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特表2023-534152触媒、レドックススイッチ触媒系、及びヒドロシリル化を伴う関連方法
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  • 特表-触媒、レドックススイッチ触媒系、及びヒドロシリル化を伴う関連方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】触媒、レドックススイッチ触媒系、及びヒドロシリル化を伴う関連方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/24 20060101AFI20230801BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20230801BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20230801BHJP
   C07F 19/00 20060101ALN20230801BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
B01J31/24 Z
C07F7/08 X
C07F7/08 C
C07F15/00 B
C07F19/00
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580458
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021040457
(87)【国際公開番号】W WO2022010858
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/048,613
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】503060525
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェレティック、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ラウヒフース、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ユー
(72)【発明者】
【氏名】カガルワラ、フセイン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4H049
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA05
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BE05A
4G169BE05B
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169BE45A
4G169BE46B
4G169CB25
4G169CB80
4G169FB43
4G169FB77
4H039CA92
4H039CF10
4H049VN01
4H049VP01
4H049VP05
4H049VP10
4H049VQ07
4H049VQ79
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VR42
4H049VT17
4H049VT30
4H049VW02
4H049VW32
4H050AA03
4H050AB40
(57)【要約】
ヒドロシリル化の触媒が開示される。触媒は、特定の式を有する錯体を含む。触媒を調製するためのレドックススイッチ触媒系も開示される。レドックススイッチ触媒系は、レドックススイッチ触媒と、還元性化合物と、を含む。還元性化合物は、レドックススイッチ触媒の形式的酸化状態を還元して触媒を得、前者は、ヒドロシリル化を触媒する際に概して不活性であり、後者は触媒活性である。触媒及び/又はレドックススイッチ触媒系と、ヒドロシリル化反応生成物と、を含む組成物も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化の触媒であって、前記触媒は、以下の式:
【化1】


[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、Xはハロゲン原子である]を有する錯体を含む、触媒。
【請求項2】
(i)各R2は、メチルである、(ii)各Rは、フェニルである、(iii)各Xは、Clである、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒を調製するためのレドックススイッチ触媒系であって、前記レドックススイッチ触媒系は、
以下の式:
【化2】

[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、各Xは、ハロゲン原子であり、Aは、対アニオンである]を有する錯体を含む、レドックススイッチ触媒と、
還元性化合物と、を含む、レドックススイッチ触媒系。
【請求項4】
(i)各Rは、メチルであり、各Rは、フェニルであり、各Xは、Clである、(ii)前記対アニオンAは、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートである、(iii)前記還元性化合物は、コバルトセンを含む、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項3に記載のレドックススイッチ触媒系。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のレドックススイッチ触媒系から形成される、触媒反応生成物。
【請求項6】
ヒドロシリル化の触媒を調製する方法であって、前記方法は、
還元性化合物でレドックススイッチ触媒を還元して、前記触媒を得ることを含み、
前記レドックススイッチ触媒は、以下の式:
【化3】

[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、各Xは、ハロゲン原子であり、Aは、対アニオンである]を有する錯体を含み、
前記触媒は、請求項1又は2に記載の触媒である、方法。
【請求項7】
(i)各Rは、メチルであり、各Rは、フェニルであり、各Xは、Clである、(ii)前記対アニオンAは、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートである、(iii)前記還元性化合物は、コバルトセンを含む、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ヒドロシリル化の触媒を調製する方法であって、前記方法は、
式[RhR X]の出発物質(I)と式
【化4】

の出発物質(II)とを錯化して前記触媒を得ることを含み、
式中、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和基であり、各Xは、独立して選択されたハロゲン原子であり、Rは、ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、
前記ヒドロシリル化の触媒は、請求項1又は2に記載の触媒である、方法。
【請求項9】
組成物であって、
(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含むこと、のうちの少なくとも1つに従う、(A)不飽和化合物と、
(C)請求項1又は2に記載の触媒と、を含む、組成物。
【請求項10】
組成物であって、
(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含むこと、のうちの少なくとも1つに従う、(A)不飽和化合物と、
(C)請求項3又は4に記載のレドックススイッチ触媒系と、を含む、組成物。
【請求項11】
条件(2)が真であり、その結果、組成物が、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む前記水素化ケイ素化合物を更に含む、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
(i)前記(A)不飽和化合物は、1分子あたり少なくとも2つの不飽和基を含む、(ii)前記(B)水素化ケイ素化合物は、1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法であって、前記方法は、
(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子を反応させて、前記ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含み、
前記脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記ケイ素結合水素原子が前記(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用され、
前記(C)ヒドロシリル化触媒は、請求項1又は2に記載の触媒を含む、方法。
【請求項14】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法であって、前記方法は、
(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子を反応させて、前記ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含み、
前記脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記ケイ素結合水素原子が前記(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用され、
前記(C)ヒドロシリル化触媒は、請求項4又は5に記載のレドックススイッチ触媒系からその場で形成される、方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法に従って形成された、ヒドロシリル化反応生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月06日に出願された米国特許仮出願第63/048,613号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、触媒、より具体的には、ヒドロシリル化の触媒、及び触媒を調製するためのレドックススイッチ触媒系に関する。本発明はまた、それ及び関連方法を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロシリル化反応は、一般に、当技術分野で知られており、ケイ素結合水素と脂肪族不飽和との間の付加反応を伴う。ヒドロシリル化反応は、様々な用途で利用されている。例えば、硬化性組成物は、その成分を硬化又は架橋させて硬化生成物を得る目的でヒドロシリル化反応に依存することが多い。また、ヒドロシリル化反応を利用して、個々の成分又は化合物、例えば、硬化性組成物に含めるための成分を調製することができる。
【0004】
ヒドロシリル化反応は、典型的には、白金金属である触媒の存在下で実行され、それは、その優れた触媒活性に起因する。また、金属錯体を利用して、ヒドロシリル化反応を触媒することができる。しかしながら、ヒドロシリル化反応の開始時期に影響を及ぼす触媒の触媒活性を制御することは困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ヒドルキシル化の触媒を提供する。触媒は、以下の式:
【化1】


[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、Xはハロゲン原子である]を有する錯体を含む。
【0006】
本発明はまた、触媒を調製するためのレドックススイッチ触媒系を提供する。レドックススイッチ触媒系は、以下の式:
【化2】

[式中、各Rは、独立して選択され、上記で定義されており、各Rは、独立して選択され、上記で定義されており、各Xは独立してハロゲン原子であり、Aは対アニオンである]を有する錯体を含む、レドックススイッチ触媒を含む。レドックススイッチ触媒系は、還元性化合物を更に含む。更に、本発明は、レドックススイッチ触媒系を用いて触媒を調製する方法を提供する。本方法は、還元性化合物でレドックススイッチ触媒を還元して、触媒を得ることを含む。
【0007】
本発明はまた、触媒を調製する方法を更に提供する。本方法は、式[RhR X]の出発物質(I)と式
【化3】

の出発物質(II)とを錯化して触媒を得ることを含む。出発物質(I)において、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和基であり、各Xは、独立して選択されたハロゲン原子である。出発物質(II)において、Rは、ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基である。
【0008】
更に、本発明は、組成物を提供する。本組成物は、(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は(2)本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含むこと、のうちの少なくとも1つに従う。組成物は、触媒及び/又はレドックススイッチ触媒系を更に含む。
【0009】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法も提供される。本方法は、触媒の存在下で脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子を反応させて、ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含む。脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、組成物に関して上述した同一の条件に従う。触媒は、本方法ではその場でレドックススイッチ触媒系から形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の他の利点は、添付の図面と併せて考えると、以下の詳細な説明を参照することにより更に良く理解されるため、容易に理解されるであろう。
【0011】
図1】実施例6のレオメータによってリアルタイムで監視される硬化プロセスに関連する時間の関数として、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び温度を示す。
図2】実施例7のレオメータによってリアルタイムで監視される硬化プロセスに関連する時間の関数として、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び温度を示す。
図3】比較例1のレオメータによってリアルタイムで監視される硬化プロセスに関連する時間の関数として、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、触媒を提供する。触媒は、ヒドロシリル化反応において優れた物理的特性及び触媒活性を有する。触媒は、レドックススイッチ触媒系からその場で形成され得、それによって、そのようなレドックススイッチング(すなわち、酸化状態の形式的変化を介して「オン」に変換する)に基づいて、選択的にヒドロシリル化を制御又は開始することを可能にする。
【0013】
触媒は、以下の構造:
【化4】


