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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20230731BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20230731BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20230731BHJP
【FI】
H04B7/06 960
H04B7/08 810
H04B7/0413 320
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501398
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021017016
(87)【国際公開番号】W WO2022169463
(87)【国際公開日】2022-08-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 健
(72)【発明者】
【氏名】イエック マーク
(72)【発明者】
【氏名】サドゥー ボディスタワ
(72)【発明者】
【氏名】アルーン パイディマッリー
(57)【要約】
フェーズドアレイアンテナ(1)は、複数のアンテナ素子(11a~11d)と、アンテナ素子の各々に接続される複数の信号経路(R11、R12)と、アンテナ素子の少なくとも1つに関し、接続される複数の信号経路のうち、予め規定された少なくとも1つの基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値を、設定すべきアンテナ指向性の少なくとも1つにおいて記憶する記憶部(M)と、設定値が記憶部に記憶されたアンテナ素子における基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方と、当該アンテナ素子における基準経路以外の信号経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方とを、記憶部に記憶された設定値を用いて制御する振幅位相制御部(22、26)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と、
前記アンテナ素子の各々に接続される複数の信号経路と、
前記アンテナ素子の少なくとも1つに関し、接続される前記複数の信号経路のうち、予め規定された少なくとも1つの基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値を、設定すべきアンテナ指向性の少なくとも1つにおいて記憶する記憶部と、
前記設定値が前記記憶部に記憶された前記アンテナ素子における前記基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方と、
当該アンテナ素子における前記基準経路以外の前記信号経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方とを、
前記記憶部に記憶された前記設定値を用いて制御する振幅位相制御部と、
を備えるフェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
前記記憶部は、前記アンテナ素子の全てについての前記設定値を記憶する、
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
前記記憶部は、前記基準経路と前記基準経路以外の前記信号経路との経路間誤差を更に記憶しており、
前記振幅位相制御部は、前記記憶部に記憶された前記設定値を用いて、前記設定値を前記経路間誤差で補正した補正設定値で、前記基準経路以外の前記信号経路によって伝送される前記信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御する、
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
前記記憶部は、前記経路間誤差を複数記憶しており、
前記振幅位相制御部は、前記設定すべきアンテナ指向性に応じて、前記経路間誤差を1つ選択する、
請求項3に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項5】
前記複数の信号経路として、
前記アンテナ素子の各々から送信される複数の送信信号が伝送される送信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々で受信される複数の受信信号が伝送される受信信号経路と、
が設けられている請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項6】
前記複数の信号経路として、
前記アンテナ素子の各々から第1偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第1送信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々で前記第1偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第1受信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々から第2偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第2送信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々で前記第2偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第2受信信号経路と、
が設けられている請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項7】
前記複数の信号経路を順次切り替える切替部を備える、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項8】
前記設定値は、前記設定すべきアンテナ指向性の数だけ設けられている、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項9】
前記設定値は、前記設定すべきアンテナ指向性の数の一部のみに設けられている、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項10】
複数のアンテナ素子と、
前記アンテナ素子の各々から第1偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第1送信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々で前記第1偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第1受信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々から第2偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第2送信信号経路と、
前記アンテナ素子の各々で前記第2偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第2受信信号経路と、
前記複数のアンテナ素子の全てに関し、前記第1送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第1受信信号経路によって伝送される受信信号のうちの何れか一方の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値である第1設定値と、前記第2送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第2受信信号経路によって伝送される受信信号のうちの何れか一方の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値である第2設定値とを、設定すべきアンテナ指向性の全てにおいて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1設定値を用いて、前記第1送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第1受信信号経路によって伝送される受信信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御し、
前記記憶部に記憶された前記第2設定値を用いて、前記第2送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第2受信信号経路によって伝送される受信信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御する振幅位相制御部と、
を備えるフェーズドアレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ素子に供給される信号(送信信号)又は複数のアンテナ素子から供給される信号(受信信号)の振幅又は位相の少なくとも一方(振幅のみ、位相のみ、振幅及び位相、の何れか)を調整することによって、アンテナ指向性を自在に変化させることができるアンテナである。このようなフェーズドアレイアンテナは、近年では、自動車分野、通信分野、その他の様々な分野で用いられている。
【0003】
以下の特許文献1には、従来のフェーズドアレイアンテナの一例が開示されている。このフェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ素子と、複数のアンテナ素子に対応する複数の振幅位相制御器と、複数の振幅位相制御器に対する振幅及び位相の設定値を記憶するメモリとを備えている。そして、メモリに記憶された設定値を振幅位相制御器に設定し、複数のアンテナ素子から供給される複数の信号の振幅及び位相を調整することにより、必要なアンテナ指向性を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-212947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のフェーズドアレイアンテナは、上述した通り、メモリに記憶された設定値を参照して、複数のアンテナ素子から供給される複数の信号の振幅及び位相を調整している。このため、アンテナ指向性の数、アンテナ素子の数、並びに送受及び偏波の数が多くなるにつれて多くのメモリ量が必要になるという問題がある。
【0006】
例えば、アンテナ指向性の数が8であり、アンテナ素子の数が4であり、送受の数が2(送信の数が1、受信の数が1)であるとすると、必要となるメモリ量は、これらを乗算して得られる64ワード分になる。加えて、垂直(V)偏波及び水平(H)偏波の信号の送受信を行う場合には、偏波の数である2を更に乗算して得られる128ワード分のメモリ量が必要になる。尚、1ワードは、1つの振幅位相制御器に設定される振幅及び位相の設定値である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができるフェーズドアレイアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるフェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々に接続される複数の信号経路と、前記アンテナ素子の少なくとも1つに関し、接続される複数の前記信号経路のうち、予め規定された少なくとも1つの基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値を、設定すべきアンテナ指向性の少なくとも1つにおいて記憶する記憶部と、前記設定値が前記記憶部に記憶された前記アンテナ素子における前記基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方と、当該アンテナ素子における前記基準経路以外の前記信号経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方とを、前記記憶部に記憶された前記設定値を用いて制御する振幅位相制御部と、を備える。
