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特表2023-533983シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K31/4985
A61K31/351
A61P43/00 121
A61P3/10
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/34
A61K9/48
A61K9/16
A61K31/155
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501142
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 KR2021005474
(87)【国際公開番号】W WO2022010078
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0085679
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポ シク
(72)【発明者】
【氏名】タク、チン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョ、チュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ホ テク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン イル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA37
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD47C
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086NA05
4C086ZC35
4C086ZC75
4C206HA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206NA05
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤、及びその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物と、
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物と、
滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムと、
を含む乾式顆粒を含む複合製剤であり、
前記乾式顆粒は、フマル酸ステアリルナトリウムを、複合製剤総重量に対し、1~5重量%含むものである、複合製剤。
【請求項2】
前記乾式顆粒外部に、滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムを追加して含み、複合製剤内に存在するフマル酸ステアリルナトリウム総量は、複合製剤総重量対比で、3~8重量%である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項3】
前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、シタグリプチンリン酸塩水和物である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項4】
前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、ダパグリフロジンL-プロリンまたはダパグリフロジンプロパンジオールである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項5】
微晶質セルロース(MCC)、マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na)、及びそれらの任意の混合物のうちから選択される賦形剤を含むものである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項6】
前記乾式顆粒は、崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)を、複合製剤総重量に対し、5~20重量%で含むものである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項7】
記乾式顆粒は、水分を、複合製剤総重量に対し、5重量%以下で含むものである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項8】
前記複合製剤は、錠剤、カプセル剤または顆粒剤の形態である、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項9】
前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、10~40重量%で含まれるものである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項10】
前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、2~10重量%で含まれるものである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項11】
メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を追加してさらに含むものである、請求項1に記載の複合製剤。
【請求項12】
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及びダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、賦形剤、並びに滑沢剤を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
前記顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合する段階と、
を含む、請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載の複合製剤の製造方法。
【請求項13】
前記顆粒化する段階は、ローラ圧着機を利用し、圧着物を形成する段階を含むものである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記滑沢剤を混合した顆粒物を打錠する段階をさらに含む、請求項12に記載の複合製剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤、及びその製造方法に係り、さらに具体的には、生産性、溶出率、安定性及び配合適合性にすぐれる複合製剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第2型糖尿患者は、一般的に、過体重、腹部肥満、高血圧を伴うことになり、それにより、糖尿病は、高血圧、高脂血症、心筋梗塞、脳卒中のような二次的な慢性疾患、または代謝症侯群を引き起こす疾病と知られており、大韓糖尿病学会の診療指針によれば、症状改善増大のために、薬物併合療法が積極的に勧告されている。特に、DPP-4抑制剤系薬物と、SGLT-2抑制剤系薬物との併用は、最近、学界において、糖尿病治療においてすぐれた効能と効果とを立証され、メトホルミン(metformin)との3剤治療までも研究されている分野である。
【0003】
シタグリプチン(sitagliptin)(製品名:ジャヌビア錠)は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)抑制剤系薬剤であり、化合物名は、(R)-3-アミノ-1-(3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)-4-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-1-オンである。シタグリプチンは、インクレチンという胃腸管ホルモンの分解を抑制し、インシュリンとグルカゴンとを調節するインクレチンの機能が、体内において良好になされるようにすることにより、血糖を調節し、2型糖尿病患者へのシタグリプチンを経口投与するとき、HbA1cレベルが有意的に低下し、空腹時の血糖レベル、及び食後の血糖レベルが低下すると知られている。
【0004】
ダパグリフロジン(dapagliflozin)(製品名:フォシーガ錠)は、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT-2:sodium-glucose linked transporter 2)抑制剤系薬剤であり、化合物名は(2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオールである。ダパグリフロジンは、腎臓においてSGLT2を選択的に抑制し、尿においてグルコースの排出を増強させ、それにより、インシュリン感受性を改善させ、糖尿病合併症の発病を遅延させることにより、血漿グルコースレベルを正常化させることができる。原開発社であるアストラゼネカABにおいて、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物を有効成分とする錠剤形態(フォシーガ錠)で市販中である。
【0005】
シタグリプチン及びダパグリフロジンは、低血糖の危険性なしに、血糖を降下させる主効果以外にも、シタグリプチンの場合、膵臓ベータ細胞保護効果、GLP-1増加効果があり、ダパグリフロジンの場合、体重減少効果、血圧降下効果があり、2つの有効成分の組み合わせが、相乗的な効果を示す臨床的結果でもって紹介されている。また、糖尿病患者の場合、糖尿が進むほど血糖調節が困難であり、合併症を伴うことになり、特に、高齢者糖尿病患者の場合、高血圧、肥満、高脂血症を共に患っている可能性が高い。そのような糖尿患者の特性上、服薬順応度は、非常に重要な要素であり、服薬順応度の低下は、患者の生の質を落とすだけではなく患者の治療率を低下させ、個人医療費増大と、保険財政の悪化とをもたらしてしまう。従って、シタグリプチンとダパグリフロジンとを含む複合製剤開発が必要である。
【0006】
