(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】回折導波路ディスプレイ中の視覚的アーチファクトを減少させるための光学素子、およびそれを組み込むシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230801BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20230801BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230801BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02B5/30
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579811
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021038361
(87)【国際公開番号】W WO2021262641
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515252341
【氏名又は名称】イマジンオプティクス・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】ロビンス, スティーヴン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エスクティ, マイケル ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジファン
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA12
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
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2H149FA00W
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2H149FC09
2H149FD46
2H149FD47
2H199CA12
2H199CA54
2H199CA62
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2H199CA84
2H249AA02
2H249AA06
2H249AA62
(57)【要約】
回折導波路デバイスは、光導波路と、この光導波路に光学的に結合された回折素子とを含む。回折素子は、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されており、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の偏光の光を透過するように構成されている。偏光フィルムアセンブリは、光導波路への第2の偏光の光を与えるように構成されている、および/または光導波路からの第2の偏光の光を阻止するように構成されている。偏光フィルムアセンブリは、偏光子、および偏光子と光導波路との間に配置される光学リターダを含む。関連したデバイスおよび動作の方法も述べられる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と、
前記光導波路に光学的に結合された回折素子であって、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されており、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく前記第2の偏光の光を透過させるように構成されている、回折素子と、
前記光導波路へ前記第2の偏光の光を与えるように構成されている、および/または前記光導波路からの前記第2の偏光の光を阻止するように構成されている偏光フィルムアセンブリであって、偏光子、および前記偏光子と前記光導波路との間に配置される光学リターダを備える、偏光フィルムアセンブリと
を備える、回折導波路デバイス。
【請求項2】
前記偏光フィルムアセンブリは、前記光導波路の反対側にある前記偏光フィルムアセンブリの面に入射する非ディスプレイ光に応答して前記光導波路へ前記第2の偏光の光を与えるように配置され、適宜、前記第2の偏光の光は、前記第1の偏光が実質的にない、請求項1に記載の回折導波路デバイス。
【請求項3】
前記光導波路は、前記光導波路の面からの前記非ディスプレイ光を透過するように構成されており、透過される前記非ディスプレイ光は、前記第2の偏光の光を含み、レインボーアーチファクトが実質的になく、
適宜、透過される前記非ディスプレイ光は、前記第1の偏光の光が実質的にない、請求項2に記載の回折導波路デバイス。
【請求項4】
前記光導波路は、全内反射によって電子イメージングディスプレイからのディスプレイ光を伝搬し、前記光導波路の前記面からの前記ディスプレイ光を出力結合するように構成されている、請求項3に記載の回折導波路デバイス。
【請求項5】
前記回折素子は、前記光導波路の前記面の方へ前記ディスプレイ光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されており、出力結合される前記ディスプレイ光は、前記第1の偏光の光を含み、
適宜、出力結合される前記ディスプレイ光は、前記第2の偏光の光が実質的にない、請求項4に記載の回折導波路デバイス。
【請求項6】
前記第1のおよび第2の偏光は、互いに直交する、請求項1から5のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項7】
前記第1のおよび第2の偏光の一方は右円偏光であり、前記第1のおよび第2の偏光の他方は左円偏光である、請求項6に記載の回折導波路デバイス。
【請求項8】
前記光学リターダは、スタックした複屈折サブレイヤを備えるマルチねじれリターダであり、前記スタックした複屈折サブレイヤは、それぞれのリタデーションと、前記スタックした複屈折サブレイヤのそれぞれの厚さにわたってそれぞれのねじり角度だけ回転しているそれぞれの局所光軸とを有し、前記それぞれのねじり角度および/または前記それぞれの厚さのうちの少なくとも2つは、前記スタックした複屈折サブレイヤの間で異なっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項9】
前記スタックした複屈折サブレイヤは、液晶ポリマー層である、請求項8に記載の回折導波路デバイス。
【請求項10】
前記光学リターダは、異なる第1のリタデーション状態と第2のリタデーション状態との間で切り換えられるように構成されている切り換え可能なリターダ素子を備え、
前記偏光フィルムアセンブリは、前記第1のリタデーション状態で前記光導波路へ前記第2の偏光の光を与え、前記第2のリタデーション状態で前記光導波路からの前記第2の偏光の光を阻止するように構成されている
請求項1から5のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項11】
前記偏光フィルムアセンブリは、切り換え可能な円偏光子である、請求項10に記載の回折導波路デバイス。
【請求項12】
前記偏光子は、直線偏光子であり、前記第1のおよび第2のリタデーション状態の一方は、半波リタデーションを与えるように構成されており、前記第1のおよび第2の状態の他方は、ゼロリタデーションを与えるように構成されており、前記光学リターダは、前記直線偏光子と前記光導波路との間に1/4波長板をさらに備える、請求項10に記載の回折導波路デバイス。
【請求項13】
前記光学リターダは、可変リターダ素子を備え、前記可変リターダ素子は、入射光の入射角、前記入射光の波長、および/あるいは前記可変リターダ素子の面に沿って1つまたは複数の方向における空間的な位置に基づいて前記入射光に付与されるリタデーションを変えるように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項14】
前記可変リターダは、前記回折導波路デバイスの視野内にある入射角について第1のリタデーションを、および前記視野の外側にある入射角について前記第1のリタデーションとは異なる第2のリタデーションを与えるように構成されており、
前記偏光フィルムアセンブリは、前記視野の外側にある前記入射角について前記光導波路へ前記第2の偏光の光を与えるように、および前記視野内にある前記入射角について前記光導波路からの前記第2の偏光の光を阻止するように構成されている
請求項13に記載の回折導波路デバイス。
【請求項15】
前記回折素子から出力された光を受信するように配置された、空間的に変えるリターダであって、当該リターダの面に沿って1つまたは複数の方向で当該リターダに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている空間的に変えるリターダ
をさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項16】
前記空間的に変えるリターダは、前記1つまたは複数の方向において前記回折素子の回折効率を変えるように、および適宜、前記フィルムアセンブリの反対側の前記光導波路の面から実質的に均一な強度で出力される光を与えるように、構成されている、請求項15に記載の回折導波路デバイス。
【請求項17】
前記空間的に変えるリターダは、前記リタデーションを空間的に変えるように構成された局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを備える、請求項15に記載の回折導波路デバイス。
【請求項18】
前記回折素子および/または前記空間的に変えるリターダは、前記光導波路内に含まれる、請求項15に記載の回折導波路デバイス。
【請求項19】
前記光導波路は、第1の光導波路であり、
前記第1の光導波路から出力された光を受信するように配置された第2の光導波路と、
前記第1の光導波路に光学的に結合された第2の回折素子と、をさらに備え、前記第2の回折素子は、前記第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されており、前記第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく前記第2の偏光の光を透過するように構成されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項20】
前記第2の回折素子と前記第1の光導波路との間に第2のフィルムアセンブリをさらに備え、
前記第2のフィルムアセンブリは、第2の空間的に変えるリターダであって、当該リターダの面に沿って1つまたは複数の方向で当該リターダに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている第2の空間的に変えるリターダを備える、請求項19に記載の回折導波路デバイス。
【請求項21】
前記第2の空間的に変えるリターダは、前記第1の光導波路の前記空間的に変えるリターダの局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さとは逆に前記リタデーションを空間的に変えるように構成された、局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを備える、請求項20に記載の回折導波路デバイス。
【請求項22】
前記第2の光導波路は、
前記第2の回折素子から出力された光を受信するように配置された、第3の空間的に変えるリターダであって、当該リターダの面に沿って1つまたは複数の方向で当該リターダに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている第3の空間的に変えるリターダをさらに備える、請求項20に記載の回折導波路デバイス。
【請求項23】
前記第3の空間的に変えるリターダは、前記1つまたは複数の方向において前記第2の回折素子の回折効率を変え、
実質的に均一な強度で出力される光を与えるように構成されている、請求項22に記載の回折導波路デバイス。
【請求項24】
前記第2のフィルムアセンブリは、前記第2の光導波路内に含まれ、前記第3の空間的に変えるリターダは、前記第2の空間的に変えるリターダの局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さとは逆に前記リタデーションを空間的に変えるように構成された局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを備える、請求項22に記載の回折導波路デバイス。
【請求項25】
前記第2の光導波路から出力された光を受信するように配置された第3の光導波路と、
前記第3の光導波路に光学的に結合された第3の回折素子であって、前記第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されており、前記第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく前記第2の偏光の光を透過するように構成されている、第3の回折素子と
をさらに備える、請求項20に記載の回折導波路デバイス。
【請求項26】
前記第3の回折素子と前記第2の光導波路との間に第3のフィルムアセンブリをさらに備え、
前記第3のフィルムアセンブリは、第4の空間的に変えるリターダであって、当該リターダの面に沿って1つまたは複数の方向で当該リターダに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている第4の空間的に変えるリターダを備える、請求項25に記載の回折導波路デバイス。
【請求項27】
前記第1、第2、および第3の光導波路は、可視スペクトルのそれぞれの色に対応するそれぞれの波長範囲の光に関して動作するように構成されている、請求項25に記載の回折導波路デバイス。
【請求項28】
前記回折素子の回折効率は、前記フィルムアセンブリの反対側の前記光導波路の面から実質的に均一な強度で出力される光を与えるように、前記回折素子の面に沿って1つまたは複数の方向において変わる、請求項1から5のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項29】
前記回折素子は、
スタックした複屈折サブレイヤを備えたマルチ傾斜格子を備え、前記スタックした複屈折サブレイヤは、それぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータを有し、前記偏光フィルムアセンブリの反対側にある前記光導波路の面の方へディスプレイ光を向けると同時に、前記光導波路の前記面から離れるように残留光を向けるように構成されており、
