(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】高多孔性スパイダーシルク繊維
(51)【国際特許分類】
A61K 47/46 20060101AFI20230801BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230801BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230801BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230801BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230801BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230801BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230801BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20230801BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20230801BHJP
D01F 4/02 20060101ALI20230801BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230801BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20230801BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61K47/46
A61K47/42 ZNA
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61Q1/00
A61Q19/00
A61K8/64
A61K9/00
C07K14/435
D01F4/02
C08L101/00
C08L89/00
C08K7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500037
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 IL2021050827
(87)【国際公開番号】W WO2022009200
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】PCT/IL2020/050752
(32)【優先日】2020-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518047506
【氏名又は名称】シービックス マテリアル サイエンシーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギラッド,ハイム メイア
(72)【発明者】
【氏名】イデルソン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】プレス,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】メイア,アロン
(72)【発明者】
【氏名】ハダール,ノア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4H045
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC09
4C076CC21
4C076CC31
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4C076GG06
4C083AC302
4C083AD332
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4C083AD452
4C083CC01
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4C083FF01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
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4H045FA84
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4L035AA04
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4L035BB15
4L035DD07
4L035DD08
4L035DD20
4L035EE08
4L035EE20
(57)【要約】
少なくとも100m
2/gのBET表面積を特徴とする多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を含む組成物を開示する。さらに、本組成物を含む物品およびそれを作製するための方法を開示する。
【選択図】
図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100m
2/gのBET表面積および残存量の有機溶媒を特徴とする、多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を含む組成物。
【請求項2】
前記MaSp系繊維は0.5μm~2μmの範囲のサイズを有する粒子の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機溶媒は水と共に共沸混合物を形成することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒はt-ブタノールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらなる薬剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記さらなる薬剤のw/w濃度は1~80%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記さらなる薬剤と前記多孔性MaSp系繊維とのw/w比は100:1~1:10である、請求項5および6の組成物。
【請求項8】
前記組成物からの前記さらなる薬剤の放出速度は対照と比較して少なくとも10%減少している、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリエステル、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸(PLA)またはそれらのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)、ゴム、セルロースあるいはそれらの任意の組み合わせから選択される熱可塑性ポリマーをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記MaSp系繊維と前記ポリマーとの重量/重量(w/w)比は0.01:1~1:1である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
0.01%~50%(w/w)の前記MaSp系繊維を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の引張強度は対照と比較して少なくとも20%高められている、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
乾燥された大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を得るための方法であって、
(a)MaSp系繊維を有機溶媒を含む液体と混合して混合物を得る工程、および
(b)前記液体を前記混合物から実質的に除去するのに適した条件に前記混合物を供する工程
を含み、それにより、少なくとも100m
2/gのBET表面積および残存量の有機溶媒を特徴とする前記乾燥されたMaSp系繊維を得る方法。
【請求項14】
前記液体は任意に水性溶媒を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒は水と共に共沸混合物を形成することができる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記有機溶媒はt-ブタノールを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか1項に記載の方法によって得られる乾燥された多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維。
【請求項18】
前記乾燥されたMaSp系繊維は請求項1~12のいずれか1項に記載のMaSp系繊維である、請求項17に記載の乾燥されたMaSp系繊維。
【請求項19】
(i)さらなる薬剤の改善された負荷容量、(ii)持続放出プロファイルのうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項17または18に記載の乾燥されたMaSp系繊維。
【請求項20】
前記改善された負荷容量は、100:1~1:10である前記さらなる薬剤と前記多孔性MaSp系繊維とのw/w比を含む、請求項19に記載の乾燥されたMaSp系繊維。
【請求項21】
少なくとも100m
2/gのBET表面積を特徴とする多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維と、薬学的に許容される担体および薬用化粧品的に許容される担体から選択される担体とを含む組成物。
【請求項22】
前記MaSp系繊維は請求項17~20のいずれか1項に記載の乾燥されたMaSp系繊維である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項17~20のいずれか1項に記載の乾燥されたMaSp系繊維または請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物を含む物品であって、強化プラスチック、容器、包装材料、ケーブル、チューブ、フィルム、ロープ、糸または織物の形態である物品。
【請求項24】
前記組成物を含んでいない前記物品の性質と比較した場合に少なくとも1つの改善された機械的性質を特徴とする請求項23に記載の物品であって、前記性質は、ヤング率、引張強度、破壊ひずみ、降伏点、靱性、破壊仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、特定の伸び率における曲げひずみおよび応力、摩耗、UV抵抗性ならびにガス透過率からなる群から選択される物品。
【請求項25】
対象にさらなる薬剤を追加するための方法であって、前記対象に請求項21および22のいずれか1項に記載の組成物を投与し、それにより前記対象に前記さらなる薬剤を追加することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月5日に出願されたPCT国際特許出願第PCT/IL2020/050752号、および2021年1月6日に出願された米国仮特許出願第63/134,343号の優先権の利益を主張するものである。上記文献の内容全体があたかも本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる。
【0002】
本発明はそのいくつかの実施形態において、MaSp(大瓶状腺スピドロイン)タンパク質系繊維を含む組成物、その調製およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ドラグラインスパイダーシルクは、自身のクモの巣の枠および半径を構築すると共に落下したり危険から逃れたりする場合の命綱を構築するために、丸網を張るクモによって使用されるシルクとして当該技術分野で知られている。これらの作業を行うことができるようにするために、ドラグライン繊維は高弾性および強度の組み合わせにより著しく高い靭性を示し、故に天然であるか人工であるかに関わらず最も頑丈な繊維とされている。例えばドラグラインは、その直径において高張力鋼よりも6倍強く、かつこれまで作られてきた最強の合成繊維のうちの1つであるケブラーよりも3倍頑丈である。ドラグラインシルクは、大抵の場合に大瓶状腺スピドロイン(MaSp)1および2と呼ばれ、ニワオニグモ(Araneus diadematus)においてはADF-3およびADF-4とも呼ばれる2種類の主要なポリペプチドからなる。これらのタンパク質は、試料年数および分析条件に応じて200~720kDaの範囲の見かけの分子量を有する。公知のドラグラインシルクスピドロインは、繊維中に結晶βシートを形成するアラニンが豊富なセグメントと、より柔軟であり、かつ大部分が秩序構造を欠いているグリシンが豊富なセグメントとを交互にする高度に反復されたブロックからなる。C末端領域は非反復状態であり生物種間で高度に保存されており、αヘリックス構造をなしている。ドラグラインシルクタンパク質のN末端領域は、異なるスピドロイン間および異なるクモ種間でも高度に保存されていることも分かった。組織培養において細菌、酵母、植物および哺乳類細胞を用い、かつさらにトランスジェニックヤギを用いる遺伝子工学などによりスパイダーシルクを合成で作り出すために数多くの試みがなされてきた。天然のスパイダーシルクと同様の機械的性質を有する繊維を作製するための改善された組成物および方法の要求は未だ対処されていない。
【発明の概要】
【0004】
一態様によれば、本発明は、少なくとも100m2/gのBET表面積および残存量の有機溶媒を特徴とする多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を含む組成物を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は0.5μm~2μmの範囲のサイズを有する粒子の形態である。
【0006】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒は水と共に共沸混合物を形成することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒はt-ブタノールを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本組成物はさらなる薬剤をさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本組成物中のさらなる薬剤のw/w濃度は1~80%である。
【0010】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤と多孔性MaSp系繊維とのw/w比は100:1~1:10である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本組成物からのさらなる薬剤の放出速度は対照と比較して少なくとも10%減少している。
【0012】
いくつかの実施形態では、本組成物はポリエステル、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸(PLA)またはそれらのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)、ゴム、セルロースあるいはそれらの任意の組み合わせから選択される熱可塑性ポリマーをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維と当該ポリマーとの重量/重量(w/w)比は0.01:1~1:1である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本組成物は0.01%~50%(w/w)のMaSp系繊維を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本組成物の引張強度は対照と比較して少なくとも20%高められている。
【0016】
別の態様では、乾燥された大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を得るための方法であって、(a)MaSp系繊維を有機溶媒を含む液体と混合して混合物を得る工程、および(b)混合物から液体を実質的に除去するのに適した条件下にその混合物を供する工程を含み、それにより、少なくとも100m2/gのBET表面積および残存量の有機溶媒を特徴とする乾燥されたMaSp系繊維を得る方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態では、当該液体は任意に水性溶媒を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒は水と共に共沸混合物を形成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒はt-ブタノールを含む。
【0020】
別の態様では、本発明の方法によって得られる乾燥された多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、乾燥されたMaSp系繊維は本発明の組成物のMaSp系繊維である。
【0022】
いくつかの実施形態では、乾燥されたMaSp系繊維は(i)さらなる薬剤の改善された負荷容量、(ii)持続放出プロファイルのうちのいずれかを特徴とする。
【0023】
いくつかの実施形態では、改善された負荷容量は、100:1~1:10のさらなる薬剤と多孔性MaSp系繊維とのw/w比を含む。
【0024】
別の態様では、本発明の組成物または本発明の乾燥されたMaSp系繊維を含む物品が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、当該物品は強化プラスチック、瓶、容器、パッケージ、ケーブル、チューブ、フィルム、ロープ、糸または織物の形態である。
【0026】
いくつかの実施形態では、当該物品は対照物品の性質と比較した場合に少なくとも1つの改善された機械的性質を特徴とし、ここではその性質は、ヤング率、引張強度、破壊ひずみ、降伏点、靱性、破壊仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、特定の伸び率における曲げひずみおよび応力、摩耗、UV抵抗性ならびにガス透過率からなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、当該物品は担体をさらに含む。
【0028】
別の態様では、対象にさらなる薬剤を追加するための方法であって、対象に本発明の物品を投与し、それにより対象にさらなる薬剤を追加することを含む方法が提供される。
【0029】
特に定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する業界の当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が以下に記載されている。矛盾する場合には定義を含む本特許明細書が優先される。また材料、方法および実施例は単に例示であり、必ずしも限定的なものではない。
【0030】
本発明のさらなる実施形態および全適用可能範囲は、以下に与えられている詳細な説明から明らかになるであろう。但し、本発明の趣旨および範囲内の様々な変形および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるため、本発明の好ましい実施形態を示している詳細な説明および具体例は単に例示として与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】対照(元の状態のポリウレタン(PU)(E394POTA))と比較したt-ブタノールおよび水中で凍結乾燥された15%SVX-Eで強化されたポリウレタン(PU)(E394POTA)の応力-ひずみ曲線を示すグラフである。
【
図3】
図3A~
図3Bは、t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-E(
図3A)および水で凍結乾燥されたSVX-E(
図3B)からのヒアルロン酸(HA)の放出プロファイルを示すグラフである。
【
図4】
図4A~
図4Bは、t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-E(
図4A)および水で凍結乾燥されたSVX-E(
図4B)からのグリコール酸(GA)の放出プロファイルを示すグラフである。
【
図5】細菌中で発現させたスパイダーシルクタンパク質(SVX-E)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す。
【
図6】25℃~280℃の温度上昇時(曲線1)、50℃への冷却時(曲線2)、および350℃への新たな上昇時(曲線3)におけるSVX-Eの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す。
【
図7】
図7A~
図7Bは細菌中で発現させたスパイダーシルクタンパク質(SVX-E)の熱重量分析(TGA)曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
いくつかの実施形態によれば、本発明は高多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、少なくとも100m2/gのBET表面積および残存量の有機溶媒を特徴とする多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を含む組成物を提供する。
【0034】
本発明は部分的に、有機溶媒で凍結乾燥され、かつ熱可塑性ポリマーで強化された多孔性MaSp系繊維を含む組成物の引張強度が対照と比較して少なくとも20%高められているという驚くべき発見に基づいている。本発明は部分的に、t-ブタノールで凍結乾燥され、熱可塑性ポリマーで強化された多孔性MaSp系繊維を含む組成物の引張強度が水で凍結乾燥されたMaSp系繊維と比較して少なくとも20%高められているという驚くべき発見に基づいている。