【0009】
上記態様によるフェーズドアレイアンテナでは、複数の信号経路が接続される複数のアンテナ素子の少なくとも1つに関し、接続される複数の信号経路のうち、予め規定された少なくとも1つの基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値が、設定すべきアンテナ指向性の少なくとも1つにおいて、記憶部に記憶されている。そして、設定値が記憶部に記憶されたアンテナ素子における基準経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方と、当該アンテナ素子における基準経路以外の信号経路によって伝送される信号の振幅又は位相の少なくとも一方とが、記憶部に記憶された設定値を用いて制御される。このように、上記態様によるフェーズドアレイアンテナでは、設定値が記憶部に記憶されたアンテナ素子においては、少なくとも1つの基準経路の設定値を記憶部に記憶すれば良く、基準経路以外の信号経路の設定値を記憶部に記憶する必要がないため、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0010】
前記記憶部は、前記アンテナ素子の全てについての前記設定値を記憶してもよい。
【0011】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記記憶部が、前記基準経路と前記基準経路以外の前記信号経路との経路間誤差を更に記憶しており、前記振幅位相制御部は、前記記憶部に記憶された前記設定値を用いて、前記設定値を前記経路間誤差で補正した補正設定値で、前記基準経路以外の前記信号経路によって伝送される前記信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御してもよい。
【0012】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記記憶部が、前記経路間誤差を複数記憶しており、前記振幅位相制御部が、前記設定すべきアンテナ指向性に応じて、前記経路間誤差を1つ選択してもよい。
【0013】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記複数の信号経路として、前記アンテナ素子の各々から送信される複数の送信信号が伝送される送信信号経路と、前記アンテナ素子の各々で受信される複数の受信信号が伝送される受信信号経路と、が設けられてもよい。
【0014】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記複数の信号経路として、前記アンテナ素子の各々から第1偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第1送信信号経路と、前記アンテナ素子の各々で前記第1偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第1受信信号経路と、前記アンテナ素子の各々から第2偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第2送信信号経路と、前記アンテナ素子の各々で前記第2偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第2受信信号経路と、が設けられてもよい。
【0015】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記複数の信号経路を順次切り替える切替部を備えてもよい。
【0016】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記設定値が、前記設定すべきアンテナ指向性の数だけ設けられてもよい。
【0017】
上記態様に係るフェーズドアレイアンテナにおいて、前記設定値が、前記設定すべきアンテナ指向性の数の一部のみに設けられてもよい。
【0018】
本発明の他の態様によるフェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子の各々から第1偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第1送信信号経路と、前記アンテナ素子の各々で前記第1偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第1受信信号経路と、前記アンテナ素子の各々から第2偏波状態の信号として送信される送信信号が伝送される第2送信信号経路と、前記アンテナ素子の各々で前記第2偏波状態の信号が受信されて得られる受信信号が伝送される第2受信信号経路と、前記複数のアンテナ素子の全てに関し、前記第1送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第1受信信号経路によって伝送される受信信号のうちの何れか一方の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値である第1設定値と、前記第2送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第2受信信号経路によって伝送される受信信号のうちの何れか一方の振幅又は位相の少なくとも一方の設定値である第2設定値とを、設定すべきアンテナ指向性の全てにおいて記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記第1設定値を用いて、前記第1送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第1受信信号経路によって伝送される受信信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御し、前記記憶部に記憶された前記第2設定値を用いて、前記第2送信信号経路によって伝送される送信信号及び前記第2受信信号経路によって伝送される受信信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御する振幅位相制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一以上の態様によれば、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】1実施形態によるフェーズドアレイアンテナの要部構成を示すブロック図である。
図2A】第1実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図2B】第1実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図3】第2実施形態によるフェーズドアレイアンテナの要部構成を示すブロック図である。
図4A】第2実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図4B】第2実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図5A】第3実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図5B】第3実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図6A】第4実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図6B】第4実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図7A】第5実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図7B】第5実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図8A】第6実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図8B】第6実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図9A】第7実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図9B】第7実施形態における補正インデックスの選択例を示す図である。
図9C】第7実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図10A】第8実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。
図10B】第8実施形態における補正インデックスの選択例を示す図である。
図10C】第8実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。
図11】メモリの内容の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるフェーズドアレイアンテナについて詳細に説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態によるフェーズドアレイアンテナの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態のフェーズドアレイアンテナ1は、アンテナ素子11a~11d、送受信ユニット12a~12d、及び制御器13を備えており、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)方式により無線信号を送受信する。このフェーズドアレイアンテナ1は、制御器13の制御によって、アンテナ指向性を変化させることが可能である。
【0023】
フェーズドアレイアンテナ1は、例えば、周波数が30~300[GHz]程度のミリ波帯域の無線信号を送受信する。尚、フェーズドアレイアンテナ1が送受信する無線信号は、ミリ波帯域の無線信号に制限される訳ではなく、ミリ波帯域以外の無線信号であっても良い。
【0024】
尚、以下では、4つのアンテナ素子11a~11dを総称する場合にはアンテナ素子11といい、4つの送受信ユニット12a~12dを総称する場合には送受信ユニット12という。また、フェーズドアレイアンテナ1が備えるアンテナ素子11及び送受信ユニット12の数は4つに制限される訳ではなく、3つ以下であっても良く、5つ以上であっても良い。
【0025】
アンテナ素子11a~11dは、無線信号の送受信を行う。具体的に、アンテナ素子11a~11dは、送受信ユニット12a~12dから出力される送信信号を電磁波に変換してそれぞれ送信するとともに、外部から送信されてくる電磁波を受信して信号(受信信号)に変換して送受信ユニット12a~12dにそれぞれ出力する。アンテナ素子11a~11dは、例えば、予め規定された間隔をもって2次元状に配列されており、アレーアンテナを構成する。尚、アンテナ素子11a~11dは、線状アンテナ、平面アンテナ、マイクロストリップアンテナ、パッチアンテナ、その他のアンテナであっても良い。
【0026】
