(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】異なる置換フランのメチル基にアルデヒドを選択的還元する金属触媒フリーおよび水素ガスフリーの手法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/44 20060101AFI20230801BHJP
C07D 307/36 20060101ALI20230801BHJP
C07D 307/42 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C07D307/44
C07D307/36
C07D307/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549718
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 IN2021050157
(87)【国際公開番号】W WO2021165991
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】202011007068
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596020691
【氏名又は名称】カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【氏名又は名称】小野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】ダス、プラレイ
(72)【発明者】
【氏名】チョーハン、アルヴィンド、シン
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アジャイ
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、一般式(I)の5-メチル置換フラン化合物およびその製造工程に関する。
【化1】
詳細には、本発明は、異なるアルデヒド置換フラン化合物からメチル置換フラン化合物を製造する、金属触媒フリーおよび水素ガスフリー、原子経済的、高選択的で、費用のかからない工程に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)、
【化1】
の5-メチル置換フラン類であって、式中;
R
1が、水素、ヒドロキシメチル、アルキル、ヒドロキシ、アルデヒド、ハライド、エステル、カルボキシル、ニトロ、アミノ、アミド、アミノ置換、アルコキシ/エーテル結合、硫黄誘導体、リン誘導体、ならびにアリールおよびヘテロアリール官能基を含む群から選択され;
R
2およびR
3が、水素、アルキル、およびアリールからなる群から選択される、5-メチル置換フラン類の製造方法であって:
i) アミン化合物および無機塩基を、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒中、120~140℃の範囲の温度で、2~6時間の範囲の時間の間、式(II)の置換フルフラールと反応させて、インサイチュでの対応するイミン化合物を得るステップと;
【化2】
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成イミンを、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒中、塩基性条件下で還元して、一般式(I)の5-メチル置換フラン類を得るステップと;
iii) 一般式(I)のメチル置換フラン類を単離するステップと;
iv) 随意に、一般式(I)の単離されたメチル置換フラン類を精製するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
式(III)、
【化3】
の5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)の製造方法であって;
i) アミン化合物および無機塩基を、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒中、120~140℃の範囲の温度で、2~6時間の範囲の時間の間、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)と反応させて、インサイチュでの対応するイミンを生成するステップと;
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成イミンを、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒中、塩基性条件下で還元して、式(III)の5-MFAを得るステップと;
iii) 式(III)の5-MFAを単離するステップと;
iv) 随意に、式(Ill)の単離された5-MFAを精製するステップと、を含む方法。
【請求項3】
式(IV)、
【化4】
の2,5-ジメチルフランの製造方法であって:
i) アミン化合物および無機塩基を、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒中、130℃の温度で3~5時間の範囲の時間の間、2,5-ジホルミルフランと反応させて、インサイチュでの対応するジイミンを生成するステップと;
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成ジイミンを、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒中、塩基性条件下で還元して、式(IV)の2,5-ジメチルヒフランを得るステップと;
iii) 式(IV)の2,5-ジメチルフランを単離するステップと;
iv) 随意に、式(IV)の単離された2,5-ジメチルフランを精製するステップと、
を含む方法。
【請求項4】
前記アミン化合物が、ヒドラジンヒドラ―ト、ヒドラジンヒドロクロリド、アリール置換ヒドラジンもしくはアルキル置換ヒドラジンもしくはヒドロキシル置換ヒドラジン、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機塩基が、アルコキシアルカリ金属、ヒドロキシルアルカリ金属、およびヒドリドアルカリ金属の塩基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