【0035】
本発明は部分的に、有機溶媒で凍結乾燥された多孔性MaSp系繊維を含む組成物が水で凍結乾燥された多孔性MaSp系繊維のBET表面積と比較してより大きいBET表面積を特徴とするという驚くべき発見に基づいている。本発明は部分的に、t-ブタノールで凍結乾燥された多孔性MaSp系繊維を含む組成物が水で凍結乾燥された多孔性MaSp系繊維のBET表面積と比較してより大きいBET表面積を特徴とするという驚くべき発見に基づいている。
【0036】
本発明は部分的に、有機溶媒から乾燥され、かつさらなる薬剤で強化された多孔性MaSp系繊維を含む組成物が、対照と比較してさらなる薬剤のより遅い放出速度を示すという驚くべき発見に基づいている。本発明は部分的に、t-ブタノールから乾燥され、かつさらなる薬剤(ヒアルロン酸またはグリコール酸など)で強化された多孔性MaSp系繊維を含む組成物が、水から乾燥され、かつさらなる薬剤で強化されたMaSp系繊維と比較してさらなる薬剤のより遅い放出速度を示すという驚くべき発見に基づいている。本発明は部分的に、有機溶媒で凍結乾燥され、かつさらなる薬剤で強化された多孔性MaSp系繊維を含む組成物が、対照と比較してさらなる薬剤のより遅い放出速度を示すという驚くべき発見に基づいている。本発明は部分的に、t-ブタノールで凍結乾燥され、かつさらなる薬剤(ヒアルロン酸またはグリコール酸など)で強化された多孔性MaSp系繊維を含む組成物が、水で凍結乾燥され、かつさらなる薬剤で強化されたMaSp系繊維と比較してさらなる薬剤のより遅い放出速度を示す(
図3A~
図3Bおよび
図4~
図4Bにおいて例示されている)という驚くべき発見に基づいている。
【0037】
組成物
いくつかの実施形態によれば、多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本繊維は少なくとも100m2/gのBET表面積を特徴とする。いくつかの実施形態では、本組成物は残存量の有機溶媒を含む。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は少なくとも100m2/gまたは約180m2/g以上のBET表面積および残存量の有機溶媒を特徴とする。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、(i)残存量の有機溶媒、および(ii)少なくとも100m2/g、少なくとも150m2/g、少なくとも180m2/g、少なくとも200m2/g、少なくとも210m2/g、少なくとも250m2/g、少なくとも300m2/g、少なくとも350m2/g、少なくとも400m2/g、少なくとも450m2/g、少なくとも500m2/g、少なくとも800m2/g、少なくとも1000m2/g、少なくとも1500m2/g、少なくとも2000m2/g、少なくとも2500m2/gまたは少なくとも5000m2/g(その間の任意の値を含む)のBET表面積を特徴とする多孔性MaSp系繊維が提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0039】
いくつかの実施形態では、100~5500m2/g、100~5000m2/g、100~2500m2/g、100~2000m2/g、100~1000m2/g、100~500m2/g、100~250m2/g、100~200m2/g、120~5500m2/g、120~5000m2/g、120~2500m2/g、120~2000m2/g、120~1000m2/g、120~500m2/g、120~250m2/g、120~200m2/g、150~5500m2/g、150~5000m2/g、150~2500m2/g、150~2000m2/g、150~1000m2/g、150~500m2/g、150~250m2/gまたは150~200m2/g(その間の任意の範囲を含む)のBET表面積を特徴とする多孔性MaSp系繊維が提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は有機溶媒および/または水を実質的に欠いている(例えば微量の有機溶媒および/または水を欠いている)。
【0040】
本発明の一態様では、(i)少なくとも100m2/g、少なくとも150m2/g、少なくとも180m2/g、少なくとも200m2/g、少なくとも210m2/g、少なくとも250m2/g、少なくとも300m2/g、少なくとも350m2/g、少なくとも400m2/g、少なくとも450m2/g、少なくとも500m2/g、少なくとも800m2/g、少なくとも1000m2/g、少なくとも1500m2/g、少なくとも2000m2/g、少なくとも2500m2/gまたは少なくとも5000m2/g(その間の任意の値を含む)のBET表面積、(ii)本明細書に記載されている残存量の有機溶媒(例えばt-ブタノール)、および/または本明細書に記載されている水含有量(例えば100ppm未満)を特徴とする多孔性MaSp系繊維が提供される。
【0041】
本発明の一態様では、(i)少なくとも100m2/g、少なくとも150m2/g、少なくとも180m2/g、少なくとも200m2/g、少なくとも210m2/g、少なくとも250m2/g、少なくとも300m2/g、少なくとも350m2/g、少なくとも400m2/g、少なくとも450m2/g、少なくとも500m2/g、少なくとも800m2/g、少なくとも1000m2/g、少なくとも1500m2/g、少なくとも2000m2/g、少なくとも2500m2/gまたは少なくとも5000m2/g(その間の任意の値を含む)のBET表面積、(ii)本明細書に記載されているDSCパターン(および/またはTd)、ならびに(iii)本明細書に記載されている残存量の有機溶媒(例えばtert-ブタノール)および/または本明細書に記載されている水含有量(例えば100ppm未満)を特徴とする多孔性MaSp系繊維が提供される。いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は本明細書に記載されている複数のMaSp系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は粒子の形態である。いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は本発明の組成物中で粒子の形態である。
【0042】
いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維および/またはそれを含む本発明の組成物は対照と比較して改善された性質をさらに特徴とし、ここでは改善された性質はさらなる薬剤の負荷容量、その中に封入されたさらなる薬剤の延長された放出時間、および/または向上した機械的強度(例えば引張強度)のうちの1つ以上である。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、粒子の形態の多孔性MaSp系繊維を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、当該粒子を本明細書では「多孔性粒子」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、当該粒子は0.5μm~2μm、0.7μm~1.5μm、0.8μm~1.5μm、0.9μm~1.5μm、0.5μm~1μm、0.7μm~1μm、0.8μm~1μm、0.9μm~1μm、0.5μm~1.3μm、1.0μm~2μm、1.0μm~2μm、1.0μm~2μm、0.5μm~1.2μm、0.7μm~1.3μm、0.7μm~1.2μmまたは0.9μm~1.2μmの範囲(その間の任意の範囲を含む)のサイズ(平均粒子径)を有する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、粒子径は、レーザー回折により測定した場合の水性溶媒(例えば水性分散媒)中での平均粒子径を指す(実施例の箇所を参照)。いくつかの実施形態では、粒子径は数平均粒子径を指す。当業者であれば、平均粒子径(例えば数平均粒子径)はレーザー回折により、あるいはSEM画像を用いて測定することができることが分かるであろう。数平均粒子径は周知の方程式に従って計算することができる。いくつかの実施形態では、粒子径は乾燥粒子径(例えばSEMで測定した場合の例えば水分子を含む外殻を実質的に欠いている粒子のサイズ)を指す。
【0044】
いくつかの実施形態では、当該粒子は球形、楕円形および/または円筒形を有する。いくつかの実施形態では、当該粒子は、0.5μm~2μm、0.7μm~1.5μm、0.8μm~1.5μm、0.9μm~1.5μm、0.5μm~1μm、0.7μm~1μm、0.8μm~1μm、0.9μm~1μm、0.5μm~1.3μm、0.5μm~1.2μm、0.7μm~1.3μm、0.7μm~1.2μmまたは0.9μm~1.2μmの範囲(その間の任意の範囲を含む)の(例えば当該粒子の長手軸に沿った)長さ寸法を有する。いくつかの実施形態では、当該粒子は0.01μm~0.5μm、0.01μm~0.05μm、0.05μm~0.1μm、0.1μm~0.2μm、0.2μm~0.3μm、0.3μm~0.4μm、0.4μm~0.5μmの範囲(その間の任意の範囲を含む)の(例えば当該粒子の長手軸に垂直な)幅寸法を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は本発明の組成物中で複数の凝集した粒子の形態である。いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は本発明の組成物中で複数の別個の粒子の形態である。いくつかの実施形態では、重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%(それらの間の任意の範囲を含む)の多孔性MaSp系繊維は複数の粒子の形態であり、ここでは当該粒子は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、本組成物のタンパク質含有量の重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%(それらの間の任意の範囲を含む)は、複数の粒子の形態である。
【0046】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は不溶性MaSp系ポリマーを含むかそれからなる。いくつかの実施形態では、不溶性MaSp系ポリマーは粒子の形態である。いくつかの実施形態では、不溶性MaSp系ポリマーは有機溶媒中で不溶性である。いくつかの実施形態では、不溶性MaSp系ポリマーは水溶液中で不溶性である。本明細書で使用される「MaSp系ポリマー」および「MaSp系繊維」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0047】
本明細書で使用される「不溶性」という用語は、過剰な溶媒に曝露された場合に溶解しないが様々な程度に分散することができる材料を指す。いくつかの実施形態では、「不溶性」という用語は溶媒に10%未満、5%未満、2%未満または1%未満で可溶な材料を指す。いくつかの実施形態では、「不溶性」は0.01重量%未満の濃度でしか溶媒に部分的に溶解することができない材料を指す。本発明に係る溶媒は有機溶媒および水溶液を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は界面活性剤水溶液を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は尿素水溶液を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は規定の示差走査熱量測定(DSC)パターンを特徴とする。いくつかの実施形態では、「DSCパターン」とはピークの位置を指すことが意図されている。いくつかの実施形態では、「ピーク」とは発熱ピークを指すことが意図されている。本明細書全体を通して「ピークの位置」または「ピーク位置」はサーモグラムパターンにおける温度軸に沿ったピークを指し、いくつかの実施形態では任意のピーク強度におけるピーク位置を指す場合がある。当業者であれば、DSC測定において得られるデータは使用される機器および測定が行われる時間の環境条件(例えば湿度)によって部分的に決まることを理解するであろう。
【0049】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は少なくとも、200℃~280℃の範囲の吸熱ピークを示すDSCパターンを特徴とする。いくつかの実施形態では、開示されている組成物は少なくとも、200℃~270℃、200℃~260℃、200℃~250℃、210℃~280℃、212℃~280℃、215℃~280℃、216℃~280℃、220℃~280℃、210℃~250℃、212℃~250℃、215℃~250℃、216℃~250℃、220℃~250℃、210℃~245℃、210℃~242℃または215℃~245℃の範囲(その間の任意の範囲を含む)に吸熱ピークを示すDSCパターンを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0050】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は少なくとも、280℃~350℃、290℃~350℃、300℃~350℃、310℃~350℃、280℃~330℃、290℃~330℃、300℃~330℃、310℃~330℃または320℃~330℃(その間の任意の範囲を含む)の吸熱ピークを示すDSCパターンをさらに特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0051】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維はDSCで決定された200℃~250℃、210℃~250℃、220℃~250℃、230℃~250℃、200℃~240℃、210℃~240℃、220℃~240℃、230℃~240℃、200℃~230℃または210℃~230℃(その間の任意の範囲を含む)のガラス転移温度(Tg)を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0052】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維はDSCで決定された260℃~320℃、270℃~320℃、280℃~320℃、290℃~320℃、260℃~310℃、270℃~310℃、280℃~310℃または290℃~310℃(その間の任意の範囲を含む)のTgを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0053】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は少なくとも、(MaSp)系繊維を含む対応する組成物のDSCパターンよりも少なくとも5℃~100℃、少なくとも10℃~100℃、少なくとも15℃~100℃、少なくとも12℃~100℃、少なくとも25℃~100℃、少なくとも5℃~80℃、少なくとも10℃~80℃、少なくとも15℃~80℃、少なくとも12℃~80℃、少なくとも25℃~80℃、少なくとも5℃~50℃、少なくとも10℃~50℃、少なくとも15℃~50℃、少なくとも12℃~50℃または少なくとも25℃~50℃低い吸熱ピークを示すDSCパターンを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0054】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は約-100℃~約190℃の範囲にDSCピークを欠いている。いくつかの実施形態では、開示されている化合物は約-100℃~約25℃の範囲にDSCピークを欠いている。いくつかの実施形態では、開示されている組成物は少なくとも、40℃~70℃の範囲に発熱ピークを欠いていることを示すDSCパターンを特徴とする。
【0055】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は約-100℃~約-50℃の範囲にDSCピークを欠いている。いくつかの実施形態では、開示されている化合物は約-50℃~約0℃の範囲にDSCピークを欠いている。いくつかの実施形態では、開示されている化合物は約-0℃~約-25℃の範囲にDSCピークを欠いている。
【0056】
本明細書で使用される「分解温度(Td)」という用語は、分解が生じる温度を指す。熱分解は熱によって引き起こされる広範囲な化学種変化のプロセスである。
【0057】
本明細書で使用される「ガラス転移温度(Tg)」という用語は、材料が弾性かつ粘性の非晶質液体(T>Tg)から脆いガラス状非晶質固体(T<Tg)に転移する温度を指す。この液体-ガラス転移(または略してガラス転移)は可逆的転移である。ガラス転移温度(Tg)は存在する場合には一般に材料の結晶状態の融解温度(Tm)よりも低い。
【0058】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は、FTIR分析により測定した場合に1615cm-1~1635cm-1の範囲にアミドピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、開示されている組成物は、FTIR分析により測定した場合に1620cm-1~1635cm-1、1620cm-1~1630cm-1、1621cm-1~1630cm-1または1620cm-1~1625cm-1の範囲(その間の任意の範囲を含む)にアミドピークを有することを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0059】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維はFTIR分析により測定した場合に1700cm-1~1800cm-1の範囲にピークを欠いている。
【0060】
一実施形態では、本発明のMaSp系ポリマーは自己集合により集合する。「自己集合」とは、本発明のモノマーすなわち合成のスパイダーシルクタンパク質が、正常な生理学的条件下または室温でエネルギー的に好ましい方法で自然に互いに結合して、本明細書に記載されている性質を有する巨大分子構造を作り出すことを意味する。さらに本発明のMaSp系繊維は極めて弾力があり、一旦集合すると10%の界面活性剤溶液中での可溶化および少なくとも1時間の沸騰などの極度の化学的攻撃に耐えることができる。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、本明細書の上に記載されている多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維および残存量の有機溶媒を含む組成物が提供される。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている有機溶媒は水と共に共沸混合物を形成することができる。
【0063】
本明細書で使用される「共沸混合物」または「共沸点混合物」という用語は、その中の液体組成および蒸気組成が規定の圧力および温度において等しい2種以上の構成成分の系を指す。実際にこれは、共沸点混合物の構成成分が定沸点または本質的に定沸点であり、かつ一般に相変化中に熱力学的に分離することができないことを意味する。共沸点混合物の沸騰または蒸発によって形成される蒸気組成物は元の液体組成物と同一であるか実質的に同一である。水と共に共沸混合物を形成することができる溶媒は周知であり、当該技術分野において文書化されており、当業者には明らかになるであろう。
【0064】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒はエタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、2-ブタノール、n-ブタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、DMF、DMSO、THF、TFA、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、エーテル(例えばジエチルエーテル)およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒はクラス3溶媒である。いくつかの実施形態では、クラス3溶媒は酢酸、アセトン、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸ブチル、tert-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはMaSp系繊維は、薬学的に許容される範囲または薬用化粧品的に許容される範囲内で残存量の有機溶媒を含む。従って、本明細書に開示されている有機溶媒の残存量は薬学的に許容される量または、そのいくつかの実施形態では本発明の組成物および/または繊維中での薬用化粧品的に許容される量である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはMaSp系繊維は0.1ppm~100ppm、0.5ppm~100ppm、0.9ppm~100ppm、1ppm~100ppm、5ppm~100ppm、10ppm~100ppm、20ppm~100ppm、0.1ppm~50ppm、0.5ppm~50ppm、0.9ppm~50ppm、1ppm~50ppm、5ppm~50ppm、10ppm~50ppm、20ppm~50ppm、0.1ppm~20ppm、0.5ppm~20ppm、0.9ppm~20ppm、1ppm~20ppm、5ppm~20ppmまたは10ppm~20ppm(その間の任意の範囲を含む)の有機溶媒を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0068】