[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、Xは、ハロゲン原子である]を有する。
【0014】
Xで表されるハロゲン原子は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)、又はテネシン(T)であり得る。特定の実施形態では、Xは、Br又はClである。特定の実施形態では、XはClである。
【0015】
各Rは独立して選択され、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、単環式であっても多環式であってもよい。直鎖及び分枝鎖ヒドロカルビル基は独立して、飽和又は不飽和であってもよい。直鎖及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。「置換/置換された」とは、1個以上の水素原子が、水素以外の原子(例えば、ハロゲン原子、例えば塩素、フッ素、臭素など)で置き換えられ得ること、又はRの鎖内の炭素原子が、炭素以外の原子で置き換えられ得ること、すなわち、Rが鎖内に1個以上のへテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素などを含み得ること、を意味する。典型的には、各Rはヘテロ原子を含まない。好適なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに炭素原子6個の分枝飽和炭化水素基によって例示されるが、これらに限定されない。好適なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルによって例示されるが、これらに限定されない。好適なアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基としては、1~6個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基又は6~10個の炭素原子を有するハロゲン化アリール基が挙げられるが、これらに限定されない。好適なハロゲン化アルキル基は、1個以上の水素原子がF又はClなどのハロゲン原子で置き換えられた上述のアルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。例えば、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチルは、好適なハロゲン化アルキル基の例である。好適なハロゲン化アリール基は、1個以上の水素原子がF又はClなどのハロゲン原子で置き換えられた上述のアリール基によって例示されるが、これらに限定されない。例えば、クロロベンジル及びフルオロベンジルは、好適なハロゲン化アリール基である。
【0016】
特定の実施形態では、各Rは、独立して選択されたアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状(例えば、シクロアルキル)、又はこれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態では、各Rは、直鎖状又は分岐状である。特定の実施形態では、各Rは直鎖状である。
【0017】
好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘキサデシル、及びオクタデシル、並びに6~8個の炭素原子を有する分岐飽和炭化水素基が挙げられる。好適な非共役環状基(すなわち、シクロアルキル基)の例としては、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及びシシロヘプチル基が挙げられる。
【0018】
特定の実施形態では、各Rは、独立して、1~8個、あるいは1~7個、あるいは1~6個、あるいは1~5個、あるいは1~4個、あるいは1~3個、あるいは1個~2個、あるいは1個の炭素原子を有する。
【0019】
各Rはまた、独立して選択されたヒドロカルビル基であり得る。しかしながら、典型的には、各Rは、独立して選択されたアリール基である。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。アリール基は、単環式又は多環式であり得る。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有し得る。多環式アリール基は、炭素原子10~17個、あるいは炭素原子10~14個、あるいは炭素原子12~14個を有し得る。アリールは、フェニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、各Rは、単環式アリール基である。特定の実施形態では、各Rは、フェニル基である。
【0020】
特定の実施形態では、各R及び各Rは独立して、立体障害、電子機器(例えば、電子供与効果、誘導効果、又は引き込み効果)など、又はこれらの組み合わせなどの要因に基づいて選択される。R及びRは、触媒に対称性を付与するように選択され得る。これらの又は他の実施形態では、R及びRは、反応性位置選択性を付与するように独立して選択され得る。
【0021】
触媒の例示的な実施形態は、以下[式中、各Rは、メチルであり、各Rは、フェニルであり、Xは、Clである]:
【化5】

[Phは、フェニルを示す]である。
【0022】
触媒は、固体担体の中又は上にあり得る。担体の例としては、活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト、及びその他の無機粉末/粒子(例えば硫酸ナトリウム)などが挙げられる。
【0023】
触媒はまた、ビヒクル、例えば、触媒を可溶化する溶媒、あるいは触媒を単に担持するか、又は分散させるが、可溶化しないビヒクルに配置され得る。このようなビヒクルは、技術分野において既知である。
【0024】
好適なビヒクルとしては、直鎖状及び環状の両方のシリコーン、有機油、有機溶媒、並びにこれらの混合物が挙げられる。例えば、シリコーンに対して、担体ビヒクルは、ポリジアルキルシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサンを含み得る。
【0025】
ビヒクルはまた、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデアメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3,ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサンペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、並びにポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、カプリリルメチコン、及びこれらの任意の混合物などの、25℃で1~1,000mm/秒の範囲の粘度を有する、低粘度オルガノポリシロキサン、又は揮発性メチルシロキサン、又は揮発性エチルシロキサン、又は揮発性メチルエチルシロキサンであり得る。
【0026】
あるいは、ビヒクルは、有機溶媒を含み得る。有機溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、及びクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアセテート;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノールなどのアルコール;並びにジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ホワイトスピリット、ミネラルスピリット、ナフサ、n-メチルピロリドンなどの典型的な反応温度で液体/流体として存在する他の有機化合物、並びにそれらの誘導体、修飾体、及び組み合わせが含まれる。
【0027】
触媒はまた、結晶化状態であり得、例えば、ビヒクル中の過飽和溶液から成長する。しかしながら、触媒は、典型的には均質であり、ヒドロシリル化反応における触媒の成分との接触相互作用を最大化するために不均一ではない。
【0028】
本発明はまた、触媒を調製する方法を更に提供する。本方法は、式[RhR X]の出発物質(I)と式
【化6】

の出発物質(II)とを錯化して触媒を得ることを含む。出発物質(I)において、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和基であり、Xは、独立して選択されたハロゲン原子である。出発物質(II)において、Rは、ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基である。
【0029】
触媒を調製するこの方法では、触媒は直接調製される。しかしながら、以下により詳細に記載するように、触媒はまた、レドックススイッチ触媒系から調製され得る。直接又はレドックススイッチ触媒系を介して調製された触媒の使用は、ヒドロシリル化に関連する所望の最終用途の関数である。例えば、調製された触媒を使用することにより、典型的には白金に基づいて、任意の従来のヒドロシリル化触媒を置き換えることができる。しかしながら、触媒がレドックススイッチ触媒系から調製された場合、触媒は、例えば、ヒドロシリル化硬化性組成物の反応物の存在下でその場で形成され得る。これにより、以下により詳細に記載するように、反応物の組み合わせに基づいて、開始ではなく、ヒドロシリル化の開始時期を選択的に制御することが可能になる。
【0030】
出発材料(I)は、式[RhR X]を有する。各Xは独立して選択され、好適な例は、触媒を参照して上述されている。典型的には、各Xは、Br又はCl、あるいはClである。各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和基であり、これは、2~12個、あるいは2~11個、あるいは2~10個、あるいは2~9個、あるいは2~8個、あるいは2~7個、あるいは2~6個、あるいは2~5個、あるいは2~4個、あるいは2~3個、あるいは2個の炭素原子を有する独立して選択されるアルケニル基及び/又はアルキル基である。「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基が挙げられる。「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環状、分枝鎖又は非分枝鎖の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、エチニル、プロピニル、及びブチニル基が挙げられる。エチレン性不飽和基の様々な例としては、CH=CH-、CH=CHCH-、CH=CH(CH-、CH=CH(CH-、CH=C(CH)CH-、HC=C(CH)-、HC=C(CH)-、HC=C(CH)CH-、HC=CHCHCH-、HC=CHCHCHCH-、HC≡C-、HC≡CCH-、HC≡CCH(CH)-、HC≡CC(CH-、及びHC≡CC(CHCH-が挙げられる。典型的には、脂肪族不飽和は、Rの末端である。当該技術分野で理解されるように、脂肪族不飽和はエチレン性不飽和と呼ばれることがある。特定の実施形態では、各Rは、ビニルである。
【0031】
出発物質(I)の特定の例は、式RhCl(Cを有する、あるいは[Rh(CCl]と記されるクロロビス(エチレン)ロジウムダイマーである。この出発物質(I)は、2つの架橋塩化物配位子及び4つのエチレン配位子を含み、以下の構造:
【化7】

を有する。
【0032】
出発物質(II)は、出発物質(I)のRの置換により、配位子として出発物質(I)と錯化する。
【0033】
出発物質(II)のR及びRの具体例は、出発物質(II)のR及びRが、配位子の形成時に触媒のR及びRになるため、触媒を参照して上記で定義されている。
【0034】
出発物質(II)の例示的な例は、構造:
【化8】

を有する、2-(ジフェニルホスフィノ)アニソールである。
【0035】
典型的には、触媒は、出発物質(II)対出発物質(I)が4:1のモル比である出発物質(II)及び出発物質(I)から形成される。しかしながら、モル過剰又は化学量論的過剰の出発物質(I)又は出発物質(II)は、他方と比較して利用され得る。出発物質(I)との出発物質(II)の錯化に対する反応は、担体中で実行され得、その例は上述されている。反応は、周囲条件で実行され得るが、任意選択的に、周囲条件からの温度、湿度、圧力などを制御又は修正しつつ、不活性雰囲気(例えば、窒素)中で実行され得る。
【0036】
上記のように、触媒を調製するためのレドックススイッチ触媒系も提供される。レドックススイッチ触媒系は、以下の式:
【化9】