無機塩基が、KO
tBu、NaO
tBu、KOEt、NaOEt、KOMe、NaOMe、NaOH、KOH、およびNaH、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒が、強塩基性条件でプロトン移動能を有し、インサイチュ生成されたイミンを還元する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルキルまたは環状アルキルのアルコール性有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
単離ステップiii)が、アルキルケトン類、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、THF、ジエチルエーテル、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を採用する抽出方法によって行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(III)のメチルフルフリルアルコール(5-MFA)を、さらにアルミニウムトリクロリドおよびエタノールの存在下で反応させて、式(V)の2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン(EMMF)を得る、請求項2に記載の方法。
【化5】
【請求項11】
前記アミン化合物:前記無機塩基:式(II)の置換フルフラールの比が、1~3:0.5~4:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アミン化合物:前記無機塩基:前記5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の比が、1~3:0.5~2:1の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記アミン化合物:前記無機塩基:前記2,5-ジホルミルフランのモル濃度が、2:0.5:1である、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I):
【0002】
【化1】
の5-メチル置換フラン化合物であって、式中;
R
1が、水素、ヒドロキシメチル、メチル、アルキル、ヒドロキシ、アルデヒド、ハライド、エステル、カルボン酸、アミド、アミン、置換アミン、アルコキシ/エーテル結合、硫黄誘導体、リン誘導体、ならびにアリールおよびヘテロアリール官能基を含む群から選択され;
R
2およびR
3が、水素、アルキル、およびアリールを含む群から選択されてもよい5-メチル置換フラン化合物、およびその製造工程に関する。
【0003】
より詳細には、本発明は、「異なる置換フランのメチル基にアルデヒドを選択的還元する金属フリーの手法」のための新しいプロトコルに関する。異なるアルデヒド置換フラン化合物からメチル置換フラン化合物を製造する、金属触媒フリーおよび水素ガスフリー、原子経済的、高選択的で、費用のかからない工程が、本発明によって開発された。この工程ステップは、大規模化することが容易であり、高純度を達成するための面倒な精製ステップを必要としない。
【0004】
本発明は詳細には、5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)、2,5-ジメチルフラン(DMF)、5-メチルフランを、バイオ燃料および他の用途として非常に広範囲の用途を有する、対応するアルデヒド化合物から製造する工程に関する。
【0005】
さらに本発明は、バイオ燃料、香料、食品添加物、薬剤、樹脂の製造、およびバイオポリマー合成のための中間体/最終生成物として有用な一般式(I)のメチル置換フラン化合物に関する。
【0006】
本発明はさらに、一般式(I)のメチル置換フラン化合物の、便利、安価、効率的で大規模化可能な合成方法に関する。
【背景技術】
【0007】
バイオマス由来のバイオ燃料の製造は、ここ数十年の間に活発で重要な課題となっている。化石資源の枯渇と温室効果ガスの排出により、研究分野では、バイオ燃料製造用の原料として再生可能な資源を利用することが、日ごとに求められている。バイオマス資源(リグノセルロース、セルロース、デンプン、フルクトース、グルコース、スクロース等)は、自然界に豊富に存在するため、エネルギーやファインバルク化学品の製造に適した再生可能な資源として想定されてきた。5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、こうした状況でプラットフォーム分子と考えられており、様々なファインケミカルおよびバイオ燃料の製造用のかなめとなる中間体として働くバイオマスから誘導される(Mika, L. T., Csefalvay, E. and Nemeth, A., Chem. Rev., 2018, 118, (2),505-613)。
【0008】
5-HMFの還元により、5-HMFからだけでなくバイオマスから直接誘導される有望なバイオ燃料である、2,5-ジメチルフラン(DMF)が得られている。バイオ燃料の工業的規模での製造は、費用がかかることと大規模化上の問題から、まだ高い科学的介入が必要である。この点では、5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)は、水素化分解を経てジメチルフラン(バイオ燃料)を得る重要な中間体として想定されている(Thanatthanachon, T. and Rauchfuss, B. T., Angew. Chem., 2010, 49, 6616-6618)。西村ら(Nishimura et al.)は、Pd-Au/C触媒を用いて5-HMFを、5-MFA中間体を経て2,5-DMFに水素化することを報告している。この条件下での5-MFA生成収率は非常に低い(Nishimura, S.; Ikeda, N. and Ebitani, K., Catalysis Today, 2014, 232, 89-98)。また、5-クロロフラン-2-カルバルデヒドも、Zr-ベンジルホスホナートを用いた5-MFA合成(GC定量収率98%)の前駆体として報告されている(Li, H.; Fang, Z.; He, J. and Yang, S., ChemSusChem, 2017, 10, 681-686)。