いくつかの実施形態では、本組成物は水を実質的に欠いている。いくつかの実施形態では本組成物は100ppm未満、70ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、1ppm未満、0.5ppm未満または0.1ppm未満(その間の任意の値を含む)の水含有量を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0069】
いくつかの実施形態では、本組成物はさらなる薬剤をさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は生物学的薬剤、医薬品、栄養素および栄養補助食品から選択される。
【0071】
本明細書で使用される「生物学的薬剤(生物材料ともいう)」という用語は、生物由来のあらゆる物質または材料に関する。例えば「生物学的薬剤」という用語は細胞(幹細胞を含む)、タンパク質、ペプチドまたは核酸(核酸の類似体を含む)を包含する。本明細書で使用される「医薬品(医薬化合物ともいう)」という用語は、病的状態、例えば疾患または障害の治療、治癒、防止、予防または診断で使用することができるか、そうでなければ身体的、心的または精神的健康状態を向上させるために使用することができるあらゆる生物学的もしくは化学的物質を指す。従って、本発明の文脈において想定される「医薬品」という用語は、治療、診断もしくは予防効果を有するあらゆる薬剤、すなわちあらゆる治療薬、診断薬または予防薬を含む。
【0072】
医薬品は、組織増殖、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるか関与する薬剤、免疫応答などの生物学的作用を引き起こすことができる薬剤、または1つ以上の生物学的プロセスにおいてあらゆる他の役割を担うことができる薬剤であってもよい。
【0073】
医薬品の非限定的な例としては、限定されるものではないが、抗菌剤(例えば抗生物質)、抗ウイルス剤または抗真菌剤などの抗微生物剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗凝固剤、抗リウマチ剤、抗乾癬薬、鎮静剤、筋弛緩剤、抗片頭痛薬、抗うつ剤、防虫剤、増殖因子、ホルモン、ホルモン拮抗薬、抗体、例えば抗体などの免疫活性化合物と組み合わせたアジュバント、抗酸化剤、糖タンパク質、リポタンパク質または酵素(例えばヒアルロニダーゼ)などのタンパク質、多糖、フリーラジカルスカベンジャー、放射線治療薬、光線力学療法剤、色素(例えば蛍光色素)、造影剤、消毒剤、防腐剤またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0074】
また当該医薬品は小分子化合物であってもよい。「小分子化合物」という用語は、生物学的プロセスに作用するか影響を与えることができる分子を指す。小分子は現在公知であり、かつ使用されている任意の数の治療薬を含むことができ、あるいは生物学的機能のスクリーニングのためにそのような分子のライブラリーにおいて合成された小分子であってもよい。小分子化合物は通常、約5,000ダルトン(Da)未満、好ましくは約2,500Da未満、より好ましくは1,000Da未満、最も好ましくは約500Da未満の分子量を有する。
【0075】
本明細書で使用される「栄養素」は、生物が生きて成長するために必要とする化学物質またはその環境から取り込まなければならない生物の代謝で使用される物質である。有機栄養素としては炭水化物、脂肪、タンパク質(アミノ酸)およびビタミンが挙げられる。無機栄養素は食物ミネラル、水および酸素である。好ましい栄養素は炭水化物、アミノ酸またはタンパク質などの多量栄養素およびビタミンなどの微量栄養素である。
【0076】
炭水化物の非限定的な例としては、限定されるものではないが、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどの単糖またはそれらの立体異性体、ガラクトサミン、グルコサミン、シアル酸、N-アセチルグルコサミンなどのアミノ糖、スルホキノボースなどのスルホ糖、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロースまたはマルトビオースなどの二糖、およびフラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)またはマンナンオリゴ糖(MOS)などのオリゴ糖が挙げられる。
【0077】
本明細書で使用される「栄養補助食品(dietary supplement)」(栄養補助食品(food supplement)または栄養補助食品(nutritional supplement)ともいう)という用語は、人の食事において欠いているか十分な量で消費されないビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸またはアミノ酸などの栄養素を提供することを目的とした製剤を指す。
【0078】
栄養補助食品の非限定的な例としては、限定されるものではないが、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、プレグネノロンなどのステロイドまたはそれらの誘導体、メラトニンなどのホルモン、および硫酸ヒドラジン、カフェイン、カテキン、大豆イソフラボン、グルコサミン、コエンザイムQ10などの他の物質、あるいはエフェドリン、シネフリン、ノルエフェドリンまたはプソイドエフェドリンなどのエフェドリン系アルカロイドが挙げられる。
【0079】
さらなる薬剤は正または負に帯電していてもよい。また、さらなる薬剤は電気的に中性であってもよい。好ましくは、さらなる薬剤は正または負に帯電している。「正電荷」と陽イオン」および「負電荷」と「陰イオン」という用語は同義で使用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、MaSp系ポリマー粒子は、MaSp系ポリマーの撚り合わせられたポリマー鎖によって形成された複数の孔(すなわち空間または内腔)を含む。いくつかの実施形態では、絡み合ったMaSp系ポリマーはマトリックスを形成する。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤が当該マトリックスまたは粒子内の孔の少なくとも一部を満たしている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は複数の孔に封入されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、物理的相互作用をMaSp系ポリマーによって形成されたマトリックス内へのさらなる薬剤の封入(すなわち捕捉)という。いくつかの実施形態では、当該マトリックスはさらなる薬剤に結合または接触している。いくつかの実施形態では、(MaSp)系繊維はさらなる薬剤に結合している。
【0082】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該粒子の複数の孔内に安定に封入されている。いくつかの実施形態では、安定に封入されたさらなる薬剤は徐放プロファイル(例えば塗布部位の表面または溶液中)を特徴とする。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤を封入している粒子は、そこからのさらなる薬剤の高速放出を実質的に防止する。
【0083】
いくつかの実施形態では、安定に封入されたさらなる薬剤は対照と比較して延長された放出時間を特徴とし、対照は本明細書に記載されているとおりである。
【0084】
本明細書で使用される「安定に封入された」という用語は、そこからのさらなる薬剤の高速放出を実質的に防止する本組成物の能力を指す。
【0085】
いくつかの実施形態では、本組成物中のさらなる薬剤のw/w濃度は1%~80%、3%~80%、5%~80%、10%~80%、20%~80%、30%~80%、50%~80%、1%~60%、3%~60%、5%~60%、10%~60%、20%~60%、30%~60%、50%~60%、1%~50%、3%~50%、5%~50%、10%~50%、20%~50%、30%~80%または50~99.9%(その間の任意の範囲を含む)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0086】
いくつかの実施形態では、重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%のさらなる薬剤を実質的に含む。いくつかの実施形態では、重量で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%のさらなる薬剤を実質的に含み、これは非共有結合、物理的相互作用またはその両方によりMaSp系繊維に結合している。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。非共有結合は当該技術分野でよく知られており、特に水素結合、p-pスタッキング、ファンデルワールス相互作用などが挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、物理的相互作用をMaSp系ポリマーによって形成されたマトリックス内へのさらなる薬剤の封入(すなわち捕捉)という。いくつかの実施形態では、当該マトリックスはさらなる薬剤に結合または接触している。
【0088】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はMaSp系繊維に接触または結合している。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤で強化されたポリマーはMaSp系繊維に物理的に結合している。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はMaSp系繊維の表面または中にある孔の少なくとも一部を満たしている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はMaSp系繊維によって封入されている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はフィブリルに接触または結合している。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は絡み合った構造の粒子(本明細書では「マトリックス」としても使用されている)によって封入されている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該粒子によって封入されている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はMaSp系繊維内に組み込まれている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はMaSp系繊維内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該マトリックス内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、当該マトリックスはさらなる薬剤でドープされている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は複数の孔内に位置している。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はフィブリルの間に位置している。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は内腔内に位置しており、その内腔は当該マトリックスの絡み合った繊維によって画定されている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はフィブリルによって封入されている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はフィブリルのそれぞれの内腔(または空所)内に封入されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、非共有結合、物理的相互作用またはその両方により結合している。
【0090】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は孔の体積の20%~100%を満たしている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は孔の体積の55%~100%、60%~100%、55%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、50%~99%、50%~98%、50%~97%、50%~95%、50%~90%、70%~90%または70%~95%(その間の任意の範囲を含む)を満たしている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0091】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該粒子の体積(例えば内腔)の20%~100%を満たしている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該粒子の体積の55%~100%、60%~100%、55%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、50%~99%、50%~98%、50%~97%、50%~95%、50%~90%、70%~90%または70%~95%(その間の任意の範囲を含む)を満たしている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のさらなる薬剤とMaSp系繊維とのw/w比は100:1~1:10、100:1~8:1、100:1~6:1、100:1~4:1、100:1~1:1、100:1~10:1、90:1~1:10、90:1~8:1、90:1~6:1、90:1~4:1、90:1~1:1、90:1~10:1、50:1~1:10、50:1~8:1、50:1~6:1、50:1~4:1、50:1~1:1、50:1~10:1、20:1~1:10、20:1~8:1、20:1~6:1、20:1~4:1、20:1~1:1、20:1~10:1、10:1~1:10、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~3:1、3:1~2:1、2:1~1:1、1:1~1:2、1:2~1:3、1:3~1:5、1:5~1:10(その間の任意の範囲を含む)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0093】
いくつかの実施形態では、本組成物中のさらなる薬剤とMaSp系繊維とのw/w比は多くとも100:1、多くとも80:1、多くとも40:1、多くとも20:1、多くとも10:1、多くとも6:1、多くとも5:1、多くとも4:1、多くとも3:1、多くとも2:1、多くとも1:1(その間の任意の範囲を含む)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0094】
いくつかの実施形態では、本組成物からのさらなる薬剤の放出速度は対照と比較して少なくとも10%減少している。いくつかの実施形態では、本組成物からのさらなる薬剤の放出速度は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%(その間のあらゆる範囲または値を含む)減少している。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0095】
いくつかの実施形態では、対照は水から凍結乾燥されたMaSp系繊維である。以下に例示されているように(
図3および
図4)、本発明の組成物は対照(例えば水から凍結乾燥されたMaSp系繊維)と比較してさらなる薬剤の改善された放出プロファイル(すなわち減少した放出速度)を特徴とする。
【0096】
いくつかの実施形態では、放出期間は対照と比較して少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%(その間のあらゆる範囲または値を含む)延長されている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0097】
いくつかの実施形態では、本組成物は熱可塑性ポリマーをさらに含む。本明細書で使用される「熱可塑性」は、加熱した場合により軟らかくなり、冷却した場合に硬くなる材料を指す。熱可塑性材料は、それらの化学的もしくは機械的性質を全く変化させることなく何度か冷却したり加熱したりすることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリエステル、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸(PLA)またはそれらのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)、ゴム、セルロースあるいはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0099】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維と高溶融温度ポリマーとの重量/重量(w/w)比は0.01:1~1:1、0.02:1~1:1、0.05:1~1:1、0.09:1~1:1、0.1:1~1:1、0.5:1~1:1または0.9:1~1:1(その間の任意の範囲を含む)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0100】
いくつかの実施形態では、本組成物は0.01%~90%(w/w)、0.05%~90%(w/w)、0.09%~90%(w/w)、0.1%~90%(w/w)、0.5%~90%(w/w)、0.9%~90%(w/w)、1%~90%(w/w)、5%~90%(w/w)、10%~90%(w/w)、15%~90%(w/w)、20%~90%(w/w)、30%~90%(w/w)、0.01%~80%(w/w)、0.05%~80%(w/w)、0.09%~80%(w/w)、0.1%~80%(w/w)、0.5%~80%(w/w)、0.9%~80%(w/w)、1%~80%(w/w)、5%~80%(w/w)、10%~80%(w/w)、15%~80%(w/w)、20%~80%(w/w)、30%~80%(w/w)、0.01%~50%(w/w)、0.05%~50%(w/w)、0.09%~50%(w/w)、0.1%~50%(w/w)、0.5%~50%(w/w)、0.9%~50%(w/w)、1%~50%(w/w)、5%~50%(w/w)、10%~50%(w/w)、15%~50%(w/w)、20%~50%(w/w)、30%~50%(w/w)、0.01%~20%(w/w)、0.05%~20%(w/w)、0.09%~20%(w/w)、0.1%~20%(w/w)、0.5%~20%(w/w)、0.9%~20%(w/w)、1%~20%(w/w)、5%~20%(w/w)、0.01%~10%(w/w)、0.05%~10%(w/w)、0.09%~10%(w/w)、0.1%~10%(w/w)、0.5%~10%(w/w)、0.9%~10%(w/w)または1%~10%(w/w)(その間の任意の範囲を含む)のMaSp系繊維を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0101】
いくつかの実施形態では、例えば熱安定性、ヤング率、引張強度、降伏点、耐摩耗性および伸長応力から選択される本組成物の1つ以上の性質は、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0102】
いくつかの実施形態では、本組成物の引張強度は対照と比較して少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%(その間の任意の値を含む)高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0103】
いくつかの実施形態では、本組成物は50MPa~170MPa、52MPa~170MPa、60MPa~170MPa、68MPa~170MPa、90MPa~170MPa、100MPa~170MPa、101MPa~170MPa、105MPa~170MPa、101MPa~160MPaまたは105MPa~160MPaの範囲(その間の任意の範囲を含む)のヤング率を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0104】
「テナシティ」または「引張強度」は、破壊前に耐えることができるフィラメントの重量を指す。材料を破壊するための引張試験によって生じる最大比応力は通常、フィラメント、糸または織物におけるものである。具体的な実施形態によれば、本発明のMaSp系ポリマーは約100~3000MPa(MPa=N/mm2)、約300~3000MPa、約500~2700MPa、約700~2500MPa、約900~2300MPa、約1100~2000MPa、約1200~1800MPa、約1300~1700MPaまたは約1400~1600MPaの引張強度を有する。より具体的にはそれは約1500MPaである。
【0105】
「靭性」は、MaSp系ポリマーを破壊するために必要なエネルギーを指す。これは応力-ひずみ曲線下の面積であり、これを「破壊エネルギー」または破断仕事量という場合もある。特定の実施形態によれば、本発明のMaSp系ポリマーは、約20~1000MJ/m3、約50~950MJ/m3、約100~900MJ/m3、約120~850MJ/m3、約150~800MJ/m3、約180~700MJ/m3、約180~750MJ/m3、約250~700MJ/m3、約280~600MJ/m3、約300~580MJ/m3、約310~560MJ/m3、約320~540MJ/m3または約350~520MJ/m3、最も特に約350~520MJ/m3の靭性を有する。
【0106】
