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特表2023-534024IGE FC受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン及び抗IL-4抗体を含む融合タンパク質並びにその融合タンパク質の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(54)【発明の名称】IGE FC受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン及び抗IL-4抗体を含む融合タンパク質並びにその融合タンパク質の使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230731BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230731BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230731BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230731BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230731BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230731BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230731BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230731BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230731BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20230731BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/85 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N1/21
C07K16/00
C07K16/46
A23L33/17
A61P37/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502645
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2021009047
(87)【国際公開番号】W WO2022015049
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0088941
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521550909
【氏名又は名称】ジーアイ イノベーション, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GI INNOVATION, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ミュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ナム, ス ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ヨン‐ギュ
(72)【発明者】
【氏名】オー, ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー, キョンファ
(72)【発明者】
【氏名】オー, ナヒョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018ME07
4B064AG27
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA41
4B065CA44
4C085AA13
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC21
4C085CC22
4C085DD23
4C085DD31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体;並びに同融合タンパク質二量体を含むアレルギー性疾患を処置するための組成物、に関する。本発明による融合タンパク質二量体は、優れたIgE結合能及び優れた血清IgEレベル低減効果を呈する。加えて、本発明は、IgEの過免疫応答を誘発し、したがってIL-4及びIL-13などのアレルギー性疾患を誘導するサイトカインの活性を阻害する優れた効果を有するので、その結果、IgE媒介性アレルギー性疾患を処置するか又は予防する使用のための医薬として適用することができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が免疫グロブリンのFc領域を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列又はその断片からなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記抗IL-4R抗体の断片が、
配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2及び配列番号22のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記抗IL-4R抗体の断片が、配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記配列番号7の重鎖可変領域及び前記配列番号8の軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記融合タンパク質が以下の構造式(I)又は(II):
N’-X-リンカー(1)-Fc領域断片又はそれのバリアント-リンカー(2)-Y-C’(I)
N’-Y-リンカー(1)-Fc領域断片又はそれのバリアント-リンカー(2)-X-C’(II)
からなり、
前記構造式(I)及び(II)中、
N’が前記融合タンパク質のN末端であり、
C’が前記融合タンパク質のC末端であり、
XがFcεRIα-ECD又はその断片であり、
Yが抗IL-4R抗体の断片であり、且つ
前記リンカー(1)及びリンカー(2)がペプチドリンカーである、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記融合タンパク質の前記Fc領域がヒトIgG4由来である、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質2つが結合された、融合タンパク質二量体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の前記ベクターが導入されている形質転換細胞。
【請求項13】
i)請求項12に記載の形質転換細胞を培養するステップ;及び
ii)融合タンパク質二量体を回収するステップ、
を含む、
融合タンパク質二量体を生成する方法。
【請求項14】
請求項9に記載の融合タンパク質二量体を含む、アレルギー性疾患を予防するか又は処置するための医薬組成物。
【請求項15】
前記アレルギー性疾患が、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、慢性特発性蕁麻疹、及びアレルギー性接触皮膚炎からなる群から選択されるものである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項9に記載の融合タンパク質二量体を含む、アレルギー症状を改善するか又は緩和するための食品組成物。
【請求項17】
アレルギー性疾患の処置又は予防のための医薬の製造のための、請求項9に記載の融合タンパク質二量体の使用。
【請求項18】
アレルギー性疾患の処置又は予防のための、請求項9に記載の融合タンパク質二量体の使用。
【請求項19】