送受信ユニット12a~12dは、アンテナ素子11a~11dに対応して設けられており、対応するアンテナ素子11a~11dに送信信号を出力するとともに、対応するアンテナ素子11a~11dから出力される受信信号を受信する。また、送受信ユニット12a~12dは、制御器13の制御の下で、対応するアンテナ素子11a~11dに出力する送信信号の振幅又は位相の少なくとも一方(振幅のみ、位相のみ、振幅及び位相、の何れか)を制御するとともに、対応するアンテナ素子11a~11dから出力される受信信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御する。尚、以下では、説明を簡単にするために、送受信ユニット12a~12dは、送信信号及び受信信号について振幅及び位相を制御するものであるとする。但し、送受信ユニット12a~12dは、送信信号及び受信信号について振幅のみを制御するものであっても良く、位相のみを制御するものであっても良い。
【0027】
送受信ユニット12a~12dは、送信器21、振幅位相制御器22(振幅位相制御部)、アンプ23、スイッチ24(切替部)、アンプ25、振幅位相制御器26(振幅位相制御部)、及び受信器27を備える。尚、送受信ユニット12a~12dは同様の構成であるため、以下では、送受信ユニット12a~12dを区別せずに、送受信ユニット12として説明する。
【0028】
送信器21、振幅位相制御器22、及びアンプ23は、無線信号の送信を行うために設けられる構成であり、送信信号が伝送される信号経路R11(送信信号経路)に設けられる。アンプ25、振幅位相制御器26、及び受信器27は、無線信号の受信を行うために設けられる構成であり、受信信号が伝送される信号経路R12(受信信号経路)に設けられる。
【0029】
スイッチ24は、アンテナ素子11に対して、信号経路R11を接続するか、又は、信号経路R12を接続するか、を所要の時間で切り替える。つまり、スイッチ24は、信号経路R11,R12のうち、アンテナ素子11に接続する信号経路を所要の時間で順次切り替える。このように、本実施形態では、1つのアンテナ素子11が、信号経路R11,R12で共用されている。尚、スイッチ24が上述の切り替えを行うことで、TDD方式による無線信号の送受信が実現される。
【0030】
信号経路R11に設けられる送信器21は、外部に送信すべき送信信号を出力する。振幅位相制御器22は、例えば、可変利得増幅器及び移相器を備えており、制御器13の制御の下で、送信器21から出力される送信信号(信号経路R11によって伝送される送信信号)の振幅及び位相を制御する。尚、詳細は後述するが、振幅位相制御器22は、制御器13のメモリMに記憶された設定値を用いて、送信信号の振幅及び位相を制御する。アンプ23は、振幅位相制御器22から出力される送信信号を電力増幅してスイッチ24に出力する。
【0031】
信号経路R12に設けられるアンプ25は、アンテナ素子11から出力されて、スイッチ24を介した受信信号を低雑音増幅して振幅位相制御器26に出力する。振幅位相制御器26は、例えば、可変利得増幅器及び移相器を備えており、制御器13の制御の下で、アンプ25から出力される受信信号(信号経路R12によって伝送される受信信号)の振幅及び位相を制御する。尚、詳細は後述するが、振幅位相制御器26は、振幅位相制御器22と同様に、制御器13のメモリMに記憶された設定値を用いて、受信信号の振幅及び位相を制御する。受信器27は、振幅位相制御器26から出力される受信信号の受信処理を行う。
【0032】
制御器13は、送受信ユニット12a~12dの各々に設けられた振幅位相制御器22,26に制御信号を出力して、フェーズドアレイアンテナ1のアンテナ指向性を形成させる。制御器13から出力される制御信号には、形成すべきアンテナ指向性に応じて、振幅位相制御器22,26で制御させるべき振幅及び位相を規定する設定値が含まれる。制御器13は、この設定値を記憶するメモリM(記憶部)を備える。尚、制御器13は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)によって構成される。或いは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として、送受信ユニット12と一体に統合された集積回路の内部に実装されてもよい。
【0033】
図2Aは、第1実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB1が記憶されている。つまり、メモリMには、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルTB1が記憶されている。
【0034】
具体的に、テーブルTB1は、図2Aに示す通り、指向性インデックス毎に、4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)が規定されたものである。ここで、指向性インデックスとは、形成すべきアンテナ指向性を特定するための指標である。図2Aに示す例では、数値「1」~「8」で特定される8種類の指向性インデックスが用意されている。つまり、本実施形態のフェーズドアレイアンテナ1では、8種類のアンテナ指向性を形成することが可能である。また、4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)は、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22にそれぞれ設定されるべき設定値である。
【0035】
具体的に、図2A中の「C11」,「C21」,…,「C81」はそれぞれ、指向性インデックスが1,2,…,8である場合に、送受信ユニット12aの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値である。図2A中の設定値「C12」,「C22」,…,「C82」はそれぞれ、指向性インデックスが1,2,…,8である場合に、送受信ユニット12bの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値である。尚、図2Aでは振幅及び位相の設定値の組合せをC11等と表記しているが、指向性インデックスに対して振幅、位相それぞれの設定値が個別に記憶されても良い。
【0036】
同様に、図2A中の設定値「C13」,「C23」,…,「C83」はそれぞれ、指向性インデックスが1,2,…,8である場合に、送受信ユニット12cの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値である。図2A中の設定値「C14」,「C24」,…,「C84」はそれぞれ、指向性インデックスが1,2,…,8である場合に、送受信ユニット12dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値である。
【0037】
図2Bは、第1実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図2Bに示す通り、本実施形態の制御器13は、指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)を出力するように構成されている。尚、メモリMから出力された4つの設定値は、送受信ユニット12a~12dにそれぞれ出力される。
【0038】
例えば、制御器13が、指向性インデックス「1」を指定した場合を考える。この場合には、設定値「C11」が「設定値1」として送受信ユニット12aの振幅位相制御器22,26に出力され、設定値「C12」が「設定値2」として送受信ユニット12bの振幅位相制御器22,26に出力される。また、設定値「C13」が「設定値3」として送受信ユニット12cの振幅位相制御器22,26に出力され、設定値「C14」が「設定値4」として送受信ユニット12dの振幅位相制御器22,26に出力される。
【0039】
このように、メモリMに記憶されたテーブルTB1は、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。加えて、テーブルTB1は、送受信ユニット12a~12dの信号経路R12(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するためにも用いられる。つまり、テーブルTB1は、信号経路R11,R12で共用されているということができる。
【0040】
次に、フェーズドアレイアンテナ1の動作について説明する。フェーズドアレイアンテナ1の動作は、アンテナ指向性を形成して、TDD方式により無線信号を送受信する動作が基本となる。
【0041】
アンテナ指向性を形成する際には、まず、形成すべきアンテナ指向性に応じた指向性インデックスが制御器13によって特定される。次に、指定された指向性インデックスについての4つの設定値(図2Bに示す「設定値1」~「設定値4」)がメモリMから出力される。これらの4つの設定値は、制御信号として、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22,26に出力され、信号経路R11,R12における振幅及び位相の制御量が設定される。これにより、アンテナ指向性が形成される。
【0042】
無線信号を送信する場合には、まず、スイッチ24によって、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11がアンテナ素子11a~11dにそれぞれ接続される。次に、送受信ユニット12a~12dに設けられた送信器21から外部に送信すべき送信信号がそれぞれ出力される。送受信ユニット12a~12dの送信器21から出力された送信信号は、送受信ユニット12a~12dに設けられた信号経路R11によってそれぞれ伝送される。
【0043】
これら送信信号は、送受信ユニット12a~12dに設けられた振幅位相制御器22で振幅及び位相がそれぞれ制御された後に、送受信ユニット12a~12dに設けられたアンプ23でそれぞれ電力増幅される。そして、送受信ユニット12a~12dに設けられたスイッチ24を介してアンテナ素子11a~11dにそれぞれ供給される。アンテナ素子11a~11dに供給された送信信号は、電磁波に変換されてそれぞれ送信される。
【0044】
無線信号を受信する場合には、まず、スイッチ24によって、送受信ユニット12a~12dの信号経路R12がアンテナ素子11a~11dにそれぞれ接続される。次に、外部から送信されてきた電磁波がアンテナ素子11a~11dによって受信され、アンテナ素子11a~11dから送受信ユニット12a~12dに対して受信信号がそれぞれ出力される。
【0045】
アンテナ素子11a~11dから出力された受信信号は、送受信ユニット12a~12dのスイッチ24を介した後に、送受信ユニット12a~12dの信号経路R12によってそれぞれ伝送される。これら受信信号は、送受信ユニット12a~12dに設けられたアンプ25でそれぞれ低雑音増幅された後に、送受信ユニット12a~12dに設けられた振幅位相制御器26で振幅及び位相がそれぞれ制御される。そして、送受信ユニット12a~12dに設けられた受信器27に供給されて受信処理が行われる。
【0046】
以上の通り、本実施形態では、アンテナ素子11a~11dに対して送受信ユニット12a~12dをそれぞれ設け、送信信号が伝送される信号経路R11と受信信号が伝送される信号経路R12とでアンテナ素子を共用している。また、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルTB1をメモリMに記憶している。
【0047】