[式中、各Rは、独立して選択され、上記で定義されており、各Rは、独立して選択され、上記で定義されており、各Xは独立して選択され、上記で定義されており、Aは対アニオンである]を有する錯体を含む、レドックススイッチ触媒を含む。
【0037】
特定の実施形態では、対アニオンAは、式(BQを有し、式中、Bは、3の形式的酸化状態のホウ素であり、各Qは独立して、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、フッ素化ヒドロカルビル基、フッ素化ヒドロカルビルオキシ基、又はフッ素化シリルヒドロカルビル基から選択されるが、1つ以下のQがヒドロカルビルであることを条件とする。最も典型的には、各Qは、フッ素化アリール基、例えばペンタフルオロフェニル又はノナフルオロビフェニル基から選択される。このような対アニオンの具体例としては、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレート、及びテトラキス(ノナフルオロビフェニル)ボレートが挙げられる。あるいは、対アニオンAは、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、及び/又はアルミニウムペルフルオロアルコキシドを含み得る。更にまた、対アニオンAは、ハロゲン化物を含み得る。
【0038】
概して、上記の触媒とは異なり、レドックススイッチ触媒系のレドックススイッチ触媒は、ヒドロシリル化を触媒する際に活性ではない。しかしながら、還元性化合物による還元を介して、レドックススイッチ触媒は、ヒドロシリル化に対して触媒活性である触媒に変換され得る。
【0039】
レドックススイッチ触媒系は、このような還元性化合物を更に含む。特定の実施形態では、還元性化合物は、レドックススイッチ触媒中のロジウム原子の形式的酸化状態を還元するのに役立ち、上記の触媒をもたらす。還元性化合物の例としては、アルカリ金属アマルガム;水素;金属水素化物、例えば、リチウムアルミニウム水素化物(LiAlH)、ジイソブチルアルミニウム水素化物、若しくはナトリウムナフタレニドなど;シリルヒドリド;又は水素化ホウ素金属、例えば、水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaEtBH)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiEt3BH)若しくは水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)が挙げられる。特定の実施形態では、還元性化合物は、i)水素化ホウ素化合物、(ii)水素化アルミニウム化合物、(iii)オルガノリチウム化合物、(iv)オルガノマグネシウム化合物、又は(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の液体組成物。特定の実施形態では、還元性化合物は、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(II)、又はコバルトセンを含む。好適な還元性化合物の追加の例としては、亜鉛ダスト若しくは粒子、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)チタン(III)、及び/又はヒドラジンが挙げられる。還元性化合物の別の具体例は、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン(TDAE)である。
【0040】
更に、本発明は、レドックススイッチ触媒を用いて触媒を調製する方法を提供する。本方法は、還元性化合物でレドックススイッチ触媒を還元することを含む。レドックススイッチ触媒及び還元性化合物は、上述されている。
【0041】
本方法は、ヒドロシリル化硬化性組成物中でヒドロシリル化の開始を選択的に制御することを可能にする。例えば、従来のヒドロシリル化触媒を含む従来のヒドロシリル化硬化性組成物を形成する場合、ヒドロシリル化は、典型的には、周囲条件で部分的のみであっても開始される。しかしながら、レドックススイッチ触媒は、典型的には、ヒドロシリル化を触媒する際に不活性であるため、レドックススイッチ触媒は、ヒドロシリル化を開始することなく、又はゲル化を防ぐために特に低い変換率でヒドロシリル化硬化性組成物中に配置され得る。レドックススイッチ触媒は、レドックススイッチ触媒を含むヒドロシリル化硬化性組成物を還元性化合物と組み合わせることによって、任意の所望の時点で還元性化合物を介して還元され得、この時点で、レドックススイッチ触媒は、酸化状態で形式的変化を介して触媒に変換され、(ヒドロシリル化に対して)触媒活性になる。レドックススイッチ触媒は、触媒をヒドロシリル化硬化性組成物に組み込む前に触媒を得るために還元性化合物で還元され得るか、又は触媒がその場で形成されるようにその場で還元され得る。
【0042】
触媒及び還元性化合物の相対量は、例えば、触媒、還元性化合物、配位子などの選択に応じて、レドックススイッチ触媒系及びレドックススイッチ触媒を還元する関連方法の両方において様々であり得る。当業者は、これらの選択を考慮して、適切なモル比を決定する方法を容易に理解する。
【0043】
レドックススイッチ触媒系は、典型的には、還元性化合物がレドックススイッチ触媒を触媒に還元的に変換すると、反応生成物を形成する。レドックススイッチ触媒系から形成される触媒反応生成物も提供される。触媒反応生成物は、典型的には、ヒドロシリル化を触媒するときに用いられ、上記のように、反応を触媒する前又は反応を触媒するのと同時に形成され得る(例えば、触媒反応生成物は、その場で形成される)。触媒反応生成物は、触媒を含む。
【0044】
上記で紹介されるように、本発明は、組成物も提供する。本組成物は、(A)不飽和化合物を含む。(A)不飽和化合物は、1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含み、これは、あるいは、エチレン性不飽和とも呼ばれ得る。(A)不飽和化合物は限定されず、少なくとも1つの脂肪族不飽和基を有する任意の不飽和化合物であり得る。ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、有機化合物を含む。他の実施形態では、(A)不飽和化合物は、シロキサンを含む。更に他の実施形態では、(A)不飽和化合物は、シリコーン-有機ハイブリッド、又はオルガノケイ素化合物を含む。(A)不飽和化合物の様々な実施形態及び例は、以下に開示される。
【0045】
ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、1分子あたり少なくとも平均2つの脂肪族不飽和基を含む。このような実施形態では、(A)不飽和化合物は、単一の硬化部位のヒドロシリル化を超えた重合化又は硬化を行うことができる。(A)不飽和化合物の脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物の末端、ペンダント、又は両方の位置にあり得る。
【0046】
例えば、脂肪族不飽和基は、アルケニル基及び/又はアルキニル基であり得る。「アルケニル基」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環式の分岐又は非分岐の一価の炭化水素基を意味する。アルケニル基は、2~30個の炭素原子、あるいは2~24個の炭素原子、あるいは2~20個の炭素原子、あるいは2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。アルケニル基は、限定されないが、ビニル、アリル、プロペニル、及びヘキセニルによって例示される。「アルキニル基」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環式の分岐又は非分岐の一価の炭化水素基を意味する。アルキニル基は、2~30個の炭素原子、あるいは2~24個の炭素原子、あるいは2~20個の炭素原子、あるいは2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。アルキニルは、エチニル、プロピニル、及びブチニルによって例示されるが、これらに限定されない。
【0047】
特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、式R-Z-Rを有し、式中、Zは、二価の炭化水素、ポリオキシアルキレン、ポリアルキレン、ポリイソアルキレン、炭化水素-シリコーンコポリマー、シロキサン、又はこれらの混合物(ブロック形態又はランダム化形態)であり得る二価の連結基である。Zは、直鎖状又は分岐状であり得る。これらの特定の実施形態では、Rは独立して選択され、脂肪族不飽和を含み、すなわち、各Rは独立して、アルケニル基及びアルキニル基から選択される。
【0048】
これらの特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、Rで表される2つの脂肪族不飽和基を含む。
【0049】
(A)不飽和化合物の一実施形態では、Zは、二価の炭化水素である。二価の炭化水素Zは、脂肪族構造又は芳香族構造のいずれかとして、1~30個の炭素を含んでよく、分枝状又は非分枝状であってよい。あるいは、連結基Zは、1~12個の炭素を含むアルキレン基であってよい。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、α,ω-不飽和炭化水素から選択され得る。あるいは、α,ω-不飽和炭化水素は、オレフィンと呼ばれ得る。
【0050】
例えば、(A)不飽和化合物は、任意のジエン、ジイン、又はエンイン化合物であり得る。上記の式を参照すると、これらの実施形態では、Rは、例えば、独立して、CH=CH-、CH=CHCH-、CH=CH(CH-、CH=C(CH)CH-、又はHC=C(CH)-、及びHC=C(CH)-など同様の置換不飽和基から選択され得る。そのような実施形態では、(A)不飽和化合物は、α,ω-不飽和炭化水素と呼ばれ得る。α,ω-不飽和炭化水素は、例えば、式CH=CH(CHCH=CHのα,ω-ジエン、式CH≡C(CHC≡CHのα,ω-ジイン、式CH=CH(CHC≡CHのα,ω-エン-イン、又はこれらの混合物であり得、式中、bは独立して、0~20、あるいは1~20である。
【0051】
好適なジエン、ジイン又はエン-イン化合物の具体例としては、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン;1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、及び1,19-エイコサジエン、1,3-ブタジイン、1,5-ヘキサジイン(ジプロパルギル)、及び1-ヘキセン-5-インが挙げられる。
【0052】
しかしながら、(A)不飽和化合物は、あるいは、式R-Z’を有し得、式中、Rは上記で定義されており、Z’は一価の炭化水素基(又はシリル若しくはシロキサン基)である。これらの特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、Rで表される1つの脂肪族不飽和基を含む。
【0053】
(A)不飽和化合物が脂肪族不飽和基を1つだけ含む場合、(A)不飽和化合物は、不飽和炭化水素と呼ばれ得、任意の-エン又は-イン化合物であり得る。そのような実施形態では、(A)不飽和化合物は、非環式アルケン及び/又は非環式アルキンであり得る。しかしながら、(A)不飽和化合物は、任意のアリール基から独立した少なくとも1つの脂肪族不飽和基、例えば、任意のアリール基から独立したペンダントも含む限り、アリール基を含み得る。
【0054】
別の実施形態では、(A)不飽和化合物は、ポリエーテルを含むか、あるいはポリエーテルである。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、式(C2aO)を有するポリオキシアルキレン基を含み、式中、aは、2~4である。上記の一般式を参照すると、Z’は、ポリオキシアルキレン基である。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、ポリオキシアルキレンと呼ばれ得る。
【0055】
ポリオキシアルキレンは、オキシエチレン単位(CO)、オキシプロピレン単位(CO)、オキシブチレン若しくはオキシテトラメチレン単位(CO)、又はそれらの混合物を含み得、これは、(A)不飽和化合物中でブロック形態にあるか、又はランダム化され得る。
【0056】
例えば、ポリオキシアルキレンとしての(A)不飽和化合物は、以下の一般式:
O-[(CO)(CO)(CO)]-R
[式中、各Rは独立して選択され、上記で定義されており、cは0~200であり、dは0~200であり、eは0~200であるが、c、d、及びeが同時に0ではないことを条件とする]を有し得る。特定の実施形態では、cは0~50、あるいは0~10、あるいは0~2である。これらの又は他の実施形態では、dは、0~100、あるいは1~100、あるいは5~50である。これらの又は他の実施形態では、eは、0~100、あるいは0~50、あるいは0~30である。様々な実施形態では、(d+e)/(c+d+e)の比は、0.5より大きく、あるいは0.8より大きく、あるいは0.95より大きい。