さらに、Cu/g-Al2O3と、水素源として水素分子とを用いた2,5-DMF合成の場合にも、5-MFAは大きな役割を果たしている。Cu/g-Al2O3に及ぼす水の影響が説明されており、水がない場合には、5-HMFの主要な水素分解生成物が5-MFAと2,5-DMFであることが発見されている(Liu, Y.; Mellmer, A. M.; Alonso, M. D. and Dumesic, A. J., ChemSusChem, 2015, 8, 3983-3986)。この開発の続きとして、様々なアルコール性溶媒中での5-HMFから2,5-BHMFへの高選択的水素化に適したジルコニア担持ルテニウム触媒(Ru(OH)x/ZrO2)など、様々な不均一系触媒の手法も適用されており、2-プロパノールおよび三級ブチルアルコールの場合には、副生成物として5-MFAが形成されることが確認されている(Han,J. ; Kim, H. Y.; Jnag, S. H.; Hwang, Y. S.; Jegal, J.; Kim, W. J. and Lee, S. Y., RSC Adv., 2016, 6, 93394-93397)。その後、5-HMFからDHMF合成するCu(50)-SiO2ナノコンポジットも開発されている。DHMFとともに5-MFA(2%)の形成が報告されている(Upare, P. P.; Hwang, K. Y. and Hwang, W. D., Green Chem., 2018, 20, 879-885)。Ru-Sn/ZnOを用いることで5-MFAの最高収率(19%)が得られた(Upare, P. P.; Hwang, W. D.; Hwang, K. Y.; Lee, H. U.; Hong, Y. D. and Chang, S. J., Green Chem., 2015, 17, 3310-3313)。ペロブスカイト型酸化物に担持されたニッケルが、フーら(Fu et al.)によって同様にスクリーニングされ、5-MFA(38.5%)が5-HMFの他の水素分解生成物とともに形成されることが観察された(Chen, Y. M.; Chen, B. C.; Zada, B. and Fu, Y., Green Chem, 2016, 18, 3858-3866)。チャタジーら(Chatterjee et al.)は、触媒Pt/MCM-41を用い、水性媒体中で水素圧0.8MPaという穏やかな反応条件下でいかなる添加物もなしに水素化することによって、5-HMFからBHMFを合成する別の手法を試みている。基質がメチルフルフラールおよびBHMFである場合にのみ、5-MFA(GC収率90%)が生成され、また標準条件から反応時間を延長する(2時間から6時間)ことが5-MFAの形成に有利である可能性があることが観察された(Chatterjee, M.; Ishizaka, T. and Kawanami, H., Green Chem., 2014, 16, 4734-4739)。最近、フーら(Hu et al.)は、ジルコニウムN-アルキルトリホスファート・ナノハイブリッド(ZrPN)を用い140℃で、5-メチルフルフリルアルコールへの5-メチルフルフラールの触媒的移動水素化を実行し、最高99%という収率がGCで定量されている(Li, H.; He, J.; Riisager, A.; Saravanamurugan, S.; Song, B. and Yang, S. ACS Catal. 2016, 6, 7722-7727)。また、NiOナノ粒子を用いた別のCTH手法が実行され、180℃の高温で5-メチルフルフラールから収率93%の5-MFAが得られることが観察されている。(He, J.; Schill, L.; Yang, S. and Riisager, A., ACS Sustainable Chem. Eng., 2018, 6, 17220-17229)。最近、Cu0/Cu2O-SiO2サイト上で外来ガスなしに銅フィロシリカート前駆体を介し水性フルフラールの選択的脱酸素化による2-メチルフラン(MF)の合成も、ザオら(Zhao et al.)によって報告されている(Li, B.; Li. L.; Sun, H. and Zhao, C. ACS Sustainable Chem. Eng., 2018, 6, 12096-12103)。ズーら(Zhu et al.)は、SiO2に担持されたCu系触媒が、フルフラールを89%の高収率で2-MFに選択的に変換することを報告している(Dong, F.; Zhu, Y. L.; Zheng, H. Y.; Zhu, Y. F.; Li, X. Q. and Li, Y. W. J. Mol. Catal. A: Chem. 2015, 398, 140-148)。また、Cu-Zn-Al触媒と、水素供与体としてシクロヘキサノールとを用いることによりフルフラールから2-MFを250℃で87%の選択率で合成する、ハイブリッド触媒の手法も適用されている(Zheng, H. Y.; Zhu, Y. L.; Bai, Z. Q.; Huang, L.; Xiang, H. W. and Li, Y. W. Green Chem. 2006, 8(1), 107-109)。
【0009】
先行技術に続いて、本発明は、異なるアルデヒド置換フラン化合物からメチル置換フラン化合物を非常に容易に得る工程を開発することを目的としている。本開発は詳細には、バイオ燃料および他の用途として非常に広範囲の用途を有する、5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)、2,5-ジメチルフラン(DMF)、2-メチルフランを、対応するアルデヒド化合物から製造する工程に関する。
発明の目的
【0010】
本発明の主目的は、一般式(I)の5-メチル置換フラン化合物を提供することである。
【0011】
【0012】