ところで、前記複合製剤の開発は、適切な生産性、溶出率及び安定性などの確保のために、克服されなければならない山積された問題点により、いまだに試みされていない。シタグリプチン主成分の場合、1錠当たり含有される量が多く、粘性を有するために、生産工程において、パンチ付着(sticking)が起こりやすいという問題点がある。また、ダパグリフロジン主成分の場合、密度が低く、少量にもかかわらず、主成分体積が大きく、生産性が良好ではなく、他の主成分、及び賦形剤と層分離が生じる可能性が高く、主成分が互いに塊になる特性があり、凝集体形成可能性が高いために、製剤生産性を確保し難いという問題点がある。
【0007】
さらに、シタグリプチンとダパグリフロジンとの2つの薬物成分それぞれが示す、血漿において、薬物が最高濃度になる時間(Tmax)がいずれも約1時間ほど(シタグリプチン1~4hr/ダパグリフロジン1~2hr)を示すので、2つの成分をいずれも含むと共に、溶出速度が高い複合製剤を開発する必要がある。
【0008】
適切な生産性、溶出率及び安定性のような薬剤学的要件をいずれも満足することができる複合製剤開発のために、互いに異なる2つの成分のいずれに係わる配合適合性も満足させる賦形剤を選別することは、複合製剤開発分野において、最も重要であり、解決し難い問題点のうちの一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開公報第10-2016-0111237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一態様は、生産性、溶出率、安定性及び配合適合性にすぐれる、シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及びダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物を含む複合製剤を提供するものである。
【0011】
他の一態様は、前記複合製剤の製造方法を提供するものである。
【0012】
本出願の他の目的及び利点は、特許請求の範囲と共に、下記の詳細な説明によってさらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野内、または類似した技術分野内において、当業者であるならば、十分に認識して類推することができるものであるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様は、シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;及び
滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム;を含む乾式顆粒を含む複合製剤であり、
前記乾式顆粒は、フマル酸ステアリルナトリウムを、複合製剤総重量に対し、1~5重量%含むものである複合製剤を提供する。
【0014】
他の一態様は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及びダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物;賦形剤;並びに滑沢剤を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
前記顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合する段階と、を含む前記一態様による複合製剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
一態様による、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む複合製剤は、生産性、溶出率、安定性及び配合適合性にすぐれる複合製剤を製造することができ、前記2つの薬物の併用投与が必要な患者の服薬順応度を高めることができる。一態様による製造方法は、複合製剤のフロー性及び打錠性などの製剤学的特性を改善され、製造生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ステアリン酸マグネシウム存在いかんを異にして製造した圧着フレーク及び錠剤を撮影した写真である。
図2】シタグリプチン及び乳糖を混合して打錠した錠剤、及びシタグリプチン及び乳糖以外の賦形剤と混合して打錠した錠剤の写真である。
図3】複合製剤において、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))の量を異ならせた実施例5及び比較例5の打錠後の錠剤外観を撮影した写真、及びそれぞれの錠剤製造時、混合粉末排出所要時間を測定した結果を示した図である。
図4】実施例5~8、並びに比較例6及び8のシタグリプチン溶出試験結果を示したグラフである。
図5】実施例5~8、並びに比較例6及び8のダパグリプロジン溶出試験結果を示したグラフである。
図6】複合製剤において、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))及び/またはL-HPCの量を異ならせた実施例9~11及び比較例9~11シタグリプチンの溶出試験結果を示したグラフである。
図7】複合製剤において、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))及び/またはL-HPCの量を異ならせた実施例9~11及び比較例9~11のダパグリフロジンの溶出試験結果を示したグラフである。
図8】複合製剤において、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))及び/またはL-HPCの量を異ならせた実施例10,12~14、及び比較例12~14のシタグリプチンの溶出試験結果を示したグラフである。
図9】複合製剤において、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))及び/またはL-HPCの量を異ならせた実施例10,12~14、及び比較例12~14のダパグリフロジンの溶出試験結果を示したグラフである。
図10】実施例9~11及び比較例9~11につき、加速露出条件(40℃、相対湿度75%、オープンディッシュ状態)で1週保管後、錠剤の外観に係わる写真、及び錠剤厚を測定し、膨脹率を計算した結果を示した図である。
図11】フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))の存在いかんを異ならせた実施例9及び比較例12の乾式顆粒製造のための圧縮工程時、フレーク外観を撮影した写真である。
図12】実施例9~14及び比較例9~14の加速条件において、シタグリプチンの総類縁物質(%)を測定し、その結果を図示したグラフである。
図13】実施例9~14及び比較例9~14の加速条件において、ダパグリプロジンの総類縁物質(%)を測定し、その結果を図示したグラフである。
図14】複合製剤において、水分含量を異ならせた実施例10,15,16及び比較例15~17の水分過飽和(25℃、相対湿度90%)条件における、1,2週後のシタグリプチンの総類縁物質(%)を測定し、その結果を図示したグラフである。
図15】複合製剤において、水分含量を異ならせた実施例10,15,16及び比較例15~17の水分過飽和(25℃、相対湿度90%)条件における、1,2週後のダパグリプロジンの総類縁物質(%)を測定し、その結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0018】
本明細書で使用される全ての技術用語は、異なって定義されない以上、関連分野において当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、望ましい方法や試料が記載されるが、それと類似しているか、あるいはそれと同等なものも、本明細書の範疇に含まれる。また、本明細書に記載された数値は、明示されなくとも、「約」の意味を含むものと見なされる本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、全体が本明細書に参照として統合される。本明細書で使用された用語「約」は、言及される値がある程度変わりうるということを意味する。例えば、「約5」は、4.5と5.5との間、4.75と5.25との間、4.9と5.1との間、または4.95と5.05との間の任意の値を含むということを意味する。本明細書で使用された用語「有する」、「有しうる」、「含む」または「含むものでもある」というような表現は、当該特徴(例:数値または成分などの構成要素)の存在を示すが、さらなる特徴の存在を排除するものではない。
【0019】
一態様は、シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物と、
ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物と、
滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウムと、を含む乾式顆粒を含む複合製剤であり、
前記乾式顆粒は、フマル酸ステアリルナトリウムを、複合製剤総重量に対し、1~5重量%含むものである複合製剤を提供する。
【0020】
一具体例において、前記複合製剤は、乾式顆粒外部に、滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムを追加して含み、複合製剤内に存在するフマル酸ステアリルナトリウム総量は、製剤総重量対比で、3~8重量%でもある。
【0021】
主成分である前記シタグリプチンまたはダパグリフロジンは、それらの結晶形、水和物、共結晶、溶媒化物、塩、部分立体異性体または鏡像異性体をいずれも含むものである。
【0022】
前記薬剤学的に許容可能なその塩は、当該技術分野で一般的に使用されうる任意の薬剤学的に許容される塩を称する。
【0023】
一具体例において、前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、シタグリプチンリン酸塩水和物でもある。
【0024】
一具体例において、前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、薬剤学的に許容可能なダパグリフロジンの共結晶でもある。一具体例において、前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩は、ダパグリフロジンL-プロリンまたはダパグリフロジンプロパンジオールでもある。
【0025】