そして、メモリMに記憶されたテーブルTB1を用いて、信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、信号経路R12によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御している。このように、本実施形態では、送信信号の振幅及び位相を制御するための設定値が規定されたテーブルTB1を、受信信号の振幅及び位相を制御するための設定値と共用することができる。そのため、設定値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、32ワード分である。尚、1ワードは、1つの振幅位相制御器(振幅位相制御器22,26)に設定される振幅及び位相の設定値の組合せである。送信信号と受信信号で設定値を共用しない場合は64ワードとなるため、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
図3は、第2実施形態によるフェーズドアレイアンテナの要部構成を示すブロック図である。尚、図3においては、図1に示す構成に相当する構成については、同一の符号を付してある。図3に示す通り、本実施形態のフェーズドアレイアンテナ2は、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1の送受信ユニット12aに代えて送受信ユニット14a,15aを設け、送受信ユニット12bに代えて送受信ユニット14b,15bを設け、送受信ユニット12cに代えて送受信ユニット14c,15cを設け、送受信ユニット12dに代えて送受信ユニット14d,15dを設けた構成である。
【0049】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナ2は、垂直偏波(V偏波:第1偏波状態)の信号の送受信と、水平偏波(H偏波:第2偏波状態)の信号の送受信とを、アンテナ素子11a~11dによって行うようにしたものである。言い換えると、アンテナ素子11a~11dに対する給電点を異ならせることで、アンテナ素子11a~11dを、V偏波用のアンテナ素子とH偏波用のアンテナ素子として共用したものである。
【0050】
尚、以下では、4つの送受信ユニット14a~14dを総称する場合には送受信ユニット14といい、4つの送受信ユニット15a~15dを総称する場合には送受信ユニット15という。また、フェーズドアレイアンテナ2が備えるアンテナ素子11、送受信ユニット14、及び送受信ユニット15の数は4つに制限される訳ではなく、3つ以下であっても良く、5つ以上であっても良い。また、送受信を行う偏波は垂直及び水平偏波に限ったものではなく、右旋円偏波と左旋円偏波や、+45°直線偏波と-45°直線偏波など、任意の2偏波でも良い。
【0051】
送受信ユニット14a~14dは、アンテナ素子11a~11dに対応して設けられており、対応するアンテナ素子11a~11dに送信信号を出力するとともに、対応するアンテナ素子11a~11dから出力される受信信号を受信する。送受信ユニット14a~14dは、V偏波の信号の送受信を行うものである。また、送受信ユニット14a~14dは、制御器13の制御の下で、対応するアンテナ素子11a~11dに出力する送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、対応するアンテナ素子11a~11dから出力される受信信号の振幅及び位相を制御する。
【0052】
送受信ユニット15a~15dは、アンテナ素子11a~11dに対応して設けられており、対応するアンテナ素子11a~11dに送信信号を出力するとともに、対応するアンテナ素子11a~11dから出力される受信信号を受信する。送受信ユニット15a~15dは、H偏波の信号の送受信を行うものである。また、送受信ユニット15a~15dは、制御器13の制御の下で、対応するアンテナ素子11a~11dに出力する送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、対応するアンテナ素子11a~11dから出力される受信信号の振幅及び位相を制御する。
【0053】
これら送受信ユニット14a~14d,15a~15dは、図1に示す送受信ユニット12a~12dと同様の構成であり、送信器21、振幅位相制御器22、アンプ23、スイッチ24、アンプ25、振幅位相制御器26、及び受信器27を備える。尚、送受信ユニット14a~14d,15a~15dは同様の構成であるため、以下では、送受信ユニット14a~14dを区別せずに送受信ユニット14として説明し、送受信ユニット15a~15dを区別せずに送受信ユニット15として説明する。
【0054】
送受信ユニット14の送信器21、振幅位相制御器22、及びアンプ23は、V偏波の無線信号の送信を行うために設けられる構成であり、送信信号が伝送される信号経路R21(送信信号経路、第1送信信号経路)に設けられる。送受信ユニット14のアンプ25、振幅位相制御器26、及び受信器27は、V偏波の無線信号の受信を行うために設けられる構成であり、受信信号が伝送される信号経路R22(受信信号経路、第1受信信号経路)に設けられる。
【0055】
送受信ユニット14のスイッチ24は、アンテナ素子11に対して、信号経路R21を接続するか、又は、信号経路R22を接続するか、を所要の時間で切り替える。つまり、送受信ユニット14のスイッチ24は、信号経路R21,R22のうち、アンテナ素子11に接続する信号経路を所要の時間で順次切り替える。
【0056】
送受信ユニット15の送信器21、振幅位相制御器22、及びアンプ23は、H偏波の無線信号の送信を行うために設けられる構成であり、送信信号が伝送される信号経路R23(送信信号経路、第2送信信号経路)に設けられる。送受信ユニット15のアンプ25、振幅位相制御器26、及び受信器27は、H偏波の無線信号の受信を行うために設けられる構成であり、受信信号が伝送される信号経路R24(受信信号経路、第2受信信号経路)に設けられる。
【0057】
送受信ユニット15のスイッチ24は、アンテナ素子11に対して、信号経路R23を接続するか、又は、信号経路R24を接続するか、を所要の時間で切り替える。つまり、送受信ユニット15のスイッチ24は、信号経路R23,R24のうち、アンテナ素子11に接続する信号経路を所要の時間で順次切り替える。このように、本実施形態では、1つのアンテナ素子11が、4つの信号経路(信号経路R21~R24)で共用されている。尚、送受信ユニット14,15のスイッチ24が上述の切り替えを行うことで、TDD方式による無線信号の送受信が実現される。
【0058】
図4Aは、第2実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB2が記憶されている。つまり、メモリMには、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルTB2が記憶されている。尚、図4Aに示すテーブルTB2は、図2Aに示すテーブルTB1と同じものである。
【0059】
図4Bは、第2実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図4Bに示す通り、本実施形態の制御器13は、V偏波用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)を出力するように構成されている。また、本実施形態の制御器13は、H偏波用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)を出力するように構成されている。
【0060】
尚、制御器13は、V偏波用の指向性インデックス及びH偏波用の指向性インデックスを個別に指定可能である。ここで、V偏波用の指向性インデックスとH偏波用の指向性インデックスとによって、テーブルTB2から異なる設定値を同時に読み出し可能であるから、メモリMはデュアルポートメモリを用いるのが望ましい。制御器13がV偏波用の指向性インデックスを指定した場合に制御器13から出力される4つの設定値は、送受信ユニット14a~14dにそれぞれ出力される。また、制御器13がH偏波用の指向性インデックスを指定した場合に制御器13から出力される4つの設定値は、送受信ユニット15a~15dにそれぞれ出力される。
【0061】
例えば、制御器13が、V偏波用の指向性インデックスとして「1」を指定し、H偏波用の指向性インデックスとして「8」を指定した場合を考える。この場合には、設定値「C11」が「設定値1」として送受信ユニット14aの振幅位相制御器22,26に出力され、設定値「C12」が「設定値2」として送受信ユニット14bの振幅位相制御器22,26に出力される。また、設定値「C13」が「設定値3」として送受信ユニット14cの振幅位相制御器22,26に出力され、設定値「C14」が「設定値4」として送受信ユニット14dの振幅位相制御器22,26に出力される。
【0062】
また、設定値「C81」が「設定値1」として送受信ユニット15aの振幅位相制御器22,26に出力され、設定値「C82」が「設定値2」として送受信ユニット15bの振幅位相制御器22,26に出力される。また、設定値「C83」が「設定値3」として送受信ユニット15cの振幅位相制御器22,26に出力され、設定値「C84」が「設定値4」として送受信ユニット15dの振幅位相制御器22,26に出力される。
【0063】
このように、メモリMに記憶されたテーブルTB2は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。加えて、テーブルTB2は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R22、送受信ユニット15a~15dの信号経路R23、及び送受信ユニット15a~15dの信号経路R24(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するためにも用いられる。つまり、テーブルTB2は、信号経路R21~R24で共用されているということができる。
【0064】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナ2は、第1実施形態のフェーズドアレイアンテナ1とは、制御器13がV偏波用の指向性インデックスとH偏波用の指向性インデックスとを個別に設定できる点が相違する。つまり、本実施形態のフェーズドアレイアンテナ2は、V偏波の信号とH偏波の信号とで異なるアンテナ指向性を形成することができる点が、第1実施形態のフェーズドアレイアンテナ1と異なる。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナ2の基本的な動作は、第1実施形態のフェーズドアレイアンテナ1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
以上の通り、本実施形態では、アンテナ素子11a~11dに対して、V偏波の送受信を行う送受信ユニット14a~14dをそれぞれ設けるととともに、H偏波の送受信を行う送受信ユニット15a~15dをそれぞれ設けている。これにより、4つの信号経路(信号経路R21~R24)でアンテナ素子を共用している。また、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルTB2をメモリMに記憶している。
【0066】
そして、メモリMに記憶されたテーブルTB2を用いて、信号経路R21によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、信号経路R22~R24によって伝送される信号の振幅及び位相を制御している。このように、本実施形態では、複数の信号経路のうちの1つの信号経路(信号経路R21)における設定値が規定されたテーブルTB2を、他の信号経路において共用することで、設定値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、32ワード分である。設定値を共用しない場合は128ワードとなるため、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