「弾性」は、変形後にその元のサイズおよび形状に回復する傾向がある本体の性質を指す。可塑性すなわち回復を伴わない変形は弾性の反対である。MaSp系ポリマーの分子配置での回復可能な変形すなわち弾性変形は、原子間および分子間構造結合の伸長(再配向)によって可能である。逆に分子間結合の破壊および新しい安定化位置への再形成は、回復不可能な変形すなわち塑性変形を引き起こす。
【0107】
「伸長」は、初期の長さの割合または分数として表される長さの増加を指す。
【0108】
「繊度」とは、MaSp系ポリマーまたはフィラメント(例えばバイオフィラメント)の平均直径を意味し、これは通常ミクロン(μm)で表される。
【0109】
どんな特定の理論にも縛られるものではないが、本明細書に開示されているMaSp系繊維の高いポロシティが放出プロファイル、引張強度および任意に負荷容量などの本繊維のいくつかの有利な性質を予め決定するものと仮定する。
【0110】
いくつかの態様によれば、本明細書において互換的に使用されるMaSp系タンパク質またはMaSp系ポリマーは繊維の形態である。本明細書で使用される「繊維」とは、互いに捻じられた2本以上のフィラメントからなる繊維材料の細い紐を意味する。「フィラメント」とは、微視的長さから1マイル以上の長さまでの範囲の不確定な長さの細長い糸のような物体または構造を意味する。具体的には、合成のスパイダーシルクフィラメントは微視的であり、かつタンパク性である。「バイオフィラメント」とは、組換えで作製されたスパイダーシルクタンパク質を含むタンパク質から作り出されたフィラメントを意味する。いくつかの実施形態では、「繊維」という用語は非構造化凝集体または沈殿物を包含しない。
【0111】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は複数のMaSp系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、複数のMaSp系ポリマーは異なる化学組成および/または異なる分子量(MW)を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、複数のMaSp系ポリマーは異なる数の反復領域を有するポリマーを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は本明細書に記載されているように単一のMaSp系ポリマーまたはMaSp系繊維を実質的に含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は単一のさらなる薬剤または複数の(例えば2、3、4、5、10種など)のさらなる薬剤を実質的に含む。いくつかの実施形態では、MaSp系ポリマーまたはMaSp系繊維はさらなる非MaSp系タンパク質を実質的に欠いている。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたはMaSp系繊維はさらなるポリマー(例えば合成ポリマー、非MaSp系ペプチド、非MaSp系タンパク質)を実質的に欠いている。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物の重量で少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%または80~99%、90~99.9%(それらの間の任意の範囲を含む)は、本発明のMaSp系繊維(例えば単一のMaSp系繊維種)と、任意に本明細書に記載されている1種以上のさらなる薬剤とからなる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のタンパク質含有量の重量で少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%(それらの間の任意の範囲を含む)は本発明のMaSp系繊維からなる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のポリマー含有量の重量で少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%(それらの間の任意の範囲を含む)は本発明のMaSp系繊維からなる。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維の重量で少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%または80~99%、90~99.9%(それらの間の任意の範囲を含む)は、本発明のMaSp系ポリマー(例えば本明細書に記載されている単一のアミノ酸配列または複数のアミノ酸配列)からなる。
【0115】
いくつかの実施形態では、タンパク質の繊維はその少なくとも1つの寸法(例えば、直径、長さ)のサイズを特徴とする。例えば限定されるものではないが、本繊維の直径は10nm~1μm、20~100nmまたは10~50nmである。
【0116】
一実施形態では、MaSp系繊維は複数のMaSp系ポリマーからなる(例えば、MaSp系ポリマーのそれぞれが同じもしくは異なるアミノ酸配列を有するペプチド、ポリアミノ酸またはポリペプチドから選択される)。一実施形態では、複数のMaSp系ポリマーは本明細書に記載されている配列番号から選択される同じアミノ酸配列を有する。一実施形態では、複数のMaSp系ポリマーがナノフィブリル内に配置されている。一実施形態では、複数のナノフィブリルが繊維内に配置されているか繊維を構成している。一実施形態では、MaSp系繊維内のモノマーまたはナノフィブリルは4~16nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維内のモノマーまたはナノフィブリルは6~14nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維内のモノマーまたはナノフィブリルは8~12nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は複数のフィブリル(例えばナノフィブリル)を含む。いくつかの実施形態では、突然変異したアミノ酸配列を有する繊維はナノフィブリルを実質的に欠いている。いくつかの実施形態では、突然変異したアミノ酸配列を有する繊維は非多孔性粒子の形態である。
【0117】
いくつかの実施形態では、ナノフィブリルは例えば、1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約40nm、約42nm、約44nm、約46nm、約48nmまたは約50nm(その間のあらゆる値または範囲を含む)の直径を有する。一実施形態では、ナノフィブリルは3~7nmの直径を有する。一実施形態では、ナノフィブリルは4~6nmの直径を有する。
【0118】
一実施形態では、MaSp系繊維は70~450nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維は80~350nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維は80~300nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維は150~250nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維またはMaSp系ポリマーはコイルとして配置されている。一実施形態では、単繊維すなわち1本のMaSp系ポリマーはコイルとして配置されている。一実施形態では、コイルは5~800μmの直径を有する。一実施形態では、コイルは5~500μmの直径を有する。一実施形態では、コイルは5~30μmの直径を有する。一実施形態では、コイルは5~20μmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系繊維またはMaSp系ポリマーは5~800μmの長さを有する。一実施形態では、MaSp系繊維またはMaSp系ポリマーは30~300μmの長さを有する。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維の長さは1~200μm、10~100μm、100~500μmまたは200~500μm(その間の任意の範囲を含む)である。
【0119】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は複数の孔を含む。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は本明細書に記載されている粒子の形態である。いくつかの実施形態では、本組成物は複数のMaSp系繊維を含む。いくつかの実施形態では、複数のMaSp系繊維は異なる化学組成を有する繊維を含む。いくつかの実施形態では、複数のMaSp系繊維は異なるサイズおよび/または異なる構造を有する粒子の形態である。いくつかの実施形態では、複数のMaSp系繊維は異なるポロシティ(BET表面積で表される)を有する粒子の形態である。ポロシティは、例えばS.Brunauer,P.H.EmmettおよびE.Teller,J.Am.Chem.Soc.,1938,60,309に記載されているBET表面分析を用いて測定してもよく、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維は多孔性構造を特徴とする。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は多孔性繊維である。いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維はメッシュ状もしくはスポンジ状構造を有する多孔性粒子の形態であり、ここでは当該粒子径は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、多孔性粒子は本明細書に記載されているマトリックスの形態である(例えば、複数の空所または内腔を画定する複数のメッシュ状の絡み合ったMaSp-ポリマーを含む)。いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維は複数の別個の多孔性粒子を含み、ここでは多孔性粒子は本明細書に記載されているとおりである(例えば0.5μm~1.5μmの範囲のメジアン径を有する)。一方、対照のMaSp系繊維(例えば水溶液から乾燥されたもの)は、2μm超のサイズを有する実質的にあまり多孔性でない繊維の形態であり、かつ例えば別個の多孔性粒子を欠いている実質的に均一な糸状繊維である。
【0121】
非多孔性の類似したMaSp系繊維に対して本発明の多孔性繊維の例示的な構造が
図1に表されている。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維は少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも80nm、少なくとも100nm(それらの間の任意の範囲を含む)の孔径を特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維は20~80nm、20~60nm(それらの間の任意の範囲を含む)の孔径を特徴とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている孔径値は中央値である。いくつかの実施形態では、当該孔の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%は本明細書に記載されている孔径を特徴とする。
【0123】
どんな理論または機構にも縛られるものではないが、対照のMaSp系繊維(例えば水溶液から乾燥されたもの)は500nm超、1μm超またはさらにはそれ以上の孔径を有するものと仮定する。
【0124】
いくつかの実施形態では、多孔性構造または多孔性MaSp系繊維は少なくとも30%(例えば30~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも50%(例えば、50~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも60%(例えば60~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも70%(例えば70~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも80%(例えば80~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも90%(例えば90~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は約90%のポロシティを特徴とする。
【0125】
本明細書では「ポロシティ(porosity)」という用語は、空隙からなる物質(例えば「スポンジ状」材料)の体積の割合を指す。別の実施形態では、表面積内の空隙を表面積全体(多孔性および非多孔性)で割ることによりポロシティを測定する。
【0126】
いくつかの実施形態では、開示されているMaSp系繊維の多孔性構造は、さらなる薬剤またはポリマーを本発明のMaSp系繊維の複数の孔内に効率的に吸収するのを可能にする。MaSp系繊維の向上したポロシティは、対照(例えば水溶液から乾燥された同様の繊維)と比較してその中でのさらなる薬剤の保持の増加に寄与し、かつ実質的により低い空所および/またはBET値を有するものと仮定する(
図1において例示されている)。すなわち、どんな特定の理論にも縛られるものではないが、この驚くべき発見は、自然界に存在する天然のスパイダーシルク、または水溶液から乾燥され、「コラプス(collapsed)」構造を特徴とし、かつ本発明の繊維と比較して実質的にあまり多孔性でない構造を有する同様の(例えば同じアミノ酸配列を有する)MaSp系繊維とは厳格に区別される開示されている繊維の構造およびそのポロシティの観点から説明することができる。
図1に例示されているように、水溶液から凍結乾燥された繊維は実質的にフィルムの形態である。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維は対照と比較して少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも2000%以上のBET値を有し、ここでは対照は本明細書に記載されているとおりである。
【0128】
いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は本明細書に記載されている粒子の形態である。いくつかの実施形態では、当該粒子は多孔性粒子である。いくつかの実施形態では、当該粒子は実質的に非凝集粒子である。いくつかの実施形態では、当該粒子はMaSp系ポリマーの撚り合わせられたポリマー鎖によって形成された複数の孔(すなわち空間または内腔)を含む。いくつかの実施形態では、絡み合ったMaSp系ポリマーはマトリックスを形成している。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該当該マトリックスまたは粒子内の孔の少なくとも一部を満たしている。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は複数の孔によって封入されている。
【0129】
物品
本発明の別の態様では、本発明の組成物または本発明の乾燥されたMaSp系繊維を含む物品が提供される。
【0130】
本発明の別の態様では、本発明の組成物または本発明の凍結乾燥されたMaSp系繊維を含む物品が提供される。
【0131】
いくつかの実施形態では、当該物品は強化プラスチック、瓶、容器、パッケージ、ケーブル、チューブ、フィルム、ロープ、糸または織物の形態である。
【0132】
いくつかの実施形態では、当該物品は本組成物を含まない物品の性質と比較した場合に少なくとも1つの改善された機械的性質を特徴とし、ここではその性質は、ヤング率、引張強度、破壊ひずみ、降伏点、靱性、破壊仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、特定の伸び率における曲げひずみおよび応力、摩耗、UV抵抗性ならびにガス透過率からなる群から選択される。
【0133】
いくつかの実施形態では、当該物品は担体をさらに含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、当該物品は化粧品(例えば、カラー化粧品、パウダー、フェイスクレンザー)である。化粧品は本明細書の他の箇所に記載されているもの、または当業者に公知のものであってもよい。製品の非限定的な例としては保湿剤、クリーム、ローション、皮膚軟化剤、ファンデーション、ナイトクリーム、口紅、クレンザー、化粧水、日焼け止め、マスク、アンチエイジング製品、脱臭剤、制汗剤、香水、オーデコロンなどが挙げられる。
【0135】
いくつかの実施形態では、担体は生理学的に好適な担体である。例示的な生理学的に好適な担体は以下に列挙されており、さらなる生理学的に好適な担体は当該技術分野でよく知られている。
【0136】
いくつかの実施形態では、担体は乳化剤を含む。乳化剤は相間での界面張力を低下させ、かつ乳濁液の製剤および安定性を向上させることができる。乳化剤は非イオン性、陽イオン性、陰イオン性および双性イオン性乳化剤であってもよい(McCutcheon’s(1986);米国特許第5,011,681号、第4,421,769号および第3,755,560号を参照)。
【0137】
乳化剤の非限定的な例としては、グリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールの脂肪酸エステル、ソルビトールのエステル、ソルビタン無水物のエステル、カルボン酸コポリマー、グルコースのエステルおよびエーテル、エトキシ化エーテル、エトキシ化アルコール、アルキルホスフェート、ポリオキシエチレン脂肪族エーテルホスフェート、脂肪酸アミド、アシルラクチレート、石鹸、ステアリン酸TEA、オレス-3リン酸DEA、ポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール5ダイズステロール、ステアレス-2、ステアレス-20、ステアレス-21、セテアレス-20、ジステアリン酸PPG-2メチルグルコースエーテル、セテス-10、ポリソルベート80、リン酸セチル、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ジエタノールアミン、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG-100またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0138】
方法
本発明の別の態様では、乾燥された大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を得るための方法であって、(a)MaSp系繊維を有機溶媒を含む液体と混合して混合物を得る工程、および(b)混合物から液体を実質的に除去するのに適した条件下にその混合物を供する工程を含み、それにより、少なくとも100m2/gのBET表面積および任意に残存量の有機溶媒を特徴とする乾燥されたMaSp系繊維を得る方法が提供される。いくつかの実施形態では、工程(a)および工程(b)は続けてまたは同時に行う。いくつかの実施形態では、工程(a)は工程(b)を行う前に行う。
【0139】
いくつかの実施形態では、乾燥されたMaSp系繊維は本明細書に記載されている本発明のMaSp系繊維である。いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維を本明細書に開示されている方法により乾燥させる。
【0140】
本発明の別の態様では、凍結乾燥された大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を得るための方法であって、(a)MaSp系繊維を液体と混合して混合物を得る工程、および(b)その混合物を凍結乾燥に適した条件に供する工程を含み、それにより凍結乾燥されたMaSp系繊維を得る方法が提供される。
【0141】
いくつかの実施形態では、本方法は乾燥された大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を得るためのものであり、本方法は(a)湿ったMaSp系繊維を有機溶媒を含む液体と混合して混合物を得る工程、および(b)混合物から液体を実質的に除去するのに適した条件下にその混合物を供する工程を含み、それにより乾燥されたMaSp系繊維を得る。いくつかの実施形態では、本方法は湿ったMaSp系繊維を用意する工程を含み、ここでは用意する工程は工程(a)および(b)のうちのいずれかを実施する前に行う。いくつかの実施形態では、湿ったMaSp系繊維は本明細書に記載されている発現系のうちのいずれかから得られる(例えば抽出される)。いくつかの実施形態では、湿ったMaSp系繊維は宿主細胞または宿主生物(「発現系」ともいう)から単離される。
【0142】