請求項9に記載の融合タンパク質二量体を対象に投与するステップを含む、アレルギー性疾患を処置するか又は予防するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体;並びに、同融合タンパク質二量体を含むアレルギー性疾患を処置するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息を含めて、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、及び食物アレルギーなどのアレルギー性疾患は、工業化した且つ西洋化した現代社会において急速に増えてきており、重度のアレルギー性疾患であるアナフィラキシーの発生も増えてきている。こういった慢性免疫疾患は、個人の生活の質を激しく損ない、それに応じて社会経済的費用が急騰している。したがって、かかる疾患を解決するための対策に対する切実なニーズが存在する。
【0003】
ほとんどのアレルギー性疾患は、免疫グロブリンE(IgE)の過度の免疫応答によって引き起こされる。IgEは、正常な状態下では極めて低濃度で血清に存在する抗体である。IgEは、無害な抗原によっても通常には産生される。IgEの数が、何ら特定の刺激なしで増加するケースがある。そのようなケースが、アレルギー性疾患をもたらす場合がある。異常に増加した数のIgEは、肥満細胞、好塩基球等の表面で発現する高親和性IgE Fc受容体(FcεRIs)に結合することができる。そのような結合は、肥満細胞又は好塩基球に、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ブラジキニン、及び血小板活性化因子などのケミカルメディエーターを放出させる。そういったケミカルメディエーターの放出は、アレルギー性症状をもたらす。特に、アレルギー性疾患は、IgEとFcεRIとの間の結合に起因する症状の悪化を呈するおそれがある。
【0004】
現在、アレルギー性疾患を処置するために、様々な方法が、例えば、アレルゲンの回避、抗アレルギー薬の投与、身体におけるIgE合成の調節、及び抗IgE抗体の開発が、提案されてきた。しかし、これまでに知られている治療法は、多くの欠点を、例えば、アレルギーの根本原因を治癒することができないこと、不十分な薬物有効性、及び重度の副作用の発生を有する。
【0005】
一方、炎症性サイトカインIL-4の生物学的活性は、細胞表面の特定のIL-4受容体(インターロイキン4受容体、IL-4R)によって媒介される。IL-4受容体に関し2つのタイプが存在する:IL-4受容体α鎖とγc鎖が複合体を形成している1型、及びIL-4受容体α鎖とIL-13受容体α1鎖が複合体を形成している2型。これに関して、IL-4Rα鎖に対するヒトモノクローナル抗体は、喘息、湿疹及びアトピー性皮膚炎などの症状を緩和及び治療する上で臨床的に効果的であることが、実証されてきた。
【0006】
これまで、Regeneron Pharmaceuticals Inc.によって開発された抗hIL-4Rα抗体であるデュピルマブは、2017年にFDAによって承認されたが、アレルギー性疾患を処置するのに使用されている(米国特許第7,605,237号)。デュピルマブ以外の抗hIL-4Rα抗体はまだ承認されていない。
【発明の概要】
【0007】
[技術上の問題]
したがって、本発明者らは、アレルギー性疾患を効果的に処置及び予防するための融合タンパク質の新規の組み合わせを開発するために研究した。その結果、IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体は、優れたIgE結合能及び優れた血清IgEレベル低減効果を呈すること、が確認された。加えて、IgEの過免疫応答を誘発してアレルギー性疾患を誘導するサイトカインであるIL-4及びIL-13の活性が濃度依存性の様式で阻害されることが、確認された。上記を踏まえて、融合タンパク質二量体は喘息及びアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の治療剤として有用に利用できることを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【0008】
[問題の解決]
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体が提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び当該発現ベクターが導入されている形質転換細胞が提供される。
【0010】
本発明の別の態様では、形質転換細胞を培養するステップ;及び融合タンパク質二量体を回収するステップを含む、融合タンパク質二量体を生成する方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様では、融合タンパク質二量体を含む、アレルギー性疾患を予防するか又は処置するための医薬組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の態様では、融合タンパク質二量体を含む、アレルギー症状を改善するか又は緩和するための食品組成物が提供される。
【0013】
本発明の別の態様では、アレルギー性疾患の処置又は予防のための医薬の製造のための、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体の使用が提供される。
【0014】
本発明の別の態様では、アレルギー性疾患の処置又は予防のための、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体の使用が提供される。
【0015】
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体を対象に投与するステップを含む、アレルギー性疾患を処置するか又は予防するための方法が提供される。
【0016】
[発明の効果]
IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む本発明による融合タンパク質二量体は、優れたIgE結合能及び優れた血清IgEレベル低減効果を呈する。加えて、本発明の融合タンパク質二量体は、IgEの過免疫応答を誘発し、したがってIL-4及びIL-13などのアレルギー性疾患を誘導するサイトカインの活性を阻害する優れた効果を有する。加えて、機能面では、融合タンパク質二量体は、IgE Trap及び抗IL-4R抗体として複雑な方法で作用するので、その結果、融合タンパク質二量体は、従来の抗IgE抗体及び抗IL-4R抗体の個々の治療剤に取って代わることができる、アレルギー性疾患の処置のための新規の医薬組成物として有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による融合タンパク質GI-305(FcεRIα ECD-Fc-抗IL-4RscFv)の構造を例示する図である。
図2】SDS-PAGEにより、得られた融合タンパク質GI-305を確認することによって得られた結果を例示する図である。
図3】ウエスタンブロットにより、得られた融合タンパク質GI-305を確認することによって得られた結果を例示する図である。
図4】ヒトIgEに対する本発明による融合タンパク質GI-305の結合能を測定することによって得られた結果を示すグラフの図である。
図5】抗IL-4R抗体としての本発明による融合タンパク質GI-305の有効性を確認することによって得られた結果を示すグラフの図である。
図6】本発明による融合タンパク質GI-305の血清IgEレベル低減効果を確認することによって得られた結果を示すグラフの図である。
図7】本発明による融合タンパク質GI-305の血清IgEレベル低減効果を確認することによって得られた結果を示すグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明を実施するための最良の形態]
FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質