第3実施形態によるフェーズドアレイアンテナは、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2と同様の構成である。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2とは、制御器13のメモリMの内容及び制御器13の構成の一部が異なる。
【0068】
図5Aは、第3実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB31と、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB32とが記憶されている。つまり、テーブルTB31は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値(第1設定値)が規定されたテーブルである。テーブルTB32は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R23(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値(第2設定値)が規定されたテーブルである。
【0069】
具体的に、テーブルTB31は、図5Aに示す通り、指向性インデックス毎に、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたものである。また、テーブルTB32は、図5Aに示す通り、指向性インデックス毎に、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたものである。つまり、テーブルTB31,TB32はそれぞれ、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性の数だけ設定値が規定されたものである。テーブルTB31,TB32を記憶するために必要となるメモリ量はそれぞれ32ワード分である。このため、本実施形態では、設定値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、64ワード分である。
【0070】
図5Bは、第3実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図5Bに示す通り、本実施形態の制御器13は、V偏波用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値V1」~「設定値V4」)を出力するように構成されている。また、本実施形態の制御器13は、H偏波用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値H1」~「設定値H4」)を出力するように構成されている。
【0071】
尚、制御器13は、第2実施形態と同様に、V偏波用の指向性インデックス及びH偏波用の指向性インデックスを個別に指定可能である。但し、本実施形態では、V偏波用の指向性インデックスによってテーブルTB31に規定された設定値が読み出され、H偏波用の指向性インデックスによってテーブルTB32に規定された設定値が読み出される点が第2実施形態とは異なる。このため、本実施形態では、メモリMは、デュアルポートメモリを用いなくとも良い。
【0072】
V偏波用の指向性インデックスが指定された場合に、メモリMのテーブルTB31から読み出された4つの設定値は、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力されるとともに、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力される。また、H偏波用の指向性インデックスが指定された場合に、メモリMのテーブルTB32から読み出された4つの設定値は、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力されるとともに、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力される。
【0073】
このように、テーブルTB31で規定された設定値は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。加えて、テーブルTB31で規定された設定値は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R22(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するためにも用いられる。つまり、メモリMのテーブルTB31は、信号経路R21,R22で共用されているということができる。
【0074】
また、テーブルTB32で規定された設定値は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R23(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。加えて、テーブルTB32で規定された設定値は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R24(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するためにも用いられる。つまり、メモリMのテーブルTB32は、信号経路R23,R24で共用されているということができる。
【0075】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第2実施形態のフェーズドアレイアンテナ2とは、送受信ユニット14a~14dで用いられる設定値がテーブルTB31で規定され、送受信ユニット15a~15dで用いられる設定値がテーブルTB32で規定されている点において相違する。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナの基本的な動作は、第2実施形態のフェーズドアレイアンテナ2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0076】
以上の通り、本実施形態では、第2実施形態と同様に、4つの信号経路(信号経路R21~R24)でアンテナ素子を共用している。また、信号経路R21についての設定値をテーブルTB31としてメモリMに記憶するとともに、信号経路R23についての設定値をテーブルTB32としてメモリMに記憶している。
【0077】
そして、テーブルTB31の設定値を用いて、信号経路R21によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、信号経路R22によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御している。また、テーブルTB32の設定値を用いて、信号経路R23によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、信号経路R24によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御している。
【0078】
このように、本実施形態では、送受信ユニット14a~14dと送受信ユニット15a~15dとの各々において、送信信号の振幅及び位相を制御するための設定値を、受信信号の振幅及び位相を制御するための設定値と共用することで、設定値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、64ワード分である。設定値を共用しない場合は128ワードとなるため、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0079】
〔第4実施形態〕
第4実施形態によるフェーズドアレイアンテナは、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2と同様の構成である。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2とは、制御器13のメモリMの内容及び制御器13の構成の一部が異なる。
【0080】
図6Aは、第4実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB41と、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器26に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB42とが記憶されている。つまり、テーブルTB41は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値(第1設定値)が規定されたテーブルである。テーブルTB42は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R22(基準経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相の設定値(第2設定値)が規定されたテーブルである。
【0081】
具体的に、テーブルTB41は、図6Aに示す通り、指向性インデックス毎に、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたものである。また、テーブルTB42は、図6Aに示す通り、指向性インデックス毎に、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器26に設定されるべき設定値が規定されたものである。つまり、テーブルTB41,TB42はそれぞれ、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性の数だけ設定値が規定されたものである。テーブルTB41,TB42を記憶するために必要となるメモリ量はそれぞれ32ワード分である。このため、本実施形態では、設定値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、第3実施形態と同様に、64ワード分である。
【0082】
図6Bは、第4実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図6Bに示す通り、本実施形態の制御器13は、送信用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値T1」~「設定値T4」)を出力するように構成されている。また、本実施形態の制御器13は、受信用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値R1」~「設定値R4」)を出力するように構成されている。
【0083】
尚、制御器13は、送信用の指向性インデックス及び受信用の指向性インデックスを個別に指定可能である。但し、本実施形態では、送信用の指向性インデックスによってテーブルTB41に規定された設定値が読み出され、受信用の指向性インデックスによってテーブルTB42に規定された設定値が読み出される点が第2実施形態とは異なる。このため、本実施形態では、メモリMは、デュアルポートメモリを用いなくとも良い。
【0084】
送信用の指向性インデックスが指定された場合に、テーブルTB41から読み出された4つの設定値は、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力されるとともに、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力される。また、受信用の指向性インデックスが指定された場合に、メモリMのテーブルTB42から読み出された4つの設定値は、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力されるとともに、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力される。
【0085】