適宜、前記それぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータのうちの少なくとも2つは、前記スタックした複屈折サブレイヤの間で異なっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項30】
前記光導波路の前記面から出力結合される前記ディスプレイ光対前記光導波路の前記面から離れるように向けられる前記残留光の強度比は、約10対1よりも大きい、請求項29に記載の回折導波路デバイス。
【請求項31】
両側に第1のおよび第2の面を備える光導波路であって、全内反射によって電子イメージングディスプレイからのディスプレイ光を伝播し、前記第2の面からの前記ディスプレイ光を出力結合するように構成されている、光導波路と、
前記導波路に光学的に結合された回折素子であって、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されており、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく前記第2の偏光の光を透過させるように構成されている、回折素子と
を備える回折導波路デバイスであって、
前記回折素子は、複数のスタックした複屈折サブレイヤを備え、前記複数のスタックした複屈折サブレイヤは、それぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータを有し、前記光導波路の前記第2の面の方へ前記ディスプレイ光を向けると同時に、前記光導波路の前記第1の面の方へ前記ディスプレイ光よりも低い強度の残留光を向けるように構成されている、回折導波路デバイス。
【請求項32】
前記光導波路の前記面から出力結合される前記ディスプレイ光対前記光導波路の前記面から離れるように向けられる前記残留光の強度比は、約10対1よりも大きい、請求項31に記載の回折導波路デバイス。
【請求項33】
出力結合される前記ディスプレイ光は、前記第1の偏光の光を含み、適宜、前記第2の偏光の光が実質的になく、
前記残留光は、前記第2の偏光の光を含み、適宜、前記第1の偏光の光が実質的にない
請求項31に記載の回折導波路デバイス。
【請求項34】
前記光導波路の前記第1の面から出力結合される前記第2の偏光の光を阻止するように構成されている偏光フィルムアセンブリ
をさらに備える、請求項33に記載の回折導波路デバイス。
【請求項35】
前記偏光フィルムアセンブリは、偏光子と、前記偏光子と前記光導波路の前記第1の面との間に配置される光学リターダとを備える、請求項34に記載の回折導波路デバイス。
【請求項36】
前記偏光フィルムアセンブリは、前記光導波路の反対側にある前記偏光フィルムアセンブリの面に入射する非ディスプレイ光に応答して前記光導波路へ前記第2の偏光の光を与えるようにさらに構成されている、請求項35に記載の回折導波路デバイス。
【請求項37】
前記光学リターダは、異なる第1のリタデーション状態と第2のリタデーション状態との間で切り換えられるように構成されている切り換え可能なリターダ素子を備え、
前記偏光フィルムアセンブリは、前記第1のリタデーション状態で前記光導波路へ前記第2の偏光の光を与え、前記第2のリタデーション状態で前記光導波路の前記第1の面から出力結合される前記第2の偏光の光を阻止するように構成されている
請求項36に記載の回折導波路デバイス。
【請求項38】
前記偏光子は、直線偏光子であり、前記第1のおよび第2のリタデーション状態の一方は、半波リタデーションを与えるように構成されており、前記第1のおよび第2の状態の他方は、ゼロリタデーションを与えるように構成されており、前記光学リターダは、前記直線偏光子と前記光導波路との間に1/4波長板をさらに備える、請求項37に記載の回折導波路デバイス。
【請求項39】
順次配置された複数の光導波路を備えた光導波路アセンブリであって、前記光導波路の各々は、それぞれの回折素子、およびそれぞれの空間的に変えるリターダを備え、前記それぞれの空間的に変えるリターダは、回折効率のそれぞれの勾配を生成するためにそれぞれの回折層からの光と相互作用するように構成されている、光導波路アセンブリと、
偏光子およびリターダ素子を備えた偏光フィルムアセンブリであって、前記光導波路アセンブリへ第2の偏光の偏光した光を与えるように構成され、および/または前記光導波路アセンブリから出力される偏光した光を阻止するように構成されている、偏光フィルムアセンブリと
を備える回折導波路デバイス。
【請求項40】
前記回折素子は、1つまたは複数の寸法が変わる局所光軸の向きを含む幾何学的位相要素を備える、請求項1から39のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項41】
前記回折素子は、1つまたは複数の寸法が線形的に変わりそれぞれの格子周期を定める局所光軸の向きを含む偏光格子を備える、請求項1から40のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項42】
前記回折素子は、前記第2の偏光の光をゼロ次ビームにおよび前記第1の偏光の光を1次ビームに出力するように構成されている透過格子または反射ブラッグ偏光格子を備え、前記ゼロ次ビームの伝搬方向と前記1次ビームの伝搬方向との間の差は、約45度よりも大きい、請求項1から41のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【請求項43】
前記第1のおよび/または第2の偏光の光は、可視波長範囲の光を含む、請求項1から42のいずれか一項に記載の回折導波路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年6月22日に米国特許商標庁に共に出願された米国仮特許出願第63/042,031号および米国仮特許出願第63/042,021号の優先権を主張するものであり、各米国仮特許出願の開示は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ディスプレイ光源からの光をユーザの動作環境からの光と合成することができる導波管ディスプレイは、ニアツーアイ(near-to-eye)および/またはヘッドマウントディスプレイのための通常の投影光学系に勝る多くの利点を有するフォームファクタを表すことができる。例えば、導波路ベースの拡張現実(AR)システム(複合現実(MR)システムとも呼ばれる)のフォームファクタは、眼鏡に類似し得る。眼への大きい射出瞳は、導波路内の2つ以上の拡張機構により小型コリメーティングディスプレイエンジンの射出瞳を拡張することによって生成され得る。例えば、回折射出瞳エキスパンダ(EPE:Exit Pupil Expander)は、入射光を多数の回折次数に回折させる格子を含み得る。方向は、格子周期の長さによって規定することができる。角度が十分大きい場合、光は、全内反射(TIR)を受け、平坦なガラス導波路の内側に閉じ込められる。次いで、光は、初期ビームを所望のサイズに拡張する1つまたは複数の他の格子によって徐々に抽出され得る。
【0003】
1つまたは複数の回折格子を組み込むいくつかの導波管ディスプレイでは、極端な軸外れの光源からの光(たとえば、外界または動作環境の視野からの周囲光)は、回折格子によって回折され、ガラスの中に導波することなくユーザの眼に入ることができる。光が格子を1度だけインターセプトするので、光は回折分散によりレインボーに分割される(回折角は、回折式によって関連付けられた波長の関数)。そのようなレインボー効果のモードは、異なる方向からの導波路に入射する光により生じ得る。これは、
図1Aに示されており、
図1Aは、(上からの入射として示された)ユーザの正面の方向から回折格子100を含む導波路20に入射するが、ユーザの背後の方向からも生じる場合がある光10によるレインボー効果30を示す。より小さいフォームファクタデバイスについては、ユーザの背後からの光は、光の一部がユーザの頭部によって阻止され得るので、問題となり得ない。
【0004】
また、ディスプレイ視野内の順光10は、導波路20の中に回折することができ、再び外に回折することができ、すなわち、二重回折である。この場合には、
図1Bに示されるように、分散は補正され得る(回折分散は、等しく反対の方向に作用する)。導波路20(特に、単一の格子によって支持され得る最大視野)内で伝搬する光については、外界からの光10は、導波路20の中に回折され、光のスペクトルは、回折式に従って異なる角度に回折され得る。続いて格子100と遭遇すると、光は、ユーザの眼の方へ回折され、異なる波長の光が、(導波路20に入る前に)元の方向に回折される場合があり、異なる波長の光が再合成されるようになっている。
【0005】
しかしながら、
図1Aに示されるように、高入射角の光10は、導波路20の臨界角未満の角度へ回折され得、したがって、その次の時間で回折格子100に遭遇する前に外へ回折され得、したがって、別々の波長に分割される。この光がディスプレイの射出瞳内にある場合、ユーザは、この光をレインボー30として観察する。
【0006】
レインボー効果は、例えば、Valliusの米国特許第10,234,686号に説明されるように、システムに入る周囲光が特定の偏光状態を有するように偏光フィルタを用いていくつかの導波管ディスプレイ内で除去され得るまたは減少させられ得る。偏光フィルタは、反対の偏光状態に敏感であるために構成される回折格子構造を含む下流の回折光学素子と併せて利用され得る。
【0007】
また、ARディスプレイシステムが現実世界のシーン/動作環境と合成ディスプレイの両方からの光を合成するときに、多くのARディスプレイは、一部の光を眼から離れるように順方向に投影することができる。これに対する例外は、
図1Cに示されるように、ディスプレイのコンバイナが偏光ビームスプリッタ60であり、ディスプレイ光50が非常に偏光されるときである。しかしながら、多くのARディスプレイは、
図1Cの破線の矢印によって示されるように、ディスプレイ光の一部を前方に「漏らす」要素を有する、または一部の光が順方向に伝播することを可能にする部分的反射面を有する。この光は、順光漏れまたは順投影光105とひとまとめに呼ばれ得る。
【0008】
図1Dは、順投影光または順光漏れ105の問題をより詳細に示す。
図1Dに示されるように、透明基板は、外界に見える(出力格子100として示された)1つまたは複数の格子を組み込む導波路20として設けられる。基板は、2つ以上の導波路20、たとえば、6つの導波路であってもよく、または2つ以上の導波路20、たとえば、6つの導波路を含んでもよく、視野は、導波路の個数に伴って増加し得る。光101は、導波路120内の全内反射によって内部で反射する。光101は、出力格子100をインターセプトし、ユーザの眼の方へ主に拡散され102、しかしながら、一部の順投影光105が、存在し得る。出力格子100は、様々な格子タイプ、たとえば、表面レリーフ格子(SRG)、体積ホログラフィック格子(VHG)、切り換え可能なブラッグ格子などのいずれかであり得る。
【0009】
多くの回折技術は、(本明細書中で順方向と呼ばれる)ユーザとは反対の方向に一部の光が回折することを可能にすることができ、したがって、これは、他の人(すなわち、ユーザ以外の他の人)に見え得る。この機構は、反射格子または透過格子のために存在し得るとともに、特定の格子タイプ、たとえば、SRGによって重要であり得る。例えば、SRGを用いる一部のARシステムは、ユーザの方へ投影される輝度の約50%の輝度で光を順方向に投影することができる。
【0010】
反射導波路と回折導波路の両方は、光を順方向に投影することができる。この順光漏れは、プライバシー(ユーザが見ているものを他の者が見ることができる可能性があるとき)、光セキュリティ(軍事システムの場合には、光は、狙撃するために敵にビーコンを与えることができる)、および/または社会的に(光がユーザの眼を見えにくくし得るとき)など、多くの観点から問題となり得る。
【発明の概要】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態によれば、回折導波路ディスプレイデバイスまたはイメージングシステムは、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているが、その偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の異なる(たとえば、直交)偏光の光を透過するように構成されている偏光格子(PG)または他の幾何学的位相(GP)ホログラムなどの少なくとも1つの回折光学素子または層を備えた光導波路と、光導波路(または光導波路の少なくとも1つの回折層)からの光および/またはその逆も同じと相互作用するように配置されているフィルムアセンブリと、を含む1つまたは複数の光学素子を備える。フィルムアセンブリは、光導波路への第2の偏光の偏光した光を与えるように構成されている、および/または光導波路から出力される偏光した光を阻止するように構成されている。フィルムアセンブリは、少なくとも1つの偏光子と、少なくとも1つの第1のリターダ素子とを含み、リターダ素子は、偏光子と光導波路の回折層との間に配置されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、フィルムアセンブリは、周囲または偏光されていない光源と光導波路との間に配置されてもよく、周囲または偏光されていない光源と光導波路との間に空隙を備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、空間的に変えるリターダ層または素子が設けられ、空間的に変えるリターダ層または素子は、少なくとも1つの回折層の回折効率の空間依存性を制御するように構成されている。例えば、空間的に変えるリターダは、そこに入射する光の空間的に変わるリタデーションを与えることによって光導波路から出力された光の強度の均一性を増加させるように構成されている局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを含むことができる。空間的に変えるリターダは、例えば、回折層に隣接して、または回折層から隔てられもしくは回折層から間隔をおいて配置された第1の光導波路内に含まれ得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2の光導波路は、第1の光導波路からの光と相互作用するように配置される。第2の光導波路は、第2の回折層または素子を含む。第2のフィルムアセンブリは、第2の光導波路の第2の回折層と第1の光導波路との間に設けられる。