【0057】
このポリオキシアルキレンは、各分子鎖末端(すなわち、アルファ位置及びオメガ位置)において、独立して選択され、上述されているRで終端されている。Rの更なる例としては、HC=C(CH)CH-HC=CHCHCH-、HC=CHCHCHCH-、及びHC=CHCHCHCHCH-、HC≡C-、HC≡CCH-、HC≡CCH(CH)-、HC≡CC(CH-、HC≡CC(CHCH-が挙げられる。しかしながら、上記のポリオキシアルキレンは、好適なポリオキシアルキレンの単なる一例に過ぎない。
【0058】
特定の実施形態では、ポリオキシアルキレン基は、オキシプロピレン単位(CO)のみを含む。ポリオキシプロピレン含有ポリオキシアルキレンの代表的な非限定的な例には、HC=CHCH[CO]CHCH=CH、HC=CH[CO]CH=CH、HC=C(CH)CH[CO]CHC(CH)=CH、HC≡CCH[CO]CHC=CH、及びHC≡CC(CH[CO]C(CHC≡CHが含まれ、式中、dは、上記で定義されたとおりである。
【0059】
ポリオキシアルキレンを含有するポリオキシブチレン又はポリ(オキシテトラメチレン)の代表的な非限定的な例には、HC=CHCH[CO]CHCH=CH、HC=CH[CO]CH=CH、HC=C(CH)CH[CO]CHC(CH)=CH、HC≡CCH[CO]CH2C≡CH、及びHC≡CC(CH[CO]C(CHC≡CHが含まれ、式中、eは、上記で定義されたとおりである。
【0060】
(A)不飽和化合物に好適なポリオキシアルキレンの例には、2つの脂肪族不飽和基が含まれる。しかしながら、(A)不飽和化合物に好適なポリオキシアルキレンは、脂肪族不飽和基を1つだけ含み得る。例えば、(A)不飽和化合物に好適なポリオキシアルキレンは、代替的に、以下の一般式:
O-[(CO)(CO)(CO)]-R
[式中、R、c、d、及びeは上記で定義されており、Rは、H又はCHなどアルキル基である]を有し得る。また、いずれの上記の説明又は例も、この実施形態にも適用される。当業者は、2つの脂肪族不飽和基を有する上記ポリオキシアルキレンの例が、脂肪族不飽和基を代替的に1つしか含み得ない方法を容易に理解するであろう。
【0061】
ポリオキシアルキレンは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタンス、及び/又はシクロヘキセンオキシド若しくはエクソ-2,3-エポキシノルボランなど環状エポキシドの重合により調製され得る。ポリオキシアルキレンのポリオキシアルキレン部分は、オキシエチレン単位(CO)、オキシプロピレン単位(CO)、オキシブチレン単位(CO)、又はこれらの混合物を含み得る。典型的には、ポリオキシアルキレン基は、モル基準で定義され、上記式で下付き文字c、d、及びeにより示されるように、オキシプロピレン又はオキシブチレン単位の大部分を含む。
【0062】
別の実施形態では、一般式R-Z-RのZ又は(A)不飽和化合物の式R-Z’のZ’は、ポリアルキレン基を含む。ポリアルキレン基は、C~Cアルキレン単位又はそれらの異性体を含み得る。1つの具体的な例は、ポリイソブチレン基であり、これは、イソブチレン単位を含むポリマーである。例えば、(A)不飽和化合物は、ジアリル末端ポリイソブチレン又はアリル末端ポリイソブチレンであり得る。ポリイソブチレン基の分子量は変化し得るが、典型的には、100~10,000g/モルの範囲である。
【0063】
ある特定の実施形態では、(A)不飽和化合物は、オルガノポリシロキサンを含む。オルガノポリシロキサンは限定されず、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合脂肪族不飽和基を含む任意のオルガノポリシロキサンであり得る。例えば、オルガノポリシロキサンは、線状、分岐状、部分分岐状、環状、樹脂状(すなわち、三次元ネットワークを有する)であり得るか、又は異なる構造の組み合わせを含み得る。(A)不飽和化合物がオルガノポリシロキサンを含む場合、脂肪族不飽和基は、ケイ素結合している(例えば、ケイ素結合アルケニル及び/又はケイ素結合アルキニルとして)。
【0064】
特定の実施形態では、(A)不飽和化合物がオルガノポリシロキサンを含む場合、オルガノポリシロキサンは以下の平均式:
SiO(4-f)/2
[式中、各Rは独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であるが、各分子では、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのR基が脂肪族不飽和基であることを条件とし、fは0<f≦3.2となるように選択される]を有する。
【0065】
上記のオルガノポリシロキサンについての平均式は、あるいは、(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2と記され得、式中、R及びその条件は上記で定義されており、w、x、y、及びzは、独立して、0以上1以下であるが、w+x+y+z=1であることを条件とする。当業者であれば、このようなM、D、T、及びQ単位、並びにそれらのモル分率が、上記の平均式中の下付き文字fにどのように影響するかを理解する。下付き文字y及びzによって示されるT及びQ単位は、典型的にはシリコーン樹脂中に存在する一方で、下付き文字xによって示されるD単位は、典型的にはシリコーンポリマー中に存在する(及びシリコーン樹脂中に存在してもよい)。
【0066】
各Rは、上で述べたとおり、独立して選択され、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。概して、Rに好適なヒドロカルビル基は独立して、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式又は多環式であってもよい。直鎖及び分枝鎖ヒドロカルビル基は独立して、飽和又は不飽和であってもよい。直鎖及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。ヒドロカルビル基の全般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基等、並びに誘導体、変形体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘキサデシル、オクタデシル、並びに6~18個の炭素原子を有する分岐飽和炭化水素基が挙げられる。好適な非共役環状基の例としては、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及びシシロヘプチル基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基(即ち、ハロ炭素基又は置換ハロ炭素基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の具体例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチル基、並びにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基及びフルオロベンジル基が挙げられる。
【0067】
特定の実施形態では、オルガノポリシロキサンは、実質的に直鎖状であるか、あるいは直鎖状である。これらの実施形態では、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、平均式:
f’SiO(4-f’)/2
[式中、各R及びその条件は、上記で定義されており、f’は、1.9≦f’≦2.2となるように選択される]を有し得る。
【0068】
これらの実施形態では、25℃の温度において、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、典型的には、流動性液体であるか、又は未硬化ゴムの形態である。概して、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、25℃で10~30,000,000mPa・s、あるいは10~10,000mPa・s、あるいは100~1,000,000mPa・s、あるいは100~100,000mPa・sの粘度を有する。当該技術分野で理解されているように、粘度は、ブルックフィールドLV DV-E粘度計によって25℃で測定することができる。
【0069】
オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状、又は直鎖状である、具体的な実施形態において、オルガノポリシロキサンは、平均式:
(R SiO1/2m’(R SiO2/2n’(RSiO3/2
[式中、各Rは独立して選択され、上記で定義されており(各分子では、少なくとも1つのRが脂肪族不飽和基であるという条件を含む)、m’≧2、n’≧0、及びo≧2である]を有し得る。具体的な実施形態において、m’は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。これらの又は他の実施形態では、n’は、0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。これらの又は他の実施形態では、oは、2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
【0070】
オルガノポリシロキサンが実質的に線状であるか、あるいは線状である場合、ケイ素結合脂肪族不飽和基(複数可)は、ペンダント、末端、又はペンダント及び末端の両方の位置にあり得る。ペンダントケイ素結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、オルガノポリシロキサンは、平均式:
(CHSiO[(CHSiO]n’[(CH)ViSiO]m’Si(CH
[式中、n’及びm’は、上記で定義され、Viはビニル基を示す]を有し得る。この平均式に関して、当業者であれば、一分子中に少なくとも2つの脂肪族不飽和基が存在する限り、任意のメチル基がビニル又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基で置き換えられてもよく、及び任意のビニル基が任意のエチレン性不飽和基で置き換えられてもよいことが分かる。あるいは、末端ケイ素結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、オルガノポリシロキサンは、平均式:
Vi(CHSiO[(CHSiO]n’Si(CHVi
[式中、n’及びViは、上記で定義されている]を有し得る。ケイ素結合ビニル基末端のジメチルポリシロキサンは、単独で、又は上記開示のジメチル,メチル-ビニルポリシロキサンと組み合わせて使用することができる。この平均式に関して、当業者であれば、一分子中に少なくとも2つの脂肪族不飽和基が存在する限り、任意のメチル基がビニル又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基で置き換えられてもよく、及び任意のビニル基が任意のエチレン性不飽和基で置き換えられてもよいことが分かる。少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基はペンダント及び末端の両方であり得るため、(A)オルガノポリシロキサンは、平均式:
Vi(CHSiO[(CHSiO]n’[(CH)ViSiO]m’SiVi(CH
[式中、n’、m’、及びViは、上記で定義されている]を有し得る。
【0071】
実質的に直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、及び分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーによって例示され得る。
【0072】
これらの又は他の実施形態では、(A)オルガノポリシロキサンは、樹脂状オルガノポリシロキサンであり得る。これらの実施形態において、樹脂状オルガノポリシロキサンは、平均式:
f’SiO(4-f’’)/2
[式中、各R及びその条件は、上記で定義されており、f’’は、0.5≦f’’≦1.7となるように選択される]を有し得る。
【0073】
樹脂状オルガノポリシロキサンは、分岐状又は三次元網状の分子構造を有する。25℃において、樹脂状オルガノポリシロキサンは、液状又は固体形態であってもよく、任意選択的にキャリア中に分散されていてもよく、これは、樹脂状オルガノポリシロキサンをキャリア中に可溶化及び/又は分散させ得る。
【0074】
具体的な実施形態において、樹脂状オルガノポリシロキサンは、T単位のみを含むオルガノポリシロキサン、T単位を他のシロキシ単位(例えば、M、D、及び/又はQシロキシ単位)と組み合わせて含むオルガノポリシロキサン、又はQ単位を他のシロキシ単位(すなわち、M、D、及び/又はTシロキシ単位)と組み合わせて含むオルガノポリシロキサンによって例示され得る。樹脂状オルガノポリシロキサンは、T及び/又はQ単位を含む。樹脂状ポリオルガノシロキサンの具体例は、ビニル官能シルセスキオキサン及びビニル官能MQ樹脂である。
【0075】