本発明の一態様では、IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質が提供される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「IgE」という用語は、免疫グロブリンEとして知られている抗体タンパク質を意味する。IgEは、肥満細胞、血中の好塩基球等に親和性を有する。加えて、IgE抗体とIgE抗体に対応する抗原(アレルゲン)との間の反応は炎症性反応を引き起こす。加えて、IgEは、IgEは肥満細胞又は好塩基球の急激な分泌に起因して発生するアナフィラキシーを引き起こす抗体であると知られている。
【0020】
本明細書で使用される場合、「IgE Fc受容体」という用語は、Fcε受容体とも呼ばれ、IgEのFc部分に結合する。受容体には2つのタイプがある。IgE Fcに対して高親和性を有する受容体は、Fcε受容体I(FcεRI)と称される。IgE Fcに対して低親和性を有する受容体は、Fcε受容体II(FcεRII)と称される。FcεRIは、肥満細胞及び好塩基球で発現する。FcεRIに結合したIgE抗体が多価抗原によって架橋されている場合、肥満細胞及び好塩基球で脱顆粒が起こり、それによってヒスタミンを始めとする様々な化学伝達物質を放出する。この放出は、即時型アレルギー反応を招く。
【0021】
FcεRIは、ジスルフィド結合によって連結された1つのα鎖、1つのβ鎖、及び2つのγ鎖から構成される膜タンパク質である。これらの鎖のうち、IgEが結合する部分は、α鎖(FcεRIα)であり、FcεRIαは、約60kDaのサイズを有し、細胞膜の内側に存在する疎水性ドメインと細胞膜の外側に存在する親水性ドメインとから構成されている。特に、IgEは、α鎖の細胞外ドメインに結合する。「FcεRIα」は、「IgE Fc受容体のアルファサブユニット」と互換的に使用することができる。
【0022】
特に、IgE Fc受容体のアルファサブユニットは、NP_001992.1に記載のアミノ酸配列を有することができる。加えて、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)は、配列番号2のアミノ酸配列を有することができる。本明細書では、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインの断片又はバリアントがIgEに結合することができる限り、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインは、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインの断片であってもバリアントであってもよい。
【0023】
バリアントは、下記方法がFcεRIのα鎖の機能を変更しない限り、野生型FcεRIα-ECD(細胞外ドメイン)において1又は複数のタンパク質を置換するか、欠失させるか、又は付加する方法をとおして、作製することができる。このようなさまざまなタンパク質又はペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列と、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ超で同一であるとし得る。加えて、配列番号2のFcεRIα ECDは、配列番号11の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「IL-4R(インターロイキン-4受容体)」又は「インターロイキン-4受容体」という用語は、インターロイキン-4(IL-4)が特異的に結合するサイトカイン受容体であり、1型IL-4受容体及び2型IL-4受容体として存在する。1型IL-4受容体はIL-4Rα鎖及びγc鎖を含む二量体受容体であり、2型IL-4受容体はIL-4Rα鎖及びIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体はIL-4と相互作用し且つIL-4によって刺激され、2型IL-4受容体はIL-4とIL-13の両方と相互作用し且つIL-4とIL-13の両方によって刺激される。
【0025】
Th2サイトカインである、IL-4及びIL-13は、喘息、アトピー性皮膚炎、及びアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患において重要な役割を果たすと知られており、且つ、Tリンパ球の増殖、Th2細胞への分化、及びBリンパ球産物のIgEへの変換に関与する。加えて、IL-4及びIL-13はIL-4受容体α(IL-4Rα、IL-4受容体α)を共有し、類似の生物学的特性を有する。特に、IL-4はBリンパ球産物のIgEへの変換に必須であり、好酸球の走化性及び接着を促進する。加えて、IL-13はIgEの産生及び維持の重要なメディエーターとして機能する。したがって、IL-4及びIL-13はIgEの過免疫応答を誘発して、アレルギー性疾患を誘導する。
【0026】
ここで、抗IL-4R抗体は、IL-4受容体に特異的に結合する抗体であるとし得る。特に、抗IL-4R抗体は、2型IL-4受容体に特異的に結合する抗体であるとし得る。加えて、抗体の断片がIL-4受容体に特異的に結合することができる抗原結合ドメインを含む限り、抗体の断片はいずれの形態でも使用することができる。加えて、抗IL-4R抗体の断片は、scFvの形態であってもよい。本明細書で使用される場合、「scFv」という用語は単鎖可変断片の略称であり、重鎖可変領域と軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって組み合わされている形態を指す。
【0027】
本発明の一実施形態で使用される抗IL-4R抗体のscFvの重鎖可変領域は、配列番号7又は26のアミノ酸配列を有することができる。特に、重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号20、21及び22であるとし得る。加えて、抗IL-4R抗体のscFvの軽鎖可変領域は、配列番号8又は27のアミノ酸配列を有することができる。特に、軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、それぞれ配列番号23、24及び25であるとし得る。加えて、一実施形態では、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結するペプチドリンカーは、配列番号9のアミノ酸配列を有することができる。加えて、本発明の一実施形態で使用される抗IL-4R抗体のscFvは、配列番号6のアミノ酸配列を有することができる。
【0028】
一方、本発明の一実施形態で使用される配列番号7の抗IL-4R抗体のscFvの重鎖可変領域は、ジスルフィド結合形成によるscFv構造の安定化のために、デュピルマブscFvのアミノ酸配列(配列番号26)において44番目のアミノ酸をGからCへと突然変異を起こさせることによって得られたものであるとし得る。加えて、本発明の一実施形態で使用される配列番号8の抗IL-4R抗体のscFvの軽鎖可変領域は、ジスルフィド結合形成によるscFv構造の安定化のために、デュピルマブscFvのアミノ酸配列(配列番号27)において105番目のアミノ酸をQからCへと突然変異を起こさせることによって得られたものであるとし得る。
【0029】
ここで、融合タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域を含有することができる。ここで、免疫グロブリンのFcドメインとは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含有するが、免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域並びに軽鎖定常領域(CL)を含有しないタンパク質を指す。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgE、IgD又はIgMであるとし得るが、IgG4であるとし得るのが好ましい。
【0030】
加えて、免疫グロブリンのFcドメインは、野生型Fcドメイン並びにFcドメインバリアントであるとし得る。加えて、本明細書で使用される場合、「Fcドメインバリアント」とは、形態であって、グリコシル化パターンについて野生型Fcドメインとは異なるか、若しくは、野生型Fcドメインと比較して高グリコシル化を有するか、若しくは、野生型Fcドメインと比較して低グリコシル化を有する形態、又は脱グリコシル化形態を指すことができる。加えて、アグリコシル化FCドメインがFcドメインバリアントに含まれる。Fcドメイン又はそのバリアントは、培養条件又は宿主の遺伝子操作をとおして、調整された数のシアル酸、フコシル化、又はグリコシル化を有するように構成させることができる。