第2のフィルムアセンブリは、第1の光導波路の第1の空間的に変えるリターダの光学効果を補償するように構成されている第2の空間的に変えるリターダを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2のフィルムアセンブリは、第2の光導波路とは別個の要素であってもよく、または第2の光導波路とは独立していてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2のフィルムアセンブリは、第2の光導波路内に含まれ得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の光導波路は、第3の空間的に変えるリターダを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3の空間的に変えるリターダは、第2の回折層の回折効率の空間依存性を制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、第3の空間的に変えるリターダは、第2の空間的に変えるリターダの光学効果を補償するように構成されている。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によれば、回折導波路デバイスは、光導波路と、光導波路に光学的に結合された回折素子であって、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているとともに、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の偏光の光を透過させるように構成されている、回折素子と、光導波路への第1のまたは第2の偏光の一方の光を与えるように構成されているとともに、および/あるいは光導波路からの第1のまたは第2の偏光の一方の光を阻止するように構成されている偏光フィルムアセンブリとを含む。偏光フィルムアセンブリは、偏光子、および偏光子と光導波路との間に配置される光学リターダを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、偏光フィルムアセンブリは、光導波路の反対側の偏光フィルムアセンブリの面に入射する非ディスプレイ光に応答して光導波路への第2の偏光の光を与えるように配置される。第2の偏光の光は、第1の偏光が実質的になくてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、光導波路は、透過される非ディスプレイ光が第2の偏光の光を含み、レインボーアーチファクトが実質的にないように光導波路の面からの非ディスプレイ光を透過するように構成されている。透過される非ディスプレイ光は、第1の偏光の光が実質的になくてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、光導波路は、全内反射によって電子イメージングディスプレイからのディスプレイ光を伝搬するとともに、光導波路の面からのディスプレイ光を出力結合するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、回折素子は、光導波路の面の方へディスプレイ光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されている。出力結合されるディスプレイ光は、第1の偏光の光を含み、第2の偏光の光が実質的になくてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のおよび第2の偏光は、互いに直交する。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のおよび第2の偏光の一方は右円偏光であり、第1のおよび第2の偏光の別の方は左円偏光である。
【0025】
いくつかの実施形態では、光学リターダは、それぞれのリタデーションと、そのそれぞれの厚さにわたってそれぞれのねじり角度だけ回転しているそれぞれの局所光軸と、を有するスタックした複屈折サブレイヤを備えるマルチねじれリターダであり、それぞれのねじり角度および/またはそれぞれの厚さのうちの少なくとも2つは、スタックした複屈折サブレイヤの間で異なっている。
【0026】
いくつかの実施形態では、スタックした複屈折サブレイヤは、液晶ポリマー層である。
【0027】
いくつかの実施形態では、光学リターダは、異なる第1のリタデーション状態と第2のリタデーション状態との間で切り換えられるように構成されている切り換え可能なリターダ素子を備える。偏光フィルムアセンブリは、第1のリタデーション状態で光導波路への第2の偏光の光を与えるとともに、第2のリタデーション状態で光導波路からの第2の偏光の光を阻止するように構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、偏光フィルムアセンブリは、切り換え可能な円偏光子である。
【0029】
いくつかの実施形態では、偏光子は、直線偏光子である。第1のおよび第2のリタデーション状態の一方は、半波リタデーションを与えるように構成されており、第1のおよび第2の状態の別の方は、ゼロリタデーションを与えるように構成されている。光学リターダは、直線偏光子と光導波路との間に1/4波長板をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、光学リターダは、可変リターダ素子を含み、可変リターダ素子は、入射光の入射角、入射光の波長、および/あるいは可変リターダ素子の面に沿った1つまたは複数の方向の空間的な位置に基づいて入射光に提示されるリタデーションを変えるように構成されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、可変リターダは、回折導波路デバイスの視野内にある入射角のための第1のリタデーション、および視野の外側にある入射角のための第1のリタデーションとは異なる第2のリタデーションを与えるように構成されている。偏光フィルムアセンブリは、視野の外側にある入射角のために光導波路への第2の偏光の光を与えるように、および視野内にある入射角のために光導波路からの第2の偏光の光を阻止するように構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、空間的に変えるリターダは、回折素子から出力された光を受信するように配置され、その面に沿って1つまたは複数の方向にそこに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、空間的に変えるリターダは、1つまたは複数の方向の回折素子の回折効率を変えるように構成されており、フィルムアセンブリの反対側の光導波路の面からの実質的に均一な強度で出力される光を与えることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、空間的に変えるリターダは、リタデーションを空間的に変えるように構成された局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、回折素子および/または空間的に変えるリターダは、光導波路内に含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、光導波路は、第1の光導波路である。回折導波路デバイスは、第1の光導波路から出力された光を受信するように配置される第2の光導波路と、第1の光導波路に光学的に結合された第2の回折素子とをさらに含む。第2の回折素子は、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているとともに、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の偏光の光を透過するように構成されている。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2のフィルムアセンブリは、第2の回折素子と第1の光導波路との間に設けられる。第2のフィルムアセンブリは、その面に沿って1つまたは複数の方向にそこに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている第2の空間的に変えるリターダを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2の空間的に変えるリターダは、第1の光導波路の空間的に変えるリターダのものとは逆にリタデーションを空間的に変えるように構成された局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2の光導波路は、第2の回折素子から出力された光を受信するように配置され、その面に沿って1つまたは複数の方向にそこに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている第3の空間的に変えるリターダをさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、第3の空間的に変えるリターダは、1つまたは複数の方向の第2の回折素子の回折効率を変えるように構成され、実質的に均一な強度で出力される光を与えるようになっている。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2のフィルムアセンブリは、第2の光導波路とは別個である。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2のフィルムアセンブリは、第2の光導波路内に含まれる。第3の空間的に変えるリターダは、第2の空間的に変えるリターダのものとは逆にリタデーションを空間的に変えるように構成された局所光軸パターン、ねじり角度、および/または厚さを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、第3の光導波路は、第2の光導波路から出力された光を受信するように配置され、第3の回折素子は、第3の光導波路に光学的に結合される。第3の回折素子は、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているとともに、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の偏光の光を透過するように構成されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、第3のフィルムアセンブリは、第3の回折素子と第2の光導波路との間に配置される。第3のフィルムアセンブリは、その面に沿って1つまたは複数の方向にそこに入射する光のリタデーションを空間的に変えるように構成されている4の空間的に変えるリターダを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の光導波路は、可視スペクトルのそれぞれの色に対応するそれぞれの波長範囲の光に関して動作するように構成されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、回折素子の回折効率は、フィルムアセンブリの反対側の光導波路の面からの実質的に均一な強度で出力される光を与えるようにその面に沿って1つまたは複数の方向に変わる。
【0047】
いくつかの実施形態では、回折素子は、偏光フィルムアセンブリの反対側にある光導波路の面の方へディスプレイ光を向けるとともに、同時に、光導波路の面から離れるように残留光を向けるように構成されているそれぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータを有するスタックした複屈折サブレイヤを含むマルチ傾斜格子である。
【0048】
いくつかの実施形態では、それぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータのうちの少なくとも2つは、スタックした複屈折サブレイヤの間で異なっていてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、光導波路の面から出力結合されるディスプレイ光対光導波路の面から離れるように向けられる残留光の強度の比は、約10対1よりも大きい。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態によれば、回折導波路デバイスは、対向している第1のおよび第2の面を備える光導波路であって、全内反射によって電子イメージングディスプレイからのディスプレイ光を伝播するとともに、第2の面からのディスプレイ光を出力結合するように構成されている、光導波路と、導波路に光学的に結合された回折素子とを含む。回折素子は、第1の偏光の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているとともに、第2の偏光の光の偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の偏光の光を透過させるように構成されている。回折素子は、光導波路の第2の面の方へディスプレイ光を向けるとともに、同時に、光導波路の第1の面の方へディスプレイ光よりも低い強度の残留光を向けるように構成されているそれぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータを有する複数のスタックした複屈折サブレイヤを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、光導波路の面から出力結合されるディスプレイ光対光導波路の面から離れるように向けられる残留光の強度の比は、約10対1よりも大きい。
【0052】