一具体例において、前記シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、10~40重量%、例えば、25~35重量%で含むものでもある。
【0026】
一具体例において、前記ダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物は、複合製剤総重量において、2~10重量%、例えば2~6重量%で含むものでもある。
【0027】
実験結果、一般的に、滑沢剤として、最も汎用されるステアリン酸マグネシウムは、本出願の複合製剤の生産性及び打錠性を上昇させるが、主成分の類縁物質を経時的に増加させるために、非常に不利であると確認された(試験例1及び3)。それに反し、フマル酸ステアリルナトリウムは、生産性及び打錠性を上昇させるだけでなく、類縁物質の基準を満足することができるほどに安定した複合製剤を形成することができる(試験例3)。前記フマル酸ステアリルナトリウムは、乾式顆粒内において、複合製剤総重量に対し、1~5重量%で含まれ、前記含量範囲に及びえない場合、十分な生産性が確保されえないという危惧があり、それを超える場合、主成分の溶出率及び安定性の低下が危惧される(試験例4,5,6,7及び8を参照)。選択的に、乾式顆粒外部に、追加して、フマル酸ステアリルナトリウムを含むものでもあり、それを含む複合製剤内に存在するフマル酸ステアリルナトリウム総量は、製剤総重量対比で、3~8重量%でもある。それに及びえない場合、十分な生産性が確保されえない危惧があり、それを超える場合、主成分の溶出率低下及び安定性低下が危惧される(試験例4及び試験例8を参照)。
【0028】
前記複合製剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤及び放出調節剤のうちから選択される1種以上の賦形剤を含むものでもある。
【0029】
前記希釈剤は、例えば、D-マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微晶質セルロース(MCC)、スクロース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、及びそれらの任意の混合物によってなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0030】
一具体例において、前記希釈剤は、D-マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微晶質セルロース、及びそれらの任意の混合物によって構成された群のうちからも選択される。
【0031】
前記崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Naまたはクロスカルメロースナトリウム(C.CMC Na))、とうもろこし澱粉、カルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、及びそれらの任意の混合物によってなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記崩壊剤は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)である。
【0032】
前記結合剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン、及びそれらの任意の混合物によってなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0033】
前記放出調節剤は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニル高分子、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアガム、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、メチルセルロース及びその誘導体、ポビドン・ポリ酢酸ビニル共重合体、並びにそれらの任意の混合物によってなる群のうちからも選択されるが、それらに限定されるものではない。一具体例において、前記放出調節剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0034】
一具体例において、前記複合製剤は、微晶質セルロース(MCC)、マンニトール、前糊化澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(cross-linked CMC Na)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びそれらの任意の混合物のうちから選択される賦形剤を含むものでもある。
【0035】
一具体例において、前記乾式顆粒は、崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)を、複合製剤総重量に対し、5~20重量%で含むものでもある。該低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)が前記含量範囲に及びえない場合には、崩壊速度が遅くなることになり、それにより、序盤の溶出速度が遅くなるという問題点が生じる。一方、該低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)が前記含量範囲を超える場合には、保管時、水分吸収により、錠剤の膨張率が急激に上昇することになり、外観安定性が顕著に落ち(試験例7参照)、主成分の類縁物質が顕著に増加することになるという問題点にぶつかる(試験例8参照)。
【0036】
一具体例において、前記乾式顆粒は、水分を、複合製剤総重量に対し、5重量%以下で含むものでもある。水分含量が前記範囲を超える場合、水分に敏感な2種主成分の類縁物質が顕著に増加することになると確認された(試験例9参照)。従って、賦形剤のバッチ/等級別に原料を選定する場合、水分含量が少ない原料を選択することにより、主成分の類縁物質増加を防ぐことができる安定した複合製剤を製造することができる。
【0037】
前記複合製剤は、錠剤、カプセル剤または顆粒剤の形態でもある。一具体例による複合製剤は、混合錠または二層錠でもある。
【0038】
前記複合製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を追加して含むものでもあり、前記薬学的に許容可能な賦形剤としては、抗酸化剤、甘味剤、保存剤、コーティング剤、粘度調節剤、及びそれらの任意の混合物によってなる群のうちから選択される成分を使用することができる。
【0039】
前記錠剤は、さらには、当該技術分野において、一般的に使用されうる薬学的速放フィルムコーティング基剤でもって、一般的な方法によってもコーティングされる。一具体例において、前記錠剤は、裸錠総重量を基準に、Opadry IIコーティング液でもって、約3%防湿フィルムコーティングされうる。
【0040】
前記複合製剤は、縦横長がそれぞれ約5~15mmである形態でもある。前記複合製剤の厚みは、約3~8mmでもある。一具体例による複合製剤は、縦横長がそれぞれ約5~15mmであり、厚みが約3~8mmである形態でもある。一具体例による複合製剤は、横約10~15mm、縦約5~10mm、厚み約3~8mmである形態でもある。前記複合製剤の横長は、例えば、約10,11,12,13,14,15mmでもある。前記縦複合製剤の縦長は、例えば、約5,6,7,8,9,10mmでもある。前記複合製剤の厚みは、例えば、約3,4,5,6,7,8mmでもある。
【0041】
前記複合製剤は、長方形の楕円錠剤でもある。前記複合製剤は、2つの有効成分をそれぞれ含む2個の錠剤を服用する場合よりも、喉通りにすぐれる。一般的に、薬物投与後、人体喉の狭い部位を通過するとき、錠剤は、最小断面積を維持して喉を通ることになる。この時、錠剤の小断面積を維持するためには、錠剤の横・縦・厚みのうち、小さい値を有する2つの変数を維持して喉通りがなされることになる。一具体例によるシタグリプチン及びダパグリフロジンの2つの有効成分を含む複合製剤は、それぞれの有効成分の単一錠剤2個を同時に服用する場合と比較し、薬の大きさ、重さ、喉通り時の断面積を小さくすることができ、大きい錠剤の喉通りに不都合を感じる患者の服用便宜性を高めることができる。
【0042】
前記複合製剤は、1以上の糖尿病治療剤をさらに含むものでもある。例えば、前記複合製剤は、メトホルミン、または薬剤学的に許容可能なその塩を追加してさらに含むものでもある。一具体例による複合製剤は、シタグリプチン、ダパグリフロジン及びメトホルミンを含む3剤複合製剤でもある。
【0043】
他の一態様は、前記複合製剤の製造方法を提供する。
【0044】
一具体例による前記製造方法は、
シタグリプチン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、及びダパグリフロジン、または薬剤学的に許容可能なその塩、またはそれらの水和物、賦形剤、並びに滑沢剤を含む混合部を製造する段階と、
前記混合部を乾式顆粒化する段階と、
前記顆粒物に滑沢剤をさらに付加して混合する段階と、を含むものでもある。
【0045】
前記乾式顆粒化する段階は、薬剤学分野で一般的に遂行される乾式顆粒法によってもなされる。一具体例において、前記乾式顆粒法は、ローラ圧着機(roller compactor)を利用し、圧着フレークを形成する段階を含むものでもある。
【0046】
一具体例において、前記製造方法は、滑沢剤を混合した顆粒物を打錠する段階をさらに含むものでもある。
【0047】
以下、本発明について、実施例によって詳細に説明する。しかし、それら実施例は、単に例示的なものに過ぎず、本発明は、それら実施例によって制限されると意図されるものではない。
【0048】
試験方法
下記試験例において、類縁物質分析、溶出物質分析及び含量分析の条件は、以下のような方法で遂行した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
FDA_Clinical Pharmacology Biopharmaceutics Reviewを参照すれば、シタグリプチンとダパグリフロジンとの血漿において、薬物が最高濃度になる時間(Tmax)は、それぞれ約1~4h、約0.5~1.5hであり、生体利用率は、それぞれ78%、87%である。それにより、各主成分のIVIVC(in vitro-in vivo correlation)溶出試験液として、pH1.2溶出試験液を選定し、溶出採取間隔を、5,10,15,30,45分に定め、その後、最終飽和溶出率を測定した。
【0052】
【表3】