【0031】
加えて、免疫グロブリンのFcドメインのグリコシル化は、化学的方法、酵素的方法、及び微生物を使用する遺伝子工学的方法などの定法によって改変することができる。加えて、Fcドメインバリアントは、免疫グロブリンIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMのそれぞれのFc領域の混合形態であってもよい。加えて、Fcドメインバリアントは、Fcドメインの一部のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された形態であってもよい。
【0032】
加えて、改変Fc領域は、天然型のグリコシル化を有してもよく、天然型と比較して高いグリコシル化を有してもよい。免疫グロブリンのFcドメインのグリコシル化は、化学的方法、酵素的方法、及び微生物を使用する遺伝子工学的方法などの定法によって改変することができる。
【0033】
一実施形態では、Fcドメインバリアントは、配列番号4のアミノ酸配列を有することができる。
特に、融合タンパク質が以下の構造式(I)又は(II):
N’-X-リンカー(1)-Fc領域断片又はそれのバリアント-リンカー(2)-Y-C’(I)
N’-Y-リンカー(1)-Fc領域断片又はそれのバリアント-リンカー(2)-X-C’(II)
からなることができ、
構造式(I)及び(II)中、
N’が融合タンパク質のN末端であり、
C’が融合タンパク質のC末端であり、
XがFcεRIα-ECD又はその断片であり、
Yが抗IL-4R抗体の断片であり、且つ
リンカー(1)及びリンカー(2)がペプチドリンカーである。
【0034】
ここで、FcεRIα-ECD又はその断片及び抗IL-4R抗体の断片は、上記のとおりである。
【0035】
ここで、ペプチドリンカー(1)は、5~80個の連続したアミノ酸、10~70個の連続したアミノ酸、15~60個の連続したアミノ酸、20~50個の連続したアミノ酸、25~40個の連続したアミノ酸、又は25~35個のアミノ酸からなることができる。一実施形態では、ペプチドリンカー(1)は、30個のアミノ酸からなることができる。加えて、ペプチドリンカー(1)は、少なくとも1個のシステインを含むことができる。特に、ペプチドリンカー(1)は、1個、2個又は3個のシステインを含むことができる。加えて、ペプチドリンカー(1)は、免疫グロブリンのヒンジに由来してもよい。一実施形態では、ペプチドリンカー(1)は、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであるとし得る。
【0036】
ペプチドリンカー(2)は、1~50個の連続したアミノ酸、又は3~30個の連続したアミノ酸、又は5~15個のアミノ酸からなることができる。ペプチドリンカー(2)は、(G4S)n(ここで、nは1~10の整数である)を含んでもよく、(G)nをさらに含んでもよい。ここで、(G4S)n及び(G)nにおいて、nはそれぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であるとし得る。ペプチドリンカー(2)は、配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであるとし得る。
【0037】
融合タンパク質の各アミノ酸配列は下に表1に示すとおりである。加えて、一実施形態では、GI-305(FcεRIα ECD-Fc-抗IL-4R scFv)のアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列を有することができる。
【0038】
【表1】

【0039】
融合タンパク質二量体
本発明の別の態様では、上記の2つの融合タンパク質が結合された融合タンパク質二量体が提供される。ここで、融合タンパク質は、FcεRIα-ECD又はその断片を免疫グロブリンのFc領域と連結するリンカーに含有されるシステインによって結合させることができる。ここで、リンカーは、免疫グロブリンのヒンジ領域を含むことができる。
【0040】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片は、上記のとおりである。
【0041】
ポリヌクレオチドは、配列番号19の配列を有することができる。
【0042】
ポリヌクレオチドが同一ポリペプチドをコードする場合、置換、欠失、挿入、又はそれらの組み合わせによって、1つ又は複数のヌクレオチドを突然変異させることができる。ポリヌクレオチド配列を化学合成によって作製する場合、当技術分野でよく知られた合成方法、例えば、文献(Engels and Uhlmann、Angew Chem IntEd Engl.、37:73~127頁、1988)に記載の方法を使用することができ、よく知られた合成方法として、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホルアミダイト法及びH-リン酸法、PCR及び他のオートプライマー(autoprimer)法、固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成法等、を挙げることができる。
【0043】
一実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、配列番号19のヌクレオチド配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%の同一性を有する核酸配列を含むことができる。
【0044】
ポリヌクレオチドは、シグナル配列又はリーダー配列をさらに含むことができる。本明細書で使用される場合、「シグナル配列」という用語は、標的タンパク質の分泌を方向付けるシグナルペプチドをコードする核酸を指す。シグナルペプチドは宿主細胞で翻訳され、次いで切断される。特に、本発明のシグナル配列は、小胞体(ER)膜を横切るタンパク質の移動を開始させるアミノ酸配列をコードするヌクレオチドである。
【0045】
シグナル配列は、その特徴について当技術分野でよく知られている。そのようなシグナル配列は通常には、16~30個のアミノ酸残基を含有するが、そのようなアミノ酸残基よりも多いか又は少ないアミノ酸残基を含有してもよい。通常のシグナルペプチドは、塩基性N末端領域、中央の疎水性領域、及びより極性のC末端領域である3つの領域から構成されている。中央の疎水性領域は、未成熟ポリペプチドの移行過程で膜脂質二重層をとおしてシグナル配列を固定化する4~12個の疎水性残基を含有する。
【0046】
開始後、シグナル配列は、シグナルペプチダーゼとして一般に知られている細胞酵素によってERの内腔中で切断される。ここで、シグナル配列とは、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPa)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(HSV gD)、IgGシグナル配列、又は成長ホルモンの分泌性シグナル配列であるとし得る。好ましくは、哺乳動物等を始めとする高等真核生物の細胞で使用される分泌性シグナル配列を使用することができる。
【0047】
本発明における有用なシグナル配列には、抗体軽鎖シグナル配列、例えば、抗体14.18(Gilliesら、J.Immunol.Meth1989.125:191~202頁)、抗体重鎖シグナル配列、例えば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakanoら、Nature、1980.286:676~683頁)、及び当技術分野で知られているその他のシグナル配列(例えば、Watsonら、Nucleic Acid Research、1984.12:5145~5164頁を参照されたい)、が含まれる。一実施形態では、配列番号1のアミノ酸から構成されるシグナル配列をシグナル配列として使用することができる。
【0048】
ポリヌクレオチドをローディングしたベクター