いくつかの実施形態では、出力結合されるディスプレイ光は、第1の偏光の光を含み、第2の偏光の光が実質的になくてもよい。残留光は、第2の偏光の光を含み、第1の偏光の光が実質的になくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、偏光フィルムアセンブリは、光導波路の第1の面から出力結合される第2の偏光の光を阻止するように構成されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、偏光フィルムアセンブリは、偏光子と、偏光子と光導波路の第1の面との間に配置される光学リターダとを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、偏光フィルムアセンブリは、光導波路の反対側にある偏光フィルムアセンブリの面に入射する非ディスプレイ光に応答して光導波路への第2の偏光の光を与えるようにさらに構成されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、光学リターダは、異なる第1のリタデーション状態と第2のリタデーション状態との間で切り換えられるように構成されている切り換え可能なリターダ素子を含む。偏光フィルムアセンブリは、第1のリタデーション状態で光導波路への第2の偏光の光を与えるとともに、第2のリタデーション状態で光導波路の第1の面から出力結合される第2の偏光の光を阻止するように構成されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、偏光子は、直線偏光子であり、第1のおよび第2のリタデーション状態の一方は、半波リタデーションを与えるように構成されており、第1のおよび第2の状態の別の方は、ゼロリタデーションを与えるように構成されている。光学リターダは、直線偏光子と光導波路との間に1/4波長板をさらに含む。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態によれば、回折導波路デバイスは、順次配置された複数の光導波路を備えた光導波路アセンブリを含み、各光導波路は、それぞれの回折素子、および回折効率のそれぞれの勾配を生成するためにそれぞれの回折層からの光と相互作用するように構成されているそれぞれの空間的に変えるリターダを備える。回折導波路デバイスは、偏光子およびリターダ素子を備えた偏光フィルムアセンブリをさらに含む。偏光フィルムアセンブリは、光導波路アセンブリへの第2の偏光の偏光した光を与えるように構成され、および/または光導波路アセンブリから出力される偏光した光を阻止するように構成されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、回折素子は、1つまたは複数の寸法が変わる局所光軸の向きを含む幾何学的位相要素を備える。
【0060】
いくつかの実施形態では、回折素子は、1つまたは複数の寸法が線形的に変わるとともにそれぞれの格子周期を定める局所光軸の向きを備えた偏光格子を備える。
【0061】
いくつかの実施形態では、回折素子は、第2の偏光の光をゼロ次ビームにおよび第1の偏光の光を1次ビームに出力するように構成されている透過または反射ブラッグ偏光格子を備え、ゼロ次ビームの伝搬方向と1次ビームの伝搬方向との間の差は、約45度よりも大きい。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1のおよび/または第2の偏光の光は、可視波長範囲の光を含む。
【0063】
いくつかの実施形態による他のデバイス、機器、および/または方法は、以下の図面および詳細な説明を検討すると当業者に明らかになる。全てのそのような追加の実施形態が、上記の実施形態にいずれかおよび全ての組合せに加えて、この説明内に含まれ、本発明の範囲内に含まれ、および添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A】導波管ディスプレイに対する回折分散入射光によるレインボー効果を示す概略図である。
【
図1B】二重回折による導波管ディスプレイに対する回折分散入射光の補正を示す概略図である。
【
図1C】偏光ビームスプリッタを含むARアイピースにおける順光漏れを示す概略図である。
【
図1D】導波管ディスプレイにおける順投影光をより詳細に示す概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図3A】本発明のさらなる実施形態による回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図3B】本発明のさらなる実施形態による回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図4A】マルチ導波路構成におけるレインボー効果および順光漏れを示す概略図である。
【
図4B】マルチ導波路構成におけるレインボー効果および順光漏れを示す概略図である。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態によるマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態によるマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図6A】
図5Aと比較してより少ない素子およびインタフェースを有する本発明のさらなる実施形態によるマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図6B】
図5Bと比較してより少ない素子およびインタフェースを有する本発明のさらなる実施形態によるマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図7A】本発明のまたさらなる実施形態によるマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図7B】本発明のまたさらなる実施形態によるマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図8A】
図7Aと比較してより少ない素子およびインタフェースを有するマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図8B】
図7Bと比較してより少ない素子およびインタフェースを有するマルチ導波路回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図9A】本発明のいくつかの実施形態による切り換え可能なリターダ素子を有する偏光フィルムアセンブリを含む回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図9B】本発明のいくつかの実施形態による切り換え可能なリターダ素子を有する偏光フィルムアセンブリを含む回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図10A】本発明のいくつかの実施形態によるマルチ傾斜偏光格子を含む回折導波路デバイスにおける順光漏れ減少を示す概略図である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による可変リターダ素子を備えた偏光フィルムアセンブリを含む回折導波路デバイスにおけるレインボー減少および順光漏れ減少を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本明細書中で使用されるとき、回折光学素子または層は、波長および/または偏光選択的であり得るとともに、回折光学素子または層に入射する光の偏光と伝搬方向の両方を変更するように構成され得る。例えば、回折層は、第1の波長範囲および/または第1の偏光内の光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているが、その偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の異なる波長範囲および/または第2の異なる(たとえば、直交)偏光内の光を透過するように構成されている1つまたは複数の(偏光格子(PG)または他の幾何学的位相ホログラム(GPH)などの)回折格子であり得る。いくつかの実施形態では、回折層は、いずれか1つの偏光状態の実質的な吸収なしで、動作に係る特定された偏光および/または波長を有する入射光を異なる偏光状態および/または異なる伝搬の方向を有するそれぞれのビーム(たとえば、透過光および回折(または反射)光ともそれぞれ呼ばれる、入射光の伝搬の方向を実質的に維持するゼロ次出力光、および入射光に対して伝搬の方向を変更する1次出力光)に偏光および回折させることができる。いくつかの実施形態では、回折次数は、反対の旋光性でほぼ円偏光され得る。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、「リターダ」または「波長板」は、交換可能に使用することができ、以下の追加の用語、単軸、双軸、または不均質であるいずれかの「リタデーションプレート」、「補償フィルム」、および「複屈折プレート」も、別段示されていない限り均等とみなされるべきである。本明細書中に説明されるようなリターダは、広帯域(すなわち、アクロマティック)、または狭帯域(すなわち、クロマティック)であり得る。したがって、本明細書中に説明されるようなリターダは、旋光もしくは複屈折リタデーション、またはそれらの任意の組合せによって偏光の変化を達成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中に説明されるリターダは、そこを通過する光の伝搬の方向にあまり影響し得ないまたはそれを変更させ得ない。いくつかの実施形態では、本明細書中に説明されるリターダは、印加された電気電圧に応答し得ない。
【0067】
本開示の実施形態は、多くの格子技術について、光導波路内の回折光の偏光状態が混合される(すなわち、1つの純粋な偏光状態でない)ことの実現から生じ得る。上で述べたように、光導波路は、ディスプレイの光源からの光(本明細書中で「ディスプレイ光」とも呼ばれる)をユーザの動作環境からの光(本明細書中で「非ディスプレイ光」とも呼ばれる)と合成することができる。ディスプレイ光および非ディスプレイ光は、混合された偏光を有することができ、ディスプレイ光は、可視波長範囲内の光を主に含み、一方、非ディスプレイ光は、可視波長範囲および不可視波長範囲内の光を含むことができる。
【0068】
本開示の実施形態は、ディスプレイのユーザに出力するためにディスプレイ光および非ディスプレイ光をそれぞれの(たとえば、直交)偏光状態に向けるように構成されている1つまたは複数の光学素子のアセンブリを含む回折導波路ディスプレイなどのイメージングシステムを提供し、例えば、ディスプレイ光は、実質的に同じ(第1の)偏光を有し、非ディスプレイ光は、第1の偏光とは異なる(たとえば、それに直交する)実質的に同じ(第2の)偏光を有する。詳細には、本明細書中に説明されるいくつかの実施形態は、光が第1の偏光を用いてユーザの眼の方へ向けられるように光の偏光および伝搬方向を変更するように構成されているが、その偏光または伝搬方向を実質的に変更することなく第2の異なる(たとえば、直交)偏光の光を透過するように構成されている回折層を備えた少なくとも1つの光導波路と、光導波路に第2の偏光の偏光した光を与えるように構成されている、および/またはレインボーアーチファクトおよび/または順光漏れを減少させるまたは防ぐように光導波路から出力される偏光した光を阻止するように構成されているフィルムアセンブリとを含む。
【0069】
単一の導波路(たとえば、
図2A~
図2Bの基板120)を参照していくつかの例で本明細書中に示されているが、本明細書中に説明される実施形態は、2つ以上の導波路を含んでもよく、(平面のおよび/または曲がった導波路を含む)6つ以上の導波路まで含むがそれに限定されず、視野は、導波路の個数に伴って増加し得ることが理解されよう。また、多数の導波路を含む実施形態では、各導波路は、特定のまたはそれぞれの波長範囲の光に対して動作するように構成され得、それぞれの波長範囲は、光のそれぞれの色に対応していてもよくまたは対応いていなくてもよく、互いに重なり合っていてもよくまたは重なり合っていなくてよい。更に、本明細書中に説明される実施形態は、本明細書中に説明される例によって示された特定の偏光および/または伝搬方向に限定されないことが理解されよう。素子または層間の界面における屈折は、例示を簡単にするために図に示されていない。
【0070】
いくつかの実施形態では、
図2Aおよび
図2Bに示されるように、光導波路120は、ブラッグ偏光格子(BPG)として本明細書中で例によって示された回折素子200としての偏光格子(PG)に光学的に結合される。ブラッグPG(BPG)は、導波管ディスプレイの出力結合格子からの光が、幅広い角度およびスペクトルにわたってほとんど純粋に単一の偏光状態(たとえば、第1の偏光状態)であり得るように設計され得るまたは別の形で構成され得る。加えて、第2の(たとえば、直交)偏光状態の光は、実質的に影響を受けず、またはBPGによる低い回折を少なくとも有する。すなわち、導波路120は、ある偏光状態の光のために1次方向に高い回折効率(たとえば、約80%以上)を与えるとともに、異なる(たとえば、直交)偏光状態の光のために1次方向に低い回折効率(たとえば、約10%以下)を与えるように設計または別の形で構成されている回折層200(たとえば、BPG)を含むことができ、または別の形で、それに光学的に結合されることができ、光の大部分は、ゼロ次方向に透過される。本明細書中に説明されるようなBPGは、ブラッグ角にほぼ等しい入射角で光を受信することに応答して、ゼロ次(すなわち、回折されていない)ビームおよび1次ビームの伝搬の方向または角度間の差が約45度よりも大きい、約60度よりも大きい、または約90度以上まであるように構成され得る。本明細書中に説明されるBPGは、透過または反射であってもよく、および/または周期、向き、および/またはレンズ効果が変わっていてもよい。
【0071】
本明細書中に説明される例では、2つの偏光状態は、円偏光した光、すなわち、左旋円LHC偏光(BPGによる高い回折効率を有する)および右旋円RHC偏光(BPGによる低い回折効率を有する)である。しかしながら、他の実施形態は、逆偏光(たとえば、高い回折効率を有するRHC、および低い回折効率を有するLHC)、非円偏光、非直交偏光、および/またはBPGを回折するように構成されている回折素子、あるいはあまり効率的でない他の回折層を用いてもよいことが理解されよう。
【0072】
図2Aおよび
図2Bに示されるように、偏光フィルムアセンブリ121は、導波路120の(たとえば、視野または動作環境を向いている)前方に配置された偏光子122および(MTR-R1などの)光学リターダMTRを含む。いくつかの実施形態では、リターダは、単軸の1/4波長板であり得る。いくつかの実施形態では、リターダは、例えば、Escutiらの米国特許出願公開第2013/0027656号に説明されたマルチねじれリターダであってもよく、その本開示は、参照により本明細書に組み込まれる。マルチねじれリターダMTRは、それぞれの位相リタデーション角、およびそれぞれの厚さにわたってそれぞれのねじり角度だけ回転しているそれぞれの局所光軸を有する、層間のそれぞれの界面に沿って配列されたスタックした複屈折サブレイヤを含むことができ、いくつかの実施形態において、それぞれのねじり角度および/またはそれぞれの厚さは、層間で異なっており、(液晶ポリマー層などの)液晶層によって実施され得る。
【0073】
図2Aの実施形態は、シースルーレインボー効果またはアーチファクトを減少させるまたはなくすように構成され得る。詳細には、