オルガノポリシロキサンは、異なる構造のオルガノポリシロキサンなど異なるオルガノポリシロキサンの組み合わせ又は混合物を含み得る。
【0076】
あるいは、(A)不飽和化合物は、シリコーン-有機ハイブリッドであり得る。例えば、(A)不飽和化合物は、オルガノポリシロキサン(又は、1つ以上のオルガノポリシロキサンと1つ以上の有機化合物)のヒドロシリル化反応生成物を含み得、この場合、(A)不飽和化合物の主鎖は、有機二価の連結基を含み得る。別の例として、オルガノ水素シロキサンを他のオルガノポリシロキサン又は有機化合物と反応させて、(A)不飽和化合物を得ることができる。
【0077】
例えば、(A)不飽和化合物は、(a1)少なくとも1つのSi-H化合物と(b1)エチレン性不飽和を有する少なくとも1つの化合物との反応生成物であり得る。これらの実施形態では、(b1)化合物のエチレン性不飽和基の余剰分子は、(a1)Si-H化合物のSi-H基と比較して利用され、その結果、(A)不飽和化合物が少なくとも1つ、あるいは少なくとも平均2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を含む。
【0078】
(a1)Si-H化合物と(b1)エチレン性不飽和を有する化合物との反応生成物は、(AB)n型コポリマーと呼ばれ得るものであり、(a1)Si-H化合物形成単位Aと、(b1)B単位を形成するエチレン性不飽和を有する化合物とを、有する。得られる(b)架橋剤が個別の単位(distinct units)を含むが、(AB)n型コポリマーにはなり得ないように、異なる(a1)Si-H化合物の組み合わせを使用し得、異なる(b1)エチレン性不飽和を有する化合物の組み合わせを使用し得る。個別の単位は、ランダム化され得る、又はブロック化形態であり得る。
【0079】
あるいは更に、(A)不飽和化合物は、オルガノケイ素化合物を含み得るが、オルガノポリシロキサンは含まない。例えば、(A)不飽和化合物は、オルガノポリシロキサンを構成しないが、シラン、ジシラン、又はシロキサン(例えば、ジシロキサン)を含み得る。
【0080】
好適なシランの一例は、式R z’’SiR 4-z’’のシランであり、式中、各Rは、独立して脂肪族不飽和基であり、Rは、独立して置換又は非置換ヒドロカルビル基、かつ1≦z’’≦4である。シロキサンの一例は、テトラメチルジビニルジシロキサンである。当業者は、(A)不飽和化合物として使用するためのそのような化合物を調製又は取得する方法を理解する。
【0081】
(A)不飽和化合物は、単一の不飽和化合物、又は2つ以上の異なる水素化ケイ素化合物を含む組み合わせであり得る。
【0082】
本組成物及び(A)不飽和化合物は、以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は(2)本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含むこと、のうちの少なくとも1つに従う。
【0083】
第1の実施形態では、条件(1)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含む。第2の実施形態では、条件(2)は真であり、その結果、本組成物は、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含む。最後に、第3の実施形態では、条件(1)及び条件(2)の両方は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含む。
【0084】
第1の実施形態では、条件(1)は真であり、(A)不飽和化合物は、脂肪族不飽和基に加えて、1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、少なくとも1つのケイ素結合水素原子及び少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む任意の化合物であり得る。これらの実施形態では、(A)不飽和化合物は、典型的には、オルガノケイ素化合物及び/又はオルガノポリシロキサンである。
【0085】
当業者は、そのような不飽和化合物を調製又は取得する方法を容易に理解する。例えば、脂肪族不飽和水素及びケイ素結合水素の両方を含むオルガノケイ素化合物は、上記に開示される不飽和有機化合物から調製され得る。単に一例として、式CH=CH(CHCH=CHのα,ω-ジエンは、ヒドロシリル化触媒の存在下で式HSi(CHのシランと反応して、1つの脂肪族不飽和基及び1つのケイ素結合水素原子を含む、式CH=CH(CHCHCHSi(CHHの不飽和化合物を得ることができる。オルガノケイ素化合物はまた、シラン、ジシラン、シロキサンなどであり得る。例えば、オルガノケイ素化合物は、式R b’c’SiR 4-b’-c’のオルガノケイ素化合物であり得、式中、R及びRは、独立して選択され、上記で定義されており、b’は1、2、又は3であり、c’は1、2、又は3であるが、2≦(b’+c’)≦4であることを条件とする。
【0086】
(A)不飽和化合物が脂肪族不飽和及びケイ素結合水素の両方を有するオルガノポリシロキサンを含む場合、オルガノポリシロキサンは式R d’e’SiO(4-d’-e’)/2を有し得、式中、Rは独立して選択され、上記で定義されており(未だに、少なくとも1つのRが脂肪族不飽和基であるという条件を受けている)、e’及びfは、0<(d’+e’)≦3.2となるように、それぞれ0超である。
【0087】
あるいは、(A)不飽和化合物が脂肪族不飽和及びケイ素結合水素の両方を有するオルガノポリシロキサンを含む場合、ケイ素結合脂肪族不飽和基(複数可)及びケイ素結合水素原子(複数可)は、オルガノポリシロキサン中に存在する任意のM、D、及び/又はTシロキシ単位中に存在し得、同じケイ素原子に結合し得る(M及び/又はDシロキシ単位の場合)。オルガノポリシロキサンは、例えば、Mシロキシ単位として、(R SiO1/2)、(R HSiO1/2)、(RSiO1/2)、及び/又は(HSiO1/2)を含み得る。オルガノポリシロキサンは、例えば、Dシロキシ単位として、(R SiO2/2)、(RHSiO2/2)、及び/又は(HSiO2/2)を含み得る。オルガノポリシロキサンは、例えば、Tシロキシ単位として、(RSiO3/2)及び/又は(HSiO3/2)を含み得る。そのようなシロキシ単位は、任意の様式で、任意選択的にQシロキシ単位と組み合わされて、Rにより表される少なくとも1つのケイ素結合脂肪族不飽和基及び少なくとも1つのケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0088】
例えば、オルガノポリシロキサンは、以下の式:(R HSiO1/2w’(R SiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’、(RSiO1/2w’(R SiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’
(R SiO1/2w’(RHSiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’、(RSiO1/2w’(RHSiO2/2(RSiO3/2y’(SiO4/2z’
(R SiO1/2w’(R SiO2/2x’(HSiO3/2y’(SiO4/2z’、(R SiO1/2w’(RHSiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’、及び/又は(RSiO1/2w’(RHSiO2/2x’(HSiO3/2y’(SiO4/2z’などのうちのいずれか1つを有し得、式中、各Rは、独立して選択され、上記で定義されており(少なくとも1つのRは、脂肪族不飽和基である)、w’、x’、y’、及びz’は独立して、0以上1以下であるが、w’+x’+y’+z’’=1であることを条件とする。
【0089】
第2の実施形態では、条件(2)は真であり、本組成物は、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含む。これらの実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む任意の化合物であり得る。(B)水素化ケイ素化合物の構造に応じて、(B)水素化ケイ素化合物は、シラン化合物、オルガノケイ素化合物、オルガノ水素シラン、オルガノ水素シロキサンなどであり得る。
【0090】
(B)水素化ケイ素化合物は、線状、分岐状、環状、樹脂状、又はそのような構造の組み合わせを有し得る。非環式ポリシラン及びポリシロキサンでは、ケイ素結合水素原子(複数可)は、末端、ペンダント、又は末端及びペンダントの両方の位置に配置され得る。シクロシラン及びシクロシロキサンは、典型的には、3~12個のケイ素原子、あるいは3~10個のケイ素原子、あるいは3~4個のケイ素原子を有する。
【0091】
特定の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、式R 4-sSiHの水素化ケイ素化合物であり、式中、Rは、独立して選択され、任意のケイ素結合基であり得、sは、1≦s≦4となるように選択される。典型的には、sは、1、2、又は3、あるいは1又は2である。各Rは、典型的には、独立して、置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、その好適な例は上述されている。しかしながら、(B)水素化ケイ素がそのケイ素結合水素原子を介してヒドロシリル化を受けることができる限り、Rは、任意のケイ素結合基であり得る。例えば、Rはハロゲンであり得る。(B)水素化ケイ素がシラン化合物である場合、(B)水素化ケイ素は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランであり得る。
【0092】
これらの又は他の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、式Hg’ 3-gSi-R-SiR Hのオルガノケイ素化合物であり得、式中、各Rは独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、g’は0又は1であり、Rは二価連結基である。Rは、シロキサン鎖(例えば、-R SiO-、-RHSiO-、及び/又は-HSiO-Dシロキシ単位を含む)であり得るか、又は二価炭化水素基であり得る。典型的には、二価炭化水素基は脂肪族不飽和を含まない。二価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状、芳香族などであってもよく、又はそのような構造の組み合わせを有してもよい。
【0093】
g’が1である場合、かつRが二価炭化水素基である場合、(B)水素化ケイ素化合物の具体的な例としては、
【化10】
【0094】
これら又は他の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、オルガノ水素シロキサンを含み、これは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンであり得る。(B)水素化ケイ素化合物としての使用に好適なオルガノ水素シロキサンの例としては、以下の式:PhSi(OSiMeH)、Si(OSiMeH)、MeSi(OSiMeH)、及びPhSi(OSiMeH)を有するシロキサンが挙げられるが、これらに限定されず、式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである。(B)水素化ケイ素化合物の目的に好適であるオルガノ水素シロキサンの追加例には、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、及びジメチル水素シロキシ末端ポリ(メチル水素シロキサン)が含まれる。
【0095】
(B)水素化ケイ素化合物がオルガノ水素シロキサンを含む場合、(B)水素化ケイ素化合物は、(B)水素化ケイ素化合物が少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む限り、M、D、T、及び/又はQシリオキシ単位の任意の組み合わせを含み得る。これらのシロキシ単位を様々な様式で組み合わせて、環状、直鎖状、分岐状、及び/又は樹脂状(三次元網目状)の構造を形成することができる。(B)水素化ケイ素化合物は、M、D、T、及び/又はQ単位の選択に応じて、モノマー、ポリマー、オリゴマー、線状、分岐状、環状、及び/又は樹脂状であり得る。
【0096】
(B)水素化ケイ素化合物は、上記のシロキシ単位に関して、少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含むため、(B)水素化ケイ素化合物は、ケイ素結合水素原子を含む次のシロキシ単位、(R HSiO1/2)、(RSiO1/2)、(HSiO1/2)、(RHSiO2/2)、(HSiO2/2)、及び/又は(HSiO3/2)のいずれかを任意選択的にケイ素結合水素原子を含まないシロキシ単位と組み合わせて含み得、式中、Rは、独立して選択され、上記で定義されている。
【0097】
特定の実施形態では、例えば、(B)水素化ケイ素化合物が直鎖状である場合、(B)水素化ケイ素化合物は、平均式:
【化11】