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。ここで、ポリヌクレオチドは、配列番号19の配列を有することができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、宿主細胞に導入すること及び宿主細胞のゲノムと組み換えることができるとともに宿主細胞のゲノムに挿入することができること、が意図されている。代替的に、ベクターは、エピソームとして自己複製可能であるヌクレオチド配列を含有する核酸手段として理解される。ベクターには、線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター、ミニ染色体、及びそれらのアナログが含まれる。ウイルスベクターの例として、それらに限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスが挙げられる。
【0050】
特に、ベクターは、プラスミドDNA、ファージDNA等、商業的に開発されたプラスミド(pUC18、pBAD、pIDTSAMRT-AMP等)、大腸菌(E.coli)由来プラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118、pUC119等)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来プラスミド(pUB110、pTP5等)、酵母由来プラスミド(YEp13、YEp24、YCp50等)、ファージDNA(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)、動物ウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス等)、昆虫ウイルスベクター(バキュロウイルス等)等、であるとし得る。ベクターは、宿主細胞に応じてさまざまなタンパク質の発現レベル及び改変を呈するので、目的に向けて最適な宿主細胞を選択及び使用することが好ましい。
【0051】
加えて、プラスミドは抗生物質耐性遺伝子などの選択可能なマーカーを含有することができ、プラスミドを維持する宿主細胞を選択的条件下で培養することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「遺伝子発現」又は標的タンパク質の「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写物の翻訳、及び融合タンパク質産物又はその断片の分泌を意味すると理解される。有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen、Carlsbad)又はそのバリアントであるとし得る。発現ベクターは、哺乳動物細胞における標的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、及び転写後のRNAの安定性レベルを向上さるためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列を含有することができる。
【0053】
融合タンパク質を発現する形質転換細胞
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入されている形質転換細胞が提供される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「形質転換細胞」という用語は、組換え発現ベクターを導入することができる原核細胞及び真核細胞を指す。形質転換細胞は、ベクターを宿主細胞に導入すること及び宿主細胞を形質転換することによって調製することができる。加えて、本発明の融合タンパク質は、ベクターに含有されるポリヌクレオチドを発現させることによって生成することができる。
【0055】
形質転換は、様々な方法によって実施することができる。形質転換が本発明の融合タンパク質を生成することができる限り、形質転換はそれらに特に限定されない。特に、形質転換法として、CaCl沈殿法、CaCl沈殿法においてジメチルスルホキシド(DMSO)などの還元剤を使用することにより効率が向上されたHanahan法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、プロトプラスト融合法、炭化ケイ素繊維を使用する攪拌法、アグロバクテリア媒介形質転換法、PEG、デキストラン硫酸、リポフェクタミンを使用する形質転換法、及び乾燥/阻害媒介形質転換法等を使用することができる。加えて、感染を手段として使用することにより、対象物体を、ウイルス粒子を使用して細胞へと送達することができる。加えて、ベクターは、遺伝子銃等によって宿主細胞へと導入することができる。
【0056】
加えて、形質転換細胞の作出に使用される宿主細胞が本発明の融合タンパク質を生成することもできる限り、宿主細胞はそれらに特に限定されない。特に、宿主細胞には、それらに限定されないが、原核細胞、真核細胞、及び哺乳動物由来、植物由来、昆虫由来、真菌由来、又は細菌由来の細胞が含まれ得る。原核細胞の例として、大腸菌を使用することができる。加えて、真核細胞の一例として、酵母を使用することができる。加えて、哺乳動物細胞として、CHO細胞、F2N細胞、COS細胞、BHK細胞、Bowesメラノーマ細胞、HeLa細胞、911細胞、AT1080細胞、A549細胞、SP2/0細胞、ヒトリンパ芽球、NSO細胞、HT-1080細胞、PERC.6細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞等を使用することができるが、それらに限定されず、哺乳動物宿主細胞として使用可能であると当業者に知られている任意の細胞を使用してもよい。
【0057】
上記のように、治療剤としての融合タンパク質の特性の最適化のために、又は他の任意の目的のために、融合タンパク質のグリコシル化パターン(例えば、シアル酸、フコシル化、グリコシル化)は、当業者に知られている方法をとおして、宿主細胞が保有するグリコシル化関連遺伝子を操作することによって調整することができる。
【0058】
融合タンパク質を生成する方法
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体を生成する方法が提供される。
【0059】
融合タンパク質を生成する方法は:i)形質転換細胞を培養するステップ;及びii)FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む本発明の融合タンパク質二量体を回収するステップ、を含むことができる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「培養」という用語は、適切に人工的に制御された環境条件で微生物を増殖する方法を指す。
【0061】
形質転換細胞を培養する方法は、当技術分野でよく知られている方法を使用して行うことができる。特に、培養が本発明の融合タンパク質を発現させること及び生成することができる限り、培養は特に限定されない。特に、培養はバッチ法で行ってもよく、流加法又は反復流加法で連続的に行ってもよい。
【0062】
加えて、培養から融合タンパク質二量体を回収するステップは、当技術分野で知られている方法によって行うことができる。特に、回収する方法が本発明の生成された融合タンパク質を回収することができる限り、回収する方法は特に限定されない。好ましくは、回収する方法は、遠心分離、濾過、抽出、噴霧、乾燥、蒸発、沈殿、結晶化、電気泳動、分別溶解(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性及びサイズ排除)等、であるとし得る。
【0063】
融合タンパク質の使用
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体を含む、アレルギー性疾患を予防するか又は処置するための医薬組成物が提供される。
【0064】
本明細書では、「アレルギー性疾患」という用語は、肥満細胞の脱顆粒などの、肥満細胞活性化が媒介するアレルギー反応によって引き起こされる病的症状を意味する。このようなアレルギー性疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アナフィラキシー、蕁麻疹、掻痒、昆虫アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性自発性蕁麻疹、薬物アレルギー等が含まれる。特に、アレルギー性疾患はIgE媒介性であるとし得る。