【0053】
試験例1:滑沢剤による類縁物質試験
一般的に広く使用されるステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として使用する場合による複合製剤の安定性について試験した。下記表1による処方でもって、下記[サンプル製法]によって錠剤を製造した。その後、各サンプルについて類縁物質を測定し、(表1~3)、ステアリン酸マグネシウム存在いかんによる圧着フレーク及び錠剤の外観を比較した(図1)。図1は、ステアリン酸マグネシウム存在いかんによる圧着フレーク及び錠剤を撮影した写真である。
【0054】
[サンプル製法]
(1)秤量:各成分1,000T分量を秤量した。
【0055】
(2)篩過:最終混合に投入される滑沢剤を除いた全ての成分を30メッシュ篩で通過させて篩過した。
【0056】
(3)混合:篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpmで30分間混合した。
【0057】
(4)圧縮(compacting):ローラコンパクタ(roller compactor)を利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した。
【0058】
(5)整粒:オシレータ(oscillator)を利用し、前記(4)段階で製造されたフレークを20メッシュで整粒した。
【0059】
(6)最終混合:前記(5)段階で製造された結果物と、残っている最終混合滑沢剤とを投入し、Bin Mixerを利用し、17rpmで5分間混合した。
【0060】
(7)打錠:AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、直径8.0mmの円形パンチを利用し、錠剤硬度10~12kpで打錠した。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
前記実験結果によれば、シタグリプチン及びダパグリフロジンが共に含まれた混合顆粒において、滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウムが使用される場合、加速保管条件において、類縁物質が大きく増加し、またステアリン酸マグネシウムを除く場合、顆粒工程時及び製品打錠時、パンチ及び生産設備に接着されるイシューによる生産性低下が生じた。従って、該滑沢剤は、生産性及び打錠性のために必要であるが、ステアリン酸マグネシウムは、主成分の安定性を低下させ、適切ではないと確認された。
【0065】
試験例2:賦形剤による類縁物質試験
製造例1
シタグリプチンとダパグリフロジンとの2つの主成分の共存時、安定性を評価するために、シタグリプチンリン酸塩水和物128.5mg(シタグリプチンとして100mg)とダパグリフロジンプロパンジオール12.3mg(ダパグリフロジンとして10mg)とを含む錠剤を圧着して製造した。AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)打錠機を使用し、フレーク(flake)を形成させ、加速条件(40℃/75%RH)1ヵ月/2ヵ月で類縁物質発生量を測定し、安定性を確認した。
【0066】
製造例2
主成分シタグリプチンと賦形剤との配合適合性を調べるために、該賦形剤の種類を異ならせ、シタグリプチンと混合した。前述の賦形剤と主成分シタグリプチンとに対し、20メッシュ篩過後、Tubular Mixerを使用し、各30分ずつ混合した。その後、他の主成分であるダパグリフロジンを投入し、混合及び圧着して錠剤で製造した。AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)打錠機を使用し、フレークを形成させ、加速条件(40℃/75%RH)1ヵ月/2ヵ月で類縁物質発生量を測定し、安定性を確認した。
【0067】
製造例3
主成分ダパグリフロジンと賦形剤との配合適合性を調べるために、賦形剤の種類を異ならせ、ダパグリフロジンと混合した。前述の賦形剤と主成分ダパグリフロジンとに対し、20メッシュ篩過後、Tubular Mixerを使用し、各30分ずつ混合した。その後、他の主成分であるシタグリプチンを投入し、混合及び圧着して錠剤で製造した。AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)打錠機を使用し、フレークを形成させ、加速条件(40℃/75%RH)1ヵ月/2ヵ月で類縁物質発生量を測定し、安定性を確認した。
【0068】
総類縁物質含量の基準
常用される総類縁物質含量基準は、国内許可された類縁物質基準により、シタグリプチンの場合、総類縁物質0.2%未満であり、ダパグリフロジンの場合、総類縁物質2.0%未満であるとしている。
【0069】
【表7】