[式中、各R10は独立して水素又はRであり、各Rは独立して選択され、上記で定義されており、e’’≧2、f’’’≧0、及びg’’≧2である]を有し得る。特定の実施形態では、e''は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。これらの又は他の実施形態では、f'''は0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。これらの又は他の実施形態では、g’’は2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
【0098】
一実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、線状であり、1つ以上のペンダントケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、平均式を有するジメチル、メチル水素ポリシロキサンであり得、
【化12】

[式中、f’’’及びg’’は、上記で定義されている]を有するジメチル,メチル-ハイドロジェンポリシロキサンであり得る。
【0099】
これら又は他の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は線状であり、末端ケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、平均式を有するSiH末端ジメチルポリシロキサンであり得、
【化13】

[式中、f’’’は上記で定義されたとおりである]を有するSiH末端ジメチルポリシロキサンであり得る。SiH末端ジメチルポリシロキサンは、単独で、又は上記開示のジメチル,メチルハイドロジェンポリシロキサンとの組み合わせで利用され得る。更に、SiH末端ジメチルポリシロキサンは、SiH末端ジメチルポリシロキサンがケイ素結合水素原子を1つだけ有し得るように、1つのトリメチルシロキシ末端を有し得る。あるいは更に、(B)オルガノ水素シロキサンは、ペンダント及び末端ケイ素結合水素原子の両方を含み得る。
【0100】
ある特定の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、以下の平均式のうちの1つを有し得る:
【化14】

[式中、各R11及びRは、独立して選択され、及び上記で定義され、e’’、f’’’、及びg’’は上記で定義され、h≧0であり、iは≧0である]。上記の平均式のそれぞれでは、下付き文字の合計は1である。
【0101】
(B)水素化ケイ素化合物の上記の平均式の一部は、(B)水素化ケイ素化合物がTシロキシ単位(下付き文字hにより示される)及び/又はQシロキシ単位(下付き文字iにより示される)を含む場合、樹脂状である。(B)水素化ケイ素化合物が樹脂状である場合、(B)水素化ケイ素化合物は、典型的には、Mシロキシ単位及び/又はDシロキシ単位と組み合わせて、Tシロキシ単位及び/又はQシロキシ単位を含むコポリマーである。例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂であり得る。
【0102】
(B)水素化ケイ素化合物が樹脂状であるか、又はオルガノポリシロキサン樹脂を含む様々な実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、典型的には、式:
【化15】

[式中、各R11は、独立して、H又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基であるが、1分子中、少なくとも1つのR11はHであり、0≦j’≦1、0≦k’≦1、0≦l’≦1、及び、0≦M’’≦1であり、ただし、j’+k’+l’+m’’=1である]を有する。
【0103】
特定の実施形態では、(B)水素化ケイ素化合物は、概して式(R11 SiO)r′(R11HSiO)s′[式中、R11は独立して選択され、上記で定義されており、r’は0~7の整数であり、s’は3~10の整数である]によって表されるアルキルハイドロジェンシクロシロキサン又はアルキルハイドロジェンジアルキルシクロシロキサンコポリマーを含み得る。このタイプの好適なオルガノハイドロジェンシロキサンの具体例としては、(OSiMeH)、(OSiMeH)(OSiMeC13)、(OSiMeH)(OSiMeC13、及び(OSiMeH)(OSiMeC13[式中、Meはメチル(-CH)を表す]が挙げられる。
【0104】
(B)水素化ケイ素化合物は、単一の水素化ケイ素化合物、又は2つ以上の異なる水素化ケイ素化合物を含む組み合わせであり得る。
【0105】
最後に、第3の実施形態では、条件(1)及び条件(2)の両方は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含む。この第3の実施形態に好適な不飽和化合物及び水素化ケイ素化合物の例は上記に示される。
【0106】
(A)不飽和化合物、並びに(B)水素化ケイ素化合物は、本組成物中に存在する場合、担体ビヒクルに配置され得る。担体ビヒクルの例について記載する。
【0107】
本組成物は、(A)不飽和化合物及び(B)水素化ケイ素化合物を、存在する場合、本組成物の所望の特性又は最終用途に応じて様々な量又は比率で含み得る。本組成物が成分(A)及び(B)を含む様々な実施形態では、本組成物は、0.3~5、あるいは0.6~3のケイ素結合水素原子の脂肪族不飽和基に対するモル比を提供するような量の成分(A)及び(B)を含む。
【0108】
組成物は、(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系を更に含む。(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系は、上記のように、(C)レドックススイッチ触媒系を(C)触媒に変換するときに形成された触媒反応生成物として存在し得る。
【0109】
(C)触媒及び(C)レドックススイッチ触媒系は、上述されている。組成物が(C)レドックススイッチ触媒系を含む場合、(C)触媒は、還元性化合物が組み込まれる時期に応じて、組成物の形成前及び/又はそれと同時にその場で形成される。
【0110】
(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系は、触媒量、すなわち、所望の条件でその反応又は硬化を促進するのに十分な量又は分量で本組成物中に存在する。(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系の触媒量は、0.01ppm超であり得、1,000ppm超(例えば、最大10,000ppm又はそれ以上)であり得る。特定の実施形態では、(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系の典型的な触媒量は、5,000ppm未満、あるいは2,000ppm未満、あるいは1,000ppm未満である(ただしいずれの場合でも、0ppm超)。特定の実施形態では、(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~100ppm、あるいは0.01~50ppmの範囲の金属であり得る。範囲は、(C)触媒及び/又は(C)レドックススイッチ触媒系内の金属含有量のみに関連し得る。
【0111】
本組成物は、接着促進剤、担体ビヒクル、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定化剤、難燃剤、流動制御添加剤、殺生物剤、充填剤(増量充填剤及び補強充填剤など)、界面活性剤、チキソトロープ剤、水、担体ビヒクル又は溶媒、pH緩衝剤などを含む、1つ以上の任意選択的な成分を更に含み得る。組成物は、任意の形態であり得、例えば、組成物の成分として、更なる組成物に組み込まれ得る。例えば、組成物は、エマルジョンの形態であってもよく、又はエマルジョンに組み込まれていてもよい。エマルジョンは、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、油中シリコーン型エマルジョン等であってもよい。組成物自体は、このようなエマルジョンの連続相又は不連続相であってもよい。
【0112】
好適な担体ビヒクルは上述されている。
【0113】
本組成物は、成分(A)、(B)、(C)、及び/又は(C)を、任意の成分とともに、任意の添加順序で、任意選択的にマスターバッチで、かつ任意選択的に剪断下で組み合わせることにより調製され得る。
【0114】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法も提供される。ヒドロシリル化反応生成物は、本組成物から形成され、本組成物中の成分のセクションに応じて様々な形態をとり得る。
【0115】
本方法は、(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子を反応させて、ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含む。(C)ヒドロシリル化触媒は、上記の(C)触媒であるか、又は(C)レドックススイッチ触媒系から、例えばその場で形成される。ヒドロシリル化反応生成物は、ケイ素結合水素原子と脂肪族不飽和基との間の付加反応により形成される。当技術分野で理解されるように、ヒドロシリル化反応は、一般に、二重結合の場合及び(C)ヒドロシリル化触媒の存在下では、-Si-H+C=C-→-Si-CH-CH-と表され得る。(C)ヒドロシリル化触媒及び本発明の方法は、例えば、従来のヒドロシリル化触媒の代わりに、又はそれに加えて、任意のヒドロシリル化反応で利用され得る。
【0116】
脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在する。以下の2つの条件:(1)(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は(2)ケイ素結合水素原子が(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用される。第1の実施形態では、条件(1)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含む。第2の実施形態では、条件(2)は真であり、その結果、本組成物は、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含む。最後に、第3の実施形態では、条件(1)及び条件(2)は真であり、その結果、(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含み、かつ本組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含む。これらの実施形態は、本組成物自体に関して上で詳細に記載される。
【0117】
本方法を介して調製されるヒドロシリル化反応生成物は限定されず、一般に、(A)不飽和化合物、及び利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物の機能である。例えば、ヒドロシリル化反応生成物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、樹脂状などであり得る。ヒドロシリル化反応生成物は、流体、油、ゲル、エラストマー、ゴム、樹脂などを含み得る。ヒドロシリル化反応生成物は、(A)不飽和化合物、及び利用される場合には(B)水素化ケイ素化合物の選択に基づいて、当該技術分野で理解されるように任意の形態をとり得る。
【0118】
例としてのみ、以下は、本発明の方法を介して利用され得る2つの反応メカニズムである。これらの2つの反応メカニズムでは、本方法は、(A)不飽和化合物として1-オクテン、及び2つの異なる(B)水素化ケイ素化合物を利用する。触媒は、上記の(C)触媒であり、この触媒は、レドックススイッチ触媒系から個別的に利用され得るか、又はその場で形成され得る。
【化16】
【0119】
上記の反応メカニズムでは、Phはフェニルであり、Meはメチルである。当業者は、ヒドロシリル化反応生成物の所望の標的種に基づいて、(A)不飽和化合物、及び利用される場合、(B)水素化ケイ素化合物がどのように選択され得るかを理解する。
【0120】
本方法を利用して、官能化、例えば、オレフィン官能化シラン、又はシロキサンの形態のヒドロシリル化反応生成物を調製することができる。そのような官能化シラン又はシロキサンは、他の最終用途で、例えば、硬化性組成物、パーソナルケア組成物、又は化粧品組成物などを含む別の組成物の別個の成分として利用され得る。
【0121】
ヒドロシリル化反応生成物は、ヒドロシリル化反応を介して形成される様々な副産物も含み得る。例えば、ヒドロシリル化反応生成物は、典型的には、標的種及び様々な副産物を含む。ヒドロシリル化反応生成物は、他の成分、例えば、担体又は溶媒も含み得るが、これは、本方法及び反応がそこで実行される場合、並びに/又は本組成物がそのような成分を含む場合である。本方法は、例えば、任意の好適な精製方法を介して標的種を単離することを更に含み得る。
【0122】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴又は態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、全ての他のマーカッシュメンバーから独立したそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/又は予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュ群の各々の要素は、個々にかつ又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0123】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0124】
実施例で利用される様々な成分を以下の表1に示す。
【表1-1】