このように、テーブルTB41で規定された設定値は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。加えて、テーブルTB41で規定された設定値は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R23(基準経路以外の信号経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するためにも用いられる。つまり、テーブルTB41は、信号経路R21,R23で共用されているということができる。
【0086】
また、テーブルTB42で規定された設定値は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R22(基準経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。加えて、テーブルTB42で規定された設定値は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R24(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するためにも用いられる。つまり、メモリMのテーブルTB42は、信号経路R22,R24で共用されているということができる。
【0087】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第2実施形態のフェーズドアレイアンテナ2とは、信号経路R21,R23で用いられる設定値がテーブルTB41で規定され、信号経路R22,R24で用いられる設定値がテーブルTB42で規定されている点において相違する。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナの基本的な動作は、第2実施形態のフェーズドアレイアンテナ2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
以上の通り、本実施形態では、第2実施形態と同様に、4つの信号経路(信号経路R21~R24)でアンテナ素子を共用している。また、信号経路R21についての設定値をテーブルTB41としてメモリMに記憶するとともに、信号経路R22についての設定値をテーブルTB42としてメモリMに記憶している。
【0089】
そして、テーブルTB41の設定値を用いて、信号経路R21によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するとともに、信号経路R23によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。また、テーブルTB42の設定値を用いて、信号経路R22によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するとともに、信号経路R24によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御している。
【0090】
このように、本実施形態では、送受信ユニット14a~14dと送受信ユニット15a~15dとの間において、送信信号の振幅及び位相を制御するための設定値を共用することができるとともに、受信信号の振幅及び位相を制御するための設定値を共用することで、設定値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、64ワード分である。設定値を共用しない場合は128ワードとなるため、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0091】
〔第5実施形態〕
第5実施形態によるフェーズドアレイアンテナは、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1と同様の構成である。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1とは、制御器13のメモリMの内容及び制御器13の構成の一部が異なる。
【0092】
図7Aは、第5実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB51と、テーブルTB51に規定された設定値の補正値が規定されたテーブルTB52とが記憶されている。つまり、テーブルTB51は、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルである。テーブルTB52は、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)と信号経路R12(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。
【0093】
具体的に、テーブルTB51は、図7Aに示す通り、指向性インデックス毎に、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたものである。また、テーブルTB52は、図7Aに示す通り、送受信ユニット12a~12d毎の補正値が規定されたものである。つまり、テーブルTB51は、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性の数だけ設定値が規定されたものであり、テーブルTB52は、送受信ユニット12a~12dの数だけ補正値が規定されたものである。
【0094】
図7Bは、第5実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図7Bに示す通り、本実施形態の制御器13は、指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)を出力するように構成されている。また、本実施形態の制御器13は、これら4つの設定値を、テーブルTB52の補正値(「補正値1」~「補正値4」)を用いて補正した4つの補正設定値も出力するように構成されている。尚、図7B中の4つの記号「○」は、設定値の補正演算を行う演算子を示している。この演算子は、例えば、振幅の乗算(或いは、デシベル値による加算)や、位相角度の加算等の演算を行うものである。
【0095】
指向性インデックスが指定された場合に、メモリMのテーブルTB51から読み出された4つの設定値は、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力される。また、指向性インデックスが指定された場合に、制御器13から出力される4つの補正設定値は、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力される。
【0096】
このように、テーブルTB51で規定された設定値は、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。これに対し、テーブルTB52で規定された補正値を用いて求められた補正設定値は、送受信ユニット12a~12dの信号経路R12(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。尚、テーブルTB51は、テーブルTB52で規定された補正値を用いた補正が必要になるものの、信号経路R11,R12で共用されているということができる。
【0097】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第1実施形態のフェーズドアレイアンテナ1とは、テーブルTB51で規定された設定値を補正した補正設定値を用いて、信号経路R12によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御している点において相違する。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナの基本的な動作は、第1実施形態のフェーズドアレイアンテナ1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0098】
以上の通り、本実施形態では、第1実施形態と同様に、送信信号が伝送される信号経路R11と受信信号が伝送される信号経路R12とでアンテナ素子を共用している。また、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルTB51と、テーブルTB51に規定された設定値の補正値が規定されたテーブルTB52とをメモリMに記憶している。
【0099】
そして、メモリMに記憶されたテーブルTB51を用いて、信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。また、テーブルTB51で規定された設定値を、テーブルTB52で規定された補正値で補正した補正設定値を用いて、信号経路R12によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。このため、信号経路R11,R12の経路間誤差があっても所望のアンテナ指向性を形成することができる。
【0100】
テーブルTB51を記憶するために必要となるメモリ量は32ワード分であり、テーブルTB52を記憶するために必要となるメモリ量は4ワード分である。このため、本実施形態では、設定値及び補正値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、36ワード分である。よって、送信信号と受信信号で設定値を共用しない場合の64ワードと比較して、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0101】
〔第6実施形態〕
第6実施形態によるフェーズドアレイアンテナは、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2と同様の構成である。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2とは、制御器13のメモリMの内容及び制御器13の構成の一部が異なる。
【0102】
図8Aは、第6実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB61と、テーブルTB61に規定された設定値の補正値が規定されたテーブルTB62~TB64とが記憶されている。
【0103】
つまり、テーブルTB61は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルである。テーブルTB62は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)と信号経路R22(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。テーブルTB63は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)と送受信ユニット15a~15dの信号経路R23(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。テーブルTB64は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)と送受信ユニット15a~15dの信号経路R24(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。
【0104】
具体的に、テーブルTB61は、図8Aに示す通り、指向性インデックス毎に、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたものである。また、テーブルTB62は、図8Aに示す通り、送受信ユニット14a~14d毎の補正値が規定されたものであり、テーブルTB63,TB64は、図8Aに示す通り、送受信ユニット15a~15d毎の補正値が規定されたものである。