【0070】
製造例1及び製造例2で製造された錠剤を利用して測定された類縁物質試験結果を前記表4に示した。前記表4でのように、シタグリプチンの場合、賦形剤として、乳糖水和物またはリン酸二カルシウム水和物(DCP水和物)を含む場合、総類縁物質含量が、それぞれ0.2%超過であり、基準を満足することができなかった。
【0071】
特に、シタグリプチンと乳糖水和物を混合する場合、加速2ヵ月で外観を観察時高温で茶色物質を作り出すメールラード反応(MaillardReaction)による茶色に変えること現象を見せて処方に相応しくないことを確認した(図2)。図2は、シタグリプチン及び乳糖水和物を混合して打錠した錠剤、及びシタグリプチンを乳糖以外の賦形剤と混合して打錠した錠剤の写真である。
【0072】
【表8】

【0073】
製造例1及び製造例3で製造された錠剤を利用して測定した類縁物質試験結果を前記表5に示した。前記表5でのように、ダパグリフロジンの場合、賦形剤として、リン酸二カルシウム無水物(DCP無水物)を含む場合、総類縁物質含量が、それぞれ2.0%超過であり、基準を満足することができなかった。また、該賦形剤として、リン酸二カルシウム水和物(DCP水和物)を含む場合にも、総類縁物質含量基準は、満足したが、他の賦形剤対比で、類縁物質発生量が多かった。
【0074】
試験例3:滑沢剤及び賦形剤による類縁物質試験
前記試験例1及び2における処方別安定性比較結果を基に、生産に適し、安定性が確保された滑沢剤ないし賦形剤の選定が必要であるということを確認した。従って、さまざまな種類の滑沢剤及び賦形剤の種類による安定性試験を行った。錠剤生産を完了した後、加速条件及び苛酷条件において、安定性評価を進めた。
【0075】
下記表6による処方により、下記[サンプル製法]によって錠剤を製造した。
【0076】
[サンプル製法]
(1)秤量:各成分を1,000T分量を秤量した
【0077】
(2)篩過:最終混合に投入する滑沢剤を除いた全ての賦形剤を30メッシュ篩で通過させて篩過した
【0078】
(3)混合:篩を通過した粉末を、Bin Mixerを利用し、17rpm、30分間混合した
【0079】
(4)圧縮:ローラコンパクタを利用し、ロールrpm3.0/スクリューrpm35.0rpm、油圧2.5Mpaを利用し、圧着フレークを形成した
【0080】
(5)整粒:オシレータを利用し、前記(4)段階で製造されたフレークを20メッシュで整粒した
【0081】
(6)最終混合:前記(5)段階で製造された結果物と、残っている最終混合滑沢剤とを投入し、Bin Mixerを利用し、17rpm5分間混合した
【0082】
(7)打錠:AutoTab-200TR(市橋精機(株)、日本)を利用し、横12.8mm、縦7.0mmの長方形パンチを利用し、錠剤硬度12~14kpで打錠した
【0083】
【表9】