図2Aの例的動作に示されるように、偏光されていない光107(たとえば、外界または動作環境の視野からの非ディスプレイ光)は、フィルムアセンブリ121に入射する。この偏光されていない光107は、偏光子122によって平面偏光または直線偏光され、TE(Transverse Electric)偏光した光108として出力される。TE偏光した光108は、リターダMTR-R1をインターセプトし、そこで、TE偏光した光108は、RHC偏光した光109に変換される。RHC偏光した光109は、フィルムアセンブリ121から出て、ディスプレイ導波路である別の基板120に入る。この実施形態では、フィルムアセンブリ121は、ほんの一例として円偏光子として働く。
【0074】
いくつかの実施形態では、偏光フィルムアセンブリ121、および基板または導波路120は、要素121と120との間に少なくとも1つの空気界面を与える空隙などの間隙によって隔てられてもよい。(フィルムアセンブリ121などの)破線によって囲まれた本明細書中に示される要素は、いくつかの実施形態において要素がモノリシックであってもよくまたはなくてもよいことを示す。また、それぞれの光導波路と一体であるまたはそれに含まれる回折素子を参照して主に示されるが、本明細書中に説明される回折素子または層は、いくつかの実施形態において、例えば、導波路とは別個のまたは導波路の外部の(たとえば、その面上にスタックされた)導波路に他の方法で光学的に結合されてもよいことが理解されよう。
【0075】
図2Aをさらに参照すると、フィルムアセンブリ121は、導波路120に入射するRHC偏光した光109を与え、RHC偏光した光109は、BPG200へ透過される。BPG200は、ユーザの眼の方へ1つまたは複数の光学ビームを出力結合するように構成された(ここでは、透過)出力結合格子である。この例では、BPG200が、RHC偏光した光109のために低い回折効率を与えるように構成されているので、したがって、RHC偏光した光109は、ゼロ次(透過またはT(0))光としてBPG200を通過し、透過光110は、偏光したRHCのままである。BPG200は、入射光109の特定の偏光のために低い回折効率で構成されているので、入射光109は、入射光109の偏光および/または伝搬方向を実質的に変更せずに(たとえば、BPGは、入射光109を実質的に回折しない)BPG200を通じて透過され、ほとんどまたは全く分散がない場合があり、したがって、シースルーレインボーアーチファクトは、導波路120の出力面で減少するおよび/または生成されない。すなわち、透過光110は、外界または動作環境の視野からの非ディスプレイ光を含むことができるが、レインボー効果またはアーチファクトが実質的になくてもよい。
【0076】
図2Bに示された実施形態は、導波路120内の全内反射によって内部で反射する(主にディスプレイ光を参照して本明細書中で説明されるが一般的な照明などのために、他の源からの光に含む)光101が出力格子200をインターセプトするときに、順光投影を減少させるまたはなくすように同様に構成され得る。この光101は、RHC偏光した光105に変換され、ユーザの眼から離れるように順方向に回折される。光105は、リターダMTR-R1をインターセプトし、そこで、光105は、TM偏光した光106に変換され、TM偏光した光106は、フィルムアセンブリ121を越える順光投影が減少するまたは防がれるように偏光子122によって阻止される。
【0077】
いくつかの実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、光導波路120は、この例では、一の偏光状態(この例では、LHC)の光について高い回折効率を与えるように、および異なる(たとえば、直交)偏光状態(この例では、RHC)の光について低い回折効率を与えるように設計または別の形で構成されているBPGとして示された回折素子200を含む、または別の形でそれに光学的に結合される。(導波路120内の光101がBPGを通じてユーザへ透過される)透過BPGを参照して本明細書中に説明されるが、代替として、本明細書中に説明される実施形態のいずれかにおいて、反射BPGが実施されてもよく、またはその逆も同じであることが理解される。
図3Aおよび
図3Bの実施形態は、
図2Aおよび
図2Bと同様であり得、すなわち、フィルムアセンブリ121は、導波路120の(たとえば、視野または環境を向いて)前方に配置された偏光子122および(MTR-R1として示された)リターダMTRを含む。
【0078】
図3Aおよび
図3Bの例では、空間的に変えるリターダMTR-Gは、回折効率の勾配をひとまとめに生成するために含まれ(たとえば、導波路120内にあり、および回折層200からの光と相互作用するように構成され、BPGとして再び示される)、これは、(たとえば、導波路120から出力された光が実質的に均一な強度を有するように)導波路120から出力された光の強度の均一性を増加させることができる。例えば、リターダMTR-Gは、幅広い(たとえば、アクロマティックの)波長範囲および幅広い角度範囲にわたってそこに入射する光の空間的に変わるリタデーションを与えるように構成されている1つまたは複数の特徴または特性(たとえば、光軸の向き、厚さ、および/またはねじり角度)を与えることによって、回折層の回折効率の空間依存性を制御するように構成されている1つまたは複数の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、空間的に変えるリターダMTR-Gは、その面または回折層との界面によって定められた平面内で、1つまたは複数の寸法が(たとえば、x寸法および/またはy寸法が、直線的にまたは非直線的に)変わる局所光軸の向きを有することができ、局所光軸の向きの変化は、空間的に変わるリタデーションを与えるように構成されている。いくつかの実施形態では、リターダMTRは、空間的に変わるリタデーションを与えるように構成されているそれぞれの層の厚さおよび/または(たとえば、におけるz寸法)異なる層の厚さにわたって異なるねじり角度を有する2つ以上のスタックされた層を含むマルチねじれリターダを含むことができる。
【0079】
本明細書中に説明される空間的に変えるリターダの特徴または特性は、それぞれの回折層または格子から出力されるように構成されている光の偏光に基づいて構成され得る。空間的に変えるリターダおよび導波路の回折層との相互動作は、Robbinsらの米国仮特許出願第63/042,021号により詳細に説明されており、その本開示は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、回折層200またはBPG自体は、(本明細書中に説明されるBPG/空間的に変えるリターダの組合せが単一の要素によって置き換えられてもよいように)空間的に変わる回折効率を与えるように構成され得る。例えば、回折層200は、それぞれの局所格子周期を定めるようにその面に沿って1つまたは複数の寸法が空間的に変わる局所光軸の向きを含むことができ、ただし、局所光軸の向きは、1つまたは複数の寸法においてそれぞれの局所格子周期内で非直線的に変わる。光軸の向きの非直線的な変化は、実質的に類似してもよく、または1つまたは複数の寸法におけるそれぞれの局所格子周期の2つ以上の間で異なってもよい。空間的に変わる非直線的な光軸の向きのプロファイルを有する回折格子は、Escutiらの米国仮特許出願第63/042,046号により詳細に説明されており、その本開示は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
図3Aに示されるように、導波路120からのディスプレイ光101は、ユーザの眼へ向けられる。詳細には、光導波路120は、ディスプレイ光101が導波路120内で伝搬するように電子イメージングディスプレイからのディスプレイ光101を全内反射によって内部で反射するように構成されている透明なサブ状態を含む。BPG200は、偏光フィルムアセンブリ121とは反対側の導波路120の面から出力結合されるディスプレイ光101を回折するように構成される。詳細には、BPG200は、ディスプレイ光101および出力光102の偏光および伝搬方向を変更する。BPG200によって1次に回折される光102は、設計された偏光(ここでは、LHC)を有し、設計された偏光は、BPG200自体の構成によって主に決定することができ、概して、入射ディスプレイ光101に応じていることはできない。次いで、空間的に変えるリターダMTR-Gは、ユーザに出力するために、(たとえば、LHC偏光した)BPG200から出力された回折光102を楕円の/混合した偏光の光103に変換する。
【0081】
図3Aの実施形態は、シースルーレインボーを減少させるまたはなくすようにやはり構成され得る。詳細には、
図3Aの例的動作に示されるように、偏光されていない光107(たとえば、外界または動作環境の視野からの周囲光または他の非ディスプレイ光)が、フィルムアセンブリ121に入射する。この偏光されていない光107は、偏光子122によって平面偏光または直線偏光され、TE偏光したもの108として出力される。TE偏光した光108は、リターダMTR-R1をインターセプトし、ここで、TE偏光した光108は、右旋円(RHC)偏光した光109に変換され、右旋円(RHC)偏光した光109は、直交偏光(ここでは、LHC)が実質的にない。RHC偏光した光109は、フィルムアセンブリ121から出て、BPG200を含む導波路基板120に入る。この例では、BPG200が、RHC偏光した光109のために低い回折効率を与えるように構成されているので、したがって、RHC偏光した光109は、ゼロ次(透過またはT(0))光としてBPG200を通過し、偏光は、RHC110のままである。この光110は、MTR-Gをインターセプトし、これにより光110を楕円偏光した光111に変換する。
【0082】
図3Bに示された実施形態は、順光投影105を減少させるまたはなくすように同様に構成されてもよく、フィルムアセンブリ121を越える順光投影が減少するまたは防がれるように
図2Bの実施形態を参照して上述されたやり方で動作することができる。
【0083】
単一の導波路120を含む
図3Aおよび
図3Bの例では、回折効率の勾配を生成するための空間的に変えるリターダMTR-Gの追加は、レインボーを減少させることに関連していなくてもよい。しかしながら、(導波路120の空間的に変えるリターダMTR-Gとの組合せで)1つまたは複数の追加の光導波路を含めることは、
図4Aおよび
図4Bにそれぞれ示されるように、特にレインボー効果および順光漏れの減少に対して複雑さを導入する可能性があり得る。
【0084】
詳細には、レインボー効果に関して
図4Aに示されるように、第1の導波路120(プレートA)の光出力は、混合された偏光のディスプレイ光103と「現実世界」の透過光(たとえば、ユーザの環境からの偏光されていないまたは非ディスプレイ光107の透過部分111)との両方を含む。補正されない場合、レインボー効果は、構成中の次のまたは続く導波路123(プレートB)の(第2のBPGに示された)回折格子202によって生成され得る。
【0085】
また、順光投影に関して
図4Bに示されるように、第2の導波路123(プレートB)内で伝搬する光101は、第2の導波路123の第2のBPG202によって少なくとも部分的に前方回折され得、(この例では)RHC偏光した光130へコンバートされ得る。この光130は、第1の導波路120(プレートA)の空間的に変えるリターダMTR-Gを通じて透過され、楕円/混合した偏光した光131になる。混合した偏光の光131のRHC部分は、光132として変化しないまま第1のBPG200を通過することができる。この光132は、フィルムアセンブリ121のリターダMTR-R1を通じて透過され、TM(transverse magnetic)平面偏光または直線偏光した光133に変換され得、偏光子121によって有効に阻止され得る。
【0086】
しかしながら、
図4Bをさらに参照すると、混合した偏光の光131の残り(すなわち、LHC偏光した部分)は、第1の導波路120(プレートA)内で第1のBPG200によって回折され得135、続いて第1のBPG200と遭遇すると、光136として再び部分的に外に回折され得、場合によっては、続く遭遇138でやはり再び光138として再び部分的に外に回折され得る。しかし、光136(および場合によっては138)は、RHC偏光で順方向136に回折され得る。この光136は、フィルムアセンブリ121のリターダMTR-R1によってTM偏光した137光に変換され、そこで、TM偏光した137光は、偏光子122によって有効に阻止され得る。しかし、光138(および場合によっては136)は、LHC偏光で順方向に回折され得る。この光138は、リターダMTR-R1によってTE偏光した光139に変換され得、TE偏光した光139は、順光漏れ134としてユーザから離れるように、フィルムアセンブリの偏光子を通過することができる。
【0087】
本明細書中に説明されるさらなる実施形態は、上で述べたように、回折導波路ディスプレイまたは他のイメージングシステムの視野を増加させるために使用され得る多数の導波路との組合せでレインボー効果および/または順光投影に有効に対処するように構成されている1つまたは複数の光学素子のアセンブリであり得る。後述の実施形態では、各導波路は、特定のまたはそれぞれの波長範囲の光に基づいて動作するように構成され得、それぞれの波長範囲は、光のそれぞれの色に対応していてもよくまたは対応していなくてもよく、互いに重なり合っていてもよくまたは重なり合っていなくてよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第1の光導波路120(プレートA)は、この例では、一の偏光状態(この例では、LHC)の光について高い回折効率を与えるように、および異なる(たとえば、直交)偏光状態(この例では、RHC)の光について低い回折効率を与えるように設計または別の形で構成されている第1のBPGとして示された第1の回折層200を含む、または別の形でそれに光学的に結合される。第2の光導波路123(プレートB)は、この例では第2のBPGとして示された第2の回折層202を含む、または別の形でそれに光学的に結合され、第1の光導波路120から出力された光(およびその逆も同じ)と相互作用するように配置される。
図5Aおよび
図5Bの実施形態は、
図3Aおよび
図3Bと同様であり得、すなわち、フィルムアセンブリ121は、第1の導波路120の(たとえば、視野または環境を向いて)前方に配置された偏光子122および(MTR-R1として示された)リターダMTRを含む。空間的に変えるリターダMTR-Gが、第1の導波路120内に含まれ、回折効率の勾配を生成するために第1のBPG200からの光と相互作用するように構成されている。いくつかの実施形態では、別の空間的に変えるリターダMTR-Rが、第2の導波路123内に含まれ、回折効率の勾配を生成するために第2のBPG202からの光と相互作用するように構成されている。