本発明のさらに別の目的は、バイオ燃料、食品添加物、薬剤の分野で汎用性のある用途を有する便利な手法に従って、5-HMFおよび2,5-ジホルミルフラン(DFF)または5-メチルフラン-2-カルバルデヒドから、5-MFAおよびDMFを合成する、金属フリーおよび水素ガスフリー、高選択的で、費用対効果の高い工程を開発することであり、詳細に示される欠点が未然に防がれる。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、副生成物形成が非常に少なく、面倒な精製を必要としない、原子経済的で高収率の手法を開発することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、大規模化された変換に適用可能な、より穏和で効率的な手法を開発することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、5-HMFまたはそのアルデヒド置換誘導体からの段階的手法に従って、費用のかからない炭水化物系バイオ廃棄物を利用するバイオ燃料またはバイオ燃料候補物を製造する大規模化可能な工程を開発することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、同様のタイプの分子と結合したアルデヒド基の還元に同一の戦略を適用することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、非食用で費用のかからないセルロース/炭水化物を、バイオ燃料、食品添加物、香料、医薬用途の原料として、価値の高い生化学品(5-MFA、DMF等)の製造に利用することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、5-MFAを、バイオ燃料/バイオディーゼルおよび他の商業的用途としての2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン(EMMF)製造に利用することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、バイオ燃料および商業的に重要な分子/製造物合成としての、費用のかからない2,5-ジメチルフラン(DMF)製造のための工程開発である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施形態では、本発明は、一般式(I):
【0021】
【化3】
の5-メチル置換フラン類であって、式中;
R
1が、水素、ヒドロキシメチル、メチル、アルキル、ヒドロキシ、アルデヒド、ハライド、エステル、カルボン酸、アミド、アミン、置換アミン、アルコキシ/エーテル結合、硫黄誘導体、リン誘導体、ならびにアリールおよびヘテロアリール官能基を含む群から選択され;
R
2およびR
3が、水素、アルキル、およびアリールを含む群から選択されてもよい5-メチル置換フラン類の製造工程を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、費用のかからない炭水化物(サトウキビバガス、稲わら、トウモロコシ穂軸、他のセルロース系資源、セルロース、デンプン、ポリサッカリド、グルコース、およびフルクトース等)から、5-HMFおよびその対応する生成物を通じて、一般式(I)の5-メチル置換フラン化合物を製造し、副生成物生成を最小限に抑えて、費用のかかる精製工程を回避する、費用対効果の高い、原子経済的、高選択的で、高収率の手法を提供する。別の実施形態では、本発明は、一般式(I)の5-メチル置換フラン類を製造するワンポット工程を提供する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)の5-メチル置換フラン類を製造する、金属フリーおよび水素ガスフリー、高選択的で、費用対効果の高い工程を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)の5-メチル置換フラン類の製造工程であって:
i) アミン化合物および無機塩基を、好適な溶媒中、式(II)の置換フルフラールと反応させて、インサイチュでの対応するイミンを生成することと
【0025】
【化4】
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成イミンを、好適な溶媒中、塩基性条件下で還元して、一般式(I)のメチル置換フラン類にすることと;
iii) 一般式(I)のメチル置換フラン類を単離することと;
iv) 随意に、一般式(I)の単離されたメチル置換フラン類を精製することと、
を含む工程を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、式(1)、
【0027】
【化5】
の5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)の製造工程であって:
i) アミン化合物および無機塩基を、好適な溶媒中、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)と反応させて、インサイチュでの対応するイミンを生成することと;
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成イミンを、好適な溶媒中、塩基性条件下で還元して、式(1)の5-MFAにすることと;
iii) 式(1)の5-MFAを単離することと;
iv) 随意に、単離された5-MFAを精製することと、
を含む工程を提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、式(IV)、
【0029】
【化6】
の2,5-ジメチルフランの製造工程であって:
i) アミン化合物および無機塩基を、溶媒中、2,5-ジホルミルフランと反応させて、インサイチュでの対応するジイミンを生成することと;
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成ジイミンを、溶媒中、塩基性条件下で還元して、式(IV)の2,5-ジメチルフランを得ることと;
iii) 式(IV)の2,5-ジメチルフランを単離することと;
iv) 随意に、式(IV)の単離された2,5-ジメチルフランを精製することと、
を含む工程を提供する。
【0030】
さらに別の実施形態では、本発明は、式(III)の5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)から式(V)の2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン(EMMF)を製造する工程を提供する。
【0031】
【0032】
従って、この方法は、不要な反応を回避し、変換を成功させるのに必要な所望の条件を満たす、金属フリーのさらに穏和な溶媒条件下で、無機塩基を組み合わせることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、カルボニル化合物のヒドラゾンに続き、強塩基の存在下でのさらなる分解により、一般式(I):