【0084】
加速条件(40℃、相対湿度75%)における保管時、シタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を下記表7に示した。
【0085】
【表10】

【0086】
加速条件(40℃、相対湿度75%)における保管時、ダパグリフロジンの総類縁物質を評価した結果を下記表8に示した。
【0087】
【表11】

【0088】
苛酷条件(60℃)における保管時、シタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を下記表9に示した。
【0089】
【表12】

【0090】
苛酷条件(60℃)における保管時、ダパグリプロジンの総類縁物質を評価した結果を下記表10に示した。
【0091】
【表13】

【0092】
前記表7~10の結果によれば、滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))を使用する場合(実施例1~3)、類縁物質基準を満足すると示され、安定性を阻害しない適切な滑沢剤であると確認された。それに反し、比較例1~4によれば、他の滑沢剤であるモノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸スクロースのいずれにおいても、加速条件及び苛酷条件の基準に不適であるということを確認した。
【0093】
また、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))と共に、賦形剤として、微晶質セルロース、D-マンニトール及び/または低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを使用した場合、類縁物質安定性が確保されたが(実施例1~3)、フマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))と共に、賦形剤として、リン酸二カルシウム無水物を使用した場合(実施例4)加速条件及び苛酷条件のダパグリフロジン類縁物質基準を満足することができなかった。
【0094】
試験例4:滑沢剤量による生産性評価
前記試験例3において、安定性が確保されたフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV(登録商標))、並びに微晶質セルロース、D-マンニトール及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを対象に、滑沢剤量による生産性評価を進めた。また、サンプル製造完了後、加速条件及び苛酷条件において安定性評価を進め、前記サンプル製造は、前記試験例3の方法と同一に行った。
【0095】
【表14】

【0096】
実施例5及び比較例5の打錠後の錠剤外観を写真撮影し、各錠剤打錠時の顆粒排出所要時間を測定し、その結果を図3に示した。前記「打錠時の顆粒排出所要時間」とは、打錠進行中、フィーダ内部に充填された顆粒が、全部錠剤に打錠され、フィーダ内部顆粒がいずれも消尽されるのに所要される時間を言い、本試験においては、フィーダにいっぱい詰められた顆粒量が420gであるときを基準に評価した。
【0097】
試験例5:滑沢剤量による安定性評価
前記表11によって製造されたサンプルにつき、加速条件(40℃、相対湿度75%)における保管時、滑沢剤量による錠剤のシタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を下記表12に示した。
【0098】
【表15】

【0099】
加速条件(40℃、相対湿度75%)における保管時、滑沢剤量による錠剤のダパグリフロジンの総類縁物質を評価した結果を下記表13に示した。
【0100】
【表16】

【0101】
苛酷条件(60℃)における保管時、滑沢剤量による錠剤のシタグリプチンの総類縁物質を評価した結果を下記表14に示した。
【0102】
【表17】

【0103】
苛酷条件(60℃)における保管時、滑沢剤量による錠剤のダパグリフロジンの総類縁物質を評価した結果を下記表15に示した。
【0104】
【表18】

【0105】
試験例6:滑沢剤量による溶出率評価
前記表11によって製造されたサンプルにつき、溶出率評価を行い、その結果を、図4及び図5に示した。
【0106】
図4は、実施例5~8、並びに比較例6及び8のシタグリプチン溶出試験結果を示したグラフである。
【0107】
図5は、実施例5~8、並びに比較例6及び8のダパグリプロジン溶出試験結果を示したグラフである。
【0108】
それと共に、実施例5~8、並びに比較例6及び8の主成分含量を評価した。その結果を、下記の表16及び表17に示した。
【0109】
【表19】