【0065】
「予防」という用語は、医薬組成物の投与によってアレルギー性疾患の発生を阻害するか又はそれの発症を遅延させる任意の作用を指す。「処置」という用語は、医薬組成物の投与によってアレルギー性疾患の症状を改善するか又は有益に変化させる任意の作用を指す。
【0066】
アレルギー性疾患を処置するか又は予防するための本発明の医薬組成物において、融合タンパク質二量体が抗アレルギー活性を呈することができる限り、融合タンパク質二量体を使用、製剤、配合目的等に応じて、任意の量(有効量)で含有することができる。従来の有効量は、組成物の総重量に対して、0.001重量%~20.0重量%の範囲内で決定することができる。ここで、「有効量」とは、抗アレルギー作用を誘導することができる有効成分の量を指す。このような有効量は、当業者の一般知識の範囲内で実験的に決定することができる。
【0067】
ここで、医薬組成物は、薬学的に許容できる担体をさらに含むことができる。薬学的に許容できる担体が患者への送達に適した非毒性物質である限り、薬学的に許容できる担体は任意の担体であるとし得る。蒸留水、アルコール、脂肪、ワックス、及び不活性固体を担体として含有することができる。薬学的に許容できる助剤(緩衝剤、分散剤)も医薬組成物に含有することができる。
【0068】
特に、本発明の医薬組成物は、融合タンパク質二量体に加えて、薬学的に許容できる担体を含有し、投与経路に応じて当技術分野で知られている定法により非経口製剤へと調製することができる。ここで、「薬学的に許容できる」という用語は、適用される(処方される)対象が融合タンパク質二量体の活性を阻害することなく順応することができるよりもそれ以上の毒性を有さないことを意味する。
【0069】
本発明の医薬組成物を経口製剤として調製する場合、医薬組成物は、当技術分野で知られている方法により、適切な担体とともに、散剤、顆粒剤、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、懸濁剤、ウエハー等の形態で調製することができる。ここで、適切な薬学的に許容できる担体の例として、ラクトース、グルコース、スクロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、及びキシリトールなどの糖、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、及び小麦デンプンなどのデンプン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、麦芽、ゼラチン、タルク、ポリオール、植物油等を挙げることができる。製剤の場合、必要に応じて、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、及び界面活性剤などの、希釈剤及び/又は賦形剤を含んで、製剤を製剤化することができる。
【0070】
本発明の医薬組成物を非経口製剤へと調製する場合、当技術分野で知られている方法により、医薬組成物は、適切な担体とともに、注射剤、経皮薬物、鼻吸入器、及び坐剤の形態で製剤化することができる。注射剤へと製剤化する場合、滅菌水、エタノール、グリセロール若しくはプロピレングリコールなどの多価アルコール、又はそれらの混合物を適切な担体として使用することができる。担体については、リンガー液などの等張液、トリエタノールアミンを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、注射用滅菌水、及び5%デキストロース等が好ましくは使用することができる。
【0071】
医薬組成物の製剤は当技術分野で知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)等を特に参照することができる。当該文献は、本明細書の一部とする。
【0072】
一方、本発明の医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、適当な方法により所定の物質を対象に導入することを意味し、組成物が標的組織に到達することができる限り、組成物は一般的な任意の経路をとおして投与することができる。投与の経路には、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、局所投与、鼻腔内投与、及び直腸内投与が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0073】
「薬学的に有効な量」という用語は、医学的処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で疾患を処置するのに十分であるとともに副作用を引き起こさない量を指す。有効用量のレベルは、患者の性別、年齢、体重、及び健康状態、疾患の種類及び重度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与方法、投与時間、投与経路及び排泄速度、処置期間、併用で又は同時に使用される薬物、並びに医療分野でよく知られているその他の要因を始めとする要因に応じて、当業者であれば容易に決定することができる。
【0074】
本発明の医薬組成物の好ましい1日投薬量は、患者の状態、体重、性別、年齢、疾患の重度、又は投与経路に応じて、1日当たり0.01μg/kg~10g/kg、好ましくは1日当たり0.01mg/kg~1g/kgの範囲であるとし得る。投与は、1日1回行ってもよく、1日数回行ってもよい。そのような投薬量は、本発明の範囲を限定するものとして、決して解釈されるべきではない。
【0075】
「対象」という用語は、本発明の組成物を適用(処方)することができる対象を指し、ヒト、ラット、マウス又は家畜などの哺乳動物であるとし得る。好ましくは対象はヒトであるとし得るが、これに限定されない。融合タンパク質二量体に加えて、本発明の抗アレルギー組成物は、抗アレルギー活性を有するとともに抗アレルギー活性の増強及び強化についてすでに安全性が検認されたと知られている任意の化合物又は天然抽出物をさらに含むことができる。ここで、融合タンパク質二量体及び抗アレルギー活性を有する化合物又は天然抽出物は、同時に投与しても順次に投与してもよい。
【0076】
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体を含む、アレルギー症状を改善するか又は緩和するための食品組成物が提供される。
【0077】
ここで、融合タンパク質二量体は、腸への効率的な送達向けの適当な送達手段と組み合わせることができる。加えて、本発明の食品組成物は、任意の形態で調製することができ、食品組成物は、例えば、飲料、例えば茶、ジュース、炭酸飲料及びイオン飲料、加工乳製品、例えばミルク及びヨーグルト、健康機能性食品調製物、例えば錠剤、カプセル、丸薬、顆粒剤、液剤、散剤、フレーク、ペースト、シロップ、ゲル、ゼリー、バー等の形態で調製することができる。加えて、本発明の食品組成物が製造及び流通される際に施行規則に適合する限り、食品組成物は、法的又は機能的分類における任意の製品カテゴリーに該当することができる。例えば、食品組成物は、健康機能性食品法にしたがう健康機能性食品であることもあり、又は食品組成物は、食品衛生法の食品基準規約(食品医薬品局の安全性通達、食品の規格及び仕様)における各食品のタイプによる、菓子、豆、茶、飲料、特定用途食品等であることもある。本発明の食品組成物に含めることができる他の食品添加物に関しては、食品衛生法にしたがう食品安全規約又は食品添加物規約を参照することができる。
【0078】
本発明の別の態様では、アレルギー性疾患の処置又は予防のための医薬品の製造のための、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体の使用が提供される。ここで、FcεRIα-ECD、抗IL-4R抗体、アレルギー性疾患、処置及び予防については上記のとおりである。
【0079】