【0034】
【化8】
の5-メチル置換フラン化合物であって、式中:
R
1が、水素、ヒドロキシメチル、メチル、アルキル、ヒドロキシ、ホルミル、ハライド、エステル、カルボキシル、ニトロ、アミド、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、エーテル、硫黄誘導体、リン誘導体、ならびにアリールおよびヘテロアリール官能基を含む群から選択され;
R
2およびR
3が、水素、アルキル、およびアリールを含む群から選ばれてもよい5-メチル置換フラン化合物を与えるインサイチュステップを含む、「異なる置換フランのメチル基にアルデヒドを選択的に還元する金属フリーの手法」を提供する。
【0035】
先行技術の工程とは対照的に、本発明は、5-HMFおよびジ/モノホルミルフランを、対応する5-MFAおよびDMFに良好な収率で直接変換する、金属フリーおよび水素ガスフリーの還元方法を提供する。
【0036】
問題があってまだ試みられていないウォルフ・キシュナー(Wolff-Kishner)還元の手法が、この研究の下、比較的低温で実行されて、副生成物を無視できる程度にしか伴わずに、5-アルデヒド置換フラン化合物を一般式(I)の5-メチル置換フラン化合物に良好な収率で選択的に変換している。
【0037】
さらに、この工程は、高圧オートクレーブ系を必要とせず、通常の還流条件下で実行された。
【0038】
この改良された合成手法は、高選択性で高収率であり非常に良好な収率で5-MFAの大規模製造に適用可能であることが見いだされた。
【0039】
また、この改良された系全体は、不要な副生成物の形成、過剰な還元、および重合を抑制する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、一般式(I):
【0041】
【化9】
の5-メチル置換フラン類であって、式中;
R
1が、水素、ヒドロキシメチル、メチル、アルキル、ヒドロキシ、アルデヒド、ハライド、エステル、カルボン酸、アミド、アミン、置換アミン、アルコキシ/エーテル結合、硫黄誘導体、リン誘導体、ならびにアリールおよびヘテロアリール官能基を含む群から選択され;
R
2およびR
3が、水素、アルキル、およびアリールを含む群から選択されてもよい5-メチル置換フラン類の製造工程であって:
i) アミン化合物および無機塩基を、溶媒中、式(II)の置換フルフラールと反応させて、インサイチュでの対応するイミン化合物を得るステップと;
【0042】
【化10】
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成イミンを、溶媒中、塩基性条件下で還元して、一般式(I)の5-メチル置換フラン類を得るステップと;
iii) 一般式(I)のメチル置換フラン類を単離するステップと;
iv) 随意に、一般式(I)の単離されたメチル置換フラン類を精製するステップと、
を含む工程を提供する。
【0043】
別の実施形態では、アルキルはメチルである。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、費用のかからない炭水化物(サトウキビバガス、稲わら、トウモロコシ穂軸、他のセルロース系資源、セルロース、デンプン、ポリサッカリド、グルコース、およびフルクトース等)から、5-HMFおよびその対応する生成物を通じて、一般式(I)の5-メチル置換フラン化合物を製造し、副生成物形成を最小限に抑えて、費用のかかる精製工程を回避する、費用対効果の高い、原子経済的、高選択的で、高収率の手法を提供する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)の5-メチル置換フラン類を製造するワンポット工程を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、一般式(I)の5-メチル置換フラン類を製造する、金属フリーおよび水素ガスフリー、高選択的で、費用対効果の高い工程を提供する。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、式(1)、
【0048】
【化11】
の5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)の製造工程であって;
i) アミン化合物および無機塩基を、好適な溶媒中、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)と反応させて、インサイチュでの対応するイミンを生成することと;
ii) ステップ(i)のインサイチュ生成イミンを、好適な溶媒中、塩基性条件下で還元して、式(1)の5-MFAにすることと;
iii) 式(III)の5-MFAを単離することと;
iv) 随意に、式(III)の単離された5-MFAを精製することと、
を含む工程を提供する。
【0049】
5-HMFは、5-MFAを構築するための炭水化物から生成される主要構成要素として使用されている。
【0050】
5-HMFのアルコール基は、その反応性は見いだされず、最終的には、主要な5-MFA生成物と、2,5-ジホルミルフランまたはモノホルミルフランとになり、どちらもこの工程の下、主要生成物としてDMFに変換できる。
【0051】
別の実施形態では、式(I)または式(III)または式(IV)の最終生成物は、好適な抽出溶媒を採用する抽出の方法によって単離される。
【0052】
好適な抽出溶媒には、アルキルケトン類、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、THF、およびジエチルエーテル、または同類のもの、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。
【0053】
式(I)または式(III)または式(IV)の最終生成物の高収率および純度を実現するために、蒸留は可変の圧力および温度条件下で実行される。
【0054】
本工程は、一般式(II)のアルデヒド置換フラン化合物についてまだ検討されていなかった従来のウォルフ・キシュナー還元の手法に従う。
【0055】
