから28日及び56日の測定までの変化におけるUP360とプラセボの差を評価した。
【0291】
所期方法は更に、健全な炎症応答を支援する方法;感染に対する補体C3及びC4タンパク質、サイトカイン及びサイトカイン応答の健全なレベルを維持する方法;TNF-α、IL-1β、IL-6、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-β/LTA、CRP及びCINC3を低減、調節及び維持する方法を含む。
【0292】
試料を採取し、その後の分析でベースラインから28日及び56日までの以下の事項の変化についてUP360とプラセボの差を分析するために保存した。
1.サイトカイン(GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、IL-1α、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-15、IL17A、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-27、IL-31、TNF-α、TNF-β/LTA150)。
2.高移動度群ボックス1(HMGB1)タンパク質、核内因子カッパB(NF-κB)、核内因子エリスロイド2関連因子2(Nrf-2)。
3.8-イソプロスタグランジンF2α、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、マロンジアルデヒド(MDA)及び 終末糖化産物(AGE)により評価した酸化ストレス。
4.特定のウイルス株に対するヘマグルチニン阻害(HI)力価。
【0293】
有効性分析に加え、安全性評価も実施する。1.臨床化学パラメーター:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビン、クレアチニン、電解質(Na+、K+、Cl-)、推算糸球体濾過量(eGFR)、グルコース;2.発現前及び発現後の有害事象の発生率;3.バイタルサイン(血圧(BP)及び心拍数(HR))。
【0294】
[実施例53]UP360の急速免疫調節作用に関する臨床概念実証試験
本臨床概念実証試験の目的は、実施例9で調製した多糖類とポリフェノールを含有する新規栄養補強的ブレンドUP360の急性免疫作用をプラセボと比較することである。このデータは、免疫関連効果を検証するために重要である。
【0295】
本臨床概念実証試験は、免疫細胞活性化、細胞トラフィキング、炎症性及び抗炎症性サイトカインのサイトカイン変化、抗ウイルスペプチド、並びに復元成長因子の評価により、被験品摂取の急性効果を実証することを目的とする。
【0296】
免疫細胞トラフィキング及び監視に関するデータを収集する。本試験は、多糖類とポリフェノールを含有する新規組成物を摂取することにより免疫系の覚醒の急速な変化を生じるか否かを明らかにし、微生物侵入を排除し、免疫細胞種間で有効に協調するように探求・試行するものである。
【0297】
この臨床試験では、既製のプラセボ対照無作為化二重盲検クロスオーバー試験デザインに従ってヒト被験者を試験する。具体的には、リンパ球トラフィキングの変化に及ぼす免疫調節物質、特に幹細胞サブセットの作用に関する従来の臨床試験で使用されている試験デザインを使用した。被験者を活性成分又はプラセボにランダムに割り付け、摂取前にベースライン試料を採取し、被験品の摂取後、摂取から1時間後、2時間後、3時間後に血液試料を採取する。7日間ウォッシュアウト後に被験者に再来院してもらい、クロスオーバー法で逆の被験品を摂取してもらい、試験手順を繰り返す。
【0298】
評価する試験パラメーターは、個人の代謝、個々の概日リズム、及び他の正常な生理的パラメーターに関連するので、数時間の間でも必ずしも一定である必要はない。したがって、この種の試験は、各人の試験日間の変化を被験者内で分析できるように、プラセボ試験日を設ける必要がある。こうすると、この種のパイロット試験からのデータ解析が著しく強化される。プラセボ試験日を設けないと、変化が被験品摂取に関連すると解釈することができないので、データが不十分になると考える。
【0299】
一次アウトカム測定:免疫監視:免疫細胞のインビボトラフィキング及び活性化。本試験は、免疫監視と免疫覚醒による迅速な免疫支援を証明するようにデザインされる。
【0300】
本試験では、IRBに承認されたインフォームドコンセントに書面で同意後に、健康な男女被験者12人に登録させる。この種の試験の適格/除外プロファイルは瑣末事ではなく、登録前に各潜在的試験参加者を入念に評価する。試験のために最初に来院する際に予想されるストレスと不安を最小限にするために、各試験参加者に本発明者らの施設で予備試験に参加してもらうか、又は臨床試験日前に来院して試験手順を体験してもらう必要がある。
【0301】
本試験は、全試験期間を通して一貫した食事と生活習慣を維持し、来院日には軽い朝食をとる習慣を守り、試験来院日の朝は運動と栄養補助食品を控え、来院前少なくとも1時間はコーヒー、紅茶、及びソフトドリンクの摂取を控え、来院中は音楽、キャンディ、ガム、コンピューター/携帯電話の使用を控えることを含めて試験手順に従う意志のある年齢18歳以上75歳以下でBMIが18.0以上34.9以下の健康な成人を対象とする。
【0302】