いくつかの実施形態では、本方法は、MaSp系繊維(例えば発現系から得られ、かつ水を含む)を有機溶媒を含む液体と混合して混合物を得る工程、およびその混合物をMaSp系繊維を乾燥させるのに適した条件に供する工程を含む。いくつかの実施形態では、混合する工程は液体を湿ったMaSp系繊維に添加すること、またはその逆を含む。いくつかの実施形態では、添加することは液体を湿ったMaSp系繊維の上に注ぐことによる。いくつかの実施形態では、混合する工程は湿ったMaSp系繊維を液体に添加することを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、混合物から溶媒(例えば湿った繊維の液体および水含有量)の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%またはそれ以上を除去し、それにより乾燥されたMaSp系繊維を得るのに十分な条件を含む。いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、混合物から溶媒(例えば湿った繊維の液体および水含有量)の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%またはそれ以上を除去するのに十分な強度を有する熱への曝露および/またはIRもしくはMW放射線への曝露を含む。いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、混合物から溶媒(例えば湿った繊維の液体および水含有量)の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%またはそれ以上を除去するのに十分な期間にわたる熱への曝露および/またはIRもしくはMW放射線への曝露を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、混合物から溶媒(例えば湿った繊維の液体および水含有量)の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%またはそれ以上を除去するのに十分な期間にわたって混合物に真空をかけることを含む。いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は混合物の凍結乾燥に適した条件を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、(i)混合物を凍結させるのに適した条件にその混合物を曝露し、それにより凍結された混合物を得ること、および(ii)溶媒(例えば湿った繊維の液体および水含有量)を実質的に除去するのに十分な時間にわたって凍結された混合物を真空に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、(i)混合物をその混合物の凝固点以下の温度に供し、それにより凍結された混合物を得ること、および(ii)混合物から溶媒(例えば湿った繊維の液体および水含有量)の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%またはそれ以上を除去するのに十分な期間にわたって凍結された混合物に十分な真空をかけることを含む。いくつかの実施形態では、工程(i)および(ii)は続けてまたは同時に行う。いくつかの実施形態では、乾燥させるのに適した条件は、本明細書に記載されているBETおよび任意に本明細書に記載されている残存する水含有量および/または残存量の溶媒を特徴とする本発明のMaSp系繊維を得るためのものである。
【0146】
いくつかの実施形態では、当該液体は任意に水性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、当該液体は50~100%w/w、50~70%w/w、70~80%w/w、80~100%w/w、80~90%w/w、90~95%w/w、95~99%w/w、99~100%w/w(それらの間の任意の範囲を含む)の有機溶媒(例えばt-ブタノール)、および任意に30~0.1%w/w、任意に30~20%w/w、20~0.1%w/w、20~10%w/w、10~0.1%w/w(それらの間の任意の範囲を含む)の水または水溶液を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒は水と共に共沸混合物を形成することができる。いくつかの実施形態では、当該有機溶媒は、本発明の乾燥MaSp系繊維を得るのに十分な湿ったMaSp系繊維に対するw/w比のものである。いくつかの実施形態では、当該有機溶媒は湿ったMaSp系繊維の水含有量と共に共沸混合物を形成するのに十分な湿ったMaSp系繊維に対するw/w比のものである。いくつかの実施形態では、本方法の工程(a)は、湿ったMaSp系繊維(例えば発現系から得られ、かつ水を含む)を十分な量の液体(ここでは液体は本明細書に記載されているとおりである)と接触させるか混合することを含む。いくつかの実施形態では、本方法の工程(a)は、湿ったMaSp系繊維(例えば発現系から得られ、かつ水を含む)を有機溶媒を含む液体と接触させるか混合して混合物を得ることを含み、ここでは液体と湿ったMaSp系繊維とのw/w比は共沸混合物を形成するのに十分なものである。いくつかの実施形態では、本方法の工程(b)は、共沸混合物を蒸発させるか除去するのに十分な条件に混合物を供することを含む。当業者であれば、MaSp系繊維の最適な乾燥または凍結乾燥をもたらすために液体/繊維重量比を調整することができるであろう。最適な乾燥条件ならびに最適な液体/繊維重量比は、本明細書に開示されている乾燥(例えば凍結乾燥された)MaSp系繊維のポロシティを計算することにより評価することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、当該有機溶媒はエタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、2-ブタノール、n-ブタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ベンゼン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THF、TFA、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、溶媒はt-ブタノールである。いくつかの実施形態では、当該有機溶媒は本明細書の上に記載されているとおりである(例えばクラス3溶媒)。
【0149】
いくつかの実施形態では、混合物から液体を実質的に除去するのに適した条件は遠心分離、濾過、沈降、凍結乾燥またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0150】
本発明の別の態様では、凍結乾燥された大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を得るための方法であって、(a)MaSp系繊維をある期間にわたって有機溶媒と接触させる工程、および(b)MaSp系繊維を溶媒から分離する工程を含み、それによりMaSp系繊維を得る方法が提供される。
【0151】
本発明の別の態様では、大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維を精製するための方法であって、(a)MaSp系繊維をある期間にわたって有機溶媒と接触させる工程、および(b)MaSp系繊維を溶媒から分離し、それによりMaSp系繊維を精製する工程を含む方法が提供される。
【0152】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程(a)を1回~5回、2回~5回または3回~5回(その間の任意の範囲を含む)繰り返すことを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0153】
いくつかの実施形態では、当該期間は10秒(s)~10分(min)間である。
【0154】
いくつかの実施形態では、接触させる工程は混合、高剪断混合、オーバーヘッド撹拌、均質化またはそれらの組み合わせを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、分離する工程は遠心分離、濾過、沈降、凍結乾燥またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0156】
本発明の別の態様では、本明細書の上に記載されている方法によって得られる乾燥された多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維が提供される。
【0157】
本発明の別の態様では、本明細書の上に記載されている方法によって得られる凍結乾燥された多孔性大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系繊維が提供される。
【0158】
いくつかの実施形態では、乾燥されたMaSp系繊維はさらなる薬剤の改善された負荷容量を特徴とする。いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維は、水から乾燥されたMaSp系繊維と比較してさらなる薬剤の改善された負荷容量を特徴とする。いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維は対照と比較してさらなる薬剤の改善された負荷容量を特徴とする。いくつかの実施形態では、対照は水から乾燥されたMaSp系繊維である。本明細書で使用される「負荷容量」は、本発明の複合材中の乾燥されたMaSp系繊維の単位重量当たりで負荷されるさらなる薬剤の量を指す。負荷容量は、乾燥されたMaSp系繊維重量全体を本発明の複合材中に捕捉されたさらなる薬剤全体で割った量により計算することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、改善された負荷容量は、本発明の複合材中に100:1~1:10のさらなる薬剤と多孔性MaSp系繊維とのw/w比を含む。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤とMaSp系繊維とのw/w比は100:1~1:10、100:1~8:1、100:1~6:1、100:1~4:1、100:1~1:1、100:1~10:1、90:1~1:10、90:1~8:1、90:1~6:1、90:1~4:1、90:1~1:1、90:1~10:1、50:1~1:10、50:1~8:1、50:1~6:1、50:1~4:1、50:1~1:1、50:1~10:1、20:1~1:10、20:1~8:1、20:1~6:1、20:1~4:1、20:1~1:1、20:1~10:1、10:1~1:10、10:1~8:1、8:1~6:1、6:1~4:1、4:1~3:1、3:1~2:1、2:1~1:1、1:1~1:2、1:2~1:3、1:3~1:5、1:5~1:10(その間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように対照と比較した場合に改良されている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明の複合材中のさらなる薬剤とMaSp系繊維とのw/w比は、多くとも100:1、多くとも80:1、多くとも40:1、多くとも20:1、多くとも10:1、多くとも6:1、多くとも5:1、多くとも4:1、多くとも3:1、多くとも2:1、多くとも1:1(その間の任意の範囲を含む)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0161】
いくつかの実施形態では、乾燥されたMaSp系繊維はさらなる薬剤の改善された保持を特徴とする。いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維は水から乾燥されたMaSp系繊維と比較してさらなる薬剤の改善された保持を特徴とする。
【0162】
本発明の別の態様では、乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む複合材が提供される。いくつかの実施形態では、本複合材はさらなる薬剤に(例えば、物理的吸着および/または非共有結合または相互作用により)結合したMaSp系繊維を含む。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む組成物を本明細書では「複合材」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、本複合材は本発明のMaSp系繊維のマトリックス中に均質に分散されたさらなる薬剤を含む。いくつかの実施形態では、本複合材は本発明のMaSp系繊維(例えば、本明細書に記載されているように内腔または空所の中)に封入または吸着されているか埋め込まれたさらなる薬剤を含む。いくつかの実施形態では、本発明の複合材は実質的に均質または均一である(例えば凝集体および/または相分離を実質的に欠いている)。
【0163】
本明細書で使用される「複合材」という用語は、組み合わせられた場合に個々の要素とは異なる性質を有する物質を作り出す、特に似ていない化学的もしくは物理的性質を有する2種以上の構成材料から作製される物質を指す。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/または複合材は実質的に安定である。いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維(本明細書で「MaSp系繊維」または「本発明のMaSp系繊維」としても使用されている)およびさらなる薬剤を含む複合材は、水から乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む複合材と比較した場合に改善された安定性を有する。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は当該粒子の複数の孔内に安定に封入されている。いくつかの実施形態では、「改善された安定性」および「安定に封入された」という用語は、そこからのさらなる薬剤の放出を実質的に防止する本複合材の能力を指す。いくつかの実施形態では、「改善された安定性」という用語は、その物理的性質および/または化学組成を実質的に保持する本複合材の能力を指す。いくつかの実施形態では、「改善された安定性」という用語は、製剤(例えば薬用化粧品および/または医薬組成物)中などの適当な貯蔵条件下で凝集体および/または相分離および/またはさらなる薬剤の漏出を実質的に欠いている本複合材の能力を指す。いくつかの実施形態では、本組成物および/または本複合材は、本明細書に開示されている期間にわたって相分離を実質的に欠いている場合に安定であるという。本明細書で使用される「安定な」という用語は、本発明の組成物および/または複合材の化学的安定性および/または物理的安定性をいう。
【0165】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/または複合材は、本発明の組成物および/または複合材中のさらなる薬剤の濃度が20℃以下の温度で6ヶ月間にわたって1%、5%、10%を超えて低下しない場合に安定であるという。いくつかの実施形態では、本組成物および/または本複合材は、本組成物および/または本複合材中のさらなる薬剤の濃度が本明細書に記載されている適当な貯蔵条件下で6ヶ月間にわたって1%、5%、10%(それらの間の任意の範囲を含む)を超えて低下しない場合に安定であるという。
【0166】
いくつかの実施形態では、適当な貯蔵条件は、1~60℃、1~10℃、10~30℃、30~40℃、40~50℃、50~60℃(それらの間の任意の範囲を含む)の貯蔵温度を含む。いくつかの実施形態では、適当な貯蔵条件は周囲雰囲気を含む。いくつかの実施形態では、適当な貯蔵条件は、本明細書に記載されている貯蔵温度および少なくとも1ヶ月(m)、少なくとも2m、少なくとも3m、少なくとも4m、少なくとも5m、少なくとも6m、少なくとも7m、少なくとも8m、少なくとも10m、少なくとも12m、少なくとも2年(その間のあらゆる範囲または値を含む)の貯蔵時間を含む。いくつかの実施形態では、「安定な」という用語は本組成物および/または複合材の貯蔵安定性を指し、ここでは貯蔵安定性は本明細書に記載されている適当な貯蔵条件下での安定性を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、乾燥されたMaSp系繊維は対照と比較して持続放出プロファイルを特徴とする。本明細書で使用される「持続放出」という用語はさらなる薬剤を長期間にわたって徐々に、かつゆっくりと放出して持続効果を可能にする能力(例えば対照と比較した場合)を指す。
【0168】
いくつかの実施形態では、封入されたさらなる薬剤は(例えば施用部位または溶液中での)徐放プロファイルを特徴とする。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤を封入している粒子はそこからのさらなる薬剤の高速放出を実質的に防止する。
【0169】
いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む本複合材からのさらなる薬剤の放出速度は、水から乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む複合材と比較して少なくとも10%減少している。いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む本複合材からのさらなる薬剤の放出速度は、水から乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む複合材と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%または少なくとも1000%(その間のあらゆる範囲または値を含む)減少している。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0170】
いくつかの実施形態では、有機溶媒から乾燥されたMaSp系繊維およびさらなる薬剤を含む本複合材からのさらなる薬剤の放出速度は、対照と比較して少なくとも10%減少している。
【0171】
いくつかの実施形態では、対照は水から凍結乾燥されたMaSp系繊維である。以下に例示されているように(
図3および
図4)、本発明の複合材は、対照(例えば水から凍結乾燥されたMaSp系繊維を含む複合材)と比較してさらなる薬剤の改善された放出プロファイル(すなわち放出速度の減少)を特徴とする。
【0172】
いくつかの実施形態では、放出期間は対照と比較して少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも1000%(その間のあらゆる範囲または値を含む)延長されている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0173】
別の態様では、対象にさらなる薬剤を追加するための方法であって、対象に本発明の組成物または物品を投与し、それにより対象にさらなる薬剤を追加することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象はヒト対象または動物対象から選択される。
【0174】
押出品
いくつかの実施形態によれば、本発明は本発明のMaSp系繊維を含む押出品および/またはそれを含む組成物、および高溶融温度ポリマーを提供する。いくつかの実施形態では、本発明のMaSp系繊維および/またはそれを含む押出品は、押出可能または成形可能である(例えば、押出および/または成形によるその加工時の十分な物理的および/または化学的安定性を特徴とする)。いくつかの実施形態では、成形は溶融押出、射出成形、スピニング、メルトブローおよび熱成形またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、押出品は本明細書に記載されている複合材の形態である。いくつかの実施形態では、押出品は本発明のMaSp系繊維で強化された高溶融温度ポリマーの形態である。
【0175】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維および/またはそれを含む押出品は、それを成形または押出に適した条件に曝露した際に安定である。いくつかの実施形態では、成形に適した条件は、MaSp系繊維および/または押出品を軟化点前後の温度に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、成形に適した条件は、MaSp系繊維および/または押出品を(MaSp系繊維および/または押出品)のTm前後の温度に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、成形に適した条件は100~300℃の範囲の熱への曝露を含み、それにより押出品を融解または軟化させる。いくつかの実施形態では、成形または押出に適した条件は、押出品をその融解または軟化に適した条件下に供することを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維と高溶融温度ポリマーとの重量/重量(w/w)比は0.01:1~1:1、0.02:1~1:1、0.05:1~1:1、0.09:1~1:1、0.1:1~1:1、0.5:1~1:1または0.9:1~1:1(その間の任意の範囲を含む)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0177】
いくつかの実施形態では、押出品は0.01%~50%(w/w)、0.05%~50%(w/w)、0.09%~50%(w/w)、0.1%~50%(w/w)、0.5%~50%(w/w)、0.9%~50%(w/w)、1%~50%(w/w)、5%~50%(w/w)、10%~50%(w/w)、15%~50%(w/w)、20%~50%(w/w)、30%~50%(w/w)、0.01%~20%(w/w)、0.05%~20%(w/w)、0.09%~20%(w/w)、0.1%~20%(w/w)、0.5%~20%(w/w)、0.9%~20%(w/w)、1%~20%(w/w)、5%~20%(w/w)、0.01%~10%(w/w)、0.05%~10%(w/w)、0.09%~10%(w/w)、0.1%~10%(w/w)、0.5%~10%(w/w)、0.9%~10%(w/w)または1%~10%(w/w)(その間の任意の範囲を含む)のMaSp系繊維を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0178】
いくつかの実施形態では、高溶融温度ポリマーは非共有結合、物理的相互作用またはその両方によりMaSp系繊維に結合している。
【0179】