【表1-2】
【0125】
以下に記載のレオロジー測定は、TA InstrumentのDHR-3レオメータで行った。各試験材料を、溶媒トラップを用いてAdvanced Peltierプレート(下側幾何形状)上に置いた。25mm平行プレートを上側幾何形状として使用した。温度は、Peltierシステムを介して±0.02C以内に制御した。試験パラメータ:ひずみ振動;ひずみ%:1%、周波数:1Hz。
【0126】
調製例1:触媒の合成
【0127】
ドライボックス内で、約10mLのベンゼン中の出発物質(II)(1.100g、3.770mmol、4.0当量)の溶液を、約15mLのベンゼン中の出発物質(I)(367mg、0.944mmol、1.0当量)の溶液を含有する100mLの丸底フラスコに滴下して、混合物を得た。混合物を30分間撹拌した後、得られた濃赤橙色の溶液をセライトで濾過して濾液を得た。濾液の体積は、かなりの量の沈殿物が出現するまで、真空内で低減させた。濾過によって淡いピンクがかった橙色の粉末として沈殿物を収集し、真空内で乾燥させた。収率=1.309g、96%。H NMR(500MHz,C;δ,ppm):7.77(br,8H),6.96(t,J=7.5Hz,4H),6.91(t,J=7.5Hz,8H),6.62(t,J=6.5Hz,2H),6.23(d,J=7.5Hz,2H),3.45(br,6H)。31P{H}NMR(202MHz,C;δ,ppm):52.48(d,JRh-P=204.4Hz)。室温で、触媒の過飽和THF溶液からX線結晶学的解析に適した単結晶を成長させた。
【0128】
調製例2:触媒の合成
【0129】
ドライボックス内で、出発物質(I)(50mg、0.129mmol、1.0当量)及び出発物質(II)(115mg、0.514mmol、4.0当量)を20mLの反応バイアルに充填した。次いで、約10mLのTHFを添加した。室温で1時間撹拌した後、THFを除去して結果生成物を得た。結果生成物をジエチルエーテルで洗浄して、固体残留物を得た。固体残留物をTHFに再溶解し、THFをゆっくりと蒸発させ、濃いえび茶色の結晶を得た。結晶を濾過し、真空内で乾燥させた(収率:72mg、48%)。H NMR(400MHz,CDCl,室温)δ 7.59(br,2H),7.35(t,J=7.8Hz,2H),6.98(t,J=7.4Hz,4H),4.07(br,6H),2.32(br,4H),1.58-0.80(m,24H)。31P NMR(202MHz,C,室温)δ 73.50(d(br),J~240Hz),60.25(d(br),J~183Hz)。室温で、触媒の過飽和THF溶液からX線結晶学的解析に適した単結晶を成長させた。
【0130】
調製例3:レドックススイッチ触媒の合成
【0131】
固体の初期物質(I)(52mg、0.066mmol、1.0当量)及び初期物質(II)(61mg、0.069mmol、1.05当量)を20mLのバイアルに充填した。約3mLのEtOをバイアルに入れて、黄色の懸濁液を得た。黄色の懸濁液を1時間撹拌して、反応生成物を得た。反応生成物は橙色で、ほぼ均質であった。反応生成物をセライトで濾過して、濾液を得た。濾液をゆっくりと蒸発させて、橙色の結晶を得た。H NMR(500MHz,C;δ,ppm):8.44(br,8H),7.63(br,4H),7.07-6.98(m,6H),6.97-6.90(m;8H),6.87-6.80(m,8H),6.76-6.70(m,2H),6.66-6.59(m,4H),3.63(s,6H)。13C{H}NMR(125MHz,C;δ,ppm):162.82(q,JB-C=49.5Hz),161.69(dd,J=3.3Hz),135.45,135.39,134.62(dd,J=4.8Hz),133.73,133.24,129.98(qm,J=31.8Hz),128.88(dd,J=6.0Hz),126.34,125.67-124.98(m),124.49(dd,J=4.3Hz),124.17,122.01,119.29-118.58(m),118.15(sept,J=3.9Hz),115.88(dd,J=3.8Hz),62.34。31P{H}NMR(202MHz,C;δ,ppm):37.41(d,JRh-P=132.5Hz,2P)。過飽和EtO溶液からX線結晶学的解析に適した単結晶を成長させた。
【0132】
実施例1:触媒で触媒されたヒドロシリル化
【化17】

ドライボックス内で、反応バイアルに、1,3,5-トリメトキシベンゼン、(A1)不飽和化合物(2.00g、11.47mmol、1当量)、触媒(0.083mg、0.115μmol、0.00001当量、貯蔵液から)、及び(B1)水素化ケイ素(2.55g、11.47mmol、1当量)を充填して、混合物を得た。ドライボックスから混合物を取り出し、シュレンクラインのアルゴン雰囲気に接続し、予熱した油浴(80℃)に入れた。反応の進行を監視するために、以下に示すように特定の時点で反応混合物のアリコートを採取し、これをH NMR分光法で分析した。出発物質の変換は、1,3,5-トリメトキシベンズに基づいている。異なる硬化条件で実施例1を繰り返す。具体的には、不活性(窒素)雰囲気下の80℃で未希釈の基質を使用して、不活性(窒素)雰囲気下の室温で未希釈の基質を使用して、不活性(窒素)雰囲気下の80℃で、C溶媒(両基質について0.057mmol、触媒の0.0005当量、0.6mLのC溶媒)中で実施例1を担持した。以下の表2~4は、指定されたように様々な反応条件下での経時的な変換を示す。表2では、時間を時間単位で測定し、表3では、時間を日単位で測定し、表4では、時間を分単位で測定する。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】
【0133】
実施例2:レドックススイッチ触媒系で触媒されたヒドロシリル化
【化18】