以下の基準に該当する被験者は除外する:過去に重大な胃腸手術の既往がある(被験品の吸収が変化する可能性がある)(過去の虫垂や胆嚢の摘出を含めた小手術は問題ない);抗炎症薬を毎日摂取している;現在、強いストレスのあるイベント/生活変容を経験している;現在、集中トレーニング中である(マラソンランナー等);過去12か月間にがんを患っている;過去12か月間に化学療法を受けている;現在、免疫抑制剤による投薬治療中である;例えば、全身性エリテマトーデス、溶血性貧血等の自己免疫疾患であると診断されている;試験中又は試験開始前4週間以内に献血している;過去12週間以内にコルチゾン注射を受けている;前月中に免疫処置を受けている;現在、抗不安薬、催眠薬又は抗鬱薬処方投薬を受けている;急性感染症が進行中である(歯、副鼻腔、耳等を含む);本試験中に被験品又は生活様式変化に関連する別の臨床試験に参加している;不規則な睡眠習慣(例:深夜勤務、頻繁に深夜を含む不規則なルーチン、勉強、パーティー);試験期間を通して栄養補助食品の常用を維持する意志がない;妊娠の可能性のある女性:妊娠中、授乳中、又は妊娠計画中である;活性被験品又はプラセボ中の成分に関連する食物アレルギーがあることが分かっている。処方投薬はケースバイケースで評価する。
【0303】
摂取型被験品:実施例9で調製した多糖類とポリフェノールを含有する活性UP360と、プラセボを被験品として準備する。各来院日に、ベースライン採血直後に、被験者は臨床スタッフの立会いのもとで、活性被験品であるUP360又はプラセボを単回摂取する。被験者は水と共にカプセルを摂取し、消化機能を刺激するために薄味のソーダクラッカー数枚も摂取する。
【0304】
提案される臨床試験手順の説明:免疫活性化イベントをモニターするための臨床試験では、腸管における免疫細胞の活性化から開始し、サイトカイン濃度の全身変化、免疫細胞トラフィキングの変化(免疫監視強化)の後、全身の組織における免疫監視、及び状況次第では、活性化された免疫細胞の血液循環への再流入に至るイベントのカスケードが予想される。
【0305】
血液試料は、被験品の摂取後に起こる免疫イベントを覗き見る簡便な手段を提供する。初期腸管活性化時に何が起こっているのかを覗き見る簡便な手段はないが、インビトロのイベントと同様であると想像している。組織内を覗き見る手段はないので、免疫細胞が微生物侵入を排除して自然免疫応答と適応免疫応答を発揮するために血液から組織内に移動した後に下流イベントをモニターすることはできない。そこで、血液試料の一部を分取し、微生物ミメティクスで免疫細胞をエクスビボ(生体外)で感作することによりこれを模倣する。
【0306】
本実施例に記載する試験は、血液循環に見られる免疫細胞の種類と活性化状態の急変をモニターすることを目的とする。血液中の免疫細胞数の増減は、血流内外の細胞トラフィキングの尺度である。
【0307】
同一被験品を摂取後に試験参加者の大半で何らかの規則的な変化が認められ、免疫活性化イベントの誘導を示唆するような微かなイベントを期待している。これは、被験品が免疫認識強化を誘発したことの良好な指標である。
【0308】
免疫監視では、免疫細胞は組織内外を移動するので、循環血液中の細胞数を算定することにより測定することができる。免疫覚醒では、循環血液中の機能に特異的な細胞を測定する。
【0309】
免疫細胞トラフィキング及び免疫覚醒状態
この分析では、被験品の摂取により循環中の細胞数が急速に変化するか否か、及び/又は細胞がインビボで活性化されるか否かを検出することができる。新たに採血した血液試料を免疫細胞数及び活性化状態の変化の試験に使用する。各採血からの細胞を3本ずつアッセイする。
【0310】
T細胞マーカーCD3と、CD56及びCD57マーカーに加え、CD69及びインターロイキン2受容体CD25の2種類の活性化マーカーで細胞を染色する。こうすると、試験の各時点で血液循環中の以下の免疫細胞種、即ち、CD3陰性CD56陽性NK細胞;CD3+CD56+NKT細胞;CD3+CD56-Tリンパ球;CD3-CD56-非NK非Tリンパ球;CD3-CD57+NK細胞;CD3-CD56+CD57+NK細胞;単球(前方/側方散乱プロファイルにより識別される)の数を分析することができる。
【0311】
分析中に、上記に列挙した細胞集団の表面の活性化分子CD69と成長因子受容体CD25の発現レベルを測定する。
【0312】
注:免疫監視には、NK細胞とT細胞を含むリンパ球サブセットの安定した再循環が必要である。トラフィキングは明確な概日リズムを示し、人体の代謝状態の影響を受ける。免疫監視に及ぼす摂取型免疫調節物質の急性効果を比較する際には、プラセボ対照試験日を設け、被験者の代謝状態を考慮することが重要である。
【0313】
更にフローサイトメトリーパネルを追加することも可能である。予算オプションを以下に挙げる。追加パネルとしては、ガンマデルタ(γδ)T細胞(γδTCR+CD5-CD8-)数のアドオンパネルとして、CD3/γδT細胞受容体;CD5;γδT細胞でCD56-、状況次第で+又は-;CD69、CD25が挙げられる。
【0314】
Bリンパ球及びTリンパ球サブセット数と、CD45アイソフォーム発現のアドオンパネルとして、CD4T細胞サブセット、CD8T細胞サブセット、CD19Bリンパ球、ナイーブT細胞及びB細胞で発現されるCD45RA、活性化及びメモリーT細胞及びB細胞で発現されるCD45R0が挙げられる。
【0315】
【表59】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
【国際調査報告】