【0110】
【表20】

【0111】
前記試験例4の試験結果によれば、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の3%に及びえない場合(比較例5及び7)、滑沢剤の量が不足し、錠剤打錠時、打錠障害が生じた。また、打錠工程進行時、打錠時の顆粒排出所要時間が遅延されるために、生産性が落ちると確認された。それに反し、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の3%以上である場合(実施例5~8及び比較例6、比較例8)は、打錠障害なしに錠剤が打錠された。図3によれば、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の3%以上frsつ実施例5の場合は、3重量%未満の比較例5の場合に比べ、打錠障害なしに円滑に錠剤が製造され、混合粉末排出時間も顕著に短いということを確認することができる。
【0112】
前記試験例5の試験結果によれば、比較例5~8と実施例5~8は、加速条件及び苛酷条件において、基準に適する類縁物質安定性が確保されることはされたが、滑沢剤の比率が相対的に高い比較例6及び比較例8は、苛酷条件において、シタグリプチン及びダパグリフロジンの2成分いずれも、類縁物質基準に近接するように増加する傾向を示した
【0113】
前記試験例6の試験結果によれば、フマル酸ステアリルナトリウムが、錠剤総重量の8%を超えて存在する場合、主成分の溶出率低下が示されると確認された。具体的には、比較例6及び比較例8は、実施例6及び実施例8と溶出様相を比較するとき、溶出率の低下が示された(図4及び図5参照)。さらには、試験例8の含量評価結果によれば、各錠剤において、主成分含量の低下がないと確認された(表16及び表17参照)。それを総合するとき、顆粒の過滑沢により、溶出率低下が示されたと判断された。
【0114】
試験例7:滑沢剤量及び賦形剤量による溶出率、生産性及び外観安定性の評価
下記の表18及び表19に記載された組成により、主成分として、シタグリプチン及びダパグリフロジンを含む錠剤を製造した。
【0115】
具体的には、シタグリプチン塩酸塩一水和物物、ダパグリフロジンプロパンジオール、微晶質セルロース、D-マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカメルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース及びフマル酸ステアリルナトリウムに対し、20号篩で篩過を行い、大きい塊を粉砕させ、良好に混合した。該混合物に対し、ローラ圧縮機(TF-1-A60(Freund Vector))を利用し、フレークを形成した後、20号篩で整粒して乾式顆粒を製造した。製造された乾式顆粒に、滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムを5分間さらに混合し、最終混合部を製造する。製造された最終混合部を、打錠機(Autotab-200TR(市橋精機(株)製))を利用し、適切な硬度に合うように打錠し、裸錠状態の半製品を製造した。
【0116】
【表21】

【0117】
【表22】

【0118】
実施例9~14及び比較例9~14のシタグリプチン、ダパグリフロジンの溶出率を測定し、その結果を図6図9に表示した。
【0119】
また、実施例9~11及び比較例9~11につき、加速露出条件(40℃、相対湿度75%、オープンディッシュ状態)で1週保管後、錠剤の外観を観察し、錠剤厚を測定し、膨脹率を計算した。その結果を、図10に示した。
【0120】
また、顆粒内フマル酸ステアリルナトリウムが含有された顆粒である実施例9、及びそれを含んでいない比較例12の乾式顆粒製造のための圧縮工程時のフレーク外観を比較し、当該フレーク外観を撮影した写真を図11に示した。
【0121】
[低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)量による溶出パターン及び外観安定性比較]
図6,7に示されているように、実施例9~11と比較例9~11との溶出パターン比較時、実施例9~11の場合、各主成分が、対照薬対比で、類似しているということを確認し、それは、一般的に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)が、希釈剤と崩壊剤との役割を同時に行うので、序盤の崩壊力増大により、序盤の溶出率上昇につながり、それにより、対照薬の溶出と類似したパターンを示すものと見られる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)量が相対的に少ない比較例9及び10の場合、序盤の溶出速度が遅いということを確認した。それはさらに、相対的に崩壊速度が遅く、水不溶性である賦形剤である微晶質セルロース量増加により、大きい溶出率偏差を引き起こし、それは、患者に対する均一な薬物投与に問題になる素地がある。一方、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)量が相対的に多い比較例11の場合にも、序盤の溶出速度が速く、対照薬と類似したパターンを示したが、崩壊剤の過多使用は、追手の外観及び加速安定性に問題を引き起こしうると確認された。図10に示されているように、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)が30重量%使用された比較例11の場合、水分吸収により、膨脹率が急激に上昇し、それは、錠剤の外観が大きく変化するので、外観安定性に問題が生じうると確認された。
【0122】
結論として、溶出評価を介し、序盤の崩壊力確保のための低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)の量は、錠剤総重量対比で、5重量%以上の範囲で有効であるが、過度に過量を含む場合、外観安定性に問題があると確認された。
【0123】
[PRUV量による溶出パターン及び生産性比較]
図8及び図9に示されているように、実施例10,12~14と、比較例12~14との溶出パターンを比較するとき、実施例10,12~14の場合、各主成分が、対照薬と類似した溶出パターンを示した。表20に示されているように、顆粒内PRUV滑沢剤が添加されていない比較例12の場合、溶出パターンは、良好であったが、乾式顆粒工程において、ローラに付く圧着現象(図11)が起こり、それは、工程中において機器にトラブル(trouble)が起こり、顆粒収率が低くなり、生産性を低下させた。それは、顆粒製造工程時、滑沢剤の添加を介し、生産性向上を示すことができることを意味する。比較例13,14の場合、相対的にPRUV量が多い処方(顆粒内含量5重量%超過)に該当し、そのような過滑沢時、溶出が遅延されるという現象を示した。特に、驚くべきことに、比較例13,14の場合、実施例14と比較し、薬物の溶解速度を顕著に低下させ、薬物を飽和させた溶出時点(Max)においても、相対的に低い溶出率を示した。それは、患者に対する均一な薬物投与に問題になる素地があり、薬効発現時間が相対的に遅く示される。従って、乾式顆粒工程私のPRUVの量は、1~5重量%の範囲において有効であると判断することができる。
【0124】
【表23】