アミン化合物には、ヒドラジンヒドラ―ト、ヒドラジンヒドロクロリド、アリール置換ヒドラジン/アルキル置換ヒドラジン/ヒドロキシル置換ヒドラジン、およびさらにはイミン形成の傾向を有し同様のウォルフ・キシュナー還元の手法に従うジアミン化合物の広範ないずれかのそうした群、または同類のものなどが挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、無機塩基は無機強塩基である。
【0056】
無機塩基には、アルコキシアルカリ金属、ヒドロキシルアルカリ金属、ヒドリドアルカリ金属の無機塩基などが挙げられるが、これらには限定されない。最も好ましくは、アルカリ金属は、K、Na、およびCsである。アルコキシアルカリ金属は、KOtBu、NaOtBu、KOEt、NaOEt、KOMe、およびNaOMeからなる群から選択される。ヒドロキシルアルカリ金属は、NaOHおよびKOHからなる群から選択され;そしてヒドリドアルカリ金属は、NaHである。
【0057】
最も好ましくは、無機塩基は、KOtBu、NaOtBu、KOEt、NaOEt、KOMe、NaOMe、NaOH、KOH、およびNaHからなる群から選択される。
【0058】
好ましくは、好適な溶媒は、アルコール性有機溶媒である。
【0059】
アルコール性有機溶媒は、沸点が可変である、そしてカルボニルから形成されたインサイチュのイミンをアルキル炭素に還元する強塩基性条件でプロトン移動能を有するいずれかのプロトン性アルコールである。
【0060】
アルコール性有機溶媒には、アルキルアルコール、環状アルキルアルコール類、または同類のものなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0061】
好ましくは、アルキルまたは環状アルキルのアルコール性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、またはそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、アルコール性溶媒は、2-ブタノールおよびエタノールである。
【0062】
上記工程の単離ステップiii)は、アルキルケトン類、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、THF、ジエチルエーテル、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を採用する抽出方法によって行われる。
【0063】
本発明の別の実施形態では、式(III)のメチルフルフリルアルコール(5-MFA)をさらにアルミニウムトリクロリドおよびエタノールの存在下で反応させて、式(V)の2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン(EMMF)を得ることができる。
【0064】
【0065】
反応に好適な温度は、この変換に適用される異なる塩基および溶媒に基づいて、80から180℃まで可変であってもよい。好ましくは、反応は、副生成物の形成が少なく最高の収率が得られるよう、120から140℃の範囲の温度で実行される。
【0066】
反応時間は、2~6時間または反応の完了まで、選択してもよい。
【0067】
本工程の範囲を拡大するために、異なる5-アルデヒド置換フラン化合物を使用して、一般式(I)の下で提案される5-メチル置換フラン類を生成することに成功している。
【0068】
工程開発では、異なるヒドラジン類似体、無機塩基、およびアルコール性溶媒を、一般式(I)の下で提案される化合物の選択的形成に使用した。
【0069】
高度に選択的なやり方で式(I)の所望の5-メチル置換フランを製造する本工程は、式(II)の置換フラン化合物のアルデヒド基との選択的イミン形成にアミン化合物を使用することを伴う。アルコール性溶媒条件下での塩基が、副生成物の一つとして窒素ガスを生成することにより、プロトン移動を通じてカルボニル基を特異的に還元する。
【0070】
好ましくは、反応物のモル濃度/比は、アルデヒド置換フラン(1当量)、アミン化合物(1~3当量)、無機塩基(0.5~4当量)である。
【0071】
精製の方法は、当該技術分野で公知のいずれかの好適な方法から選択され、これらには、クロマトグラフィー技術、蒸留、結晶化等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0072】
好ましくは、精製は溶媒抽出、分別蒸留によって実行され、他の精製技法を引き続き行ってもよい。
【0073】
さらに別の実施形態では、本発明は、式(III)の5-メチルフルフリルアルコール(5-MFA)から式(V)の2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン(EMMF)を製造する工程を提供する。
【0074】
【0075】
本工程では、最適化された試薬、基質、溶媒、および反応条件が全体として、副生成物の生成を最小限に抑えて一般式(I)の所望の化合物を生成する大きな役割を果たしている。
【0076】
さらに、本工程は、異なるアルデヒド置換フラン化合物から一般式(I)の5-メチル置換フラン化合物の大規模化された製造に適用でき、この化合物は、バイオ燃料および他の商業的に価値のある生成物用の原料として適用できる可能性がある。
【0077】
原料化学品としての5-MFAを製造するこの大規模化可能な工程は、さらに、2,5-ジメチルフラン(2,5-DMF)などのバイオ燃料および他の重要なバイオ化学品製造の前駆体として有用である可能性がある(スキーム1)。
【0078】
【化14】
スキーム1. 5-HMFからの5-MFA生成は、バイオ燃料および他の重要なバイオ化学品製造のためのプラットフォーム化合物である
【0079】
略号の一覧:
HMF:5-ヒドロキシメチルフルフラール
DMF:2,5-ジメチルフラン
5-MFA:5-メチルフルフリルアルコール
MF:2-メチルフラン
EMMF:2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン
THF:テトラヒドロフラン
GC-MS:ガスクロマトグラフ/質量分析計
NMR:核磁気共鳴
TLC:薄層クロマトグラフィー
【0080】
実験に使用した材料および方法:
使用したすべての出発材料および溶媒は、市販品供給元から、例えば、ヒドラジンヒドラ―トおよびその類似体をトーマス・ベーカー社(Thomas Baker)およびシグマ社(Sigma)から、塩基をアブラ社(Avra)から、溶媒をCDH、SDファイン社(SD Fine)から購入し、5-HMFを、我々自身の特許工程により使用し準備した。(出願番号:201811023331)、他の出発物質はシグマ社(Sigma)およびTCIからのものである。