ドライボックス内で、(A2)不飽和化合物(17.87mg、159.24μmol、2当量)、レドックススイッチ触媒(0.065mg、4.00×10-8mol、0.0005当量、貯蔵液から)、水素化ケイ素化合物(B2)(10.85mg、79.62μmol、1当量)、1,3,5-トリメトキシベンゼン、及び0.6mLの重水素化ベンゼン(C)をJ-Young NMR管に充填した。60℃の予熱した湯浴の期間後、NMR管をドライボックスに戻し、混合物に還元性化合物1(16μg、0.001当量、0.1mol%)を添加した。還元性化合物1を添加すると、レドックススイッチ触媒は、酸化状態で形式的変化を受け、その場で触媒に変換し、変換の有意な増加が生じたことが観察された。結果を以下の表5に示し、収率を時間の関数として示す。
【表6】
【0134】
実施例3:レドックススイッチ触媒系で触媒されたヒドロシリル化
ドライボックス内で、(A2)不飽和化合物(17.87mg、159.24μmol、2当量)、レドックススイッチ触媒(0.065mg、4.00×10-8mol、0.0005当量、貯蔵液から)、水素化ケイ素化合物(B2)(10.85mg、79.62μmol、1当量)、1,3,5-トリメトキシベンゼン、及び0.6mLの重水素化ベンゼン(C)をJ-Young NMR管に充填した。60℃の予熱した湯浴の期間後、NMR管をドライボックスに戻し、混合物に還元性化合物2(10μg、0.001当量)を添加した。還元性化合物2を添加すると、レドックススイッチ触媒は、酸化状態で形式的変化を受け、その場で触媒に変換し、変換の有意な増加が生じたことが観察された。結果を以下の表6に示し、収率を時間の関数として示す。
【表7】
【0135】
実施例4:レドックススイッチ触媒系で触媒されたヒドロシリル化
ドライボックス内で、(A2)不飽和化合物(17.87mg、159.24μmol、2当量)、レドックススイッチ触媒(0.065mg、4.00×10-8mol、0.0005当量、貯蔵液から)、水素化ケイ素化合物(B2)(10.85mg、79.62μmol、1当量)、1,3,5-トリメトキシベンゼン、及び0.6mLの重水素化ベンゼン(C)をJ-Young NMR管に充填した。60℃の予熱した湯浴の期間後、NMR管をドライボックスに戻し、混合物に還元性化合物3(16μg、0.001当量)を添加した。還元性化合物3を添加すると、レドックススイッチ触媒は、酸化状態で形式的変化を受け、その場で触媒に変換し、変換の有意な増加が生じたことが観察された。結果を以下の表7に示し、収率を時間の関数として示す。
【表8】
【0136】
実施例5:オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化
【0137】
ドライボックス内で、20mLの反応バイアルに、(A3)不飽和化合物(1.00g、1当量)、触媒(13μg、0.001mol%で10ppm mol Rhを得た)、及び(B3)水素化ケイ素化合物(2.90g、1当量)を充填して、混合物を得た。ドライボックスから混合物を取り出し、シュレンクラインのアルゴン雰囲気に接続し、予熱した油浴(80℃)に入れた。反応の進行を監視するために、特定の時点で反応混合物のアリコートを採取し、これをH NMR分光法で分析した。出発物質の変換は、不飽和の消費に基づいている。異なる硬化条件で実施例5を繰り返す。具体的には、不活性(窒素)雰囲気下の40℃及び80℃で実施例5を担持した。以下の表8は、変換を示す。
【0138】
【表9】
【0139】
実施例6:オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化
【0140】
窒素を充填したドライボックス内で、20mLの反応バイアルに、(A4)不飽和化合物(10.00g)、触媒(0.4mg、THF中40μL)、及び(B4)水素化ケイ素化合物(0.96g)を充填して、混合物を得た。約200回転の間、混合物を手動で撹拌した。混合物をドライボックスから取り出し、レオロジー測定の前にドライアイスで一杯のデュワーに入れた。レオメータにおいて、試料の一部(約1g)を、空気下でPeltierプレート上に移した。実験は、事前に設計した温度スイッチ手順で開始した。レオメータによって、硬化プロセスをリアルタイムで監視した。結果を図1に示す。この図は、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び温度を時間の関数として示す(x軸は秒単位の時間である)。図1に示すように、温度の上昇は、反応速度の顕著な増加をもたらした。
【0141】
実施例7:オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化
【0142】
窒素を充填したドライボックス内で、20mLの反応バイアルに、(A4)不飽和化合物(2.5g)、触媒(0.4mg、THF中8.2μL)、及び(B4)水素化ケイ素化合物(0.24g)を充填して、混合物を得た。約200回転の間、混合物を手動で撹拌した。混合物をドライボックスから取り出し、レオロジー測定の前にドライアイスで一杯のデュワーに入れた。レオメータにおいて、試料の一部(約1g)を、空気下でPeltierプレート上に移した。レオメータによって、硬化プロセスをリアルタイムで監視した。結果を図2に示す。この図は、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び温度を時間の関数として示す(x軸は秒単位の時間である)。実施例6とは異なり、実施例7で用いた温度スイッチ又は増加は存在しなかった。
【0143】
比較例1:オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化
【0144】
窒素を充填したドライボックスにおいて、20mLの反応バイアルに、(A4)不飽和化合物(5.2g)、比較触媒(71μg、THF中7.1μL)、及び(B4)水素化ケイ素化合物(0.499g)を充填して、混合物を得た。約200回転の間、混合物を手動で撹拌した。試料をドライボックスから取り出し、レオロジー測定の前にドライアイスで一杯のデュワーに入れた。レオメータにおいて、試料の一部(約1g)を、空気下でPeltierプレート上に移した。レオメータによって、硬化プロセスをリアルタイムで監視した。結果を図3に示す。この図は、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び温度を時間の関数として示す(x軸は秒単位の時間である)。図3に示すように、実施例6とは異なって、比較例1での温度の上昇は、反応速度の顕著な増加をもたらさなかった。
【0145】
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0146】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化の触媒であって、前記触媒は、以下の式を有する錯体を含み、
【化1】

式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、Xはハロゲン原子である、触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒を調製するためのレドックススイッチ触媒系であって、前記レドックススイッチ触媒系は、
以下の式:
【化2】

[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、各Xは、ハロゲン原子であり、Aは、対アニオンである]を有する錯体を含む、レドックススイッチ触媒と、
還元性化合物と、を含む、レドックススイッチ触媒系。
【請求項3】
請求項2に記載のレドックススイッチ触媒系から形成された、触媒反応生成物。
【請求項4】
ヒドロシリル化の触媒を調製する方法であって、前記方法は、
還元性化合物でレドックススイッチ触媒を還元して、前記触媒を得ることを含み、
前記レドックススイッチ触媒は、以下の式:
【化3】

[式中、各Rは、独立して選択されたヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、各Xは、ハロゲン原子であり、Aは、対アニオンである]を有する錯体を含み、
前記触媒は、請求項1に記載の触媒である、方法。
【請求項5】
ヒドロシリル化の触媒を調製する方法であって、前記方法は、
式[RhR X]の出発物質(I)と式
【化4】

の出発物質(II)とを錯化して前記触媒を得ることを含み、
式中、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和基であり、各Xは、独立して選択されたハロゲン原子であり、Rは、ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択されたアリール基であり、
前記ヒドロシリル化の触媒は、請求項1に記載の触媒である、方法。
【請求項6】
組成物であって、
(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含むこと、のうちの少なくとも1つに従う、(A)不飽和化合物と、
(C)請求項1に記載の触媒と、を含む、組成物。
【請求項7】
組成物であって、
(A)1分子あたり少なくとも1つの脂肪族不飽和基を含む不飽和化合物であって、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記組成物が(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む水素化ケイ素化合物を更に含むこと、のうちの少なくとも1つに従う、(A)不飽和化合物と、
(C)請求項2に記載のレドックススイッチ触媒系と、を含む、組成物。
【請求項8】
条件(2)が真であり、その結果、組成物が、(B)1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を含む前記水素化ケイ素化合物を更に含み、(i)前記(A)不飽和化合物は、1分子あたり少なくとも2つの不飽和基を含む、(ii)前記(B)水素化ケイ素化合物は、1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法であって、前記方法は、
(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子を反応させて、前記ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含み、
前記脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記ケイ素結合水素原子が前記(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用され、
前記(C)ヒドロシリル化触媒は、請求項1に記載の触媒を含む、方法。
【請求項10】
ヒドロシリル化反応生成物を調製する方法であって、前記方法は、
(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子を反応させて、前記ヒドロシリル化反応生成物を得ることを含み、
前記脂肪族不飽和基は、(A)不飽和化合物中に存在し、以下の2つの条件:
(1)前記(A)不飽和化合物が1分子あたり少なくとも1つのケイ素結合水素原子も含むこと、及び/又は
(2)前記ケイ素結合水素原子が前記(A)不飽和化合物とは別の(B)水素化ケイ素化合物中に存在すること、のうちの少なくとも1つが適用され、
前記(C)ヒドロシリル化触媒は、請求項2に記載のレドックススイッチ触媒系からその場で形成される、方法。
【国際調査報告】