本発明の別の態様では、アレルギー性疾患の処置又は予防のためのFcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体の使用が提供される。ここで、FcεRIα-ECD、抗IL-4R抗体、アレルギー性疾患、処置及び予防については上記のとおりである。
【0080】
本発明の別の態様では、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体を対象に投与するステップを含む、アレルギー性疾患を処置するか又は予防するための方法が提供される。ここで、FcεRIα-ECD、抗IL-4R抗体、投与、アレルギー性疾患、処置及び予防については上記のとおりである。
【0081】
対象は哺乳動物、好ましくはヒトであるとし得る。加えて、対象は、アレルギー性疾患に罹患している患者であってもよく、アレルギー性疾患に罹患する確率が高い対象であってもよい。
【0082】
FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体の投与の経路、投薬量、及び投与の頻度は、患者の状態及び副作用の有無によって異なることができ、したがって、融合タンパク質二量体はさまざまな方法及び量で対象に投与してもよい。当業者であれば、最適な投与方法、投薬量、投与の頻度を適当な範囲で選択することができる。加えて、FcεRIα-ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質二量体は、他の薬物又は処置される疾患に対してその治療効果が知られている生理活性物質と併用で投与してもよく、他の薬物との配合剤の形態で製剤化してもよい。
【実施例
【0083】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明を以下の例を参照してより詳細に説明する。これらの例は、参照により本発明を例示するものであり、本発明の範囲がこれらの例により限定されると解釈すべきではないことは、当業者であれば明らかであろう。
【0084】
調製例1.FcεRIα ECD-Fc-抗IL-4R scFv融合タンパク質:GI-305の調製
FcεRI α鎖細胞外ドメイン、Fcドメイン、及びIL-4受容体(IL-4R)に特異的に結合する抗体を含む融合タンパク質を生成するために、FcεRIα鎖細胞外ドメイン(配列番号2)、リンカー(配列番号3)、IgG4 Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及びIL-4受容体に特異的に結合する抗体のscFv(配列番号6)を、N末端からこの順で含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号19)を含むポリヌクレオチドを合成し、pcDNA3.4ベクター(Genscript)にローディングした。
【0085】
ベクターをCHO細胞(ExpiCHO-S細胞)に導入した。その後、37℃、8%CO2、無血清ExpiCHO(商標)発現培地(Thermo Fisher Scientific)で14日間、細胞を培養した。その後、培養液を採取し、アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製カラム)を使用して融合タンパク質を精製した。
【0086】
精製した融合タンパク質の分子量及び純度を、SDS-PAGE及びウエスタンブロットによって確認した。SDS-PAGE及びウエスタンブロット分析の結果、非還元条件下及び還元条件下でタンパク質が検出されることを確認した。このことから、精製した融合タンパク質は二量体を形成していることを確認した(図2及び図3)。融合タンパク質二量体を「GI-305(FcεRIα ECD-Fc-抗IL-4R scFvとも呼ばれる)」と命名した。
【0087】
調製例2.対照としてのFcεRIα ECD-Fc融合タンパク質の調製
調製例2.1.GI-301の調製
対照としてのFcεRIα鎖細胞外ドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質を生成するために、FcεRIα鎖細胞外ドメイン(配列番号2)、リンカー(配列番号28)及び改変IgG4 Fcドメイン(配列番号29)をN末端からこの順で含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号30)を含むポリヌクレオチドを合成し、pcDNA3.4ベクター(Genscript)にローディングした。
【0088】
ベクターをCHO細胞(ExpiCHO-S細胞)に導入した。その後、37℃、8%CO2、無血清ExpiCHO(商標)発現培地(Thermo Fisher Scientific)で14日間、細胞を培養した。その後、培養液を採取し、アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製カラム)を使用して融合タンパク質二量体を精製した。
【0089】
調製例2.2.GI-305CNの調製
FcεRIα鎖細胞外ドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質を生成するために、FcεRIα鎖細胞外ドメイン(配列番号2)、リンカー(配列番号3)及びIgG4 Fcドメイン(配列番号4)をN末端からこの順で含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号31)を含むポリヌクレオチドを合成し、pcDNA3.4ベクター(Genscript)にローディングした。
【0090】
ベクターをCHO細胞(ExpiCHO-S細胞)に導入した。その後、37℃、8%CO2、無血清ExpiCHO(商標)発現培地(Thermo Fisher Scientific)で14日間、細胞を培養した。その後、培養液を採取し、アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製カラム)を使用して融合タンパク質二量体を精製した。
【0091】
調製例3.対照としてのFc-抗IL4Rα scFv:GI-305C1の調製
Fcドメイン及びIL-4受容体(IL-4R)に特異的に結合する抗体を含む融合タンパク質を生成するために、IgG4 Fcドメイン(配列番号4)、リンカー(配列番号5)及びIL-4受容体(IL-4R)に特異的に結合する抗体のscFv(配列番号6)をN末端からこの順で含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号32)を含むポリヌクレオチドを合成し、pcDNA3.4ベクター(Genscript)にローディングした。
【0092】
ベクターをCHO細胞(ExpiCHO-S細胞)に導入した。その後、37℃、8%CO2、無血清ExpiCHO(商標)発現培地(Thermo Fisher Scientific)で14日間、細胞を培養した。その後、培養液を採取し、アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製カラム)を使用して融合タンパク質二量体を精製した。
【0093】
実験例1.GI-305融合タンパク質二量体のヒトIgEに対する結合能の確認
IgEに対する結合能を、上の例1の方法により得られたFcεRIα ECD及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質GI-305について、測定した。この時点で、IgEへの結合能を、Octet RED384(ForteBio)を使用して確認した。AHC(抗Human IgG Capture)バイオセンサーを、1×kinetic buffer中10分間の浸漬により使用した。GI-305を10μg/mLの濃度で調製し、バイオセンサーにコーティングし、IgEを1.6~100nMまで連続希釈することにより、各濃度で結合能を確認した。その結果、GI-305融合タンパク質二量体とIgEとの間の結合能を、図4及び表2に示すように測定した。
【0094】
【表2】
【0095】
実験例2.GI-305融合タンパク質二量体のIL-4及びIL-13の活性阻害効果の確認
抗IL-4R抗体としてのGI-305融合タンパク質二量体の活性を確認するために、細胞増殖用のサイトカイン依存性細胞株であるTF-1細胞を使用して実験を実施した。TF-1細胞は、IL-4及びIL-13を始めとするいくつかのサイトカインに応答する細胞株であるが、GI-305融合タンパク質二量体がTF-1細胞のIL-4又はIL-13が媒介する細胞増殖を阻害するかどうか確認した。