いくつかの実施形態では、高溶融温度ポリマーは200℃~400℃、210℃~400℃、220℃~400℃、250℃~400℃、270℃~400℃、280℃~400℃、200℃~390℃、210℃~390℃、220℃~390℃、250℃~390℃、270℃~390℃、280℃~390℃、200℃~380℃、210℃~380℃、220℃~380℃、250℃~380℃、270℃~380℃、280℃~380℃、200℃~350℃、210℃~350℃、220℃~350℃、250℃~350℃、270℃~350℃、280℃~350℃、200℃~310℃、210℃~310℃、220℃~310℃、250℃~310℃、270℃~310℃、280℃~310℃、200℃~300℃、210℃~300℃、220℃~300℃、250℃~300℃、270℃~300℃または280℃~380℃(その間の任意の範囲を含む)の融解温度(Tm)を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0180】
本明細書で使用される「高溶融温度ポリマー」という用語は、150℃超の連続使用温度(CUT)または相対温度指数(RTI)を特徴とするポリマーを指す。これらの温度は、その臨界的性質が熱分解により許容できない程に損なわれない材料の最大有効使用温度とみなされる。最大連続使用温度は、それを超えると被験製品の妥当な寿命の間に材料の機械的性質(引張強度、衝撃強度)または電気的性質(絶縁性に関連する絶縁耐力)が著しく低下する最大許容温度である。
【0181】
いくつかの実施形態では、高溶融温度ポリマーは熱可塑性ポリマーである。本明細書で使用される「熱可塑性」は加熱した場合により軟化状態となり、かつ冷却した場合に硬くなる材料を指す。熱可塑性材料はそれらの化学的もしくは機械的性質を全く変化させることなく何度か冷却したり加熱したりすることができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、高温熱可塑性プラスチックは「高性能プラスチック」または「高性能ポリマー」ともいう。本明細書で使用される「高性能ポリマー」という用語は、高温、高圧および腐食性薬品などの厳しい環境条件に供された場合にその望ましい機械的、熱的および化学的性質を保持することが知られているポリマー材料の群を指す。
【0183】
いくつかの実施形態では、高溶融温度ポリマーはポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(6-アミノカプロン酸)、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(デカメチレンアジパミド)(ナイロン10,6)、ポリ(ヘキサメチレンスベルアミド)(ナイロン6,8)、ポリ(スチレン)(PS)、ポリ(4-メチルペンテン)(PMP)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリアリレート、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびそれらのあらゆるコポリマーおよび組み合わせからなる群から選択される。
【0184】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は最長5時間における200℃~300℃の温度での熱安定性を特徴とする。いくつかの実施形態では、本押出品は最長5時間における200℃~300℃、210℃~300℃、220℃~300℃、250℃~300℃、270℃~300℃または280℃~380℃(その間の任意の範囲を含む)の温度での熱安定性を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本押出品は最長5時間、最長2時間、最長1時間、最長40分間、最長20分間または最長10分間(その間の任意の範囲を含む)における200℃~300℃の温度での熱安定性を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0185】
いくつかの実施形態では、本押出品は1分間~5時間、2分間~5時間、5分間~5時間、10分間~5時間、20分間~5時間、30分間~5時間、1分間~2時間、2分間~2時間、5分間~2時間、10分間~2時間、20分間~2時間、30分間~2時間、1分間~1時間、2分間~1時間、5分間~1時間、10分間~1時間、20分間~1時間、30分間~1時間、1分間~40分間、2分間~40分間、5分間~40分間、10分間~40分間、20分間~40分間、1分間~20分間、2分間~20分間、5分間~20分間または10分間~20分間の範囲(その間の任意の範囲を含む)の期間にわたる200℃~300℃の温度での熱安定性を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0186】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は最長5時間における200℃~300℃、210℃~300℃、220℃~300℃、250℃~300℃、270℃~300℃または280℃~380℃(その間の任意の範囲を含む)の温度での熱安定性を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0187】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は最長5時間、最長2時間、最長1時間、最長40分間、最長20分間または最長10分間(その間の任意の範囲を含む)における200℃~300℃の温度での熱安定性を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0188】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は1分間~5時間、2分間~5時間、5分間~5時間、10分間~5時間、20分間~5時間、30分間~5時間、1分間~2時間、2分間~2時間、5分間~2時間、10分間~2時間、20分間~2時間、30分間~2時間、1分間~1時間、2分間~1時間、5分間~1時間、10分間~1時間、20分間~1時間、30分間~1時間、1分間~40分間、2分間~40分間、5分間~40分間、10分間~40分間、20分間~40分間、1分間~20分間、2分間~20分間、5分間~20分間または10分間~20分間の範囲(その間の任意の範囲を含む)の期間にわたる200℃~300℃の温度での熱安定性を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0189】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は10000psi~24000psi、12000psi~24000psi、15000psi~24000psi、18000psi~24000psi、20000psi~24000psi、10000psi~21000psi、12000psi~21000psi、15000psi~21000psi、18000psi~21000psi、20000psi~21000psi、10000psi~20000psi、12000psi~20000psi、15000psi~20000psi、18000psi~20000psi、10000psi~17000psi、12000psi~17000psiまたは15000psi~17000psiの範囲(その間の任意の範囲を含む)の圧縮強度を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0190】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は12000psi~25000psi、12000psi~21000psi、15000psi~21000psi、18000psi~21000psi、20000psi~21000psi、12000psi~20000psi、15000psi~20000psi、18000psi~20000psi、12000psi~17000psiまたは15000psi~17000psiの範囲(その間の任意の範囲を含む)の曲げ強度を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0191】
「押出品」という用語は、本組成物が溶融(または軟化)状態になるまで加熱および/または圧縮され、かつその後に押し出される製品を指す。本明細書で使用される「押出可能な組成物」という用語は、押し出される組成物の能力を指す。「押出品」および「押出可能な組成物」は、熱可塑性を有するポリマーを含有する組成物だけでなく、公知の技術によって容易に押出可能であるかそうでなければ押出プロセスに関して熱可塑性ポリマーと同様に挙動するポリマーも指すために本明細書で使用される。
【0192】
いくつかの実施形態では、本押出品は、MaSp系繊維を含んでいない高融解温度ポリマーの熱安定性と比較した場合に改善された熱安定性を特徴とする。
【0193】
いくつかの実施形態では、本押出品はMaSp系繊維を含んでいない高融解温度ポリマーの性質と比較した場合に少なくとも1つの改善された機械的性質を特徴とし、ここではその性質はヤング率、貯蔵弾性率、損失弾性率、引張強度、破壊ひずみ、降伏点、靱性、破壊仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、特定の伸び率における曲げひずみおよび応力ならびに摩耗からなる群から選択される。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、本発明は本明細書の上に記載されている押出品を含む物品を提供する。
【0195】
いくつかの実施形態では、当該物品は強化プラスチック、瓶、容器、パッケージ、ケーブル、チューブ、フィルム、ロープ、糸または織物の形態である。
【0196】
いくつかの実施形態では、当該物品は本組成物を含まない物品の性質と比較した場合に少なくとも1つの改善された機械的性質を特徴とし、ここではその性質は、ヤング率、引張強度、破壊ひずみ、降伏点、靱性、破壊仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、特定の伸び率における曲げひずみおよび応力、摩耗、UV抵抗性ならびにガス透過率からなる群から選択される。
【0197】
いくつかの実施形態では、本発明は耐摩耗性押出品を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は改善された耐摩耗性を有する押出品を提供する。本明細書で使用される「耐摩耗性」という用語は、硬い粒子または突起部の相対的移動に曝露された場合に変位を停止する材料の能力を指す。耐摩耗性は、例えばアブレージョン(テーバー(Taber))摩耗試験、ガードナースクラバー(Gardner scrubber)試験、砂落とし(落砂)試験などの当該技術分野で知られている様々な試験により測定することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、熱安定性、ヤング率、引張強度、降伏点、耐摩耗性および伸長応力から選択される1つ以上の性質は、例えば少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0199】
いくつかの実施形態では、熱安定性、ヤング率、引張強度、降伏点、耐摩耗性および伸長応力から選択される1つ以上の性質は、例えば少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも250%、少なくとも250%、少なくとも260%、少なくとも270%、少なくとも280%、少なくとも290%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%、少なくとも600%、少なくとも650%、少なくとも700%、少なくとも750%、少なくとも800%、少なくとも850%、少なくとも900%、少なくとも1000%、少なくとも1500%、少なくとも2000%、少なくとも2500%または少なくとも3000%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0200】
いくつかの実施形態では、本組成物は50MPa~170MPa、52MPa~170MPa、60MPa~170MPa、68MPa~170MPa、90MPa~170MPa、100MPa~170MPa、101MPa~170MPa、105MPa~170MPa、101MPa~160MPaまたは105MPa~160MPaの範囲(その間の任意の範囲を含む)のヤング率を特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0201】
いくつかの実施形態では、熱安定性、ヤング率、引張強度、降伏点、耐摩耗性および伸長応力から選択される少なくとも2つの性質は、例えば少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0202】
いくつかの実施形態では、熱安定性、ヤング率、引張強度、降伏点、耐摩耗性および伸長応力から選択される少なくとも3つの性質は、例えば少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0203】
いくつかの実施形態では、熱安定性は、例えば少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0204】
いくつかの実施形態では、ヤング率は、例えば少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0205】
いくつかの実施形態では、引張強度は、例えば少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%または少なくとも50%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0206】
いくつかの実施形態では、降伏点は、例えば少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%または少なくとも50%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0207】
いくつかの実施形態では、耐摩耗性は、例えば少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%または少なくとも50%高められている。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0208】
いくつかの実施形態では、本押出品は、構造強度の20%超が組み込まれたMaSp系繊維から生じる構造強度を特徴とする。いくつかの実施形態では、本複合材は、構造強度の30%超が組み込まれたMaSp系繊維から生じる構造強度を特徴とする。
【0209】
いくつかの実施形態では、本押出品は、引張強度の1%超が組み込まれたMaSp系繊維から生じる構造強度を特徴とする。いくつかの実施形態では、本押出品は、引張強度の5%超が組み込まれたMaSp系繊維から生じる構造強度を特徴とする。いくつかの実施形態では、本押出品は、引張強度の10%超が組み込まれたMaSp系繊維から生じる構造強度を特徴とする。いくつかの実施形態では、本押出品は、引張強度の20%超が組み込まれたMaSp系繊維から生じる構造強度を特徴とする。いくつかの実施形態では、本押出品は、構造強度の30%超が組み込まれたMaSp系繊維から得られる引張強度を特徴とする。
【0210】
MaSp系繊維
「大瓶状腺スピドロインタンパク質」および「スピドロインタンパク質」という用語は本明細書全体を通して同義で使用され、全ての公知の大瓶状腺スピドロインタンパク質を包含し、これらは典型的には「MaSp」またはニワオニグモの場合は「ADF」と略される。これらの大瓶状腺スピドロインタンパク質は一般に1および2の2種類である。これらの用語は、公知の大瓶状腺スピドロインタンパク質の少なくとも反復領域との高い程度の同一性および/または類似性を有する本明細書に開示されている非天然タンパク質をさらに含む。さらなる好適なスパイダーシルクタンパク質としては、MaSp2、MiSp、MiSp2、AcSp、FLYS、FLASおよび鞭毛状腺由来タンパク質が挙げられる。
【0211】
本明細書で使用されるという「反復領域」、「反復配列」または「リピート」という用語は、スパイダーシルクアミノ酸配列において(例えばMaSp-1タンパク質において)天然に複数回生じるリピート単位由来の組換えタンパク質配列を指す。当業者であれば、スパイダーシルクタンパク質の一次構造は、主として単位リピートの一連の小さい変形からなると考えられていることを分かっているであろう。天然に生じるタンパク質中のこの単位リピートは多くの場合に互いに異なる。すなわち、タンパク質の長さに沿った単位リピートの正確な重複は僅かに存在するか全く存在しない。いくつかの実施形態では、そのタンパク質の一次構造が単一の単位リピートの多くの正確な反復を含む本発明の合成のスパイダーシルクが作製される。さらなる実施形態では、本発明の合成のスパイダーシルクは、1つの単位リピートの多くの反復を第2の単位リピートの多くの反復と共に含む。そのような構造は典型的なブロックコポリマーと同様である。また、いくつかの異なる配列の単位リピートを組み合わせて特定の用途に適した性質を有する合成のスパイダーシルクタンパク質を得てもよい。本明細書で使用される「ダイレクトリピート」という用語は、同様のリピートを有するタンデムリピート(頭-尾配置)である。別の実施形態では、本発明の合成のスパイダーシルクを形成するために使用されるリピートはダイレクトリピートである。いくつかの実施形態では、当該リピートは天然には存在しない(すなわち天然に生じるアミノ酸配列ではない)。
【0212】
反復配列を含む例示的な配列は、ADF-4:AAAAAAASGSGGYGPENQGPSGPVAYGPGGPVSSAAAAAAAGSGPGGYGPENQGPSGPGGYGPGGSGSSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSGGYGPGSQGPSGPGASSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSGGYGPGSQGPSGPGGPGASAAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAAAAAAGSGPGGYGPGNQGPSGPGGYGPGGPGSSAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGVYGPGGPGSSAAAAAAAGSGPGGYGPGNQGPSGPGGYGPGGSGSSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSGGYGPGSQGPSGPGASSAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAASGPGGYGPGSQGPSGPGAYGPGGPGSSAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGSRGYGPGSQGPGGPGASAAAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGYQGPSGPGAYGPSPSASAS(配列番号1)である。いくつかの実施形態では、本発明の合成の反復配列は、ADF-4(配列番号1)由来の1つ以上の反復配列に基づいている(例えば、本明細書の下に定義されている高い割合の同一性を有する)。本明細書で使用される「~に基づいている」という用語は、反復配列との高い割合の相同性を有する配列を指す。
【0213】
いくつかの実施形態では、各反復配列は、最大60個のアミノ酸、最大55個のアミノ酸、最大50個のアミノ酸、最大49個のアミノ酸、最大48個のアミノ酸、最大47個のアミノ酸、最大46個のアミノ酸、最大45個のアミノ酸、最大44個のアミノ酸、最大43個のアミノ酸、最大42個のアミノ酸、最大41個のアミノ酸、最大40個のアミノ酸、最大39個のアミノ酸、最大38個のアミノ酸、最大37個のアミノ酸、最大36個のアミノ酸または最大35個のアミノ酸を含み、ここでは各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、各反復配列は、5~60個のアミノ酸、10~55個のアミノ酸、15~50個のアミノ酸、20~45個のアミノ酸、25~40個のアミノ酸、25~39個のアミノ酸または28~36個のアミノ酸を含み、ここでは各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、各反復配列は30~40個のアミノ酸、31~39個のアミノ酸、32~38個のアミノ酸、33~37個のアミノ酸、34~36個のアミノ酸を含み、ここでは各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。さらなる実施形態では、各反復配列は35個のアミノ酸を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、反復領域は独立して式1に示されているアミノ酸配列(X1)ZX2GPGGYGPX3X4X5GPX6GX7GGX8GPGGPGX9X10を含み、式中、X1は独立して各場合においてAまたはGである。
【0215】
いくつかの実施形態では、(X1)Zの少なくとも50%はAであり、Zは5~30の整数であり、X2はSまたはGであり、X3はGまたはEであり、X4はG、SまたはNであり、X5はQまたはYであり、X6はGまたはSであり、X7はPまたはRであり、X8はYまたはQであり、X9はGまたはSであり、X10はSまたはGである。
【0216】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質の反復領域は、配列番号2(SGPGGYGPGSQGPSGPGGYGPGGPGSS)に示されているアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、MaSP1タンパク質の反復領域は、配列番号3(AAAAAAAASGPGGYGPGSQGPSGPGGYGPGGPGSS)に示されているアミノ酸配列を含む。
【0217】
別の実施形態では、配列番号1と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を共有するMaSP1タンパク質の反復領域の相同体が提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0218】