【0105】
つまり、テーブルTB61は、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性の数だけ設定値の組(設定値1~4を1組とする)が規定されたものである。テーブルTB62は、送受信ユニット14a~14dの数だけ補正値が規定されたものであり、テーブルTB63,TB64は、送受信ユニット15a~15dの数だけ補正値が規定されたものである。
【0106】
図8Bは、第6実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図8Bに示す通り、本実施形態の制御器13は、V偏波用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)を出力するように構成されている。また、本実施形態の制御器13は、これら4つの設定値を、テーブルTB62の補正値(「補正値A1」~「補正値A4」)を用いて補正した4つの補正設定値(以下、「第1補正設定値」という)も出力するように構成されている。
【0107】
また、本実施形態の制御器13は、H偏波用の指向性インデックスを指定すると、その指向性インデックスについての4つの設定値(「設定値1」~「設定値4」)補正した補正設定値を出力するように構成されている。具体的に、本実施形態の制御器13は、テーブルTB63の補正値(「補正値B1」~「補正値B4」)を用いて補正した4つの補正設定値(以下、「第2補正設定値」という)を出力するように構成されている。また、本実施形態の制御器13は、テーブルTB64の補正値(「補正値C1」~「補正値C4」)を用いて補正した4つの補正設定値(以下、「第3補正設定値」という)を出力するように構成されている。
【0108】
制御器13は、V偏波用の指向性インデックス及びH偏波用の指向性インデックスを個別に指定可能である。ここで、V偏波用の指向性インデックスとH偏波用の指向性インデックスとによって、テーブルTB61から異なる設定値を同時に読み出し可能であるから、第2実施形態と同様に、メモリMはデュアルポートメモリを用いるのが望ましい。尚、図8B中の計12個の記号「○」は、図7Bに示した演算子と同様のものである。
【0109】
V偏波用の指向性インデックスが指定された場合に、メモリMのテーブルTB61から読み出された4つの設定値は、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力される。また、第1補正設定値は、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力される。H偏波用の指向性インデックスが指定された場合に、第2補正設定値は、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器22にそれぞれ出力され、第3補正設定値は、送受信ユニット15a~15dの振幅位相制御器26にそれぞれ出力される。
【0110】
このように、テーブルTB61で規定された設定値は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。これに対し、テーブルTB62で規定された補正値を用いて求められた第1補正設定値は、送受信ユニット14a~14dの信号経路R22(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。
【0111】
また、テーブルTB63で規定された補正値を用いて求められた第2補正設定値は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R23(基準経路以外の信号経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。また、テーブルTB64で規定された補正値を用いて求められた第3補正設定値は、送受信ユニット15a~15dの信号経路R24(基準経路以外の信号経路)によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。尚、テーブルTB61は、テーブルTB62~TB64で規定された補正値を用いた補正が必要になるものの、信号経路R21~R24で共用されているということができる。
【0112】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第2実施形態のフェーズドアレイアンテナ2とは、テーブルTB61で規定された設定値を補正した補正設定値を、信号経路R22~R24の設定値として用いられている点において相違する。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナの基本的な動作は、第2実施形態のフェーズドアレイアンテナ2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0113】
以上の通り、本実施形態では、第2実施形態と同様に、4つの信号経路(信号経路R21~R24)でアンテナ素子を共用している。また、信号経路R21についての設定値が規定されたテーブルTB61と、テーブルTB61に規定された設定値の補正値が規定されたテーブルTB62~TB64とをメモリMに記憶している。
【0114】
そして、テーブルTB61の設定値を用いて、信号経路R21によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。また、テーブルTB61で規定された設定値を、テーブルTB62~TB64で規定された補正値で補正した第1~第3補正設定値を用いて、信号経路R22~R24によって伝送される信号の振幅及び位相をそれぞれ制御している。このため、信号経路R21と信号経路R22~R24との経路間誤差があっても所望のアンテナ指向性を形成することができる。
【0115】
テーブルTB61を記憶するために必要となるメモリ量は32ワード分であり、テーブルTB62~TB64を記憶するために必要となるメモリ量は12ワード分である。このため、本実施形態では、設定値及び補正値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、44ワード分である。よって、設定値を共用しない場合の128ワードと比較して、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0116】
〔第7実施形態〕
第7実施形態によるフェーズドアレイアンテナは、第5実施形態のフェーズドアレイアンテナとほぼ同様の構成であり、全体的な構成は、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1とほぼ同様である。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第5実施形態のフェーズドアレイアンテナとは、制御器13のメモリMの内容及び制御器13の構成の一部が若干異なる。
【0117】
図9Aは、第7実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット12a~12dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB71と、テーブルTB71に規定された設定値の補正値が規定されたテーブルTB72とが記憶されている。
【0118】
テーブルTB71は、図7Aに示すテーブルTB51と同じものであり、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルである。テーブルTB72は、図7Aに示すテーブルTB52と同様に、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11(基準経路)と信号経路R12(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。但し、テーブルTB72は、図7Aに示すテーブルTB52とは、上記の経路間誤差が複数規定されている点が異なる。
【0119】
このように、複数の経路間誤差を規定するのは、信号経路R12によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる補正設定値を、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性に応じて、より適切なものとするためである。テーブルTB72で規定されている複数の経路間誤差は、補正インデックスによって特定される。図9Aに示す例では、補正インデックスによって特定される2つの経路間誤差がテーブルTB72で規定されている。
【0120】
図9Bは、第7実施形態における補正インデックスの選択例を示す図である。図9Bに示す通り、補正インデックスは、指向性インデックス毎に選択される。図9Aに示すテーブルTB72において、補正インデックスは、値「1」,「2」を取り得る。このため、図9Bに示す通り、指向性インデックス毎に補正インデックスの値として「1」又は「2」が選択される。
【0121】
図9Cは、第7実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図9Cに示す通り、本実施形態の制御器13は、図7Bに示すものとほぼ同様の構成である。但し、本実施形態の制御器13は、指向性インデックスに応じた補正インデックスが選択され(図9B参照)、選択された補正インデックスで特定される補正値(「補正値1」~「補正値4」)を用いて設定値が補正される点が、図7Bに示すものとは異なる。
【0122】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第5実施形態のフェーズドアレイアンテナとは、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11と信号経路R12との経路間誤差が複数規定されている点において相違する。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナの基本的な動作は、第5実施形態のフェーズドアレイアンテナと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0123】
以上の通り、本実施形態では、第5実施形態(第1実施形態)と同様に、送信信号が伝送される信号経路R11と受信信号が伝送される信号経路R12とでアンテナ素子を共用している。また、送受信ユニット12a~12dの信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルTB71と、テーブルTB71に規定された設定値の補正値が複数規定されたテーブルTB72とをメモリMに記憶している。
【0124】
そして、メモリMに記憶されたテーブルTB71を用いて、信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。また、テーブルTB71で規定された設定値を、テーブルTB72で規定された補正値で補正した補正設定値を用いて、信号経路R12によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。このため、信号経路R11,R12の経路間誤差があっても所望のアンテナ指向性を形成することができる。
【0125】
テーブルTB71は、上述の通り、図7Aに示すテーブルTB51と同じものであるから、テーブルTB71を記憶するために必要となるメモリ量は32ワード分である。また、テーブルTB72を記憶するために必要となるメモリ量は8ワード(4ワード×2インデックス)分である。このため、本実施形態では、設定値及び補正値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、40ワード分である。よって、送信信号と受信信号で設定値を共用しない場合の64ワードと比較して、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0126】