【実施例】
【0081】
一般的な実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(500mL)に塩基(0.5~2.0当量)およびアルコール性溶媒を入れた。反応混合物を、塩基が完全に溶解するまで、120℃から140℃の温度範囲で加熱した。別の丸底フラスコに5-HMF(1.0当量)を2-ブタノールとともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(1~3当量)を滴下して加えた。5-HMF混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で2~6時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物を酢酸エチル/ジエチルエーテルで抽出し、Na2SO4上で乾燥させ、その後、真空下100~110℃で蒸留して溶媒を除去したところ、粗生成物の5-MFAが得られ、これを真空蒸留でさらに精製すると、50~70%の収率および>90%の選択率で5-MFAが得られた。この生成物を、さらにGC-MSおよびNMR(1Hおよび13C)により分析した。
【0082】
【化15】
スキーム2. 5-アルデヒド置換フラン類からの5-メチル置換フラン類の合成
【0083】
1. 5-HMFから5-MFAを合成する実験手順:
乾燥させたバッチ式反応器(15L)にKOtBu(106.8g、0.95mol)および2-ブタノール(1L)を入れた。反応混合物を加熱、攪拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコに5-HMF(100.0g、0.79mol)を2-ブタノール(300mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(78.0mL、1.58mol)を滴下して加えた。5-HMF混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で3~6時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物を酢酸エチル/ジエチルエーテルで抽出し、Na2SO4上で乾燥させ、その後、100~110℃で真空蒸留して溶媒を除去したところ、51%収率で5-MFA、45.15gが得られた。粗生成物をさらにGC-MSおよびNMRで分析した。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.15 (d, 1H, J = 3 Hz), 5.91 (d, 1H, J = 3 Hz), 4.52 (s, 2H), 2.29 (s, 3H); 13C NMR (300 MHz, CDCl3) δ 152.31, 152.30, 108.67, 106.19, 57.35, 13.48; GC-MS [M]+ = 112
【0084】
【化16】
スキーム3. 5-HMFからの5-MFAの合成
【0085】
2. 5-HMFから5-MFAを合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(500mL)に、ナトリウムtertブトキシド、NaOtBu(18.2g、0.19mol)および2-ブタノール(25mL)を入れた。反応混合物を加熱、攪拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコにHMF(20g、0.15mmol)を2-ブタノール(15mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながら、ヒドラジンヒドラ―ト(11.6mL、0.23mol)を滴下して加えた。5-HMF混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で3~6時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物を酢酸エチル/ジエチルエーテルで抽出し、Na2SO4上で乾燥させ、その後、100~110℃で蒸留して溶媒を除去したところ、粗生成物5-MFAが得られ、さらに真空蒸留で精製すると50.5%収率で5-MFA、9.0gが得られた。蒸留された反応残渣を、さらにGC-MSおよびNMRで分析した。スペクトルデータは、スキーム2、化合物IIIで言及したものと同一であった。
【0086】
【化17】
スキーム4. 5-HMFからの5-MFAの合成
【0087】
3. 5-HMFから5-MFAを合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(250mL)にKOH(3.3g、0.05mol)および2-ブタノール(10mL)を入れた。反応混合物を加熱、撹拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコにHMF(5.0g、0.03mol)を2-ブタノール(10mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(2.9mL、0.05mol)を滴下して加えた。5-HMF混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で3~6時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物を酢酸エチル/ジエチルエーテルで抽出し、Na2SO4上で乾燥させ、その後、100~110℃で蒸留して溶媒を除去したところ、粗生成物5-MFAが得られ、さらに真空蒸留で精製すると25%収率の5-MFA、1.1gが得られた。蒸留された反応残渣を、さらにGC-MSおよびNMRで分析した。スペクトルデータは、スキーム2、化合物IIIで言及したものと同一であった。
【0088】
【化18】
スキーム5. 5-HMFからの5-MFAの合成
【0089】