別の実施形態では、相同体は、配列番号2と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を共有する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0219】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質の反復領域は配列番号1に示されているアミノ酸配列を有する。
【0220】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質は、配列番号4(MSYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMDPEFKGLRRRAQLV)、配列番号5(MSYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMDPEFKGLRRRAQLVRPLSNLDNAP)、配列番号6(MSYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMDPEFKGLRRRAQLVDPPGCRNSARAGSS)あるいはその任意の機能的相同体、バリアント、誘導体または断片からなる群から選択される単一のN末端領域を含む。別の実施形態では、C末端領域の相同体は配列番号4~6のうちのいずれか1つと少なくとも70%の相同性を共有する。
【0221】
別の実施形態では、MaSP1タンパク質は、配列番号7(VAASRLSSPAASSRVSSAVSSLVSSGPTNGAAVSGALNSLVSQISASNPGLSGCDALVQALLELVSALVAILSSASIGQVNVSSVSQSTQMISQALS)、配列番号8(GPSGPGAYGPSPSASASVAASRLSSPAASSRVSSAVSSLVSSGPTNGAAVSGALNSLVSQISASNPGLSGCDALVQALLELVSALVAILSSASIGQVNVSSVSQSTQMISQALS)あるいはその任意の機能的相同体、バリアント、誘導体、断片または突然変異体からなる群から選択される単一のC末端領域をさらに含む。別の実施形態では、N末端領域の相同体は配列番号7~8と少なくとも70%の相同性を共有する。
【0222】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は、国際公開第2017025964号により開示されているタンパク質の混合物を含み、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0223】
いくつかの実施形態では、MaSP1タンパク質は少なくとも1つのタグ配列をさらに含む。本発明において使用することができるタグの非限定的な例としては、Hisタグ、HAタグおよびT7タグなどが挙げられる。当業者は他の好適なタグまたは他の融合パートナーをよく分かっている。
【0224】
本明細書で使用される「アミノ酸」は、天然に生じるアミノ酸および合成のアミノ酸、ならびに天然に生じるアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然に生じるアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるものならびに後で修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」は、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合しているアルファ炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は修飾されたR基または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。「アミノ酸模倣体」は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが天然に生じるアミノ酸と同様に機能する化合物を指す。アミノ酸は本明細書では、IUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨されているそれらの一般に公知の3文字記号または1文字記号のいずれかによって言及される場合がある。
【0225】
「アミノ酸配列」または「ペプチド配列」は、ペプチド結合によってつながったアミノ酸残基がペプチドおよびタンパク質中の鎖において位置する順序である。この配列は一般に、遊離アミノ基を含むN末端から遊離カルボキシル基を含むC末端へと報告される。アミノ酸配列は多くの場合に、タンパク質の一次構造を表す場合にはペプチド、すなわちタンパク質配列と呼ばれるが、タンパク質は特定の3次元構成に折り畳まれたアミノ酸配列として定められ、かつ典型的にはリン酸化、アセチル化、グリコシル化、スルフヒドリル結合形成および切断などの翻訳後修飾を受けているため、「アミノ酸配列」または「ペプチド配列」という用語と「タンパク質」という用語とを区別しなければならない。
【0226】
本明細書で使用される「単離された」または「実質的に精製された」は、本発明によって例示されている合成のスパイダーシルクアミノ酸配列またはそれをコードする核酸分子の文脈では、アミノ酸配列またはポリヌクレオチドがそれらの自然な環境から除去されているかそれらの自然な状態から変化されていることを意味する。従って「単離された」は、必ずしもアミノ酸配列または核酸分子が精製されている程度を反映しているわけではない。但し、ある程度精製されているそのような分子は「単離」されていることが理解されるであろう。当該分子が自然な環境に存在しない、すなわち天然に存在しない場合、それが存在する場所に関わらず当該分子は「単離」されている。例としてヒトにおいて自然に存在しないアミノ酸配列またはポリヌクレオチドは、ヒトに存在する場合であっても「単離」されている。
【0227】
「単離された」または「実質的に精製された」という用語は、アミノ酸配列または核酸に適用される場合、アミノ酸配列または核酸が自然な状態では関連づけられている他の細胞の構成要素を本質的に含まないことを意味する。それは均質な状態で、あるいは乾燥もしくは水溶液のいずれかの中に存在していてもよい。純度および均質性は典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィなどの分析化学技術を用いて決定される。製剤中に存在する主な種であるアミノ酸配列または核酸は実質的に精製されている。
【0228】
いくつかの実施形態では、リピートはMaSp1タンパク質またはその断片の反復領域の相同体、バリアント、誘導体のものである。いくつかの実施形態では、リピートはADF-4タンパク質またはその断片の反復領域の相同体、バリアント、誘導体のものである。
【0229】
「機能的相同体、バリアント、誘導体または断片」における本明細書で使用される「機能的」という用語は、規定の機能アッセイにより同定される生物学的機能または活性を有するアミノ酸配列を指す。より具体的には、規定の機能アッセイは、機能的相同体、バリアント、誘導体または断片を発現している細胞において自己集合する繊維の形成である。
【0230】
アミノ酸配列または核酸配列は、相同性が少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%または少なくとも99%であると決定された場合に、対応するアミノ酸配列または核酸の相同体である。
【0231】
「同一」、「実質的な同一性」、「実質的な相同性」または「同一性」の割合という用語は2つ以上のアミノ酸または核酸配列の文脈において、以下に記載されているデフォルトパラメータを有するBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いるか、手動のアライメントおよび目視検査により測定した場合に、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドであるか、あるいは指定された割合の同じアミノ酸残基またはヌクレオチド(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたる最大一致のために比較およびアライメントした場合に、指定された領域(例えば、アミノ酸配列の配列番号2または3)にわたって約60%の同一性、あるいは少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または99%の同一性)を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。次いでそのような配列を「実質的に同一である」とする。この定義は、試験配列の相補物も指し、あるいはそれに適用してもよい。この定義は、欠失および/または付加を有する配列ならびに置換を有する配列も含む。好ましいアルゴリズムはギャップなどを説明することができる。
【0232】
配列比較のために典型的には1つの配列は参照配列として機能し、それと試験配列とを比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標を指定し、かつ配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。好ましくは、デフォルトプログラムパラメータを使用することができ、あるいは他のパラメータを指定することができる。次いで配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性の割合を計算する。
【0233】
当然のことながら本発明は、配列番号1、2または3のうちのいずれか1つのバリアントのn回のリピートを含むアミノ酸配列をさらに包含する。本明細書で使用される「バリアント」または「実質的に同様の」という用語は、その1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20または25個)のアミノ酸残基またはヌクレオチドが欠失、置換または付加されている特異的に同定された配列とは異なるアミノ酸またはヌクレオチドの配列を含む。バリアントは天然に生じる対立遺伝子バリアントまたは非天然由来のバリアントであってもよい。バリアントまたは実質的に同様の配列は、最先端技術で使用される共通のアルゴリズムによって決定された場合の、それらのアミノ酸またはヌクレオチド配列と本明細書に記載されているアミノ酸またはヌクレオチド配列との同一性の割合を特徴とし得るアミノ酸配列または核酸の断片を指す。アミノ酸または核酸の好ましい断片は、参照の配列と比較した場合に少なくとも約40または45%の配列同一性、優先的には約50%または55%の配列同一性、より優先的には約60%または65%の配列同一性、より優先的には約70%または75%の配列同一性、より優先的には約80%または85%の配列同一性、なおより優先的には約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸またはヌクレオチドの配列を有するものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0234】
一実施形態では、MaSp系ポリマーは繊維である。
【0235】
一実施形態では、MaSp系ポリマーはモノマーからなる。一実施形態では、複数のモノマーがナノフィブリル内に配置されている。一実施形態では、複数のナノフィブリルが繊維内に配置されているか繊維を構成している。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたは繊維内のモノマーまたはナノフィブリルは4~16nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたは繊維内のモノマーまたはナノフィブリルは6~14nmの直径を有する。一実施形態では、MaSp系ポリマーまたは繊維内のモノマーまたはナノフィブリルは8~12nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは70~450nmの直径を有する。一実施形態では、タンパク質の繊維またはMaSp系ポリマーは80~350nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは80~300nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは150~250nmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーはコイルとして配置されている。一実施形態では、単繊維すなわち1本のMaSp系ポリマーはコイルとして配置されている。一実施形態では、コイルは5~800μmの直径を有する。一実施形態では、コイルは5~500μmの直径を有する。一実施形態では、コイルは5~30μmの直径を有する。一実施形態では、コイルは5~20μmの直径を有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは5~800μmの長さを有する。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは30~300μmの長さを有する。
【0236】
一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは分岐鎖状である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは1~10個の分岐を含む。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは炭水化物を含んでいない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーはグリコシル化されていない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーは脂肪または脂肪酸を含んでいない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーはリンを含んでいない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーはさらなる非MaSp系タンパク質を含んでいない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーはさらなるポリマー(例えば合成ポリマー、非MaSp系ペプチド、非MaSp系タンパク質)を含んでいない。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーはさらなるポリマーを実質的に含んでいない。一実施形態では、「~を含んでいない」は、「~を欠いている」または本質的に「~を欠いている」ことである。
【0237】
一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さ:直径のアスペクト比は、少なくとも1:10である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さ:直径のアスペクト比は少なくとも1:10~1:1500である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さ:直径のアスペクト比は少なくとも1:50~1:1000である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さ:直径のアスペクト比は少なくとも1:100~1:1200である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さ:直径のアスペクト比は少なくとも1:100~1:1000である。一実施形態では、繊維またはMaSp系ポリマーの長さ:直径のアスペクト比は少なくとも1:500~1:1000である。
【0238】
本明細書で使用される誘導体および機能性誘導体という用語は、任意の挿入、欠失、置換および修飾を有する本発明のアミノ酸配列を意味する。
【0239】
当然のことながら本明細書で使用される「挿入」という用語は、本発明の配列への1~50個のアミノ酸残基、具体的には20~1個のアミノ酸残基、より具体的には1~10個のアミノ酸残基のアミノ酸残基の任意の付加を意味する。最も具体的には、それは1、2、3、4、5、6、7、8、9~10個のアミノ酸残基である。さらに本発明のアミノ酸配列は、そのN末端および/またはC末端において様々な同一もしくは異なるアミノ酸残基により伸長されていてもよい。
【0240】
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を同様の構造的および/または化学的性質を有する別のアミノ酸で置換した結果であり、すなわち保存的アミノ酸置換である。アミノ酸置換は関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて行ってもよい。例えば非極性(疎水性)のアミノ酸としてはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられ、極性の中性のアミノ酸としてはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ、正に帯電した(塩基性)アミノ酸としてはアルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられ、負に帯電した(酸性の)アミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0241】
別の実施形態では、本発明のリピート配列は、配列番号2または3のうちのいずれか1つの配列に対する17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下または7個以下のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、本発明のリピート配列は配列番号1、2または3のうちのいずれか1つの配列に対する少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個または少なくとも13個のアミノ酸置換を有する。
【0242】
アミノ酸配列に関して当業者であれば、コードされる配列における単一のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を変化、付加または欠失させるアミノ酸、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、その変化により化学的に同様のアミノ酸によるアミノ酸の置換が生じる「保存的に修飾されたバリアント」であることを認識しているであろう。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換表が当該技術分野でよく知られている。そのような保存的に修飾されたバリアントは本発明の多型バリアント、種間相同体および対立遺伝子も追加で含み、それらを排除しない。
【0243】
例えば脂肪族アミノ酸(G、A、I、LまたはV)を以下の群の別のメンバーで置換する置換、すなわちアルギニンをリジンで、グルタミン酸をアスパラギン酸で、あるいはグルタミンをアスパラギンで置換するなどの1つの極性残基を別のもので置換するなどの置換を行ってもよい。以下の8つの群のそれぞれが互いに保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0244】
保存的核酸置換は、上に定義されている保存的アミノ酸置換が得られる核酸置換である。
【0245】
本発明のアミノ酸配列のバリアントは、配列番号2または3のうちの1つによって表されているリピート単位とアミノ酸レベルで少なくとも80%の配列類似性、少なくとも85%の配列類似性、90%の配列類似性あるいは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列類似性を有していてもよい。
【0246】
本発明のアミノ酸配列は、配列番号1または3またはその任意の断片の2~70回のリピートを含んでいてもよい。「断片」は特定の領域のアミノ酸もしくはDNA配列の画分を構成している。ペプチド配列の断片は特定の領域よりも短い少なくとも1つのアミノ酸であり、DNA配列の断片は特定の領域よりも短い少なくとも1つの塩基対である。当該断片は、C末端もしくはN末端側またはその両方において切断されていてもよい。アミノ酸断片は、配列番号1または3の少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも24個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個または少なくとも34個のアミノ酸を含んでいてもよい。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0247】
本発明のアミノ酸配列の突然変異体は、別のアミノ酸の1つ以上に対するそのアミノ酸の1つ(点突然変異体)以上であって約10個以下の交換を特徴とする。それらは異なるコドンをもたらすDNAレベルにおける対応する突然変異の結果である。
【0248】
なおさらに本発明は、本発明のアミノ酸配列の誘導体に関する。本発明のアミノ酸配列の誘導体は、例えばアミノ、ヒドロキシル、メルカプトまたはカルボキシル基などの官能基が誘導体化されており、例えばそれぞれグリコシル化、アシル化、アミド化またはエステル化されている。グリコシル化誘導体においてオリゴ糖は通常、アスパラギン、セリン、トレオニンおよび/またはリジンに結合している。アシル化誘導体は特に天然に生じる有機もしくは無機酸、例えば酢酸、リン酸または硫酸によってアシル化されており、それは通常それぞれ、特にチロシンまたはセリンのN末端アミノ基またはヒドロキシ基において生じる。エステルは天然に生じるアルコール、例えばメタノールまたはエタノールのエステルである。さらなる誘導体は塩、特に薬学的に許容される塩、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩などの金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛塩、あるいはアンモニアまたは好適な有機アミン、例えばトリエチルアミン、ヒドロキシ-低級アルキルアミン、例えば2-ヒドロキシエチルアミンなどの低級アルキルアミンと共に形成されるアンモニウム塩などである。