また、本実施形態では、テーブルTB72には、テーブルTB71に規定された設定値の補正値が複数規定されている。このため、本実施形態では、信号経路R12によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる補正設定値を、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性に応じて、より適切なものとすることができる。尚、信号経路R12に設けられた振幅位相制御器26の制御誤差が無視できないような場合には、適切な補正値を選択することで制御誤差を小さくすることも可能である。
【0127】
〔第8実施形態〕
第8実施形態によるフェーズドアレイアンテナは、第6実施形態のフェーズドアレイアンテナとほぼ同様の構成であり、全体的な構成は、図3に示すフェーズドアレイアンテナ2とほぼ同様である。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第6実施形態のフェーズドアレイアンテナとは、制御器13のメモリMの内容及び制御器13の構成の一部が若干異なる。
【0128】
図10Aは、第8実施形態におけるメモリの内容の一例を示す図である。本実施形態において、制御器13のメモリMには、送受信ユニット14a~14dの振幅位相制御器22に設定されるべき設定値が規定されたテーブルTB81と、テーブルTB81に規定された設定値の補正値が規定されたテーブルTB72~TB74とが記憶されている。
【0129】
テーブルTB81は、図8Aに示すテーブルTB61と同じものであり、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)によって伝送される送信信号の振幅及び位相の設定値が規定されたテーブルである。テーブルTB82は、図8Aに示すテーブルTB62と同様に、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)と信号経路R22(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。
【0130】
テーブルTB83は、図8Aに示すテーブルTB63と同様に、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)と送受信ユニット15a~15dの信号経路R23(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。テーブルTB84は、図8Aに示すテーブルTB64と同様に、送受信ユニット14a~14dの信号経路R21(基準経路)と送受信ユニット15a~15dの信号経路R24(基準経路以外の経路)との経路間誤差が規定されたテーブルである。
【0131】
但し、テーブルTB82~TB84は、図8Aに示すテーブルTB62~TB64とは、上記の経路間誤差が複数規定されている点が異なる。このように、複数の経路間誤差を規定するのは、信号経路R22~R24によって伝送される信号の振幅及び位相を制御するために用いられる補正設定値を、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性に応じて、より適切なものとするためである。
【0132】
図10Aに示す例では、補正インデックスAによって特定される2つの経路間誤差がテーブルTB82で規定されている。また、補正インデックスBによって特定される2つの経路間誤差がテーブルTB83で規定されている。また、補正インデックスCによって特定される2つの経路間誤差がテーブルTB84で規定されている。
【0133】
図10Bは、第8実施形態における補正インデックスの選択例を示す図である。図10Bに示す通り、補正インデックスA~Cは、指向性インデックス毎に選択される。図10Aに示すテーブルTB82~TB84において、補正インデックスA~Cは、値「1」,「2」を取り得る。このため、図10Bに示す通り、指向性インデックス毎に補正インデックスA~Cの値として「1」又は「2」が個別に選択される。
【0134】
図10Cは、第8実施形態における制御器の構成の一部を説明するための図である。図10Cに示す通り、本実施形態の制御器13は、図8Bに示すものとほぼ同様の構成である。但し、本実施形態の制御器13は、指向性インデックスに応じた補正インデックスA~Cが選択され(図10B参照)、選択された補正インデックスA~Cで特定される補正値を用いて設定値が補正される点が異なる。尚、本実施形態では、補正インデックスAによって「補正値A1」~「補正値A4」が特定され、補正インデックスBによって「補正値B1」~「補正値B4」が特定され、補正インデックスCによって「補正値C1」~「補正値C4」が特定される。
【0135】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナは、第6実施形態のフェーズドアレイアンテナとは、信号経路R21と信号経路R22との経路間誤差、信号経路R21と信号経路R23との経路間誤差、及び信号経路R21と信号経路R24との経路間誤差がそれぞれ複数規定されている点において相違する。但し、本実施形態のフェーズドアレイアンテナの基本的な動作は、第6実施形態のフェーズドアレイアンテナと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0136】
以上の通り、本実施形態では、第6実施形態(第2実施形態)と同様に、4つの信号経路(信号経路R21~R24)でアンテナ素子を共用している。また、信号経路R21についての設定値が規定されたテーブルTB81と、テーブルTB81に規定された設定値の補正値が複数規定されたテーブルTB62~TB64とをメモリMに記憶している。
【0137】
そして、テーブルTB81の設定値を用いて、信号経路R21によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御している。また、テーブルTB81で規定された設定値を、テーブルTB82~TB84で規定された補正値で補正した補正設定値(第1~第3補正設定値)を用いて、信号経路R22~R24によって伝送される信号の振幅及び位相をそれぞれ制御している。このため、信号経路R21と信号経路R22~R24との経路間誤差があっても所望のアンテナ指向性を形成することができる。
【0138】
テーブルTB81は、上述の通り、図8Aに示すテーブルTB61と同じものであるから、テーブルTB81を記憶するために必要となるメモリ量は32ワード分である。また、テーブルTB82~TB84を記憶するために必要となるメモリ量はそれぞれ8ワード分である。このため、本実施形態では、設定値及び補正値の全てを記憶するために必要となるメモリ量は、56ワード分である。よって、設定値を共用しない場合の128ワードと比較して、所望のアンテナ指向性を形成するために必要となるメモリ量を低減することができる。
【0139】
また、本実施形態では、テーブルTB82~TB84には、テーブルTB81に規定された設定値の補正値が複数規定されている。このため、本実施形態では、信号経路R22~R24によって伝送される信号の振幅及び位相を制御するために用いられる補正設定値を、設定すべき(形成すべき)アンテナ指向性に応じて、より適切なものとすることができる。尚、信号経路R22~R24に設けられた振幅位相制御器22又は振幅位相制御器26の制御誤差が無視できないような場合には、適切な補正値を選択することで制御誤差を小さくすることも可能である。
【0140】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、1つのアンテナ素子が、2つの信号経路R11,R12、又は4つの信号経路R21~R24によって共用されていたが、アンテナ素子は必ずしも共用されている必要はない。アンテナ素子は、2つの信号経路R11,R12、又は4つの信号経路R21~R24の各々に設けられていてもよい。
【0141】
但し、アンテナ素子が複数の信号経路によって共用される場合、及びアンテナ素子が複数の信号経路によって共用されない場合の何れの場合であっても、各信号経路の配線長等の条件が均一に揃えられていることが望ましい。尚、物理的制約、実装上の誤差、振幅位相制御器22,26の制御誤差等により上記の条件を均一に揃えることが困難な場合には、第5~第8実施形態のように、補正値を設けて設定値を補正するようにすれば良い。
【0142】
また、上述した実施形態では、TDD方式によって信号(無線信号)の送受信を実現していたが、信号の送受信を行う必要は必ずしもない。信号の送信のみを行うものであってもよく、信号の受信のみを行うものであってもよい。例えば、V偏波の信号及びH偏波の信号の送信のみを行うものであってもよく、V偏波の信号及びH偏波の信号の受信を行うものであってもよい。
【0143】
また、上述した第5~第8実施形態のように補正演算を行う場合において、補正後に位相の折り返しが生じる(補正後の位相が±πを超える)ことが考えられる。このような位相の折り返しが生じる場合には、モジュロ演算等を行って補正後の位相を±πの範囲に抑えるのが望ましい。
【0144】
また、上述した実施形態では、全ての指向性インデックスで設定値が共用されている例について説明したが、設定値は、少なくとも1つの指向性インデックス(設定すべきアンテナ指向性)で共用されていれば良い。但し、設定値が共用される指向性インデックスの数が少ない場合には、補正値の数及びワード数を少なくすることが好ましい。
【0145】
図11は、メモリの内容の他の例を示す図である。図11に示す通り、本例におけるテーブルTB90は、3つのテーブルTB91~TB93からなる。テーブルTB91は、指向性インデックスが1~6である場合に用いられる設定値が規定されたテーブルである。テーブルTB92,TB93は、指向性インデックスが7,8である場合に用いられる設定値が規定されたテーブルである。
【0146】
テーブルTB91で規定された設定値は、例えば、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1における送受信ユニット12a~12dの信号経路R11によって伝送される送信信号と、信号経路R12によって伝送される受信信号との振幅及び位相を制御するために用いられる。つまり、テーブルTB91は、指向性インデックス1~6について、信号経路R11,R12で共用されているということができる。
【0147】
テーブルTB92で規定された設定値は、例えば、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1における送受信ユニット12a~12dの信号経路R11によって伝送される送信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。テーブルTB93で規定された設定値は、例えば、図1に示すフェーズドアレイアンテナ1における送受信ユニット12a~12dの信号経路R12によって伝送される受信信号の振幅及び位相を制御するために用いられる。
【0148】
このように、本例では、指向性インデックス1~8のうちの6つ(指向性インデックス1~6)で設定値が共用されている。尚、図11に示す例はあくまでも一例であり、設定値が共用される指向性インデックスの数は6つに限られることはなく、1つ~5つの何れかであっても良く、7つであっても良い。
【符号の説明】
【0149】
1,2…フェーズドアレイアンテナ、11a~11d…アンテナ素子、22,26…振幅位相制御器、M…メモリ、24…スイッチ、R11,R12…信号経路、R21~R24…信号経路
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
【国際調査報告】