【0089】
図5Aに示されるように、空間的に変えるリターダMTR-Gと組み合わせて、第2の導波路123の追加によって引き起こされ得るレインボー効果に対処するために、別の第2のフィルムアセンブリ125が、第1の導波路120と第2の導波路123との間に配置される。第2のフィルムアセンブリ125は、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3を含む。破線によって示されるように、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3は、吊り下げられたフィルムとしてまたはそれ自体の基板上に独立して取り付けられるように上で示され、第1の導波路と第2の導波路123との間に1つまたは複数の空気界面を定めることができる。第2の空間的に変えるリターダMTR-R3は、第1の空間的に変えるリターダMTR-Gの光学効果を「元に戻す」(または打ち消すもしくは補償する)ように、すなわち、第2の導波路123の第2のBPGによって低い回折を有するように構成されている(この例では、RHC偏光した)光出力109に光111をコンバートするように構成されている。すなわち、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3は、第1の空間的に変えるリターダMTR-Gの効果を補正するように構成されている(およびいくつかの実施形態では、リターダMTR-Gの逆の空間的変化を与えるように構成され得る)。
【0090】
図5Bに示されるように、空間的に変えるリターダMTR-Gと組み合わせて第2の導波路123の追加によって引き起こされ得る順光投影に対処するために、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3を含む第2のフィルムアセンブリ125は、
図5Aを参照して上述されたのと類似したやり方で設けられる。第2の空間的に変えるリターダMTR-R3は、第1の空間的に変えるリターダMTR-Gの効果を「元に戻す」(または補償する)ように、すなわち、第2の導波路123の第2のBPG202からの順投影光130を第1の導波路120の第1のBPG200によって低い回折を有するように構成されている(この例では、RHC偏光した)光130にコンバートするように構成されている。第1のBPG200から出る光132は、(この例では)RHC偏光したままであり、フィルムアセンブリ121におけるリターダMTR-R1および偏光子によって有効に阻止され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、
図5Aおよび
図5Bの構成に類似する構成が、より少ない基板またはインタフェースを用いてそれぞれ成し遂げられ得る。詳細には、基板の個数を減少させるために、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3が、第2の導波路123内に含まれる。したがって、第2の導波路123の一部として、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3も、ディスプレイ光101と相互作用し得る。
図6Aの例では、(
図5Aの実施形態における第2のBPGに対して回折効率の勾配を生成するために、光の偏光状態を制御するように構成された)第2の導波路123の(ここでは、第3の)空間的に変えるリターダMTR-Rが、(この例では、LHC偏光の)ディスプレイ光102に対して第2の空間的に変わるMTR-R3の機能を補償するように代わりにまたはさらに構成され、一緒に協働して働く。すなわち、第3の空間的に変えるリターダMTR-Rは、(
図6Aおよび
図6Bの例では)第2の導波路123内に共に含まれる第2の空間的に変えるリターダMTR-R3の光学効果を補償するように構成され得る。
図6Aおよび
図6Bの実施形態は、別の方法でそれぞれレインボー効果および順光投影を減少させるまたは防ぐように
図5Aおよび
図5Bの実施形態と同様に動作してもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、第1の光導波路120(緑色プレート)は、この例では、一の偏光状態(この例では、LHC)の光について高い回折効率を与えるように、および異なる(たとえば、直交)偏光状態(この例では、RHC)の光について低い回折効率を与えるように設計または別の形で構成されている第1のBPGとして示された第1の回折層200を含む、または別の形でそれに光学的に結合される。第2の光導波路123(赤色プレート)は、この例では第2のBPGとして示された第2の回折層202を含む、または別の形でそれに光学的に結合され、第1の光導波路120から出力された光(およびその逆も同じ)と相互作用するように配置される。第3の光導波路124(青色プレート)は、この例では第3のBPGとして示された第3の回折層203を含む、または別の形でそれに光学的に結合され、第2の光導波路123から出力された光(およびその逆も同じ)と相互作用するように配置される。各導波路120、123、および124は、回折効率の勾配を生成するために、それぞれのBPG(それぞれ、200、202、および203)からの光と相互作用するように構成されているそれぞれの空間的に変えるリターダ(それぞれ、MTR-G、MTR-R、およびMTR-B)を含むことができる。
【0093】
図7Aおよび
図7Bの実施形態は、
図5Aおよび
図5Bと同様であり得、すなわち、フィルムアセンブリ121は、偏光子122と、第1の導波路120の(たとえば、視野または環境を向いて)前方に配置された(MTR-R1として示された)リターダMTRとを含み、第2のフィルムアセンブリ125は、第1の導波路120と第2の導波路123との間に配置された第2の空間的に変えるリターダMTR-R3を含む。加えて、第3のフィルムアセンブリ126は、第2の導波路123と第3の導波路124との間に配置された(第4の)空間的に変えるリターダMTR-R4を含む。破線によって示されるように、第2の空間的に変えるリターダMTR-R3、および/または第3の空間的に変えるリターダMTR-R4は、吊り下げられたフィルムとしてまたはそれ自体の基板上に独立して取り付けられてもよく、それぞれ、第1の導波路120と第2の導波路123との間におよび第2の導波路123と第3の導波路124との間に1つまたは複数の空気界面を定めることができる。
【0094】
図7Aおよび
図7Bの例では、プレートは、緑色120、赤色123、および青色124として識別される。しかしながら、他の実施形態では、導波路120、123、および124は、異なる順序を有してもよく、個数がより少なくまたはより多くてもよく、および/または異なる色または他のそれぞれの(重なり合っているまたは重なり合っていない)波長範囲に対応してもよい。
図7Aおよび
図7Bの実施形態は、それぞれレインボー効果および順光投影を減少させるまたは防ぐように
図5Aおよび
図5Bの実施形態の実施形態と同様に動作してもよく、回折効率の勾配を生成するためにそれぞれの追加の導波路(たとえば、123および124)および空間的に変わるMTR(たとえば、MTR-RおよびMTR-B)を含めることは、それぞれ、追加で打ち消す中間の空間的に変えるリターダ(たとえば、介在するフィルムアセンブリ125および126のMTR-R3およびMTR-R4)を必要とし得ることを理解するであろう。
【0095】
いくつかの実施形態では、
図8Aおよび
図8Bに示されるように、
図7Aおよび
図7Bの構成に類似する構成は、より少ない基板またはインタフェースを用いてそれぞれ成し遂げられ得る。詳細には、基板の個数を減少させるために、中間の空間的に変わる補正リターダ(MTR-R3およびMTR-R4)が、それぞれ隣接した基板または導波路(123および124)内に含まれる。空間的に変えるリターダMTR-RおよびMTR-Bは、同様に上で論じられたように回折効率を管理するために、それぞれ、空間的に変えるリターダMTR-R3およびMTR-R4の光学効果を(たとえば、その逆の空間的変化を与えることによって)打ち消す、または別の形で補償するように構成され得る。本明細書中に説明されるリターダは、波長範囲の幅広いスペクトルにわたって動作するように構成することができ(すなわち、アクロマティックであることができ)、入射光角度の幅広い範囲にわたって動作するように構成することができる。一の空間的に変えるリターダを通過する光に対するリタデーションは、順方向と逆方向の両方に、続く空間的に変えるリターダを通過することによって打ち消されるように構成され得る。より一般的には、多数の空間的に変えるリターダを含む実施形態において、それぞれの続く空間的に変えるリターダの構成は、(視野/動作環境/偏光されていない光107からユーザの眼の方への方向に)先のまたは前述の空間的に変えるリターダの機能に基づくことができる。
図8Aおよび
図8Bの実施形態は、別の方法でそれぞれレインボー効果および順光投影を減少させるまたは防ぐように
図7Aおよび
図7Bの実施形態の実施形態と同様に動作してもよい。
【0096】
図9Aおよび
図9Bは、本発明のいくつかの実施形態による、それぞれレインボー減少および順光漏れ減少を与えるように第1のおよび第2の動作モード間またはリタデーション状態間で切り換えられるように構成されている偏光フィルムアセンブリ921を含む回折導波路デバイスを示す。偏光フィルムアセンブリ921は、第1の偏光(たとえば、LHC)または第2の偏光(たとえば、RHC)のどちらかの光を光導波路120へ透過するように2つの状態間で切り換えることができる切り換え可能な円偏光子を実施することができる。例えば、偏光子922は、直線偏光子であってもよく、光学リターダRは、切り換え可能なリターダ素子S-HWPとそれに続く1/4波長板QWPを含んでもよく、またはその逆も同じである。切り換え可能なリターダ素子S-HWPは、2つのモードまたはリタデーション状態を有する切り換え可能な1/2波長板として実施されてもよく、一方のリタデーション状態はゼロリタデーションを与え、他方は半波リタデーションを与える。
【0097】
図9Aに示されるように、第1の動作モードまたはリタデーション状態において、切り換え可能なリターダ素子S-HWPは、直線偏光子を通じて透過される偏光されていない入力光107の偏光を第2の偏光(たとえば、RHC)を変換して、第2の偏光の光を光導波路120へ与える。導波路120に光学的に結合されたBPGは、低い回折効率でRHCの偏光した光を回折するように構成され、したがって、RHC偏光した光は、偏光または伝搬方向を実質的に変更することなくBPGを通じて透過され、したがって、(さもなければ導波路120におけるBPGによる回折によって引き起こされ得る)レインボー効果またはアーチファクトは、減少し得るまたは防がれ得る。
【0098】
図9Bに示されるように、第2の動作モードまたはリタデーション状態において、切り換え可能なリターダ素子S-HWPは、第1の偏光の光を光導波路120へ与えるために直線偏光子を通じて透過される偏光されていない入力光107の偏光を第1の偏光(たとえば、LHC)に変換する。導波路120に光学的に結合された(BPGとして示された)回折素子200は、高い回折効率でLHCの偏光した光を回折するように構成され、レインボー効果またはアーチファクト30が形成され得るように偏光および伝搬方向を変更する。しかしながら、導波路120から出力結合された残留光105は、(たとえば、第2の偏光に)変換され、順方向に回折され得、残留光105は、偏光子922によって阻止されることになる偏光にS-HWPによって変換され得る。したがって、ユーザから離れる方向に導波路120から外へ回折されるディスプレイ光の順方向漏れは、減少するまたは防がれることができる。
【0099】
したがって、偏光フィルムアセンブリ921は、第1のリタデーション状態において第2の偏光の光を導波路120へ透過するように構成され、および第2のリタデーション状態において、第1の偏光の光を導波路120へ透過し、導波路120からの第2の偏光の光を阻止するように構成されている。いくつかの実施形態では、回折導波路デバイスは、デバイスの前方に配置され、調光を与えるように構成されている第2のS-HWPおよび第2の偏光子をさらに含むことができる。2つの偏光子の中間の切り換え可能な1/2波長板は、時としてLCシャッタと呼称される。例えば、LCシャッタは、直線偏光子軸を互いに直交または平行に向けることによってLCシャッタを通じて透過される光を減少させるように構成され得る。切り換え可能な1/2波長板は、2つのモードまたは状態間で切り換え可能であることができ、2つのモードまたは状態は、零のリタデーションまたは1/2波長のリタデーションのいずれかを与えるように、したがって、第2の偏光子の光軸に平行であるまたは直交する光軸を有する偏光した光で第2の偏光子を提示するように構成されている。本明細書中に説明されるいくつかの実施形態では、第2の偏光子および切り換え可能な1/2波長板の存在は、AR応用における非ディスプレイ光の透過に関してあまり大きな追加の損失を示し得ず、かなり大きな調光を与えることができる。AR応用では、外界からの透過光の調光は、ディスプレイ光によって与えられる仮想コンテンツのシースルー輝度コントラストを強化することができる。これは、特にディスプレイデバイスが野外で使用されるときに有利であり得、直射日光およびコンクリート建築物などの物体から反射した日光の輝度は、比較的高い可能性があり、さもなければ、適度なコントラストで仮想コンテンツを見るために、ディスプレイ輝度が不愉快に高くなることを必要とし得る。
【0100】
図10Aは、本発明のいくつかの実施形態によるマルチ傾斜偏光格子を含む回折導波路デバイスにおける順光漏れ減少を示す概略図である。
図10Bは、より詳細に
図10Aのマルチ傾斜偏光格子を示す概略図である。
図10Aに示されるように、光導波路120は、ディスプレイ光101が導波路120内で伝搬するように、電子イメージングディスプレイからのディスプレイ光101を全内反射によって内部で反射するように構成されている透明なサブ状態を含む。(ここでBPGとして示された)偏光格子1000は、導波路120の面からユーザの方へ出力結合されることになるディスプレイ光101を回折するように構成されている。詳細には、BPG100は、ディスプレイ光101の偏光および伝搬方向を変更し、導波路120からの出力結合のために光102を出力する。BPG100によって1次に回折される光102は、主にBPG100自体の構成によって決定され得る設計された偏光(ここでは、LHC)を有する。BPG1000は、光導波路120の対向面の方へ異なる偏光(ここでは、RHC)の残留光105を同時に向けるようにやはり構成されており、ここで、出力結合されている残留光105は、出力光102よりも低い強度を有する。例えば、光導波路120の面から出力結合されるディスプレイ光102の強度対光導波路120の対向している面から出力結合される残留光105の強度の比は、約10対1よりも大きいものであってもよく、それによって順光漏れの影響を減少させる。