4. 2-フルフラルデヒドから2-メチルフランを合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(100mL)にKOtBu(1.1g、0.010mol)および2-ブタノール(3mL)を入れた。反応混合物を加熱、攪拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコに2-フルフラルデヒド(1.0g、0.01mol)を2-ブタノール(3mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(1.02mL、0.020mol)を滴下して加えた。2-フルフラルデヒド混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で3~6時間還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物をGC-MSで分析した。生成物をさらにGC-MSで分析し、標準と比較した。
【0090】
【化19】
スキーム6. 2-フルフラルデヒドからの2-メチルフランの合成
【0091】
5. 2,5-ジメチルフラン(DMF)から2,5-ジホルミルフランを合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(100mL)にKOtBu(45.0mg、0.403mmol)および2-ブタノール(1.5mL)を入れた。反応混合物を加熱、撹拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコに2,5-ジホルミルフラン(100mg、0.806mmol)を2-ブタノール(3mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(79μL、1.612mmol)を滴下して加えた。2,5-ジホルミルフラン混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、130℃で3~5時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物をGC-MSで分析した。生成物をさらにGC-MSで分析し、標準と比較した。
【0092】
【化20】
スキーム7. 2,5-ジホルミルフランからの2,5-ジメチルフランの合成
【0093】
6. 5-エチルフラン-2-カルバルデヒドから2-エチル-5-メチルフランを合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(100mL)にKOtBu(45.0mg、0.403mmol)と2-ブタノール(1.5mL)を入れた。反応混合物を加熱、撹拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコに5-エチルフラン-2-カルバルデヒド(100mg、0.805mmol)を2-ブタノール(3mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(79μL、1.611mmol)を滴下して加えた。5-エチルフラン-2-カルバルデヒド混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で3~5時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物をGC-MSで分析して、標準と比較した。
【0094】
【化21】
スキーム8. 5-エチルフラン-2-カルバルデヒドからの2-エチル-5-メチルフランの合成。
【0095】
7. 4,5-ジメチルフラン-2-カルバルデヒドを合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(100mL)にKOtBu(45.0mg、0.403mmol)と2-ブタノール(1.5mL)を入れた。反応混合物を加熱、攪拌し、塩基が完全に溶解するまで130℃で還流させた。別の丸底フラスコに4,5-ジメチルフラン-2-カルバルデヒド(100mg、0.806mmol)を2-ブタノール(3mL)とともに入れ、その後、穏やかに攪拌しながらヒドラジンヒドラ―ト(79μL、1.612mmol)を滴下して加えた。4,5-ジメチルフラン-2-カルバルデヒド混合物を、溶解させておいた塩基性溶液に徐々に加え、120~130℃で3~5時間、還流させた。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、混合物をGC-MSで分析して、標準と比較した。
【0096】
【化22】
スキーム9. 4,5-ジメチルフラン-2-カルバルデヒドからの2,3,5-トリメチルフランの合成
【0097】
8. 5-MFAから2-(エトキシメチル)-5-メチルフラン(EMMF)を合成する実験手順:
オーブン乾燥させた丸底フラスコ(100mL)に5-MFA(100mg、0.8919mmol)およびエタノール(2mL)を入れ、その後、アルミニウムトリクロリド(3.56mg、0.0267mmol)を加えた。反応産物を加熱し、90℃で4~12時間、還流下で攪拌した。反応の進行はTLCでモニタリングし、反応完了後、反応混合物をナトリウムビカルボナートで中和した後、ジエチルエーテル/酢酸エチルで抽出した。反応の抽出物をナトリウムスルファート上で乾燥させ、真空下で濃縮して、所望の生成物である化合物Vをほぼ定量的な変換で得た。この生成物をさらにGC-MSで分析し、標準と比較した。
【0098】
【化23】
スキーム10. 5-MFAからのEMMFの合成
【0099】
本発明の主な利点は、以下の通り:
1. 5-アルデヒド置換フラン類から5-メチル置換フラン類を製造する、簡単で原子経済的、費用対効果の高い工程が開発された。
2. この工程のもとでは、水素ガスや金属を使用せず、大規模化が容易であり、高収率を達成するための面倒な精製の必要がない。
3. この工程のもとでは過還元は確認されず、溶媒抽出や蒸留によって生成物分離が容易である。
4. 高圧オートクレーブ系が不要であり、したがって、還流条件下で実行される反応はリスクを低減させる。
5. この工程は、バイオ燃料や他の用途として需要の高いプラットフォーム化合物である5-MFA、2,5-DMF、および他の5-メチル置換フラン化合物の費用のかからない製造に適用できる可能性がある。
6. 5-MFAは、エネルギー効率の高い工程に従う2,5-DMF製造に非常に適した選択肢である。
7. 5-MFAのエーテル化は、バイオ燃料およびバイオディーゼルとして非常に広範囲の用途を有する異なるアルキルアルコール類を用いてさらに穏和な酸性条件下で行うことができる。
【国際調査報告】