【0096】
TF-1細胞(ATCC、#CRL-2003)を、ヒトGM-CSF(4ng/mL、R&DSystems)を含有する培地(RPMI-1640+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシン)で培養した。分析前に、TF-1細胞を1,500rpmにて5分間の遠心分離により沈殿させ、培地を除去し、次いで細胞をGM-CSFなしのアッセイ培地に再懸濁した。再懸濁細胞を96ウエルプレートの各ウエルに5×10細胞/ウエルの密度で一定分量取った。さまざまな濃度にてのGI-305融合タンパク質二量体をそれぞれIL-4(100ng/mL)及びIL-13(100ng/mL)と混合し、ウエルに添加した。アッセイプレートを5%CO、37℃で24時間インキュベートした。その後、WST-1(Roche)10μLを各ウエルに添加し、4時間インキュベートした。
【0097】
その後、プレートリーダーを使用して波長450nmにての吸光度を記録し、GraphPadPrismソフトウェアを使用してデータを解析した。その結果、GI-305はIL-4又はIL-13が誘導するTF-1細胞の増殖を阻害することが示された(図5)。
【0098】
実験例3.GI-305融合タンパク質二量体による血清IgEレベル低減効果の確認
IL-4及びIL-13はB細胞の増殖を促進し、CD40/CD40Lを共刺激し、IgG4及びIgEのクラススイッチを誘導する。IL-4によって誘導されるB細胞からのIgEの放出に及ぼすGI-305融合タンパク質二量体の効果を評価した。末梢血単核細胞(PBMC)をCellular Technology Limitedから購入し、実験を実施した。アッセイ培地(RPMI-1640+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシン)でPBMCを培養した。
【0099】
分析前に、LN2タンクに貯蔵したPBMCを1,500rpmで5分間の遠心分離により沈殿させ、培地を吸引により除去し、次いで細胞をアッセイ培地に再懸濁した。細胞を、アッセイ培地中の96ウエルプレートの各ウエルに2×10細胞/ウエルの密度で一定分量取った。市販の抗IgE抗体オマリズマブ(商品名:ゾレア(Xolair))、対照として抗IL-4Rα抗体デュピルマブ(商品名:デュピクセント(Dupixent))、上の調製例で調製したGI-301(FcεRIα ECD-改変Fc)、GI-305CN(FcεRIα ECD)-IgG4Fc)及びGI-305C1(IgG4 Fc-IL-4RαscFv)、並びに被験物質GI-305を、IL-4(30ng/mL)及び抗-ヒトCD40抗体(1μg/mL)とそれぞれ混合し、プレートのウエルに添加した。対照及び被験物質を、0.008nM又は0.04nMの濃度で調製及び使用した。アッセイプレートを5%CO、37℃で12日間培養した。その後、1,500rpmにての遠心分離により細胞を沈殿させ、上清中に存在するIgEレベルをR-PLEXアッセイキット(MSD)を使用して測定した。
【0100】
特に、ビオチン化捕捉抗体25μLをMSD GOLD96ウエルSmall Spot Streptavidin Plateの各ウエルに一定分量取った。室温にての1時間のインキュベーション後、各ウエルをPBST(0.05%Tween20含有PBS)150μLで5回洗浄した。その後、各ウエルに試料25μLを入れ、次いで、室温で1時間インキュベートした。次いで、各ウエルをウエル当たりPBST 150μLで5回洗浄した。洗浄後、スルホタグ検出抗体150μLを各ウエルに一定分量取った。室温にての1時間のインキュベーション後、各ウエルをウエル当たりPBST 150μLで5回洗浄した。その後、MSD GOLDリード緩衝剤150μLを各ウエルに一定分量取り、MESO QuickPlex SQ120で測定した。GraphPad Prismソフトウェアを使用してデータを解析した。
【0101】
その結果、GI-305融合タンパク質二量体は、抗IgE抗体オマリズマブ、抗IL-4Rα抗体デュピルマブ、GI-301(FcεRIα ECD改変Fc)、GI-305CN(FcεRIα ECD-IgG4Fc)及びGI-305C1(IgG4Fc-IL-4RαscFv)と比較して、B細胞活性の阻害をとおしてIgE産生を阻害する上で有意に優れた効果を呈することが見いだされた(図6及び図7)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023534024000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)及び抗IL-4R抗体の断片を含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が免疫グロブリンのFc領域を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
IgE Fc受容体アルファサブユニット細胞外ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列又はその断片からなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記抗IL-4R抗体の断片が、
配列番号20のHCDR1、配列番号21のHCDR2及び配列番号22のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
配列番号23のLCDR1、配列番号24のLCDR2及び配列番号25のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記抗IL-4R抗体の断片が、配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記配列番号7の重鎖可変領域及び前記配列番号8の軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記融合タンパク質が以下の構造式(I)又は(II):
N’-X-リンカー(1)-Fc領域断片又はそれのバリアント-リンカー(2)-Y-C’(I)
N’-Y-リンカー(1)-Fc領域断片又はそれのバリアント-リンカー(2)-X-C’(II)
からなり、
前記構造式(I)及び(II)中、
N’が前記融合タンパク質のN末端であり、
C’が前記融合タンパク質のC末端であり、
XがFcεRIα-ECD又はその断片であり、
Yが抗IL-4R抗体の断片であり、且つ
前記リンカー(1)及びリンカー(2)がペプチドリンカーである、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項7に記載の融合タンパク質であって、前記融合タンパク質の前記Fc領域がヒトIgG4由来である、融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質2つが結合された、融合タンパク質二量体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターが導入されている形質転換細胞。
【請求項13】
i)請求項12に記載の前記形質転換細胞を培養するステップ;及び
ii)融合タンパク質二量体を回収するステップ、
を含む、
融合タンパク質二量体を生成する方法。
【請求項14】
請求項9に記載の融合タンパク質二量体を含む、アレルギー性疾患を予防するか又は処置するための医薬組成物。
【請求項15】
前記アレルギー性疾患が、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、慢性特発性蕁麻疹、及びアレルギー性接触皮膚炎からなる群から選択されるものである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項9に記載の融合タンパク質二量体を含む、アレルギー症状を改善するか又は緩和するための食品組成物。
【請求項17】
アレルギー性疾患の処置又は予防のための医薬の製造のための、請求項9に記載の融合タンパク質二量体の使用。
【国際調査報告】