【0101】
例えば、BPG1000は、ブラッグ領域(Bragg regime)内の格子を定める複数のスタックした複屈折サブレイヤ(たとえば、多数のLCサブレイヤ)として形成され得る。スタックした複屈折サブレイヤは、それぞれの格子周期を定めるためにスタックした複屈折サブレイヤの隣接したもの同士間のそれぞれの界面に沿って変わる局所光軸をそれぞれ含む。局所光軸は、それぞれのねじり角度またはカイラリティパラメータを定めるためにサブレイヤのそれぞれの厚さにわたってやはり変わる。
【0102】
図10Bの例に示されるように、BPG1000は、基板610上のパターン付き光配向層615(たとえば、LPP層)上に形成され得る薄いLCPサブレイヤ605a、605b、...605nを含む。LCPサブレイヤ605a、605b、...605nは、それぞれの厚さ(d
1,d
2,...,d
N)、ならびに全体的な素子1000について総厚さdおよび総ねじれφまで加わるそれぞれのカイラルパラメータまたはねじれ(φ
1,φ
2,...,φ
N)をそれぞれ有する。言い換えれば、サブレイヤ605a、605b、...605nのうちの1つまたは複数に係る液晶分子配向は、サブレイヤ605a、605b、...605n間のそれぞれの界面に沿って変わるのみならず、それぞれのねじり角度φ
1,φ
2,...,φ
Nを定めるようにサブレイヤ605a、605b、...605nのそれぞれの厚さd
1,d
2,...,d
Nにわたっても変わる局所光軸を定める。これは、いくつかの従来の傾斜したブラッグ格子における周期構造の角度傾斜に類似する「傾斜した」ブラッグLC PGを成し遂げる。各サブレイヤ605a、605b、...605nは、素子1000についての全体的な光学的格子周期Λ
0(光学素子格子周期Λとも呼ばれる)を定めるそれぞれのサブレイヤまたは面格子周期Λ
s有する。光学素子格子周期Λは、
図10Bの実施形態に示された傾斜したブラッグLC PGにおけるサブレイヤ格子周期Λ
sよりも小さいが、他の実施形態におけるサブレイヤ格子周期Λ
sに等しくてもよい。
【0103】
格子傾斜角θGは、例えば、tanθGi=φiΛ/diπという式に従って、格子周期Λ、サブレイヤ厚さd、および/またはサブレイヤカイラリティパラメータまたはねじり角度φに依存し得、ただし、φiおよびdiは、それぞれi番目の層のねじり角度および厚さである。この傾斜は、サブレイヤ605a、605b、...605nごとにカイラルネマチックLCP材料自体の自発的な螺旋ねじれ作用によって成し遂げられ得、入射ブラッグ角および/または1次回折角についての追加の制御を与え、別の方法による均等な傾斜していない(すなわち、非カイラル)バージョンと比較して大きいまたは小さいようにそれが修正されることを可能にする。カイラル分子は、ねじり角度を正確に制御するために非カイラルネマチックLCに追加されてもよい。サブレイヤ605a、605b、...605nは、同じ厚さおよびねじれをそれぞれ有し得るが、本発明の実施形態は、それに限定されず、異なる厚さおよび/またはねじれを有するサブレイヤ605a、605b、...605nを含んでもよく、それによって2つ以上のサブレイヤ605a、605b、...605nが異なる傾斜角を有するマルチ傾斜格子を与える。そのような格子は、Escutiらの米国特許出願公開第2016/0033698号により詳細に説明されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、サブレイヤ605a、605b、...605nは、それぞれの傾斜角が約15から45度の間であり、それぞれの厚さが約0.5から1.2ミクロンの間である透過格子を定めることができる。いくつかの実施形態では、サブレイヤ605a、605b、...605nは、それぞれの傾斜角が約50から70度の間であり、およびそれぞれの厚さが約0.7から1ミクロンの間である反射格子を定めることができる。それぞれの厚さ、傾斜角、および/またはカイラリティパラメータのうちの少なくとも2つは、スタックした複屈折サブレイヤ605a、605b、...605nの間で異なり得る。
【0104】
図10Aを再び参照すると、BPG1000は、導波路120から出力結合されることになるディスプレイ光102が第1の(たとえば、LHC)偏光の光を含み、第2の偏光の光(たとえば、RHC)が実質的にないように構成され得る。逆に、導波路120から出力結合されることになる残留光105は、第2の(たとえば、RHC)偏光の光を含み、第1の(たとえば、LHC)偏光の光が実質的にない。透過格子として
図10Aに示されるが、BPG1000は、ディスプレイ光101がユーザに隣接したBPG1000の側面に入射できるように反射格子であることができ、1次回折光102は、やはりユーザの方に戻るように向けられることが理解されよう。
【0105】
いくつかの実施形態では、適宜、偏光フィルムアセンブリ121が、上述された
図2Aおよび
図9Bの実施形態のいずれかに示された構成と同様に、第2の偏光(たとえば、RHC)の非ディスプレイ光を導波路120へ与えるように、たとえば、ユーザに向いているように構成されている面の反対側に、
図10Aに示されるように、光導波路120および回折素子1000上に設けられてもよい。したがって、
図10Aの回折導波路デバイスは、(リターダMTR-R1によって変換され、偏光子によって阻止され得る)残留光105の順方向漏れを減少させるまたはなくすことができ、また、(BPG1000によって実質的に回折され得ない導波路120へ第2の偏光の光を主に与えることによって)シースルーレインボー効果またはアーチファクトを減少させるまたはなくすように構成され得る。
【0106】
図11は、本発明のいくつかの実施形態による可変リターダ素子VRを有する偏光フィルムアセンブリ1121を含む回折導波路デバイスにおけるレインボーおよび順光漏れ減少を示す概略図である。上述したように、シースルーレインボーアーチファクトは、(たとえば、デバイスの視野の外側の)比較的高い入射角における光がガラスの臨界角よりも大きい角度に回折されないときに、回折導波路によって形成され得る。より一般的には、レインボーアーチファクトという結果になる入射角は、例えば、ディスプレイが導波路からユーザの眼の中に光を伝搬させるために交差格子を含むとき、回折導波路ディスプレイの視野の外側にあり得る。または、順光漏れは、TIRによって導波路内でおよびディスプレイの視野内で伝搬される光から生じ得る。
【0107】
本発明のさらなる実施形態では、可変リターダ素子VRは、シースルーレインボーと順光漏れとの両方を同時に減少させるまたは防ぐように上述された境界条件に基づいて構成されている。例えば、高い効率でLHC光を回折するように構成されている回折格子についてのレインボーを減少させるために、偏光フィルムアセンブリ1121は、レインボーを引き起こし得るディスプレイの視野を越えるまたはその外側の入射角についてRHC光を格子へ透過するように構成された円偏光子を実施することができる。高い効率でLHC光を回折するように構成されている格子についての順光漏れを減少させるために、偏光フィルムアセンブリ1121は、順光漏れを与え得るディスプレイの視野内の入射角についてLHC光を透過するように構成された円偏光子を実施することができる。可変リターダVRは、順光漏れを阻止しつつ、透過されたレインボーが減少するまたは防がれるように、角度特有のリタデーションを与えるように構成され得る。
【0108】
より詳細には、次に
図11を参照すると、回折素子は、光導波路120に光学的に結合される(いくつかの実施形態におけるBPGであり得るが、必ずではない)回折格子1100として示される。光導波路は、全内反射によって(たとえば、電子イメージングディスプレイから)光101を伝搬するように構成されている透明基板であることができ、回折格子は、導波路120からユーザの眼の方へ光101を回折するように構成され得る。回折格子1100は、第1の(たとえば、LHC)偏光に(たとえば、伝搬を1次方向に変更するように)高い回折効率を与えるように、および第2の(たとえば、RHC)偏光に(たとえば、伝搬方向を実質的に変更することなく、ゼロ次方向に透過するように)低い回折効率を与えるように構成されている。
【0109】
偏光フィルムアセンブリ1121は、偏光子122(たとえば、直線偏光子)と、可変リターダ素子VRとを含み、導波路120へ非ディスプレイ光を向けるように配置される。ユーザの眼におけるレインボー30を減少させるまたはなくすために、可変リターダ素子VRは、回折導波路ディスプレイの視野よりも大きい入射角を有する周囲光または偏光されていない光107について光を第2の偏光状態に変換するように構成されている。いくつかの実施形態では(たとえば、回折格子がBPGである場合)、順光漏れ105は、第2の偏光に出力結合され得る。順光漏れ105を阻止するために、可変リターダVRは、ディスプレイの視野内の入射角について、第2の偏光の光を偏光子によって阻止することができる偏光した(たとえば、直線偏光した)光に(たとえば、直線偏光子によって透過される光に対して直交偏光に)変換するように構成されている。より一般的には、回折格子1100は、視野内の角度について、実質的に単一のまたは同じ偏光を有する(すなわち、他のまた直交偏光が実質的にない)順方向に(すなわち、ユーザから離れるように)光105を回折するように構成され得るとともに、可変リターダ素子VRは、この光を直線偏光子122によって阻止することができる偏光に変換するように構成され得る。
【0110】
さらにより一般的には、順光漏れ105は、入射角、波長/スペクトルが変わり得る、および/または回折格子の面にわたる空間的な位置に関して変わり得る偏光を有することができる。すなわち、(ユーザの眼から離れるように)順方向に回折された出力結合された光または残留光105は、角度依存、スペクトル依存、および/または位置依存であり得る偏光を有し得る。可変リターダ素子VRは、(視野内の光105の入射角について)この順光105の偏光を偏光フィルムアセンブリ1121の偏光子によって阻止することができる偏光に(たとえば、直線偏光子122によって透過された光の直線偏光に直交する直線偏光に)変換するように構成され得る。いくつかの実施形態では、可変リターダVRは、1つまたは複数の寸法または方向がサブレイヤの面にわたって変わる局所光軸を有する多数のスタックした複屈折サブレイヤを含んでもよい。すなわち、可変リターダ素子VRは、入射角、波長、および/または可変リターダ素子VRの面に沿った1つまたは複数の方向の空間的な位置に基づいて可変リターダ素子VRに入射する光のリタデーションを変えるように構成されてもよい。
【0111】
したがって、可変リターダ素子VRは、デバイスの視野内で第1のリタデーションの量または入射角についての値を、ならびに第2のリタデーションの量または視野を越えるまたは視野の外側の入射角についての値を与えるように構成されている。偏光フィルムアセンブリ1121は、視野の外側の入射角について光導波路へ第2の偏光の光を与えるとともに、視野内の入射角について光導波路120から出力結合される第2の偏光の光を阻止するように構成されている。
【0112】
本明細書中に説明される実施形態では、リターダは、回折素子上に直接または回折素子に隣接して配置されてもよく、あるいは、たとえば、導波路の反対側に、回折素子から隔てられてもよい。いくつかの実施形態では、リターダおよび/または回折層は、液晶(LC)層(しかし、これに限定するものではない)などの複屈折の材料または層を含み得る。いくつかの実施形態では、リターダおよび回折層は、モノリシック構造を有する光学素子を定め得る。モノリシック光学素子の層は、互いに対して直接あってもよく、またはモノリシック光学素子の層間に1つまたは複数の透明な層を含んでもよい。
【0113】
本開示の実施形態は、それによって、ユーザへ(混合された偏光ではなく)それぞれの偏光状態にディスプレイ光および非ディスプレイ光を向けるように構成された1つまたは複数の光導波路、ならびにレインボー効果および/または順光漏れを減少させるまたは防ぐように構成された偏光フィルムアセンブリを含む回折光導波路ディスプレイを提供することができる。導波路ベースのまたは他のニアツーアイイメージングシステムを参照して、いくつかの実施形態が本明細書中に説明されてきたが、本開示の実施形態は、それに限定されず、他の応用にも使用できると理解されよう。
【0114】
光学素子スタックの特定の構成を参照して本明細書中に説明される例に示されるが、追加の偏光子、リターダ、および/または他の光学層などの介在する要素も、存在してもよいことが理解されよう。例えば、PG素子の特性に応じて、発光の特定の偏光が、所望の回折角を与えることが必要とされ得る。したがって、光源が偏光した光(たとえば、レーザ)を放出する場合、波長板(たとえば、円偏光を与えるための1/4波長板)が、所望の入力偏光を有する発光を与えるように含まれてもよい。同様に、光源が偏光した光(たとえば、LED)を放出しない場合、偏光子が、所望の入力偏光を有する発光を与えるように含まれてもよい。
【0115】
本開示の実施形態は、回折光学素子の動作波長範囲内の偏光と光の伝搬方向との両方を変更するように構成されている偏光格子などの回折光学素子を参照して説明されている。PGは、光学異方性を有する薄膜をパターン付けすることによって形成された回折光学素子である。より具体的には、PGは、光軸自体と同じ平面(たとえば、X-Y平面)にある少なくとも1つの方向に沿って直線的に変わる局所光軸(たとえば、φ(x)=πx/Λ)を有するとともに、他の特徴の中で均一異方性の大きさを有する。PGは、高い回折効率、限られた回折次数、および/または偏光選択性を与えることができる。
【0116】
いくつかの例的実施では、PGは、切り換え可能なLCと重合可能なLCとの両方における光配向および液晶(LC)材料を用いて製造することができる。後者の場合には、PGは、単一の配列層を有するLCの多数のサブレイヤとして形成され得る。低い分子量の重合可能なLC(LCP)とも呼ばれる反応性メソゲンにカイラルドーパントを加えることによって、層ごとのカイラルねじれが、成し遂げられ得る。このカイラルねじれは、高い回折効率の帯域幅を仕立てるために使用され得る。
【0117】
光と回折格子の相互作用は、材料パラメータと幾何学的パラメータとの両方の複雑な組合せによって影響を受け得る。特定の格子構成の光学的挙動の領域を特定するために
Q=2πλd/Λ2n