【0125】
試験例8:滑沢剤量及び賦形剤量による類縁物質評価
試験例7によって選定された剤形をもって剤形の安定性を確認するために、加速試験を施行し、類縁物質を評価した。包装材質として、シリカゲルが同封されたHDPEボトルに包装し、加速チャンバに管理した。
【0126】
実施例9~14及び比較例9~14のシタグリプチン及びダパグリフロジンの総類縁物質(%)を測定し、その結果を、図12及び図13に図示した。
【0127】
[加速条件における総類縁物質比較]
図12,13に示されているように、実施例9~14と比較例9~14との加速安定性総類縁物質(%)の比較時、実施例9~11の場合、各主成分が、対照薬対比で、総類縁物質量が少なく、追って加速安定性も確保することができる。実施例12~14の場合、対照薬対比で、総類縁物質量は、多いが、基準以内で適するもので合った。比較例11(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)30重量%含有)の場合、加速3ヵ月、類縁物質量が基準以内であるとしても、大幅に増加し、それは、追って加速6ヵ月の安定性も低く、「医薬品などの安定性試験基準」による製品許可時にも、安定性問題の素地が生じることになり、他の処方対比で、有意味に顕著に類縁物質が増加するので、不適な薬剤学的処方と判断される。それは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)の過多使用により、吸湿性による水分不安定性を示したものであると解釈される。従って、試験例7及び8のデータによれば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)は、錠剤総重量に対し、5~20重量%に設定することが望ましいと確認される。
【0128】
また、PRUVの過度な使用も、類縁物質に影響を及ぼすと確認された。処方内低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)量が一定している実施例10、実施例12~14、比較例12~14について見れば、実施例10、実施例12~14、比較例12の場合、錠剤総重量対比で、総PRUVの含量が3~7重量%以内であり、顆粒内PRUVの含量が1~5重量%に該当し、安定性が確保されたが、比較例13及び14の場合、それぞれPRUVが、総重量対比で、顆粒内5重量%を超え、総PRUVの含量が、それぞれ7.5,10重量%と、類縁物質生成が大幅に増加し、保管安定性が顕著に低かった。それは、複合製剤総重量対比で、総PRUVが1~7重量%であり、顆粒内PRUVの含量が1~5重量%でる場合、薬剤学的処方配合に適し、同時に向上された保管安定性を確保すことができるということを示している。
【0129】
試験例9:初期水分含量による安定性試験
主成分の水分不安定性により、試験例7及び8によって選定された実施例10を基準に、水分含量のみを異にする錠剤を製造し、水分含量による安定性を評価した。
【0130】
剤形と主成分との配合適合性は、確認されたが、相対的に、原料の水分基準範囲が広い希釈剤(微晶質セルロース)及び崩壊剤(クロスカルメルロースナトリウム)を選定し、そのうち、バッチ/等級別水分含量によって組み合わされた処方でもって、水分含量の確認及び安定性様相を確認した(バッチ別:同一グレード内バッチ別に、調査を介し、製造所成績書内の水分試験結果によって選定;等級別:微晶質セルロース/クロスカルメルロースナトリウム製造所グレード査を介し、製造所成績書内の水分試験結果によって選定)。
【0131】
賦形剤のバッチ/等級別に組み合わせ、実施例10,15,16及び比較例15~17を製造し、剤形当たり総水分含量(表面水及び結晶水を含む)を測定した。大韓民国薬典一般試験法中の水分測定法(カール・フィッシャー滴定)において、容量滴定法により、水分測定用メタノールを利用し、直接滴定法を使用し、水分含量を測定した。その結果を下記表21に示した。
【0132】
また、実施例10,15,16及び比較例15~17を水分過飽和(25℃、相対湿度90%)条件で、1,2週保管した後、シタグリプチン、ダパグリフロジンの総類縁物質(%)を測定し、その結果を図14,15に表示した。
【0133】
【表24】

【0134】
水分含量測定結果、実施例10,15,16の場合、剤形当たり水分の総含量が約5%以内であり、比較例15~17の場合、5%以上の初期剤形内水分を含んでいた。それは、希釈剤及び崩壊剤の原料の水分含有量が高いバッチ/等級を組み合わせた結果、初期総水分含量も高く示された。
【0135】
水分過飽和(25℃、相対湿度90%)条件における1,2週保管結果、初期水分の含量により、類縁物質量が増加する傾向が顕著であり、比較例15~17の場合、基準を超える結果を示した。それは、初期水分含有量を調節し、さらに安定した剤形を設計することができるということを意味するものであり、剤形の設計時、初期水分含有量が5%以内になるように、バッチ/等級別原料を選定する場合、水分に敏感な2種主成分に対し、安定性が向上された剤形を製造することができる。
【0136】
当業者であるならば、本発明が、その思想、または本質的な特性を外れずに、他の特定形態に具体化されうるということを認識するであろう。記述された実施例は、全ての面において、単に例示的なものに過ぎず、制限的なものではない。従って、本発明の範囲は、前述の説明よりは、特許請求の範囲によって提示される。特許請求の範囲と均等な意味、 及び該範囲内にある全ての変更は、本発明の範囲内に含まれるものである。

図1
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【国際調査報告】