【0249】
いくつかの実施形態では、本発明のシルクタンパク質は翻訳後修飾を欠いている。
【0250】
いくつかの実施形態では、本発明のシルクタンパク質は生分解性である。この性質は例えば医学の分野において、シルクタンパク質が生物学的分解が望まれるインビボでの使用のためのものである場合は常に重要になり得る。この性質は、縫合材料ならびに創傷閉鎖および被覆システムに応用される場合がある。
【0251】
いくつかの態様によれば、本発明のMaSp系繊維は好適な核酸配列を含む発現ベクターを用いて製造され、ここでは核酸配列は作動可能に連結されたプロモーターおよび任意に調節配列の発現制御下にある。第PCT/IL2020/050752号に開示されている発現系などの例示的な発現系が当該技術分野で知られている。
【0252】
いくつかの実施形態では、MaSp系タンパク質は自己集合して規定の構造を形成する。いくつかの実施形態では、MaSp系タンパク質はネットワークの形態である。いくつかの実施形態では、MaSp系タンパク質は複合体の形態である。いくつかの実施形態では、MaSp系タンパク質は規定の二次構造、例えばβターン、γターン、βシートおよびαヘリックス構造などを誘導する。
【0253】
いくつかの態様によれば、本明細書において互換的に使用されるMaSp系タンパク質および/またはMaSp系ポリマーは繊維の形態であり、従って、本発明のいくつかの態様ではMaSp系ポリマーおよびMaSp系繊維という用語は本明細書では互換的に使用されることは明らかなはずである。本明細書で使用される「繊維」とは、互いに捻じられた2本以上のフィラメントからなる繊維材料の細い紐を意味する。「フィラメント」とは、微視的長さから1マイル以上の長さまでの範囲の不確定な長さの細長い糸のような物体または構造を意味する。具体的には、合成のスパイダーシルクフィラメントは微視的であり、かつタンパク性である。「バイオフィラメント」とは、組換えで作製されたスパイダーシルクタンパク質を含むタンパク質から作り出されたフィラメントを意味する。いくつかの実施形態では、「繊維」という用語は非構造化凝集体または沈殿物を包含しない。
【0254】
いくつかの実施形態では、タンパク質の繊維はその少なくとも1つの寸法(例えば、直径、長さ)のサイズを特徴とする。例えば限定されるものではないが、本繊維の直径は10nm~1μm、20~100nmまたは10~50nmである。
【0255】
いくつかの実施形態では、本繊維はナノフィブリルからなる。いくつかの実施形態では、ナノフィブリルは例えば、1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約40nm、約42nm、約44nm、約46nm、約48nmまたは約50nm(その間の任意の値または範囲を含む)の直径を有する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。一実施形態では、ナノフィブリルは3~7nmの直径を有する。一実施形態では、ナノフィブリルは4~6nmの直径を有する。
【0256】
いくつかの実施形態では、開示されている繊維の長さは1~200μm、10~100μm、100~500μmまたは200~500μmである。
【0257】
本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれか1つのいくつかの実施形態では、開示されている繊維(例えば粒子)は多孔性構造を特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも30%(例えば30~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも50%(例えば50~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも60%(例えば60~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも70%(例えば70~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも80%(例えば80~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は少なくとも90%(例えば90~99%)のポロシティを特徴とする。いくつかの実施形態では、多孔性構造は約90%のポロシティを特徴とする。
【0258】
本明細書では「ポロシティ(porosity)」という用語は、空隙からなる物質(例えば「スポンジ状」材料)の体積の割合を指す。別の実施形態では、表面積内の空隙または内腔を表面積全体(多孔性および非多孔性)で割ることによりポロシティを測定する。
【0259】
いくつかの実施形態では、開示されている繊維の多孔性構造は水を繊維表面に効率的に吸収するのを可能にする。すなわち、どんな特定の理論にも縛られるものではないがこの驚くべき発見は、自然界に存在する天然のスパイダーシルクとは厳格に区別される開示されている繊維の構造およびそのポロシティの観点から説明することができる。
【0260】
本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれか1つのいくつかの実施形態では、開示されている繊維は平均直径がナノサイズであることを特徴とする。
【0261】
いくつかの実施形態では、開示されている繊維は平均直径が1~50nmの範囲であることを特徴とする。いくつかのそのような実施形態では、平均直径は3~50nmの範囲である。いくつかのそのような実施形態では、平均直径は5~50nmの範囲である。いくつかのそのような実施形態では、平均直径は1~40nmの範囲である。いくつかのそのような実施形態では、平均直径は1~30nmの範囲である。いくつかのそのような実施形態では、平均直径は5~40nmの範囲である。
【0262】
いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は複数の孔を含む。いくつかの実施形態では、多孔性MaSp系繊維は複数のフィブリル(例えばナノフィブリル)を含む。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は本明細書の下に記載されているように粒子の形態である。いくつかの実施形態では、MaSp系繊維は本明細書の下に記載されているとおりである。いくつかの実施形態では、本組成物は複数のMaSp系繊維を含む。いくつかの実施形態では、複数のMaSp系繊維は異なる化学組成および/または異なる分子量(MW)を有する繊維を含む。
【0263】
以下の実施例の箇所にさらに例示されているように、いくつかの実施形態では、複数の開示されている繊維は自己集合化構造またはマトリックスの形態であってもよい。いくつかの実施形態では、このマトリックスは生体材料用途に適したものにすることができる。
【0264】
いくつかの実施形態では、このマトリックスは本明細書の下でさらに実証されているように細胞増殖に適しており、かつ細胞活性を維持または促進するのに適している。
【0265】
いくつかの実施形態では、「自己集合化」という用語は、1つのドメイン上の会合基が十分に近接した状態にあり、かつ別のドメインとの構成的会合を可能にするために配向されている場合に生じる、本繊維の少なくとも2つのドメイン間の一連の会合的化学反応に基づく自己集合プロセス(例えば自然発生的な自己集合プロセス)の結果として生じる構造を指す。言い換えると会合的相互作用は、1本以上の繊維のドメインの互いへの付着を生じさせる接近を意味する。いくつかの実施形態では、付着したドメインは互いに平行ではない。それぞれが異なる平面に係合している自己集合化構造の3つ以上のドメインが存在する構成も考えられる。
【0266】
いくつかの実施形態では、自己集合化繊維の密度(例えば約80%の空隙)が0.1g/cm3~0.4g/cm3または0.2g/cm3~0.3g/cm3の範囲であることは注目に値する。例示的な実施形態では、自己集合化繊維の密度は約0.26g/cm3である。
【0267】
一般事項
本明細書で使用される「約」という用語は±10%を指す。
【0268】
「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」という用語およびそれらの活用形は、「限定されるものではないが~を含む」を意味する。
【0269】
「~からなる(consisting of)」という用語は「~を含み、かつそれらに限定される」を意味する。
【0270】
「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、本組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含んでもよいが、さらなる成分、工程および/または部分が請求項に係る組成物、方法または構造の基本的および新規な特性を実質的に変えない場合にのみそうであることを意味する。
【0271】
「例示的」という言葉は本明細書では、「一例、実例または例示として機能すること」を意味するように使用される。「例示的」なものとして記載されている任意の実施形態は必ずしも、他の実施形態よりも好ましいか有利であるもの、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを排除するものとして解釈されるべきではない。
【0272】
「任意に」という言葉は本明細書では、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り複数の「任意の」特徴を含み得る。
【0273】
本明細書で使用される単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(その)(the)」は、その文脈が明らかにそうでないことを示していない限り複数の指示対象を含む。例えば「化合物」または「少なくとも1種の化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0274】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は範囲形式で示されている場合がある。当然のことながら範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する変更の余地がない限界として解釈されるべきではない。従って、範囲の記載は具体的に開示されている全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を有するように解釈されるべきである。例えば1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示されている部分範囲など、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5および6を有するように解釈されるべきできある。これはその範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0275】
数の範囲が本明細書に示されている場合は常に、示されている範囲内の任意の列挙されている数(分数または整数)を含むことが意図されている。「第1の指示数と第2の指示数との間の範囲(にある)」という語句および「第1の指示数~第2の指示数の範囲(にある)」は本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数およびその間の全ての分数および整数を含むことが意図されている。
【0276】
本明細書で使用される「方法」という用語は、限定されるものではないが化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の実施者に知られているか公知の様式、手段、技術および手順から容易に開発される様式、手段、技術および手順を含む、所与の作業を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0277】
本明細書で使用される「治療する」という用語は、病気の進行を抑止、実質的に阻止、減速または逆行させること、病気の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改善すること、あるいは病気の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0278】
明確性のために、別個の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴が単一の実施形態において組み合わせで提供される場合もあることが理解される。逆に簡潔のために、単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特徴は本発明の任意の他の記載されている実施形態において別々に、あるいは任意の好適な部分的組み合わせまたは好適な組み合わせとして提供される場合もある。様々な実施形態の文脈に記載されている特定の特徴は、当該実施形態がそれらの要素なしでは実施できないということがない限り、それらの実施形態の必須の特徴とみなされるべきではない。
【0279】
本明細書の上に詳述されており、かつ以下の特許請求の範囲の箇所で特許請求されている本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的支持を得ている。
【実施例】
【0280】
次に、上の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を例示する以下の実施例を非限定的な方法で参照する。
【0281】
実験手順
細菌増殖
pET24Rを発現する細菌(第PCT/IL2020/050752号に開示されている手順に従って産生させた)をクロラムフェニコールおよびカナマイシンを含むLB培地の3mLのスターターに播種し、約0.6のOD(96ウェルプレートにおいて100μL中で測定)になるまで増殖させ、増殖培地の中に播種した。
【0282】
この細菌を振盪しながら37℃で増殖させ、約20時間後にOD600およびβシート特異的染色を行った。24時間後に有意なβシート染色が現れた。さらなる詳細は第PCT/IL2020/050752号に開示されており、これは本明細書に組み込まれる。
【0283】
ポリマーをスパイダーシルク繊維で強化するための一般的なプロトコル
スパイダーシルク繊維懸濁液を遠心分離し、十分な量の溶媒に再懸濁させた。この懸濁液をポリマー溶液の中に注いだ。ポリマーおよびスパイダーシルクポリマーの懸濁液を均質性が達成されるまで徹底的に混合した。次いでこの溶液を乾燥させた。
【0284】
実施例1:細菌細胞によって産生されたSVX繊維の精製
細菌(例えば、pET24Rを発現する細菌)を遠心分離し、脱イオン水に再懸濁させた。次いで界面活性剤溶液を添加し、得られた懸濁液を37℃で一晩振盪した。遠心分離後にペレット(特に単離されたMaSp系繊維を含む)を6M尿素に再懸濁させた。遠心分離後にペレットを再懸濁させ、界面活性剤溶液で数回洗浄した。
【0285】
次いで得られたペレット(単離されたMaSp系繊維)をt-ブタノールで洗浄し、この洗浄を2~3回繰り返した。次いで均質な懸濁液が得られるまで、t-ブタノールをMaSp系繊維に添加した。懸濁液を撹拌して凝集体の形成を防止した。遠心分離後に、溶媒が完全に蒸発するまで懸濁液を(例えば液体窒素中で)凍結させることを含む凍結乾燥、および凍結された懸濁液の真空印加によりMaSp系繊維を乾燥させた。本発明者らはさらに、懸濁液を得るためにt-ブタノールと最大20%w/wの水との混合を上手く行い、これを凍結乾燥すると本明細書に記載されている凍結乾燥されたMaSp系繊維が得られた。正確な凍結乾燥条件は異なってもよいが、当業者であれば本明細書に開示されているように、凍結乾燥されたMaSp系繊維を得るために凍結乾燥条件(例えば真空、凍結乾燥時間、凍結温度など)を調整することができるであろう。
【0286】
図1A、
図1Cおよび
図1Eは、水から凍結乾燥された類似した繊維と比較して、精製およびt-ブタノールでの凍結乾燥後に得られた繊維の結果を示す。
【0287】
実施例2:機械的性質
例示的な実験では、ポリウレタン(PU)(E394POTA)をt-ブタノールまたは水から凍結乾燥された15%SVX-Eで強化した。対照(強化されていないPU)と比較した、t-ブタノールおよび水から凍結乾燥された15%SVX-Eで強化されたPUの応力-ひずみ曲線が
図2に示されている。
【0288】
実施例3:ヒアルロン酸の負荷および放出
t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-Eおよび水で凍結乾燥されたSVX-Eからのヒアルロン酸(HA)の放出を評価するために、異なるSVX-EおよびHAを用いて製剤を調製した。ヒアルロン酸(1:1w/w)を、t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-Eおよび水で凍結乾燥されたSVX-Eに添加した。
【0289】
水洗浄を用いてHAの放出を評価し、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて複合体SVX-HA中のHAの比を測定した。
【0290】
t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-Eおよび水で凍結乾燥されたSVX-EからのHAの放出プロファイルを示すグラフが
図3A~
図3Bに示されている。
【0291】
t-ブタノールで凍結乾燥され、かつHAで強化されたSVX-Eは水で凍結乾燥され、かつHAで強化されたSVX-Eと比較してHAのより遅い放出速度を示すことを観察することができる。
【0292】
実施例4:グリコール酸の負荷および放出
t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-Eおよび水で凍結乾燥されたSVX-Eからのグリコール酸(GA)の放出を評価するために、異なるSVX-EおよびHAを用いて製剤を調製した。GA(1:1w/w)をt-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-Eおよび水で凍結乾燥されたSVX-Eに添加した。
【0293】
水洗浄を用いてGAの放出を評価し、FTIRを用いて複合体SVX-GA中のGAの比を測定した。
【0294】
t-ブタノールで凍結乾燥されたSVX-Eおよび水で凍結乾燥されたSVX-EからのGAの放出プロファイルを示すグラフが
図4A~
図4Bに示されている。
【0295】
t-ブタノールで凍結乾燥され、かつGAで強化されたSVX-Eが、水で凍結乾燥され、かつGAで強化されたSVX-Eと比較してGAのより遅い放出速度を示すことを観察することができる。
【0296】
実施例5:BET表面積
S.Brunauer,P.H.Emmett,E.Teller,J.Am.Chem.Soc.1938,60,309-331に記載されているBET(Brunauer、Emmett、Teller)方法を用いて、窒素吸着データから表面積を決定した。Nova Station AおよびQuantachrome NovaWin(Quantachrome Instruments社)バージョン11.02を用いてBET表面積測定を行った。
【0297】
試料の調製
1ml中に0.0168gの粉末SVX試料を、気体除去のために120℃で3時間加熱した。窒素を用いて273°Kの浴温度で308分間分析を行った。
【0298】
t-ブタノールから乾燥されたSVXおよび水から乾燥されたSXVの試料の表面積を測定した。t-ブタノールから乾燥されたSVXの計算した表面積は約180m2/gであった。水から乾燥されたSVXの計算した表面積は、t-ブタノールから乾燥されたSVXの表面積と比較してかなりより低く、その計算値は約85m2/gであった。
【0299】
実施例6:大瓶状腺スピドロインタンパク質(MaSp)系ポリマーの熱安定性
細菌において発現される提供されているスパイダーシルクポリマー(SVX-E)の示差走査熱量測定(DSC)曲線の分析により、SVX-Eが融解ピークを示さないことを観察することができる。代わりに、それは約220℃および約280℃に小さいガラス転移温度(Tg)領域を示した。約330℃で分解ピークを観察することもできた(
図5)。
【0300】
図6は、25℃~280℃の温度上昇(曲線1)、50℃への冷却(曲線2)および350℃への新しい上昇(曲線3)でSVX-EのDSC曲線を示す。
【0301】
SVX-Eの熱重量分析(TGA)曲線(
図7A~
図7B)は、10℃/分の加熱速度において100℃以下の温度での重量損失が吸収された水の約5%のみであったことを示している。大きい重量減少(1%/時間超)が230℃超で開始することを観察することができる。
【0302】
本発明についてその具体的な実施形態と共に説明してきたが、多くの代替、修飾および変形が当業者には明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および広範囲に含まれる全てのそのような代替、修飾および変形を包含することが意図されている。
【0303】
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的に、かつ個々に示されているかのように同程度に、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。また本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が先行技術として本発明に利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的なものとして解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】