である無次元パラメータQを使用することは、回折格子の分野においてよくあることであり得、ただし、λは光の真空波長であり、dは格子厚さであり、Λは光学素子の格子周期(すなわち、ピッチ)であり、nは平均屈折率である。この枠組みでは、ブラッグ領域は、Q>1として定義することができ、ラマン・ナス領域(Raman-Nath regime)は、Q<1として定義することができ、Q~1は、両方の特性を有する混合領域と指し得る。
【0118】
本明細書中に説明される実施形態は、約90°までの大きい回折角θ(すなわち、λがΛに近づくとき)と高い効率との両方を有するPGを提供する。動作波長についてブラッグ条件(Q>1)を達成するように選択される格子周期Λ、厚さd、および/または平均屈折率nを有するLC材料で形成されたブラッグPGは、これを可能にすることができる。ブラッグPGは、(一部の非ブラッグPGと比較して)より高い回折効率を有するとともに、(一部の非ブラッグPGの多数の回折次数ではなく)単一の回折次数で動作するように設計されている、ブラッグ領域内で動作する偏光格子を指す。より具体的には、本発明の実施形態は、ブラッグ領域のために必要とされる大きい厚さを成し遂げるために、個々にコーティングされたおよび重合された(通過させられることになる光の動作波長よりも小さいそれぞれの厚さを有することができる)多数のスタックした複屈折サブレイヤを用いることができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、ブラッグPGは、重合された反応性LCモノマー層またはLCポリマー(LCP)層として説明され得るバルクネマチックLC層を用いて形成することができる。LCP層は、従来の液晶ポリマーとは異なる。本発明のいくつかの実施形態において用いられたLCP薄膜は、コーティングまたは別の方法で形成される面の特性によって配列される低い分子量の反応性LC分子を含み、続いて硬質ポリマーネットワークに重合される。詳細には、ブラッグPGの周期パターンは、直接LCP層にではなく、光配向層の面に記録することができる。逆に、一部の従来の液晶ポリマーは、液晶成分を有する高い分子量のポリマーとすることができ、ブラッグPGの周期パターンは、典型的には、例えば、光誘起分子再配列によって材料に直接記録される。
【0120】
幾何学的位相(GP)要素は、1つまたは複数の寸法が変わる、および/または直線的、非直線的、および連続的または不連続的な光軸の変化を含むが、これに限定されない任意のやり方で変わる光軸の向きを有する異方性光学素子であり、それによって、(光路長差の影響から生じる)動的位相ではなく、幾何学的位相(または偏光状態の変化から生じるパンチャラトナム・ベリー位相)を制御するようなやり方で入射光の偏光に影響を与える。
【0121】
GP要素は、偏光格子の面に沿った偏光格子の格子周期Λの1つまたは2つの寸法の変化を有する偏光格子のより複雑なバージョンとみなされ得る。別の観点から、PGは、直線位相プロファイル、たとえば、φ(x)=πx/Λまたはφ(x)=πy/Λを実施するGPHの単なる特定の例とみなされてもよく、ただし、Λは、一定の格子周期である。いくつかの実施形態では、幾何学的位相要素の面に沿った位置の関数としての1つまたは複数の寸法における局所光軸の向きの非直線的変化(たとえば、φ(x)=kπx2)は、GP要素の効果全体がレンズ効果を与えるようになり得るように、連続的に変わる周期性を有するパターンを定めることができる。
【0122】
いくつかの例では、変わる光軸の向きは、ホログラフィ技術を用いて記録媒体または他の配列面にパターン付けすることによって生成され得、この場合には、GP要素は、幾何学的位相ホログラム(GPH)要素、または単にGPHと呼ばれ得る。しかしながら、本明細書中に説明されるような幾何学的位相要素は、ホログラフィ干渉および様々な他の形態のリソグラフィを含む様々な方法によって生成されることも可能であり、したがって、本明細書中に説明されるような『ホログラム』は、ホログラフィ干渉、または『ホログラフィ』による生成に限定されない。
【0123】
本発明の実施形態は、液晶(LC)材料に関して本明細書中に説明される。本明細書中で使用されるとき、液晶は、ネマチック相、カイラルネマチック相、スメティック相、強誘電層、および/または別の層を有することができる。加えて、いくつかの光重合可能なポリマーが、本明細書中に説明されるGP要素を生成するために配向層として使用されてもよい。
【0124】
本明細書中で使用されるとき、「透過性の」または「透明な」基板または要素は、入射光の少なくとも一部が、それを通過することを可能にすることができることが理解されよう。言い換えれば、本明細書中に説明される透過性のまたは透明な要素は、完全に透明である必要はなく、等方性または二色性吸収特性を有してもよく、および/あるいは別の方法で入射光の一部を吸収してもよい。透明基板またはスペーサは、いくつかの実施形態においてガラス基板であってもよい。対照的に、本明細書中に説明されるような「反射」基板は、入射光の少なくとも一部を反射することができる。光(たとえば、特定の偏光の光)を「阻止する」要素は、そのような光が反射基板を通って透過するのを実質的に防ぐ。
【0125】
反射防止コーティングが周囲媒体(たとえば、空気)をつなぐ全ての面に施されてもよいことも理解されよう。一部の場合には、本明細書中に説明される光学素子/層は、要素/層の中間に空隙を備えることなくモノリシック構造を定めるように一緒に積層されてもよく、他の場合には、中間に空隙を備えて配置されてよいことも理解されよう。
【0126】
本明細書中で使用されるとき、「ゼロ次」の光は、入射光の方向に実質的に平行に、すなわち、実質的に同様の入射角で伝搬し、本明細書中で「軸上の」光と呼ばれる。対照的に、「1次の」光などの「非ゼロ次の光」は、入射光に平行でない方向に伝播し、本明細書中で「軸外れの」光と呼ばれる。本明細書中に説明されるような「一部コリメートされた」光は、互いに実質的に平行に伝搬する光線またはビームを説明することができるが、いくらかの発散(たとえば、源からの距離に関するビーム直径の差)を有してもよい。
【0127】
本明細書中で使用されるとき、「平行な」偏光格子構成は、同じ複屈折n(x)を有する第1のおよび第2の偏光格子を含み、すなわち、第1のおよび第2の偏光格子のそれぞれの複屈折パターンは、実質的に同様の向きを有する。対照的に、「逆平行の」偏光格子構成は、反対の複屈折を有する第1のおよび第2の偏光格子を含み、すなわち、n(x)およびn(-x)である。言い換えれば、第2の偏光格子は、第1の偏光格子の屈折パターンに対して反転または約180度だけ回転される複屈折パターンを有する。
【0128】
本発明の実施形態は、液晶(LC)材料に関して本明細書中に説明される。液晶は、分子の秩序配置が存在する液体を含み得る。典型的には、液晶(LC)分子は、細長い(ロッドのような)形状または平坦な(円盤のような)形状のどちらかを有する異方性であってよい。異方性分子の秩序化の結果として、バルクLCは、しばしば、その機械特性、電気特性、磁気特性、および/または光学特性における異方性など、その物理特性に異方性を示す。ロッドのようなまたは円盤のような性質の結果として、LC分子の配向の分布は、液晶ディスプレイ(LCD)などにおける光学的応用において重要な役割を果たし得る。これらの応用では、LC配列は、配列面によって規定され得る。配列面は、LCが制御可能なやり方で面に対して配列するように処理され得る。
【0129】
また、「重合可能な液晶」は、重合され得る比較的低い分子量の液晶材料を指し得、また、「反応性メソゲン」として本明細書中に説明される。対照的に、「非反応性液晶」は、重合され得ない比較的低い分子量の液晶材料を指し得る。しかしながら、本発明の実施形態は、本明細書中に説明される特定の材料に限定されず、本明細書中に説明されるように働くいずれかおよび全ての材料層を用いて実施され得ることが理解されよう。
【0130】
本明細書中に説明されるとき、切り換え可能な層は、切り換え可能な層に入射する光の偏光に異なるように影響を与える状態間で(加えられた電気信号に応答して)独立して切り換えられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、切り換え可能な層は、光の偏光を実質的に変更しない第1の状態(たとえば、「オフ」状態)と光の偏光を(たとえば、直交偏光状態へ)変更する第2の状態(たとえば、「オン」状態)との間で切り換えられ得る。いくつかの実施形態では、切り換え可能な層は、ある偏光状態から直交状態へ完全に切り換えられなくてもよく、したがって、切り換え可能な層を通過する動作の特定された波長内で光を変調するために使用され得る。すなわち、切り換え可能な層は、動作の特定された波長内の入射光の偏光に対する効果に関して(「オフ」状態と「オン」状態との間に)中間の状態を含み得る。
【0131】
切り換え可能な層は、切り換え可能な層に印加された電圧に応答して、ゼロリタデーションと1/2波長リタデーション(または他のリタデーション)との間で電気的に切り換えられ得る複屈折液晶層を含むことができる。切り換え可能な光学層の状態(たとえば、「オン」または「オフ」)は、1つまたは複数の外部コントローラによって制御することができる。いくつかの実施形態では、切り換え可能な光学層は、例えば、Escutiらの米国特許出願公開第2011/0242461号に説明されるようなLC材料を用いて形成することができ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の実施形態に従って使用され得るLC材料は、本明細書中に説明される特定の「オン」(半波リタデーション)状態、または「オフ」(ゼロリタデーション)状態に限定されることなく、ねじられたネマチック、垂直配列、青色相などを含むが、これらに限定されない。
【0132】
第1の、第2の、第3のなどの用語は、様々な要素、構成要素、リージョン、層、および/またはセクションを説明するために本明細書中で使用され得るが、これらの要素、構成要素、リージョン、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されよう。これらの用語は、ある要素、構成要素、リージョン、層、またはセクションを別のリージョン、層、またはセクションから区別するために使用されるものにすぎない。したがって、以下に論じられる第1の要素、構成要素、リージョン、層、またはセクションは、本発明の教示から逸脱することなく第2の要素、構成要素、リージョン、層、またはセクションと呼ばれてもよい。
【0133】
「真下に」、「下方に」、「下の」、「下に」、「上方に」、「上に」等などの空間的に相対的な用語は、図に示されるように、ある要素または特徴の関係と別の要素または特徴を説明するための説明を簡単にするために本明細書中で使用されてもよい。空間的に相対的な用語は、図に示された向きに加えて使用中または動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図されることを理解されよう。例えば、図中のデバイスがひっくり返される場合、他の要素または特徴の「下方に」または「真下に」または「下に」と説明される要素は、そのとき、他の要素または特徴の「上方」に向けられる。したがって、「下方に」および「下に」といった用語は、上方と下方の両方の向きを包含し得る。デバイスは、別の方法で向けられ(90度または他の向きに回転され)てもよく、本明細書中で使用される空間的に相対的な説明は、それに応じて解釈される。加えて、層が2つの層「間」にあると呼ばれるとき、2つの層の間にたった1つの層があってもよく、あるいは1つまたは複数の介在する層が存在できることもやはり理解されよう。
【0134】
本明細書中で使用される専門語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本発明の限定であることは意図されない。本明細書中で使用されるとき、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上別段明らかに示されない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書中で使用されるとき、「備える(comprises)」および/または「備える(comprising)」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの集まりの存在または追加を除外しないことが理解されよう。本明細書中で使用されるとき、「および/または」という用語は、関連して挙げた項のうちの1つまたは複数のいずれかおよび全ての組合せを含む。
【0135】
ある要素または層が別の要素または層「の上にある」、「に接続される」、「に結合される」、または「に隣接している」と呼ばれるとき、この要素または層は、他の要素または層の直接上にあっても、それに直接接続されても、直接結合されても、または直接隣接していてもよく、あるいは介在する要素または層が、存在してもよいことが理解されよう。対照的に、要素が別の要素または層の「直接上にある」、それに「直接接続される」、「直接結合される」、または「すぐに隣接される」と呼ばれるとき、介在する要素または層は存在しない。
【0136】
別段定めがない限り、本明細書中で使用される(科学技術用語を含む)全ての用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されているのと同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語などの用語は、関連技術および/または本明細書の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書中にそのように明確に定められない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
【0137】
多くの異なる実施形態が、上記の説明および図面に関連して本明細書中に開示されている。これらの実施形態のあらゆる組合せおよびサブコンビネーションを文字通り説明することは必要以上に繰り返しが多くなり、分かりにくくなることが理解されよう。したがって、本明細書は、図面を含めて、本明細書中に説明される本発明の実施形態の全ての組合せおよびサブコンビネーション、ならびにそれを製造および使用するやり方およびプロセスの説明の完全な記載を構成すると解釈されるべきであり、いずれかのそのような組合せおよびサブコンビネーションに対する権利主張をサポートするものである。
【0138】
図面および明細書において、本開示の実施形態が開示されており、特定の用語が用いられるが、それらは、一般的な意味および説明的な意味で使用されるものにすぎず、限定のためではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】